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特表2022-539310パナマ病の防除におけるバナナの野生近縁種からの抵抗性遺伝子の特定およびそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】パナマ病の防除におけるバナナの野生近縁種からの抵抗性遺伝子の特定およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20220901BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20220901BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20220901BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220901BHJP
   A01H 6/00 20180101ALI20220901BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C12N15/82 Z
C12N15/29 ZNA
A01H1/00 A
A01H5/00 A
A01H6/00
C07K14/415
C12N15/09 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575024
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 US2020036828
(87)【国際公開番号】W WO2020263561
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】62/866,872
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/912,010
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548674
【氏名又は名称】イージー クロップ サイエンス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メシエ,ウォルター
【テーマコード(参考)】
2B030
4H045
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD05
2B030CA14
2B030CB02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA30
4H045EA05
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Fusarium菌などの真菌病原体、およびそれに由来する植物に対する広範な抵抗性を提供するための組成物および方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸分子であって、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする核酸配列の配列番号14を含み、配列番号14が、1、2、3、または4つの核酸置換によって修飾され、その結果、得られる核酸配列が、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記核酸置換が、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えることを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記核酸置換が、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えることを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
前記核酸置換が、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えることを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
前記核酸置換が、配列番号14の347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記核酸置換が、323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含み、すべての位置が、配列番号14に基づく、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることにつながる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることにつながる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることにつながる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項11】
配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
前記発現が、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
前記発現が、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、請求項12に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
前記発現が、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、請求項13に記載の単離された核酸分子。
【請求項15】
核酸構築物であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含み、前記核酸配列が、前記核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結されている、核酸構築物。
【請求項16】
前記プロモーターが、植物プロモーターである、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項17】
プロモーターが、35Sプロモーターである、請求項15記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記プロモーターが、配列番号31によってコードされる、請求項15に記載の核酸構築物。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、形質転換ベクター。
【請求項20】
植物細胞を形質転換する方法であって、請求項19に記載の形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、前記形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、方法。
【請求項21】
前記植物細胞が、Musa植物細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
単離されたアミノ酸分子であって、植物で産生された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をもたらすタンパク質をコードする配列番号15のアミノ酸配列を含み、配列番号15が、1、2、3、または4つのアミノ酸置換によって修飾され、その結果、植物で生産された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をもたらすタンパク質をコードする、単離されたアミノ酸分子。
【請求項31】
前記アミノ酸置換が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることを含む、請求項30に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項32】
前記アミノ酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることを含む、請求項30に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項33】
前記アミノ酸置換が、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることを含む、請求項30に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項34】
前記アミノ酸置換が、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む、請求項30に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項35】
前記アミノ酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む、請求項30に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項36】
前記産生が、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる、請求項30~35のいずれか一項に記載の単離されたアミノ酸分子。
【請求項37】
前記産生が、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、請求項36に記載の単離されたアミノ酸分子セグメント。
【請求項38】
前記産生が、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、請求項36に記載の単離されたアミノ酸分子セグメント。
【請求項39】
核酸構築物であって、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列が、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および配列番号24からなる群から選択され、前記核酸配列が、前記核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結されている、核酸構築物。
【請求項40】
前記プロモーターが、植物プロモーターである、請求項39に記載の核酸構築物。
【請求項41】
前記プロモーターが、35Sプロモーターである、請求項39に記載の核酸構築物。
【請求項42】
前記プロモーターが、配列番号31によってコードされる、請求項39に記載の核酸構築物。
【請求項43】
請求項39~42のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、形質転換ベクター。
【請求項44】
植物細胞を形質転換する方法であって、請求項43に記載の形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、前記形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、方法。
【請求項45】
前記植物細胞が、Musa植物細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
バナナ育種法であって、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含む第1のMusa植物を、Fusarium oxysporumレース4に感受性のある第2のMusa植物と交配し、Fusarium oxysporumレース4に対するそれらの抵抗性に基づいて、交配の結果として生じる子孫を選択することを含み、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする前記核酸配列が、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および配列番号24からなる群から選択される、バナナ育種法。
【請求項55】
前記交配の前記結果として生じる子孫のクローンを生産することをさらに含み、前記クローンが、Fusarium oxysporumレース4に対するそれらの抵抗性に基づいて選択される、請求項54に記載のバナナ育種法。
【請求項56】
前記第2のMusa植物が、Musa acuminata植物である、請求項54に記載のバナナ育種法。
【請求項57】
Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を示す前記交配の前記子孫が、前記交配において使用された前記第1のMusa植物に存在するFusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする前記核酸配列に基づいて設計される分子マーカーを使用して選択される、請求項54に記載のバナナ育種法。
【請求項58】
Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を得るための方法であって、配列番号14によってコードされる外因性遺伝子の少なくとも1つの部位に二本鎖切断を導入して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を産生することを含む、方法。
【請求項59】
Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞からMusa acuminata植物を生成して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を生産することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
バナナ育種プログラムにおいて、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を使用することをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有する、請求項59に記載のMusa acuminata植物細胞である、請求項20または44に記載の方法。
【請求項62】
前記二本鎖切断が、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、およびCRISPR関連ヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼによって誘導される、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記二本鎖切断が、CRISPR関連ヌクレアーゼによって誘導され、ガイドRNAが提供される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
Fusarium oxysporumレース4に抵抗性のある植物細胞を産生するための方法であって、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする1つ以上の内因性核酸配列に少なくとも1つの遺伝子修飾を導入することを含み、前記遺伝子修飾が、前記植物細胞に、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を付与する、方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR関連ヌクレアーゼによって導入される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、CRISPR関連ヌクレアーゼおよび関連するガイドRNAによって導入される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えること、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および配列番号14の347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えること、からなるリストから選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えること、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えること、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えること、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えること、からなる群から選択されるアミノ酸における変化をもたらす、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記植物細胞が、Musa植物細胞である、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、請求項64~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、請求項71または72に記載の方法。
【請求項75】
前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、請求項75または76に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月26日に出願された米国仮特許出願第62/866,872号および2019年10月7日に出願された米国仮特許出願第62/912,010号の利益を主張し、その各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、農産業の分野、特に病原性抵抗性を有する消費者作物の生産に関する。より具体的には、本開示は、土壌由来のFusarium菌などの真菌病原体に抵抗性のある形質を有する、および/または該真菌病原体によって引き起こされる病害に対する抵抗性を示す植物を生成するための組成物および方法に関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願に関連する配列表は、ハードコピーの代わりにテキスト形式で提供される。本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式コピー(ファイル名:EVOL_009_02WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2020年5月28日、ファイルサイズ:26.9キロバイト)。
【背景技術】
【0004】
バナナは、合計1億トンを超える世界最大の果実作物のうちの1つである。バナナは、先進国で最も人気のある果実であり、世界の大部分にとって重要な食料および収入源であり、多くの熱帯および亜熱帯の国々において食料安全保障を提供している。実際、バナナは、バナナの大部分が地元で生産され消費されている発展途上国において4番目に最も重要な食用作物である。主要な生産国は、インド、中国、エクアドル、ブラジル、およびいくつかのアフリカ諸国である。
【0005】
バナナ生産の約15パーセントは世界市場で取引されており、年間約80億ドルを生み出している。上位輸出国は、エクアドル、フィリピン、コスタリカ、およびコロンビアである。
【0006】
しかしながら、この重要な作物は現在、真菌のFusarium oxysporum f.sp.cubense(Foc)によって引き起こされる、パナマ病としても知られるFusarium立ち枯れ病によって深刻な脅威にさらされている。
【0007】
世界中の商業用バナナ作物の半分、かつ一部の国ではバナナの輸出の最大90%が、クローン繁殖するキャベンディッシュ遺伝子型である単一の栽培品種群からなる。また、商業的に取引されているバナナの大半、および地元で消費されているバナナの多くは、「単作」として知られる特定の地域で単一の作物でクローン栽培されている。単作は、様々な真菌、ウイルス、細菌、および線虫の病害の影響を受けやすいバナナなどの需要の高い作物を大量生産するために農家によって広く実践されてきた。明らかに、現在のパナマ病の流行の拡大は、感受性の高いキャベンディッシュバナナの大規模な単作により、特に破壊的である。
【0008】
キャベンディッシュバナナは、AAAバナナ栽培品種群のキャベンディッシュサブグループに属するいくつかのバナナ栽培品種のうちの1つの果実である。同じ用語は、バナナが育つ植物を表すためにも使用される。それらには、「ドワーフキャベンディッシュ」(1888年)および「グランドナイン(Grand Nain)」(「Chiquitaバナナ」)などの商業的に重要な栽培品種が含まれる。「ウィリアムズ(Williams)」は、キャベンディッシュサブグループの「ジャイアントキャベンディッシュ」タイプの栽培品種である。これは、商業プランテーションで最も広く栽培されている栽培品種のうちの1つである。「Formosana」は、ソマクローナル変異型「GCTCV-218」の別名であり、Fusarium立ち枯れ病TR4に対してある程度の抵抗性を有する。他の代表的な商業栽培品種には、「Masak Hijau」および「Robusta」が含まれる。1950年代以来、これらの栽培品種は、最も国際的に取引されているバナナである。それらは、パナマ病によって打撃を受けた後、グロスミッチェル(Gros Michel)バナナ(一般にケニアではKampalaバナナ、ウガンダではBogoyaとして知られる)に取って代わった。
【0009】
したがって、Fusarium立ち枯れ病またはパナマ病に抵抗性であるバナナが当技術分野で緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、抵抗性を生じさせる基礎となる遺伝的構造を特定することにより、前述のパナマ病の問題を解決する。さらに、本開示は、この抵抗性遺伝的構造を病害にかかりやすいバナナに取り込み、したがってこれらのバナナを病害抵抗性にすることができる方法論を教示する。この遺伝的構造の取り込みは、本明細書で詳しく説明するように、従来の植物育種、トランスジェニック遺伝子操作、次世代植物育種(CRISPR、塩基編集、MASなど)、および他の方法を含む多くの形態をとることができる。
【0011】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする核酸配列の配列番号14を含む単離された核酸分子が本明細書に提供され、配列番号14は、1、2、3、または4つの核酸置換によって修飾され、その結果、得られる核酸配列は、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えることを含む核酸置換を含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えることを含む核酸置換を含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えることを含む核酸置換を含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号14の347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含む核酸置換を含む。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含む核酸置換を含み、すべての位置は、配列番号14に基づく。いくつかの実施形態では、配列番号14の単離された核酸分子は、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、核酸置換は、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることにつながる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号15のアミノ酸配列をコードする配列番号14を含み、核酸置換は、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることにつながる。いくつかの実施形態では、単離された核酸は、配列番号15のアミノ酸配列をコードする配列番号14を含み、核酸置換は、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることにつながる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号15のアミノ酸配列をコードする配列番号14を含み、核酸置換は、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる。いくつかの実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号15のアミノ酸配列をコードする配列番号14を含み、核酸置換は、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる。
【0012】
いくつかの実施形態では、発現は、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる。いくつかの実施形態では、発現は、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる。いくつかの実施形態では、発現は、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる。
【0013】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結される本発明の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、植物プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、35Sプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号31によってコードされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、形質転換ベクターは、本発明の核酸構築物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、植物細胞を形質転換する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、Musa植物細胞である植物細胞を使用する。いくつかの実施形態では、方法は、Musa acuminata植物細胞である植物細胞を使用する。
【0016】
いくつかの実施形態では、形質転換された植物組織は、形質転換された植物細胞から産生される。いくつかの実施形態では、形質転換された小植物は、形質転換された植物組織から生産される。いくつかの実施形態では、クローンは、形質転換された小植物から生産される。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された小植物または形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることを含む。いくつかの実施形態では、成熟した形質転換された植物は、Musa植物であり、成熟した形質転換されたMusa植物は、果実を生産することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、成熟した形質転換されたMusa植物または成熟した形質転換されたMusa植物のクローンは、育種法において使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、植物で産生された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をもたらすタンパク質をコードする配列番号15のアミノ酸配列を含む単離されたアミノ酸分子を提供し、配列番号15は、1、2、3、または4つのアミノ酸置換によって修飾され、その結果、植物で産生された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をもたらすタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質産生は、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる。いくつかの実施形態では、タンパク質産生は、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる。いくつかの実施形態では、タンパク質産生は、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸構築物は、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、配列番号24、および配列番号29からなる群から選択され、核酸配列は、核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは、植物プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、35Sプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号31によってコードされる。いくつかの実施形態では、形質転換ベクターは、本発明の核酸構築物を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、植物細胞を形質転換する方法を提供する。いくつかの実施形態では、植物細胞は、Musa植物細胞である。いくつかの実施形態では、植物細胞は、Musa acuminata植物細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む。いくつかの実施形態では、形質転換された小植物は、形質転換された植物組織から生産される。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された小植物または形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、成熟した形質転換された植物は、Musa植物であり、成熟した形質転換されたMusa植物は、果実を生産することができる。いくつかの実施形態では、方法は、成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、成熟した形質転換されたMusa植物または成熟した形質転換されたMusa植物のクローンは、育種法において使用される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含む第1のMusa植物を、Fusarium oxysporumレース4に感受性である第2のMusa植物と交配し、Fusarium oxysporumに対するそれらの抵抗性に基づいて、交配の結果として生じる子孫を選択することを含む、バナナ育種法を提供し、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする該核酸配列は、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、配列番号24、および配列番号29からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、バナナ育種法は、交配の結果として生じる子孫のクローンを生産することをさらに含み、クローンは、Fusarium oxysporumレース4に対するそれらの抵抗性に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、第1および第2のMusa植物は、異なるMusa種からである。いくつかの実施形態では、第1および第2のMusa植物は、同じMusa種からである。いくつかの実施形態では、第1および/または第2のMusa植物は、Musa acuminata植物である。いくつかの実施形態では、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を示す交配の子孫は、交配において使用された第1のMusa植物に存在するFusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列に基づいて設計される分子マーカーを使用して選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を得るための方法を提供し、方法は、配列番号14によってコードされる内因性遺伝子の少なくとも1つの部位に二本鎖切断を導入して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を産生することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞からMusa acuminata植物を生成して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、バナナ育種プログラムにおいて、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を使用することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞である植物細胞を利用する。いくつかの実施形態では、二本鎖切断は、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、およびCRISPR関連ヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼによって誘導される。いくつかの実施形態では、二本鎖切断は、CRISPR関連ヌクレアーゼによって誘導され、ガイドRNAが提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明は、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする1つ以上の内因性核酸配列に少なくとも1つの遺伝子修飾を導入することを含む、Fusarium oxysporumレース4に抵抗性のある植物細胞を産生するための方法を提供し、遺伝子修飾は、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を植物細胞に付与する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子修飾は、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR関連ヌクレアーゼによって導入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子修飾は、CRISPR関連ヌクレアーゼおよび関連するガイドRNAによって導入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子修飾は、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えること、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および配列番号14の347位に対応するAを T(347A>T)に置き換えること、からなるリストから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの遺伝子修飾は、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えること、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えること、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えること、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えること、からなる群から選択されるアミノ酸の変更をもたらす。いくつかの実施形態では、植物細胞は、Musa植物細胞である。いくつかの実施形態では、植物細胞は、Musa acuminata植物細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、形質転換された小植物または形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、成熟した形質転換された植物は、Musa植物であり、成熟した形質転換されたMusa植物は、果実を生産することができる。いくつかの実施形態では、方法は、成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、育種法において成熟した形質転換されたMusa植物または成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを使用することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】整列させたバナナFusR1コード配列を図示する。開始(initiation)(開始(start))および終止(停止)コドンには下線が引かれている。 Musa種間のFusR1ヌクレオチド塩基置換は太字で示される。交換アミノ酸残基をコードする(すなわち、非同義である)置換は、アスタリスク(*)が付いた太字で示される。サイレント置換は、ドット(・)が付いた太字で示される。最初の96塩基は、成熟タンパク質から切断されるリーダーペプチド(小文字で示される)をコードする。これは、Bowman-Birkタンパク質に一般的であることが知られている(Barbosaら、2007)。発明者は、2つの異なるバイオインフォマティクスツールであるSignalP-5.0(Armenterosら、2019)およびPrediSi(Hillerら、2004)を使用してリーダー配列の範囲を確認し、これらは両方とも同じリーダーペプチドを特定した。次に、バイオインフォマティクスツールDeepLoc-1.0(Armenterosら、2017)を使用して、発明者は、成熟FUSR1タンパク質が細胞質に局在することを確立した(0.9732の尤度)。 大文字で示される塩基は、成熟タンパク質をコードする。 M.balbisiana FusR1配列においてダッシュ(-)で示される塩基の欠損は、他のFusR1配列と比較して、未熟な停止コドン(イタリック体で下線付きの小文字で示される)をもたらす。本文に記載されように、発明者が調べたすべてのM.balbisiana系統からのFusR1 mRNAは、スプライシングされていない(すなわち、発現された)イントロンを有する。図を明確にし、異なるバナナ種からのFusR1コード配列の類似性/違いに焦点を当てるために、イントロン配列は、ここでM.balbisianaから削除されているが、発明者はそれが生じるのを見ていない。したがって、配列番号27は「仮想の」コード配列である。 M.itinerans FusR1配列は、複数の系統(ITC1526、ITC1571、およびPT-BA-00223)から得られ、それらのすべてはFW抵抗性である。「FW抵抗性」とラベル付けされたM.acuminata FusR1配列は、ITC0896(M. a.亜種banksii)およびPT-BA-00281(Pisang Bangkahulu)を含む複数のFW抵抗性系統から得た。「感受性」とラベル付けされたM.acuminata配列は、FW感受性系統ITC0507、ITC0685、PT-BA-00304、PT-BA-00310、およびPT-BA-00315からのものである。これらの系統には、Pisang Madu、Pisang Pipit、およびPisang Rojo Uterなどのバナナ栽培品種からの複数のサンプルが含まれ、これらはすべてFW感受性であると十分に特徴付けられている(Chenら、2019)。本明細書に含まれるM.balbisiana配列は、ITC1016から得た。M.basjooからのFusR1は、FW抵抗性系統(ITC0061およびPD#3064)からのものである。 図1を調べると、予想どおり、FusR1バナナ配列がリーダーペプチドをコードする領域で十分に保存されていることがわかる。しかしながら、成熟したFUSR1タンパク質をコードするFusR1配列は、異常に多数の非同義置換を示す。これは、これらのタンパク質に対する厳しい選択圧の結果であり、これは、これらの遺伝子に見られるKa/Ks比の上昇に反映されている。(以下を参照されたい。)発明者は、M.itineransからFusR1の2つのFW抵抗性対立遺伝子を発見した。これらは極めてわずかに異なり、簡単にするために、M.itineransからの対立遺伝子1(配列番号2)のみが図1に示される。M.itineransからの対立遺伝子2コード配列は、配列番号5として配列表に含まれる。同様に、発明者は、M.acuminataで2つのFusR1FW抵抗性対立遺伝子を発見した。これらは、単一のサイレント塩基置換のみが異なる。この場合も、簡単にするために、図1は、これらの対立遺伝子のうちの1つのみを示す(配列番号9)。図1に示されていない第2の対立遺伝子は、配列番号11として配列表に記録されている。
図2】整列させたバナナFUSR1タンパク質配列を図示する。バナナFUSR1タンパク質配列間で異なるアミノ酸残基には下線が引かれている。最初の32残基は、成熟タンパク質から切断されるリーダーペプチドを構成する。リーダー配列残基は小文字で示され、成熟タンパク質残基は大文字で示される。 機能的な折り畳まれたバナナFUSR1タンパク質は、2つのサブドメインからなる。サブドメイン1は、薄い灰色の陰影で示され、サブドメイン2は、濃い灰色の陰影で示される。他のBowman-Birkタンパク質と同様に、バナナFUSR1構造は、14のジスルフィド結合によって維持されている。これらのジスルフィド結合を形成するシステイン残基は太字で示される。各サブドメインは、イタリック体で示される反応部位を含む。トリプシン(サブドメイン1)およびキモトリプシン(サブドメイン2)に特異的な残基は、アスタリスク(*)で示される。M.acuminataの場合、Foc4感受性FusR1対立遺伝子とFoc-4抵抗性対立遺伝子との間で異なる残基はドット(・)で示され、Foc4感受性を説明するアルギニン残基(番号115)は、ドット(・)の付いた太字で示される。
図3】C2H2遺伝子のヌクレオチド配列に基づいた、いくつかのバナナ種の系統樹を提供する。 ここに示される樹形は、バナナC2H2ヌクレオチド配列の分析から復元された。この形態は、C2H2タンパク質配列の分析から復元された形態と同じである。同じ系図がTOPO6ヌクレオチドおよびタンパク質配列から復元された。ここに示される形態も、参考文献の形態と類似する。 対照的に、FusR1タンパク質配列およびFusR1遺伝子のタンパク質コード領域から復元された形態は異なる形態をもたらし、これは明らかに、Fusariumによる攻撃に起因して適応中にFusR1に課された選択圧の結果であることに留意することが重要である。FusR1の非コード領域は、C2H2およびTOPO6の系統樹と同じ形態を有する。 進化の歴史は、最大節約法を使用して推測された。最も節約的な単一の系図を示す。すべてのサイトで、一致指数は1.000000、保持指数は1.000000、総合指数は1.000000である。配列のランダムな追加(10の複製)によって初期系図を得た、探索レベル0のSubtree-Pruning-Regrafting(SPR)アルゴリズムを使用して、MP系図を得た。この分析には5つのヌクレオチド配列が含まれた。含まれるコドン位置は、第1+第2+第3+非コードであった。サイト被覆が95%未満のすべての位置が削除された。すなわち、5%未満のアラインメントギャップ、欠損データ、および曖昧な塩基が任意の位置で許可された(部分的な欠失オプション)。最終的なデータセットには合計218の位置があった。進化的分析はMEGA Xにおいて実施された(Kumarら、2018)。
図4】FUSR1タンパク質配列に基づいた、いくつかのバナナ種の系統樹を提供する。この系図は、実際の系統関係とは対照的に、Musa acuminataおよびM.basjooを一体化することに留意する。M.acuminataはM.balbisianaに最も近縁関係にあり、M.basjooはこれら2つの種の姉妹分類群である。しかしながら、深刻な正の選択の影響のため、M.acuminataおよびM.basjooのFusR1タンパク質配列は一緒にクラスター化する。(実際、これらのタンパク質配列は同一である。) 進化の歴史は、最大節約法を使用して推測された。長さ= 55の最も節約的な単一の系図を示す。すべてのサイトで、一致指数は0.963636、保持指数は0.875000、総合指数は0.843182である。配列のランダムな追加(10の複製)によって初期系図を得た、探索レベル0のSubtree-Pruning-Regrafting(SPR)アルゴリズムを使用して、MP系図を得た。進化的分析はMEGA Xにおいて実施された。
図5】FW感受性Musa balbisiana系統からのFusR1 mRNA配列のアラインメントを提供する。ここに含まれる配列は、ITC1016、ITC0545、ITC0080、ITC1527、ITC0565、ITC1781、ITC1580、および他のいくつかを含む多くのM.balbisiana系統から得た。 Musa balbisiana系統間のFusR1ヌクレオチド塩基置換はイタリック体である。開始および終止(停止)コドンは小文字で示される。他のM.balbisiana系統(および発明者が分析した他のすべての植物からのFusR1配列)と比較した挿入は太字である。ヌクレオチドの欠失はコロン記号(:)で示される。系統ITC0545およびITC1781からのFusR1の85塩基対の欠失は、M.balbisianaに独特のものである。ITC1781からのFusR1の配列は、ITC0545からの配列と同一であるため、ITC1781は図5に示されていない。同様に、これらのFW感受性M.balbisiana系統に見られる単一の塩基対欠失は、他のどのFusR1配列にも見られなかった。しかしながら、それは、発明者が分析したすべてのM.balbisiana系統に存在する。この単一の塩基対欠失は、FW抵抗性バナナ系統からのFusR1配列と比較して未熟の終止コドンをもたらす。 発明者が調べたすべてのM.balbisiana系統は、ここに示される4つの対立遺伝子型のうちの1つを有した。いくつかの系統は、同一のFusR1対立遺伝子を共有した。したがって、簡単にするために、この図には4つの系統のみが示される。これらの4つのFusR1対立遺伝子はすべて、ヌクレオチド配列が非常に類似する。系統間には転写変異型が存在するが、これらの変異型はすべて、発現された、スプライシングされていないイントロンを有する。すべての系統は、単一の塩基対の塩基対欠失も有する。3つの系統も85塩基対欠失を有し、いくつかは4塩基対挿入を有する。 したがって、これらすべてのFusR1配列は「壊れて」おり、それらすべてが機能しないFusR1タンパク質をコードする。重要なことに、これらすべてのM.balbisiana系統はFW感受性である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、多くの侵入病原体に対する防御応答を誘導することによって、真菌、ウイルス、細菌、および/または線虫の病害の解決策を提供する。本開示は、バナナを含む植物ならびに植物および植物部分において病害抵抗性および/または真菌抵抗性を駆動することができる遺伝材料を特定する方法を提供する。また、本開示は、病害および/または真菌抵抗性の形質を生じさせるために、遺伝材料を感受性のあるバナナ栽培品種に移入する方法を提供する。さらに、本開示は、修飾された病害抵抗性を有する、遺伝子修飾された植物、植物細胞、組織、および種子を生成する新たに特定された遺伝的構成要素および方法を教示する。
【0024】
I.定義
特に明記しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が所属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。以下の用語は、当業者によって十分に理解されていると考えられているが、以下の定義は、現在開示されている主題の説明を容易にするために示される。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等のあらゆる方法および材料が、本開示の実践または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。以下の用語を以下に定義する。これらの定義は図示を目的としたものであり、定義された用語の分野における一般的な意味を制限することを意図したものではない。
【0025】
