(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】無煙たばこ製品におけるイソチオシアネートの使用
(51)【国際特許分類】
A24B 15/30 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A24B15/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566938
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020031849
(87)【国際公開番号】W WO2020227512
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520061789
【氏名又は名称】セス,アビナッシュ
【氏名又は名称原語表記】SETH,Avinash
(71)【出願人】
【識別番号】521489241
【氏名又は名称】ガモット グローバル プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GAMOT GLOBAL PTE.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】セス、アビナッシュ
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB22
4B043BC06
4B043BC13
4B043BC18
4B043BC19
4B043BC24
(57)【要約】
たばこ製品は、たばこ消費の負の影響、特に癌の発症のいくらかを低減または軽減する。たばこ製品は、(a)ニコチン、(b)イソチオシアネートまたはイソチオシアネート前駆体の少なくとも1つ、(c)ミロシナーゼ、および(d)合成イソチオシアネートを含有する。製品はさらに、チモキノン、レスベラトロール、合成ビタミンC、チモキノンレスベラトロールおよび合成ビタミンC、の少なくとも1つをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン、および(a)イソチオシアネートまたはイソチオシアネート前駆体、(b)ミロシナーゼ、および(c)レスベラトロールの少なくとも1つを含む、摂取可能な製品。
【請求項2】
無煙たばこ、噛みたばこ、スナッフ、スヌース、溶解性たばこ、紙巻きたばこ、ツイスト、葉巻たばこおよびシガリロのいずれか1つとして処方された、請求項1に記載の摂取可能な製品。
【請求項3】
前記ニコチンの供給源として粉末状のたばこ葉をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の摂取可能な製品。
【請求項4】
前記ニコチンの供給源としてたばこ葉の抽出物をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項5】
前記イソチオシアネート前駆体の供給源として、ウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレス、およびガーデンクレス抽出物のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項6】
前記イソチオシアネートが合成されたもの(フェネチルイソチオシアネートまたはアリルイソチオシアネート)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項7】
前記ミロシナーゼの供給源としてマスタードシードおよびマスタードシード抽出物のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項8】
チモキノンをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項9】
ブラッククミンシード抽出物をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項10】
合成ビタミンCをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項11】
前記レスベラトロールをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項12】
前記ニコチン、および(a)前記イソチオシアネートまたはイソチオシアネート前駆体、(b)前記ミロシナーゼ、および(c)前記レスベラトロールのそれぞれを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項13】
前記ニコチンの供給源として粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物のうちの少なくとも1つと;
前記イソチオシアネート前駆体の供給源としてウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレスおよびガーデンクレス抽出物のうちの少なくとも1つと;
前記ミロシナーゼの供給源としてマスタードシード抽出物と、
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項14】
合成イソチオシアネートをさらに含む、請求項13に記載の摂取可能な製品。
【請求項15】
チモキノンをさらに含む、請求項13に記載の摂取可能な製品。
【請求項16】
合成ビタミンCをさらに含む、請求項13に記載の摂取可能な製品。
【請求項17】
レスベラトロールをさらに含む、請求項13に記載の摂取可能な製品。
