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特表2022-539369グラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】グラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/198 20170101AFI20220901BHJP
【FI】
C01B32/198
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577422
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2020080336
(87)【国際公開番号】W WO2020258932
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910567189.5
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522158340
【氏名又は名称】中素新科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhongsu New Technologies Company Limited
【住所又は居所原語表記】The 20th Floor, Block 3 Ronghua International, No. 10 Ronghua South Road, Yizhuang Economic and Technological Development Zone, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】童裳慧
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC02B
4G146AC20B
4G146AC22B
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB38
(57)【要約】
本発明は、酸化グラフェンを水と混合して濃度3~20mg/mlの酸化グラフェン分散液を形成し、そしてアルカリ金属水酸化物を酸化グラフェン分散液と混合し、超音波分散させ酸化グラフェン液晶溶液を得るステップ、酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッターを介して塩化カルシウム凝固浴に供給し、5~30min放置して酸化グラフェンミクロスフェアを得るステップ、酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液に入れ、60~90℃で5~25h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを得るステップ、および、グラフェンウェットゲルミクロスフェアを後処理してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得るステップを含むグラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法に関する。本発明に係る方法は、グラフェンエアロゲルミクロスフェアを連続的に製造することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化グラフェンを水と混合して濃度3~20mg/mlの酸化グラフェン分散液を形成し、アルカリ金属水酸化物を酸化グラフェン分散液と混合し、超音波分散させて酸化グラフェン液晶溶液を得るステップ(1)、
酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッターを介して塩化カルシウム凝固浴に供給し、5~30min放置して酸化グラフェンミクロスフェアを得るステップ(2)、
酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液に加え、60~90℃で5~25h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを得るステップ(3)、および、
グラフェンウェットゲルミクロスフェアを後処理してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得るステップ(4)、
を含むことを特徴とする、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの濃度が5~10mg/mlであり、アルカリ金属水酸化物が酸化グラフェン分散液重量に対して0.1~3wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、超音波分散の時間が3~15minであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、スラリー供給装置の圧力を0.01~0.05MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)において、スプリッターの個数は2個以上であり、スプリッターの出口個数は2個以上であり、スプリッターの口径が1~5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、塩化カルシウム凝固浴は濃度1~8wt%の塩化カルシウム水溶液を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(3)において、アスコルビン酸ナトリウム溶液におけるアスコルビン酸ナトリウムの濃度が3~15g/lであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(4)において、前記後処理は、グラフェンウェットゲルミクロスフェアを濃度0.5~10wt%のエタノール水溶液で10~36h洗浄して、洗浄後のミクロスフェアを得る洗浄ステップを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれに記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、前記後処理は、さらに洗浄後のミクロスフェアを-10~-40℃で5~15h凍結し、そして15~35℃で解凍して解凍ミクロスフェアを得る凍結ステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(4)において、前記後処理は、さらに解凍ミクロスフェアを常圧、25~60℃で乾燥する常圧乾燥ステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンエアロゲルは、そのユニークな特性(例えば、超低密度、超弾性および高表面積など)を有するため、大きな注目を集めている。