(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ニューロキニン-1アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07D 471/10 20060101AFI20220905BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20220905BHJP
C07H 15/26 20060101ALI20220905BHJP
A61K 31/438 20060101ALI20220905BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20220905BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20220905BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220905BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220905BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220905BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220905BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220905BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20220905BHJP
C07F 9/6561 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C07D471/10 101
A61K31/661
C07H15/26 CSP
A61K31/438
A61K31/7028
A61P11/00
A61P29/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61P25/32
A61P25/08
A61P25/30
A61P1/04
A61P9/10
A61P3/04
A61P3/10
A61P25/04
A61P13/00
C07F9/6561 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577929
(86)(22)【出願日】2020-06-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2020098460
(87)【国際公開番号】W WO2020259675
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201910572272.1
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911375262.5
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(71)【出願人】
【識別番号】521567756
【氏名又は名称】上海森輝医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SENHUI MEDICINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 4, No.14 Building, No.3728 Jinke Road, Free Trade Pilot Zone, Pudong New Area, Shanghai 201203, China
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 建
(72)【発明者】
【氏名】祝 令建
(72)【発明者】
【氏名】鄒 洋
(72)【発明者】
【氏名】唐 応剛
【テーマコード(参考)】
4C057
4C065
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ55
4C065AA15
4C065BB04
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH04
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL04
4C065PP03
4C065PP07
4C065PP09
4C065PP10
4C065PP15
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086DA38
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC35
4C086ZC39
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB21
4H050AB22
4H050AC80
4H050AC90
4H050WA13
4H050WA23
(57)【要約】
式(II)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩、およびその製造方法。式(II)で表される化合物は、ニューロキニン-1受容体のアンタゴニストであり、ニューロキニン-1受容体に関連する疾患の治療に使用することができ、薬物の溶血作用を回避し、薬物投与の副作用を低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
[式中、
Xは、水素、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)OA
mR
3、-C(O)NR
4A
mR
3、-A
m[C(R
1)(R
2)]C(O)OA
nR
3、-A
mOC(O)[C(R
1)(R
2)]A
nR
3、-A
mC(O)NR
4A
nR
3、-A
mNR
4C(O)A
nR
3および-A
mR
5からなる群から選択され、前記ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
Yは、水素、-C(O)OA
mR
3、-C(O)NR
4A
mR
3、-A
m[C(R
1)(R
2)]C(O)OA
nR
3、-A
mOC(O)[C(R
1)(R
2)]A
nR
3、-A
mC(O)NR
4A
nR
3、-A
mNR
4C(O)A
nR
3および-A
mR
5からなる群から選択される;
Aは、-C(R
1)(R
2)(B)
p-および-(B)
qC(R
1)(R
2)-からなる群から独立して選択される;
R
1、R
2およびR
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
3は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ポリ(エチレンオキシ)
【化2】
、ポリ(オキシエチレンオキシ)
【化3】
、OPO(R
6)
2、PO(R
6)
2、OSO
2(R
6)
2、SO
2(R
6)
2、OC(O)R
6およびC(O)OR
6からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
5は、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、OSO
2R
7、OC(O)R
7、SR'、
【化4】
、SO
2R’およびNR'(R'')からなる群から選択される;
R
6のそれぞれは、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から独立して選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
7のそれぞれは、アルキル、ヒドロキシル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から独立して選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R'およびR''は、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアシルからなる群からそれぞれ独立して選択される;
Bのそれぞれは、O、NおよびSC(O)からなる群からそれぞれ独立して選択される;
m、nおよびoは、1~10からなる群からそれぞれ独立して選択される;
pおよびqは、0および1からなる群からそれぞれ独立して選択される;および
XおよびYは、同時に水素ではない]
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩、またはその立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体、またはその重水素化物。
【請求項2】
Xが、水素、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)O[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
3、-C(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
m[C(R
1)(R
2)]C(O)[(O)
qC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3および-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
5からなる群から選択され、前記シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシル、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換され;
Yが、水素、-C(O)O[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
3、-C(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)[(O)
qC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3および-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mR
5からなる群から選択され;および
XおよびYは、同時に水素ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが、-C(O)O[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-C(O)NR
4[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-[C(R
1)(R
2)O]
mC(O)[C(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)]
mC(O)[OC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[C(R
1)(R
2)]
nR
3、[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[OC(R
1)(R
2)]
nR
3、[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[NC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3および-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
5からなる群から選択され;Xが、水素または3~6員のヘテロシクリルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、-C(O)O[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-C(O)NR
4[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-[C(R
1)(R
2)O]
mC(O)[C(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)]
mC(O)[OC(R
1)(R
2)]
nR
3および-[C(R
1)(R
2)]
nR
