(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】多接合LEDのトンネル接合、多接合LED、及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/06 20100101AFI20220901BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20220901BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L33/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568384
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2020075867
(87)【国際公開番号】W WO2021163924
(87)【国際公開日】2021-08-26
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520163407
【氏名又は名称】天津三安光電有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、チーホン
(72)【発明者】
【氏名】ポン、イー-レン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、クンフアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ドゥーシャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チア-フン
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA24
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA36
5F241CA57
5F241CA65
5F241CA74
5F241CB28
5F241CB36
(57)【要約】
【解決手段】本発明には、多接合LEDのトンネル接合、多接合LED、及び製作方法が開示され、前記トンネル接合は、高濃度ドーピングのP型のAl
X1Ga
1-X1Asと、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層と、高濃度ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPと、Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層と、を含む。高濃度ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPにより、長い波長の赤外光に対する光吸収効果を効果的に減少し、素子の輝度を向上させると共に、直列接続による電気抵抗を効果的に減らして電圧を減らし、且つAl
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層とAl
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層を加えることにより、界面の品質と結晶の成長品質を効果的に向上させ、AsとPの切替えを効果的に実現し、直列接続による電気抵抗を減らして作業電圧を低くし、光電変換効率を向上させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asと、
Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層と、
高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPと、
Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層と、を含んでいる、ことを特徴とする多接合LEDのトンネル接合。
【請求項2】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1AsのX1は、0~0.8の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項3】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asのドーピング濃度は、1E19cm
-3以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項4】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asは、ドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAl
X1Ga
1-X1Asである、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項5】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asの厚さは、10~100nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項6】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPのYは、0.45~0.7の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項7】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPのドーピング濃度は、1E19cm
-3以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項8】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項9】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあり且つSiドーピング濃度が5E18~2E19cm
