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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】多段ポンプ用ポンプシャフト
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/043 20060101AFI20220905BHJP
   F04D 1/06 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F04D29/043 Z
F04D1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577694
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067302
(87)【国際公開番号】W WO2021001191
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】102019004539.4
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】モリトール,カイ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ,ゾフィア
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130AB62
3H130AB69
3H130AC30
3H130BA22D
3H130BA24D
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EA06D
3H130EB01D
3H130ED01D
(57)【要約】
本発明は、多段ポンプ、特に、遠心ポンプ用ポンプシャフトに関する。ポンプシャフトは、ポンプシャフトの軸方向に作用する力を導くために緩和装置と係合するための周方向溝領域を備えている。ポンプシャフトは、溝領域がポンプシャフトの縦断面において軸方向に互いに離間した複数の溝を備えることによって特徴づけられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ポンプ(10)、特に,遠心ポンプ用ポンプシャフト(1)であって、
前記ポンプシャフト(1)の軸方向に作用する力(F)を、前記ポンプシャフト(1)に導くために、緩和装置(3)に係合するための周方向溝領域(2)を備え、
前記溝領域(2)は、前記ポンプシャフト(1)の縦断面で見て、軸方向において互いに離間した複数の溝(4)を有することを特徴とする、ポンプシャフト(1)。
【請求項2】
前記複数の溝(4)は、互いに分離したそれぞれの周方向溝(4)又は一条又は多条の閉ネジ山によって形成される、請求項1に記載のポンプシャフト(1)。
【請求項3】
前記複数の溝(4)の各溝基部(5)は、縦断面で見て、円弧形状を有するように構成される、先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)。
【請求項4】
円弧形状を有する前記溝基部(5)のそれぞれの半径は、互いに異なり、前記溝領域(2)の外縁に配置された前記溝(4)のこのような半径は、好ましくは、前記溝領域(2)の中心区域に配置された前記溝(4)の半径よりも大きい、請求項3に記載のポンプシャフト(1)。
【請求項5】
前記複数の溝(4)の前記溝基部(5)のそれぞれは、互いに異なる深さを有し、前記溝領域(2)の前記外縁に配置された溝(4)の溝基部深さは、好ましくは、前記溝領域(2)の中心区域に配置された溝(4)の溝基部深さよりも小さい、先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)。
【請求項6】
ポンプシャフト区域(6)の近くにおいて、前記複数の溝(4)は、前記ポンプシャフト(1)の長手方向において互いに分離され、前記ポンプシャフト区域(6)は、前記溝領域(2)に隣接する前記ポンプシャフト(1)の半径と一致する前記ポンプシャフト(1)の回転軸(R)からの半径を有する、先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)。
【請求項7】
前記複数の溝(4)は、前記ポンプシャフト(1)の縦断面で見て、鋸歯構造(7)を呈し、前記鋸歯構造(7)のそれぞれの歯先は、好ましくは、それらの全てが前記ポンプシャフト(1)の前記回転軸に対して同一の半径を有する、先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)。
