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▶ カラー リリー パーソナル ケア リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】薬剤送達および投与器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 31/00 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61M31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559175
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 GB2020050891
(87)【国際公開番号】W WO2020201767
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】1904856.0
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513275355
【氏名又は名称】カラー リリー パーソナル ケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CALLA LILY PERSONAL CARE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フーイ, ユー シン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォ-タ, ヴィン-タン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA02
4C066AA04
4C066BB05
4C066CC06
4C066DD06
4C066HH30
4C066LL12
(57)【要約】
本発明は、直腸および/または膣腔内への送達形態の治療用組成物の送達および/または塗布のための器具であって、外部装着型パッドと、治療用組成物の送達形態を受容するための非吸収性プラットフォームと、使用者の指をシース内に受容することができるように、プラットフォームをパッドに接合するシースとを備える器具に関する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直腸および/または膣腔内への送達形態の治療用組成物の送達および/または塗布のための器具において、
外部装着型パッドと、
前記治療用組成物の前記送達形態を受容するための非吸収性プラットフォームと、
前記プラットフォームを前記パッドに接合するシースであって、使用者の指を前記シース内に受容することができるシースと、
を備える、器具。
【請求項2】
前記治療用組成物は、形状を有する送達形態であり、前記プラットフォームは、受容部分を備え、その形状は、前記治療用組成物の前記送達形態の形状に部分的に対応する、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記プラットフォームは、所定量の治療用組成物を受容するように構成された受容部分を備える、請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記プラットフォームは比較的剛性の高い領域を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の器具。
【請求項5】
前記受容部分は、折り畳み可能および/または反転可能である、請求項2~4のいずれか一項に記載の器具。
【請求項6】
前記プラットフォームは、前記治療用組成物を放出するための手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の器具。
【請求項7】
取外し可能なストリングを更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の器具。
【請求項8】
前記パッドは、使用時に直腸又は膣腔に面する吸収層と、使用時に直腸又は膣腔から離れて面する不浸透層とを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
前記シースの長さは、直腸または腟口と直腸または膣腔キャビティ内の標的領域との間の距離と実質的に同じである、請求項1~8のいずれか一項に記載の器具。
【請求項10】
