(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-09
(54)【発明の名称】窒素含有炭素触媒の再生方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 38/08 20060101AFI20220902BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20220902BHJP
B01J 27/28 20060101ALI20220902BHJP
B01J 38/04 20060101ALI20220902BHJP
B01J 38/02 20060101ALI20220902BHJP
C07C 21/06 20060101ALI20220902BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20220902BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
B01J38/08
B01J27/24 Z
B01J27/28 Z
B01J38/04 Z
B01J38/02
C07C21/06
C07C17/25
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576731
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2020131764
(87)【国際公開番号】W WO2021139429
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】202010014910.0
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(71)【出願人】
【識別番号】520044047
【氏名又は名称】台湾塑膠工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】樊 斯斯
(72)【発明者】
【氏名】徐 金銘
(72)【発明者】
【氏名】黄 延強
(72)【発明者】
【氏名】段 洪敏
(72)【発明者】
【氏名】張 涛
(72)【発明者】
【氏名】鄭 明煌
(72)【発明者】
【氏名】洪 万▲トゥン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 玉振
(72)【発明者】
【氏名】呉 建慧
(72)【発明者】
【氏名】鄭 雅文
(72)【発明者】
【氏名】温 明憲
(72)【発明者】
【氏名】張 朝欽
(72)【発明者】
【氏名】黄 朝晟
(72)【発明者】
【氏名】葉 律真
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA10
4G169BA02B
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169CB26
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FC07
4G169FC08
4G169GA02
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA32
4H006BA34
4H006BA84
4H006EA03
4H039CA29
4H039CG20
(57)【要約】
窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成して、再生窒素含有炭素触媒を得る窒素含有炭素触媒の再生方法。該方法は、窒素ドープ炭素タイプの触媒に適用できる汎用的な方法であり、1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する窒素含有炭素触媒を再生することに用いられる。該方法は、触媒の製造コストを大幅に低減し、触媒の耐用年数を向上させ、再生過程の速度が速く、温度に対する要件が低く、簡単に制御可能である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有炭素触媒の再生方法であって、
窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成して、再生窒素含有炭素触媒を得る、ことを特徴とする再生方法。
【請求項2】
窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成して降温し、再生窒素含有炭素触媒を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
まず、窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成した後、不活性雰囲気に切り替えて降温し、再生窒素含有炭素触媒を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記窒素含有炭素触媒は、窒素ドープ炭素タイプを有する触媒を含み、前記窒素含有炭素触媒において、窒素元素が共有結合の形で炭素材料にドープされており、前記窒素含有炭素中の窒素元素の質量含有量は0.1~20%である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記焼成条件として、昇温速度0.1~20℃/minで、最高温度300~850℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~240minとする、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成条件として、昇温速度0.1~10℃/minで、最高温度300~800℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~90minとする、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記窒素含有雰囲気中の窒素は、アンモニアガス、N