「a」または「an」という用語は、その実体のうちの1つ以上を指す、つまり、複数の指示対象を指すことができる。同様に、「a」または「an」、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。加えて、不定冠詞「a」または「an」による「要素」への言及は、文脈上、要素が1つだけであることが明確に要求されない限り、要素のうちの2つ以上が存在する可能性を排除しない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、別途の指示がない限り、本開示において、「および」または「または」のいずれかを意味するように使用される。
【0027】
本明細書全体を通して、文脈上別の意味に解釈すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの変形は、記述された要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を含むことを意味するが、任意の他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を除外するものではないことを理解されたい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は同意義として使用される。約/およその有無にかかわらず、本開示で使用される任意の数字は、当業者によって理解される任意の通常の変動を包含することを意味する。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に明記されていない限り、または文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除いて)、言及された参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)の範囲内の値の範囲を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、核酸またはポリペプチドの「少なくとも一部」または「断片」という用語は、そのような配列の最小サイズの特徴を有する部分、または完全長分子を含むそれ以下の、完全長分子の任意のより大きな断片を意味する。本開示のポリヌクレオチドの断片は、遺伝子調節要素の生物学的に活性な部分をコードし得る。遺伝子調節要素の生物学的に活性な部分は、本明細書に記載されるように、遺伝子調節要素を含む本開示のポリヌクレオチドのうちの1つの一部を単離し、活性を評価することによって調製することができる。同様に、ポリペプチドの一部は、完全長ポリペプチドに至るまで、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸などであり得る。使用される部分の長さは、特定の用途に依存する。ハイブリダイゼーションプローブとして有用な核酸の一部は、12ヌクレオチドほど短くてもよい。いくつかの実施形態では、それは20ヌクレオチドである。エピトープとして有用なポリペプチドの一部は、4アミノ酸ほど短くてもよい。完全長ポリペプチドの機能を実行するポリペプチドの一部は、一般に4アミノ酸より長いであろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの断片は、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド断片は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000以上のヌクレオチドまたはアミノ酸を含み得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「コドン最適化」という用語は、DNAまたはRNAのコドン使用頻度が、目的の細胞または生物における該組換え核酸の転写速度を改善するために、目的の細胞または生物の使用頻度に適合されることを意味する。当業者は、標的核酸がコドン縮重によりある位置で修飾され得るが、この修飾は翻訳後もその位置で同じアミノ酸配列をもたらすという事実を十分に認識しており、これは、標的細胞または生物の種特異的コドン使用頻度を考慮に入れるために、コドン最適化によって達成される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「内因性」または「内因性遺伝子」という用語は、宿主細胞ゲノム内で天然に見出される場所に天然に存在する遺伝子を指す。「内因性遺伝子」は、本明細書で使用される「天然遺伝子」と同義である。本明細書に記載される内因性遺伝子は、本開示の方法のうちのいずれかによって変異した天然に存在する遺伝子の対立遺伝子を含み得る、すなわち、内因性遺伝子は、ある時点で従来の植物育種法および/または次世代植物育種法によって修飾された可能性がある。
【0032】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、その天然供給源以外のある供給源に由来する物質を指す。例えば、「外因性タンパク質」または「外因性遺伝子」という用語は、非天然供給源からのタンパク質または遺伝子を指し、それは、生物学的系に人工的に供給されたものである。本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、「異種」という用語と交換可能に使用され、その天然供給源以外のある供給源に由来する物質を指す。
【0033】
「遺伝子操作された宿主細胞」、「組換え宿主細胞」、および「組換え株」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、本開示の方法によって遺伝子操作された宿主細胞を指す。したがって、これらの用語は、遺伝子改変された、修飾された、または操作された宿主細胞(例えば、細菌、酵母細胞、真菌細胞、CHO、ヒト細胞、植物細胞、植物由来の原形質体、カルスなど)を含み、その結果、宿主細胞は、遺伝子型または表現型が由来する天然に存在する宿主細胞と比較して、改変された、修飾された、または異なる遺伝子型および/または表現型(例えば、遺伝子修飾がコード核酸配列に影響を及ぼす場合)を示す。これらの用語は、問題の特定の組換え宿主細胞だけでなく、そのような宿主細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことが理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、その天然供給源または場所以外のある供給源または場所に由来する物質を指す。いくつかの実施形態では、「異種核酸」という用語は、特定の生物に天然に見出されない核酸配列を指す。例えば、「異種プロモーター」という用語は、ある供給源生物から採取され、別の生物で利用されたプロモーターを指し得、そのプロモーターは、天然には見出されない。しかしながら、「異種プロモーター」という用語は、同じ供給源生物内からであるが、該プロモーターが通常は位置しない新規の位置に単に移動されたプロモーターを指す場合もある。
【0035】
異種遺伝子配列は、真核生物発現ベクター、例えば、植物発現ベクターであり得る「発現ベクター」を使用することによって、標的細胞に導入することができる。ベクターを構築するために使用される方法は、当業者に周知であり、様々な刊行物に記載されている。特に、プロモーター、エンハンサー、終止およびポリアデニル化シグナル、選択マーカー、複製起点、およびスプライシングシグナルなどの機能的構成要素の説明を含む、好適なベクターを構築するための技法は、先行技術において概説されている。ベクターには、プラスミドベクター、ファージミド、コスミド、人工/ミニ染色体(例えば、ACE)、またはバキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルス、バクテリオファージなどのウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。真核生物発現ベクターは、典型的には、複製起点および細菌における選択のための抗生物質抵抗性遺伝子などの細菌におけるベクターの増殖を容易にする原核生物配列も含む。ポリヌクレオチドが作動可能に連結され得るクローニング部位を含む様々な真核生物発現ベクターは、当技術分野で周知であり、いくつかは、Stratagene,La Jolla,Calif.、Invitrogen,Carlsbad,Calif.、Promega,Madison,Wis.、またはBD Biosciences Clontech,Palo Alto,Calif.などの企業から市販されている。一実施形態では、発現ベクターは、目的のペプチド/ポリペプチド/タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写および翻訳に必要な調節配列である少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用される「天然に存在する」という用語は、自然界で見出される核酸、ポリペプチド、細胞、または生物を指す。「天然に存在する」という用語は、天然に存在する供給源に由来する遺伝子または配列を指す場合がある。したがって、本開示の目的のために、「非天然に存在する」配列は、既知の天然配列とは異なる配列を有するように合成、変異、操作、編集、またはその他の方法で修飾された配列である。いくつかの実施形態では、修飾は、タンパク質レベル(例えば、アミノ酸置換)であり得る。他の実施形態では、修飾は、DNAレベル(例えば、ヌクレオチド置換)であり得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド変化」または「ヌクレオチド修飾」という用語は、当技術分野でよく理解されているように、例えば、ヌクレオチド置換、欠失、および/または挿入を指す。例えば、そのようなヌクレオチド変化/修飾には、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コードされたタンパク質の特性もしくは活性、またはタンパク質が作製される方法を改変しない改変を含む変異が含まれる。別の例として、そのようなヌクレオチド変化/修飾には、コードされたタンパク質の特性もしくは活性、またはタンパク質が作製される方法を改変する、交換置換、付加、または欠失をもたらす改変を含む変異が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「タンパク質修飾」という用語は、当技術分野でよく理解されているように、例えば、アミノ酸置換、アミノ酸修飾、欠失、および/または挿入を指す。
【0039】
「次世代植物育種」という用語は、今日の育種家が利用できる多くの植物育種ツールおよび方法論を指す。次世代植物育種の重要な際立った特徴は、所与の形質の基礎となる遺伝的原因を推測するために、育種家が観察された表現型多様性に依存することにもはや限定されていないことである。むしろ、次世代植物育種には、分子マーカーおよびマーカー支援選択(MAS)の利用が含まれてもよく、その結果、育種家は、育種集団内のある植物から別の植物への目的の対立遺伝子および遺伝要素の移動を直接観察でき、単に表現型を観察することに限定されない。さらに、次世代植物育種法は、植物集団内に見られる天然の遺伝的多様性を利用することに限定されない。むしろ、次世代植物育種法論を利用する育種家は、目的の表現型の形質をもたらすために、対象を絞った方法で植物の基礎となる遺伝的構造を直接改変/変更/編集する多くの最新の遺伝子操作ツールにアクセスすることができる。複数の態様では、次世代植物育種法論で育種された植物は、得られる最終産物の植物が理論的にどちらの方法でも発育させることができるため、従来の方法で育種された植物と見分けがつかない。特定の態様では、次世代植物育種法論は、任意のサイズの欠失または挿入である遺伝子修飾、1つ以上の塩基対置換である遺伝子修飾、植物の天然遺伝子プール(例えば、目的の植物と交配または育種することができる任意の植物)内からの、または植物の天然の遺伝子プールで生じることが既知の配列に対応するための植物における核酸配列の編集からの核酸配列の導入である遺伝子修飾、および該植物の子孫を含む植物をもたらし得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、一方の機能が他方によって調節されるような、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現を調節することができる場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列と作動可能に連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結され得る。別の例では、本開示の相補的RNA領域は、直接的または間接的のいずれかで、標的mRNAの5’、または標的mRNAの3’、または標的mRNA内で作動可能に連結され得るか、または第1の相補的領域が5’であり、その補体が標的mRNAの3’である。
【0041】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、分子の一次構造を指し、したがって、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNAを含む。この用語には、一本鎖、二本鎖、もしくは多鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいはプリンおよびピリミジン塩基、または他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。それはまた、メチル化および/またはキャップされた核酸などの修飾された核酸、修飾された塩基を含む核酸、骨格修飾などを含む。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖または二本鎖DNAの約5~約100ヌクレオチドのポリヌクレオチドを指す。しかしながら、本開示の目的のために、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドは「オリゴマー」または「オリゴ」としても知られており、遺伝子から単離されるか、または当技術分野で既知の方法によって化学的に合成することができる。「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「ヌクレオチド配列」という用語は、記載されている実施形態に適用可能である場合、一本鎖(センスまたはアンチセンスなど)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0042】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これには、コードされた、および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「組換え構築物」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」、および「組換えDNA構築物」という句は、本明細書で交換可能に使用される。組換え構築物は、核酸断片の人工的な組み合わせ、例えば、自然界では一緒に見出されない調節配列およびコード配列を含む。例えば、キメラ構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来するが自然界で見出されるものとは異なる方法で配置された調節配列およびコード配列を含み得る。このような構築物は、それ自体で使用され得るか、またはベクターと組み合わせて使用され得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知であるように、宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。例えば、プラスミドベクターを使用することができる。当業者は、本開示の単離された核酸断片のうちのいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択、および増殖させるために、ベクター上に存在しなければならない遺伝要素を十分に認識している。当業者はまた、異なる独立した形質転換事象が異なるレベルおよび発現パターンをもたらし(Jones et al.,(1985)EMBO J.4:2411-2418、De Almeida et al.,(1989)Mol.Gen.Genetics 218:78-86)、したがって、所望の発現レベルおよびパターンを示す系列を得るために、複数の事象をスクリーニングする必要があることを認識しているだろう。そのようなスクリーニングは、とりわけ、DNAのサザン分析、mRNA発現のノーザン分析、タンパク質発現のイムノブロッティング分析、または表現型分析によって達成され得る。ベクターは、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体などであり得、自律的に複製するか、または宿主細胞の染色体に組み込まれ得る。ベクターはまた、自律的に複製しない、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内のDNAおよびRNAの両方から構成されるポリヌクレオチド、ポリリジンコンジュゲートされたDNAまたはRNA、ペプチドコンジュゲートされたDNAまたはRNA、リポソームコンジュゲートされたDNAなどであり得る。本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、機能的な最終産物、例えば、mRNAまたはタンパク質(前駆体または成熟)の産生を指す。
【0044】
「従来の植物育種」という用語は、所与の植物に目的の形質を付与する対立遺伝子および遺伝的変異型の供給源として、植物集団内に見られる自然多様性を利用することを指す。従来の育種法は、観察された表現型の多様性に大きく依存する交配手順を利用して、原因となる対立遺伝子の関連性を推測する。つまり、従来の植物育種は、所与の植物の発現された表現型の観察に依存して、基礎となる遺伝的原因を推測する。これらの観察結果は、対立遺伝子の多様性を目的の生殖質に移すための育種手順を伝えるために利用される。さらに、従来の植物育種はまた、所与の生殖質に遺伝的多様性を導入するために使用することができるランダム変異誘発技法を含むと特徴付けられてきた。これらのランダム変異誘発技法は、化学的および/または放射線ベースの変異誘発手順を含み得る。したがって、従来の植物育種の重要な特徴の1つは、遺伝的多様性を導入し、目的の表現型の形質をもたらすために、育種家が、対象を絞った方法で植物の基礎となる遺伝的構造を直接改変/変更/編集する遺伝子操作ツールを利用しないことである。
【0045】
したがって、本明細書で使用される場合、「CRISPR関連エフェクター」は、一本鎖または二本鎖切断をゲノム標的部位に導入する能力を有するか、または点変異、挿入、もしくは欠失を含む標的修飾を目的のゲノム標的部位に導入する能力を有する、CRISPR(クラスター化された規則的に配置された短い回文配列リピート)に関連する任意のヌクレアーゼ、ニッカーゼ、またはリコンビナーゼとして定義され得る。少なくとも1つのCRISPR関連エフェクターは、それ自体で、または分子複合体の一部として他の分子と組み合わせて作用することができる。CRISPR関連エフェクターは、融合分子として、またはgRNAおよび/または標的部位との共有または非共有相互作用のうちの少なくとも1つによって会合する、または会合される個々の分子として存在することができるため、CRISPR関連複合体の構成要素は、物理的に近接している。
【0046】
本明細書で使用される場合、「塩基エディター」は、それが由来するタンパク質と同じ触媒活性を有するタンパク質またはその断片を指し、そのタンパク質または断片は、単独で、または分子複合体(本明細書で塩基編集複合体と呼ばれる)として提供される場合、標的化された塩基修飾を媒介する能力を有する、すなわち、目的の塩基の変換が目的の点変異をもたらし、これは、塩基変換がサイレント変異を引き起こさない場合、標的化された変異をもたらし得るが、むしろ、塩基エディターで変換される位置を含むコドンによってコードされるアミノ酸の変換をもたらす。本開示による少なくとも1つの塩基エディターは、少なくとも1つのCRISPR関連エフェクター、または任意選択で少なくとも1つのCRISPR関連エフェクター複合体の構成要素に一時的または恒久的に連結されている。
【0047】
「Cas9ヌクレアーゼ」および「Cas9」という用語は、本明細書で交換可能に使用され得、Cas9タンパク質またはその断片(Cas9の活性DNA切断ドメインおよび/またはCas9のgRNA結合ドメインを含むタンパク質など)を含むCRISPR(クラスター化された規則的に配置された短い回文配列リピート)に関連するRNAガイドDNAエンドヌクレアーゼ酵素を指す。Cas9は、CRISPR/Casゲノム編集系の構成要素であり、ガイドRNAの誘導下でDNA標的配列を標的とし、切断して、DNA二本鎖切断(DSB)を形成する。
【0048】
「CRISPR RNA」または「crRNA」という用語は、標的DNA配列とのハイブリダイズ、ならびにCRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはCRISPR関連エフェクターの動員に関与するRNA鎖を指す。crRNAは、天然に存在し得るか、またはRNAを産生する任意の既知の方法により合成され得る。
【0049】
「tracrRNA」という用語は、トランスコードされた小さなRNAを指す。TracrRNAは、crRNAと相補的であり、塩基対合して、crRNA/tracrRNAハイブリッドを形成し、CRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはCRISPR関連エフェクターを標的配列に動員することができる。
【0050】
本明細書で使用される「ガイドRNA」または「gRNA」という用語は、CRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはCRISPR関連エフェクターを標的配列に動員することができるRNA配列または配列の組み合わせを指す。典型的には、gRNAは、部分的な補体を介して複合体を形成するcrRNAおよびtracrRNA分子から構成され、crRNAは、ハイブリダイゼーションの標的配列に十分に相補的な配列を含み、CRISPR複合体(すなわち、Cas9-crRNA/tracrRNAハイブリッド)を標的配列に特異的に結合するように指向する。また、crRNAおよびtracrRNAの両方の特徴を備えた単一ガイドRNA(sgRNA)を設計することができる。したがって、本明細書で使用される場合、ガイドRNAは、天然もしくは合成のcrRNA(例えば、Cpf1の場合)、天然もしくは合成のcrRNA/tracrRNAハイブリッド(例えば、Cas9の場合)、または単一ガイドRNA(sgRNA)であり得る。
【0051】
「ガイド配列」または「スペーサー配列」という用語は、標的DNAとのハイブリダイズに関与するcrRNAまたはガイドRNA(gRNA)の部分を指す。
【0052】
「プロトスペーサー」という用語は、crRNAまたはgRNAのガイド配列によって標的化されるDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、プロトスペーサー配列は、CRISPR複合体のcrRNAまたはgRNAガイド(スペーサー)配列とハイブリダイズする。
【0053】
本明細書で使用される場合、「CRISPRランディング部位」という用語は、CRISPR-Cas複合体によって標的化されることが可能なDNA配列を指す。いくつかの実施形態では、CRISPRランディング部位は、CRISPR複合体によって切断されることが可能な、近接して配置されたプロトスペーサー/プロトペーサー隣接モチーフの組み合わせ配列を含む。
【0054】
「CRISPR複合体」、「CRISPRエンドヌクレアーゼ複合体」、「CRISPR Cas複合体」、または「CRISPR-gRNA複合体」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。「CRISPR複合体」は、ガイドRNA(gRNA)と複合体化されたCas9ヌクレアーゼおよび/またはCRISPR関連エフェクターを指す。したがって、「CRISPR複合体」という用語は、CRISPRエンドヌクレアーゼとCRISPRランディング部位で二本鎖切断を誘導することができるガイドRNAとの組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、本開示の「CRISPR複合体」は、標的配列を標的とすることができるが、ヌクレアーゼ活性を失うため、CRISPRランディング部位で二本鎖切断を誘導することができない、触媒活性がないCas9タンパク質とガイドRNAとの組み合わせを指す。他の実施形態では、本開示の「CRISPR複合体」は、Cas9ニッカーゼと野生型Cas酵素によって作成される二本鎖切断の代わりにDNAにgRNA標的化一本鎖切断を導入することができるガイドRNAとの組み合わせを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、CRISPR複合体の文脈における「配列特異的結合を指向する」という用語は、CRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはCRISPR関連エフェクターをCRISPRランディング部位に動員するガイドRNAの能力を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「デアミナーゼ」という用語は、脱アミノ化反応を触媒する酵素を指す。本開示のいくつかの実施形態では、デアミナーゼは、シチジンまたはデオキシシチジンのウラシルまたはデオキシウリジンへの脱アミノ化をそれぞれ触媒するシチジンデアミナーゼを指す。本開示の他の実施形態では、デアミナーゼは、アデニンの脱アミノ化を触媒して、DNAポリメラーゼによってグアニンとして読み取られるヒポキサンチン(そのヌクレオシドイノシンの形態で)を形成するアデノシンデアミナーゼを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「グリコシラーゼ」という用語は、EC番号EC 3.2.2に分類される、塩基除去修復に関与する酵素のファミリーを指す。塩基除去修復は、DNAの損傷した塩基を除去して置き換える機構である。DNAグリコシラーゼは、このプロセスの最初のステップを触媒する。それらは、糖リン酸骨格を無傷のまま残しながら、損傷した窒素塩基を除去し、一般にAP部位と呼ばれる脱プリン塩基/脱ピリミジン塩基部位を作成する。これは、損傷した塩基を二重らせんの外にはじき出し、続いてN-グリコシド結合を切断することによって達成される。本開示のいくつかの実施形態では、デアミナーゼなどとは異なる変異導入傾向をもたらすことを期待して、DNAのN-グリコシド結合の加水分解による塩基除去反応、次いで、細胞の修復プロセスにおける変異導入の誘導が使用される。複数の態様では、シトシン-DNAグリコシラーゼ(CDG)活性またはチミン-DNAグリコシラーゼ(TDG)活性を有する酵素が使用される。複数の態様では、酵母ミトコンドリアウラシル-DNAグリコシラーゼ(UNG1)の変異体が、そのような塩基除去反応を実行する酵素として使用される。2017年11月09日に公開されたNishidaらのUS2017/0321210 Alは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「標的化」という用語は、非標的化アイテムまたは分子を除外するために、あるアイテムまたは分子がある程度の特異性で別のアイテムまたは分子と相互作用するという見込みを指す。例えば、本開示による、第2のポリヌクレオチドを標的とする第1のポリヌクレオチドは、配列特異的な方法で(例えば、ワトソン-クリック塩基対合を介して)第2のポリヌクレオチドとハイブリダイズするように設計されている。いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションの選択された領域は、ハイブリダイゼーションを1つ以上の標的化領域に独特なものにするように設計される。第2のポリヌクレオチドは、その標的配列(ハイブリダイゼーションの領域)が変異している場合、またはそうでなければ第2のポリヌクレオチドから除去/分離されている場合、第1の標的ポリヌクレオチドの標的でなくなる可能性がある。さらに、「標的化」は、「部位特異的」または「部位指向的」と交換可能に使用され得、修飾される目的のゲノム領域の配列に関する情報を使用し、分子ツールの作用機序の情報、例えば、CRISPRヌクレアーゼおよびその変異型を含むヌクレアーゼ、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼもしくはリコンビナーゼ、シチジンデアミナーゼ酵素などの塩基修飾酵素、ヒストン修飾酵素などを含むDNA修飾酵素、DNA結合タンパク質、cr/tracr RNA、ガイドRNAなどにさらに依存する分子生物学の作用を指す。
【0059】
「シード領域」という用語は、標的とのミスマッチの影響を最も受けやすい、crRNAまたはガイドRNAのガイド配列の重要な部分を指す。いくつかの実施形態では、crRNA/gRNAのシード領域における単一のミスマッチは、その結合部位でCRISPR複合体を不活性にすることができる。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼのシード領域は、PAMに隣接するプロトスペーサー標的配列の部分に対応する(ハイブリダイズする)ガイド配列の3’部分の最後の約12ntに沿って位置する。いくつかの実施形態では、Cpf1エンドヌクレアーゼのシード領域は、PAMに隣接するプロトスペーサー標的配列の部分に対応する(ハイブリダイズする)ガイド配列の5’部分の最初の約5ntに沿って位置する。
【0060】
「配列同一性」という用語は、同じであり、同じ相対位置にある2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の塩基またはアミノ酸の比率を指す。そのようなものとして、あるポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、別のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して、ある特定の比率の配列同一性を有する。配列比較の場合、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。「参照配列」という用語は、試験配列が比較される分子を指す。タンパク質に関して配列同一性の比率を使用する場合、同一ではない残基位置は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、したがって、分子の機能特性を変更しない保存的アミノ酸置換によってしばしば異なることが認識されている。配列が保存的置換で異なる場合、置換の保存的性質を補正するために、配列同一性パーセントを上方調整することができる。そのような保守的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。典型的には、これには、完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとして保守的な置換をスコアリングすることが含まれ、それにより、配列同一性の比率が増加する。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換に0のスコアが与えられる場合、保存的置換には0から1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、Meyers and Miller,Computer Applic.Biol.Sci.,4:11-17(1988)のアルゴリズムに従って計算される。
【0061】
「相補的」は、塩基スタッキングおよび特異的水素結合を介して、天然または非天然に存在する塩基またはその類似体を含む2つの配列間の対合の能力を指す。例えば、核酸のある位置にある塩基が、標的の対応する位置にある塩基と水素結合することができる場合、その塩基は、その位置で互いに相補的であると見なされる。核酸は、ユニバーサル塩基、または水素結合に正または負の寄与を提供しない不活性な脱塩基スペーサーを含み得る。塩基対合には、標準的なワトソン-クリック塩基対合および非ワトソン-クリック塩基対合の両方が含まれる場合がある(例えば、ゆらぎ塩基対合およびフーグスティーン塩基対合)。相補的塩基対合の場合、アデノシン型塩基(A)はチミジン型塩基(T)またはウラシル型塩基(U)に相補的であり、シトシン型塩基(C)はグアノシン型塩基(G)に相補的であり、3-ニトロピロールまたは5-ニトロインドールなどのユニバーサル塩基は、あらゆるA、C、U、またはTにハイブリダイズすることができ、相補的であると見なされることが理解される。Nichols et al.,Nature,1994;369:492-493およびLoakes et al.,Nucleic Acids Res.,1994;22:4039-4043。イノシン(I)も当技術分野ではユニバーサル塩基であると見なされており、あらゆるA、C、U、またはTに相補的であると見なされる。Watkins and Santa Lucia,Nucl.Acids Research,2005;33(19):6258-6267を参照されたい。
【0062】
本明細書で言及される場合、「相補的核酸配列」は、温度および溶液のイオン強度の適切なインビトロおよび/またはインビボ条件下で、配列特異的な逆平行様式で別の核酸に非共有結合的に結合することを可能にするヌクレオチドの配列を含む核酸配列である(すなわち、核酸は、相補的核酸に特異的に結合する)。
【0063】
配列同一性パーセントおよび相補性パーセントの比較および決定のための配列アラインメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Needleman and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman,(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装により(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、手動アラインメントおよび目視検査により(例えば、Brent et al.,(2003)Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムを含む当技術分野で既知のアルゴリズムの使用により(それぞれ、Altschul et al.,(1977)Nuc.Acids Res.25:3389-3402およびAltschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410に記載されている)実施することができる。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に入手可能である。いくつかのアラインメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd,Oxford,U.K.)、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)、およびAlignX(Vector NTI,Invitrogen,Carlsbad,CA)である。別のアラインメントプログラムは、デフォルトのパラメータを使用するSequencher(Gene Codes,Ann Arbor,Michigan)、およびMUSCLE(Multiple Sequence Comparison by Log-Expection、パブリックドメインとしてライセンスされているコンピュータソフトウェア)である。
【0064】
本明細書において、「ハイブリダイズする」という用語は、二本鎖核酸分子を形成するための、相補的ヌクレオチド塩基間の対合(例えば、アデニン(A)は、DNA分子中のチミン(T)およびRNA分子中のウラシル(U)と塩基対を形成し、グアニン(G)は、DNAおよびRNA分子の両方のシトシン(C)と塩基対を形成する)を指す。(例えば、Wahl and Berger(1987)Methods Enzymol.152:399、Kimmel,(1987)Methods Enzymol.152:507を参照されたい)。加えて、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーションに関して、グアニン(G)塩基対がウラシル(U)と対合することも当技術分野で既知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNAのコドンとのtRNAアンチコドン塩基対合の文脈における遺伝暗号の縮重(すなわち、冗長性)に部分的に関与している。本開示の文脈において、ガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であると見なされ、逆もまた同様である。そのため、G/U塩基対を所与のヌクレオチド位置でガイドRNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)にできる場合、その位置は非相補的であるとは見なされず、代わりに相補的であると見なされる。ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸の配列に対して100%相補的である必要はないことが当技術分野で理解されている。さらに、ポリヌクレオチドは、介在または隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)に関与しないように、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズし得る。ポリヌクレオチドは、それらが標的とされる標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の配列相補性を含み得る。
【0065】
「修飾された」という用語は、対応する非修飾物質または化合物と比較して、改変または変更された物質または化合物(例えば、細胞、ポリヌクレオチド配列、および/またはポリペプチド配列)を指す。
【0066】
「単離された」とは、その天然状態で見られるときに、通常それを付随する成分を全く含まないから様々な程度まで含む物質を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「遺伝子編集された植物、部分、または細胞」という用語は、遺伝子編集系によって編集される1つ以上の内因性遺伝子を含む植物、部分、または細胞を指す。本開示の遺伝子編集系は、標的要素および/または編集要素を含む。標的要素は、標的ゲノム配列を認識することができる。編集要素は、例えば、ゲノム配列中の1つ以上のヌクレオチドの置換もしくは挿入、ゲノム配列中の1つ以上のヌクレオチドの欠失、調節配列を含むようにゲノム配列を改変すること、セーフハーバーゲノム部位もしくはゲノム内の他の特定の位置での導入遺伝子の挿入、またはそれらの任意の組み合わせによって、標的ゲノム配列を修飾することができる。標的要素および編集要素は、同じ核酸分子または異なる核酸分子上にあり得る。いくつかの実施形態では、編集要素は、CRISPR関連エフェクタータンパク質に直接的または間接的に融合されるシトシン塩基エディター(CBE)および/またはアデニン塩基エディター(ABE)などの塩基エディターを使用して単一ヌクレオチドを置換することによって正確なゲノム編集が可能である。
【0068】
「植物」という用語は、植物全体を指す。「植物部分」という用語は、植物器官、植物組織、根、茎、芽、台木、若枝、托葉、花弁、葉、花、胚珠、花粉、苞葉、葉柄、節間、樹皮、軟毛、分げつ、根茎、葉状体、葉身、雄しべ、果実、種子、腫瘍組織、および植物細胞(例えば、単一細胞、原形質体、胚、およびカルス組織)を含むが、これらに限定されない分化および未分化組織を含む。植物細胞には、種子、浮遊培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、芽、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子からの細胞が含まれるが、これらに限定されない。植物組織は、植物または植物器官、組織または細胞培養物にあり得る。
【0069】
植物について論じるときに本明細書で使用される場合、「胚珠」という用語は雌の配偶体を指し、「花粉」という用語は雄の配偶体を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「植物組織」という用語は、植物の任意の部分を指す。植物器官の例としては、葉、茎、根、塊茎、種子、枝、軟毛、根粒、葉腋、花、花粉、雄しべ、雌しべ、花弁、花柄、柄、柱頭、花柱、苞葉、果実、幹、心皮、萼片、葯、胚珠、小花柄、針葉、球果、根茎、走根、芽、果皮、内胚乳、胎座、液果、雄しべ、および葉鞘が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で使用される場合、「表現型」という用語は、その個体の遺伝子構造(すなわち、遺伝子型)と環境との間の相互作用から生じる、個々の細胞、細胞培養物、生物(例えば、植物)、または生物群の観察可能な特徴を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」または「トランスジェニック」という用語は、ある生物のゲノムから採取されるか、または合成的に産生され、次いで目的の宿主細胞または生物または組織に導入され、その後、「安定した」形質転換またはトランスフェクションアプローチによって宿主のゲノムに組み込まれる、少なくとも1つの核酸配列を指す。対照的に、「一過性」形質転換またはトランスフェクションまたは導入という用語は、少なくとも1つの核酸(DNA、RNA、一本鎖もしくは二本鎖、またはそれらの混合物)および/または少なくとも1つのアミノ酸配列を含み、任意選択で、細胞質、核、ミトコンドリア、空胞、葉緑体を含む小器官を含むがこれらに限定されない細胞の目的の少なくとも1つの区画、または膜への移入を達成するための、好適な化学的または生物学的薬剤を含む分子ツールを導入し、安定した組み込みまたは取り込みを達成せずに導入された少なくとも1つの分子の転写および/または翻訳および/または会合および/または活性をもたらし、したがって、細胞のゲノムに導入されたそれぞれの少なくとも1つの分子を受け継ぐ方法を指す。「導入遺伝子を含まない」という用語は、導入遺伝子が、目的の宿主細胞または組織または生物のゲノムに存在しないか、または見出されない状態を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「組織培養」という用語は、同じもしくは異なる型の単離された細胞、または植物の一部に組織化されたそのような細胞の集合を含む組成物を示す。組織培養物の例示的な種類は、植物または植物の一部(胚、花粉、花、種子、葉、茎、根、根端、葯、雌しべ、分裂組織細胞、腋芽、子房、種皮、内胚乳、胚軸、子葉など)において無傷である組織培養物を生成することができる、原形質体、カルス、植物塊、および植物細胞である。「植物器官」という用語は、植物の形態学的および機能的に異なる部分を構成する植物組織または組織群を指す。「子孫」は、植物の任意のその後の世代を含む。
【0074】
分子および細胞生化学の一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley & Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds., Academic Press 1999)、Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、およびCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)などの標準的な教科書に見出すことができ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「AGAMOUSクレード転写因子」または「AGクレード転写因子」という用語は、MIKC型MADSボックス遺伝子のAGAMOUS(AG)サブファミリーのメンバーである。「MIKC型」タンパク質は、MADSドメイン転写因子のクラスを表し、独特のドメイン構造:(1)「M」-高度に保存されたDNA結合MADSドメイン、(2)「I」-介在ドメイン、(3)「K」-ケラチン様Kドメイン、および(4)「C」-C末端ドメインによって定義される。いくつかの実施形態では、「AGAMOUSクレード転写因子」または「AGクレード転写因子」は、N末端領域をさらに含む。さらなる実施形態では、「AGAMOUSクレード転写因子」または「AGクレード転写因子」は、本開示の植物におけるAG、SHP1、SHP2、およびSTK遺伝子を含み、それらの各々は、MドメインにNNモチーフ、KドメインにYQQモチーフ、および/またはCドメインにR/Q(RまたはQ)を有する。
【0076】
「生物学的に活性な部分」とは、完全長の親ペプチドまたはポリペプチドの一部を意味し、その部分は親分子の活性を保持する。例えば、本開示のポリペプチドの生物学的に活性な部分は、病害抵抗性、特にFusariumなどの真菌病原体に対する抵抗性を付与する能力を保持する。本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な部分」という用語は、親分子の活性を有する、例えば、少なくとも約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、400、500、600、700、800、900、または1000の連続したアミノ酸の欠失変異体およびペプチドを含む。この種類の部分は、標準的な組換え核酸技法の適用を通じて得られるか、または従来の液相または固相合成技法を使用して合成され得る。例えば、Nicholsonによって編集され、Blackwell Scientific Publicationsによって出版された「Synthetic Vaccines」と題された刊行物に含まれる、Atherton and Shephardによる「Peptide Synthesis」と題された第9章に記載されるような溶液合成または固相合成を参照することができる。代替的に、ペプチドは、本開示のペプチドまたはポリペプチドを、endoLys-C、endoArg-C、endoGlu-C、およびstaphylococcus V8-プロテアーゼなどのプロテイナーゼで消化することによって産生することができる。消化された断片は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技法によって精製され得る。組換え核酸技法を使用して、そのような部分を産生することもできる。
【0077】
「対応する」または「対応すること」とは、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部と実質的に同一または相補的であるヌクレオチド配列を有する、または(b)ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味する。この句はまた、その範囲内に、参照ペプチドまたはタンパク質中のアミノ酸の配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0078】
本明細書で使用される場合、「成長させること」または「再生」という用語は、植物細胞、植物細胞群、植物部分(種子を含む)、または植物片(例えば、原形質体、カルス、または組織部分から)から分化した植物全体を成長させることを意味する。
【0079】
本明細書で使用される場合、「由来する」という用語は、起源または供給源を指し、天然に存在する、組換えの、未精製の、または精製された分子を含み得る。起源または供給源に由来する核酸またはアミノ酸は、本明細書の他の箇所で定義されるあらゆる種類のヌクレオチド変化またはタンパク質修飾を有し得る。
【0080】
「から得られる」とは、例えば、核酸抽出物またはポリペプチド抽出物などのサンプルが、特定の供給源から単離されるか、またはそれに由来することを意味する。例えば、抽出物は、植物、特に単子葉植物、より具体的にはバナナなどの非イネ科単子葉植物から直接単離することができる。
【0081】
「病原体」という用語は、本明細書では、その最も広い意味で、生存可能な植物組織の細胞の感染が病害応答を誘発する生物または感染性因子を指すために使用される。
【0082】