グラフェンエアロゲルは、エネルギー設備、センサー、汚染物の吸着剤及び断熱材に多くの潜在的用途が考えられる。
【0003】
現在、グラフェンエアロゲルに関するレポートは、すべて単一のグラフェンエアロゲルに集中しているが、実際のアプリケーションでは、通常、任意の形状とサイズのグラフェンエアロゲルを多数収集する必要がある。従来のエアロゲルの内表面と外表面の両方に細孔構造を持っており、多数のグラフェンエアロゲルが凝集すると集団効果を引き起こし、エアロゲルは凝集しやすく、壊れやすくなる。グラフェンエアロゲルバルクは、断熱材や吸着剤材などの分野に直接適用できるが、大きなグラフェンエアロゲルバルクの製造には、還元が不十分であったり、洗浄が困難であったり、乾燥時間が長いなどの問題がある。グラフェンエアロゲルバルクは、洗浄が不十分であり、不純物が残されているため、グラフェンエアロゲルに欠陥が生じやすく、その性能に影響を与える。グラフェンエアロゲルミクロスフェアは、粒子径が小さいため、製造プロセスにおいて、グラフェンエアロゲルバルクの還元、洗浄、凍結および乾燥などの問題がほとんど発生しない。しかし、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造は、依然として困難である。
【0004】
例えば、CN105498649Bには、グラフェンナノ粒子複合エアロゲルミクロスフェアの製造方法が開示されている。当該方法によれば、天然グラファイトから酸化グラファイトに調製し、脱イオン水、酸化グラファイトおよびナノ粒子を均一に混合して超音波で酸化グラフェンナノ粒子分散液に調製し、酸化グラフェンナノ粒子水分散液を噴霧して酸化グラフェンナノ粒子液滴ミクロスフェアになり、かつ、冷却浴中の収集液により収集してから収集液を濾過して酸化グラフェンナノ粒子氷ミクロスフェアを得、凍結乾燥した後、酸化グラフェンナノ粒子複合エアロゲルミクロスフェアを得、エアロゲルミクロスフェアを熱還元法または化学還元法で処理してグラフェンナノ粒子複合エアロゲルミクロスフェアを得る。CN105195067Aには、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの製造方法であり、天然グラファイトから酸化グラファイトに形成し、そして酸化グラフェン分散液を調製し、噴霧法によって酸化グラフェン分散液を噴霧して酸化グラフェン液滴ミクロスフェアに形成し、冷却浴中の収集液により収集してから収集液をろ過して酸化グラフェン氷ミクロスフェアを得、凍結乾燥した後に酸化グラフェンエアロゲルミクロスフェアを得、そして酸化グラフェンエアロゲルミクロスフェアを熱還元法によって処理してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得る方法が開示されている。前述した方法は、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの実験室規模の製造に適合するが、製造の連続性が低い。
【発明の概要】
【0005】
これに鑑みて、本発明の目的は、連続的な大量生産に適したグラフェンエアロゲルミクロスフェアの製造方法を提供することである。さらに、本発明に係る方法では、シェル層構造を有するグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得ることができる。本発明は、上記の目的を達成するために以下の構成を採用している。
【0006】
酸化グラフェンを水と混合して濃度3~20mg/mlの酸化グラフェン分散液を形成し、アルカリ金属水酸化物をその酸化グラフェン分散液と混合し、超音波分散させて酸化グラフェン液晶溶液を得るステップ(1)、
酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッターを介して塩化カルシウム凝固浴に供給し、5~30min静置して酸化グラフェンミクロスフェアを得るステップ(2)、
酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液に加えた後、60~90℃で5~25h反応させてグラフェンウェットゲルミクロスフェアを得るステップ(3)、および、
グラフェンウェットゲルミクロスフェアを後処理してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得るステップ(4)、
を含むグラフェンエアロゲルミクロスフェアの連続製造方法。
【0007】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(1)において、前記酸化グラフェン分散液における酸化グラフェン濃度は5~10mg/mlであり、アルカリ金属水酸化物は、酸化グラフェン分散液の重量の0.1~3wt%である。
【0008】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(1)において、超音波分散の時間は3~15minである。
【0009】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(2)において、スラリー供給装置の圧力が0.01~0.05MPaになるように、圧力供給装置で圧力をかける。
