IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン ディキンソン フランスの特許一覧

特表2022-539221医療用容器用アダプタ、該アダプタを備える医療用容器及び該医療用容器の製造方法
<>
  • 特表-医療用容器用アダプタ、該アダプタを備える医療用容器及び該医療用容器の製造方法 図1
  • 特表-医療用容器用アダプタ、該アダプタを備える医療用容器及び該医療用容器の製造方法 図2
  • 特表-医療用容器用アダプタ、該アダプタを備える医療用容器及び該医療用容器の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】医療用容器用アダプタ、該アダプタを備える医療用容器及び該医療用容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20220831BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61M5/00 518
A61M39/10 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578063
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067528
(87)【国際公開番号】W WO2020260298
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19305878.1
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス デルイ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ジュフレ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066FF01
4C066FF03
4C066GG13
4C066JJ02
(57)【要約】
アダプタ(1)は、医療用容器の遠位先端部に固定されるように構成された近位部(2)と、コネクタを受け入れるように構成された遠位部(3)と、アダプタ(1)が医療用容器(10)に固定されたときに医療用容器の遠隔識別を可能にするように構成された遠隔読み取り可能な電子部品(5)とを備え、遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、少なくとも部分的にアダプタ(1)にはめ込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位先端部(11)を有する医療用容器(10)用アダプタ(1)であって、
前記医療用容器(10)の前記遠位先端部(11)に固定されるように構成された近位部(2)と、
コネクタを受け入れるように構成された遠位部(3)と、
前記アダプタ(1)が前記医療用容器(10)に固定されるときに、前記医療用容器(10)を遠隔識別できるように構成された遠隔読み取り可能な電子部品(5)であって、前記遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、少なくとも部分的に前記アダプタ(1)内にはめ込まれ、前記遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、前記アダプタ(1)の内面(21)と同一平面にあり、より好ましくは、前記アダプタ(1)の前記近位部(2)の内面(21)と同一平面にある、遠隔読み取り可能な電子部品(5)と、
を備える、アダプタ(1)。
【請求項2】
前記遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、RFIDチップ(51)とRFIDアンテナ(52)とを備えるRFIDタグ(50)であり、前記RFIDアンテナ(52)は、前記アダプタ(1)の貫通開口部(4)の周囲に延在することが好ましい、請求項1に記載のアダプタ(1)。
【請求項3】
前記近位部(2)は、グルー材料(24)を収容するように構成された少なくとも1つの環状空間(23)を画定する内面(21)を有し、前記遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、前記グルー材料(24)によって覆われるように配置される、請求項1または請求項2に記載のアダプタ(1)。