「変異型」ポリペプチドは、天然タンパク質のN末端および/もしくはC末端への1つ以上のアミノ酸の欠失(いわゆる短縮化)もしくは付加、天然タンパク質の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失もしくは付加、または天然タンパク質の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の置換による、天然タンパク質に由来するポリペプチドを意味する。本開示に包含される変異型タンパク質は、生物学的に活性である、つまり、それらは、天然タンパク質の所望の生物学的活性、つまり、本明細書に記載される調節(modulating)または調節(regulatory)活性を有し続ける。そのような変異型は、例えば、遺伝子多型または人の操作に起因し得る。本開示の天然Rタンパク質の生物学的に活性な変異型は、デフォルトのパラメータを使用して、本明細書の他の箇所に記載される配列アラインメントプログラムによって決定される天然タンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくとも40%、50%、60%、70%、一般に少なくとも75%、80%、85%、好ましくは約90%~95%以上、より好ましくは約98%以上の配列同一性を有する。本開示のタンパク質の生物学的に活性な変異型は、そのタンパク質と、わずか1~15アミノ酸残基、わずか1~10、例えば、6~10、わずか5、わずか4、3、2、またはさらには1つのアミノ酸残基だけ異なり得る。
【0083】
本開示のタンパク質は、アミノ酸置換、欠失、短縮化、および挿入を含む様々な方法で改変され得る。そのような操作のための方法は、一般に当技術分野で既知である。例えば、Rタンパク質のアミノ酸配列変異型は、DNAの変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列改変のための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492、Kunkel et al.(1987)Methods in Enzymol.154:367-382、米国特許第4,873,192号、Walker and Gaastra, eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的な活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(参照により本明細書に組み込まれる)のモデルに見出すことができる。あるアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸と交換するなどの保存的置換が好ましい場合がある。
【0084】
コードされた配列中の単一のアミノ酸またはアミノ酸のごく一部(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を改変、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加は、「保存的に修飾されたバリエーション」であり、改変は、化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。脂肪族:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、硫黄含有:メチオニン(M)、システイン(C)、塩基性:アルギニンI、リジン(K)、ヒスチジン(H)、酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)の5つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。Creighton,1984も参照されたい。加えて、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはアミノ酸のごく一部を改変、付加、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加も、「保守的に修飾されたバリエーション」である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指向することができるDNA配列を意味し、終結シグナルに作動可能に連結される目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターを含む。それはまた、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。コード領域は通常、目的のタンパク質をコードするが、センスまたはアンチセンス方向で、目的の機能的RNA、例えば、アンチセンスRNAまたは非翻訳RNAをコードすることもある。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラであり得る。これは、その構成要素のうちの少なくとも1つが、その他の構成要素のうちの少なくとも1つに関して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであり得る。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または宿主細胞がある特定の外部刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、動物および/または植物(バナナ種を含む)における特定の組織もしくは器官、または発達段階に特異的であり得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、「ベクター」、「プラスミド」、または「構築物」という用語は、外因性核酸をコードする任意のプラスミドまたはウイルスを広く指す。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物などの、ビリオンまたは細胞への核酸の移入を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ベクターは、核酸またはその変異体を細胞に送達するための送達ビヒクルとして好適なウイルスベクターであり得るか、またはベクターは、同じ目的に適した非ウイルスベクターであり得る。細胞および組織にDNAを送達するためのウイルスおよび非ウイルスベクターの例は、当技術分野で周知であり、例えば、Ma et al.(1997,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12744-12746)に記載されている。ウイルスベクターの例としては、組換え植物ウイルスが挙げられるが、これに限定されない。植物ウイルスの非限定的な例としては、タバコへのTMV媒介(一過性)トランスフェクション(Tuipe,T-H et al(1993),J.Virology Meth,42: 227-239)、ssDNAゲノムウイルス(例えば、Geminiviridae科)、逆転写ウイルス(例えば、Caulimoviridae科、Pseudoviridae科、およびMetaviridae科)、dsNRAウイルス(例えば、Reoviridae科およびPartitiviridae科)、(-)ssRNAウイルス(例えば、Rhabdoviridae科およびBunyaviridae科)、(+)ssRNAウイルス(例えば、Bromoviridae科、Closteroviridae科、Comoviridae科、Luteoviridae科、Potyviridae科、Sequiviridae科、およびTombusviridae科)、およびウイロイド(例えば、Pospiviroldae科およびAvsunviroidae科)が挙げられる。植物ウイルスの詳細な分類情報は、Fauquet et al(2008,”Geminivirus strain demarcation and nomenclature”.Archives of Virology 153:783-821、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびKhan et al.(Plant viruses as molecular pathogens;Publisher Routledge,2002,ISBN 1560228954,9781560228950)に見出すことができる。非ウイルスベクターの例としては、リポソーム、DNAのポリアミン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
また、「ベクター」は、とりわけ、自己伝達性または可動性であってもなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込みにより、または染色体外に存在することによるいずれかで原核生物または原核生物の宿主を形質転換することができる、二本鎖または一本鎖の線形または環状形態の任意のプラスミド、コスミド、ファージ、またはAgrobacteriumバイナリーベクター(例えば、複製起点を有する自律的複製プラスミドなど)を含むように定義される。
【0088】
actinomyceteおよび関連種、細菌、ならびに真核生物(例えば、高等植物、哺乳動物、酵母、または真菌細胞)から選択され得る2つの異なる宿主生物における複製が自然にまたは設計により可能であるDNAビヒクルを意味するシャトルベクターが具体的に含まれる。
【0089】
好ましくは、ベクター中の核酸は、微生物、例えば、細菌、または植物細胞などの宿主細胞における転写のための適切なプロモーターまたは他の調節要素の制御下にあり、かつそれらに作動可能に連結されている。ベクターは、複数の宿主で機能する二機能性発現ベクターであり得る。ゲノムDNAの場合、これはそれ自身のプロモーターまたは他の調節要素を含み得、cDNAの場合、これは宿主細胞における発現のための適切なプロモーターまたは他の調節要素の制御下にあり得る。
【0090】
「クローニングベクター」は典型的には、ベクターの本質的な生物学的機能を失うことなく、外来DNA配列を決定可能な方法で挿入することができる1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位と、クローニングベクターで形質転換された細胞の特定および選択に使用するのに好適なマーカー遺伝子とを含む。マーカー遺伝子には、典型的には、テトラサイクリン抵抗性、ハイグロマイシン抵抗性、またはアンピシリン抵抗性を提供する遺伝子が含まれる。
【0091】
本明細書で使用される場合、「抵抗性の」または「抵抗性」という用語は、生物的害虫または病原体に対して感受性の(またはより感受性の)植物、系列、または品種よりも、生物的害虫または病原体に対して少ないまたは低減した症状を示す植物、系列、または栽培品種を説明する。これらの用語は、症状を示さない植物、ならびにいくつかの症状を示すが、それでも許容可能な収量で市場性のある産物を生産することができる植物を説明するために様々に適用される。抵抗性と呼ばれるいくつかの系列は、植物が視覚的に発育不良に見え、感染していない植物と比較して収量が低減している場合でも、作物を生産できるという意味でのみそうである。種子産業を代表する非政府、非営利組織であるInternational Seed Federation(ISF)によって定義されているように(「Definition of the Terms Describing the Reaction of Plants to Pests or Pathogens and to Abiotic Stresses for the Vegetable Seed Industry」、May 2005を参照されたい)、植物が害虫または病原体の影響を受けているか、またはさらされているかどうかの認識は、用いられる分析方法に依存し得る。抵抗性は、ISFによって、特定の害虫もしくは病原体の成長および発生、ならびに/または同様の環境条件および害虫もしくは病原体の圧力下で感受性のある植物品種と比較した場合にそれらが引き起こす損害を制限する草型の能力として定義される。抵抗性のある草型は、それでもいくつかの病害の症状または損害を示す可能性がある。2つのレベルの抵抗性が定義されている。「高/標準抵抗性」という用語は、感受性の品種と比較した場合、通常の害虫または病原体の圧力下で特定の害虫または病原体の成長および発生を高度に制限する植物品種に使用される。「中程度/中等度の抵抗性」は、特定の害虫または病原体の成長および発生を制限するが、抵抗性の高い草型と比較して、より広範囲の症状または損害を示す草型に適用される。中等度の抵抗性を有する草型は、同様の圃場条件および病原体の圧力の下で育てられた場合、感受性の植物品種よりも深刻な症状を示さない。抵抗性を評価する方法は、当業者に周知である。そのような評価は、症状の重症度を決定する際に、植物または植物の部分(例えば、葉、根、花、果実など)を視覚的に観察することによって実施することができる。例えば、反応または症状の重症度に基づいて、各植物に1~5のスケールで抵抗性スコアが与えられた場合(1は最も抵抗性のある植物に適用される抵抗性スコアであり(例えば、症状がない、または症状が最も少ない)、5は最も深刻な症状のある植物に適用されるスコアである)、植物の少なくとも75%が1、2、または3レベルの抵抗性スコアを有する場合、系列は抵抗性であると評価される一方で、感受性の系列は、植物の25%超が4または5レベルのスコアを有するものである。より詳細な視覚的評価が可能な場合は、1~10までのスケールを使用してスコアの範囲を広げ、それにより、できれば、評価される植物間でより大きなスコアの広がりを提供する。
【0092】
別のスコアリングシステムは、接種後の壊死の発生および子葉に対するその位置(Boslandら、1991に由来するものなど)に基づく根接種試験であり、0は感染後に症状がないことを表し、1は感染後に胚軸での小さな壊死を表し、2は感染後に子葉の下での壊死を表し、3は感染後に子葉の上での壊死を表し、4は感染後に植物の立ち枯れを伴って子葉の上での壊死を表し、5は最終的には枯れた植物を表す。
【0093】
そのような視覚的評価に加えて、病害の評価は、電子顕微鏡を使用して、ならびに/またはタンパク質ハイブリダイゼーション(例えば、ELISA、病原体タンパク質密度の測定)および/もしくは核酸ハイブリダイゼーション(例えば、RT-PCR、病原体RNA密度の測定)などの分子生物学的方法を介して、植物または植物部分における病原体生物密度を決定することによって実施することができる。特定の病原体/植物の組み合わせに応じて、例えば、それが、感受性の植物において、約50%、または約40%、または約30%、または約20%、または約10%、または約5%、または約2%、または約1%、または約0.1%、または約0.01%、または約0.001%、または約0.0001%のRNA/DNAおよび/またはタンパク質密度である病原体RNA/DNAおよび/またはタンパク質密度を有する場合、植物は病原体に対して抵抗性であると決定され得る。
【0094】
病害抵抗性のために植物を育種する際に使用される方法は、他の特徴のために育種する際に使用される方法と同様である。宿主植物における抵抗性特徴の遺伝の性質および病原体の生理学的レースまたは株の存在について可能な限り知る必要がある。
【0095】
本明細書で使用される場合、「完全抵抗性」という用語は、感染後に病原体が完全に発生しないことを指し、病原体が細胞に侵入できないこと(初期感染なし)の結果であり得るか、または病原体が細胞内で増殖し、後続の細胞に感染することができないこと(サブリミナル感染なし、拡散なし)の結果のいずれかであり得る。完全抵抗性の存在は、植物の細胞に病原体タンパク質または病原体RNAが存在しないこと、および感染量の病原体に該植物を曝露したとき(すなわち、「感染後」)に該植物にいずれの病害の症状がないことを確立することによって決定することができる。育種家の間では、この表現型はしばしば「免疫」と称される。したがって、本明細書で使用される場合、「免疫」は、病原体が例えばエレクトロポレーションによって細胞に活発に移入された場合でも、病原体の複製がないことを特徴とする抵抗性の形態を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「部分抵抗性」という用語は、細胞内の病原体の増殖の低減、病原体の(全身)移動の低減、および/または感染後の症状発達の低減と称される。部分抵抗性の存在は、植物中の低濃度の病原体タンパク質または病原体RNAの全身的存在、および感染量の病原体に該植物を曝露したときの該植物に減少もしくは遅延した病害症状の存在を確立することによって決定され得る。タンパク質濃度は、定量的検出法(例えば、ELISA法または定量的逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR))を使用して決定することができる。育種家の間では、この表現型はしばしば「中等度の抵抗性」と称される。
【0097】
本明細書で使用される場合、「耐性」という用語は、本明細書では、植物の表現型を示すために使用され、感染量の病原体に該植物を曝露したときに病害症状が存在しないままであり、それにより全身性または局所性病原体感染の存在、病原体増殖、少なくとも、該植物の細胞における病原体ゲノム配列の存在および/またはそのゲノム組み込みが確立され得る。したがって、耐性植物は症状の発現に抵抗性であるが、病原体の無症状保因体である。時折、病原体配列は、病害の症状を引き起こすことなく、植物に存在するか、さらには増殖する可能性がある。この現象は「潜伏感染」としても知られる。潜伏感染では、病原体は、おそらく組み込まれたゲノムまたはエピソーム作用因子として(そのため、病原体タンパク質は細胞質に見出すことができないが、PCRプロトコルは病原体核酸配列の存在を示し得る)、または感染性の継続的に複製する作用因子として、真に潜伏性の非感染性の潜在的な形態で存在し得る。再活性化された病原体は、感受性の接触体の間で広がり、流行を引き起こす可能性がある。「潜伏感染」の存在は、植物における「耐性」表現型の存在と区別がつかない。
【0098】
本明細書で使用される場合、「感受性」という用語は、病原体に対する抵抗性がないか、または実質的にない植物を指し、病原体が植物に侵入し、病原体が増殖し全身に広がり、病害の症状をもたらす。したがって、「感受性」という用語は「非抵抗性」と同等である。
【0099】
本明細書で使用される場合、「子孫」という用語は、1つ以上の親植物またはその子孫からの栄養または有性生殖からの子孫として生じる任意の植物を指す。例えば、子孫植物は、親植物のクローニングまたは自殖によって、または2つの親植物を交配することによって得ることができ、自殖ならびにF1もしくはF2、またはさらにさらなる世代を含む。F1は、少なくとも1つが形質のドナーとして初めて使用される親から生産された第1世代の子孫であるが、第2世代(F2)または後続の世代(F3、F4など)の子孫は、F1、F2などの自殖から生産された標本である。したがって、F1は、2つの真の育種親の間の交配から生じる雑種であり得る(通常そうである)(真の育種は、形質に対してホモ接合である)が、F2は、該F1雑種の自家受粉から生じる子孫であり得る(通常そうである)。
【0100】
本明細書で使用される場合、「双子葉類」、「双子葉植物」、および「双子葉類の」という用語は、2つの種子の半分または子葉を含む胚を有する顕花植物を指す。例としては、タバコ、トマト;エンドウ、アルファルファ、クローバー、大豆などのマメ科植物、オーク、カエデ、バラ、ミント、カボチャ、ヒナギク、クルミ、サボテン、スミレおよびキンポウゲが挙げられる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「単子葉類」、「単子葉植物」、または「単子葉類の」という用語は、1枚の子葉のみを含む胚を有し、通常平行脈の葉、3の倍数単位の花部分を有し、茎および根の二次成長がない、顕花植物のサブクラス(Monocotyledoneae)のうちのいずれかを指す。例としては、バナナ、ラッパズイセン、サトウキビ、生姜、ユリ、ラン、米、トウモロコシ、ヒロハノウシノケグサ、ヤギ草、およびナガハグサなどの草、小麦、オート麦、および大麦などの穀物、菖蒲、タマネギ、ならびにヤシが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連するDNAの任意のセグメントを指す。したがって、遺伝子には、それらの発現に必要なコード配列および/または調節配列が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子はまた、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する、発現されていないDNAセグメントを含み得る。遺伝子は、目的の供給源からのクローニングまたは既知のもしくは予測された配列情報からの合成を含む、様々な供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含み得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「遺伝子型」という用語は、個々の細胞、細胞培養物、組織、生物(例えば、植物)、または生物群の遺伝子構造を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子」という用語は、遺伝子の1つ以上の代替形態のうちのいずれかを意味し、そのすべての対立遺伝子は、少なくとも1つの形質または特徴に関連する。二倍体細胞では、所与の遺伝子の2つの対立遺伝子が、1対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。本開示は、QTL、すなわち、1つ以上の遺伝子または調節配列を含み得るゲノム領域に関連するため、場合によっては、「対立遺伝子」の代わりに「ハプロタイプ」(すなわち、染色体セグメントの対立遺伝子)を指すことがより正確であるが、それらの場合、「対立遺伝子」という用語は、「ハプロタイプ」という用語を含むと理解されるべきである。対立遺伝子は、類似の表現型を発現する場合、同一であると見なされる。配列の違いは可能であるが、表現型に影響を与えない限り重要ではない。
【0105】
本明細書で使用される場合、「遺伝子座」(複数形:「loci」)という用語は、遺伝的に定義された任意の部位を指す。遺伝子座は、遺伝子、または遺伝子の一部、または何らかの調節的な役割を有するDNA配列であり得、異なる配列によって占められ得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、「分子マーカー」または「遺伝子マーカー」という用語は、核酸配列の特徴の違いを視覚化するための方法で使用される指標を指す。そのような指標の例は、制限断片長多型(RFLP)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、単一ヌクレオチド多型(SNP)、挿入変異、マイクロサテライトマーカー(SSR)、配列特徴付けされた増幅領域(SCAR)、切断増幅多型配列(CAPS)マーカー、もしくはアイソザイムマーカー、または特定の遺伝子および染色体位置を定義する、本明細書に記載のマーカーの組み合わせである。対立遺伝子の近くの分子マーカーのマッピングは、分子生物学的技法に熟練している平均的な者によって非常に簡単に実行することができる手順であり、その技法は、例えば、Lefebvre and Chevre,1995、Lorez and Wenzel,2007、Srivastava and Narula,2004、Meksem and Kahl,2005、Phillips and Vasil,2001に記載されている。AFLP技術に関する一般的な情報は、Vos et al.(1995,AFLP:a new technique for DNA fingerprinting,Nucleic Acids Res.1995 November 11;23(21):4407-4414)に見出すことができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「半接合体」という用語は、単数体細胞もしくは生物の遺伝子、異型配偶子性の性関連遺伝子、またはパートナーセグメントが欠失している二倍体細胞もしくは生物の染色体セグメント内の遺伝子として、遺伝子が遺伝子型に一度だけ存在する細胞、組織、または生物を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ接合体」という用語は、少なくとも1つの遺伝子座に存在する異なる対立遺伝子(所与の遺伝子の形態)を有する二倍体または倍数体の個々の細胞または植物を指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ接合性」という用語は、特定の遺伝子座における異なる対立遺伝子(所与の遺伝子の形態)の存在を指す。
【0110】
本明細書で使用される場合、「ホモ接合体」という用語は、1つ以上の遺伝子座に同じ対立遺伝子を有する個々の細胞または植物を指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「ホモ接合性」という用語は、相同染色体セグメントの1つ以上の遺伝子座に同一の対立遺伝子が存在することを指す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「相同の」または「相同体」という用語は、当技術分野で既知であり、共通の祖先またはファミリーメンバーを共有し、配列同一性の程度に基づいて決定される関連配列を指す。「相同性」、「相同の」、「実質的に類似の」、および「実質的に対応する」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。相同体は通常、同じまたは類似の生化学的経路を制御する、媒介する、またはそれに影響を与えるが、特定の相同体は異なる表現型を生じさせる場合がある。したがって、当業者が理解するように、本開示は、特定の例示的な配列だけではないものを包含することが理解される。これらの用語は、ある種、亜種、品種、栽培品種、または株に見られる遺伝子と、別の種、亜種、品種、栽培品種、または株における対応するもしくは同等の遺伝子との関係を説明する。この開示の目的のために、相同配列が比較される。
【0113】
「相同体」という用語は、種分化の事象によって分離された遺伝子間の関係(「オルソログ」を参照されたい)または遺伝子重複の事象によって分離された遺伝子間の関係(「パラログ」を参照されたい)に適用するために使用されることがある。
【0114】
「ホメオログ」という用語は、倍数性または染色体重複事象から生じる同祖遺伝子または染色体を指す。これは、すぐ上で定義されるより一般的な「相同体」とは対照的である。
【0115】
「オルソログ」という用語は、種分化によって共通の祖先遺伝子から進化した異なる種の遺伝子を指す。通常、オルソログは進化の過程で同じ機能を保持する。オルソログの特定は、新たに配列決定されたゲノムにおける遺伝子機能の確実な予測に重要である。
【0116】
「パラログ」という用語は、ゲノム内の重複によって関連する遺伝子を指す。相同体は一般に、進化の過程で同じ機能を保持するが、パラログは、元の機能に関連している場合でも、新しい機能を進化させることができる。
【0117】
「相同配列」または「相同体」または「オルソログ」は、機能的に関連していると考えられているか、信じられているか、または知られている。機能的関係は、(a)配列同一性の程度および/または(b)同一または類似の生物学的機能を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法のうちのいずれか1つで示すことができる。好ましくは、(a)および(b)の両方が示される。配列同一性の程度は異なり得るが、一実施形態では、少なくとも50%(当技術分野で既知の標準的な配列アラインメントプログラムを使用する場合)、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.718,Table 7.71で論じられているものなど、当技術分野で容易に利用可能なソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。いくつかのアラインメントプログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd,Oxford,U.K.)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)である。他の非限定的なアラインメントプログラムとしては、Sequencher(Gene Codes,Ann Arbor,Michigan)、AlignX、およびVector NTI(Invitrogen,Carlsbad,CA)が挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「雑種」という用語は、1つ以上の遺伝子が異なる親間の交配から生じる任意の個々の細胞、組織、または植物を指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「近親交配」または「近交系」という用語は、比較的純粋種の種類を指す。
【0120】
本明細書で使用される場合、「単一対立遺伝子変換植物」という用語は、戻し交配と呼ばれる植物育種技法によって開発され、戻し交配技法を介して近親交配に移入された単一対立遺伝子に加えて、近親交配の所望の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが回復されるそれらの植物を指す。
【0121】
本明細書で使用される場合、「系列」という用語は、組織培養技法を介して単一の親植物から栄養繁殖された植物群、または共通の親からの血統により遺伝的に非常に類似する近親交配植物群を含むように広く使用されるが、これらに限定されない。植物が特定の系列に「属している」と言われるのは、(a)その系列の材料から再生された一次形質転換体(T0)植物である場合、(b)その系列のT0植物から構成される系統を有する場合、または(c)共通の祖先により(例えば、近親交配または自殖を介して)遺伝的に非常に類似している場合である。この文脈において、「系統」という用語は、例えば、ヘテロ接合(ヘミ接合)またはホモ接合状態の遺伝子または遺伝子の組み合わせが植物に所望の形質を付与するように影響を受ける性交配の観点から植物の系統(lineage)を意味する。
【0122】
本明細書で使用される場合、「遺伝子移入」、「遺伝子移入された」、および「遺伝子移入すること」という用語は、ある種、品種、または栽培品種の遺伝子が、それらの種を交配することによって別の種、品種、または栽培品種のゲノムに移動するプロセスを指す。交配は自然または人工であり得る。このプロセスは、任意選択で、反復親への戻し交配によって完了することができ、この場合、遺伝子移入とは、その親のうちの1つとの種間の雑種の戻し交配を繰り返すことにより、ある種の遺伝子を別の種の遺伝子プールに浸透させることを指す。遺伝子移入は、レシピエント植物のゲノムに安定して組み込まれた異種遺伝材料として説明することもできる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「集団」という用語は、共通の遺伝的派生を共有する植物の遺伝的に均質または不均質な一群を意味する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「品種」または「栽培品種」という用語は、構造的特徴および性能によって同じ種内の他の品種から特定され得る類似の植物群を意味する。本明細書で使用される場合、「品種」という用語は、1972年11月10日、1978年10月23日、および1991年3月19日にジュネーブで改訂された、1961年12月2日のInternational Convention for the Protection of New Varieties of Plants(UPOV条約)の対応する定義と同じ意味を有する。したがって、「品種」とは、最も低い既知のランクの単一の植物分類群内の植物の群化を意味し、育種者の権利の付与の条件が完全に満たされているかどうかに関係なく、群化は、i)所与の遺伝子型または遺伝子型の組み合わせから生じる特徴の発現によって定義され、ii)該特徴のうちの少なくとも1つの発現によって任意の他の植物群化と区別され、iii)変化せずに繁殖するための適合性に関して単位と見なされ得る。
【0125】
本明細書で使用される場合、「集団選択」という用語は、個々の植物が選択され、それらの種子の集合体から次世代が繁殖する選択の形態を指す。集団選択の詳細は、本明細書の明細書に記載されている。
【0126】
本明細書で使用される場合、「放任受粉」という用語は、遺伝子流動に対する効果的な障壁が存在する閉鎖(closed)受粉とは対照的に、何らかの遺伝子流動に自由に曝露される植物集団を指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、「放任受粉集団」または「放任受粉品種」という用語は、多様性を示し得るが、集団または品種を他のものと区別することができる1つ以上の遺伝子型または表現型の特徴も有する、標準に選択された、通常少なくともある程度の異花受粉が可能である植物を指す。異花受粉に対する障壁がない雑種は、放任受粉集団または放任受粉品種である。
【0128】
本明細書で使用される場合、「自己交配」、「自家受粉された」、または「自家受粉」という用語は、1つの植物の1つの花の花粉が同じ植物の同じまたは異なる花の胚珠(柱頭)に(人工的または自然に)適用されることを意味する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「交配する」、「交配すること」、「交配受粉」、または「交配育種」という用語は、1つの植物の1つの花の花粉が別の植物の花の胚珠(柱頭)に(人工的または自然に)適用されるプロセスを指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「由来する」という用語は、起源または供給源を指し、天然に存在する、組換えの、未精製の、または精製された分子を含み得る。起源または供給源に由来する核酸またはアミノ酸は、本明細書の他の箇所で定義されるあらゆる種類のヌクレオチド変化またはタンパク質修飾を有し得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、「プライマー」という用語は、増幅標的にアニーリングしてDNAポリメラーゼを付着させ、それにより、プライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの重合剤の存在下、ならびに好適な温度およびpHに置かれたときにDNA合成の開始点として機能することができるオリゴヌクレオチドを指す。(増幅)プライマーは、増幅の最大効率のために一本鎖であることが好ましい。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合剤の存在下で伸長産物の合成をプライムするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度およびプライマーの組成(A/TおよびG/C含量)を含む、多くの要因に依存する。双方向プライマーの対は、PCR増幅などのDNA増幅の分野で一般的に使用される1つのフォワードプライマーおよび1つのリバースプライマーからなる。
【0132】
プローブは、標的核酸配列を認識する識別可能な単離された核酸を含む。プローブは、アドレス可能な位置、検出可能な標識、または他のレポーター分子に付着し、標的配列にハイブリダイズする核酸を含む。典型的な標識には、放射性同位元素、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤または蛍光剤、ハプテン、および酵素が含まれる。様々な目的に適切な標識の方法および標識の選択におけるガイダンスは、例えば、Sambrook et al.(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989およびAusubel et al.Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,1999に論じられている。
【0133】
核酸プローブおよびプライマーを調製および使用するための方法は、例えば、Sambrook et al.(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989、Ausubel et al.Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.,John Wiley & Sons,Inc.,1999、およびInnis et al.PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1990に記載されている。増幅プライマー対は、例えば、PRIMER(Version 0.5,1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,MA)などの、その目的を意図したコンピュータプログラムを使用することにより、既知の配列から導くことができる。当業者は、特定のプローブまたはプライマーの特異性がその長さと共に増加することを理解するであろう。したがって、より高い特異性を得るために、標的ヌクレオチド配列の少なくとも20、25、30、35、40、45、50以上の連続したヌクレオチドを含むプローブおよびプライマーを選択することができる。
【0134】
本明細書に開示されるポリヌクレオチドのPCR増幅のために、オリゴヌクレオチドプライマーは、目的の任意の生物から抽出されたcDNAまたはゲノムDNAからの対応するDNA配列を増幅するためのPCR反応で使用するために設計され得る。PCRプライマーおよびPCRクローニングを設計するための方法は、当技術分野で一般に知られており、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)に開示されている。Innis et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York)、Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York)、およびInnis and Gelfand,eds.(1999) PCR Methods Manual(Academic Press,New York)も参照されたい。既知のPCRの方法には、対のプライマー、入れ子プライマー、単一特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的にミスマッチのプライマーなどを使用する方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログ、ならびにそれらの断片およびバリエーションからなる群から選択される配列を含む単離された核酸配列を提供する。一実施形態では、本開示は、FusR1に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の同一性を共有する核酸配列を含む、FusR1の核酸配列によって産生されるタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0136】
比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野で周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムは、Smith and Waterman(Adv.Appl.Math.,2:482,1981)、Needleman and Wunsch(J.Mol.Biol.,48:443,1970)、Pearson and Lipman (Proc.Natl.Acad.Sci.,85:2444,1988)、Higgins and Sharp(Gene,73:237-44,1988)、Higgins and Sharp(CABIOS,5:151-53,1989)、Corpet et al.(Nuc.Acids Res.,16:10881-90,1988)、Huang et al.(Comp.Appls Biosci.,8:155-65,1992)、およびPearson et al.(Meth. Mol.Biol.,24:307-31,1994)に記載されている。Altschulら(Nature Genet.,6:119-29,1994)は、配列アラインメント方法および相同性の計算の詳細な考察を示している。
【0137】
本開示はまた、好適な調節配列に作動可能に連結された上記のポリヌクレオチドのうちのいずれか1つの単離された核酸配列を含むキメラ遺伝子を提供する。
【0138】
本開示はまた、上記のようなキメラ遺伝子を含む組換え構築物を提供する。一実施形態では、該組換え構築物は、RNAi遺伝子サイレンシングで使用されるような遺伝子サイレンシング構築物である。別の実施形態では、該組換え構築物は、CRISPR-Cas遺伝子編集系で使用されるような遺伝子編集構築物である。
【0139】
本開示の発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。そのようなマーカーには、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418、またはネオマイシン抵抗性、およびE.coliおよび他の細菌で培養するためのテトラサイクリン、カナマイシン、またはアンピシリン抵抗性遺伝子が含まれる。
【0140】
本開示はまた、上記のようなキメラ遺伝子を含む形質転換された宿主細胞を提供する。一実施形態では、該宿主細胞は、細菌、酵母、糸状菌、藻類、動物、およびMusa属を含むがこれに限定されない植物からなる群から選択される。
【0141】
これらの配列により、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のホメオログ、FusR1のパラログ、ならびにその断片およびバリエーションの遺伝子特異的プライマーおよびプローブの設計が可能になる。
【0142】
II.病害抵抗性の調節
本開示は、新たに特定されたFusR1(Fusarium抵抗性1)のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド、ならびに病原体によって引き起こされる植物の病害抵抗性を調節、刺激、または増強するための方法に向けられている。本開示の病原体には、細菌、真菌、ウイルス、またはウイロイド、線虫、昆虫などが含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
細菌性病原体には、Pseudomonas avenae subsp.avenae、Xanthomonas campestris pv.holcicola、Enterobacter dissolvens、Erwinia dissolvens、Ervinia carotovora subsp.carotovora、Erwinia chrysanthemi pv.zeae、Pseudomonas andropogonis、Pseudomonas syringae pv.coronafaciens、Clavibacter michiganensis subsp.、Corynebacterium michiganense pv.nebraskense、Pseudomonas syringae pv.syringae、Herniparasitic bacteria(真菌の箇所を参照されたい)、Bacillus subtilis、Erwinia stewartii、およびSpiroplasma kunkeliiが含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
真菌病原体には、Collelotrichum graminicola、Glomerella graminicola Politis、Glomerella lucumanensis、Aspergillus flavus、Rhizoctonia solani Kuhn、Thanatephorus cucumeris、Acremonium strictum W.Gams、Cephalosporium acremonium Auct.non Corda Black Lasiodiplodia theobromae=BoIr odiplodia y theobromae Borde blanco Marasmiellus sp.、Physoderma maydis、Cephalosporium Corticium sasakii、Curvularia clavata、C.maculans、Cochhobolus eragrostidis、Curvularia inaequahs、C.intermedia(有性世代Cochhobolus intermedius)、Curvularia lunata(有性世代: Cochliobolus lunatus)、Curvularia pallescens(有性世代-Cochliobolus pallescens)、Curvularia senegalensis、C.luberculata(有性世代:Cochliobolus tuberculatus)、Didymella exitalis Diplodiaftumenti(有性世代-Botryosphaeriafestucae)、Diplodia maydis=Stenocarpella maydis、Stenocarpella macrospora=Diplodia macrospora、Sclerophthora rayssiae var.zeae、Sclerophthora macrospora=Sclerospora macrospora、Sclerospora graminicola、Peronosclerospora maydis=Sclerospora maydis、Peronosclerospora philippinensis、Sclerospora philippinensis、Peronosclerospora sorghi=Sclerospora sorghi、Peronosclerospora spontanea=Sclerospora spontanea、Peronosclerospora sacchari=Sclerospora sacchari、Nigrospora oryzae(有性世代:Khuskia oryzae)A.Iternaria alternala=A.tenuis、Aspergillus glaucus、A. niger、Aspergillus spp.、Botrytis cinerea、Cunninghamella sp.、Curvulariapallescens、Doratomyces slemonitis=Cephalotrichum slemonitis、Fusarium culmorum、Gonatobotrys simplex、Pithomyces maydicus、Rhizopus microsporus Tiegh.、R.stolonifer=R.nigricans、Scopulariopsis brumptii、Claviceps gigantea(無性世代: Sphacelia sp.)Aureobasidium zeae=Kabatiella zeae、Fusarium subglutinans=F.moniliforme var.subglutinans、Fusarium moniliforme、Fusarium avenaceum(有性世代-Gibberella avenacea)、Botryosphaeria zeae=Physalospora zeae(無性世代:Allacrophoma zeae)、Cercospora sorghi=C.sorghi var.maydis、Helminthosporium pedicellatum(有性世代:Selosphaeriapedicellata)、Cladosporium cladosporioides=Hormodendrum cladosporioides、C.herbarum(有性世代-Mycosphaerella tassiana)、Cephalosporium maydis、A.Iternaria alternata、A.scochyta maydis、A.tritici、A.zeicola、Bipolaris victoriae、Helminthosporium victoriae(有性世代Cochhoholus victoriae)、C.sativus(無性世代:Bipolaris sorokiniana=H.sorokinianum=H.sativum)、Epicoccum nigrum、Exserohilum prolatum=Drechslera prolata(有性世代:Setosphaeriaprolata)、Graphium penicillioides、Leptosphaeria maydis、Leptothyrium zeae、Ophiosphaerella herpotricha(無性世代-Scolecosporiella sp.)、Pataphaeosphaeria michotii、Phoma sp.、Septoria zeae、S.zeicola、S.zeina Setosphaeria turcica、Exserohilzim turcicum=Helminthosporium furcicum、Cochhoholus carbonum、Bipolaris zeicola=Helminthosporium carhonum、Penicilhum spp.、P.chrysogenum、P.expansum、P.oxalicum、Phaeocytostroma ambiguum、Phaeocylosporella zeae、Phaeosphaeria maydis=Sphaerulina nmaydis、Botryosphaeriafestucae=Physalospora zeicola(無性世代:Diplodiaftumenfi)、半寄生細菌および真菌Pyrenochaeta Phoma terrestris=Pyrenochaeta terrestris、Pythiumn spp.、P.arrhenomanes、P.graminicola、Pythium aphanidermatum=P.hutleri L.、Rhizoctonia zeae(有性世代:Waitea circinata)、Rhizoctonia solani、minor A Iternaria alternala、Cercospora sorghi、Dictochaetaftrtilis、Fusarium acuminatum(有性世代Gihherella acuminata)、E.equiseti(有性世代:G.intricans)、E.oxysporum、E.pallidoroseum、E.poae、E.roseum、G.cyanogena(無性世代:E.sulphureum)、Microdochium holleyi、Mucor sp.、Periconia circinata、Phytophthora cactorum、P.drechsleri、P.nicotianae var.parasitica、Phytophthora spp.、Rhizopus arrhizus、Setosphaeria rostrata、Exserohilum rostratum=Helminthosporium rostratum、Puccinia sorghi、Physopella pallescens、P.zeae、Sclerotium rofsii Sacc.(有性世代Athelia rotfsii)、Bipolaris sorokiniana、B.zeicola=Helminthosporium carbonum、Diplodia maydis、Exserohilum pedicillatum、Exserohilum furcicum=Helminthosporium turcicum、Fusarium avenaceum、E.culmorum、E.moniliforme、Gibberella zeae(無性世代-E.graminearum)、Macrophominaphaseolina、Penicillium spp.、Phomopsis sp.、Pythium spp.、Rhizoctonia solani、R.zeae、Sclerotium rolfsfi、Spicaria sp.、Selenophoma sp.、Gaeumannomyces graminis、Myrothecium gramineum、Monascus purpureus、M.ruber Smut、Ustilago zeae=U.maydis Smut、Ustilaginoidea virens Smut、Sphacelotheca reiliana=Sporisorium holci、Cochliobolus heterostrophus(無性世代:Bipolaris maydis=Helminthosporium maydis)、Stenocarpella macrospora=Diplodia macrospora、Cercospora sorghi、Fusarium episphaeria、E.merismoides、F.oxysporum Schlechtend、Fusarium oxysporum f. sp. cubense(Foc)、Fusarium spp.、E.poae、E.roseum、E.solani(有性世代:Nectria haematococca)、F.tricincturn、Mariannaea elegans、Mucor sp.、Rhopographus zeae、Spicaria sp.、Aspergillus spp.、Penicillium spp.、Trichoderma viride=T.lignorum 有性世代:Hypocrea sp.、Stenocarpella maydis=Diplodia zeae、Ascochyta ischaemi、Phyllosticta maydis(有性世代:Mycosphaerella zeae-maydis)、Mycosphaerella fijiensis、Pseudocercospora(Paracercospora)fijiensi、ならびにGloeocercospora sorghiが含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
