(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】発光デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20220906BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20220906BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220906BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 Z
H05B33/22 D
H05B33/22 A
H05B33/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020572857
(86)(22)【出願日】2019-05-13
(85)【翻訳文提出日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2019086646
(87)【国際公開番号】W WO2020227890
(87)【国際公開日】2020-11-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ドンバオ
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107CC04
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD79
3K107DD84
3K107DD85
3K107FF08
3K107FF13
3K107FF16
3K107GG06
3K107GG24
3K107GG26
3K107GG28
(57)【要約】
発光デバイス及びその製造方法である。該発光デバイスの製造方法は、第1の面を有する機能層を形成するステップと、機能層の第1の面にプラズマ処理を行うステップと、プラズマ処理済みの第1の面上にペロブスカイト型発光層を形成するステップと、を含む。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する機能層を形成するステップと、
前記機能層の前記第1の面にプラズマ処理を行うステップと、
プラズマ処理済みの前記第1の面上にペロブスカイト型発光層を形成するステップと、を含む発光デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理は、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、及びアルゴンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記プラズマ処理を行うためのガスの気圧が20Pa~50Paであり、前記プラズマ処理の時間が2~5分間である、請求項1又は2に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記機能層は正孔注入層であり、前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、ポリ[ビス(4-フェニル)(4-ブチルフェニル)アミン](Poly-TPD)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記機能層は電子注入層であり、前記機能層の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型発光層は分子式ABX
3(Aは金属カチオン又はアルキルアンモニウム塩イオンであり、Bは金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。)の材料を含む、請求項1~5のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項7】
Aは、有機アミン基、アミジニル基、Cs
+、K
+、Rb
+のうちの少なくとも1つを含み、
Bは、Pb
2+、Sn
2+、Ge
2+、Ga
2+、In
3+、Cd
2+、Hg
2+、Ni
2+、Mn
2+、Bi
3+、Sb
3+のうちの少なくとも1つを含み、Xは、Cl
-、Br
-、I
-のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成するステップは、
AX
n、BX
mを溶質として第1の溶剤に溶解し、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を形成するステップと、
前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いて、前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成し、AX
nとBX
mは反応してABX
3を生成し、m及びnはいずれも正の整数であるステップと、を含む、請求項6又は7に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成するステップは、
前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を前記プラズマ処理済みの前記第1の面上にスピンコーティングするステップと、
前記スピンコーティング過程において前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液に前記第1の溶剤と相溶しない第2の溶剤を加えるステップと、
アニール処理を行い、前記ペロブスカイト型発光層を得るステップと、を含む、請求項8に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第1の溶剤は無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(ACN)のうちの少なくとも1つであり、第2の溶剤は、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、アセトンのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記アニール処理の温度は70℃~80℃であり、前記アニール処理の時間は20~40minである、請求項9又は10に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記プラズマ処理済みの前記第1の面に対する前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液の接触角が16°未満である、請求項8~11のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項13】
AI、B(I)
mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第1の前駆体溶液を形成し、前記第1の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に赤色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AIとB(I)
