(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制のための医薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5513 20060101AFI20220906BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20220906BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K31/5513
A61P27/10
A61P27/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549989
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021028770
(87)【国際公開番号】W WO2022030489
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020132626
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 隆明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅智
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、近視の治療、予防および/または近視進行の抑制のための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、近視の治療、予防および/または近視進行の抑制のための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
【請求項2】
(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
実質的に散瞳作用を有さない、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
近視が、軸性近視、屈折性近視、仮性近視、病的近視、単純近視、極度近視、最強度近視、強度近視、中等度近視、弱度近視、緑内障を発症している近視、緑内障を発症するリスクのある近視または高眼圧を伴う近視である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
眼局所投与に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
眼局所投与が点眼投与、眼軟膏投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、結膜嚢内挿入または眼瞼塗布である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤または注射剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.0001~5%(w/v)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.001~1%(w/v)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.001%(w/v)以上、1%(w/v)未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.002~0.5%(w/v)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.002~0.01%(w/v)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.1%(w/v)未満である、請求項1および3~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.05質量部以下である、請求項1および3~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、眼軸長伸長を抑制するための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
【請求項16】
有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、屈折異常を抑制するための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
【請求項17】
近視を治療および/または予防するための医薬の製造における、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の使用。
【請求項18】
医薬が、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
近視の進行を抑制するための医薬の製造における、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の使用。
【請求項20】
医薬が、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制のための医薬、より詳しくは、有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「AFDX0250」とすることもある)またはその塩を含む、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近視は屈折異常の一種で、遠方から目に入ってきた光が網膜より手前で像を結び、物がぼやけて見える状態をいう。近視は、角膜または水晶体の屈折力が強すぎる場合に、遠くを見たときに網膜上でピントが合わず、網膜の手前でピントが合ってしまうこと(屈折性近視)、あるいは、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が伸長し、正常より長すぎる場合に、遠くを見たときに水晶体を十分薄くしても、網膜上でピントが合わず、網膜の手前でピントが合ってしまうこと(軸性近視)が原因で発症するとされている。また、若年齢での近視の発症や近視の急速な進行は、視覚的に障害を与える病的な近視病変を伴う成人としての強度近視になり得る。
