(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】振動減衰部材を備える金属切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20220905BHJP
B23B 27/04 20060101ALI20220905BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20220905BHJP
B23C 5/08 20060101ALI20220905BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B23B27/04
B23B27/16 B
B23C5/08 A
B23C9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578038
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020052560
(87)【国際公開番号】W WO2021001064
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ポン
(72)【発明者】
【氏名】マグネバル, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】レビン, セバスティアン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022JJ04
3C022QQ03
3C046AA00
3C046BB02
3C046EE11
(57)【要約】
工具本体(2)を備えた金属切削用切削工具(1)であって、工具本体(2)はインサート座(11)を備え、工具本体(2)には凹部(9)が形成され、工具本体(2)は振動減衰手段(4)を備え、振動減衰手段(4)は片持ち部材(12)を備え、片持ち部材(12)は凹部(9)に隣接し、片持ち部材(12)は片持ち梁(5)および端部質量部(8)を備え、片持ち部材(12)は固定端(6)と自由端(7)の間に延在し、固定端(6)は工具本体(2)に恒久的に接続され、片持ち梁(5)は固定端(6)から延在し、端部質量部(8)は自由端(7)から延在する、切削工具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(2)を備えた金属切削用切削工具であって、
前記工具本体(2)は、インサート座(11)を備え、
前記工具本体(2)には、凹部(9)が形成され、
前記工具本体(2)は、振動減衰手段(4)を備えた金属切削用切削工具において、
前記振動減衰手段(4)は片持ち部材(12)を備えることと、
前記片持ち部材(12)は前記凹部(9)に隣接することと、
前記片持ち部材(12)は片持ち梁(5)および端部質量部(8)を備えることと、
前記片持ち部材(12)は固定端(6)と自由端(7)の間に延在することと、
前記固定端(6)は前記工具本体(2)に恒久的に接続されることと、
前記片持ち梁(5)は前記固定端(6)から延在することと、
前記端部質量部(8)は前記自由端(7)から延在することとを特徴とする、金属切削用切削工具(1)。
【請求項2】
前記工具本体(2)は、第1の側面(15)と、反対側の第2の側面(16)とを備え、
前記凹部(9)は、前記第1および第2の側面(15、16)に開口し、
前記片持ち部材(12)は、前記第1の側面と前記第2の側面(15、16)との間に延在する、
請求項1に記載の切削工具(1)。
【請求項3】
前記第1の側面および前記第2の側面(15、16)の間の距離(17)は、0.5~20mmであり、好ましくは0.5~8mmである、
請求項2に記載の切削工具(1)。
【請求項4】
前記第1の側面および前記第2の側面(15、16)は、平行または実質的に平行である、
請求項2または3に記載の切削工具(1)。
【請求項5】
前記インサート座(11)に配置された切削インサート(18)を備え、
前記切削インサート(18)は、切れ刃(19)を備え、
前記切れ刃(19)は、インサート幅(20)を画定し、
前記インサート幅(20)は、前記第1の側面(15)および第2の側面(16)の間の距離(17)よりも大きい、
請求項2から4のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項6】
前記工具本体(2)は、前端面(21)を備え、
前記インサート座(11)は、前記前端面(21)に開口し、
前記切れ刃(19)は、その一部または全体が共通の平面上に延在し、
前記片持ち梁(5)の長手方向軸(A1)は、前記共通の平面に対して平行または実質的に平行な平面上に延在する、
請求項5に記載の切削工具(1)。
【請求項7】
前記工具本体(2)は、前端面(21)を備え、
前記前端面(21)から前記片持ち部材(12)の前記自由端(7)までの距離は、前記前端面(21)から前記片持ち部材(12)の前記固定端(6)までの距離よりも長い、
請求項1から6のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項8】
前記工具本体(2)と前記片持ち部材(12)は、同じ材料から形成される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項9】
前記凹部(9)および前記片持ち部材(12)は、対応するまたは実質的に対応する形状を有し、
