(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】組換えタンパク質の安定な製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20220905BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220905BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220905BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220905BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220905BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
C07K 14/375 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K38/16 100
A61K9/08 ZNA
A61K9/19
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/00
C07K14/375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570936
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 IB2020056361
(87)【国際公開番号】W WO2021005500
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201921027358
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515259694
【氏名又は名称】ユニケム ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】サテ,ダナンジャイ
(72)【発明者】
【氏名】パディ,ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン,アヌパム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB11
4C076BB29
4C076CC27
4C076DD08F
4C076DD09F
4C076DD22Z
4C076DD23Z
4C076DD38
4C076DD50Z
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF65
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084CA05
4C084CA53
4C084DA31
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA03
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA15
4H045DA80
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、組換えタンパク質の安定な製剤に関する。本発明は、特に、スクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンの製剤に関する。前記製剤は、スクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチン及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む。本発明はまた、スクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンを含む安定な液体の及び/又は凍結乾燥した製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量のスクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンタンパク質及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む安定な医薬組成物。
【請求項2】
請求項1記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記賦形剤が、1つ以上の薬学的に許容され得る安定剤を含む、医薬組成物。
【請求項3】
請求項2記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記薬学的に許容され得る安定剤が、
a)1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b)1つ以上の界面活性剤;
c)1つ以上の炭水化物又は糖;又は
d)a)からc)の2つ以上の混合物
の少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項1記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記組成物が、約0.001mg/mLから約100mg/mLの量の組換えレクチンタンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記薬学的に許容され得る安定剤が、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、又はそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸である、医薬組成物。
【請求項6】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記薬学的に許容され得る安定剤が、前記アミノ酸の薬学的に許容され得る塩であり、ここで前記塩が、アルカリ塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩又は酸塩から選択される、医薬組成物。
【請求項7】
請求項6記載の安定な医薬組であって、ここで前記酸塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩及び/又は酒石酸塩から選択される、医薬組成物。
【請求項8】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記アミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩が、約0.1mg/mLから約100mg/mLの濃度を有する、医薬組成物。
【請求項9】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記タンパク質のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩に対する比が、約1:0.1から約1:10の範囲内にある、医薬組成物。
【請求項10】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、Triton(商標)X-100、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-88、Pluronic(登録商標)F-127、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート及びBrij35又はそれらの組み合わせから選択される、医薬組成物。
【請求項11】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記界面活性剤の濃度が、約0.001mg/mLから約10mg/mLである、医薬組成物。
【請求項12】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記タンパク質の界面活性剤に対する比が、約1:0.0002から約1:10の範囲である、医薬組成物。
【請求項13】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで1つ以上の炭水化物又は糖が、ショ糖、トレハロース、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、ラクトース、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、グルコース、ラフィノース、マルトース、デキストラン、イノシトール又はそれらの組み合わせから選択される、医薬組成物。
【請求項14】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記炭水化物又は糖が、約1.0mg/mLから約150.0mg/mLの濃度を有する医薬組成物。
【請求項15】