ウイルスまたはウイロイドには、アメリカコムギ線条モザイクウイルスモザイク(AWSMV)、オオムギ縞葉モザイクウイルス(BSMV)、オオムギ黄萎ウイルス(BYDV)、バナナバンチートップウイルス、ブロムモザイクウイルス(BMV)、ムギ退緑斑紋ウイルス(CCMV)、トウモロコシ退緑葉脈バンディングウイルス(CCVBV)、トウモロコ退緑斑紋ウイルス(MCMV)、トウモロコシ萎性モザイクウイルス(MDMV)、AまたはB、コムギ条斑モザイクウイルス(WSMV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)、ギョウギシバ(cynodon)退緑条斑ウイルス(CCSV)、セイバンモロコシモザイクウイルス(JGMV)、トウモロコシブッシースタントまたはマイコプラズマ様生物(NILO)、トウモロコシ退緑萎縮ウイルス(MCDV)、トウモロコシ退緑斑紋ウイルス(MCMV)、トウモロコシ萎性モザイクウイルス(MDMV)株A、D、E、およびF、トウモロコシリーフフレックウイルス(MLFV)、トウモロコシ線ウイルス(NELV)、トウモロコシモザイクウイルス(MMV)、トウモロコシ斑紋および退緑スタントウイルス、トウモロコシペルシード輪紋ウイルス(MPRV)、トウモロコシラヤグルエサウイルス(MRGV)、トウモロコシラヤドフィノウイルス(MRFV)、トウモロコシ赤葉および赤縞葉ウイルス(MRSV)、トウモロコシリング斑紋ウイルス(MRMV)、トウモロコシリオクアルトウイルス(MRCV)、トウモロコシラフ萎縮ウイルス(MRDV)、トウモロコシ無菌スタントウイルス(オオムギ黄線条ウイルス)、トウモロコシ条斑ウイルス(MSV)、トウモロコシ退緑縞葉、トウモロコシホジャトウモロコシ白縞葉ウイルス、トウモロコシ成長阻害(stunting)ウイルス、トウモロコシタッセル流産ウイルス(MTAV)、トウモロコシ葉脈エネーション(enation)ウイルス(MVEV)、トウモロコシワラビー耳ウイルス(MAVEV)、トウモロコシ白葉ウイルス、トウモロコシ白線モザイクウイルス(NTVVLMV)、キビ赤葉ウイルス(NMV)、Nanoviridae科のウイルス、ムギ北地モザイクウイルス(NCMV)、オートムギ偽ロゼットウイルス、オートムギ無菌萎縮ウイルス(OSDV)、イネ黒条萎縮ウイルス(RBSDV)、イネ縞葉枯ウイルス(RSV)、ソルガムモザイクウイルス(SrMV)、以前はサトウキビモザイクウイルス(SCMV)株H、I、およびM、サトウキビフィジー病ウイルス(FDV)、サトウキビモザイクウイルス(SCMV)株A、B、D、E、SC、BC、Sabi、およびNM葉脈エネーションウイルス、ならびにコムギ斑点モザイクウイルス(WSMV)が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
寄生性線虫には、Awl Dolichodorus spp.、D.heterocephalus Bulb and stem(Europe)、Ditylenchus dipsaci Burrowing Radopholus similis Cyst Heterodera avenae、H.zeae、Punctodera chalcoensis Dagger Xiphinema spp.、X.americanum、X.mediterraneum False root-knot Nacobbus dorsalis Lance、Columbia Hoplolaimus columbus Lance Hoplolaimus spp.、H.galeatus Lesion Pratylenchus spp.、P.brachyurus、P.crenalus、P.hexincisus、P.neglectus、P.penetrans、P.scribneri、P.thornei、P.zeae Needle Longidorus spp.、L.breviannulatus Ring Criconemella spp.、C ornata Root-knot Meloidogyne spp.、M.chitwoodi、M.incognita、M.javanica Spiral Helicotylenchus spp.、Belonolaimus spp.、B.longicaudatus Stubby-root Paratrichodorus spp.、P.christiei、P.minor、Ouinisulcius aculus、およびTrichodorus spp.が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
害虫は、Coleoptera目、Diptera目、Hymenoptera目、Lepidoptera目、Mallophaga目、Homoptera目、Hemiptera目、Orthoptera目、Thysanoptera目、Dermaptera目、Isoptera目、Anoplura目、Siphonaptera目、Trichoptera目など、特にColeoptera目およびLepidoptera目から選択される。
【0148】
いくつかの実施形態では、植物病原体は、真菌、特にFusarium oxysporumなどの土壌伝染性真菌、Mycosphaerella fijiensis(Morelet)、Mycosphaerella musicola(Leach ex Mulder)、Pseudocercospora(Paracercospora)fijiensi、Verticillium dahliae、Cladosporium、およびRalstona Solanaceumなどの水および空気伝染性ウイルスから選択される。
【0149】
いくつかの実施形態では、該病害は、パナマ病としても知られる Fusarium立ち枯れ病であり、これは、土壌伝染性真菌Fusarium oxysporum f.sp.cubense(Foc)によって引き起こされる致死的な真菌病害である。該病害は、パナマ病TR4、Foc、パナマ病トロピカルレース4、またはTR4としても知られる。いくつかの実施形態では、TR4に対する抵抗性は、細菌、他の真菌、ウイルス、線虫、昆虫などによって引き起こされる病害に対する抵抗性など、1つ以上の追加の病害に対する遺伝的抵抗性または耐性を有する単一の栽培品種内で組み合わされる。
【0150】
Fusarium立ち枯れ病は、バナナの最も破壊的で有名な病害の1つである。この中米の国の輸出プランテーションに甚大な被害をもたらしたことから、パナマ病としても知られる。1960年までに、Fusarium立ち枯れ病は、推定40,000ヘクタールの「グロスミッチェル」(AAA)を破壊し、輸出産業をキャベンディッシュサブグループ(AAA)の栽培品種に転換させた(Ploetz and Pegg,2000)。Fusarium立ち枯れ病は、土壌伝染性糸状不完全菌類、Fusarium oxysporum Schlect.f sp.cubenseによって引き起こされる。これは、顕花植物の血管立ち枯れ病を引き起こすF.oxysporumの120を超える分化型(特殊形態)のうちの1つである。この病原体は、MusaおよびHeliconiaの種に影響を及ぼし、株は、圃場で栽培品種を宿主とする病原性に基づいて4つの生理学的レースに分類される(レース1、「グロスミッチェル」、レース2、「Bluggoe」、レース3、Heliconia spp.、およびレース4、キャベンディッシュ栽培品種ならびにレース1および2に感受性のすべての栽培品種)。レース1からレース4までの4つのFusarium oxysporumレースに名前が付けられている。レース1は、多くのバナナ栽培品種の重要な病原体である。レース2は、料理用バナナを攻撃する。レース3は、アメリカのバナナ近縁種に影響を及ぼすが、バナナには影響を及ぼさないようである。現在の脅威は、「Foc-TR4」と指定されるTR4(トロピカルレース4)としても知られるFusarium oxysporumレース4の拡大が原因である。レース4には、TR4およびSR4(トロピカルレース4)の2つのサブグループがある。最近まで、レース4は、オーストラリア、南アフリカ、カナリア諸島、および台湾の亜熱帯地方で深刻な損失を引き起こしたと記録されただけであった。バナナ生産者およびバナナ会社は、このレースがアメリカで確立された場合、キャベンディッシュ栽培品種の代替品が広く受け入れられていないため、世界の輸出産業に深刻な影響を及ぼすと繰り返し述べている(Bentley et al.,1998)。
【0151】
ごく最近(Stokstad,2019)、西半球で現在パナマ病レース4(Fusarium立ち枯れ病)が検出された。この病害は、コロンビアの4つのプランテーションで発見された。これらの4つのプランテーションはすぐに隔離された。しかしながら、バナナ市場の大部分は、中南米から米国への輸出からなる。現在、この市場は非常に危機にさらされており、危機に対する迅速な解決策がさらに緊急となっている。西半球での最近のパナマ病TR4の出現は、危機に対する迅速な解決策をさらに緊急なものとしている。
【0152】
いくつかの実施形態では、「Fusarium立ち枯れ病」または「FW」は交換可能に使用され得、これは、感染したバナナ植物に表われる病害を指定する。
【0153】
1950年代および1960年代に、単一の品種、グロスミッチェルが広く栽培された。それは、容易に広がる真菌Fusarium oxysporum f sp.cubenseに非常に感受性が高かった。特に、致命的な立ち枯れ病を引き起こしたのはFusariumトロピカルレース1(Foc-TR1)であり、世界のバナナ産業はほぼ破壊された。キャベンディッシュの品種は、Foc-TR1に対して非常に抵抗性があることがわかり、世界的なバナナ生産のためにグロスミッチェルに取って代わった。1990年代に、栽培者は、新たに出現したレースであるFoc-TR4に感染したバナナ植物を発見し始めた。Foc-TR4も容易に拡散し、アジア、中東、およびアフリカのバナナプレンテーションで発見されており、世界のバナナ作物を再び脅かしている。カリブ海で最近Foc-TR4が特定されたことにより、大きな懸念を引き起こし、これは、真菌が現在、西半球に足場を持ち、ラテンアメリカのバナナ生産を脅かしていることを意味する。いくつかの実施形態では、本開示は、Foc-TR4によって引き起こされるバナナの深刻な問題に対する解決策を提供する。いくつかの実施形態では、解決策は、病害抵抗性のある遺伝材料および/または構造の特定、ならびに病原性真菌(例えば、Foc-TR4)に感受性であるバナナ品種への該遺伝材料および構造の導入に向けられる。
【0154】
バナナは、他の病原性真菌、特に黒葉条斑病(黒シガトカ病および黒シグとしても知られる)を引き起こすMycosphaerella fijiensis(Morelet)および黄シガトカ葉斑病を引き起こすM.musicolaにも感受性である。これらの真菌(M.fijiensisおよびM.musicola)は殺菌剤で防除されることが知られるが、殺菌剤はFoc-TR4に対して効果がない。
【0155】
本開示は、新しい育種技法としても知られる次世代植物育種技法を使用して、Foc-TR4などの病原体によって引き起こされる植物の病害抵抗性を調節、刺激、または増強する方法を教示する。
【0156】
新しい育種技法(NBT)は、遺伝的多様性を通じて植物に新しい特徴を作り出すために開発および/または使用される様々な新しい技術を指し、その目的は、標的化変異誘発、新しい遺伝子の標的化導入、または遺伝子サイレンシング(RdDM)である。以下の育種技法は、NBTの範囲内である:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術(ZFN-1、ZFN-2、およびZFN-3、米国特許第9,145,565号を参照されたい、参照によりその全体が組み込まれる)の使用により容易になる標的化配列の変更)、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発(ODM、別名、部位指向性変異誘発)、シスジェネシスおよびイントラジェネシス、RNA依存性DNAメチル化(RdDM、必ずしもヌクレオチド配列を変更しないが、配列の生物学的活性を変更することができる)などのエピジェネティックアプローチ)、グラフト化(GM台木上)、逆育種、一過性遺伝子発現のためのアグロインフィルトレーション(アグロインフィルトレーション「厳密に言えば」、アグロイノキュレーション、フローラルディップ)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN、米国特許第8,586,363号および同第9,181,535号を参照されたい、参照によりそれらの全体が組み込まれる)、CRISPR/Cas系(米国特許第8,697,359号、同第8,771,945号、同第8,795,965号、同第8,865,406号、同第8,871,445号、同第8,889,356号、同第8,895,308号、同第8,906,616号、同第8,932,814号、同第8,945,839号、同第8,993,233号、および同第 8,999,641号を参照されたい、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)、操作されたメガヌクレアーゼ、再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ、DNA誘導ゲノム編集(Gao et al.,Nature Biotechnology(2016),doi:10.1038/nbt.3547、参照によりその全体が組み込まれる)、および合成ゲノミクス。新しい育種技法の別の名称である、今日の標的化ゲノム編集の主要な部分は、修飾が意図されるゲノムの選択された位置でDNA二本鎖切断(DSB)を誘導するための応用である。DSBの直接修復により、標的化ゲノム編集が可能になる。そのような応用を利用して、変異(例えば、標的化変異または正確なネイティブ遺伝子編集)、および遺伝子(例えば、シス遺伝子、遺伝子内、または導入遺伝子)の正確な挿入を生成することができる。変異をもたらす応用は、SDN1、SDN2、SDN3などの部位指向性ヌクレアーゼ(SDN)技術として特定されることが多い。SDN1の場合、成果は標的化された非特異的な遺伝子欠失変異であり、DNA DSBの位置は正確に選択されるが、宿主細胞によるDNA修復はランダムであり、小さなヌクレオチドの欠失、付加、または置換をもたらす。SDN2の場合、SDNを使用して標的化DSBを生成し、DNA修復テンプレート(1つまたはいくつかのヌクレオチドの変更を除いて標的化DSB DNA配列と同一の短いDNA配列)を使用してDSBを修復する。これにより、目的の所望の遺伝子の標的化された所定の点変異がもたらされる。SDN3の場合、SDNは、新しいDNA配列(例えば、遺伝子)を含むDNA修復テンプレートと共に使用される。この技術の成果は、そのDNA配列の植物ゲノムへの組み込みであろう。SDN3の使用を図示する最も可能性の高い応用は、選択されたゲノム位置でのシスジェニック、イントラジェニック、またはトランスジェニック発現カセットの挿入である。これらの各技法の完全な説明は、2011年にJoint Research Center (JRC) Institute for Prospective Technological Studies of the European Commissionによって作成され、「New plant breeding techniques - State-of-the-art and prospects for commercial development」と題される報告書に見出すことができ、参照によりその全体が組み込まれる。
【0157】
いくつかの実施形態では、Foc-TR4感染を予防または処置するために様々なアプローチが取られた。本開示は、Foc-TR4を予防または処置するための重要なアプローチは、(1)抵抗性バナナ栽培品種を見つけること、(2)選択されたバナナ栽培品種から抵抗性遺伝子および/または形質を特定すること、ならびに(3)抵抗性遺伝子および/または形質を感受性のバナナ栽培品種に育種/導入することであることを教示する。
【0158】
Zuoら(2018)は、129のバナナ系統を評価し、Foc-TR4に非常に抵抗性である10のバナナ系統を発見し、したがって、研究のために天然に存在する抵抗性栽培品種を提供する。
【0159】
Liら(2012)は、抵抗性変異体の根のトランスクリプトームおよび発現プロファイルを調べ、Foc-TR4で攻撃した後の2つの時点で、これらを感受性の野生型ブラジルキャベンディッシュバナナと比較した。約88,000の一遺伝子(unigene)を発見し、そのうち5,000は他の植物の防御経路に関連していた。抵抗性変異体で同じまたはより低いレベルで発現されたいくつかの植物細胞木化遺伝子を含む、ある2,600の遺伝子が抵抗性変異体で差次的に発現されたと結論付けた。
【0160】
同様に、Baiら(2013)は、Foc-TR4感受性のブラジルの栽培品種からの根のトランスクリプトームを、病害の重症度がはるかに低いことが知られているYueyoukang1の栽培品種と比較した。Baiらは、異なる時点で500~2000の異なる一遺伝子の差次的発現を発見し、これらは11の異なる種類の代謝経路にクラスター化され得る。Baiらは、感受性栽培品種と抵抗性栽培品種との間に差次的に調節された、細胞壁の木化に関連する遺伝子を発見し、具体的には、4-クマル酸:CoAリガーゼ(4CL)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、セルロースシンターゼ、カフェオイル-CoA O-メチルトランスフェラーゼ(CCoAM)、およびシンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(CAD)は、抵抗性栽培品種でより高いレベルで発現され、細胞壁木化がFoc-TR4抵抗性に関与する機構のうちの1つであり得ると結論付けた。Baiらは、これはLiら(2012)で見出された結果と矛盾していることを指摘し、異なる植物は異なる抵抗性機構を有する可能性があり、バナナ栽培品種がFoc-TR4にどのように抵抗することができるかを解読するにはより多くの作業が必要であると結論付けた。
【0161】
Wangら(2017)はまた、花芽分化時の差次的な根の遺伝子発現を調べ、感受性バナナ栽培品種と感受性のバナナ品種の間の根で差次的に発現する107の遺伝子を発見した。
【0162】
Zhangら(2018)は、Foc-TR4感染が、抵抗性栽培品種(Pahang)および感受性栽培品種(Brazilian)の根で、球茎に到達するまで同様に進行することを示し、菌類バイオマスおよび壊死の程度は、Pahang対Brazilianで顕著に低かった。(バナナの「球茎」は、根が成長する地下茎または根茎である。)
【0163】
Van der Bergら(2007)は、定量RT-PCRを使用して、Foc-4感染後にFW耐性GCTCV-218バナナ栽培品種で上方制御された遺伝子を特定した。対照は、FW感受性ウィリアムズ品種であった。彼らは、FW感受性ウィリアムズと比較して、FW耐性GCTCV-218ではいくつかの遺伝子が上方制御されたことを発見した。予想通り、上方制御された遺伝子の多くは、細胞壁強化遺伝子を含む、既知の防御関連遺伝子と相同であった。根で上方制御された13の遺伝子が報告された。彼らは、「結果は、防御に関与する遺伝子を明らかにし、バナナのFusarium立ち枯れ病を理解し、それによって効果的な病害管理戦略を開発するための一歩を提供する」と述べているが、この論文は、GenBankに寄託した13のうちのいずれか1つがFusarium立ち枯れ病を防除するために使用され得ることを示唆していない。これらの遺伝子を使用してFusarium立ち枯れ病を防除するための特定の戦略は示されていない。
【0164】
Vishnevetskyら(2009)(米国特許第7,534,930号)は、バナナ植物を遺伝子操作して、黒および黄シガトカ病ならびにBotrytis cinereaに対する抵抗性を含む外因性の病害抵抗性形質を付与する方法を説明した。Vishnevetskyらは、エンドキチナーゼ、スチルベンシンターゼ、およびスーパーオキシドジスムターゼをコードする遺伝子を含む、3つのポリヌクレオチドをバナナ植物に操作した。
【0165】
Paul et alら(2011)は、「Lady finger」バナナ栽培品種に安定して形質転換された場合、温室試験において、パナマ病のレース1に対して抵抗性を付与するように思われた、線虫C.elegansから遺伝子を単離した。
【0166】
線虫由来の遺伝子によるバナナの形質転換は、消費者に受け入れられる可能性は低いが、バナナ由来の遺伝子によるDaleグループによる追跡調査は、GMO形質転換バナナにおいてFusarium抵抗性を達成するのに有望であることを示す。例えば、Peraza-Echeverriaら(2009)は、野生のバナナ、Musa acuminata malaccensisから抵抗性遺伝子類似体(RGA2)遺伝子を単離した。この遺伝子は、大きなNB-LRR型抵抗性遺伝子ファミリーのメンバーである。FW感受性のキャベンディッシュ植物に形質転換された場合(Daleら、2017)、この遺伝子はFusariumに対する抵抗性を付与するように思われる。Daleら(2017)は、トランスジェニックバナナ植物の圃場試験を3年間実施した。試験の結論では、FW感受性の対照植物の約67%~100%が枯れたか、または感染していた。しかしながら、候補遺伝子でトランスフェクトされたバナナの4つの系列では、形質転換されたバナナの30%未満が重度の感染の兆候を示した(すなわち、≧70%はある程度の耐性または抵抗性を示した)。RGA2で形質転換された1つの系列は、TR4に免疫があるように思われた。これは、遺伝子がある程度のFW抵抗性を付与する可能性がある十分な証拠であるが、この遺伝子は10年以上前に最初に単離され、バナナ栽培産業がRGA2遺伝子を活用するかどうかは不明である。
【0167】
ある程度のFusarium抵抗性に寄与するMusaゲノムには最大4つの遺伝子が存在する可能性があると考えられているため(バナナ産業の育種家および科学者との未発表のやりとり)、生産者に受け入れられても、RGA2だけでは現在の危機を解決できない可能性があることに注意することが重要である。RGA2が受け入れられたとしても、産業にはTR4を防除するための複数の遺伝子が緊急に必要とされている。
【0168】
発明者は、本開示のFusR1がRGA2とは完全に無関係であることを述べる。2つの遺伝子は完全に異なるヌクレオチド配列を有し(すなわち、それらは配列同一性を有しない)、それらは異なる染色体上にあり、それらは異なる生化学を有し、それらは植物における異なる作用機序を有する。
【0169】
Wuら(2016)は、亜熱帯の中国で発見された、病害抵抗性のある野生のバナナの近縁種であるMusa itineransの配列決定を行った。Ks値は、Musa属の種分化および古倍数化(paleoploidization)事象を推定するために計算された。また、Ka/Ks値は、予想どおり、Musa itineranゲノムのほとんどの遺伝子が精製選択を受けていることを示すために計算された。M. itineransは病害抵抗性であることが知られているため、そのゲノムは病害抵抗性遺伝子のために利用され得ることが示唆された。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示は、FW抵抗性バナナ栽培品種からのFusarium立ち枯れ病などの病害に抵抗性のある遺伝子を発見、特定、および選択する方法を提供する。他の実施形態では、本開示は、本開示の方法から特定されたFusarium抵抗性遺伝子(例えば、FusR1遺伝子)のヌクレオチドおよびポリペプチド配列を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、本開示に記載されるCRISPR技術を含むがこれらに限定されない次世代植物育種技術を使用することによって、抵抗性遺伝子および/または形質を有するバナナ品種を生成および/または生産する方法を教示する。
【0171】
III.Musa属からのFusR1遺伝子の特定
栽培されたバナナは、自然および人間主導の両方のいくつかの種間および種内の交雑事象を伴った複雑な進化および栽培化の歴史の結果として、一般に三倍体(いくつかは二倍体)である。食用の栽培バナナは、主に2つの野生の二倍体種であるMusa acuminataとMusa balbisianaとの間の交雑の結果である(Christelovaら、2017)。バナナの人による栽培化は、約7,000年前に東南アジアで始まった(D’Hontら、2012)。M.acuminataに由来するバナナゲノムは「A」ゲノムとして知られるが、M.balbisianaに由来するバナナは「B」ゲノムを有する(D’Hontら、2012)。したがって、二倍体のM.acuminataのゲノム構造はAAとラベル付けされ、二倍体のM.balbisianaのゲノム構造はBBとラベル付けされる。したがって、食用バナナの栽培品種は、3倍体のAAAゲノム(キャベンディッシュまたはグロスミッチェルのような)、AABゲノム(多くのオオバコにあるような)、またはABBゲノム(Cachaco landraceのような)を有し得る。M.acuminataは、マレーシアまたはインドネシアで発生した可能性がある(Christelovaら、2017)。対照的に、M.balbisianaは、インド、タイ、またはフィリピンで生じたと考えられている(Christelovaら、2017)。したがって、これら2つの種はもともと異所性であり、地理的な隔離により、各種が独特の形質を発達させる機会が与えられた。後に人間がM.acuminataの栽培品種を、M.balbisianaが存在する地域に移動させたとき、種間交雑が起こった。
【0172】
商業的なバナナの輸出生産の少なくとも99%を占める経済的に重要なキャベンディッシュ栽培品種は、三倍体誘導性不稔性を示す。これは単為結実と組み合わされて、種子のない食用果実を生み出すが、育種を著しく妨げるため、キャベンディッシュバナナは栄養繁殖(クローン的に)である。キャベンディッシュの遺伝子型には、3つのM.acuminata由来の「A」ゲノムがある。
【0173】
いくつかの実施形態では、発明者は、バナナにおけるFusarium立ち枯れ病を効果的に防除する遺伝子を特定した。例えば、本開示は、FusR1(Fusarium抵抗性1)と名付けられた遺伝子が、発明者の分子進化分析アプローチを使用することによって特定されたことを教示する。最近の開示は、FusR1遺伝子が、栽培バナナのM.itinerans、M.acuminata、M.balbisiana、M.basjooを含むMusa種、ならびに近縁関係にある属の唯一のメンバーであるMusella lasiocarpaの天然遺伝子であることを教示する。野生のバナナ近縁種であるMusa itineransのオルソログ(2つの対立遺伝子)は、ここでは配列番号1および配列番号4として示される。M.itinerans FusR1配列は、複数の系統(ITC1526、ITC1571、およびPT-BA-00223を含むがこれらに限定されない)から得た。すべてのM.itinerans系統は、非常にFW抵抗性である(Liら、2015;Wuら、2016)。
【0174】
本開示は、発明者がM.itineransにおいてFusR1の2つの対立遺伝子を特定したことを教示する。配列番号1は、FusR1 mRNA配列の対立遺伝子#1を示す。配列番号2は、対立遺伝子#1のコード配列を示す。配列番号4は、FusR1 mRNA配列の対立遺伝子#2を示す。配列番号5は、対立遺伝子#2のコード配列を示す。対立遺伝子1および2は、配列が非常に類似し、それらはわずか4つのアミノ酸の違いをコードする。
【0175】
FusR1の2番目の転写物がM.itineransから特定され(配列番号7)、この転写物は、正常なリーディングフレームの破壊をもたらす発現された(すなわち、スプライシングされていない)イントロンを有する。これは非常に低いレベルで発現される。
【0176】
M.itineransは、Fusarium立ち枯れ病の影響に対して自然に非常に抵抗性である(Liら、2015;Wuら、2016)。いくつかの実施形態では、M.itineransからのFusR1遺伝子は、Fusarium立ち枯れ病に対する抵抗性に関与している。
【0177】
本開示はさらに、発明者がM.acuminataにおいてFusR1の3つの対立遺伝子を特定したことを教示する。これらの対立遺伝子のうちの2つは、M.acuminataのFW抵抗性系統から単離された。3番目の対立遺伝子は、FW感受性のM.acuminata系統から単離された。M.acuminataのFusR1 FW抵抗性配列は、ITC0896(M.a.亜種banksii)およびPT_BA-00281(Pisang Bangkahulu)を含む複数のFW抵抗性系統から得た。M.acuminataのFW感受性配列は、FW感受性系統ITC0507、ITC0685、PT-BA-00304、PT-BA-00310、およびPT-BA-00315からである。
【0178】
配列番号8は、M.acuminataからのFW抵抗性FusR1遺伝子の対立遺伝子1のmRNA配列を示す。配列番号10は、M.acuminataからのFW抵抗性FusR1遺伝子の対立遺伝子2のmRNA配列を示す。M.acuminataからのFW抵抗性対立遺伝子1のコード配列は、配列番号9に示される。配列番号11は、M.acuminataからのFW抵抗性対立遺伝子2のコード配列を示す。
【0179】
配列番号13は、M.acuminataからのFW感受性FusR1対立遺伝子のmRNA配列を示す。(M.acuminataのFW感受性配列は、系統ITC0507、ITC0685、PT-BA-00304、PT-BA-00310、およびPT-BA-00315から特定された。これらの系統には、Pisang Madu、Pisang Pipit、およびPisang Rojo Uterなどのバナナ栽培品種からの複数のサンプルが含まれ、これらはすべてFW感受性であると十分に特徴付けられている(Chenら、2019)。
【0180】
発明者は、M.acuminataからFusR1の推定コアプロモーターを特定した。発明者は、異なるアルゴリズム/ソフトウェアから一致する予測を見出すために、2つの異なるプロモーター予測アプリケーションを使用した。
【0181】
第一段階として、発明者は、M.acuminataに由来するFusR1遺伝子のFW抵抗性対立遺伝子のコード領域の上流で始まる753bpの配列断片(配列番号31)を増幅し配列決定した。この断片は、M.acuminata染色体5にあるGenBank受託NC_025206(Musa acuminata subsp.malaccensis染色体5、ASM31385v2、全ゲノムショットガン配列)のbp7868911-bp7869210、およびbp7869341-bp7869743と100%同一である。
【0182】
発明者は、最初に、Berkeley Drosophila Genome Project(BDGP)で利用可能な「Neural Network Promoter Prediction」(NNPP)を使用してFusR1の上流領域を分析した。BDGPは、National Human Genome Research Institute、National Cancer Institute、およびHoward Hughes Medical Instituteによって資金提供されているDrosophila Genome Centerのコンソーシアムである。NNPPソフトウェアは、ヒトおよびDrosophila melanogasterのプロモーター配列で「トレーニング」されたが、植物でもプロモーター配列を特定するのに一般的に効果的であることが証明されている(Reese、2001)。
【0183】
NNPP分析は、FusR1のコアプロモーターを特定することに成功した。分析結果は次のとおりである。配列番号31の最初の189塩基(小文字で示される)は、FusR1の5’UTR配列を含む非コード上流配列であり、次の423塩基はコード配列である(大文字で示される)。このコード配列は、配列番号9と同一である。最後の141塩基は3’UTRである(小文字で示される)。配列番号31の塩基92~141
(配列表1)
【化1】
は、NNPPで予測されたプロモーター配列であり、小文字の太字で示される。塩基対132の転写開始部位(TSS)は小文字で下線付きの太字で示される。NNPPは、このプロモーターに.88(すなわち、88%の信頼レベル)のスコアを割り当てる。
【0184】
配列番号31:
(配列表2)
【化2】
【0185】
次に、発明者は、植物プロモーター配列の特定を特に目的とする「Prediction of PLANT Promoters」(TSSP)ソフトウェアを使用して、M.acuminataからのFusR1の上流領域を分析した(Solovyev and Shahmuradov、2003)。これは、Softberry,Inc.によって作成された一連の配列分析ソフトウェアの一部である。TSSPは、転写開始部位(TSS)を配列番号31の132位として特定し、これは、NNPPソフトウェアの結果と同一である(上記を参照されたい)。TSSPは、FusR1 TATAボックス(上記の小文字のイタリック体で示される)を配列番号31の塩基102~107に位置付ける。したがって、FusR1 TATAボックスは、予想どおり、TSSの25塩基対上流にある。
【0186】
これらの2つの異なるプロモーター予測アプリケーションが一致する結果をもたらすため、発明者は、M.acuminataの正しいプロモーター配列を特定した。
【0187】
本開示は、これらの栽培品種をFusarium立ち枯れ病抵抗性にするために、新たに特定されたFusR1遺伝子およびその変異型を栽培バナナ、特にFusarium感受性キャベンディッシュ栽培品種に導入する方法を教示する。いくつかの実施形態では、本開示は、従来の植物育種法を使用して、M.itineransからのFusR1遺伝子/形質をキャベンディッシュおよび他の栽培バナナに導入することができることを教示する。他の実施形態では、本開示は、次世代植物育種法を使用して、M.itineransからのFusR1遺伝子/形質をキャベンディッシュおよび他の栽培バナナに導入することができることを教示する。さらなる実施形態では、本開示は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR RNA(crRNA)によって指向された配列特異性を有するCRISPR関連(Cas)タンパク質のエンドヌクレアーゼ活性を利用するCRISPR/Cas9系技術を使用する標的化ゲノム編集系などのゲノム編集技法を使用して、M.itineransからのFusR1遺伝子/形質をキャベンディッシュおよび他の栽培バナナに導入する方法を教示する。
【0188】
キャベンディッシュが絶滅する可能性の危機を考えると、本開示は、Fusarium抵抗性遺伝子/形質を有する最小限の遺伝子編集バナナの生産に適合したCRISPR/Cas9系を使用して、迅速で効率的かつ正確なゲノム編集アプローチを提供し、これはバナナが重要な経済および食糧の安全を提供する発展途上国で特に受け入れられるだろう。本開示は、M.itineransからの天然FusR1遺伝子の栽培バナナへの移入が、標的化されたクリーンで効率的な導入を可能にし、また従来の遺伝子編集技法と比較して、潜在的な副作用を最小限に抑えるCRISPR技術を用いて最もよく達成され得る。
【0189】
いくつかの実施形態では、FusR1の有用な対立遺伝子(配列番号8および配列番号10)は、自然にFW抵抗性のM.acuminata集団から特定される。これらの対立遺伝子はFW抵抗性を付与する。本開示は、M.acuminataに由来するFusR1対立遺伝子を、M.itineransに由来するFusR1対立遺伝子(配列番号2および配列番号5)と組み合わせて使用して、栽培バナナ、特にキャベンディッシュのFW抵抗性を増強することができることを教示する。
【0190】
本開示は、本開示で開示される発明者によって特定された少なくとも2つのFusR1遺伝子との遺伝子スタッキングを教示する。
【0191】
M.itineransのFusR1オルソログ(配列番号2および配列番号5)とM.acuminataのFW抵抗性対立遺伝子(配列番号8および配列番号10)の両方を、従来の植物育種および/または新世代植物育種アプローチにおいて使用することができる。新世代植物育種アプローチには、栽培バナナにおけるマーカー支援選択(MAS)および/またはゲノム編集技法が含まれるが、これらに限定されない。
【0192】
いくつかのM.balbisiana系統は、FWに対して非常に抵抗性であると厳密に特徴付けられている一方で、他の系統はFWに非常に感受性である。野生のM.balbisiana系統は、Fusariumのような病原体に抵抗性であろうと予想される場合があるが、近縁関係にある系統がFW抵抗性関してそれほど顕著に異なる理由を研究者が理解することは困難であった。
【0193】
本発明者らは、図5に示されるように、FW感受性M.balbisiana系統におけるFusR1遺伝子のヌクレオチド配列の構造的な違いを発見した。発明者が分析したすべてのFW感受性M.balbisiana系統は、「壊れた」FusR1転写物を含む。この分析は、調べたすべてのFW感受性系統で見つかった「壊れた」FusR1遺伝子に限定される。発明者が調べたすべてのM.balbisiana系統のFusR1mRNAは、正常なリーディングフレームを破壊するスプライシングされていない発現されたイントロンを有した。加えて、発明者は、(i)すべての系統で、いくつかのFusR1 mRNA(2)において長い82もしくは84bpの欠失、より小さな1bpの欠失、または(ii)一部の系統で、4bpの挿入を見つけその各々も、オープンリーディングフレームを破壊し、したがって、変異した非機能性FUSR1タンパク質をコードする。すべてのFW感受性のM.balbisiana系統は、上記のこれらのリーディングフレームディスラプターのうちの1つ以上を有し、非機能性タンパク質をもたらす。いくつかの実施形態では、本開示は、一部のM.balbisiana系統が4つすべてのリーディングフレームディスラプターを有することを教示する。図5を参照されたい。
【0194】
他の実施形態では、発明者はまた、FW抵抗性対FW感受性のM.acuminata系統を研究したときに、別の顕著な差を発見した。いくつかの実施形態では、M.acuminataのFusR1は、FusR1対立遺伝子に応じて抵抗性対感受性をもたらす。本開示は、「抵抗性対立遺伝子」であることが判明した2つの対立遺伝子(配列番号8および配列番号10)がFW抵抗性を付与することを教示する。これらの2つの対立遺伝子は、FW抵抗性の野生のバナナ種であるM.basjoo(配列番号17および配列番号20)に由来するFusR1オルソログと配列が非常に類似する。第3の対立遺伝子であるFW感受性対立遺伝子は、FW感受性のM.acuminata系統(配列番号13)にのみ見られる。
【0195】
M.balbisianaのFusR1配列(配列番号26および配列番号27)は、この遺伝子がFW抵抗性の喪失を引き起こすリーディングフレーム破壊インデルおよび/または発現されたスプライスされていないイントロンによって損傷を受けるため(調べたFW感受性M.balbisiana系統のすべてにおいてそうであるため)、FW抵抗性を付与しない。
【0196】
さらなる実施形態では、FW抵抗性のM.acuminata系統に由来するFusR1配列(配列番号8および配列番号10)は、M.basjooに由来するFusR1オルソログ(配列番号17)と非常に高い配列類似性を有する。M.basjooは、FWに非常に抵抗性である野生のバナナ種である(Liら、2015)。他の実施形態では、FW感受性のM.acuminata系統からのFusR1配列(配列番号13)は、FW抵抗性のM.acuminata対立遺伝子(配列番号8および配列番号10)とは異なる。
【0197】
本開示は、M.acuminataのFW抵抗性が、FW抵抗性系統にのみ見られる対立遺伝子を有することに依存することを教示する。M.acuminataおよびM.balbisianaは、いずれかがM.itineransまたはM.basjooに対してよりも互いにより近縁関係にあるが、FW抵抗性を制御するFusR1配列は、種が実際に関連している方向とは正反対に一緒にクラスター化する。他の実施形態では、FusR1遺伝子は、FusR1がMusa種内の実際の関係を反映できないように適応された(すなわち、積極的に選択された)。本開示は、2つの独立した適応事象(収束進化)、またはFW抵抗性FusR1バージョンがおそらく様々なMusa種間で交換されている(遺伝子移入)ことを教示する。
【0198】
発明者は、いくつかのMusa種からの2つの異なる保存された単一コピー遺伝子、C2H2およびTOPO6を配列決定することにより、これらのMusa種間の真の系統発生関係を確認した。C2H2型のジンクフィンガータンパク質は、バナナの果実の成熟を含む、植物の発生および成長、ならびに非生物的ストレス抵抗性において重要な役割を果たす(Han et al.,Front.Plant Sci.,Vol.11,Article 115:1-13,20 February 2020、Han et al.,Postharvest Biology and Technology,116:8-15,June 2016)。古細菌トポイソメラーゼVIの植物相同体のサブユニットBの核遺伝子マーカー領域であるTOPO6は、ほとんどの植物群の一倍体ゲノムの単一コピー遺伝子座として生じる(Frank R. Blattner,Plant Systematics and Evolution,Vol.302:239-244,2016)。これらの2つの遺伝子(その生化学的機能は周知である)は、病原体の防除に関与しないため、Fusariumへの曝露の結果としてバナナFusR1に現れる適応変化を理解するための「対照」として理想的である。したがって、本開示は、M.acuminataおよびM.balbisianaが姉妹種であるという文献のコンセンサスが正しいことを教示する、つまり、これらのバナナ種で新たに特定された遺伝子FusR1に顕著な変化が生じ、FusR1がFW抵抗性を付与するというさらに多くの証拠を提供する。図3および4に提供される系統樹を参照されたい。
【0199】
本開示は、M.itineransからの強くFW抵抗性のFusR1対立遺伝子間の重要な配列の違いを教示し、これにより、発明者は、FusR1がFWを防除することができるようにする正確ないくつかのヌクレオチドを決定することができる。発明者の発見に基づいて、本開示は、FusR1のいくつかの重要なヌクレオチドのみを正確に変更することによって、FW感受性キャベンディッシュ(および他のすべての栽培バナナ)にFW抵抗性を付与するために、CRISPR/Cas系を使用する方法を教示する。また、本開示は、これらの重要なヌクレオチドを使用して、天然遺伝子よりも高いFW抵抗性を有する新しいFusR1配列を作成する方法も教示する。
【0200】
IV.FusR1遺伝子およびその変異型
本開示は、部分的には、バナナの品種および種からの新しいFusR1遺伝子の単離に基づいている。このFusR1遺伝子のヌクレオチド配列およびそのオルソログ配列は、それぞれ、配列番号1~2、4~5、7~11、13~14、16~18、20~21、23~24、および26~31に示される。
【0201】
いくつかの実施形態では、配列番号1は、最もFusarium抵抗性の野生のバナナ種であるMusa itineransからのFusR1の対立遺伝子1の部分mRNA配列である。配列番号4は、Musa itineransからのFusR1の対立遺伝子2の部分mRNA配列である。
【0202】
M.itineransからの前述のFusR1対立遺伝子(配列番号1および配列番号4)は、わずかに異なるタンパク質をコードし、それぞれ、配列番号3および配列番号6である。配列番号1の翻訳されたポリペプチドは、配列番号3として示される。配列番号4の翻訳されたポリペプチドは、配列番号6として示される。これらはわずかに異なるのみで、いくつかの異なるアミノ酸残基はすべて生化学的に保存的である。いくつかの実施形態では、5つの異なるM.itinerans系統が配列決定され、すべての系統はこれらの同じ2つのFusR1対立遺伝子を有した。
