(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(54)【発明の名称】体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A61M1/36 153
A61M1/36 165
A61M1/36 119
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516729
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2020076133
(87)【国際公開番号】W WO2021053160
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】102019125355.1
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515143739
【氏名又は名称】ビー.ブラウン アビタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】Schwarzenberger Weg 73-79, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター マンドリー
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA07
4C077BB03
4C077EE01
4C077KK05
4C077KK13
4C077MM02
4C077MM07
4C077PP30
(57)【要約】
本発明は、体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法であって、当該方法は、第1のライン区間内において、特に血液ポンプという手段により、血液を輸送するステップと、第1のライン区間内における血液に、特にポンプという手段により、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するステップと、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、特に血漿分離器という手段により、血球成分及び血漿に分離するステップと、分離された血漿を、特に血漿ポンプという手段により、第2のライン区間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体を経由して輸送するステップと、処理された血漿及び血球成分を、第3のライン区間内において共に合わせるステップと、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、第1のライン区間内における、特に血液ポンプにおける血漿分画の第1の体積流量を特定するステップと、第2のライン区間内の、陰イオン交換体の上流又は下流における、特に前記血漿ポンプにおける血漿の第2の体積流量を特定するステップと、を含む。この方法は、分離の前に血液に供給される、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、第1の体積流量と第2の体積流量との比率に基づいて設定するステップであって、設定するステップは、浄化された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように設定する、設定するステップにより特徴付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法であって、
第1のライン区間(4)内において、特に血液ポンプ(6)という手段により、血液を輸送するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液に、特にポンプ(8)という手段により、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するステップと、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された前記血液を、特に血漿分離器(10)という手段により、血球成分及び血漿に分離するステップと、
分離された前記血漿を、特に血漿ポンプ(12)という手段により、第2のライン区間(14)内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体(16)を経由して輸送するステップと、
前記処理された血漿及び前記血球成分を、第3のライン区間(18)内において共に合わせるステップと、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、前記第1のライン区間(4)内における、特に前記血液ポンプ(6)における前記血漿分画の第1の体積流量を特定するステップと、
前記第2のライン区間(14)内の、前記陰イオン交換体(16)の上流又は下流における、特に前記血漿ポンプ(12)における前記血漿の第2の体積流量を特定するステップと、
を含み、
以下のステップ、即ち、
前記分離の前に前記血液に供給される、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との比率に基づいて設定するステップであって、前記設定するステップは、前記浄化された血漿及び前記血球成分が共に合わされた後に、前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように設定する、前記設定するステップにより特徴付けられる、方法。
【請求項2】
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度の実際の値を特定するステップと、
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度を、前記特定された実際の値、前記体積流量と前記第2の体積流量との前記比率、並びに、前記第1のライン区間(4)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記供給される量に基づいて、制御するステップと、により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を特定するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液の体積流量を特定するステップ、特に前記血液ポンプ(6)の輸送速度を特定するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記第1のライン区間(4)内における前記血液の前記特定された体積流量、及び、前記特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するステップと、により特徴付けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
特に前記血漿ポンプ(12)という手段により、前記陰イオン交換体(16)を通過して流れる前記血漿の前記第2の体積流量を設定するステップにより特徴付けられる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記陰イオン交換体(16)により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、前記第3のライン区間(18)内に付加的に供給するステップにより特徴付けられる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
体外血液処理中において適用するための抗凝固制御デバイス(2)であって、
第1のライン区間(4)内において血液を輸送するための手段、特に血液ポンプ(6)と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液に、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するための手段、特にポンプ(8)と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、血球成分及び血漿に分離するための手段、特に血漿分離器(10)と、
分離された前記血漿を、第2のライン区間(14)内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体(16)を経由して輸送するための手段、特に血漿ポンプ(12)と、
前記処理された血漿及び前記血球成分を、第3のライン区間(18)内において共に合わせるための手段と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、前記第1のライン区間(4)内における、特に前記血液ポンプ(6)における前記血漿分画の第1の体積流量を特定するための手段と、
前記第2のライン区間(14)内の、前記陰イオン交換体(16)の上流又は下流における、特に前記血漿ポンプ(12)における前記血漿の第2の体積流量を特定するための手段と、
を備え、
前記分離の前に前記血液に供給される、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との比率に基づいて、制御するように適合された制御ユニット(20)であって、前記制御ユニット(20)は、前記処理された血漿及び前記血球成分が共に合わされた後に、前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように制御する、前記制御ユニット(20)により特徴付けられる、抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項7】
