(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】細胞シート保護液
(51)【国際特許分類】
C12N 1/04 20060101AFI20220901BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220901BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20220901BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20220901BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20220901BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20220901BHJP
C07K 14/765 20060101ALN20220901BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N5/071
C12N5/0775
C12N5/074
C07K14/78
C07K14/62
C07K14/765
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020572836
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2020090383
(87)【国際公開番号】W WO2020259120
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910550572.X
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ ユーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ シュゥァン
(72)【発明者】
【氏名】ジン シン
(72)【発明者】
【氏名】タン ユーチン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヂーシォン
(72)【発明者】
【氏名】チャン デェァファ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BA30
4B065BB08
4B065BB19
4B065BB20
4B065BC02
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA61
4H045CA40
4H045CA50
4H045DA37
4H045DA70
4H045EA20
(57)【要約】
【課題】本開示は、細胞シート保護液に関し、例えば、間葉系幹細胞シート保護液などの幹細胞シート保護液に関する。
【解決手段】本開示は、また、細胞シートの保存及び輸送における細胞シート保護液の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.緩衝塩溶液;
b.細胞外基質成分;
c.還元剤;
d.細胞代謝に必要な物質;及び
e.ホルモン物質を含む、細胞シート保護液。
【請求項2】
前記緩衝塩溶液が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Hanks緩衝液、HEPES緩衝液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)及びMOPS緩衝液から選択される、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項3】
前記細胞外基質成分が、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、及びビトロネクチンから選択される1つ又は複数を含む、請求項1又は2に記載の細胞シート保護液。
【請求項4】
前記還元剤が、ビタミンC、セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、及びグルタチオンから選択される1つ又は複数を含む、請求項1-3のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項5】
前記細胞代謝に必要な物質が、トランスフェリン、ヒト血清アルブミン、プトレシン、エタノールアミン、カルニチン、リノール酸、リノレン酸、及びアミノ酸から選択される1つ又は複数を含む、請求項1-4のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項6】
前記アミノ酸が、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、タウリン、システイン、アルギニン、シスチン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択される1つ又は複数を含む、請求項5に記載の細胞シート保護液。
【請求項7】
前記ホルモン物質が、ヒドロコルチゾン、インスリン、及びプロゲステロンから選択される1つ又は複数を含む、請求項1-6のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項8】
前記緩衝塩溶液がPBSであり、前記細胞外基質成分がゼラチンを含み、前記還元剤がビタミンC及びグルタチオンを含み、前記細胞代謝に必要な物質がトランスフェリン、リノール酸、及びリノレン酸を含み、前記ホルモン物質がインスリンを含む、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項9】
