(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、およびそのシステムを用いた熱膨張係数決定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 3/14 20060101AFI20220901BHJP
G01F 3/06 20060101ALI20220901BHJP
G01K 13/02 20210101ALI20220901BHJP
G01N 9/00 20060101ALI20220901BHJP
G01N 25/16 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
G01F3/14
G01F3/06
G01K13/02
G01N9/00 A
G01N25/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576236
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 AT2020060259
(87)【国際公開番号】W WO2021000002
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュナー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カンマーシュテッター,ヘリベルト
【テーマコード(参考)】
2F030
2F056
2G040
【Fターム(参考)】
2F030CD15
2F056WF01
2G040AB07
2G040BA04
2G040BA24
2G040CA01
2G040CA07
2G040DA02
2G040DA12
2G040EA02
2G040GA05
2G040ZA01
(57)【要約】
本発明は、入口(12)と、出口(14)と、入口(12)と出口(14)との間に配置され、少なくとも、ポンプ(48)、密度センサ(50)、温度センサ(51)、および電気部品または電子部品を備える、流量計(10)と、を備える、媒体の時間分解貫流プロセス測定システムに関する。体積と正確に同じ温度で密度を測定しなくてよいように、本発明は、密度センサ(50)、または密度センサ(50)のすぐ上流で密度センサ(50)に通じる導管部(56)が、発熱する電気部品または電子部品と熱伝導接触し、ポンプ(48)の回転速度が制御されることを提案する。それに対応し、本発明は、熱膨張係数確定方法に関し、この方法では、発熱する電気部品または電子部品にて加熱される媒体の密度および温度が、ポンプ(48)の2つの異なる回転速度において密度センサ(50)および温度センサ(51)で測定され、熱膨張係数が、密度センサ(50)の測定値と、対応する温度センサ(51)の測定値とから計算される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口(12)と、
出口(14)と、
前記入口(12)と前記出口(14)との間に配置され、少なくとも、ポンプ(48)、密度センサ(50)、温度センサ(51)、および電気部品または電子部品を備える、流量計(10)と、
を備える、媒体の時間分解貫流プロセス測定システムであって、
前記密度センサ(50)、または前記密度センサ(50)のすぐ上流で前記密度センサ(50)に通じる導管部(56)が、発熱する前記電気部品または前記電子部品と熱伝導接触し、前記ポンプ(48)が速度制御される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記流量計(10)が主導管(20)を備え、前記主導管(20)を介して前記入口(12)が前記出口(14)に流体接続され、前記主導管(20)内にディスプレーサ(22)が配置され、前記主導管(20)は、バイパス導管(26)を用いてバイパス可能であり、前記バイパス導管(26)は、前記入口(12)と前記ディスプレーサ(22)との間で前記主導管(20)から分岐し、前記ディスプレーサ(22)と前記出口(14)との間で前記主導管(20)に開口し、
圧力差トランスデューサ(28)が前記バイパス導管(26)内に配置され、
前記ディスプレーサ(22)は、前記圧力差トランスデューサ(28)に存在する圧力差に依存して、電子ユニット(25)にて制御可能な駆動モータ(24)にて駆動可能であり、