5からなる群から選択され、Yが、水素である、請求項1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
R
3が、水素、ポリ(オキシエチレンオキシ)
【化5】
、ポリ(エチレンオキシ)
【化6】
、OPO(R
6)
2、PO(R
6)
2、OSO
2(R
6)
2、SO
2(R
6)
2、OC(O)R
6およびC(O)OR
6からなる群から選択され、R
6が、請求項1において定義されたとおりである、請求項1~4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
R
3が、OPO(R
6)
2から選択され、R
6が、ヒドロキシル、C
1-6アルキル、C
3-7シクロアルキル、C
1-6アルコキシおよび3~7員のヘテロシクリルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
m=1、2、3または4である、請求項1~4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
R
1およびR
2が、水素、C
1-6アルキルおよびC
3-7シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される、請求項1~3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
m=1、2、3または4であり、n=1、2、3または4であり、o=1~8である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式(II)で示される化合物が、
【化7】
[式中、m=1、2、3または4であり;R
1およびR
2は、請求項1において定義されたとおりである]
またはその薬学的に許容される塩、またはその立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体である、請求項1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
式(II)で示される化合物が、以下:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
またはその薬学的に許容される塩、その立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体、またはその重水素化物からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~11のいずれか1つに記載の化合物の少なくとも1つ、ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
患者の生理的障害、状態または疾患の治療用薬剤の製造における、請求項1~11のいずれか1つに記載の化合物または請求項12に記載の医薬組成物の使用であって、ここで、生理的障害、状態または疾患が、呼吸器疾患、咳、炎症性疾患、皮膚障害、眼科障害、うつ病、不安症、恐怖症、双極性障害、アルコール依存症、神経に重大な影響を与える薬物乱用、てんかん、侵害受容、精神病、統合失調症、アルツハイマー病、エイズ関連認知症、タウン病、ストレス関連障害、強迫性(obsessive/compulsive)障害、過食症、神経性食欲不振症、多食症、躁病、月経前症候群、胃腸機能障害、アテローム性動脈硬化症、線維性障害、肥満、2型糖尿病、頭痛、神経障害性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛症候群、膀胱障害、泌尿生殖器障害または嘔吐または悪心である、使用。
【請求項14】
喘息、嘔吐、悪心、うつ病、不安症、咳および片頭痛からなる群から選択されるものを治療するために使用される、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、神経ペプチドニューロキニン-1(NK1またはNK-1)受容体のアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
タキキニンは、ニューロキニン受容体のペプチドリガンドである。NK1、NK2およびNK3などのニューロキニン受容体はさまざまな生物学的プロセスに関与している。それらは、哺乳動物の神経系および循環器系、そして周囲の組織に見られる。したがって、そのような受容体の調節は、哺乳動物のさまざまな疾患の可能性がある治療または予防のために研究されてきた。典型的なニューロキニン受容体アゴニストおよびそれらの使用として、US5760018(1998)(疼痛、炎症、片頭痛および嘔吐)、US5620989(1997)(疼痛、痛覚および炎症)、WO95/19344(1995)、WO 94/13639(1994)およびWO 94/10165(1994)が挙げられる。他のタイプのNK1受容体アンタゴニストとして、Wu et al.、Tetrahedron 56、3043-3051(2000);Rombouts et al.、Tetrahedron Letters 42、7397-7399(2001);およびRogiers et al.、Tetrahedron 57、8971-8981(2001)が挙げられる。
【0003】
US7049320は、遊離塩基または薬学的に許容される塩の形態でありえ、非経口投与用製剤に適している、有利な治療および薬理学的特性ならびに良好な代謝安定性を有する、有効で選択的なNK1アンタゴニストである(5S,8S)-8-[{(1R)-1-(3,5-ビス-(トリフルオロメチル)フェニル)-エトキシ}-メチル]-8-フェニル-1,7-ジアザスピロ[4.5]デク-2-オン(式(I)で示される化合物)を提供する。
【化1】
【0004】
US9101615は、式(I)で示される化合物のプロドラッグ、すなわち、式(I)で示される化合物の遊離アミン(または2つのアミン)が、-Yおよび-Xから選択される基によって置換されるプロドラッグおよびその塩を提供し、ここで、Yは、-P(O)(OH)2、-S(O)n1R1、-C(O)(C1-6アルキル)X、-C(O)(C1-6アルキル)(アリール)および-C(O)OR4からなる群から選択され;Xは、-NR2R3、-P(O)(OH)2および-S(O)n1R1からなる群から選択され;R1は、HまたはC1-6アルキルであり;R2は、HまたはC1-6アルキルであり;R3は、HまたはC1-6アルキルであり;R4は、HまたはC1-6アルキルであり;n1は、0-4である。プロドラッグは、それを必要とする患者を治療するために、適切な液体製剤(送達のための非経口担体を含むか、または含まない)で使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
別の態様では、薬物誘発性溶血は、薬物が人体に入った後の免疫因子によって引き起こされる赤血球の大規模な破壊に起因する。臨床的に現れる溶血症状は、貧血、黄疸、醤油様尿などである。薬物性溶血性貧血は、次の3つのタイプに分類することができる:(1)薬物誘発性免疫、抗体媒介性溶血反応につながる;(2)遺伝的酵素欠損症(たとえば、G6PD欠損症)を伴う赤血球に対する薬物の作用;(3)異常ヘモグロビンに対する薬物誘発性溶血反応。このような病気を治療するための鍵は、合併症の発生を防ぐために、関連する薬の使用を停止し、溶血の発生を制御することである。生理的pHでの式(I)で示される化合物の溶解度が低いという問題を解決するために、研究者は、カプチゾール、プロピレングリコールおよびエタノールを含む共溶媒ベースの製剤を使用して、化合物1の溶解度を大幅に改善したが、共溶媒ベースの製剤は、静脈内投与後に有意な溶血作用を示す。CN102573475は、ポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレートと中鎖トリグリセリドを含む改良された製剤を開示する。しかしながら、式(I)で示される化合物がリン酸塩を含むプロドラッグとして調製されたとしても、医薬組成物の溶血作用はまだ完全には解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、さまざまな生理的障害、状態および疾患の治療に有効であり、副作用が最小限である、新しいNK1アンタゴニストプロドラッグ化合物を提供する。
【0007】
発明の概略
本開示は、式(II):
【化2】
[式中、
Xは、水素、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)OA
mR
3、-C(O)NR
4A
mR
3、-A
m[C(R
1)(R
2)]C(O)OA
nR
3、-A
mOC(O)[C(R
1)(R
2)]A
nR
3、-A
mC(O)NR
4A
nR
3、-A
mNR
4C(O)A
nR
3および-A
mR
5からなる群から選択され、前記ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
Yは、水素、-C(O)OA
mR
3、-C(O)NR
4A
mR
3、-A
m[C(R
1)(R
2)]C(O)OA
nR
3、-A
mOC(O)[C(R
1)(R
2)]A
nR
3、-A
mC(O)NR
4A
nR
3、-A
mNR
4C(O)A
nR
3および-A
mR
5からなる群から選択される;
Aは、-C(R
1)(R
2)(B)
p-および-(B)
qC(R
1)(R
2)-からなる群から独立して選択される;
R
1、R
2およびR
4は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
3は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ポリ(オキシエチレンオキシ)
【化3】
、ポリ(エチレンオキシ)
【化4】
、OPO(R
6)
2、PO(R
6)
2、OSO
2(R
6)
2、SO
2(R
6)
2、OC(O)R
6およびC(O)OR
6からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
5は、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、OSO
2R
7、OC(O)R
7、SR'、
【化5】
、SO
2R’およびNR'(R'')からなる群から選択される;
R
6のそれぞれは、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から独立して選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
7のそれぞれは、アルキル、ヒドロキシル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から独立して選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R'およびR''は、水素、ヒドロキシル、アルキル(好ましくは、限定的ではないが、メチル、エチルまたはイソプロピルなどのC
1-12アルキルからなる群から選択される)、アルコキシ(好ましくはC
1-12アルコキシからなる群から選択される)、アルケニルおよびアシルからなる群からそれぞれ独立して選択される;
Bは、O、NおよびSC(O)からなる群からそれぞれ独立して選択される;
m、nおよびoは、1~10からなる群からそれぞれ独立して選択され、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10でありうる;
pおよびqは、0および1からなる群からそれぞれ独立して選択される;および
XおよびYは、同時に水素ではない]
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩、またはその立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体、またはその重水素化物を提供する。
【0008】
本開示の式(II)で示される化合物は、親薬物である式(I)で示される化合物よりも、より良好な溶解度を有し、したがって、静脈内投与に適切である。さらに、上記の化合物は、静脈内製剤に処方された後、人体に入るときに生理学的条件下で分解されて親薬物を放出するが、これは薬物の放出を遅らせ、薬物の放出期間を延長する。