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度の実際の値を特定するための手段と、
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度を、前記特定された実際の値、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との前記比率、並びに、前記第1のライン区間(4)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記供給される量に基づいて、制御するための手段と、により特徴付けられる、請求項6に記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項8】
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を入力するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記血液ポンプ(6)の前記輸送速度、及び、前記入力されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、請求項6又は7に記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項9】
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を特定するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液の体積流量を特定するための、特に前記血液ポンプ(6)の輸送速度を特定するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記第1のライン区間(4)内における前記血液の前記特定された体積流量、及び、前記特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、請求項6から8のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項10】
前記陰イオン交換体(16)、特に前記血漿ポンプ(12)を通過して流れる前記血漿の前記第2の体積流量を設定するための手段により特徴付けられる、請求項6から9のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項11】
前記陰イオン交換体(16)により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、前記第3のライン区間(18)内に付加的に供給するための手段により特徴付けられる、請求項6から10のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項12】
前記血液ポンプ(6)が、前記第1のライン区間(4)内において、前記ポンプ(8)の上流、かつ、前記血漿分離器(10)の上流に配置されることによって特徴付けられる、請求項6から11のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項13】
前記血漿ポンプが、前記第2のライン区間(14)内において、前記血漿分離器(10)の下流であるが、前記陰イオン交換体(16)の上流に配置されることによって特徴付けられる、請求項6から12のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【請求項14】
前記陰イオン交換体(16)が、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)で改質された表面を有していることによって特徴付けられる、請求項6から13のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、急性感染症及び感染性疾患の最も重篤な合併症のうちの1つであり、入院患者の部門において、最も頻繁に発生するとともに最もコストのかかる疾患のうちの1つに属する。その結果、敗血症は、世界中の保健制度に対する重大な課題を示している。敗血症患者の処置に関連するコスト因子は、特に、患者が頻繁に再入院することであり、多くの場合では、往々にして敗血症疾患に伴う、例えば長期間の人工呼吸(ventilation)及び透析の必要性といった、疾患の長期に亘る影響である。しかしながら、生じている長期間の就労不能及びそれに関連する早期退職に関わるコストも見過ごすことはできない。敗血症は、米国では、病院処置コストの最上位に挙がり、年間コストが240億米ドルである。これに比べ、ドイツでは、外来患者及び入院患者の部門における敗血症の直接的な処置コストは、2013年において75億ユーロと推定されていた。
【0003】
敗血症の生命を脅かす症状は、身体の防衛反応が、感染症(これは、殆どの場合、細菌によって生じるが、潜在的にはウイルス、真菌、又は寄生体によっても生じる)と、当該感染症の結果と、を限られたエリアに、もはや制限することができなくなったときに生じる。結果的に、身体の過剰な防衛反応が生じ、このことが、自身の組織及び器官の損傷を招く。敗血症は、適時に診断及び処置を受けなければ、患者の症状がごく短時間のうちに劇的に悪化するおそれがあり、例えば、心臓、肺、肝臓、及び腎臓の多臓器不全、並びに/又は、敗血症性循環性ショックを招くおそれがあり、死に至り得る。
【0004】
身体の過剰な防衛反応の主要な役割は、エンドトキシンのグループに属する、いわゆるリポ多糖類(LPS)が担っている。LPSは、親水性多糖分画及び親油性脂質分画で構成されているとともに、サルモネラ菌、大腸菌、又はレジオネラ菌といったグラム陰性菌の外側細胞壁の主成分を表す、比較的に熱安定性を有する化合物である。毎時1ng/kg体重の静脈内投与でさえも、ヒトの炎症反応を生じるおそれがあり、それ故に、LPSは極めて毒性であるとみなされる。LPSは、増殖するグラム陰性菌の細胞分裂中に、又は、抗生物質若しくはヒトの補体系による当該細菌の溶解/破壊中に、血流に放出される。ヒトの免疫系は、これらのエンドトキシンを認識し、その結果、調節蛋白質、いわゆるサイトカインの過剰生産を招く、複数の防衛反応及び炎症反応を開始する。このような体系化されたサイトカインの過剰生産は、その後、血管の損傷及び敗血症性ショックを招くおそれがあり、播種性血管内凝固症候群及び多臓器不全が付随する。
【0005】
従って、患った患者の血液からLPSを除去することは、開始された防衛反応及び炎症反応を迅速に阻止するとともに、サイトカインの生産を減少させるために有望なアプローチを表している。Falkenhagenら(Int J Artif Organs 2014;37(3):222-232)が、様々な市販のエンドトキシン吸着剤の有効性検討の枠組み内で実証することができたように、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)で改質された表面を有する吸着剤(但し、この吸着剤は、現在まで臨床的に適用可能であるとはみなされていない)のみが、血清からLPSを効果的に除去することできる。実施された研究によると、このような吸着剤は、負電荷を有する分子と結合する能力を有する陰イオン交換体である。この目的のために、陰イオン交換体は、この場合においてはDEAEで改質された表面を介して、固体の不溶性マトリックスに共有結合した陽イオン材料と、これにイオン結合しているとともに、他の陰イオンの結合によって交換される中和陰イオンと、を有している。
【0006】
体外治療の過程における血液処理中には、処理されるべき血液の血液凝固を抑制するために、例えばヘパリンのような、いわゆる抗凝固薬/凝固抑制剤が体外回路において、それぞれの患者の血液に添加される。それにより、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者の体外治療による血液処理においては、抗凝固薬の濃度が特に重要であるが、その理由は、濃度が低すぎると血液の凝固、よって、治療の中止を招き、これに対し、抗凝固薬の濃度が高すぎると、処理された血液が誘導されて患者の体内に戻ったときに、内出血を招き、死にさえも到るおそれがあるためである。この結果、敗血症患者の血液の体外処理が成功するためには、抗凝固剤の濃度が一定であることが不可欠である。
【0007】
ヘパリンは、敗血症の処置のために、特に集中治療医学において使用される好ましい抗凝固薬である。ヘパリンは、5つ以上の単糖の鎖長から自身の抗凝固作用を発揮する多数の負電荷を有する、可変的にエステル化されたグリコサミノグリカンである。ヘパリンは、プロテアーゼインヒビターであるアンチトロンビンIIIに結合することにより、アンチトロンビンIIIの凝固因子への結合が約1000倍速く生じ、それ故に、血液凝固が抑制されるという作用を有する。しかしながら、ヘパリンの負の全体電荷を理由に、DEAEでコーティングされた陰イオン交換体において、LPSを除去するための体外血液処理の過程において使用するには好適ではない。その理由は、陰イオン交換体が、LPSに加え、ヘパリンも結合させるためである。しかしながら、上記のように、ヘパリンが除去されると、患者の血液の凝固を結果的に生じ、それ故に、治療の中止を招く。さらに、敗血症患者は、血栓症を防止するために、低用量のヘパリンでの処置を受ける。このヘパリンもまた、DEAEでコーティングされた陰イオン交換体により除去される。従って、患者に副作用又はリスクを何ら生じることなく、LPSを効果的に除去することが可能な、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者の治療の可能性が必要とされている。
