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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】安全な免疫ステルス細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220905BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20220905BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20220905BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20220905BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220905BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20220905BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0735
C12N5/074
A61K35/545
A61K48/00
A61P3/10
A61P27/02
A61P25/16
A61P25/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/04
C12N15/54
C12N15/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571656
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020067995
(87)【国際公開番号】W WO2020260563
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19182963.9
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19218122.0
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20170447.5
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャップリン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドーン、ウルリック
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA81
4C084ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB45
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB50
4C087BB51
4C087BB52
4C087BB56
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA81
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、安全かつ免疫ステルス移植可能な細胞、および疾患を予防、治療、または治癒するためのそれらの使用に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B2M/HLA-E遺伝子を含む哺乳類細胞であって、前記哺乳類細胞が、他の発現可能なB2M遺伝子を含まず、別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する、哺乳類細胞。
【請求項2】
前記哺乳類細胞が、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む、請求項1に記載の哺乳類細胞。
【請求項3】
前記哺乳類細胞が、幹細胞である、請求項1または2に記載の哺乳類細胞。
【請求項4】
前記哺乳類細胞が、神経細胞、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞、エクソソーム細胞、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞、ベータ細胞、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞、C-ペプチド+およびNKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞、内分泌細胞、免疫細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、肝細胞、星細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、有毛細胞、内耳細胞、腸細胞またはオルガノイド細胞、ネフロイド細胞、および腎臓関連細胞からなる群から選択される、請求項1または2に記載の哺乳類細胞。
【請求項5】
前記哺乳類細胞が、HLA-II欠損、例えば、CIITA欠損である、請求項1~4のいずれかに記載の哺乳類細胞。
【請求項6】
少なくとも2つのHSV-TK遺伝子が、セーフゲノムハーバー部位においてノックインされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の哺乳類細胞。
【請求項7】
1つのHSV-TK遺伝子がセーフハーバー部位においてノックインされ、別のHSV-TK遺伝子がノックインされて、CIITA対立遺伝子を除去する、請求項1~6のいずれかに記載の哺乳類細胞。
【請求項8】
移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・前記哺乳類細胞に少なくともB2M/HLA-E遺伝子をノックインするステップと、
・前記哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、
・任意選択で、前記哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって前記移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
【請求項9】
前記移植可能な哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0101HLA-E*0103細胞の細胞表面表現型を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳類細胞が、幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞、内分泌前駆細胞、およびNGN3+/NKX2.2+二重陽性細胞からなる群から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記移植可能な哺乳類細胞が、神経細胞、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞、エクソソーム細胞、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞、ベータ細胞、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞、C-ペプチド+およびNKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞、内分泌細胞、免疫細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、肝細胞、星細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、有毛細胞、内耳細胞、腸細胞またはオルガノイド細胞、ネフロイド細胞、および腎臓関連細胞からなる群から選択される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、2つの異なる染色体上の位置にある、請求項8~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2つのHSV-TK遺伝子が、セーフゲノムハーバー部位においてノックインされている、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
慢性疾患の予防、治療、または治癒のための、請求項1~7のいずれか一項に記載の哺乳類細胞の使用。
【請求項15】
前記疾患が、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、乾燥黄斑変性症、網膜色素変性症、神経疾患、パーキンソン病、心疾患、慢性心不全、および慢性腎疾患からなる群から選択される、請求項14に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類細胞の分野、および移植のためのドナー細胞としてのそのような細胞の使用に関する。
【0002】
配列表の参照による組み込み
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出される。配列表の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
普遍的に移植可能な組織および/または細胞は、例えば、非適合のドナー/レシピエントの免疫学的プロファイル、または1型糖尿病(T1D)などの自己免疫状態の文脈において、移植片拒絶リスクの低減などの有意な利益を期待して研究されている。
【0004】
ドラフト拒絶のリスクを制限するために、自己移植は、幹細胞が患者から抽出され、増殖され、分化され、同じ患者に移植して戻される選択肢である。しかしながら、このプロセスは、技術的に非常に難しく、高価である。
【0005】
組織不適合による拒絶は、クラスI HLA(ヒト白血球抗原)ペプチド複合体およびその後のT細胞ベースの組織破壊によって媒介される。クラスI HLAペプチド複合体の枯渇は、ほとんどの細胞に対する組織適合の要件を免除する。
【0006】
クラスI HLAペプチド複合体には、高多型性クラスI HLAペプチド複合体であるHLA-A、HLA-B、およびHLA-C、ならびに低多型性クラスI HLAペプチド複合体であるHLA-E、-F、および-Gの6つが存在する。
【0007】
クラスI HLAペプチド複合体の枯渇は、以下の2つの経路:
1)6つすべての高多型性クラスI HLA対立遺伝子の直接除去によって、または
2)ベータ2マイクログロブリン(B2M)タンパク質の除去によって、のいずれかを介して達成することができる。B2Mは、すべてのHLA-I複合体の細胞表面への転座に必要である。B2Mタンパク質が存在しないことにより、細胞表面は、すべてのクラスI HLAペプチド複合体を欠く。
【0008】
汎クラスI HLA欠損細胞は、不適合による拒絶から保護されるが、クラスI HLA-E複合体が存在しないため、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の拒絶を受けやすい。細胞表面上に存在する場合、クラスI HLA-E複合体は、NK細胞に阻害シグナルを送達する。HLA-E複合体の非存在下では、この阻害シグナルの喪失により、NK細胞によるHLA欠損細胞の溶解がもたらされる。
【0009】
NK溶解のこの問題を解決する試みは、HLA-Eタンパク質に融合されたB2Mタンパク質の操作されたバリアントの発現に依存する(特許文献1)。1つのアプローチ(非特許文献1)は、融合タンパク質中のシグナルペプチド(HLAクラスIリーダーペプチド配列)を、シグナルペプチド/B2M/HLA-E三量体の形態で事前に構築して、複合体の安定性および膜発現を増加させることである。最も重要な開発プログラムは、HLAクラスIリーダーペプチドとして、融合された(または「事前に結合された」)HLA-G由来シグナルペプチドを含む融合構築物を使用する。
【0010】