【0003】
近視の治療には、手術、メガネもしくはコンタクトレンズによる矯正または薬物療法が用いられている。近年、近視の治療の一つである薬物療法の研究が盛んに行われており、近視の治療剤として有用であり得る薬物が報告されている。例えば、特許文献1には、アトロピン(ムスカリン受容体アンタゴニスト)が近視の治療に有用であることが開示され、特許文献2には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用されるチオトロピウム(ムスカリン受容体M2/M3アンタゴニスト)が近視予防、近視治療および/または近視進行抑制に有効であることが開示されている。一方で、ムスカリン受容体アンタゴニストによる近視の治療においては、散瞳作用による副作用をより低く抑えるかまたは完全に抑えることが課題であった。散瞳を引き起こすと、瞳孔が広がって、まぶしさによって日常生活の障害となり得る。
そのため、散瞳作用による副作用を抑えることができる、新たな近視治療剤の開発が強く切望されている。
【0004】
特許文献3には、11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(以下、「AFDX0116」または「オテンゼパド」とすることもある)が緑内障および/または高眼圧症の治療に有用であることが開示され、前房内注射により眼内圧を低下させることが示されている。また、眼内圧を低下させる化合物の一つとして、AFDX0116の右旋性(+)エナンチオマーであるAFDX0250が開示されている。
非特許文献1には、ムスカリン受容体M2選択的アンタゴニストは近視の進行を抑制することが開示され、近視の進行を抑制する薬物の一つとして、AFDX0116が開示されている。
【0005】
しかしながら、AFDX0250が近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制に使用できることは開示されていない。また、ADFX0250が散瞳作用による副作用を抑え得るとの報告もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-021007号公報
【特許文献2】国際公開第2018/174179号パンフレット
【特許文献3】国際公開第93/18772号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dis Model Mech. 2013 Sep: 6(5): 1146-1158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制に有用な新たな化合物を見出すことを目的とする。さらに、本発明は、実質的に散瞳作用を有さず、その上優れた安全性および使用感をもたらす近視治療剤を見出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行う中で、ムスカリン受容体M2選択的アンタゴニストである11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(AFDX0116)での近視治療に関する研究において、これまで使用されていなかった(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン(AFDX0250)に着目した。本発明者らは、近視症状を示す動物モデルにおいて、AFDX0250が、眼軸長伸長および屈折異常を抑制し、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制に有効であることを見出した。さらに、AFDX0250が、日常生活に支障をきたさないレベルに散瞳作用を抑え、その上他のムスカリン受容体アンタゴニストに比べて安全域が広いことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
具体的に、本発明は以下を提供する。
(1) 有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、近視の治療、予防および/または近視進行の抑制のための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
(2) (-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3) 実質的に散瞳作用を有さない、上記(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4) 近視が、軸性近視、屈折性近視、仮性近視、病的近視、単純近視、極度近視、最強度近視、強度近視、中等度近視、弱度近視、緑内障を発症している近視、緑内障を発症するリスクのある近視または高眼圧を伴う近視である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5) 眼局所投与に用いられる、上記(1)~(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6) 眼局所投与が点眼投与、眼軟膏投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、結膜嚢内挿入または眼瞼塗布である、上記(5)に記載の医薬組成物。
(7) 点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤または注射剤である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.0001~5%(w/v)である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.001~1%(w/v)である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.001%(w/v)以上、1%(w/v)未満である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.002~0.5%(w/v)である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12) (+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.002~0.01%(w/v)である、上記(1)~(7)のいずれかに記載の医薬組成物。