【0008】
現時点における最新技術から、特に、独国特許出願公開第3135814A1号明細書に開示されている、いわゆるヘパリン誘発性体外LDL沈殿(HELP:heparin induced extracorporeal LDL precipitation)法が知られている。これまでに、HELP法は、先天性脂質代謝異常、つまり、重度の一次性高コレステロール血症の患者の長期的処置のために使用されてきた。この過程では、事前に分離された血漿が、ヘパリン及び酢酸緩衝液と混合され、これにより、血漿のpH値が低下する。これらの条件下で生じた、LDL、フィブリノゲン、及びヘパリンで構成される沈殿物を、それ以降に、血漿循環から濾過及び除去する。その後、依然として残存する過剰な沈殿剤ヘパリンを、更なるステップにおいて、DEAEセルロース陰イオン交換体において選択的に吸着し、除去する。透析及び限外濾過という手段によって緩衝溶液を除去することにより、続いては、処理された血漿を血液細胞と再び混合して最終的に患者に戻すことができるように、生理学的pH値を回復させる。
【0009】
血液の凝固を回避し、かつ、陰イオン交換体によるヘパリンの除去を補償するために、独国特許出願公開第3135814A1号明細書に開示されたようなHELP法の範囲内において、患者の血液に、より大量のボーラス投与によりヘパリンが添加される。しかしながら、上述の身体の過剰な防衛反応という理由により、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者における血液凝固は、妨害されるとともに不安定になっており、そのことを理由として、このような患者には、ヘパリン濃度が一定であることが不可欠である。そのために、例えばHELP法という手段により処置を受ける患者におけるような、ヘパリンの単なる過剰投与は、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者の場合では不可能であり、生命を脅かしさえもする。
【0010】
また、欧州特許第0705845B1号明細書は、大部分において、上記のHELP法に類似の方法で進行する方法を開示している。この方法では、水性液体から腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)及び細菌性LPSを同時に除去することが記載されている。この目的を達成するために、ここでもまた、血液に対し、又は、必要な場合には、血球成分を除去した後の血漿に対し、より大量のボーラス投与によりヘパリンを添加し、それにより、TNFαの沈殿を誘発させる。TNFα沈殿物の濾過又は遠心分離の後、過剰なヘパリンを、DEAEセルロースで改質した陰イオン交換体に結合させることによって除去する。しかしながら、ヘパリンに加え、LPSもまた、その負電荷を理由に、陰イオン交換体に結合することによって効果的に除去される。HELP法と同様に、欧州特許第705845B1号明細書に開示された方法においても、血液又は血漿の生理学的pH値は、限外濾過により、及び/又は、付加的な透析ステップにより、その後再生される。
【0011】
この方法のシミュレーションにより、その後に何ら投与を行うことなく、ヘパリンの98%が陰イオン交換体に結合することによって血漿から排除されることが示されている。しかしながら、このような程度までヘパリンを除去すると、既に上で示したように、その抗凝血作用が最小化されるか又は消失して、血液が凝固するという欠点を有する。また、上記のように、ヘパリンの濃度が低すぎると、体外血液処理の中止を招く。その理由は、それに基づいた治療を継続することにより、凝固から結果的に生じ得る血塊が誘導されて患者に戻り、患者の体内で、例えば心臓発作又は卒中発作のような重篤な合併症を招き得る血栓を可能性として生じるおそれがあるというリスクが増大するためである。逆に、その後のヘパリンの投与が多すぎると、内出血を招くおそれがある。そのため、上の方法を実際に使用すると、患者には充分な安全性がもたらされない。
【0012】
その一方で、このような方法における他の抗凝固薬の使用は、臨床試験がそれほど十分に行われていないか、又は、高コストを要することが多いため、他の抗凝固薬は、実際にはあまり適用されていない。
【0013】
米国特許出願公開第2016/0038666A1号明細書は、ダイアライザと、制御コンポーネントと、収着剤カートリッジと、処置を必要とする個人が装着又は運搬するのに好適な重量及びサイズを有するように構成された流体槽と、を有しているか又は使用する腎代替療法を実施するためのシステム及び方法を開示している。腎代替療法を実施するためのこのシステムは、制御されたコンプライアンス透析回路(a controlled compliance dialysis circuit)を有しており、ここでは、制御ポンプが透析膜を横切る流体の双方向の移動を制御している。血液を循環させるための透析回路及び体外回路は、透析膜を介して流体連通している。体外回路と透析回路との間を移動する流体の流動は、限外濾過の速度及び対流クリアランスが制御され得るように、制御ポンプが動作している速度によって変更される。このシステムは、収着剤カートリッジの入口導電率及び出口導電率のモニタリングに備えており、収着剤カートリッジによる尿素の除去を定量化又はモニタするための設備を提供する。
【0014】
このように、米国特許出願公開第2016/0038666A1号明細書は、陽イオン交換体によって、正の全体電荷を有する陽イオンを除去することに関するものであり、これは、慢性腎不全の透析患者を対象としている。ここでは、透析のため、尿素の濃度を減少させる目的のために、最初のステップにおいて、尿素が、酵素ウレアーゼによって、正電荷を有するアンモニウムイオン(NH4)+と二酸化炭素とに分離されなければならないことが開示されている。当該酵素分解に続くステップでは、アンモニウムイオン(NH4)+がイオン交換体ステージにより血液から抽出され、このイオン交換体ステージのために、陽イオン交換体を使用しなければならない。
【0015】
オーストリア国特許出願公開第509192A4号明細書は、他の収着原理に基づいた陰イオン交換体の使用に対する代替例、つまり、生体液からエンドトキシンを除去するための収着剤であって、中性かつ疎水性の表面を有する不水溶性の多孔質担体を備えた収着剤について開示している。それにより、担体の表面は、ポリミキシン及びアルブミンから構成される吸着性コーティングを有しており、ポリミキシン及びアルブミンは、担体の表面に非共有結合的に結合されている。それ故に、オーストリア国特許出願公開第509192A4号明細書は、患者の安全のためにポリミキシンの固定化について扱っており、ポリミキシンは、神経毒性及び腎毒性であることを事前に説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者を処置するための体外血液浄化の状況の中で、陰イオン交換体の使用と、負電荷を有するいくつかの/少なくとも1つの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを抗凝固薬として同時使用することとにより、LPSの効果的な排除を可能にするための方法及び装置を提供することである。このことに関係して、この発明の更なる目的は、体外回路内における負電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、陰イオン交換体における吸着にもかかわらず一定で維持されるように、治療中に、負電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンの添加を制御することである。
【0017】
このことに関係して、本発明の更なる目的は、体外血液浄化中における敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者の安全性を、血塊又は出血により生じる望ましくない副作用を回避すること及び治療の中断を回避することにより高めて、敗血症の治療を概して改善することでもある。
【0018】
当該目的は、請求項1の特徴を有する方法によって解決され、また、この独立請求項の特徴を有する装置によっても解決される。本開示の有利な更なる展開は、それぞれ、従属請求項の内容である。
【0019】
