(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ガラス溶融炉
(51)【国際特許分類】
C03B 5/183 20060101AFI20220901BHJP
C03B 5/225 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C03B5/183
C03B5/225
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021578238
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020068609
(87)【国際公開番号】W WO2021001467
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522001574
【氏名又は名称】インターナショナル パートナーズ イン グラス リサーチ(アイ・ピー・ジー・アール)イー.ヴィー.
【氏名又は名称原語表記】International Partners in Glass Research (IPGR) e.V.
【住所又は居所原語表記】Krantzstr. 7/ Geb. 87, 52070 Aachen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファティー メーメット ギュチュリュ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ロース
(57)【要約】
本発明は、上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ(2)と、前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)にバッチ材料を供給するための少なくとも1つのバッチ供給装置(6)であって、前記溶融チャンバ(2)の側壁(7、29)、後壁または底部(9)に配置されている前記バッチ供給装置(6)と、前記溶融チャンバ(2)内でガラス溶融物の上部表面のレベルより下に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極(13、14、18、27)であって、互いに間隔があけられている前記電極(13、14、18、27)とを含み、前記電極(13、14、18、27)が、水平および垂直の動きの成分を有する流れ(20)が前記溶融物中で作り出されるように配置されている、ガラス溶融炉(1、1’、1’’)に関する。前記溶融物と原材料との混合が最適化されるように溶融炉をさらに発展させるために、本発明によれば、溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸(21)を有する環状流(20)またはらせん流(20)が溶融物中で作り出されるように、電極(13、14、18、27)を配置することが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ(2)、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)にバッチ材料を供給するための少なくとも1つのバッチ供給装置(6)であって、前記溶融チャンバ(2)の側壁(7、29)、後壁または底部(9)に配置されている前記バッチ供給装置(6)、
・ 前記溶融チャンバ(2)内で前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極(13、14、18、27)であって、互いに間隔があけられている前記電極(13、14、18、27)、
を含み、前記電極(13、14、18、27)が、水平および垂直の動きの成分を有する流れ(20)が前記溶融物中で作り出されるように配置されている、ガラス溶融炉(1、1’、1’’)であって、
前記電極(13、14、18、27)が、前記溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸(21)を有する環状流(20)またはらせん流(20)が前記溶融物中で作り出されるように配置されていることを特徴とする、
前記ガラス溶融炉(1、1’、1’’)。
【請求項2】
一対の電極(13、14、18、27)が互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のガラス溶融炉。
【請求項3】
前記ガラス溶融物の上部表面からの前記電極(13、14、18、27)の距離が、前記上部表面から最も長い距離を有する電極(14)から出発して、流れの方向に沿って動く場合に減少することを特徴とする、請求項1または2に記載のガラス溶融炉。
【請求項4】
前記溶融チャンバ(2)の底部(9)から電極(13、14、18)の上部まで測定される前記電極(13、14、18)の長さが、最も短い長さを有する電極(14)から出発して、流れ(20)の方向に沿って動く場合に増加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項5】
前記溶融物の上部表面から最も長い距離を有する電極(14、27)および/または前記溶融チャンバ(2)の底部(9)から電極(14)の上部まで測定して最も短い長さを有する電極(14)が、前記バッチ供給装置(6)に近接して配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項6】
前記電極(13、14、18)が、溶融チャンバ(2)の底部(9)から突出していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項7】
前記電極(13、14、18)が2つの円(31、32)、特に2つの同心円(31、32)状に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載のガラス溶融炉。
【請求項8】
前記電極(27)が、前記溶融チャンバ(2)の少なくとも1つの側壁(7、30)に固定され、且つ前記溶融チャンバ(2)の少なくとも1つの側壁(7、30)から突出していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項9】
前記溶融チャンバ(2)が、バッチが導入される溶融領域(3)と、前記溶融領域(3)の深さに比して浅い深さを有する清澄領域(4)と、前記溶融領域(3)と実質的に同じ深さを有する精製領域(5)とに分けられることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項10】
前記溶融チャンバ(2)の清澄領域(4)に少なくとも1つのバブラー(11)、好ましくはバブラー(11)の列が配置されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項11】
前記清澄領域(4)において、バブラー(11)の第1の列の隣に、バブラーの第2の列または電極(23)の列が配置されていることを特徴とする、請求項10に記載のガラス溶融炉。
【請求項12】
全ての電極(13、14、18、23、27)の熱出力が実質的に等しいか、または前記電極(13、14、18、23、27)の熱出力が異なり且つそれらの長さに伴って増加することを特徴とする、請求項4から11までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項13】
前記バッチ供給装置(6)の入口の供給断面と、第1の電極(14)との間の距離が、上面図において0.5m~1.5mの範囲であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項14】
