(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】マイクロ流体検出ユニット及び流体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20220906BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220906BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B01J19/00 321
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568326
(86)(22)【出願日】2019-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2019036288
(87)【国際公開番号】W WO2020251526
(87)【国際公開日】2020-12-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521496940
【氏名又は名称】インスタント ナノバイオセンサーズ インク
【氏名又は名称原語表記】INSTANT NANOBIOSENSORS, INC.
【住所又は居所原語表記】2F., No. 459, Chongyang Rd., Nangang Dist., Taipei City, 11560 (TW)
(71)【出願人】
【識別番号】521496951
【氏名又は名称】インスタント ナノバイオセンサーズ カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSTANT NANOBIOSENSORS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2F., No. 459, Chongyang Rd., Nangang Dist., Taipei City, 11560 (TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ユィチョン
(72)【発明者】
【氏名】スゥン、イリ
(72)【発明者】
【氏名】チァン、ティンチォウ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ジェイウェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ、ナンクアン
(72)【発明者】
【氏名】チャウ、ライクワン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャウチュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、インティン
【テーマコード(参考)】
2G058
4G075
【Fターム(参考)】
2G058CC05
2G058CC08
2G058CC14
2G058GA06
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA65
4G075AA70
4G075EB50
4G075EC06
4G075FA01
4G075FA14
4G075FB12
4G075FC04
(57)【要約】
少なくとも1つの流体注入領域、流体貯蔵領域及び検出領域を含むマイクロ流体検出ユニットが提供される。各流体注入領域は流体出口を有し、流体貯蔵領域は大気環境に気体連通するとともに、流体入口を有する。検出領域は、流体出口に連通する第1端及び流体入口に連通する第2端を有する。流体出口と流体入口との間に重力方向に沿って高低差が形成されることで、流体出口での重力ポテンシャルエネルギが流体入口での重力ポテンシャルエネルギよりも大きい。少なくとも1つの流体注入領域から第1流体を注入し、第1流体は、重力作用によって検出領域を通過して流体入口で集まって液滴を形成し、このときに、流体出口から液滴の液面相と同じ高さの位置までの第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を検出し、及びユニット内で生化学又は化学反応が発生するためのマイクロ流体検出ユニットであって、
前記マイクロ流体検出ユニットは、基材を含み、
前記基材は、
それぞれ流体出口を有する少なくとも1つの流体注入領域と、
大気環境に気体連通するとともに、流体入口を有する流体貯蔵領域と、
前記第1端連通至前記流体注入領域の前記流体出口に連通する第1端、及び前記流体貯蔵領域の前記流体入口に連通する第2端を有する検出領域と、
を含み、
前記流体注入領域の前記流体出口での重力ポテンシャルエネルギが前記流体貯蔵領域の前記流体入口での重力ポテンシャルエネルギよりも大きいように、前記流体注入領域の前記流体出口と前記流体貯蔵領域の前記流体入口との間には、重力方向に沿って高低差が形成され、
少なくとも1つの前記流体注入領域から第1流体が注入され、前記第1流体が重力作用によって前記検出領域を通過して前記流体貯蔵領域の前記流体入口で集まって液滴を形成したときに、前記流体出口から前記液滴の液面と同じ高さの位置までの前記第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となる、マイクロ流体検出ユニット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの流体注入領域は、第1流体注入領域及び第2流体注入領域を含み、
前記第1流体注入領域は、第1管路を介して前記検出領域の前記第1端に連通し、
前記第2流体注入領域は、第2管路を介して前記検出領域の前記第1端に連通する、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項3】
前記第2流体注入領域の前記流体出口は、重力方向において前記第1流体注入領域の前記流体出口よりも高い、請求項2に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項4】
前記第2管路の断面直径は、前記第1管路の断面直径よりも大きい、請求項3に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項5】
前記第2管路は、前記第1管路に連通し、前記第2流体注入領域は、前記第2管路及び前記第1管路を介して前記検出領域の前記第1端に連通する、請求項4に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項6】
前記流体出口には、流体緩衝領域が設けられ、
前記流体緩衝領域は、前記流体注入領域と前記流体出口との境界に位置する、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項7】
前記流体緩衝領域は、柱状空間若しくは球状空間の少なくとも一部又は曲面構造である、請求項6に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項8】
前記流体緩衝領域内には、多孔質材料が設けられる、請求項6に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項9】
前記多孔質材料は、ポリスルホン(polysulfone)、セルロースエステル(cellulose ester)、再生セルロース(regenerated cellulose)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)及びポリアクリル酸ナトリウム塩(polyacrylic acid sodium salt)から選択される1種又は複数種の組み合わせである、請求項8に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項10】
前記流体貯蔵領域内には、多孔質材料が設けられ、
前記多孔質材料と、前記流体貯蔵領域の前記流体入口との間には、互いに接触しないように隔離領域が形成される、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項11】
前記多孔質材料は、ポリスルホン、セルロースエステル、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸ナトリウム塩から選択される1種又は複数種の組み合わせである、請求項10に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項12】
前記流体貯蔵領域には、流体収集領域がさらに設けられ、
前記流体収集領域は、前記隔離領域と前記流体入口との間に位置し、前記流体貯蔵領域に流入する流体量を制御するためのものである、請求項10に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項13】
前記流体貯蔵領域には、前記流体収集領域と前記隔離領域とを分離するバリア構造がさらに設けられる、請求項12に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項14】
前記検出領域には、検出素子が設けられる、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項15】
