(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】無人航空機の経路を決定するための方法および他の関連する方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/00 20060101AFI20220831BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01C21/00
B64C39/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578220
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2020056227
(87)【国際公開番号】W WO2021001768
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522000924
【氏名又は名称】ウアヴィア
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレ,ピエール
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA11
2F129DD46
2F129DD53
2F129DD62
2F129DD63
2F129FF02
(57)【要約】
異なる優先順位に従って最適化された無人航空機の経路を確立するために、3次元環境のデジタル処理を使用する、モデリング方法であって、以下のデジタル処理ステップ:(a)飛行が禁止されている容積(PEXi)の3次元モデルを提供するステップと、(b)モデルを個々の要素(PVk)に細分化するステップと、(c)個々の要素ごとに中心(Pk)を決定するステップと、(d)グラフを確立および記憶するステップであって、そのノード(Pk、Ik)は、中心の少なくとも1つの部分によって形成され、その分岐は、ノード間の距離によって、および所与の優先度に関連付けられた少なくとも1つの重み付けによって重み付けされる、グラフを確立および記憶するステップと、を含むことを特徴とする、方法。また、無人航空機を使用して、そのようなグラフによってモデル化された3次元モデル空間内の2点間の経路を決定するための方法が提案され、そのような決定を使用する操縦方法も提案される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる優先順位に従って最適化された無人航空機の経路を確立するために、3次元環境のデジタル処理を使用する、モデリング方法であって、以下のデジタル処理ステップ:
(a)飛行が禁止されている容積(PEXi)の3次元モデルを提供するステップと、
(b)前記モデルを個々の要素(PVk)に細分化するステップと、
(c)個々の要素ごとに中心(Pk)を決定するステップと、
(d)グラフを確立および記憶するステップであって、そのノード(Pk、Ik)は、前記中心の少なくとも1つの部分によって形成され、前記分岐が、前記ノード間の距離によって、および所与の優先順位に関連付けられた少なくとも1つの重み付けによって重み付けされる、確立および記憶するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記優先順位が、絶対距離優先順位、移動時間優先順位、エネルギー消費優先順位、および危険優先順位のうちの少なくとも2つの優先順位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重み付けのうちの少なくとも1つが、前記一組の分岐に影響を及ぼす制約に依存する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記制約が、すべての分岐に影響を与える制約ベクトルを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制約ベクトルが、風ベクトルであり、各分岐が、前記移動方向にそれぞれ関連付けられた一対の重みを有し、各重みが、前記風ベクトルに明確に影響を受ける、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記重み付けが、好ましい移動方向を生成するために、前記移動方向に応じて異なる重みが同じ分岐に割り当てられるようにする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記重み付けが、飛行空間内の位置に応じて異なるレベルの制約を画定するマッピングに基づいている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記制約レベルが、最大許可速度制約と危険制約を含むグループに含まれている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制約が、対応する区域が飛行禁止区域となるような値を取ることができる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)が、物理的に飛行が不可能な容積(PEXi)を有する3次元モデルを提供し、静的安全マージンデータでこのモデルを再処理することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)が、前記3次元モデルを水平スライス(Txy)に細分化し、各スライスの厚さを通して同じである水平面上に前記容積を投影し、各水平面内の個々の要素に細分化を実装することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細分化が、三角測量によって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記三角測量が、Delaunay三角測量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)が、距離最小化アプローチによって、隣接する水平面に位置するノード間に前記グラフの分岐を確立することを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
無人航空機によって、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法で得られたグラフによってモデル化された3次元空間内の2点間の経路を決定するための方法であって、以下のステップ:
-ルートの優先順位を決定するステップと、
-前記決定された優先順位に対応する所与のグラフを考慮するか、または確立するステップと、
-前記所与のグラフ内の最良の経路計算によって、前記航空機内で前記ルートを定義するステップと、含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記グラフの前記分岐を重み付けするステップが、重み付けされていない分岐を伴う開始グラフをリモートで受信し、前記航空機上で、優先順位に従って前記分岐を重み付けすることによって実装される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
