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特表2022-539224EGFRキナーゼを阻害する化合物、調製方法、及びその使用
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  • 特表-EGFRキナーゼを阻害する化合物、調製方法、及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】EGFRキナーゼを阻害する化合物、調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/06 20060101AFI20220831BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220831BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20220831BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C07D471/06 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
C07D519/00 311
A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578076
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020099916
(87)【国際公開番号】W WO2021000912
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】201910600229.1
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ガン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホウシン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA07
4C065AA18
4C065BB06
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP03
4C065PP08
4C065PP09
4C065PP12
4C065PP14
4C065PP15
4C072MM02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩、その調製方法及び用途を提供する。化合物は、上皮増殖因子受容体(EGFR)変異体の活性を選択的に阻害することができ、変異体EGFRに対する良好な阻害効果と、がん細胞に対する抗増殖活性とを示す。したがって、それらは腫瘍及び関連する疾患を治療するために使用できる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩。
【化1】
(式中:
Xは、N及びCHからなる群から選択される、
は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、-C(O)OR及びCNからなる群から選択される、
は、C1-6アルキル、重水素化C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
は、-NR(CHNR′R″、
【化2】
からなる群から選択される、

【化3】
である、
、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びCNからなる群から選択される、
は、水素、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
は、水素、C1-6アルキル、重水素化C1-6アルキル、及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
′及びR″は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、重水素化C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択されるか、又はR′及びR″は、それらに結合している窒素と一緒になってヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、非置換であるか、又はハロゲン、C1-6アルキル、C1-3アルコキシ、メチルチオ、メタンスルホニル、及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される1~3個の基で任意選択的に置換されていてもよい、
10は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル及び-CHNR12′R12″からなる群から選択される、
11は、水素、ハロゲン及びC1-6アルキルからなる群から選択される、そして
12及びR12′は、独立して、水素、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択されるか、又はR12′及びR12″は、それらに結合している窒素と一緒になってヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環は、非置換であるか、又はハロゲン、C1-6アルキル及びCl-6ハロアルキルからなる群から選択される1~3個の基で任意選択的に置換されていてもよい。)
【請求項2】
が、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、-C(O)OR及びCNからなる群から選択される、そして
、R及びRが、独立して、水素及びハロゲンからなる群から選択される、請求項1に記載の一般式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物が、
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
である、請求項2に記載の一般式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が参照により本明細書中で援用される、2019年7月4日に出願された、中国特許出願第201910600229.1号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、医薬品の分野に関し、さらに具体的には、一連のEGFR阻害剤、調製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
上皮増殖因子受容体(EGFR)は、細胞膜におけるErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼである。前記ErbBファミリーの他のメンバーには、ERBB2(HER2)、ERBB3(HER3)及びERBB4(HER4)が含まれる。EGFRは、MAPK及びPI3Kシグナル伝達経路の活性化により細胞増殖を促進する。変異、増幅又は過剰発現による過剰活性化されたEGFRが、複数の固形腫瘍、特に肺がんで特定されている。
【0004】
非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR変異の保有率(prevalence)は、東アジアでは50%であり、欧米では15%である。ほとんどのEGFR変異は、エクソン18からエクソン21で起こる。ゲフィチニブやエルロチニブをはじめとする第一世代EGFRチロシン阻害剤(TKI)は、主に、エクソン18、19及び21における変異を標的とする。しかしながら、治療の過程で必然的に耐性が発生する。EGFR-T790M変異は、第一世代TKIに対する獲得耐性の60%超を占める。第二世代不可逆性EGFR阻害剤であるアファチニブは、T790Mに対しては有効であるが、野生型EGFRに対するその活性のために発疹や下痢をはじめとする実質的な毒性を伴う。第三世代のEGFR TKIであるAZD9291は、T790Mに特異的に対応し、EGFR T790M変異陽性非小細胞肺がんにかかっている患者の治療薬として承認されている。
