(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】改良された相同性依存性修復ゲノム編集
(51)【国際特許分類】
C12N 15/90 20060101AFI20220901BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20220901BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20220901BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220901BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220901BHJP
【FI】
C12N15/90 Z
A01K67/027 ZNA
A01H1/00 A
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/31
C12N15/34
C12N15/55
C12N15/63 Z
C12N15/82 Z
C12N5/10
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576666
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020039410
(87)【国際公開番号】W WO2020264016
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521559371
【氏名又は名称】イナリ アグリカルチャー テクノロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェルマク, トマーシュ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB02
2B030CA17
2B030CB03
4B063QA05
4B063QA13
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4B063QR08
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4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA53
4B065CA60
(57)【要約】
ゲノム編集分子による標的編集部位の相同組換え修復(HDR)の頻度を増加させるための真核細胞並びに関連する試薬、システム、方法、及び組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させる方法であって、
ゲノム編集分子とHDR促進剤とを真核細胞に提供することであって、前記ゲノム編集分子が、(i)前記標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと;(ii)前記標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及び前記HDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;
それによって前記ゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによる前記ドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた前記真核細胞ゲノムの前記標的編集部位の修飾をもたらすことを含む、方法。
【請求項2】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲノム編集分子が、前記標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、前記ガイドRNA分子が、前記標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ドナーDNA分子が、環状DNAベクター、ジェミニウイルスレプリコン上に、又は線状DNA断片として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列のコピーが隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、前記標的編集部位が、PAM配列と、前記ガイドRNAに相補的な、且つプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に前記標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼIII、Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項23】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)と前記SSAPとが、同じ宿主生物から入手される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、前記HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBタンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBが、前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として前記細胞に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が植物細胞であり、前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記一本鎖DNA結合タンパク質が、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記ゲノム修飾を含む植物細胞、前記植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、前記植物細胞、珠芽、又は植物の前記ゲノムが前記ゲノム修飾を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させるためのシステムであって、
(a)真核細胞;
(b)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含むHDR促進剤;及び
(c)前記標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、前記標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含む1つ又は複数のゲノム編集分子
を含み;
前記真核細胞が有効量の前記HDR促進剤及び前記1つ又は複数のゲノム編集分子と会合し、それに接触し、及び/又はそれを含有する、システム。
【請求項37】
前記ゲノム編集分子及び/又は配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項40】
前記ゲノム編集分子が、前記標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項41】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、前記ガイドRNA分子が、前記標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
前記ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、請求項36に記載のシステム。
【請求項44】
前記ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、請求項36に記載のシステム。
【請求項45】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、前記標的編集部位が、PAM配列と、前記ガイドRNAに相補的な、且つ前記PAM配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項46】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に前記標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、請求項36に記載のシステム。
【請求項47】
前記ゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して少なくとも2倍に増加した頻度でHDRによる前記ドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた前記真核細胞ゲノムの前記標的編集部位の修飾をもたらす、請求項36に記載のシステム。
【請求項48】
前記SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、請求項36に記載のシステム。
【請求項49】
前記SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項50】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項52】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項53】
前記ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項54】
前記RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項55】
線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項36に記載のシステム。
【請求項56】
リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項36に記載のシステム。
【請求項57】
前記エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項36に記載のシステム。
【請求項58】
前記エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項36に記載のシステム。
【請求項59】
前記エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項60】
前記エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項61】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)と前記SSAPとが、同じ宿主生物から入手される、請求項36に記載のシステム。
【請求項62】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、請求項36に記載のシステム。
【請求項63】
前記SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項65】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照システムと比較して、前記HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、請求項36に記載のシステム。
【請求項66】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照システムと比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、請求項36に記載のシステム。
【請求項67】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記一本鎖DNA結合タンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項68】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBが、前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として前記細胞に提供される、請求項36に記載のシステム。
【請求項69】
前記真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、請求項36~68のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項70】
前記植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、請求項69に記載のシステム。
【請求項71】
前記植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、請求項69に記載のシステム。
【請求項72】
前記細胞が植物細胞であり、前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記一本鎖DNA結合タンパク質が、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、請求項69に記載のシステム。
【請求項73】
前記システムが、前記ゲノム修飾を含む植物細胞、前記植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離すること及び/又は成長させることを提供し、及び前記植物細胞、珠芽、又は植物の前記ゲノムが前記ゲノム修飾を含む、請求項69に記載のシステム。
【請求項74】
ゲノム修飾を有する真核細胞を作製する方法であって、
(a)ゲノム編集分子と相同組換え修復(HDR)促進剤とを真核細胞に提供することであって、前記ゲノム編集分子が、(i)前記標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、前記標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及び前記HDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;それによって前記ゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによる前記ドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた前記真核細胞ゲノムの前記標的編集部位の修飾をもたらすこと;及び
(b)前記ゲノム修飾を含む真核細胞を単離し又は増殖させることであって、それによってゲノム修飾を有する前記真核細胞を作製すること
を含む方法。
【請求項75】
前記ゲノム編集分子及び/又は配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記ゲノム編集分子が、前記標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、前記ガイドRNA分子が、前記標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
前記ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、請求項74に記載の方法。
【請求項83】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、前記標的編集部位が、PAM配列と、前記ガイドRNAに相補的な、且つ前記PAM配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に前記標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、請求項74に記載の方法。
【請求項85】
前記SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
前記SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項87】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項74に記載の方法。
【請求項92】
リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項74に記載の方法。
【請求項93】
前記エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項74に記載の方法。
【請求項94】
前記エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項74に記載の方法。
【請求項95】
前記エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項96】
前記エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項97】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)と前記SSAPとが、同じ宿主生物から入手される、請求項74に記載の方法。
【請求項98】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、請求項74に記載の方法。
【請求項99】
前記SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項101】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、前記HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、請求項74に記載の方法。
【請求項102】
対照真核細胞が前記ゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、請求項74に記載の方法。
【請求項103】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記一本鎖DNA結合タンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項104】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBが、前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として前記細胞に提供される、請求項74に記載のシステム。
【請求項105】
前記真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、請求項74~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記SSAP、前記エキソヌクレアーゼ、及び/又は前記SSBが、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記ゲノム修飾を含む植物細胞、前記植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、前記植物細胞、珠芽、又は植物の前記ゲノムが前記ゲノム修飾を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項110】
前記HDR促進剤、ゲノム編集分子及び真核細胞又は前記ゲノム修飾を含む真核細胞が、複数の容器、区画、又は位置を含むアレイで提供され、各容器、区画、又は位置が、前記HDR促進剤、ゲノム編集分子及び真核細胞又は前記ゲノム修飾を含む真核細胞を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法、請求項36~68のいずれか一項に記載のシステム、又は請求項74~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
真核細胞を遺伝子操作する方法であって、前記真核細胞に、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を提供することを含み、
前記細胞の前記標的編集部位が前記ドナー鋳型DNA分子によって修飾される、方法。
【請求項112】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、Cas12i、Cas14、又は操作されたヌクレアーゼを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、請求項111に記載の方法。
【請求項115】
ガイドRNAを更に含み、前記配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAが、前記標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する、請求項111に記載の方法。
【請求項116】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含み、前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、前記標的編集部位のエンドヌクレアーゼ認識配列に特異的である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、前記ガイドRNA分子が、前記標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、請求項111に記載の方法。
【請求項119】
前記ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、請求項111に記載の方法。
【請求項120】
前記SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項121】
前記RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項111に記載の方法。
【請求項123】
リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、前記エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、請求項111に記載の方法。
【請求項124】
前記エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項111に記載の方法。
【請求項125】
前記エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、請求項111に記載の方法。
【請求項126】
前記エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項127】
前記エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、請求項111に記載の方法。
【請求項128】
前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)と前記SSAPとが、同じ宿主生物から入手される、請求項111に記載の方法。
【請求項129】
前記真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、請求項111~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記ゲノム修飾を含む植物細胞、前記植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、前記植物細胞、珠芽、又は植物の前記ゲノムが前記ゲノム修飾を含む、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有する前記ドナー鋳型DNA分子、iii)前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼ、及びv)前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、1つ以上のベクターに提供される、請求項111~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記ベクターがアグロバクテリウムベクターである、請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有する前記ドナー鋳型DNA分子、iii)前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼ、及びv)前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、染色体によって提供される、請求項111~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有する前記ドナー鋳型DNA分子、iii)前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼ、及びv)前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、ポリペプチド、DNA、mRNAを導入すること、及び/又は性的交雑によって提供される、請求項111~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項138】
前記i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有する前記ドナー鋳型DNA分子、iii)前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼ、及びv)前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、i)~v)のうちの1つ以上を含む前駆細胞によって提供され、
前記前駆細胞が、i)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、
前記前駆細胞に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つが、続いて前記前駆細胞にポリペプチド、DNA、又はmRNAを送達すること及び/又は前記前駆細胞の性的交雑によって提供される、請求項111~132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項139】
前記修飾を検出すること更に含む、請求項111~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
前記修飾を検出することが、アンプリコンシーケンシングを含む、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記標的編集部位が、タンパク質コード配列中又はプロモーター中にある、請求項111~140のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
前記標的編集部位の前記修飾が、挿入、欠失、又は置換である、請求項111~141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
前記標的編集部位が、作物栽培学的に重要な形質をコードする遺伝子又は哺乳類疾患に関わる遺伝子である、請求項111~142のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
遺伝子修飾された標的編集部位を有する真核細胞の作製方法であって、
(a)前記標的編集部位中の少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ認識配列DNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを提供すること、及び
(b)少なくとも1つの二本鎖DNA配列を含む少なくとも1つのドナー分子を提供することであって、(i)前記DNA配列が、前記標的編集部位に隣接する配列と少なくとも50ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも90%の相同性を有し、及び(ii)前記ドナー配列が、前記標的編集部位と比較して少なくとも1つの修飾を含むこと;及び
(c)少なくとも1つの相同組換え修復(HDR)促進剤を提供することであって、前記HDR促進剤が、
(i)少なくとも1つの一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、及び
(ii)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる少なくとも1つのエキソヌクレアーゼ、及び
(iii)少なくとも1つの一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)
を含み;
及びそれによって前記少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、前記少なくとも1つのドナー分子、及び前記少なくとも1つのHDR促進剤が前記真核細胞の前記標的編集部位に前記修飾を導入すること;及び
(d)前記標的編集部位に修飾を含む真核細胞を単離すること
を含む方法。
【請求項145】
前記修飾が、1つ以上のヌクレオチドの挿入、1つ以上のヌクレオチドの欠失、又は1つ以上のヌクレオチドの置換からなる群から選択される、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記標的編集部位の一部分が、前記標的編集部位における2つの配列特異的切断を用いることによって欠失され、前記ドナー分子によって提供される配列に置き換えられる、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
ベクター内で前記ドナー配列にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、請求項144~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記修飾を含む前記真核細胞を増殖させることを更に含む、請求項144~147のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
遺伝子修飾された生物を作製する方法であって、
(i)請求項144~148のいずれか一項に記載の遺伝子修飾された真核細胞を作製するステップ、及び
(ii)前記細胞を生物へと再生するステップ
を含む方法。
【請求項150】
前記生物が、植物及び非ヒト動物からなる群から選択される、請求項149に記載の生物。
【請求項151】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含む組成物。
【請求項152】
前記核酸が1つ以上のベクター内にある、請求項151に記載の組成物。
【請求項153】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含むベクター。
【請求項154】
前記ドナー鋳型DNAと、前記配列特異的エンドヌクレアーゼと、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、請求項153に記載のベクター。
【請求項155】
前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼと、前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む、153に記載のベクター。
【請求項156】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む、153に記載のベクター。
【請求項157】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸と、真核細胞の遺伝子操作に関する使用説明書とを含むキット。
【請求項158】
前記キットが第1のベクターと第2のベクターとを含み、ここで
i)前記第1のベクターが、前記ドナー鋳型DNAと前記配列特異的エンドヌクレアーゼとを含む核酸を含み、前記配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含み;及び
ii)前記第2のベクターが、前記一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる前記エキソヌクレアーゼと、前記一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む、請求項157に記載のキット。
【請求項159】
遺伝子操作された細胞の検出用薬剤を更に含む、請求項157又は158に記載のキット。
【請求項160】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む細胞。
【請求項161】
i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む細胞。
【請求項162】
植物又は哺乳類細胞である、請求項160又は161に記載の細胞。
【請求項163】
宿主細胞である、請求項160~162のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項164】
請求項1~35又は74~149のいずれか一項に記載の方法によって作製される遺伝子操作された細胞。
【請求項165】
標的編集部位における遺伝子操作のための前駆真核細胞又は生物であって、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)前記真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のサブセットを含み、前記細胞がi)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、ここで前記前駆細胞又は生物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つを前記細胞又は生物に提供すると、前記ドナー鋳型分子によって前記標的編集部位が修飾されることになる、前駆真核細胞又は生物。
【請求項166】
前記ドナー鋳型が二本鎖DNA分子である、請求項165に記載の前駆真核細胞又は生物。
【請求項167】
前記細胞が生殖系列細胞である、請求項165に記載の前駆細胞。
【請求項168】
前記前駆真核細胞が前駆植物細胞であり、前記前駆植物細胞又は植物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つが形質転換によって供給される、請求項165に記載の前駆真核細胞又は生物。
【請求項169】
前記生物が植物であり、前記前駆植物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つが、前記前駆植物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つを含む第2の植物との性的交雑によって供給される、請求項165に記載の前駆生物。
【請求項170】
前記前駆真核細胞が動物細胞であり、前記前駆細胞に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つがトランスフェクションによって供給される、請求項165に記載の前駆真核細胞。
【請求項171】
前記前駆生物が非ヒト動物であり、前記非ヒト動物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つが、前記非ヒト動物に含まれないi)~v)のうちの前記少なくとも1つを含む非ヒト動物との性的交雑によって供給される、請求項165に記載の前駆生物。
【請求項172】
前記配列特異的ヌクレアーゼが、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項153に記載のベクター。
【請求項173】
前記配列特異的エンドヌクレアーゼがニッカーゼである、請求項111に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/866,317号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、本明細書によってあらゆる目的から全体として参照により援用される。
【0002】
ASCIIテキストファイルによる配列表の提出
以下のASCIIテキストファイルによる提出の内容は、全体として参照により本明細書に援用される:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:165362000640SEQLIST.TXT、記録日:2020年6月24日、サイズ:284KB)。
【0003】
本願は、遺伝子編集のための方法、キット、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
相同組換え修復(HDR)は、所望の置換配列を持つ提供されたDNA鋳型の配列によって標的ゲノムDNA部位を高精度で置換するために用いることのできるゲノム編集方法である。HDRの結果は極めて望ましいものであるが、幾つもの理由から、HDRはあまり上手く機能しない。最も大きな問題としてあるのは、特に、ゲノム中の標的とする編集部位を切断するゲノム編集分子によって引き起こされることの多い代替的な非相同末端結合(NHEJ)修復機構と比較したときの、その全体的な発生頻度の低さである。ほとんどの細胞は、HDRを媒介する可能性のある経路を幾つか有し得るが、その中には細胞周期の間に最も活性が高いものもあり、典型的な細胞培養条件におけるHDRの成功率は下がる。
【0005】
大腸菌(E.coli)などの原核生物宿主では、相同遺伝子置換は、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼと、バクテリオファージλベータタンパク質と、相補DNA鎖のアニーリングを促進する一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、DNA鋳型とを含むバクテリオファージλ Red相同組換えシステムで達成され得る(Murphy,2016)。バクテリオファージλ Red相同組換えシステムを原核生物のCRISPR-Cas9システムと組み合わせることにより、細菌ゲノム中の標的配列における組換えが達成されている(Jiang et al.,2013;Wang et al.,2016)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、対照と比較して、真核細胞ゲノムの標的編集部位が相同組換え修復(HDR)によってドナー鋳型ポリヌクレオチドで修飾される頻度の増加をもたらすことのできる方法、システム、真核細胞(例えば、植物細胞又は哺乳類細胞)、及び組成物(例えば、細胞培養組成物、核酸、ベクター、キット、又は細胞)が開示される。そのようなHDR頻度の増加をもたらすことのできるかかる方法、システム、真核細胞(例えば、植物細胞又は哺乳類細胞)、及び組成物(例えば、細胞培養組成物、核酸、ベクター、キット、又は細胞)の特徴には、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含むHDR促進剤を、真核細胞ゲノム中の標的編集部位を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含むゲノム編集分子と組み合わせて提供することが含まれる。特定の実施形態において、ドナー鋳型DNA分子には、エンドヌクレアーゼ認識配列のコピーが隣接する。
【0007】
本明細書に提供される方法は、真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させる方法であって、ゲノム編集分子とHDR促進剤とを真核細胞に提供することであって、ゲノム編集分子が、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと;(ii)標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;それによってゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらすことを含む方法を含む。
【0008】
本明細書に提供される方法はまた、ゲノム修飾を有する真核細胞を作製する方法であって、ゲノム編集分子と相同組換え修復(HDR)促進剤とを真核細胞に提供することであって、ゲノム編集分子が、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;それによってゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらすこと;及びゲノム修飾を含む真核細胞を単離し又は増殖させることを含む方法も含む。
【0009】
本明細書に提供されるシステムは、真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させるためのシステムであって、
(a) 真核細胞;
(b) 一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含むHDR促進剤;及び
(c) 標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含む1つ又は複数のゲノム編集分子を含み;真核細胞が、有効量のHDR促進剤及び1つ又は複数のゲノム編集分子と会合し、それに接触し、及び/又はそれを含有する、システムを含む。
【0010】
本明細書に提供される方法はまた、真核細胞を遺伝子操作する方法であって、真核細胞に、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を提供することを含み、細胞の標的編集部位がドナー鋳型DNA分子によって修飾される、方法も含む。
【0011】
本明細書に提供される方法はまた、遺伝子修飾された標的編集部位を有する真核細胞の作製方法であって、(a)前記標的編集部位中の少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ認識配列DNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを提供すること、及び(b)少なくとも1つの二本鎖DNA配列を含む少なくとも1つのドナー分子を提供することであって、(i)前記DNA配列が、標的編集部位に隣接する配列と少なくとも50ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも90%の相同性を有し、及び(ii)前記ドナー配列が、前記標的編集部位と比較して少なくとも1つの修飾を含むこと;及び(c)少なくとも1つの相同組換え修復(HDR)促進剤を提供することであって、HDR促進剤が、(i)少なくとも1つの一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、及び(ii)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる少なくとも1つのエキソヌクレアーゼ、及び(iii)少なくとも1つの一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含み;それによって少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、少なくとも1つのドナー分子、及び少なくとも1つのHDR促進剤が前記真核細胞の前記標的編集部位に前記修飾を導入すること;及び(d)前記標的編集部位に修飾を含む真核細胞を単離することを含む方法も含む。
【0012】
本明細書に提供される組成物は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含む組成物を含む。
【0013】
本明細書に提供されるベクターは、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含むベクターを含む。
【0014】
本明細書に提供されるキットは、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸と、真核細胞の遺伝子操作に関する使用説明書とを含むキットを含む。
【0015】
本明細書に提供される細胞は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む細胞を含む。
【0016】
本明細書に提供される細胞はまた、標的編集部位における遺伝子操作のための前駆真核細胞又は生物であって、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のサブセットを含み、細胞がi)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、ここで前駆細胞又は生物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つを細胞又は生物に提供すると、ドナー鋳型分子によって標的編集部位が修飾されることになる、前駆真核細胞又は生物も含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ベクターpRS08tの概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、Cas発現カセット(トマトSlUBI10プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA発現カセット(シロイヌナズナ(A.thaliana)U6プロモーター(AtU6)、ガイドRNAをコードする配列、及び35Sプロモーター)、mGFP6配列、エンドウrbcS E9ターミネーター、ANT1ドナー鋳型、及びスペクチノマイシン耐性マーカー(SpnR)を含む。
【
図2】ベクターpRS045の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、アンピシリン耐性マーカー(AmpR)、HDR促進剤発現カセット(PcUbiプロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2核局在化配列(NLS)、エンドウ3Aターミネーター、トマトSlUBI10プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、HSPターミネーター、2x 35Sプロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及び35Sターミネーター)、及びpUC複製起点(pUC起点)を含む。
【
図3】ベクターpAP046の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、Cas発現カセット(トマトSlUBI10プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA及びリボザイム発現カセット(35Sプロモーター、ハンマーヘッド型(HH)リボザイムをコードする配列、ガイドRNAをコードする配列、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムをコードする配列、及び35Sターミネーター)、HDR促進剤発現カセット(PcUbiプロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2 NLS、エンドウ3Aターミネーター、トマトSlUBI10プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、HSPターミネーター、2x 35Sプロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及び35Sターミネーター)、ANT1ドナー鋳型、及びスペクチノマイシン耐性マーカー(SpnR)を含む。
【
図4】ベクターpRS148の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、Cas発現カセット(トマトSlUBI10プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA及びリボザイム発現カセット(35Sプロモーター、ハンマーヘッド型(HH)リボザイムをコードする配列、ガイドRNAをコードする配列、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムをコードする配列、及び35Sターミネーター)、及びスペクチノマイシン耐性マーカー(SpnR)を含む。
【
図5】ベクターpRS192の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、HDR促進剤発現カセット(PcUbiプロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2 NLS、エンドウ3Aターミネーター、トマトSlUBI10プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、HSPターミネーター、2x 35Sプロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及び35Sターミネーター)、ANT1ドナー鋳型、及びアンピシリン耐性マーカー(AmpR)を含む。
【
図6】ベクターpTC801の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、Cas発現カセット(トウモロコシユビキチン(ZmUbi)プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA及びリボザイム発現カセット(35Sプロモーター、ハンマーヘッド型(HH)リボザイムをコードする配列、ガイドRNA1及び2をコードする配列、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムをコードする配列、及び35Sターミネーター)、HDR促進剤発現カセット(イネ(Oryza sativa)アクチン(OsActin)プロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2 NLS、エンドウ3Aターミネーター、スイッチグラス(Panicum virgatum)ユビキチン(PvUbi1)プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、エンドウrbcS E9ターミネーター、イネ(O.sativa)ユビキチン(OsUB1)プロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及びタバコエクステンシン(NtEXT)ターミネーター)、SPXドナー鋳型、及びスペクチノマイシン耐性マーカー(SpnR)を含む。
【
図7】ベクターpAB156の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、カナマイシン耐性マーカー(KanR)、左T-DNA境界、ハイグロマイシン耐性カセット(2x 35Sプロモーター、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hygR)コード配列、及び35Sターミネーター)、Cas発現カセット(トマトSlUBI10プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA及びリボザイム発現カセット(35Sプロモーター、ガイドRNAをコードする配列、ハンマーヘッド型(HH)リボザイムをコードする配列、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムをコードする配列、及び35Sターミネーター)、HDR促進剤発現カセット(PcUbi4プロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2 NLS、エンドウ3Aターミネーター、AtUbi10プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、エンドウrbcS E9ターミネーター、HaUbiCh4プロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及びExt3’ターミネーター)、GFPドナー鋳型、右T-DNA境界、及びpVS1由来のSTA領域を含む。
【
図8】スーパーバイナリーT-DNAベクターpIN1757(下)及びpIN1576(上)の挿入領域設計の概略図を示す。pIN1757は、左T-DNA境界、NOSターミネーター、グルホシネート選択用のPAT、35Sプロモーター、Cas発現カセット(トウモロコシユビキチン(ZmUbi)プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA発現カセット(コムギU6(TaU6)プロモーター、ガイドRNAをコードする配列(Gln1-3 Pro-2)、及びPol IIIターミネーター)、Gln1-3ドナー鋳型、及び右T-DNA境界を含む。加えて、ベクターpIN1756は、HDR促進剤発現カセット(イネ(O.sativa)アクチン(OsActinプロモーター+イントロン)プロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(SSB)、エンドウ3Aターミネーター;スイッチグラス(P.virgatum)ユビキチン(PvUbi1プロモーター+イントロン)プロモーター(promote)、SSAPコード配列(beta)、エンドウrbcS E9ターミネーター;イネ(O.sativa)ユビキチン(OsUB1)プロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Exo)、及びタバコエクステンシン(NtEXT)ターミネーター)を含む。
【
図9】
