(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-12
(54)【発明の名称】アルキン誘導体およびその調製方法と用途
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20220905BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220905BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
C07D487/04 142
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
A61P37/02
A61P19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501136
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2020100376
(87)【国際公開番号】W WO2021004421
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】201910608212.0
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510116819
【氏名又は名称】浙江海正薬業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zhejiang Hisun Pharmaceutical CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.46 Waisha Road,Jiaojiang District,Taizhou,Zhejiang 318000,P.R.China
(71)【出願人】
【識別番号】521508896
【氏名又は名称】上海昂睿医薬技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】呂 賀軍
(72)【発明者】
【氏名】馬 玉涛
(72)【発明者】
【氏名】邱 海波
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲ウェン▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 泰山
(72)【発明者】
【氏名】陳 磊
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF03
4C050GG04
4C050HH02
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB06
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、アルキン誘導体、その調製方法、及びその医薬への応用に関する。具体的には、本発明は、式(I)で示されるアルキン誘導体、その調製方法、及びそれらの薬学的に許容される塩、並びに治療薬、特にホスファチジルイノシトール3-キナーゼγ(PI3Kγ)阻害剤としてのそれらの使用に関する。ただし、式(I)中、各置換基の定義は明細書に記載の定義と同じである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示される化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【化1】
(式中、Xは、CH又はNから選ばれ、
R
1は、シクロアルキル基又は複素環式基から選ばれ、前記のシクロアルキル基又は複素環式基は、ヒドロキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、または-NR
5R
6から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意選択的にさらに置換され、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲンから選ばれ、ここで、前記のアルキル基又はアルコキシ基は、さらに1つ又は複数のハロゲンで任意選択的に置換され、
R
4は、同一または異なって、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲンから選ばれ、ここで、該アルキル基又はアルコキシ基は、さらに1つ又は複数のハロゲンで任意選択的に置換され、
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基から選ばれ、ここで、前記のアルキル基又はシクロアルキル基は、さらにヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、又は複素環式基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換され、かつ
mは、0、1、2、3、4又は5である。)
【請求項2】
R
1は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はオキセタニル基である、請求項1に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1は、シクロプロピル基又はオキセタニル基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲンから選ばれ、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
4は、同一または異なって、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、又はハロゲンから選ばれ、かつ、mは0、1、2又は3であり、好ましくはR
4は水素である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記化合物は、
【化2】
から選ばれる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項7】
有効量の請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤又はそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項8】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの阻害剤として用いられる医薬品の製造における、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載の医薬組成物の使用。
【請求項9】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載の医薬組成物の使用であって、
前記ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患は、好ましくはがん、骨障碍、呼吸器疾患、炎症性疾患または自己免疫疾患であり、前記呼吸器疾患は、好ましくは喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧である呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患である、使用。
【請求項10】
前記がんは、血液腫瘍、及び固形腫瘍であり、前記血液腫瘍は、好ましくは急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性疾患から選ばれ、
前記血液腫瘍は、好ましくは脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載の医薬組成物と、一種または複数の第2の治療薬の併用において、前記第2の治療薬は、PI3Kδ阻害剤、mTOR阻害剤、共刺激調節剤、免疫賦活剤、CXCL12/CXCR4阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、CD28抗体、CD30抗体、CD40抗体、GM-CSF、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、5-FU、テモゾロミド、抗血管新生剤、アキシチニブ、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤又はそれらの混合物から選ばれ、好ましくはPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤である、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの活性を阻害するための方法において、治療有効量の請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載の医薬組成物を、必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載の医薬組成物を、必要とする患者に投与することを含む、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの活性を阻害することにより、がん、骨障碍、呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患を治療するための方法であって、
呼吸器系疾患は、好ましくは喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧から選ばれ、
がんは、好ましくは血液腫瘍又は固形腫瘍から選ばれ、ここで、前記血液腫瘍は好ましくは急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性疾患から選ばれ、前記固形腫瘍は好ましくは、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれる、方法。
【請求項14】
一種または複数の第2の治療薬、を前記患者に追加投与することをさらに含む方法において、前記第2の治療薬は、PI3Kδ阻害剤、mTOR阻害剤、共刺激調節剤、免疫賦活剤、CXCL12/CXCR4阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、CD28抗体、CD30抗体、CD40抗体、GM-CSF、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、5-FU、テモゾロミド、抗血管新生剤、アキシチニブ、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、及びそれらの混合物から選ばれ、好ましくはPD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、発明の名称が「アルキン誘導体およびその調製方法と用途」である、2019年7月8日に中国特許庁へ提出された中国特許出願201910608212.0に基づく優先権を主張し、その全内容は、全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、新しいアルキン誘導体、その調製方法、この誘導体を含む医薬組成物、及び治療薬、特にホスファチジルイノシトール3-キナーゼγ(PI3Kγ)阻害剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3-キナーゼ或PI3K)は、ウイルスのかん遺伝子に関連する細胞内ホスファチジルキナーゼであり、それによって媒介されるPI3K-Akt-mTORシグナル経路が腫瘍の発生と発達に重要な役割を果たし、腫瘍細胞の形成、生存、増殖、遊走、代謝およびアポトーシスを調節することができる。配列相同性と脂質基質の特異性に基づき、PI3KファミリーはI型、II型、III型に分類される。I型のPI3Kは、比較的広く研究されており、多くの薬物研究の重要なターゲットである。すべてのI型のPI3Kは、ヘテロ二量体タンバク質であり、それぞれが小さな調節ドメインと大きな110kDaの触媒ドメインを含み、p110α、p110β、p110γ、及びp110δに分化した4つのサブタイプとして存在する。通常、I型のPI3K(p110α、p110β、p110δ、又はp110γ)は、チロシンキナーゼやGタンパク質共役受容体によって活性化され、例えばAkt/PDK1経路、mTOR、Tecファミリーキナーゼ、及びRhoファミリーのGTPアーゼの下流エフェクターと結合するPIP3を生成する。II型とIII型のPI3Kは、PI(3)PとPI(3,4)P2の合成を通じて細胞内輸送において重要な役割を果たす。PI3Kは、細胞成長(mTORC1)を制御するか、ゲノムの完全性(ATM、ATR、DNA-PK、及びhSmg-1)を監視するプロテインキナーゼである。4つのI型のPI3Kサブタイプは、インビボで特徴的な発現パターンを示す。PI3KαとPI3Kβの発現は非常に一般的であり、細胞の成長、生存、増殖に重要な役割を果たす。PI3KαとPI3Kβを阻害するのは、主にかんの治療を目的とする。PI3Kγは顆粒球、単球、及びマクロファージで広く発現し、PI3KδサブタイプはB細胞とT細胞にも見られている。PI3KδやPI3Kγをコードする遺伝子のノックアウトマウスは、生き残る可能性があるが、自然免疫と適応応答に明らかな欠陥を示すことになるので、特異性PI3KδやPI3Kγの阻害剤は他の細胞系に対するPI3Kシグナル伝達の正常な機能を妨げることなく、自己免疫疾患の治療利益を有する可能性がある。