【0005】
前述の古典的なEGFR変異に加えて、エクソン20挿入は、EGFR変異の三番目に大きな群を構成し、全てのEGFR変異のうちの4~10%の発生頻度であり、女性、非喫煙者、アジア人、及び腺がん患者でより多くみられ、古典的な変異と類似した臨床的特徴と関連する。
【化1】
【0006】
エクソン20における変異はアミノ酸762~823にクラスター化し、そのすべてが、T790Mを除いて挿入である。EGFRに加えて、NSCLC患者のほぼ2%は、her2変異を保有し、その90%はエクソン20挿入である。Her2におけるエクソン20挿入変異は、分子的特徴及び薬物感受性が類似しているEGFRにおけるものと構造的に類似した位置で起こる。つまり、それらはエクソン20挿入に大別される。EGFRエクソン20挿入の122サブタイプがこれまでに確認され、Asp770_Asn771insが最もよく見られ、次いでVa1769_Asp770ins、Ala767_Va1769ins及びSer768_Asp770insである。その一方で、Her2におけるエクソン20変異の最も一般的な変異体はA775_G776insYVMであり、症例の70%である。EGR及びHer2におけるエクソン20挿入は、すべてリガンド非依存性活性化を促進する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EGFRエクソン20挿入の大多数はナイーブであり、それらの一部は後天的である。肺がんは別として、エクソン20挿入は、副鼻腔扁平上皮がんとして知られる珍しい型の頭頚部がんでも観察される。かなりの数の患者におけるエクソン20挿入の存在を考慮すると、前記エクソン20挿入を保有するEGFRを阻害できる薬剤は、この患者群で特に有用であり得る。しかしながら、多くの研究により、エクソン20挿入、特にアミノ酸764以降のものは承認されたTKIに対して感受性ではなく、利用可能な治療選択肢は限られていることが分かった。エクソン20挿入に対する二つのTKIであるポジオチニブ及びモボセルチニブは現在臨床試験中である。その中でも、ポジオチニブは、おそらくは野生型EGFRの同時阻害による深刻な悪影響と関係がある。したがって、野生型EGFRよりもエクソン20挿入に対する選択性を有するTKIの開発が必要とされる。この特許で開示された新世代TKIは、T790M及びエクソン20挿入変異に対して野生型EGFRよりも優れた生化学及び細胞活性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、一般式(I)の化合物、その薬剤的に許容される塩を提供する。
【化2】
Xは、N及びCHからなる群から選択される、
は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、-C(O)OR及びCNからなる群から選択される、
は、C1-6アルキル、重水素化C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
は、-NR(CHNR′R″、
【化3】
からなる群から選択され、

【化4】
であり、
、R及びRは、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びCNからなる群から独立して選択される、
は、水素、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
は、水素、C1-6アルキル、重水素化C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される、
′及びR″は、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、重水素化C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から独立して選択されるか、又はR′及びR″は、それらに結合している窒素と一緒になってヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環(heteroclcle)は、非置換であるか又はハロゲン、C1-6アルキル、C1-3アルコキシ、メチルチオ、メタンスルホニル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される1~3個の基で任意選択的に置換されていてもよい、
10は、水素、ハロゲン、C1-6アルキル及び-CHNR12′R12″からなる群から選択される、
11は、水素、ハロゲン及びC1-6アルキルからなる群から選択され、そして
12及びR12′は、独立して、水素、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択されるか、又はR12′及びR12″は、それらに結合している窒素と一緒になってヘテロ環を形成し、前記ヘテロ環(heteroclcle)は、非置換であるか、又はハロゲン、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルからなる群から選択される1~3個の基で任意選択的に置換されていてもよい。
【0009】
一般式(I)中、Rは、好ましくは、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、-C(O)OR又はCNからなる群から選択され、そしてR、R及びRは、好ましくは独立して、水素及びハロゲンからなる群から選択される。
【0010】
本発明は、一つ以上のEGFR活性化又は薬物耐性変異体、例えば、T790M薬物耐性変異体、エクソン20挿入活性化変異体を阻害することができる式(I)の化合物を提供し、したがって、そのような化合物は、EGFR阻害剤に基づく既存の療法に対して薬物耐性を獲得した患者のがん治療レジメンで使用できる。
【0011】
本発明は、野生型EGFR阻害に関連した低減された毒性のために野生型EGFRよりも、活性化又は耐性変異体によって形成されたEGFRのより強力な阻害を有し、したがって、特にがん治療のための治療薬としての使用により好適な、一般式(I)の化合物を提供する。
【0012】
本発明は、一般式(I)の化合物の調製方法を提供する。
【0013】
本発明は、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩と、薬剤的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、哺乳動物、特にヒト、特にがん治療中のヒトにおいて、EGFR活性化又は薬物耐性変異体によって媒介される疾患の治療での式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩の使用を提供する。
【0015】
本発明は、哺乳動物、特にヒトにおいてEGFR活性化又は薬物耐性変異体によって媒介される疾患、特にがんを治療する方法であって、患者に対して、式(I)の化合物若しくはその薬剤的に許容される塩、又は治療有効量の式(I)の化合物及び薬剤的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤を含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明は、野生型EGFRと比べて、EGFR活性化又は薬物耐性変異体を選択的に阻害する方法であって、患者に対して、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩又はその医薬組成物の生体サンプルを接触させるか又は投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明において言及されるがんは、肝細胞がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、直腸結腸がん、胃がん、肺がん、鼻咽腔がん、卵巣がん、前立腺がん、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、神経膠腫、グリア芽腫、黒色腫、胃腸管間質腫瘍(GIST)、甲状腺がん、胆管がん、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫又は中皮腫から選択され得る。