前記片持ち部材(12)と前記工具本体(2)の囲繞部分との間の間隙幅(13)は、一定または実質的に一定である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項10】
前記間隙幅(13)は0.2~5.0mm、好ましくは0.5~2.5mmである、
請求項9に記載の切削工具(1)。
【請求項11】
前記振動減衰手段(4)は運動エネルギー吸収要素(14)を備え、前記運動エネルギー吸収要素(14)は前記凹部(9)内に配置されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項12】
前記運動エネルギー吸収要素(14)は、ポリマー、エラストマー、またはゴムを含む、
請求項11に記載の切削工具(1)。
【請求項13】
前記運動エネルギー吸収要素(14)は、ASTM D2240タイプAスケールによる40~80、好ましくは35~65の硬度を有する、
請求項11または12に記載の切削工具(1)。
【請求項14】
前記自由端(7)から前記片持ち部材(12)の質量中心までの距離は、前記固定端(6)から前記片持ち部材(12)の質量中心までの距離よりも短い、
請求項1から13のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項15】
前記切削工具(1)は溝切りブレードであり、
前記溝切りブレードは、前端面(21)と、上面(22)と、底面(23)とを備え、
前記インサート座(11)は、前記前端面(21)に開口する、
請求項1から14のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項16】
前記上面と前記底面(22、23)は、平行または実質的に平行であり、
前記片持ち梁(5)は、前記上面および前記底面(22、23)に平行または実質的に平行に配置される、
請求項15に記載の切削工具(1)。
【請求項17】
前記前端面(21)から前記自由端(7)までの距離は、前記前端面(21)から前記固定端(6)までの距離よりも長い、請求項15または16に記載の切削工具(1)。
【請求項18】
前記前端面(21)から前記自由端(7)までの距離は、前記前端面(21)から前記固定端(6)までの距離よりも短い、請求項15または16に記載の切削工具(1)。
【請求項19】
前記底面(23)から前記片持ち部材(12)までの距離は、前記上面(22)から前記片持ち部材(12)までの距離よりも短く、
前記インサート座(11)から前記上面(22)までの距離は、前記インサート座(11)から前記底面(23)までの距離よりも短い、
請求項15から18のいずれか一項に記載の切削工具(1)。
【請求項20】
前記切削工具(1)は、スロットフライスカッターであり、
前記スロットフライスカッターは、回転軸(R1)を中心に回転可能であり、
前記片持ち梁(5)は、前記回転軸(R1)に対して半径方向または実質的に半径方向に配置され、
前記固定端(6)は、前記回転軸(R1)に面している、
請求項1から14に記載の切削工具(1)。
【請求項21】
金属工作物(28)を提供するステップと、
請求項5から19のいずれか一項に記載の切削工具(1)を提供するステップと、
前記金属工作物(28)をその回転軸(R2)を中心に回転させるステップと、
前記片持ち梁(5)が前記回転軸(R2)に対して半径方向または実質的に半径方向に配置されるよう前記切削工具(1)を配置するステップと、
前記切削工具(1)を前記回転軸(R2)に向けて移動させることにより前記金属工作物(28)を切削するステップと、を含む、
金属切削作業中の振動を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、振動減衰手段を備える切削工具の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1の前提部に記載の旋削工具に関する。換言すると、本発明は、インサート座を備え、凹部が形成された工具本体を備える金属切削用切削工具であって、工具本体が振動減衰手段を備える切削工具に関する。
【0003】
金属切削業界の激しい競争下において、金属切削加工にかかる製造コストを削減するには生産性を向上させることが非常に重要である。生産性を向上させるためには、機械加工の高速化とサイクルタイムの短縮化が常に求められる。このような需要に応えるには、切削速度、送り速度、および切削深さ等といったプロセスパラメータを高める必要がある。プロセスパラメータを高めると、細長い切削工具の場合、再生振動、すなわちビビリ振動が起こりやすくなる。このような振動は、多くの場合、切削工程で大きな騒音を引き起こし、表面仕上げの劣化や工具寿命の短縮の原因となる。極端な場合には、ビビリ振動が切削工具を破壊し、工作機械を損傷してしまうことさえある。
【0004】
一般的な切削工具は、鋼製の工具本体と、超硬合金製の切削インサートとを備える。
【0005】
上述した問題を低減するために、すなわちビビリ振動を抑制するために、さまざまな解決策が提案されている。国際公開第2017109771号パンフレットでは、ホルダ本体とウエイトアセンブリを備えた切削工具ホルダであって、ウエイトアセンブリが、ウエイト開口内に配置されたウエイト部を備えた切削工具ホルダが開示されている。ウエイト部は、ホルダ本体の材料よりも高密度な材料で形成される。
【0006】