前記検出素子は、光導波路素子である、請求項14に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項16】
前記光導波路素子は、光ファイバである、請求項15に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項17】
前記光ファイバの露出するファイバ芯線の表面にはナノ粒子層が塗布される、請求項16に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項18】
前記検出領域には、反応材料が設けられる、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項19】
少なくとも1つの通気管路をさらに含み、
前記流体貯蔵領域は、少なくとも1つの前記通気管路を介して大気環境に気体連通する、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項20】
前記基材の少なくとも一側を覆う少なくとも1つの蓋体をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項21】
前記検出領域の前記第1端及び前記第2端は、重力方向において前記流体注入領域の前記流体出口よりも低い、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項22】
前記流体出口と前記流体入口との間に重力方向に沿って形成される高低差は0.5~10cmである、請求項1に記載のマイクロ流体検出ユニット。
【請求項23】
検出領域、少なくとも1つの流体注入領域、及び流体貯蔵領域を含むマイクロ流体検出ユニットを提供するステップと、
少なくとも1つの前記流体注入領域から第1流体を注入し、前記第1流体は重力作用によって前記検出領を通過し、前記流体貯蔵領域の流体入口で集まって液滴となったときに、少なくとも1つの前記流体注入領域の流体出口から前記液滴の液面と同じ高さの位置までの第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となるステップと、
前記検出領域内の前記第1流体を検出するステップと、
を含む、流体検出方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの流体注入領域から第2流体を注入することにより、前記液滴の蓄積量が減少し、前記第1流体が前記検出領域から離れるように駆動され、前記流体出口から前記液滴の液面と同じ高さの位置までの前記第2流体が反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより前記流体圧力平衡状態となるまで、前記第2流体が前記検出領域を通過するステップをさらに含む、請求項23に記載の流体検出方法。
【請求項25】
前記流体入口に近い位置に多孔質材料が設けられ、前記多孔質材料が前記流体入口に接触せず、前記多孔質材料により前記液滴の過剰の蓄積量を吸収する、請求項24に記載の流体検出方法。
【請求項26】
前記流体入口に近い位置に流体収集領域が設けられ、前記液滴の蓄積量が前記流体収集領域の容積を超えたときに、前記液滴が前記流体収集領域から溢れ出ることで前記液滴の蓄積量を減少させる、請求項24に記載の流体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体検出ユニットに関し、特に流体を駆動して検出するために駆動装置を別途に設ける必要がないマイクロ流体検出ユニットに関する。本発明は、流体検出方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー又は医学の分野では、特定の成分、分子又は目標分析物を含む流体サンプルを検出する必要がある場合が多い。上記液体サンプルの検出は、ほとんど液体の特性及び発生する生化学又は化学反応によって判断される。科学技術の進歩に伴い、マイクロ流体技術は徐々に活発に発展し、流体サンプルの検出に広く使用されてきた。マイクロ流体技術を利用して流体サンプルを検出することにより、必要な流体サンプル及び測定設備の体積を大幅に減少できる。しかし、素子内のマイクロ流路に流体サンプルを流すために、一般的なマイクロ流体検出素子には、真空ポンプ、電源、その他の空気圧装置などの流体駆動源として外部駆動装置を増設する必要がある。外部駆動装置が作動できなくなると、マイクロ流体検出素子の機能を喪失し、使用に不便である。
【0003】
また、現在、ほとんどのマイクロ流体検出素子は使い捨ての設計を採用している。このようなマイクロ流体検出素子は一度の検出が終われば、これ以上使用できなくなり、新しいマイクロ流体検出素子を頻繁に交換する必要があるため、流体検出コストと検出時間が大幅に増加する。
【0004】
そこで、上記問題を改善できるマイクロ流体検出素子の開発は、課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、駆動装置がない状態で重力作用により流体を駆動して検出できるとともに、複数回の流体注入検出を行うことができるマイクロ流体検出ユニットを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のマイクロ流体検出ユニットは、基材を含み、基材は、それぞれ流体出口を有する少なくとも1つの流体注入領域と、大気環境に気体連通するとともに、流体入口を有する流体貯蔵領域と、第1端連通至流体注入領域の流体出口に連通する第1端、及び流体貯蔵領域の流体入口に連通する第2端を有する検出領域と、を含み、流体注入領域の流体出口での重力ポテンシャルエネルギが流体貯蔵領域の流体入口での重力ポテンシャルエネルギよりも大きいように、流体注入領域の流体出口と流体貯蔵領域の流体入口との間には、重力方向に沿って高低差が形成され、少なくとも1つの流体注入領域から第1流体が注入され、第1流体が重力作用によって検出領域を通過して流体貯蔵領域の流体入口で集まって液滴を形成したときに、流体出口から液滴の液面と同じ高さの位置までの第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となる。
【0007】
本発明の一実施例において、少なくとも1つの流体注入領域は、第1流体注入領域及び第2流体注入領域を含み、第1流体注入領域は、第1管路を介して検出領域の第1端に連通し、第2流体注入領域は、第2管路を介して検出領域の第1端に連通する。
【0008】
本発明の一実施例において、第2流体注入領域の流体出口は、重力方向において第1流体注入領域の流体出口よりも高い。
【0009】
本発明の一実施例において、第2管路の断面直径は、第1管路の断面直径よりも高い。
【0010】
本発明の一実施例において、第2管路は、第1管路に連通し、第2流体注入領域は、第2管路及び第1管路を介して検出領域の第1端に連通する。
【0011】
本発明の一実施例において、流体出口定義流体緩衝領域,流体緩衝領域位於流体注入領域與流体出口之境界。
【0012】
本発明の一実施例において、流体緩衝領域は、柱状空間若しくは球状空間の少なくとも一部又は曲面構造である。
【0013】
本発明の一実施例において、流体緩衝領域内に多孔質材料が設けられる。
【0014】
本発明の一実施例において、多孔質材料は、ポリスルホン、セルロースエステル、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸ナトリウム塩から選択される1種又は複数種の組み合わせである。
【0015】
本発明の一実施例において、流体貯蔵領域内には、多孔質材料が設けられ、多孔質材料と、流体貯蔵領域の流体入口との間には、互いに接触しないように隔離領域が形成される。
【0016】
本発明の一実施例において、多孔質材料は、ポリスルホン、セルロースエステル、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸ナトリウム塩から選択される1種又は複数種の組み合わせである。
【0017】
本発明の一実施例において、流体貯蔵領域には、流体収集領域がさらに設けられ、流体収集領域は、隔離領域と流体入口との間に位置し、流体貯蔵領域に流入する流体量を制御するためのものである。
【0018】
本発明の一実施例において、流体貯蔵領域には、流体収集領域と隔離領域とを分離するバリア構造がさらに設けられる。
【0019】
本発明の一実施例において、検出領域には、検出素子が設けられる。
【0020】
本発明の一実施例において、検出素子は、光導波路素子である。
【0021】
本発明の一実施例において、光導波路素子は、光ファイバである。
【0022】
本発明の一実施例において、光ファイバの露出するファイバ芯線の表面にはナノ粒子層が塗布される。
【0023】
本発明の一実施例において、検出領域には、反応材料が設けられる。
【0024】
本発明の一実施例において、マイクロ流体検出ユニットは、少なくとも1つの通気管路をさらに含み、
流体貯蔵領域は、少なくとも1つの通気管路を介して大気環境に気体連通する。
【0025】
本発明の一実施例において、マイクロ流体検出ユニットは、基材の少なくとも一側を覆う少なくとも1つの蓋体をさらに含む。
【0026】
本発明の一実施例において、検出領域の第1端及び第2端は、重力方向において流体注入領域の流体出口よりも低い。
【0027】
本発明の一実施例において、流体出口と流体入口との間に重力方向に沿って形成される高低差は0.5~10cmである。