飛行中に、前記グラフの少なくとも一部分の前記分岐重みを更新するステップと、前記グラフ内の前記最良の経路を再計算するステップと、を含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記グラフの前記分岐の前記重みの前記更新が、優先順位の変更に従って実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記グラフの少なくとも一部の前記分岐の前記重みの前記更新が、前記現在の優先順位に対応する前記重み付けのための修正された重み付けデータの受信に基づいて行われる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記グラフの前記分岐の前記重みを更新する前記ステップが、動的に発生する禁止区域に基づいて禁止分岐を生成することを含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記禁止区域が、その位置が前記禁止区域を決定する他の機器との前記航空機の遠隔通信によって決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記他の機器が、別の無人航空機である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記禁止区域が、禁止された高度着陸である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記他の機器が、一時的な敷地介入に関連付けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記最良の経路の前記計算が、前記航空機の俊敏性制約に従って実行される、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
無人航空機を操縦するための方法であって、以下のステップ:
-請求項15~25のいずれか一項に記載の前記方法によって経路を決定するステップと、
-少なくとも1つの軌道緩和係数を適用するステップと、
-前記緩和係数の関数として許容軌道偏差を決定することと、
-実際に測定された軌道偏差が前記許容軌道偏差を超える場合にのみ、軌道補正命令を適用するステップと、を含む、方法。
【請求項27】
前記緩和係数が、前記航空機に搭載されたGPSユニットの現在の精度、風、前記航空機の操縦コマンドへの応答、前記航空機のサイズ、前記航空機のタイプのいくつかの情報のうちの1つを表す少なくとも1つのデータから決定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
無人航空機を操縦するための方法であって、以下のステップ:
-請求項15~25のいずれか一項に記載の前記方法によって経路を決定するステップと、
-飛行中に前記航空機の動的特性を測定するステップと、
-前記動的特性の進化に従って、新しい経路を動的に決定するステップと、を含む、方法。
【請求項29】
前記動的特性が、機内で利用可能なエネルギーおよび行動異常からの少なくとも1つの特性を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
グラフが、着陸ステーションまたは区域を指定するノードを含み、前記新しい経路を動的に決定するステップが、前記着陸ステーションまたは区域のノードの位置を考慮に入れる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記新しい経路を動的に決定する前記ステップが、ステーションまたは着陸区域のノードの状況(空いている、占有されている)も考慮に入れる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
行動異常の場合に優先順位を修正することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の前記方法の全部または一部の前記実装のために設計されたデジタル処理回路および無線通信回路を備えることを特徴とする、無人航空機。
【請求項34】
無人航空機に搭載されるために好適なコンピュータプログラムであって、請求項1~32のいずれか一項に記載の前記方法の全部または一部を実装するために好適な命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、無人航空機またはドローンに関するものであり、特に、制約された環境におけるドローンのための経路の決定に関する。
【0002】
先行技術
監視ドローンは、監視、特に構造物、機密の敷地などの監視にますます使用されている。
【0003】
加えて、ドローンに課された経路を記述させるための解決策が文献において既知である。
【0004】
有人飛行の分野では、飛行計画は、環境および材料の制約に従って、ユーザによって事前に選択された垂直寸法のない一連のウェイポイント(例えば、EP1614086A2を参照されたい)である。
【0005】
本書では、理論軌道を追跡するための技術について説明し、異なるセンサ(ライダ、レーザなど)からのウェイポイントおよびデータの座標のリストを入力として取り込み、上記軌道を動的に修正するように処理する。
【0006】
現行技術では、一方では環境および材料の制約の下で、他方ではユーザによって決定されるより高いレベルの制約の下で、飛行プログラムを自動的に確立することを可能にする技術は提案されていない。
【0007】
したがって、現行技術では、航空機が目的地に到達することを可能にするウェイポイントのリストの構築を担当するのは、UAVのユーザである。ユーザは、UAVの位置決めの不確実性を考慮し、UAVが経路をカバーするのに必要なエネルギーが利用可能であることを確認するなどして、障害物を回避することによって、この経路を構築しなければならない。
【0008】
依然として、現行技術では、安全パイロットは、問題が発生した場合に引き継ぐことができるように、UAVの自動ミッションの実行中に存在していなければならない。その後、パイロットは、UAVが安全な区域に到達することを可能にする軌道について正しい決定を下すことを担う。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、飛行中の人間の介入の必要性を制限し、非常に柔軟な飛行経路の決定によって、自動飛行プログラムの生成を改善することを提案する。
【0010】
第1の態様によれば、異なる優先順位に従って最適化された無人航空機の経路を確立するために、デジタル処理によって3次元環境をモデリングするための方法が提案され、その方法は、以下のデジタル処理ステップ:
(a)飛行が禁止されている容積(PEXi)の3次元モデルを提供するステップと、
(b)そのモデルを個々の要素(PVk)に細分化するステップと、
(c)個々の要素ごとに中心(Pk)を決定するステップと、
(d)グラフを確立および記憶するステップであって、そのノード(Pk、Ik)は、上記中心の少なくとも1つの部分によって形成され、その分岐は、ノード間の距離によって、および所与の優先順位に関連付けられた少なくとも1つの重み付けによって重み付けされる、確立および記憶するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本方法は、有利に、しかし任意選択的に、当業者が技術的に適合性があると見なす、個々にまたは任意の組み合わせで取られる以下の追加の特徴を含む。
