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  • 特表-抗菌性コーティング組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】抗菌性コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220901BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220901BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20220901BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20220901BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220901BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20220901BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20220901BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C09D201/00
B01J35/02 J
B01J23/89 M
B01J35/02 H
B01J37/02 101D
C09D7/62
C09D5/14
C09D183/04
C09D175/04
C09D129/04
C09D133/00
C09D7/20
C09C1/00
C09C3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576270
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020062543
(87)【国際公開番号】W WO2020259904
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182056.2
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555683
【氏名又は名称】フラムティックス ホールディングス アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドーリヤ、クルナル マヘシュクマール
【テーマコード(参考)】
4G169
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA22A
4G169BA36A
4G169BA48A
4G169BB02A
4G169BB04A
4G169BC16A
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC69A
4G169CA11
4G169DA05
4G169EB18X
4G169EB19
4G169EC13X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC16X
4G169EE01
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB19
4G169FC05
4G169FC08
4G169HA01
4G169HB01
4G169HC02
4G169HC13
4G169HC29
4G169HD09
4G169HE07
4J037AA04
4J037CA03
4J037CB26
4J037DD05
4J037EE03
4J037EE12
4J037EE26
4J037EE28
4J037EE43
4J037EE47
4J037EE48
4J037FF22
4J037FF26
4J038CE021
4J038CG001
4J038DG001
4J038DL031
4J038HA066
4J038HA216
4J038JA19
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA15
4J038KA20
4J038MA14
4J038NA02
4J038PB01
4J038PB02
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
コア及び少なくとも1つのシェルを有するナノ粒子複合体を含む抗菌性コーティング組成物であって、コアが抗菌作用を有する銀ナノ粒子を含む、抗菌性コーティング組成物。少なくとも1つのシェルは、光触媒作用を供給し、Agイオンの放出を制御することによって銀ナノ粒子コアの安定性を向上させるドープ半導体によって形成される。ナノ粒子複合体は、電磁放射線の存在下で表面プラズモンを供給する貴金属のナノ粒子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及び少なくとも1つのシェルを有するナノ粒子複合体を含む抗菌性コーティング組成物であって、
前記コアが抗菌作用を有する銀ナノ粒子を含み、
前記少なくとも1つのシェルが、光触媒作用を供給し、Agイオンの放出を制御することによって前記銀ナノ粒子コアの安定性を向上させるドープ半導体によって形成され、
前記ナノ粒子複合体が、電磁放射線の存在下で表面プラズモンを供給する貴金属のナノ粒子を含む、