図9A~
図9Bは、トマト子葉の形質転換用のベクター及び発現カセットの概略図を示す。
図9Aは、ベクターpIN1705の概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、カナマイシン耐性マーカー(KanR)、左T-DNA境界、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(EPSPS)シンターゼ発現カセット(即ち、シロイヌナズナ(A.thaliana)ユビキチンプロモーター(AtUbi10)及びエンドウrbcS E9ターミネーターの制御下にあるEPSPSコード配列(CDS))、Cas発現カセット(トマトSlUBI10プロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びHSPターミネーター)、ガイドRNA及びリボザイム発現カセット(35Sプロモーター、ハンマーヘッド型(HH)リボザイムをコードする配列、ガイドRNAをコードする配列、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイムをコードする配列、35Sターミネーター)、HDR促進剤発現カセット(PcUbiプロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に融合したc2 NLS、エンドウ3Aターミネーター、トマトSlUBI10プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に融合したc2 NLS、HSPターミネーター、2x 35Sプロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に融合したc2 NLS、及び35Sターミネーター)、ANT1ドナー鋳型、右T-DNA境界、pVS1由来のSTA領域、pVS1複製起点(起点)、及び複製起点(起点)を含む。
図9Bは、トマト子葉のゲノムへの染色体組込み用のアグロバクテリウム属(Agrobacterium)T-DNAベクターの左右の境界間にある領域の概略図を示す。図示されるのは、上から下に、pIN1703、pIN1704、及びpIN1705ベクターの領域である。CSは切断部位を示し、EPSPSはEPSPS発現カセットを示し、CasSはCas発現カセットを示し、ANT1ドナーはドナー鋳型を示し、HDR剤は、SSAP、SSB、及びエキソヌクレアーゼをコードするHDR促進剤発現カセットを示し、及びGFPは緑色蛍光タンパク質コード配列を示す。
【
図10】ヒトにおける発現用ベクターの概略図を示す。塩基対の長さは、ベクターの外側の目盛りによって示される。このベクターは、塩基対1から始まって、高コピー数複製起点(高コピー起点)、Cas発現カセット(CAGプロモーター、Casヌクレアーゼコード配列(CasヌクレアーゼCDS)、及びウサギβ-グロビン(rbグロビン)ターミネーター)、ガイドRNA発現カセット(ヒト(H.sapiens)U6(HsU6)プロモーター、ガイドRNAをコードする配列)、HDR促進剤発現カセット(ヒト(H.sapiens)EF1aプロモーター、大腸菌(E.coli)SSBコード配列(大腸菌(E.coli)SSB CDS)に連結されたSV40 NLS、ヒト成長ホルモン(hGH)ターミネーター、ヒト(H.sapiens)ACTB(hACTB)プロモーター、SSAPコード配列(Red Beta CDS)に連結されたSV40 NLS、ウシ成長ホルモン(bGH)ターミネーター、CMVプロモーター、エキソヌクレアーゼコード配列(Red Exo CDS)に連結されたSV40 NLS、及びSV40ポリAシグナル)、EMX1 FRTドナー鋳型、及びスペクチノマイシン耐性マーカー(SpnR)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
特に指定されない限り、本明細書の本文中にある核酸配列は、左から右に読んだとき、5’から3’方向で提供される。核酸配列は、指定されるとおり、DNAとして、又はRNAとして提供され得る;当業者に公知のとおり、一方の開示が必然的に他方を定義するとともに、必然的に正確な相補体も定義する。用語が単数形で提供される場合、本発明者らはまた、その用語の複数形によって記載される実施形態も企図する。
【0019】
語句「アレルバリアント」は、本明細書で使用されるとき、所与の生物の異なる株、変種、又は分離株に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチド配列バリアントを指す。
【0020】
用語「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示と受け取られるべきである。従って、用語「及び/又は」は、本明細書において「A及び/又はB」などの語句で用いられるとき、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの語句で用いられるとき、以下の実施形態:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「Cpf1」及び「Cas12a」は、本明細書では、同じRNA依存性ヌクレアーゼを指して同義的に使用される。
【0022】
本明細書で使用されるとき、語句「ゲノム編集分子」は、少なくとも1つのDNA配列をエンドヌクレアーゼ認識部位で切断する1つ又は複数の配列特異的エンドヌクレアーゼ又はそのような1つ又は複数の配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「外因性」薬剤又は分子は、システム、組成物、真核細胞若しくは植物細胞培養物、反応系、又は真核細胞若しくは植物細胞に提供されるか、又はそこに導入される外部供給源由来の任意の薬剤又は分子を指す。特定の実施形態において、外部供給源由来の外因性薬剤(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質、又は化合物)は、真核細胞又は植物細胞にも見られる薬剤であり得る。特定の実施形態において、外部供給源由来の外因性薬剤(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質、又は化合物)は、真核細胞又は植物細胞にとって異種の薬剤であり得る。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「異種」薬剤又は分子は、(i)野生型の、未処理の、又は天然に存在する組成物、真核細胞、又は植物細胞には見られない任意の薬剤又は分子;及び/又は(ii)例えばゲノム又はベクター内において、その配列が自然中に存在する場合以外のコンテクストで位置するポリヌクレオチド又はペプチド配列を指す。例えば、そのプロモーターが自然中で作動可能に連結されている遺伝子以外の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーターは、異種プロモーターである。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「~を含む(include)」、「~を含む(includes)」、及び「~を含んでいる(including)」は、それが言及する特徴を少なくとも有するが、任意の追加的な特定されていない特徴を除外しないものと解釈されるべきである。
【0026】
用語「相同組換え」は、本明細書で使用されるとき、相同性部位における2つのDNA分子間でのDNA断片の交換を指す。相同組換えの頻度は、幾つもの要因に影響される。異なる生物は、相同組換えの量及び相同組換えと非相同組換えとの相対的比率の点で違いがある。概して、相同組換えイベントの頻度には、相同性領域の長さが影響を及ぼす:相同性領域が長いほど、頻度が高くなる。相同組換えを観察するのに必要な相同性領域の長さもまた、種間でばらつきがある。多くの場合、少なくとも5kbの相同性が利用されているが、僅か25~50bpほどの短い相同性でも、相同組換えは観察されている。
【0027】
本明細書で使用されるとき、相同組換え修復(HDR)は、提供されるドナー配列の取込みによって標的編集部位の高精度編集(precite editing)を生じさせるDNA修復方法を意味する。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「HDRの頻度」、「HDR頻度」などの語句は、分析する標的編集部位の総数と比較した、標的編集部位におけるHDR媒介性イベントの数を指す。標的編集部位の総数は、(a)NHEJ媒介性イベントがある標的編集部位と;(b)変化のない標的編集部位と;(c)HDR媒介性イベントがある標的編集部位との合計である。HDR媒介性イベントは、挿入された異種配列、異種挿入体に隣接する相同配列、又は異種配列と相同配列との接合部に位置する配列のいずれにも、いかなる意図しないヌクレオチド挿入、欠失、又は置換も含まない、標的編集部位への異種配列の高精度な挿入を含む。
【0029】
本明細書で使用されるとき、語句「真核細胞」は、核を持つ任意の細胞を指し、従って、哺乳類のもの(例えば、ヒト、家畜、及び伴侶動物細胞)、昆虫細胞、爬虫類細胞、植物細胞(例えば、単子葉及び双子葉植物細胞)、酵母細胞、及び真菌細胞(例えば、糸状菌及び非糸状菌)が含まれる。
【0030】
「修飾されたヌクレオチド」又は「編集されたヌクレオチド」は、その非修飾ヌクレオチド配列と比較したとき少なくとも1つの改変を含む目的のヌクレオチド配列を指す。かかる「改変」には、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせが含まれる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、語句「植物細胞」は、植物細胞壁を有する植物細胞又は植物細胞壁を欠く植物細胞プロトプラストのいずれも指し得る。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、2つ以上のヌクレオチド残基を含有する核酸分子である。ポリヌクレオチドは、概して、一本鎖又は二本鎖として記載される。ポリヌクレオチドが、分子内又は分子間ハイブリダイゼーションによって形成される二本鎖領域を含む場合、各二本鎖領域の長さは、好都合には、塩基対の数を単位として記載される。本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物の実施形態は、(i)2~25残基長の1つ以上のポリヌクレオチド、26残基長より長い1つ以上のポリヌクレオチド、又は両方の混合物を用いることができ、又はそれを含むことができる。ポリヌクレオチドは、一本鎖若しくは二本鎖RNA、一本鎖若しくは二本鎖DNA、二本鎖DNA/RNAハイブリッド、その化学的に修飾された類似体、又はこれらの混合物を含むことができる。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドには、リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの組み合わせ(例えば、リボヌクレオチドから主になるが、1つ以上の末端デオキシリボヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチド、又はデオキシリボヌクレオチドから主になるが、1つ以上の末端ジデオキシリボヌクレオチドを有する合成ポリヌクレオチド)が含まれてもよく、又はイノシン、チオウリジン、若しくはプソイドウリジンなど、非カノニカルなヌクレオチドが含まれてもよい。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドには、化学的に修飾されたヌクレオチドが含まれる(例えば、Verma and Eckstein(1998)Annu.Rev.Biochem.,67:99-134を参照のこと)。本明細書に提供されるポリヌクレオチドに使用することのできる化学的に修飾されたヌクレオチドは、(i)リン酸ジエステル骨格のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、又はメチルホスホネートインターヌクレオチド結合修飾;(ii)修飾塩基及び/又は修飾糖を含むヌクレオシド;及び/又は(iii)蛍光部分(例えば、フルオレセイン若しくはローダミン又は発色団標識の蛍光共鳴エネルギー転移対、即ちFRET対)又は他の標識(例えば、ビオチン又は同位体)を含む検出可能標識を含む。本明細書において提供又は使用されるポリヌクレオチドにはまた、米国特許第9,464,124号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示される修飾核酸、特に修飾RNAも含まれる。
【0033】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つの、一部の実施形態では2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する1つ以上の異種配列(即ち、AAV由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。かかるrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染した(又は好適なヘルパー機能を発現している)、且つAAV rep及びcap遺伝子産物(即ちAAV Rep及びCapタンパク質)を発現している宿主細胞に存在するとき、複製及び感染性ウイルス粒子へのパッケージングが可能である。rAAVベクターが大型ポリヌクレオチド(例えば、染色体、又はクローニング若しくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター)に取り込まれると、そのとき(men)rAAVベクターは「プロベクター」と称されてもよく、これは、AAVパッケージング機能及び好適なヘルパー機能の存在下で複製及びカプシド形成によって「レスキュー」され得るものである。rAAVベクターは、限定はされないが、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体化した形態、リポソーム内に封入された形態、及びウイルス粒子、特にAAV粒子にカプシド化された形態を含め、幾つもの形態のいずれであってもよい。rAAVベクターをAAVウイルスカプシドにパッケージングすると、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を作成することができる。
【0034】
「組換えアデノウイルスベクター」は、少なくとも1つのアデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する1つ以上の異種配列(即ち、アデノウイルス由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態において、この組換え核酸には、2つの逆方向末端反復配列(ITR)が隣接している。かかる組換えウイルスベクターは、組換えウイルスゲノムから欠失した必須アデノウイルス遺伝子(例えば、El遺伝子、E2遺伝子、E4遺伝子等)を発現している宿主細胞に存在するとき、複製及び感染性ウイルス粒子へのパッケージングが可能である。組換えウイルスベクターが大型ポリヌクレオチド(例えば、染色体、又はクローニング若しくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター)に取り込まれると、そのとき(men)組換えウイルスベクターは「プロベクター」と称されてもよく、これは、アデノウイルスパッケージング機能の存在下で複製及びカプシド形成によって「レスキュー」され得るものである。組換えウイルスベクターは、限定はされないが、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体化した形態、リポソーム内に封入された形態、及びウイルス粒子、例えばアデノウイルス粒子にカプシド化された形態を含め、幾つもの形態のいずれであってもよい。組換えウイルスベクターをアデノウイルスウイルスカプシドにパッケージングすると、「組換えアデノウイルス粒子」を作成することができる。
【0035】
「組換えレンチウイルスベクター」は、少なくとも1つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)が隣接する1つ以上の異種配列(即ち、レンチウイルス由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。一部の実施形態において、組換え核酸には、2つのレンチウイルス末端反復配列(LTR)が隣接している。かかる組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能に感染した宿主細胞に存在するとき、複製及び感染性ウイルス粒子へのパッケージングが可能である。組換えレンチウイルスベクターをレンチウイルスカプシドにパッケージングすると、「組換えレンチウイルス粒子」を作成することができる。
【0036】
「組換え単純ヘルペスベクター(組換えHSVベクター)」は、HSV末端反復配列が隣接する1つ以上の異種配列(即ち、HSV由来でない核酸配列)を含むポリヌクレオチドベクターを指す。かかる組換えウイルスベクターは、好適なヘルパー機能に感染した宿主細胞に存在するとき、複製及び感染性ウイルス粒子へのパッケージングが可能である。組換えウイルスベクターが大型ポリヌクレオチド(例えば、染色体、又はクローニング若しくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター)に取り込まれると、そのとき組換えウイルスベクターは「プロベクター」と称されてもよく、これは、HSVパッケージング機能の存在下で複製及びカプシド形成によって「レスキュー」され得るものである。組換えウイルスベクターは、限定はされないが、プラスミド、線状人工染色体、脂質と複合体化した形態、リポソーム内に封入された形態、及びウイルス粒子、例えばHSV粒子にカプシド化された形態を含め、幾つもの形態のいずれであってもよい。組換えウイルスベクターをHSVカプシドにパッケージングすると、「組換え単純ヘルペスウイルス粒子」を作成することができる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、語句「標的編集部位」は、ドナー核酸によって修飾されるDNA配列を指す。
【0038】
本明細書で使用されるとき、語句「標的遺伝子」は、本明細書に提供されるシステム、方法、組成物及び/又は真核細胞に提供される遺伝子編集分子によって修飾されることになるゲノム内に位置する遺伝子を指し得る。標的遺伝子の実施形態には、(タンパク質)コード配列、非コード配列、及びコード配列と非コード配列との組み合わせが含まれる。標的遺伝子の修飾には、転写エンハンサー又はプロモーター、5’又は3’非翻訳領域、成熟又は前駆RNAコード配列、イントロン、スプライスドナー及び/又はアクセプター、タンパク質コード配列、ポリアデニル化部位、及び/又は転写ターミネーターを含めた、遺伝子の1つ以上のエレメントにおけるヌクレオチド置換、挿入、及び/又は欠失が含まれる。特定の実施形態では、二倍体又は倍数体植物細胞における所与の標的遺伝子の全てのコピー又は全てのアレルが、植物細胞において修飾された標的遺伝子のホモ接合性をもたらすように修飾される。遺伝子編集によって標的遺伝子に導入される機能喪失型突然変異により所望の形質が付与される実施形態では、植物細胞、植物細胞集団、植物、又は種子は、その機能喪失型突然変異を有する修飾された標的遺伝子に関してホモ接合体である。他の実施形態では、所与の標的遺伝子のコピー又はアレルの一部のみが、植物細胞において修飾された標的遺伝子のヘテロ接合性をもたらすように修飾される。遺伝子編集によって標的遺伝子に導入される優性突然変異により所望の形質が付与される特定の実施形態では、植物細胞、植物細胞集団、植物、又は種子は、その優性突然変異を有する修飾された標的遺伝子に関してヘテロ接合体である。かかる修飾によって特定の植物標的遺伝子に与えられる形質としては、いずれも修飾を含まない対照植物と比較して向上した収量、昆虫、真菌、細菌性病原体、及び/又は線虫に対する抵抗性、除草剤耐性、非生物的ストレス耐性(例えば、耐干性、耐寒性、耐塩性、及び/又は耐暑性)、タンパク質の量及び/又は質、デンプンの量及び/又は質、脂質の量及び/又は質、二次代謝産物の量及び/又は質などが挙げられる。本明細書に提供されるシステム、方法、組成物及び/又は植物細胞に提供される遺伝子編集分子によって修飾されたゲノムを有する植物は、従来の育種(即ち、雄性親植物と雌性親植物との交雑)によって修飾されたゲノムを有する植物とは異なり、従来の育種では、典型的には、ゲノム領域の望ましくないランダムな交換並びにランダムな有糸分裂又は減数分裂でゲノムに生じる遺伝的及び後成的変化が交雑中に起こり、次にそれが子孫植物に見出される。従って、修飾されたゲノムを有する植物(又は植物細胞)の実施形態において、その修飾されたゲノムは、元の(修飾されていない)ゲノムと99.9%超同一である。実施形態において、修飾されたゲノムは、元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、ランダムな有糸分裂又は減数分裂で生じた遺伝的又は後成的変化を欠いている。実施形態において、修飾されたゲノムは、元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、ゲノムの0.01%未満に後成的変化の違いを含む。実施形態において、修飾されたゲノムは、(a)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、ゲノムの0.01%未満にDNAメチル化の違いを含み;又は(b)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、ゲノムの0.005%未満にDNAメチル化の違いを含み;又は(c)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、ゲノムの0.001%未満にDNAメチル化の違いを含む。実施形態において、目的の遺伝子は植物細胞の染色体に位置し、修飾されたゲノムは、(a)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、目的の遺伝子を含む染色体内に含まれるゲノムの一部分の0.01%未満にDNAメチル化の違いを含み、;又は(b)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、目的の遺伝子を含む染色体内に含まれるゲノムの一部分の0.005%未満にDNAメチル化の違いを含み;又は(c)元の(修飾されていない)ゲノムと比べて、目的の遺伝子を含む染色体内に含まれるゲノムの一部分の0.001%未満にDNAメチル化の違いを含む。実施形態において、修飾されたゲノムは、元の(修飾されていない)ゲノムと比較して、意図的でない変化を1回の複製当たり各塩基対につき1×10-8突然変異より多く有することはない。特定の実施形態において、修飾されたゲノムは、意図的でない変化を自然突然変異率で起こるであろうより多く有することはない。自然突然変異率は、実験的に決定することができ、又は文献に記載されているとおりである(Lynch,M.,2010;Clark et al.,2005)。
【0039】
「ベクター」は、本明細書で使用されるとき、インビトロ又はインビボのいずれにしろ、宿主細胞の中に送達されることになる核酸を含む組換えプラスミドを指す。
【0040】
上記の定義のいずれかが、参照により本明細書に援用される任意の特許若しくは非特許文献、本明細書に引用される任意の特許若しくは非特許文献、又は他の部分に見られる任意の特許若しくは非特許文献に提供される定義と矛盾する限りにおいて、本明細書には上記の定義が用いられるものとすることが理解される。
【0041】
II.方法及び組成物
A.相同組換え修復媒介性ゲノム修飾を増加させる方法
本明細書には、HDR促進剤(SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)とゲノム編集分子とを含む、且つ真核細胞遺伝子編集実験において対照実験と比較して相同性依存性修復(HDR)頻度の増加をもたらす様々な試薬、システム、方法、及び組成物が提供される。特定の実施形態において、対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、HDR促進剤(SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)のうちの少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、HDR頻度は少なくとも2倍、3倍、5倍、又は10倍に増加する。特定の実施形態において、対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、HDR促進剤(SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)のうちの少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、HDR頻度は少なくとも2倍、3倍、又は5倍~約12倍、15倍、20倍、25倍、又は30倍に増加する。一部の実施形態において、本方法は、有糸分裂又は減数分裂を起こしていない細胞に利用することができる。一部の実施形態において、本方法は、DNA複製を必要としない。
【0042】
i.核局在化シグナル(NLS)
本明細書に提供されるSSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又は遺伝子編集分子を指向させることができる核局在化シグナル(NLS)には、単節型及び双節型核局在化シグナルが含まれる(Kosugi et al.,2009)。使用し得る単節型NLSの例としては、SV40ラージT抗原NLS(PKKKRKV;配列番号11)などの少なくとも4個の連続する塩基性アミノ酸を含むNLS及びK(K/R)X(K/R)コンセンサス配列(配列番号12)を有する3個の塩基性アミノ酸のみを有する別のクラスが挙げられる。提供される本明細書において使用し得る双節型NLSの例としては、(K/R)(K/R)X10-12(K/R)3/5(配列番号13)(式中、(K/R)3/5は、5個の連続するアミノ酸のうち少なくとも3個がリジン又はアルギニンのいずれかであることを表す)が挙げられる。NLSはまた、LGKR(K/R)(W/F/Y)(配列番号14)のコンセンサス配列を有する植物特異的クラス5 NLSも含むことができる。使用し得る特異的NLSの例としては、更に、トウモロコシopaque-2核局在化シグナル(配列番号10、オクラ葉脈黄化モザイクウイルス(BYVMV) c2 NLS(配列番号15、及び伸長SV40ラージT抗原NLS(配列番号16)が挙げられる。
【0043】
一部の実施形態において、NLSは、哺乳類のもの(ヒトNLSなど)である。一部の実施形態において、NLSは、SV40 NLSである。一部の実施形態において、NLSは、アミノ酸リンカーを有するSV40 NLSである。一部の実施形態において、NLSは、アミノ酸配列MAPKKKRKVGGSGS(配列番号148)を有する。
【0044】
特定の実施形態において、NLSエレメント又は他の所望のエレメント(例えば、エピトープタグ)は、本明細書に提供されるSSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又は遺伝子編集分子に対し、エレメントとドメインとの直接的な共有結合を介するか、又はリンカーペプチド若しくは可動性ヒンジポリペプチドを使用するかのいずれかにより、作動可能に連結することができる。可動性ヒンジポリペプチドは、グリシンリッチ又はグリシン/セリン含有ペプチド配列を含む。かかる配列としては、限定はされないが、(Gly4)n配列、(Gly4Ser)n配列、Ser(Gly4Ser)n配列、これらの組み合わせ、及びそのバリアント(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に等しい正の整数である)を挙げることができる。特定の実施形態において、かかるグリシンリッチ又はグリシン/セリン含有ヒンジペプチドはまた、可動性のためのスレオニル及び/又はアラニル残基並びに極性リシル及び/又はグルタミル残基も含有し得る。使用し得るヒンジペプチドの他の例としては、免疫グロブリンヒンジペプチドが挙げられる(Vidarsson et al.,2014)。
【0045】
本明細書に提供されるSSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又は遺伝子編集分子には、種々の細胞透過性ペプチド(CPP)もまた使用することができる。使用し得るCPPとしては、最小ウンデカペプチドタンパク質形質導入ドメイン(HIV-1 TATの残基47~57に対応し、YGRKKRRQRRR;配列番号17を含む);細胞への侵入を導くのに十分な幾つものアルギニン(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10~50個のアルギニン)を含むポリアルギニン配列;VP22ドメイン(Zender et al.(2002)Cancer Gene Ther.9(6):489-96);ショウジョウバエ属(Drosophila)アンテナペディアタンパク質形質導入ドメイン(Noguchi et al.(2003)Diabetes 52(7):1732-1737);トランケート型ヒトカルシトニンペプチド(Trehin et al.(2004)Pharm.Research 21:1248-1256);ポリリジン(Wender et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13003-13008);RRQRRTSKLMKR(配列番号18);トランスポータン(例えば、GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL(配列番号19);KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号20);及びRQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号21)が挙げられる。例示的CPPアミノ酸配列としてはまた、YGRKKRRQRRR(配列番号22;RKKRRQRR(配列番号23);YARAAARQARA(配列番号24);THRLPRRRRRR(配列番号25);及びGGRRARRRRRR(配列番号26)も挙げられる。
【0046】
ii.一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)
特定の実施形態において、本明細書に提供される方法、システム、細胞、及び細胞培養組成物に使用される一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)は、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を促進し、又は触媒するタンパク質を含む。本明細書で使用されるSSAPの特徴としては、RecA依存性及び非依存性経路の刺激、インビトロでのオリゴマー環及び/又はフィラメント形成、ssDNA結合活性、及び相補ssDNA鎖アニーリングのATPアーゼ非依存性刺激が挙げられる。RecT/Redβ、ERF、又はRAD52タンパク質ファミリーのSSAPタンパク質の特徴については、Murphy,2016及びIyer et al.,2002に開示されている。特定の実施形態において、SSAPは、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含むRecT/Redβタンパク質ファミリーのメンバーである。特定のRecT/Redβタンパク質ファミリーの特徴としては、5つのβストランドと5つのαヘリックスとのコアを有するα+βドメイン、Mg+2依存性一本鎖アニーリング活性及び全てではないが、ほとんどのメンバーにおける2個のC末端酸性残基の保存が挙げられる(Iyer et al.,2002)。特定の実施形態において、RecT/Redβファミリータンパク質は、配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含み、及び任意選択で、5つのβストランドと5つのαヘリックスとのコアを有する保存されたα+βドメイン、Mg+2依存性一本鎖アニーリング活性、及び/又は2個のC末端酸性残基の保存を含む。特定の実施形態において、SSAPは、ERFファミリータンパク質である。EFRタンパク質ファミリーの特徴としては、GuXXoYhp+YXhXXhh(配列番号32)モチーフ[式中、Gはグリシンであり、Y-チロシンであり、uは「小さい」残基(グリシン、セリン、アラニン)であり、h-疎水性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン)であり、pは極性残基(リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、スレオニン、セリン)であり、oはアルコール含有アミノ酸残基(セリン又はスレオニン)であり、+は塩基性残基であり、及びXは任意の残基である]を含む約150アミノ酸残基の保存された領域が挙げられる(Iyer et al.,2002)。ERFファミリータンパク質には、バクテリオファージP22 ERFタンパク質又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質が含まれ、任意選択で、GuXXoYhp+YXhXXhh(配列番号32)モチーフを更に含むことができる。ERFファミリーのSSAPにはまた、ワールドワイドウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/proteinのNCBIデータベースにアクセッション(gi、即ち遺伝子識別名)番号9634188、9635694、16804357、12719409、458219、11497308、11497280、1497168、11527300、9634634、9635643、13491642、6015511、11138335、9627938、9628668、及び15088753として掲載されているタンパク質も含まれる。特定の実施形態において、本明細書で使用されるSSAPには、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)のRAD52ファミリータンパク質、並びにそれぞれ、配列番号5、6、及び7の全長にわたって少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するその変異体;又は配列番号5、6、又は7に1つ以上の保存的及び/又は半保存的アミノ酸置換を有する変異体が含まれる。RAD52タンパク質ファミリーの特徴としては、DNA結合活性を有する保存されたヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)モチーフが挙げられる(Iyer et al.,2002)。本明細書で使用されるSSAPには、国際公開第2017/184227号パンフレットとして公開された、PCT/US2017/016184号明細書の米国国内段階である米国特許出願第16/075,281号明細書(この内容は、全体として参照により本明細書に援用される)の少なくとも表1、表2、表3、表4、表5、及び表6に掲載される「リコンビナーゼ」として特定されるタンパク質が更に含まれ得る。特定の実施形態において、SSAPは、前述のSSAPのうちのいずれかのアレル変異体を含み得る。特定の実施形態において、前述のSSAPのいずれも、SSAPをコードする核酸(例えば、発現ベクター、mRNA、又はウイルス発現ベクター)を用いて細胞に提供することができる。特定の実施形態において、前述のSSAPのいずれも、タンパク質、融合タンパク質(例えば、細胞透過性ペプチド及び/又は核局在化配列との融合タンパク質)として、又はSSAPと他のタンパク質との間に挿入された(例えば、SSB及び/又はエキソヌクレアーゼとの組み合わせでの)プロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供することができる。
【0047】
iii.エキソヌクレアーゼ
特定の実施形態において、本明細書に提供される方法、システム、細胞、及び細胞培養組成物において使用されるエキソヌクレアーゼには、それぞれ、露出した3’末端又は露出した5’末端を有する少なくとも部分的に一本鎖のDNA(ssDNA)を含む産物を生じさせることができる5’→3’又は3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を二本鎖DNA(dsDNA)基質に及ぼすエキソヌクレアーゼが含まれる。特定の実施形態において、エキソヌクレアーゼは、5’リン酸基を有する平滑末端を含めた、平滑末端を有するdsDNA基質を認識することになる。特定の実施形態において、エキソヌクレアーゼは、ssDNAのオーバーハング(例えば、dsDNA基質中に付着末端型の切断をもたらすエンドヌクレアーゼによって作り出される末端を含めた、dsDNA分子の末端にある5’又は3’ssDNA領域)を有するdsDNA基質を認識することになる。特定の実施形態において、エキソヌクレアーゼは、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質(例えば、ニックの入ったdsDNA)を認識することになる。本明細書で使用し得る5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼには、バクテリオファージラムダエキソタンパク質(例えば、配列番号8)、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号9)、アルテミスタンパク質(例えば、配列番号136)、アポロタンパク質(例えば、配列番号137)、DNA2エキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号138)、Exo1エキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号139)、ヘルペスウイルスSOXタンパク質(例えば、配列番号140)、UL12エキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号141)、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIIIタンパク質(例えば、配列番号142)、T7ファージエキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号143)又は同等の5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、又は143と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質が含まれる。特定の実施形態において、本明細書に提供される5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼには、配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、又は143に少なくとも1つ又はそれ以上の保存的及び/又は半保存的アミノ酸置換を有する配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、又は143に示されるタンパク質が含まれる。本明細書で使用し得る3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼには、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIIIタンパク質(例えば、配列番号144)、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼタンパク質(例えば、配列番号145)、同等の3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号144又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質が含まれる。特定の実施形態において、本明細書に提供される3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼには、配列番号144又は145に少なくとも1つ又はそれ以上の保存的及び/又は半保存的アミノ酸置換を有する配列番号144又は145に示されるタンパク質が含まれる。特定の実施形態において、前述のエキソヌクレアーゼは、DEDD/DnaQエキソヌクレアーゼスーパーファミリーに特徴的な保存されたDEDD触媒残基を含むことになる(Bernad et al.,1989)。特定の実施形態において、前述のエキソヌクレアーゼのいずれも、タンパク質、融合タンパク質(例えば、細胞透過性ペプチド及び/又は核局在化配列との融合タンパク質)として、又はエキソヌクレアーゼと他のタンパク質との間に挿入された(例えば、SSB及び/又はSSAPとの組み合わせでの)プロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供することができる。特定の実施形態において、エキソヌクレアーゼは、前述のエキソヌクレアーゼのうちのいずれかのアレル変異体を含み得る。特定の実施形態において、前述のエキソヌクレアーゼのいずれも、エキソヌクレアーゼをコードする核酸(例えば、発現ベクター、mRNA、又はウイルス発現ベクター)を用いて細胞に提供することができる。一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼはニッカーゼである。
【0048】
iv.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)
本明細書に提供される方法、システム、細胞、及び細胞培養組成物には、様々な一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を使用することができる。特定の実施形態において、SSBには、細菌SSB又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBが含まれる。特定の実施形態において、SSBは、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)である。本明細書に提供されるSSBには、配列番号31、及び配列番号34~131、及び132に示されるもの、並びに配列番号31、配列番号34~131、又は132の全長にわたって少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するか;又は配列番号31、又は配列番号34~131、又は132に1つ以上の保存的及び/又は半保存的アミノ酸置換を有するその変異体が含まれる。本明細書で使用されるSSBには、本開示及び国際公開第2017/184227号パンフレットとして公開された、PCT/US2017/016184号明細書の米国国内段階である米国特許出願第16/075,281号明細書(この内容は、全体として参照により本明細書に援用される)の少なくとも表7及び表8に示されるSSBタンパク質が含まれ得る。特定の実施形態において、SSBは、前述のSSBのうちのいずれかのアレル変異体を含み得る。特定の実施形態において、前述のSSBのいずれも、SSBをコードする核酸(例えば、発現ベクター、mRNA、又はウイルス発現ベクター)を用いて細胞に提供することができる。特定の実施形態において、前述のSSBのいずれも、タンパク質、融合タンパク質(例えば、細胞透過性ペプチド及び/又は核局在化配列との融合タンパク質)として、又はSSBと他のタンパク質との間に挿入された(例えば、SSAP及び/又はエキソヌクレアーゼとの組み合わせでの)プロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供することができる。
【0049】
一部の実施形態において、本方法に使用されるSSB及びSSAPは、同じ生物由来であるか、又はファージ及びファージの細菌宿主由来である。
【0050】
一部の実施形態において、SSBは不要である。一部の実施形態において、SSAPは、複製タンパク質A(RPA)結合パートナーと融合される(Fanning et al.Nucleic acids research,34(15),4126-4137)。一部の実施形態において、SSBは内因性SSBである。一部の実施形態において、内因性SSBに結合するように修飾されたSSAPが提供される。
【0051】
一部の実施形態において、本明細書に提供される方法に使用される構成要素は、融合タンパク質として提供される。一部の実施形態において、SSAPはSSBと融合される。一部の実施形態において、SSAPは、複製タンパク質A(RPA)に融合される。
【0052】
v.植物、植物組織、及び植物細胞
特定の実施形態において、HDRは、単離された植物細胞又は植物プロトプラスト(即ち、解離されていない又はインタクトな植物組織、植物部分、又は全植物に位置しない)で増加する。特定の実施形態において、植物細胞は、任意の植物部分又は組織又はカルスから入手される。特定の実施形態において、培養物は、植物組織、培養植物組織外植片、全植物、インタクトな芽の節、茎頂又は茎頂分裂組織、根端又は根端分裂組織、側部分裂組織、介在分裂組織、実生、全種子、半分に割られた種子又は他の種子断片、接合胚、体細胞胚、未熟胚、胚珠、花粉、小胞子、葯、胚軸、子葉、葉、葉柄、茎、塊茎、根、カルス、又は植物細胞懸濁液から入手される植物細胞を含む。特定の実施形態において、植物細胞は、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、モロコシ、又はコメ)の未熟胚又は成熟胚のL1層又はL2層に由来する。
【0053】
特定の実施形態において、HDRは、解離されていない又はインタクトな植物組織、植物部分、植物外植片、又は全植物に位置する植物細胞で増加する。特定の実施形態において、植物細胞は、インタクトな芽の節、培養植物組織外植片、茎頂又は茎頂分裂組織、根端又は根端分裂組織、側部分裂組織、介在分裂組織、実生、全種子、半分に割られた種子又は他の種子断片、接合胚、体細胞胚、未熟胚、胚珠、花粉、小胞子、葯、胚軸、子葉、葉、葉柄、茎、塊茎、根、又はカルスに位置し得る。特定の実施形態において、使用される外植片には、未熟胚が含まれる。未熟胚(例えば、未熟トウモロコシ胚)には、1.8~2.2mm胚、1~7mm胚、及び3~7mm胚が含まれる。特定の実施形態において、前述の胚は、成熟穂由来の種子、葉脚、成熟植物の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟穂、及び絹糸から入手される。様々な態様において、形質転換に使用される植物由来の外植片には、未熟胚、1.8~2.2mm胚、1~7mm胚、及び3.5~7mm胚が含まれる。ある態様において、本開示の方法に使用される胚は、成熟穂由来の種子、葉脚、成熟植物の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟穂、又は絹糸に由来することができる。特定の実施形態において、植物細胞は、多能性植物細胞(例えば、幹細胞又は分裂組織細胞)である。特定の実施形態において、植物細胞は、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、モロコシ、又はコメ)の未熟胚又は成熟胚のL1層又はL2層内に位置する。特定の実施形態において、国際公開第2018085693号パンフレット(これは全体として参照により本明細書に援用される)に公開されている全植物、種子、胚、外植片、又は分裂組織のゲノムを編集する方法は、本明細書に提供される植物細胞及び関連するシステム、方法、組成物、又は培養物における使用に応用することができる。
【0054】
特定の実施形態において、植物細胞は、一倍体、二倍体、又は倍数体植物細胞又は植物プロトプラスト、例えば、一倍体、二倍体、又は倍数体植物、植物部分若しくは組織、又はカルスから入手されたものを含み得る。特定の実施形態において、培養下の植物細胞(又は再生植物、子孫種子、及び子孫植物)は、一倍体であるか、又は一倍体になるように誘導することができる;一倍体植物及び植物細胞の作製及び使用技法は当該技術分野において公知であり、例えば、Maruthachalam and Chanによって“How to make haploid Arabidopsis thaliana”、www[dot]openwetware[dot]org/images/d/d3/Haploid_Arabidopsis_protocol[dot]pdfで利用可能なプロトコルに記載されるとおりの、改変型のセントロメア特異的ヒストンCENH3を発現する一倍体誘導株と野生型株を交雑することによるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)における一倍体の作成方法を参照のこと;(Ravi et al.(2014)Nature Communications,5:5334,doi:10.1038/ncomms6334)。一倍体はまた、米国特許第9,215,849号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるとおり、多種多様な単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、モロコシ、オオムギ)又は双子葉植物(例えば、ダイズ、キャノーラを含めたアブラナ属種(Brassica sp.)、ワタ、トマト)において、突然変異型CENH3遺伝子を含む植物を野生型二倍体植物と交雑させて一倍体子孫を作成することによっても入手し得る。一倍体トウモロコシ植物及び/又は細胞を入手するのに使用することができる一倍体誘導トウモロコシ株には、Stock 6、MHI(Moldovian Haploid Inducer(モルドバ一倍体誘導体))、不確定配偶体(indeterminate gametophyte:ig)突然変異、KEMS、RWK、ZEM、ZMS、KMS、並びに米国特許第9,677,082号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるトランスジェニック一倍体誘導株が含まれる。一倍体細胞の例としては、限定はされないが、一倍体植物から入手された植物細胞及び生殖組織から入手された、例えば、花、発育中の花又は花芽、子房、胚珠、大胞子、葯、花粉、大配偶体、及び小胞子から入手された植物細胞が挙げられる。植物細胞又は植物プロトプラストが一倍体である特定の実施形態では、植物細胞又は植物プロトプラストにおいて遺伝的相補体を染色体倍加(例えば、減数分裂時の非減数による自然染色体倍加によるか、又はコルヒチン、オリザリン、トリフルラリン、プロナミド、亜酸化窒素ガス、抗微小管除草剤、抗微小管剤、及び有糸分裂阻害薬などの染色体倍加剤を用いることによる)によって倍加させると、倍加一倍体植物細胞又は植物プロトプラストを作製することができ、ここで遺伝子の相補体又はアレルはホモ接合性であり;更に他の実施形態は、倍加一倍体植物細胞又は植物プロトプラストからの倍加一倍体植物の再生を含む。別の実施形態は、この手法によって提供される倍加一倍体植物である少なくとも1つの親植物を有するハイブリッド植物に関する。倍加一倍体植物を作製すると、ホモ接合性植物を入手するのに数世代の自家交雑を必要とする代わりに、1世代でホモ接合性がもたらされる。倍加一倍体の使用は、最小限の時間で遺伝的純度(即ちホモ接合性)を確立することが所望される任意の状況で有利である。倍加一倍体の作製は、果実及び他の樹木など、成長が遅い植物において、又は少なくとも1つの倍加一倍体植物の子孫であるハイブリッド植物の作製に、特に有利であり得る。
【0055】