国際公開第2017109771号パンフレットに開示されている切削工具ホルダは振動減衰性を改善すると主張しているが、本発明者らは、切削工具にはさらなる改善が必要であることを見出した。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、上述の切削工具ホルダの設計は、工具の幅が狭くなればなるほど、設計および/または製造が困難になることを見出した。つまり、特に幅の狭い/または深い溝切りや切断などの用途の場合、特に工具幅が10mm以下である場合、幾何学的な制限が課され、工具の設計および/または製造が困難である。さらに、高密度の質量を有する工具を、例えばスロットフライスカッター等といった切削工具を回転させる切削加工に使用する場合、電力消費が増加するなどといった問題もある。すなわち、より軽量な切削工具を提供できれば好ましい。さらに、本発明者らは、上述の切削工具が高密度要素を含む部品をいくつか備えているため、製造が比較的高価であることを見出した。さらに、振動減衰性を向上させた切削工具に対する需要も存在する。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題の少なくとも1つを軽減することである。
【0009】
これは、最初に定義された切削工具によって達成され、振動減衰手段は片持ち部材を備え、片持ち部材は凹部に隣接し、片持ち部材は片持ち梁および端部質量部を備え、片持ち部材は固定端と自由端との間に延在し、固定端は工具本体に恒久的に接続され、片持ち梁は固定端から延在し、端部質量部は自由端から延在する。
【0010】
上述の課題を克服するために、工具本体自体の材料を使用して、同調質量ダンパの効果を生み出す切削工具が既に開発されている。ダンパは、もとの工具本体から材料を切り出すことによって形成することが可能である。このようにブレードの形状を変更しても、材料を追加したり、複雑な特徴を付加することはない。
【0011】
切削工具は、金属切削に適しており、好ましくは切断および溝切り工具、またはスロットフライス工具である。切削工具は、好ましくは切断および溝切りブレード、またはスロットフライスカッター本体などの工具本体を備える。工具本体は、好ましくは鋼製である。
【0012】
工具本体は、1つまたは複数の切削インサート用の、1つまたは複数のインサート座を備える。
【0013】
切削工具は、好ましくはインサート座に配置された切削インサートを備え、切削インサートは切れ刃を備え、切れ刃はインサート幅を画定する。
【0014】
前記インサートは、インサート座に着脱可能に挟持させることができる。工具本体は、例えば、1つ以上のねじ、トップクランプまたは弾性のあるクランプフィンガ等としての挟持手段を備える。
【0015】
工具本体には、好ましくは貫通孔またはスロットの形状をした凹部が形成される。あるいは、凹部は、空洞の形状をしていてもよい。凹部は、インサート座とは離間している。
【0016】
工具本体は、振動減衰手段、すなわち、振動減衰装置または振動減衰部材を備える。すなわち、工具本体は、切削作業中の振動のリスクを低減する装置を備える。振動減衰手段は、インサート座とは離間している。
【0017】
振動減衰手段は、固定端を除き、凹部によって囲まれた片持ち部材を備える。
【0018】
片持ち部材は、片持ち梁、すなわち片持ち部材と、端部質量部、すなわち端部質量部材とを備える。別様にまとめると、片持ち部材は、ステム部分およびヘッド部分を備える。
【0019】
片持ち部材は、振動を打ち消すために、工具本体の周囲部分に対して振動可能である。
【0020】
片持ち部材は、好ましくは固定端よりも、固定端から離れた位置で大きい断面積をもつ。より厳密には、片持ち部材は、片持ち梁の長手方向軸に対して垂直な断面積が、端部質量部の中央よりも、片持ち梁の中央において大きいことが好ましい。
【0021】
片持ち部材の質量の中心は、自由端と固定端との中間に位置していない。むしろ、自由端から質量の中心までの距離は、固定端から質量の中心までの距離よりも短い。
【0022】
片持ち部材および凹部は、片持ち部材が振動することによって振動を低減できるよう配置されている。
【0023】
片持ち部材の幅は、好ましくは固定端から自由端まで一定である。
【0024】
片持ち梁の長さは、好ましくは0.5~30mmであり、より好ましくは1.0~20mmであり、さらに好ましくは1.5~10mmである。片持ち梁は、好ましくは断面が同一または実質的に同一である。片持ち梁は、好ましくは断面が長方形または正方形である。片持ち梁は、好ましくは直方体の形状または立方体の形状である。
【0025】
端部質量部は、好ましくは筒形であり、好ましくは円筒形である。
【0026】
言い換えれば、好ましくは片持ち部材は、中実の直方体と、中実の円筒部とを備え、直方体の一端が中実の円筒部に接続され、直方体の反対側の端部が工具本体に接続される。すなわち、直方体の前記反対側の端部が片持ち部材の固定端を画定する。
【0027】
一実施形態によれば、工具本体は第1の側面および反対側の第2の側面を備え、凹部は第1の側面および第2の側面に開口し、片持ち部材は第1の側面と第2の側面の間に延在する。
【0028】
このような切削工具により、切削工具をより経済的に製造することができる。
【0029】
片持ち部材は、第1の側面および第2の側面に含まれる。片持ち部材の幅は、第1の側面と第2の側面の間の距離に等しい。凹部は第1の側面と第2の側面の間に延在する貫通孔である。言い換えると、凹部は第1の側面および第2の側面に開口する貫通孔である。側面視における凹部の輪郭または形状が、側面視における片持ち部材の輪郭または形状を画定する。第1の側面および第2の側面は、工具本体の外面、すなわち周辺面である。好ましくは、側面視における凹部の輪郭または形状には、円弧により繋がった2本の平行な直線部分が含まれる。前記円弧の半径は前記2つの平行な直線部分間の距離よりも長い。前記円弧の角度は360°未満かつ180°超である。前記角度は、好ましくは240°超である。