【0018】
本発明において、特に好ましい式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩には、以下のものが含まれる。
【0019】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0020】
本発明は、以下のステップを含む式(I)の化合物を調製するためのプロセスを提供する。
【化5】
又は
【化6】
式中、R、R、R、R、R、R及びRは、一般式(I)において定義したのと同じ定義を有する。
【0021】
化合物(a)及び(b)を出発物質として、塩基性条件下で置換反応を実施して中間体1を得、中間体1及び中間体2を用いて置換又はカップリング反応を実施して化合物(c)を得、化合物(c)を求核置換に供して化合物(d)を得、前記化合物(d)のニトロ基を還元して化合物(e)を得、化合物(e)のアシル化をさらに実施して、化合物(I)を得る、あるいは中間体1及び中間体2′を直接置換又はカップリング反応に供して、化合物(I)を得る。
【0022】
一実施形態において、中間体1が中間体1aである場合、式(I)の化合物は以下のようにして調製する。
【化7】
【0023】
一実施形態において、中間体1が中間体1bである場合、式(I)の化合物は以下のように調製される。
【化8】
【0024】
式(I)の化合物の調製のための本発明の一実施形態において、中間体2、中間体2′の調製のためのプロセスは、以下のステップを含む。
【化9】
式中、R、R及びRは、一般式(I)において定義したのと同じ定義を有する。
【0025】
2,6-ジクロロ-3-ニトロピリジンを出発物質として、エーテル化反応を実施して化合物(g)を得、これを化合物(g)のニトロ基の還元に供して化合物(h)を得、化合物(h)をアシル化に供して化合物(i)を得、次いで化合物(i)をニトロ化反応に供して化合物(j)を得、これをさらに脱保護して、中間体2を得る。
【0026】
化合物(j)は置換によりRHと反応して化合物(k)を得、化合物(k)をBocで保護して化合物(l)を得、これを脱アセチル化保護に供して化合物(m)を得、化合物(m)のニトロ基を還元して化合物(n)を得、化合物(n)をさらにアシル化して化合物(o)を得、最後に化合物(o)を脱保護に供して中間体2′を得る。
【0027】
中間体2及び2′の調製方法では、エーテル化反応を強塩基の作用の下で実施し、ここで、強塩基としては、限定されるものではないが、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムエトキシド及びナトリウムメトキシドが挙げられる。ニトロ基の還元法は、限定されるものではないが、鉄粉、亜鉛粉、硫化ナトリウム、H2/PtOをはじめとする、当該技術分野で公知の従来型還元剤を使用する。上側の保護基又は脱保護基は、好適な酸性又は塩基性条件下、当該技術分野で周知の従来法により実施する。
【0028】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0029】
「C1-6アルキル」とは、1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を指す。分岐鎖とは、一つ以上の1~4個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、エチル又はプロピルなどが、直鎖アルキル基に結合していることを意味する。好ましいC1-6アルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。
【0030】
「重水素化アルキル」とは、アルキル基中の一つ以上の水素原子が重水素で置換されていることを意味する。例えば、メチル基中の3個の水素原子をすべて重水素で置換することで重水素化メチル基CDが形成される。
【0031】
「C1-6ハロアルキル」は、一つ以上のハロゲン原子置換基を含む定義のC1-6アルキル基を指す。
【0032】
「C1-6ヘテロアルキル」は、O、S、N、-(S=O)-、-(O=S=O)-などからなる群から選択される一つ以上の置換基を含む定義のC1-6アルキルを意味する。
【0033】
「C3-6シクロアルキル」は、3~6個の炭素原子、好ましくは3~6個の炭素原子を有する非芳香族単環式又は多環式基を指す。好ましい単環式C3-6シクロアルキル基としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0034】
「C1-6アルコキシ」は、親部分に酸素によって結合するC1-6アルキル-O-基を指し、ここで、C1-6アルキルは定義のとおりである。好ましいC1-6アルコキシ基としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ及びn-ブトキシが挙げられる。
【0035】
本発明の任意の官能基は、非置換であってもよいし、又は本明細書中で記載する置換基で置換されていてもよい。「置換された」(又は置換する)という用語は、特定の原子における一つ以上の水素原子の、特定の基から選択される基での置換を指す。ただし、特定の原子の通常の原子価状態を越えず、置換の結果、安定な化合物が得られるものとする。そのような置換基及び/又は変数の組み合わせは、組み合わせによって安定な化合物が形成される場合にのみ許容される。
【0036】
本発明は、式(I)の化合物の薬剤的に許容される塩も含む。「薬剤的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の比較的無毒な酸付加塩又は塩基付加塩を指す。前記酸付加塩は、本発明による式(I)の化合物の好適な無機若しくは有機酸との塩であり、この塩は、化合物の最終分離及び精製で調製することができるか、又は遊離塩基の形態の精製された式(I)の化合物を好適な有機若しくは無機酸と反応させることによって調製することができる。代表的な酸付加塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、重炭酸塩、トルイル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩などが挙げられる。前記塩基付加塩は、本発明の式(I)の化合物の、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第四アンモニウムカチオン、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどとの塩を含む好適な無機又は有機塩基との塩、アンモニア(NH)、第一アンモニア、第二アンモニア又は第三アミンと形成される塩、例えば、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチルアミン塩などを含むアミン塩である。
【0037】
酵素活性アッセイは、本発明の化合物が、エクソン20挿入変異体に対して良好な活性を有することを示した。細胞アッセイ、すなわち、活性化変異体細胞、すなわち、エクソン20挿入型の活性化変異体細胞、薬物耐性腫瘍細胞及び野生型EGFRヒト皮膚細胞のインビトロ抗増殖アッセイは、化合物が活性化変異体細胞又は薬物耐性変異体腫瘍細胞に対して良好な抗増殖活性を有するが、野生型EGFRがん細胞に対しては良好な選択性で弱い抗増殖活性を有することを示した。本発明の化合物は、EGFR活性化又は耐性変異体の活性によって媒介される疾患又は状態の治療のために、特にがんの治療のために有用である。そのようながんとしては、限定されるものではないが、肝細胞がん、肺がん、頭頚部がん、膵臓がん、乳がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、直腸結腸がん、胃がん、肺がん、鼻咽腔がん、卵巣がん、前立腺がん、白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫骨髄腫、神経膠腫、グリア芽腫、黒色腫、胃腸管間質腫瘍(GIST)、甲状腺がん、胆管がん、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫又は中皮腫が挙げられ、特に上皮増殖因子受容体790のトレオニンからメチオニンへの変異(EGFR T790M)ティモール型及び活性化型変異については、エクソン20挿入型の活性化変異腫瘍型がより良好に適用される。