2つのバッチ供給装置(6)が前記溶融チャンバ(2)の同じ側壁(7)に配置され、且つ互いに間隔をあけられており、ここで上面図において、前記2つのバッチ供給装置(6)の間の距離(10)は、電極(13、14、18)によって形成される円の直径または楕円の直径の平均値の50%~120%の範囲、好ましくは80%~90%の範囲であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項15】
前記バッチ供給装置(6)によって前記溶融チャンバ(2)に搬送されるバッチの入口の最も低い点は、前記溶融チャンバの底部から、ガラス全体の深さの15%~75%の範囲の距離に配置されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項16】
前記溶融チャンバ(2)が八角形の床面図を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項17】
ガラス溶融炉(1、1’、1”)においてガラスを溶融するための方法であって、前記炉は、
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ(2)、
・ バッチ材料をガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)に供給するためのバッチ供給装置(6)であって、前記溶融チャンバ(2)の側壁(7、29)に配置されている前記バッチ供給装置(6)、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)内に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極(13、14、18、27)であって、互いに間隔をあけられている前記電極(13、14、18、27)
を含み、前記溶融チャンバ(2)に搬送されるバッチが、前記溶融チャンバ内(2)に既に存在しているガラス溶融物と混合され、動きの水平成分と垂直成分とを有する流れが、前記電極(13、14、18、27)によって溶融物中で作り出される前記方法において、
前記電極(13、14、18、27)によって、前記溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有する環状流またはらせん流が作り出されることを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバにバッチ材料を供給するための少なくとも1つのバッチ供給装置であって、前記溶融チャンバの側壁、後壁または底部に配置されている前記バッチ供給装置、
・ 前記溶融チャンバ内で前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極であって、互いに間隔があけられている前記電極
を含み、
・ 前記電極が、水平および垂直の動きの成分を有する流れが溶融物中で作り出されるように配置されている、
ガラス溶融炉に関する。
【0002】
さらに、本発明は、請求項17の前提部によるガラス溶融炉におけるガラスの溶融方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス溶融炉は当該技術分野において一般的に知られている。典型的には、ガラス溶融炉は、エネルギー源の位置に従い(U字型火炎またはクロスファイア炉)、酸化剤の種類(酸素または空気)に応じて、および製造されるガラスの質、例えば容器、食器、フロートガラスまたはガラス繊維にも応じてグループ化され得る。本発明は先述の全ての種類のガラス溶融炉に関する。
【0004】
ガラス溶融炉におけるガラスの製造は連続的に行われるので、原材料のバッチは定期的に溶融チャンバ内のガラス溶融物に添加される一方で、良好な品質のガラスが製造のために炉から連続的に引き出される。一般的な炉において、原材料のバッチ(バッチとも称される)は粉末形態で、それを既存のガラス溶融物の上部に分配することによって炉に添加される。次に、前記バッチ材料はガラス溶融物上にしばらく残り、そしてある種のブランケットを形成し、それが、ガラス溶融物上に配置されたバーナーの火炎とガラス溶融物自体との間の断熱層として作用する。断熱特性に起因して、バッチのブランケットの内側では熱の浸透が遅く、バッチのブランケットのコアは常に室温に近くなり、バッチの溶融には長い時間がかかる。その結果、バーナーからガラス溶融物に伝達される熱エネルギーの量が減少する。しかしながら、バッチのブランケットは、バーナーからも、再循環流の助けによってガラス溶融物からもエネルギーを取得する。この再循環流はバッチのブランケットの底部へのエネルギーを取得するが、多くの空気の被包(泡)を含有する新たな冷たい溶融物と、特定の時間の間、炉に滞留し、泡が減少した熱いガラスとの混合も引き起こす。この混合プロセスは、ガラス溶融の精製プロセスを長くして、高いエネルギー消費をもたらす。しかしながら、従来の炉においては、炉の温度勾配およびガラスの溶融性に起因して、この混合が避けられない。
【0005】
この課題を解決するために、米国特許出願公開第2015/0307382号明細書(US2015/0307382 A1)の文献は、溶融チャンバへのバッチの導入を溶融物のレベルより下で行い、その際、バッチがガラス溶融物の上部で導入される場合、前記バッチを予熱することで溶融物上部の断熱層についての欠点が部分的に回避されることを指摘している。しかしながら、バッチ材料は溶融物の上部まで流れる傾向があるので、バッチ材料の一部はこの場合もやはり、バーナーによって放出される熱に関してバリアとして作用する。その結果、この文献においては、有効な混合には取り組まれておらず、バッチ材料とガラス溶融物との間のプロセスは困難であり且つ時間がかかるままである。
【0006】
国際公開第2014/036979号(WO2014/036979 A1)から、電極の列が溶融チャンバの底部に配置されてスパイラル流を作り出し、前記流のスパイラルの軸が水平である、ガラス溶融炉が公知である。この特許は砂粒子の溶解、およびガラス炉の他の区画において溶融された溶融ガラス中の泡の除去に関する。この文献と本発明との違いは、後者においてはバッチが溶融ガラス中に直接的に供給されることである。前記先行技術の解決策の欠点は、スパイラル流は溶融ガラスの内側に泡が残ることを引き起こし得るので、溶融ガラス中に泡が残り得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0307382号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/036979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス溶融物と原材料との混合が最適化されるように溶融炉をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の従来技術に基づき、前記の課題は、溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有する環状流またはらせん流が溶融物中で作り出されるように電極を配置することによって解決される。その結果、バッチ材料は溶融物の上部表面まで浮かび上がらず、上部表面より下の領域で溶融物内に留まっている。原材料は表面への短い(垂直の)道を取ることはできないが、公知の炉に比して、溶融物を通じて延長された経路に沿って流れるように促される。原材料は、電極によって引き起こされる電場によって材料内に作り出される力により、溶融物を通る経路が定められる。従って、バッチ材料は、通常よりも遙かに長い時間の間、熱い溶融物によって完全に取り囲まれるので、原材料自体が最適に加熱されて、通常よりも遙かに速く溶融する。有利なことに、前記流がほぼ水平面内で動く場合、バッチ材料と溶融物との間の最適な混合が引き越される。本発明によれば、溶融物の上部表面は、未溶融の原材料がないままで保たれているので、表面上で増加された熱伝導率に起因して、熱いバーナーの火炎から溶融物への熱伝達が改善される。