【請求項4】
前記アダプタ(1)は、接着によって前記医療用容器(10)に固定されるように構成されている、請求項3に記載のアダプタ(1)。
【請求項5】
前記遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、前記アダプタ(1)の前記近位部(2)内に完全に置かれる、請求項1から4のいずれかに記載のアダプタ(1)。
【請求項6】
前記近位部(2)の内面(21)には突出部が設けられ、前記RFIDチップ(51)は、前記突出部のうちの2つの間に配置されている、請求項2に記載のアダプタ(1)、または請求項2に従属する場合の請求項3から5のいずれかに記載のアダプタ(1)。
【請求項7】
前記近位部(2)は、環状リング(20)を備え、前記RFIDアンテナ(52)は、前記環状リング(20)内に配置される、請求項2に記載のアダプタ(1)、または請求項2に従属する場合の請求項3から6のいずれかに記載のアダプタ(1)。
【請求項8】
遠位先端部(11)と、請求項1から7のいずれかに記載のアダプタ(1)とを備える医療用容器(10)であって、前記アダプタ(1)は、前記医療用容器(10)の前記遠位先端部(11)に取り付けられている、医療用容器(10)。
【請求項9】
前記アダプタ(1)は、グルー材料(24)によって前記先端部(11)に固定され、前記アダプタ(1)の遠隔読み取り可能な電子部品(5)は、前記アダプタ(1)と前記グルー材料(24)との間にはめ込まれている、請求項8に記載の医療用容器(10)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の医療用容器(10)を製造する方法であって、
請求項1から7のいずれかに記載のアダプタ(1)を提供する工程と、
前記医療用容器(10)の遠位先端部(11)を提供する工程と、
前記アダプタ(1)の前記近位部(2)によって前記アダプタ(1)を前記遠位先端部(11)に接続する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器に取り付けるためのアダプタ、このアダプタを備える医療用容器、及びこの医療用容器の製造方法に関する。
【0002】
本願において、部品または装置の遠位端は、使用者の手から最も遠い端を意味するものとして理解されるべきであり、近位端は、使用者の手に最も近い端を意味するものとして理解されるべきである。同様に、本願において、「遠位方向」とは、本発明の医療用容器に関して注射の方向を意味し、「近位方向」とは、該注射の方向とは反対の方向、すなわち、注射操作の場合、容器を持つ使用者の手の方向を意味するものと理解される。
【背景技術】
【0003】
医療機器、例えばプレフィラブル又はプレフィルドシリンジなどの注射装置は、通常、医薬製品の容器を形成する中空体又はバレルを備える。この本体は、使用者が近位圧力をフランジに加えるように指を置くことができるフランジを備える近位端と、通常針を備える遠位端とを備え、この遠位端は、医薬製品が容器から放出される軸方向の通路を画定する長手方向先端部の形態である。しかしながら、この長手方向先端部は、それ自体では非経口投与を可能にせず、ステーキドニードル(staked needle)または針ハブもしくは静脈(IV)ラインなどのコネクタへのシリンジの接続を可能にするアダプタのいずれかを備えなければならない。基本的に、アダプタは、接着、ねじ込み(screwing)、スナップ嵌めまたは摩擦力によって、シリンジの長手方向先端部の周りに固定することができる。したがって、コネクタは、例えばねじ込みによってアダプタに取り付けられる。
【0004】
注射装置などの医療用容器の個々のトレーサビリティの必要性は、製造工程から少なくとも該医療用容器、典型的には医薬製品の注射の最終使用まで増大する。
【0005】
例えば、特許文献1(WO2017157784)から、印刷された機械読み取り可能な固有の識別コードのシーケンスによって囲まれた円筒状の側面を有する入れ物が公知である。これらの印刷された固有の識別コードにより、サプライチェーンに沿って各入れ物を追跡およびトレースできる。しかしながら、これらの固有の識別コードは、入れ物の外側に印刷されており、例えば、入れ物の取り扱いまたは使用中に除去または損傷され得る。さらに、固有の識別コードは、入れ物の一部を覆うため、顧客の目視検査プロセスに影響を与え得る。
