(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】T細胞活性化のための抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220905BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220905BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220905BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220905BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220905BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220905BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/46
C07K16/28
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P35/00
A61K47/68
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576891
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 US2020039218
(87)【国際公開番号】W WO2020263879
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517015786
【氏名又は名称】エーピー バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハー チェン-ホーン
(72)【発明者】
【氏名】イウ ジョン-チェ
(72)【発明者】
【氏名】スー チン-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ホァン ポ-リン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本願明細書において、CD137に結合する抗原結合領域を含む抗体を提供する。本願明細書において、CD137に結合する第1の抗原結合領域と、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する第2の抗原結合領域とを含む二重特異性抗体もまた提供する。当該抗体を含む医薬組成物、及びがんを治療する方法を提供する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1、配列番号9及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV
H領域と、
(ii)配列番号2、配列番号10及び配列番号18からなる群から選択される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV
L領域と
を含む、抗体又はその抗原結合断片であって、CD137に結合する、前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記V
H領域が、配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記V
L領域が、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
(a)V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号3と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号4と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号5と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、
(b)V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号6と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号7と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号8と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と
を含む、請求項2記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記V
H領域が、配列番号9と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記V
L領域が、配列番号10と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
(a)V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号11と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号12と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号13と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、
(b)V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号14と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号15と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号16と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と
を含む、請求項4記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記V
H領域が、配列番号17と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記V
L領域が、配列番号18と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
(a)V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号19と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号20と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号21と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
HのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、
(b)V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号22と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号23と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号24と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記V
LのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3と
を含む、請求項6記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体が、Fcドメインを含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記Fcドメインが、IgGドメイン、IgEドメイン、IgMドメイン、及びIgDドメイン、IgAドメイン、又はIgYドメインである、請求項8記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
前記IgGドメインが、IgG1ドメイン、IgG2ドメイン、IgG3ドメイン、又はIgG4ドメインである、請求項9記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記IgG1ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項10記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記IgG4ドメインが、配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項10記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗原結合断片が、scFv、F(ab)2、又はFabを含む、請求項1記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記薬学的に許容される担体が、前記抗体又は抗原結合断片の1又は複数のポリペプチドのC末端に結合する、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
対象におけるがんを治療する方法であって、
請求項1から15のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片又は医薬組成物の治療有効量を前記対象に投与し、それによって前記がんを治療すること
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記がんが、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、又は白血病から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
配列番号1から26に記載される、単離されたアミノ酸配列。
【請求項19】
配列番号1から26のいずれか1つをコードする、単離された核酸配列。
【請求項20】
第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域を含む二重特異性抗体であって、該第1の抗原結合領域がCD137に結合する、前記二重特異性抗体。
【請求項21】
前記抗体が、
(i)配列番号1、配列番号9及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV
H領域と、
(ii)配列番号2、配列番号10及び配列番号18からなる群から選択される配列の約100から120アミノ酸のN末端配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むV
L領域と
を含み、
前記第2の抗原結合領域が、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する、
請求項20記載の二重特異性抗体。
【請求項22】
前記第1の抗原結合領域が、
(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むV
H領域、及び配列番号10のN末端配列の約100から120アミノ酸のアミノ酸配列を含むV
L領域、又は
(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むV
H領域、及び配列番号18のN末端配列の約100から120アミノ酸のアミノ酸配列を含むV
L領域
を含む、請求項21記載の二重特異性抗体。
【請求項23】
前記第2の抗原結合領域が、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG3、CD28、CD40、CD137、CD27、ICOS、Her2、又はグリカンから選択される抗原に結合する、請求項21記載の二重特異性抗体。
【請求項24】
前記第2の抗原結合領域が、PD-L1、Her2、又はグリカンに結合する、請求項23記載の二重特異性抗体。
【請求項25】
前記第1の抗原結合領域及び前記第2の抗原結合領域が、scFv、F(ab)2、Fab、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項23記載の二重特異性抗体。
【請求項26】
前記第1の抗原結合領域がscFvを含み、前記第2の抗原結合領域がFabを含む、請求項25記載の二重特異性抗体。
【請求項27】
前記scFvが、
(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むV
H領域、及び配列番号10のN末端配列の約100から120アミノ酸のアミノ酸配列を含むV
L領域、又は
(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むV
H領域、及び配列番号18のN末端配列の約100から120アミノ酸のアミノ酸を含むV
L領域
を含む、請求項26記載の二重特異性抗体。
【請求項28】
前記scFvの前記V
H領域と前記V
L領域との間にリンカーをさらに含む、請求項27記載の二重特異性抗体。
【請求項29】
前記scFvが、配列番号33又は配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項28記載の二重特異性抗体。
【請求項30】
Fcドメインをさらに含む、請求項26記載の二重特異性抗体。
【請求項31】
前記Fcドメインが、IgGドメイン、IgEドメイン、IgMドメイン、及びIgDドメイン、IgAドメイン、又はIgYドメインである、請求項30記載の二重特異性抗体。
【請求項32】
前記Fcドメインが、IgGドメインである、請求項31記載の二重特異性抗体。
【請求項33】
前記IgGドメインが、IgG1ドメイン、IgG2ドメイン、IgG3ドメイン、又はIgG4ドメインである、請求項32記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
前記scFvが、前記FcドメインのC末端に連結する、請求項30記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
前記Fcドメインと前記scFvとの間にリンカーをさらに含む、請求項30記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
前記Fabが、前記FcドメインのN末端に連結する、請求項30記載の二重特異性抗体。
【請求項37】
配列番号31又は配列番号32の重鎖配列を含む、請求項20記載の二重特異性抗体。
【請求項38】
配列番号30の軽鎖配列をさらに含む、請求項37記載の二重特異性抗体。
【請求項39】
配列番号36の重鎖配列を含む、請求項20記載の二重特異性抗体。
【請求項40】
配列番号35の軽鎖配列をさらに含む、請求項39記載の二重特異性抗体。
【請求項41】
配列番号38の重鎖配列を含む、請求項20記載の二重特異性抗体。
【請求項42】
配列番号37の軽鎖配列をさらに含む、請求項41記載の二重特異性抗体。
【請求項43】
配列番号40の重鎖配列を含む、請求項20記載の二重特異性抗体。
【請求項44】
配列番号39の軽鎖配列をさらに含む、請求項43記載の二重特異性抗体。
【請求項45】
配列番号30から40に記載される、単離されたアミノ酸配列。
【請求項46】
配列番号30から40のいずれか1つをコードする、単離された核酸配列。
【請求項47】
治療薬と、請求項1から13のいずれか一項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、又は請求項20から44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体もしくはその抗原結合断片とを含む、抗体-薬剤複合体。
【請求項48】
前記治療薬が、リンカーを介して前記抗体又は抗原結合断片に共有結合している、請求項47記載の抗体-薬剤複合体。
【請求項49】
請求項20から44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項50】
対象におけるがんを治療する方法であって、
請求項20から44のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又はその抗原結合断片の治療有効量を前記対象に投与し、それによって前記がんを治療すること
を含む、前記方法。
【請求項51】
前記がんが、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、又は白血病から選択される、請求項50記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2019年6月26日出願の米国シリアル番号第62/866,699号及び2019年12月24日出願の米国シリアル番号第62/953,302号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を請求し、そのいずれもそれら全体として参照により本明細書に援用する。