送達形態の治療用組成物と、前記治療用組成物の送達形態を直腸又は膣腔内の標的領域に送達および/または塗布するための請求項1~9のいずれか一項に記載の器具とを備える、キット。
【請求項11】
前記治療用組成物は、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、ステロイド(NSAID)化合物、非ステロイド化合物、および/またはホルモンを備える、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
月経過多処置の為の治療用組成物の送達および/または塗布のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の器具の使用。
【請求項13】
不妊処置の為の治療用組成物の送達および/または塗布のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の器具の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直腸腔または膣腔における治療用組成物の送達および/または投与のための器具に関する。
【0002】
膣または直腸腔を介する薬物の送達は、薬物の局所投与および全身投与の両方を達成することができ、従来の送達経路の代替を提供する点で有利であることが知られている。場合によっては、ガストロ-腸の副作用または生物学的利用能の低下のため、または単に患者が非協力的であるか、または薬物を飲み込むことができないために、経口送達は推奨されない。注射剤(例えば、静脈注射)は、通常、訓練された医療従事者によって投与されなければならないので、適切でない場合がある。
【0003】
手袋をはめた指で腟や直腸の薬(クリームなど)を塗布することもある。しかしながら、指を膣または直腸腔に挿入すると、指が膣腔を通って前進する際に膣壁または直腸壁によって保持される薬物の一部分は、標的領域に塗布されない。したがって、正確な量の薬物を標的領域に投与することは困難である。
【0004】
坐薬を挿入したり、注射器を使って薬を注射したりスプレーにより薬を投与することもできる。しかしながら、その身体的機能のために、膣および直腸の両方の腔は異物を拒絶する傾向がある。薬物は標的領域に到達するが、十分な接触および吸収が達成されるようにキャビティ内には保持されない。これは特に、坐剤が溶解して、キャビティ壁への薬物の浸透および吸収を可能にしなければならない場合である。漏出する薬物を保持するために弾性腟リングが開発されているが、これらの器具はしばしば患者にとって不快である。
【0005】
膣または直腸腔への薬物の送達のために、多くの薬用タンポンおよびスポンジが知られている。これらの器具は、通常、アプリケータまたは挿入器を使用して挿入されるが、これは不快であり、タンポンを適切に配置することがしばしば困難である。
【0006】
欧州特許公報EP3 027 155は、シースによって生理用ナプキンに結合された薬用タンポンを備える薬剤送達器具に関する。使用者は、タンポンを正確にかつ非外傷性に膣または直腸腔に押し込むために、シースに指を挿入することができる。しかしながら、タンポンに組み込むために実質的な改良およびコストを必要とするか、または単にタンポンに全く組み込むことができない医薬品が存在し得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上記の欠点を少なくとも軽減すること、または既存の製品に対する代替物を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、直腸および/または膣腔内への送達形態の治療用組成物の送達および/または塗布のための器具が提供されるが、この器具は、外部装着型パッドと、治療用組成物の送達形態を受容するための非吸収性プラットフォームと、使用者の指をシース内に受容することができるように、プラットフォームをパッドに結合するシースと、を備える。
【0009】
本発明の文脈において、送達形態は、任意の市販の送達形態でもよく、坐剤、ペッサリー、カプセル、錠剤、液体、溶液、懸濁液、ローション、分散液、クリーム、ゲル、粉末および顆粒を含むが、これらに限定されない。本発明は、ガスの形態で送達される治療用組成物の送達および投与に関するものではない。
【0010】