【0006】
さらに、特許文献2(US8872870)から、ガラスマークのための方法が公知であり、ここで、読取り可能マークの配列は、例えば追跡の目的で、ガラス管の外面にレーザによって形成することができる。しかしながら、レーザマーキング方法の欠点は、ガラス材料への損傷の可能性及び高価な製造プロセスである。また、レーザで書かれたマークの配列は、読み取られるようにガラス管に視覚的にアクセスする必要があるため、読み取り操作をいつでも行うことができない。レーザで書かれたマークの配列は、さらに、顧客の目視検査プロセスに影響を与え得る。
【0007】
特許文献3(US2014276213)はさらに、注射部位情報キャップを開示している。特許文献4(DE102008061415)には、呼吸ホースを呼吸装置に接続するための医療機器用ホースコネクタが開示されており、このコネクタは、一緒に成型されたプラスチック部品の間に埋め込まれた電子データ記憶素子を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2017157784
【特許文献2】US8872870
【特許文献3】US2014276213
【特許文献4】DE102008061415
【発明の概要】
【0009】
この文脈において、本発明の目的は、製造工程の第1工程から最終使用、典型的には、注入または廃棄工程までの医療用容器の個々の識別を容易にし、目視検査に影響を与えず、除去または損傷のリスクをほとんどまたは全く与えず、上記の欠点を軽減するアダプタを提供することにある。
【0010】
本発明の一態様は、遠位先端部を有する医療用容器用アダプタであって、アダプタは、
医療用容器の遠位先端部に固定されるように構成された近位部と、
コネクタを受け入れるように構成された遠位部と、
アダプタが医療用容器に固定されるときに、医療用容器の遠隔識別を可能にするように構成された遠隔読み取り可能な電子部品であって、遠隔読み取り可能な電子部品は、少なくとも部分的にアダプタ内にはめ込まれている、遠隔読み取り可能な電子部品と、
を備える。
【0011】
アダプタ内にはめ込まれた電子部品とは、アダプタの材料が電子部品を完全に又は少なくとも部分的に包んでいると理解されるべきであり、その結果、電子部品は外部環境から保護され、従って、損傷又は除去されない。
【0012】
医療用容器の遠隔識別を可能にするように構成された遠隔読み取り可能な電子部品とは、電子部品が、RFIDリーダーなどの読み取り機によって遠隔読み取り可能な電子的に記憶された情報を含み、本発明のアダプタが組み立てられることが意図されている医療用容器の識別を可能にすることを意味する。
【0013】
したがって、本発明のアダプタは、製造工程の第1段階から医療用容器の最終使用または医療用容器の廃棄までの各医療用容器の個別のトレーサビリティを有することを可能にする。また、電子部品は、少なくとも部分的にアダプタ内に包まれているので、医療用容器の包装、滅菌、保管、流通または使用によって生じ得る除去または外部損傷から保護される。また、電子部品がアダプタ内に置かれるため、顧客の目視検査工程に影響を与えることもない。さらに、電子部品は、医療用容器の遠隔での容易な識別を可能にすると考えられる。電子部品は、読み取り機からの直接的な視覚的視点(visual perspective)を必要としないために、医療用容器を開封する必要なしにいつでも読み取りが行われ得る。さらに、電子部品は、アダプタの内部に一体化されるため、通常使用されるアダプタまたは医療用容器バレルに厚さを加えることがないことも有利であり、したがって、医療用容器の包装または保管に関して変更を必要としない。
【0014】
好ましい実施形態では、遠隔読み取り可能な電子部品は、RFIDタグ、超広帯域リアルタイム位置システム(RTLS)、wifi RTLSおよび赤外線RTLSからなる群から選択される。有利には、遠隔読み取り可能な電子部品は、RFIDチップおよびRFIDアンテナを備えるRFIDタグであり、該RFIDアンテナは、アダプタの貫通開口部の周囲に延在することが好ましい。
