(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】制御性T細胞をターゲットとして増殖させるための方法及び材料
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220901BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220901BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220901BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20220901BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220901BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220901BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220901BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220901BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220901BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220901BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20220901BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220901BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220901BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220901BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220901BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/55
C12N15/13
C12N15/26
C07K16/24
A61P3/10
A61P25/00
A61P37/06
A61P1/04
A61P17/06
A61P17/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P5/14
A61P1/16
A61P3/00
A61K48/00
A61K39/395 Y
A61K38/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577021
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2020039854
(87)【国際公開番号】W WO2020264318
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー スパングラー
(72)【発明者】
【氏名】デレク ヴァンダイク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA14
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
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4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA35
4C085BB31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA04
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、制御性T細胞(T
Reg)をターゲットとして増殖させるための方法及び材料に関する。例えば、インターロイキン-2受容体α(IL-2Rα)ポリペプチド、インターロイキン-2受容体β(IL-2Rβ)ポリペプチド及び共通ガンマ鎖(γ
c)ポリペプチドを含むヘテロトリマー受容体(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体)に結合することができる1種以上の一本鎖抗体/サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカイン)を、ほ乳類の免疫反応を低減又は消失させるためにほ乳類に投与して、ほ乳類のT
Regを刺激することができる。場合によっては、ほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類を処置するために使用され得る方法及び物質も、提供される。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを、免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリン重鎖と、
インターロイキン-2受容体α(IL-2Rα)ポリペプチド、インターロイキン-2受容体β(IL-2Rβ)ポリペプチド、及び共通ガンマ鎖(γ
c)ポリペプチドを含むポリペプチド複合体(IL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体)に結合することができるIL-2ポリペプチドと、
免疫グロブリン軽鎖と、
を含む、一本鎖免疫サイトカインであって、
前記IL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体に結合する、一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項2】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含む、請求項1に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項3】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む、請求項2に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項4】
前記免疫グロブリン重鎖が、γ型重鎖定常ドメインを含む、請求項2又は3に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項5】
前記γ型重鎖定常ドメインが、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項4に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項6】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含む、請求項4又は5に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項7】
前記免疫グロブリン重鎖が、シグナル配列を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項8】
前記シグナル配列が、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項9】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項10】
前記IL-2ポリペプチドが、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項11】
前記IL-2ポリペプチドが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項12】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含む、請求項1に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項13】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む、請求項12に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項14】
前記免疫グロブリン軽鎖が、ラムダ(λ)型軽鎖定常ドメインを含む、請求項12又は13に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項15】
前記λ型軽鎖定常ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項14に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項16】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含む、請求項14又は15に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項17】
前記免疫グロブリン軽鎖が、シグナル配列を含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項18】
前記シグナル配列が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項19】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項20】
前記IL-2ポリペプチドと、前記免疫グロブリン軽鎖とが、融合ポリペプチドである、請求項1に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項21】
前記IL-2ポリペプチドが、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項22】
前記IL-2ポリペプチドが、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項23】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含む、請求項20に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項24】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含む、請求項23に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項25】
前記免疫グロブリン軽鎖が、λ型軽鎖定常ドメインを含む、請求項23又は24に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項26】
前記λ型軽鎖定常ドメインが、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項25に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項27】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含む、請求項25又は26に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項28】
前記IL-2ポリペプチドと、前記免疫グロブリン軽鎖とが、リンカーを介して融合している、請求項20~27のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項29】
前記リンカーが、10~60個のアミノ酸を含むペプチドリンカーである、請求項28に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項30】
前記リンカーが、(Gly
4Ser)
3リンカー、(Gly
4Ser)
5又は(Gly
4Ser)
7である、請求項29に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項31】
前記免疫グロブリン軽鎖が、シグナル配列を含む、請求項20~30のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項32】
前記シグナル配列が、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項33】
前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号3、配列番号24又は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む、請求項20~32のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項34】
前記一本鎖免疫サイトカインが、約5分~約6か月の半減期を有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項35】
前記一本鎖免疫サイトカインが、約10nM K
D~約1pM K
DのIL-2Rαポリペプチドに対するアフィニティを有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項36】
前記一本鎖免疫サイトカインが、約300nM K
D超のIL-2Rβポリペプチドに対するアフィニティを有する、請求項1~33のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項37】
ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体に結合する、請求項1~36のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項38】
非ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γ
cポリペプチド複合体に結合しない、請求項37に記載の一本鎖免疫サイトカイン。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカインをコードする核酸。
【請求項40】
前記免疫グロブリン重鎖をコードすることができる第1の核酸と、前記免疫グロブリン軽鎖に融合した前記IL-2ポリペプチドをコードすることができる第2の核酸とを含む、請求項39に記載の核酸。
【請求項41】
請求項1~38のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物又は請求項39又は40に記載の核酸を含む組成物を、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与することを含む、自己免疫疾患を有するほ乳類を処置するための方法。
【請求項42】
前記ほ乳類が、ヒトである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病、ギラン-バレー症候群、狼瘡、関節リウマチ、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、橋本甲状腺炎、セリアック病、アジソン病、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群及びグレーブス病からなる群より選択される、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記ほ乳類中に存在する自己抗体の数が減少する条件下において、1種以上の自己免疫疾患の処置を前記ほ乳類に施用することをさらに含む、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
