(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-09
(54)【発明の名称】耳、鼻、および咽喉の不調を治療するデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/02 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
A61B18/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577690
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020041248
(87)【国際公開番号】W WO2021007348
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518284846
【氏名又は名称】アリネックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ウイリアム・ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】サアーダト,ヴァヒド
(72)【発明者】
【氏名】ムーサヴィ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ラミド,シャーウィン
(72)【発明者】
【氏名】トゥロフスキー,ローマン
(72)【発明者】
【氏名】グールド,ウイリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,マット・アリソン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ03
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】
プローブシャフトの遠位端が鼻腔を通して導入され、遠位端は、鼻腔内で組織を操作するように形状設定された低プロフィルの第1の構成を有するエンドエフェクタを有する、鼻炎などの状態を治療するデバイスおよび方法が本明細書に記載されている。遠位端は、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の直近に位置決めされてよい。適切に位置決めされると、遠位端は、第1の構成から、鼻組織領域に接触しそれに沿うように形状設定される第2の構成に再構成されてよく、次いで、少なくとも1つの鼻神経が遠位端を介してアブレーションされてよい。アブレーションは、クライオ療法などの様々な機構を用いて、任意選択で直接視覚化して行われてよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端および近位端を有するプローブシャフトであって、前記プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸が前記プローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように湾曲部分を有し、前記プローブシャフトの前記近位部分の可撓性が前記プローブシャフトの前記遠位部分の可撓性よりも大きいプローブシャフトと、
前記プローブシャフトの前記近位端に結合されるハウジングと、
前記ハウジングに結合されるハンドルと、
前記プローブシャフトの前記遠位端に結合されるエンドエフェクタであって、前記プローブシャフトの前記遠位端が患者の鼻腔を通して前進され、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の直近に位置決めされるときに非外傷性表面を画定し、前記鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成されるエンドエフェクタと、
前記ハンドルに位置決めされるトリガであって、前記トリガが作動すると、前記エンドエフェクタが前記鼻組織領域に接触しているときに、前記エンドエフェクタが前記少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするトリガと
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記プローブシャフトの前記遠位部分の前記長手方向軸と前記プローブシャフトの前記近位部分の前記長手方向軸との間の前記ゼロでない角度は、約15度と約25度との間にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記プローブシャフトの前記湾曲部分は、前記エンドエフェクタの前記遠位端から約4cmの位置に位置決めされ、前記プローブシャフトの前記湾曲部分によって、前記エンドエフェクタの前記遠位端が前記プローブシャフトの前記近位部分の前記長手方向軸に対して横方向に約1cm偏向する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記プローブシャフトの前記近位端は前記ハウジング中に延びる、請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記プローブシャフトは前記ハウジングを基準に180度回転可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記プローブシャフトの前記遠位部分は、第1の材料を含み、前記プローブシャフトの前記近位部分は、前記第1の材料とは異なる第2の材料を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の材料はポリマーを含み、前記第2の材料はステンレス鋼を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記プローブシャフトの前記近位部分は、第1の直径を有する第1のチューブと、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブとを備え、エアギャップが前記第1のチューブと前記第2のチューブとを分ける、請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの鼻神経は、ヴィディアン神経の鼻枝の後鼻神経を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの鼻神経は副交感神経を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記エンドエフェクタは、極低温流体、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、抵抗加熱、発熱化学反応、またはそれらの組み合わせを用いて、前記少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするように構成される、請求項1から10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ハンドルに少なくとも部分的に位置決めされる極低温流体源と、
前記プローブシャフトに配設され、前記極低温流体源と流体連通する内腔と
をさらに備える、請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記極低温流体源の高さが、前記プローブシャフトの前記近位部分の前記長手方向軸の上方に約2cm未満である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記極低温流体源は、前記ハンドルに着脱可能なように少なくとも部分的に位置決めされた容器を備える、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記極低温流体源の長手方向軸と前記プローブシャフトの前記近位部分の前記長手方向軸との間の角度が、約60度と約90度との間にあり、好ましくは、約75度である、請求項12から14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記エンドエフェクタは、
前記プローブシャフトの前記遠位端に配設される平坦な形状を画定する平面部材であって、非外傷性表面を画定するように縁部が弓形の細長い構造を有する平面部材と、
前記平面部材を囲繞し、前記プローブシャフトの前記遠位端に結合される拡張可能な構造体であって、収縮構成から拡張構成に膨張可能であり、前記拡張可能な構造体の内部が前記極低温流体源と流体連通している拡張可能な構造体と
を備える、請求項12から15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記拡張可能な構造体は、前記拡張構成において所定の形状およびサイズに拡張するように構成され、前記所定の形状およびサイズは前記鼻組織領域の形状およびサイズに相当する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記拡張可能な構造体は、前記拡張可能な構造体の前記内部で極低温流体が蒸発する際に、前記収縮構成から前記拡張構成に移行するように構成される、請求項16または17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記平面部材は、前記鼻腔内で組織を操作するように構成された、剛性のワイヤによって形成された細長いループ構造を備える、請求項16から18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記拡張可能な構造体は、拡張された直径が約3mmと12mmとの間にある、請求項16から19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記平面部材は、前記拡張可能な構造体の内部に取り付けられないように、前記拡張可能な構造体内を延びる、請求項16から20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、前記患者の鼻炎の少なくとも1つの症状を軽減するように、前記鼻組織領域の表面から深さ4mm未満の位置で前記少なくとも1つの鼻神経を制御可能に凍結させるように、120秒未満の間に摂氏-20度から摂氏-90度の間まで前記拡張可能な構造体の外面を冷却するように構成される、請求項16から21のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
遠位端および近位端を有するプローブシャフトであって、前記プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸が前記プローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように、前記プローブシャフトの遠位部分と前記プローブシャフトの近位部分との間に位置決めされる湾曲部分を有し、前記プローブシャフトの前記近位部分は、第1の直径を有する第1のチューブと、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブとを備え、エアギャップが前記第1のチューブと前記第2のチューブとを分けるプローブシャフトと、
前記プローブシャフトの前記近位端に結合されるハウジングと、
前記ハウジングに結合されるハンドルと、
前記プローブシャフトの前記遠位端に結合されるエンドエフェクタであって、前記プローブシャフトの前記遠位端が患者の鼻腔を通して前進され、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の直近に位置決めされるときに非外傷性表面を画定し、前記鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成されるエンドエフェクタと、
前記ハンドルに位置決めされるトリガであって、前記トリガが作動すると、前記エンドエフェクタが前記鼻組織領域に接触しているときに、前記エンドエフェクタが前記少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするトリガと
を備える、デバイス。
【請求項24】
患者の鼻腔の鼻組織領域を治療する方法であって、
前記鼻腔を通してプローブシャフトの遠位端を導入することであって、前記プローブシャフトの前記遠位端は、前記鼻腔内で組織を操作するように形状設定された低プロフィルの第1の構成を有するエンドエフェクタを有し、前記プローブシャフトは、前記プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸が前記プローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように湾曲部分を有し、前記プローブシャフトの前記近位部分の剛性が前記プローブシャフトの前記遠位部分の剛性よりも大きい、前記プローブシャフトの遠位端を導入することと、
前記エンドエフェクタを前記第1の構成から、前記エンドエフェクタが前記鼻組織領域の輪郭に接触しそれに沿うように形状設定される第2の構成に再構成することと、