【0015】
好ましくは、遠隔読み取り可能な電子部品は、アダプタの内面と同一平面にあり、より好ましくは、アダプタの近位部の内面と同一平面にある。
【0016】
これにより、グルー材料を添加する前の外部環境によって遠隔電子部品が損傷されるリスクを制限する。これにより、アダプタを1ショット成形で成形することもできる。
【0017】
好ましくは、近位部は、グルー材料を収容するように構成された少なくとも1つの環状空間を画定する内面を有し、遠隔読み取り可能な電子部品は、グルー材料によって覆われるように配置される。
【0018】
その結果、遠隔読み取り可能な電子部品が、アダプタとグルー材料との間にはめ込まれる。これにより、遠隔読み取り可能な電子部品を効率的に保護しつつ、製造コストを低減することができる。
【0019】
従って、アダプタは、接着によって医療用容器に固定されるように構成される。
【0020】
好ましくは、遠隔読み取り可能な電子部品は、アダプタの近位部内に完全に置かれる。
【0021】
好ましくは、近位部の内面には突出部が設けられ、RFIDチップは該突出部のうちの2つの間に置かれる。
【0022】
これは、射出プロセス中の圧力によってRFIDチップが破壊されるリスクを制限する。
【0023】
突出部は、少なくとも1つの環状空間を複数のキャビティに分割してもよい。
【0024】
好ましくは、近位部は環状リングを含み、RFIDアンテナはこの環状リング内に配置される。
【0025】
環状リングは、少なくとも1つの環状空間の遠位端に設けられてもよい。
【0026】
一実施形態によると、遠隔読み取り可能な電子部品は、アダプタに完全にはめ込まれる。
【0027】
この結果、投資コストを回避するように、標準的なアダプタ寸法に関してアダプタ寸法を変化させない。この実施形態では、アダプタは、2ショット射出成形プロセスによって成形される。
【0028】
遠隔読み取り可能な電子部品がアダプタ内に完全にはめ込まれると、該アダプタは、接着、圧入ねじ込みまたはスナップ嵌めによって医療用容器に固定されるように構成される。
【0029】
本発明の別の態様は、遠位先端部と、上述のようなアダプタとを備える医療用容器であって、該アダプタは、該医療用容器の遠位先端部に取り付けられている。
【0030】
好ましくは、アダプタは、グルー材料によって該遠位先端部に固定され、アダプタの遠隔読み取り可能な電子部品は、アダプタと該グルー材料との間にはめ込まれる。
【0031】
あるいは、アダプタは、圧入、スナップまたはねじ込み手段によって該遠位先端部に固定され、アダプタの遠隔読み取り可能な電子部品は、アダプタ内に完全にはめ込まれる。
【0032】
本発明の他の態様は、上記のような医療用容器の製造方法であって、該製造方法は、
上記のようなアダプタを提供する工程と、
医療用容器の遠位先端部を提供する工程と、
アダプタの近位部によってアダプタを遠位先端部に接続する工程と、
を含む。
【0033】
好ましくは、この方法は、以下の工程の中から選択される少なくとも1つの工程を含む。
【0034】
アダプタの近位部と遠位先端部との間にグルー材料を分配する工程;
アダプタを遠位先端部にねじ込む工程;または
アダプタを遠位先端部にスナップ嵌めをする工程;または
アダプタを遠位先端部に圧入する工程。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明及びそれから生じる利点は、添付図面を参照して以下に示す詳細な説明から明らかに現れるであろう。
図1】本発明のアダプタの斜視図である。
図2】医療用容器の遠位先端部に取り付けられた本発明のアダプタの断面図である。
図3】本発明のアダプタの遠隔読み取り可能な電子部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるアダプタ1が示されている。アダプタ1は、図2に示すように、医療用容器10の遠位先端部11に、より正確には、該遠位先端部11の外面110に取り付けられることを意図されている。外面110は、円筒状であってもよいし、遠位側にテーパ状(distally tapered)であってもよい。
【0037】
