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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20220906BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220906BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220906BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K45/00
A61P25/04
C07K7/06 ZNA
C07K14/575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576723
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 AU2020050713
(87)【国際公開番号】W WO2021003531
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】2019902437
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520260832
【氏名又は名称】ラテラル、アイピー、プロプライエタリー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LATERAL IP PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、ギアリング
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA08
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、対象における神経障害性疼痛を治療又は予防するための方法及び組成物である。この方法は、治療有効量のプロラクチン又はその機能的バリアントを対象に投与することを含み、機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における神経障害性疼痛を治療又は予防する方法であって、
前記方法が、治療有効量のプロラクチン又はその機能的バリアントを前記対象に投与することを含み、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、前記方法。
【請求項2】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNCG(配列番号3)である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNC(配列番号4)である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNCG(配列番号5)である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記治療有効量が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象がヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記神経障害性疼痛が、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群、複合性局所疼痛症候群、反復性緊張外傷、薬剤性末梢神経障害及び感染症に関連した末梢神経障害からなる群から選択される状態に関連する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記対象における疼痛を軽減することができる治療有効量の第2の薬剤を前記対象に投与することをさらに含み、前記第2の薬剤が、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントではない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の薬剤が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の薬剤が、前記対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
対象における神経障害性疼痛の治療又は予防に使用するための、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む医薬組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記医薬組成物。
【請求項14】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNCG(配列番号3)である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNC(配列番号4)である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNCG(配列番号5)である、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
前記プロラクチン又はその機能的バリアントが、前記対象に投与された場合に、侵害受容性疼痛に対する治療上有効な鎮痛効果を伴わずに前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減する治療有効量で存在する、請求項13~18のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記対象がヒトである、請求項13~19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
前記神経障害性疼痛が、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群、複合性局所疼痛症候群、反復性緊張外傷、薬剤性末梢神経障害及び感染症に関連した末梢神経障害からなる群から選択される状態に関連する、請求項13~19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物が、前記対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤をさらに含み、前記第2の薬剤が、前記プロラクチン又はその機能的バリアントではない、請求項13~21のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記第2の薬剤が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減することができる、請求項22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記第2の薬剤が、前記対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる、請求項22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
対象における神経障害性疼痛の治療又は予防のための医薬の製造における、プロラクチン又はその機能的バリアントの使用であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記使用。
【請求項26】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNCG(配列番号3)である、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNC(配列番号4)である、請求項26に記載の使用。
【請求項30】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNCG(配列番号5)である、請求項26に記載の使用。
【請求項31】
前記プロラクチン又はその機能的バリアントが、侵害受容性疼痛に対する治療上有効な鎮痛効果を伴わずに前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減する治療有効量で、前記対象に投与するために調合される、請求項25~30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記対象がヒトである、請求項25~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記神経障害性疼痛が、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群、複合性局所疼痛症候群、反復性緊張外傷、薬剤性末梢神経障害及び感染症に関連した末梢神経障害からなる群から選択される状態に関連する、請求項25~32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記プロラクチン又はその機能的バリアントが、前記対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤との順次投与又は併用投与のために調合され、前記第2の薬剤が、前記プロラクチン又はその機能的バリアントではない、請求項21~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記第2の薬剤が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減することができる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記第2の薬剤が、前記対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
治療有効量のプロラクチン由来ペプチドを含む組成物であって、前記プロラクチン由来ペプチドが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)又はアミノ酸配列CRIIHNNNCG(配列番号3)又はアミノ酸配列CRIVYDSNC(配列番号4)又はアミノ酸配列CRIVYDSNCG(配列番号5)からなる、前記組成物。
【請求項38】
薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
経口投与用に調合された、請求項37又は請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
医薬として使用するための、配列番号2若しくは配列番号3若しくは配列番号4若しくは配列番号5のペプチド又はそれらの薬学的に許容可能な塩を含む組成物。
【請求項41】
(i)プロラクチン又はその機能的フラグメントと、(ii)対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤とを含む医薬組成物であって、
前記機能的フラグメントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含み、
前記第2の薬剤が、前記プロラクチン又はその機能的バリアントではない、前記医薬組成物。
【請求項42】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNCG(配列番号3)である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNC(配列番号4)である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNCG(配列番号5)である、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記第2の薬剤が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減することができる、請求項41~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記第2の薬剤が、前記対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる、請求項41~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
プロラクチン又はその機能的バリアントを含む鎮痛組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記鎮痛組成物。
【請求項50】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される、請求項49に記載の鎮痛組成物。
【請求項51】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNC(配列番号2)である、請求項50に記載の鎮痛組成物。
【請求項52】
前記機能的バリアントが、CRIIHNNNCG(配列番号3)である、請求項50に記載の鎮痛組成物。
【請求項53】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNC(配列番号4)である、請求項50に記載の鎮痛組成物。
【請求項54】
前記機能的バリアントが、CRIVYDSNCG(配列番号5)である、請求項50に記載の鎮痛組成物。
【請求項55】
前記医薬組成物が、前記対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤をさらに含み、前記第2の薬剤が、請求項1~54のいずれか一項に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントではない、請求項49~54のいずれか一項に記載の鎮痛組成物。
【請求項56】
前記第2の薬剤が、前記対象における前記神経障害性疼痛を軽減することができる、請求項55に記載の鎮痛組成物。
【請求項57】
前記第2の薬剤が、前記対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる、請求項55に記載の鎮痛組成物。
【請求項58】
治療有効量のプロラクチン又はその機能的バリアントを含む鎮痛組成物であって、前記機能的バリアントが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)又はアミノ酸配列CRIIHNNNCG(配列番号3)又はアミノ酸配列CRIVYDSNC(配列番号4)又はアミノ酸配列CRIVYDSNCG(配列番号5)からなる、前記鎮痛組成物。
【請求項59】
薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含む、請求項58に記載の鎮痛組成物。
【請求項60】
経口投与用に調合された、請求項58又は請求項59に記載の鎮痛組成物。
【請求項61】
医薬として使用するための、配列番号2~5からなる群から選択されるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む鎮痛組成物。
【請求項62】
プロラクチン又はその機能的バリアントを含む医薬組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、神経障害性疼痛の治療又は予防に有用なペプチド及び組成物、並びにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において引用されるいずれの特許又は特許出願を含むすべての参考文献は、本発明を完全に理解することができるようにするために、引用することにより本明細書の一部とされる。しかしながら、このような参考文献は、オーストラリア又はその他のいずれの国においても、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを容認することを構成するものとは解釈されない。
【0003】
疼痛は、典型的には組織損傷及び/又は基礎神経疾患に関連する衰弱性の感覚体験であり得る。疼痛は、急性であろうと慢性であろうと、検出可能な刺激、傷害又は基礎疾患のない場合にも発生し得る。急性の疼痛は通常、短期間(例えば、数時間又は数日)続き、通常、基礎となる刺激が停止すると消える。対照的に、慢性的な疼痛は長期間(例えば、数週間又は数か月)続き、基礎となる刺激がなくても持続する場合がある。
【0004】
広く認識されている疼痛には、侵害受容性疼痛及び神経障害性疼痛の2種類が存在する。侵害受容性疼痛は、感覚神経線維の潜在的に有害な刺激の結果であり、機械的又は物理的損傷に反応する身体中の侵害受容器によって検出される。侵害受容性疼痛は、組織損傷を警告することによって保護的な生物学的機能を果たし、有害な刺激から離脱させる。侵害受容性疼痛は、熱的損傷、例えば、火傷若しくは凍傷、又は機械的外傷、例えば、裂傷若しくは圧迫に起因し得る。
【0005】
侵害受容性疼痛とは対照的に、神経障害性疼痛は、末梢又は中枢神経系における原発巣、機能障害又は機能不全により引き起こされる。神経障害性疼痛は、保護的な作用を有せず、傷害後又は病態の消散後の数日後又は数か月後に発症することがあり、持続性及び慢性であることが多い。
【0006】
神経障害性疼痛は、外傷、例えば、スポーツ傷害、事故、転倒又は鋭的外傷により引き起こされる神経損傷に起因し得、或いは、神経損傷は、疾患過程、例えば、脳卒中、ウイルス感染、毒素への曝露、変性疾患及び糖尿病に起因し得る。神経障害性疼痛の状態、例えば、糖尿病性ニューロパチー及び帯状疱疹後神経痛の発症をもたらし得る病態の有病率は増加しており、したがって、慢性神経障害性疼痛の症状に苦しむ人の数は増加している。
【0007】
侵害受容性疼痛を治療するための有効な治療薬は存在するが、神経障害性疼痛は、利用可能な鎮痛薬に対して抵抗性であることが多い。さらに、現在の療法、例えば、三環系抗うつ薬、抗痙攣薬、オピオイド及び非オピオイド鎮痛薬は、重大な副作用、例えば、鎮静及び眠気を有し、オピオイド鎮痛薬の場合は、薬物耐性及び薬物依存又は嗜癖のリスクを有する。さらに、侵害受容性疼痛に対する鎮痛効果がない場合の神経障害性疼痛の治療に利用可能な有用な選択肢は現在ほとんどない。したがって、副作用が限られているか、又は副作用のない、神経障害性疼痛の選択的治療に有効な新規且つ代替の選択肢に対する緊急の必要性が依然として存在する。本発明は、侵害受容性疼痛に対する鎮痛効果が最小限であるか、又は全くない、神経障害性疼痛の軽減に有効な化合物を提供することにより、この課題を解決するか、又は部分的に軽減する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に記載される態様では、対象における神経障害性疼痛を治療又は予防する方法であって、
前記方法が、治療有効量のプロラクチン又はその機能的バリアントを前記対象に投与することを含み、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しないか、又はRは薬学的に許容可能な担体である。]
を含む、前記方法を提供する。
【0009】
一実施形態において、式(I)のペプチドは、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される。
【0010】
一実施形態において、前記治療有効量は、侵害受容性疼痛に対する治療有効な鎮痛効果を有せずに、対象における神経障害性疼痛を軽減する。
【0011】
一実施形態において、対象はヒトである。
【0012】
一実施形態において、対象は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される。
【0013】
一実施形態において、神経障害性疼痛は、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹(Herpes Zoster (shingles))関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群、複合性局所疼痛症候群、反復性緊張外傷、薬剤性末梢神経障害及び感染症に関連した末梢神経障害からなる群から選択される状態に関連する。
【0014】
一実施形態において、この方法は、対象における疼痛を軽減することができる治療有効量の第2の薬剤を対象に投与することをさらに含み、第2の薬剤は、本明細書に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントではない。
【0015】
本明細書に記載される別の態様では、対象における神経障害性疼痛の治療及び予防のための、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む医薬組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しないか、又はRは薬学的に許容可能な担体である。]
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0016】
本明細書に記載される別の態様では、対象における神経障害性疼痛の治療及び予防のための医薬の製造における、プロラクチン又はその機能的バリアントの使用であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記使用を提供する。
【0017】
本明細書に記載される別の態様では、(i)プロラクチン又はその機能的バリアントと、(ii)対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤とを含む医薬組成物の使用であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含み、
前記第2の薬剤が、本明細書に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントではない、前記使用を提供する。
【0018】
本明細書に記載される別の態様では、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む鎮痛組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記鎮痛組成物を提供する。