2Oのうちの少なくとも1種に由来する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記窒素含有雰囲気は、第1のガスと第2のガスとからなる混合ガスであり、前記第1のガスは、アンモニアガス、N
2Oから選択される少なくとも1種であり、
前記第2のガスは不活性ガスである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率は2~100%である、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスから選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成すると、窒素含有量は3~150%増加する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する窒素含有炭素触媒の再生における、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項13】
1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する方法であって、
1,2-ジクロロエタンを気化した後、窒素含有炭素触媒を充填した反応器に導入し、触媒を不活性化させた後、ガスを窒素含有雰囲気に切り替えて再生し、再生過程終了後、ガスを1,2-ジクロロエタンを含む反応雰囲気に切り替えるステップを含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は窒素含有炭素触媒の再生方法及びその使用に関し、触媒分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(略称PVC)は、単量体である塩化ビニル(VCM)を重合してなる世界的に広く使用されている汎用型合成樹脂材料である。VCMは、主に、塩化水銀を触媒としたアセチレン塩化水素付加経路と、石油を原料としたジクロロエタン(EDC)分解経路との2つの製造方法がある。水銀の潜在毒性が大きく、しかも水銀触媒に起因する水銀汚染が深刻であるため、現在、次第に経路2を経路1の代わりにし、ジクロロエタンを分解してVCMを製造する技術を研究することは非常に重要な意義がある。現在、工業的に採用されているジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する技術は、無触媒下の熱分解技術であり、分解温度は500~600℃であり、EDCの転化率は約50%に制御されている。熱分解には、反応温度が高く、エネルギー消費量が多く、安全性が低く、コークス化しやすく、コークスを頻繁に除去する必要があり、生産期間が短いなどの一連の問題がある。触媒を用いることにより、分解反応温度を大幅に低下させ、反応選択性を向上させ、反応器のコーキング度を緩和することができる。現在、特許で報告されている触媒の多くは窒素ドープ多孔質炭触媒であり、EDC転化率が高く、生成物のVCM選択性が良い等の利点があるが、反応過程で生成される炭溜まりやタールが窒素ドープ多孔質炭材料の表面に蓄積し、触媒の寿命が短いという問題を引き起こす。一方、多孔質炭材上の堆積炭は、ケイ酸アルミニウムやモレキュラーシーブ上の堆積炭のように空気下簡単な焼成することにより除去することができず、この酸化再生の方法では、堆積炭を除去する際に多孔質炭材の元の骨格構造を破壊し、触媒の機械的強度の低下や活性の低下を引き起こす。そのため、多孔質炭素触媒の不活性化後の再生の問題を解決することは、EDC接触分解工業化に応用できるかどうかの鍵の一つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一態様によれば、窒素含有炭素触媒の再生方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
窒素含有炭素触媒の再生方法であって、
窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成して、再生窒素含有炭素触媒を得る。
【0005】
好適には、窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成して降温し、再生窒素含有炭素触媒を得る。
【0006】
好適には、まず、窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成した後、不活性雰囲気に切り替えて降温し、再生窒素含有炭素触媒を得る。
【0007】
好適には、前記窒素含有炭素触媒は、窒素ドープ炭素タイプを有する触媒を含み、前記窒素含有炭素触媒において、窒素元素が共有結合の形で炭素材料にドープされており、前記窒素含有炭素中の窒素元素の質量含有量は0.1~20%である。
【0008】
好適には、前記窒素含有炭素は担体である。
【0009】
好適には、前記窒素含有炭素を活性成分として無機多孔質材料の表面に担持させる。
【0010】
該方法は、普遍的な方法であり、窒素ドープ炭素タイプを有する触媒に適用できる。
【0011】
好適には、前記焼成条件として、昇温速度0.1~20℃/minで、最高温度300~850℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~240minとする。
【0012】
好適には、昇温速度0.1~5℃/minで、最高温度500~800℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~60minとする。
【0013】
好適には、昇温速度0.1~10℃/minで、最高温度300~800℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~90minとする。
【0014】
好適には、昇温速度2~10℃/minで、最高温度300~800℃まで昇温し、最高温度での滞在時間を0~90minとする。
【0015】
本出願において、0minとは、窒素含有炭素触媒が窒素含有雰囲気中で焼成温度に達した後、滞在せず、直ちに降温することを指す。
