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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】抗IgE構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220906BHJP
   C07K 16/42 20060101ALI20220906BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220906BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 15/64 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220906BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220906BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20220906BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/42 ZNA
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N15/64 Z
A61P37/08
A61P11/06
A61K38/17
A61K38/39
A61K38/16
A61K38/38
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K47/64
A61K47/68
A61K47/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021572343
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2020051377
(87)【国際公開番号】W WO2020245608
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】1908108.2
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522242074
【氏名又は名称】ピーコック・バイオセラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ビーヴィル
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・ビーヴィル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CC24
4B064CD21
4B064CE03
4B064CE06
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB25
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BD14
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA04
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA56
4C084DA37
4C084DC50
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB131
4C084ZB132
4C085AA14
4C085BB42
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、a)それぞれがCD23のC型レクチンドメインを含み、各単量体がIgEに結合することができる、少なくとも2つの単量体;及びb)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体を含むタンパク質構築物であって、前記タンパク質構築物がリンカーを含み、前記リンカーが、CD23のC型レクチンドメインを含む前記単量体を、FcRnに結合することができる前記実体に連結するために使用される、タンパク質構築物を提供する。例えば、抗IgE療法における、又はIgE関連の疾患若しくは状態の治療若しくは予防における使用のための構築物の治療的使用もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれがCD23のC型レクチンドメインを含み、各単量体がIgEに結合することができる、少なくとも2つの単量体;及び
b)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体
を含むタンパク質構築物であって、前記タンパク質構築物がリンカーを含み、前記リンカーが、CD23のC型レクチンドメインを含む前記単量体を、FcRnに結合することができる前記実体に連結するために使用される、タンパク質構築物。
【請求項2】
前記構築物が2つの単量体、又は2つより多い単量体、好ましくは4つ若しくは6つの単量体を含む、請求項1に記載のタンパク質構築物。
【請求項3】
前記CD23のC型レクチンドメインが、配列番号1のV159~P290(配列番号6)、又は配列番号1のC160~C288(配列番号7)、又は配列番号1のF170~L277(配列番号8)、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、又はそれに対応する、請求項1又は請求項2に記載のタンパク質構築物。
【請求項4】
前記CD23のC型レクチンドメインが、配列番号1のS156からA292(配列番号15)、好ましくは配列番号1のE133からA292(配列番号10)を含むか、若しくはそれに対応する、又は配列番号1のS156からC288(配列番号31)、若しくはその断片、若しくはそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、若しくはそれに対応する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項5】
前記CD23のC型レクチンドメインが、配列番号1のS156からE298(配列番号13)、好ましくは配列番号1のE133からE298(配列番号11)、又はその断片、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、又はそれに対応する、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項6】
前記CD23のC型レクチンドメインが、配列番号1のS156からS321(配列番号9)、好ましくは配列番号1のE133からS321(配列番号12)、又はその断片、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、又はそれに対応する、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項7】
各単量体が0.1~3μMの親和性でIgEに結合する、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項8】
FcRnに結合することができる前記実体が、Fc領域、好ましくはIgG-Fc領域、若しくはその断片若しくはバリアント、又はアルブミン若しくはその断片若しくはバリアント、又はIgG抗体若しくはアルブミンに対する結合タンパク質、若しくはFcRnに対する結合タンパク質を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項9】
FcRnに結合することができる前記実体が、IgG1-Fc領域若しくはその断片若しくはバリアント、又はヒト血清アルブミン若しくはその断片若しくはバリアント、又はIgG1抗体若しくはヒト血清アルブミンに対する結合タンパク質を含む、請求項8に記載のタンパク質構築物。
【請求項10】
前記結合タンパク質が、抗体若しくは抗体断片、好ましくはsdAbを含むか、又は非免疫グロブリンベースの単一ドメイン結合タンパク質、好ましくはフィブロネクチン若しくはフィブロネクチンベースの分子、アフィマー、アンキリンリピートタンパク質、リポカリン、ヒトAドメイン、ブドウ球菌プロテインA、チオレドキシン、ガンマBクリスタリン、又はユビキチンベースの分子を含む、請求項8又は請求項9に記載のタンパク質構築物。
【請求項11】
前記リンカーが、ペプチドリンカーである、請求項1から10のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項12】
構築物の部分a)の各単量体とIgEとの前記結合、及び/又は構築物の部分b)とFcRnとの前記結合が、エンドソーム条件に感受性である、請求項1から11のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項13】
構築物の部分a)とIgEとの前記結合が、pH7.4と比較してpH6.0若しくは6.5において減少するか、又は血清カルシウムレベルと比較してエンドソームカルシウムレベルにおいて減少する、請求項12に記載のタンパク質構築物。
【請求項14】
構築物の部分b)とFcRnとの前記結合が、pH7.4と比較してpH6.0若しくは6.5において増加するか、又は血清カルシウムレベルと比較してエンドソームカルシウムレベルにおいて増加する、請求項12又は請求項13に記載のタンパク質構築物。
【請求項15】
少なくとも2つの単量体が、個々の単量体の結合親和性の合計と比較して、IgEとの結合のアビディティーの増加をもたらす、請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物をコードするヌクレオチド配列を含む1つ若しくは複数の核酸分子;又は
そのような核酸分子を含む1つ若しくは複数の発現ベクター;又は
前記発現ベクター、核酸分子、若しくは請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を含む、1つ若しくは複数の宿主細胞。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を生成する方法であって、(i)請求項16に記載の、発現ベクターのうちの1つ若しくは複数又は核酸配列のうちの1つ若しくは複数を含む宿主細胞を、コードされたタンパク質構築物の発現に適した条件下で培養する工程;及び場合により(ii)宿主細胞から又は増殖培地/上清から発現されたタンパク質構築物を単離又は取得する工程を含む方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を生成する方法であって、(i)IgE Fcが固定化されたアフィニティーマトリックスを、前記構築物がアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合する条件下で、請求項1から15のいずれか一項に記載の構築物と接触させる工程;及び(ii)構築物がアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合しなくなる条件下で、アフィニティーマトリックスから構築物を溶出させる工程を含む方法。
【請求項19】
工程(i)において、そのような条件が、血清カルシウム又はpHレベル、好ましくは1から2mMのカルシウムレベル、又はpH7.4若しくは約pH7.4のpHに対応する条件である;及び/又は、工程(ii)において、そのような条件が、エンドソームカルシウム又はpHレベル、好ましくは3~30μMのカルシウムレベル又はpH5.0から6.5若しくは約pH5.0から6.5のpHに対応する条件である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物又は請求項16に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクターを含む、組成物、好ましくは薬学的に許容される組成物。
【請求項21】
療法における使用、好ましくは抗IgE療法における使用、又はIgE関連の疾患若しくは状態の治療若しくは予防における使用のための、請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物、又は請求項16に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクター。
【請求項22】
抗IgE療法又はIgE関連の疾患又は状態の治療又は予防における使用のための医薬又は組成物の製造における、請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物、又は請求項16に記載の1つ若しくは複数の核酸分子又は発現ベクターの使用。
【請求項23】
IgE関連の疾患又は状態の治療又は予防の方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質構築物又は請求項16に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクターを投与する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgEに結合する能力と、FcRnにも結合する能力を有する新型のタンパク質構築物に関する。そのような構築物又は分子は、抗IgE療法において治療用途を有し、既存の療法に勝る重要な利点をもたらす可能性がある。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体分野は、以前は効果的な臨床選択肢を持たなかった多くの患者の生活を変化させてきた。モノクローナル抗体療法は、優れた標的特異性及び患者における比較的長い半減期を含む、従来の薬物と比較して重要な利点を多数有している。しかしながら現在、例えば高い標的の代謝回転又は高レベルで発現される標的のために、モノクローナル抗体も新規の様式も対処することができない多数の疾患、潜在的標的及び治療機会が残っている。次世代の抗体ベースの治療法は、これらの現在の制約の多くを克服し、妥当なコストでそれを行い、患者に受け入れられる必要がある。
【0003】
標的媒介薬物消失(TMDD)は、患者における抗体治療のよく知られた特性である。健康な対象では、治療用モノクローナル抗体の薬物動態学的挙動は通常のIgGとほとんど同じであり、半減期は21~23日である(Loweら、Basic Clin Pharm Tox 106;195~209頁、2009年)。可溶性リガンドの存在下では、治療用モノクローナル抗体の半減期は、標的リガンドの半減期に向かってシフトする。したがって、半減期が短い可溶性標的リガンドの場合、抗体-リガンド複合体は比較的迅速に循環から排除される(Loweら、上記)。この現象はモノクローナル抗体に問題を引き起こす。代謝回転が速い標的リガンド(例えば、ケモカイン、IgEのような一部の免疫グロブリン、及びサイトカイン)、及び高レベルで発現される標的の場合、リガンドを捕捉するために利用可能なモノクローナル抗体の量は急速に制限され、これは、所望の効果を達成するための適切な抗体対リガンド比を維持するために、対応して大量に又は増加した頻度でモノクローナル抗体が投与されなければならないことを意味する。
【0004】
抗体治療の場合、通常は皮下注射又は静脈内注射のいずれかで投与されるため、これは特に問題である。患者にとって、投与する必要のある薬物の量は、許容できない負担となる可能性があり、患者のコンプライアンスと治療の持続性に大きな影響を及ぼす。この点に関して、モノクローナル抗体のほとんどの市販製剤の固有の溶解度は100~150mg/mLである一方、皮下投与の最大許容注射量は注射部位あたり約1mLである。これらの特性は、モノクローナル抗体について、静脈内注射に頼らずに投与される薬物の量に自然な限界を課している。
【0005】
しかしながら、正常な体重の患者において適度に高いレベル又は適度に速い代謝回転を有する標的リガンドの場合であっても、これは、有効性に必要な程度に標的リガンドを捕捉するための頻繁な間隔(例えば、2~4週間ごと)での複数の大量注射(例えば、複数の1ml注射)を意味し得る。これは、患者と医療制度にとって大きな負担となる。
【0006】
したがって、治療用抗体の最近のトレンドは、患者のために優れた有効性と低用量を達成する手段として、1:1に近い抗体:リガンド比で中和を達成する非常に親和性の高い抗体を開発することであった。しかしながら、そのような高親和性抗体はしばしば、溶解性の喪失又は他の物理化学的特性の低下等の他の問題に悩まされる。
【0007】
したがって、迅速な代謝回転を伴う標的リガンド及び高レベルで発現される標的について遭遇する問題に対する代替的な解決策が望まれる。更に、全ての標的について投与量又は投与頻度を減らすことができる代替手段は、当技術分野における歓迎すべき進歩を代表し、治療に変革をもたらす可能性があるであろう。
【0008】
上記のように、IgEはこれらの困難な標的の1つの例である。IgEは一般的に、体がその他の点では無害な物質に反応したときに生じるアレルギーにおいて重要な役割を果たす。喘息、鼻炎、湿疹、食物アレルギー等のアレルギー性疾患は、世界中でますます蔓延しており、医療制度に大きな負担をかけている。IgEはアレルギーにおいて中心的な役割を果たし、2つの受容体と相互作用する;いわゆる「高」親和性受容体であるFcεRIと、いわゆる「低」親和性受容体であるCD23(FcεRIIとも呼ばれる)。
【0009】
高親和性IgE受容体であるFcεRIは、肥満細胞及び好塩基球等の細胞型において見られる(Sutton及びGould、2008年、Nat. Rev. Immunol.、8、205; Sutton及びDavies、2015年、Immunol. Rev. 268:222~235頁)。アレルゲンによるFcεRI結合IgEの架橋は、肥満細胞と好塩基球の脱顆粒、及びヒスタミン、サイトカイン/ケモカイン、プロテアーゼ等の炎症性メディエーターの放出をもたらす。
【0010】
低いμM親和性で遊離IgEに結合する低親和性IgE受容体のCD23(FcεRII)は、B細胞、活性化マクロファージ、好酸球、単球、樹状細胞、血小板、内皮細胞を含む様々な細胞型において見られる。CD23は、C型レクチンの「ヘッド」ドメインが「ストーク」ドメインによって細胞膜に接続され、その後にN末端に短い細胞内/細胞質「テール」ドメインが続く構造を有している。CD23の膜結合型(mCD23とも呼ばれる)は、約45kDaのII型膜貫通糖タンパク質であり、通常3つのヘッドドメインが3つの個別のストークドメイン(これらは一緒になって三量体αヘリックスコイルドコイルストークを形成する)によって膜に接続されている三量体として見られる。CD23は、IgE免疫複合体の形成によるアレルゲンの上皮を横切ったトランスサイトーシスにおける役割を含む、複数の生物学的役割を担っていると考えられている。CD23はまた、抗原提示及びCD21結合を介したIgE応答の調節においても役割を果たす。ヒトCD23は、CD23a(飲食作用)とCD23b(食作用)の2つのアイソフォームを有しているが、これらは細胞質ドメインが異なり、したがってシグナル伝達特性が異なる。
【0011】
可溶性CD23(sCD23とも呼ばれる)は、細胞表面からのmCD23の切断によって形成される。sCD23は自由に溶解するタンパク質であり、生物学的プロセス及び機能、例えばリガンド結合、特にIgEとの結合になおも関与し得る。様々な自由に溶解するCD23(sCD23)タンパク質が天然に見られ、例えば、37kDa、33kDa、25kDa、及び16kDaのタンパク質は全てIgEに結合し、サイトカイン様の活性を有している。細胞からのCD23放出の原因となり得るプロテアーゼはメタロプロテアーゼADAM10であり、これはヒトCD23のアラニン80(A80)のC末端側で切断して37kDaのsCD23分子を生成するか、又はアルギニン101(R101)のC末端側で切断して33kDa種を生成する(Lemieuxら、J. Biol. Chem.、2007年、282:14836~14844頁)。天然に存在するさらなるsCD23断片はderCD23であり、これはヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pterronysinus)の糞便中に見られるder p1プロテアーゼの作用によって生成される。der p1プロテアーゼは、ヒトCD23をセリン155(S155)とセリン156(S156)の間、及びグルタミン酸298(E298)とセリン299(S299)の間で切断して、三量体ではなく単量体である16kDaのderCD23断片を生成する(Schultzら、1997年、Eur. J. Immunol. 27:584~588頁)。
【0012】
FcεRIとCD23(FcεRII)は、異なる部位でIgEに結合する(Dhaliwalら、2017年、Sci. Rep. 7、45533)。結合はアロステリックに調節されるため、IgEが両方のタイプの受容体に同時に結合することはできない(Dhaliwalら、2017年、上記)。IgEの定常領域3(Cε3)は、FcεRIとCD23の両方がIgEに結合するための鍵となる。この点について、Cε3ドメインがいわゆる「オープン」コンフォメーションをとっている場合には、FcεRIがIgEに結合するが、Cε3ドメインがいわゆる「クローズド」コンフォメーションをとっている場合には、CD23がIgEに結合する。重要なことに、CD23とIgEとの結合は、IgEをクローズドコンフォメーションに固定することができ、よってIgEとFcεRIとの結合を妨げることができる。一般に、CD23の2つの別々の分子(例えば、2つのCD23単量体又は2つのCD23三量体)が、IgEのクローズドコンフォメーションに結合し、1つのCD23分子が、IgE Fc二量体の2つの鎖のそれぞれのCε3ドメインに結合する。
【0013】
抗IgE療法の承認された薬物に関する現在のベンチマークは、抗IgEモノクローナルIgG1抗体であるオマリズマブ(Xolair(登録商標)、Novartis社)である(Holgateら、2005年、J. Allergy Clin. Immunol. 115、459~465頁)。オマリズマブは遊離IgEに結合し、それがFcεRIに結合するのを防ぐことによって(つまり、競合阻害によって)作用し、それにより肥満細胞の脱顆粒と好塩基球の活性化を防ぐ。オマリズマブは、重度の持続性アレルギー性喘息及び慢性特発性蕁麻疹の治療薬として承認されている。それは体重と血中IgEのベースラインレベルに基づいた投薬表に従って投与される。しかしながら、その中程度の結合親和性は、IgEの効果的な抑制を達成するためにかなりの過剰な薬物を必要とし、複雑な投薬と最適以下の臨床転帰を導く。リゲリズマブは、後期開発段階にある別の抗IgEモノクローナル抗体であり、IgEへの高親和性結合のために開発された。しかしながら、作用機序はその他の点でオマリズマブと同じであり、高親和性結合が全ての問題に対処してはいない。例えば、上述のように、高親和性結合は標的媒介薬物消失(TMDD)を介した薬物の急速な消費を導く可能性があり、したがって、予想され得るよりも多く、より頻繁な用量の必要性を導く可能性がある(Armら、2014年、Clinical and Experimental Allergy、44:1371~1385頁)。IgE自体の迅速なクリアランスの原因となるメカニズムはよく分かっていない。IgEはFcRn結合を有さないため、IgEのIgE受容体取り込みは、その消費、並びに飲食作用による取り込み、及びリソソーム分解経路を介した分解に役割を担っている可能性がある(Lawrenceら、J. Allergy Clin. Immunol.、2017年、139(2):422~428頁)。
【0014】
FcRnは、1型膜糖タンパク質であり、エンドソーム等の酸性細胞内区画内で主に発現される(Sandら、2015年、Frontiers in Immunol. 5、article 682; Grevysら、2018年、Nat. Commun. 9:621~635頁)。FcRnの既知の役割の1つは、IgGやアルブミン等の特定の分子を飲食作用後に血清に戻してリサイクルすることにある。例えば、FcRnはCH2-CH3ドメイン界面においてIgGのFc領域と2:1の化学量論で相互作用する(つまり、1分子のIgG-Fcが2分子のFcRnに結合する)。リサイクルは、IgG-FcのFcRnへのpH依存的結合によって促進される。この点に関して、IgG-FcはpH6.0/6.5において高い親和性でFcRnに結合するが、pH7.4では結合しない。このように、FcRnは酸性化されたエンドソーム中のIgGに(IgG-Fc領域を介して)結合するが、IgGはその後、例えばFcRn-IgG複合体を含むリサイクリングエンドソームが細胞膜と融合し、それによってIgGを血清に放出して戻す際、生理的/中性のpHにおいてFcRnから解離する(Roopenian及びAkilesh、2007年、Nat. Rev. Immuno. 7:715~725頁; Sandら、2015年、上記; Grevysら、2018年、上記)。
【0015】
このようにして、オマリズマブ等の治療用抗体のIgGサブタイプは、ある程度、循環中に戻してリサイクルされる。しかしながら上記のように、現在の抗IgE療法には解決する必要のある特定の欠点がある。例えば、オマリズマブ療法は効果的であるものの、抗体療法は高価であり、存在する全ての遊離IgE分子を標的にしてブロックするには、高用量のオマリズマブが必要とされる。この問題は、例えばリゲリズマブ等の親和性の高い抗体を生成することである程度軽減できる可能性があるが、アレルギー中の遊離IgEの量は、依然として重大な問題を表す。更に上記のように、治療用抗IgE抗体の多くはTMDDのために急速に除去される。したがって、薬物が体から排出されるため、その反復投与が必要とされる。薬物の一部は上記のようにFcRnを介してリサイクルされるものの、リサイクルされた薬物の一部は依然としてIgE標的に結合したままで、血清中のIgE-抗IgEの複合体のレベル上昇をもたらし得るため(Lawrenceら、2017年、上記)、これは、遊離薬物のレベルを維持するために必要とされる薬物の反復投与に関する問題を軽減しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Loweら、Basic Clin Pharm Tox 106;195~209頁、2009年
【非特許文献2】Sutton及びGould、2008年、Nat. Rev. Immunol.、8、205
【非特許文献3】Sutton及びDavies、2015年、Immunol. Rev. 268:222~235頁
【非特許文献4】Lemieuxら、J. Biol. Chem.、2007年、282:14836~14844頁
【非特許文献5】Schultzら、1997年、Eur. J. Immunol. 27:584~588頁
【非特許文献6】Dhaliwalら、2017年、Sci. Rep. 7、45533
【非特許文献7】Holgateら、2005年、J. Allergy Clin. Immunol. 115、459~465頁
【非特許文献8】Armら、2014年、Clinical and Experimental Allergy、44:1371~1385頁
【非特許文献9】Lawrenceら、J. Allergy Clin. Immunol.、2017年、139(2):422~428頁
【非特許文献10】Sandら、2015年、Frontiers in Immunol. 5、article 682
【非特許文献11】Grevysら、2018年、Nat. Commun. 9:621~635頁
【非特許文献12】Roopenian及びAkilesh、2007年、Nat. Rev. Immuno. 7:715~725頁
【非特許文献13】Wurzburgら、2000年、Immunity、13(3):375~385頁
【非特許文献14】Borthakurら、2012年、J. Biol. Chem. 287:31457~31461頁
【非特許文献15】Yuanら、2013年、J. Biol. Chem. 288(30):21667~21677頁
【非特許文献16】Thompsonら、Nucleic Acids Res.、22:4673~4680頁、1994年
【非特許文献17】SIAM J. Applied Math.、48:1073、1988年
【非特許文献18】Myers及びMiller、CABIOS、4:11~17頁、1988年
【非特許文献19】Pearson、Methods in Enzymology、183:63~98頁、1990年
【非特許文献20】Altschulら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402頁、1997年
【非特許文献21】Devereuxら、Nucleic Acids Res.、12:387、1984年
【非特許文献22】Wang及びBrezski、2018年、Protein Cell 9(1):63~73頁
【非特許文献23】Sambrook、Fritsch及びManiatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、代替的な改善された抗IgE療法が明らかに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
有利には、本発明は、そのような代替療法のための手段を提供し、これは更に、以前の療法に対する明らかな利点を有する。これに関して、本発明のタンパク質構築物は、タンパク質構築物(生物製剤)のFcRn媒介リサイクルと、分解による細胞内のIgEの除去とを組み合わせる。構築物(生物製剤)のリサイクルとは、IgE標的のさらなる分子に結合するために生物製剤が血清に戻されることを意味する。しかしながら重要なことに、IgEは、体内に残って更に病気を引き起こすのではなく、細胞内で分解されることによって体から更に除去又は「掃討」される。したがって、本発明の構築物は、内因性IgEクリアランスメカニズムに加えて、例えば、FcRnを有する組織及び細胞において、IgEを破壊するための新規経路を提供し、これには、生物学的構築物がIgEと共に破壊されるのではなくリサイクルされるという追加の利点が伴う。
【0019】
リサイクル要素は、IgG Fc領域等のFcRnに結合できる実体を含む本発明のタンパク質構築物によって達成される。IgEの分解は驚くべきことに、高カルシウムレベル/カルシウムイオン濃度(約2mM)又は中性pH(例えば、約pH7.4)等、組織又は血清において観察される生理的条件下でIgEに結合できるが、低カルシウム(3~30μM)又は約5.0から6.5の低下した(又は低い)pH等のエンドソーム条件下でIgEとの結合の大幅な低下を示す、可溶性CD23(又はその断片若しくはバリアント)、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のC型レクチンヘッドドメイン(CTLD)(又はその断片若しくはバリアント)を含む、本発明のタンパク質構築物によって達成される。これは、タンパク質構築物が血清(又は組織)のIgEに結合できることを意味するが、その後、IgE含有複合体は、細胞内に内在化し、又は飲作用(例えば、微飲作用)又は飲食作用により取り込まれ、カルシウムレベルが低く環境がより酸性である初期エンドソーム区画に到達すると、IgEが放出されてリソソーム経路に入り、そこで分解され得る。一方、構築物のFcRn結合部分は、低下した(低い)pH又は低下した(低い)カルシウム等のエンドソーム条件下でFcRnに結合して、無負荷の生物製剤を血清(又は組織)に戻してリサイクルし、より多くのIgE標的に結合させることができる。