請求項3記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記タンパク質の炭水化物に対する比が、約1:0.1から約1:150の範囲内
である、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記組成物が、局所的、経腸的又は非経口的に投与される、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記組成物が、がんの治療又は予防に使用される、医薬組成物。
【請求項18】
請求項2記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記賦形剤が、緩衝剤、ポリマー、可溶化剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増量剤、希釈剤、乳化剤及び保存剤からさらに選択される、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1記載の安定な医薬組成物であって、ここで前記組換えレクチンタンパク質が、配列番号1、2又は3のアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1、2又は3に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有するタンパク質である、医薬組成物。
【請求項20】
治療上有効な量のスクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンを含む安定な医薬組成物を調製するための方法であって、ここで前記方法が、組換えレクチンの緩衝溶液を、1つ以上の安定剤の緩衝溶液と組み合わせることを含む、方法。
【請求項21】
請求項1記載の安定な組成物であって、ここで安定な組成物のバイオアッセイが、安定期間中に5%を超えて変動しない、組成物。
【請求項22】
a)1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b)1つ以上の界面活性剤;
c)1つ以上の炭水化物又は糖;又は
d)a)からc)の2つ以上の混合物
の少なくとも1つを含む、製剤を安定化する成分。
【請求項23】
請求項22記載の製剤を安定化する成分であって、ここで前記製剤が、治療上有効な量のスクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンタンパク質を含む安定な医薬組成物である、成分。
【請求項24】
a)約0.0001%(w/v)から約10%(w/v)のスクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチンタンパク質;
b)約0.01%(w/v)から約10%(w/v)の1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
c)約0.0001%(w/v)から約1%(w/v)の1つ以上の界面活性剤;又は
d)約0.1%(w/v)から約15%(w/v)の1つ以上の炭水化物又は糖
を含む安定な医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌病原菌(soil borne fungus)由来の組換えタンパク質及びそれらの治療上有効な製剤に関する。本発明は、特に、スクレロチウム・ロルフシー(Sclerotium rolfsii)レクチン由来の組換えレクチン及びそれらの安定な液体及び/又は凍結乾燥製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
組換えタンパク質の開発は、生物医学バイオテクノロジーにおける重要なブレークスルーであった。組換えタンパク質は、標的外の副作用から安全であり、且つ糖尿病、小人症、心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、多発性硬化症、好中球減少症、血小板減少症、貧血、肝炎、関節リウマチ、喘息、クローン病、及びがんなどの疾患の処置に用いられる、非常に強力な薬剤として公知である。組換えホルモン、インターフェロン、インターロイキン、成長因子及び酵素は、規制当局によって承認されたいくつかの組換えタンパク質であり、今日では医薬品として入手可能である。
【0003】
レクチンは、他の分子の糖部分に非常に特異的である、高分子の、炭水化物結合性タンパク質である。多くのレクチンは、悪性増殖を早期に検出するバイオマーカー又はオートファジー誘導物質として使用されているが、一方では他のレクチンもまた、アポトーシスを介してがん増殖を阻害する能力を示す。レクチンは、それらが悪性腫瘍に特異的に結合するために、がん治療における薬物送達剤として使用される。さらに、レクチンはまた、がん関連経路も調節するので、それらはがんの診断及び治療剤としての可能性を有する。現在、市販されているレクチンのほとんどは、植物及び他の真核生物由来である。
【0004】
Sclerotium rolfsiiレクチン(SRL)は、土壌植物病原菌S. rolfsiiの菌核体から単離されたレクチンである。SRLは、Thomsen-Friedenreich(TF)抗原及びTn抗原に対して特異性を有する。TF抗原は、様々なヒトがん細胞の細胞表面に過剰発現する二糖類(Gaipi3GalNAc-a-Ser/Thr)である。Tn抗原は、単糖類(GalNAc-a-)である。TF抗原及びTn抗原に対するその特異性により、SRLは、ヒト結腸がん、卵巣がん及び白血病細胞に結合することが示されている。
【0005】
国際公開公報第2010/095143号は、組換えレクチン変異体Rec-2及びRec-3を開示しており、それらは、それぞれ、3及び5個のアミノ酸の置換によって天然SRL配列から誘導される。同様に、国際公開公報第2014/203261号は、12個のアミノ酸の置換によって天然のSRLの配列から誘導される組換えレクチン変異体を開示している。
【0006】
国際公開公報第2010/095143号及び国際公開公報第2014/203261号は、SRL由来のレクチンが、ヒト結腸がん、卵巣がん及び白血病細胞などのいくつかのがんに対して非常に効果があることを示しているが、その参照は、ヒトにおけるがんの効果的な処置のためのそれらの治療製剤について沈黙したままである。
【0007】
レクチン(SRL由来のものを除く)を含む組成物が開示されている参考文献がある。参考文献の国際公開公報第2003/010188号、国際公開公報第2003/018617号、国際公開公報第2003/090774及びCN第101485880号は、等張剤、安定剤、緩衝剤及び担体を含むマンノース結合レクチンの組成物を開示している。
【0008】
公開特許公報特開第2011-126907号は、脳腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導し、糖タンパク質のN結合性糖鎖A2G2Fに対する結合特異性を有するレクチンを含む医薬組成物を開示している。国際公開公報第2014/027958及び米国特許第9981007号は、植物レクチンである組換えヤドリギレクチンを含む医薬組成物に関しており、RU第2644332号は、2年半の抗腫瘍効果及び安定性を有するヤドリギから抽出されたタンパク質の組成物に関する。
【0009】
このように、ヒトにおけるがんの有効な処置のための真菌レクチンの治療上有効な製剤に関する報告はない。さらに、レクチンは、有機化合物(従来の活性医薬成分)と比較して高分子であり、それらの製剤の開発は、非常に複雑且つ挑戦的である。主要な課題は、製剤におけるレクチンの安定性、及びレクチンにおけるアミノ酸の少なくとも一つのコア配列の立体配座の完全性の維持である。安定性については、化学的不安定性(例えば、新規な化学物質をもたらす結合形成又は切断によりタンパク質の修飾を含む任意のプロセス)又は物理的不安定性(例えば、タンパク質の高次構造における変化)を生じ得る、このような大きなタンパク質の高い分解性に起因する性質が懸念される。化学的不安定性は、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離又はジスルフィド交換をもたらす可能性があり、物理的不安定性は、変性、凝集、沈殿又は吸着に起因する可能性がある。市販のタンパク質製剤は、安全に投与でき、推奨される貯蔵期間中に、物理的、化学的、及び生物学的に安定なままでなければならない。
【0010】
がんの処置に有効である、真菌レクチンの安定且つ有効な製剤を開発するには、ある程度の時間を要する。また、レクチンの溶解性と生物活性を維持しながら、安定な製剤を開発する必要がある。従って、真菌由来のレクチンの安定な製剤を開発することが、本発明の目的である。また、薬学的に許容され得る、治療上有効なレクチンの製剤を開発することも、本発明の目的である。いくつかの特定な実施態様では、経腸又は非経口投与に好適なレクチン製剤を提供することが目的である。取り扱い、貯蔵及び送達が容易な安定な凍結乾燥レクチン製剤を提供することは、更なる目的である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの態様によれば、Sclerotium rolfsiiレクチン(SRL)由来の治療上有効な量の組換えレクチンタンパク質を含む安定な医薬組成物が提供される。