【0010】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(2)において、スプリッターの個数は2個以上であり、スプリッターの出口個数は、2個以上であり、スプリッターの口径は1~5mmである。
【0011】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(2)において、塩化カルシウム凝固浴は、濃度1~8wt%の塩化カルシウム水溶液を含む。
【0012】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(3)において、アスコルビン酸ナトリウム 溶液におけるアスコルビン酸ナトリウムの濃度は3~15g/lである。
【0013】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(4)において、前記後処理は、グラフェンウェットゲルミクロスフェアを濃度0.5~10wt%のエタノール水溶液で10~36h洗浄して、洗浄後のミクロスフェアを得る洗浄ステップを含む。
【0014】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(4)において、前記後処理は、さらに、洗浄後のミクロスフェアを-10~-40℃で5~15h凍結し、そして15~35℃で解凍され、解凍されたミクロスフェアを得る凍結ステップを含む。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ステップ(4)において、前記後処理は、さらに解凍されたミクロスフェアを常圧で25~60℃で乾燥させる常圧乾燥ステップを含む。
【0015】
本発明は、アルカリ金属水酸化物と酸化グラフェン分散液を混合することにより整列している酸化グラフェン液晶溶液を得て、湿式紡糸技術でグラフェンウェットゲルミクロスフェアを調製した後、常圧乾燥法でグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得る。前記した方法では、連続した量産を実現することができる。本発明の好ましい構成によれば、本発明に係る方法は、シェル層構造を持つグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1つのグラフェンエアロゲルミクロスフェア製造装置の概略図である。
図2】グラフェンエアロゲルミクロスフェアの実物写真である。
図3】グラフェンエアロゲルミクロスフェアの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施例を併せて本発明をさらに説明するが、本発明の技術範囲はこれに限定されないものではない。
【0018】
本発明に係る酸化グラフェンエアロゲルミクロスフェアの製造方法は、液晶溶液製造ステップ(1)、酸化グラフェンミクロスフェア製造ステップ(2)、ウェットゲルミクロスフェア製造ステップ(3)、及び、グラフェンエアロゲルミクロスフェア製造ステップ(4)を含む。以下、詳しく説明する。
【0019】
<液晶溶液製造ステップ>
酸化グラフェンを水と混合して酸化グラフェン分散液を形成する。混合の順番は、特に限定されていない。本発明の1つの実施形態によれば、酸化グラフェンを水に加えて分散させて酸化グラフェン分散液を形成する。本発明のもう1つの実施形態によれば、水を酸化グラフェンに分散させて酸化グラフェン分散液を形成する。酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの濃度は、3~20mg/mであってもく、好ましくは5~10mg/mlであり、より好ましくは5~8mg/mlである。これにより、グラフェンエアロゲルのシェル層構造の改善に有利である。
【0020】
アルカリ金属水酸化物を酸化グラフェン分散液と混合し、超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を得る。混合の順番は、特に限定されていない。本発明の1つの実施形態によれば、アルカリ金属水酸化物を酸化グラフェン分散液に加えて酸化グラフェン分散液を形成する。本発明のもう1つの実施形態によれば、酸化グラフェン分散液をアルカリ金属水酸化物に加えて酸化グラフェン分散液を形成する。アルカリ金属水酸化物は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムであってもよく、好ましくは水酸化カリウムである。アルカリ金属水酸化物は、固体粉末または水溶液の形態で使用してもよい。アルカリ金属水酸化物は、酸化グラフェン分散液の重量の0.1~3wt%であり、好ましくは0.2~2wt%であり、より好ましくは0.5~1wt%である。超音波分散の時間は3~20minであり、好ましくは5~15minであり、より好ましくは5~10minである。これにより、グラフェンエアロゲルのシェル層構造の改善に有利である。本発明の1つの実施形態によれば、ステップ(1)において、前記酸化グラフェン分散液における酸化グラフェン濃度は5~10mg/mlであり、アルカリ金属水酸化物は、酸化グラフェン分散液重量の0.1~3wt%である。
【0021】
<酸化グラフェンミクロスフェア製造ステップ>
酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッターを介して塩化カルシウム凝固浴に供給し、5~30分間放置して酸化グラフェンミクロスフェアを得る。これにより、連続生産に有利である。スラリー供給装置は、特に限定されるものではなく、例えば、スラリータンクなどがある。圧力供給装置は、不活性ガスの圧力ボトルまたは空気圧縮機などであってもよい。スラリー供給装置の圧力が0.01~0.05MPaになるように圧力供給装置を採用して圧力をかける。スプリッターの個数は、2個以上であり、好ましくは、スプリッターの個数は、3個以上であり、より好ましくは5個以上である。スプリッターの出口の個数は、2個以上であり、好ましくは5~100個であり、より好ましくは10~50個である。スプリッターの口径は、1~5mmであり、好ましくは2~3mmである。