【0020】
本明細書の他の箇所でより詳細に説明されるように、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のC型レクチンヘッドドメイン(又はその断片若しくはバリアント)を含む、可溶性CD23(又はその断片若しくはバリアント)の使用は、FcεRIとFcεRIIの両方へのIgEの結合をブロックする競合的阻害とは対照的に、FcεRIへのIgEの結合のアロステリック阻害を提供することから、オマリズマブやリゲリズマブ等の抗IgE治療薬とは異なる作用機序も有利に提供する。
【0021】
したがって、本発明の分子は、以前の抗IgE療法に勝るいくつかの利点を提供することが分かる。第一に、本発明の抗IgE構築物(生物製剤)は、体内で有用な寿命を著しく増加させた。言い換えれば、無負荷の生物製剤を血清に戻してリサイクルすることにより、半減期が大幅に延長された。これは、より低用量の薬物を投与する可能性及び/又は、より頻度の低い薬物の投与を含む、多くの利点があり、これに対応して、注射量が少なく、医療専門家への訪問頻度がより少なくなる等、患者にとりポジティブで便利な経験を伴う。この点に関して、IgEの放出と薬物のリサイクルは、TMDDの問題を克服し、高い血清薬物レベルを維持するために使用され得る。
【0022】
第二に、本発明のタンパク質構築物は、他の抗IgE療法とは異なり、例えばリソソームにおける分解を促進することによって、体からかなりの量のIgEを実際に除去することを可能にする。これは、許容可能な用量でIgEを完全に排除できる可能性を与え、オマリズマブやリゲリズマブ等の既存の治療には高すぎるIgEレベルの対象の治療も可能にすると考えられている(言い換えれば、潜在的な患者のIgEレベルの理論的な上限はないはずである)。本発明の生物製剤によるIgE受容体、CD23及びFcεRIの両方に結合するIgEの効率的な遮断は、慢性自発性蕁麻疹、喘息、アレルギー性鼻炎等のIgE媒介性疾患の治療における、その広範な使用を可能にするはずである。
【0023】
第三に、本発明の構築物は、一般に、オマリズマブ及びリゲリズマブ等の全体抗体よりも著しく小さく、これは、医薬品の特性及び組織分布の点で利点をもたらす。第四に、本発明の構築物は、IgE感作エフェクター細胞の架橋を誘導しないことが示されているため、潜在的な安全上の利点がある。対照的に、オマリズマブ及びリゲリズマブは、有害事象のリスクを増加させる高い循環IgE-抗IgE複合体レベルを有している。標的が急速に破壊され得るため、これらは本発明の生物製剤には存在しないはずである。更に、本明細書の他の箇所でより詳細に説明されるように、本発明の生物製剤は、親和性とは無関係に、アロステリック阻害と両方の受容体へのIgE結合の遮断を可能にする。対照的に、リゲリズマブ及びオマリズマブはどちらも、その受容体に結合するIgEの薬理学的競合阻害剤であるため、患者の治療の際の阻害を維持するために、抗IgE濃度を最小閾値よりも上に、無血清IgE濃度を超えて維持する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
したがって、その最も広い範囲において、本発明は、
a)IgEに結合することができる、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のC型レクチンドメイン(CTLD)(又はその断片若しくはバリアント)を含む、少なくとも1分子の可溶性CD23又はその断片若しくはバリアント;並びに
b)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体
を含むタンパク質構築物を提供する。
【0025】
したがって、いくつかの実施形態において、構築物は、IgEに結合することができる、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のC型レクチンドメイン(CTLD)(又はその断片若しくはバリアント)を含む、単一(1)分子の可溶性CD23又はその断片若しくはバリアントを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のCTLD(又はその断片若しくはバリアント)を含む、少なくとも2分子の可溶性CD23(又はその断片若しくはバリアント)が存在することが好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、特に少なくとも1分子又は少なくとも2分子の可溶性CD23のCTLD(又はその断片若しくはバリアント)を含む、可溶性CD23(又はその断片若しくはバリアント)の分子は、単量体であることが好ましい。
【0028】
別の見方をすれば、いくつかの実施形態では、特に少なくとも1分子の可溶性CD23のCTLD(又はその断片若しくはバリアント)を含む、可溶性CD23(又はその断片若しくはバリアント)の分子は、ホモ二量体化若しくはホモ三量体化する能力、又はホモオリゴマーを形成する能力を持たないことが好ましい。
【0029】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、
a)それぞれがCD23のC型レクチンドメイン(CTLD)又はその断片若しくはバリアントを含み、各単量体がIgEに結合することができる、少なくとも2つの単量体;及び
b)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体
を含むタンパク質構築物を提供する。
【0030】
リンカー/リンカー分子の存在、特に本発明の構築物の部分a)と部分b)との間のリンカー/リンカー分子の存在は、構築物の機能性に関して重要な利点を与えると考えられている。したがって、他の好ましい実施形態では、例えば、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されるようなリンカーが構築物中に存在する。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明は、
a)それぞれがCD23のC型レクチンドメイン(CTLD)又はその断片若しくはバリアントを含み、各単量体がIgEに結合することができる、少なくとも2つの単量体;及び
b)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体
を含むタンパク質構築物であって、前記タンパク質構築物がリンカーを含み、前記リンカーが、CD23のC型レクチンドメインを含む前記単量体を、FcRnに結合することができる前記実体に連結するために使用される、タンパク質構築物を提供する。
【0032】
CD23はヒトでは、CD23アイソフォームa(CD23a、配列番号1、NCBI NP_001207429.1、長さ321アミノ酸)とCD23アイソフォームb(CD23b、配列番号2、NCBI NP_001193948.2、長さ320アミノ酸)という2つのアイソフォームにおいて見られる。
1 meegqyseie elprrrccrr gtqivllglv taalwagllt llllwhwdtt qslkqleera
61 arnvsqvskn leshhgdqma qksqstqisq eleelraeqq rlksqdlels wnlnglqadl
121 ssfksqelne rneasdller lreevtklrm elqvssgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
181 tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
241 dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pasegsaesm
301 gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号1)

1 mnppsqeiee lprrrccrrg tqivllglvt aalwaglltl lllwhwdttq slkqleeraa
61 rnvsqvsknl eshhgdqmaq ksqstqisqe leelraeqqr lksqdlelsw nlnglqadls
121 sfksqelner neasdllerl reevtklrme lqvssgfvcn tcpekwinfq rkcyyfgkgt
181 kqwvharyac ddmegqlvsi hspeeqdflt khashtgswi glrnldlkge fiwvdgshvd
241 ysnwapgept srsqgedcvm mrgsgrwnda fcdrklgawv cdrlatctpp asegsaesmg
301 pdsrpdpdgr lptpsaplhs (配列番号2)
【0033】
これらの2つのアイソフォームは、細胞質ドメインの一部であるN末端のイタリック体で示されている残基を除き、配列が同一である。N末端の細胞質ドメインの配列は、種間でも異なり得る。例えば、マウスとヒトのCD23分子では配列が異なる。しかしながら、CD23の種差は、細胞質領域だけでなく、分子全体に見られ得るが、全体として、例えばCTLDにおいて、異なる種間に有意な相同性がある。
【0034】
CD23は、N末端からC末端へと、細胞質テール領域、膜貫通ドメイン、ネック領域、ストール領域、及びヘッド領域(レクチンヘッドドメイン/C型レクチンヘッドドメイン又はC型レクチンドメイン(CTLD)及びCD21結合部位を含むC末端テールを含む)により構成されている。ヒトCD23には多くの構造的な特徴がある。例えば、CD23はMHCクラスII結合ドメイン、インテグリン結合部位、CD21結合部位、及びIgE結合ドメインを含んでいる。インテグリン結合部位、CD21結合部位、及びIgE結合ドメインは全てヘッド領域にある。更にCD23は、プロテアーゼの標的部位を含んでおり、これは上記の配列番号1において下線で示されている。それらの配列はA80、R101、S155、及びE298に位置している。天然のCD23においてA80及びR101は、ADAMファミリーのプロテアーゼ、特にADAM10によって切断されると考えられている。天然のCD23において、S155及びE298はヒョウヒダニに見られるder p1プロテアーゼの切断部位であると考えられている。一般に、プロテアーゼは指し示された残基のC末端側を切断する。
【0035】
これらの天然のプロテアーゼ部位は、可溶性CD23の形成にとって好ましい切断部位であるが(そして、これらの部位での切断によって生成又は形成される可溶性CD23分子又はそのような可溶性CD23分子に対応するCD23分子もまた、本発明における使用に好ましい)、本明細書において定義される任意の可溶性CD23分子(又はCTLD分子)が、本発明のタンパク質構築物において、又はそれを生成するために使用され得る。
【0036】
CD23分子に関して本明細書において使用される「可溶性」という用語は、細胞の膜に結合又は他の方法で会合していないか、又は自由に循環するか自由に溶解できるCD23分子又はCD23分子の形態を指す。したがって、そのような可溶性CD23分子は、CD23分子の細胞外ドメインの全部又は一部、又はその断片若しくはバリアントを含む。
【0037】
CD23は細胞表面から切断されて、一連の可溶性CD23(sCD23)タンパク質/分子を生成することができ、これらのいずれかが本発明において使用され得る。しかしながら、本発明の構築物において使用するための等しく可溶性のCD23分子は、組換え的に改変又は生成され得る。例えば、本発明の構築物において使用するための例示的な可溶性CD23は、CD23の細胞外ドメイン全体、又はその断片若しくはバリアントを含むか、又はそれに対応し得るであろう。例えばヒトCD23の場合、例示的な可溶性CD23分子は、配列番号1のD48からS321(配列番号3)の配列、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。そのようなsCD23分子は、CD23のヘッド+ストークドメイン、又はCD23のヘッド+ストーク+ネックドメインを含み得るであろう。
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gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号3)
【0038】
本発明の構築物において使用するための別の例示的な可溶性CD23は、(例えば、ADAM10プロテアーゼ切断による)配列番号1のA80における切断によって得られる、又は得ることができるCD23のA80断片、又はその断片若しくはバリアントを含むか、又はそれに対応し得るであろう。例えばヒトCD23の場合、例示的な可溶性CD23分子は、配列番号1のQ81からS321(配列番号4)の配列、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。
qksqstqisq eleelraeqq rlksqdlels wnlnglqadl
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gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号4)
【0039】
本発明の構築物において使用するための別の例示的な可溶性CD23は、(例えばADAM10プロテアーゼ切断による)配列番号1のR101における切断によって得られる、又は得ることができるCD23のR101断片、又はその断片若しくはバリアントを含むか、又はそれに対応し得るであろう。例えばヒトCD23の場合、例示的な可溶性CD23分子は、配列番号1のL102からS321(配列番号5)の配列、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。
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ssfksqelne rneasdller lreevtklrm elqvssgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
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gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号5)
【0040】
CD23のC型レクチンドメイン(CTLD)又はC型レクチンヘッドドメインを含む構築物、特にCD23のC型レクチンドメイン(CTLD)又はC型レクチンヘッドドメインを含む少なくとも2つの単量体を含む構築物が好ましい。
【0041】
本明細書で言及されるCD23のヘッドドメイン(又はC型レクチンヘッドドメイン若しくはC型レクチンドメイン若しくはCTLD)という用語は、好ましくは配列番号1のV159からP290の配列(配列番号6)又はその断片若しくは変異体(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を指す。好ましいCTLDは、配列番号1のC160~C288の配列(配列番号7)又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を指す。別の好ましいCTLDは、配列番号1のF170~L277の配列(配列番号8)又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を指す。
vc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp (配列番号6)

c ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatc (配列番号7)

f qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrkl (配列番号8)
【0042】
本発明の構築物において使用するためのCD23のC型レクチンヘッドドメインを含む別の例示的な可溶性CD23又は分子は、(例えばder p1プロテアーゼ切断による)配列番号1のS155における切断によって得られる、又は得ることができるCD23のS155断片、又はその断片若しくはバリアンを含むか、又はそれに対応し得るであろう。例えばヒトCD23の場合、例示的なそのような分子は配列番号1のS156からS321の配列(配列番号9)、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。
sgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pasegsaesm
gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号9)
【0043】
そのような構築物は、CD23のヘッドドメイン(又はC型レクチンヘッドドメイン若しくはC型レクチンドメイン若しくはCTLD)の全部又は一部を含み、好ましくは全てのヘッドドメインを含む。好ましい構築物は、CD23の追加の残基、例えばストークドメインを含まないか、又はほんのわずか、例えばCD23、例えばストークドメインの最大40、35、30、25、20、15、又は10個の追加の残基、例えばCD23、例えばストークドメインの最大9、8、7、6、5、4、3、2又は1個の追加の残基しか含まない。そのような追加の残基は一般に、S156の(又はその前の)N末端側に位置するCD23の最大40、35、30、25、20、15、10個等の追加の残基(連続した残基)、すなわちN末端側のS156に直接隣接する最大10、15、20、25個等の残基に対応するであろう。αヘリックスストークの残基は、自己会合を導き得るため、それらの残基を避けることが好ましく、そして単量体が好ましい。したがって、好ましい構築物は自己会合(例えば二量体化又は三量体化)を可能にするのに十分なストーク残基を含まない。
【0044】
ストークドメインのいくつかの追加の残基を含む好ましい構築物は、そのような構築物において使用される最初のCD23残基として配列番号1(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)のE133を有する(ただし、他の例示的な構築物は、配列番号1のアミノ酸134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154又は155から始まり得る)。言い換えれば、いくつかの実施形態では、配列番号1(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)のE133(又はE133の前)、又は134、135等の他の残基の前のN末端への追加のCD23残基は構築物中に含まれない。言い換えれば、E133(又はE133の後のアミノ酸)、又は対応する残基が、そのような構築物において使用される最初のCD23残基である。
【0045】
したがって、ヒトCD23の場合、本発明の構築物において使用するためのCD23のC型レクチンヘッドドメイン及びストークドメインのいくつかを含む別の例示的な可溶性CD23又は分子は、配列番号1のE133からA292の配列(配列番号10)、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応し得るであろう。
easdller lreevtklrm elqvssgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pa
(配列番号10)
【0046】
したがって、ヒトCD23の場合、本発明の構築物において使用するためのCD23のC型レクチンヘッドドメイン及びストークドメインのいくつかを含む別の例示的な可溶性CD23又は分子は、配列番号1のE133からE298の配列(配列番号11)、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。
easdller lreevtklrm elqvssgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pasegsae
(配列番号11)
【0047】
したがって、ヒトCD23の場合、本発明の構築物において使用するためのCD23のC型レクチンヘッドドメイン及びストークドメインのいくつかを含む別の例示的な可溶性CD23又は分子は、配列番号1のE133からS321の配列(配列番号12)、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。
easdller lreevtklrm elqvssgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pasegsaesm
gpdsrpdpdg rlptpsaplh s (配列番号12)
【0048】
他の実施形態では、配列番号1(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)のS156(又はS156の前)のN末端への追加のCD23残基は構築物中に含まれない。言い換えれば、S156(又はS156の後のアミノ酸)又は対応する残基が、そのような構築物において使用される最初のCD23残基である。
【0049】
本発明において使用するためのCD23のC型レクチンヘッドドメインを含む好ましい天然に存在する形態の可溶性CD23又は分子は、(例えば、der p1プロテアーゼ切断による)配列番号1のS155及びE298における切断によって得られる、又は得ることができるderCD23断片、又はその断片若しくはバリアントを含むか、又はそれに対応する。例えば、ヒトCD23の場合、例示的なそのような分子は、配列番号1のS156からE298の配列(配列番号13)、又はその断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形態、例えば他の種のCD23における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか、又はそれに対応する。derCD23断片は、その天然の形態において単量体であり、本明細書の他の箇所で述べられているように、そのような単量体断片が好ましい。
sgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pasegsae
(配列番号13)
【0050】
CD23のそのような天然に存在する断片は便利であり、いくつかの実施形態では本発明における使用に好ましいが、可溶性CD23の任意の適切な断片が本発明の構築物において使用され得る。
【0051】
本明細書に記載の断片(及びそのバリアント)については、好ましい末端(C末端)残基が示されているものの、そのような断片(又はバリアント)は、CD23分子内の任意の適切なアミノ酸で終了することができ、例えば、L277、C288、又はP290を含むか、又はその後の任意のアミノ酸で終了することができる。
【0052】
本明細書に記載の断片(及びそのバリアント)については、好ましい開始(N末端)残基が示されているものの、そのような断片(又はバリアント)は、CD23分子中の任意の適切なアミノ酸から始まることができ、例えば、好ましい実施形態では、E133又はS156を含むか、又はその後の任意のアミノ酸から始まることができる。
【0053】
上記のように、CD23はIgEの低親和性受容体であるため、IgEに結合する能力があり、例えば、IgE Fc領域のCε2~4部分、特にIgE Fc領域のCε3部分に結合又は相互作用する能力を有する。IgEに結合する能力が保持されるか、又は存在することを条件として、CD23のCTLDを含む任意の適当な形態の可溶性CD23又は分子(又はその断片若しくはバリアント)が、本発明の構築物において使用され得る。したがって、本発明において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLD(又はその断片若しくはバリアント)の好ましい特徴は、IgE結合ドメインの存在である。IgE結合ドメインは、当技術分野で知られている様々なCD23分子においてマッピングされている。例えば、好ましいIgE結合ドメインは、配列番号1によって表されるように、ヒトCD23aアイソフォームのアミノ酸W184からA279の間に位置する。したがって例えば、配列番号1のアミノ酸W184からA279(配列番号14)に位置する配列又はそのIgE結合断片若しくはバリアント(又はCD23の他の形式における対応する配列若しくは同等な配列)を含むか又はそれに対応するIgE結合ドメインを含む、可溶性CD23分子若しくはCD23のCTLD、又はIgE結合ドメインを含むその断片若しくはバリアントが好ましい。
【0054】
したがって、これらの残基(wvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklga、配列番号14)を含む可溶性CD23分子又はCD23のCTLD、又はCD23の他の形態、例えばCD23の他の(非ヒト)種において見られるこれらの残基に対応する残基、又はIgEに結合する能力を保持するその断片又は変異(若しくはバリアント)バージョンが好ましい。
【0055】
配列番号1のIgE結合ドメインにおけるIgE結合のために特に重要な残基は、W184、R188、Y189、A190、L198、H202、I221、G222、R224、N225、L226、W234、V235、A271、C273、D274、K276、及びA279として同定されている。これらの残基は全て、IgE結合表面を形成するレクチンヘッドの連続的な表面に位置しているため、結合表面が機能し続けるようにこれらの残基を十分に保存することが重要である可能性が高い。したがって、本発明において使用するための可溶性CD23又はCD23のCTLDの任意の断片、変異形態又はバリアント形態は、可溶性CD23分子がIgEに結合できるように、好ましくは配列番号1以外のCD23配列における1つ若しくは複数、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又はそれ以上の残基、そして好ましくはこれらの残基の全て、又は同等な残基を含む。
【0056】
天然の単量体CD23、例えばderCD23断片は、約0.1~3μMの親和性でIgEに結合できる。したがって、本発明において使用するための任意の可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(特にそのようなCD23分子の単量体)は、同様な又は改善された親和性、例えば20μM未満、例えば15μM、10μM、5μM、4μM、3μM、2μM、又は1μM未満の親和性で(例えば個別に)IgEに結合できることが好ましい。より高い親和性、例えば500、400、300、200、100、50、40、30、20、10又は1nM未満の親和性でIgEに結合することができる可溶性CD23の形態もまた想定される。例えば、本明細書に記載の可溶性CD23分子の変異形態又はバリアント形態は、IgEに対するそのような改善された親和性を有するように選択され得る。
【0057】
本発明で使用するための、例示的な可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(特にそのようなCD23分子の単量体)、又はその断片若しくはバリアントは、例えば血清中等の生理的条件下で、FcεRIへのIgEの結合を防ぐ(又は低下させるか、若しくは著しく低下させる)のに十分安定な複合体を形成するのに十分高い親和性/アビディティーでIgEに結合することができる。可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)の少なくとも2つの単量体が構築物中に存在する実施形態では、単一の単量体のもの、又は個々の単量体の結合親和性の合計と比較して、少なくとも(又は最大)1.5倍、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、又は1000倍のIgEへの本発明の構築物の結合のアビディティーにおける改善又は増加が観察されることが好ましい。
【0058】
いくつかの実施形態において、構築物の部分a)の分子(又は単量体)、例えば構築物のCD23ベースの部分は、天然の単量体CD23と同様な親和性(天然の親和性付近)、例えば0.1μMと20、15、10、5、4、3、2.5、2、1.5、1、若しくは0.5μMとの間、例えば0.1~3μM又は0.1~2若しくは2.5μMの親和性で、又は0.5μMと20、15、10、5、4、3、2.5、2、1.5、若しくは1μMとの間の親和性で、又は1μMと20、15、10、5、4、3、2.5、若しくは2μMとの間の親和性で、又は2μMと20、15、10、5、4、若しくは3μMとの間の親和性で、又は3若しくは4μMと20、15、10、若しくは5若しくは4μMとの間の親和性で、IgEに(例えば個別に)結合することが好ましい。言い換えると、時にはμMの親和性(低親和性)でIgEに結合する分子(又は単量体)が好ましい。
【0059】
結合親和性(KD)を決定する任意の適切な方法が使用され得る。しかしながら、便利なことに、KDは表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ(例えば、BIAcoreアッセイ)で決定され得る。そのようなアッセイ、例えばIgE-Fcがチップ(固体支持体)に、例えばFcに対する抗体(例えば抗Fc Fab、例えば抗IgE Fc Fab)を介して捕捉(又は固定化)されているアッセイを任意の適切な方法で設計することができ、結合を評価するためにCD23の関連する形態の様々な濃度(例えば希釈系列、例えば倍希釈系列)が加えられる。したがって、上記の結合親和性(KD)の値は、SPRアッセイにおいて、例えば上記又は本明細書の他の箇所において記載された通りであり得る。特に好ましい方法は、本明細書の実施例のセクションに記載されている。
【0060】
更に、本発明において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、好ましくはIgEに結合、例えばIgE Fc領域のCε2~4部分、特にCε3部分に結合する、又はCε2~4部分、特にIgE Fc領域のCε3部分中のCD23結合部位を認識又は相互作用するだけでなく、例えば、高親和性受容体であるFcεRIへのIgEの結合を阻害する能力、例えば、防止又は妨害又は低下させる能力も有する。そのような阻害は、立体障害等の任意のメカニズムによるものであり得る。好ましくは、そのような阻害は、本発明の構築物中の可溶性CD23又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)に結合すると、高親和性受容体FcεRIに結合できなくなる(例えば、そのような結合が防がれているか、存在しないか、検出できないか、測定できない)ような、又は、そのような結合が、例えば構築物が存在しない場合と比較して、少なくとも有意に又は測定可能に低下又は阻害されるような、IgEのアロステリック(コンフォメーション)変化の誘導を伴う。したがって、本発明の構築物において使用するための好ましい可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、クローズドコンフォメーションにある場合、IgE(例えばIgE Fc領域のCε3ドメイン)に結合する能力を有する。そのような結合は、好ましくは、IgEのオープンコンフォメーションの形成を防止又は低下させることができ、言い換えれば、IgEをクローズドコンフォメーションにロック又は維持することができる(Wurzburgら、2000年、Immunity、13(3):375~385頁)。高親和性受容体FcεRIへの結合を可能にするのは、IgEのオープンコンフォメーション(例えば、IgE Fc領域のCε3ドメインのオープンコンフォメーション)である。したがって、本発明の構築物のCD23ベースの部分を使用してIgEをそのクローズドコンフォメーションにロック又は維持することで、FcεRIへの結合を防ぐことができる。立体障害とアロステリック(又はコンフォメーション)変化の両方が関与し得る。別の見方をすれば、IgEとFcεRI又はFcεRII(CD23)との結合は、相互に排他的な結合と見なすことができ、つまり、IgEの単一分子はFcεRIとCD23(FcεRII)に同時には結合できない。