【0009】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Xは、水素、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)O[C(R1)(R2)(O)p]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]mR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)[C(R1)(R2)(O)p]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]m[C(R1)(R2)]C(O)[(O)qC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]nR3および-[C(R1)(R2)(O)p]mR5からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル(好ましくは、限定的ではないが、メチル、エチルまたはイソプロピルなどのC1-12アルキルからなる群から選択される)、シクロアルキル(好ましくはシクロヘキシルおよびシクロペンタニルなどのC1-12シクロアルキルから選択される)、アルコキシル(好ましくはC1-12アルコキシから選択される)、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換され;
Yは、水素、-C(O)O[C(R1)(R2)(O)p]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]mR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)[C(R1)(R2)(O)p]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)[(O)qC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]nR3および-[C(R1)(R2)(O)p]mR5からなる群から選択され;および
XおよびYは、同時に水素ではない。
【0010】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R1)(R2)]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]mR3、-[C(R1)(R2)O]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)N]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[NC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]nR3および-[C(R1)(R2)(O)p]nR5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルである。
【0011】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R1)(R2)]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]mR3、-[C(R1)(R2)O]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)N]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[NC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)NR4 [C(R1)(R2)(O)p]nR3および-[C(R1)(R2)(O)p]nR5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルであり;m、nおよびoは、1、2、3、4、5および6からなる群からそれぞれ独立して選択され;pおよびqは、0からそれぞれ独立して選択される。
【0012】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R1)(R2)]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]mR3、-[C(R1)(R2)O]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)N]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3、[C(R1)(R2)N]mC(O)[NC(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)(O)p]mC(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]nR3および-[C(R1)(R2)(O)p]nR5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルであり;m、nおよびoは、1、2、3、4、5および6からなる群からそれぞれ独立して選択され;pおよびqは、1からそれぞれ独立して選択される。
【0013】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R1)(R2)]R3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)O]C(O)[C(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)]C(O)[OC(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)N]C(O)[C(R1)(R2)]R3、[C(R1)(R2)N]C(O)[OC(R1)(R2)]R3、[C(R1)(R2)N]C(O)[NC(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)(O)p]C(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]R3および-[C(R1)(R2)(O)p]R5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルである。
【0014】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R1)(R2)]2R3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]2R3、-[C(R1)(R2)O]2C(O)[C(R1)(R2)]2R3、-[C(R1)(R2)]2C(O)[OC(R1)(R2)]2R3、-[C(R1)(R2)N]2C(O)[C(R1)(R2)]2R3、[C(R1)(R2)N]2C(O)[OC(R1)(R2)]2R3、[C(R1)(R2)N]2C(O)[NC(R1)(R2)]2R3、-[C(R1)(R2)(O)p]2C(O)NR4[C(R1)(R2)(O)p]2R3および-[C(R1)(R2)(O)p]2R5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルである。
【0015】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Xは、-C(O)O[C(R1)(R2)]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]mR3、-[C(R1)(R2)O]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3および-[C(R1)(R2)]nR5からなる群から選択され、Yは、水素である。
【0016】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Xは、-C(O)O[C(R1)(R2)]mR3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]mR3、-[C(R1)(R2)O]mC(O)[C(R1)(R2)]nR3、-[C(R1)(R2)]mC(O)[OC(R1)(R2)]nR3および-[C(R1)(R2)]nR5からなる群から選択され;Yは、水素であり;m、nおよびoは、1、2、3、4、5および6からなる群からそれぞれ独立して選択され;pおよびqは、0からそれぞれ独立して選択される。
【0017】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Xは、-[C(R1)(R2)]C(O)[OC(R1)(R2)]R3、-C(O)O[C(R1)(R2)]R3、-C(O)NR4[C(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)O]C(O)[C(R1)(R2)]R3、-[C(R1)(R2)]C(O)NR4[C(R1)(R2)]R3および-[C(R1)(R2)]R5からなる群から選択され、Yは、水素である。
【0018】
さらに、本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、R
3は、水素、ポリ(オキシエチレンオキシ)
【化6】
、ポリ(エチレンオキシ)
【化7】
、OPO(R
6)
2、PO(R
6)
2、OSO
2(R
6)
2、SO
2(R
6)
2、OC(O)R
6およびC(O)OR
6からなる群から選択され、R
6は、式(II)で示される化合物で定義されたとおりである。
【0019】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、-C(O)O[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-C(O)NR
4[C(R
1)(R
2)]
mR
3、-[C(R
1)(R
2)O]
mC(O)[C(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)]
mC(O)[OC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[C(R
1)(R
2)]
nR
3、[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[OC(R
1)(R
2)]
nR
3、[C(R
1)(R
2)N]
mC(O)[NC(R
1)(R
2)]
nR
3、-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
mC(O)NR
4[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
3および-[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
5からなる群から選択され、Xは、水素または3~6員のヘテロシクリルであり;R
3は、水素、ポリ(オキシエチレンオキシ)
【化8】
、ポリ(エチレンオキシ)
【化9】
、OPO(R
6)
2、PO(R
6)
2、OSO
2(R
6)
2、SO
2(R
6)
2、OC(O)R
6およびC(O)OR
6から選択され、R
6は、式(II)で示される化合物で定義されたとおりである。
【0020】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、[C(R
1)(R
2)(O)
p]
nR
5から選択され、R
5は、C
6-10ヘテロシクリル、OPO(R
6)
2、OSO
2R
6、SR'、SO
2R'、
【化10】
、OC(O)R
7およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0021】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、[C(R
1)(R
2)]
nR
5から選択され、R
5は、C
6-10ヘテロシクリル、OPO(R
6)
2、OSO
2R
6、SR'、SO
2R'、
【化11】
、OC(O)R
7およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0022】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、Yは、[C(R
1)(R
2)O]
nR
5から選択され、R
5は、C
6-10ヘテロシクリル、OPO(R
6)
2、OSO
2R
6、SR'、SO
2R'、
【化12】
、OC(O)R
7およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0023】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、R
5は、C
6-10ヘテロシクリル、OPO(R
6)
2、OSO
2R