【0002】
配列表の援用
添付の配列表の内容は、参照によりここで本願に援用する。添付の配列表のテキストファイルは、AP1100_2WO_Sequence_Listing.txtという名前で、2020年6月12日に作成され、66kbである。このファイルは、WindowsのOSを用いるコンピュータ上でマイクロソフト社のWordを用いてアクセス可能である。
【0003】
発明の分野
本発明は、概して、抗体及びその抗原結合断片に関し、より詳細には、T細胞機能を増強する抗体及び抗原結合断片に関する。
【背景技術】
【0004】
背景情報
適応免疫系の免疫制御機構は、副作用がほとんどないこと及びがんの再発からの長期的な保護を理由に、がん免疫療法において魅力的な領域となっている。T細胞を完全に活性化するために、概して2つのシグナル、T細胞受容体(TCR)よりの抗原特異性シグナル及び例えばCD28等である共起刺激分子よりのシグナル、の2つのシグナルが必要である。過去10年に、TCRシグナル伝達を正に又は負に調節することが可能であるさらなる共起刺激分子のみならず共抑制分子が、T細胞上で発見された。
【0005】
1989年に、TNF受容体スーパーファミリーに属する共起刺激分子、CD137(4-1BB)が、活性化されたT細胞よりクローン化された(Kwon&Weissman,1989)。4-1BB:4-1BBL経路が、既存の共起刺激シグナルを増幅するように思われるが、強いTCRシグナル伝達の存在下で4-1BBが関与することにより、CD28に依存しない手法でのIL-2産生を誘導可能である。CD137シグナル伝達が、TCRシグナル伝達を増強し、サイトカイン合成及びT細胞増殖を誘導し、そして活性化により誘導されるアポトーシスを阻害することは実証されている。T細胞におけるCD137刺激が、それぞれT細胞活性化により誘導されるアポトーシスを防止すること、T細胞増殖を誘導することに関与する、NF-κB及びPI3K/ERKのシグナル伝達経路を誘導する。CD4 T細胞及びCD8 T細胞がいずれも、増強された増殖及びエフェクター機能を結果的に生じるCD137刺激に応答する一方で、CD8 T細胞は、優先的に、より大きいサイトカイン産生を誘導することによってCD137シグナル伝達に応答する。CD137は、活性化されたT細胞での発現に加えて、制御性T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、単核球、及び樹状細胞(DC)を含む多系統の造血細胞において発現する。DCにおいては、CD137の刺激により、IL-6及びIL-12の分泌を増加し、より重要なことには、同種抗原及び微量抗原に応じて、DCのT細胞増殖を刺激する能力を増強する。NKにおいては、CD137刺激が、増殖とIFN-γ産生とを促進するが、細胞溶解活性は促進しない。それにもかかわらず、CD137に刺激されたNK細胞は、活性化したT細胞の増殖を促進する際にヘルパーの役割を示す。
【0006】
臨床的には、抗-CD137アゴニスト抗体ウレルマブ(Urelumab)(BMS-663513)が、疾患の部分的な緩解及び一部の安定化を示した。しかしながら、ほとんどの治験の終りに致命的な肝毒性を結果的に生じた。別の抗-CD137抗体ウトミルマブ(Utomilumab)(PF-05082566)の治験では、肝毒性を引き起こすことなく、完全応答及び部分応答を含めて、客観的奏効率が固形腫瘍患者では3.8%、メルケル細胞がん患者では13.3%を達成した。ウレルマブ及びウトミルマブは、別個の特徴を示す。アゴニスト活性に関しては、ウレルマブは強く、また架橋結合非依存性であるが、その一方でウトミルマブは弱く、また架橋結合依存性である。CD137とのウレルマブ及びウトミルマブの結晶構造により、CD137-CD137Lの相互作用に影響する別個の結合性エピトープが明らかになる。別個のエピトープの認識と、CD137-CD137L結合の阻止により、これら2つの抗-CD137抗体の別個の効力及び毒性を結果としてもたらすことができる。しかしながら、抗-4-1BBモノクローナル抗体(mAb)3H3及び2Aは、CD137L結合に対してそれぞれ対立する影響を有するが、同様の肝毒性を示すという理由から、リガンドの結合がCD137媒介性の毒性を決定するのではない。近年、弱いアゴニスト抗体の操作されたFc領域が、FcγRIIB(低いA/I FcγR結合比で)に優先的に結合し、それが肝毒性を誘導することなくウレルマブに匹敵する強力なアゴニスト活性を結果的に生じるということが示された。アゴニスト抗-CD137抗体は、CD40に依存する手法でT-細胞傷害性を増強することにより抗がん活性を有することが示されている。さらに、十分に樹立されていない抗原性腫瘍を退行させるために、抗-CD137抗体には抗原発現が必要とされる。さらにまた、抗-PD-1抗体及び抗-CD137抗体を組み合わせることで、各抗体での単一治療と比較して、T細胞エフェクター機能及び腫瘍浸潤の増強を介したマウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性の増強が示された。抗がん治療に加えて、抗-CD137アゴニスト抗体はまた、治療のタイミングに依存して、実験的な自己免疫性脳脊髄炎の改善及び抗ウイルス免疫を増強することを示した。
【0007】
はじめにアポトーシス進行中のT細胞から、PD-1が単離された。次にそのリガンドPD-L1が同定され、そしてPD-1及びPD-L1間の相互作用により、T細胞活性化を阻止することが実証された。PD-1は、休止期T細胞上では発現されないが、活性化により誘導される。持続的なPD-1の発現は、慢性感染症及びがんにおける疲弊したT細胞上で見られる。正常状態下では、PD-1/PD-L1経路は、自己免疫を予防するための末梢性トレランスの維持にとって重要である。しかしながら、がんにおいてPD-L1の自己保護機能は乗っ取られているものであり、PD-L1は、種々のがん細胞型により発現されて免疫系の監視を免れる。PD-1/PD-L1を標的とする抗体は、阻害性のシグナル伝達を阻止して、T細胞の抗がん活性を修復する。PD-1/PD-L1経路は、抗腫瘍T細胞のエフェクター機能のドミナントネガティブ調節因子としてみなされてきた。臨床的には、この経路の阻止が、一部のがんのタイプにおいて、例えばホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん及び黒色腫等において、35%~87%の範囲にわたる高い客観的奏効率を達成してきた。例えばNSCLC、頭頸部がん、ならびに腎細胞がん等の他のがんのタイプでは、15%~25%の範囲の低い客観的奏効率が達成された。
【0008】
抗-PD-1抗体及び抗-CD137抗体の組み合わせにより、各抗体での単一治療と比較して、T細胞エフェクター機能及び腫瘍浸潤の増強によりマウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍活性の増強が示された。臨床的には、ウトミルマブ(0.45~5.0mg/kg)及びペムブロリズマブ(Pembrolizumab)の組み合わせが、用量制限毒性なしに、進行した固形腫瘍の患者において、相乗的な抗腫瘍効果を示した。
【0009】
CD137の免疫調節性に基づいて、抗-ヒト4-1BBアゴニスト抗体を、がん及び自己免疫疾患及び感染症の治療に用いることも可能であろう。しかしながら、抗-ヒト4-1BBアゴニスト抗体の使用は、肝臓毒性のために制限される。さらに、免疫阻害経路又は腫瘍シグナル伝達経路を阻止することと、肝臓毒性のない、4-1BB:4-1BBL経路の活性化を組み合わせた有効な治療は記載されてきていない。すなわち、免疫活性化の阻害の除去と組み合わせた又は腫瘍細胞シグナル伝達の阻害と組み合わせた、4-1BB:4-1BBL経路の効果的な関与に対する要望が存在している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、強力な架橋結合依存性のアゴニスト活性を有し、かつ、治験で見られる肝臓毒性を回避する可能性がある、抗-CD137抗体を生成することができるという基本的な発見に基づいている。本発明は、PD-L1及びCD137を標的とする二重特異性抗体が、T-細胞エフェクター機能を高め、また各抗体での単一治療又は組み合わせ治療より良好にインビボでの腫瘍増殖を阻害する特別な活性を所有するという発見にさらに基づいている。二重特異性抗体は、例えばPD-L1に結合する二重特異性抗体のもう一方のアームを介した架橋結合によりT細胞を活性化する、固有の抗-CD137一本鎖可変断片(scFv)を有し得る。二重特異性抗体はまた、抗-PD-L1アームを他の腫瘍特異性バインダー、例えば本明細書において提供するような抗-Her2又は抗-腫瘍特異性グリカン等、に変えることによって、非PD-L1発現腫瘍に向けられ得る。標的依存性のT-細胞活性化を誘導する二重特異性抗体は、抗-CD137モノクローナル抗体の抗腫瘍能力を維持しつつ、肝毒性を回避することができる。
【0011】
一部の実施形態においては、本発明は、以下の3つのアゴニスト抗体又はその抗原結合断片を提供する:抗-CD137抗体クローン15(CD137 #15)、抗-CD137抗体クローン31(CD137 #31)、及び抗-CD137抗体クローン54(CD137 #54)。一態様においては、本明細書において提供する抗-CD137抗体は、配列番号1、配列番号9又は配列番号17から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)領域と;及び配列番号2、配列番号10又は配列番号18から選択される配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)領域とを含む。別の態様においては、配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する抗体又は抗原結合断片は、(a)VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号3と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号4と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号5と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、(b)VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号6と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号7と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号8と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3とを含む。
【0012】
別の態様においては、配列番号9と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する抗体又はその抗原結合断片は、(a)VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号11と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号12と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号13と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、(b)VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号14と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号15と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号16と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3とを含む。
【0013】
さらに別の態様においては、配列番号17と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する抗体又はその抗原結合断片は、(a)VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3であって、CDR-H1が配列番号19と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-H2が配列番号20と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-H3が配列番号21と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VHのCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と、(b)VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3であって、CDR-L1が配列番号22と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDR-L2が配列番号23と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCDR-L3が配列番号24と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、VLのCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3とを含む。
【0014】
一態様においては、本明細書において提供する抗体又はその抗原結合断片は、Fcドメインを含む。別の態様においては、Fcドメインは、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、又はIgYドメインである。さらに別の態様においては、IgGドメインは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4ドメインである。さらなる態様においては、IgG1ドメインは、配列番号26のアミノ酸配列を含む。ある態様においては、IgG1は、野生型IgG1と比較して、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を改変又は減少させる点変異を含む。例示的な点変異としては、K297A及びK322Aの変異が挙げられる。さらに別の態様においては、IgG4ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。さらなる態様においては、本明細書において提供する抗原断片には、scFv、F(ab)2、又はFabが含まれる。
【0015】
ある実施形態においては、本開示はまた、本明細書において提供する抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれか1つを含む医薬組成物を提供する。一態様においては、本明細書において提供する医薬組成物の抗体又は抗原結合断片は、抗体又はその抗原結合断片のうちの1又は複数のポリペプチドのC末端に結合した薬学的に許容される担体を含む。別の態様においては、本明細書において提供する医薬組成物には、二重特異性抗体が含まれる。
【0016】
一実施形態においては、本開示はまた、がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書において提供する有効量の抗体もしくはその抗原結合断片又は本明細書において提供する有効量の二重特異性抗体を投与することを含む、当該方法を提供する。一態様においては、当該がんは、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、又は白血病から選択される。
【0017】
一実施形態においては、本明細書においては、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域を含む二重特異性抗体であって、第1の抗原結合領域がCD137に結合する、該二重特異性抗体が提供される。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、(i)配列番号1、配列番号9及び配列番号17から選択される配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、(ii)配列番号2、配列番号10及び配列番号18から選択される配列の約100~120アミノ酸のN末端配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含み、第2の抗原結合領域が、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子又は腫瘍抗原に結合するものである。
