(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】水処理残渣からの水硬性バインダーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220906BHJP
C04B 7/32 20060101ALI20220906BHJP
C04B 7/345 20060101ALI20220906BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20220906BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220906BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20220906BHJP
C01F 7/164 20220101ALI20220906BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20220906BHJP
C01F 7/76 20220101ALI20220906BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B7/32 ZAB
C04B7/345
C04B22/06 A
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
C01F7/164
B09B5/00 Z
C01F7/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571881
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020066317
(87)【国際公開番号】W WO2020249739
(87)【国際公開日】2020-12-17
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521527978
【氏名又は名称】アルデ グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル マーク
【テーマコード(参考)】
4D004
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA16
4D004AB01
4D004AC05
4D004BA02
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA36
4D004CA42
4D004CB05
4D004CB13
4D004CB31
4D004CC01
4D004CC02
4D004CC11
4D004DA06
4D004DA09
4G076AA02
4G076AA10
4G076AA14
4G076AA18
4G076AA19
4G076AB26
4G076AC02
4G076AC04
4G076BA38
4G076BA46
4G076BC08
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA33
4G076DA30
4G112MA00
4G112MA01
4G112MB01
4G112MB08
4G112PA03
4G112PA35
4G112PB04
4G112PB06
4G112PB09
4G112PE06
(57)【要約】
水の存在下、カルシウムイオン源でアルミニウムイオン源を水和して鉱物水和物を形成する工程と、続いて前記鉱物水和物を加熱して前記高アルミナ水硬性バインダーを形成する工程と、を含む高アルミナ水硬性バインダーの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下、アルミニウムイオン源をカルシウムイオン源で水和して鉱物水和物(mineral hydrates)を形成する工程と、続いて前記鉱物水和物を加熱して高アルミナ水硬性バインダーを形成する工程と、を含むことを特徴とする高アルミナ水硬性バインダーの製造方法。
【請求項2】
