(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】オレフィン系不飽和ポリオキシアルキレングリシジルエーテルから成る親水性シリコーン及びその組成物、並びにそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/46 20060101AFI20220906BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20220906BHJP
C08L 83/12 20060101ALI20220906BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C08G77/46
C08K5/09
C08L83/12
C08G81/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576811
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2020056048
(87)【国際公開番号】W WO2020261192
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】201931025732
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521151957
【氏名又は名称】ワッカー・メトロアーク・ケミカルズ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WACKER METROARK CHEMICALS PVT. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリア,ソウガタ
(72)【発明者】
【氏名】ビスワス,スナンダ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
4J246
【Fターム(参考)】
4J002CP181
4J002EF026
4J002EF036
4J002GK02
4J002HA07
4J031AA53
4J031AA59
4J031AB04
4J031AC01
4J031AD01
4J031AE15
4J031AF16
4J246AA03
4J246AB02
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA010
4J246CA01E
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA540
4J246CA54M
4J246CA54X
4J246CA670
4J246CA67E
4J246CA67M
4J246CA67U
4J246CA67X
4J246CA770
4J246CA77M
4J246CA77X
4J246CB02
4J246EA14
4J246FA222
4J246FA291
4J246FA322
4J246FA382
4J246FC162
4J246FC232
4J246GB08
4J246HA34
(57)【要約】
本発明は、オレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物を用いて調製される親水性シリコーンポリマーに関する。ポリオキシアルキレンエポキシシロキサン分子と更に反応し得る少なくとも1つの第三級アミン基を有するアミン化合物は、いずれの天然繊維又は人工繊維においても、感触及び親水性の両方を改善するための、このような親水性ABA分子を調製するために更に用いられる。したがって、布地又は繊維処理の分野において、親水性及び感触特性の両方のバランスをとる、すなわち両方を改善するという最も困難な問題が解決される。また、本発明は、前述の親水性シリコーンポリマー及びそのエマルジョンの調製プロセスにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンポリマーであって、構造式(I)
XABA’X’ (I)
を有し、
式中、Bは(OSi(R)(R’))
x基を含んで成るシロキサン疎水性部分であり、
A及びA’は(CH
2)
z(OR
1)
yG基を含んで成る親水性部分であり、
X及びX’は親水性部分に結合するイオン性基であり、
R及びR’は、同じ又は異なるものであり、水素原子、又はC
1~C
10のアルキル基若しくはC
1~C
10の置換アルキル基であり、
Gは-R
6(OR
2)
f-O-R
5CH(OH)-CH
2-であり、
R
1、R
2は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
6の直鎖又は分岐アルキレンラジカルであり、
R
5、R
6は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