鼻炎の症状が軽減されるまで、前記エンドエフェクタを介して前記鼻組織領域の少なくとも1つの鼻神経をアブレーションすることと、
を含む、方法。
【請求項25】
前記鼻組織領域の前記少なくとも1つの鼻神経は中鼻甲介または下鼻甲介と関連する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの鼻神経はヴィディアン神経の鼻枝の後鼻神経を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの鼻神経は副交感神経を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記プローブシャフトの前記遠位端は、前記患者の前記鼻腔を通して蝶口蓋孔の直近に前進される、請求項24から27のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年7月9日出願の米国仮特許出願第62/872,195号の利益を主張するものであり、その文献の内容は全体がここに援用される。
【0002】
本開示は、組織の領域を治療するデバイスおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、鼻炎などの耳、鼻、および咽喉(ENT:ear, nose, and throat)の不調を治療するための、低温冷却法および冷凍アブレーションを含むクライオ療法などによって、組織の領域を治療するデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に別段の指示のない限り、本節に記載する事項は、本願における特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本節に包含することによって先行技術と認めるものではない。
【0004】
人間の鼻は吸気を加温、加湿、およびろ過する役割を担う。鼻は主に軟骨、骨、粘膜、および皮膚から形成される。左右の鼻腔は後方に軟口蓋まで延び、軟口蓋で一体になって後鼻孔を形成する。後鼻孔は鼻咽腔に開口している。鼻の上面は篩板として知られる骨によって一部が形成される。篩板は極めて小さい多数の孔を含み、それらを通って知覚神経線維が嗅球まで延びる。吸入したにおいが鼻の上側領域の小さい面積の粘膜に接触すると、嗅覚が起こって、嗅球につながる神経線維が刺激される。
【0005】
鼻甲介とは3つの骨突起であり、それら骨突起は鼻の側壁から内側に延び、粘膜組織で覆われている。これら鼻甲介は、鼻の内部表面積を増やし、鼻を通して吸入される空気に温かさおよび湿気を与えるように働く。鼻甲介を覆う粘膜組織は、生理的条件または環境条件の変化に応答して、充血して膨張するか、または血液が実質的になくなって収縮することができる。各鼻甲介の湾曲した縁部は、鼻道として知られる通路を形成する。例えば、下鼻道は下鼻甲介の下を通る通路である。鼻涙管として知られる管は、下鼻道内に位置する開口を通して涙を眼から鼻に排出する。中鼻道は、中鼻甲介の横の通路であり、中鼻甲介が側壁に付着する位置の下にある。中鼻道には半月裂孔があり、開口または孔が上顎洞、前頭洞、および前篩骨洞につながる。上鼻道は上鼻甲介と中鼻甲介との間に位置する。
【0006】
鼻甲介は、ヴィディアン神経から出る神経によって自律神経支配を受ける。ヴィディアン神経には、求心性交感神経および求心性副交感神経があり、それらは、粘膜下層の活動を上昇(副交感神経)または低下(交感神経)させるように、鼻甲介を覆う軟部組織の機能を調整できる。ヴィディアン神経は翼突管を介して翼口蓋神経節まで延びる。翼口蓋神経節(SPG:sphenopalatine ganglion)からの線維の一部は蝶口蓋孔(SPF:sphenopalatine foramen)を通って鼻腔に入る。SPFを除いて、さらなる後外側の神経血管枝がSPGから突出して鼻粘膜に分布する。それら神経血管枝の最もよくある位置は、下鼻甲介の水平付着部の後上方1cm以内、その付着部の前下方5mm以内、およびSPFとは別の孔を介して口蓋骨の直近である。一部の事例では、線維束間吻合輪が少なくとも3つの副神経と関連している。副神経はそれぞれSPGまたは大口蓋神経に直接トレースできることがある。
【0007】
鼻炎は、そう痒、鼻漏、および/または鼻閉を含む鼻の症状を特徴とする、鼻の内膜の炎症として定義される。慢性鼻炎は、非常に多くの人が患っており、患者が医療を求める主な原因である。医学的治療は、慢性鼻炎患者にとって効果が限定的であることが示されており、毎日の薬物治療の利用または負担になるアレルギー治療を必要とし、患者の最大20%が難治性の可能性がある。
【0008】
既存の薬物治療に加えて、鼻甲介縮小術(例えば、高周波による手術およびマイクロデブリードマンによる手術)は、効果の持続期間が1~2年という一時的なものであることが示されており、粘膜の脱落、急性疼痛および腫脹、過剰治療、ならびに骨の損傷を含む、合併症を引き起こす恐れがある。さらに、鼻甲介縮小術は鼻漏の症状は治療しない。
【0009】
ヴィディアン神経の副交感神経作用が主に自律神経のバランスを制御し、その結果、それを切除することで鼻炎および鼻閉を抑える可能性があると考えられる。こうした病態生理では、ヴィディアン神経の外科治療が実際に一部の鼻炎症状の軽減を示したことが確認された。しかし、その手技は、侵襲性があり時間を浪費し、ヴィディアン神経の自律神経線維が涙腺にも分布するので、場合によっては、慢性的なドライアイを引き起こす恐れがある。
【0010】
温熱療法(thermal therapy)は、鼻炎などENT不調の先行治療において上記の制約に対する解決策になる可能性がある。この種の療法は、組織の変質を選択的に生み出して、場合によっては、一時的または恒久的な損傷を引き起こす、温度変化を誘発することによって組織を治療する。治療の目標とされる組織のタイプおよび身体の領域に応じた熱エネルギーの印加は、心不整脈の治療、がん組織塊の破壊、および神経信号の伝達経路の変質を含む、様々な利益をもたらすことができる。組織アブレーションとは、破壊的な組織損傷を引き起こす温熱療法の一種である。こうした損傷は、(例えば、高周波、レーザー、マイクロ波、高密度焦点式超音波(HIFU:high intensity focused ultrasound)、または抵抗加熱法を用いた)熱の印加によって、または(例えば、クライオアブレーション法を用いた)冷却エネルギーの印加によって誘発されてよい。
【0011】
用語「クライオ療法(cryotherapy)」とは、身体組織に冷温または低温を誘導することを伴い、一般に低体温療法およびクライオアブレーションと称される治療法を含む、温熱療法の一種である。温度および関係する曝露時間に応じて、様々なクライオ療法の臨床上の目標は、(例えば、理学療法セッション中に採用される低体温療法のような)改善された組織の治癒/回復から、(例えば、神経調整療法または腫瘍破壊目的で用いられるクライオアブレーション中の)選択的な組織の損傷または破壊までの範囲にある場合がある。クライオ療法中に導入される組織の損傷はいずれも、治療される組織および施行される治療法の特徴に応じて、一時的な場合も恒久的な場合もある。
【0012】
最近では、ENT手技での使用に関して様々なクライオ療法技術が普及している。適用例には鼻炎、鼻甲介肥大、および他の臨床病理のための治療が含まれる。ENTのための最近のクライオ療法は、多くの場合、大気圧に移行する間に膨張して気体になる、冷却源を提供する(亜酸化窒素などの)圧縮極低温液を用いることによって施行される。寒冷療法を施行するその方法は、一般に熱電/ペルチェ効果の冷却および循環流体による冷却に関連付けられる複雑なシステム、例えば、ポンプ、ワイヤ、および/または他の電気的ハードウェアが必要でない。
【0013】
ENT適用に関するクライオ療法の普及が最近急増していることに伴って、ENTのためにクライオ療法を施行するデバイス、システム、および方法も発展および改善されてきた。一部の設備および技術の発展は医療の成果の改善を目的としているが、他は商用目的または実習目的のいずれかに関係する。例えば、ENT手技が外来患者に診療所の環境で施行されることが増えており、その環境で利用される設備および技術は、病院内で使用するのに現実的かつ安全であると考えられるものとは大きく異なることがある。しかし、最近の技術が発展していても、既存の最先端のクライオ療法設備には一部の制限が残っている。
【0014】
したがって、当業者に知られた既存の制限が現実的かつコスト効率の高い解決策で対処された場合は、ENT適用のためのクライオ療法の分野が有意に改善されたであろう。クライオ療法および他の温熱療法のデバイスならびに技術を改善し続けることで、より多くの医師が手技を実行し、より多くの患者が手技を受け、手技を受ける患者がより良い結果を得ることが可能になる。
【発明の概要】
【0015】
本開示は、クライオ療法による介入を施行するシステム、デバイス、および方法に関する。より詳細には、本開示は、ENT不調に関してクライオ療法による介入を施行することに関する。本開示は、診療所での手技の間に、または、全身麻酔が利用できない、現実的でない、かつ/もしくは賢明でない他の状況で、患者を治療するときに、特に有用な場合がある。本開示は、上気道内で適用されるクライオ療法手技中に、特に有用な場合がある。
【0016】
本開示は、単純さと実現性と有効性との間のバランスを改善する解決策を用いた、クライオ療法の施行を進歩させる方法、デバイス、およびシステムを提供する。より詳細には、本開示のシステム、デバイス、および/または方法は、鼻腔または他の身体内腔に、改善された手法でクライオ療法を施行することを可能にする。これを実現することは、こうした重要な治療を受けるときの患者の体験を改善することになり、そのことがより多くの患者に前記治療を受けることを選択するように促すかもしれないため、価値がある。
【0017】
一例では、本開示はデバイスを提供する。そのデバイスは、遠位端および近位端を有するプローブシャフトを含む。プローブシャフトは、プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸がプローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように湾曲部分を有する。プローブシャフトの近位部分の可撓性が、プローブシャフトの遠位部分の可撓性よりも大きい。デバイスはまた、プローブシャフトの近位端に結合されるハウジングと、そのハウジングに結合されるハンドルを含む。デバイスはまた、プローブシャフトの遠位端に結合されるエンドエフェクタを含む。エンドエフェクタは、プローブシャフトの遠位端が患者の鼻腔を通して前進され、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の直近に位置決めされるときに非外傷性表面を画定し、エンドエフェクタは、鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成される。デバイスはまた、ハンドルに位置決めされるトリガを含む。トリガが作動すると、エンドエフェクタが鼻組織領域に接触しているときに、エンドエフェクタが少なくとも1つの鼻神経をアブレーションする。
【0018】
別の例では、本開示は別のデバイスを提供する。そのデバイスは、遠位端および近位端を有するプローブシャフトを含む。プローブシャフトは、プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸がプローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように、プローブシャフトの遠位部分とプローブシャフトの近位部分との間に位置決めされる湾曲部分を有する。プローブシャフトの近位部分は、第1の直径を有する第1のチューブと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブを含み、エアギャップが第1のチューブと第2のチューブとを分ける。デバイスはまた、プローブシャフトの近位端に結合されるハウジングと、そのハウジングに結合されるハンドルを含む。デバイスはまた、プローブシャフトの遠位端に結合されるエンドエフェクタを含む。エンドエフェクタは、プローブシャフトの遠位端が患者の鼻腔を通して前進され、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の直近に位置決めされるときに非外傷性表面を画定する。エンドエフェクタは、鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成される。デバイスはまた、ハンドルに位置決めされるトリガを含む。トリガが作動すると、エンドエフェクタが鼻組織領域に接触しているときに、エンドエフェクタが少なくとも1つの鼻神経をアブレーションする。
【0019】