【0004】
現在、BEZ235、GDC-0941、CAL-101などの幾つかのPI3Kに対する阻害剤は臨床研究に進んで、市場に出されることもある。最近の研究は、PI3Kγは自己免疫系、炎症性疾患、呼吸器系疾患などと密接に関連していることが分かった。したがって、PI3Kγ選択的阻害剤はがん、炎症性疾患、骨障害、呼吸器系疾患、及び自己免疫疾患(Matthew W.D.ら,Journal of Medicinal Chemistry(2019),62(10),4783-4814;Perrottaら,International Journal of Molecular Sciences(2016),17(11),1858/1-1858/9;Okkenhaug、Klausら,Cancer Discovery(2016),6(10),1090-1105.;Hirsch E,ら.Science(80-).2000;287:1049-1053.;Li Z.ら,Science(80-).2000;287:1046-1049.;KanedaMMら,Nature.2016;1-21)の人気のある標的になっている。PI3Kγ選択的阻害剤は、がんを治療する潜在的な薬剤である。前記がんは、血液腫瘍及び固形腫瘍を含む。前記血液腫瘍は、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、(WM)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、肥満細胞症、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、または骨髄増殖性疾患(MPD)から選ばれる。前記固形腫瘍は、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスに引き起こすがん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍(GIST)、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNT)、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん及びカルチノイド腫瘍から選ばれることが好ましい。PI3Kγ阻害剤は、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧などを含む呼吸器系疾患に対しても治療利益を有する。
【0005】
現在、臨床研究に進んだPI3Kγ選択的阻害剤は、Infinity社のIPI-549のみであり、それは、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤及びPD-L1阻害剤)への腫瘍の抵抗を逆転させることができ、腫瘍免疫療法に用いられる見込みがある。IPI-549は、その構造が以下に示され、特許出願WO2015051244A1にはその調製方法が開示されている。
【化1】
【0006】
さらに、従来技術には、WO2012052753、WO2011008302などのPI3Kγ選択的阻害剤に関する一連の出願も開示されている。
【0007】
PI3Kγ選択的阻害剤の研究と応用は、一定の発展を遂げたが、それらの新しい阻害剤はまだ研究段階であるもので、生物活性が不十分であり、選択性が不十分であり、オフターゲットの可能性が高く又は安全性及び耐容性が不十分であるなどの解決すべき多くの課題があり、まだ改善の余地がある。従って、新しいPI3Kγ選択的阻害剤の研究開発を続ける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術問題に鑑みて、本発明は下記の式(I)で示されるアルキン系化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】
(式中、Xは、CH又はNから選ばれ、
R
1は、シクロアルキル基又は複素環式基から選ばれ、ここで、前記のシクロアルキル基又は複素環式基は、さらにヒドロキシ基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、または-NR
5R
6から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換され、R
1は、オキセタニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基から選ばれ、より好ましくはシクロプロピル基又はオキセタニル基であり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲンから選ばれ、ここで、前記のアルキル基又はアルコキシ基はさらに1つ又は複数のハロゲンで任意選択的に置換され、
R
4は、同一または異なって、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はハロゲンから選ばれ、ここで、前記アルキル基又はアルコキシ基はさらに1つ又は複数のハロゲンで任意選択的に置換され、
R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基から選ばれ、ここで、前記アルキル基又はシクロアルキル基はさらにヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、又は複素環式基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換され、かつ
mは、0、1、2、3、4又は5である。)
【0009】
本発明の好適な実施形態においては、R1は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又はオキセタニル基であることが好ましく、シクロプロピル基又はオキセタニル基であることがより好ましい。
【0010】
本発明の好適な実施形態においては、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、又はハロゲンから選ばれ、前記ハロゲンは好ましくはフッ素である。
【0011】
本発明の好適な実施形態においては、R4は、同一または異なって、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はハロゲンから選ばれ、かつmは、0、1、2又は3であり、好ましくは、R4は水素である。
【0012】
本発明の好適な実施形態においては、Xは、CH又はNから選ばれ、R1は、シクロプロピル基又はオキセタニル基から選ばれ、R2及びR3は、水素原子及びFから選ばれる。
【0013】
本発明の典型的な化合物は、
【表1】
に限られていないが、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0014】
さらに、本発明は、有効量の式(I)で示される化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤又はそれらの組み合わせとを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの阻害剤として用いられる医薬品の製造における、本発明に係る式(I)で示される化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0016】
本発明は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患を治療するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物の使用を提供する。ここで、前記ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患は、がん、骨障碍、呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患であることが好ましい。前記呼吸器系疾患は、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧であることが好ましい。前記がんは、血液腫瘍又は固形腫瘍であるであることが好ましい。前記血液腫瘍は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性疾患から選ばれることが好ましい。前記固形腫瘍は、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれることが好ましい。
【0017】
本発明は、さらに、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患を治療するための医薬品の製造における、式(I)で示される化合物、またはその立体異性体化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物と一種または複数の第2の治療薬との併用を提供する。ここで、前記ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγによって介される疾患は、がん、骨障碍、呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患であることが好ましい。前記呼吸器系疾患は、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧であることが好ましい。前記がんは、血液腫瘍又は固形腫瘍であることが好ましい。前記血液腫瘍は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性疾患から選ばれることが好ましい。前記固形腫瘍は、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれることが好ましい。前記第2の治療薬は、PI3Kδ阻害剤、mTOR阻害剤、共刺激調節剤、免疫賦活剤、CXCL12/CXCR4阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、CD28抗体、CD30抗体、CD40抗体、GM-CSF、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、5-FU、テモゾロミド、抗血管新生剤、アキシチニブ、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はそれらの混合物から選ばれ、好ましくはPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤である。
【0018】
本発明は、式(I)で示される化合物、またはその立体異性体化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物を投与することを含むホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの活性の阻害方法を提供する。
【0019】
本発明は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼγの活性を阻害することにより、がん、骨障碍、呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患の病気を治療するための方法であって、式(I)前記化合物、その立体異性体、互変異性体、又はそれらの薬学的に許容される塩、又はその医薬組成物を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。ここで、前記呼吸器系疾患は、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧から選ばれることが好ましい。前記がんは、血液腫瘍又は固形腫瘍であることが好ましい。前記血液腫瘍は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性疾患から選ばれることが好ましい。前記固形腫瘍は、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれることが好ましい。
【0020】