*優先順位は、絶対距離優先順位、移動時間優先順位、エネルギー消費優先順位、および危険優先順位のうちの少なくとも2つの優先順位を含む。
*重み付けの少なくとも1つは、すべての分岐に影響を与える制約に依存する。
*上記制約は、すべての分岐に影響を与える制約ベクトルを含む。
*制約ベクトルは、風ベクトルであり、各分岐は、それぞれ移動方向に関連付けられた一対の重みを有し、各重みは、風ベクトルに明確に影響を受ける。
*上記重み付けは、好ましい移動方向を生成するために、移動方向に応じて異なる重みが同じ分岐に割り当てられるようにする。
*上記重み付けは、飛行空間内の場所に応じて異なるレベルの制約を定義するマッピングに基づいている。
*制約レベルは、最大許容速度制約および危険制約を含むグループに含まれている。
*制約は、対応する区域が飛行禁止区域となるような値を取ることができる。
*ステップ(a)は、物理的に飛行が不可能な容積(PEXi)を有する3次元モデルを提供し、静的安全マージンデータでこのモデルを再処理することを含む。
*ステップ(a)は、3次元モデルを水平スライス(Txy)に細分化し、各スライスの厚さを通して同じである水平面上に容積を投影し、各水平面内の個々の要素に細分化を実装することを含む。
*細分化は三角測量によって行われる。
*三角測量はDelaunay三角測量である。
*ステップ(d)は、距離最小化アプローチを使用して、隣接する水平面に位置するノード間にグラフ分岐を確立することを伴う。
【0012】
第2の態様によれば、無人航空機によって、上で定義されたモデリング方法によって得られたグラフによってモデル化された3次元空間内の2点間の経路を決定するための方法が提案され、その方法は、以下のステップ:
-ルートの優先順位を決定するステップと、
-決定された優先順位に対応する所与のグラフを考慮するか、または確立するステップと、
-上記所与のグラフ内の最良の経路計算によって、航空機上でルートを定義するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
本方法は、有利に、しかし任意選択的に、当業者が技術的に適合性があると見なす、個々にまたは任意の組み合わせで取られる以下の追加の特徴を含む。
*グラフの分岐を重み付けするステップは、重み付けされていない分岐を伴う開始グラフをリモートで受信し、航空機上で、優先順位に従って上記分岐を重み付けすることによって実装される。
*この方法は、飛行中に、グラフの少なくとも一部の分岐の重みを更新するステップと、グラフ内の最良の経路を再計算するステップとを含む。
*グラフの分岐の重みの更新は、優先順位の変更に従って実行される。
*グラフの少なくとも一部の分岐重みの更新は、現在の優先順位に対応する重み付けのための修正された重み付けデータの受信に基づいて実行される。
*グラフの分岐の重みを更新するステップは、動的に発生する禁止区域に基づいて禁止分岐を生成することを含む。
*禁止区域は、その位置が禁止区域を決定する他の機器と航空機の遠隔通信により決定される。
*他の機器は別の無人航空機である。
*禁止区域は、禁止されている高度レベルである。
*他の機器は、その敷地での一時的な介入に関連付けられている。
*最良経路の計算は、航空機の俊敏性の制約に従って実行される。
【0014】
第3の態様によれば、無人航空機を操縦するための方法が提案され、方法は、以下のステップ:
-上で定義された決定方法によって経路を決定するステップと、
-少なくとも1つの軌道緩和係数を適用するステップと、
-緩和係数の関数として許容軌道偏差を決定するステップと、
-実際に測定された軌道偏差が許容軌道偏差を超える場合にのみ、軌道補正命令を適用するステップと、を含む。
【0015】
有利に、しかし任意選択的に、緩和係数は、航空機に搭載されたGPSユニットの現在の精度、風、航空機の操縦コマンドへの応答、航空機のサイズ、航空機のタイプのいくつかの情報のうちの1つを表す少なくとも1つのデータ項目から決定される。
【0016】
第4の態様によれば、無人航空機を操縦するための方法が提案され、方法は、以下のステップ:
-上で定義された決定方法によって経路を決定するステップと、
-飛行中に航空機の動的特性を測定するステップと、
-上記動的特性の進化に従って、新しい経路を動的に決定するステップと、を含む。
【0017】
本方法は、有利に、しかし任意選択的に、当業者が技術的に適合性があると見なす、個々にまたは任意の組み合わせで取られる以下の追加の特徴を含む。
*上記動的特性は、機上で利用可能なエネルギーおよび行動異常から少なくとも1つの特性を含む。
*グラフは、着陸ステーションまたは区域を指定するノードを含み、新しい経路を動的に決定するステップは、着陸ステーションまたは区域のノードの位置を考慮に入れる。
*新しい経路を動的に決定するステップは、ステーションまたは着陸区域ノードの状況(空いている、占有されている)も考慮する。
*方法は、行動異常の場合の優先順位の修正を含む。
【0018】
上記の方法のいずれかのすべてまたは一部を実装するように設計されたデジタル処理回路および無線通信回路と、上記の方法のいずれかのすべてまたは一部を実装するために好適な命令を含むことを特徴とする、無人航空機に搭載するために好適なコンピュータプログラムと、を含むことを特徴とする、無人航空機がさらに提案される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の他の態様、目的、および利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照して作られる、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明確になるであろう。
【
図1】UAVが動作しなければならない簡易的な敷地の平面図である。
【
図4】
図1に類似した図であり、飛行禁止区域を取り囲む安全区域を示す。
【
図5】
図2に類似した図であり、飛行禁止区域を取り囲む安全区域を示す。
【
図6】第1の高度での平面図であり、この高度での簡易的な敷地の可能な空間的分解を示す。
【
図7】第2の高度での平面図であり、この高度での簡易的な敷地の可能な空間的分解を示す。
【
図8】第3の高度での平面図であり、この高度での簡易的な敷地の可能な空間的分解を示す。
【
図9】第4の高度での平面図であり、この高度での簡易的な敷地の可能な空間的分解を示す。
【
図10】
図6の空間的分解の点を介した理論的経路を示す。
【
図12】本発明を実装するために好適なドローンシステムの全体的なアーキテクチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
はじめに
以下では、「ドローン」(またはUAV-無人航空機)という用語を使用して、無人、遠隔操作、および/または、好ましくは回転翼を備えている自己操縦式の航空機を指し、昇降翼を有するドローンも対象とする。
【0021】
ここでは、複雑で潜在的に危険な3次元飛行空間における動的で安全な経路の計算と追跡の異なる態様について説明する。次に、特に飛行装置と地上との間のこれらの機能に関連するタスクの分配の観点から、これらの機能を実装できるアーキテクチャについて説明する。
【0022】
本発明が適用されるシステムは、所与の空間を飛行可能な1つ以上のドローン、ならびに1つ以上の地上充電ステーションを含む。本発明は、特に、この空間における制約の下での経路の探索、計算された軌道の観測、ならびに軌道および目的地の再評価に焦点を当てる。