HLA欠損細胞(「ユニバーサルドナー」細胞とも称される)の生成における認知された問題は、それらが、ウイルス感染または新生物の形質転換に対する免疫監視に対してサイレントとなることである。ウイルス感染または悪性脱分化時、細胞は定期的な免疫監視にこれ以上供されなくなり、これが安全性の懸念を誘発するという関連リスクが依然として存在する。
【0011】
改善された安全なユニバーサルドナー細胞に対するニーズが依然として存在する。
【0012】
非特許文献1は、HLA-E発現多能性幹細胞を開示している。
【0013】
特許文献2は、B2M欠損細胞を開示している。
【0014】
特許文献3は、HLAハプロタイプに対してホモ接合性であるHLAホモ接合性細胞を開示している。
【0015】
特許文献4は、NK細胞媒介性細胞傷害を防止するために一本鎖HLA-Eタンパク質をコードする遺伝子を開示している。
【0016】
非特許文献2は、ノックアウトされたB2MおよびCIITAならびに添加されたCD47を開示している。
【0017】
特許文献1は、B2Mタンパク質ならびにHLA-Eおよび/またはHLA-Gタンパク質を含む融合タンパク質をコードする配列を含む単離された遺伝子改変されたT細胞を開示している。
【0018】
特許文献5は、申し立てによれば、MHC-E分子を含む細胞を開示している。
【0019】
非特許文献3は、単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を使用したガンシクロビル媒介性細胞致死を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第19032675号
【特許文献2】国際公開第2012/145384号
【特許文献3】米国特許第8586358(B2)号
【特許文献4】米国特許公開2004/0225112(A1)号
【特許文献5】国際公開第18005556号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Gornalusse G.,et al(Nature Biotechnology 2017)
【非特許文献2】Deuse et al(Nature Biotechnology,2019)
【非特許文献3】Young et al.Cancer Gen.Therapy(2000),7:240-246
【発明の概要】
【0022】
一態様では、本発明は、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子などのB2M/HLA-E遺伝子を含む、哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない。一実施形態では、該哺乳類細胞は、別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する。
【0023】
別の態様では、本発明は、そうでなければB2MおよびHLA-II欠損細胞である細胞、例えば、CIITA欠損細胞への、B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子の両方のノックインを有する、哺乳類細胞を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、B2M/HLA-E遺伝子を含む哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まず、CIITA欠損であり、別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する。
【0025】
別の態様では、本発明は、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まず、CIITA欠損であり、別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する。
【0026】
一態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0027】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0028】
一態様では、該哺乳類細胞は、ヒト細胞である。
【0029】
さらなる態様では、該哺乳類細胞は、幹細胞である。
【0030】
一態様では、該哺乳類細胞は、胚性幹細胞である。別の態様では、該哺乳類細胞は、多能性幹細胞である。さらに別の態様では、該哺乳類細胞は、分化段階にある。
【0031】
一実施形態では、本発明の方法は、別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップをさらに含む。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、慢性疾患の予防、治療、または治癒のための、本発明による哺乳類細胞の使用を提供する。
【0033】
一実施形態では、この慢性疾患は、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、乾燥黄斑変性、網膜色素変性症、神経疾患、パーキンソン病、心疾患、慢性心不全、および慢性腎疾患からなる群から選択される。
【0034】
本発明は、改善されたユニバーサルドナー細胞を提供する。本発明の細胞は、患者にとってより普遍的かつより安全である。
【0035】
定義
対立遺伝子:
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子」という用語は、所与の遺伝子のバリアントを意味する。例えば、HLA-E 01:01およびHLA-E 01:03は、HLA-E遺伝子のバリアントであり、対立遺伝子またはアイソタイプとも称される。
【0036】
B2M:
本明細書で使用される場合、「B2M」という用語は、ベータ2-マイクログロブリン、すなわち、β2マイクログロブリンを意味する。「B2M遺伝子」という用語は、B2Mタンパク質をコードする遺伝子を指す。B2Mタンパク質は、すべてのクラスI HLAタンパク質のサブユニットである。B2Mタンパク質は、クラスI HLAタンパク質が細胞表面へと転座するために必要である。ヒトでは、B2M遺伝子は、15番染色体上に位置する。
【0037】
B2M欠損細胞:
使用される「B2M欠損細胞」という用語は、機能性B2M遺伝子を有しない細胞を意味する。したがって、B2M遺伝子は、細胞に全く存在しないか、または機能的に欠損している、例えば、不活性化されているか、もしくは損傷されている場合があり、その結果、機能性B2Mタンパク質を発現しないか、またはそれをコードしない。
【0038】
B2M/HLA-E遺伝子またはタンパク質:
本明細書で使用される場合、「B2M/HLA-E遺伝子」という用語は、「B2M/HLA-E融合タンパク質」と同義であり、B2M部分およびHLA-E部分を含むタンパク質をコードする遺伝子融合構築物を意味し、これは、「B2M/HLA-E融合タンパク質」と同義である。本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「B2M/HLA-E遺伝子」および「B2M/HLA-E融合タンパク質」という用語は、そのあらゆる機能的バージョンを指し、遺伝子は、対応する融合タンパク質を発現する能力を有し、発現されたB2M/HLA-E融合タンパク質は、細胞表面へと転座する能力を有する。
【0039】
B2M/HLA-E*0101タンパク質:
本明細書で使用される場合、「B2M/HLA-E*0101タンパク質」という用語は、HLA-E部分が01:01アイソタイプであり、01:01対立遺伝子とも称される、「B2M」部分と「HLA-E」部分とを含む融合タンパク質、すなわち、B2M機能性ペプチドとHLA-E 01:01機能性ペプチドとを含む融合体を意味する。
【0040】
B2M/HLA-E*0101遺伝子:
本明細書で使用される場合、「B2M/HLA-E*0101遺伝子」という用語は、B2M/HLA-E*0101タンパク質をコードする遺伝子融合構築物を意味する。
【0041】
HLA/MHC:
「HLA」という用語は、ヒト白血球抗原を表す。本明細書で使用される場合、HLAは、哺乳類における免疫系の調節に関与する周知のHLA系を指す。「HLA遺伝子」は、「HLAタンパク質」をコードし、「MHCタンパク質」とも称される。「MHC」は、「主要組織適合遺伝子複合体」を表す。
【0042】
機能性「HLAタンパク質」(または「MHCタンパク質」)は、細胞表面へと転座し、必要に応じて免疫応答を誘導する。ヒトでは、HLA遺伝子は、6番染色体上に位置する。
【0043】
クラスI HLAタンパク質は、ヘテロ二量体であり、高多型性であるHLA-A、HLA-B、およびHLA-Cタンパク質、ならびに低多型性であるHLA-E、HLA-F、およびHLA-Gタンパク質を含む。クラスI HLAタンパク質は、通常、ヒトのすべての有核細胞の表面上に見出される。
【0044】
クラスI HLAタンパク質の役割は、細胞の外部表面上に、細胞内部由来の小ペプチド(本明細書では「内因性ペプチド」と称される)を提示することである。細胞感染の場合、クラスI HLAペプチドは、侵入病原体(例えば、ウイルス)由来の小ペプチドを外部細胞表面に提示し、これは、「非自己」(または「外来性」もしくは「抗原」)として認識され、免疫系による細胞の破壊によって免疫応答を誘発する。細胞感染がない場合、クラスI HLAペプチドは、例えば、HLA-E(HLA-E断片)由来の内因性小ペプチドを外部細胞表面に提示し、これは「自己」(または「自己抗原」)として認識され、免疫応答を誘導しない。
【0045】
クラスII HLAタンパク質は、ヘテロ二量体であり、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、およびHLA-DRを含む。クラスII HLAタンパク質は、通常、プロフェッショナル抗原提示細胞上に見出される。
【0046】
クラスII HLAタンパク質の役割は、主に外因性供給源に由来する抗原を細胞表面に提示し、(CD4(+)Tリンパ球を介して)抗原特異的免疫応答を開始することである。
【0047】
細胞遺伝子型:
「遺伝子A-/-細胞」は、遺伝子Aの両方のコピーが非機能性である(例えば、欠失しているか、またはそうでなければ破壊されている)細胞を意味する。「遺伝子A+/-細胞」は、遺伝子Aの1つのコピーが機能性であり、第2のコピーが非機能性である(例えば、欠失しているか、またはそうではければ破壊されている)細胞を意味する。「遺伝子A細胞」は、細胞が遺伝子Aの1つのコピーのみを含み、遺伝子Aの該1つのコピーが機能性であることを意味する。
【0048】
細胞表面表現型:
本明細書で使用される場合、「HLA-A/B/C-/-細胞の細胞表面表現型」という表現は、HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cタンパク質を有しない、細胞表面を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「HLA-E*0101HLA-E*0103細胞の細胞表面表現型」という表現は、各HLA-E対立遺伝子の1コピーから発現されるHLA-E*0101タンパク質およびHLA-E*0103タンパク質を含む、細胞表面を指す。
【0050】
CIITA/CIITA欠損:
CIITAという用語は、「クラスII、主要組織適合遺伝子複合体、トランス活性化因子」を表す。本明細書で使用される場合、CIITAという用語は、「CIITA遺伝子」または「CIITAタンパク質」、すなわち、CIITA遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。CIITAタンパク質は、すべてのクラスII HLAペプチドの転写に関与する転写因子である。ヒトゲノムでは、CIITAタンパク質は、16番染色体上に位置する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「CIITA欠損」という用語は、「機能性CIITA遺伝子なし」を意味する。「CIITA欠損細胞」は、機能性CIITAタンパク質を発現しない(例えば、細胞のCIITA遺伝子がノックアウトされているか、またはそうでなければ不活性化されている)細胞、または非機能性タンパク質を発現する細胞を意味する。CIITA欠損細胞では、すべてのHLAクラスIIタンパク質は切除される。
