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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】電池管理回路及び電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20220831BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220831BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01R19/00 B
H02J7/02 X
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578093
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020098744
(87)【国際公開番号】W WO2021000819
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】201910599532.4
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514175014
【氏名又は名称】ダタン・エヌエックスピー・セミコンダクターズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Datang NXP Semiconductors Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドンヘン,マレイン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ランメレン,ヨープ
(72)【発明者】
【氏名】ブートケル,ディック
(72)【発明者】
【氏名】ブーゼン,ヘンク
(72)【発明者】
【氏名】ショルテンス,ペーテル
【テーマコード(参考)】
2G035
5G503
【Fターム(参考)】
2G035AB03
2G035AC01
2G035AD28
2G035AD51
2G035AD57
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503EA09
5G503GD03
(57)【要約】
本発明は、信号抽出部と、クロック捕捉部と、電圧制御発振器と、電圧サンプリング部とを備える電池管理回路に関する。信号抽出部は、電池管理回路に接続された通信バスから同期パルス信号を抽出する。クロック捕捉部は、信号抽出部に接続され、同期パルス信号に基づいてクロック信号を生成する。電圧制御発振器は、電池セル電圧を電圧周波数信号に変換する。電圧サンプリング部は、クロック信号に応じて電圧周波数信号のサンプリングを行って、電池セル電圧のサンプリング電圧を取得する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池管理回路に接続された通信バスから同期パルス信号を抽出する信号抽出部と、
前記信号抽出部に接続され、前記同期パルス信号に基づいてクロック信号を生成するクロック捕捉部と、
電池セル電圧を電圧周波数信号に変換する電圧制御発振器と、
前記クロック信号に応じて前記電圧周波数信号のサンプリングを行って、前記電池セル電圧のサンプリング電圧を取得する電圧サンプリング部と、を備えることを特徴とする電池管理回路。
【請求項2】
前記クロック捕捉部と前記電圧サンプリング部との間に接続され、前記クロック信号を分周する分周器をさらに含み、
前記電圧サンプリング部は、分周されたクロック信号を用いて前記サンプリングを行うことを特徴とする請求項1に記載の電池管理回路。
【請求項3】
前記クロック捕捉部は、周波数ロックループまたは位相ロックループを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池管理回路。
【請求項4】
前記電圧サンプリング部は、データ入力端に前記電圧周波数信号が入力され、リセット端に前記クロック信号が入力されるカウンタを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池管理回路。
【請求項5】
前記電圧制御発振器および/または前記電圧サンプリング部の伝達関数に基づいて前記サンプリング電圧を補正する補正部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電池管理回路。
【請求項6】
前記電池管理回路の内部温度を検出する内部温度センサをさらに含み、
前記補正部は、前記内部温度センサに接続され、前記内部温度を使用して前記サンプリング電圧を補正することを特徴とする請求項5に記載の電池管理回路。
【請求項7】
