(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】電圧を測定するための電極装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/257 20210101AFI20220905BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20220905BHJP
A61B 5/266 20210101ALI20220905BHJP
A61B 5/268 20210101ALI20220905BHJP
A61B 5/291 20210101ALI20220905BHJP
【FI】
A61B5/257
A61N1/04
A61B5/266
A61B5/268
A61B5/291
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021577027
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 AT2020060247
(87)【国際公開番号】W WO2020257836
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515001200
【氏名又は名称】クリストフ グーガー
【氏名又は名称原語表記】Christoph Guger
【住所又は居所原語表記】Pellndorf 10, A-4533 Piberbach, Austria
(71)【出願人】
【識別番号】515001211
【氏名又は名称】ギュンター エドリンガー
【氏名又は名称原語表記】Guenter Edlinger
【住所又は居所原語表記】Prankergasse 49, A-8020 Graz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ グーガー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター エドリンガー
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB23
4C053BB35
4C053JJ13
4C053JJ14
4C127LL03
4C127LL18
4C127LL19
4C127LL22
(57)【要約】
本発明は、人体の電圧および電流を測定するため、ならびに人体を電気刺激するための電極装置(100)に関し、この電極装置(100)は、-フレキシブルな支持体(12)を有する電極アレイ(10)を含み、特定数の電極(11)が、グリッド状に支持体(12)の同じ面に配置されており、支持体(12)の外側の縁部からスリットが、個々の電極(11)間に配置されており、電極装置(100)はさらに、-それぞれの電極(11)についてそれぞれ1つの切り抜き部(21)を有する、弾性中間層(20)を含み、それぞれの切り抜き部(21)を通して、導電性ジェルを充填するためにそれぞれ1つの中空部(210)が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の電圧および電流を測定するため、ならびに前記人体を電気刺激するための電極装置(100)であって、前記電極装置(100)は、
-フレキシブルな支持体(12)を有する電極アレイ(10)を含み、特定数の電極(11)が、グリッド状に前記支持体(12)の同じ面に配置されており、前記支持体(12)の外側の縁部からスリットが、個々の電極(11)間に配置されており、前記電極装置(100)はさらに、
-それぞれの前記電極(11)についてそれぞれ1つの切り抜き部(21)を有する、弾性中間層(20)を含み、それぞれの前記切り抜き部(21)を通して、導電性ジェルを充填するためのそれぞれ1つの中空部(210)が設けられている、
電極装置(100)。
【請求項2】
前記弾性中間層(20)が、被験者(1)の体部表面に配置するための第1接着面(22)および/または前記電極アレイ(10)の前記支持体(12)に配置するための第2接着面(23)を有する、ことを特徴とする、請求項1記載の電極装置(100)。
【請求項3】
前記弾性中間層(20)が、フレキシブルな電気絶縁材料、特に発泡プラスチックから形成されている、ことを特徴とする、請求項1または2記載の電極装置(100)。
【請求項4】
前記電極アレイ(10)の前記電極(11)が、高導電性であり、特に、金、白金、導電性ポリマーまたは他の電極材料から成る、ことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項5】
前記電極アレイ(10)の前記支持体(12)は、フレキシブルなプリント基板、特にFlexPrintとして構成されている、ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項6】
前記電極アレイ(10)が、足および/または胸郭および/または心臓に配置するために構成されている、ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項7】