【0028】
本発明の流体検出方法は、検出領域、少なくとも1つの流体注入領域、及び流体貯蔵領域を含むマイクロ流体検出ユニットを提供するステップと、少なくとも1つの流体注入領域から第1流体を注入し、第1流体は重力作用によって検出領を通過し、流体貯蔵領域の流体入口で集まって液滴となったときに、少なくとも1つの流体注入領域の流体出口から液滴の液面と同じ高さの位置までの第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となるステップと、検出領域内の第1流体を検出するステップと、を含む。
【0029】
本発明の一実施例において、流体検出方法は、少なくとも1つの流体注入領域から第2流体を注入することにより、液滴の蓄積量が減少し、第1流体が検出領域から離れるように駆動され、流体出口から液滴の液面と同じ高さの位置までの第2流体が反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となるまで、第2流体が検出領域を通過するステップをさらに含む。
【0030】
本発明の一実施例において、流体入口に近い位置に多孔質材料が設けられ、多孔質材料が流体入口に接触せず、多孔質材料により液滴の過剰の蓄積量を吸収する。
【0031】
本発明の一実施例において、流体入口に近い位置に流体収集領域が設けられ、液滴の蓄積量が流体収集領域の容積を超えたときに、液滴が流体収集領域から溢れ出ることで液滴の蓄積量を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。
【
図3】本発明のマイクロ流体検出ユニット用いて流体検出を実行するビーム強度変化の模式図である。
【
図4】本発明の流体検出方法のフローチャートである。
【
図5A】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の一である。
【
図5B】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の二である。
【
図5C】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の三である。
【
図5D】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の四である。
【
図5E】本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の後である。
【
図6】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
【
図7】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。
【
図8A】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の一である。
【
図8B】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の二である。
【
図8C】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の三である。
【
図8D】本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の四である。
【
図9】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
【
図10】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。
【
図11A】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の一である。
【
図11B】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の二である。
【
図11C】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の三である。
【
図11D】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の四である。
【
図11E】本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図の五である。
【
図12】本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
【
図13】本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
様々な態様と実施例は例示的であり、限定的ではないので、本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、他の態様と実施例を想到することができる。以下の詳細な説明及び特許請求の範囲により、これらの実施形態の特徴及び利点はより明確になる。
【0034】
本明細書において、「一」又は「1つ」を用いて本明細書に記載の素子及び部品を説明する。これは説明の便宜上、本発明の範囲に一般的な意味を付与するためのものである。したがって、明らかに別の意図がない限り、このような記述は、1つ又は少なくとも1つを含み、単数も複数を含むものとして理解されるべきである。
【0035】
本明細書において、用語「第1」又は「第2」といった類似の序数語は、主に同一又は類似の素子又は構造を区別し又は指し示すために使用され、空間的又は時間的にこのような素子又は構造の順序を明示するものではない。場合によって、序数語は本発明の実施に影響を与えることなく交換して使用され得る。
【0036】
本明細書において、「含む」、「有する」、その他これらに類する用語は、排他的でないものを含むことを意図している。例えば、複数の要素を含む素子又は構造は、本明細書に記載されている要素に限定されるものではなく、明示的に記載されていないが、この素子又は構造に一般的に固有の要素を含むことができる。
【0037】
本明細書において、用語「流体」は、主に特定の成分、分子又は目的分析物を含む流体サンプル、例えば、水サンプル、飲料、乳サンプル、血液、生体液、その他流体状の被検体を指すが、本発明はこれに限定されるものではない。「流体検出」とは、上記流体サンプル中の分析物を検出することを意味する。
【0038】
図1は、本発明に係るマイクロ流体検出ユニットの実施例1の構造分解図である。
図1に示すように、本発明のマイクロ流体検出ユニット1の実施例1において、マイクロ流体検出ユニット1は、基材100を含む。基材100は、変形しにくいとともに、製造されやすい硬質材料で作製される。例えば、ポリメチルメタクリレート(Poly(methyl methacrylate),PMMA)などの塑性材料を使用してもよいが、他の硬質材料を使用してもよい。基材100は、底面101を有する。本実施例において、底面101は、実質的に重力方向に垂直な平面、即ち、水平面である。これによって、本発明のマイクロ流体検出ユニット1が流体を検出する過程において、基材100の底面101を別の水平面に置くことにより、本発明のマイクロ流体検出ユニット1の構造及び操作の安定性を保持することができる。底面101は、重力方向に非垂直な平面、曲面又は不規則な表面などの設計を採用してもよく、本実施例に限定されない。本実施例において、基材100は立体的なブロック状基材、例えば、矩形ブロックであってもよく、その寸法が50*50*10mm
2であってもよいが、本発明の基材100の形状及び寸法は上記実施例に制限されない。
【0039】
本発明のマイクロ流体検出ユニット1は、基材100の少なくとも片側に覆われる少なくとも1つの蓋体190をさらに含んでもよい。蓋体190は、基材100と同じ材質で作製されてもよいが、他の硬質材料又は軟質フィルム材料(例えば、ポリスチレン(polystyrene,PS)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,PVC)又は類似の材料など)で作製されてもよい。本実施例において、基材100における流体の流れ及び検出のための流体経路がほとんど基材100の同一側に設けられ、対向側まで貫通しないため、蓋体190を覆蓋於基材100における流体経路が設けられる側に覆うことができる。これによって、本発明のマイクロ流体検出ユニット1では、元々外部の大気環境に連通する流体注入構造及び通気構造以外、基材100の流体経路は、ほぼ密閉経路を形成することができるため、流体の駆動及び検出に有利である。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の別の実施例において、設置の需要に応じて、基材100の流体経路を基材100の片側から対向側まで連通させてもよい。この場合、基材100の対向する両側を2つ以上の蓋体190でそれぞれ覆うことにより、同様に、基材100の流体経路がほぼ密閉経路を形成する効果を保持することができる。勿論、本発明のマイクロ流体検出ユニット1では、組み合わせて用いられる流体検出装置に応じて蓋体190を含まない基材100を使用してもよい。つまり、蓋体190を設けるか否か及び蓋体190の数は、基材100の設置需要に応じて適宜に調整することができる。
【0040】
図1及び
図2を参照されたい。