6、SR'、SO
2R'、
【化13】
、OC(O)R
7およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0024】
さらに、式(II)で示される化合物において、前記R6は、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル(ピペリジンなど)、OR'およびNR'(R'')からなる群から選択され、R'およびR''は、式(II)で示される化合物で定義されたとおりである。
【0025】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、R'およびR''は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC1-6アルキルから選択される。
【0026】
本開示の別の実施態様では、式(II)で示される化合物において、m=1、2、3または4であり、n=1、2、3または4であり、o=1~8である。
【0027】
いくつかの実施態様では、式(II)で示される化合物において、R
6およびR
7は。以下:
【化14】
からなる群からそれぞれ独立して選択され、ここで、R'およびR''は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC
1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC
1-6アルキルから選択される。
【0028】
いくつかの実施態様では、R3が、OPO(R6)2から選択され、R6が、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、C1-6アルコキシおよび3~7員のヘテロシクリルからなる群から選択される、化合物(II)が提供される。
【0029】
いくつかの他の実施態様では、m=1、2、3または4である、化合物(II)が提供される。
【0030】
いくつかの他の実施態様では、R1およびR2が、水素、C1-6アルキルおよびC3-7シクロアルキルからなる群からそれぞれ独立して選択される、化合物(II)が提供される。
【0031】
いくつかの他の実施態様では、式(II)で示される化合物は、
【化15】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R'およびR''は、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアシルからなる群からそれぞれ独立して選択される;
m=1、2、3または4である]
またはその薬学的に許容される塩、またはその立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体、またはその重水素化物である。
【0032】
いくつかの実施態様では、式(II)で示される化合物において、R
6は、以下:
【化16】
からなる群から選択され、ここで、R'およびR''は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC
1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC
1-6アルキルから選択される、。
【0033】
いくつかの他の実施態様では、式(III)で示される化合物は、
【化17】
[式中、
R
1およびR
2は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群からそれぞれ独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R
6のそれぞれは、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から独立して選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換される;
R'およびR''は、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアシルからなる群からそれぞれ独立して選択される]
またはその薬学的に許容される塩、またはその立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体、またはその重水素化物である。
【0034】
さらに、別の実施態様では、式(IV)で示される化合物において、R6は、C1-12アルキル(限定的ではないが、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルなど)、C3-12シクロアルキル(限定的ではないが、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、3~12員のヘテロシクリル(限定的ではないが、ピロリルなど)、C6-12 アリール(限定的ではないが、フェニル、ナフチルなど)、3~12員のヘテロアリール(限定的ではないが、ピリジン、ピペリジンなど)、C1-12アルコキシ(限定的ではないが、メトキシル、エトキシル、プロポキシルまたはイソプロポキシルなど)、C1-12ヒドロキシアルキルおよびNR'(R'')からなる群から選択され、前記アルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールは、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、3~12員のヘテロシクリル、C1-12アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C6-10 アリール、3 to 10員のヘテロアリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、ハロゲン、SR'、NR'(R'')、COOR'およびCONR'(R'')からなる群から選択される1つまたは複数の基により任意選択で置換され;R'およびR''は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C2-4アルケニル、C1-6アルカノイル(アセチル、ホルミルなど)、ベンゾイルおよびp-トルオイルからなる群からそれぞれ独立して選択される。
【0035】
本開示の好ましい実施態様では、式(II)で示される化合物において、前記R6は、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル(ピペリジンなど)、OR'およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0036】
本開示の別の実施態様では、式(IV)で示される化合物において、R'およびR「は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC1-6アルキルから選択される。
【0037】
いくつかの実施態様では、式(IV)で示される化合物において、R
6は、以下:
【化18】
からなる群から選択され、ここで、R'およびR''は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC
1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC
1-6アルキルから選択される。
【0038】
本開示の好ましい実施態様では、式(II)で示される化合物において、前記R6は、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、3~6員のヘテロシクリル(ピペリジンなど)、OR'およびNR'(R'')からなる群から選択される。
【0039】
本開示の別の実施態様では、式(IV)で示される化合物において、R'およびR「は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC1-6アルキルから選択される。
【0040】
いくつかの他の実施態様では、式(IV)で示される化合物において、R
6は、以下:
【化19】
からなる群から選択され、ここで、R'およびR''は、水素およびアルキルからなる群から選択され、前記アルキルは、好ましくはC
1-10アルキルから選択され、より好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルなどのC
1-6アルキルから選択される。
【0041】
典型的な式(II)で示される化合物として、以下:
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
またはその薬学的に許容される塩、その立体異性体、回転異性体もしくは互変異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
さらに、式(IA)で示される化合物は、
【化29】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
別の態様では、本開示の化合物は、既知の化合物と比較して、より高い溶解度およびより良好なインビボ変換を有する。いくつかの実施態様では、本開示の化合物は、溶血作用が低く、薬物投与後の副作用が少なく、薬物投与に対する患者のコンプライアンスを改善するのに有益である。
【0044】
本開示はまた、治療有効量の前述の化合物またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つ、ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0045】
別の態様では、本開示の化合物の官能基の水素を重水素化して、対応する重水素化化合物を得ることができ、これは、水素アナログに匹敵する選択性およびポテンシャルを保持する。重水素結合は、より安定しており、異なる「ADME」、すなわち、「毒性薬物動態」につながり、それにより臨床的に有益な効果を提供する。
【0046】
毒性薬物動態とは、身体による外因性化学物質の吸収、分布、代謝および排泄のプロセスを示す。
【0047】
本開示はまた、患者の生理的障害、状態または疾患の治療用薬剤の製造における、上記実施態様による化合物、またはその薬学的に許容される塩、または医薬組成物の使用に関し、ここで、生理的障害、状態または疾患は、呼吸器疾患、咳、炎症性疾患、皮膚障害、眼科障害、うつ病、不安症、恐怖症、双極性障害、アルコール依存症、神経に重大な影響を与える薬物乱用、てんかん、侵害受容、精神病、統合失調症、アルツハイマー病、エイズ関連認知症、タウン病、ストレス関連障害、強迫性(obsessive/compulsive)障害、過食症、神経性食欲不振症、多食症、躁病、月経前症候群、胃腸機能障害、アテローム性動脈硬化症、線維性障害、肥満、2型糖尿病、頭痛、神経障害性疼痛、術後疼痛、慢性疼痛症候群、膀胱障害、泌尿生殖器障害または嘔吐または悪心であり、さらに本開示は、喘息、嘔吐、悪心、うつ病、不安症、咳または片頭痛の治療用薬剤の製造のための使用に関する。
【0048】
別の態様では、化合物の薬学的に許容される塩は、無機塩および有機塩からなる群から選択される。本開示による化合物は、トリフルオロ酢酸などの酸と反応して、対応する塩を形成する。前記酸は、限定的ではないが、酢酸、塩酸、サリチル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、リン酸、クエン酸、安息香酸、フマル酸からなる群から選択される。本開示による化合物は、N-メチル-Dメグルミンまたはジシクロヘキシルアミンなどの塩基と反応して、対応する塩を形成する。前記塩基は、限定的ではないが、ナトリウム、アルカリ土類金属およびアミノ酸(アルギニン、リシンなど)からなる群から選択される。
【0049】
別の態様では、本開示はまた、本開示に記載されるものと同じであるが、1つまたは複数の原子が、自然界で一般的に見られるものとは異なる原子量または質量数を有する原子で置き換えられている、本出願の同位体標識化合物を含む。本願化合物に組み込むことができる同位体の例として、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、5S、18F、123I、125Iおよび36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体が挙げられる。
【0050】