【0010】
本発明によれば、回転軸が溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である環状流が溶融物中で作り出されるように電極を配置する場合、溶融物の作り出される環状流が正確に円形であることは必要ではない。溶融チャンバの形状に応じて、作り出される流れは楕円形、長円形、または同様のものであってよい。流れが溶融物中で生成され、溶融物の上部表面から間隔をあけられていることのみが必要とされる。従って、バッチ材料の入口が制御される。
【0011】
例えば、本発明の炉の上面図において、電極を円形または楕円形または矩形に配置して、溶融物中で溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である循環の軸を有する環状流を作り出すことができる。バッチ材料の動きは電極の幾何学的な配置に厳密には従わないので、他の電極配置も可能であることが明らかである。
【0012】
炉のサイズに応じて、2つの隣接する電極間の水平距離を炉の幅の5~25%の間で選択すべきである。
【0013】
従来のガラス溶融炉においても、ガラス溶融物が循環するが、その循環は溶融物の上部表面の面に対して実質的に平行であるかまたはわずかに傾いた回転軸を有する。冷たいバッチと熱い溶融ガラスとの間の温度差は、炉のホットスポットから開始しバッチ供給領域への炉内でのガラスの流れを作り出す。ホットスポットは火炎によって形成される仮想的な点である。例えば、U字型火炎においては火炎の長さがホットスポットの位置を定めるが、クロスファイア炉においては、ホットスポットはポートの燃料比を変えることによって作り出される。本発明によれば、ガラス溶融物の上部表面に対する環状流の軸の向きは、溶融物の上部表面の面に対して平行な向きから実質的に垂直な向き、または非常に傾いた向くように変えられ、その向きはバッチの供給点から炉のホットスポットへのバッチの経路のらせん形状を形成する。この革新において、炉のホットスポットは垂直方向になり、且つ電気的なブーストおよびバーナーの火炎から生じるエネルギーの比に従って調整される。
【0014】
溶融物の上部表面に対して実質的に垂直であるらせん軸を有するらせん流が溶融物中で作り出されるように電極が配置される場合、ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で供給されるバッチ材料は溶融物内を流れ、そして連続的に高く上昇していく一方で、温度も上昇する。長い距離および時間の後(1回だけ、しかし数回であることも可能である)、バッチ材料が溶融され、ガラス溶融物として上部表面に達し、そこでバーナーの火炎によってさらに加熱される。このようにして、バッチ材料を溶融し且つそれをガラス溶融物と混合するための合計時間が著しく低減され、その結果、必要とされるエネルギーが著しく低減される。
【0015】
好ましくは、一対の電極が互いに接続されて、交流を使用して電極を電気的にブーストする。2つの電極が互いに接続されて、溶融ガラスが回路を閉じる。接続された電極の極は正または負として異なり、並びに位相および電極の電流密度が互いに異なる。その結果、ガラス溶融物は電気を伝導するためのブリッジであり、ガラスはそれらの2つの電極間を流れ、溶融ガラスの内側でバッチを運ぶ。イオン移動の方向は位相差に起因して常に一定である。
【0016】
溶融物のらせん流に関しては、ガラス溶融物の上部表面からの電極の距離が、上部表面から最も長い距離を有する電極から出発して、溶融物の流れの方向に沿って動く場合、減少すれば好ましい。従って、ガラス溶融物の上部表面と電極の上方部分との間の距離は段階的に減少し、電極の配置は階段のようになる。電極に沿って流れる溶融物および搬送されるバッチ材料は、上部表面の方向に連続的に上昇する。
【0017】
溶融チャンバの底部が平らな向きでは、溶融チャンバの底部から電極の上部まで測定される電極の長さは、最も短い長さを有する電極から出発して、流れの方向に沿って動く場合に増加すれば、らせん流が達成され得る。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、溶融物の上部表面から最も長い距離を有する電極および/または溶融チャンバの底部から電極の上部まで測定して最も短い長さを有する電極が、バッチ供給装置に近接して配置される。このようにして、バッチは、バッチ供給装置付近の第1の電極のところで開始する流れによって最適に捕捉される。
【0019】
電極を、それらが溶融チャンバの底部から突出するように配置することが可能である。代替的に、電極を溶融チャンバの少なくとも1つの側壁に、電極が前記側壁から突出するように固定することが可能である。第1の場合において、それらは好ましくはほぼ垂直に向けられており、第2の場合において、好ましくはほぼ水平に向けられている。
【0020】
さらに、溶融チャンバの底部から突出する電極、並びに溶融チャンバの少なくとも1つの側壁から突出する電極を配置することが可能である。側壁の電極の助けにより、溶融ガラスの上部まで渦流が続く。従って、バッチの溶融が強化され、バッチと溶融ガラスとの混合が増加する。
【0021】
電極が溶融チャンバの底部から突出する場合、電極が2つの円、特に2つの同心円状に配置されればさらに有利である。このようにして、より多くの熱を溶融物中に導入でき、且つ溶融物の環状流の創出がさらに改善される。その結果、原材料が最適に経路を定められる。
【0022】
炉の有利な設計によれば、溶融チャンバは、バッチが導入される溶融領域と、前記溶融領域の深さに比して浅い深さを有する清澄(fining)領域と、前記溶融領域と実質的に同じまたは同じ深さに近く、少なくとも前記清澄領域より遙かに深い精製(refining)領域とに分けられる。
【0023】
溶融チャンバの清澄領域において、好ましくは少なくとも1つのバブラーが配置されて、溶融物中の泡を表面へと上昇させて、溶融物から離れさせる。より好ましくは、バブラーの列が清澄領域に配置される。
【0024】
本発明の炉の好ましい実施態様によれば、清澄領域内でバブラー第1の列の隣にバブラーの第2の列または電極の列が配置される。従って、溶融物中の泡の除去がさらに強化される。電極の列がバブラーの第1の列の隣に配置される場合、精製領域の溶融ガラスに追加的な熱が導入される。
【0025】
有利には、全ての電極の熱出力が実質的に等しいこと、または電極の熱出力が異なり、それらの長さに伴って増加することが予測される。
【0026】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、バッチ供給装置の入口の供給断面と第1の電極との間の距離は、上面図において0.5m~1.5mの範囲である。前記バッチ供給装置の入口の供給断面は、バッチ材料を溶融チャンバに入れるバッチ供給装置の相応の側壁の開口部の断面である。前記第1の電極は、前記開口部までの水平距離が最も短く、ガラス溶融物表面への垂直距離が最大である電極として定義される。バッチ供給装置の入口の供給断面と、第1の電極との間の距離は炉の大きさに依存し、それは炉の引き出し速度に依存する。先述の距離に関し、炉に入るバッチ材料が環状流によって捕捉されて、前記の利点が生じることが重要である。
【0027】