湾曲した体部表面、特に被験者(1)の頭部に前記電極アレイ(10)が配置可能であるように、前記電極アレイ(10)の個々の前記電極(11)間に前記スリット(13)が構成されている、ことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項8】
前記支持体(12)に配置された増幅装置(30)が設けられており、前記電極(11)が、前記増幅装置(30)に接続されており、特に、前記増幅装置(30)が、100mmよりも小さい、特に10mmを下回る範囲の間隔で、前記電極アレイ(10)の最も近い電極(11)に配置されている、ことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項9】
前記電極アレイ(10)に接続されるスイッチングユニットが設けられており、前記スイッチングユニットは、前記電極(11)を介する前記人体の電気刺激と、前記電極(11)を用いた前記人体の電圧および電流の測定との間で切り換わるように構成されている、ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項10】
特に、被験者(1)の前記体部表面に前記電極装置(100)が配置された状態で、前記中空部(210)に導電性ジェルが充填される、ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項11】
特に被験者(1)の前記体部表面に前記電極装置(100)が配置された状態で、前記弾性中間層(20)が、前記電極アレイ(10)の前記支持体(12)によって覆われている、ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項12】
前記弾性中間層(20)と、前記電極アレイ(10)の前記電極(11)との間に配置されるサポート層が設けられており、
-前記サポート層は、前記弾性中間層(20)よりも小さな断面積を有し、
-前記サポート層は、接触接続開口部を有し、
前記接触接続開口部は、前記中間層(20)の前記切り抜き部(21)よりも小さな断面積を有し、
前記接触接続開口部は、特に被験者(1)の前記体部表面に前記電極装置(100)が配置された状態で、前記電極(11)と前記中空部(210)との間に、特に前記電極(11)と、前記中空部(210)に設けられている導電性ジェルとの間に導電接続が形成できるように前記切り抜き部(21)と一致する、
ことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の電極装置(100)。
【請求項13】
人体の体部表面に、特に請求項1から12までのいずれか1項記載の電極装置(100)を装着する方法であって、
a)前記電極(11)が、前記中間層(20)における前記切り抜き部(21)と一致するように、前記電極アレイ(10)の前記支持体(12)に前記中間層(20)の前記第2接着面(23)を配置し、
b)前記切り抜き部(21)によって設けられる前記中空部(210)が完全に充填されるように、前記電極アレイ(10)の前記支持体(12)とは反対側を向いた、前記中間層(20)の面に導電性ジェルを塗布し、特に、過剰なジェルを取り除くようにし、
c)前記人体の体部表面に前記中間層(20)の前記第1接着面(22)を配置する、方法。
【請求項14】
前記ステップa)、b)およびc)を逆順に実行する、ことを特徴とする、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載された、人体の電圧および電流を測定するため、ならびに人体を電気刺激するための電極装置と、請求項13に記載された、人体の体部表面に電極装置を装着する方法とに関する。
【0002】
従来技術からは、脳波または心臓活動を測定するための極めてさまざまな電極装置が、特に医療分野から公知である。このような公知の電極装置は、例えば、乾燥型電極、または例えば導電性ジェルもしくは導電性液体を用いて被験者の体部表面との接触接続を形成する電極を含み、これにより、被験者の体内の電気信号が検出できるようになる。しかしながら、すべての電極装置において、完璧な測定結果には、電極の正確なポジショニングと、被験者の測定対象の体部における良好な固定もしくは良好な静止と、体部表面への電極の完璧な電気的な接触接続とが必要である。このような完璧な接触接続もしくは良好な固定は、特に、湾曲した体部表面、例えば被験者の頭部では、形成するのが困難である。さらに、特に脳波検査の分野では、例えば、特定の脳領域における活動を位置特定できるようにすることを目的として、EEG測定データの可能な限りに良好な空間分解能を保証できるようにするために、検査対象の体部表面の、単位面積当たりの高い電極密度を利用できることが望ましい。しかしながら公知の電極装置では、個々の電極は、個々に配置しなければならないことが多いため、被験者の体部表面に数多くの電極をポジショニングすることには、大きな時間的コストが伴う。
【0003】