【0018】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号31又は配列番号32の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号30の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号36の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号35の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号38の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号37の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号40の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号39の軽鎖配列をさらに含む。
【0019】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを有するか又は(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを有する、第1の抗原結合領域を含む。別の態様においては、第2の抗原結合領域は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG3、CD28、CD40、CD137、CD27、ICOS、Her2、又はグリカンから選択される抗原に結合する。さらに別の態様においては、第2の抗原結合領域は、PD-L1、Her2、又はグリカンに結合する。
【0020】
一態様においては、本発明は、抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体(bsAb)が、抗-CD137#54一本鎖の架橋結合依存性アゴニスト活性による標的依存性T細胞活性化を発揮するプラットフォームとして作用することができるということを開示する。
【0021】
別の態様においては、CD137及びPD-L1に結合する二重特異性抗体は、CD137と、例えばHer2又は腫瘍特異性グリカン等である免疫調節分子及び腫瘍特異性マーカーを含める、腫瘍で発現する他の標的とに結合するように改変される。
【0022】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、Fcドメイン、Fab断片、一本鎖可変断片(scFv)、又はそれらの任意の組み合わせを含む。さらに別の態様においては、scFvは、(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを含むか、又は(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。さらなる態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、scFvのVH領域及びVL領域の間にリンカーを含む。さらなる態様においては、scFvは、アミノ酸配列、配列番号33又は配列番号34を含む。
【0023】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、Fcドメインを含む。別の態様においては、Fcドメインは、IgGドメイン、IgEドメイン、IgMドメイン、及びIgDドメイン、IgAドメイン、又はIgYドメインである。さらに別の態様においては、Fcドメインは、IgGドメインである。さらなる態様においては、IgGドメインは、IgG1ドメイン、IgG2ドメイン、IgG3ドメイン、又はIgG4ドメインである。
【0024】
一態様においては、scFvは、FcドメインのC末端に結合する。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、FabドメインとscFvドメインとの間にリンカーを含む。さらなる態様においては、Fab断片は、FcドメインのN末端に結合する。またさらなる態様においては、Fabは、PD-L1結合部位、Her2結合部位又はグリカン結合部位を含み、またscFvは、CD137結合部位を含む。
【0025】
一実施形態においては、本発明は、本明細書において提供する任意の二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含める、治療薬及び抗体を含む抗体-薬剤複合体を提供する。一態様においては、治療薬は、リンカーを介して抗体又は抗原結合断片に共有結合している。
【0026】
一実施形態においては、本明細書においては、本明細書において提供する任意の二重特異性抗体及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
一実施形態においては、本発明は、配列番号1~26に記載される単離されたアミノ酸配列を提供する。別の実施形態においては、本発明は、配列番号30~40に記載される単離されたアミノ酸配列を提供する。
【0028】
一実施形態においては、本開示はまた、抗体、その抗原結合断片、又は本発明の二重特異性抗体をコードする単離された核酸配列も提供する。別の実施形態においては、本発明は、配列番号1~26のいずれか1つをコードする単離された核酸を提供する。別の実施形態においては、本発明は、配列番号30~40のいずれか1つをコードする単離された核酸配列を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、直接ELISAによる、CD137に向けられるファージクローンのスクリーニングを示す。
【
図2-1】
図2は、フローサイトメトリーによる、CD137を過剰発現するHEK-293F細胞上での、CD137に向けられるファージクローンの結合を示す。
【
図3】
図3A~
図3Bは、PAGEによる、一工程プロテインGにより精製された抗-CD137抗体リードの完全性及び純度を示す。2つのバッチの結果(上図及び下図)を示す。
【
図4】
図4は、フローサイトメトリーによる、活性化したジャーカット(Jurkat)細胞に対する抗-CD137抗体リードの結合を示す。
【
図5】
図5は、ELISAによる、組換えヒトCD137への抗-CD137抗体リードの結合活性(EC
50)を示す。
【
図6】
図6は、SEC-HPLCによる、高度に濃縮された抗-CD137抗体のクローン31及びクローン54のタンパク質凝集を示す。
【
図7-1】
図7は、抗-CD137抗体リードのアゴニスト活性の存在下でのT細胞のサイトカイン産生を示す。
【
図8-1】
図8は、初代ヒトT細胞における抗-CD137抗体リードクローンによるヒトT細胞サイトカイン産生の用量依存的な誘導を示す。
【
図9】
図9は、抗-CD137抗体と組み合わせた治療が、混合したリンパ球反応においてT細胞による抗-PD-L1抗体媒介性のIFN-γ産生を増強することを示す。
【
図10】
図10は、CD137-CD137L相互作用に対する抗-CD137抗体クローンの明白な効果を示す。
【
図11】
図11は、インビボでの抗-CD137抗体のクローン#31及び#54の薬物動態プロファイルを示す。
【
図12】
図12は、ウトミルマブ(CD137 ref)及びウレルマブ(CD137 ref2)と比較した、抗-CD137抗体クローンのアゴニスト活性に関する架橋結合の様々な所要量を示す。
【
図13】
図13は、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体(bsAb)の対称的なフォーマットを示す。
【
図14】
図14は、SDS-PAGEによる、プロテインGで精製した抗-PD-L1-CD137 bsAbの純度及び完全性を示す。一工程のプロテインGクロマトグラフィーにより、90%以上を達成することが可能である。
【
図15】
図15は、μCE-SDSによる、プロテインAで精製した抗-PD-L1-CD137 bsAbの純度及び完全性を示す。
【
図16-1】
図16は、ForteBio(登録商標)のバイオセンサー解析により見られるとおり、抗-PD-L1-CD137 bsAbが、CD137及びPD-L1を同時に認識することを示す。
【
図17】
図17は、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、混合されたリンパ球反応において、単一治療、組み合わせ治療又は抗-PD-L1#6-CD137#31 bsAbによる治療と比較して、相乗的なT細胞活性化を誘導することを示す。
【
図18】
図18A~
図18Bは、メモリーCD4(A)及びメモリーCD8(B)のT細胞の抗原特異性リコール応答が、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbによって顕著に増強されることを示す。
【
図19】
図19は、標的依存性T細胞活性化が、PD-L1を過剰発現するHEK-293細胞と共にT細胞を共培養する間に、抗-PD-L1#6-CD137#31 bsAb又は抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbにより誘導されることを示す。
【
図20A】
図20A~
図20Cは、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、PD-L1陽性のがん細胞と共培養すると、T細胞のIFN-γ産生(
図20A、
図20C及び
図20Bの左図)及びがん細胞の細胞傷害性(
図20Bの右図)を誘導することを示す。(A)NCI-H1975、非小細胞肺がん細胞;(B)PC-3、前立腺がん細胞;(C)MDA-MB-231、乳がん細胞。
【
図21】
図21A~
図21Bは、トラスツズマブ(Tra)-CD137#54 bsAb又は抗-Her2#3-7-CD137#54 bsAbが、Her2陽性がん細胞と共培養すると、CD8 T細胞のIFN-γ産生を誘導することを示す。(A)SKBR-3、乳がん細胞;(B)MDA-MD-361、乳がん細胞。
【
図22A】
図22A~
図22Bは、抗-グリカン-CD137#54 bsAbが、グリカン陽性のがん細胞と共培養すると、CD8 T細胞のIFN-γ産生(
図22Aの左図、及び
図22B)及びがん細胞の細胞傷害性(
図22Aの右図)を誘導することを示す。(A)MCF-7、乳がん細胞;(B)NCI-N87、胃がん細胞。
【
図23】
図23は、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、HEK293細胞において発現されたCD137の取込み(internalization)を誘導することを示す。
【
図24A】
図24A~
図24Bは、抗-PD-L1#6-CD137 bsAbが、Tレグ(Treg)細胞の存在下での、T-細胞増殖(A)及びサイトカイン産生(B)を救済したことを示す。
【
図25】
図25A~
図25Cは、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、PD-L1陽性の(A)NCI-H292、(B)NCI-H1975及び(C)BxPC-3の腫瘍細胞により異種移植したヒト化マウスにおいて、抗-PD-L1#6抗体及び抗-CD137#54抗体の組み合わせ治療と比較して、より大きい腫瘍成長阻害を結果的に生じることを示す。
【
図26-1】
図26は、PD-L1#6-CD137#54 bsAb、Her2#3-7-CD137#54 bsAb及びグリカン-CD137#54 bsAbが、ヒトPBMCにおいて顕著なサイトカイン放出を誘導しないことを示す。
【
図27】
図27A~
図27Bは、サルにおける抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbのPKパラメータを、(A)グラフ及び(B)表の形式として示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本組成物及び方法を記述する前に、本発明は、特定の組成物、方法、及び記載の実験条件に限定されないものであり、そのため組成物、方法、及び条件は変動する可能性があるということを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることとなるため、本明細書において用いる専門用語は、単に特定の実施形態を記述する目的のためであり、限定することを意図していないということもまた理解されたい。
【0031】
本明細書においては、一部の実施形態において、CD137に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。本明細書においては、CD137に結合する抗体のアミノ配列もまた提供する。本明細書において用いる場合、「抗体」の語は、抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子を指す。「抗体」の語には、文脈により別を明示していない限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体及び抗-イディオタイプ抗体が含まれるがこれに限定されない。一態様においては、本明細書において提供する抗体には、モノクローナル抗体が含まれる。本明細書において提供する抗体には、任意のアイソタイプ及びクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)が含まれる。本明細書において用いる場合、「抗原結合断片」は、免疫グロブリン分子又は抗体の断片又は部分であって、当該免疫グロブリン分子又は抗体と同じ抗原に特異的に結合する能力を有する該免疫グロブリン分子又は抗体の断片又は部分を意味する。例示的な抗原結合断片には、scFv、Fab、又はF(ab)2の断片が含まれる。本明細書において用いる場合、「抗原結合領域」は、例えば、抗原又はタンパク質と接触することにより抗原又はタンパク質に結合する抗体又は免疫グロブリン分子の部分を意味する。抗原結合領域は概して、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む。抗原結合領域は概して、1又は複数の抗原結合部位又はパラトープを含む。
【0032】
本明細書において提供する抗体は、配列番号1、配列番号9又は配列番号17の配列と、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間にある任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVH領域を有する。本明細書において提供する抗体はまた、配列番号2、配列番号10又は配列番号18の配列と、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間にある任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0033】