【0061】
例えば、FcεRIへのIgEの結合を阻害するために、可溶性CD23分子を含む天然CD23分子によって、そのようなアロステリック変化を誘導することができ、したがって、好ましくは、この能力は、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)において保持されているか、存在している。また、その遊離形態においてIgEは、本発明の構築物中に存在するCD23ベースの分子を含むCD23による結合にアクセス可能なクローズドコンフォメーションを維持することに留意することも重要である。したがって、可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、遊離(又は遊離型若しくは循環)IgEに結合する能力を有する。
【0062】
CD23によって、したがって本発明の構築物によって誘発されるそのようなアロステリック変化は、当技術分野における他の抗IgE治療薬との重要な違いを提供する。例えば、オマリズマブ及びリゲリズマブ等のこれらの多くは、IgE上のFcεRI結合部位を標的とすることによって、CD23と高親和性受容体FcεRIの両方へのIgEの結合を競合的にブロックするが、本発明の構築物は、IgE上のCD23結合部位を標的とする。
【0063】
したがって、別の見方をすれば、本発明において使用するための好ましい可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、IgE Fc上の天然CD23結合部位に結合する(又は相互作用する)能力を有する。この結合部位は当技術分野において記載されており(Borthakurら、2012年、J. Biol. Chem. 287:31457~31461頁)、3つの不連続な配列からの残基を含んでいる(E-Fヘリックスからのアミノ酸405~407、409~411及び413、C-Dループからのアミノ酸377~380、及びC末端領域からの残基436、Uniprot P01854を参照)。この部位に結合するCD23ベースの分子(又は断片若しくはバリアント)の能力は、例えば、15N標識IgE-Cε3ドメインと非標識CD23を使用して、Borthakurら、2012年、上記によるNMR-HSQCマッピング試験を繰り返すことによって、又はHDX(水素-重水素交換)質量分析を使用することによって、当業者によって試験され得るであろう。
【0064】
別の見方をすれば、本発明において使用するための好ましい可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、IgEが既に高親和性受容体FcεRIに結合している場合、IgEに結合する能力を持たない(又はIgEへのわずかな、又は検出不可能な結合を示す)。本発明のタンパク質構築物が、その高親和性受容体FcεRIに結合しているときにIgEに結合する可能性を保持している場合、マスト細胞(又は他の細胞型)上の高親和性受容体FcεRIに既に結合しているIgEを架橋し、それによって炎症誘発性の高い脱顆粒反応を引き起こす可能性があるため、これは有効性の観点からだけでなく、安全性の観点からも重要である。したがって、本発明のタンパク質構築物(及び本発明のタンパク質構築物のCD23ベースの部分)は好ましくは、IgEに結合したときにFcεRIを架橋可能であるべきでない(例えば、それ(IgE)が細胞上のFcεRIに結合しているときに、IgEを架橋又はIgEに結合可能であるべきでない)。実際、この有利な特性は、添付の実験例における本発明の構築物によって実証されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)はまた、インテグリン結合部位及び/又はCD21結合部位、例えば、1つ若しくは複数の天然のインテグリン結合部位及び/又はCD21結合部位も含む、又は含有する。言い換えれば、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、存在する結合部位に応じて、インテグリン及び/又はCD21に結合する能力を有し得る。ヒトCD23の場合、インテグリン結合部位の必須のアミノ酸残基は、配列番号1の残基172から174に位置し、配列RKCを有していると考えられる。しかしながら、CD23の代替的な形態、例えば他の種のCD23における同等な又は対応するインテグリン結合部位は、当業者によって容易に同定又は決定されるであろう。同様に、ヒトCD23のCD21結合部位は、配列番号1の残基294から298又は293から298に位置すると考えられており、EGSAE(配列番号30)又はSEGSAE(配列番号24)の配列を有する。しかしながら、CD23の代替的な形態、例えば他の種のCD23における同等な又は対応するCD21結合部位は、当業者によって容易に同定又は決定されるであろう。
【0066】
その他の実施形態では、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、インテグリン結合部位及び/又はCD21結合部位を含まないか、又は含有せず、例えば、天然のインテグリン結合部位及び/又はCD21結合部位の1つ若しくは複数を含有しないであろう。言い換えれば、本発明の構築物において使用するためのこれらの可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、インテグリン及び/又はCD21に結合する能力を有さないであろう(例えば、検出できないか、わずかな結合を示す)。そのような形態のCD23は、状況によっては、例えば望まれない結合相互作用を防ぐために好まれるであろう。したがって、好ましい本発明の構築物の部分a)成分は、CD21結合部位を含まないか、又は含有しない。他の好ましい本発明の構築物の部分a)成分は、インテグリン結合部位を含まないか、又は含有しない。他の好ましい本発明の構築物の部分a)成分は、CD21結合部位又はインテグリン結合部位を含まないか、又は含有しない。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)はまた、CD23のC末端テール領域の全部又は一部を含む、又は含有する。ヒトCD23の場合、CD21結合部位/結合領域に加えて、CD23のC末端テール領域は配列番号1の残基S299からS321を含み、配列番号25に示す配列を有すると考えられる。しかしながら、CD23の代替的な形態、例えばCD23の他の種の同等な又は対応するC末端テール領域は、当業者によって容易に同定又は決定されるであろう。C末端テール領域の任意の数のアミノ酸が含まれてよく、例えば配列番号25の、例えば少なくとも1、2、3、4、5、10、15又は22個のアミノ酸が含まれ得るであろう。他の実施形態では、本発明の構築物において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、CD23のC末端テール領域からの残基を含まず、例えば配列番号25からの、又は配列番号25に対応する残基を含まないであろう。言い換えれば、CD23のC末端テール領域は存在しない。
【0068】
そのような部位を含まない可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、当業者によって容易に開発又は改変され得る。例えば、そのような部位の全部又は一部は、生物学的機能(必要に応じてインテグリン結合又はCD21結合)が破壊、低下、又は除去されるように、部位を構成する1つ若しくは複数の残基の欠失によって、又は部位を構成する1つ若しくは複数の残基の変異によって、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されているような様々な所望の特性等、出発分子又は親分子の他の機能特性に影響を与えることなく、除去され得る。したがって、そのような分子は、CD23分子のバリアント若しくは変異体、又は天然の可溶性CD23配列に実質的に相同であるCD23分子の例となるであろう。
【0069】
特にCD21部位(又はC末端テール領域)の場合、本発明の構築物において使用するためのCD21部位(又はC末端テール領域)を持たないCD23ベースの分子を生成する便利な方法は、CD21部位(又はC末端テール領域)の前で切断されたCD23分子、又はそれに対応するCD23の断片を使用することである。例えばヒトCD23の場合、CD23ベースの分子はS293又はA292又はP291又はP290又はC288において(及びそれらを含んで)、又はその前で切断され得る。時にはA292又はC288における(及びA292又はC288を含む)切断が望ましい。したがって、好ましいCD23ベースの分子は、配列番号1のS156からA292(配列番号15)であるか、又はそれに対応する。別の好ましいCD23ベースの分子は、配列番号1のS156からC288(配列番号31)であるか、又はそれに対応する。同様に、CD21に結合する能力が除去されることを条件として、CD21結合部位内における切断が想定され得る。したがって、ヒトCD23の場合、CD23ベースの分子は、E294、G295、S296、又はA297において(及びそれらを含んで)切断され得る。C末端テール領域内、例えばヒトCD23の場合はS299とS321の間、又は配列番号25に対応する配列内の任意の箇所における切断もまた想定される。
【0070】
本発明の他の実施形態におけるように、他の形態のCD23、例えば他の種のCD23における対応する、又は同等な配列が等しく使用され得る。例えば、配列番号1のS156からC288に対応するイヌの配列が、以下に概説される(配列番号32)。したがって、本発明の好ましい構築物は、本明細書の他の箇所に記載されているように、このイヌの配列、又はその断片若しくはバリアントを含むことができ、これは例えば、本明細書の他の箇所に記載されるように、それらに少なくとも70%等の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
sgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatctp pa
(配列番号15)

sgfvc ntcpekwinf qrkcyyfgkg
tkqwvharya cddmegqlvs ihspeeqdfl tkhashtgsw iglrnldlkg efiwvdgshv
dysnwapgep tsrsqgedcv mmrgsgrwnd afcdrklgaw vcdrlatc
(配列番号31)

NGSECNTCPEKWLNFQRKCYYFGEEPKKWIQARFACSKLQGRLASIHSQEEQDFLARYANKKGTWIGLRDLDREGEFIWMDENPLNYSNWRPGEPNNGGQGEDCVMMQGSGQWNDAFCGSSLDGWVCDRLATC (配列番号32)
【0071】
そのような部位の除去は任意であり、そのような部位は、本発明における使用が想定される全ての形態のCD23において存在すらしなくてもよい。例えば、マウスCD23はCD21に結合する能力を有さず、CD21との結合に必要な残基を含んでいない(CD21結合部位を含んでいない)。
【0072】
本明細書の他の箇所により詳細に記載されているように、IgEへのCD23結合はカルシウム依存性/カルシウム感受性である(Yuanら、2013年、J. Biol. Chem. 288(30):21667~21677頁)。したがって、CD23とIgEとの結合(例えば、良好な又は安定な結合)は、高カルシウム、例えば高生理的カルシウムの条件、例えば細胞外又は間質、例えば組織内又は血清又は血液中に見られるカルシウムのレベルにおいて起こる。そのようなカルシウムのレベル(又はカルシウムイオン濃度)は一般に約2mM、例えば1.0から2.5mM又は1.0から2.0mMである。対照的に、CD23とIgEとの結合は低カルシウム、例えば低生理的カルシウムの条件、例えばエンドソーム等の細胞内酸性区画等の体の酸性区画に見られるレベルにおいては、非常に低下しているか、又は存在しないか、又は欠如している(例えば本質的に存在しない)。そのような低レベルのカルシウム(カルシウムイオン濃度)は、一般に高カルシウムレベル(カルシウムイオン濃度)の30から1000倍低く、100又は500nmの低レベルも報告されているものの、例えば約3~30μMである。したがって、IgEに結合したCD23(例えば、CD23-IgEの複合体)が、例えば血清又は組織からエンドソームに取り込まれた際、高カルシウム環境から低カルシウム環境に移行すると、CD23からIgEが放出、例えば急速に放出される。
【0073】
IgEへのCD23結合のこのカルシウム依存性は、本発明の背後にある非常に重要で有利な特徴である。したがって、本発明の構築物において使用される任意の可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、好ましくはカルシウムを保持するか、又はカルシウムに結合する能力を有するべきであり、また、高カルシウム又は高生理的カルシウム、例えば上記の血清カルシウムレベルの条件下で、IgEを保持するか結合、例えば安定に結合する能力も有するべきであり、そして、低カルシウム又は低生理的カルシウム、例えば上記のようなエンドソームカルシウムレベルの条件下では低い、例えば有意又は測定可能な程度に低いIgEの結合を示すべきであるか、又は結合を示さない若しくは有意な結合を示さないべきである。本明細書におけるカルシウムの存在又はカルシウムレベルへの言及、例えば高カルシウムレベル又は低カルシウムレベル等への言及はまた、カルシウムイオンの存在又はカルシウムイオン濃度への言及も含む。
【0074】
したがって、本発明のいくつかのタンパク質構築物において、IgEへの構築物の部分a)の前記結合は、血清カルシウムレベルと比較して、エンドソームカルシウムレベルでは低下している。
【0075】
ヒトCD23では、IgEへのカルシウム依存性結合に関与すると考えられている残基は、ループ4のThr251、Ser252、Glu249、Asp270、Asn269と、ループ1のAsn225及びAsp258である。したがって、本発明の構築物において使用される任意の変異体CD23ベースの分子において、これらの残基の1つ若しくは複数、好ましくはこれらの残基の全てが保持されているか、又は存在することが好ましい。
【0076】
本発明の構築物において使用するための他のCD23ベースのバリアント分子では、カルシウム結合部位を変更又は変異させ、IgEに対する結合親和性を増加させることにより、IgEに対するCD23の結合親和性を増加させることが可能であり得る。しかしながら、一部の実施形態ではIgEとCD23の間の低い又は中程度の親和性相互作用(個々の親和性相互作用)が好ましいため、同様に、バリアント又は変異型CD23分子は、例えばカルシウム誘導性のIgEに対する親和性の増加をもたらすカルシウム結合の増加を示さないことが好ましい。したがって、一般に、いくつかの実施形態では、IgEに対する親和性が増加した変異型若しくはバリアントCD23ベース分子(例えば天然若しくは野生型の分子又は出発分子と比較して、例えば高親和性の変異体又はバリアント)、又はカルシウム結合が増加した(例えば天然若しくは野生型の分子又は出発分子と比較して)変異型又はバリアント型のCD23ベース分子は、本発明の構築物では使用されない。例えば、本発明において使用するための好ましいCD23ベースの分子は、カルシウム結合を増加させ、したがってIgEに対する親和性を増加させると考えられるヒトCD23の残基258(又は他の形態のCD23、例えば他の種のCD23における対応する残基)にDからEへの変異を含まないか、又は含有しない。したがって、本発明において使用するための好ましいCD23ベースの分子は、天然又は野生型のCD23分子と同様なカルシウム結合(例えば、有意に異ならないレベルのカルシウム結合)を示す。したがって、本発明において使用するための他の好ましいCD23ベースの分子は、例えば本明細書の他の箇所に記載されているような親和性レベルで、天然又は野生型CD23分子と同様なIgE結合(例えば、有意に異ならないレベルのIgE結合)を示す。
【0077】
構築物の他の好ましい特徴は、当業者によって容易に考案され得るが、例えば、非哺乳類宿主における生成を改善するために、例えばグリコシル化部位又は翻訳後修飾の対象となる他の部位の除去(又は構築物への非包含)、また、例えば構築物を生成又は投与する際における構築物の望ましくない切断又はプロセシング(例えば、タンパク質分解切断又はプロセシング)を回避するために、プロテアーゼ切断部位の除去(又は構築物への非包含)を含み得るであろう。そのような部位は、標準的な技術を使用して当業者によって容易に同定及び除去され得る。
【0078】
本発明の好ましいタンパク質構築物は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されるように、以下の特徴の1つ若しくは複数、2つ以上、3つ以上、又は全てを含むか、又は包含する:
i)CD21結合部位がない;
ii)インテグリン結合部位がない;
iii)グリコシル化部位がない;
iv)プロテアーゼ切断部位がない。
【0079】
これらの特徴は、エンドソームに対して血清中のIgEに対する構築物の部分a)のカルシウム感受性結合と相まった構築物の部分b)によって媒介されるFcRn結合等、本明細書の他の箇所において説明されるような好ましい機能的特徴に加えて、構築物中に存在し得る。
【0080】
上記から、CD23分子の断片(機能的断片)又はバリアント(機能的バリアント)もまた、本発明において使用するための適切な可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子であることが分かる。
【0081】
本発明において使用するための適切な断片又はバリアント(適切な可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子)は、本明細書の他の箇所で説明されるように、適切な記載の機能的特徴、例えばIgE結合等の1つ又は複数が保持されることを条件として、任意の長さであり得る。断片は通常、元の配列又は親の配列よりも長さが短い。例示的な長さ/断片の長さは、少なくとも50、60、70、80、100、125、140、150、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225又は250アミノ酸の長さであり得るであろう。別の見方をすれば、例示的な長さ/断片の長さは、最大60、70、80、100、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、200、225、250、275、300、又は350アミノ酸の長さであり得るであろう。したがって、例示的な長さ/断片の長さは、50、60、70、80、90、100、110、120、125、又は130アミノ酸から、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、225、250、275又は300又は350アミノ酸までの長さであり得るであろう。本明細書の他の開示から明らかであるように、全長の天然又は野生型CD23分子(例えば配列番号1のもの)又は他の種の同等物は、本発明の構築物では使用されず、本発明の構築物における使用には、例えばCD23の細胞外領域が一般に好ましい。特に、CD23の細胞質領域及び膜貫通領域は、包含には望ましくない。全長のストーク領域も望ましくない。しかしながら、いくつかの実施形態では、天然又は野生型のCD23に見られる配列に対応するCD23配列(例えばCD23の断片)の使用が好ましい。
【0082】
本発明において使用するための可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子の適切なバリアント(機能的バリアント)は、配列相同性によって便利に定義することができ、本明細書で定義されるCD23分子の様々な配列に実質的に相同であるCD23配列が、元の(又は親の)CD23分子の適切な機能的特徴が保持されることを条件として、本発明において容易に使用され得る。
【0083】
適切なバリアント(又は変異配列若しくは実質的に相同な配列)は、上記のCD23配列に対して少なくとも70%、75%又は80%の配列同一性、例えば少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり得るであろう。これらのバリアント配列は、本明細書の他の箇所で定義されているように、CD23分子の適切な機能特性を保持又は有するべきである。適切な機能特性が保持されていれば、これらの配列(又はこれらの相同配列)の機能的な切断物又は断片も使用され得るであろう。可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子の変異体又はバリアントの他の好ましい例は、上記のCD23配列中に最大20個、例えば最大18、15、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の変更されたアミノ酸を含む配列である。
【0084】
%同一性は、任意の都合のよい方法で評価され得る。しかしながら、配列間の相同性の程度を決定するために、配列のマルチプルアラインメントを行うコンピュータプログラム、例えばClustal W(Thompsonら、Nucleic Acids Res.、22:4673~4680頁、1994年)が有用である。2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージを計算するための他の方法は、一般に当業者に認識されており、例えばCarillo及びLiptonによって記載されたものを含む(SIAM J. Applied Math.、48:1073、1988年)。
【0085】
一般的に、そのような計算にはコンピュータプログラムが使用されるであろう。ALIGN(Myers及びMiller、CABIOS、4:11~17頁、1988年)、FASTA(Pearson、Methods in Enzymology、183:63~98頁、1990年)、及びギャップ付きBLAST(Altschulら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402頁、1997年)若しくはBLASTP(Devereuxら、Nucleic Acids Res.、12:387、1984年)のような、配列のペアを比較及び整列するプログラムもこの目的に有用である。
【0086】
基準点を提供することにより、少なくとも70%等の同一性を有する本発明に従う配列が、デフォルトパラメータを用いたALIGNプログラム(例えば、GENESTREAMネットワークサーバ、IGH、モンペリエ、フランスにおいて、インターネット上で利用可能)を使用して決定され得る。
【0087】
本明細書に記載される本発明の全ての側面において、可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子への言及は、本明細書に記載されているように、可溶性CD23の断片若しくはバリアント又はCD23のCTLDを含む分子の断片若しくはバリアントを等しく意味し得る(必要に応じて)。
【0088】
本発明のタンパク質構築物の可溶性CD23成分(又はその断片若しくはバリアント)又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)は、IgEに結合する構築物の能力を提供する。1分子のCD23(又はその断片若しくはバリアント)は、例えばIgEに対する結合親和性が十分である場合に、この能力を付与し得る。これに関して、単量体のCD23は0.1~3μMの領域の親和性(Kd)でIgEに結合できることが当技術分野において知られている。したがって、約20、15、10、5、4、3、2、若しくは1μM、又は500、400、300、200、100、50、40、30、20、10若しくは1nM又はそれ未満のKdでIgEに結合する能力を有する単一(又は単量体)のCD23分子が、例えば本明細書の他の箇所に記載されているようにして使用され得る。そして、CD23(又はCD23のCTLD)の断片若しくはバリアント、例えばCD23(又はCTLD)に対して特定の配列同一性を有する配列が使用される本発明の実施形態においては、天然の可溶性CD23分子が、それらが改善された結合親和性を有するが、(例えばカルシウムに対する)エンドソーム感受性は保持されるように、改変され得るであろう。しかしながら、同様に、いくつかの実施形態においては、天然(又は天然に近い若しくは低い)結合親和性が好ましく、例示的なそのような親和性は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0089】
しかしながら、好ましくは、2つ以上、例えば2つの可溶性CD23分子又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)が、本発明の構築物中に提供される。より好ましくは2つ以上、例えば2つの単量体、又は2つより多い単量体(例えば、4、6、8又は10個の単量体)が提供される。したがって、好ましいタンパク質構築物は、好ましくは2つ(又は少なくとも2つ)の単量体によって提供される2つ(又は少なくとも2つ)のIgEに対する結合部位を有する。
【0090】
CD23の2つ以上の分子(又は単量体)が存在する場合、タンパク質構築物は一般に、好ましくは各分子又は単量体がIgEに結合できるように、個々のCD23ベースの分子又は単量体が分離されるように設計され、それによりアビディティー効果によって、例えば結合アビディティーの向上をもたらす協調的結合によって、IgEに対する結合親和性を全体的に高めることができる(例えば、CD23の2つの分子又は単量体がIgEの1つの分子に結合する場合、例えば、1つのCD23分子又は単量体がIgE Fcの一方の鎖に結合し、もう一方のCD23分子又は単量体が同じIgE Fcの他の鎖に結合する場合、又は言い換えれば、2つ(又は両方)のCD23分子(又は単量体)又はCD23ヘッドが、単一のIgE Fcの各鎖からの両方のCD23結合ドメインと結合できる場合)。本発明の構築物とIgE分子との間のこの種の相互作用は、本明細書ではシス結合とも呼ばれる。或いは、CD23の2つ以上の分子(又は単量体)が存在する本発明のそのような構築物は、例えば2つの個々のIgE分子に結合する本発明の構築物によって、1つより多いIgE分子が本発明の構築物に結合することを可能とする。本発明の構築物とIgE分子との間のこの種の相互作用は、本明細書ではトランス結合とも呼ばれ、これはひいては、高次構造又は高次オリゴマー等の複合体の形成を可能とする。より高次の構造が形成されるそのような相互作用はまた、改善された結合アビディティーももたらし得る。好ましい相互作用は、IgEに結合した構築物中の両方(2つのCD23分子が存在する実施形態において)又は全てのCD23分子を有する。
【0091】
協調的結合の代替的又は追加の様式は、IgE(又は複数のIgE)上の全てのCD23結合部位が、高次の形態(高次のオリゴマー)として占められ、単量体単独又は構造内の個々の単量体の結合親和性の合計よりも大きな、好ましくは有意に大きな、IgEとの結合の見かけの親和性(機能的親和性、相対的親和性、又は全体的な親和性)による高アビディティー相互作用をもたらすように、IgE Fc(例えば複数のIgE Fc/複数のIgE分子)に結合する1つより多いCD23単量体を含み得る。例えばCD23の2つの分子(例えばderCD23の2つの分子又はCD23の他のCTLD)は、IgEの単一分子又は同じIgE Fcに結合できることが知られており(そのようなシス相互作用を示す図1の概略図も参照)、したがって、本発明の好ましい構築物は、これを再現し得る。
【0092】
好ましくは、CD23の2つ以上の分子(好ましくは単量体)が存在する場合、これは、CD23の少なくとも1つの分子がIgE Fc領域を構成する鎖の1つに結合し、構築物中のCD23の他の少なくとも1つの分子が同じIgE Fc領域を構成する他の鎖に結合することを可能とし(例えば、シス相互作用を介して)、それにより結合親和性を改善するためのアビディティー効果を可能とする。本発明の好ましい構築物は、それらがCD23の2つの分子(好ましくは単量体)、したがって2つのIgE結合部位を含むという点で二価である。上記のような単純なトランス結合相互作用(例えば、2つの個々のIgE分子に結合する本発明の1つの構築物)もまた起こり得る。しかしながら、より高次の構造又はオリゴマーもまた想定され、例えば、IgE上の全てのCD23結合部位が占有されるような、CD23単量体のIgE Fcへの協調的結合によって、CD23の2つの分子を含む構築物から形成され得る。そのような構造は、例えば、それらが全てCD23に結合しているために、構造中に存在するIgE分子に遊離のCD23結合部位がないリング状又は閉じた構造を形成し得る。そのような構造の形成はまた、単量体単独又は構造内の個々の単量体の結合親和性の合計よりも大きい、好ましくは有意に大きい、IgEとの結合の機能的親和性を有する高いアビディティーの相互作用も、もたらすであろう。例えば、それぞれがCD23の2つの単量体(又は分子)を有する本発明の2つ又は3つのタンパク質構築物は、それぞれIgE-Fc領域に結合することによって相互作用(連結)し、2つ又は3つのIgE分子とリング状構造を形成し得る。より大きなリング状構造も形成され得るが、その中には一般に、本発明の構築物及びIgEの同数の分子が存在するであろう。
【0093】
そのような構造は、例えば、本発明の構築物が2つのCD23分子(単量体)を有し、IgE上の全てのCD23結合部位が占有されている場合に形成できる。
【0094】
CD23の2つ以上の分子(好ましくは単量体)が使用される場合、それらは同じ又は同一の分子又は単量体(例えば、分子又は単量体の「ペア」又は複数の「ペア」、例えば複数の同一の「ペア」と呼ばれ得る)であることが好ましい。
【0095】
したがって、本発明の好ましい構築物において、CD23分子、好ましくはCD23単量体は、それらがそれぞれ同じ(単一の)IgE Fc二量体の1つの鎖に結合できるように、すなわち分子の1つ(好ましくは単量体)がIgE Fc二量体の一方の鎖に結合し、もう一方の分子(好ましくは単量体)が同じIgE Fc二量体のもう一方の鎖に結合するように、空間的に分離される。別の言い方をすれば、1:1の全分子化学量論が観察される。したがって、好ましくは、CD23の2つの分子(好ましくは単量体)が使用されるIgEに対する本発明の構築物の全体的な結合親和性(アビディティー)は、同じ単一分子(又は単量体)が使用される場合、観察される結合親和性よりも増加(又は改善)、好ましくは有意に増加(又は改善)している。より好ましくは、CD23の2つの分子(好ましくは単量体)が使用されるIgEに対する本発明の構築物の全体的な結合親和性(アビディティー)は、同じ単一分子(又は単量体)を使用した場合に観察される結合親和性の合計よりも増加(又は改善)、好ましくは有意に増加(又は改善)している。全体的な結合親和性における同様の増加はまた、例えば本明細書の他の箇所で説明されるように、より高次の構造又はオリゴマーが形成される場合、CD23の2つより多い分子(好ましくは単量体)が使用される構築物にも適用される。