したがって本発明の課題は、上記について改善しかつ湾曲した体部表面であっても多数の電極を容易に配置できるようにする電極装置を提供することである。
【0004】
この課題は、本発明により、請求項1に記載された、人体の電圧および電流を測定するため、ならびに人体を電気刺激するための電極装置によって解決される。本発明では、電極装置が、
-フレキシブルな支持体を有する電極アレイを含み、特定数の電極が、グリッド状に支持体の同じ面に配置されており、支持体の外側の縁部からスリットが、個々の電極間に配置されており、電極装置はさらに、
-それぞれの電極についてそれぞれ1つの切り抜き部を有する、弾性中間層を含み、それぞれの切り抜き部を通して、導電性ジェルを充填するためのそれぞれ1つの中空部が設けられる、ように構成される。
【0005】
このように構成された電極装置により、有利には、1つの作業ステップにおいて、被験者の体部表面に多数の電極を同時に装着することができる。というのは、これらは、電極アレイの形態でつながって配置されているからである。被験者の体部表面との完璧な導電性の接触接続は有利には、それぞれ個別の電極についての切り抜き部に、体部表面との導電接続を形成するジェルが存在することによって保証される。個々の電極間に入り込む支持体のスリットにより、湾曲した体部表面であっても、電極アレイの適合化もしくは電極装置の装着が問題なく可能になる。
【0006】
被験者の体部表面における電極装置の特に迅速な取り付けを保証するためには、弾性中間層が、被験者の体部表面に配置するための第1接着面および/または電極アレイの支持体に配置するための第2接着面を有するように構成されていてよい。
【0007】
製造コストを同時に少なくさせながら、極めてさまざまに形成された体部表面に弾性中間層を特に良好に適合させることができるのは、弾性中間層が、フレキシブルな電気絶縁材料、特に発泡プラスチックから形成される場合である。
【0008】
接触抵抗および接触電圧を低減するために、電極アレイの電極が、高導電性であり、特に、金、白金、導電性ポリマーまたは別の電極材料から成るように構成可能である。
【0009】
数多くの電極についても特に容易に作製可能な支持体を提供できるのは、電極アレイの支持体が、フレキシブルなプリント基板、特にFlexPrintとして構成されている場合である。
【0010】
人体の電圧および電流を測定するため、ならびに人体を電気刺激するために電極装置を特に多重に使用することができるのは、電極アレイが、足および/または胸郭および/または心臓に配置するために構成されている場合である。
【0011】
極めてさまざまな体部表面における、特に信頼性の高い、電極装置の固定を行うことができるのは、湾曲した体部表面、特に被験者の頭部に電極アレイが配置可能であるように、電極アレイの個々の電極間にスリットが構成されている場合である。
【0012】
特に信頼性の高い測定結果を得ることができるのは、支持体に配置された増幅装置が設けられている場合であり、電極が、この増幅装置に接続されており、特に、増幅装置が、100mmよりも小さい、特に10mmを下回る範囲の間隔で、電極アレイの最も近い電極に配置されているように構成される。電極装置の支持体に増幅装置を配置することによって保証することができるのは、妨害的な影響によって測定結果が狂わせられないことである。というのは、特に電極が小さい場合には、測定結果を狂わせ得る大きなインピーダンスが発生し得るからである。
【0013】
人体の電流または電圧の測定と、人体の電気刺激との間の特に容易な切り換えは、電極アレイに接続されるスイッチングユニットが設けられている場合に保証可能であり、スイッチングユニットは、電極を介する人体の電気刺激と、電極を用いた人体の電圧および電流の測定との間で切り換わるように構成されている。
【0014】
特に迅速に装着される電極装置を提供できるのは、特に、被験者の体部表面に電極装置が配置された状態で、中空部に導電性ジェルが充填される場合である。
【0015】
特に材料を節約する、中間層の変形実施形態を提供できるのは、特に被験者の体部表面に電極装置が配置された状態で、弾性中間層が、電極アレイの支持体によって覆われる場合である。
【0016】
電極装置の特に容易に清浄化可能な変形実施形態であって、同時に電極と人体の体部表面との間の特に良好な導電性の接触接続を保証する変形実施形態を提供できるのは、弾性中間層と、電極アレイの電極との間に配置されるサポート層が設けられている場合であり、
-サポート層は、弾性中間層よりも小さな断面積を有し、
-サポート層は、接触接続開口部を有し、
接触接続開口部は、中間層の切り抜き部よりも小さな断面積を有し、
接触接続開口部は、特に被験者の体部表面に電極装置が配置された状態で、電極と中空部との間に、特に電極と、中空部に設けられている導電性ジェルとの間に、導電接続が形成できるように切り抜き部と一致する。
【0017】
本発明の課題はさらに、人体の体部表面に電極装置を装着する方法を提供することである。この課題は、本発明により、特許請求項13に記載された方法によって解決される。本発明では、