抗菌性コーティング組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子複合体が結合剤材料中に分散している、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項3】
前記銀ナノ粒子コアが1nmから100nmの平均直径を有する、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項4】
前記シェルの材料がTiOである、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項5】
前記シェルが、遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物又は遷移元素の多価イオンを含む群からのドーパントでドープされている、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項6】
前記シェルが、銅及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つのドーパントでドープされている、請求項5に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項7】
前記ドーパントが、銅(Cu+2)又はアルミニウム(Au+3)の多価イオンである、請求項6に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項8】
前記ドーパントが前記シェル材料の0.1から1%である、請求項5に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項9】
前記貴金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項10】
前記貴金属ナノ粒子の直径が10から100nmである、請求項9に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子複合体が、オルガノシラン、PU、ポリビニルアルコール及びアクリルコーティングからなる群からの結合剤中に供給される、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項12】
担体化合物中に供給される、請求項1に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項13】
前記担体化合物が、水よりも低い沸点を有する溶媒を含む、請求項12に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項14】
前記担体化合物が、イソプロパノールを含む、請求項12に記載の抗菌性コーティング組成物。
【請求項15】
抗菌性コーティング組成物を製造する方法であって、
銀ナノ粒子溶液を調製して、銀ナノ粒子コアを形成することと、
前記銀ナノ粒子コアのTiOシェル用のチタンイソプロポキシド(TTIP)溶液を調製することと、
前記TiOシェルの表面ドーピングを供給するためのCu++ドーパント溶液を調製することと、
金属金ナノ粒子溶液を調製することと、
ドープされたTiOのゾルを生成することと、
前記銀ナノ粒子溶液を前記金ナノ粒子溶液と混合することと、
前記銀ナノ粒子溶液と前記金ナノ粒子溶液との混合物をドープされたTiOのゾルに添加することとを含む、抗菌性コーティング組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア及び少なくとも1つのシェルを有するナノ粒子複合体を含む、抗菌性コーティング組成物(antimicrobial coating composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは、細菌、真菌及び胞子などの数百万の微生物に日々曝露されている。微生物は、ほぼあらゆる表面、例えば食品上、空調及び換気システム内、又は歯ブラシ上にさえ見出される。これらの微生物の多くは有用であり、又は必要でさえある。それにもかかわらず、より無害な代表的微生物に加え、疾患を引き起こす又は致命的でさえある細菌、真菌及び胞子も存在する。
【0003】
他の人々との日常的な取引及び他の人々が使用した物品、例えばドアのハンドル、衛生設備、照明スイッチ又は蛇口との接触は、微生物の伝染をもたらし得る。特に公共の建物、とりわけ病院では、このリスクへの曝露が増大している。健康被害に関するリスクに加えて、微生物(例えば衛生区域のカビ菌)も、かなりの材料損傷を引き起こす。
【0004】
有機化合物及び/又は微生物細胞の酸化分解を実現することが可能である。一部の「高度酸化法(advanced oxidation process)」では、不均一光触媒反応が、大半の有機汚染物質の完全なミネラル化(mineralization)をもたらす、新たな破壊技術として出現した。光触媒法は、エネルギーが半導体バンドギャップよりも大きい光の照射下で、半導体粒子内に生成された電子-正孔対の反応特性に基づいて構築される。これらの電子及び正孔は、再結合することができるか、又は粒子表面に到達して、好適な酸化還元電位を有する溶液中の種と反応することができる。様々な半導体のうち、酸化チタン(IV)(TiO)は、長期安定性及び非毒性を含む、多くの利点を有する触媒である。TiOはまた、容易かつ安全に製造される。光触媒作用は、光の存在下で酸化還元力を発生させ、近傍の有機化合物及び/又は微生物細胞に作用する。
【0005】