前記緩衝塩溶液がHanks緩衝液であり、前記細胞外基質成分がフィブロネクチンを含み、前記還元剤がビタミンC及びセレン酸ナトリウムを含み、前記細胞代謝に必要な物質がトランスフェリン、プトレシン、ヒト血清アルブミン、及びカルニチンを含み、前記ホルモン物質がインスリン及びプロゲステロンを含む、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項10】
前記緩衝塩溶液がHEPES緩衝液であり、前記細胞外基質成分がビトロネクチンを含み、前記還元剤がピルビン酸ナトリウム、グルタチオン、及びセレン酸ナトリウムを含み、前記細胞代謝に必要な物質がリノール酸、リノレン酸、及びエタノールアミンを含み、前記ホルモン物質がインスリン及びプロゲステロンを含む、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項11】
前記緩衝塩溶液がHEPES緩衝液であり、前記細胞外基質成分がビトロネクチンを含み、前記還元剤がピルビン酸ナトリウム、グルタチオン、及びセレン酸ナトリウムを含み、前記細胞代謝に必要な物質がアラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、及びタウリンを含み、前記ホルモン物質がインスリン及びプロゲステロンを含む、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項12】
前記緩衝塩溶液がMOPS緩衝液であり、前記細胞外基質成分がフィブロネクチンを含み、前記還元剤がグルタチオン及びビタミンCを含み、前記細胞代謝に必要な物質がアラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、及びタウリンを含み、前記ホルモン物質がインスリンを含む、請求項1に記載の細胞シート保護液。
【請求項13】
コラーゲンの濃度が0.5-5mg/Lであり、ゼラチンの濃度が0.5-5mg/Lであり、フィブロネクチンの濃度が5-30mg/Lであり、ラミニンの濃度が2-10mg/Lであり、ビトロネクチンの濃度が5-30mg/Lである、請求項3-12のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項14】
ビタミンCの濃度が100-1000mg/Lであり、セレン酸ナトリウムの濃度が0.01-0.05mg/Lであり、ピルビン酸ナトリウムの濃度が10-100mg/Lであり、グルタチオンの濃度が5-30mg/Lである、請求項4-13のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項15】
トランスフェリンの濃度が5-30mg/Lであり、ヒト血清アルブミンの濃度が1000-5000mg/Lであり、プトレシンの濃度が5-30mg/Lであり、エタノールアミン濃度が0.5-5mg/Lであり、カルニチンの濃度が0.5-5mg/Lであり、リノール酸の濃度が0.5-5mg/Lであり、リノレン酸の濃度が0.5-5mg/Lである、請求項5-14のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項16】
アラニンの濃度が0.025-0.4mMであり、アスパラギン酸の濃度が0.025-0.4mMであり、アスパラギンの濃度が0.025-0.4mMであり、グルタミン酸の濃度が0.025-0.4mMであり、アラニルグルタミンの濃度が0.1-2mMであり、グリシンの濃度が0.025-0.4mMであり、プロリンの濃度が0.025-0.4mMであり、セリンの濃度が0.025-0.4mMであり、タウリンの濃度が0.025-0.4mMであり、システインの濃度が0.1-2mMであり、アルギニンの濃度が0.15-2.4mMであり、シスチンの濃度が0.025-0.4mMであり、ヒスチジンの濃度が0.05-0.8mMであり、イソロイシンの濃度が0.1-1.6mMであり、ロイシンの濃度が0.1-1.6mMであり、リジンの濃度が0.1-1.6mMであり、メチオニンの濃度が0.025-0.4mMであり、フェニルアラニンの濃度が0.05-0.8mMであり、スレオニンの濃度が0.1-1.6mMであり、トリプトファンの濃度が0.1-2mMであり、チロシンの濃度が0.05-0.8mMであり、バリンの濃度が0.1-1.6mMである、請求項6-15のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項17】
ヒドロコルチゾンの濃度が5-30mg/Lであり、インスリンの濃度が5-30mg/Lであり、プロゲステロンの濃度が0.005-0.05mg/Lである、請求項7-16のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項18】
pHが、7.0-7.4である、請求項1-17のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項19】
浸透圧が、240-340mOSM/Lである、請求項1-18のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項20】
血清を含まない、請求項1-19のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項21】
幹細胞シート保護液である、請求項1-20のいずれか一項に記載の細胞シート保護液。
【請求項22】