図2は、本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施例において、基材100は、流体注入領域110、流体貯蔵領域120及び検出領域130を含む。検出領域130の両端は、それぞれ流体注入領域110及び流体貯蔵領域120に連通する。つまり、流体注入領域110は、検出領域130を介して流体貯蔵領域120に連通する。
【0041】
流体注入領域110は、自外部から基材100に注入する流体を受けて一時貯蔵するものである。流体注入領域110には、流体出口111及び開口部113が設けられる。開口部113は、基材100の片側の表面に位置し、外部大気環境に連通する。流体注入領域110は、開口部113から基材100の内部に向かって凹んで流体出口111まで延在する。流体注入領域110が開口部113から流体出口111に向かって断面積が徐々に小さくなる構造となるように、開口部113の断面積は流体出口111の断面積よりも大きいことで、流体注入領域110内の流体を流体出口111へ流動するようにガイドするのに有利である。流体は、流体出口111から流体注入領域110を離れた後に検出され得る。本実施例において、流体注入領域110は、柱状空間、錐状空間又は半球状空間の少なくとも一部(例えば、本実施例において、流体注入領域110は半円柱状空間)であってもよく、流体注入領域110における流体出口111に近い部分は漏斗状(funnel type)構造であるが、本発明はこれに限定されない。ここで、流体注入領域110における流体出口111から底面101までの最小距離は流体出口111から底面101までの垂直距離である。
【0042】
さらに、本実施例において、流体出口111には、流体緩衝領域112が設けられる。流体緩衝領域112は、流体注入領域110と流体出口111との境界に位置する。流体緩衝領域112によって流体一時貯蔵空間が形成され、流体注入領域110に注入された流体は流体出口111の流体緩衝領域112を流れた後、流体注入領域110を離れる。流体注入領域110内に残留流体がある場合、残留流体は流体緩衝領域112に集まって液滴を形成する。本発明の一実施例において、流体緩衝領域112は柱状空間若しくは球状空間の少なくとも一部又は曲面構造(例えば、本実施例において、流体緩衝領域112は円柱状空間の一部)であることにより、残留流体の蓄積及び液滴の形成に有利である。
【0043】
本発明の一実施例において、流体緩衝領域112内には、多孔質材料が設けられてもよい。多孔質材料により、可提供検出される流体を濾過するとともに、流体緩衝領域112での流体の集合及び一時貯蔵の機能を強化させることができる。ここで、多孔質材料は、ポリスルホン(polysulfone,PS)、セルロースエステル(cellulose ester,CE)、再生セルロース(regenerated cellulose,RC)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone,PES)、ポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone,PAES)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)及びポリアクリル酸ナトリウム塩(polyacrylic acid sodium salt,PAAS)から選択される1種又は複数種の組み合わせである。
【0044】
流体貯蔵領域120は、検出後の流体を受けて貯蔵するものである。流体貯蔵領域120は、外部大気環境と気体連通するように設計される。これによって、基材100の内部の流体はスムーズに流動することができる。流体貯蔵領域120には、流体入口121が設けられる。検出後の流体は、流体入口121から流体貯蔵領域120の内部に入って貯蔵することができる。本実施例において、流体貯蔵領域120における流体入口121に近い部分は漏斗状の構造を形成し、これによって、流体入口121から流体貯蔵領域120に入った流体は流体入口121に近いところに集まりやすくなるが、本発明はこれに限定されない。流体貯蔵領域120の流体入口121から底面101までの最小距離は、流体入口121から底面101までの垂直距離である。
【0045】
本発明において、流体注入領域110の流体出口111と流体貯蔵領域120の流体入口121との間に、重力方向に沿って高低差が形成される。例えば、底面101に対して、流体注入領域110の流体出口111から底面101までの最小距離は流体貯蔵領域120の流体入口121から底面101までの最小距離よりも長いことで、流体注入領域110の流体出口111と流体貯蔵領域120の流体入口121との間に、重力方向に沿って高低差が形成される。本発明の一実施例において、流体注入領域110の流体出口111と流体貯蔵領域120の流体入口121との間に重力方向に沿って形成された高低差は約0.5~10cmである。このようにして、流体注入領域110の流体出口111に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギは、流体貯蔵領域120の流体入口121に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギよりも大きい。
【0046】
本発明の一実施例において、流体貯蔵領域120に流入した流体の吸収及び貯蔵を補助するために流体貯蔵領域120内には多孔質材料122が設けられてもよい。多孔質材料122は、同様にポリスルホン、セルロースエステル、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸ナトリウム塩から選択される1種又は複数種の組み合わせである。さらに、本実施例において、多孔質材料122と流体貯蔵領域120の流体入口121との間に隔離領域123が形成される。隔離領域123により、多孔質材料122と流体貯蔵領域120の流体入口121とは互いに接触することなく、両者の間に一定の空間が保持され、流体入口121に近い箇所の蓄積可能な流体容積が増大される。
【0047】
マイクロ流体検出ユニット1は、少なくとも1つの通気管路180をさらに含む。流体貯蔵領域120は、少なくとも1つの通気管路180を介して外部大気環境に気体連通する。本実施例において、マイクロ流体検出ユニット1に単一の通気管路180が設けられ、且つ通気管路180の一端が流体貯蔵領域120に直接連通し、他端が基材100の片側の表面まで延在して外部大気環境に連通するが、通気管路180の配置位置及び数は異なる設計の必要に応じて調整することができ、本実施例に限定されない。
【0048】
検出領域130は主に流体を検出するのに用いられる。検出領域130は、マイクロ流路構造である。本実施例において、検出領域130として直線状のマイクロ流路を使用するが、検出領域130の構造はこれに限定されない。検出領域130は第1端131及び第2端132を有する。第1端131は、入力管路140を介して流体注入領域110の流体出口111に連通することにより、検出される流体は、流体注入領域110から入力管路140に沿って検出領域130の第1端131を経て検出領域130に入ることができる。第2端132は、出力管路150を介して流体貯蔵領域120の流体入口121に連通することにより、流体は検出された後に検出領域130の第2端132を経て検出領域130から離れ、出力管路150に沿って流体貯蔵領域120に入ることができる。本実施例において、基材100の底面101を基準として、検出領域130の第1端131及び第2端132は、重力方向においていずれも流体注入領域110の流体出口111よりも低いため、流体注入領域110から離れた流体は重力により検出領域130に向かって流動することができる。
【0049】
本発明において、検出領域130内には、必要に応じて異なる検出素子又は反応材料が設けられてもよい。これによって、検出領域130を流れた流体は、上記検出素子又は反応材料により検出される効果が得られる。上記検出素子は、光導波路素子、例えば、光ファイバ又は類似機能を有する素子であってもよく、検出領域130のマイクロ流路内に挿設される。例えば、本発明の一実施例において、使用される光ファイバは、外層である保護層が剥離されて露出したファイバ芯線であってもよく、ファイバ芯線の表面に金ナノ粒子層が事前に塗布されてもよい。上記金ナノ粒子層は、検出の必要に応じてさらに異なる識別ユニットで修飾されてもよい。上記識別ユニットは、特定の分析物を識別可能な複数の識別分子を含むユニットを指す。上記識別分子は、例えば、酵素、抗体、核酸、有機小分子などである。異なる識別ユニットを異なる物質に対する検出に適用することにより流体に対する検出効果が向上するが、本発明はこれに限定されない。光ファイバなどの光導波路素子の設置に応じて、検出領域130における第1端131に近い箇所にビーム入射部133を設け、検出領域130における第2端132に近い箇所にビーム出射部134を設けてもよく、これによって、ビームを容易に出射する及び受けることができる。此外,本実施例において、検出領域130の第1端131とビーム入射部133との間、及び検出領域130の第2端132とビーム出射部134との間にシーラントを充填することによって、流体は入力管路140及び出力管路150のみを介して検出領域130から出入りすることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0050】