請求項1~38のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物又は請求項39又は40に記載の核酸を含む組成物を、ほ乳類に投与することを含む、ほ乳類の制御性T細胞を刺激するための方法。
【請求項46】
前記ほ乳類が、ヒトである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1~38のいずれか一項に記載の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物又は請求項39若しくは40に記載の核酸を含む組成物を、移植片拒絶反応を有するほ乳類に投与することを含む、移植片拒絶反応を有するほ乳類を処置するための方法。
【請求項48】
前記ほ乳類が、ヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記移植片拒絶反応が、同種移植又は自家移植の拒絶反応を含む、請求項47又は48に記載の方法。
【請求項50】
エフェクターT細胞を実質的に活性化しない、請求項41~49のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月26日に出願された米国特許出願第62/867,012号の利益を主張する。先願の開示は、本出願の開示の一部として考えられる(先願の開示は、参照により本出願の開示に組み込まれもする)。
【0002】
連邦政府による資金提供に関する記載
本発明は、アメリカ合衆国国防総省から第W81XWH-18-1-0735番で助成を受けて、アメリカ合衆国連邦政府の支援によりなされた。アメリカ合衆国連邦政府は、本発明に対して一定の権利を留保する。
【0003】
1.技術分野
本明細書は、制御性T細胞(TReg)をターゲットとして増殖させるための方法及び物質に関する。例えば、インターロイキン-2受容体α(IL-2Rα)ポリペプチド、インターロイキン-2受容体β(IL-2Rβ)ポリペプチド及び共通ガンマ鎖(γc)ポリペプチドを含むヘテロトリマー受容体(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体)に結合することができる1種以上のアミノ酸鎖(例えば、1種以上の一本鎖抗体/サイトカイン融合タンパク質(免疫サイトカイン))を含有する組成物を、ほ乳類の免疫反応(例えば、自己免疫反応)を低減又は消失させるためにほ乳類に投与して、ほ乳類のTRegを刺激することができる。場合によっては、本明細書において提供される方法及び物質を使用して、ほ乳類の免疫反応(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応)の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類を処置することもできる。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。
【背景技術】
【0004】
2.背景技術
IL-2は、免疫細胞の分化、増殖、生存及び活性を巧みに協調させる、多機能サイトカインである。低用量のIL-2による処置は、免疫エフェクター細胞(Eff)のポリクローナル増殖よりTRegのポリクローナル増殖を優先的に刺激する(Boymanら、Nat Rev Immunol.12(3):180~190(2012);及びLiaoら、Immunity.38(1):13~25(2013))。前臨床研究及び臨床研究により、低用量IL-2は、TRegの増殖を促進できることが実証されている。しかしながら、IL-2は、Eff(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、CD4+エフェクターT細胞及びCD8+エフェクターT細胞)も増殖させることができ、これにより、望ましくないオフターゲット効果及び毒性を生じさせる(Boymanら、Nat Rev Immunol.12(3):180~190(2012);及びKlatzmannら、Nat Rev Immunol.15(5):283~294(2015))。
【0005】
IL-2は、IL-2Rα、IL-2Rβ及びγc鎖からなるアフィニティ(親和性)が高い(KD約10pM)ヘテロトリマー受容体又はIL-2Rβ及びγc鎖のみからなるアフィニティが中等度の(KD約1nM)ヘテロダイマー受容体によって、細胞シグナル伝達を活性化する。したがって、IL-2反応性は、IL-2Rαサブユニットによって決定されるが、IL-2Rαサブユニットは、TRegには高発現するが、ナイーブEffには事実上存在しないため、TRegは、IL-2より感度が100倍高いものになる(例えば、Boymanら、Nat Rev Immunol.12(3):180~90(2012);Malek、Annu Rev Immunol.26:45379(2008);及びSpanglerら、Annu Rev Immunol.33:139~67(2015)を参照されたい。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boymanら、Nat Rev Immunol.12(3):180~190(2012)
【非特許文献2】Liaoら、Immunity.38(1):13~25(2013)
【非特許文献3】Boymanら、Nat Rev Immunol.12(3):180~190(2012)
【非特許文献4】Klatzmannら、Nat Rev Immunol.15(5):283~294(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IL-2の免疫抑制作用を識別し、選択的に調整する能力は、免疫療法の開発に変革をもたらす進歩であり、自己免疫疾患及び移植に関する医学においては重大な意味をもつ。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、TRegをターゲットとして増殖させるための方法及び物質を提供する。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインが、本明細書において提供される。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインは、免疫グロブリン重鎖(HC)、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)及び免疫グロブリン軽鎖(LC)を含んでもよい(例えば、含むように設計されていてもよい)。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインを製造及び使用するための方法も、本明細書において提供される。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、それを必要としているほ乳類(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類)に投与して、ほ乳類を処置することができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、(例えば、ほ乳類の自己免疫反応等の免疫反応を低減又は消失させるために)ほ乳類のTRegを刺激することもできる。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、移植片拒絶反応を有する又は移植片拒絶反応を発症するリスクがあるほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。
【0009】
本明細書において実証されているように、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合するように遺伝子操作された一本鎖免疫サイトカインは、インビボでTRegを特異的に刺激する(例えば、増殖させる)ことが可能であり、インビボで病原性自己免疫を抑制することができる。(例えば、Effではなく)免疫TRegを刺激する能力は、ほ乳類(例えば、ヒト)の病原性自己免疫及び/又は移植片拒絶反応を安全かつ選択的に低減又は消失させることができる、いまだ実現されたことがないユニークなターゲットサイトカイン療法をもたらすものであり、自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する若しくは移植片拒絶反応を発症するリスクがある、ほ乳類を処置するために使用され得る。
【0010】
一般に、本明細書の一態様は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む、一本鎖免疫サイトカインであって、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、一本鎖免疫サイトカインを特徴とする。免疫グロブリン重鎖は、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は、γ型重鎖定常ドメインを含んでもよい。γ型重鎖定常ドメインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有し得る。免疫グロブリン重鎖は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は、シグナル配列を含んでもよい。シグナル配列は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。IL-2ポリペプチドは、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。IL-2ポリペプチドは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、ラムダ(λ)型軽鎖定常ドメインを含んでもよい。λ型軽鎖定常ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有し得る。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、シグナル配列を含んでもよい。シグナル配列は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。IL-2ポリペプチドと、免疫グロブリン軽鎖とが、融合ポリペプチドであってもよい。IL-2ポリペプチドは、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。IL-2ポリペプチドは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメインを含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、λ型軽鎖定常ドメインを含んでもよい。λ型軽鎖定常ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有し得る。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。IL-2ポリペプチドと、免疫グロブリン軽鎖とが、リンカーを介して融合していてもよい。リンカーは、10~60個のアミノ酸を含み得るペプチドリンカーであってよい。リンカーは、(Gly4Ser)3、(Gly4Ser)5又は(Gly4Ser)7リンカーであってよい。免疫グロブリン軽鎖は、シグナル配列を含んでもよい。シグナル配列は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、配列番号3、配列番号24又は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。一本鎖免疫サイトカインは、約5分間~約6か月の半減期を持つことができる。一本鎖免疫サイトカインは、約10nM KD~約1pM KDのIL-2Rαポリペプチドに対するアフィニティを有し得る。一本鎖免疫サイトカインは、約300nM KD超のIL-2Rβポリペプチドに対するアフィニティを有し得る。場合によっては、一本鎖免疫サイトカインは、ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することもできる。場合によっては、一本鎖免疫サイトカインは、非ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合しない。
【0011】
別の態様において、本明細書は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む一本鎖免疫サイトカインをコードする核酸であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、核酸を特徴とする。核酸は、免疫グロブリン重鎖をコードすることができる第1の核酸と、免疫グロブリン軽鎖に融合したIL-2ポリペプチドをコードすることができる第2の核酸とを含むことができる。
【0012】
別の態様において、本明細書は、自己免疫疾患を有するほ乳類を処置するための方法を特徴とする。本方法は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物;又は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む一本鎖免疫サイトカインをコードする核酸を含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物を、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与することを含み、又はから本質的になることができる。ほ乳類は、ヒトであってもよい。自己免疫疾患は、1型糖尿病、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病、ギラン-バレー症候群、狼瘡、関節リウマチ、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、橋本甲状腺炎、セリアック病、アジソン病、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群又はグレーブス病であり得る。本方法は、ほ乳類中に存在する自己抗体の数が減少する条件下において、1種以上の自己免疫疾患の処置をほ乳類に施用することを含んでもよい。本方法は、エフェクターT細胞を実質的に活性化しない。
【0013】
別の態様において、本明細書は、ほ乳類の制御性T細胞を刺激するための方法を特徴とする。本方法は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物;又は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む一本鎖免疫サイトカインをコードする核酸を含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物を、ほ乳類に投与することを含み、又はから本質的になることができる。ほ乳類は、ヒトであってもよい。本方法は、エフェクターT細胞を実質的に活性化しない。
【0014】