本開示の第1の態様によると、体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための1つの方法は、以下のステップ、即ち、第1のライン区間内において、特に血液ポンプという手段により、血液を輸送するステップと、第1のライン区間内における血液に、特にヘパリンポンプという手段により、ヘパリンを供給するステップと、ヘパリンが添加された血液を、特に血漿分離器という手段により、血球成分及び血漿に分離するステップと、分離された血漿を、特に血漿ポンプという手段により、第2のライン区間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体を経由して輸送するステップと、処理された血漿及び血球成分を、第3のライン区間内において共に合わせるステップと、を含む。この過程において、当該方法は、ヘパリンを供給の前に、第1のライン区間内における、特に血液ポンプにおける血漿分画の第1の体積流量を特定するステップと、第2のライン区間内の、陰イオン交換体の上流又は下流における、特に血漿ポンプにおける血漿の第2の体積流量を特定するステップと、分離の前に血液に供給されるヘパリンの量を、第1の体積流量と第2の体積流量との比率に基づいて設定するステップであって、この設定するステップは、処理された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、第3のライン区間内におけるヘパリンの濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように設定する、設定するステップと、により特徴付けられる。陰イオン交換体は、その機能原理により、ヘパリンに加え、例えば凝固因子といった負の全体電荷を有する他の血漿蛋白質も除去するため、上の方法という手段により、この方法の根底にある数理モデルの助けを借りて、概して、負の全体電荷を有するいくつかの/少なくとも1つの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を供給することができる。以下においては、全ての当該生物学的及び/又は薬理学的活性物質の同義語として、ヘパリンが使用される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本開示は、概して、体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法であって、当該方法は、第1のライン区間内において、特に血液ポンプという手段により、血液を輸送するステップと、第1のライン区間内における血液に、特にポンプという手段により、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するステップと、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、特に血漿分離器という手段により、血球成分及び血漿に分離するステップと、分離された血漿を、特に血漿ポンプという手段により、第2のライン区間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体を経由して輸送するステップと、処理された血漿及び血球成分を、第3のライン区間内において共に合わせるステップと、を含む。それによって、この方法は、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を供給の前に、第1のライン区間内における、特に血液ポンプにおける血漿分画の第1の体積流量を特定するステップと、第2のライン区間内の、陰イオン交換体の上流又は下流における、特に血漿ポンプにおける血漿の第2の体積流量を特定するステップと、分離の前に血液に供給される、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、第1の体積流量と第2の体積流量との比率に基づいて設定するステップであって、設定するステップは、浄化された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように設定する、設定するステップと、により特徴付けられる。
【0021】
換言すると、上記の態様によると、体外血液処理のための装置において、血液ポンプという手段により吸引された血液には、まず、ポンプという手段により、特にヘパリンポンプという手段により供給されるヘパリンが添加され、次いで、当該血液は、血漿分離器において血球成分及び血漿に分離される。血球成分は、血漿分離器内で、血漿の分画と共に留まっている一方で、血漿の別の分画は、陰イオン交換体を経由して誘導され、この陰イオン交換体においては、血漿内に存在しているLPSが吸着されて、結果的に除去される。陰イオン交換体においては、LPSに加えて、ヘパリンもまた、その負電荷を理由に吸着されるため、分離するステップの前に、ヘパリンポンプという手段によって或る量のヘパリンが血液に添加されるが、その量は、処理された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、ヘパリン濃度が、所定の一定の目標値を取るような量である。ヘパリン濃度の一定性を保証するために、ヘパリンポンプという手段により供給されるべきヘパリンの量は、当該量が、ヘパリンを供給の前における、血液ポンプにおける血漿分画の体積流量と、陰イオン交換体の上流又は下流における、血漿ポンプにおける血漿の体積流量とに基づいているように設定される。この方法では、陰イオン交換体の使用と、抗凝固薬としてのヘパリンの同時使用とが、体外血液処理の状況の中で、特に敗血症の血液処理のために可能となる。
【0022】
それにより、一方では、毒性の高いエンドトキシンの除去という技術上の総合的目標と、他方では、血液凝固抑制剤、特にヘパリンを使用することによる血液凝固カスケードの効果的抑止という手段による血液凝固の回避とを、一定の目標値濃度によってなおも達成可能であるということを、この方法において管理できる旨、即ち、選択性の欠如を、技術上の欠点として、又は、克服すべき基本的特質の阻害要因として、受け入れるか又は迂回して回避することによって管理できる旨が、本開示の利点として現れる。
【0023】
現在開示している方法又は対応する装置が、エンドトキシンの完全な抽出に至る前に、既に奏功する体外血液処理を可能にすることは、更に有利である。この点に関し、エンドトキシンの部分的な除去は既に、血液浄化のための1つの経路中においてプラスの作用を有する。
【0024】
本開示の1つの態様によると、この方法は、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度の実際の値を特定するステップと、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度を、特定された実際の値、第1の体積流量と第2の体積流量との比率、並びに、第1のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の供給される量に基づいて、制御するステップと、をさらに含むことができる。このような制御は、可能性としての外乱変数を考慮することにより、第3のライン区間内における負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度を連続的に、かつ、自動的に調整することを可能にする。よって、この方法においても、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンの濃度が一定であることが保証され、このことは、上で既に解説したように、敗血症患者又は敗血症性ショックをきたした患者の血液処理にとって本質的に重要である。
【0025】
ヘパリンを供給するステップの前に、第1のライン区間内における血漿分画の上記の体積流量を特定することが可能となるために、この方法は、以下のステップ、即ち、第1のライン区間内における、血液のヘマトクリット値を特定するステップと、第1のライン区間内における、血液の体積流量を特定するステップ、特に血液ポンプの輸送速度を特定するステップと、第1のライン区間内における血漿分画の体積流量を、第1のライン区間内における血液の特定された体積流量、及び、特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するステップと、をさらに含むことができる。血液の全体積中の細胞成分のパーセンテージを反映するとともに、患者に依存するヘマトクリット値を特定するステップと、第1のライン区間内における、血液の体積流量又は血液ポンプの輸送速度を特定するステップと、により、最終的に、第1のライン区間内における血液に供給すべきヘパリン量の計算に必要とされる、第1のライン区間内における血漿分画の体積流量に関し、直接的な結論を引き出すことができる。
【0026】
本開示の更なる一態様によると、この方法は、特に血漿ポンプという手段により、陰イオン交換体を通過して流れる血漿の第2の体積流量を設定するステップを含むことができる。このことは、血液処理の開始前及び/又は最中に、陰イオン交換体を通過して流れる血漿の体積流量を、又は、予め選択された量の血漿を輸送するための血漿ポンプの輸送速度を、体外血液処理のための装置において、所望の治療条件に依存して、例えば医師又は病院スタッフのようなオペレータによって調整することが可能であることを意味する。それにより、体外血液処理の時間経過と、陰イオン交換体を通過して流れる流体の速度とを臨機応変に変更することができる。代替的に又は付加的に、血液ポンプの輸送速度は、装置において設定及び調整することができる。
【0027】
既に上記したように、陰イオン交換体においては、LPSだけではなくヘパリンもまた、その負の全体電荷を理由として吸着される。しかしながら、さらに、血漿内に存在する負の全体電荷を有する他の血漿蛋白質、又は薬物、又は薬剤もまた、陰イオン交換体に結合することが可能であり、よって、血漿から除去することができる。更なる血漿蛋白質及び/又は薬剤の所望しない除去を補償するために、本開示の別の態様によると、上記の方法は、陰イオン交換体により吸着される薬物及び/又は血液固有の物質を、第3のライン区間内に付加的に供給するステップを含むことができる。
【0028】