図2及び
図3を参照されたい。
図3は、本発明のマイクロ流体検出ユニットを用いて流体検出を実行するときのビーム強度変化模式図である。
図2に示すように、本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニット1を例とすると、検出領域130に識別ユニットで修飾された光ファイバを設けるとともに、外部光源を用いてビーム入射部133から検出領域130に向かってビームを入射し、光レシーバを用いてビーム出射部134で検出領域130から出射したビームを受けることで、検出領域130内を流れた流体を検出する。識別ユニットが検出領域130を流れた流体中の分析物分子と結合すると、金ナノ粒子層の粒子のプラズモン共鳴条件が変化することで、レシーバが受けるビームのビーム強度が変化する。以下の実験において、室温で本発明の実施例1に係る上記マイクロ流体検出ユニット1を用いて流体を検出し、光ファイバで修飾された識別ユニットは抗免疫グロブリンG(Anti-Immunoglobulin G)である。
図3に示すように、検出初期に緩衝水溶液を流体としてマイクロ流体の検出ユニット1内に注入し、緩衝水溶液を検出領域130を通って流し、流体圧力平衡状態にし、このときに測定されたビーム強度は明らかな変化がなく、安定する。一定時間後、免疫グロブリンG(Immunoglobulin G)を含む緩衝水溶液を流体としてマイクロ流体検出ユニット1内に注入し、同様にこの流体を検出領域130を通って流し、流体圧力平衡状態に到達させる。識別ユニット(抗免疫グロブリンG)と流体中の分析物分子(免疫グロブリンG)との結合に伴い、測定されたビーム強度は
図3の矢印で示される箇所から激減し始め、分子同士の結合は徐々に動的平衡に達する。この特性により、上記検出結果は分析物の定量に適用できる。
【0051】
さらに、本発明において、上記反応材料を検出領域130のマイクロ流路の表面に直接塗布又は形成することができる。反応材料と検出領域130を流れる流体とが発生する生化学又は化学反応により、流体を検出する効果を達成する。本発明のマイクロ流体検出ユニット1は、異なる流体検出の必要に応じて適切な反応材料を選択することができる。例えば、本発明の一実施例において、反応酸化鉄を材料として検出領域130のマイクロ流路の表面に塗布することができる。ルミノール(luminol)試薬及び過酸化水素を含む混合溶液が検出領域130を流れる際に、鉄イオンの触媒作用により、過酸化水素は酸素と水に分解され、酸素はルミノール試薬を酸化して青色光が発生するため、血液分析のための過酸化水素検出に適用できる。上記反応は、いわゆる化学発光反応である。
【0052】
また、本発明の別の実施例において、例えば、分析物と部分的に相補的なDNA断片を反応材料として検出領域130のマイクロ流路の表面に修飾し、検出される流体に金ナノ粒子溶液を添加し、金ナノ粒子の表面を官能基化し、分析物と部分的に相補的なDNAプローブを接続することができる。分析物を含む流体が検出領域130を流れる際に、相補的なハイブリダイゼーション反応が発生することで金ナノ粒子は検出領域130に結合する。そのため、金ナノ粒子の結合前後の色の違いに基づいてDNAの定量分析を行うことができる。上記定量分析法は、いわゆる比色法である。
【0053】
以下、本発明の実施例に係る上記マイクロ流体検出ユニット1により本発明の流体検出方法を説明する。
図2、
図4から
図5Eを参照されたい。
図4は、本発明の流体検出方法のフローチャートである。
図5Aから
図5Eは、本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図である。
図4に示すように、本発明の流体検出方法は、主にステップS1からステップS3を含む。以下、この方法の各ステップを詳しく説明する。
【0054】
ステップS1:検出領域、少なくとも1つの流体注入領域及び流体貯蔵領域を含むマイクロ流体検出ユニットを提供する。
【0055】
まず、流体検出を行うために本発明のマイクロ流体検出ユニットを提供する。マイクロ流体検出ユニットは、検出領域、少なくとも1つの流体注入領域、及び流体貯蔵領域を含む。本発明の実施例1に係るマイクロ流体検出ユニット1を例とすると、
図2に示すように、マイクロ流体検出ユニット1の基材100は、検出領域130、流体注入領域110及び流体貯蔵領域120を含む。ここで、マイクロ流体検出ユニット1の基材100の底面101を任意の水平表面(即ち、重力方向に実質的に垂直な表面)に置くことにより、マイクロ流体検出ユニット1はこの水平表面に実質的に垂直である。
【0056】
ステップS2:少なくとも1つの流体注入領域から第1流体を注入し、第1流体が重力の作用下で検出領域を通過して流体貯蔵領域の流体入口に集まって液体となり、このときに、少なくとも1つの流体注入領域の流体出口から液滴の液面と同じ高さの位置までの第1流体は、反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となる。
【0057】
上記ステップS1でマイクロ流体検出ユニット1を提供した後、マイクロ流体検出ユニット1の流体注入領域110から一度に十分量の第1流体Aを注入し、又は第1流体Aを持続的に注入する。
図5Aに示すように、流体注入領域110内の第1流体Aは、重力作用下で流体出口111の流体緩衝領域112を通過し、入力管路140に沿って検出領域130の第1端131から検出領域130内に入る。そして、第1流体Aは、引き続き検出領域130を通って流れた後、連通管の原理によって検出領域130の第2端132から検出領域130を離れ、出力管路150に沿って流体貯蔵領域120に向かって流れ、流体貯蔵領域120の流体入口121に集まって液滴P1となり、蓄積量の増加に伴って多孔質材料122がある位置に拡張する。流体入口121と多孔質材料122との間に隔離領域123が形成されているため、液滴P1は特定の蓄積量に集まることができる。マイクロ流体検出ユニット1内の第1流体Aが十分な量に達することで流体注入領域110内に残留する第1流体Aが流体出口111の流体緩衝領域112に集まって液滴P2を形成したときに、液滴P2(
図5B示される位置H2)から液滴P1の上液面と同じ水平高さの位置(
図5Bに示される位置H1)までの第1流体Aに発生する反重力方向の毛細管力は、液滴P2から液滴P1の上液面と同じ高さの位置までの重力ポテンシャルエネルギエネルギと相殺する。これによって、マイクロ流体検出ユニット1内の第1流体Aは流体圧力平衡状態になり、流動しなくなり、
図5Bに示される状態となる。このときに、流体注入領域110からの第1流体Aの注入を停止することができる。
【0058】
ステップS3:検出領域内の第1流体を検出する。
【0059】
上記ステップS2においてマイクロ流体検出ユニット1内の第1流体Aが流体圧力平衡状態になると、検出領域130内には第1流体Aが安定して満たされる。この場合、検出領域130内の第1流体Aに対して検出を行うことができる。本実施例において、検出領域130内には、光ファイバが設けられてもよい。外部光源を用いて第1端131に近いビーム入射部133から検出領域130に向かってビームを入射し、レシーバを用いて第2端132に近いビーム出射部134により検出領域130から出射したビームを受ける。出射したビームを分析して第1流体Aの検出結果を得る。なお、本発明に用いる流体検出メカニズムはこれに限定されない。
【0060】
このようにして、本発明の流体検出方法に本発明のマイクロ流体検出ユニットを用いることによって、重力により流体の流動を駆動することができ、駆動装置を別途に設ける必要がないとともに、マイクロ流体検出ユニットの構造配置のみにより内部流体の安定的な圧力平衡を容易に達成でき、流体検出効率を向上できる。
【0061】
さらに、本発明の流体検出方法は、複数回の流体追加注入及び検出にも適用できる。
図4に示すように、本実施例において、本発明の流体検出方法は、ステップS3の後にステップS4をさらに含む。
【0062】
ステップS4:少なくとも1つの流体注入領域から第2流体を注入し、液滴の蓄積量を減少させることにより、流体出口から液滴P1の液面と同じ高さの位置までの第2流体が反重力方向の毛細管力と重力ポテンシャルエネルギとが互いに相殺することにより流体圧力平衡状態となるまで、第1流体が検出領域から離れ、第2流体が検出領域を通過する。
【0063】
ステップS3で第1流体Aを検出した後、
図5Cに示すように、マイクロ流体検出ユニット1の流体注入領域110から一度に十分量の第2流体Bを注入し、又は第2流体Bを持続的に注入することができる。第1流体Aが流体出口111の流体緩衝領域112内で液滴P2を形成するため、注入された第2流体Bはこの液滴P2を介して第1流体Aと迅速に連通し、気泡の発生が回避され得る。注入された第2流体Bにより、流体注入領域110内の圧力が増大され、マイクロ流体検出ユニット1内の第1流体Aの流体圧力平衡状態が破壊される。第1流体Aは全体として第2流体Bによって押し付けられて引き続き流体貯蔵領域120に向かって流れることで、液滴P1の蓄積量は多孔質材料122に接触するまで徐々に増加する。この場合、多孔質材料122に接触した液滴P1は多孔質材料122によって吸収されることで、液滴P1の蓄積量は迅速に減少する。このようにして、重力作用によって第1流体Aが検出領域130から離れることが促進され、第2流体Bが検出領域130に入ってそこを通過し、