さらに別の例では、本開示は、患者の鼻腔の鼻組織領域を治療する方法を提供する。本方法は、鼻腔を通してプローブシャフトの遠位端を導入することを含む。プローブシャフトの遠位端は、鼻腔内で組織を操作するように形状設定された低プロフィルの第1の構成を有するエンドエフェクタを有する。プローブシャフトは、プローブシャフトの遠位部分の長手方向軸がプローブシャフトの近位部分の長手方向軸に対してゼロでない角度を有するように湾曲部分を有する。プローブシャフトの近位部分の可撓性がプローブシャフトの遠位部分の可撓性よりも大きい。本方法はまた、エンドエフェクタを第1の構成から、エンドエフェクタが鼻組織領域の輪郭に接触しそれに沿うように形状設定される第2の構成に再構成することを含む。本方法はまた、エンドエフェクタを介して鼻組織領域の少なくとも1つの鼻神経をアブレーションすることを含む。
【0020】
添付の図面を適宜参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、これらのならびに他の態様、利点、および代替形態が、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】鼻の側壁の目標領域内またはその近くで、関係のある鼻の解剖学的構造および関連する神経を示す鼻腔の内部側面図である。
【
図3】一例による、
図2に示すデバイスの上面図である。
【
図4】一例による、
図2に示すデバイスの遠位端の上面図である。
【
図5】一例による、
図2に示すデバイスの例示的な極低温流体源の側面図である。
【
図6】一例による、
図2に示すデバイスの側面図である。
【
図7】一例による、
図2に示すデバイスの断面斜視図である。
【
図8】一例による、
図2に示すデバイスのトリガの側断面図である。
【
図9】一例による、
図2に示すデバイスの底面図である。
【
図10A】一例による、収縮構成にある例示的なエンドエフェクタの拡張可能な部材および平面部材の側面図である。
【
図10B】一例による、拡張構成にある例示的なエンドエフェクタの拡張可能な部材および平面部材の側面図である。
【
図11】一例による、
図2に示すデバイスのプローブシャフトの遠位端の斜視図である。
【
図12A】一例による、温度センサを含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図12B】別の例による、温度センサを含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図12C】別の例による、温度センサを含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図12D】別の例による、温度センサを含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図13】一例による、カメラおよび光源を含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図14】一例による、ドップラーセンサを含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【
図15】一例による、電極を含む
図2に示すデバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例示的な方法およびシステムが本明細書に記載されている。単語「例(example)」、「例示的な(exemplary)」および「例証的な(illustrative)」は、本明細書では、「例、例示、または例証となる(serving as an example, instance, or illustration)」という意味で用いられることを理解されたい。本明細書に「例」である、「例示的」である、または「例証的」であると記載されるどの例または特徴も、他の例または特徴よりも必ずしも好ましいかまたは有利であると解釈されるものではない。本明細書に記載される例は限定的であるとは意図されていない。本明細書に概略的に記載し図に示す本開示の態様が、本明細書にすべて明確に企図される多種多様な異なる構成で配置、置換、組み合わせ、分離、および設計できることが、容易に理解されるであろう。
【0023】
また、図に示す特定の構成は限定的であるとみなすべきではない。他の例が所与の図に示す各要素をより多くまたはより少なく含んでよいことを理解されたい。さらに、例証する要素の一部は組み合わせられても省略されてもよい。さらにまた、ある例は図に示していない要素を含んでよい。
【0024】
以下の説明では、開示する概念の徹底した理解を期すために多数の具体的な詳細を記載するが、その概念はこれら細部の一部または全部なしでも実践できる。他の例では、本開示をいたずらに不明瞭にすることを避けるために、既知のデバイスおよび/またはプロセスの詳細が省略されている。一部の概念を特定の例と併せて記載するが、それらの例は限定を意図しないことが理解される。
【0025】
別段の指示のない限り、用語「第1の(first)」、「第2の(second)」などは、本明細書では単なるラベルとして用いられ、これらの用語が言及する要素に順序、位置、または階層の要件を課すものではない。さらに、例えば、「第2の」要素について言及していても、例えば「第1の」要素もしくは小さい数字を付した要素、および/または、例えば「第3の(third)」要素もしくは大きい数字を付した要素の存在を必要とすることも排除することもない。
【0026】
本明細書で用いるように、特定の機能を実行する「ように構成される(configured to)」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、さらに修正した後に単に特定の機能を実行する可能性があるのではなく、確かに特定の機能を実行できる。言い換えれば、特定の機能を実行する「ように構成される」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、詳細には、特定の機能を実行する目的で、選択され、作り出され、実装され、利用され、プログラムされ、かつ/または設計される。本明細書で用いるように、「ように構成される」とは、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアの既存の特徴が、そのシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアがさらなる修正なしに特定の機能を実行できるようにすることを表す。本開示において、特定の機能を実行する「ように構成される」と表される、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、またはハードウェアは、それに加えてまたはその代わりに、その機能を実行する「ように適合される(adapted to)」および/または「ように動作する(operative to)」と表され得る。
【0027】
以下の請求項の限定は、ミーンズプラスファンクション形式で記載されておらず、そのような請求項の限定が、語句「~する手段(means for)」を明白に使用し、それに続けてさらなる構造を欠いた機能の記述がなされない限り、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されることを意図しない。
【0028】
本明細書に記載される量または測定値に対する用語「約(about)」、「約(approximately)」、または「実質的に(substantially)」によって、列挙する特徴、パラメータ、または値が厳密に達成される必要はないが、例えば、公差、測定誤差、測定精度の限界および当業者に知られた他の要因を含む、偏差またはばらつきが、特徴がもたらそうとしていた作用を妨げない量で起こる可能性があるということが意図されている。
【0029】
本開示による主題の、特許請求される場合もされない場合もある、例証的であり網羅的でない例を以下に提示する。
【0030】
本開示は、クライオ療法を適用するシステム、デバイス、および方法に関する。より詳細には、本開示は、耳、鼻、および咽喉の不調に関する適用例にクライオ療法を適用することに関する。本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、診療所の環境で患者に治療を施行するときに特に有用な場合がある。開示する方法、デバイス、およびシステムを使用することで、既存の設備および技術を基準にしてより有効性があり現実的な、改善されたクライオ療法による治療の施行を可能にすることができる。
【0031】
以下に記載される特定の用途のいずれか、または他の任意のタイプの熱によるもしくは熱によらない治療システムもしくは治療法のために、本明細書に記載される本開示の様々な態様を利用してよい。本開示は、独立型のシステムもしくは方法として、または統合型の医学治療システムの一部として利用されてよい。
【0032】
概して、本開示は、既存のクライオ療法デバイスの少なくともいくつかの態様を改善しようとしている。記載する改善点によって、より良い結果、より現実的な使用を可能にでき、最終的には患者にも医療提供者にも利益がもたらされる。
【0033】
図を参照すると、
図1は、いくつかの関係のある鼻の解剖学的構造を示す、鼻腔の内部の図である。オリエンテーションのために鼻腔側壁4、鼻1、鼻孔2、および上唇3が示されている。上鼻甲介5、中鼻甲介6、および下鼻甲介7が関連する神経と一緒に示されており、それら神経は、本開示に関係があり、破線で示されている。後鼻神経10、11および12が、鼻甲介を覆う粘膜を含む鼻粘膜を副交感神経支配する役割を担う。これら後鼻神経(PNN:posterior nasal nerve)は翼口蓋神経節から出る。場合によっては、他の副次的な後鼻神経(APNN:accessory posterior nasal nerve)が大口蓋管からまたは粘膜下の骨板から出ることがある。
【0034】
図2はデバイス100の概略図であり、デバイス100は、鼻炎および/または他の状態の治療のために、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域の治療のために構成される。
図2に示すように、デバイス100は、遠位端104および近位端106を有するプローブシャフト102を含む。
図3のデバイス100の上面図に示すように、プローブシャフト102は、プローブシャフト102の遠位部分112の長手方向軸110がプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116に対してゼロでない角度114を有するように湾曲部分108を有する。以下でさらに詳細に論じるように、プローブシャフト102の近位部分118の可撓性をプローブシャフト102の遠位部分112の可撓性よりも大きくすることができる。例として、プローブシャフト102の近位部分118の長さが、プローブシャフト102の遠位部分112の長さよりも少なくとも2倍大きいかまたは少なくとも3倍大きい。プローブシャフト102の遠位部分112は、プローブシャフト102の遠位端104から湾曲部分108まで延びることができる。プローブシャフト102の近位部分118は、プローブシャフト102の近位端106から湾曲部分108まで延びる。
【0035】
図2に示すように、デバイス100はまた、プローブシャフト102の近位端106に結合されるハウジング119と、ハウジング119に結合されるハンドル120を含む。プローブシャフト102の近位端106はハウジング119中に延びてよい。一例では、
図2に示すように、ハンドル120は、フィンガグリップ125を含むピストル形グリップを含む。したがって、デバイス100は、
図2に示すように、ハンドル120を用いて施術者によってピストルのように把持されるように構成されてよい。ハンドル120の他の構成も可能である。
【0036】
デバイス100はまた、プローブシャフト102の遠位端104に結合されるエンドエフェクタ122を含む。概して、エンドエフェクタ122は、エンドエフェクタ122に隣接する目標組織をアブレーションするように構成される。例えば、エンドエフェクタ122は、極低温流体(例えば、エンドエフェクタ122はクライオアブレーション要素を含むことができる)、高周波(RF:radiofrequency)エネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、抵抗加熱、発熱化学反応、またはそれらの組み合わせを用いて、少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするように構成できる。エンドエフェクタ122が極低温流体を用いて目標組織領域をアブレーションするように構成される実装形態に関してエンドエフェクタ122を以下で説明するが、エンドエフェクタ122は、それに加えてまたはその代わりに、上述の他のアブレーションモダリティのうちの1つまたは複数を用いて目標組織をアブレーションするように構成できる。それに加えて、エンドエフェクタ122は、本明細書に記載するいくつかの変更形態を有することが示され、任意選択で、施術者に利用される特定の例に応じて置き換えてよい。
【0037】