mは反応してABI
3を生成するステップをさらに含む、請求項8~12のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項14】
ABr、B(Br)
mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第2の前駆体溶液を形成し、前記第2の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に緑色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、ABrとB(Br)
mは反応してAB(Br)
3を生成するステップをさらに含む、請求項8~13のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項15】
ACl、B(Br)
mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第3の前駆体溶液を形成し、前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に青色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AClとB(Br)
mは反応してAB(Br)
2Clを生成するステップをさらに含む、請求項8~14のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記プラズマ処理を行う前に、前記機能層をアニール処理するステップをさらに含む、請求項1~15のいずれかに記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項17】
第1の面を有する機能層と、
前記機能層の前記第1の面と直接接触するペロブスカイト型発光層とを含み、
前記機能層の前記第1の面に親水基が存在する発光デバイス。
【請求項18】
前記プラズマは、酸素プラズマ、窒素プラズマ、及びアルゴンプラズマのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の発光デバイス。
【請求項19】
前記ペロブスカイト型発光層の表面粗さが2nm未満である、請求項17又は18に記載の発光デバイス。
【請求項20】
前記機能層は正孔注入層であり、前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ペンタフルオロベンジル(PFB)のうちの少なくとも1つを含む、請求項17~19のいずれかに記載の発光デバイス。
【請求項21】
前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)であり、前記PEDOT:PSSの前記ペロブスカイト型発光層に近い面は前記親水基を有し且つ前記ペロブスカイト型発光層と直接接触する、請求項20に記載の発光デバイス。
【請求項22】
前記ペロブスカイト型発光層の前記正孔注入層から離れた側に位置する電子注入層と、
前記電子注入層のペロブスカイト型発光層から離れた側に位置する修飾電極と、
第1の電極及び第2の電極であって、前記正孔注入層、前記ペロブスカイト型発光層、前記電子注入層及び前記修飾電極がこれらの間に介在する第1の電極及び第2の電極と、をさらに含む、請求項20又は21に記載の発光デバイス。
【請求項23】
前記機能層は電子注入層であり、前記機能層の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含み、前記ZnOの前記ペロブスカイト型発光層に近い面は前記親水基を有し且つ前記ペロブスカイト型発光層と直接接触する、請求項17~19のいずれかに記載の発光デバイス。
【請求項24】
前記ペロブスカイト型発光層の前記電子注入層から離れた側に位置する正孔注入層と、
前記電子注入層のペロブスカイト型発光層から離れた側に位置する修飾電極と、
第1の電極及び第2の電極であって、前記正孔注入層、前記ペロブスカイト型発光層、前記電子注入層及び前記修飾電極がこれらの間に介在する第1の電極及び第2の電極と、をさらに含む、請求項23に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の少なくとも1つの実施例は発光デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト材料は、通常、分子式ABX3成分を有する材料を指し、優れた光学特性及び光電子特性を有し、ペロブスカイト材料で製造されるペロブスカイト電界発光デバイスは、外部量子効率が高く、発光スペクトルが連続的に調整可能であり、色純度が高く、低コストであるなどの特徴を有するので、表示や照明などの分野において幅広く適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、ペロブスカイト材料で製造されるペロブスカイト発光ダイオードデバイス(Perovskite light-emitting diodes、PeLED)には、構造が複雑であり、外部量子効率が低いなどの欠点があり、従来幅広く適用されている有機電界発光デバイス(Organic light-emitting diodes、OLED)に比べて、改善する余裕がまだまだある。高品質のペロブスカイト発光フィルムを形成するには、その下方にある基板について、高い表面平坦性や濡れ性が求められ、このため、下層基板材料の選択が制限されてしまい、それにより、ペロブスカイト電界発光デバイス構造の設計が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の少なくとも1つの実施例は、第1の面を有する機能層を形成するステップと、
機能層の第1の面にプラズマ処理を行うステップと、プラズマ処理済みの第1の面上にペロブスカイト型発光層を形成するステップと、を含む発光デバイスの製造方法を提供する。
【0005】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記プラズマ処理は、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、及びアルゴンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記プラズマ処理を行うためのガスの気圧が20Pa~50Paであり、前記プラズマ処理の時間が2~5分間である。
【0007】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記機能層は正孔注入層であり、前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、ポリ[ビス(4-フェニル)(4-ブチルフェニル)アミン](Poly-TPD)のうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記機能層は電子注入層であり、前記機能層の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含む。