本発明の前記具体的な態様によれば、SRL由来の治療上有効な量の組換えレクチンを含む安定な医薬組成物が提供され、ここで、前記組換えレクチンは、
a)配列番号1;
b)配列番号2;
c)配列番号3;又は
d)配列番号1、2又は3と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなる。
【0012】
Sclerotium rolfsiiレクチン又はSRLは、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質である。配列番号1から3は、配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列の例である。特に、配列番号1、2及び3は、配列番号4に対してそれぞれ97.9%、96.5%及び91.5%の相同性を有する(Emboss Needleを用いて決定される)。
【0013】
先行する態様のいずれか1つによれば、前記組換えレクチンは、国際公開公報第2020/044296号に定義される修飾されたレクチンタンパク質(すなわち、炭水化物結合部位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する組換えレクチンタンパク質)であり、特にレクチンの定義に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
いくつかの実施態様では、本発明の安定な医薬組成物は、治療上有効な量の、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチン及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む。
【0015】
別の実施態様では、薬学的に許容され得る賦形剤は、1つ以上の薬学的に許容され得る安定剤を含む。
【0016】
前記先行する態様のいずれか1つによれば、前記薬学的に許容され得る安定剤は、
a)1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b)1つ以上の界面活性剤;
c)1つ以上の炭水化物又は糖;又は
d)a)からc)の2つ以上の混合物
の少なくとも1つを含む。
【0017】
一つの実施態様では、前記薬学的に許容され得る安定剤は、
a)1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b)1つ以上の界面活性剤;及び/又は
c)1つ以上の炭水化物
を含み、
ここで、組換えレクチンの、
i.アミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩に対する比は、約1:0.1から約1:10の範囲内であり;
ii.界面活性剤に対する比は、約1:0.0002から約1:10の範囲内であり;そして
iii.炭水化物に対する比は、約1:0.1から約1:150の範囲内である。
【0018】
前記先行する態様のいずれかひとつによれば、本発明の安定な医薬組成物は、局所的に、経腸的に又は非経口的に投与される。
【0019】
さらに、本発明の前記先行する態様のいずれかによれば、安定な医薬組成物は、がんの治療又は予防に用いられる。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の治療上有効な量の組換えレクチンを含む安定な医薬組成物を調製するための方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、
a.1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b.1つ以上の界面活性剤;
c.1つ以上の炭水化物又は糖;又は
d.a)からc)の2つ以上の混合物の
少なくとも1つを含む製剤を安定化する成分が提供される。
【0022】
本発明の前記具体的な態様によれば、
a)約0.0001%(w/v)から約10%(w/v)のSclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチンタンパク質;
b)約0.01%(w/v)から約10%(w/v)の1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
c)約0.0001%(w/v)から約1%(w/v)の1つ以上の界面活性剤;又は
d)約0.1%(w/v)から約15%(w/v)の1つ以上の炭水化物又は糖
を含む安定な医薬組成物が提供される。
【0023】
本明細書において使用されるパーセンテージは、投与の準備ができている、最終製剤の容積中の成分の量(重量)を指す。前記パーセンテージは、従来技術において公知の方法によって決定される。
【0024】
添付の配列の簡単な説明(本発明)
・配列番号1は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列(国際公開公報第2010/095143号においてRec-2として報告されている)の変異体を表す。
・配列番号2は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列(国際公開公報第2010/095143号においてRec-3として報告されている)の変異体を表す。
・配列番号3は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列(国際公開公報第2014/203261号に報告されている)の変異体を表す。
・配列番号4は、天然のS. rolfsiiレクチンのアミノ酸配列を表す。
【0025】
発明の詳細な説明
【0026】
定義:
本明細書で使用されるとき、用語「レクチン」は、炭水化物結合タンパク質を指し、ここで、本明細書で使用される用語「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「組換え」生成物は、遺伝的に操作された生成物を指す。遺伝子工学が遺伝子の非自然な操作であることは理解されよう。したがって、組換え生成物は、その生成物が自然界に存在しない宿主細胞のような非自然な環境中に存在するか又は合成される生成物である。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「組換えタンパク質」、「組換えレクチン」、「組換えレクチンタンパク質」又は「組換えポリペプチド」は、組換えDNA分子を用いて発現されるタンパク質分子を指す。本発明の組換えタンパク質は、Sclerotium rolfsiiレクチン(SRL)由来のレクチンである。SRLは、土壌植物病原菌S. rolfsiiの菌核体から単離されたレクチンである。配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質は、組換えレクチンの一例である。
【0029】
用語「組換えタンパク質」は、本明細書では、本明細書に記載の化合物を患者への投与時に、(直接的又は間接的に)提供することができる、任意の薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、又は任意の他の化合物を包含することが意図される。塩、溶媒和物、水和物、及びプロドラッグの調製は、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。
【0030】
用語「製剤」、「組成物」、「医薬製剤」及び「医薬組成物」は、互換的に使用され、活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような調製物であり、したがって、治療用途のために被験体に投与してもよく、ここで、被験体は、好ましくはヒトである。本明細書で使用される「活性成分」は、被験体を疾患又は疾患の症状から解放するか、又は疾患の進行を遅くする(slow)又は遅延させる(delay)ための所望の生物学的又は治療的活性を有する、組換えレクチン又は組換えタンパク質を指す。本発明の製剤は、液体製剤又は固体製剤として調製される。液体製剤は、経口投与又は注射に好適な溶液、エマルジョン又は懸濁液の形態である。前記液体製剤が、液体ビヒクルとして注射用水(WFI)などの媒体中にあることは、当業者によって理解されよう。前記固体製剤は、固体成分を混合するか、又は溶媒媒体を蒸発させるのどちらかによって調製される。前記固体製剤はまた、前記液体製剤の凍結乾燥によって調製することができ、ここで、凍結乾燥の方法において、乾燥されるべき材料は、最初に凍結され、次いで氷又は凍結溶媒が真空下の昇華によって除去される。安定性の理由から、調整において、製剤を凍結乾燥する前に賦形剤を添加してもよい。凍結乾燥中に、当業者の知識の範囲内である、適切な貯蔵温度、生成物温度、真空レベル、凍結、一次乾燥パラメータ、及び二次乾燥パラメータを特定し、用いることが必要であってもよい。前記個体製剤は、凍結乾燥製剤としても知られている。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「賦形剤」は、活性成分の治療作用に影響を与えないが、活性成分のためのビヒクル又は媒体として役立つ、製剤に添加される不活性又は通常不活性な物質を指す。それは、所望の適合性を提供するため、安定性を改善するため、及び/又は前記組成物の浸透圧を調節するために使用してもよい。本発明の目的のために、賦形剤は、タンパク質製剤において使用するために当業者に知られている物質から選択してもよい。そのような賦形剤の例は、緩衝剤、タンパク質安定化剤、ポリマー、可溶化剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増量剤、希釈剤又はそれらの混合物である。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「凍結防止剤」は、細胞又は組織、又は製剤中の活性成分が、凍結による又は凍結の工程の間に損傷するのを防止する化合物を指す。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、用語「凍結保護剤」は、乾燥段階の間に、細胞又は組織、又は製剤中の活性成分の損傷を防止する化合物を指す。