前記ディスプレーサ(22)の前記駆動モータ(24)または前記電子ユニット(25)は、前記密度センサ(50)または前記密度センサ(50)のすぐ上流で前記密度センサ(50)に通じる前記導管部(56)と熱伝導接触している発熱する電気部品または電子部品として作用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項3】
前記主導管(20)の導管部(18)または前記バイパス導管(26)は、前記ポンプ(48)および前記密度センサ(50)が中に直列に配置された第2バイパス導管(16)を用いてバイパス可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項4】
前記ポンプ(48)が、第2駆動モータ(52)を介して駆動されると共に、制御ユニット(54)にて制御可能であり、前記制御ユニット(54)および/または前記駆動モータ(52)は、前記密度センサ(50)または前記密度センサ(50)のすぐ上流で前記密度センサ(50)に通じる前記導管部(56)と熱伝導接触している発熱する電気部品または電子部品として作用する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項5】
前記ポンプ(48)が無脈動ポンプである、
ことを特徴とする請求項4に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項6】
前記無脈動ポンプ(48)がテスラポンプである、
ことを特徴とする請求項5に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項7】
前記テスラポンプ(48)が、運搬方向で前記密度センサ(50)の上流に配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項8】
前記第2バイパス導管(16)が、前記入口(12)と前記圧力差トランスデューサ(28)との間で前記バイパス導管(26)から分岐し、前記バイパス導管(26)に開口する、
ことを特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項9】
前記温度センサ(51)が前記密度センサ(50)に組み込まれている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項10】
前記ポンプ(48)の前記第2駆動モータ(52)の前記制御ユニット(54)が、前記電子ユニット(25)に組み込まれている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを用いた熱膨張係数決定方法であって、
発熱する電気部品または電子部品にて加熱される媒体の密度および温度が、ポンプ(48)の2つの異なる回転速度において密度センサ(50)および温度センサ(51)で測定され、前記熱膨張係数が、前記密度センサ(50)の測定値と、対応する前記温度センサ(51)の測定値とから計算される、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項2に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを用いた、請求項11に記載の熱膨張係数決定方法であって、
前記媒体が、前記密度センサ(50)のすぐ上流でまたは前記密度センサ(50)の箇所で前記密度センサ(50)に通じる導管部(56)内のポンプ(48)の電子ユニット(25)および/または第2駆動モータ(52)にて加熱される、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項3に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを用いた、請求項11または12に記載の熱膨張係数決定方法であって、
主導管(20)のバイパス可能導管部(18)またはバイパス導管(26)からの前記媒体が、第2バイパス導管(16)内の媒体流から熱を吸収する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項4に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを備える、請求項11から13のいずれか一項に記載の熱膨張係数方法であって、