-3の範囲内にあるTeとSiとの混合ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項10】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、TeとSiとのドーピング濃度の割合が5:3~2:1にあるTeとSiとの混合ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項9に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項11】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの厚さは、10~100nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項12】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPとの間に介在され、且つ前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの方へ徐々に減少する、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項13】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの方へ直線的に減少する、ことを特徴とする請求項12に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項14】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm
-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAl
X2Ga
1-X2Asのグレーデッド層である、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項15】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項16】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの上にあり、且つ前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPから離れる方へ徐々に増加する、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項17】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPから離れる方へ直線的に増加する、ことを特徴とする請求項16に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項18】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm
-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のAl
X3Ga
1-X3Asのグレーデッド層である、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項19】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載の多接合LEDのトンネル接合。
【請求項20】
第1のLEDIのエピタキシャル構造と、第2のLEDIIのエピタキシャル構造と、を少なくとも含んでいる多接合LED構造であって、
前記第1のLEDIのエピタキシャル構造と前記第2のLEDIIのエピタキシャル構造との間に、請求項1~19のいずれか一項に記載のトンネル接合を具えている、ことを特徴とする多接合LED構造。
【請求項21】
前記第1のLEDIのエピタキシャル構造と前記第2のLEDIIのエピタキシャル構造の放射波長は、760nm~1100nmの範囲内にある赤外線である、ことを特徴とする請求項20に記載の多接合LED構造。
【請求項22】
第1のLEDIのエピタキシャル構造を形成するステップと、
前記第1のLEDIのエピタキシャル構造の上に、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asと、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層と、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPと、Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層と、を含むトンネル接合構造を形成するステップと、
前記トンネル接合構造の上に第2のLEDIIのエピタキシャル構造を形成するステップと、を含む、ことを特徴とする多接合LED構造の製作方法。
【請求項23】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1AsのX1は、0~0.8の範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項24】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asは、ドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAl
X1Ga
1-X1Asである、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項25】
前記高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asの厚さは、10~100nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項26】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPのYは、0.45~0.7の範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項27】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項28】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm
-3の範囲内にあり且つSiドーピング濃度が5E18~2E19cm
-3の範囲内にあるTeとSiとの混合ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項29】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、TeとSiとのドーピング濃度の割合が5:3~2:1にあるTeとSiとの混合ドーピングのN型のGa
YIn
1-YPである、ことを特徴とする請求項28に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項30】
前記高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの厚さは、10~100nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項31】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPとの間に介在され、且つ前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの方へ徐々に減少する、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項32】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの方へ直線的に減少する、ことを特徴とする請求項31に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項33】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm
-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAl
X2Ga
1-X2Asのグレーデッド層である、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項34】
前記Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項35】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの上にあり、且つ前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPから離れる方へ徐々に増加する、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項36】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPから離れる方へ直線的に増加する、ことを特徴とする請求項35に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項37】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm
-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のAl
X3Ga
1-X3Asのグレーデッド層である、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項38】
前記Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【請求項39】
前記第1のLEDIのエピタキシャル構造と前記第2のLEDIIのエピタキシャル構造の放射波長は、760nm~1100nmの範囲内にある赤外線である、ことを特徴とする請求項22に記載の多接合LED構造の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多接合LEDのトンネル接合、多接合LED、及びその製作方法に関し、半導体の光電技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
赤外発光ダイオードとは、赤外線を発光することができるダイオードであり、安全監視、ウェアラブル装置、赤外線通信、赤外線遠隔制御装置、センサー用光源、及び夜間照明などの分野、特にガス検出の分野に適用されている。その中で、安全監視、夜間照明システムは、赤外発光ダイオードの輝度に対する要求が比較的高いため、多接合LEDを直列接続することが一般的な解決方法とされ、即ち、エピタキシャル成長を行っている際に、トンネル接合を用いて各サブ素子を直列接続することであり、また、高いピーク電流密度のトンネル接合のエピタキシャル成長がその重要な技術である。できるだけ高いトンネルピーク電流を得るために、トンネル接合材料の選択、ドーピング源の選択、ドーピング濃度、及び成長技術などを考えなければならない。
【0003】
赤外発光ダイオードは、主にAlGaAsの材料系のものであるため、それ自身が光吸収効果を有し、且つ比較的大きな直列接続の電気抵抗が発生するので、多接合LEDのトンネル接合の材料を選択することは重要である。高効率、低光吸収、低電圧のトンネル接合構造を完成させるために、以下のことを満たさなければならない。1、トンネル接合のp型領域及びn型領域の厚さは、できる限り薄くすること(15nm未満)。2、光吸収を避けるために、トンネル接合のp型領域及びn型領域の材料のバンドギャップは、主ピークの波長よりも大きい必要があること(Eg>hv)。3、トンネル接合のp型領域及びn型領域の濃度は、1E1019cm-3を超える必要があること。
【0004】
多接合LEDの実際応用においては、大型且つ高輝度製品のニーズ(例えば、車両用灯具、舞台照明、虹彩認識などの製品)に伴い、素子の注入電流が大きくなって、トンネル接合のピーク電流密度に対する要求が高くなる。低いバンドギャップのトンネル接合は、光吸収現象が存在するので、素子の発光輝度に対して深刻な影響を与える。このため、トンネル接合の半導体材料のバンドギャップを低くして、高いピーク電流密度を高めるという方法は通用しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する上記の問題によって、本発明は、多接合LEDのトンネル接合、多接合LED、及びその製作方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態によれば、多接合LEDのトンネル接合には、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと、AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層と、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPと、AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層と、が順に含まれている。
【0007】
前記高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1AsのX1は、0~0.8の範囲内にあることが好ましい。
【0008】
前記高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asのドーピング濃度は、1E19cm-3以上であることが好ましい。
【0009】
前記高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asは、ドーピング濃度が1E19~2E20cm-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAlX1Ga1-X1Asであることが好ましい。
【0010】
前記高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asの厚さは、10~100nmの範囲内にあることが好ましい。
【0011】
前記高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPのYは、0.45~0.7の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