エンドエフェクタ122は、プローブシャフト102の遠位端104が患者の鼻腔を通して前進され、少なくとも1つの鼻神経を有する鼻組織領域、例えば、鼻の側壁に関連する鼻神経の直近に位置決めされるときに非外傷性表面を画定することができる。例えば、エンドエフェクタ122の非外傷性表面は、丸いかつ/または鋭くない縁部を有し、とがった角または鋭利な縁部をなくすことができる。非外傷性表面の画定を助けるために、エンドエフェクタ122は、それに加えてまたはその代わりに、エンドエフェクタ122が鼻腔を横切るときにエンドエフェクタ122によって接触される解剖学的構造の形状に合致できる柔軟な材料から形成することができる。例として、エンドエフェクタ122は、少なくとも部分的に、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ナイロン、および/または高分子化合物(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET))を含む材料の群から選択される少なくとも1つの材料から形成することができる。
【0038】
エンドエフェクタ122は、鼻組織領域内に位置決めされると、鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成される。例えば、デバイス100は、施術者が目標後鼻神経の直近で鼻の側壁に対してエンドエフェクタ122を押圧できるように構成されてよい。一部の実装形態では、エンドエフェクタ122は、目標組織(例えば、鼻の側壁)の形態に合致し、目標組織の形態に合致しないエンドエフェクタ122と比べて、実質的に均一の接触圧力で目標組織(例えば、鼻の側壁)により一様に係合するように構成できる。そのことによって、比較的均一に目標組織領域を効果的にアブレーションすることを助け、それゆえ、所望の臨床成果を実現するためにより予測可能かつ制御可能に目標組織領域をアブレーションすることができる。
【0039】
一例では、プローブシャフト102は、長さが約4cmと約10cmとの間、直径が約1mmと約4mmとの間にあってよい。一部の例では、エンドエフェクタ122は、外径がプローブシャフト102の直径に近くてよい。他の例では、エンドエフェクタ122の直径は、プローブシャフト102の直径よりも大きくても小さくてもよい。それに加えて、ある例では、エンドエフェクタ122の延長した長さは、約0.5cmと約1.5cmとの間にあってよい。エンドエフェクタ122は、エンドエフェクタ122の長手方向軸に沿って(例えば、軸110に沿って)実質的に可撓性とすることができる。しかし、エンドエフェクタ122は、少なくとも部分的に可鍛性があり、ユーザによって形状を作るように構成されてもよい。エンドエフェクタ122の形状を作ることは施術者によって手作業で行われてよい。様々な長さ、形状、および直径のデバイス100のエンドエフェクタ122が生産され、エンドユーザに供給されてよい。
【0040】
いくつかの例で、エンドエフェクタ122は、それに加えてまたはその代わりに、(i)プローブシャフト102の遠位部分112の長手方向軸110がプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116に対してゼロでない角度を有するように、プローブシャフト102が湾曲部分108を有すること、(ii)プローブシャフト102の近位部分118の可撓性がプローブシャフト102の遠位部分112の可撓性よりも大きいこと、を含む特徴の群から選択される少なくとも1つの特徴に基づいて、鼻組織領域に対して横圧力を伝達するように構成できる。
【0041】
例えば、湾曲部分108のおかげで、プローブシャフト102の近位部分118は、エンドエフェクタ122が対象の鼻組織領域に接触して圧平することを可能にでき、一方、プローブシャフト102の近位部分118は鼻腔の他の解剖学的特徴に対して無視できる圧力しか加えないかまたは圧力を加えない。
図3に示すように、プローブシャフト102の遠位部分112の長手方向軸110とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116との間のゼロでない角度114は、約15度と約25度との間にあり、好ましくは、約20度とすることができる。それに加えてまたはその代わりに、このようにプローブシャフト102が湾曲部分108で曲がることで、鼻腔を通るエンドエフェクタ122のナビゲーションを容易にでき、中鼻甲介および下鼻甲介などの構造の周りでそれに対する操作性を改善できる。
【0042】
デバイス100の一実装形態では、
図4に示すように、プローブシャフト102の湾曲部分108は、プローブシャフト102のエンドエフェクタ122の遠位端から約4cmの位置に位置決めされ、プローブシャフト102の湾曲部分108によって、プローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116に対してプローブシャフト102のエンドエフェクタ122の遠位端が横方向に約1cm偏向する。プローブシャフト102の湾曲部分108をエンドエフェクタ122の遠位端から約4cmの位置に位置決めすることで、デバイス100を用いて下鼻甲介を目標とするのを有益に助けることができることが分かった。異なる組織領域を目標とする手技の場合は、湾曲部分108はエンドエフェクタ122の遠位端を基準に異なる距離に位置決めできる。現在開示している例の場合は、改善(または最適化)されたナビゲーション性能が作り出されており、エンドエフェクタ122と鼻腔内の重要な解剖学的構造との間の十分な接触を行う能力が改善されている。
【0043】
それに加えて、上記で言及したように、プローブシャフト102の近位部分118の可撓性は、プローブシャフト102の遠位部分112の可撓性よりも大きくすることができる。プローブシャフト102の近位部分118とプローブシャフト102の遠位部分112との間の可撓性のこのような差が、エンドエフェクタ122が目標組織領域に係合するときに、近位部分118と遠位部分112との間の位置に(例えば、プローブシャフト102の湾曲部分108に)プローブシャフト102の曲げ位置を設けることができる。近位部分118と遠位部分112との間の曲げ位置は、プローブシャフト102が近位部分118と遠位部分112との間の可撓性に差を有しない実装形態のプローブシャフト102の曲げ位置よりもプローブシャフト102に沿ってより近位に位置することができる。プローブシャフト102の可撓性がプローブシャフト102の全長にわたって実質的に同じ実装形態と比べると、プローブシャフト102に沿ってより近位に曲げ位置を設けることによって、施術者が目標組織に向かう方向にハンドル120を操作するときに、エンドエフェクタ122の組織に面する面のうち比較的大きい部分(例えば、50パーセント超)または全体が、目標組織の表面(例えば、鼻の側壁)により一様に接触できるようになる。
【0044】
いくつかの例で、プローブシャフト102の近位部分118と遠位部分112との間に可撓性の差をもたらすために、プローブシャフト102の近位部分118および遠位部分112は、(i)異なる材料から形成され、かつ/または(ii)異なる寸法を有することができる。例えば、近位部分118は、金属管(すなわち、ステンレス鋼管)、高分子管/プラスチック管(すなわち、PEEK、ナイロン、ABS、ウレタン、ポリエチレン)、および織物管/ブレード管から選択される1つまたは複数の剛性の材料から形成することができる。遠位部分112はそれぞれ、熱可塑性エラストマー(例えば、PEBAX(polyether block amide)としても知られるポリエーテルブロックアミド)、ナイロン、ウレタン、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、レーザーカット金属管、金属コイル材、およびメッシュ/ブレードシャフト材料から選択される1つまたは複数の材料から形成できる。それに加えて、例えば、近位部分118のために選択される1つまたは複数の材料は、遠位部分112のために選択される1つまたは複数の材料とは異なるものにすることができる。
【0045】
一例では、プローブシャフト102の遠位部分112は、プローブシャフト102の近位部分118の可撓性よりも約2倍から約4倍大きい可撓性を有することができる。ある実装形態では、遠位部分112は、約35ショアDと約72ショアDとの間の値の範囲から選択される、それぞれの硬さを有することができる。
【0046】
それに加えて、ある例では、プローブシャフト102の遠位部分112は、プローブシャフトの近位部分118を基準に遠位部分112およびエンドエフェクタ122を約22度曲げるのに必要な力が0.3ポンドと約0.7ポンドとの間とすることができるように、それぞれの剛性および/または可撓性の値を有することができる。別の例では、プローブシャフト102の遠位部分112は、プローブシャフトの近位部分118を基準に遠位部分112およびエンドエフェクタ122を約22度曲げるのに必要な力が0.6ポンドと約0.7ポンドとの間とすることができるように、それぞれの剛性および/または可撓性の値を有することができる。別の例では、プローブシャフト102の遠位部分112は、プローブシャフトの近位部分118を基準に遠位部分112およびエンドエフェクタ122を約22度曲げるのに必要な力が0.3ポンドと約0.5ポンドとの間とすることができるように、それぞれの剛性および/または可撓性の値を有することができる。
【0047】
プローブシャフト102は、デバイス100のハウジング119に回転可能なように結合され、デバイス100を過度に回転させる必要なしにエンドエフェクタ122の位置決めを容易にするように構成されてよい。一例では、プローブシャフト102は、デバイス100のハウジング119に対して180度回転可能である。したがって、プローブシャフト102の遠位部分112の長手方向軸110とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116との間のゼロでない角度114は、デバイス100を上から見たときに左に角度が付いた状態から、デバイス100を上から見たときに右に角度が付いた状態に調節可能でよい。例えば、使用中に、施術者は、患者の左の鼻孔にデバイス100のエンドエフェクタ122を挿入し目標鼻神経をアブレーションし、患者の鼻腔からデバイスを抜き出し、プローブシャフト102を180度回転させ、次いで、ハンドル120に対する施術者の把持を修正することなく、患者の右の鼻孔にデバイス100のエンドエフェクタ122を挿入し目標鼻神経をアブレーションしてよい。
【0048】
特定の一例では、デバイス100のハウジング119のうちのプローブシャフト102の近位端106のすぐ近位の部分は、1対の戻り止めおよびそれに対応する1対の切り欠きを含んでよい。その1対の戻り止めは約180度離して位置決めされてよく、対応する1対の切り欠きも約180度離して位置決めされてよい。第1の構成(例えば、デバイス100を上から見たときにプローブシャフト102が左に角度が付いた構成)では、その1対の戻り止めのうちの第1の戻り止めは、その1対の切り欠きのうちの第1の切り欠きに位置決めされ、その1対の戻り止めのうちの第2の戻り止めは、その1対の切り欠きのうちの第2の切り欠きに位置決めされる。プローブシャフト102の回転の際に、デバイス100が第2の構成になるまで、その1対の戻り止めはその1対の切り欠きに対して回転するように構成されてよい。第2の構成(例えば、デバイス100を上から見たときにプローブシャフト102が右に角度が付いた構成)では、第1の戻り止めは第2の切り欠きに位置決めされ、第2の戻り止めは第1の切り欠きに位置決めされる。
【0049】
デバイス100は、ハンドル120に位置決めされるトリガ124を含む。トリガ124が作動すると、エンドエフェクタ122が鼻組織領域に接触しているときに、エンドエフェクタ122が鼻組織の少なくとも1つの鼻神経をアブレーションする。鼻組織領域の少なくとも1つの鼻神経は、非限定的な例として、ヴィディアン神経の鼻枝の後鼻神経を1つまたは複数含むことができる。別の例では、プローブシャフト102の遠位端104は、患者の鼻腔を通して、蝶口蓋孔の直近に前進される。上記で言及したように、プローブシャフト102の近位部分118とプローブシャフト102の遠位部分112との間の可撓性の差によって、プローブシャフト102の曲げ位置がデバイス100上のより近位の位置にシフトして、上述のようにエンドエフェクタ122が鼻の側壁などの平坦な面に載ることが可能になる。それに加えてまたはその代わりに、こうした可撓性の差は、適切な組織接触を確立するために、オペレータが不適切に大きい組織への力を加える必要なしに、デバイス100がより大きい範囲の解剖学的構造を収容することを可能にする。
【0050】
上記で言及したように、エンドエフェクタ122は、極低温流体(例えば、クライオアブレーション要素)、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、抵抗加熱、発熱化学反応、またはそれらの組み合わせを含むモダリティの群から選択される少なくとも1つのアブレーションモダリティを用いて、少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするように構成できる。一例では、デバイス100は、ハンドル120に少なくとも部分的に位置決めされる極低温流体源126と、プローブシャフト102に配設され、極低温流体源126と流体連通する内腔とを含む。一例では、極低温流体源126は、液体極低温流体が供給され、患者1人にだけ使用するように構成されてよい。