別の態様において、本明細書は、移植片拒絶反応を有するほ乳類を処置するための方法を特徴とする。本方法は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物;又は、(a) 免疫グロブリン重鎖;(b) IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド;及び(c) 免疫グロブリン軽鎖を含む一本鎖免疫サイトカインをコードする核酸を含む組成物であって、一本鎖免疫サイトカインが、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する、組成物を、移植片拒絶反応を有するほ乳類に投与することを含み、又はから本質的になることができる。ほ乳類は、ヒトであってもよい。移植片拒絶反応は、同種移植の拒絶反応であってもよいし、又は自家移植の拒絶反応であってもよい。本方法は、エフェクターT細胞を実質的に活性化しない。
【0015】
そうではないとの規定がない限り、本明細書において使用されているすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものに類似する又は等価な方法及び物質を使用して、本発明を実施することも可能であるが、適切な方法及び物質については後述する。本明細書において言及されたすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考資料は、その全体を参照により組み込む。矛盾がある場合、規定を含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法及び例は、説明用のものにすぎず、限定を加えるものとして意図されていない。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び下記の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的及び利点は、これらの説明及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】IL-2/F5111一本鎖融合タンパク質(免疫サイトカイン)の設計の概略図である。ヒトIL-2は、F5111抗体軽鎖のN末端に融合している。
【
図2】
図2Aは、組換えF5111抗体のFPLCトレース(左側のパネル)及びF5111免疫サイトカイン(IC)LN15のFPLCトレース(右側のパネル)を示している、グラフである。LN15は、ヒトIL-2のC末端と、F5111抗体軽鎖のN末端との間にある15個のアミノ酸からなるリンカーを指す。プールされた画分は、実線によって示されている。
図2Bは、精製されたF5111抗体及びF5111 IC LN15の非還元SDS-PAGE分析及び還元SDS-PAGE分析の画像である。
【
図3】F5111抗体が、マウスIL-2サイトカインではなく、ヒトIL-2サイトカインに結合することを示している、グラフである。フローサイトメトリーによって測定したときの、酵母表面上におけるヒトIL-2(hIL-2、実線)又はマウスIL-2(mIL-2、点線)へのF5111抗体の結合が、示されている。
【
図4】
図4Aは、フローサイトメトリーによって測定したときの、酵母表面ディスプレイしたhIL-2へのF5111抗体及びICの結合を示している、グラフである。
図4Bは、バイオレイヤー干渉法によって測定したときの、固定化hIL-2への精製されたF5111抗体、hIL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15の結合を示している、グラフである。無関係のタンパク質(モノクローナル抗体トラツズマブ)を、ネガティブコトロールとして使用した。
【
図5】
図5Aは、固定化IL-2Rαに対する、hIL-2、hIL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15のバイオレイヤー干渉法による結合滴定を示している、グラフである。無関係のタンパク質(モノクローナル抗体トラツズマブ)を、ネガティブコトロールとして使用した。
図5Bは、固定化IL-2Rβに対する、hIL-2、hIL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15のバイオレイヤー干渉法による結合滴定を示している、グラフである。無関係のタンパク質(モノクローナル抗体トラツズマブ)を、ネガティブコトロールとして使用した。
【
図6】F5111 IC LN15がIL-2Rα
+細胞を選択的に活性化することを示している、模式図及びグラフを含む、図である。フローサイトメトリーによって測定したときの、IL-2Rαを有するYT-1ヒトナチュラルキラー(NK)細胞(
図6A)又はIL-2Rαを有さないYT-1ヒトナチュラルキラー(NK)細胞(
図6B)上における、IL-2、IL-2/F5111複合体又はF5111 IC LN15に応じたSTAT5活性化が、示されている。
【
図7】F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35がHEK293細胞内で生成され、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて精製されたことを示している、図である。
図7Aは、F5111 IC LN35のSECトレースを示している、グラフである。ピーク1(P1)及びピーク2(P2)は、より高次のオリゴマー型構造を含むが、ピーク3(P3)は、モノマー型F5111 IC LN35を含むことが予想されている。したがって、後続するすべての実験には、P3を使用しており、そうではないと指定されていない限り、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35は、プールされたP3画分を指す。
図7Bは、F5111 IC LN15、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35のSECの比較を示している、グラフである。
図7Cは非還元条件及び還元条件下における、F5111 IC LN35 P3のSDS-PAGE分析の画像である。
【
図8】IL-2Rα
+YT-1ヒトNK細胞及びIL-2Rα
-YT-1ヒトNK細胞上における、様々なIL-2による処置に応じたSTAT5活性化を示している、図である。フローサイトメトリーによって測定したときの、IL-2Rαを有するYT-1細胞(
図8A)又はIL-2Rαを有さないYT-1細胞(
図8B)上における、IL-2、IL-2/F5111複合体又はF5111 ICバリアントに応じたSTAT5活性化が、示されている。
【
図9】hIL-2及びhIL-2受容体サブユニットへのhIL-2サイトカイン/受容体タンパク質、hIL-2/F5111複合体及びF5111 ICバリアントの結合を示している、図である。
図9Aは、バイオレイヤー干渉法によって測定したときの、固定化hIL-2への精製されたF5111抗体、F5111/hIL-2複合体及びF5111 ICバリアントの結合を示している、グラフである。
図9Bは、バイオレイヤー干渉法によって測定したときの、固定化hIL-2Rαへの精製されたF5111抗体、F5111/hIL-2複合体及びF5111 ICバリアントの結合を示している、図である。
図9Cは、バイオレイヤー干渉法によって測定したときの、固定化hIL-2Rβへの精製されたF5111抗体、F5111/hIL-2複合体及びF5111 ICバリアントの結合を示している、図である。
【
図10】全血から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)に属する異なる免疫細胞サブセット上における、hIL-2、hIL-2/F5111複合体及びF5111 ICバリアントに応じたSTAT5活性化を示している、図である。
図10Aは、CD3
+CD8
+細胞(CD8
+エフェクターT細胞)上におけるSTAT5活性化を示している、図であり、
図10Bは、CD3
+CD4
+CD25
HighFOXP3
High細胞(T
Reg細胞)上におけるSTAT5活性化を示している、図であり、
図10Cは、CD3
+CD4
+CD25
LowFOXP3
Low細胞(CD4
+エフェクターT細胞)上におけるSTAT5活性化を示している、図である。
【
図11】シグナル配列(太字)、F5111 V
H(斜体)及びヒトIgG1 CH1、CH2及びCH3(太字かつ斜体)を含む例示的な組換え抗体重鎖(F5111抗体に対応する)の配列(配列番号1)を示している、図である。
【
図12】シグナル配列(太字)、F5111 V
L(斜体)及びλ型C
L(太字かつ斜体)を含む例示的な組換え抗体軽鎖(F5111抗体に対応する)の配列(配列番号2)を示している、図である。
【
図13】シグナル配列(太字)、hIL-2(プレーンテキスト)、リンカー(下線)、F5111 V
L(斜体)及びλ型C
L(太字かつ斜体)を含む例示的な免疫サイトカイン軽鎖(F5111 IC LN15に対応する)の配列(配列番号3)を示している、図である。
【
図14】シグナル配列(太字)、hIL-2(プレーンテキスト)、リンカー(下線)、F5111 V
L(斜体)及びλ型C
L(太字かつ斜体)を含む、例示的な免疫サイトカイン軽鎖(F5111 IC LN25に対応する)の配列(配列番号24)を示している、図である。
【
図15】シグナル配列(太字)、hIL-2(プレーンテキスト)、リンカー(下線)、F5111 V
L(斜体)及びλ型C
L(太字かつ斜体)を含む例示的な免疫サイトカイン軽鎖(F5111 IC LN35に対応する)の配列(配列番号25)を示している、図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書は、TRegをターゲットとして増殖させるための方法及び物質を提供する。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインが、本明細書において提供される。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインは、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)及び免疫グロブリン軽鎖を含んでもよい(例えば、含むように設計されていてもよい)。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインを製造及び使用するための方法も、本明細書において提供される。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、それを必要としているほ乳類(例えば、ヒト)(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類)に投与して、ほ乳類を処置することができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、(例えば、ほ乳類の自己免疫反応等の免疫反応を低減又は消失させるために)ほ乳類に投与して、ほ乳類のTRegを刺激することもできる。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を、移植片拒絶反応を有する又は移植片拒絶反応を発症するリスクがあるほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。
【0019】
本明細書において使用されているとき、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、抗体又はそのフラグメント(例えば、サイトカイン/抗体融合タンパク質)に融合した(例えば、遺伝子融合した)サイトカインを含む融合タンパク質である。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、抗サイトカイン抗体又はそのフラグメント(例えば、抗IL-2抗体又はそのフラグメント)に融合したサイトカインを含んでもよい。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、一本鎖免疫サイトカインの内部でサイトカインと抗体とが分子内結合するように抗体に融合した、サイトカインを含むこともできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、抗体の1つ以上の末端(例えば、抗体重鎖のN末端若しくはC末端、及び/又は、抗体軽鎖のN末端若しくはC末端)に融合したサイトカインを含んでもよい。例えば、一本鎖免疫サイトカインは、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)及び免疫グロブリン軽鎖を含む(例えば、含むように設計された)アミノ酸鎖であってもよい。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、抗サイトカイン抗体の少なくとも一部(例えば、免疫グロブリン重鎖及び/又は免疫グロブリン軽鎖)に融合したサイトカインを含む融合ポリペプチドであってもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、免疫グロブリン軽鎖(例えば、抗サイトカイン抗体に由来の免疫グロブリン軽鎖)に融合した、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)に融合した、免疫グロブリン重鎖(例えば、抗サイトカイン抗体に由来の免疫グロブリン重鎖)を含む、融合ポリペプチドであってもよい。
【0020】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、任意の適切な供給源(例えば、ヒト又はマウス等の任意の適切なほ乳類)に由来のIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することもできる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)が、第1の種のほ乳類に由来のIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する場合、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、第2の種のほ乳類に由来のIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体と交差反応しない。例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)が、ヒトIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合する場合、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、非ヒト種(例えば、マウスIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体)に由来のIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体と交差反応しない。