【0034】
凍結防止剤及び凍結保護剤はまた、増量剤としても使用することができる。増量剤は、得られる凍結乾燥ケーキの構造を強化し、当業者に理解されている通りである。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「治療上有効な量」(すなわち、治療有効性を達成する)は、所望の臨床結果をもたらす(すなわち、治療有効性を達成する)のに十分な量である。治療上有効な量は、1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的のために、治療上有効な量の組換えタンパク質は、病状の進行を緩和、改善、安定化、逆転、予防、遅く又は遅延させるのに十分な量である。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「相同性」又は「相同」は、所与の領域又は部分にわたって少なくとも部分的に同一性を共有する、2つ以上の参照される実体を指す。相同性又は同一性の区域(areas)、領域(regions)又はドメインは、相同性を共有する、又は同一である2つ以上の参照される実体の一部を指す。したがって、2つの配列が1つ以上の配列領域にわたって同一である場合、それらはこれらの領域において同一性を共有する。実質的な相同性は、参照分子の1つ以上の構造又は機能(例えば、生物学的機能又は活性)、又はそれが相同性を共有する参照分子の関連する/対応する領域もしくは部分の少なくとも部分的な構造もしくは機能を有するか、又は有すると予測されるように、構造的又は機能的に保存されている分子を指す。
【0037】
室温は、22℃から28℃の範囲内の温度である。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「安定な組成物」及び「安定な製剤」は、同一の意味を有し、その中のタンパク質が、その物理的及び化学的安定性及び完全性及び保存時のその治療有効性を本質的に保持するタンパク質の組成物を指す。前記組成物中のタンパク質は、結合形成又は切断による如何なる修飾も受けないか、又はタンパク質の基本構造に修飾がない。例えば、「安定な」製剤は、タンパク質の約10%未満、そして好ましくは約5%未満が、その製剤において凝集体として存在するものであってもよい。さらに、安定な製剤はまた、そこに溶解したタンパク質の凝集又は沈殿に対する保護も提供することができる。タンパク質製剤の安定性はまた、生物活性アッセイ(バイオアッセイ)を用いて測定してもよい。前記安定な組成物は、新たに調製された組成物と比較して、貯蔵期間中にアッセイ値の大きな変動を示さないことが予想される。
【0039】
例えば、本発明において、バイオアッセイは、卵巣がん細胞株(PA-1細胞株)に対する製剤の細胞毒性を試験することによって観察された。緩衝液中の配列番号1のPA-1細胞株に対する標準的な細胞毒性は、31.58%~58.05%の間である。配列番号1の組成は、PA-1細胞株に対して同様の効果を示すと予想される。前記細胞株に対する0ヶ月及び6ヶ月後の組成物の効果が同一である場合(31.58%と58.05%の間)、組成物は6ヶ月間安定であると言う。
【0040】
前記組成物の安定性はまた、いくつかの他のパラメータを用いて試験してもよい。例えば、組成物は、肉眼で観察した場合、6ヶ月間その外観を変化させなければ、6ヶ月間安定であると言う。あるいは、安定期間中、例えば製剤調製後1ヶ月から6ヶ月までの間に形成された不純物が許容限度内にあれば、組成物は、安定な組成物であると言う。不純物は、高分子量不純物又は他の未知の不純物を含んでもよい。
【0041】
さらに、前記組成物は、その「アッセイ」が安定期間中に同一であるか又は許容限度内である場合、安定であると言ってよい。本明細書に使用されるとき、用語「アッセイ」は、活性物質の純度又は強度の測定のための分析手順を指す。これは、組成物中に存在する活性成分のパーセンテージの分析である。タンパク質を分析するアッセイは、クロマトグラフィー法又は化学分析又は滴定などの当技術分野で公知の方法から選択されてもよい。製剤中のタンパク質のパーセンテージは、安定期間後に分析した場合、製剤の製造日のものと同一か、又は限度内で変動しなければならない。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「安定期間」は、製剤及び製剤中の活性成分が、同一性、強度、品質、純度及び活性などのその全ての特性を保持する期間を指す。安定期間は、製剤の調製又は製造の日から計算され、数日から、数週間、数ヶ月数年と変化してもよい。例えば、製剤は、調製から数日間安定性を示すか、調製日から3年間安定性を維持してもよい。
【0043】
「製剤を安定化する成分」は、水溶液中、凍結工程中、又は凍結乾燥中のタンパク質の分解を低減又は防止する物質を指す。「製剤を安定化する成分」は異なる条件下でタンパク質の立体配座を維持する。緩衝剤、界面活性剤、アミノ酸安定化剤、炭水化物安定化剤及び等張化剤などの種々の製剤成分が、タンパク質、及びそれゆえのタンパク質製剤を安定化するために、個別に又は組み合わせて使用される。
【0044】
用語「アミノ酸」は、製剤の成分又は賦形剤を指すとき、カルボキシル基(-COOH)及びアミノ基(-NH2)の両方を含む単純な有機化合物である。本発明の目的のために、アミノ酸は、タンパク質安定剤として個々に、又はその混合物として、又は他の安定化成分と組み合わせて使用される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「w/v」は、組成物中の賦形剤の重量パーセンテージを指し、当業者によって理解されるように測定又は計算される。
【0046】
用語「がん」、「腫瘍(tumor」及び「腫瘍(tumour)」は、当業者によって理解されるように、本出願において互換的に使用されてもよい。がん又は腫瘍は、異常な細胞増殖から生じる。がん又は腫瘍は、正常な細胞が、制御不能の状態で成長し、横溢する場合に形成される。腫瘍の形成は、組織、臓器又は生物の正常な機能にしばしば影響を及ぼす。
【0047】
がんは、体内の如何なる場所からでも発生することができ、そしてまた体の他の部位に拡がることもできる。がん細胞の拡がりは転移と呼ばれる。したがって、用語「がん」は、原発性がん及び転移性がんの両方を包含する。本明細書中で使用されるとき、用語「がん」は、固形腫瘍を含むが、これに限定されない。
【0048】
用語「処置」は、がんを治癒すること、前記疾患の進行を予防又は遅くすること、又は前記疾患の重症度を低減すること、転移を予防又は低減すること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍質量を減少させること又は腫瘍を排除すること、及び/又は疾患に関連する症状を(一時的又は永久的に)改善することを実質的に含み得ることが理解されるであろう。症状は、がんのタイプによって異なるが、痛み、機能の低下又は喪失、吐き気及び/又は体調不良(sickness)、発熱、腫瘍形成、免疫抑制、及び/又は疲労を含むことが理解されよう。用語「処置」は、予防的(prophylactic)又は治療的又は防止的(preventive)手段を含む。
【0049】
用語「再構成時間」は、凍結乾燥製剤などの固形製剤を液体に完全に溶解し、粒子を含まない清澄な溶液にするのに要する時間である。当業者によって理解されるように、凍結乾燥製剤の再構成に必要な時間が短いことは、製剤の安定性の決定における寄与因子である。加えられる液体(通常は注射用水)の量は、被験体に製剤を投与する前に製剤において必要とされるタンパク質の最終濃度に依存する。
【0050】
本発明の第1の具体的な態様によれば、治療上有効な量の、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチンタンパク質を含む安定な医薬組成物が提供される。