植物細胞においてHDRが増加する特定の実施形態、並びに本明細書に提供される関連する方法、システム、組成物、又は反応混合物には、任意の目的の単子葉又は双子葉植物種、例えば、条植え作物植物、果実産生植物及び樹木、野菜、樹木、及び装飾花を含む観賞植物、低木、樹木、地被植物、及び芝草から入手されるか、又はそこに位置する植物細胞が含まれ得る。特定の非限定的な実施形態において、植物細胞は、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、アーモンド類(プルヌス・デュルキス(Prunus dulcis))、リンゴ類(マルスxドメスティカ(Malus x domestica))、アンズ類(プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、P.ブリガンティネ(P.brigantine)、P.マンドシュリカ(P.mandshurica)、P.ムメ(P.mume)、P.シビリカ(P.sibirica))、アスパラガス類(アスパラグス・オフィキナリス(Asparagus officinalis))、バナナ類(バショウ属種(Musa spp.))、オオムギ類(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare))、マメ類(インゲンマメ属種(Phaseolus spp.))、ブルーベリー類及びクランベリー類(スノキ属種(Vaccinium spp.))、カカオ(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))、キャノーラ及びナタネ又はアブラナ(ブラシカ・ナプス(Brassica napus))、カーネーション(ダイアンサス・カリオフィルス(Dianthus caryophyllus))、ニンジン類(ダウクス・カロタ・サティブス(Daucus carota sativus))、キャッサバ(マニホット・エスクレンツム(Manihot esculentum))、サクランボ(プルヌス・アビウム(Prunus avium))、ヒヨコマメ(キケル・アリエティヌム(Cider arietinum))、チコリ(キコリウム・インティブス(Cichorium intybus))、チリペッパー類及び他のトウガラシ類(カプシクム・アンヌウム(Capsicum annuum)、C.フルテスセンス(C.frutescens)、C.キネンセ(C.chinense)、C.プベスセンス(C.pubescens)、C.バッカトゥム(C.baccatum))、キク類(キク属種(Chrysanthemum spp.))、ココナツ(ココス・ヌキフェラ(Cocos nucifera))、コーヒー(コフィア・アラビカ(Coffea arabica)及びコフィア・カネフォラ(Coffea canephora)を含むコーヒーノキ属種(Coffea spp.))、ワタ(ゴシピウム・ヒルストゥム(Gossypium hirsutum L.))、ササゲ(ビグナ・ウンギュイクラタ(Vigna unguiculata))、キュウリ(ククミス・サティブス(Cucumis sativus))、スグリ類及びグズベリー類(スグリ属種(Ribes spp.))、ナス(eggplant)又はナス(aubergine)(ソラヌム・メロンゲナ(Solanum melongena))、ユーカリ(ユーカリ属種(Eucalyptus spp.))、アマ(リナム・ウシタティッスムム(Linum usitatissumum L.))、ゼラニウム類(ペラルゴニウム属種(Pelargonium spp.))、グレープフルーツ(シトラスxパラディシ(Citrus x paradisi))、ワイン用ブドウ類(ビティス・ビニフェラ(Vitus vinifera))を含むブドウ類(ブドウ属種(Vitus spp.))、グアバ(プシディウム・グアヤバ(Psidium guajava))、アサ及び大麻(例えば、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)及びアサ属種(Cannabis spp.))、ホップ類(フムルス・ルプルス(Humulus lupulus))、アヤメ類(アヤメ属種(Iris spp.))、レモン(シトラス・リモン(Citrus limon))、レタス(ラクトゥカ・サティバ(Lactuca sativa))、ライム類(ミカン属種(Citrus spp.))、トウモロコシ(ゼア・マイス(Zea mays L.))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、マンゴスチン(ガルシニア・マンゴスタナ(Garcinia mangostana))、メロン(ククミス・メロ(Cucumis melo))、アワ類(エノコログサ属種(Setaria spp)、ヒエ属種(Echinochloa spp)、オヒシバ属種(Eleusine spp)、キビ属種(Panicum spp.)、チカラシバ属種(Pennisetum spp.))、オートムギ類(アベナ・サティバ(Avena sativa))、アブラヤシ(エレイス・グイネエンシス(Ellis quineensis))、オリーブ(オレア・エウロペア(Olea europaea))、タマネギ(アリウム・ケパ(Allium cepa))、オレンジ(シトラス・シネンシス(Citrus sinensis))、パパイヤ(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、モモ類及びネクタリン類(プルヌス・ペルシカ(Prunus persica))、セイヨウナシ(ナシ属種(Pyrus spp.))、エンドウ(ピスム・サティブム(Pisa sativum))、ピーナッツ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、シャクヤク(ボタン属種(Paeonia spp.))、ペチュニア類(ペチュニア属種(Petunia spp.))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、オオバコ類(バショウ属種(Musa spp.))、セイヨウスモモ(プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica))、ポインセチア(ユーフォルビア・プルケリマ(Euphorbia pulcherrima))、ポーランドアブラナ(Polish canola)(ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa))、ポプラ(ポプルス属種(Populus spp.))、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))、カボチャ(ククルビタ・ペポ(Cucurbita pepo))、コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa L.))、バラ(バラ属種(Rosa spp.))、ゴム(ヘベア・ブラシリエンシス(Hevea brasiliensis))、ライムギ(セカレ・ケレアレ(Secale cereale))、ベニバナ(カルタムス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius L))、ゴマ種子(セサムム・インディクム(Sesame indium))、モロコシ(ソルガム・ビコロル(Sorghum bicolor))、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max L.))、カボチャ(ククルビタ・ペポ(Cucurbita pepo))、イチゴ類(オランダイチゴ属種(Fragaria spp.)、フラガリアxアナナッサ(Fragaria x ananassa))、サトウダイコン(ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris))、サトウキビ類(サトウキビ属種(Saccharum spp.))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annus))、サツマイモ(イポメア・バタタス(Ipomoea batatas))、タンジェリン(シトラス・タンゲリナ(Citrus tangerina))、茶(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum L.))、トマト(リコペルシコン・エスクレントゥム(Lycopersicon esculentum))、チューリップ類(チューリップ属種(Tulipa spp.))、カブ(ブラッシカ・ラパ・ラパ(Brassica rapa rapa))、クルミ類(クルミ属種(Juglans spp.L.))、スイカ(キトルルス・ラナツス(Citrulus lanatus))、コムギ(トリティウム・エスティブム(Tritium aestivum))、又はヤムイモ類(ヤマノイモ属種(Discorea spp.))から入手されるか、又はそこに位置する。
【0056】
vi.真核細胞
特定の実施形態において、HDRが増加する真核細胞(例えば、植物細胞)は、(a)ポリマー(例えば、ペクチン、アガロース、又は他の多糖)又は他の支持体(固体若しくは半固体表面若しくはマトリックス、又は粒子若しくはナノ粒子)にカプセル化若しくは封入され、又は取り付けられる細胞;(b)小胞又はリポソーム又は他の液体区画にカプセル化若しくは封入され、又は取り付けられる細胞;又は(c)カプセル化されず、又は封入されず、又は取り付けられない細胞であり得る。特定の実施形態において、細胞は液体若しくは浮遊培養下にあってもよく、又は半固形若しくは固形培地内若しくはその上で、又は液体培地と固形若しくは半固形培地との組み合わせで培養されてもよい(例えば、液体培地を重層した固形培地上で培養される植物細胞又はプロトプラストか、或いは固形ビーズ又はマトリックスに取り付けられ、液体培地で成長する植物細胞又はプロトプラスト)。特定の実施形態において、ポリマー(例えば、ペクチン、アガロース、又は他の多糖)又は他のカプセル化材料にカプセル化されるか、小胞又はリポソームに封入されるか、混合相培地(エマルション又は逆エマルションなど)に懸濁されるか、又はマトリックス又は他の固体支持体(例えば、ビーズ又はマイクロビーズ、膜、又は固体表面)に包埋され又は取り付けられる細胞。
【0057】
関連する態様において、本開示は、スクリーニング目的に好都合か、又はハイスループット及び/又は多重形質転換又は遺伝子編集実験に好都合な細胞の構成体など、本明細書に記載されるシステム、方法、及び組成物におけるHDR頻度が向上した真核細胞(例えば、植物細胞)の構成体を提供する。ある実施形態において、本開示は、(a)HDR促進剤と;任意選択で(b)ゲノム編集分子とを含む複数の細胞の構成体を提供する。特定の実施形態において、細胞の構成体は、少なくとも1つの化学的、酵素的、又は物理的送達剤を更に含み得る。別の実施形態において、本開示は、HDR媒介性ゲノム修飾頻度が増加した少なくとも1つの細胞を各々が含む複数の容器を含むアレイを提供する。ある実施形態において、本開示は、HDR促進剤と、任意選択でゲノム編集分子とを有する細胞の構成体を提供し、ここで細胞は、例えばマルチウェルプレートにアレイ化されたフォーマットであるか、小胞、リポソーム、又は液滴にカプセル化又は封入されているか(有用な、(例えば、マイクロ流体デバイス内で)、又はマトリックスに、又は個別の粒子若しくはビーズに個別に取り付けられ;具体的な実施形態は、アレイ化されたフォーマットで提供されるHDR媒介性ゲノム修飾頻度が増加した複数の細胞のかかる構成体であって、アレイ上の少なくとも一部の位置が異なり得るか、又は更にはアレイ上の各位置が異なり得る少なくとも1つのゲノム編集分子(例えば、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、少なくとも1つのガイドRNA、又はRNA誘導型DNAヌクレアーゼと少なくとも1つのガイドRNAとの両方を含むリボ核タンパク質)、及び任意選択で少なくとも1つの化学的、酵素的、又は物理的送達剤を更に含む構成体である。
【0058】
本明細書に提供されるシステム及び方法において、真核細胞(例えば、植物細胞)は、1つ以上のHDR促進剤及び/又は1つ以上の遺伝子編集分子に任意の時間的順序で曝露することができる。特定の実施形態において、HDR促進剤と遺伝子編集分子とは、同時に提供される。他の実施形態において、ゲノム編集分子は、HDR促進剤が提供された後に提供される。他の実施形態において、遺伝子編集分子は、HDR促進剤が提供される前に提供される。つまり、HDR促進剤を真核細胞(例えば、植物細胞)に提供するのは、細胞を遺伝子編集分子に曝露する前、それと同時、又はその後のいずれであってもよい。
【0059】
本明細書には、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)及び/又は修飾されたDNAドナー鋳型によって付与される相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾頻度の増加を呈する真核細胞(例えば、植物細胞)が提供される。本開示によってはまた、本明細書に開示されるシステム及び方法によってもたらされる、HDR媒介性ゲノム修飾頻度の増加を呈する植物細胞又は植物プロトプラストに由来する、又はそれから成長した組成物も提供される;かかる組成物は、HDR媒介性ゲノム修飾頻度の増加を呈する植物細胞又は植物プロトプラストから成長した複数のプロトプラスト又は細胞、カルス、体細胞胚、体細胞分裂組織、胚形成カルス、又は再生植物を含む。HDR促進剤及び/又は修飾されたDNAドナー鋳型に供された細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾頻度の増加は、種々の技法によって評価することができる。特定の実施形態において、かかる技法は、HDR促進剤に供された細胞で観察されるHDR頻度と、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)及び/又は修飾されたDNAドナー鋳型に供されていない対照細胞のHDR頻度とを比較することができる。
【0060】
特定の実施形態において、本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物に使用される真核細胞(例えば、植物細胞)は、非分裂細胞を含み得る。かかる非分裂細胞には、植物細胞プロトプラスト、遺伝的及び/又は薬剤誘導性細胞周期阻害のうちの1つ以上に供された真核細胞などが含まれ得る。特定の実施形態において、非分裂細胞は、本明細書に提供されるHDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSB)及び/又は修飾されたDNAドナー鋳型を任意選択で含み得る遺伝子編集分子による処理の後、(例えば、遺伝的な又は薬剤による細胞周期阻害を反転させるか、又は取り除くことにより)分裂するように誘導することができる。
【0061】
特定の実施形態において、本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物に使用される真核細胞(例えば、植物細胞)は、分裂細胞を含み得る。分裂細胞には、葉、分裂組織、及び胚を含めた様々な植物組織に見られる細胞が含まれ得る。そうした組織としては、限定はされないが、トウモロコシ幼葉からの分裂細胞、分裂組織及び約8又は10~約12又は14日の受粉後日数(DAP)胚からの胚盤組織が挙げられる。トウモロコシ胚の単離については、幾つかの既発表文献に記載されている(Brettschneider,Becker,and Loerz 1997;Leduc et al.1996;Frame et al.2011;K.Wang and Frame 2009)。特定の実施形態において、根出葉組織(例えば、トウモロコシ植物の葉舌から約0~3cmに位置する葉組織;Kirienko,Luo,and Sylvester 2012)がHDR媒介性遺伝子編集の標的となる。再生可能な植物構造体を入手し、本明細書に提供される植物細胞のHDR媒介性遺伝子編集から植物を再生する方法は、米国特許出願公開第20170121722号明細書(これは、全体として、特にかかる開示に関して参照により本明細書に援用される)に開示される方法を応用することができる。特定の実施形態では、HDR媒介性遺伝子編集に供された単一の植物細胞が、単一の再生可能な植物構造体を生じることになる。特定の実施形態において、単一の再生可能な植物細胞構造体は、HDR媒介性遺伝子編集に供された外植片上、又はその中にある単一の細胞で形成されてもよい。
【0062】
vii.植物再生
一部の実施形態において、本明細書に提供される方法は、改良されたHDR媒介性遺伝子編集に供された植物細胞から、又はそのような植物細胞から入手された再生可能な植物構造体から、植物を成長又は再生させる追加のステップを含み得る。特定の実施形態において、植物は、本明細書に開示される方法及び組成物によって提供されるとおりの挿入されたトランス遺伝子、標的遺伝子編集、又はゲノム編集を更に含み得る。特定の実施形態では、植物細胞からカルスを作製し、かかるカルスから小植物及び植物を作製する。他の実施形態では、カルス段階を経ずに植物細胞から直接、全実生又は植物を成長させる。従って、追加的な関連態様は、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞又は植物プロトプラストから成長又は再生した全実生及び植物、並びにかかる植物の種子に関する。植物細胞又は植物プロトプラストが遺伝子修飾(例えば、RNA誘導型DNAヌクレアーゼを例えば用いることによるゲノム編集)に供される特定の実施形態では、成長又は再生した植物は、その遺伝子修飾に関連する表現型を示す。特定の実施形態において、成長又は再生した植物は、そのゲノムに、組み合わせになって少なくとも1つの目的の表現型をもたらす2つ以上の遺伝的又は後成的修飾を含む。特定の実施形態において、本方法によれば、その少なくとも一部が少なくとも1つの遺伝的又は後成的修飾を含む標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞の異種集団が提供される;関連する態様は、標的遺伝子又はゲノム編集を有する植物細胞の異種集団から選択される植物細胞又は植物プロトプラストから目的の表現型を有する植物を再生すること、又は標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞の集団から成長又は再生させた植物の異種集団から目的の表現型を有する植物を選択することのいずれかによって提供される、遺伝的又は後成的修飾に関連する目的の表現型を有する植物を含む。目的の表現型の例としては、除草剤抵抗性、非生物的ストレス耐性(例えば、極端な温度への耐性、耐干性、又は耐塩性)又は生物的ストレス耐性(例えば、線虫、細菌性、又は真菌性病原体に対する抵抗性)の向上、栄養又は水利用率の向上、脂質、炭水化物、又はタンパク質組成の修飾、風味又は外観の向上、保存特性(例えば、傷、褐変、又は軟化に対する抵抗性)の向上、収量増大、形態(例えば、花の構成又は色、草高、分枝、根構造)の改変が挙げられる。ある実施形態において、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞の異種集団(又はそれから成長又は再生した実生又は植物)は、目的の表現型の発現を可能にする条件に曝露される;例えば、除草剤抵抗性の選択は、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞の集団(又はそれから成長又は再生した実生又は植物)を、所定量の除草剤又はその他の成長を阻害する物質若しくは毒性のある物質に曝露することにより、処理を生き残る抵抗性の植物細胞(又は実生又は植物)の同定及び選択を実現することを含み得る。再生可能な植物構造体を入手し、植物細胞又は再生可能な植物構造体から植物を再生する方法には、既発表の手順を応用することができる(Roest and Gilissen,Acta Bot.Neerl.,1989,38(1),1-23;Bhaskaran and Smith,Crop Sci.30(6):1328-1337;Ikeuchi et al.,Development,2016,143:1442-1451)。再生可能な植物構造体を入手し、植物細胞又は再生可能な植物構造体から植物を再生する方法にはまた、米国特許出願公開第20170121722号明細書(これは、全体として、特にかかる開示に関して参照により本明細書に援用される)も応用することができる。また、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有するかかる植物の異種集団、アレイ、若しくはライブラリ、植物細胞若しくは植物プロトプラストから成長若しくは再生させたかかる植物の後続世代若しくは種子、植物の一部分(接穂又は台木として接木に使用される植物部分を含む)、又は植物若しくはその種子から作られる生産品(例えば、果実又は他の可食植物部分、精製後の穀粒又は種子、食用油、穀粉又はデンプン、タンパク質、及び他の加工生産品)も提供される。実施形態は、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有する植物細胞から成長又は再生させた植物を含み、ここでこの植物は、遺伝的又は後成的修飾を有しない細胞又は組織を含有し、例えば、接穂若しくは台木が遺伝的又は後成的修飾を含有する接木植物、又は全てではないが、一部の細胞又は組織が遺伝的若しくは後成的修飾を含有するキメラ植物である。一般に接木が有用な植物としては、多くの柑橘樹、リンゴ類、石果(例えば、モモ、アンズ、サクランボ、及びセイヨウスモモ)、アボカド類、トマト類、ナス、キュウリ、メロン類、スイカ類、及びブドウ類などの多くの果樹及び植物、並びにバラなどの様々な観賞植物が挙げられる。接木植物は、同じ又は異なる(概して近縁の)種間の接木であり得る。追加的な関連態様は、標的遺伝子編集又はゲノム編集を有し且つ少なくとも1つの遺伝的又は後成的修飾を有する植物細胞又は植物プロトプラストから成長又は再生させた第1の植物を第2の植物と交雑させることにより提供されるハイブリッド植物を含み、ここでこのハイブリッド植物は、遺伝的又は後成的修飾を含有し;また、ハイブリッド植物によって作られる種子も企図される。また、関連する態様として、ハイブリッド種子及びハイブリッド植物を含め、親又は祖先として再生植物を有する子孫種子及び子孫植物も想定される。本明細書に開示される植物細胞並びに派生植物及び種子は、消費者又は栽培者に有用な様々な目的に使用することができる。例えば、被覆作物又は観賞植物として成長させる植物など、インタクトな植物それ自体が望ましいこともある。他の実施形態では、抽出タンパク質、油、糖、及びデンプン、発酵製品、動物用飼料又はヒト用食品、木及び木製品、医薬品、及び様々な工業製品など、植物又はその種子から加工品が作られる。
【0063】
viii.真核細胞へのHDR促進剤の提供
HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、任意の好適な技術によって真核細胞(例えば、植物細胞又は植物プロトプラスト)に提供することができる。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB、又はSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドを細胞と直接接触させることにより提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、化学的、酵素的、又は物理的薬剤を使用してSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB、又はSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドを細胞内に輸送することにより提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、細菌の媒介により(例えば、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、シノリゾビウム属種(Sinorhizobium sp.)、メソリゾビウム属種(Mesorhizobium sp.)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)、アゾトバクター属種(Azobacter sp.)、フィロバクテリウム属種(Phyllobacterium sp.))、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドを植物細胞又は植物プロトプラストにトランスフェクトすることにより提供される;例えば、Broothaerts et al.(2005)Nature,433:629-633を参照のこと。ある実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードし且つ植物細胞のゲノムに安定に組み込まれるDNAが植物細胞又は植物プロトプラストにおいて転写されることによって提供されるか、又はSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするプラスミド又は発現ベクター(例えば、ウイルスベクター)の形態で植物細胞又は植物プロトプラストに提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドとして、例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするRNA(例えば、配列内リボソーム進入部位(IRES)を持つmRNA又はRNA)の形態で植物細胞又は植物プロトプラストに提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、コードされるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの間にプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むアミノ酸配列が挿入された、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBを任意の順番で含むポリタンパク質をコードするポリヌクレオチドとして植物細胞又は植物プロトプラストに提供される。かかるプロテアーゼ認識配列の例としては、内因性植物プロテアーゼによって切断され得る植物メタロチオネイン様タンパク質(PsMTa)のスペーサー領域(Unwin et al.,1998)、又は同様に細胞に提供される特異的プロテアーゼ(例えば、TVMV Niaプロテイナーゼ;Dasgupta,et al.,1998)の認識配列が挙げられる。かかる自己プロセシングタンパク質配列の例としては、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A配列(配列番号33;Halpin,C.,et al,1999)が挙げられる。ゲノム編集分子もまた、同様の技法によって植物細胞に導入することができる。
【0064】
ix.HDR促進剤の一過性発現
本明細書に提供される方法、システム、細胞、及び組成物の特定の実施形態においては、HDR促進剤及び/又はゲノム編集分子の一過性発現が用いられる。HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB又はゲノム編集分子の一過性発現は、種々の技法によって実現することができる。一部の実施形態において、HDR促進剤の発現は誘導性発現である。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子は、単離された分子として、無細胞合成法(例えば、インビトロ翻訳)の単離又は半精製された産物として、又は細胞ベースの合成法における(例えば、細菌又は他の細胞のライセート中などの)単離又は半精製された産物として、細胞、システム、方法、及び組成物に直接提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子)は、一過性発現が確実となる方法で(例えば、Gao et al.2016;又はLi et al.2009から応用される方法によって)細胞又は細胞核へと標的化される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子は、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子をコードするいかなるポリヌクレオチドも存在することのないSSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子の送達によって細胞内に送達される。いかなるコードポリヌクレオチドも存在することなく送達できる外因性薬剤の例としては、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB配列特異的エンドヌクレアーゼ、及びRNAガイドが挙げられる。RNA誘導型DNA結合ポリペプチド/RNAガイドは、別々に、及び/又はRNP複合体として送達することができる。特定の実施形態では、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質を異種システムで作製し、精製して、パーティクルボンバードメントによって(例えば、Martin-Ortigosa and Wang 2014から応用される方法によって)植物細胞に送達することができる。いかなるコードポリヌクレオチドも存在することなくSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBが送達される実施形態において、送達剤は、一過性発現を生じさせるために導入された任意のコードポリヌクレオチドからの進行中の発現がなければ、時間とともに分解するものと予想される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドの送達によって細胞内に送達される。特定の実施形態では、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBを細菌プラスミドにコードし、パーティクルボンバードメントによって(例えば、Hamada et al.2018;又はKirienko,Luo,and Sylvester 2012から応用される方法によって)植物組織に送達することができる。特定の実施形態では、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをT-DNAにコードし、アグロバクテリウムを用いて(例えば、Leonelli et al.2016;又はWu et al.2014から応用される方法によって)植物細胞に一過性に移入させることができる。特定の実施形態では、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをウイルスゲノムにコードし、(例えば、Honig et al.2015から応用される方法によって)植物に送達することができる。特定の実施形態では、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをIRES含有mRNA又はRNAにコードし、標的細胞に送達することができる。SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBがRNA誘導型DNA結合ポリペプチド及びRNAガイドを含む特定の実施形態において、ポリペプチド又はガイドは、(i)ポリペプチド又はガイドのいずれかのコードポリヌクレオチドと;(ii)コードポリヌクレオチドの非存在下でのポリペプチド又はガイドのいずれかそれ自体との組み合わせによって送達することができる。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、HDR促進剤をコードするポリヌクレオチドの送達によって植物細胞内に送達される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドは、植物細胞ゲノムに組み込まれず(例えば、組込みをもたらす配列を欠くポリヌクレオチドとしてか、組込み欠損T-DNAベクター又はシステムへのアグロインフィルトレーションによるか、又はウイルスベクターにおいて)、自己複製をもたらすポリヌクレオチドに作動可能に連結されておらず、及び/又は自己複製をもたらす因子(例えば、ウイルス複製タンパク質)のみが提供される。本明細書に提供されるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの一過性発現には、バイオリスティック法などによるポリヌクレオチド送達、アグロインフィルトレーション、及びCanto,2016によって開示されるウイルスベクターの使用などを含め、好適な一過性発現技法を応用することができる。非組込み型のポリヌクレオチドによってコードされる薬剤の一過性発現は、ポリヌクレオチドの切り出し及び/又は薬剤の調節された発現によって達成される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチドは、真核細胞ゲノム(例えば、植物核又はプラスチドゲノム)に組み込まれ、薬剤の一過性発現は、ポリヌクレオチドの切り出し及び/又はSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの調節された発現によって達成される。薬剤をコードするポリヌクレオチドの切り出しは、部位特異的組換えシステム(例えば、Cre-Lox、FLP-FRT)の使用により提供され得る。薬剤の調節された発現は、(i)発生調節性の、抑制解除可能な、及び/又は誘導可能なプロモーターへの、薬剤をコードするポリヌクレオチドの作動可能な連結;及び/又は(ii)薬剤のsiRNA媒介性阻害を誘導することができるポリヌクレオチド(例えば、dsRNA又はmiRNA)の導入を含む方法によって達成することができる。好適な部位特異的組換えシステム並びに発生調節性の、抑制解除可能な、及び/又は誘導可能なプロモーターとしては、米国特許出願公開第20170121722号明細書(これは、全体として、特にかかる開示に関して、参照により本明細書に援用される)に開示されるものが挙げられる。
【0065】
SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、及び/又はゲノム編集分子の一過性発現を達成するために使用することのできるポリヌクレオチド(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、配列特異的エンドヌクレアーゼ、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ、及び/又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチド)には、(a)二本鎖RNA;(b)一本鎖RNA;(c)化学的に修飾されたRNA;(d)二本鎖DNA;(e)一本鎖DNA;(f)化学的に修飾されたDNA;又は(g)(a)~(f)の組み合わせが含まれる。ポリヌクレオチドの特定の実施形態は、有用な機能を提供する追加的なヌクレオチド配列を更に含む;かかる追加的なヌクレオチド配列の非限定的な例としては、アプタマー又はリボスイッチ配列、ステム-ループなどの二次構造を提供するか、又は酵素に対する配列特異的部位(例えば、配列特異的リコンビナーゼ又はエンドヌクレアーゼ部位)を提供するヌクレオチド配列、T-DNA(例えば、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium spp.)由来又は植物で感染する若しくは腫瘍を誘導する他の細菌由来の左右のT-DNA境界間に、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするDNA配列が囲まれる)、DNA核ターゲティング配列、プロモーター配列などの調節配列、及び転写物安定化又は不安定化配列が挙げられる。ポリヌクレオチドの特定の実施形態には、非核酸エレメント、例えば、担体分子、抗体、抗原、ウイルス移動タンパク質、細胞透過性若しくは膜孔形成性ペプチド、ポリマー、検出可能標識、量子ドット、又は粒子若しくはナノ粒子とポリヌクレオチドが複合体化しているか、又は共有結合的若しくは非共有結合的に結合しているものが含まれる。一部の実施形態において、本明細書に提供される構成要素のうちの1つ以上は、誘導性プロモーターの誘導によって一過性に発現する。
【0066】
x.HDR促進剤の送達
遺伝子編集分子及び/又はHDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBを真核細胞(例えば、植物細胞)に送達するには、様々な処理が有用である。特定の実施形態では、HDR促進剤(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド又はこれらの組み合わせを含む)が、例えば、細胞壁、細胞膜、核膜、及び/又は他の脂質二重層などのバリアを通り抜けて真核細胞又は植物細胞内へと送達されるように、1つ以上の処理が利用される。特定の実施形態では、1つ又は複数の薬剤を含むポリヌクレオチド含有、ポリペプチド含有、又はRNP含有組成物が、例えば組成物を真核細胞と直接接触させることによって直接送達される。前述の組成物は、液体、溶液、懸濁液、エマルション、逆エマルション、コロイド、分散液、ゲル、リポソーム、ミセル、注射用材料、エアロゾル、固体、粉末、粒子、ナノ粒子、又はこれらの組み合わせの形態で提供されてもよく、真核細胞、真核生物組織、真核生物器官、真核生物、植物、植物部分、植物細胞、又は植物外植片に(例えば、細胞壁又は細胞膜の擦過又は穿刺又は他の方法による破壊を用いて、噴霧又は浸漬若しくは液浸又は他の方法で直接接触させることにより、マイクロインジェクションにより)直接適用することができる。例えば、植物細胞又は植物プロトプラストは、液体SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB含有組成物に液浸され、それによって薬剤が植物細胞に送達される。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、負圧又は正圧を用いて、例えば、減圧浸潤又は流体力学的圧力若しくは流体圧力の印加を用いて送達される。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、例えば、マイクロインジェクションによるか、又は細胞壁若しくは細胞膜の破壊若しくは変形により、例えば、負圧若しくは正圧、剪断力を加えることによるなどの物理的処理によるか、又は界面活性剤、リポソーム、若しくはナノ粒子などの化学的若しくは物理的送達剤での処理により、植物細胞又は植物プロトプラスト内に導入される;例えば、米国特許出願公開第2014/0287509号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるとおりの、細胞変形収縮を通じたマイクロ流体フローを利用した細胞への材料の送達を参照のこと。真核細胞、植物細胞又は植物プロトプラストへの薬剤含有組成物の送達に有用な他の技法としては、超音波又は音波処理;振動、摩擦、ずり応力、ボルテックス、キャビテーション;遠心又は機械的な力を加えること;機械的細胞壁又は細胞膜変形又は破壊;酵素的細胞壁又は細胞膜破壊又は透過処理;擦過又は機械的表面剥離(例えば、カーボランダム若しくは他の研磨粒子による擦過又はやすり若しくはサンドペーパーによる表面剥離)又は化学的表面剥離(例えば、酸又は腐食剤による処理);及び電気穿孔が挙げられる。特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、細菌の媒介により(例えば、アグロバクテリウム属種(Agrobacterium sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、シノリゾビウム属種(Sinorhizobium sp.)、メソリゾビウム属種(Mesorhizobium sp.)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)、アゾトバクター属種(Azobacter sp.)、フィロバクテリウム属種(Phyllobacterium sp.))、薬剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はガイドRNA)をコードするポリヌクレオチドを植物細胞又は植物プロトプラストにトランスフェクトすることによって提供される;例えば、Broothaerts et al.(2005)Nature,433:629-633を参照のこと。こうした技法のいずれか又はこれらの組み合わせが、或いは、任意選択で続いて植物細胞が入手又は単離される元となる植物外植片、植物部分若しくは組織又はインタクトな植物(又は種子)に利用される;特定の実施形態において、薬剤含有組成物は、植物細胞が単離された後に別個のステップで送達される。特定の実施形態において、前述の方法はまた、真核細胞(例えば、植物細胞)へのゲノム編集分子の導入にも使用することができる。
【0067】
実施形態において、HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBを真核細胞(例えば、植物細胞)に送達するのに利用される処理は、特別な熱的レジームの下で行われ、これには、1つ以上の適切な温度、例えば、冷却若しくは寒冷ストレス(正常な植物成長が起こる温度を下回る温度への曝露)、又は加熱若しくは温熱ストレス(正常な植物成長が起こる温度を上回る温度への曝露)、又は種々の温度の組み合わせでの処理が関わり得る。特定の実施形態において、特別な熱的レジームは、植物細胞、又は続いて植物細胞若しくは植物プロトプラストが入手若しくは単離される元となる植物、植物外植片、若しくは植物部分に対して、薬剤の送達とは別の1つ以上のステップで行われる。特定の実施形態において、前述の方法はまた、真核細胞へのゲノム編集分子の導入にも使用することができる。
【0068】
本明細書に提供される植物部分、システム、方法、及び組成物の特定の実施形態において、全植物又は植物部分若しくは種子、又は単離された植物細胞、植物外植片、植物細胞若しくは植物プロトプラストが入手若しくは単離される元となる植物若しくは植物部分は、少なくとも1つの化学的、酵素的、又は物理的薬剤、又はこれらの組み合わせを含み得る1つ以上の送達剤で処理される。特定の実施形態において、HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、送達のための1つ又は2つ以上の化学的、酵素的、又は物理的薬剤を更に含む。化学的、酵素的又は物理的薬剤による処理は、薬剤の送達と同時に行われてもよく、又は薬剤の送達に先行する、若しくはその後に続く1つ以上の別個のステップで行われてもよい。特定の実施形態において、化学的、酵素的、又は物理的薬剤、又はこれらの組み合わせは、ポリヌクレオチド組成物と会合又は複合体化され、ドナー鋳型ポリヌクレオチドと会合又は複合体化され、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBと会合又は複合体化される;かかる会合又は複合体化の例としては、非共有結合性相互作用(例えば、イオン又は静電相互作用、疎水性又は親水性相互作用、リポソーム、ミセル、又は他の異種組成物の形成)及び共有結合性相互作用(例えば、ペプチド結合、架橋剤を用いて形成される結合)が関わるものが挙げられる。非限定的な例において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、カチオン性脂質とのリポソーム複合体として提供される;SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、カーボンナノチューブとの複合体として提供される;及び/又はSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、薬剤と細胞透過性ペプチドとの融合タンパク質として提供される。SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの送達に有用な薬剤の例としては、Zhang et al.(2007)J.Controlled Release,123:1-10によってレビューされる様々なカチオン性リポソーム及びポリマーナノ粒子、並びに米国特許出願公開第2014/0356414 A1号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載される架橋多重膜リポソームが挙げられる。前述の任意の実施形態において、前述の方法がまた、真核細胞(例えば、植物細胞)へのゲノム編集分子の導入にも用いられ得ることが更に企図される。
【0069】
特定の実施形態において、HDR頻度を増加させることができるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質又はそれをコードするポリヌクレオチドの送達に使用される化学的薬剤は、以下を含み得る:
(a)溶媒(例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N-ピロリジン、ピリジン、ヘキサメチルホスホラミド、アルコール類、アルカン類、アルケン類、ジオキサン類、ポリエチレングリコール、及び水に対して混和性若しくは乳化性の、又はホスホヌクレオチドを非水溶液系に溶解させることになる他の溶媒);
(b)フルオロカーボン類(例えば、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロメチルデカリン);
(c)グリコール類又はポリオール類(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール);
(d)カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両親媒性界面活性剤などの界面活性剤、例えば、アルキル又はアリール硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、又はカルボン酸塩;第一級、第二級、又は第三級アミン類;第四級アンモニウム塩;スルタイン類、ベタイン類;カチオン性脂質;リン脂質;牛脂アミン;コール酸などの胆汁酸;長鎖アルコール類;トリシロキサンエトキシレート界面活性剤などの非イオン性オルガノシリコーン界面活性剤又はポリアルキレンオキシド修飾ヘプタメチルトリシロキサンとアリルオキシポリプロピレングリコールメチルエーテルとの共重合体(CAS番号27306-78-1及びEPA番号CAL.REG.NO.5905-50073-AAのSILWET L-77(商標)ブランドの界面活性剤として市販されている、Momentive Performance Materials,Inc.、Albany,N.Y.)などのシリコーンポリエーテル共重合体を含めた、オルガノシリコーン界面活性剤;有用な界面活性剤の具体的な例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、Tweenシリーズの界面活性剤、Triton-X100、Triton-X114、CHAPS及びCHAPSO、TergitolタイプのNP-40、Nonidet P-40が挙げられる;
(e)脂質、リポタンパク質、リポ多糖;
(f)酸、塩基、腐食剤;
(g)ペプチド、タンパク質、又は酵素(例えば、セルラーゼ、ペクトリアーゼ、マセロエンザイム(maceroenzyme)、ペクチナーゼ)、例えば、細胞透過性又は膜孔形成性ペプチド(例えば、(BO100)2K8、Genscript;ポリリジン、ポリアルギニン、又はポリホモアルギニンペプチド;γゼイン、米国特許出願公開第2011/0247100号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと;ヒト免疫不全ウイルス1型の転写活性化因子(「HIV-1 Tat」)及び他のTatタンパク質、例えば、www[dot]lifetein[dot]com/Cell_Penetrating_Peptides[dot]html及びJaerver(2012)Mol.Therapy-Nucleic Acids,1:e27,1-17を参照のこと);オクタアルギニン又はノナアルギニン;ポリホモアルギニン(Unnamalai et al.(2004)FEBS Letters,566:307-310を参照のこと)を含めたもの;また、crdd[dot]osdd[dot]net/raghava/cppsite/で公開されている細胞透過性ペプチドのデータベースCPPsite 2.0も参照のこと
(h)RNアーゼ阻害薬;
(i)カチオン性分岐又は線状ポリマー、例えば、キトサン、ポリリジン、DEAE-デキストラン、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、又はポリエチレンイミン(「PEI」、例えば、PEI、分岐、MW25,000、CAS番号9002-98-6;PEI、線状、MW5000、CAS番号9002-98-6;PEI線状、MW2500、CAS番号9002-98-6)など;
(j)デンドリマー(例えば、米国特許出願公開第2011/0093982号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと);
(k)対イオン、アミン又はポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン、プトレシン)、オスモライト、緩衝液、及び塩(例えば、リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム);
(l)ポリヌクレオチド(例えば、非特異的二本鎖DNA、サケ精子DNA);
(m)トランスフェクション剤(例えば、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、及びOligofectamine(登録商標)、及びInvivofectamine(登録商標)(供給元は全て、Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA)、PepFect(Ezzat et al.(2011)Nucleic Acids Res.,39:5284-5298を参照のこと)、TransIt(登録商標)トランスフェクション試薬(Mirus Bio,LLC、Madison,WI)、及びLu et al.(2010)J.Agric.Food Chem.,58:2288-2294に記載されるとおりの、ポリリジン、ポリホモアルギニン、並びにオクトアルギニン及びノノアルギニン(nono-arginine)を含めたポリアルギニン分子);
(n)抗生物質、例えば、非特異的DNA二本鎖切断誘導剤(例えば、フレオマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン)を含めたもの;及び/又は
(o)抗酸化剤(例えば、グルタチオン、ジチオスレイトール、アスコルビン酸)。
【0070】
前述の任意の実施形態において、更に、前述の化学的薬剤はまた、真核細胞(例えば、植物細胞)へのゲノム編集分子の導入にも使用できることが企図される。
【0071】
特定の実施形態において、化学的薬剤は、HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBと同時に提供される。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、1つ以上の化学的薬剤に共有結合的又は非共有結合的に連結され、又はそれと複合体化される;例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、SSB及び/又は配列特異的エンドヌクレアーゼは、ペプチド又はタンパク質(例えば、細胞透過性ペプチド又は膜孔形成性ペプチド)に共有結合的に連結されてもよく、又はカチオン性脂質、ポリカチオン(例えば、ポリアミン)、又はカチオン性ポリマー(例えば、PEI)と非共有結合的に複合体化されてもよい。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBは、1つ以上の化学的薬剤と複合体化して、例えば、溶液、リポソーム、ミセル、エマルション、逆エマルション、懸濁液、コロイド、又はゲルを形成する。前述の任意の実施形態において、更に、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含むゲノム編集分子もまた、上記に記載するとおり送達できることが企図される。
【0072】
特定の実施形態において、HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBを送達するための物理的薬剤は、様々なサイズ範囲及び形状の粒子又はナノ粒子(例えば、炭素、ケイ素、炭化ケイ素、金、タングステン、ポリマー、又はセラミックなどの材料でできている粒子又はナノ粒子)、磁性粒子又はナノ粒子(例えば、silenceMag Magnetotransfection(商標)薬剤、OZ Biosciences、San Diego,CA)、研磨剤又は表面剥離剤、ニードル又はマイクロニードル、マトリックス、及びグリッドからなる群から選択される少なくとも1つである。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの送達には、粒子及びナノ粒子が有用である。有用な粒子及びナノ粒子としては、金属(例えば、金、銀、タングステン、鉄、セリウム)、セラミック(例えば、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化タングステン)、ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリジアセチレン、及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)水和物)、半導体(例えば、量子ドット)、ケイ素(例えば、炭化ケイ素)、炭素(例えば、グラファイト、グラフェン、グラフェンオキシド、又はカーボンナノシート、ナノ複合体、又はナノチューブ)、及びコンポジット(例えば、ポリビニルカルバゾール/グラフェン、ポリスチレン/グラフェン、白金/グラフェン、パラジウム/グラフェンナノコンポジット)でできているものが挙げられる。特定の実施形態において、かかる粒子及びナノ粒子は、更に共有結合的又は非共有結合的に官能化されるか、又は修飾物質若しくは架橋された材料、例えば、ポリマー(例えば、線状又は分岐ポリエチレンイミン、ポリリジン)、ポリヌクレオチド(例えば、DNA又はRNA)、多糖、脂質、ポリグリコール(例えば、ポリエチレングリコール、チオール化ポリエチレングリコール)、ポリペプチド若しくはタンパク質、及び検出可能標識(例えば、フルオロフォア、抗原、抗体、又は量子ドット)を更に含む。様々な実施形態において、かかる粒子及びナノ粒子は、中性であるか、又は正電荷を帯びているか、又は負電荷を帯びている。粒子を含む組成物の実施形態には、例えば、液体、コロイド、分散液、懸濁液、エアロゾル、ゲル、及び固体として製剤化されるものが含まれる。実施形態には、表面又は支持体に取り付けられたナノ粒子、例えば、ケイ素又は銅ウエハ基板上に垂直に整列したカーボンナノチューブのアレイが含まれる。実施形態には、バイオリスティックタイプの技法によるか、又は磁力で送達された粒子(例えば、金若しくはタングステン又は磁性粒子)を含むポリヌクレオチド組成物が含まれる。バイオリスティック法に使用される粒子のサイズは、概して、「マイクロパーティクル」範囲で、例えば、0.6、1.0、及び1.6マイクロメートルサイズ範囲の金マイクロキャリアであり(例えば、Helios(登録商標)遺伝子銃システム、Randolph-Anderson et al.(2015)“Sub-micron gold particles are superior to larger particles for efficient Biolistic(登録商標) transformation of organelles and some cell types”,Bio-Rad US/EG Bulletin 2015の取扱説明書を参照のこと)、しかし、より大きい(40ナノメートル)ナノ粒子を使用したバイオリスティック送達の成功が、培養動物細胞で報告されている;O’Brian and Lummis(2011)BMC Biotechnol.,11:66-71を参照のこと。有用な粒子の他の実施形態はナノ粒子であり、これは、概してナノメートル(nm)サイズ範囲又は1マイクロメートル未満であり、例えば、直径が約1nm未満、約3nm未満、約5nm未満、約10nm未満、約20nm未満、約40nm未満、約60nm未満、約80nm未満、及び約100nm未満である。市販のナノ粒子の具体的な非限定的実施形態(供給元は全て、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis,MO)としては、直径が5、10、又は15nmの金ナノ粒子;粒径が10、20、40、60、又は100nmの銀ナノ粒子;25nm未満の粒径のパラジウム「ナノ粉末」;例えば、直径が0.7~1.1、1.3~2.3、0.7~0.9、又は0.7~1.3nm、又はナノチューブ束寸法が2~10nm×1~5マイクロメートル、6~9nm×5マイクロメートル、7~15nm×0.5~10マイクロメートル、7~12nm×0.5~10マイクロメートル、110~170nm×5~9マイクロメートル、6~13nm×2.5~20マイクロメートルの単層、二層、及び多層カーボンナノチューブが挙げられる。特定の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの送達用の物理的薬剤は、金、ケイ素、セリウム、又は炭素などの材料、例えば、金又は金被覆ナノ粒子、炭化ケイ素ウィスカー、カーボランダム、多孔質シリカナノ粒子、ゼラチン/シリカナノ粒子、ナノセリア又は酸化セリウムナノ粒子(CNP)、単層、二層、又は多層カーボンナノチューブ及びその化学的に官能化されたバージョン(例えば、アミド、アミノ、カルボン酸、スルホン酸、又はポリエチレングリコール部分で官能化されたカーボンナノチューブ)などのカーボンナノチューブ(CNT)、及びグラフェン又はグラフェンオキシド又はグラフェン複合体を含み得る。SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの送達に応用することができるかかる物理的薬剤としては、Wong et al.(2016)Nano Lett.,16:1161-1172;Giraldo et al.(2014)Nature Materials,13:400-409;Shen et al.(2012)Theranostics,2:283-294;Kim et al.(2011)Bioconjugate Chem.,22:2558-2567;Wang et al.(2010)J.Am.Chem.Soc.Comm.,132:9274-9276;Zhao et al.(2016)Nanoscale Res.Lett.,11:195-203;及びChoi et al.(2016)J.Controlled Release,235:222-235に開示されるものが挙げられる。また、例えば、米国特許出願公開第2010/0311168号明細書、同第2012/0023619号明細書、同第2012/0244569号明細書、同第2013/0145488号明細書、同第2013/0185823号明細書、同第2014/0096284号明細書、同第2015/0040268号明細書、同第2015/0047074号明細書、及び同第2015/0208663号明細書(これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される各種の粒子及びナノ粒子、その調製、並びに例えば細胞へのポリヌクレオチド及びポリペプチドの送達におけるその使用方法も参照のこと。前述の任意の実施形態において、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含むゲノム編集分子もまた、上記に記載するとおり送達できることが更に企図される。