a)電極が、中間層における切り抜き部と一致するように、電極アレイの支持体に中間層の第2接着面を配置し、
b)切り抜き部によって設けられた中空部が完全に充填されるように、電極アレイの支持体とは反対側を向いた、中間層の面に導電性ジェルを塗布し、特に、過剰なジェルを取り除くようにし、
c)人体の体部表面に中間層の第1接着面を配置する、
ように構成される。
【0018】
本発明による方法は有利には、逆順に実行することも可能である。
【0019】
本発明の別の利点および実施形態は、以下の説明および添付の図から明らかになる。
【0020】
以下では添付の図面に基づいて、特に有利ではあるが制限的ではないと理解すべきである本発明の実施例を略示し、図面を参照して例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による電極装置の第1実施例を示す図である。
【
図2】被験者の頭部に配置された状態で、
図1の電極装置を示す図である。
【
図3】本発明による電極アレイの別の実施例を示す図である。
【
図4】本発明による電極アレイのさらに別の実施例を示す図である。
【
図5】本発明による電極アレイのさらに別の実施例を示す図である。
【
図6】本発明による電極アレイのさらに別の実施例を示す図である。
【
図7】本発明による電極アレイのさらに別の実施例を示す図である。
【0022】
図1には、本発明による電極装置100の第1実施例が示されている。電極装置100は、フレキシブルな、すなわち弾性的な、柔軟性のある支持体12を備えた電極アレイ10を含み、電極アレイ10の電極11は、フレキシブルな支持体12に配置されている。第1実施例では、電極11は、矩形に構成されており、支持体12の同じ面にグリッド状に配置されており、等間隔に分散されている。しかしながら電極11のこのような配置構成は、本発明の動作の仕方に必ずしも必要でなく、例えば、同心円の形状で、または電極11の互いに可変の間隔での別の配置構成も可能である。選択的には、電極11は、例えば、円形の断面積を有していてもよい。
【0023】
図1の第1実施例では、支持体12は、FlexPrintとしても知られているフレキシブルプリント基板である。このようなフレキシブルプリント基板は、例えばポリイミドから成りかつ例えば200μmよりも小さな厚さを有しかつ任意の形状および大きさに切断可能な基板である。導体路は、例えば、銅から作製可能であり、例えば28μmの厚さを有することができ、支持体12の両面に設けられていてよい。
【0024】
支持体12に配置されている電極11は、
図1に図示した実施例において、高導電性であり、金から作製されているが、白金または導電性ポリマーまたは別の公知の電極材料から形成されていてもよい。これとはさらに択一的に、電極11は、例えば0.03μmの金層によってめっきされた、例えばニッケルから形成されていてよい。支持体12の基板は、例えば、エポキシ樹脂または付加的なポリイミド層のような、その上に被着される複数のカバー層を有していてもよく、これらは電極11間の領域に被着される。フレキシブルな支持体12および電極11を備えた電極アレイ10の最大の厚さは、例えば、1mm未満であってよい。
【0025】
図1の実施例では、それぞれ4つの列を有する5つの行で20個の電極11が配置されている。電極11は、
図1の第1実施例では、2mm×2mmの大きさを有し、かつ5cm×5cmの大きさの支持体12に等間隔に配置されている。しかしながら支持体12の大きさも、支持体12に配置されている電極11の個数も別に選択することも可能である。電極11の個数が可変のこのような電極アレイ10の実施例は、
図3~
図7に示されており、これらについて以下でさらに詳しく説明する。
【0026】
支持体12にグリッド状に配置された電極11間には、支持体12の外側の縁部からスリット13が、個々の電極間に配置されている。図示した実施例では、スリット13は、支持体12の縁部から見て最も外側の、電極11の並びを通って延在している。しかしながらこれは必ずしも必要ではなく、スリット13をより短く選択することが可能であるが、支持体12の大きさに応じて、例えば電極の2つ以上の並びを通って延在していてもよい。有利には、これらのスリット13によって保証されるのは、フレキシブルプリント基板として構成されている支持体12が、被験者1の体部表面に適合できることであり、これにより、このような電極装置100は、
図2において被験者1の頭部2について示したように、湾曲した体部表面にも装着可能である。
【0027】
しかしながら本発明による電極装置100は、足、胸郭または心臓にも配置可能である。支持体10および中間層20の大きさならびにスリット13の長さは、この場合、配置のためにそれぞれ体部表面に適合される。
【0028】
本発明による電極装置100は、
図1にさらに見て取れるように、弾性中間層20を含み、この弾性中間層20は、電極アレイ10のそれぞれの電極11についてそれぞれ1つの切り抜き部21を有する。弾性中間層20の個々の切り抜き部21には、人体の体部表面との導電接続を形成するためにジェルが充填されるか、またはこれが充填可能である。