【0051】
本発明の別の態様によれば、治療上有効な量の、SRL由来の組換えレクチンを含む安定な医薬組成物であって、ここで、前記組換えレクチンが、
a)配列番号l;
b)配列番号2;
c)配列番号3;又は
d)配列番号1、2又は3と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含む、又はからなる医薬組成物が提供される。
【0052】
1つの実施態様では、2つの配列間のパーセンテージ「相同性」は、デフォルトパラメータ(Altschul et al. Nucleic Acids Res. 1997 Sep 1; 25 (17):3389-402)を用いるBLASTPアルゴリズムを用いて決定される。特に、BLASTアルゴリズムは、URL:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi を用いてインターネット上でアクセスできる。一つの代替実施態様では、グローバルシークエンスアラインメント(global sequence alignments)のために、2つの配列間の同一性、相同性のパーセンテージは、デフォルトパラメータを用いるEMBOSS Needleアルゴリズムを用いて決定される。特に、EMBOSS Needleアルゴリズムは、URL: https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/を用いてインターネット上でアクセスできる。
【0053】
Sclerotium rolfsiiレクチン又はSRLは、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質である。配列番号1から3は、配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列の例である。特に、配列番号1、2及び3は、配列番号4に対してそれぞれ97.9%、96.5%及び91.5%の相同性を有する(EMBOSS Needleを用いて決定される)。
【0054】
配列番号1は、SRLアミノ酸配列(国際公開公報第2010/095143号においてRec-2として報告されている)の変異体を表す。
配列番号2は、SRLアミノ酸配列(国際公開公報第2010/095143号においてRec-3として報告されている)の変異体を表す。
配列番号3は、SRLアミノ酸配列(国際公開公報第2014/203261号に報告されている)の変異体を表す。
配列番号4は、天然のS. rolfsiiレクチンのアミノ酸配列を表す。
【0055】
前記先行する態様のいずれか1つによれば、前記組換えレクチンは、国際公開公報第2020/044296号に定義される修飾されたレクチンタンパク質(すなわち、炭水化物結合部位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する組換えレクチンタンパク質)であり、特にレクチンの定義に関して参照により本明細書に組み込まれる。1つの具体的な態様では、前記組換えレクチンは、配列番号4の炭水化物結合部位における少なくとも1つのアミノ酸修飾又は配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
別の具体的な態様では、前記炭水化物結合部位は、一級及び/又は二級の炭水化物結合部位である。
【0057】
別の具体的な態様では、前記一級の炭水化物結合部位は、配列番号1における27、28、47、48、70、71、72及び105の1つ以上から選択される位置、又は配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列における位置を含む。
【0058】
別の具体的な態様では、前記アミノ酸修飾の位置は、
i)27及び/又は28;
ii)47及び/又は48;
iii)70、71、及び/又は72;及び/又は
iv)105
の1つ以上から選択される。
【0059】
別の具体的な態様では、前記二級の炭水化物結合部位は、配列番号4における77、78、80、101、112、及び114の一つ以上から選択される位置、又は配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列における位置を含む。
【0060】
別の具体的な態様では、アミノ酸修飾の位置は、
i)77、78、及び/又は80;
ii)101;及び/又は
iii)112、及び/又は114
の1つ以上から選択される。
【0061】
別の具体的な態様では、前記アミノ酸修飾は、置換アミノ酸が元のアミノ酸を置換するようなアミノ酸置換である。
【0062】
別の具体的な態様では、前記一級の炭水化物結合部位におけるアミノ酸置換は、
i)位置27での:保存的な、好ましい又は好ましくないアミノ酸であって、ここで保存的なアミノ酸は非極性又は酸性であり;好ましいアミノ酸は、極性又は塩基性であり、好ましくないアミノ酸は、非極性であるアミノ酸;
ii)位置28での:保存的な、好ましい、中立の又は好ましくないアミノ酸であって、ここで保存的なアミノ酸は、非極性であり;好ましいアミノ酸は、極性であり、中立のアミノ酸は、酸性又は塩基性であり及び好ましくないアミノ酸は極性であるアミノ酸;
iii)位置47での:塩基性又は非極性である、好ましくないアミノ酸;
iv)位置48での:非極性である、好ましくないアミノ酸;
v)位置70での:非極性である、好ましくないアミノ酸;
vi)位置71での:非極性である、好ましくないアミノ酸;
vii)位置72での:非極性である好ましくないアミノ酸;及び/又は
viii)位置105での:保存的なアミノ酸、好ましいアミノ酸、中立の又は好ましくないアミノ酸であって、ここで保存的なアミノ酸は、塩基性又は非極性であり;好ましいアミノ酸は、極性であり、中立のアミノ酸は、酸性、塩基性又は極性であり及び/又は好ましくないアミノ酸は、極性、非極性又は酸性であるアミノ酸
のうちの1つ以上から選択されるアミノ酸の置換である。
【0063】
別の具体的な態様では、前記二級の炭水化物結合部位におけるアミノ酸置換は、
i)位置77での:非極性である好ましくないアミノ酸;
ii)位置78での:非極性である好ましくないアミノ酸;
iii)位置80での:非極性である好ましくないアミノ酸;
iv)位置101での:好ましいアミノ酸、好ましくない又は中立のアミノ酸であって、ここで好ましいアミノ酸は、極性又は塩基性であり、好ましくないアミノ酸は、非極性であり及び中立のアミノ酸は、非極性又は酸性であるアミノ酸;
v)位置112での:非極性である好ましくないアミノ酸;
vi)位置114での:極性である好ましくないアミノ酸
のうちの1つ以上から選択されるアミノ酸の置換である。
【0064】
別の具体的な態様では、修飾されたレクチンタンパク質は、配列番号4のN末端において、又は配列番号4に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列において、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、ここで、前記N末端は、配列番号4における1及び/又は2から選択される位置、又は配列番号4に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有する配列における対応する位置を含む。
【0065】
別の具体的な態様では、前記アミノ酸修飾は、位置1でのアミノ酸置換であり、そしてここで置換アミノ酸はトレオニン又はバリンではない。
【0066】
別の具体的な態様では、前記置換アミノ酸は、アラニン、グリシン、プロリン又はセリンから選択される。
【0067】
別の具体的な態様では、前記アミノ酸修飾は、位置2でのアミノ酸置換であり、そしてここで置換アミノ酸はトリプトファンである。
【0068】
別の具体的な態様では、開始メチオニンの切断は、対照と比較して増加又は減少する。
【0069】
別の具体的な態様では、位置76でのアミノ酸修飾は、非極性アミノ酸を用いたアミノ酸置換である。
【0070】
別の具体的な態様では、前記非極性アミノ酸は、グリシン、バリン又はロイシンから選択される。
【0071】
別の具体的な態様では、位置44又は89でのアミノ酸修飾は、非極性アミノ酸を用いたアミノ酸置換である。
【0072】
別の具体的な態様では、前記非極性アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン又はバリンから選択される。
【0073】
別の具体的な態様では、前記修飾されたレクチンタンパク質は、可溶性、部分的に可溶性又は不溶性であり及び/又は細胞毒性を有する。
【0074】
別の具体的な態様では、前記修飾されたレクチンタンパク質は、対照の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である細胞毒性を有する。
【0075】
別の具体的な態様では、前記修飾されたレクチンタンパク質は、対照の10%未満であるパーセンテージの細胞毒性を有するか、又は細胞毒性がない。
【0076】