6の直鎖若しくは分岐アルキレンラジカル、又はC
3~C
8の環状アルキレンラジカルであり、
xは20~500であり、yは5~30であり、zは1~20であって、fが0~30である、シリコーンポリマー。
【請求項2】
構造式(I)を有するシリコーンのイオン性基がカチオン性基である、請求項1に記載のシリコーンポリマー。
【請求項3】
カチオン性基が、構造式(II)
-N
+Z
3-w-(R
3-(OR
4)
g-NZ
1
h)
w (II)
を有し、
式中、Zは、水素原子、又はC
1~C
10のアルキル基、若しくはC
1~C
10の置換アルキル基、又は末端若しくは分岐ヒドロキシル基を有するC
1~C
10のアルキル基、又はC
3~C
10の環状アルキル基、又は、隣接する窒素原子の孤立電子対に正の電子供与効果を有する任意の他の基であり、
Z
1は、Z又はカルボニル基又はカルボキシル基又はアミド基、又は、隣接する窒素原子の孤立電子対に電子吸引効果を有する任意の他の基であり、
R
4は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
10のアルキレンラジカルであり、
R
3は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
10のアルキレンラジカルであり、
gは0又は1~70の整数であり、wは0又は1~3の整数であって、hは2又は3の整数である、請求項2に記載のシリコーンポリマー。
【請求項4】
請求項1の構造式(I)を有するシリコーンを調製するプロセスであって、
(i)第1のステップにて、白金又はその化合物若しくは錯体を含んで成る触媒の存在下で、式
HR’
2SiO(R
2SiO)
u(RHSiO)
nSiR’
2H (IV)
の水素シロキサンを、式
CH
2=CH-R
6-(OR
2)
y-O-R
5-CH(O)CH
2 (V)
のオレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物と、
水素シロキサン中のSi結合水素1モル当たり、オレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物中のオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0.8~1モルである量でオレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物を用いるという条件で、任意選択的には、水素シロキサン中のSi結合水素1モル当たり、オレフィン性不飽和ポリエーテル中のオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0~0.2モルである量でオレフィン性不飽和ポリエーテルを用いるという条件で反応させて、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサンを形成することであって、
式中、R及びR’は、同じ又は異なるものであり、水素原子、又はC
1~C
10のアルキル基、若しくはC
1~C
10の置換アルキル基であり、
uは1~500の整数であり、nは0又は1~50の整数であり、
R
2は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
6の直鎖又は分岐アルキレンラジカルであり、一実施形態においてはC
2及びC
3のアルキレンラジカルであり、
R
5、R
6は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
6の直鎖若しくは分岐アルキレンラジカル、又はC
3~C
8の環状アルキレンラジカルであり、yは1~30であること、並びに
(ii)第2ステップにおいて、式(III)
NZ
3-w-(R
3-(OR
4)
g-NZ
1
h)
w (III)
のアミン化合物と、第1ステップで得られたポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサンを、
ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサン中のエポキシ基1モル当たり、アミン化合物中のアミノ基が1モルより多い量でアミン化合物を用いて、構造式(I)を有するシリコーンポリマーを得るという条件で、反応させることであって、
式中、Zは、水素原子、又はC
1~C
10のアルキル基、若しくはC
1~C
10の置換アルキル基、又は末端若しくは分岐ヒドロキシル基を有するC
1~C
10のアルキル基、又はC
3~C
10の環状アルキル基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に正の電子供与効果を有する任意の他の基であり、
Z
