(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220905BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C08G73/10
H01B7/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500102
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 KR2019014426
(87)【国際公開番号】W WO2021006428
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081066
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イン・ファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ギョン・ヒョン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】イク・サン・イ
【テーマコード(参考)】
4J043
5G309
【Fターム(参考)】
4J043PA01
4J043PA05
4J043PA06
4J043PA15
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4J043UB122
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4J043ZA12
4J043ZA31
4J043ZA42
4J043ZA46
4J043ZB47
4J043ZB48
5G309MA06
(57)【要約】
本出願は、ポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物に関するもので、低い誘電率と耐熱性、絶縁性及び高温など苛酷条件での機械的特性を同時に具現し得るポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非フッ素系ジアミン単量体及び非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合単位で含み、フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体のうち少なくとも一つを重合単位で含み、
硬化後の誘電率が3.0以下であり、絶縁破壊電圧が10kV以上であり、部分放電開始電圧が800Vp以上であることを特徴とする、ポリアミド酸組成物。
【請求項2】
フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のペルフルオロアルキル基を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項3】
フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、互いに重合されないことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項4】
フッ素系ジアミン単量体又はフッ素系ジアンハイドライド単量体は、2以上のベンゼン環を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項5】
フッ素系ジアミン単量体は、ジアミン単量体100モル%に対して45~98モル%の範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項6】
フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ジアンハイドライド単量体100モル%に対して5~60モル%の範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項7】
固形分が15~40%の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項8】
23℃温度及び1s
-1のせん断速度条件で測定した粘度が10,000cP以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド酸組成物。
【請求項9】
フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体に非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアミン単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第3段階を含むことを特徴とする、ポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項10】
フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアミン単量体に非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第3段階を含むことを特徴とする、ポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項11】
第2段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個の非フッ素系ジアミン単量体が重合されることを特徴とする、請求項9に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項12】
第3段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合されることを特徴とする、請求項11に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項13】
前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されることを特徴とする、請求項12に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項14】