前記電圧制御発振器は、調整可能な電圧を電源として、前記電圧周波数信号を出力するリングオシレータを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池管理回路。
【請求項8】
前記電圧制御発振器は、
前記電池セル電圧に接続され、前記電池セル電圧の比例電圧を出力する分圧回路と、
正入力端が前記調整可能な電圧に接続され、負入力端が前記比例電圧に接続されたコンパレータと、
ソース電極が前記電池セル電圧に接続され、ドレイン電極が前記調整可能な電圧に接続され、ゲート電極が前記コンパレータの出力端に接続されているトランジスタと、をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の電池管理回路。
【請求項9】
複数のグループの電池セルと、
各電池管理回路が一つのグループの電池セルに対応して接続されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の複数の前記電池管理回路と、
前記複数の電池管理回路の少なくとも一部に通信バスを介して接続され、システムクロックに基づく同期パルス信号を送信するように配置されているモジュールコントローラと、を備えることを特徴とする電池モジュール。
【請求項10】
前記モジュールコントローラは、外部クリスタルに接続される発振器を有することを特徴とする請求項9に記載の電池モジュール。
【請求項11】
複数のグループの電池セルと、
各電池管理回路が一つのグループの電池セルに対応して接続されている複数の電池管理回路と、
前記複数の電池管理回路の少なくとも一部に通信バスを介して接続され、システムクロックを有するモジュールコントローラと、を備え、
前記電池管理回路は、内部クロックを前記システムクロックにロックするように配置されていることを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池グループに関し、特に、電池グループにおける電池管理回路及び電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電池管理システム(Battery Management System、BMS)はバッテリとユーザとの間を結ぶものであり、バッテリの利用率を高め、バッテリに対する過充電あるいは過放電を防止し、バッテリの安全を保障することができ、電気自動車、水中ロボットなどの分野に広く応用されている。
【0003】
電池管理システムは、電池セルの様々な重要なパラメータ、例えばセル電圧を測定することができる。セル電圧を測定するには、バンドギャップ参照回路によって生成された参照電圧が一般的に使用される。正確な電圧測定の課題の1つは、十分に正確で安定した参照電圧を生成することである。この参照電圧の絶対精度は100μVの範囲内であるだけでなく、寿命期間や機械応力の条件においてもこの精度を保証する必要がある。PN接合は経年変化や応力に敏感であるため、バンドギャップ参照を用いてこのような精度を実現することは困難である。
【0004】
可能な解決策の1つとして、ツェナーダイオードに基づく参照電圧を使用することである。この解決策の欠点は、ツェナーダイオードが約6Vの電源を必要とすることであり、これは単一の電池セルのバッテリ管理システムでは利用できない。このバッテリ管理システムは、1.5V程度の最小電源を有する単一の電池セルに接続される。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、参照電圧に依存する必要がなく、セル電圧の測定精度がより高い電池管理回路及び電池モジュールを提供することである。
【0006】
上記の技術的課題を解決するために本発明が採用した技術案は、信号抽出部と、クロック捕捉部と、電圧制御発振器と、電圧サンプリング部と備える電池管理回路を提供することである。信号抽出部は、電池管理回路に接続された通信バスから同期パルス信号を抽出する。クロック捕捉部は、信号抽出部に接続され、同期パルス信号に基づいてクロック信号を生成する。電圧制御発振器は、電池セル電圧を電圧周波数信号に変換する。電圧サンプリング部は、クロック信号に応じて電圧周波数信号のサンプリングを行って、電池セル電圧のサンプリング電圧を取得する。
【0007】
本発明の一実施形態では、電池管理回路は、前記クロック捕捉部と前記電圧サンプリング部との間に接続され、前記クロック信号を分周する分周器をさらに含み、前記電圧サンプリング部は、分周されたクロック信号を用いて前記サンプリングを行う。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記クロック捕捉部は、周波数ロックループまたは位相ロックループを含む。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記電圧サンプリング部は、そのデータ入力端に前記電圧周波数信号が入力され、そのリセット端が前記クロック信号が入力されるカウンタを含む。