幾つかの好適な実施形態では、上記のがん、骨障碍、呼吸器系疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患の病気を治療するための方法は、一種または複数のの第2の治療薬を前記患者に追加投与することをさらに含む。ここで、前記呼吸器系疾患は、喘息、嚢胞性線維症、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気管支拡張症、急性呼吸窮迫症候群、気道疾患、胸腔疾患、又は肺動脈高血圧から選ばれることが好ましい。前記がんは、血液腫瘍又は固形腫瘍から選ばれることが好ましい。前記血液腫瘍は、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、末梢性T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、大顆粒リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肥満細胞症、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性疾患から選ばれることが好ましい。前記固形腫瘍は、脳腫瘍、皮膚かん、頭頸部かん、神経内分泌がん、膵臓がん、肺かん、乳がん、前立腺がん、精巣がん、食道かん、肝臓かん、胃かん、結腸かん、結腸直腸かん、卵巣かん、子宮頸かん、子宮かん、子宮内膜かん、膀胱かん、腎がん、ウイルスによる発がん、髄芽腫、基底細胞がん、グリオーマ、肝細胞かん、消化管間質腫瘍、黒色腫、原始神経外胚葉性腫瘍、線維肉腫、粘液型肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫瘍、中皮腫、平滑筋肉腫、膀胱の移行細胞かん、上皮かん、有棘細胞かん、腺かん、気管支かん、腎細胞かん、及びカルチノイド腫瘍から選ばれることが好ましい。前記第2の治療薬は、PI3Kδ阻害剤、mTOR阻害剤、共刺激調節剤、免疫賦活剤、CXCL12/CXCR4阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、CD28抗体、CD30抗体、CD40抗体、GM-CSF、ゲムシタビン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、5-FU、テモゾロミド、抗血管新生剤、アキシチニブ、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、及びそれらの混合物から選ばれ、好ましくはPD-1阻害剤或PD-L1阻害剤である。
【0021】
発明の詳細的な説明
反対の記載がない限り、本発明の明細書および特許請求の範囲で使用されるいくつかの用語は、以下のように定義される。
【0022】
「アルキル基」は、一基又は一基の一部と見なされる場合、C1-C20の直鎖状又は分岐脂肪族炭化水素基を含む基を指す。C1-C10アルキル基であることが好ましく、C1-C6アルキル基及びC1-C4アルキル基であることがより好ましい。アルキル基の実例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、s-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどが含まれるが、それらに限定されない。アルキル基は、置換であってもよく、非置換であってもよい。
【0023】
「シクロアルキル基」とは、飽和または部分的に飽和した単環式、縮合式、架橋式、およびスピロ環式炭素環を指す。C3-C12シクロアルキル基であることが好ましく、C3-C8シクロアルキル基であることがより好ましく、C3-C6シクロアルキル基であることが最も好ましい。単環式シクロアルキル基の実例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチルなどを含み、好ましくは、シクロプロピル基、シクロヘキセニル基であるが、それらに限定されない。前記シクロアルキル基環は、アリール、ヘテロアリール、または複素環式環に縮合してもよく、ただし、親構造に連結する環はシクロアルキル基であり、非限定的な実例には、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、ベンゾシクロヘプチル基等などが含まれる。シクロアルキル基は、任意選択的に置換であってもよく、非置換であってもよい。インダニル、テトラヒドロナフタレン基、ベンゾシクロヘプタニル基などが含まれる。
【0024】
「複素環式基」又は「ヘテロ環」は、本願において交換可能に使用され、いずれも1つ又は複数の環形成原子が酸素、窒素、硫黄原子などのヘテロ原子である非芳香族複素環式基を意味し、単環、縮合式環、架橋式環、およびスピロ環を含む。5乃至7員の単環式環、又は7乃至10員の二環式又は三環式環を有することが好ましく、窒素、酸素および/または硫黄から選択される1、2又は3個の原子を含んでも良い。「複素環式基」の実例は、モルホリニル、オキセタニル基、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル基、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、ピペリジニル基、2-オキソ-ピペリジニル基、ピロリジニル基、2-オキソ-ピロリジニル基、ピペリジン-2-オン、8-オキサ-3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタニル基、及びピペラジニル基を含むが、以下に限定されない。複素環式基は、置換であってもよく、非置換であってもよい。前記複素環式基環は、アリール基、ヘテロアリール基、またはシクロアルキル基の環に縮合してもよく、ここで、親構造と一緒に連結する環は複素環式基である。複素環式基は、任意選択的に置換であってもよく、非置換であってもよい。
【0025】
「アリール基」とは、1つ又は2つの環を含む炭素環式芳香族系を指し、ここで、該環は、縮合より一緒に連結することができる。「アリール基」という用語は、例えば、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基などの芳香族基を含む。アリール基は、C
6~C
10アリール基であることが好ましく、フェニル基、及びナフチル基であることがより好ましく、フェニル基であることが最も好ましい。アリール基は、置換であってもよく、非置換であってもよい。前記「アリール基」は、ヘテロアリール基、複素環式基、又はシクロアルキル基と縮合してもよく、ここで、親構造と一緒に連結する環はアリール基環である。非限定的な実例は、
【化3】
を含むが、これらに限定されない。
【0026】
「ヘテロアリール基」は、芳香族の5乃至6員の単環式環または8乃至10員の二環式環を指し、窒素、酸素、及び/又は硫黄から選択される1、2、3又は4個の原子を含むんでも良い。「ヘテロアリール基」の実例は、フラニル基、ピリジル基、2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、チエニル基、イソキサゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3-チアジアゾリル基、ベンゾジオキソリル基、ベンゾチエニル基、ベンズイミダゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、1,3-ジオキソ-イソインドリル基、キノリニル基、インダゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、及びベンズイソキサゾリル基を含むが、以下に限定されない。ヘテロアリール基は、置換であってもよく、非置換であってもよい。
【0027】
「アルコキシ基」とは、(アルキル-O-)基を指す。ここで、アルキル基は、上記のように定義されている。C1~C6アルコキシ基又はC1~C4アルコキシ基が好ましく選択される。その実例は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0028】
「ヒドロキシ基」とは、-OH基を指す。
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
「アミノ基」とは、-NH2を指す。
「シアノ基」とは、-CNを指す。
「ニトロ基」とは、-NO2を指す。
「カルボキシ基」とは、-C(O)OHを指す。
「カルボキシレート基」とは、-C(O)O-アルキル基又は-C(O)O-シクロアルキル基を指す。ここで、アルキル基、シクロアルキル基は、定義が上記の通りである。
「DMSO」とは、ジメチルスルホキシドを指す。
「Me」とは、メチルを指す。
「Et」とは、エチルを指す。
「TMS」とは、トリメチルシリル基を指す。
【0029】
「置換」とは、基中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは最大5つ、より好ましくは1、2、または3つの水素原子が、それぞれ独立して対応する数の置換基で置き換えたことを指す。言うまでもなく、置換基はそれらの可能な化学的部位にのみ存在し、当業は、あまり労力をかけずに(実験または理論によって)可能なまたは不可能な置換を決定するである。例えば、遊離水素を持つアミノ基又はヒドロキシ基は不飽和(例えば、エチレン性)結合を持つ炭素原子に結合する場合、不安定になる可能性がある。
【0030】
本明細書にかかる「置換」又は「置換されている」とは、特に断らない限り、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環式基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、アミノ基、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、=O及び-NR5R6から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換されてもよいことを指す。
【0031】
R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基から選ばれる。ここで、前記アルキル基又はシクロアルキル基は、さらにヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、または複素環式基から選ばれる1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されている。特に好ましくは、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子から選択される。
【0032】
「薬学的に許容される塩」とは、元の生物学的活性を維持することが可能な、薬剤用途に適している上記の化合物のある塩を指す。式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩は、適切な酸と形成されたアンモニウム塩であってもよい。
【0033】
「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物の一種または複数、またはそれらの生理学的に薬学的に許容される塩、またはプロドラッグと他の化学的成分との混合物、及び生理学的に薬学的に許容される担体及び賦形剤などの他の成分を含むことを表す。医薬組成物にする目的は、生体への投与を促進し、有効成分の吸収を促進し、ひいては生物学的活性を発揮することである。
【0034】
本発明において、「複数」という用語は、数が2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上ことを表す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例を合わせて本発明をさらに説明するが、それらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例は、式(I)で表される代表的な化合物の調製及び関連する構造の同定データを示す。なお、以下の実施例は、本発明を説明するために用いられるが、本発明を限定するものではないことに留意されたい。1H NMRスペクトルは、ブルカー装置(400MHz)により測定され、化学シフトはppmで表された。内部標準物質(0.00ppm)としてテトラメチルシランを使用した。1H NMRの表示法は、s=一重線、d=二重線、t=三重線、m=多重線、br=幅広線、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線である。カップリング定数が示された場合、その単位がHzである。
【0037】
マススペクトルは、LC/MS機器により測定され、イオン化法はESIまたはAPCIでもよい。
【0038】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートは、煙台黄海のHSGF254または青島のGF254シリカゲルプレートを使用した。薄層クロマトグラフィー(TLC)に用いられるシリカゲルプレートは、0.15mm~0.2mmの仕様を採用した。薄層クロマトグラフィーによる製品の分離と精製は、0.4mm~0.5mmの仕様を採用した。
【0039】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に煙台黄海のシリカゲル200~300メッシュのシリカゲルを担体として使用した。
【0040】
以下の実施例では、特に指定のない限り、すべての温度は摂氏温度である。特に指定のない限り、さまざまな出発原料及び試薬は、市場で購入されたか、既知の方法に従って合成された。市販の原料および試薬は、さらに精製することなくそのまま使用し、特に指定のない限り、アルドリッチケミカル社、ABCRGmbH&Co.KG、アクロス オーガニクス、広賛化学工業科技有限公司、及び景顔化学工業科技有限公司を含む販売メーカーから購入したが、これらに限定されない。
【0041】
CD3OD:重水素化メタノール
CDCl3:重水素化クロロホルム
DMSO-d6:重水素化ジメチルスルホキシド
【0042】