【0052】
別個かつ既知の位置:
本明細書で使用される場合、「既知の位置において」という表現は、「標的化された座位において」を意味する。この表現は、ゲノム内のランダムな位置におけるランダムな遺伝子改変とは対照的に、ゲノム上の特定の標的化された座位(位置)における挿入、欠失、または破壊などの遺伝子改変を指す。特に、ノックインに関連して、「別個かつ既知の位置において」という表現は、目的の遺伝子が、ゲノム内のランダムな位置においては挿入されないが、事前に定義されており、かつ特異的に標的化されている座位においては挿入されることを意味する。これは、挿入された遺伝子の一貫したレベルの発現を確実にする利点を提供し、例えば、セーフハーバー座位を標的化する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「別個の位置において」という表現は、「ゲノム上の異なる座位において」を意味する。この表現は、例えば、2つ以上の核酸配列挿入を指し、該2つ以上の核酸配列は、ゲノム上の同じ座位、すなわち、ゲノム上の同一の位置上に挿入されない。むしろ、該2つ以上の核酸配列は、ゲノム上の異なる座位に挿入される。例えば、同じ染色体上に挿入された場合、2つ以上の配列は、挿入後、複数のヌクレオチドによって互いに分離されている。「別個の位置」という表現は、一対の染色体の2つの染色体上に位置する同じ座位を含み得る。
【0054】
EF1aミニ、EF1a、UbC、PGK、CMV、およびCAGプロモーター:
EF1aプロモーターは、ヒト伸長因子1αプロモーターを表し、UbCプロモーターは、ヒトユビキチンCプロモーターを表し、PGKプロモーターは、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターを表し、CMVプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期プロモーターを表し、CAG(またはCAGG)プロモーターは、CMV初期エンハンサーと結合したニワトリβ-アクチンプロモーターを表す。これらのプロモーターは、異所性遺伝子発現を駆動するために使用され得る構成的プロモーターである。
【0055】
UCOおよびUCOE:
UCOEは、遍在性クロマチンオープニングエレメントを表す。UCOエレメントは、プロモーターのサイレンシングを防止する。UCOエレメントは、プロモーターの上流に配置され得る。
【0056】
HLA-Eに対するヘテロ接合性:
HLA-E遺伝子に対して少なくとも2つの異なる対立遺伝子を含む、例えば、HLA-E*0101遺伝子およびHLA*0103遺伝子を含む細胞は、HLA-Eに対してヘテロ接合性である。
【0057】
HSV-TK遺伝子:
本明細書で使用される場合、「HSV-TK」という用語は、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)を表し、自殺スイッチシステムを指す。HSV-TK遺伝子は、TK酵素をコードする。HSV-TK細胞の自殺を誘発するために、ガンシクロビルは、HSV-TK細胞に、またはそのような細胞の宿主である生物体に提供され、TK酵素は、ガンシクロビルを、DNAポリメラーゼを阻害する毒性化合物にリン酸化し、HSV-TK細胞の死を誘発する。
【0058】
ノックインおよびノックアウト:
本明細書で使用される場合、「ノックイン」という用語は、ゲノムへの遺伝子の挿入を指す。ノックイン技術では、遺伝子挿入が標的化され、これは、遺伝子が、他の遺伝子操作方法を用いたランダムな遺伝子挿入とは対照的に、事前に定義されており、かつ特異的に標的化されるゲノム上の位置において、特定の座位に挿入されることを意味する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ノックアウト」という用語は、ゲノムからの遺伝子の破壊による欠失または不活性化を指す。目的の所与の遺伝子の欠失または破壊を達成するために、ノックアウト技術は、通常、ゲノム上の特異的に標的化された位置における遺伝子改変を必要とする。
【0060】
いくつかのノックインおよびノックアウト技術が存在し、当該技術分野で明確に定義される。
【0061】
哺乳類細胞:
本明細書で使用される場合、「哺乳類細胞」という用語は、哺乳類動物細胞またはヒト細胞などの哺乳類生存生物体に由来する細胞を意味する。哺乳類細胞は、未分化段階、例えば、多能性(pluripotent)もしくは多能性(multipotent)段階、または分化段階、例えば、完全成熟段階、または分化の中間段階であり得る。
【0062】
適合するHLA型:
本明細書で使用される場合、「適合するHLA」または「適合するHLA型」という用語は、ドナー細胞と宿主生物体との間で十分に類似していて、免疫系によるドナー細胞の拒絶を誘導しない、HLAアイソタイプを意味する。哺乳類では、HLAタンパク質は、個人に固有である。宿主生物体の免疫系は、ドナー細胞(例えば、移植された細胞、または移植された器官中の細胞)の外部細胞表面上の「非適合の」HLAタンパク質を、「非自己」(または「侵入者」)として認識し、ドナー細胞の免疫応答および拒絶を誘導するであろう。ドナー細胞のHLAタンパク質が、宿主生物体のHLAタンパク質と同一または十分に類似したアイソタイプである場合、すなわち、宿主生物体と適合するHLA型である場合、免疫系は、ドナー細胞を「自己」として認識し、ドナー細胞の拒絶を誘導しないであろう。
【0063】
多型性:
本明細書で使用される場合、「多型性」という用語は、所与の細胞内に所与の遺伝子の異なるアイソタイプが存在することを意味する。HLA系の多型性は、より有効かつ適応性のある免疫応答を可能にする。
【0064】
タンパク質、ペプチド:
別段の指定がない限り、「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、その機能的バージョンを指す。
【0065】
セーフハーバー:
本明細書で使用される場合、「セーフハーバー部位」または「セーフハーバー座位」または「セーフゲノムハーバー部位」という用語は、例えば、転写活性のエピジェネティックなサイレンシングまたは下方調節によってサイレンシングされない、常に発現されるゲノム上の位置を意味する。AAVS1およびhROSA16は、ヒトゲノムにおけるセーフハーバー部位の例である。「AAVS1」は、アデノ随伴ウイルス統合部位1を表し、ヒト19番染色体上に位置する。「hROSA26」は、「ヒト型Gt(ROSA)26S」または「ヒト型ROSA26」を表し、ヒト3番染色体上に位置する。CLYBLおよびCCR5は、他の可能性のあるセーフハーバー部位であり、「CLYBL」は、「クエン酸溶解ベータ様」を表し、ヒト13番染色体に位置する。「CCR5」は、「C-Cケモカイン受容体5型」を表し、ヒト5番染色体に位置する。
【0066】
普遍的に移植可能な細胞、移植可能な(transplantable)細胞、移植可能な(implantable)細胞、またはユニバーサルドナー細胞:
本明細書で使用される場合、「普遍的に移植可能な(transplantable)/移植可能な(implantable)細胞」または「ユニバーサル細胞」または「ユニバーサルドナー細胞」または「移植可能な(transplantable)細胞」または「免疫安全細胞」または「ステルス細胞」または「免疫ステルス細胞」または「移植可能な(implantable)細胞」という用語はすべて、非自己として認識されることなく、したがって宿主生物体の免疫システムによって拒絶されることなく、宿主生物体に移植され得る細胞を指す。細胞は、通常、宿主生物体とは異なるドナー生物体に由来する。本発明の目的は、拒絶されることなく、幅広い患者に安全に移植され得る細胞を提供することである。
【0067】
移植可能な哺乳類細胞および哺乳類細胞:
本発明の方法、方法請求項および方法実施形態の文脈において、「哺乳類細胞」という用語は、本発明の遺伝子改変の完了前の細胞を指し、「移植可能な哺乳類細胞」という用語は、本発明の遺伝子改変を含む細胞を指す。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図1は、本発明によるB2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子構築物の実施形態、ならびにヒト15番染色体上のB2M座位におけるそれらのノックインの図である。示される遺伝子構築物は、プロモーター、シグナルペプチドをコードする核酸配列、核酸配列をコードするB2M、(G4S)4リンカーをコードする核酸配列、および遺伝子構築物のうちの1つの核酸配列をコードするHLA-E*0101、または他の遺伝子構築物の核酸配列をコードするHLA-E*0103を含む。矢印
【数1】
は、遺伝子構築物の発現を駆動するプロモーターを示す。
図2図2は、本発明によるセーフハーバー座位、例えば、19番染色体上のハーバー座位AAVS1(PPP1R12C)、3番染色体上のhROSA26、5番染色体上のCCR5、または13番染色体上のCLYBLにおける、2つのHSV-TK遺伝子のノックインの実施形態の図である。示される遺伝子構築物は、プロモーターと、HSV-TKタンパク質をコードする核酸配列とを含む。矢印
【数2】
は、遺伝子構築物の発現を駆動するプロモーターを示す。
図3図3は、様々な濃度のガンシクロビル(GCV)への曝露時の細胞培養の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
一態様では、本発明は、少なくとも1つのB2M/HLA-E遺伝子を含む哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない。
【0070】
別の態様では、本発明は、B2M/HLA-E遺伝子を含む哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まず、別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する。
【0071】
一実施形態では、該哺乳類細胞は、B2M/HLA-E遺伝子を含む。一実施形態では、該細胞は、1つのタイプのB2M/HLA-E対立遺伝子、すなわち、B2M/HLA-E融合における1つのHLA-Eバリアントを含む。一実施形態では、B2M/HLA-E融合におけるHLA-Eバリアントは、HLA-E*01:01対立遺伝子であるか、またはHLA-E*01:03対立遺伝子である。
【0072】
一実施形態では、該哺乳類細胞は、2つの異なるB2M/HLA-E対立遺伝子を含み、すなわち、該細胞は、B2M/HLA-E遺伝子に対してヘテロ接合性である。一実施形態では、B2M/HLA-E融合におけるHLA-Eバリアントは、HLA-E*01:01対立遺伝子およびHLA-E*01:03対立遺伝子である。
【0073】
一態様では、本発明は、B2M/HLA-E*0101またはB2M/HLA-E*0103融合遺伝子を含む、哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない。一態様では、本発明は、B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む、哺乳類細胞を提供し、該哺乳類細胞は、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない。
【0074】
本発明では、B2M/HLA-E*0101遺伝子は、B2M/HLA-E*0101タンパク質をコードする。
【0075】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101タンパク質は、B2Mタンパク質、HLA-E*0101タンパク質、およびB2Mタンパク質とHLA-E*0101タンパク質との間のリンカーを含む。一実施形態では、B2M部分は、B2M/HLA-E*0101融合タンパク質のN末端に位置し、HLA-E部分は、C末端に位置する。
【0076】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101タンパク質はまた、シグナルペプチドを含む。