図5Dに示される状態となる。この場合、検出領域130内の第1流体Aは、第2流体Bによって完全に置き換えられている。
【0064】
マイクロ流体検出ユニット1内の第2流体Bが十分量に達した場合、流体注入領域110内に残留する第2流体Bは流体出口111の流体緩衝領域112に集まって液滴P2を形成するとともに、過剰な液滴P1の蓄積量は、液滴P1が多孔質材料122に接触しなくなり、流体圧力平衡状態に回復するまで多孔質材料122によって吸収される。この場合、第2流体Bによって形成された液滴P2(
図5Eに示される位置H2)から液滴P1の上液面と同じ高さの位置(
図5Eに示される位置H1)までの第2流体Bは、同様に反重力方向の毛細管力を受けて液滴P2から液滴P1の上液面と同じ高さの位置までの重力ポテンシャルエネルギと相殺する。これによって、マイクロ流体検出ユニット1内の第2流体Bは流体圧力平衡状態となり、引き続き流動しなくなり、
図5Eに示される状態となる。この場合、流体注入領域110からの第2流体Bの注入を停止することができる。
【0065】
上記第2流体Bとして、必要に応じて異なる流体を選択することができる。例えば、第2流体Bは、別の検出される流体であってもよい。マイクロ流体検出ユニット1内の第2流体Bが
図5Eに示される状態となったとき、上記ステップS3の流体検出を行うことができる。また、第2流体Bは、洗浄効果を提供する流体(例えば、水溶液又は他の洗浄溶液など)であってもよい。上記ステップS4のように第2流体Bを注入してマイクロ流体検出ユニット1の内部管路を洗浄することにより、次の流体検出のために準備をすることができる。
【0066】
このようにして、本発明の流体検出方法に本発明のマイクロ流体検出ユニットを使用することにより、同じ又は異なる流体の注入を繰り返して行い、対応流体の検出及び洗浄効果を提供できるとともに、同一のマイクロ流体検出ユニットだけで複数回の流体検出を行うことができるため、検出コストが節約され、流体の検出効率が向上する。
【0067】
図6及び
図7を参照されたい。
図6は、本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
図7は、本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットは、上記実施例1の変化形態であり、具体的には、主に流体注入領域の数及び管路配置を変更し、流体出口の流体緩衝領域をなくしたものであり、他の構造及び機能は上記実施例1と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0068】
図6及び
図7に示すように、本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニット2は、基材200と、基材200の片側を覆う蓋体290とを含む。基材200は、第1流体注入領域210a、第2流体注入領域210b、流体貯蔵領域220、及び検出領域230を含む。第1流体注入領域210aは、流体出口211aから第1管路240aを介して検出領域230の第1端231に連通し、第2流体注入領域210bは、流体出口211bから第2管路240bを介して検出領域230の第1端231に連通し、流体貯蔵領域220は、流体入口221から出力管路250を介して検出領域230の第2端232に連通する。本実施例において、第2管路240bが第1管路240aに連通することで第2流体注入領域210bは、第2管路240b及び第1管路240aを介して検出領域230の第1端231に連通するが、第2管路240bの設置方式は本実施例に限定されない。第1流体注入領域210aの流体出口211aと底面201との間の最小距離は、流体出口211aから底面201までの垂直距離であり、第2流体注入領域210bの自流体出口211bと底面201との間の最小距離は、流体出口211bから底面201までの垂直距離であり、流体貯蔵領域220の流体入口221と底面201との間の最小距離は、流体入口221から底面201までの垂直距離である。
【0069】
本実施例において、第1流体注入領域210aの流体出口211aと第2流体注入領域210bの流体出口211bとの間には、重力方向に沿って高低差が形成され、第1流体注入領域210aの流体出口211a及び第2流体注入領域210bの流体出口211bと、流体貯蔵領域220の流体入口221との間には、それぞれ重力方向に沿って高低差が形成される。例えば、底面201を基準として、第2流体注入領域210bの流体出口211bは重力方向において第1流体注入領域210aの流体出口211aよりも高いことにより、第2流体注入領域210bの流体出口211bと第1流体注入領域210aの流体出口211aとの間には、重力方向に沿って高低差が形成される。また、底面201を基準として、第1流体注入領域210aの流体出口211aと底面201との間の最小距離、及び第2流体注入領域210bの流体出口211bと底面201との間の最小距離は、いずれも流体貯蔵領域220の流体入口221と底面201との間の最小距離よりも大きいことにより、第1流体注入領域210aの流体出口211a及び第2流体注入領域210bの流体出口211bと、流体貯蔵領域220の流体入口221との間には、それぞれ重力方向に沿って高低差が形成される。第2流体注入領域210bの流体出口211bに位置する流体の重力ポテンシャルエネルギは、第1流体注入領域210aの流体出口211aに位置する重力ポテンシャルエネルギよりも大きく、第1流体注入領域210aの流体出口211a又は第2流体注入領域210bの流体出口211bに位置する重力ポテンシャルエネルギは、流体貯蔵領域220の流体入口221に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギよりも大きい。
【0070】
さらに、本実施例において、第2管路240bの断面直径が第1管路240aの断面直径よりも大きいことにより、流体は第2流体注入領域210bに注入された後、重力作用によって第2管路240bに入り、第1管路240aと第2管路240bとの連通箇所から検出領域230の第1端231までに存在する流体を押し付けるのに十分な押付力を生じるため、複数回の流体注入操作に有利である。
【0071】
また、本実施例において、マイクロ流体検出ユニット2は、第1通気管路280a及び第2通気管路280bをさらに含む。第1通気管路280aの一端は流体貯蔵領域220に直接連通し、他端は基材200の片側の表面まで延在して外部大気環境に連通する。第2通気管路280bの一端は出力管路250に直接連通し、他端は同様に基材200の片側の表面まで延在して外部大気環境に連通する。このような設計により、マイクロ流体検出ユニット2は、外部大気環境に連通する複数の経路を提供するため、1つの通気管路が詰まったときにマイクロ流体検出ユニット2の正常の流体検出機能に影響を与えることが回避されるとともに、マイクロ流体検出ユニット2内の流体圧力はより容易に平衡に達することができる。
【0072】
図7から
図8Dを参照されたい。
図8Aから
図8Dは、本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図である。本発明の実施例2に係るマイクロ流体検出ユニット2を例とすると、
図7に示すように、まず、流体の検出を行うために、マイクロ流体検出ユニット2の基材200の底面201を、マイクロ流体検出ユニット2がこの水平表面に実質的に垂直となるように任意の水平表面に置く。
【0073】
また、
図8Aに示すように、マイクロ流体検出ユニット2の第1流体注入領域210aから一度に十分量の第1流体Aを注入し、又は第1流体Aを持続的に注入する。第1流体注入領域210a内の第1流体Aは、重力作用下で流体出口211aを通過して第1管路240aに沿って検出領域230の第1端231から検出領域230内に入る。次に、第1流体Aは引き続き検出領域230を通って流れた後、連通管の原理により検出領域230の第2端232から検出領域230を離れ、出力管路250に沿って流体貯蔵領域220に向かって流れる(第1流体Aの一部が第2通気管路280b内に流入する)ことで、第1流体Aは流体貯蔵領域220の流体入口221で集まって液滴P1を形成し、蓄積量の増加に伴って多孔質材料222がある位置に拡張する。流体入口221と多孔質材料222との間に隔離領域223が形成されているため、液滴P1は一定の蓄積量まで蓄積することができる。マイクロ流体検出ユニット2内の第1流体Aが十分量に達し、第1流体Aが第1流体注入領域210aの流体出口211aに溢れ出た場合、第1管路240aにおける第1流体注入領域210aの流体出口211a(
図8Bに示される位置H2)から液滴P1の上液面と同じ高さの位置(
図8Bに示される位置H1)までの第1流体Aに発生する反重力方向の毛細管力は、將會抵銷第1流体注入領域210aの流体出口211aから液滴P1の上液面と同じ高さの位置に発生する重力ポテンシャルエネルギと相殺する。これによって、マイクロ流体検出ユニット2内の第1流体Aは流体圧力平衡状態となって引き続き流動しなくなり、
図8Bに示される状態となることができる。この場合、第1流体注入領域210aからの第1流体Aの注入を停止し、検出領域230内の第1流体Aを検出することができる。
【0074】
