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特表2022-539508ポリマー包装および医薬組成物を保存するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ポリマー包装および医薬組成物を保存するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/00 20060101AFI20220905BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220905BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20220905BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220905BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20220905BHJP
   A61J 1/03 20060101ALN20220905BHJP
   A61J 1/05 20060101ALN20220905BHJP
   B65D 65/40 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
A61J1/00 Z
A61K31/43
A61P31/00
A61K38/08
A61K31/53
A61P33/00
A61K31/545
C08L23/06
C08L23/12
C08L23/04
A61J1/03
A61J1/05 311
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576033
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 FR2020051112
(87)【国際公開番号】W WO2020260833
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1906965
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513024281
【氏名又は名称】セヴァ サンテ アニマレ
【氏名又は名称原語表記】CEVA SANTE ANIMALE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラコステ,サンドリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ギムバトゥー,フローレンス
【テーマコード(参考)】
3E086
4C047
4C084
4C086
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB21
3E086BB74
3E086BB90
4C047AA05
4C047BB14
4C047BB17
4C047BB30
4C047CC04
4C047CC14
4C047CC15
4C047CC16
4C047CC18
4C047GG14
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA17
4C084NA03
4C084ZA81
4C086AA02
4C086BC64
4C086CC04
4C086CC10
4C086CC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZB31
4C086ZB35
4C086ZB37
4J002BB03W
4J002BB06Y
4J002BB12X
4J002BE03Y
4J002GB00
(57)【要約】
本発明は、無菌医薬組成物を保存するための包装であって、少なくとも、200~800μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、ポリエチレンから作製された外層とを含み、外層は、環境と接触しており、300~1000μmの厚さを有する、包装に関する。本発明はまた、そのような包装を使用する医薬組成物の無菌保存のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌医薬組成物を保存するための包装であって、少なくとも1つの、200~800μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、ポリエチレンから作製された外層とを含み、前記外層は、環境と接触しており、300~1000μmの厚さを有する、包装。
【請求項2】
前記ポリプロピレンの内層が、300~700μm、350~650μm、400~600μm、好ましくは450~550μm、さらにより好ましくは約500μmの厚さを有する、請求項1に記載の包装。
【請求項3】
前記ポリエチレンの外層が、400~800μm、450~750μm、500~700μm、好ましくは550~650μm、さらにより好ましくは約600μmの厚さを有する、請求項1または2に記載の包装。
【請求項4】
前記ポリエチレンの外層が、少なくとも1つの抗紫外線着色剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装。
【請求項5】