【0023】
より具体的には、本発明は、トポロジーの一部が事前に知られている3次元空間でドローンが最大の安全性で移動することを可能にすることを目的とする。この知識により、飛行空間の表現を確立し、この空間の動的変化と、バッテリレベルまたは行動異常の現れなどの航空機の状態の変化の両方を考慮に入れ、また、ユーザによって、または所与の状況に応じて自動的に飛行に与えられた優先順位(最短経路、最大エネルギー効率など)を考慮に入れることができる。
【0024】
1つの特徴によれば、処理ユニットは、開始点の座標および到達されるべき点の座標を特に含むミッションデータを使用して、飛行安全性を含むいくつかの判定基準の観点から最適化されたウェイポイントのリストを構築する。
【0025】
このウェイポイントのリストは、地形のトポロジーが変化するか、新しい情報が利用可能になるか、または以前に利用可能な情報が利用可能ではなくなるたびに、時間の経過とともに再計算される。
【0026】
この方法は、空間の特定の区域におけるネットワークの品質の低下、特定の区域における一方通行の義務、利用可能な充電ステーションの座標、軌道の近傍に他のドローンが存在するなど、様々な影響をリアルタイムで自動的に考慮することを目的としている。
【0027】
入力データとして提供される3次元飛行空間は、飛行が禁止されている容積を含むことができる有限の容積である。位置決めの不確実性を防止するために、静的な安全マージンが考慮され、飛行空間の容積は、その外側の境界の空間的拡張を減少させ、それが含む禁止されている容積の境界の空間的拡張を増加させることによって減少する。
【0028】
次いで、不正飛行区域を表す容積を総容積から除外するものとして定義される、許可された飛行空間は、許可された飛行空間内に含まれるすべての要素のセットに細分化される。これらの要素の各々について、特性点が選択される。グラフは、最も近い隣接点間を接続することで構築される。有利に、重み付けは、各分岐に関連付けられ、システムに課される制約に依存するものであり、以下で説明する。この重み付けは、それが横断されるべき方向に応じて配向され得、すなわち、2つの異なる点は、分岐に関連付けられ得る。ユーザが、目的地を示すと、制約条件に従って最適な経路を見つけるために、グラフが横断される。
【0029】
経路が計算されると、すなわち、飛行計画が確立されると、経路はUAVによって追従される。計算された軌道の観測を確実にするために、環境条件、飛行パラメータ(速度、加速度など)に応じて、軌道を含む容積が計算される。この容積は、軌道の非等方的緩和係数の適用によって導出され、上記軌道を辿るUAVの必須飛行容積に対応する。緩和係数は、周期的に計算され、必須飛行容積は、上記緩和係数の修正条件の動的変化を考慮に入れるように、それに応じて修正される。グラフの分岐に関連付けられた重み付けは周期的に再計算され、1つ以上の判定基準に従って経路の「コスト」を最小限に抑える現在の位置と目的地との間の経路が再計算される。経路コストの概念は、ユーザが選択した高レベルの優先順位すなわち、最短経路時間、最高平均経路速度、安全性の向上の優先順位によって決定される。新しい経路が以前の経路に関連付けられた容積を超えると、緩和係数が再計算され、それに応じて必須飛行容積が再計算される。UAVの挙動は、監視され、異常が検出されると、目的地の変更が起こり得るので、UAVは、事前に定義された安全区域に向かい、飛行安全性を最大化する。
【0030】
飛行空間の表現
経路検出および経路構築および追跡のための方法を、
図1~
図11を参照して詳細に説明する。
【0031】
[0076]まず、
図1~
図3を参照すると、飛行空間Eの表現は、いわゆる「包含する」多面体PEG(典型的には、敷地の限界、ここではフェンスCLに寄りかかった垂直ディレクタの円柱)が、他のいわゆる「除外される」多面体、ここでは簡略化のために、その容積は飛行が禁止されている、長方形の平行六面体PEX1、PEX2、PEX3のセットを完全に含むものと考えることによって、3次元で提供することができる。これらの多面体は、例えば、建物、産業設備、タンク、駐車場区域、または作業区域を表すことができる。位置測定器の不確実性と3次元モデル自体がもたらす誤差の両方を考慮するために、包含する多面体と除外される多面体の両方に対する静的な安全マージンが、除外される多面体のサイズの事前定義された増加と包含する多面体のサイズの事前定義された減少を決定することによって計算される。距離の増減は、例えば、位置決めシステムの既知の誤差を使用して、異なる方法で選択することができる。2つの水平寸法と垂直寸法で異なり得る。典型的には、約5mである。
【0032】
したがって、参照のPEG’ならびにPEX1’、PEX2’およびPEX3’については、補正後のこれらの「拡張」多面体を
図4および
図5に示す。
【0033】
ここで、
図5および
図6~
図9を参照すると、飛行空間の3次元モデルは、ここでは異なる高度での水平層の重ね合わせと見なされる。固定高度の水平スライスは、飛行空間に含まれる各多面体の最小高度および最大高度に位置する水平面の間に作成される。ここで、平面P0は、除外される3つの多面体PEX1、PEX2、PEX3の共通の最小高度に対応し、平面P1~P3は、除外される多面体、すなわち、PEX3、PEX2、およびPEX1の増加方向における最大高度に対応する。各平面と各多面体の交点は、それ自体が多角形を形成する。ここで、多面体は、その全高にわたって一定の水平断面である。可変断面の多面体の場合、考えられるスライスの最も広い断面のレベルでの平面内の多面体の投影は、計算によって決定される。
【0034】
3次元モデルの設計はまた、UAVの最大飛行高度に従って決定された平面P4(
図5を参照)を含み得、この平面は、そのような制限がない場合にほぼ無限の高度まで持ち越される。
【0035】
飛行空間は、一定の水平断面の一連のスライス、ここではT01、T12、T23、およびT34によって構成される2.5次元空間によってモデル化され、これらのスライスは、それぞれ、平面P0-P1、...、P3-P4の対によって区切られ、その限界は、外部的には、補正された包含する多面体PEG’の限界であり、内部的には、補正された除外される多面体PEX1’~PEX3’の限界であり、これらの限界は、それらのスライスと交差し、これらのスライスの各々は、その全高にわたって、許可された飛行区域を画定する。
【0036】
【0037】
図9において、最大高度のスライスT34が任意の除外された多角形を含まないことが分かる。
【0038】
この飛行空間は、飛行区域のアクセス可能区域に位置する1つ以上の充電ステーションと相互作用する1つ以上のUAVによって進入される。飛行空間の定義には、緊急着陸区域も考慮することができる。それらは、充電ステーションを含む、または含まない場合がある区域に対応し、UAVが安全に着陸することができる選択された区域である。充電ステーションは、必ず緊急着陸区域に配置されなければならず、ステーションへのUAVの着陸中に問題が発生した場合、UAVは、迅速かつ安全にアクセス可能な予備の解決策を有している。現在の説明では、緊急着陸区域は障害物の上に位置することができるが、同じレベルに位置することはできない。
【0039】