硫酸イオン源が、前記アルミニウムイオン源および前記カルシウムイオン源と、水和前および/または水和中に混合されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウムイオン源が水処理残渣を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水処理残渣中に存在する有機物が、前記加熱工程中に燃料エネルギー源を形成し、前記有機物の酸化を促進するために、前記加熱工程中に前記混合物に空気または酸素が添加されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱工程の前に、さらに前記水和鉱物(hydrated minerals)を粉砕する工程を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、前記水和鉱物を350℃以上に加熱することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水の存在下、混合工程において、鉱物水和物が形成されるように、カルシウムイオン源を水処理残渣または他のアルミニウムに富む廃棄物残渣と混合する工程と、続いて、熱処理工程において、得られた鉱物水和物を350℃以上の温度に加熱して、存在する有機物を酸化し、かつ前記水和鉱物を少なくとも部分的に脱水することで、得られるセメント製品を形成する工程と、を含むことを特徴とするカルシウムアルミネートセメントの製造方法。
【請求項8】
水の存在下、混合工程において、鉱物水和物が形成されるように、カルシウムイオン源および硫酸塩を、水処理残渣または他のアルミニウムに富む廃棄物残渣と混合する工程と、続いて、熱処理工程において、得られた鉱物水和物を350℃以上の温度に加熱して、存在する有機物を酸化し、かつ前記水和鉱物を少なくとも部分的に脱水することで、得られるセメント製品を形成する工程と、を含むことを特徴とするカルシウムスルホアルミネートセメントの製造方法。
【請求項9】
前記熱処理工程の前に、前記鉱物水和物を粉砕することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合工程の前に、前記水処理残渣を少なくとも部分的に脱水することを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理工程中に、有機物の酸化を促進するために、前記材料に空気を添加することを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記カルシウムイオン源が石灰または消石灰を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理残渣または他のアルミニウムに富む廃棄物残渣からの水硬性バインダーの製造方法に関し、特に、水硬性バインダーを含むカルシウムアルミネートおよび/またはカルシウムスルホアルミネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理残渣(以下、WTRまたは残渣と呼ぶ)とは、一般にミョウバンと呼ばれる硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3・14H
2O)、または硫酸第二鉄アルミニウム(鉄)などのアルミニウム化合物を典型的に含む凝集剤を用いる凝集により、飲料水の工業的浄化から生成される廃棄物である。凝集は、天然の未処理水中に浮遊している粒子を除去する。関与する化学反応は以下を含む。
【数1】
【0003】
凝集された固体は、処理水から分離されて、WTRと呼ばれる、アルミニウムに富む廃棄物スラリーを形成する。WTRは、典型的には、非晶質水酸化アルミニウム、水、有機物、残留凝集剤および他の微量成分からなる。
【0004】
現在のところ、この物質の実行可能なリサイクルの選択肢はほとんどなく、その多くは最終的に埋立処分される。この種の廃棄物は世界中で発生しており、それをリサイクルする能力は世界中を惹きつけるだろう。
【0005】
セメントとはバインダーであり、他の材料を固定し、硬化させ、接着させてそれらを互いに結合させる建築に使用される物質である。セメントは、単独で使用されることはほとんどなく、むしろ砂と砂利(骨材)を一緒に結合するために使用される。セメントは、微細骨材と混合されることでコンクリート建築用のモルタルを生産し、また砂および砂利と混合されることでコンクリートを生産する。建築に用いられるセメントは、通常、無機物であり、しばしば石灰系またはケイ酸カルシウム系である。また、セメントは、その水存在下での固定能力によって(水硬性バインダーの場合)、水硬性または非水硬性のいずれかであると特徴付けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カルシウムアルミネートセメントやカルシウムスルホアルミネートセメントのような高アルミナセメントは通常、石灰石やボーキサイトから作られる。カルシウムアルミネートセメントの水和は典型的にカルシウムアルミネート水和物を産生し、一方で、カルシウムスルホアルミネートセメントの水和は典型的にエトリンガイトを産生するため、カルシウムイオンおよび硫酸イオンの利用可能性を調整することにより特殊な物理的特性(膨張または急速反応など)を得ることができる。カルシウムアルミネートセメントおよびカルシウムスルホアルミネートセメントは、典型的には高温焼成法(1200℃超)により工業的に製造され、かなりのエネルギー資源を必要とし、高CO2産生をもたらす。