本発明の特に有利な設計は、溶融チャンバの同じ側壁に配置され、互いに間隔をあけられた2つのバッチ供給装置を有し、ここで上面図において、2つのバッチ供給装置間の距離は、電極によって形成される円の直径または楕円の直径の平均値の50%~120%の範囲、好ましくは80%~90%の範囲である。第2の供給装置の存在はいくつかの利点がある: 第1に、倍量の原材料を供給することが可能である。さらに、両方の供給装置を交互に使用することが可能である。1つの供給装置が故障、またはメンテナンスを要する際には、第2の供給装置を介して炉の稼働を維持することができる。これは冗長性があるシステムをもたらす。さらに、炉の形状に応じてより多くの供給装置を配置することが可能である。炉が八角形の場合、4つの供給装置をその八角形の各々の壁の対に配置できる。
【0028】
追加的に、本発明のさらなる利点がある: 従来の技術において、原材料の使用は、炉および換熱器についての種々の欠点に起因して限定されており、例えばNaOHまたはか焼された原材料は、それらの材料のダスト発生(dusting)特性および耐火物との反応のために使用できない。本発明によれば、液中での原材料の供給のおかげで、渦状の溶融によって原材料が溶融ガラスの上部に達する前に溶融するために充分な時間がもたらされるのでダスト発生および耐火物との腐食反応が除かれ、か焼された原材料およびNaOHの使用を実現できる。
【0029】
バッチ供給装置に関し、それを溶融物の底部の近くに配置することが好ましい。特に、バッチ供給装置によって溶融チャンバに搬送されるバッチの入口の最も低い点は、溶融チャンバの底部から、ガラス全体の深さの15%~75%の範囲の距離に配置される。バッチ供給装置と溶融チャンバの底部との間には特定の距離を有する必要があり、なぜなら、溶融チャンバに供給されたばかりのバッチの下にいくらかの溶融ガラスが必要とされるからである。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、溶融チャンバが八角形の床面図を有することを提案する。八角形の形状は円に似ているので、溶融チャンバの形状を、電極の円形の配置並びに溶融物の円形の流れに適合させることができる。
【0031】
ガラス溶融炉内でガラスを溶融するための方法に関し、前記炉は
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ、
・ バッチ材料を前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で溶融チャンバに供給するためのバッチ供給装置であって、前記溶融チャンバの側壁に配置されている前記バッチ供給装置、
・ ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ内に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極であって、互いに間隔をあけられた前記電極
を含み、前記溶融チャンバに搬送されるバッチは、前記溶融チャンバ中に既に存在しているガラス溶融物と混合され、その際、電極によって、動きの水平成分と垂直成分とを有する流れが溶融物中で作り出され、前記の課題は、前記電極によって、溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有する環状流またはらせん流が溶融物中で作り出されることによって解決される。本発明の方法からもたらされる利点は、上述の装置からもたらされる利点と類似している。
【0032】
本発明を添付の図面を参照して説明する:
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図4】
図4は、第2の本発明の炉の三次元図を示す。
【
図5】
図5は、第3の本発明の炉の三次元図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明のガラス溶融炉1の実施態様についての例を三次元図で示し、前記炉1は上部表面を有するガラス溶融物を収容するために適している。本発明の炉1は溶融チャンバ2を含み、前記溶融チャンバは、バッチ材料が導入される溶融領域3と、前記溶融領域3の深さに比して浅い深さを有する清澄領域4と、前記溶融領域3と実質的に同じ深さを有する精製領域5とに分けられる。
【0035】
さらに、前記炉1は、前記溶融チャンバ2の側壁7に配置されている2つのバッチ供給装置6を含み、前記供給装置6は、バッチ材料をガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ2に供給するように設計されている。バッチ供給装置6と、溶融領域3の底部9との間の垂直距離8は0.7mであり、且つ前記2つのバッチ供給装置6の間の水平距離10は1.5mである。
【0036】
清澄領域4においてバブラー11の列が配置され、溶融物中の泡12を上部表面へと上昇させて、溶融物から離れさせる。
【0037】
溶融領域3において8つの電極13が円形に配置され、前記電極13は、
図2に関連してより詳細に説明される。
【0038】
図2は、
図1の炉1を通じた垂直断面を示し、電極13が溶融チャンバ2の底部9から突出し、且つ異なる長さを有することがわかる。第1の電極14は、前記供給装置6が配置される側壁7の近くに位置付けられ、前記第1の電極14は他の電極13に比して最も短い。前記第1の電極14の上端は、前記供給装置6の中心軸16の距離15において終了し、前記距離15は、ガラス全体の深さの5%~30%の範囲である。隣接する電極13の長さは段階的に増加するので、電極13の上端はらせんを描く。換言すれば、ガラス溶融物の上部表面(ライン17によって表される)からの電極13の距離は、上部表面から最も遠い距離の第1の電極14から出発して減少する。最も高い電極18の上端は、供給装置6の中心軸16の距離19において終了し、前記距離19は、ガラス全体の深さの5%~30%の範囲である。
【0039】
電極13、14、18は、溶融物のらせん流20が、前記電極13、14、18の上端に相応して作り出されるように互いに接続される。従って、バッチ材料はらせん流20によって運ばれ、動きの水平成分を有するバッチ材料の流れが達成される。このようにして、バッチ材料と溶融ガラスとの混合が改善される。らせん流20は溶融物の上部表面に対して実質的に垂直な回転軸21を有する。
【0040】
溶融領域3の上面図を
図3に示し、ここで電極13、14、18の円形の配置がわかる。
【0041】
本発明の炉1’の代替的な実施態様を
図4に示し、それは炉1’を三次元図で示す。
図4に示される炉1’は、清澄領域4におけるバブラー11の列の隣に配置されている電極23の列22のさらなる配置において、
図1に示される炉1とは異なる。電極23は清澄領域4の底部24から垂直に突出し、且つ全て同じ長さである。電極23によって、清澄領域4において溶融物中に補助的な熱を導入できる。
【0042】
炉1’はさらに、溶融領域3の底部9に配置された電極13を有し、その配置は
図1に示される炉1の配置と同一である。さらに、溶融チャンバ2の2つの対向する側壁25はそれぞれ、前記側壁25から突出して水平に走る電極27の列26を含有する。全ての電極27は同じ高さに配置される。バッチ供給装置6の側壁7への距離が最も小さい電極27から出発して、1つの列26の電極27の長さは、前記供給装置6を備える側壁7からの電極27の距離に伴って増加する。側壁25に配置される電極27は、溶融ガラスの上部まで渦流の継続を引き起こす。
図4の前方の側壁25における電極27は、前方の側壁25によって隠されているので見られない。
【0043】
さらに、本発明の炉1’’の実施態様の第3の例を
図5に三次元図で示す。溶融チャンバ2は8つの側壁7を有する八角形の床面図を有し、清澄領域4の隣の側壁28は、他の7つの側壁7よりも低い。これは、溶融領域3が、浅い深さを有する清澄領域4よりも深い深さを有することによってもたらされる。
【0044】