【請求項8】
前記鋸歯構造(7)の前記複数の歯基部(5)の少なくとも1つは、前記ポンプシャフト(1)の前記回転軸(R)に関して、前記鋸歯構造(7)の少なくとも1つの他の歯基部(5)よりも大きい半径を有する、請求項7に記載のポンプシャフト(1)。
【請求項9】
より小さい半径を有する前記少なくとも1つの歯基部(5)は、縦断面で見て、より大きい半径を有する少なくとも1つの歯基部(5)によって前記溝領域(2)の外縁から分離され、より小さい半径を有する前記少なくとも1つの歯基部(5)は、好ましくは、縦断面で見て、より大きい半径を有する少なくとも1つの歯基部(5)によって、好ましくは、少なくとも2つの歯基部(5)によって、前記溝領域(2)の両外縁の各々から分離される、請求項8に記載のポンプシャフト(1)。
【請求項10】
緩和装置(3)の係合に機能しない緩和溝(8)が、前記緩和装置(3)と係合する前記溝領域(2)に隣接して前記ポンプシャフト(1)に設けられ、前記緩和溝(8)は、好ましくは、前記溝領域(2)の両方の外縁領域において前記ポンプシャフト(1)に設けられる、先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)。
【請求項11】
ポンプ、特に、遠心分離ポンプであって、
先行する請求項の1つに記載のポンプシャフト(1)と、
緩和装置(3)であって、前記緩和装置(3)の前記ポンプシャフト(1)の軸方向に作用する力(F)を前記ポンプシャフト(1)に導くために、溝領域(2)の複数の溝(4)に係合する、緩和装置(3)と、
を備える、ポンプ。
【請求項12】
前記緩和装置(3)は、前記ポンプシャフト(1)を周方向に取り囲むリング(9)であり、前記リング(9)の内周は、前記溝領域(2)の前記複数の溝(4)に係合するように形成され、前記リング(9)は、好ましくは、2つの部分リング片によって前記溝領域(2)内に係合するスプリットリングである、請求項11に記載のポンプ(10)。
【請求項13】
前記緩和装置(3)は、縦断面で見て、前記溝領域(2)の前記溝(4)の少なくとも1つ又は全てに対して対応する溝(4)に係合するためのネジ山要素(11,12)を有する、請求項11又は12の1つに記載のポンプ(10)。
【請求項14】
前記複数のネジ山要素の少なくとも1つ(12)は、半径方向において短くなっており、すなわち、前記ポンプシャフト(1)の回転軸に関して、他のネジ山要素(11)ほど深く入り込まず、このような半径方向において短くなったネジ山(12)は、好ましくは、前記溝領域(2)の前記縁に配置された溝(4)内に係合する、請求項13に記載のポンプ(10)。
【請求項15】
前記溝領域(2)の前記2つの縁における前記溝(4)に係合する前記ネジ山要素(11,12)は、前記半径方向に短くなったネジ山要素(12)である、請求項13又は14に記載のポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段ポンプ用ポンプシャフト及びこのようなポンプシャフトを有するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ、特に、遠心ポンプでは、ポンプ移送される流体は、回転シャフトによって吸い込まれ、シャフトによって駆動されるインペラによって移送される。
【0003】
多段ポンプでは、インペラの入口開口に起因して、より低い圧力、従って、より小さい力が軸方向においてインペラの吸込側に形成されるので、軸力が常に吸込側の方向に生じる。インペラのこの軸力は、シャフトに導かれる。すなわち、シャフトがケーシング内に軸方向に静止して保持されるので、緩和装置によって、流体的に生じる反力をポンプシャフト内に導くことができる。
【0004】
多段ポンプでは、緩和装置は、スプリットリング及びポンプシャフトの保持リング溝によってポンプシャフトに接続されている。この溝内への係合によって、ケーシングに対するポンプシャフトの望ましくない軸方向変位が防がれる。
【0005】