間葉系幹細胞シート保護液である、請求項21に記載の細胞シート保護液。
【請求項23】
細胞シートの保存における、請求項1-22のいずれか一項に記載の細胞シート保護液の使用。
【請求項24】
細胞シートの輸送における、請求項1-22のいずれか一項に記載の細胞シート保護液の使用。
【請求項25】
a.前記細胞シートを請求項1-22のいずれか一項に記載の細胞シート保護液に保持すること、及び
b.前記細胞シートを保存することを含む、細胞シートを保存する方法。
【請求項26】
a.前記細胞シートを請求項1-22のいずれか一項に記載の細胞シート保護液に保持すること、及び
b.前記細胞シートを輸送することを含む、細胞シートを輸送する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年6月24日に提出された出願番号がCN201910550572.Xであり、発明の名称が「細胞シート保護液」である中国特許出願の優先権を主張する。前記中国特許出願に開示された内容を完全にここに引用して本願の一部として扱う。
【0002】
本開示は、組織工学及び再生医療の分野、特に細胞シート保護液、及び細胞シートの保存及び輸送におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、退行性疾患や外傷による組織や臓器の損傷の発生率(心不全、パーキンソン病、アルツハイマー病など)は年々増加しており、従来の医療法ではこれらの疾患を完全に治療することは困難である。幹細胞には、多能性幹細胞と成体幹細胞があり、さまざまな機能細胞に分化する可能性があり、また、組織や臓器の修復に役立つさまざまなサイトカインを分泌することもでき、損傷した組織や臓器を修復するのに理想的な細胞である。
【0004】
現在、損傷した組織や臓器を修復して病気を治療する幹細胞に関する基礎的及び臨床的研究が数多く行われている。これらの研究では、ほとんどは細胞の直接注射の方法、又は細胞と生物学的材料と組み合わせた移植の方法が使用されているが、どちらの方法にも一定の制限がある。細胞を直接注射すると、多数の幹細胞が失われ、幹細胞療法の効果に影響を与えるだけでなく、肺塞栓症などの副作用も引き起こす。細胞と生物学的材料と組み合わせて同時に移植すると、細胞が失われる問題を解決したが、生物学的材料の体内における分解は様々な程度の炎症を引き起こし、且つ分解過程と分解生成物は局所組織病変を引き起こす可能性がある。
【0005】
細胞シート技術は、幹細胞の移植と応用のための新しい技術を提供する。培養の過程で、幹細胞は細胞外基質によって細胞間及び細胞と培養皿の間に接続を構築する。温度を変更し、温度感受性インテリジェント培養皿を調整して細胞と培養皿との接触状況を変更することにより、酵素消化なしで細胞と細胞外基質を温度感受性培養皿の底から分離し、完全な細胞シートを得ることができる。この方法で得られた細胞シートは、高い細胞密度、均一な厚さ、及び完全な構造を有する。この方法で作製された細胞シートは細胞外基質を失うことがないため、フィブロネクチンなどの細胞外基質成分は、追加の縫合糸や接着剤に頼ることなく、細胞シートを標的組織又は器官の表面に接着させることができる。
【0006】
細胞シートは、実験室で作製されてから病院の患者に使用されるまで、保存及び輸送プロセスを経る必要がある。この過程で、細胞シート保存液が適さないと、細胞シート内の細胞の活性や分泌因子が保証されず、細胞シートの完全性や膜内の細胞の接続が破壊され、細胞シートの臨床応用に深刻な影響を及ぼす。
【0007】
したがって、細胞シートの保存及び輸送中に、細胞の活性及び細胞の分泌因子の量が影響を受けないこと、及び細胞シートの完全性及び膜内の細胞接続が影響を受けないことを保証するための細胞シート輸送保護液の開発が非常に必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、細胞シートの保存及び輸送中に細胞シートにおける細胞の活性及びサイトカイン分泌能力を維持し、細胞シートの完全性及びシートにおける細胞接続を維持し、細胞をアポトーシスから保護することができる、細胞シート保護液を提供する。
【0009】
相応に、一態様では、本開示は、
a.緩衝塩溶液;
b.細胞外基質成分;
c.還元剤;
d.細胞代謝に必要な物質;及び
e.ホルモン物質を含む、細胞シート保護液に関する。
【0010】
ある実施形態では、前記緩衝塩溶液の非限定的な例には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Hanks緩衝液、HEPES緩衝液、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、及びMOPS緩衝液が含まれる。当技術分野で知られている他の緩衝塩溶液、特に細胞及び組織に関連する実験で使用される緩衝塩溶液も使用することができる。
【0011】
細胞外基質成分の非限定的な例には、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、及びビトロネクチンが含まれる。本開示の細胞シート保護液のある実施形態では、前記細胞外基質成分は、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びビトロネクチンから選択される1つ又は複数を含み、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、及びビトロネクチンから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又はすべての5つの細胞外基質成分を含む。
【0012】