清澄領域4に対向する3つの側壁29の各々にバッチ供給装置6が配置されている。残りの4つの側壁30の各々に2つの電極27が配置されており、それは溶融チャンバ2内に水平に突出している。清澄領域4は矩形の床面図を有し、前記清澄領域の幅は溶融チャンバ2の隣接する側壁28にほぼ相応する。溶融領域3と実質的に同じ深さを有する精製領域5も矩形の床面図を有するが、精製領域5の幅は清澄領域4の幅よりも大きい。
【0045】
さらに、
図5に示される実施態様は、底部9から突出する電極13を有する。電極13は2つの同心円31、32状に配置され、内側の円32の電極13は、外側の円31の電極13よりも短い長さを有する。各々の円31、32の電極13の長さは、
図1に示される実施態様の電極13と同様に異なる。
【符号の説明】
【0046】
1、1’、1’’ ガラス溶融炉
2 溶融チャンバ
3 溶融領域
4 清澄領域
5 精製領域
6 バッチ供給装置
7 側壁
8 距離
9 底部
10 距離
11 バブラー
12 泡
13 電極
14 第1の電極
15 距離
16 中心軸
17 ライン
18 最も高い電極
19 距離
20 らせん流
21 回転軸
22 列
23 電極
24 底部
25 側壁
26 列
27 電極
28 側壁
29 側壁
30 側壁
31 外側の円
32 内側の円
【手続補正書】
【提出日】2021-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ(2)、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)にバッチ材料を供給するための少なくとも1つのバッチ供給装置(6)であって、前記溶融チャンバ(2)の側壁(7、29)、後壁または底部(9)に配置されている前記バッチ供給装置(6)、
・ 前記溶融チャンバ(2)内で前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極(13、14、18、27)であって、互いに間隔があけられている前記電極(13、14、18、27)、
を含み、前記電極(13、14、18、27)が、水平および垂直の動きの成分を有する流れ(20)が前記溶融物中で作り出されるように配置されている、ガラス溶融炉(1、1’、1’’)であって、
前記電極(13、14、18、27)が、前記溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸(21)を有す
るらせん流(20)が前記溶融物中で作り出されるように配置されて
おり、前記バッチ供給装置(6)の入口の供給断面と、第1の電極(14)との間の距離が、上面図において0.5m~1.5mの範囲であり、前記ガラス溶融物の上部表面からの前記電極(13、14、18、27)の距離が、前記上部表面から最も長い距離を有する電極(14)から出発して、流れの方向に沿って動く場合に減少することを特徴とする、
前記ガラス溶融炉(1、1’、1’’)。
【請求項2】
一対の電極(13、14、18、27)が互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のガラス溶融炉。
【請求項3】
前記溶融チャンバ(2)の底部(9)から電極(13、14、18)の上部まで測定される前記電極(13、14、18)の長さが、最も短い長さを有する電極(14)から出発して、流れ(20)の方向に沿って動く場合に増加することを特徴とする、請求項1
または2に記載のガラス溶融炉。
【請求項4】
前記溶融物の上部表面から最も長い距離を有する電極(14、27)および/または前記溶融チャンバ(2)の底部(9)から電極(14)の上部まで測定して最も短い長さを有する電極(14)が、前記バッチ供給装置(6)に近接して配置されていることを特徴とする、請求項1から
3までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項5】
前記電極(13、14、18)が、溶融チャンバ(2)の底部(9)から突出していることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項6】
前記電極(13、14、18)が2つの円(31、32)、特に2つの同心円(31、32)状に配置されていることを特徴とする、請求項
5に記載のガラス溶融炉。
【請求項7】
前記電極(27)が、前記溶融チャンバ(2)の少なくとも1つの側壁(7、30)に固定され、且つ前記溶融チャンバ(2)の少なくとも1つの側壁(7、30)から突出していることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項8】
前記溶融チャンバ(2)が、バッチが導入される溶融領域(3)と、前記溶融領域(3)の深さに比して浅い深さを有する清澄領域(4)と、前記溶融領域(3)と実質的に同じ深さを有する精製領域(5)とに分けられることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項9】
前記溶融チャンバ(2)の清澄領域(4)に少なくとも1つのバブラー(11)、好ましくはバブラー(11)の列が配置されていることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項10】
前記清澄領域(4)において、バブラー(11)の第1の列の隣に、バブラーの第2の列または電極(23)の列が配置されていることを特徴とする、請求項
9に記載のガラス溶融炉。
【請求項11】
全ての電極(13、14、18、23、27)の熱出力が実質的に等しいか、または前記電極(13、14、18、23、27)の熱出力が異なり且つそれらの長さに伴って増加することを特徴とする、請求項
1から
10までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項12】
2つのバッチ供給装置(6)が前記溶融チャンバ(2)の同じ側壁(7)に配置され、且つ互いに間隔をあけられており、ここで上面図において、前記2つのバッチ供給装置(6)の間の距離(10)は、電極(13、14、18)によって形成される円の直径または楕円の直径の平均値の50%~120%の範囲、好ましくは80%~90%の範囲であることを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項13】
前記バッチ供給装置(6)によって前記溶融チャンバ(2)に搬送されるバッチの入口の最も低い点は、前記溶融チャンバの底部から、ガラス全体の深さの15%~75%の範囲の距離に配置されることを特徴とする、請求項1から
12までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項14】
前記溶融チャンバ(2)が八角形の床面図を有することを特徴とする、請求項1から
13までのいずれか1項に記載のガラス溶融炉。
【請求項15】
ガラス溶融炉(1、1’、1”)においてガラスを溶融するための方法であって、前記炉は、
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ(2)、
・ バッチ材料をガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)に供給するためのバッチ供給装置(6)であって、前記溶融チャンバ(2)の側壁(7、29)に配置されている前記バッチ供給装置(6)、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ(2)内に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極(13、14、18、27)であって、互いに間隔をあけられている前記電極(13、14、18、27)