【0051】
その代わりに、デバイス100は、ハンドル120に着脱可能なように少なくとも部分的に位置決めされる容器の形態の、ユーザが交換できる極低温流体源126と共に使用するように構成されてよい。こうした容器の一例が
図5に示されている。
図5に示すように、極低温流体源126はキャップ127および複数のねじ山129を含み、ねじ山129は、ハンドル120の複数のねじ山131(
図7参照)と相互作用するように構成され、そうすることで、極低温流体源126がデバイス100に着脱可能なように結合される。さらに別の代替形態では、デバイス100とは別個のリザーバーがハンドル120に流体結合されてよい。このような例では、デバイス100はさらに図示しない液体極低温流体フローコントロールバルブを含み、そのコントロールバルブは、プローブシャフト102において極低温流体源126および内腔と流体連通するように配設されてよい。
【0052】
図6はデバイスの側面図であり、プローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116を基準にした極低温流体源126の高さ128を示している。一例では、高さ128は約2cm未満である。別の例では、高さ128は約0.5インチ(例えば、約1.27cm)とすることができる。このサイズの高さによって、極低温流体源126および関連するクライオライン入力特徴部を含む、必要なデバイス要素がすべて、適切な流出を可能にする向きでデバイス100にフィットすることが可能になり、同時に、極低温流体容器の配置/穿孔のためにおよびそれに続く治療後の容器の取り外しのために十分なトルクで、ユーザが極低温流体源126のキャップを回転させるための十分な把持空間を可能にする。高さを小さくすると、オペレータが一方の手でデバイスを保持し、同時に、ほとんど干渉なしに、第2の手に内視鏡(または他のツール)を操作させることが可能になるので、オペレータの利便性および最終的には手技成功の見込みにいくつかの利点をもたらす。より詳細には、高さ128を小さくすると、デバイス100を鼻腔中にナビゲートするときに、内視鏡または他のツールを操作している2つ目の手が、デバイスの手の面を自由に横切ることが可能になる。
【0053】
さらに、
図6に示すように、デバイス100は、極低温流体源126の長手方向軸132とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116と間の角度130を含む。ある例では、極低温流体源126の長手方向軸132とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116との間の角度130は、患者が直立して座っている間にも患者がうつ伏せで横になっている間にも、極低温流体源126からエンドエフェクタ122への極低温流体の流れを可能にするように構成できる。例示的な実装形態では、極低温流体源126の長手方向軸132とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116との間の角度130は、約0度から約90度の間、約10度と約90度との間、約20度と約90度との間、約30度と約90度との間、約40度と約90度との間、約50度と約90度との間、約60度と約90度との間、約60度と約100度との間、および約70度と約90度との間の範囲にあってよい。別の実装形態では、角度130は、完全に横になっている患者ならびに完全に直立して座っている患者の治療を容易にするように、約75度とすることができる。さらに、極低温流体源126の長手方向軸132とプローブシャフト102の近位部分118の長手方向軸116との間の相対角度が約75度であることは、患者の身体に対する患者の頭部の位置も考慮に入れている。したがって、現在開示している設計によって、最大数の位置にある患者を提供者が治療するために可撓性および自由度を改善(または最適化)することが可能になる。
【0054】
図7を参照すると、現在開示しているデバイス100の例はトリガ124を含み、トリガ124はユーザが片手でまたは指1本で確実に使用できる単純化された操作を可能にする。図示のように、いくつかの実装形態はトリガタイプのトグルバルブ134を含み、トグルバルブ134は、ユーザによって圧迫されて、プローブシャフト102通ってエンドエフェクタ122に入る極低温流体の放出を開始することができる。
【0055】
それに加えて、
図7では、トリガ124はロックアウトレバー136を含む。ある実装形態では、ロックアウトレバー136をトグルバルブ134に向かって(例えば、トーションスプリングによって)付勢することができる。トグルバルブ134を初期位置からハンドル120に向かって押し込むことに応答して、ロックアウトレバー136は離れてトグルバルブ134に向かって遠位に延びることができ、そうすることで、トグルバルブ134が解放されて初期位置に戻ることが防止される。ロックアウトレバー136がトグルバルブ134を邪魔する間に、極低温流体が極低温流体源126からエンドエフェクタ122に流れ続けることができる。極低温流体の放出を終了するために、ユーザがロックアウトレバー136を付勢力に逆らって移動させてよく、そうすることで、トグルバルブ134が初期位置に戻ることができる。
【0056】
一部の実装形態では、施術者は、トグルバルブ134を押し込むために約4ポンドの力を加え、極低温流体がエンドエフェクタ122に流れるようにしてよい。いくつかの手技の間に、施術者は、所与の患者の鼻孔ごとに約30秒間その力をトグルバルブ134に対して維持してよく、その手技を所与の日に複数の患者に実行してよい。その結果、ロックアウトレバー136は、手技全体を通して施術者がトグルバルブ134に対して力を維持することなく、極低温流体が流れ続けるのを可能にすることによって、デバイス100を操作する施術者の指の疲労を緩和するのを助けることができる。ロックアウトレバー136はこうした利益を与えることができるが、デバイス100は一部の代替的実装形態ではロックアウトレバー135を省略することができる。
【0057】
いくつかの例では、トグルバルブ134およびロックアウトレバー136は、大人のオペレータなら誰もがハンドル120を把持するのと同じ手の指でトグルバルブ134に届くことができると予期されるような位置で、ハンドル120の直近に位置する。既存のデバイスをこのように改善する結果、現在開示しているデバイス100は今や片手で適切に操作することができる。したがって、デバイス100は、トグルバルブ134がピストルのトリガのように構成されたピストル形グリップを有するピストルのようにユーザによって把持されるように構成されてよい。他の例の構成も可能である。
【0058】
図8は、デバイス100の例示的なトリガ124の断面図を示す。そのトリガ124は、亜酸化窒素容器からの正圧を用いてメンブレン146を持ち上げて、近位クライオライン148と遠位クライオライン150との間の流れを可能にする。
図8に示すように、トリガ124は、バルブハウジング152、バルブプラグ154、メンブレン146、止めねじ156、バルブステム158、トグルバルブ134、およびトリガスプリング160を含む。バルブハウジング152の止めねじ156は、バルブプラグ154とメンブレン146とを互いに密接させて、バルブハウジング152の周囲に沿ってシールを形成する。そのデフォルト状態において、トリガ124は閉位置にあり、閉位置では、トリガスプリング160およびバルブステム158が、近位クライオライン148への孔が位置するバルブプラグ154の面に対して、メンブレン146をシールするのに十分な力をもたらす。トグルバルブ134が押圧されると、バルブハウジング152、バルブプラグ154、およびメンブレン146はバルブステム158から離れる方に移動する。トリガ124がバルブステム158から十分な距離の位置にだけ移動されると、加圧された亜酸化窒素からの力が、バルブプラグ154に位置する近位クライオライン148への孔を有するメンブレン146のシールを遮断するのに十分になる。そのことによって、メンブレン146がドーム状に膨らんで、近位クライオライン148と遠位クライオライン150とを連結する加圧空間が作られることが可能になる。トグルバルブ134の解放は、バルブハウジング152、バルブプラグ154、およびメンブレン146を戻して、トリガスプリング160によって定められた速度でバルブステム158と接触させて、メンブレン146およびバルブプラグ154上で近位クライオライン148を閉じる。
【0059】
図8に示すように、遠位クライオライン150は、内径が近位クライオライン148の内径よりも小さくてよい。こうした構成により、内径のより小さい遠位クライオライン150からの余分な抵抗によって、メンブレン146下の空間が開位置にあるときに、改善された加圧を確実に受ける。遠位クライオライン150による改善された加圧は、遠位クライオライン150の近位での圧力降下を低減し、極低温流体のより効率的な利用を可能にする。
【0060】
加圧された極低温流体源126は極低温流体、例えば、亜酸化窒素を入れていてよいが、液体二酸化炭素または液体クロロフルオロカーボン化合物などの別の極低温流体でもよい。使用中は、極低温流体は、極低温流体供給ラインを通してエンドエフェクタ122に導入され、その供給ラインは、ハンドル120において極低温流体源126に連結され、プローブシャフト102を通って同軸上に延びる。エンドエフェクタ122は、極低温流体蒸発器として構成され、少なくとも1つの後鼻神経のクライオアブレーションために、上述のようにSPFの直近で鼻の側壁に対して押圧されるように構成される。エンドエフェクタ122の構造および機能ならびに代替例を以下で詳細に説明する。蒸発された極低温流体は、空間に、例えば、プローブシャフト102を通して、ハンドル120またはプローブシャフト102の近位端106の近傍にある、1つまたは複数のベントポート138(
図9に示す)に、排気されてよい。したがって、液体または気体の極低温流体は患者の鼻腔中に導入されない。
【0061】
本開示の一例では、
図10A~
図10Bに示すように、デバイス100のエンドエフェクタ122は、プローブシャフト102の遠位端104に配設される平坦な形状を画定する平面部材142と、平面部材142を囲繞し、プローブシャフト102の遠位端104に結合される拡張可能な構造体144とを含む。平面部材142は、非外傷性表面を画定するように弓形の縁部を有する細長い構造を含む。拡張可能な構造体144は、収縮構成(
図10Aに示す)から拡張構成(
図10Bに示す)に膨張可能である。拡張可能な構造体144の内部が極低温流体源126と流体連通している。拡張可能な構造体144は、拡張可能な構造体144の内部で極低温流体が蒸発する際に収縮構成から拡張構成に移行するように構成される。使用中には、平面部材142および拡張可能な構造体144によって形成されるエンドエフェクタ122は、極低温流体蒸発チャンバとして構成され、拡張可能な構造体144の外面は、クライオアブレーション面として構成される。拡張可能な構造体144は、鼻の側壁に対して、例えば、約20グラムと約200グラムとの間の力を加えるように構成される。
【0062】
拡張可能な構造体144は、シリコーンゴムまたはウレタンゴムなどのエラストマー材料から形成されてよい。その代わりに、拡張可能な構造体144は、ナイロンまたはPETなど、実質的に非エラストマー材料から形成されてよい。ある例では、拡張可能な構造体144は、拡張構成では所定の形状およびサイズまで拡張するように構成され、その所定の形状およびサイズは、治療のために目標とされる鼻組織領域の形状およびサイズに相当する。例えば、拡張可能な構造体144は、その構造体の形状およびサイズが、鼻炎治療のための後鼻神経のアブレーションの例示的な目標位置である、中鼻甲介の末端、中鼻甲介、鼻の側壁、および下鼻甲介によって画定される中鼻道の袋小路の形状およびサイズに合うように構成される。拡張可能な構造体144のサイズおよび形状が目標の解剖学的構造のサイズおよび形状に合うと、組織の凍結および後鼻神経のアブレーションが容易に改善される。拡張可能な構造体144は、ある径方向軸において約3mmと12mmとの間の拡張直径を有してよく、ある径方向軸における拡張直径が別の径方向軸のものとは異なるように構成されてよい。平面部材142は、鼻腔で組織を操作するように構成された剛性のワイヤによって形成される細長いループ構造を含んでよい。さらに、平面部材142は、平面部材142が拡張可能な構造体144の内部に取り付けられないように、プローブシャフト102の遠位端104の内部に結合されてよい。使用中は、デバイス100は、患者の鼻炎の少なくとも1つの症状を軽減させるように、鼻の側壁の組織領域の表面から深さ4mm未満の位置で少なくとも1つの鼻神経を制御可能に凍結させるように、120秒未満の間に摂氏-20度から-90度の間まで拡張可能な構造体144の外面を冷却するように構成される。