アダプタ1は、取り付けリングの形態であってもよく、医療用容器10に固定されるように構成された近位部2と、接続リングの形態であってもよく、遠位先端部11の通路111とコネクタとの間に確かな流体連通を確立するために、針ハブまたは静脈(IV)ラインなどのコネクタ(図示せず)を受け入れるように構成された遠位部3とを備える。したがって、遠位部3は、コネクタを遠位先端部11に固定するために、雌ねじ30などの接続手段を備える。接続手段は、代わりに、バヨネット要素、スナップ要素、または圧入要素を含んでもよい。
【0038】
図1を参照すると、アダプタ1は、遠隔読み取り機による医療用容器10の遠隔識別のための遠隔読み取り可能な電子部品5を備える。有利には、遠隔読み取り可能な電子部品は、RFIDタグ50、好ましくは受動RFIDタグ5である。RFIDタグ50は、アダプタ1の直接的な透視図(pespective view)を必要とせずに、RFIDリーダによって読み取ることができる。
【0039】
図3を参照すると、RFIDタグ50は、RFIDチップ51およびRFIDアンテナ52を備える。RFIDチップ51は、医療用容器10の識別を可能にする機器固有識別(UDI)を記憶する記憶ユニットを少なくとも含んでもよい。
【0040】
RFIDタグ5は、以下の寸法の一部または全部を有することができる:0.5mm~10mmの、例えば約2.4mmの、全体の高さH;0.1mm~8mmの、例えば約0.5mmの、アンテナ高さh;0.05mm~1mmの、例えば約0.2mmの、アンテナ幅w;2mm~20mmの、例えば約4.8mmの、アンテナ外径;0.5×0.5mm~5×5mmの、例えば約1.8×1.8mmの、RFIDチップ。
【0041】
また、アダプタ1には、遠隔読み取り可能な電子部品5がオーバーモールドされていてもよい。
【0042】
遠隔読み取り可能な電子部品5は、少なくとも部分的にアダプタ1にはめ込まれている。
【0043】
第1の実施形態では、遠隔読み取り可能な電子部品5は、例えば1ショット射出プロセス中に、アダプタ1の材料に部分的にはめ込まれる。この第1の実施形態では、遠隔読み取り可能な電子部品5は次いで、グルー材料24によって覆われることが意図されている。その結果、遠隔読み取り可能な電子部品5は、アダプタ1の材料内に部分的にはめ込まれるが、アダプタ1とグルー材料24と、必要に応じて医療用容器10の遠位先端部11との間に完全にはめ込まれる。本実施形態によれば、遠隔読み取り可能な電子部品5は、アダプタ1の近位部2に完全に配置されることが好ましい。有利には、遠隔読み取り可能な電子部品5が、RFIDチップ51およびアンテナ52を備えるRFIDタグ50である場合、チップ51は、アダプタ1とグルー材料24との間に完全にはめ込まれ、一方、アンテナ52は、グルー材料24によって覆われないままであり得るので、アンテナ52は、医療用容器10の遠位先端部11に接触し、したがって、アダプタ1が遠位先端部11に取り付けられるときに、アダプタ1と医療用容器10の遠位先端部11との間にはめ込まれる。アンテナ52は、グルー材料24と接触していても、していなくてもよい。
【0044】
グルー材料は、ホットメルト接着剤と膠との間で選択してもよく、例えば、アクリレート基材を有する膠である。
【0045】
第2の実施形態では、遠隔読み取り可能な電子部品5は、アダプタ1の材料に完全にはめ込まれる。例えば、遠隔読み取り可能な電子部品5は、2ショット射出プロセスにおいて、オーバーモールドされてもよい。より詳細には、遠隔読み取り可能な電子部品5は、金型へのインサートとして位置決めされる。アダプタ1の第1の部分は、材料の第1の射出によって形成され、遠隔読み取り可能な電子部品5を部分的に覆う。アダプタ2の第2の部分は、第1の部分と共に遠隔読み取り可能な電子部品5を完全に包み、したがって、第1の部分と同じ材料または異なる材料であってもよい材料の第2の射出工程によって形成される。この実施形態によれば、遠隔読み取り可能な電子部品5は、アダプタ1の近位部2および/または遠位部3内に置かれてもよい。
【0046】
最後に、上記第1および第2の実施形態の両方において、アダプタ1が医療用容器10の遠位先端部11に取り付けられるとき、遠隔読み取り可能な電子部品5、特にRFIDタグ50のチップ51は、アダプタ1、グルー材料24および/または医療用容器10の遠位先端部11の間、または唯一のアダプタ1内のいずれかに完全にはめ込まれることが好ましい。これにより、遠隔読み取り可能な電子部品5が外部環境から保護される。例えば、アダプタ1または医療用容器10は、したがって、遠隔読み取り可能な電子部品5を損傷することなく、滅菌処理に供され得る。