前記包装が、前記ポリプロピレンの内層と前記ポリエチレンの外層との間に位置し、10~250μm、10~200μm、20~80μm、好ましくは20~50μm、さらにより好ましくは約30または50μmの厚さを有する、ガスバリア剤の中央層をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装。
【請求項6】
前記ガスバリア剤の中央層が、エチレン-ビニルアルコールを含む、請求項5に記載の包装。
【請求項7】
前記包装が、少なくとも、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、
-エチレン-ビニルアルコールを含み、約30または50μmの厚さを有する中央層と、
-約600μmの厚さを有するポリエチレンの外層と、を含む、請求項5または6に記載の包装。
【請求項8】
前記包装は、各々が5~50μm、好ましくは約10μmの厚さを有する2つの接着性セパレータ層をさらに含み、前記2つの接着性セパレータ層が、それぞれ、前記ポリプロピレンの内層と前記ガスバリア剤の中央層との間、および前記ポリエチレンの外層と前記ガスバリア剤の中央層との間に位置する、請求項5~7のいずれか一項に記載の包装。
【請求項9】
前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の包装。
【請求項10】
無菌医薬組成物をさらに含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の包装。
【請求項11】
前記無菌医薬組成物が、水性または非水性組成物である、請求項10に記載の包装。
【請求項12】
前記非水組成物が、油性組成物である、請求項11に記載の包装。
【請求項13】
前記無菌医薬組成物が、アモキシシリン、ブセレリン、トルトラズリル、ジクラズリル、またはセファレキシンから選択される活性成分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の包装。
【請求項14】
前記包装が、ボトルまたはバイアルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の包装。
【請求項15】
無菌医薬組成物を保存するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の包装の使用。
【請求項16】
医薬組成物の無菌保存のための方法であって、
a)請求項1~14のいずれか一項に記載の包装中に医薬組成物を添加するステップと、
b)前記医薬組成物を含有する前記包装を滅菌するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
ステップb)における前記医薬組成物を含有する前記包装が、好ましくは15~40kGyの線量で、ガンマ線照射によって滅菌される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の目的
本発明は、ポリマーの分野、具体的には、無菌医薬組成物を保存するために使用され得る、バイアルなどのポリマー包装の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌は、医薬組成物の製造プロセスにおいて非常に重要な、実際必須の操作である。実際、大部分の医薬組成物は、病原菌の導入を防止し、最適な化学的および物理的安定性を保持するために、患者に投与される前に、無菌状態で製造および保存されなければならない。医薬組成物の無菌保存のための方法における、滅菌ステップは、包装/医薬組成物アセンブリに対して、またはその各々に対して(それらは、すべて無菌環境で、分離して得られ、続いて医薬組成物が包装に充填される)のいずれかで実施され得る。
【0003】
欧州医薬品庁(EMA)は、医薬組成物(活性物質および賦形剤)を含み、当該医薬組成物を含有する包装も含む、医学製品および獣医学製品の滅菌のために満たすべき条件に関する新たなガイドライン(EMA/CHMP/CVMP/QWP/850374/2015)を最近公表した。可能な限り、これらのガイドラインは、医薬組成物の最終滅菌ステップ(存在する場合)を、その最終包装中で実施することを推奨している。
【0004】
空の包装(すなわち、内部に医薬組成物がない)、または医薬組成物を含有する包装を滅菌するために一般的に使用される様々なタイプの方法が存在する。例えば、湿式または乾式加熱による滅菌の方法、照射による方法、およびガス滅菌による方法を挙げることができ、これらは、熱または照射の方法が好適ではない最後に行わなければならない。ガイドラインは、湿式加熱による滅菌の方法について、110~121℃の温度で実施される、数分のサイクルを推奨している。乾式加熱滅菌方法を実行するために、160℃の最低温度での少なくとも2時間の期間が推奨されている。照射滅菌方法に関して、参照照射線量は少なくとも25kGyである。
【0005】
したがって、これらの様々な滅菌方法は、最適な無菌医薬組成物を得るために特定の条件を必要とし、医薬組成物を含有する包装は、その条件に無事に耐えなければならない。より具体的には、包装は、滅菌プロセスの間および後に、特に、無菌医薬組成物を可能な限り長く保存することができるように、耐性、安定性、機械的耐性、または頑丈さ、透明性、環境要因(光、酸素、温度)に対する不浸透性の特性を示さなければならない。同様に、当該許容される医薬包装はそれ自体、それが含有する医薬組成物の品質を変化させてはならない。逆に、医薬組成物は、当該包装の品質を変化させてはならない。