【0009】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記ペロブスカイト型発光層は分子式ABX3(Aは金属カチオン又はアルキルアンモニウム塩イオンであり、Bは金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。)の材料を含む。
【0010】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、Aは、有機アミン基、アミジニル基、Cs+、K+、Rb+のうちの少なくとも1つを含み、
Bは、Pb2+、Sn2+、Ge2+、Ga2+、In3+、Cd2+、Hg2+、Ni2+、Mn2+、Bi3+、Sb3+のうちの少なくとも1つを含み、Xは、Cl-、Br-、I-のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成するステップは、
AXn、BXmを溶質として第1の溶剤に溶解し、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を形成するステップと、
前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いて、前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成し、AXnとBXmは反応してABX3を生成し、m及びnはいずれも正の整数であるステップと、を含む。
【0012】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に前記ペロブスカイト型発光層を形成するステップは、
前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を前記プラズマ処理済みの前記第1の面上にスピンコーティングするステップと、
前記スピンコーティング過程において前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液に前記第1の溶剤と相溶しない第2の溶剤を加えるステップと、
アニール処理を行い、前記ペロブスカイト型発光層を得るステップと、を含む。
【0013】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記第1の溶剤は無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(ACN)のうちの少なくとも1つであり、第2の溶剤は、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、アセトンのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記アニール処理の温度は70℃~80℃であり、前記アニール処理の時間は20~40minである。
【0015】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法では、前記プラズマ処理済みの前記第1の面に対する前記ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液の接触角が16°未満である。
【0016】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法は、AI、B(I)mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第1の前駆体溶液を形成し、前記第1の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に赤色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AIとB(I)mは反応してABI3を生成するステップをさらに含む。
【0017】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法は、ABr、B(Br)mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第2の前駆体溶液を形成し、前記第2の前駆体溶液を用いて前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に緑色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、ABrとB(Br)mは反応してAB(Br)3を生成するステップをさらに含む。
【0018】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法は、ACl、B(Br)mを溶質として前記第1の溶剤に溶解し、第3の前駆体溶液を形成し、前記プラズマ処理済みの前記第1の面上に青色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AClとB(Br)mは反応してAB(Br)2Clを生成するステップをさらに含む。
【0019】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスの製造方法は、前記プラズマ処理を行う前に、前記機能層をアニール処理するステップをさらに含む。
【0020】
本開示の少なくとも1つの実施例は、第1の面を有する機能層と、前記機能層の前記第1の面と直接接触するペロブスカイト型発光層とを含み、機能層の前記第1の面に親水基が存在する発光デバイスをさらに提供する。
【0021】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスでは、前記プラズマは、酸素プラズマ、窒素プラズマ、及びアルゴンプラズマのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスでは、前記ペロブスカイト型発光層の表面粗さが2nm未満である。
【0023】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスでは、前記機能層は正孔注入層であり、前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、ポリ[ビス(4-フェニル)(4-ブチルフェニル)アミン](Poly-TPD)のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスでは、前記機能層の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)であり、前記PEDOT:PSSの前記ペロブスカイト型発光層に近い面は前記親水基を有し且つ前記ペロブスカイト型発光層と直接接触する。
【0025】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスは、前記ペロブスカイト型発光層の前記正孔注入層から離れた側に位置する電子注入層と、前記電子注入層のペロブスカイト型発光層から離れた側に位置する修飾電極と、第1の電極及び第2の電極であって、前記正孔注入層、前記ペロブスカイト型発光層、前記電子注入層及び前記修飾電極がこれらの間に介在する第1の電極及び第2の電極と、をさらに含む。