【0030】
一実施形態によれば、第1の側面と第2の側面の間の距離は0.5~20mmであり、好ましくは0.5~8mmである。
【0031】
このような切削工具であれば、細溝を加工することができる。
【0032】
第1の側面と第2の側面の間の距離を、幅とする。工具本体の幅は一定または実質的に一定であってよい。例えば、工具本体は、幅が一定または実質的に一定の切断ブレードまたはスロットフライスカッター本体であってもよい。あるいは、工具本体は、ブレード部分すなわち前方部分と、後方部分すなわち結合部分とを備えてもよい。そのような場合、ブレード部分は、第1の側面および第2の側面と、インサート座と、凹部と、振動減衰手段とを備える。後方部分は、好ましくはブレード部分よりも幅広である。後方部分は、好ましくは機械インターフェースへの接続に適した結合部を備える。
【0033】
ブレード部分の幅は、一定であってもよい。あるいは、ブレード部分は、正面視で円弧状の第1の側面および第2の側面を備え、第1の側面と第2の側面の間の距離は変化してもよい。
【0034】
ブレード部分の長さが、切削工具による溝切り深さの最大値を規定する。
【0035】
一実施形態によれば、第1の側面と第2の側面は、平行または実質的に平行である。
【0036】
このような切削工具により、旋削加工およびフライス加工のいずれにおいても、半径方向の溝切りを効率的に行うことができる。
【0037】
別様にまとめると、第1の側面と第2の側面は互いに平行な平面上に延在する。言い換えると、第1の側面と第2の側面の間の距離は一定である。
【0038】
一実施形態によれば、切削工具は、インサート座に配置される切削インサートを備え、切削インサートは切れ刃を備え、切れ刃はインサート幅を画定し、インサート幅は第1の側面と第2の側面との間の距離よりも大きい。
【0039】
このような切削工具により、インサート幅に等しい幅の溝の溝切りを行うことができる。
【0040】
切削インサートは、好ましくは上面と、反対側の底面と、前端面とを備える。切れ刃が前端面と上面とを繋いでいる。前端面は、第二逃げ面または第一逃げ面である。切削インサートの上面は、好ましくは切屑破砕手段を備え、切屑破砕手段は、好ましくは1つまたは複数の突起および/または窪みである。上面は、すくい面として作用するのに好適である。
【0041】
切削インサートは、好ましくは切断および/または溝切りインサートである。切削工具は、インサート幅と幅の等しい溝の溝切りに好適である。工具本体は、好ましくは半径方向の切断、および/または半径方向の溝切り方向の溝切りに適した切断ブレードである。切削インサートの前端面は、好ましくは半径方向の溝切り方向に実質的に、すなわち15°以内で対面している。
【0042】
インサート幅は、0.6~20mmであるのが好ましく、1.0~8.0mmであるのがさらにより好ましい。インサート幅は、好ましくは第1の側面と第2の側面の間の距離に対して2~40%大きい。
【0043】
切削インサートの底面から片持ち部材までの距離は、好ましくは切削インサートの上面から片持ち部材までの距離よりも短い。
【0044】
片持ち梁の長手方向軸は、好ましくは半径方向の溝切り方向に平行または実質的に平行である。
【0045】
一実施形態によれば、工具本体は前端面を備え、インサート座は前端面に開口し、切れ刃はその部分または全体が共通の平面上に延在し、片持ち梁の長手方向軸は、前記共通の平面に平行または実質的に平行な平面上に延在する。
【0046】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0047】
工具本体は、前端面、すなわち前方を向いた面と、反対側の後面とを備える。後面は、機械インターフェースへの接続または結合に好適な結合部を備えていてもよい。前端面は、切削工具の半径方向の溝切り方向に面しているか、または実質的に面している。
【0048】
切れ刃は、部分的または全体的もしくは実質的に共通の平面上に延在する。切れ刃は、好ましくは切れ刃主要部と、2つの切れ刃コーナ部と、2つの切れ刃逃げ部または二次切れ刃部とを備えていてもよい。前記切れ刃コーナ部の各々は、切れ刃主要部と、切れ刃逃げ部のうち1つを繋いでいる。
【0049】
前記切れ刃コーナ部分は、好ましくは上面視で弧状であってもよく、また好ましくは前記共通の平面上に延在してもよい。
【0050】
あるいは、切れ刃は、上面視で円弧状に形成されてもよい。前記弧の角度は、好ましくは180°超であり、かつ前記弧の角度は、好ましくは300°未満である。
【0051】
片持ち梁の長手方向軸は、前記共通の平面に平行または実質的に平行な平面上に延在する。
【0052】
前記長手方向軸は、好ましくは固定端および自由端に交差する。長手方向軸は、切削工具の半径方向の溝切り方向に平行または実質的に平行である。
【0053】
一実施形態によれば、工具本体は前端面を備え、前端面から片持ち部材の自由端までの距離は、前端面から片持ち部材の固定端までの距離よりも長い。
【0054】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0055】
一実施形態によれば、工具本体および片持ち部材は、同じ材料から作製される。
【0056】
このような切削工具は、より経済的に製造することができる。
【0057】
片持ち梁を含む工具本体と端部質量部は、同じ材料で作製される。材料は、好ましくは鋼である。片持ち梁と端部質量部とは恒久的に接続されている。片持ち梁と工具本体とは恒久的に接続されている。工具本体は、好ましくは単一のブランクから作製される。