この構成の欠点は、シャフトの破損がこの箇所において稀に生じることである。これは、保持リング溝に起因するシャフトの特有の弱点をはっきりと示すこととなる。動力生成分野では、多段ポンプをいったん始動して再始動する運転がここ数年ますます一般的になってきているので、保持リング溝に大きな機械的応力が作用し、これによって、切り替えられる運転条件下において耐久性のあるポンプの有効性に関するますます大きくなる深刻な問題が顕在化してきている。従って、大抵の場合、疲労破損のために必要な安全因子がもはや得られないこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この欠点を解消することにある。この目的は、請求項1の全ての特徴を有するポンプシャフト又は請求項11に記載のポンプによって達成される。本発明は、上記の弱点を著しく改良し、とりわけ、ポンプシャフトの著しく改良された耐久性をもたらすものである。本発明の更に有利な実施形態は、従属請求項に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、多段ポンプ、特に,遠心ポンプ用ポンプシャフトが、ポンプシャフトの軸方向に作用する力をポンプシャフトに導くために、緩和装置に係合するための周方向溝領域を備えることが提示される。このポンプシャフトは、溝領域が、ポンプシャフトの縦断面で見て、軸方向において互いに離間した複数の溝を有することによって特徴づけられる。
【0008】
先行する周知の先行技術と対照的に、緩和装置と係合するための保持リング溝は、もはや単一溝によって形成されず、代わって、ポンプシャフトの縦断面の方向から見て、互いに隣接して配置された複数の溝から形成される。ポンプシャフトの軸方向において互いに隣接して配置された複数の溝を設けることによって、ポンプシャフト内に深く入り込むことになる1つのみの溝の場合と比べてポンプシャフトの溝領域内における断面積がより大きくなるように構成することが可能である。その結果、ポンプシャフトが溝領域において破断する傾向が効果的に弱められる。また、この領域における平均応力も同様に低減される。
【0009】
先行技術と対照的に、大きい軸力が、シャフトの1つの大きな溝ではなく複数のより小さい溝に加えられ、その向きがすぐに反対方向に切り替えられる。この力の向きが切り替えられることによって、シャフトの溝半径部に高応力が生じる。多数の溝の場合、軸力のわずかな部分のみがその向きを切り換えて各溝に加えられ、残りの軸力は、該溝に加えられない。これによって、溝底の応力が著しく低減される。従って、この溝の新規の設計によって、シャフトの溝底(又は溝基部)における最大応力が著しく低減し、具体的には、略半減する。
【0010】
また、新規のより小さな複数の溝によって、溝に係合する緩和装置とシャフトとの間の接触面を増大させるすることも可能である。従って、接触面の面圧が著しく低減される。初期の段階の計算によれば、これによって、接触面の面圧が略半分に低減される。
【0011】
複数の溝は、好ましくは、互いに分離したそれぞれの周方向溝又は一条又は多条の閉ネジ山によって形成されるとよい。
【0012】
ここでは、複数の溝がそれらの溝基部間に溝領域の外縁の高さに対応する高さを有する少なくとも1つの頂部を画定することが提示される。換言すれば、複数の溝の各々は、ここでは、溝間に位置する(溝基部に対する)少なくとも1つの隆起部分が溝領域の隣接領域の高さと同一レベルの高さに配置されることを意味する。従って、溝間に配置された頂部は、溝領域の外縁よりも低いレベルで配置されていない。
【0013】
本発明の有利な修正形態によれば、複数の溝の各溝基部は、縦断面で見て円弧形状を有するものとして構成されることが提示される。これによって、溝底に係合する要素が高い軸力を伝達することができる有利な凹部が得られることとなる。
【0014】
ここでは、円弧形状を有する溝基部のそれぞれの半径は、互いに異なり、溝領域の外縁に配置された溝のこのような半径は、好ましくは、溝領域の中心区域に配置された溝の半径よりも大きいことが提示される。
【0015】
従って、溝領域の縁に配置された溝は、縦断面で見て、溝領域に配置された他の溝基部よりも大きい半径の円弧形状を有する溝基部を備えることができる。ここで、もしもより大きい半径の円弧形状を有する溝基部を備える溝がポンプのピストンに面する溝領域の側又は縁に配置されるのであれば、特に好ましい、
【0016】
溝基部の円弧形状の半径が種々異なることにとによって、力を比較的均一にポンプシャフトに導くことが可能になる。
【0017】
本発明の更に任意選択的な展開形態によれば、複数の溝の溝深さは、互いに異ななり、好ましくは、溝領域の外縁に配置された溝の溝深さは、好ましくは、溝領域に配置された他の溝の溝深さよりも小さいことが提示される。ここで、もしも溝領域のピストンに面する側に配置された溝の溝深さがより小さいのであれば、有利である。しかしながら、(縦断面の方向から見て)溝領域の中心区域の溝基部よりも深くない溝基部を有する溝が溝領域の縁に設けられることも提示される。
【0018】