本開示の化合物は、化合物を構成する1つまたは複数の原子中に非天然な割合の原子同位体を含むことができる。たとえば、化合物は、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)またはC-14(14C)などの放射性同位体で標識されうる。別の例として、水素を重水素に置き換えて重水素化物を形成することができる。重水素と炭素の間の結合は、通常の水素と炭素の間の結合よりも強力である。重水素化されていない化合物と比較して、重水素化された化合物は、毒性および副作用の低減、薬物安定性の向上、有効性の向上、生物学的半減期の延長などの利点を有する。放射性であるかどうかにかかわらず、本願の化合物の同位体組成のすべての変化は、本願の範囲に含まれる。
【0051】
さらに、より重い同位体(重水素(すなわち、2H)など)での置換は、より高い代謝安定性に起因する特定の治療上の利点(たとえば、インビボ半減期の増加または必要な投与量の減少)を提供することができ、したがって、重水素置換が部分的または完全である可能性がある特定の状況下で好ましい可能性があり、部分的重水素置換は、少なくとも1つの重水素によって少なくとも1つの水素を置換することを示す。
【0052】
用語の説明
「アルキル」とは、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分枝基を含む飽和脂肪族炭化水素基、好ましくは1~12個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキルを示す。非限定的例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル 、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、およびそのさまざまな分枝異性体が挙げられる。アルキルは、置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、任意の利用可能な結合点で置換されうる。置換基は、好ましくは、リール、ヘテロアリールおよびハロゲンからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基である。
【0053】
「アルケニル」とは、2~20個の炭素原子を有する分枝または直鎖オレフィン、または脂肪族炭化水素基を含むオレフィンを示す。たとえば、「C2-6アルケニル」は、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルケニルを意味する。アルケニル基の例として、限定的ではないが、ビニル、アリル、1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルブト-2-エニル、3-メチルブト-1-エニル、1-ペンテニル、3-ペンテニルおよび4-ヘキセニルが挙げられる。
【0054】
「シクロアルキル」という用語は、飽和または部分不飽和単環式または多環式炭化水素置換基を示す。シクロアルキル環は、3~20個の炭素原子、好ましくは3~12個の炭素原子、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキルの非限定的例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプタントリエニル、シクロオクチルなどが挙げられる。多環式シクロアルキルとして、スピロ環、縮合環または架橋環を有するシクロアルキルが挙げられる。
【0055】
前記シクロアルキル環は、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環は、シクロアルキルである。非限定的例として、インダニル、テトラヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプチルなどが挙げられる。シクロアルキルは、任意選択で置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカンチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ、オキソ、カルボキシルまたはカルボキシレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基であるのが好ましい。
【0056】
「ヘテロシクリル」という用語は、3~20個の環原子を含み、1つまたは複数の環原子が、窒素、酸素およびS(O)m(ここで、mは、0~2の整数である)からなる群から選択されるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-または-S-S-である間部分は除外され、残りの環原子が炭素原子である、飽和または部分不飽和単環式または多環式炭化水素置換基を示す。ヘテロシクリルが、3~12個の環原子を含むのが好ましく、ここで、1~4個の原子がヘテロ原子であり、3~6個の環原子を含むのがより好ましい。単環式ヘテロシクリルの非限定的例として、ピロリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモピペラジニルなどが挙げられ、ピペリジニル およびピロリジニルが好ましい。多環式ヘテロシクリルとして、スピロ環、縮合環または架橋環を有するヘテロシクリルが挙げられる。
【0057】
前記複素環式環は、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキル環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環は、ヘテロシクリルである。非限定的例として、
【化30】
などが挙げられる。
【0058】
ヘテロシクリルは、任意選択で置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオール、アルキルアミノ、ハロゲン、チオール、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ、オキソ、カルボキシルまたはカルボキシレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基であるのが好ましい。
【0059】
「アルキニル」には、2~12個の炭素原子を有する分枝または直鎖アルキニルまたは脂肪族炭化水素基を含むオレフィンが含まれ、あるいは、炭素原子の数が特定される場合、それは、たとえば、エチニル、プロピニル(たとえば、1-プロピニル、2-プロピニル)、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルおよび1-メチルペント-2-イニルなどの特定の数を意味する。
【0060】
「アリール」という用語は、6~14員のすべてが炭素の単環式環または共役π電子系を有する多環式縮合環(すなわち、各環が隣接する炭素対を共有するを示し、6~12員の、たとえば、フェニルまたはナフチルが好ましい。前記アリール環は、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはシクロアルキルの環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環は、アリール環である。非限定的例として、以下:
【化31】
が挙げられる。
【0061】
アリールは、置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルアミノ、ハロゲン、チオl、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボキシル and カルボキシレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基であるのが好ましく、フェニルであるのが好ましい。
【0062】
「ヘテロアリール」という用語は、1~4個のヘテロ原子および5~14個の環原子を含むヘテロ芳香族系を示し、ここで、ヘテロ原子は、酸素、イオウおよび窒素からなる群から選択される。ヘテロアリールは、好ましくは6~12員のヘテロアリール、より好ましくは5または6員のヘテロアリール、たとえば、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ピロリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、チアジアゾール、ピラジニルなどであり;好ましくはイミダゾリル、ピラゾリル、ピリミジニルまたはチアゾリルであり;より好ましくはピラゾリルまたはチアゾリルである。前記ヘテロアリール環は、アリール、ヘテロシクリルまたはシクロアルキルの環に縮合することができ、ここで、親構造に結合した環は、ヘテロアリール環である。非限定的例として、以下:
【化32】
が挙げられる。
【0063】
ヘテロアリールは、任意選択で置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオl、アルキルアミノ、ハロゲン、チオl、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボキシルおよびカルボキシレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基であるのが好ましい。
【0064】
「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)または-O-(非置換シクロアルキル)基を示し、ここで、アルキルは、上記で定義されたとおりである。アルコキシの非限定的例として、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、ブトキシル、シクロプロポキシル、シクロブトキシル、シクロペンチルオキシル、シクロヘキシルオキシルが挙げられる。アルコキシは、任意選択で置換または非置換でありうる。置換される場合、置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルチオl、アルキルアミノ、ハロゲン、チオl、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルコキシ、ヘテロシクロアルコキシ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクリルチオ、カルボキシルまたはカルボキシレートからなる群から独立して選択される1つまたは複数の基であるのが好ましい。
【0065】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシル(1つまたは複数)で置換されたアルキルを示し、ここで、アルキルは、上記で定義されたとおりである。
【0066】
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲン(1つまたは複数)で置換されたアルキルを示し、ここで、アルキルは、上記で定義されたとおりである。
【0067】
「重水素化アルキル」という用語は、重水素(1つまたは複数)で置換されたアルキルを示し、ここで、アルキルは、上記で定義されたとおりである。
【0068】
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を示す。
【0069】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0070】
「アミノ」という用語は、-NH2を示す。
【0071】
「シアノ」という用語は、-CNを示す。
【0072】
「ニトロ」という用語は、-NO2を示す。
【0073】
「任意選択」または「任意選択で」とは、以下に説明する事象または状況が発生する可能性があるが、発生しなくてもよいことを意味し、詳細な説明には、事象または状況が発生するか、または発生しない状況が含まれる。たとえば、「アルキルにより任意選択で置換されたヘテロシクリル」は、アルキルが、存在する可能性があるが、存在しなくてもよいことを意味し、詳細な説明には、ヘテロシクリルが、アルキルで置換される状況およびヘテロシクリルが、アルキルで置換されない状況が含まれる。
【0074】
「置換された」は、対応する数の置換基によって独立して置換された、1つの基中の1つまたは複数の水素原子、好ましくは5個まで、より好ましくは1~3個の水素原子を示す。言うまでもなく、置換基はそれらの可能な化学的位置にのみ存在する。当業者は、過度の努力なしに、実験または理論によって置換が可能であるか不可能であるかを決定することができる。たとえば、不飽和結合を有する炭素原子(オレフィンなど)への遊離水素を有するアミノまたはヒドロキシルの結合は、不安定でありうる。
【0075】
「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物の1つまたは複数、またはその生理学的/薬学的に許容される塩またはプロドラッグ、および他の化学成分、ならびに生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の成分を含む混合物を示す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることであり、これは、生物学的活性を示すように、有効成分の吸収を促す。