を含み、前記溶融チャンバ(2)に搬送されるバッチが、前記溶融チャンバ内(2)に既に存在しているガラス溶融物と混合され、動きの水平成分と垂直成分とを有する流れが、前記電極(13、14、18、27)によって溶融物中で作り出される前記方法において、
前記電極(13、14、18、27)によって、前記溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有す
るらせん流が作り出され
、前記バッチ供給装置(6)の入口の供給断面と、第1の電極(14)との間の距離が、上面図において0.5m~1.5mの範囲であり、前記ガラス溶融物の上部表面からの前記電極(13、14、18、27)の距離が、前記上部表面から最も長い距離を有する電極(14)から出発して、流れの方向に沿って動く場合に減少することを特徴とする、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ、
・ 前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバにバッチ材料を供給するための少なくとも1つのバッチ供給装置であって、前記溶融チャンバの側壁、後壁または底部に配置されている前記バッチ供給装置、
・ 前記溶融チャンバ内で前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極であって、互いに間隔があけられている前記電極
を含み、
・ 前記電極が、水平および垂直の動きの成分を有する流れが溶融物中で作り出されるように配置されている、
ガラス溶融炉に関する。
【0002】
さらに、本発明は、請求項15の前提部によるガラス溶融炉におけるガラスの溶融方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス溶融炉は当該技術分野において一般的に知られている。典型的には、ガラス溶融炉は、エネルギー源の位置に従い(U字型火炎またはクロスファイア炉)、酸化剤の種類(酸素または空気)に応じて、および製造されるガラスの質、例えば容器、食器、フロートガラスまたはガラス繊維にも応じてグループ化され得る。本発明は先述の全ての種類のガラス溶融炉に関する。
【0004】
ガラス溶融炉におけるガラスの製造は連続的に行われるので、原材料のバッチは定期的に溶融チャンバ内のガラス溶融物に添加される一方で、良好な品質のガラスが製造のために炉から連続的に引き出される。一般的な炉において、原材料のバッチ(バッチとも称される)は粉末形態で、それを既存のガラス溶融物の上部に分配することによって炉に添加される。次に、前記バッチ材料はガラス溶融物上にしばらく残り、そしてある種のブランケットを形成し、それが、ガラス溶融物上に配置されたバーナーの火炎とガラス溶融物自体との間の断熱層として作用する。断熱特性に起因して、バッチのブランケットの内側では熱の浸透が遅く、バッチのブランケットのコアは常に室温に近くなり、バッチの溶融には長い時間がかかる。その結果、バーナーからガラス溶融物に伝達される熱エネルギーの量が減少する。しかしながら、バッチのブランケットは、バーナーからも、再循環流の助けによってガラス溶融物からもエネルギーを取得する。この再循環流はバッチのブランケットの底部へのエネルギーを取得するが、多くの空気の被包(泡)を含有する新たな冷たい溶融物と、特定の時間の間、炉に滞留し、泡が減少した熱いガラスとの混合も引き起こす。この混合プロセスは、ガラス溶融の精製プロセスを長くして、高いエネルギー消費をもたらす。しかしながら、従来の炉においては、炉の温度勾配およびガラスの溶融性に起因して、この混合が避けられない。
【0005】
この課題を解決するために、米国特許出願公開第2015/0307382号明細書(US2015/0307382 A1)の文献は、溶融チャンバへのバッチの導入を溶融物のレベルより下で行い、その際、バッチがガラス溶融物の上部で導入される場合、前記バッチを予熱することで溶融物上部の断熱層についての欠点が部分的に回避されることを指摘している。しかしながら、バッチ材料は溶融物の上部まで流れる傾向があるので、バッチ材料の一部はこの場合もやはり、バーナーによって放出される熱に関してバリアとして作用する。その結果、この文献においては、有効な混合には取り組まれておらず、バッチ材料とガラス溶融物との間のプロセスは困難であり且つ時間がかかるままである。
【0006】
国際公開第2014/036979号(WO2014/036979 A1)から、電極の列が溶融チャンバの底部に配置されてスパイラル流を作り出し、前記流のスパイラルの軸が水平である、ガラス溶融炉が公知である。この特許は砂粒子の溶解、およびガラス炉の他の区画において溶融された溶融ガラス中の泡の除去に関する。この文献と本発明との違いは、後者においてはバッチが溶融ガラス中に直接的に供給されることである。前記先行技術の解決策の欠点は、スパイラル流は溶融ガラスの内側に泡が残ることを引き起こし得るので、溶融ガラス中に泡が残り得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0307382号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/036979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス溶融物と原材料との混合が最適化されるように溶融炉をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の従来技術に基づき、前記の課題は、溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有するらせん流が溶融物中で作り出されるように電極を配置し、前記バッチ供給装置の入口の供給断面と、第1の電極との間の距離が、上面図において0.5m~1.5mの範囲であり、前記ガラス溶融物の上部表面からの前記電極の距離が、前記上部表面から最も長い距離を有する電極から出発して、流れの方向に沿って動く場合に減少することによって解決される。その結果、バッチ材料は溶融物の上部表面まで浮かび上がらず、上部表面より下の領域で溶融物内に留まっている。原材料は表面への短い(垂直の)道を取ることはできないが、公知の炉に比して、溶融物を通じて延長された経路に沿って流れるように促される。原材料は、電極によって引き起こされる電場によって材料内に作り出される力により、溶融物を通る経路が定められる。従って、バッチ材料は、通常よりも遙かに長い時間の間、熱い溶融物によって完全に取り囲まれるので、原材料自体が最適に加熱されて、通常よりも遙かに速く溶融する。有利なことに、前記流がほぼ水平面内で動く場合、バッチ材料と溶融物との間の最適な混合が引き越される。本発明によれば、溶融物の上部表面は、未溶融の原材料がないままで保たれているので、表面上で増加された熱伝導率に起因して、熱いバーナーの火炎から溶融物への熱伝達が改善される。
【0010】
本発明によれば、回転軸が溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である環状流が溶融物中で作り出されるように電極を配置する場合、溶融物の作り出される環状流が正確に円形であることは必要ではない。溶融チャンバの形状に応じて、作り出される流れは楕円形、長円形、または同様のものであってよい。流れが溶融物中で生成され、溶融物の上部表面から間隔をあけられていることのみが必要とされる。従って、バッチ材料の入口が制御される。
【0011】
例えば、本発明の炉の上面図において、電極を円形または楕円形または矩形に配置して、溶融物中で溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である循環の軸を有する環状流を作り出すことができる。バッチ材料の動きは電極の幾何学的な配置に厳密には従わないので、他の電極配置も可能であることが明らかである。