【0077】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101タンパク質は、シグナルペプチド、B2Mタンパク質、HLA-E*0101タンパク質、およびB2Mタンパク質とHLA-E*0101タンパク質との間のリンカーを含む。一実施形態では、シグナルペプチドは、B2M/HLA-E*0101融合タンパク質のN末端に位置し、B2Mタンパク質およびリンカーがこれに続き、HLA-Eタンパク質は、C末端に位置する。
【0078】
一実施形態では、B2Mタンパク質とHLA-E*0101タンパク質との間のリンカーは、(G4S)4リンカーである。
【0079】
本発明では、B2M/HLA-E*0103遺伝子は、B2M/HLA-E*0103タンパク質をコードする。本明細書で使用される場合、「B2M/HLA-E*0103」という用語は、ベータ2マイクログロブリン(B2M)とHLA-E*0103との間の融合を意味することが意図される。
【0080】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0103タンパク質は、B2Mタンパク質、HLA-E*0103ペプチド、およびB2Mタンパク質とHLA-E*0103ペプチドとの間のリンカーを含む。一実施形態では、B2M部分は、B2M/HLA-E*0103融合タンパク質のN末端に位置し、HLA-E部分は、C末端に位置する。
【0081】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0103タンパク質はまた、シグナルペプチドを含む。
【0082】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0103タンパク質は、シグナルペプチド、B2Mタンパク質、HLA-E*0103タンパク質、およびB2Mタンパク質とHLA-E*0103タンパク質との間のリンカーを含む。一実施形態では、シグナルペプチドは、B2M/HLA-E*0103融合タンパク質のN末端に位置し、B2Mタンパク質およびリンカーがこれに続き、HLA-Eタンパク質は、C末端に位置する。
【0083】
一実施形態では、B2Mタンパク質とHLA-E*0103との間のリンカーは、(G4S)4リンカーである。
【0084】
好ましい実施形態では、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103融合タンパク質は、細胞表面への転座の前に内因性ペプチドをさらに結合する能力を保持する。これは、該融合タンパク質の部分として、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチド配列(VMAPRTLILなど)が存在しないことによって可能となる。一実施形態では、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103融合タンパク質は、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチド配列を含まない。
【0085】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101融合タンパク質のHLA-E*0101部分は、アミノ酸配列[配列番号01]を含む。
【化1】
【0086】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101融合タンパク質またはB2M/HLA-E*0103融合タンパク質のB2M部分は、アミノ酸配列[配列番号02]を含む。
【化2】
【0087】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0103融合タンパク質のHLA-E*0103部分は、アミノ酸配列[配列番号03]を含む。
【化3】
【0088】
一実施形態では、(G4S)4リンカーとシグナルペプチドとを含むB2M/HLA-E*0101融合タンパク質は、アミノ酸配列[配列番号04]を含む。
【化4-1】
【化4-2】
【0089】
一実施形態では、(G4S)4リンカーとシグナルペプチドとを含むB2M/HLA-E*0103融合タンパク質は、アミノ酸配列[配列番号05]を含む。
【化5】
【0090】
一実施形態では、(G4S)4リンカーとシグナルペプチドとを有するB2M/HLA-E*0101融合タンパク質をコードするB2M/HLA-E*0101遺伝子は、配列番号06の核酸配列を含む。
【化6-1】
【化6-2】
【0091】
一実施形態では、(G4S)4リンカーとシグナルペプチドとを有するB2M/HLA-E*0103融合タンパク質をコードするB2M/HLA-E*0103遺伝子は、配列番号07の核酸配列を含む。
【化7】
【0092】
別の態様では、本発明は、そうでなければB2M欠損細胞である細胞への、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子の両方のノックインを有する、哺乳類細胞を提供する。
【0093】
一実施形態では、B2M/HLA-E遺伝子は、ヒト細胞の場合、5番染色体上の天然B2M遺伝子の座位に挿入される。一実施形態では、B2M/HLA*0101遺伝子のコピーおよびB2M/HLA*0103遺伝子のコピーは、細胞の天然B2M遺伝子の2つのコピーの各々の座位上に挿入され、それによって天然B2M遺伝子を不活性化する。一例を図1に示す。
【0094】
一実施形態では、B2M/HLA遺伝子は、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチドをコードする配列を含まず、B2M/HLAタンパク質は、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチドを含まない。
【0095】
驚くべきことに、B2M欠損細胞への、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチドをコードする配列を含まないB2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子融合構築物の両方の使用は、高いかつ強固なHLA-E密度、最大内因性ペプチド結合多様性、NK細胞媒介性非感染標的細胞溶解に対する最大保護、ならびにウイルスまたは他の病原体に感染している標的哺乳類細胞のNK細胞による認識の強化および最適な除去を有する、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0101HLA-E*0103細胞の細胞表面表現型を生成することが見出されている。
【0096】
本発明は、有利には、A)ドナー細胞表面上のHLA-Eタンパク質の密度を構造的に増加させて、B2M欠損細胞のNK細胞媒介性拒絶を阻害すること、B)天然の内因性ペプチド結合を介してHLA-Eの正常な免疫監視機能を保持する(結果として、免疫寛容原性能力のわずかな低下をもたらす)こと、C)複数のHLA-Eアイソタイプを包含することによって、HLAタンパク質に結合した潜在的な内因性ペプチドの多様性を最大化すること、およびD)ウイルス感染時、または細胞が定期的な免疫監視にこれ以上供されない悪性脱分化時に、リスクを軽減することを可能にする。
【0097】
HLA-E密度の増加をもたらし、かつ非天然プロモーターを介して利点A)を達成するために、B2M/HLA-E遺伝子の、1つではなく2つの対立遺伝子が、細胞内に挿入される。利点B)を達成するために、発明者らは、事前に操作された、すなわち、事前に結合されたHLAクラスIリーダーペプチドを欠いており、次いで、天然内因性ペプチド処理および装填機構を利用する、B2M/HLA-E融合タンパク質をコードするB2M/HLA-E遺伝子を使用する。利点C)を達成するために、2つの主要なHLA-E対立遺伝子であるHLA-E*0101およびHLA-E*0103の両方が利用される。2つのコードされたHLA-E*0101およびHLA-E*0103タンパク質は、異なる内因性ペプチドサブセットを装填および提示し、それによって、HLAタンパク質が、正常な状況下では免疫寛容原性内因性ペプチドを、ウイルス感染中は活性化内因性ペプチドを適切に装填されるであろう可能性をいずれも増大させる。利点D)を達成するために、本発明者らは、所望する場合、細胞を速やかに死滅させることができる強固なスイッチとしての役割を果たす、HSV-TK遺伝子の4つのコピーを導入している。いくつかの改変の組み合わせは、感染条件下での細胞保持と免疫監視の両方を実質的に改善する可能性を有する。
【0098】
有利なことに、正常な内因性ペプチド装填(事前に結合されたペプチドを使用しないことによる)と複数のHLA-Eアイソタイプとの組み合わせは、最大免疫寛容原性表現型を維持しながら、ウイルスおよび/または細菌感染に対する細胞の免疫監視の拡大を可能にする。感染中、ウイルスまたは細菌病原体由来のいくつかのペプチドは、HLA-Eからの正常な内因性ペプチドを置換することができる。NK細胞に「健康な状態」を示し、NK溶解を刺激せず、それによって耐性機能を提供する、事前に結合されたペプチドを有するHLA-Eとは対照的に、HLA-Eが病原体由来ペプチドを提示する場合、それは、感染した細胞のNK溶解を刺激する。これは、本発明で達成される重要な安全性特徴である。
【0099】
一実施形態では、本発明の哺乳類細胞は、HLA-II欠損である。一実施形態では、哺乳類細胞は、CIITA欠損である。
【0100】
任意の利用可能なかつ関連する遺伝子編集技術(CRISPR、TALEN、ZFN、ホーミングエンドヌクレアーゼ、アデノウイルス組み換え等)を使用して、天然B2Mの両方の対立遺伝子がノックアウトされ、同時に、B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子の各々の1つ以上のコピーがノックインされるように、細胞を改変し得る。
【0101】
B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子のノックインは、天然B2M遺伝子座位上、他の座位上、例えば、AAVS1セーフハーバー座位などのセーフハーバー座位上、またはそれらの任意の組み合わせ上で直接達成され得る。これらのノックイン遺伝子に対して、任意の利用可能なプロモーター、例えば、EF1aミニ、EF1a、UbC、PGK、CMV、およびCAGからなる群から選択されるプロモーターが使用され得る。本発明によれば、HLA-E密度の所望の増加は、構造的に活性なプロモーターによって制御される二対立遺伝子HLA-Eノックインを介して得られる。天然細胞では、内因性HLA-Eプロモーターは、プロモーターINFガンマ応答エレメントによって制御される。
【0102】
同様に、HSV-TK遺伝子は、所望の位置、すなわち、標的化された座位においてノックインされ得る。任意の利用可能なかつ関連する遺伝子編集技術が使用され得る。
【0103】
本発明の細胞は、別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子を含む。
【0104】
本発明では、HSV-TK遺伝子は、例えば宿主生物体において、操作された哺乳類細胞の生存を制御するために、誘導性「自殺スイッチ」システムとしての役割を果たす。自殺スイッチの概念は、細胞を外因性分子に対して感受性にする遺伝子のゲノム的導入を伴い、これは、必要に応じて投与することができる。HSV-TK遺伝子は、一般的な小分子抗ウイルス薬ガンシクロビルをHSV-TK発現細胞内の毒性物質に変換する、チミジンキナーゼをコードする。そのような自殺遺伝子の問題は、それらが、自発的ゲノム欠失またはプロモータースライシングによって、理論上、不活性化または除去され得、その結果、「自殺スイッチ」による意図された制御の喪失をもたらすことである。
【0105】
本発明の一実施形態では、HSV-TK自殺遺伝子は、ゲノム内のセーフハーバー座位に配置される。本発明の一実施形態では、HSV-TKの発現は、上流UCOエレメントを有するプロモーターによって駆動される。本発明の一実施形態では、HSV-TK自殺遺伝子の発現は、上流UCOエレメントを有するUbCプロモーターによって駆動される。
【0106】