横断する敷地のモデルの作成には、適切なユーザインターフェースの助けを借りて実施される、UAVのための充電ステーションの位置決め、および必要に応じて充電ステーション区域とは別の緊急着陸区域の位置決めも含まれる。
【0040】
有利に、この位置決めは、緊急着陸中にUAVがそのような禁止区域に入らなければならないことを回避するために、禁止区域の安全マージンを考慮して実施される。
【0041】
個々の要素への飛行空間の細分化およびグラフの形態での飛行空間の表現の構築
このステップでは、前述の各スライスにおける許可された飛行区域の水平面が、処理システムによって個々の要素または敷石PVkのセットに細分化され、その結果、そのスライスにおける許可された飛行区域の舗装を構成する。舗装は様々な方法で実行され得る。有利に、Delaunay三角測量またはその変形の1つ(特にhttps://fr.wikipedia.org/wiki/Triangulation_de_Delaunayを参照)がこの舗装に使用され、敷石はすべて三角形の形状になっている。
【0042】
有利に、制約付きDelaunay三角測量が使用される(例えば、Christophe Lemaire.Delaunay triangulation and multidimensional trees.Image synthesis and virtual reality[cs.GR].Ecole Nationale Superieure des Mines de Saint-Etienne;Universite Jean-Monnet-Saint-Etienne,1997.French.NNT:1997 STET 4021;電話-00850521,1.5章を参照)。
【0043】
Delaunay三角測量の利点は、三角測量を実行するために必要な計算リソースの観点からあまり多くを要求されないことであり、したがってタイルへの細分化は、UAVの機上で実行され得る。
【0044】
さらに、制約付き三角測量により、モデルの個々の要素が交差することができるため(例えば、許可された飛行区域の中央にある禁止された飛行区域の場合)、三角測量の結果がいくつかの場所で特定の形状を確実に尊重できるようになる。
【0045】
三角測量が実施されると、処理ユニットは、敷石ごとの特性点Pkの座標を決定する。考えられる選択肢は、敷石の質量の中心を取ることである。確かに、定義上、Delaunay三角測量から生じる三角形の敷石の質量の中心は、必然的にこの敷石の内側にあり、したがって、考慮された水平スライスTxyの許可された飛行区域に位置する。
【0046】
次に、処理ユニットは、そのノードがこれらの特性点Pkの各々であるグラフを構築する。各ノードはノード識別子Ik、および正規直交3次元空間にある3つの座標Xk,Yk,Zkを特性として有する。グラフの分岐は、同じスライス内に位置する最も近いノードを接続する分岐と、一方、隣接する2つのスライス内の最も近いノードを接続する分岐とを含む。同じスライス内で最も近いノードとして構成されるノードは、有利に、それらの辺の一方が隣接する三角形の特性点である(構造の単純さ)。2つの隣接するスライスの最も近いノードは、最短の計算された相互距離を有するノードであり、所与のスライス内のノードは、それを次の上位分岐(利用可能な場合)の1つ以上のノードに接続する1つ以上の分岐と、それを次の下位分岐(利用可能な場合)の1つ以上のノードに接続する1つ以上の分岐とを有し得る。原則として、処理ユニットは、直接隣接していないスライスのノード間で分岐を生成しないが、例外は、特定の敷地構成に対して存在し得る。また、いずれの場合も、検討中のスライスの内側縁と外側縁が交差していない場合にのみ、2つのノード間で分岐を生成することができ、処理ユニットは、各分岐生成に単純な幾何学的規則を適用することで、この条件をチェックする。
【0047】
図6~
図9は、これまでに使用された簡略化されたモデルの各スライスにおけるDelaunay三角測量および関連する特性点を示す。
【0048】
グラフが確立されると(またはその構築中に)、処理ユニットは、接続する2つのノードの座標から決定される、分岐の長さに比例する基本の重みをこれらの分岐の各々に割り当てる。
【0049】
好ましい実施形態では、この基本の重みは、ある方向の経路を別の方向の経路よりも有利にするために、基本の重みを減少させ、反対方向に増加させることで、場合によっては、処理ユニットによる最良の経路の探索中にその方向の経路が提案できないほど大きくなるまで、経路方向補正係数によって影響を受け得る(以下参照)。
【0050】
異なる高度に位置するノードを接続する分岐について、基本の重みは、2つのノード間の高度の差によって決定される高度係数によって補正され得る。この補正係数の値は、ヒューリスティックに選択することができ、上方向が正、下方向が負である。このように、高度の変化は下方向に有利であり、上方向に不利である。
【0051】
分岐の重みの動的変動の他の要因は、以下で説明する。
【0052】
経路の探索および更新
ドローンに搭載された処理ユニットは、その敷地上の所望の目的地の座標を入力データとして受信することができ、この目的地はユーザが入力し、利用可能な通信手段によってドローンに通知されるか、または他の処理動作に応じて自動的に決定される。UAVに搭載された処理ユニットは、現在の位置と目的地のデータをもとに、敷地に設置されたときに、各UAVのメモリに読み込まれた上述したように定義されたグラフを頼りに、上記目的地に至る経路を構築し、その経路を辿ることを可能にする制御コマンドを実行する。
【0053】
経路の決定は、2つの部分に分類される。
-第1の部分は、飛行空間全体の全体的な経路を探索することであり、
-第2の部分は、前のステップで見出された経路を辿ることを可能にする軌道を構築することである。
【0054】
目的地がドローンによって受信されると、処理ユニットは、上述のように決定された舗道を走査して、目的地の高度の直下の高度スライス内で、目的地を包含する三角形の敷石を識別する。この探索は、Delaunay三角測量によって決定されるように、舗装のすべての幾何学的特性を一覧にしたテーブルを閲覧することによって実行することができる。
【0055】
そのような敷石がテーブルに見つかった場合、目的地は実際に許可された飛行区域内に含まれている。言い換えれば、許可された飛行区域外の目的地は、工事によって到達することはできない。
【0056】
目的地が検証されると、処理ユニットは、それ自体に既知のタイプのグラフ閲覧プロセスを開始し、閲覧される分岐の重みの合計を最小化することによって、グラフ内の最短経路を見つける。このプロセスは、例えば、A*またはDikjstra(例えば、https://dzone.com/articles/from-dijkstra-to-a-star-a-part-2-the-a-star-a-algoを参照)などの既知のアルゴリズムに基づき得る。
【0057】
図10は、中間点または交差点が、重みの合計が最小化されるグラフの特性点となる破線である、取得された基本経路CHBを示す。
【0058】
この基本経路CHBの主な目的は、複雑な環境において、この重み最小化に関して、禁止されている区域間の最適なルートを決定することである。
【0059】
この基本経路に基づいて、処理ユニットは、基本経路上でいくつかの動作、特に以下の動作を実行することによって、