前記高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPのドーピング濃度は、1E19cm-3以上であることが好ましい。
【0013】
前記高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のGaYIn1-YPであることが更に好ましい。
【0014】
本発明の他の実施形態として、前記高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm-3の範囲内にあり且つSiドーピング濃度が5E18~2E19cm-3の範囲内にあるTeとSiとの混合ドーピングのN型のGaYIn1-YPであることが更に好ましい。前記TeとSiとのドーピング濃度の割合が5:3~2:1にあることが更に好ましい。
【0015】
前記高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの厚さは、10~100nmの範囲内にあることが好ましい。
【0016】
前記AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPとの間に介在され、且つ前記AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの方へ徐々に減少することが好ましい。前記AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの方へ直線的に減少することが更に好ましい。
【0017】
前記AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAlX2Ga1-X2Asのグレーデッド層であることが好ましい。
【0018】
前記AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にあることが好ましい。
【0019】
前記AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層は、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの上にあり、且つ前記AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPから離れる方へ徐々に増加することが好ましい。前記AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPから離れる方へ直線的に増加することが更に好ましい。
【0020】
前記AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のAlX3Ga1-X3Asのグレーデッド層であることが好ましい。
【0021】
前記AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にあることが好ましい。
【0022】
本発明の第2の形態によれば、多接合LED構造は、第1のLEDIのエピタキシャル構造と、第2のLEDIIのエピタキシャル構造と、を少なくとも含んでいる多接合LED構造であって、前記第1のLEDIのエピタキシャル構造と前記第2のLEDIIのエピタキシャル構造との間に、上記のトンネル接合を具えている。
【0023】
前記第1のLEDIのエピタキシャル構造と前記第2のLEDIIのエピタキシャル構造の放射波長は、760nm~1100nmの範囲内にある赤外線であることが好ましい。
【0024】
同時に、本発明は、第1のLEDIのエピタキシャル構造を形成するステップと、前記第1のLEDIのエピタキシャル構造の上に、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと、AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層と、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPと、AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層と、を含むトンネル接合構造を形成するステップと、前記トンネル接合構造の上に第2のLEDIIのエピタキシャル構造を形成するステップと、を含む多接合LED構造の製作方法を提供する。これで、双接合LED構造を形成し、この方法に従って多接合LED素子の構造にエピタキシャル成長を続いて行なうことができる。各LEDのエピタキシャルのサブ構造には、n型の半導体層と、活性層と、p型の半導体層と、が含まれることは一般的であるが、腐食防止層、オーミックコンタクト層、透明導電層といった機能層を含むこともできる。
【発明の効果】
【0025】
上記によれば、本発明で設計の多接合LEDに用いられるトンネル接合及び多接合LEDは、以下の有利な効果を有する。
(1)高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPを用いて、そのGaYIn1-YPのバンドギャップが比較的に大きいので、不可視光線に対する光吸収効果を効果的に減少して、素子の輝度を向上させることができ、且つ直列接続による電気抵抗を効果的に減らして電圧を減らすことができる。
(2)高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPとの間にAlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層を加えることにより、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPとの間の界面にあるアルミニウムの相対含有量の差が比較的大きいことによる格子不整合が発生する欠陥の問題を効果的に改善することができ、界面の品質と結晶体の成長品質とを効果的に向上させることができると共に、AsとPとの切り替えを効果的に実現し、直列接続による電気抵抗を減らして作業電圧を低くし、ひいては光電変換効率を向上させることもできる。
(3)高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの上にAlGaAs被覆層を続けて成長させる。ここで、高いAl成分が合成している際に、突起及び水点(Ga-rich又はAl-rich)が発生してエピタキシャル層と不整合となることを防ぐために、Alの成分、成長速度、温度の変化が有効にコントロールされるべきである。本発明は、AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層を加えることによって、Al成分の相対含有量が高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPからAlGaAs被覆層の方へ徐々に増加して、AlGaAs被覆層の結晶体の成長品質を改善して、直列接続による電気抵抗を減らして作業電圧を低くすることができる。
