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  • 特表-抗CEA抗体及びその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】抗CEA抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220901BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220901BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220901BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220901BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220901BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220901BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220901BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220901BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220901BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220901BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220901BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220901BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20220901BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/12
A61K45/00
A61K35/76
A61K47/68
A61K39/395 C
G01N33/574 E
C12P21/08
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576913
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2020097984
(87)【国際公開番号】W WO2020259550
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910560329.6
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】応 華
(72)【発明者】
【氏名】毛 浪勇
(72)【発明者】
【氏名】張 玲
(72)【発明者】
【氏名】葛 虎
(72)【発明者】
【氏名】陶 維康
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA92Y
4B065AA93X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗CEA抗体及びその応用に関する。具体的に、本開示は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む抗CEA抗体、その薬物複合体と、前記抗CEA抗体又はその薬物複合体を含む組成物、及び薬物としてのその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
i)前記重鎖可変領域は、そのHCDR1及びHCDR3がそれぞれSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR1及びHCDR3と同じであり、且つそのHCDR2がSEQ ID NO:7に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、及び
前記軽鎖可変領域は、そのLCDR1、LCDR2及びLCDR3がそれぞれSEQ ID NO:8に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
ii)前記重鎖可変領域は、そのHCDR1及びHCDR3がそれぞれSEQ ID NO:9に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR1及びHCDR3と同じであり、且つそのHCDR2がSEQ ID NO:9に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、及び
前記軽鎖可変領域は、そのLCDR1、LCDR2及びLCDR3がそれぞれSEQ ID NO:10に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iii)前記重鎖可変領域は、そのHCDR1、HCDR2及びHCDR3がそれぞれSEQ ID NO:11に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同じであり、及び
前記軽鎖可変領域は、そのLCDR1、LCDR2及びLCDR3がそれぞれSEQ ID NO:12に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iv)前記重鎖可変領域は、そのHCDR1及びHCDR3がそれぞれSEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR1及びHCDR3と同じであり、且つそのHCDR2がSEQ ID NO:13に示される重鎖可変領域に含まれるHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、及び
前記軽鎖可変領域は、そのLCDR1及びLCDR3がそれぞれSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR1及びLCDR3と同じであり、且つそのLCDR2がSEQ ID NO:14に示される軽鎖可変領域に含まれるLCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有する、
抗CEA抗体。
【請求項2】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、
v)前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
vi)前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:47及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
vii)前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
viii)前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:33とSEQ ID NO:34に示されるHCDR1とHCDR3、及び、SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2を含み、
前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:35とSEQ ID NO:37に示されるLCDR1とLCDR3、及び、SEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2を含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、それぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:64及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、
請求項1に記載の抗CEA抗体。
【請求項3】
前記抗体はマウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1又は2に記載の抗CEA抗体。
【請求項4】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含むマウス抗体又はキメラ抗体であり、
(a)前記重鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示され、又はSEQ ID NO:7と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:8に示され、又はSEQ ID NO:8と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(b)前記重鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(c)前記重鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:11に示され、又はSEQ ID NO:11と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:12に示され、又はSEQ ID NO:12と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(d)前記重鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:13に示され、又はSEQ ID NO:13と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、そのアミノ酸配列がSEQ ID NO:14に示され、又はSEQ ID NO:14と少なくとも90%の配列同一性を有する、
請求項3に記載の抗CEA抗体。
【請求項5】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であり、
(e)前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:39、40、41若しくは42に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:39、40、41若しくは42と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:43、44、45若しくは46に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:43、44、45若しくは46と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(f)前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:48、49、50、51若しくは52に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:48、49、50、51若しくは52と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:53、54若しくは55に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:53、54若しくは55と少なくとも90%の同一性を有し、又は
(g)前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:56、57若しくは58に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:56、57若しくは58と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:59、60、61、62若しくは63に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:59、60、61、62若しくは63と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(h)前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:65、66、67若しくは68に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:65、66、67若しくは68と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は
前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75若しくは76に示され、又はそれぞれSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75若しくは76と少なくとも90%の配列同一性を有し、
好ましくは、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:44に示され、且つ前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:42に示され、又は
好ましくは、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:53に示され、且つ前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:52に示され、又は
好ましくは、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:62に示され、且つ前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:58に示され、又は
好ましくは、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:76に示され、且つ前記重鎖可変領域SEQ ID NO:68に示される、
請求項1~3の何れか1項に記載の抗CEA抗体。
【請求項6】
ヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、前記フレームワーク領域変異体はヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ1~10個のアミノ酸の復帰変異を有する抗CEA抗体であって、
好ましくは、前記抗CEA抗体は、
(i)それぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:15に示されるHCDR1、SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(j)それぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:21に示されるHCDR1、SEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、48I、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(k)それぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
それぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び
(l)SEQ ID NO:35に示されるLCDR1、SEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:33に示されるHCDR1、SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、
前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
そのうち、前記復帰変異の部位は、Kabat番号付け規則に従って番号付けられる、
請求項1、2、3又は5に記載の抗CEA抗体。
【請求項7】
重鎖定常領域と軽鎖定常領域を更に含む抗CEA抗体であって、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体κとλ鎖定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、更に好ましくは、前記抗体は、SEQ ID NO:77に示される重鎖定常領域、及びSEQ ID NO:78又はSEQ ID NO:79に示される軽鎖定常領域を含み、
最も好ましくは、前記抗CEA抗体は、
(m)SEQ ID NO:80に示され、又はSEQ ID NO:80と少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、
SEQ ID NO:81に示され、又はSEQ ID NO:81と少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、
(n)SEQ ID NO:82に示され、又はSEQ ID NO:82と少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、
SEQ ID NO:83に示され、又はSEQ ID NO:83と少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、
(o)SEQ ID NO:84に示され、又はSEQ ID NO:84と少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、
SEQ ID NO:85に示され、又はSEQ ID NO:85と少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(p)SEQ ID NO:86に示され、又はSEQ ID NO:86と少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、SEQ ID NO:87に示され、又はSEQ ID NO:87と少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、
を含む、
請求項1~6の何れか1項に記載の抗CEA抗体。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の抗CEA抗体と競合してヒトCEA又はヒトCEAのエピトープに結合する、単離した抗CEA抗体。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体をコードする、核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体と、
細胞毒性薬物と、
を含み、又はそれらからなり、
そのうち、前記細胞毒性薬物は、前記抗CEA抗体に複合される、
抗体薬物複合体。
【請求項12】
予防有効量又は治療有効量の請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体、又は請求項9に記載の核酸分子、又は請求項11に記載の抗体薬物複合体と、
1種又は複数種の薬学的に許容されるベクター、希釈剤、緩衝剤又は賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
免疫検出又はCEAの測定に用いられる方法であって、請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体を試料に接触させる工程を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体を含む、試薬キット。