(13) (-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、0.1%(w/v)未満である、上記(1)および(3)~(12)のいずれかに記載の医薬組成物。
(14) (-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量が、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.05質量部以下である、上記(1)および(3)~(13)のいずれかに記載の医薬組成物。
(15) 有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、眼軸長伸長を抑制するための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
(16) 有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む、屈折異常を抑制するための医薬組成物であって、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、医薬組成物。
(17) 近視を治療および/または予防するための医薬の製造における、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の使用。
(18) 医薬が、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、上記(17)に記載の使用。
(19) 近視の進行を抑制するための医薬の製造における、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の使用。
(20) 医薬が、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない、上記(19)に記載の使用。
(21) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を投与することを特徴とする、近視の治療および/または予防方法。
(22) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含み、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない医薬を投与することを特徴とする、近視の治療および/または予防方法。
(23) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を投与することを特徴とする、近視の進行を抑制する方法。
(24) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含み、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない医薬を投与することを特徴とする、近視の進行を抑制する方法。
(25) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を投与することを特徴とする、眼軸長伸長を抑制する方法。
(26) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含み、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない医薬を投与することを特徴とする、眼軸長伸長を抑制する方法。
(27) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を投与することを特徴とする、屈折異常を抑制する方法。
(28) 患者に、治療上の有効量の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含み、実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない医薬を投与することを特徴とする、屈折異常を抑制する方法。
(29) 近視の治療および/または予防に使用する、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩。
(30) 近視の進行抑制に使用する、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩。
【0011】
上記(1)から(30)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制の効果をもたらし、さらに、ムスカリン受容体アンタゴニストの使用により生じる散瞳作用を日常生活に支障をきたさないレベルに抑える、有効成分として(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含む医薬組成物を得ることができる。また、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、実質的に散瞳作用を有することなく、広い安全域を有することから、優れた安全性および使用感をもたらす近視治療剤として期待される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、「(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オン」または「AFDX0250」は、下式:
【化1】
で表される化合物である(CAS登録番号:121029-35-4)。
【0015】
本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、塩形態であってもよく、医薬として許容される塩であれば特に制限されない。その塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ラウリル硫酸、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの金属との塩:アンモニアなどの無機化合物との塩;およびトリエチルアミン、グアニジンなどの有機アミンとの塩が挙げられる。