【0006】
したがって、新たなEMAガイドラインによって推奨されるものなどの、ますます苛酷なまたは要求の厳しい滅菌条件に対して耐性であり、安定かつ無菌の医薬組成物を持続的に保存することを可能にする、新たな包装を開発および提供する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【0007】
この課題に直面して、本発明者らは、無菌医薬組成物の保存または貯蔵のための新規の耐性包装を提案する。当該包装は、特に、その頑丈さを保持しながら、当該包装がEMAガイドラインによって推奨される滅菌条件に耐えることを可能にする、特定のポリマー外層を含む。より具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、少なくとも1つの、300~1000μmの厚さのポリエチレンのポリマー外層を含む包装が、高線量の照射(およそ40kGy)に供されたときにその耐性全体を保持し、したがって、無菌医薬組成物の持続的な保存を可能にすることを示した。
【0008】
したがって、本発明は、包装、特に、無菌医薬組成物を保存するための包装であって、少なくとも1つの、200~800μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、ポリエチレンから作製された外層とを含み、外層は、環境と接触しており、300~1000μmの厚さを有する、包装に関する。
【0009】
特定の実施形態によれば、ポリプロピレンの内層は、300~700μm、350~650μm、400~600μm、好ましくは450~550μm、さらにより好ましくは約500μmの厚さを有する。別の特定の実施形態によれば、ポリエチレンの外層は、400~800μm、450~750μm、500~700μm、好ましくは550~650μm、さらにより好ましくは約600μmの厚さを有する。好ましい実施形態によれば、ポリエチレンの外層は、少なくとも1つの抗紫外線着色剤をさらに含む。
【0010】
本発明の別の態様によれば、包装は、ポリプロピレンの内層とポリエチレンの外層との間に位置し、10~250μm、10~200μm、20~80μm、好ましくは20~50μm、さらにより好ましくは約30または50μmの厚さを有する、ガスバリア剤の中央層をさらに含む。ガスバリア剤の中央層は、好ましくはエチレン-ビニルアルコールを含む。
【0011】
本発明の特定の包装はまた、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層、
-エチレン-ビニルアルコールを含み、約30または50μmの厚さを有する中央層、および
-約600μmの厚さを有するポリエチレンの外層、のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
当該包装は、好ましくは、各々が5~50μm、好ましくは約10μmの厚さを有する2つの接着性セパレータ層を含み、当該2つの接着性セパレータ層は、それぞれ、ポリプロピレンの内層とガスバリア剤の中央層との間、およびポリエチレンの外層とガスバリア剤の中央層との間に位置する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリエチレンは、低密度ポリエチレンである。
【0014】
本発明はまた、無菌医薬組成物をさらに含む、本出願に記載の包装に関する。無菌医薬組成物は、好ましくは水性または非水性組成物である。好ましい実施形態によれば、非水組成物は、油性組成物である。特に、無菌医薬組成物は、アモキシシリン、ブセレリン、トルトラズリル、ジクラズリル、またはセファレキシンから選択される活性成分を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、包装は、ボトルまたはバイアルである。
【0016】
本発明はまた、無菌医薬組成物を保存するための、本出願に記載の包装の使用に関する。
【0017】
本発明はまた、医薬組成物の無菌保存のための方法であって、
a)本出願に記載の包装中に医薬組成物を添加するステップと、
b)医薬組成物を含有する包装を滅菌するステップと、を含む、方法に関する。好ましい実施形態によれば、ステップb)における医薬組成物を含有する包装は、好ましくは15~40kGyの線量で、ガンマ線照射によって滅菌される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、無菌医薬組成物を長期保存することを可能にする包装を提供する。より具体的には、当該包装は、滅菌条件、特に高線量のガンマ線照射に対して耐性でありかつこの条件下で安定であること、酸素および水に対して不浸透性であることができること、ならびにその透明性を保持することの利点を有する。
【0019】
本出願で使用される場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じて、特定の程度まで変動し得る。この用語のいくつかの使用が当業者に対して明確でない場合、文脈に応じて、「約」は、明記される値のプラス/マイナス20%、好ましくはプラス/マイナス10%を意味する。
【0020】
包装
本発明は、包装、特に、無菌医薬組成物を保存するための包装であって、少なくとも1つの、200~800μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、ポリエチレンから作製された外層とを含み、外層は、環境と接触しており、300~1000μmの厚さを有する、包装に関する。