上記の方法の対応する実装及び正しい実行のために、本開示の更なる一態様によると、本開示は、体外血液処理中において使用するための抗凝固制御デバイスを含み、当該抗凝固制御デバイスは、第1のライン区間内において血液を輸送するための手段、特に血液ポンプと、第1のライン区間内における血液にヘパリンを供給するための手段、特にヘパリンポンプと、ヘパリンが添加された血液を、血球成分及び血漿に分離するための手段、特に血漿分離器と、分離された血漿を、第2のライン区間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体を経由して輸送するための手段、特に血漿ポンプと、処理された血漿及び血球成分を、第3のライン区間内において共に合わせるための手段と、を備える。それにより、この抗凝固制御デバイスは、ヘパリンを供給の前に、第1のライン区間内における、特に血液ポンプにおける血漿分画の第1の体積流量を特定するための手段と、第2のライン区間内の、陰イオン交換体の上流又は下流における、特に血漿ポンプにおける血漿の第2の体積流量を特定するための手段と、分離の前に血液に供給されるヘパリン量を、第1の体積流量と第2の体積流量との比率に基づいて、制御するように適合された制御ユニットであって、制御ユニットは、浄化された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、第3のライン区間内におけるヘパリンの濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように制御する、制御ユニットと、により特徴付けられる。それにより、第2の体積流量を特定するための手段は、例えば、ポンプ、或いは、例えば流量センサ又は圧力センサのようなセンサの輸送速度であることができる。それにより、抗凝固制御デバイスは、概して、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が、ヘパリンと同じ方法で供給されることが可能であるような方法で、適合される。
【0029】
従って、本開示は、概して、体外血液処理中において使用するための抗凝固制御デバイスであって、この抗凝固制御デバイスは、第1のライン区間内において血液を輸送するための手段、特に血液ポンプと、第1のライン区間内における血液に、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するための手段、特にポンプと、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、血球成分及び血漿に分離するための手段、特に血漿分離器と、分離された血漿を、第2のライン区間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体を経由して輸送するための手段、特に血漿ポンプと、処理された血漿及び血球成分を、第3のライン区間内において共に合わせるための手段と、を備える。それによって、この抗凝固制御デバイスは、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を供給の前に、第1のライン区間内における、特に血液ポンプにおける血漿分画の第1の体積流量を特定するための手段と、第2のライン区間内の、陰イオン交換体の上流又は下流における、特に血漿ポンプにおける血漿の第2の体積流量を特定するための手段と、分離の前に血液に供給される、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、第1の体積流量と第2の体積流量との比率に基づいて、制御するように適合された制御ユニットであって、制御ユニットは、処理された血漿及び血球成分が共に合わされた後に、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように制御する、制御ユニットと、により特徴付けられる。
【0030】
それにより、全てが等しく負の全体電荷を有している物質、又は材料、又はプロタゴニスト(protagonist)、又は分子に関して、つまり、一方では、(敗血症)患者にとっては毒性の高い物質として血液から分離されなければならないエンドトキシン、特にリポ多糖類、これに対して他方では、(敗血症)患者の生存に不可欠な物質としての、例えばヘパリンのような凝固抑制剤に関して、陰イオン交換体の選択性の欠如という基本的なジレンマが、提案される開示によって克服される。
【0031】
さらに、この抗凝固制御デバイスは、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度の実際の値を特定するための手段と、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度を、特定された実際の値、第1の体積流量と第2の体積流量との比率、並びに、第1のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の供給される量に基づいて、制御するための手段と、を備えることができる。それにより、第3のライン区間内における、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度を制御するための手段は、濃度制御手段又はコントローラであることができる。それにより、濃度制御手段又はコントローラは、特に、ヘパリン濃度の疑似的に一回の目標値設定又は目標値制御に基づいた制御変数としてのヘパリン濃度の測定された実際の値に基づいて、目標値/参照変数としてのヘパリン濃度を、疑似動的に又は自動的に制御するために使用される。これは、誘導されて(敗血症)患者に戻される血液中の実際のヘパリン濃度の、特に動的に及び/又はリアルタイムでモニタされるモニタリングのための制御変数として働く。
【0032】
この抗凝固制御デバイスは、第1のライン区間内における血液のヘマトクリット値を入力するための手段と、第1のライン区間内における血漿分画の体積流量を、血液ポンプの輸送速度、及び、入力されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、を更に備えることができる。それにより、それぞれの患者の以前に特定されたヘマトクリット値を、例えば、抗凝固制御デバイスに設けられたユーザインターフェイスを介して入力することができる。この同じユーザインターフェイスは、血漿ポンプ及び血液ポンプの輸送速度を入力するための手段としても、また、最終的に患者に流れることになる、第3のライン区間内における所望のヘパリン濃度を入力するための手段としても、機能することができる。血漿ポンプの場合と同様に、血液ポンプの輸送速度は、例えば、流量センサ又は圧力センサのようなセンサにより特定することができる。
【0033】
好ましくは、この抗凝固制御デバイスは、第1のライン区間内における血液のヘマトクリット値を特定するための手段と、第1のライン区間内における血液の体積流量を特定するための、特に血液ポンプの輸送速度を特定するための手段と、第1のライン区間内における血漿分画の体積流量を、第1のライン区間内における血液の特定された体積流量、及び、特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、を備えることができる。
【0034】
好ましくは、この抗凝固制御デバイスは、陰イオン交換体、特に血漿ポンプを通過して流れる、及び/又は血漿ポンプにおける、血漿の第2の体積流量を設定するための手段を備えることができる。
【0035】
好ましくは、この抗凝固制御デバイスは、陰イオン交換体により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、第3のライン区間内に付加的に供給するための手段を備えることができる。
【0036】
本開示の更なる一態様によると、この抗凝固制御デバイスは、血液ポンプが、第1のライン区間内において、ポンプ、特にヘパリンポンプの上流、かつ、血漿分離器の上流に配置されるように設計されることができる。しかしながら、代替的に、血液ポンプを、体外血液回路内の別の位置に配置することもできる。さらに、血漿ポンプは、第2のライン区間内において、血漿分離器の下流であるが、陰イオン交換体の上流に配置される。ここでもまた、血漿ポンプの、第2のライン区間内の別の位置における代替的配置が可能である。
【0037】
本開示によると、陰イオン交換体は、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)で改質された表面を有することができる。このことは、例えばポリミキシンB(PMB)といった、陰イオン交換体の比較に値する材料又はコーティングが、実際には、血清からLPSをはるかに不十分に除去する(Falkenhagenら、Int J Artif Organs 2014;37(3):222-232)限りにおいて、有利である。それ故に、DEAEで改質された表面を有する陰イオン交換体は、血液からLPSを吸着するための最も適した材料及び最も効率的な解決策を表す。
【0038】
以下においては、本開示について、添付の図面を参照しながら、好ましい一実施形態を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本開示よるシステム構造を例示するための図を示す。
【
図2】ヘパリン置換(heparin substitution)を行わない状態でのシミュレーションされた処理中における血液中のヘパリン濃度の低下を例示するための図を示す。
【