図11にその一例を示す有効経路CHEを確立する。
-アライメントテストを用いて特定の交差点を排除する(3つの交差点PPn-1、PPn、PPn+1が近似的に同じ線上にある場合、中間交差点PPnは排除される)。
-交差点PPnの両側に位置する交差点PPn-1とPPn+1を結ぶ直線を計算し、この直線が1つ以上の拡張禁止区域と交差するかどうかを判定し、このテストが否の場合に交差点Pnを排除することにより、特定の交差点を排除する。
-重み和還元アプローチを通じていくつかの不要な中間点を除去することによって経路を絞り込む。このプロセスは、例えば、二分法を伴う。3つの交差点PPn-1、PPn、PPn+1で構成される経路の断面を考えた場合、分岐PPn’-PPn+1に関連付けられた重みが分岐PPn-PPn+1に関連付けられた重みよりも低くなるように、点PPnはセグメントPPn-1-PPnの点PPn’で置き換えられ、この点PPn’の探索は二分法で実施される。したがって、分岐の総重みが最小となる有効経路CHEが生成される。
【0060】
これらのステップの終わりに、処理ユニットは、有効経路CHEのデータを使用して、UAVが尊重しなければならない飛行容積または通路を構築する。この容積は、経路CHEの周りの緩和係数を考慮して構築される。
【0061】
この緩和係数は、UAVの最大ウイングスパンから決定され、均一であり、かつ敷地の性質に依存する、または経路CHEの場所、特に飛行禁止区域からの距離(拡張後)に応じて変動する、または均一係数と可変係数の合計のいずれかであり得る係数によって増加する。
【0062】
基本的な実施形態では、必要とされる飛行通路の計算においてこの緩和係数を考慮に入れることは、経路CHEの周りに端から端まで配置された一組の円錐台の計算を伴い、各円錐台の基部の半径は、緩和係数に等しい。飛行容積は、CHEが辿る経路の周りに段階的に構築される。
【0063】
この飛行通路は、経路全体について経路CHEが確立された後に計算され得るか、またはUAVの飛行中に動的に計算され得る。これは、UAVがグラフの分岐の重みの変動後に新しい経路CHEを決定するたびに再計算される。
【0064】
UAVは、周期的に、その実際の現在の位置を、飛行通路の幾何学的データと比較する。この比較は、飛行通路からの偏差(特に強風、一時的なGPS位置の問題などの外的因子による)を検出すると、測定された位置偏差に基づいて自動操縦装置に補正飛行命令が適用される。
【0065】
他の要因は、許可された飛行通路の静的または動的決定、特に、
-UAVの俊敏性係数(翼のタイプ、固定翼の場合の最小速度、最大速度、最大加速度など)、
-搭載されているセンサ(ライダ、レーザなど)の特性、
特に、UAVが動的に検出し、衝突を回避する能力に影響を与えるこれらの要因に関連し得ることに留意されたい。一般に飛行通路が狭いほど、これらの能力は弱い。
【0066】
さらに、飛行通路の寸法が確立されると、UAVは、この通路内で、動的または静的であるかどうかにかかわらず、これらまたは他のパラメータに従って異なる軌道を採用することが予測され得る。したがって、軌道の決定は、可能な限り最短の軌道を選ぶ効果を有する様々なパラメータ、または実行時間を最大限に短縮することを可能にするパラメータ、または障害物から可能な限り最大の距離を残すパラメータの値によって影響され得る。
【0067】
別の特徴によれば、飛行通路からの退出は、UAVにその通路を回復させることを目的とした自動操縦装置の補正措置ではなく、経路と関連する飛行通路の新たな計算を引き起こすことが予測され得る。
【0068】
実際には、目的地データを含むミッション指令がUAVによって受信されると、搭載された処理ユニットが、第1のグローバル経路探索を開始する。次いで、飛行中、UAVと他の機器(地上装置、センサ、他のUAVなど)との間の通信チャネルにより、処理ユニットは、グラフの分岐の重みを更新することができる。
【0069】
同時に、所与の周波数(例えば、1秒に1回)で、または重みが変更されるたびに、UAVの処理ユニットは、その現在の位置と開始時に示される目的地との間で新しい経路探索を実施する。
【0070】
飛行中、UAVが新しい目的地を受信または決定することも可能であり、この場合、その現在の位置と新しい目的地との間の新しい経路が計算され、上記のように更新される。
【0071】
経路が見つかると、飛行通路は、ローカルの軌道プランナーがアクセスできるように計算および記憶される。
【0072】
搭載された処理ユニットが、UAVの1つ以上のバッテリの自律性に関する情報を有する場合、この情報は、経路CHEの重みの合計と比較され、UAVが、適切な誤差の余裕をもって目的地に到達するのに十分な自律性を有するかどうかが判定される。
【0073】
飛行が可能である場合、ローカルの軌道プランナーは、決定された頻度、例えば、毎秒50回、UAVを通路内で移動させるために、自動操縦装置に飛行命令を適用する。上述したように、このプランナーはまた、好ましくは同じ頻度で、車線の離脱の可能性をテストし、自動操縦装置に適切な補正命令を適用する。
【0074】
また、この軌道プランナーは、通路内の最大許可速度を静的または動的に考慮することができることに留意されたい。
【0075】
グラフの分岐の重みの調整
上記の説明では、飛行空間を表すグラフの分岐に関連付けられた基本の重みは、分岐が接続するノード間の距離に比例するように計算される。
【0076】
敷地で飛行する可能性のある各UAVは、基本的な重みを有するこのグラフのデータをそのメモリに含んでおり、すでに見たように、搭載された処理ユニットが所与の目的地に到達するために辿る飛行通路を決定する。
【0077】
同時に、UAVと地上との通信手段、または同じ敷地上を飛行する他のUAVとの通信手段、またはその敷地上の情報源(センサなど)もしくは外部情報源(気象データなど)との通信手段でさえも、UAVが重み値に影響を及ぼす可能性のあるデータを収集することを可能にする。
【0078】
数学的なレベルでは、これらのデータは、スカラー場のタイプまたはベクトル場のタイプであり得る。
【0079】
スカラー場は、例えば、UAVと地上との間の通信ネットワークの品質定格、温度、湿度などの変数に対応する。
【0080】
これらのデータは、配向されていないという意味でスカラーであり、グラフのすべての重みに同じように影響を与える。
【0081】
例えば、特に温度が低いと、バッテリ効率の損失に起因して低温でのUAVの自律性が低下するという事実に対処するため、所与の乗数によって基本の重みを増加させることにつながり得る。
【0082】
一方、風は、ベクトル場として表すことができ、飛行空間の各点または領域は、その向きがその方向を表し、そのノルムがその強度を表すベクトルに関連付けられる。ベクトル場(またはドローンの現在の位置に適用可能なベクトル)を受信すると、スカラー積関数によってグラフの分岐の重みを再計算することが可能になり、分岐はまた、その向きがその方向に対応し、そのノルムが基本の重みを表すベクトルと見なされる。
【0083】
所与の分岐に沿った風ベクトルの値が分岐内の位置に応じて変化する場合、処理ユニットは、分岐の異なる点におけるベクトル積の平均を決定する。
【0084】