1は、Z又はカルボニル基又はカルボキシル基又はアミド基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に電子吸引効果を有する任意の他の基であり、
R
4は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
10のアルキレンラジカルであり、
R
3は、同じ又は異なるものであり、C
1~C
10のアルキレンラジカルであり、
gは0又は1~70の整数であり、wは0又は1~3の整数であり、hは2又は3の整数であることを含む、プロセス。
【請求項5】
請求項1に記載のシリコーンポリマーを含んで成る組成物。
【請求項6】
請求項4のプロセスによって調製されるシリコーンポリマーを含んで成る組成物。
【請求項7】
請求項1のシリコーンポリマーを含んで成る水性組成物。
【請求項8】
請求項4のプロセスによって調製されるシリコーンポリマーを含んで成る水性組成物。
【請求項9】
組成物が水性エマルジョンである、請求項7に記載の水性組成物。
【請求項10】
請求項1のシリコーンポリマーで繊維を処理することを含む、水性組成物で有機繊維を処理するためのプロセス。
【請求項11】
水性組成物が水性エマルジョンである、請求項10に記載の、有機繊維を処理するためのプロセス。
【請求項12】
未処理の有機繊維と比較して、有機繊維の親水性、保水性、しみ、及び柔軟性が改善される、請求項10に記載の、有機繊維を処理するためのプロセス。
【請求項13】
有機繊維が織布の形態である、請求項10に記載の、有機繊維を処理するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
布地又は繊維処理分野において、親水性の向上及び感触特性の改善は、最も困難な課題である。本発明は、いずれの天然繊維又は人工繊維における感触及び親水性を同時に改善するための、オレフィン系不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物から成る親水性シリコーンポリマー、及びそのエマルジョンに関する。また、本発明は、かかる親水性シリコーンポリマー及びそのエマルジョンの調製プロセスにも関する。ポリオキシアルキレンエポキシシロキサン分子と反応した少なくとも1つの第3級アミノ基を有するアミン化合物は、いずれの天然繊維または人工繊維における感触及び親水性の両方を改善するための、このような親水性ABA分子を調製するために更に用いられる。よって、布地又は繊維処理分野におけるバランス、すなわち親水性及び感触特性を改善するという最も困難な問題が解決される。また、本発明は、かかるABA型の親水性シリコーンポリマー及びそのエマルジョンの調製プロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
合成製造された繊維(ポリエステル、ポリアミド若しくはポリオレフィン繊維、又はそれらの混合物など)は、疎水性が高く、水又は汗を吸収し得ないことが多い。アミノシリコーンで処理した天然繊維であっても、仕上げ加工後は、織物表面に疎水性のシリコーン膜が形成されるため、親水性が損なわれる。また、天然繊維の布地は、マーセル化後にセルロースのOH基の配向が変化するため、非常に疎水化することが確認されている。これらは全て、最終的に、織物の仕上げ加工において不快な性質をもたらす。このような織物の着用者にとって非常に不快なこの特性は、織物繊維又は織物を織物柔軟剤で処理することによって解消され得る。これによって、織物は親水性となり、汗が吸収され得ると同時に、快適さが著しく改善され得る。更に、親水性柔軟剤で処理された織物は、心地よく柔らかな手触りを得る。
【0003】
ポリシロキサン及び繊維助剤を規定する先行技術のDE102007015372又はUS2008261473において試された反応の種類は、ポリエーテル基とSi-H分子を連結すること、次いで、脱ラジオン化反応のため、遷移金属ハロゲン(例えば、SnCl4)触媒の存在下で塩化グリセジル(又はエピクロロヒドリン)を反応させることである。このような種類の反応は、US5098979の第6欄第45~55行目に正確に示されているように、-OH基と反応しながらエポキシ環を開き、開環したエピクロロヒドリンのクロロ誘導体を形成することによって、実際に行われる。また、このような錫触媒は、わずかでも存在すると、最終的なポリマーを更に劣化させ、所望の効果が得られない可能性がある。この場合も、実施例の段落[0026]では、シロキサンのエポキシ基0.2モルに対して、0.1モルの第三級アミンを計量して用いると、第四級基化合物が作られる。その場合、エポキシ基の50%のみが開き、第三級アミン基と連結して第四級アミン官能基を形成し、エポキシ基の50%は未反応のままである。これは、「少なくとも1つのエポキシラジカル-PY及び1つの-MZラジカルを含む各分子」という、出願された特許請求の範囲とも一致する。この種の分子は、分子の一端にのみ第四級基を有し、一端のみにおいて繊維と結合する一方で、分子の他端は、エポキシ基を有し、親水性に寄与するものの、分子のシロキサン鎖が分子の自由端に存在する末端エポキシ基によって遮られるために手触りが減じられるので、所望の親水性と共に最も適した手触りを与えない。