【0016】
本発明の医薬組成物において、含有される(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩は、水和物または溶媒和物の形態をとってもよい。
【0017】
本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩は、有機化学の分野における公知の方法にしたがって製造してもよく、また、市販品として入手してもよい。例えば、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、J.Med.Chem.,32(8),1718-24,1989に記載の工程により得ることができる。
【0018】
本発明において、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、特に制限されないが、患者の眼に局所投与する際に眼軸長伸長および/または屈折異常を抑制する量が好ましい。含有量の下限は、0.0001%(w/v)が好ましく、0.0003%(w/v)がより好ましく、0.0005%(w/v)がさらに好ましく、0.001%(w/v)がさらにより好ましく、0.0013%(w/v)が特に好ましく、0.0015%(w/v)が特により好ましく、0.0017%(w/v)が特にさらに好ましく、0.002%(w/v)が最も好ましい。さらに、患者の眼に局所投与する際に散瞳作用を生じない量が好ましいことから、含有量の上限は、5%(w/v)が好ましく、3%(w/v)がより好ましく、2%(w/v)がさらに好ましく、1%(w/v)がよりさらに好ましく、0.5%(w/v)が特に好ましく、0.1%(w/v)が特により好ましく、0.02%(w/v)が特にさらに好ましく、0.01%(w/v)が特によりさらに好ましく、0.004%(w/v)が最も好ましい。また、含有量の上限は、患者の眼に局所投与する際に散瞳作用を生じない最小量と比べて、同量が好ましく、1/2の量がより好ましく、1/5の量がさらに好ましく、1/10の量がもっと好ましく、1/50の量が特に好ましく、1/100の量が最も好ましい。患者の眼に局所投与する際に眼軸長伸長および/または屈折異常を抑制する量であり、かつ、患者の眼に局所投与する際に散瞳作用を生じない量の濃度範囲は、0.001~1%(w/v)または0.001%(w/v)以上、1%(w/v)未満が好ましく、0.002~0.5%(w/v)がより好ましく、0.002~0.1%(w/v)がさらに好ましく、0.002~0.02%(w/v)がさらにより好ましく、0.002~0.01%(w/v)が特に好ましく、0.0015~0.02%(w/v)が特により好ましく、0.0017~0.01%(w/v)が特にさらに好ましく、0.002~0.004%(w/v)が最も好ましい。点眼剤の場合、含有量は、例えば0.0001~5%(w/v)が好ましく、0.0003~2%(w/v)がより好ましく、0.0005~1%(w/v)がさらに好ましく、0.001~0.5%(w/v)がさらにより好ましく、0.0013~0.1%(w/v)が特に好ましく、0.0015~0.02%(w/v)が特により好ましく、0.0017~0.01%(w/v)が特にさらに好ましく、0.002~0.004%(w/v)が最も好ましい。眼軟膏剤の場合、含有量は、例えば0.0001~5%(w/w)が好ましく、0.001~3%(w/w)がより好ましい。
なお、本発明において、「%(w/v)」は、本発明の医薬組成物100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味し、「%(w/w)」は、本発明の医薬組成物100g中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する。本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの塩が含有される場合、その値は(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの塩の含有量であっても、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンの含有量であってもよい。また、本発明において、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩が、水和物または溶媒和物の形態をとって配合される場合、その値は(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の水和物または溶媒和物の含有量であっても、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量であってもよい。以下、特に断りがない限り同様とする。
【0019】
本発明において、「実質的に(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を含まない」とは、(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩を一切含まないこと、キラルカラムを用いた液体カラムクロマトグラフィー(検出器:紫外吸光光度計)など医薬の分析で通常用いられる方法により(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の存在を検出できないこと、(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩が単独でその効果および副作用を発現しない程度の量で含まれること、あるいは、その製造上不可避的に不純物として混入した程度の量で含まれることを意味する。例えば、医薬組成物中の(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、0.1%(w/v)未満であり、0.05%(w/v)以下が好ましく、0.001%(w/v)以下がより好ましく、0.0005%(w/v)以下がさらに好ましく、0.0001%(w/v)以下がさらにより好ましく、0.00005%(w/v)以下が特に好ましく、0.00001%(w/v)以下が最も好ましい。