前記ポンプ(48)が第2駆動モータ(52)にて駆動され、前記第2駆動モータ(52)は、前記温度および前記密度の測定が前記密度センサ(50)および前記温度センサ(51)にて実行される少なくとも2つの異なる速度を用いて制御ユニット(54)にて制御される、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項4に記載の媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを用いた、請求項14に記載の熱膨張係数決定方法であって、
前記媒体が、前記密度センサ(50)の上流にまたは前記密度センサ(50)の箇所にある第2バイパス導管(16)の導管部(56)内の、前記ポンプの第2駆動モータ(52)および/または前記第2駆動モータ(52)の前記制御ユニット(54)にて加熱される、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口と、出口と、入口と出口との間に配置され、少なくともポンプ、密度センサ、温度センサ、および電気部品または電子部品を備える流量計と、を備える、媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、ならびに媒体の時間分解貫流プロセス測定システムを用いた熱膨張係数決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムは、長年に亘って知られており、例えば内燃機関内の噴射量測定のために使用される。例えば、独国特許第1798080号明細書は、入口および出口を備えた電子制御される流量計について記載され、入口と出口との間には、ギアポンプの形態の回転ディスプレーサが配置され、ディスプレーサに平行な導管には、ピストンが測定室内に配置される。流量を決定するために、測定室内のピストンの変位が、光学センサを用いて測定される。ギアポンプの速度は、この信号に基づいて、可能な場合にはピストンが常に開始位置に戻されてバイパス導管内では小さい流れのみが発生するように、評価制御ユニットにて継続的に再調整される。よって、指定された時間間隔内の流量は、エンコーダにて測定されるギアポンプの回転または部分回転の回数と、1回転間のギアポンプの既知の送液体積とから計算される。
【0003】
そのような方式で構築された流量測定装置が、ドイツ特許第10331228号明細書にも記載されている。正確な噴射流量曲線を決定するために、ギアポンプは、噴射が開始する前に一定した速度にそれぞれ設定され、その後ピストンの運動が測定されて、噴射曲線を決定するために使用される。
【0004】
測定される媒体の密度の変動に起因する測定値の誤差をさらに回避するために、媒体の時間分解貫流プロセスを測定するためのシステムが欧州特許公開第3073228号明細書に記載されており、ここでは、測定される媒体の既存密度に関する正確な記述を正確なタイミングで行えるように、流量計の導管部が、ポンプおよび密度センサが中に直列に配置されたバイパス導管を用いてバイパス可能であり、密度は、測定された体積流量から質量流量を計算するために使用できる。
【0005】
また、独国特許公開第102010045521号明細書から、測定ボリューム内に燃料を導入し、測定ボリューム内の燃料にエネルギーを供給することで燃料の熱膨張を決定することも知られている。初期状態および最終状態における圧力が測定され、その圧力差から熱膨張が計算される。そのようにして得られた測定値を用いて、使用される物質の混合についての結論を引き出すこともできる。
【0006】
市場で現在入手可能な測定計器では、体積測定貫流が測定された温度への変換を回避するために、体積測定貫流も同じく測定される温度で可能な限り正確に密度を決定しようとする試みがなされており、その理由は、そのような変換のためには熱膨張の正確な係数が分からなければならない。また、測定された体積測定貫流を基準温度における体積測定貫流に変換することも、熱膨張の係数なしでは不可能であり、そのため、対応する媒体の事前処理が必要となる。しかし、測定される媒体の組成はある程度変化するため、熱膨張の係数の事前測定は多くの場合十分でないことが示されている。さらに、特に小型化に起因して、しばしば密度センサの近傍に発熱部品があり、それにより、密度センサにおける温度が流量計自体における媒体の温度と異なるという問題が発生する。このことにより、ギア温度での体積または密度への変換の必要性が生じ、そのためには膨張の正確な係数が分からなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第1798080号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第3073228号明細書