本発明の変更形態によれば、ポンプシャフト区域の近くにおいて、複数の溝は、ポンプシャフトの長手方向において互いに分離され、ポンプシャフト区域は、溝領域に隣接するポンプシャフトの半径と一致するポンプシャフトの回転軸からの半径を有することが提示される。
【0019】
更に好ましい実施形態によれば、複数の溝は、ポンプシャフトの縦断面で見て、鋸歯構造を呈し、鋸歯構造のそれぞれの歯先は、好ましくは、それらの全てがポンプシャフトの回転軸に対して同一の半径を有している。ここで、この鋸歯構造の急峻なフランクは、ポンプシャフトに導かれる力がピストンからもたらされるので、ポンプのピストンの方に向けられている。
【0020】
DIN2781による鋸歯ネジ山と同様の溝が、特に適している。何故なら、半径力が溝に係合する緩和装置に殆ど加えられないからである。従って、このような鋸歯形状は、本発明における負荷状況に対して理想的に構成される。
【0021】
加えて、本発明によれば、鋸歯構造の複数の歯基部の少なくとも1つは、ポンプシャフトの回転軸に関して、鋸歯構造の少なくとも1つの他の歯基部よりも大きい半径を有することが更に提示される。
【0022】
また、より小さい半径を有する少なくとも1つの歯基部は、縦断面で見て、より大きい半径を有する少なくとも1つの歯基部によって溝領域の外縁から分離され、より小さい半径を有する少なくとも1つの歯基部は、好ましくは、縦断面で見て、より大きい半径を有する少なくとも1つの歯基部によって、好ましくは、少なくとも2つの歯基部によって溝領域の両外縁の各々から分離されることも提示される。
【0023】
本発明の更なる発展形態によれば、緩和装置の係合に機能しない緩和溝が、緩和装置と係合する溝領域に隣接してポンプシャフトに設けられ、緩和溝は、好ましくは、溝領域の両方の外縁領域においてポンプシャフトに設けられることが提示される。
【0024】
これによって、シャフトの溝内の応力が低減され、ポンプシャフトの更に耐性のある設計が得られる。
【0025】
ここでは、少なくとも緩和溝が溝領域の溝と同様の深さを有することが提示される。
【0026】
ここでは、少なくとも1つの緩和溝は、その縦断面において、該緩和溝が溝領域から離間した溝側において急峻な傾きを有し、溝領域に面する溝側において緩慢な傾斜を有するように構成されてもよい。
【0027】
本発明は、ポンプ、特に、遠心分離ポンプであって、前述の別の実施形態の1つに記載のポンプシャフトと、緩和装置であって、該緩和装置のポンプシャフトの軸方向に作用する力をポンプシャフトに導くために、溝領域の複数の溝に係合する、緩和装置と、を備える、ポンプに関する。
【0028】
ここでは、緩和装置は、ポンプシャフトを2つの部分リング片によって周方向に取り囲むスプリットリングであり、該リングの内周は、溝領域の複数の溝に係合するように形成されることが提示される。しかしながら、緩和装置は、スプリットリングに代わって、同様に設計された一部品リングであってもよい。ここでは、同様のネジ山も考えられる。
【0029】
本発明の任意選択的な修正形態によれば、緩和装置は、縦断面で見て、溝領域の溝の少なくとも1つ又は全てに対して対応する溝に係合するためのネジ山要素を有することが提示される。
【0030】
複数のネジ山要素の1つは、半径方向において短くなっており、すなわち、ポンプシャフト回転軸に関して、他のネジ山要素ほど深く入り込まず、このような半径方向において短くなったネジ山は、好ましくは、溝領域の縁に配置された溝内、特に、ピストンの最も近くに配置された溝領域の溝内に係合することが提示される。
【0031】
互いに隣接して溝領域の2つの溝内に係合する2つの半径方向に短くなったネジ山要素は、溝領域の縁に配置され、好ましくは、溝領域のピストンから離れる方を向く側に配置されることも提示される。
【0032】
ピストンは、ここでは、ポンプシャフトに導かれる力と向き合ってこの力をスプリットリングに加える溝領域の側に配置される。
【0033】
好ましくは、ネジ山要素は、溝領域の2つの縁における溝に係合する半径方向に短くなったネジ山であることが提示される。従って、(縦断面で見た時に)両方の縁区域において、緩和装置の両縁領域が少なくとも1つの半径方向に短くなったネジ山を備え、短くなっていないネジ山要素が緩和装置の中心区域にのみ配置されることも可能になる。
【0034】
ネジ山要素が円弧形状を有するように構成され、特に、半径方向に短くなったネジ山要素の一部又は全てが半径方向に短くなっていないネジ山要素の直径よりも大きい直径を有することも提示される。
【0035】