既知の直腸または膣送達器具は、薬物と送達器具との吸収または組み合わせを必要とする。これは、薬物の放出の制御を容易にするが、全用量が送達器具によって保持され、標的領域に送達されないというリスクが依然として存在する。本発明は、関連する吸収がないという点で、治療用組成物全体(即ち、その送達形態)を標的領域に送達することを可能にする。本発明の器具は、器具と治療用組成物との間に相互作用がない点で、送達器具よりもむしろアプリケータとして作用すると言える。治療用組成物は、プラットフォームによって支持されているとも言える。
【0011】
好ましくは、シースは、前記プラットフォームを備える。シースは、パッドに接合された第1の端部と、プラットフォームを備えた第2の端部とを備え、プラットフォームは、使用者の指の先端によって直腸又は膣腔に押し込まれることができる。
【0012】
好ましい実施形態において、治療用組成物は、形状を有する送達形態であり、プラットフォームは、受容部分を含み、その形状は、治療用組成物の送達形態の形状に部分的に対応する。
【0013】
本発明の文脈において、本発明者らは、治療用組成物の送達形態の形状を参照するが、ここで、送達形態は、1つの成分(例えば1つの坐剤、1つのペッサリー、1つのカプセル、1つの錠剤)からなるが、送達形態が特定の形状を有さないもの、液体、溶液、懸濁液、ローション、分散液、クリーム、ゲル、粉末および顆粒ではない。
【0014】
送達形態の形状は、球形、卵形、円筒形、菱形、または任意の他の市販の形状でもよい。受容部分の形状は、好ましくは、治療用組成物が受容部分にぴったりと適合し、かつ標的領域で放出され得るように、送達形態の形状に部分的に対応する。好ましくは、受容部分の形状は、標的部位での容易な放出を可能にするために、治療用組成物の送達形態の形状の半分までに対応する。
【0015】
送達形態の形状が球形または卵形のカプセルである場合、プラットフォームは、半球形または卵形のカップ形状の受容部分を備えることができる。送達形態の形状が菱形である場合、プラットフォームは、テーパ状の受容部分を備えることができる。
【0016】
受容部分は、シース内に一体的に形成されてもよい。たとえば、シースは、シースと同じ材料で形成された受容部分(ポケットまたは凹部)を備えることができる。あるいは、受容部分は、シースに接続された追加または代替の材料を含んでもよい。
【0017】
受容部分の、この特定の構成は、治療用組成物の送達を改善する点で有利である。シースは、その中に使用者の指が受容できるようになっている。これは、十分な直径のシース、または指を収容するために拡張することができるシース材料を使用することによって達成することができる。その結果、シースの直径は、錠剤、カプセル、坐剤などが、成形された受容部分によって保持されない場合には緩くなるので、送達形態の寸法よりも広くなりそうであり、使用者は治療用組成物を直腸または膣腔に押し込む際に困難を経験する。
【0018】
好ましくは、プラットフォームは、所定量の治療用組成物を受容するように構成された受容部分を備える。
【0019】
好ましい実施形態において、受容部分は、カップまたはボウルなどのレセプタクルであってもよい。好ましくは、受容部分は、治療用組成物が角部に捕捉されて送達されなくなることを防止するために、丸みを帯びたベースを有する。
【0020】
これは、治療用組成物の送達形態が明確でない場合、たとえば、治療用組成物が定量化が困難な送達形態である場合(例えば、送達形態が液体、溶液、懸濁液、ローション、分散液、クリーム、ゲル、粉末および顆粒である場合)に特に有利である。受容部分が所定量の治療用組成物を受容するように適合され構成されている場合、使用者は、処置に必要な治療用組成物の正確な量を受容部分に単に充填することができる。
【0021】
別の実施形態において、受容部分は、使用者が処置に必要な治療用組成物の量を調節できるように、視覚的目盛りまたはマーカーを備えることができる。必要な量は、たとえば、処置すべき状態、状態の重症度、年齢、体重、性別などの患者の特徴に依存し得る。
【0022】
好ましくは、プラットフォームは、比較的高い剛性の領域を備える。プラットフォームは、シースの材料よりも剛性の高い材料を備えてもよいし、または、シースの材料よりも剛性の高い材料で作られてもよい。プラットフォームおよび/または受容セクションの剛性を高めるために、追加または代替の材料を使用することができる。たとえば、比較的高い剛性の領域は、多層構造を有することができ、または異なる、より剛性の高い材料で作ることができる。
【0023】