(4)N型のGaYIn1-YPは、高い割合のTeと低い割合のSiとの混合ドーピングと合わせて、高濃度にドーピングされるN++GaInPを効果的に成長し、高い発光効率を有する赤外光LED発光デバイスを製作することができる。
【0026】
本発明の更なる特徴及び利点は、後続の明細書において説明し、且つ一部が明細書から明らかになり、或いは本発明を実施することにより理解することができる、本発明の目的及び他の利点は、明細書、特許請求の範囲、及び図面に具体的に指されている構造によって、実現且つ取得され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面は本発明に対する一層の理解のために供するものであり、また明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明の解釈に用いられ得るが、本発明に対して限定するものではない。この他、図面のデータは概要を説明するものであり、比率に応じて描かれたものではない。
【
図1】本発明に実施される多接合LED構造が示される模式図である。
【
図2】
図1に示される多接合LED構造のトンネル接合の領域を拡大する拡大模式図である。
【
図3】第1の実施例の成長基板の上に第1のLEDIのエピタキシャル構造を形成することを説明する模式図である。
【
図4】第1の実施例において第1のLEDIのエピタキシャル構造の上にトンネル接合を形成することを説明する模式図である。
【
図5】第1の実施例においてトンネル接合の上に第2のLEDIIのエピタキシャル構造を形成することを説明する模式図である。
【
図6】第1の実施例の製作方法において、双接合LEDのエピタキシャル構造がボンディング技術を経て導電基板に移転されて得られた構造が示される模式図である。
【
図7】第1の実施例の製作方法において、成長基板が取り除かれた双接合LEDのエピタキシャル構造に、第1の電極を作成し、エッチング技術によりAlGaAs窓層を露出し、AlGaAs窓層に表面粗化を行なうステップにより得られた構造が示される模式図である。
【
図8】第1の実施例の製作方法において、導電基板の上に第2の電極を作成するステップにより得られた構造が示される模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下は特定の具体的な実施例を通して本発明の実施方式を説明する。通常の知識を有する者は、本明細書に開示される内容により本発明の他の利点および効果を簡単に理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施方式を通して実施または応用を施すことができ、本明細書における各項の細目は異なる観点および応用に基づいて、本発明の精神から外れない限り、各種の修飾または変更を実行することができる。
【0029】
なお、本実施例において提供される図示は、模式の方式で基本的な考え方のみ説明する。図中では、本発明に関する部品のみ示しており、実際に実施するときの部品の数、形状、および寸方に従って描くものではない。実際に実施するときに各部品の形態、数量、および比率は、任意の変更にすることができ、且つその部品は構成形態がより複雑であり得る。
【0030】
第1の実施例
図1は本発明に実施される多接合LED構造が示される模式図であり、その多接合LED構造は、第1のLEDIのエピタキシャル構造と、第2のLEDIIのエピタキシャル構造と、を少なくとも含んでおり、且つ、トンネル接合005を介して第1のLEDIのエピタキシャル構造及び第2のLEDIIのエピタキシャル構造を連接している。
図2はトンネル接合005の領域を拡大する模式図を示しており、そのトンネル接合500は、高濃度にドーピングされたP型のAl
X1Ga
1-X1As501と、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層502と、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YP503と、Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層504と、を順に含んでいる。
【0031】
以下、製作方法と合わせて本実施例の多接合LED構造について説明する。
【0032】
まず、MOCVDのシステムにおいて、N型のドーピングの方位(100)の結晶面のずれ角が2°にあるGaAsを採用して成長基板001とし、その厚さが約350μmにあり、ドーピング濃度が1E18cm-3~3E18cm-3の範囲内にあり、且つこの基板の上に第1のLEDIのN型層002と、活性層003と、P型層004と、を成長して、第1のLEDIのエピタキシャル構造とする。その中で、N型層002は、N型のGaAsオーミックコンタクト層と、N型のAlGaAs窓層と、N型のAlGaAs被覆層と、ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層と、を含むことができる。活性層003は、760nm~1100nmの範囲内にある放射を提供し、且つドーピングされていない多重量子井戸構造であることができるが、それに限定されない。一実施例として、多重量子井戸層とエピタキシャル層との積み重ね構造においては、具体的に、その井戸層は、InGaAs、InGaAsP材料であり、厚さが3~15nmの範囲内にあり、且つ障壁層は、AlGaAs、AlGaAsP、GaAsP材料であり、厚さが5~50nmの範囲内にあり、量子井戸の対数が1~25対の範囲内にあるが、対数が3~12対の範囲内にあることが好ましく、井戸層の元素含有量を調整することによって活性層の放射の波長範囲を調整することができる。P型層004は、P型のAlGaAs被覆層と、ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層と、を含むことができる。
【0033】
現在、従来のトンネル接合は、GaAs、AlGaAs材料から作成されたものであり、そのGaAs、AlGaAs材料の自身が光吸収効果を具えているので、不可視光線において双接合LEDの特性を達成することができない。そこで、本発明は、N型のGaInPの高バンドギャップ及び高濃度ドーピングの特性により、第1のLEDI構造と、第2のLEDII構造と、複数のLEDエピタキシャル構造と、を効果的に接合することを提供して、トンネル接合の光吸収作用を低減することができる。
【0034】
次に、LEDIのP型層004の上に、トンネル接合005を形成することができる。
図2に示されるように、まず、Al
X1Ga
1-X1As:C又はIn
zAl
X1G
a1-X1As:C(X1=0~0.8、Z<0.05)を成長して、超薄型高濃度にドーピングされたP型層501とし、その厚さが10nm~100nmの範囲内にあり、ドーピング濃度が1E19cm
-3~2E20cm
-3の範囲内にあることができる。
【0035】