【0019】
本明細書に記載される別の態様では、治療有効量のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む鎮痛組成物であって、前記ペプチドが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる、前記鎮痛組成物を提供する。
【0020】
本明細書に記載される別の態様では、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む医薬組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しないか、又はRは薬学的に許容可能な担体である。]
を含む、前記医薬組成物を提供する。
【0021】
一実施形態において、ペプチドは、YLKLLKCRIIHNNNC(配列番号6)、LKLLKCRIIHNNNC(配列番号7)、KLLKCRIIHNNNC(配列番号8)、LLKCRIIHNNNC(配列番号9)、LKCRIIHNNNC(配列番号10)、LKCRIIHNNNC(配列番号11)、YLKLLKCRIIHNNNCG(配列番号12)、LKLLKCRIIHNNNCG(配列番号13)、KLLKCRIIHNNNCG(配列番号14)、LLKCRIIHNNNCG(配列番号15)、LKCRIIHNNNCG(配列番号16)及びKCRIIHNNNCG(配列番号17)からなる群から選択される。
【0022】
本明細書に記載される別の態様では、治療有効量のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる、前記組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、神経障害性疼痛のChungモデルにおける脊髄切片の調製及びホールセル記録部位を示す概略図である。
図2図2は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、対照である静止状態と比較した配列番号2のペプチド(本明細書では「LAT7771」とも呼ばれる)誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=11、*P<0.05、対応のあるスチューデントのt検定)。
図3図3は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、対照静止状態と比較したLAT7771誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=11)。
図4図4は、LAT7771誘発性膜脱分極及び自発発火の増加を示す図である。A及びBは、LAT7771の非存在下(A)及び存在下(B)での自発的に活性な細胞の連続記録のサンプルを示す。C:A及びBに示されるのと同じ細胞の電圧-電流(VI)の関係。電流注入に対する電圧応答は重ね合わせて示されている。D及びEは、応答のピーク(D)及び定常状態(E;応答の終わり)において測定された電圧応答の振幅とともにCに示されているデータのプロットを示す。勾配のほぼ平行なシフトはコンダクタンスの変化がほとんどないことを示すことに留意されたい。
図5図5は、LAT7771が、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける膜脱分極を誘発し、内向き整流を増強したことを示す図である。A及びB:LAT7771の非存在下(A)及び存在下(B)での細胞の電圧-電流(VI)の関係。電流注入に対する電圧応答が重ねて合わせて示されている。C及びDは、A及びBに示されているデータのプロットを示す。勾配のほぼ平行なシフトは、脱分極電位におけるコンダクタンスの変化がほとんどないことを示すが、膜電位における勾配の減少は、-70mV付近よりも負であることに留意されたい。後者は内向き整流の増加を示す。
図6図6は、LAT7771が、シナプス後膜の特性にほとんど影響を与えずに、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける抑制性シナプス伝達を増強したことを示す図である。A:LAT7771がこの細胞で最小の膜脱分極を誘発したことを示す連続記録のサンプル。B及びC:LAT7771の非存在下(B)及び存在下(C)でのAに示される細胞の電圧-電流(VI)の関係。電流注入に対する電圧応答が重ねて合わせて示されている。VIの関係においてほとんど変化が観察されなかったことに留意されたい。D:A、B及びCと同じニューロンが示す、LAT7771の非存在下(黒)及び存在下(赤)での後根求心性神経の電気刺激(0.1Hz)によって誘発される抑制性シナプス後電位(IPSP)の重ね合わせ。Eは、Dに示されているデータの重ね合わせた平均を示す。LAT7771の存在下でのIPSPのピーク振幅の増加に留意されたい。
図7図7は、LAT7771及びLAT8881(アミノ酸配列YLRIVQCRSVEGSCGFを有する、ヒト成長ホルモン由来の鎮痛化合物)が、シナプス後膜の特性にほとんど影響を与えずに、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける抑制性シナプス伝達を増強したことを示す図である。A:対照(黒)、LAT7771(赤)、ウォッシュ後(青)、次いで、LAT8881(緑)でのVIの関係を示す連続記録のサンプル。LAT7771(赤)及びLAT8881(緑)は、この細胞のシナプス後の特性にほとんど又は全く影響を与えなかった。B:Aと同じニューロンにおける後根の電気刺激(0.1Hz)によって誘発されたシナプス後電位の重ね合わせ示す。対照(黒)において、興奮性シナプス後電位(EPSP)は、主に後根の刺激によって誘発された。LAT7771の存在下において、EPSPは抑制され、抑制性シナプス後電位は顕現し(赤)、LAT7771のウォッシュアウト後に部分的に可逆的な効果であった(青)。その後のLAT8881の適用は、LAT7771と同様に、EPSPを抑制しながら、抑制性シナプス伝達を再び増強した。C:Bに示されている応答の平均の重ね合わせ。対照(黒)及びLAT7771のウォッシュ後と比較して、LAT7771(赤)及びLAT8881(緑)の存在下で有意なIPSPが存在することに留意されたい。
図8図8は、LAT7771が、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける抑制性シナプス伝達を増強することを示す図である。A:後根の電気刺激に応答して誘発されたシナプス後電位の重ね合わせを示す連続記録のサンプル。LAT7771の不存在化では、興奮性シナプス後電位(EPSP)が優勢であった(対照1及び対照2)。次いで、LAT7771の存在下では、EPSPが減少し、抑制性シナプス後電位(IPSP)が応答の中心であった。Bは、Aに示される応答の平均の重ね合わせを示す。LAT7771の存在下でのEPSPの漸進的な抑制及びIPSPの出現に留意されたい。C:A及びBと同じニューロンにおける、対照及びその後のLAT7771の存在下でのシナプス後応答の経時的プロットを示す。LAT7771の存在下でのEPSPの抑制及びIPSPによる優位性に留意されたい。
図9図9は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、配列番号3のペプチド(本明細書では「LAT7772」とも呼ばれる)誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=5、*P<0.05、vs静止、対応のあるスチューデントのt検定)。
図10図10は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、LAT7772誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=5)。
図11図11は、A:ニューロンの入力抵抗の減少に関連したLAT7772誘発性過分極を示す図である。B:Aに示される同じ細胞の電圧-電流(VI)の関係を示す図である。電流注入に対する電圧応答を、重ねて合わせて示す。C:LAT7772の存在下でのBと同じ細胞からのデータのプロットを示す図である。勾配の減少は、ニューロンの入力抵抗の減少を示し、イオンチャネル開口を示していることに留意されたい。プロットは、-60mV付近(本発明者らの記録条件下における塩化物イオンに関する逆転電位に近い)で交差している。D:LAT7772はまた、後根求心性神経を介した興奮性シナプス伝達も抑制した。連続記録のサンプルは、LAT7772の非存在下(1、黒)及び存在下(2、赤)での電気的に誘発された(0.1Hz)EPSPの重ね合わせを示す。これらの記録の平均は、下に重ね合わせて示されている。LAT7772における後根刺激誘発性EPSPの抑制に留意されたい。
図12図12は、ニューロンの入力抵抗の減少に関連したLAT7772誘発性過分極を示す図である。B:Aに示される同じ細胞の電圧-電流(VI)の関係を示す図である。電流注入に対する電圧応答を、重ねて合わせて示す。C:LAT7772の存在下でのBと同じ細胞からのデータのプロットを示す図である。勾配の減少は、ニューロンの入力抵抗の減少を示し、イオンチャネル開口を示していることに留意されたい。プロットは、-78mV付近(本発明者らの記録条件下における塩化物イオン及びカリウムイオンに関する逆転電位間の中程)で交差している。D:LAT7772はまた、後根求心性神経を介した興奮性シナプス伝達も抑制した。連続記録のサンプルは、LAT7772の非存在下(1、黒)及び存在下(2、赤)での電気的に誘発された(0.1Hz)EPSPの重ね合わせを示す。これらの記録の平均は、下に重ね合わせて示されている。LAT7772における後根刺激誘発性EPSPの抑制に留意されたい。
図13図13は、ニューロンの入力抵抗の減少に関連したLAT7772誘発性脱分極を示す図である。A:電圧-電流(VI)の関係は、電流注入に対する電圧応答を重ね合わせて示されている。B:Aに示されているデータのプロット。勾配の減少は、ニューロンの入力抵抗の減少を示し、イオンチャネル開口を示していることに留意されたい。プロットは、-60mV付近(記録条件下での塩化物イオンの逆転電位の近く)で交差している。C:LAT7772はまた、後根求心性神経を介した興奮性シナプス伝達も抑制した。連続記録のサンプルは、LAT7772の非存在下(1、黒)及び存在下(2、赤)での電気的に誘発された(0.1Hz)EPSPの重ね合わせを示す。これらの記録の平均は、以下のDに重ね合わせて示されている。LAT7772における後根刺激誘発性の後期成分EPSP(dorsal root stimulation-evoked late component EPSP)の抑制に留意されたい。
図14図14は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、配列番号4のペプチド(本明細書では「LAT7773」とも呼ばれる)誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=9、*P<0.05、vs静止、対応のあるスチューデントのt検定)。
図15図15は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、LAT7773誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=9)。
図16図16は、内向き整流を増強し、このニューロンにおいて後根求心性神経を介したシナプス入力を減少させながら、LAT7773が膜電位にほとんど変化を誘発しなかったことを示す図である。A:電流注入に対する電圧応答を重ね合わせた電圧-電流(VI)の関係。Bは、LAT7773の存在でのAと同じセルからのデータのプロットを示す。-60mVの静止電位付近でコンダクタンスに変化がないが、LAT7773のより負の膜電位におけるプロットの勾配の減少は、化合物の存在下での内向き整流の増強を示していることに留意されたい。C及びD:後根の刺激によって誘発された、A及びBと同じニューロンが示す重ね合わせたEPSP。対照(黒、C)と比較してLAT7773(赤、D)の存在下での刺激の失敗数(the number of failures of stimulation)の増加に留意されたい。Eは、C及びDに示されるデータの重ね合わせた平均を示す。
図17図17は、ニューロンの入力抵抗の増加に関連したLAT7773誘発性脱分極を示す図である。A:電圧-電流(VI)の関係は、電流注入に対する電圧応答を重ね合わせて示されている。B:Aに示されているデータのプロット。勾配の増加は、ニューロンの入力抵抗の増加を示し、イオンチャネル閉口と一致していることに留意されたい。プロットは、-92mV付近(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位の近く)で交差している。C:LAT7773は、後根求心性神経を介した興奮性シナプス伝達にほとんど影響を与えなかった。連続記録のサンプルは、LAT7773の非存在下(1、黒)及び存在下(2、赤)での電気的に誘発された(0.1Hz)EPSPの重ね合わせを示す。
図18図18は、LAT7773が、シナプス後膜の特性にほとんど影響を与えずに、後根求心性神経を介したシナプス伝達の増加を誘発することを示す図である。A:電圧-電流(VI)の関係は、電流注入に対する電圧応答を重ね合わせて示されている。B:Aに示されているデータのプロット。LAT7773の負の膜電位における勾配の減少に留意されたい。これは、静止電位付近の入力抵抗にほとんど影響を与えずに、内向き整流が増強されていることを示す。C、D及びE:後根求心性神経を介したEPSP及びIPSPを示す連続記録のサンプルは、LAT7773の存在下で増強された。D及びEは、Cに示されている連続記録から分離されたEPSP(D)及びIPSP(E)を示す。EPSP及びIPSPの両方がLAT7773で増強されていることに留意されたい。
図19図19は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、配列番号5のペプチド(本明細書では「LAT7774」とも呼ばれる)誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=7)。
図20図20は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、LAT7774誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=7)。
図21図21は、ニューロンの入力抵抗の減少及びカリウムコンダクタンスの活性化に関連したLAT7774誘発性過分極を示す図である。A:電流注入に対する電圧応答を重ね合わせて示す、LAT7774の非存在下(対照、黒)及び存在下(赤)での電圧-電流(VI)の関係。Bは、LAT7774の不存在及び存在下での、Aと同じ細胞からのデータのプロットを示す。勾配の減少はニューロン入力抵抗の減少を示し、これはイオンチャネル開口を示すことに留意されたい。プロットは、-95mV付近(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位の近く)で交差すると予測される。C:同じニューロンが示す後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7774の効果。連続記録のサンプルが示す後根の刺激によって誘発されたEPSPの重ね合わせ。下のトレースは、1及び2の平均を重ね合わせを示す。LAT7774の存在下でEPSPがわずかに減少することに留意されたい。
図22図22は、ニューロンの入力抵抗の減少及び塩化物コンダクタンスの活性化に関連したLAT7774誘発性過分極を示す図である。A:電流注入に対する電圧応答を重ね合わせて示す、LAT7774の非存在下(対照、黒)及び存在下(赤)での電圧-電流(VI)の関係。Bは、LAT7774の不存在及び存在下での、Aと同じ細胞からのデータのプロットを示す。勾配の減少は、ニューロン入力抵抗の減少及びイオンチャネル開口を示すことに留意されたい。プロットは、-55mV付近(記録条件下での塩化物イオンの逆転電位の近く)で交差すると予測される。C:同じニューロンが示す後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7774の効果。連続記録のサンプルが示す後根の刺激によって誘発されたEPSPの重ね合わせ。下のトレースは、1及び2の平均を重ね合わせたものを示す。これらの電位に対するLAT7774の効果の欠如に留意されたい。
図23図23は、ニューロンの入力抵抗の増加及びカリウムコンダクタンス(ほぼ、内向き整流性のカリウムコンダクタンス)の遮断に関連したLAT7774誘発性脱分極を示す図である。A:電流注入に対する電圧応答の重ね合わせを示すLAT7774の不存在(対照、黒)及び存在(赤)での電圧-電流(VI)の関係。Bは、LAT7774の不存在及び存在下での、Aと同じ細胞からのデータのプロットを示す。勾配の増加は、ニューロン入力抵抗の増加及びイオンチャネル閉口を示すことに留意されたい。プロットは、-80mV付近(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位に近づく)で交差すると予測される。-80mV付近よりも負の電位における勾配の変化にも留意されたい。これは、内向き整流性のカリウムコンダクタンスの電圧依存性の減少又は変化を示す。C:同じニューロンが示す後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7774の効果。連続記録のサンプルが示す後根の刺激によって誘発されたEPSPの重ね合わせ。下のトレースは、1及び2の平均を重ね合わせたものを示す。これらの電位に対するLAT7774の効果の欠如に留意されたい。
図24図24は、ニューロンの入力抵抗の増加及びカリウムコンダクタンスの遮断に関連したLAT7774誘発性脱分極を示す図である。A:LAT7774の不存在(対照、黒)及び存在(赤)、続く化合物のウォッシュ(青)での電圧-電流(VI)の関係。電流注入に対する電圧応答は重ね合わせて示されている。Bは、LAT7774の不存在及び存在下、続く化合物のウォッシュアウトでの、Aと同じ細胞からのデータのプロットを示す。勾配の増加は、ニューロン入力抵抗の増加及びイオンチャネル閉口を示すことに留意されたい。プロットは、-85mV付近(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位に近づく)で交差すると予測される。-80mV付近よりも負の電位における勾配の変化にも留意されたい。これは、内向き整流性のカリウムコンダクタンスの電圧依存性の減少又は変化を示す。C:同じニューロンが示す後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7774の効果。連続記録のサンプルが示す後根の刺激によって誘発されたEPSPの重ね合わせ。LAT7774の存在下における、EPSPの増加と、勾配が増加して発火の閾値に達したこととに留意されたい。LAT7774のこれらの効果は、薬剤のウォッシュアウトに対して少なくとも部分的に可逆的であった。
図25図25は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、プロラクチン誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=3)。
図26図26は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、プロラクチン誘発性応答に関する膜電位及びニューロンの入力抵抗の変化を示す要約データである(N=3)。
図27図27は、ニューロンの入力抵抗の増加に関連したプロラクチン誘発性の辺縁性の膜の脱分極(marginal membrane depolarisation)を示す図である。A:プロラクチンの非存在下(対照、黒)及び存在下(赤)での脱分極電流パルスに対する膜応答が重ね合わせて示されている。B:Aに示されているのと同じ細胞の電圧-電流(VI)の関係。電流注入に対する電圧応答が重ね合わせて示されている。C及びDは、プロラクチンの非存在下及び存在下での、Bに示されているデータ(応答のピーク及び定常状態で測定)のプロットを示す。勾配の増加は、イオンチャネル閉口と一致するニューロン入力抵抗の増加を示すことに留意されたい。プロットは-90mV周辺で交差する(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位に近づく)。
図28図28は、プロラクチンが後根刺激性の抑制性シナプス後電位(IPSP)にほとんど影響を与えなかったことを示す図である。連続記録のサンプルが示す、プロラクチンの非存在下(対照、黒)及び存在下(赤)における、0.1Hz(A)及び5Hz(B)の周波数で後根の電気刺激によって誘発されるIPSPの重ね合わせ。これらの応答の平均を重ね合わせたものが右端に示されている。これらのIPSPに対するLAT7771の効果の欠如に留意されたい。
図29図29は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、LAT7771、LAT7772、LAT7773、LAT7774及びプロラクチン誘発性応答に関連した正規化膜電位の変化を示す要約データである。
図30図30は、神経障害性疼痛のChungモデルから得られた後角ニューロンにおける、LAT7771、LAT7772、LAT7773、LAT7774、及びプロラクチン誘発性応答に関連する正規化膜電位の変化を示す要約データである。