第2段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合されることを特徴とする、請求項10に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項15】
第3段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体が重合されることを特徴とする、請求項14に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項16】
前記2個のフッ素係又は非フッ素計ジアミン単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されることを特徴とする、請求項15に記載のポリアミド酸組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載のポリアミド酸組成物の硬化物であることを特徴とする、ポリイミド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリイミドを含むことを特徴とする、被覆物。
【請求項19】
電線;及び請求項1に記載のポリアミド酸組成物が前記電線の表面にコーティングされてイミド化された被覆物を含むことを特徴とする、被覆電線。
【請求項20】
請求項19に記載の被覆電線を含むことを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は、2019年7月5日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0081066号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0003】
技術分野
【0004】
本出願は、ポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物に関する。
【背景技術】
【0005】
導体を被覆する絶縁層(絶縁被覆)には、優れた絶縁性、導体に対する密着性、耐熱性、機械的強度などが要求されている。
【0006】
また、適用電圧が高い電気機器、例えば、高電圧で用いられるモーターなどでは、電気機器を構成する絶縁電線に高電圧が印加され、その絶縁被覆表面から部分放電(コロナ放電)が発生しやすい。
【0007】
コロナ放電の発生により局所的な温度上昇やオゾン又はイオンの発生が引き起こされ得、その結果、絶縁電線の絶縁被覆に劣化が発生することによって早期に絶縁破壊を起こし、電気機器の寿命が短くなることがある。
【0008】
高電圧で用いられる絶縁電線には、上記の理由によりコロナ放電の開始電圧の向上が要求されており、そのためには、絶縁層の誘電率を低めることが有効であることが知られている。
【0009】
絶縁層に使用可能な樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが挙げられる。
【0010】
これらのうち、特に、ポリイミド樹脂は、耐熱性及び絶縁性に優れた材料であって、導体の被覆用物質として用いるための優れた性質を有している。
【0011】
ポリイミド樹脂は、芳香族ジアンハイドライドと芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネートを溶液重合してポリアミド酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水してイミド化して製造される高耐熱樹脂を称する。
【0012】
このようなポリイミド樹脂を用いて絶縁被覆を形成する方法としては、例えば、導体からなる電線の周りにポリイミド樹脂の前駆体であるポリイミドワニスを塗布又はコーティングし、その後、所定の温度で熱処理が可能な硬化炉内で前記ポリイミドワニスをイミド化させる方法を用いることができる。
【0013】
ただし、一般的なポリイミド樹脂は、優れた物性であることにもかかわらず導体との接着力がすぐれないので、絶縁被覆を形成するときに外観不良が発生する問題が発生し得る。
【0014】
それによって、耐熱性、絶縁性、低誘電率、密着性及び機械的物性を同時に満足する導体被覆用ポリイミドワニスの生産が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願は、低い誘電率と耐熱性、絶縁性及び高温など苛酷条件での機械的特性を同時に具現し得るポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願は、ポリアミド酸組成物に関する。本出願のポリアミド酸組成物は、ジアミン単量体及びジアンハイドライド単量体を重合単位で含む。一つの例示で、本出願のポリアミド酸組成物は、非フッ素系ジアミン単量体及び非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合単位で含み、フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体のうち少なくとも一つを重合単位で含むことができる。前記ポリアミド酸組成物が前記単量体を重合単位で含むということは、ポリイミドに硬化する前に各単量体間で重合反応が起きた状態を意味する。上記のポリアミド酸組成物は、硬化後の誘電率が3.0以下であってもよく、また、硬化後の絶縁破壊電圧が10kV以上であり、部分放電開始電圧が800Vp以上であってもよい。前記誘電率の上限は、特に制限されず、2.95、2.93、2.9、2.88、2.86、2.84、2.82、2.8又は2.78であってもよく、誘電率の下限は、1又は1.5であってもよい。また、前記絶縁破壊電圧の下限は、10kV、10.5kV、11kV、12kV、12.5kV、13kV、13.3kV、13.6kV以上であってもよく、上限は、25kV、20kV又は18kV以下であってもよい。また、前記部分放電開始電圧の下限は、800Vp、820Vp、840Vp、850Vp、860Vp、870Vp以上であってもよく、上限は、1000Vp又は950Vp以下であってもよい。本出願のポリアミド酸組成物は、前記単量体を含むことによって、硬化後に低い誘電率と耐熱性、絶縁性、密着性及び高温での機械的特性を同時に満足させ得るポリイミドを提供することができ、これを通じて、電線被覆に用いられるときに部分放電、局所劣化、絶縁破壊を防止して信頼性の高い被覆物を提供することができる。