【0203】
いくつかの実施形態では、配列番号8および配列番号10は、部分mRNA(完全なコード配列を含む)である。これらは、Musa acuminata ssp.banksia(受託番号ITC0896)およびPT_BA-00281(Pisang Bankahulu)からのFusR1のFW抵抗性対立遺伝子である。これらの2つの対立遺伝子は、単一のサイレント部位で異なる。他の実施形態では、配列番号13は、M.acuminataからのFW感受性対立遺伝子を表す。さらなる実施形態では、配列番号9および配列番号11は、M.acuminataからのFW抵抗性対立遺伝子のコード配列を表す。また、配列番号12は、配列番号8および配列番号10の翻訳されたポリペプチド配列である、M.acuminataからのFW抵抗性タンパク質配列を表す。
【0204】
いくつかの実施形態では、配列番号17および配列番号20は、Fusariumに抵抗性である野生のバナナ種であるM.basjooからの部分mRNA FusR1対立遺伝子配列である。他の実施形態では、配列番号23は、別の野生のバナナ近縁種であるMusella lasiocarpaからのFusR1配列である。
【0205】
発明者が本明細書で報告するmRNA配列のすべては、少しの5’UTRと、通常は3’UTRの末端の数塩基とが欠けているため、厳密には部分的であることに留意する。本明細書で報告されているmRNAの大部分は、完全な配列であるものに非常に近い。
【0206】
いくつかの実施形態では、配列番号26および配列番号28~30は、いくつかの異なるM.balbisiana系統からの部分的mRNA FusR1配列である。配列番号27は、M.balbisianaからのFusR1コード配列である。いくつかの実施形態では、多数のFW感受性M.balbisiana系統が調べられた。FW感受性のM.balbisiana系統からのすべてのFusR1配列では、FusR1配列の構造が壊れており、かつ/または損傷している。すべてのFW感受性のM.balbisiana系統は、コード配列の340位に1bpの欠失を有するFusR1コード配列を有した。すべてのFW感受性のM.balbisiana系統はまた、コード配列に長いスプライシングされていない発現されたイントロンを有した。一部も長い(82~84bp)欠失を有し、いくつかは別の4bp欠失を有し、すべての場合において、1塩基対の欠失を有した(他のすべてのバナナ系統を含む他の植物種からのFusR1と比較して)。3の倍数であるため、84bpはリーディングフレームを破壊せず、タンパク質の一次構造から28のアミノ酸残基を削除し、したがって、折り畳まれたタンパク質の三次構造を潜在的に破壊し、したがって、機能に悪影響を与える可能性がある。いずれの場合でも、我々の発見に基づくと、遍在する1bpの欠失は、常にリーディングフレームの破壊をもたらす。
【0207】
発明者は、発明者がFusR1を配列決定したMusa balbisiana系統からのmRNA配列を含んだ。これらは、M.balbisianaにおいてFusR1が「壊れている」様々な方法を図示する。発明者は、発明者が分析したすべてのM.balbisiana系統が壊れたFusR1mRNA転写物を有することに本明細書で述べる。図5は、これらのM.balbisiana FusR1配列が整列されていることを示す。
【0208】
M.balbisiana系統ITC1016(配列番号26)には、82塩基対のスプライシングされていない発現されたイントロンが含まれている。このイントロンはリーディングフレームを破壊し、8bpに位置する未熟の終止コドンをイントロンにもたらし、これにより、(正常な423bpコード配列とは対照的に)短縮化された141bpコード配列が生じる。さらに、この系統(および実際にはすべてのM.balbisiana系統)も、真の終止コドンの約90bp 5 ’側に位置する1塩基対の欠失を有し、(イントロンが適切にスプライシングされていたとしても)未熟な停止コドンをもたらし、コード配列が短縮化される。
【0209】
M.balbisiana系統ITC0545(配列番号28)には、同じ82塩基対のスプライシングされていない発現されたイントロンが含まれている。このイントロンはリーディングフレームを破壊し、8bpに位置する未熟の停止コドンをイントロンにもたらし、(正常な423bpコード配列とは対照的に)短縮化された141bpコード配列を生じさせる。発現されたイントロンの別の27bp下流には、85bpの欠失がある。これを84bpの発現されたイントロンと組み合わせると、数学的に正しいリーディングフレーム(85bp -82bp=3bp)が復元されるが、上記で説明したように、折り畳まれたFusR1タンパク質の機能的に重要な領域にある28のアミノ酸残基が失われる。加えて、この系統も、真の終止コドンの約90bpの5’側に位置する1塩基対の欠失を有し、これは(イントロンが適切にスプライシングされていたとしても)、未熟な停止コドンをもたらし、コード配列が短縮化される。最後に、この系統からのFusR1 mRNAも、さらに下流にフレームを破壊する4bpの挿入を有する。
【0210】
M.balbisiana系統ITC0080(配列番号29)には、このバージョンのスプライシングされていないイントロンの長さが84 bpであることを除いて、以前の系統と同じスプライシングされていない発現されたイントロンが含まれている。この発現されたイントロンはリーディングフレームを破壊しないが、折り畳まれたタンパク質の機能的に重要な領域にある28の余分なアミノ酸残基を導入するため、FusR1タンパク質の正常な折り畳みを妨げる可能性が非常に高い。加えて、この系統も、真の終止コドンの約90bpの5’側に位置する1塩基対の欠失を有し、これは(イントロンが適切にスプライシングされていたとしても)、未熟な停止コドンをもたらし、コード配列が短縮化される。
【0211】
M.balbisiana系統ITC1527(配列番号30)には、今回は長さが82bpの、以前の系統と同じスプライシングされていない発現されたイントロンが含まれている。この場合も、このイントロンはリーディングフレームを破壊し、8bpに位置する未熟の停止コドンをイントロンにもたらし、(正常な423bpコード配列とは対照的に)短縮化された141bpコード配列を生じさせる。加えて、この系統からのFusR1 mRNAは、さらに下流に4bpの挿入を有する。加えて、この系統も、真の終止コドンの約90bpの5’側に位置する1塩基対の欠失を有し、これは(イントロンが適切にスプライシングされていたとしても)、未熟な停止コドンをもたらし、コード配列が短縮化される。
【0212】
発明者が分析したすべてのM.balbisiana系統は、FusR1 mRNAにこれらの様々な欠陥のうちの1つ以上の組み合わせを有する。
【0213】
表1は、本開示の配列情報を要約する。
【表1-1】

【表1-2】
【0214】
本開示によれば、新規のFusR1遺伝子およびそのオルソログは、病原性病害、特に真菌病原体、ウイルス、線虫、昆虫などによって引き起こされる病害に抵抗性である作物植物の構築を容易にするのに有用である。本開示のFusR1遺伝子はまた、遺伝子マッピングにおけるマーカーとして、ならびに目的の植物における病害抵抗性を評価する際に使用することができる。したがって、配列は育種プログラムで使用することができる。例えば、Gentzbittelら(1998,Theor.Appl.Genet.96:519-523)を参照されたい。本開示の配列のさらなる用途には、防御/抵抗性経路上の他のシグナル伝達構成要素を単離し、対応するプロモーター配列を単離するためのベイトとして配列を使用することが含まれる。これらの配列は、花粉の発生、器官形状の調節、糊粉および苗条表皮の分化、胚形成能、ならびに細胞/細胞相互作用などの植物発生過程を調節するためにも使用することもできる。一般に、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview,N.Y.)を参照されたい。本開示の配列はまた、新しい抵抗性特異性を生成するための変異型を生成するために(例えば、「ドメイン交換」により)使用することができる。
【0215】
本開示は、単離されたまたは実質的に精製された核酸またはタンパク質組成物を包含する。「単離された」または「精製された」核酸分子もしくはタンパク質、またはその生物学的に活性な部分は、その自然発生環境において見られる核酸分子またはタンパク質に通常付随する、またはそれと相互作用する構成要素を実質的または本質的に含まない。したがって、単離または精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組換え技法によって産生される場合、他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まないか、または化学的に合成される場合、化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。適切には、「単離された」ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する生物のゲノムDNAにおいてポリヌクレオチド(すなわち、ポリヌクレオチドの5’および3’末端に位置する配列)に自然に隣接する配列(特にタンパク質コード配列)を含まない。例えば、様々な実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNAにおいてポリヌクレオチドに自然に隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、または0.1kb未満のヌクレオチド配列を含み得る。細胞材料を実質的に含まないポリペプチドは、約30%、20%、10%、5%未満(乾燥重量で)の汚染タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。本開示のタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え産生される場合、培養培地は、適切に、約30%、20%、10%、または5%未満(乾燥重量で)の化学前駆体または目的の非タンパク質化学物質を表す。
【0216】
本開示のFusR1ポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードするFusR1ヌクレオチド配列の一部は、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000の連続するアミノ酸残基、または本開示の完全長FUSR1ポリペプチドに存在するほぼ総数までのアミノ酸(例えば、それぞれ、配列番号3、6、12、19、または22の場合、140のアミノ酸残基)をコードする。ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用なFusR1ヌクレオチド配列の部分は、一般に、FUSR1ポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードする必要はない。
【0217】
したがって、FusR1ヌクレオチド配列の一部は、FUSR1ポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードし得るか、または当技術分野で既知の標準的な方法を使用してハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして使用することができる断片であり得る。FUSR1ポリペプチドの生物学的に活性な部分は、本開示のFusR1ヌクレオチド配列のうちの1つの一部を単離し、FUSR1ポリペプチドのコードされた部分を発現し(例えば、インビトロでの組換え発現によって)、FUSR1ポリペプチドのコードされた部分の活性を評価することによって調製され得る。FusR1ヌクレオチド配列の一部である核酸分子は、少なくとも約15、16、17、18、19、20、25、30、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、もしくは650ヌクレオチド、または本明細書に開示される完全長FusR1ヌクレオチド配列に存在するほぼ最大数のヌクレオチド(例えば、それぞれ、配列番号1~2、4~5、8~10、17~18、または20~21の場合、約350~650ヌクレオチド)を含む。
【0218】
本開示はまた、開示されたヌクレオチド配列の変異型を企図する。核酸変異型は、対立遺伝子変異型(同じ遺伝子座)、相同体(異なる遺伝子座)、およびオルソログ(異なる生物)など、天然に存在し得るか、または非天然に存在し得る。これらのような天然に存在する変異型は、例えば、当技術分野で既知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技法のように、周知の分子生物学技法を使用して特定することができる。非天然に存在する変異型は、ポリヌクレオチド、細胞、または生物に適用されるものを含む、変異誘発技法によって作製することができる。変異型は、ヌクレオチドの置換、欠失、逆位、および挿入を含むことができる。多様性は、コード領域および非コード領域のいずれかまたは両方で生じ得る。多様性は、保存的および非保存的アミノ酸置換の両方をもたらし得る(コードされた生成物と比較して)。ヌクレオチド配列の場合、保存的変異型には、遺伝暗号の縮重のために、本開示のFUSR1ポリペプチドのうちの1つのアミノ酸配列をコードするそれらの配列が含まれる。変異型ヌクレオチド配列はまた、例えば、部位指向性変異誘発を使用することによって生成されるが、それでも本開示のFUSR1ポリペプチドをコードするものなどの、合成的に誘導されたヌクレオチド配列を含む。一般に、本開示の特定のヌクレオチド配列の変異型は、デフォルトパラメータを使用して本明細書の他の箇所に記載される配列アラインメントプログラムによって決定される、その特定のヌクレオチド配列に対して、少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、一般に少なくとも約75%、80%、85%、望ましくは約90%~95%以上、より適切には約98%以上の配列同一性を有する。
【0219】
変異型ヌクレオチド配列はまた、目的のポリペプチドのドメインを他のポリペプチドのドメインと交換するために使用することができる「DNAシャッフリング」などの変異原性または組換え手順に由来する配列を包含する。DNAシャッフリングを用いて、1つ以上の異なるFusR1コード配列を操作して、所望の特性を有する新しいFusR1配列を作成することができる。この手順では、組換えポリヌクレオチドのライブラリは、実質的な配列同一性を有し、インビトロまたはインビボで相同的に組換えることができる配列領域を含む関連ポリヌクレオチドの集団から生成される。例えば、このアプローチを使用して、目的のドメインをコードする配列モチーフを、本開示のFusR1遺伝子と他の既知のFusR1遺伝子との間でシャッフルして、病害抵抗性のスペクトルの拡大など、目的の特性が改善されたタンパク質をコードする新しい遺伝子を得ることができる。DNAシャッフリングの戦略は当技術分野で既知である。例えば、Stemmer(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747-10751;1994,Nature 370:389-391)、Crameri et al.(1997,Nature Biotech.15:436-438)、Moore et al.(1997,J.Mol.Biol.272:336-347)、Zlang et al.(1997 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:450-44509)、Crameri et al.(1998,Nature 391:288-291)、および米国特許第5,605,793号および同第5,837,458号を参照されたい。
【0220】
本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにそれらの断片およびバリエーションによってコードされる単離されたタンパク質の少なくとも一部を含むヌクレオチド配列を提供する。
【0221】
いくつかの実施形態では、本開示は、FUSR1をコードするヌクレオチド配列、ならびに/または配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、もしくは配列番号18に対して少なくとも約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、もしくは約99.9%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含むその機能的断片およびバリエーションを提供する。いくつかの実施形態では、FUSR1をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、または配列番号18の核酸配列を有する。
【0222】
いくつかの実施形態では、本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびに配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、または配列番号18に対して少なくとも約70%、約75%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、もしくは約99.9%の配列同一性を共有するヌクレオチド配列を含むその断片およびバリエーションを提供する。いくつかの実施形態では、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにそれらの断片およびバリエーションは、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、または配列番号18の核酸配列を有する。
【0223】
いくつかの実施形態では、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにそれらの断片およびバリエーションを使用して、植物で発現させることができる。いくつかの実施形態では、該ヌクレオチド配列を使用して、植物細胞、例えば、本明細書に開示されるバナナ品種において、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにその断片およびバリエーションの発現を指示することができる発現カセットに組み込むことができる。この発現カセットは、終結シグナルに作動可能に連結される、目的のヌクレオチド配列(すなわち、FusR1、FusR1のオルソログ、ならびにその断片およびバリエーション)に作動可能に連結されるプロモーターを含む。それはまた、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含む。コード領域は通常、目的のタンパク質(すなわち、FUSR1)をコードする。いくつかの実施形態では、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにその断片およびバリエーションを含む発現カセットは、その構成要素のうちの少なくとも1つがその他の構成要素のうちの少なくとも1つに関して異種であるようにキメラである。
【0224】
他の実施形態では、発現カセットは、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものである。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または宿主細胞がある特定の外部刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあり得る。また、発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、組織特異的プロモーターの制御下にあり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、動物および/または植物(バナナ種を含む)における特定の組織もしくは器官、または発達段階に特異的であり得る。
【0225】
本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログのヌクレオチド配列、ならびにそれらの断片およびバリエーションによってコードされるタンパク質の少なくとも一部を含むポリペプチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【0226】
本開示はまた、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログの核酸配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションによってコードされるアミノ酸配列を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログの核酸配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、または約99.9%の同一性を共有するアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。一実施形態では、本開示は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、FusR1のパラログの核酸配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションによってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、約86%、約87%、約88%、約89、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、または約99.9%の同一性を共有するアミノ酸配列をコードするアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0227】
本開示はまた、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/またはFusR1のパラログの核酸配列によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質の変異型および断片を包含する。変異型は、構成タンパク質のアミノ酸配列に改変を含み得る。ポリペプチドに関する「変異型」という用語は、参照配列に関して1つ以上のアミノ酸によって改変されているアミノ酸配列を指す。変異型は、「保存的」変化または「非保存的」変化を有し得、例えば、類似のわずかの変化はまた、アミノ酸の欠失もしくは挿入、またはその両方を含み得る。
【0228】
ポリペプチドの機能的断片および変異型には、親ポリペプチドの1つ以上の機能を維持するそれらの断片および変異型が含まれる。ポリペプチドをコードする遺伝子またはcDNAは、ポリペプチドの機能のうちの1つ以上を実質的に改変することなく、かなり変異させることができることが認識されている。第1に、遺伝暗号は縮重していることが周知であるため、異なるコドンが同じアミノ酸をコードする。第2に、アミノ酸置換が導入される場合でも、変異は保存的であり得、タンパク質の本質的な機能に重大な影響を与えない。例えば、Stryer Biochemistry 3rd Ed., 1988を参照されたい。第3に、ポリペプチド鎖の一部は、その機能のすべてを損なうか、または排除することなく欠失させることができる。第4に、挿入または付加、例えばエピトープタグの付加は、その機能を損なうか、または排除することなく、ポリペプチド鎖に行うことができる(Ausubel et al.J.Immunol.159(5):2502-12,1997)。ポリペプチドの1つ以上の機能を実質的に損なうことなく行うことができる他の修飾には、例えば、インビボまたはインビトロの化学的および生化学的修飾または異常アミノ酸の取り込みが含まれ得る。当業者に容易に理解されるように、そのような修飾には、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば、放射性ヌクレオチドによる標識、および様々な酵素修飾が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドを標識するための様々な方法、およびそのような目的に有用な標識は、当技術分野で周知であり、32Pなどの放射性同位体、標識された特異的結合パートナー(例えば、抗体)に結合するかまたはそれによって結合されるリガンド、フルオロフォア、化学発光剤、酵素、および抗リガンドを含む。機能的断片および変異型は、様々な長さのものであり得る。例えば、一部の断片は、少なくとも10、25、50、75、100、200以上のアミノ酸残基を有する。これらの変異は、天然であるか、または意図的に変更されたものであり得る。いくつかの実施形態では、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、タンパク質の特性もしくは活性、またはタンパク質が作製される方法を改変しない改変を含む変異は、本開示の実施形態である。
【0229】
保存的アミノ酸置換は、行われたときに元のタンパク質の特性への干渉が最も少ないそれらの置換である、つまり、タンパク質の構造、および特に機能は保存されており、そのような置換によって顕著に変更されない。保存的置換は、一般に、(a)例えば、シートもしくはらせん構造として、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の大部分を維持する。保存的置換に関するさらなる情報は、例えば、Ben Bassat et al.(J.Bacteriol.,169:751 757,1987)、O’Regan et al.(Gene,77:237 251,1989)、Sahin Toth et al.(Protein Sci.,3:240 247,1994)、Hochuli et al.(Bio/Technology,6:1321 1325,1988)、および広く使用されている遺伝学および分子生物学の教科書に見出すことができる。Blosumマトリックスは、ポリペプチド配列の関連性を決定するために一般的に使用される。Blosumマトリックスは、信頼できるアラインメントの大規模なデータベース(BLOCKSデータベース)を使用して作成され、このデータベースでは、あるしきい値未満の同一性率に関連するペアワイズ配列アラインメントがカウントされた(Henikoff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 89:10915-10919,1992)。BLOSUM90マトリックスの高度に保存された標的頻度には、90%同一性のしきい値が使用された。BLOSUM65マトリックスには、65%同一性のしきい値が使用された。Blosumマトリックスのスコアがゼロ以上の場合、選択された同一性率で「保守的な置換」と見なされる。次の表2は、例示的な保存的アミノ酸置換を示す。
【表2】
【0230】
いくつかの例では、変異型は、3、5、10、15、20、25、30、40、50、または100以下の保存的アミノ酸変化(非常に高度に保存されたまたは高度に保存されたアミノ酸置換など)を有し得る。他の例では、変異型配列中の1つまたはいくつかの疎水性残基(Leu、Ile、Val、Met、Phe、またはTrpなど)を、異なる疎水性残基(Leu、Ile、Val、Met、Phe、またはTrp)に置き換えて、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/もしくはFusR1のパラログの核酸配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションによってコードされる開示されたアミノ酸配列に機能的に類似する変異型を作成する。
【0231】
いくつかの実施形態では、変異型は、分子が導入される特定の生物のコドン使用バイアスに適合するようにコード領域を改変することによって、開示された配列とは異なり得る。他の実施形態では、コード領域は、遺伝暗号の縮重を利用してコード配列を改変することによって改変することができ、その結果、ヌクレオチド配列は実質的に改変されるが、それにもかかわらず、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/もしくはFusR1のパラログの核酸配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションによってコードされる開示されるアミノ酸配列に実質的に類似のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
【0232】
いくつかの実施形態では、本開示のFusR1オルソログに由来する機能的断片が提供される。機能的断片は、植物で発現された場合でも病原体に対する抵抗性を付与することができる。いくつかの実施形態では、機能的断片は、少なくとも、野生型FusR1オルソログの保存領域もしくはBowman-Birkインヒビタードメイン、またはその機能的変異型を含む。いくつかの実施形態では、機能的断片は、2つ以上のFusR1オルソログによって共有される、同じ植物属の2つ以上のFusR1オルソログによって共有される、2つ以上の双子葉植物FUSR1オルソログによって共有される、および/または2つ以上の単子葉植物FusR1オルソログによって共有される1つ以上の保存領域を含む。保存領域またはBowman-Birkインヒビタードメインは、NCBIタンパク質BLASTプログラムおよびNCBIアラインメントプログラムなどの任意の適切なコンピュータプログラム、または同等のプログラムによって決定され得る。いくつかの実施形態では、機能的断片は、本開示のFusR1オルソログと比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50以上のアミノ酸が短い。いくつかの実施形態では、機能的断片は、本開示のFusR1オルソログの1つ以上のアミノ酸を欠失させることによって作製される。いくつかの実施形態では、機能的断片は、本開示のFusR1オルソログに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を共有する。
【0233】
いくつかの実施形態では、本開示のFusR1オルソログに由来する機能的なキメラまたは合成ポリペプチドが提供される。機能的なキメラまたは合成ポリペプチドは、植物で発現された場合でも病原体に対する抵抗性を付与することができる。いくつかの実施形態では、機能的なキメラまたは合成ポリペプチドは、少なくとも、野生型FUSR1オルソログの保存領域もしくはBowman-Birkインヒビタードメイン、またはその機能的変異型を含む。いくつかの実施形態では、機能的なキメラまたは合成ポリペプチドは、2つ以上のFUSR1オルソログによって共有される、同じ植物属の2つ以上のFusR1オルソログによって共有される、2つ以上の単子葉植物FusR1オルソログによって共有される、および/または2つ以上の双子葉植物FUSR1オルソログによって共有される1つ以上の保存領域を含む。非限定的な例示的な保存領域を図2に示す。保存領域またはBowman-Birkインヒビタードメインは、NCBIタンパク質BLASTプログラムおよびNCBIアラインメントプログラムなどの任意の適切なコンピュータプログラム、または同等のプログラムによって決定され得る。いくつかの実施形態は、機能的なキメラまたは合成ポリペプチドは、本開示のFusR1オルソログに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を共有する。
【0234】
FW感受性対立遺伝子に独特の保存領域の配列を使用して、1つ以上のFusR1オルソログのレベルをノックダウンすることもできる。いくつかの実施形態では、保存領域の配列を使用して、1つ以上のFusR1オルソログを標的とする遺伝子サイレンシング分子を作製することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子サイレンシング分子は、二本鎖ポリヌクレオチド、一本鎖ポリヌクレオチド、または混合二本鎖オリゴヌクレオチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子サイレンシング分子は、約10bp、15bp、19bp、20bp、21bp、25bp、30bp、40bp、50bp、60bp、70bp、80bp、90bp、100bp、150bp、200pb、250bp、300bp、350bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1000bp以上のポリヌクレオチドのDNA/RNA断片を含み、DNA/RNA断片は、本開示のFusR1オルソログ配列の保存領域、またはその相補的配列に対して、少なくとも90%、95%、99%以上の同一性を共有する。
【0235】
V.植物形質転換
FUSR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/もしくはFusR1のパラログをコードする本ポリヌクレオチド、ならびに/または本開示のその断片およびバリエーションは、バナナまたは他の植物属に形質転換することができる。
【0236】
トランスジェニック植物を生産する方法は、当業者に周知である。トランスジェニック植物は現在、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、粒子加速またはバイオリステック照射(biolistic bombardment)としても知られる微粒子銃、ウイルス媒介形質転換、およびAgrobacterium媒介形質転換を含むが、これらに限定されない様々な異なる形質転換方法によって生産することができる。例えば、米国特許第5,405,765号、同第5,472,869号、同第5,538,877号、同第5,538,880号、同第5,550,318号、同第5,641,664号、同第5,736,369号、および同第5,736,369号、国際特許出願公開番号WO2002/038779およびWO/2009/117555、Lu et al.,(Plant Cell Reports, 2008,27:273-278)、Watson et al.,Recombinant DNA,Scientific American Books(1992)、Hinchee et al.,Bio/Tech.6:915-922(1988)、McCabe et al.,Bio/Tech.6:923-926(1988)、Toriyama et al.,Bio/Tech.6:1072-1074(1988)、Fromm et al.,Bio/Tech.8:833-839(1990)、Mullins et al.,Bio/Tech.8:833-839(1990)、Hiei et al.,Plant Molecular Biology 35:205-218(1997)、Ishida et al.,Nature Biotechnology 14:745-750(1996)、Zhang et al.,Molecular Biotechnology 8:223-231(1997)、Ku et al.,Nature Biotechnology 17:76-80(1999)、およびRaineri et al.,Bio/Tech.8:33-38 (1990))を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0237】
Agrobacterium tumefaciensは、そのDNA(遺伝情報)を植物に挿入することができる天然に存在する細菌であり、クラウンゴールとして知られる植物への一種の損傷をもたらす。現在、ウリ科の種を含む、植物のほとんどの種は、この方法を使用して形質転換することができる。
【0238】
微粒子銃は、粒子加速、バイオリステック照射、および遺伝子銃(Biolistic(登録商標)Gene Gun)としても知られる。遺伝子銃は、植物細胞に新しい遺伝子を発現させるために、遺伝子でコーティングされたペレットを(例えば、所望の形質のために)植物の種子または植物組織に打ち込むために使用される。遺伝子銃は、実際の爆発物(.22口径のブランク)を使用して材料を推進させる。圧縮空気または蒸気も推進剤として使用することができる。Biolistic(登録商標)遺伝子銃は、1983年から1984年にCornell Universityで、John Sanford、Edward Wolf、およびNelson Allenによって発明された。それとその登録商標は現在、E.I.du Pont de Nemours and Companyが所有している。植物のほとんどの種は、この方法を使用して形質転換されている。
【0239】
植物ゲノムに新しい遺伝材料を導入するための最も一般的な方法は、細菌病原体Agrobacterium tumefaciensの生細胞を使用して、トランスファーまたはT-DNAと呼ばれるDNAの小片を、染色体組み込みのために植物核に標的化される個々の植物細胞に文字通り注入することである(通常は組織の創傷後)。Agrobacterium媒介形質転換およびAgrobacteriumで使用するために特別に設計された特定のDNA送達プラスミドを管理する多数の特許、例えば、US4536475、EP0265556、EP0270822、WO8504899、WO8603516、US5591616、EP0604662、EP0672752、WO8603776、WO9209696、WO9419930、WO9967357、US4399216、WO8303259、US5731179、EP068730、WO9516031、US5693512、US6051757、およびEP904362A1がある。Agrobacterium媒介植物形質転換は、最初のステップとして、プラスミド上にクローニングされたDNA断片を生きているAgrobacterium細胞に配置することを含み、その後、個々の植物細胞への形質転換に使用される。したがって、Agrobacterium媒介植物形質転換は、間接的な植物形質転換方法である。T-DNAを含まないベクターを使用することを伴うAgrobacterium媒介植物形質転換の方法もまた、当業者に周知であり、本開示において適用可能性であり得る。例えば、形質転換ベクターにおいてT-DNAの代わりにP-DNAを利用する、米国特許第7,250,554号を参照されたい。
【0240】
Agrobacterium形質転換法を使用して形成されたトランスジェニック植物は、典型的には、1つの染色体上に単一の遺伝子を含むが、複数のコピーが可能である。そのようなトランスジェニック植物は、付加された遺伝子に対して半接合性であると言われ得る。形質転換された各植物が独特のT-DNA組み込み事象を表すため、そのような植物のより正確な名前は、独立した分離個体である(米国特許第6,156,953号)。導入遺伝子の遺伝子座は、一般に、導入遺伝子の存在および/または不在を特徴とする。1つの対立遺伝子が導入遺伝子の不在に対応するヘテロ接合性遺伝子型も半接合性と呼ばれる(米国特許第6,008,437号)。
【0241】
DNAを使用した直接的な植物形質転換方法も報告されている。歴史的に報告されたこれらの最初のものは、植物細胞を含む溶液に適用される電流を利用するエレクトロポレーションである(M.E.Fromm et al.,Nature,319,791(1986)、H.Jones et al.,Plant Mol.Biol.,13,501(1989)、およびH.Yang et al.,Plant Cell Reports,7,421(1988)。「バイオリステック照射」と呼ばれる別の直接的な方法では、通常タングステンまたは金の超微粒子を使用し、これらの粒子は、DNAでコーティングされ、植物組織の表面に十分な力で噴霧されて、厚い細胞壁、膜、および核膜を含む植物細胞に粒子を貫通させるが、それらの少なくともいくつかを死滅させない(US5,204,253、US5,015,580)。3番目の直接法は、文字通り細胞を突き刺す鋭い多孔質または中空の針状の突起からなる、繊維状形態の金属またはセラミック、および細胞の核膜も使用する。炭化ケイ素およびホウ酸アルミニウムウィスカーの両方は、植物形質転換(Mizunoら、2004、Petolinoら、2000、US5302523 米国出願第20040197909号)、ならびに細菌および動物の形質転換(Kaeplerら、1992、Raloff,1990、Wang,1995)にも使用されている。報告されているこれらおよび他の方法があり、間違いなく、さらなる方法が開発されるであう。しかしながら、外来DNAを植物細胞に導入する際のこれらの間接的または直接的な方法の各々の効率は常に非常に低く、形質転換されたそれらの細胞のみを選択するための何らかの方法を使用し、さらに、形質転換されたそれらの細胞のみの植物に成長および再生させる必要がある。
【0242】
効率的な植物形質転換のためには、植物全体が単一の形質転換された細胞から再生され、形質転換された植物のすべての細胞が目的のDNAを有するような選択方法を用いる必要がある。これらの方法は正の選択を用いることができ、それによって外来遺伝子が、植物細胞に供給され、マンノースまたはキシロースなど、他の方法では使用できない培地に存在する基質を利用できるようになる(例えば、US5767378、US5994629を参照)。しかしながら、より典型的には、より効率的であるため、非形質転換植物細胞の成長を殺すかまたは阻害する除草剤または抗生物質などの選択的薬剤を利用し、キメラの可能性を低減する、負の選択が使用される。植物形質転換に使用される導入された外来DNAには、負の選択剤に対して有効な抵抗性遺伝子が提供される。例えば、使用される最もよく知られている選択剤のうちの1つは、カナマイシンおよび関連抗生物質に対する抵抗性を付与する抵抗性遺伝子ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)と共に、抗生物質カナマイシンである(例えば、Messing & Vierra,Gene 19:259-268(1982)、Bevan et al.,Nature 304:184-187(1983))。しかしながら、多くの異なる抗生物質および抗生物質抵抗性遺伝子が形質転換の目的で使用され得る(US 5034322、US 6174724、およびUS 6255560を参照)。加えて、除草剤ホスフィノトリシンに対する抵抗性を付与する、bar遺伝子を含むいくつかの除草剤および除草剤抵抗性遺伝子が形質転換の目的で使用されてきた(White et al.,Nucl Acids Res 18:1062(1990)、Spencer et al.,Theor Appl Genet 79: 625-631(1990)、US 4795855、US5378824、およびUS6107549)。加えて、抗癌剤メトトレキサートに対する抵抗性を付与するdhfr遺伝子が選択に使用されている(Bourouis et al.,EMBO J.2(7):1099-1104(1983)。
【0243】
所与のタンパク質の発現を調節するために使用される発現制御要素は、コード配列に関連して通常見出される発現制御要素(相同発現要素)であり得るか、または異種発現制御要素のいずれかであり得る。様々な相同および異種発現制御要素が当技術分野で既知であり、本開示で使用するための発現単位を作製するために容易に使用することができる。例えば、転写開始領域は、Agrobacterium tumefaciensのTiプラスミドに見られるオクトピン、マンノピン、ノパリンなどの様々なオパイン開始領域のうちのいずれかを含み得る。代替的に、カリフラワーモザイクウイルス19Sおよび35Sプロモーター(それぞれ、CaMV19SおよびCaMV35Sプロモーター)などの植物ウイルスプロモーターを使用して、植物における遺伝子発現を制御することもできる(例えば、米国特許第5,352,605号、同第5,530,196号、および同第5,858,742号)。CaMVに由来するエンハンサー配列も利用することができる(例えば、米国特許第5,164,316号、同第5,196,525号、同第5,322,938号、同第5,530,196号、同第5,352,605号、同第5,359,142号、および同第5,858,742号)。最後に、増殖プロモーター、果実特異的プロモーター、Ap3プロモーター、熱ショックプロモーター、種子特異的プロモーターなどの植物プロモーターも使用することができる。
【0244】
配偶子特異的プロモーター、構成的プロモーター(CaMVまたはNosプロモーターなど)、器官特異的プロモーター(トマトからのE8プロモーターなど)、または誘導性プロモーターのいずれかは、典型的には、当技術分野で既知の標準的な技法を使用してタンパク質またはアンチセンスコード領域にライゲートされる。発現単位は、転写ターミネーターおよび/またはエンハンサー要素などの追加要素を用いることによってさらに最適化することができる。
【0245】
したがって、植物での発現の場合、発現単位は、典型的には、タンパク質配列に加えて、植物プロモーター領域、転写開始部位、および転写終結配列を含む。発現単位の5’および3’末端の独特の制限酵素部位は、典型的には、既存のベクターに簡単に挿入できるように含まれる。
【0246】
異種プロモーター/構造遺伝子またはアンチセンスの組み合わせの構築において、プロモーターは、好ましくは、その自然な設定における転写開始部位からであるように、異種転写開始部位からほぼ同じ距離に配置される。しかしながら、当技術分野で既知であるように、この距離のいくらかの変動は、プロモーター機能を失うことなく適応され得る。
【0247】
プロモーター配列に加えて、発現カセットはまた、効率的な終結を提供するために、構造遺伝子の下流に転写終結領域を含むことができる。終結領域は、プロモーター配列と同じ遺伝子から得ることができるか、または異なる遺伝子から得ることができる。構造遺伝子によってコードされるmRNAが効率的に処理される場合、RNAのポリアデニル化を指向するDNA配列も一般的にベクター構築物に追加される。ポリアデニル化配列には、Agrobacteriumオクトピンシンターゼシグナル(Gielen et al.,EMBO J 3:835-846(1984))またはノパリンシンターゼシグナル(Depicker et al.,Mol.and Appl.Genet.1:561-573(1982))が含まれるが、これらに限定されない。得られる発現単位は、より高度な植物形質転換に適したベクターにライゲートされるか、または別の方法で構築されてベクターに含まれる。1つ以上の発現単位を同じベクターに含めることができる。ベクターは、典型的には、形質転換された植物細胞を培養で特定することができる選択可能なマーカー遺伝子発現単位を含む。通常、マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、もしくはゲンタマイシンなどの抗生物質、またはグリホサート(Round-Up)もしくはグルホシネート(BASTA)、もしくはアトラジンなどの除草剤に対する抵抗性をコードする。細菌またはウイルス起源の複製配列もまた、一般に、ベクターが細菌またはファージ宿主にクローニングされることを可能にするために含まれ、好ましくは、原核生物の複製起点のための広い宿主範囲が含まれる。細菌の選択可能なマーカーもまた、所望の構築物を有する細菌細胞の選択を可能にするために含まれ得る。好適な原核生物の選択可能なマーカーには、アンピシリン、カナマイシン、またはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する抵抗性が含まれる。当技術分野で既知であるように、追加の機能をコードする他のDNA配列もまた、ベクター中に存在し得る。例えば、Agrobacterium形質転換の場合、T-DNA配列も、その後の植物染色体への移入のために含まれる。
【0248】
従来の方法で所望の遺伝子または遺伝子のセットを導入するには、2つの系列間で性交配を行い、次いで、所望の特徴を有する植物が得られるまで、雑種の子孫と親のうちの1つとの間で戻し交配を繰り返す必要がある。しかしながら、このプロセスは性的に交雑することができる植物に限定されており、所望の遺伝子に加えて遺伝子が移入される。
【0249】
組換えDNA技法により、植物研究者は、植物遺伝学者が改善された脂肪酸組成などの望ましい形質に特異的な遺伝子を特定してクローニングし、これらの遺伝子をすでに有用な品種の植物に導入できるようにすることで、これらの制限を回避することができる。外来遺伝子が植物に導入されると、その植物は、インプ植物育種スキーム(例えば、系統育種、単粒系統育種スキーム、相互循環選択)で使用され、目的の遺伝子も含む子孫をもたらすことができる。
【0250】