【0096】
本発明の好ましい構築物は、単量体型のCD23を使用する。言い換えれば、本発明の構築物は、好ましくはCD23の二量体又は三量体又は他のオリゴマー(例えばホモ二量体、ホモ三量体、又は他のホモオリゴマー若しくはホモマルチマー)を含まない。本明細書で使用される二量体、三量体、オリゴマー等の用語は、物理的に会合又は自己会合している分子を指す。したがって、CD23の単量体を使用する本発明の好ましい構築物において、構築物内の個々のCD23分子は、例えば二量体又は三量体において互いに直接物理的に会合していないか、互いに直接物理的に相互作用していないか、自己会合しておらず、そして、それぞれがIgEに自由に結合、特に構築物中のCD23の少なくとも1つの単量体がIgE Fcの2つの鎖のそれぞれに結合するように単一のIgE分子に結合する(例えば、シス相互作用によって)、又は本明細書の他の箇所に開示されているように、構築物中のCD23の少なくとも1つの単量体がIgE Fcの鎖に結合し、構築物中のCD23の他の少なくとも1つの単量体が異なるIgE Fcの鎖に結合するように、複数のIgE分子に結合する(例えばトランス相互作用によって、例えば2つの遊離(又は可溶性)IgE分子を連結するか、又は他の高次構造を形成する)、別個の実体として存在する。
【0097】
したがって、本発明の好ましい構築物は、CD23の2つ以上の単量体(又は分子)を有する場合、単一のIgE分子上の2つのエピトープ(一般に2つの同一のエピトープ、単一のIgE Fcの各鎖上に1つ)が、本発明の単一の構築物によって結合され得るという点でバイパラトピックと見なされ得る。他の好ましい構築物は、例えば2つの個々のIgE分子への二価結合を可能とし、より高次の構造又はより高次のオリゴマー等の複合体の形成を可能とし得る。これらの形態の混合物、そして実際、本明細書に記載されている他の形態のいずれかもまた形成され得る。
【0098】
したがって、本発明の好ましいタンパク質構築物では、構築物中に存在するペアのCD23単量体の個々のCD23単量体が、IgEの同じ標的分子と同時に相互作用し得る。CD23とIgEの間の各単一結合相互作用は(例えば、より低い親和性の(例えば天然の)相互作用が関与する場合、相互作用の親和性に応じて)容易に破壊され得るが、ペアの両方のメンバーが同時にIgE抗原と相互作用している場合、特に生理的条件下、例えば生理的pH又は例えば血清中において、全体的な効果は、CD23単量体のペアのIgEに対する相乗的で強力な結合となる。更に、単一の結合相互作用が破壊された場合、他の相互作用の存在は、IgE標的分子が拡散しないことを意味し、それにより、破壊された結合相互作用が(例えばアビディティーのために)回復する可能性が高いことを意味する。同様な相互作用はまた、本明細書の他の箇所で記載されているように、より高次の構造でも想定される。
【0099】
したがって、個々のCD23単量体(又は分子)が低い又は中程度の親和性で標的抗原(IgE)に結合する本発明の実施形態においては、CD23単量体と標的抗原(IgE)との個々の相互作用は親和性が低い又は弱いものの、各メンバーが低親和性又は弱い相互作用で標的抗原(IgE)と相互作用するCD23単量体のペアが存在する(つまり、単一の構築物中に複数の個別の弱い相互作用が存在する)という事実は、単一の標的IgE分子との全体的な相互作用が、高いアビディティー、つまりアビディティーによる高い全体的親和性という重要な利点を有すること、又は標的抗原の天然の機能を阻害する能力、例えばリガンドに結合するその能力、例えばIgEがその高親和性受容体であるFcεRIに結合する能力に関して高い効力を有すること、つまり、高い効力で標的-リガンド相互作用を阻害し得ることを意味する。同様な(アビディティーによる全体的親和性の高い)相互作用も、本明細書の他の箇所で記載されているように、より高次の構造で想定される。
【0100】
したがって、本発明の好ましいタンパク質構築物(そして特に、個々のCD23単量体が低い又は中程度の親和性、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるようなIgEに結合する単量体の天然の親和性付近で標的IgEに結合する実施形態)では、CD23単量体のペアの単一のメンバー(単一の単量体CD23)が結合するのではなく、ペアの両方のメンバーが同じ標的IgE分子に結合する場合、IgEに対する結合親和性(アビディティー)の全体的な増加又は改善(又は好ましくは相乗的な増加若しくは改善)が観察される。そのような全体的な増加は、測定可能な増加、好ましくは有意な増加、より好ましくは統計的に有意な増加(例えば0.05未満の確率値)を含む。例えば、IgEに対する全体的な結合親和性は、単一の構築物内のCD23単量体のペアの2つのCD23単量体が、同じ標的IgE分子に結合している場合、ペアの単一の単量体が結合している場合と比較して(又は個々の単量体の結合親和性の合計と比較して)、1倍より大きく、例えば少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、又は1000倍より大きく、例えば少なくとも(又は最大で)5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、又は1000倍に増加(又は改善)され得る。これらの増加又は改善は、本明細書の他の箇所に記載されているように、生理的pH(例えばpH7.4又はその周辺)及び/又は生理的カルシウムレベルにおいて観察されるべきである。結合親和性におけるこの全体的な増加(又は改善)は、CD23単量体ペアの2つの単量体が存在する構築物と、単一の単量体(つまりペアの1つのメンバー)のみが存在する構築物とを使用して、標的抗原に対する結合親和性を測定及び比較することで容易に試験され得る。相乗的な増加又は改善とは、CD23単量体のペアの両方のメンバーが同じ標的抗原に同時に結合する場合の標的抗原(IgE)に対する全体的な(組み合わせた)結合親和性が、それぞれのCD23単量体のペアの標的抗原に対する個々の結合親和性の合計よりも大きいことを意味する。
【0101】
別の見方をすれば、相乗的な増加又は改善とは、CD23単量体のペアの両方のメンバーが同じ標的抗原(IgE)に結合している場合に、ペアの単一のCD23単量体が結合している場合と比較して、標的抗原(IgE)に対する全体的な結合親和性が1倍、例えば少なくとも1.5倍、又は2倍(例えば上記の値)より大きく増加(又は改善)していることを意味する。全体的な結合親和性(アビディティー)の同様な増加及び改善はまた、本明細書の他の箇所で記載されているように、より高次の構造、例えば本発明の構築物の少なくとも2つの分子及びIgEの少なくとも2つの分子(典型的には、両方の同じ(又は等しい)数)を含む高次構造であって、例えばIgE上の全てのCD23結合部位が占有されているリング状の構造が形成されている構造でも想定される。
【0102】
本発明の他の好ましいタンパク質構築物では、1対より多いCD23分子、好ましくは単量体が使用され得る。これらの複数のペアは、第1のペアと同じでも、異なるペアでもよい。したがって、本発明のタンパク質構築物は、例えば、4、6、8、又は10個の個々のCD23分子、好ましくは単量体を有するか、又はそれらを含み得る。これらの複数のペアは、例えば、各ペアが別個のIgE分子に(例えば単一のIgE分子、例えばシス結合によって)結合し得るように、又は本明細書の他の箇所に記載されるように、より高次の構造又はオリゴマーを形成し得るように、適切に配置されるであろう。例えば4つ(例えば2対)の個々のCD23分子、好ましくは単量体が使用される実施形態では、2つ(例えば1対)の個々のCD23分子、好ましくは単量体が、構築物の一端(例えばN末端)に存在することができ、そして、別の2つ(例えば第2のペア)の個々のCD23分子、好ましくは単量体が、構築物のもう一方の端(例えば、C末端)に存在することができる。或いは、4つ(例えば2対)の個々のCD23分子、好ましくは単量体が使用される他の実施形態では、個々のCD23分子の両方のペア、好ましくは単量体が、例えば空間構成において(例えば、ペアの両方のメンバーが同じポリペプチド鎖上で一緒に連結されている場合、又はペアの両方のメンバーが異なるポリペプチド鎖上にある場合)、構築物の同じ末端(例えば、N末端又はC末端)に存在することができ、これは、各ペアがIgEの単一分子と相互作用することを可能とする。そのような構築物はまた、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるような協同的結合によって、より高次の構造又はオリゴマーを形成することもできる。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、sCD23又はsCD23断片若しくはバリアントの個々の分子、又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)の少なくとも1つは、sCD23又はsCD23の断片若しくはバリアント、又はCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)と、標的抗原(IgE)との結合がエンドソーム条件(細胞エンドソーム内で見られる条件)に感受性となるように改変又は選択される。「エンドソーム条件に感受性である」とは、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)と標的抗原(IgE)との結合が、細胞内エンドソームにおいて見られる条件下で破壊されるか、少なくとも弱められるか、又は低下し得ることを意味する。以下の議論はカルシウム感受性、すなわち、本明細書の他の箇所に記載されているように、高カルシウム又は血清カルシウム又は生理的カルシウムの条件下でIgEに結合し、本明細書の他の箇所に記載されているように、エンドソームカルシウム条件下又は低カルシウム下でのIgEとの結合の低下を示す分子に焦点を当てている。しかしながら、他のエンドソーム条件に対する感受性、例えばpHへの感受性を使用することもでき、構築物の部分a)に適切な分子は、本明細書の他の箇所に記載されているように、生理的pH(例えばpH7.4)の条件下でIgEに結合し、そして、本明細書の他の箇所に記載されているようなエンドソームpH条件下において(例えば、pH6.0又は6.5において)IgEとの結合の低下を示すものであり得るであろう。
【0104】
特に、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)とIgEとの間の相互作用は、カルシウムレベルの変化に感受性であり得、例えば、カルシウムレベルが約2mMである血清においては、相互作用が強いか又は安定しているが、カルシウムイオン(Ca2+)濃度が実質的に2mM未満のレベル、例えば、哺乳類のエンドソームにおいて典型的に見られるレベル、例えば3~30μM又は30~300μMのカルシウムにまで低下した場合には、安定性が低くなるか、弱くなるか、破壊又は低下する(例えば測定可能に低下、又は例えば0.05未満の確率値で有意に低下する)。言い換えれば、sCD23又はsCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)とIgEとの間の相互作用は、循環(血清)カルシウム濃度又は組織/間質カルシウム濃度において一般に強いか又は安定しているが、低エンドソームカルシウム濃度又はエンドソーム条件下では一般に、安定性が低くなるか、弱くなるか、破壊又は低下する(例えば測定可能に低下、又は例えば0.05未満の確率値で有意に低下する)。
【0105】
この特徴は、エンドソームを介した本発明のタンパク質構築物のリサイクルを有利に可能にし得る。そのような実施形態では、負荷されたタンパク質構築物、すなわち本発明のタンパク質構築物は、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)がIgE標的抗原に結合すると、エンドソーム経路に入るか、又はエンドソーム経路に内在化され、その後、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)に結合したIgEは、エンドソーム条件下でタンパク質構築物から放出又は解離され、無負荷又は空のタンパク質構築物が循環に戻されてリサイクルされ、より多くの標的抗原(IgE)を捕捉し、そしてそれにより、タンパク質構築物のin vivoにおける半減期を大幅に延長する。
【0106】
したがって、これらの実施形態において、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)とその標的抗原(IgE)との間の相互作用は、本発明のタンパク質構築物がエンドソーム又はエンドソーム経路に入った際に、標的抗原(IgE)の少なくとも一部が放出又は解離され得るように、十分に弱められる。そのようなタンパク質構築物において使用するためのCD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)は適宜、例えば血清pH、例えばpH7.4又はその周辺、及び血清中に見られる通常のカルシウムレベル(例えば、本明細書の他の箇所に記載されているような2mM又は1mM付近)又は血清中に見られる観念的カルシウムイオン濃度におけるIgEとの結合をアッセイし、そしてそれを、エンドソームpH及び/又は本明細書の他の箇所に記載されているようなカルシウム濃度におけるCD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)とIgEとの結合と比較し、そして、より高いカルシウム濃度(又は血清pH)における標的抗原(IgE)との結合が、エンドソームカルシウム濃度(又はエンドソームpHレベル)における結合よりも、測定可能に高い(好ましくは、例えば0.05未満の確率値で有意に高い)CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)を同定することによって、選択され得る。しかしながら、そのような実施形態では、標的抗原(IgE)との個々の相互作用がより弱く、したがってエンドソーム条件下、例えば、より低いカルシウムレベル(Ca2+イオン)でより容易に破壊又は弱められるため、生理学的に正常な血清カルシウム濃度において標的抗原(IgE)に対して低い、又は中程度の親和性を有するCD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペ
ア若しくは複数の分子)の使用が好ましい。
【0107】
したがって、この実施形態では、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)が、生理的な血清又は間質組織カルシウム濃度において、標的抗原(IgE)に高いアビディティー(全体的な親和性、相対的な親和性、機能的な親和性)で結合でき、そしてエンドソーム、例えば哺乳類のエンドソームにおいて典型的に見られるカルシウム濃度で標的抗原(IgE)を放出又は解離することが重要である。
【0108】
したがって、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)とIgEとの間の結合相互作用は、上記のように血清カルシウム濃度において十分に安定でなければならないが、結合は、結合したIgE又はある割合(好ましくは測定可能な又は有意な割合)の結合したIgEの放出を可能にするために、上記のように、エンドソームカルシウム濃度において有意に又は十分に弱められなければならない。
【0109】
CD23又はCD23断片若しくはバリアントの適切な個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)は、例えば300μM又はその周辺のカルシウム濃度において、又は300μM未満で100μMを超えるカルシウム濃度において、又は100μM未満で10μMを超えるカルシウム濃度において、又は10μM未満で0.1μMを超えるカルシウム濃度において、(例えば、0.05未満の確率値で)IgEに対する結合親和性が大幅に低下するものであろう。好ましくは、エンドソームカルシウム濃度(例えば3~30μM)が使用されると、結合の完全な喪失(又は結合能力がほとんどないか、有意な結合がないこと)が観察される。しかしながら、より重要なことは、より低いカルシウム濃度において、IgEとの結合の低下が、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)から、標的抗原(IgE)の少なくともいくらか、好ましくはかなりの割合を解離、好ましくは急速に解離させるのに十分であるということである。
【0110】
例として、適切なカルシウム感受性のCD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)は、CD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)の、標的抗原(IgE)に対する結合親和性が、より低いカルシウムにおいて、本明細書の他の箇所に記載されている通常の生理的カルシウムレベル(例えば2mM又はその周辺のカルシウム)における標的抗原(IgE)に対する結合親和性と比較して、少なくとも(又は最大で)5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、又は1000倍、又はそれ以上、低下するものであり得るであろう。理想的には、より低カルシウムにおける標的抗原(IgE)に対するCD23又はCD23の断片若しくはバリアントの個々の分子(又は、好ましくは単量体である2つ以上の分子が構築物中に存在する場合には、そのペア若しくは複数の分子)のKdは、高いμM又はmMの範囲、例えば10~500μM、又は500~1000μM、又は1~100mMにあるであろう。
【0111】
好ましい実施形態では、カルシウム感受性は可逆的であり、すなわち、カルシウムが増加して生理的条件(例えば、約2mMのカルシウム)に戻ると、結合親和性が回復される。
【0112】
したがって、本発明のいくつかのタンパク質構築物において、構築物の部分a)とIgEとの前記結合は、血清pHレベル(例えばpH7.4)又は血清カルシウムレベルと比較したエンドソームpHレベル(例えばpH6.0若しくは6.5、又は本明細書の他の箇所に記載されている他のエンドソームpHレベル)又はエンドソームカルシウムレベルにおいて低下する。本発明のいくつかのタンパク質構築物においては、構築物の部分a)とIgEとの前記結合は、pH7.4と比較して、pH6.0又は6.5において低下する。
【0113】
本発明の構築物において使用するためのCD23分子は、任意の供給源又は種からのCD23から得られるか、又はそれに由来するか、又はそれに対応することができ、又はその断片若しくはバリアントであり得る。好ましい供給源は哺乳動物であり、任意の適切な哺乳動物供給源、例えばヒト又は任意の家畜、飼育動物又は実験動物が利用され得る。具体的な例は、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、及び非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)を含む。したがって、本発明の構築物において使用するためのCD23分子(例えばCTLD)は、上で概説したもの等の哺乳動物CD23分子であるか、それに対応するか、又はその断片若しくはバリアントであり得る。しかしながら好ましくは、哺乳動物はヒトである。別の好ましい哺乳動物は、イヌ科・動物(例えばイヌ)である。様々な種に由来するCD23の配列が当技術分野で知られており、したがって、本発明において使用するための適切なCD23分子は、標準的な技術、例えば組換え技術によって容易に産生又は生成され得る。イヌ科動物(例えばイヌ)のCD23配列の断片は、本明細書の他の箇所において提供され(配列番号32)、したがって、本発明の好ましい構築物は、この配列又はそれに実質的に相同な配列、例えば本明細書の他の箇所に記載されているように、少なくとも70%、75%、80%等の同一性を有する配列を含む。
【0114】
CD23の好ましい標的抗原(この場合、IgE、特にIgE-Fcドメイン)は、選択されたCD23分子が得られるか、又は誘導されるか、又は対応する種又は供給源と同じ種又は供給源からのIgEである。したがって、選択されたCD23がヒトである場合、好ましくは、標的IgEはヒトIgEである。しかしながら、いくつかの実施形態において、他のタイプの哺乳動物からのIgE(その例は本明細書の他の箇所に記載されている)もまた、標的IgEとして使用することができ、例えば、カニクイザル等の非ヒト霊長類からのIgEタンパク質が特に好ましい。また、イヌ科動物(例えばイヌ)のIgEも好ましい。いくつかの実施形態では、構築物において使用されるCD23分子(又は断片若しくはバリアント)が、標的抗原(IgE)との結合において種交差反応性を示すことが望ましい。例えば、CD23分子(又は断片若しくはバリアント)は、ヒト及び非ヒト霊長類型のIgEの両方、又はヒト及びげっ歯類(例えば、マウス若しくはラット)又は他の非ヒト哺乳動物型のIgEの両方に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態においては、異なる種の標的IgEに対するCD23分子(又は断片若しくはバリアント)の結合親和性、又は異なる種の標的IgEを使用する機能アッセイにおいて働くCD23分子(又は断片若しくはバリアント)の能力は、互いに実質的に異ならないことが好ましく、例えば互いに5倍又は10倍以内である。特に、ヒトIgEに対する結合親和性(又は機能的活性)は、好ましくは別の哺乳動物種、例えば非ヒト霊長類又はげっ歯類からのIgEに対する結合親和性(又は機能的活性)と実質的に異ならず、例えば5倍又は10倍以内である。
【0115】
本発明のタンパク質構築物の部分b)は、胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するか、又は結合を可能にするか、又は標的とすることができる任意の実体又は分子を含み得る。FcRnへのそのような結合は直接的、すなわち中間実体を伴わないもの、又は間接的、例えば中間実体を介するものであり得る。FcRnへのこの直接的又は間接的な結合はそれから、結合がエンドソーム条件に感受性であること、例えば、結合がエンドソームで観察されるか、又は発生するが、細胞外や血清や組織等の細胞外環境では生じないことを条件として、エンドソームを介したリサイクルを可能とし得る。したがって、部分b)のそのようなエンドソーム感受性の結合は、本発明の好ましい構築物にとって重要である。
【0116】
好ましくは、そして便利なことに、そのような相互作用又はそのような結合は直接的であるであろう。言い換えれば、構築物の部分b)を構成する実体又は分子は、FcRnに直接的に結合又は相互作用することができ、例えば、FcRnに結合する(例えば特異的に結合する)ことができる任意のタンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含み得る。そのような分子の例は、当技術分野において知られており、これらのいずれもが使用され得る。例えば、FcRnに直接的に結合することができる分子(例えば、結合タンパク質又はペプチド)は、様々な種からのアルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)を含む。更に、抗体の適切なFc領域、特にIgG-Fc領域もまた、FcRnに直接結合し得る。したがって、アルブミン、例えばFcRnに結合するHSA、又はその断片若しくはバリアント(修飾されたアルブミン分子、例えば修飾されたHSA分子等)、又はIgG-Fc領域、例えばFcRnに結合するマウス若しくはヒトのIgG-Fc領域、好ましくはヒトIgG-Fc領域、又はその断片若しくはバリアント(修飾されたIgG-Fc領域、例えば修飾されたヒトIgG-Fc領域等)が、本発明の構築物において便利に使用される。本明細書の他の箇所に記載されているように、FcRnに直接的に結合又は相互作用することができる他の適切な分子は、FcRn抗体又は他のFcRn結合タンパク質又はペプチドである。そのような分子は、本明細書においてFcRn結合タンパク質又は実体とも呼ばれる。
【0117】
アルブミン及びIgG-Fc領域等、FcRnとの結合が保持又は改善されたそれらの改変されたバージョンを含む、そのようなFcRn結合タンパク質の配列は、当技術分野で周知で記載されており、そして、それらがFcRnに結合する能力を有し、そして本発明の文脈において、好ましくは細胞外環境、例えば血清又は組織へと構築物を戻すリサイクルを可能にすることを条件として、これらのいずれもが使用され得る。
【0118】
IgG-Fc領域又はその断片若しくはバリアントが特に好ましい。したがって、本発明において使用するためのIgG-Fc領域は、IgG分子中に存在するようなFc領域に都合よく由来するか、又はそれに対応する。
【0119】
本明細書において使用されるFc領域(又はFc断片)という用語は、当技術分野で認識されている意味を有し、Fc受容体と相互作用する能力を有する抗体の部分を含むか、又はそれに対応する。一般に、前記Fc領域(又はFc断片)は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む2つの同一な鎖から構成される(二量体である)。
【0120】
IgG、IgA、及びIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域(又はFc断片)は、各ポリペプチド鎖に2つの重鎖定常ドメイン(CH2及びCH3)をそれぞれ含む2つの同一な鎖で構成される(二量体である)。IgM及びIgE抗体アイソタイプでは、Fc領域(又はFc断片)は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3、及びCH4)を含む2つの同一な鎖で構成される(二量体である)。IgG-Fc内では、2つのCH3ドメインが互いにタイトに結合しているが、2つのCH2ドメインは直接的なタンパク質間接触を互いに有さない。二量体の形成を可能にするのは、CH3ドメインのタイトな結合である。したがって、IgG-Fc領域(又はその断片若しくはバリアント)を含む本発明の構築物において、好ましくは、前記領域の2つの同一の鎖は、CH3ドメインを介して互いに結合することができ、それにより、それぞれがFc領域の1つの鎖(又は半分)を含む2つのポリペプチド鎖間の連結を提供し、それにより二量体の形成を可能にする。他のタイプのFc領域が使用される場合、二量体化を可能にするFc領域の部分が同様に含まれることが好ましい。
【0121】
切断された、変異された、又は改変されたFc領域(又はFc断片)、例えば断片、又はバリアントFc領域、特にIgG-Fc領域が、例えば出発Fc領域、非変異Fc領域、又は野生型のFc領域と比較して、FcRnと相互作用する能力が維持されるか、又は存在するか、又は改善されている(例えば高い、又はより高い親和性結合)ことを条件として、使用され得る。改善された結合を有する適切な変異体、例えばYTE又はLS変異体が当技術分野で周知で記載されており、これらのいずれかが使用されてもよい。改善又は増加された半減期を有する(又はそれを与える)適切な変異体は、当技術分野で周知で記載されており、これらのいずれかが使用されてもよい(例えば、Wang及びBrezski、2018年、Protein Cell 9(1):63~73頁、例えば表1に記載されているそれらの変異体を参照)。
【0122】
本発明の構築物において使用されるIgG-Fc領域は、IgG抗体の任意のサブタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4に由来し得る。いくつかの実施形態では、IgG1、IgG2、又はIgG3 Fc領域、最も好ましくはIgG1が使用される。他の実施形態では、IgG4 Fc領域は使用されない。いくつかの実施形態において、Fc領域は追加の又は改変された特性、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)、又は抗体依存性細胞食作用(ADCP)応答、補体依存性細胞毒性(CDC)の誘導を含み得る追加の又は改変されたエフェクター機能、又は半減期の増加又は抗原及び/若しくはFcγ受容体の同時関与の増加を含むように、設計又は改変されてもよい。エフェクター機能を低下させる改変、例えば、アグリコシル化又はアフコシル化形態、又はFcγ受容体結合の低下(Fcサイレンシング)及び/若しくはC1q結合の低下を示す形態も使用され得る。これらの特徴を有する(又はそれを与える)適切な変異体は、当技術分野で周知で記載されており、これらのいずれかが使用されてもよい(例えば、Wang及びBrezski、2018年、Protein Cell 9(1):63~73頁、例えば表1に記載されているそれらの変異体を参照)。
【0123】
上記のように、本発明の構築物において使用するための適切なFc領域(IgG-Fc領域)は、CH2及びCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CH4及び/又はCH1ドメインが含められ得る。しかしながら他の実施形態では、CH2及びCH3ドメイン(又はFcRnと相互作用する能力、及び好ましくは二量体化する能力を有するその断片若しくはバリアント)が、構築物に含まれるIgG抗体の唯一の部分である。例えば、いくつかの実施形態では、軽鎖抗体ドメイン、特に軽鎖定常ドメイン(CLドメイン)は、構築物の部分b)に含まれないであろう。好ましい実施形態において、IgG-Fc領域は、ヒトIgG-Fc領域又はイヌ科動物(例えばイヌ)のIgG-Fc領域である。Fc領域の配列及びCH1、CH2、CH3及びCH4ドメインの位置は、当業者には容易に入手可能である(例えば上記のWang及びBrezski、2018年を参照のこと)。例えば、例示的なヒト完全IgG Fc配列は、本明細書の他の箇所の配列表において提供されており、そこから必要に応じて、構築物に含めるためにCH1、CH2、CH3及び/又はCH4ドメイン、好ましくはCH2及びCH3ドメインの例示的な配列が得られ得る。更に、例示的なイヌ科動物(例えばイヌ)のIgG Fc配列(CH2及びCH3ドメインを含む)が、本明細書の他の箇所に提供されている。
【0124】
FcRnとの結合は間接的でもあり得るため、他のタイプの分子、例えばそれ自体が(又は次々に)上記のもの等のFcRn結合タンパク質、例えばIgG Fc又はアルブミン結合タンパク質に結合する分子も、容易に使用され得る。
【0125】
例えば、タンパク質構築物の部分b)は、アルブミン、例えばHSA等の血清タンパク質との結合、例えば特異的な結合を媒介し得、これは次に、FcRnに結合するか、又はIgG等の循環免疫グロブリン分子との結合、例えば特異的な結合を媒介するであろう。したがって、タンパク質構築物の部分b)がアルブミン、例えばHSAに結合又は特異的に結合するか、又はIgGに結合又は特異的に結合し得る実施形態において、本発明の構築物はまた、HSA又はIgGを介してFcRnと相互作用又は結合することもできる。言い換えると、タンパク質構築物の部分b)はFcRn結合パートナー、又はFcRn受容体と相互作用する物質に結合するか、又はそれを標的化する。同様に、タンパク質構築物の部分b)は、抗体断片(例えばFab又は本明細書の他の箇所に記載されているsdAb等の他の断片)又は他のFcRn結合タンパク質(若しくはペプチド)、例えばFcRnに特異的に直接結合する可能性のある、本明細書の他の箇所に記載されている結合タンパク質又は単一ドメイン結合タンパク質を含み得る。好ましい分子は、代替的なスキャフォールドにグラフトされた抗体CDR(例えば1から6個の抗体CDR)を含むもの等の抗体又は抗体ベースの分子であろう。特に好ましい分子は、抗体又は抗体断片(例えば1から6個の抗体CDRを含む)であろう。好ましい抗体断片は、Fab断片又は単一ドメイン抗体(sdAb)であろう。いくつかの実施形態では、sdAbが使用される。いくつかの実施形態では、Fab断片は使用されない。