本発明の一実施形態では、HSV-TK自殺遺伝子の4つのコピーが、細胞のゲノムに挿入される。
【0107】
本発明の一実施形態では、4つのHSV-TK遺伝子のノックイン、すなわち、HSV-TK遺伝子の4つのコピーのノックインは、別個の位置、すなわち、遺伝子再構成または欠失による劣化に適応できない安全なシステムを提供するような、何らかの分離を有するゲノム上の位置にある。一実施形態では、4つのHSV-TK遺伝子は、同じ染色体上でノックインされており、少なくとも10Kbp、例えば、少なくとも100Kbp、少なくとも1Mbp、または少なくとも20Mbp互いに分離されている。別の実施形態では、4つのHSV-TK遺伝子は、4つの異なる染色体上の位置においてノックインされている。別の実施形態では、4つのHSV-TK遺伝子は、3つの異なる染色体上の位置においてノックインされている。別の実施形態では、4つのHSV-TK遺伝子は、2つの異なる染色体上の位置においてノックインされており、例えば、2つのHSV-TKコピーは、各々が両方の3番染色体上の同じ位置において、2つのHSV-TKコピーは、二倍体細胞中の両方の19番染色体上の同じ位置において、ノックインされている。本発明の別の実施形態では、2つのHSV-TK遺伝子は、同じセーフゲノムハーバー部位においてノックインされている。別の実施形態では、1つのHSV-TK遺伝子をノックインして、B2M対立遺伝子を破壊および除去する。別の実施形態では、1つのHSV-TK遺伝子をノックインして、CIITA対立遺伝子を除去する。
【0108】
患者の安全性は、細胞療法において非常に重要なパラメータである。
【0109】
TK自殺遺伝子の4つのコピーを挿入することはまた、患者に対する安全性も有利に増加させる。驚くべきことに、TK自殺遺伝子の4つのコピーを有する細胞は、2つのコピーを有する細胞よりもガンシクロビル治療に対して有意に感受性が高く、より少ない量のガンシクロビルで細胞死を達成することが見出された。
【0110】
TK自殺遺伝子を既知かつ事前に定義された位置に配置することは、細胞ゲノムへのランダムな統合と比較して、患者に対する安全性を有利に増加させる。ランダムな統合と比較して、標的化された統合は、重要な遺伝子の破壊のリスク、または重要な遺伝子発現調節のリスクを低下させる。これはまた、自殺遺伝子が最適以下の発現活性の領域にランダムに統合されるリスクも低下させ、それによって最適なTK発現レベルを確実にする。
【0111】
TK自殺遺伝子を別個の位置に配置することは、挿入座位が遺伝子サイレンシングまたは転写下方調節に曝された場合に、すべてのTK自殺遺伝子コピーが同時にサイレンシングまたは下方調節されるリスクを制限することによって、患者の安全性をさらに増加させる。
【0112】
TK自殺遺伝子をセーフハーバー座位に配置することは、患者に対する安全性を有利に増加させる。セーフハーバー座位は、常に発現されるゲノムの領域である。このアプローチは、自殺遺伝子が意図せずサイレンシングまたは下方調節されるリスクを低下させ、それによって、常に自殺TKタンパク質の最適な発現レベルの可能性を増加させ、続いて、ガンシクロビル投与時に必要に応じて制御された細胞死の可能性を増加させる。
【0113】
結果として、4つのTK自殺遺伝子コピーをセーフハーバー座位などの既知かつ別個の位置に配置することは、本発明による細胞療法を受けている患者に、有意に改善された安全性を提供する。
【0114】
一実施形態では、少なくとも2つのHSV-TK遺伝子は、AAVS1遺伝子座位、hROSA26遺伝子座位、またはCLYBL遺伝子座位などのセーフハーバー部位においてノックインされている。一実施形態では、2つのHSV-TK遺伝子は、AAVS1遺伝子座位、hROSA26遺伝子座位、またはCLYBL遺伝子座位などのセーフハーバー部位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、CIITA遺伝子座位においてノックインされている。
【0115】
別の実施形態では、2つのHSV-TK遺伝子は、セーフハーバー部位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、別のセーフハーバー部位においてノックインされており、CIITA遺伝子座位は、ノックアウトされている。より具体的な実施形態では、2つのHSV-TK遺伝子は、AAVS1遺伝子座位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、CLYBL遺伝子座位においてノックインされており、CIITA遺伝子は、ノックアウトされている。
【0116】
一実施形態では、B2M/HLA-E遺伝子は、B2M遺伝子の座位においてノックインされており、それによって細胞の天然B2M遺伝子を不活性化する。一実施形態では、B2M/HLA-E*01:01遺伝子またはB2M/HLA-E*01:03遺伝子は、B2M遺伝子の座位においてノックインされており、それによって細胞の天然B2M遺伝子を不活性化する。一実施形態では、B2M/HLA-E*0101遺伝子は、B2M遺伝子の1つのコピーの座位においてノックインされており、B2M/HLA-E*0103遺伝子は、B2M遺伝子の他のコピーの座位においてノックインされており、それによって細胞の天然B2M遺伝子を不活性化する。一実施形態では、2つのHSV-TK遺伝子は、AAVS1遺伝子の座位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、CIITA遺伝子の座位においてノックインされており、それによって細胞の天然CIITA遺伝子を不活性化する。細胞の天然CIITA遺伝子の不活性化は、HLA-IIタンパク質の枯渇につながる。
【0117】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101遺伝子は、B2M遺伝子の1つのコピーの座位においてノックインされており、B2M/HLA-E*0103遺伝子は、B2M遺伝子の他のコピーの座位においてノックインされており、HSV-TK遺伝子の2つコピーは、AAVS1遺伝子などのセーフハーバー座位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、CIITA遺伝子の座位においてノックインされている。
【0118】
一実施形態では、B2M/HLA-E*0101遺伝子は、B2M遺伝子の1つコピーの座位においてノックインされており、B2M/HLA-E*0103遺伝子は、B2M遺伝子の他のコピーの座位においてノックインされており、HSV-TK遺伝子の2つのコピーは、AAVS1遺伝子座位においてノックインされており、2つのHSV-TK遺伝子は、CLYBL遺伝子座位においてノックインされており、CIITA遺伝子は、ノックアウトされている、すなわち、CIITA遺伝子の両方のコピーがノックアウトされている。
【0119】
好ましくは、4つのHSV-TK遺伝子は、それらの各々が単独で、ガンシクロビルへの曝露時に該哺乳類細胞を死滅させる程度まで発現される。
【0120】
一実施形態では、HSV-TKタンパク質は、配列番号08のアミノ酸配列を含む。
【化8】
【0121】
一実施形態では、HSV-TKタンパク質をコードするHSV-TK遺伝子は、配列番号09の核酸配列を含む。
【化9-1】
【化9-2】
【0122】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・任意選択で、該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0123】
ステップの順序は、それが理にかなう場合、変動してもよい。例えば、遺伝子改変ステップおよび細胞分化ステップは、異なる順序で発生してもよく、B2M/HLA-E遺伝子のノックインは、B2M遺伝子不活性化の前に発生してもよく、分化ステップは、B2M/HLA-E遺伝子および/またはB2M遺伝子不活性化の前に発生してもよい。
【0124】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・該哺乳類細胞中の別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、
・任意選択で、該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0125】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然HLA-II遺伝子または天然CIITA遺伝子を不活性化するステップと、
・任意選択で、該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0126】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・B2MおよびCIITA欠損哺乳類細胞を提供するステップと、
・該B2MおよびCIITA欠損哺乳類細胞に、B2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0127】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該細胞のB2M遺伝子に、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得され、B2M欠損であり、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103タンパク質を発現する。
【0128】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞のB2M遺伝子に、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞のゲノム中の別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、
・任意選択で、該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得され、B2M欠損であり、B2M/HLA-E*0101タンパク質および/またはB2M/HLA-E*0103タンパク質、ならびにHSV-TKタンパク質を発現する。
【0129】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
a)B2M欠損哺乳類細胞を提供するステップと、
b)該B2M欠損哺乳類細胞にB2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103の両方をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0130】
別の態様では、本発明は、移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法を提供し、この方法は、
a)B2MおよびCIITA欠損哺乳類細胞を提供するステップと、
b)該B2MおよびCIITA欠損哺乳類細胞にB2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103の両方をノックインするステップと、
c)別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される。
【0131】
本発明の方法による遺伝子改変に供される哺乳類細胞は、分化の様々な段階にあり得、必要に応じて、さらなる分化に供され得ることが想定される。例えば、幹細胞、多能性細胞、または初期分化段階にある細胞の場合、この細胞は、移植前に、より進んだ分化段階、より成熟した細胞型に分化され得る。本発明の方法はまた、移植前にさらなる分化を必要としない機能性細胞型にも適用され得る。
【0132】
さらに別の実施形態では、本発明は、慢性疾患などの疾患の予防、治療、または治癒のための、本発明による哺乳類細胞の使用を提供する。本発明の哺乳類細胞および方法は、広範囲の慢性疾患の治療に有用であり得ることが想定される。また、それらは、慢性疾患ならびに他の疾患の予防に有用であり得ることも想定される。
【0133】