概して、「配列同一性」又は「配列相同性」は、区別なく用い得るが、それぞれ2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の、寸分たがわぬヌクレオチド-ヌクレオチド間の、又はアミノ酸-アミノ酸間の一致を指す。典型的には、配列同一性を決定する技術としては、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定すること及び/又はそれによってコードされるアミノ酸配列もしくはポリペプチドのアミノ酸配列を決定すること、及びこれら配列を第2のヌクレオチド又はアミノ酸配列と比較することが挙げられる。本明細書において用いる場合、「パーセント配列同一性(%)(percent(%) sequence identity)」又は「パーセント同一性(%)(percent(%) identity)」の語は、「相同性(homology)」も含めて、配列をアラインしてギャップを導入し、必要であれば、最大のパーセント配列同一性を達成した後で、また配列同一性の部分として任意の保存的置換を検討せずに、参照配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドと一致する、配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドの百分率を指すものである。すなわち、2以上の配列(ポリヌクレオチド又はアミノ酸)は、「パーセント相同性(percent homology)」とも呼ばれるそれらの「パーセント同一性」を決定することによって比較することが可能である。より長い分子(例えばポリヌクレオチド、又はポリペプチド)内の配列であり得る参照配列(例えば、核酸又はアミノ酸配列)に対するパーセント同一性は、参照配列の長さで除算して100を掛けた、2つの最適にアラインした配列間の寸分たがわぬマッチ数として算出され得る。パーセント同一性はまた、例えばアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)より利用可能である、バージョン2.2.9を含めた高度のBLASTコンピュータプログラムを用いた配列情報の比較によって、決定することもできる。BLASTプログラムは、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268(1990)のアラインメント方法に基づき、またAltschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993)及びAltschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)に論じられるとおりである。簡潔には、BLASTプログラムは、2つの配列のうちの短い方におけるシンボルの総数で除算される、アラインされたシンボル(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の一致数として同一性を決定する。当該プログラムを用いて、比較されている配列の全長にわたってパーセント同一性を決定することができる。例えばblastpプログラムにより、短いクエリ配列での検索を最適化するために、デフォルトパラメータが提供される。当該プログラムはまた、Wootton and Federhen,Computers and Chemistry 17:149-163(1993)のSEGプログラムによって決定されるようなクエリ配列のマスクオフセグメントに対してSEGフィルターの使用を可能にする。望まれる程度の配列同一性の範囲は、およそ80%~100%及びその間の整数値である。参照配列と特許請求の範囲に記載の配列との間のパーセント同一性は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%であり得る。概して、寸分たがわぬマッチは、参照配列の長さにわたる100%の同一性を示唆する。配列を比較及び/又は配列同一性を評価するためのさらなるプログラム及び方法には、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/において利用可能である、随意にデフォルト設定でなされるEMBOSS Needleアライナーを参照)、Smith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/において利用可能である、随意にデフォルト設定でなされるEMBOSS Waterアライナーを参照)、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,2444の類似性のサーチ方法、又はこれらアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wisの中のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)が含まれる。一部の態様においては、パーセント配列同一性への言及は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて測定されるような配列同一性を指す。他の態様においては、多重の配列アラインメントのためにClustalWを用いる。最適なアラインメントは、デフォルトパラメータを含めて選択したアルゴリズムの任意の好適なパラメータを用いて評価され得る。
【0034】
一態様においては、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号2に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する。配列番号1は、抗-CD137抗体クローン#15の重鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。配列番号2は、抗-CD137クローン#15の軽鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。
【0035】
抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、概して、相補性決定領域(CDR)を含む。「相補性決定領域(CDR)」は、VH及びVLの超可変領域を指す。CDRは、タンパク質又は抗原への結合に関する特異性を与える抗体の標的タンパク質又は抗原結合部位を含む。VH及びVLは概して、3つの連続する番号が付いたCDRを含む。本明細書において用いる場合、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3は、重鎖ポリペプチドのN末端から番号付けされた、重鎖可変領域(VH)の3つの連続して並んだCDRを指す。本明細書において用いる場合、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、軽鎖ポリペプチドのN末端から番号付けされた、軽鎖可変領域(VL)の3つの連続して並んだCDRを指す。
【0036】
一態様においては、配列番号1に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号2に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号3に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号4に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号5に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H3とを有する。別の態様においては、配列番号1に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号2に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号6に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号7に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号8に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L3とを有する。
【0037】
一部の態様においては、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号9に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。配列番号9は、抗-CD137抗体クローン#31の重鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。配列番号10は、抗-CD137クローン#31の軽鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。
【0038】
一態様においては、配列番号9に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号11に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号12に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号13に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H3とを有する。別の態様においては、配列番号9に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号14に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号15に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号16に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L3とを有する。
【0039】
一部の態様においては、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号17に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを有する。配列番号17は、抗-CD137抗体クローン#54の重鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。配列番号18は、抗-CD137クローン#54の軽鎖の可変領域を含むアミノ酸配列を提供する。
【0040】
一態様においては、配列番号17に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号19に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号20に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号21に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-H3とを有する。別の態様においては、配列番号17に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18に対して少なくとも約80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む抗体又はその抗原結合断片の抗原結合領域は、配列番号22に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号23に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号24に対して、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、少なくとも約99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むCDR-L3とを有する。
【0041】
本明細書において提供する抗体又はその抗原結合断片は、Fcドメインをさらに含む。本明細書において用いる場合、Fcドメインの語は、文脈により別を明示していない限り、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む抗体の領域を指す。Fcドメイン及びFc領域の語は、文脈により別を明示していない限り、区別なく用い得る。ある態様においては、Fcドメインは、IgGドメイン、IgEドメイン、IgMドメイン、及びIgDドメイン、IgAドメイン、又はIgYドメインである。任意の配列の任意の種からのFcドメインを用いることが可能であり、ヒト、類人猿(ape)、サル、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ウマ及びその他が含まれる。ある態様においては、Fcドメインは操作されており、すなわち例えば、分子生物学の技術を用いて生成された非天然の又は組換えのFcドメインである。一部の態様においては、IgGドメインは、IgG1ドメイン、IgG2ドメイン、IgG3ドメイン、又はIgG4ドメインである。一態様においては、IgG4ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。別の態様においては、IgG1ドメインは、配列番号26のアミノ酸配列を含む。一態様においては、Fcドメインはヒトである。
【0042】
本明細書においては、一部の実施形態において、本明細書において提供される抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれかと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。一部の態様においては、薬学的に許容される担体は、抗体又は抗原結合断片の1又は複数のポリペプチドのC末端に結合する。薬学的に許容される担体を結合する任意の好適な手段を用いることが可能であり、例えば共有結合的な結合及びリンカーの使用が含まれる。
【0043】
一部の実施形態においては、本明細書においては、配列番号1~26に記載される単離されたアミノ酸配列を提供する。本明細書においては、一部の実施形態において、配列番号1~26のアミノ酸配列のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸配列もまた提供する。
【0044】
一部の実施形態においては、本明細書において、対象におけるがんを治療する方法を提供する。一部の態様においては、がんを治療する方法は、がんを治療するのに有効である、CD137に結合する本明細書において提供する抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれかのある量を対象に投与することを含む。一部の態様においては、当該がんは、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、又は白血病である。
【0045】
本明細書において用いる場合、「治療する」、「治療」、「療法」、「治療上の」等の語は、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを指し、進行を緩和、遅延又は遅くさせること、影響又は症状を軽減すること、発症を予防すること、疾患又は障害の発症を阻害、改善すること、例えば治療効果及び/又は予防効果等である疾患、障害又は病状に関する有益な又は所望の結果を得ることが含まれるがこれに限定されない。本明細書において用いる場合「治療」には、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療が含まれ、また(a)疾患の素因がある又は疾患にかかる危険性があるがまだそうであると診断されていない対象を含めて、ある対象において疾患が生じることを予防すること、(b)該疾患を阻害すること、すなわちその発症を止めること、及び(c)該疾患を軽減すること、すなわち疾患を退行させること、が含まれる。治療効果には、治療される根底にある障害の根絶又は回復が含まれる。治療効果はまた、根底にある障害に付随する生理的症状のうちの1又は複数の根絶又は回復により達成されるので、対象が根底にある障害にいまだ苦しめられる可能性があるにもかかわらず、対象において改善が観察される。一部の態様においては、予防的効果のために、治療又は治療用組成物が、特定の疾患を発症する危険性がある対象に、又は疾患の生理的症状のうちの1又は複数が報告されている対象に、当該疾患の診断がいまだ下されていなかったとしても、投与される。本開示の方法は、任意の哺乳動物又は他の動物に用いられ得る。一部の態様においては、治療により、症状の減少又は停止が結果として生じる。予防効果には、ある疾患もしくは状態の出現を遅延もしくは除去すること、ある疾患もしくは状態の症状の発症を遅延もしくは除去すること、ある疾患又は状態の進行を遅らせる、停止するもしくは逆行させること、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0046】
本明細書において用いる場合、「対象」の語は、本明細書において開示する方法が実施される任意の個体又は患者を指す。「対象」の語は、「個体」又は「患者」の語と区別なく用い得る。対象は、ヒトとすることが可能であるが、対象は当業者によって認識されることとなるような動物であってもよい。すなわち、他の動物が、例えばげっ歯類(マウス、ラット、ハムスター及びモルモットを含める)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜であってウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等を含めた家畜、及び霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、及びゴリラを含める)を含めて、対象の定義の範囲内に含まれる。
【0047】
本明細書において用いる場合、「有効量」又は「治療有効量」の語は、本明細書において規定するような、疾患の治療に限定されない意図する適用を生じさせるのに十分である、本明細書に記載の抗体、その抗原結合断片、又は他の組成物の量を指す。治療有効量は、意図した治療上の適用(例えば、インビボで)に、又は治療対象の患者及び疾患の状態に応じて、例えば患者の体重及び年齢、疾患の状態の重症度、投与形態等に応じて、変動し得るものであるが、当業者によって容易に決定することが可能である。当該語はまた、標的細胞において特定の応答を誘導することとなる用量も当てはまる。明確な用量は、特定の抗体、その抗原結合断片、又は選択された他の組成物、以下の投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与する先の組織、及びそれを運ぶ体内での送達系、に応じて変動することとなる。
【0048】