【請求項15】
疾患を予防又は治療する方法であって、
対象に予防有効量又は治療有効量の請求項1~8の何れか1項に記載の抗CEA抗体、又は請求項9に記載の核酸分子、又は請求項11に記載の抗体薬物複合体、又は請求項12に記載の医薬組成物を投与することを含み、
そのうち、前記疾患はCEA関連の疾患であり、好ましくは、腫瘍であり、
更に好ましくは、前記疾患は、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんから選ばれ、
更に好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、
前記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれ、
前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中国特許出願「抗CEA抗体及びその応用」(出願番号は201910560329.6で、出願日は2019年06月26日である)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、抗体薬物分野に関する。具体的には、抗CEA抗体薬物及びその応用を含む。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
がん胎児性抗原(CEA;CEACAM-5やCD66eとも呼ばれる)は、最初に発見された腫瘍関連抗原の1つで、約180 kDaの分子量を有する糖タンパク質であり、CEAは免疫グロブリン超分子群のメンバーの1つであると共に、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞膜に接続される7つのドメインを含む(Thompson J. A. , J Clin Lab Anal. 5: 344-366, 1991)。CEAは、最初にGold P及びFreedman SOによって結腸がん組織抽出物において発見されて報告(Gold and Freedman 1965;Gold and Freedman 1965)され、その後、高感度の放射免疫測定法により結腸がん患者と他の腫瘍患者の血清にCEAが検出されたが、健康な人又は他の疾患患者の血清にCEAの含有量が極めて低いと報告された(Thomson, Krupey et al., 1969)。CEAは、がん細胞において発現が高くなり、高くなったCEAにより、細胞間の接着が促進され、更に細胞の移転が促進される(Marshall J. , Semin Oncol. , 30(増刊8): 30-6, 2003)。CEAは、胃腸、気道と尿生殖路の細胞、及び結腸、子宮頸、汗腺と前立腺の細胞(Nap et al., Tumour Biol. , 9(2-3): 145-53, 1988; Nap et al., Cancer Res. , 52(8): 2329-23339, 1992)を含む上皮組織に発現されていることがよく認められる。
【0004】
現在、複数種の抗CEA抗体が、WO1999043817A1、WO2004032962A1、WO2005086875A3、WO2012117002A1などの特許に開示されている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、新規の抗CEA抗体を提供する。本開示の抗体は、全長抗体とその抗原結合断片を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、本開示の抗CEA抗体は、抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
i)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:7配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、
前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3はSEQ ID NO:8配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
ii)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:9配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、
前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、SEQ ID NO:10配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iii)前記重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、SEQ ID NO:11配列に示される重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2及びHCDR3と同じであり、
前記軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、SEQ ID NO:12配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2及びLCDR3と同じであり、又は
iv)前記重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR1及びHCDR3と同じであり、前記重鎖可変領域のHCDR2はSEQ ID NO:13配列に示される重鎖可変領域のHCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有し、
前記軽鎖可変領域のLCDR1とLCDR3はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR1とLCDR3と同じであり、前記軽鎖可変領域のLCDR2はSEQ ID NO:14配列に示される軽鎖可変領域のLCDR2と同じであり、又はそれと1つのアミノ酸差異を有する。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、
v)前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:15、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
vi)前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:21、SEQ ID NO:47及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
vii)前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
viii)前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:33とSEQ ID NO:34に示されるHCDR1とHCDR3、及び配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:35とSEQ ID NO:37に示されるLCDR1とLCDR3、及び配列がSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:64及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
前記重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:35、SEQ ID NO:64及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含むマウス抗体又はキメラ抗体であり、そのうち、
(a)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に示され、又はSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に示され、又はSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(b)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示され、又はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示され、又はSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、
(c)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:11に示され、又はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示され、又はSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、又は
(d)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示され、又はSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示され、又はSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記(a)から(d)の何れか1項に記載される少なくとも90%の配列同一性を有するとは、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有することである。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含むヒト化抗体であり、そのうち、
(e)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:39、40、41若しくは42に示され、又はSEQ ID NO:39、40、41若しくは42に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:43、44、45若しくは46に示され、又はSEQ ID NO:43、44、45若しくは46に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、
(f)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:48、49、50、51若しくは52に示され、又はSEQ ID NO:48、49、50、51若しくは52に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53、54若しくは55に示され、又はSEQ ID NO:53、54若しくは55に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、
(g)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:56、57若しくは58に示され、又はSEQ ID NO:56、57若しくは58に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:59、60、61、62若しくは63に示され、又はSEQ ID NO:59、60、61、62若しくは63に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、又は
(h)前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:65、66、67若しくは68に示され、又はSEQ ID NO:65、66、67若しくは68に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有し、及び/又は、
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75若しくは76に示され、又はSEQ ID NO:69、70、71、72、73、74、75若しくは76に示される何れか1つのアミノ酸配列と90%の配列同一性を有する。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記(e)~(h)の何れか1項に記載される少なくとも90%の配列同一性を有するとは、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有することである。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、表a-1、表a-2、表a-3又は表a-4に示すような重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせを含む:
【0015】
備考:表中、例えば「Hu47V-14」は、軽鎖可変領域がh47VL2(SEQ ID NO:44)、重鎖可変領域がh47VH4(SEQ ID NO:42)である軽鎖可変領域と重鎖可変領域との組み合わせを示す。
【0016】
備考:表中、例えば「Hu63V-13」は、軽鎖可変領域がh63VL1(SEQ ID NO:53)、重鎖可変領域がh63VH5(SEQ ID NO:52)である軽鎖可変領域と重鎖可変領域との組み合わせを示す。
【0017】
備考:表中、例えば「Hu67V-14」は、軽鎖可変領域がh67VL4(SEQ ID NO:62)、重鎖可変領域がh67VH3(SEQ ID NO:58)である軽鎖可変領域と重鎖可変領域との組み合わせを示す。
【0018】
備考:表中、例えば「Hu103V-32」は、軽鎖可変領域がh103VL8(SEQ ID NO:76)、重鎖可変領域がh103VH4(SEQ ID NO:68)である軽鎖可変領域と重鎖可変領域との組み合わせを示す。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記ヒト化抗CEA抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、そのうち、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:44に示され、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:42に示され、又は
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:53に示され、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:52に示され、又は
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:62に示され、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:58に示され、又は
前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:76に示され、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:68に示される。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、ヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、前記フレームワーク領域変異体は、ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域、及び/又は、重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ1~10個のアミノ酸の復帰変異を有し、
好ましくは、前記フレームワーク領域変異体は、下記の(i)~(l)の記載から選ばれるアミノ酸復帰変異を含む:
(i)軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む場合に、軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は、
重鎖可変領域は、配列がSEQ ID NO:15に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む場合に、重鎖可変領域のフレームワーク領域は、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、
(j)軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む場合に、軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は、
重鎖可変領域は、配列がSEQ ID NO:21に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む場合に、重鎖可変領域のフレームワーク領域は、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、
(k)軽鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む場合に、軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は、
重鎖可変領域は、配列がそれぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む場合に、重鎖可変領域のフレームワーク領域は、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び
(l)軽鎖可変領域は、配列がSEQ ID NO:35に示されるLCDR1、配列がSEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及び配列がSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む場合に、軽鎖可変領域のフレームワーク領域は、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は、
重鎖可変領域は、配列がSEQ ID NO:33に示されるHCDR1、配列がSEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及び配列がSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む場合に、重鎖可変領域のフレームワーク領域は、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、
そのうち、前記変異の部位はKabat番号付け規則に従って番号付けられる。例えば「46P」は、Kabat番号付け規則の第46位のアミノ酸復帰変異を「P」とすることを示す。
【0021】
当業者は、Kabat以外の他の番号付け規則を採用する場合に、機能及び/又は構造で同等の地位を有するアミノ酸残基には、異なる番号が付けられ得るが、依然として本開示に限定された部位に対応すると理解すべきである。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、