還元剤の非限定的な例には、ビタミンC、セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、及びグルタチオンが含まれる。本開示の細胞シート保護液のある実施形態では、前記還元剤は、ビタミンC、セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム及びグルタチオンから選択される1つ又は複数を含み、例えば、ビタミンC、セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、及びグルタチオンから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又はすべての4つの還元剤を含む。
【0013】
細胞代謝に必要な物質の非限定的な例には、トランスフェリン、ヒト血清アルブミン、プトレッシン、エタノールアミン、カルニチン、リノール酸、及びリノレン酸が含まれる。本開示の細胞シート保護液のある実施形態では、前記細胞代謝に必要な物質は、トランスフェリン、ヒト血清アルブミン、プトレッシン、エタノールアミン、カルニチン、リノール酸、リノレン酸及びアミノ酸から選択される1つ又は複数を含み、例えば、トランスフェリン、ヒト血清アルブミン、プトレッシン、エタノールアミン、カルニチン、リノール酸、リノレン酸及びアミノ酸から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、又はすべての8つの細胞代謝に必要な物質を含む。
【0014】
ある実施形態では、前記アミノ酸は、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、タウリン、システイン、アルギニン、シスチン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンから選択される1つ又は複数を含むことができる。
【0015】
ホルモンの非限定的な例には、ヒドロコルチゾン、インスリン、及びプロゲステロンが含まれる。本開示の細胞シート保護液のある実施形態では、前記ホルモン物質は、ヒドロコルチゾン、インスリン及びプロゲステロンから選択される1つ又は複数を含み、例えば、ヒドロコルチゾン、インスリン及びプロゲステロンから選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はすべての3つのホルモン物質を含む。
【0016】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:PBS、Hanks緩衝液又はHEPES緩衝液;
b.細胞外基質成分:ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、又はそれらの任意の組み合わせ;
c.還元剤:ビタミンC、グルタチオン、セレン酸ナトリウム、ピルビン酸ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせ;
d.細胞代謝に必要な物質:トランスフェリン、リノール酸、リノレン酸、プトレッシン、ヒト血清アルブミン、カルニチン、エタノールアミン、又はそれらの任意の組み合わせ;及び
e.ホルモン物質:インスリン、プロゲステロン、又はそれらの組み合わせ。
【0017】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:PBS;
b.細胞外基質成分:ゼラチン;
c.還元剤:ビタミンC及びグルタチオン;
d.細胞代謝に必要な物質:トランスフェリン、リノール酸及びリノレン酸;及び
e.ホルモン物質:インスリン。
【0018】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:Hanks緩衝液;
b.細胞外基質成分:フィブロネクチン;
c.還元剤:ビタミンC及びセレン酸ナトリウム;
d.細胞代謝に必要な物質:トランスフェリン、プトレッシン、ヒト血清アルブミン及びカルニチン;及び
e.ホルモン物質:インスリンとプロゲステロン。
【0019】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:HEPES緩衝液;
b.細胞外基質成分:ビトロネクチン;
c.還元剤:ピルビン酸ナトリウム、グルタチオン及びセレン酸ナトリウム;
d.細胞代謝に必要な物質:リノール酸、リノレン酸、及びエタノールアミン;及び
e.ホルモン物質:インスリンとプロゲステロン。
【0020】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:HEPES緩衝液;
b.細胞外基質成分:ビトロネクチン;
c.還元剤:ピルビン酸ナトリウム、グルタチオン及びセレン酸ナトリウム;
d.細胞代謝に必要な物質:アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、及びタウリン;及び
e.ホルモン物質:インスリンとプロゲステロン。
【0021】
ある実施形態では、本開示の細胞シート保護液は、以下の成分を含む:
a.緩衝塩溶液:MOPS緩衝液;
b.細胞外基質成分:フィブロネクチン;
c.還元剤:グルタチオンとビタミンC;
d.細胞代謝に必要な物質:アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、アラニルグルタミン、グリシン、プロリン、セリン、タウリン;及び
e.ホルモン物質:インスリン。