本発明のマイクロ流体検出ユニット2により第1流体Aを検出した後、マイクロ流体検出ユニット2の第1流体注入領域210a又は第2流体注入領域210bから第2流体Bを注入することができる。
図8Cに示すように、本実施例において、マイクロ流体検出ユニット2の第2流体注入領域210bから一度に十分量の第2流体Bを注入し、又は第2流体Bを持続的に注入する。注入された第2流体Bにより第2流体注入領域210b内の圧力が増大されることで、マイクロ流体検出ユニット2内の第1流体Aの流体圧力平衡状態が破壊される。第1管路240aと第2管路240bとの連通箇所の下方に位置する第1流体Aは、第2流体Bによって押し付けられることで引き続き流体貯蔵領域220に向かって流動した結果、液滴P1が多孔質材料222に接触するまで液滴P1の蓄積量が徐々に増加する。この場合、接触した多孔質材料222の液滴P1は多孔質材料222によって吸収することで、液滴P1の蓄積量は迅速に減少する。これによって、重力作用によって第1流体Aが検出領域230から離れることが促進されるとともに、第2流体Bは検出領域230に入ってそこを通過することにより、検出領域230内の第1流体Aは第2流体Bによって完全に置き換えられている。
【0075】
マイクロ流体検出ユニット2内の第2流体Bが十分量に達した場合、過剰な液滴P1の蓄積量は、液滴P1が多孔質材料222に接触しなくなり、流体圧力平衡状態に回復するまで多孔質材料222によって吸収される(
図8D)。これによって、マイクロ流体検出ユニット2内の第2流体Bは流体圧力平衡状態となり、引き続き流動しなくなる。この場合、第2流体注入領域210bからの第2流体Bの注入を停止し、第2流体Bにより洗浄効果を達成し、又は検出領域230内の第2流体Bを検出することができる。本発明のマイクロ流体検出ユニット2をにより引き続き流体を複数回注入しようとする場合、同様にマイクロ流体検出ユニット2の第1流体注入領域210a又は第2流体注入領域210bから同じ又は異なる流体を注入することができる。
【0076】
図9及び
図10を参照されたい。
図9は、本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
図10は、本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットは、上記実施例1の変形であり、主に流体貯蔵領域の構造及び管路配置を変更し、流体出口の流体緩衝領域を省略し、他の構造及び機能は上記実施例1と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0077】
図9及び
図10に示すように、本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニット3は、基材300及び基材300の片側を覆う蓋体390を含む。基材300は、流体注入領域310、流体貯蔵領域320及び検出領域330を含む。流体注入領域310は、流体出口311から入力管路340を介して検出領域330の第1端331に連通し、流体貯蔵領域320は、流体入口321から出力管路350を介して検出領域330の第2端332に連通する。流体注入領域310の流体出口311と底面301との間の最小距離は、流体出口311から底面301までの垂直距離であり、流体貯蔵領域320の流体入口321と底面301との間の最小距離は、流体入口321から底面301までの垂直距離である。さらに、基材300は把持部360をさらに含む。把持部360は基材300の片側の表面に突設される。使用者は、手又はツールで把持部360を挟持することにより、本発明のマイクロ流体検出ユニット3を容易に取ることができる。
【0078】
本実施例において、流体注入領域310の流体出口311と流体貯蔵領域320の流体入口321との間には、重力方向に沿って高低差が形成される。例えば、底面301を基準として、流体注入領域310の流体出口311と底面301との間の最小距離は、流体貯蔵領域320の流体入口321と底面301との間の最小距離よりも大きいことにより、流体注入領域310の流体出口311と流体貯蔵領域320の流体入口321との間に重力方向に沿って高低差が形成される。これによって、流体注入領域310の流体出口311に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギは、流体貯蔵領域320の流体入口321に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギよりも大きい。
【0079】
流体貯蔵領域320内の多孔質材料322と流体入口321との間には隔離領域323が形成される。隔離領域323により、多孔質材料322と流体貯蔵領域320の流体入口321とは互いに接触することなく、両者の間に一定の空間が保持される。此外,本実施例において、流体貯蔵領域320には、流体収集領域324がさらに設けられる。流体収集領域324は、隔離領域323と流体入口321との間に位置する。流体が流体入口321から流体貯蔵領域320に流入する際に、流体収集領域324により流体が集まって形成された液滴を一時的に収容することができる。液滴の蓄積量が流体収集領域324の容積を超えたら、液滴は流体収集領域324から溢れ出る。したがって、流体収集領域324により、流体貯蔵領域320に流入する液滴の蓄積量を制御することができる。
【0080】
また、本実施例において、流体貯蔵領域320には、バリア構造325がさらに設けられてもよい。バリア構造325は、流体収集領域324と隔離領域323とを分離し、液滴が流体収集領域324から溢れ出ることを防止するためのダム(dam)のような構造である。液滴の蓄積量が流体収集領域324の容積未満である場合、液滴はバリア構造325により流体収集領域324内に保持される。液滴の蓄積量が流体収集領域324の容積を超えると、液滴は流体収集領域324から溢れ出るとともに、バリア構造325を乗り越えて隔離領域323内に入る。
【0081】
本実施例において、マイクロ流体検出ユニット3は、複数の通気管路380をさらに含む。各通気管路380の一端は流体貯蔵領域320に直接連通し、他端は基材300の片側の表面まで延在して外部大気環境に連通する。このような設計により、マイクロ流体検出ユニット3は、外部大気環境に連通する複数の経路を提供し、1つの通気管路が詰まったときにマイクロ流体検出ユニット3の正常の流体検出機能に影響を与えることが回避されるとともに、マイクロ流体検出ユニット3内の流体圧力はより容易に平衡に達することができる。
【0082】
図10から
図11Eを参照されたい。
図11Aから
図11Eは、本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニットの操作模式図である。本発明の実施例3に係るマイクロ流体検出ユニット3を例とすると、
図10に示すように、まず、流体の検出を行うために、マイクロ流体検出ユニット3の基材300の底面301を、マイクロ流体検出ユニット3がこの水平表面に実質的に垂直となるように任意の水平表面に置く。
【0083】
また、
図11Aに示すように、マイクロ流体検出ユニット3の流体注入領域310から一度に十分量の第1流体Aを注入し、又は第1流体Aを持続的に注入する。流体注入領域310内の第1流体Aは、重力作用下で流体出口311を通過して入力管路340に沿って検出領域330の第1端331から検出領域330内に入る。次に、第1流体Aは引き続き流動して検出領域330を通過した後、連通管の原理により検出領域330の第2端332から検出領域330を離れ、出力管路350に沿って流体貯蔵領域320に向かって流動することで、第1流体Aは流体貯蔵領域320の流体入口321及び流体収集領域324で集まって液滴P1を形成し、蓄積量の増加に伴って流体収集領域324外へ拡張する。液滴P1が流体収集領域324内に一時的に貯蔵するため、液滴P1は一定の蓄積量まで蓄積することができる。マイクロ流体検出ユニット3内の第1流体Aが十分量に達し、第1流体Aが第1流体注入領域310aの流体出口311aに溢れ出た場合、入力管路340における流体注入領域310の流体出口311(
図11Bに示される位置H2)から液滴P1の上液面と同じ高さの位置(
図11Bに示される位置H1)までの第1流体Aに発生する反重力方向の毛細管力は、流体注入領域310の流体出口311から液滴P1の上液面と同じ高さの位置に発生する重力ポテンシャルエネルギと相殺する。これにより、マイクロ流体検出ユニット3内の第1流体Aは流体圧力平衡状態となって引き続き流動しなくなり、
図11Bに示される状態となることができる。この場合、第1流体注入領域310aからの第1流体Aの注入を停止し、検出領域330内の第1流体Aを検出することができる。
【0084】
本発明のマイクロ流体検出ユニット3により第1流体Aを検出した後、マイクロ流体検出ユニット3の流体注入領域310から一度に十分量の第2流体Bを注入し、又は第2流体Bを持続的に注入することができる(
図11C)。注入された第2流体Bにより流体注入領域310内の圧力が増大されることで、マイクロ流体検出ユニット3内の第1流体Aの流体圧力平衡状態が破壊される。第1流体Aは全体として第2流体Bによって押し付けられて引き続き流体貯蔵領域320に向かって流れ、液滴P1の蓄積量は徐々に増加する。液滴P1の蓄積量が流体収集領域324の容積を超えた場合、液滴P1は、流体収集領域324から溢れ出るとともにバリア構造325を乗り越え、隔離領域323内に入る。液滴P1の引き続きの拡張に伴い、液滴P1は隔離領域323を乗り越えて多孔質材料322に接触する。この場合、多孔質材料322に接触した液滴P1は多孔質材料322によって吸収されるため、液滴P1の蓄積量は迅速に減少し、