図31図31は、神経障害性疼痛のChungモデルにおける機械的アロディニアの回復によって示されるように、LAT7771及びLAT8881(アミノ酸配列YLRIVQCRSVEGSCGF)が神経障害性疼痛の転帰を改善したことを示す図である。手術前3日間(D-2、D-1及びD0)1日1回と、機械的アロディニア(D7)の進展をモニターするために手術後1週間に1回とに足引っ込め閾値(PWT:paw withdrawal threshold)を測定した。薬物又はビヒクル投与の前(BL)及び2時間(2hr)後にPWTを評価した。A:損傷の同側に関する、ChungモデルラットのPWTに対する2種の投与経路(経口(PO)又は筋肉内(IM))によるLAT8881及びLAT7771の効果の比較。経口又は筋肉内経路で投与されたLAT8881及びLAT7771の両方が、ChungモデルラットのPWTを有意に増加させた。B:損傷の反対側に関する、ChungモデルラットのPWTに対する2種の投与経路(経口(PO)又は筋肉内(IM))によるLAT8881及びLAT7771の効果の比較。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等のいずれの方法及び材料も、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を説明する。本発明目的のために、以下の用語を下記に定義する。
【0025】
冠詞「a」及び「an」は、その冠詞の文法的目的語の1又は2以上(すなわち、少なくとも1)を指すために、本明細書において使用される。例として、「ペプチド(a peptide)」は、1のペプチド又は2以上のペプチドを意味する。
【0026】
本明細書全体を通じて、文脈上特に必要でない限り、用語「含む(comprise、comprises及びcomprising)」は、言及した工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群を含むが、任意のその他の工程若しくは要素又は工程若しくは要素の群も排除しないことを意味すると理解される。
【0027】
治療法
本発明は、少なくとも部分的に、式(I)のプロラクチン由来ペプチド(配列番号1)が神経障害性疼痛を軽減することができるという点で有利な鎮痛特性を有するという発明者の驚くべき知見に基づいている。したがって、本明細書に記載される一態様では、対象における神経障害性疼痛を治療及び予防する方法であって、
前記方法が、治療有効量のプロラクチン又はその機能的バリアントを前記対象に投与することを含み、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
又はその薬学的に許容可能な塩を含む、前記方法を提供する。
【0028】
好ましい実施形態において、式(I)のペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)である。配列番号2(本明細書ではLAT7771と交換可能に呼ばれる)は、ヒトプロラクチン前駆体(hPRL)のアミノ酸残基219~227にまたがるヒトプロラクチン(PRL)のC末端フラグメントである(例えば、NCBI参照配列NP_000939.1及びNP_001157030)。
【0029】
「機能的バリアント」という用語は、本明細書では、天然のプロラクチンペプチド(例えば、本明細書に記載の配列番号30のヒトプロラクチン)とは構造的に異なるが、神経障害性疼痛の治療又は予防において、天然プロラクチンの少なくとも一部又はすべての生物活性を保持するペプチドを指す。用語「機能的バリアント」には、保存的又は非保存的な挿入、欠失及び/又は置換が含まれ、そのような変化は、本明細書に記載されるように、それを必要とする対象に投与された場合に神経障害性疼痛を治療又は予防するバリアントの能力を実質的に変化させない。バリアントがプロラクチンの機能的バリアントであるか否かを決定するための適切な方法は、当業者によく知られており、その例示的な例は、本明細書の他所に記載されている(例えば、ex vivoでニューロンシグナル伝達を改変する機能的バリアントの能力)。機能的バリアントはまた、プロラクチンの非ヒトアイソフォーム(その機能的フラグメントを含む)にまで及ぶ。プロラクチンの非ヒトアイソフォームは当業者に知られており、その例示的な例は、Hashimoto et al. (2010, Exp Anim; 59 (5) 643-6) 及び Miller et al. (1981, DNA; 1(1) 37-50)に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
本明細書に記載される実施形態において、プロラクチンの機能的バリアントは、天然プロラクチンの機能的フラグメント(配列番号30)である。天然プロラクチンの機能的フラグメントは、フラグメントが少なくともいくらかの鎮痛特性を保持している限り、任意の適切な長さであり得る。一実施形態において、機能的フラグメントの長さは、最大50アミノ酸残基、好ましくは最大45アミノ酸残基、好ましくは最大40アミノ酸残基、好ましくは最大35アミノ酸残基、好ましくは最大30アミノ酸残基、好ましくは最大25アミノ酸残基、好ましくは最大20アミノ酸残基、好ましくは最大15アミノ酸残基又はより好ましくは最大10アミノ酸残基である。
【0031】
機能的バリアントは、1又は2以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又はそれ以上)のアミノ酸置換によって天然プロラクチンのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する分子を含み得、ここで、この差異は、それを必要とする対象に投与された場合に神経障害性疼痛を軽減するバリアントの能力を抑制しない、又は完全には抑制しない。いくつかの実施形態において、機能的バリアントは、それを必要とする対象に投与された場合に神経障害性疼痛を軽減するバリアントの能力を増強するアミノ酸置換を含む。一実施形態において、機能的バリアントは、1又は2以上の保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)によって天然プロラクチンのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」という用語は、所与の位置におけるアミノ酸の同一性を変化させて、それをほぼ同等のサイズ、電荷及び/又は極性のアミノ酸で置き換えることを指す。アミノ酸の天然の保存的置換(natural conservative substitution)の例には、以下の8種類の置換群(通常の1文字コードで記載)が含まれる:(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R;(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;(7)E、D;及び(8)C、S。
【0032】
一実施形態において、機能的バリアントは、天然プロラクチンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。「少なくとも85%」に対する言及には、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性又は類似性が、例えば最適なアラインメント又はベストフィット分析の後に、含まれる。したがって、一実施形態において、配列は、本明細書で特定された配列との少なくとも85%、好ましくは少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%又は好ましくは100%の配列同一性又は配列類似性を、例えば最適なアラインメント又はベストフィット分析の後に、有する。
【0033】
本明細書で使用される「同一性」、「類似性」、「配列同一性」、「配列類似性」、「相同性」、「配列相同性」等の用語は、アラインメントされた配列中の任意の特定のアミノ酸残基位置において、アミノ酸残基が、アラインメントされた配列間で同一であることを意味する。本明細書で使用される「類似性」又は「配列類似性」という用語は、アラインメントされた配列中の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを示す。例えば、ロイシンをイソロイシン又はバリン残基の代わりに使用することができる。本明細書の他所で述べられているように、これは保存的置換と呼ばれることがある。一実施形態において、改変が、非改変(天然)プロラクチンペプチド/タンパク質と比較して、それを必要とする対象に投与された場合に疼痛を軽減する機能的バリアントの能力に影響を及ぼさないように、アミノ酸配列は、その中に含まれる任意のアミノ酸残基の保存的置換によって改変され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、ペプチド配列についての配列同一性は、必要に応じて最大割合の相同性を達成するために、配列をアラインメントし、ギャップを導入した後の対応するペプチド配列の残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合に関し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない。N末端又はC末端の伸長も挿入も、配列の同一性又は相同性を低下させるとは解釈されないとする。2個又は3個以上のアミノ酸配列のアラインメントを実行し、それらの配列の同一性又は相同性を決定するための方法及びコンピュータプログラムは、当業者によく知られている。例えば、2個のアミノ酸配列の同一性又は類似性の割合は、アルゴリズム、例えば、BLAST、FASTA又はスミス-ウォーターマンアルゴリズムを使用して容易に計算可能である。
【0035】
アミノ酸配列「類似性」を決定するための技術は、当業者によく知られている。一般に、「類似」とは、アミノ酸が同一である適切な場所、又はアミノ酸が類似の化学的及び/若しくは物理的特性、例えば、電荷若しくは疎水性を有する適切な場所における2個又は3個以上のペプチド配列の正確なアミノ酸とアミノ酸との類似を意味する。次いで、いわゆる「パーセント類似性」を、比較されたペプチド配列間で決定することができる。一般に、「同一」とは、2個のペプチド配列の正確なアミノ酸とアミノ酸との対応を意味する。
【0036】
2個又は3個以上のペプチド配列は、それらの「パーセント同一性」を決定することによって比較することもできる。2個のアラインメントされた配列間の完全一致の数を短い配列の長さで割って100を掛けたものとして、2個の配列のパーセント同一性を説明することができる。核酸配列に対するおおよそのアラインメントは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981)のローカルホモロジーアルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure, M. O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3:353-358、National Biomedical Research Foundation、ワシントンD.C.、米国)によって開発されたスコアリングマトリックスを使用して、ペプチド配列で使用するように拡張可能である。配列間のパーセント同一性又は類似性を計算するための適切なプログラムは、一般に当技術分野で知られている。
【0037】
比較ウィンドウをアラインメントするための最適な配列アラインメントは、アルゴリズムのコンピュータ化された導入(GAP、BESTFIT、FASTA及びWisconsin Genetics Software Package Release 7.0におけるTFASTA(Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、ウィスコンシン、米国)によって、又は検査(inspection)と、選択された様々な方法のいずれかにより生成される最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高のパーセンテージ相同性をもたらす)とによって実施され得る。例えば、Altschul et al., (1997, Nucl. Acids Res.25:3389)によって記載されるBLASTファミリーのプログラムも参考となる。配列分析の詳細な考察は、Ausubel et al. ("Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15)のユニット19.3で見られる。
【0038】
一実施形態において、機能的バリアントは、バリアントの安定性を高めるため、又はバリアントの溶解度を高めるために、天然プロラクチンに対してアミノ酸置換及び/又はその他の修飾を含む。
【0039】
機能的バリアントは、天然に存在するペプチドであり得るか、又は当業者に知られている方法を使用する化学合成によって合成的に生成され得る。
【0040】
一実施形態において、機能的バリアントは、配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、機能的バリアントは、天然プロラクチンの機能的フラグメントである。本明細書に記載される一実施形態において、Rは存在しない。別の実施形態において、Rは存在しない。さらに別の実施形態において、R及びRは存在しない。
【0041】
本発明者らはまた、驚くことに、式(I)のペプチドがC末端の延長によって修飾された際に、本明細書に記載のペプチドの鎮痛特性が保持されることを見出した。例えば、本発明者らは、驚くことに、配列番号3(CRIIHNNNCG;本明細書では7772とも呼ばれる)が神経障害性疼痛に対して治療的に有効な鎮痛効果を有することを見出した。したがって、一実施形態において、機能的バリアントは、C末端アミノ酸残基を含む。一実施形態において、C末端アミノ酸残基はグリシン(G)である。
【0042】
本明細書に記載される実施形態において、機能的バリアントの長さは、9~165アミノ酸残基、好ましくは少なくとも9アミノ酸残基、好ましくは少なくとも10アミノ酸残基、好ましくは少なくとも11アミノ酸残基、好ましくは少なくとも12アミノ酸残基、好ましくは少なくとも13アミノ酸残基、好ましくは少なくとも14アミノ酸残基、好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、又はより好ましくは少なくとも16アミノ酸残基である。プロラクチン又はその機能的バリアントは、式(I)の位置2及び10の2個のシステイン(C)残基の間にジスルフィド結合を含み、それにより、2個のシステイン残基の間で環状ペプチドを形成する。
【0043】
一実施形態において、機能的バリアントは、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態において、機能的バリアントは、YLKLLKCRIIHNNNC(配列番号6)、LKLLKCRIIHNNNC(配列番号7)、KLLKCRIIHNNNC(配列番号8)、LLKCRIIHNNNC(配列番号9)、LKCRIIHNNNC(配列番号10)、LKCRIIHNNNC(配列番号11)、YLKLLKCRIIHNNNCG(配列番号12)、LKLLKCRIIHNNNCG(配列番号13)、KLLKCRIIHNNNCG(配列番号14)、LLKCRIIHNNNCG(配列番号15)、LKCRIIHNNNCG(配列番号16)及びKCRIIHNNNCG(配列番号17)からなる群から選択される。
【0045】
一実施形態において、機能的バリアントは、CRIIHNNNC(配列番号2)である。別の実施形態において、機能的バリアントは、CRIIHNNNCG(配列番号3)である。
【0046】
本発明者らはまた、驚くことに、式(I)のペプチドを含むプロラクチン由来ペプチドの非ヒトバリアントが、それらのヒト対応物と同様の鎮痛特性を有することを見出した。適切な非ヒトバリアントは、当業者によく知られており、その例示的な例には配列番号4及び5が含まれる。
【0047】
本明細書に記載される一態様では、対象における神経障害性疼痛を治療及び予防する方法であって、この方法が、治療有効量の配列番号4(CRIVYDSNC)又は配列番号5(CRIVYDSNCG)のペプチドを対象に投与することを含む、方法が提供される。配列番号4は、イヌのプロラクチンのC末端フラグメントの例示的な例であり、イヌのプロラクチン前駆体のアミノ酸残基221~229にまたがっている(例えば、GenBankアクセッションADK11290を参照)。
【0048】
一実施形態において、機能的バリアントは、CRIVYDSNCG(配列番号5)、YLKLLKCRIVYDSNC(配列番号18)、LKLLKCRIVYDSNC(配列番号19)、KLLKCRIVYDSNC(配列番号20)、LLKCRIVYDSNC(配列番号21)、LKCRIVYDSNC(配列番号22)、KCRIVYDSNC(配列番号23)、YLKLLKCRIVYDSNCG(配列番号24)、LKLLKCRIVYDSNCG(配列番号25)、KLLKCRIVYDSNCG(配列番号26)、LLKCRIVYDSNCG(配列番号27)、LKCRIVYDSNCG(配列番号28)及びKCRIVYDSNCG(配列番号29)からなる群から選択される。
【0049】
一実施形態において、機能的バリアントは、CRIVYDSNC(配列番号4)である。別の好ましい実施形態において、機能的バリアントは、CRIVYDSNCG(配列番号5)である。
【0050】
式(I)のペプチドは、天然に存在するタンパク質原性又は非タンパク質原性のアミノ酸残基から構成され得る。これらのアミノ酸は、L-立体化学を有する。天然に存在するアミノ酸を、下表1に記載する。
【0051】
【表1】
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を指す。適当な場合に、アルキル基は、特定の数の炭素原子を有し得、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の配置の1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルキル基を含むC1-6アルキルが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、炭素原子間に1以上の二重結合を有し、2~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を指す。適当な場合に、アルケニル基は、特定の数の炭素原子を有し得る。例えば、「C2-C6アルケニル」におけるC2-C6は、直鎖状又は分岐鎖状の配置の2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルケニル基の例としては、限定されるものではないが、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘキサジエニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニルが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「アルキニル」は、1以上の三重結合を有し、2~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を指す。適当な場合に、アルキニル基は、特定の数の炭素原子を有し得る。例えば、「C2-C6アルキニル」におけるC2-C6は、直鎖状又は分岐鎖状の配置の2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する基を含む。好適なアルキニル基の例としては、限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、飽和及び不飽和の(芳香族ではない)環状炭化水素を指す。シクロアルキル環は、特定の数の炭素原子を含み得る。例えば、3~8員シクロアルキル基は、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含む。好適なシクロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、各環において最大7個の原子のいずれかの安定な単環式、二環式又は三環式炭素環系であって、少なくとも1個の環は芳香族である環系を意味するものとする。このようなアリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フルオレニル、フェナントレニル、ビフェニル及びビナフチルが挙げられる。
【0057】
一実施形態において、ジスルフィド結合は、式(I)の2個のシステイン残基(C)の間に形成される。
【0058】
一実施形態において、プロラクチン又はその機能的バリアントは、薬学的に許容可能な塩として形成される。薬学的に許容可能でない塩は、薬学的に許容可能な塩の調製における中間体として有用であり得るか、又は保存若しくは輸送中に有用であり得るため、薬学的に許容可能でない塩も想定されると理解されるべきである。好適な薬学的に許容可能な塩は、当業者によく知られ、その例示的な例としては、薬学的に許容可能な無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸の塩、又は薬学的に許容可能な有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸及び吉草酸の塩が挙げられる。
【0059】
適切な塩基性塩の例示的な例には、薬学的に許容可能な陽イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウムで形成される塩基性塩が挙げられる。塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物;硫酸ジメチル及び硫酸ジエチルのような硫酸ジアルキル;等の剤で四級化され得る。
【0060】