【0073】
一部の実施形態において、「提供される」は、本明細書で使用されるとき、細胞の核において構成要素を一つにまとめ合わせることを含む。一部の実施形態において、1つ以上の構成要素を提供することは、ポリペプチドの送達の形態で提供することである。一部の実施形態において、1つ以上の構成要素の送達は、ポリヌクレオチドと複合体化したポリペプチドの形態である。一部の実施形態において、1つ以上の構成要素の送達は、リボ核タンパク質(RNP)の形態である。一部の実施形態において、Cas及びガイドRNAは、リボ核タンパク質として送達される。一部の実施形態において、RNPは、リポフェクション又は電気穿孔を用いて細胞に送達される。一部の実施形態において、ポリペプチド又はRNPは、バイオリスティック法で細胞に送達される。一部の実施形態において、ポリペプチド又はRNPは、PEG媒介性トランスフェクションで細胞に送達される。一部の実施形態において、構成要素は、性的交雑によって送達される。
【0074】
一部の実施形態において、構成要素は、RNAとして、又はDNAとして提供される。例えば一部の実施形態において、1つ以上の構成要素は、mRNAとして提供される。一部の実施形態において、mRNAは、構成要素の1つであるタンパク質をコードする。一部の実施形態において、mRNAは、細胞において翻訳されて、1つ以上の構成要素を産生する。
【0075】
一部の実施形態において、1つ以上の構成要素は、染色体に組み込まれた核酸として提供される。
【0076】
一部の実施形態において、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、i)~v)のうちの1つ以上を含む前駆細胞によって提供される。一部の実施形態において、前駆細胞は、本明細書に記載される細胞のいずれか1つ、例えば、植物細胞、動物細胞、真菌細胞、又は他の真核細胞である。一部の実施形態において、前駆細胞は、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBタンパク質のうちの少なくとも1つを含まない。一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBタンパク質のうちの前駆細胞に含まれない少なくとも1つは、続いて前駆細胞へのポリペプチド、DNA、又はmRNAの送達及び/又は前駆細胞の性的交雑によって提供される。一部の実施形態において、構成要素は、以下の表Aに示されるとおり提供される。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
xi.遺伝子編集分子
遺伝子編集分子がgRNA(又はgRNAをコードするポリヌクレオチド)を含み、それが、ヌクレアーゼ活性欠損のRNA誘導型DNA結合ポリペプチド(又はそれをコードするポリヌクレオチド)を更に含む組成物中に提供される特定の実施形態において、同様に1つ以上の1つの化学的、酵素的、又は物理的薬剤を利用することができる。特定の実施形態において、RNAガイドとヌクレアーゼ活性欠損RNA誘導型DNA結合ポリペプチド(ndRGDBP)又はそれをコードするポリヌクレオチド)とは、別個に提供され、例えば、別個の組成物で提供される。かかる組成物は、ポリヌクレオチド組成物に有用であるとして上記に記載したものなど、他の化学的又は物理的薬剤(例えば、溶媒、界面活性剤、タンパク質又は酵素、トランスフェクション剤、粒子又はナノ粒子)を含み得る。例えば、多孔質シリカナノ粒子は、DNAリコンビナーゼをトウモロコシ細胞に送達するのに有用である;例えば、Martin-Ortigosa et al.(2015)Plant Physiol.,164:537-547を参照されたく、これは、ndRGDBP又はそれをコードするポリヌクレオチドをトウモロコシ又は他の植物細胞に提供するのに応用することができる。一実施形態において、ポリヌクレオチド組成物はgRNAとndRGDBPとを含み、更に、ndRGDBPに作動可能に連結されてもよい界面活性剤及び細胞透過性ペプチド(CPP)を含む。ある実施形態において、ポリヌクレオチド組成物は、gRNAとndRGDBPとの両方をコードするプラスミド又はウイルスベクターを含み、更に、界面活性剤及びカーボンナノチューブを含む。ある実施形態において、ポリヌクレオチド組成物は、複数のgRNAとndRGDBPをコードするmRNAとを含み、更に、粒子(例えば、金又はタングステン粒子)を含み、このポリヌクレオチド組成物は、バイオリスティック法によって植物細胞又は植物プロトプラストに送達される。前述の任意の実施形態において、ゲノム編集分子を含めた他の目的のポリヌクレオチドもまた、gRNA及びndRGDBPの送達の前、その間、又はその後に送達され得ることが更に企図される。
【0082】
特定の実施形態において、植物細胞が入手又は単離される元となる植物、植物外植片、又は植物部分は、植物細胞を入手し、単離し、又は処理する過程で、1つ以上の化学的、酵素的、又は物理的薬剤によって処理される。特定の実施形態において、植物細胞、植物、植物外植片、又は植物部分は、研磨剤、腐食剤、Silwet L-77又はカチオン性脂質などの界面活性剤、又はセルラーゼなどの酵素によって処理される。前述の任意の実施形態において、ゲノム編集分子を含めた他の目的のポリヌクレオチドもまた、HDR促進剤の送達の前、その間、又はその後に送達され得ることが更に企図される。
【0083】
特定の実施形態において、1つ又は2つ以上の化学的、酵素的、又は物理的薬剤は、植物細胞が処理され、入手され、又は単離される植物位置、部分、又は組織以外にある植物又は植物部分中の位置に、HDR頻度を増加させるSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBをコードするポリヌクレオチド組成物と別個に、又はそれとの組み合わせで提供され/適用される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド組成物は、隣接又は遠隔細胞又は組織に適用され、続いて植物細胞が単離されるところである分裂組織に(例えば、維管束系を通じて、又は細胞間移行により)輸送される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド含有組成物は、種子若しくは種子断片又は接合胚若しくは体細胞胚をポリヌクレオチド含有組成物に液浸することにより適用され、それによってポリヌクレオチドが植物細胞に送達される。特定の実施形態において、花芽又は茎頂をポリヌクレオチド含有組成物と接触させ、それによって、所望の植物細胞が入手されるところである花芽又は茎頂においてポリヌクレオチドが細胞に送達される。特定の実施形態において、ポリヌクレオチド含有組成物は、植物の表面又は植物の一部の表面(例えば、葉表面)に適用され、それによって、所望の植物細胞が入手されるところである植物の組織に1つ又は複数のポリヌクレオチドが送達される。特定の実施形態において、全植物又は植物組織がポリヌクレオチド含有組成物の粒子媒介性又はナノ粒子媒介性送達(例えば、バイオリスティック法又はカーボンナノチューブ若しくはナノ粒子送達)に供され、それによって、続いて植物細胞が入手されるところである細胞又は組織に1つ又は複数のポリヌクレオチドが送達される。前述の任意の実施形態において、ゲノム編集分子を含めた他の目的のポリヌクレオチドもまた、HDR促進剤の送達の前、その間、又はその後に送達され得ることが更に企図される。
【0084】
ゲノム編集分子は、本明細書に提供されるHDR媒介性ゲノム修飾頻度の増加を呈する植物細胞において遺伝子修飾を誘導するための遺伝子編集分子を含む。特定の実施形態において、かかるゲノム編集分子は、(i)RNA誘導型ヌクレアーゼ用のRNAガイド、RNA誘導型ヌクレアーゼ用のRNAガイドをコードするDNAからなる群から選択されるポリヌクレオチド;(ii)RNA誘導型ヌクレアーゼ、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9、nCas9、V型Casヌクレアーゼ、Cas12a、nCas12a、CasY、CasX、Cas12b、Cas12c、Cas12i、Cas14、操作されたヌクレアーゼ、コドン最適化されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ又は操作されたメガヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼ;(iii)標的ヌクレオチド配列の部位特異的切断を達成する能力を有する1つ以上のヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;及び/又は(iv)ドナー鋳型DNA分子を含むことができる。特定の実施形態において、少なくとも1つの送達剤は、溶媒、フルオロカーボン、グリコール又はポリオール、界面活性剤;第一級、第二級、又は第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩;オルガノシリコーン界面活性剤;脂質、リポタンパク質、リポ多糖;酸、塩基、腐食剤;ペプチド、タンパク質、又は酵素;細胞透過性ペプチド;RNアーゼ阻害薬;カチオン性分岐又は線状ポリマー;デンドリマー;対イオン、アミン類又はポリアミン類、オスモライト、緩衝液、及び塩;ポリヌクレオチド;トランスフェクション剤;抗生物質;キレート剤、例えば、シュウ酸アンモニウム、EDTA、EGTA、又はシクロヘキサンジアミン四酢酸など、非特異的DNA二本鎖切断誘導剤;及び抗酸化剤;粒子又はナノ粒子、磁性粒子又はナノ粒子、研磨剤又は表面剥離剤、ニードル又はマイクロニードル、マトリックス、及びグリッドからなる群から選択される。特定の実施形態において、本明細書に提供される細胞を含む真核細胞(例えば、植物細胞)、システム、方法、又は組成物は、(a)少なくとも1つのCas9、nCas9、Cas12a、nCas12a、CasY、CasX、Cas12b、Cas12c、又はCas12iヌクレアーゼ又はニッカーゼを有する少なくとも1つの細胞;(b)少なくとも1つのガイドRNA;及び(c)任意選択で、少なくとも1つの化学的、酵素的、又は物理的送達剤を更に含む。
【0085】
本明細書に提供される細胞、システム、方法、組成物、及び反応混合物に有用な遺伝子編集分子は、ゲノムDNA又はゲノムDNA内に位置する標的遺伝子など、二本鎖DNAに二本鎖切断(「DSB」)を導入する能力を有する分子、並びに付随するガイドRNA又はドナー鋳型ポリヌクレオチドを含む。かかる遺伝子編集分子の例としては、(a)RNA誘導型ヌクレアーゼ、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9、nCas9ニッカーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、nCas12aニッカーゼ、CasY、CasX、Cas12b、Cas12c、Cas12i、Cas14 操作されたヌクレアーゼ、コドン最適化されたヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又はニッカーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)又はニッカーゼ、アルゴノート、及びメガヌクレアーゼ又は操作されたメガヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼ;(b)標的編集部位の部位特異的改変(DSBの導入など)を達成する能力を有する1つ以上のヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド;(c)RNA誘導型ヌクレアーゼ用のガイドRNA(gRNA)、又はRNA誘導型ヌクレアーゼ用のgRNAをコードするDNA;及び(d)ドナー鋳型ポリヌクレオチドが挙げられる。
【0086】
CRISPR型ゲノム編集は、本明細書に提供される真核細胞(例えば、植物細胞)、システム、方法、及び組成物における使用に幾つかの方法で応用することができる。CRISPRエレメント、即ち、CRISPRエンドヌクレアーゼ及びCRISPRシングルガイドRNA又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子編集分子は、CRISPRエレメントの残遺物又は選択的遺伝子マーカーが子孫に現れることなくゲノム編集を達成するのに有用である。特定の実施形態において、CRISPRエレメントは、単離された分子として、無細胞合成法(例えば、インビトロ翻訳)の単離若しくは半精製された産物として、又は細胞ベースの合成法(例えば、細菌又は他の細胞のライセート中など)の単離若しくは半精製された産物として、真核細胞(例えば、植物細胞)、システム、方法、及び組成物に直接提供される。特定の実施形態において、ゲノムが挿入されたCRISPRエレメントは、本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物における使用に適合された植物株において有用である。特定の実施形態において、本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物に使用される植物又は植物細胞は、CRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1型又は他のCRISPRエンドヌクレアーゼ)を発現するトランス遺伝子を含み得る。特定の実施形態において、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼは、ユニークなPAM認識部位と共に使用することができる。ガイドRNA(sgRNA又はcrRNA及びtracrRNA)がRNA誘導型エンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を形成し、この複合体は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に隣接するgDNA標的編集部位の配列に特異的に結合することができる。典型的には、RNA誘導型エンドヌクレアーゼの種類から、好適なPAM部位の位置及びcrRNA又はsgRNAの設計を知ることができる。Cas9タンパク質と使用されるcrRNA又はsgRNAの設計については、典型的にはGリッチPAM部位、例えば5’-NGGが標的となる。Cas12aタンパク質(例えば、配列番号27、28、29、及び30)と使用されるcrRNA又はsgRNAの設計については、典型的にはTリッチPAM部位(例えば、5’-TTTV[1]、式中、「V」は、A、C、又はGである)が標的となる。Cpf1エンドヌクレアーゼ並びに対応するガイドRNA及びPAM部位については、米国特許出願公開第2016/0208243 A1号明細書(これは、Cpf1エンドヌクレアーゼをコードするDNA並びにガイドRNA及びPAM部位のその開示に関して参照により本明細書に援用される)に開示される。植物ゲノムに組み込まれるか、又はそれとは別様に植物に提供されるCRISPRエンドヌクレアーゼと相互作用する多種多様なCRISPRガイドRNAのうちの1つ以上を導入することは、所望の表現型又は形質を付与するための遺伝子編集、形質スクリーニング、又は遺伝子編集媒介性の形質遺伝子移入(例えば、反復親との戻し交雑のない、又は反復親との戻し交雑を制限した新規遺伝子型への形質の導入)に有用である。複数のエンドヌクレアーゼが適切なプロモーターと共に発現カセットに提供されてもよく、染色体DNA又はエピソームDNAのいずれかにおける空間的又は時間的に離れた形での複数のゲノム編集が可能となる。
【0087】
真核生物の遺伝子を編集するためのCRISPR技術については、米国特許出願公開第2016/0138008A1号明細書及び同第2015/0344912A1号明細書、並びに米国特許第8,697,359号明細書、同第8,771,945号明細書、同第8,945,839号明細書、同第8,999,641号明細書、同第8,993,233号明細書、同第8,895,308号明細書、同第8,865,406号明細書、同第8,889,418号明細書、同第8,871,445号明細書、同第8,889,356号明細書、同第8,932,814号明細書、同第8,795,965号明細書、及び同第8,906,616号明細書に開示される。Cpf1エンドヌクレアーゼ並びに対応するガイドRNA及びPAM部位については、米国特許出願公開第2016/0208243 A1号明細書に開示される。ゲノムの編集に有用な他のCRISPRヌクレアーゼとしては、Cas12b及びCas12c(Shmakov et al.(2015)Mol.Cell,60:385-397を参照)並びにCasX及びCasY(Burstein et al.(2016)Nature,doi:10.1038/nature21059を参照)が挙げられる。CRISPRガイドRNAの発現用の植物RNAプロモーター及び植物コドン最適化されたCRISPR Cas9エンドヌクレアーゼが、国際特許出願PCT/US2015/018104号明細書(国際公開第2015/131101号パンフレットとして公開されており、米国仮特許出願第61/945,700号明細書に対する優先権を主張する)に開示される。植物におけるゲノム編集へのCRISPR技術の使用方法が、米国特許出願公開第2015/0082478A1号明細書及び同第2015/0059010A1号明細書並びに国際特許出願PCT/US2015/038767 A1号明細書(国際公開第2016/007347号パンフレットとして公開されており、米国仮特許出願第62/023,246号明細書に対する優先権を主張する)に開示される。本段落中で言及される特許公報は全て、全体として参照により本明細書に援用される。特定の実施形態では、標的編集部位がエンドヌクレアーゼ認識配列で切断された後に平滑末端が残るRNA誘導型エンドヌクレアーゼが使用される。平滑末端に切断するRNA誘導型エンドヌクレアーゼとしては、Cas9、Cas12c、及びCas12hが挙げられる(Yan et al.,2019)。特定の実施形態では、エンドヌクレアーゼ認識配列の切断後に付着末端型一本鎖DNAオーバーハング末端が残るRNA誘導型エンドヌクレアーゼが使用される。付着末端に切断するRNA誘導型エンドヌクレアーゼとしては、Cas12a、Cas12b、及びCas12eが挙げられる。
【0088】
本方法、システム、組成物、真核細胞(例えば、植物細胞)はまた、標的編集部位内のエンドヌクレアーゼ認識配列にあるdsDNAの単一DNA鎖を切断する配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAも使用することができる。dsDNA標的編集部位における単一DNA鎖のかかる切断は、本明細書及び他の部分では「ニッキング」とも称され、これは様々な「ニッカーゼ」又はニッキングをもたらすシステムによって達成され得る。使用し得るニッカーゼとしては、nCas9(D10Aアミノ酸置換を含むCas9)、nCas12a(例えば、R1226Aアミノ酸置換を含むCas12a;Yamano et al.,2016)、Cas12i(Yan et al.2019)、ジンクフィンガーニッカーゼ、例えば、Kim et al.,2012に開示されるとおり)、TALEニッカーゼ(例えば、Wu et al.,2014に開示されるとおり)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、ニッキングをもたらすシステムは、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9及び/又はCas12a)と、標的編集部位のDNA配列に対して少なくとも1塩基のミスマッチを有するガイドRNA分子とを含み得る(Fu et al.,2019)。特定の実施形態において、約10、20、30、40、50、60、80、100、150、又は200DNA塩基対以下しか離れていないゲノム位置に一本鎖切断(即ち、「ニック」)を作り出すことにより、標的編集部位にゲノム修飾を導入することができる。特定の例示的且つ非限定的な実施形態では、2つのニッカーゼ(即ち、nCas9、nCas12a、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、これらの組み合わせなどを含めた、一本鎖DNA切断を導入するCASヌクレアーゼ)又はニッカーゼシステムを指向させて、約10、20、30、40、50、60、80又は100DNA塩基対以下しか離れていない近接部位に切れ目を入れることができる。RNA誘導型ニッカーゼ及びRNAガイドが使用される例では、RNAガイドは、十分に近い(即ち、約10、20、30、40、50、60、80、100、150、又は200DNA塩基対以下しか離れていない)PAM配列に隣接する。ニッカーゼ又はニッカーゼシステムが使用される前述の実施形態のいずれにおいても、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質を認識することのできる5’→3’又は3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するエキソヌクレアーゼを使用することができる。特定の実施形態では、ニッカーゼ又はニッカーゼシステム、SSAP、及びSSBと併せて、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を使用することができる。
【0089】
遺伝子編集の目的では、CRISPRアレイは、所望の標的DNA配列に対応する1つ又は複数のガイドRNA配列を持つように設計され得る;例えば、Cong et al.(2013)Science,339:819-823;Ran et al.(2013)Nature Protocols,8:2281-2308を参照のこと。Cas9がDNA切断を起こすには、少なくとも16又は17ヌクレオチドのgRNA配列が必要である;Cpf1については、検出可能なDNA切断の実現に少なくとも16ヌクレオチドのgRNA配列が必要とされ、インビトロでの効率的なDNA切断には少なくとも18ヌクレオチドのgRNA配列が必要と報告されている;Zetsche et al.(2015)Cell,163:759-771を参照のこと。実際には、ガイドRNA配列は、概して、17~24ヌクレオチド(多くの場合に19、20、又は21ヌクレオチド)の長さ及び標的とする遺伝子又は核酸配列との正確な相補性(即ち、完全な塩基対合性)を有するように設計される;標的配列との相補性が100%未満のガイドRNAが使用されてもよく(例えば、20ヌクレオチドの長さで、標的配列と1~4個のミスマッチを有するgRNA)、但し、オフターゲット効果の可能性が高まり得る。植物ゲノム編集における使用に有効なガイドRNAの設計については、米国特許出願公開第2015/0082478 A1号明細書(この明細書全体が参照により本明細書に援用される)に開示されている。最近になって、天然に存在するcrRNA-tracrRNA複合体を模倣した、tracrRNA(ヌクレアーゼへの結合用)と少なくとも1つのcrRNA(編集の標的となる配列にヌクレアーゼを誘導する)との両方を持つ操作された(合成の)単一RNA分子であるキメラ「シングルガイドRNA」(「sgRNA」)を用いて、効率的な遺伝子編集が実現している;例えば、Cong et al.(2013)Science,339:819-823;Xing et al.(2014)BMC Plant Biol.,14:327-340を参照のこと。化学的に修飾されたsgRNAがゲノム編集において有効であることが実証されている;例えば、Hendel et al.(2015)Nature Biotechnol.,985-991を参照のこと。植物ゲノム編集における使用に有効なgRNAの設計については、米国特許出願公開第2015/0082478 A1号明細書(この明細書全体が参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0090】
本明細書に提供されるシステム、方法、及び組成物における、標的ヌクレオチド配列の部位特異的修飾を達成する能力を有する他の配列特異的エンドヌクレアーゼとしては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ又はTALEN)、アルゴノートタンパク質、及びメガヌクレアーゼ又は操作されたメガヌクレアーゼが挙げられる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、核酸切断ドメイン、例えばヌクレアーゼに融合したジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む操作されたタンパク質である。ジンクフィンガー結合ドメインが特異性を提供し、これは、いかなる所望の標的DNA配列も特異的に認識するように操作することができる。植物及び他の生物におけるZFNの構築及び使用のレビューについては、例えば、Urnov et al.(2010)Nature Rev.Genet.,11:636-646を参照のこと。ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)と呼ばれる大規模な真核生物転写因子クラスのDNA結合ドメインに由来する。ZFPのDNA結合ドメインは、典型的には、各々が特異的DNAトリプレットを認識する少なくとも3個のジンク「フィンガー」のタンデムアレイを含んでいる。ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の設計には、幾つもの戦略を用いることができる。「モジュラーアセンブリ」と称される一つの手法は、DNAとの個々のジンクフィンガーの機能的自律性に頼る。この手法では、配列中のトリプレット成分毎にジンクフィンガーを同定し、それらをつなぎ合わせてマルチフィンガーペプチドにすることにより、所与の配列を標的化する。ジンクフィンガーDNA結合ドメインの設計には、幾つかの代替的な戦略も開発されている。それらの方法は、ジンクフィンガーが隣接フィンガー並びにその標的トリプレットの外側にあるヌクレオチド塩基と接触する能力を適応させるように設計される。典型的には、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を呈する。操作方法には、例えば、合理的設計及び各種の選択が含まれる。合理的設計には、例えば、トリプレット(又はクアドルプレット)ヌクレオチド配列及び個々のジンクフィンガーアミノ酸配列のデータベースの使用が含まれ、そこでは各トリプレット又はクアドルプレットヌクレオチド配列が、特定のトリプレット又はクアドルプレット配列と結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連付けられている。例えば、米国特許第6,453,242号明細書及び同第6,534,261号明細書(両方とも全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。例示的選択方法(例えば、ファージディスプレイ及び酵母2ハイブリッドシステム)は周知であり、文献に記載されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性を増強することが、米国特許第6,794,136号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。加えて、個々のジンクフィンガードメインが、任意の好適なリンカー配列を用いて一体に連結されてもよい。リンカー配列の例は公知であり、例えば、米国特許第6,479,626号明細書;同第6,903,185号明細書;及び同第7,153,949号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照されたい。核酸切断ドメインは非特異的であり、典型的には、Foklなどの制限エンドヌクレアーゼである。このエンドヌクレアーゼは、DNAを切断するためには二量化しなければならない。従って、ZFNの一部としてのFoklによる切断には、2つの隣接する且つ独立した結合イベントが必要であり、それらは、正しい向き、及び二量体形成を許容する適切な間隔の両方を伴い起こらなければならない。2つのDNA結合イベントが必要であるため、長い、且つ潜在的にユニークな認識部位を一層特異的に標的化することが可能となる。活性が増強されたFoklバリアントが記載されている;例えば、Guo et al.(2010)J.Mol.Biol.,400:96-107を参照のこと。
【0091】
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、宿主植物の遺伝子発現を調節するため、並びに細菌によるコロニー形成及びその生存を促進するため、特定のキサントモナス属(Xanthomonas)種によって分泌されるタンパク質である。TALEは転写因子として働き、植物における耐性遺伝子の発現を調節する。TALEの最近の研究から、TALEの繰り返し領域をその標的DNA結合部位と関係付けるコードが明らかになっている。TALEは、概ね33又は34アミノ酸セグメントのタンデムリピートからなる高度に保存された繰り返し領域を含む。これらのリピート単量体は、主にアミノ酸位置12位及び13位で互いに異なる。12位及び13位のユニークなアミノ酸対とTALE結合部位における対応するヌクレオチドとの間には、強い相関があることが分かっている。アミノ酸配列とTALE結合ドメインのDNA認識との間のこの単純な関係のおかげで、あらゆる所望の特異性のDNA結合ドメインを設計することが可能となる。TALEを非特異的DNA切断ドメインに連結して、TALエフェクターヌクレアーゼ又はTALENと称される配列特異的エンドヌクレアーゼを調製することができる。ZFNの場合のように、好都合にはFoklなどの制限エンドヌクレアーゼを使用することができる。植物におけるTALENの使用の説明については、Mahfouz et al.(2011)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,108:2623-2628及びMahfouz(2011)GM Crops,2:99-103を参照のこと。
【0092】
アルゴノートは、標的ヌクレオチド配列に相補的な配列)を含むポリヌクレオチド(例えば、一本鎖DNA又は一本鎖RNA)と結合することによって配列特異的エンドヌクレアーゼとして機能できるタンパク質であり、このポリヌクレオチドがアルゴノートを標的ヌクレオチド配列に誘導し、標的ヌクレオチド配列の部位特異的改変を生じさせる;例えば、米国特許出願公開第2015/0089681号明細書(全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0093】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ認識配列に結合する。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ認識配列を切断する。一部の実施形態において、用語「エンドヌクレアーゼ認識配列」は、エンドヌクレアーゼ切断部位配列と同義的に使用される。
【0094】
一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは不要である。一部の実施形態において、本方法は、二本鎖切断を非特異的に導入する化合物を提供することによって行われる。例示的な二本鎖切断誘導化合物としては、ヒドロキノン(HQ)、ベンゾキノン(BQ)、ベンゼントリオール(BT)、過酸化水素(H2O2)、ブレオマイシン(BLM)又はアスコルビン酸ナトリウム(Vit C)が挙げられ、二本鎖切断の導入に使用される。
【0095】
本明細書に提供される方法、システム、真核細胞(例えば、植物細胞)、及び組成物に使用されるドナー鋳型DNA分子は、5’から3’に、第1の相同アーム、置換DNA、及び第2の相同アームを含むDNA分子を含み、ここで相同アームは、gDNAにおいてエンドヌクレアーゼ認識配列に隣接するゲノムDNA(gDNA)配列と部分的又は完全に相同の配列を含み、及び置換DNAは、標的gDNAと比べて1DNA塩基対以上の挿入、欠失、又は置換を含み得る。特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームは、約20、50、100、200、400、又は600~約800、又は1000塩基対長であり得る。特定の実施形態において、ドナー鋳型DNA分子は、環状(例えば、プラスミド又はジェミニウイルスベクターを含めたウイルスベクター)又は線状DNA分子で真核細胞(例えば、植物細胞)に送達することができる。特定の実施形態において、使用し得る環状又は線状DNA分子は、5’から3’に、エンドヌクレアーゼ認識配列の第1のコピー、第1の相同アーム、置換DNA、第2の相同アーム、及びエンドヌクレアーゼ認識配列の第2のコピーを含む修飾されたドナー鋳型DNA分子を含み得る。理論によって制限されることを望むものではないが、かかる修飾されたDNAドナー鋳型分子は、真核細胞の標的編集部位(eiditng site)ゲノムDNA内のエンドヌクレアーゼ認識配列の切断に使用されるのと同じ配列特異的エンドヌクレアーゼによって切断されることができるため、ドナー鋳型DNA分子が放出されて、それが真核細胞ゲノムにおける標的編集部位のHDR媒介性ゲノム修飾に関与することができる。特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型は、5’から3’に、切断型エンドヌクレアーゼ認識配列、第1の相同アーム、置換DNA、第2の相同アーム、及び切断型エンドヌクレアーゼ認識配列を含む線状DNA分子を含み得る。特定の実施形態において、切断型エンドヌクレアーゼ配列は、平滑末端型のDNA末端又は5’リン酸基を任意選択で含み得る平滑末端型のDNA末端を含み得る。特定の実施形態において、切断型エンドヌクレアーゼ配列は、一本鎖5’又は3’DNAオーバーハングを有するDNA末端を含む。かかる切断型エンドヌクレアーゼ認識配列は、インタクトな標的配列の切断、又は切断された標的配列特異的エンドヌクレアーゼ認識配列のコピーの合成のいずれかによって作られ得る。ドナーDNA鋳型は、化学的に合成されても、又は酵素的に(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で)合成されても、いずれであってもよい。
【0096】
二本鎖DNA以外のドナー鋳型の使用も企図される。例えば、一部の実施形態では、二本鎖DNAの前駆体が提供される。一部の実施形態では、逆転写酵素のRNA鋳型が提供される。一部の実施形態では、RNAに加えて逆転写酵素が提供される。一部の実施形態において、本方法は、一本鎖DNAドナー鋳型の使用を含む。一部では、一本鎖又は二本鎖RNA鋳型が使用される。一部の実施形態において、本方法は、DNA/RNAハイブリッドの使用を含む。一部の実施形態では、PNAを使用してドナー鋳型が作成される。
【0097】
一部の実施形態において、2つ以上のドナー鋳型が提供される。一部の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上のドナー鋳型が提供される。一部の実施形態において、それらのドナー鋳型は同じ遺伝子を標的とする。一部の実施形態において、それらのドナー鋳型は、同じ経路内にある異なる遺伝子を標的とする。一部の実施形態において、それらのドナー鋳型は、同じ機能を果たす複数の遺伝子を標的とする。
【0098】
本明細書に提供される植物細胞及び方法において使用される他のゲノム編集分子は、トランス遺伝子又はそれを含むベクターを有する植物又は細胞に対して使用することができる。かかるトランス遺伝子は、除草剤耐性、耐害虫性(例えば、昆虫、線虫、又は植物病原性真菌及び細菌に対する耐性)、収量向上、油、デンプン、及びタンパク質含有分の増加及び/又は定性的向上、非生物的ストレス耐性の向上(例えば、水利用効率又は耐干性、浸透圧ストレス耐性、高塩分ストレス耐性、熱ストレス耐性の向上又は亢進、低温発芽耐性を含めた耐寒性の亢進)などを含めた有用な形質を付与することができる。かかるトランス遺伝子には、外因性タンパク質の発現によって形質を付与するトランス遺伝子並びに内因性植物遺伝子の発現を阻害することによって(例えば、内因性植物遺伝子の発現を阻害するsiRNA応答を誘導することによって)形質を付与するトランス遺伝子の両方が含まれる。かかる形質を提供することのできるトランス遺伝子については、米国特許出願公開第20170121722号明細書及び同第20170275636号明細書(これらは、各々が、全体として参照により、特にかかる開示に関して本明細書に援用される)に開示されている。
【0099】
一部の実施形態では、真核細胞(例えば、植物細胞)内に、前述のSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB及び/又はゲノム編集分子のいずれかをコードする1つ以上のポリヌクレオチドの発現をドライブする1つ以上のポリヌクレオチド又はベクターが導入される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドベクターは、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB又はゲノム編集分子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターなどの調節エレメントを含む。かかる実施形態において、それらのポリヌクレオチドの発現は、適切なプロモーター、特に真核細胞(例えば、植物細胞)で機能性のプロモーターの選択によって制御することができる;有用なプロモーターは、構成的な、条件的な、誘導性の、及び時間的又は空間的に特異的なプロモーター(例えば、組織特異的プロモーター、発生調節性プロモーター、又は細胞周期調節性プロモーター)を含む。植物細胞において使用し得る発生調節性プロモーターとしては、米国特許出願公開第20170121722号明細書(これは全体として、特にかかる開示に関して参照により本明細書に援用される)に開示されるリン脂質転移タンパク質(PLTP)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼタンパク質、NAD(P)結合ロスマンフォールドタンパク質、脂肪細胞細胞膜結合タンパク質様タンパク質、リスケ[2Fe-2S]鉄硫黄ドメインタンパク質、葉緑体呼吸還元6タンパク質、D-グリセリン酸3-キナーゼ、葉緑体様タンパク質、クロロフィルa-b結合タンパク質7、葉緑体様タンパク質、紫外線B抑制性タンパク質、Soulヘム結合ファミリータンパク質、光化学系I反応中心サブユニットpsi-Nタンパク質、及び短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼタンパク質が挙げられる。特定の実施形態において、プロモーターは、複数のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され、ここでガイドRNAをコードする配列は、マイクロRNA認識/切断部位又は自己切断型リボザイムをコードするヌクレオチド配列などの切断部位によって隔てられている(例えば、Ferre-D’Amare and Scott(2014)Cold Spring Harbor Perspectives Biol.,2:a003574を参照のこと)。特定の実施形態において、プロモーターは、1つ以上のガイドRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたRNAポリメラーゼIIIプロモーターである。特定の実施形態において、1つ以上のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、真核細胞(例えば、植物細胞)において遺伝子発現をドライブする構成的プロモーターである。特定の実施形態において、プロモーターは、核において、又は葉緑体若しくはミトコンドリアなどの細胞小器官において遺伝子発現をドライブする。植物に使用される構成的プロモーターの例としては、米国特許第5,858,742号明細書及び同第5,322,938号明細書に開示されるとおりのCaMV 35Sプロモーター、米国特許第5,641,876号明細書に開示されるとおりのコメアクチンプロモーター、米国特許第7,151,204号明細書に開示されるとおりのトウモロコシ葉緑体アルドラーゼプロモーター、並びにアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のノパリンシンターゼ(NOS)及びオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーターが挙げられる。特定の実施形態において、ゲノム編集システムのエレメントをコードする1つ以上のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)由来のプロモーター、ルビスコプロモーター、又は光合成組織において活性のピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)プロモーターである。他の企図されるプロモーターとしては、細胞特異的若しくは組織特異的又は発生調節性プロモーター、例えば、核酸ターゲティングシステムの発現を生殖細胞系列又は生殖細胞に制限するプロモーター(例えば、DNAリガーゼ、リコンビナーゼ、レプリカーゼをコードする遺伝子、又は生殖細胞系列若しくは生殖細胞に特異的に発現する他の遺伝子のプロモーター)が挙げられる。特定の実施形態において、ゲノム改変は、そこからのDNAが遺伝によって後続の世代に受け継がれる細胞のみに制限され、これは、遺伝毒性又は他の望ましくない効果を回避するためにゲノム編集システムの発現が制限されることが望ましい場合に有利である。本段落中で言及される特許公報は全て、全体として参照により本明細書に援用される。
【0100】
本明細書に提供される発現ベクター又はポリヌクレオチドは、発現カセットの3’末端の近傍に、転写を終結させるシグナルとして働き、且つ得られたmRNAのポリアデニル化を導く、またプロモーター活性も支持し得るDNAセグメントを含んでもよい。かかる3’エレメントは、一般に「3’-非翻訳領域」又は「3’-UTR」又は「ポリアデニル化シグナル」と称される。ある場合には、植物遺伝子ベースの3’エレメント(又はターミネーター)は、3’-UTRと下流非転写配列との両方からなる(Nuccio et al.,2015)。有用な3’エレメントとしては、米国特許第6,090,627号明細書(参照により本明細書に援用される)に開示されるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens) nos 3’、tml 3’、tmr 3’、tms 3’、ocs 3’、及びtr7 3’エレメント、並びに米国特許出願公開第2002/0192813 A1号明細書(参照により本明細書に援用される)に開示されるコムギ(トリチカム・エスティブム(Triticum aestivum))由来の熱ショックタンパク質17、ユビキチン、及びフルクトース-1,6-ビホスファターゼ遺伝子、並びにコメ(イネ(Oryza sativa))由来のグルテリン、乳酸デヒドロゲナーゼ、及びβ-チューブリン遺伝子など、植物遺伝子由来の3’エレメントが挙げられる。
【0101】
特定の実施形態において、発現カセットを含むベクター又はポリヌクレオチドは、追加的な構成要素、例えば、薬剤抵抗性若しくは除草剤遺伝子をコードするポリヌクレオチド又は緑色蛍光タンパク質(GFP)若しくはβ-グルクロニダーゼ(gus)などの検出マーカーをコードするポリヌクレオチドを含み、そのベクター若しくはポリヌクレオチドを発現する細胞を簡便にスクリーニング又は選択することが可能である。選択マーカーとしては、グリホサート、スルホニル尿素類、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン類、及び2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)などの除草化合物に対する抵抗性を付与する遺伝子が挙げられる。かかる選択マーカー遺伝子及び選択的薬剤としては、スルホニル尿素類及びイミダゾリノン類に対する抵抗性を付与するトウモロコシHRA遺伝子(Lee et al.,1988,EMBO J 7:1241-1248)、グリホサートに対する抵抗性を付与するCP4遺伝子(米国再発行特許RE039247号明細書、全体として、並びにかかる遺伝子及び関連する選択方法に関して、具体的に参照により本明細書に援用される)、グリホサートに対する抵抗性を付与するGAT遺伝子(Castle et al.,2004,Science 304:1151-1154)、aadA遺伝子など、スペクチノマイシンに対する抵抗性を付与する遺伝子(Svab et al.,1990,Plant Mol Biol.14:197-205)及びグルホシネートアンモニウムに対する抵抗性を付与するbar遺伝子(White et al.,1990,Nucl.Acids Res.25:1062)、及びPAT(又はトウモロコシについてのmoPAT、Rasco-Gaunt et al.,2003,Plant Cell Rep.21:569-76を参照のこと;また、Sivamani et al.,2019も参照のこと)及びマンノース含有培地での成長を可能にするPMI遺伝子(Negrotto et al.,2000,Plant Cell Rep.22:684-690)が挙げられる。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に提供される真核細胞(例えば、植物)、方法、システム、及び組成物では、対抗選択マーカーを使用することができる。かかる対抗選択マーカーは、特定の実施形態では、宿主細胞ゲノムへの標的編集部位における挿入が意図されない任意のDNAに取り入れることができる。かかる実施形態において、対抗選択マーカーを有するDNAの非限定的な例としては、HDR促進剤(例えば、SSB、SSAP、及び/又はエキソヌクレアーゼ)、遺伝子編集分子、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードするDNAに連結される任意のDNA分子が挙げられる。ドナー鋳型DNA分子を含むベクター又はDNA分子、ここで対抗選択マーカーはドナー鋳型DNAに連結され、且つ任意選択で、ドナー鋳型DNAと標的編集部位配列によって隔てられている。植物において使用し得る対抗選択マーカーの例としては、シトシンデアミナーゼ遺伝子(例えば、5-フルオロシトシンと併せて使用される;Schlaman and Hooykaas,1997)、ホスホン酸エステルヒドロラーゼ(例えば、グリセロールグリホサートを含めた、グリホサートのホスホン酸エステル類と併せて使用される;Dotson,et al.1996)、硝酸レダクターゼ(例えば、アンモニアを単一窒素源として含有する培地で塩素酸塩と併せて使用される;Nussaume,et al.1991)が挙げられる。
【0103】
特定の実施形態では、HDR促進剤(即ち、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB)及び/又は修飾された鋳型DNA分子によってHDR頻度の増加がもたらされるため、選択マーカーの使用は不要となる。かかる実施形態では、本明細書に提供される細胞、システム、方法、又は組成物に使用されるドナー鋳型DNA分子、ドナー鋳型DNA分子若しくは他のDNA分子の送達に使用されるプラスミド、又は任意の他のベクター(例えば、ウイルスベクター)若しくはポリヌクレオチドのいずれからも、選択マーカー及び/又は対抗選択マーカーを省くことができる。
【0104】
B.遺伝子操作方法
一態様において、本開示は、真核細胞を遺伝子操作する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を提供することを含む。一部の実施形態において、本方法は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を送達することを含む。
【0105】
別の態様において、本開示は、真核細胞を遺伝子操作する方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、及びiv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼを含む。
【0106】
別の態様において、本方法は、i)二本鎖切断誘導化合物、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、及びiv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼを含む。
【0107】
i.遺伝子修飾
遺伝子操作は、遺伝子機能(即ち、コードされる遺伝子産物の活性)の低減であり得る。これには、本明細書で考察するとおり、欠損配列を提供するための対応する修復鋳型が必要であり得るか、又はそれは、DSBの誘導を経るものであり得る。詳細には、遺伝子摂動は遺伝子ノックダウンである。一部の実施形態において、細胞は植物又は動物細胞である。一部の実施形態において、遺伝子操作は、遺伝子内への終止コドンの導入である。一部の実施形態において、遺伝子操作は、プロモーター又は開始コドンの突然変異である。
【0108】
或いは、遺伝子操作は、遺伝子機能(即ち、コードされる遺伝子産物の活性)の増加であり得る。これには、本明細書で考察するとおり、修正された配列を提供するための対応する修復鋳型が必要であり得る。一部の実施形態において、遺伝子操作は、タンパク質コード遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの置換である。
【0109】
一部の実施形態において、標的編集部位はプロモーター領域に位置する。一実施形態において、ヌクレオチド配列はプロモーターであってもよく、ここでプロモーターを編集すると、以下のいずれか1つ又は以下を組み合わせたいずれか1つが生じることになる:プロモーター活性の増加、プロモーター組織特異性の増加、プロモーター活性の低下、プロモーター組織特異性の低下、DNA結合エレメントの突然変異及び/又はDNA結合エレメントの欠失若しくは付加。
【0110】
一実施形態において、ヌクレオチド配列は、細胞のゲノム中の調節配列であり得る。調節配列は、生物における特異的遺伝子の発現を増加又は減少させる能力を有する核酸分子中のセグメントである。調節配列の例としては、限定はされないが、転写アクチベーター、転写リプレッサー、及び翻訳リプレッサー、スプライシング因子、miRNA、siRNA、人工miRNA、CAATボックス、CCAATボックス、プリブノーボックス、TATAボックス、SECISエレメント及びポリアデニル化シグナルが挙げられる。一部の実施形態において、調節エレメントを編集すると、タンパク質翻訳、RNA切断、RNAスプライシング、又は転写終結が改変されることになる。
【0111】
一実施形態では、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用してTETオペレーターリプレッサー/オペレーター/インデューサーシステムの構成要素又はスルホニル尿素(Su)リプレッサー/オペレーター/インデューサーシステムの構成要素を植物ゲノムに挿入することにより、誘導性発現システムを作成又は制御することができる。
【0112】