【0126】
したがって、IgGに結合し、IgG-Fcを構築物へと動員して、それによって次にFcRnに結合する実体、例えばポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物等のタンパク質性の実体が使用され得る。この目的のために使用され得るIgGに結合可能な様々なタイプの実体、例えばタンパク質性実体の例は多数ある。好ましい分子は、代替的なスキャフォールドにグラフトされた抗体CDR(例えば1から6個の抗体CDR)を含むもの等のIgGに対する抗体又は抗体ベースの分子であろう。特に好ましい分子は、抗体又は抗体断片(例えば1から6個の抗体CDRを含む)であろう。好ましい抗体断片は、Fab断片又は単一ドメイン抗体(sdAb)であろう。いくつかの実施形態では、sdAbが使用される。いくつかの実施形態では、Fab断片は使用されない。
【0127】
同様に、アルブミンに結合し、それによってアルブミン、例えばヒト血清アルブミンを構築物へと動員して、それによって次にFcRnに結合することができる実体、例えばポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物等のタンパク質性の実体が使用され得る。この目的のために、任意のアルブミン結合タンパク質が使用され得る。好ましい結合タンパク質は、代替的なスキャフォールドにグラフトされた抗体CDR(例えば1から6個の抗体CDR)を含むもの等の抗体又は抗体ベースの分子であろう。特に好ましい分子は、抗体又は抗体断片(例えば1から6個の抗体CDRを含む)であろう。好ましい抗アルブミン抗体断片は、Fab断片又は単一ドメイン抗体(sdAb)であろう。いくつかの実施形態では、sdAbが使用される。いくつかの実施形態では、Fab断片は使用されない。
【0128】
アルブミン、例えばHSA、又はFcRnに結合できるアルブミンの断片若しくはバリアントは、IgG-Fcと同様に、FcRnへのpH依存的な結合を示し、細胞の細胞質、又は血清若しくは組織(例えば間質組織)において見られる生理的pH(pH7.4付近)において親和性結合を示さないか又は低い親和性結合を示し、且つ酸性又はより低いpH(例えばエンドソームpH、例えばpH6.5以下、例えばpH5.0から6.5、又は約pH6.0以下、例えばpH5.0から6.0、例えばpH6.0又はpH6.5)におけるFcRnへの良好な又は高い又はより高い親和性結合を示すことから、アルブミンを含む構築物を細胞内のエンドソーム区画から血清に戻してリサイクルすることを可能とするために本発明の構築物において(直接的又は間接的に)使用するのに特に好ましい分子である。
【0129】
同様に、アルブミン又はIgG-Fcについて記載されているもの等のpH依存性又はエンドソーム依存性のFcRn結合を示す他の任意の実体が使用され得る。有利には、このpH依存性又はエンドソーム依存性の結合は、リサイクル経路を介したタンパク質構築物(又は生物学的製剤若しくは生物製剤)の回収を可能とするべきである。したがって、タンパク質構築物の部分b)は好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されるような低pH及び/又は低カルシウム等のエンドソーム条件下では安定であり、本明細書の他の箇所に記載されているようなpH7.4及び/又は高カルシウム等の生理的又は血清条件下では安定性が低いか、又は存在しないFcRnへの相互作用を提供することによって、タンパク質構築物がリサイクルされる能力を提供する。
【0130】
本発明のいくつかのタンパク質構築物において、構築物の部分b)のFcRnへの前記結合は、血清カルシウムレベルと比較してエンドソームカルシウムレベルにおいて増加するか、又は血清pHレベル(例えばpH7.4)と比較してエンドソームpHレベル(例えばpH6.0若しくは6.5、又は本明細書の他の箇所に記載されている他のエンドソームpHレベル)において増加する。本発明のいくつかのタンパク質構築物において、構築物の部分b)のFcRnへの前記結合は、pH7.4と比較して、pH6.0又は6.5において増加する。
【0131】
本発明の構築物において使用するためのIgG又はアルブミン結合タンパク質(又はFcRn結合タンパク質)の便利で好ましい例は、単一ドメイン結合タンパク質である。本明細書において使用される「単一ドメイン結合タンパク質」(時にはsdbpと略される)という用語は、特異的な標的抗原(例えばアルブミン又はIgG又はFcRn)との結合を個別に媒介することができる単一のタンパク質ドメインを有する単量体タンパク質であるか、又は標的抗原との特異的な相互作用に十分な単一のタンパク質ユニットである。言い換えれば、単一ドメイン結合タンパク質は、単独で標的抗原(例えばアルブミン又はIgG又はFcRn)に特異的に結合することができる。したがって、本発明において使用するための単一ドメイン結合タンパク質は、単一のタンパク質ドメインを有するが、抗原結合部位(例えばアルブミン又はIgG又はFcRnの結合部位)を含むタンパク質である。言い換えれば、sdbpの抗原結合部位は、単一のドメインによってのみ形成される。任意の適切な抗原結合部位が存在し得る。例えば、そのような単一ドメイン結合タンパク質は、抗原結合を媒介するための1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)をしばしば含むであろう。3つのCDR領域が存在し得るが、特に低い又は中程度の親和性結合のみが望まれる場合には、抗原結合が1つ又は2つのCDR領域によって媒介されることも可能である。したがって、1つ又は2つのCDRを含むsdbpもまた含まれる。適切なsdbpは、天然に生成され得るか又は天然の供給源から誘導することができ、又は改変若しくは組換え分子/結合タンパク質の形態であり得る。
【0132】
本発明の構築物において使用するための好ましい単一ドメイン結合タンパク質は、本明細書及び当技術分野においてナノボディ又はVHH抗体、又はVH抗体又はVL抗体とも呼ばれる単一ドメイン抗体(sdAb)である。そのような単一ドメイン抗体は、単一の可変抗体ドメインのみを含むが、全体抗体と同様に、特異的な抗原(例えばアルブミン又はIgG又はFcRn)に選択的に結合することができる。そのような単一ドメイン抗体は単一の単量体可変抗体ドメインから成るため、従来の抗体よりもはるかに小さく、Fab又は単鎖可変断片(scFvs)又はFvsよりも小さい。
【0133】
しかしながら、標的抗原(例えばアルブミン又はIgG又はFcRn)上のエピトープに個別に特異的に結合することができる任意のsdbpが、本発明の構築物において使用され得る。例えば、一般にCDR領域(及び場合によりFR領域又は免疫グロブリンベースのスキャフォールド)を含む免疫グロブリンベースのsdbpと同様に、いくつかの実施形態では、特定の標的抗原(例えばアルブミン又はIgG又はFcRn)にそれ自体で特異的に結合する能力について選択され得る非免疫グロブリンベースの単一ドメイン結合タンパク質/スキャフォールドタンパク質が使用され得る。そのような分子は、抗体ミミック(又は抗体模倣物)とも呼ばれる。適切な非免疫グロブリンベースの単一ドメイン結合タンパク質の例は、当技術分野で知られ、記載されており、フィブロネクチン(又はフィブロネクチンベースの分子)、例えばアドネクチン等のフィブロネクチンIII型ドメインの第10モジュールに基づくもの(例えばCompound Therapeutics社、ウォルサム、マサチューセッツのもの);アフィマー(例えばAvacta社のもの);アンキリンリピートタンパク質(例えばMolecular Partners社、チューリッヒ、スイスのもの);リポカリン、例えばアンチカリン(例えばPieris Proteolab社、フライジング、ドイツのもの);ヒトAドメイン(例えばアビマー);ブドウ球菌プロテインA(例えばAffibody社、スウェーデンのもの);チオレドキシン;及びガンマ-B-クリスタリン又はユビキチンベースの分子、例えばアフィリン(例えばScil Proteins社、ハレ、ドイツのもの)を含む。そのような分子はまた、標的抗原結合を媒介する適切なCDRがグラフトされ得るスキャフォールドとしても使用され得る。例えば適切な免疫グロブリンベースのsdbp、例えばsdAbのCDRが、適切な非免疫グロブリンスキャフォールドにグラフトされ得る。
【0134】
本発明の構築物において使用するための好ましい抗体断片はsdAbであるが、scFv、Fab又はFab様分子等の1つ又は複数、2つ以上、又は3つ以上のCDRを含む他の抗体断片、例えば6つのCDRを有する抗体断片が等しく使用され得る。いくつかの実施形態では、Fab又はFab様分子は使用されない。
【0135】
本発明の構築物において使用するためのFcRn結合実体、例えばアルブミン若しくはIgG-Fc(若しくは他のFc)、又はアルブミン若しくはIgG若しくはFcRnに対する結合タンパク質(若しくはペプチド)は、任意の適切な供給源又は種から得られ得るか、又はそれらに由来し得る、又はそのような供給源からのFcRn結合実体に対応し得るか、又はその断片若しくはバリアントであり得る。好ましい供給源は哺乳動物であり、任意の適切な哺乳動物供給源、例えばヒト又は任意の家畜、飼育動物又は実験動物が利用され得る。具体的な例は、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、及び非ヒト霊長類(例えばサル、例えばカニクイザル)を含む。しかしながら好ましくは、哺乳動物はヒトであり、配列はヒト配列又はヒト由来配列であるか、又はそれに対応する。他の好ましい哺乳動物は、イヌ科動物(例えばイヌ)である。様々な種からのFcRn結合実体、例えばアルブミン又はIgG-Fc(又は他のFc)の配列が当技術分野で知られており、したがって、そのようなFcRn結合実体は標準的な技術、例えば組換え技術によって容易に産生又は生成され得る。例えば、CH2及びCH3ドメインを含むイヌ科動物のIgG-Fc配列の例示的な配列が以下に提供され(配列番号33)、したがって(例えばイヌ科動物において使用するための)本発明の好ましい構築物は、この配列又はイヌ科動物のCH2及びCH3ドメインを含む任意の他の配列、又はそれに実質的に相同な配列、例えば本明細書の他の箇所に記載されているように、少なくとも70%、75%、80%等の同一性を有する配列を含む。
KTKVDKPVPKRENGRVPRPPDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPGK
(イヌ科動物IgG Fc、配列番号33、Genbank AAL 35302に由来)。
【0136】
同様に、本発明の構築物において使用するためのFcRn結合実体、例えば、アルブミン又はIgG-Fc又はアルブミン又はIgGの結合タンパク質は、合成又は組換え分子、例えばライブラリースクリーニングによって同定された分子であり得る。
【0137】
タンパク質構築物の部分b)のFcRn結合実体の好ましいFcRn標的は、任意の所望の種であり得、例えば、選択されたFcRn結合実体が得られるか又は誘導されるか又は対応する種又は供給源と同じ種又は供給源に由来する。したがって、FcRn結合実体がヒトのものである場合、FcRn標的は好ましくはヒトのFcRnである。例えば、FcRn結合実体がイヌ科動物(例えばイヌ)のものである場合、FcRn標的は好ましくはイヌ科動物(例えばイヌ)のFcRnである。FcRn標的の適切な種はまた、一般に、本発明のタンパク質構築物が投与される種(例えば哺乳動物種)に依存するであろう。例えば、投与がヒトへの投与である場合、構築物の部分b)は種に応じて、ヒトFcRn等に結合可能であるべきである。
【0138】
しかしながら、いくつかの実施形態では、構築物の部分a)について上に記載されているように、FcRn結合実体は、他のタイプの哺乳動物からのFcRnタンパク質と交差反応することができ(すなわち、種交差反応性を示す)、その例は、本明細書の他の箇所に記載されているが、例えば、カニクイザル等の非ヒト霊長類からのFcRnとの交差反応性が特に好ましい。例えばFcRn結合実体は、ヒト及び非ヒト霊長類型のFcRnの両方、又はヒト及びげっ歯類(例えばマウス若しくはラット)型のFcRnの両方に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態において、異なる種の標的FcRnに対するFcRn結合実体の結合親和性、又は異なる種の標的FcRnを使用する機能的アッセイにおいて働くFcRn結合実体の能力は、互いに実質的に異ならないことが好ましく、例えば互いに5倍又は10倍以内である。特に、ヒトFcRnに対する結合親和性(又は機能的活性)は、好ましくは別の哺乳動物種、例えば非ヒト霊長類又はげっ歯類からのFcRnに対する結合親和性(又は機能的活性)と実質的に異ならず、例えば5倍又は10倍以内である。
【0139】
本発明のタンパク質構築物は、任意の適切な方法で製造又は産生され得る。例えば、構築物の様々な成分は、単一のポリペプチド鎖又は複数のポリペプチド鎖にコード化され得、その後、様々な成分が一緒に結合又は連結される。
【0140】
本発明のタンパク質構築物の様々な成分は、各部分がそれらの機能を実行することができるように、任意の適切な方法で互いに結合又は連結され得る。本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質構築物は、構築物の異なる部分の間、例えば構築物の部分a)と部分b)との間にリンカー(物理的リンカー又はリンカー分子、例えば少なくとも1つの物理的リンカー又はリンカー分子)を含むであろう。例えば、構築物の部分a)のCD23分子(又はCTLD)を部分b)のFcRn結合実体に結合するため、例えば、好ましい実施形態ではCD23(又はCTLD)単量体をFc領域、例えばIgG-Fc領域を構成するポリペプチド鎖の1つに結合するために、前記リンカーが使用され得る。当業者に周知の任意の適切なリンカー分子が使用され得る。例えば、ペプチドリンカー又は化学リンカー又は他の共有結合リンカーが必要に応じて使用され得る。
【0141】
ペプチド(タンパク質)リンカーが一般的に好ましい。非天然又は天然のアミノ酸を含み得るそのようなペプチドリンカーは、当技術分野で周知であり、したがって、本発明のタンパク質構築物の様々な成分が安定した方法で、しかし正しい空間的配向又は空間的最適化で一緒に結合されることを可能にするために、適切な配列、長さ、及び/又は柔軟性/剛性を有する適切なリンカーが、個々の成分が互いに結合された後に上記の必要とされる機能特性(つまり各成分の機能特性)が保持されるように、当業者によって容易に選択され得る。例えば、(2つの)CD23分子(又は断片若しくはバリアント)のペアの場合、例えば図1の概略図に示されているように、ペアの両方のメンバー(例えば両方の単量体)は、例えば、標的IgEの2つの分子(本明細書において時としてトランス結合とも呼ばれる)とは対照的に、好ましくは、標的IgEの単一の分子(本明細書ではシス結合とも呼ばれるIgE Fc二量体の各鎖に結合する1つのCD23分子)に結合できるように、適切に近接している必要があり、ペプチドリンカー又は他の結合手段が適切に設計され得る。
【0142】
しかしながら、更に又は代替的に、そのようなリンカー又は他の適切なリンカーを有する構築物は、例えば、標的IgEの2つの分子を(例えば、好ましくは単量体である2つのCD23分子、個々の各IgE分子に結合する1つのCD23分子を介して)連結することもできる。そのような連結はトランス結合性連結とも呼ばれ、ここで、本発明の1つの好ましいタンパク質構築物(例えば、少なくとも2つのCD23分子/単量体を含む)は、2つのCD23分子(単量体)を介して2つのIgE標的分子に連結される。次に、例えば本明細書の他の箇所に記載されているように、例えば本発明の複数のタンパク質構築物及び標的IgEの複数の分子を含む、より高次の構造が形成され得る。最も安定な構造又はより高次の構造(したがって、いくつかの実施形態では好ましい)は、本明細書の他の箇所に記載されているように、IgE分子上の全てのCD23結合部位が占有されているものであると考えられる。したがって、そのようなコンフォメーション及び構造が形成されることを可能にするリンカーが適切である。
【0143】
本発明の構築物は、例えば、部分a)と部分b)を構成するポリペプチドが遺伝子融合を形成するために連結された融合タンパク質の形態で必ずしも提供される必要はないが、部分a)及びb)が単一のポリペプチド又はタンパク質鎖において一緒に連結されている遺伝子融合又は構築物が好ましい。この理由のため、好ましいリンカーはペプチド又はタンパク質(ポリペプチド)リンカーである。リンカーが構築物の部分a)又は部分b)、或いは実際に構築物の他のあらゆる部分の機能に干渉しないという条件で、任意の適切なペプチドリンカーが使用され得る。
【0144】
したがって、リンカー又はスペーサーは、接続されたタンパク質の折り畳みを助けることができ、スペーサー又はリンカーの長さ及び/若しくは柔軟性/剛性は、各成分の最も良い又は満足のいく機能的折り畳みを可能にするために適切に調整され得る。適切な長さは、当業者によって容易に決定され得るが、任意の適切な数のアミノ酸であり得るであろう。しかしながら、例示的な長さは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、若しくは45アミノ酸の長さ(例えば少なくとも6、7、8、若しくは9アミノ酸長、又は少なくとも11、12、13、若しくは14アミノ酸長)、又は5若しくは10から50アミノ酸の間、例えば5若しくは10から15、20、25、30、35、40、45若しくは50アミノ酸、又は15から20、25、30、35、40、45若しくは50アミノ酸、又は20から25、30、35、40、45若しくは50アミノ酸、又は25から30、35、40、45若しくは50アミノ酸、又は30から35、40、45若しくは50アミノ酸であり得るであろう。好ましいリンカーは、15から30アミノ酸長であり得、例えば最大15、20、25又は30アミノ酸長(又は最大40若しくは50アミノ酸長)であり得る。例示的なリンカーは当技術分野において記載されており、G4Sリンカー(GGGGS、配列番号16)の1つ又は複数のリピート等のGSリンカーが含まれ得る。添付の実施例において使用された構築物で使用されているリンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号17)、すなわちGGGGSのリピートを3つ有している。また、リピートを4つ有するリンカーも使用される。したがって、このリンカーは例えば、タンパク質構築物が図1に示されるような構造を有するか又は形成することができる場合、本発明のいくつかの実施形態にとって好ましいが、他の配列及び長さを有するリンカー(スペーサー, Linker)、例えば、他のGSリンカー又は同じ、類似の、若しくは同等な長さを有する他の適切なリンカーもまた使用され得ることが理解されるであろう。例えば、4つ又は6つのリピートを有するGGGGSリンカーも効果的であることが示されており、好ましい。構築物の関連する機能特性が保持されることを条件として、5つ、7つ、又はそれ以上のリピートを有するリンカーが同様に使用され得る。
【0145】
実際、リンカー、例えばペプチドリンカーの存在は、機能性に関して本発明の構築物に利点を提供することが示されている。したがって、実施例におけるデータから分かるように、構築物の部分a)及びb)の間、例えば、CD23含有部分とFcRn結合実体(例えば、Fc領域を構成するポリペプチド鎖)との間のリンカーの存在は、リンカーが存在しない構造物と比較して、標的抗原であるIgEの活性を阻害する能力を改善(又は増加)させることが示されている。具体的には、リンカーが存在しない構造物と比較して、高親和性受容体であるFcεRIへのIgEの結合を阻害する能力の改善(又は増加)。更に、試験された最長のリンカー長(ここでは20アミノ酸)が、最高の機能特性を示した。したがって、本発明において使用するための適切なリンカーは、リンカーがない(又は例えば5アミノ酸未満の短いリンカーを有する)構築物と比較して、標的抗原であるIgEの活性を阻害する能力の改善(又は増加)をもたらす任意のリンカーであり得るであろう。具体的には、リンカーがない(又は例えば5アミノ酸未満の短いリンカーを有する)構造物と比較して、高親和性受容体であるFcεRIへのIgEの結合を阻害する能力の改善(又は増加)をもたらしたリンカーが適切となるであろう。
【0146】
例えば、例示された構築物において使用されるリンカーについて観察されるものと同じ(又は同様な)効果を達成するための、リンカーの性質及び適切なリンカーの長さ等の他の特性の選択は、当業者にとって標準的且つ日常的な手順であろう。例えば、本発明の特定の実施形態において、例えば、図1に示されるような構造を有するか又は形成する(例えば、本明細書に記載されるようなシス相互作用を有する構造を形成する)ことができるタンパク質構築物が関係する場合、2つ(又はペアの)CD23分子が同じIgE Fcの各鎖に結合することを可能とし、それにより、好ましくはアビディティー効果によって全体的な結合親和性を改善することを可能とする、適切なリンカー長及び/又は構造/性質が選択され得る。異なるIgE分子を連結し、本明細書に記載のトランス相互作用を有する構造、特に本明細書に記載のより高次の構造又はオリゴマーを形成することができるタンパク質構築物中のリンカーについて同様な選択を行うことができ、それにより、好ましくはアビディティー効果によって全体的な結合親和性の改善も可能とされる。選択され得る適切なリンカーの他の特徴は、当業者に周知であり、容易に選択され得るであろう。好ましくは例えば、リンカーは抗原性ではないか、又はプロテアーゼ切断部位を含まないであろう。
【0147】
ペプチドリンカーを使用することの利点は、それが(上記のように)単一のポリペプチドとしての生成を可能にすることである。しかしながら、成分が互いに結合された際に一緒に連結された様々な成分の(本書の他の箇所に記載されているような)機能特性が保持されることを条件として、他の適切な結合手段、例えば、化学リンカーを含む任意の他の形態のリンカーが使用されてもよい。
【0148】
したがって、本発明の分子は、2つの主要な分子成分又はモジュールを含むと見なされ得る。一般に、構築物の部分a)及びb)は、全ての成分の機能を保持するための適切な手段によって相互に結合又は連結される別個の成分である。単一のポリペプチド鎖が提供され、CD23(又は断片若しくはバリアント)の単一分子が存在する実施形態では、CD23分子(又は断片若しくはバリアント)が鎖のN末端又はC末端、より好ましくはN末端に配置され得る。次に、FcRn結合実体は、ポリペプチド鎖のもう一方の末端、好ましくはC末端に都合よく配置され得る。本明細書の他の箇所で記載されているように、リンカーが含められ得る。もちろん、全ての成分がそれらの生物学的機能を保持することを条件として、代替的な構成が考えられ得る。
【0149】
単一のポリペプチド鎖が提供され、CD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子が存在する実施形態では、CD23分子(又は断片若しくはバリアント)が鎖のN末端及びC末端の両方に(両端に1つずつ)配置され、その間にFcRn結合実体が配置され得る。本明細書の他の箇所で記載されているように、リンカーが含められ得る。例示的なFcRn結合実体は、本明細書の他の箇所に記載されているが、これらの側面において好ましいものは、一本鎖(例えば単一ドメイン)抗体又は一本鎖(例えば単一ドメイン)結合タンパク質であり得るであろう。他の好ましいFcRn結合実体は、本明細書の他の箇所に記載されているようなアルブミン分子であり得る。したがって、例示的な構築物は、CD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子とアルブミン、又はCD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子とFcRnに特異的な単一ドメイン抗体(又は他の単一ドメイン結合タンパク質)を含み得るであろう。場合により、そして好ましくは、リンカーは例えば、CD23分子とFcRn結合実体との間に存在し得る。
【0150】
もちろん、全ての成分がそれらの生物学的機能を保持することを条件として、代替的な構成が考えられ得る。したがって、CD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子を有するそのような一本鎖の実施形態では、CD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子は、鎖のN末端又はC末端の半分(又は末端)のいずれかに一緒に(タンデムに又は互いに隣接して)存在することができ、そしてFcRn結合実体は、ポリペプチド鎖の残りの半分(又は末端)に都合よく配置され得る。例示的な成分は、上記及び本明細書の他の箇所に記載されている通りである。したがって、例示的な構築物は、互いに隣接するCD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子とアルブミン、又は互いに隣接するCD23(又は断片若しくはバリアント)の2つの分子とFcRnに特異的な単一ドメイン抗体(又は他の単一ドメイン結合タンパク質)を含み得るであろう。場合により、そして好ましくは、リンカーは(一緒に存在する)2つのCD23分子をFcRn結合実体に結合させるために、例えば2つの個々のCD23分子の間に存在し得る。
【0151】
タンパク質構築物が2つのポリペプチド鎖を含む本発明の実施形態において、好都合には、CD23分子(又は断片若しくはバリアント)が、2つの鎖のそれぞれのN末端又はC末端、より好ましくはN末端に配置され得る。次に、FcRn結合実体は、ポリペプチド鎖のもう一方の端に都合よく配置され得る。2つのポリペプチド鎖を有する構築物は、FcRnに結合することができる実体(すなわち構築物の部分b))自体が、2つのポリペプチド鎖から構成される、例えば、IgG-Fcドメインである実施形態において、特に好ましい。このような構築物の例示的な構造が図1に示されており、ここで、構築物の第1鎖(1本の鎖)はCD23(CD23のCTLD)とIgG-Fcの1本の鎖を含み、構築物の第2の鎖(他の鎖)は第2のCD23(CD23のCTLD)とIgG-Fcの他の鎖を含んでいる。CD23分子は、適切なリンカーによってIgG-Fcの個々の鎖に接続され、2つのポリペプチド鎖は、CH3ドメインを介したIgG-Fcの2つの鎖の天然の会合を介して一緒に連結される。好ましい構築物において、CD23ベースの分子は、C末端のFcRn結合実体へのリンカーを介してN末端に配置され得る。同様な構造が、本明細書の他の箇所において記載されているような他の部分a)及び部分b)分子のために使用可能であり、好ましい。同様に、いくつかの構築物は4つの個別のCD23分子を含むことができ、好都合には、前記構築物においてCD23分子は、各鎖上の2つのCD23分子の間にFcRn結合実体を伴って、両方のポリペプチド鎖のN末端とC末端に配置され得る。同様に、いくつかの構築物は、直線的に配置された個々のCD23分子の4個、8個、又は4の倍数のコピーを含むことができ、好都合には、前記構築物においてCD23分子は、各鎖上のCD23分子間にFcRn結合実体を伴って、両方のポリペプチド鎖のN末端とC末端に配置され得る。リンカーは好ましくは、CD23の2つの分子のそれぞれを各鎖のFcRn結合実体に接続するために使用される。
【0152】
本明細書において「融合タンパク質」、「融合」等の用語は、同じポリペプチド配列又は同じオープンリーディングフレーム(ORF)における2つ以上のタンパク質成分の機能的結合を記載するために使用される。そのような融合タンパク質の例は、それらが同じ核酸配列(時として「融合遺伝子」又は「融合ヌクレオチド配列」と呼ばれる)によってコードされるため、遺伝子融合としても記載され得る。2つ(又はそれ以上)のタンパク質成分(又はコード化核酸配列)は、そのような融合タンパク質において互いに直接隣接し得るが、等しくそして好ましくは、成分は適切なペプチドスペーサー又はリンカーによって結合され得る。当技術分野で周知のように、スペーサー又はリンカーは、個々のタンパク質成分のそれぞれを機能的に発現させるために重要であり得、例えば、それらの天然又は所望の機能を実行又は維持するための適切な三次元構造をそれらが形成することを可能にする。
【0153】
したがって、本発明のタンパク質構築物中に存在する融合タンパク質において、ペプチドスペーサー(又はリンカー)は一般に、CD23分子(又は断片若しくはバリアント)、例えばCD23のCTLDを含む分子(又は断片若しくはバリアント)、すなわち構築物の部分a)とFcRn結合実体、すなわち構築物の部分b)との間に含められる。したがって、そのような構築物は、少なくとも1つのリンカーを含み得る。一般に、可溶性CD23(又はCD23のCTLD)を含む2つ(又はそれ以上)の分子(又は単量体)が含められる実施形態では、例えば、CD23の各単量体(又は分子)がFcRn(構築物の部分b))に結合することができる実体に(リンカーを介して)別々に連結されるように、2つ(若しくはそれ以上)又は少なくとも2つのリンカーが含められるが、同様に、2つ以上のCD23の単量体/分子が構築物中に一緒に、例えばタンデムで(又は連続して)存在する実施形態では、CD23の単量体(又は分子)の1つだけが(リンカーを介して)FcRn(構築物の部分b))に結合することができる実体に連結されてもよいであろう。したがって、好ましくはCD23の各単量体はリンカーを有する。例えば、2個、4個、又は6個等のCD23単量体/分子が構築物中に存在する場合には、2個、4個、又は6個等、それぞれ別個のリンカーが存在し得る(CD23単量体/分子ごとに1つ)。他の実施形態では、そのようなリンカー又はスペーサーは、含められる必要がないか、又はいくつかの成分の間にのみ含められてもよい。しかしながら、そのようなリンカーの存在は、それが構築物の機能性の有意な改善をもたらすことが示されていることから、好ましい。
【0154】
この議論は、構築物の部分a)と部分b)との間のリンカー又はスペーサーに焦点を当てているが、リンカー配列は必要に応じて、本発明の構築物の他の場所、例えば、存在し得る構築物中の他の成分の間に含められてもよい。
【0155】
本明細書に記載の本発明のタンパク質構築物の部分a)及びb)の様々な成分は、当技術分野で標準的な方法を使用して生成又は選択することができ、次いで、全ての成分が本明細書に記載のそれらの機能特性を保持するように、任意の適切な方法で一緒に連結又は結合され得る。したがって、好ましい実施形態では、IgEとFcRn結合実体を結合させて、それらがFcRnに結合できるように、CD23(又は断片若しくはバリアント)の単一又は複数のコピー、例えば、IgEの1つ又は複数の分子を認識するCD23のCTLDを含む分子(又は断片若しくはバリアント)の単一又は複数のコピーが、FcRnに結合してsCD23分子(又は断片若しくはバリアント)を空間的に配向するタンパク質構築物を形成できる1つ又は複数の実体に結合又は連結される。
【0156】
標的抗原(例えばIgG、アルブミン又はFcRn)に結合することができる単一ドメイン結合タンパク質(sdbp)が使用される実施形態では、これらは当技術分野で周知であり、記載されている方法によって適切に誘導され得る。例えば、本発明の方法において使用するためのsdAbは、当技術分野において周知で標準的な方法によって、例えば、ヒトコブラクダ、ラクダ、ラマ、アルパカ等のラクダ科動物、又は(例えば、完全に機能するヒト重鎖抗体を発現することができるトランスジェニック動物の形で)ラットやマウス等の他の種を所望の抗原を用いて免疫した後、適切な方法で免疫化された動物のリンパ球からのsdAbを標的抗原に対して所望の親和性を有する抗原特異的結合物質についてスクリーニングすることによって、例えば遺伝子ライブラリー、例えばファージディスプレイライブラリーを調製及びスクリーニングすることによって、生成され得る。