重みに影響を与えることができるベクトル場の粒度は、大きく変化し得ることに留意する。例えば、風の場合、接続された風速計もしくは外部の気象情報源からアクセス可能な、敷地全体に単一の風ベクトルを使用することができ、または、敷地の区域に応じて、「局所的な」風をセンサーで測定したか、シミュレーションで求めたかによって、異なる風ベクトルを使用することができる。
【0085】
なお、この計算により得られる分岐の重みの成分は、分岐に対して垂直でない風の力により、一方向の基本の重みを減少させ(経路に対する風)、他方向の基本の重みを増加させる(経路による風)という向きになっている。
【0086】
グラフの分岐の重みを更新するモジュールは、外部制約からの新しいデータが利用可能になるたびに優先度を変更する。エラーの危険を最小限に抑えるため、重み更新操作中の新しい経路計算要求は、更新前の現在のグラフに基づいて行われ、そのコピーがこの目的のために保持される。
【0087】
飛行に与えられた優先順位に従った経路の変更-異なる重みのタイプ
ユーザによって、または自動化された方法でミッションを設定する場合、ミッションデータは、ミッションによって設定された目的地に到達するための優先度のタイプを有利に含むことができる。
【0088】
例えば、以下の4つのタイプの優先順位を提供することができる。
-カバーされる絶対距離の最小化、
-移動時間の最小化、
-エネルギー消費の最小化、
-危険の最小化、(人、商品などへの)危険のタイプに応じた考えられるサブカテゴリ。
【0089】
一般に、所与の移動方向についての分岐の重みの現在値は、上述のように、基本の重み(分岐の長さ)と、1つ以上のスカラー場によって、および/または1つ以上のベクトル場によって行われた様々な補正とを組み合わせることによって得られる。
【0090】
優先度管理は、各分岐に異なる性質または重み値を与える能力を意味する。
【0091】
優先順位が絶対距離の最小化である場合、基本の重み、または例えば、風ベクトルで補正された基本の重みを有する重み付けグラフに対して経路探索が実行される。
【0092】
移動時間の最小化タイプの優先順位を考慮するために、各分岐に割り当てられた距離重み(基本の重み、補正済みか否か)を、この分岐で許容される最大速度に関連する係数で補正することができる。
【0093】
有利に、この補正は、モデル化される敷地のデータに、許可された速度のマッピング(特に、近傍機器または架空機器のタイプ、人に関連する危険などに応じて)を含めることによって実施される。次に、グラフの構造が確立されると、処理ユニットは、速度マップ内のこの分岐の位置に従って、各分岐に最大許可速度情報を割り当てる。基本の重み(分岐の長さ)およびこの最大速度情報から、処理ユニットは、スカラーまたはベクトル場によって補正される可能性のある基本の重みに、許可された速度が高いほど小さくなるか、逆もまた同様である、係数を乗じることによって、最小移動時間の重み(最大許可速度に対して得られるもの)を計算する。
【0094】
ミッションに移動時間を最小限に抑えるというこの優先順位が含まれる場合、最良の経路の探索はもはや距離を表す重みではなく、これらの移動時間の重みに基づく。
【0095】
システムが有利に使用することができる別のマッピングは、異なるレベルの危険を有する区域を画定するマッピングである。この危険マッピングにより、例えば、人員の存在または人員の通行区域、異なる設備の危険性などを考慮することができる。許可された速度のマッピングと同様に、処理ユニットは、分岐が位置する区域の危険評価に従って各分岐の重みを変更することで、最終的には、低危険区域を横断する経路と比較して、高危険区域を横断する経路は選ばない。
【0096】
ミッションの優先順位がエネルギー消費の最小化である場合、考えられるアプローチの1つは、ウェイポイントの密度を決定することである。これに関して、ウェイポイントの数が多いほど、UAVの方向および速度の変化が頻繁になり、これは、エネルギー消費にとって重要な要因である。
【0097】
次いで、経路の決定は、距離または時間での最短経路を探索するのではなく、すべてが閾値未満の時間または距離の重みの和を有する可能な経路のセットを決定し、最小の交差点の数を有する経路を選択することによって達成することができる。
【0098】
最後に、飛行の安全を優先する場合、各分岐には、禁止区域を構成する機器に近接していることに由来する危険係数が割り当てられ得る。近接度が高いほど、危険係数が高くなる。グラフ構造が得られると、この「危険」の重みは、最も近い禁止区域から生成された各分岐の距離を算出し、距離の重み(場合によっては、スカラーまたはベクトル場によって補正された後の基本の重み)に、この距離が短いほど大きくなる乗数係数(禁止区域からの距離が所与の閾値より大きいすべての分岐に対して、通常1に等しい係数)を割り当てることによって決定される。
【0099】
飛行安全の観点からの最良の経路は、危険の重みの合計を最小限に抑える経路である。
【0100】
この優先順位管理をさらに洗練させるために、各変更の重要性をミッション優先順位に適応させるために、基本の重み(スカラーおよび/またはベクトル場によって補正されている場合がある)と前述の速度、エネルギー消費および危険係数を異なる手段で組み合わせることが可能である。
【0101】
例えば、優先順位(例えば、安全性、次に速度、次にエネルギー)の順序を設定し、対応する重み補正係数の影響をそれに応じて変調することが可能である。
【0102】
ここで、グラフの分岐の重みを計算するための例を説明する。
【0103】
この重みを計算するための一般的な式は、
wAB;j=SUMi(i;jGi(A,B))によって与えられ、
式中、
・AおよびBは、禁止区域の内部と交差することなく(必要に応じてその端と接触することなく)直線で接続できるグラフのノードであり、
・jは優先係数であり、
・Gi(A,B)は、重み計算への寄与を表す関数であり、
・Υi;jは、寄与に関連付けられた係数である。
【0104】
特定の例では、重み計算への3つの寄与、すなわち、3つの関数G1、G2、およびG3が考慮され、
・G1(A、B)は、点Aと点Bとの間の距離を表し、
・G2(A、B)は、点Aと点Bとの間のGPS位置決め信号の平均品質を表し、
・G3(A,B)は危険区域の考慮事項を表す。
【0105】
これら3つの関数の数学的定式化は、ここで詳述する必要のない異なるアプローチに対応することができる。
【0106】
次に、2つの優先順位を考える。
・j=1:最短移動距離
・j=2:危険区域の考慮事項
【0107】
システムは、これらの2つの優先順位の各々について、対応するパラメータΥi;jの値を変更することによって、3つの関数G1、G2、G3の分岐重みへの寄与を選択する。
【0108】
したがって、最短移動距離(j=1)のみに優先順位が与えられた上記の場合には、以下を使用することができる。
-Υi=1=1
-Υi=2,3=0
【0109】
危険区域(j=2)の考慮事項のみを優先する場合には、以下を使用することができる。
-Υi=1,2=0
-Υi=3=1
【0110】
当然のことながら、異なる優先順位の考慮事項が組み合わされるように、0および1とは値が異なる係数Υi;jを使用することができる。
【0111】
強制された交通方向による飛行空間の変更
いつでも、ユーザまたは外的因子は、区域、特に2つの禁止された区域の間に通行区域を強制することができ、その場合、一定の交通方向が義務付けられる。
【0112】