【0026】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスでは、前記機能層は電子注入層であり、前記機能層の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含み、前記ZnOの前記ペロブスカイト型発光層に近い面は前記親水基を有し且つ前記ペロブスカイト型発光層と直接接触する。
【0027】
たとえば、本開示の少なくとも1つの実施例による発光デバイスは、前記ペロブスカイト型発光層の前記電子注入層から離れた側に位置する正孔注入層と、前記電子注入層のペロブスカイト型発光層から離れた側に位置する修飾電極と、第1の電極及び第2の電極であって、前記正孔注入層、前記ペロブスカイト型発光層、前記電子注入層及び前記修飾電極がこれらの間に介在する第1の電極及び第2の電極と、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の図面を簡単に説明するが、明らかなように、以下説明する図面は、本開示のいくつかの実施例に係るものに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【
図1A】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1B】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1C】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1D】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1E】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1F】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1G】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1H】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1I】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1J】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図1K】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。
【
図2A】本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図2B】本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図3A】本開示の一実施例における機能層の第1の面のプラズマ処理前後の接触角の測定結果の比較図である。
【
図3B】本開示の一実施例における機能層の第1の面のプラズマ処理前後の接触角の測定結果の比較図である。
【
図4】本開示の一実施例における機能層のプラズマ処理前後の透過率の比較曲線図である。
【
図5】本開示の一実施例における赤色光を発光するペロブスカイト発光層の表面SEM画像である。
【
図6】本開示の一実施例における赤色光を発光するペロブスカイト発光層の表面AFM画像である。
【
図7】本開示の一実施例における赤色光を発光するペロブスカイト発光層の吸収及びフォトルミネセンススペクトル曲線である。
【
図8】本開示の一実施例における緑色光を発光するペロブスカイト発光層の表面SEM画像である。
【
図9】本開示の一実施例における緑色光を発光するペロブスカイト発光層の表面AFM画像である。
【
図10】本開示の一実施例における緑色光を発光するペロブスカイト発光層の吸収及び電界発光スペクトル曲線である。
【
図11】本開示の一実施例による方法により製造された緑色光を発光する発光デバイスの電流密度/輝度-電圧関係曲線である。
【
図12】本開示の一実施例による方法により製造された緑色光を発光する発光デバイスの外部量子効率/電流効率-電流密度関係曲線である。
【
図13】本開示の一実施例による緑色光を発光する発光デバイスの電界発光スペクトルである。
【
図14】本開示の一実施例による発光デバイスの構造模式図である。
【
図15】本開示の一実施例による別の発光デバイスの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例の図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明確かつ完全に説明する。以下説明する実施例は、本開示の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。説明する本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに得るすべての他の実施例は、本開示の特許範囲に属する。
【0030】
別に定義しない限り、ここで使用する技術用語又は科学用語は、当業者が理解する一般的な意味として理解すべきである。本開示で使用される「第1の」、「第2の」及び類似の用語はいずれの順番、数量又は重要性を示すこともなく、異なる構成部分を区別するために過ぎない。同様に、「含む」又は「備える」などのような用語は、この単語の前に記載の素子又は物品が、この単語の後に挙げられる素子又は物品及びその同等物を含むが、他の素子又は物品を排除しないことを意味する。「接続」又は「連結」などのような用語は物理的又は機械的接続に限定されず、直接か間接的かを問わず電気的接続を含んでもよい。「上」、「下」、「左」、「右」などは、相対位置関係を示すために過ぎず、説明対象の絶対位置が変わると、該相対位置関係もその分変わる。
【0031】
本開示の一実施例は、発光デバイスの製造方法を提供し、該方法は、第1の面を有する機能層を形成するステップと、機能層の第1の面にプラズマ処理を行うステップと、プラズマ処理済みの第1の面上にペロブスカイト型発光層を形成するステップとを含む。
【0032】
一例として、
図1A~1Fは、本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法の模式図であり、
図2Aは、本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法のフローチャートである。該実施例による発光デバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0033】
図1Aに示すように、ベース基板1を提供する。ベース基板1を洗浄する。たとえば、脱イオン水、アセトン溶液、エタノール溶液、イソプロパノール溶液を用いてベース基板1を順に擦拭して、超音波洗浄を行い、洗浄後、窒素ガスで乾燥させ、洗浄したベース基板1にプラズマ前処理を行い、ベース基板1の表面の濡れ性を高める。たとえば、該プラズマ処理は、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、及びアルゴンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む。たとえば、ベース基板1の材料は、ガラス、石英、酸化インジウム錫(ITO)などの無機材料であってもよいし、ポリイミドなどの有機材料であってもよく、本開示の実施例ではそれについて限定しない。