【0012】
炉のサイズに応じて、2つの隣接する電極間の水平距離を炉の幅の5~25%の間で選択すべきである。
【0013】
従来のガラス溶融炉においても、ガラス溶融物が循環するが、その循環は溶融物の上部表面の面に対して実質的に平行であるかまたはわずかに傾いた回転軸を有する。冷たいバッチと熱い溶融ガラスとの間の温度差は、炉のホットスポットから開始しバッチ供給領域への炉内でのガラスの流れを作り出す。ホットスポットは火炎によって形成される仮想的な点である。例えば、U字型火炎においては火炎の長さがホットスポットの位置を定めるが、クロスファイア炉においては、ホットスポットはポートの燃料比を変えることによって作り出される。本発明によれば、ガラス溶融物の上部表面に対する環状流の軸の向きは、溶融物の上部表面の面に対して平行な向きから実質的に垂直な向き、または非常に傾いた向くように変えられ、その向きはバッチの供給点から炉のホットスポットへのバッチの経路のらせん形状を形成する。この革新において、炉のホットスポットは垂直方向になり、且つ電気的なブーストおよびバーナーの火炎から生じるエネルギーの比に従って調整される。
【0014】
溶融物の上部表面に対して実質的に垂直であるらせん軸を有するらせん流が溶融物中で作り出されるように電極が配置されるので、ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で供給されるバッチ材料は溶融物内を流れ、そして連続的に高く上昇していく一方で、温度も上昇する。長い距離および時間の後(1回だけ、しかし数回であることも可能である)、バッチ材料が溶融され、ガラス溶融物として上部表面に達し、そこでバーナーの火炎によってさらに加熱される。このようにして、バッチ材料を溶融し且つそれをガラス溶融物と混合するための合計時間が著しく低減され、その結果、必要とされるエネルギーが著しく低減される。
【0015】
溶融物のらせん流に関して、ガラス溶融物の上部表面からの電極の距離が、上部表面から最も長い距離を有する電極から出発して、溶融物の流れの方向に沿って動く場合、減少する。従って、ガラス溶融物の上部表面と電極の上方部分との間の距離は段階的に減少し、電極の配置は階段のようになる。電極に沿って流れる溶融物および搬送されるバッチ材料は、上部表面の方向に連続的に上昇する。
【0016】
溶融チャンバの底部が平らな向きでは、溶融チャンバの底部から電極の上部まで測定される電極の長さが、最も短い長さを有する電極から出発して、流れの方向に沿って動く場合に増加すれば、らせん流が達成され得る。
【0017】
前記バッチ供給装置の入口の供給断面と第1の電極との間の距離は、上面図において0.5m~1.5mの範囲である。前記バッチ供給装置の入口の供給断面は、バッチ材料を溶融チャンバに入れるバッチ供給装置の相応の側壁の開口部の断面である。前記第1の電極は、前記開口部までの水平距離が最も短く、ガラス溶融物表面への垂直距離が最大である電極として定義される。バッチ供給装置の入口の供給断面と、第1の電極との間の距離は炉の大きさに依存し、それは炉の引き出し速度に依存する。先述の距離に関し、炉に入るバッチ材料が環状流によって捕捉されて、前記の利点が生じることが重要である。
【0018】
好ましくは、一対の電極が互いに接続されて、交流を使用して電極を電気的にブーストする。2つの電極が互いに接続されて、溶融ガラスが回路を閉じる。接続された電極の極は正または負として異なり、並びに位相および電極の電流密度が互いに異なる。その結果、ガラス溶融物は電気を伝導するためのブリッジであり、ガラスはそれらの2つの電極間を流れ、溶融ガラスの内側でバッチを運ぶ。イオン移動の方向は位相差に起因して常に一定である。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、溶融物の上部表面から最も長い距離を有する電極および/または溶融チャンバの底部から電極の上部まで測定して最も短い長さを有する電極が、バッチ供給装置に近接して配置される。このようにして、バッチは、バッチ供給装置付近の第1の電極のところで開始する流れによって最適に捕捉される。
【0020】
電極を、それらが溶融チャンバの底部から突出するように配置することが可能である。代替的に、電極を溶融チャンバの少なくとも1つの側壁に、電極が前記側壁から突出するように固定することが可能である。第1の場合において、それらは好ましくはほぼ垂直に向けられており、第2の場合において、好ましくはほぼ水平に向けられている。
【0021】
さらに、溶融チャンバの底部から突出する電極、並びに溶融チャンバの少なくとも1つの側壁から突出する電極を配置することが可能である。側壁の電極の助けにより、溶融ガラスの上部まで渦流が続く。従って、バッチの溶融が強化され、バッチと溶融ガラスとの混合が増加する。
【0022】
電極が溶融チャンバの底部から突出する場合、電極が2つの円、特に2つの同心円状に配置されればさらに有利である。このようにして、より多くの熱を溶融物中に導入でき、且つ溶融物の環状流の創出がさらに改善される。その結果、原材料が最適に経路を定められる。
【0023】
炉の有利な設計によれば、溶融チャンバは、バッチが導入される溶融領域と、前記溶融領域の深さに比して浅い深さを有する清澄(fining)領域と、前記溶融領域と実質的に同じまたは同じ深さに近く、少なくとも前記清澄領域より遙かに深い精製(refining)領域とに分けられる。
【0024】
溶融チャンバの清澄領域において、好ましくは少なくとも1つのバブラーが配置されて、溶融物中の泡を表面へと上昇させて、溶融物から離れさせる。より好ましくは、バブラーの列が清澄領域に配置される。
【0025】
本発明の炉の好ましい実施態様によれば、清澄領域内でバブラー第1の列の隣にバブラーの第2の列または電極の列が配置される。従って、溶融物中の泡の除去がさらに強化される。電極の列がバブラーの第1の列の隣に配置される場合、精製領域の溶融ガラスに追加的な熱が導入される。
【0026】
有利には、全ての電極の熱出力が実質的に等しいこと、または電極の熱出力が異なり、それらの長さに伴って増加することが予測される。
【0027】
本発明の特に有利な設計は、溶融チャンバの同じ側壁に配置され、互いに間隔をあけられた2つのバッチ供給装置を有し、ここで上面図において、2つのバッチ供給装置間の距離は、電極によって形成される円の直径または楕円の直径の平均値の50%~120%の範囲、好ましくは80%~90%の範囲である。第2の供給装置の存在はいくつかの利点がある: 第1に、倍量の原材料を供給することが可能である。さらに、両方の供給装置を交互に使用することが可能である。1つの供給装置が故障、またはメンテナンスを要する際には、第2の供給装置を介して炉の稼働を維持することができる。これは冗長性があるシステムをもたらす。さらに、炉の形状に応じてより多くの供給装置を配置することが可能である。炉が八角形の場合、4つの供給装置をその八角形の各々の壁の対に配置できる。
【0028】
追加的に、本発明のさらなる利点がある: 従来の技術において、原材料の使用は、炉および換熱器についての種々の欠点に起因して限定されており、例えばNaOHまたはか焼された原材料は、それらの材料のダスト発生(dusting)特性および耐火物との反応のために使用できない。本発明によれば、液中での原材料の供給のおかげで、渦状の溶融によって原材料が溶融ガラスの上部に達する前に溶融するために充分な時間がもたらされるのでダスト発生および耐火物との腐食反応が除かれ、か焼された原材料およびNaOHの使用を実現できる。
【0029】