【0063】
本デバイス100の一部の例では、平面部材142は、拡張可能な構造体144の周囲をたどる幅広の形状であると見做すことができる。また、一部の例では、平面部材142は、拡張可能な構造体144に対して約15mm近位の位置でプローブシャフト102に結合できる。
図10A~
図10Bに示すように、平面部材142の形状の前述の変更および拡張可能な構造体144の取り付け構成によって、拡張可能な構造体144の拡張の程度は改善され得、両側により大きく拡張できるようにされ得る(すなわち、拡張可能な構造体144は両方向で平面部材142から離れる方に延びる)。さらに、平面部材142および拡張可能な構造体144の幾何学的形状は、特に、鼻の側壁ならびに中鼻甲介自体の各部分を同時に治療することが望ましい場合がある、中鼻道などの治療領域における組織への接触を強化し得る。
【0064】
図11は、一例による、プローブシャフト102のための改善された断熱システムを示す。具体的には、カニューレ(
図11に示さない)の外部を被覆するポリマー断熱層に加えて、2チューブシステムが使用されてよい。
図11に示すように、プローブシャフト102の近位部分118は、第1の直径を有する第1のチューブ162と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2のチューブ164とを含み、エアギャップが第1のチューブ162と第2のチューブ164とを分ける。クライオ療法中は、極低温流体の排出はより小さい内側の第1のチューブ162を通して移動する。このより小さい第1のチューブ162は、エアギャップがそれら2つのチューブを分けるように、より大きい第2のチューブ164によってカバーされる。上で言及したように、ポリマー断熱層は集合体全体をカバーする。その結果、内側の排出チューブ(例えば、第1のチューブ162)からのプローブシャフト102の外面の断熱が改善され、結果として、使用中にプローブシャフト102の外部で温度変化がほとんどないことが分かる。
【0065】
このように断熱されたシステムの好ましい実装形態は、ステンレス鋼または他の同様の材料から構成されるハイポチューブを利用してよい。ステンレス鋼は、十分な機械的強度をもたらし、同時に、チューブ壁を最小限の厚さにすることを可能にする。チューブ壁の厚さを限定すると、隣接するチューブ間のエアギャップのサイズを最大にし、したがって、断熱を最大にすることができる。一例では、内側の第1のチューブ162は、内径約0.046インチ、外径約0.056インチでよい。このサイズの内径は、エンドエフェクタ122内で所望の圧力を実現するために、極低温流体の排出が内部チューブの内腔を通って流れるのに十分な面積を保証する。このサイズの外径は、使用中の第1のチューブ162のねじれを防止するのを助け得る。一例では、外側の第2のチューブ164は、内径約0.085インチ、外径約0.095インチである。記載したサイズの外側の第2のチューブ164の外径は、鼻腔内のナビゲーションのためのプローブシャフト102のプロフィルを最小限に抑え、この外側の第2のチューブ164の内径はやはりチューブのねじれを防止するため選ばれる。記載した例では、結果として生じる断熱のためのエアポケットは約0.014~0.015インチである。好ましい実装形態では、第1のチューブ162と第2のチューブ164とは遠位および近位の縁部で心合わせされる。ステンレス鋼などの材料は、第1のチューブ162と第2のチューブ164とがそれらの相対的な間隔の分離を確実に維持し、したがって、断熱を最大にし、コールドスポットを防止するというさらなる利益をもたらす。
【0066】
プローブシャフト102は、生体適合性のある材料から作製されてよい。一例では、プローブシャフト102の遠位部分112は第1の材料を含み、プローブシャフト102の近位部分118は、第1の材料とは異なる第2の材料を含む。一例では、第1の材料はポリマーを含み、第2の材料はステンレス鋼を含む。以下でさらに詳細に論じるように、こうした材料の違いがプローブシャフト102の近位部分118とプローブシャフト102の遠位部分112との間の可撓性の違いをもたらし得る。
図11は、このような例のプローブシャフト102の遠位端104を示す。
【0067】
具体的には、
図11は、複数内腔のポリマーチューブ166としてプローブシャフト102の遠位端104を示す。そのポリマーチューブ166は、プローブシャフト102の近位部分118(内側の第1のチューブ162として示す)と平面部材142との間にある。プローブシャフト102の遠位端104から離れた位置で、内側の第1のチューブ162は、上で論じたように、内側の第1のチューブ162を囲繞するより大きい外側の第2のチューブ164中に入る。非限定的な例として、第1のチューブ162および第2のチューブ164はステンレス鋼を含んでよい。平面部材142のパドルレッグは、可撓性ポリマーチューブ166を通って移動した後に適位置にレーザー溶接されてよい。こうした構成は、平面部材142の面に所望の剛性を維持し、排出のためにシールされた内側内腔を提供し続けるが、ポリマーチューブ166の本来の可撓性によって、予想される組織への接触の面における可撓性を高める。言い換えれば、エンドエフェクタ122の曲げはプローブシャフト102に沿ってより近位で開始できて、加えられる全体の力がより小さくても同程度の曲げを実現することができる。
【0068】
現在開示しているデバイス100の例では、平面部材142はステンレス鋼ワイヤから構築されてよく、そのステンレス鋼ワイヤの直径は約0.010から約0.020インチの範囲にあり、好ましい直径は0.015インチである。いくつかの例では、ワイヤは、プローブシャフト102から出る極低温流体のスプレーをワイヤが妨げないことを保証するように形状設定され、そうすることで、ワイヤは、構造のプロファイルを最小限に抑えるように平面部材142の近位で狭められる。
図2に示す平面部材142の形状は、適切な形状の一例であるが、新規性を失うことなく代替の形状が可能であることが当業者には明らかであろう。一部の例では、平面部材142のレッグは、長さが約5から約50mmの間の範囲、好ましい長さが約30mmでよい。
【0069】
現在開示しているデバイス100の例では、平面部材142のワイヤレッグは、チューブ中に、例えば、3つの内腔のポリマーチューブ166中に挿入されてよい。各レッグは、ワイヤの周りできつくフィットするように適切にサイズ設定された独立の内腔に挿入してよい。いくつかの例では、中央の内腔は、蒸発した極低温流体の材料のための排出内腔など、他のデバイスの目的で採用されるように開いたままでよい。変更例では、ポリマーチューブ166は、3未満または3超の内腔を含んでよい。一部の例では、ポリマーチューブ166は、その遠位端が平面部材142の近位端に接触するように配置される。ポリマーチューブ166は、好ましくは、硬さが40~80ショアDの範囲の熱可塑性エラストマーまたは別の適切なポリマー材料から構築され、別の適切なポリマー材料は、熱処理を受け同様の材料に取り付けられる能力を維持しながら、適切な可撓性を保持する。好ましい例では、ポリマーチューブ166は長さ約20mmである。一例では、デバイス構築中に、ポリマーチューブ166の中央内腔の近位端は、ポリマーチューブ166がプローブシャフト102の近位部分118に約2mmから約7mmの間だけ重なるように、湾曲した剛体のプローブシャフト102の近位部分118に押圧される。次いで、平面部材142のワイヤレッグは、レーザー溶接または同様の技術によってプローブシャフト102に貼付されてよい。いくつかの例では、内側の第1のチューブ162が、プローブシャフト102の全長にわたって延び、ハンドル120の内側でより大きい外側の第2のチューブ164に貼付される。上で論じたように、こうした構成によって、極低温流体の排出のためにシールされた内側内腔を保持する、可撓性があり圧縮できない10~15mmのデバイスネックが可能になる。
【0070】
プローブシャフト102の遠位端104にポリマーチューブ166が存在することで、平面部材142を平坦面に面一に位置決めするのに必要な力が思いがけず大幅に軽減される。具体的には、現在開示しているデバイスは、平面部材142を表面に平坦に位置決めするのに4オンス未満の力を必要としてよく、好ましくは、約2オンス未満の力である。ここで開示する新規設計の態様を組み込むことで、プローブシャフト102の曲げ位置は、デバイス100上でより近位の位置にシフトして、平面部材142全体が、鼻の側壁などの平坦な面に載ることが可能になる。そのことが、適切な組織への接触を確立するために、オペレータが不適切に大きい組織への力を加える必要なしに、デバイス100がより大きい範囲の解剖学的構造を収容することを可能にする。
【0071】
例示的なデバイスのさらなる例を以下で説明する。本明細書の例のいずれかで説明したどのデバイスまたはデバイス構成要素の特徴部も、デバイスまたはデバイス構成要素の他の適切などの例においても使用することができる。一例では、本開示は、アブレーションのために構成された手術用プローブを提供し、その手術用プローブは、遠位端および近位端を有する細長い構造を備える手術用プローブシャフトと;プローブシャフトの遠位端に取り付けられる拡張可能な構造体であって、収縮構成および拡張構成を有する拡張可能な構造体と;拡張可能な構造体の内部に取り付けられないように遠位端に取り付けられ、拡張可能な構造体内を延びる部材であって、後鼻神経の直近で鼻の側壁に接触して配置されるようにサイズ設定された平坦な形状を画定する部材と;拡張可能な構造体の内部と流体連通する内腔と;を含む。
【0072】
デバイス100は、図示のように電子部品のない、単純な機械的デバイスとして構成されてよい。その代わりに、デバイス100は、少なくとも1つの電子機能を有するように構成されてよい。一例では、エンドエフェクタ122の近傍に温度センサが配設されてよい。例として、
図12A~
図12Dは、様々な位置に温度センサ1268を含む、
図2~
図11に示したデバイス100を示す。概して、温度センサ1268は、温度を測定し、温度を示す信号を生成することができる。いくつかの例で、デバイス100は、温度センサ1268によって感知された温度に基づいて1つまたは複数の動作を行うように構成できる。
【0073】
図12Aでは、温度センサ1268は、プローブシャフト102の外部で、エンドエフェクタ122の近位に位置する。ある例では、プローブシャフト102の外部でエンドエフェクタ112の近位に位置する温度センサ1268は、極低温冷却治療が所望の目標領域の外側に広がっているかどうかを判定するのを助けることができる。例えば、温度センサ1268が閾値温度未満の温度を感知する場合、デバイス100がエンドエフェクタ122への極低温流体の供給を停止すべきであることが示されてよい。一部の実装形態では、温度センサ1268および/またはコントローラは、温度が閾値温度未満であることを温度センサ1268が感知するのに応答して、エンドエフェクタ122への極低温流体の供給を自動的に停止するように構成できる。
【0074】
図12Bでは、温度センサ1268は、プローブシャフト102の内部で、エンドエフェクタ112の近位に位置する。ある例では、プローブシャフト102の内部でエンドエフェクタ112の近位に位置する温度センサ1268は、極低温流体が液相から気相に十分に変換されているかどうかを示すことができる温度を感知することができる。例えば、温度センサ1268および/またはコントローラは、温度センサ1268によって感知された温度が閾値温度未満であると温度センサ1268が判定することに応答して、極低温流体が液体から気体に十分に変換されておらず、極低温流体がエンドエフェクタ122からハンドル120に液体として流れていると判定することができる。一例として、閾値温度は摂氏約マイナス88度とすることができる。
【0075】
図12Cでは、温度センサ1268は、エンドエフェクタ122の拡張可能な構造体144の内部空間に位置する。より詳細には、
図12Cにおいて、平面部材142は、上述の構造的機能も温度感知機能も提供する熱電対である。プローブシャフト102の内部に位置する温度センサ1268と同様に、エンドエフェクタ122の拡張可能な構造体144の内部空間に位置する温度センサ1268は、極低温流体が液体から気体に十分に変換されているかどうかを判定するのを助けることができる。例えば、温度センサ1268および/またはコントローラは、温度センサ1268によって感知された温度が閾値温度未満であると温度センサ1268が判定することに応答して、極低温流体が液体から気体に十分に変換されておらず、極低温流体がエンドエフェクタ122からハンドル120に液体として流れていると判定することができる。一例として、閾値温度は摂氏約マイナス88度とすることができる。
【0076】