【0022】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞外基質成分としてのコラーゲンの濃度が、例えば、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0023】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞外基質成分としてのゼラチンの濃度が、例えば、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0024】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞外基質成分としてのフィブロネクチンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0025】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞外基質成分としてのラミニンの濃度が、1-50mg/L、例えば、2-20mg/L、例えば、2-10mg/L、例えば、約5mg/Lであってもよい。
【0026】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞外基質成分としてのビトロネクチンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0027】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、還元剤としてのビタミンCの濃度が、50-2000mg/L、例えば、100-1000mg/L、例えば、200-1000mg/L、例えば、約500mg/Lであってもよい。
【0028】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、還元剤としてのセレン酸ナトリウムの濃度が、0.001-0.1mg/L、例えば、0.005-0.05mg/L、例えば、0.01-0.05mg/L、例えば、約0.02mg/Lであってもよい。
【0029】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、還元剤としてのピルビン酸ナトリウムの濃度が、5-200mg/L、例えば、10-100mg/L、例えば、10-50mg/L、例えば、約25mg/Lであってもよい。
【0030】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、還元剤としてのグルタチオンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0031】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのトランスフェリンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0032】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのヒト血清アルブミンの濃度が、500-5000mg/L、例えば、1000-5000mg/L、例えば、約2000mg/Lであってもよい。
【0033】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのプトレシンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0034】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのエタノールアミンの濃度が、例えば、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0035】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのカルニチンの濃度が、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0036】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのリノール酸の濃度が、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0037】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのリノレン酸の濃度が、0.1-10mg/L、例えば、0.5-5mg/L、例えば、0.5-2mg/L、例えば、約1mg/Lであってもよい。
【0038】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、細胞代謝に必要な物質としてのアラニンの濃度が、0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;アスパラギン酸の濃度が、0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;アスパラギンの濃度が、0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;グルタミン酸の濃度が、0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;アラニルグルタミンの濃度が0.1-2mM、例えば0.2-1mM、例えば、約0.5mMであってもよい;グリシンの濃度が0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;プロリンの濃度が