【特許文献3】独国特許公開第102010045521号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、ならびにそのシステムを用いた熱膨張係数決定方法を提供することであり、これらを用いて、この目的のために追加的な測定装置を使用する、または別個のサンプルを測定する必要なしに、熱膨張係数を可能な限り正確に決定でき、それを標準化された体積測定貫流または質量流量の計算で使用できる点で、知られているシステムおよび方法と比べて測定結果が改良される。特に、目的は、正確な測定値を得るために体積と正確に同じ温度で密度を測定する必要性を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題は、請求項1の特徴を有する媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、ならびに請求項11に記載のシステムを用いた熱膨張係数決定方法にて解決される。
【0010】
媒体の時間分解貫流プロセス測定システムに関し、この目的は、密度センサ、または密度センサのすぐ上流で密度センサに通じる導管部が、発熱する電気部品または電子部品と熱伝導接触しており、ポンプが速度制御されるという点で解決される。何故ならば、そのような機構を用いると、本発明に係る方法を実施可能となるためであり、この方法では、発熱する電気部品または電子部品にて加熱される媒体の密度および温度が、ポンプの2つの異なる回転速度において密度センサおよび温度センサで測定され、熱膨張係数が、密度センサの測定値と、関連する温度センサの測定値とから計算される。通常、回転速度は恒久的に変更され、それに応じて多数回の測定が行われる。そして、この計算は、例えば、式:γ=1/(T2-T1)(ρ1/ρ2-1)を使用して、2つの異なる速度での2つの異なる測定値に対して行われる。温度センサはしばしば密度センサに組み込まれ、そのため、測定される温度は、密度センサにおける温度にも対応する。最初に、ポンプの第1指定回転速度で測定が行われる。このことは、媒体が第1温度で密度センサに到達することを意味し、この温度は、密度センサまたは密度センサに直接通じる導管部が発熱部品と熱伝導接触しているため、わずかに高い。よって、流量計の残りの部分で運搬される媒体の温度よりも高い第1温度について、第1密度が測定される。例えばこのときポンプの回転速度が上げられると、より多くの冷たい媒体が流量計から循環され、その媒体はそれに対応してヒートシンクとして作用し、結果として温度センサで温度の低下が生じると共に、熱源に近接している、すなわち発熱部品の箇所に位置している密度センサで異なる密度が生じ、その結果、最初の測定とは異なる密度が測定される。したがって、ポンプの速度を変化させることにより、多数回の測定を異なる温度で行うことができ、よって、熱膨張の係数を高度に動的な形で非常に正確に計算できる。よって、この機構を用いて、流量計内の流体特性を能動的に追跡できる。
【0011】
また、密度センサが、特に制御可能な熱源を備えれば、有利である。すなわち、熱源は好ましくは、密度センサに組み込まれる。この場合には、循環される流体の量の代わりに熱源が制御される。そして、これは、ポンプを用いた循環量制御に相当するものとみなすことができ、したがってポンプは一定した速度で回転することになる。両方の制御方式の組み合わせも、無論可能である。これにより複雑性が増大するが、その場合、温度制御がさらに柔軟になり、より高い組み込みレベルが達成可能となる。
【0012】
好ましくは、流量計は、主導管を備え、この主導管を介して入口が出口に流体接続され、主導管内にディスプレーサが配置され、主導管は、バイパス導管を用いてバイパス可能であり、バイパス導管は、入口とディスプレーサとの間で主導管から分岐し、ディスプレーサと出口との間で主導管に開口し、圧力差トランスデューサがバイパス導管内に配置され、ディスプレーサは、圧力差トランスデューサに存在する圧力差に依存して、電子ユニットによって制御可能な駆動モータにて駆動され、ディスプレーサの駆動モータまたは電子ユニットは、密度センサまたは密度センサのすぐ上流で密度センサに通じる導管部と熱伝導接触している発熱する電気部品または電子部品として作用する。それに応じて、媒体は、密度センサのすぐ上流でまたは密度センサの箇所で密度センサに通じる導管部内のディスプレーサの電子ユニットおよび/または駆動モータにて加熱される。そのような流量計は、高精度で動作し、比較的小さい設置空間内に実現可能である。電子部品および/または電気部品を、流体特性曲線を追跡するための熱源として使用することにより、熱膨張の係数を決定するための追加的な部品が排除される。