【0004】
US5981681及びUS5807956では、ポリシロキサン及びアミノ-ポリアルキレンオキシドの交互のユニットを含んで成る、非加水分解性のブロック、(AB)nAタイプのコポリマーが記載されており、これらのコポリマーの調製方法が供される。また、これらのコポリマーを、柔軟剤、特に耐久性のある親水性織物柔軟剤として用いることで、市販のソイル・リリース仕上げで処理した織物基材の触感が向上する。このような組成物は高分子量ポリマーを有するため、産業において、織物を加工する際にエマルジョンが不安定になる。
【0005】
EP2780396(B1)において、発明は、内部シリコーン単位を含んで成り、更にポリアルキレンオキシド単位を含んで成る、直鎖ブロックABAシリコーンポリアルキレンオキシドコポリマーに関する。コポリマーは、ポリアルキレンオキシド単位でキャップされ、分子は、n=1~30の式(CnH2n+1)-であるR5で終端されている。このような末端アルキル基は、親油性の表面(例えば、毛髪)にのみ使用できるものの、織物においては、この分子は織物と適切に結合しない可能性があることから、親水性のような材料(例えば、織物)には使用できないため、望ましい効果を示さない。
【0006】
また、特許US6242554では、一端にポリエーテル基、他端にクオタニウム基を有する分子がある。このような分子は、親水性及び適度な手触りを与える。
【0007】
ここで、US2004219371A1では、特許請求の範囲の一般式(I)のポリシロキサンの分岐又は末端にポリエーテルラジカルR3が存在する。このような分子は構造的に異なり、織物に適用される際に高い親水性を示さない。
【0008】
US2019119450A1におけるABAタイプの親水性シリコーンポリマーは、天然繊維または人工繊維の感触及び親水性を改善し、それらのバランスをとる。塩素系水処理に対する色堅牢度とともに、織物の吸水性を改善し、快適な柔らかい風合い(soft handle)をさらに改善させることが求められている。
【0009】
先行技術の試みは多くあるものの、手触りと親水性とのバランスは、望ましい特性である。
【0010】
親水性の特性が分子の親水性部分に由来し、手触りは分子の疎水性部分に由来するため、通常、これは手触り特性が増すとともに親水性が低下する現象、及びその逆の現象である。そのため、これまでの先行技術では、通常、両方の特性のバランスが良い分子が見られ、これらの特性の両方は、通常、管理可能な範囲で両方の特性を得るように最適化されている。新たな親水性分子は、通常手触り特性を低下させることなく、親水性の特性を驚くほど改善した。最も驚くべきことに、親水性の向上とともに手触り特性が向上する。手触りは主に長いシリコーン鎖に起因するため、このような現象は驚くべきことであり、このようなシリコーン鎖は撥水性と見なされるため、親水性という特性から遠ざかる。しかしながら、この分子は、驚くべきことに、向上した手触りと共に、向上した親水性を有している。
【0011】
新たな親水性分子または他の組成物の形態、およびそのエマルジョンは、特に天然繊維または人工繊維が新たな親水性分子で処理される場合に、通常、織られた形態または非織の形態において、改善された所望の特性を与える改善された感触特性と共に、高い親水性を必要とする任意の硬い表面でもあり得る。
【0012】
また、アミノ基を有する先行技術の分子は、処理プロセス中の熱処理において黄変(又は黄色、yellowness)を誘発する。驚くべきことに、新たな親水性分子またはその組成は、高熱処理においてもいずれの黄変も示さない。
【0013】
[発明の目的]
本発明の目的は、改善された手触りと共に改善された親水性を有する処理組成物をもたらすことである。したがって、本発明の目的は、織物(又はテキスタイル、textile)の親水性柔軟剤として好適な新しい親水性シリコーン分子を提示することである。これにより、織物に親水性が付与され、さらに、織物の吸水特性が改善されると共に、快適で柔らかな風合いの織物が得られる。
【発明の概要】
【0014】
本発明の基本的な態様によれば、織物用途に主に限定されないものの、好適な親水性柔軟剤として適している構造式(I)の親水性シリコーンポリマーを供することである。シリコーンポリマーは、構造式(I)を有する。
XABA’X’ (I)
式中、Bは(OSi(R)(R’))x基を含んで成るシロキサン疎水性部分であり、
A及びA’は(CH2)z(OR1)yG基を含んで成る親水性部分であり、
X及びX’は親水性部分に結合したイオン性基であって、