【0010】
本発明の一実施形態では、電池管理回路は、前記電圧制御発振器および電圧サンプリング部の伝達関数に基づいて前記サンプリング電圧を補正する補正部をさらに含む。
【0011】
本発明の一実施形態では、電池管理回路は、前記電池管理回路の内部温度を検出する内部温度センサをさらに含み、前記補正部は、前記内部温度センサに接続され、前記内部温度を使用して前記サンプリング電圧を補正する。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記電圧制御発振器は、調整可能な電圧を電源として、前記電圧周波数信号を出力するリングオシレータを含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記電圧制御発振器は、分圧回路と、コンパレータと、トランジスタとを備える。分圧回路は、電池セル電圧に接続され、電池セル電圧の比例電圧を出力する。コンパレータは、正入力端が調整可能な電圧に接続され、負入力端が比例電圧に接続されている。トランジスタは、ソース電極が電池セル電圧に接続され、ドレイン電極が調整可能な電圧に接続され、ゲート電極がコンパレータの出力端に接続されている。
【0014】
本発明は、複数のグループの電池セルと、上述した複数の前記電池管理回路と、モジュールコントローラとを含む電池モジュールをさらに提供する。各電池管理回路は、一つのグループの電池セルに対応して接続されている。モジュールコントローラは、電池管理回路の少なくとも一部に通信バスを介して接続され、システムクロックに基づく同期パルス信号を送信するように配置されている。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記モジュールコントローラは、クリスタル発振器に接続されている。
【0016】
本発明は、複数のグループの電池セルと、複数の電池管理回路と、モジュールコントローラとを含む電池モジュールをさらに提供する。電池管理回路は、一つのグループの電池セルに対応して接続されている。モジュールコントローラは、電池管理回路の少なくとも一部に通信バスを介して接続され、システムクロックを有する。前記電池管理回路は、内部クロックを前記システムクロックにロックするように配置されている。
【0017】
本発明は、上記の技術案を採用することにより、従来技術と比較して、参照電圧に依存して電圧を測定するのではなく、電圧を測定するために非常に正確なクリスタルに基づくタイミング参照を使用するようにして、測定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上述した目的、特徴および利点をより明確に分かりやすくするために、本発明の具体的な実施形態を添付図面に関連して以下で詳細に説明する。
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電池管理回路のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電池管理回路の電池セル電圧がローレベルである場合の波形図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電池管理回路の電池セル電圧がハイレベルである場合の波形図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電圧制御発振器の回路図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る電池管理回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の上述した目的、特徴及び利点をより明らかに分かりやすくするために、本発明の具体的な実施形態について添付図面に関連して詳細に説明する。
【0021】
以下の説明では、本発明の十分な理解を容易にするために多くの具体的な詳細が説明されているが、本発明は、本明細書で説明されているものとは異なる他の方法で実施されてもよいので、本発明は以下に開示される具体的な実施形態に限定されない。
【0022】
本出願および特許請求の範囲に示されているように、「1」、「1つ」、「一種」および/または「この」などの用語は、コンテキストが例外的な状況を明示的に示す場合を除き、特に単数を意味するものではなく、複数を含むこともできる。一般に、「備える」および「含む」という用語は、明示的に識別されたステップおよび要素を含むことを示唆するだけであるが、これらのステップおよび要素は排他的な羅列を構成するのではなく、方法または装置は、他のステップまたは要素を含むこともできる。
【0023】