【0013】
システムの好ましいさらなる発展形態において、主導管の導管部またはバイパス導管は、上記ポンプおよび密度センサが中に直列に配置された第2バイパス導管を用いてバイパス可能である。よって、循環がバイパス内で発生するため、媒体の密度は、測定回路に対するフィードバック効果を伴わずに測定中に決定できる。媒体は、主導管のバイパスされる導管部またはバイパスされる導管から熱を吸収する。電子部品にて加熱されない媒体、すなわちバイパスラインまたは主導管内の主流は、それに応じて、ヒートシンクとして作用し、それにより、循環される媒体流が再度冷却される。
【0014】
好ましくは、ポンプは、第2駆動モータを介して駆動されると共に、制御ユニットにて制御可能であり、制御ユニットおよび/または駆動モータは、密度センサまたは密度センサのすぐ上流で密度センサに通じる導管部と熱伝導接触している発熱する電気部品または電子部品として作用する。第2駆動モータは、2つの測定値から可能となる熱膨張係数を決定可能にするために、少なくとも2つの異なる速度を用いて制御ユニットにて制御される。この熱膨張係数の決定は、ポンプの異なる速度で取られる測定値の数が増えるに連れて、より正確になる。
【0015】
また、そのようにして、上記方法に関して、媒体が、密度センサの上流にまたは密度センサの箇所にあるバイパスラインの導管部内のポンプの第2駆動モータおよび/または制御ユニットにて加熱可能である。よって、ポンプの駆動モータまたは制御ユニットが熱源の役割を果たし、そのため、特性曲線に沿って動作する可能性が与えられる。したがって、ディスプレーサの駆動に加えて、ポンプの駆動は、熱源の役割も直接果たすことができ、これはシステムの設計の観点から好ましい方どちらでもよい。また、媒体が、追加的または代替的に、この目的のために専用に設けられる加熱要素にて加熱可能である。
【0016】
バイパスラインの結果として流量計の測定値に、および特に圧力差トランスデューサに及ぼされる影響を排除するために、ポンプは、無脈動となるように、特にテスラポンプとして構成される。これによっても密度センサの測定値の誤差を排除し、密度センサは、例えばMEMSセンサとして設計される場合、または肉眼で見えるセンサの場合に、媒体の脈動のためにそれ自体が励振されて発振する可能性がある。テスラポンプは、羽を使用する必要なく、単に粘着力を使用して流体の既存の粘性に基づいて流体を運搬する。この目的のために、その間に媒体が中央に導入される、互いと並べて配置されたいくつかの円盤が駆動モータにて回転され、したがって、外向きに増大する速度による粘性および粘着のために、媒体が回転方向で接線方向に、かつ径方向外側に運搬される。この結果、効率が良好な無脈動の運搬が生じる。
【0017】
より高度な実施形態において、テスラポンプは、媒体の運搬方向でバイパス導管内の密度センサの上流に配置され、それにより、起動時にセンサのエリア内で気泡がポンプに到達することを防止する。そのような気泡は、媒体の粘着力が不十分なためにテスラポンプにて運搬できず、そうでなければポンプの効率を極めて低下させる。
【0018】
また、第2バイパス導管が、入口と圧力差トランスデューサとの間で第1バイパス導管から分岐し、第1バイパス導管に開口すれば有利である。一方、この位置は非常にアクセスしやすく、そのため短い接続ラインで十分であり、他方、測定室における流れを作り出すことなく、媒体を直接循環できるため、流量計の測定に対する影響が防止される。
【0019】
一方で密度と同じ場所で温度を測定し、他方でシステムの機構を簡略にするために、温度センサは密度センサに組み込まれる。
【0020】
また、システムの構造の簡略化は、ポンプの第2駆動モータの制御ユニットが電子ユニットに組み込まれることで達成される。
【0021】
よって、媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、ならびにそのシステムを用いた熱膨張係数決定方法が提供され、これらを用いて、媒体の熱膨張係数を高度に動的な形で高精度に決定するために、それぞれ使用される媒体の流体特性曲線を流量計で直接追跡できる。したがって、得られた値は、流量計にて決定される質量および体積測定貫流の計算で使用でき、よって、それらも、より高い精度を備える。この目的のために追加的な構成要素は必要とされない。代わりに、特性曲線を追跡する際に、いずれにせよ熱を発生する部品が熱源として使用され、より冷たい媒体がヒートシンクとして使用される。