【0029】
図2に示したように、電極装置100が、被験者1の体部表面に配置される場合、電極アレイ10の支持体12は、弾性中間層20を覆う。第1実施例では、弾性中間層20は、フレキシブルであり、発泡性でありかつ電気絶縁性である材料(これは
図1ではプラスチックである)から形成されており、被験者1の体部表面に配置するための第1接着面22と、電極アレイ10の支持体12に配置するための第2接着面23とを有する。
【0030】
中間層20は、例えば、皮膚に優しい両面接着性の接着テープであってよく、例えば、この接着テープは、例えば約1700μmの厚さを有していてよい。電極11用の切り抜き部21は、例えば、打ち抜き加工またはレーザ切断加工によって中間層20に作製可能である。切り抜き部21は、電極11と同じ大きさを有しているか、またはわずかに大きくてよく、これにより、導電性ジェルと、被験者1の体部表面もしくは皮膚との間の接触接続面積が最大になり、同時に、電気的な短絡を回避するために、切り抜き部21間の間隔が十分に大きくなるようにする。
【0031】
切り抜き部21により、体部表面との可能な限りに良好な電気的な接触接続を形成するために導電性ジェルが充填可能な中空部210が設けられる。このような中空部210の容積は、それぞれの切り抜き部21の断面積と、中間層20の厚さとによって定められる。
【0032】
以下では、被験者1の体部表面に本発明による電極装置100を装着する、本発明の方法を説明する。
図1に見て取れるように、第1実施例では、中間層20は、出発状態において、すなわち、被験者1の体部表面に配置する前にまず、中間層20における切り抜き部21と一致する開口部26を有する第1カバー層24を有する。第1カバー層24は、中間層20の第1接着面22を覆い、この第1接着面22により、中間層20は、
図2に示されているように、被験者1の体部表面に、例えば被験者1の頭部2に配置される。第1カバー層24により、第1接着面22は、接着作用に影響を及ぼし得る汚れから保護される。
【0033】
図1にさらに見て取れるように、第1実施例では、弾性中間層20は、出発状態において、閉じられた第2カバー層25を有し、この第2カバー層25により、電極アレイ10の支持体12に中間層20を配置する第2接着面23が覆われる。第2カバー層25は、第2接着面23を汚れから保護するために使用される。
【0034】
人体の体部表面に電極装置100を装着する、本発明の方法ではまず、電極11が、中間層20における切り抜き部21と一致するように、電極アレイ10の支持体12に、中間層20の第2接着面23を配置し、これにより、電圧または電流が、切り抜き部21を通して測定可能であるようにする。中間層20の第2接着面23が、第2カバー層25によって覆われている場合には、中間層20と電極アレイ10の支持体12との間の接続を形成するためにまずこれを剥がす。
【0035】
次に、電極アレイ10の支持体12とは反対側を向いた、中間層20の面に導電性ジェルを塗布し、これにより、切り抜き部21によって設けられた中空部210を完全に充填し、引き続いて過剰なジェルを、例えばカードによって取り除く。
【0036】
引き続き、中間層20の第1接着面22を覆いかつ中間層20における切り抜き部21と一致する開口部26が配置されている第1カバー層24を、これが設けられている場合には、剥がす。これによって保証されるのは、導電性ジェルが切り抜き部21だけに存在し、これにより、電極11間の電気的な短絡が回避されることである。
【0037】
その後、
図2に示されているように、第1接着面22を有する中間層20を、被験者1の体部表面に配置する。電極11と体部表面との可能な限りに良好な固定および良好な接触接続を保証するために有利であるのは、被験者1の皮膚が、毛および剥がれた鱗屑を有しない場合である。従来技術から公知の電極装置には必要な、例えば研磨ジェルまたはアルコールによる皮膚のさらなる準備は、本発明による電極装置100では有利には不要である。
【0038】
これにより、電極11は、一緒に支持体10に配置されており、また導電性ジェルは、それぞれの切り抜き部21に別々に入れる必要もないため、数多くの電極11を迅速に取り付けることができる。
【0039】
電極装置を装着する、本発明による方法は、有利には、逆順に実行することも可能である。すなわち、中間層20をまず、人体の体部表面に配置し、引き続いて電極アレイ10の支持体12を中間層20に接続する。
【0040】
数多くの電極11を配置することにより、例えば、被験者1の脳を開かなくても、大量のEEGデータを取得することができ、これにより、例えば、被験者1の脳におけるダイポールを求める、もしくは正確に位置特定することも可能である。このことは例えば、脳におけるてんかんマーカを求め、これにより、考えられ得る手術治療についての脳領域を位置特定するのに特に有益である。
【0041】