【0157】
或いは、sdAbは、免疫化されていない適切な動物から調製されたナイーブ遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって産生又は同定され得る。或いは、sdAbは、標的抗原に結合できる単一のVH又はVLドメインをスクリーニングすることにより、従来的な抗体又は抗体断片又は合成ライブラリーから生成され得る。
【0158】
標的抗原(例えばIgG、アルブミン又はFcRn)に対する特異性を有するsdbpが、フィブロネクチン(例えばアドネクチン)、アフィマー、アンキリンリピートタンパク質、リポカリン(例えばアンチカリン)、ヒトAドメイン(例えばアビマー)、ブドウ球菌プロテインA、チオレドキシン、ガンマ-B-クリスタリン、又はユビキチンベースの分子、例えばアフィリンであるか又はそれを含む実施形態においては、ここでも、これらは当技術分野で記載された方法を使用して産生又は選択され得る。
【0159】
低い、中程度、又は高い親和性(必要に応じて)で標的抗原(例えばIgG、アルブミン又はFcRn)に結合する個々のsdbp(例えばsdAb)は、例えば適切なストリンジェンシー条件下でスクリーニングを実施することによって、容易に選択され得る。
【0160】
標的抗原への様々な成分の結合、例えばsdbp(例えばsdAb、又は他の抗体分子又は抗体断片)がpH感受性(又はエンドソーム感受性)である本発明の実施形態においては、標的抗原への個々の低い、中程度、又は高い親和性の結合について上記のように選択された成分又は分子が次に、酸性pH、例えばpH6.5又はpH6.0(又はより低い選択されたpH)において標的抗原に結合する能力を試験し、酸性pH、例えばpH6.5又はpH6.0等で良好な又は高い親和性の結合を有するが、中性pH、例えばpH7.4では低下した結合を有する分子を選択することによって、pH感受性(例えばエンドソームpH感受性)の結合について試験される。カルシウム依存性(又は他のタイプのエンドソーム依存性)の結合を示す分子を選択するために、本明細書の他の箇所に記載されるような低い(エンドソーム)カルシウム濃度と高い(生理的)カルシウム濃度の条件下で、同様な選択が行われ得る。
【0161】
例示的な高親和性結合物質は1nM未満のKdを有していてもよく、中程度の親和性の結合物質は1nM以上50nM未満のKdを有していてもよく、そして低親和性結合物質は50nM以上のKdを有していてもよい。
【0162】
或いは、pH感受性又は他のタイプのエンドソーム感受性の結合を示す個々の分子を生成するために、個々の成分又は分子、例えばsdbp(例えばsdAb又は他の抗体分子又は抗体断片)の1つ又は複数が、上記のように試験する前に、例えばCDR又は他のアミノ酸残基を改変又は変異させることによって、タンパク質工学に供され得る。pH感受性分子を生成するための好ましい方法は、当技術分野で周知であり、記載されているように、CDR又は他のアミノ酸残基をヒスチジン操作に供することである。
【0163】
本発明のタンパク質構築物がFab断片等の抗原結合断片(抗体断片)を含む実施形態においては、これらは、当技術分野で周知であり、記載されている方法によって、例えば、目的の標的実体で動物を免疫化し、続いて、適切な標的実体、例えばHSA、IgG又はFcRnに結合する断片について、抗体断片の適切なライブラリーを調製し、スクリーニングすることによって、適切に誘導され得る。或いは、既存のライブラリーが、標的実体に結合する適切な抗体断片についてスクリーニングされ得るか、又は選択された標的実体に結合する既知の又は記載された抗体断片が使用され得る。或いは、適切な抗体断片は、適切な標的実体に結合することができる従来的な全体抗体を適切なタンパク質工学又は切断に供することにより、それらから作製され得る。
【0164】
必要な場合には、本発明のタンパク質構築物の1つ又は複数の成分は、ヒトの臨床使用の前にヒト化に供せられ得るか、又は治療される任意の非ヒト種への投与と適合性があるように必要に応じて改変され得る。ここでも、これを行うための適切な方法論及び技術は、当技術分野で周知であり、記載されている。例えば標的抗原に結合するために使用される、本発明のタンパク質構築物において使用するための本発明のタンパク質構築物の好ましい成分は、特にCDR領域又は他の結合部位内に、翻訳後修飾のための潜在的な部位を含まないであろう。翻訳後修飾の潜在的部位は、当技術分野で認識され、標準的に定義された基準によって決定され得る。
【0165】
理論に拘束されることを望まないが、本発明の構築物が使用される場合、IgEの1つ又は複数の分子が本発明のタンパク質構築物の部分a)に捕捉されるか、又は結合し、例えば可溶性CD23又はその断片若しくはバリアント、例えばCD23のCTLDを含む分子(又はその断片若しくはバリアント)に結合すると考えられている。タンパク質構築物とIgEの間の複合体(構築物-IgE複合体)は、飲食作用又は飲作用を受けて、エンドソームに取り込まれ、飲食作用経路へと入る。エンドソームのpHが低下すると、本発明のタンパク質構築物の部分b)がFcRnに結合し、細胞表面にリサイクルされ(構築物は中性のpH、例えば7.4付近の血清pHでFcRnから放出又は解離されるため、より多くのIgE標的に自由に結合できる)、その一方、エンドソーム内のカルシウム濃度(又はpH)の低下は、構築物の部分a)、例えばCD23ベースの部分からのIgEの放出又は解離を引き起こし、そしてIgE(非結合又は遊離のIgE)がリソソーム分解経路に入り、破壊される。本発明の構築物の作用機序を示す概略図が図2に示されている。
【0166】
実際、本明細書における実験結果は、IgE取り込みの非常に高い効率、例えば、測定可能なIgEのリサイクルを伴わないIgEの最大98%の保持又は分解を伴う最大100%の細胞によるIgEの取り込みが、本発明の構築物を用いて観察されることを示している。更に、FcRn結合を介したタンパク質構築物(生物製剤)の血清へのリサイクルも、非常に効率的であり、例えば、生物製剤の最大98%の回収を伴うことが示されている。これは、細胞による最大100%のIgE取り込みも観察されるが、最大55%のIgEがリサイクルされるオマリズマブで観察された結果とは対照的である。
【0167】
したがって、本発明の好ましい構築物は、捕捉された(又は結合した)IgEの少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%が取り込み後に細胞内に保持及び/又は分解されることを可能にする。これを行う本発明の構築物の能力は、任意の適切なアッセイによって測定され得る。便利なことに、これは適切な細胞を用いたin vitroアッセイ、例えば実施例3に記載されているような、例えばリサイクル及び細胞取り込みアッセイ、又は単純なIgE取り込み又は分解アッセイによって評価され得る。本発明の好ましい構築物は、特に無負荷の構築物、すなわち、もはやIgE標的に結合しない構築物のリサイクル、すなわち少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%のリサイクルレベルを細胞取り込み後に示す。これを行う本発明の構築物の能力は、任意の適切なアッセイによって測定され得る。便利なことに、これは適切な細胞を用いたin vitroアッセイ、例えば実施例3に記載されているような、例えばリサイクル及び細胞取り込みアッセイによって評価され得る。
【0168】
非常に効率的な空の(無負荷の)生物製剤のリサイクルとIgEの取り込み/分解/細胞内保持という、これらの2つの特性の組み合わせは、より深いIgEの抑制、薬物の作用期間の延長(半減期の延長)、及び維持投与量の低減をもたらす。したがって、本発明者らは、本発明の構築物がIgEを標的とする新たなクラスの生物学的製剤(生物製剤)を提供すると考えている。
【0169】
本発明のタンパク質構築物は、必要に応じて他の成分又は機能を含むように容易に操作され得る。例えば、細胞殺傷活性を分子に与えることができる成分を含めることができ、又は構築物は、例えばADCC、CDC若しくはADCP活性が存在するように改変又は適合され得る。そのような場合、本発明の構築物は、例えば構築物の部分a)を介して、例えば構築物のCD23部分を介して、細胞の表面上に発現された膜IgEを標的化するために使用することができ、そして表面上に膜IgEを発現している細胞がその後、殺傷され得るであろう。したがって、これはIgE発現細胞、例えばB細胞、例えば膜IgEを発現するように刺激されたB細胞/IgE発現B細胞、形質芽球又は形質細胞の直接的な標的化及び殺傷を可能にするであろう。上記のアプローチによって標的化されるであろう膜IgEを発現する細胞と、好ましくは標的化されないであろう例えばIgEが細胞表面受容体、例えばFcεRIに結合するようになったために表面IgEを有する細胞との間には違いがあることが注意されるべきである。これに関して、膜型のIgEを発現する細胞は、短い細胞質テールと膜貫通ドメインを含む可溶性IgE(又は例えばFcεRIに結合したIgE)には存在しないC末端伸長を含み、その結果、それはIgEを発現するB細胞の細胞膜にのみB細胞受容体の一部として提示される。
【0170】
本発明の全ての実施形態において、タンパク質構築物は、それらが天然に存在する分子に対応しないという点で人工構築物であるが、構築物の個々の成分のいくつかは、天然のタンパク質又は分子(又はその一部)に対応し得る。言い換えれば、本発明のタンパク質構築物は非天然である。したがって、そのようなタンパク質構築物は、例えば当技術分野で周知の遺伝子工学又は組換え工学技術によって作製された、組換え構築物又は改変された構築物と見なされ得る。
【0171】
上記の議論は、本発明のタンパク質構築物を記載することに焦点を合わせているが、好都合には、前記タンパク質構築物は、そのようなタンパク質構築物の全部又は一部をコードする適切な核酸分子を使用して調製又は生成されるであろう。
【0172】
したがって、本明細書において定義される本発明のタンパク質構築物、好ましくは組換えタンパク質構築物をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、例えば1つ又は複数の核酸分子(例えば核酸分子のセット)、又はその部分(例えばタンパク質構築物の単鎖又は第1若しくは第2の鎖)又は断片は、本発明の更に別の側面を形成することが分かる。そのような核酸分子、例えば1つ又は複数の核酸分子を含む発現ベクター、及び前記発現ベクター若しくは核酸分子若しくはタンパク質構築物を含む宿主細胞は、更に別の側面を形成する。
【0173】
典型的には、本発明のタンパク質構築物、例えば組換えタンパク質構築物の生成を容易にするために、本発明のタンパク質構築物をコードする1つ又は複数の核酸断片が1つ又は複数の適切な発現ベクターに組み込まれる。
【0174】
したがって、本発明は、の本発明の核酸分子を含有する又は含むか発現ベクター、例えば1つ又は複数の発現ベクター、例えば1つ又は複数の組換え発現ベクター、及び本発明の核酸分子によってコードされるタンパク質配列の転写と翻訳に必要な調節配列を想定している。ベクターはまた、抗生物質耐性及びベクターの複製を可能にする配列を含んでいてもよい。適切なベクター及び調節配列は、当業者には周知であろう。
【0175】
本発明の発現ベクター、例えば組換え発現ベクター、又は本発明の核酸分子は、形質転換された宿主細胞を生成するために宿主細胞に導入され得る。「形質転換された」、「トランスフェクトされた」、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、当技術分野で公知の多くの可能な技術の1つによる細胞への核酸(例えばベクター)の導入を包含することが意図されている。宿主細胞を形質転換及びトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrookら、1989年(Sambrook、Fritsch及びManiatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1989年)及び他の実験教科書の中に見出され得る。
【0176】
適切な宿主細胞は、多種多様な真核生物宿主細胞及び原核生物細胞を含む。例えば、本発明の分子は酵母細胞、又は哺乳動物細胞、又は大腸菌(Escherichia coli)等の原核細胞、又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現され得る。
【0177】
本発明の更に別の側面は、本発明の宿主細胞を培養する工程を含む、本発明のタンパク質構築物を生成する方法を提供する。好ましい方法は、(i)コードされたタンパク質構築物の発現に適した条件下で、本発明の1つ又は複数の組換え発現ベクター又は1つ又は複数の核酸配列を含む宿主細胞を培養する工程;及び、場合により(ii)宿主細胞又は増殖培地/上清から発現されたタンパク質構築物を単離又は取得する工程を含む。そのような生成方法はまた、タンパク質産物の精製及び/又はタンパク質産物を、薬学的に許容される担体又は賦形剤等の少なくとも1つの追加の成分を含む組成物へと調合する工程を含んでいてもよい。
【0178】
本発明の好ましい組換え分子/タンパク質構築物は、2つ(又はそれ以上)の同一のポリペプチド鎖から構成されるため(例えば、各鎖はペプチドリンカーによってIgG-Fcの鎖に接続されたCD23分子を含む)、そのような実施形態では、本発明の完全なタンパク質構築物が宿主細胞内で集合し、そこから単離又は精製され得るように、単一の適切なポリペプチド鎖が宿主細胞において発現される。
【0179】
本発明のタンパク質構築物は、当業者には周知であろう標準的な方法によって、生成、精製、又は単離され得る。しかしながら、本発明の更に別の側面は、そのような精製又は単離の工程のために、IgE Fc(又はその断片、例えば機能的断片、又はバリアント)が固定化された(及び構築物内のCD23分子を捕捉するために次に使用され得る)アフィニティーマトリックス(例えば、アフィニティーカラム又は他の固相)の使用を含む。したがって、そのような親和性マトリックスは、タンパク質構築物の製造又は生成の方法においても使用され得る。
【0180】
そのような方法において、そのような生成、精製又は単離は、IgE Fcが固定化されたアフィニティーマトリックス(例えば、アフィニティーカラム又は他の固相)を、構築物(特に構築物内のCD23分子)がアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合する条件下で、本発明の構築物と接触させることにより実施され得る。そのような条件は都合良く且つ好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されているように、血清(又は生理的)カルシウム又はpHレベル(例えば1から2mMのカルシウムレベル又はpH7.4若しくは約pH7.4のpH)に対応するものであり得るであろう。次に、そのような結合工程の後には、構築物(特に構築物中のCD23分子)がもはやアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合しない(又はアフィニティーマトリックス上のIgE Fcから放出される)ような条件下での溶出工程(すなわち、アフィニティーマトリックスから構築物を溶出させる工程)が続き得る。そのような条件は都合良く且つ好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されているように、エンドソームカルシウム又はpHレベル(例えば、3~30μMのカルシウムレベル又はpH5.0から6.5若しくは約pH5.0から6.5のpH、例えば6.0又は6.5のpH)に対応する条件であり得る。そのような溶出工程は次いで、本発明のタンパク質構築物の単離、精製、生成又は製造を可能にする。
【0181】
本発明のタンパク質構築物(又は本発明の核酸分子又は発現ベクター)を含む組成物は、本発明の更に別の側面を構成する。適切な希釈剤、担体又は賦形剤との混合物中に本発明の1つ又は複数のタンパク質構築物(又は核酸又は発現ベクター)を含む製剤(組成物)は、本発明の好ましい実施形態を構成する。そのような製剤は、医薬用途のためのものであってもよく(医薬組成物であり)、したがって、本発明の組成物は、好ましくは薬学的に許容される。適切な希釈剤、賦形剤及び担体は当業者に公知である。
【0182】
本発明に従う組成物は、例えば経口、経鼻、非経口、静脈内、局所又は直腸投与に適した形態で提示され得る。特に明記しない限り、投与は典型的には非経口経路により、好ましくは皮下、筋肉内、被膜内、髄腔内、腹腔内、腫瘍内、経皮又は静脈内注射による。いくつかの実施形態では、皮下投与が好ましい。
【0183】
本明細書において定義される本発明のタンパク質構築物は、コーティング錠、経鼻又は肺スプレー、溶液、リポソーム、粉末、カプセル又は徐放性形態等の従来的な薬理学的投与形態で提示され得る。これらの形態の調製には、従来的な薬学的賦形剤及び通常の生成方法が使用され得る。
【0184】
注射溶液は例えば、適切な保存剤又は安定剤の添加等による従来的な方法で生成され得る。次に、溶液は注射バイアル又はアンプルに充填される。
【0185】
経鼻スプレーは、水溶液中で同様に調合され、エアゾール噴射剤を伴うか又は手動圧縮のための手段を備えたスプレー容器中に充填され得る。
【0186】
非経口投与は注射器、場合によりペン型注射器による皮下、筋肉内又は静脈内注射によって実施され得る。或いは、非経口投与は注入ポンプによって実行され得る。さらなる選択肢は、経鼻又は肺スプレーの形態での分子又はタンパク質構築物の投与のための粉末又は液体であり得る組成物である。更に別の選択肢として、本発明の分子又はタンパク質構築物はまた、例えばパッチ、場合によりイオントフォレーシスパッチから経皮的にも、又は経粘膜的に、例えば頬側にも投与され得る。
【0187】
適切な投与単位は、当業者によって決定され得る。
【0188】
医薬組成物は、同時投与レジメンの文脈において、さらなる有効成分を追加的に含み得る。
【0189】
本明細書において定義される本発明のタンパク質構築物は、in vitro又はin vivoでの応用及びアッセイのための分子ツールとして使用されてもよい。したがって、本発明の更に別の側面は、本明細書において定義される本発明の分子又はタンパク質構築物を含む試薬、並びに例えばin vitro又はin vivoアッセイにおける分子ツールとしてのそのような分子又はタンパク質構築物の使用を提供する。
【0190】
タンパク質構築物、例えば本発明の組換えタンパク質構築物は、明確な治療用途を有する。例えば、本発明のタンパク質構築物、例えば組換えタンパク質構築物は、IgEに結合することができる治療薬分子による治療から利益を得るであろう、すなわち任意の抗IgE療法において使用され得る任意の疾患を治療又は予防するために使用され得る。本発明の分子はIgEを標的化し、好ましくは排除するため、本発明の構築物による治療のための好ましい疾患は、高濃度又は異常濃度(例えば異常に高いか、非常に高いか、又は病理学的な濃度)、例えば従来的な抗IgE抗体で効果的に治療するには高すぎる濃度で循環又は組織中に存在する、高レベル又は異常レベルのIgE、例えば高レベル又は異常レベルの遊離又は可溶性IgEによって媒介されるか、関連付けられるか、又は特徴付けられる、それらの疾患又は状態である。本明細書の他の箇所に記載されているように、本発明のタンパク質構築物はまた、膜IgEを発現する細胞、例えば膜IgE発現B細胞、形質芽細胞又は形質細胞を標的化し、排除するか、又は殺傷するために使用され得る。そのような実施形態では、好都合には、例えばペイロード又は毒素を使用して、例えばADCC活性又は他のタイプの細胞殺傷を可能とすることによって、分子又は構築物に細胞殺傷活性を与えることができる成分、例えば追加の成分が、構築物に含められるか、構築物に結合され得る。したがって、本発明のタンパク質構築物は、膜IgEを発現するそのような細胞の低下、除去又は死滅から利益を得る任意の疾患を治療又は予防するために使用され得る。
【0191】
したがって、本発明は更に、治療に使用するための本発明のタンパク質構築物、好ましくは組換えタンパク質構築物を提供する。
【0192】
したがって、本発明は更に、任意のIgE関連疾患又は状態の治療又は予防に使用するため、例えば、IgEのレベルを低下させることで利益が得られるであろう任意の疾患又は状態の治療又は予防、又はIgE若しくは膜IgEを発現する細胞の上昇した又は異常な(例えば異常に上昇した)レベルに関係付けられる、又はそれにより特徴付けられる疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、本発明のタンパク質構築物、好ましくは組換えタンパク質構築物を提供する。本発明のタンパク質構築物を用いて治療又は予防され得るであろう特定の疾患又は状態の例は、アレルギー性疾患及び喘息(アレルギー性及び非アレルギー性喘息を含む)を含む。
【0193】
「アレルギー性疾患」という用語は、医学の分野におけるその意味に従って理解されるべきである。特に、本発明の意味におけるアレルギー性疾患は、抗原に対するアレルギー性及び/又はアトピー性の免疫反応により特徴付けられる疾患を含み、これは、アレルギー性疾患に罹患している患者にアレルギー性及び/又はアトピー性の症状をもたらす。特に「アレルギー性疾患」という用語は、循環IgEレベルの上昇を特徴とする疾患を含む。アレルギー性疾患はしばしば、抗原特異的IgEの生成と、その結果として生じるIgE抗体の影響を特徴とする。当技術分野で周知のように、IgEはマスト細胞及び好塩基球上のIgE受容体に結合する。IgEによって認識される抗原に後に曝されると、抗原はマスト細胞と好塩基球上のIgEを架橋し、これらの細胞の脱顆粒を引き起こす。
【0194】
アレルギー性疾患の好ましい例は、アレルギー性喘息、季節性アレルギー性鼻炎及び通年性アレルギー性鼻炎等のアレルギー性鼻炎、並びにアトピー性皮膚炎である。
【0195】
アレルギー性及び非アレルギー性の喘息は、気道の炎症;可逆的な気道の閉塞;及び過敏性と呼ばれる感度の増加を特徴とする臨床的障害である。気流の閉塞は、ベースラインの肺活量測定との比較により得られる1秒間の強制呼気量(FEV I)の減少によって測定される。気道の過敏性は、非常に低いレベルのヒスタミン又はメタコリンに反応したFEVIの減少によって認識される。過敏症は、気道のアレルゲンへの曝露によって悪化し得る。アレルギー検査は、持続性喘息患者のアレルゲンを同定するのに役立ち得る。一般的なアレルゲンは、ペットの皮屑、ヒョウヒダニ、ゴキブリのアレルゲン、カビ、及び花粉を含む。一般的な呼吸器刺激物は、タバコの煙、汚染、及び木材やガスの燃焼による煙を含む。
【0196】
アレルギー性鼻炎は、鼻づまり、鼻漏、くしゃみ、及びかゆみを特徴とする臨床的障害である。これらの症状の重症度は年ごとに変わり、時折、自然寛解することもある。したがって、アレルギー性鼻炎は、症状が特定の季節(SAR又は季節性アレルギー性鼻炎)又は一年中(PAR又は通年性アレルギー性鼻炎)のどちらで発生するかによって分類される。季節的な多様性は通常、草、木、水草、カビの胞子等、他家受粉のために風に依存する植物からの花粉によって引き起こされる。アレルギー性鼻炎が治療されないか、治療が不十分な場合、鼻ポリープ、再発性副鼻腔炎、再発性耳感染症、及び難聴等の深刻な合併症が発生し得る。心理社会的な影響は、仕事や学校を頻繁に欠席すること、パフォーマンスの低下、食欲不振、倦怠感、及び慢性疲労を含み得る。
【0197】
アトピー性皮膚炎は、炎症、かゆみ、及び鱗屑により特徴付けられる皮膚内の過敏反応を伴う皮膚障害である。アトピー性皮膚炎は小児型又は成人型で生じ得る。多くの場合、喘息、干し草熱、湿疹、乾癬、又はその他のアレルギー性疾患やアレルギー関連障害の家族歴がある。成人では、それは一般的に慢性的な状態である。神経皮膚炎もアトピー性皮膚炎の一形態であり、治療され得る。それは自己永続的なかゆみと掻破の悪循環によって特徴付けられる。症状はストレス時に増加するものの、神経線維における生理学的変化も存在する。過敏反応が皮膚に起こり、慢性炎症が引き起こされる。
【0198】
治療に適した他の疾患は、他の高IgE症候群、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症及び他のアスペルギルス症に関連する症状、特発性アナフィラキシー、アナフィラキシー、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、蕁麻疹、例えば慢性蕁麻疹、鼻ポリープ、慢性副鼻腔炎、肥満細胞症及び他の肥満細胞障害、アトピー性角結膜炎、好酸球性胃腸炎を含む消化管の好酸球性疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、セリアック病、並びにクローン病を含む。
【0199】
昆虫、ハチ、ミツバチ又はクモからの毒を含む非食品関連物質、抗生物質及び化学療法剤を含む治療薬、放射性物質、ラテックス、ゴム、並びに他の潜在的にアレルギー性の物質に対するIgE関連のアレルギー感受性に加えて、ピーナッツ、ミルク、小麦、大豆、卵、桃、キウイ、ゴマ、シーフード、魚等を含むが、これらに限定されない食品に対するアレルギー(食物アレルギー)もまた、治療され得る。
【0200】
ループス腎炎、SLE、多発性硬化症、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、神経炎症性疾患を含むが、これらに限定されないIgEが役割を果たし得る自己免疫及び炎症の兆候もまた、治療され得る。したがって、これらの疾患は、本発明の構築物による治療にも適している。
【0201】
本発明は更に、治療に使用するための、又は上記の疾患又は状態のいずれかの治療又は予防に使用するための薬剤又は組成物の製造における、本発明のタンパク質構築物、好ましくは組換えタンパク質構築物の使用を提供する。
【0202】
本発明は更に、上記の疾患又は状態のいずれかの治療又は予防の方法を提供し、ここで前記方法は、それを必要とする患者に治療有効量の本発明のタンパク質構築物、好ましくは組換えタンパク質構築物を投与する工程を含む。
【0203】
本発明の核酸分子又は発現ベクターは、本明細書に記載されるような治療方法において等しく使用され得る。
【0204】
本明細書に記載されるin vivoの方法及び使用は、一般に哺乳動物において実施される。任意の哺乳動物、例えばヒト及び任意の家畜、飼育動物又は実験動物が治療され得る。具体的な例は、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、サル(例えばカニクイザル)を含む。しかしながら好ましくは、哺乳動物はヒトである。別の好ましい哺乳動物は、イヌ科動物(例えばイヌ)である。
【0205】
したがって、本明細書において使用される「患者」又は「対象」という用語は、上記のように任意の哺乳動物、例えばヒト及び任意の家畜、飼育動物若しくは実験動物を含む。しかしながら好ましくは、患者はヒトの対象である。したがって、本発明に従って治療される対象又は患者は、好ましくはヒトである。別の好ましい対象又は患者は、イヌ科動物(例えばイヌ)である。
【0206】
治療有効量は臨床評価に基づいて決定され、容易に監視され得る。
【0207】
本発明の組成物及び方法及び使用は、他の治療薬及び診断法と組み合わせて使用されてもよい。
【0208】
本発明は更に、本発明のタンパク質構築物若しくは組成物の1つ又は複数、又は本発明のタンパク質構築物をコードする1つ又は複数の核酸分子、又は1つ又は複数の発現ベクター、例えば本発明の核酸分子を含む組換え発現ベクター、又は発現ベクター、例えば組換え発現ベクター、若しくは本発明の核酸分子を含む1つ又は複数の宿主細胞を含むキットを含む。好ましくは前記キットは、本明細書に記載の方法及び使用、例えば本明細書に記載の治療方法で使用するためのものであるか、又は本明細書に記載のin vitroアッセイ若しくは方法で使用するためのものである。前記キットは好ましくは、キット成分の使用のための説明書を含む。前記キットは好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されるように疾患を治療又は予防するためのものであり、場合により、そのような疾患を治療又は予防するためのキット成分の使用のための説明書を含む。
【0209】
本願全体において使用される「1つ(a)」及び「1つ(an)」という用語は、上限がその後に具体的に述べられている場合を除いて、それらが「少なくとも1つ」、「少なくとも第1」、「1つ又は複数」、又は「複数」の参照される成分又は工程を指す意味で使用される。
【0210】
更に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「有する(has)」又は「有する(having)」という用語、又は他の同等な用語が本明細書において使用される場合、いくつかのより具体的な実施形態では、これらの用語は「から成る(consist of)」又は「から本質的に成る(consists essentially of)」という用語、又は他の同等な用語を含む。
【0211】
本明細書で論じられるような様々な成分及び機能「から成る」リストはまた、様々な成分及び特徴を「含む」リストも参照し得る。
【0212】
本明細書において使用される「アビディティー」という用語は、タンパク質間の多重結合相互作用の複合的な強度を表す。したがって、アビディティーは単一の結合の強度を表す親和性(affinity)とは異なる。そのため、アビディティーは結合の合計ではなく、組み合わされた結合親和性の相乗的(協調的)な強度であり、時として機能的親和性又は相対的親和性又は全体的親和性と呼ばれる。
【0213】
本明細書において使用される場合、「約」又は「付近」という用語は、例えば、使用される方法に応じてこれらの値を測定又は決定する際の典型的な実験誤差によって生じ得る数値の変動を指す。いくつかの実施形態において、「約」又は「付近」という用語は、報告された数値の10%以内、好ましくは報告された数値の5%又は2%以内を意味する。
【0214】
本明細書において使用されるタンパク質又はポリペプチドという用語は、任意のタイプのアミノ酸から成るか、又はそれを含む任意の分子を指す。したがって、天然及び/又は非天然又は改変又は合成アミノ酸を含む分子が含まれる。同様に、本明細書において使用される核酸分子又は核酸という用語は、任意のタイプのヌクレオチドから成るか、又はそれを含む任意の分子を指す。したがって、天然及び/又は非天然又は改変又は合成ヌクレオチドを含む分子が含まれる。
【0215】
本明細書において言及される「減少する」又は「低下する」という用語(又は同等な用語)は、適切な対照と比較した場合の測定可能な減少又は低下を含む。好ましくは、そのような減少又は低下(及び実際に本明細書の他の箇所で言及される他の減少、低下又は負の効果)は有意な低下であり、好ましくは、適切な対照のレベル又は値と比較した場合に、例えば0.05未満の確率値を伴う臨床的に有意又は統計的に有意な低下である。適切な対照は、当業者によって容易に同定され、例えば、前記構築物の存在と比較して(例えば未処理のサンプルと比較して)、本発明の構築物の非存在下で、又は必要に応じて前記特徴の存在(又は不在)と比較して、本発明の構築物の特定の特徴の不在(又は存在)下において観察されるパラメータ又は機能特性のレベルを含み得るであろう。
【0216】