(i-1)それぞれSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19及びSEQ ID NO:20に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:15に示されるHCDR1、SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:17に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、46P、47W、49Y、70S及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K又は46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(j-1)それぞれSEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:26に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:21に示されるHCDR1、SEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:47に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:23に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、2V、42G、44V及び71Yから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、48I、66K、67A、69L、71V、73K、82F、82A Rから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
(k-1)それぞれSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31及びSEQ ID NO:32に示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
それぞれSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28及びSEQ ID NO:29に示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、3V、43P及び58Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、38K、66K、71Vから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び
(l-1)SEQ ID NO:35に示されるLCDR1、SEQ ID NO:36又はSEQ ID NO:64に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:37に示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域と、
SEQ ID NO:33に示されるHCDR1、SEQ ID NO:16又はSEQ ID NO:38に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:34に示されるHCDR3を含む重鎖可変領域と、を含み、
そのうち、前記軽鎖可変領域のフレームワーク領域には、4V、36Y、43P、47V、49E、70D及び87Iから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、及び/又は、前記重鎖可変領域のフレームワーク領域には、2I、38K及び46Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異が含まれ、
そのうち、前記復帰変異の部位は、Kabat番号付け規則に従って番号付けられる。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、抗体重鎖定常領域と軽鎖定常領域を更に含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体κとλ鎖定常領域及びその通常の変異体から選ばれ、更に好ましくは、前記抗体は、配列がSEQ ID NO:77に示される重鎖定常領域、及び配列がSEQ ID NO:78又はSEQ ID NO:79に示される軽鎖定常領域を含み、
最も好ましくは、前記抗体は、
(m)配列がSEQ ID NO:80に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:81に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(n)配列がSEQ ID NO:82に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:83に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(o)配列がSEQ ID NO:84に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:85に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、又は
(p)配列がSEQ ID NO:86に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は、配列がSEQ ID NO:87に示され、又はそれと少なくとも85%の配列同一性を有する軽鎖、
を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記(m)~(p)の何れか1項に記載の少なくとも85%の配列同一性を有するとは、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有することである。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、全長抗体又は抗原結合断片である。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体は、
(q)配列がSEQ ID NO:80に示される重鎖及び配列がSEQ ID NO:81に示される軽鎖、
(r)配列がSEQ ID NO:82に示される重鎖及び配列がSEQ ID NO:83に示される軽鎖、
(s)配列がSEQ ID NO:84に示される重鎖及び配列がSEQ ID NO:85に示される軽鎖、又は
(t)配列がSEQ ID NO:86に示される重鎖及び配列がSEQ ID NO:87に示される軽鎖、
を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、本開示は、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体と競合してヒトCEA、又はヒトCEAエピトープ若しくは断片に結合する単離した抗CEA抗体を更に提供する。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、細胞膜表面(膜結合型又は膜貫通型)のヒトCEA(例えば、高い親和力で)に結合可能であるのみならず、細胞膜表面サルCEA(例えば、高い親和力で)にも結合可能であり、且つ前記抗CEA抗体の、細胞膜表面ヒトCEAに結合するEC50値に対する細胞膜表面サルCEAに結合するEC50値の比率は≦3.5で、好ましくは≦3.4、≦3.3、≦3.2、≦3.1、≦3.0、≦2.9、≦2.8、≦2.7、≦2.6、≦2.5、≦2.4、≦2.3、≦2.2、≦2.1、≦2.0、≦1.9、≦1.8、≦1.7、≦1.6、≦1.5、≦1.0、≦0.9、≦0.8≦0.7、≦0.6、≦0.5、≦0.4、≦0.3、≦0.2又は≦0.1で、更に好ましくは≦0.7、≦0.6、≦0.5、≦0.4、≦0.3、≦0.2であり、前記抗CEA抗体のCEAに結合するEC50(nM)値は、FACS方法により測定され、例示としては、本開示の試験例1に示される通りである。
【0029】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、可溶性ヒトCEA(sCEA)に対して、競合して細胞膜表面ヒトCEA(CEA)に結合する。幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、sCEAを加えないとsCEAを加えたヒトCEA発現細胞(例えば、MKN45)において、抗CEA抗体と抗原に結合する蛍光シグナルとの比率の最大値は2.0未満で、更に好ましくは≦1.9、≦1.8、≦1.7、≦1.6、≦1.5、≦1.4、≦1.3、≦1.2、≦1.1又は≦1.0で、前記蛍光シグナル値はFACS方法により検出され、例えば、本開示の試験例2である。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、10-7 M以上(例えば、10-7 M以上、1×10-6 M以上、1×10-5 M以上、好ましくは1×10-7 M以上且つ5×10-6 M以下)のKD値で可溶性ヒトCEAに結合すると共に、10-9 M以下(例えば、9×10-9 M以下、8×10-9 M以下、7×10-9 M以下、6×10-9 M以下、5×10-9 M以下、4×10-9 M以下、3×10-9 M以下、2×10-9 M以下、1×10-9 M以下又は1×10-10 M以下)のEC50値で細胞膜表面のヒトCEA又は細胞膜表面のサルCEAに結合し、前記EC50値はFACS方法により測定され、例えば、本開示の試験例1に記載のものであり、前記KD値はBiacore方法により測定され、例えば、本開示の試験例3である。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記抗CEA抗体は、以下の特徴を有する:
a.前記抗CEA抗体は可溶性ヒトCEA(sCEA)に対して、競合して細胞膜表面ヒトCEAに結合し、前記抗CEA抗体は、sCEAを加えないとsCEAを加えたヒトCEA発現細胞(例えば、MKN45)において、抗CEA抗体と抗原に結合する蛍光シグナルとの比率の最大値が1.7未満で、前記蛍光シグナル値はFACS方法により検出される;
b.前記抗CEA抗体は、細胞膜表面のヒトCEAに高い親和力で結合するのみならず、細胞膜表面サルCEAにも高い親和力で結合し、前記抗CEA抗体の、細胞膜表面ヒトCEAに結合するEC50値に対する細胞膜表面サルCEAに結合するEC50値の比率は≦0.7で、前記EC50値はFACS方法により測定される;及び/又は、
c.前記抗CEA抗体は、1×10-7 M以上且つ5×10-6 M以下のKD値で可溶性ヒトCEAに結合すると共に、8×10-9 M以下のEC50値で細胞膜表面のヒトCEAと細胞膜表面のサルCEAに結合し、前記EC50値はFACS方法により測定され、前記KD値はBiacore方法により測定される。
【0032】
幾つかの実施形態において、本開示は、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体をコードする核酸分子を更に提供する。
【0033】
幾つかの実施形態において、本開示は、前記核酸分子を含む宿主細胞を更に提供する。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示は、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体と細胞毒性薬物とを複合してなる抗体薬物複合体を更に提供する。
【0035】
別の幾つかの実施形態において、本開示は、
- 前記の抗CEA抗体と、
- 細胞毒性薬物と、を含み、又はそれらからなり、
そのうち、前記細胞毒性薬物は、前記抗CEA抗体と共有結合して複合する、
抗体薬物複合体を更に提供する。
【0036】
幾つかの実施形態において、本開示は、予防又は治療有効量の前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、核酸分子、又は抗体薬物複合体、及び1種又は複数種の薬学的に許容されるベクター、希釈剤、緩衝剤若しくは賦形剤を含む医薬組成物を更に提供する。
【0037】
幾つかの実施形態において、本開示は、免疫検出又はCEAの測定に用いられる、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体を試料に接触させる工程を含む方法を更に提供する。
【0038】
幾つかの実施形態において、本開示は、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体を含む試薬キットを更に提供する。
【0039】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を予防又は治療するための、対象に予防又は治療有効量の前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体又は医薬組成物を投与することを含む方法を更に提供する。
【0040】
幾つかの実施形態において、本開示は、CEA関連疾患を治療するための、対象に治療有効量の前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体又は医薬組成物を投与する方法を更に提供する。
【0041】
幾つかの実施形態において、前記疾患は腫瘍であり、別の幾つかの実施形態において、前記疾患は、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんから選ばれ、別の幾つかの実施形態において、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0042】
幾つかの実施形態において、前記予防又は治療有効量は、単位投与量の組成物に0.1 mg~3000 mg(好ましくは1 mg~1000 mg)の前記抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体又は医薬組成物が含まれることである。
【0043】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を予防又は治療するための薬物の調製における、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体又は医薬組成物の用途を更に提供する。
【0044】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患又は病症を治療するための薬物の調製における、前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体又は医薬組成物の用途を更に提供する。
【0045】
幾つかの実施形態において、前記疾患は、CEA関連疾患が好ましい。幾つかの実施形態において、前記疾患は腫瘍である。
【0046】
別の幾つかの実施形態において、前記疾患は、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんから選ばれ、別の幾つかの実施形態において、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0047】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を予防又は治療するための前記何れか1項に記載の抗CEA抗体、又は前記核酸分子、又は前記抗体薬物複合体、又は前記医薬組成物を更に提供する。幾つかの実施形態において、前記疾患は、CEA関連疾患が好ましい。幾つかの実施形態において、前記疾患は腫瘍である。別の幾つかの実施形態において、前記疾患は、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんから選ばれ、別の幾つかの実施形態において、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【0048】
幾つかの実施形態において、本開示による抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体は、予防又は治療における唯一の活性成分である。
【0049】
別の幾つかの実施形態において、本開示による抗CEA抗体、核酸分子、抗体薬物複合体は、他の活性成分と併用投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】ヒト化抗体のMKN45細胞におけるエンドサイトーシス活性である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
用語(定義)
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書で特に明らかに定義しない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0052】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字符号と1文字符号は、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載される通りである。
【0053】
用語「細胞毒性薬物」は、細胞の機能を阻害又は防止し、及び/又は、細胞の死亡や破壊を引き起こす物質を指し、細胞毒性薬物は毒素、化学療法薬などの腫瘍細胞の死滅に利用可能な化合物を含む。
【0054】
用語「毒素」とは、細胞の成長又は増殖に悪影響を与えることができる任意の物質であり、細菌、真菌、植物や動物由来の小分子毒素及びその誘導体であってもよく、エキサテカンなどのカンプトテシン誘導体、、メイタンシンアルカロイド及びその誘導体(CN101573384)、例えばDM1、DM3、DM4、auristatin F(AF)及びその誘導体、例えばMMAF、MMAE、3024(WO 2016/127790 A1、化合物7)、ジフテリア毒素、外毒素、リシン(ricin)A鎖、アブリン(abrin)A鎖、modeccin、α-サルシナ(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)毒性タンパク質、ジアンシン(dianthin)毒性タンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolacca americana)毒性タンパク質(PAPI、PAPIIとPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(Momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(saponaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコセセンス(trichothecenes)を含むが、これらに限定されない。
【0055】