【請求項18】
チモキノン、レスベラトロールおよび合成ビタミンCをさらに含む、請求項13に記載の摂取可能な製品。
【請求項19】
前記ニコチンおよび前記イソチオシアネート前駆体、合成イソチオシアネートの少なくとも1つがカプセル化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項20】
前記イソチオシアネート前駆体および合成イソチオシアネートがミセルおよびナノ粒子のうちの少なくとも1つにカプセル化されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項21】
前記イソチオシアネートおよび前駆体ならびに合成イソチオシアネートの少なくとも一部が、粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物のうちの少なくとも1つと直接接触している、請求項1~20のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項22】
前記摂取可能な製品がフィルタを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の摂取可能な製品。
【請求項23】
集団内のがんを予防または治療するが、前記集団の少なくとも一部のメンバーが、ニコチン、イソチオシアネートおよびイソチオシアネート前駆体のうちの少なくとも1つ、アミロシナーゼおよび合成イソチオシアネートを含む摂取可能な製品を利用できるようにする方法。
【請求項24】
前記摂取可能な製品が、
前記ニコチンの供給源として粉末状のたばこ葉およびたばこ葉の抽出物のうちの少なくとも1つと;
前記イソチオシアネートの供給源としてウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレスおよびガーデンクレス抽出物のうちの少なくとも1つと;合成イソチオシアネートと;
前記ミロシナーゼの供給源としてマスタードシード抽出物と、
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記摂取可能な製品がチモキノンをさらに含む、請求項23~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記摂取可能な製品がレスベラトロールをさらに含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記摂取可能な製品がビタミンCをさらに含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記摂取可能な製品を、無煙たばこ、噛みたばこ、スナッフ、スヌース、および溶解性たばこのうちの少なくとも1つとしてパッケージ化することをさらに含む、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記摂取可能な製品を、紙巻きたばこ、ツイスト、葉巻たばこおよびシガリロのうちの少なくとも1つとしてパッケージ化することをさらに含む、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、たばこ消費の悪影響を低減するためのたばこ製品である。
【背景技術】
【0002】
背景技術の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であるかまたは現在特許請求されている発明に関連していること、あるいは具体的または暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
2017年、18歳以上の米国成人の100人中14人(14.0%)が現在たばこを吸っている。つまり、米国では推定3,400万人の成人が現在たばこを吸っていることになる。1,600万人以上の米国人が、喫煙に関連する疾患と共存している。喫煙健康課(Office on Smoking and Health)によると、米国ではたばこの喫煙は毎年48万人以上を死に至らしめており、これは米国の死者のほぼ5人に1人にあたる。
【0004】
喫煙者は非喫煙者よりも肺がんを発症しやすい。例えば、喫煙者の男女は、非喫煙者の男女に比べて25倍も肺がんを発症する。米国がん協会によると、たばこの煙は何千もの化学物質で構成されており、その中には、アセトアルデヒド、アクリロニトリル、ホルムアルデヒド、鉛、N-ニトロソピペリジン、塩化ビニルなど、がんを引き起こすことが知られている少なくとも70種類の化学物質(発がん物質)が含まれている。喫煙は、膀胱、血液、子宮頸部、結腸、食道、腎臓、尿管、喉頭、肝臓、中咽頭、膵臓、胃、気管、気管支、肺など、身体のほとんどの場所でがんを引き起こすことがよく知られている。
【0005】
多くの喫煙者は禁煙を切望しているが、ニコチン中毒のためにそれは非常に困難である。ニコチンはたばこに自然に含まれる薬物で、ヘロインやコカインと同じくらいの中毒性があると考えられている。喫煙者は、禁煙すると身体的・精神的な禁断症状に悩まされる。ニコチン中毒を治療する一般的な方法の1つに、ニコチンパッチやニコチンガムなどのニコチン置換療法(NRS)の使用がある。NRSを使って禁煙しようとしていた人々に関する2015年の研究では、対照群の喫煙者の約20%が禁煙した。一方、NRSを少なくとも2カ月使用した人では、約52%が禁煙に成功した(非特許文献1)。この結果は、NRSが禁煙したい喫煙者に効果的に作用することを示している。一方で、同研究では、50%近くの喫煙者がNRSを使用したにもかかわらず、禁煙に失敗している。加えて、禁煙には多大な努力と時間が必要なため、禁煙しようともしない喫煙者も多くいる。