アルゴン雰囲気とは、反応フラスコが一つの約1L容量のアルゴンガス風船に接続されていることを指す。
【0043】
実施例では、特に断りのない限り、反応中の溶液は水溶液を指す。
【0044】
化合物の精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー溶離剤システムおよび薄層クロマトグラフィーを使用した。ここで、溶離剤システムは、石油エーテルと酢酸エチルとのシステム(A)、ジクロロメタンとメタノールとのシステム(B)、ジクロロメタン-酢酸エチル(C)から選択された。だたし、溶剤の体積比は、化合物の極性によって異なり、酢酸又はトリエチルアミンなどの酸性またはアルカリ性の試薬を少量加えて調整することができる。
【0045】
実施例1
(S)-2-amino-N-(1-(8-((1-cyclopropyl-1H-pyrazol-4-yl)ethynyl)-1-oxo-2-phenyl-1,2-dihydroisoquinolin-3-yl)ethyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidine-3-carboxamide
(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
【化4】
【化5】
【0046】
第1ステップ
(Z)-3-アミノ-4,4,4-トリクロロ-2-シアノブタ-2-エン酸エチルエステル
2-シアノ基酢酸エチル1a(16.48g,0.1448mol)及び2,2,2-トリクロロアセトニトリル1b(40g,0.289mol)を50mLのエタノールに溶解し、氷浴下でトリエチルアミン(1.1mL,7.9mmol)をゆっくり滴下し、2時間反応させた。減圧下で濃縮させ、(Z)-3-アミノ-4,4,4-トリクロロ-2-シアノブタ-2-エン酸エチルエステル1c(37g,黄色固体)を、収率100%で得た。
MSm/z(ESI):258.8[M+H]
【0047】
第2ステップ
3,5-ジアミノ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
(Z)-3-アミノ-4,4,4-トリクロロ-2-シアノブタ-2-エン酸エチルエステル1c(37g,0.1448mmol)及びヒドラジン水和物(18g,0.362mol)を75mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、100℃に加熱し、3時間反応させた。減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムB)によりさらに分析・精製し、3,5-ジアミノ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル1d(24.6g,黄色固体)を収率100%で得た。
MSm/z(ESI):171.1[M+H]
【0048】
第3ステップ
2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸エチル
3,5-ジアミノ-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル1d(23.5g,0.138mol)及び1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(24.9g,0.152mol)を140mLの2M塩酸に加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。室温に冷却し、pH=9にアンモニア水で調整し、ジクロロメタン(200mL×3)で抽出を行い、有機相を合わせ、減圧下で濃縮させ、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸エチル1e(15.2g,黄色固体)を収率53.5%で得た。
MSm/z(ESI):206.9[M+H]
第4ステップ
【0049】
2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸
2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸エチル1e(16.7g,0.081mol)及び水酸化リチウム一水和物(14.98g,0.356mol)を150mLのメタノールと水との混合溶剤(V/V=1:4)に加え、50℃に加熱し、2時間反応させた。減圧下で濃縮させ、4Mの塩酸でpH=6に調整し、固形物を洗い出し、ろ過し、乾燥させ、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸1f(7.8g,黄色固体)を収率54%で得た。
MSm/z(ESI):178.9[M+H]
【0050】
第5ステップ
1-シクロプロピル-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール
アルゴンガスの保護下で、1-シクロプロピル-4-ヨード-1H-ピラゾール1k(28g,0.12mol,特開WO2015134701に従って調製)を500mLのテトラヒドロフランに溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(4.2g,0.006mol)、ヨウ化第一銅(2.28g,0.012mol)及び0.6mLのトリエチルアミンを加え、温度を0℃に制御し、エチニルトリメチルシラン(23.5g,0.24mol)をゆっくりと加え、室温で一晩中反応させた。ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)によりさらに分析し精製し、1-シクロプロピル-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール1l(20.5g,茶色の黒い液体)を収率83.7%で得た。
MSm/z(ESI):205.1[M+H]
【0051】
第6ステップ
1-シクロプロピル-4-エチニル-1H-ピラゾール
1-シクロプロピル-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール1l(20.5g,0.1mol)を120mLのテトラヒドロフランに溶解し、温度を0℃に制御し、テトラブチルアンモニウムフルオリドテトラヒドロフラン溶液(120mL,0.12mol,1mol/L)を加え、室温で1時間反応させた。減圧下で濃縮させ、得られた残留物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)により分析・精製し、1-シクロプロピル-4-エチニル-1H-ピラゾール1m(12g,淡黄色液体)を収率90.9%で得た。
MSm/z(ESI):133.1[M+H]
【0052】
第7ステップ
2-クロロ-6-メチル-N-フェニルベンズアミド
2-クロロ-6-メチル安息香酸1g(17g,0.1mol)を100mLのジクロロメタンに溶解し、0.2mLのN,N-ジメチルホルムアミドを滴下し、塩化オキサリル(9.3mL,0.11mol)を氷浴下でゆっくりと滴下し、室温下で3時間反応させた。減圧下で濃縮させ、残留物を70mLのジクロロメタンに溶解し、氷浴下で、アニリン(9.76g,0.105mol)とトリエチルアミン(30mL,0.210mol)を溶解した100mLのジクロロメタン溶液をゆっくりと滴下し、室温下で2時間反応させた。100mLの水及び100mLのジクロロメタンを加え、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、20mLの酢酸エチル及び200mLのn-ヘキサンを加え、撹拌し、固体を析出させ、ろ過し、乾燥させた。2-クロロ-6-メチル-N-フェニルベンズアミド1h(18.9g,黄色固体)を収率77.14%で得た。
MSm/z(ESI):246.0[M+H]
【0053】
第8ステップ
(S)-3-(1-アミノエチル)-8-クロロ-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン
2-クロロ-6-メチル-N-フェニルベンズアミド1h(490mg,2mmol)を5mLのテトラヒドロフランに加え、温度を-30℃に制御し、n-ブチルリチウム(2.5mL,5mmol)をゆっくり滴下し、この温度で30分間反応させた。また、(S)-(1-(メトキシ(メチル)アミノ)-1-オキソプロピル-2-イル)カルバミン酸tert-ブチル1i(696mg,3mmol,J.Med.Chem.2003,43,3434~3442に従って合成して得た)を5mLのテトラヒドロフランに加え、温度を-30℃に制御し、イソプロピルマグネシウムクロリド(1.65mL,3.3mmol)をゆっくり滴下し、この温度下で0.5時間反応させた。温度を-15℃に制御し、1iの反応液を1hの反応液にゆっくり滴下し、1時間反応させた。1mLの水を加えて反応溶液をクエンチし、濃塩酸でpH=2に調整し、減圧下で濃縮させ、残留物を10mLのメタノールに溶解し、5mLの濃塩酸を加え、加熱しながら1時間還流した。減圧下で濃縮させ、200mLの酢酸エチルと石油エーテルとの混合溶剤(V/V=1:1)で2回抽出し、pH=10にアンモニア水で水相を調整し、100mLのジクロロメタンで抽出し、ジクロロメタン層を減圧下で濃縮させ、残留物を分取液体クロマトグラフィーにより分離して(S)-3-(1-アミノエチル)-8-クロロ-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン1j(300mg,淡黄色の固形物)を収率50%で得た。
MSm/z(ESI):299.0[M+H]
【0054】
第9ステップ
(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン
アルゴンガスの保護下で、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-クロロ-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン1j(200mg,0.67mmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(34mg,0.132mmol)、炭酸セシウム(659mg,2.01mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(95mg,0.2mmol)及び1-シクロプロピル-4-エチニル-1H-ピラゾール1m(174mg,1.32mmol)を10mLのアセトニトリルに加え、75℃に加熱し、4時間反応させた。減圧下で濃縮させ、ジクロロメタンを加え、珪藻土でろ過し、水で洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させ、分取薄層クロマトグラフィーで単離し、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン1n(120mg,黄色固体)を収率45%で得た。
MSm/z(ESI):394.9[M+H]
【0055】
第10ステップ
(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
アルゴンガスの保護下で、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン1n(120mg,0.304mmol)、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸1f(56.92mg,0.319mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(69.93mg,0.364mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(4mg,0.0304mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.16mL,0.912mmol)を3mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、室温で一晩中反応させた。冷たい炭酸カリウム溶液(10mL,0.1mol)をゆっくりと加え、ろ過し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ液を濃縮させ、分取薄層クロマトグラフィーで単離し、(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド1(70mg)を収率41.6%で得た。
【0056】
MSm/z(ESI):554.9[M+H]
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm 8.93(d,J=6.7Hz,1H),8.55(d,J=4.6Hz,1H),8.09(s,1H),8.00(d,J=6.6Hz,1H),7.54~7.67(m,5H),7.43~7.53(m,3H),7.34~7.41(m,1H),7.02(dd,J=6.7,4.5Hz,1H),6.74(s,1H),6.43(brs,2H),4.55(t,J=6.7Hz,1H),3.72(dq,J=7.5,3.8Hz,1H),1.35(d,J=6.7Hz,3H),1.01~1.08(m,2H),0.90~0.98(m,2H).