本明細書において言及される「増加する」又は「増強する」という用語(又は同等な用語)は、適切な対照と比較した場合の測定可能な増加又は増強又は改善を含む。好ましくは、そのような増加(及び実際に本明細書の他の箇所で言及される他の改善又は正の効果)は有意な増加であり、好ましくは、適切な対照のレベル又は値と比較した場合に、例えば0.05未満の確率値を伴う臨床的に有意又は統計的に有意な増加である。適切な対照は、当業者によって容易に同定され、例えば、前記構築物の存在と比較して(例えば未処理のサンプルと比較して)、本発明の構築物の非存在下で、又は必要に応じて前記特徴の存在(又は不在)と比較して、本発明の構築物の特定の特徴の不在(又は存在)下において観察されるパラメータ又は機能特性のレベルを含み得るであろう。
【0217】
「結合する」、「結合することができる」という用語、及び本明細書において様々な分子又は実体に使用される同等な用語は、関連する標的に特異的に結合する能力を含む。
【0218】
本発明に従う疾患若しくは状態の治療(例えば既存の疾患の治療)は、前記疾患若しくは状態の治癒、又は疾患若しくは疾患の症状の低下若しくは緩和(例えば疾患の重症度の低下)を含む。
【0219】
本明細書の他の箇所における開示から明らかとなるように、本発明の方法及び使用は、疾患の予防並びに疾患の積極的な治療(例えば既存の疾患の治療)に適している。したがって、予防的治療も本発明に含まれる。この理由のため、本発明の方法及び使用において、治療はまた、適切な場合には予防又は防止を含む。
【0220】
そのような予防的(又は保護的)な側面は、健康な又は正常な、又はリスクに曝されている対象に対して、都合よく実施することができ、完全な予防及び有意な予防の両方を含み得る。同様に、有意な予防は、治療が行われない場合に予想されるであろう重症度又は症状と比較して、疾患の重症度又は疾患の症状が低下される(例えば測定可能又は大幅に低下される)シナリオを含み得る。
【0221】
本明細書において参照される配列のいくつかが、関連する識別子と共に以下の表にまとめられている。
【0222】
【表1A】
【0223】
【表1B】
【0224】
【表1C】
【0225】
【表1D】
【0226】
この表及び本明細書の他の箇所における全ての配列は、この技術分野の慣習に従ってN末端残基からC末端残基へ、又は5'から3'の方向で記載されている。上記の配列の1つ又は複数、又はその断片若しくはバリアント、例えば、本明細書の他の箇所に記載されているような、それに少なくとも70%、75%、80%等の同一性を有する配列が本発明の構築物において使用され得る。例えば、配列番号19から26は、配列番号17のリンカー及び4×G4Sリピート(すなわちGGGGS×4)を有するリンカーと一緒に、例示された構築物において使用される。
【0227】
本発明を、下記の図面を参照しつつ、下記の非限定的な実施例を参照して更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0228】
図1】2個のsCD23単量体がリンカー(Linker)を介してIgG由来のFcRn結合性Fc断片に結合している「生物製剤」の描写、及びIgEと結合した形態の描写。
図2】生物製剤の予測される作用機序を描写する概要。飲食作用又は微飲作用による、IgEとの複合体である生物製剤の取り込みが示されている。初期のエンドソーム内では、エンドソーム内のカルシウム及びpHが低下している。血清中で見出される高レベルからエンドソーム中で見出されるはるかに低レベルへのカルシウム濃度の変化により、生物製剤によりIgEが放出される。エンドソーム内のpHの酸性への変化により、FcRnに対するIgG-Fcの親和性が高まり、その結果、生物製剤がFcRnに結合する。FcRnとの結合により、生物製剤はリサイクル経路に入って血清に戻される。一方、IgEカーゴは、リソソーム分解経路に入って分解される。
図3】生物製剤(抗IgE3)が、IgEで予め負荷され感作された好塩基球の脱顆粒を増強する経口を評価するためのアッセイ。ポリクローナル抗IgE抗体を添加して表面FcεRI結合IgEに結合させて架橋させると、βヘキソサミニダーゼ放出により測定した場合に脱顆粒が起こり、この脱顆粒は、架橋するIgEの量の増加に伴い増加した。0.01nMと4mMとの間で生物製剤の濃度を増加させると、βヘキソサミニダーゼの放出により測定した場合には、好塩基球の脱顆粒の兆候はなかった。好塩基球を完全に溶解させるためのTriton X-100対照を使用すると、可能な限り最大のβヘキソサミニダーゼ放出(100%)が示された。この図は、最高濃度であっても生物製剤が脱顆粒を誘発しないことを示す。
図4】生物製剤(抗IgE3)が、好塩基球性RBL-SX38細胞のIgE媒介性脱顆粒を阻害する可能性を評価するためのアッセイ。この細胞を、一晩か又は最大24時間にわたり、生物製剤の用量範囲の存在下で、1nM IgEの存在下にてインキュベートした。翌日、ポリクローナル抗IgEを添加して、FcεRIに結合した表面IgEを架橋させ、βヘキソサミニダーゼの放出を増強させ、その後、細胞脱顆粒のレベルを定量化するための手段として測定した。1nM IgE以上の生物製剤濃度では、RBL-SX38細胞により放出されるβヘキソサミニダーゼの量が用量依存的に減少している。ポリクローナル抗IgE抗体を添加して表面FcεRI結合IgEに結合させて架橋させると、βヘキソサミニダーゼ放出により測定した場合に脱顆粒が起こり、この脱顆粒は、架橋するIgEの量の増加に伴い増加した。細胞を完全に溶解させるためのTriton X-100対照を使用すると、可能な限り最大のβヘキソサミニダーゼ放出(100%)が示された。この図は、生物製剤濃度が増加すると、IgEがFcεRIとの結合を妨げられ、好塩基球の感作が阻害されることを示す。
図5】データは、生物製剤(抗IgE3)が、IgEと、FcεRIを発現するRBL-SX38細胞との結合をブロックする能力を示す。この細胞を、1時間にわたり、0.05と2000nMとの間で濃度が増加する生物製剤の存在下又は非存在下で、AF-488で標識した1nM IgEと共にインキュベートした。RBL-SX38好塩基球性細胞の表面上に存在するAF-488標識IgEの量を、FACSにより定量化し、平均蛍光指数として示す。この図は、生物製剤濃度が増加すると、IgEがFcεRIとの結合を妨げられ、好塩基球の感作が阻害されることを示す。
図6】データは、RBL-SX38好塩基球性細胞がFcεRI結合IgEで予め感作されている場合での、生物製剤(抗IgE3)の、ポリクローナル抗IgE誘発性RBL-SX38好塩基球性細胞脱顆粒をブロックする能力を示す。RBL-SX38細胞を適切な培地に蒔いて増殖させた後、2日目にIgEを添加し、次いで24時間放置した。次いで、3日目に、この細胞に、生物製剤の増加する量を添加し、1時間にわたり細胞と共にインキュベートした後、一定量の架橋ポリクローナル抗IgEを添加して脱顆粒を誘発させ、βヘキソサミニダーゼの放出により測定した。ポリクローナル抗IgE抗体を添加して表面FcεRI結合IgEに結合させて架橋させると、βヘキソサミニダーゼ放出により測定した場合に脱顆粒が起こり、この脱顆粒は、架橋するIgEの量の増加に伴い増加した。細胞を完全に溶解させるためのTriton X-100対照を使用すると、可能な限り最大のβヘキソサミニダーゼ放出が示された。この図は、生物製剤濃度の高濃度では、予め感作された好塩基球中において脱顆粒が阻害されたことを示す。
図7】この概要は、Grevy's他2018から改変された、リサイクル及び分解アッセイのレイアウトを説明する。簡潔に説明すると、FcRn及びβ2ミクログロブリンでトランスフェクトしたHEK293細胞を播種し、コンフルエントなインタクトの単層が確立されるまで増殖させた。細胞を短期間飢餓状態にした後に、試験抗体及びタンパク質(IgE、生物製剤、又は生物製剤+タンパク質)を添加し、次いで、4時間にわたり、温かいHBSS中でインキュベートした。この研究を並行して行った。半分には、インキュベーション期間後に上清を取り出し、残存するIgE又は生物製剤の量をELISAで評価した。次いで、これらのウェル中に細胞を溶解させ、IgE及び生物製剤の細胞内取り込みをELISAで評価した。この研究の残り半分では、さらなる4時間のインキュベーション期間の前に細胞を徹底的に洗浄して、リガンドを上清へと放出させた。上清の試料を、生物製剤又はIgEに関してELISAで測定し、且つ細胞を溶解させて、この細胞内に取り込まれた量を評価した。このアッセイにより、抗体-リガンド複合体の取り込みと、この複合体がリサイクルされるか又はリソソーム分解経路に入るかの傾向との評価が可能である。
図8】上部のパネルは、表面プラズモン共鳴実験の実験セットアップの概要を示す。この概要の下は、derCD23単量体とIgE-Fcとの結合を示すセンサーグラムであり、このセンサーグラムでは、この実験の5つの異なるフェーズが強調されている。挿入図は、上部のパネルで示されているSPR結合プロファイルのフェーズ4に相当し、様々な開始濃度の範囲にわたるderCD23の結合プロファイルを示す。derCD23の会合及び解離は迅速であり、derCD23注入後数秒内で相互作用が定常状態に達した。α-Cε4 Fabで捕捉されたIgE-Fcに結合するderCD23に関する二重基準ブランク減算データ。derCD23と1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体との相互作用について実施した定常状態結合曲線分析。このデータは、0~4μMの濃度範囲にわたり1対1結合モデルに十分に適合しており、このことは、1個のderCD23結合部位のみがIgEで占有されていることを示唆しており、推定KDは1.82×10-6Mであった。
図9a】上部のパネルは、表面プラズモン共鳴実験の実験セットアップの概要を示す。SPRセンサー表面を、アミンカップリングによりα-Cε4 Fabを共有結合的にコンジュゲートさせることにより調製した(フェーズ1)。このα-Cε4 Fab表面全体に約80nMのIgE-Fcを注入し、1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体を形成した(フェーズ2)。短い解離フェーズを誘発する短い緩衝液注入後、2倍希釈系列の濃度範囲の抗IgE0;抗IgE3;及び抗IgE4を4μMの最高濃度でIgE-Fc全体に流した。最後に、約800秒の緩衝液を表面全体に流し、解離フェーズを誘発した。1:1 α-Cε4 Fab捕捉IgE-Fc複合体への抗IgE分子の結合及び解離(フェーズ4&5)を示すSPRセンサーグラム。1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体への(A)抗IgE0分子、(B)抗IgE3分子、及び(C)抗IgE4分子の結合に関するブランク減算センサーグラム。
図9b】IgE-Fcを、分子間間隔を広げつつ固定した場合の抗IgE分子に関する解離フェーズの比較を、表面プラズモン共鳴により示す。モデル構築プログラムCoot(Emsley他、2010)を使用して、生物製剤構築物IgE0、IgE3、及びIgE4のそれぞれに関する分子モデルを構築した。各抗IgE生物製剤に関するおおよその構造(及びCTLD間の分離)を示す画像を、PyMOLにより作成した。IgE-Fcは40pMの濃度で固定されており、これは、播種密度算出によれば、110nmの平均分子間隔を作る。同様に、80nM及び160pMの固定濃度は、それぞれ、40nm及び80nmの平均分子間隔をもたらすと算出された。短い解離フェーズを誘発する短い緩衝液注入後、2倍希釈系列の濃度範囲の抗IgE0;抗IgE3;及び抗IgE4を4μMの最高濃度でIgE-Fc全体に流した。最後に、約800秒の緩衝液を表面全体に流し、解離フェーズを誘発した。各構築物に関する解離フェーズの比較が描かれており、これは、リンカー長がIgE-Fc結合特定の決定であることを示唆する。
図10】この図の上部では、実験の概要が模式的に示されている。IgE-FcをAlexa-488(A488)で蛍光標識し、RBL SX-38細胞と共にインキュベートした。単一の生細胞のA488蛍光を、フローサイトメトリーを使用して測定した。1nM IgE-Fc-A488のみの結合に関して観察されたA488蛍光強度を、100%結合と定義した。A488標識陰性対照及び400nMの3種の抗IgE分子と共にインキュベートした単一のRBL SX-38細胞のA488蛍光強度を使用して、0%結合を定義した。抗IgE分子であるIgE0、IgE3、及びIgE4を、様々な濃度(0~4000nM)でIgE-Fc-A488及びRBL SX-38細胞と共にインキュベートし、IgE-Fc-A488に結合する単一の生細胞のA488蛍光強度へのこれらの効果を、フローサイトメトリーを使用して測定した。この研究は、抗IgE生物製剤の機能的特性の決定におけるリンカー長の重要性を示す。
【実施例
【0229】
(実施例1)
生物製剤抗IgE構築物のクローニング、発現、及び精製
pcDNA5-FRTへのマウスカッパリーダー-CD23-(GGGGS)3-Fcのクローニング方法
下記の配列は、Integrated DNA Technologies (IDT)により二本鎖gBlock DNA断片として合成された:
atgagtgtgcccactcaggtcctggggttgctgctgctgtggcttacagatgccagatgtgatggcgccgaagcttccgacctgctggaacggctgcgggaggaagtgaccaagctgcggatggaactgcaggtgtccagcggcttcgtgtgcaacacctgccccgagaagtggatcaacttccagcggaagtgctactacttcggcaagggcaccaagcagtgggtgcacgccagatacgcctgcgacgacatggaaggccagctggtgtccatccacagccccgaggaacaggacttcctgaccaagcacgccagccacaccggcagctggatcggcctgcggaacctggacctgaagggcgagttcatctgggtggacggcagccacgtggactacagcaactgggcccctggcgagcccacctccagaagccagggcgaggactgcgtgatgatgcggggcagcggccggtggaacgacgccttctgcgaccggaagctgggcgcctgggtgtgcgaccggctggccacctgcaccccccctgccagcgagggcagcgccgagagcatgggccccgacagcaggcccgaccccgacggcagactgcccacccccagcgcccctctgcacagcggcggcggcggcagcggcggcggcggcagcggcggcggcggcagcgccagcatatcggccatggttagatctcccagagggcccacaatcaagccctgtcctccatgcaaatgcccagcacctaacctcgagggtggaccatccgtcttcatcttccctccaaagatcaaggatgtactcatgatctccctgagccccatagtcacatgtgtggtggtggatgtgagcgaggatgacccagatgtccagatcagctggtttgtgaacaacgtggaagtacacacagctcagacacaaacccatagagaggattacaacagtactctccgggtggtcagtgccctccccatccagcaccaggactggatgagtggcaaggcgttcgcatgcgcggtcaacaacaaagacctcccagcgcccatcgagagaaccatctcaaaacccaaagggtcagtaagagctccacaggtatatgtcttgcctccaccagaagaagagatgactaagaaacaggtcactctgacctgcatggtcacagacttcatgcctgaagacatttacgtggagtggaccaacaacgggaaaacagagctaaactacaagaacactgaaccagtcctggactctgatggttcttacttcatgtacagcaagctgagagtggaaaagaagaactgggtggaaagaaatagctactcctgttcagtggtccacgagggtctgcacaatcaccacacgactaagagcttctcccggactccgggtaaatga (配列番号34)
【0230】
次いで、これを、pcDNA5-FRT (ThermoFisher)へのPIPEクローニングによりクローニングした。簡潔に説明すると、このベクターを、プライマーgtctgtgtgtgatcagtgtgaggctg(配列番号35)及びtaagataaacctgcctccctccctcccagggctccatccagctgtg(配列番号36)を使用するPCR(Pfu、Promega)により線形化し、ゲル抽出により精製し、DpnI(ThermoFisher)により処理して元々のプラスミドを除去した。挿入物を、ベクターの末端と相同なオーバーハングを有するプライマーtgatcacacacagacatgagtgtgcccactca(配列番号37)及びgagggaggcaggtttatcttatcatttacccggagtccgggaga(配列番号38)を使用する、gBlockからのPCR(Phusion Flash, ThermoFisher)により増幅させ、次いでゲル抽出により精製した。生成物を、1:1、2:1、又は1:2の比で混合し、30分にわたり室温でインキュベートし、次いで使用してNEB10βコンピテント大腸菌(E. coli)(NEB)を形質転換させた。コロニーをLB-ampで成長させ、プラスミドDNAをミニプレップし(Monarch kit, NEB)、次いで全体を配列決定した(Eurofins)。
【0231】
翻訳されたタンパク質の配列は下記に示されており、タンパク質発現に使用される哺乳類HEK293細胞中でのプロセシング中に開裂される「マウスカッパリーダー」と標識された分泌シグナルペプチドを含む。
【0232】
【化1】
【0233】
マウスカッパリーダー(太字)、sCD23、(GGGGS)3リンカー(太字イタリック)、mIgG-2AFc(下線が引かれたイタリック)
【0234】
pcDNA5/FRT/CD23-IgGFcベクター及びpOG44 Flp-リコンビナーゼベクターの共トランスフェクション
FuGene(Promega)に関して推奨されているように、簡潔に説明すると、トランスフェクションの前日に、24ウェルプレート(平底ウェル、組織培養24ウェルNunc(商標)プレート、ThermoFisher)の半分に、8×104個の細胞/ウェルの密度でFlpIn HEK293細胞を蒔き、もう半分に、完全増殖培地(DMEM+10%のウシ胎仔血清)500μl中に4×104個の細胞/ウェルの密度で蒔いた。2重での単一タンパク質トランスフェクションのために、pcDNA5-FRTベクター0.11ug及びpOG44 DNA(ThermoFisher)0.99ugを、滅菌脱イオン水 総量52μlに添加した。3:1のFugene対DNA比を使用して、FuGene 3.3μlを注意深く添加した。このことを、ピペットの先端がマイクロ遠心分離チューブの側面に触れないように実現した。この溶液を20秒にわたりボルテックスし、スピンダウンさせてマイクロ遠心分離チューブの底部中の全ての溶液を回収した。室温での10分間のインキュベーション後、FlpIn HEK293細胞(より高い密度のもの、及びより低い細胞密度のもの)の1つのウェル当たり複合体25μlを添加し、十分に混合した。細胞を、37℃5%CO2加湿インキュベーターに戻し、48時間後に、細胞を、選択のために50μg/mlのハイグロマイシン(PBS中のThermoFisherハイグロマイシンB)を含む完全培地が入った6ウェルプレートに分けた。1ヶ月後、成功裏にトランスフェクトされた細胞はウェル中で遺伝子座を形成し、この遺伝子座は、典型的には1Lのスピナーフラスコ又は5LのWAVEバイオリアクタに拡大され得、2週間後に培養上清を回収した。
【0235】
タンパク質-G親和性精製
細胞上清を回収し、15分にわたり4000×gで遠心分離して細胞残屑を除去した。上清を0.45μmフィルタ(Sartorius)に通し、精製のための0.1%のアジ化ナトリウム(Sigma)と共に4℃で保存した。CD23-IgGFc融合タンパク質を、AKTA Primeシステム(GE Healthcare)を使用するHiTrap Protein-G HPカラム(GE Healthcare)5mlによる親和性クロマトグラフィーにより精製した。このカラムを、5カラム容積(CV)の洗浄緩衝液(PBS、pH7.4)で平衡化した。このカラムに、ろ過した上清を2ml/分の流速でロードし、このカラムを10CVの洗浄緩衝液で洗浄した。CD23-IgGFc融合タンパク質を0.1Mのグリシン-HCl, pH 2.5で溶出させ、画分2.5mlを、中和のために1MのTris-HCl pH8.6 0.5mlが入ったチューブに回収した。
【0236】
親和性精製したCD23-IgGFc融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー
PBS pH7.4にて0.75ml/分の流速でSuperdex(商標)200 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を使用するGilson HPLCシステムで、サイズ排除クロマトグラフィーを実施した。このサイズ排除クロマトグラフィー分析により、凝集がないことが示され、且つ親和性カラムにより精製された生成物は、予測サイズ(約100KDa)の単分散分子からなることを確認した。
【0237】
(実施例2)
好塩基球脱顆粒への生物製剤抗IgEの効果の評価
脱顆粒アッセイを使用して、好塩基球及び肥満細胞等のIgE感受性エフェクター細胞が、細胞質内の顆粒中に保持された細胞内メディエーターを放出する傾向を評価した。エフェクター細胞の表面上のアレルゲン特異的IgEが、その特異的なアレルゲンに環境中で遭遇した場合には、高親和性IgE受容体FcεRIとの間で架橋が起こり、下流のシグナル伝達事象が活性化される。これにより、炎症性メディエーターを含む細胞内顆粒が局所環境中に放出され、この放出により典型的なアレルギー反応が起きる。この反応を抗IgE生物製剤が阻害するか又は増強する可能性を、一連の改変好塩基球脱顆粒アッセイで評価する。
【0238】
材料及び方法
好塩基球脱顆粒アッセイ
ヒト四量体(αβγ2)高親和性IgE受容体FcεRIを安定して発現するラット好塩基球性白血病細胞系統RBL-SX38細胞[Dibbern, DA他、J Immunol Methods 2003; 274: 37-45]、(Prof. J-P. Kinet, Harvard University, Boston, MAからの寄贈品)を、様々なIgE媒介性トリガーにより刺激して、β-ヘキソサミニダーゼの放出により測定される脱顆粒を評価した。使用する方法論は、本質的には、Rudman他、Clin Exp Allergy 2011年、41(10): 1400-1413、及びWeigand他、1996年、J. Immunol、157:221-230で説明されているものであり、本明細書で簡単に説明する。
【0239】
対照(コントロール)として、非刺激細胞を使用した。全β-ヘキソサミニダーゼ細胞含有量を定量するために、細胞を、適切な緩衝液中で0.5%のTriton X-100+1%のウシ血清アルブミン(BSA)と共にインキュベートして完全に溶解させた後、β-ヘキソサミニダーゼを定量した(100%放出)。陰性対照として、非刺激細胞を、HBSS中で1%のBSA(試験物に相当する濃度で使用する+/-対照IgG)と共にインキュベートした(0%ベースライン)。細胞なし対照も含めた。
【0240】
RBL-SX38好塩基球性細胞を、一晩培養培地(DMEM、10%のFCS、1.2mg/mLのGeneticin G418(Invitrogen))中において、96ウェルプレートで、1×104個の細胞/ウェルの密度で播種した後、200ng/mLのIgE (NIP IgE、AbD Serotec, Kidlington, Oxford)、アイソタイプ対照、又は培地のみを添加して感作し、更に一晩インキュベートした。細胞を刺激緩衝液(HBSS+1%のBSA)で3回洗浄した後、表面に結合したIgE(Dako)を架橋するために使用する対照抗体又はウサギポリクローナル抗IgEで、37℃で1時間にわたり刺激した。培養上清50μLからβ-ヘキソサミニダーゼを定量し、次いで刺激緩衝液で1:1に希釈した後、黒色96ウェルプレートに移した。このプレートの各ウェルには、蛍光発生基質(0.1%のDMSO中の1mMの4-メチルウンベリフェリルN-アセチル-b-D-グルコサミニド、0.1%のTriton X100、200mMのクエン酸緩衝液pH4.5)50μLが既に入っていた。試料を暗所にて2時間にわたりインキュベートした後、0.5MのTris 100μLでクエンチした。プレートを、Fluostar Omegaマイクロプレートリーダー(350nm励起、450nm発光)(BMG Labtech, Offenburg, Germany)で読み取った。脱顆粒を、Triton X-100放出の割合で表し、且つ非刺激細胞と比較した。
【0241】
抗IgE生物製剤が好塩基球脱顆粒のみを誘発する傾向の評価
この生物製剤構築物を、FcεRI IgE受容体に既に結合しているIgEの架橋を介してIgE媒介性脱顆粒事象を増強する能力に関して試験した。
【0242】
材料及び方法
RBL-SX38好塩基球性細胞を、上記材料及び方法(好塩基球脱顆粒アッセイ)セクションで説明したように調製して48時間の期間にわたりIgEを負荷した。IgEを負荷した細胞に、生物製剤を4μM~0.016nMの連続希釈範囲で添加し、1時間にわたりインキュベートした。次いで、説明したように上清の試料を採取して処理して、細胞の脱顆粒のシグナルとして放出されるβ-ヘキソサミニダーゼの濃度を評価した。
【0243】
結果及び考察
抗IgEと架橋する対照との1時間のインキュベーション後、RBL-SX38好塩基球性細胞を刺激して、用量依存的反応でβ-ヘキソサミニダーゼを放出させた。これに対して、(同一の実験条件を使用して)生物製剤の濃度を増加させると、いかなるβ-ヘキソサミニダーゼ放出の兆候も見られず、このことは、この生物製剤が単独で好塩基球の活性化又は脱顆粒を増強し得なかったことを示す(図3)。
【0244】
抗IgE生物製剤が競合研究においてIgEとFcεRIとの結合をブロックし、好塩基球性細胞系統の脱顆粒を防止する傾向の評価
この研究では、抗IgE生物製剤がIgEに結合し、高親和性IgE受容体FcεRIとの結合を防止し、それにより好塩基球性細胞系統RBL-SX38のIgE依存性脱顆粒を防止する可能性を探る。
【0245】
材料及び方法
RBL-SX38好塩基球性細胞を上記で説明したように播種し、一晩インキュベートした。翌日、200ng/mL(1nM)に設定されたIgEの標準濃度を含むプレミックス溶液を、生物製剤抗IgE構築物の増加する濃度と共に調製した。次いで、このプレミックス溶液を細胞に直ちに添加し、一晩インキュベートした後、上記の脱顆粒アッセイセクションで説明したように、ポリクローナル抗IgEによる刺激プロトコルに供した。
【0246】
結果及び考察
図4に示すデータは、抗IgE生物製剤が用量依存的にIgE媒介性脱顆粒を阻害し得たことを示しており、抗IgE生物製剤が高親和性IgE受容体FcεRIへのIgEの結合をブロックしていることと一致している。
【0247】
生物製剤抗IgEが高親和性受容体FcεRIへのIgEの結合を防止することの実証
この研究では、抗IgE生物製剤がIgEに結合し、高親和性IgE受容体FcεRIとの結合を防止する可能性を探る。
【0248】
材料及び方法
RBL-SX38好塩基球性細胞を上記で説明したように播種し、一晩インキュベートした。翌日、200ng/mL(1nM)に設定されたAlexaFluor-488標識IgEの標準濃度を含むプレミックス溶液を、生物製剤抗IgE構築物の増加する濃度と共に調製した。次いで、このプレミックス溶液を細胞に直ちに添加し、1時間にわたりインキュベートした後、2回洗浄し、分析のためにFACS緩衝液1mLに再懸濁させた。細胞をAttune NxT Acoustic Focusing Cytometer (Lasers: BRVX) (ThermoFisher)で分析し、データをFlowJoバージョン10.2で分析した。
【0249】
結果及び考察
図5に示すデータは、競合結合研究において、抗IgE生物製剤がIgEに結合して、RBL-SX38細胞上の高親和性IgE受容体FcεRIへのIgEの結合を用量依存的に防止し得たことを示す。生物製剤抗IgEの濃度の増加に伴い、表面FcεRIに結合し得たIgE分子は少なくなり、そのため、この分子が、IgEとその高親和性受容体との結合を阻害する能力が実証された。
【0250】
生物製剤抗IgEが、高親和性受容体FcεRIに結合したIgEで既に予め感作された好塩基球の脱顆粒を防止することの実証
IgEは、肥満細胞及び好塩基球の表面上のFcεRIに結合する。多価アレルゲンの存在下では、FcεRIに結合したIgEは、受容体を架橋して、細胞の活性化、及び脱顆粒反応による炎症性細胞メディエーターの放出を増強する。生物製剤抗IgEを、既に予め感作された好塩基球性細胞の脱顆粒反応を防止する能力に関して試験した。
【0251】
材料及び方法
RBL-SX38好塩基球性細胞を上記で説明したように播種し、一晩インキュベートした後、上記で説明したプロトコルに従って200ng/mLのIgE(1nM)を添加し、更に24時間にわたりインキュベートした。次いで、この細胞が入ったウェルに、増加する濃度の生物製剤抗IgE構築物を添加し、1時間にわたりインキュベートした後、上記の脱顆粒アッセイセクションで説明したように、5000ng/mLのポリクローナル抗IgEによる刺激プロトコルに供した。
【0252】
結果及び考察
図6に示すデータは、1時間以内に急速に、適度に過剰(>1nM)な場合でβ-ヘキソサミニダーゼ放出により測定した場合に抗IgE生物製剤がIgE媒介性脱顆粒を用量依存的に防止し得たことを示す。インキュベーション時間を更に長くしても、この構築物で観察された脱顆粒の阻害レベルにさらなる変化はなかった(データは示さない)。
【0253】
(実施例3)
リサイクル及び取り込み細胞アッセイ
材料及び方法:
HEK-mFcRn/β2m細胞及びHEK-hFcRn/β2m細胞の調製
HEK293F(ThermoFisher)細胞は、ヒト胚性腎細胞系統である。細胞を、DMEM+10%のウシ胎仔血清中で維持し、実施例1に従ってFugene(ThermoFisher)トランスフェクション試薬を使用して、マウス又はヒトのFcRn及びβ2mのいずれかで一過性にトランスフェクトし、約48時間後に使用可能であった。HUVEC、HepG2、CACO2、及びHMEC1等の他の細胞系統も、この方法で成功裏にトランスフェクトし得る(図示しない)。
【0254】
マウス用のFcRn及びβ2m発現ベクター(mFcRnFix-pEGFP-N1及びmB2-M-PCB7)、並びにヒト用のFcRn及びβ2m発現ベクター(hFcRnWT-pEGFP-N1及びhB2-M-PCB7)は、Prof E.S. Wardからの寄贈品であり、FcRnベクターは、FACS及び蛍光顕微鏡に更に有用な細胞質GFPを含む(説明しない)。
【0255】
参考文献:
mFcRnFix-pEGFP-N1及びmB2-M-PCB7
インビボでの抗体レベルを調整するための免疫グロブリンGのFc領域の操作
Carlos Vaccaro、Jinchun Zhou、Raimund J Ober & E Sally Ward、Nat. Biotechnol.、23 (10):1283-1288. 2005.