別の具体的な態様では、前記修飾されたレクチンタンパク質は、対照と比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%増加したパーセンテージの細胞毒性を有する。
【0077】
別の具体的な態様では、前記修飾されたレクチンタンパク質は、アミノ酸長が500,400,300,250,200又は150以下である。
【0078】
上記の組換えタンパク質は、国際公開公報第2020/044296号、国際公開公報第2010/095143号及び国際公開公報第2014/203261号に記載の方法によって得ることができる。1つの実施態様での、本発明の組換えタンパク質は、従来の技術、典型的には従来のクロマトグラフィー法によって精製される。
【0079】
別の主要な態様によれば、本発明は、治療上有効な量のSclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチン及び薬学的に許容され得る賦形剤を含む安定な医薬組成物を提供する。
【0080】
前記薬学的に許容され得る賦形剤は、緩衝剤、安定剤、ポリマー、可溶化剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増量剤、希釈剤、乳化剤及び保存剤であってもよい。
【0081】
前記緩衝液は、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、TRIS-塩化ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム又はヒスチジンなどのリン酸緩衝液から選択されてもよい。前記緩衝液の濃度は、1mM~300mMの範囲であってもよい。当業者に理解されるように、緩衝剤TRIS-塩化ナトリウム緩衝系において、TRIS(トリスアミノメタン)の濃度は1mM~200mMであり、塩化ナトリウム(NaCl)の濃度は1mM~300mMである。前記緩衝液は、製剤のpHを維持するために用いられることが理解されよう。前記pHは5~9の間で調節されてもよい。特に、前記製剤のpHは7~9の範囲内である。
【0082】
本発明の1つの態様によれば、前記安定剤は、界面活性剤、洗浄剤(detergents)、アミノ酸、薬学的に許容され得るアミノ酸の塩、炭水化物又は糖安定剤、アミン、ポリオール又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0083】
この実施態様によれば、界面活性剤の非限定的な例は、Tween(登録商標)20(ポリソルベート20)、Tween(登録商標)40(ポリソルベート40)、Tween(登録商標)60(ポリソルベート60)、Tween(登録商標)80(ポリソルベート80)、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノパルミタート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート、ソルビタンモノオレアート、Triton(商標)X-100、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-88、Pluronic(登録商標)F-127(ポロキサマー)、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンモノステアラート、ソルビタントリステアラート、Poloxamer188及びBrij35(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)又はそれらの組み合わせである。
【0084】
ある実施態様では、前記界面活性剤は、0.001mg/mLから10mg/mLすなわち0.0001%(w/v)から1.0%(w/v)の範囲内であってもよい。
【0085】
ある実施態様では、安定な組成物は、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチン及び1つ以上の界面活性剤を含み、ここでタンパク質の界面活性剤に対する比は、1:0.0002から1:10の範囲内である。
【0086】
さらに、1つの実施態様によれば、前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。前記アミノ酸は、L-アミノ酸又はD-アミノ酸、好ましくはL-アミノ酸であってもよい。前記アミノ酸はそれ自体、又はその塩として用いてもよい。前記塩は、アルカリ塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩又はトリエタノールアミン塩などの有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩などのアルギニン塩又は酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩又は当業者に公知のアミノ酸の他の塩であってもよい。1つの実施態様では、前記アミノ酸は、L-ヒスチジン、L-アルギニン、グルタミン酸又はメチオニンから選択される。別の実施態様では、前記アミノ酸は、L-ヒスチジン、L-アルギニン、グルタミン酸又はメチオニンから選択されるアミノ酸の塩酸塩である。1つの好ましい実施態様では、前記アミノ酸は、L-ヒスチジン又はL-アルギニンの塩酸塩から選択される。
【0087】
いくつかの実施態様では、アミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩の濃度は、0.01%(w/v)から10%(w/v)すなわち0.1mg/mLから100mg/mLの範囲内である。
【0088】
別の実施態様では、安定な組成物は、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチン及び1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩を含む。タンパク質のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩に対する比は、1:0.1から1:10の範囲内である。
【0089】
さらに別の実施態様によれば、前記炭水化物又は糖安定剤は、ショ糖、トレハロース、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、ラクトース、キシリトール、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、グルコース、ラフィノース、マルトース、デキストラン、イノシトール又はそれらの組み合わせの非限定的な例から選択されてもよい。いくつかの実施態様では、前記炭水化物は、ショ糖又はマンニトールである。別の実施態様では、前記炭水化物の濃度は、0.1%(w/v)から15%(w/v)すなわち1.0mg/mLから150.0mg/mLの範囲内である。
【0090】
さらに別の実施態様では、安定な組成物は、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチン及び1つ以上の炭水化物又は糖安定剤を含み、ここでタンパク質の炭水化物に対する比は1:0.1から1:150の範囲内である。
【0091】
本発明の前記態様によれば、前記安定剤はさらに、プロタミン又はプロタミンの薬学的に許容され得る塩などのアミン様塩基性タンパク質、又はポリリジンなどのアミン残基を有する天然又は合成ポリマーから選択されてもよい。プロタミンは、例えば、ヒト又は魚から得られてもよく、又はヒト又は魚由来であってもよい。前記安定剤はまた、PEG400からPEG20,000、グリセロール又はキシリトールなどのポリオールから選択されてもよい。
【0092】
1つの特に好ましい実施態様では、前記安定剤は、界面活性剤、アミノ酸、薬学的に許容され得るアミノ酸の塩及び/又は炭水化物の1つ以上の組み合わせである。例えば、前記安定剤は、界面活性剤とアミノ酸の組み合わせであってもよく、又はアミノ酸又はその塩及び炭水化物の組み合わせであってもよい。米国特許第9981007号は、転移性腫瘍を処置するための組換えヤドリレクチンを含む組成物を開示しており、ここでその実施例によれば、その組成物は、安定剤としてポリソルベート及びグルタミン酸又はポリソルベート及びトレハロースの組み合わせを含む。異なる機序及び/又は可能な相乗効果を介して異なる安定性の問題に対処することを見込んで、複数の安定剤が、タンパク質組成物において同時に用いられることが理解されよう。しかしながら、複数の安定剤を使用するだけでは、必ずしも安定なタンパク質製剤が得られるとは限らない。例えば、本発明において、L-ヒスチジン及び種々の量のポリソルベート80を含む製剤は、安定な製剤を与えなかった。目視検査では、25℃で1か月保存後に白色の沈殿が見られた。
【0093】
本発明の1つの態様によれば、組成物中の前記賦形剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ヒドロキシルエチルスターチ(HETA)又はPEG-4000などのポリマー又はそれらの組み合わせ;及びヒト血清アルブミン又はゼラチン又はそれらの組み合わせなどのタンパク質を含んでもよい。