一部の態様においては、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、単一療法として用いられるか、又は例えば放射線療法薬、細胞傷害性化学療法薬等である他の治療薬と、及び例えばワクチン、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン等である他の免疫調節剤と、及び組み合わせ療法としての生物製剤と組み合わされる。免疫療法のための例示的なインターロイキンとしては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、及びIL-23が挙げられる。免疫療法のための例示的なサイトカインとしては、インターフェロン、TNF-α、TGF-β、G-CSF、及びGM-CSFが挙げられる。免疫療法のための例示的なケモカインとしては、CCL3、CCL26、及びCXCL7が挙げられる。例示的な生物製剤としては、CAR T-細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法、及びモノクローナル抗体が挙げられ、例えばアレムツズマブ(CAMPATH)、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、イブリツモマブチウキセタン(ZEVALIN)、ブレンツキシマブ ベドチン(ADCETRIS)、トラスツズマブエムタンシン(ado-trastuzumab emtansine)(KADCYLA)、ブリナツモマブ(BLINCYTO)、ベバシズマブ(AVASTIN)、及びセツキシマブ(ERBITUX)等である。抗体はまた、PD-1阻害剤、例えばペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、ニボルマブ(OPDIVO)及びセミプリマブ(LIBTAYO)等、PD-L1阻害剤、例えばアテゾリズマブ(TECENTRIQ)、アベルマブ(BAVENCIO)及びデュルバルマブ(IMFINZI)等、CTLA-4阻害剤、例えばイピリムマブ(YERVOY)等、を含むチェックポイント阻害剤、ならびに例えば抗B7-H3抗体(MGA271)、抗-KIR抗体(lirilumab)及び抗-LAG3抗体(BMS-986016)等である他のチェックポイント阻害剤も含む。
【0049】
一部の実施形態においては、本発明は、以下の実施例において詳説するように、抗-CD137アゴニスト抗体の発現、精製及び特徴決定をさらに提供する。本明細書において提供する抗体のための発現コンストラクトに、シグナル配列が含まれ得る。任意の好適なシグナル配列、例えば配列番号27の配列等を、用いることが可能である。一部の態様においては、本明細書において提供する抗-CD137抗体と一緒に抗-PD-L1抗体により処理したT細胞は、T細胞エフェクター機能のさらなる増加を示した。理論に制限されることなく、このことは、組み合わせの治療又はCD137及びPD-L1の両方を標的とする二重特異性抗体による治療により、臨床試験においてそれぞれの抗体単独で見られた単一療法でのより低い奏効率を克服することができるということを示す。抗-PD-L1抗体に加えて、例えばCD40もしくはCTLA-4等の他の免疫増強抗原を標的とする組み合わせ治療のための又はCD137と例えばPD-L1、CD40又はCTLA-4等である第2の抗原とを標的とする二重特異性抗体による治療のための第2の抗体を用いることが可能である。
【0050】
例えば二重特異性抗体(bsAb)等である二重特異性分子は、単一の治療薬による同一の又は異なる分子標的上の複数のエピトープを同時に標的とする手段を提供する。理論に制限されることなく、がん治療薬としての二重特異性分子は、例えば2つのモノクローナル抗体(mAb)の混合物と比較して、新規の又は複数の強い活性、より低い物品の価格をもたらし、また新しい治療レジメンの開発を促進する可能性を有する。
【0051】
したがって、本明細書においては、二重特異性抗体を含めた二機能性のタンパク質の発現、精製及び特徴決定もまた提供する。本明細書において用いる場合、「二機能性のタンパク質」の語は、少なくとも2つの機能を有するタンパク質を指す。二機能性のタンパク質の非限定的な例としては、2つの抗原に結合することができる二重特異性抗体が挙げられる。本明細書において提供する二重特異性抗体は、例えば、CD137に結合し、かつ、抗-PD-L1抗体のFcドメインのC末端と融合する、単離された機能性scFv断片を含み得る。一部の態様においては、本明細書において提供する融合コンストラクト内のCD137に結合するC末端に位置するscFvは、例えばCD40又はCTLA-4等である他の免疫調節分子に結合する抗体のFcドメインに融合する。他の態様においては、C末端に位置するscFvは、例えばCD40又はCTLA-4等である免疫調節分子に結合することが可能である。
【0052】
一部の実施形態においては、本明細書においては、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域を含む二重特異性抗体が提供される。概して、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、異なる抗原又は標的に特異的に結合する。一部の態様においては、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、同一の抗原又は標的における異なるエピトープに結合する。
【0053】
ある実施形態においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、CD137に結合する第1の抗原結合領域を含む。第1の抗原結合領域は、配列番号1、配列番号9及び配列番号17から選択される配列に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性、少なくとも99.5%の同一性、少なくとも99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号2、配列番号10及び配列番号18から選択される配列のN末端配列の約100~120アミノ酸に対して、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも99%の同一性、少なくとも99.5%の同一性、少なくとも99.9%の同一性、及びその間の任意の数又は範囲を有するアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する。
【0054】
VH領域を含む配列番号1、配列番号9及び配列番号17に記載される配列又はVL領域を含む配列番号2、配列番号10及び配列番号18に記載される配列の任意の数のアミノ酸が、二重特異性抗体の中に含まれ得る。VH領域又はVL領域を有する本明細書において提供する配列のN末端又はC末端の配列は、二重特異性抗体の中に含まれ得る。一態様においては、配列番号1、配列番号2、配列番号9、配列番号10、配列番号17又は配列番号18のN末端又はC末端の配列の、約100~105アミノ酸、約100~110アミノ酸、約100~115アミノ酸、約100~120アミノ酸、約100~125アミノ酸、及びその間の任意の数又は範囲が、本明細書において提供する二重特異性抗体の中に含まれる。別の態様においては、二重特異性抗体は、配列番号1、配列番号9又は配列番号17の配列を含む。さらに別の態様においては、二重特異性抗体は、配列番号2、配列番号10又は配列番号18のN末端配列の約100~120アミノ酸を含む。またさらなる態様においては、二重特異性抗体は、配列番号10のN末端配列の約112アミノ酸又は配列番号18のN末端配列の約108アミノ酸を含む。
【0055】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、配列番号9のアミノ酸配列を有するVH領域と、配列番号10のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を有するVL領域とを含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第1の抗原結合領域は、配列番号17のアミノ酸配列を有するVH領域と、配列番号18のN末端の配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を有するVL領域とを含む。
【0056】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する。本明細書において用いる場合、「免疫チェックポイント分子」の語は、免疫応答を阻害又は負に調節する任意の分子を指す。一態様においては、免疫チェックポイント分子への第2の抗原結合領域の結合により、免疫チェックポイント分子が阻害される。例示的な免疫チェックポイント分子としては、PD-L1、PD-1、CTLA-4、及びLAG3が挙げられる。本明細書において用いる場合、「免疫刺激分子」の語は、免疫応答を誘導、増強又は正に調節する任意の分子を指す。例示的な免疫刺激分子としては、CD28、CD40、CD137、CD27、及びICOSが挙げられる。一部の態様においては、免疫刺激分子への第2の抗原結合領域の結合により、免疫刺激分子が活性化されて、例えばシグナル伝達の増加及び免疫活性化の増加が結果的に生じる。本明細書において用いる場合、「腫瘍抗原」の語は、腫瘍細胞の表面に存在する又は腫瘍細胞において発現した任意の抗原を指す。例示的な腫瘍抗原としては、変異したオンコジーンの産物、変異した腫瘍抑制遺伝子の産物、オンコジーン又は腫瘍抑制因子以外の変異した遺伝子の産物、発がん性ウイルスにより産生された腫瘍抗原、変化した細胞表面の糖脂質及び糖タンパク質、がん胎児性抗原、ならびに他のものが挙げられる。また腫瘍抗原には、例えば免疫チェックポイント阻害剤及び免疫刺激分子等の免疫調節分子が含まれる。したがって、一部の態様においては、腫瘍抗原、本明細書において提供する二重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、免疫調節分子としての機能と結合する。一態様においては、第2の抗原結合領域の腫瘍抗原への結合により、例えばT細胞等の免疫細胞を、腫瘍細胞に向かわせることが結果的に生じる。
【0057】
第1及び第2の抗原結合領域の任意の組み合わせが、本明細書において提供する二重特異性抗体の中に含まれ得、例えば任意の免疫チェックポイント分子、任意の免疫刺激分子、又は任意の腫瘍抗原に結合する第1及び第2の抗原結合領域が含まれる。したがって、一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体の第2の抗原結合領域は、任意の免疫チェックポイント分子、任意の免疫刺激分子、又は任意の腫瘍抗原に結合する。一部の態様においては、第1及び第2の抗原結合領域は、同一の分子に結合する。例えば、第1及び第2の抗原結合領域は、同一分子の同一の又は異なるエピトープに結合し得る。他の態様においては、第1及び第2の抗原結合領域は、異なる分子に結合する。
【0058】
一部の態様においては、第2の抗原結合領域は、PD-L1、PD-1、CTLA-4、LAG3、CD28、CD40、CD137、CD27、ICOS、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2)、又はグリカンから選択される抗原に結合する。例示的なグリカンとしては、N-グリカン、O-グリカン、及びグリコスフィンゴリピドが挙げられる。グリカンは、がん細胞において独占的に発現し得、例えばGloboH等である。一態様においては、第2の抗原結合領域は、PD-L1に結合する。別の態様においては、第2の抗原結合領域は、Her2に結合する。さらに別の態様においては、第2の抗原結合領域は、グリカンに結合する。さらなる態様においては、グリカンはGloboHである。CD137と、PD-L1に加えて又はPD-L1以外の腫瘍上で発現する抗原とに結合する二重特異性抗体のレパートリーを増殖することにより、例えばPD-L1を発現しないがん型へと二重特異性抗体を向かわせることが可能になる。
【0059】
一態様においては、CD137に結合する第1の抗原結合領域とPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを有する二重特異性抗体は、CD137及びPD-L1に同時に結合する(
図16)。理論に制限されることなく、CD137及びPD-L1の両方に結合することが可能である二重特異性抗体を設計することによってPD-L1を発現する腫瘍部位に対する抗-CD137結合活性を制限することにより、例えばウレルマブ等の抗-CD137抗体での臨床試験で見られた肝毒性の危険性及びそれに付随する致死率を減少させることができる。さらに、CD137及びPD-L1に同時に結合することにより、架橋結合の結果としてのT細胞活性化を増強することができると考えられている(以下の実施例10も参照のこと)。別の態様においては、CD137に結合する第1の抗原結合領域とPD-L1に結合する第2の抗原結合領域とを有する二重特異性抗体が、例えばウトミルマブ及びウレルマブ等である参照抗体と比較してより強いCD137取込みを誘導する(
図23)。
【0060】
一部の態様においては、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、scFv、F(ab)2、Fab、又はそれらの任意の組み合わせを含む。一態様においては、第1の抗原結合領域はscFvを含み、第2の抗原結合領域はFabを含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体に含まれるscFvは、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する。さらに別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体に含まれるscFvは、CD137に結合する。一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体に含まれるFabは、免疫チェックポイント分子、免疫刺激分子、又は腫瘍抗原に結合する。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体に含まれるFabは、PD-L1に結合する。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体のscFvは、配列番号9のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号10のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。さらに別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体のscFvは、配列番号17のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18のN末端配列の約100~120アミノ酸のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む。
【0061】
一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、CD137に結合する第1の抗原結合領域と、Her2に結合する第2の抗原結合領域とを含む。CD137及びHer2に結合する二重特異性抗体は、例えばトラスツズマブ(重鎖 配列番号36)又は抗-Her2#3-7(重鎖 配列番号38)等であるHer2に結合する抗体のFcドメインのC末端に融合するCD137に結合するscFvを含む。ある態様においては、CD137及びHer2に結合する二重特異性抗体は、配列番号35(トラスツズマブ)又は配列番号37(抗-Her2#3-7)の軽鎖をさらに含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、CD137に結合する第1の抗原結合領域と、腫瘍特異性グリカンに結合する第2の抗原結合領域とを含む。CD137及び腫瘍特異性グリカンに結合する二重特異性抗体は、例えば本明細書において提供する抗-グリカン等である腫瘍特異性グリカンに結合する抗体のFcドメインのC末端に融合するCD137に結合するscFvを含む(重鎖 配列番号40)。ある態様においては、CD137及び腫瘍特異性グリカンに結合する二重特異性抗体は、配列番号39の軽鎖(抗-グリカン)をさらに含む。一部の態様においては、CD137及びHer2又はCD137及び腫瘍特異性グリカンに結合する二重特異性抗体は、抗-CD137 scFvをFcドメインに結合させるリンカーをさらに含む。例えばGSリンカー(配列番号28)、G4Sリンカー(配列番号29)又はその複合体等である任意のリンカーを用いることが可能である。一態様においては、当該リンカーはG4Sリンカーである。
【0062】
したがって、本発明は、標的依存性T細胞活性化のプラットフォームを提供する。一態様においては、抗-CD137 scFvのアゴニスト活性は、
図19及び
図20に示すように、例えばPD-L1等の腫瘍特異性抗原に結合すると誘導される。抗-CD137アゴニスト活性はまた、
図21及び
図22に示すように、例えばHer2及び腫瘍特異性グリカン等である他の腫瘍特異性抗原に結合することによって活性化することも可能である。