いくつかの用途では、エネルギーバンドギャップを減少させるか、又は禁制バンドギャップ内にエネルギー準位を確立し、電子(e)及び/又は正孔(h)にトラップを導入することによって再結合プロセスを減少させることが望ましい。TiOの価電子帯(VB)及び伝導帯(CB)は、それぞれO 2p及びTi 3d軌道からなり、そのバンドギャップ(禁制帯)は約3.0から3.2eVである。TiO光触媒の光照射(hν>3.2eV)はバンドギャップ励起をもたらし、CB内の電子及びVB内の正孔の電荷分離を生じる。
【0006】
通常、TiOの光触媒活性は、その位相構造、結晶子径、比表面積及び細孔構造に強く依存する。酸化チタンは、自然界ではルチル及びアナターゼの2種類の正方晶形態と、ブルッカイトと呼ばれる斜方晶形態でも存在する。ブルッカイトは実験室での合成が非常に困難であるが、アナターゼとルチルの両方は容易に調製できる。アナターゼ型が最も高い光触媒作用を示す。結晶化は、400℃を超える高温での焼成によって行われることが多いが、水熱処理、水を用いた低温結晶化を使用して結晶化することができる。この例では、120℃の水熱を使用したが、これは600℃で生成された粒子と同等の効率であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様において、コア及び少なくとも1つのシェルを有するナノ粒子複合体を含む抗菌性コーティング組成物であって、コアが抗菌作用を有する銀ナノ粒子を含み、少なくとも1つのシェルが、光触媒作用を供給し、Agイオンの放出を制御することによって銀ナノ粒子コアの安定性を向上させるドープ半導体によって形成され、ナノ粒子複合体が、電磁放射線の存在下で表面プラズモンを供給する貴金属のナノ粒子を含む、抗菌性コーティング組成物が提供される。
【0008】
本発明は、ナノ粒子(NP)複合体を有する抗菌性コーティング組成物であって、
TiOのシェルを有する銀ナノ粒子コアで、銅及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つのドーパントによってシェルがドープされている、銀ナノ粒子コアと、
金ナノ粒子とを含み、
TiOのシェルが、裸の銀ナノ粒子(naked silver nanoparticle)と比較して、Agイオンの放出の効果的な制御により銀ナノ粒子コアの安定性を向上させる、抗菌性コーティング組成物に関する。
【0009】
コアは、100nm未満の粒径及び抗菌作用を有する、又はコアから放出された銀イオンが細胞損傷及び細胞死を引き起こす、いわゆるオリゴダイナミック作用を有する、銀のナノスケール粒子を含む。シェルは、半導体特性を有する無機材料などの、光触媒活性を有する少なくとも1つの物質によって形成される。好ましくは2eVから5eVのバンドギャップを有するこの種の半導体材料は、光励起の結果として、電子-正孔対を形成することができる。形成された電子はコア粒子の表面に移動し、そこで酸化/還元反応が起こり、有機化合物及び/又は微生物の分解をもたらすことができる。
【0010】
上述のように、好ましい半導体材料は酸化チタンTiOである。酸化チタン(IV)は、光励起から生じる強い酸化還元活性のために、抗菌剤として使用することができる。TiOは、紫外線(<387nm)下で比較的高い反応性及び化学的安定性を示す。TiOのシェルは、裸の銀ナノ粒子からの銀イオンの放出を効果的に制御することによって、コア銀ナノ粒子の安定性も向上させる。
【0011】
コア粒子径は、100nm未満では、本発明に従って生じる効果にとって非常に重要であることが強調できる。本発明より使用されるコア粒子は、100nm未満の表示によって定義される、狭いナノスケール範囲に位置する。
【0012】
光触媒の性能は、金属イオン又は非金属ドーパントのTiOへの堆積又は組み込みによって改善される。ドーピング技術は、ワイドバンドギャップ、可視光下での光触媒反応の無効性、電子e-及び正孔+対の分離、電子-及び正孔+対の再結合、並びに熱不安定性などのTiOの制限を克服するために、光触媒反応に適用される。大半のドーパントは、ナノドープTiOの光触媒効率を向上させる可能性を有する。光触媒の光感受性の有効範囲を紫外(UV)領域から可視光領域に拡張するために、ドーパントはナノTiOの電子構造を改変する(modify)ことができる。
【0013】
ドーパントは、TiOの表面上に電荷空間担体領域を形成し、光生成電子-正孔対の再結合を妨げるが、光生成電子-正孔対の再結合は、次にヒドロキシルラジカルの形成を加速し、そのため光触媒プロセスの速度を上昇させる。これに加えて、ドーパントは、汚染物質の吸着のための活性部位として作用し、光分解速度を上昇させることができる。ドーパントは、TiOの0.1~1%の濃度の遷移金属、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、又はCu若しくはAlなどの遷移元素の多価イオンである。
【0014】
TiOのシェルからの光触媒作用は、金などの貴金属ナノ粒子をナノ粒子複合体に添加してプラズモンナノ粒子(PNP)を得ることによって、さらに向上させることができる。様々なプラズモン光触媒複合体は、著しく向上した光触媒活性を示す。これらの複合体において、PNPは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を通じて可視光を効率的に吸収し、可視光を近くの半導体の正孔及び電子に変換する。
【0015】