図12Dでは、温度センサ1268は、エンドエフェクタ122の拡張可能な構造体144の外面(例えば、エンドエフェクタ122のうちの、治療手技中に目標組織と接触するようになる治療側)に位置する。ある例では、拡張可能な構造体144の外面に位置する温度センサ1268は、治療手技の有効性を示す温度を測定することができる。例えば、温度センサ1268によって感知される温度は、目標組織が所望の温度に達したときにそのことを示すことができる。一部の実装形態では、デバイス100は、温度センサ1268によって感知された温度に基づいて、エンドエフェクタ122への極低温流体の供給を制御するためのフィードバックループを設けるように構成される構成要素を1つまたは複数含むことができる。
図12A~
図12Dはデバイス100上の異なる位置にある単一の温度センサ1268を示すが、デバイス100は、
図12A~
図12Dに示す位置のうちの1つまたは複数に1つまたは複数の温度センサ1268を含むことができる。したがって、デバイス100は、図示の位置および
図12A~
図12Dに関して上述した位置を含む複数の位置に、複数の温度センサ1268を有することができる。
【0077】
上述のように、
図12A~
図12Dに示すデバイス100の一部の例では、温度センサ1268は、手術対象の温度を測定、表示、および/または制御するために使用できる。例えば、ある実装形態では、温度センサ1268は、エンドエフェクタ122内で蒸発する極低温流体の温度を感知するように構成されてよい。温度センサ1268は、それに加えてまたはその代わりに、手術対象の組織の温度を感知するように構成されてよい。
【0078】
トリガ124は、任意選択で、サーボ機構も含んでよく、サーボ機構は、所望の手術パラメータを制御するために、極低温流体の流れを調整するように感知された温度に応答するように構成される。具体的には、デバイス100は、蒸発器の温度、蒸発器の圧力、組織の温度、蒸発器の排気の温度、または極低温流体の流れの経過時間というパラメータのうちの1つまたは複数に応答して、極低温流体の流量を自動的に調節するように構成されてよい。流量は、切れ目ないアナログ式でかつ/または交互のオン/オフ流量調整によって、調節されてよい。
【0079】
温度感知能力に加えて、デバイス100は、カメラおよび/または光源がプローブシャフト102の遠位端104の近傍に配設されるように構成されてよい。カメラおよび/または光源は、例えば、鼻の解剖学的構造の目印を同定するために使用されてよく、目標後鼻神経の機能のアブレーションのための鼻の側壁に対するエンドエフェクタ122の配置をガイドするために使用されてよい。
図13は、一例による、カメラ1370および光源1372を含むデバイス100を示す。
【0080】
超音波式または光学式のドップラーフローセンサが、やはりプローブシャフト102の遠位端104の近傍に配設されてよく、例えば、目標後鼻神経を位置特定する手段として、目標後鼻神経と関連する動脈を位置特定するために使用されてよい。こうした一例では、ドップラーフローセンサは超音波式検出器を含む。別のこのような例では、ドップラーフローセンサは光学式検出器を含む。一例では、少なくとも1つの鼻神経と関連する動脈には、蝶口蓋枝からの動脈が含まれる。
図14は、一例による、1つまたは複数のドップラーフローセンサ1474A~1474Dを含むデバイス100を示す。具体的には、ドップラーフローセンサ1474Aおよびドップラーフローセンサ1474Bは、プローブシャフト102の遠位部分112に位置し、ドップラーフローセンサ1474Cはプローブシャフト102の近位部分118に位置し、ドップラーフローセンサ1474Dはエンドエフェクタ122に位置する。
【0081】
図14は4つのドップラーフローセンサ1474A~1474Dを有するデバイス100を示すが、他の例では、デバイス100はより少ないまたはより多いドップラーフローセンサ1474A~1474Dを有することができる。それに加えて、
図14はデバイス100の特定の位置にあるドップラーフローセンサ1474A~1474Dを示すが、デバイス100は、他の例による1つまたは複数の代替の位置に1つまたは複数のドップラーフローセンサ1474A~1474Dを含むことができる。
【0082】
さらに、1つまたは複数の電極がプローブシャフト102の遠位端104の近傍に配設されてよい。その電極は、目標後鼻神経の機能を電気刺激または電気遮断するために使用されてよく、その刺激または遮断に対して観測される生理学的応答を用いて、アブレーションの前にエンドエフェクタ122の正確な手術上の位置決めを確認し、かつ/またはアブレーションの前後から生理学的応答の変化を判定することによってアブレーションの有効性を確認する。
図15は、一例による、1つまたは複数の電極1576A~1576Dを含むデバイス100を示す。具体的には、電極1576Aおよび電極1576Bはプローブシャフト102の遠位部分112に位置し、電極1576Cはプローブシャフト102の近位部分118に位置し、電極1576Dはエンドエフェクタ122に位置する。
【0083】
図15は4つの電極1576A~1576Dを有するデバイス100を示すが、デバイス100は、他の例では、より少ないまたはより多い電極1576A~1576Dを有することができる。それに加えて、
図15はデバイス100の特定の位置にある電極1576A~1576Dを示すが、デバイス100は、他の例による1つまたは複数の代替の位置に1つまたは複数の電極1576A~1576Dを含むことができる。
【0084】
任意の数の温度感知、内視鏡機器、サーボ制御式の極低温流体コントロールバルブ、超音波式もしくは光学式のドップラーフロー検出、ならびに/または電気式神経刺激および遮断機構が、任意選択で、本明細書に記載されるデバイスに組み込まれてよい。
【0085】
使用中に、こうした手術用プローブは、鼻腔を通して鼻神経を有する組織領域の直近に手術用プローブシャフトの遠位端を前進させることと、拡張可能な構造体が組織領域に対して収縮構成から拡張構成に膨張するように、プローブシャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能な構造体に極低温流体を導入することと、組織領域を基準に部材を位置決めすることであって、その部材は、部材が拡張可能な構造体の内部に取り付けられないように、プローブシャフトの遠位端に取り付けられ、拡張可能な構造体内を延び、その部材は、鼻神経の直近の組織領域に対して配置するようにサイズ設定された平坦な形状を画定する部材を位置決めすることと、鼻神経が極低温でアブレーションされるまで、部材を組織領域に対して維持することとを概して含む、鼻腔内の組織領域を治療するために使用されてよい。
【0086】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、へら形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経を含む鼻粘膜のクライオアブレーションのために構成される。
【0087】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、弾丸形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻粘膜のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻粘膜のクライオアブレーションのために構成される。
【0088】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、弾丸形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトは、ユーザが操作できる偏向可能な遠位セグメントを有するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0089】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、円筒形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、クライオアブレーション要素は、線状にセグメントに分かれたクライオアブレーション要素を含み、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0090】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、円筒形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、クライオアブレーション要素は、半円形のクライオアブレーション要素を含み、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経を含む目標組織のクライオアブレーションのために構成される。
【0091】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、円筒形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、クライオアブレーション要素は、螺旋状のクライオアブレーション要素を含み、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経を含む目標鼻組織のクライオアブレーションのために構成される。
【0092】
本開示の別の例は、近位端と、クライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたバルーンを備えるプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、近位端は、極低温流体源から極低温流体を受け取るように構成され、極低温流体源は、クライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御する手段を備え、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0093】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、バルーンを備える円筒形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経を含む目標鼻組織のクライオアブレーションのために構成される。
【0094】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、2つの横方向チャンバを有するバルーンを備えて装着される円筒形のクライオアブレーション要素が、シャフトの遠位端の近傍に配設されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、バルーンの一方のチャンバは極低温流体の膨張チャンバとして構成され、第2のチャンバは熱遮断チャンバとして構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0095】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、バルーンを備える「I」字形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0096】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、バルーンを備えた「J」字形のクライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0097】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、クライオアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトとを備える、鼻神経のアブレーションのための冷凍手術用プローブ装置であって、ハンドルは、極低温流体源を収納しクライオアブレーション要素への極低温流体の流れを制御するように構成され、クライオアブレーション要素に関連する吸引手段は、目標組織に対するクライオアブレーション要素の位置を安定させるように構成され、プローブシャフトおよびクライオアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のクライオアブレーションのために構成される。
【0098】
本開示の一態様は、クライオアブレーション要素の表面上にオイルまたはゲルのフィルムを配置することと、次いで、鼻神経に隣接する鼻腔の側壁に対してクライオアブレーション要素を押圧することと、次いで、クライオアブレーション要素を用いて鼻神経をアブレーションすることと、オイルまたはゲルが、凍結された鼻組織がクライオアブレーション要素に貼り付くのを防止することとを含む、鼻神経の冷凍手術アブレーションのための方法である。
【0099】
本開示の別の態様は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えた高周波(RF)アブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成される。