R及びR’は同じ又は異なるものであり、水素原子、又はC1~C10のアルキル基、又はC1~C10の置換アルキル基であり、
Gは-R6(OR2)f-O-R5CH(OH)-CH2-であり、
R1、R2は同じ又は異なるものであり、C1~C6の直鎖又は分岐アルキレンラジカルであり、
R5、R6は同じ又は異なるものであり、C1~C6の直鎖若しくは分岐アルキレンラジカル、又はC3~C8の環状アルキレンラジカルであって、xは20~500、yは5~30、zは1~20であり、fは0~30である。一実施形態において、イオン性基であるX及びX’は、カチオン性基である。
【0015】
ここで、カチオン性基は構造式(II)を有する。
-N+Z3-w-(R3-(OR4)g-NZ1
h)w (II)
式中、Zは、水素原子、又はC1~C10のアルキル基、又はC1~C10の置換アルキル基、又は末端若しくは分岐ヒドロキシル基を有するC1~C10のアルキル基、又はC3~C10の環状アルキル基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に正の電子供与効果を有する任意の他の基であり、
Z1は、Z又はカルボニル基又はカルボキシル基又はアミド基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に電子吸引効果を有する任意の他の基であり、R4は同じ又は異なるものであり、C1~C10のアルキレンラジカルであり、R3は同じ又は異なっており、C1~C10のアルキレンラジカルであり、gは0又は1~70の整数であり、wは0又は1~2の整数であって、hは整数2又は3である。一実施形態において、hが2である場合、-NZ1は非イオン性窒素基であり、hが3である場合、-NZ1はイオン性窒素基、すなわちカチオン性窒素基である。
【0016】
構造式(I)を有するシリコーンポリマーは、親水性シリコーンポリマーである。組成物は、構造式(I)のシリコーンポリマーを含んで成る。一実施形態において、組成物は、構造式(I)のシリコーンポリマーを含んで成る水性組成物である。一実施形態において、水性組成物は水性エマルジョンである。水性組成物で有機繊維を処理するためのプロセスにおいて、改善には、構造(I)のシリコーンポリマーで処理することが含まれる。有機繊維を処理するためのプロセスにおいて、水性組成物は水性エマルジョンである。有機繊維を処理するためのプロセスにおいて、未処理の有機繊維と比較して、有機繊維の親水性、保水性、しみ(又はブロッチ若しくはブロッチネス、blotchiness)及び柔軟性が改善される。プロセスにおいて、有機繊維は、織布(textile fabric)の形態である。
【0017】
驚くべきことに、本発明の組成物で処理された織物は、塩素水によるしみまたは色堅牢度(又は耐変色性、colour fastness)において特に有利であることが見出された。ISO 105-E03:2010織物-色堅牢度のテスト-パートE03:塩素水(水泳プール水)に対する色堅牢度は、高い安定性と色堅牢度特性を決定している。
【0018】
一実施形態のシリコーンポリマーにおいて、構造式(I)を有するシリコーンのイオン性基はカチオン性基である。
【0019】
別の実施形態のシリコーンポリマーにおいて、イオン性基は、アニオン性基または両性基である。
【0020】
本発明は、以下を含む親水性シリコーンポリマーを調整するためのプロセスを供する:
請求項1の構造式(I)を有するシリコーンを調製するためのプロセスであって、以下を含む:
(i)第1ステップにて、
以下の式:
HR’2SiO(R2SiO)u(RHSiO)nSiR’2H (IV)
(式中、R及びR’は同じ又は異なるものであり、水素原子、又はC1~C10のアルキル基、若しくはC1~C10の置換アルキル基であり、
uは1~500の整数であり、nは0又は1~50の整数である)
の水素シロキサンを、以下の式:
CH2=CH-R6-(OR2)y-O-R5-CH(O)CH2 (V)
(式中、R2は同じ又は異なるものであり、C1~C6の直鎖又は分岐アルキレンラジカル、一実施形態ではC2およびC3のアルキレンラジカルであり、
R5、R6は同じ又は異なっており、C1~C6の直鎖若しくは分岐アルキレンラジカル、又はC3~C8の環状アルキレンラジカルであって、yは1~30である)
のオレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物と、白金又はその混合物若しくは錯体を含んで成る触媒の存在下で、水素シロキサンにおける1モルのSi結合水素当たりのオレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物におけるオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0.2~1モル、好ましくは0.8~1モルである量でエポキシ化合物を用いるという条件で、場合によっては、水素シロキサンにおける1モルのSi結合水素当たりのエポキシ化合物におけるオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0~0.8モル、好ましくは0~0.2モルである量で、オレフィン性不飽和ポリエーテルを用いるという条件で反応させて、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサンを生成すること;