【0038】
本発明の前述の一般的説明及び以下の詳細な説明はどちらも例示的かつ説明的なものであり、請求する本発明のさらなる説明を提供することを意図するものと理解されたい。
【0039】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者によって様々な変更又は修飾がなされ得ると理解されるべきであり、また、そのような均等物が、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれ得ることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、PC9脳インサイチュヌードマウスの生存率に対する化合物1の効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を詳細に記載する。
【0042】
(実施例)
本発明を特定の実施例でさらに説明する。これらの実施例は本発明を単に例示するためのものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないと理解されたい。これらの化合物が以下の調製方法の条件及びプロセスの公知変形を使用して調製できることを当業者は容易に理解するであろう。特に説明のない本発明で使用する出発物質は商業的に入手可能である。
【0043】
略号:室温(RT、rt);水溶液(aq.);石油エーテル(PE);酢酸エチル(EA);ジクロロメタン(DCM);メタノール(MeOH);エタノール(EtOH);テトラヒドロフラン(THF);ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);トリエチルアミン(TEA);ジイソプロピルエチルアミン(DI(P)EA);4-ジメチルアミノピリジン(DMAP);炭素上パラジウム(Pd/C);当量(eq.);グラム/ミリグラム(g/mg);モル/ミリモル(mol/mmol);リットル/ミリリットル(L/mL);分(s);時間(h、hr、hrs);窒素(N);核磁気共鳴(NMR);薄層クロマトグラフィー(TLC)。
【0044】
一般的合成法:
特別の定めのない限り、すべての反応は、市販の試薬及び無水溶媒をさらに処理(conduct)することなく使用して、不活性ガス(例えば、アルゴン又は窒素)下で実施する。
【0045】
質量スペクトルは、液体クロマトグラフィー-質量分析計(LC-MS)(Agilent 6120B一段及び四段LC-MS)を用いて記録した。核磁気共鳴スペクトル(例えば、水素(H)、炭素(13C)、リン(31P)、及びフッ素(19F))は、BrukerAMX-400、Gemini-300、又はAMX-600NMR分光計を使用して、重水素化クロロホルム、重水素化メタノール、重水、又は重水素化ジメチルスルホキシドなどの重水素化溶媒中、重水素化溶媒ピークを参照標準として使用して、記録した。化学シフトδの単位はppmであり、カップリング定数(j)の単位はヘルツ(Hz)である。NMRスペクトル中のカップリングスプリッティングピークは、ブロードなシングレットピーク(brs)、シングレットピーク(s)、ダブレットピーク(d)、ダブルダブレットピーク(dd)、トリプレットピーク(t)、カルテットピーク(q)及びマルチプレットピーク(m)として表す。
【0046】
発明の詳細な説明
【0047】
1.本発明の中間体の調製例
【0048】
中間体1a:1-(2-クロロピリミジン-4-イル)-8-フルオロ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化10】
【0049】
ステップ1:3-クロロ-N-(4-フルオロフェニル)プロペンアミドの合成
【化11】
【0050】
3-クロロプロピオニルクロリド(653g、1eq)を6.5Lのジクロロメタン中に溶解させ、内温を0~10℃に維持しながら出発物質である4-フルオロアニリン(783.6g、1.05eq)をドライアイス/エタノール浴下で滴下し、大量の固体が析出した。滴下後、混合物をさらに0.5時間撹拌し、イミダゾール(405g、1.01eq)を数バッチに分けて添加して(明らかな温度上昇を伴う)、内温を0~10℃に維持した。1時間撹拌した後に反応が完了し、反応溶液を希塩酸中に注ぎ、分離し、大量の固体が析出するまで有機相を濃縮し、800mLのPE/EA(5/1)を添加し、一晩撹拌し、ろ過し、PE/EA(5/1)で洗浄して、950gの3-クロロ-N-(4-フルオロフェニル)プロペンアミドを白色固体として得た。MS(ESI):m/z=202[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 10.16(s,1H),7.71-7.60(m,2H),7.23-7.13(m,2H),3.91(t,J=6.3Hz,2H),2.84(t,J=6.3Hz,2H)。
【0051】
ステップ2:6-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
【化12】
【0052】
5Lの三口フラスコ中、3-クロロ-N-(4-フルオロフェニル)プロピオンアミド(820g、1eq)を添加し、続いて撹拌しながら無水三塩化アルミニウム(1640g、3eq)を添加し、続いて3回窒素置換を行った。外温を60℃に設定し、フラスコを溶融状態になるまで撹拌した(内温を70℃まで上昇させた)。内温を低下させた後、フラスコを100℃まで加熱し(内温は97℃であった)、混合物を4時間撹拌した。LCMSは、500gの三塩化アルミニウムを添加し、混合物を4時間さらに撹拌しながら、反応慣例(convention)が約58%であったことを示し、LCMSは、反応慣例が約73%であったことを示し、追加の200gの三塩化アルミニウムを添加し、4時間撹拌し、LCMSは未変換(unconvented)の出発物質はごくわずかであったことを示した。混合物を40℃まで冷却したら、DCM(2L)を混合物に添加し、次いでTHF(6L)を混合物に滴下すると、激しく発熱した。EA(3L)を添加し、水を連続して添加して、大量の沈殿を分離させた。有機相を分離し、有機相を濃縮し、水相をろ過した。組み合わせた生成物をそれぞれEA及び水でスラリー化して、600gの湿潤生成物を白色固体として得た。MS(ESI):m/z=166[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 10.16(s,1H),7.71-7.61(m,2H),7.23-7.13(m,2H),3.92(t,J=6.3Hz,2H),2.85(t,J=6.3Hz,2H)。
【0053】
ステップ3:6-フルオロ-8-ニトロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オンの合成
【化13】
【0054】
6-フルオロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(700g、1eq)を5Lの三口フラスコに添加し、次いで3.5Lの無水酢酸を添加し、内温を15~20℃に制御し、濃硝酸(485g、1.2eq)をゆっくりと滴下し、添加後に溶液は透明になり、25℃で30分間さらに撹拌し、次いで、大量の固体が析出し、反応溶液を水(20L)中に注ぎ、加水分解が完了するまで撹拌し、ろ過し、洗浄溶液が無色になるまでフィルターケーキを水で洗浄し、乾燥して、700gの所望の中間体を黄色固体として得た。MS(ESI):m/z=211[M+H],HNMR:H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 9.84(s,1H),7.91(dd,J=8.9,2.9Hz,1H),7.70(dd,J=8.2,2.8Hz,1H),3.15-3.04(m,2H),2.63(dd,J=8.3,6.7Hz,2H)。