本明細書に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントを含むプロドラッグもまた、本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」は一般に、in vivoで代謝されて、式(I)の活性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をもたらし得る化合物を指す。いくつかの実施形態において、プロドラッグ自体もまた、本明細書において他所に記載されるように、プロラクチン又はその機能的バリアントと同じ又は実質的に同じ鎮痛活性を共有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、プロラクチン又はその機能的バリアントは、C末端キャッピング基をさらに含んでもよい。用語「C末端キャッピング基」は、本明細書で使用される場合、C末端カルボン酸の反応性を遮断する基を指す。好適なC末端キャッピング基は、C末端カルボン酸と反応してアミド基又はエステルを形成し、例えば、C末端キャッピング基は、-C(O)NHR又は-C(O)OR(式中、C(O)はC末端カルボン酸基由来であり、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリールであり、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリールである)を形成する。特定の実施形態において、C末端キャッピング基は-NHであり、-C(O)NHを形成する。いくつかの実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、C末端ポリエチレングリコール(PEG)を含む。一実施形態において、PEGは、220~5500Da、好ましくは220~2500Da、より好ましくは570~1100Daの分子量を有する。
【0062】
いくつかの実施形態において、プロラクチン又はその機能的バリアントは、N末端キャッピング基をさらに含んでもよい。用語「N末端キャッピング基」は、本明細書で使用される場合、N末端アミノ基の反応性を遮断する基を指す。好適なN末端キャッピング基は、N末端アミノ基と反応してアミド基を形成するアシル基であり、例えば、N末端キャッピング基は-NHC(O)R(式中、NHはN末端アミノ基由来であり、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はアリールである)を形成する。特定の実施形態において、N末端キャッピング基は、-C(O)CH(アシル)であり、-NHC(O)CHを形成する。
【0063】
いくつかの実施形態において、プロラクチン又はその機能的バリアントは、本明細書に記載されるように、C末端キャッピング基及びN末端キャッピング基を含み得る。
【0064】
本明細書に記載のプロラクチン又はその機能的バリアントは、当業者に公知の任意の方法で作製することができる。好適な方法の例示的な例としては、Fmoc又はBoc保護されたアミノ酸残基を使用した液相又は固相合成、微生物培養、遺伝子組換え微生物、植物及び組換えDNA技術を使用する組換え技術が挙げられる(例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第3版), 2001, CSHL Pressを参照)。
【0065】
本明細書において他所に記載されるように、本発明者らは、驚くことに、式(I)のペプチド(配列番号1)を含むプロラクチン由来ペプチドが、神経障害性疼痛を軽減することができる限りにおいて、鎮痛特性を有することを初めて見出した。したがって、本明細書において記載されるように、プロラクチン又はその機能的バリアントは、神経障害性疼痛の1又は2以上の症状を含め、対象における神経障害性疼痛の発症を治療、予防、軽減するか、又はそうでなければ遅延させるために好適に使用可能である。本発明者らはまた、驚くことに、式(I)のペプチドを含む非ヒトプロラクチン由来ペプチドは、それらのヒト対応物と類似した鎮痛特性を有することも見出した。
【0066】
したがって、プロラクチン又はその機能的バリアントは、神経障害性疼痛の1又は2以上の症状を含め、対象における神経障害性疼痛の発症を治療、予防、軽減するか、又はそうでなければ遅延させるために好適に使用可能である。
【0067】
用語「治療する(treating)」、「治療(treatment)」等は、神経障害性疼痛の1又は2以上の症状、例えば、アロディニア及び痛覚過敏を含め、神経障害性疼痛を緩和、低減、軽減、寛解するか、又はそうでなければ阻害することを意味するように、本明細書において互換的に使用される。用語「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」、「予防的(prophylaxis)」、「予防的(prophylactic)」、「予防的(preventative)」等は、神経障害性疼痛の発症又は神経障害性疼痛を発症するリスクを予防又は遅延させることを意味するために互換的に使用される。
【0068】
用語「治療する」、「治療」等はまた、経障害性疼痛の作用を少なくとも一定期間緩和、低減、軽減、寛解するか、又はそうでなければ阻害することを含む。用語「治療する」、「治療」等は、神経障害性疼痛又はその症状が、永久的に緩和、低減、軽減、寛解されるか、又はそうでなければ阻害されることを意味するものではなく、したがって、神経障害性疼痛又はその症状の一時的な緩和、低減、軽減、寛解又はそうでなければ阻害も包含すると理解される必要がある。
【0069】
理論又は特定の適用様式に拘束されることはないが、神経障害性疼痛は一般に、神経組織若しくはニューロンそれ自体に対する傷害若しくは疾患による損傷、又は神経組織内の機能不全の結果生じる疼痛として特徴付けられる。神経障害性疼痛は、末梢性、中枢性又はその組合せであってよく、言い換えれば、用語「神経障害性疼痛」は一般に、原発巣又は末梢若しくは中枢神経系における機能不全により惹起される又は生じるいずれかの疼痛症候群を指す。神経障害性疼痛は、一般的な鎮痛薬、例えば、オピオイドによる治療に対して効果的に反応しないという点でも特定可能である。対照的に、侵害受容性疼痛は、組織に対する損傷又は傷害を生じ得る侵害刺激又は潜在的に有害な刺激による侵害受容器の刺激の結果生じる疼痛として特徴付けられる。侵害受容性疼痛は一般に、一般的な鎮痛薬、例えば、オピオイドに反応性である。
【0070】
用語「鎮痛」は、痛覚の欠損を含む疼痛知覚の低下の状態、及び侵害刺激に対する感受性の低下又は欠損の状態を説明するために、本明細書において使用される。このような疼痛知覚の低下又は欠損の状態は一般に、当技術分野で一般に理解されているように、1種又は2種以上の疼痛管理剤の投与により誘発され、意識消失を伴わずに生じる。化合物が鎮痛効果を提供することができるか否かを決定する好適な方法は、当業者によく知られ、その例示的な例としては、神経障害性疼痛、例えば、慢性絞扼損傷、脊髄神経結紮及び部分的坐骨神経結紮の動物モデル(Bennett et al. (2003); Curr. Protoc. Neurosci., Chapter 9, Unit 9.14を参照)並びに侵害受容性疼痛、例えば、ホルマリン、カラゲナン又は完全フロイントアジュバント(CFA)誘発炎症性疼痛の動物モデルの使用が挙げられる。神経障害性疼痛のその他の好適なモデルは、Gregoryら(2013, J. Pain.; 14(11); “:An overview of animal models of pain: disease models and outcome measures”)において考察されている。
【0071】
当業者には公知であるように、ニューロパチー及び神経障害性疼痛の可能性のある原因は多く存在する。したがって、原因を問わず、神経障害性疼痛の治療又は予防が本明細書において企図されると理解されるべきである。いくつかの実施形態において、疼痛は、組織への損傷若しくは外傷、神経に影響を及ぼす疾患若しくは状態(例えば、原発性ニューロパチー)及び/又は全身性疾患により生じる疼痛(続発性ニューロパチー)の結果であり、その例示的な例としては、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー及び複合性局所疼痛症候群が挙げられる。神経障害性疼痛を生じ得る状態のその他の例示的な例としては、反復活動、例えば、タイピング又は組立ラインでの作業、末梢神経障害を生じることで知られる薬剤、例えば、いくつかの抗レトロウイルス薬ddC(ザルシタビン)及びddI(ジダノシン)、抗生物質(メトロニダゾール、クローン病に使用される抗生物質、結核に使用されるイソニアジド)、金化合物(関節リウマチに使用される)、いくつかの化学療法薬(例えば、ビンクリスチン等)等が挙げられる。アルコール、鉛、ヒ素、水銀及び有機リン農薬を含む化合物も、末梢神経障害を生じることで知られる。いくつかの末梢神経障害は、感染過程と関連している(例えば、ギラン・バレー症候群)。神経障害性疼痛のその他の例示的な例としては、熱的痛覚過敏又は機械的痛覚過敏、熱的アロディニア又は機械的アロディニア、糖尿病性疼痛、口腔に影響を及ぼす神経障害性疼痛(例えば、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群)、線維筋痛及び絞扼痛が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載される一実施形態において、神経障害性疼痛は、糖尿病性ニューロパチー;帯状疱疹関連ニューロパチー;線維筋痛;多発性硬化症、脳卒中、脊髄損傷;慢性術後疼痛、幻肢痛、パーキンソン病;尿毒症関連ニューロパチー;アミロイドーシスニューロパチー;HIV感覚性ニューロパチー;遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN);遺伝性感覚性ニューロパチー(HSN);遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー;潰瘍断節を伴う遺伝性ニューロパチー;ニトロフラントインニューロパチー;ソーセージ様ニューロパチー;栄養欠乏により引き起こされるニューロパチー、腎不全により引き起こされるニューロパチー、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)、口腔灼熱症候群、複合性局所疼痛症候群、反復性緊張外傷、薬剤性末梢神経障害、感染症に関連した末梢神経障害、アロディニア、知覚過敏及び痛覚過敏からなる群から選択される状態に関連する。別の実施形態において、神経障害性疼痛は、灼熱痛又は電撃痛である。
【0073】
いくつかの実施形態において、神経障害性疼痛は、しびれ、脱力及び反射消失を伴い得る。神経障害性疼痛は、重度及び身体障害性であり得る。「痛覚過敏」とは、通常有痛性である刺激に対する反応の増加を意味する。痛覚過敏状態は、通常有痛性ではない刺激により引き起こされる疼痛と関連した状態である。用語「知覚過敏」は、特に皮膚の過剰な物理的感受性を指す。用語「アロディニア」は、本明細書で使用される場合、非侵害刺激の結果生じる疼痛、すなわち、通常は疼痛を誘発しない刺激に起因する疼痛を指す。アロディニアの例示的な例としては、熱的アロディニア(寒冷又は温暖刺激に起因する疼痛)、接触性アロディニア(軽い圧力又は接触に起因する疼痛)、機械的アロディニア(強い圧力又は針刺しに起因する疼痛)等が挙げられる。
【0074】
神経障害性疼痛は、急性又は慢性であり得、本文脈においては、疼痛の時間的経過はその根本原因に基づいて変化し得ると理解されるべきである。例えば、外傷では、神経障害性疼痛の症状の発症は、急性又は突発性であり得る。しかしながら、ほとんどの重度の症状は、経時的に発症し得、数年間持続し得る。数週間~数か月にわたる慢性の時間的経過は通常、中毒性又は代謝性の疼痛症候群を示す。慢性の緩徐進行性の疼痛症候群、例えば、有痛性糖尿病性ニューロパチー又はほとんどの遺伝性ニューロパチー又は慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)と呼ばれる状態とともに生じる疼痛症候群は、数年間にわたる時間的経過をたどり得る。再発及び寛解する症状を伴う神経障害性の状態としては、ギラン・バレー症候群が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、神経障害性疼痛は、神経過敏症を特徴とする状態、例えば、線維筋痛又は過敏性腸症候群の結果生じる。
【0076】
その他の実施形態において、神経障害性疼痛は、神経過敏症に至る異常な神経再生と関連した障害の結果生じる。このような障害としては、乳房痛、間質性膀胱炎、外陰部痛及び癌化学療法誘発ニューロパチーが挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、神経障害性疼痛は、手術、術前疼痛及び術後疼痛、特に術後疼痛と関連している。
【0078】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、神経障害性疼痛の治療又は予防が望まれる哺乳動物対象を指す。好適な対象の例示的な例としては、霊長類、特にヒト、コンパニオン動物、例えば、ネコ及びイヌ等、使役動物、例えば、ウマ、ロバ等、家畜動物、例えば、ヒツジ、雌ウシ、ヤギ、ブタ等、実験動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等及び捕獲野生動物、例えば、動物園及び野生動物公園における動物、シカ、ディンゴ等が挙げられる。一実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、対象は、イヌ、ネコ及びウマからなる群から選択される。
【0079】
本明細書における対象への言及は、対象が神経障害性疼痛又はその症状を有することを意味するだけでなく、神経障害性疼痛又はその症状を発症するリスクにある対象も含むものと理解されるべきである。一実施形態において、対象は、神経障害性疼痛又はその症状を有する(すなわち、経験している)。別の実施形態において、対象は、治療の時点で神経障害性疼痛又はその症状を経験していないが、神経障害性疼痛又はその症状を発症するリスクにある。例示的な例において、対象は、対照が神経障害性疼痛を発症するリスクがある疾患又は状態、例えば、糖尿病性ニューロパチーに至り得る管理不十分な糖尿病を有する。別の実施形態において、対象は、神経障害性疼痛に至る可能性がある疾患又は状態、例えば、帯状疱疹後神経痛に至り得る帯状疱疹を有している。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、プロラクチン又は配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するその機能的バリアントを、非ヒト対象に投与することを含み、ここで、機能的バリアントは、式(I)のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む。好ましい実施形態において、非ヒト対象は、イヌ、ネコ又はウマからなる群から選択される。その他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、プロラクチン又は配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するその機能的バリアントを、ヒト対象に投与することを含み、ここで、機能的バリアントは式(I)のペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。その他の実施形態において、プロラクチン又は配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するその機能的バリアントを、非ヒト対象、例えば、イヌ、ネコ又はウマに投与し、ここで、機能的バリアントは式(I)のペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0081】
プロラクチン又は配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するその機能的バリアントは、治療有効量で投与されるべきであり、ここで、機能的バリアントは、式(I)のペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。語句「治療有効量」は一般に、所望の反応を達成するため、又は治療される神経障害性疼痛の発症を遅延させる若しくは進行を阻害する、又は発症若しくは進行をまとめて停止するために必要な量を意味する。ペプチドの治療有効量がいくつかの因子に応じて変わることは、当業者により理解され、その例示的な例としては、治療される対象の健康及び身体的状態、治療される対象の分類群、治療される神経障害性疼痛の重症度、式(I)のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物の調合、投与経路、及び前述のいずれかの組合せが挙げられる。
【0082】
治療有効量は一般に、当業者による慣例的な試行を通じて決定され得る比較的広い範囲内に収まる。ヒト対象に投与するためのプロラクチン又はその機能的バリアントの好適な治療有効量の例示的な例としては、約0.001mg/kg体重~約1g/kg体重、好ましくは、約0.001mg/kg体重~約50g/kg体重、より好ましくは、約0.01mg/kg体重~約1.0mg/kg体重が挙げられる。本明細書に記載される一実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学上許容可能な塩の治療上有効な量は、用量あたり約0.001mg/kg体重~約1g/kg体重(例えば、0.001mg/kg体重、0.005mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.05mg/kg体重、0.1mg/kg体重、0.15mg/kg体重、0.2mg/kg体重、0.25mg/kg体重、0.3mg/kg体重、0.35mg/kg体重、0.4mg/kg体重、0.45mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.55mg/kg体重、0.6mg/kg体重、0.65mg/kg体重、0.7mg/kg体重、0.75mg/kg体重、0.8mg/kg体重、0.85mg/kg体重、0.9mg/kg体重、0.95mg/kg体重、1mg/kg体重、1.5mg/kg体重、2mg/kg体重、2.5mg/kg体重、3mg/kg体重、3.5mg/kg体重、4mg/kg体重、4.5mg/kg体重、5mg/kg体重、5.5mg/kg体重、6mg/kg体重、6.5mg/kg体重、7mg/kg体重、7.5mg/kg体重、8mg/kg体重、8.5mg/kg体重、9mg/kg体重、9.5mg/kg体重、10mg/kg体重、10.5mg/kg体重、11mg/kg体重、11.5mg/kg体重、12mg/kg体重、12.5mg/kg体重、13mg/kg体重、13.5mg/kg体重、14mg/kg体重、14.5mg/kg体重、15mg/kg体重、15.5mg/kg体重、16mg/kg体重、16.5mg/kg体重、17mg/kg体重、17.5mg/kg体重、18mg/kg体重、18.5mg/kg体重、19mg/kg体重、19.5mg/kg体重、20mg/kg体重、20.5mg/kg体重、21mg/kg体重、21.5mg/kg体重、22mg/kg体重、22.5mg/kg体重、23mg/kg体重、23.5mg/kg体重、24mg/kg体重、24.5mg/kg体重、25mg/kg体重、25.5mg/kg体重、26mg/kg体重、26.5mg/kg体重、27mg/kg体重、27.5mg/kg体重、28mg/kg体重、28.5mg/kg体重、29mg/kg体重、29.5mg/kg体重、30mg/kg体重、35mg/kg体重、40mg/kg体重、45mg/kg体重、50mg/kg体重、55mg/kg体重、60mg/kg体重、65mg/kg体重、70mg/kg体重、75mg/kg体重、80mg/kg体重、85mg/kg体重、90mg/kg体重、95mg/kg体重、100mg/kg体重、105mg/kg体重、110mg/kg体重等)である。一実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学上許容可能な塩の治療上有効な量は、約0.001mg/kg体重~約50mg/kg体重である。一実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学上許容可能な塩の治療上有効な量は、約0.01mg/kg体重~約1.0mg/kg体重である。投与レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整してよい。例えば、いくつかの分割した用量を毎日、毎週、毎月又は他の好適な時間間隔で投与してよく、或いは、用量は、病態の緊急性に応じて比例的に低減してよい。
【0083】
本明細書に記載される一実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、侵害受容性疼痛に対する鎮痛効果を最小限で伴うか又は全く伴わずに、対象における神経障害性疼痛を軽減する治療有効量で対象に投与される。本発明者らはまた、驚くことに、プロラクチン又はその機能的バリアントの非ヒトバリアントは、それらのヒト対応物と同様の鎮痛特性を有することを見出した。
【0084】
鎮痛特性は、神経障害性疼痛の神経絞扼モデルから得られたデータから明らかである(図2~30を参照)。そのデータからわかるように、プロラクチンのC末端フラグメント(配列番号2~5)は、神経障害性鎮痛の大きさ及び期間の両方の点で、親プロラクチンタンパク質と同等の活性を示した(図29~30)。したがって、本明細書に記載される別の態様において、対象における神経障害性疼痛を治療する方法であって、この方法が、治療有効量のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を対象に投与することを含み、ペプチドが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号NO:5)を含む、それらからなる、又は実質的にそれらからなる、方法が提供される。
【0085】
投与経路