これにより、プラットフォームおよび/または受容セクションは、直腸または膣腔に進入する際にその形状を維持することができる。受容部分の形状が折り畳まれる場合、その中に含まれる液体治療用組成物は、シース中に溢れたり広がったりして、標的部位への送達をより困難にし、さらに/または標的部位に送達される治療用組成物の量が不正確になる。治療用組成物が単一の固体形態(例えば、錠剤、カプセル、坐剤、ブジー、ペッサリー)の形状である場合、その組成物は、標的領域に到達する前に、受容プラットフォームから偶然に外れてもよい。
【0024】
より高い剛性の領域を使用して、取外しストリングをプラットフォームに取り付けることができるように、プラットフォームの堅牢性を高めることもできる。
【0025】
好ましくは、受容部分は、折り畳み可能および/または反転可能である。好ましい実施形態において、受容部分は、挿入ステップの間、すなわち、治療用組成物が直腸又は膣腔を通って標的領域に向かって押されるとき、その形状を維持するのに十分な剛性を有するが、折り畳まれて標的領域で治療用組成物を放出するのに十分な柔軟性を有する。本発明による器具は、挿入および取外しプロセス中に使用者に怪我や不快感を与えないように、完全に剛性の部品を含まないことが好ましい。
【0026】
好ましい実施形態において、プラットフォームは、治療用組成物を放出するための手段を備える。
【0027】
最も単純な実施形態において、治療用組成物が受容部分から押し出されるように、プラットフォームは反転可能である。たとえば、プラットフォームは、裏返しにすることができるカップまたはボウル形状のレセプタクルを備えるか、またはそのようなレセプタクルである。いったん反転されると、プラットフォームを使用して、例えばクリーム、ローション、液体、顆粒などの場合には、治療用組成物を標的領域に塗布して、組成物がキャビティ壁に浸透するようにすることができる。
【0028】
治療用組成物が受容セクションから放出されるように、プラットフォームは折り畳み可能であってもよく、またはプラットフォームは折り畳み可能な側壁を備えてもよい。プラットフォームは、キャビティ口(cavity orifice)に向かって引っ張られ、側壁を折り畳むように構成および配置された一つ又は複数のストリングを備えることができる。たとえば、プラットフォーム壁は、蛇腹機構を備えることができる。
【0029】
好ましい実施形態において、受容部分は、たとえば、器具の保存、輸送、取り扱いおよび挿入の間に治療用組成物を包含するように閉鎖可能でもよい。シースは、たとえば、超音波溶接、衝撃熱または熱溶接によって放出可能に閉じることができる。これらの技術は、シールの強度が、使用前に治療用組成物を包含するのに十分な強さであるが、シースを患者のキャビティ内に押し込むことによっても開くことができるように、調節することができる点で特に有利である。受容部分を標的領域に押し、使用者がシースの遠位端部を更に押して、シールを開き、受容部分から治療用組成物を放出する。
【0030】
好ましくは、シースの長さは、直腸または腟口と直腸または膣腔内の標的領域との間の距離と実質的に同じである。シースが放出可能な閉鎖部を備える場合、パッドと閉鎖部との間のシースの長さは、直腸または腟口と直腸または膣腔内の標的領域との間の距離と実質的に同じであることが好ましい。
【0031】
好ましい実施形態において、器具は、取外しストリングを更に備える。好ましくは、器具は、受容部分から治療用組成物を放出するため、さらに/または、直腸もしくは膣腔から器具を取り外すためのストリングを備える。好ましくは、ストリングは、プラットフォーム、またはプラットフォームを構成するシースの端部に接続される。別の実施形態において、ストリングはループを備えるか又はループを形成し、ユーザが容易に把持できるようにする。ループは、器具、プラットフォーム、または受容部分を均一に操作および/または引っ張るように、プラットフォーム上またはプラットフォームに隣接する複数の点に接続されてもよい。
【0032】
好ましい実施形態において、パッドは、使用時に直腸又は膣腔に面する吸収層、及び使用時に直腸又は膣腔から離れて面する不浸透層を備える。
【0033】