用語「化学療法薬」は、腫瘍の治療に利用可能な化学化合物である。この定義は、がんの成長を促進可能なホルモン効果作用を調節、低減、遮断又は阻害する抗ホルモン剤を更に含み、且つ常に系統的治療又は全身的治療の形式である。それ自体はホルモンであってもよい。化学療法薬の実例としては、チオテパ(thiotepa)などのアルキル化剤;シクロホスファミド(cyclophosphamide)(CYTOXANTM);ブスルファン(busulfan)、インプロスルファン(improsulfan)とピポスルファン(piposulfan)などのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)とウレドーパ(uredopa)などのアジリジン(aziridine);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン(triethylenemelamine)、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドとトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むアジリジンとメチラメラミン(methylamelamine);クロラムブシル、クロルナファジン、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン(estramustine)、イフォスファミド(ifosfamide)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン(melphalan)、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード(nitrogen mustards);カルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン(nimustine)、ラニムスチン(ranimustine)などのニトロソウレア(nitrosureas);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシンC(cactinomycin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、carabicin、カーミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、アクチノマイシンD、ダウノルビシン(daunorubicin)、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン(peplomycin)、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン(streptozocin)、ツベルシジン、ウベニメクス(ubenimex)、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin)などの抗生物質;メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート(trimetrexate)などの葉酸アナログ;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン(ancitabine)、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン、カルモフール(carmofur)、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン(doxitluridine)、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン、5-FUなどのピリミジンアナログ;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolong propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン(mepitiostane)、テストラクトン(testolactone)などのアンドロゲン類;アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、ミトタン(mitotane)、トリロスタン(trilostane)などの抗アドレナリン類;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamideglycoside);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);アムサクリン(amsacrine);bestrabucil;ビサントレン(bisantrene);エダトラキサート(edatraxate);defofamine;デメコルシン;ジアジコン(diaziquone);エルフォミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン(lentinan);ロニダミン(lonidamine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン(mitoxantrone);モピダモール(mopidamol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン(pintostatin);phenamet;ピラルビシン(pirarubicin);ポドフィロトキシン(podophyllinic acid);2-アセチルヒドラジン;プロカルバジン(procarbazine);PSK(R);ラゾキサン(razoxane);シゾフィラン(sizofiran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン(trichlorrotriethylamine);ウレタン(urethan);ビンデシン;ダカルバジン(dacarbazine);マンノムスチン;ミトブロニトール(mitobronitol);ミトラクトール;ピポブロマン(pipobroman);gacytosine;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ(thiotepa);パクリタキセル(TAXOL(R),Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)とドセタキセル(docetaxel)(TAXOTERE(R),Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)などのタキサン;クロラムブシル;ゲムシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンとカルボプラチンなどのプラチナアナログ;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(etoposide)(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(vinorelbine);ナベルビン(navelbine);novantrone;テニポシド(teniposide);ダウノルビシン;アミノプリン;xeloda;イバンドロナート(ibandronate);CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);トレチノイン、エスペラミシン(esperamicins);カペシタビン(capecitabine);及び前記何れかのものの薬学的に使用される塩、酸又は誘導体が含まれる。この定義は、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、アロマターゼ阻害剤4(5)-イミダゾリル、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)とフェアストン(Fareston)を含む抗エストロゲン製剤、フルタミド(flutamide)、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリド(leuprolide)やゴセレリン(goserelin)などの抗アンドロゲン製剤、及び前記何れかのものの薬学的に使用される塩、酸又は誘導体などの、ホルモンの腫瘍への作用を調節又は阻害可能な抗ホルモン製剤を更に含む。
【0056】
本開示に記載の「抗体」は、免疫グロブリンの1つであり、通常、完全な抗体は、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖を鎖間ジスルフィド結合で接続してなるテトラペプチド鎖構造である。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるので、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは、5種類に分けることができ、又は、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれ、その対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の差によって、異なるサブクラスに更に分けることができ、例えば、IgGはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられてもよい。軽鎖は、定常領域の違いによってκ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgにおけるそれぞれの種類は、κ鎖又はλ鎖を有してもよい。
【0057】
抗体重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列の変化が大きくて、可変領域(Fv領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定的で、定常領域となる。可変領域は、3つの高変領域(HVR)と、4つの配列が比較的に保存的な骨格領域(FR)とを含む。3つの高変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。それぞれの軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ基末端からカルボキシル基末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0058】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。本開示の抗体は、全長抗体の他に、抗原に結合可能な抗原結合断片を含む。
【0059】
用語「マウス抗体」は、本開示において、当該分野の知識と技術により調製されたヒトCEAに対するモノクローナル抗体である。調製時に、CEA抗原を試験対象に注射した後、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現したハイブリドーマを分離する。本開示の一好ましい実施形態において、前記マウス抗CEA抗体又はその抗原結合断片は、マウスκ、λ鎖若しくはその変異体の軽鎖定常領域を更に含み、又は、マウスIgG1、IgG2、IgG3若しくはその変異体の重鎖定常領域を更に含んでもよい。
【0060】
用語「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合してなる抗体であり、マウス抗体により誘発される免疫応答反応を低減することができる。キメラ抗体を作成するには、まず、マウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作成し、そしてマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローンし、更に、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローンし、マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子とをキメラ遺伝子になるように接続した後、発現ベクターに挿入し、最後に真核細胞系又は原核細胞系においてキメラ抗体分子を発現する。本開示の一好ましい実施形態において、前記PD-L1キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域を更に含む。前記CEAキメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4若しくはその変異体の重鎖定常領域を更に含み、好ましくはヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4重鎖定常領域を含み、又はアミノ酸変異(例えばL234A、及び/又は、L235A変異、及び/又は、S228P変異)のIgG1、IgG2若しくはIgG4変異体を使用する。
【0061】
用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワーク、即ち、異なる種類のヒト生殖細胞系の抗体フレームワーク配列に移植して発生された抗体を指す。キメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分をもつことにより誘導された異種反応性を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む共通DNAデータベース又は開示された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseで取得可能)、及びKabat、E.A.et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th editionで見出すことができる。免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、前記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列に対して最も少ない逆変異又は復帰変異を行うことにより、活性を保つことができる。本開示のヒト化抗体は、更に酵母菌で提示される、CDRに対して親和性成熟変異を行ったヒト化抗体も含む。
【0062】
抗原の接触残基のために、CDRの移植は、抗原に接触するフレームワーク残基により発生された抗体又はその抗原結合断片の、抗原への親和力を低減させることができる。このような相互作用は、体細胞が高度に変異した結果であり得る。従って、依然として、このようなドナーフレームワークアミノ酸をヒト化抗体のフレームワークに移植する必要がある。非ヒト抗体又はその抗原結合断片からの、抗原結合に関与するアミノ酸残基は、動物のモノクローナル抗体可変領域の配列と構造を検査することにより同定することができる。CDRドナーフレームワークにおいて、生殖細胞系と異なる各残基は関連性があると考えられる。最も接近する生殖細胞系を確定することができない場合、配列を、サブクラスコンセンサス配列又は非常に類似する百分率を有する動物抗体配列のコンセンサス配列と比較することができる。希少なフレームワーク残基は、体細胞が高度に変異した結果であり得ると考えられるので、結合において重要な役割が果たされる。
【0063】
本開示の一実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はマウスκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域を更に含み、又はヒト又はマウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域を更に含んでもよく、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2又はIgG4重鎖定常領域を含み、又は、アミノ酸変異(例えばL234A及び/又はL235A変異、及び/又は、S228P変異)のIgG1、IgG2又はIgG4変異体を使用する。
【0064】
本開示に記載されるヒト抗体の重鎖定常領域及びヒト抗体の軽鎖定常領域の「通常の変異体」とは、従来の技術に開示された抗体可変領域の構造と機能を変更しないヒト由来の重鎖定常領域又は軽鎖定常領域の変異体であり、例示的な変異体は、重鎖定常領域に対して部位特異的に改造とアミノ酸置換を行ったIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域変異体を含み、具体的な置換は、例えば、従来の技術における既知のYTE変異、L234A、及び/又は、L235A変異、S228P変異、及び/又は、knob-into-hole構造を得た変異(抗体重鎖にknob-Fcとhole-Fcの組み合わせを付与する)で、これらの変異は、抗体可変領域の機能を変更せずに、抗体に新しい性能を付与することが確認された。
【0065】
「ヒト抗体」(HuMAb)、「ヒト化抗体」、「全ヒト抗体」、「完全なヒト抗体」は互いに交換して用いられてもよく、ヒト由来の抗体であってもよいし、1種のトランスジェニック生体から得られた抗体であってもよく、当該トランスジェニック生体は、「改造」により、抗原の刺激に応答して特異性ヒト抗体が生成され、且つ、当該分野で知られている任意の方法で生成することができる。ある技術では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素が胚性幹細胞系の生体由来の細胞株に導入されるが、これらの細胞系中の内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座は、これらの細胞系に含まれる標的を標的として破壊する内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座により破壊される。トランスジェニック生物は、ヒト抗原に対する特異的なヒト抗体を合成することができ、当該生物は、ヒト抗体-分泌ハイブリドーマの産生に用いることができる。ヒト抗体は、重鎖と軽鎖が1人以上のヒトDNA由来のヌクレオチド配列によりコードされる抗体であってもよい。完全なヒト抗体は、遺伝子又は染色体トランスフェクション方法及びファージ提示技術により構築されてもよいし、体外で活性化したB細胞で構築されてもよく、これらは全て当該分野で知られているものである。
【0066】
用語「全長抗体」、「完全抗体」、「完全な抗体」及び「全抗体」は本明細書で互いに交換して用いられてもよく、実質的に完全な形式の抗体を指し、以下定義される抗原結合断片と区別するものである。当該用語は、特に、軽鎖及び重鎖が定常領域を含む抗体を指す。本開示の「抗体」は、「全長抗体」及びその抗原結合断片を含む。
【0067】
幾つかの実施形態において、本開示の全長抗体は、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域が接続した軽鎖と、重鎖可変領域と重鎖定常領域が接続した重鎖とにより形成される全長抗体を含む。当業者は、実際の必要に応じて、ヒト抗体由来の軽鎖定常領域と重鎖定常領域などの、異なる抗体由来の軽鎖定常領域、重鎖定常領域を選択することができる。
【0068】
用語である抗体の「抗原結合断片」又は「機能断片」は、抗原(例えば、CEA)に特異的に結合する抗体の能力を保つ1つ又は複数の断片を指す。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。用語である抗体の「抗原結合断片」に含まれる結合断片の実例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1構造ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により接続された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab')2断片、(iii)VHとCH1構造ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単アームのVHとVL構造ドメインからなるFv断片、(v)VHとVLにより鎖間ジスルフィド結合で形成された安定的な抗原結合断片であるdsFv、(vi)scFv、dsFv、Fabなどの断片を含む二重抗体、二重特異性抗体及び多重特異性抗体が含まれる。また、Fv断片の2つの構造ドメインVL及びVHは、分離した遺伝子でコードされるが、その中のVL及びVH領域のためにペアリングして1価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)と呼ばれ、例えば、Bird et al.(1988)Science242:423-426、及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA85:5879-5883を参照)を生成することができるように、組換え法により、合成するリンカーでそれらを接続することができる。このような単鎖抗体も、用語である抗体の「抗原結合断片」に含まれる。当業者に知られている通常の技術により、このような抗原結合断片が得られ、また、完全な抗体と同じように、機能性によって断片が選別される。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、完全な免疫グロブリンを酵素的又は化学的に切断することで生成することができる。抗体は、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4亜型)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体のような異なるアイソタイプの抗体であってもよい。