【0094】
本発明の組成物は、さらに場合により、ベンジルアルコール、m-クレゾール、メチルパラベン、フェノール又はそれらの組み合わせなどの保存剤;塩化ナトリウム、ぶどう糖、塩化カリウム、塩化カルシウム、ショ糖又はそれらの組み合わせなどの浸透張力調節剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アスコルビン酸などの抗酸化剤;及び/又はマンニトール、エチレングリコール、グリセロール、ショ糖、トレハロース、及び/又はデキストロースなどの凍結防止剤を含んでもよい。
【0095】
本明細書に記載した賦形剤の例は、本発明を明確にし且つ理解するためのものであり、いかなる方法でにおいても本発明を限定するものではないことが理解されよう。さらに、異なる賦形剤が、製剤において異なる役割を果たすことも当業者には理解されよう。例えば、ポリソルベートは、製剤において、安定剤として、又は可溶化剤として、又は乳化剤として使用されてもよい。本発明の製剤は、異なる機能を示す賦形剤を含み、そして本明細書に特定された機能に限定されなくてもよい。
【0096】
いくつかの実施態様では、前記組成物中の組換えレクチンの濃度は、0.001mg/mLから100mg/mLの範囲内である。いくつかの実施態様では、前記濃度は、少なくとも0.25mg/mL、0.5mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも1.5mg/mL、少なくとも2mg/mL、少なくとも2.5mg/mL、少なくとも3mg/mL、少なくとも3.5mg/mL、少なくとも4mg/mL、少なくとも4.5mg/mL、少なくとも5mg/mL、少なくとも5.5mg/mL、少なくとも6mg/mL、少なくとも6.5mg/mL、少なくとも7mg/mL、少なくとも7.5mg/mL、少なくとも8mg/mL、少なくとも8.5mg/mL、少なくとも9mg/mL、少なくとも9.5mg/mL、少なくとも10mg/mL、又は少なくとも20mg/mL、少なくとも30mg/mL、少なくとも40mg/mL、少なくとも50mg/mLである。
【0097】
ある実施態様では、前記組成物中の組換えレクチンの濃度は、0.0001%(w/v)から10%(w/v)の範囲内である。
【0098】
本発明の別の主要な態様によれば、
a)1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
b)1つ以上の界面活性剤;
c)1つ以上の炭水化物又は糖;又は
d)a)からc)の2つ以上の混合物
の少なくとも1つを含む製剤を安定化する成分が提供される。
【0099】
本発明の前記態様によれば、「製剤を安定化する成分」をタンパク質製剤に用いることが好ましい。
【0100】
1つの具体的な実施態様では、前記タンパク質製剤は、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチンを含む製剤である。
【0101】
前記の非常に具体的な態様によれば、本発明の安定な医薬組成物は、
a)約0.0001%(w/v)から約10%(w/v)の、Sclerotium rolfsiiレクチン由来の組換えレクチンタンパク質;
b)約0.01%(w/v)から約10%(w/v)の、1つ以上のアミノ酸又はその薬学的に許容され得る塩;
c)約0.0001%(w/v)から約1%(w/v)の1つ以上の界面活性剤;又は
d)約0.1%(w/v)から約15%(w/v)の、1つ以上の炭水化物又は糖
を含む。
【0102】
本発明の組成物は、水性液体又は固体として製剤化してもよい。ある実施態様では、前記組成物は、液体、懸濁液、粉末、滅菌粉末であってもよく又は溶液製剤用に凍結乾燥してもよい。凍結乾燥製剤は、当業者に知られているように、必要な濃度を得るために、注射用水(WFI)及び/又は任意の好適な薬学的に許容され得る希釈剤又はそれらの混合物で再構成してもよい。前記組成物は、単回投与又は複数回投与に好適である。当業者は、投与のタイプが、身長及び体重、体表面積、年齢、性別、又は患者の一般的な健康状態などの、様々な要因、特に投与される製剤、投与期間及び投与のタイプ、及び並行して投与され得る他の薬剤に依存することを知っている。
【0103】
前記レクチンは、液体(例えば、水溶液又は懸濁液中、又は油性の溶液又は懸濁液として)、固体(例えばカプセル又は錠剤)、凍結乾燥粉末、スプレー、クリーム、ローション又はゲル、ビロソーム、リポソーム、ニオソーム、トランスフェロソーム、エトソーム、スフィンゴソーム、ファーマコソーム、マルチラメラ小胞、ミクロスフェアなどのこれらに限定されない小胞性ドラッグデリバリーシステムなどの、薬学的に許容され得る形態で提供されてもよい。
【0104】
本明細書で使用されるとき、「水溶液」は、配列番号1のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの、固体又は凍結乾燥剤を水又は緩衝液を含む水に溶解することによって製造される溶液である。水溶液はまた、配列番号1のアミノ酸配列を有する組換えレクチンなどの薬剤が液状であり且つ水又は緩衝液を含む水と混合した場合にも形成される。
【0105】
本発明の組成物は、好適な用量で個体に投与してもよい。前記投与は、局所的に、経腸的に、又は静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所的に、鼻腔内、気管支内又は皮内などの、非経口的に、又は動脈内のある点でカテーテルを介して行うことができる。特定の実施態様では、本発明の組成物は非経口的に投与してもよい。
【0106】
1つの実施態様では、本発明の液体製剤は、冷蔵温度(2℃~8℃)で少なくとも2年間、又は少なくとも1年間安定である。別の実施態様では、前記液体製剤は、室温で少なくとも6ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間又は少なくとも2ヶ月間又は少なくとも1ヶ月間安定である。
【0107】
いくつかの実施態様では、本発明の凍結乾燥製剤は、冷蔵温度(2℃~8℃)で少なくとも2年間、又は少なくとも1年間安定である。別の実施態様では、凍結乾燥製剤はまた、室温で少なくとも6ヶ月間又は少なくとも5ヶ月間又は少なくとも4ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間安定である。前記凍結乾燥製剤はまた、30℃と40℃の間のような高温で、少なくとも4ヶ月間又は少なくとも3ヶ月間又は少なくとも2ヶ月間又は少なくとも一ヶ月間又は少なくとも15日間又は少なくとも7日間安定である。
【0108】
別の主要な態様によれば、本発明の組成物は、がんの治療又は予防に用いられる。
【0109】
用語「がん」は、皮膚、組織、器官、骨、軟骨の疾患を含む。本発明の方法及び組成物によって処置され得るがんの例は、胆管、膀胱、骨、脳、乳房、子宮頸部、結腸、食道、胃腸(回腸、結腸、直腸及び/又は肛門を含む)、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、甲状腺、膀胱、膣及び子宮のがんを含むが、これらに限定されない。
【0110】
前記がんは、良性又は悪性であってもよく、悪性のどの段階であってもよい。
【0111】
前記がんは、上皮組織、非上皮組織、皮膚を構成する細胞、臓器の内側を覆う組織、免疫系の細胞、結合組織、又は脊髄又は脳の細胞のがんであってもよい。
【0112】
いくつかの実施態様では、前記がんは、固形腫瘍である。
【0113】
がんは、腫瘍であってもよい。いくつかの実施態様では、がんは、腺がんである。前記腺がんは、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、乳房、結腸又は結腸直腸、肺、胆管、膣、尿膜管又は胃腺がんであってもよい。
【0114】
いくつかの実施態様では、前記がんは、扁平上皮がんである。前記扁平上皮がんは、皮膚、口腔、肺、甲状腺、食道、膣、子宮頸部、卵巣、頭部及び/又は頸部、前立腺又は膀胱の扁平上皮がんであり得る。
【0115】
ある具体的な実施態様では、前記がんは、神経膠芽腫、髄膜腫、星状細胞腫、神経膠腫及び神経芽細胞腫を含み得る、脳の腫瘍/がんであってもよい。
【0116】
別の実施態様によれば、本発明は、それを必要とする被験体におけるがんの治療又は予防において使用するための、薬学的に安定なレクチンの組成物を提供する。
【0117】
前記被験体は、哺乳動物の被験体であってもよい。便宜上、そのような「処置」を受ける哺乳動物を「被験体」と呼ぶことができる。いくつかの実施態様では、前記被験体は、ヒトである。特に、前記被験体は、がんに罹患しているか又はがんからの予防又は治療を求めているヒト被験体であってもよい。当業者には、前記被験体を「個体」と呼び得ることが理解されよう。
【0118】