【0034】
次に、ベース基板1上に第1の電極21を形成する。該電極は、たとえば透明電極又は不透明電極である。
【0035】
図1Bに示すように、第1の電極21のベース基板1から離れた側に、第1の面31を有する機能層3を形成する。たとえば、一実施例では、機能層3は正孔注入層であり、機能層3の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)のうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
図1Bに示すように、機能層3の第1の面31にプラズマ処理を行う。たとえば、該プラズマ処理は、酸素プラズマ処理、窒素プラズマ処理、及びアルゴンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む。本実施例は、機能層3の材料がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)であり、機能層3の第1の面31に酸素プラズマ処理を行う場合を例として、発光デバイスの製造方法及び技術的効果を説明する。
【0037】
たとえば、機能層3が製造されたデバイスをプラズマ洗浄機のチャンバーに入れて、真空引き/酸素ガス導入の操作を複数回繰り返すことにより、チャンバー内を酸素ガス環境とする。次に、酸素プラズマ処理のパワー、チャンバー内の気圧や酸素プラズマ処理時間などのパラメータを調整することにより処理効果を調整する。たとえば、適切なプラズマ濃度を得るために、プラズマ処理を行うためのガスの気圧が20Pa~50Paであり、プラズマ処理の時間が2~5分間であり、プラズマ処理のパワーが30W~40Wである。たとえば、該パワーとは、プラズマ処理装置のパワーである。プラズマ処理の時間やパワーは第1の面31の突起物の量に影響し、さらに比表面積に影響し、また、第1の面31に含まれる含窒素又は含酸素等の親水基の量に影響し、それによりプラズマ処理済みの第1の面31上に形成されたペロブスカイト型発光層の性能や第1の面31の結合効果に影響を与える。上記条件を採用すると、機能層3の第1の面31は適切な比表面積及び含窒素又は含酸素などの親水基を有するようにし、それにより、機能層3の第1の面31は良好に変性され、後続で機能層3の第1の面31上に形成されたペロブスカイト型発光層の性能向上に有利である。
【0038】
図1Cに示すように、プラズマ処理済みの第1の面31上にペロブスカイト型発光層4を形成する。たとえば、まず、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を製造し、次に、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いてプラズマ処理済みの第1の面31上にペロブスカイト型発光層4を形成する。機能層3の第1の面31にプラズマ処理が行われているので、第1の面31に対するペロブスカイト型発光層の前駆体溶液の濡れ性が向上し、接触角が小さくなり、それにより、形成されたペロブスカイト型発光層4がより平坦になり、たとえば前記ペロブスカイト型発光層の表面粗さが2nm未満になり、それにより、発光性能が改善され、たとえば該発光デバイスの外部量子効率が向上する。さらに、プラズマ処理済みの機能層3の光透過率が向上し、発光デバイスの光利用率向上に有利である。
【0039】
なお、本開示において、ペロブスカイト型発光層4は有機発光ダイオード(OLED)の発光層と異なる。たとえば、ペロブスカイト型発光層4は、分子式ABX3の材料を含む。Aは金属カチオン又はアルキルアンモニウム塩イオンであり、Bは金属カチオンであり、Xはハロゲンアニオンである。たとえば、Aは有機アミン基(たとえばアルキルアミン基RNH4
+、ここでRはアルキル基であり、たとえばアルキルアミン基はCH3NH4
+である)、アミジニル基(たとえばメチルアミジノ基NH2CH=NH2
+など)、Cs+、K+、Rb+のうちの少なくとも1つを含み、Bは、Pb2+、Sn2+、Ge2+、Ga2+、In3+、Cd2+、Hg2+、Ni2+、Mn2+、Bi3+、Sb3+のうちの少なくとも1つを含み、XはCl-、Br-、I-のうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
たとえば、プラズマ処理済みの第1の面31上にペロブスカイト型発光層4を形成するステップは、AXn、BXmを溶質として第1の溶剤に溶解し、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を形成するステップと、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いてプラズマ処理済みの第1の面31上にペロブスカイト型発光層4を形成するステップとを含む。AXnとBXmは反応してABX3を生成し、m及びnはいずれも正の整数である。たとえば、Aが一価イオンであり、Bが二価イオンである場合、n=1、m=2であり、又は、Aが一価イオンであり、Bが三価イオンである場合、n=1、m=3である。
【0041】
たとえば、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液を用いてプラズマ処理済みの第1の面31上にペロブスカイト型発光層3を形成するステップは、ペロブスカイト型発光層の前駆体溶液をプラズマ処理済みの第1の面31上にスピンコーティングするステップと、スピンコーティング過程においてペロブスカイト型発光層の前駆体溶液に、第1の溶剤と相溶しない第2の溶剤を加えるステップと、アニール処理を行い、ペロブスカイト型発光層4を得るステップと、を含む。
【0042】
たとえば、第1の溶剤は、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(ACN)のうちの少なくとも1つであり、第2の溶剤は、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、アセトンのうちの少なくとも1つを含む。もちろん、第1の溶剤及び第2の溶剤は以上のいくつかに制限されず、具体的には、形成されるペロブスカイト材料に応じて決定できる。
【0043】
たとえば、本開示の一実施例による発光デバイスの製造方法は、ペロブスカイト発光層を形成するための前駆体溶液にハロゲン化アミンリガンド材料を添加するステップと、ハロゲン化アミンリガンド材料が添加されたペロブスカイト発光層の前駆体溶液をプラズマ処理済みの第1の面31上にスピンコーティングするステップと、をさらに含む。たとえば、ハロゲン化アミンリガンド材料は臭化アンモニウムリガンド材料であってもよく、もちろん、塩化アンモニウムリガンド材料又はヨウ化アミンリガンド材料などを用いてもよい。
【0044】