【0069】
Fabは、プロテアーゼであるパパイン(H鎖を切断するアミノ酸残基)でIgG抗体分子を処理することで得られた断片のうちの、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗原結合断片であり、そのうち、H鎖N末端側の約半分及び全てのL鎖は、ジスルフィド結合により一緒に結合される。
【0070】
F(ab')2は、酵素ペプシンによりIgGヒンジ領域における2つのジスルフィド結合の下方部分を消化することで得られた、分子量が約100,000で抗原結合活性を有すると共に、ヒンジにて接続された2つのFab領域に含まれる抗原結合断片である。
【0071】
Fab'は、前記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することで得られた、分子量が約50,000で抗原結合活性を有する抗原結合断片である。本開示のFab'は、ジチオスレイトールなどの還元剤を用いて、本開示のCEAに特異的に認識して結合するF(ab')2を処理することで製造することができる。
【0072】
また、抗体のFab'断片をコードするDNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入してベクターを原核生物又は真核生物に導入することにより、Fab'を発現して前記Fab'を製造することができる。
【0073】
用語「単鎖抗体」、「単鎖Fv」又は「scFv」とは、リンカーにより接続された抗体重鎖可変構造ドメイン(又は領域、VH)と抗体軽鎖可変構造ドメイン(又は領域、VL)の分子を含む。このようなscFv分子は、NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHという一般的な構造を有してもよい。好適な従来技術のリンカーは、反復のGGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなり、例えば、1~4個の反復変異体(Holliger et al.(1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA90: 6444-6448)が用いられる。本開示に用いられる他のリンカーは、Alfthan et al.(1995),Protein Eng.8:725-731、Choi et al.(2001),Eur.J.Immuno l.31:94-106、Hu et al.(1996),Cancer Res.56:3055-3061、Kipriyanov et al.(1999),J.Mol.Biol.293:41-56及びRoovers et al.(2001),Cancer Immunol.で記載されている。
【0074】
二重抗体は、その中のscFv又はFabが二量体化された抗原結合断片であり、2価抗原結合活性を有する抗原結合断片である。2価抗原結合活性では、2つの抗原が相同又は相異であってもよい。
【0075】
二重特異性抗体及び多重特異性抗体とは、2つ若しくは複数の抗原又は抗原決定基と同時に結合可能な抗体であり、その中にCEAと結合可能なscFv又はFab断片が含まれる。
【0076】
本開示の二重抗体は、本開示のヒトCEAに特異的に認識して結合するモノクローナル抗体のVH及びVLのコードcDNAを取得し、ペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8つ以下の残基になるようにscFvをコードするDNAを構築し、前記DNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、そして前記発現ベクターを原核生物又は真核生物に導入して二重抗体を発現する工程により製造することができる。
【0077】
dsFvは、その中の各々のVHとVLにおける1つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されたポリペプチドを、システイン残基間のジスルフィド結合で接続することにより得られる。既知の方法(Protein Engineering, 7, 697(1994))により、抗体の3次元構造予測に基づき、システイン残基で置換されるアミノ酸残基を選択することができる。
【0078】
本開示の全長抗体又は抗原結合断片は、本開示のヒトCEAに特異的に認識して結合する抗体のコードcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、前記DNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、そして前記発現ベクターを原核生物又は真核生物に導入してdsFvを発現する工程により製造することができる。
【0079】
用語「アミノ酸差異」又は「アミノ酸変異」とは、元のタンパク質又はポリペプチドを基にして発生された1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換を含む、元のタンパク質又はポリペプチドと比べて、変異体タンパク質又はポリペプチドにアミノ酸の変異又は変異があることである。
【0080】
用語「抗体フレームワーク」又は「FR領域」とは、当該可変構造ドメインの抗原結合環(CDR)のステントとして用いられる、可変構造ドメインVL又はVHの一部である。本質的に、それは、CDRを有しない可変構造ドメインである。
【0081】
用語「相補性決定領域」、「CDR」又は「高変領域」とは、抗体の可変構造ドメインにおいて抗原結合を促進する主な6つ高変領域の1つである。通常、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。「Kabat」番号付け規則(Kabat et al.(1991),「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,5th edition,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDを参照)、「Chothia」番号付け規則(Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273:927-948を参照)及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc M.P.,Immunologist,7,132-136(1999);Lefranc、M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003)などを含む種々の公知方法の何れか1つによって、CDRのアミノ酸配列境界を決定することができる。例えば、典型的な書式では、Kabat規則によれば、前記重鎖可変領域(VH)中のCDRアミノ酸残基の番号は31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)で、軽鎖可変領域(VL)中のCDRアミノ酸残基の番号は24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)である。Chothia規則によれば、VH中のCDRアミノ酸の番号は26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)及び95-102(HCDR3)で、VL中のアミノ酸残基の番号は26-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)及び91-96(LCDR3)である。KabatとChothiaの両方を組み合わせたCDR定義によって、CDRはヒトVH中のアミノ酸残基26-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)及びヒトVL中のアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)により構成される。IMGT規則によれば、VH中のCDRアミノ酸残基の番号は大体、26-35(CDR1)、51-57(CDR2)及び93-102(CDR3)で、VL中のCDRアミノ酸残基の番号は大体、27-32(CDR1)、50-52(CDR2)及び89-97(CDR3)である。IMGT規則によれば、抗体のCDR領域は、プログラムIMGT/DomainGap Alignによって決定することができる。特に説明のない限り、本開示の具体的な実施例において、前記抗体可変領域及びCDR配列は何れも、「Kabat」番号付け規則に適用する。
【0082】
用語「エピトープ」又は「抗原決定基」とは、抗原における免疫グロブリン又は抗体に特異的に結合する部位(例えば、CEA分子における特定部位)である。エピトープは、線状エピトープ及び立体配座エピトープを含み、例えば、立体配座エピトープは通常、独特な空間的配座を有し、且つ、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続的又は非連続的なアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular B iology,第66巻,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照する。
【0083】
用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合」及び「特異的に結合」とは、予め決定された抗原上のエピトープに対する抗体の結合である。通常、抗体は、約10-7 Mよりも小さく、例えば、約10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M以下よりも小さい親和力(KD)で結合する。
【0084】
用語「KD」とは、特定の抗体ー抗原が互いに作用する解離平衡定数である。通常、本開示の抗体は、約10-7 Mよりも小さく、例えば、約10-8 M又は10-9 Mよりも小さい解離平衡定数(KD)でCEAに結合し、例えば、本開示において、抗体と細胞表面抗原との親和力は、Biacore法によりKD値が測定される。
【0085】
用語「競合」は、同じエピトープの抗原結合タンパク質の競合(例えば、抗原結合タンパク質の中和又は抗体の中和)に用いられる場合に、抗原結合タンパク質間での競合を指し、それは下記の測定法により測定される:前記測定法において、検出すべき抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその免疫学的機能断片)により、参照抗原結合タンパク質(例えば、配体又は参照抗体)と共通抗原(例えば、CEA抗原又はその断片)との特異的結合を防止又は阻害(例えば、低減)する。様々な競合的結合測定は、1つの抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合しているか否かを確定することに用いることができ、これらの測定は、例えば、固相直接又は間接放射免疫測定(RIA)、固相直接又は間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合測定(例えば、Stahli et al.,1983,Methodsin Enzymology 9:242-253を参照)、固相直接ビオチンーアビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614-3619を参照)、固相直接標識測定、固相直接標識サンドイッチ測定(例えば、HarlowとLane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual(抗体、実習マニュアル)、Cold Spring Harbor Pressを参照)、I-125マーカーを用いる固相直接標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7-15を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung et al.,1990,Virology176:546-552を参照)、及び直接標識するRIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77-82)である。通常、前記測定法は、未標識の検出抗原結合タンパク質及び標識した参照抗原結合タンパク質の何れか1つを担持した固相表面又は細胞に結合する精製した抗原を使用する必要がある。測定される抗原結合タンパク質の存在下で固相表面又は細胞に結合する標識量を測定することによって、競合的阻害を測定する。通常、測定される抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合的測定(競合的抗原結合タンパク質)により同定される抗原結合タンパク質は、参照抗原結合タンパク質と同一のエピトープに結合する抗原結合タンパク質と、参照抗原結合タンパク質の結合エピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質とを含み、前記2つのエピトープは空間的に互いに干渉し合いながら結合を行う。本明細書の実施例には、競合的結合を測定するための方法の他の詳細な資料が提供される。通常、競合的抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合に、参照抗原結合タンパク質と共通抗原との特異的結合は、少なくとも40-45%、45-50%、50-55%、55-60%、60-65%、65-70%、70-75%又は75%以上阻害(例えば、低減)される。ある場合に、結合は、少なくとも80-85%、85-90%、90-95%、95-97%又は97%以上阻害される。
【0086】
本明細書に使用される用語「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を指す。核酸分子は、単鎖又は二重鎖であってもよく、好ましくは、二重鎖DNA又は単鎖mRNA又は修飾されたmRNAである。核酸を別の核酸配列と共に機能的関係に置く場合に、核酸は「効果的に接続」である。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーター又はエンハンサーは、前記コード配列に効果的に接続されている。
【0087】
アミノ酸配列の「同一性」とは、配列同一性のパーセンテージが最も大きく達成されるように、アミノ酸配列のアラインメント及び必要な時にギャップを導入し、且つ、何れの保存的置換も配列同一性の一部とは見なされずに、第2配列中のアミノ酸残基と同様のアミノ酸残基に対する第1配列のパーセンテージである。アミノ酸の配列同一性のパーセンテージを測定するために、アラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に取得可能なコンピュータソフトウェアなどの、当該分野の技術的範囲内の複数の方式により実現することができる。当業者は、比較される配列の全長で最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、測定・アラインメントに適するパラメータを決定することができる。
【0088】
用語「発現ベクター」とは、それに接続された別の核酸を輸送可能な核酸分子である。一実施形態において、ベクターは「プラスミド」であり、他のDNAセグメントをその中に接続する環状二重鎖DNA環を指す。別の実施形態において、ベクターはウイルスベクターであり、その中に、他のDNAセグメントをウイルスゲノムに接続することができる。本明細書に開示されるベクターは、それらを導入した宿主細胞において自己複製することができ(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーマル哺乳動物ベクター)、又は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに整合されることで、宿主ゲノムと共に複製することができる(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)。
【0089】
従来の技術でよく知られている抗体及び抗原結合断片を製造・精製する方法は、冷泉港の抗体実験技術マニュアル,5-8章及び15章の通りである。例えば、マウスはヒトCEA又はその断片により免疫可能であり、得られた抗体は復元、精製されることができると共に、通常の方法によりアミノ酸シークエンシングを行うことができる。抗原結合断片は同じく、通常の方法により調製することができる。発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒトのCDR領域に1つ又は複数のヒトFR領域が加えられる。ヒトFR生殖細胞系配列は、IMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系遺伝子データベースとMOEソフトウェアをアラインメントすることにより、ImMunoGeneTics(IMGT)のホームページであるhttp://imgt.cines.frから取得し、又は免疫グロブリン雑誌である2001ISBN012441351から得ることができる。
【0090】
用語「宿主細胞」とは、その中に発現ベクターを導入した細胞である。宿主細胞は、細菌、微生物、植物又は動物の細胞を含むことができる。形質転換しやすい細菌は、大腸菌(Escherichia coli)やサルモネラ菌(Salmonella)の菌株などの腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス科(Bacillaceae)、肺炎球菌(Pneumococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)を含む。好適な微生物は、サッカロミセス酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピキア酵母(Pichia pastoris)を含む。好適な動物宿主細胞系は、CHO(中国ハムスター卵巣細胞系)、293細胞及びNS0細胞を含む。
【0091】
本開示の工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により、調製と精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。更に好ましい従来技術の一つとして、哺乳動物発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒトCEAに特異的に結合する抗体を発現することにより、安定的なクローンが得られる。陽性クローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体を分泌した培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製を行う。非特異的結合の成分を洗い流す。そして、pH勾配法により結合する抗体を溶出し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70 ℃などで冷凍され、又は冷凍乾燥されなければならない。