【0076】
本開示における既知の出発物質は、当技術分野で知られている方法によるか、またはそれに従って合成することができ、あるいはAcros OrganicsまたはAldrich Chemical Companyおよび他の会社から購入することができ、あるいはCN102775401Aに記載の方法によって得ることができる。
【0077】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)および/または質量分析(MS)によって識別される。NMRシフト(δ)は、10-6(ppm)の単位で与えられる。NMRは、BrukerAVANCE-400核磁気分光計によって決定される。決定のための溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)および重水素化メタノール(CD3OD)であり、内部標準は、テトラメチルシラン(TMS)である。FINNIGANLCQAd(ESI)質量分析計(製造業者:Thermo、モデル:ESI-MS決定のために、FinniganLCQadvantageMAX)を使用する。勾配溶離、陽イオンスキャンモード、および100~1500のクォリティスキャン範囲を用いて、高性能液体クロマトグラフィー(製造業者:Agilent、モデル:1200)によってLCMSを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】ヒト血漿における実施例5の化合物の変換傾向のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0079】
詳細な記載
本開示は、以下の実施例を参照してさらに説明されるが、これらの実施例は、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0080】
本開示の実施例における不特定の条件での実験方法は、一般に、従来の条件に従うか、または原材料または製品の製造業者によって推奨される条件に従う。ソースが特定されていない試薬は、市販の従来の試薬である。
【実施例1】
【0081】
【0082】
ステップ1:
【化34】
N
2雰囲気下、化合物1(2.43 g、4.86mmol、1当量)を秤量し、100mL三口フラスコ中のジクロロメタン(36mL)に溶解した。
ジイソプロピルエチルアミン(5 g、38.76mmol、8当量)を加え、混合物を-30℃に冷却した。トリメチルクロロシラン(1.36 g、12.52mmol、2.6当量)を加え、混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物を-25℃に冷却した。ジクロロメタン中のクロロメチル クロロホルメート(0.77 g、6mmol、1.23当量)の溶液を滴下し、制御温度下、混合物を-20℃~-5℃で反応が完了するまで撹拌した。反応溶液を氷水に注ぎ、分離し、ジクロロメタンで抽出した。水および1N塩酸溶液を加え、分離した。次に、有機層をブライン、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液およびブラインで連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、収率104%で3.0 gの黄色いゼリー状物を得た。
【0083】
ステップ2:
【化35】
N
2雰囲気下、化合物2(2.8 g、4.53mmol、1当量)、テトラブチルアンモニウムヨウ化物(1.68 g、4.55mmol、1当量)、ジ-tert-ブチルリン酸カリウム塩(5.63 g、22.67mmol、5当量)およびジオキサン(84mL)を500mL三口フラスコに加えた。反応混合物を55℃に加熱し、4時間撹拌した。反応溶液を冷却し、酢酸エチルおよび水に注ぎ、分離し、酢酸エチルで抽出した。有機層を亜硫酸ナトリウムの水溶液で洗浄し、次に、水およびブラインで連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、収率107%で3.73 gの黄色泡状物を得た。
【0084】
ステップ3:
【化36】
N
2雰囲気下、化合物3(1.95 g、2.543mmol、1当量)を100mL一口フラスコに加え、ジクロロメタン(40mL)に溶解した。氷水冷却下でトリフルオロ酢酸(1.45mL、19.52mmol、8当量)をゆっくりと加えた。反応混合物を反応が完了するまで撹拌し、次に、濃縮して、2.29 gの油状物を得、次に、精製して、収率83.5%で1.39 gの白色泡状固体を得た。
【0085】
1H-NMR(400MHz、CD3OD):δ(ppm) 7.89(s、2H)、7.86(s、1H)、7.41-7.27(m、5H)、5.66(d、J=12Hz、1H)、5.50-5.47(m、1H)、4.60(d、J=8Hz、1H)、4.20-3.88(m、3H)、2.51-2.10(m、5H)、1.86-1.66(m、3H)、1.44-1.31(m、4H)。
【0086】
ステップ4:
【化37】
化合物4(111mg、0.17mmol)およびメグルミン(59.6mg、0.305mmol)を50mL一口フラスコに加え、メタノール(5mL)に溶解した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌し、次に、濃縮して、174mgの白色固体塩を得た。
【実施例2】
【0087】
【0088】
ステップ1:
【化39】
化合物1(5 g、10mmol、1当量)を250mL三口フラスコに入れ、50mLのジクロロメタンを加えた。反応混合物をN
2で置き換えた。ジイソプロピルエチルアミン(5.1 g、40mmol、4当量)を加え、混合物を0℃に冷却した。3-クロロプロピルクロロホルメート(4.71 g、30mmol、3当量)をゆっくりと滴下し、反応混合物を反応が完了するまで撹拌した。反応溶液を20mL×2の水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。粗生成物を20mLのtert-ブチルメチルエーテルでパルプ化し、ろ過し、乾燥して、収率85.5%およびHPLC純度95.2%で、5.3 gの生成物を白色固体で得た。
【0089】
ステップ2:
【化40】
化合物2(500mg、0.833mmol、1当量)を25mL丸底フラスコに加えた。5mLのジメチルホルムアミド、5mgのヨウ化カリウムおよびジ-tert-ブチルリン酸テトラブチル第四級アンモニウム(564mg、1.25mmol、1.5当量)を加えた。反応が完了するまで温度を100℃に上げた。反応混合物を濃縮し、残渣をHPLCにより精製して、収率57.8%およびHPLC純度97%で370mgの生成物をを得た。
【0090】
ステップ3:
【化41】
化合物3(2 g、2.52mmol)をジオキサン(25mL、4 M)中の塩酸の溶液に溶解し、室温で時間30分間撹拌した。反応混合物を減圧下で蒸発乾固して、収率81%で化合物4(1.4 g、2.05mmol)を得た。
【0091】
ステップ4:
【化42】
化合物4(700mg、1.025mmol)およびメグルミン(310mg、2mmol)を25℃でメタノール(10mL)に溶解し、1時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮して、化合物5の粗生成物(1.1 g)を得、次に、メチルtert-ブチルエーテルでパルプ化し、ろ過し、次に、乾燥して、収率91%で化合物5の純生成物(1 g、0.932mmol)を得た。
【0092】
1H-NMR(400 MHz、CD3OD):δ7.90-7.84(m、3H)、7.32-7.25(m、5H)、4.14-3.61(m、25H)、2.81(m、5H)、2.47-2.29(m、12H)、1.79-1.63(m、5H)、1.46-1.29(m、3H)、1.21-1.12(m、6H)。
【実施例3】
【0093】
【化43】
2mlのアセトンおよび100mgの化合物1を25mlフラスコに加え、撹拌した。炭酸カリウム(42mg、0.3mmol、1.5当量)をバッチで加え、混合物を室温で30分間撹拌した。36mgの化合物2を反応フラスコに加えた。反応混合物を反応が完了するまで、室温で約18時間撹拌し、カラムクロマトグラフィーにより精製して、50mgの3(収率40.8%)を得た。
【0094】
1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ=7.79(s、1H)、7.72(s、2H)、7.42-7.40(d、J=8Hz、2H)、7.31-7.27(m、2H)、7.27-7.21(m、1H)、5.58(s、1H)、4.55-4.53(m、1H)、4.06-3.99(m、2H)、3.69-3.67(d、J=8Hz、1H)、3.53-3.49(d、J=16Hz,1H)、3.25-3.21(d、J=16Hz、1H)、2.77-2.74(d、J=12Hz、1H)、2.59-2.57(d、J=8Hz、1H)、2.34-2.31(m、3H)、1.97-1.71(m、7H)、1.46-1.45(d、J=4Hz、3H)。
【実施例4】
【0095】
【0096】
ステップ1:
【化45】
窒素雰囲気下、750mgの化合物1および2.1mlのジイソプロピルエチルアミンを三口フラスコに加えた。次に、12mlの無水ジクロロメタンを加えた。混合物を-40℃に冷却し、0.5mlのトリメチルクロロシランを滴下した。混合物を室温で2時間撹拌した。次に、反応混合物を-30℃~-20℃に冷却し、3mlの無水ジクロロメタンに溶解した0.024mlのクロロエチルクロロホルメートを滴下した。反応混合物を反応が完了するまで-20℃~5℃で撹拌した。水を加えて反応を停止させた。液体を分離し、1N希塩酸、飽和ブライン、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液および飽和ブラインで連続して洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、減圧乾燥して、1 gの2を白色固体で得た。
【0097】
ステップ2:
【化46】
1 gの化合物2および0.99 gのヨウ化ナトリウムを10mlのジメチルホルムアミドに溶解した。1.15mlのジイソプロピルエチルアミンおよび0.75mlのメチルピペラジンを加えた。反応混合物を90℃に加熱 、反応が完了するまで撹拌した。反応溶液を直接濃縮し、残渣をHPLCにより精製して、430mgの化合物3を得た。
【0098】
1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ7.77(s、1H)、7.73(s、2H)、7.37-7.26(m、5H)、6.56(s、1H)、4.44-4.40(m、1H)、4.29-4.24(m、2H)、4.10-4.07(m、1H)、3.90-3.87(d、J=12Hz、1H)、3.79-3.76(d、J=12Hz、1H)、3.01-2.97(d、J=16Hz、1H)、2.52-2.32(m、15H)、1.93-1.65(m、6H)、1.29-1.28(d、J=4Hz、3H)。
【実施例5】
【0099】
【0100】
ステップ1:
【化48】
窒素雰囲気下、750mgの化合物1および2.1mlのジイソプロピルエチルアミンを13mlの無水ジクロロメタンに溶解した。反応混合物を-10℃に冷却し、0.5mlのトリメチルクロロシランを滴下した。次に、混合物を室温に温め、3時間撹拌した。混合物を再度-10℃に冷却し、ジクロロメタン中のクロロメチルクロロホルメート(0.288 g)の溶液3mlを加えた。次に、反応混合物を-10℃で反応が完了するまで反応させた。水を加えて反応を停止させた。液体を分離し、希塩酸、飽和ブライン、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液および飽和ブラインで連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を精製して、400mgの化合物2を白色固体で得た。
【0101】
【0102】
147mgの化合物3および203mgのヨウ化ナトリウムを2mlのジメチルホルムアミドに加え、次に、136mgの重炭酸カリウムを加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、つぎに、10mlのジメチルホルムアミドに溶解した400mgの化合物2を滴下した。混合物を一晩反応させた。水を加えて反応を停止させた。反応混合物を酢酸エチルで2回抽出した。有機相を集め、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムによって精製して、450mgの化合物4を油状物で得た。