本明細書に記載されるペプチドは、本明細書に記載の治療有効量で対象へのペプチドの送達を可能にするいずれかの好適な経路によって、対象に投与してよい。好適な投与経路は、当業者に公知であり、その例示的な例としては、経腸投与経路(例えば、経口及び直腸)、非経口投与経路、一般に注射又はマイクロインジェクション(例えば、筋肉内、皮下、静脈内、硬膜外、関節内、腹腔内、槽内又はくも膜下腔内)及び局所(経皮又は経粘膜)投与経路(例えば、頬側、舌下、膣内、鼻腔内又は吸入)が挙げられる。本明細書に記載されるペプチドはまた、長時間にわたり有効成分の徐放を提供するための徐放性投与形態として対象に好適に投与してもよい。用語「徐放」は一般に、ある期間にわたり(例えば、約8時間~約12時間まで、約14時間まで、約16時間まで、約18時間まで、約20時間まで、1日まで、1週まで、1か月まで、又は1か月超)対象における有効成分の一定又は実質的に一定の濃度を提供するための有効成分の放出を意味する。有効成分の徐放は、必要に応じて、投与後数分以内、又は投与後遅延期間(ラグ時間)の満了後に開始し得る。好適な徐放性投与形態は、当業者に公知であり、その例示的な例は、Anal, A. K. (2010; Controlled-Release Dosage Forms. Pharmaceutical Sciences Encyclopedia. 11:1-46)に記載されている。
【0086】
理論又は特定の適用様式に拘束されることはないが、神経障害性疼痛が局所性か全身性かに基づいて、投与経路を選択することが望まれ得る。例えば、神経障害性疼痛が局所性の場合には、患部又はそれに直接隣接した領域にペプチドを投与することが望まれ得る。例えば、神経障害性疼痛が関節内(例えば、頸部、膝、肘、肩、股関節等)である場合には、ペプチドは、対象に対して罹患関節内に関節内投与することができる。或いは、さらに、ペプチドは、罹患関節に又はそれに実質的に隣接して投与することができる。別の例示的な例として、神経障害性疼痛が口腔内(例えば、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)又は口腔灼熱症候群)である場合には、ペプチドは、口腔粘膜を介した(例えば、頬側及び/又は舌下投与による)投与のために調合することができる。逆に、神経障害性疼痛が対象の複数の解剖学的部位に及ぶ全身性又は散在性である場合には、ペプチドは、神経障害性疼痛により冒された複数の解剖学的部位に活性ペプチドを分布させる目的で、いずれかの部位に局所、経腸及び/又は非経口投与してよい。本明細書に記載される一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、対象に経腸投与される。本明細書に記載される一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、対象に経口投与される。本明細書に記載される一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、対象に非経口投与される。本明細書に記載される別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、対象に局所投与される。本明細書において他所に記載されるように、「局所」投与は一般に、好適には、クリーム、ローション、泡沫、ゲル、軟膏、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、経皮パッチ、経皮フィルム(例えば、舌下フィルム)等の形態での、身体の表面、例えば、皮膚又は粘膜への有効成分の適用を意味する。局所投与はまた、吸入又は吹送による気道の粘膜を介した投与も包含する。本明細書に記載される一実施形態において、局所投与は、経皮投与及び経粘膜投与からなる群から選択される。一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、対象に経皮投与される。
【0087】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドをヒトに経口投与することを含む。別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に経口投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に経口投与することを含む。
【0088】
一実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドをヒトに局所投与することを含む。別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に局所投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に局所投与することを含む。
【0089】
別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ヒトに経口投与することを含む。別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に経口投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に経口投与することを含む。
【0090】
別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をヒトに局所投与することを含む。別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に局所投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に局所投与することを含む。
【0091】
別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に経口投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に経口投与することを含む。
【0092】
別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に局所投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に局所投与することを含む。
【0093】
別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に経口投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に経口投与することを含む。
【0094】
別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に局所投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に局所投与することを含む。
【0095】
別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に経口投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に経口投与することを含む。
【0096】
別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、非ヒト対象に局所投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に局所投与することを含む。
【0097】
局所投与の例示的な例は、本明細書において他所に記載される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0098】
本明細書に記載される一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、徐放性投与形態として対象に投与され、その例示的な例は、本明細書において他所に記載される。一実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態としてヒトに投与することを含む。別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。
【0099】
別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態としてヒトに投与することを含む。別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。
【0100】
別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口的に対象に投与され、その好適な例は、本明細書の他所に記載されている。
【0101】
別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口的に対象に投与され、その好適な例は、本明細書の他所に記載されている。
【0102】
別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として非ヒト対象に投与することを含む。さらに別の実施形態において、方法は、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を徐放性投与形態として、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与することを含む。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口的に対象に投与され、その好適な例は、本明細書の他所に記載されている。
【0103】
本明細書において他所に記載されるように、いくつかの(すなわち、複数の)分割した用量を毎日、毎週、毎月又はその他の好適な時間間隔で投与してよく、或いは用量は、状況の緊急性に応じて比例的に低減してよい。複数の用量の治療単位が必要であるか、又はそうでなければ望まれる場合には、本明細書に記載されるペプチドを、2以上の経路を介して投与することが有益であり得る。例えば、第1の用量を非経口(例えば、筋肉内、静脈内;皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、槽内又はくも膜下腔内投与経路を介して)投与して、対象において急速な又はそうでなければ急性の鎮痛効果を誘導し、次いで、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を経腸(enterally)(例えば、経口又は直腸)及び/又は局所(例えば、経皮又は経粘膜投与経路を介して)投与して、治療の急性期に続く長期間にわたり有効成分の継続した有効性を提供することが望まれ得る。或いは、用量を経腸(例えば、経口又は直腸)投与し、次いで、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を非経口(例えば、筋肉内、静脈内;皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、槽内又はくも膜下腔内投与経路を介して)及び/又は局所(例えば、経皮又は経粘膜投与経路を介して)投与することが望まれ得る。或いは、用量を局所(例えば、経皮又は経粘膜投与経路を介して)投与し、次いで、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を非経口(例えば、筋肉内、静脈内;皮下、硬膜外、関節内、腹腔内、槽内又はくも膜下腔内投与経路を介して)及び/又は経腸(例えば、経口又は直腸)投与することが望まれ得る。
【0104】
投与経路は、本明細書において他所に考察されるように、神経障害性疼痛が局所性か全身性かに基づいて、好適に選択され得る。或いは、さらに、投与経路は、対象の全身健康状態、年齢、体重及び特定の投与経路に対する耐性(又はその欠如)等の因子を考慮して、好適に選択され得る(例えば、針恐怖症がある場合には、経腸及び/又は局所等の代替の投与経路を選択してよい)。
【0105】
複数の投与経路が望まれる場合には、2以上の投与経路の任意の組合せを、本明細書に記載される方法に従って使用してよいことも理解されるべきである。好適な組合せの例示的な例としては、限定されるものではないが、(投与順で)(a)非経口-経腸;(b)非経口-局所;(c)非経口-経腸-局所;(d)非経口-局所-経腸;(e)経腸-非経口;(f)経腸-局所;(g)経腸-局所-非経口;(h)経腸-非経口-局所;(i)局所-非経口;(j)局所-経腸;(k)局所-非経口-経腸;(l)局所-経腸-非経口;(m)非経口-経腸-局所-非経口;(n)非経口-経腸-局所-経腸;等が挙げられる。
【0106】
一実施形態において、方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを対象に非経口投与以外で投与(すなわち、経腸投与又は局所用途)することを含み、非経口投与以外の投与(経腸投与又は局所投与)は、非経口投与の後に行われる。一実施形態において、非経口投与は、筋肉内投与、皮下投与及び静脈内投与からなる群から選択される。さらなる実施形態において、非経口投与は皮下投与である。一実施形態において、非経口投与以外の投与は経口投与である。
【0107】
一実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドをヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドをヒト対象に経口投与することを含み、経口投与は非経口投与に続く。
【0108】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)ヒト対象に配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を経口投与することを含み、経口投与は非経口投与の後に続く。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。別の実施形態において、非経口投与はくも膜下腔内投与である。
【0109】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)ヒト対象に配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を経口投与することを含み、経口投与は非経口投与の後に続く。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。別の実施形態において、非経口投与はくも膜下腔内投与である。
【0110】
一実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に経口投与することを含み、経口投与は非経口投与に続く。さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)非ヒト対象に配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を経口投与することを含み、経口投与は非経口投与の後に続く。
【0111】
一実施形態において、非ヒト対象は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。別の実施形態において、非経口投与はくも膜下腔内投与である。
【0112】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)非ヒト対象に配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を経口投与することを含み、経口投与は非経口投与の後に続く。一実施形態において、非ヒト対象は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。別の実施形態において、非経口投与はくも膜下腔内投与である。
【0113】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドをヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドをヒト対象に局所投与することを含み、局所投与は非経口投与に続く。
【0114】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)ヒト対象に配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を局所投与することを含み、局所投与は非経口投与の後に続く。
【0115】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩をヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)ヒト対象に配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を局所投与することを含み、局所投与は非経口投与の後に続く。
【0116】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを非ヒト対象に局所投与することを含み、局所投与は非経口投与に続く。
【0117】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)非ヒト対象に配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を局所投与することを含み、局所投与は非経口投与の後に続く。
【0118】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される方法は、(i)配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を非ヒト対象に非経口投与すること、及び(ii)非ヒト対象に配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を局所投与することを含み、局所投与は非経口投与の後に続く。
【0119】
一実施形態において、非ヒト対象は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される。一実施形態において、非経口投与経路は皮下投与である。別の実施形態において、局所投与経路は経皮投与である。別の実施形態において、非経口投与は皮下投与であり、局所投与は経皮投与である。
【0120】
或いは、さらに、本明細書に記載されるペプチドは、徐放性投与形態として好適に投与され得る。したがって、一実施形態において、方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを対象に非経口投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として対象に投与することを含み、徐放性投与形態は、非経口投与の後に投与される。別の実施形態において、方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを対象に非経口投与以外で投与(経腸投与又は局所投与)すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として対象に投与することを含み、徐放性投与形態は、非経口投与以外の投与の後に対象に投与される。さらに別の実施形態において、方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを対象に経腸投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として対象に投与することを含み、徐放性投与形態は、経腸投与の後に対象に投与される。さらに別の実施形態において、方法は、(i)本明細書に記載されるペプチドを対象に局所投与すること、及び(ii)本明細書に記載されるペプチドを徐放性投与形態として対象に投与することを含み、徐放性投与形態は、局所投与の後に対象に投与される。好ましい実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために調合される。
【0121】
補助療法
本明細書に記載されるペプチドは、1種又は2種以上の別の有効成分と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、好適にともに投与され得る。その他の有効成分の性質は治療又は予防される状態に依存することは、当業者により理解される。例えば、対象が癌を有する場合には、本明細書に記載されるペプチドは、1種又は2種以上の化学療法剤と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、対象にともに投与され得、その例示的な例は、当業者によく知られる。この性質の組合せ治療は、いくつかの化学療法剤と関連することが多い神経障害性疼痛を軽減することにより有利であり得、その例示的な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、イクサベピロン(izbepilone)、ボルテゾミブ、サリドマイド及びレナリドミド(lenalinomide)が挙げられる。したがって、一実施形態において、本明細書に記載される方法は、治療有効量の化学療法剤を対象に投与することをさらに含む。
【0122】
本明細書に記載されるペプチドはまた、対象における疼痛を軽減することができる1種又は2種以上のその他の鎮痛剤(すなわち、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアント以外)と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、対象に好適にともに投与され得る。好適な鎮痛剤は、当業者によく知られ、その例示的な例としては、侵害受容性疼痛を軽減することができる鎮痛剤、神経障害性疼痛を軽減することができる薬剤、又はその任意の組合せが挙げられる。したがって、一実施形態において、本明細書に記載される方法は、対象における疼痛を軽減することができる治療上有効な量の第2の薬剤を対象に投与することをさらに含み、第2の薬剤は、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない。
【0123】
別の実施形態において、本明細書に記載される方法は、対象における疼痛を軽減することができる治療有効量の第2の薬剤を対象に投与することをさらに含み、第2の薬剤は、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない。
【0124】
一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象における神経障害性疼痛を軽減することができる。