【0007】
本発明の目的は、高アルミナ水硬性バインダー、特にカルシウムアルミネートセメントおよび/またはカルシウムスルホアルミネートセメントを比較的低温で製造し、水処理残渣を原料として使用するための方法を提供し、それにより、高アルミナセメントの従来の製造方法に代わる、より環境に優しく、より低コストの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の態様によれば、水の存在下、カルシウムイオン源でアルミニウムイオン源を水和して鉱物水和物(mineral hydrates)を形成する工程と、続いて前記鉱物水和物を加熱して前記高アルミナ水硬性バインダーを形成する工程と、を含む高アルミナ水硬性バインダーの製造方法が提供される。
【0009】
1つの実施形態において、水和前および/または水和中に、硫酸イオン源を前記アルミニウムイオン源および前記カルシウムイオン源と混合することができる。前記アルミニウムイオン源は、水処理残渣を含むことが好ましい。前記水処理残渣は、特に飲料水処理残渣の形で形成されることができる。この飲料水処理残渣は特に汚染が少ないため、排水処理残渣などの他の残渣よりもはるかに容易に浄化することができる。飲料水と排水の成分が異なるため、これら(飲料水/排水)は直接比較できるものではない。
【0010】
前記水処理残渣中に存在する有機物は、前記加熱工程中に燃料エネルギー源を形成することができ、前記有機物の酸化を促進するために、前記加熱工程中に空気または酸素を前記混合物に添加することができる。
【0011】
この方法は、前記加熱工程の前に、前記水和鉱物を粉砕する工程をさらに含むことができる。
【0012】
最も効率のよいバインダーを達成するために、前記加熱工程において前記水和鉱物を350℃以上に加熱することが好ましい。
【0013】
本願のさらなる態様によれば、水の存在下、混合工程において、鉱物水和物が形成されるように、カルシウムイオン源を水処理残渣または他のアルミニウムに富む廃棄物残渣と混合する工程と、続いて、熱処理工程において、得られた鉱物水和物を350℃以上の温度に加熱して、存在する有機物を酸化し、かつ前記水和鉱物を少なくとも部分的に脱水することで、得られるセメント製品を形成する工程と、を含むカルシウムアルミネートセメントの製造方法が提供される。
【0014】
さらに別の方法によれば、カルシウムスルホアルミネートセメントの製造は、水の存在下、混合工程において、鉱物水和物が形成されるように、カルシウムイオン源および硫酸塩を、水処理残渣または他のアルミニウムに富む廃棄物残渣と混合する工程と、続いて、熱処理工程において、得られた鉱物水和物を350℃以上の温度に加熱して、存在する有機物を酸化し、かつ前記水和鉱物を少なくとも部分的に脱水することで、得られるセメント製品を形成する工程と、を含む。
【0015】
前記鉱物水和物は、前記熱処理工程の前に粉砕してもよい。
【0016】
前記混合工程の前に、前記水処理残渣を少なくとも部分的に脱水してもよい。前記熱処理工程の間、有機物の酸化を促進するために、前記物質に空気を添加してもよい。
【0017】
前記カルシウムイオン源は、石灰または消石灰を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例におけるWTR、消石灰および硫酸カルシウムを含む水和物ブレンドのX線回折トレースを示す。
【
図2】実施例における熱処理工程で生成される様々なカルシウムスルホアルミネート鉱物およびカルシウムアルミネート鉱物のX線回折トレースを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の多くの実施形態に従うWTRまたは他のアルミニウムに富む廃棄物残渣からの水硬性バインダーの製造方法について、実施例のみによって説明する。
【0020】
水処理残渣は、水、有機物および無機物からなる。前記無機物は、主に、非晶質酸化アルミニウムおよび/または非晶質水酸化アルミニウム(典型的には75~80%の非晶質酸化アルミニウム、すなわち20~25%の結晶化度、例えば、分光法、DSC測定またはX線回折実験により測定可能である)からなる。残りの無機成分(主として様々な量の石英および酸化鉄)は、本質的に不活性なフィラーである。非晶質酸化/水酸化アルミニウムは、後述するように、セメント系鉱物を形成するための水和/脱水プロセスにおいて、本願の様々な実施形態に従う方法で利用することができる。