【0006】
本明細書に記載されているすべての出版物は、個々の出版物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に明示されている場合と同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた参照における用語の定義または使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と矛盾するかまたは反対である場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参照におけるその用語の定義は適用されない。
【0007】
喫煙者の中には、喫煙をやめるためにたばこ代替品を使用する人もいる。たばこ代替品がニコチンを含まないとしても、喫煙行動の単純な運動効果により、たばこへの渇望を軽減することができるかもしれない。特許文献1は、イソチオシアネートを含むたばこ代替品を教示している。イソチオシアネートは、肺がん、乳がん、口腔がんを含むがん細胞で抗がん剤として機能する。喫煙者が代替品を使い続けることで、がんの発症を予防または低減するのに役立つ。しかしながら、依然として多くの喫煙者は、ニコチンへの渇望のために本物のたばこ製品を吸うことに戻ってしまう。
【0008】
特許文献2は、喫煙者のがんの発症を予防および/または低減するための、イソチオシアネートを含む無煙たばこ製品を教示している。上述したように、イソチオシアネートは、抗がん剤として機能する。したがって、このたばこ製品を吸うことは、他の喫煙者と比較して、がんの発症に関しては害が少ないと思われるが、非喫煙者に対してはまだ害が大きいと思われる。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明および請求するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数値は、「約」という用語によっていくつかの例で修正されていると理解される。したがって、いくつかの実施形態において、記載された説明および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め手法を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な例に示された数値は、実行可能な限り正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態で示された数値は、それらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含んでいる可能性がある。
【0010】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲で使用されているように、「a、an」および「the」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の参照を含む。また、本明細書の記載において使用されるように、「in」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、「in」および「on」を含む。
【0011】
本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にある各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図しているに過ぎない。本明細書で別段の指示がない限り、各個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書において特定の実施形態に関して提供される任意のおよびすべての例、または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本出願をよりよく照らすことを意図しており、そうでなければ請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。明細書の如何なる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書に開示された本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、またはグループの他のメンバーもしくは本明細書に見られる他の要素との任意の組み合わせで参照し、特許請求することができる。グループの1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由から、グループに含んだり、グループから削除したりすることができる。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書において、同明細書は、修正されたグループを含むものとみなされ、それにより、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述が満たされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】カナダ国特許出願公開第2866912号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/05142号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ボ(Bo)他、American J Epi、2015、513-520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、たばこ消費の負の影響を低減するための、有効性が高められたたばこ製品が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の主題は、たばこ消費の負の影響を低減するための有効性を高めたたばこ製品のための装置、システムおよび方法を提供する。