部品が「他の部品の上にある」、「他の部品に接続されている」、「他の部品に結合されている」、または「他の部品に接触している」と言及される場合、該部品は、他の部品の上に直接配置されていてもよく、他の部品に接続されていてもよく、他の部品に結合されていてもよく、あるいは他の部品に接触していてもよく、または挿入された部品が存在していてもよいことを理解すべきである。これに対して、ある部品が「他の部品上に直接ある」、「に直接接続される」、「に直接結合される」、または「に直接接触される」と言及される場合には、挿入された部品は存在しない。同様に、第1の部品が第2の部品に「電気的に接触される」または「電気的に結合される」と言及される場合、該第1の部品と該第2の部品との間に電流を流すための電気的経路が存在する。当該電気的経路は、導電性部品間の直接接触がなくても、コンデンサ、結合されたインダクタ、および/または電流を流すことができる他の部品を含むことができる。
【0024】
本発明の実施形態は、一種の電池管理回路(battery management circuit)を説明する。本発明のコンテキストでは、電池管理回路は、1つまたは複数の電池セル(battery cell)を管理することに応用される。典型的には、1つの電池管理回路は、1つのグループの電池セルを管理するための1つのチップとして実施される。多数の電池管理回路および選択可能な追加デバイスは、電池管理システム(battery management system)を構成する。
【0025】
本発明の実施形態では、電池管理回路は、参照電圧に依存する必要がなく、より高いセル電圧測定精度を有している。電池モジュールにおいて、中央マイクロコントローラ(MCU)は、非常に正確なクリスタルに基づくタイミング参照を使用して、すべての電池管理回路との通信を駆動する。各電池管理回路のシステムクロックをMCUのクロックにロックすることにより、電池管理回路内で正確なタイミング参照を取得することができ、電圧測定に用いられることができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。図1に示すように、電池モジュール100は、複数のグループの電池110、例えば110_1、110_2、・・・、110_nを含むことができ、ここで、nは正の整数である。各グループのバッテリ110は、1つまたは複数の電池セルを含むことができ、図中に2つの電池セルが示されている。各グループの電池110の電池セルの間は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよい。各グループのバッテリ110_1、110_2および110_nの間は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよい。図1には、電池セルおよび電池グループを直列に接続した例が示されている。図1では、複数の電池管理回路120、例えば120_1、120_2、・・・、120_nが設けられている。各電池管理回路120は、グループに対応するバッテリを監視して管理するために、対応するバッテリのグループ110に並列に接続されることが可能である。例えば、電池管理回路120は、対応する1つのグループのバッテリ110のセル電圧を監視することができる。いくつかの実施形態では、各電池管理回路120は1つの半導体チップとして実施されるが、これに限定されるものではない。各電池管理回路120は、通信のために接続されることが可能である。例えば、各電池管理回路120は、通信バスを介して通信することができる。通信バスの形式は、公知の様々な適切な通信バスを応用してもよい。1つの実施形態では、デイジーチェーン通信バスを使用してもよい。図1には、各電池管理回路120間のインターフェースIOtopおよびIObotが示されている。
【0027】
これらの電池管理回路120は、データを交換するために電池モジュールコントローラ130に接続されてもよい。例えば、電池管理回路120は、測定されたバッテリ電圧を電池モジュールコントローラ130に提供してもよい。電池モジュールコントローラ130は、複数のグループの電池110を含む電池モジュール全体の動作を制御することができる。電池モジュールコントローラ130は、クリスタル132に接続されている。電池モジュールコントローラ130内の発振器(図示せず)は、タイミング参照としてクリスタル132を利用して非常に正確なシステムクロックを生成することができる。システムクロックの周波数は、テクノロジの選択、処理/計算に必要な速度、消費電力要求などに依存する。実際の実施では、システムクロックの周波数範囲は、数十MHzから数百MHzの間であってもよい。電池モジュールコントローラ130の発振器は、全ての電池管理回路120を制御するための通信バスを駆動するために使用される。各電池管理回路120は、通信バスを介して電池モジュールコントローラ130のバス動作周波数を捕捉した後、その内部クロックをバス動作周波数にロックすることができ、これにより、同じような非常に高い絶対精度を有する。