【0058】
一実施形態によれば、凹部と片持ち部材は、それぞれ対応する形状または実質的に対応する形状を有し、片持ち部材と工具本体の囲繞部分との間の間隙幅は、一定または実質的に一定である。
【0059】
このような切削工具により、製造コストを低減することができる。
【0060】
側面視において、片持ち部材の輪郭は凹部の輪郭に対応する。凹部は、片持ち部材に隣接する隙間を画定する。片持ち部材と、片持ち部材と同じ材料からなる工具本体の囲繞部分との間の間隙幅は、一定または実質的に一定である。
【0061】
一実施形態によれば、間隙幅は0.2~5.0mm、好ましくは0.5~2.5mmである。
【0062】
このような切削工具によれば、除去される材料の量が最小限に保たれるため安定性がさらに向上する。
【0063】
一実施形態によれば、振動減衰手段は、運動エネルギー吸収要素を備え、運動エネルギー吸収要素は凹部内に配置される。
【0064】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0065】
運動エネルギー吸収要素は、凹部の少なくとも一部に配置される。
【0066】
好ましくは運動エネルギー吸収要素は、端部質量部の少なくとも一部に接する。
【0067】
凹部には、運動エネルギー吸収要素が完全にまたは実質的に充填されていてもよい。
【0068】
一実施形態によれば、運動エネルギー吸収要素は、ポリマー、エラストマー、またはゴムから構成される。
【0069】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0070】
好ましくは運動エネルギー吸収要素は、ポリマー、好ましくはシリコーンから構成される。好ましくは端部質量部を囲む凹部には、運動エネルギー吸収要素が少なくとも部分的に充填される。
【0071】
一実施形態によれば、運動エネルギー吸収要素は、ASTM D2240タイプAスケールによる40~80、好ましくは35~65の硬度を有する。
【0072】
このような切削工具により、振動のリスクがよりさらに低減される。
【0073】
前記硬度はショア硬さとして知られている。ASTM D2240-00試験規格タイプAによれば、したがって運動エネルギー吸収要素は40~80、好ましくは35~65の硬度を有する。
【0074】
一実施形態によれば、片持ち部材の自由端から質量の中心までの距離は、片持ち部材の固定端から質量の中心までの距離よりも短い。
【0075】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0076】
好ましくは片持ち部材の自由端から質量中心までの距離は、片持ち部材の固定端から質量中心までの距離の1~75%であり、さらにより好ましくは20~50%である。
【0077】
一実施形態によれば、切削工具は溝切りブレードであり、溝切りブレードは、前端面と、上面と、底面とを備え、インサート座は前端面に開口する。
【0078】
切削工具は、旋削工具である。溝切りブレード、または切断ブレード、もしくは溝切りおよび/または切断用の旋削工具は、好ましくは鋼から作製される。切削工具は、好ましくはインサート座に配置された切削インサートを備え、切削インサートは切れ刃を備え、切れ刃はインサート幅を画定する。切削インサートは、好ましくは切断および/または溝切りインサートである。
【0079】
溝切りブレードの幅は、好ましくは一定である。あるいは、溝切りブレードの幅は、部分的にインサート幅よりも小さく、部分的にインサート幅よりも大きい。より厳密には、前端面を含む溝切りブレードの前方部分の幅は、インサート幅よりも小さく、後面を含む溝切りブレードの後方部分の幅は、インサート幅よりも大きい。
【0080】
上面および底面は、好ましくは工具ブロックである工具アダプタに溝切りブレードを挟持するのに適した挟持面である。
【0081】
底面は、好ましくは第1の側面および第2の側面に対して垂直ではない。底面は、好ましくはV字形であって、すなわち先細である。底面は、好ましくは第1の表面および第2の表面を備え、第1および第2の表面は互いに対して100°から170°の角度を成し、さらにより好ましくは110°から150°の角度を成す。好ましくは、上面と底面の間の距離として定義される溝切りブレードの高さは、第1の側面または第2側面上の距離、または第1の側面または第2側面に沿った距離よりも、第1の側面と第2の側面の中間地点で大きくなっている。
【0082】
上面は、好ましくは底面と対応するように配置される。
【0083】
片持ち部材は、前端面、上面、および底面とは離間している。
【0084】
後面は、前端面の反対側にある。
【0085】
溝切りブレードは、尺長であることが好ましい。後面から前端面までの距離は、好ましくは上面と底面との間の距離よりも長く、より好ましくは2~10倍長く、さらにより好ましくは3~8倍長い。
【0086】
好ましくはインサート座は、上面と前端面を分断する。
【0087】
前端面から凹部までの距離は、好ましくは1~20mmであり、さらにより好ましくは2~10mmである。
【0088】
好ましくは底面から凹部までの距離は、1~20mm、さらにより好ましくは2~10mmである。
【0089】
好ましくは凹部および片持ち部材の少なくとも一部は、切削工具のインサート座と底面との間に位置する。
【0090】
溝切りブレードは、好ましくは少なくとも1つかつ2つ以下の片持ち梁を備える。
【0091】