0.025-0.4mM、例えば、0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;セリンの濃度が0.025-0.4mM、例えば0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;タウリンの濃度が0.025-0.4mM、例えば0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;システインの濃度が0.1-2mM、例えば0.2-1mM、例えば、約0.5mMであってもよい;アルギニンの濃度が0.15-2.4mM、例えば0.3-1.2mM、例えば、約0.6mMであってもよい;シスチンの濃度が0.025-0.4mM、例えば0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;ヒスタミン酸の濃度が、0.05-0.8mM、例えば、0.1-0.4mM、例えば、約0.2mMであってもよい;イソロイシンの濃度が、0.1-1.6mM、例えば、0.2-0.8mM、例えば、約0.4mMであってもよい;ロイシンの濃度が、0.1-1.6mM、例えば、0.2-0.8mM、例えば、約0.4mMであってもよい;リジンの濃度が、0.1-1.6mM、例えば、0.2-0.8mM、例えば、約0.4mMであってもよい;メチオニンの濃度が、0.025-0.4mM、例えば0.05-0.2mM、例えば、約0.1mMであってもよい;フェニルアラニンの濃度が0.05-0.8mM、例えば0.1-0.4mM、例えば0.2mMであってもよい;スレオニンの濃度が0.1-1.6mM、例えば、0.2-0.8mM、例えば、約0.4mMであってもよい;トリプトファンの濃度が、0.1-2mM、例えば、0.2-1mM、例えば、約0.5mMであってもよい;チロシンの濃度が、0.05-0.8mM、例えば、0.1-0.4mM、例えば、約0.2mMであってもよい;バリンの濃度が、0.1-1.6mM、例えば、0.2-0.8mM、例えば、約0.4mMであってもよい。
【0039】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、ホルモン物質としてのヒドロコルチゾンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0040】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、ホルモン物質としてのインスリンの濃度が、1-50mg/L、例えば、5-30mg/L、例えば、5-20mg/L、例えば、約10mg/Lであってもよい。
【0041】
本開示の細胞シート保護液の任意の実施形態では、ホルモン物質としてのプロゲステロンの濃度が、0.001-0.1mg/L、例えば、0.005-0.05mg/L、例えば、0.005-0.02mg/L、例えば、約0.01mg/Lであってもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された値及び指定された値から+/-20%以下、好ましくは+/-10%以下、より好ましくは+/-5%以下を含むことを意味し、そのような変更が開示された本発明において行うのに適していればよい。修飾語「約」によって参照される値は、それ自体が具体的かつ好ましくは開示されることを理解されるべきである。
【0043】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、中性に近いか又は生理学的環境に近いpHを有する。例えば、ある実施形態では、前記細胞シート保護液のpHは6.0-8.0である。好ましい実施形態では、前記細胞シート保護液のpHは7.0-7.4である。
【0044】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、細胞と等張又はほぼ等張である。例えば、ある実施形態では、前記細胞シート保護液の浸透圧は、240-340mOSM/Lである。好ましい実施形態では、前記細胞シート保護液の浸透圧は約280mOSM/Lである。
【0045】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、血清をさらに含んでもよく、例えば、前記血清は、胎児ウシ血清、新生ウシ血清、子牛血清及びヒト血清から選択され得る。ある実施形態では、前記細胞シート保護液中の血清含有量は、1-20%、例えば、5-10%である。
【0046】
他の実施形態では、前記細胞シート保護液は血清を含まない。
【0047】
血清を含まない細胞シート保護液は、追加の利点を提供する。これは、細胞シートを患者などの被験者に投与すると、異体や異種に由来の血清は潜在的な免疫リスクがあり、且つ病原性微生物などのキャリアとなる可能性があるためである。自体に由来の血清を使用すると、免疫リスクを回避するが、その供給源は限られており、シート間の品質を制御することは困難であり、細胞シート保護液システムの安定性に不利である。
【0048】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、幹細胞シート保護液である。
【0049】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、間葉系幹細胞シート保護液である。前記間葉系幹細胞は、異なる供給源を有し得、例えば、羊膜液、羊膜、絨毛膜、絨毛膜絨毛、脱落膜、胎盤、臍帯血、ウォートンジェリー、臍帯、成人の骨髄、成人の末梢血及び成人の脂肪組織から選択された組織に由来することができる。