【0063】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、scFvのVH領域及びVL領域の間にリンカーを含む。任意のリンカーを用いることが可能である。例えば、リンカーは、任意のアミノ酸配列を含むことが可能である。リンカーは、例えば1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、6個のアミノ酸、7個のアミノ酸、8個のアミノ酸、9個のアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、16個のアミノ酸、17個のアミノ酸、18個のアミノ酸、19個のアミノ酸、20個のアミノ酸、又はそれ以上のアミノ酸等である任意の長さのものとすることが可能である。リンカーはまた、アミノ酸配列の複合体を含むことも可能である。任意の数のアミノ酸配列複合体をリンカー内に含めることが可能である。例示的なリンカー配列としては、配列番号28及び配列番号29に提供する。一部の態様においては、scFvは、配列番号33又は配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0064】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、Fcドメインをさらに含む。ある態様においては、Fcドメインは、IgGドメイン、IgEドメイン、IgMドメイン、及びIgDドメイン、IgAドメイン、又はIgYドメインである。任意の配列の任意の種からのFcドメインを用いることが可能であり、ヒト、類人猿(ape)、サル、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ウマ及びその他が含まれる。一部の態様においては、IgGドメインは、IgG1ドメイン、IgG2ドメイン、IgG3ドメイン、又はIgG4ドメインである。一態様においては、IgG4ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。別の態様においては、IgG1ドメインは、配列番号26のアミノ酸配列を含む。一態様においては、Fcドメインはヒトである。概して、ヒトFcドメインは、ヒトにおいて免疫原性ではなく、したがってヒトの治療での使用に好適である。
【0065】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体のscFvは、FcドメインのC末端に結合する。一態様においては、リンカーは、Fcドメイン及びscFvの間に含まれる。別の態様においては、リンカーは、scFvをFcドメインに結合する。例えば本明細書において提供するG4Sリンカー等の任意のリンカーを用いることが可能である。
【0066】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体のFabは、FcドメインのN末端に結合する。一態様においては、Fabは、ペプチド結合を介してFcドメインのN末端に直接結合する。別の態様においては、Fabドメインは、リンカーを介してFcドメインのN末端に結合する。
【0067】
一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号31又は配列番号32の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号30の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号36の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号35の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号38の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号37の軽鎖配列をさらに含む。一態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号40の重鎖配列を含む。別の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体は、配列番号39の軽鎖配列をさらに含む。例えば配列番号31、配列番号32、配列番号36、配列番号38、配列番号40及びその他等である重鎖配列は、1又は複数のGリンカー(配列番号28)、1又は複数のG4Sリンカー(配列番号29)、又はGリンカーもしくはG4Sリンカーの任意の複合体含むことが可能であるが、任意の他の好適なリンカーを用いることが可能である。
【0068】
一部の実施形態においては、本明細書においては、配列番号30~40に記載される単離されたアミノ酸配列を提供する。本明細書においては、一部の実施形態において、配列番号30~40のアミノ配列のうちのいずれか1つをコードする単離された核酸配列もまた提供する。
【0069】
一部の実施形態においては、本明細書においては、抗体-薬剤複合体を提供する。本明細書において提供する抗体-薬剤複合体は、本明細書において提供する任意の抗体又はその抗原結合断片を含み得る。例えば、CD137に特異的に結合する任意の抗体又はその抗原結合断片が、抗体-薬剤複合体に含まれ得る。本明細書において提供する任意の二重特異性抗体又はその抗原結合断片はまた、抗体-薬剤複合体に含まれ得る。一部の態様においては、本明細書において提供する抗体-薬剤複合体は、治療薬を含む。任意の治療薬は、小分子を含めて、本明細書において提供する抗体-薬剤複合体に含まれ得る。一部の態様においては、治療薬は細胞傷害活性を有する。細胞傷害活性を有する任意の化学療法薬が、抗体-薬剤複合体に含まれ得る。例示的な化学療法薬としては、アクチノマイシン、オールトランスレチノイン酸、抗エストロゲン剤、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポシロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、タキソール、タキソテール、タモキシフェン、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシンが挙げられるがこれに限定されない。
【0070】
一部の態様においては、本明細書において提供する抗体-薬剤複合体は、がんの治療に用いられる。例えば、抗体-薬剤複合体に含まれる抗体は、腫瘍細胞上の抗原に結合し、それによって細胞傷害活性をもつ小分子又は該抗体-薬剤複合体に含まれる他の治療薬を、腫瘍細胞に向かわせる。抗体-薬剤複合体が腫瘍細胞に結合すると、小分子又は他の治療薬は、腫瘍細胞内に取り込まれて放出される。
【0071】
一部の態様においては、本明細書において提供する抗体-薬剤分子に含まれる治療薬は、本明細書において提供する抗体もしくはその抗原結合断片と、又は本明細書において提供する二重特異性抗体もしくはその抗原結合断片と共有結合する。治療薬を抗体もしくはその抗原結合断片に又は二重特異性抗体もしくはその抗原結合断片に共有結合させるために、リンカーを用いることが可能である。治療薬を本明細書において提供する抗体もしくはその抗原結合断片に又は本明細書において提供する二重特異性抗体もしくはその抗原結合断片に共有結合させるために、任意の好適なリンカーを用いることが可能である。一部の態様においては、本明細書において提供する抗体-薬剤複合体に含まれるリンカーは、血液循環を含めて標的細胞の外側において安定であり、標的細胞内側で切断されて治療薬を放出する。細胞傷害活性を有する治療薬は、例えば、放出されると標的細胞死を誘導することが可能である。したがって、一部の態様においては、治療薬は、選択的に腫瘍細胞に向けられる。治療薬の腫瘍細胞に対する選択的標的化により、概して、例えば非腫瘍細胞に対する細胞傷害性の減少及び忍容性の増加が結果的に生じる。
【0072】
本明細書においては、一部の態様においては、本明細書において提供する二重特異性抗体を含む医薬組成物を提供する。本明細書において提供する任意の二重特異性抗体は、医薬組成物に含まれ得る。一態様においては、本明細書において提供する医薬組成物に含まれる二重特異性抗体は、CD137、PD-L1、又はCD137及びPD-L1の両方に結合する。本明細書において提供する抗体-薬剤複合体もまた、医薬組成物に含まれ得る。一部の態様においては、がんの治療のために医薬組成物を用いる。本明細書において提供する医薬組成物を用いて、任意のがんを治療することが可能である。例示的ながんとしては、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、及び白血病が挙げられる。
【0073】
一部の実施形態においては、本明細書において、対象におけるがんを治療する方法を提供する。がんを治療する方法は、がんを治療するのに有効である、本明細書において提供する任意の二重特異性抗体又はその抗原結合断片のある量を対象に投与することを含む。一部の態様においては、当該がんは、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳がん、頭頸部がん、腎細胞がん(RCC)、卵巣がん、腎がん、膀胱がん、子宮がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、口腔がん、咽頭がん、膵がん、甲状腺がん、皮膚がん、脳がん、骨がん、造血器がん、又は白血病である。
【実施例】
【0074】
実施例1
この実施例では、OmniMabライブラリーよりの抗体産生を説明する。
【0075】
CD137に対する治療用抗体を生成するために、OmniMabファージミドライブラリーによる選択を実行した。当該ファージミドライブラリーは、100例を超える健常ドナーからの末梢血単核球の採取群からAP Biosciences Inc.社(APBio Inc.社)により構築された。予め被覆したCD137-Fc組換えタンパク質を、救済したファージを含有する上清と共に1時間インキュベートし、0.1% Tween-20を含有するPBSで3回洗浄した。結合したファージをHRP標識した抗-M13抗体(Roche社)で検出し、またシグナル発生のためにTMB基質を用いた。OD450読み取り値を記録した。
【0076】
1回目のパニングは、ハイパーファージ(Hyperphage)(Μ13Κ07ΔρΙΙΙ、Progen社、ドイツ国ハイデルベルグ)を用いて実施した。CD137に対する固相パニング及び細胞パニングを、OmniMabライブラリーからのCD137特異性バインダーの選択及び単離のために用いた。固相パニングは、1回目での選択で用いた組換えヒトCD137-ECD-Fc(APBio Inc.社)を用いて実施した。2回目及び3回目の濃縮には、CD137を発現するHEK293細胞を用いた。3回目のパニングの後で、特異性CD137バインダーを、直接ELISA及びFACSによりスクリーニング及び単離した(
図1及び
図2)。FACS解析のために、CD137を安定的に発現する293F細胞を、抗-CD137ファージ上清(50ul/ウェル)で染色し、CD137結合活性を調べた。CD137を安定的に発現する293F細胞はまた、対照としての2.5ug/mlの抗-CD137抗体(Ab)と共に、1時間氷上でインキュベートした。当該細胞を1×PBSで3回洗浄して、次いで抗-M13抗体(Progen社)と共に、1時間氷上でインキュベートした。再度、細胞を1×PBSで3回洗浄して、抗-マウスIgG-Alexa 488(Invitrogen Inc.社)と共に、さらに1時間氷上でインキュベートした。染色後、細胞を1×PBSで3回洗浄して、1×PBS中で再懸濁してから、FACS Calibur(BD Biosciences,Inc.社)及びFlowJo(TreeStar,LLC社)で解析した。CD137を安定的に発現する293F細胞クローン13についてのFACS解析を、
図2に示す。陽性であるバインダーを単離して、重鎖の配列及び多様性を確認するために配列決定に送った。
図1及び
図2に示すように、負の対照と比較して、CD137抗原を特異的に認識したいくつかのクローンが単離された。
【0077】
これら結果は、3回のCD137特異的な濃縮後に得られたファージクローンが、CD137を特異的に認識するということを示す。
【0078】
実施例2
この実施例では、IgG形態での、CD137に特異的に結合するタンパク質のサブクローニング、発現及び精製について説明する。
【0079】
T細胞活性化における機能性をもつ候補を素早くスクリーニングするために、ELISAにより同定された陽性であるCD137又はPD-L1のバインダーの重鎖及び軽鎖を増幅し、消化し、そしてAPBio社により生成されてIgG4定常領域(配列番号25)を担持するIgG発現ベクターにサブクローニングした。配列検証後、293fectinトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、抗体発現のためにプラスミドを調製してHEK293細胞にトランスフェクションした。培養の4日後、無血清培地中に分泌された抗体を、プロテインGクロマトグラフィーにより培養上清からアフィニティ精製した。精製した抗体は、濃縮して、その後にPBSバッファー中での透析が続いた。透析タンパク質の最終濃度は、NanoDrop2000分光光度計を用いて決定し、そしてその純度及び完全性を、還元剤と共に又は還元剤を伴わずに、SDS-PAGEにより決定した。
【0080】
図3は、精製した抗-CD137抗体リードの第1のバッチ(
図3、上図)及び第2のバッチ(
図3、下図)の代表的なPAGEゲル解析を示す。トランスフェクション4日後に採取した哺乳動物細胞よりの培養上清を、プロテインGクロマトグラフィー(Thermo Fisher社)を用いて精製した。精製したタンパク質は、還元条件又は非還元条件下で解析してから、ゲル上にロードした(3μg/レーン)。結果は、非還元条件下では両タンパク質が分子量約145kDaであり、また還元条件下では重鎖及び軽鎖はそれぞれ、分子量約55kDa及び約25kDaであることを示した。一工程のプロテインGクロマトグラフィーにより、90%以上の純度を達成することができた。
【0081】
これら結果により、種々の精製された抗体リードの完全性がHEK293細胞において正常であることが示される。
【0082】
実施例3
この実施例では、ジャーカット(Jurkat)細胞への抗-CD137抗体の結合を説明する。
【0083】
精製した抗-CD137抗体リードはまた、CD137を誘導したジャーカット細胞に適用されて、FACSで結合活性を決定した。ジャーカット細胞は、PMA(10ng/ml)及びイオノマイシン(1μg/ml)で処理し、2日間CD137発現を誘導した。刺激した細胞は、陽性対照としての抗-CD137(0.5μg/ml)及び参照(ref)抗体(0.5μg/ml)と共に1時間氷上でインキュベートしたか、未染色のままとしたか、又は陰性対照としてのOX40参照(ref)抗体と共にインキュベートした。細胞を1×PBSで3回洗浄して、次いでAlexa-488標識したヤギ抗-ヒトIgG(H+L)(Invitrogen Inc.社)と共に、さらに1時間氷上でインキュベートした。染色後、細胞を1×PBSで3回洗浄して、1×PBS中で再懸濁してから、FACS Calibur(BD Biosciences,Inc.社)及びFlowJo(TreeStar,LLC社)で解析した。CD137抗体リードのうち、いくつかのリードは、
図4に示すように参照抗体と匹敵する結合活性を保有した。
【0084】
これら結果は、フローサイトメトリーで見られるように、抗-CD137抗体リードの活性化ジャーカット細胞への結合を示す。
【0085】
実施例4
この実施例では、ELISAによる抗-CD137抗体結合活性の決定について説明する。
【0086】
CD137に結合する抗-CD137抗体の直接のリガンド結合アッセイを実施するために、組換えCD137/Fc(100ng/ml)を用いて予め被覆したウェルを調製した。簡潔には、精製したヒトCD137-IgG4 Fc(APBio社)をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で透析し、1mg/mlに調節し、次いでPBSで最終濃度1μg/mlに希釈した。Nuncイムノマキシソープ(Nunc-Immuno Maxisorp)96ウェルプレートを、非特異的に結合する対照のために空のウェルを残しつつ、組換えCD137タンパク質で1ウェル当たり0.1mlで予め被覆して、4℃で一晩インキュベートした。CD137組換えタンパク質溶液を除き、プレートを0.4mlの洗浄緩衝液(PBS中0.1% Tween-20)で3回洗浄した。0.4mlのブロッキングバッファー(PBS中5%の低脂肪乳粉末)を全てのウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除き、0.4ml洗浄緩衝液で3回洗浄した。
【0087】
予め被覆したウェルを、精製した抗-CD137抗体の段階希釈物と共にインキュベートした。CD137抗体の段階希釈物は、PBS中で調製し、各ウェルに0.1mlを添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除き、プレートを0.4ml洗浄緩衝液で3回洗浄した。HRP標識したヤギ抗-ヒトIgG、F(ab’)2特異性F(ab’)2抗体(Jackson Immunoresearch社 #109-036-097)をPBSで1:2000で希釈し、1ウェル当たり0.1mlで添加した。当該プレートを室温で1時間インキュベートし、1ウェル当たり0.4mlの洗浄緩衝液で3回洗浄した。プレートを0.1mlのTMB試薬(Invitrogen)で発色させ、室温で1~5分間インキュベートした。0.05mlの1N HClを加えて反応を停止し、Bio-Tek Spectraで450nmにおける吸光度を読み取った。OD450の読み取り値を抗-CD137の濃度に対してプロットし、CD137/Fcに結合する抗-CD137抗体の50%有効濃度(EC
50)値を算出した。EC