【0057】
実施例2
(S)-2-amino-N-(1-(5-((1-cyclopropyl-1H-pyrazol-4-yl)ethynyl)-4-oxo-3-phenyl-3,4-dihydroquinazolin-2-yl)ethyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidine-3-carboxamide
(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
【化6】
【化7】
【0058】
第1ステップ
(S)-2-(1-アミノエチル)-5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン
アルゴンガスの保護下で、(S)-2-(1-アミノエチル)-5-クロロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン2a(5g,16.7mmol、US20180105527に従って調製)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(217mg,0.835mmol)、炭酸セシウム(16.3g,50.1mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(796mg,1.67mmol)及び1-シクロプロピル-4-エチニル-1H-ピラゾール1m(2.9g,21.7mmol)を100mLのアセトニトリルに加え、85℃に加熱し、5時間反応させた。減圧下で濃縮させ、ジクロロメタンを加え、珪藻土でろ過し、水で洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに分析・精製し(溶離剤:システムB)、(S)-2-(1-アミノエチル)-5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン2b(5.2g)を収率78.8%で得た。
MSm/z(ESI):396.1[M+H]
【0059】
第2ステップ
(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
アルゴンガスの保護下で、(S)-2-(1-アミノエチル)-5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン2b(25.6g,64.7mmol)、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸1f(13.8g,77.5mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(18.6g,97.05mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.37g,32.3mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(17g,129.4mmol)を300mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、40℃で3時間反応させた。減圧下で濃縮させ、500mLの水を加え、酢酸エチルで抽出し(500mL×3)、有機相を合わせ、500mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに分析・精製し(溶離剤:システムB)、(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド2(21.3g)を収率59.2%で得た。
【0060】
MSm/z(ESI):556.2[M+H]
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm 8.91(dd,J=6.7,1.0Hz,1H),8.71(d,J=7.4Hz,1H),8.64(d,J=4.5,1.6Hz,1H),8.11(s,1H),7.81(t,J=7.8Hz,1H),7.71(dd,J=8.1,1.3Hz,1H),7.56~7.66(m,6H),7.50~7.55(m,1H),7.02(dd,J=6.7,4.4Hz,1H),6.44(brs,2H),4.75(t,J=6.9Hz,1H),3.73(dt,J=7.3,3.6Hz,1H),1.33(d,J=6.6Hz,3H),1.01~1.08(m,2H),0.91~0.98(m,2H).
【0061】
実施例3
(S)-2-amino-N-(1-(5-((1-cyclopropyl-1H-pyrazol-4-yl)ethynyl)-6-fluoro-4-oxo-3-phenyl-3,4-dihydroquinazolin-2-yl)ethyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidine-3-carboxamide
(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
【化8】
【化9】
【0062】
第1ステップ
(S)-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)カルバミン酸tert-ブチル
アルゴンガスの保護下で、6-アミノ-2-クロロ-3-フルオロ安息香酸3a(95mg,0.5mmol)、トリフェニルホスフィンオキシド(388mg,1.25mmol)及び(tert-ブトキシカルボニル)-L-アラニン(95mg,0.5mmol)を5mLのピリジンに加え、75℃に加熱し、3時間反応させた。そして、アニリン(55μL,0.6mmol)を加え、4時間反応させた。減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)によりさらに分析・精製し、(S)-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)カルバミン酸tert-ブチル3b(200mg)を収率96%で得た。
MSm/z(ESI):418.1[M+H]
【0063】
第2ステップ
(S)-2-(1-アミノエチル)-5-クロロ-6-フルオロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン
(S)-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)カルバミン酸tert-ブチル3b(200mg,0.479mmol)及びトリイソプロピルシラン(294μL,1.436mmol)を10mLのジクロロメタンに加え、1.2mLのトリフルオロ酢酸を加え、室温下で3時間反応させた。減圧下で濃縮させ、中和のために飽和重炭酸ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し(10mL×3)、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)によりさらに分析・精製し、(S)-2-(1-アミノエチル)-5-クロロ-6-フルオロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン3c(174.7mg)を収率100%で得た。
MSm/z(ESI):318.1[M+H]
【0064】
第3ステップ
(S)-2-アミノ-N-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-α]ピリミジン-3-カルボキサミド
アルゴンガスの保護下で、(S)-2-(1-アミノエチル)-5-クロロ-6-フルオロ-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン3c(174.7mg,0.479mmol)、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸1f(102mg,0.575mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(139mg,0.719mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(32mg,0.24mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(237μL,1.437mmol)を5mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、35℃で4時間反応させた。酢酸エチルを加え、希塩酸で中和し、それぞれ飽和重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに分析・精製し(溶離剤:システムB)、(S)-2-アミノ-N-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-α]ピリミジン-3-カルボキサミド3d(210mg)を収率92%で得た。
MSm/z(ESI):478.1[M+H]
【0065】
第4ステップ
(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
アルゴンガスの保護下で、(S)-2-アミノ-N-(1-(5-クロロ-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-α]ピリミジン-3-カルボキサミド3d(210mg,0.440mmol)、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(35mg,0.044mmol)、炭酸セシウム(468mg,1.437mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(46mg,0.096mmol)及び1-シクロプロピル-4-エチニル-1H-ピラゾール1m(96mg,0.719mmol)を20mLの1,4-ジオキサンに加え、100℃に加熱し、一晩中反応させた。珪藻土でろ過し、ろ液を減圧下で濃縮させ、酢酸エチルを加え、希塩酸で中和し、それぞれ飽和重炭酸ナトリウム及び塩化ナトリウム溶液で洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに分析・精製し(溶離剤:システムB)、(S)-2-アミノ-N-(1-(5-((1-シクロプロピル-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-6-フルオロ-4-オキソ-3-フェニル-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド3(147.4mg)を収率58.4%で得た。
【0066】
MSm/z(ESI):574.2[M+H]
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm 8.92(d,J=6.7Hz,1H),8.69(d,J=7.4Hz,1H),8.64(d,J=4.5Hz,1H),8.16(s,1H),7.72~7.87(m,2H),7.49~7.67(m,6H),6.97~7.07(m,1H),6.44(s,2H),4.69~4.80(m,1H),3.69~3.79(m,1H),1.32(d,J=6.8Hz,3H),1.03~1.09(m,2H),0.90~0.99(m,2H).