具体的には、臭化アンモニウムリガンド材料は、臭化3,3-ジフェニルプロピルアミン、臭化エチルアミン、臭化ブチルアミン、臭化オクチルアミン、臭化フェニルエチルアミン、臭化フェタミンのうちの任意の1種又は複数種を含む。臭化アンモニウムリガンド材料が臭化3,3-ジフェニルプロピルアミン(DPPA‐Br)である場合を例として、このようなリガンド材料の製造を説明する。所定量の3,3-ジフェニルプロピルアミン(DPPA)とエタノールを1:1の体積比でブレンドし、氷水浴にて温度を10℃以下に低減させた後、やや過剰のHBr水溶液を滴下し、2時間反応させる。回転蒸発により乾燥させた後、エタノールで再結晶させ、吸引濾過して無水エーテルで3回洗浄し、最終的に50℃の温度で12時間真空乾燥させる。臭化アンモニウムリガンド材料を得る。
【0045】
たとえば、スピンコーティング過程においてペロブスカイト型発光層の前駆体溶液に所定量の前記第2の溶剤を加えてペロブスカイト材料を結晶させ、且つハロゲン化アミンリガンド材料を結晶のペロブスカイト材料にグラフトし、ペロブスカイトフィルムを形成する。たとえば、スピンコーティングを開始させた後、6秒目に第2の溶剤を滴下し、たとえば、良好なペロブスカイト材料結晶効果を奏するために1分間内で第2の溶剤の滴下を終了する。
【0046】
たとえば、前記アニール処理の温度は70℃~80℃であり、アニール処理の時間は20~40minであり、この場合、理想的な効果が得られる。
【0047】
たとえば、プラズマ処理済みの第1の面に対するペロブスカイト型発光層の前駆体溶液の接触角が16°未満である。
図3A~3Bは、本開示の一実施例における機能層の第1の面のプラズマ処理前後の接触角の測定結果の比較図である。
図3Aに示す角αは、プラズマ処理を行われていない機能層の第1の面上にペロブスカイト型発光層の前駆体溶液をスピンコーティングした場合の接触角であり、α=16°である。
図3Bに示す角βはプラズマ処理済みの機能層の第1の面31上にペロブスカイト型発光層の前駆体溶液をスピンコーティングした場合の接触角であり、α=12.5°である。このことから分かるように、機能層3の第1の面31にプラズマ処理を行うことにより、第1の面31に対するペロブスカイト型発光層の前駆体溶液の濡れ性を向上させ、該前駆体溶液をプラズマ処理済みの機能層3の第1の面31に形成したときの接触角を減少させ、それにより、アニール処理されたペロブスカイト型発光層4がより平坦になり、発光性能が改善し、たとえば該発光デバイスの外部量子効率が向上する。それにより、機能層3は、上記正孔注入層とする場合、正孔輸送層の機能を兼ね備え、このため、正孔輸送層を別途設置しなくてもよく、該発光デバイスの製造プロセス及び構造を簡略化させる。
【0048】
また、
図4は、本開示の一実施例における機能層のプラズマ処理前後の透過率の比較曲線図である。プラズマ処理済みの機能層3の光透過率はプラズマ処理前の光透過率より高く、たとえばプラズマ処理済みの機能層3の光透過率は96%以上に達する。これから、機能層3の第1の面31にプラズマ処理を行うことにより、機能層3の光透過率を向上させ、さらに発光デバイスの光利用率を向上させることが証明される。
【0049】
たとえば、発光デバイスの製造方法は、プラズマ処理済みの第1の面31上に赤色光を発光するペロブスカイト型発光層、緑色光を発光するペロブスカイト型発光層及び青色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成することで、カラー照明又はカラー表示を実現するステップを含む。
【0050】
たとえば、AI、B(I)mを溶質として第1の溶剤に溶解し、第1の前駆体溶液を形成し、第1の前駆体溶液を用いてプラズマ処理済みの第1の面上に赤色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AIとB(I)mは反応してABI3を生成する。本実施例では、AIがNH2CH=NH2I、B(I)mがPbI2、第1の溶剤が無水DMFである場合を例とする。
【0051】
たとえば、NH
2CH=NH
2I、PbI
2、アミンのハロゲン化物を所定の割合で第1の溶剤に溶解し、第1の前駆体溶液を得る。たとえば、NH
2CH=NH
2I、PbI
2、アミンのハロゲン化物をモル比1:1:0.5で無水DMFに溶解し、濃度0.2Mの第1の前駆体溶液を調製する。0.22umのナイロンろ過ヘッドを通して使用に備え、第1の前駆体溶液を、酸素プラズマ処理を受けた第1の面31上にスピンコーティングし、スピンコーティング回転数が4000rpmに達すると、たとえば開始してから6秒後、第2の溶剤(反溶剤)を素早く滴下し、1秒以内で第2の溶剤の滴下を終了し、それにより、ペロブスカイト型フィルムを素早く形成し、またペロブスカイト型フィルム中のペロブスカイト結晶粒子の形成を抑制する。たとえば、次に、80℃でアニールして、赤色光を発光するペロブスカイト発光層を得る。赤色光を発光するペロブスカイト発光層の表面形態を
図5及び
図6に示し、製造された赤色光を発光するペロブスカイト発光層は非常に緻密であり、明らかな欠陥がなく、表面が非常に平坦且つ均一であり、表面の平均粗さが低く、僅か0.57nmである。
図7は、赤色光を発光するペロブスカイト発光層の吸収及び電界発光スペクトル曲線である。
図7から分かるように、発光ピークが675nmにあり、半値幅がわずか50nmであり、この赤色光を発光するペロブスカイト発光層により高色域が得られ得る。
【0052】
たとえば、ABr、B(Br)mを溶質として第1の溶剤に溶解し、第2の前駆体溶液を形成し、第2の前駆体溶液を用いてプラズマ処理済みの第1の面上に緑色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、ABrとB(Br)mは反応してAB(Br)3を生成する。本実施例では、ABrがNH2CH=NH2Br、B(Br)mがPbBr2、第1の溶剤が無水DMFである場合を例とする。
【0053】
たとえば、NH
2CH=NH
2Br、PbBr
2、アミンのハロゲン化物を所定の割合で第1の溶剤に溶解し、第2の前駆体溶液を得る。たとえば、NH
2CH=NH
2Br、PbBr
2、アミンのハロゲン化物をモル比1:1:0.35で無水DMFに溶解し、濃度0.2Mの第2の前駆体溶液を調製する。0.22umのナイロンろ過ヘッドを通して使用に備え、第2の前駆体溶液を、酸素プラズマ処理を受けた第1の面31上にスピンコーティングし、スピンコーティング回転数が4000rpmに達すると、たとえば開始してから6秒後、第2の溶剤(反溶剤)を素早く滴下し、1秒内で第2の溶剤の滴下を終了し、それにより、ペロブスカイト型フィルムを素早く形成し、またペロブスカイト型フィルム中のペロブスカイト結晶粒子の形成を抑制する。たとえば、次に、80℃でアニールして緑色光を発光するペロブスカイト発光層を得る。緑色光を発光するペロブスカイト発光層の表面形態を
図8及び
図9に示し、製造された緑色光を発光するペロブスカイト発光層は非常に緻密であり、明らかな欠陥がなく、表面が非常に平坦且つ均一であり、表面の平均粗さが低く、僅か1.7nmである。
図10は、緑色光を発光するペロブスカイト発光層の吸収及び電界発光スペクトル曲線である。