【0021】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、任意の適切な免疫グロブリン(Ig)重鎖を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切なアイソタイプ免疫グロブリン(例えば、IgA免疫グロブリン、IgD免疫グロブリン、IgE免疫グロブリン、IgG免疫グロブリン及びIgM免疫グロブリン)に由来のものであり得る。場合によっては、免疫グロブリン重鎖は、IgG重鎖(例えば、IgG1重鎖)であってもよい。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切なクラスの免疫グロブリン(例えば、γ、σ、α、μ及びε)に由来のものであり得る。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切な重鎖可変ドメイン(VH)を有することができる。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切な重鎖定常ドメイン(CH)を有することができる。場合によっては、免疫グロブリン重鎖は、γ型重鎖、α型重鎖又はδ型重鎖等の3種の定常ドメイン(例えば、CH1、CH2及びCH3)を有する免疫グロブリンであってもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖は、μ型重鎖又はε型重鎖等の4種の定常ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3及びCH4)を有する免疫グロブリンであってもよい。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切な免疫グロブリンに由来のものであり得る。場合によっては、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、同じ免疫グロブリンに由来のものであってもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、異なる免疫グロブリンに由来のものであってもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、天然の免疫グロブリンに由来のものであってもよい(例えば、天然の免疫グロブリンに由来し得る)。場合によっては、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、合成物であってもよい。重鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン重鎖定常ドメインが本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリンの例には、限定はないが、モノクローナル抗体F5111(本明細書では、「F5111」と呼ぶ。)重鎖、モノクローナル抗体F5111.4重鎖、モノクローナル抗体F5111.7重鎖、モノクローナル抗体F5111.8重鎖及びモノクローナル抗体F5111.2重鎖が挙げられる。場合によっては、重鎖可変ドメイン及び/又は重鎖定常ドメインが本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリンは、本明細書以外の場所で説明されているものであってもよい(例えば、Trottaら、Nat Med.24(7):10051014(2018)を参照されたい。)。免疫グロブリン重鎖は、任意の適切な配列(例えば、アミノ酸配列)を含むことができる。場合によっては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の同一性(例えば、約82%、約85%、約88%、約90%、約93%、約95%、約97%、約98%、約99%又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖可変ドメインを含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%の同一性(例えば、約75%、約80%、約85%、約88%、約90%、約93%、約95%、約97%、約8%、約99%又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖は、シグナル配列を含むこともできる。シグナル配列は、任意の適切なシグナル配列(例えば、配列番号6及び配列番号7)であり得る。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するシグナル配列を有する免疫グロブリン重鎖を含んでもよい。
【0022】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)中に使用され得る例示的な免疫グロブリン重鎖は、配列番号1に記載されている。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン重鎖は、シグナル配列、F5111抗体に由来の可変ドメイン、及び、IgG1定常ドメインを含むことができる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン重鎖は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するシグナル配列、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメイン及び配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン重鎖は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン重鎖は、アミノ酸配列に対する1つ以上の変更(例えば、配列番号1に対する1つ以上の変更)を有することもできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる重鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインのサイトカインアフィニティを改変する可能性がある。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる重鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインの受容体の競合を変化させる可能性がある。
【0023】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる任意の適切なIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を含んでもよい。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、任意の供給源に由来のものであり得る。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる天然のIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)であってもよい。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、合成物であってもよい。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、任意の適切な配列を有することができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の同一性(例えば、約82%、約85%、約88%、約90%、約93%、約95%、約97%、約98%、約99%又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を含んでもよい。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、アミノ酸配列に対する1つ以上の変更(例えば、配列番号9に対する1つ以上の変更)を有することもできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれるIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)のアミノ酸配列に対する変更により、一本鎖免疫サイトカインの分子内集合の乱れを軽減することもできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる重鎖のアミノ酸配列に対する変更により、一本鎖免疫サイトカインの活性(例えば、シグナル伝達活性)を高めることもできる。
【0024】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、任意の適切な免疫グロブリン軽鎖を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖は、任意の適切な種類の免疫グロブリン軽鎖(例えば、(κ)型軽鎖及びラムダ(λ)型軽鎖)に由来のものであり得る。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖は、λ型軽鎖(例えば、ヒトλ型軽鎖)であってもよい。免疫グロブリン軽鎖は、任意の適切な軽鎖可変ドメイン(VL)を有することができる。免疫グロブリン軽鎖は、任意の適切な軽鎖定常ドメイン(CL)を有することができる。免疫グロブリン軽鎖は、任意の適切な免疫グロブリンに由来のものであり得る。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン及び免疫グロブリン軽鎖定常ドメインは、同じ免疫グロブリンに由来のものであってもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン及び免疫グロブリン軽鎖定常ドメインは、異なる免疫グロブリンに由来のものであってもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン軽鎖定常ドメインは、天然の免疫グロブリンに由来のものであってもよい(例えば、天然の免疫グロブリンに由来し得る)。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン軽鎖定常ドメインは、合成物であってもよい。軽鎖可変ドメイン及び/又は免疫グロブリン軽鎖定常ドメインが本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリンの例には、限定はないが、モノクローナル抗体F5111軽鎖、モノクローナル抗体F5111.4軽鎖、モノクローナル抗体F5111.7軽鎖、モノクローナル抗体F5111.8軽鎖及びモノクローナル抗体F5111.2軽鎖が挙げられる。場合によっては、軽鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖定常ドメインが本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリンは、本明細書以外の場所で説明されているものであってもよい(例えば、Trottaら、Nat Med.24(7):1005~1014(2018)を参照されたい。)。免疫グロブリン軽鎖は、任意の適切な配列(例えば、アミノ酸配列)を含むことができる。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインは、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の同一性(例えば、約82%、約85%、約88%、約90%、約93%、約95%、約97%、約98%、約99%又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも約70%の同一性(例えば、約75%、約80%、約85%、約88%、約90%、約93%、約95%、約97%、約98%、約99%又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖定常ドメインを含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖は、シグナル配列を含むこともできる。シグナル配列は、任意の適切なシグナル配列(例えば、配列番号7及び配列番号8)であり得る。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するシグナル配列を有する免疫グロブリン軽鎖を含んでもよい。
【0025】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)中に使用され得る例示的な免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に記載されている。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、シグナル配列、F5111抗体に由来の可変ドメイン、及び、λ型定常ドメイン(例えば、ヒトλ型定常ドメイン)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するシグナル配列、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメイン及び配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖は、アミノ酸配列に対する1つ以上の変更(例えば、配列番号2に対する1つ以上の変更)を有することもできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる軽鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインのサイトカインアフィニティを改変する可能性がある。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる軽鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインの受容体の競合を変化させる可能性がある。
【0026】