外部から着用されるパッドは、キャビティから漏出する過剰な治療用組成物または体液を吸収する吸収層を備えることができる。これは、キャビティから漏れ出しやすい液体、クリームまたはゲルなどの送達形態を塗布する場合に特に有利である。外部から着用されるパッドは、漏出する流体がユーザの下着を汚すのを防止するために不浸透層を備えることができる。パッドは、陰唇間パッドとして腟口の外側に、または使用者の臀部の間で直腸開口部の外側に位置されることが好ましい。好ましい実施形態において、パッドは、陰唇または使用者の臀部の間にパッドを保持するのを容易にするために、一つ又は複数の脆弱ラインを備える。また、脆弱ラインは、パッドが脆弱ラインの周りに折り畳まれ、それにより、使用者がパッドの汚れた表面またはシースに触れないようにシースを閉じることができるので、薬物送達器具の衛生的な処分を可能にする。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、送達形態の治療用組成物と、治療用組成物の送達形態を直腸又は膣腔内の標的領域に送達および/または塗布するための請求項1~9のいずれか一項に記載の器具とを備えるキットが提供される。
【0035】
好ましくは、治療用組成物は、抗真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、ステロイド(NSAID)化合物、非ステロイド化合物、および/またはホルモンを備える。
【0036】
本発明の更なる態様によれば、器具は、月経過多の処置のための治療組成物の送達および/または塗布のために使用されてもよい。
【0037】
本発明の更なる態様によれば、器具は、不妊処置のための治療組成物の送達および/または塗布のために使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、図面および図を参照して本発明を更に説明する。
図1A図1Aは、本発明による第1の器具の概略図である。
図1B図1Bは、本発明による第1の器具の概略図である。
図1C図1Cは、本発明による第1の器具の概略図である。
図1D図1Dは、本発明による第1の器具の概略図である。
図2A図2Aは、本発明による第2の器具の概略図である。
図2B図2Bは、本発明による第2の器具の概略図である。
図2C図2Cは、本発明による第2の器具の概略図である。
図2D図2Dは、本発明による第2の器具の概略図である。
図3A図3Aは、本発明による第3の器具の概略図である。
図3B図3Bは、本発明による第3の器具の概略図である。
図3C図3Cは、本発明による第3の器具の概略図である。
図3D図3Dは、本発明による第3の器具の概略図である。
図4図4は、本発明による第4の器具の概略図である。
図5図5は、本発明による第5の器具の概略図である。
図6図6は、本発明による第6の器具の概略図である。
図7A図7Aは、本発明による第7の器具の概略図である。
図7B図7Bは、本発明による第7の器具の概略図である。
図7C図7Cは、本発明による第7の器具の概略図である。
図7D図7Dは、本発明による第7の器具の概略図である。
図8図8は、本発明による第8の器具の概略図である。
図9図9は、本発明による第9の器具の概略図である。
図10図10は、本発明による第10の器具の概略図である。
図11A図11Aは、本発明による器具を使用する治療用組成物の女性患者の直腸腔への送達を示す概略図である。
図11B図11Bは、本発明による器具を使用する治療用組成物の女性患者の直腸腔への送達を示す概略図である。
図11C図11Cは、本発明による器具を使用する治療用組成物の女性患者の直腸腔への送達を示す概略図である。
図12A図12Aは、本発明による器具を使用する男性患者の直腸腔への治療用組成物の送達を示す概略図である。
図12B図12Bは、本発明による器具を使用する男性患者の直腸腔への治療用組成物の送達を示す概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0039】
図1を参照すると、治療用組成物Cを送達形態で直腸および/または膣腔内に送達および/または塗布するための器具1が示されており、この器具1は外部装着型パッド2と、治療用組成物Cの送達形態を受容するための非吸収性プラットフォーム3と、プラットフォーム3をパッド2に結合するシースであって、使用者の指が受容されるシース4とを備える。
【0040】
非吸収性プラットフォーム3は、シース4の遠位端部に置かれる。本発明の文脈において、遠位端部は、使用時には、膣または直腸腔における標的領域に最も近い端部であり、近位端部は、キャビティ穴に最も近いシース4の端部である。
【0041】
プラットフォーム3の主な機能は、治療用組成物Cのための支持表面を提供し、使用者が膣又は直腸腔に沿って治療用組成物Cを押すことである。使用者がプラットフォーム3のないラテックス手袋を使用していた場合、治療用組成物Cは使用者の指先から離れ、効率的かつ正確な送達は不可能である。また、プラットフォーム3は、使用者が治療用組成物Cを膣または直腸腔の標的領域に維持することを可能にし、治療用組成物Cが外れたり、または腔から漏れ出すのを防止するための内部バリアとして作用することができる。