図10から分かるように、発光ピークが526nmにあり、半値幅がわずか22nmであり、この緑色光を発光するペロブスカイト発光層により高色域が得られ得る。
【0054】
たとえば、ACl、B(Br)mを溶質として第1の溶剤に溶解し、第3の前駆体溶液を形成し、プラズマ処理済みの第1の面上に青色光を発光するペロブスカイト型発光層を形成し、AClとB(Br)mは反応してAB(Br)2Clを生成する。本実施例では、ABrがNH2CH=NH2Cl、B(Br)mがPbBr2、第1の溶剤が無水DMFである場合を例とする。NH2CH=NH2Cl、PbBr2、アミンのハロゲン化物をモル比1:1:0.8で無水DMFに溶解し、濃度0.2Mの第3の前駆体溶液を調製する。0.22umのナイロンろ過ヘッドを通して使用に備え、第3の前駆体溶液を、酸素プラズマ処理を受けた第1の面31上にスピンコーティングし、スピンコーティング回転数が4000rpmに達すると、たとえば開始してから6秒後、第2の溶剤(反溶剤)を素早く滴下し、1秒内で第2の溶剤の滴下を終了し、ペロブスカイト型フィルムを素早く形成し、またペロブスカイト型フィルム中のペロブスカイト結晶粒子の形成を抑制する。たとえば、次に、80℃でアニールして青色光を発光するペロブスカイト発光層を得る。この青色光を発光するペロブスカイト発光層は非常に緻密であり、明らかな欠陥がなく、表面が非常に平坦且つ均一であり、表面の平均粗さが低く、発光する青色光の発光ピークが460nm~480nmにある。
【0055】
図11及び
図12は、本開示の上記実施例による方法により製造された緑色光ペロブスカイト電界発光デバイスの性能パラメータの曲線であり、該発光デバイスは、オン電圧が2.9Vであり、4.6Vでは、8000cd/m
2を超える最大輝度に達する。また、該発光デバイスは、外部量子効率が16%以上に達し、電流効率が60cd/Aを超える。
図13は、緑色光を発光する発光デバイスの電界発光スペクトルの電圧変化に伴う曲線であり、
図13から分かるように、ピーク位置が常に526nmに維持され、スペクトルの半値幅が23nmであり、非常に高い色純度があり、
図10に示すフォトルミネセンススペクトルと一致する。且つ、ピーク位置が発光デバイスに作用する電圧の上昇に伴い変化することはなく、このため、スペクトル安定性が高い。
【0056】
ペロブスカイト型発光層は、ナノサイズのペロブスカイトナノ結晶からなり、たとえば、結晶のペロブスカイト材料のサイズが20nmより大きい。もちろん、ペロブスカイト型発光層は、ナノサイズのペロブスカイト量子ドットからなるようにしてもよく、たとえばペロブスカイト量子ドットのサイズが20nm未満である。本実施例のペロブスカイト型発光層の製造方法では、形成されたペロブスカイト材料の結晶後のサイズは、ハロゲン化リガンド材料の添加量、及び第2の溶剤の添加量により制御され得る。一般的には、ハロゲン化リガンド材料の量が多いと、ペロブスカイト量子ドットが形成されやすく、ペロブスカイト量子ドットは優れた発光効率を有し、ハロゲン化リガンド材料の量が少ないと、ペロブスカイトナノ結晶が形成されやすく、ペロブスカイトナノ結晶は良好なキャリア輸送能力を有する。当業者であれば、必要に応じて決定できる。
【0057】
図1Dに示すように、機能層3が正孔注入層である場合、発光デバイスの製造方法は、
図1Dに示すように、ペロブスカイト型発光層4の正孔注入層3から離れた側に位置する電子注入層5を形成するステップと、
図1Eに示すように、修飾電極6を形成するステップと、
図1Fに示すように、第2の電極22を形成するステップと、をさらに含む。正孔注入層3、ペロブスカイト型発光層4、及び電子注入層5は第1の電極21と第2の電極22との間に介在する。修飾電極6は電子注入層5のペロブスカイト型発光層4から離れた側に位置する。修飾電極6の材料はLiF又はCsCO
3であり、このように、電子注入の速度を調整し、たとえば電子注入の速度を低減させ、それにより正孔注入の速度と電子注入の速度とをバランスよくし、良好な発光効果及びエネルギー効率を達成させる。たとえば、第2の電極22は、
図1Fに示すように、間隔を空けて設置された複数の部分を含んでもよく、第2の電極22は全面電極としてもよい。
【0058】
たとえば、電子注入層5の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含む。たとえば、電子注入層5の材料はZnOである。ZnOは、良好な電子注入機能を有するとともに、電子輸送機能を有するので、電子輸送層をなくすることができる。又は、電子注入層5は、積層して設置された酸化亜鉛層とポリエチレンイミン(PEI)層を含み、ポリエチレンイミン層が酸化亜鉛層のペロブスカイト型発光層4から離れた側に位置する。PEI層はZnOのエネルギーレベルを調整したり、電子注入の速度を低減させたりすることができ、それにより、正孔注入の速度と電子注入の速度をバランスよくし、良好な発光効果及びエネルギー効率を達成させる。
【0059】
本開示のさらなる実施例では、たとえば、
図2B及び
図1Bに示すように、発光デバイスの製造方法は、プラズマ処理を行う前、機能層3にアニール処理を行うステップをさらに含み、それにより、機能層3などベース基板1上の各構造の応力を放出し、後で機能層3上に形成されるペロブスカイト型発光層の安定性をさらに向上させる。本実施例のほかのステップはすべて前述した実施例と同じであり、前記説明を参照すればよく、ここで詳しく説明しない。
【0060】
図1G~1Kは、本開示の一実施例による別の発光デバイスの製造方法の模式図である。たとえば、
図1G~1Kに示す発光デバイスの製造方法では、機能層30は電子注入層である。
【0061】
図1Gに示すように、発光デバイスの製造方法は、第1の電極210、修飾電極60、及び機能層30をベース基板10上に順に形成するステップを含む。機能層30は、電子注入層であり、その材料が酸化亜鉛(ZnO)を含む。
【0062】
図1Hに示すように、発光デバイスの製造方法は、機能層30(すなわち電子注入層)の第1の面301にプラズマ処理を行うステップをさらに含み、該プラズマ処理は、前述した実施例における電子注入層30へのプラズマ処理と同じであり、前記説明を参照すればよい。
【0063】
図1Iに示すように、発光デバイスの製造方法は、プラズマ処理を受けた電子注入層30の第1の面301上にペロブスカイト型発光層40を形成するステップをさらに含む。ペロブスカイト型発光層40の形成方法は、具体的には、前記説明を参照すればよい。
【0064】
該発光デバイスの製造方法は、
図1Jに示すように、ペロブスカイト型発光層40の電子注入層30から離れた側に位置する正孔注入層50形成するステップと、
図1Kに示すように、第2の電極220を形成するステップとをさらに含む。正孔注入層50、ペロブスカイト型発光層40、及び電子注入層30は第1の電極21と第2の電極22との間に介在する。
【0065】
たとえば、一例では、電子注入層30は酸化亜鉛層であり、この場合、酸化亜鉛層の第1の面301にプラズマ処理を行い、プラズマ処理済みの酸化亜鉛層の第1の面301上に前記ペロブスカイト型発光層40を形成し、たとえば、別の例では、電子注入層30は、積層して設置された酸化亜鉛層とポリエチレンイミン(PEI)層を含み、ポリエチレンイミン層が酸化亜鉛層のベース基板10に近い側に位置し、この場合、酸化亜鉛層の第1の面301にプラズマ処理を行い、プラズマ処理済みの酸化亜鉛層の第1の面301上に前記ペロブスカイト型発光層40を形成する。