場合によっては、免疫グロブリン軽鎖は、本明細書に記載のIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を含んでもよい。免疫グロブリン軽鎖が、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を含む場合、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、免疫グロブリン軽鎖の内部の任意の適切な場所に存在することができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、免疫グロブリン軽鎖(例えば、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン)に融合することもできる。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)と、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインとが融合ポリペプチドである場合、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)と、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインとが、リンカーを介して融合していてもよい。リンカーは、任意の適切なリンカーであり得る。場合によっては、リンカーは、(例えば、分子内相互作用を可能にするために)柔軟であってもよい。場合によっては、リンカーは、ペプチドリンカーであってもよい。ペプチドリンカーは、任意の適切な数のアミノ酸を含むことができる。例えば、ペプチドリンカーは、約10~約60個のアミノ酸(例えば、約10~約50個のアミノ酸、約10~約40個のアミノ酸、約10~約30個のアミノ酸、約20~約60個のアミノ酸、約30~約60個のアミノ酸、約40~約60個のアミノ酸、約50~約60個のアミノ酸、約15~約55個のアミノ酸、約20~約50個のアミノ酸、約30~約40個のアミノ酸、約20~約40個のアミノ酸、約30~約50個のアミノ酸又は約40~約60個のアミノ酸)を含むことができる。ペプチドリンカーは、任意の適切なアミノ酸を含むことができる。例えば、ペプチドリンカーは、1個以上のグリシン(Gly)残基及び/又は1個以上のセリン(Ser)残基を含んでもよい。IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を免疫グロブリン軽鎖可変ドメインに融合させるために使用され得るリンカーの例には、限定はないが、(Gly4Ser)2リンカー(配列番号12)、(Gly4Ser)3リンカー(配列番号13)、(Gly4Ser)4リンカー(配列番号14)、(Gly4Ser)5リンカー(配列番号15)、(Gly4Ser)6リンカー(配列番号16)、(Gly4Ser)7リンカー(配列番号17)、(Gly4Ser)8リンカー(配列番号18)、(Gly4Ser)9リンカー(配列番号19)、(Gly4Ser)10リンカー(配列番号20)、(Gly4Ser)11リンカー(配列番号21)及び(Gly4Ser)12リンカー(配列番号22)が挙げられる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、配列番号12、配列番号13、配列番号15又は配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するリンカーを介して免疫グロブリン軽鎖可変ドメインに融合した、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を有する、免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。場合によっては、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)は、アミノ酸配列に対する1つ以上の変更(例えば、配列番号12に対する1つ以上の変更、配列番号13に対する1つ以上の変更、配列番号15に対する1つ以上の変更又は配列番号17に対する1つ以上の変更)を有することができる。場合によっては、リンカーのアミノ酸配列に対する変更は、リンカーの長さ、電荷、構造及び/又は組成を変化させる可能性がある。
【0027】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)中に使用され得るIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)を含む例示的な免疫グロブリン軽鎖は、配列番号3、配列番号24及び配列番号25に記載されている。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、シグナル配列と、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)と、リンカーと、F5111抗体に由来の可変ドメインと、λ型定常ドメイン(例えば、ヒトλ型定常ドメイン)とを含むことができる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、(a) 配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するシグナル配列、(b) 配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するIL-2ポリペプチド、(c) 配列番号13、配列番号15又は配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するリンカー、(d) 配列番号10に記載のアミノ酸配列を有する可変ドメイン、及び、(e) 配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する定常ドメインを含んでもよい。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に使用され得る免疫グロブリン軽鎖は、配列番号3、配列番号24又は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。場合によっては、免疫グロブリン軽鎖は、アミノ酸配列に対する1つ以上の変更(例えば、配列番号3に対する1つ以上の変更、配列番号24に対する1つ以上の変更又は配列番号25に対する1つ以上の変更)を有することもできる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる軽鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインのサイトカインアフィニティを改変する可能性がある。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインに含まれる軽鎖のアミノ酸配列に対する変更は、一本鎖免疫サイトカインの受容体の競合を変化させる可能性がある。
【0028】
場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、(例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に存在しないIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる分子に比較して)安定な分子であり得る。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、約5分~約6か月(例えば、約15分~約6か月、約30分~約6か月、約1時間~約6か月、約24時間~約6か月、約3日~約6か月、約7日~約6か月、約1か月~約6か月、約3か月~約6か月、約5分~約3か月、約5分~約1か月、約5分~約2週間、約5分~約7日、約5分~約3日、約5分~約24時間、約5分~約12時間、約5分~約60分、約30分~約3日、約3日~約1週間、約1週間~約1か月又は約1か月~約3か月)の半減期(例えば、血清中半減期又は血漿中半減期等のインビボ半減期)を有することができる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、標準的な室温条件(例えば、約25℃)において、約1日~約1か月間(例えば、約1日~約2週間、約1日~約1週間、約1日~約5日間、約4日~約1か月間、約1週間~約1か月間、約2週間~約1か月間、約3日~約2週間間、約2日~約5日間、約5日~約2週間又は約1週間~約3週間)の有効期間を有することができる。任意の適切な方法を使用して、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインの安定性を測定することができる。例えば、サーマルシフトアッセイ、タンパク質安定性曲線分析、サイズ排除クロマトグラフィー及び/又は動的光散乱を用いて、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインの安定性を測定することができる。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、IL-2Rαポリペプチドとの間での(例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に存在しないIL-2Rαポリペプチドに結合することができる分子に比較して)強化された相互作用を有し得る(例えば、IL-2Rαポリペプチドに対するより強い結合アフィニティ)。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、約10nM KD~約1pM KDのIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に対するアフィニティを有し得る。
【0029】
場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、(例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に存在しないIL-2Rβポリペプチドに結合することができる分子に比較して)低減された又は消失したIL-2Rβポリペプチドとの相互作用(例えば、IL-2Rβポリペプチドに対するより弱い結合アフィニティ)を有することもできる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、約300nM KD超のIL-2Rβポリペプチドに対するアフィニティを有し得る。
【0030】
任意の適切な方法を用いて、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)と、IL-2Rβポリペプチド及び/又はIL2Rαポリペプチドとの結合アフィニティを測定することができる。例えば、アフィニティ滴定による研究、表面プラズモン共鳴、等温滴定カロリメトリー及び/又はバイオレイヤー干渉法を用いて、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインと、IL-2Rβポリペプチド及び/又はIL-2Rαポリペプチドとの結合アフィニティを測定することができる。
【0031】
場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、(例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン中に存在しないIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる分子に比較して)減少した数のEffを活性化することもできるし、又は、活性化するEffの数が0にすることもできる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインは、Effを実質的に活性化しない(例えば、検出可能なレベル及び/又は免疫反応を誘導するのに十分なレベルになるまでEffを活性化しない)。任意の適切な方法を用いて、Effの有無又は量を判定することができる。例えば、Effマーカー(例えば、CD4、CD8、CD16、CD56、NK1.1、NK1.2、CD44及び/又はCD62L)用の免疫染色を使用して、Effの有無又は量を判定することができる。
【0032】
本明細書は、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を製造するための方法及び物質も提供する。例えば、本明細書は、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得るポリペプチドをコードすることができる核酸(例えば、核酸ベクター)も提供する。場合によっては、核酸は、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る免疫グロブリン軽鎖をコードすることもできる。例えば、第1の核酸は、免疫グロブリン重鎖をコードすることができ、第2の核酸は、免疫グロブリン軽鎖に融合したIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)をコードすることができる。
【0033】
本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を生成するために使用され得るポリペプチドを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸(例えば、核酸ベクター)は、任意の適切な核酸であってよい。核酸は、DNA(例えば、DNAコンストラクト)、RNA(例えば、mRNA)又はこれらの組合せであり得る。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得るポリペプチドを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチドをコードする核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター又はプラスミド)であってもよい。
【0034】
場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を生成するために使用され得るポリペプチドを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸は、(例えば、アミノ酸鎖の発現を調節するために)1種以上の制御要素を含むこともできる。本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得るポリペプチドを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチドをコードする核酸に含まれ得る制御要素の例には、限定はないが、プロモーター(例えば、構成的プロモーター(constitutive promoter)、組織/細胞特異的プロモーター、並びに、化学的に活性化される型のプロモーター及び光によって活性化される型のプロモーター等の誘導的プロモーター(inducible promoter))及びエンハンサーが挙げられる。
【0035】
場合によっては、本明細書に記載の核酸によってコードされる1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)を使用して、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を生成することができる。例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)及び免疫グロブリン軽鎖を含む2個以上のポリペプチドは、集合して(例えば、自己集合して)本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)になることができる。場合によっては、第1の核酸によってコードされる免疫グロブリン重鎖と、第2の核酸によってコードされる免疫グロブリン軽鎖に融合したIL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)とは、集合して(例えば、自己集合して)本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインになることもできる。免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)及び免疫グロブリン軽鎖を含む2個以上のポリペプチドが集合して本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインになる場合、これらの2個以上のポリペプチドは、インビボ又はインビトロで集合することができる。
【0036】
場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)、又は本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得るポリペプチドを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸は、精製することもできる。「精製された」ポリペプチド又は核酸は、複数の成分からなる混合物中の主要な成分を構成する、例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上又は99重量%以上を構成する、ポリペプチド又は核酸を指す。例えば、精製された一本鎖免疫サイトカインは、1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物の約30重量%以上を構成することができる。ポリペプチドは、限定されるわけではないがアフィニティクロマトグラフィー及び免疫吸着アフィニティカラムを含む方法によって、精製することができる。例えば、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチドをコードする精製された核酸は、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のアミノ酸鎖を含有する組成物の約30重量%以上を構成することができる。核酸は、限定されるわけではないがフェノール-クロロホルム抽出及びカラム精製(例えば、ミニカラム精製)を含む方法によって、精製することができる。