【0017】
前記絶縁破壊電圧(BDV)は、同種業界に公知の方法で測定され得る。一つの例示で、前記絶縁破壊電圧は、次のように測定することができる。前記ポリアミド酸組成物がコーティングされた電線を試片として製造し、前記試片を4時間の間150℃のオーブンで前処理した後、圧力容器に入れ、圧力容器を1400gの冷媒で満たし、圧力容器を72時間の間加熱した後、圧力容器を冷却させ、試片を150℃のオーブンに移して10分間維持して室温で冷却させる。電線の両末端を連結して電線導体の間に試験電圧(60Hz)公称周波数の交流電圧を0から一定の速度で増加させてBDVを測定することができる。一つの例示で、前記絶縁破壊電圧は、例えば、IEC 60851標準によって荷重及びねじりを印加することによってツイストペアサンプルを製作した後、試験電圧を導体の間に印加してサンプルの絶縁被覆が破壊される電圧を測定したものであってもよい。
【0018】
また、前記部分放電開始電圧(PDIV)は、同種業界に公知の方法で測定され得る。一つの例示で、前記部分放電開始電圧は、次のように測定することができる。前記部分放電開始電圧は、例えば、製造した絶縁電線の試片の一対の末端にASTM 2275-01標準によって荷重及びねじりを印加することによってツイストペアサンプルを製作する。その後、前記サンプルの両末端の裸導体に50~60Hz周波数の電圧を一定の速度で印加して部分放電(100pC以上)が起きる電圧を記録する。
【0019】
本明細書でフッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内にフッ素原子を含んでいる単量体を意味することができる。前記フッ素原子は、前記単量体内に多様な位置及び構造で含まれ得、これは特別に制限されない。例えば、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、分子構造内に少なくとも一つ以上のペルフルオロアルキル基を含むことができる。前記ペルフルオロアルキル基は、例えば、ペルフルオロメチル基であってもよい。本出願は、前記フッ素系単量体を重合単位で含むことによって、従来添加剤としてフッ素系粒子を含んでいるものとは異なり、粒子の相溶性及び分散性の問題なしに前記添加剤なくとも誘電率を低めることができ、これによって、耐熱性及び機械的特性を共に具現し得る。
【0020】
本出願の具体例で、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、互いに重合されなくてもよい。すなわち、本出願のポリアミド酸組成物は、前記フッ素系ジアミン単量体とフッ素系ジアンハイドライド単量体は互いに反応せず、全体重合単位で互いに直接会わなくてもよい。従来技術は、フッ素系添加剤を用いて誘電率を低めたが、本願発明は、フッ素系単量体を用いるが、フッ素系添加剤なしにフッ素系単量体のみを用いる場合に誘電率を十分に低めることに限界がある。ただし、本出願は、単量体の重合方法及び重合順序を調節することによって、誘電率を十分に低めると共に硬化後の耐熱性及び機械的特性を一緒に具現し得る。
【0021】
一つの例示で、本出願のフッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体の種類は、特に制限されない。一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体は、2以上のベンゼン環を有することができる。一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、例えば、前記ベンゼン環の水素が置換されてペルフルオロアルキル基を有することができる。また、一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、二つのベンゼン環を連結するアルキレン基に上述したペルフルオロアルキル基を有することができる。また、一つの例示で、前記フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ベンゼン環の水素が置換されてペルフルオロアルキル基を有することができ、また、一つの例示で、二つのベンゼン環を連結するアルキレン基に上述したペルフルオロアルキル基を有することができる。
【0022】
一つの例示で、前記フッ素系ジアミン単量体は、全体ジアミン単量体100モル%に対して、45~98モル%、48~95モル%又は49~92モル%の範囲内に含まれ得る。また、前記フッ素系ジアンハイドライド単量体は、ジアンハイドライド単量体100モル%に対して、5~60モル%、8~57モル%又は9~55モル%の範囲内に含まれ得る。一方、前記フッ素系ジアミン単量体及びフッ素系ジアンハイドライド単量体の総含量は、全体単量体を100モル%としたとき、20~70モル%、23~60モル%、30~58モル%、35~55モル%又は42~53モル%の割合で含まれ得る。本出願は、前記単量体の含量比を調節することによって、硬化後にポリイミドの優れた誘電特性、耐熱性及び機械的特性を具現し得る。
【0023】
本明細書で前記ポリアミド酸組成物は、前記ポリアミド酸溶液と同一の意味で用いられ得る。
【0024】
ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアンハイドライド単量体は、芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドであってもよく、前記芳香族テトラカルボン酸ジアンハイドライドは、ピロメリット酸ジアンハイドライド(又はPMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBPDA)、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はa-BPDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(又はODPA)、ジフェニルスルホン-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はDSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィドジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド、2,3,3'、4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(又はBTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタンジアンハイドライド、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパンジアンハイドライド、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸アンハイドライド)、m-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、p-テルフェニル-3,4,3',4'-テトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼンジアンハイドライド、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニルジアンハイドライド、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンジアンハイドライド(BPADA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド、4,4'-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジアンハイドライドなどを例示し得る。
【0025】
前記ジアンハイドライド単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、本出願は、上述した結合解離エネルギーを考慮して、例えば、ピロメリット酸ジアンハイドライド(PMDA)、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(s-BPDA)又は2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(a-BPDA)を含むことができる。
【0026】
また、ポリアミド酸溶液の製造に用いられ得るジアミン単量体は、芳香族ジアミンであって、以下のように分類して例示し得る。
【0027】
1)1,4-ジアミノベンゼン(又はパラフェニレンジアミン、PDA)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸(又はDABA)などのように、構造上ベンゼン核1個を有するジアミンであって、相対的に強直な構造のジアミン;
【0028】
2)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(又はオキシジアニリン、ODA)、3,4'-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアミン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジカルボキシ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、3,3'-ジクロロベンジジン、3,3'-ジメチルベンジジン(又はo-トリジン)、2,2'-ジメチルベンジジン(又はm-トリジン)、3,3'-ジメトキシベンジジン、2,2'-ジメトキシベンジジン、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジクロロベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホキシドなどのように、構造上ベンゼン核2個を有するジアミン;
【0029】
3)1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(又はTPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3'-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼンなどのように、構造上ベンゼン核3個を有するジアミン;
【0030】
4)3,3'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3、-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのように、構造上ベンゼン核4個を有するジアミン。
【0031】
前記ジアミン単量体は、必要に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、本出願は、上述した結合解離エネルギーを考慮して、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン又は4,4'-メチレンジアミン(MDA)を含むことができる。
【0032】
一つの具体的な例で、前記ポリアミド酸組成物は、全体重量を基準として固形分を15~40重量%含むことができる。本出願は、前記ポリアミド酸組成物の固形分含量を調節することによって、粘度上昇を制御すると共に硬化過程で多量の溶媒を除去しなければならない製造コストと工程時間の増加を防止し得る。
【0033】
本出願のポリアミド酸組成物は、低粘度特性を有する組成物であってもよい。本出願のポリアミド酸組成物は、23℃の温度及び1s-1のせん断速度条件で測定した粘度が10,000cP以下、9,000cP以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、500cP以上又は1000cP以上であってもよい。前記粘度は、例えば、Haake社のRheostress 600を用いて測定したものであってもよく、1/sのせん断速度、23℃温度及び1mmプレートギャップ条件で測定したものであってもよい。本出願は、前記粘度範囲を調節することによって、優れた工程性を有する前駆体組成物を提供して導体電線の被覆時に目的とする物性の被覆物を形成し得る。
【0034】