【0067】
実施例4
(S)-2-amino-N-(1-(8-((1-(oxetan-3-yl)-1H-pyrazol-4-yl)ethynyl)-1-oxo-2-phenyl-1,2-dihydroisoquinolin-3-yl)ethyl)pyrazolo[1,5-a]pyrimidine-3-carboxamide
(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
【化10】
【化11】
【0068】
第1ステップ
4-ヨード-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール
4-ヨード-1H-ピラゾール4a(5g,25.78mmol)を20mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、温度を0℃に制御し、水素化ナトリウム(1.34g,33.52mmol)を加え、10分間反応させた後、3-ヨードオキセタン(2.44mL,28.35mmol)を加え、65℃に加熱し、3時間反応させた。反応液を飽和アンモニウムクロライド溶液に加え、酢酸エチル(30mL×2)で抽出し、有機相を合わせ、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、4-ヨード-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール4b(5.412g)を収率82.8%で得た。
MSm/z(ESI):250.8[M+H]
【0069】
第2ステップ
1-(オキセタン-3-イル)-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール
アルゴンガスの保護下で、4-ヨード-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール4b(5.412g,21.65mmol)を50mLテトラヒドロフランに溶解し、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(758mg,1.08mmol)、ヨウ化第一銅(410.4mg,2.16mmol)及び14mLのトリエチルアミンを加え、温度を0℃に制御し、エチニルトリメチルシラン(6.7mL,47.62mmol)をゆっくりと加え、室温で5時間反応させた。10mLの水を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)によりさらに分析・精製し、1-(オキセタン-3-イル)-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール4c(2.6g)を収率54.6%で得た。
MSm/z(ESI):221.0[M+H]
【0070】
第3ステップ
4-エチニル基-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール
アルゴンガスの保護下で、1-(オキセタン-3-イル)-4-((トリメチルシリル)エチニル)-1H-ピラゾール4c(0.6g,2.73mmol)を5mLのテトラヒドロフランに溶解し、温度を0℃に制御し、テトラブチルアンモニウムフルオリド(855mg,3.27mmol)を加え、室温で1時間反応させた。減圧下で濃縮させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:システムA)によりさらに分析・精製し、4-エチニル-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール4d(0.236g)を収率58.6%で得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.73(s,1H),7.69(s,1H),5.42(p,J=6.9Hz,1H),4.99~5.07(m,4H),3.03(s,1H).
【0071】
第4ステップ
(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン
アルゴンガスの保護下で、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-クロロ-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン1j(200mg,0.67mmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(17mg,0.067mmol)、炭酸セシウム(659mg,2.01mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(95mg,0.2mmol)及び4-エチニル基-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール4d(148mg,1.0mmol)を10mLのアセトニトリルに加え、75℃に加熱し、4時間反応させた。減圧下で濃縮させ、ジクロロメタンを加え、珪藻土でろ過し、水で洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させ、分取薄層クロマトグラフィーで単離し、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン4e(110mg)を収率40%で得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.82(s,1H),7.74(s,1H),7.64(d,J=7.2Hz,1H),7.50~7.58(m,3H),7.42~7.50(m,2H),7.27~7.35(m,2H),6.75(s,1H),5.40(p,J=6.9Hz,1H),4.97~5.05(m,4H),3.71(q,J=6.5Hz,1H),2.00(brs,2H),1.28(d,J=6.5Hz,3H).
【0072】
第5ステップ
(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド
アルゴンガスの保護下で、(S)-3-(1-アミノエチル)-8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-2-フェニルイソキノリン-1(2H)-オン4e(110mg,0.268mmol)、2-アミノピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボン酸1f(50.1mg,0.28mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(61.6mg,0.32mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(3.6mg,0.0268mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.15mL,0.804mmol)を3mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、室温で5時間反応させた。冷たい炭酸カリウム溶液(10mL、0.1mol)をゆっくりと加え、15mLの水を加え、酢酸エチルで抽出し(15mL×3)、有機相を合わせ、30mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させ、分取薄層クロマトグラフィーで単離し、(S)-2-アミノ-N-(1-(8-((1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)エチニル)-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロイソキノリン-3-イル)エチル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキサミド4(110mg)を収率72%で得た。
【0073】
MSm/z(ESI):570.8[M+H]
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm 8.93(dd,J=6.7,1.6Hz,1H),8.55(dd,J=4.6,1.7Hz,1H),8.21(s,1H),8.00(d,J=6.7Hz,1H),7.76(s,1H),7.61~7.66(m,2H),7.54~7.60(m,2H),7.44~7.52(m,3H),7.36~7.40(m,1H),7.01(dd,J=6.8,4.5Hz,1H),6.75(s,1H),6.42(s,2H),5.55(q,J=6.9Hz,1H),4.83~4.92(m,4H),4.53~4.58(m,1H),1.35(d,J=6.7Hz,3H).
生物学的評価
試験例1、PI3Kキナーゼ阻害に対する本発明の化合物の活性の試験
【0074】
以下の方法はインビトロ条件下の本発明の化合物による組換えヒト化PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3Kδキナーゼ活性ぼ阻害の程度を測定するのに使用された。この方法では、プロメガ社のADP-GloTM Kinase Assayキット(カタログ番号:V9102)を使用した。上記のキットは、発光法によるキナーゼ検出キットであり、キナーゼ反応で生じたADP含有量を検出するために用いられる。ADP含有量は、キナーゼ活性と正の相関があり、ADPの含有量を測定することにより、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3Kδキナーゼ活性に対する化合物の阻害強さを反映する。詳細な実験操作は、キットの説明書を参照できる。組換えヒト化PI3Kα、PI3Kγ及びPI3Kδは、インビトロジェンから購入し、PI3Kβは、プロメガ(それぞれのカタログ番号は、PI3Kα:PV4788、PI3Kβ:V1751、PI3Kγ:PV4786、及びPI3Kδ:PV6451であった)から購入した。