【0103】
ステップ3:
【化50】
405mgの化合物4を18mlのジクロロメタンに溶解した。氷浴で冷却しながら4.5mlのトリフルオロ酢酸を滴下した。添加後、反応物を室温に温め、2時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、収率80%で330mgの生成物である化合物5を得た。
【0104】
1H-NMR(400 MHz、CDCl3):δ 8.34(s、1H)、7.72(s、1H)、7.63(s、2H)、7.40-7.28(m、5H)、6.19(s、1H)、5.68-5.67(d、J=4Hz、1H)、4.30-4.29(d、J=4Hz、1H)、4.20-4.17(d、J=12Hz、1H)、3.99-3.91(m、2H)、3.79(s、1H)、2.70-2.67(d、J=12Hz、1H)、2.49-2.21(m、8H)、1.83-1.70(m、4H)、1.29-1.28(m、3H)、1.09-1.07(m、6H)。
【実施例6】
【0105】
【0106】
ステップ1:
【化52】
1.294 gのトリホスゲンを7.5mlの無水テトラヒドロフランに溶解した。溶液を氷浴で冷却し、窒素で3回置き換えた。次に、0.33mlのピリジンを滴下した。添加後、After addition、7.5mlの無水テトラヒドロフランに溶解した500mgの化合物1溶液を滴下した。添加後、反応物を5℃で3時間撹拌した。希釈のために、30mlのジクロロメタンを加えた。溶液を希塩酸、水および飽和ブラインで連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、700mgの粗生成物を得た。
【0107】
ステップ2:
【化53】
128mgの化合物3を2mlの無水テトラヒドロフランに加えた。反応混合物を窒素で3回置き換えた。反応物を約-65℃に冷却し、0.28mlのリチウムヘキサメチルジシラジド(1mol/L、n-ヘキサンに溶解)を滴下した。混合物を30分間撹拌した。一方、前のステップからの化合物2の60mgの粗生成物を1mlの無水テトラヒドロフランに溶解した。窒素で3回置き換えた後、混合物を-65℃に冷却した。上記で製造した化合物3のリチウム塩をアシルクロリドである化合物2を入れた反応フラスコに移した。添加後、-65℃で反応を完了させ、塩化アンモニウムの飽和水溶液を加えて反応を停止させた。反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機相を濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより直接精製して、62mgの化合物4を得た。
【0108】
ステップ3:
【化54】
62mgの化合物4および31mgの20%湿った水酸化パラジウムを1.5mlの酢酸エチルに加え、撹拌を開始した。反応混合物を水素で3回置き換え、室温で5時間撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキを酢酸エチルで洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣を精製して、41mgの化合物5を白色固体で得た。
【0109】
1H-NMR(400 MHz、CDCl3) δ=7.72(s、1H)、7.57(s、2H)、7.50-7.41(m、5H)、4.80-4.59(m、3H)、4.17-4.13(d、J=16Hz、1H)、3.83-3.80(d、J=12Hz、1H)、3.62-3.59(d、J=12Hz、1H)、3.26-3.22(d、J=16Hz、1H)、2.60-2.47(m、4H)、2.26-2.18(m、2H)、1.85-1.80(m、2H)、1.45-1.43(d、J=8Hz、3H)、0.89-0.83(m、1H)。
【実施例7】
【0110】
【化55】
【化56】
炭酸カリウム(11.7 g、84.66mmol、8.47当量)を使用するまで水(40mL)に溶解した。N
2雰囲気下、化合物1(5.55 g、10mmol、1当量)を酢酸エチル(80mL)に懸濁し、これに氷浴で冷却しながら前述の炭酸カリウムの水溶液を加えた。撹拌下、反応溶液は徐々に透明になり、次に、Cbz-Cl(1.7mL、12mmol、1.2当量)を滴下した。添加後、反応混合物を10分間撹拌し、室温で一晩撹拌した。反応溶液を分離し、酢酸エチルで抽出した。有機相を集め、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、収率56%で4.3 gの白色固体を得た。
【実施例8】
【0111】
【化57】
【化58】
窒素雰囲気下、化合物1(317mg、0.5mmol)およびTHF(7.2mL)を50mlの一口フラスコに加え、次に、撹拌して溶解し、-20℃に冷却した。NaHMDS(2 M、0.5mL、1mmol)を滴下し、反応混合物を反応が完了するまで撹拌した。飽和塩化アンモニウムを加えて反応を停止させた。反応混合物をメチルtert-ブチルエーテルで抽出した。有機層を飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、収率68%で化合物2(250mg)を得た。
【0112】
【化59】
化合物2(250mg、0.34mmol)、メタノール(10mL)およびパラジウム炭素(10%、250mg)を50mlの一口フラスコに加えた。水素雰囲気下、反応混合物を反応が完了するまで室温で撹拌した。反応混合物をろ過し、残渣を濃縮して、収率74%で化合物3(150mg)を得た。
LCMS:601[M+1]。
【実施例9】
【0113】
【化60】
【化61】
N
2雰囲気下、化合物1(215mg、0.339mmol、1当量)、無水炭酸カリウム(55mg、0.396mmol、1.1当量)、パラホルムアルデヒド(37mg、1.23mmol、3.3当量)およびTHF(5ml)を50mLの反応フラスコに加えた。反応混合物を加熱し、反応が完了するまで撹拌した。反応混合物をろ過し、濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、収率95%で216mgの油状物2を得た。
【0114】
【化62】
N
2雰囲気下、化合物2(66mg、0.1mmol、1当量)およびTHF(5ml)を反応フラスコに加えた。LiHMDS(1M THF溶液、0.2ml、0.2mmol、2当量)、次に、化合物3(40mg、0.37mmol、3.7当量)を加え、反応混合物を反応が完了するまで撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、収率36%で27mgの粗生成物4を油状物で得た。
【0115】
【化63】
化合物4(27mg、0.367mmol、1当量)、Pd/C(33mg)およびメタノール(5ml)を室温で反応フラスコに加え、水素雰囲気下、反応が完了するまで撹拌した。反応混合物をろ過し、濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィーに付して、収率58.8%で13mgの油状物5を得た。
LCMS:602[M+1]。
【実施例10】
【0116】
【化64】
クロロメチルクロロホルメートをクロロプロピルクロロホルメートに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:702[M+1]。
【実施例11】
【0117】
【化65】
クロロメチルクロロホルメートをクロロエチルクロロホルメートに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:688[M+1]。
【実施例12】
【0118】
【0119】
Boc-L-バリンをN-Boc-グリシンに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:632[M+1]。
【実施例13】
【0120】
【0121】
Boc-L-バリンをN-Boc-アラニンに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:646[M+1]。
【実施例14】
【0122】
【化68】
クロロメチルクロロホルメートをクロロエチルクロロホルメートに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物(約1/1異性体)を合成した。LCMS:688[M+1]。
【実施例15】
【0123】
【化69】
Boc-L-バリンをN-Boc-メチオニンに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:706[M+1]。
【実施例16】
【0124】
【化70】
Boc-L-バリンをN-Boc-プロリンに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:672[M+1]。
【実施例17】
【0125】
【化71】
Boc-L-バリンを(S)-2,6-ジ-tert-ブチルカルボニルアミノカプロン酸に置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:703[M+1]。
【実施例18】
【0126】
【化72】
Boc-L-バリンをBoc-D-バリンに置き換え、実施例5の方法に従って、目的化合物を合成した。LCMS:674[M+1]。
【0127】
試験例1:水溶性データおよび化学的安定性
1.1.試薬の調製
試薬:NaH2PO4・2H2O
【0128】
1.2.調製方法
100mLの強度試薬を以下のように調製した:
pH=3.0:リン酸緩衝液:100mlの20mmol/L NaH2PO4、0.1M H3PO4、pHを3.0に調節。
pH=4.0:リン酸緩衝液:100mlの20mmol/L NaH2PO4、0.1M H3PO4、pHを4.0に調節。
pH=7.0:超純水
pH=9.0:リン酸緩衝液:100mlの20mmol/L Na2HPO4、0.1M NaOH溶液、pHを9.0に調節。
【0129】
1.3.試験方法
適切な量の試験化合物を正確に秤量した。溶液を毎回少量ずつ数回加え、化合物が溶解するまで撹拌し、溶液中の化合物の含有量を測定した。データを表1に示す。
【0130】
2.1 化合物の溶解度試験
約1mgのサンプルをバイアルに量り取り、次に、バイアルを真空バッグに入れ、バッグを真空にした。次に、バッグを変色シリカゲルを含む容器に入れて密封した。2つの並行サンプルを調製した。サンプリング時点に応じて十分なサンプルを準備し、それぞれ4℃と室温に置いた。データを表1に示す。
【0131】
【0132】
試験例2:血漿安定性試験
試験プロトコル
1.1 試験薬物
実施例5の化合物および式(I)で示される化合物。
1.2 試験血漿
ヒト新鮮血漿は、インフォームドコンセントを得たボランティアから提供された。
1.3 化合物の溶液の調製
実施例5の化合物の一定量を秤量し、DMSOを加えて30mM原液を調製した。一定量のストック溶液をDMSOで希釈して、1600μMの濃度の溶液Iを調製した。次に、一定量の1600μM溶液Iを45%メタノールで希釈して、16μMの濃度で作業溶液IIを調製した。また、上記の方法により、式(I)で示される化合物用の30mM原液および1600μM溶液IIを調製した。
【0133】
1.4 サンプルインキュベーション
実施例5の化合物の16μMの希釈標準溶液5μLを、最終濃度1μMで75μLの血漿に添加した。サンプルを37℃の水浴中で0、15、30、60、90、120~180分間インキュベートした。インキュベーションの完了後、アセトニトリルを含む240μLの内部標準をサンプルに添加し、次にシェーカー上で800rpmで10分間振とうし、3700rpmで4℃にて20分間遠心分離した。上清をLC-MSで分析し、注入量は2μLであった。
【0134】
1.5 標準曲線の作成
前述の1600μM溶液Iをアセトニトリルで希釈して、160、400、1600、4000、8000、16000、および32000ng/mLの濃度の標準曲線を作成した。QC希釈液の濃度は480、1920および25600ng/mLであった。5μLの標準曲線希釈標準溶液とQC希釈標準溶液を、75μLの血漿に加えて、最終濃度10、25、100、250、500、1000および2000ng/mLの標準曲線サンプルと、最終濃度30、120および1600ng/mLのQCサンプルを得た。次に、内部標準を含む240μLのアセトシアノをサンプルにすばやく加え、次に、これをシェーカーで800rpmにて10分間振とうし、3700rpmにて4℃で20分間遠心分離した。上清を集め、LC-MSで分析し、注入量は2μLであった。