一実施形態では、該疾患は、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、乾燥黄斑変性、網膜色素変性症、神経疾患、パーキンソン病、心疾患、慢性心不全、および慢性腎疾患からなる群から選択される。
【0134】
一実施形態では、哺乳類細胞は、動物細胞である。別の実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞である。
【0135】
一実施形態では、哺乳類細胞は、未分化細胞である。一実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト幹細胞などの幹細胞、多能性ヒト細胞などの多能性細胞、またはヒトiPS細胞などのiPS細胞(人工多能性幹細胞)である。
【0136】
一実施形態では、本発明の哺乳類細胞は、幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞などの未分化細胞であり、機能性細胞型にさらに分化される。
【0137】
別の実施形態では、哺乳類細胞は、分化細胞である。
【0138】
一実施形態では、哺乳類細胞は、本発明の幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞に由来するヒト分化細胞である。
【0139】
本発明の特定の実施形態では、哺乳類細胞は、以下のリストから選択される分化細胞である。
【0140】
該分化細胞は、以下のリストにおいて参照される刊行物に記載される分化方法のうちの1つに従って、本発明の幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞に由来し得る:
・国際公開第2017/144695号に記載の方法により取得可能なベータ細胞、例えば、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞またはC-ペプチド+/NKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞または内分泌細胞;
・特許出願国際公開第WO2015/028614号に記載の方法により取得可能な内分泌前駆細胞またはNGN3+/NKX2.2+二重陽性細胞;
・Nolbrant S.et al.,Nat.Protoc.2017 Sep,12(9):1962-1979、Kirkeby A.et al.,Cell Rep.2012 Jun 28,1(6):703-14、Aktinson-Dell R.et al,Adv Exp Med Biol.2019,1175:383-405、Ni P.et al,Mol Ther Methods Clin Dev.2019 Apr 8,13:414-430に記載の方法により取得可能な神経細胞、例えば、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞;
・Chen B.Stem Cell Res Ther.2019 May 21,10(1):142、Sun X.et al,Front Cell Neurosci.2019 Sep 3,13:394、Dougherty J.A.et al.,Front Physiol.2018 Dec 14,9:1794、Candelario K.M.et al.,J Comp Neurol.2019 Nov 19、Yang R.et al.,Front Immunol.2019 Oct 16,10:2346に記載の方法により取得可能なESC(胚性幹細胞)もしくはNSC(神経幹細胞)などのエクソソーム細胞、またはESCもしくはNSC由来のエクソソーム細胞;
・Ackermann M.et al.,Nat Commun.2018 Nov 30;9(1):5088、Good ML.et al.J Vis Exp.2019 Oct 24(152)、Zhu H.et al.Methods Mol Biol.2019,2048:107-119、Kitadani J.et al,Sci Rep.2018 Mar 15;8(1):4569に記載の方法により取得可能なT細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞などの免疫細胞;
・Li Z.et al.Cell Death Dis.2019 Oct 10,10(10):763に記載の方法により取得可能な肝細胞;
・Coll M.Cell Stem Cell.2018 Jul 5,23(1):101-113に記載の方法により取得可能な星細胞;
・Miyake T.Int J Radiat Oncol Biol Phys.2019 Sep 1,105(1):193-205に記載の方法により取得可能な線維芽細胞、ケラチノサイト、または有毛細胞;
・Jeong M.et al,Cell Death Dis.2018 Sep 11;9(9):922に記載の方法により取得可能な内耳細胞;
・Negoro R.et al.Stem Cell Reports,2018 Dec 11,11(6):1539-1550、Lees EA et al.J Vis Exp.2019 May 12,(147)に記載の方法により取得可能な腸細胞またはオルガノイド細胞;
・Vanslambrouck JM et al.J Am Soc Nephrol.2019 Oct,30(10):1811-1823に記載の方法により取得可能なネフロイド細胞または別の腎臓関連細胞;
・Huang CY et al.J Mol Cell Cardiol.2019 Oct 23,138:1-11に記載の方法により取得可能な心筋細胞;
・Ben M’Barek K et al.Biomaterials.2019 Nov 6:119603に記載の方法により取得可能な網膜細胞、網膜色素上皮細胞;
・Chen KH et al.Am J Transl Res.2019 Sep 15;11(9):6232-6248)に記載の方法により取得可能な間葉系幹細胞。
【0141】
分化ステップが適用される本発明の方法の一実施形態では、哺乳類細胞は、幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞などの未分化細胞であり、かつ上記リストから選択される細胞に分化される。
【0142】
本発明の方法の一実施形態では、移植可能な哺乳類細胞は、上記リストから選択される分化細胞である。
【0143】
本発明の非限定的な実施形態には、以下が含まれる。
実施形態1.少なくともB2M/HLA-E遺伝子を含む哺乳類細胞であって、該哺乳類細胞が、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない、哺乳類細胞。
実施形態2.B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含み、該哺乳類細胞が、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない、実施形態1に記載の哺乳類細胞。
実施形態3.B2M/HLA-E*0101遺伝子またはB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む、実施形態1に記載の哺乳類細胞。
実施形態4.該細胞が、別個かつ既知の位置において、4つまたは少なくとも4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する、実施形態1~3のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態5.該B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子が、該哺乳類細胞の天然B2M配列にノックインされている、実施形態1~4のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態6.B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103を含む哺乳類細胞であって、該哺乳類細胞が、他の発現可能なB2M遺伝子を含まない、哺乳類細胞。
実施形態7.そうでなければベータ2マイクログロブリン(B2M)欠損細胞である細胞への、B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103の両方のノックインを有する、哺乳類細胞。
実施形態8.該B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103が、該B2M欠損細胞を作製するために使用される細胞の天然B2M配列に直接ノックインされている、実施形態6または7に記載の哺乳類細胞。
実施形態9.該哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E細胞表面表現型、例えば、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0103および/またはHLA-A/B/C-/-HLA-E*0101細胞表面表現型を有する、実施形態1~8のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態10.該哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E細胞表面表現型を有し、別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子のノックインを含む、実施形態1~9のいずれかに記載の哺乳細胞。
実施形態11.該哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0101およびHLA-E*0103細胞表面表現型を有する、実施形態1~10のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態12.B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む哺乳類細胞であって、該哺乳類細胞が、他の発現可能なB2M遺伝子を含まず、CIITA欠損であり、別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子のノックインを有する、哺乳類細胞。
実施形態13.該哺乳類細胞が、普遍的に移植可能な細胞である、実施形態1~12のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態14.該哺乳類細胞が、幹細胞または多能性細胞である、実施形態1~13のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態15.該哺乳類細胞が、ニューロン、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、およびベータ細胞からなる群から選択される、実施形態1~14のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態16.該哺乳類細胞が、ベータ細胞またはその前駆体である、実施形態15に記載の哺乳類細胞。
実施形態17.該哺乳類細胞が、間葉系幹細胞、胚性幹細胞、神経幹細胞からなる群から選択される、実施形態1~16のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態18.該B2M/HLA-E遺伝子細胞、例えば、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子が、各々、プロモーターを含むか、または機能性プロモーターの制御下にある座位において、もしくはプロモーターの隣でノックインされている、実施形態1~17のいずれか1つに記載の哺乳類細胞。