【0021】
本発明によれば、包装は、少なくとも1つの、ポリプロピレンの内層を含む。
【0022】
「内層」は、包装の内部に位置する層を意味する。したがって、内層は、これが包装中に存在するときに医薬組成物と接触している層に対応する。
【0023】
本出願において「PP」の頭文字によっても称されるポリプロピレン(またはポリプロペン)ポリマーは、化学式-(CH-CH(CH))-を有する。ポリプロピレンは、チーグラー-ナッタ法において使用されるものなどの触媒の存在下でのプロピレンモノマー(CH=CH-CH)の配位重合から生じる。ポリプロピレンは、約0.9g/cm、より正確には0.895~0.920g/cmの密度、および1.1~1.6Gpa(ギガパスカル)のヤング率(弾性率または牽引力とも称される)を有する。3つの異なるタイプのポリプロピレンが存在する。第1のタイプは、固体半結晶形態のプロピレンモノマーのみを含み、「ポリプロピレンのホモポリマー」と称される。第2のタイプは、ランダムプロピレン/エチレンコポリマーに対応する。これは、プロピレンモノマーに加えて、1~8%のモル量のエチレンモノマーを含む。最後に、第3のタイプは、45~65%のモル量のエチレンモノマーを有するランダムプロピレン/エチレンコポリマーの相をさらに含む、ポリプロピレンのホモポリマーに対応する。これは、ポリプロピレンインパクトコポリマーと称される。市販のポリプロピレンは、例えば、TotalによるポリプロピレンAceso(登録商標)PPM R021、およびBorealisによるポリプロピレンBORMED SB815MOである。本発明の好ましい実施形態によれば、包装の内層を形成するポリプロピレンは、3%のモル量のエチレンモノマーを含むランダムプロピレン/エチレンコポリマーである。
【0024】
本発明によれば、ポリプロピレンで作製された包装の内層は、200~800μmの厚さを有する。より具体的には、ポリプロピレンの内層は、300~700μm、350~650μm、400~600μm、420~580μm、430~570μm、440~560μm、450~550μm、460~540μm、470~530μm、480~520μm、490~510μm、好ましくは約500μmの厚さを有する。
【0025】
本発明によれば、包装は、少なくとも1つの、ポリエチレンの外層を含む。
【0026】
「外層」は、包装の外周に位置する層を意味する。したがって、それは環境と接触している層に対応する。
【0027】
本出願において「PE」の頭文字によっても称されるポリエチレンは、化学式-(CH-CH-を有する。それは、非常に高い圧力(1800~3000バール)下で、およそ200℃の温度でのエチレンモノマー(CH=CH)のラジカル重合から生じる。低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、中密度ポリエチレン(「MDPE」)、および高密度ポリエチレン(「HDPE」)を含む、種々のタイプのポリエチレンが存在する。
【0028】
その名称が示すように、LDPEは、中密度ポリエチレン(MDPE)(0.926~0.940g/cm)および高密度ポリエチレン(HDPE)(0.941~0.965g/cm)の密度よりも低い、0.92g/cm付近、より正確には0.895~0.925g/cmの密度を有し、これは、MDPEおよびHDPEの分岐率よりも高いその分岐率によって説明される。LDPEは、0.1~0.3Gpaのヤング率を有する。LDPEは、石油もしくは化石起源、または植物起源であり得る。化石起源のLDPEは、例えば、Borealis社によって販売されているLDPE「Bormed(商標)LE6607-PH」、およびLyondellBasell社によって販売されているLDPE「Purell PE 3020 D」である。MDPEは、172~379Mpaのヤング率を有する。市販のMDPEは、例えば、Total社によって市販されている一連のLumicene(登録商標)のMDPEである。HDPEは、0.5~1.2Gpaのヤング率を有する。HDPEは、石油起源、または植物起源のいずれかであり得る。植物起源の、または「バイオソース」であるHDPEは、すべてのバイオソース材料と同様に、生態学的または環境的フットプリントを低減する効果を有する。化石起源のHDPEは、例えば、Sabic社によって販売されているHDPE、例えばHDPE BM6246LSである。植物起源の、またはバイオソースであるHDPEは、例えば、Braskem社によって販売されているLDPE「SGF 4950」である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリエチレンは、低密度ポリエチレンである。
【0030】
本発明の特定の実施形態によれば、低密度ポリエチレンは、植物起源である。LDPEは、好ましくは、サトウキビなどの植物から産生される。包装の外層におけるこの種の「バイオソース」LDPEの使用は、化石起源のLDPEの使用と比較して、包装の生態学的または環境的フットプリントを低減する効果を有する。「バイオソース」であるかまたは植物起源の特定のLDPEは、例えば、Braskem社によって販売されているLDPE「STN7006」である。
【0031】
本発明によれば、PEで作製された包装の外層は、400~800μmの厚さを有する。より具体的には、PEの外層は、450~750μm、500~700μm、550~650μm、560~640μm、570~630μm、580~620μm、590~610μm、好ましくは約600μmの厚さを有する。