別の実施形態では、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用してプロモーター又はプロモーターエレメントの欠失を実現することができ、ここでプロモーターを欠失させると(又はプロモーターエレメントを欠失させると)、以下のいずれか1つ又は以下を組み合わせたいずれか1つが生じることになる:遺伝子座の永久的な不活化、プロモーター活性の増加(プロモーター強度の増加)、プロモーター組織特異性の増加、プロモーター活性の低下、プロモーター組織特異性の低下、新規プロモーター活性、誘導性プロモーター活性、遺伝子発現ウィンドウの延長、遺伝子発現のタイミング又は発生進行の修飾、DNA結合エレメントの突然変異及び/又はDNA結合エレメントの付加。欠失させることになるプロモーターエレメントは、限定はされないが、プロモーターコアエレメント、プロモーターエンハンサーエレメント又は35Sエンハンサーエレメントであり得る。欠失させることになるプロモーター又はプロモーター断片は、編集下の細胞にとって内因性であるか、人工的であるか、前から存在するか、又はトランスジェニックであり得る。
【0113】
一実施形態において、修飾されることになるヌクレオチド配列はターミネーターであってもよく、ここでターミネーターの編集は、ターミネーター(「ターミネータースワップ」又は「ターミネーター置換」とも称される)又はターミネーター断片を別のターミネーター(置換ターミネーターとも称される)又はターミネーター断片(置換ターミネーター断片とも称される)に置き換えることを含み、ここでターミネーターを置換すると、以下のいずれか1つ又は以下を組み合わせたいずれか1つが生じることになる:ターミネーター活性の増加、ターミネーター組織特異性の増加、ターミネーター活性の低下、ターミネーター組織特異性の低下、DNA結合エレメントの突然変異及び/又はDNA結合エレメントの欠失若しくは付加”。修飾されることになるターミネーター(又はターミネーター断片)は、編集下の細胞にとって内因性の、人工的な、前から存在する、又はトランスジェニックのターミネーター(又はターミネーター断片)であり得る。置換ターミネーター(又は置換ターミネーター断片)は、編集下の細胞にとって内因性の、人工的な、前から存在する、又はトランスジェニックのターミネーター(又はターミネーター断片)であり得る。
【0114】
挿入されることになるターミネーター(又はターミネーターエレメント)は、編集下の細胞にとって内因性の、人工的な、前から存在する、又はトランスジェニックのターミネーター(又はターミネーターエレメント)であり得る。
【0115】
別の実施形態において、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼシステムを使用してターミネーター又はターミネーターエレメントの欠失を実現することができ、ここでターミネーターを欠失させると(又はターミネーターエレメントを欠失させると)、以下のいずれか1つ又は以下を組み合わせたいずれか1つが生じることになる:ターミネーター活性の増加(ターミネーター強度の増加)、ターミネーター組織特異性の増加、ターミネーター活性の低下、ターミネーター組織特異性の低下、DNA結合エレメントの突然変異及び/又はDNA結合エレメントの付加。欠失させることになるターミネーター又はターミネーター断片は、編集下の細胞にとって内因性であるか、人工的であるか、前から存在するか、又はトランスジェニックであり得る。
【0116】
修飾には、5’キャップ、3’ポリアデニル化尾部、リボスイッチ配列、安定性制御配列、dsRNA二重鎖を形成する配列、ガイドポリヌクレオチドを細胞内位置に標的化する修飾又は配列、追跡手段を提供する修飾又は配列、タンパク質の結合部位を提供する修飾又は配列、ロックド核酸(LNA)、5-メチルdCヌクレオチド、2,6-ジアミノプリンヌクレオチド、2’-フルオロAヌクレオチド、2’-フルオロUヌクレオチド;2’-O-メチルRNAヌクレオチド、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子との連結、ポリエチレングリコール分子との連結、スペーサー18分子との連結、5’→3’共有結合、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。これらの修飾により、少なくとも1つの追加の有益な特徴を得ることができ、ここで追加の有益な特徴は、安定性の修飾又は調節、細胞内ターゲティング、追跡、蛍光標識、タンパク質又はタンパク質複合体の結合部位、相補的標的編集部位に対する結合親和性の修飾、細胞分解抵抗性の修飾、及び細胞透過性の増加の群から選択される。
【0117】
一部の実施形態において、修飾されることになる目的のゲノム配列はポリユビキチン化部位であり、ここでポリユビキチン化部位を修飾すると、タンパク質分解速度が修飾されることになる。ユビキチンタグにより、タンパク質がプロテアソーム又はオートファジーによって分解されるように運命付けられる。プロテアソーム阻害薬は、タンパク質の過剰産生を引き起こすことが公知である。目的のタンパク質をコードするDNA配列に修飾を設けると、目的のタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸修飾を生じさせることができ、ここで前記修飾は、タンパク質のポリユビキチン化(翻訳後修飾)を実現するため、タンパク質分解が修飾されることになる。
【0118】
一部の実施形態において、標的編集部位は遺伝子コード領域に位置する。一部の実施形態において、標的配列は遺伝子内領域に位置する。一部の実施形態において、標的配列はテロメアに位置する。
【0119】
一部の実施形態において、本明細書に提供される方法は、標的編集部位の1つ以上のヌクレオチドに修飾を生じさせる。
【0120】
一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1つ以上のヌクレオチドの置換である。一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上の置換である。
【0121】
一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1つ以上のヌクレオチドの欠失である。一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上の置換である。
【0122】
一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1つ以上のヌクレオチドの挿入である。一部の実施形態において、標的編集部位に対する修飾は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上の置換である。
【0123】
一部の実施形態において、標的編集部位は、標的編集部位と比較して1つ以上の挿入、欠失、又は置換を有するドナー配列によって修飾される。一部の実施形態において、標的編集部位はドナー配列によって置き換えられる。
【0124】
標的配列の操作というとき、本出願人らはまた、標的編集部位の後成的操作も意味する。これは、標的編集部位のメチル化状態の修飾(即ち、メチル化又はメチル化パターン又はCpG島の付加又は除去)、ヒストン修飾、標的編集部位の露出度の増加又は低減によるか、又は3次元の折り畳みの促進によるなど、標的配列のクロマチン状態の操作であり得る。
【0125】
また、1つ以上の動物又は植物細胞における1つ以上の遺伝子の機能を調べる方法であって、本明細書に提供される方法を用いて遺伝的摂動を導入すること、及び改変された細胞における1つ以上の遺伝子の発現の変化を決定することを含み、それによって1つ以上の遺伝子の機能を調べる方法も提供される。一部の実施形態において、遺伝的摂動は機能喪失突然変異である。
【0126】
一部の実施形態において、本方法は、同じ標的に対する異なる修飾(即ち、挿入、欠失、又は置換)を有する複数のドナーDNAを使用することを含む。一部の実施形態において、複数のドナーDNAは、プロモーター領域(promoger regions)又はコード配列を標的とする。一部の実施形態では、異なる修飾を有する細胞が、続いて(subesequently)特定の表現型に関してスクリーニングされてもよい。
【0127】
ii.哺乳類の遺伝子操作
また、本明細書には、哺乳類細胞の遺伝子編集方法も提供される。一部の実施形態において、遺伝子編集は、遺伝子病態又は疾患に関わる遺伝子座のものである。一部の実施形態において、疾患又は障害は、酵素の突然変異によって引き起こされる。一部の実施形態において、遺伝子病態は代謝障害である。
【0128】
例示的病態及び遺伝子は、アミロイドニューロパチー(TTR、PALB);アミロイドーシス(APOA1、APP、AAA、CVAP、AD1、GSN、FGA、LYZ、TTR、PALB);硬変(KRT18、KRT8、CIRH1A、NAIC、TEX292、KIAA1988);嚢胞性線維症(CFTR、ABCC7、CF、MRP7);糖原病(SLC2A2、GLUT2、G6PC、G6PT、G6PT1、GAA、LAMP2、LAMPB、AGL、GDE、GBE1、GYS2、PYGL、PFKM);肝細胞腺腫、142330(TCF1、HNF1A、MODY3)、肝不全、早期発症型、及び神経学的障害(SCOD1、SCOl)、肝性リパーゼ欠損症(LIPC)、肝芽腫、癌及び癌腫(CTNNB1、PDGFRL、PDGRL、PRLTS、AXIN1、AXIN、CTNNB1、TP53、P53、LFS1、IGF2R、MPRI、MET、CASP8、MCH5;腎髄質嚢胞症(UMOD、HNFJ、FJHN、MCKD2、ADMCKD2);フェニルケトン尿症(PAH、PKU1、QDPR、DHPR、PTS);多発性嚢胞腎及び肝疾患(FCYT、PKHD1、ARPKD、PKD1、PKD2、PKD4、PKDTS、PRKCSH、G19P1、PCLD、SEC63)である。他の好ましい標的としては、PCSK9;Hmgcr;SERPINA1;ApoB;LDL;ハンチントン病(ハンチントン)、ヘモクロマトーシス(HEF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(ジストロフィン)、鎌状赤血球貧血(βグロビン)、及びテイ・サックス(ヘキソサミニダーゼA)のうちの任意の1つ以上が挙げられる。
【0129】
ヒト又は非ヒト哺乳類又は生物を含めた生物又は哺乳類を目的のゲノム遺伝子座における標的編集部位の操作によって修飾する方法について言及される場合、それは、生物(又は哺乳類)全体に適用されてもよく、又は単に(生物が多細胞性であるならば)当該生物からの単一細胞若しくは細胞集団だけに適用されてもよいことが理解されるであろう。ヒトの場合には、例えば、本出願人らは単一細胞又は細胞集団をとりわけ想定し、これらは好ましくは、エキソビボで修飾され、次に再導入され得る。その場合、生検又は他の組織若しくは生体液試料が必要となり得る。この点で幹細胞もまた特に好ましい。しかし、当然ながら、インビボ実施形態もまた想定される。
【0130】
本方法は、エキソビボ又はインビトロ、例えば細胞培養物又はエキソビボ若しくはインビトロモデル(オルガノイド又は「オンチップ動物又は植物細胞」など)であってもよい。或いは、本方法はインビボであってもよく、その場合、方法はまた、対象から第1の細胞集団を単離すること、及び第2の細胞集団を(再び)対象に移植することも含む。遺伝子摂動は、1つ以上、又は2つ以上、又は3つ以上、又は4つ以上の遺伝子に対するものであってよい。
【0131】
本発明の一部の実施形態では、ノックアウトモデルを作製することができる。
【0132】
一部の実施形態において、送達は、レンチウイルス又はバキュロウイルス又は好ましくはアデノウイルス/アデノ随伴ウイルスベクターなど、ウイルスベクターであってよいベクターの形態であるが、他の送達手段が公知であり(酵母システム、微小胞、遺伝子銃/ベクターを金ナノ粒子に取り付ける手段など)、提供される。ベクターとは、ウイルス又は酵母システム(例えば、ここでは目的の核酸がプロモーターに(最終的にプロセシングされたRNAを提供するためなど、発現の点で)作動可能に連結され、その制御下にあってもよい)を意味するのみならず、宿主細胞内への核酸の直接的な送達もまた意味する。本明細書の方法では、ベクターはウイルスベクターであってよく、これは有利にはAAVであるが、レンチウイルスなど、本明細書で考察するとおりの他のウイルスベクターを利用することもできる。例えば、昆虫細胞における発現には、バキュロウイルスが用いられてもよい。こうした昆虫細胞は、次には、本発明の送達に適合されたAAV又はレンチウイルスベクターなど、更なるベクターを大量に作製するのに有用となり得る。
【0133】
iii.植物の遺伝子操作
一部の実施形態において、本明細書には、植物の遺伝子操作方法が提供される。目的のポリヌクレオチド/ポリペプチドとしては、限定はされないが、除草剤耐性コード配列、殺虫性コード配列、殺線虫性コード配列、抗微生物性コード配列、抗真菌性コード配列、抗ウイルス性コード配列、非生物的及び生物的ストレス耐性コード配列、又は収量、穀粒品質、栄養含量、デンプンの質及び量、窒素固定及び/又は利用、脂肪酸、及び含油量及び/又は組成など、植物形質を修飾する配列が挙げられる。より具体的な目的のポリヌクレオチドとしては、限定はされないが、作物収穫量を向上させる遺伝子、作物の望ましさを向上させるポリペプチド、干ばつ、窒素、温度、塩分、有毒金属又は微量元素などの非生物的ストレスに対する抵抗性を付与するタンパク質をコードする遺伝子、又は農薬及び除草剤などの毒素に対する抵抗性、又は真菌、ウイルス、細菌、昆虫、及び線虫による攻撃、並びにこれらの生物に関連する病害の発生などの生物的ストレスに対する抵抗性を付与するものが挙げられる。目的の遺伝子の一般的カテゴリーには、例えば、ジンクフィンガーなど、情報に関わる遺伝子、キナーゼなど、コミュニケーションに関わる遺伝子、及び熱ショックタンパク質など、ハウスキーピングに関わる遺伝子が含まれる。トランス遺伝子のより具体的なカテゴリーには、例えば、作物栽培学、虫害抵抗性、病害抵抗性、除草剤抵抗性、稔性又は不稔性、穀粒特性、及び市販用生産物に重要な形質をコードする遺伝子が含まれる。目的の遺伝子としては、概して、油、デンプン、炭水化物、又は栄養素代謝に関わる遺伝子、並びに他の形質と積み重ねるか、又は組み合わせて用いてもよい、穀粒サイズ、ショ糖負荷などに影響を及ぼす遺伝子が挙げられる。
【0134】
従来の育種方法を用いることに加えて、油、デンプン、及びタンパク質含量などの作物栽培学的に重要な形質を遺伝的に改変することができる。修飾には、オレイン酸、飽和及び不飽和油の含量を増加させること、リジン及び硫黄のレベルを増加させること、必須アミノ酸を提供すること、及びまた、デンプンの修飾が含まれる。ホルドチオニンタンパク質修飾について、米国特許第5,703,049号明細書、同第5,885,801号明細書、同第5,885,802号明細書、及び同第5,990,389号明細書(本明細書において参照により援用される)に記載されている。別の例は、米国特許第5,850,016号明細書に記載されるダイズ2Sアルブミンによってコードされるリジン及び/又は硫黄リッチ種子タンパク質、及びWilliamson et al.(1987)Eur.J.Biochem.165:99-106に記載されるオオムギ由来のキモトリプシン阻害薬(これらの開示は本明細書において参照により援用される)である。
【0135】
目的のポリヌクレオチドにはまた、例えば、エタノール生産用のデンプンを増加させ得るか、又はタンパク質の発現を提供し得る商業的形質もコードすることができる。形質転換植物の別の重要な商業的利用は、米国特許第5,602,321号明細書に記載されるなどの、ポリマー及びバイオプラスチックの生産である。β-ケトチオラーゼ、PHBアーゼ(ポリヒドロキシ酪酸シンターゼ)、及びアセトアセチル-CoAレダクターゼなどの遺伝子(Schubert et al.(1988)J.Bacteriol.170:5837-5847を参照)は、ポリヒドロキシアルカノエート類(PHA類)の発現を促進する。
【0136】
部位特異的突然変異誘発によってコード配列の誘導体を作製することにより、コードされるポリペプチド中にある予め選択されたアミノ酸のレベルを増加させることができる。例えば、オオムギ高リジンポリペプチド(BHL)をコードする遺伝子は、オオムギキモトリプシン阻害剤に由来する。1996年11月1日に出願された米国特許出願第08/740,682号明細書、及び国際公開第98/20133号パンフレット(これらの開示は本明細書において参照により援用される)。他のタンパク質としては、ヒマワリ種子(Lilley et al.(1989)Proceedings of the World Congress on Vegetable Protein Utilization in Human Foods and Animal Feedstuffs,ed.Applewhite(American Oil Chemists Society,Champaign,Ill.),pp.497-502;本明細書において参照により援用される);トウモロコシ(Pedersen et al.(1986)J.Biol.Chem.261:6279;Kirihara et al.(1988)Gene 71:359;これらは両方とも、本明細書において参照により援用される);及びコメ(Musumura et al.(1989)Plant Mol.Biol.12:123、本明細書において参照により援用される)由来などのメチオニンリッチ植物性タンパク質が挙げられる。他の作物栽培学的に重要な遺伝子は、ラテックス、Floury 2、成長因子、種子貯蔵因子、及び転写因子をコードする。
【0137】
作物収穫量を向上させるポリヌクレオチドとしては、Rht1及びRht2など、矮化遺伝子(Peng et al.(1999)Nature 400:256-261)、及びアンモニウム誘導性グルタミン酸デヒドロゲナーゼなど、植物成長を増加させるものが挙げられる。作物の望ましさを向上させるポリヌクレオチドとしては、例えば、植物の飽和脂肪含量を低下させるもの、植物の栄養価を押し上げるもの、及び穀粒タンパク質を増加させるものが挙げられる。耐塩性を向上させるポリヌクレオチドは、1つ又は複数の耐塩性遺伝子が導入された植物の天然環境と比べて高塩分の環境での植物成長を増加させるもの又は可能にするものである。
【0138】
アミノ酸生合成に影響を与えるポリヌクレオチド/ポリペプチドとしては、例えば、植物、真菌、及び細菌において芳香族アミノ酸経路からトリプトファン生合成へと枝分かれする最初の反応を触媒するアントラニル酸シンターゼ(AS;EC4.1.3.27)が挙げられる。植物では、トリプトファン生合成の化学的過程は葉緑体に区画化される。例えば、米国特許出願公開第20080050506号明細書(本明細書において参照により援用される)を参照のこと。更なる目的の配列としては、コリスミ酸ピルビン酸リアーゼ(CPL)が挙げられ、これは、コリスミ酸からピルビン酸及びpHBAへの変換を触媒する酵素をコードする遺伝子を指す。最も良く特徴付けられているCPL遺伝子は、大腸菌(E.coli)から単離されており、GenBank受託番号M96268を有する。米国特許第7,361,811号明細書(本明細書において参照により援用される)を参照のこと。
【0139】
これらの目的のポリヌクレオチド配列は、病害又は害虫抵抗性を提供することに関わるタンパク質をコードし得る。「病害抵抗性」又は「害虫抵抗性」とは、植物病原菌相互作用の結果である有害な症状を植物が回避することを意図する。害虫抵抗性遺伝子は、根食い虫、根切り虫、アワノメイガなど、収穫量低下の大きな要因となる害虫に対する抵抗性をコードし得る。抗細菌保護のためのリゾチーム又はセクロピンなどの病害抵抗性及び昆虫抵抗性遺伝子、又は抗真菌保護のためのデフェンシン、グルカナーゼ又はキチナーゼなどのタンパク質、又は線虫若しくは昆虫の防除のためのバチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)エンドトキシン、プロテアーゼ阻害薬、コラゲナーゼ、レクチン、又はグリコシダーゼは、全て、有用な遺伝子産物の例である。病害抵抗性形質をコードする遺伝子としては、フモニシンに対するものなど、解毒遺伝子(米国特許第5,792,931号明細書);非病原性(avr)及び病害抵抗性(R)遺伝子(Jones et al.(1994)Science 266:789;Martin et al.(1993)Science 262:1432;及びMindrinos et al.(1994)Cell 78:1089)などが挙げられる。昆虫抵抗性遺伝子は、根食い虫、根切り虫、アワノメイガなど、収穫量低下の大きな要因となる害虫に対する抵抗性をコードし得る。かかる遺伝子としては、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)毒性タンパク質遺伝子(米国特許第5,366,892号明細書;同第5,747,450号明細書;同第5,736,514号明細書;同第5,723,756号明細書;同第5,593,881号明細書;及びGeiser et al.(1986)Gene 48:109)などが挙げられる。
【0140】
「除草剤抵抗性タンパク質」又は「除草剤抵抗性コード核酸分子」の発現によって生じるタンパク質としては、そのタンパク質を発現しない細胞と比べて高濃度の除草剤に耐える能力、又はそのタンパク質を発現しない細胞と比べてある種の濃度の除草剤に対して長時間耐える能力を細胞に付与するタンパク質が挙げられる。除草剤抵抗性形質は、アセト乳酸シンターゼ(ALS)の作用を阻害する働きをする除草剤、詳細にはスルホニル尿素系除草剤に対する抵抗性をコードする遺伝子、ホスフィノトリシン又はバスタ(basta)(例えば、bar遺伝子)、グリホサート(例えば、EPSPシンターゼ遺伝子及びGAT遺伝子)、HPPD阻害薬(例えば、HPPD遺伝子)など、グルタミンシンターゼの作用を阻害する働きをする除草剤に対する抵抗性をコードする遺伝子又は当該技術分野において公知の他のかかる遺伝子によって植物に導入され得る。例えば、米国特許第7,626,077号明細書、同第5,310,667号明細書、同第5,866,775号明細書、同第6,225,114号明細書、同第6,248,876号明細書、同第7,169,970号明細書、同第6,867,293号明細書、及び米国仮特許出願第61/401,456号明細書(これらの各々は、本明細書において参照により援用される)を参照のこと。bar遺伝子は、除草剤バスタ(basta)に対する抵抗性をコードし、nptII遺伝子は、抗生物質カナマイシン及びジェネティシンに対する抵抗性をコードし、及びALS遺伝子突然変異体は、除草剤クロルスルフロンに対する抵抗性をコードする。
【0141】
更なる選択マーカーとしては、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン類、及び2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)など、除草化合物に対する抵抗性を付与する遺伝子が挙げられる。例えば、Yarranton,(1992)Curr Opin Biotech 3:506-11;Christopherson et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314-8;Yao et al.,(1992)Cell 71:63-72;Reznikoff,(1992)Mol Microbiol 6:2419-22;Hu et al.,(1987)Cell 48:555-66;Brown et al.,(1987)Cell 49:603-12;Figge et al.,(1988)Cell 52:713-22;Deuschle et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400-4;Fuerst et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549-53;Deuschle et al.,(1990)Science 248:480-3;Gossen,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917-21;Labow et al.,(1990)Mol Cell Biol 10:3343-56;Zambretti et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952-6;Baim et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072-6;Wyborski et al.,(1991)Nucleic Acids Res 19:4647-53;Hillen and Wissman,(1989)Topics Mol Struc Biol 10:143-62;Degenkolb et al.,(1991)Antimicrob Agents Chemother 35:1591-5;Kleinschnidt et al.,(1988)Biochemistry 27:1094-104;Bonin,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-51;Oliva et al.,(1992)Antimicrob Agents Chemother 36:913-9;Hlavka et al.,(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer-Verlag,Berlin);Gill et al.,(1988)Nature 334:721-4を参照のこと。1つ又は複数の遺伝子にはまた、例えば、エタノール生産用のデンプンを増加させ得るか、又はタンパク質の発現を提供し得る商業的形質もコードすることができる。形質転換植物の別の重要な商業的利用は、米国特許第5,602,321号明細書に記載されるなどの、ポリマー及びバイオプラスチックの生産である。β-ケトチオラーゼ、PHBアーゼ(ポリヒドロキシ酪酸シンターゼ(polyhydroxyburyrate synthase))、及びアセトアセチル-CoAレダクターゼなどの遺伝子(Schubert et al.(1988)J.Bacteriol.170:5837-5847を参照)は、ポリヒドロキシアルカノエート類(polyhyroxyalkanoates)(PHA類)の発現を促進する。
【0142】
外因性産物には、植物酵素及び産物並びに原核生物及び他の真核生物を含めた他の供給源からのものが含まれる。かかる産物には、酵素、補因子、ホルモンなどが含まれる。植物の栄養価値を向上させるため、アミノ酸分布が向上したタンパク質、特に修飾タンパク質のレベルを増加させることができる。これは、アミノ酸含量が亢進したかかるタンパク質の発現によって実現される。
【0143】
一部の実施形態において、真核細胞は、生合成経路中の1つ以上の外因性タンパク質を産生するように操作される。一部の実施形態において、生合成経路は、バイオ燃料生産の生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、アルコールの生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、エタノールの生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、小分子の生産の生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、薬物の生産の生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、ステロールの生産の生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、ホルモンの生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、ペプチドの生産の生合成経路である。一部の実施形態において、生合成経路は、テルペンの生合成経路である。
【0144】
一部の実施形態において、真核細胞は、その子孫がもはや複製できないように操作される。一部の実施形態において、真核細胞は病原性細胞である。
【0145】
トランス遺伝子、組換えDNA分子、目的のDNA配列、及び目的のポリヌクレオチドは、遺伝子サイレンシング用の1つ以上のDNA配列を含み得る。植物におけるDNA配列の発現が関わる遺伝子サイレンシング方法は当該技術分野において公知であり、限定はされないが、共抑制、アンチセンス抑制、二本鎖RNA(dsRNA)干渉、ヘアピンRNA(hpRNA)干渉、イントロン含有ヘアピンRNA(ihpRNA)干渉、転写遺伝子サイレンシング、及びマイクロRNA(miRNA)干渉が挙げられる。
【0146】
iv.検出
当業者は、標的編集部位の遺伝子修飾を様々な手段によって検出し得ることを理解するであろう。一部の実施形態において、本方法は、細胞をシーケンシングすることを更に含む。一部の実施形態において、本方法は、レポーター遺伝子を検出することを含む。一部の実施形態において、本方法は、選択マーカーを用いて細胞を選択することを含む。
【0147】
選択マーカーの例としては、限定はされないが、制限酵素部位を含むDNAセグメント;スペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、バスタ(Basta)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)及びハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)など、抗生物質を含めた、本来毒性の化合物に対する抵抗性を提供する産物をコードするDNAセグメント);本来レシピエント細胞に欠けている産物(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求マーカー)をコードするDNAセグメント;容易に同定し得る産物(例えば、β-ガラクトシダーゼ、GUSなどの表現型マーカー;緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン(CFP)、黄色(YFP)、赤色(RFP)などの蛍光タンパク質、及び細胞表面タンパク質)をコードするDNAセグメント;PCR用の新規プライマー部位の作成(例えば、それまで並置されていなかった2つのDNA配列の並置)、制限エンドヌクレアーゼ又は他のDNA修飾用酵素、化学薬品等の作用を受けない又は受けるDNA配列の取込み;及び、その同定を可能にする特異的修飾(例えば、メチル化)に必要なDNA配列の取込みが挙げられる。
【0148】
更なる選択マーカーとしては、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン類、及び2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)などの除草化合物に対する抵抗性を付与する遺伝子が挙げられる。例えば、Yarranton,(1992)Curr Opin Biotech 3:506-11;Christopherson et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314-8;Yao et al.,(1992)Cell 71:63-72;Reznikoff,(1992)Mol Microbiol 6:2419-22;Hu et al.,(1987)Cell 48:555-66;Brown et al.,(1987)Cell 49:603-12;Figge et al.,(1988)Cell 52:713-22;Deuschle et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400-4;Fuerst et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549-53;Deuschle et al.,(1990)Science 248:480-3;Gossen,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917-21;Labow et al.,(1990)Mol Cell Biol 10:3343-56;Zambretti et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952-6;Baim et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072-6;Wyborski et al.,(1991)Nucleic Acids Res 19:4647-53;Hillen and Wissman,(1989)Topics Mol Struc Biol 10:143-62;Degenkolb et al.,(1991)Antimicrob Agents Chemother 35:1591-5;Kleinschnidt et al.,(1988)Biochemistry 27:1094-104;Bonin,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-51;Oliva et al.,(1992)Antimicrob Agents Chemother 36:913-9;Hlavka et al.,(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer-Verlag,Berlin);Gill et al.,(1988)Nature 334:721-4を参照のこと。
【0149】
C.核酸
一態様において、本開示は、HDR促進剤をコードする核酸を提供する。一部の実施形態において、本明細書には、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含む組成物が提供される。一部の実施形態において、核酸は、1つ以上のベクターにある。一部の実施形態において、核酸は、1つのベクターにある。
【0150】
一部の実施形態において、核酸は、少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子を含む。一部の実施形態において、核酸は、HDR促進剤をコードする。一部の実施形態において、核酸は、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)をコードする。一部の実施形態において、核酸は、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする。一部の実施形態において、核酸は、発現コンストラクト又はベクターである。一部の実施形態において、発現コンストラクト又はベクターは核酸を含む。
【0151】
一部の実施形態において、核酸は、遺伝子編集分子をコードする。一部の実施形態において、核酸は、配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は配列特異的エンドヌクレアーゼをコードし、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、及びガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、核酸は、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAをコードする。一部の実施形態において、核酸は、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、Cas9及び/又はCas12aを含む配列特異的エンドヌクレアーゼをコードし、及びガイドRNA分子は、標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する。
【0152】
一部の実施形態において、核酸は、ドナーDNA分子を含む。一部の実施形態において、核酸は、ドナー鋳型DNAを含む。一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、環状DNAベクター、ジェミニウイルスレプリコン上に、又は線状DNA断片として提供される。一部の実施形態において、ドナーDNA分子にはエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接する。
【0153】
一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、ゲノムDNA標的編集部位の修飾された配列を含む。一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、標的編集部位と比較して1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上の置換を含む。
【0154】
一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、ゲノム標的編集部位と比較して1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む。一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上の欠失を含む。
【0155】
一部の実施形態において、ドナーDNA分子は、ゲノム標的編集部位と比較して1つ以上のヌクレオチドの挿入を含む。一部の実施形態において、挿入は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド又はそれ以上である。
【0156】
一部の実施形態において、核酸は、RNA誘導型ヌクレアーゼを含む配列特異的エンドヌクレアーゼをコードし、標的編集部位は、PAM配列と、ガイドRNAに相補的な、且つプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に直接隣接した位置にある配列とを含む。一部の実施形態において、核酸は、切断後に標的編集部位に5’オーバーハングを提供する配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸は、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供するSSAPをコードする。一部の実施形態において、核酸は、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含むSSAPをコードする。一部の実施形態において、核酸は、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含むRecT/Redβファミリータンパク質をコードする。一部の実施形態において、核酸は、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含むERFファミリータンパク質をコードする。一部の実施形態において、核酸は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含むRAD52ファミリータンパク質をコードする。
【0157】
一部の実施形態において、核酸は、エキソヌクレアーゼをコードする。一部の実施形態において、核酸はエキソヌクレアーゼをコードし、ここでは線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である。一部の実施形態において、リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である。一部の実施形態において、エキソヌクレアーゼは5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる。一部の実施形態において、エキソヌクレアーゼは3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる。一部の実施形態において、エキソヌクレアーゼには、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼIII、Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質が含まれる。一部の実施形態において、エキソヌクレアーゼには、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質が含まれる。
【0158】
一部の実施形態において、核酸は、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする。一部の実施形態において、核酸は、SSB及びSSAPをコードする。一部の実施形態において、核酸は、同じ宿主生物から入手された一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)及びSSAPをコードする。一部の実施形態において、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)は、細菌SSB又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである。一部の実施形態において、SSBは、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである。一部の実施形態において、SSBは、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。
【0159】
一部の実施形態において、核酸は、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含むSSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質をコードする。一部の実施形態において、核酸は、植物細胞で発現させるためのタンパク質をコードする。一部の実施形態において、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む。
【0160】
一部の実施形態において、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする本明細書に提供される核酸は、各々がプロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態において、プロモーターは構成的に活性なプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは植物特異的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは哺乳類プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはウイルスプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは35Sプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはユビキチンプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはアクチンプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは哺乳類プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはCAGプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはU6プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはEF1aプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはヒトACTBプロモーターであり、一部の実施形態、プロモーターはCMVプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはU6プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはT7プロモーターである。一部の実施形態において、部位特異的ヌクレアーゼ、及び/又はCRISPR/Casベースヌクレアーゼ用のそのガイドRNAは、誘導性プロモーターの制御下で発現する。この構成では、システムの他の構成要素の濃度が律速因子とならない時点でゲノム編集プロセスの開始を誘導することができる。
【0161】
一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、1つ以上のベクターに提供される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、1つのベクターに提供される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、2つのベクターに提供される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、3つのベクターに提供される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、4つのベクターに提供される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、5つのベクターに提供される。
【0162】
一部の実施形態において、本明細書には、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードするベクターが提供される。一部の実施形態において、本明細書には、HDR促進エレメントをコードするベクターが提供される。一部の実施形態において、本明細書には、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードするベクターが提供される。一部の実施形態において、本明細書には、少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ及びドナー鋳型をコードするベクターが提供される。
【0163】
また、本明細書には、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む第1のベクター、及びドナー鋳型DNAとガイドRNAとを含む第2のベクターも提供される。
【0164】
一部の実施形態において、核酸は、特定の細胞型での発現用に最適化される。一部の実施形態において、核酸は、特定の種での発現用に最適化される。一部の実施形態において、核酸は、植物細胞での発現用に最適化される。一部の実施形態において、核酸は、哺乳類細胞での発現用に最適化される。一部の実施形態において、核酸は、エキソヌクレアーゼ、SSBタンパク質、及び/又はSSAPなどのタンパク質コード配列を含む。一部の実施形態において、タンパク質コード配列は、植物細胞での翻訳にコドン最適化される。一部の実施形態において、タンパク質コード配列は、哺乳類細胞での翻訳にコドン最適化される。
【0165】
特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームは、約20、50、100、200、400、又は600~約800、又は1000塩基対長であり得る。例えば、ドナーDNA鋳型相同アームは、約20~約1000、約50~約1000、約100~約1000、約200~約1000、又は約600~1000塩基対長であり得る。一部の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームは、約400~約800塩基対長である。一部の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームは、250塩基対長未満である。一部の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームは、100塩基対長未満である。
【0166】
特定の実施形態において、ドナーDNA鋳型相同アームのGC含量が修飾される。一部の実施形態において、GC含量は最大化される。
【0167】
一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、特定の細胞型での発現用に修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、真核細胞での発現用に修飾される。一部の実施形態において、核酸は、植物又は動物細胞での発現用に修飾される。一部の実施形態において、核酸は、哺乳類細胞用に修飾される。一部の実施形態において、核酸は、マウス又は霊長類細胞用に修飾される。一部の実施形態において、核酸は、ヒト細胞用に修飾される。一部の実施形態において、核酸は、マウス細胞用に修飾される。
【0168】
特定の細胞型での発現用に核酸組成物を修飾する方法は、当該技術分野において周知である。一部の実施形態において、本明細書に提供されるヌクレオチドのGC(グアニン-シトシン)含量が修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される核酸は、特定の細胞型、例えば真核細胞用にコドン最適化される。
【0169】
i.ウイルスベクター
一態様において、本開示は、哺乳類細胞での発現用の本明細書に開示される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、ベクターは、発現コンストラクトを含む。一部の実施形態において、ベクターは、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードする核酸を含む。
【0170】
一部の実施形態において、本明細書には、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及び/又はv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含むベクターが提供される。
【0171】
一部の実施形態において、第1のベクターが、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする。一部の実施形態において、第2のベクターが、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする。一部の実施形態において、第1のベクターは、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBタンパク質のうちの少なくとも1つをコードしない。一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBタンパク質のうちの第1のベクターによってコードされない少なくとも1つは、第2のベクターによってコードされる。一部の実施形態において、構成要素は、以下の表Bに示されるとおりの第1及び第2のベクターによってコードされる。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBは、様々な組み合わせで3つのベクターに提供される。例えば、配列特異的エンドヌクレアーゼを含む第1のベクター、ドナー鋳型DNAを含む第2のベクター、及びSSAPとエキソヌクレアーゼとSSBとを含む第3のベクター、又は配列特異的エンドヌクレアーゼとドナー鋳型DNAとSSAPとを含む第1のベクター、エキソヌクレアーゼを含む第2のベクター、及びSSBを含む第3のベクター。
【0177】
一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBは、様々な組み合わせで4つのベクターに提供される。例えば、配列特異的エンドヌクレアーゼを含む第1のベクター、ドナー鋳型DNAを含む第2のベクター、SSAPを含む第3のベクター、及びエキソヌクレアーゼとSSBとを含む第4のベクター、又は配列特異的エンドヌクレアーゼとドナー鋳型DNAとを含む第1のベクター、SSAPを含む第2のベクター、エキソヌクレアーゼを含む第3のベクター、及びSSBを含む第4のベクター。
【0178】
一部の実施形態において、配列特異的エンドヌクレアーゼ、ドナー鋳型DNA分子、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及びSSBは、5つのベクターに提供される。
【0179】
一部の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはパルボウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは組換えAAV(rAAV)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターはアデノウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはレトロウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはヘルペスウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはバキュロウイルスベクターである。
【0180】
一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24-30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHuSO、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、又はブタAd3型に由来する。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2又はアデノウイルス血清型5バリアントに由来する。一部の実施形態において、ベクターは組換えレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD 114又はこれらにおけるバリアントでシュードタイプ化したレンチウイルスに由来する。一部の実施形態において、ベクターはrHSVベクターである。一部の実施形態において、rHSVベクターは、rHSV-1又はrHSV-2に由来する。
【0181】