【0125】
侵害受容性疼痛を軽減することができる好適な薬剤は、当業者によく知られ、その例示的な例としては、アヘン剤、例えば、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、アセチルジヒドロコデイン、オキシコドン、オキシモルフォン及びブプレノルフィン、並びに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジフルニサル、サルサラート、フェナセチン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ(lumaricoxib)、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド(rimesulide)及びリコフェロンが挙げられる。一実施形態において、侵害受容性疼痛を軽減することができる第2の薬剤は、オピオイドである。
【0126】
本明細書に記載されるその他の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、神経障害性疼痛又は神経障害性疼痛を引き起こしている根本的な状態を治療又は軽減するための別の療法と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、ともに投与される。場合によっては、投与が本明細書に記載されるペプチドとともに行われる場合には、第2の神経障害性鎮痛剤の量を低減してよい。神経障害性疼痛を治療することができる好適な薬剤の例示的な例としては、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、フェニトイン、メラトニン、カルバマゼピン、レボカルニチン、カプサイシン、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン(amitryptiline))及びナトリウムチャネル遮断薬(例えば、リドカイン)が挙げられる。
【0127】
医薬組成物
本明細書に記載されるペプチドは、純化学物質として対象に投与するために調合され得る。しかしながら、特定の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドを、獣医学的組成物を含む医薬組成物として調合することが好適であり得る。したがって、本明細書に記載される別の態様では、対象における神経障害性疼痛の治療及び予防に使用するための、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む医薬組成物であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記医薬組成物が提供される。
【0128】
一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される。
【0129】
一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNCG(配列番号3)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNC(配列番号4)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNCG(配列番号5)である。
【0130】
一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、本明細書の他所に記載されるように、対象に投与された場合に対象における神経障害性疼痛を軽減する治療有効量で存在する。
【0131】
一実施形態において、組成物は、第2の薬剤が本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない、対象の疼痛を軽減することができる第2の薬剤をさらに含む。一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができ、その例示的な例は、本明細書の他所に記載されている。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象の神経障害性疼痛を軽減することができ、その例示的な例はまた、本明細書の他所にも記載されている。一実施形態において、第2の薬剤はオピオイドである。
【0132】
本明細書に記載される別の態様において、対象における神経障害性疼痛の治療又は予防のための医薬の製造における、プロラクチン又はその機能的バリアントの使用であって、
前記機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、前記使用が提供される。
【0133】
一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される。一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNCG(配列番号3)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNC(配列番号4)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNCG(配列番号5)である。
【0134】
一実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、本明細書の他所に記載されるように、対象における神経障害性疼痛を軽減する治療有効量で対象に投与するために調合される。
【0135】
一実施形態において、ペプチドは、対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤との順次投与又は併用投与のために調合され、ここで、第2の薬剤は、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない。一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができ、その例示的な例は、本明細書の他所に記載されている。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象の神経障害性疼痛を軽減することができ、その例示的な例はまた、本明細書の他所にも記載されている。一実施形態において、第2の薬剤はオピオイドである。
【0136】
本明細書において他所に記載されるように、本明細書に記載されるペプチドは、治療される状態に依存する可能性が高い1種又は2種以上の別の有効成分と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、ともに投与され得る。例えば、対象が癌を有する場合には、本明細書に記載される組成物は、1種又は2種以上の化学療法剤と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、ともに調合され得、その例示的な例は、当業者によく知られる。この性質の組合せ治療は、いくつかの化学療法剤と関連することが多い神経障害性疼痛を軽減することにより有利であり得、その例示的な例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、イクサベピロン(izbepilone)、ボルテゾミブ、サリドマイド及びレナリドミド(lenalinomide)が挙げられる。
【0137】
本明細書に記載される組成物はまた、本明細書において他所に記載される対象における疼痛を軽減することができる1種又は2種以上のその他の鎮痛剤(すなわち、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアント以外の鎮痛剤)と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、対象に好適にともに投与するために、好適に調合され得る。一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない、対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤をさらに含む。
【0138】
一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができる。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象における神経障害性疼痛を軽減することができる。
【0139】
侵害受容性疼痛を軽減することができる好適な薬剤は、当業者によく知られ、その例示的な例としては、アヘン剤、例えば、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、アセチルジヒドロコデイン、オキシコドン、オキシモルフォン及びブプレノルフィン、並びに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジフルニサル、サルサラート、フェナセチン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ(lumaricoxib)、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド(rimesulide)及びリコフェロンが挙げられる。一実施形態において、侵害受容性疼痛を軽減することができる第2の薬剤は、オピオイドである。
【0140】
本明細書に記載されるその他の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、神経障害性疼痛又は疼痛を引き起こしている根本的な状態を治療又は軽減するための別の療法と順次に又は組み合わせて(例えば、混合物として)のいずれかで、ともに投与するために調合される。場合によっては、本明細書に記載されるペプチド又とともに行われる場合には、第2の神経障害性鎮痛剤の量を低減してよい。神経障害性疼痛を治療することができる好適な薬剤の例示的な例としては、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、フェニトイン、メラトニン、カルバマゼピン、レボカルニチン、カプサイシン、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン(amitryptiline))及びナトリウムチャネル遮断薬(例えば、リドカイン)が挙げられる。
【0141】
本明細書に記載される別の態様では、(i)本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントと、(ii)対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤とを含む医薬組成物であって、
機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含み、
第2の薬剤が、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない、医薬組成物が提供される。一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができ、その例示的な例は、本明細書の他所に記載されている。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象の神経障害性疼痛を軽減することができ、その例示的な例はまた、本明細書の他所にも記載されている。一実施形態において、第2の薬剤はオピオイドである。
【0142】
本明細書に記載される実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物として調合される。担体、賦形剤又は希釈剤は、それらが組成物のその他の成分と適合性であり、且つ、レシピエントにほとんど又は全く有害な影響を生じさせない場合に、一般に「許容可能」と見なされる。
【0143】
本明細書に記載される別の態様において、プロラクチン又はその機能的バリアントを含む鎮痛組成物であって、
機能的バリアントが、式(I)のペプチド:
-C-R-I-X-X-X-X-N-C-R (I)(配列番号1)
[式中、
は、イソロイシン(I)及びバリン(V)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、ヒスチジン(H)及びチロシン(Y)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン酸(D)及びアスパラギン(N)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、アスパラギン(N)及びセリン(S)から選択されるアミノ酸残基であり、
は、YLKLLK、LKLLK、KLLK、LLK、LL及びKからなる群から選択されるか、又はRは存在せず、
は、G(グリシン)であるか、又はRは存在しない。]
を含む、鎮痛組成物が提供される。
【0144】
一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)、CRIIHNNNCG(配列番号3)、CRIVYDSNC(配列番号4)及びCRIVYDSNCG(配列番号5)からなる群から選択される。一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNC(配列番号2)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIIHNNNCG(配列番号3)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNC(配列番号4)である。一実施形態において、ペプチドは、CRIVYDSNCG(配列番号5)である。
【0145】
一実施形態において、鎮痛組成物は、本明細書の他所に記載されるように、対象における疼痛を軽減することができる第2の薬剤をさらに含み、ここで、第2の薬剤は、本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントではない。一実施形態において、第2の薬剤は、対象における侵害受容性疼痛を軽減することができ、その例示的な例は、本明細書の他所に記載されている。別の実施形態において、第2の薬剤は、対象の神経障害性疼痛を軽減することができ、その例示的な例はまた、本明細書の他所にも記載されている。一実施形態において、第2の薬剤はオピオイドである。
【0146】
本明細書に記載される別の態様では、治療有効量のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物であって、ペプチドが、アミノ酸配列CRIIHNNNC(配列番号2)若しくはアミノ酸配列CRIIHNNNCG(配列番号3)からなるか、又は本質的にそれからなる、組成物が提供される。
【0147】
本明細書に記載される別の態様では、治療有効量のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物であって、ペプチドが、アミノ酸配列CRIVYDSNC(配列番号4)若しくはCRIVYDSNCG(配列番号5)からなるか、又は本質的にそれからなる、組成物が提供される。
【0148】
一実施形態において、組成物は、本明細書の他所に記載される薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含む。一実施形態において、組成物は経口投与用に調合される。
【0149】
好適な医薬製剤の例示的な例としては、経腸又は非経口投与に好適なものが挙げられ、その例示的な例は、本明細書において他所に記載され、経口、直腸、頬側、舌下、膣内、鼻腔、局所(例えば、経皮)、筋肉内、皮下、静脈内、硬膜外、関節内及びくも膜下腔内が挙げられる。
【0150】
本明細書に記載されるペプチドは、経口使用のための固体(例えば、錠剤若しくは充填カプセル剤)若しくは液体(例えば、液剤、懸濁剤、エマルション、エリキシル剤、若しくはそれを充填したカプセル剤)として使用される医薬組成物及びその単位用量の形態、直腸投与のための軟膏剤、坐剤若しくは浣腸剤の形態、非経口使用(例えば、筋肉内、皮下、静脈内、硬膜外、関節内及びくも膜下腔内投与)のための無菌注射用液剤の形態;又は局部(例えば、局所、頬側、舌下、膣内)投与のための軟膏剤、ローション、クリーム、ゲル、パッチ、舌下ストリップ若しくはフィルム等の形態に好適にされ得る。一実施形態において、式(I)のペプチド又はそれらの薬学上許容可能な塩は、局所(例えば、経皮)送達のために調合される。好適な経皮送達システムは、当業者によく知られ、その例示的な例はPrausnitz及びLanger(2008; Nature Biotechnol. 26(11):1261-1268)により記載され、その内容は引用することにより本明細書の一部とされる。別の実施形態において、式(I)のペプチド又はその薬学上許容可能な塩は、舌下又は頬側送達のために調合される。好適な舌下及び頬側送達システムは、当業者によく知られ、その例示的な例としては、Balaら(2013; Int. J. Pharm. Investig. 3(2):67-76)により記載される溶解性ストリップ又はフィルムが挙げられ、その内容は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0151】
好適な医薬組成物及びそれらの単位投与形態は、さらなる有効化合物又は成分を有する又は有しない、従来の割合での従来の成分を含み得、このような単位投与形態は、使用される意図する一日用量範囲と釣り合った任意の好適な有効量の有効成分を含み得る。本明細書に記載されるペプチドは、多様な経腸、局所及び/又は非経口投与形態での投与のために調合され得る。好適な投与形は、有効成分として、本明細書に記載されるペプチドを含み得る。
【0152】
本明細書において他所に記載されるように、神経障害性疼痛が局所性か全身性かに基づいて、投与経路を選択することが望まれ得る。例えば、神経障害性疼痛が局所性の場合には、患部又はそれに直接隣接した領域に投与するために、本明細書に記載される組成物を調合することが望まれ得る。例えば、神経障害性疼痛が関節内(例えば、頸部、膝、肘、肩又は股関節)である場合には、組成物は、罹患関節内に関節内投与するために調合することができる。或いは、さらに、組成物は、罹患関節に又はそれに実質的に隣接して投与するために調合することができる。別の例示的な例として、神経障害性疼痛が口腔内(例えば、三叉神経障害性疼痛、非定型歯痛(幻歯痛)又は口腔灼熱症候群)である場合には、組成物は、口腔粘膜を介した(例えば、頬側及び/又は舌下投与による)投与のために調合することができる。
【0153】
逆に、神経障害性疼痛が対象の複数の解剖学的部位に及ぶ全身性又は散在性である場合には、疼痛により冒された複数の解剖学的部位に有効成分を分布させる目的で、本明細書において他所に記載されるように、経腸、局所及び/又は非経口投与経路のために組成物を調合することが好都合であり得る。
【0154】
一実施形態において、組成物は、ヒトに対する経口投与のために調合される。別の実施形態において、組成物は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。
【0155】
別の実施形態において、組成物は、ヒトに対する非経口投与のために調合される。別の実施形態において、組成物は、非ヒト対象に対する非経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する非経口投与のために調合される。一実施形態において、非経口投与は皮下投与である。
【0156】
別の実施形態において、組成物は、ヒトに対する局所投与のために調合される。別の実施形態において、組成物は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0157】
別の実施形態において、組成物は、ヒトに投与される徐放性投与形態として調合される。別の実施形態において、組成物は、非ヒト対象に投与される徐放性投与形態として調合される。さらに別の実施形態において、組成物は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に投与される徐放性投与形態として調合される。好適な徐放性投与形態の例示的な例は、本明細書において他所に記載される。
【0158】
本明細書に記載されるプロラクチン又はその機能的バリアントの医薬組成物を調製するために、薬学上許容可能な担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態調製物の例示的な例としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又は封入材料としても作用し得る1種又は2種以上の物質であり得る。散剤において、担体は、微細有効成分との混合物である微細固体であり得る。錠剤において、有効成分は、好適な割合で必要な結合能を有する担体と混合してよく、所望の形状及び大きさに圧縮してよい。
【0159】
いくつかの実施形態において、散剤及び錠剤は、5又は10~約70パーセントの有効化合物を含有する。好適な担体の例示的な例としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等が挙げられる。用語「調製物」は、担体を有する又は有しない有効成分が、担体に囲まれているカプセル剤を提供する、封入材料を有する有効化合物の製剤を含むものとする。同様に、カシェ剤及びロゼンジも、本明細書において想定される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジは、経口投与に好適な固体形態として使用され得る。
【0160】
坐剤を調製するために、低融点ワックス、例えば、脂肪酸グリセリド又はカカオ脂の混合物を、最初に融解させ、有効成分を撹拌によってその中で均一に分散させる。次いで、融解した均一な混合物を、好都合な大きさの鋳型に注ぎ、放冷し、それにより固化させる。
【0161】