【0016】
好適には、前記昇温速度の上限は、0.5℃/min、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/min、6℃/min、7℃/min、8℃/min、9℃/min又は10℃/minから選択され、下限は、0.1℃/min、0.5℃/min、1℃/min、2℃/min、3℃/min、4℃/min、5℃/min、6℃/min、7℃/min、8℃/min又は9℃/minから選択される。
【0017】
好適には、前記最高温度の上限は、350℃、400℃、500℃、550℃、600℃、700℃又は800℃から選択され、下限は、300℃、350℃、400℃、500℃、550℃、600℃又は700℃から選択される。
【0018】
好適には、前記滞在時間の上限は、10min、20min、30min、40min、50min、60min、70min、80min又は90minから選択され、下限は、0min、10min、20min、30min、40min、50min、60min、70min又は80minから選択される。
【0019】
好適には、前記窒素含有雰囲気中の窒素は、アンモニアガス、N2Oのうちの少なくとも1種に由来する。
【0020】
好適には、前記アンモニアガスは、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、尿素化合物を熱分解して生成したアンモニアガスに由来するものであってもよい。
【0021】
本発明の窒素含有雰囲気源としては、原則として、熱分解によりアンモニアガスを発生可能な有機物又は無機物のいずれかを用いてもよい。
【0022】
好適には、前記窒素含有雰囲気は、第1のガスと第2のガスとからなる混合ガスであり、
前記第1のガスは、アンモニアガス、Nガス2Oから選択される少なくとも1種であり、
前記第2のガスは不活性ガスである。
【0023】
好適には、混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率は2~100%である。
【0024】
好適には、混合ガスに対する前記第1ガスの質量百分率は2~99.9%である。
【0025】
好適には、混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率は5~75%である。
【0026】
好適には、混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率は5~30%である。
【0027】
好適には、混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率は2~75%である。
【0028】
好適には、混合ガスに対する前記第1のガスの質量百分率の上限は、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%又は100%から選択され、下限は、2%、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、又は70%から選択される。
【0029】
好適には、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスから選択される少なくとも1種である。
【0030】
再生過程は窒素含有炭素の組成構造を変化し、活性成分窒素の含有量を増加させ、再生後の触媒性能は新しい触媒に相当し、さらにそれよりも高いものとする。
【0031】
好適には、前記窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成すると、窒素含有量は3~150%増加する。
【0032】
好適には、窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中で焼成すると、窒素含有量は3~130%増加する。
【0033】
好適には、1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する反応を触媒するときに不活性化した窒素含有炭素触媒を窒素含有雰囲気中に入れて、室温から一定温度まで昇温し、一定時間滞在した後に焼成を停止し、不活性雰囲気に切り替えて室温まで自然降温し、再生した触媒を分解反応に直接再利用する。
【0034】
本出願の別の態様として、1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する窒素含有炭素触媒の再生における使用を提供する。
【0035】
本出願の更なる態様として、1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する方法を提供する。
【0036】
1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する方法であって、
1,2-ジクロロエタンを気化した後、窒素含有炭素触媒を充填した反応器に導入し、触媒を不活性化させた後、ガスを窒素含有雰囲気に切り替えて再生し、再生過程終了後、ガスを1,2-ジクロロエタンを含む反応雰囲気に切り替えるステップを含む。
【0037】
好適には、1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造する触媒の再生方法及びその使用であって、1,2-ジクロロエタンを気化した後、触媒を充填した固定床・流動床反応器に導入し、触媒を不活性化させた後、ガスを窒素含有雰囲気に切り替えて再生し、再生過程終了後、ガスを1,2-ジクロロエタンを含有する反応雰囲気に切り替えることにより、触媒の原位置再生を実現する。
【0038】
本出願において、特に明記されていない限り、与えられたデータ範囲は、範囲内の任意の値から選択され、範囲の端点値を含む。
【0039】
本出願による有益な効果は次のものを含む。
(1)本発明により提供される再生方法は、窒素含有炭素を活性成分としても担体としても使用することができる窒素ドープ炭素材料に適用可能であり、本発明の再生方法を用いて再生することにより、いずれの場合においても改善できる。