上記の方法の一部の実施形態において、ベクターはrAAVベクターである。一部の実施形態において、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードする発現コンストラクトには、1つ以上のAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接する。一部の実施形態において、発現コンストラクトには、2つのAAV ITRが隣接する。一部の実施形態において、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、又はマウスAAV血清型ITRである。一部の実施形態において、AAV ITRは、AAV2 ITRである。一部の実施形態において、ベクターは、スタッフィアー(stuffier)核酸を更に含む。一部の実施形態において、スタッフィアー(stuffier)核酸は、プロモーターと発現コンストラクトをコードする核酸との間に位置する。一部の実施形態において、ベクターは、自己相補的rAAVベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードする第1の核酸配列と、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードする第2の核酸配列とを含む。一部の実施形態において、第1の核酸配列と第2の核酸配列とは、突然変異型AAV ITRによって連結され、ここで突然変異型AAV ITRはD領域の欠失を含み、及び末端分解配列の突然変異を含む。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるベクター(例えば、rAAVベクター)のいずれかを含む細胞を提供する。
【0182】
上記の方法の一部の実施形態において、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードするベクターはウイルス粒子中にあり、ここでウイルス粒子は、rAAVベクターをカプシド化するAAV粒子、組換えアデノウイルスベクターをカプシド化するアデノウイルス粒子、組換えレンチウイルスベクターをカプシド化するレンチウイルス粒子又は組換えHSVベクターをカプシド化するHSV粒子である。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えアデノウイルスベクターをカプシド化するアデノウイルス粒子である。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHuSO、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、又はブタAd3型由来のカプシドを含む。一部の実施形態において、アデノウイルス粒子は、アデノウイルス血清型2カプシド又はアデノウイルス血清型Sカプシドのバリアントを含む。一部の実施形態において、ウイルス粒子は、組換えレンチウイルスベクターをカプシド化するレンチウイルス粒子である。一部の実施形態において、レンチウイルス粒子は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114又はこれらにおけるバリアントでシュードタイプ化したカプシドを含む。一部の実施形態において、ウイルス粒子はHSV粒子である。一部の実施形態において、HSV粒子はrHSV-1粒子又はrHSV-2粒子である。
【0183】
上記の方法の一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAVベクターのいずれかを含む組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAVウイルス粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、又はマウスAAVカプシドrAAV2/HBoVl血清型カプシドを含む。一部の実施形態において、ITRとrAAVウイルス粒子のカプシドとは、同じAAV血清型に由来する。一部の実施形態において、ITRとrAAVウイルス粒子のカプシドとは、異なるAAV血清型に由来する。一部の実施形態において、ITRはAAV2に由来し、rAAV粒子のカプシドは、AAV1に由来する。本発明は、本明細書に記載される実施形態のうちのいずれか1つの発現コンストラクトを含むベクターを提供する。一部の実施形態において、発現コンストラクトは、HDR促進剤(例えば、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSB)、配列特異的エンドヌクレアーゼ、及び/又はドナー鋳型DNA分子をコードする。一部の実施形態において、ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター又は組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは組換えアデノウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2、1、5、6、19、3、11、7、14、16、21、12、18、31、8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24~30、37、40、41、AdHu2、AdHu3、AdHu4、AdHu24、AdHu26、AdHu34、AdHu35、AdHu36、AdHu37、AdHu41、AdHu48、AdHu49、AdHu50、AdC6、AdC7、AdC69、ウシAd3型、イヌAd2型、ヒツジAd、又はブタAd3型に由来する。一部の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルス血清型2又はアデノウイルス血清型Sのバリアントに由来する。一部の実施形態において、ベクターは組換えレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、組換えレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ロスリバーウイルス(RRV)、エボラウイルス、マールブルグウイルス、モコラウイルス(Mokala virus)、狂犬病ウイルス、RD114又はこれらにおけるバリアントでシュードタイプ化したレンチウイルスに由来する。一部の実施形態において、ベクターはrHSVベクターである。一部の実施形態において、rHSVベクターは、rHSV-1又はrHSV-2に由来する。
【0184】
一部の実施形態において、ベクターは選択マーカーを含む。
【0185】
上記の方法の一部の実施形態において、ウイルス粒子は組成物(例えば、医薬組成物)である。一部の実施形態において、この組成物は、薬学的に許容可能な担体を更に含む。
【0186】
ii.他のベクター
一部の実施形態において、ベクターは非ウイルスベクターである。一部の実施形態において、ベクターはプラスミドである。一部の実施形態において、ベクターは植物形質転換ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、組織培養物又は植物組織におけるアグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介性一過性発現又は安定形質転換用のベクターである。
【0187】
本発明と適合性のある組換えプラスミドベクターを使用する例示的システムとしては、限定はされないが、「融合構造体」及び「バイナリー」システムが挙げられる。「融合構造体」システムでは、例えば、pMLJ1シャトルベクター及び非発癌性プラスミドpGV3850の場合のように、植物細胞形質転換に必要なシス作用性エレメント及びトランス作用性エレメントの両方を含む非発癌性プラスミドに、目的の遺伝子を含有するシャトルベクターが遺伝子組換えによって挿入される。第2のシステムは「バイナリー」システムと呼ばれ、ここでは2つのプラスミドが使用される;目的の遺伝子は、植物形質転換に必要なシス作用性エレメントを含むシャトルベクターに挿入される。他の必要な機能は、pBIN19シャトルベクター及び非発癌性プラスミドPAL4404によって例示されるとおり、非発癌性プラスミドによってトランスで提供される。これらのシステムに有用な上記及び他のベクターは、市販されている。
【0188】
D.細胞
一態様において、本開示は、HDR促進剤を含む真核細胞を提供する。一部の実施形態において、真核細胞は、ゲノム編集分子とHDR促進剤とを含む。一部の実施形態において、細胞は、宿主細胞である。一部の実施形態において、細胞は、本方法により修飾されることになる細胞である。一部の実施形態において、ゲノム編集分子は、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと;(ii)標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含む。一部の実施形態において、HDR促進剤は、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む。
【0189】
別の態様において、本開示は、本明細書に提供される方法によって作製される真核細胞を提供する。一部の実施形態において、真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾は、ゲノム編集分子とHDR促進剤とを真核細胞に提供することを含み、ここでゲノム編集分子は、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、(ii)標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤は、SSAPと、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、SSBタンパク質とを含む。一部の実施形態において、細胞は、本方法に係る修飾によって作製されるゲノムシグネチャを有する。一部の実施形態において、ヌクレアーゼ切断部位が除去される。一部の実施形態において、核酸配列タグが関心をもたれる。
【0190】
一部の実施形態において、本明細書には、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)をコードする核酸、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼをコードする核酸、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む1つ以上のベクターを含む宿主細胞が提供される。一部の実施形態において、宿主細胞は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)をコードする核酸、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼをコードする核酸、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸をコードする1つのベクターを含む。一部の実施形態において、細胞は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする核酸、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子を含む第1のベクターと、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)をコードする核酸、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼをコードする核酸、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む第2のベクターとを含む。
【0191】
更に、本明細書に記載されるとおり、真核細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する真核細胞を作り、及び/又は真核細胞を遺伝子操作するため、本開示の方法が用いられる。
【0192】
一部の実施形態において、細胞は単離細胞である。一部の実施形態において、細胞は細胞培養下にある。一部の実施形態において、細胞はエキソビボである。一部の実施形態において、細胞は、生体から入手され、細胞培養物中に維持される。一部の実施形態において、細胞は単細胞生物である。一部の実施形態において、細胞は生物の内部にある。一部の実施形態において、細胞は生物である。一部の実施形態において、細胞は、単細胞真核生物の細胞、原虫細胞、植物由来の細胞、藻類細胞(例えば、ボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、ヤツマタモク(Sargassum patens,C.agardh)など)、海藻(例えばケルプ)、真菌細胞(例えば、酵母細胞、キノコ由来の細胞)、動物細胞、無脊椎動物(例えば、ショウジョウバエ、刺胞動物、棘皮動物、線虫等)由来の細胞、脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)由来の細、哺乳類(例えば、有蹄類(例えば、ブタ、雌ウシ、ヤギ、ヒツジ);げっ歯類(例えば、ラット、マウス);非ヒト霊長類;ヒト;ネコ科動物(例えば、ネコ);イヌ科動物(例えば、イヌ)等)由来の細胞などである。一部の実施形態において、細胞は、天然の生物に由来しない細胞である(例えば、細胞は合成的に作られた細胞であってもよい;人工細胞とも称される)。一部の実施形態において、細胞は、細胞培養物(例えば、インビトロ細胞培養物)中にある。一部の実施形態において、細胞は、一群の細胞のうちの1つである。一部の実施形態において、細胞は真核細胞であるか、又は真核細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は植物細胞であるか、又は植物細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は動物細胞であるか、又は動物細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は無脊椎動物細胞であるか、又は無脊椎動物細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は脊椎動物細胞であるか、又は脊椎動物細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は哺乳類細胞であるか、又は哺乳類細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞はげっ歯類細胞であるか、又はげっ歯類細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞はヒト細胞であるか、又はヒト細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は非ヒト動物細胞であるか、又は非ヒト動物細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は非ヒト哺乳類細胞であるか、又は非ヒト哺乳類細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は真菌細胞であるか、又は真菌細胞に由来する。一部の実施形態において、細胞は昆虫細胞である。一部の実施形態において、細胞は節足動物細胞である。一部の実施形態において、細胞は原虫細胞である。一部の実施形態において、細胞は蠕虫細胞である。一部の実施形態において、細胞は非哺乳類動物細胞である。一部の実施形態において、細胞は魚類細胞である。一部の実施形態において、細胞は昆虫細胞である。一部の実施形態において、細胞はショウジョウバエ細胞である。一部の実施形態において、細胞はドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)細胞である。一部の実施形態において、細胞は線虫細胞である。一部の実施形態において、細胞はカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)細胞である。一部の実施形態において、細胞は回虫細胞である。
【0193】
一部の実施形態において、細胞は、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上を含む前駆細胞であり、ここで前駆細胞は、i)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、前駆細胞に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つは、続いて前駆細胞にポリペプチド、DNA、又はmRNAを送達すること及び/又は前駆細胞の性的交雑によって提供される。例えば、一部の実施形態において、前駆細胞はi)~v)のうちの1つ以上の構成要素を欠いており、欠けている構成要素で形質転換される。
【0194】
i.植物細胞
一部の実施形態において、真核細胞は植物細胞である。一部の実施形態において、HDR促進剤を含む真核細胞は、植物細胞である。更に、植物細胞のHDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する植物細胞を作り、及び/又は植物細胞を遺伝子操作するため、本開示の方法が用いられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、植物細胞を編集することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、植物細胞においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、植物細胞ゲノムの標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、植物細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させることを含む。
【0195】
特定の実施形態において、細胞は、単離植物細胞又は植物プロトプラストである(即ち、解離されていない又はインタクトな植物組織、植物部分、又は全植物に位置しない)。特定の実施形態において、植物細胞は、任意の植物部分又は組織又はカルスから入手される。特定の実施形態において、培養物は、植物組織、培養植物組織外植片、全植物、インタクトな芽の節、茎頂又は茎頂分裂組織、根端又は根端分裂組織、側部分裂組織、介在分裂組織、実生、全種子、半分に割られた種子又は他の種子断片、接合胚、体細胞胚、未熟胚、胚珠、花粉、小胞子、葯、胚軸、子葉、葉、葉柄、茎、塊茎、根、カルス、又は植物細胞懸濁液から入手された植物細胞を含む。特定の実施形態において、植物細胞は、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、モロコシ、又はコメ)の未熟胚又は成熟胚のL1層又はL2層に由来する。
【0196】
特定の実施形態において、植物細胞は、解離されていない又はインタクトな植物組織、植物部分、植物外植片、又は全植物に位置する。特定の実施形態において、植物細胞は、インタクトな芽の節、培養植物組織外植片、茎頂又は茎頂分裂組織、根端又は根端分裂組織、側部分裂組織、介在分裂組織、実生、全種子、半分に割られた種子又は他の種子断片、接合胚、体細胞胚、未熟胚、胚珠、花粉、小胞子、葯、胚軸、子葉、葉、葉柄、茎、塊茎、根、又はカルスに位置し得る。特定の実施形態において、使用される外植片には、未熟胚が含まれる。未熟胚(例えば、未熟トウモロコシ胚)には、1.8~2.2mm胚、1~7mm胚、及び3~7mm胚が含まれる。特定の実施形態において、前述の胚は、成熟穂由来の種子、葉脚、成熟植物の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟穂、及び絹糸から入手される。様々な態様において、形質転換に使用される植物由来の外植片には、未熟胚、1.8~2.2mm胚、1~7mm胚、及び3.5~7mm胚が含まれる。ある態様において、胚は、成熟穂由来の種子、葉脚、成熟植物の葉、葉頂、未熟花序、雄穂、未熟穂、又は絹糸に由来し得る。特定の実施形態において、植物細胞は、多能性植物細胞(例えば、幹細胞又は分裂組織細胞)である。特定の実施形態において、植物細胞は、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、モロコシ、又はコメ)の未熟胚又は成熟胚のL1層又はL2層内に位置する。
【0197】
特定の実施形態において、植物細胞は、一倍体、二倍体、又は倍数体植物細胞又は植物プロトプラスト、例えば、一倍体、二倍体、又は倍数体植物、植物部分若しくは組織、又はカルスから入手されたものである。特定の実施形態において、培養下の植物細胞(又は再生植物、子孫種子、及び子孫植物)は、一倍体であるか、又は一倍体になるように誘導することができる;一倍体植物及び植物細胞の作製及び使用技法は当該技術分野において公知であり、例えば、Maruthachalam and Chanによって“How to make haploid Arabidopsis thaliana”、www[dot]openwetware[dot]org/images/d/d3/Haploid_Arabidopsis_protocol[dot]pdfで利用可能なプロトコルに記載されるとおりの、改変型のセントロメア特異的ヒストンCENH3を発現する一倍体誘導株と野生型株を交雑することによるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)における一倍体の作成方法を参照のこと;(Ravi et al.(2014)Nature Communications,5:5334,doi:10.1038/ncomms6334)。一倍体はまた、米国特許第9,215,849号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるとおり、多種多様な単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、コメ、モロコシ、オオムギ)又は双子葉植物(例えば、ダイズ、キャノーラを含めたアブラナ属種(Brassica sp.)、ワタ、トマト)において、突然変異型CENH3遺伝子を含む植物を野生型二倍体植物と交雑させて一倍体子孫を作成することによっても入手し得る。一倍体トウモロコシ植物及び/又は細胞を入手するために使用し得る一倍体誘導トウモロコシ株には、Stock 6、MHI(Moldovian Haploid Inducer(モルドバ一倍体誘導体))、不確定配偶体(indeterminate gametophyte:ig)突然変異、KEMS、RWK、ZEM、ZMS、KMS、並びに米国特許第9,677,082号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるトランスジェニック一倍体誘導株が含まれる。一倍体細胞の例としては、限定はされないが、一倍体植物から入手された植物細胞及び生殖組織から入手された、例えば、花、発育中の花又は花芽、子房、胚珠、大胞子、葯、花粉、大配偶体、及び小胞子から入手された植物細胞が挙げられる。植物細胞又は植物プロトプラストが一倍体である特定の実施形態では、植物細胞又は植物プロトプラストにおいて遺伝的相補体を染色体倍加(例えば、減数分裂時の非減数による自然染色体倍加によるか、又はコルヒチン、オリザリン、トリフルラリン、プロナミド、亜酸化窒素ガス、抗微小管除草剤、抗微小管剤、及び有糸分裂阻害薬などの染色体倍加剤を用いることによる)によって倍加させると、倍加一倍体植物細胞又は植物プロトプラストを産生することができ、ここで遺伝子の相補体又はアレルはホモ接合性であり;更に他の実施形態は、倍加一倍体植物細胞又は植物プロトプラストからの倍加一倍体植物の再生を含む。別の実施形態は、この手法によって提供される倍加一倍体植物である少なくとも1つの親植物を有するハイブリッド植物に関する。倍加一倍体植物を作製すると、ホモ接合植物を入手するのに数世代の自家交雑を必要とする代わりに、1世代でホモ接合性がもたらされる。倍加一倍体の使用は、最小限の時間で遺伝的純度(即ちホモ接合性)を確立することが所望される任意の状況で有利である。倍加一倍体の作製は、果実及び他の樹木など、成長が遅い植物において、又は少なくとも1つの倍加一倍体植物の子孫であるハイブリッド植物の作製に、特に有利であり得る。
【0198】
特定の実施形態において、植物細胞は、任意の目的の単子葉又は双子葉植物種、例えば、条植え作物植物、果実産生植物及び樹木、野菜、樹木、及び装飾花を含む観賞植物、低木、樹木、地被植物、及び芝草から入手されるか、又はそこに位置する。特定の非限定的な実施形態において、植物細胞は、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、アーモンド類(プルヌス・デュルキス(Prunus dulcis))、リンゴ類(マルスxドメスティカ(Malus x domestica))、アンズ類(プルヌス・アルメニアカ(Prunus armeniaca)、P.ブリガンティネ(P.brigantine)、P.マンドシュリカ(P.mandshurica)、P.ムメ(P.mume)、P.シビリカ(P.sibirica))、アスパラガス(アスパラグス・オフィキナリス(Asparagus officinalis))、バナナ類(バショウ属種(Musa spp.))、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare))、マメ類(インゲンマメ属種(Phaseolus spp.))、ブルーベリー類及びクランベリー類(スノキ属種(Vaccinium spp.))、カカオ(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))、キャノーラ及びナタネ又はアブラナ(ブラシカ・ナプス(Brassica napus))、カーネーション(ダイアンサス・カリオフィルス(Dianthus caryophyllus))、ニンジン類(ダウクス・カロタ・サティブス(Daucus carota sativus))、キャッサバ(マニホット・エスクレンツム(Manihot esculentum))、サクランボ(プルヌス・アビウム(Prunus avium))、ヒヨコマメ(キケル・アリエティヌム(Cider arietinum))、チコリ(キコリウム・インティブス(Cichorium intybus))、チリペッパー類及び他のトウガラシ類(カプシクム・アンヌウム(Capsicum annuum)、C.フルテスセンス(C.frutescens)、C.キネンセ(C.chinense)、C.プベスセンス(C.pubescens)、C.バッカトゥム(C.baccatum))、キク類(キク属種(Chrysanthemum spp.))、ココナツ(ココス・ヌキフェラ(Cocos nucifera))、コーヒー(コフィア・アラビカ(Coffea arabica)及びコフィア・カネフォラ(Coffea canephora)を含むコーヒーノキ属種(Coffea spp.))、ワタ(ゴシピウム・ヒルストゥム(Gossypium hirsutum L.))、ササゲ(ビグナ・ウンギュイクラタ(Vigna unguiculata))、キュウリ(ククミス・サティブス(Cucumis sativus))、スグリ類及びグズベリー類(スグリ属種(Ribes spp.))、ナス(eggplant)又はナス(aubergine)(ソラヌム・メロンゲナ(Solanum melongena))、ユーカリ(ユーカリ属種(Eucalyptus spp.))、アマ(リナム・ウシタティッスムム(Linum usitatissumum L.))、ゼラニウム類(ペラルゴニウム属種(Pelargonium spp.))、グレープフルーツ(シトラスxパラディシ(Citrus x paradisi))、ワイン用ブドウ類(ビティス・ビニフェラ(Vitus vinifera))を含むブドウ類(ブドウ属種(Vitus spp.))、グアバ(プシディウム・グアヤバ(Psidium guajava))、アサ及び大麻(例えば、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)及びアサ属種(Cannabis spp.))、ホップ類(フムルス・ルプルス(Humulus lupulus))、アヤメ類(アヤメ属種(Iris spp.))、レモン(シトラス・リモン(Citrus limon))、レタス(ラクトゥカ・サティバ(Lactuca sativa))、ライム類(ミカン属種(Citrus spp.))、トウモロコシ(ゼア・マイス(Zea mays L.))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、マンゴスチン(ガルシニア・マンゴスタナ(Garcinia mangostana))、メロン(ククミス・メロ(Cucumis melo))、アワ類(エノコログサ属種(Setaria spp)、ヒエ属種(Echinochloa spp)、オヒシバ属種(Eleusine spp)、キビ属種(Panicum spp.)、チカラシバ属種(Pennisetum spp.))、オートムギ類(アベナ・サティバ(Avena sativa))、アブラヤシ(エレイス・グイネエンシス(Ellis quineensis))、オリーブ(オレア・エウロペア(Olea europaea))、タマネギ(アリウム・ケパ(Allium cepa))、オレンジ(シトラス・シネンシス(Citrus sinensis))、パパイヤ(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、モモ類及びネクタリン類(プルヌス・ペルシカ(Prunus persica))、セイヨウナシ(ナシ属種(Pyrus spp.))、エンドウ(ピスム・サティブム(Pisa sativum))、ピーナッツ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、シャクヤク(ボタン属種(Paeonia spp.))、ペチュニア類(ペチュニア属種(Petunia spp.))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、オオバコ類(バショウ属種(Musa spp.))、セイヨウスモモ(プルヌス・ドメスティカ(Prunus domestica))、ポインセチア(ユーフォルビア・プルケリマ(Euphorbia pulcherrima))、ポーランドアブラナ(Polish canola)(ブラッシカ・ラパ(Brassica rapa))、ポプラ(ポプルス属種(Populus spp.))、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))、カボチャ(pumpkin)(ククルビタ・ペポ(Cucurbita pepo))、コメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa L.))、バラ(バラ属種(Rosa spp.))、ゴム(ヘベア・ブラシリエンシス(Hevea brasiliensis))、ライムギ(セカレ・ケレアレ(Secale cereale))、ベニバナ(カルタムス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius L))、ゴマ種子(セサムム・インディクム(Sesame indium))、モロコシ(ソルガム・ビコロル(Sorghum bicolor))、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max L.))、カボチャ(squash)(ククルビタ・ペポ(Cucurbita pepo))、イチゴ類(オランダイチゴ属種(Fragaria spp.)、フラガリアxアナナッサ(Fragaria x ananassa))、サトウダイコン(ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris))、サトウキビ類(サトウキビ属種(Saccharum spp.))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annus))、サツマイモ(イポメア・バタタス(Ipomoea batatas))、タンジェリン(シトラス・タンゲリナ(Citrus tangerina))、茶(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum L.))、トマト(リコペルシコン・エスクレントゥム(Lycopersicon esculentum))、チューリップ類(チューリップ属種(Tulipa spp.))、カブ(ブラッシカ・ラパ・ラパ(Brassica rapa rapa))、クルミ類(クルミ属種(Juglans spp.L.))、スイカ(キトルルス・ラナツス(Citrulus lanatus))、コムギ(トリティウム・エスティブム(Tritium aestivum))、又はヤムイモ類(ヤマノイモ属種(Discorea spp.))から入手されるか、又はそこに位置する。
【0199】
ii.哺乳類細胞
一部の実施形態において、HDR促進剤を含む真核細胞は、動物細胞である。一部の実施形態において、動物細胞は哺乳類細胞である。更に、動物細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する動物細胞を作り、及び/又は動物細胞を遺伝子操作するため、本開示の方法が用いられ得る。一部の実施形態において、本方法は、HDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する細胞を作り、及び/又は哺乳類細胞を遺伝子操作するために用いられ得る。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、動物細胞、例えば哺乳類細胞を編集することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、動物細胞、例えば哺乳類細胞においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、動物細胞、例えば哺乳類細胞の標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、動物細胞、例えば哺乳類細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させることを含む。
【0200】
一部の実施形態において、細胞は、任意の多細胞脊椎動物又は無脊椎動物由来の動物細胞である。一部の実施形態において、動物は、生物学的、生理学的、又は遺伝学的研究に使用されるモデル生物である。従って、一部の実施形態において、動物は、マウス(ムス・ムスクルス(Mus musculus))、ゼブラフィッシュ(ダニオ・レリオ(Danio rerio))、ショウジョウバエ(ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster))、ネコ(フェリス・シルベストリス・カトゥス(Felis sylvestris catus))、ニワトリ(ガルス・ガルス(Gallus gallus))、イヌ(カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris))、モルモット(カビア・ポルセルス(Cavia porcellus))、ラット(ラッタス・ノルベギクス(Rattus norvegicus))及び線虫(カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans))から選択される。一部の実施形態において、動物は、家畜化された又は農場飼育されている動物である。従って、一部の実施形態において、動物は、ヤギ(カプラ・エガグルス・ヒルクス(Capra aegagrus hircus))、ブタ(スス・スクロファ・ドメスティクス(Sus scrofa domesticus))、ヒツジ(オビス・アリエス(Ovis aries))、ウシ(ボス・タウルス(Bos taurus))、ネコ(フェリス・カトゥス(Felis catus))、ロバ(エクウス・アフリカヌス・アシヌス(Equus africanus asinus))、アヒル(アナス・プラチリンコス・ドメスティクス(Anas platyrhynchos domesticus))、スイギュウであって、ブバルス・ブバリス・ブバリス(Bubalus bubalis bubalis)及びブバルス・ブバリス・カラベネシス(Bubalus bubalis carabenesis)を含めたもの、セイヨウミツバチ(アピス・メリフェラ(Apis mellifera))であって、亜種イタリアミツバチ(A.メリフェラ・リグスティカ(A.mellifera ligustica))、ヨーロッパクロバチ(A.メリフェラ・メリフェラ(A.mellifera mellifera))、カーニオランミツバチ(A.メリフェラ・カルニカ(A.mellifera carnica))、コーカサスミツバチ(A.メリフェラ・カウカシア(A.mellifera caucasia))、及びギリシャミツバチ(A.メリフェラ・ケクロピア(A.mellifera cecropia))を含めたもの、ヒトコブラクダ(カメルス・ドロメダリウス(Camelus dromedarius))、ウマ(エクウス・フェルス・カバルス(Equus ferns caballus))、カイコガ(ボンビックス・モリ(Bombyx mori))、ハト(コルンバ・リビア(Columba livia))、ガチョウ(アンセル・ドメスティクス(Anser domesticus)及びアンセル・キグノイデス・ドメスティクス(Anser cygnoides domesticus))、ヤク(ボス・グルニエンス(Bos grunniens))、フタコブラクダ(カメルス・バクトリアヌス(Camelus bactrianus))、ラマ(ラマ・グラマ(Lama glama))、アルパカ(ビクーニャ・パコス(Vicugna pacos))、ホロホロチョウ(ヌミダ・メレアグリス(Numida meleagris))、フェレット(ムステラ・プトリウス・フロ(Mustela putorius furo))、シチメンチョウ(メレアグリス・ガロパボ(Meleagris gallopavo))、ソウギョ、ハクレン、コイ、ナイルティラピア、コクレン、カトラ(インディアンカープ)、フナ、タイセイヨウサケ、ローフー、サバヒー、ニジマス、ダントウボウ、マゴイ、カムルチー及びナマズから選択される。
【0201】
一部の実施形態において、細胞は、細胞株、例えば、哺乳類細胞株又はヒト細胞株に由来する。組織培養用の多種多様な細胞株が当該技術分野において公知である。細胞株の例としては、限定はされないが、A549、HEK-293、293T、MF7、K562、Caco-2、HeLa細胞、及びこれらのトランスジェニック変種が挙げられる。一部の実施形態において、細胞はHEK-293細胞である。一部の実施形態において、細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。細胞株は、当業者に公知の種々の供給源から入手可能である(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)(Manassus,Va.)を参照のこと)。一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおりの1つ以上の核酸(HDR促進剤をコードするベクターなど)をトランスフェクトした細胞を使用して、1つ以上のベクター由来配列を含む新規細胞株を樹立することにより、標的核酸に対する修飾を含む新規細胞株が樹立される。
【0202】
一部の実施形態において、細胞は、初代細胞、例えば、哺乳類初代細胞又はヒト初代細胞である。例えば、初代細胞の培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、15回又はそれ以上継代されてもよい、初代細胞は、任意の公知の方法によって個体から採取される。例えば、白血球は、アフェレーシス、白血球アフェレーシス、密度勾配分離等によって採取されてもよい。皮膚、筋肉、骨髄、脾臓、肝臓、膵臓、肺、腸、胃等の組織からの細胞は、生検によって採取することができる。採取された細胞の分散又は懸濁に、適切な溶液が使用され得る。かかる溶液は、概して、低濃度の許容可能な緩衝液と併せた、好都合にはウシ胎仔血清又は他の天然に存在する因子が補足された平衡塩類溶液(例えば、標準生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液等)であり得る。緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等を挙げることができる。細胞はすぐに使用されてもよく、又は細胞は(例えば、凍結することにより)保存されてもよい。凍結細胞は解凍することができ、再使用可能であり得る。細胞は、DMSO、血清、培地緩衝液(例えば、10%DMSO、50%血清、40%緩衝培地)、及び/又は凍結温度で細胞を維持するために使用される他の何らかのかかる一般的な溶液中に凍結することができる。
【0203】
一部の実施形態において、細胞はヒト細胞である。一部の実施形態において、細胞は生殖系列細胞である。一部の実施形態において、細胞は体細胞である。一部の実施形態において、細胞は分裂終了細胞である。一部の実施形態において、細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はマクロファージなど、免疫細胞である。一部の実施形態において、細胞は、患者又はドナーから入手されたヒトT細胞である。本明細書に提供される方法を用いると、免疫療法用の初代T細胞の標的核酸を修飾することができる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法を用いて、例えば、T細胞のゲノムを編集し、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する発現コンストラクトを導入することにより、CAR-T細胞が作成される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、免疫細胞がエキソビボで修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、CAR-T細胞がエキソビボで作成される。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、ヒト細胞を編集することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、ヒト細胞においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、ヒト細胞の標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、ヒト細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させることを含む。
【0204】
一部の実施形態において、細胞は幹細胞又は前駆細胞である。一部の実施形態において、細胞は未分化細胞である。一部の実施形態において、細胞はヒト幹細胞又は前駆細胞である。一部の実施形態において、細胞は哺乳類幹細胞又は前駆細胞である。一部の実施形態において、細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、又は前駆細胞(例えば、心筋前駆細胞、神経前駆細胞等)である。一部の実施形態において、細胞は造血幹細胞(HSC)である。一部の実施形態において、細胞は間葉系幹細胞(MSC)である。一部の実施形態において、細胞は神経幹細胞である。一部の実施形態において、細胞は上皮幹細胞である。細胞には、げっ歯類幹細胞、げっ歯類前駆細胞、ヒト幹細胞、ヒト前駆細胞等を含め、哺乳類幹細胞及び前駆細胞が含まれ得る。
【0205】
一部の実施形態において、細胞は、罹患細胞、例えば、罹患哺乳類細胞又は罹患ヒト細胞である。罹患細胞は、代謝的特徴、遺伝子発現特徴、及び/又は形態学的特徴の改変を呈し得る。一部の実施形態において、細胞は、疾患に関連する遺伝的変異を含むゲノムを有する。一部の実施形態において、細胞は、疾患に関連するSNPを有する。一部の実施形態において、細胞のゲノムは、疾患に関連する遺伝子マーカーを有する。一部の実施形態において、細胞は、有害な突然変異を有する。一部の実施形態において、細胞は、疾患を引き起こす突然変異を有する。一部の実施形態において、細胞は、疾患に関連する突然変異アレルを有する。一部の実施形態において、細胞は、機能喪失型突然変異を有する。一部の実施形態において、細胞は、疾患遺伝子型を有する。一部の実施形態において、細胞は、疾患表現型を有する。一部の実施形態において、細胞は、遺伝的欠陥を有する。一部の実施形態において、細胞は、発癌突然変異を有する。一部の実施形態において、細胞は、組み込まれた及び/又は安定して維持されているウイルスを有する。一部の実施形態において、細胞のゲノムにレトロウイルスが組み込まれる。一部の実施形態において、細胞のゲノムにレンチウイルスが組み込まれる。一部の実施形態において、細胞は、持続性ウイルス感染を有する。一部の実施形態において、細胞は、HIVを有する。一部の実施形態において、細胞は、HIVゲノムの組み込まれたコピーを有する。一部の実施形態において、細胞は、ウイルスに感染している。一部の実施形態において、細胞は、潜伏ウイルス感染を有する。一部の実施形態において、細胞は、ヘルペスウイルスに感染している。一部の実施形態において、細胞は、ヒトヘルペスウイルス6型又は7型に感染している。一部の実施形態において、細胞は、単純ヘルペスウイルス1型又は2型に感染している。一部の実施形態において、細胞は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染している。一部の実施形態において、細胞は、ヒトパポバウイルスに感染している。一部の実施形態において、細胞は、エプスタイン・バーウイルスに感染している。罹患細胞は、癌細胞、糖尿病細胞、又はアポトーシス細胞であり得る。罹患細胞は、罹患対象からの細胞であり得る。例示的疾患としては、遺伝的障害、感染性疾患、血液障害、癌、代謝障害、眼障害、臓器障害、筋骨格障害、心疾患などを挙げることができる。一部の実施形態において、細胞は患者に由来する。一部の実施形態において、細胞はエキソビボで修飾される。一部の実施形態において、細胞は癌細胞である。一部の実施形態において、細胞は胚細胞である。一部の実施形態において、細胞は胚性幹細胞である。
【0206】
一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、罹患細胞、例えば、罹患哺乳類細胞又は罹患ヒト細胞が遺伝子修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、罹患細胞が遺伝子修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、罹患細胞に遺伝子の野生型アレルが挿入される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、罹患細胞の有害突然変異が修正される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、癌遺伝子が遺伝子修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、疾患に関連する遺伝子のアレルが遺伝子修飾される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、遺伝子の健常アレルが挿入される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、疾患に関連しない遺伝子のアレルが挿入される。一部の実施形態において、本明細書に提供される方法を用いて、レンチウイルス、レトロウイルス、又はヘルペスウイルスなど、組み込まれた又は安定して維持されているウイルスが細胞のゲノムから除去される。
【0207】
iii.真菌細胞
一部の実施形態において、真核細胞は真菌細胞である。一部の実施形態において、HDR促進剤を含む真核細胞は、真菌細胞である。更に、真菌細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する真菌細胞を作り、及び/又は真菌細胞を遺伝子操作するため、本開示の方法が用いられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、真菌細胞を編集することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、真菌細胞においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、真菌細胞の標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、真菌細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させることを含む。
【0208】
一部の実施形態において、真菌細胞は、多細胞真菌に由来する細胞である。一部の実施形態において、細胞は子嚢菌細胞である。一部の実施形態において、細胞は単細胞真菌である。一部の実施形態において、細胞は酵母細胞である。一部の実施形態において、細胞は、アスペルギルス属(Aspergillus)、カンジダ属(Candida)、コクリオボルス属(Cochliobolus)、クリフォネクトリア属(Cryphonectria)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton)、フザリウム属(Fusarium)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ラカンセア属(Lachancea)、ムコール属(Mucor)、アカパンカビ属(Neurospora)、オフィオストマ属(Ophiostoma)、ペニシリウム属(Penicillium)、ピキア属(Pichia)、ニューモシスチス属(Pneumocystis)、プルラリア属(Pullularia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、又はヤロウイア属(Yarrowia)の真菌細胞である。一部の実施形態において、細胞は、C.アルビカンス(C.albicans)、C.アウリス(C.auris)、C.デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、C.グラブラタ(C.glabrata)、C.ギリエルモンディ(C.guilliermondii)、又はC.トロピカリス(C.tropicalis)細胞など、カンジダ属種(Candida sp.)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ツボカビ真菌細胞、即ち、ツボカビ門(Chytridiomycota)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)細胞など、カエルツボカビ属種(Batrachochytrium sp.)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、グルゲア属種(Glugea sp.)又はノセマ属種(Nosema sp.)細胞など、微胞子虫門(Microsporidia)細胞である。一部の実施形態において、真菌細胞は、寄生虫である。一部の実施形態において、細胞は、白癬菌属種(Trichophyton sp.)又はミクロスポルム属種(Microsporum sp.)細胞、即ち、白癬を引き起こす寄生性変種を含む真菌属のメンバーである。一部の実施形態において、細胞は、糸状菌細胞、即ち、糸状菌類由来の細胞である。一部の実施形態において、細胞は、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)細胞など、クリプトコッカス属種(Cryptococcus sp.)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、ボトリチス・アリ(Botrytis allii)、ボトリチス・アントフィラ(Botrytis anthophila)、ボトリチス・エリプティカ(Botrytis elliptica)、ボトリチス・ファバエ(Botrytis fabae)、ボトリチス・スクアモサ(Botrytis squamosal)、又はボトリチス・トラケイフィラ(Botrytis tracheiphila)細胞など、ボトリチス属種(Botrytis sp.)細胞である。
【0209】
iv.他の真核細胞
一部の実施形態において、HDR促進剤を含む真核細胞は、微生物真核細胞である。更に、微生物真核細胞におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させ、ゲノム修飾を有する微生物真核細胞を作り、及び/又は微生物真核細胞を遺伝子操作するため、本開示の方法が用いられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、微生物真核生物を編集することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、微生物真核生物においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、微生物真核生物の標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、微生物真核生物におけるHDR媒介性ゲノム修飾を増加させることを含む。一部の実施形態において、細胞は微生物真核生物である。一部の実施形態において、細胞は、単細胞真核生物の細胞である。一部の実施形態において、細胞は原虫細胞である。一部の実施形態において、細胞は原生生物である。一部の実施形態において、細胞は感染性微生物真核生物である。一部の実施形態において、細胞は寄生性微生物真核生物である。一部の実施形態において、細胞は、ランブル鞭毛虫(G.lamblia)、G.ムリス(G.muris)、G.アルデエ(G.ardeae)、G.プシッタキ(G.psittaci)、G.アギリス(G.agilis)又はG.ミクロティ(G.microti)細胞など、ジアルジア属種(Giardia sp.)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、又はサルマラリア原虫(P.knowlesi)細胞など、プラスモジウム属種(Plasmodium sp.)細胞である。一部の実施形態において、細胞はキネトプラスト細胞である。一部の実施形態において、細胞は、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)又はブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)細胞など、トリパノソーマ属種(Trypanosoma sp.)細胞である。