【0022】
本発明に係る媒体の時間分解貫流プロセス測定システム、ならびにそのシステムを用いた熱膨張係数決定方法が、以下で図に示される非制限的な実施形態例に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る媒体の時間分解貫流プロセス測定システムの基本的構造の模式図である。
【
図2】本体が部分的に切り開かれた、媒体の時間分解貫流プロセス測定システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す、本発明に係る媒体の時間分解貫流プロセス測定システムは、流量計10からなり、入口12および出口14と、第2バイパス導管16とを備え、第2バイパス導管16を用いて、流量計10の導管部18がバイパス可能である。
【0025】
入口12を通じ、測定対象の媒体、特に燃料が、流量計10の主導管20に入る流れを生成する装置から流れる。ダブルギアポンプの形態の回転ディスプレーサ22が、この主導管20内に配置される。ディスプレーサ22の下流で、主導管20は出口14で終端する。回転ディスプレーサ22は、継手またはギアボックスに結合された駆動モータ24にて駆動され、駆動モータ24は、電子ユニット25にて制御される。
【0026】
第1バイパス導管26が、入口12と回転ディスプレーサ22との間で主導管20から分岐し、回転ディスプレーサ22の下流で、回転ディスプレーサ22と出口14との間で再び主導管20に開口し、主導管20と同様に入口12および出口14と流体接続されている。並進圧力差トランスデューサ28がこのバイパスライン26内に配置され、このトランスデューサは、測定室30と、自由に変位できるように測定室30内に配置されたピストン32とからなり、ピストン32は、測定媒体、すなわち燃料、と同じ比重を備え、測定室30と同様に円筒形状であり、よって、測定室30は、ピストン32の外径に実質的に対応する内径を有する。ピストン32の前側と後ろ側との間の圧力差が加えられると、静止位置からのピストン32の変位が起こる。したがって、ピストン32の変位は、加えられる圧力差分の関数である。測定室30に変位センサ34が配置され、これは、ピストン32と動作的に接続され、中でピストン32の変位の大きさに依存した電圧が生成される。この変位センサ34は、測定室30に取り付けられ、特に、自身に作用する磁石36の場の強度を電圧に変換する磁気抵抗センサである。この目的のために、磁石36は、ピストン32の重心に取り付けられる。しかし、光センサが変位センサ34として用いられてもよい。
【0027】
変位センサ34は電子ユニット25にも接続され、電子ユニット25は、それに応じて、変位センサ34の測定値を評価し、それを駆動モータ24への制御信号に変換するために使用され、駆動モータ24は、ピストン32が常に定められた開始位置にあるように制御される。よって、回転ディスプレーサ22は、噴射された媒体のためにピストン32で生じる圧力差を、運搬にて常に概ね補償する。このことは、ピストン32が右に変位されると、ポンプ速度がこの変位の大きさの関数として増大され、その逆も同様であることを意味する。この目的のために、ピストン32の変位またはそれによって測定室30内で押しのけられる体積が、伝達関数によって、要求される回転ディスプレーサ22の送液体積または駆動モータ24の速度に変換され、それに応じて駆動モータ24に電流が供給される。しかし、電子ユニット25は、駆動モータ24を駆動するための発熱するパワー半導体も含む。
【0028】
圧力測定要素40が測定室30に配置され、温度測定要素42が回転ディスプレーサ22のすぐ後方に位置して配置され、これらは、この領域内で発生する圧力および温度を継続的に測定し、測定室30内の密度の変化を計算の際に考慮できるように次いでそれらを電子ユニット25に供給する。
【0029】
一連の測定は、電子ユニット25で決定される総流量を計算する際に、ピストン32の移動または位置および測定室30内で押しのけられる体積のために生じるバイパスライン26内の流量と、固定の時間間隔内の回転ディスプレーサ22の実際の流量との両方が考慮され、両方の流量を共に足して総流量を決定するように実施される。
【0030】
ピストン32における流量は、例えば、変位センサ34に接続された電子ユニット25内でピストン32の変位を微分し、次いでそれにピストン32の基部面積を乗算して、上記時間間隔の間のバイパスライン26内の体積測定貫流を得ることで決定される。
【0031】