一具体例で、本出願のポリアミド酸組成物は、硬化後の重量平均分子量が10,000~100,000g/mol、15,000~80,000g/mol、18,000~70,000g/mol、20,000~60,000g/mol、25,000~55,000g/mol又は30,000~50,000g/molの範囲内であってもよい。本出願で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。
【0035】
本出願は、前記ポリアミド酸組成物が有機溶媒を含むことができる。前記有機溶媒は、ポリアミド酸が溶解され得る有機溶媒であれば、特に限定されないが、一つの例として、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)であってもよい。
【0036】
前記非プロトン性極性溶媒は、例えば、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルプロパンアミド(DMPA)などのアミド系溶媒、p-クロロフェノール、o-クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ガンマブチロラクトン(GBL)及びジグリム(Diglyme)などが挙げられ、これらは単独に又は2種以上組み合わせて用いられ得る。
【0037】
本出願は、場合によって、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、水などの補助的溶媒を用いてポリアミド酸の溶解度を調節してもよい。
【0038】
一つの例示で、前記有機溶媒は、例えば、N-メチル-ピロリドン(NMP)であってもよい。
【0039】
また、本出願は、ポリアミド酸組成物の製造方法に関する。前記製造方法は、上述したポリアミド酸組成物の製造方法であってもよい。
【0040】
一つの例示で、前記製造方法は、フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体に非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアミン単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第3段階を含むことができる。また、本出願の製造方法は、フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階;前記重合された非フッ素系ジアミン単量体に非フッ素系ジアンハイドライド単量体を追加で重合する第2段階及び前記重合された非フッ素系ジアンハイドライド単量体にフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体を追加で重合する第3段階を含むことができる。本出願は、前記三段階の重合段階を通じて、フッ素系ジアミン単量体とフッ素系ジアンハイドライド単量体が互いに反応しないようにすることができ、それによって、優れた誘電率とともに耐熱性及び機械的特性を具現し得る。
【0041】
本出願の具体例で、まず、フッ素系ジアミン単量体の両側アミン基に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体を重合する第1段階に引き続いて進行される前記第2段階は、前記2個の非フッ素系ジアンハイドライドに2個の非フッ素系ジアミン単量体が重合されるものを含むことができる。また、引き続き、前記第3段階は、前記2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合されるものを含むことができる。また、引き続き、前記製造方法は、前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライド単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合されるものを含むことができる。すなわち、前記第2段階まで重合された重合単位は、フッ素系又は非フッ素系ジアンハイドライドを媒介として互いに連結され得る。本出願は、上記のような重合方法及びそれから生成される重合順序を調節することによって、低誘電特性とともに耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得る。
【0042】
同様に、フッ素系ジアンハイドライド単量体の両側アンハイドライド基に2個の非フッ素系ジアミン単量体を重合する第1段階に引き続いて進行される第2段階は、2個の非フッ素系ジアミン単量体に2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体が重合され得る。また、引き続き、第3段階は、2個の非フッ素系ジアンハイドライド単量体に2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体が重合され得る。また、引き続き、前記製造方法は、前記2個のフッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体に、前記第2段階まで重合された重合単位が追加で重合され得る。すなわち、前記第2段階まで重合された重合単位は、フッ素系又は非フッ素系ジアミン単量体を媒介として互いに連結され得る。本出願は、上記のような重合方法及びそれから生成される重合順序を調節することによって、低誘電特性とともに耐熱性及び機械的特性を同時に具現し得る。
【0043】
一般的に、ポリアミド酸溶液の製造は、例えば、ジアミン単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアンハイドライド単量体をジアミン単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法、又はジアンハイドライド単量体の全量を溶媒中に入れ、その後、ジアミン単量体をジアンハイドライド単量体と実質的に等モル又は過量となるように添加して重合する方法などを用いる。このような方法は、前記本出願の製造方法においても用いられ得る。
【0044】
また、本出願は、前記ポリアミド酸組成物の硬化物であるポリイミドに関する。一つの例示で、前記ポリイミドは、上述したポリアミド酸組成物又はその製造方法によって製造された前駆体組成物の硬化物であってもよい。
【0045】