【0050】
ある実施形態では、前記間葉系幹細胞は、臍帯間葉系幹細胞、胎盤間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞、及び骨髄間葉系幹細胞から選択される。
【0051】
ある実施形態では、前記細胞シート保護液は、細胞シート保存のために使用される。他の実施形態では、前記細胞シート保護液は、細胞シートの輸送に使用される。
【0052】
一態様では、本開示は、細胞シートの保存における本開示の細胞シート保護液の使用に関する。
【0053】
別の態様では、本開示は、細胞シートの輸送における本開示の細胞シート保護液の使用に関する。
【0054】
上記の使用のある実施形態では、前記細胞シートは、間葉系幹細胞シートなどの幹細胞シートである。
【0055】
一態様では、本開示は、
a.前記細胞シートを本開示の細胞シート保護液に保持すること、及び
b.前記細胞シートを保存することを含む、細胞シートを保存する方法に関する。
【0056】
ある実施形態では、前記細胞シートは、約4℃又は室温(約25℃)などの0-37℃の温度で保存される。
【0057】
ある実施形態では、前記細胞シートは、約24時間、約48時間、約72時間、約48時間、約5日、約6日、約1週間又は約2週間などの12時間から2週間の期間に保存することができる。
【0058】
別の様態において、本開示は、
a.前記細胞シートを本開示の細胞シート保護液に保持すること、及び
b.前記細胞シートを輸送することを含む、細胞シートを輸送する方法に関する。
【0059】
ある実施形態では、前記細胞シートは、約4℃又は室温(約25℃)などの0-37℃の温度で輸送される。
【0060】
ある実施形態では、前記細胞シートは、約24時間、約48時間、約72時間、約48時間、約5日、約6日、約1週間又は約2週間などの12時間から2週間の期間に輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、本開示の細胞シート保護液(製剤B)を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートの例示的な写真を示している。
【
図2】
図2は、本開示の細胞シート保護液(製剤A、製剤B、及び製剤C)を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートのサイトカインHGF、IL-6及びVEGFの分泌レベルのヒストグラムを示す。
【
図3】
図3は、本開示の細胞シート保護液(製剤D及び製剤E)及び対照緩衝液を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートのサイトカインHGF、IL-6、及びVEGFの分泌レベルのヒストグラムを示す。
【
図4】
図4は、本開示の細胞シート保護液(製剤B)を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートにおけるフィブロネクチン及びインテグリン-β1の蛍光染色の結果を示している。
【
図5】
図5は、本開示の細胞シート保護液(製剤A、製剤B、及び製剤C)を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートにおけるアポトーシスレベル(生細胞のパーセンテージ)の検出結果のヒストグラムを示している。
【
図6】
図6は、本開示の細胞シート保護液(製剤D及び製剤E)及び対照緩衝液を使用した輸送前後の間葉系幹細胞シートにおけるアポトーシスレベル(生細胞のパーセンテージ)の検出結果のヒストグラムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
実施例1.間葉系幹細胞シートの作製
臍帯間葉系幹細胞シートを作製する前に、まず温度感受性培養皿の表面を間葉系幹細胞の付着を促進する基質でコーティングする。使用される基質は、10mg/Lの濃度のフィブロネクチンである。前記温度感受性培養皿を8時間コーティングする。続いて、コーティング溶液を廃棄し、間葉系幹細胞の単一細胞懸濁液をインテリジェント培養皿に加える。細胞を付着させて12時間増殖させた後、温度を25℃に下げる。温度感受性インテリジェント培養皿の底から細胞を層状に分離し、細胞外基質が完全に接続されている細胞シートになる。その中で、シートは、オフホワイトであり、緻密な構造を有し、そして滑らかで平坦な表面を有する。
【0063】
実施例2.細胞シート保護液の作製
以下の製剤A、製剤B、及び製剤Cを有する例示的な細胞シート保護液を作製し、さらなる実験に使用される。
【0064】
製剤A:
緩衝塩溶液:PBS
細胞外基質成分:ゼラチン(1mg/L)
還元剤:ビタミンC(500mg/L);グルタチオン(10mg/L)
細胞代謝に必要な物質:トランスフェリン(10mg/L);リノール酸(1.0mg/L);リノレン酸(1.0mg/L)
ホルモン物質:インスリン(10mg/L)
【0065】
製剤B:
緩衝塩溶液:Hanks緩衝液
細胞外基質成分:フィブロネクチン(10mg/L)
還元剤:ビタミンC(500mg/L);セレン酸ナトリウム(0.02mg/L)
細胞代謝に必要な物質:トランスフェリン(10mg/L);プトレシン(10mg/L);ヒト血清アルブミン(2000mg/L);カルニチン(2mg/L)
ホルモン物質:インスリン(10mg/L);プロゲステロン(0.01mg/L)
【0066】
製剤C:
緩衝塩溶液:HEPES緩衝液
細胞外基質成分:ビトロネクチン(10mg/L)
還元剤:ピルビン酸ナトリウム(25mg/L);グルタチオン(10mg/L);セレン酸ナトリウム(0.02mg/L)