【0037】
それを必要としているほ乳類(例えば、ヒト)(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失よって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類)を処置するための方法及び物質も、本明細書において提供される。場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)、又は本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸を含有する組成物は、自己免疫疾患を有するほ乳類を処置するために使用することもできる。例えば、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン、又は本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチドをコードする核酸を含有する組成物を、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)、又は、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができるIL-2ポリペプチド(又はそのフラグメント)、及び/又は、免疫グロブリン軽鎖)をコードする核酸を含有する組成物は、移植片拒絶反応を有するほ乳類を処置するために使用することもできる。例えば、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン、又は、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインを生成するために使用され得る1種以上のポリペプチドをコードする核酸を含有する組成物を、移植片拒絶反応を有するほ乳類に投与して、ほ乳類を処置することができる。
【0038】
自己免疫疾患を有する任意の適切なほ乳類は、本明細書に記載のようにして(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を投与することによって)処置することができる。本明細書に記載のようにして処置され得るほ乳類の例には、限定はないが、霊長類(例えば、ヒト及びサル)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、マウス及びラットが挙げられる。例えば、自己免疫疾患を有するヒトは、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物によって処置することができる。
【0039】
本明細書に記載のようにして(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を投与することによって)自己免疫疾患を有するほ乳類を処置する場合、ほ乳類は、任意の種類の自己免疫疾患を有し得る。本明細書に記載のようにして処置され得る自己免疫疾患の例には、限定はないが、1型糖尿病、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、移植片対宿主病、ギラン-バレー症候群、狼瘡、関節リウマチ、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、橋本甲状腺炎、セリアック病、アジソン病、自己免疫性肝炎、抗リン脂質抗体症候群及びグレーブス病が挙げられる。
【0040】
任意の適切な方法を用いて、ほ乳類(例えば、ヒト)を、自己免疫疾患を有するほ乳類であると特定することができる。例えば、臨床検査(例えば、抗核抗体検査(ANA))、症状の分析、診察、MRI及び/又はCTスキャンを用いて、自己免疫疾患を有するほ乳類(例えば、ヒト)を特定することができる。
【0041】
本明細書に記載のようにして(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を投与することによって)移植片拒絶反応を有する又は移植片拒絶反応を発症するリスクがあるほ乳類を処置する場合、ほ乳類は、任意の適切な臓器及び/又は組織の移植片を受け入れることができ、又は受け入れる準備ができている状態であってよい。本明細書に記載のようにして処置することができるほ乳類に移植され得る臓器及び組織の例には、限定はないが、皮膚、骨、血液、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、腸、胃、精巣、陰茎、角膜、骨髄及び肺が挙げられる。移植は、同種移植であってもよいし、又は自家移植であってもよい。場合によっては、本明細書に記載の物質及び方法を使用して、移植片に関連付けられた合併症又は疾患(例えば、移植片対宿主病)を有するほ乳類を処置することもできる。
【0042】
任意の適切な方法を用いて、ほ乳類(例えば、ヒト)を、移植片拒絶反応を有するほ乳類であると特定することができる。例えば、臨床検査(例えば、ANA)、症状の分析、診察、臓器生検及び/又はCTスキャンを用いて、移植片拒絶反応を有するほ乳類(例えば、ヒト)を特定することができる。
【0043】
自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する若しくは移植片拒絶反応を発症するリスクがあるものであると特定されたらすぐに、ほ乳類(例えば、ヒト)は、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物を投与されてもよいし、又は自己投与するように指示されてもよい。場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を使用して、ほ乳類(例えば、自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する、ほ乳類)中に存在する自己抗体の数を減少させることもできる。場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物を使用して、自己免疫疾患を有するほ乳類の1種以上の症状を低減又は消失させることもできる。
【0044】
場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応を処置するために使用される唯一の活性成分として、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与することもできる。
【0045】
場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)が、自己免疫疾患を有するほ乳類に投与される場合において、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインは、自己免疫疾患及び/又は1種以上のさらなる免疫抑制剤を処置するために使用される1種以上のさらなる処置との併用療法として投与することもできる。例えば、自己免疫疾患を処置するために使用される併用療法は、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインをほ乳類(例えば、ヒト)に投与することと、養子細胞(例えば、TReg)移植、寛容原性ワクチン接種、免疫チェックポイントアゴニスト及び/又はステロイド投与等の1種以上の自己免疫疾患の処置をほ乳類(例えば、ヒト)に施用することとを含むこともできる。例えば、免疫反応を増進するために使用される併用療法は、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインと、シクロスポリン、ラパマイシン、メトトレキサート、アザチオプリン、クロラムブシル、レフルノミド及び/又はミコフェノール酸モフチル等の1種以上の免疫抑制剤とをほ乳類(例えば、ヒト)に投与することを含むことができる。
【0046】
場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を、移植片拒絶反応を有する又は移植片拒絶反応を発症するリスクがあるほ乳類に投与する場合において、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインは、移植片拒絶反応を処置するために採用される1種以上のさらなる処置との併用療法として、投与することもできる。例えば、移植片拒絶反応を処置するために使用される併用療法は、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインと、シクロスポリン、ラパマイシン、メトトレキサート、アザチオプリン、クロラムブシル、レフルノミド及び/又はミコフェノール酸モフチル等の1種以上のさらなる免疫抑制剤とをほ乳類(例えば、ヒト)に投与することを含むことができる。
【0047】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインが、1種以上のさらなる処置と組み合わせて使用される場合、1種以上のさらなる処置は、同時に又は独立に施用することができる。例えば、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを最初に投与し、1種以上のさらなる処置を2番目に施用することも可能であるし、又はこの投与及び施用を逆の順番にして行うことも可能である。
【0048】
場合によっては、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)は、それを必要としているほ乳類(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態を有するほ乳類)に投与するための組成物(例えば、薬学的に許容される組成物)に配合することができる。例えば、ある治療有効量の本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインは、1種以上の薬学的に許容されるキャリア(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒にして配合されてもよい。医薬組成物は、投与のために、任意の適切な剤形にして製剤化することができる。剤形の例には、限定はないがガム剤、カプセル剤、錠剤(例えば、チュアブル錠及び腸溶錠)、坐剤、液剤、浣腸剤、懸濁剤、溶液(例えば、無菌溶液)、徐放性製剤、放出遅延製剤、丸剤、散剤及び顆粒剤を含む、固体形態又は液体形態が挙げられる。本明細書に記載の医薬組成物中に使用され得る薬学的に許容されるキャリア、充填剤及び溶媒には、限定はないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、ホスフェート等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物(partial glyceride mixture)、水、塩又は電解質、例えばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとする物質、ビタミンE TPGS等のポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー及び羊毛脂が挙げられる。
【0049】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物(例えば、医薬組成物)は、経口投与又は非経口投与(皮下投与、腫瘍内投与、筋肉内投与、静脈内投与及び皮内投与を含む)のために設計され得る。経口投与される場合、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する医薬組成物は、丸剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよい。非経口投与に適した組成物は、抗酸化剤と、バッファーと、静菌剤と、製剤を所期のレシピエントの血液に対して等張の状態にする溶質とを含有することができる水性及び非水性無菌注射液;並びに、懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性無菌懸濁液を含む。製剤は、ユニットドーズ型容器又はマルチドーズ型容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルの中に入れられた状態で存在してもよく、使用直前に無菌液体キャリア、例えば注射用水を加えることのみ必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することもできる。用時調製の注射液(extemporaneous injection solution)及び懸濁液は、無菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製することもできる。
【0050】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物(例えば、医薬組成物)は、局所投与することもできるし、又は全身投与することもできる。例えば、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物は、経口投与又は注射によってほ乳類(例えば、ヒト)に全身投与することができる。
【0051】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)の有効用量は、自己免疫疾患の重症度、投与経路、対象の年齢及び総合的な健康状態、賦形剤の使用、他の作用物質の使用等の他の治療処置と併用する可能性、並びに/又は、治療医の判断に応じて変化し得る。
【0052】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物の有効量は、ほ乳類に対する有意な毒性を発生させることなくほ乳類(例えば、自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する若しくは移植片拒絶反応を発症するリスクがある、ほ乳類)を処置することができる、任意の量であり得る。本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインの有効量は、任意の適切な量であり得る。場合によっては、本明細書に記載の一本鎖免疫サイトカインの有効量は、ほ乳類(例えば、ヒト)の体重1kg当たり約0.05ミリグラム(mg)~約500mg(mg/kg;例えば、体重に対して約0.05mg/kg~約400mg/kg、約0.05mg/kg~約300mg/kg、約0.05mg/kg~約200mg/kg、約0.05mg/kg~約100mg/kg、約0.05mg/kg~約50mg/kg、約0.5mg/kg~約500mg/kg、約1mg/kg~約500mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約100mg/kg~約500mg/kg、約200mg/kg~約500mg/kg、約300mg/kg~約500mg/kg、約400mg/kg~約500mg/kg、約0.5mg/kg~約400mg/kg、約1mg/kg~約300mg/kg、約50mg/kg~約200mg/kg、約1mg/kg~約100mg/kg、約100mg/kg~約200mg/kg、約200mg/kg~約300mg/kg又は約300mg/kg~約400mg/kg)であってもよい。有効量は、一定のままであってもよいし、又は、処置に対するほ乳類の反応に応じて変動する用量若しくは変更することができる用量であるように調整することもできる。様々な要因が、特定の用途のために使用される実際の有効量に影響し得る。例えば、投与頻度、処置継続期間、複数の処置用作用物質の使用、投与経路及び/又は状態(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態)の重症度により、投与される実際の有効量を増やし、又は減らすことが必要になることもある。