膣内投与に好適な製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適当であると知られるような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、パスタ剤、泡沫又は噴霧剤として提示され得る。
【0162】
液体形態調製物としては、液剤、懸濁剤及びエマルション、例えば、水又は水-プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射液調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の液剤として調合され得る。
【0163】
本明細書に記載されるペプチドは、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)のために調合され得、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量注入液又は保存剤が添加された複数回投与容器における単位投与形態で提示され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、又はエマルション等の形態をとり得、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤等の配合剤を含有し得る。或いは、有効化合物は、使用前に好適なビヒクル、例えば、無菌の発熱物質不含水で構成するための、無菌固体の無菌単離又は液剤からの凍結乾燥により得られる粉末形態であり得る。
【0164】
経口使用に好適な水溶液は、有効成分を水に溶解させ、所望により、好適な着色剤、香味剤、安定剤及び増粘剤を添加することにより、調製することができる。
【0165】
経口使用に好適な水性懸濁剤は、微細有効成分を、粘稠材料、例えば、天然若しくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他の周知の懸濁化剤とともに水に分散させることにより、作製することができる。
【0166】
使用直前に、経口投与のための液体形態調製物に変換されることを意図した固体形態調製物も、本明細書において企図される。このような液体形態としては、液剤、懸濁剤及びエマルションが挙げられる。これらの調製物は、有効成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有し得る。
【0167】
表皮に対する局所投与のために、本明細書に記載される式(I)のペプチド又はその薬学上許容可能な塩は、軟膏剤、クリーム若しくはローションとして、又は経皮パッチとして調合され得る。軟膏剤及びクリームは、例えば、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた、水性又は油性基剤とともに調合され得る。ローションは、水性又は油性基剤とともに調合され得、一般に、1種又は2種以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤又は着色剤も含有するであろう。
【0168】
口腔内への局所投与に好適な製剤としては、通常、スクロース及びアラビアガム又はトラガカントガム等の香味基剤中に有効成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアガム等の不活性基剤中に有効成分を含む香錠;並びに好適な液体担体中に有効成分を含む口腔洗浄薬が挙げられる。
【0169】
液剤又は懸濁剤は、従来の手段により、例えば、点滴注入器、ピペット又は噴霧器を使用して、鼻腔に直接適用される。製剤は、単回又は複数回投与形態で提供され得る。点滴注入器又はピペットの後者の場合において、これは、患者に対して適当な所定の容量の液剤又は懸濁剤を投与することにより、達成され得る。噴霧器の場合において、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプにより、達成され得る。経鼻送達及び保持を改善するために、本発明において使用されるペプチドは、シクロデキストリンによって被包され得るか、又は送達及び鼻粘膜における保持を亢進することが期待されるそれらの剤とともに調合され得る。
【0170】
気道に対する投与も、有効成分が、好適な噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素、又はその他の好適なガスを含む加圧包装で提供されるエアロゾル調合物により、達成され得る。エアロゾルは、レシチン等の界面活性剤も好都合に含有し得る。薬物の用量は、定量弁を備えることにより、制御され得る。
【0171】
或いは、さらに、有効成分は、ドライパウダー、例えば、好適な粉末基剤(例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及びポリビニルピロリドン(PVP))中の化合物の粉末混合物の形態で提供され得る。好都合には、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えば、ゼラチン等のカプセル剤若しくはカートリッジ、又は粉末がそこから吸入器により投与され得るブリスターパックの単位投与形態で提示され得る。
【0172】
鼻腔内投与を意図した製剤を含む、気道に対する投与を意図した製剤において、ペプチドは一般に、例えば、1~10ミクロン以下の桁の小さな粒子径を有する。このような粒子径は、当技術分野で公知の手段、例えば微粒子化により得ることができる。
【0173】
所望により、有効成分の制御放出又は持続放出(controlled or sustained release)をもたらすように適合した製剤が、本明細書において他所に記載されるように使用され得る。
【0174】
一実施形態において、本明細書に記載の医薬調製物は、好ましくは、単位投与形態で存在する。このような形態において、調製物は、適当な量の有効成分を含有する単位用量に細分される。単位投与形態は、包装調製物であり得、包装は、分離量の調製物(例えば、小包装錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の散剤)を含有する。また、単位投与形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤若しくはロゼンジ自体であり得、又は、包装形態のこれらのいずれかの適当な数であり得る。
【0175】
本明細書に記載される別の態様では、医薬として使用するための、本明細書に記載の配列番号2若しくは配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物が提供される。
【0176】
本明細書に記載される別の態様では、医薬として使用するための、本明細書に記載の配列番号4若しくは配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を含む組成物が提供される。
【0177】
一実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ヒトに対する経口投与用に調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、非ヒトに対する経口投与用に調合される。さらなる実施形態において、本明細書に記載される組成物は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒトに対する経口投与用に調合される。
【0178】
別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ヒト対象に対する経口投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0179】
別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0180】
別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチドは、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0181】
別の実施形態において、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトに対する経口投与のために調合される。別の実施形態において、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0182】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0183】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号2のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0184】
別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0185】
別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0186】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0187】
別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0188】
別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0189】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号3のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0190】
別の実施形態において、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0191】
別の実施形態において、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0192】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号4のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0193】
別の実施形態において、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する経口投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する経口投与用に調合される。
【0194】
別の実施形態において、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。さらに別の実施形態において、配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する局所投与のために調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0195】
別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。さらに別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。別の実施形態において、本明細書に記載される配列番号5のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩は、ネコ、イヌ及びウマからなる群から選択される非ヒト対象に対する徐放性投与形態としての投与のために調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は経口投与のために調合される。
【0196】
本明細書において他所に記載されるように、いくつかの(すなわち、複数の)分割した用量を毎日、毎週、毎月又はその他の好適な時間間隔で投与してよく、或いは、用量は、状況の緊急性に応じて比例的に低減してよい。複数の用量の治療単位が必要な場合には、又はそうでなければ所望により、本明細書に記載される組成物は、複数の経路を介した投与のために好適に調合され得る。例えば、第1の用量を非経口(例えば、筋肉内、静脈内;皮下等)投与して、対象において急速な又はそうでなければ急性の鎮痛効果を誘導し、次いで、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を非経口投与以外で投与(例えば、経腸投与及び/又は局所投与)して、治療の急性期に続く長期間にわたり有効成分の継続した有効性を提供することが望まれ得る。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、第1の用量として(すなわち、非経口投与形として)対象に対する非経口投与のために調合され、第1の用量の後(例えば、経腸及び/又は局所投与形態として)対象に対する非経口投与以外の投与のために調合される。一実施形態において、非経口投与は、筋肉内、皮下及び静脈内からなる群から選択される。さらなる実施形態において、非経口投与は皮下である。
【0197】
別の実施形態において、経腸投与は経口投与である。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、第1の用量として対象に対する非経口投与のために調合され、第1の用量の後の対象に対する経口投与のために(すなわち、経口投与形態として)調合される。
【0198】
別の実施形態において、経腸投与は局所投与である。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、第1の用量として対象に対する非経口投与のために調合され、第1の用量の後の対象に対する局所投与のために(すなわち、経口投与形態として)調合される。一実施形態において、局所投与は経皮投与である。
【0199】
別の実施形態において、第1の用量を非経口(例えば、筋肉内、静脈内;皮下等)投与して、対象において急速な又はそうでなければ急性の鎮痛効果を誘導し、次いで、本明細書において他所に記載される徐放性投与形態の引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)投与を行い、治療の急性期に続く長期間にわたる有効成分の徐放を提供することが望まれ得る。したがって、別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、対象に対する非経口投与のために第1の用量として調合され、第1の用量の後に対象に対して投与される徐放性投与形態として調合される。一実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために調合される。
【0200】
第1の用量を経腸(例えば、経口又は直腸)投与し、次いで、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を局所(例えば、経皮)投与することも望まれ得る。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、対象に対する経腸投与のために第1の用量として(すなわち、経腸投与形態として;経口又は直腸投与形態)調合され、第1の用量の後の対象に対する局所投与のために(例えば、経皮又は経粘膜投与形態として)調合される。別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、経皮及び経粘膜投与からなる群から選択される局所投与のために調合される。さらなる実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、経皮投与のために調合される。
【0201】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるペプチド又は組成物を第1の用量として経腸(例えば、経口又は直腸)投与し、次いで、本明細書において他所に記載される徐放性投与形態として、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を投与することが望まれ得る。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、第1の用量としての経腸投与のために調合され、徐放性投与形態としての投与のために調合され、徐放性投与形態は、第1の用量に続く投与のために調合される。一実施形態において、経腸用量は、経口投与のために調合される。別の実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために調合される。
【0202】
一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド又は組成物を第1の用量として局所(例えば、経口又は直腸)投与し、次いで、本明細書において他所に記載される徐放性投与形態として、引き続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)用量を投与することが望まれ得る。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されるペプチド及び組成物は、第1の用量としての局所投与のために調合され、徐放性投与形態としての投与のために調合され、徐放性投与形態は、第1の局所用量に続く投与のために調合される。一実施形態において、局所用量は、経皮投与のために調合される。別の実施形態において、徐放性投与形態は、非経口投与のために調合される。
【0203】
以下に、本発明のいくつかの好ましい態様を説明する以下の実施例を参照して、本発明を説明する。しかしながら、本発明の以下の説明の詳細は、本発明の前述の説明の一般性に取って代わるものではないと理解されるべきである。
【実施例
【0204】
配列番号2、3、4及び5のアミノ酸配列を含むペプチド(それぞれLAT7771、LAT7772、LAT7773及びLAT7774)は、固相合成及びFmoc保護戦略を使用してAuspep(ビクトリア、オーストラリア)によって合成された。LAT7771、LAT7772、LAT7773及びLAT7774は蒸留水に可溶であり、濃縮ストックとして作製され、実験当日まで凍結保存され、実験当日に人工脳脊髄液(aCSF)で必要な試験濃度に希釈された。
【0205】
単一細胞ホールセルパッチクランプ電気生理学的記録法と組み合わせた無傷の後根求心性線維を有するin vitro脊髄切片を使用して、配列番号2、3、4及び5のアミノ酸配列を有するペプチドの電気生理学的特性を評価した。実験調製の概略図を図1に示す。
【0206】
脊髄神経結紮モデル(Chungモデル)は、Kim及びChung(1992; Pain, 50(3):355-63)によって最初に報告され、L5脊髄神経の単一の緊密な結紮を含む。このモデルは、神経障害性疼痛の症状/徴候、例えば、機械的アロディニア、機械的及び熱的痛覚過敏並びに臨床患者において認められる症状/徴候を模倣する自発痛の特徴的な特色を示す。このモデルは、神経障害性疼痛を標的とする新規な化合物の有効性を評価するための「ゴールドスタンダード」として使用されている。
【0207】
手術時の体重が220~250gの、8~9週齢の成体雄スプラーグドーリーラットを、Charles River UK Ltdから購入した。12時間明暗周期での空調室に動物を4匹の群で収容した。飼料及び水を自由摂取させた。動物を、一段高い金属メッシュに少なくとも40分間放置することにより、実験環境に3日間馴化させた。ベースラインの足引っ込め閾値(PWT)を、一連の段階的なvon Frey hairを使用して、手術前3日連続で調べ、手術後6~8日目及び薬物投与前の手術後12~14日目に再評価した。各ラットを、酸素(2L/分)と混合した5%イソフルランで麻酔し、次いで、ケタミン90mg/kg+キシラジン10mg/kgの筋肉内(i.m.)注射を行った。背部を剪毛し、ポビドンヨードで滅菌した。動物を腹臥位にさせ、L4~6レベルを覆う皮膚に傍正中切開(para-medial incision)を行った。L5脊髄神経を慎重に単離し、6/0絹糸縫合で緊密に結紮した。次いで、完全止血の後、創傷を層状に閉じた。手術後の感染症を予防するために、抗生物質の単回投与(アモキシペン、15mg/ラット、i.p.)を定期的に投与した。動物を、完全に目覚めるまで温度制御された回復チャンバーに入れた後、ホームケージに戻した。
【0208】
8~12週齢のChungモデルラットを、12時間明暗周期での空調室に収容し、飼料及び水を自由摂取させた。ラットを、イソフルランを使用して末端麻酔し、断頭した。脊柱、胸郭及び周囲組織を迅速に取り出し、127mMスクロース、1.9mM KCl、1.2mM KHPO、0.24mM CaCl、3.9mM MgCl、26mM NaHCO、10mM D-グルコース及び0.5mMアスコルビン酸を含む氷冷(4℃未満)高スクロース含有人工脳脊髄液(aCSF)下でピン留めした。椎弓切除を行い、脊髄及び関連する根を穏やかに解剖し、脊柱及び周囲組織から掻き裂いた。引き続き、硬膜及び軟膜並びに前根を微細鉗子で除去し、脊髄を半切除した。脊髄への後根入力が維持されていることを保証するために注意を払った。半切除した脊髄-後根調製物を組織スライサーに固定し、後根が付着した脊髄切片(400~450μm厚)を、Leica VT1000sミクロトームを用いて、冷却(4℃未満)高スクロースaCSF中で切り出した。
【0209】
切片を、127mM NaCl、1.9mM KCl、1.2mM KHPO、1.3mM MgCl、2.4mM CaCl、26mM NaHCO及び10mM D-グルコースを含む氷冷aCSFを含有する小さなビーカーに移し、温度制御された水浴中で20分かけて35℃±1℃まで迅速に温め、次いで、取り出し、電気生理学的記録の前に室温(22℃±2℃)で維持した。127mM NaCl、1.9mM KCl、1.2mM KHPO、1.3mM MgCl、2.4mM CaCl、26mM NaHCO及び10mM D-グルコースを含むaCSF中で、電気生理学的記録を行った。
【0210】
Axopatch 1D及び/又はMulticlamp 700B増幅器を使用して、或いはパッチクランプ法の「盲検」バージョンを使用して、脊髄切片の後角における第I又はII層ニューロンから、ホールセル記録を34~35℃で行った。