細胞代謝に必要な物質:リノール酸(1mg/L);リノレン酸(1mg/L);エタノールアミン(1mg/L)
ホルモン物質:インスリン(10mg/L);プロゲステロン(0.01mg/L)。
【0067】
製剤D:
緩衝塩溶液:HEPES緩衝液
細胞外基質成分:ビトロネクチン(10mg/L)
還元剤:ピルビン酸ナトリウム(25mg/L);グルタチオン(10mg/L);セレン酸ナトリウム(0.02mg/L)
細胞代謝に必要な物質:アラニン(0.1mM);アスパラギン酸(0.1mM);アスパラギン(0.1mM);グルタミン酸(0.1mM);アラニルグルタミン(0.5mM);グリシン(0.1mM);プロリン(0.1mM);セリン(0.1mM);タウリン(0.1mM)
ホルモン物質:インスリン(10mg/L);プロゲステロン(0.01mg/L)。
【0068】
製剤E:
緩衝塩溶液:MOPS緩衝液
細胞外基質成分:フィブロネクチン(10mg/L)
還元剤:グルタチオン(10mg/L);ビタミンC(500mg/L)
細胞代謝に必要な物質:アラニン(0.1mM);アスパラギン酸(0.1mM);アスパラギン(0.1mM);グルタミン酸(0.1mM);アラニルグルタミン(0.5mM);グリシン(0.1mM);プロリン(0.1mM);セリン(0.1mM);タウリン(0.1mM)
ホルモン物質:インスリン(10mg/L)。
【0069】
実施例3.輸送前後の細胞分泌因子の検出
実施例1に記載のように作製した間葉系幹細胞シートを、それぞれ、製剤A、製剤B、製剤C、製剤D又は製剤Eを有する細胞シート保護液に入れ、4℃で48時間輸送した。製剤Bの細胞シート保護液中での輸送前後の細胞シートの例示的な写真を
図1に示す。当該写真から、細胞シートは輸送の前後で完全性を維持しており、その形態は大きく変化しておらず、滑らかなエッジ、平らな表面を有し、且つ緩みやしわがないという特徴を有することがわかった。
【0070】
間葉系幹細胞の自体組織修復及び免疫関連疾患に対する治療効果は、主に、免疫抑制因子、サイトカイン、増殖因子などの分泌及び発現によって炎症及び組織恒常性を調節することにより達成される。本例では、輸送の前後に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用し、製造元の説明により間葉系幹細胞シートの上清中に分泌されたサイトカインHGF(R&D、カタログ番号DHG00B)、IL-6(R&D、カタログ番号VAL102)及びVEGF(LifeTechnologies、カタログ番号KHG0112)を検出した。具体的な操作:細胞シートを新鮮な培地に入れる。16時間後、上清を回収して15mLの遠心チューブに入れ、400gで5分間遠心分離して、死んだ細胞を除去する。上清をELISA検出に直接供与するか、又は-80℃で凍結してその後のELISA検出に供与する。
【0071】
結果を
図2と
図3に示す。この結果から、間葉系幹細胞に分泌されるサイトカインのレベルは、本開示の細胞シート保護液を用いた輸送の前後で著しく変化しなかったことが分かり、間葉系幹細胞の活性を維持していることを示す。逆に、対照のPBS緩衝液で輸送された間葉系幹細胞シートは、サイトカインHGF、IL-6、及びVEGFを分泌する能力が著しく低下した。
【0072】
実施例4.細胞シート中のコネキシンの検出
上記のように得られた間葉系幹細胞シートを、パラホルムアルデヒド又はホルマリン固定液で固定し、次にパラフィン切片法又は凍結切片法により細胞シートを厚さ4-10μmの組織切片にして染色し、細胞シートにおける細胞外基質が有するタンパク質を観察し、同時にDAPI色素を使用して細胞核を染色し、位置決めを支援する。
【0073】
図4は、製剤Bの細胞シート保護液で輸送する前後に、間葉系幹細胞シートをフルオレセイン標識抗フィブロネクチン及びインテグリン-β1抗体で染色した結果を示している。この結果は、間葉系幹細胞シートが、シート中の間葉系幹細胞をつなぐ細胞外基質として機能するフィブロネクチンとインテグリン-β1を大量に含んでいることを示している。さらに、輸送前後の細胞シート中のコネキシンフィブロネクチン及びインテグリン-β1の量は著しく変化せず、本開示の細胞シート保護液中で輸送された細胞シートがその細胞間接続を十分に維持していることを示している。
【0074】
実施例5.細胞シートにおけるアポトーシスの検出
さらに、輸送前後の細胞シートにおける間葉系幹細胞のアポトーシスを検出した。具体的検出は、AnnexinV-FITC ApoptosisDetectionKit(LifeTechnologies、カタログ番号BMS500FI)を使用し、製造元の説明で行った。
【0075】
検出の結果を
図5と
図6に示す。この結果は、細胞シート中の間葉系幹細胞の活性が、製剤A、製剤B、製剤C、製剤D、又は製剤Eの細胞シート保護液の輸送の前後で著しく変化しないことを示している。逆に、対照のPBS緩衝液で輸送された細胞シート内の生細胞のパーセンテージは大幅に減少した。上記の結果は、本開示の細胞シート保護液が間葉系幹細胞をアポトーシスから保護することを示している。
【0076】
以上に本発明のある実施形態が詳細に記載されているが、これらが単なる例であり、本発明は上記の特定の実施形態に限定されない。当業者は本発明に対してなされた同等の変更及び置換も、本発明の範囲内である。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われたすべての同等の置換及び変更は、本発明の範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】