【0022】
塩化カルシウム凝固浴は過剰であり、これは酸化グラフェン液晶の固化および整列している配置に有利である。塩化カルシウム凝固浴は、塩化カルシウム水溶液であってもよく、そのうち、塩化カルシウムの濃度は、1~8wt%であり、好ましくは2~7wt%であり、より好ましくは3~5wt%である。酸化グラフェン液晶溶液をスプリッターを介して塩化カルシウム凝固浴に供給し、5~30min放置し、好ましくは10~25min放置し、より好ましくは15~20min放置する。これにより、液晶が固化してミクロスフェアを形成することに役立つ。放置した後に形成されたミクロスフェアを、塩化カルシウム凝固浴が入っている容器の底部に沈み、塩化カルシウム凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄して酸化グラフェンミクロスフェアを得る。
【0023】
<ウェットゲルミクロスフェアの製造ステップ>
酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液に入れた後、60~90℃で5~25h反応させてグラフェンウェットゲルミクロスフェアを得る。反応温度は、60~90℃であってもよく、好ましくは、65~85℃であり、より好ましくは70~80℃である。反応時間は、5~20hであってもよく、好ましくは8~15hであり、より好ましくは9~12hである。これにより、生産効率とシェル層構造の形成も兼備することができる。
【0024】
アスコルビン酸ナトリウム溶液におけるアスコルビン酸ナトリウムの濃度は、3~15g/lであり、好ましくは3.5~8g/lであり、より好ましくは4~7g/lである。これは、グラフェンエアロゲルのシェル層構造を改善することに有利である。
【0025】
<グラフェンエアロゲルミクロスフェア製造ステップ>
グラフェンウェットゲルミクロスフェアを後処理してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを得る。後処理は。洗浄、凍結および常圧乾燥などのステップを含む。
【0026】
洗浄ステップは、グラフェンウェットゲルミクロスフェアをエタノール水溶液で10~36h洗浄して洗浄後のミクロスフェアを得るステップである。エタノール水溶液の濃度は0.5~10wt%であってもよく、好ましくは0.6~5wt%であり、より好ましくは1~2wt%である。これは、製品品質の安定および連続生産の実現に有利である。
【0027】
凍結ステップは、洗浄されたミクロスフェアを-10~-40℃で5~15h凍結し、そして15~35℃で解凍して解凍ミクロスフェアを得る。凍結温度は、-10~-40℃であってもよく、好ましくは-15~-35℃であり、より好ましくは-20~-25℃である。凍結時間は、5~15hであり、好ましくは8~13hであり、より好ましくは10~12hである。凍結後のグラフェンウェットゲルミクロスフェアを、15~35℃、好ましくは16~30℃、より好ましくは20~25℃で解凍する。
【0028】
常圧乾燥ステップは、解凍ミクロスフェアを常圧、25~60℃で乾燥させる。常圧は、1atm程度である。乾燥温度は25~60℃であり、好ましくは28~50℃であり、より好ましくは30~35℃である。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、グラフェンウェットゲルミクロスフェアをエタノール水溶液と水で交互に用いて10~36h洗浄し、洗浄後のミクロスフェアを得、洗浄後のミクロスフェアを-10~-40℃で5~15h凍結し、そして15~35℃で解凍して、解凍されたミクロスフェアを得、解凍されたミクロスフェアを、常圧、25~60℃で乾燥する。
【0030】
本発明に係る方法で製造して得られたグラフェンエアロゲルミクロスフェアは、シェル層構造を持ち、かつシェル層の内部に多孔質構造を有し、熱伝導率が0.02~0.05W/(mk)である。グラフェンエアロゲルミクロスフェアシェルは、緻密で剛性の高いシェル層表面と、シェル層内部の弾性多孔質構造を有しており、その結果、グラフェンエアロゲルミクロスフェアの強度と圧縮復元力がより高い。
以下、下記の実施例の測定方法について説明する。
熱伝導率:粒子または粉末サンプルの熱伝導率測定は非定常熱線法(Transient Hot Wire Method)を採用し、GB/T 10297-2015『非金属固体材料熱伝導率の測定 熱線法』を参照する。サンプルを均一にサンプルボックスに入れ、2つのサンプルボックスの間に線形熱源を設置し、線形熱源はサンプルに直接接触するようにする。
【0031】
耐火レベル:サンプルの燃焼性能測定は、GB/T8624-2012『建築材料および製品の燃焼性能の等級分類』を参照する。
【0032】
密度試験:密度は、サンプル材料の自由かさ密度である。特定の高さからサンプル材料を漏斗から定量的かつ自由に落下させ、緩く充填した後、落下したサンプルの質量を充填体積で割ってサンプルの自由かさ密度を得る。少なくとも3回測定して平均値を取る。
【0033】
粒子径:ランダムにサンプリングし、ノギスによって粒子サイズをマクロレベルで測定する。
【0034】
実施例1
(1)酸化グラフェンを脱イオン水10000mlに分散して濃度5mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム56gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置2に入れ、スラリー供給装置2の圧力を0.02MPaになるように圧力供給装置1で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター3(個数は2個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は2mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器4に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器4の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に浸漬して24h洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。グラフェンエアロゲルミクロスフェアの実物写真および走査型電子顕微鏡写真は、それぞれ図2および図3を参照する。