【0211】
細胞内液(140mMグルコン酸カリウム、10mM KC1、1mM EGTA-Na、10mM HEPES、4mM NaATP、0.3mM Na-GTP)で満たされた際、3~8MΩの抵抗を有する薄肉ホウケイ酸ガラスからパッチピペットを引き抜いた。配列番号2、3、4又は5のペプチド(LAT7771、LAT7772、LAT7773又はLAT7774)を組織浴(tissue bath)で5μMの濃度に希釈した。
【0212】
記録細胞のシナプス後電位/電流を誘発するために、同心双極刺激電極を後根又は後根進入部のいずれかに適切に配置した(図1を参照)。電圧固定及び電流固定においてそれぞれ興奮性シナプス後電流(EPSC)及び興奮性シナプス後電位(EPSP)を誘発するために、低周波の単一ショックを与えた(0.1~0.8ミリ秒 パルス幅、2~35V、0.16~0.33Hz)。一定の遅延及びほとんど不足のない立ち上がり時間(constant latency and rise-time with few failures)によって特徴付けられることに基づいて、EPSP/EPSCが単シナプス性であることを確認した。
【0213】
記録をオシロスコープでモニタリングし、後のオフライン分析のためにデジタルオーディオテープに保存した。さらに、データを2~5kHz(電圧固定データに関しては1kHz)で低域フィルターをかけ、2~10kHzでデジタル化し、pCLAMP10データ取得ソフトウェア(Axon Instruments)を実行するPCに保存した。電気生理学的データの分析は、Clampfit 10ソフトウェアを使用して行った。
【0214】
この試験は、CCIラットを使用した慢性神経絞扼モデルの、上記のように調製した脊髄後角ニューロンに対する配列番号2、3、4又は5のペプチド(LAT7771、LAT7772、LAT7773又はLAT7774)の効果を評価するために実施された。
【0215】
実施例1:後角ニューロンに対するLAT7771の効果
(i)後角ニューロンの膜特性に対するLAT7771の効果
神経障害性疼痛のChungモデルから調製された脊髄切片における11個の後角ニューロンに対して、LAT7771(5μM)の効果を試験し、損傷部位と同側で記録した。これらのニューロンにおいて、LAT7771は、8個のニューロンで1.7~10mVにわたる小さな膜脱分極を誘発し、さらに3個の後角ニューロンにはほとんど影響を与えなかった。
【0216】
すべての細胞(n=11)に対するデータによって、LAT7771は、平均静止膜電位-56.8±2.6mVから新たな定常状態の静止電位-53.8±2.8mVへの膜脱分極を誘発すること(膜電位の2.9±1.2mVの変化に相当)が示された(n=11、P<0.05、表1、図2、3)。LAT7771誘発性応答は、全体的に、ニューロンの入力抵抗をほとんど変化させなかった。ニューロンの入力抵抗は、平均対照静止レベル431.8±91.8MΩからLAT7771の存在下で447.6±119.4MΩに増加した(ニューロンの入力抵抗の15.8±36.1MΩの増加に相当)(n=11、P=0.671)。後角ニューロンの膜特性に対するLAT7771の効果を図2及び3にまとめる(表1も参照)。
【0217】
シナプス後膜の特性に対して、LAT7771の効果をさらに調査した。膜電位のシフトが観察されたが、これらの作用は、VIの関係に関してニューロンの入力抵抗の顕著な変化とは関連しないことが多く、はっきりとした逆転電位のない平行シフトを最も一般的に示した(図4及び5を参照)。これは、起電性のイオン交換体若しくはポンプの活性、又はコンダクタンスの変化を効果的に打ち消すために活性化されるイオンチャネルの組み合わせ、例えば、2種類のイオンコンダクタンスの同時活性化及び阻害を反映している可能性がある。しかしながら、静止電位にほとんど変化がない2個のニューロンでは、内向き整流の強度の増強又は増加が観察された(図5を参照)。その他の4個のニューロンでは、膜電位の変化は、塩化物コンダクタンス又は非選択的陽イオンチャネルの活性化をそれぞれ反映して、-55mV、-55mV、-45mV及び-40mVの逆転電位と関連していた。
【0218】
(ii)後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7771の効果
LAT7771の効果はまた、後根求心性神経を介したシナプス入力でも試験した。ここで、LAT7771は、興奮性シナプス後電位(EPSP)及び抑制性シナプス後電位(IPSP)に対していくつかの顕著な効果を示した。4個のニューロンでは、LAT7771の存在下で、周波数0.1Hzにおける後根誘発性EPSPが減少した。これらのニューロンのうちの2個では、EPSPの抑制がIPSPを露わにするか、又は活性化して、その結果、後角に対する抑制性シナプス伝達が促進され、興奮性入力に取って代わった(図7及び8を参照)。1個のニューロンでは、LAT7771のこの効果は、鎮痛作用があることが示されている、PCT/AU2019/050020のヒト成長ホルモン由来化合物であるLAT8881によって部分的に模倣された(図7を参照)。別のニューロンでは、興奮性入力を伴わずに後根の刺激によって誘発されたIPSPもまた、LAT7771で増強された(図6を参照)。後根求心性神経を介した入力に対するこれらの効果は、シナプス後細胞に対する有意な効果を伴わずに観察され、シナプス前部位の作用を示唆している(図6及び7を参照)。
【0219】
【表2】
【0220】
実施例2:後角ニューロンに対するLAT7772の効果
(i)後角ニューロンの膜特性に対するLAT7772の効果
神経障害性疼痛のChungモデルから調製された脊髄切片における5個の後角ニューロンに対して、LAT7772(5μM)の効果を試験し、損傷部位と同側で記録した。これらのニューロンでは、LAT7772は全体として膜電位にほとんど影響を与えず、2個のニューロンで小さな膜脱分極、1個のニューロンで12.7mVに相当する実質的な膜脱分極、及び残り2個のニューロンで3.5及び9.9mVに相当する入力抵抗の低下を伴う膜過分極を誘発した。LAT7772は、5個のニューロンすべてでニューロンの入力抵抗の減少を誘発した。
【0221】
すべての細胞(n=5)に対するデータによって、LAT7772は、膜にほとんど変化を誘発せず、平均静止膜電位-59.5±2.7mVから-58.7±4.8mVの新たな定常状態の静止電位脱分極を誘発する(膜電位の0.8±3.7mVの変化に相当)ことを示した(n=5、P=0.849、表2、図9、10)。LAT7772誘発性応答は、LAT7772の存在下での平均対照静止レベル321.4±100.1MΩから172.3±33.2MΩへのニューロン入力抵抗の有意な減少(ニューロンの入力抵抗の149.1±81.7MΩ(対照の60.1±12.3%)の低下に相当)と全体的に関連していた(n=5、P=0.142)。後角ニューロンの膜特性に対するLAT7772の効果を図9及び10にまとめる(表2も参照)。
【0222】
LAT7772は、2個の細胞で明確な膜過分極と活性の阻害とを誘発した(図11及び12を参照)。LAT7772誘発性抑制に関連した逆転電位は、カリウムイオン及び塩化物イオンの逆転電位間の中程である-78mV付近及び塩化物イオン単独の-55mV付近であった。3個の細胞におけるLAT7772誘発性脱分極は、それぞれ-100mV、-60mV及び-60mVの逆転電位と関連していた。これらのデータは、LAT7772がカリウムコンダクタンスの遮断を介して(逆転電位が-100mV付近と予測される場合)脱分極を誘発したことを示唆しているが、-60mV付近でのそれらの逆転は、塩化物選択的コンダクタンスの関与を示唆している。
【0223】
(ii)後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7772の効果
LAT7772の効果はまた、後根求心性神経を介したシナプス入力でも試験した。LAT7772は、試験したすべてのニューロンで後根誘発性の興奮性シナプス後電位(EPSP)を抑制した(図11、12及び13)。LAT7772の効果は、シナプス後の入力抵抗の減少と関連していることが多い。このため、現在のところ、後根求心性神経を介したEPSPに対するこれらの効果が、シナプス前終末に直接的なものなのか、シナプス後細胞への変化の間接的な結果を反映しているのかを確実に知ることはできない。
【0224】
【表3】
【0225】
実施例3:後角ニューロンに対するLAT7773の効果
(i)後角ニューロンの膜特性に対するLAT7773の効果
神経障害性疼痛のChungモデルから調製された脊髄切片における9個の後角ニューロンに対して、LAT7773(5μM)の効果を試験し、損傷部位と同側で記録した。これらのニューロンにおいて、LAT7773は、1個のニューロンを除くすべてのニューロンで1.5~25.6mVの膜脱分極を誘発し、残りのニューロンでは7.6mVの膜過分極を誘発した。LAT7773は入力抵抗に関して変動的な効果を有し、4個のニューロンで減少を誘発し、5個のニューロンで増加を誘発した。
【0226】
すべての細胞(n=9)に対するデータによって、LAT7773は、平均静止膜電位-57.2±2.3mVから新たな定常状態の静止電位-50.3±3.0mVへの膜脱分極を誘発すること(膜電位の6.9±3.0mVの変化に相当)が示された(n=9、P<0.05、表3)。化合物の効果は変動的であったが、LAT7773誘発性応答は、ニューロンの入力抵抗のわずかな増加と全体的に関連していた。ニューロンの入力抵抗は、平均対照静止レベル350.6±68.1MΩからLAT7773の存在下での373.5±103.6MΩに増加した(ニューロンの入力抵抗の22.9±45.1MΩの増加に相当)(n=9、P=0.625)。後角ニューロンの膜特性に対するLAT7773の効果を図14及び15にまとめる(表3も参照)。
【0227】
明確な応答が観察された細胞を詳しく調べた。LAT7773誘発性応答は、7個のニューロンで明確な逆転電位を誘導せず、これは、影響なし、コンダクタンスの同時抑制及び活性化、又はイオン交換体若しくはポンプの関与のいずれかを意味した。1個のニューロンにおいて、LAT7773は、ニューロンの入力抵抗の増加と、カリウムイオンの逆転電位に近い-93mV付近での逆転電位とを伴う興奮を誘発した(図17)。これは、この細胞でLAT7773によって誘発された興奮が、1又は2以上のカリウムコンダクタンスの遮断を介して媒介されたことを示唆している。別の細胞では、入力抵抗の変化はLAT7773において静止電位付近でほとんど観察されなかったが、-75mV付近よりも負の電位を超えるIV関係の勾配の減少として、内向き整流の増強が観察された(図16)。通常、2個の細胞を除いて、LAT7773誘発性のシナプス後の効果の根底にあるイオン性メカニズムは不明であった。
【0228】
(ii)後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7773の効果
LAT7773の効果はまた、後根求心性神経を介したシナプス入力でも試験した。シナプス入力に対するLAT7773の効果は、同様に変動的であった。3個のニューロンでは、後根の電気刺激(0.1Hz)により、LAT7773で抑制されたEPSPが誘発された(図16を参照)。その他の2個のニューロンではEPSP及びこれらのうちの1個ではIPSPが、LAT7773で増強されたが、残りの2個のニューロンでは化合物の存在における変化は見られなかった(図17及び18を参照)。
【0229】
【表4】
【0230】
実施例4:後角ニューロンに対するLAT7774の効果
(i)後角ニューロンの膜特性に対するLAT7774の効果
神経障害性疼痛のChungモデルから調製された脊髄切片における7個の後角ニューロンに対して、LAT7774(5μM)の効果を試験し、損傷部位と同側で記録した。これらのニューロンにおいて、LAT7774は、2個のニューロンで9.0~25.2mVの顕著な膜過分極及び活性の阻害を誘発し、3個のニューロンで5.4~25.1mVの顕著な膜脱分極を誘発し、さらに2個の後角ニューロンにはほとんど影響しなかった。
【0231】
すべての細胞(n=9)に対するデータによって、LAT7774は、平均静止膜電位-61.0±3.1mVから新たな定常状態の静止電位-59.8±3.6mVへの若干の膜脱分極を誘発すること(膜電位の1.2±6.0mVの変化に相当)が示された(n=7、P=0.848、表4)。LAT7774誘発性応答は、平均対照静止レベル283.2±36.6MΩからLAT7774の存在下での294.0±62.2MΩへのニューロンの入力抵抗の増加(ニューロンの入力抵抗の10.8±88.1MΩの増加に相当)と全体的に関連していた(n=7、P=0.907)。後角ニューロンの膜特性に対するLAT7774の効果を図19及び20にまとめる(表4も参照)。
【0232】
明確な応答が観察された細胞を詳しく調べた。2個のニューロンにおいて、LAT7774は、1個の細胞では-100mV付近の逆転電位を伴う、及び別の細胞では-65mV付近の逆転電位を伴う、ニューロンの入力抵抗の減少に関連する明確な膜過分極を誘発し、それぞれカリウムコンダクタンス及び塩化物コンダクタンスの活性化を示唆している(図21及び22を参照)。その他の3個のニューロンにおいて、LAT7774は、ニューロンの入力抵抗の増加と、それぞれ-80mV付近、-80mV付近及び-85mV付近(これらはすべて、記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位に近い)の逆転電位とに関連する膜脱分極を誘発した(図23及び24を参照)。これらのデータは、LAT7774が1又は2以上の静止カリウムコンダクタンスの遮断を介して脱分極を誘発したことを示唆している。さらに、1個の細胞では、膜脱分極もまた内向き整流の変化と関連しており、この化合物の作用の一部が内向き整流性のカリウムコンダクタンスの電圧感度を遮断し得るか又は変化させ得ることを示唆している(図23を参照)。
【0233】
(ii)後根求心性神経を介したシナプス入力に対するLAT7774の効果
LAT7774の効果はまた、後根求心性神経を介したシナプス入力でも試験した。LAT7774は、4個のニューロンでは後根誘発性(0.1Hz)EPSPに影響を与えず、2個のニューロンでわずかな減少を引き起こし、1個のニューロンでEPSPを増加させて一部のEPSPを発火の閾値に到達させた(図22~25を参照)。
【0234】
【表5】
【0235】
実施例5:後角ニューロンに対するプロラクチンの効果
(i)後角ニューロンの膜特性に対するプロラクチンの効果
神経障害性疼痛のChungモデルから調製された脊髄切片における3個の後角ニューロンに対して、プロラクチン(500nM)の効果を試験し、損傷部位と同側で記録した。これらのニューロンにおいて、プロラクチンは、2個のニューロンでわずかな膜脱分極を誘発し、別の後角ニューロンにはほとんど影響しなかった。
【0236】
すべての細胞(n=3)に対するデータによって、プロラクチンは、平均静止膜電位-54.9±10.0mVから新たな定常状態の静止電位-52.0±8.4mVへのわずかな膜脱分極を誘発すること(膜電位の2.8±2.0の変化に相当)が示されたn=3、P=0.291、表5)。プロラクチン誘発性応答は、平均対照静止レベル558.3±252.9MΩからプロラクチンの存在下での637.3±301.1MΩへのニューロンの入力抵抗の増加(ニューロンの入力抵抗の79.0±60.5MΩの増加に相当)と全体的に関連していた(n=3、P=0.322)。現在までの後角ニューロンの膜特性に対するプロラクチンの効果を図25及び26にまとめる(表5も参照)。
【0237】
これらの細胞に対するプロラクチンの影響を詳しく調べた。2個のニューロンにおいて、プロラクチンはほとんど効果がなかった。しかしながら、1個の細胞では、ニューロンの入力抵抗の増加に関連する明確な膜脱分極が認められた。VIの関係から、このプロラクチン誘発性脱分極の逆転電位は-90mV付近(記録条件下でのカリウムイオンの逆転電位に近い)であった(図27を参照)。これらのデータは、1又は2以上の静止カリウムコンダクタンスを抑制することによってプロラクチンが脱分極を誘発したことを示唆している。
【0238】
(ii)後根求心性神経を介したシナプス入力に対するプロラクチンの効果
可能な限り、プロラクチンの効果はまた、後根求心性神経を介したシナプス入力でも試験した。プロラクチンは、1個の細胞で後根刺激によって誘発されたIPSPに影響を与えなかった(図28)。
【0239】
【表6】
【0240】
実施例6:神経障害性疼痛のラットモデルにおける足引っ込め閾値に対するLAT8881及びLAT7771の経口及び筋肉内投与の有効性を比較するためのin vivo試験
神経障害性疼痛のChungモデルを使用して、経口又は筋肉内投与されたLAT8881及びLAT7771のin vivoでの有効性を比較した。
【0241】
脊髄神経結紮モデル(Chungモデル)は、Kim及びChung(1992; Pain, 50(3):355-63)によって最初に報告され、L5脊髄神経の単一の緊密な結紮を含む。このモデルは、神経障害性疼痛の症状/徴候、例えば、機械的アロディニア、機械的及び熱的痛覚過敏並びに臨床患者において認められる症状/徴候を模倣する自発痛の特徴的な特色を示す。このモデルは、神経障害性疼痛を標的とする新規な化合物の有効性を評価するための「ゴールドスタンダード」として使用されている。
【0242】
手術時の体重が220~250gの、8~9週齢の成体雄スプラーグドーリーラットを酸素と混合した3%イソフルランで麻酔し、次いで、ケタミン及びキシラジンの混合物を筋肉内注射した。背部を剪毛し、ポビドンヨードに浸したコットンボールで滅菌した。L5脊髄神経を慎重に単離し、6/0絹糸縫合で緊密に結紮し、創傷を層状に閉じた。手術後の感染症を予防するために、抗生物質の単回投与(アモキシペン、100mg/kg、i.p.)を定期的に投与した。
【0243】
一段高い金属メッシュ上の個別のPerspexボックスに、動物をPWT試験の前に少なくとも40分間入れた。最低の力(1g)のフィラメントで開始し、各フィラメントを、6秒間わずかに曲がるまで、足の腹側表面の中心に垂直に適用した。動物が刺激時に足を引っ込めたか、又は足を上げた場合には、試験したものよりすぐ下の力を有するvon Frey hairを引き続き使用した。反応が認められなかった場合には、すぐ上の力を有するhairを試験した。信頼できる反応(3回中2回の試行で陽性)を誘導するのに必要であった最低量の力を、足引っ込め閾値(PWT)の値として記録した。
【0244】
手術前3日間の1日1回と、機械的アロディニアの進展をモニターするために1週間に1回とにPWTを評価した。
【0245】
すべての薬物試験は、手術後13日~17日に実施された。すべての薬物投与は、第2の実験者によって「盲検的に」実施された。試験化合物を投与し、薬物又はビヒクル(5%DMSO)投与の前及び2時間後にPWTを評価した。
【0246】
神経障害性疼痛のChungモデルにおける機械的アロディニアの回復によって示されるように、LAT7771及びLAT8881は神経障害性疼痛の転帰を改善した。手術前3日間毎日と、機械的アロディニアの進展をモニターするために手術後1週間に1回とにPWTを測定した。薬物又はビヒクル投与の前及び2時間後にPWTを評価した。10mg/kgで経口又は筋肉内経路により投与されたLAT8881は、薬剤投与後2時間で素早く機械的アロディニアを回復させた。同様に、10mg/kgで経口又は筋肉内経路により投与されたLAT7771は、ChungモデルラットのPWTを有意に増加させた。損傷の同側及び反対側に関する、ChungモデルラットのPWTに対する2種の投与経路(経口(PO)又は筋肉内(IM))によるLAT8881及びLAT7771の効果の比較を図31に示す。
【0247】
考察
上記の実施例は、LAT7771、LAT7772、LAT7773及びLAT7774(配列番号2、3、4及び5)が疼痛を治療及び予防し得ることを示す。後角ニューロンに対するプロラクチンと比較したLAT7771、LAT7772、LAT7773及びLAT7774の効果の要約を図29及び30に示す。
【0248】
LAT7771は、主に後角ニューロンの膜脱分極を誘発し、ニューロンの入力抵抗をわずかに増加させた。LAT7771の最も興味深い機能の1つは、後根求心性神経を介したシナプス入力への影響に関する。LAT7771は一貫して後根誘発性EPSPを減少させ、2個のニューロンで抑制性シナプス伝達を促進した。鎮痛特性を有することが示されている、PCT/AU2019/050020のヒト成長ホルモン由来化合物LAT8881に類似するこの化合物の特性の特徴が存在し、シナプス伝達に対するLAT7771の効果は鎮痛を引き起こす重要な可能性を示唆している。
【0249】
LAT7772は、膜の脱分極及び過分極の両方を誘発し、応答の大部分はニューロンの入力抵抗の減少に関連していた。後根誘発性シナプス入力に対するこの化合物の主な効果は、EPSPに対する抑制効果でもあった。しかしながら、ニューロンの入力抵抗に対するこの化合物の重要な効果を考慮すると、後根求心性神経を介した興奮性入力に対するこれらの効果がシナプス後細胞への変化の結果として直接的であるか間接的であるかは不明である。
【0250】
LAT7773は、主に後角ニューロンの膜脱分極を誘発し、ニューロンの入力抵抗を増加させた。同様に、後根求心性神経を介した興奮性シナプス入力は、一部のニューロンにおいて抑制されたが、その他のニューロンにおいて明らかに増強され、後者は鎮痛促進性の傾向を示唆している。
【0251】
LAT7774の効果は変動的であり、両方の膜の脱分極を誘発した。この化合物の効果は、後根求心性神経を介したシナプス入力に対してより変動的であり、これらの入力を促進及び阻害した。
【0252】
プロラクチンは、主に後角ニューロンの膜脱分極を誘発し、カリウムコンダクタンスの遮断と一致するニューロンの入力抵抗を増加させた。
【0253】
LAT7771は、in vivoでのLAT8881の鎮痛特性に匹敵する鎮痛特性を示している。
【0254】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
2022539720000001.app
【国際調査報告】