本発明のさらに別の主要な態様によれば、安定な組成物を調製するための方法が提供され、ここで、前記方法は、組換えレクチンの緩衝溶液を、1つ以上の安定剤の緩衝溶液と組み合わせることを含む。この方法は、当業者の知識によって、好適な条件で実施することができる。例えば、前記方法における温度は、0℃と35℃の間、5℃と30℃の間、10℃と25℃の間又は20℃と25℃の間であってもよい。
【0119】
前記安定な組成物は、液体又は凍結乾燥製剤であってもよい。
【0120】
1つの具体的な実施態様では、前記方法は、
a)組換えレクチン緩衝液の原液を調製する工程;
b)安定剤の単一成分の溶液を調製する工程;
c)溶液a)の必要量を溶液b)の必要量に加える工程;
d)場合により工程c)の混合物を必要量のWFIで希釈する工程;
e)場合により工程c)又は工程d)の溶液に1つ以上の安定剤を個別に添加する工程;
f)工程e)の溶液に他の賦形剤を添加する工程;
g)注射用水(WFI)を用いてバッチサイズを形成して、液体製剤を得る工程;
h)場合により、工程g)で得られた液体製剤を凍結乾燥して、凍結乾燥製剤を得る工程
を含んでもよい。
【0121】
当業者の必要性及び理解に従って、上述の方法における工程を交換してもよい。
【0122】
前記製剤のpHは、0.05N 塩酸(HCl)を用いて5と9の間、特に7と9の間で維持される。前記組成物は、0℃と5℃の間の温度で製剤化される。好ましくは室温で製剤化される。最終液体製剤は、0.22ミクロンのポリフッ化ビニリデン又はポリ2フッ化ビニリデン(PVDF)又はポリエーテルスルホン(PES)のような好適なフィルター、又は当業者に公知の任意の他のそのようなフィルターを通して無菌的に濾過されてもよい。
【実施例】
【0123】
本発明は、以下の実施例を参照することによって完全に理解されるであろう。
それらは、本発明を実施する最良の形態を実証し、且ついかなる方法においても本発明の範囲を制限しない。
【0124】
実施例1:水性/液体製剤を調製する方法。
a)ポリソルベート80(10%w/v)の原液を、WFIで調製した。
b)配列番号1のタンパク質の原液を、TBS(トリス緩衝生理食塩水)で調製して、ガラスビーカー中に採取した;
c)必要量の工程a)から得たポリソルベート-80溶液を、22℃~25℃の温度で工程b)のガラスビーカー中に移し、よく混合して、清澄な無色の溶液を得た。
d)必要量のL-アルギニン塩酸塩(L-アルギニンHCl)を、工程c)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
e)必要量のショ糖を、工程d)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
f)工程e)における溶液のpHを、7.4~8.0(0.05N 塩酸を用いて)に調整した。
g)最終バッチサイズはWFIを用いて到達させた;
h)最終バッチを、0.22ミクロンのPVDFフィルターを通して濾過した後に、充填、停止及びキャッピングを行った。
【0125】
実施例2:如何なる安定剤及び可溶化剤も含まない組換えタンパク質の製剤。
【表1】
【0126】
調製の手順:
a)TBS(トリス緩衝生理食塩水)中の配列番号1のタンパク質の原液を、ガラスビーカーに採取した;
b)溶液のpHを、7.4~8.0の間に調整した(0.05N HClを用いた)。
c)最終バッチサイズはWFIを用いて作成した;
d)バッチを、0.22ミクロンのPVDFフィルターを通して濾過した後に、充填、停止及びキャッピングを行った。
e)充填したバイアルを、2℃~8℃で保存した。
安定性結果:2℃~8℃で3ヵ月保存した後に、アッセイにおける有意な低下が観察された。
【0127】
実施例3:L-ヒスチジンを用いた製剤:
【表2】
上記製剤を実施例1と同様の方法で調製した。
安定性結果:
目視検査では、25℃/60%RH(相対湿度)で保存した場合、調製の1ヵ月後に、白色の沈殿が示された。
【0128】
実施例4:組換えタンパク質の液体製剤
【表3】
上記製剤を実施例1と同様の方法で調製した。
安定性結果:25℃/60%RH及び2℃~8℃で保存した場合の3か月後の安定性結果を報告した。
目視検査では、3ヵ月経過後に、調製時と同様な清澄且つ無色の溶液を示した。
分析結果では、有意な低下なしに、許容限度内(90%~10%)であることが報告された。アッセイの結果では、PA-1細胞株に対して31.58%と58.05%の間の許容範囲内であることが報告された。
【0129】
実施例5:組換えタンパク質の液体製剤
【表4】
上記製剤は、実施例1に記載の方法によって調製した。
安定性結果:
目視検査では、25℃/60%RH及び2℃~8℃で3か月後に、清澄且つ無色の溶液を示した。
アッセイの結果では、限度内(90%~110%)であり、有意な低下が無いことを見出した。このバイオアッセイの結果では、PA-1細胞株に対して31.58%と58.05%の間の許容範囲内であることが報告された。
【0130】
実施例6:組換えタンパク質の液体製剤
【表5】
上記製剤は、実施例1と同様の方法によって調製した。
安定性結果:25℃/60%RH及び2℃~8℃で6か月間の安定性結果を報告した。
目視検査では、6か月の期間にわたり清澄な無色の溶液を示した。
アッセイの結果では、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間及び6ヵ月間、限度内であり、高分子量の不純物の顕著な存在は見出せなかった。
バイオアッセイの結果では、PA‐1細胞株に対して31.58%と58.05%の間の限度内であった。
【0131】
実施例7:組換えタンパク質の凍結乾燥製剤
【表6】
上記製剤は、以下の方法により調製した:
a)ポリソルベート80(10%w/v)の原液を、WFIで調製した;
b)配列番号1のタンパク質の原液を、TBS(トリス緩衝生理食塩水)で調製し、ガラスビーカーに入れた;
c)必要量の工程a)のポリソルベート-80溶液を、22~25℃の温度で、工程b)の溶液に加え、よく混合して清澄な無色の溶液の出現を得た;
d)必要量の40%WFIを、工程c)の溶液に加えた。
e)必要量のL-アルギニン塩酸塩を、工程d)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
f)必要量のショ糖を、工程e)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
g)マンニトールを、工程f)の溶液に加え、混合して、清澄な無色の溶液を得た;
h)工程g)の溶液のpHを、0.05N HClを用いて7.4~8.0の間に調整した;
i)WFIを、工程h)の溶液に加えてバッチサイズを作成した;
j)バッチを、バイアルに充填し、凍結乾燥に供した;
k)凍結乾燥したバイアルを、2℃~8℃で保存する。
安定性結果:25℃/60%RH及び2℃~8℃における12か月間の安定性結果を報告した。
目視検査では、12か月後に白色の凍結乾燥したケーキが、所望の物理的安定性を示すこが示された。
アッセイの結果では、限度内であり、顕著な変動はなかった。バイオアッセイの結果では、PA‐1細胞株に対して31.58%と58.05%の限度内であった。
【0132】
実施例8:組換えタンパク質の凍結乾燥製剤
【表7】
上記製剤は、以下の方法により調製した:
a)ポリソルベート80(10%w/v)の原液を、WFIで調製した。必要量のポリソルベート80をこの原液からとり、WFIに加えた;
b)配列番号1のタンパク質の原液を、TBS(トリス緩衝生理食塩水)で調製し、ガラスビーカーに入れた;
c)必要量の工程b)の配列番号1のタンパク質の溶液を、必要量の工程a)の溶液に、22℃~25℃の温度で加え、よく混合して、清澄な無色の溶液を得た;
d)必要量のL-アルギニンの塩酸塩を工程c)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
e)必要量のショ糖を工程d)の溶液に加え、均質な溶解のためによく混合した;
f)必要量のマンニトールを工程e)の溶液に加え、混合して、清澄な無色の溶液を得た;
g)バッチの容量はWFIを、用いてバッチサイズの80%までとした。
h)工程g)の溶液のpHを、0.05N HClを用いて7.4~8.0の間に調整した;
i)WFIを、ステップh)の溶液に加えて、バッチサイズを作成した;
j)バッチを、バイアルに充填し、凍結乾燥に供した;
k)凍結乾燥したバイアルを、2℃~8℃の温度で保存した。
安定性結果:25℃/60%RH及び2℃~8℃での6か月間の安定性結果を報告した。
目視検査では、6か月間にわたり可視粒子のない白色のケーキが見られた。アッセイの結果では、それぞれ1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月及び6ヵ月の期間にわたるそれぞれで、高分子量の不純物の顕著な存在がなく、許容限度内であることが見いだされた。バイオアッセイの結果では、PA‐1細胞株に対して31.58%と58.05%の限度内であった。
再構成時間は、凍結乾燥生成物を含有するバイアルにWFIを加えることによって分析した。
【0133】
実施例9:L-ヒスチジンを用いた組換えタンパク質の処方。
【表8】
上記製剤は、実施例1に記載の方法によって調製した。
【配列表】
【国際調査報告】