5日間連続生産し、各バッチは、安定な品質を有する。
【0035】
実施例2
(1)酸化グラフェンを脱イオン水10000mlに分散させ濃度6mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム56gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、スラリー供給装置の圧力が0.02MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター(個数は2個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は2mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に浸漬して24h洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。
5日間連続生産し、各バッチは、安定な品質を有する。
【0036】
実施例3
(1)酸化グラフェンを脱イオン水10000mlに分散して濃度8mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム80gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、スラリー供給装置の圧力が0.02MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター(個数は2個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は2mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に24h浸漬し、洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。
5日間連続生産し、各バッチは、安定な品質を有する。
【0037】
実施例1~3にて製造されたグラフェンエアロゲルミクロスフェアを測定し、結果は下記の表に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例4
(1)酸化グラフェンを脱イオン水100mlに分散させ濃度5mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム0.56gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、スラリー供給装置の圧力が0.01MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター(個数は3個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は3mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に24h浸漬し、洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。
【0040】
実施例5
(1)酸化グラフェンを脱イオン水100mlに分散させ濃度6mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム0.56gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、スラリー供給装置の圧力が0.01MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター(個数は3個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は3mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に24h浸漬し、洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。
【0041】
実施例6
(1)酸化グラフェンを脱イオン水100mlに分散して濃度8mg/mlの酸化グラフェン分散液を得た。水酸化カリウム0.80gを酸化グラフェン分散液に加え、5min超音波分散して酸化グラフェン液晶溶液を形成した。
(2)酸化グラフェン液晶溶液をスラリー供給装置に入れ、スラリー供給装置の圧力が0.01MPaになるように圧力供給装置で圧力をかけ、酸化グラフェン液晶溶液をスプリッター(個数は3個であり、スプリッターの出口は、10個であり、口径は2mmである)で塩化カルシウム凝固浴(5wt%塩化カルシウム水溶液)が入っている容器に供給して10min放置し、酸化グラフェンミクロスフェアが容器の底部に沈み、凝固浴を注ぎ出し、大量の脱イオン水を加えて洗浄した。
(3)酸化グラフェンミクロスフェアをアスコルビン酸ナトリウム溶液4g/Lに加え、80℃で10h反応してグラフェンウェットゲルミクロスフェアを製造した。
(4)グラフェンウェットゲルミクロスフェアを1wt%のエタノール水溶液に浸漬して24h洗浄した後、-20℃で10h凍結し、25℃で解凍し、そして30℃で24h乾燥してグラフェンエアロゲルミクロスフェアを製造した。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。本発明の要旨から逸脱することなく、当業者が考えられる任意の修正、改善、および置換は、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0043】
1-圧力供給装置、2-スラリー供給装置、3-スプリッター、4-容器。
図1
図2
図3
【国際調査報告】