【0042】
好ましくは、プラットフォーム3は、シース4の材料よりも剛性の高い材料を備える。プラットフォーム3は、単層または多層シート構造から形成されてもよい。プラットフォーム3の材料は、シース4の材料と同じ材料であってもよいが、相対的な剛性を与えるために、シース4の材料の厚さよりも大きい厚さであってもよい。プラットフォーム3は、相対剛性を付与する構造層を備えた多層構造を備えることができる。また、比較的大きな構造剛性のプラットフォーム3は、ストリングまたはコード6の取り付けを容易にする。
【0043】
プラットフォーム3は、受容部分5を備えるか、または受容部分5を形成することができるプラットフォーム3は、受容部分5が存在しない第1の構成(例えば、回収構成および/または送達構成において、キャビティ内の標的領域で反転される場合)、および受容部分5が存在する第2の構成(例えば、挿入構成において、治療用組成物Cが膣または直腸腔に沿って押される場合)に配置されてもよい。好ましい実施形態において、受容部分5は、治療用組成物Cを包含することができる受容構成、および治療用組成物Cが受容部分5から放出される送達構成に配置することができる。
【0044】
プラットフォーム3および受容部分5は、同じ非吸収性材料または異なる吸収性材料で作ることができる。好ましい実施形態において、受容部分5は、プラットフォーム3内に、および/または、プラットフォーム3と共に、一体に形成される。
【0045】
好ましくは、プラットフォーム3および/または受容部分5は、使用者が受容部分5内で治療用組成物Cを押すことができるほど十分に剛性であり、かつ使用者が受容部分5から治療用組成物Cを押すことができるほど十分に柔軟な材料で作られる。プラットフォーム3および受容部分5は、好ましくは、挿入および/または取外しプロセス中に患者を傷つけるほど剛性ではない。好ましくは、プラットフォーム3及び/又は受容部分5は、プラスチック材料の半可撓性シートから作られる。
【0046】
治療用組成物が流体、液体、顆粒または粉末形態である場合、受容部分5の形状および寸法は、治療用組成物Cの必要な量/用量を受容するように調節されてもよい。
【0047】
図2A図2Dを参照すると、受容部分5は、固体または流体送達形態で治療用組成物を受容するように、カップまたはボウル形状であってもよい。取外しストリング6は、治療用組成物Cの送達後に器具1をキャビティから引き出すように、プラットフォーム3に接続されてもよい。
【0048】
図3A図3Dおよび図5を参照すると、受容部分5は、平坦なベース7(例えば、円筒状受容部分5)を備え、使用者によって押される表面を提供してもよい。
【0049】
図4を参照すると、受容部分5は、凹部又はリザーバ8であってもよい。図6を参照すると、受容部分5は、そこに含まれる治療用組成物Cの量の視覚的表示を備えてもよい。
【0050】
受容部分5は、治療用組成物Cを(図3A図3Dに示すような)受容部分5から解放するために反転可能(内側が外)であってもよく、または受容部分5の壁は、図7A図7Dに示すように折り畳み可能であってもよい。たとえば、受容部分5の壁は、遠隔的に折り畳み可能な蛇腹機構9を備えることができる。
【0051】
ストリングまたはコード6をプラットフォーム3に取り付けて、使用後に器具1をキャビティから引き出すことができる。また、ストリング6は、受容部分5の壁を折り畳むために使用されてもよい。ストリング6は、単一の点でプラットフォーム3に取り付けられてもよく、または器具1および/または受容部分5の操作を容易にする複数の取り付け点があってもよい。
【0052】
治療用組成物Cは、単一固体送達形態、たとえば、錠剤、カプセル、ペッサリー、坐剤などもあり得る。この固体形状は、特定の形状と寸法を有する。図8図10を参照すると、受容部分5の形状は、治療用組成物Cの送達形態の形状に部分的に対応する形状を有する。
【0053】
シース4は、実質的に円筒形であり、非吸収性プラットフォーム3からパッド2まで延びる。好ましくは、シース4は、高分子生体適合性材料のシートから作られるか、またはこのシートを備える。シース4は、指を受容するように配置され、構成されている。しかしながら、幅の広いシース4を設けることも可能であり、シース4が使用者の指の周りで緩んでいると、挿入が困難になる。シース4は、少なくとも径方向に伸長可能であることが好ましい。伸張性シース4は、使用者の指にぴったりと心地よくフィットするように設けられてもよい。
【0054】