【0047】
アダプタ1は、長手方向軸線Aに沿って近位部2および遠位部3を通って延びる中央貫通開口部4を画定する。貫通開口部4は、近位部および遠位部を画定しており、近位部は遠位先端部11を受け入れるように構成されており、遠位部は遠位先端部11および遠位先端部11の周囲に接続されるコネクタの両方を受け入れるように構成されている。従って、遠位部は近位部よりも大きな直径を有する。
【0048】
図1および図2に示すように、RFIDアンテナ52は、好ましくは、アダプタ1の貫通開口部4の周囲に延在する。図1にみられるように、RFIDアンテナ52は、貫通開口部4の周囲全体に延在している。
【0049】
図2を参照すると、近位部2は、有利には、該近位部2の遠位端に設けられた環状リング20を備えることができる。環状リング20は、半径方向内側に突出している。該環状リング20は、近位部2と遠位部3とを分離する遠位肩部200を画定してもよい。図1に示すように、環状リング20は、以下にさらに詳細に説明するように、グルー材料のための止め具(stop)として機能することを意図した近位肩部201をさらに画定してもよい。
【0050】
図1または図2に示すように、RFIDアンテナ52は、有利には、この環状リング20内に配置される。
【0051】
近位部2は、遠位先端部11の外面110上に該近位部2を固定するために固定手段を備え得る内面21を備える。
【0052】
固定手段は、アダプタ1を遠位先端部11に結合するためにグルー材料24を受け入れるように構成された環状空間23を含んでもよい。環状空間23は、アダプタ1が医療用容器10に取り付けられるときに、近位部2の内面21、環状リング20、特に近位肩部201、および遠位先端部11の外面110によって区切られる。環状空間23は、グルー材料24を入れるために開いた近位端を有してもよく、一方、環状リング20によって閉じられてもよい遠位端を有してもよい。
【0053】
好ましくは、遠隔読み取り可能な電子部品5、より正確にはRFIDチップ51は、部分的に環状空間23を画定する。遠隔読み取り可能な電子部品5は、図1に示されるように、近位部2の内面21と実質的に同一平面にある。内面21と同一平面にある遠隔読み取り可能な電子部品5とは、該電子部品5の一部が、内面21と同じ高さに配置されているか、又は、該内面21に対してわずかに突出しているか又は凹部を形成していてもよいことを意味する。これにより、読取可能な電子部品5は、環状空間23に収容された該グルー材料24によって覆われるように配置される。
【0054】
固定手段は、長手方向軸線Aに平行に延在してもよい長手方向リブ25の形態であってもよい1つまたは幾つかの突出部を含んでもよい。長手方向リブ25は、円周内面21上の周囲に規則的に配置されてもよい。長手方向リブ25は、内面21の全長にわたって、好ましくは連続的に延在し得る。長手方向リブ25は、環状リング20に接触してもよく、または環状リング25から離間していてもよい。長手方向リブ25及び環状リング20の少なくとも一方は、アダプタ1の近位部2と該遠位先端部11との間の締めしろ(interference)を増大させるために、遠位先端部11の外面110と接触していてもよい。長手方向リブ25は、環状空間23をいくつかのキャビティに分割してもよい。例えば、図1に示すように、アダプタ1の近位部2は、医療用容器10の遠位先端部11上にアダプタ1のアイソスタティックセンタリング(isostatic centering)を有するために、3つの長手方向リブ25のみを備える。3つの長手方向リブ25は、環状空間23を3つのキャビティに分割する。これらのキャビティのうちの少なくとも1つ、好ましくは各キャビティは、グルー材料24を入れるように開いた近位端を有してもよく、一方、環状リング20によって閉じられていてもよい遠位端を有していてもよいことに留意されたい。
【0055】
図1を参照すると、RFIDチップ51は、好ましくは、該長手方向リブ25のうちの2つの間に配置される。したがって、RFIDチップ51は、好ましくは、該突出部のうちの1つの後ろにはめ込まれない。RFIDチップ51は、長手方向リブ25によって形成されたキャビティのうちの1つを部分的に画定してもよい。