【0210】
一部の実施形態において、細胞は藻類細胞である。一部の実施形態において、藻類細胞は、ツメケイソウ属(Achnanthes)、アンフィプロラ属(Amphiprora)、ニセクチビルケイソウ属(Amphora)、アンキストロデスムス属(Ankistrodesmus)、アステロモナス属(Asteromonas)、ボエケロビア属(Boekelovia)、ボリドモナス属(Bolidomonas)、ボロジネラ属(Borodinella)、フウセンモ属(Botrydium)、ボトリオコッカス属(Botryococcus)、ブラクテアコッカス属(Bracteococcus)、ツノケイソウ属(Chaetoceros)、カルテリア属(Carteria)、コナミドリムシ属(Chlamydomonas)、クロロコックム属(Chlorococcum)、クロロゴニウム属(Chlorogonium)、クロレラ属(Chlorella)、クロオモナス属(Chroomonas)、クリソスファエラ属(Chrysosphaera)、クリコスファエラ属(Cricosphaera)、クリプテコディニウム属(Crypthecodinium)、クリプトモナス属(Cryptomonas)、タイコケイソウ属(Cyclotella)、ドゥナリエラ属(Dunaliella)、エリプソイドン属(Ellipsoidon)、エミリアニア属(Emiliania)、エレモスフェラ属(Eremosphaera)、エルノデスミス属(Ernodesmius)、ミドリムシ属(Euglena)、ユースチグマトス属(Eustigmatos)、フランケイア属(Franceia)、オビケイソウ属(Fragilaria)、フラジラリオプシス属(Fragilaropsis)、グレオタムニオン属(Gloeothamnion)、ヘマトコッカス属(Haematococcus)、ハロカフェテリア属(Halocafeteria)、アカシオモ属(Heterosigma)、ヒメノモナス属(Hymenomonas)、イソクリシス属(Isochrysis)、ニセウチワヒゲムシ属(Lepocinclis)、ミクラクチニウム属(Micractinium)、モノラフィディウム属(Monoraphidium)、ナンノクロリス属(Nannochloris)、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)、フナガタケイソウ属(Navicula)、ネオクロリス属(Neochloris)、ネフロクロリス属(Nephrochloris)、ネフロセルミス属(Nephroselmis)、ササノハケイソウ属(Nitzschia)、オクロモナス属(Ochromonas)、サヤミドロ属(Oedogonium)、オオキスティス属(Oocystis)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、パブロバ属(Pavlova)、パラクロレラ属(Parachlorella)、パスケリア属(Pascheria)、ペラゴモナス属(Pelagomonas)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、ファガス属(Phagus)、ピコクロラム属(Picochlorum)、プラチモナス属(Platymonas)、プレウロクリシス属(Pleurochrysis)、プレウロコッカス属(Pleurococcus)、プロトテカ属(Prototheca)、シュードクロレラ属(Pseudochlorella)、シュードネオクロリス属(Pseudoneochloris)、シュードスタウラスツルム属(Pseudostaurastrum)、ピラミモナス属(Pyramimonas)、ピロボトリス属(Pyrobotrys)、セネデスムス属(Scenedesmus)、ホネツギケイソウ属(Skeletonema)、スピロギラ属(Spyrogyra)、スチココッカス属(Stichococcus)、テトラセルミス属(Tetraselmis)、タラシオシラ属(Thalassiosira)、トリボネマ属(Tribonema)、フシナシミドロ属(Vaucheria)、ビリジエラ属(Viridiella)、ビスケリア属(Vischeria)、又はボルボックス属(Volvox)の種の細胞である。一部の実施形態において、細胞は珪藻である。珪藻類には、ツメケイソウ属(Achnanthes)、ニセクチビルケイソウ属(Amphora)、ツノケイソウ属(Chaetoceros)、コアミケイソウ属(Coscinodiscus)、シリンドロテカ属(Cylindrotheca)、タイコケイソウ属(Cyclotella)、クチビルケイソウ属(Cymbella)、オビケイソウ属(Fragilaria)、フラジラリオプシス属(Fragilaropsis)、ユミケイソウ属(Hantzschia)、フナガタケイソウ属(Navicula)、ササノハケイソウ属(Nitzschia)、ニセササノハケイソウ属(Pseudo-Nitzschia)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、プサモディクチオン属(Psammodictyon)、ホネツギケイソウ属(Skeletonema)、タラシオネマ属(Thalassionema)、及びタラシオシラ属(Thalassiosira)のメンバーが含まれる。一部の実施形態において、細胞は、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)種又はモノドス属(Monodus)、シュードスタウラスツルム属(Pseudostaurastrum)、ビスケリア属(Vischeria)、及びユースチグマトス属(Eustigmatos)の種など、真正眼点藻である。一部の実施形態において、細胞は、限定はされないが、N.ガディタナ(N.gaditana)、N.グラヌラタ(N.granulata)、N.リムネティカ(N.limnetica)、N.オセアニカ(N.oceanica)、N.オクラタ(N.oculata)、及びN.サリナ(N.salina)など、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis)の藻類細胞である。
【0211】
一部の実施形態において、細胞は不等毛類である。例えば、不等毛類には、上記に挙げたものなどの真正眼点藻類及び珪藻類のみならず、ラビリンチュラ類(labrinthulids)及びヤブレツボカビ類を含めたツボカビ種もまた含まれる。一部の実施形態において、細胞は、限定はされないが、珪藻類、真正眼点藻類、ラビリンチュラ類(Labrinthulids)、及びヤブレツボカビ類を含めた不等毛類種の細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ラビリンチュラ属(Labryinthula)、ラビリンチュロイデス属(Labryinthuloides)、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、アプラノキトリウム属(Aplanochytrium)、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)、ジャポノキトリウム属(Japonochytrium)、ディプロフリス属(Diplophrys)、又はウルケニア属(Ulkenia)の種の細胞である。例えば、株は、トラウストキトリウム属(Thraustochytrium)、シゾキトリウム属(Schizochytrium)、オブロンギキトリウム属(Oblongichytrium)、又はオーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium)の種であってもよい。一部の実施形態において、細胞はオピストコントである。一部の実施形態において、細胞は襟鞭毛虫である。一部の実施形態において、細胞は、アメソミセトゾエア(amesomycetozoea)(例えば、スフェロフォルマ(Sphaeroforma))である。一部の実施形態において、細胞はユニコントである。一部の実施形態において、細胞はアメーバ動物である。一部の実施形態において、細胞は、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)、アメーバ属(Amoeba)、カオス属(Chaos)、タマホコリカビ属(Dictyostelium)、エントアメーバ属(Entamoeba)、又はペロミクサ属(Pelomyxa)の細胞である。
【0212】
v.細胞の組成物
本明細書には、細胞の組成物が提供される。一態様において、本明細書に提供される方法を用いて、真核細胞の組成物が作製され得る。一部の実施形態において、真核細胞の組成物は、本明細書に記載される細胞のいずれか、例えば、植物、動物、真菌、又は他の真核細胞を含み得る。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、細胞集団を編集すること含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、編集された細胞集団を作製することを含む。一部の実施形態において、編集された細胞集団を作製することを含む本明細書に開示される方法、ここで集団中の編集された細胞の比率は、HDR促進剤の非存在下で編集された細胞の集団と比べて約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約20倍、約25倍、約30倍のいずれか1つ(これらの値の間にある任意の値又は範囲を含む)の高さである。一部の実施形態において、編集された細胞集団を作製することを含む本明細書に開示される方法、ここで集団中の編集された細胞の比率は、HDR促進剤の非存在下で編集された細胞の集団と比べて10倍の高さである。
【0213】
一部の実施形態において、本明細書には、組成物、本明細書に提供される方法に使用される細胞のクローン部分集団が提供される。一部の実施形態において、クローン部分集団は、細胞株の部分集団である。一部の実施形態において、クローン部分集団は、個体に由来する細胞の部分集団である。一部の実施形態において、クローン細胞部分集団は、単一の細胞に由来する細胞の集団である。一部の実施形態において、クローン細胞部分集団は、同じ遺伝的及び後成的プロファイルを有する。
【0214】
一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、細胞集団においてゲノム修飾を実施することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、ゲノム修飾を有する細胞の組成物を作製することを含む。一部の実施形態において、ゲノム修飾を有する細胞の組成物を作製することを含む本明細書に開示される方法、ここで集団中のゲノム修飾を有する細胞の比率は、HDR促進剤の非存在下で修飾された細胞の集団と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、20倍、25倍、30倍(これらの値の間にある任意の値又は範囲を含む)の高さである。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、細胞集団の標的遺伝子座を修飾することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、修飾された標的遺伝子座を有する細胞の集団を作製することを含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、修飾された標的遺伝子座を有する細胞の集団を作製することを含み、ここで集団中の修飾された標的遺伝子座を有する細胞の比率は、HDR促進剤の非存在下で修飾された細胞の集団と比べて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、20倍、25倍、30倍(これらの値の間にある任意の値又は範囲を含む)の高さである。
【0215】
E.キット
本発明の方法は、キットの形態で提供され得る。一部の実施形態において、本キットは、HDR促進剤をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、本キットは、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸と、使用説明書とを含む。一部の実施形態において、本キットは、核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態において、本キットは、ドナー鋳型DNA分子を使用して細胞の標的編集部位を修飾するために使用される。一部の実施形態において、本キットは、本明細書に記載されるベクターのいずれかを含む。一部の実施形態において、本キットは、植物又は哺乳類細胞ゲノムなど、真核細胞ゲノムの標的編集部位のHDR媒介性ゲノム修飾を増加させるためのベクターを含む。一部の実施形態において、本キットは、植物細胞における標的編集部位のHDR媒介性ゲノム修飾を増加させるためのベクターを含む。一部の実施形態において、キットは、哺乳類細胞における標的編集部位のHDR媒介性ゲノム修飾を増加させるためのベクターを含む。
【0216】
一部の実施形態において、本キットは説明書を含む。一部の実施形態において、説明書は、細胞を核酸で形質転換することに関する説明書を含む。一部の実施形態において、説明書は、細胞中の核酸の存在を検出することに関する説明書を含む。一部の実施形態において、説明書は、細胞における核酸の効果を評価することに関する説明書を含む。
【0217】
一部の実施形態において、本キットは、遺伝子操作された細胞の検出用薬剤を含む。一部の実施形態において、本キットは、遺伝子操作された細胞の検出用薬剤の使用説明書を含む。一部の実施形態において、遺伝子操作された細胞の検出用薬剤は、PCRアッセイ、RT-qPCRアッセイ、サザンブロット、又はシーケンシングアッセイなど、細胞のゲノムを評価するアッセイである。一部の実施形態において、遺伝子操作された細胞の検出用薬剤は、オリゴヌクレオチドプライマーセットであり、ここでは特定のプライマー対が、遺伝子修飾、又は野生型標的遺伝子座を特異的に増幅する。一部の実施形態において、遺伝子操作された細胞の検出は、蛍光レポーター、転写レポーター、比色レポーター、又は化学発光レポーターなど、レポーターを使用して実施される。従って、一部の実施形態において、遺伝子操作された細胞の検出用薬剤は、レポーターの検出手段である。
【0218】
一部の実施形態において、本明細書には、植物又は哺乳類細胞ゲノムなど、真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させるためのキットが提供される。一部の実施形態において、本キットは、ゲノム編集分子及びHDR促進剤をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、ゲノム編集分子は、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと;(ii)標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含む。一部の実施形態において、HDR促進剤は、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む。一部の実施形態において、ゲノム編集分子及びHDR促進剤は、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらす。一部の実施形態において、本キットは、標的編集部位のHDR媒介性ゲノム修飾レベルの測定用薬剤を含む。
【0219】
一部の実施形態において、本明細書には、ゲノム修飾を有する真核細胞を作製するためのキットが提供される。一部の実施形態において、本キットは、ゲノム編集分子及び相同組換え修復(HDR)促進剤をコードする核酸を含み、ここでゲノム編集分子は、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤は、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;それによってゲノム編集分子及びHDR促進剤は、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらす。一部の実施形態において、本キットは、ゲノム修飾を含む真核細胞を単離し又は増殖させる手段を提供し、それによってゲノム修飾を有する真核細胞を作り出す。一部の実施形態において、本キットは、標的編集部位のゲノム修飾の存在の検出用薬剤を含む。
【0220】
一部の実施形態において、本明細書には、真核細胞を遺伝子操作する方法のためのキットが提供される。一部の実施形態において、本キットは、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、本キットは、標的編集部位の遺伝子操作の検出用薬剤を含む。
【0221】
実施形態
以下の非限定的な実施形態リストには、本明細書に提供される真核細胞(例えば、植物細胞及び哺乳類細胞)、システム、及び方法の様々な実施形態が含まれる。
【0222】
1.真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させる方法であって、
ゲノム編集分子とHDR促進剤とを真核細胞に提供することであって、ゲノム編集分子が、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと;(ii)標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;
それによってゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらすことを含む、方法。
【0223】
2.配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、実施形態1に記載の方法。
【0224】
3.RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、実施形態2に記載の方法。
【0225】
4.配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、実施形態1に記載の方法。
【0226】
5.ゲノム編集分子が、標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、実施形態1に記載の方法。
【0227】
6.配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態5に記載の方法。
【0228】
7.配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、ガイドRNA分子が、標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、実施形態5に記載の方法。
【0229】
8.ドナーDNA分子が、環状DNAベクター、ジェミニウイルスレプリコン上に、又は線状DNA断片として提供される、実施形態1に記載の方法。
【0230】
9.ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列のコピーが隣接する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
10.配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、標的編集部位が、PAM配列と、ガイドRNAに相補的な、且つプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
11.配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
12.SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
13.SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
14.RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態13に記載の方法。
【0236】
15.ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態13に記載の方法。
【0237】
16.RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態13に記載の方法。
【0238】
17.線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
18.リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態17に記載の方法。
【0240】
19.エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
20.エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
21.エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼIII、Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
22.エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態1、5、又は6のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
23.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とSSAPとが、同じ宿主生物から入手される、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
24.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0246】
25.SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、実施形態24に記載の方法。
【0247】
26.SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
27.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
28.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
29.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBタンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0251】
30.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBが、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供される、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
31.真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0253】
32.植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、実施形態31に記載の方法。
【0254】
33.植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、実施形態32に記載の方法。
【0255】
34.細胞が植物細胞であり、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質が、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0256】
35.ゲノム修飾を含む植物細胞、植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、植物細胞、珠芽、又は植物のゲノムがゲノム修飾を含む、実施形態31~34のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
36.真核細胞ゲノムの標的編集部位の相同組換え修復(HDR)媒介性ゲノム修飾を増加させるためのシステムであって、
(a)真核細胞;
(b)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含むHDR促進剤;及び
(c)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含む1つ又は複数のゲノム編集分子
を含み;
真核細胞が有効量のHDR促進剤及び1つ又は複数のゲノム編集分子と会合し、それに接触し、及び/又はそれを含有する、システム。
【0258】
37.ゲノム編集分子及び/又は配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、実施形態36に記載のシステム。
【0259】
38.RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、実施形態37に記載のシステム。
【0260】
39.配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、実施形態36に記載のシステム。
【0261】
40.ゲノム編集分子が、標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、実施形態36に記載のシステム。
【0262】
41.配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態40に記載のシステム。
【0263】
42.配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、ガイドRNA分子が、標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、実施形態40に記載のシステム。
【0264】
43.ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、実施形態36に記載のシステム。
【0265】
44.ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、実施形態36~43のいずれか1つに記載のシステム。
【0266】
45.配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、標的編集部位が、PAM配列と、ガイドRNAに相補的な、且つPAM配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、実施形態36~44のいずれか1つに記載のシステム。
【0267】
46.配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、実施形態36~45のいずれか1つに記載のシステム。
【0268】
47.ゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して少なくとも2倍に増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらす、実施形態36~46のいずれか1つに記載のシステム。
【0269】
48.SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、実施形態36~47のいずれか1つに記載のシステム。
【0270】
49.SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、実施形態36又は48に記載のシステム。
【0271】
50.RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0272】
51.RecT/Redβファミリータンパク質が、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0273】
52.RecT/Redβファミリータンパク質が、配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0274】
53.ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0275】
54.RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0276】
55.線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態36~54のいずれか1つに記載のシステム。
【0277】
56.リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態36~54のいずれか1つに記載のシステム。
【0278】
57.エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態36~54のいずれか1つに記載のシステム。
【0279】
58.エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態36~54のいずれか1つに記載のシステム。
【0280】
59.エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態36~58のいずれか1つに記載のシステム。
【0281】
60.エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態36、40、又は41のいずれか1つに記載のシステム。
【0282】
61.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とSSAPとが、同じ宿主生物から入手される、実施形態36~60のいずれか1つに記載のシステム。
【0283】
62.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、実施形態36~61のいずれか1つに記載のシステム。
【0284】
63.SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、実施形態62に記載のシステム。
【0285】
64.SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態36~63のいずれか1つに記載のシステム。
【0286】
65.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照システムと比較して、HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、実施形態36~64のいずれか1つに記載のシステム。
【0287】
66.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照システムと比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、実施形態36~64のいずれか1つに記載のシステム。
【0288】
67.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、実施形態36~66のいずれか1つに記載のシステム。
【0289】
68.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBが、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供される、実施形態36~64のいずれか1つに記載のシステム。
【0290】
69.真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、実施形態36~68のいずれか1つに記載のシステム。
【0291】
70.植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、実施形態69に記載のシステム。
【0292】
71.植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、実施形態69又は70に記載のシステム。
【0293】
72.細胞が植物細胞であり、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質が、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、実施形態69、70、又は71に記載のシステム。
【0294】
73.システムが、ゲノム修飾を含む植物細胞、植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離すること及び/又は成長させることを提供し、及び植物細胞、珠芽、又は植物のゲノムがゲノム修飾を含む、実施形態69~72のいずれか1つに記載のシステム。
【0295】
74.ゲノム修飾を有する真核細胞を作製する方法であって、
(a)ゲノム編集分子と相同組換え修復(HDR)促進剤とを真核細胞に提供することであって、ゲノム編集分子が、(i)標的編集部位中のDNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又はその配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドと、標的編集部位との相同性を有するドナー鋳型DNA分子とを含み;及びHDR促進剤が、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含み;それによってゲノム編集分子及びHDR促進剤が、対照と比較して増加した頻度でHDRによるドナー鋳型ポリヌクレオチドを用いた真核細胞ゲノムの標的編集部位の修飾をもたらすこと;及び
(b)ゲノム修飾を含む真核細胞を単離し又は増殖させることであって、それによってゲノム修飾を有する真核細胞を作製すること
を含む方法。
【0296】
75.ゲノム編集分子及び/又は配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、実施形態74に記載の方法。
【0297】
76.RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、又は操作されたヌクレアーゼを含む、実施形態75に記載の方法。
【0298】
77.配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、実施形態74に記載の方法。
【0299】
78.ゲノム編集分子が、標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する1つ以上の配列特異的エンドヌクレアーゼ又は配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む、実施形態74に記載の方法。
【0300】
79.配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、Cas12i、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態78に記載の方法。
【0301】
80.配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、ガイドRNA分子が、標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、実施形態78に記載の方法。
【0302】
81.ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、実施形態74に記載の方法。
【0303】
82.ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、実施形態74~81のいずれか1つに記載の方法。
【0304】
83.配列特異的エンドヌクレアーゼがRNA誘導型ヌクレアーゼを含み、標的編集部位が、PAM配列と、ガイドRNAに相補的な、且つPAM配列に直接隣接した位置にある配列とを含む、実施形態74~82のいずれか1つに記載の方法。
【0305】
84.配列特異的エンドヌクレアーゼが、切断後に標的編集部位に5’オーバーハングを提供する、実施形態74~83のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
85.SSAPが、DNA鎖交換及び相同DNA分子の相補DNA鎖の塩基対合を提供する、実施形態74~84のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
86.SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、実施形態74~85のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
87.RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、実施形態86に記載の方法。
【0309】
88.RecT/Redβファミリータンパク質が、配列番号1、2、又は3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態86に記載の方法。
【0310】
89.ERFファミリータンパク質が、バクテリオファージP22 ERFタンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態86に記載の方法。
【0311】
90.RAD52ファミリータンパク質が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Rad52タンパク質、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)Rad22タンパク質、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)Rad52タンパク質、機能的に関連性のあるタンパク質、又は配列番号5、6、又は7と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態86に記載の方法。
【0312】
91.線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態74~90のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
92.リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態74~91のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
93.エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態74~92のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
94.エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態74~92のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
95.エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態74~90のいずれか1つに記載の方法。
【0317】
96.エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態74、78、又は79に記載の方法。
【0318】
97.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とSSAPとが、同じ宿主生物から入手される、実施形態74~96のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
98.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)が、細菌SSB、又は任意選択で腸内細菌科種(Enterobacteriaceae sp.)SSBである、実施形態74~97のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
99.SSBが、大腸菌属種(Escherichia sp.)、赤痢菌属種(Shigella sp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter sp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、パントエア属種(Pantoea sp.)、又はエルシニア属種(Yersinia sp.)SSBである、実施形態98に記載の方法。
【0321】
100.SSBが、配列番号31、34~131、又は132と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態74~99のいずれか1つに記載の方法。
【0322】
101.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、HDR頻度が少なくとも2倍に増加する、実施形態74~100のいずれか1つに記載の方法。
【0323】
102.対照真核細胞がゲノム編集分子の提供を受けるが、前記HDR促進剤の少なくとも1つに曝露されない対照方法と比較して、非相同末端結合(NHEJ)の頻度が維持されるか、又は少なくとも2分の1に低下する、実施形態74~100のいずれか1つに記載の方法。
【0324】
103.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又は一本鎖DNA結合タンパク質が、作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)及び/又は細胞透過性ペプチド(CPP)を更に含む、実施形態74~102のいずれか1つに記載の方法。
【0325】
104.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBが、SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBの間に挿入されたプロテアーゼ認識部位又は自己プロセシングタンパク質配列を含むポリタンパク質として細胞に提供される、実施形態74~103のいずれか1つに記載のシステム。
【0326】
105.真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、実施形態74~104のいずれか1つに記載の方法。
【0327】
106.植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、実施形態105に記載の方法。
【0328】
107.植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、実施形態105又は106に記載の方法。
【0329】
108.SSAP、エキソヌクレアーゼ、及び/又はSSBが、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される作動可能に連結された核局在化シグナル(NLS)を更に含む、実施形態105、106、又は107に記載の方法。
【0330】
109.ゲノム修飾を含む植物細胞、植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、植物細胞、珠芽、又は植物のゲノムがゲノム修飾を含む、実施形態105~108のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
110.HDR促進剤、ゲノム編集分子及び真核細胞又はゲノム修飾を含む真核細胞が、複数の容器、区画、又は位置を含むアレイで提供され、各容器、区画、又は位置が、HDR促進剤、ゲノム編集分子及び真核細胞又はゲノム修飾を含む真核細胞を含む、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法、実施形態36~68のいずれか1つに記載のシステム、又は実施形態74~104のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
111.真核細胞を遺伝子操作する方法であって、真核細胞に、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を提供することを含み、
細胞の標的編集部位がドナー鋳型DNA分子によって修飾される、方法。
【0333】
112.配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼ又はRNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNA又はガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、実施形態111に記載の方法。
【0334】
113.RNA誘導型ヌクレアーゼが、RNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ、II型Casヌクレアーゼ、Cas9ヌクレアーゼ、V型Casヌクレアーゼ、Cas12aヌクレアーゼ、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、CasYヌクレアーゼ、CasXヌクレアーゼ、Cas12i、Cas14、又は操作されたヌクレアーゼを含む、実施形態112に記載の方法。
【0335】
114.配列特異的エンドヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼ)、アルゴノート、メガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼを含む、実施形態111に記載の方法。
【0336】
115.ガイドRNAを更に含み、配列特異的エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAが、標的編集部位にある2つの個別のDNA配列で単一のDNA鎖を切断する、実施形態111に記載の方法。
【0337】
116.配列特異的エンドヌクレアーゼが、少なくとも1つのCas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、ジンクフィンガーニッカーゼ、TALEニッカーゼ、又はこれらの組み合わせを含み、配列特異的エンドヌクレアーゼが、標的編集部位のエンドヌクレアーゼ認識配列に特異的である、実施形態115に記載の方法。
【0338】
117.配列特異的エンドヌクレアーゼがCas9及び/又はCas12aを含み、ガイドRNA分子が、標的編集部位のDNA配列と少なくとも1塩基のミスマッチを有する、実施形態115に記載の方法。
【0339】
118.ドナーDNA分子が、プラスミド又はジェミニウイルスゲノムに提供される、実施形態111に記載の方法。
【0340】
119.ドナーDNA分子にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、実施形態111に記載の方法。
【0341】
120.SSAPが、RecT/Redβファミリー、ERFファミリー、又はRAD52ファミリータンパク質を含む、実施形態111に記載の方法。
【0342】
121.RecT/Redβファミリータンパク質が、Rac細菌プロファージRecTタンパク質、バクテリオファージλベータタンパク質、バクテリオファージSPP1 35タンパク質、又は同等のSSAP活性を有する関連するタンパク質を含む、実施形態120に記載の方法。
【0343】
122.線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態111に記載の方法。
【0344】
123.リン酸化した5’末端を含む線状dsDNA分子が、エキソヌクレアーゼの好ましい基質である、実施形態111に記載の方法。
【0345】
124.エキソヌクレアーゼが5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態111に記載の方法。
【0346】
125.エキソヌクレアーゼが3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、平滑末端型dsDNA基質、一方の鎖に内部切断を有するdsDNA基質、5’オーバーハングを有するdsDNA基質、及び/又は3’オーバーハングを有するdsDNA基質を認識することができる、実施形態111に記載の方法。
【0347】
126.エキソヌクレアーゼが、バクテリオファージラムダエキソタンパク質、RacプロファージRecEエキソヌクレアーゼ、アルテミスタンパク質、アポロタンパク質、DNA2エキソヌクレアーゼ、Exo1エキソヌクレアーゼ、ヘルペスウイルスSOXタンパク質、UL12エキソヌクレアーゼ、腸内細菌エキソヌクレアーゼVIII、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、哺乳類Trex2エキソヌクレアーゼ、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号8、9、136、137、138、139、140、141、142、143、144、又は145と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態111に記載の方法。
【0348】
127.エキソヌクレアーゼが、T7ファージエキソヌクレアーゼ、大腸菌(E.coli)エキソヌクレアーゼIII、同等のエキソヌクレアーゼ活性を有する関連するタンパク質、又は配列番号143又は144と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有するタンパク質を含む、実施形態111に記載の方法。
【0349】
128.一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とSSAPとが、同じ宿主生物から入手される、実施形態111に記載の方法。
【0350】
129.真核細胞が哺乳類細胞又は植物細胞である、実施形態111~128のいずれか1つに記載の方法。
【0351】
130.植物細胞が一倍体、二倍体、又は倍数体である、実施形態129に記載の方法。
【0352】
131.植物細胞が、培養培地中、植物中、又は植物組織中にある、実施形態130に記載の方法。
【0353】
132.ゲノム修飾を含む植物細胞、植物細胞から入手された珠芽、又は植物を単離する及び/又は成長させるステップを更に含み、植物細胞、珠芽、又は植物のゲノムがゲノム修飾を含む、実施形態131に記載の方法。
【0354】
133.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、1つ以上のベクターに提供される、実施形態111~132のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
135.ベクターがアグロバクテリウムベクターである、実施形態133に記載の方法。
【0356】
136.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、染色体によって提供される、実施形態111~132のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
137.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、ポリペプチド、DNA、mRNAを導入すること、及び/又は性的交雑によって提供される、実施形態111~132のいずれか1つに記載の方法。
【0358】
138.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上が、i)~v)のうちの1つ以上を含む前駆細胞によって提供され、
前駆細胞が、i)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、
前駆細胞に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つが、続いて前駆細胞にポリペプチド、DNA、又はmRNAを送達すること及び/又は前駆細胞の性的交雑によって提供される、実施形態111~132のいずれか1つに記載の方法。
【0359】
139.修飾を検出することを更に含む、実施形態111~138のいずれか1つに記載の方法。
【0360】
140.修飾を検出することが、アンプリコンシーケンシングを含む、実施形態139に記載の方法。
【0361】
141.標的編集部位が、タンパク質コード配列中又はプロモーター中にある、実施形態111~140のいずれか1つに記載の方法。
【0362】
142.標的編集部位の修飾が、挿入、欠失、又は置換である、実施形態111~141のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
143.標的編集部位が、作物栽培学的に重要な形質をコードする遺伝子又は哺乳類疾患に関わる遺伝子である、実施形態111~142のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
144.遺伝子修飾された標的編集部位を有する真核細胞の作製方法であって、
(a)前記標的編集部位中の少なくとも1つのエンドヌクレアーゼ認識配列DNA配列を切断する少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ又は前記少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを提供すること、及び