遺伝子は、相同組換えを使用して部位指向性様式で導入することができる。相同組換えは、内因性遺伝子の部位特異的修飾を可能にし、したがって、遺伝性または後天性の変異を修正することができ、かつ/または新規の改変をゲノム内に操作することができる。植物における相同組換えおよび部位指向性組み込みは、例えば、米国特許第5,451,513号、同第5,501,967号、および同第5,527,695号に論じられている。
【0251】
Ploetz(2015,Phytopathology 105:1512-1521)によると、「バナナの遺伝的形質転換は当たり前になり、病害抵抗性は最も求められている形質のうちの1つである[引用は省略]。」バナナ植物を形質転換および再生するための技法は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第7,534,930号、米国特許第6,133,035号、Sagi et al.,Bio/Technology 13,481-485,1995、May et al.,Bio/Technology 13,485-492,1995、Vishnevetsky et al.,Transgenic Res.20(1):61-71,2011、Paul et al.(2011)、Zhong et al.,Plant Physiol.110,1097-1107,1996、およびDugdale et al.,Journal of General Virology 79:2301-2311,1998を参照されたく、その各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。概要および歴史については、例えば、Mohan and Swennen (editors),2004,Banana improvement:cellular, molecular biology, and induced mutations,Science Publishers, Inc.およびRemy et al.,2013,Genetically modified bananas:Past, present and future,Acta Horticulturae 974:71-80を参照されたく、その各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0252】
本発明を実施に還元する一方で、発明者は、FUSR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/もしくはFusR1のパラログをコードするヌクレオチド配列、ならびに/またはその断片およびバリエーションを含む発現構築物を構築することができる。本発明の発現構築物は、市販のバナナの胚形成カルスに導入することができ、得られる形質転換細胞を植物に再生することができる。トランスジェニックバナナ植物は、FW抵抗性FUSR1タンパク質の発現および病原体抵抗性を有すると予想される。
【0253】
本発明の一態様によれば、病害抵抗性のあるバナナ植物を生産する方法が提供される。この方法は、バナナ植物に病害抵抗性を付与することができるポリペプチド(FW抵抗性FusR1など)をコードする少なくとも1つの外因性ポリヌクレオチドでバナナ細胞を形質転換することによって達成される。
【0254】
本発明の別の態様によれば、病害抵抗性のあるバナナ植物を生産する方法が提供される。この方法は、CRISPR関連エフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドと、少なくとも1つのFW感受性FusR1対立遺伝子を標的とすることができるガイドRNAとを含む、少なくとも1つの外因性発現カセットでバナナ細胞を形質転換し、それによってバナナ植物に病害抵抗性を付与することにより達成される。
【0255】
本発明のバナナ細胞は、商業的に重要なM.acuminata(キャベンディッシュ、ドワーフキャベンディッシュ、グランドナインなど)を含むがこれらに限定されない、任意のバナナ品種または栽培品種であり得る。好ましくは、形質転換に使用されるバナナ細胞は、植物全体を形成することができる胚形成細胞である。より好ましくは、バナナ細胞は胚形成カルス細胞である。
【0256】
本明細書で使用される場合、「胚形成カルス細胞」という句は、インビトロで産生された細胞塊に含まれる胚形成細胞を指す。
【0257】
形質転換に好適なバナナ胚形成カルス細胞は、周知の方法論を使用して生成することができる。例えば、未熟な雄花(花房)を解剖し、M1培地(以下の本明細書の表1の内容を参照されたい)で、25°Cで光強度を下げて(50~100ルクス)インキュベートすることができる。M1培地で3~5ヶ月インキュベートした後、黄色の胚形成カルスをM2培地に移し(以下の表1の内容を参照されたい)、27℃で暗所で少なくとも4ヶ月間インキュベートして、胚形成を促進する。
【0258】
上記のように、そのようなバナナ胚形成カルス細胞は、病害抵抗性ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む核酸構築物での形質転換に適している。
【0259】
「病害抵抗性を付与することができるポリペプチド」および「病害抵抗性ポリペプチド」という句は、本明細書において交換可能に使用され、病原体感染からまたは病原体感染の結果として生じる有害な影響からバナナ植物を保護することができる(ポリペプチドを発現する)任意のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を指す。
【0260】
好適な病害抵抗性ポリペプチドはまた、例えば、米国特許第6,091,004号および第6,316,697号に記載されているような植物において抵抗性を誘導または増強することができるポリペプチドであり得る。
【0261】
上記のように、本発明の方法は、バナナ植物に病害抵抗性を付与することができるポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドでバナナ細胞を形質転換することによってもたらされる。
【0262】
いくつかの実施形態では、バナナ細胞は、Musa itineransからのFUSR1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で形質転換され、その例は、配列番号1、配列番号2、配列番号4、および配列番号5に示される。
【0263】
いくつかの実施形態では、バナナ細胞は、Musa acuminataからのFUSR1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で形質転換され、その例は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号11に示される。
【0264】
いくつかの実施形態では、バナナ細胞は、Musa basjooからのFUSR1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で形質転換され、その例は、配列番号17、配列番号18、配列番号20、および配列番号21に示される。
【0265】
いくつかの実施形態では、バナナ細胞は、Musella lasiocarpaからのFUSR1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で形質転換され、その例は、配列番号23に示される。
【0266】
いくつかの実施形態では、バナナ細胞は、Musa balbisianaからのFUSR1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列で形質転換され、その例は配列番号26に示される。
【0267】
いくつかの実施形態では、FUSR1などの単一の外因性病害抵抗性ポリペプチドのみで形質転換された植物は、部分的かつ短期間の保護のみを示し得る(例えば、Jach et al.,Plant J.8:97-108,1995)。他の実施形態では、本発明のバナナ細胞/植物は、好ましくは、複数の外因性病害抵抗性ポリペプチドを発現し、したがって、非修飾植物よりも実質的により病害抵抗性である。
【0268】
植物細胞においてこれらのポリヌクレオチドを形質転換および同時発現させるために、いくつかのアプローチを利用することができる。
【0269】
あまり好ましくないが、上記のポリヌクレオチド配列の各々は、3つの別個の核酸構築物を使用することによって、バナナ細胞に別個に導入することができる。いくつかの実施形態では、3つのポリヌクレオチド配列は、単一の核酸構築物を使用して、バナナ細胞において同時導入および同時発現され得る。そのような構築物は、3つすべてのポリヌクレオチド配列を含むポリシストロンメッセージを同時転写することができる単一のプロモーター配列を用いて設計することができる。ポリシストロンメッセージによってコードされる3つのポリヌクレオチドの同時翻訳を可能にするために、ポリヌクレオチド配列は、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列の下流に位置するポリヌクレオチド配列の翻訳を容易にするIRES配列を介して相互連結され得る。この場合、上記の3つのポリペプチドをコードする転写されたポリシストロンRNA分子は、ポリシストロンRNA分子のキャップされた5’末端および2つの内部IRES配列の両方から翻訳され、それによって細胞内で3つすべてのポリペプチドを産生する。
【0270】
代替的に、病害抵抗性を付与することができる複数のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントは、核酸構築物で形質転換される細胞によって発現されるプロテアーゼによって切断可能なプロテアーゼ認識部位を介して翻訳的に融合され得る。この場合、翻訳されたキメラポリペプチドは、細胞発現されたプロテアーゼによって切断され、それによって複数のポリペプチドを生成する。
【0271】
他の実施形態では、本発明は、各々が上記のポリヌクレオチド配列の特定のポリヌクレオチド配列の転写を指向することができる3つのプロモーター配列を含む核酸構築物を利用する。
【0272】
本発明の核酸と共に使用することができる好適なプロモーターには、構成的、誘導性、または組織特異的プロモーターが含まれる。
【0273】
好適な構成的プロモーターには、例えば、CaMV 35Sプロモーター(Odell et al.,Nature 313:810-812,1985)、トウモロコシUbi1(Christensen et al.,Plant Sol.Biol.18:675-689,1992)、イネアクチン(McElroy et al.,Plant Cell 2:163-171,1990)、pEMU(Last et al.,Theor.Appl.Genet.81:581-588, 1991)、および合成スーパーMAS(Ni et al., The Plant Journal 7:661-76,1995)が含まれる。他の構成的プロモーターには、米国特許第5,659,026号、同第5,608,149号、同第5,608,144号、同第5,604,121号、同第5,569,597号、同第5,466,785号、同第5,399,680号、同第5,268,463号、および同第5,608,142号のものが含まれる。
【0274】
好適な誘導性プロモーターは、例えば、アルファルファPR10プロモーター(Coutos-Thevenot et al.,Journal of Experimental Botany 52:901-910,2001などの病原体誘導性プロモーター、ならびにMarineau et al.,Plant Mol.Biol.9:335-342,1987、Matton et al.Molecular Plant-Microbe Interactions 2:325-331,1989、Somsisch et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:2427-2430,1986、Somsisch et al.,Mol.Gen.Genet.2:93-98,1988、およびYang,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:14972-14977,1996により記載されるプロモーターであり得る。
【0275】
好適な組織特異的プロモーターには、例えば、Yamamoto et al.,Plant J.12:255-265,1997、Kwon et al.,Plant Physiol.105:357-67,1994、Yamamoto et al.,Plant Cell Physiol.35:773-778,1994、Gotor et al.,Plant J.3:509-18,1993、Orozco et al.,Plant Mol.Biol.23:1129-1138,1993、およびMatsuoka et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:9586-9590,1993などによって記載される葉特異的プロモーターが含まれるが、これに限定されない。
【0276】
本発明の核酸構築物はまた、例えば、nptIIなどの少なくとも1つの選択可能なマーカーを含み得る。好ましくは、核酸構築物は、E.coli(構築物が適切な選択可能なマーカーおよび複製起点を含む)で増殖することができ、細胞での増殖に適合性があり得る両方であるシャトルベクターである。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルス、または人工染色体、好ましくはプラスミドであり得る。
【0277】
本発明の核酸構築物は、バナナ細胞を安定して形質転換するために利用することができる。外因性DNAのバナナゲノムへの安定した組み込みを引き起こす主な方法には、2つの主要なアプローチが含まれる:
(i)Agrobacterium媒介遺伝子導入:Klee et al.(1987)Annu.Rev.Plant Physiol.38:467-486、Klee and Rogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol. 6,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes,eds.Schell, J.,and Vasil, L.K.,Academic Publishers,San Diego,Calif.(1989)p.2-25、Gatenby,in Plant Biotechnology,eds.Kung,S. and Arntzen,C.J.,Butterworth Publishers,Boston,Mass.(1989)p.93-112。
(ii)直接的なDNA取り込み:Paszkowski et al.,in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol.6,Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds.Schell,J.,and Vasil,L.K.,Academic Publishers,San Diego,Calif.(1989)p.52-68(DNAの原形質体への直接取り込みのための方法を含む)、Toriyama,K.et al.(1988)Bio/Technology 6:1072-1074。DNA uptake induced by brief electric shock of plant cells:Zhang et al.Plant Cell Rep.(1988)7:379-384.Fromm et al.Nature(1986)319:791-793.DNA injection into plant cells or tissues by particle bombardment,Klein et al.Bio/Technology(1988)6:559-563、McCabe et al.Bio/Technology(1988)6:923-926、Sanford,Physiol.Plant.(1990)79:206-209、マイクロピペットシステムの使用による:Neuhaus et al.,Theor.Appl.Genet.(1987) 75:30-36、Neuhaus and Spangenberg,Physiol.Plant.(1990)79:213-217、細胞培養物、胚またはカルス組織のガラス繊維または炭化ケイ素ウィスカー形質転換、米国特許第5,464,765号、または発芽花粉とのDNAの直接インキュベーションによる、DeWet et al.in Experimental Manipulation of Ovule Tissue,eds.Chapman,G.P.and Mantell,S.H.and Daniels,W.Longman,London,(1985)p.197-209、およびOhta,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:715-719。
【0278】
Agrobacterium系には、植物のゲノムDNAに組み込まれる定義されたDNAセグメントを含むプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織への接種方法は、植物種およびAgrobacterium送達系によって異なる。広く使用されているアプローチは、植物全体の分化を開始するための優れた供給源を提供する任意の組織外植片で実行され得るリーフディスク手順である。Horsch et al.in Plant Molecular Biology Manual A5,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht (1988)p.1-9。補足的なアプローチでは、真空浸潤と組み合わせてAgrobacterium送達系を用いる。バナナ細胞に外因性DNAを導入するための好適なAgrobacterium媒介手順は、Dougale et al(Journal of General Virology,79:2301-2311,1998)および米国特許第6,395,962号に記載されている。
【0279】
植物細胞に直接DNAを移入する様々な方法がある。エレクトロポレーションでは、原形質体は短時間強い電場にさらされる。マイクロインジェクションでは、非常に小さなマイクロピペットを使用して、DNAを細胞に直接機械的に注入する。微粒子銃では、DNAは、硫酸マグネシウム結晶またはタングステン粒子などの微粒子に吸着され、細胞または植物組織への微粒子は物理的に加速される。
【0280】
代替的に、本発明の核酸構築物は、微粒子銃によってバナナ細胞に導入することができる。この技術では、外因性DNAでコーティングされたタングステンまたは金の粒子が標的細胞に向かって加速される。微粒子銃による好適なバナナ形質転換手順は、Sagi et al.(Biotechnology 13:481-485,1995)およびDougale et al.(Journal of General Virology,79:2301-2311,1998)によって説明されている。好ましくは、本発明の核酸構築物は、本明細書の以下の実施例4に記載される微粒子銃手順によってバナナ細胞に導入される。
【0281】
形質転換に続いて、形質転換された細胞は、形質転換された材料の迅速で一貫した複製を提供するためにマイクロプロパゲーション(micropropagate)される。
【0282】
マイクロプロパゲーションは、選択した親植物または栽培品種から切除された単一の組織片から新世代の植物を育てるプロセスである。このプロセスは、融合タンパク質を発現する好ましい組織を有する植物の大量繁殖を可能にする。生産される新世代の植物は、元の植物と遺伝的に同一であり、その特徴のすべてを有する。マイクロプロパゲーションは、短期間で高品質の植物材料の大量生産を可能にし、元のトランスジェニックまたは形質転換された植物の特徴を保持しながら、選択された栽培品種の迅速な増殖を提供する。植物をクローニングすることの利点は、植物の増殖の速度、ならびに生産される植物の品質および均一性である。
【0283】
マイクロプロパゲーションは、段階間で培地または成長条件を改変する必要がある多段階の手順である。したがって、マイクロプロパゲーションプロセスには4つの基本的な段階が含まれる:段階1、初期組織の培養、段階2、組織培養増殖;段階3、分化および植物形成;ならびに段階4、温室培養およびハードニング。段階1の最初の組織培養中に、組織培養が確立され、汚染物質を含まないことが証明される。段階2では、初期の組織培養が、生産目標を達成するのに十分な数の組織サンプルが生産されるまで増殖される。段階3では、ステージ2で成長した組織サンプルが分割され、個々の小植物に成長する。段階4では、形質転換された小植物はハードニングのために温室に移され、そこで植物の光に対する耐性が徐々に増加し、自然環境で育つことができるようになる。
【0284】
したがって、形質転換されたバナナ細胞は、例えば、米国特許第6,133,035号、ならびにNovakら、1989、Dhed’aら、1991、Cote ら、1996、Beckerら、2000、Sagi et al.Plant Cell Reports 13:262-266,1994、Grapin et al.,Cell Dev.Biol.Plant.32:66-71,1996、Marroquin et al.,In Vivo Cell.Div.Biol.29P:43-46,1993、およびEscalant et al.,In Vivo Cell Dev.Biol.30:181-186,1994)などに記載されている技術分野で既知の方法を使用して、マイクロプロパゲーションされ、植物に再生され得る。
【0285】
形質転換された植物のゲノムにおける外因性DNA配列の安定した組み込みは、PCRおよびサザンブロットハイブリダイゼーションなどの当技術分野で周知の標準的な分子生物学技法を使用して決定することができる。
【0286】
現在、安定した形質転換が好ましいが、培養された細胞、葉細胞、分裂組織細胞、または植物全体の一過性の形質転換もまた、本発明によって想定される。
【0287】
一過性の形質転換は、上記の直接DNA移入方法のうちのいずれかによって、または修飾された植物ウイルスを使用したウイルス感染によってもたらされ得る。
【0288】
ウイルス感染は、培養された細胞からの植物全体のマイクロプロパゲーションおよび再生を回避することを可能にするため、好ましい。植物宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスには、CaMV、TMV、およびBVが含まれる。植物ウイルスを使用した植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号(BGV)、EP-A67,553(TMV)、日本公開出願第63-14693号(TMV)、EPA194,809(BV)、EPA278,667(BV)、およびGluzman et al(Communications in Molecular Biology:Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,pp.172-189,1988)に記載されている。植物を含む多くの宿主において外来DNAを発現するのに使用するための偽ウイルス粒子は、WO87/06261に記載されている。
【0289】
植物における非ウイルス性外因性核酸配列の導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献、ならびにDawson et al.(Virology 172:285-292,1989,Takamatsu et al.EMBO J.6:307-311,1987,French et al.(Science 231:1294-1297,1986)、およびTakamatsu et al.(FEBS Letters 269:73-76,1990)によって示されている。
【0290】
ウイルスがDNAウイルスである場合、ウイルス自体に好適な修飾を行うことができる。代替的に、ウイルスを最初に細菌プラスミドにクローニングして、外来DNAを用いて所望のウイルスベクターを構築することを容易にすることができる。その後、ウイルスをプラスミドから切除することができる。ウイルスがDNAウイルスである場合、細菌の複製起点がウイルスDNAに付着し得、そして細菌によって複製される。このDNAの転写および翻訳により、ウイルスDNAをキャプシドで包むコートタンパク質が産生される。
【0291】
ウイルスがRNAウイルスである場合、ウイルスは一般に、cDNAとしてクローニングされ、プラスミドに挿入される。次に、プラスミドを使用して構築のすべてを行う。次に、RNAウイルスは、プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳して、ウイルスRNAをキャプシドで包むコートタンパク質を産生することによって産生される。
【0292】
本発明の構築物に含まれるものなどの非ウイルス性外因性核酸配列の植物への導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献および米国特許第5,316,931号に示されている。
【0293】
一実施形態では、天然のコートタンパク質コード配列が、ウイルス核酸、非天然の植物ウイルスコートタンパク質コード配列、および非天然のプロモーターから欠失しており、好ましくは、植物宿主での発現、組換え植物ウイルス核酸のパッケージング、および組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身感染を確実にすることができる、非天然のコートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーターが挿入されている、植物ウイルス核酸が提供される。代替的に、コートタンパク質遺伝子は、タンパク質が産生されるように、その中に非天然の核酸配列を挿入することによって不活化され得る。組換え植物ウイルス核酸は、1つ以上の追加の非天然のサブゲノムプロモーターを含み得る。各非天然のサブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子または核酸配列を転写または発現することができ、互いにおよび天然のサブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然(外来)の核酸配列は、天然の植物ウイルスサブゲノムプロモーター、または2つ以上の核酸配列が含まれる場合は天然および非天然の植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入され得る。非天然の核酸配列は、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の産物を産生する。
【0294】
第2の実施形態では、組換え植物ウイルス核酸は、天然のコートタンパク質コード配列が非天然のコートタンパク質コード配列の代わりに非天然のコートタンパク質サブゲノムプロモーターのうちの1つに隣接して配置されることを除いて、第1の実施形態と同様に提供される。
【0295】
第3の実施形態では、天然のコートタンパク質遺伝子がそのサブゲノムプロモーターに隣接し、1つ以上の非天然のサブゲノムプロモーターがウイルス核酸に挿入されている組換え植物ウイルス核酸が提供される。挿入された非天然のサブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子を転写または発現することができ、互いにおよび天然のサブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然の核酸配列は、非天然のサブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入され得、その結果、配列は、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の産物を産生する。
【0296】
第4の実施形態では、組換え植物ウイルス核酸は、天然のコートタンパク質コード配列が非天然のコートタンパク質コード配列によって置き換えられることを除いて、第3の実施形態と同様に提供される。
【0297】
ウイルスベクターは、組換え植物ウイルス核酸によってコードされたコートタンパク質によってキャプシドで包まれて、組換え植物ウイルスを産生する。組換え植物ウイルス核酸または組換え植物ウイルスは、適切な宿主植物を感染させるために使用される。組換え植物ウイルス核酸は、所望のタンパク質を産生するために、宿主での複製、宿主での全身拡散、および宿主での外来遺伝子(単離された核酸)の転写または発現が可能である。
【0298】
上記に加えて、本発明の核酸分子はまた、葉緑体ゲノムに導入され得、それにより葉緑体発現を可能にする。
【0299】
葉緑体のゲノムに外因性核酸配列を導入するための技法は既知である。この技法には、次の手順を伴う。まず、植物細胞を化学的に処理して、細胞あたりの葉緑体の数を約1つに減らす。次に、外因性核酸を、少なくとも1つの外因性核酸分子を葉緑体に導入することを目的として、粒子銃を介して細胞に導入する。外因性核酸は、葉緑体に固有の酵素によって容易にもたらされる相同組換えを介して葉緑体のゲノムに組み込み可能であるように選択される。この目的のために、外因性核酸は、目的の遺伝子に加えて、葉緑体のゲノムに由来する少なくとも1つの核酸ストレッチを含む。加えて、外因性核酸は、選択可能なマーカーを含み、これは、連続的な選択手順によって、そのような選択後の葉緑体ゲノムのコピーのすべてまたは実質的にすべてが外因性核酸を含むことを確認するのに役立つ。この技法に関するさらなる詳細は、米国特許第4,945,050号および同第5,693,507号に見出すことができ、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、ポリペプチドは、葉緑体のタンパク質発現系によって産生され得、葉緑体の内膜に組み込まれる。
【0300】
外因性ポリペプチドが植物に病害抵抗性を付与する場合、発現は、好ましくは同様の野生型(非形質転換)植物と比較して、病原体に対する抵抗性または耐性の増加に基づいて決定され得る。病原体に対するそれらの抵抗性または耐性についての植物の比較評価は、例えば、Agrios, G.N.,ed.(Plant Pathology,Third Edition,Academic Press,New York,1988)などによって記載されている植物病理学の分野で周知のインビトロまたはインビボバイオアッセイを使用してもたらされ得る。
【0301】
病原体に対する植物の抵抗性または耐性を評価することは、植物組織から得られた抽出物に病原体を曝露し、インビトロでの病原体の成長に対する抽出物の効果を決定することによってもたらすことができる。いくつかの実施形態では、病原体に対する植物の抵抗性または耐性を評価することは、病原体を植物組織(例えば、葉組織)に曝露することによってもたらされる。
【0302】
他の実施形態では、病原体に対する植物の抵抗性または耐性を評価することは、病原体を植物全体に曝露することによってもたらされる。例えば、Fusarium oxysporum f.sp.Cubense(Foc)(パナマ病の原因菌)に対する植物の抵抗性または耐性を評価することは、病原体(接種源として使用される)に感染している非形質転換植物のすぐ近くの野原に形質転換されたバナナ植物を植えることによってもたらされ得る。形質転換された植物でその後発症する病害の重症度は、非形質転換植物と比較して評価される。病害の重症度は、好ましくは視覚的に評価され(通常、損傷は少なくとも5~12枚の葉を持つ吸枝に現れる)、統計的に分析されて、パナマ病に対する植物系列間の抵抗性または耐性の顕著な違いが決定される。
【0303】
したがって、本発明は、病害抵抗性ポリペプチドをコードする1つ以上のポリヌクレオチド、外因性病害抵抗性形質を発現する形質転換されたバナナ細胞および形質転換されたバナナ植物を含む核酸構築物、ならびにそれらを生産する方法を提供する。
【0304】
VI.育種法
放任受粉集団。ライ麦、多くのトウモロコシおよびテンサイ、牧草(herbage grass)、アルファルファおよびクローバーなどのマメ科植物、カカオ、ココナッツ、油ヤシ、および一部のゴムなどの熱帯樹木作物などの作物の放任受粉集団の改善は、本質的に、高度(しかし最大からはほど遠い)のヘテロ接合性を維持しながら、好ましい対立遺伝子の固定に向けた遺伝子頻度に変更することに依存する。そのような集団の均一性は不可能であり、放任受粉品種の純種は、個々の植物の特徴ではなく、集団全体の統計的特徴である。したがって、放任受粉集団の不均一性は、近交系、クローン、および雑種の均一性(または事実上そうである)とは対照的である。
【0305】
集団の改善方法は、自然に2つの群に分類され、通常、大量選択と呼ばれる純粋な表現型の選択に基づく方法と、子孫試験による選択に基づく方法である。集団間の改善は、放任育種集団の概念を利用しており、ある集団から別の集団への遺伝子の流れを可能にする。ある集団(栽培品種、種類、生態型、または任意の生殖質源)の植物は、自然に(例えば、風によって)、手で、またはミツバチ(通常、Apis mellifera L.またはMegachile rotundata F.)のいずれかによって他の集団の植物と交配される。選択は、両方の供給源から望ましい形質を有する植物を単離することによって、1つ(または場合によっては両方)の集団を改善するために適用される。
【0306】
放任受粉集団の改善には、基本的に2つの主要な方法がある。第一に、選択された選択手順によって集団が一斉に変更される状況がある。その結果、集団が改善され、それ自体が単独でランダムに交配することで無制限に繁殖することができる。第2に、合成品種は集団の改善と同じ最終結果を達成するが、それ自体はそのように繁殖可能ではなく、親系列またはクローンから再構築する必要がある。放任受粉集団を改善するためのこれらの植物育種手順は、当業者に周知であり、異花受粉植物を改善するために日常的に使用される育種手順の包括的な考察は、Allard,Principles of Plant Breeding,John Wiley & Sons,Inc.(1960)、Simmonds,Principles of Crop Improvement,Longman Group Limited(1979)、Hallauer and Miranda,Quantitative Genetics in Maize Breeding,Iowa State University Press(1981)、およびJensen,Plant Breeding Methodology,John Wiley & Sons,Inc.(1988)を含む多数のテキストおよび記事に提供されている。大豆に特有の集団改善方法については、例えば、J.R.Wilcox,editor(1987) SOYBEANS:Improvement,Production,and Uses,Second Edition,American Society of Agronomy,Inc.,Crop Science Society of America,Inc.、およびSoil Science Society of America, Inc.,publishers,888pagesを参照されたい。
【0307】
集団選択。集団選択では、望ましい個々の植物が選択され、収穫され、子孫試験をせずに種子が複合されて、次の世代が生産される。選択は母方の親のみに基づいており、受粉を制御することはできないため、集団選択は選択によるランダムな交配の形になる。上記のように、集団選択の目的は、集団における優れた遺伝子型の割合を増やすことである。
【0308】
合成。合成品種は、すべての可能な雑種の組み合わせにおいて良好な組み合わせ能力のために選択されたいくつかの遺伝子型を内々に交配し、その後、放任受粉によって品種を維持することによって生産される。一部のテンサイおよび豆(Vicia)のように、親が(多かれ少なかれ近親交配の)種子繁殖系列であるか、牧草、クローバー、およびアルファルファのようにクローンであるかは、原則として違いはない。親は、一般的な混合能力に基づいて、時には試験交雑またはトップ交雑によって、より一般的には多交雑によって選択される。親の種子系列は、故意に近親交配される場合がある(例えば、自殖または同胞交配による)。しかしながら、親が意図的に近親交配されていない場合でも、系列維持中に系列内で選択することで、ある程度の近親交配が発生することを確実にする。もちろん、クローンの親は変更されず、非常にヘテロ接合のままである。
【0309】
合成物が親の種子生産区画から農家に直接行くことが可能であるか、または最初に1または2サイクルの増殖を行わなければならないかは、種子生産および種子の需要規模に依存する。実際には、草およびクローバーは一般に1~2回増殖されるため、元の合成物からかなり除去される。
【0310】
集団選択が時々使用されるが、子孫試験は、操作が単純であり、目的、つまり合成物における一般的な混合能力の活用と明らかな関連性があるため、一般に多交配に好まれる。
【0311】
合成物に入る親系列またはクローンの数は大きく異なる。実際には、親系列の数は10~数百の範囲であり、平均100~200である。100以上のクローンから形成される基礎の広い(Broad based)合成物は、基礎の狭い合成物よりも種子増殖中により安定であると予想される。
【0312】
雑種。上で論じたように、雑種は、異なる遺伝子型の親の間の交配から生じる個々の植物である。市販の雑種は、現在、トウモロコシ(トウモロコシ)、ソルガム、テンサイ、ヒマワリ、およびブロッコリーなどの多くの作物で広く使用されている。雑種は、2つの親を直接交配する(単交配雑種)、単交配雑種を別の親と交配する(三元または三系交配雑種)、または2つの異なる雑種を交配する(四元または複交配雑種)ことを含む、いくつかの異なる方法で形成され得る。
【0313】
厳密に言えば、異系交配(すなわち、放任受粉)集団のほとんどの個体は雑種であるが、この用語は通常、親が異なる種または亜種として認識されるのに十分にゲノムが異なる個体である場合に残しておかれる。雑種は、2つの親のゲノムの質的および/または量的な違いに応じて、稔性または不稔性であり得る。雑種強勢(heterosis)または雑種強勢(hybrid vigor)は、通常、雑種を形成するために使用された親系列と比較して雑種の成長力、生存率、および稔性を高めるヘテロ接合性の増大に関連している。最大の雑種強勢は通常、2つの遺伝的に異なる高度の近交系を交配することにより達成される。
【0314】
雑種の生産は、よく発達した産業であり、親系列およびそれらの系列の交配から生じる雑種の両方の単離生産を伴う。雑種生産プロセスの詳細な議論については、例えば、Wright,Commercial Hybrid Seed Production 8:161-176,In Hybridization of Crop Plantsを参照されたい。
【0315】
バルク分離分析(BSA)。BSA、別名バルク分離分析(bulked segregation analysisまたはbulk segregant analysis)は、Michelmoreら(Michelmore et al.,1991,Identification of markers linked to disease-resistance genes by bulked segregant analysis:a rapid method to detect markers in specific genomic regions by using segregating populations.Proceedings of the National Academy of Sciences,USA,99:9828-9832)およびQuarrieら(Quarrie et al.,Bulk segregant analysis with molecular markers and its use for improving drought resistance in maize,1999,Journal of Experimental Botany,50(337):1299-1306)によって説明された方法である。
【0316】
目的の形質のBSAの場合、ある特定の異なる表現型を有する親系列を選択し、交配して、QTL分析でF2、倍加半数体、または組換え近親交配集団を生成する。次に、集団の表現型を決定して、形質の発現が高いまたは低い個々の植物または系列を特定する。1つは1つの表現型(例えば、病原体に抵抗性)を有する個体から、もう1つは逆の表現型(例えば、病原体に感受性)を有する個体からの、2つのDNAバルクを調製し、分子マーカーを用いて対立遺伝子頻度を分析する。マーカーが優勢である場合(例えば、RAPD)、各バルクに必要な個体はわずかである(例えば、各々10の植物)。マーカーが共優勢である場合(RFLPなど)、より多くの個体が必要である。表現型に連結されたマーカーを特定し、育種またはQTLマッピングに使用する。
【0317】
遺伝子ピラミッド化。異なる親で特定された一連の標的遺伝子を単一の遺伝子型に組み合わせる方法は、通常、遺伝子ピラミッド化と呼ばれる。遺伝子ピラミッド化育種の最初の部分は系統と呼ばれ、単一の遺伝子型(根の遺伝子型と呼ばれる)にすべての標的遺伝子の1つのコピーを蓄積することを目的とする。2番目の部分は固定ステップと呼ばれ、標的遺伝子をホモ接合状態に固定すること、つまり、根の遺伝子型から理想的な遺伝子型(イデオタイプ)を導き出すことを目的とする。遺伝子ピラミッド化は、マーカー支援選択(MAS、Hospital et al.,1992,1997a,and 1997bおよびMoreau et al,1998を参照されたい)またはマーカーベースの循環選択(MBRS、Hospitalら、2000を参照されたい)と組み合わせることができる。
【0318】
特に食用バナナのバナナ育種プログラムは、高い不稔性、三倍体性、無種子性によって妨げられている。生存可能な花粉を生産する二倍体バナナクローンはほとんどなく、市販のバナナクローンの生殖質は雄性および雌性の両方で不稔である。これらの問題および課題にもかかわらず、近年、Musaの遺伝的改善において重要な進歩が見られ、バナナ育種プログラムから新しい品種が利用できるようになっていない(Escalant and Jain,Chapter 30,Banana improvement with cellular and molecular biology,and induced mutations:future and perspectives,8 pages,In Jain and Swennan,editors,Banana Improvement:Cellular,Molecular Biology,and Induced Mutations,2004,Food and Agriculture Organization of the United Nations,Science Publishers,Inc.)。
【0319】
バナナの育種に関する情報については、例えば、Heslop-Harrison and Schwarzacher,Annals of Botany 100:1073-1084,2007、Bakry et al.,Chapter 1,Genetic Improvement in Banana,50 pages,In Breeding Plantation Tree Crops: Tropical Species,2009、Heslop-Harrison et al.,Genomics,Banana Breeding and Superdomestication,Acta Hort.897:55-62, 2011、Jenny et al.,In Jacome et al.,editors,Mycosphaerella leaf spot diseases of banana:present status and outlook,Proceedings of the 2nd International Workshop on Mycosphaerella leaf spot diseases held in San Jose,Costa Rica,20-23 May 2002,Session 4,pages 199-208、Ortiz et al.,Banana and Plantain Breeding,Chapter 10,pages 110-146,In Gowen et al.,editors,Bananas and Plantains,World Crop Series,Springer Link,1995、Batte et al.,Frontiers in Plant Science,Volum 10,Article 81,9 pages,February 2019を参照されたい。
【0320】
VII.遺伝子編集
本明細書で使用される場合、「遺伝子編集系」という用語は、1つ以上のDNA結合ドメインもしくは構成要素、および1つ以上のDNA修飾ドメインもしくは構成要素、または該DNA結合およびDNA修飾ドメインもしくは構成要素をコードする単離された核酸、例えば、1つ以上のベクターを含む系を指す。遺伝子編集系は、標的遺伝子の核酸を修飾するため、および/または標的遺伝子の発現を調節するために使用される。既知の遺伝子編集系では、例えば、1つ以上のDNA結合ドメインまたは構成要素は、1つ以上のDNA結合ドメインが1つ以上のDNA修飾ドメインまたは構成要素を特定の核酸部位に標的化するように、1つ以上のDNA修飾ドメインまたは構成要素と関連している。遺伝子編集を強化するための方法および組成物は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許出願公開第2018/ 0245065号を参照されたく、参照によりその全体が組み込まれる。
【0321】
ある特定の遺伝子編集系は当技術分野で既知であり、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化された規則的に配置された短い回文配列リピート(CRISPR)/Cas系、メガヌクレアーゼ系、およびウイルスベクター媒介遺伝子編集が含まれるが、これらに限定されない。
【0322】
いくつかの実施形態では、本開示は、DNAヌクレアーゼを利用する遺伝子編集/クローニングのための方法を教示する。CRISPR複合体、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、およびFokI制限酵素は、遺伝子編集ツールとして使用されている配列特異的ヌクレアーゼの一部である。これらの酵素は、目的の配列を認識するように操作されたガイド領域との相互作用を通じて、ヌクレアーゼ活性を所望の標的遺伝子座に標的化することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、病原体に対する病害抵抗性を刺激、増強、または調節するために、本開示のバナナ種のゲノムを遺伝子操作するためのCRISPRベースの遺伝子編集方法を教示する。
【0323】
(i)CRISPR系
CRISPR(クラスター化された規則的に配置された短い回文配列リピート)およびCRISPR関連(cas)エンドヌクレアーゼは、最初は、ウイルスおよびプラスミドの侵入から保護するために細菌および古細菌によって進化した適応免疫系として発見された。細菌に天然に存在するCRISPR/Cas系は、1つ以上のCas遺伝子、ならびに以前に遭遇したウイルスおよびプラスミドから取得したゲノム標的化配列によって分離された塩基配列(スペーサーと呼ばれる)の短い回文配列リピートからなる1つ以上のCRISPRアレイから構成される。(Wiedenheft,B.,et.al.Nature.2012;482:331、Bhaya,D.,et. al.,Annu.Rev.Genet.2011;45:231、およびTerms, M.P.et.al.,Curr.Opin.Microbiol.2011;14:321)。1つ以上のCRISPR遺伝子座を有する細菌および古細菌は、CRISPRアレイの近位端にある宿主染色体に外来配列の短い断片(プロトスペーサー)を組み込むことにより、ウイルスまたはプラスミド攻撃に応答する。CRISPR遺伝子座の転写により、以前に遭遇した侵入核酸に相補的な配列を含むCRISPR由来RNA(crRNA)のライブラリが生成される(Haurwitz,R.E.,et. al.,Science.2012:329;1355、Gesner,E.M.,et.al.,Nat.Struct.Mol.Biol.2001:18;688、Jinek,M.,et.al.,Science.2012:337;816-21)。crRNAによる標的認識は、Casタンパク質による外来配列の切断を指向する標的DNAとの相補的塩基対合によって起こる。(Jinek et.al.2012 “A Programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity.” Science.2012:337;816-821)。
【0324】