【0032】
無菌医薬組成物を保存するための本発明の好ましい包装は、少なくとも1つの、約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、ポリエチレン、好ましくは低密度ポリエチレンから作製された外層とを含み、当該外層は、環境と接触しており、約600μmの厚さを有する。
【0033】
特定の実施形態によれば、包装のポリエチレン、好ましくは低密度ポリエチレンの外層は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む。当該添加剤は、例えば、抗酸化剤、可塑剤、安定剤、潤滑剤、着色剤(もしくは「色素」)、または機械的強化剤である。包装のポリエチレンの外層は、好ましくは、少なくとも着色剤、好ましくは抗紫外線特性を有する着色剤をさらに含む。さらにより好ましい実施形態によれば、包装のポリエチレンの外層は、抗紫外線特性を有する着色剤を含む。少なくとも1つの抗紫外線着色剤をさらに含む外層を含む当該包装は、紫外線に対して感受性である無菌医薬組成物の保存のために特に好適である。特定の実施形態によれば、抗紫外線着色剤は、外層の総重量に対して5%以下、特に5%、4%、3%、2%、1%の割合で、好ましくは外層の総重量に対して3重量%の割合で存在する。着色剤は、例えば、Milliken社によって販売されている一連のColorant Cleartint(商標)の製品、Clariant社によって販売されている一連のMevopur(登録商標)の製品、およびGabriel-Chemieグループによって販売されている製品、例えば、参照HP 79860 UVである。
【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、包装は、ガスバリア剤の中央層をさらに含む。当該ガスバリア剤の中央層を含む当該包装は、ガスに対して感受性である、特に酸素に対して感受性である無菌医薬組成物の保存のために特に好適である。「ガスバリア剤の中央層」は、ポリプロピレンの内層と低密度ポリエチレンの外層との間に位置するガスバリア剤の中央層を意味する。その位置の理由により、中央層は、したがって、これが包装中に存在するときに環境と接触しておらず、無菌医薬組成物とも接触していない。ガスバリア剤の中央層は、好ましくは、10~250μm、10~200μm、20~80μm、30~70μm、好ましくは20~50μm、さらにより好ましくは約30または50μmの厚さを有する。本発明のさらにより特定の実施形態によれば、包装は、ポリプロピレンの内層とポリエチレンの外層との間に位置し、10~250μm、10~200μm、20~80μm、好ましくは20~50μm、さらにより好ましくは約30または50μmの厚さを有する、ガスバリア剤の中央層をさらに含む。
【0035】
ガスバリア剤の中央層は、好ましくは、エチレン-ビニルアルコールまたはポリグリコール酸、有利にはエチレン-ビニルアルコールを含む。
【0036】
本出願において「EVOH」の頭文字によっても称されるエチレン-ビニルアルコールは、化学式-(CH-CHOH)-(CH-CHを有するコポリマーである。それは、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーとの重合、それに続く加水分解から生じる。コポリマーEVOHは、エチレンのモル量(%)によって規定される。エチレンのモルのパーセンテージが低ければ低いほど、ガスバリア剤特性は良好である。好ましい実施形態によれば、EVOHは、20~60%、27~47%、さらにより好ましくは約32%のエチレンのモルを含む。EVOHの例として、KURARAY社およびGOSHEI社によって販売されている製品EVAL F101およびSOARNOLを挙げることができる。
【0037】
本出願において「PGA」の頭文字によっても称されるポリグリコール酸は、生分解性および熱可塑性である、植物起源のポリマーである。PGAは、特に、ガスバリア効果、耐熱性、成形性、透明性、および耐久性に関して改善された特性を示す。市販のPGAの一例は、KUREHA社による製品KUREDUXである。
【0038】
無菌医薬組成物の保存のための、本発明の別の好ましい包装は、少なくとも、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、
-エチレン-ビニルアルコールを含み、約30または50μmの厚さを有する中央層と、
-約600μmの厚さを有するポリエチレンの外層と、を含む。
【0039】
包装は、任意選択で、PPの内層とPEの外層との間、またはPPの内層とガスバリア剤の中央層との間、およびPEの外層とガスバリア剤の中央層との間に位置し得る1つ以上の接着性セパレータ層を含み得る。
【0040】
接着性セパレータ層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、EVOH、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリテレフタレートなどのポリマーから形成され、支持ポリマーのために好適な官能基によって修飾された接着剤を含む。これには、例えば、無水マレイン酸で修飾されたポリプロピレンまたはポリエチレンに対応する、Mitsui Chemical社による商標ADMER(登録商標)の市販製品が含まれる。無水マレイン酸で修飾されたポリエチレンは、例えば、製品ADMER(商標)NF408Eである。