【0092】
「投与」、「与える」及び「処理」は動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬物、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「投与」、「与える」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、そのうち、前記流体は細胞と接触する。「投与」、「与える」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0093】
「治療」は、例えば、本開示の何れか1つの結合化合物の組成物を含む経口又は外用治療剤を患者に与えることを意味し、前記患者は1種又は複数種の疾患症状を有するが、既知の前記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有する。通常、治療される患者又はグループには、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導し、又は臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこれらの症状を抑制する。任意の具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢と体重、及び薬物の患者で必要な治療効果を発生させる能力などの複数の要因によって、変化することができる。医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによる当該症状の重症度又は進行状況への評価によく用いられる何れの臨床的検出方法によっても、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、それぞれの目標疾患症状の緩和において無効な可能性があるが、当該分野で知られている任意の統計学的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定により、統計学的に有意な数の患者において目標疾患症状を低減可能なことが確認される。
【0094】
「保存的修飾」又は「保存的置換又は置換」は、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座や剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質中のアミノ酸を置換することで、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域中の単一のアミノ酸置換が実質的に生物学的活性を変えないと分かる(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p224,(4th edition)を参照)。また、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換は、以下のように記載される。
【0095】
「有効量」又は「有効投与量」とは、何れか1種又は複数種の有益な又は必要な予防若しくは治療結果を得るために必要な薬物、化合物又は医薬組成物の量である。予防用途として、有益又は必要な結果はリスクの解消や低減、重症度の低減又は病症の発作の遅延を含み、病症、その合併症と病症の進行中に現れる中間病理学的表現型の生化学・組織学的、及び/又は行動症状を含む。治療的応用として、有益又は必要な結果は、種々の本開示の標的抗原関連病症の罹患率の低減又は前記病症の1つ又は複数の症状の改善、病症の治療に必要な他の薬剤の投与量の低減、別の薬剤の治療効果の向上、及び/又は、患者の本開示の標的抗原関連病症の進行の遅延などの臨床的結果を含む。
【0096】
「外因性」は、場合によって生物、細胞やヒトの体外で発生された物質を意味する。
【0097】
「内因性」は、場合によって生物、細胞やヒトの体内で発生された物質を意味する。
【0098】
「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列の類似性である。2つの比較される配列における位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンに占められる場合、前記分子が当該位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100をかける関数である。例えば、配列の最適アラインメントを行う際に、2つの配列中の10個の位置に6個がマッチングし、又は相同である場合は、2つの配列が60%相同であり、2つの配列中の100個の位置に95個がマッチングし、又は相同である場合は、2つの配列が95%相同である。通常、2つの配列をアライメントする際に、最大百分率の相同性が得られるように、比較が行われる。例えば、各参照配列の全長にわたって各配列間の最大マッチングが得られるようにアルゴリズムのパラメータを選択するBLASTアルゴリズムにより、比較を実行することができる。下記の参考文献は、配列分析によく用いられるBLASTアルゴリズムに言及している:BLASTアルゴリズム(BLAST ALGORITHMS):Altschul,S.F.et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.et al.,(1993)Nature Genet.3:266-272;Madden,T.L.et al.,(1996)Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.et al.,(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.et al.,(1997)Genome Res.7:649-656。その他、例えば、NCBI BLASTにより提供される通常のBLASTアルゴリズムも、当業者によく知られている。
【0099】
本明細書に用いられる表現である「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」は互いに交換して用いられてもよく、これらの名称は何れも子孫を含む。従って、単語「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、移転数を考慮せずに、初代被検細胞及びそれより誘導された培養物を含む。また、意図する又は意図しない変異のために、あらゆる子孫はDNA含有量で精確に同じであることがあり得ないと理解すべきである。最初の形質転換細胞から選別されたものと同様の機能又は生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。異なる名称を指す場合は、文脈から明らかに分かる。
【0100】
本明細書に用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」とは、その中の微量の特定部分の核酸、RNA及び/又はDNAが、例えばアメリカ特許番号4,683,195に記載されるように増幅するプログラム又は技術である。一般的に、オリゴヌクレオチドプライマーの設計が可能になるように、目標領域末端からの配列情報又はそれ以外の配列情報を取得する必要があり、これらのプライマーは配列において、増幅すべきテンプレートの対応する鎖と同様又は類似である。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅すべき材料の末端に一致してもよい。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定DNA配列、及び全細胞RNAから転写されたcDNA、ファージ又はプラスミド配列などの増幅に用いることができる。一般的に、Mullis et al.(1987)Cold Spring Harbor Symp.Ouant.Biol.51:263;edited by Erlich,(1989)PCR TECHNOLOGY(Stockton Press,N.Y.)を参照する。本明細書に用いられるPCRは、核酸試験試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の一実例とされるが、唯一の実例ではなく、前記方法は、核酸の特定部分を増幅又は産生するために、プライマーとなる既知の核酸及び核酸ポリメラーゼを用いることを含む。
【0101】
「単離した」とは、精製状態を指し、この場合、当該分子に、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの他の生物分子、又は、細胞破片や成長培地などの他の材料を実質的に含まないことを意味する。通常、用語「単離した」は、本明細書に記載の化合物の実験や治療用途を顕著に干渉する量で存在しない限り、これらの材料が全然存在しない、又は水、緩衝液や塩が存在しないことを意味する意図はない。
【0102】
「選択的」又は「選択的に」は、その後記載されるイベントや環境が発生されてもよいが、必ずしもその必要がないことを意味し、この説明は、当該イベントや環境が発生され、又は発生されない場合を含む。
【0103】
「医薬組成物」は、本明細書に記載される1種又は複数種の化合物又はその生理学的/薬学的に使用可能な塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に使用可能なベクターや賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物学的活性を発揮するためのものである。
【0104】
用語「薬学的に許容されるベクター」とは、抗体又は抗原結合断片を送達するために製剤に適用される任意の不活性物質である。ベクターは、粘着防止剤、結合剤、コーティング、崩壊剤、充填剤や希釈剤、防腐剤(例えば、酸化防止剤、抗菌剤や抗真菌剤)、甘味剤、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤などであってもよい。好適な薬学的に許容されるベクターの例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)デキストロース、植物油(例えば、オリーブオイル)、塩水、緩衝液、緩衝塩水、及び糖、ポリオール、ソルビトールや塩化ナトリウムなどの等張剤を含む。
【0105】
また、本開示は、目標抗原(例えば、CEA)に関連する疾患を治療するための、本開示の抗CEA抗体を活性成分として含む薬剤を含む。
【0106】
本開示において、CEAに関連する疾患には制限がないが、CEAに関連する疾患であればよく、例えば、本開示の分子により誘導される治療反応は、ヒトCEAに結合し、そしてCEAとその受容体/リガンドとの結合を阻害し、又はCEAを過剰発現した腫瘍細胞を殺したり傷つけたりすることにより実現される。従って、本開示の分子は、治療応用に適用される調製物にある場合、腫瘍又はがん、好ましくは黒色腫、結腸がん、乳がん、肺がん、胃がん、腸がん、腎がん、非小細胞肺がん、膀胱がんなどを罹患している対象に非常に有用である。
【0107】
また、本開示は、目標抗原(例えば、CEA)の免疫検出又は測定に用いられる方法、目標抗原(例えば、CEA)の免疫検出又は測定に用いられる試薬、目標抗原(例えば、CEA)を発現した細胞の免疫検出又は測定に用いられる方法、及び目標抗原(例えば、CEA)に関連する疾患の診断に用いられる診断剤に関し、それは、本開示の目標抗原(例えば、ヒトCEA)を特異的に認識して結合する抗体又は抗原結合断片を活性成分として含む。
【0108】
本開示において、目標抗原(例えばCEA)の量の検出又は測定に用いられる方法は、何れの既知の方法であってもよい。例えば、免疫検出又は測定方法が含まれる。
【0109】
免疫検出又は測定方法は、標識された抗原又は抗体を用いて抗体量又は抗原量を検出又は測定する方法である。免疫検出又は測定方法の実例としては、放射性物質で標識する免疫抗体方法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA又はELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法、ウエスタンブロット法、物理化学的方法などが含まれる。
【0110】
前記CEAに関連する疾患は、本開示の抗体検出又はCEAのレベルの測定により診断することができる。
【0111】
ポリペプチドを発現した細胞を検出するために、既知の免疫検出方法、好ましくは、免疫沈降法、蛍光細胞染色法、免疫組織染色法などを利用することができる。更に、FMAT8100HTSシステム(Applied Biosystem)による蛍光抗体染色法などを利用することができる。
【0112】
本開示において、目標抗原(例えば、CEA)を検出又は測定するための試料には特に制限がないが、目標抗原(例えば、CEA)を含む可能性があるものであればよく、例えば、組織球、血液、血漿、血清、膵液、尿液、糞便、組織液や培養液である。
【0113】
必要な診断方法に応じて、本開示の抗体又はその抗原結合断片を含む診断剤は、抗原-抗体反応を実行するための試薬、又は反応を検出するための試薬を含んでもよい。抗原ー抗体反応を実行するための試薬は、緩衝剤、塩などを含む。検出するための試薬は、前記モノクローナル抗体、その抗原結合断片又はその結合物の標識を認識する第2抗体と前記標識に対応する基質などの、一般的に免疫検出又は測定方法に用いられる試薬を含む。
【0114】
上記の明細書には、本開示の1つ又は複数種の実施形態の詳細が提出されている。本開示は、本明細書の記載と類似又は同様の任意の方法と材料により実施又は試験することができるが、以下、好ましい方法と材料を説明する。明細書と特許請求の範囲により、本開示の他の特徴、目的及び利点は明らかになる。明細書と特許請求の範囲において、文脈で特に明記しない限り、単数形は複数の指示対象を含む。特に定義しない限り、本明細書に用いられる技術・科学用語の全ては、本開示の属する分野の当業者により理解されている一般的な意味をもっている。明細書に引用される特許と出版物の全ては、引用により組み込まれている。下記の実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に全面的に説明するために提出される。これらの実施例は決して、本開示の範囲を限定するものと理解すべきではない。
【0115】
以下、実施例及び試験例に合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例及び試験例は、本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例又は試験例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は一般的に、冷泉港の抗体技術実験マニュアル、分子クローンマニュアルのような通常の条件に従い、又は、原料や商品のメーカーにより勧められた条件に従ったが、具体的な供給源が明記されていない試薬材料は、市場から購入して得られた。
【実施例
【0116】
実施例1:CEA組換えタンパク質及び安定的にトランスフェクションした細胞の調製
一、組換えCEA抗原及び細胞表面にCEAタンパク質が発現される配列
Fc、Hisラベル付きのヒトCEAタンパク質配列をコードしてそれぞれ哺乳動物細胞発現ベクターにクローンし、293E細胞において発現して精製した後、組換えタンパク質を取得し、後続の各実施例の実験に備えた。同時に、ラベル無しのヒトCEA遺伝子、ヒトCEACAM1遺伝子及びサルCEA遺伝子をCHO細胞にトランスフェクションし、細胞表面にCEAタンパク質が発現されるCHO細胞株を形成し、後続の抗体の選別と同定に備えた。関連するタンパク質のアミノ酸配列は、以下の通りである:
【0117】
1、ヒトCEA-his(hCEA-His)アミノ酸配列(試験例に用いられる可溶性ヒトCEA抗原タンパク質):
KLTIESTPFNVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNRQIIGYVIGTQQATPGPAYSGREIIYPNASLLIQNIIQNDTGFYTLHVIKSDLVNEEATGQFRVYPELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPETQDATYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDTASYKCETQNPVSARRSDSVILNVLYGPDAPTISPLNTSYRSGENLNLSCHAASNPPAQYSWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYTCQAHNSDTGLNRTTVTTITVYAEPPKPFITSNNSNPVEDEDAVALTCEPEIQNTTYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNDNRTLTLLSVTRNDVGPYECGIQNELSVDHSDPVILNVLYGPDDPTISPSYTYYRPGVNLSLSCHAASNPPAQYSWLIDGNIQQHTQELFISNITEKNSGLYTCQANNSASGHSRTTVKTITVSAELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPEAQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDARAYVCGIQNSVSANRSDPVTLDVLYGPDTPIISPPDSSYLSGANLNLSCHSASNPSPQYSWRINGIPQQHTQVLFIAKITPNNNGTYACFVSNLATGRNNSIVKSITVSASGTSPGLSAHHHHHH
(SEQ ID NO:1)
2、ヒトCEA-Fc(hCEA-Fc)アミノ酸配列:
KLTIESTPFNVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNRQIIGYVIGTQQATPGPAYSGREIIYPNASLLIQNIIQNDTGFYTLHVIKSDLVNEEATGQFRVYPELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPETQDATYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDTASYKCETQNPVSARRSDSVILNVLYGPDAPTISPLNTSYRSGENLNLSCHAASNPPAQYSWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYTCQAHNSDTGLNRTTVTTITVYAEPPKPFITSNNSNPVEDEDAVALTCEPEIQNTTYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNDNRTLTLLSVTRNDVGPYECGIQNELSVDHSDPVILNVLYGPDDPTISPSYTYYRPGVNLSLSCHAASNPPAQYSWLIDGNIQQHTQELFISNITEKNSGLYTCQANNSASGHSRTTVKTITVSAELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPEAQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDARAYVCGIQNSVSANRSDPVTLDVLYGPDTPIISPPDSSYLSGANLNLSCHSASNPSPQYSWRINGIPQQHTQVLFIAKITPNNNGTYACFVSNLATGRNNSIVKSITVSASGTSPGLSAEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