(2)再生して得られた触媒は、性能が安定しており、再生を複数回繰り返しても性能は新しい触媒に比べて低下していない。
(3)従来の酸化再生方式は、不活性化触媒を焼成することにより触媒表面の蓄積炭素の部分を除去し、触媒の活性を回復させる。酸化再生は強い発熱反応であり、温度制御が困難であり、温度が急激に上昇しやすく、触媒自体の炭素層を破壊する。一方、本発明による窒素含有雰囲気下での再生方法は、温度精度の制御に対する要件が低く、温度が高いほど再生性能が良く、再生後の触媒は、選択性と転化率の両方が新しい触媒に相当する。
(4)再生過程は反応器において原位置で行うことができ、触媒の再利用を実現し、触媒の製造コストを大幅に低減し、この触媒は、窒素含有雰囲気下で再生するため、窒素源が安価で入手されやすいので、産業上の利用が極めて期待される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】シリカゲル担持窒素含有炭素触媒サンプル(Fresh-Cat#)の外観図である。
【
図2】実施例1と比較例1で得られた再生触媒の反応時間に応じて変化する原料転化率の模式図である。
【
図3】実施例2、実施例3、実施例4で得られた再生触媒の反応時間に応じて変化する原料転化率の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本出願は、実施例を参照して以下に詳細に説明されるが、本出願はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、実際の必要に応じて、本発明で提供される方法を用いて、再生条件を変更して、異なる再生効果を得ることができる。
【0042】
特に明記されていない限り、本出願の実施例における原料及び触媒は、いずれも商業的な方法で購入されるものである。特に明記されていない限り、テスト方法はすべて通常の方法を採用し、機器の設定はすべてメーカーが推奨した設定を採用する。
【0043】
このうち、シリカゲル小球は山東東営一鳴新材料有限公司の80~120メッシュの粗孔微小球シリカゲルとして購入したもので、白色である。
【0044】
本出願の実施例における分析方法は以下の通りである。
【0045】
窒素元素の含有量はリマン社のEA3000元素分析計で測定する。
【0046】
1,2-ジクロロエタンの転化率及び塩化ビニルの選択性は固定床反応器分析により測定し、1,2-ジクロロエタンを窒素ガスに担持して反応器にバブリングし、窒素ガス流量2.5ml/min、バブリング温度5℃、触媒充填量0.2g、床での滞在時間18.1sとする。
【0047】
本出願では、再生した触媒を1,2-ジクロロエタンを分解して塩化ビニルを製造するために用いたが、反応に誘導期間があり、誘導期間中は反応時間が長くなるにつれて転化率が徐々に高くなり、3日経過後は安定化している。
【0048】
本出願の実施例における転化率、選択性は以下のように計算される。
【0049】
本出願の実施例では、1,2-ジクロロエタンの転化率及び塩化ビニルの選択性は、全てモル数に基づいて計算される。
【0050】
1,2-ジクロロエタンの転化率=反応で消費された1,2-ジクロロエタン(mol)/反応器に導入された1,2-ジクロロエタン(mol)×100%
塩化ビニルの選択性=反応により生成した塩化ビニル(mol)/反応により生成した全生成物の合計(mol)×100%
【0051】
窒素含有炭素触媒サンプルの調製:
室温で1000mLビーカーに200mLのフランメタノールを加え、撹拌しながら2.00gのシュウ酸を加え、溶解後、300mLのキシレンを加え、ビーカーに500mLの粗孔微小球シリカゲルを加え、20℃の水浴鍋に入れて6時間浸漬し、濾過して余分な液体を除去した後、1000mLビーカーに入れ、60℃の水浴にて12時間重合し、90℃に昇温して12h重合した。
処理後の粗孔シリカゲル小球500mLを回転管式炉石英管内に入れ、窒素ガスを流量250mL/minで4時間導入して、空気を置換しながら浸漬した小球を乾燥させた。回転管式炉内の窒素ガス保護下、1℃/minで150℃に昇温し、3時間保温した後、450℃に昇温し、3時間保温し、室温に降温した。
窒素ガス下で降温した後、窒素ガスの流量を45mL/min、アンモニアガスの流量を320mL/minに変更し、昇温前にガスを置換し、5℃/minで800℃に昇温し、1.5保温し、アンモニアガスの導入を停止し、窒素ガスの流量を250mL/minに変更し、600℃に降温して、1.5時間保温し、室温に自然降温した。担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は6.1質量%であった。サンプルの外観を
図1に示し、Fresh-Cat#と記す。
触媒を担持した固定床反応器に1,2-ジクロロエタンをバブリングし、反応器温度を250℃、1,2-ジクロロエタンの滞在時間(G HSV)を18.1sとした。テストの結果、1,2-ジクロロエタンの転化率は13%、塩化ビニルの選択性は99%であった。45日反応後、1,2-ジクロロエタンの転化率は10%、塩化ビニルの選択性は98%であった。不活性化後のサンプルを45d-Cat#と記す。
【0052】
再生実験
実施例1
不活性化した触媒45d-Cat#をアンモニアガスと窒素ガスの混合雰囲気中に置き、室温から800℃まで昇温し、800℃で1.5h反応を持続し、窒素ガスに切り替えて室温まで自然降温した。昇温速度は5℃/min、アンモニアの質量百分率は50%であり、NH
3-1#と記す。再生後の触媒の評価過程は上記過程と同様であり、1,2-ジクロロエタンの転化率は15%であり、担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は14.1質量%であり、反応時間に応じた1,2-ジクロロエタンの転化率の変化は
図2に示す。塩化ビニルの選択性は99%であった。