【0041】
特に、接着性セパレータ層は、5~50μmの厚さを有する。より具体的には、接着剤セパレータ接着性セパレータ層は、5~40μm、5~30μm、5~20μm、5~15μm、好ましくは約10μmの厚さを有する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、包装は、各々が5~50μm、好ましくは約10μmの厚さを有する2つの接着性セパレータ層を含み、当該2つの接着性セパレータ層は、それぞれ、ポリプロピレンの内層とガスバリア剤の中央層との間、およびポリエチレンの外層とガスバリア剤の中央層との間に位置する。
【0043】
本出願の文脈内で、接着性層はまた、記号「/」によって表される。したがって、少なくとも1つの接着性層を含む本発明による包装は、エチレン-ビニルアルコールを含むガスバリア剤の中央層が存在するか否かに応じて、以下のように表され得る:PP/PE、およびPP/EVOH/PE。
【0044】
無菌医薬組成物の保存のための、本発明の別の好ましい包装は、少なくとも、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、
-約10μmの厚さを有する接着性セパレータ層と、
-約600μmの厚さを有するポリエチレンの外層と、を含む。
【0045】
無菌医薬組成物の保存のための、本発明の別の好ましい包装は、少なくとも、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、
-約10μmの厚さを有する接着性セパレータ層と、
-エチレン-ビニルアルコールを含み、約30μmの厚さを有する中央層と、
-約10μmの厚さを有する接着性セパレータ層と、
-約600μmの厚さを有する低密度ポリエチレンの外層と、を含む。
【0046】
当該好ましい包装は、以下のように表される:以下の実施例における「PP(500μm)/EVOH(30μm)/LDPE(600μm)」。
【0047】
無菌医薬組成物の保存のための、本発明の別の好ましい包装は、少なくとも、
-約500μmの厚さを有するポリプロピレンの内層と、
-約10μmの厚さを有する接着性セパレータ層と、
-エチレン-ビニルアルコールを含み、約50μmの厚さを有する中央層と、
-約10μmの厚さを有する接着性セパレータ層と、
-約600μmの厚さを有する低密度ポリエチレンの外層と、を含む。
【0048】
当該好ましい包装は、以下のように表される:「PP(500pm)/EVOH(50pm)/LDPE(600pm)」。
【0049】
組成物
本発明の別の態様は、無菌医薬組成物をさらに含む、本出願に記載の包装に関する。
【0050】
「医薬組成物」は、活性成分を含む任意の医薬組成物を意味する。医薬組成物はまた、獣医学組成物を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、獣医学組成物である。
【0051】
活性成分は、一般的に、治療薬および医薬品、予防剤、診断薬、ならびにヒトまたは動物における病態、感染、疾患を予防および/または治療あるいは診断することができる任意の他の薬剤を含む。より具体的には、活性成分には、抗生物質、特に、βラクタム、例えば、アモキシシリン、セファロスポリン、例えば、セファレキシン、およびテトラサイクリン、例えば、オキシテトラサイクリン、抗感染剤、抗コクシジウム剤、例えば、ジクラズリルおよびトルトラズリル、ワクチン、例えば、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、タンパク質、インターフェロン、インターロイキン、サイトカイン、およびビタミンを含むワクチン、非ステロイド性抗炎症剤、例えば、メロキシカムおよびインドメタシン、駆虫および抗寄生虫剤、例えば、プラジカンテル、ピランテル、イベルメクチン、ペルメトリン、フィプロニル、およびジノテフラン、昆虫成長制御剤、抗ウイルス剤、強心剤、例えば、ジゴキシン、高血圧剤、利尿剤、心不全の治療のための治療薬、例えば、スピロノラクトン、ならびにアンジオテンシン変換酵素の阻害剤、例えば、ベナゼプリル、発情および排卵の誘発および同期化剤、例えば、ブセレリンが含まれる。活性成分には診断薬も含まれ、これは、ポリペプチド、核酸、多糖、脂質、糖タンパク質、糖脂質、炭水化物、特定の組織を標識することを可能にする薬剤、例えば、放射性同位体を含有する薬剤、磁性マーカー、蛍光マーカー、化学発光マーカー、および酵素マーカーであり得る。
【0052】
無菌医薬組成物は、好ましくは、アモキシシリン、ブセレリン、トルトラズリル、ジクラズリル、またはセファレキシンから選択される活性成分を含む。
【0053】
「無菌医薬組成物」は、すべての微生物菌を破壊することを目的とした滅菌方法において使用されている、上記の任意の医薬組成物を意味する。この滅菌方法には、特に、乾式加熱または湿式加熱(オートクレーブ)熱処理、エチレンオキサイドを使用する処理などの化学的処理、およびガンマ線照射もしくはベータ線照射、または加速電子線への曝露によるなどの紫外線照射または電離放射線照射を使用する処理が含まれる。
【0054】
無菌医薬組成物は、任意の形態で存在し得る。例えば、無菌医薬組成物は、液体組成物、特に水性または非水性組成物であり得る。非水組成物の例は、油性組成物であり得る。無菌医薬組成物はまた、粉末、圧縮錠剤、カプセル、顆粒、糖衣錠、硬カプセル、ウエハーカプセル、丸剤、錠剤、またはクリームなどの固体組成物であり得る。無菌医薬組成物は、好ましくは水性または非水性組成物である。さらにより好ましくは、非水性無菌医薬組成物は、油性組成物である。