PNPのLSPRは、双極子プラズモンモード、四重極モード及びかなりより高いプラズモンモードなどの、多くのプラズモンモードを含むことができる。光触媒用途では、最も関連性のあるモードは双極子プラズモン共鳴である。双極子プラズモンモードは、入射光に応答したPNP内の伝導電子の集団振動を表す。光照射時に、電場は伝導電子を核に対して変位させ、大きな電気双極子を誘導する。同時に、電子と核との間のクーロン引力に起因して復元力が生じ、特定の周波数において伝導電子の共鳴振動が生じる。LSPRは一般に、PNPが入射光の波長よりもかなり小さいときに発生する。
【0016】
中心に銀ナノ粒子を供給すると、光の存在下でプラズモン効果が生成される。銀ナノ粒子は、オリゴダイナミック特性も有する。ナノ粒子複合体中に金ナノ粒子を含めることにより、光の存在下での表面プラズモンの効果の向上がもたらされる。この効果により、電磁線の電界と同相で伝導電子が振動し、電子雲が発生する。
【0017】
本発明は、広範囲の光、UV範囲の下並びに可視光(>400nm)の下で高い反応性を示す光触媒である。再結合して、入力エネルギーを熱として散逸させる励起状態の電子及び正孔は、準安定表面状態で捕捉されるか、又は半導体表面上に若しくは荷電粒子の周囲の電気二重層内に吸着した電子供与体及び電子受容体と反応する。
【0018】
さらなる利点は、以下の説明に一部記載されるか、又は実施によって習得され得る。利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている要素及び組み合わせによって実現及び達成される。
【0019】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、実施形態を図示し、説明と共に、方法及びシステムの原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による抗菌性コーティング組成物の概略図である。 例 本発明の一実施形態において、抗菌性コーティング組成物は、銀コア及びTiOシェル(Ag@TiO)を有するコア/シェルナノ粒子(NP)の形態の銀ドープTiOによって形成される。そのようなナノ粒子複合体のコア/シェル形態は、銀ナノ粒子の明確に定義され、(TiOシェル内部のそのカプセル化状態による)より高い安定性を含む、いくつかの利点を与える。TiO:Agのモル比は、Ag@TiOコア-シェルナノ粒子を調製する間で重要である。より低いモル比では、より高い比と比較して、改良されたコアシェル粒子を得ることができる。銀ナノ粒子コアは、1nmから100nm、いくつかの実施形態において10nmから100nmの平均直径を有する。
【0021】
銀ナノ粒子は、還元剤としてβ-D-グルコース、分散剤としてPEG(ポリエチレングリコール)、溶媒として水の存在下で調製した。PEG水溶液マトリクス中に銀イオンを分散させた後、PEGはAgと反応してPEG錯体[Ag(PEG)]を形成し、[Ag(PEG)]はβ-D-グルコースと反応して、グルコースのグルコン酸への酸化による銀イオンの還元のため、[Ag(PEG)]を形成した。反応時間に応じてNP径が増大する。Ag NP径は、3時間の反応時間における約10nmから48時間の反応時間における約25nmまで実質的に変化し得る。
【0022】
ナノ粒子の調製後、これらの粒子を2.5%、5%、7.5%、10%、20%のモル比の各種の割合でTiOゾルに添加した。120℃での4時間の水熱処理は、適正な結晶化形態の形成に役立った。ナノ粒子を、銀モル比に等しい金粒子を有する溶媒に添加した。各種の割合は、20%使用時を除き、最初はほぼ等しい効率をもたらした。この効率は経時的に、2.5%のより低い割合の場合に低下するが、5%~10%の割合では、より良好な抗菌作用が生じる。
【0023】
光触媒としてTiOを使用することの欠点は、アナターゼ相では3.2eVのそのバンドギャップが、電磁スペクトルの近UV範囲に存在することである。結果として、UV光のみが電子-正孔対を生成して、光触媒プロセスを開始することができる。
【0024】
ドーピングは、不純物をTiOマトリックスに導入することによって光触媒活性を向上させるために使用される、一般的な方法である。表面ドープされたイオンは、界面電荷移動の速度論において重要な役割を果たす。それらのイオンは、電荷担体及び反応物質の両方と相互作用して電荷移動を媒介することができる。
【0025】
様々な遷移元素多価イオン、即ちCu++、Al+++、Fe+++、Mn+7、Ni++をドーパントとして使用することができる。これらのイオンはいずれも非常に周知の導体である。これらのイオンは、その上に存在するイオン電荷のために電子を受容することができる。ドーパントとしてCu++を使用すると、抗菌作用にとって非常に良好な結果が得られた。様々なCu++モル濃度を使用した。使用するCu++源は、チタンに対して1%、0.5%、0.25%、0.1%モルである。0.25%のCuOは、メチルチオニウムクロリド分解試験に基づいて、非常に良好な光触媒作用を与えた。
【0026】
金ナノ粒子は可視光を吸収し、より広い光スペクトルにおいて光触媒反応応答を向上させる。これは、電磁線の存在下で良好な表面プラズモンを示す金ナノ粒子の結果である。電磁線の電界と同相で伝導電子が振動する。
【0027】
調製方法
ステップ1、ナノ銀の合成
溶液A:1.0M硝酸銀(1)(AgNO)を再蒸留水中で調製した。
溶液B:再蒸留水中1%ポリエチレングリコール(PEG)溶液
溶液C:再蒸留水中1.0M D-グルコース