【0135】
上記の方法によって、式(I)で示される化合物およびQCサンプルの標準曲線を作成した。
【0136】
2.結果
新鮮なヒト血漿における本発明の実施例5の化合物の変換は以下の通りであり、データを表2に示す:
【0137】
表2
【表2】
結論:化合物は、約30分でヒト新鮮血漿中で式(I)で示される化合物に完全に変換された。
【0138】
試験例3:血漿安定性試験
1.1 試験薬物
実施例4、実施例6、実施例10および実施例11の化合物。
1.2 試験血漿
ヒト新鮮血漿は、インフォームドコンセントを得たボランティアから提供された。
【0139】
1.3 実験ステップ
1)表3の試験化合物は、後の使用のために、DMSOを含む30mM原液にそれぞれ調製された。
2)30mM原液をDMSO溶液で1600μMの濃度で溶液Iに希釈した。次に、1600μMの溶液Iを、アセトニトリル(ACN)で16μMの濃度で希釈標準溶液IIに希釈した。
3)この実験では、0、15、30、60、90、120および180分の7つの時点を設定し、各時点で2つの並列サンプルを使用した。各化合物に対し、2つのサンプルグループを設定した。血漿75μLおよび16μMの濃度の上記で調製された希釈溶液II 5μLを、各グループに加えた。内部標準を含むACN溶液300μLで反応を停止する設定時間まで、反応系を37℃でインキュベートした。反応混合物を3700rpmで10分間遠心分離し、上清を集めて分析した。
4)標準曲線の作成:予め希釈した1600μMの溶液Iを、後で使用するための標準曲線として、アセトニトリルで1.5μM/mLの溶液IIIに希釈した。標準曲線濃度は0.32、0.8、1.6、4.0、8、12、16および42μMに設定した。標準曲線の各濃度の希釈の後、75μLの血漿を、それぞれ0.02、0.05、0.1、0.25、0.75、1.0および1.5μMの最終濃度での5μLの各濃度ポイントに添加した。次に、300μLの停止溶液をサンプルにすばやく加え、次に3700rpmで10分間遠心分離し、LC-MSMS分析のために上清を集めた。データを表3に示す。
【0140】
表3
【表3】
注:a:実施例の化合物の血漿中濃度、b:実施例の化合物の代謝後のロラピタントの血漿濃度。
【0141】
結論:実施例4、実施例10および実施例11の化合物は、血漿中で比較的安定しており、血漿中での半減期は比較的長いが、これら3つの化合物のごく一部のみが血漿中で代謝されてロラピタントになる。実施例6の化合物は、血漿中で代謝されてロラピタントになるが、上記のデータから、血漿中の代謝量は比較的少ないことがわかる。
【0142】
試験例4:
マウス、ラットおよびヒトの血漿中の実施例1、実施例2および実施例8の化合物の代謝は、試験例2の試験方法を参照することによって決定された。データを表4に示す。
【化73】
【0143】
表4
【表4】
注:a:実施例の化合物の血漿中濃度、b:実施例の化合物の代謝後のロラピタントの血漿濃度。
【0144】
結論:マウス、ラット、およびヒトの血漿中では、化合物8の化合物をロラピタントに変換することができ、特に、ヒト血漿中の変換率は、約46%である。一方、実施例1および実施例2の化合物は、基本的にヒト血漿中でロラピタントへの変換がないか、わずかな変換しかなかった。
【0145】
試験例5:ラットにおけるインビボ薬物動態試験
試験動物としてラットを使用した。実施例1および実施例2の化合物を注射により投与した後の異なる時点での血漿薬物濃度を、LC/MS/MS法を使用して決定した。ラットにおける化合物のインビボ薬物動態を研究し、薬物動態特性を評価した。
【0146】
薬物の調製
実施例1および実施例2の化合物の一定量を秤量し、後の使用のために20mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムを使用することにより、pH=4.0の溶液に調製した。
【0147】
1.1 薬物投与
薬物は、注射時間約5分、投与量2mg/kg、投与濃度0.4mg/mlおよび投与量5ml/kgの静脈内ボーラス注射により投与された。
【0148】
1.2 作業
投与前および投与後5分、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間および48時間に、眼窩静脈から採血した。ヘパリンナトリウムを用いた抗凝固処理を行った各サンプルについて、約0.6mLを採取し、採取直後に氷上に置いた。採血後、血液サンプルをラベルの付いた遠心分離管に入れ、血漿を遠心分離により分離した(遠心分離条件:遠心力2200g、2~8℃で10分間の遠心分離)。
【0149】
1.3 薬物動態パラメーターの結果
表5
【表5】
注:a:ラットにおける実施例の化合物のインビボ薬物動態パラメーター、b:ラットにおける実施例の化合物の代謝後のロラピタントのインビボ薬物動態パラメーター。
【0150】
結論:実施例1の化合物は、基本的にインビトロでは、特にヒト血漿中では活性物質ロラピタントに代謝されないが、ラットにおけるロラピタントの優れた薬物動態データを示し、このことは、実施例1の化合物がインビボでロラピタントに代謝されたことを示す。さらに、AUC0-∞、AUC0-tおよびT1/2のデータから、投与後の化合物1のインビボ代謝サイクルが長く、化合物1の吸収および曝露レベルはロラピタントに匹敵する。
【0151】
試験例6:カニクイザルにおける化合物の薬物動態試験
試験動物としてカニクイザルを使用した。実施例5の化合物を静脈内投与した後の異なる時点での血漿薬物濃度を、LC/MS/MS法を使用して決定した。カニクイザルにおける本発明の化合物のインビボ薬物動態を研究し、薬物動態特性を評価した。
【0152】
薬物の調製
実施例5の化合物の一定量を秤量し、後の使用のために20mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムを使用することにより、pH=4.0の溶液に調製した。
【0153】
1.1 薬物投与
薬物は、注射時間約30分、投与量2mg/kg、投与濃度0.4mg/mlおよび投与量5ml/kgの静脈内注射により投与された。
【0154】
1.2 作業
投与前および投与後5分、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、24時間および48時間に、大腿静脈から採血した。ヘパリンナトリウムを用いた抗凝固処理を行った各サンプルについて、約0.6mLを採取し、採取直後に氷上に置いた。採血後、血液サンプルをラベルの付いた遠心分離管に入れ、血漿を遠心分離により分離した(遠心分離条件:遠心力2200g、2~8℃で10分間の遠心分離)。
【0155】
血漿サンプル中の化合物5およびロラピタントの含有量を、LC/MS/MSによって決定した。
【0156】
1.3 薬物動態パラメーターの結果
表6
【表6】
結論:カニクイザルにおける実施例5の化合物の薬物動態研究では、化合物のほとんどが、カニクイザルにおいて、良好な薬物動態特性を有する活性代謝物ロラピタントに急速に変換された。
【実施例19】
【0157】
実施例1のステップ1-2に従って、目的化合物を調製した。次に、N2雰囲気下、化合物3(6.65 g、8.67mmol、1当量)を500mL一口フラスコ中のジクロロメタン(200mL)に溶解し、氷水で冷却しながらトリフルオロ酢酸(9.89 g、86.7mmol、10.0当量)をゆっくりと添加した。反応混合物を反応が完了するまで撹拌した。反応混合物を濃縮して、2.29 gの油状物を得、これを逆相シリカゲルカラム(C18)(A溶液:NH4HCO3の20mmol水溶液、B溶液:アセトニトリル)によって精製し、次に、1Mリン酸でpH=1~2に調節し、ジクロロメタンで抽出し、飽和ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、濃縮して、2.7 gの目的生成物を得た。
【0158】
【0159】
試験例7:溶解度
試験例1の溶解度試験法を参照することにより、異なるpH値での実施例19の化合物の溶解度を測定した。データは以下の通りである:
表7
【表7】
【0160】
試験例8:溶血作用
ウサギの頸静脈または中央耳(central ear)動脈から赤血球(RBC)を採取した(10mlのEDTA全血)。血液をガラスビーズを入れた三角フラスコに入れ、10分間振とうしてフィブリノーゲンを除去し、脱線維化した血液を得た。脱線維化した血液に約10倍量の塩化ナトリウム溶液を加え、次に、よく振とうし、1500rpmで10分間遠心分離した。上清を除去し、沈殿した赤血球を、上清が無色に観察されるまで、上記の方法に従って塩化ナトリウム注射で3回洗浄した。得られた赤血球を、後の使用のために、塩化ナトリウムを注入して2%(v/v)懸濁液に調製した。
【0161】
試験サンプル(実施例5の化合物および実施例19の化合物)をそれぞれ、PBS(pH 7.4またはpH 5)に溶解し、ろ過して、後の使用のために、0.4mg/ml、0.8mg/ml、1.2mg/ml、1.6mg/mlおよび2mg/ml溶液を調製した。
【0162】
上清で試験するために、上記のヘモグロビンに一定量の試験サンプル溶液を加えた。
【0163】
試験管内の溶液が透明で赤色であり、試験管の底に細胞が残っていないか、赤血球が少量しか残っていない場合は、溶血が起こったことを示す。すべての赤血球が沈み、上清が無色透明の場合は、溶血が起こっていないことを示す。溶液中に褐赤色または赤褐色の綿状の沈殿物があり、3~5回穏やかに反転させても分散しない場合は、赤血球の凝固が起こる可能性があることを示す。顕微鏡でサンプルをさらに観察し、赤血球が凝集しているように見える場合は、凝固が起こっている。本開示の化合物の溶血作用は、この方法を使用することによって決定された。
【0164】
結論:実施例19の化合物は2mg/mlまでの濃度で溶血作用を有さず、実施例5の化合物は0.04mg/ml以上の濃度で溶血作用を有する。
【0165】
試験例9:ロラピタントエマルジョンの溶血作用
CN102775401Aに記載の方法を参照することによって、ロラピタントエマルジョンを調製し(配合:4.4% ポリエチレングリコール15 ヒドロキシステアレート、1.1%中鎖トリグリセリドおよび0.66%大豆油)、後の使用のために後の使用のために、PBSで0.18mg/ml、0.09mg/ml、0.045mg/ml、0.023mg/ml、0.011mg/ml、0.056mg/mlおよび0.028mg/mlに調製した。
【0166】
溶血作用は、試験例8の方法を参照することによって決定された。
【0167】
結論:すべての濃度でロラピタントエマルジョンは、溶血効果を示した。
【0168】
試験例10:カニクイザルにおける薬物動態試験
試験動物としてカニクイザルを使用した。実施例19を参照することによって調製した化合物を注射により投与した後の異なる時点での血漿薬物濃度を、LC/MS/MS法を使用して決定した。カニクイザルにおける本発明化合物のインビボ薬物動態を研究し、薬物動態特性を評価した。
【0169】
薬物の調製
試験化合物の一定量を秤量し、後の使用のために、20mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムを使用することにより、pH=4.0の溶液に調製した。
【0170】
1.1 薬物投与
薬物は、注射時間約30分、投与量3.54mg/kg、投与濃度2mg/mlおよび投与量5ml/kgの点滴により投与された。
【0171】
1.2 作業
投与前および投与後5分、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間および24時間に、大腿静脈から採血した。ヘパリンナトリウムを用いた抗凝固処理を行った各サンプルについて、約0.6mLを採取し、採取直後に氷上に置いた。採血後、血液サンプルをラベルの付いた遠心分離管に入れ、血漿を遠心分離により分離した(遠心分離条件:遠心力2200g、2~8℃で10分間の遠心分離)。
【0172】
血漿サンプル中の実施例24のおよびロラピタントの含有量を、LC/MS/MSによって決定した。
【0173】
1.3 薬物動態パラメーターの結果
表8
【表8】
注:a:カニクイザルにおける実施例の化合物のインビボ薬物動態パラメーター、b:カニクイザルにおける実施例の化合物の代謝後のロラピタントのインビボ薬物動態パラメーター。
【0174】
結論:カニクイザルにおける上記化合物の薬物動態研究では、化合物のほとんどが、カニクイザルにおいて、活性代謝物ロラピタントに急速に変換され、化合物は、良好な薬物動態特性を有する。さらに、実施例5の化合物と比較して、化合物は、カニクイザルにおいてより高いインビボバイオアベイラビリティを有する。
【国際調査報告】