(キャビティの外側に残る)パッド2とプラットフォーム3との間のシース4の長さは、治療用組成物および/または薬物が送達される標的領域に応じて調節されてもよい。
【0055】
パッド2は、特にシース4の第2の端部でシース4に接合される。パッド2は、使用者が自分の指をシース4に挿入することを可能にするアパーチャ10を備える。パッド2は、実質的に円形、楕円形、長方形、または任意の他の適切な形状である。パッド2は、標準的な長方形のナプキンまたは小さな陰唇間パッドとすることができる。好ましい実施形態において、パッド2は平卵型である。
【0056】
パッド2は、吸収性材料の層またはシートを備える第1の表面2Aを備える。第1の表面2Aは、使用時に、治療用組成物Cが送達される患者のキャビティに面する。パッド2は、不浸透性材料の層またはシートを備える第2の表面2Bを備える。第2の表面2Bは、使用時に、患者のキャビティの方を向いている。パッド2の不浸透性材料は、シース4のものと同じ材料であってもよい。シース4は、アパーチャ10を通って吸収層2Aに沿って延びて、不浸透層2Bを形成することができる。
【0057】
本発明による器具の使用を、図、特に図1図2図3図7図11図12を参照して説明する。
【0058】
使用時には、器具1は、パッド2の吸収表面2Aが上方を向き、不浸透面2Bが下方を向くように位置される。シース4は、パッド2の不浸透性表面2Bから延び、プラットフォーム3およびその受容部分5がその底部に置かれる。あるいは、器具1は、パッド2の吸収表面2Aが上方に面し、不浸透表面2Bが下方に面するように位置する。シース4は、パッド2の吸収表面2Aから延び、プラットフォーム3およびその受容部分5がその最上部に置かれる。両方の開始構成において、受容部分5は、その送達構成にあり、その中に治療用組成物Cを受容するように配置されている。
【0059】
器具1の受容部分5の形状は、治療用組成物Cの送達形態および形状に基づいて選択される。組成物Cが特定の形状を有する送達形態である場合、受容部分5の形状および寸法は、送達形態の形状および寸法に少なくとも部分的に対応し、たとえば、坐剤の場合、円筒形である。受容部分5は、好ましくは、その中に治療用組成物Cを固定するために、伸張性材料から作られる。組成物Cが不定形、たとえば顆粒、クリーム、ローション、分散液、ゲル等である場合、受容部分5は、組成物Cをその中に受容するための容器、例えばカップまたはボウル形状のレセプタクルを形成する。受容部分5は、好ましくは、その形状を維持しながら組成物を包含し、プラットフォーム3を膣または直腸腔を通して押すように十分に剛性の材料で作られる。受容部分5の受容容積は、1回の塗布に必要な量の組成物Cを包含するように調節することができる。シース4または受容部分5は、受容部分5内の組成物Cの量の視覚的指標、例えば、1以上のラインまたは目盛り付きラインを備えることができる。
【0060】
治療用組成物Cは、シース4内の受容部分5の内部に位置決めされ、固定される。使用者は、シース4がパッド2の吸収面2Aから延びるように、シース4の内側に指を挿入する。使用者は、器具1がキャビティ穴を通して挿入されるようにプラットフォーム3を押す。プラットフォーム3は、組成物Cが送達され塗布される標的領域に到達するまで、キャビティを通って前進する。シース4の長さは、シース4が完全に伸長したときにプラットフォーム3がキャビティ内の標的領域に位置するように調節することができる。治療用組成物Cは受容部分5内に入れ子状に収容されているので、使用者は容易かつ正確にキャビティを通して組成物を案内することができる。
【0061】
標的領域では、治療用組成物が受容部分5から放出される。これは、たとえば、受容部分5を内側を外に反転させて、治療用組成物が受容部分5から排出されるようにすることによって行うことができる。あるいは、受容部分5(またはその壁)は、プラットフォーム3をシース4の遠位端部に押すことによって、または受容部分5(またはその壁)を折り畳む代替手段を使用することによって、折り畳むことができる。たとえば、1つ以上のストリング6は、(例えば、ストリング6をキャビティの外側から引っ張ることによって)受容部分3の壁を遠隔的に折り畳むように、受容部分3に結合されてもよい。
【0062】
器具1が、密封された受容部分5内に予め位置された治療用組成物Cを備える場合、使用者は、シース4の遠位端部が標的領域に到達するまで、シース4および包まれた指をキャビティ内に挿入する。シールを破壊し、受容部分を反転させ、治療用組成物Cを放出するために、密封された組成物Cに指で圧力を加える。