【0053】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γcポリペプチド複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物の投与頻度は、ほ乳類に対する有意な毒性を発生させることなくほ乳類(例えば、自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する若しくは移植片拒絶反応を発症するリスクがある、ほ乳類)を処置することができる、任意の頻度であり得る。例えば、投与頻度は、概ね1日3回~概ね1週間に1回、概ね1日2回~概ね1週間に2回又は概ね1日1回~概ね1週間に2回であってよい。投与頻度は、一定のままであってもよいし、又は、処置継続期間中に変更することができるものであってもよい。本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物による処置の経過は、休薬期間を含み得る。例えば、本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカインを含有する組成物は、2週間の期間にわたって毎日投与し、続いて、2週間の休薬期間を置くことも可能であり、このようなレジメンが、複数回繰り返されてもよい。有効量の場合と同様に、様々な要因が、特定の用途のために採用される実際の投与頻度に影響し得る。例えば、有効量、処置継続期間、複数の処置用作用物質の使用、投与経路及び/又は状態(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態)の重症度により、投与頻度を増やし、又は減らすことが必要になることもある。
【0054】
本明細書に記載の1種以上の一本鎖免疫サイトカイン(例えば、IL-2Rα/IL-2Rβ/γc複合体に結合することができる一本鎖免疫サイトカイン)を含有する組成物を投与するための有効な期間は、ほ乳類に対する有意な毒性を発生させることなくほ乳類(例えば、自己免疫疾患を有し、及び/又は移植片拒絶反応を有する若しくは移植片拒絶反応を発症するリスクがある、ほ乳類)を処置する、任意の期間であり得る。例えば、有効な期間は、数日から数週間、数か月又は数年まで様々であり得る。場合によっては、ほ乳類の処置のための有効な期間は、約1か月~約10年間の範囲の期間であり得る。場合によっては、ほ乳類の処置のための有効な期間は、(例えば、ほ乳類の寿命の期間にわたる)慢性処置であってもよい。複数の要因が、特定の処置のために採用される実際の有効な期間に影響し得る。例えば、有効な期間は、投与頻度、有効量、複数の処置用作用物質の使用、投与経路、及び/又は、処置される状態(例えば、自己免疫疾患及び/又は移植片拒絶反応等のほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある状態)の重症度に応じて変化し得る。
【0055】
場合によっては、ほ乳類に存在する自己免疫疾患、及び/又は、処置されている自己免疫疾患の1種以上の症状の重症度は、モニタリングすることができる。例えば、処置されているほ乳類中に存在する自己抗体の存在は、モニタリングすることができる。任意の適切な方法を用いて、ほ乳類中に存在する自己抗体レベルが低下するか否かを判定することができる。
【0056】
代替的には、本明細書に記載の方法及び物質は、ほ乳類の免疫反応の低減又は消失によって利益を受ける可能性がある別の状態を有するほ乳類(例えば、ヒト)を処置するために使用することもできる。
【0057】
以下の例においては、本発明をさらに説明するが、これにより、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することはない。
【実施例】
【0058】
物質及び方法
タンパク質の発現及び精製
公開されているF5111のVH及びVL配列(例えば、Trottaら、Nat Med.24(7):10051014(2018)を参照されたい。)を使用して、ヒト免疫グロブリン(IgG)1 λ型アイソタイププラットフォーム(配列番号1及び配列番号2)により、組換え抗体を作製した。F5111抗体の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を、gWizベクター(Genlantis)内に別々にクローニングした。HC及びLCをコードするプラスミドの一過性コトランスフェクションによって、抗体をヒト胎児腎(HEK)293F細胞に組換え発現させた。小規模なコトランスフェクション試験において、HC及びLCプラスミドを滴定して、大規模な発現に最適な比を判定した。トランスフェクションから5日後に、分泌された抗体を、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによって細胞上清から精製し、続いて、HEPES緩衝生理食塩水(HBS。pH7.3の10mM HEPES中の150mM NaCl)で平衡化したFPLC機器に搭載のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。SDS-PAGE分析によって、純度(99%超)を確認した。IC生成のために、IL-2サイトカインを、完全F5111抗体のLCのN末端に融合させたが、分子内相互作用を可能にするために、15個のアミノ酸(Gly4Ser)3からなる柔軟なリンカー(F5111 IC LN15、配列番号3)、25個のアミノ酸(Gly4Ser)5からなる柔軟なリンカー(F5111 IC LN25、配列番号24)又は35個のアミノ酸(Gly4Ser)7からなる柔軟なリンカー(F5111 IC LN35、配列番号25)によって連結された状態にしておいた。別々のプラスミドを、F5111 HC及びhIL-2融合F5111 LCをコードするgWizベクター(Genlantis)内に調製した。F5111抗体について説明したのと同じようにして、HEK 293F細胞の一過性コトランスフェクションによってICを発現させ、精製した。
【0059】
完全hIL-2サイトカイン(残基1~133)と、hIL-2Rα(残基1~214)及びhIL-2Rβ(残基1~214)受容体サブユニットの細胞外ドメインとを、C末端にヘキサヒスチジンタグを有するgWizベクター(Genlantis)にクローニングした。HEKについて説明したのと同じようにして、HEK293F細胞の一過性トランスフェクションによってタンパク質を発現させ、Ni-NTAアフィニティクロマトグラフィーによって精製し、続いて、HBSで平衡化したFPLC機器に搭載のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。SDS-PAGE分析によって、純度(99%超)を確認した。
【0060】
ビオチン化hIL-2Rα及びhIL-2Rβの発現のために、C末端ビオチンアクセプターペプチド(BAP)(配列番号23)を含有するタンパク質を発現させ、Ni-NTAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した後、pH8.3の0.5mM ビシン、100mM ATP、100mM酢酸マグネシウム及び500mMビオチン(Sigma)中で可溶性BirAリガーゼ酵素によってビオチン化した。HBSで平衡化したFPLC機器に搭載のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって、過剰なビオチンを除去した。
【0061】
細胞株
0.01%ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を添加したFreestyle293 Expression Medium(Thermo)中で、HEK293F細胞を培養した。改変されていないYT-1及びIL-2Rα+YT-1ヒトナチュラルキラー細胞(例えば、Kuzielら、J Immunol.150(8):3357~3365(1993)を参照されたい。)を、RPMI完全培地(10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、最低限度の非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、25mM HEPES及びペニシリン-ストレプトマイシン[Gibco]を添加したRPMI1640培地)中で培養し、5%CO2を含む加湿された雰囲気下で37℃に維持した。
【0062】
酵母表面上における結合についての研究
酵母上における抗体結合を研究するために、hIL-2(残基1~133)又はマウスIL-2(mIL-2;残基1~149)をpCT302ベクターにクローニングし、本明細書以外の場所で説明されているようにして酵母の表面上で提示させた(例えば、Boderら、Nat.Biotechnol.、15(6):553~557(1997)を参照されたい。)。酵母ディスプレイしたヒト又はマウスIL-2を、組換えF5111抗体ECDの希釈系列を含有するPBSA中において室温で2時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、PBSA中のAlexaFluor(登録商標)647と複合体化したストレプトアビジン(Thermo)の1:200希釈物によって4℃で15分間染色した。最後の洗浄後、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter)を使用して、抗体結合について細胞を分析した。バックグラウンドを差し引いて正規化した結合曲線を、一次結合モデルに当てはめ、平衡解離定数(KD)値を、GraphPad Prismを使用して判定した。研究を3回実施したが、同様の結果だった。
【0063】
バイオレイヤー干渉法による結合についての研究。
IL-2と免疫サイトカインとを対比させたアフィニティ滴定による研究に関しては、分析のために、ビオチン化ヒトIL-2サイトカイン又はIL-2Rα若しくはIL-2Rβ受容体鎖を、OCTET(登録商標)Red96バイオレイヤー干渉法(BLI)機器(ForteBio)のストレプトアビジンコーティングされた先端に固定化した。シグナル単位(nm)が5未満の受容体は、物質移動の影響を最小化するために固定化した。96ウェルプレートの中で、hIL-2、IL-2/F5111複合体又は一本鎖IL-2/F5111 ICコンストラクトの希釈系列に先端を300秒間さらし、解離を600秒間測定した。非特異的結合を差し引くために、無関係のタンパク質(ヒトモノクローナル抗体トラツズマブ)を参照用ウェルに入れた。すべての相互作用に関する表面の再生は、pH3.0の0.1Mグリシンに15秒間さらすことによって実施した。実験は、PBSA(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.3+0.1%ウシ血清アルブミン(BSA、Thermo Fisher Scientific))中において25℃で実施された。データは、Octet(登録商標)データ分析ソフトウェアバージョン7.1(Molecular Devices)を使用して可視化及び処理した。すべての結合相互作用が一次であると仮定した上で、GraphPad Prismを使用して、平衡滴定曲線の当てはめ及びKD値の判定を実施した。実験を2回再現したが、同様の結果だった。
【0064】
YT-1細胞におけるSTAT5リン酸化についての研究
約2×105個のIL-2Rα-YT-1細胞又はIL-2Rα+YT-1細胞を、96ウェルプレートの各ウェルに播種し、必要な処理の希釈系列を含有するRPMI完全培地に再懸濁させた。hIL-2に対して1:1のモル比のF5111抗体を37℃で1時間インキュベートすることによって、サイトカイン/抗体複合体を形成した。細胞を20分間37℃で刺激したらすぐに、1.5%になるまでホルムアルデヒドを加えることによって固定し、室温で10分間インキュベートした。氷冷した100%メタノールに4℃で30分間再懸濁させることにより、細胞の透過処理を実施した。固定及び透過処理した細胞を、FACSバッファー(0.1%BSA[Thermo Fisher Scientific]を含有するpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水[PBS])によって2回洗浄し、FACSバッファーに希釈されたAlexa Fluor(登録商標)647と複合体化した抗STAT5 pY694(BD Biosciences)と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、FACSバッファー中で細胞を2回洗浄し、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman-Coulter)によってMFIを測定した。用量反応曲線をロジスティックモデルに当てはめ、無刺激細胞の平均蛍光強度(MFI)を差し引き、最大シグナル強度に対して正規化した後、GraphPad Prismデータ分析ソフトウェアを使用して、半数効果濃度(EC50)を計算した。実験は、トリプリケートで行われ、3回実施したが、同様の結果だった。
【0065】
ヒトPBMCにおけるSTAT5リン酸化についての研究。
製造業者のプロトコルに従ったFicollグラジエントにより、健康なドナーの全血からヒトPBMCを単離し、次いで、赤血球の除去のためにACK溶解バッファーと一緒にインキュベートした。約1×106個のヒトPBMCを96ウェルプレートの各ウェルに播種し、必要な処理の希釈系列を含有するRPMI完全培地に再懸濁させた。hIL-2に対して1:1のモル比のF5111抗体を37℃で1時間インキュベートすることによって、サイトカイン/抗体複合体を形成した。細胞は、37℃で20分間刺激したらすぐに、1×Fix/Perm Buffer(BD Biosciences)の添加によって固定し、4℃で50分間インキュベートした。Perm Buffer III(BD Biosciences)に-20℃で終夜再懸濁させることにより、細胞の透過処理を実施した。固定及び透過処理した細胞を、FACSバッファー(0.1%BSA[Thermo Fisher Scientific]を含有するpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水[PBS])によって2回洗浄し、FACSバッファーに希釈された適切な抗ヒト抗体のパネル(ヒトPBMC用の場合、抗CD3、抗CD4、抗CD8、抗FOXP3、抗CD25、抗CD127及び抗リン酸化STAT5)と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、FACSバッファー中で細胞を2回洗浄し、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman-Coulter)によってMFIを測定した。用量反応曲線をロジスティックモデルに当てはめ、無刺激細胞の平均蛍光強度(MFI)を差し引き、最大シグナル強度に対して正規化した後、GraphPad Prismデータ分析ソフトウェアを使用して、半数効果濃度(EC50)を計算した。実験は、トリプリケートで行われ、2回実施したが、同様の結果だった。