図3】本開示によるヘパリンを置換(substitution)した状態でのシミュレーションされた処理中における血液中のヘパリン濃度を例示するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下においては、対応する図面に基づいて、本開示の実施形態について説明する。同一の又は機能上均等な特徴には、個々の図面において、同じ参照符号が設けられている。
【0041】
図1は、体外血液処理のための方法をシミュレーションするための抗凝固制御デバイス2のシステム構造を示している。この方法を適切に実行するために、抗凝固制御デバイス2は、第1のライン区間4を備えており、この第1のライン区間4を介して、特に血液処理を受けている患者22の処理されることになる血液が、例えば蠕動式の血液ポンプといった血液ポンプ6という手段により吸引される。血液ポンプ6の下流では、血液が凝固しないことを保証するために、第1のライン区間4内に位置する血液に対し、ポンプ8、特にヘパリンポンプ8という手段により、ヘパリンが供給される。ヘパリンが添加された血液は、最後に血漿分離器10に輸送され、血漿分離器10では、血液が、一方ではその血球成分、即ち赤血球又は白血球のような細胞成分と、他方では血漿とに分離される。それにより、血漿は、例えば血液凝固のためのイオン及び蛋白質を含有している。血液の血球成分は、血漿の分画と共に血漿分離器10内に留まる一方で、血漿の別の分画は、血漿ポンプ12という手段により生じた真空によって、第2のライン区間14内に吸い込まれ、そこで、陰イオン交換体16を経由して輸送される。
【0042】
陰イオン交換体16を経由して流れることにより、負の全体電荷を有する蛋白質は、陰イオン交換体16の表面上において結合/吸着され、それにより、血漿から除去される。それにより、DEAEを有する陰イオン交換体16の表面のコーティングが、とりわけ、全てのLPSとヘパリンとをかなり効果的に吸着する。しかしながら、陰イオン交換体16の機能原理を理由に、LPS及びヘパリンに加え、例えば凝固因子といった、負の全体電荷を有する薬物及び他の血漿蛋白質もまた、除去される。処理された血漿は、陰イオン交換体16を経由して流れた後、血漿分離器10の下流であって、かつ、陰イオン交換体16の下流に位置する第3のライン区間18内に誘導され、当該第3のライン区間18内においては、処理された血漿が、血漿分離器10内に残っていた血球成分と、未処理のままであった血漿の1つの分画と、再び共に合わされて、最後に、共に合わされたものが、第3のライン区間18を経由して輸送されて患者22に戻る。
【0043】
陰イオン交換体16を経由して流れた後に共に合わされた血液が、ヘパリンの吸着を理由とする凝固が生じないように、及び、それにより、おそらくは血液処理の中止が生じるようにするために、抗凝固制御デバイス2には、ヘパリンポンプ8という手段により第1のライン区間4内におけるヘパリンの供給を制御する制御ユニット20であって、最後に患者22に流れることになる第3のライン区間18内のヘパリン濃度が、所定の、好ましくは一定の値を取るように制御する制御ユニット20が更に設けられている。この目的を達成するために、制御ユニット20は、血液ポンプ6において特定された第1のライン区間4内の血漿分画の第1の体積流量と、血漿ポンプ12において特定された第2のライン区間14内の血漿の第2の体積流量と、を検出し、それらを関係付ける。第2の体積流量を特定するために、抗凝固制御デバイス2には、例えば、血漿ポンプ12において体積流量を検出する、
図1には示されていないセンサを設けることができ、又は、抗凝固制御デバイス2は、血漿ポンプ12の輸送速度によって当該体積流量を導出することができる。同じ方法で、ヘパリンに並行して、負の全体電荷を有する更なる生物学的及び/又は薬理学的活性物質もまた、供給され及び制御されることができる。
【0044】
第1のライン区間4内の血漿分画の体積流量を特定するために、血液ポンプ6における血液の体積流量の検出に加え、ヘマトクリット値もまた必要とされる。ヘマトクリット値は、患者依存性であるという実態にもかかわらず、患者の体外血液処理の過程においてはそれほど激しく変動しないため、通常は、一定であると想定することができる。血漿ポンプ12の場合と同様に、血液の体積流量を特定するために、抗凝固制御デバイス2は、センサを備えることができ、又は、血液ポンプ6の輸送速度を用いて、血液の体積流量を導出することができる。さらに、抗凝固制御デバイス2は、例えばユーザインターフェイスの形で、第1のライン区間4内の血液のヘマトクリット値を入力するための手段を備えることができる。
【0045】
さらに、及び、現時点における最新技術に類似して、抗凝固制御デバイス2は、第3のライン区間18内に配置された透析ユニット及び/又は限外濾過ユニットをも備えることができる。
【0046】
図2は、ヘパリンの置換を何ら行わない状態でのシミュレーションされた処理中における患者22の血液中のヘパリン濃度の低下が例示される図を示している。それにより、ヘパリン濃度cは、分[min]で表記された処理時間tの関数として、いわゆる国際単位パーミリリットル[IU/ml]で表されている。この処理の前に、即ち、時点0において、ヘパリン開始濃度は、血液ポンプ6及び血漿ポンプ12の異なる輸送速度において、5から11IU/mlに設定されており、これが、測定時間毎に4つの測定値が記録されている理由である。
図2に基づいて、血液中のヘパリン濃度は、処理の進行に伴って指数関数的速度で低下することが明らかになっている。このことは、血液中のヘパリン濃度cが、ヘパリン開始濃度Gから始まって、処理時間t及び解離定数(distance constant)kに依存して下がることを意味する。当該関係性について、以下のように表すことができる。
【数1】
【0047】
式(1)を解離定数kについて整理し、処理時間tに亘って積分すると、以下の関係性が得られる。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0048】
式中、ceffは、時間tにおける実効ヘパリン濃度を表し、c0は、血液中のヘパリン開始濃度を表し、VSplasmaは、第2のライン区間14内の血漿ポンプ12における血漿の体積流量を表し、GVplasmaは、ヘパリンポンプ8によるヘパリンの供給前の第1のライン区間4内における、特に血液ポンプ6における血漿分画の全体積を表す。式(2)から、概して、結果的に生じる関係性は、第3のライン区間18内におけるヘパリン濃度の一定性を得るためには、ヘパリンポンプ8を介して供給されるべきヘパリン量が増加されなければならず、かつ、この増加を、第2のライン区間14内における陰イオン交換体16を経由した部分的なヘパリンの流れが補償されるように行わなければならない、というものである。ここで、当該部分的なヘパリンの流れは、血漿ポンプによって設定することが可能な血漿流と相関する。
【0049】
しかしながら、臨床診療においては、ヘパリン濃度は規定されないものの、規定された体積流量でヘパリンが注入される。本開示によると、最後に患者22に流れることになる、第3のライン区間18内における所望のヘパリン体積流量HEP2は、処理の前に設定することができ、そのため、当該パラメータを含めることにより、及び、式(2)に基づいて、以下の関係性が得られる。
【数8】
【0050】
式中、PFは、第2のライン区間14内における血漿流を表し、BFは、第1のライン区間4内における血流を表し、HKは、所定のヘマトクリット値を表し、HEP1は、ヘパリンポンプ8によって供給されるべきヘパリン量を表しており、このヘパリン量は、制御ユニット20という手段により制御される。
【0051】
既に上述したように、第2のライン区間14内における血漿流PFは、血漿ポンプ12の回転速度により、又は、例えばセンサにより、検出することができ、これは、第1のライン区間4内の血液ポンプ6における血液の特定された輸送速度から結果的に生じる、第1のライン区間4内における血流BFと同様である。式(3)についてHEP1に関して整理すると、以下のものが得られる。
【数9】
【0052】
第1のライン区間4内において供給されるべきヘパリン量、又は、ヘパリンポンプ8の輸送速度を式(4)により最終的に計算するために、抗凝固制御デバイス2のオペレータは、例えばユーザインターフェイスを介して、HEP2、PF、BF、及び、患者22の特定されたHKを、前もって又は処理中にも入力する。抗凝固制御デバイス2は、その後、処理データを用いて、第1のライン区間4内において供給されるべきヘパリン量、又は、ヘパリンポンプ8の輸送速度を自動的に制御することができる。
【0053】
可能性としての干渉因子の影響下においてさえもHEP2を一定に保つために、抗凝固制御デバイス2の制御ユニット20を、制御ユニットとして設計することも可能である。すると、制御ユニットは、第3のライン区間18内において特定された実際の値、及び、第1のライン区間4内におけるヘパリン供給前の血漿分画の体積流量と、第2のライン区間14内の血漿ポンプ12における血漿の体積流量との比率に基づいて、HEP2を制御する。
【0054】