また、医薬組成物中の(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して、0.05質量部以下が好ましく、0.03質量部以下がより好ましく、0.02質量部以下がさらに好ましく、0.01質量部以下がことさら好ましく、0.005質量部以下が特に好ましく、0.001質量部以下が最も好ましい。なお、医薬組成物中の(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は効果の観点ではできるだけ低いことが好ましいが、製造法によって製造上不可避的に不純物として混入する場合もある。そのような観点から、医薬組成物中の(-)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩の含有量は、医薬組成物全体に対して0.000005%(w/v)、好ましくは0.000001%(w/v)、医薬組成物中の(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩1質量部に対して0.0005質量部、好ましくは、0.0001質量部を下限とすることが考えられる。
【0020】
本発明において、「近視」とは、無調節の状態で眼に入る平行光線が網膜の前方で結像する眼の屈折状態と定義づけられる。本発明における「近視」には、あらゆる公知の近視の分類および定義が含まれ、例えば、軸性近視、屈折性近視、仮性近視、病的近視、単純近視、極度近視、最強度近視、強度近視、中等度近視、弱度近視、緑内障(特に若年性緑内障)を発症している近視、緑内障を発症するリスクのある近視、高眼圧を伴う近視などが挙げられ、好ましくは、軸性近視、極度近視、最強度近視、強度近視、緑内障(特に若年性緑内障)を発症している近視が挙げられ、より好ましくは、軸性近視が挙げられる。
【0021】
本発明において、「治療」とは、近視またはそれに伴う症状のあらゆる治療、例えば、近視、特に軸性近視および/または屈折性近視を治癒または改善すること、近視に伴う症状を緩和または抑制することを意味する。また、近視の再発の防止も含まれる。
本発明において、「予防」とは、近視の発症を阻止すること、近視の発症を遅らせること、近視の発症の危険性を低下させることを意味する。
本発明において、「近視の進行抑制」とは、近視の進行を遅らせること(近視の進行の遅延)、近視の進行を減退させること(近視の進行の減退)を意味する。
また、本発明において、「近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制」とは、眼軸長伸長を抑制することおよび/または屈折異常を抑制することも含む。
【0022】
本発明において「実質的に散瞳作用を有さない」とは、日常生活に支障をきたすようなレベルの散瞳作用を有さないことを意味する。散瞳作用を一切有さないことに加えて、何らかの測定方法で散瞳作用が確認されても、日常生活に支障をきたすようなまぶしさや散瞳拡張の視覚的副作用を患者が感じない場合は、「実質的に散瞳作用を有さない」と解される。
【0023】
本発明の医薬組成物は、広い安全域を有しており、他のムスカリン受容体アンタゴニストの近視治療剤に比べて優れた安全性を有しうる。本発明において、「安全域」とは、近視の治療効果を発揮する最小有効濃度と治療効果を発揮し、散瞳作用を有さない最大有効濃度の幅を意味する。本発明の安全域は、最大有効濃度/最小有効濃度により算出され、例えば10以上であり、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上がさらに好ましく、250以上がさらにより好ましい。
【0024】
本発明の医薬組成物は、患者の年齢に関係なく広く使用することができ、小児もしくは近視が進行したティーンエイジャーや成人における近視の予防、および/または小児もしくは近視が進行したティーンエイジャーや成人における近視の進行抑制のために使用することができる。
【0025】
本発明において、「患者」とは、ヒトおよび動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどを意味する。その中でも、ヒトが好ましい。
【0026】
本発明において、「治療上の有効量」とは、未治療対象と比べて、近視およびそれに伴う症状の治療効果をもたらす量、または近視の発症または進行の遅延をもたらす量を意味する。
【0027】
本発明の医薬組成物は、特に断りのない限り、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩以外の医薬的に許容される活性成分を含んでいてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物は、経口または非経口投与することができる。投与経路としては、経口投与、静脈内投与、経皮投与、眼局所投与(例えば、点眼投与、眼軟膏投与、結膜嚢内投与、硝子体内投与、結膜下投与、テノン嚢下投与、結膜嚢内挿入、眼瞼塗布)などが挙げられる。
【0029】
本発明の医薬組成物は、有効成分を1以上の医薬的に許容される添加剤と混合して、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などの経口剤、または点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤、注射剤、坐剤、経鼻剤などの非経口剤の所望の形態に該技術分野における通常の方法で調製することができる。本発明の医薬組成物の好ましい剤型として点眼剤、眼ゲル剤、眼軟膏剤および注射剤が挙げられる。
【0030】
本発明の医薬組成物を点眼剤として調製する場合、精製水、緩衝液などの媒体に有効成分を添加、撹拌した後、pH調整剤によりpHを調整することで所望の点眼剤を調製できる。
また、必要に応じて点眼剤に汎用されている添加剤を用いてもよい。添加剤の例としては、等張化剤、緩衝化剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、可溶化剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の医薬組成物を点眼剤として調製する場合、そのpHは、眼科製剤として許容される範囲内にあればよい。
【0032】