【0100】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタと、RFアブレーション要素と関連する少なくとも1つの流体ポートを圧縮流体源に連結するハンドルの近傍に配設される流体コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成される。
【0101】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、1つまたは複数の電極を備えた単極性の電気外科的構成を含む。
【0102】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、2以上の電極を備えた両極性の電気外科的構成を含む。
【0103】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、円筒形、「J」字形、「U」字形または「T」字形の構造上でシャフトの遠位端の近傍に配設される。
【0104】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は横方向または径方向の配置となるように構成される。
【0105】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、平坦な電気絶縁面上に配設された円形配列ドーム型電極を含み、ドーム型電極は、任意選択で、流体洗浄ポートと関連する。
【0106】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、平坦な電気絶縁面上に配設された線形配列のドーム型電極と、液体を粘膜下空間に注入するように構成される針とを含み、ドーム型電極は、任意選択で、流体洗浄ポートと関連する。
【0107】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つのRF電極を備えたRFアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、RFアブレーション要素を高周波エネルギー源に連結するように構成されるハンドルの近傍に配設される電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成され、RFアブレーション要素は、間質性のRFアブレーションのために構成された針を少なくとも1つ含む。
【0108】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと、遠位端および近位端を備えるプローブシャフトと、ハンドルの近傍に配設されるRF発振器を備える集積回路と、シャフトの遠位端の近傍に配設されるRFアブレーション要素とを備える、鼻神経のアブレーションのための電気外科的プローブ装置であって、プローブシャフトおよびRFアブレーション要素の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経のRFアブレーションのために構成される。
【0109】
本開示のさらに別の例は、近位端にあるハンドルと、少なくとも1つの超音波エネルギー放出器を備える超音波エネルギーアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと、超音波エネルギー放出器を超音波エネルギー発生器に連結するように構成されるハンドルの近傍の電気コネクタとを備える、鼻神経のアブレーションのための超音波エネルギー放出プローブ装置であって、プローブシャフトおよび超音波エネルギー放出器の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経の超音波エネルギーアブレーションのために構成される。
【0110】
本開示の別の例は、近位端にあるハンドルと;少なくとも1つの超音波エネルギー放出器を備えた超音波エネルギーアブレーション要素がシャフトの遠位端の近傍に装着されたプローブシャフトと;超音波エネルギー放出器を超音波エネルギー発生器に連結するように構成されるハンドルの近傍の電気コネクタと;ハンドルの近傍の少なくとも1つの流体コネクタと、超音波エネルギー放出中に超音波エネルギー放出器を冷却するように構成される超音波エネルギー放出器との間を連通する少なくとも1つの流体路と;を備える、鼻神経のアブレーションのための超音波エネルギー放出プローブ装置であって、プローブシャフトおよび超音波エネルギー放出器の幾何学的パラメータは、本明細書内で開示する方法による鼻神経の超音波エネルギーアブレーションのために構成される。
【0111】
上述の任意のデバイスの使用方法をここで説明する。後鼻神経(PNN)は、SPGから出て鼻腔の後側の鼻粘膜を刺激する神経を含む。鼻腔においてそれら神経ならびに他の神経をアブレーションすることは、(アレルギー性または非アレルギー性)慢性鼻炎患者の鼻閉および鼻漏の一因となる副交感神経信号の低減また遮断につながる。本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、鼻炎を軽減または解消するように、それら鼻神経の1つまたは複数をアブレーションするために使用されるように構成される。
【0112】
概して、上述のデバイスは、患者の鼻腔の鼻組織領域の鼻神経をアブレーションするために用いられてよい。少なくとも1つの神経の直近にある鼻腔内の鼻組織領域を治療する一方法は、鼻腔を通してプローブシャフトの遠位端を導入することを含んでよく、その遠位端は、鼻腔内で組織を操作するように形状設定された低プロフィルの第1の構成を有するエンドエフェクタを有する。遠位端は、鼻神経を有する組織領域の直近に位置決めされてよい。適切に位置決めされると、遠位端は、第1の構成から、組織領域に接触しそれに沿うように形状設定される第2の構成に再構成されてよい。次いで、遠位端は、本明細書に記載されるようないくつかの異なる組織治療機構、例えば、クライオ療法を用いて組織領域内の鼻神経をアブレーションするために使用されてよい。
【0113】
特定の一変更形態において組織領域を治療する際には、遠位端は、詳細には、袋小路を形成しPNNを有する、中鼻甲介、下鼻甲介、および鼻腔の側壁によって囲繞される組織領域の直近に位置決めされてよい。その結果、遠位端は、組織領域を治療するために再構成されてよい。
【0114】
遠位端が鼻腔の狭められた範囲内、より詳細には、中鼻甲介、下鼻甲介、鼻組織側壁、および下鼻道を囲繞する組織領域の範囲内で配置するために構成される限り、組織領域を治療する際に遠位端に関する様々な構成が利用されてよい。鼻腔内の他の解剖学的位置は、その代わりにまたはそれに加えて、本明細書に記載される構成で治療可能である。
【0115】
上述のように、鼻腔などの組織領域をアブレーションするように構成された手術用プローブの一例は、遠位端および近位端を有する細長い構造を備えた手術用プローブシャフトを有する手術用プローブ装置と、プローブシャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能な構造体であって、収縮構成および拡張構成を有する拡張可能な構造体とを含む。内腔は、拡張可能な構造体の内部と流体連通するシャフトを通して画定されてよい。部材は、部材が拡張可能な構造体の内部に取り付けられないように、遠位端に取り付けられ、部材を囲む拡張可能な構造体内を延びてよい。さらに、その部材は、拡張可能な構造体を通して鼻組織領域を押圧しそれを操作するように形状設定された非無外傷性形状を画定してよい。
【0116】
組織領域を治療する際にこうした構造を利用する例は、概して、鼻腔を通して鼻神経を有する目標鼻組織領域の直近に手術用プローブシャフトの遠位端を前進させることと、拡張可能な構造体が目標鼻組織領域に対して収縮構成から拡張構成に膨張するように、プローブシャフトの遠位端に取り付けられた拡張可能な構造体に極低温流体を導入することとを含んでよい。
【0117】
目標鼻組織領域を基準にした部材の位置は、部材がプローブシャフトの遠位端に取り付けられ、部材が拡張可能な構造体の内部に取り付けられないように部材を囲む拡張可能な構造体内を延びる位置に調節されてよい。施術者は、部材が拡張可能な構造体の内部に対して押圧され、拡張可能な構造体が目標鼻組織領域に対して押圧されるように、遠位端に対して圧力を加えてよく、部材は、目標鼻組織領域を押圧しそれを操作するように形状設定された非外傷性形状を画定する。部材は、目標鼻組織領域が極低温でアブレーションされるまで、拡張可能な構造体の内部および目標鼻組織領域に対して維持されてよい。
【0118】
本明細書のアブレーションデバイスはいずれも、1つの神経枝または複数の神経枝をアブレーションするために使用できる。
【0119】
本開示の別の態様は、鼻神経をアブレーションすることによって鼻炎を治療する方法である。本方法は、冷凍神経剥離のために構成された手術用プローブの遠位端を患者の鼻孔中に挿入することを含んでよい。プローブシャフトの近位端に配設される手術用ハンドピースは、上記で論じたように、極低温流体リザーバーを含んでよい。遠位の拡張可能な構造体は、目標鼻神経の直近で鼻の側壁に対して位置決めされてよく、次いで、拡張可能な構造体への極低温流体の流れが、目標鼻神経を含む鼻において目標領域をクライオアブレーションするのに十分な時間にわたって作動されてよい。
【0120】
本方法はさらに、同側鼻腔内または対側鼻腔の後鼻神経の、少なくとも1つの追加の後鼻神経を目標とすることを含んでよい。
【0121】
本方法は、極低温流体の流量、極低温流体の流れの経過時間、極低温流体の蒸発圧力、極低温流体の蒸発温度、極低温流体の排気温度、組織凍結の視覚判定、組織凍結の超音波判定、または極低温流体リザーバーによって供給された極低温流体の体積というパラメータのうちの1つまたは複数を含んでよい、少なくとも1つの所定のパラメータに基づいて、蒸発チャンバへの極低温流体の流れを制御することを含んでよい。
【0122】
本方法は目標鼻神経の位置を判定することを含んでよく、その判定は、鼻の解剖学的構造の目印に基づく内視鏡判定、刺激に対する生理学的応答を観察しながら行う目標鼻神経の電気神経刺激、遮断に対する生理学的応答を観察しながら行う電気神経遮断、または、例えば、超音波式もしくは光学式のドップラーフロー技術を用いた、目標鼻神経と関連する動脈の同定、という目標設定技術のうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0123】
現在開示しているデバイスおよび方法を主にクライオ療法の説明で論じてきたが、本明細書に記載されるデバイス、システム、および方法は、他のアブレーション手術法および非アブレーション手術法に適用可能性を有し得る。例えば、いくつかの例は、加熱療法/温熱療法を利用するデバイス、システム、および方法を含んでよい。加熱療法/温熱療法を利用する例は、低温療法を用いる例と構造およびステップが同様であってよい。温熱による治療法と共に用いるための熱源は、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、超音波エネルギー、抵抗加熱、発熱化学反応、それらの組み合わせ、および当業者に知られた他の熱源を含んでよい。さらに、本開示は、独立型のシステムもしくは方法として、または統合型の医学的治療システムの一部として利用されてよい。本開示の様々な態様を個別に、まとめて、または互いに組み合わせて評価できることを理解されるものとする。
【0124】
さらに、現在開示しているデバイスおよび方法を、主に、患者の鼻腔の鼻の側壁に関連する少なくとも1つの鼻神経をアブレーションするという説明で論じてきたが、治療は、それに加えてまたはその代わりに、隔壁、鼻腔の上面、または鼻腔の他の領域に同様に適用されてよい。
【0125】
本明細書に記載される方法は、事実上、上述のデバイスおよびシステムのどの例または変更形態とも、同様に、本明細書に明示的に示していない他の例および変更形態とも、一緒に利用することができる。本明細書の例のいずれかで説明したデバイスまたはデバイス構成要素のどの特徴も、デバイスまたはデバイス構成要素の他の適切などの例においても使用することができる。
【0126】
本明細書に記載される構成は単に例示のためであることを理解されたい。したがって、他の構成および他の要素(例えば、機械、インターフェース、機能、順番、機能のグループ分けなど)を代わりに使用でき、一部の要素が所望の結果に従って全体的に省略されてよいことを当業者なら理解する。さらに、説明する要素の多くは、任意の適切な組み合わせおよび位置で、個別のもしくは分散型の構成要素としてまたは他の構成要素と併用して実装されてよい機能エンティティであるか、あるいは、独立した構造として説明した他の構造上の要素を組み合わせてよい。
【0127】
様々な態様および例を本明細書で説明してきたが、当業者には他の態様および例が明らかである。本明細書に開示する様々な態様および例は説明のためのものであり、限定する意図はなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と併せて示される。本明細書で用いる用語が、単に特定の例を説明するものであり限定する意図がないことも理解される。
【国際調査報告】