一実施形態によれば、上面および底面は互いに平行または実質的に平行であり、片持ち梁は上面および底面に平行または実質的に平行に配置される。
【0092】
片持ち梁の長手方向軸は、好ましくは側面図に見られるように、上面および底面に平行または実質的に平行である。この文脈において実質的に平行とは、+/-20°以内を意味する。
【0093】
一実施形態によれば、前端面から自由端までの距離は、前端面から固定端までの距離よりも長い。
【0094】
一実施形態によれば、前端面から自由端までの距離は、前端面から固定端までの距離よりも短い。
【0095】
このようなツールにより、振動のリスクがさらに低減される。
【0096】
一実施形態によれば、底面から片持ち部材までの距離は、上面から片持ち部材までの距離よりも短く、インサート座から上面までの距離は、インサート座から底面までの距離よりも短い。
【0097】
このような切削工具により、振動のリスクがさらに低減される。
【0098】
一実施形態によれば、切削工具はスロットフライスカッターであり、スロットフライスカッターは回転軸周りに回転可能であり、片持ち梁は回転軸に対して半径方向または実質的に半径方向に配置され、固定端は回転軸に面している。
【0099】
片持ち部材は、回転軸とは離間している。回転軸から自由端までの距離は、回転軸から固定端までの距離よりも長い。片持ち梁の長手方向軸は、スロットフライスカッターの回転軸と交差または実質的に交差する。言い換えれば、片持ち梁の仮想的延長線は、スロットフライスカッターの回転軸と交差または実質的に交差する。
【0100】
スロットフライスカッターは、好ましくは2~30個のインサート座を備える。好ましくはスロットフライスカッターは、2~30個の振動減衰手段を備える。好ましくは振動減衰手段の数は、インサート座の数に等しいまたは実質的に等しい。
【0101】
一実施形態によれば、金属切削作業中の振動を低減する方法であって、
金属工作物を提供するステップと、
上述の切削工具を提供するステップと、
金属工作物をその回転軸を中心に回転させるステップと、
片持ち梁が回転軸に対して半径方向または実質的に半径方向に配置されるよう切削工具を配置するステップと、
切削工具を回転軸に向けて移動させることにより金属工作物を切削するステップと、を含む方法。
【0102】
この方法は、金属切削方法、より具体的には旋削方法である。好ましくはCNC旋盤が提供される。CNC旋盤は、好ましくは機械インターフェースを備える。CNC旋盤は、好ましくは挟持手段を備えた回転可能なスピンドルを備える。金属工作物が提供される。金属工作物は、回転対称または実質的に回転対称であることが好ましい。金属工作物は、好ましくは回転可能なスピンドルよって回転させることができる。切削工具が提供される。切削工具は、好ましくは機械インターフェースに接続される。
【0103】
金属工作物は、その回転軸を中心に回転させる。切削工具は、片持ち梁が回転軸に対して半径方向または実質的に半径方向に配置されるよう配置または配向される。この文脈において、実質的に半径方向とは、片持ち梁が回転軸を基準とした半径方向に対して平行である状態を含む。
【0104】
本方法は、切削工具を回転軸に向かって半径方向の溝切り方向に移動させることにより、金属工作物を切削するステップを含む。
【0105】
片持ち梁の長手方向軸は、半径方向の溝切り方向に平行または実質的に平行である。
【0106】
ここで、本発明の実施形態の説明および添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】第1の実施形態による工具アダプタおよび切削工具の斜視図である。
【
図2】
図1の工具アダプタおよび切削工具ならびに金属工作物の側面図である。
【
図5】第2の実施形態による工具アダプタおよび切削工具の斜視図である。
【
図8】第3の実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図9】第4の実施形態による切削工具の斜視図である。
【
図12】第5実施形態による工具アダプタおよび切削工具の斜視図である。
【
図14】振動減衰手段の第1の例を示す、
図3の切削工具の右下部分の拡大図である。
【
図20】第6実施形態による切削工具の側面図である。
【
図21】振動減衰手段の第5の例を示す、
図20の切削工具の右下部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
第1の実施形態による切削工具1を示す
図1~
図4を参照する。
【0109】
切削工具1は、長細の切断および溝切りブレードである工具本体2と、切削インサート18とを備える。工具本体2は、対角線上に対向する、2つのインサート座11を備える。切削インサート18は、一方のインサート座11に取り付けられる。
【0110】
工具本体2には、凹部9が2つ形成される。
図14~
図16において、1つの凹部9について詳細に説明する。工具本体2は、振動減衰手段4を備え、振動減衰手段4は、凹部9に隣接する片持ち部材12を備える。
【0111】
切削インサート3は、上面29と、反対側の底面30と、前端面40とを備える。切れ刃19は、前端面40と上面29とを繋いでいる。切れ刃19は、インサート幅20を画定する。前端面は、第二逃げ面または第一逃げ面である。切削インサートの上面29は、1つまたは複数の突起および/または窪みとしての切屑破砕手段を備える。上面29は、すくい面として作用するのに好適である。上面29および底面30は、インサート座11に形成された着座面と接触する着座面を備える。
【0112】