第1カバー層24および第2カバー層25が、出発状態において中間層20に配置される場合、中間層20の作製プロセス時にすでに、切り抜き部21もしくは中空部210に導電性ジェルを注入してカバー層24、25によって閉じ込めることも可能であり、これにより、後からの注入が不要になる。この場合には、切り抜き部21から、もしくは中空部210からジェルが漏れ出ることを阻止する別のカバー層を第1カバー層24の上に配置することができる。
【0042】
使用した後、電極アレイ10から、もしくはフレキシブルな支持体12から中間層20を剥がして、電極アレイ10を清浄化することができ、これにより、電極アレイ10は引き続いて再使用可能である。
図2の実施例では、電極装置100は有利には、電極11に接続されている増幅装置30を含む。増幅装置30は、支持体12に配置されており、例えば100mmよりも小さな、特に10mmよりも小さな間隔で、
図2に示したように、電極アレイ10の最も近い電極11に配置されている。この実施例ではこの間隔は、約5mmである。面積の小さい電極11では、インピーダンスは比較的高く、このことは測定値に影響を及ぼし得るため、支持体12に配置されている増幅装置30は、特に有利である。というのはこれにより、このような外乱を回避できるからである。
【0043】
選択的には、電極装置100は、弾性中間層20と、電極アレイ10の電極11との間に配置されるサポート層を含んでいてもよい。このようなサポート層は、弾性中間層20よりも小さな断面積を有する。これによって保証されるのは、例えば、第2接着面23の十分に大きな領域が、露出したままになり、中間層20を電極アレイ10の支持体12に確実に接続もしくは接着できることである。
【0044】
サポート層は、中間層20の切り抜き部21よりも小さな断面積を有する接触接続開口部を有し、これにより、一方では、中空部210に存在する導電性ジェルを外に出さないようにし、これが漏れ出ないようにする。
【0045】
他方では、接触接続開口部が中間層20の切り抜き部21と一致するように、サポート層が中間層20と電極アレイ10との間に配置される場合には、接触接続開口部を通して、電極11と、中空部210もしくは中空部210に存在する導電性ジェルとの間で、ひいては被験者1の体部表面に対して導電接続が形成可能である。
【0046】
この関連において「一致する」とは、切り抜き部21の断面積のそれぞれ一部が、接触接続開口部の断面積と重なり、これにより、例えば、導電性ジェルが、それぞれの中空部210からサポート層を通ってそれぞれの電極11に接触接続することであると理解される。これは、例えば、接触接続開口部の断面積の中点が、切り抜き部の断面積の中点とそれぞれ一致する場合に達成可能である。
【0047】
さらに選択的には、弾性中間層20は、接着面22、23なしに、またはただ1つの接着面だけを有するようにも構成可能である。この場合、電極装置100は、例えば、粘着性医療接合材料により、被験者1の体部表面に固定可能である。この接合材料は、例えば、支持体12に固定されて、または支持体12を越えて張られ、関連する体部表面に接着され、これにより、中間層20も体部表面に確実に固定される。
【0048】
選択的には、本発明による電極装置100は、電極11を用いた測定と刺激との間の切り換えに使用されるスイッチングユニットを含んでいてもよい。これにより、人体の電圧および電流の測定を行うか、または関連する体部表面の刺激を行うことができる。
【0049】
図3~
図7には、本発明による電極アレイ10の考えられ得る構成を有する別の実施例が示されている。
【0050】
図3には、支持体12において、10個の正方形の電極11が、2つの行にそれぞれ5つの電極11で配置されている電極装置100が示されている。スリット13は、それぞれの行において、第2電極と第3電極との間に配置されている。
【0051】
図4には、支持体12において、16個の正方形の電極11が、4つの行にそれぞれ4つの電極11で配置されている電極装置100が示されている。スリット13は、支持体10の縁部において、第2電極と第3電極との間に配置されている。
【0052】
図5および
図6にそれぞれ示されているのは、支持体12において、4つの行にそれぞれ5つの電極11で20個の正方形の電極11を有する類似の電極装置100と、支持体12において、4つの行にそれぞれ6つの電極11で24個の正方形の電極11を有する類似の電極装置100とである。
【0053】
例えば、
図7に示されているように、8cm×8cmの大きさの支持体12に、円形の断面を有する64個の電極11をグリッド状に等間隔で分散させて配置することも可能である。この場合、中間層20における切り抜き部21および場合によっては第1カバー層24における開口部26は、円形の断面を有していてもよい。
図7では、支持体12のそれぞれの辺には、3つのスリット13が、すなわちそれぞれ2つの電極11の後に配置されており、これらのスリット13はそれぞれ、支持体12の縁部から見て最も外側の、電極11の並びを通って延在している。電極11は、
図7において、4mmの直径を有し、電極11の中心と、それぞれ隣接した電極11の中心との間隔は、10mmである。
【国際調査報告】