摂取可能な製品、例えば、無煙たばこ、噛みたばこ、スナッフ(snuff)、スヌース(snus)、溶解性たばこ、紙巻きたばこ、ツイスト、葉巻たばこおよびシガリロは、ニコチン、イソチオシアネートまたはイソチオシアネート前駆体の少なくとも1つ、およびミロシナーゼを含む。
【0017】
ニコチン(nicotnine)は、粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物の少なくとも一方から得られる。イソチオシアネート前駆体は、ウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレス、ガーデンクレス抽出物の少なくとも1つに由来し得る。イソチオシアネートは、合成品(synthetic)であってもよい。ミロシナーゼは、マスタードシードおよびマスタードシード抽出物の少なくとも1つに由来に由来し得る。摂取可能な製品は、チモキノン、ブラック、クミンシード抽出物、レスベラトロールおよび合成ビタミンCの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、摂取可能な製品は、ニコチンの供給源として粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物の少なくとも1つと、イソチオシアネート前駆体の供給源としてウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレスおよびガーデンクレス抽出物の少なくとも1つと、ミロシナーゼの供給源としてマスタードシード抽出物と、を含む。摂取可能な製品は、合成イソチオシアネート、チモキノン、レスベラトロール、合成ビタミンC、チモキノンおよび合成ビタミンC、をさらに含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、ニコチンおよびイソチオシアネート前駆体の両方またはそれぞれをカプセル化して、摂取可能な製品に含めることができる。カプセル化は、ミセルおよびナノ粒子のうちの少なくとも1つを用いて形成することができる。いくつかの実施形態において、イソチオシアネート前駆体の少なくとも一部は、粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物の少なくとも一方と直接接触させてもよい。摂取可能な製品は、フィルタを含むことができる。
【0020】
集団におけるがんを予防または治療するが、ニコチン、イソチオシアネートおよびイソチオシアネート前駆体の少なくとも1つ、およびミロシナーゼを含む摂取可能な製品を、同集団の少なくとも一部のメンバーに利用可能にする方法。
【0021】
本発明の主題はさらに、集団におけるがんを予防または治療する方法であって、ニコチン、イソチオシアネートおよびイソチオシアネート前駆体のうちの少なくとも1つ、およびミロシナーゼを含む摂取可能な製品を、集団の少なくとも一部のメンバーに利用可能にする方法を含む。
【0022】
本明細書において使用される場合、文脈がそうでないことを示していない限り、「結合される(coupled to)」という用語は、直接結合(互いに結合された2つの要素が互いに接触する)と間接結合(少なくとも1つの追加要素が2つの要素の間に配置される)の両方を含むことを意図している。したがって、「coupled to」および「coupled with」という用語は同義的に使用される。
【0023】
本明細書の記載において、およびそれに続く特許請求の範囲で使用されているように、「a、an」および「the」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の参照を含む。また、本明細書の記載において使用されるように、「in」の意味は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、「in」および「on」を含む。
【0024】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書においてそうでないことを示していない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書において特定の実施形態に関して提供される任意のおよびすべての例、または例示的な文言(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本出願をよりよく照らすことを意図しており、そうでなければ請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。明細書の如何なる文言も、本発明の実施に不可欠な特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0025】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様、および利点は、同様の符号が同様の構成要素を表す添付した図面とともに、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】DMSOの非存在下/存在下におけるA549の明視野画像(左)および蛍光画像(右)を示す。
【
図2】AITCで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図3】PEITCで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図4】チモキノンで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図5】レスベラトロールで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図6】AITCおよびPEITCで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図7】AITC、PEITC、およびチモキノンで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図8】チモキノンおよびレスベラトロールで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【
図9】AITC、PEITC、チモキノン、およびレスベラトロールで処理したA549の明視野画像および蛍光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の議論は、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素のすべての可能な組み合わせを含むと見なされる。したがって、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題はまた、明示的に記載されていなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせを含むと見なされる。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明および請求するために使用される、成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数値は、「約」という用語によっていくつかの例で修正されていると理解される。したがって、いくつかの実施形態において、記載された説明および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮し、通常の丸め手法を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な例に示された数値は、実行可能な限り正確に報告されている。本発明のいくつかの実施形態で示された数値は、それらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含んでいる可能性がある。
【0029】
本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内にある各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図しているに過ぎない。本明細書で別段の指示がない限り、各個別の値は、あたかも本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0030】
文脈から反対の指示がない限り、本明細書に記載されているすべての範囲は、その終点を含むものと解釈されるべきであり、オープンエンドの範囲は、商業的に実用的な値のみを含むものと解釈されるべきである。同様に、すべての値のリストは、文脈から反対の指示がない限り、中間値を含むものと考えるべきである。
【0031】
本明細書で企図されているたばこ製品は、(a)製品から放出されるジュースが飲み込まれるように口内に保持されるか、または(b)吸い込まれた成分が唾液と混合された後に飲み込まれるように、吸われるかまたはベイプされるかのいずれかであるため、「摂取可能(ingestible)」であると称される。そのような摂取可能な製品には、無煙たばこ、たばこ葉抽出物、噛みたばこ、スナッフ、スヌース、溶解性たばこ、紙巻きたばこ、ツイスト、葉巻たばこおよびシガリロのうちの少なくとも1つが含まれる。
【0032】
好ましい実施形態は、(a)ニコチン、(b)イソチオシアネートまたはイソチオシアネート前駆体のうちの少なくとも1つ、および(b)ミロシナーゼを含む。ニコチンは、任意の適切なニコチン源、例えば、粉末状のたばこ葉および/またはたばこ葉抽出物に由来する。
【0033】
イソチオシアネート(ITC)、R-N=C=Sはよく知られた抗がん分子であり、p53の発現を増加させ、変異型p53の発現を枯渇させ、乳房、肺、およびがん細胞株を含むがん細胞において有糸分裂細胞周期停止およびアポトーシスを誘導する。本明細書で使用される場合、ITCという用語には、イソチオシアネート類似体およびITCの前駆体が含まれ、そのような分子がp53発現を増加させ、変異型p53発現を枯渇させ、がん細胞において有糸分裂細胞周期停止およびアポトーシスを誘導するものであればよい。ITC類似体には、アブラナ科の野菜に由来するアリルITC(AITC)、フェネチルITC(PEITC)、およびベンジルITC(BITC)が含まれる(37)。いくつかの実施形態において、野菜および/または野菜抽出物は、摂取可能な製品に添加することができる。
【0034】