図2から分かるように、再生後の触媒の誘導期における転化率はすでに16%以上に達しており、新しい触媒の転化率の13%より優れていることに加えて、再生後の触媒に誘導期が存在し、誘導期内の転化率は時間の延長とともに次第に上昇し、安定後の転化率は16%より高く、このことから、触媒性能が再生過程を通じて回復し、新しい触媒より優れていることを示した。しかし、不活性雰囲気下で昇温した後、窒素含有雰囲気(比較例1)に導入すると、触媒の転化率と選択性は共に低下した。
【0053】
比較例1
まず、不活性化した触媒を窒素雰囲気中に置き、室温から800℃まで昇温し、800℃に達した後、アンモニアガスと窒素ガスの混合雰囲気に切り替え、1.5時間継続した以外、他の反応条件はすべて実施例1と同じであった。DB-1#と記し、担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は17.6質量%であり、触媒評価過程は上記過程と同様であり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は3%、塩化ビニルの選択性は92%であった。1,2-ジクロロエタンの転化率を
図2に示す。以上から分かるように、この方法により処理された触媒では、担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の質量が増加するものの、処理順序が異なるため触媒の再生が実現できず、これは、アンモニアガスが存在しない雰囲気では高温で触媒が不可逆的に破壊され、さらにアンモニアガスを含むガスを導入しても触媒の再生が困難であるためであった。
【0054】
実施例2
不活性化した触媒をアンモニアガスと窒素ガスの混合雰囲気中に置き、室温から550℃に上昇した直後に窒素ガスに切り替え、室温まで自然降温した。昇温速度は5℃/min、アンモニアの質量百分率は25%であり、NH
3-2#と記し、窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は6.5質量%であった。再生後の触媒評価過程は上記過程と同様であり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は12%であり、1,2-ジクロロエタンの転化率は
図3に示され、塩化ビニルの選択性は99%であった。誘導期を経て安定化した後、1,2-ジクロロエタンの転化率は13%以上であった。
【0055】
実施例3
実施例2と異なる点は、アンモニアガスの質量百分率は75%であり、NH
3-3#と記し、担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は6.3質量%であることであり、再生後の触媒評価過程は上記過程と同様であり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は11%であり、1,2-ジクロロエタンの転化率は
図3に示され、塩化ビニルの選択性は99%であった。誘導期を経て安定化した後、1,2-ジクロロエタンの転化率は13%以上であった。
【0056】
実施例4
実施例3と異なる点は、550℃で1h滞在し、NH
3-4#と記し、担持窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量は6.9質量%であることであり、再生後の触媒評価過程は上記過程と同様であり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は10%であり、反応性能は
図3に示され、塩化ビニルの選択性は99%であった。誘導期を経て安定化した後、1,2-ジクロロエタンの転化率は13%以上であった。
図3は、実施例2、実施例3、実施例4で得られた再生触媒の反応時間に応じて変化する原料転化率の模式図である。
【0057】
実施例5
実施例2と異なる点は、昇温速度が0.1℃/minであることであった。
【0058】
実施例6
実施例2と異なる点は、昇温速度が10℃/minであることであった。
【0059】
実施例7
実施例2と異なる点は、アンモニアガスの質量百分率が2%であることであった。
【0060】
実施例8
実施例2と異なる点は、アンモニアガスの質量百分率が5%であることであった。
【0061】
実施例9
実施例2と異なる点は、アンモニアガスの質量百分率が15%であることであった。
実施例5~9で再生した触媒について、実施例2と同様の評価過程を用い、250℃で反応させ、誘導期を経て安定化した後、塩化ビニルの選択性は99%、1,2-ジクロロエタンの転化率はいずれも13%以上であった。
【0062】
実施例10
実施例3と異なる点は、最高温度300℃まで昇温し、再生後の窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量が6.4質量%であることであり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は8%であり、塩化ビニル選択性は99%であった。誘導期を経て安定化した後、1,2-ジクロロエタンの転化率は13%以上であった。
【0063】
実施例11
実施例3と異なる点は、最高温度600℃まで昇温し、再生後の窒素含有炭素材料中の窒素元素の含有量が6.6質量%であることであり、250℃で反応した場合、1,2-ジクロロエタンの転化率は15%であり、塩化ビニル選択性は99%であった。誘導期を経て安定化した後、1,2-ジクロロエタンの転化率は15%以上であった。
【0064】
本出願の再生方法は非常に便利で迅速であり、実施例2のように、短い滞在時間で良好な再生性能を達成でき、本出願の再生方法は非常に経済的で効率的であり、実施例7のように、低いアンモニア濃度で良好な再生性能を達成でき、再生コストを大幅に節約できることが分かった。
【0065】
以上は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、本出願を何ら制限するものではなく、本出願は好適な実施例をもって上記のように開示されているが、本出願を限定するものではなく、当業者であれば、本出願の技術的解決手段を逸脱しない範囲内で、上記開示された技術的内容を利用して若干の変更又は修飾を行ったことは、等価実施例に相当し、いずれも技術的解決手段の範囲内に属する。
【国際調査報告】