溝領域の外縁に配置された溝内に係合するネジ山要素の直径は、好ましくは、大きくなるように構成されるとよい。また、このような大きい直径を有するネジ山要素をピストンと向き合う溝領域の縁に配置された溝内に係合させることも可能である。
【0036】
本発明の他の詳細、利点、及び特徴は、図面に基づく以下の説明を参照することによって、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来のポンプの縦断面図である。
図2図1の領域Aの拡大詳細図である。
図3】本発明によるポンプの保持リング溝の領域の周りの拡大詳細図である。
図4図3の領域Zの拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、ポンプ10のポンプシャフト1に沿った縦断面を示している。ポンプシャフト1を回転させることによって、移送されるべき流体を移送させるインペラ102が回転する。入口101及び一列に並んだ複数のポンプ段が配置されている。各ポンプ段は、ポンプシャフト1を中心として回転するインペラ102を備えている。
【0039】
圧送された流体は、最下流に位置するインペラ102に従って出口103を通ってポンプ10から流出される。
【0040】
流体が圧送されると、ポンプシャフトと平行の力Fが生じ、この力Fは、ピストン104を介してポンプシャフト1に導かれる。その結果、ポンプ10のポンプシャフト及び他の構成要素の望ましくない相対運動が防がれる。
【0041】
ここで、力Fは、ポンプシャフト1の縮小断面部に導かれるが、この縮小断面部内に緩和装置3が係合している。従って、緩和装置3は、ポンプシャフトの軸方向に移動することができない。しかしながら、ポンプシャフト1の回転は、これによって影響されない。
【0042】
ポンプ10のポンプシャフト1の溝は、軸スラストFを受けるという事実に起因して著しく大きい応力を受け、この理由から、シャフト破損が生じやすい箇所でもある。
【0043】
図2は、図1の領域Aの拡大図を示している。この図では、溝4の周りの領域が拡大して示されている。図から分かるように、典型的にはピストン104によって緩和装置3に伝達される軸スラストF、すなわち、ポンプシャフト1に導かれる力Fは、溝領域2を介してポンプシャフト1に導かれる。
【0044】
図3は、本発明による溝領域2の実施形態を示している。溝領域2には、力Fを受けるための複数の溝4が設けられている。本明細書では、緩和装置3は、緩和装置3のネジ山要素がそれぞれの溝4に係合するように、対応設計されている。この係合によって、力Fは、ポンプシャフト1の断面内に特に深く入り込むことなく加えられるように変更される。これは、この箇所に1つのみの溝しか有しない実施例と対照的に著しく増大された安定性を有するポンプシャフト1をもたらすので、有利である。
【0045】
緩和装置は、必ずしも溝領域の100%にわたって配置されるように構成される必要がないことに留意されたい。
【0046】
図4に示されるように、もし緩和装置3の(関連する溝5と係合するための)ネジ山要素11,12が、縦断面の方向から見て、それらの外縁に向かって半径方向に短くなったネジ山要素12を有するのであれば、力Fを均一にポンプシャフト1に加えることができるので有利である。ここでは、これは、(ポンプシャフト1の縦断面の方向において)鋸歯設計7を有するものとして示されている。
【0047】
溝領域2の外縁における溝5は、ここでは、全ての他の溝と正確に同一の深さを有するように設計されている。しかしながら、溝領域2の縁、特に、ピストン104に面する縁における溝を他の溝4よりも浅くすることも可能である。
【0048】
特に、ピストン4に面する縁に配置された溝5の円弧形状を有する溝基部は、中心区域に配置された他の溝4の溝基部の半径よりも大きい半径を有している。
【0049】
従って、2つの右側のネジ山要素12が半径方向において短くされると、シャフト1の2つの対応する溝5は、該溝5の深さを浅くすると共に該溝5の溝基部5の半径を大きくするように構成される必要があることが規定されてもよい。これによって、シャフト1の溝4への応力が低減されることとなる。
【0050】
更に、緩和溝8が、特に溝領域2の外縁の近傍に直接隣接して設けられている。しかしながら、このような緩和溝8は、緩和装置3自体に設けられてもよい。緩和溝8は、ピストン104に向かって大きくなる凹部であり、これによって、ネジ山要素11,12の各々が各関連する溝4内に同じ大きさの力を導くことが可能になる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】