【0055】
ステップ4:6-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-アミンの合成
【化14】
【0056】
LiAlH(48g、1.27mol)をTHF(1L)中に溶解させ、6-フルオロ-8-ニトロ-3,4-ジヒドロキノリン-2(1H)-オン(89g、0.42mol)のTHF(100mL)中懸濁液を数回に分けて添加し、内温を5~10℃で維持した。滴下が完了した後、混合物は自然に12℃に戻り、0.5時間撹拌した。次いで、混合物を0℃未満に冷却し、内温を5℃未満に維持しつつ、水(48mL)、15%NaOH(48mL)及び水(144mL)を連続してクエンチし、珪藻土(90g)を添加した。5℃未満で30分間撹拌した後、混合物を珪藻土でろ過し、THFで洗浄し、フィルターケーキをTHFで再度スラリー化し、ろ過し、有機相を濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(移動相PE/EA比は1/10、1/4、及び2/3であり、0.1%TEAを含んでいた)によって精製して、57gの所望の中間体をワインレッド色の油状液体として得た。MS(ESI):m/z=167[M+H]
【0057】
ステップ5:8-フルオロ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化15】
【0058】
6-フルオロ-8-アミノ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(166g、1mol)をTHF(1L)中に溶解させ、トリホスゲン(118g、0.4mol)のTHF(300mL)中懸濁液を、内温を5~10℃に維持しながら滴下した。添加完了後、撹拌を0.5時間続け、イミダゾール(160g、20mol)を滴下し、内温を10~20℃で維持し、そして温度を室温に戻した後に撹拌を15分間続けた。LCMSの監視下で、出発物質が完了した後、1Lの13%NaCl溶液を添加し、続いてTHF(1L)を添加し、有機相を分離し、THF(2L*2)で抽出し、乾燥し、濃縮し、残留物をEAで一晩スラリー化し、ろ過して、168gの所望の中間体を明褐色固体として得た。MS(ESI):m/z=193[M+H]。
【0059】
ステップ6:1-(2-クロロピリミジン-4-イル)-8-フルオロ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ-[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化16】
【0060】
8-フルオロ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾール[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オン(36g、0.19mol)及び2,4-ジクロロピリミジン(34g、0.23mol)をDMF(400mL)中に溶解させ、炭酸セシウム(122g、0.37mol)を添加し、そして混合物を室温で4時間撹拌した。反応の完了をLCMSで確認した。混合物を水(250mL)で希釈し、固体をろ過し、粗サンプルをカラムクロマトグラフィー(DCM/EA、100/1)によりさらに精製し、約50mLに濃縮し、PE(200mL)でスラリー化し、ろ過して、45gの所望の中間体を白色固体として得た。MS(ESI):m/z=305[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 8.81(d,J=5.7Hz,1H),8.42(d,J=5.8Hz,1H),7.75(d,J=9.7Hz,1H),7.00(d,J=9.6Hz,1H),3.82(t,J=5.5Hz,2H),2.85(t,J=5.6Hz,2H),2.15-2.01(m,2H)。
【0061】
中間体1b:1-(2-クロロピリミジン-4-イル)-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ-[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化17】
【0062】
ステップ1:N-メトキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-カルボキサミドの合成
【化18】
【0063】
トリホスゲン(335g、1.13mol)をDCM(3L)中に溶解させ、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(300g、2.26mol)及びトリエチルアミン(390g、3.86mmol)のDCM(2L)中溶液を0~5℃で1.5時間にわたって滴下した。添加後、混合物を室温で1時間撹拌した。TLC(PE:EA=5:1)により、1,2,3,4-テトラヒドロキノリンのほとんどが消費されたことが分かった。トリエチルアミン(800g、7.92mol)及びメトキシアミン塩酸塩(375g、4.52mol)を添加し、室温(15℃)で16時間さらに撹拌した。TLC(PE:EA=5:1)により、出発物質のごく一部(約20%)が消費されていないことが確認され、次いで反応を30℃(水浴)までさらに3時間温めた。反応の完了をTLC(PE:EA=5:1)によって確認し、反応溶液を塩酸(2M、3L)で洗浄し、水相をDCM(1L)で抽出し、有機相を組み合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3L)及び飽和塩溶液(2L)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、乾燥して、所望の中間体(580g)を黄色固体として得た。
【0064】
ステップ2:1-メトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化19】
【0065】
N-メトキシ-3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-カルボキサミド(粗、580g、1.13mol)をDCM(500mL)中に溶解させ、ビス(トリフルオロ酢酸)ヨードベンゼン(1250g、2.91mol)のDCM(1.2L)中溶液を-3℃~2℃で滴下し、添加後、自然に室温(15℃)まで温め、1時間さらに撹拌した。反応の完了をTLC(PE:EA=1:1)で確認し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(8L)を混合物に添加し、有機相を分離し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(PE:EA=5:1から1:1)によって精製して、所望の中間体(205g、収率44.5%)を黄色固体として得た。
【0066】
ステップ3:5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化20】
【0067】
1-メトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾール[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オン(51.25g、251.22mol)をエタノール(500mL)中に溶解させ、ラネーニッケル(20g)を室温(15℃)で添加し、次いで温度を50℃まで上昇させ、そして混合物を水素バルーン下で16時間さらに撹拌した。TLC(PE:EA=1:1)で出発物質の約30%が消費されなかったことがわかった。混合物を新しい水素バルーン下で50℃にて4時間さらに撹拌し、TLC(PE:EA=1:1)は出発物質の約20%が依然として消費されていないことを示した。追加のラネーニッケル(8g)を室温で添加し、混合物を新しい水素バルーン下で50℃にて16時間撹拌した。反応の完了をTLC(PE:EA=1:1)によって確認した。反応溶液を室温まで冷却し、セライトを通してろ過し、フィルターケーキをメタノール(150mL)で3回洗浄し、ろ液を濃縮した。粗生成物(4ロットを組み合わせる)をPE/EA(1:1、800mL)でスラリー化し、ろ過して、所望の中間体(155g、収率88.6%)を灰白色固体として得た。