回転ディスプレーサ22、およびしたがって主導管20を通る流量は、ディスプレーサ22を制御するための決定された制御データから決定することも、または、例えば光学エンコーダや磁気抵抗センサにより、ディスプレーサ22または駆動モータ24において直接測定されたときの回転速度を使用して計算することもできる。
【0032】
本実施形態において、第2バイパス導管16は、入口12と測定室30との間でバイパス導管26から分岐し、導管部18をバイパスして、測定室30の上流で再びバイパス導管26に入る。この第2バイパス導管16を主導管20またはバイパス導管26の任意の他の位置で分岐させ、再び入るようにすることも可能であるが、第2バイパス導管16は、ディスプレーサ22も圧力差トランスデューサ28もバイパスすべきでない。
【0033】
分岐44とバイパス導管26への開口46との間に、テスラポンプの形態の無脈動ポンプ48と密度センサ50とが、バイパス導管16内に互いに続いて直列に配置される。通常は、密度が測定される温度が正確に分かるように、温度センサ51も密度センサ50内に含まれる。この密度センサ50は、例えばコリオリの原理に従って測定するMEMSセンサとして定義されてよい。テスラポンプ48は第2駆動モータ52にて駆動され、第2駆動モータ52は制御ユニット54にて制御され、制御ユニット54は、本実施形態では電子ユニット25に組み込まれている。よって、第2駆動モータ52と、温度センサ51を備える密度センサ50とは、電子ユニット25に電気的に接続され、そのため、密度センサ50の測定値を使用して、計算された流れ値を媒体の密度に関する追加的な情報にて改良し、テスラポンプ48を制御でき、それにより密度センサ50を介して流れが保証され、その測定値は、そうでなければ、流れの停滞のために測定室内で測定される実際の値からずれる。また、テスラポンプ48の無脈動の送液も、センサ50の測定値が誤ったものになることを防止する。
【0034】
これは、センサ50が常に、正確に定められた周波数で発振するためであり、周波数はセンサの設計に依存する。MEMSセンサは、小型の設計に起因して、従来のセンサよりもはるかに高い発振周波数を有する。一般的な密度センサの場合、発振周波数は、100Hz~1kHzの間であり、MEMSセンサでは、通常、1kHzまたはそれ以上である。よって、ここでテスラポンプ48が、センサ50の発振周波数と近い脈動を生成すると、センサ50が妨害されるため、ポンプの脈動は避けるべきである。よって、バイパス導管26の導管部18は、テスラポンプ48にてポンプ動作されるときに第2バイパス導管16を用いてバイパスされ、バイパス導管26へのバイパス導管16の開口46から分岐44まで、導管部18をまたぐ回路流を作り出し、この理由は特に、理想的には、回転ディスプレーサ22がピストン32にまたがる圧力差分を完全に補償し、したがって理想的にはバイパス導管26内に流れが発生しないためである。
【0035】
流量計10のバイパス導管26の流れ断面は、第2バイパス導管16の断面よりも大幅に大きく、第2バイパス導管16の直径は例えば約4mmであり、そのため、必要な圧力差を作り出すために比較的少量の流れで済む。ポンプ48の脈動がないことと、そのようなより少ない流れの量とにより、不要な流れまたは脈動に起因する、ディスプレーサ22および圧力差トランスデューサ28の制御回路に対するフィードバック効果が実質的に存在しないことが保証される。したがって、正確な追加的情報が電子ユニット25に供給され、それを、ディスプレーサ22の制御と貫流の計算の両方で使用でき、それにより結果をさらに改良する。
【0036】
密度センサ50の測定値を使用できるようにするために、このセンサ50が、流量計10が動作する温度、すなわち、測定室30またはディスプレーサ22に存在する温度、と正確に同じ温度で媒体の密度を測定することが必要である。しかし、これは通常該当せず、その理由は、通常は周囲熱を通じて、システム内の異なる位置における温度が、よって密度も異なることがあり、それが測定ずれを引き起こすためである。これは、センサ50,51に対する電子ユニット25からなどの発熱部品の影響が増大するため、より小型の測定装置に対する要求にてさらに増大する。これは特に小さい流量で該当し、それは、その場合には少量のみの条件付けされた新しい媒体がセンサ50内に運搬されるためである。その結果、最も小さい熱源でも、媒体の著しい加熱を引き起こすために十分となる。別個の条件付け経路でセンサ全体を条件付け、それによりこの影響を低減可能である。しかし、これは、特にモバイル用途では、センサに接続され得る条件付け回路がないため、センサ50の著しい制限を呈する。