本発明の医薬組成物を眼軟膏剤として調製する場合、汎用される基剤を用いてもよい。基剤の例としては、白色ワセリン、流動パラフィンなどが挙げられる。
【0033】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口剤とする場合は、増量剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、皮膜剤などを必要に応じて加え調製することができる。増量剤としては、乳糖、結晶セルロース、デンプン、植物油などが挙げられ、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどが挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられ、コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール(ポリエチレングリコール)、シリコン樹脂などが挙げられ、皮膜剤としては、ゼラチン皮膜などが挙げられる。
【0034】
本発明の医薬組成物の用法用量は、剤形、患者の症状、年齢、体重、近視を発症した年齢、医師の判断などに応じて適宜変えることができる。例えば、本発明の医薬組成物を点眼剤として眼局所投与する場合、所望の薬効を奏するのに十分であれば用法用量に特に制限はないが、1回量1滴~数滴を1日1回~数回(例えば、1回~4回、1回~6回、1回~8回)点眼することができる。また、コンタクトレンズ装用時においても使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
実施例1:モルモット近視モデルを用いた近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制試験(1)
以下の方法にしたがって、AFDX0250の近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制効果を評価した。
(試料の調製)
AFDX0250を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、0.5%AFDX0250溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液または希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。0.01%AFDX0250溶液は、9.8mLのベヒクルと0.2mLの0.5%AFDX0250溶液を添加・撹拌することで調製した。0.004%AFDX0250溶液、0.002%AFDX0250溶液および0.001%AFDX0250溶液は、3mL、4mLおよび4.5mLのベヒクルに、それぞれ2mL、1mLおよび0.5mLの0.01%AFDX0250溶液を添加・撹拌することで調製した。
【0037】
(モルモット近視モデルの作製)
直径18mmの試験管の底部分先端を10mm切断し、中心に適当な直径の穴を開けたマジックテープ(約20mm四方)の片面と接着剤にて接着させ、レンズ(ゴーグル)を作製した。入手した生後3週齢のモルモット(Slc:Hartley)(n=30)の右眼に作製したゴーグルを接着剤にて装着させて近視を誘導して、モルモット近視モデルを作製した。なお、ゴーグルを装着していない左眼は対照とした。
【0038】
(試料の投与)
作製されたモルモット近視モデルを0.001%AFDX0250溶液投与群、0.002%AFDX0250溶液投与群、0.004%AFDX0250溶液投与群、0.01%AFDX0250溶液投与群およびベヒクル投与群(対照群)に無作為に分類した(1群あたりn=6)。AFDX0250溶液投与群では、右眼をゴーグルで遮蔽した日(0日目とする)から、各モルモットの右眼に各濃度のAFDX0250溶液10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。対照群では、各モルモットの右眼にベヒクル10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。なお、すべてのモルモットの左眼には、各群の投与回数と同じ回数でベヒクル10μLを0日目から13日目まで14日間毎日点眼投与した。モルモットは通常の飼育条件で飼育した。
【表1】
【0039】
(評価方法)
近視を誘導して14日目にモルモット左右眼球の眼軸長を超音波眼軸長測定装置ECHOSCAN US-500(ニデック社)によるA-scanにて測定し、屈折度をオートレフラクトメーターAR-1a(ニデック社)により測定した。眼軸長の差および眼軸長伸長抑制率ならびに屈折度の差および屈折異常抑制率を、以下の式にて算出した。計算は、Microsoft Excelにおいて実施した。
【0040】
(式)
眼軸長の差(mm)=右眼軸長(mm)-左眼軸長(mm)
眼軸長伸長抑制率(%)=(1-AFDX0250溶液投与群の眼軸長の差/対照群の眼軸長の差)×100
【0041】
(式)
屈折度の差(D)=右屈折度(D)-左屈折度(D)
屈折異常抑制率(%)=(1-AFDX0250溶液投与群の屈折度の差/対照群の屈折度の差)×100
【0042】
(試験結果)
対照群および各AFDX0250溶液投与群の眼軸長の差および屈折度の差の平均値を表2に示す。
【表2】
【0043】
各AFDX0250溶液投与群の眼軸長伸長抑制率および屈折異常抑制率を表3に示す。なお、これら抑制率は、表2の眼軸長の差及び屈折度の差の四捨五入する前の値を用いて計算した。
【表3】
【0044】
実施例2:モルモット近視モデルを用いた近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制試験(2)
以下の方法にしたがって、AFDX0250の近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制効果を評価した。
(試料の調製)