【0068】
ステップ4:1-(2-クロロピリミジン-4-イル)-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オンの合成
【化21】
【0069】
5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾール[4,5,1-ij]キノリン-2(1H)-オン(155g、890.80mol)をDMF(1.5L)中に溶解させ、2,4-ジクロロピリミジン(158g、1.06mol)及び炭酸セシウム(580g、1.78mol)を室温(10℃)で添加し、次いで30℃まで加熱し、16時間さらに撹拌した。反応の完了をTLC(DCM:MeOH=20:1)により確認し、水(3L)を反応に添加し、1時間さらに撹拌した。ろ過し、フィルターケーキを水(1L)で洗浄した。フィルターケーキをPE:EA(1:1、1.5L)でスラリー化し、ろ過し、乾燥して、所望の中間体(230g、収率90.2%)を灰白色固体として得た。
【0070】
中間体2a:N-(5-アミノ-2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)-(メチル)-アミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドの合成
【化22】
【0071】
ステップ1:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N-メチル-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミンの合成
【化23】
【0072】
4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロアニリン(3g、16mmol)及びN,N,N-トリメチルエタン-1,2-ジアミン(2.47g、24mmol)をDMF(30mL)中に溶解させ、炭酸カリウム(4.5g、32mmol)を添加し、80℃で2時間撹拌し、反応の完了をLCMSで確認し、室温まで冷却し、混合物を水(60mL)で希釈し、ろ過し、フィルターケーキをEtOH/HO(1/1)でスラリー化し、ろ過し、乾燥して、所望の中間体(3.1g)を黄色固体として得た。MS(ESI):m/z=269[M+H]
【0073】
ステップ2:(4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシ-5-ニトロフェニル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化24】
【0074】
-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N-メチル-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミン(3.1g、12mmol)をTHF(40mL)中に溶解させ、重炭酸ジーtert-ブチル(3.8g、17mmol)を添加し、混合物を70℃で6時間撹拌した後、反応を完了させた。次に濃縮し、残留物をEA/PE(1/5)でスラリー化して、所望の中間体(3.8g)を淡黄色固体として得た、MS(ESI):m/z=369[M+H]
【0075】
ステップ3:(5-アミノ-4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化25】
【0076】
(4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシ-5-ニトロフェニル)カルバミン酸tert-ブチル(3.8g、10.3mmol)をMeOH(40mL)中に溶解させ、窒素で3回置換し、次いでPd/C(0.4g)を添加し、水素で3回置換した。次に、混合物を室温で4時間撹拌した。反応が完了した後、混合物をろ過し、濃縮し、粗生成物をさらに精製することなく次のステップで直接使用した。MS(ESI):m/z=339[M+H]
【0077】
ステップ4:(5-アクリルアミド-4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)-アミノ)-2-メトキシフェニル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【化26】
【0078】
(5-アミノ-4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシフェニル)-カルバミン酸tert-ブチル(10.3mmol)をDCM(50mL)中に溶解させ、塩化アクリロイル(1.36g、15mmol)を氷浴下で連続して滴下し、次いで0.5時間撹拌しながら室温まで自然に戻した。飽和重炭酸ナトリウム溶液を添加することによってpHを8に調節し、水相を分離し、DCM(50mL)で抽出し、有機相を組み合わせ、乾燥し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/70から1/20)によって精製して、所望の中間体(1.4g)を灰色固体として得た。MS(ESI):m/z=393[M+H]
【0079】
ステップ5:N-(5-アミノ-2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドの合成
【化27】
【0080】
(5-アクリルアミド-4-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-2-メトキシ-フェニル)-カルバミン酸tert-ブチル(392mg、1mmol)をDCM(5mL)中に溶解させ、TFA(1mL)を滴下し、室温で1時間撹拌した後に反応が完了した。飽和重炭酸ナトリウム溶液を氷浴下で添加することによってpHを8に調節した。水相を分離し、DCM(50mL)で抽出し、乾燥し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/20から1/10)によって精製して、所望の中間体(200mg)を褐色のシロップ状固体として得た。MS(ESI):m/z=293[M+H]
【0081】
中間体2b:N-(5-アミノ-2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)-アミノ)-6-メトキシピリジン-3-イル)アクリルアミドの合成
【化28】
【0082】
ステップ1:6-クロロ-3-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジンの合成
【化29】
【0083】
2,6-ジクロロ-3-ニトロピリジン(500g、2.6mol)をTHF(1L)中に溶解させ、-10℃未満に冷却し、水素化ナトリウム(sodium hydrogen)(104g、2.6mol)を添加し、トリフルオロエタノール(260g、2.6mol)を-15℃で滴下し、添加後、温度を室温まで戻し、一晩撹拌した。反応の完了をTLC(PE/EA=5/1)で確認し、氷水(1L)中に注ぎ、撹拌し、分離した。有機相を小容量まで濃縮し、EAで2回抽出し、有機相を組み合わせ、水及び飽和塩溶液で洗浄し、乾燥し、濃縮して、所望の中間体(720g)を黄色油状物-固体として得た。MS(ESI):m/z=257[M+H]
【0084】
ステップ2:6-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-アミンの合成
【化30】
【0085】