【0021】
カルシウムアルミネート水和物は、WTRを水の存在下でカルシウムイオン源(例えば、ポルトランドセメント、消石灰)と混合するときに形成され得る。
【0022】
エトリンガイト(Ca6[Al(OH)6]2(SO4)3・26H2O)は、WTRを水の存在下でカルシウムイオン源(例えば、ポルトランドセメント、消石灰)および硫酸イオン源(例えば、硫酸カルシウム)と混合するときに形成され得る。所望のセメント系物質を製造するために用いられる前駆材料の正確な配合は、使用する水処理残渣の化学組成および最終製品の具体的な工業用途によって決まる。
【0023】
本願の様々な実施形態によれば、原料として、水処理残渣または反応性アルミニウム源(非晶質水酸化アルミニウム、非晶質酸化アルミニウムまたは塩化アルミニウムなど)を含む他の高アルミニウム含量残渣を用いる水硬性バインダーの製造方法が提供される。鉱物学における非晶質という用語は、結晶形態を持たない固体/物質を意味する。北アイルランドの水処理残渣(WTR)の典型的な化学組成は、無機物の80~90%が非晶質水酸化アルミニウムであることを示すであろう。別の一般的な組成は、50~80%の間の非晶質水酸化アルミニウムである。他のWTRは、50%未満の非晶質水酸化アルミニウムを有する無機物を含む。
【0024】
セメント製品を製造する際には、可能な限り多くの非晶質水酸化アルミニウムを含有することが加工済材料にとって有利であろう。これは、水酸化/酸化アルミニウムの結晶形態が、セメント系では基本的に不活性(化学的に非反応性)であるからである。しかしながら、非晶質形態の水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウムおよび酸化アルミニウムは、セメント系において化学的に反応性であり、例えば、水の存在下で消石灰と反応してカルシウムアルミネート水和物を形成する。このような反応は強度を与え、硬化物の形成をもたらす。他の有益な特性(急結、早強、速乾)も得ることができる。しかしながら、より低レベルの非晶質水酸化アルミニウムを含むWTRは、用途によっては依然として有用であり得る。
【0025】
第1の実施形態において、前駆材料は、カルシウムイオン源(例えば、石灰、消石灰)およびアルミニウムに富むWTR(または任意の他の非晶質酸化/水酸化アルミニウム源(例えば、ECEM)、または反応性もしくは可溶性のアルミニウムイオン源を含む廃棄物を含む他の適切なアルミニウム源)を含むことが好ましい。水源も必要である。水源はWTRに存在する水からのものであってよい。
【0026】
前記方法は、以下の工程を含む。
【0027】
工程1:前駆材料のブレンド/混合。前駆材料を水とブレンドおよび混合してペースト/スラリーを形成する。WTRは受け取ったまま使用してもよい。あるいは、WTRは、部分的に脱水し、用途に適した粒径、例えば約40ミクロンまで、製粉または他の方法で粉砕してもよい。
【0028】
前駆材料の組成および比率は、様々なカルシウムアルミネート水和物(セミカーボネートおよびカトイトなど)を製造するために、変化させることができる。
【0029】
混合に用いる装置の選択は、混合物のレオロジーに左右される。1つの実施形態において、混合装置はコンクリートミキサーと同様であることが想定される。混合装置は、混合前駆材料を一括でまたは連続供給で提供するように適合させてもよい。
【0030】
工程2:水和。水和工程中には、水和物が形成され、当該生成物が固定され得る。水和は24時間未満の時間で完了することが望ましい。前駆材料の選択によって、様々な水和物が形成される。
【0031】
工程3:熱処理。熱処理工程では、水和物質を、例えば350℃以上の温度まで熱処理する。加熱中に、WTR中の実質的に全ての有機物の酸化を保証するのに適した割合で空気を加えることが好ましい。
【0032】
WTR中の有機物の熱量(~5-10MJ/Kg)は熱処理プロセスのエネルギー源(全部または一部)として利用できる。
【0033】
熱処理温度は350℃から1200℃超に及ぶことができる。材料の反応性を最大にするために、熱処理が800℃を超えないことが好ましい場合がある。
【0034】
熱処理の前に、水和物質を部分的に脱水し、用途に適した粒径、例えば約40ミクロンまで、製粉または粉砕することができる。
【0035】
熱処理は、回転焼成炉、フラッシュ焼成装置などの適切な加熱チャンバー内で行われ得る。
【0036】