【0066】
(実施例1)
ヒト制御性T細胞をターゲットとして増殖するための遺伝子操作されたサイトカイン/抗体融合体
F5111抗体と複合体化したヒトIL-2(hIL-2)の投与は、ヒト化マウスモデルにおいては、ヒト末梢血に由来のTRegを増殖させるが、エフェクターT細胞は増殖させないことが判明したが、これにより、ターゲットサイトカイン療法を目指す上で大変興味深い可能性がもたらされている。IL-2/F5111複合体による処置は、マウスのT1Dの重症度を低下させることも、さらに示された(Trottaら、Nat Med。24(7):1005~1014(2018))。この胸が躍るようなターゲットIL-2療法には、極めて大きな臨床可能性があるが、サイトカインと抗体とが混合した複合体の治療目的での開発は、用量比に関する考慮事項と、複合体が不安定であることとにより、制限されている。実際、このような複合体の解離は、遊離サイトカインから危険な毒性を引き出す場合もあるし、可能性としては、自己反応性エフェクターT細胞を活性化することによって、自己免疫による発病を悪化させることもあり得る。さらに、遊離サイトカインは、血流から5分未満で消える(Donohueら、J Immunol.130(5):2203~2208(1983))。
【0067】
この実施例では、TRegを特異的に刺激して、病原性自己免疫を抑制する、臨床的に意義のある一本鎖融合タンパク質(免疫サイトカイン、ICと呼ぶ)の設計及び遺伝子操作について説明する。このICは、F5111抗体と、ほ乳類細胞のIL-2とを含む。
【0068】
サイトカインの効力と、薬学的に好ましい抗体特性とを、目的とする単分子型のコンストラクトの中で組み合わせるために、ヒトIL-2(hIL-2)を、サイトカインに対するバイアスのあるF5111抗体に融合させて、免疫サイトカイン(IC)を作製した(
図1)。完全hIL-2サイトカインを、完全長F5111ヒトIgG1 λ型抗体のLCの末端に融合させたが、15個のアミノ酸(Gly
4Ser)
3からなる柔軟なリンカーによって連結された状態にしておいた。これは、F5111 IC LN15と呼ぶ。迅速で小規模なHEK293F細胞トランスフェクションアッセイを用いて、免疫サイトカイン発現を最適化した。重鎖(HC)プラスミドDNAと、IL-2融合軽鎖(LC)プラスミドDNAとが所定の比になるように、6ウェルプレートの中で細胞をトランスフェクションした。3日間のインキュベーション後、分泌されたタンパク質を、プロテインG樹脂によって上清から捕集し、pH2.0の0.1Mグリシンによって溶出させ、SDS-PAGEによって分析した。HC:LC比の滴定により、最適な発現条件が明らかになった。免疫サイトカインの発現を、HEK293F細胞内でスケールアップし、分泌されたタンパク質を、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによって精製し、続いて、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。上記プロセスは、組換えF5111抗体の発現のためにも実施した。FPLC機器により、均一になるまでF5111抗体及びF5111 IC LN15を精製し(
図2A)、SDS-PAGE分析によって純度(99%超)を確認した(
図2B)。目的hIL-2サイトカインへの組換えF5111抗体の結合を確認するために、可溶性抗体を滴定して、酵母ディスプレイしたhIL-2又はmIL-2に結合させた。予想のとおり、抗体は、hIL-2に結合したが、見かけの二価アフィニティは、K
D=420pMだった。抗体は、mIL-2と交差反応しなかった(
図3)。
【0069】
(実施例2)
この実施例により、組換え発現一本鎖F5111 ICが適切に集合し、IL-2Rβに結合しないことが実証される。
【0070】
ICの内部において、hIL-2がF5111抗体に分子内結合していることを実証するために、hIL-2に対するF5111 IC LN15の結合アフィニティを測定し、組換えF5111抗体(Ab)の結合アフィニティに対して比較した。フローサイトメトリーによって測定したときの、酵母表面ディスプレイしたhIL-2への精製されたF5111抗体及びICの結合が、
図4Aに示されている。ビオチン化hIL-2がストレプトアビジンコーティングされた先端に固定化されたOCTET(登録商標)機器により、バイオレイヤー干渉法を用いて、結合アフィニティも評価した(
図4B)。酵母表面による研究と、バイオレイヤー干渉法による研究とのいずれにおいても、F5111 Abとの比較でF5111 IC LN15には結合アフィニティの有意な低下が観察されており、分子内でのサイトカイン/抗体の集合が確認された。バイオレイヤー干渉法ベースの結合の研究も実施して、F5111 IC LN15と、IL-2Rα及びIL-2Rβ受容体鎖との相互作用を評価し、これによって、一本鎖抗体/サイトカイン融合体が、IL-2Rβとの比較でIL-2Rα(T
Reg細胞においては高発現しているが、エフェクター細胞においては高発現していない)との結合に対してバイアスを有することを保証した。実際、生物物理的評価により、F5111 IC LN15は、遊離IL-2サイトカインに等しい効力を伴ってIL-2Rαに結合するが(
図5A)、F5111 IC LN15は、遊離IL-2サイトカインに比べて有意に低下したIL-2Rβに対する結合を示すことが示された(
図5B)。これらのデータは、ICの適切なフォールディング、分子内結合及び活性を裏付けている。
【0071】
(実施例3)
この実施例により、免疫サイトカインが、IL-2シグナル伝達に選択的にバイアスをかけることが実証される。
【0072】
IL-2は、核に移動して、転写プログラムを実施するものである、シグナル伝達兼転写活性化因子5(STAT5)の活性化よってシグナル伝達する(例えば、Murray,P.J.J Immunol、178(5):2623~2629(2007);並びに、Bromberg,J.及びWang,T.C.、Cancer Cell、15(2):79~80(2009)を参照されたい。)。ICバリアントによってもたらされる免疫のバイアスをキャラクタリゼーションするために、IL-2Rαサブユニットを誘導発現するYT-1ヒトNK細胞株を利用した(例えば、Yodoiら、J Immunol、134(3):1623~1630(1985)を参照されたい。)。フローサイトメトリーベースの研究を実施して、T
Regの活性化と免疫エフェクター細胞の活性化との対比の代用として誘導ありのIL-2Rα
+YT-1細胞と誘導なしのIL-2Rα
-YT-1細胞とを対比させたときの、IL-2、IL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15によって誘起されたSTAT5シグナル伝達を定量化した(
図6)。何も結合していないIL-2(untethered IL-2)は、IL-2Rα
+細胞とIL-2Rα
-細胞との両方において、強度にシグナル伝達し、IL-2/F5111複合体は、IL-2Rα
+細胞とIL-2Rα
-細胞との両方を完全に活性化した。対照的に、F5111 IC LN15活性は、IL-2Rα
+細胞においてはわずかにしか低下しなかったが(
図6A)、IL-2Rα
-細胞においては劇的に低下した(
図6B)。
【0073】
上記結果は、F5111免疫サイトカインにより、IL-2活性が、免疫エフェクター細胞よりもT
Reg細胞の方に効果的にバイアスをかけられることと、このようなバイアスを、F5111免疫サイトカインが、IL-2とF5111とが混合した複合体より著しく効果的にかけることとを示している(
図6)。
【0074】
(実施例4)
この実施例では、F5111免疫サイトカインの発現及び機能を最適化するための実験について説明する。
【0075】
先述のF5111 IC LN15は、hIL-2のC末端と、F5111抗体の軽鎖のN末端との間に15個のアミノ酸からなる柔軟なリンカーを含む。25個のアミノ酸からなるリンカー(F5111 IC LN25)及び35個のアミノ酸リンカーからなる(F5111 IC LN35)を含むより長いリンカーによって、15個のアミノ酸からなるリンカーを置きかえて、代替的なF5111 ICコンストラクトを設計した。F5111重鎖及びIL-2融合F5111軽鎖をコードするプラスミドの一過性コトランスフェクションにより、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35をHEK293F細胞内で発現させた。プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによって細胞上清からタンパク質を精製し、続いて、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)機器を用いたSECによって精製した。F5111 IC LN25とF5111 IC LN35との両方を対象とするSEC分析によって、3つのピーク(P1、P2、P3と標示されている)が観察されており、各ピークを分析用にプールした。P1及びP2は、SECカラムからより早く溶出するため、より高次のオリゴマー型構造を含み、一方で、P3は、モノマー型F5111 IC LN35を表すことが予想された(
図7A)。F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35のSECトレースを、F5111 IC LN15のSECトレースに対して比較した(
図7B)。
図7Bに見られるように、生成されたF5111 IC LN15の大部分は、オリゴマー化していたが、このことは、生成されたF5111 IC LN15の大部分が、SECカラムからF5111 IC LN25及びF5111 IC LN35のP1及びP2と同時に溶出したことによって実証されている。さらに、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35のP3は、抗体の分子量に近い体積で溶出しており、このことは、このピークが、モノマー型ICからなることを示唆している。したがって、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35を用いたさらなる実験においては、評価のためにP3を使用しており、そうではないと指定されていない限り、以下で行われるF5111 IC LN25及びF5111 IC LN35への言及はすべて、P3を意味する。F5111 IC LN35は、総じて、F5111 IC LN25より少ないオリゴマーを含有していた。SDS-PAGE分析を実施して、純度を確認した(
図7C)。
【0076】
F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35は、F5111 IC LN15及びhIL-2/F5111複合体より大きなバイアスを伴って、IL-2Rα
-エフェクターT細胞(T
Eff)様細胞よりもIL-2Rα
+T
Reg様細胞を選択的に活性化することが実証された。細胞シグナル伝達アッセイを、IL-2Rαが発現した又は発現していないYT-1ヒトNK細胞に実施した。
図8A及び
図8Bは、フローサイトメトリーによって測定したときの、IL-2Rα
+細胞(
図8A)又はIL-2Rα
-細胞(
図8B)上における、hIL-2、hIL-2/F5111複合体、F5111 IC LN15、F5111 IC LN25又はF5111 IC LN35に応じたSTAT5リン酸化を示している。F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35は、サブナノモルの濃度でIL-2Rα
+細胞を活性化したが、IL-2Rα
-細胞上におけるF5111 IC LN25及びF5111 IC LN35の活性は、測定できないほどに弱く、このことは、IL-2Rαを発現したT
Reg様細胞に対するこれらのICのバイアスを実証している。
【0077】
実験を実施して、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35コンストラクトの内部において、hIL-2が抗体に分子内結合していることと、IL-2Rβ結合部位を完全に遮断して、高レベルのIL-2Rαを発現させた細胞との相互作用を増進することにより、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35が、hIL-2をT
Reg細胞に選択的に誘導することとを実証した。ビオチン化hIL-2がストレプトアビジンコーティングされた先端に固定化されたOctet(登録商標)機器により、バイオレイヤー干渉法を用いて、IL-2と、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35との結合相互作用を評価した(
図9A)。さらに、Octet(登録商標)機器により、バイオレイヤー干渉法を用いて、ビオチン化hIL-2Rα及びIL-2Rβを、ストレプトアビジンコーティングされた先端に固定化することによって、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35と、ヒトIL-2Rα(hIL-2Rα)及びhIL-2Rβサブユニットとの結合相互作用も測定した。
図9Bに示されているように、F5111 IC LN25と、F5111 IC LN35とは、遊離hIL-2、hIL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15に比較すれば、hIL-2Rαに対する結合アフィニティが類似していた。対照的に、F5111 IC LN25と、F5111 IC LN35とは、遊離hIL-2、hIL-2/F5111複合体及びF5111 IC LN15に比較すれば、hIL-2Rβへの結合アフィニティが有意に低下しており、これにより、F5111 IC LN25及びF5111 IC LN35の分子のバイアスが、F5111 IC LN15及びhIL-2/F5111複合体との比較で改善されていることもさらに示されている(
図9C)。
【0078】
免疫サイトカイン活性についても、健康なドナーの全血から単離されたヒトPBMCで調査した。STAT5リン酸化を測定して、3つの細胞集団:CD3
+CD8
+細胞(CD8
+エフェクターT細胞)(
図10A)、CD3
+CD4
+CD25
HighFOXP3
High細胞(T
Reg細胞)(
図10B)及びCD3
+CD4
+CD25
LowFOXP3
Low細胞(CD4
+エフェクターT細胞)(
図10C)の活性化を定量化した。F5111 IC LN35は、CD8
+T細胞とCD4
+エフェクターT細胞との両方より有意に強力なT
Reg細胞の活性化を実証した。対照的に、hIL-2/F5111複合体による処置は、遊離hIL-2との比較で、T細胞サブセットにおけるバイアスを示さなかった。
【0079】
サマリー
上記結果により、IL-2/F5111免疫サイトカインは、TRegを選択的に増殖させることが可能であり、したがって、患者の病原性自己免疫を直接抑制し、移植片拒絶反応を軽減するために使用できることが実証されている。
【0080】
その他の実施形態
本発明は、本発明の詳細な説明と併せて説明してきたが、上記の説明は、添付した特許請求の範囲の範囲によって規定される本発明の範囲を説明するように意図されており、本発明の範囲を限定するようには意図されていないことを理解すべきである。他の態様、利点及び変更形態も、下記の特許請求の範囲含まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0081】
【配列表】
【国際調査報告】