工具本体2は、前端面21と、反対側の後面33と、上面22と、反対側の底面23と、第1の側面15と、反対側の第2の側面16とを備える。工具本体2は長細であり、すなわち、前端面21から後面までの距離が、上面22から底面23までの距離よりも長い。
【0113】
底面はV字形をしており、すなわち先細である。底面23は、第1の表面31および第2の表面32を含み、第1および第2の表面は、互いに対して100°から170°、さらにより好ましくは110°から150°の角度を成す。上面22と底面23との間の距離として定義される溝切りブレードの高さは、第1の側面15または第2側面16上の距離、または第1の側面15または第2側面16に沿った距離よりも、第1の側面15と第2の側面16間の途中で大きくなっている。上面22は、底面23と対応するように配置される。
【0114】
インサート座11は、前端面21内に開口する。
【0115】
片持ち梁の長手方向軸A1は、例えば、
図3に見られるような側面図において見られるように、上面22および底面23に平行または実質的に平行である。
【0116】
第1の側面15と第2の側面16との間の距離17は一定であり、インサート幅20よりも小さい。
【0117】
図1および
図2に見られるように、切削工具1は、ねじを含んでいる挟持手段26により工具アダプタ25に取り付けられる。工具アダプタは、例えばCNC旋盤などの工作機械(図示せず)の機械インターフェース27に接続するのに適した結合部24を備える。
【0118】
図2は、金属工作物28を切断動作または半径方向に溝切り動作により加工する際、切削工具1をどのように使用するか例を示す。金属工作物28は、その回転軸R2を中心に回転する。金属工作物28の回転方向は、
図2中において反時計回りである。切削工具1は、金属工作物28に向けて、半径方向の溝切り方向34に搬送または移動される。より正確には、切削インサート1の切れ刃19が直線的に、金属工作物28の回転軸R2に向かう。片持ち梁の長手方向軸A1は、半径方向の溝切り方向34に平行または実質的に平行である。
【0119】
別の実施形態(図示せず)では、切削工具1を金属工作物28の回転軸R2周りに回転させる一方で、金属工作物28を静止させておいてもよい。
【0120】
第2の実施形態による切削工具1を示す
図5~
図7を参照する。切削工具1は、工具本体2と、切削インサート18とを備える。切削インサート18は、
図1~
図4の切削インサート18と同一である。切削工具1は工具アダプタ25に取り付けられるが、工具アダプタ25は
図1および
図2の工具アダプタと同一である。工具本体2は、切削インサート18の前端40が底面23と同じ方向または実質的に同じ方向を向くよう、インサート座が配向されるという点において
図1~
図4に示す工具本体2と異なっている。片持ち梁の長手方向軸A1は、上面22および底面23に対して垂直である。
【0121】
第3の実施形態による切削工具1を示す
図8を参照する。切削工具1は、工具本体2が、ブレード部分41、すなわち前方部分と、後方部分42とを備える点で、
図5~
図7に示す切削工具と異なっている。ブレード部分41は、第1の側面と第2の側面16を備える。第1の側面と第2の側面との間の距離は一定であり、インサート幅よりも小さい。ブレード部分41は、片持ち部材12を備える。後方部分42は、結合部24を備える。
【0122】
第4の実施形態による切削工具1を示す
図9~
図11を参照する。工具本体2は、前方部分であるブレード部分41と、後方部分42とを備える。ブレード部分41は、第1の側面15と第2の側面16を備える。第1の側面15と第2の側面16との間の距離17は、インサート幅20よりも小さい。第1の側面15と第2の側面16は、
図10に見られるように、正面視で湾曲しているか、もしくは円弧状をしている。
【0123】
第5の実施形態による切削工具1を示す
図12および
図13を参照する。切削工具1は、その回転軸R1を中心に回転可能なスロットフライスカッターまたは溝切りフライスカッターである。切削工具1は、金属工作物(図示せず)に溝切りするのに適している。
【0124】
図12に見られるように、切削工具1は、ねじを含んでいる挟持手段26により工具アダプタ25に取り付けられる。工具アダプタ25は、例えば、機械加工センタもしくはマルチタスク機械、またはミーリング工具を回転させる機能を有するCNC機械等の工作機械(図示せず)の機械インターフェース27に接続するのに適した結合部24を備える。
【0125】
図13に見られるように、片持ち部材12は、片持ち梁の長手方向軸A1がスロットフライスカッターの回転軸A1と交差または実質的に交差するように、片持ち梁が回転軸R1に対して半径方向または実質的に半径方向に位置するように配置される。片持ち部材12は、回転軸R1とは離間している。
【0126】
スロットフライスカッター1は、
図13等の側面図で見たときに、回転軸R1の周囲に均等にまたは実質的に均等に配置された15個のインサート座を備える。各インサート座には、ちょうど1つの切削インサート18が配置される。振動減衰手段の数は、インサート座の数に等しい。
【0127】
スロットフライスカッター1は、15個の切削インサート18および15個のインサート座を備える。しかしながら、切削インサートの数は、それよりも少なくても多くてもよい。
【0128】
ここで、
図3の切削工具の右下部分に見られる振動減衰手段の第1の例をより詳細に示す
図14~
図16を参照する。
図15は、
図14の線A-Aに沿った断面図である。
図16は、
図14の線B-Bに沿った断面図である。振動減衰手段4は、片持ち部材12を備える。