熱処理工程は、様々な無水カルシウムアルミネート鉱物を生成する。生成物中の各鉱物の種類および量は、実質的には前駆材料の比率および使用されるWTRまたは他の前駆材料の組成によって決まる。
【0037】
熱処理工程中に到達する温度が上昇すると、カルシウムアルミネート鉱物はより結晶性になる。
【0038】
工程4:最終製品:CAセメント。最終製品(無水カルシウムアルミネート鉱物の混合物からなる)を冷却する。冷却後、最終製品を任意に製粉または粉砕して最終セメント製品としてもよい。
【0039】
本願の第2の実施形態によれば、カルシウムイオン源および硫酸塩源と混合された原料として、水処理残渣または他の高アルミニウム含量残渣を使用する、カルシウムスルホアルミネートセメントの製造方法が提供される。
【0040】
一例において、前駆材料は、Caイオン源(例えば、石灰、消石灰)、硫酸塩源(例えば、石膏、無水石膏、半水石膏)およびアルミニウムに富むWTR源(または非晶質酸化/水酸化アルミニウム源(例えば、ECEM))を含み得る。第1の実施形態と同様に、水源はWTRに存在する水からであってもよい。
【0041】
工程1:WTRとカルシウムイオン源および硫酸塩源とのブレンド。消石灰(または石灰)、硫酸塩(例えば、石膏、無水石膏、半水石膏)およびアルミニウムに富むWTRをブレンドし、水と混合してペースト/スラリーを形成する。
【0042】
WTRは受け取ったまま使用してもよい。あるいは、WTRは、部分的に脱水し、適当な粒径に製粉または粉砕してもよい。
【0043】
WTRの組成に応じて、硫酸塩源の包含は任意であり得る(すなわち、硫酸塩源がWTRにすでに存在している可能性がある)。
【0044】
前駆材料の組成および比率は、様々なカルシウムスルホアルミネート水和物(エトリンガイトなど)およびカルシウムアルミネート水和物(セミカーボネートまたはカトイトなど)を生成するために変化させることができる。
【0045】
第1の実施形態と同様に、前駆材料を混合するために使用される混合装置の選択は、混合物のレオロジーに左右される。混合装置は、連続的混合またはバッチ混合を提供することができる。
【0046】
工程2:水和。水和工程中には、水和物が形成され、生成物が固定され得る。水和は24時間未満の時間で完了することが望ましい。前駆材料の組成と比率に応じて、様々な水和物が形成される。その一例として、鉱物エトリンガイトの形成がある。
【0047】
図1に示す表は、この方法に従って作られたWTR、消石灰および硫酸カルシウムを含む水和物ブレンドのX線回折トレースを示す。
【0048】
工程3:熱処理。第2工程から生成された水和物質を熱処理する(例えば、水和物の脱水を実質的に最大にするために、350℃以上の温度で)。加熱中に、WTR中の実質的に全ての有機物の酸化を保証するのに適した割合で空気を加えることが好ましい。
【0049】
WTRからの有機炭素の熱量(~5-10MJ/Kg)は熱処理プロセスの燃料源(全部または一部)として使用できる。
【0050】
熱処理温度は350℃から1200℃超に及ぶことができる。熱処理は、材料の反応性を最大にするために、特に、残渣の非晶質Al2O3が非晶質のままであり、従って反応性であることを保証するために、800℃を超えないことが好ましい。
【0051】
熱処理の前に、水和物質を部分的に脱水し、適当な粒径、例えば約40ミクロンまで、製粉または粉砕することができる。
【0052】
熱処理工程は、回転焼成炉、フラッシュ焼成装置などで行われ得る。
【0053】
熱処理工程により、様々なカルシウムスルホアルミネート鉱物およびカルシウムアルミネート鉱物が生成され得る(
図2参照)。
【0054】
各鉱物の種類および量は、実質的には前駆材料の組成および比率、そして特にWTRの組成によって決まる。
【0055】
熱処理工程中に到達する温度が上昇すると、カルシウムアルミネート鉱物およびカルシウムスルホアルミネート鉱物はより結晶性になる。
【0056】
工程4:最終製品:CSAセメント。最終製品(カルシウムスルホアルミネート鉱物とカルシウムアルミネート鉱物とからなる)を冷却する。冷却後、最終製品を必要な粒径まで任意に製粉または粉砕することができる。
【0057】
【0058】
本願は、廃棄物材料を利用でき、かつ従来技術の方法よりもはるかに低いエネルギーインプットを必要とする高アルミナ水硬性バインダーの製造方法を提供する。従って、本願は、高アルミナセメントの従来の製造方法に代わる、より環境に優しく、かつ低コストの方法を提供する。
【0059】
本願は、本明細書に記載された実施形態に限定されるものではないが、特許請求の範囲に定義されている本願の範囲から逸脱することなく修正または変更することができる。
【国際調査報告】