【0028】
図1は、単一の電池管理回路に基づく電池管理システムを示しているが、他のタイプのシステムにも同じ原理を適用することができ、このシステムでは、高い絶対精度を有するクリスタルに基づく発振器信号をロックに使用することができる。
【0029】
各電池管理回路120内の正確なクロックを使用して、バッテリ電圧を測定することができる。図2は本発明の一実施形態に係る電池管理回路のブロック図である。図2に示すように、電池管理回路120は、信号抽出部121と、クロック捕捉部122と、分周器123と、電圧制御発振器124と、電圧サンプリング部125と、補正部126とを備えることができる。信号抽出部121は、通信バスIOBusに接続される。通信バス上には、電池モジュールコントローラ130からのシステムクロックを含む同期パルス信号がある。信号抽出部121は、通信バスから同期パルス信号を抽出する。通信信号は、常に特定のデータレートまたはクロック信号を用いて動作し、信号抽出部121は、該信号中のタイミング情報を抽出することを目的とする。信号抽出部121を正確に実現するには、通信バスの変調に大きく依存する。例えば、通信信号はマンチェスター符号としてもよく、これはクロックとデータが単一の信号に結合されることを意味する。信号抽出部121は、通信バス信号のエッジに基づいて同期パルス信号を抽出することができる。これらの同期パルス信号は、通信バス周波数にロックされたクロック信号を生成するように、クロック捕捉部122への入力を形成する。
【0030】
クロック捕捉部122は、信号抽出部121に接続され、同期パルス信号に応じてクロック信号Clkを生成する。このとき、クロック信号Clkの周波数は、電池モジュールコントローラ130内のシステムクロックの周波数と同じであってもよい。本発明の実施形態では、クロック捕捉部122は、周波数ロックループ(Frequency Locked Loop, FLL)または位相ロックループ(Phase Locked Loop, PLL)として実施することができる。
【0031】
一方、電圧制御発振器(VCO)124は、電池セル電圧Vbatを電圧周波数信号Vfmに変換する。ここで、電池セル電圧Vbatはアナログ値であってもよく、電圧周波数信号は周波数情報を含むデジタル値であってもよい。この周波数情報は、電池セル電圧Vbatの振幅に関連付けられている。例えば、振幅が大きいほど、周波数は大きくなる。
【0032】
電圧サンプリング部125は、クロック信号Clkに応じて電圧周波数信号Vfmをサンプリングして電池セル電圧のサンプリング電圧Dを取得することができる。典型的には、クロック信号Clkを分周器123で分周して分周信号Rstを取得することができる。電圧サンプリング部125は、分周信号Rstを用いてサンプリングを行う。一実施形態では、電圧サンプリング部125は、カウンタを含むことができる。カウンタのデータ入力端には電圧周波数信号Vfmが入力され、リセット端にはクロック信号Clkまたはその分周信号Rstが入力される。図2の例では、分周器123を使用する例が示されたが、本発明は、分周器123を使用しない例を含むように理解されてもよい。以下、分周器123を使用することを例として説明する。カウンタは、分周信号Rstによって規定される時間窓内における電圧周波数信号Vfmの周期数をカウントすることが可能であり、カウント値は電池セル電圧Vbatを反映している。Rst信号は、測定された積分時間を決定する。Rst信号の周期が長いほど、カウントされるVfmの周期が多くなり、測定される分解能が高くなる。Rst信号の周波数は、電池管理回路120のアプリケーション要求およびノイズ性能に依存する。Rstの最も可能な最小周期は数ms程度であり、数百Hzの周波数に対応する。
【0033】
このカウンタの出力は、Rst信号により設定された時間窓の間にVfmの周期数をカウントすることにより、電池セル電圧を表すものとなる。カウンタの周期を長くすることで、出力の分解能が高くなる。その代償は測定速度が遅くなることである。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る電池管理回路の電池セル電圧がローレベルである場合の波形図である。図3に示すように、電池セル電圧Vbatが低レベルである場合には、変換された電圧周波数信号の周波数も低く、パルスが密集していない。電池管理回路は、通信バスからクロック信号Clkを捕捉し、分周してRst信号を取得して、これを用いてVfm信号をサンプリングしてサンプリング電圧Dを取得する。DはRstの1周期で徐々に立ち上がる信号である。さらに補正を行った後、測定電圧VMoutを取得する。図4は、本発明の一実施形態に係る電池管理回路の電池セル電圧がハイレベルである場合の波形図である。図3と比較して、電池セル電圧Vbatはハイレベルであり、その変換された電圧周波数信号の周波数も高く、パルスが密集している。それに応じて、サンプリング電圧Dおよび測定電圧VMoutの振幅も高くなる。