実施形態19.該B2M/HLA-E遺伝子のノックインが、天然B2M座位上にあり、天然B2Mプロモーターを利用する(すなわち、その制御下にある)、実施形態1~18のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態20.該B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子のノックインが、天然のB2M座位上にあり、非天然B2Mプロモーターを利用する(すなわち、その制御下にある)、実施形態1~19のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態21.該B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子が、天然B2M座位以外の座位においてノックインされており、代替的なプロモーターを利用する、実施形態1~19のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態22.所望のHLA-E密度が、二対立遺伝子HLA-Eノックインを介して生成される、実施形態1~21のいずれか1つに記載の哺乳類細胞。
実施形態23.HLA-Gシグナル配列ペプチドの優先的装填が使用されない、実施形態1~22のいずれか1つに記載の哺乳類細胞。
実施形態24.B2M/HLA-E遺伝子が、事前に結合されたHLA-Iリーダーペプチドを含まない、実施形態1~23のいずれか1つに記載の哺乳類細胞。
実施形態25.該B2M/HLA-E*0101遺伝子が、配列番号4のアミノ酸配列のB2M/HLA-E*0101タンパク質、または合計1~10個の置換、欠失、もしくは付加を有するそのバリアントをコードする、実施形態1~24のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態26.該B2M/HLA-E*0103遺伝子が、配列番号5のアミノ酸配列のB2M/HLA-E*0103タンパク質、または合計1~10個の置換、欠失、もしくは付加を有するそのバリアントをコードする、実施形態1~25のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態27.該哺乳類細胞が、HLA-II欠損、例えば、CIITA欠損である、実施形態1~26のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態28.別個かつ既知の位置において、4つまたは少なくとも4つのHSV-TK遺伝子のノックインを含む、実施形態1~27のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態29.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、少なくとも10Kbp、例えば、少なくとも100Kbp、少なくとも1Mbp、または少なくとも20Mbp分離された位置にある、実施形態28に記載の哺乳類細胞。
実施形態30.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、4つの異なる染色体上の位置にある、実施形態28または29に記載の哺乳類細胞。
実施形態31.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、3つの異なる染色体上の位置にある、実施形態28または29に記載の哺乳類細胞。
実施形態32.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、2つの異なる染色体上の位置にある、実施形態28または29に記載の哺乳類細胞。
実施形態33.該4つのHSV-TK遺伝子は、それらの各々が単独で、ガンシクロビルへの曝露時に該哺乳類細胞を死滅させる程度まで発現される、実施形態28に記載の哺乳類細胞。
実施形態34.2つまたは少なくとも2つのHSV-TK遺伝子が、セーフゲノムハーバー部位においてノックインされている、実施形態1~33のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態35.1つのHSV-TK遺伝子がノックインされて、B2M対立遺伝子を除去する、実施形態1~34のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態36.1つのHSV-TK遺伝子がノックインされて、CIITA対立遺伝子を除去する、実施形態1~35のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態37.該4つのHSV-TK遺伝子が、AAVs1、hROSA、AAVS1、CLYBL、またはそれらの任意の組み合わせなどのセーフハーバー部位においてノックインされている、実施形態4~36のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態38.哺乳類細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞ではない、実施形態1~37のいずれかに記載の哺乳類細胞。
実施形態39.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・任意選択で、該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態40.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
・哺乳類細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E融合遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態41.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
a)哺乳類細胞を提供するステップと、
b)該哺乳類細胞中のB2M遺伝子座位にB2M/HLA-E遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態42.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
a)B2M欠損未分化哺乳類細胞を提供するステップと、
b)該B2M欠損未分化哺乳類細胞にB2M/HLA-E遺伝子をノックインするステップと、
c)該未分化細胞を機能性分化細胞に分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態43.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
a)B2M欠損哺乳類細胞を提供するステップと、
b)該B2M欠損哺乳類細胞に、B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態44.別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップをさらに含む、実施形態39~43のいずれかに記載の方法。
実施形態45.少なくとも2つのHSV-TK遺伝子が、セーフハーバー座位においてノックインされている、実施形態39~44のいずれかに記載の方法。
実施形態46.4つのHSV-TK遺伝子が、セーフハーバー座位においてノックインされている、実施形態39~45のいずれかに記載の方法。
実施形態47.該哺乳類細胞の天然HLA-II遺伝子または天然CIITA遺伝子を不活性化するステップをさらに含む、実施形態39~46のいずれかに記載の方法。
実施形態48.該B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子が、該B2M欠損細胞を作製するために使用される細胞の天然B2M配列上に直接ノックインされている、実施形態39~47のいずれかに記載の方法。
実施形態49.該B2M/HLA-E遺伝子が、B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子を含む、実施形態39~48のいずれかに記載の方法。
実施形態50.該哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0101HLA-E*0103細胞の細胞表面表現型を有する、実施形態39~49のいずれかに記載の方法。
実施形態51.該哺乳類細胞が、幹細胞である、実施形態39~50のいずれかに記載の方法。
実施形態52.該哺乳類細胞または該移植可能な哺乳類細胞が、ニューロン、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉幹細胞、およびベータ細胞から選択される、実施形態39~51のいずれかに記載の方法。
実施形態53.
・哺乳類幹細胞または多能性細胞を提供するステップと、
・該哺乳類細胞に、少なくともB2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞の天然B2M遺伝子を不活性化するステップと、
・別個かつ既知の位置において、少なくとも4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、
・該哺乳類細胞を分化させるステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、実施形態39~52のいずれかに記載の方法。
実施形態54.分化ステップにおいて、該哺乳類細胞が、ベータ細胞、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞またはC-ペプチド+/NKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞または内分泌細胞、内分泌前駆細胞またはNGN3+/NKX2.2+二重陽性細胞、神経細胞、例えば、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞、エクソソーム細胞、例えば、ESCもしくはNSC、またはESCもしくはNSC由来のエクソソーム細胞、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、肝細胞、星細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトまたは有毛細胞、内耳細胞、腸細胞またはオルガノイド細胞、ネフロイド細胞または別の腎臓関連細胞、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞に分化される、実施形態39~53に記載の方法。
実施形態55.該移植可能な哺乳類細胞が、ベータ細胞、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞またはC-ペプチド+/NKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞または内分泌細胞、内分泌前駆細胞またはNGN3+/NKX2.2+二重陽性細胞、神経細胞、例えば、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞、エクソソーム細胞、例えば、ESCもしくはNSC、またはESCもしくはNSC由来のエクソソーム細胞、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、肝細胞、星細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトまたは有毛細胞、内耳細胞、腸細胞またはオルガノイド細胞、ネフロイド細胞または別の腎臓関連細胞、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞から選択される、実施形態39~54に記載の方法。
実施形態56.B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101遺伝子および/またはB2M/HLA-E*0103遺伝子のノックインが、各々、プロモーターを含むか、または該B2M/HLA-E遺伝子が、プロモーターの隣で、もしくは機能性プロモーターの制御下にある座位においてノックインされている、実施形態39~55のいずれかに記載の方法。
実施形態57.該B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子のノックインが、天然B2M座位上にあり、天然B2Mプロモーターを利用する、実施形態39~56のいずれかに記載の方法。