(b)少なくとも1つの二本鎖DNA配列を含む少なくとも1つのドナー分子を提供することであって、(i)前記DNA配列が、標的編集部位に隣接する配列と少なくとも50ヌクレオチドの長さにわたって少なくとも90%の相同性を有し、及び(ii)前記ドナー配列が、前記標的編集部位と比較して少なくとも1つの修飾を含むこと;及び
(c)少なくとも1つの相同組換え修復(HDR)促進剤を提供することであって、HDR促進剤が、
(i)少なくとも1つの一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、及び
(ii)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできる少なくとも1つのエキソヌクレアーゼ、及び
(iii)少なくとも1つの一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)
を含み;
及びそれによって少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、少なくとも1つのドナー分子、及び少なくとも1つのHDR促進剤が前記真核細胞の前記標的編集部位に前記修飾を導入すること;及び
(d)前記標的編集部位に修飾を含む真核細胞を単離すること
を含む方法。
【0365】
145.修飾が、1つ以上のヌクレオチドの挿入、1つ以上のヌクレオチドの欠失、又は1つ以上のヌクレオチドの置換からなる群から選択される、実施形態144に記載の方法。
【0366】
146.標的編集部位の一部分が、前記標的編集部位における2つの配列特異的切断を用いることによって欠失され、ドナー分子によって提供される配列に置き換えられる、実施形態144に記載の方法。
【0367】
147.ベクター内で前記ドナー配列にエンドヌクレアーゼ認識配列が隣接している、実施形態144~146のいずれか1つに記載の方法。
【0368】
148.修飾を含む真核細胞を増殖させることを更に含む、実施形態144~147のいずれか1つに記載の方法。
【0369】
149.遺伝子修飾された生物を作製する方法であって、
(i)実施形態144~148のいずれかにより、遺伝子修飾された真核細胞を作製するステップ、及び
(ii)前記細胞を生物へと再生するステップ
を含む方法。
【0370】
150.生物が、植物及び非ヒト動物からなる群から選択される、実施形態149に記載の生物。
【0371】
151.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含む組成物。
【0372】
152.核酸が1つ以上のベクター内にある、実施形態151に記載の組成物。
【0373】
153.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のうちの1つ以上をコードする核酸を含むベクター。
【0374】
154.ドナー鋳型DNAと、配列特異的エンドヌクレアーゼと、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含む、実施形態153に記載のベクター。
【0375】
155.一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む、実施形態153に記載のベクター。
【0376】
156.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む、実施形態153に記載のベクター。
【0377】
157.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸と、真核細胞の遺伝子操作に関する使用説明書とを含むキット。
【0378】
158.キットが第1のベクターと第2のベクターとを含み、
i)第1のベクターが、ドナー鋳型DNAと配列特異的エンドヌクレアーゼとを含む核酸を含み、配列特異的エンドヌクレアーゼが、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドと、ガイドRNAをコードするポリヌクレオチドとを含み;及び
ii)第2のベクターが、一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)と、二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼと、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)とを含む、実施形態157に記載のキット。
【0379】
159.遺伝子操作された細胞の検出用薬剤を更に含む、実施形態157又は158に記載のキット。
【0380】
160.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む細胞。
【0381】
161.i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型DNA分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)をコードする核酸を含む細胞。
【0382】
162.植物又は哺乳類細胞である、実施形態160又は161に記載の細胞。
【0383】
163.宿主細胞である、実施形態160~162のいずれか1つに記載の細胞。
【0384】
164.実施形態1~35又は74~149のいずれか1つに記載の方法によって作製される遺伝子操作された細胞。
【0385】
165.標的編集部位における遺伝子操作のための前駆真核細胞又は生物であって、i)少なくとも1つの配列特異的エンドヌクレアーゼ、ii)真核細胞の標的編集部位と相同性を有するドナー鋳型分子、iii)一本鎖DNAアニーリングタンパク質(SSAP)、iv)二本鎖DNA基質を一本鎖DNA産物へと少なくとも部分的に変換することのできるエキソヌクレアーゼ、及びv)一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)のサブセットを含み、細胞がi)~v)のうちの少なくとも1つを含まず、ここで前駆細胞又は生物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つを細胞又は生物に提供すると、ドナー鋳型分子によって標的編集部位が修飾されることになる、前駆真核細胞又は生物。
【0386】
166.ドナー鋳型が二本鎖DNA分子である、実施形態165に記載の前駆真核細胞又は生物。
【0387】
167.細胞が生殖系列細胞である、実施形態165に記載の前駆細胞。
【0388】
168.前駆真核細胞が前駆植物細胞であり、前駆植物細胞又は植物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つが形質転換によって供給される、実施形態165に記載の前駆真核細胞又は生物。
【0389】
169.生物が植物であり、前駆植物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つが、前駆植物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つを含む第2の植物との性的交雑によって供給される、実施形態165に記載の前駆生物。
【0390】
170.前駆真核細胞が動物細胞であり、前駆細胞に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つがトランスフェクションによって供給される、実施形態165に記載の前駆真核細胞。
【0391】
171.前駆生物が非ヒト動物であり、非ヒト動物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つが、非ヒト動物に含まれないi)~v)のうちの少なくとも1つを含む非ヒト動物との性的交雑によって供給される、実施形態165に記載の前駆生物。
【0392】
172.配列特異的ヌクレアーゼが誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態153に記載のベクター。
【0393】
173.配列特異的エンドヌクレアーゼがニッカーゼである、実施形態111に記載の方法。
【実施例】
【0394】
以下の実施例は、単に本発明を例示することを意図しており、従って、いかなる形であれ本発明を限定するものと見なされてはならない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定としてではなく、例示として提供される。
【0395】
実施例1.エキソヌクレアーゼ、SSAP、及びSSB発現ベクター及びドナーDNA鋳型配列
本実施例は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号8)、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質(配列番号1)、及び大腸菌(E.coli)SSB(配列番号31)の発現に使用される植物発現ベクターの構築について記載する。
【0396】
バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号8)、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質(配列番号1)、及び大腸菌(E.coli)SSB(配列番号31)の発現用の植物発現コンストラクトを構築した。配列番号15のタバコc2核局在化シグナル(NLS)をコードするDNA配列を、エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質、及び大腸菌(E.coli)SSBをコードするDNA配列に作動可能に連結して、それぞれ、配列番号135、配列番号134、及び配列番号133に示される、c2 NLS-Exo(別名Red-Exo)、c2 NLSラムダベータSSAP(別名Red-Beta)、及びc2 NLS-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を提供した。c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2NLSf-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を、それぞれ、2x35S、SlUBI10、PcUBI4プロモーター及び35S、AtHSP、エンドウ3Aポリアデニル化部位に作動可能に連結して、エキソヌクレアーゼ、SSAP、及びSSB植物細胞遺伝子発現カセットを提供した(
図2を参照)。
【0397】
HDRによる42塩基対異種配列の挿入用のトマトAnt1遺伝子のプロモーター領域を標的とするDNAドナー鋳型プラスミドを構築した(
図1)。この環状DNAドナープラスミドは、両側に相同アーム約600~800bp長が隣接する所望の挿入領域(42塩基対長)を有する置換鋳型を含んだ。相同アームは、標的gDNA挿入部位に隣接するgDNA(ゲノムDNA)領域にマッチした(即ち、それと相同であった)。ドナーDNAを含む置換鋳型領域には、各端に、RNA誘導型ヌクレアーゼによって認識される標的gDNA配列と同一のDNA配列が隣接した。RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼ及び挿入部位に隣接する配列に相補的なガイドRNAの発現をもたらす植物発現カセットもまた構築した(
図1)。
【0398】
実施例2.トマトプロトプラストを用いたゲノム編集実験
本実施例は、エキソヌクレアーゼ、SSB、及びSSAPの存在下及び非存在下における平滑末端切断型及び付着末端切断型の両方のCASヌクレアーゼによるトマトプロトプラストの遺伝子編集について記載する。
【0399】
本質的に既発表の手順のとおり(Czermak et al.2017)、トマトプロトプラストを単離し、培養し、PEG媒介性トランスフェクションに供した。トランスフェクトした材料は、実施例1に記載されるドナーDNA鋳型領域を有するとともに、指示されるとおりのgRNA及びCasポリヌクレオチドも発現するプラスミド(
図1)を含んだ。Casポリヌクレオチドは核局在化シグナルに融合した。gRNAは、意図されるゲノムDNA標的内への二本鎖切断の標的化、及びドナープラスミドからの置換鋳型の放出の両方を行う(
図1を参照)。一部の実験は、エンドヌクレアーゼ認識配列の切断後に平滑末端が残るCASヌクレアーゼを代表する、且つ本明細書でCasBヌクレアーゼと称されるCasヌクレアーゼで行った。他の実験は、エンドヌクレアーゼ認識配列の切断後に付着末端型一本鎖DNA突出末端が残るCASヌクレアーゼを代表する、且つ本明細書においてCasSヌクレアーゼと称されるCasヌクレアーゼで行った。
【0400】
トランスフェクションに続いてプロトプラストを48時間インキュベートした後、トランスフェクト試料からgDNAを抽出し、導入された置換配列及び置換鋳型の相同アームに隣接するゲノム配列と相補的なプライマーで標的遺伝子座を増幅し、アンプリコンシーケンシングによって分析した。
【0401】
アンプリコンは、ペアエンドIlluminaシーケンシングを用いてシーケンシングした。アンプリコンのサイズに起因して、ペアエンドリードのうちの僅か1リードエンド(Read1)が、標的化される配列挿入を含む目的の部位をカバーした。目的のリード(Read1)をクオリティに関してトリムし、参照アンプリコンとアラインメントした。リードは、それをある種のPCR重複と区別するためのユニークな分子識別子(UMI)タグを有し、そうした重複リードはアラインメントから排除した。次に、未編集のゲノム配列にマッピングされたリード(Read2)について、ゲノムに正しくマッピングされているか調べた。Read1から生成されたアラインメントをCrispRVariantsで分析し、それによって切断部位を中心とした100bpウィンドウの範囲内で異なる全ての配列アレルが記述され、集計された(Lindsay,H.et al.Nature Biotechnology 2016 34:701-702)。CrispRVariantsから、アラインメント全体のリード数における各アレルのリード頻度が報告された。種々の配列アレルが、1)野生型配列、SNP、又はシーケンシングアーチファクト、2)インデル突然変異、又は3)正確な挿入イベントに分類された。CrispRVariantsが、突然変異の種類及び定義された切断部位からのその距離に基づきSNPを自動的に検出し、更なるフィルタリングステップを用いて、予想切断部位の両側5bp以内の塩基に関わらない任意の他の配列異常を除去した。これらのアレルはカテゴリー1に入れた。切断部位の両側5bp以内にある任意の塩基に関わる挿入又は欠失突然変異を有するシーケンシングアレルは全て、インデルであると決定し、カテゴリー2に入れた。高精度遺伝子ターゲティングが成功すると、予想されるサイズ及び配列の挿入によって同定可能な単一のCrispRVariants配列アレルが生じた。以下の表1~表2の中で、%インデルに関して報告される頻度は、インデルであると決定された全てのシーケンシングアレルの全ての頻度の合計である。%精度に関して報告される頻度は、単一の高精度挿入シーケンシングアレルの頻度である。両方の頻度とも、分母は、参照アンプリコンに対してアラインメントした全てのリードの合計である。
【0402】
平均測定値の結果を以下の表1にまとめる。CasS(1)とCasS(2)とは、(1)と比較して(2)では2倍に増やしたガイドRNAを使用したことを除き、同様の処理であった。「ラムダRED」は、3つ全てのHDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAPタンパク質、及びSSB)を指す。SD=標準偏差。
【0403】
【0404】
3つ全てのHDR促進剤(即ち、SSB、エキソヌクレアーゼ、及びSSAP)をトランスフェクトすると、CasB平滑末端ヌクレアーゼ実験及びCasS付着末端切断型ヌクレアーゼの両方について、HDR発生率が大幅に亢進した(約10倍)。ベースラインは全3つのHDR促進剤の非存在下で測定し、このときゲノム編集の編集対象の僅か0.1~0.22%にドナー鋳型(HDR)が取り込まれたに過ぎなかった。表1に示されるとおり、HDR促進剤を含まない試料をベースライン対照として供した。
【0405】
3つのHDR促進剤のうちのいずれか1つ又は2つを省くと、HDR発生率は大きく下がったが、いずれの場合にも、ベースラインを上回ってなおも測定可能であった(表2)。
【0406】
【0407】
標的編集部位に付着末端を有するCasSヌクレアーゼ媒介性編集では、標的編集部位に平滑末端を有するCasBヌクレアーゼ媒介性編集と比べると、高精度編集イベント(HDR)が高い比率で生じた。従って、編集イベントは、CasSヌクレアーゼ媒介性の約80%及びCasBヌクレアーゼ媒介性の30%が、NHEJイベントではなく高精度HDRイベントであった。HDR促進剤が存在することにより、NHEJイベントの生成率は有意に低下した。
【0408】
実施例3.トウモロコシプロトプラストを用いたゲノム編集実験
本実施例は、エキソヌクレアーゼ、SSB、及びSSAPの存在下及び非存在下でのトウモロコシプロトプラストにおける遺伝子編集について記載し、ここでは平滑末端切断型CASヌクレアーゼが、ごく近接した2つの二本鎖切断を誘導して、挿入よりむしろ配列置換を誘導する。
【0409】
トウモロコシPYL-E遺伝子のコード領域を110塩基対配列のHDR媒介性置換の標的とするDNAドナー鋳型プラスミドを構築し、この置換は、2つのgRNAが標的とする2つのPAM部位の同義突然変異及び破壊を生じさせる7塩基編集及びアミノ酸変化を生じさせる1塩基編集を導入するものである。環状DNAドナープラスミドは、両側に約500bp長の相同アームが隣接する所望の修飾を有する置換鋳型(8塩基修飾を有する110塩基対長領域)を含む。相同アームは、2つのgRNA標的部位に隣接するgDNA(ゲノムDNA)領域に一致する(即ち、それと相同である)。ドナーDNAを含む置換鋳型領域には、いずれの側にも、RNA誘導型ヌクレアーゼによって認識される2つの標的gDNA配列のうちの一方と同一のDNA配列が隣接する。
【0410】
トウモロコシプロトプラストを単離し、培養し、PEG媒介性トランスフェクションに供する。トランスフェクトした材料は、それぞれ、配列番号135、配列番号134、及び配列番号133に示される、且つ2x35S、ZmUBI1、OsACT1プロモーター及び35S、AtHSP、エンドウ3Aポリアデニル化部位に作動可能に連結されている、c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2 NLS-SSB融合タンパク質を発現するプラスミドを含む。プラスミドはまた、上記に記載した、指示されるとおりの2つのgRNA及びCasポリヌクレオチドを発現するドナーDNA鋳型領域も有する。Casポリヌクレオチドは核局在化シグナルに融合される。2つのgRNAの各々は、意図されるゲノムDNA標的及びドナープラスミドから置換鋳型を遊離させるため置換鋳型に一端で隣接する配列を、両方ともに二本鎖切断を入れる標的とする。実験は、エンドヌクレアーゼ認識配列の切断後に平滑末端が残る、本明細書においてCasBヌクレアーゼと称されるCasヌクレアーゼで行われる。
【0411】
トランスフェクションに続いてプロトプラストを48時間インキュベートした後、トランスフェクトした試料からgDNAを抽出し、導入された塩基修飾及び置換鋳型の相同アームに隣接するゲノム配列と相補的なプライマーで標的遺伝子座を増幅し、アンプリコンシーケンシングによって分析した。gRNA及びCasヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドのみをトランスフェクトした対照と比較して、c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2 NLS-SSB融合タンパク質、gRNA、及びCasヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを発現するプラスミドをトランスフェクトしたプロトプラストでは、HDRが増加したレベルで観察される。
【0412】
実施例4.生物学的配列
本実施例では、本明細書において言及されるタンパク質及び核酸配列の非限定的な実施形態を提供する。生物学的配列及びその配列番号は表3に示す。
【0413】
【0414】
【0415】
【0416】
【0417】
【0418】
【0419】
【0420】
【0421】
【0422】
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
【0427】
【0428】
【0429】
【0430】
【0431】
【0432】
【0433】
【0434】
【0435】
【0436】
実施例5.トマトプロトプラストにおけるゲノム編集
以下の実施例は、HDR促進剤(即ち、エキソヌクレアーゼ、SSBタンパク質、及びSSAP)の存在下及び非存在下でのCasヌクレアーゼを使用したトマトプロトプラストにおける遺伝子編集を評価する実験について記載する。具体的には、鋳型ドナーDNA、HDR促進剤、及びヌクレアーゼ試薬の形態及び送達方法が変わるとゲノム編集に効果が及ぶかを試験する実験を実施した。
【0437】
材料及び方法
実施例2に記載されるとおりトマトプロトプラストを単離し、培養し、トランスフェクトした。実施例2に記載されるとおり、アンプリコンシーケンシングを用いてゲノム編集を評価した。
【0438】
トランスフェクション用のプラスミドの設計
単一のベクターの一部として全ての構成要素を含むか(プラスミド、
図3を参照)、又は構成要素をコトランスフェクション用の2つの異なるプラスミドに分けるか(
図4~
図5を参照)、いずれかのプラスミドを構築した。詳細には、第1のベクターがCasSヌクレアーゼ及びその対応するガイドRNAをコードし、第2のベクターが3つ全てのHDR促進剤(即ち、SSBタンパク質、エキソヌクレアーゼ、及びSSAP)をコードした。加えて、第1のベクター又は第2のベクターのいずれかに、エンドヌクレアーゼ認識配列が隣接するドナー鋳型が存在した。
【0439】
トマトAnt1遺伝子のプロモーター領域をHDRによる42塩基対異種配列の挿入及び3塩基対の欠失の標的とするためのDNAドナー鋳型を構築した。
【0440】
線状化ドナーDNA
ドナー鋳型DNAは、線状二本鎖DNA分子として加えるか、又は特異的ヌクレアーゼ認識配列が隣接する環状ベクターの一部として加えるかのいずれかとした。
【0441】
DNA鋳型上のgRNA認識部位の存在
gRNAによって認識される切断部位がドナーDNA鋳型の隣に存在する効果について、それらの部位をトランスフェクションベクターから除くことにより試験した。
【0442】
結果
HDR促進剤(即ち、エキソヌクレアーゼ、SSBタンパク質、及びSSAP)の存在下及び非存在下で、Casヌクレアーゼ、ガイドRNA、及びドナーDNAをコードする1つ又は2つのプラスミドベクターによってトマトプロトプラストを形質転換した(
図3~
図5を参照)。以下の表4A~表4Cは、トマトプロトプラスト遺伝子編集実験からのデータの要約を提供する。
【0443】
2つのベクターの同時形質転換では、以下の表4Aに示されるとおり、HDRに帰せられる高精度ゲノム編集の有意な増加、並びに非相同末端結合(NHEJ)に帰せられる挿入及び欠失(インデル)編集の減少が一貫して示された。HDR促進剤(即ち、SSB、エキソヌクレアーゼ、及びSSAP)の存在下では、高精度インデル編集の比率が高かった(例えば約70~80%)。ドナー鋳型DNAとCasヌクレアーゼとを別個のベクターで同時形質転換したとき(
図4~
図5)、HDR促進剤の非存在下でドナー鋳型を含めると、NHEJ編集が有意に減少したが、高精度編集が有意に促進されることはなかった。ドナー鋳型DNAとCasヌクレアーゼとが単一のベクター上にあるとき(
図3)、HDR促進剤が存在することによってNHEJ編集は減少したが、程度は低かった。ドナー鋳型DNAに隣接するgRNA認識切断部位を除くと、HDR促進剤が存在しても、NHEJ編集レベルは減少しなかった。異なるベクター上にある構成要素の同時形質転換によっては、HDR効率が実施例2に記載される効率を上回って有意に向上することはなかった。
【0444】
【0445】
線状鋳型DNAは、実施例2で使用したとおりの、特異的ヌクレアーゼ認識配列が隣接する環状ベクターと同程度に高精度(HDR)編集を促進するのに有効で、インデル(NHEJ)編集が減少した(表4B)。
【0446】
【0447】
DNA鋳型に隣接する切断部位の効果について、それらの部位をトランスフェクションベクターから除くことにより試験した。高精度編集の数及び割合は、HDR促進剤を有しない陰性対照よりも多かったが、実施例2にあるとおりのDNA鋳型に隣接する切断部位を有する陽性対照と比べると少なかった(表4C)。同様に、インデル頻度は陰性対照よりも少なく、陽性対照よりもやや多かった。
【0448】
【0449】
実施例6.トウモロコシにおけるSPXのゲノム置換
以下の実施例は、HDR促進剤(即ち、エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAP、及び大腸菌(E.coli)SSBタンパク質)を使用したトウモロコシプロトプラストのSPX遺伝子座におけるmiRNA結合部位の編集について記載する。
【0450】
材料及び方法
プラスミドコンストラクトの設計
トウモロコシのSPX遺伝子座にあるmiRNA結合部位の周辺領域がCasS媒介性切断の標的となり、それによってその部位の置換が媒介されるように、2つのgRNAを使用する。HDR促進剤によって媒介されるHDR修復/編集の鋳型として、ドナーDNA断片を使用する。
【0451】
トウモロコシのSPX遺伝子座にあるmiRNA結合部位及びその隣接領域を、miRNA結合部位内に3塩基対毎にSNPを含む断片で置き換えるためのプラスミドコンストラクトを設計する。加えて、2つのPAM部位を突然変異させるSNPを導入して、それにより編集が起こった後に遺伝子座が切断されるのを防ぐ。miRNA結合部位に導入されるSNPのうちの1つは、miRNA結合部位とPAM配列の一方との両方に対するSNPとして働く。
【0452】
標的に特異的な2つのgRNAを伴うCasSヌクレアーゼ、HDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAP、及び大腸菌(E.coli)SSBタンパク質)、並びに置換断片及び標的編集部位と相同の約700塩基対相同アームを有するドナー鋳型を含むシステムを使用する。Cas9及びHDR促進剤を発現するベクターは、実施例6に記載されるとおり設計した。これまでの実験では、約500~750塩基対のアームが機能性であることが示されているため(実施例6を参照)、相同アームは約700塩基対となるように設計した。加えて、相同アームのGC含量もまた考慮して最大化しており、これは、理論によって拘束されることを望むものではないが、アニーリング及び高精度編集促進の助けとなり得る。2つのgRNA標的配列の各々はまた、続くHDR促進剤の媒介による編集のためドナーがプラスミドから切断されて放出されるようにするため、ドナーの両末端にも存在した。単一のプラスミドが、編集に必要な全ての構成要素を発現した(
図6を参照)。発現する各構成要素は、その専用のプロモーターによってドライブされた。
【0453】
トウモロコシ培養及びトランスフェクション、及びアンプリコンシーケンシング
各個別のプラスミドを別個の4レプリケートでトウモロコシプロトプラストにトランスフェクトする。細胞を48時間インキュベートする。次にゲノムDNAを抽出し、アンプリコンシーケンシングライブラリを調製する。上記の実施例2に記載されるとおり、アンプリコンシーケンシングデータから挿入及び欠失(インデル)頻度及び置換効率を定量化する。
【0454】
結果
HDR促進剤の存在下又は非存在下で2つのgRNAによって標的化されるCasSヌクレアーゼを使用して、トウモロコシのSPX遺伝子座にあるmiRNA結合部位を編集する。本実験には、この実験試料に加えて、ベースライン対照並びに幾つかの他の対照を含める。表5に示されるとおり、CasSと2つのgRNA及びドナー、CasSと2つのgRNA、CasSと個別のgRNA、及びドナーのみをコードするベクターを対照として供した。
【0455】
【0456】
高精度編集及びインデルをシーケンシングによって測定し、異なる試料間で比較する。
【0457】
実施例7.ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)におけるHDRの亢進
以下の実施例は、ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)の葉におけるゲノム編集について記載する。詳細には、HDR促進剤(即ち、エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAP、及び大腸菌(E.coli)SSBタンパク質)の存在下又は非存在下でGFPの突然変異体アレルによってベンサミアナタバコ(N.benthamiana)レポーター株のGFPコード配列を修復することにより、インプランタで編集効率を測定する。
【0458】
材料及び方法
ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の培養及びトランスフェクション
GFPの機能喪失型アレルを有するベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の種子をカナマイシン選択培地(50mg/mL)で2週間発芽させた後、土中に移し替え、Convironグロースチャンバー(12時間/12時間/75μmol/m
2s
-1、昼:夜:光)で2週間成長させる。ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の葉に、CasS及びHDR促進剤発現カセット、並びにGFP修復鋳型を有するドナー鋳型を含むT-DNAベクター(
図7を参照)を発現するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(GV3101株)をシリンジで浸潤させる。次に遺伝子タイピング用に葉試料を採取して、PCRでレポータートランス遺伝子の存在を確認する。グロースチャンバーの蓋を閉めて植物を3日間インキュベートした後、判定及び回収する。処理した葉を組織培養に移し替え、組織培養から全植物を再生する。試料は全て、トリプリケートで試験する。
【0459】
GFPコード配列修復の評価
幾つもの方法のうちの1つを用いてGFPコード配列の修復を評価する。浸潤から3日後の蛍光顕微鏡法を用いたGFPシグナルの可視化により、標的とする挿入を含む葉細胞の比率及び数を定量化する。
【0460】
右側ゲノム/ドナー境界のアンプリコンシーケンシング(実施例2に記載されるとおり)を用いて浸潤後の葉内での標的挿入頻度を定量化して、全体の高精度編集効率を推定する。
【0461】
蛍光顕微鏡法を用いてGFPシグナルを可視化することにより、再生した全植物を定性的に比較して、標的とする挿入の安定発現を確認する。
【0462】
再生した全植物内での標的挿入頻度を右側ゲノム/ドナー境界のサンガーシーケンシングによって定量化して、全体の高精度編集効率を推定する。
【0463】
結果
突然変異体GFP遺伝子を遺伝子修飾するためのCasSシステムをHDR促進剤と共に及びそれ無しで発現するように、ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の葉を形質転換する。以下の表6に、ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の葉に形質転換される構成要素の概要を提供する。「ラムダRED」は、3つ全てのHDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAPタンパク質、及びSSB)を指す。
【0464】
【0465】
突然変異体GFPの修復を測定し、試料間で比較する。
【0466】
実施例8.トマト及びトウモロコシ分裂組織におけるHDRの亢進
以下の実施例は、分裂植物組織でHDR促進剤によって媒介される遺伝子編集を試験する実験について記載する。詳細には、HDR促進剤の存在下及び非存在下でCasヌクレアーゼを使用してトマト子葉外植片を編集した。加えて、HDR促進剤の存在下及び非存在下でCasヌクレアーゼを使用してトウモロコシ胚外植片を編集する。
【0467】
トウモロコシ外植片の形質転換
材料及び方法
トウモロコシ形質転換用のプラスミドの設計
本実施例は、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)媒介性トウモロコシ形質転換用の植物発現ベクターの構築について記載する。2つの植物遺伝子発現ベクターを調製した。バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号8)、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質(配列番号1)、及び大腸菌(E.coli)SSB(配列番号31)の発現用の植物発現カセットを構築した。エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質、及び大腸菌(E.coli)SSBをコードするDNA配列に、配列番号15のタバコc2核局在化シグナル(NLS)をコードするDNA配列を融合して、それぞれ、配列番号135、配列番号134、及び配列番号133に示される、c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2 NLS-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を提供した。c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2NLS-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を、それぞれ、OsUBI1、SlUBI1、OsACTプロモーター及びエンドウ3A、エンドウrbcsE9、NtEXTポリアデニル化部位に作動可能に連結して、エキソヌクレアーゼ、SSAP、及びSSB植物発現カセットを提供した。
【0468】
トウモロコシgln1-3遺伝子のプロモーター領域をHDRによる36塩基対異種配列の挿入の標的とするDNAドナー配列を構築した。このDNAドナー配列は、所望の挿入領域(36塩基対長)の両側に約500~635bp長の相同アームが隣接する置換鋳型を含む。これらの相同アームは、標的gDNA挿入部位に隣接するgDNA(ゲノムDNA)領域とマッチする(即ち、それと相同である)。ドナーDNAを含む置換鋳型領域には、いずれの側にも、RNA誘導型ヌクレアーゼによって認識されるgln1-3遺伝子配列と同一のDNA配列が隣接する。
【0469】
RNA誘導型配列特異的(CasB切断型)エンドヌクレアーゼの発現を提供する植物発現カセットを構築した。挿入部位に隣接する配列と相補的なガイドRNAの発現を提供する植物発現カセットを構築した。ホスフィノトリシンN-アセチルトランスフェラーゼシンターゼ(PAT)タンパク質の発現を提供するカセットを含むアグロバクテリウム属(Agrobacterium)スーパーバイナリープラスミド形質転換ベクターを構築した。これらのカセット、ドナー配列及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)スーパーバイナリープラスミド形質転換ベクターを構築したところで、それらを組み合わせて2つのトウモロコシ形質転換プラスミドを作成した。
【0470】
PATカセット、RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼカセット、ガイドRNAカセット、及びgln1-3DNAドナー配列をアグロバクテリウム属(Agrobacterium)スーパーバイナリープラスミド形質転換ベクターに入れて、トウモロコシ形質転換プラスミドpIN1757を構築した(
図8)。
【0471】
PATカセット、RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼカセット、ガイドRNAカセット、SSBカセット、ラムダベータSSAPカセット、Exoカセット、及びgln1-3DNAドナー配列をアグロバクテリウム属(Agrobacterium)スーパーバイナリープラスミド形質転換ベクターに入れて、トウモロコシ形質転換プラスミドpIN1756を構築した(
図8)。
【0472】
トウモロコシの形質転換
コンストラクトは全て、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)株LBA4404におけるスーパーバイナリーベクターから送達した。
【0473】
既発表の方法に基づき(Ishida et.al,Nature Protocols 2007;2,1614-1621)、トウモロコシ形質転換を実施した。簡潔に言えば、受粉後10~14日の表面を滅菌した穂から、約1.8~2.2mmサイズの近交系GIBE0104由来の未熟胚を単離した。感染培地で作られたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液に胚をOD600=1.0の濃度で入れた。使用時に、感染培地にアセトシリンゴン(200μM)を加えた。胚及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)を低速のロッカー式振盪機に15分間置いた。次に胚を共培養培地プレートの表面に注ぎかけた。プレートを傾け、ピペットで全ての液体を抜き出すことにより、余分な液体培地を除去した。胚盤(scutelum)を上向きに保つため、必要に応じて胚を反転させた。共培養プレートを蓋付きの箱に入れ、22℃の暗所で3日間培養した。次に胚を静止培地へと、胚盤を上向きに保ちながら移し替えた。胚は静止培地に27~28℃で7日間置いておく。カルスを生成した胚を、7.5mg/Lホスフィノトリシン(PPT)を含有する選択1培地に移し替え、更に7日間培養した。カルス化した胚を、10mg/L PPTを含有する選択2培地に入れ、27~28℃で14日間培養した。選択薬剤に抵抗性を示す成長中のカルスを10mg/L PPT含有再生前培地に移し替え、シュートの生育を開始した。カルスは再生前培地に7日間置いておいた。シュートを発芽し始めたカルスを、Phytatray中7.5mg/L PPTを含有する再生培地に移し替え、27~28℃の明所下で培養した。インタクトな根を有するPhytatrayの上部に達したシュートをシュート伸長培地中に分離した後、土中に移植し、温室条件下に徐々に順化させた。
【0474】
結果
実験条件毎の外植片の数を、以下の表7Aに提供する。再生したシュートを試料採取し、pIN1757については16個の胚(「イベント」)からの45個の再生植物から、及びpIN1756については53個の胚からの201個の再生植物から、gDNAを抽出した。約835塩基対のアンプリコンを生成するように設計したプライマーを使用して、gDNAからZmGln1.3遺伝子座を増幅した;フォワードプライマーはエンドヌクレアーゼ切断部位から5’側に約130bpであり、リバースプライマーは3’相同アームの外側であるため、内因性遺伝子座のみが増幅される。ビーズクリーンアップ後、次世代シーケンシングによってアンプリコンを分析した。
【0475】
表7Aのインデル数及びHDR数の列に報告される数字は、標的配列に対して少なくとも5,000個のマッピングされたリードを有し、且つアンプリコンと少なくとも50%の完全アラインメントを有する試料に相当する。標的配列にマッピングされる少なくとも5,000個のリード及びアンプリコンと少なくとも50%の完全アラインメントを有する試料をフィルタリングした後、HDR促進剤が存在しなかったとき16イベント中0であったのと比較して、HDR促進剤が存在したとき53イベント(201個の植物)中2つの独立したイベント(5個の植物)に、標的とする挿入(3.77%)があったと同定された。
【0476】
【0477】
トマト外植片の形質転換
材料及び方法
トマト形質転換用のプラスミドの設計
バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号8)、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質(配列番号1)、及び大腸菌(E.coli)SSB(配列番号31)の発現用の植物発現カセットを構築した。エキソヌクレアーゼ、バクテリオファージラムダベータSSAPタンパク質、及び大腸菌(E.coli)SSBをコードするDNA配列に、配列番号15のタバコc2核局在化シグナル(NLS)をコードするDNA配列を作動可能に連結して、それぞれ、配列番号135、配列番号134、及び配列番号133に示される、c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2 NLS-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を提供した。c2 NLS-Exo、c2 NLSラムダベータSSAP、及びc2NLS-SSB融合タンパク質をコードするDNA配列を、それぞれ、2x35S、SlUBI10、PcUBI4プロモーター及び35S、AtHSP、エンドウ3Aポリアデニル化部位に作動可能に連結して、エキソヌクレアーゼ、SSAP、及びSSB植物発現カセットを提供した。
【0478】
加えて、トマトAnt1遺伝子(SlAnt1)のプロモーター領域をHDRによる42塩基対異種配列の挿入の標的とするDNAドナー配列を構築した。このDNAドナー配列は、両側に相同アーム約600~800bp長が隣接する所望の挿入領域(42塩基対長)を有する置換鋳型を含んだ。相同アームは、標的gDNA挿入部位に隣接する内因性DNA領域にマッチした(即ち、それと相同であった)。ドナーDNAを含む置換鋳型領域には、各端に、RNA誘導型ヌクレアーゼによって認識される内因性標的編集部位配列と同一のDNA配列が隣接した。
【0479】
更に、RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼの発現を提供する植物発現カセットを構築した。挿入部位に隣接する配列と相補的なガイドRNAの発現を提供する植物発現カセットを構築した。緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を提供する植物発現カセットを構築した。5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸(EPSPS)シンターゼの発現を提供するカセットを含むアグロバクテリウム属(Agrobacterium)バイナリープラスミド形質転換ベクターを構築した。
【0480】
カセット、ドナー配列及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)形質転換プラスミドベクターを構築したところで、それらを組み合わせて3つのトマト形質転換プラスミドを作成した。
【0481】
RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼカセット、ガイドRNAカセット及びGFPカセットをアグロバクテリウム属(Agrobacterium)形質転換プラスミドベクターにクローニングして、トマト形質転換プラスミドpIN1703を構築した(
図9B)。RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼカセット、ガイドRNAカセット及びAnt1 DNAドナー配列をアグロバクテリウム属(Agrobacterium)形質転換プラスミドベクターにクローニングして、トマト形質転換プラスミドpIN1704を構築した(
図9B)。RNA誘導型配列特異的エンドヌクレアーゼカセット、ガイドRNAカセット、SSBカセット、ラムダベータSSAPカセット、エキソヌクレアーゼカセット及びAnt1 DNAドナー配列をアグロバクテリウム属(Agrobacterium)形質転換プラスミドベクターにクローニングして、トマト形質転換プラスミドpIN1705を構築した(
図9A~
図9B)。
【0482】
ベクターは全て、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)株EHA105を使用してトマトに送達した。
【0483】
トマト外植片の形質転換
上記に記載されるベクターを使用してトマト(栽培品種マネーメーカー(Moneymaker))外植片を形質転換することにより、上述の構成要素を有する安定に形質転換されたトランスジェニックシュートを再生した。トマトの形質転換は、既発表の方法に基づき実施した(Van Eck J.,Keen P.,Tjahjadi M.(2019)Agrobacterium tumefaciens-Mediated Transformation of Tomato.In:Kumar S.,Barone P.,Smith M.(eds)Transgenic Plants.Methods in Molecular Biology,vol 1864.Humana Press,New York,NY)。簡潔に言えば、トマト種子を50%の市販漂白剤で10分間滅菌し、2分の1強度のMSO培地で発芽させた。本葉が出る前に子葉を切断して、葉の中央の3~5mm片を採取した。これらの葉をアグロバクテリウム属(Agrobacterium)で形質転換し、次に静止再生培地に2週間置いた。2週間後、選択薬剤としての2mg/Lグリホサートを補足した再生培地に外植片を移した。外植片は2週間毎に継代培養した。約6~7週間で、これらの外植片からシュートが再生し始めた。
【0484】
良好に伸長したシュートから試料を採取し、2mg/Lグリホサートを補足した発根培地にシュートを移した。小さいシュートについては、分子解析用に一塊のシュート全体を採取した(即ち、破壊的試料採取)。
【0485】
トマト外植片形質転換の評価
再生したシュートは、初めに、ヌクレアーゼ配列の存在を検出するTaqMan qPCRアッセイによりトランス遺伝子陽性であることを同定した。更に、このqPCRアッセイを用いて、以下の表7Bに示されるとおり、トランス遺伝子挿入が低いコピー数(1~2つのコピー)で起こったか、それとも高いコピー数(2つより多いコピー)で起こったかを推定した。HDR媒介性編集イベントのレベルを評価するため、既に確認済みのヌクレアーゼ配列陽性外植片から抽出した同じgDNA源からSlAnt1遺伝子座を増幅し、次世代シーケンシングで分析した。
【0486】
結果
上記に記載されるとおり、CRISPRエンドヌクレアーゼ(CasS)、部位特異的切断用のガイドRNA及びHDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAPタンパク質、及び大腸菌(E.coli)SSB)でシステムを設計した。組み込もうとする配列に標的ゲノム遺伝子座とマッチする相同アームが隣接することを特徴とするドナーDNA分子もまた含まれた。トランス遺伝子が挿入されるゲノム挿入部位からドナー分子が切り出されて放出され得るように、このドナーDNAには、いずれの側にも、ガイドRNAとマッチする切断部位が隣接した。このシステムが分裂植物組織のゲノムへの標的化した組込みを改善する有効性を試験するため、上記に記載される完全なシステムをアグロバクテリウム属(Agrobacterium)でトマトの外植片に送達した。
【0487】
システムの有効性は、単にCasSヌクレアーゼ、ガイドRNA、及びDNAドナーだけで構成されるベースライン実験条件(
図9BのpIN1704を参照)と比較した、HDR促進剤システムによる高精度標的化組込み効率(
図9A)の比較によって測定した。高精度標的化組込み効率は、形質転換した外植片から再生したシュートのDNAシーケンシングに基づき計算した。再生したシュートの総数に対する組み込まれたドナー配列を含むトマトシュートの割合を、コンストラクト毎に以下の表7Bに示す。試料採取した組織は、トマト形質転換システムの性質に起因して、遺伝的に均一というよりむしろキメラであり、シーケンシング結果は、個々の植物内での何らかの独立した編集の発生を反映した。表7Bでは、インデルは、SlAnt1プロモーター内の標的位置におけるNHEJ型及びHDR型の両方の突然変異を指す。HDR突然変異は、個々の試料からの30%を超えるシーケンシングリードが高精度編集、即ち鋳型DNAの挿入であったとき、遺伝的である可能性が高いと見なした。高精度編集のレベルはトランス遺伝子コピー数と相関しなかった。遺伝的HDR媒介性編集イベントの割合は、HDR促進剤をコードするベクター(pIN1705)で形質転換したシュートにおいて最も高かった。編集された植物の少数は、長いリードシーケンシングによって更に特徴付けられた。6個のpIN1704形質転換植物試料のうち1個のみに、何らかのスカーレス編集が検出された。15個のpIN1705形質転換植物試料のうち10個に、何らかのスカーレス編集が検出され、そのうち少なくとも4個は両アレル性の100%スカーレス編集を有した。標的化した配列挿入の結果として、編集された植物は種々のアントシアニン蓄積レベルを示した。まとめると、HDR促進剤をコードするベクターは、HDR媒介性の高精度編集を有意に改善した。
【0488】
【0489】
上記に記載されるとおりのトマト編集実験を繰り返した。結果を表7Cに示す。この場合もやはり、遺伝的HDR媒介性編集イベントの割合は、HDR促進剤をコードするベクター(pIN1705)で形質転換したシュートで最も高かった;同じ傾向が観察された。
【0490】
【0491】
実施例9.哺乳類細胞におけるHDRの亢進
以下の実施例は、HDR促進剤の存在又は非存在でのヒト胎児腎臓293(HEK-293)細胞における遺伝子座の高精度編集について記載する。FRT部位及び最小AAVS1部位を、それぞれ、EMX1及びGRIN2b遺伝子に挿入する。これらの遺伝子の特異的標的編集部位に標的化した挿入を誘導するため、編集機構を発現するプラスミドを細胞株にトランスフェクトする。
【0492】
材料及び方法
トランスフェクション用のプラスミドの設計
EMX1又はGRIN2b標的遺伝子座に特異的なgRNAを伴うCasSヌクレアーゼ、HDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAP、及び大腸菌(E.coli)SSBタンパク質)、及び挿入配列と標的編集部位に相同の約700塩基対の相同アームとを有するドナー鋳型をコードする単一のプラスミドを作成する。各構成要素は別個のプロモーターによってドライブされる。これらの遺伝子カセットは、初めに、モジュールA、B及びCと呼ばれる3つの別個の中間プラスミドに合成し、次に、単一の発現プラスミドにアセンブルする。
【0493】
CasS及びHDR促進剤のアミノ酸配列は、HDR促進剤用のNLSを除いては、実施例1に記載されるとおりである。詳細には、HDR促進剤は、アミノ酸リンカー(配列番号148、MAPKKKRKVGGSGS)でSV40 NLSに融合される。コード配列は全て、ヒトでの発現用にコドン最適化される。
図10に示されるとおり、CasBはCAGプロモーター及びウサギβ-グロビンターミネーターの制御下にあり(CAGp-CasS-rb_グロビン_t)、gRNAはヒト(H.sapiens)U6プロモーターの制御下にあり(HsU6p-gRNA)、SSBタンパク質はヒト(H.sapiens)EF1aプロモーター及びヒト成長ホルモンの制御下にあり(hGH)ターミネーター(HsEF1ap-SSB-hGHt)、SSAPは、ヒト(H.sapiens)ACTBプロモーター及びウシ成長ホルモン(bGH)ターミネーターの制御下にあり(HsACTB-β-bGHt)、及びエキソヌクレアーゼは、CMVプロモーター及びSV40ターミネーターの制御下にある(CMVp-Exo-SV40t)。
【0494】
加えて、ドナーにはまた、ゲノム標的に存在するのと同じgRNA標的配列が隣接し、従って送達されたプラスミドからドナーが放出されることにつながり、続いてHDR促進剤によって媒介される編集が起こる(
図10を参照)。
【0495】
以下の表8に示す試料毎に別個のプラスミドを構築する。
【0496】
HEK-293細胞のトランスフェクション
プラスミドをHEK-293細胞にトランスフェクトする。各プラスミドにつき3つの別個のトランスフェクションをレプリケートとして供する。
【0497】
トランスフェクション後、細胞を48~72時間インキュベートし、その後、続くアンプリコンシーケンシングライブラリの調製用に、全ての試料からゲノムDNAを抽出する。
【0498】
アンプリコンシーケンシング
挿入部位に直接隣接する配列にアニールするプライマー及びドナーに存在する相同性領域の外側のゲノム配列にアニールするプライマーで標的を増幅する(これによりプラスミドからのドナーの増幅を防ぐ)。次に挿入配列に隣接するプライマーから来るリードからのアンプリコンシーケンシングデータを用いて、標的遺伝子座における挿入効率を定量化する。
【0499】
HDR促進剤の存在下又は非存在下でHEK-293細胞を編集する。詳細には、上記に記載されるプラスミドを使用して、EMX1遺伝子座に34塩基対FRT部位を挿入し、GRIN2b遺伝子座に33塩基対最小AAVS1部位を挿入する。
【0500】
CasSを含む試料に加えて、HDR促進剤による試料の編集効率をベースライン対照と比較するため、表8に示されるとおり、3つ全てのHDR促進剤(「ラムダRed」)、gRNA、及びドナーDNA、幾つかの対照を含める。「ラムダRED」とは、3つ全てのHDR促進剤(エキソヌクレアーゼ、ラムダベータSSAPタンパク質、及びSSB)を指す。
【0501】
【0502】
詳細には、CasSとgRNA及びドナー(HDR促進剤のないベースライン対照)、ラムダRed遺伝子及びドナー(ヌクレアーゼ媒介性の標的DNA切断が重要であることを確認するため、ヌクレアーゼなし対照)、ドナーのみ、及びCasSとgRNA(標的の効率的な切断が得られていることを確かめるための切断対照)を含む試料を個々に対照としてトランスフェクトする。CasSとgRNA及びドナーを含む試料は、HDR促進剤を含む試料と比較されるベースライン試料である。加えて、トランスフェクションなし対照もまた評価する。
【0503】
本開示の広さ及び範囲は、上述の実施例のいずれによっても限定されてはならず、前出の実施形態、以下の特許請求の範囲、及びその均等物によってのみ定義されなければならない。
【0504】
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【国際調査報告】