【0063】
いったん送達されると、治療用組成物Cを標的領域に塗布することができる。本発明は、組成物をキャビティ壁に擦り付けて、キャビティ壁への薬物の塗布およびキャビティ壁を通した薬物の吸収を改善できる点で特に有利である。これは、指を汚さずに行うことができる。
【0064】
治療用組成物Cが標的領域に残るように、器具1をその場に残してもよい。プラットフォーム3は、たとえば、組成物が溶解して吸収されるまで、アンカーおよび/またはプラグとして作用する。
【0065】
キャビティから漏れ出す過剰な流体は、キャビティ穴に置かれるパッド2の吸収表面2Aによって吸収される。使用者の指は、パッド2の不浸透性表面2Bによって前記流体から保護される。
【0066】
器具1は、パッド2またはストリング6を引っ張ることによって取り外される。ストリング6を引っ張ることによって、シース4が反転し、シース4の汚れた外表面が内側になる。使用者は、シース4の汚れていない表面またはパッド2の不浸透性表面2Bによって器具1を保持し、器具1を処分することができる。
【0067】
本発明は、月経過多の症状を軽減するための治療用組成物の送達および塗布において特に有用である。月経過多は、女性が生理のときに過度の出血をする状態である。これは、多量の月経出血(80ml以上)および/または月経期間の延長(7日以上)によるものである。月経過多の原因は、ホルモン失調、子宮内避妊器具の使用、妊娠中の合併症など様々である。月経過多の症状を緩和するのに利用可能な多くの処置には、以下のようなものがある:
【0068】
・NSAIDや鎮痛剤のような非ステロイド系及び/又は非ホルモン系薬剤は出血を減少させることができる。
【0069】
・ホルモン剤、たとえば避妊ピルや避妊用のホルモンコイルなどがあるが、月経過多の一部患者には子供を欲しがる人もいる。
【0070】
・非侵襲的処置が失敗した場合の手術(たとえば、子宮内膜アブレーション)
【0071】
避妊処置を使用することを望まないか、または手術を拒否する、これらの患者に対して、本発明は、非ホルモン薬物(たとえば、鎮痛剤)の送達を含む非侵襲性処置を提供して、その場で症状を処置する。本発明は、多量の体液が存在するために膣腔内への薬剤の塗布が特に困難で厄介な場合に、多量の出血の間に処置を行う点で特に有利である。薬物が送達されて塗布されると、シースは患者の指を保護し、キャビティ壁に対して薬物の塗布および擦り込みを可能にする。外部パッドは、薬物の送達および塗布の間に、キャビティを出る任意の体液に浸す。
【0072】
本発明は、不妊処置、特に、ホルモンおよび抗凝固剤のような種々の薬物の投与を含むインビトロ受精(IVF)のような処置の状況において、しばしばペッサリー、錠剤または注射(皮下または筋肉内)として特に有用である。IVF投薬の大部分は自己投与され、治療用組成物の送達を損なうことなく、より簡単で、より患者に優しい投与方法が必要である。
【0073】
IVF処置では、1日3回前後のプロゲステロンの服用が必要になる。プロゲステロンは生物学的利用能の問題のために経口摂取できない。必要量のプロゲステロンを子宮に効率的に送達するために、摂取量は、望ましくない副作用を引き起こすのに十分な量でなければならない。もう1つの選択肢は、プロゲステロンをその位置で(in situ)注射することである。しかしながら、プロゲステロンを膣内に注入することは実際的でなく、痛みを伴い、費用もかかる。最も一般的な投与経路は、指またはアプリケーターを用いて挿入される膣坐剤である。効果的であるためには、坐剤は溶解し吸収されるように所定の位置に保持されなければならない。しかしながら、実際には、プロゲステロンの大部分は漏出するので、正確な量を投与することはできない。漏出を防ぐためにタンポンを着用することもできない。そうしないと、プロゲステロンがタンポンに吸収される。
【0074】
本発明は、従来の硬質アプリケーターの代替を可能にし、坐剤の快適で清潔な送達および塗布を可能にする。坐剤は、完全に溶解するまで標的領域で維持することができ、指が保護されるので、溶解した組成物を膣腔に擦り付けて、薬物送達を最適化することができる。
【0075】
本発明は、治療用組成物を直腸又は膣腔に送達及び/又は塗布するための器具を提供する。上記の説明から、この器具は、無痛で衛生的な送達および正確な量の治療用組成物の標的領域への塗布を可能にする薬物挿入器として使用されることが分かる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
【国際調査報告】