(SEQ ID NO:2)
3、サルCEA-His(cynoCEA-His)アミノ酸配列:
QLTIESRPFNVAEGKEVLLLAHNVSQNLFGYIWYKGERVDASRRIGSCVIRTQQITPGPAHSGRETIDFNASLLIQNVTQSDTGSYTIQVIKEDLVNEEATGQFRVYPELPKPYITSNNSNPIEDKDAVALTCEPETQDTTYLWWVNNQSLPVSPRLELSSDNRTLTVFNIPRNDTTSYKCETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGEYLNLTCHAASNPTAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYAELPKPYITSNNSNPIEDKDAVTLTCEPETQDTTYLWWVNNQRLSVSSRLELSNDNRTLTVFNIPRNDTTFYECETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGENLNLSCHAASNPAAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYVELPKPYISSNNSNPIEDKDAVTLTCEPVAENTTYLWWVNNQSLSVSPRLQLSNGNRILTLLSVTRNDTGPYECGIQNSESAKRSDPVTLNVTYGPDTPIISPPDLSYRSGANLNLSCHSDSNPSPQYSWLINGTLRQHTQVLFISKITSNNNGAYACFVSNLATGRNNSIVKNISVSSGDSAPGSSGLSAHHHHHH
(SEQ ID NO:3)
4、CHO細胞表面にヒトCEA(hCEA-CHO)が発現されるアミノ酸配列:
MESPSAPPHRWCIPWQRLLLTASLLTFWNPPTTAKLTIESTPFNVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNRQIIGYVIGTQQATPGPAYSGREIIYPNASLLIQNIIQNDTGFYTLHVIKSDLVNEEATGQFRVYPELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPETQDATYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDTASYKCETQNPVSARRSDSVILNVLYGPDAPTISPLNTSYRSGENLNLSCHAASNPPAQYSWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYTCQAHNSDTGLNRTTVTTITVYAEPPKPFITSNNSNPVEDEDAVALTCEPEIQNTTYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNDNRTLTLLSVTRNDVGPYECGIQNELSVDHSDPVILNVLYGPDDPTISPSYTYYRPGVNLSLSCHAASNPPAQYSWLIDGNIQQHTQELFISNITEKNSGLYTCQANNSASGHSRTTVKTITVSAELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPEAQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDARAYVCGIQNSVSANRSDPVTLDVLYGPDTPIISPPDSSYLSGANLNLSCHSASNPSPQYSWRINGIPQQHTQVLFIAKITPNNNGTYACFVSNLATGRNNSIVKSITVSASGTSPGLSAGATVGIMIGVLVGVALI
(SEQ ID NO:4)
5、CHO細胞表面にサルCEA(cynoCEA-CHO)が発現されるアミノ酸配列:
MEFGLSWLFLVAILKGVQCQLTIESRPFNVAEGKEVLLLAHNVSQNLFGYIWYKGERVDASRRIGSCVIRTQQITPGPAHSGRETIDFNASLLIQNVTQSDTGSYTIQVIKEDLVNEEATGQFRVYPELPKPYITSNNSNPIEDKDAVALTCEPETQDTTYLWWVNNQSLPVSPRLELSSDNRTLTVFNIPRNDTTSYKCETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGEYLNLTCHAASNPTAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYAELPKPYITSNNSNPIEDKDAVTLTCEPETQDTTYLWWVNNQRLSVSSRLELSNDNRTLTVFNIPRNDTTFYECETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGENLNLSCHAASNPAAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYVELPKPYISSNNSNPIEDKDAVTLTCEPVAENTTYLWWVNNQSLSVSPRLQLSNGNRILTLLSVTRNDTGPYECGIQNSESAKRSDPVTLNVTYGPDTPIISPPDLSYRSGANLNLSCHSDSNPSPQYSWLINGTLRQHTQVLFISKITSNNNGAYACFVSNLATGRNNSIVKNISVSSGDSAPGSSGLSARATVGIIIGMLVGVALM
(SEQ ID NO:5)
6、CHO細胞表面にヒトCEACAM1(CEACAM1-CHO)が発現されるアミノ酸配列:
MGHLSAPLHRVRVPWQGLLLTASLLTFWNPPTTAQLTTESMPFNVAEGKEVLLLVHNLPQQLFGYSWYKGERVDGNRQIVGYAIGTQQATPGPANSGRETIYPNASLLIQNVTQNDTGFYTLQVIKSDLVNEEATGQFHVYPELPKPSISSNNSNPVEDKDAVAFTCEPETQDTTYLWWINNQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLLSVTRNDTGPYECEIQNPVSANRSDPVTLNVTYGPDTPTISPSDTYYRPGANLSLSCYAASNPPAQYSWLINGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYTCHANNSVTGCNRTTVKTIIVTELSPVVAKPQIKASKTTVTGDKDSVNLTCSTNDTGISIRWFFKNQSLPSSERMKLSQGNTTLSINPVKREDAGTYWCEVFNPISKNQSDPIMLNVNYNALPQENGLSPGAIAGIVIGVVALVALIAVALACFLHFGKTGRASDQRDLTEHKPSVSNHTQDHSNDPPNKMNEVTYSTLNFEAQQPTQPTSASPSLTATEIIYSEVKKQ
(SEQ ID NO:6)
【0118】
二、関連するタンパク質の精製
1、Hisラベル付きのタンパク質の精製
細胞発現上清試料を高速で遠心分離して不純物を除去した。PBS緩衝液(pH 7.4)によりニッケルカラムを平衡し、2-5倍のカラム体積で洗浄し、上清試料を一定の流速でNi Sepharose excelカラムに導入した。A280読取値が基線に低減されるまで、PBS緩衝液によりカラムを洗浄し、そしてPBS+10 mMイミダゾールでクロマトグラフィーカラムを洗浄し、非特異的結合のヘテロタンパク質を除去し、流出液を収集し、最後に、イミダゾール300 mMを含むPBS溶液で目的タンパク質を溶出し、溶出ピークを収集した。収集された溶出液を濃縮した後、脱塩カラムにより試料の緩衝液をPBS溶液に変換し、後続の実験に備えた。
【0119】
2、Fcを含むタンパク質、キメラ抗体及びハイブリドーマ抗体の精製
細胞発現上清試料を高速で遠心分離して不純物を除去し、Fcを含む組換えタンパク質、キメラ抗体発現上清をProtein Aカラムで精製し、ハイブリドーマ発現上清をProtein Gカラムで精製した。上清液を一定の流速でカラムに導入した。A280読取値が基線に低減されるまで、PBSによりカラムを洗浄した。pH 3.0の酢酸100 mMで目的タンパク質を溶出し、pH 8.0のTris-HCl 1 Mで中和した。溶出試料を濃縮してPBSに変換した後、分注して使用に備えた。
【0120】
実施例2:マウス抗ヒトCEAモノクローナル抗体の調製
1、免疫と融合
マウスの免疫は、hCEA-Hisタンパク質とcyno-CEA-Hisタンパク質、又はhCEA-CHO細胞とcynoCEA-CHO細胞により交差免疫を行った。タンパク質免疫の用量は、1回目の免疫が50 μg、その後の免疫が25 μgで、細胞免疫は1回当たり107個の細胞で、2週間ごとに1回免疫した。3回免疫した後、採血して血清中抗体の力価を測定し、血清中抗体価が高いと共に安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行い、PEG媒介の融合工程で脾リンパ球と骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(R) CRL-8287TM)を融合してハイブリドーマ細胞を得た。融合済みのハイブリドーマ細胞を0.5-1×106 個/mlの密度でMC半固形完全培地(20%FBS、1×HAT、1×OPI及び2%メチルセルロースを含むRPMI-1640培地)により再懸濁し、35 mm細胞培養皿に分注し、37 ℃、5%CO2で7-9日間インキュベートした。融合した後7-9日目に、細胞クローンサイズに基づき、単細胞クローンを選び出して、200 μl/ウェルでHT完全培地(20%FBS、1×HT及び1×OPIのRPMI-1640を含む培地)を加えた96ウェル細胞培養プレートにクローンし、37 ℃、5%CO2で3日間培養して検出した。
【0121】
2、ハイブリドーマ細胞の選別
抗体の予備選別は、細胞表面抗原の酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)により行われた。細胞をElisaプレート(Corning、Cat# 3599)に敷き、37 ℃のインキュベーターで一晩培養し、細胞が完全に壁に接着し、もうすぐ孔においていっぱいになる時に、上清液を除去し、PBSで1回洗浄し、細胞固定液(Beyotime、Cat# P0098)を入れ、室温で45 min置き、固定液を除去し、プレートウォッシャーでプレートを3回洗い、5%の脱脂粉乳を加え、37 ℃で3 h以上密閉した。密閉液を除去し、プレートウォッシャーでプレートを3回洗った。密閉済みの細胞プレートは、-20 ℃で置いて保存してもよいし、直接使用してもよい。使用時に、勾配希釈されたハイブリドーマ細胞培養上清液を加え、37 ℃で1 hインキュベートし、プレートウォッシャーで3回洗い、10000倍希釈されたヒツジ抗マウスIgG H&L(HRP)二次抗体(Abcam、Cat# ab205719)100 μlを加え、37 ℃で1 hインキュベートし、プレートウォッシャーで3回洗い、TMB(KPL、Cat# 5120-0077)100 μlを加えて37 ℃で置いて10 min発色し、1 Mの硫酸100 μlを入れて反応を終了させ、マイクロプレートリーダーにより450 nmの吸光値を読み取った。試験抗体が可溶性CEA(sCEA)と競合して負けずに細胞表面のCEAに結合すると、抗体とsCEAを30 minインキュベートしてから細胞プレートに入れた。
【0122】
選別された陽性クローンを増幅して種として凍結保存し、且つ単細胞クローンが得られるまで2~3回サブクローンした。選択されたハイブリドーマクローンは、無血清細胞培養法により更に抗体を調製、精製した。得られたハイブリドーマ抗体は、フローサイトメトリーにより抗体と細胞表面CEAタンパク質との結合状況(方法は本開示の試験例1を参照)を検出し、結合活性の良いハイブリドーマ細胞株を選択した。そのうち、モノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb47、mAb63、mAb67及びmAb103の結合活性の検出結果は、表1の通りである:
【0123】
【表1】
【0124】
3、ハイブリドーマ抗体配列の測定
モノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb47、mAb63、mAb67及びmAb103を選択し、モノクローナル抗体の配列をクローンした。プロセスは次の通りである:対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集し、Trizol(Invitrogen,Cat# 15596-018)でRNAを抽出し、cDNAに逆転写した。cDNAでテンプレートに対してPCRの増幅を行った後、シークエンシングするためにシークエンシング社に送り、得られたDNA配列に対応する抗体アミノ酸配列は、下記の表2に示す通りである:
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
備考:表中の抗体CDR配列は、Kabat番号付けシステムによって決定される。
【0127】
4、ヒトIgG1キメラ抗体の調製
前記ハイブリドーマの選別により得られたmAb47、mAb63、mAb67及びmAb103候補分子を増幅してシークエンシングすることで、可変領域コード遺伝子配列が得られ、シークエンシングにより得られた配列をもって両端部のプライマーを設計し、シークエンシング遺伝子をテンプレートとして、PCRにより各抗体VH/VK遺伝子断片を組み立て、発現ベクターpHr(シグナルペプチド及びhIgG1/hkappa/hlambda定常領域付きの遺伝子(CH1-Fc/CL)断片)と相同的組換えを行い、組換えキメラ抗体全長発現プラスミドVH-CH1-Fc-pHr/VL-CL-pHrを構築し、更にそのキメラ抗体Ch47、Ch63、Ch67及びCh103を得た。
【0128】
実施例3:マウス抗ヒトCEAモノクローナル抗体のヒト化
IMGTヒト抗体重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子データベースとMOEソフトウェアをアラインメントすることにより、テンプレートとして相同性の高い重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をそれぞれ選択し、マウス抗体のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれgraft(グラフト)し、シーケンスがFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4である可変領域配列を形成した。下記の例において、抗体のCDRアミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定されて注釈されている。
【0129】
1、マウス抗体mAb47のヒト化
相同性の高い重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb47のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV6-21*01及びIGKJ2*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV7-4-1*02及びIGHJ6*01を選択し、マウス抗体mAb47のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行ったが、マウス抗体mAb47のヒト化復帰変異の設計は、下記の表4の通りである:
【0130】
【表4】
備考:表中、アミノ酸の位置番号は、何れもKabat番号付け規則の番号であり、例えば、L46PはKabat番号付けシステムの番号に対応し、第46位のLをPに回復するように変異することを意味し、グラフトは、ヒト生殖細胞系FR領域配列へのマウス抗体CDRの移植を表す。
【0131】
また、更に、重鎖h47VH3にD61S変異(即ち、抗体HCDR2配列がWINTYSGVPTYADDFKG(SEQ ID NO:16)からWINTYSGVPTYASDFKG(SEQ ID NO:38)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入したが、抗体は依然として、良好な活性をもっていた。
【0132】
マウス抗体mAb47のヒト化後の具体的な配列は、表5に示す通りである:
【0133】
【表5】
備考:表中、下線はCDR領域(Kabat番号付けシステムによって決定される)で、斜体太字は、変異部位である。
【0134】
2、マウス抗体mAb63のヒト化
相同性の高い重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb63のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV1-39*01及びIGKJ4*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV1-46*01及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb63のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行ったが、マウス抗体mAb63のヒト化復帰変異の設計は、下記の表6の通りである:
【0135】
【表6】
備考:表中、アミノ酸の位置番号は、何れもKabat番号付け規則に対応する番号であり、例えば、S 82A RはKabat番号付けシステムの番号に対応し、第82A位のSをRに回復するように変異することを意味し、グラフトは、ヒト生殖細胞系FR領域配列へのマウス抗体CDRの移植を表す。
【0136】
また、更に、重鎖h63VH1にN54S変異(即ち、抗体HCDR2配列がDIFPKNGNTDYNRKFKD(SEQ ID NO:22)からDIFPKSGNTDYNRKFKD(SEQ ID NO:47)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入したが、抗体は依然として、良好な活性をもっていた。
【0137】
マウス抗体mAb63のヒト化及び変異後の具体的な配列は、表7に示す通りである:
【0138】
【表7】
備考:表中、下線はCDR領域(Kabat番号付けシステムに対応する)で、斜体太字は、変異部位である。
【0139】
3、マウス抗体mAb67のヒト化
相同性の高い重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb67のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGKV4-1*01及びIGKJ4*01、IGKV3-15*01及びIGKJ4*01、又はIGKV1-39*01及びIGKJ4*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV1-3*01及びIGHJ1*01、又はIGHV5-51*01及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb67のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行ったが、マウス抗体mAb67のヒト化復帰変異の設計は、下記の表8の通りである:
【0140】
【表8】
備考:表中、アミノ酸の位置番号は、何れもKabat番号付け規則に対応する番号であり、例えば、A43PはKabat番号付けシステムの番号に対応し、第43位のAをPに回復するように変異することを意味し、グラフトは、ヒト生殖細胞系FR領域配列へのマウス抗体CDRの移植を表す。
【0141】
マウス抗体mAb67のヒト化後の具体的な配列は、表9に示す通りである:
【0142】
【表9】
備考:表中、下線はCDR領域(Kabat番号付けシステムに対応する)で、斜体太字は、変異部位である。
【0143】
4、マウス抗体mAb103のヒト化
相同性の高い重・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、例えば、マウス抗体mAb103のヒト化軽鎖テンプレートとしてIGLV4-69*01及びIGLJ2*01を選択し、ヒト化重鎖テンプレートとしてIGHV7-4-1*02及びIGHJ1*01を選択し、マウス抗体mAb103のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれ移植してヒト化改造を行ったが、マウス抗体mAb103のヒト化復帰変異の設計は、下記の表10の通りである:
【0144】
【表10】
備考:表中、アミノ酸の位置番号は、何れもKabat番号付け規則に対応する番号であり、例えば、K49EはKabat番号付けシステムの番号に対応し、第49位のKをEに回復するように変異することを意味し、Graftedは、ヒト生殖細胞系FR領域配列へのマウス抗体CDRの移植を表す。
【0145】
また、更に、重鎖h103VH1にD61S変異(即ち、抗体HCDR2配列がWINTYSGVPTYADDFKG(SEQ ID NO:16)からWINTYSGVPTYASDFKG(SEQ ID NO:38)に変異するように、抗体HCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入し、軽鎖h103VL3にD56E変異(即ち、抗体LCDR2配列がLKKDGSHSTGD(SEQ ID NO:36)からLKKDGSHSTGE(SEQ ID NO:64)に変異するように、抗体LCDR2においてアミノ酸変異を行った)を導入したが、抗体は依然として、良好な活性をもっていた。
【0146】
マウス抗体mAb103のヒト化後の具体的な配列は、表11に示す通りである:
【0147】
【表11-1】

【表11-2】
備考:表中、下線はCDR領域(Kabat番号付けシステムに対応する)で、斜体太字は、変異部位である。
【0148】
5、ヒト化抗体の調製
抗体軽鎖及び重鎖の発現ベクターをそれぞれ構築し、ヒト化した抗体軽/重鎖をそれぞれ交差ペアリングして組み合わせ、293E細胞をトランスフェクションした後、上清を収集して培養し、精製するとヒト化した全長抗体を得た。ヒト化抗体重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4とその変異体の定常領域から選ぶことができ、例示的に、ヒト重鎖IgG1定常領域(SEQ ID NO:77に示される)を用いて前記ヒト化重鎖可変領域に接続し、抗体全長重鎖を形成する。ヒト化抗体軽鎖定常領域は、ヒトκ、λ鎖又はその変異体の定常領域から選ぶことができ、例示的に、ヒト軽鎖定常領域κ鎖(SEQ ID NO:78に示される)又はヒト軽鎖定常領域λ鎖(SEQ ID NO:79に示される)を用いて前記ヒト化軽鎖可変領域に接続し、抗体全長軽鎖を形成する。
【0149】
示例性の抗体の定常領域配列は、下記の通りである:
ヒトIgG1重鎖定常領域:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:77
ヒト軽鎖定常領域κ鎖:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:78
ヒト軽鎖定常領域λ鎖:
GQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
SEQ ID NO:79
【0150】
例示的に、前記mAb47由来の表5に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長重鎖を形成すると共に、表5に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長軽鎖を形成し、下記の表12に示すようなシリーズmAb47ヒト化抗体を得た::
【0151】
【表12】
備考:表中、例えば「Hu47-14」は、番号がHu47-14であるヒト化抗体の軽鎖可変領域がh47VL2、重鎖可変領域がh47VH4であることを示し、重鎖定常領域配列がSEQ ID NO:77に示され、軽鎖定常領域配列がSEQ ID NO:78に示される。
【0152】
例示的に、前記mAb63由来の表7に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長重鎖を形成すると共に、表7に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長軽鎖を形成し、下記の表13に示すようなシリーズmAb63ヒト化抗体を得た:
【0153】
【表13】
備考:表中、例えば「Hu63-13」は、番号がHu63-13であるヒト化抗体の軽鎖可変領域がh63VL1、重鎖可変領域がh63VH5であることを示し、その重鎖定常領域配列がSEQ ID NO:77に示され、軽鎖定常領域配列がSEQ ID NO:78に示される。
【0154】
例示的に、前記mAb67由来の表9に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長重鎖を形成すると共に、表9に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:78に示されるヒト軽鎖κ定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長軽鎖を形成し、下記の表14に示すようなシリーズmAb67ヒト化抗体を得た:
【0155】
【表14】
備考:表中、例えば「Hu67-14」は、番号がHu67-14であるヒト化抗体の軽鎖可変領域がh67VL4、重鎖可変領域がh67VH3であることを示し、その重鎖定常領域配列がSEQ ID NO:77に示され、軽鎖定常領域配列がSEQ ID NO:78に示される。
【0156】
例示的に、前記mAb103由来の表11に記載されるヒト化抗体重鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:77に示されるヒト重鎖IgG1定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長重鎖を形成すると共に、表11に記載されるヒト化抗体軽鎖可変領域を配列がSEQ ID NO:79に示されるヒト軽鎖λ定常領域アミノ基末端に接続して抗体全長軽鎖を形成し、下記の表15に示すようなシリーズmAb103ヒト化抗体を得た:
【0157】
【表15】
備考:表中、例えば「Hu103-32」は、番号がHu103-32であるヒト化抗体の軽鎖可変領域がh103VL8、重鎖可変領域がh103VH4であることを示し、その重鎖定常領域配列がSEQ ID NO:77に示され、軽鎖定常領域配列がSEQ ID NO:79に示される。
【0158】
例示的に、ヒト化抗体軽/重鎖全長配列は、下記の表16に示す通りである:
【0159】
【表16-1】

【表16-2】
備考:表中、イタリック体の文字は定常領域配列、正立した文字は可変領域配列である
【0160】
現在知られているCEAを標的とする2つのADC分子:SAR-408701及びラベツズマブ-govitecan(Lmab-CL2A-SN38とも呼ばれる)複合体は、その中の抗体軽/重鎖配列が下記の通りである:
SAR-408701中の抗体(Sanofiと略称)の重鎖配列:
EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:88
SAR-408701中の抗体(Sanofiと略称)の軽鎖配列
DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:89
Lmab-CL2A-SN38中のラベツズマブ(labetuzumab、Lmabと略称)抗体重鎖配列
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCSASGFDFTTYWMSWVRQAPGKGLEWIGEIHPDSSTINYAPSLKDRFTISRDNAKNTLFLQMDSLRPEDTGVYFCASLYFGFPWFAYWGQGTPVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:90
Lmab-CL2A-SN38中のラベツズマブ(labetuzumab、Lmabと略称)軽鎖配列
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVGTSVAWYQQKPGKAPKLLIYWTSTRHTGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYSLYRSFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:91
【0161】
試験例
試験例1:FACS結合実験
抗体と細胞表面CEAタンパク質との結合状況を検出するために、細胞表面にCEAが発現された細胞を用いて、FACSにより抗体の結合活性を検出した。細胞を収集し、400 g、4 ℃で5 min遠心分離し、最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBSを入れ、400 g、4 ℃で5 min遠心分離し、2回繰り返し、細胞を105個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに割り当て、各孔に勾配希釈された抗体溶液100 μlを入れ、4 ℃で60 minインキュベートし、遠心分離して上清を除去し、各孔に最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBS 250 μlを入れて細胞を再懸濁し、400 g、4 ℃で5 min遠心分離し、上清液を除去し、2回繰り返し、1:200で希釈された二次抗体Alexa Fluor@488ヒツジ抗ヒトIgG(H+L)(Lifetechologies、Cat# A11013)50 μlを加え、4 ℃で遮光で45 minインキュベートし、遠心分離して上清液を除去し、各孔に最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBS 250 μlを入れて再懸濁し、400 g、4 ℃で5 min遠心分離し、2回繰り返し、各孔に予冷されたPBS 100 μlを入れて細胞を再懸濁し、アップフローサイトメトリーにより検出(BD、FACSverse)し、蛍光シグナル値を得て、シグナルが高いほど、抗体と細胞表面のタンパク質との結合活性が強くなることが示される。検出結果は、PRISM分析ソフトウェアにより結合グラフが作成され、フィッティングして抗体と細胞表面タンパク質ヒトCEA(MKN45ヒト胃がん細胞、南京科佰生物科技有限公司、Cat# CBP60488)、cynoCEA-CHO、CEACAM1-CHOとの結合活性のEC50値が得られた。ヒト化抗体の結合活性は、下記の表17、18に示す通りである:
【0162】
【表17】
【0163】
細胞表面CEAタンパク質(MKN45、cynoCEA-CHO)への他のヒト化抗体の結合活性の検出結果は、下記の表18に示す通りである:
【0164】
【表18】
【0165】
実験の結果から、本開示で選別されたヒト化抗体は、マウス抗体と類似の結合活性を保っており、何れも細胞表面ヒトCEAタンパク質に結合することができ、本開示で選別されたヒト化抗体は、細胞表面サルCEAタンパク質に結合可能であると共に、サルCEAタンパク質との結合活性が陽性対照抗体よりも優れることが明らかになる。
【0166】
試験例2:可溶性CEA(sCEA)との競合実験
sCEA(SEQ ID NO:1に示される)が存在する場合にも、抗体が優先して細胞膜表面のCEAに結合するか否かを検出するために、発明者は、勾配希釈された抗体及び一定の濃度のsCEA(5 μg/ml)を30 minプレインキュベートし、そしてMKN45細胞(ヒト胃がん細胞、南京科佰生物科技有限公司、Cat# CBP60488)を収集し、細胞を96ウェルプレートに割り当て、各孔にそれぞれ、勾配希釈された抗体、及び抗体とsCEAをプレインキュベートした混合溶液を入れ、4 ℃で60 minインキュベートし、遠心分離して上清を除去し、最終濃度10%のFBSを含む予冷されたPBS清洗細胞を加え、2回繰り返し、1:200で希釈された二次抗体Alexa Fluor@488ヒツジ抗ヒトIgG(H+L)(Lifetechologies、Cat# A11013)50 μlを入れ、4 ℃で遮光で45 minインキュベートし、遠心分離して上清液を除去し、最終濃度10%のFBSの予冷されたPBS 250 μl清洗細胞を加え、2回繰り返し、各孔に予冷されたPBS 100 μlを入れて細胞を再懸濁し、アップフローサイトメトリー(FACS)により検出(BD、FACSverse)し、蛍光シグナル値を得た。sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合の両方とも、シグナルは各抗体濃度での比率が2よりも小さいと、抗体はsCEAの存在下でも結合曲線が大きく変わることがなく、抗体が依然として優先して細胞膜表面のCEAに結合することが示される。
【0167】
実験の結果は表19及び表20に示す通りであり、そのうち、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合に、Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14、Hu103-32及び陽性対照Lmabは、抗体の濃度が異なる時の蛍光シグナルの比率が下記の表19に示す通りであり、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合に、他の実験抗体の蛍光シグナルの最大比率は、下記の表20に示す通りである:
【0168】
【表19】
【0169】
【表20】
【0170】
実験の結果から、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合の両方とも、本開示で選別されたヒト化抗体Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14、Hu103-32は、様々な抗体濃度での蛍光シグナルの比率が何れも2よりも小さく、例えば、Hu63-13の最大比率は1.59であるのに対して、陽性対照Lmabの最大比率は5.18にも達し、本開示で選別された抗体は対照抗体よりも優れることが明らかになる。本開示で選別されたヒト化抗体は、sCEAを加えない場合とsCEAを加えた場合の両方とも、蛍光シグナルの最大比率が2よりも小さいと共に、陽性対照抗体よりも小さいことにより、本開示で選別されたヒト化抗体はsCEAの存在下で、依然として優先して細胞膜表面のCEAに結合し、且つ陽性対照抗体よりも優れることが明らかになる。
【0171】
試験例3:Biacoreによる抗体と可溶性CEAとの親和力の測定
Biacore(GE、T200)機器により測定すべきヒト化抗体とヒト、サル可溶性CEAとの親和力を測定した。ヒト捕捉防止試薬キット(GE、Cat# BR-1008-39)の取扱書における方法により、ヒト捕捉防止抗体をBiacore機器のバイオセンサチップCM5(GE、Cat# BR-1005-30)と共有結合して複合することで、一定量の測定すべき抗体を親和的に捕捉した後、チップの表面で一連の濃度勾配の可溶性CEA抗原(SEQ ID NO:1に示される)を流し、Biacoreによりリアルタイムで反応シグナルを検出することにより、結合と解離曲線を得た。それぞれのサイクル解離が完了すると、ヒト捕捉防止試薬キットに配置された再生溶液でバイオチップを洗浄して再生した。実験で得られたデータをBIAevaluation version 4.1ソフトウェアにより(1:1)Langmuirモデルでフィッティングし、親和力の値を得た。本開示は、選別された抗体と細胞膜表面のCEAとの結合活性が可溶性CEAよりも強いことを求めているので、抗体と可溶性CEAとの親和力が低いほど良くなる。ヒト化抗体と可溶性CEAとの親和力試験の結果は、下記の表21に示す通りである:
【0172】
【表21】
【0173】
試験の結果から、ヒト化抗体Hu63-13、Hu47-14及びHu67-14は、可溶性CEAタンパク質との親和力が何れも低く、対照抗体Sanofi及びLmabよりも明らかに低いことが分かる。これは、Hu63-13、Hu47-14及びHu67-14が体内で容易に血液中の可溶性CEAにより中和されずに、細胞膜表面にCEAが発現された細胞に結合する抗体が多くあり得ることを示唆している。
【0174】
試験例4:CEA高発現細胞MKN45における抗CEA抗体のエンドサイトーシス活性
本開示における抗CEA抗体複合体は、細胞によりエンドサイトーシスされると、毒素を放出して細胞を殺す作用を果たせるので、CEA発現細胞におけるCEA抗体のエンドサイトーシス活性は、ADCによる活性の発揮を促進することができる。MKN45細胞(ヒト胃がん細胞、南京科佰生物科技有限公司、Cat# CBP60488)におけるヒト化抗体のエンドサイトーシス活性を評価するために、MKN45を96ウェルプレート(Coring、Cat# 3795)に敷いて一晩培養し、翌日、それぞれヒト化したCEA抗体Hu63-13、Hu47-14、Hu67-14及びHu103-3とiFL Green Human IgG Labeling Reagent(Invitrogen、Cat# Z25611)を15 minプレインキュベートし、iFL試薬がヒト化抗体のFcに結合した後、抗体とiFLの複合体を細胞培養プレートに入れ、それぞれ6時間及び24時間後、細胞培養液を除去し、PBSを加えて2回洗浄し、消化して細胞を収集し、FACSで細胞中の蛍光シグナル強度を検出し、抗体が細胞によりエンドサイトーシスされると、抗体Fcに結合したiFLが細胞に持ち込まれることになり、iFLが細胞内部に飲み込まれて、酸性環境でなければ蛍光シグナルを検出することができないので、検出されたシグナルが強いほど、抗体のエンドサイトーシス活性が高くなる。各ヒト化抗体のエンドサイトーシス活性は、図1に示す通りである:全てのヒト化抗体はMKN45によりエンドサイトーシス可能であるが、時間が長くなるほど、エンドサイトーシスされた抗体が多くなる。
【0175】
試験例5:体内での薬物動態試験
SDラットを用いて体内での薬物動態試験を行った。SDラット(西普尓-必凱(Sippr-BK)実験動物有限公司)を1群当たり3匹になるようにランダムに群分け、静脈注射投与し、投与量が3 mg/kgとされ、投与群は、投与前と投与後の5 min、8 h、1 d、2 d、4 d、7 d、10 d、14 d、21 d、28 dに全血0.3 mlを採集し、抗凝固薬を加えず、採血した後、4 ℃で30 min置き、1000 g、15 min遠心分離し、上層の血清を取ってEP管に置き、-80 ℃で保存した。ELISA方法により血清中の薬物濃度を検出し、Winnolinソフトウェアにより被検薬物の薬物動態パラメータを算出したが、検出結果は、下記の表22に示す通りである:
【0176】
【表22】
【0177】
本開示の抗体は何れも、良好な薬物動態活性を有する。
図1
【配列表】
2022539344000001.app
【国際調査報告】