AFDX0250を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、0.5%AFDX0250溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液または希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。0.1%AFDX0250溶液および0.02%AFDX0250溶液は、4mLおよび4.8mLのベヒクルに、それぞれ1mLおよび0.2mLの0.5%AFDX0250溶液を添加・撹拌することで調製した。また、0.004%AFDX0250溶液は4mLのベヒクルに、1mLの0.02%AFDX0250溶液を添加・撹拌することで調製した。
【0045】
(モルモット近視モデルの作製)
実施例1の(モルモット近視モデルの作製)と同様の方法にしたがって、モルモット近視モデルを作製した(n=30)。
【0046】
(試料の投与)
作製されたモルモット近視モデルを0.004%AFDX0250溶液投与群、0.02%AFDX0250溶液投与群、0.1%AFDX0250溶液投与群、0.5%AFDX0250溶液投与群およびベヒクル投与群(対照群)に無作為に分類した(1群あたりn=6)。AFDX0250溶液投与群では、右眼をゴーグルで遮蔽した日(0日目とする)から、各モルモットの右眼に各濃度のAFDX0250溶液10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。対照群では、各モルモットの右眼にベヒクル10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。なお、すべてのモルモットの左眼には、各群の投与回数と同じ回数でベヒクル10μLを0日目から13日目まで14日間毎日点眼投与した。モルモットは通常の飼育条件で飼育した。
【表4】
【0047】
(評価方法)
実施例1の(評価方法)と同様の方法にしたがって、眼軸長および屈折度を測定し、眼軸長の差および眼軸長伸長抑制率ならびに屈折度の差および屈折異常抑制率を、実施例1に示す式にて算出した。計算は、Microsoft Excelにおいて実施した。
【0048】
(試験結果)
対照群および各AFDX0250溶液投与群の眼軸長の差および屈折度の差の平均値を表5に示す。
【表5】
【0049】
各AFDX0250溶液投与群の眼軸長伸長抑制率および屈折異常抑制率を表6に示す。なお、これら抑制率は、表5の眼軸長の差及び屈折度の差の四捨五入する前の値を用いて計算した。
【表6】
【0050】
実施例1および2の結果から明らかなように、AFDX0250は、眼軸長伸長および屈折異常を強力に抑制することが示された。よって、AFDX0250は、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制に有効である。
【0051】
比較例1:モルモット近視モデルを用いた近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制試験(1)
以下の方法にしたがって、AFDX0116の近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制効果を評価した。
(試料の調製)
AFDX0116を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、0.5%AFDX0116溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液もしくは希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。0.1%AFDX0116溶液および0.02%AFDX0116溶液は、4mLおよび4.8mLのベヒクルに、それぞれ1mLおよび0.2mLの0.5%AFDX0116溶液を添加・撹拌することで調製した。また、0.004%AFDX0116溶液は4mLのベヒクルに、1mLの0.02%AFDX0116溶液を添加・撹拌することで調製した。
【0052】
(モルモット近視モデルの作製)
実施例1の(モルモット近視モデルの作製)と同様の方法にしたがって、モルモット近視モデルを作製した(n=30)。
【0053】
(試料の投与)
作製されたモルモット近視モデルを0.004%AFDX0116溶液投与群、0.02%AFDX0116溶液投与群、0.1%AFDX0116溶液投与群、0.5%AFDX0116溶液投与群およびベヒクル投与群(対照群)に無作為に分類した(1群あたりn=6)。AFDX0116溶液投与群では、右眼をゴーグルで遮蔽した日(0日目とする)から、各モルモットの右眼に各濃度のAFDX0116溶液10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。対照群では、各モルモットの右眼にベヒクル10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。なお、すべてのモルモットの左眼には、各群の投与回数と同じ回数でベヒクル10μLを0日目から13日目まで14日間毎日点眼投与した。モルモットは通常の飼育条件で飼育した。
【表7】
【0054】
(評価方法)
実施例1の(評価方法)と同様の方法にしたがって、眼軸長および屈折度を測定し、眼軸長の差および眼軸長伸長抑制率ならびに屈折度の差および屈折異常抑制率を、実施例1に示す式にて算出した。計算は、Microsoft Excelにおいて実施した。
【0055】
(試験結果)
対照群および各AFDX0116溶液投与群の眼軸長の差および屈折度の差の平均値を表8に示す。
【表8】
【0056】
各AFDX0116溶液投与群の眼軸長伸長抑制率および屈折異常抑制率を表9に示す。なお、これら抑制率は、表8の眼軸長の差及び屈折度の差の四捨五入する前の値を用いて計算した。
【表9】
【0057】
比較例2:モルモット近視モデルを用いた近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制試験(2)
以下の方法にしたがって、AFDX0116の近視進行(眼軸長伸長および屈折異常)抑制効果を評価した。
(試料の調製)