6-クロロ-3-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン(150g、0.58mol)をエタノール/水(1.2L/0.3L)中に溶解させ、塩化アンモニウム(160g、2.9mol)を添加した。温度を50℃(内温)まで上昇させた後、鉄粉(166g、2.9mol)を数バッチに分けてゆっくりと添加し、次いで80℃で1時間撹拌し、反応の完了をTLC(PE/EA=5/1)で確認し、温度を40℃(内温)まで下げ、炭酸ナトリウム(160g)及び珪藻土(160g)を添加し、続いて20分間撹拌し、珪藻土を利用してろ過し、フィルターケーキをDCMでスラリー化し、そしてエタノール-水母液を濃縮乾固し、これを、フィルターケーキをスラリー化したDCMで2回抽出し、有機相を組み合わせ、水と飽和塩溶液で洗浄し、乾燥し、濃縮して、所望の中間体(122g)を黒色油状物として得た。MS(ESI):m/z=227[M+H]
【0086】
ステップ3:N-(6-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アセトアミドの合成
【化31】
【0087】
6-クロロ-2-トリフルオロエトキシピリジン-3-アミン(570g、2.5mol)をDCM(4.5L)中に溶解させ、DIPEA(540mL、3.8mol)を添加した。温度を0℃まで下げた後、塩化アセチル(200mL、3mol)を約1時間滴下して、温度を10℃付近に維持し、次に30分間撹拌し、TLC(PE/EA=5/1)は反応が完了したことを示した。水(2L)を氷浴下で添加し、有機相を分離し、水相をDCMで抽出し、有機相を組み合わせ、1M塩酸及び飽和塩溶液で洗浄し、乾燥し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=5/1)によって精製して、所望の中間体(480g)を黄色固体-液体混合物として得た。MS(ESI):m/z=269[M+H]
【0088】
ステップ4:N-(6-クロロ-5-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アセトアミドの合成
【化32】
【0089】
N-(6-クロロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アセトアミド(300g、1.1mol)を無水トリフルオロ酢酸(1.5L)中に懸濁させ、-5℃未満に冷却した。濃硝酸(125g、1.2mol)を1時間滴下し、次いで-5℃で3時間撹拌し、反応の完了をTLC(PE/EA=2/1)によって確認し、次いで撹拌しながら氷水混合物中に添加し、続いて少しの間撹拌し、ろ過し、フィルターケーキを水とPEで連続して浸出させ、湿潤生成物(185g)をPE/EA(400mL)で一晩スラリー化し、ろ過し、フィルターケーキをPE/EA(5/1)で再度スラリー化し、ろ過し、乾燥して、所望の中間体(220g)を黄色固体として得た。MS(ESI):m/z=314[M+H]
【0090】
ステップ5:6-クロロ-5-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-アミンの合成
【化33】
【0091】
N-(6-クロロ-5-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アセトアミド(220g、0.7mol)をメタノール/濃塩酸の混合溶媒(900/220mL)中に懸濁させ、50℃に約4時間加熱し、反応物は透明になり、TLCによって反応が完了したことを確認し、反応溶液を撹拌しながら水中に添加し、ろ過し、フィルターケーキを水で洗浄し、次に飽和重炭酸ナトリウム溶液でスラリー化させ、ろ過し、フィルターケーキを水及びPEで連続して浸出させ、乾燥して、所望の中間体(175g)を黄色固体として得た。MS(ESI):m/z=272[M+H]
【0092】
ステップ6:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-3-ニトロ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-2,5-ジアミンの合成
【化34】
【0093】
6-クロロ-5-ニトロ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-アミン(950mg、3.5mmol)をアセトニトリル(15mL)中に溶解させ、KCO(967mg、7mmol)及びN,N,N′-トリメチルエチレンジアミン(643mg、6.3mmol)を室温で添加し、次いで反応物を80℃で一晩撹拌した。反応溶液をろ過し、ろ液を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の中間体(1.16g)を赤色油状物として得た。MS(ESI):m/z=338.2[M+H]
【0094】
ステップ7:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-3-ニトロ-5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-アミンの合成
【化35】
【0095】
-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-3-ニトロ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-2,5-ジアミン(1.01g、3.5mmol)及びDMAP(110mg、0.9mmol)を1,4-ジオキサン(30mL)中に溶解させ、重炭酸ジーtert-ブチル(1.96g、10.5mmol)を添加し、次いで油浴中、100℃にて8時間撹拌し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の中間体(680mg)を黄色油状物として得た。MS(ESI):m/z=538[M+H]
【0096】
ステップ8:N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2,3-ジアミンの合成
【化36】
【0097】
-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-3-ニトロ-5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-アミン(680mg、1.3mmol)をMeOH(30mL)中に溶解させ、10%Pd-C(136mg)を添加し、フラスコ内の空気を水素で3回置換し、次いで室温で1時間撹拌した。反応が完了した後、セライトを通してろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の中間体(415mg)を褐色油状物として得た。MS(ESI):m/z=508.3[M+H]
【0098】
ステップ9:N-(5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アクリルアミドの合成
【化37】
【0099】
DCM(15mL)中N-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-N-メチル-5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2,3-ジアミン(415mg、0.8mmol)、トリエチルアミン(248mg、2.4mmol)を添加し、氷水浴下で撹拌し、塩化アクリロイル(148mg、1.6mmol)を滴下し、次いで温度を室温に戻し、撹拌を10分間続け、次いで水でクエンチし、DCMで抽出し(15mL*3)、組み合わせた有機相を乾燥し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の中間体(318mg)を褐色油状物として得た。MS(ESI):m/z=562.3[M+H]
【0100】
ステップ10:N-(5-アミノ-2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-6-メトキシピリジン-3-イル)アクリルアミドの合成
【化38】
【0101】