実施形態58.該B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子のノックインが、天然B2M座位上にあり、代替的な非天然B2Mプロモーターを利用する、実施形態39~57のいずれかに記載の方法。
実施形態59.B2M/HLA-E*0101遺伝子およびB2M/HLA-E*0103遺伝子の両方のノックインが、天然B2M座位以外の座位にあり、代替的なプロモーターを利用するか、またはその制御下にある、実施形態39~58のいずれかに記載の方法。
実施形態60.該B2M/HLA-E*0101遺伝子が、配列番号4のアミノ酸配列のB2M/HLA-E*0101タンパク質、または合計1~10個の置換、欠失、もしくは付加を有するそのバリアントをコードする、実施形態39~59のいずれかに記載の方法。
実施形態61.該B2M/HLA-E*0103遺伝子が、配列番号5のアミノ酸配列のB2M/HLA-E*0103タンパク質、または合計1~10個の置換、欠失、もしくは付加を有するそのバリアントをコードした、実施形態39~60のいずれかに記載の方法。
実施形態62.所望のHLA-E密度が、二対立遺伝子ノックインを介して生成される、実施形態39~61のいずれか1つに記載の方法。
実施形態63.HLA-Gシグナル配列ペプチドの優先的装填が使用されない、実施形態39~62のいずれか1つに記載の方法。
実施形態64.該哺乳類細胞が、CIITA欠損である、実施形態39~63のいずれか1つに記載の方法。
実施形態65.機能性HLA-IIタンパク質の発現を不活性化するステップを含む、実施形態39~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態66.CIITA遺伝子を不活性化するステップを含む、実施形態65に記載の方法。
実施形態67.c)別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップをさらに含む、実施形態41~66のいずれかに記載の方法。
実施形態68.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、少なくとも10Kbp、例えば、少なくとも100Kbp、少なくとも1Mbp、または少なくとも20Mbp分離された位置にある、実施形態44~67のいずれかに記載の方法。
実施形態69.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、4つの異なる染色体上の位置にある、実施形態44~68のいずれかに記載の方法。
実施形態70.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、2つの異なる染色体上の位置にある、実施形態44~69のいずれかに記載の方法。
実施形態71.該4つのHSV-TK遺伝子のうちの1つのみによって発現されるHSV-TKタンパク質が、ガンシクロビルへの曝露時に該哺乳類細胞を死滅させるのに十分である、実施形態44~70のいずれかに記載の方法。
実施形態72.2つまたは少なくとも2つのHSV-TK遺伝子が、セーフゲノムハーバー部位においてノックインされている、実施形態44~71のいずれかに記載の方法。
実施形態73.1つのHSV-TK遺伝子がノックインされて、B2M対立遺伝子を除去する、実施形態44~72のいずれかに記載の方法。
実施形態74.1つのHSV-TK遺伝子がノックインされて、CIITA対立遺伝子を除去する、実施形態44~73のいずれかに記載の方法。
実施形態75.該ノックインおよび/または遺伝子不活性化が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、CRISPR、TALEN、またはアデノウイルス組み換えから選択される遺伝子編集技術を使用して実施される、実施形態39~74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.該B2M欠損哺乳類細胞が、天然B2Mの両方の対立遺伝子をノックアウトすることによって改変されている幹細胞である、実施形態39~75のいずれか1つに記載の方法。
実施形態77.慢性疾患の予防、治療、または治癒のための、実施形態1~38のいずれか1つに記載の哺乳類細胞の使用。
実施形態78.該慢性疾患が、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、乾燥黄斑変性、網膜色素変性症、神経疾患、パーキンソン病、心疾患、慢性心不全、および慢性腎疾患からなる群から選択される、実施形態77に記載の使用。
実施形態79.1つのHSV-TK遺伝子がノックインされて、B2M対立遺伝子を除去し、別のHSV-TK遺伝子がノックインされて、CIITA対立遺伝子を除去する、実施形態1~38のいずれか1つに記載の哺乳類細胞。
実施形態80.移植可能な哺乳類細胞を作製するための方法であって、
・B2M欠損およびCIITA欠損哺乳類細胞を提供するステップと、
・該B2MおよびCIITA欠損哺乳類細胞に、B2M/HLA-E遺伝子、例えば、B2M/HLA-E*0101およびB2M/HLA-E*0103遺伝子のうちの一方または両方をノックインするステップと、
・別個かつ既知の位置において、4つのHSV-TK遺伝子をノックインするステップと、を含み、
それによって該移植可能な哺乳類細胞が取得される、方法。
実施形態81.該移植可能な哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E細胞表面表現型を有する、実施形態80に記載の方法。
実施形態82.該移植可能な哺乳類細胞が、HLA-A/B/C-/-HLA-E*0101+HLA-E*0103+細胞の細胞表面表現型を有する、実施形態80または81に記載の方法。
実施形態83.該哺乳類細胞が、幹細胞、多能性細胞、またはiPS細胞である、実施形態80~82のいずれかに記載の方法。
実施形態84.該哺乳類細胞が、ニューロン、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉幹細胞、およびベータ細胞から選択される、実施形態80~83のいずれかに記載の方法。
実施形態85.該哺乳類細胞を分化するステップを含む、実施形態80~84のいずれかに記載の方法。
実施形態86.分化ステップにおいて、該哺乳類細胞が、ベータ細胞、INS+およびNKX6.1+二重陽性細胞またはC-ペプチド+/NKX6.1+二重陽性細胞、インスリン産生細胞、インビトロ由来ベータ様細胞、膵内分泌細胞または内分泌細胞、内分泌前駆細胞またはNGN3+/NKX2.2+二重陽性細胞、神経細胞、例えば、ニューロン、介在ニューロン細胞、乏突起膠細胞、星状膠細胞、ドーパミン作動性細胞、エクソソーム細胞、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、肝細胞、星細胞、線維芽細胞、ケラチノサイトまたは有毛細胞、内耳細胞、腸細胞またはオルガノイド細胞、ネフロイド細胞または別の腎臓関連細胞、心筋細胞、網膜細胞、網膜色素上皮細胞、間葉系幹細胞に分化される、実施形態85に記載の方法。
実施形態87.該4つのHSV-TK遺伝子のノックインが、4つの異なる染色体上の位置にある、実施形態80~84のいずれかに記載の方法。
実施形態88.2つのHSV-TK遺伝子が、セーフゲノムハーバー部位においてノックインされている、実施形態80~85のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0144】
実施例1-ガンシクロビルアッセイ
説明
未分化親hESC(ヒト胚性幹細胞)細胞株(WT)、HSV-TK遺伝子の2つのコピーを有するhESC細胞株(2xHSV-TK)、およびHSV-TK遺伝子の4つのコピーを有するhESC細胞株(4xHSV-TK)を、hFN(ヒトフィブロネクチンコーティング)上に播種した。細胞を24ウェル型の皿に60.000細胞/ウェルで播種し、DEF-CS培地中で一晩培養した。次いで、細胞を、ガンシクロビル(GCV)を含有するDEF-CS培地中、5つの異なる濃度:0、1、12.5、25、50、または100μMで、7日間培養した。ガンシクロビルを含有するDEF-CS培地を、毎日交換した。90%の培養密度に達したとき、細胞を、ガンシクロビルを含むDEF-CS中で、1:2で継代した。培養中7日後、細胞をDAPIで染色し、画像をキャプチャした。結果の画像を図3に示す。
【0145】
結論
ゲノム中の別個の部位にHSV-TKの4つのコピーを有する細胞は、ゲノム中の別個の部位にHSV-TKの2つのコピーのみを有する細胞よりも、ガンシクロビルに対してより感受性が高い。
【0146】
実施例2-免疫安全細胞生成プロトコル
ヒト胚性幹細胞(SA121)を、AAVS1に対する合計500ngのTALEN(登録商標)mRNA対(ThermoFisher(登録商標)、フォワード標的配列:CTGTCCCCTCCACCCCAC、リバース標的配列:TTCTGTCACCAATCCTGT)およびAAVS1中のTALEN(登録商標)切断部位に隣接する300bpの相同アームを含有する500ngのドナープラスミド、すなわちHSV-TKカセット、続いてmCherry選択カセットで電気穿孔する。細胞を1週間培養し、mCherry陽性細胞を、FACS細胞ソーターを使用してバルクソーティングする。細胞をさらに1週間培養した後、細胞を、CLYBLに対する合計500ngのTALEN(登録商標)mRNA対(ThermoFisher(登録商標)、フォワード標的配列:CTCAAGTAGGTCTCTTTC、リバース標的配列:GAAAGTCTTCTCCTCCAA)およびCLYBL中のTALEN(登録商標)切断部位に隣接する300bpの相同アームを含有する500ngのドナープラスミド、すなわちHSV-TKカセット、続いてeGFP選択カセットで電気穿孔する。細胞を1週間培養し、mCherry/eGFP二重陽性細胞を、FACS細胞ソーターを使用してバルクソーティングする。細胞をさらに1週間培養した後、細胞を100ngのCreリコンビナーゼmRNAで電気穿孔して、選択カセットを切除する。mCherry/eGFP二重陰性細胞を、FACS細胞ソーターを使用して96ウェルプレートに単一セルソーティングし、2~4週間培養する。細胞クローンを、PCRを使用して、標的化された二対立遺伝子統合についてスクリーニングする。
【0147】
上記プロトコルからの4つのHSV-TKコピーを含有するクローンを、B2Mに対する合計200ngのTALEN(登録商標)mRNA対(ThermoFisher(登録商標)、フォワード標的配列:TCTCGCTCCGTGGCCTT、リバース標的配列:AGCCTCCAGGCCAGAAAG)、およびB2MのTALEN(登録商標)切断部位に隣接する300bpの相同アームを含有する200ngのドナープラスミド、すなわちB2M-HLAIE01:01融合カセット、続いてmCherry選択カセット、およびB2MのTALEN(登録商標)切断部位に隣接する300bpの相同アームを含有する200ngのドナープラスミド、すなわちB2M-HLAIE01:03融合カセット、続いてeGFP選択カセットで電気穿孔する。細胞を1週間培養し、mCherry/eGFP二重陽性細胞を、FACS細胞ソーターを使用してバルクソーティングする。細胞をさらに1週間培養した後、細胞を100ngのCreリコンビナーゼmRNAで電気穿孔して、選択カセットを切除する。mCherry/eGFP二重陰性細胞を、FACS細胞ソーターを使用して96ウェルプレートに単一セルソーティングし、2~4週間培養する。細胞クローンを、PCRを使用して、標的化された単一対立遺伝子統合についてスクリーニングする。
【0148】
すべての電気穿孔を、製造業者の指示に従って、10uLのNeonトランスフェクションキットを使用して行う(ThermoFisher(登録商標)#MPK1025、パルス電圧1100V、パルス幅20、パルス番号2、4e5細胞)。
【0149】
細胞を、製造業者の指示に従って、DEF-CS中で培養する(Takara(登録商標)#Y30017)。
図1
図2
図3
【配列表】
2022539496000001.app
【国際調査報告】