AFDX0116を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、0.5%AFDX0116溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液または希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。0.1%AFDX0116溶液および0.02%AFDX0116溶液は、4mLおよび4.8mLのベヒクルに、それぞれ1mLおよび0.2mLの0.5%AFDX0116溶液を添加・撹拌することで調製した。また、0.01%AFDX0116溶液および0.004%AFDX0116溶液は、2.5mLおよび4mLのベヒクルに、それぞれ2.5mLおよび1mLの0.02%AFDX0116溶液を添加・撹拌することで調製した。
【0058】
(モルモット近視モデルの作製)
実施例1の(モルモット近視モデルの作製)と同様の方法にしたがって、モルモット近視モデルを作製した(n=30)。
【0059】
(試料の投与)
作製されたモルモット近視モデルを0.004%AFDX0116溶液投与群、0.01%AFDX0116溶液投与群、0.02%AFDX0116溶液投与群、0.1%AFDX0116溶液投与群およびベヒクル投与群(対照群)に無作為に分類した(1群あたりn=6)。AFDX0116溶液投与群では、右眼をゴーグルで遮蔽した日(0日目とする)から、各モルモットの右眼に各濃度のAFDX0116溶液10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。対照群では、各モルモットの右眼にベヒクル10μLを13日目まで14日間毎日、1日1回点眼投与した。なお、すべてのモルモットの左眼には、各群の投与回数と同じ回数でベヒクル10μLを0日目から13日目まで14日間毎日点眼投与した。モルモットは通常の飼育条件で飼育した。
【表10】
【0060】
(評価方法)
実施例1の(評価方法)と同様の方法にしたがって、眼軸長および屈折度を測定し、眼軸長の差および眼軸長伸長抑制率ならびに屈折度の差および屈折異常抑制率を、実施例1に示す式にて算出した。計算は、Microsoft Excelにおいて実施した。
【0061】
(試験結果)
対照群および各AFDX0116溶液投与群の眼軸長の差および屈折度の差の平均値を表11に示す。
【表11】
【0062】
各AFDX0116溶液投与群の眼軸長伸長抑制率および屈折異常抑制率を表12に示す。なお、これら抑制率は、表11の眼軸長の差及び屈折度の差の四捨五入する前の値を用いて計算した。
【表12】
【0063】
比較例1および2の結果から明らかなように、AFDX0116は、眼軸長伸長および屈折異常を抑制することが示されたものの、AFDX0116がその効果を発揮するためにはAFDX0250よりも高濃度を要した。
【0064】
実施例3:AFDX0116およびAFDX0250溶液による散瞳作用の評価
AFDX0116およびAFDX0250溶液をモルモットに1日1回、5日間反復点眼し、散瞳に及ぼす影響を評価した。
(試料の調製)
1.AFXD0116溶液の調製
AFDX0116を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、2%AFDX0116溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液または希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。1%AFDX0116溶液および0.5%AFDX0116溶液は、2.5mLおよび3mLのベヒクルに、それぞれ2.5mLおよび1mLの2%AFDX0116溶液を添加・撹拌することで調製した。
2.AFXD0250溶液の調製
AFDX0250を緩衝剤および等張化剤とともに精製水に溶解させ、2%AFDX0250溶液を調製した。なお、1mol/L水酸化ナトリウム試液または希塩酸を添加し、pHを中性にした。また、緩衝剤および等張化剤を精製水に溶解させ、中性のベヒクルを調製した。1%AFDX0250溶液および0.5%AFDX0250溶液は、2.5mLおよび3mLのベヒクルに、それぞれ2.5mLおよび1mLの2%AFDX0250溶液を添加・撹拌することで調製した。
【0065】
(評価方法)
調製した溶液を10μLの容量で1日1回、5日間、モルモットの左眼(各溶液に対し、3匹のモルモットの左眼)に点眼した。5日目の点眼前、点眼後1、2、4時間後のモルモットの瞳孔径を測定し、対光反射を観察した。各測定時間における各個体の瞳孔径を平均した値を平均瞳孔径とした。各測定時間における平均瞳孔径のうち、最大値を最大瞳孔径とした。
【0066】
【0067】
表13に示すように、AFDX0116では2%溶液投与群で瞳孔径の増加および対光反射の減弱が認められ、AFDX0250では1%の溶液投与群で瞳孔径の増加および対光反射の減弱が認められた。
【0068】
比較例3:アトロピン溶液による散瞳作用の評価
アトロピン溶液をモルモットに1日1回、5日間反復点眼し、散瞳に及ぼす影響を評価した。
(試料の調製)
硫酸アトロピン水和物、グリセリンを注射用水に溶解し、なりゆきpHにて0.001%アトロピン溶液、0.0003%アトロピン溶液、0.0001%アトロピン溶液をそれぞれ調製した。
【0069】
(評価方法)
調製した溶液を10μLの容量で1日1回、5日間、モルモットの左眼(各溶液に対し、3匹のモルモットの左眼)に点眼した。5日目の点眼前、点眼後1、2、4時間後のモルモットの瞳孔径を測定し、対光反射を観察した。各測定時間における各個体の瞳孔径を平均した値を平均瞳孔径とした。各測定時間における平均瞳孔径のうち、最大値を最大瞳孔径とした。
【0070】
【0071】
表14に示すように、0.001%および0.0003%アトロピン溶液投与群で瞳孔径の増加および対光反射の減弱が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の医薬組成物は、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンまたはその塩が眼軸長伸長および屈折異常を抑制することにより、近視の治療、近視の予防および/または近視の進行抑制に有効である。さらに、(+)-11-[2-[2-[(ジエチルアミノ)メチル]-1-ピペリジニル]アセチル]-5,11-ジヒドロ-6H-ピリド[2,3-b][1,4]ベンゾジアゼピン-6-オンは、実質的に散瞳作用を有することなく、広い安全域を有することから、優れた安全性および使用感をもたらす近視治療剤として期待される。
【国際調査報告】