高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1As層において、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPを直接に成長するため、AsとPとを直接に切り替えることで界面の箇所に欠陥が容易に発生するので、界面の品質及び後続のエピタキシャル成長される結晶体の品質に影響を与えて、発光ダイオードの作業電圧に影響を与える。従って、本発明は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asと高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPとの間に、AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層502を導入することによって、AsとPとの効果的な切り替えを実現し、界面の品質及び結晶体の成長品質を効果的に改善し、直列接続による電気抵抗を減らして、作業電圧を低くし、発光ダイオードの発光効率を向上させることができる。また、上記のAlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層502におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの方へ徐々に減少する。上記のAlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1Asから高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの方へ直線的に減少することが更に好ましい。上記のAlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層は、ドーピング濃度が1E19~5E19cm-3の範囲内にあるCドーピングのP型のAlX2Ga1-X2Asのグレーデッド層である。上記のAlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層の厚さは、10~50nmの範囲内にある。
【0036】
次に、AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層502の上に、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YP503を成長する。上記の高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPは、Yが0.45~0,7の範囲内にあり、厚さが10nm~100nmの範囲内にある。上記の高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPは、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm-3の範囲内にあるTeドーピングのN型のGaYIn1-YPであることができる。
【0037】
高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPの上にAlGaAs被覆層を続いて成長する必要がある。ここで、高いAl成分が合成している際に、突起及び水点(Ga-rich又はAl-rich)がエピタキシャル層との不整合となることを防ぐために、Alの成分、成長速度、温度の変化が有効に控えられるべきである。本発明は、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YP503の上にAlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層504を成長することによって、Al成分の相対含有量が高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPからAlGaAs被覆層へ徐々に増加して、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPとAlGaAs被覆層との間の界面にあるアルミニウムの相対含有量の差が比較的大きいことによる格子不整合が発生する欠陥の問題を効果的に改善して、AlGaAs被覆層における結晶体の成長品質を改善して、直列接続による電気抵抗を減らして、作業電圧を低くすることができる。上記のAlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPから離れる方へ直線的に増加することが更に好ましい。上記のAlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層504は、厚さが10~50nmの範囲内にあり、ドーピング濃度が11E19~5E19cm-3の範囲内にある。
【0038】
そして、トンネル接合005の上に、LEDIIのN型層006と活性層007とP型層008とを対称に成長して、第2のLEDIIのエピタキシャル構造とする。その中で、N型層006は、N型のAlGaAs被覆層と、ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層と、を含むことができる。活性層007は、それぞれが量子井戸及び障壁から構成される多重量子井戸構造とするInGaAs/AlGaAsを採用することができ、MQW障壁層の成分を調整することによって、ピーク値の波長が760nm~1100nmの範囲内にある赤外線を放射することができ、活性層における障壁層の周期の数が1~25個の範囲内にあり、活性層の総厚さが20~500nmの範囲内にある。P型層008は、P型のGaPオーミックコンタクト層と、P型のGaInP電流障壁層と、P型のAlGaAs窓層と、P型のAlGaAs被覆層と、ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層と、を含むことができる。
【0039】
以下、850nmの双接合LEDを例として、技術方法と合わせて双接合LEDの構造に対して具体的に説明する。
【0040】
まず、n型のドーピングの方位(100)の結晶面のずれ角が2°にあるGaAsを採用して成長基板001とし、その厚さが約350μmにあり、ドーピング濃度が1E18cm
-3~3E18cm
-3の範囲内にある。この基板の上に、第1のLEDIのエピタキシャル構造を成長する。
図3に示されるように、該第1のLEDIのエピタキシャル構造は、以下の順に積み重なったエピタキシャル層を含んでおり、即ち、SiドーピングのGaAsから構成された緩和層201と、GaInPから構成された腐食防止層202と、SiドーピングのGaAsから構成されたN型のオーミックコンタクト層203と、N型のAlGaAs窓層204と、N型のAlGaAs被覆層205と、ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層206と、In
0.2Ga
0.8As井戸層/Al
0.2Ga