【0055】
本発明によれば、包装は、無菌医薬組成物を保存するために好適である。特定の実施形態によれば、包装は、三次元構造(3D構造)を有する。3D構造を有するこの特定の実施形態は、したがって、フィルム、特に単層および多層ポリマーフィルムの形態の包装を除外する。本発明の好ましい実施形態によれば、包装は、ボトルまたはバイアルである。本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、包装は、10ml、25ml、50ml、100ml、250ml、500ml、1l、2l、好ましくは50ml、100ml、250mlまたは500mlの体積の無菌医薬組成物を含有し得るバイアルである。
【0056】
本発明はまた、無菌医薬組成物を保存するための、本出願に記載の包装の使用に関する。
【0057】
「本発明による包装における無菌医薬組成物の保存」は、無菌医薬組成物の、また包装の、物理的および化学的特性を、経時的に、保持することを意味し得る。実際、経時的な包装の劣化は、同時に、当該包装中に含有される元来無菌の医薬組成物を変化させる。したがって、本発明による包装は、無菌医薬組成物を持続的にまたは長期にわたって保存することを可能にする。より具体的には、本発明による包装は、無菌医薬組成物を、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、24ヶ月、3年、4年、5年、およびそれ超の間保存することを可能にする。本発明による包装は、好ましくは、無菌医薬組成物を、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、24ヶ月、または36ヶ月の間保存することを可能にする。
【0058】
包装の物理的および化学的特性に関して、これらは、当業者によって日常的に使用されている参照包装であるガラス包装とそれを一般に比較することによって、経時的に研究される。研究される包装の物理的および化学的パラメータは、例えば、物理的状態(融解、結晶化、ガラス転移)または化学的状態(架橋、酸化)の変化と関連する包装の熱特性にアクセスすることを可能にする示差走査熱量測定に由来するパラメータである。バイアルの機械的特性を、以下の実施例に記載されるような、単純な落下試験によって研究することも可能である。
【0059】
無菌医薬組成物の物理的および化学的特性に関して、これらは、絶対的に評価され得、そして、考慮されるべき物理的および化学的パラメータを規定し、当該パラメータが変動し得る程度を示す、規制または薬局方によって管理される。経時的なこれらのパラメータの変化は、無菌医薬組成物の物理的および化学的安定性、ならびに、より一般には、経時的なその保存を評価することを可能にする。パラメータは、定性的または定量的のいずれかであり得る。考慮され得る定性的パラメータは、特に、組成物の色、透明性および匂いである。定量的パラメータは、例えば、組成物中の活性成分の投薬量またはタイトレーション、活性成分に対する分解生成物の相対的パーセンテージ、pH、および粘度である。一般に、薬学の分野では、活性成分のタイトレーションの測定および活性成分に対する分解生成物の相対的パーセンテージの測定が、経時的な医薬組成物の安定性を決定するために十分である。したがって、組成物は、組成物中の活性成分の含有量、および分解生成物の相対的パーセンテージが、組成物の有効性および安全性が有意には変化しないように比例して変動する場合、安定であると考えられる。測定は、様々な時点、例えば、3、6、12、18および24ヶ月で、様々な温度、例えば、4℃、25℃および40℃で、様々な湿度条件下で行われ得る。より具体的には、組成物は、活性成分の含有量の変動が、10%、好ましくは5%を超えない場合、安定であると考えられ得る。組成物はまた、分解生成物の相対的パーセンテージの変動が、多くとも10%、好ましくは多くとも5%である場合に、安定であると考えられ得る。これらの範囲は、特に欧州薬局方によって推奨されているか、またはGuideline VICH GL3に記載されている。より一般的には、医薬組成物の保存期間および安定性は、経時的な活性成分のタイターの変動が小さければ小さいほど、そして分解生成物の出現が遅ければ遅いほど、長くなると考えられる。
【0060】
方法
本発明の別の態様は、医薬組成物の無菌保存のための方法に関する。組成物の無菌保存は、2つの特定の実施形態に従って達成され得る。
【0061】
第1の特定の実施形態では、医薬組成物はまず、上記の包装中に添加される。包装/医薬組成物アセンブリは、当業者に既知の任意の方法によって滅菌される。
【0062】
したがって、本発明は、医薬組成物の無菌保存のための方法であって、
a)上記の包装中に医薬組成物を添加するステップと、
b)医薬組成物を含有する包装を滅菌するステップと、を含む、方法に関する。
【0063】
したがって、本発明による方法は、医薬組成物の滅菌および無菌保存を可能にする。
【0064】
第2の特定の実施形態では、上記の医薬組成物および包装は、別々に滅菌される。次いで、無菌医薬組成物は、無菌条件下で、無菌包装中に導入される。
【0065】
したがって、本発明は、医薬組成物の無菌保存のための方法であって、
a)上記の包装と医薬組成物とを別々に滅菌して、無菌包装と無菌医薬組成物とを別々に得るステップと、