ITCの前駆体であるウォータークレスおよび/またはウォータークレス抽出物に由来するエチルグルコシノレート(PEGLS)は、酵素的に加水分解してPEITCとなり得る(4)。内因性または外因的に得られた酵素であるミロシナーゼは、グルコシノレートを加水分解するために使用することができる。ITCの他の前駆体としては、BITCの場合はグルコトロペオリン、PEITCの場合はグルコナスツルチイン、AITCの場合はアリルグルコシノレート(シニグリン)が含まれ、いずれもITCに酵素的に変換することができる。前駆体ITCの他の供給源としては、グルコトロペオリンを豊富に含むガーデンクレスやガーデンクレス抽出物がある。
【0035】
いくつかの実施形態において、ITC前駆体を提供するためにウォータークレス、その抽出物、ガーデンクレスおよび/またはその抽出物を添加することができ、ITCへの加水分解を促進するために内因性および/または外因性のミロシナーゼを添加することができる。付随的にまたは代替的に、摂取可能な製品は、精製されたITCを含むことができる。
【0036】
ミロシナーゼは、マスタードシードおよびマスタードシード抽出物の少なくとも1つに由来し得る。いくつかの実施形態において、ウォータークレス抽出物(PEGLCの供給源)およびマスタードシード抽出物(ミロシナーゼの供給源)の混合物を、PEITCを生成する可能性のある摂取可能な製品に添加することができる。別の実施形態において、反応物(例:PEITC)を摂取可能な製品に直接加えることができる。いくつかの実施形態において、ITCを合成して、摂取可能な製品に直接加えることもできる。
【0037】
いくつかの実施形態において、製品は、チモキノンおよびビタミンCのうちの少なくとも1つをさらに含む。チモキノンは、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa)(ブラッククミンシード)または他の植物から抽出することができる。チモキノンは抗がん作用を示し、転移能の抑制(25)、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどの抗酸化酵素能の維持(7,26)を含む抗酸化作用の維持、肺がんや乳がんを含むがん細胞におけるp53発現のアップレギュレーション(28)を示す。抽出または精製されたチモキノンおよび/または植物の抽出物を摂取可能な製品に加えることができる。
【0038】
天然のスチルベンであり、非フラボノイド系ポリフェノールであるレスベラトロールは、抗酸化作用、抗炎症作用、心筋保護作用、抗がん作用を有する植物性エストロゲンである(コ(Ko)ら、「the role of Resveratrol in cancer therapy」、Int J.Mo.Sci.,2017)。レスベラトロールは、がん細胞の多剤耐性を逆転させることができ、臨床的に使用されている薬剤と組み合わせて使用すると、標準的な化学療法剤に対して、がん細胞を感作することができると報告されている。レスベラトロールのいくつかの新規な類似体は、抗がん活性、バイオアベイラビリティ、および薬物動態プロファイルを改善して開発されている。
【0039】
ビタミンCも抗がん作用を示し、P53発現のアップレギュレーションを示す(35)。ビタミンCは、柑橘系の果実から抽出することができ、摂取可能な製品に添加することができる。
【0040】
摂取可能な製品に存在するITC、チモキノン、レスベラトロールおよびビタミンCの任意の組み合わせによって、相乗的な抗がん活性が期待され、相乗効果の結果は以下の図に示されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、喫煙可能な製品は、ニコチン、たばこ葉またはたばこ葉抽出物を含まないが、ITC、チモキノン、レスベラトロールおよびビタミンCのうちの少なくとも1つを含む。そして、たばこ葉またはたばこ葉抽出物の代わりに、喫煙可能な製品は、1つまたは複数のニコチンを含まないハーブなどのニコチンを含まない植物の葉、または抽出物を含む。そのような製品は、ニコチンを含まず、抗がん活性を有し、そのようなものとして、現在の喫煙者だけでなく、潜在的な喫煙者もその製品の喫煙を楽しむことができることが企図されている。
【0042】
いくつかの実施形態において、ニコチン、ITC、ミロシナーゼ、チモキノン、レスベラトロールおよびビタミンCのうちの少なくとも1つがカプセル化されており、そのようなカプセル化は、摂取可能な製品において物理的または化学的に分離された、捕捉された、または懸濁された成分を提供する。カプセル化することで、少なくとも2つの利点が得られる。第一に、たばこの葉や抽出物から生成される酸による分子の劣化や変形を防ぐことができる。第二に、ユーザは、摂取可能な製品がたばこの葉または抽出物に加えて他の材料を含んでいても、同摂取可能な製品の味を十分に楽しむことができる。
【0043】
カプセル化物は、結合剤および/または界面活性剤を含んでいてもよい。結合剤の例としては、リン酸ジカリシウム(dicalicium)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム、二酸化チタン、シリカ、パラベン、ラクトース、マルドデキストリン、グルタミン酸モノドシウム、タルク、微結晶セルロース、ゼラチン、ジェランガム、タートラジン、アルラレッド、インジゴチン、インジゴチン、ポリビニルピロリドン、およびフマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸などが挙げられる。
【0044】