【0037】
それでも測定値を使用できるようにするには、決定された体積測定貫流の変換が必要となり、それにより、この場合の温度差、およびその結果生じる体積差が補償される。しかし、そのような変換のためには、それぞれ使用される媒体の熱膨張係数が分からなければならない。これは、特定の基準温度に対する測定体積が決定されなければならないときにも、必ず必要とされる。過去にはサンプルを検査所に送って熱膨張係数を決定していたが、測定対象の燃料の組成は頻繁に変化し、したがって膨張係数の高度に動的な判定に対する要求があるため、これは今日ではもはや十分でない。
【0038】
本発明によれば、熱膨張係数を決定するために、密度センサ50または密度センサ50に直接通じる第2バイパス導管16の導管部56は、既存システムの発熱部品に結合されるかまたは熱伝達が発生するようにその近くに配置され、そのため、それぞれの発熱部品が熱源の役割を果たす。
【0039】
本実施形態では、
図2で、媒体への熱伝達が発生し、かつ電子ユニット25および駆動モータ24が熱源の役割を果たすように、密度センサ50および密度センサ50に通じる第2バイパス導管16の導管部56が、ディスプレーサ22の駆動モータ24および電子ユニット25の近くに配置されていることが見て取れる。その結果、密度センサ50に到達する媒体は、バイパス導管26および主導管20ならびに測定室30内の媒体よりもわずかに高い温度を備える。ここでこの差を使用して、テスラポンプ48を、少なくとも2つ、ただし通常は数個の、異なる速度で駆動することにより、媒体の温度特性曲線に沿って動作する。これら異なる速度の結果、密度センサ50で、また温度センサ51でも異なる温度が生じ、この理由は、流量が増大するにつれて、ヒートシンクとして作用するバイパスライン26から注入されるより冷たい媒体の影響が増大し、また電子ユニット25にて形成される熱源の影響が、この熱源がより短い時間だけ媒体に作用するので、減少するためである。このようにして、異なる温度における異なる密度が、密度センサ50で、よって温度センサ51で測定されることが可能となり、次いでそれから、式:γ=1/(T
2-T
1)(ρ
1/ρ
2-1)を用いて、すでに2つの異なる温度について、熱膨張の係数を計算できる。より多くの回数の測定が行われ、その結果として、特性曲線全体を追跡し、より大きい温度スペクトルを使用して熱膨張係数を決定可能となることにより、特に熱膨張係数が一定でない非線形媒体の場合に、決定される熱膨張係数の精度が向上される。例えば、水を含有する溶液では、膨張の係数は温度と共に大きく変動し、そのため、そのような溶液には最大の可能な回数の測定が行われなければならない。また、それぞれ決定された密度と温度の値の対を重み付け可能であり、これは、例えばより古い測定値の影響を低減でき、そのため、一定の期間が経過した後、古い値の対は、熱膨張係数を決定する際に考慮されない。
【0040】
さらに、対応する既知の燃料の特性曲線が記憶されていれば、特性曲線の追跡を用いて、使用される燃料の組成を決定することが可能である。例えば水の場合にそうであるように、勾配変化または反転点を有する特性曲線を完全に評価することも可能である。
【0041】
要約すると、熱膨張係数決定方法およびその方法に適する媒体の時間分解貫流プロセス測定システムが提供され、これらを用いて、熱膨張係数を既存の機器内で高度に動的に決定でき、それを噴射燃料量の計算で使用して、結果の精度をさらに改良できる。この方法を使用することにより、膨張の係数が変換に使用可能であるため、体積が測定される正確にその温度で密度を測定することを不要にできる。これは特に、測定機器の着実な小型化のために必要である。基準温度へ変換可能である。
【0042】
よって、流量計は、時間的に高度に分解された貫流プロセスを高精度で継続的に計算し、特に媒体の熱膨張係数に関して、既知の構成と比較して、システムを制御するためまたは測定結果を評価するための追加的なデータを提供する。
【0043】
本発明は記載される実施形態に限定されず、主要請求項の保護範囲内で様々な変更が可能であることが明らかであろう。原則として、他の継続的に動作する流量計が使用されてよく、またはバイパス導管は、対応する導管部を流量計の別の位置でバイパスできる。また、テスラポンプの駆動モータまたは制御ユニットなどの他の構成要素が熱源として使用される。他の流量計では、他の発熱部品が、特性曲線を追跡する目的に使用される。
【国際調査報告】