【0075】
実験手順を以下のように簡単に説明する。まず、被験化合物をDMSOに溶解してストック溶液を調製し、その後、試薬マニュアルに記載されている緩衝液の処方に従って緩衝液(HEPES 50mM,MgCl2 3mM,EGTA 1mM,CHAPS 0.03%,NaCl 100mM,pH7.5)を調製し、該緩衝液を使用して段階希釈し、反応系の被験化合物の終濃度範囲は1000nM~0.05nMである。段階希釈したATP溶液(ADP-GloTMから購入されたキナーゼアッセイキット)を使用してPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3KδのATP Km値を測定し、実験で得られたATP Km値に基づき、反応系のATP濃度をすべて10μMに設定した。反応は384ウェルのマイクロウェルプレートで行った。まず、ウェルに化合物及び一定の量のPI3Kα、PI3Kβ、PI3KγまたはPI3Kδタンバク質に加え、室温下で15分間インキュベートし、その後、反応液にATP溶液及びPIP2:3PS(終濃度0.01mg/mL)を加え、室温下で60分間振とうしながらインキュベートした。その後、反応系に5μLのADP-Glo Reagent(10mMのMgCl2を含有)を加え、室温下で40分間振とうしながらインキュベートを続けた。その後、反応系に10μLのキナーゼ検出試薬(Kinase Detection Reagent)を添加し、室温下で40分間振とうしながらインキュベートを続けた。インキュベーションの終了後、マイクロプレートリーダーでLuminescenceモードで各ウェルの化学発光強度値を測定した。対照群(0.1% DMSO)の発光強度発光値と比較することにより、各濃度での化合物の抑制率をパーセンテージとして計算し、それに、GraphPad Prism 5ソフトウェアを使用して化合物濃度の対数値-抑制率として非線形回帰分析を実行し、化合物のIC50値を得た。その結果を表1に示す。
【0076】
表1:PI3Kキナーゼ活性への本発明実施例化合物及びIPI-549の阻害のIC
50
値
【表2】
【0077】
表2:PI3Kキナーゼ活性への本発明実施例化合物及びIPI-549の阻害のIC
50
値
【表3】
【0078】
表1及び2から、IPI-549と比較して、本発明の実施例1、実施例2及び実施例3の化合物は、PI3Kγキナーゼに対して有意な阻害活性を有し、かつ、PI3Kγキナーゼに対する阻害活性がPI3Kα、PI3Kβ、及びPI3Kδに対する阻害活性より有意に優れ、本発明の化合物は有意なPI3Kγ選択的阻害効果を有することが分かった。
試験例2、本発明の化合物がPI3Kの各サブタイプを阻害した細胞活性試験
【0079】
以下の方法は様々な細胞における本発明の化合物によるPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδキナーゼ活性の阻害の程度を測定するために使用した。この方法では、PE社のAlphaLISA SureFire Ultra p-AKT1/2/3(pS473)キット(#ALSU-PAKT-B500)を使用した。上記のキットは、AlphaLISA技術を使用し、ドナービーズ及びアクセプタービーズを使用して検出生体分子の相互作用を検出し、p-AKT(pS473)の含有量を検出するために用いられ、細胞レベルでのPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδキナーゼ活性に対する化合物の阻害強さを反映する。詳細な実験操作については、キットの説明書を参照できる。
【0080】
実験手順を以下のように簡単に説明する。この実験は、以下のように384ウェルプレートで行った。Multidropディスペンサー(Thermo、#836-4049)を使用し、異なるPI3Kサブタイプに対して異なる細胞(PI3Kα:C2C12細胞(筋芽細胞)、PI3Kβ:PC-3細胞(ヒト前立腺がん細胞)、PI3Kγ:Raw264.7細胞(単核マクロファージ)、PI3Kδ:Raji細胞(リンパ腫細胞))を使用し、6μLの対応する細胞を384ウェルプレートのウェルに移し、500RPMで30秒間遠心分離し、37℃、5%CO2のインキュベーターに入れて2時間置いた。また、被験化合物をまずDMSOに溶解して10mMのストック溶液を調製し、DMSOを使用して4倍段階希釈した溶液を、Echo(Labcyte、#550)で各ウェルに30nLずつ(終濃度10000nM~0.2nM)ピペッティングし、30分間インキュベートした。その後、PI3Kαサブタイプに使用するC2C12細胞に、2uLのIGF-1(R&D、#291-G1-200、終濃度1200ng/mL)を加え、20分間インキュベートした。PI3Kβサブタイプに使用するPC-3細胞に、2μLのLPA(Sigma、#L7260、終濃度15ug/mL)を加え、20分間インキュベートした。PI3Kγサブタイプに使用するRaw264.7細胞に、2uLのC5α(Biotang、#RPR9899、終濃度80ng/mL)を加え、5分間インキュベートした。PI3Kδサブタイプに使用するRaji細胞に、2μLのIgM(Jackson ImmunoResearch、#109-006-129、終濃度3ug/mL)を加え、10分間インキュベートした。インキュベーションの終了後、AlphaLISA SureFire Ultra p-AKT1/2/3(pS473)キットを使用してAlphaLISAシグナルを測定した。キットの測定方は、以下のように簡単に説明する。2μLのLysis Bufferを使用して細胞を10分間溶解し、その後、384ウェルプレートに5uLのacceptormix及び5uLのdonormixを加え、室温下で2時間振とうしながらインキュベートし、Envision(PE,#2104)を使用してAlphaLISAのシグナルを読み取った。対照群(0.5%DMSO)のシグナルの強度比と比較することにより、各濃度での化合物の抑制率を計算し、GraphPad Prism 5ソフトウェアを使用して化合物濃度の対数値―抑制率として非線形回帰分析を実行し、化合物のIC50値を得た。その結果を表3に示す。
【0081】
表3:本発明実施例化合物がPI3Kサブタイプを阻害した細胞活性のIC
50
値
【表4】
【0082】
表4:他のサブタイプと比較したPI3Kγへの細胞阻害活性の本発明実施例化合物の選択性
【表5】
【0083】
表3及び4から、本発明の実施例2の化合物は、PI3Kγサブタイプの細胞活性に対して有意な抑制効果を有し、かつ、PI3Kγサブタイプに対する細胞阻害活性がPI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kδサブタイプに対する細胞阻害活性によりも有意に優れ、そのため、本発明の化合物は、PI3Kγサブタイプに対して顕著な選択的阻害作用を有する、ことが分かった。
試験例3、マウス肝ミクロソームにおける本発明に係る化合物の代謝安定性に関する研究
【0084】
1.実験の目的
本実験研究の目的は、マウス肝ミクロソームにおける本発明の化合物の代謝安定性を調査することにある。
【0085】
2.試薬情報(表5に示す)
表5:実験に用いられる試薬の情報
【表6】
【0086】
3.実験方法
被験化合物をヒト肝ミクロソームと共培養し、補酵素NADPHを加え反応を開始した。0、5、15、30及び60分の時点で20μLのインキュベーション溶液を採取して200μLの内部標準を含むアセトニトリルに移し、反応を停止させた。タンパク質を沈殿させた後、3,700rpmで10分間遠心分離し、上澄みを採取した。上澄みに水を加え、1:1に希釈した後、LC-MS/MS法で分析した。インキュベーションシステムにおける被験化合物の消失半減期に従って、インビトロでの固有クリアランスを計算した。ミダゾラムを内部参照化合物として使用し、2つのコピーを並行してインキュベートした。インキュベーション条件を以下の表6にまとめた。
【0087】
表6:本発明の実施例化合物及びIPI-549、WO2015051244A1の化合物21のインキュベーション条件
【表7】
【0088】
4.データ分析
分析物と内部標準とのピーク面積の比(Aanalyte/AIS)は、機器によって読み出され、残りのパーセンテージ(%Control)はゼロ以外の時点のサンプルとゼロ時刻サンプル中のAanalyte/AISの比から計算された。Ln(%Control)をインキュベーション時間に対してプロットし、線形フィットを実行した。被験化合物のクリアランス定数(k、min-1)、クリアランス半減期(T1/2、分)及びインビトロでの固有クリアランス(CLint、mL・min-1・mg-1 proteins)を次の式で計算した。
k=-傾き
T1/2=0.693/k
CLint=k/Cprotein
Cprotein(mg・mL-1)は、インキュベーションシステムにおけるミクロソームタンパク質の濃度を指す。
【0089】
5.実験結果(表7に示す)
表7:本発明の実施例化合物及びIPI-549、WO2015051244A1の化合物21のヒト肝ミクロソーム安定性の関連パラメータ
【表8】
【0090】
結論:IPI-549及びWO2015051244A1に開示された化合物21比較して、本発明の実施例1、実施例2及び実施例3の化合物は、半減期が著しく延長され、ヒト肝ミクロソーム安定性が著しく向上した。