【0056】
アダプタ1は、プラスチック材料、より正確には、高密度ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル ブタジエン スチレン(ABS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、およびこれらの組み合わせなどの医療用途に適合した任意の硬質ポリマーから作ってもよい。好ましくは、アダプタ1は、ポリカーボネート(PC)から作られる。アダプタ1は、その製造を簡略化するために、単一の材料から製造することが好ましい。しかしながら、アダプタ1は、例えば2ショット射出プロセスで製造される場合には、2つの異なる材料を含んでもよい。好ましくは、アダプタ1は、光透過性材料からなる。
【0057】
図2を参照すると、本発明はまた、シリンジであってもよい医療用容器10に関する。該医療用容器10は、医薬製品のためのリザーバを画定する管状バレル12を備える。管状バレル12は、遠位肩部120から突出し得る遠位先端部11を備える。遠位先端部11は、円筒状であってもよいし、遠位側にテーパ状であってもよい。遠位先端部11は、リザーバと連通する内部通路111を備える。管状バレル12および遠位先端部111は、好ましくはガラス製である。医療用容器10は、リザーバから通路111を通って医薬製品を放出するように、ピストンおよびプランジャロッド(図示せず)を備え得る。
【0058】
医療用容器10はまた、上述した特徴の一部又は全部を有するアダプタ1を備えている。アダプタ1は、その近位部2が遠位先端部11に取り付けられている。
【0059】
好ましい実施形態では、アダプタ1の近位部2は、グルー材料24によって該遠位先端部11に固定される。これにより、遠隔読み取り可能な電子部品5が、アダプタ1と該グルー材料24との間にはめ込まれる。グルー材料24のこの接着層により、アダプタ1は、遠位先端部11の外面110に溝またはリングを必要とすることなく、遠位先端部11の周囲に接着され得る。したがって、遠位先端部11には、このような溝またはリングがない。
【0060】
別の好ましい実施形態では、アダプタ1の近位部2は、圧入、スナップまたはねじ込み手段によって遠位先端部11に固定されてもよい。従って、遠隔読み取り可能な電子部品5をアダプタ1内に完全にはめ込んでもよい。
【0061】
本発明はまた、この医療用容器10の製造方法に関する。この方法は、以下の工程:
例えば、1ショットまたは2ショット射出プロセスにおいて、遠隔読み取り可能な電子部品5がアダプタ1内で部分的または完全にオーバーモールドされる、上述の特徴の一部または全てを有するアダプタ1を提供する工程、
医療用容器10の遠位先端部11を提供する工程、
アダプタ1の近位部2によってアダプタ1を遠位先端部11に接続する工程、
を含む。
【0062】
図2に示すように、アダプタ1は、遠位先端部11の外面110に接続されてもよい。
【0063】
また、アダプタ1を遠位先端部11に接続する工程は、以下:
グルー材料24をアダプタ2の近位部2と遠位先端部11との間に分配する工程であって、該グルー材料24を環状空間23内に分配していてもよい、工程;または
アダプタ1を遠位先端部11にねじ込む工程;または
アダプタ1を遠位先端部11にスナップ嵌めをする工程;または
アダプタ1を遠位先端部11に圧入する工程
のものから選択される少なくとも1つの工程を含んでもよい。
【0064】
この方法が、グルー材料24をアダプタ1の近位部2と遠位先端部11との間に分配する工程を含む場合、グルー材料24は、アダプタ1が遠位先端部11の周囲に置かれる前または後に分配されてもよいことに留意されたい。さらに、グルー材料24をアダプタ2の近位部2と遠位先端部11との間に分配する工程は、遠隔読み取り可能な電子部品5がアダプタ1内に部分的にはめ込まれているときに、遠隔読み取り可能な電子部品5を覆うことを含み、遠隔読み取り可能な電子部品5がグルー材料24を加えたアダプタ1内で最終的に完全に包まれる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】