【0066】
図1G~1Kに示す実施例による製造方法の他の特徴は、前述の実施例の説明と同じであり、前述の実施例と同一又は類似の技術的効果を奏し得る。
【0067】
本開示の少なくとも1つの実施例は、本開示の実施例によるいずれかの発光デバイスの製造方法により形成される発光デバイスをさらに提供する。該発光デバイスは、機能層と、ペロブスカイト型発光層とを含む。機能層は第1の面を有し、ペロブスカイト型発光層は前記機能層の第1の面と直接接触し、機能層の第1の面に親水基が存在する。
【0068】
例示的には、
図14は、本開示の一実施例による発光デバイスの構造模式図である。
図14に示すように、該発光デバイスは、本開示の実施例によるいずれかの発光デバイスの製造方法により形成される。該発光デバイスは、機能層3と、ペロブスカイト型発光層4とを含む。機能層3は第1の面31を有し、ペロブスカイト型発光層4は機能層3の第1の面31と直接接触し、機能層3の第1の面31に親水基が存在する。たとえば、該親水基は、含酸素親水基又は含窒素親水基を含む。含酸素親水基はたとえばヒドロキシ基(OH
-)であり、含窒素親水基はたとえばアミノ基である。たとえば、該親水基は第1の面31にプラズマ処理を行うことで形成される。たとえば、該プラズマは、酸素プラズマ、窒素プラズマ、及びアルゴンプラズマのうちの少なくとも1つを含む。第1の面31上に親水基が存在し、且つペロブスカイト型発光層4が機能層3の第1の面31と直接接触し、このように、第1の面31がより荒くなり、それにより第1の面31上にペロブスカイト型発光層4を形成する過程において、第1の面31に対する、ペロブスカイト型発光層4を形成するための前駆体溶液の濡れ性が向上し、それによりペロブスカイト型発光層4がより平坦になり、たとえば、ペロブスカイト型発光層の表面粗さが2nm未満であり、それにより、発光性能が改善し、たとえば該発光デバイスの外部量子効率が向上し、ペロブスカイト型発光層に作用する電圧の変化に伴い、発光性能が安定的に維持される。
【0069】
たとえば、機能層3は正孔注入層であり、機能層3の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)、ポリ[ビス(4-フェニル)(4-ブチルフェニル)アミン](Poly-TPD)のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
たとえば、機能層3の材料はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)であり、PEDOT:PSSのペロブスカイト型発光層4に近い面は前記プラズマを有し、且つペロブスカイト型発光層4と直接接触する。この場合、機能層3は正孔輸送層の機能を兼ね備え、このため、第1の面31とペロブスカイト型発光層4との間に正孔輸送層を別途設置する必要がなくなり、該発光デバイスの製造プロセス及び構造を簡略化させる。
【0071】
たとえば、
図14に示すように、該発光デバイスは、電子注入層5、修飾電極6、第1の電極21及び第2の電極22をさらに含む。電子注入層5はペロブスカイト型発光層4の正孔注入層3から離れた側に位置し、修飾電極6は、電子注入層5のペロブスカイト型発光層4から離れた側に位置し、正孔注入層3、ペロブスカイト型発光層4、電子注入層5、及び修飾電極6は第1の電極21と第2の電極22との間に介在する。修飾電極6の材料はLiF又はCsCO
3であり、このように、電子注入の速度を調整し、たとえば電子注入の速度を低減させ、それにより正孔注入の速度と電子注入の速度をバランスよくし、良好な発光効果及びエネルギー効率を達成させる。
【0072】
ペロブスカイト型発光層は、ナノサイズのペロブスカイトナノ結晶からなり、たとえば、結晶のペロブスカイト材料のサイズが20nmより大きい。もちろん、ペロブスカイト型発光層はナノサイズのペロブスカイト量子ドットからなるようにしてもよく、たとえばペロブスカイト量子ドットのサイズが20nm未満である。当業者であれば、必要に応じて決定することができる。
【0073】
該発光デバイスの他の言及されていない特徴については、製造方法に関連する前述の実施例における説明を参照すればよい。
【0074】
なお、本開示では、ペロブスカイト型発光層が機能層の第1の面と直接接触するとは、ベース基板に垂直な方向において、ペロブスカイト型発光層と機能層の第1の面との間に他のいずれの層や構造も存在しないことを意味する。
【0075】
なお、本開示における表面粗さ(surface roughness)とは、表面に小さな間隔や微小な山・谷を有する不平坦さを意味し、すなわち、表面における2つの山又は2つの谷の間の該表面に垂直な方向における距離(波の距離)を意味する。表面粗さが小さいほど、表面が滑らかである。
【0076】
たとえば、
図15は、本開示の一実施例による別の発光デバイスの構造模式図である。該発光デバイスでは、機能層30は電子注入層である。電子注入層30の第1の面301は前記親水基を有し且つペロブスカイト型発光層40が第1の面301と直接接触する。
【0077】
たとえば、電子注入層30(すなわち電子注入層)の材料は酸化亜鉛(ZnO)を含み、且つZnOのペロブスカイト型発光層40に近い面は前記親水基を有し且つペロブスカイト型発光層40と直接接触する。たとえば、電子注入層5の材料はZnOである。ZnOは、良好な電子注入機能を有するとともに、電子伝送機能を有し、それにより、電子輸送層を省略することができる。又は、電子注入層5は、積層して設置された酸化亜鉛層とポリエチレンイミン(PEI)層を含み、ポリエチレンイミン層が酸化亜鉛層のペロブスカイト型発光層4から離れた側に位置する。PEI層はZnOのエネルギーレベルを調整し、電子注入の速度を低減させることができ、それにより、正孔注入の速度と電子注入の速度とをバランスよくし、良好な発光効果及びエネルギー効率を達成させる。
【0078】
たとえば、
図15に示すように、該発光デバイスは、修飾電極60、正孔注入層50、第1の電極210及び第2の電極220をさらに含む。正孔注入層50は、ペロブスカイト型発光層40の電子注入層30から離れた側に位置し、正孔注入層50、ペロブスカイト型発光層40、機能層30(すなわち電子注入層)、及び修飾電極60は、第1の電極210と第2の電極220との間に介在する。修飾電極60は、電子注入層30のペロブスカイト型発光層4から離れた側に位置する。修飾電極60の材料はLiF又はCsCO
3であり、このように、電子注入の速度を調整し、たとえば電子注入の速度を低減させ、それにより、正孔注入の速度と電子注入の速度をバランスよくし、良好な発光効果及びエネルギー効率を達成させる。
【0079】
図15に示す実施例による発光デバイスの他の特徴は、前述の実施例の説明と同じであり、前述の実施例と同一又は類似の技術的効果を奏し得る。
【0080】
以上は、本開示の例示的な実施形態に過ぎず、本開示の特許範囲を限定するものではなく、本開示の特許範囲は特許請求の範囲に定められた範囲により決定される。
【国際調査報告】