【0091】
特開WO2015051244A1に開示された化合物21の構造は、以下の通りである。
【化12】
試験例4、ICRマウス本発明の化合物の経口投与による薬物動態学に関する研究
【0092】
1.実験の目的
ICRマウスを被試動物とし、LC/MS/MS法により本発明の化合物をマウスに胃内投与し、異なる時点での血漿中の薬物濃度を測定することにより、マウス体内における本発明の化合物の薬物動態学的特徴を調べた。
【0093】
2.実験方法
2.1実験薬剤及び動物
IPI-549、本発明の実施例1の化合物及び実施例2の化合物
27匹の健康な成体雄ICRマウス(動物品質証明書番号:1903040021)が、惟通利華実験動物技術有限公司から購入された。
【0094】
2.2薬物の調製及び投与
適量の試験化合物を量り、0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(0.05%のTween80含有)に加え、ボルテックス振とうし、超音波処理し、固体を均一に分散させ、懸濁液を得た。100μL×2の製剤を吸引し、1.5-mLのEPチューブに入れ、2~8℃で保管した。製剤の濃度が0.5mg/mLであった。
【0095】
27匹の健康な成体雄ICRマウスを一晩絶食させた後、胃内投与(投与量5mg/kg)を行い、投与の4時間後、摂食させた。
【0096】
2.3 サンプルの採取
投与前と投与0.083時間後、0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、及び24時間後に、眼窩静脈から80uL、即ち約0.08mLの血液を採取し、EDTA-K2抗凝固チューブに入れた。採取した血液サンプルを氷上で置き、血漿を(遠心分離の条件:1500g、10分間)遠心分離により分離した。採取した血漿は分析前に、-40~-20℃で保管した。LC-MS/MS法により、異なる化合物を胃内投与後のICRマウス血漿中の試験化合物の含有量を測定した。
【0097】
3、薬物動態パラメータの結果
本発明の実施例化合物及び陽性対照化合物IPI-549の薬物動態パラメータを下記の表8に示す。
【0098】
表8:本発明の実施例化合物及びIPI-549の薬物動態パラメータ
【表9】
【0099】
結論:IPI-549と比較して、本発明の実施例1及び実施例2の化合物は、ICRマウスにおける血中濃度及び曲線下面積が有意に増加し、薬物動態吸収が良好であり、半減期が延長され、バイオアベイラビリティが大幅に向上し、良好な薬物動態学的特性を有する。
試験例5、SDラット経口投与に基づいた本発明に係る化合物の薬物動態学に関する研究
【0100】
1、実験の目的
SDラットを被試動物とし、LC/MS/MS法により本発明に係る化合物をラットに胃内投与し、異なる時点での血漿中の薬物濃度を測定することにより、ラット体内における本発明の化合物の薬物動態学的特徴を調べた。
【0101】
2、実験方法
2.1実験薬品及び動物
IPI-549、本発明の実施例1及び実施例2化合物;
惟通利華実験動物技術有限公司から購入された9匹の健康な成体雄Sprague Dawley(SD)ラット、製造許可証番号:11400700271077。
【0102】
2.2医薬品の調製及び投与
強制経口投与群:
試験化合物の適切な量を量り、0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(0.05%Tween80を含有する)を加え、ボルテックス振とうし、超音波で固体を均一に分散させ、懸濁液を得た。100μL×2を吸引し、ろ過した後、製剤化し、1.5-mL EPチューブに入れ、2~8℃で保存した。製剤濃度が0.5mg/mLであった。
【0103】
9匹の健康な成体雄SDラットを一晩絶食させた後、胃内投与(投与量:5mg/kg)を行い、投与の4時間後、摂食させた。
【0104】
2.3 サンプルの採取
投与前、及び投与0.083時間後、0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、及び24時間後に、頸静脈から約0.2mLの血液を採取し、抗凝固のためにヘパリンナトリウムを使用した。採取した血液サンプルを氷上で置き、遠心分離により(遠心分離条件:1500g、10分間)血漿を分離した。採取した血漿は、分析前に-40~-20℃で保存した。LC-MS/MS法を使用し、異なる化合物を胃内投与した後のSDラット血漿中の試験化合物の含有量を測定した。
【0105】
3、薬物動態パラメータの結果
本発明の実施例化合物及び陽性対照化合物IPI-549の薬物動態パラメータを表9に示す。
【0106】
表9:本発明の実施例化合物及びIPI-549の薬物動態パラメータ
【表10】
【0107】
結論:IPI-549と比較して、本発明の実施例1及び実施例2の化合物は、SDラットにおける薬物動態吸収が良好であり、半減期が延長され、血中濃度、曲線下面積、及びバイオアベイラビリティが大幅に向上し、薬物動態学性能が良好であった。
試験例6、CT26マウス結腸かん細胞の皮下移植腫瘍モデルの成長に対する、本発明にの化合物とPD-L1モノクローナル抗体との併用の阻害作用の薬力学の試験
【0108】
1.実験の目的
CT26マウス結腸かん細胞の皮下移植腫瘍モデルにおける、実施例2化合物とPD-L1モノクローナル抗体との併用の抗腫瘍効果を評価する。
【0109】
2.被験物の調製
2.1ブランク投与製剤の調製:
ブランク対照群に、5%のNMP(N-メチルピロリドン)+95%PEG400を投与し、投与体積は0.1mL/10gであった。
【0110】
2.2実施例2の化合物投与製剤の調製
適量の実施例2の化合物を量り遠心分離管に入れ、5%NMP 95%PEG400を加え、完全に溶解するまでボルテックスした。溶液の濃度が6mg/mLであった。完全に溶けるまでボルテックスして溶液を作製した。なお、溶液は使用する直前に作製される。
【0111】
2.3 PD-L1モノクローナル抗体の調製
組換え抗PD-L1全マウスモノクローナル抗体(Bioxcellから購入された、InVivoMAb anti-mouse PD-L1(B7-H1)、Clone 10F.9G2、カタログ番号:BE0101、ロット番号:720619F1)をPBSで濃度が1mg/mLとなるように希釈した。なお、溶液は使用する直前に作製される。
【0112】
3.実験動物
BALB/cマウスが、雌性、7~8週齡(腫瘍細胞播種時のマウスの週齡)、体重18.4~19.1g、各群あたり9匹であった。これらのマウスは、許可証番号がSCXK(浙)2019-0001であり、浙江惟通利華実験動物技術有限公司から購入された。
【0113】
4.CT26マウス結腸かんの培養
CT26マウス結腸かん細胞を10%ウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含むRPMI-1640培地で培養した。指数増殖期のCT26細胞を収集し、適切な濃度でPBSに再懸濁し、マウス皮下腫瘍接種に使用した。
【0114】
5.動物の播種及び群分け
雌性BALB/cマウスの背中に、2.5×105でCT26細胞を皮下接種した。平均腫瘍体積が約127mm3の場合、腫瘍サイズに応じてランダムに群分けし、9匹ずつ、4つの群に分けた。なお、群分けの当日を0日目と定義した。
【0115】
6.動物の投与及び観察
腫瘍播種後の定期的なモニタリングには、動物の正常な行動に対する腫瘍成長及び治療の影響が含まれた。具体的な内容には、実験動物の活動性、摂食及び飲水の状態、体重の増加又は低下の状態、目、毛及び他の異常な状態がある。体重及び腫瘍体積を週2回量り、投与期間は21日であり、21日目に体重及び腫瘍体積を秤量した後、次の日でマウスを犠牲にし、腫瘍塊を取り秤量し、腫瘍体積(TV)、相対的腫瘍体積(RTV)、相対的腫瘍増殖率(T/C)、腫瘍抑制率(IR)及び相対的腫瘍抑制率(TGI)を算出し、統計的テストを行った。計算の式は以下の通りである。
(1)TV=1/2×a×b2
ただし、aとbは、それぞれ腫瘍の長さと幅を表す
(2)RTV=Vt/V0
ただし、V0は群分けして投与する際(即d0)に測定した腫瘍体積で、Vtは各測定での腫瘍体積である
(3)TGI(%)=(1-T/C)×100%
ただし、T/C%は、相対的腫瘍増殖率であり、ある時点で、治療群と対照群の相対的腫瘍体積のパーセンテージで表された比値であり、TとCは、治療群と対照群の一定の時点での相対的腫瘍体積である
T/C(%)=TRTV/CRTV×100%
ただし、TRTVは治療群のRTVであり、CRTVは対照群のRTVである
(4)IR(%)=(1-TWt/TWc)×100%
ただし、TWtは治療群の腫瘍重量であり、TWcは対照群の腫瘍重量である
【0116】
7.結果
投与後21日目でのCT26マウス結腸かんモデルにおける各群の薬効パラメータは、下記の表10に示す。
【0117】
表10:投与後21日目でのCT26マウス結腸かんモデルにおける各群の薬効の分析表
【表11】
【0118】
表11:投与後21日目でのCT26マウス結腸かんモデルにおける各群のマウス腫瘍重量の分析表
【表12】
【0119】
表10および11から、投与後21日目に、CT26マウス結腸かんモデルにおいて、60mg/kgの本発明の実施例2の化合物を使用した単剤療法群、併用治療群、及びAnti-PD-L1群は、TGIがそれぞれ51.2%、77.3%、及び38.7%で、IRがそれぞれ52.1%、79.0%、及び35.8%であり、体重の変化がほぼ見られなかったことが分かった。これによって、60mg/kgの本発明の実施例2の化合物を使用した単剤療法群および併用治療群がいずれも有意かつ効果的な腫瘍成長抑制効果を示し、併用治療群は単剤療法群よりも優れた腫瘍成長抑制効果を示した。
【国際調査報告】