【0256】
hFcRnWT-pEGFP-N1及びhB2-M-PCB7
MHCクラスI関連受容体FcRnによるIgGサルベージの部位及びダイナミクスの可視化
R. J. Ober、C. Martinez、C. Vacarro、E. S. Ward、J. Immunol.、第172巻、第2021-2029頁、2004年.
【0257】
細胞リサイクルアッセイプロトコル:
このアッセイプロトコルを、図7に示す。
a. HEK293-FcRn/β2m細胞を播種し、コンフルエント(95~100%の培養密度)まで増殖させ、1つのウェル当たり7.5×105個を24ウェルプレート(Costar)に播種し、培養培地中で2日にわたり培養する。
b.培地を除去し、細胞を2回洗浄し、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)緩衝液(pH7.4)中で1時間にわたり飢餓状態にした。
c.目的のタンパク質をHBSS(pH7.4又は6.0)で希釈し、細胞に添加し、4時間にわたりインキュベートして、抗体を取り込ませる。
d.培地を除去し、細胞を氷冷HBSS(pH7.4)で4回洗浄し、その後、新鮮で温かいHBSS(pH7.4)、又はFBSを含まず且つMEM非必須アミノ酸(ThermoFisher)が補充された増殖培地を添加した。
e.試料を新鮮で温かいHBSS(pH7.4)と共にインキュベートし、4時間又は一晩(4時間のインキュベーション)(これにより、リガンドの放出が可能となる)で回収した++
f.細胞を氷冷HBSS(pH7.4)で徹底的に洗浄し、溶解させる+++
g.回収した試料を、IgG又はIgEに特異的なELISAで分析する。
+培地を取り出し、溶液中に残存する構築物を読み取る。
++培地を吸引し、溶液/培地中に放出された構築物(リガンド)の量を決定するELISAにより読み取る。
+++細胞溶解物を、ELISAにより、細胞内に取り込まれた構築物のレベルに関して分析する。
【0258】
全タンパク質溶解物の調製
全タンパク質溶解物を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma- Aldrich)又は完全プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche)が補充されたCelLytic M細胞溶解試薬(Sigma-Aldrich)又はRIPA溶解緩衝液(ThermoFisher)を使用して得た。この混合物を、10分にわたり氷及び振盪機の上で細胞と共にインキュベートし、続いて10,000×gで15分にわたり遠心分離して細胞残屑を除去した。溶解物中に存在するIgG又はIgEの量の定量を、下記で説明するようにELISAにより行った。
【0259】
生物製剤及びIgEのリサイクル量及び残存量に関して導かれた値を使用して、リサイクルされる量と、細胞内で保持される量とを算出した。
【0260】
全IgG-Fc(抗マウス)ELISA
細胞培養上清中のIgG-Fc濃度を、下記の方法を使用するELISAにより決定した。
a.最初に、捕捉抗体であるヤギ抗マウスIgG(Sigma)を、炭酸-炭酸水素緩衝液で1μg/mLの最終濃度まで希釈した。
b.次に、このコーティング溶液100μLを、MaxisorpTM 96ウェルプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。
c.一晩のインキュベーション後、このウェルからコーティング溶液を除去し、各ウェルに、ブロッキング緩衝液である2%のSkim Milk/PBS+0.5%のTween(登録商標)20(PBS-T) 200μLを添加した。プレートを2時間にわたりインキュベートし、次いでウェルをPBS-T 250μLで2回洗浄した。
d.次に、IgG標準を、50%の培養培地(細胞培養培地と同一)及び50%のPBS-T/1%のSkim Milk (アッセイ緩衝液)で400ng/mLまで希釈し、各ウェルの最終体積が50μLになるように、2重で0.78ng/mLまでウェルプレート中において1:2で連続希釈した。
e.残りのウェルに、アッセイ緩衝液25μLと、細胞培養に由来する上清又は希釈された上清25μLとを入れた。
f.標準及び試料を2時間にわたりインキュベートした後、ウェルをPBS-T 250μLで4回洗浄した。
g.次に、二次抗体であるヤギ抗マウスIgG-HRP(ThermoFisher)をアッセイ緩衝液により1:1000で希釈し、この溶液50μLを各ウェルに添加した。2時間のインキュベーション期間後、ウェルをPBS-T 250μLで4回洗浄した。
h.次に、各ウェルに、OPD 5mgを1×Stable Peroxidase Substrate Buffer 10mLに希釈することにより調製した基質50μLを添加した。この基質を15分にわたりインキュベートし、この反応を、各ウェルへの1MのHCl 50μLの添加により停止させた。
i.各ウェルの吸光度を、492nmの吸光度及び650nmの基準波長減算を使用して、Flurostar Omega (BMG Labtech) Spectrophotometerを使用して決定した。標準曲線フィッティングを、標準曲線上の最低6点を使用する重み付けなしの4パラメータ曲線フィットにより、GraphPad Prism(著作権)ソフトウェアを使用して実施した(Findlay and Dillard 2007)。
【0261】
全IgE検出ELISA
試薬及び緩衝液
ポリクローナルウサギ抗ヒトIgE(Dako、A0094)
ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgE(Sigma、A9667)
IgE標準(WHO 75/502)(ストック濃度1mg/ml、-20℃で保存)
TMB 「Substrate Reagent Pack」(R&D、DY999、4℃)
炭酸緩衝液、pH9.2(0.2Mの炭酸ナトリウム4ml(2.2g/100ml)+炭酸水素ナトリウム46ml(1.68g/100ml)、H2Oで200mlにする)
1%のBSA/PBS
洗浄緩衝液(0.05%のTween 20/PBS)
【0262】
プロトコル
1)プレートのコーティング
a.抗ヒトIgEコーティング抗体を、炭酸緩衝液により1:7000で希釈する
b.任意選択:抗原を炭酸緩衝液で5μg/mlまで希釈する
c.希釈されたコーティング抗体(及び必要に応じて抗原)を100μl/ウェルで添加する
d.プレートを密封し、一晩4℃でインキュベートする
2)ウェルの洗浄及びブロック
a.コーティング抗体を弾き出す
b. 1つのウェル当たり洗浄緩衝液200μLを添加する
c.弾き出して薄葉紙で拭き取って、過剰な洗浄緩衝液を除去する
d. b及びcを更に4回繰り返す
e. 1%のBSA/PBSを100μl/ウェルで添加する
f.プレートを蓋で覆い、室温で1時間にわたりインキュベートする
3)洗浄並びに上清及び標準の添加
a.工程2b~2dで説明したように、プレートを5回洗浄する
b.標準を800ng/mlまで希釈する(ストック15μL+1%のBSA/PBS 210μl)
c.標準列/sのウェル2~12に、1%のBSA/PBS 50μlを添加する
d.標準列/sのウェル1及び2に、標準50μlを添加する
e.ウェルを混合し、50μlを順次移して2倍希釈を作成する(最終ウェルをブランクとして残す)
f.試料(+ve対照及び-ve対照を含む)を50μl/ウェルで2重に添加する
g.プレートを密封し、振盪プラットフォームで、4℃にて一晩インキュベートするか又は室温で2時間にわたりインキュベートする
4)洗浄及び検出器の添加
a.工程2b~2dで説明したように、プレートを5回洗浄する
b.ペルオキシダーゼコンジュゲート検出抗体を、1%のBSA/PBSで1:500まで希釈する
c. 100μl/ウェルで添加する
d.プレートを密封し、振盪プラットフォームで、1時間にわたり室温にてインキュベートする
5)基質溶液
a.工程2b~2dで説明したように、プレートを5回洗浄する
b.発色試薬Aと発色試薬Bとを同量で混合する
c. 50μl/ウェルで添加する
d.約5~10分にわたり暗所でインキュベートする
e.この反応を、3Mの硫酸50μl/ウェルで停止させる
6)プレートの読み取り
a.現像直後にプレートを読み取る
b.基準フィルタ450nm
【0263】
結果及び考察
IgEのみが細胞に取り込まれてリソソーム分解を受けるか又はFcRnによるか若しくは潜在的に同等のリサイクル及び回収経路によりリサイクルされる能力を、Grevy's他2018. Grevys A、Nilsen J、Sand KMK、Daba MB、Oynebraten I、Bern M、McAdam MB、Foss S、Schlothauer T、Michaelsen TE、Christianson GJ、Roopenian DC、Blumberg RS、Sandlie I、Andersen JT. A human endothelial cell-based recycling assay for screening of FcRn targeted molecules. Nat Commun. 2018年2月、12;9(1):621により公開されているものから改変されたアッセイで評価した。
【0264】
【表2】
【0265】
【表3】
【0266】
【表4】
【0267】
【表5】
【0268】
【表6】
【0269】
Table 1(表2)で説明されているデータは、生物製剤抗IgE(実施例1)の非存在下では、細胞の洗浄前での細胞との4時間のインキュベーション後に、IgEがHEK293-mFcRn細胞培養の上清に残存し、細胞取り込みは非常に少ないことを示す。洗浄後、IgEがリサイクルされるか又は細胞内に保持される証拠はなかった。
【0270】
IgEの取り込み、細胞保持、及びリサイクルへの生物製剤抗IgE効果の評価
Table 2(表3、表4)は、HEK293-mFcRn/β2mリサイクルアッセイにおいて、IgEを含まず生物製剤抗IgEのみの濃度の増加を評価したことを示す。この構築物は、0.01~5.00nMの生物製剤濃度では、生物製剤の93%超が、4時間のインキュベーション期間内に、トランスフェクトされたHEK293細胞により培地から取り込まれるという、FcRn飲食作用輸送機序による迅速な取り込みを示した。1nMのIgEの存在下では、1~2000nMの生物製剤抗IgEの存在下である場合に4時間のインキュベーションウィンドウ(incubation window)内で細胞培養培地からIgEが完全に除去された。1nM未満の濃度では、IgEが生物製剤抗IgEを超えた場合に、0.01nM、0.05nM、及び0.5nMの生物製剤抗IgEと共に4時間にわたりインキュベートした際に、それぞれ、IgEの8%、5%、及び1%が残存していた(Table 2(表3、表4))。
【0271】
取り込まれたIgEの内、大部分のIgeは細胞内で保持され、4時間後のリサイクル画分中ではIgEが見出されなかった。細胞インキュベーション培地中にも細胞溶解物中にも回収されなかったIgEの未検出画分は、分解されていると考えられる。
【0272】
IgEの取り込み、細胞保持、及びリサイクルへのオマリズマブ抗IgE効果の評価
Table 3(表5、表6)中のデータは、オマリズマブがHEK293- hFcRn/β2mトランスフェクト細胞により効率的に取り込まれ、その結果、添加後4時間では上清中にほとんど残存していないことを示す。緩衝液の交換及びさらなる4時間のインキュベーション後に、オマリズマブの50~84%が細胞培地中に回収され、残りは細胞内で保持された。
【0273】
1nMのIgE、及びオマリズマブの濃度の増加の存在下でインキュベートした場合には、4時間のインキュベーション後に、細胞外上清中でIgEを検出し得なかった。
【0274】
緩衝液の交換及び緩衝液による細胞の洗浄の後、上記の材料及び方法で説明されているように、温めた培地をHEK293細胞に添加した。4時間のインキュベーション後、細胞外上清を除去してIgEの存在を測定し、更にHEK293-hFcRn/β2m細胞を溶解させてIgEの細胞内量を適切なELISAアッセイで定量した。これらの研究から、試験したオマリズマブの濃度に応じてIgEの42~55%が細胞外上清中に回収されたことを観察し得る。これは、安定したIgE-オマリズマブ複合体がエンドソームリサイクル経路を介してリサイクルされる結果であり得ると考えられ、これより、オマリズマブにより処置された患者で観察されたIgE-抗IgE複合体の寿命が説明され得る。残りのIgEの内、23~30%は細胞溶解物中で測定され得、残余(16~34%)は未検出であり、分解されている可能性がある(Table 3(表5、表6))。
【0275】
この研究により、生物製剤抗IgEは、オマリズマブと比べて有効なIgE除去剤であることが実証されている。生物製剤抗IgEはIgEと効率的に結合し、HEK293-hFcRn細胞による細胞取り込みを可能にしたが、洗浄及びインキュベーションプロトコル後の細胞外上清中には検出可能なIgEが存在せず、このことは、細胞溶解及び細胞内IgEレベルの測定により確認されるように、IgEが細胞から離れなかったことを示唆する。これに対して、オマリズマブはエンドソーム内でIgEを効率的に放出し得ず、その結果、IgE-オマリズマブ複合体は循環へとリサイクルされ、オマリズマブをモル濃度過剰で投与した場合にはIgEの50%未満が細胞内で保持される。これらのデータは、IgEが非常にモル濃度過剰であるように投与された場合での生物製剤抗IgEの効率により証明されているように、生物製剤抗IgEに固有のカルシウム感受性結合機序が、結合した標的(IgE)を放出する非常に効率的な機序であり、更には、生物製剤抗IgE自体のリサイクルも可能にすることを示唆する(Table 2(表3、表4))。
【0276】
(実施例4)
BIACoreを使用する表面プラズモン共鳴によるIgEへの生物製剤抗IgEの結合の評価
方法及び材料:
BIACore研究:一般的な表面プラズモン共鳴プロトコル:
固定化を、カルボキシメチル化センサーチップ表面(CM5チップ、GE Healthcare)への直接アミンカップリングにより実施した。各CM5チップのカルボキシメチル化デキストラン表面を、脱イオン水中における1:1の比での0.1MのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び0.4Mの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)の420秒間注入により活性化した。NHS/EDC溶液は、チップ上に存在する遊離カルボキシル基と反応して反応性のスクシンイミドエステルを生成し、このスクシンイミドエステルは、タンパク質の表面上に露出したリシン残基と反応し得、そのため表面上に固定される。タンパク質を、所望のレベルの固定化が達成されるまで、60~300秒パルスで、10mMの酢酸ナトリウムpH5.0中の10μg/mlの濃度にてNHS/EDC活性化表面全体に注入した。あらゆる残余の活性カルボキシメチル化基を、600秒にわたりチップ全体に注入した1MのエタノールアミンpH8.5でブロックした。参照細胞を、タンパク質の代わりに表面全体に緩衝液を注入した以外は同一の手順を使用して調製した。全ての固定化を、20μl/分の流速により25℃で実施した。
【0277】
BIACore結合研究:IgE-FcへのderCD23の結合
SPR実験を実施して、IgE-Fcとα-Cε4 Fabとの相互作用へのderCD23の効果を決定し、定常状態分析を実施して、この効果をKD及びBmaxの観点で定量化した。アミンカップリングを使用してα-Cε4 Fab CM5センサー表面を調製し、模擬的なアミン共役表面を参照減算対照として使用した。次いで、80nMのIgE-Fcを注入して、固定された1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体を生成した。短い解離フェーズを開始するためのα-Cε4 Fab共役表面全体への短いSPR緩衝液注入後、4000nM~31nMのderCD23の2倍連続滴定を1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体全体に注入した。次いで、derCD23注入後に解離フェーズが続き、α-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fc表面が再生された(図8)。注入を、10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、4mMのCaCl2、及び0.005%(v/v)の界面活性剤P-20(GE Healthcare)のランニング緩衝液中において25μl.分-1の流速で実施した。全ての実験を2重に実行し、BIACore T200機器(GE Healthcare)を使用して再現性が高い結果が得られ、単相動力学的フィッティング(monophasic kinetic fitting)により1.8×10-6MのKDが得られた。
【0278】
BIACore結合研究:IgE-Fcへの抗IgE生物製剤構築物の結合
α-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-FcへのCD23の結合の相互作用、及び3種の抗IgE生物製剤とα-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fcとの間の相互作用に関する結合曲線を評価した。この実験での試験物は生物製剤抗IgE分子であり、この生物製剤抗IgE分子は、CD23単量体の対を含むが、IgE結合成分(CD23単量体)とFcRn結合成分(IgGFc)との間のリンカーの長さは、リンカーなし(抗IgE0)から(G4S)リンカー配列の3回の反復(抗IgE3)又は4回の反復(抗IgE4)まで変化した。1:1 α-Cε4 Fab/IgE-Fc複合体を、CM5センサー表面上に固定した。4000nM~31nMの抗IgE分子の2倍連続滴定を、α-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fc全体に注入し、解離フェーズ(図9a A~C)が続き、表面が再生された。次いで、SPR反応の変化を使用して、α-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fcの抗IgE分子に結合する能力を測定した。二相動力学的モデルを使用するデータフィッティングにより、KD1 1~2×10-6M及びKD2 1~4×10-8Mという2つのKD値が得られ、いずれの場合も、リンカーがより長いとKDがより低濃度であった。
【0279】
BIACore結合研究:抗IgE分子結合特性に対するIgE-Fc固定レベルの変動の効果
リガンド密度は、SPR実験が固有の親和性又は機能的親和性をどの程度まで測定するかに影響を及ぼす場合がある。高いリガンド密度では、多価分析物が2種以上のリガンドに同時に結合し得る可能性がある。相互作用部位の動力学が同一であり且つ独立している場合には、最初の相互作用は、この部位の固有の親和性に依存することになる。分析物の高い局所濃度のために、その後の部位の会合は有利である。このセットの実験の実施では、IgE-Fcとα-Cε4 Fabとの間で1:1複合体を確実に形成するであろう密度でチップ表面上にα-Cε4 Fabを共有結合的に固定することにより、センサーチップ表面を調製した。3種の異なる濃度のIgE-Fc(80nM、160pM、及び40pM)を、固定されたα-Cε4 Fab捕捉分子全体に注入し、平均分子化間隔がそれぞれ40nm、80nm、及び110nmとなった。IgE-Fcのより低い固定レベルで、抗IgE分子は二価性がより低くなり、単相相互作用が有利となるであろうという仮定に基づいて、平均分子間隔の測定を選択した。様々な濃度の抗IgE分子(4000nM~31nM)を、α-Cε4 Fab/IgE-Fc表面全体に注入した。
【0280】
SPR共鳴(共鳴単位)を使用してα-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fcへの抗IgE生物製剤の特異的結合を測定した。各注入後、800秒の解離フェーズが存在し、次いで、次のサイクルのために表面を再生するための10mMのグリシンpH2.5の3回の60秒パルス及び5mMのNaOHの1回のパルスにより、α-Cε4 Fabにより捕捉されたIgE-Fcを再生させた。10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、4mMのCaCl2、及び0.005%(v/v)の界面活性剤P-20のランニング緩衝液中における25μl.分-1の流速で、注入を実施した。これらの実験的結合測定を、25℃で実施した。いずれの場合でも、標準的な二重参照データ減算法(standard double referencing data subtraction method)を使用し、Originソフトウェア(OriginLab)を使用して動力学的フィットを実施した。
【0281】
結果及び考察
図8中のデータは、CD23単量体が比較的低い親和性でIgEに結合し得ることを明確に示す。図9a中のデータは、対として配置されたCD23単量体は、単一の単量体と比較して改善された親和性でIgEに結合し得ること、及びCD23単量体成分とFcRn結合成分との間でのリンカーの導入により結合の改善が示されることを示す。図9bに示されるプロットは、抗IgE分子のそれぞれに関して、固定されたIgE分子間のより大きい間隔は、IgEとの結合により形成されている複合体の解離がより速いこと、及びこの効果は、抗IgE生物製剤のリンカー長の増加により減少することを示す。
【0282】
(実施例5)
IgE媒介性好塩基球脱顆粒を阻害する能力に対するリンカー長が変化する抗IgE生物製剤の評価
アレルゲンの存在下でのIgEと高親和性受容体FcεRIとの結合及びその結果としての結合したIgEの架橋が、肥満細胞及び好塩基球等のエフェクター細胞の活性化を引き起こし、アレルギー反応を引き起こすために炎症性メディエーター(例えばヒスタミン)の放出が引き起こされることが十分に確立されている。この研究では、IgEに結合して好塩基球性エフェクター細胞のIgE媒介性の活性化及び脱顆粒を防ぐために、対として組織されたIgE結合CD23単量体の空間的到達範囲を変更させるリンカーの導入の潜在的効果を調べた。
【0283】
方法及び材料:
好塩基球性脱顆粒アッセイ
好塩基球性脱顆粒アッセイのアッセイ方法及び材料は、実施例2で説明された通りであった。この実施例の試験物は、一対のCD23単量体を含むが、IgE結合成分(CD23単量体)とFcRn結合成分(IgGFc)との間のリンカーの長さが、リンカーなし(抗IgE0)から(G4S)リンカー配列の3回の反復(抗IgE3)又は4回の反復(抗IgE4)まで変化する生物製剤抗IgE分子であった。これには、IgE結合成分の空間到達範囲の延長という効果がある。
【0284】
結果及び考察:
試験した生物製剤抗IgEのそれぞれは、IgEと、RBL-SX38ヒト好塩基球性細胞系統の表面上で発現されている高親和性IgE受容体FcεRIとの間の相互作用を効率的にブロックすることにより、IgE媒介性脱顆粒を阻害し得た。抗IgE生物製剤のそれぞれの効力及び有効性は異なった。一対のCD23単量体を含むがIgE結合成分(CD23単量体)とFcRn結合成分(IgGFc)との間にリンカーがない生物製剤抗IgE0は、好塩基球のIgE媒介性脱顆粒を部分的に阻害し得たが、有効性は最大でも50%であった。CD23単量体とIgG-Fcとの間のリンカー配列の導入により、有効性及び効力の両方が顕著に増加し、リンカーがG4Sリンカーの3回の反復を含んだ場合には約90%の有効性に達し、リンカー長が(G4S)4反復まで増加した場合には100%の有効性に達した。したがって、観察されたIC50は、リンカー長の増加に伴い効力が増加し、抗IgE0の場合の>300nMからリンカーの付加による10~30nMまで減少することを実証した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
【配列表】
2022539667000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-04-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれがCD23のC型レクチンドメインを含み、各単量体がIgEに結合することができる、少なくとも2つの単量体;及び
b)胎児性Fc受容体(FcRn)に結合することができる実体
を含むタンパク質構築物であって、前記タンパク質構築物がリンカーを含み、前記リンカーが、CD23のC型レクチンドメインを含む前記単量体を、FcRnに結合することができる前記実体に連結するために使用され
CD23の前記C型レクチンドメインが、配列番号1のS156からS321(配列番号9)、又は配列番号1のE133からS321(配列番号12)、又はその断片、又はCD23の非ヒト種における同等な配列、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列に対応する、タンパク質構築物。
【請求項2】
前記構築物が2つの単量体、又は2つより多い単量体、好ましくは4つ若しくは6つの単量体を含む、請求項1に記載のタンパク質構築物。
【請求項3】
CD23の前記C型レクチンドメインが、配列番号1のV159~P290(配列番号6)、又は配列番号1のC160~C288(配列番号7)、又は配列番号1のF170~L277(配列番号8)、又はCD23の非ヒト種における同等な配列、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、又はそれに対応する、請求項1若しくは請求項2に記載のタンパク質構築物。
【請求項4】
CD23の前記C型レクチンドメインが、配列番号1のS156からA292(配列番号15)、好ましくは配列番号1のE133からA292(配列番号10)を含むか、若しくはそれに対応する、又は配列番号1のS156からC288(配列番号31)、若しくはその断片、若しくはCD23の非ヒト種における同等な配列、若しくはそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、若しくはそれに対応する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項5】
CD23の前記C型レクチンドメインが、配列番号1のS156からE298(配列番号13)、好ましくは配列番号1のE133からE298(配列番号11)、又はその断片、又はCD23の非ヒト種における同等な配列、又はそれに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むか、又はそれに対応する、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項6】
各単量体が0.1~3μMの親和性でIgEに結合する、請求項1から5のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項7】
FcRnに結合することができる前記実体が、Fc領域、好ましくはIgG-Fc領域、若しくはその断片若しくはバリアント、又はアルブミン若しくはその断片若しくはバリアント、又はIgG抗体若しくはアルブミンに対する結合タンパク質、若しくはFcRnに対する結合タンパク質を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項8】
FcRnに結合することができる前記実体が、IgG1-Fc領域若しくはその断片若しくはバリアント、又はヒト血清アルブミン若しくはその断片若しくはバリアント、又はIgG1抗体若しくはヒト血清アルブミンに対する結合タンパク質を含む、請求項7に記載のタンパク質構築物。
【請求項9】
前記結合タンパク質が、抗体若しくは抗体断片、好ましくはsdAbを含むか、又は非免疫グロブリンベースの単一ドメイン結合タンパク質、好ましくはフィブロネクチン若しくはフィブロネクチンベースの分子、アフィマー、アンキリンリピートタンパク質、リポカリン、ヒトAドメイン、ブドウ球菌プロテインA、チオレドキシン、ガンマBクリスタリン、又はユビキチンベースの分子を含む、請求項7又は請求項8に記載のタンパク質構築物。
【請求項10】
前記リンカーが、ペプチドリンカーである、請求項1から9のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項11】
構築物の部分a)の各単量体とIgEとの前記結合、及び/又は構築物の部分b)とFcRnとの前記結合が、エンドソーム条件に感受性である、請求項1から10のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項12】
構築物の部分a)とIgEとの前記結合が、pH7.4と比較してpH6.0若しくは6.5において減少するか、又は血清カルシウムレベルと比較してエンドソームカルシウムレベルにおいて減少する、請求項11に記載のタンパク質構築物。
【請求項13】
構築物の部分b)とFcRnとの前記結合が、pH7.4と比較してpH6.0若しくは6.5において増加するか、又は血清カルシウムレベルと比較してエンドソームカルシウムレベルにおいて増加する、請求項11又は請求項12に記載のタンパク質構築物。
【請求項14】
少なくとも2つの単量体が、個々の単量体の結合親和性の合計と比較して、IgEとの結合のアビディティーの増加をもたらす、請求項1から13のいずれか一項に記載のタンパク質構築物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物をコードするヌクレオチド配列を含む1つ若しくは複数の核酸分子;又は
そのような核酸分子を含む1つ若しくは複数の発現ベクター;又は
前記発現ベクター、核酸分子、若しくは請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を含む、1つ若しくは複数の宿主細胞。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を生成する方法であって、(i)請求項15に記載の、発現ベクターのうちの1つ若しくは複数又は核酸配列のうちの1つ若しくは複数を含む宿主細胞を、コードされたタンパク質構築物の発現に適した条件下で培養する工程;及び場合により(ii)宿主細胞から又は増殖培地/上清から発現されたタンパク質構築物を単離又は取得する工程を含む方法。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物を生成する方法であって、(i)IgE Fcが固定化されたアフィニティーマトリックスを、前記構築物がアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合する条件下で、請求項1から14のいずれか一項に記載の構築物と接触させる工程;及び(ii)構築物がアフィニティーマトリックス上のIgE Fcに結合しなくなる条件下で、アフィニティーマトリックスから構築物を溶出させる工程を含む方法。
【請求項18】
工程(i)において、そのような条件が、血清カルシウム又はpHレベル、好ましくは1から2mMのカルシウムレベル、又はpH7.4若しくは約pH7.4のpHに対応する条件である;及び/又は、工程(ii)において、そのような条件が、エンドソームカルシウム又はpHレベル、好ましくは3~30μMのカルシウムレベル又はpH5.0から6.5若しくは約pH5.0から6.5のpHに対応する条件である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物又は請求項15に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクターを含む、組成物、好ましくは薬学的に許容される組成物。
【請求項20】
療法における使用、好ましくは抗IgE療法における使用、又はIgE関連の疾患若しくは状態の治療若しくは予防における使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物、又は請求項15に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクター。
【請求項21】
抗IgE療法又はIgE関連の疾患又は状態の治療又は予防における使用のための医薬又は組成物の製造における、請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物、又は請求項15に記載の1つ若しくは複数の核酸分子又は発現ベクターの使用。
【請求項22】
IgE関連の疾患又は状態の治療又は予防の方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質構築物又は請求項15に記載の1つ若しくは複数の核酸分子若しくは発現ベクターを投与する工程を含む方法。
【国際調査報告】