また、本出願は、被覆物に関する。前記被覆物は、上述したポリアミド酸組成物の硬化物であるポリイミドを含むことができる。前記被覆物は、例えば、導体の表面にコーティング及び硬化されていてもよい。一つの例示で、前記被覆物は、ポリアミド酸組成物を導体表面にコーティングする段階;及び前記導体表面にコーティングされたポリアミド酸組成物をイミド化する段階を含むことができる。前記導体は、銅又は銅合金からなる銅線であってもよいが、銀線などの他の金属材料からなる導体や、アルミニウム、スズメッキ線などの各種金属メッキ線も導体に含まれ得る。前記導体と被覆物の厚さは、KS C 3107標準によることができる。前記導体の直径は、0.3~3.2mm範囲内であってもよく、被覆物の標準被膜厚さ(最大被膜厚さと最小被膜厚さの平均値)は、0種が21~194μm、1種が14~169μm、2種が10~31μmであってもよい。導体の断面形状としては、丸線、平角線、六角線などであってもよいが、それに制限されるものではない。
【0046】
また、本発明は、前記ポリアミド酸組成物を電線表面にコーティングしてイミド化して製造されたポリイミド被覆物を含む被覆電線を提供することができる。一具現例で、前記被覆電線は、電線;及び上述したポリアミド酸組成物が前記電線の表面にコーティングされてイミド化された被覆物を含むことができる。また、本出願は、前記被覆電線を含む電子装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0047】
本出願は、低い誘電率と耐熱性、絶縁性及び高温など苛酷条件での機械的特性を同時に具現し得るポリアミド酸組成物、ポリアミド酸組成物の製造方法、それを含むポリイミド及びそれを含む被覆物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記の提示された実施例によって制限されるものではない。
【0049】
<実施例1>
撹拌機及び窒素注入排出管を具備した500mL反応器に窒素を注入しながらN-メチル-ピロリドン(NMP)を投入して反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン単量体としてフッ素系単量体である2,2-Bis[4-(4-aminophenoxy phenyl)]hexafluoropropane(HFBAPP)及びジアンハイドライド単量体として非フッ素系単量体である3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(BTDA)を投入して完全に溶解されたことを確認する。その後、ジアミン単量体として非フッ素系単量体である4,4'-Oxydianiline(ODA)を投入して同一に重合反応を進行した。その後、ジアンハイドライド単量体としてフッ素系単量体である2,2-bis(3,4-anhydrodicarboxyphenyl)hexafluoropropane(6-FDA)を投入して40℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続けた。その後、窒素雰囲気下で80℃に温度を上げて加熱しながら2時間の間追加的に撹拌を続けた。同一に重合反応を進行してポリアミド酸溶液を製造した。
【0050】
<実施例2~4、実施例6及び比較例1~4、比較例6>
実施例1で、単量体及びその含量比を下記表1のように変更したこと以外は、実施例1と同一の方法で実施例2~4及び実施例6のポリアミド酸組成物を製造した。比較例1~4及び比較例6は、単量体及びその含量をそれぞれ下記表1のように変更し、ジアミン単量体2種及びジアンハイドライド単量体2種を同時に投入したこと以外は、実施例1と同一の方法でポリアミド酸組成物を製造した。
【0051】
<実施例5及び比較例5>
撹拌機及び窒素注入排出管を具備した500mL反応器に窒素を注入しながらN-メチル-ピロリドン(NMP)を投入して反応器の温度を30℃に設定した後、ジアミン単量体として非フッ素系単量体である4,4'-Oxydianiline(ODA)及びジアンハイドライド単量体として非フッ素系単量体である3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(BTDA)を投入して完全に溶解されたことを確認する。
【0052】
その後、ジアンハイドライド単量体としてフッ素系単量体である2,2-bis(3,4-anhydrodicarboxyphenyl)hexafluoropropane(6-FDA)を投入して40℃に温度を上げて加熱しながら120分間撹拌を続けた。その後、窒素雰囲気下で80℃に温度を上げて加熱しながら2時間の間追加的に撹拌を続けた。同一に重合反応を進行してポリアミド酸溶液を製造した。
【0053】
【0054】
コーティング硬化炉内で前記ポリアミド酸溶液を導体径1mmの銅線に1回当たりコーティング厚さを2~6μmの間に調節し、コーティング硬化炉の最低温度と最高温度を350~550℃に調節し、銅線の被覆速度を12~32m/分に調節した状態で、被覆物の厚さが33~35μmであるポリイミド被覆物を含む電線(被覆電線)を製造した。
【0055】
<実験例1-厚さ>
製造されたポリイミド被覆物の被覆厚さは、KS C 3107標準によって測定した。
【0056】
<実験例2-誘電率及び誘電正接値>
前記実施例及び比較例で製造したポリイミドフィルムの1GHzでの誘電率及び誘電正接をKeysight社のSPDR測定機を用いて測定した。その結果、測定された誘電率及び誘電正接値を下記表2に示した。
【0057】
<実験例3-絶縁破壊電圧(BDV)の測定>
前記実施例及び比較例で製造した試片を4時間の間150℃のオーブンで前処理した後、圧力容器に入れる。圧力容器を1400gの冷媒で満たし、圧力容器を72時間の間加熱した後、圧力容器を冷却させ、試験片を150℃のオーブンに移して10分間維持して室温に冷却させる。電線の両末端を連結して電線導体の間に試験電圧(60Hz)公称周波数の交流電圧を0から一定の速度で増加させてBDVを測定した。
【0058】
<実験例4-部分放電開始電圧(PDIV)の測定>
実施例及び比較例で製造した被覆電線の試片の一対の末端に、ASTM 2275-01標準によって荷重及びねじりを印加することによってツイストペアサンプルを製作する。その後、サンプルの両末端の裸導体に50~60Hz周波数の電圧を一定の速度で印加して部分放電(100pC以上)が起きる電圧を記録する。
【0059】
【国際調査報告】