図11Dに示される状態となる。このようにして、重力作用によって第1流体Aが検出領域330から離れることが促進され、第2流体Bが検出領域330に入ってそこを通過することにより、検出領域330内の第1流体Aは、第2流体Bによって完全に置き換えられている。
【0085】
マイクロ流体検出ユニット3内の第2流体Bが十分量に達した場合、過剰な液滴P1の蓄積量は、液滴P1の蓄積量が多孔質材料322に接触しなくなり、流体圧力平衡状態に回復するまで多孔質材料322によって吸収される(
図11E)。これによって、マイクロ流体検出ユニット3内の第2流体Bは、流体圧力平衡状態となり、引き続き流動しなくなる。この場合、流体注入領域310からの第2流体Bの注入を停止し、第2流体Bにより洗浄効果及び検出領域330内の第2流体Bに対する検出を達成することができる。引き続き本発明のマイクロ流体検出ユニット3により流体を複数回注入しようとすると、同様にマイクロ流体検出ユニット3の流体注入領域310から同じ又は異なる流体を注入することができる。
【0086】
図12及び
図13を参照されたい。
図12は、本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニットの構造分解図である。
図13は、本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニットの基材の側面図である。本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニットは、上記実施例2及び実施例3の変形であり、主に流体注入領域の数、流体貯蔵領域の構造及び管路配置を変更し、流体出口の流体緩衝領域を省略し、他の構造及び機能は上記実施例1と同じであるため、ここで説明を省略する。
【0087】
図12及び
図13に示すように、本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニット4は、基材400及び基材400の片側を覆う蓋体490を含む。基材400は、第1流体注入領域410a、第2流体注入領域410b、流体貯蔵領域420及び検出領域430を含む。第1流体注入領域410aは、流体出口411aから第1管路440aを介して検出領域430の第1端431に連通し、第2流体注入領域410bは、流体出口411bから第2管路440bを介して検出領域430の第1端431に連通し、流体貯蔵領域420は、流体入口421から出力管路450を介して検出領域430の第2端432に連通する。本実施例において、第2管路440bが第1管路440aに連通することにより、第2流体注入領域410bは、第2管路440b及び第1管路440aを介して検出領域430の第1端431に連通するが、第2管路440bの配置方式は本実施例に限定されない。第1流体注入領域410aの流体出口411aと底面401との間の最小距離は、流体出口411aから底面401までの垂直距離であり、第2流体注入領域410bの流体出口411bと底面401との間の最小距離は、流体出口411bから底面401までの垂直距離であり、流体貯蔵領域420の流体入口421と底面401との間の最小距離は、流体入口421から底面401までの垂直距離である。
【0088】
本実施例において、第1流体注入領域410aの流体出口411aと第2流体注入領域410bの流体出口411bとの間には、重力方向に沿って高低差が形成され、第1流体注入領域410aの流体出口411a及び第2流体注入領域410bの流体出口411bと、流体貯蔵領域420の流体入口421との間には、それぞれ重力方向に沿って高低差が形成される。例えば、底面401を基準として、第2流体注入領域410bの流体出口411bは重力方向において第1流体注入領域410aの流体出口411aよりも高いことで、第2流体注入領域410bの流体出口411bと第1流体注入領域410aの流体出口411aとの間に重力方向に沿って高低差が形成される。さらに、底面401を基準として、第1流体注入領域410aの流体出口411aと底面401との間の最小距離及び第2流体注入領域410bの流体出口411bと底面401との間の最小距離は、いずれも流体貯蔵領域420の流体入口421と底面401との間の最小距離よりも大きいことで、第1流体注入領域410aの流体出口411a及び第2流体注入領域410bの流体出口411bと、流体貯蔵領域420の流体入口421との間には、それぞれ重力方向に沿って高低差が形成される。これによって、第2流体注入領域410bの流体出口411bに位置する流体の重力ポテンシャルエネルギは、第1流体注入領域410aの流体出口411aに位置する流体の重力ポテンシャルエネルギよりも大きく、第1流体注入領域410aの流体出口411a又は第2流体注入領域410bの流体出口411bに位置する流体の重力ポテンシャルエネルギは、流体貯蔵領域420の流体入口421に位置する流体の重力ポテンシャルエネルギよりも大きい。
【0089】
流体貯蔵領域420内の多孔質材料422と流体入口421との間には隔離領域423が形成されている。隔離領域423により、多孔質材料422と流体貯蔵領域420の流体入口421とは互いに接触することなく、一定の空間が保持される。さらに、本実施例において、流体貯蔵領域420には、流体収集領域424がさらに設けられる。流体収集領域424は、隔離領域423と流体入口421との間に位置する。さらに、本実施例において、流体貯蔵領域420には、バリア構造425が設けられる。バリア構造425は、流体収集領域424と隔離領域423とを分離し、液滴が流体収集領域424から溢れ出るのを防止するためのダムような構造である。
【0090】
本実施例において、マイクロ流体検出ユニット4は、複数の通気管路480をさらに含む。各通気管路480の一端は流体貯蔵領域420に直接連通し、他端は基材400の片側の表面まで延在して外部大気環境に連通する。
【0091】
本発明の実施例4に係るマイクロ流体検出ユニット4の操作原理及び使用方式は、上記実施例2,3と同様であるため、ここで説明を省略する。
【0092】
以上より、本発明のマイクロ流体検出ユニット及び流体検出方法では、重力により流体の流動を駆動できるため、従来の駆動装置のコストが節約されるとともに、流体が内部において安定した圧力平衡に達することができる。さらに、本発明のマイクロ流体検出ユニット及び流体検出方法では、同一の装置を用いて同じ又は異なる流体を繰り返して注入できるため、複数回の流体検出又は洗浄効果が達成され、コストが削減され、流体の検出効率が向上する。
【0093】
以上の実施形態は実質的に説明を補助するためのものであり、本発明の実施例又はこれらの実施例の応用若しくは用途を限定するものではない。さらに、上記実施形態において少なくとも1つの例示的な実施例が挙げられているが、本発明には様々な変化が含まれる。また、本明細書の実施例は、本願発明の保護範囲、用途又は構成を制限しない。逆に、上記実施形態は、当業者に上記1つ又は複数の実施例を実施するためのガイドを提供することができる。さらに、特許請求の範囲によって決定される範囲から逸脱しない限り、素子の機能及び配列に対して様々な変化を加えることができる。本願の特許請求の範囲には、既知の均等物及び本出願を提出するときの予見可能なすべての均等物が含まれる
【符号の説明】
【0094】
1:マイクロ流体検出ユニット
100:基材
101:底面
110:流体注入領域
111:流体出口
112:流体緩衝領域
113:開口部
120:流体貯蔵領域
121:流体入口
122:多孔質材料
123:隔離領域
130:検出領域
131:第1端
132:第2端
133:ビーム入射部
134:ビーム出射部
140:入力管路
150:出力管路
180:通気管路
190:蓋体
2:マイクロ流体検出ユニット
200:基材
201:底面
210a:第1流体注入領域
210b 第2流体注入領域
211a:流体出口
211b:流体出口
220:流体貯蔵領域
221:流体入口
222:多孔質材料
223:隔離領域
230:検出領域
231:第1端
232:第2端
240a :第1管路
240b:第2管路
250:出力管路
280a:第1通気管路
280b:第2通気管路
290:蓋体
3:マイクロ流体検出ユニット
300:基材
301:底面
310:流体注入領域
311:流体出口
320:流体貯蔵領域
321:流体入口
322:多孔質材料
323:隔離領域
324:流体収集領域
325:バリア構造
330:検出領域
331:第1端
332:第2端
340:入力管路
350:出力管路
360:把持部
380:通気管路
390:蓋体
4:マイクロ流体検出ユニット
400:基材
401:底面
410a:第1流体注入領域
410b :第2流体注入領域
411a:流体出口
411b:流体出口
420:流体貯蔵領域
421:流体入口
422:多孔質材料
423:隔離領域
424:流体収集領域
425:バリア構造
430:検出領域
431:第1端
432:第2端
440a:第1管路
440b:第2管路
450:出力管路
480:通気管路
490:蓋体
A:第1流体
B:第2流体
P1、P2:液滴
S1~S4:ステップ
H1、H2:位置
【国際調査報告】