N-(5-ジ-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-6-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-3-イル)アクリルアミド(318mg、0.57mmol)をDCM(20mL)中に溶解させ、メタンスルホン酸(1.63g、5.7mmol)を氷水浴下で滴下し、次いで、温度が自然に室温まで戻った後、撹拌を2.5時間続けた。飽和重炭酸ナトリウム溶液を氷水浴下で滴下することによってpHを8に徐々に調節し、DCMで抽出し(25mL*3)、有機相を組み合わせ、乾燥し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーによって精製して、所望の中間体(176mg)を淡い褐色がかった緑色の固体として得た。MS(ESI):m/z=362.2[M+H]
【0102】
実施例1:N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)(メチル)アミノ)-5-((4-(8-フルオロ-2-オキソ-5,6-ジヒドロ-4H-イミダゾ[4,5,1-ij]キノリン-1(2H)-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-4-メトキシフェニル)アクリルアミドの合成
【化39】
【0103】
中間体1a(152mg、0.2mmol)、中間体2a(200mg、0.68mmol)、酢酸パラジウム(45mg、0.2mmol)、Xanphos(116mg、0.2mmol)及び炭酸セシウム(130mg、0.4mmol)を1,4-ジオキサン(5mL)に撹拌しながら90℃で10時間添加した。反応が完了した後、セライトを通してろ過し、濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/10)によって精製して、所望の標的化合物(41mg)を淡褐色固体として得た。
【0104】
同じ方法で合成した化合物を以下の表に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【0105】
化合物1の合成に関して、以下の表に示す化合物を得た。
【0106】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0107】
本発明の化合物の生物学的検定の実施例
【0108】
アッセイ1:野生型EGFR、HER2及びHER4、並びに変異体EGFR生化学的活性アッセイ
10nLの段階希釈された化合物を、Labcyte Echo 550を使用してアッセイプレートに移し、アッセイ緩衝液中2X酵素5uLを続いて分注した。アッセイプレートを接着性のプレートシールで覆い、短時間、1000gにて30sスピンさせた。5uLの2X TK-基質-ビオチン及びアッセイ緩衝液中に混合したATPを添加した。
【0109】
室温で40分間インキュベーションした後、10uLの、HTRFアッセイ緩衝液中で混合したSa-XL665及びTK-抗体-Cryptateを添加して、抗体結合を開始した。
【0110】
室温でさらに60分インキュベーションした後、シグナルをEnvision 2104で615nm(crypate)及び665nm(XL665)の波長にて測定した。665nm~615nmのシグナルの比率を算出し、負の対照値を正規化のために使用して、阻害パーセンテージを算出した。IC50を算出し、4パラメータロジスティックモデルを用いて分析した。
【0111】
【表4】
【0112】
表で示すように、本発明で開示する化合物は、AZD9291よりも、エクソン20挿入及び点変異を含む広範囲のEGFR変異体に対して、より高い活性を示す。表に示していない化合物でも優れた活性が観察された。
【0113】
アッセイ2:A431(野生型EGFR、皮膚がん)、H1975(EGFR L858R/T790M、NSCLC)及びBa/F(EGFR D770_N771insSVD又はEGFR V769_D770insASV、pro-B)細胞増殖アッセイ
【0114】
様々な変異体EGFRを発現するA431細胞、H1975及びBa/F3細胞を対数期培養から収集し、A431及びH1975については1ウェルあたり3000、Ba/F3細胞については1ウェルあたり10000の細胞密度で96ウェルプレートに播種した。一晩付着させた後、化合物を3倍に段階希釈し、三連で、30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM及び0.01μMにて細胞に塗布し、3日間インキュベートした。その後、20μLの5mg/mL MTTを添加し、続いて0.01mol/L HCl中5%イソブチルアルコールと共に50μLの10%SDSをさらに添加した。プレートを一晩インキュベートした。570nmの波長での吸光度(A)を定量化した。阻害率(%)をブリス法に基づくIC50の算出のために使用した。結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
AZD9291と比較して、表5の化合物は、EGFR D770_N771insSVD又はEGFR V769_D770insASを有するBaF細胞の増殖の阻害においてより高い活性と、H1975及びA431に対して匹敵する活性とを示し、本開示の化合物は、EGFR L858R/T790Mに対する強力な活性を、野生型EGFRよりも高い選択性と共に維持しながら、EGFRエクソン20挿入に対して大幅に改善された活性を示すことが示唆される。表に記載されていない本願の他の例も、上述のような類似した活性プロフィールを示した。
【0117】
アッセイ3 細胞株由来(CDX)及び患者由来の異種移植片(PDX)マウスモデルにおけるインビボ研究
細胞(H1975)又は組織片(LU0493及びLU0426)をヌードマウスの左腋窩に皮下移植した。平均腫瘍体積が100~150mmに達したら、マウスを腫瘍体積によってランダム化し、ビヒクル、化合物1又はポジオチニブでそれぞれ処置した。腫瘍体積及び体重を週に2回測定した。マウスを第21日又は第28日に処分し、腫瘍体積及び最終体重を記録した。相対的腫瘍体積、処置/対照値の割合(%)及び腫瘍増殖阻害を算出し、統計を実施した。
【0118】
【表6】
【0119】
*:ビヒクル群に対してP<0.05;D1:薬物処置の第1日;RTV:相対的腫瘍体積;RTV=V/V;T/C(%)=TRTV/CRTV×100;TRTV:処置群のRTV;CRTV:ビヒクル群のRTV;TGI(%):腫瘍増殖阻害(%);T/C(%)>60:無効;T/C(%)≦60及びP<0.05:有効。最終的な体重変化は、第1日から第21日までの体重変化のパーセンテージとして算出した。
【0120】
表で示すように、ポジオチニブと比較して、化合物1は、EGFRエクソン20挿入及びT790M変異で腫瘍増殖をブロックするのにより有効であり、体重に対する影響は少なく、安全域ンが増加していることを示す。
【0121】
アッセイ4 インビボ同所性脳PC9異種移植マウスモデル
ルシフェラーゼを発現する3×10PC9細胞をマウス脳に注射した。マウスを脳の蛍光強度及び体重に基づいてランダム化し、ビヒクル又は化合物1を経口投与した。生存及び体重を毎日モニタリングし、20%を超える体重減少があったマウスを処分した。
【0122】
表7及び図1に示すように、ビヒクル群のすべてのマウスは投薬後28日以内に死亡したのに対し、化合物1を投与したマウスはすべて生存し、化合物1が脳に入り、腫瘍増殖を阻害して生存を促進できることが示唆される。
【表7】
【0123】
アッセイ1~4の結果から、本開示の化合物は、エクソン20挿入及び点変異を有する変異体EGFRの活性、並びに異なるEGFR変異を有するBa/F3細胞の増殖を、野生型EGFRよりも、良好な選択性で阻害することが分かる。ポジオチニブと比較して、化合物1は、安全性ウィンドウが改善されたマウスPDXモデルにおいて、より高いインビボ有効性を示した。PC9同所性脳モデルにおいても活性であり、良好な脳透過性を示す。本開示の他の化合物も、腫瘍増殖のブロックにインビボで有効である。
【0124】
本発明の特定の実施形態を記載してきたが、これらは単なる例であり、本発明の原理及び精神から逸脱することなくこれらの実施形態に対して様々な変更及び修飾を加えることができることは当業者には理解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
図1
【国際調査報告】