50値は、GraphPad Prism(GraphPad Software社、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて算出した。抗-CD137抗体のクローン31及びクローン54について算出されたEC
50値が、参照抗体に匹敵する結合活性を示した。抗-CD137特異性抗体リードについて算出されたEC
50値が、参照抗体と比較して良好な結合活性を示した(
図5)。
【0088】
発色前に、抗-PD-L1抗体を、HRP標識した抗-ヒトIgG1 Fab抗体により検出して、OD450の読み取り値を抗-PD-L1濃度に対してプロットした。
【0089】
実施例5
この実施例では、SEC-HPLCによる、高度に濃縮された抗-CD137抗体リードのタンパク質凝集の評価について説明する。
【0090】
SEC-HPLCは、Waters社2996 Photodiode Array検出装置を備えたWaters社Alliance Separation Module 2695を用いて実施した。SEC分離のための移動相バッファーとして、均一溶媒である25mMリン酸ナトリウム、200mMのNaCl、pH6.8を用いて、サンプルをXBridge Protein BEH SECカラム(Waters社、カタログ番号#176007640)にロードした。流速は0.4mL/分とし、またサンプル注入量は10μLとした。280nmにおける吸光度でピークを検出した。SECカラムへの注入前に、全てのサンプルを0.22μmフィルター(Millipore社、カタログ番号#SLGP003RB)でろ過して、沈殿したあらゆるタンパク質物質を除いた。データは、Empower 2ソフトウェアで解析した。
図6に示すように、高度に濃縮した抗-CD137抗体のクローン31及びクローン54のメインピークの百分率は、90%を超えており、明らかなタンパク質の凝集はなかった。
【0091】
これら結果は、高濃度の抗-CD137抗体は結果として凝集を形成しないということを示す。
【0092】
実施例6
この実施例では、抗-CD137抗体のアゴニスト活性について説明する。
【0093】
精製した抗体リードを、サイトカインの産生、増殖及びヒトCD3+ T細胞の増殖の誘導が増強されたことにより見られるような、ヒトCD3+細胞の活性化を増強するそれらの能力に関して機能的スクリーニングを行った。抗-CD3抗体(1μg/ml、OKT3、BioLegend社、カタログ番号317304)、抗-CD137抗体リード又はアイソタイプ抗体(1、3、及び10μg/ml)を、マキシソープ(Maxisorp) 96ウェルプレート上に被覆した。ヒトCD3+ T細胞を、RosetteSep(商標)ヒトT細胞濃縮カクテル(Human T Cell Enrichment Cocktail)(STEMCELL社、カタログ番号15061)を用いて、健常な成人ボランティアの末梢血から単離した。単離したCD3+ T細胞を、CFSE(CellTrace(商標) CFSE細胞増殖キット(CFSE cell proliferation kit)、Life Technologies社、カタログ番号C34554)で標識して、RPMI1640培地(10%ウシ胎仔血清、2.5mMのL-グルタミン、1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有)で予め被覆したウェルに播種した(1ウェル当たり1×10^5細胞)。3日後、細胞増殖をフローサイトメトリーで解析して、またIL-2及びINF-γのサイトカイン産生をELISAで解析した。
図7及び
図8に示すように、抗-CD137抗体リード#15、#31、及び#54は、試験した4ドナーのうち少なくとも2ドナーに関して、用量依存的及びドナー依存的にCD3+ T細胞の活性化を増強するアゴニスト活性を示した。抗-CD137のクローン#31及び#54は、参照抗体(ウトミルマブ;www.kegg.jp/dbget-bin/www_bget?dr:D10997におけるChin et al.,2018;antibody sequence;また米国特許第8,337,850号も参照)と比較してT細胞活性化が増強されたことでわかるように、匹敵する又はより高いアゴニスト活性を示した。したがって、クローン#31及び#54を、以下に記載するように、二重特異性抗体の構築のために選択した。
【0094】
実施例7
この実施例では、混合したリンパ球反応における抗-PD-L1及び抗-CD137抗体での組み合わせ治療について説明する。
【0095】
単核球をRosetteSep(商標) ヒト単核球濃縮カクテル(Human Monocyte Enrichment Cocktail)(カタログ番号15068)によって健常ドナーの末梢血から単離して、ヒトGM-CSF及びIL-4(それぞれ1000U/ml、R&D社)を含有するRPMI1640分化培地中で、6日間培養した。フローサイトメトリーを用いて、DC-SIGN、CD14、CD80又はCD83の発現によって、樹状細胞(DC)の分化が検証された。分化されたDCは、混合リンパ球反応(MLR)において抗原提示細胞(APC)として用いた。同種異系のCD4+ T細胞を、RosetteSep(商標)ヒトCD4+ T細胞濃縮カクテル(Human CD4+ T Cell Enrichment Cocktail)(カタログ番号15062)を用いて、ヒト末梢血から単離した。CD4+ T細胞の純度は、CD3及びCD4発現に基づいて約95%であった。CFSEで標識したCD4+ T細胞を、抗体リードの存在下(0.4、2、及び10μg/ml)で、DCと共に3~5日間共培養した。CD4+ T細胞増殖をフローサイトメトリーで解析し、また培養培地中のIL-2及びIFN-γのサイトカイン産生をELISAで検出した。IL-2及びINF-γの産生は、アイソタイプの対照抗体と比較して、MLRにおける抗-PD-L1抗体の存在下で有意に増加した。興味深いことに、例えばクローン#31等である抗-CD137抗体は、
図9に示すように、2つの別個のドナーペアでのMLRにおける抗-PD-L1抗体媒介性のIFN-γ産生を増強した。
【0096】
実施例8
この実施例では、CD137-CD137L相互作用に対する抗-CD137抗体の効果について説明する。
【0097】
HEK-293F/CD137細胞を、アイソタイプ対照及び抗-CD137抗体(50μg/ml)と共に、30分間氷上でインキュベートし、PBS/2%FBS(PBS2)で2回洗浄し、そしてHis標識した4-1BBL(0.5μg/ml、Acro BIOSYSTEMS社)と共に、20分間氷上でインキュベートした。PBS2での2回の洗浄後、HEK-293F/CD137細胞上での抗-CD137抗体及び4-1BBLの提示を、それぞれ抗-ヒトFc-A488(Jackson ImmunoResearch社)及び抗-His抗体-APC(Biolegend社)を用いて検出し、その後にCaliburフローサイトメーター(BD社)を用いた解析が続いた。アイソタイプ対照とのインキュベート以外は、ほとんど全ての細胞がA488陽性であった。APCチャネルの平均蛍光強度(MFI)を、FlowJo(TreeStar,LLC社)を用いて算出し、そして値をヒストグラムとして示した(
図10)。
図10に示すように、参照抗体1(ref1)及びクローン#54が、CD137-CD137L相互作用を効果的に阻止し、一方で、参照抗体2(ref2)、クローン#15、及びクローン#31は、CD137-CD137L相互作用の阻止において効果を欠いていた又は非効率的であった。
【0098】
実施例9
この実施例では、インビボでの抗-CD137抗体リードの薬物動態について説明する。
【0099】
抗体を、SCID-ベージュマウスに、静脈内ボーラス注射により体重1kg当たり5mg量で投与した。注射後の図示した時点で、末梢血を採取した。以下に記載するように、ELISAによって抗体血漿中濃度を検出した。CD137-ヒトFc(1μg/mL)で予め被覆したウェルを、漸増濃度の精製した抗-CD137 IgG4抗体と共にインキュベートして、血漿中の抗体濃度を算出するために標準曲線を作成した(ブロッキング溶液中での新しい調製物を用いて)。様々な時点で採取したサンプルを、検出用に予め被覆したCD137-ヒトFcウェルに加えた。発色前に、PBS中の0.1% Tween-20で洗浄後、結合した抗体を、HRP標識した抗-ヒトFab抗体(0.4μg/mL)を用いて検出した。抗体血漿中濃度は、内挿法によって算出した。PKパラメータは、PKSolverソフトウェア(Zhang,Huo,Zhou,& Xie,2010)を用いて算出した。抗体は、約176時間という良好なt
1/2と、約7800ug/ml*hというAUCを示した(
図11)。
【0100】
実施例10
この実施例では、抗-CD137抗体リードの架橋結合依存性アゴニスト活性について説明する。
【0101】
NF-κBによるルシフェラーゼ及び全長CD137でHEK293細胞をトランスフェクションし、その後にそれぞれハイグロマイシン及びG418による選択を続けることにより、CD137レポーター細胞の安定なクローンを生成した。アゴニスト活性アッセイのために、単独の又はヤギ抗-ヒトIgG(5μg/ml、Jackson ImmunoResearch社、カタログ番号109-006-008)により架橋結合した、抗-CD137抗体(10、2、及び0.4μg/ml)を、当該レポーター細胞に添加して5時間インキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ活性アッセイシステム(Promega社、カタログ番号E6120)を用いて、ルシフェラーゼ活性を検出した。これまでの報告と一貫して、ウトミルマブ(CD137 ref、
図12)が、架橋結合依存性のアゴニスト活性を示し、一方でウレルマブ(CD137 ref2、
図12)が、臨床試験で観察される深刻な肝毒性を引き起こす可能性がある架橋結合非依存性のアゴニスト活性を示した。ウトミルマブと比較して、CD137#54は、架橋結合することによってより大きなアゴニスト活性を示し、一方で架橋結合がない場合のアゴニスト活性は中程度で、ウトミルマブのアゴニスト活性と同様であった(
図12)。理論に制限されることなく、CD137#54のこの特性は、腫瘍特異性バインダーをもつ二重特異性抗体に含まれるときに、標的依存性T細胞活性化を誘導することができる。
【0102】
要約すれば、これら結果は、抗-CD137#15、抗-CD137#31、抗-CD137#54のアゴニスト活性の異なる架橋結合依存性を示す。
【0103】
実施例11
この実施例では、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体の構築、発現及び精製について説明する。
【0104】
抗-PD-L1抗体のクローン6を、ADCCを含まないIgG形態で用い、また抗-CD137抗体を、scFvフォーマットで用いて、抗-PD-L1のクローン6の抗体Fc領域のC末端に融合した。CD137 scFvと融合した抗-PD-L1抗体のFc領域を含む二重特異性抗体コンストラクトを、概略を
図10に示すと共に以下の表1(配列)に示す。短いフレキシブルなペプチドリンカー(GGGGS)2(配列番号29)を、正確なフォールディングを確実にし、また立体障害を最小限にするように、抗-PD-L1抗体のFc領域の重鎖C-末端(配列番号25又は配列番号26)と抗-CD137 scFvのN-末端モジュールとの間に配置した。抗-PD-L1-CD137 scFv重鎖のアミノ酸配列は、配列番号31及び配列番号32に示す。抗体Fc融合タンパク質コンストラクトを、Gibco ExpiCHO発現システムを用いて発現させて、一工程のプロテインGクロマトグラフィーを介してトランスフェクションした細胞の細胞培養上清から精製した。
【0105】
抗-CD137 scFvに融合した抗体は、上記に示した抗-CD137 scFvに融合した二重特異性の抗-PD-L1抗体Fcに加えて、例えば抗-PD-1、抗-CTLA-4、抗-LAG3及びその他等である抗-阻害性免疫チェックポイント抗体又は例えば抗-CD28、抗-CD40、抗-CD137、抗-CD27、抗-ICOS及びその他等である免疫刺激抗体を含み得る。二重特異性抗体ごとに、あるリンカーを、抗体Fcドメインと抗-CD137 scFvとの間に配置して、二重特異性抗体を生成することが可能である。
【0106】
二重特異性抗体の純度は、90%を超えていた(
図14及び
図15)。90%を超える純度は、単一工程の精製プロセスで達成され、正確な分子量(Mw=220kD)を有する精製された融合タンパク質と一貫していた。
図14は、精製された抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体(bsAb)の代表的なPAGEゲル解析を示す。トランスフェクション4日後に採取した哺乳動物細胞よりの培養上清を、プロテインGクロマトグラフィー(Thermo Fisher社)を用いて精製した。精製したタンパク質は、還元条件又は非還元条件下で解析してから、ゲル上にロードした(3μg/レーン)。結果は、非還元条件下では両タンパク質が分子量約220kDaであり、また還元条件下では重鎖-CD137 scFv及び軽鎖はそれぞれ、分子量約85kDa及び約25kDaであることを示した。
図15は、μCE-SDSによる、一工程のプロテインAで精製した抗-PD-L1 #6-CD137 #54 bsAbの純度及び完全性を示す。
【0107】
実施例12
この実施例では、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体による抗原認識について説明する。
【0108】
抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体の結合活性は、ForteBio(登録商標)(カリフォルニア州メンローパーク)バイオセンサー解析で決定した。His標識したCD137(ACROBiosystems社)を、0.02%Tween-20及び0.1%BSAを含むDPBS中、5μg/mLで、HIS1K(抗-Penta-HIS)バイオセンサー(カタログ番号18-5120)に5分間ロードした。次いでセンサーを、同じバッファーを用いて100nMで、示されているような抗体に5分間曝露し、その後にさらに5分間の100nMの第2の抗原(マウスFcドメインに融合したPD-L1)との結合が続いた。次いで、メーカーによって説明されるとおりに、Octet Data Acquisition and Analysisソフトウェアを用いて、
図16に示す結合チャートを作成した。対照抗体と比較して、両方の二重特異性抗体(抗-PD-L1#6-CD137#31及び抗-PD-L1#6-CD137#54)が、まずCD137を認識し、次いでPD-L1も同様に認識することが可能であったが、これは二重特異性抗体がPD-L1とCD137を同時に標的にすることができることを実証している。
【0109】
要約すると、これら結果は、ForteBio(登録商標)バイオセンサー解析によって決定されたように、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体がPD-L1及びCD137を同時に認識するということを示す。
【0110】
実施例13
この実施例では、同種異系の混合したリンパ球反応における抗-PD-L1抗体及び抗-PD-L1-CD137 scFv二重特異性抗体(bsAb)によるT細胞活性化の増強について説明する。
【0111】
単核球をRosetteSep(商標) ヒト単核球濃縮カクテル(Human Monocyte Enrichment Cocktail)(カタログ番号15068)によって健常ドナーの末梢血から単離して、ヒトGM-CSF及びIL-4(それぞれ1000U/ml、R&D社)を含有するRPMI1640分化培地中で、6日間培養した。同種異系のCD4+ T細胞を、RosetteSep(商標)ヒトCD4+ T細胞濃縮カクテル(Human CD4+ T Cell Enrichment Cocktail)(カタログ番号15062)で、ヒト末梢血から単離した。CD4+ T細胞の純度は、CD3及びCD4発現に基づいて約95%であった。CFSEで標識したCD4+ T細胞を、抗体リードの存在下(1、3、及び10μg/ml)で、DCと共に3~5日間共培養した。CD4+ T細胞増殖をフローサイトメトリーで解析し、また培養培地中のIL-2及びIFN-γのサイトカイン産生をELISAで検出した。抗-PD-L1及び抗-CD137抗体での単一での治療及び組み合わせの治療と比較して、抗-PD-L1#6-CD137#54が、T細胞の活性化を顕著に増強した(
図17、2つのドナーペアに関する結果を示す)。
【0112】
これら結果は、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、抗-PDL-1及び抗-CD137抗体の単一での治療又は組み合わせでの治療と比較して、また抗-PD-L1#6-CD137#31 bsAbでの治療と比較して、混合したリンパ球反応におけるより有力なT細胞活性化を誘導したことを示す。
【0113】
実施例14
この実施例では、抗-PD-L1-CD137 scFv二重特異性抗体リードによる抗原特異性T細胞活性化の増強について説明する。
【0114】