少なくとも5つの主要なCRISPR系の型(I、II、III、IV、およびV型)および少なくとも16の異なるサブタイプがある(Makarova,K.S.,et al.,Nat Rev Microbiol.2015.Nat.Rev.Microbiol.13,722-736)。CRISPR系もエフェクタータンパク質に基づいて分類される。クラス1の系はマルチサブユニットcrRNA-エフェクター複合体を有するが、クラス2の系では、エフェクター複合体のすべての機能は単一のタンパク質(例えば、Cas9またはCpf1)によって実施される。いくつかの実施形態では、本開示は、II型および/またはV型の単一サブユニットエフェクター系の使用を提供する。
【0325】
これらは多くの異なる種類の細菌で自然に発生するため、CRISPRの正確な配置、Cas遺伝子の構造、機能、および数、ならびにそれらの産物は種によって多少異なる。Haft et al.(2005) PLoS Comput.Biol.1:e60、Kunin et al.(2007) Genome Biol.8:R61、Mojica et al.(2005) J.Mol.Evol.60:174-182、Bolotin et al.(2005) Microbiol.151:2551-2561、Pourcel et al.(2005) Microbiol.151: 653-663、およびStern et al.(2010) Trends.Genet.28:335-340。例えば、Cse(Casサブタイプ、E.coli)タンパク質(例えば、CasA)は、CRISPR RNA転写物を処理して、Cascadeが保持するスペーサーリピート単位にする、機能複合体Cascadeを形成する。Brouns et al.(2008) Science 321: 960-964。他の原核生物では、Cas6はCRISPR転写物を処理する。E.coliでのCRISPRベースのファージ不活化には、CascadeおよびCas3が必要であるが、Cas1またはCas2は必要ではない。Pyrococcus furiosusおよび他の原核生物のCmr(Cas RAMPモジュール)タンパク質は、相補的な標的RNAを認識し切断する小さなCRISPR RNAと機能的な複合体を形成する。より単純なCRISPR系は、二重らせんの各鎖に1つずつ、2つの活性な切断部位を有するヌクレアーゼであるタンパク質Cas9に依存している。Cas9と修飾されたCRISPR遺伝子座RNAとを組み合わせることにより、遺伝子編集の系で使用することができる。Pennisi(2013)Science 341:833-836。
【0326】
(ii)CRISPR/Cas9
いくつかの実施形態では、本開示は、II型CRISPR系を使用する遺伝子編集の方法を提供する。II型の系は、i)単一エンドヌクレアーゼタンパク質、ii)トランス活性化crRNA(tracrRNA)、およびiii)crRNAの5 ’末端の約20ヌクレオチド(nt)部分が標的核酸に相補的であるcrRNAに依存している。その標的DNAプロトスペーサーに相補的なCRISPR crRNA鎖の領域は、本明細書で「ガイド配列」と呼ばれる。
【0327】
いくつかの実施形態では、II型の系のtracrRNAおよびcrRNA構成要素は、ガイドRNA(gRNA)としても知られる単一のガイドRNA(sgRNA)によって置き換えることができる。sgRNAは、例えば、標的DNA配列(ガイド配列)に相補的な少なくとも12~20ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含むことができ、その3’末端に一般的な足場RNA配列を含むことができる。本明細書で使用される場合、「一般的な足場RNA」は、tracrRNA配列を模倣する任意のRNA配列、またはtracrRNAとして機能する任意のRNA配列を指す。
【0328】
Cas9エンドヌクレアーゼは平滑末端DNA切断を産生し、RNA CRISPR複合体の相補的ハイブリダイゼーションを介してエンドヌクレアーゼをつなぐcrRNAとtracrRNAオリゴとの組み合わせによって標的DNAに動員される。
【0329】
いくつかの実施形態では、crRNA/エンドヌクレアーゼ複合体によるDNA認識は、標的プロトスペーサーから下流の標的DNAの3’部分に位置するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例えば、5’-NGG-3’)との追加の相補的塩基対合を必要とする。(Jinek,M.,et.al.,Science.2012,337:816-821)。いくつかの実施形態では、Cas9によって認識されるPAMモチーフは、異なるCas9タンパク質によって異なる。
【0330】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCas9は、任意の供給源に由来するかまたはそれから単離された任意の変異型であり得る。他の実施形態では、本開示のCas9ペプチドは、以下に記載される機能的変異を含むがこれらに限定されない、文献に記載される変異のうちの1つ以上を含むことができる:Fonfara et al.Nucleic Acids Res.2014 Feb;42(4):2577-90、Nishimasu H.et al.Cell.2014 Feb 27,156(5):935-49、Jinek M. et al.Science.2012 337:816-21、およびJinek M.et al.Science.2014 Mar 14,343(6176)、また2013年3月15日に出願された米国特許出願第13 / 842,859号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたく、さらに、米国特許第8,697,359号、同第8,771,945号、同第8,795,965号、同第8,865,406号、同第8,871,445号、同第8,889,356号、同第8,895,308号、同第8,906,616号、同第8,932,814号、同第8,945,839号、同第8,993,233号、および同第8,999,641号(これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される系および方法は、二本鎖ヌクレアーゼ活性を有する野生型Cas9タンパク質、一本鎖ニッカーゼとして作用するCas9変異体、または修飾されたヌクレアーゼ活性を有する他の変異体と共に使用することができる。
【0331】
本開示によれば、様々な種のCas9タンパク質の、それに由来する、またはそれに基づくCas9分子を、本明細書に記載の方法および組成物で使用することができる。例えば、S.pyogenes、S.thermophilus、Staphylococcus aureusおよび/またはNeisseria meningitidisのCas9分子の、それらに由来する、またはそれらに基づくCas9分子は、本明細書に記載の系、方法、および組成物で使用することができる。さらなるCas9種には、Acidovorax avenae、Actinobacillus pleuropneumoniae、Actinobacillus succinogenes、Actinobacillus suis、Actinomyces sp.、cycliphilus denitrificans、Aminomonas paucivorans、Bacillus cereus、Bacillus smithii、Bacillus thuringiensis、Bacteroides sp.、Blastopirellula marina、Bradyrhiz obium sp.、Brevibacillus latemsporus、Campylobacter coli、Campylobacter jejuni、Campylobacter lad、Candidatus Puniceispirillum、Clostridiu cellulolyticum、Clostridium perfringens、Corynebacterium accolens、Corynebacterium diphtheria、Corynebacterium matruchotii、Dinoroseobacter sliibae、Eubacterium dolichum、gamma proteobacterium、Gluconacetobacler diazotrophicus、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus sputorum、Helicobacter canadensis、Helicobacter cinaedi、Helicobacter mustelae、Ilyobacler polytropus、Kingella kingae、Lactobacillus crispatus、Listeria ivanovii、Listeria monocytogenes、Listeriaceae bacterium、Methylocystis sp.、Methylosinus trichosporium、Mobiluncus mulieris、Neisseria bacilliformis、Neisseria cinerea、Neisseria flavescens、Neisseria lactamica、Neisseria sp.、Neisseria wadsworthii、Nitrosomonas sp.、Parvibaculum lavamentivorans、Pasteurella multocida、Phascolarctobacterium succinatutens、Ralstonia syzygii、Rhodopseudomonas palustris、Rhodovulum sp.、Simonsiella muelleri、Sphingomonas sp.、Sporolactobacillus vineae、Staphylococcus lugdunensis、Streptococcus sp.、Subdoligranulum sp.、Tislrella mobilis、Treponema sp.、またはVerminephrobacter eiseniaeが含まれる。
【0332】
いくつかの実施形態では、本開示は、作物などの植物におけるゲノム編集技法のためのツールの使用、およびSpyCas9、SaCas9、St1Cas9を含むCRISPR関連(cas)エンドヌクレアーゼを使用する遺伝子編集の方法を教示する。植物ゲノム編集に適用することができるゲノム編集のためのこれらの強力なツールは、当技術分野で周知である。例えば、Song et al.(2016),CRISPR/Cas9:A powerful tool for crop genome editing,The Crop Journal 4:75-82、Mali et al.(2013)RNA-guided human genome engineering via cas9,Science 339: 823-826、Ran et al.(2015)In vivo genome editing using staphylococcus aureus cas9,Nature 520:186-191、Esvelt et al.(2013)Orthogonal cas9 proteins for rna-guided gene regulation and editing,Nature methods 10(11):1116-1121を参照されたく、その各々は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0333】
(iii)CRISPR/Cpf1
他の実施形態では、本開示は、V型CRISPR系を使用する遺伝子編集の方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、Prevotella、Francisella、Acidaminococcus、Lachnospiraceae、およびMoraxella(Cpf1)からのCRISPRを使用する遺伝子編集の方法を提供する。
【0334】
本開示のCpf1 CRISPR系は、i)単一のエンドヌクレアーゼタンパク質、およびii)crRNAを含み、crRNAの3’末端の一部は、標的核酸に相補的なガイド配列を含む。この系では、Cpf1ヌクレアーゼは、crRNAによって標的DNAに直接動員される。いくつかの実施形態では、Cpf1のガイド配列は、検出可能なDNA切断を達成するために、少なくとも12nt、13nt、14nt、15nt、または16ntでなければならず、効率的なDNA切断を達成するために最低14nt、15nt、16nt、17nt、または18ntでなければならない。
【0335】
本開示のCpf1系は、様々な点でCas9とは異なる。第1に、Cas9とは異なり、Cpf1は、切断のために別個のtracrRNAを必要としない。いくつかの実施形態では、Cpf1 crRNAは、約42~44塩基長ほど短くてよく、そのうち23~25ntはガイド配列であり、19ntは構成的な直接反復配列である。対照的に、Cas9 tracrRNAとcrRNAの合成配列の組み合わせは、約100塩基長であり得る。
【0336】
第2に、ある特定のCpf1系には、その標的の5’上流に位置する「TTN」PAMモチーフが好ましい。これは、Streptococcus pyogenes Cas9などの一般的なCas9系の標的DNAの3 ’に位置する「NGG」PAMモチーフとは対照的である。いくつかの実施形態では、ガイド配列の直前のウラシル塩基を置換することはできない(Zetsche,B.et al.2015.“Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163,759-771、すべての目的において、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0337】
第3に、Cpf1の切断部位は、約3~5塩基ずれており、「粘着末端」を作り出す(Kim et al.,2016.“Genome-wide analysis reveals specificities of Cpf1 endonucleases in human cells” published online June 06,2016)。3~5ntのオーバーハングを有するこれらの粘着末端は、NHEJ媒介ライゲーションを容易にし、末端が一致するDNA断片の遺伝子編集を改善すると考えられている。切断部位は、標的DNAの3’末端にあり、PAMが存在する5’末端の遠位にある。切断位置は通常、ハイブリダイズしていない鎖の18番目の塩基と、crRNAにハイブリダイズした相補鎖の対応する23番目の塩基の後に続く。
【0338】
第4に、Cpf1複合体では、「シード」領域は、ガイド配列の最初の5nt内に位置する。Cpf1 crRNAシード領域は、変異に非常に感受性であり、この領域での単一の塩基置換でさえ、切断活性を大幅に低下させる可能性がある(Zetsche B.et al.2015 “Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163,759-771を参照されたい)。重要なことに、Cas9 CRISPR標的とは異なり、Cpf1系の切断部位およびシード領域は重複しない。Cpf1 crRNA標的化オリゴの設計に関する追加のガイダンスは、Zetsche B.ら、2015(“Cpf1 Is a Single RNA-Guided Endonuclease of a Class 2 CRISPR-Cas System” Cell 163,759-771)で入手することができる。
【0339】
(iv)ガイドRNA(gRNA)
いくつかの実施形態では、本開示のガイドRNAは、それぞれ、crRNAおよびtracrRNAをコードする2つのコード領域を含む。他の実施形態では、ガイドRNAは、単一のガイドRNA(sgRNA)合成crRNA/tracrRNAハイブリッドである。他の実施形態では、ガイドRNAは、Cpf1エンドヌクレアーゼのcrRNAである。
【0340】
当業者は、特に断りのない限り、本開示における単一のガイドRNA(sgRNA)へのすべての言及は、ガイドRNA(gRNA)を指すものとして読むことができることを理解するであろう。したがって、単一のガイドRNA(sgRNA)を指す本開示に記載の実施形態も、ガイドRNA(gRNA)を指すと理解される。
【0341】
ガイドRNAは、CRISPRエンドヌクレアーゼを標的DNA領域に動員するように設計されている。いくつかの実施形態では、本開示は、実行可能な標的CRISPRランディング部位を特定する方法、およびその部位を標的とするためのガイドRNAを設計する方法を教示する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、標的DNA領域内のCRISPRランディング部位の特定を容易にするように設計されたアルゴリズムを教示する。
【0342】
いくつかの実施形態では、本開示は、特定のCRISPR酵素の所望のガイド配列長およびCRISPRモチーフ配列(PAM、プロトスペーサー隣接モチーフ)に基づいて、入力DNA配列の両方の鎖上の候補CRISPR標的配列を特定するように設計されたソフトウェアプログラムの使用を教示する。例えば、PAM配列TTNを有するFrancisella novicida U112からのCpf1の標的部位は、入力配列および入力の逆補体の両方で5’-TTN-3’を検索することによって特定することができる。PAM配列TTTNを有するLachnospiraceae細菌およびAcidaminococcus sp.からのCpf1の標的部位は、入力配列および入力の逆補体の両方で5’-TTTN-3’を検索することで特定することができる。同様に、PAM配列NNAGAAWを有するS.thermophilus CRISPRのCas9の標的部位は、入力配列および入力の逆補体の両方で5’-Nx-NNAGAAW-3’を検索することによって特定することができる。S.pyogenesのCas9のPAM配列は、5’-NGG-3’である。
【0343】
DNA標的部位のゲノムに複数回出現すると、非特異的なゲノム編集につながる可能性があるため、すべての潜在的な部位を特定した後、関連する参照ゲノムまたはモジュラーCRISPR構築物に出現する回数に基づいて配列を除外することができる。配列特異性が「シード」配列(Cpf1媒介切断のガイド配列の最初の5bpなど)によって決定されるそれらのCRISPR酵素については、除外ステップで任意のシード配列の制限も考慮される場合がある。
【0344】
いくつかの実施形態では、アルゴリズムツールはまた、特定のガイド配列の潜在的なオフターゲット部位を特定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、Cas-Offinderを使用して、Cpf1の潜在的なオフターゲット部位を特定することができる(Kim et al.,2016.“Genome-wide analysis reveals specificities of Cpf1 endonucleases in human cells” Nature Biotechnology 34,863-868を参照されたい)。例えば、Zhang lab crispr.mit.eduツールを含む任意の他の公的に利用可能なCRISPR設計/特定ツールを使用することもできる(Hsu, et al.2013 “DNA targeting specificity of RNA guided Cas9 nucleases” Nature Biotech 31, 827-832を参照されたい)。
【0345】
いくつかの実施形態では、ユーザは、シード配列の長さを選択することができる場合がある。ユーザは、フィルタを通過する目的で、ゲノム内のシード:PAM配列の出現回数を指定することもできる場合がある。デフォルトでは、独特な配列をスクリーニングする。フィルタレベルは、ゲノム内のシード配列の長さおよび配列の出現回数の両方を変更することによって改変される。プログラムは、特定された標的配列の逆補体を提供することにより、報告された標的配列に相補的なガイド配列の配列を追加でまたは代替的に提供することができる。
【0346】
ガイドRNAでは、「スペーサー/ガイド配列」配列は、DNA標的の「プロトスペーサー」配列に相補的である。一本鎖gRNA構造のgRNA「足場」は、Cas9タンパク質によって認識される。
【0347】
いくつかの実施形態では、本開示で教示されるトランスジェニック植物、植物部分、植物細胞、または植物組織培養物は、ガイドRNAをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む組換え構築物を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている。他の実施形態では、組換え構築物は、クラスター化された規則的に配置された短い回文配列リピート(CRISPR)エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列をさらに含む。他の実施形態では、ガイドRNAは、該CRISPRエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、該複合体は、該植物ゲノムのゲノム標的配列に結合し、二本鎖切断を作り出すことができる。他の実施形態では、CRISPRエンドヌクレアーゼはCas9である。
【0348】
さらなる実施形態では、標的配列は、FusR1、FusR1の相同体、FusR1のオルソログ、および/もしくはFusR1のパラログの核酸、ならびに/またはその断片およびバリエーションである。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の遺伝子操作技法を使用して、Fusarium病原体に感受性のあるFW感受性バナナ品種におけるFusR1の遺伝子編集を教示する。
【0349】
本開示は、本開示で与えられる配列情報に基づいてFW感受性対立遺伝子をFW抵抗性対立遺伝子に変えることによって、病害抵抗性を調節、刺激、および増強するための標的化された遺伝子編集技法を教示する。本開示は、FW抵抗性対立遺伝子およびFW感受性対立遺伝子の両方の配列情報を教示する。CRISPR/Cas系を使用して、FW抵抗性の形質がFW感受性のバナナ品種に導入される。
【0350】
いくつかの実施形態では、FW感受性FusR1対立遺伝子は、ノックアウトの標的とされるべきである。いくつかの実施形態では、FW感受性の形質に関与する保存領域の配列を使用して、遺伝子編集機構(CRISPR関連エフェクタータンパク質、ZFN、TALENなど)を作製して、1つ以上のFusR1オルソログを標的とすることができる。
【0351】
いくつかの実施形態では、内因性FW感受性対立遺伝子の発現の破壊は、遺伝子編集技術によって実施される。いくつかの実施形態では、FW感受性対立遺伝子のノックアウトは、遺伝子編集技術によって実施される。いくつかの実施形態では、FW感受性対立遺伝子のFW抵抗性対立遺伝子への塩基編集は、遺伝子編集技術によって実施される。いくつかの実施形態では、遺伝子編集技術はZFNである。他の実施形態では、遺伝子編集技術はTALENである。さらなる実施形態では、遺伝子編集技術は、CRISPR/Cas系である。さらなる実施形態では、該CRISPR系は、核酸分子および酵素タンパク質を含み、核酸分子は、ガイドRNA(gRNA)分子であり、酵素タンパク質は、Casタンパク質またはCasオルソログである。さらなる実施形態では、少なくとも2つの発現カセットは、発現ベクターにおいてタンデムに積み重ねられる。
【0352】
いくつかの実施形態では、修飾された植物細胞は、内因性標的遺伝子のゲノムDNA配列に1つ以上の修飾(例えば、1つ以上の核酸の挿入、欠失、または変異)を含み、内因性遺伝子の機能の改変をもたらし、それによって病害抵抗性を調節、刺激、または増強する。そのような実施形態では、修飾された植物細胞は、「修飾された内因性標的遺伝子」を含む。いくつかの実施形態では、ゲノムDNA配列の修飾は、変異を引き起こし、それにより、FW感受性FUSR1タンパク質の機能をFW抵抗性FUSR1タンパク質に改変する。いくつかの実施形態では、ゲノムDNA配列における修飾は、アミノ酸置換をもたらし、それにより、コードされたタンパク質の正常な機能を改変する。いくつかの実施形態では、ゲノムDNA配列における修飾は、FW感受性バナナ系統における内因性タンパク質の非修飾(すなわち、FW感受性)バージョンと比較して、病害/病原体抵抗性の機能が調節、改変、刺激、または増強された修飾された内因性タンパク質をコードする。
【0353】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾された植物細胞は、1つ以上の修飾された内因性標的遺伝子を含み、1つ以上の修飾は、非修飾植物細胞と比較して、内因性標的遺伝子によってコードされる遺伝子産物(すなわち、タンパク質)の機能の改変をもたらす。例えば、いくつかの実施形態では、修飾された植物細胞は、FW抵抗性FUSR1タンパク質の発現または該タンパク質の上方制御された発現を示す。いくつかの実施形態では、修飾された植物細胞における遺伝子産物(FW感受性FusR1からの遺伝子操作されたFW抵抗性FusR1など)の発現は、非修飾植物細胞における遺伝子産物(FW感受性FusR1など)の発現と比較して、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%以上増強される。多の実施形態では、修飾された植物細胞における遺伝子産物(遺伝子操作されたFW抵抗性FusR1など)の発現は、非修飾植物細胞における遺伝子産物(FW感受性FusR1など)の発現と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上増強される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾された植物細胞は、非修飾植物細胞における遺伝子産物の発現と比較して、複数(例えば、2つ以上)の内因性標的遺伝子によってコードされる遺伝子産物の増強された発現および/または機能を示す。例えば、いくつかの実施形態では、修飾された植物細胞は、非修飾植物細胞の遺伝子産物の発現と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の内因性標的遺伝子からの遺伝子産物の増強された発現および/または機能を示す。
【0354】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾された植物細胞は、1つ以上の修飾された内因性標的遺伝子を含み、標的DNA配列への1つ以上の修飾は、非修飾植物細胞で発現される対応するタンパク質(例えば、「非修飾内因性タンパク質」)の機能と比較して、機能が低下または改変されたタンパク質(例えば、「修飾された内因性タンパク質」)の発現をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の修飾された植物細胞は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の修飾された内因性タンパク質をコードする、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の修飾された内因性標的遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、修飾された内因性タンパク質は、修飾された植物細胞によって発現されるか、もしくは別の細胞によって発現される別のタンパク質に対する増強もしくは改変された結合親和性、増強もしくは改変されたシグナル伝達能、増強もしくは改変された酵素活性、増強もしくは改変されたDNA結合活性、または足場タンパク質として機能する低下または改変された能力を示す。
【実施例
【0355】
本発明は、制限するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに図示される。本出願を通して引用されたすべての参考文献、特許、および公開された特許出願の内容、ならびに図は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0356】
実施例1:配列決定のための方法および材料
(1)材料
新鮮で凍結乾燥したバナナの葉の組織を、Bioversity International(Leuven,Belgium)、Inter-TROP CRB Plantes Tropicales(Guadeloupe)、およびIITA Genebank(Ibadan,Nigeria)、Plant Delights Nursery(Raleigh,NC)、ならびにThe Flower Bin (Longmont,CO)から得た。
【0357】
(2)RNA
修正されたIshiharaプロトコルを使用して、全RNAを、新鮮な、冷凍の、および凍結乾燥したバナナの葉から抽出した(Ishiharaら、2016)。RNase AwayTM(Invitrogen,Carlsbad,CA)で処理した、清潔なドライアイスで冷却した乳鉢および乳棒を使用して、約100mgの新鮮なまたは冷凍のバナナ組織を粉末に粉砕した。約20~30mgの凍結乾燥したバナナ組織を、液体なしで、Lysing Matrix D Tube(MP Bio,Santa Ana,CA)でホモジナイズした。1ミリリットルのポリフェノール溶解バッファー(800μlのRLTバッファー(Qiagen,Germantown,MD)、200μlのFruit-mate(Takara,Mountain View,CA)、および10μlのβ-メルカプトエタノール)を各サンプルに添加した。FastPrep 120(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)のスピード6設定で、新鮮なおよび冷凍のサンプルを40秒間ホモジナイズする一方で、凍結乾燥したサンプルを高速で1分間ボルテックスした。すべてのサンプルを氷上で4分間インキュベートした後、8000xgで2分間遠心分離した。上清を新しい2.0mlチューブに移し、さらに1.0mlのポリフェノール溶解バッファーを上清に添加した。サンプルを高速で1分間ボルテックスし、氷上で4分間インキュベートし、8000xgで2分間遠心分離した。上清を2つのQIAshredderカラム(Qiagen,Germantown,MD)に分け、すべての上清が処理されるまで最大速度で2分間遠心分離した。RNA抽出の残りのステップは、Ishiharaプロトコルに従って実施した。オプションの溶液中DNase消化およびRNAクリーンアッププロトコルも、RNeasy Miniプロトコル(Qiagen,Germantown,MD)に詳述されているように実行された。NanoDropTM One(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)分光光度計を使用して、サンプルの濃度および純度を測定した。
【0358】
(3)DNA
修正されたPowerPlant Pro DNA Isolation Kitプロトコル(MO BIO,Carlsbad,CA)を使用して、全DNAを、新鮮な、冷凍の、および凍結乾燥されたバナナの葉から抽出した。RNase AwayTM(Invitrogen,Carlsbad,CA)で処理した、清潔なドライアイスで冷却した乳鉢および乳棒を使用して、約40mgの新鮮なまたは冷凍のバナナ組織を粉末に粉砕した。約10~20mgの凍結乾燥したバナナ組織を、液体なしで、Lysing Matrix D Tube(MP Bio,Santa Ana,CA)でホモジナイズした。DNA抽出の残りのステップは、MO BIOプロトコルに従って実施した。フェノール分離溶液を溶解バッファーに添加し、250μlのPD3バッファーを使用した。NanoDropTM One(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)分光光度計を使用して、サンプルの濃度および純度を測定した。
【0359】
(4)cDNA
1st Strand cDNA Synthesis Kit(Epicentre,Madison,WI)を使用して、1.0μgの全RNAからcDNAを合成した。ポリdTプライマーの代わりに、Invitrogenの3’-RACEキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)のアダプタープライマー(AP)を使用した。
【0360】
(5)プライマー
OligoAnalyzer Tool(IDT,Coralville,IA)プログラムを使用して、プライマー配列を、57°~64°Cのアニーリング温度で推定標的遺伝子の相同領域に対して設計した。プライマーはIDTから購入した。
【0361】
(6)PCR
PCR反応は、Veriti Thermal Cycler (Applied Biosystems,Carlsbad,CA)において、最終濃度の1XPhusion(登録商標)HFバッファー、各300μMのdNTP、各0.3μMのフォワードおよびリバースプライマー、0.5単位の1XPhusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を含む25μlの反応物で実行した。一般的なPCR条件は、98°Cで2分間、続いて98°Cで10秒間、55°~62°Cで30秒間(プライマーTaによる)、および72°Cで30秒間の35サイクルの後、72°Cで10分間最終伸長し、4°Cで保持した。PCR産物を、1.5%アガロースゲルで泳動し、Alpha Imager EC(Alpha Innotech,San Leandro,CA)で、GelRed(登録商標)Nucleic Acid Stain (Biotium,Hayward,CA)を使用して可視化した。
【0362】
(7)クローニング
PCR断片は、Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、製造元のプロトコルに従って、4μlのPCR産物を使用してクローニングした。ライゲーションされたベクターを、化学形質転換プロトコルを使用して、Top10 One Shot chemically competent cell(Invitrogen,Carlsbad,CA)に形質転換した。形質転換されたE.coli細胞を、50μg/ mlのカナマイシンを含むLB寒天プレートにプレーティングし、プレートを37℃で一晩培養した。
【0363】
(8)コロニーPCR
組換えプラスミドを含むコロニーを、M13フォワードおよびリバースプライマーを用いたPCRを使用してスクリーニングした。PCR反応は、Veriti Thermal Cycler(Applied Biosystems, Carlsbad, CA)において、60mMのTris-SO4(pH8.9)、18mMの硫酸アンモニウム、2.0mMの硫酸マグネシウム、各0.2mMのdNTP、各0.2μMのフォワードおよびリバースプライマー、0.3単位のPlatinum Taq Hi Fidelity(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含む15μlの容量で実行した。コロニーを採取して、PCR反応物に接種し、続いて50μlのLB-カナマイシンを接種した。コロニーPCR条件は、94°Cで2分間、続いて94°Cで30秒間、50°Cで30秒間、および68°Cで1分間の35サイクルの後、68°Cで10分間最終伸長し、4°Cで保持した。PCR産物を、1.5%アガロースゲルで泳動し、Alpha Imager EC(Alpha Innotech,San Leandro,CA)で、GelRed(登録商標)Nucleic Acid Stain (Biotium,Hayward,CA)を使用して可視化した。予想されるサイズの産物を産生するコロニーPCR反応物の配列決定を行った。
【0364】
(9)配列決定
2μlのHigh-Throughput ExoSAP-IT(Affymetrix,Santa Clara,CA)を使用した酵素処理により配列決定するために、5マイクロリットルの各PCR産物を調製した。反応物を、37°Cで15分間、続いて80°Cで15分間インキュベートした。テンプレートを、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)を使用して配列決定するために次のように標識した:2μlのテンプレートおよび2μlの0.8μMのシーケンシングプライマーを、10μlの反応物中のBigDye Terminatorシーケンシングバッファー、BigDye Terminator v3.1 Ready Reaction Mix、および水の混合物に添加した。BigDye配列決定反応条件は次のとおりである:96°Cで1分間、続いて96°Cで10秒間、50°Cで5秒間、および60°Cで75秒間を25サイクル。組み込まれていないBigDye terminatorは、BigDye XTerminator Purification Kit(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)を使用して除去された。Applied Biosystems 3500 Genetic Analyzer(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)を使用して、反応物の配列決定を行った。
【0365】
(10)配列アラインメント
ABI 3500 Genetic Analyzerの配列ファイルを、Sequencher v4.8 Build 3767(Gene Codes, Ann Arbor, MI)にインポートした。ベクター配列は、Trim Vectorツールを使用してトリミングされた。次に、配列を自動的に整列させ、アーティファクトを配列決定するために手動で編集した。
【0366】
実施例2:Fusarium立ち枯れ病(FW)抵抗性遺伝子とFusarium立ち枯れ病(FW)感受性遺伝子との間の構造の違いを特定する
この実施例では、Fusarium立ち枯れ病抵抗性遺伝子は、以下に説明されるように、GenBankから取得したDNA配列の分析によって発見された。いくつかのバナナ種(すなわち、Musa itinerans、Musa acuminata、Musa basjoo、Musella lasiocarpa、Musa balbisiana)からのヌクレオチド配列をダウンロードした。M.itinerans FusR1配列は、複数の系統(ITC1526、ITC1571、およびPT-BA-00223)から得られ、それらのすべてはFW抵抗性である。「FW抵抗性」とラベル付けされたM.acuminata FusR1配列は、ITC0896(M. a.亜種banksii)およびPT_BA-00281(Pisang Bangkahulu)を含む複数のFW抵抗性系統から得た。「感受性」とラベル付けされたM.acuminata配列は、FW感受性系統(ITC0507、ITC0685、PT-BA-00304、PT-BA-00310、およびPT-BA-00315からのものである)。これらの系統には、Pisang Madu、Pisang Pipit、およびPisang Rojo Uterなどのバナナ栽培品種からの複数のサンプルが含まれ、これらはすべてFW感受性であると十分に特徴付けられている(Chenら、2019)。M.balbisiana配列は、ITC1016、ITC0545、ITC0080、およびITC0565を含むいくつかのFW感受性系統から得た。M.basjooからのFusR1は、FW抵抗性系統(ITC0061およびPD#3064)からのものである。次に、自動化されたバイオインフォマティクス分析を、各ペアワイズ比較に適用し、進化的に顕著な変化をもたらすヌクレオチド変化(または複数の変化)を含むそれらの配列のみが、さらなる分析のために保持された。これにより、進化していくつかの進化上の利点をもたらす遺伝子の特定、ならびに特定の進化的変化の特定が可能になった。
【0367】
いくつかの異なる分子進化分析またはKa/Ks型方法のうちのいずれかを用いて、関連種の相同遺伝子配列間で特定されたヌクレオチド変化の進化的重要性を定量的かつ定性的に評価することができる(Kreitman and Akashi,1995;Li,1997)。例えば、タンパク質の正の選択(すなわち、分子レベルの適応進化)は、非同義部位あたりの非同義ヌクレオチド置換(Ka)の同義部位あたりの同義置換(Ks)との比率のペアワイズ比較により、タンパク質コード遺伝子で検出され得る(Liら、1985;Li,1993)。KaおよびKsの任意の比較を使用することができるが、これら2つの変数を比率として比較するのが特に簡便で最も効果的である。配列は、標準的な統計方法を使用して、KaとKsとの間の統計的に有意な差を示すことによって特定される。
【0368】
いくつかの態様では、Liら(1993)によるKa/Ks分析を使用して、本開示を実施するが、種間の積極的に選択された遺伝子を検出することができる他の分析プログラムも使用することができる(Liら、1985、Li,1993、Messier and Stewart,1997、Nei,1987)。
【0369】
遺伝子の相同タンパク質コード領域間の非同義部位あたりの非同義置換率と同義部位あたりの同義置換率との比率の比較を含むKa/Ks方法を使用して、進化中の中性置換とは対照的に、適応選択によって駆動され得る配列置換を特定する。同義(「サイレント」)置換は、遺伝暗号の縮重のため、コードされたアミノ酸配列に変更を加えないものであり、非同義置換はアミノ酸交換をもたらす。各種類の変更の範囲は、それぞれKaおよびKs、同義部位あたりの同義置換の数および非同義部位あたりの非同義置換の数として推定することができる。Ka/Ksの計算は、手動でまたはソフトウェアを使用して実行することができる。適切なプログラムの例は、Li93(Li,1993)、またはMEGA X:Molecular Evolutionary Genetics Analysis Across Computing Platforms (Kumarら、2018)である。
【0370】
KaおよびKsを推定する目的のために、完全または部分的なタンパク質コード配列のいずれかを使用して、同義および非同義置換、ならびに非同義および同義部位の総数を計算する。分析されるポリヌクレオチド配列の長さは、任意の適切な長さであり得る。好ましくは、すべての顕著な変化を決定するために、コード配列全体が比較される。Li93(Li,1993)またはMEGA X:Molecular Evolutionary Genetics Analysis Across Computing Platforms(Kumarら、2018)などの公的に利用可能なコンピュータプログラムを使用して、すべてのペアワイズ比較のKa値およびKs値を計算することができる。
【0371】
この分析は、少数の重要な変化が配列全体によってマスクされないように、「スライディングウィンドウ」方式で配列を調べるようにさらに適合させることができる。「スライディングウィンドウ」は、遺伝子の連続した重複するサブセクションを調べることを指す(サブセクションは任意の長さのものであってよい)。
【0372】
非同義置換率と同義置換率の比較は、通常、Ka/Ks比で表される。Ka/Ksは、研究中の配列において適応進化が機能している程度の反映であることが示されている。コード配列の完全長または部分セグメントは、Ka/Ks分析に使用することができる。Ka/Ks比が高いほど、配列が適応進化を遂げた可能性が高くなり、非同義置換が進化的に顕著になる。例えば、Messier and Stewart(1997)を参照されたい。
【0373】
1(1.0)よりも大幅に大きいKa/Ks比は、正の選択が偶然の結果としてのみ予想されるよりも多くのアミノ酸交換を固定していることを強く示唆しており、比率が1以下である最も一般的に観察されるパターンとは対照的である(Nei,1987、Hughes and Nei,1988、Messier and Stewart,1994、Kreitman and Akashi,1995、Messier and Stewart,1997)。1未満の比率は、一般に、負の役割または精製選択を意味し、変化しないままであるように、機能的で効果的なタンパク質の一次構造に強い圧力がかかっていることを示す。
【0374】
Ka/Ks比を計算するための方法はすべて、関連種の相同遺伝子のタンパク質コード領域の非同義部位あたりの非同義置換の数と同義部位あたりの同義置換の数とのペアワイズ比較に基づいている。各方法は、「複数のヒット」(つまり、同じ部位での2つ以上のヌクレオチド置換)を推定するための異なる修正を実装する。各方法は、進化の過程でDNA配列がどのように変化するかについて異なるモデルを使用する。したがって、好ましくは、正に選択された遺伝子の検出の感度のレベルおよび結果の信頼性を高めるために、異なるアルゴリズムからの結果の組み合わせを使用する。
【0375】
本明細書に記載の方法は、バナナのタンパク質コード配列に機能的に関連するバナナのポリヌクレオチド配列の特定につながる可能性があることが理解される。そのような配列には、タンパク質をコードしない非コード配列またはコード配列が含まれ得るが、これらに限定されない。これらの関連配列は、例えば、イントロンまたは5’および3’隣接配列(プロモーターおよびエンハンサーなどの制御要素を含む)などのバナナのゲノムにおけるバナナのタンパク質コード配列に物理的に隣接し得る。これらの関連配列は、GenBankなどの公開ゲノムデータベースを検索するか、あるいはプローブとしてタンパク質コード配列を用いて適切なゲノムライブラリをスクリーニングおよび配列決定することによって得ることができる。
【0376】
候補遺伝子が特定された後、各オルソロガス遺伝子対の遺伝子のヌクレオチド配列は、標準的なDNA配列決定技法によって慎重に検証され、次に慎重に配列決定された各候補遺伝子対についてKa/Ks分析が繰り返された。より具体的には、ソフトウェアは、野生種からのオルソログと比較して、栽培バナナ、Musa acuminata(AAA subgr.Cavendish)からのすべての遺伝子の推定オルソログ間のすべての可能なペアワイズ比較を調べ、高いKa/Ks比を探す。ソフトウェアは、野生の近縁種、例えば、M.balbisianaから配列決定されたトランスクリプトームのすべての配列に対して、栽培バナナからのすべてのmRNA配列を(自動化された方法で)BLASTした。次に、ソフトウェアは、各遺伝子対(つまり、オルソログの各セット)に対してKa/Ks分析を実行し、高いKa/Ksスコアを有する遺伝子対にフラグを付けた。
【0377】
次に、ソフトウェアは、再度一連のBLASTを行い、高いKa/Ksスコアをふるいにかけることによって、すべての栽培バナナの配列を別の野生の近縁種、例えば、M.basjooのすべての配列と比較した。したがって、これは、すべての野生種のトランスクリプトーム配列に対して連続して行われる。これにより、後続の分析のための候補のセット(以下を参照)が得られる。次に、ソフトウェアは、一連のBLASTを行い、高いKa/Ksスコアをふるいにかけることによって、M.balbisianaのトランスクリプトームのすべての遺伝子配列をM.basjooのすべての配列と比較した。したがって、最終的には、正の選択の証拠を示すすべての遺伝子を見つけることを目的として、すべてのバナナ種の利用されたcDNAライブラリに表される発現遺伝子のすべてを、野生および栽培の両方の他のすべてのバナナ種のすべての遺伝子と比較した。
【0378】
次に、出現したフラグ付きの遺伝子対をラボで個別にかつ慎重に再度配列決定して、元のハイスループット読み取りの精度をチェックし、誤検出を排除した。
【0379】
次に、Ka/Ksスコアが高い残りのすべての候補遺伝子対を調べて、比較が本当にオルソロガスであるか、またはパラロガス比較によって引き起こされた人為的な誤検出であるかを判断した。
【0380】
上記の方法論を使用して、GenBankで利用可能なバナナの遺伝子配列を分析して、当技術分野においてバナナ種のFW抵抗性形質に関連付けられていない正に選択された遺伝子を特定した。発明者は、この遺伝子を、FW抵抗性を引き起こすと予想されると特定および選択し、それをFusarium抵抗性1(FusR1)と名付けた。注目すべきことに、発明者は、抵抗性の高い野生バナナの近縁種であるM.itineransからのFusR1オルソログとFW感受性のキャベンディッシュ(M.acuminata)からのFusR1との間に3.6という異常に高いKa/Ks比を見出した。
【0381】
発明者は、バナナの栽培品種および在来種の両方、ならびにMusa属、Musella属、およびEnsete属からの野生の(栽培化されていない)バナナ種を含む、多くの種類のバナナの系統を得た。これらの3つの属は、バナナ科のMusaceaeを構成する。発明者は、バナナの分類学的および地理的多様性の両方を適切にサンプリングするために、Musa acuminata(「A」ゲノム)およびM.balbisiana(「B」ゲノム)の両方の系統の複数のサンプルを得るためにかなりの努力をした。発明者は、ほとんどのacuminata亜種の系統を得た。加えて、外群分析のために、発明者は、Musaceaeに密接に関連していることが知られている植物科からの植物系統を得た。
【0382】