よって、本開示の1つの着想とは、透過物(permeate)から、即ち、血漿ポンプ12により血漿分離器10から取り出された、第2のライン区間14内における(部分的な)血漿体積流から、同様に負の全体電荷を有するヘパリンを同時に共同分離(co-separation)することによってしか、毒性の高いLPSを、陰イオン交換体16において抽出することができないときに、hの当該損失量を、例えば敗血症患者22に必要とされるような一定の目標濃度という観点から、置換しなければならないというものである。それが、時として生命に不可欠な解毒手段であり得る限り、ヘパリンの第2の分画を伴わずに、LPSの第1の分画を血漿から抽出できないことを技術上容易に受け入れることができる。これは、また、LPSの第1の分画に対して特に選択的な分離マトリックスが利用可能であるという理想的な状況下の場合よりも、陰イオン交換体16が一段と速く容量的に消耗し得るということを意味する。換言すると、陰イオン交換体16のマトリックスを過剰に、疑似的に『不経済な』方法で使用することが可能であれば、生命を救う解毒という絶対的な目標が達成される。
【0055】
更なる有利な方法においては、ヘパリンポンプ8により、第1のライン区間内において供給されるヘパリン量による置換は、3つの全てのライン区間に亘って、凝固を回避するように働く。また、この点において、本開示は、導入部で説明したような、陰イオン交換体のヘパリンへの曝露を好ましくは行わないか又は僅かにしか行わないという専門家の教示から逸脱しているという点で、パラダイムの更なる変化を示している。
【0056】
図2とは対照的に、
図3は、本開示によるヘパリンを置換した状態でのシミュレーションされた処理中における患者22の血液中のヘパリン濃度を例示するための図を示している。
図3においても、ヘパリン濃度cは、分[min]で表記された処理時間tの関数として、いわゆる国際単位パーミリリットル[IU/ml]で表されている。この場合では、最後に第3のライン区間18内に存在することになり、かつ、患者22に供給されることになる、1.4IU/mlのヘパリン濃度が事前に設定されていた。制御ユニット20は、
図3において、第1のライン区間4内において供給されるべきヘパリン量、又は、ヘパリンポンプ8の輸送速度を式(4)に基づいて制御する。このようにして、HEP2を、全処理期間に亘って一定に保つことができる。
【0057】
よって、本開示は、体外治療の過程において、陰イオン交換体16の使用と、ヘパリンの同時使用とを可能にする。それにより、Falkenhagenら(Int J Artif Organs 2014;37(3):222-232)による、血液からエンドトキシンを除去するための最も適した材料を、敗血症の場合におけるヒトの体外治療において適用することが可能になる。
【符号の説明】
【0058】
2:抗凝固制御デバイス
4:第1のライン区間
6:血液ポンプ
8:ポンプ/ヘパリンポンプ
10:血漿分離器
12:血漿ポンプ
14:第2のライン区間
16:陰イオン交換体
18:第3のライン区間
20:制御ユニット
22:患者
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液処理中において適用するための抗凝固制御デバイ
スであって、
第1のライン区
間内において血液を輸送するための手
段と、
前記第1のライン区
間内における前記血液に、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物
質を供給するための手
段と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、血球成分及び血漿に分離するための手
段と、
分離された前記血漿を、第2のライン区
間内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換
体を経由して輸送するための手
段と、
前記処理された血漿及び前記血球成分を、第3のライン区
間内において共に合わせるための手段と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、前記第1のライン区
間内におけ
る前記血漿分画の第1の体積流量を特定するための手段と、
前記第2のライン区
間内の、前記陰イオン交換
体の上流又は下流におけ
る前記血漿の第2の体積流量を特定するための手段と、
を備え、
前記分離の前に前記血液に供給される、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との比率に基づいて、制御するように適合された制御ユニッ
トであって、前記制御ユニッ
トは、前記処理された血漿及び前記血球成分が共に合わされた後に、前記第3のライン区
間内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定
の目標値を取るように制御する、前記制御ユニッ
トにより特徴付けられる、抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項2】
前記第3のライン区
間内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度の実際の値を特定するための手段と、
前記第3のライン区
間内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度を、前記特定された実際の値、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との前記比率、並びに、前記第1のライン区
間内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記供給される量に基づいて、制御するための手段と、により特徴付けられる、請求項
1に記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項3】
前記第1のライン区
間内における前記血液のヘマトクリット値を入力するための手段と、
前記第1のライン区
間内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記血液ポン
プの前記輸送速度、及び、前記入力されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、請求項
1又は
2に記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項4】
前記第1のライン区
間内における前記血液のヘマトクリット値を特定するための手段と、
前記第1のライン区
間内における前記血液の体積流量を特定するため
の手段と、
前記第1のライン区
間内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記第1のライン区
間内における前記血液の前記特定された体積流量、及び、前記特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、請求項
1から
3のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項5】
前記陰イオン交換
体を通過して流れる前記血漿の前記第2の体積流量を設定するための手段により特徴付けられる、請求項
1から
4のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項6】
前記陰イオン交換
体により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、前記第3のライン区
間内に付加的に供給するための手段により特徴付けられる、請求項
1から
5のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項7】
前記血液ポン
プが、前記第1のライン区
間内において、前記ポン
プの上流、かつ、前記血漿分離
器の上流に配置されることによって特徴付けられる、請求項
1から
6のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項8】
前記血漿ポンプが、前記第2のライン区
間内において、前記血漿分離
器の下流であるが、前記陰イオン交換
体の上流に配置されることによって特徴付けられる、請求項1から
7のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【請求項9】
前記陰イオン交換
体が、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)で改質された表面を有していることによって特徴付けられる、請求項
1から
8のいずれかに記載の抗凝固制御デバイ
ス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
よって、本開示は、体外治療の過程において、陰イオン交換体16の使用と、ヘパリンの同時使用とを可能にする。それにより、Falkenhagenら(Int J Artif Organs 2014;37(3):222-232)による、血液からエンドトキシンを除去するための最も適した材料を、敗血症の場合におけるヒトの体外治療において適用することが可能になる。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
体外血液処理のための装置において、体外血液処理中における抗凝固を制御するための方法であって、
第1のライン区間(4)内において、特に血液ポンプ(6)という手段により、血液を輸送するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液に、特にポンプ(8)という手段により、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するステップと、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された前記血液を、特に血漿分離器(10)という手段により、血球成分及び血漿に分離するステップと、