0.8As障壁層の対から構成される活性層003と、ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層401と、CドーピングのAlGaAsから構成されたP型のAlGaAs被覆層402と、を順に含んでいる。
【0041】
本実施例では、有機金属気相成長装置(MOCVD装置)を採用して、直径が100mmにあり且つ厚さが350μmにあるGaAs成長基板の上に第1のLEDIのエピタキシャル構造を成長する。エピタキシャル層を成長する際に、III族元素の構成原料として、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)と、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)と、トリメチルインジウム((CH3)3In)と、を用いる。ドーピングについて、四臭化炭素(Carbon tetrabromide)CBr4と、ジエチルテルル(Diethvl tellurium)Te(C2H5)2と、ジシラン(Si2H6)と、ジエチル亜鉛(Diethylzinc)Zn(C2H5)2と、を用いてドーピングの原料とする。また、V族元素の構成原料として、ホスフィン(PH3)及びアルシン(AsH3)を用いる。
【0042】
GaAsから構成された緩和層201は、基板と半導体のエピタキシャル積層材料との間にある結晶格子の差によりエピタキシャル成長の質が悪くなるという問題を改善することができ、且つその厚さが約0.3μmにある。GaInPから構成された腐食防止層202は、厚さが約100nmにあり、エッチングを止めるための界面を提供することができ、具体的に、例えば半導体のエピタキシャル積層を他の基板の上に転写する場合、ヒ化ガリウム基板を取り除く必要があるため、そのエッチングを止める層はエッチング技術において用いられる溶液がオーミックコンタクト層に対してエッチングを行なうことを防止することができる。
【0043】
SiドーピングのGaAsから構成されたオーミックコンタクト層203は、比較的に高いN型のドーピング濃度を有し、例えば1E18cm-3を超え、且つ2E18cm-3を超えることが好ましい。オーミックコンタクト層203は、厚さが200nm未満にあり、且つ厚さが30~100nmの範囲内にあることが好ましい。N型のAlGaAs窓層204は、電流拡張層であり、そのドーピング濃度が1E18cm-3にあり、厚さが約4μm~7μmの範囲内に設定されている。N型のAlGaAs被覆層205は、N型のドーピング濃度が5E17cm-3~2E18cm-3の範囲内にあり、厚さが約0.5μmにある。ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層206は、厚さが約300nm~1μmの範囲内にある。井戸層は、ドーピングされていない上に厚さが約5.5nmにあるIn0.2Ga0.8Asであり、障壁層は、ドーピングされていない上に厚さが約15nmにあるAl0.2Ga0.8Asである。MQWの井戸及び障壁の対数は、10対であることが好ましい。ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層401は、厚さが300nm~1μmの範囲内にある。CドーピングのAlGaAsから構成されたP型のAlGaAs被覆層402は、キャリア濃度が1E18cm-3にあり、且つ厚さが約0.3μm~0.8μmの範囲内にある。
【0044】
次に、第1のLEDIのエピタキシャル構造の上に、トンネル接合005を成長し、
図4に示されるように、該トンネル接合は、以下の積み重ね構造を順に含んでおり、即ち、高濃度にドーピングされたP型のAl
0.3G
0.7As501と、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層502と、高濃度にドーピングされたN型のGa
0.6In
0.4P503と、Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層504と、を順に含んでいる。まず、第1のLEDIのエピタキシャル構造の上に、Al
0.3Ga
0.7As:Cを成長して、超薄型高濃度にドーピングされたP型層501とし、その厚さが50nmにあり、ドーピング濃度が8E19cm
-3にあることができる。次に、高濃度にドーピングされたP型のAl
0.3G
0.7As層の上に、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層502を成長し、該Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層の厚さは30nmにあり、上記のAl
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたP型のAl
0.3Ga
0.7Asから高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPの方へ直線的に減少する。上記のAl
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層501は、ドーピング濃度が3E19cm
-3にあるCドーピングのP型のAl
X2Ga
1-X2Asのグレーデッド層である。そして、Al
X2Ga
1-X2Asの第1のグレーデッド層の上に、高濃度にドーピングされたN型のGa
0.6In
0.4P503を成長し、上記の高濃度にドーピングされたN型のGa
0.6In
0.4P503の厚さが50nmにある。上記の高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPは、Teドーピング濃度が8E19cm
-3にあるTeドーピングのN型のGa
YIn
1-YPであることができる。最後に、高濃度にドーピングされたN型のGa
0.6In
0.4Pの上に、Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層504を成長する。上記のAl
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層504におけるAlの相対含有量は、高濃度にドーピングされたN型のGa
YIn
1-YPから離れる方へ直線的に増加する。Al
X3Ga
1-X3Asの第2のグレーデッド層504は、厚さが30nmにあり、且つドーピング濃度が3E19cm
-3にあることができる。
【0045】
そして、トンネル接合005の上に、第2のLEDIIのエピタキシャル構造を対称に成長する。
図5に示されるように、第2のLEDIIのエピタキシャル構造は、以下の積み重ねたエピタキシャル層を順に含んでおり、即ち、N型の被覆層601と、ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層602と、In
0.2Ga
0.8As井戸層/Al
0.2Ga