一部のB群のバナナ種/品種は、時折、干ばつ耐性などの望ましい農業形質を示すことさえあるが、Foc-TR4に非常に感受性であることは十分に認識されている(Chenら、2019)。Aゲノムのバナナは、特定の種または栽培品種に応じて、様々なFusarium抵抗性、耐性、および感受性を示す。結果として、多くの野生のバナナ種および栽培バナナの品種は、TR4に対する抵抗性、耐性、または感受性について慎重かつ厳密に特徴付けられている(Li et al.,2012、Ssali et al.,2013、Li et al.,2015、Wu et al.,2016、Ribeiro et al.,2018、Niu et al.,2018、およびZuo et al.2018)。
【0383】
可能な限り、発明者は、RNA(cDNAへの変換用)およびゲノムDNA(gDNA)の両方を調製することを選択した。ほとんどの系統は、新鮮な、冷凍の、または凍結乾燥したサンプルのいずれかとして得られ、これにより、通常、RNA抽出を成功させることができる。一部のサンプルでは、特に古いまたは部分的に劣化している場合、gDNAしか単離することができなかった。表1および配列表に記載される、いくつかのMusa、Musella、Ensete、および外群種のmRNA配列および/またはコード配列のみ)、イントロン配列、およびいくつかの配列(配列表を参照されたい)が本明細書に提供される。方法の詳細な説明は、実施例1の方法および材料のセクションに記載されている。
【0384】
栽培バナナは、Bゲノムバナナ(Musa balbisiana群)とAゲノムバナナ(M.acuminata群)との間の交配事象の産物である。一部のB群のバナナ種/品種は、時折、干ばつ耐性などの望ましい農業形質を有することさえある(REF)が、Foc-TR4に感受性であることは十分に認識されている(Chenら、2019)。対照的に、Aゲノムのバナナは、特定の種または栽培品種に応じて、様々なFusarium抵抗性、耐性、および感受性を示す。Musa itineransおよびM.basjooなどの一部のAゲノム群の種は、Foc-TR4に対して非常に抵抗性であることが示されている(Liら、2015;Wu ら、2016)が、キャベンディッシュのような一部のAゲノム栽培品種は、Fusariumに非常に感受性である。
【0385】
これらの配列の分析により、重要な結果が明らかになった。つまり、Fusarium抵抗性として特徴付けられているすべての「A」ゲノムバナナ種(または栽培バナナ品種)は、共通の群に分類されるFusR1配列を共有するが、Fusarium感受性のバナナ種/品種は異なる群に分類される。驚くべきことに、発明者が調べたすべてのBゲノム系統は「FW感受性」であり、Bゲノム系統からのすべてのFusR1配列は、コード配列の塩基対欠失のある組み合わせによって何らかの形で壊れており、かつ/または損傷している。多くの場合、欠失は82または85bpなどのサイズのいずれかの長さであるが、発明者は一貫した単一塩基の欠失も発見した。これらの欠失は、リーディングフレームを破壊することによって推定されるタンパク質配列を改変し、通常はタンパク質を短縮化する。加えて、すべてのBゲノムFusR1コード配列には、スプライシングされていない84bpのイントロンが含まれており、多くの場合、85bpの欠失と一緒に現れる。
【0386】
Aゲノムバナナに関して、発明者は、Foc-TR4抵抗性であることが知られているAゲノム系統はすべて共通のFusR1配列群を共有し、Foc-TR4感受性Aゲノム系統はすべて異なるFusR1配列群を共有することを見出した。
【0387】
これは、FusR1がFusarium抵抗性種とFusarium感受性種との間の観察された病害抵抗性パターンに関与するという強力な証拠である。この例の分析は、Fusariumレース4に対する感受性との抵抗性の違いが、FusR1配列の違いと強く関連していることを示唆する。
【0388】
これに対するさらなる裏付けは、「Fusarium立ち枯れ病耐性」として特徴付けられているいくつかのバナナ種の調査から得られる。これらの種はすべて、第3の配列群に分類されるFusR1配列を有し、すべてFusarium抵抗性配列群とFusarium感受性配列群との中間にある。
【0389】
バナナ産業は、1950年代に、Fusarium(パナマ病)レース1がグロスミッチェルに重大な脅威をもたらしたときに、その主要栽培品種であるグロスミッチェルからキャベンディッシュ栽培品種への転換を余儀なくされた。グロスミッチェルの半同胞( half-sib)であるキャベンディッシュ(どちらも「A」ゲノム種)は、レース1に抵抗性であることがわかった。したがって、密接に関連するキャベンディッシュおよびグロスミッチェルの栽培品種は、様々なFusariumレースに対して異なる抵抗性のプロファイルを示す。(どちらも、バナナ産業の現在の脅威であるFoc-TR4に感受性である。)
【0390】
発明者は、いくつかのMusa acuminata系統からFusR1を配列決定した。いずれの場合も、発明者は、実施例1に記載されているように、FusR1遺伝子をクローニングし、次いで、FusR1遺伝子の複数のクローンを配列決定した。これらのM.acuminata系統のいくつかは、Fusarium立ち枯れ病抵抗性/感受性について十分に特徴付けられている。発明者は、M.acuminata FusR1の3つの対立遺伝子を発見した。重要な観察結果は、すべてのFusarium立ち枯れ病抵抗性系統が類似のFusR1配列を共有しているということである。FW抵抗性M.acuminata系統からの2つのFusR1対立遺伝子は、Fusarium立ち枯れ病抵抗性FusR1対立遺伝子、または単に「抵抗性対立遺伝子」(配列番号8および配列番号10)である。対照的に、すべてのFW感受性M.acuminata系統は、Fusarium立ち枯れ病感受性FusR1対立遺伝子(配列番号13)という名前の異なる対立遺伝子を共有している。FW抵抗性FusR1対立遺伝子は、FW感受性の対立遺伝子とはごくわずかの重要なヌクレオチド置換が異なる。(図1を参照されたい)。これは、Fusarium立ち枯れ病抵抗性/感受性がバナナ植物が保有する特定のFusR1対立遺伝子によって制御されることを強く示唆する。
【0391】
実施例3:バナナの抵抗性育種
FW感受性キャベンディッシュ栽培品種(M.acuminata;AAAA)の4倍体バージョンが利用可能であるか、または生産される比較的低い割合の4倍体子孫の作成、特定、および単離に焦点を当てた大規模な受粉/育種プログラムを介して(例えば、Aguilar Moran, J.F.,2013,Improvement of Cavendish Banana cultivars through conventional breeding,Acta Hortic.986:205-208、Jenny et al.,In Jacome et al.,editors,Mycosphaerella leaf spot diseases of banana:present status and outlook,Proceedings of the 2nd International Workshop on Mycosphaerella leaf spot diseases held in San Jose,Costa Rica,20-23 May 2002,Session 4,pages 199-208)、または二倍体AA遺伝子型をインビトロ倍数化に供することによって(Amah et al.,November 2019,Frontiers in Plant Science,Vol.10,Article 1450,12 pages)開発され得る。
【0392】
M.acuminata ssp.banksiaのFW抵抗性FusR1(AA)の2倍体バージョンは、当業者に既知の方法を使用して特定または開発され得る(例えば、Bakry et al.,Chapter 1,Genetic Improvement in Banana,50 pages,In Breeding Plantation Tree Crops:Tropical Species,2009)。結果として生じる二倍体を、配列番号8および/または配列番号10(mRNA配列)の存在についてスクリーニングする。
【0393】
「ナイン」または「ウィリアムズ」栽培品種の4倍体などの4倍体FW感受性キャベンディッシュ植物は、雌親として使用される二倍体「ITC0896」などの二倍体FW抵抗性FusR1 M.acuminata ssp.banksia植物との交配で、雄親として使用され得る。
【0394】
結果として生じる子孫の多くは、配列番号8および/または配列番号10(mRNA配列)を含む三倍体植物(AAA)についてスクリーニングされ、続いて農業形質について評価される。
【0395】
TR4に抵抗性のある、得られる/選択されたすべてのバナナ植物は、無性生殖によって維持され、生産またはその後の育種プログラムにおいて使用される。
【0396】
実施例4:植物の形質転換のための材料および方法
バナナ形質転換系は、選択されたバナナの種類の不稔性材料を使用する。成功の可能性を高めるために、様々な組織培養および形質転換の方法論が使用される。例えば、Ploetz(2015,Phytopathology 105:1512-1521)、米国特許第7,534,930号、米国特許第6,133,035号、Sagi et al.,Bio/Technology 13,481-485,1995、May et al.,Bio/Technology 13,485-492,1995、Vishnevetsky et al.,Transgenic Res.20(1):61-71,2011、Paul et al.(2011)、Zhong et al.,Plant Physiol.110,1097-1107,1996、Dugdale et al.,Journal of General Virology 79:2301-2311,1998、Mohan and Swennen(編集者),2004,Banana improvement:cellular,molecular biology,and induced mutations,Science Publishers,Inc.、およびRemy et al.,2013,Genetically modified bananas: Past,present and future,Acta Horticulturae 974:71-80に記載されている形質転換プロトコルを参照されたく、その各々は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0397】
これらの方法論は、組織培養条件、再生/発芽のための様々な組織型の特定、培地配合、agrobacterium株、選択カセット、対照および送達ベクターの構築、遺伝子送達、選択可能なマーカー、ならびにDNA送達および形質転換のための標的組織/細胞基質に焦点を当てている。最初の実験では、視覚的マーカーおよび選択カセットを使用して対照ベクターを展開して、実験の方向性を迅速に最適化し、潜在的なトランスジェニック事象をスクリーニングする。並行実験は、形質転換効率の最適化および目的の遺伝子(GOI)の使用に向けられる。
【0398】
プロセスおよび形質転換の効率を改善するために、培地配合、ベクター、および形質転換プロセスの修正が行われる。目的の重要な遺伝子を含む形質転換ベクターは、追加の過剰発現またはノックアウト事象をもたらすために引き続き形質転換される。必要に応じて使用されるベクターには、バナナでの有効性を試験するための多重遺伝子スタックベクター、ポリシストロン遺伝子ベクター、および多重gRNA CRISPR編集ベクターが含まれるが、これらに限定されない。選択可能なマーカー遺伝子またはGOIの存在およびコピー数を示すために、試験はT0事象で行われる。さらに、mRNA発現分析は、必要に応じて任意の重要なGOIに使用される。推定上の形質転換された植物材料は、後続の試験または分析に使用される。
【0399】
バナナのゲノムなどの植物ゲノムを編集するために、CRISPRを使用するための組成物および手順への参照を含むCRISPR技術は、本明細書の別の箇所で詳細に説明される。目的の表現型(例えば、Fusariumなどの真菌病原体に対する抵抗性)を生じさせる植物の遺伝子をノックアウトするためにCRISPRを利用するための詳細な組成物および手順は、WO2019/118342(PCT/US2018/064735)、WO2018/220581(PCT/IB2018/053903)、およびUS2019/0032070(US16/072,706)に提供され、その各々は、参照により本明細書に具体的かつ完全に組み込まれる。
【0400】
候補遺伝子(例えば、内因性FW感受性FusR1遺伝子)をノックアウトするための標的部位をインシリコでスクリーニングし、選択したら、目的の植物で見つかった候補遺伝子の標的変異のCRISPR/Cas9ベクターが、ベクターを目的の植物(すなわち、広く栽培されている三倍体の不稔性キャベンディッシュ品種およびその子孫などのFW感受性バナナ品種)に形質変換するために構築される。
【0401】
CRISPR/Cas9ベクターは、当技術分野で知られている(例えば、Maら、2015を参照されたい)および/または発明者が開発したもしくは洗練したagrobacterium媒介プロトコルを使用して、バナナの品種、特に、FW感受性バナナなどの目的の植物に形質変換される。それに応じて、組織培養および形質転換植物の再生が行われる。
【0402】
CRISPR/Cas9ベクターで形質転換された植物は再生され、目的の植物細胞へのCRISPR/Cas9ベクターの導入を検証するために試験される。インデルの誘導の対照として、野生型Cas9を発現する構築物もこの実験で使用される。
【0403】
候補遺伝子のノックアウトは、すべての形質転換された植物において調べられる。ノックアウトは、(1)候補遺伝子の抑制および/もしくはサイレンシングをチェックするための定量的PCR、または(2)PCR増幅ならびにその後のサンガーシーケンシングおよび/もしくはハイスループットディープシーケンシングによって研究される。また、標的ゲノム領域への導入されたフレームシフトによって引き起こされるアミノ酸置換は、質量分析を用いたタンパク質配列決定によって分析される。
【0404】
得られた形質転換された植物は、制御された温室および/または野外条件で栽培される。目的のアミノ酸の挿入、欠失、または置換で検証された形質転換された植物は、FW、パナマ病、またはFusarium oxysporum f.sp.cubenseトロピカルレース4による感染に対する抵抗性の増強が観察される。
【0405】
実施例5:バナナの形質転換
Fusarium oxysporumレース4(別名トロピカルレース4またはTR4)に感受性のバナナ植物は、実施例4で提供されるバナナ形質転換技術および本明細書で提供されるTR4抵抗性をコードするFusR1ヌクレオチド配列を使用して、抵抗性をコードするヌクレオチド配列でそれらを形質転換することによってTR4抵抗性植物に形質転換される。例えば、TR4感受性のキャベンディッシュバナナ栽培品種は、本明細書で提供されるように、TR4抵抗性をコードするFusR1対立遺伝子のうちの1つで形質転換され得る。さらなる例として、TR4感受性キャベンディッシュバナナ栽培品種は、TR4抵抗性をコードする以下のヌクレオチドコード配列:配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24のうちの1つ以上で形質転換され得る。
【0406】
例えば、キャベンディッシュバナナ栽培品種「グランドナイン」(AAA)は、米国特許第7,534,930号(「Transgenic Disease Resistant Banana」)(それが開示するすべてのものについてその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている形質転換プロトコルを使用して、配列番号2、配列番号5、配列番号9、および/または配列番号11で形質転換され得る。
【0407】
要約すると、「グランドナイン」または「ウィリアムズ」などのキャベンディッシュバナナ栽培品種の未熟な雄花は、胚形成カルスを産生するために使用される。35Sプロモーター配列に作動可能に連結された、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24を含む核酸構築物が構築される。または代替的に、M.acuminataからのFusR1のFW抵抗性対立遺伝子1のプロモーター配列(配列番号31)を使用して、抵抗性対立遺伝子の発現を駆動することができる。この構築物は、微粒子銃を使用して胚形成カルスに導入される。照射された小植物は胚形成カルスから再生され、小植物はPCR分析を受けて、どの小植物がTR4抵抗性遺伝子で形質転換されたかを決定する。TR4抵抗性遺伝子を積極的に発現する得られる植物からの組織培養抽出物を、TR4の成長を抑制するそれらの能力について試験する。加えて、推定上の形質転換された植物は、TR4に対する抵抗性について試験される。TR4抵抗性植物を単離し、クローニングする。TR4抵抗性植物は、実施例3に記載されているように、抵抗性遺伝子を移入するための育種プログラムにおいて使用することができる。
【0408】
形質転換された植物が配列番号2または配列番号5を発現する場合、また配列番号9または配列番号11を発現する場合、その形質転換された植物は、TR4抵抗性をコードする2つの異なる核酸を含むことを考えると、TR4に対するスタッキングされた抵抗性遺伝子を有するであろう。上で論じられ、表1に示されるように、配列番号2および配列番号5は、それぞれ、M.itineransから得られる抵抗性をコードするFusR1対立遺伝子1および対立遺伝子2のコード配列である。対照的に、配列番号9および配列番号11は、それぞれ、M.acuminata ssp.banksiaから得られる抵抗性をコードするFusR1対立遺伝子1および対立遺伝子2のコード配列である。したがって、両方の型の抵抗性遺伝子を発現する形質転換された植物は、パナマ病トロピカルレース4に対するスタッキングされた、またはピラミッド形の抵抗性を有するであろう。
【0409】
TR4に抵抗性のある、得られる/選択されたすべてのバナナ植物は、無性生殖によって維持され、生産またはその後の育種プログラムにおいて使用される。
【0410】
実施例6:抵抗性を有する栽培品種から開始するバナナの形質転換
パナマ病トロピカルレース4に抵抗性のある形質転換されたバナナ植物は、最初の形質転換されていない植物がTR4および/または1つ以上の追加の病害にも抵抗性を有する、実施例5に概説される手順を使用して生産することができる。このようにして、結果として生じる形質転換された植物は、複数の、またはスタッキングされた抵抗性遺伝子を有し得る。例えば、実施例5の形質転換手順で使用される開始品種は、抵抗性遺伝子RGA2を有するキャベニッシュ栽培品種であり得る(Daleら、2017)。したがって、RGA2コード配列を含むキャベンディッシュ栽培品種は、配列番号2、配列番号5、配列番号9、および/または配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24を発現するように形質転換され得、それにより、TR4に対するスタッキングされた抵抗性遺伝子を有する。
【0411】
TR4に抵抗性のある、得られる/選択されたすべてのバナナ植物は、無性生殖によって維持され、生産またはその後の育種プログラムにおいて使用される。
【0412】
実施例7:FusR1感受性遺伝子の発現をノックアウトする
実施例5または実施例6により植物を形質転換することに加えて、または代替的に、その代わりに、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR関連ヌクレアーゼ、または他の適切な遺伝子編集ツールを使用して、M.acuminataにおけるTR4に対する感受性をコードするFusR1対立遺伝子のヌクレオチド配列(例えば、配列番号14)をノックアウトすることができる。
【0413】
そのような方法の1つにおいて、ガイドRNAは、適切なCRISPR関連ヌクレアーゼと共に利用され得、ガイドRNAが、配列番号14の全部または部分配列に相補的である可変標的化ドメインを含む場合を含む。例えば、二本鎖切断は、修飾された配列番号14を使用して、バナナ細胞中のM.acuminataにおけるFW感受性FusR1対立遺伝子をコードする内因性配列(配列番号14)に導入され得、修飾された配列番号14は、配列番号14の遺伝子機能をノックアウトする核酸改変を含む。
【0414】
植物においてそのようなCRISPR関連ヌクレアーゼおよびガイドRNAを構築および使用する方法の詳細については、例えば、米国特許出願公開第2019 / 0032070A1号およびWO2019/118342A1を参照されたく、その各々は、参照によりその全体が組み込まれる。病害の感受性遺伝子をサイレンシングすることを含む、バナナにおける遺伝子編集ツールとしてのCRISPRの使用については、例えば、WO2018/220581 A1(Compositions and Methods for Increasing Shelf-Life of Banana)、Tripahi et al.,2019,CRISPR/Cas9 editing of endogenous banana streak virus in the B genome of Musa spp.overcomes a major challenge in banana breeding,Communications Biology 2,Article 46,11 pages、およびNtui et al.,January 2020,Robust CRISPR/Cas9 mediated genome editing tool for banana and plantain(Musa spp.),Vol. 21,10 pagesを参照されたい。
【0415】
修飾された植物細胞は、無性生殖を介して維持することができるバナナ植物に生成/再生することができる。
【0416】
TR4に対する感受性をノックアウトした、得られる/選択されたすべてのバナナ植物は、無性生殖によって維持され、生産またはその後の育種プログラムにおいて使用される。
【0417】
実施例8:TR4に感受性のバナナの遺伝子編集
Fusarium oxysporumレース4(別名トロピカルレース4またはTR4)に感受性のバナナ植物は、実施例4で提供されるバナナ遺伝子編集技術および本明細書で提供されるTR4抵抗性をコードするFusR1ヌクレオチド配列を使用して、遺伝子標的化/遺伝子編集ツールを使用して、感受性をコードする内因性核酸配列を、抵抗性をコードするヌクレオチド配列に変更することにより、TR4抵抗性植物に変更され得る。例えば、キャベンディッシュバナナ栽培品種におけるTR4感受性をコードする内因性核酸配列は、本明細書で提供されるTR4抵抗性をコードするFusR1対立遺伝子のうちの1つの核酸配列に基づいて改変することができる。さらなる例として、キャベンディッシュバナナ栽培品種におけるTR4感受性をコードする核酸配列は、TR4抵抗性をコードする以下のヌクレオチドコード配列:配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24のうちの1つ以上に基づいて改変することができる。
【0418】
例えば、キャベンディッシュバナナ栽培品種「グランドナイン」(AAA)は、最新の遺伝子編集ツールを使用して、本明細書に記載のTR4に対する抵抗性をコードする核酸配列に基づいて(すなわち、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24に基づいて)改良することができる。図1を参照されたい。
【0419】
いくつかの一般的な例では、配列番号14の内因性FW感受性FusR1遺伝子は、配列番号2、配列番号5、配列番号、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および/または配列番号24のFW抵抗性FusR1遺伝子とのアラインメントに基づいて、以下の変更のうちの1つ以上によって修飾される。図1を参照されたい。
【0420】
いくつかの特定の例では、配列番号14は、配列番号9とのアラインメントに基づく以下の変更によって修飾される(配列アラインメント、図1を参照されたい):148位に対応するTがGに置き換えられ(148T>G)、323位に対応するTがAに置き換えられ(323T>A)、344位に対応するGがCに置き換えられ(344G>C)、かつ/または347位に対応するAがTに置き換えらる(347A>T)。一例では、行われる唯一の置換は344G>Cである。一例では、以下の3つの置換が行われる:323T>A、344G>C、および347A>T。さらに別の例では、148T>G、323T>A、344G>C、および347A>Tの4つすべての置換が行われる。図1を参照されたい。
【0421】
いくつかの一般的な例では、FW感受性FUSR1タンパク質をコードする核酸配列に対してありとあらゆる核酸置換が行われ、その結果、得られる修飾された核酸はFW抵抗性FUSR1タンパク質をコードする。図1および図2を参照されたい。
【0422】
いくつかの特定の例では、配列番号15のFW感受性FUSR1タンパク質をコードする内因性核酸配列は、配列番号12のFW抵抗性FUSR1タンパク質とのアラインメントに基づく1つ以上の核酸変化によって修飾されて、以下のタンパク質変化をもたらす:50位に対応するロイシンがバリンに置き換えられ(50L>V)、108位に対応するバリンがグルタミン酸に置き換えられ(108V>E)、115位のアルギニンがプロリンに置き換えられ(115R>P)、かつ/または116位のアスパラギン酸がバリンに置き換えられる(116D>V)。一例では、行われる唯一のタンパク質置換は115R>Pである。別の例では、行われる唯一のタンパク質置換は、108V>E、115R>P、および116D>Vである。さらに別の例では、50L>V、108V>E、115R>P、および116D>Vの4つすべてのタンパク質置換が行われる。図2を参照されたい。
【0423】
以下の出版物からのバナナ特定の遺伝子編集プロトコルは、バナナにおいて必要なヌクレオチド塩基対置換を行うためのプロトコルを提供する:Shao et al.,2020,Using CRISPR/Cas9 genome editing system to create MaGA20ox2 gene-modified semi-dwarf banana,Plant Biotechnology Journal,18:17-19、Kaur et al.,2017,CRISPR/Cas9-mediated efficient editing in phytoene desaturase(PDS)demonstrates precise manipulation in banana cv.Rasthali genome,Functional & Integrative Genomics,18(1):89-99、Otang et al.,2020,Robust CRISPR/Cas9 mediated genome editing tool for banana and plantain (Musa spp.), Current Plant Biology,21,10 pages、Tripathi et al.,2019,CRISPR/Cas9 editing of endogenous banana streak virus in the B genome of Musa spp.Overcomes a major challenge in banana breeding,Communications Biology,2:46,11 pages、および米国特許第7,381,556号、その各々は、それが教示するすべてに関して、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0424】
要約すると、「グランドナイン」または「ウィリアムズ」などのキャベンディッシュバナナ栽培品種の未熟な雄花は、胚形成カルスおよび/または胚形成細胞懸濁液を産生するために使用される。CRISPR/Cas9構築物は、上記の科学出版物および特許刊行物のうちのいずれか1つ以上に概説されている手順に従って調製され、構築物は、図1に提供される配列アラインメントに基づいて構築される。構築物は、胚形成カルスまたは胚形成細胞懸濁液に送達され、十分に根付いた小植物が生成される。ランダム再生を選択し、プライマーを使用したPCRによってCas9遺伝子の存在をスクリーニングする。Cas9 PCR陽性事象の十分に根付いた小植物および対照植物を順化させ、温室に植える。内因性FusR1遺伝子の遺伝子編集を確認するために分子分析が行われる。
【0425】
ゲノム編集された植物および対照植物は、農業形質について評価され、TR4抵抗性について評価される。TR4抵抗性タンパク質を積極的に発現し、TR4に対する抵抗性を示す、得られる遺伝子編集植物をクローニングする。遺伝子編集されたTR4抵抗性植物は、実施例3に記載されているように、抵抗性遺伝子を移入するための育種プログラムにおいて使用することができる。
【0426】
TR4に抵抗性のある、得られる/選択されたすべてのバナナ植物は、無性生殖によって維持され、生産またはその後の育種プログラムにおいて使用される。
【0427】
開示のさらなる番号付けされた実施形態
本発明によって企図される他の主題は、以下の番号が付けられた実施形態に示される。
1.単離された核酸分子であって、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする核酸配列の配列番号14を含み、配列番号14が、1、2、3、または4つの核酸置換によって修飾され、その結果、得られる核酸配列が、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする、単離された核酸分子。
2.前記核酸置換が、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えることを含む、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
3.前記核酸置換が、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えることを含む、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
4.前記核酸置換が、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えることを含む、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
5.前記核酸置換が、配列番号14の347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含む、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
6.前記核酸置換が、323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えることを含み、すべての位置が、配列番号14に基づく、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
7.配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることにつながる、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
8.配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることにつながる、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
9.配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることにつながる、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
10.配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
11.配列番号14が、配列番号15のアミノ酸配列をコードし、前記核酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることにつながる、実施形態1に記載の単離された核酸分子。
12.前記発現が、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態1~11のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
13.前記発現が、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態12に記載の単離された核酸分子。
14.前記発現が、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態13に記載の単離された核酸分子。
15.核酸構築物であって、実施形態1~11のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含み、前記核酸配列が、前記核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結されている、核酸構築物。
16.前記プロモーターが、植物プロモーターである、実施形態15に記載の核酸構築物。
17.前記プロモーターが、35Sプロモーターである、実施形態15に記載の核酸構築物。
18.前記プロモーターが、配列番号31によってコードされる、実施形態15に記載の核酸構築物。
19.実施形態15~18のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、形質転換ベクター。
20.植物細胞を形質転換する方法であって、実施形態19に記載の形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、前記形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、方法。
21.前記植物細胞が、Musa植物細胞である、実施形態20に記載の方法。
22.前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、実施形態20に記載の方法。
23.前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、実施形態20~22のいずれか一項に記載の方法。
24.前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、実施形態23に記載の方法。
25.前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態24に記載の方法。
26.前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、実施形態24または25に記載の方法。
27.前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、実施形態26に記載の方法。
28.前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態27に記載の方法。
29.前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、実施形態27または28に記載の方法。
30.単離されたアミノ酸分子であって、植物で産生された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をもたらすタンパク質をコードする配列番号15のアミノ酸配列を含み、配列番号15が、1、2、3、または4つのアミノ酸置換によって修飾され、その結果、植物で生産された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をもたらすタンパク質をコードする、単離されたアミノ酸分子。
31.前記アミノ酸置換が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えることを含む、実施形態30に記載の単離されたアミノ酸分子。
32.前記アミノ酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えることを含む、実施形態30に記載の単離されたアミノ酸分子。
33.前記アミノ酸置換が、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えることを含む、実施形態30に記載の単離されたアミノ酸分子。
34.前記アミノ酸置換が、配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む、実施形態30に記載の単離されたアミノ酸分子。
35.前記アミノ酸置換が、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D>V)に置き換えることを含む、実施形態30に記載の単離されたアミノ酸分子。
36.前記産生が、植物細胞、植物組織、植物細胞培養物、植物組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態30~35のいずれか一項に記載の単離されたアミノ酸分子。
37.前記産生が、Musa細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態36に記載の単離されたアミノ酸分子セグメント。
38.前記産生が、Musa acuminata細胞、組織、細胞培養物、組織培養物、または植物全体で生じる、実施形態36に記載の単離されたアミノ酸分子セグメント。
39.核酸構築物であって、植物で発現された場合、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含み、前記核酸配列が、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および配列番号24からなる群から選択され、前記核酸配列が、前記核酸配列の発現を駆動することができるプロモーターに作動可能に連結されている、核酸構築物。
40.前記プロモーターが、植物プロモーターである、実施形態39に記載の核酸構築物。
41.前記プロモーターが、35Sプロモーターである、実施形態39に記載の核酸構築物。
42.前記プロモーターが、配列番号31によってコードされる、実施形態39に記載の核酸構築物。
43.実施形態39~42のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、形質転換ベクター。
44.植物細胞を形質転換する方法であって、実施形態43に記載の形質転換ベクターを植物細胞に導入し、それにより、前記形質転換された植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を発現することを含む、方法。
45.前記植物細胞が、Musa植物細胞である、実施形態44に記載の方法。
46.前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、実施形態44に記載の方法。
47.前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、実施形態44~46のいずれか一項に記載の方法。
48.前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、実施形態47に記載の方法。
49.前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態48に記載の方法。
50.前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、実施形態48または49に記載の方法。
51.前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、実施形態50に記載の方法。
52.前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態51に記載の方法。
53.前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、実施形態51または52に記載の方法。
54.バナナ育種法であって、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする核酸配列を含む第1のMusa植物を、Fusarium oxysporumレース4に感受性のある第2のMusa植物と交配し、Fusarium oxysporumレース4に対するそれらの抵抗性に基づいて、交配の結果として生じる子孫を選択することを含み、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする前記核酸配列が、配列番号2、配列番号5、配列番号9、配列番号11、配列番号18、配列番号21、および配列番号24からなる群から選択される、バナナ育種法。
55.前記交配の前記結果として生じる子孫のクローンを生産することをさらに含み、前記クローンが、Fusarium oxysporumレース4に対するそれらの抵抗性に基づいて選択される、実施形態54に記載のバナナ育種法。
56.前記第1および第2のMusa植物が、異なるムサ種からである、実施形態54に記載のバナナ育種法。前記第1および第2のMusa植物が、同じMusa種からである、実施形態54に記載のバナナ育種法。前記第1および/または第2のMusa植物が、Musa acuminata植物である、実施形態54に記載のバナナ育種法。
57.Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を示す前記交配の前記子孫が、前記交配において使用された前記第1のMusa植物に存在するFusarium oxysporumレース4に対する抵抗性をコードする前記核酸配列に基づいて設計される分子マーカーを使用して選択される、実施形態54に記載のバナナ育種法。
58.Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を得るための方法であって、配列番号14によってコードされる外因性遺伝子の少なくとも1つの部位に二本鎖切断を導入して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞を産生することを含む、方法。
59.Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物細胞からMusa acuminata植物を生成して、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を生産することをさらに含む、実施形態58に記載の方法。
60.バナナ育種プログラムにおいて、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有するMusa acuminata植物を使用することをさらに含む、実施形態59に記載の方法。
61.前記植物細胞が、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードするサイレンシングされた内因性遺伝子を有する、実施形態59に記載のMusa acuminata植物細胞である、実施形態20または44に記載の方法。
62.前記二本鎖切断が、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、およびCRISPR関連ヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼによって誘導される、実施形態58に記載の方法。
63.前記二本鎖切断が、CRISPR関連ヌクレアーゼによって誘導され、ガイドRNAが提供される、実施形態62に記載の方法。
64.Fusarium oxysporumレース4に抵抗性のある植物細胞を産生するための方法であって、Fusarium oxysporumレース4に対する感受性をコードする1つ以上の内因性核酸配列に少なくとも1つの遺伝子修飾を導入することを含み、前記遺伝子修飾が、前記植物細胞に、Fusarium oxysporumレース4に対する抵抗性を付与する、方法。
65.前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはCRISPR関連ヌクレアーゼによって導入される、実施形態64に記載の方法。
66.前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、CRISPR関連ヌクレアーゼおよび関連するガイドRNAによって導入される、請求項64に記載の方法。
67.前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、配列番号14の148位に対応するTをG(148T>G)に置き換えること、配列番号14の323位に対応するTをA(323T>A)に置き換えること、配列番号14の344位に対応するGをC(344G>C)に置き換えること、および配列番号14の347位に対応するAをT(347A>T)に置き換えること、からなるリストから選択される、実施形態64に記載の方法。
68.前記少なくとも1つの遺伝子修飾が、配列番号15の50位に対応するロイシンをバリン(50L>V)に置き換えること、配列番号15の108位に対応するバリンをグルタミン酸(108V>E)に置き換えること、配列番号15の115位に対応するアルギニンをプロリン(115R>P)に置き換えること、および配列番号15の116位に対応するアスパラギン酸をバリン(116D> V)に置き換えること、からなる群から選択されるアミノ酸における変化をもたらす、実施形態64に記載の方法。
69.前記植物細胞が、Musa植物細胞である、実施形態64~68に記載の方法。
70.前記植物細胞が、Musa acuminata植物細胞である、実施形態64~68に記載の方法。
71.前記形質転換された植物細胞から形質転換された植物組織を産生することをさらに含む、実施形態64~70のいずれか一項に記載の方法。
72.前記形質転換された植物組織から形質転換された小植物を生産することをさらに含む、実施形態71に記載の方法。
73.前記形質転換された小植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態72に記載の方法。
74.前記形質転換された小植物または前記形質転換された小植物のクローンを成熟した形質転換された植物に成長させることをさらに含む、実施形態71または72に記載の方法。
75.前記成熟した形質転換された植物が、Musa植物であり、前記成熟した形質転換されたMusa植物が、果実を生産することができる、実施形態74に記載の方法。
76.前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを生産することをさらに含む、実施形態75に記載の方法。
77.前記成熟した形質転換されたMusa植物または前記成熟した形質転換されたMusa植物のクローンを育種法で使用することをさらに含む、実施形態75または76に記載の方法。
【0428】
参照による組み込み
上記の本文内で本明細書に引用されている、および/または以下に引用されているすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許刊行物、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用されているあらゆる参考文献、記事、刊行物、特許、特許刊行物、および特許出願についての言及は、世界のどの国においても、それらが有効な先行技術を構成する、または共通の一般知識の一部を形成するという承認またはいかなる形態の提案ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
米国特許資料
7,534,930 B2 5/2009 Vishnevetsky et al.
6,274,319 8/2001 Messier and Sikela
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他の刊行物
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図1-1】
図1-2】
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図2
図3
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図5-1】
図5-2】
図5-3】
【配列表】
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【国際調査報告】