界面活性剤は、アニオン性または非イオン性として分類される。本明細書の主題について企図される界面活性剤は無毒であり、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸(Cl6-C24)脂肪酸、脂肪酸の長鎖(C16-C24)エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコールのモノまたはジ脂肪酸エステル、脂肪酸モノ、ポリオキシエチレンモノおよびジステアレート、およびポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、モノパルミテート、モノステアレートまたはモノエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールおよびアルキルフェニルエーテル、ポリソルベート、ステアリルアミン、オレイン酸トリエタノールアミン、植物油、ポリオキシエチレンベリーカイロ(polyoxyethylene very caillou)、ソルビタン脂肪酸エステル、コレステロールが含まれる。
【0045】
カプセル化には、ミセル、マイクロ粒子、およびナノ粒子がある。ミセルは、例えば、リン脂質、糖脂質、イオン化脂肪酸などを用いて形成される。
マイクロ粒子およびナノ粒子に適した材料の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、カルシウムアルミノケイ酸ナトリウム含有(sodium calcium aluminosilicate containing)、ケイ酸三カルシウム、シリカエアゲル(silica airgel)、タルク、酸化鉄、その他の金属酸化物の組み合わせである。
【0046】
喫煙者のような集団におけるがんを予防または治療する方法は、ニコチン、ITCおよびITC前駆体の少なくとも1つ、およびミロシナーゼを含む摂取可能な製品を提供する。ニコチンは、粉末状のたばこ葉およびたばこ葉抽出物の少なくとも1つに由来し得る。ITCは、ウォータークレス、ウォータークレス抽出物、ガーデンクレス、ガーデンクレス抽出物の少なくとも1つに由来し得る。ミロシナーゼは、マスタードシード抽出物に由来し得る。いくつかの実施形態において、摂取可能な製品は、チモキノン、レスベラトロール、およびビタミンCを含む分子の少なくとも1つをさらに含む。製品は、無煙たばこ、噛みたばこ、スナッフ、スヌース、および溶解性たばこ、紙巻きたばこ、ツイスト、葉巻たばこおよびシガリロの少なくとも1つを含む、任意の適切な形態でパッケージ化することができる。
【0047】
企図された実験において、摂取可能な製品の効果は、乳がん細胞(MCF7)、Hela細胞、口腔がん細胞、A549(ヒト肺がん細胞)において調べることができる。同数の細胞をプレーティングし、ITC、チモキノン、ビタミンCの単独およびそれらの組み合わせとともにインキュベートした。アポトーシスの進行は、フローサイトメトリー、およびTUNELやカスパーゼ-3などのアポトーシスを担うタンパク質に対する免疫染色を用いて測定することができる。野生型および変異型p53の発現レベルは、qRT-PCRならびに野生型および変異型p53に対する免疫染色を用いて決定することができる。G2/Mでの細胞周期停止は、サイクリンB1およびcdc2などのG2-Mチェックポイント制御因子に対する免疫染色を適用して観察することができる。
【0048】
細胞は、1.処理なし、2.ITCのみ、3.チモキノンのみ、4.ビタミンCのみ、5.レスベラトロールのみ、6.ITC+チモキノン、7.チモキノン+ビタミンC、8.ITC+レスベラトロール、9.ビタミンC+ITC、10.ITC+チモキノン+ビタミンC+レスベラトロール、11.チモキノン+レスベラトロール、12.ビタミンC+レスベラトロ-ルを含む、いくつかのグループに分けられる。ITC、チモキノン、ビタミンC、レスベラトロール、およびそれらの組み合わせの効果を観察するために、いくつかの異なるインキュベーション時間と異なる濃度の分子が調べられる。
【実施例】
【0049】
アリルイソチオシアネート(AITC)、フェニルイソチオシアネート(PEITC)、チモキノンまたはレスベラトロールの各々は、インビトロで細胞死を効果的に誘導する。
【0050】
実験は、以下の手順で実施した。
A549細胞を48ウェル培養プレートに3.0×104細胞/cm2の密度でプレーティングした。37℃での5分間のインキュベーションの後、0.05%トリプシンEDTAで細胞を解離させ、1:1の比率の標準培地で中和し、プレーティングの前に血球計を用いてカウントした。AITC、PETIC、チモキノン、またはレスベラトロールのいずれかの処理化合物を添加する前に、すべてのウェルを一晩静置した。すべての処理は、最初のプレーティングから24時間以内に行った。
【0051】
A549細胞の処理は、以下の時点および濃度で行った:AITC-25μM、50μMおよび100μMで24時間、48時間および96時間。PEITC-25μM、50μM、100μM、および200μMで24、48、および96時間。TQ-25μM、50μM、100μM、および200μMで、24時間、48時間、および96時間。レスベラトロール-25μM、50μM、および100μMで48時間および96時間。各化合物の溶解にはDMSOを使用し、試験化合物のいずれも含まないDMSOで処理した細胞を対照とした。処理された細胞は、実験の最後の時点まで、同じ濃度で毎日処理された。
【0052】
アポトーシスは、Thermofisher Scientific社のCellEvent(登録商標)Caspase 3/7 green detection kit/assayを用いて検出した。細胞は、分析の前に希釈したアッセイ試薬とともに37℃で30分間インキュベートし、明視野および蛍光顕微鏡で画像化した。
【0053】