分離された前記血漿を、特に血漿ポンプ(12)という手段により、第2のライン区間(14)内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体(16)を経由して輸送するステップと、
前記処理された血漿及び前記血球成分を、第3のライン区間(18)内において共に合わせるステップと、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、前記第1のライン区間(4)内における、特に前記血液ポンプ(6)における前記血漿分画の第1の体積流量を特定するステップと、
前記第2のライン区間(14)内の、前記陰イオン交換体(16)の上流又は下流における、特に前記血漿ポンプ(12)における前記血漿の第2の体積流量を特定するステップと、
を含み、
以下のステップ、即ち、
前記分離の前に前記血液に供給される、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との比率に基づいて設定するステップであって、前記設定するステップは、前記浄化された血漿及び前記血球成分が共に合わされた後に、前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように設定する、前記設定するステップにより特徴付けられる、方法。
(項目2)
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度の実際の値を特定するステップと、
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度を、前記特定された実際の値、前記体積流量と前記第2の体積流量との前記比率、並びに、前記第1のライン区間(4)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記供給される量に基づいて、制御するステップと、により特徴付けられる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を特定するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液の体積流量を特定するステップ、特に前記血液ポンプ(6)の輸送速度を特定するステップと、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記第1のライン区間(4)内における前記血液の前記特定された体積流量、及び、前記特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するステップと、により特徴付けられる、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
特に前記血漿ポンプ(12)という手段により、前記陰イオン交換体(16)を通過して流れる前記血漿の前記第2の体積流量を設定するステップにより特徴付けられる、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記陰イオン交換体(16)により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、前記第3のライン区間(18)内に付加的に供給するステップにより特徴付けられる、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
体外血液処理中において適用するための抗凝固制御デバイス(2)であって、
第1のライン区間(4)内において血液を輸送するための手段、特に血液ポンプ(6)と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液に、負の全体電荷を有するいくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質、特にヘパリンを供給するための手段、特にポンプ(8)と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質が添加された血液を、血球成分及び血漿に分離するための手段、特に血漿分離器(10)と、
分離された前記血漿を、第2のライン区間(14)内において、リポ多糖類を吸着するために陰イオン交換体(16)を経由して輸送するための手段、特に血漿ポンプ(12)と、
前記処理された血漿及び前記血球成分を、第3のライン区間(18)内において共に合わせるための手段と、
負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質を前記供給の前に、前記第1のライン区間(4)内における、特に前記血液ポンプ(6)における前記血漿分画の第1の体積流量を特定するための手段と、
前記第2のライン区間(14)内の、前記陰イオン交換体(16)の上流又は下流における、特に前記血漿ポンプ(12)における前記血漿の第2の体積流量を特定するための手段と、
を備え、
前記分離の前に前記血液に供給される、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の量を、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との比率に基づいて、制御するように適合された制御ユニット(20)であって、前記制御ユニット(20)は、前記処理された血漿及び前記血球成分が共に合わされた後に、前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の濃度が、所定の、特に一定の目標値を取るように制御する、前記制御ユニット(20)により特徴付けられる、抗凝固制御デバイス(2)。
(項目7)
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度の実際の値を特定するための手段と、
前記第3のライン区間(18)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記濃度を、前記特定された実際の値、前記第1の体積流量と前記第2の体積流量との前記比率、並びに、前記第1のライン区間(4)内における、負の全体電荷を有する前記いくつかの生物学的及び/又は薬理学的活性物質の前記供給される量に基づいて、制御するための手段と、により特徴付けられる、項目6に記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目8)
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を入力するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記血液ポンプ(6)の前記輸送速度、及び、前記入力されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、項目6又は7に記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目9)
前記第1のライン区間(4)内における前記血液のヘマトクリット値を特定するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血液の体積流量を特定するための、特に前記血液ポンプ(6)の輸送速度を特定するための手段と、
前記第1のライン区間(4)内における前記血漿分画の前記体積流量を、前記第1のライン区間(4)内における前記血液の前記特定された体積流量、及び、前記特定されたヘマトクリット値に基づいて、特定するための手段と、により特徴付けられる、項目6から8のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目10)
前記陰イオン交換体(16)、特に前記血漿ポンプ(12)を通過して流れる前記血漿の前記第2の体積流量を設定するための手段により特徴付けられる、項目6から9のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目11)
前記陰イオン交換体(16)により吸着される、薬物及び/又は血液固有の物質を、前記第3のライン区間(18)内に付加的に供給するための手段により特徴付けられる、項目6から10のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目12)
前記血液ポンプ(6)が、前記第1のライン区間(4)内において、前記ポンプ(8)の上流、かつ、前記血漿分離器(10)の上流に配置されることによって特徴付けられる、項目6から11のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目13)
前記血漿ポンプが、前記第2のライン区間(14)内において、前記血漿分離器(10)の下流であるが、前記陰イオン交換体(16)の上流に配置されることによって特徴付けられる、項目6から12のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
(項目14)
前記陰イオン交換体(16)が、ジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)で改質された表面を有していることによって特徴付けられる、項目6から13のいずれかに記載の抗凝固制御デバイス(2)。
【国際調査報告】