バッチ供給装置に関し、それを溶融物の底部の近くに配置することが好ましい。特に、バッチ供給装置によって溶融チャンバに搬送されるバッチの入口の最も低い点は、溶融チャンバの底部から、ガラス全体の深さの15%~75%の範囲の距離に配置される。バッチ供給装置と溶融チャンバの底部との間には特定の距離を有する必要があり、なぜなら、溶融チャンバに供給されたばかりのバッチの下にいくらかの溶融ガラスが必要とされるからである。
【0030】
本発明の好ましい実施態様は、溶融チャンバが八角形の床面図を有することを提案する。八角形の形状は円に似ているので、溶融チャンバの形状を、電極の円形の配置並びに溶融物の円形の流れに適合させることができる。
【0031】
ガラス溶融炉内でガラスを溶融するための方法に関し、前記炉は
・ 上部表面を形成するガラス溶融物を収容するために適した溶融チャンバ、
・ バッチ材料を前記ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で溶融チャンバに供給するためのバッチ供給装置であって、前記溶融チャンバの側壁に配置されている前記バッチ供給装置、
・ ガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ内に配置され、前記溶融物を加熱するための複数の電極であって、互いに間隔をあけられた前記電極
を含み、前記溶融チャンバに搬送されるバッチは、前記溶融チャンバ中に既に存在しているガラス溶融物と混合され、その際、電極によって、動きの水平成分と垂直成分とを有する流れが溶融物中で作り出され、前記の課題は、前記電極によって、溶融物の上部表面に対して実質的に垂直である回転軸を有するらせん流が溶融物中で作り出され、前記バッチ供給装置の入口の供給断面と、第1の電極との間の距離が、上面図において0.5m~1.5mの範囲であり、前記ガラス溶融物の上部表面からの前記電極の距離が、前記上部表面から最も長い距離を有する電極から出発して、流れの方向に沿って動く場合に減少することによって解決される。本発明の方法からもたらされる利点は、上述の装置からもたらされる利点と類似している。
【0032】
本発明を添付の図面を参照して説明する:
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図4】
図4は、第2の本発明の炉の三次元図を示す。
【
図5】
図5は、第3の本発明の炉の三次元図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は本発明のガラス溶融炉1の実施態様についての例を三次元図で示し、前記炉1は上部表面を有するガラス溶融物を収容するために適している。本発明の炉1は溶融チャンバ2を含み、前記溶融チャンバは、バッチ材料が導入される溶融領域3と、前記溶融領域3の深さに比して浅い深さを有する清澄領域4と、前記溶融領域3と実質的に同じ深さを有する精製領域5とに分けられる。
【0035】
さらに、前記炉1は、前記溶融チャンバ2の側壁7に配置されている2つのバッチ供給装置6を含み、前記供給装置6は、バッチ材料をガラス溶融物の上部表面のレベルより下で前記溶融チャンバ2に供給するように設計されている。バッチ供給装置6と、溶融領域3の底部9との間の垂直距離8は0.7mであり、且つ前記2つのバッチ供給装置6の間の水平距離10は1.5mである。
【0036】
清澄領域4においてバブラー11の列が配置され、溶融物中の泡12を上部表面へと上昇させて、溶融物から離れさせる。
【0037】
溶融領域3において8つの電極13が円形に配置され、前記電極13は、
図2に関連してより詳細に説明される。
【0038】
図2は、
図1の炉1を通じた垂直断面を示し、電極13が溶融チャンバ2の底部9から突出し、且つ異なる長さを有することがわかる。第1の電極14は、前記供給装置6が配置される側壁7の近くに位置付けられ、前記第1の電極14は他の電極13に比して最も短い。前記第1の電極14の上端は、前記供給装置6の中心軸16の距離15において終了し、前記距離15は、ガラス全体の深さの5%~30%の範囲である。隣接する電極13の長さは段階的に増加するので、電極13の上端はらせんを描く。換言すれば、ガラス溶融物の上部表面(ライン17によって表される)からの電極13の距離は、上部表面から最も遠い距離の第1の電極14から出発して減少する。最も高い電極18の上端は、供給装置6の中心軸16の距離19において終了し、前記距離19は、ガラス全体の深さの5%~30%の範囲である。
【0039】
電極13、14、18は、溶融物のらせん流20が、前記電極13、14、18の上端に相応して作り出されるように互いに接続される。従って、バッチ材料はらせん流20によって運ばれ、動きの水平成分を有するバッチ材料の流れが達成される。このようにして、バッチ材料と溶融ガラスとの混合が改善される。らせん流20は溶融物の上部表面に対して実質的に垂直な回転軸21を有する。
【0040】
溶融領域3の上面図を
図3に示し、ここで電極13、14、18の円形の配置がわかる。
【0041】
本発明の炉1’の代替的な実施態様を
図4に示し、それは炉1’を三次元図で示す。
図4に示される炉1’は、清澄領域4におけるバブラー11の列の隣に配置されている電極23の列22のさらなる配置において、
図1に示される炉1とは異なる。電極23は清澄領域4の底部24から垂直に突出し、且つ全て同じ長さである。電極23によって、清澄領域4において溶融物中に補助的な熱を導入できる。
【0042】
炉1’はさらに、溶融領域3の底部9に配置された電極13を有し、その配置は
図1に示される炉1の配置と同一である。さらに、溶融チャンバ2の2つの対向する側壁25はそれぞれ、前記側壁25から突出して水平に走る電極27の列26を含有する。全ての電極27は同じ高さに配置される。バッチ供給装置6の側壁7への距離が最も小さい電極27から出発して、1つの列26の電極27の長さは、前記供給装置6を備える側壁7からの電極27の距離に伴って増加する。側壁25に配置される電極27は、溶融ガラスの上部まで渦流の継続を引き起こす。
図4の前方の側壁25における電極27は、前方の側壁25によって隠されているので見られない。
【0043】
さらに、本発明の炉1’’の実施態様の第3の例を
図5に三次元図で示す。溶融チャンバ2は8つの側壁7を有する八角形の床面図を有し、清澄領域4の隣の側壁28は、他の7つの側壁7よりも低い。これは、溶融領域3が、浅い深さを有する清澄領域4よりも深い深さを有することによってもたらされる。
【0044】
清澄領域4に対向する3つの側壁29の各々にバッチ供給装置6が配置されている。残りの4つの側壁30の各々に2つの電極27が配置されており、それは溶融チャンバ2内に水平に突出している。清澄領域4は矩形の床面図を有し、前記清澄領域の幅は溶融チャンバ2の隣接する側壁28にほぼ相応する。溶融領域3と実質的に同じ深さを有する精製領域5も矩形の床面図を有するが、精製領域5の幅は清澄領域4の幅よりも大きい。
【0045】
さらに、
図5に示される実施態様は、底部9から突出する電極13を有する。電極13は2つの同心円31、32状に配置され、内側の円32の電極13は、外側の円31の電極13よりも短い長さを有する。各々の円31、32の電極13の長さは、
図1に示される実施態様の電極13と同様に異なる。
【符号の説明】
【0046】
1、1’、1’’ ガラス溶融炉
2 溶融チャンバ
3 溶融領域
4 清澄領域
5 精製領域
6 バッチ供給装置
7 側壁
8 距離
9 底部
10 距離
11 バブラー
12 泡
13 電極
14 第1の電極
15 距離
16 中心軸
17 ライン
18 最も高い電極
19 距離
20 らせん流
21 回転軸
22 列
23 電極
24 底部
25 側壁
26 列
27 電極
28 側壁
29 側壁
30 側壁
31 外側の円
32 内側の円
【国際調査報告】