【0035】
前述の例では、VCO124の伝達関数をfとすると、電圧周波数Vfm=f(Vbat)となる。関数fは、VCOより構成されるVbatの値とVfmの周波数との関係を記述する。理想的には、次のような線形関係が存在する。例えば:
freqVfm=F(Vbat)=100MHz+10MHz・Vbat
この例では、Vbat=5Vであるとき、VCO124の周波数は150MHzである。この関係を利用して、電圧サンプリング部125の出力(これはVfm周波数の尺度である)を等価値Vbatに変換する必要がある。
【0036】
電圧サンプリング部125の出力は、VMout=f-1(D)=Vbatとなるように補正する必要があってもよい。それに応じて、本実施形態では、電池管理回路120は、VCO124の伝達関数に基づいてサンプリング電圧Dを補正することができる補正部126をさらに含むことができる。
【0037】
厳密的には、前述のVMout=f-1(D)=Vbatという式は正確ではない。一実施形態では、電圧サンプリング部125の伝達関数を考慮して、DをVbatに戻すことが好ましい。しかしながら、補正部126の主な目的は、値DをVbatの等価値に戻すことである。他のパラメータに加えて、VCO124の伝達関数f、例えばRst信号の周波数を使用する。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態に係る電圧制御発振器の回路図である。図5に示すように、電圧制御発振器124は、リングオシレータ502を含むことができる。リングオシレータ502は調整可能な電圧Vddを電源とし、リングオシレータ502は電圧周波数信号Vfmを出力する。
【0039】
調整可能な電圧Vddは、以下のように構成することができる。電圧制御発振器124は、分圧回路504と、コンパレータ506と、トランジスタ508とをさらに備える。分圧回路504は、電池セル電圧Vbatに接続されることが可能であり、分圧回路504は、電池セル電圧Vbatの比例電圧を出力する。コンパレータ506の正入力端には調整可能な電圧Vddが接続され、負入力端には比例電圧が接続され、コンパレータ506の出力端は両者の比較結果が出力される。トランジスタ508のソース電極は電池セル電圧Vbatに接続され、ドレイン電極は調整可能な電圧Vddに接続され、ゲート電極は前記コンパレータの出力端である。
【0040】
リングオシレータ502の出力周波数とその電源電圧との間には顕著な関係がある。したがって、電源電圧Vddにより出力周波数を調整することができる。
【0041】
リングオシレータ502の出力周波数と温度との間にも顕著な関係があるので、温度を参照しながら補正する必要がある。図6は、本発明の他の実施形態に係る電池管理回路のブロック図である。図6に示すように、電池管理回路120は、電池管理回路の内部温度を検出するための内部温度センサ127をさらに備えていてもよい。補正部127は、この内部温度センサ127に接続され、内部温度センサ127によって検出された内部温度を使用してサンプリング電圧を補正する。内部温度センサ127の出力は、補正によってVCO124の温度感度を補償するために使用されることができる。これによって、リングオシレータ502の出力周波数(正確な参照周波数を使用して測定される)を、等価な入力電圧Vbatにマッピングし直すことができる。
【0042】
上述した本発明の実施形態では、リングオシレータは単に単純化させるために選択される。他の実施形態では、出力周波数が電源電圧に依存する任意の他の発振器を使用することができる。考えられる電圧制御発振器の別の可能な方式は、電源および温度から独立した出力周波数を有するように設計された電圧平均帰還緩和発振器(VAF)である。この方式はまた、電圧参照を必要としない。
【0043】
本発明で説明されるアナログ―デジタル変換器(ADC)のタイプは、本分野では「中間FM級ADC」または「電圧―周波数変換器」と呼ばれる。本発明の1つの特徴は、このタイプのADCを電池管理回路に適用することであり、このようなADCは、MCUによって提供されるクリスタルに基づく周波数参照から利益を得ており、この周波数参照は、全ての電池管理回路の間で分配される。
【0044】
本発明は、現在の特定の実施形態を参照して説明したが、当技術分野における通常の当業者は、上記の実施形態が単に本発明を説明するために使用されているだけであり、本発明の精神から逸脱することなく、様々な同等の変更または代替を行うことができることを認識しなければならない。したがって、本発明の本質的精神の範囲内である限り、上記の実施形態の変更、変形は、すべて本出願の特許請求の範囲内に含まれることになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】