この場合、少なくとも部分的にこの区域に拡張するグラフの分岐に関連付けられた重みは、この流れの方向を尊重する方向の分岐に関連付けられた重みをそのまま残し、反対方向の重みを無限または準無限にするように修正される(グラフの数学の観点から見ると、重みに非常に高い値を与える)。
【0113】
ここで、原則として、UAVはその出発区域に戻ることができなければならないことに留意されたい。しかし、強制される飛行方向のトポロジーによっては、一方通行の基準ではこれを許さない可能性がある。一方通行の状況であっても、UAVがその出発点に戻ることができることを確実にするために、それにもかかわらず、禁止された方向へのルートについての高いが無限でない重みの存在は、他の選択肢がないときに、UAVが禁止された方向に一方通行区域を通って移動することを可能にする。
【0114】
UAVの動的特性に応じた飛行計画の変更
UAVが電源投入された瞬間から、利用可能な飛行時間を推定するためのモジュールが起動され、バッテリの充電状態、飛行中の消費電力の最近の測定値、周囲温度などに従って、この飛行時間を決定する。
【0115】
UAVがミッション中であるとき、処理ユニットは、所与の率、例えば、1秒に1回、その現在の位置と、最も近い利用可能な充電ステーション(または他の着陸区域)の位置との間のいわゆる「緊急」経路を計算する。この経路をカバーするのに必要な時間が、上記モジュールによって示された残り時間の見積もりよりも短い限り、UAVはそのミッションを継続する。
【0116】
推定される利用可能な飛行時間が最寄りの充電ステーションに到達するための飛行時間に等しくなると(可能であれば安全マージンの範囲内で)、UAV処理ユニットは、現在そのミッションで移動している経路を現在の位置および最寄りの着陸位置から計算された緊急経路に置き換えてミッションを中止させ、そこに戻って着陸させる。
【0117】
別のアプローチによれば、緊急経路は、ミッション中にUAVによって観測される技術的異常に応答して強制される。したがって、自動操縦装置は、概して、位置決定回路(いわゆる「拡張カルマンフィルタ」のためのEKF回路)の精度、振動レベルなど、ドローンの健全性に関する様々なデータを提供することができる。
【0118】
UAVが電源投入された瞬間から、EKF回路および振動センサ(通常はその慣性ユニットの一部)に接続された異常検出モジュールが作動する。分析されたすべてのタイプのデータについて、このモジュールは受信した値が許容値の範囲内にあるかどうかを推定する。1つの可能な実装態様は、受信したデータのタイプごとに所与の時間ウィンドウにわたって単純平均を計算し、それを格納された許容値の範囲と比較することである。平均値がこの範囲外にある場合、緊急経路は自動的に計算され、読み込まれ、追従される。
【0119】
飛行空間の変更:禁止されている高度、他のUAVの存在
いくつかのUAVが同じ敷地で飛行することができることが分かっているので、この機能に従って、敷地上の飛行中の他のUAVの存在が、経路の確立またはその動的修正において考慮されることが予想される。
【0120】
この機能は、レーザまたはライダなどのUAVを装備することができる衝突防止デバイスに加えて、有利に実装され、その有効性は、障害物の直接的な可視性を意味し、さらに、かなりのデジタル処理リソースを必要とし得る。
【0121】
より正確には、ドローンを移動式飛行禁止区域と見なしてグラフの構造を再計算するのではなく、UAVのレベルで、周辺で飛行中の別のUAVの現在の位置を受信し、この位置の閾値よりも低い距離にあるグラフの分岐を特定し、このように特定された分岐の重みに非常に高い乗数を割り当てて、重みを更新した後に再計算された経路が問題の分岐を避けるようにすることで解決できる。
【0122】
この態様は、UAVのフリートが同じ敷地で動作可能な場合に、飛行安全性を大幅に向上させることを可能にする。
【0123】
アーキテクチャ
図12は、上述した異なる態様の実装を可能にするアーキテクチャを示す。
【0124】
第1の処理ユニット100は、敷地モデルデータおよび関連するマップを受信する。このデータから、飛行禁止区域の拡大を行い、異なる高度での許可された飛行禁止区域を決定し、例えば、各高度でのDelaunay三角測量によって細分化を行い、個々の敷石の座標からグラフの点を生成し、これらの点を、一方では高度に対応する各水平面で、他方では隣接する水平面間で相互接続する。
【0125】
このグラフの各分岐について、その長さは結合する点の座標から計算され、それによって基本の重みを決定する。
【0126】
このグラフのデータは、適合された通信チャネルによって、敷地上を巡回する可能性が高いUAV200a、200b、200cなどの各々に送信され、そこで上記データが格納される。
【0127】
敷地環境が変化するたびに(例えば、飛行禁止区域の出現または消失)、更新されたグラフが決定され、各UAVに送信される。
【0128】
ミッションは、典型的には、処理ユニット100とは別個の、または処理ユニット100の一部である地上ステーション300から、所与のUAV、ここでは200aにミッションデータを送信することによって開始される。
【0129】
このUAVに搭載された処理ユニット210は、典型的には、
-目的地の座標、
-飛行のための1つの優先順位、またはいくつかの順序付けられた優先順位、
-他のミッションパラメータ、特に移動中およびホバリング中の撮影命令などを含むミッションデータを受信する。
【0130】
UAVに搭載された処理ユニット210はまた、ミッションの開始前に、または飛行中を含む周期的に、分岐の基本の重みに影響を及ぼす可能性が高いスカラーおよび/またはベクトルデータを受信する。
【0131】
優先データならびにスカラーデータおよび/またはベクトルデータ、ならびに交通方向に影響を与える任意のデータに基づいて、処理ユニット210は、異なる分岐の有効重みを計算し、その有効重みを有するグラフデータ、UAVの現在の座標(開始点)、および受信された目的地データに基づいてベース経路CHBを決定する。
【0132】
次に、処理ユニット210は、有効経路CHEを決定する。
【0133】
次に、自律性に基づいて、UAVがミッションを実行する能力を測定する。
【0134】
十分な自律性があれば、ミッションを開始することができ、飛行中は、搭載された処理ユニットが、通路の離脱の可能性を監視し、必要な補正措置を自動操縦装置に適用し、グラフの分岐の重みに影響を与えそうな動的データを受信し、必要に応じて経路を再計算し、更新された自律性に応じてミッションの実現可能性を再計算し、現在のミッション経路を緊急経路に置き換える可能性が高い考えられる異常を機内で監視する。
【0135】
当然のことながら、本発明は決して上記の説明に限定されるものではなく、多くの変形が可能である。
【0136】
特に、
-飛行データを収集し、学習プロセスによるアクセスのために組み立てて、制約が以前に遭遇した制約に類似しているときに、計算ではなく経験によって辿る経路を決定することができる。
-ミッションデータには、目的地データだけでなく、特に計画された監視のための必須ウェイポイントデータも含めることができる。
-上記に記載される様々なプロセスは、地上または機内で実施されるかどうかに関わらず、異なる処理アーキテクチャで実施することができ、特に、コンピューティング能力が好適である場合、敷地モデルからのグラフの作成および更新は、UAVの各々の機内で実施され得る。
【国際調査報告】