CellEvent(登録商標)Caspase-3/7 Green Detection試薬は、4個のアミノ酸ペプチド(DEVDペプチド)がDNAに結合する色素の能力を阻害するので、本質的に非蛍光性である。しかしながら、アポトーシス細胞でカスパーゼ-3/7が活性化されると、DEVDペプチドが切断され、色素がDNAに結合して明るく蛍光を発するようになる。色素-530の蛍光発光は、蛍光顕微鏡で観察することができる。
【0054】
図1は、DMSOで処理された同じA549肺がん細胞に対応する、左側の明視野画像(brightfield image)および右側の蛍光画像を示す。
図2~5は、さまざまな処理化合物、AITC、PEITC、チモキノン、およびレスベラトロールのさまざまな濃度に対するさまざまな時点での明視野画像と蛍光画像を示す。
【0055】
図2は、AITCががん細胞の細胞死を誘導することを示している。50μM以上の濃度では、48時間にて、低濃度に比べてより多くの細胞が指数関数的にアポトーシスを起こしている。低濃度では、より緩やかな速度で細胞死が起こることが観察された。
【0056】
図3は、PEITCが細胞死を誘導することを示している。100μM以上の濃度では、低濃度に比べてより多くの細胞がより早期に指数関数的にアポトーシスを受けている。低濃度では、より緩やかな速度で細胞死が起こることが観察された。
【0057】
図4は、チモキノンが細胞死を誘導することを示している。100μM以上の濃度では、低濃度に比べてより多くの細胞がより早期に指数関数的にアポトーシスを受けている。低濃度では、より緩やかな速度で細胞死が起こることが観察された。
【0058】
図5は、レスベラトロールが細胞死を誘導することを示している。50μM以上の濃度では、低濃度に比べてより多くの細胞がより早期に指数関数的にアポトーシスを受けている。一方、25μMでは高濃度のレスベラトロールに比べてアポトーシス効果が低下していた。レスベラトロールのアポトーシス効果は48時間と96時間にしか認められず、実際には他の化合物に比べて効果が遅れていることは注目に値する。処理の4日後、アリルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、チモキノン、またはレスベラトロールのいずれかを投与された各A549非小細胞肺がん細胞培養物は、最大95%のアポトーシス率に達したことが観察された。
【0059】
図6は、アリルイソチオシアネートとフェニルイソチオシアネートの組み合わせが、がん細胞死を誘導することを示している。25μMのフェニルイソチオシアネートよりも高い濃度では、低濃度の場合よりも多くの細胞が48時間にて指数関数的にアポトーシスを受けている。低濃度のフェニルイソチオシアネートでは、より緩やかな速度で細胞死が起こっている。
【0060】
図7は、先のアリルイソチオシアネートとフェニルイソチオシアネートとの組み合わせにチモキノンを加えると、がん細胞死が誘導されることを示している。すべての化合物について25μMの濃度で、48時間にて、多くの細胞がチモキノンを含まない培養物に比べて指数関数的にアポトーシスを受けている。
【0061】
図8は、チモキノンとレスベラトロールの組み合わせが、がん細胞死を誘導することを示している。この組み合わせで観察された細胞死の割合は、チモキノンも含む
図7で観察された化合物の組み合わせと同様である。どちらも、48時間経過すると、指数関数的にアポトーシスを誘導するようである。
【0062】
図9は、フェニルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、チモキノン、およびレスベラトロールの組み合わせが、がん細胞死を誘導することを示している。各化合物が10μM以上の濃度では、低濃度の場合よりも48時間にて、多くの細胞が指数関数的にアポトーシスを受けている。低濃度(<10μM)では、アポトーシスの速度はそれほど顕著ではないようである。
【0063】
化合物の組み合わせ(
図6~9)は、アポトーシスが、4つの化合物すべてを含む組み合わせにおいて10μMの最低濃度で観察されることを示している。10μMよりも高い濃度の化学物質の組み合わせでは、24時間から72時間の期間に、より高い程度のアポトーシスが観察された(最大80%のアポトーシス)。化合物の組み合わせで処理された細胞のアポトーシスは、
図1~5に見られるように、時間の短さのため、72時間まで観察されるが、96時間までは観察されない。その理由の一つは、
図1~5と同様に90%以上のアポトーシス率が96時間以内に達成された可能性があることである。
【0064】
本明細書の本発明の概念から逸脱することなく、すでに記載されたもの以外のさらに多くの修正が可能であることは、当業者には明らかであるはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の精神を除いて制限されるべきではない。さらに、明細書と特許請求の範囲の両方を解釈する際には、すべての用語は、文脈と一致する可能な限り広い方法で解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という用語は、非排他的な方法で要素、構成要素、またはステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照されている要素、構成要素、またはステップが、明示的に参照されていない他の要素、構成要素、またはステップと存在したり、利用されたり、組み合わされたりする可能性があることを示している。本明細書の請求項において、A、B、C...およびNからなる群から選択されたものの少なくとも1つに言及している場合、本文はその群から1つの要素のみを必要とすると解釈されるべきであり、A+NやB+Nなどではない。
【国際調査報告】