ヒトメモリーCD4 T細胞及びCD8 T細胞を、それぞれ、EasySep(商標) ヒトメモリーCD4+ T細胞濃縮キット(Human Memory CD4+ T Cell Enrichment Kit)(STEMCELL社、カタログ番号19157)及びヒトCD8+ T細胞単離キット(STEMCELL社、カタログ番号17953)を用いて、単離した。メモリーCD4-T細胞と自己由来の未成熟DCとの共培養を、抗体(0.4、2、及び10μg/ml)の存在下で、CEFX Ultra SuperStim Pool MHC-IIサブセット(1ug/ml、JPT社)により7日間刺激した。CD8-T細胞との共培養のため、TLR-DCを生成したが、IL-1β(10ng/ml、PeproTech社)、TNF-α(10ng/ml、PeproTech社)、IFN-γ(5000IU/ml、PeproTech社)、PGE2(250ng/ml、Sigma社)、ポリI:C(10μg/ml、Sigma社)、及びR848(5μg/ml、Sigma社)を分化培地に添加することによって、24時間、未成熟DCを成熟化するようにした。CD8 T細胞と自己由来のTLR-DCとの共培養を、抗体(0.4、2、及び10μg/ml)の存在下で、CEFX Ultra SuperStim Pool(1μg/ml、JPT社)により7日間刺激した。実施例12のMLRで観察された結果と同様に、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、抗-PD-L1又は抗-CD137モノクローナル抗体での単一治療又は抗-PD-L1及び抗-CD137モノクローナル抗体での組み合わせ治療と比較して(
図18A~
図18B)、メモリーCD4 T細胞(
図18、A図)及びCD8 T細胞(
図18、B図)のリコール応答を増強した。
【0115】
要約すると、
図17(実施例13)及び
図18(本実施例)で示した結果は、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、抗-PD-L1及び抗-CD137モノクローナル抗体の単独又は組み合わせのいずれかで治療すると見られたT細胞活性化よりもより頑健であるT細胞活性化を顕著に増強したということを示す。さらに、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbで治療すると見られたT-細胞活性化は、CD4 T細胞及びCD8 T細胞でのリコール応答アッセイにおいて見られたように、抗原依存性であった。理論に制限されることなく、抗-PD-L1#6-CD137#31 bsAbと比較して、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbで見られた大きい効力をもつT細胞活性化により、二重特異性抗体の抗-CD137#54アームが立体障害なく固有のCD137エピトープに結合することができるために結果的に二重特異性抗体の抗-PD-L1アームによるPD-L1への結合を結果的に生じるということが示唆される。
【0116】
実施例15
この実施例では、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体により誘導された標的依存性のT細胞活性化について説明する。
【0117】
ヒトT細胞を、RosetteSep(商標) ヒトT細胞濃縮カクテル(Human T Cell Enrichment Cocktail)(STEMCELL社、カタログ番号15061)を用いて単離した。精製したT細胞は、プレートに結合した抗-CD3(OKT3、1μg/ml)により活性化され、そして図示されるような抗体治療下で、PD-L1を過剰発現するか又は親であるHEK293細胞と共に共培養した(
図19)。抗-PD-L1及び抗-CD137モノクローナル抗体での単一治療又は組み合わせ治療と比較して、抗-PD-L1-CD137二重特異性抗体は、
図19に示すように、PD-L1を過剰発現する細胞での共培養によってはT細胞活性化を大きく増強したが、PD-L1陰性の親細胞での共培養では大きく増強しなかった。
【0118】
要約すると、これら結果は、プレート結合した抗-CD3(OKT3)の存在下で、親HEK293細胞ではなく、PD-L1を過剰発現するHEK-293細胞と共に共培養した場合、標的依存性のT細胞活性化が抗-PD-L1#6-CD137 bsAbによってのみ誘導されたということを示す。
【0119】
実施例16
この実施例では、抗-腫瘍抗原特異性CD137#54二重特異性抗体により誘導される腫瘍抗原依存性T細胞活性化について説明する。
【0120】
ヒトCD8-T細胞を、上記に記載したように(実施例15)、陽性選択によって単離した。精製したCD8-T細胞を、1:1比での抗-CD3(OKT3)被覆ポリビーズの存在下でPD-L1陽性腫瘍細胞(NCI-H1975、PC-3、及びMDA-MD-231)と共に共培養した。3日後、T細胞活性化を、ELISAで測定されるIFN-γ産生に基づいて解析して、腫瘍細胞の細胞傷害性をCytoTox 96(登録商標)細胞傷害アッセイ(Promega社、カタログ番号#G1780)で検出した。
【0121】
抗-PD-L1#6抗体及び抗-CD137#54抗体での単一療法又は組み合わせ療法と比較して、より頑健なIFN-γ産生が、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbにより誘導された(
図20)。CD8 T細胞のより高い腫瘍細胞の細胞傷害性が、PC-3細胞との共培養によって観察された(
図20B)。PD-L1陽性腫瘍に加えて、抗-Her2(トラスツズマブ又は#3-7)と、CD137#54 scFvに結合する抗-腫瘍グリカン抗体とにより標的にされる、Her2陽性(SKBR-3及びMDA-MB-361)腫瘍細胞、及びグリカン陽性(MCF-7及びNCI-N87)腫瘍細胞もまた、単一療法又は組み合わせ療法と比較して、はるかに強力な、CD8 T細胞のIFN-γ産生(
図21A~
図21B及び
図22A~
図22B)及び腫瘍細胞の細胞傷害性(
図22A)を結果的に生じた。
【0122】
これら結果は、標的依存性T細胞活性化が、腫瘍を標的とするCD137#54 bsAbによって特異的に誘導されたことを示す。
【0123】
実施例17
この実施例では、抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体によるCD137取込みの誘導について説明する。
【0124】
CD137取込みもまた抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体のみならず参照抗体ウレルマブ及びUtoliumabにより誘導されるか否かを調べるために、CD137を発現するHEK293細胞を用いて取込みアッセイを実施した(
図23)。1ウェル当たり5×10^3個のCD137発現細胞を、10%ウシ胎仔血清(Gibco)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)(Invitrogen)を含む黒色の96ウェルプレートに予め播種し、37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした。示されるような抗体を、メーカーのプロトコールに従ってpHAbアミン反応性色素(Promega Corp.社)で標識し、次いで培地中で100nMからの3倍段階希釈として調製した。次いで予め播種した細胞の培地を、標識した抗体を含有する培地で置換し、細胞を、インキュベーター内でさらに24時間培養した。インキュベーション後、細胞をすすぎ、SpectraMax iD3での蛍光記録のためにPBS中に維持した。EC50値を、GraphPad Prismを用いて算出した。
図23に示すように、参照の抗-CD137抗体での治療と比較して、より強いCD137の取込みの誘導が、抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体での治療で観察された。理論に制限されることなく、二重特異性抗体(Ab)がCD137結合のみを介してT細胞に結合するならば、このレベルのCD137取込みが、CD137活性化を減少させ得る。したがって、インビボで二重特異性抗体を投与すると、参照抗体と比較して、特にウレルマブと比較して、より低い毒性が二重特異性抗体では見られ得る。
【0125】
実施例18
この実施例では、抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体による、T細胞増殖のTレグ(Treg)細胞媒介性阻害の救済について説明する。
【0126】
Tレグ抑制アッセイは、実施例12に記載される混合したリンパ球反応を用いて確立された。Tレグ細胞は、EasySep(商標)ヒトCD4
+CD127
lowCD25
+制御T細胞単離キット(STEMCELL社、カタログ番号18063)を用いて末梢血から単離され、そしてDynabeads(登録商標)ヒトTレグエキスパンダ(Gibco、カタログ番号11129D)を用いて増殖させた。増殖させたTレグ細胞は、CD4 T細胞の増殖及びIL-2産生を大きく抑制した。Tレグ細胞の抑制活性は、培養液への抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbの添加によって消失した(
図24A~
図24B)。抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbは、Tレグ細胞の存在下での、T細胞増殖(
図24、A図)とサイトカイン産生(
図24、B図)とを救済した。これら結果は、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbが、Tレグが媒介するT細胞活性化抑制を救済することができるということを示す。
【0127】
実施例19
この実施例は、インビボでの抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体による腫瘍成長の阻害について説明する。
【0128】
マウスPD-L1及びマウスCD137と交差反応しない抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbの抗-腫瘍活性を検証するために、ヒト腫瘍細胞(NCI-H292、NCI-H1975及びBxPC-3)を、ヒトPBMCと予め混合し、そしてSCID-ベージュマウスに対して皮下に異種移植して、インビボでの抗がん活性を評価した。腫瘍接種の7日後、等モルのmAb(分子量150kDa、1mg/kg)及びbsAb(分子量195kDa、1.3mg/kg)を、週に2回腹腔内注射した。腫瘍サイズ(mm
3)は、週に2回測定し、また(長さ×幅×幅)/2として算出した。NCI-H292腫瘍モデルにおいて、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAb(TGI:67.5%)の腫瘍成長阻害指数(TGI)は、MPDL-3280aの指数(TGI:44.3%)、及びPD-L1#6+CD137#54の組み合わせの際の指数(TGI:-18.77%)を超えていた(
図25、A図)。同様に、NCI-H1975腫瘍モデルにおいて、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbのTGI(TGI:80%)は、PD-L1#6+CD137#54の組み合わせの際の指数(TGI:67.2%)を超えていた(
図25、B図)。肺がんに加えて、BxPC-3膵臓がんモデルにおいて、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbはまた、組み合わせ療法(10mg/mlのTGIがそれぞれ:-9.2%)と比較して、より大きい抗腫瘍活性(1.3mg/kgのTGIは43%)を示した(
図25、C図)。すなわち、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbは、インビボでの2つの異なるがんモデルにおいて抗腫瘍活性を示した。
【0129】
要約すると、これら結果は、マウスでの異種移植腫瘍モデルにおいて、抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbで治療すると、抗PD-L1抗体及び抗CD137抗体での組み合わせ治療と比較して腫瘍成長阻害がより大きいことを示す。
【0130】
実施例20
この実施例では、インビトロでの二重特異性抗体の存在下でのサイトカイン放出について説明する。
【0131】
3ドナーよりのヒトPBMCを、アイソタイプ、抗-CD3抗体(OKT3、陽性対照として)、及び3つの二重特異性抗体(抗-PD-L1#6、抗-Her2#3-7、及びCD137#54 scFvに結合した抗-グリカン)と共に、0.67、6.67、及び66.67nMで24時間インキュベートした。培養培地に放出されたサイトカインは、multiplex ProcartaPlexイムノアッセイ(ThermoFisher Scientific社)で検出した。OKT3が顕著なサイトカイン放出を誘導したが、一方で3つの二重特異性抗体は、サイトカイン放出を誘導しなかった(
図26)。
【0132】
これら結果は、OKT3と比較して、PD-L1#6-CD137#54、Her2#3-7-CD137#54及びグリカン-CD137#54のbsAbが、ヒトPBMCとインキュベートした場合にバックグラウンドより高い顕著なサイトカイン放出を誘導しなかったということを示す。
【0133】
実施例21
この実施例では、アカゲザルにおける抗-PD-L1#6-CD137#54二重特異性抗体の薬物動態パラメータを説明する。
【0134】
二重特異性の抗-PD-L1#6-CD137#54抗体(体重1kg当たり5及び25mg)を、2つの群(1群当たり1匹のオス及び1匹のメス)のアカゲザルに静脈内ボーラス注射により投与した。注射後0.5、6、24、48、72及び144時間で、末梢血を採取した。抗体の血漿中濃度を、ELISAで決定した。マキシソーププレート(Invitrogen)を、CD137-Fc融合タンパク質(AP Biosciences社、1μg/mL)で被覆して、その後標準曲線として、段階希釈した血漿サンプルと抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbとを加えた。結合した抗体を、TMB基質を用いて、ビオチン化PD-L1-Fc融合タンパク質(AP Biosciences社)及びHRP標識ストレプトアビジンとで検出した。抗体の血漿中濃度は、内挿法によって算出した。PKパラメータは、PKSolverソフトウェア(Zhang,Huo,Zhou,& Xie,2010)を用いて算出した。抗-PD-L1#6-CD137#54 bsAbのt
1/2は、25mg/kg注射群及び5mg/kg注射群でそれぞれ約87及び49時間であり(
図27A~
図27B)、また実験期間中に、ALT/ASTのレベルの上昇は観察されなかった(図示せず)。
【0135】
【0136】
(表1)二重特異性抗体のモノクローナル抗体及び一本鎖可変断片(scFv)の規定されたCDR領域の配列
【0137】
【0138】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈において別段に明示されていない限り複数形が含まれる。すなわち、例えば「その方法」という記載は、本開示を一読するなどして当業者に明らかになることとなる、本明細書に記載のタイプの、1もしくは複数の方法及び/又は工程を含む。
【0139】
本明細書において言及した公開公報、特許、及び特許出願は、あたかも個々の公開公報、特許又は特許出願のそれぞれが参照によって援用されるように具体的にかつ別個に示すのと同程度に参照により本明細書において援用される。
【0140】
別段に規定しない限り、本明細書において用いた全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様又は同等である任意の方法及び物質を、本発明の実施又は試験において用いることが可能であるが、変形及びバリエーションが、本開示の趣旨及び範囲の範囲内に包含されるということが理解されるだろう。
【0141】
範囲:この開示全体にわたって、本発明の様々な態様が、範囲の形態で存在し得る。範囲の形態での記載は、単に便宜及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する固定された制限として解釈されるべきではないということを理解されたい。したがって、ある範囲についての記載は、可能性のある下位の範囲の全てのみならずその範囲内にある個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲についての記載は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等である具体的に開示された下位の範囲のみならず、その範囲の中の例えば1、2、2.1、2.2、2.7、3、4、5、5.5、5.75、5.8、5.85、5.9、5.95、5.99、及び6である個々の数を有するものとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0142】
本発明について、上記の実施例を参照しながら記載してきたが、変形及びバリエーションが、本発明の趣旨及び範囲内に包含されるということを理解されたい。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【配列表】
【国際調査報告】