b)当該無菌包装中に当該無菌医薬組成物を添加するステップと、を含む、方法に関する。
【0066】
医薬組成物の無菌保存のための上記の方法は、好ましくは医薬組成物の良好な保存のために好適な条件下での、無菌医薬組成物を含有する包装の保存の任意選択のステップc)をさらに含み得る。例えば、当該保存のステップc)は、光から保護されて、乾燥環境で、20℃を超えない温度で、真空下で実施され得、当然ながらこれらの様々な条件を互いに組み合わせることが可能である。
【0067】
上記の方法において行われる滅菌のステップb)は、当業者に既知の任意の滅菌方法によって実施され得る。特に、滅菌のステップb)は、湿式加熱によって、乾式加熱によって、ガス滅菌によって、および照射によって実施され得る。好ましい実施形態によれば、ステップb)は、照射によって、例えば、ガンマ線照射またはベータ線照射によって、電子線によって、好ましくはガンマ線照射によって実施される。さらにより好ましい実施形態によれば、ステップb)は、15~40kGy、または好ましくは15、25、40kGy、さらにより好ましくは25または40kGyの線量でガンマ線照射によって実施される。
【0068】
医薬組成物の無菌保存のための本発明の好ましい方法は、したがって、
a)上記の包装中に医薬組成物を添加するステップと、
b)医薬組成物を含有する包装を、好ましくは15~40kGyの線量で、ガンマ線照射によって滅菌するステップと、を含む。
【0069】
本発明の他の態様および利点は、例示的かつ非限定的であると考えるべきである以下の実施例を読むことから明らかになる。
【実施例
【0070】
実施例1:落下試験
プロトコル:
100mlのバイアル20個の試料を、ガンマ線照射によって処置したか、または処置しなかった。次いで、試料に水を充填し、照射なしでまたは照射後に、1メートル40センチメートルの高さからの垂直位置での落下試験に供した。照射したバイアルについては、照射処理の直後に、または真空下および周囲温度での数ヶ月の貯蔵後に、落下試験を実施した。
【0071】
結果:
様々なバイアル試料についての結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0072】
表1の結果は、600μmの平均厚さのLDPEのポリマー外層を含む本発明のバイアルが、40kGyおよび12ヶ月の貯蔵後までの、様々な照射線量に対して耐性である(最も厳しい条件下で20個のバイアルのうち1個のバイアルだけが破損する)ことを示す。
【0073】
対照的に、200μmの薄いLDPE層を含むバイアルの大部分は、25kGy(15/20)および40kGy(17/20)で照射した直後に破損する。さらに、250μmの薄いLDPE層を含むバイアルの有意な数(13/20)は、最も厳しい貯蔵条件(40kGyの照射および12ヶ月の貯蔵)下で破損する。
【0074】
これらの結果は、250μm超、特に300~1000μmの厚さのPEのポリマー外層が、高線量の照射に対して耐性であり、したがって、長期間(少なくとも12ヶ月)にわたって無菌医薬組成物を保存することを可能にする包装を提供するために必要であることを示す。
【0075】
実施例2:ガスおよび水バリア効果の研究
水透過性試験プロトコル:
照射または非照射の本発明によるバイアルに10gの分子ふるいを充填し、次いで密封し、秤量し、約3ヶ月間40℃/75%RHの人工気候室に入れた。
【0076】
その重量増加を測定するために、この期間を通じて定期的に秤量した。これにより、水蒸気の浸透を可能にする包装の能力を評価することが可能になる。
【0077】
酸素透過性試験プロトコル:
照射または非照射の本発明によるバイアルに対する、酸素に対する透過性の測定を、標準的なASTM F2622に従って実施した。
【0078】
結果:
様々なバイアル試料についての結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0079】
表2の結果は、ガンマ線照射が、本発明の容器の酸素バリア特性に対してまたは水蒸気バリア特性において影響を有しないことを示す。
【0080】
実施例3:医薬組成物の安定性の研究
プロトコル:
本発明によるバイアル(PP(500μm)/EVOH(30μm)/LDPE(600μm))にアモキシシリンの懸濁液を充填し、次いで4つの異なる線量(7、15、25、および40kGy)のガンマ線照射によって照射した。次いで、当該バイアルを、40℃/75%RHでの6ヶ月の貯蔵の前後に分析した。
【0081】
結果:
様々なバイアル試料についての結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0082】
表3の第1行は、T0、すなわち、貯蔵なしでのアモキシシリンおよび分解生成物の用量に対応する。
【0083】
表3の結果は、照射のステップが、線量にかかわらず、アモキシシリン懸濁液の安定性に影響しないことを示す。
【0084】
実際、活性成分濃度は、医薬製品のために許容される+/-5%の範囲内にとどまっており、観察される分解生成物の量は、許容されるものを超えていない。
【0085】
本発明者らは、本発明による包装が、照射後に、加速条件(40℃/75%RH)で6ヶ月間貯蔵された医薬製品の安定性を保持することを可能にすることを示した。これらの加速条件下で得られたこれらの結果は、周囲温度での少なくとも18ヶ月の医薬製品の安定性を確実にする。
【国際調査報告】