【0129】
片持ち部材12は、凹部9に隣接している。凹部9は、第1の側面15および反対側の第2の側面16に開口する。片持ち部材12は、直方体状の片持ち梁5と、円筒状の端部質量部8とを備える。片持ち部材12は、固定端6と自由端7の間に延在する。固定端6は、工具本体2に恒久的に接続される。片持ち梁5は、固定端6から延在する。端部質量部8は、自由端7から延在する。
【0130】
片持ち梁5の長手方向軸A1または中心軸は、固定端6および自由端7に交差する。長手方向軸A1は、工具本体23の底面23に平行である。長手方向軸A1は、前端面21に対して垂直である。
【0131】
片持ち部材12の断面積は、
図16に見られる片持ち梁5の中央部分よりも、
図15に見られる端部質量部8の中央部分における断面積のほうが大きい。
【0132】
前端面21から片持ち部材12の自由端7までの距離は、前端面21から片持ち部材12の固定端6までの距離よりも短い。片持ち部材12と、片持ち部材12と同じ材料からなる工具本体2の囲繞部分の間の間隙幅13、すなわち凹部幅は、一定または実質的に一定である。片持ち梁5の高さ35は、
図14に見られるように一定であり、片持ち梁5の長手方向軸A1に垂直に測定される。片持ち梁5の長さ36および端部質量部8の長さ37はいずれも、片持ち梁5の長手方向軸A1に沿って測定される。端部質量部8の高さ38は、
図14に見られるように片持ち梁5の長手方向軸A1に垂直に測定される。片持ち部材12の長さ39は、片持ち梁5の長さ36と端部質量部8の長さ37の合計に等しい。片持ち部材12の幅は一定であり、第1の側面15と第2の側面16の間の距離17に等しい。
【0133】
凹部9から前端面21までの距離は、好ましくは2~6mmである。
【0134】
ここで、振動減衰手段4の第2の例を示す
図17を参照する。運動エネルギー吸収要素14が凹部9の一部に配置されている点のみが振動減衰手段の第1の例と異なっている。より正確には、端部質量部8を取り囲む凹部9は、少なくともその一部に運動エネルギー吸収要素14が装填される。運動エネルギー吸収要素14は、シリコーンである。運動エネルギー吸収要素は、第1の側面と第2の側面との間、または実質的に第1の側面と第2の側面との間に延在する。
【0135】
ここで、振動減衰手段4の第3の例を示す
図18を参照する。振動減衰手段の第1の例と比較した場合、間隙幅13が変化している点、および凹部9が、側面視において端部質量部8が楕円形を成すような形状をしている点において主に異なる。
【0136】
ここで、振動減衰手段4の第4の例を示す
図19を参照する。振動減衰手段の第1の例と比較した場合、間隙幅13が変化している点、および凹部9の形状が違っている点が主に異なる。より具体的には、片持ち梁5は、高さ35が固定端6からの距離が遠くなるにつれて高くなっており、片持ち梁は、端部質量部8にシームレスに移行する。
【0137】
ここで、
図20を参照すると、
図21~23に詳細に示す振動減衰手段4の第5の例を備えた、切削工具の第6の実施形態が示されている。振動減衰手段の第1の例と比較した場合、
図22に見られるように、片持ち部材12の向きが側面視において180°回転している点において主に異なっている。前端面21から片持ち部材12の自由端7までの距離は、前端面21から片持ち部材12の固定端6までの距離よりも長い。さらに、片持ち梁5の長さ36が端部質量部8の長さ37よりも短い点、および間隙幅13がさらに広くなっている点において異なる。
【0138】
片持ち梁12の長手方向軸A1は、工具本体2の上面22および底面23に対して平行である。凹部については、凹部9から底面23の距離、凹部9から前端面21の距離、凹部9からインサート座11の距離が、それぞれ実質的に等しくなるよう、すなわち前記距離のいずれもが残りの距離の100%を超えない、好ましくは50%を超えないよう配置するのが好ましい。これは、例えば、
図21から理解することができる。この図では前記距離は実質的に等しくなっている。凹部9から底面までの距離は、好ましくは2~6mmである。凹部9から前端面21までの距離は、好ましくは2~6mmである。凹部9からインサート座11までの距離は、好ましくは2~6mmである。
【0139】
振動減衰手段の上記の例はすべて、運動エネルギー吸収要素14を含んでいてもよく、運動エネルギー吸収要素14は、シリコーンを含むことが好ましく、凹部9の少なくとも一部に配置され、端部質量部8を取り囲む凹部9の少なくとも一部に運動エネルギー吸収要素14が充填されることが好ましい。
【0140】
振動減衰手段の上記の例はすべて、端部質量部に接続された高密度の材料、すなわち鋼よりも高密度の材料、好ましくは超硬合金を含んでいてもよい。
【0141】
上述の振動減衰手段のいずれも、上述の切削工具のいずれにおいても使用が可能である。
【0142】
上記の実施形態に示す切削インサートは、側面視において実質的にL字形または三角形などの他の形状を有してもよい。インサートは、ばねクランプにより挟持可能であり、すなわち、つかみ具、インサートネジ、トップクランプ、またはあらゆる他の適切な挟持手段に備わった弾性による挟持が可能である。
【0143】
上述の切削工具の凹部は、適切な金属除去加工であれば、フライス加工、穿孔加工、放電加工(EDM)またはレーザ等によって形成してもよい。
【0144】
切削工具の他の例(図示せず)は、第1および第2の側面から離れた、空洞部としての凹部を備えていてもよい。そのような切削工具は、好ましくは全体的にまたは部分的に付加製造法によって形成してもよい。
【国際調査報告】