0.8As障壁層の対から構成された活性層007と、ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層801と、CドーピングのAlGaAsから構成されたP型のAlGaAs被覆層802と、P型のAlGaAs窓層803と、P型のGaInP電流障壁層804と、P型のGaPオーミックコンタクト層805と、を順に含んでいる。
【0046】
N型のAlGaAs被覆層601は、N型のドーピング濃度が5E17~2E18cm-3の範囲内にあり、ドーピング濃度が1E18cm-3にあることが好ましく、且つ厚さが約0.5μmにある。ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層602は、厚さが約80nmにある。井戸層は、ドーピングされていなく、且つ厚さが約5.5nmにあるIn0.2Ga0.8Asである。障壁層は、ドーピングされていなく、且つ厚さが約15nmにあるAl0.2Ga0.8Asである。MQWの井戸層及び障壁層の対数は10対であることが好ましい。ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層801は、厚さが約0.2μmにある。CドーピングのAlGaAsから構成されたP型のAlGaAs被覆層802は、キャリア濃度が1.5E18cm-3にあり、且つ厚さが約0.4μmにある。P型のAlGaAs窓層803は、厚さが1μmにあり、且つドーピング濃度が5E17~1E18cm-3の範囲内にある。P型のGaInP電流障壁層804は、厚さが約10nm~30nmの範囲内にあり、且つキャリア濃度が1E18~3E18cm-3の範囲内にある。P型のGaPオーミックコンタクト層805は、厚さが約30~60nmの範囲内にあり、且つキャリア濃度が6E19cm-3にある。
【0047】
そして、チップ技術のプロセスを実行する。まず、
図6に示されるように、P型のGaPオーミックコンタクト層805の一側に反射層009を作成する。反射層の一側にボンディング層(図示せず)を設置し、ボンディング技術を通して双接合LEDのエピタキシャル構造を導電基板010となるようにボンディングを行う。次に、
図7に示されるように、エッチング技術を通して成長基板001をN型のオーミックコンタクト層203が露出するまで取り除く。N型のオーミックコンタクト層の上に第1の電極011を形成して、第1の電極011及びN型のオーミックコンタクト層203の間に良好なオーミックコンタクトを形成する。そして、第1の電極011を覆うマスクフィルムを形成する。第1の電極の周囲にあるオーミックコンタクト層203に対してAlGaAs窓層204が露出するようにエッチングを行ない、そしてAlGaAs窓層204に対してエッチングを行なうことによってパターン化又は粗面化をして、光の抽出効率を高める。最後に、
図8に示されるように、導電基板010の裏面側に第2の電極012を形成し、これによって第1の電極011と第2の電極012との間、及び半導体のエピタキシャル積層同士の間に電流が流れることができる。
【0048】
最後に、顧客のサイズに対するニーズに応じて、エッチングや分割などの技術を通して、ユニット化の双接合LEDの発光ダイオードを取得することができる。
【0049】
第2の実施例
第1の実施例と異なっているのは、本実施例における高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPが、Teドーピング濃度が1E19~2E20cm-3の範囲内にあり且つSiドーピング濃度が5E18~2E19cm-3の範囲内にあるTeとSiの混合ドーピングのN型のGaYIn1-YPであることである。上記のTeとSiとのドーピング濃度の割合が5:3~2:1にあることが更に好ましい。それ以外に、第1の実施例と同様な条件で多接合LEDに対してトンネル接合の作成を行なう。
【0050】
本実施例では、高い割合のTeと低い割合のSiとの混合ドーピングの方式によって、N型のGaYIn1-YPの高濃度のドーピングを実現し、研究の結果高い割合のTeと低い割合のSiとの混合ドーピングがエピタキシャル層の表面の品質を改善することができることがわかっている。
【0051】
42milチップを例とすると、他の構造及び条件が同じである場合、トンネル接合として高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPを採用した場合、トンネル接合として高濃度にドーピングされたN型のAlGaAsを採用した場合と比較すると、350mAのテスト電流においてVf値が0.43V低下し、輝度が7.5%増大することができる。これは、高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YPを採用するからこそ得られたことであり、不可視光線に対する光吸収効果を効果的に減少して、素子の輝度を向上させることができ、且つ直列接続による電気抵抗を効果的に減らして電圧を減らすことができる。同時に、AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層及びAlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層を加えることにより、界面の品質と結晶体の成長品質とを効果的に向上させることができると共に、AsとPとの切り替えを効果的に実現し、直列接続による電気抵抗を減らして作業電圧を低くし、ひいては光電変換効率を向上させることができる。
【0052】
上記した実施例は、本発明の原理およびその効果を例示的に説明するのみであり、本発明を限定するものではない。通常の知識を有する者であれば、本発明の精神および範疇に違反しない限り、上記した実施例に対して修飾または変更を実行することができる。従って、技術分野に属する通常の知識を有する者により、本発明が開示した精神および技術的思想から逸脱しない限りでなされた一切の同等な修飾または変更も、本発明の特許請求の範囲に包含されるべきである。
【符号の説明】
【0053】
001 成長基板
002 LEDIのN型層
003 LEDIの活性層
004 LEDIのP型層
005 トンネル接合
006 LEDIIのN型層
007 LEDIIの活性層
008 LEDIIのP型層
201 緩和層
202 腐食防止層
203 N型のオーミックコンタクト層
204 N型のAlGaAs窓層
205、601 N型のAlGaAs被覆層
206、602 ドーピングされていないAlGaAs下空間隔離層
401、801 ドーピングされていないAlGaAs上空間隔離層
402、802 P型のAlGaAs被覆層
803 P型のAlGaAs窓層
804 P型のGaInP電流障壁層
805 P型のGaPオーミックコンタクト層
501 高濃度にドーピングされたP型のAlX1Ga1-X1As
502 AlX2Ga1-X2Asの第1のグレーデッド層
503 高濃度にドーピングされたN型のGaYIn1-YP
504 AlX3Ga1-X3Asの第2のグレーデッド層
009 反射層
010 導電基板
011 第1の電極
012 第2の電極
【国際調査報告】