溶液A 10mLを溶液B 200mLと混合し、高速で20分間撹拌した。透明な溶液が生成される。この混合物に溶液C 20mLを添加し、さらに20分間撹拌した。この混合物を、淡黄色が出現するまで、撹拌条件下で80℃にて加熱する。
温度を15℃未満に低下させることによって、反応を直ちに停止する。
あらゆる光活性を避けるために、コロイド懸濁液を暗瓶に保存する。
【0028】
ステップ2、コア-シェル粒子の合成
溶液D:ステップ1で生成したコロイド状ナノ銀粒子(Ag@TiOコアシェルの生成に使用)
溶液E:2-プロパノール中1.0Mチタンイソプロポキシド(TTIP)
溶液Dを高速で10分間撹拌した。
溶液Eを溶液Dに滴加した。
乳酸を添加してpH2~3とした。
黄白色沈殿が生成した。60℃にてさらに4時間撹拌した。透明なゾルが生成した。このゾルを120℃の水熱環境下で4時間処理した。この粒子懸濁液は、直接使用するか、又は真空条件下80℃で乾燥させることができる。
【0029】
ステップ3、ドーパントの添加(表面ドーピング)
溶液F:30%過酸化水素(H)溶液
溶液G:1:1の再蒸留水:2-プロパノール中の1mM酸化銅(CuO)
ステップ2で合成したAg@TiOコア-シェルは、Cu++ドーパントでドープされる。
ステップ3の粉末を100mL 1mMを溶液Gで調製する。
溶液F 1mLを添加した。
溶液の超音波処理下で十分に分散させた。
軽く1時間撹拌した。
高速で1時間撹拌した。
600℃にて2時間の焼成プロセス。
ナノ粒子1(表面ドープコア-シェル粒子)
【0030】
ステップ4、ナノ金の合成
溶液H:王水(濃HNO:HClの1:3溶液)
溶液I:溶液B中の38mMトリナトリウムシトラート溶液
溶液J:100mMテトラクロロ金酸三水和物
1.金1.0gを500mLフラスコに入れ、溶液H 100mLをゆっくり添加した。
2.室温にて60分間静置した。金の溶解が遅くなったら、温度を徐々に上昇させて沸騰させた。
3.金属金が完全に溶解したら、溶液を連続的に加熱して50mLに濃縮した。
4.褐色蒸気が完全になくなるまで、HClを熱溶液にゆっくりと添加した。
5.最終溶液は強度が100mMであった。
1mM溶液J 20mLを100mLフラスコに添加した。
溶液を沸騰するまで加熱し、次いで溶液I(モル比1:3.8)2mLを添加した。
しばらくすると、深いワインレッド色ゾルが得られた。
長時間沸騰しても、さらなる色の変化は認められなかった。
溶液を室温まで冷却した。
ナノ金コロイド懸濁液の準備が整っている。
光反応を避けるために暗瓶に保存する。
ナノ粒子2(プラズモニックナノ粒子)
【0031】
ステップ5、Synthesis of TiOゾルの合成
TTIP 88gを、スター添加条件下で2-プロパノール中に滴加した。高速で60分間スターし、温度は50℃を超えるべきではない。pHが2に低下するまで、乳酸を添加した。
高速でさらに60分間スターした。
透明なゾルが生成するまで、6~8時間放置する。
透明なゾルが生成する。
【0032】
最終溶液
ナノ粒子1及びナノ粒子2を1:2の割合で混合した。
この混合物を超音波処理した。
この混合物500mLをTiOゾル500mLに添加する。
【0033】
コーティング組成物の調製プロセスでは、溶液又は懸濁液の調製に使用される溶媒は、シェルが適用された後に再び除去されることが好ましい。本発明のプロセスによって得られるコーティング材料は、様々な方法で、例えば噴霧、浸漬又はスピンコーティングによってさらに処理及び使用することができる。組成物に使用される基剤(結合剤)に応じて、コーティングの仕上げは各種の方法で行われる。結合剤は、オルガンシラン、PU、ポリビニルアルコール、アクリルコーティング又は対応する特性を有する他の材料であることができる。
【0034】
コーティング組成物は、水及び/又は水よりも低い沸点を有する溶媒であることができる担体化合物(carrier compound)中に供給することができる。その後、コーティング組成物は室温で容易に蒸発する。担体化合物の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール若しくはイソプロパノール単独又はそれらの混合物であることができる。
【0035】
適用方式に応じて、得られるコーティング厚は厚さが異なり得て、目的は原則として、コーティング厚が可能な限り薄いことである。したがって、最終的に得られるコーティングのコーティング厚は、0.0005mmから0.05mm、特に0.001mmから0.01mmであることが好ましい。一例として、最終溶液1リットルを面積25mに適用する。この場合、厚さはd=1000/2500*2500=0.0016mmである。
【0036】
本発明は、銀ナノ粒子の周知のオリゴダイナミック特性を、金属でドープされたTiOのシェルからの光触媒作用と併用する。シェルは、銀ナノ粒子の安定性を向上させ、オリゴダイナミック効果を延長する。ナノ粒子複合体に金ナノ粒子を添加することによって、光触媒作用がさらに向上する。金ナノ粒子は、伝導電子が電磁放射線の電界と同相で振動する電磁放射線の存在下で、表面プラズモンを供給する。
【0037】
本発明の概念から逸脱せずに様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者には明らかとなる。他の実施形態は、本明細書及び本明細書に開示された実施の考察から、当業者には明らかとなる。本明細書及び例は例示としてのみ考慮され、特許請求の範囲は、本発明が属する技術分野の当業者に明らかな本発明のすべての均等物を包含すると解釈されるものである。
図1
【国際調査報告】