(ii)第2ステップにて、第1のステップで得られたポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサンを、以下の式(III):
NZ3-w-(R3-(OR4)g-NZ1
h)w (III)
のアミン化合物と反応させることであって、
式中、Zは、水素原子、又はC1~C10のアルキル基、又はC1~C10の置換アルキル基、又は末端若しくは分岐ヒドロキシル基を有するC1~C10のアルキル基、又はC3~C10の環状アルキル基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に正の電子供与効果を有する任意の他の基であり、
Z1は、Z又はカルボニル基又はカルボキシル基又はアミド基、又は隣接する窒素原子の孤立電子対に電子吸引効果を有する任意の他の基であり、R4は同じ又は異なるものであり、C1~C10のアルキレンラジカルであり、R3は同じ又は異なるものであり、C1~C10のアルキレンラジカルであり、gは0又は1~70の整数であり、wは0又は1~3の整数であって、hは整数2又は3である、こと。
【0021】
組成物は、前述のプロセスによって調製されたシリコーンポリマーを含んで成る。一実施形態において、組成物は、前述のプロセスによって調製されたシリコーンポリマーを含んで成る水性組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
親水性シリコーンポリマー流体の粘度は、25℃にて、好ましくは100~15000mPa.sである。親水性シリコーンポリマーのアミン価は、好ましくは、ポリマー1グラム当たり2~60mgのKOHである。
【0023】
本発明のプロセスの第1ステップにおいて、より好ましくは、オレフィン性不飽和ポリエーテルエポキシ化合物は、水素シロキサン中のSi結合水素1モルあたりのポリエーテルエポキシ化合物中のオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が1モルである量で用いられる。非限定的な一実施形態において、0.9~1モルのオレフィン性不飽和ポリエーテルエポキシ化合物、及び場合によっては最大0.1モルのオレフィン性不飽和ポリエーテルを、第1ステップにて同時に又は段階的に反応させ、共に混合するか、又は所定の速度若しくは所定の間隔にて所定の量を別々に投与する。
【0024】
水素シリコーンは、Wacker H polymer 55、SilGel 600等としてWacker Chemie AGから市販されている。
【0025】
本発明は、本発明の親水性シリコーンポリマー流体を含んで成る水性組成物を供する。当該組成物は、水性エマルジョンである。
【0026】
本発明は、本発明の親水性シリコーンポリマーを含んで成る水性組成物で有機繊維を処理するプロセスを供する。
【0027】
好ましくは、本発明の親水性シリコーンポリマーは、親水性柔軟剤として用いられる。
【0028】
一実施形態にて、親水性シリコーンポリマー流体である親水性柔軟剤は、(a)一端がポリエーテルで終端され、他端が、アミン化合物又はアルキルアミンと更に反応するポリオキシアルキレンで終端されたシロキサンであって、アミン基は第一級、第二級又は第三級であり、好ましくは第三級アミン基である、シロキサン、(b)両端がポリオキシアルキレンエポキシ(すなわち、α,ω-ジエポキシシロキサン)で終端され、アミン化合物(又はアルキルアミン)と更に反応するシロキサンであって、アミン基は第一級、第二級又は第三級であり、好ましくは第三級基である、シロキサン、及び(c)両端がポリエステルで終端されたシロキサン、又はそれらの混合物から選択されてよい。未反応のSi-Hポリマー、ポリオキシアルキレンエポキシ末端シロキサン、又は未反応の第三級アミン化合物が存在し得る。
【0029】
本発明は、有機繊維を処理するためのプロセスを供し、水性組成物は、水性エマルジョンである。好ましくは、有機繊維を処理するためのプロセスは、有機繊維の親水性及び柔軟性を改善する。好ましくは、プロセスにおいて、有機繊維は織布である。
【0030】
一実施形態において、アミン価は、ポテンショメータ[Veego製;モデル:VPT-MG]を用いて、酸塩基滴定によって決定される。0.6gのサンプルを500mlのビーカーに取り、トルエン-ブタノールの1:1混合物を加えて攪拌し、サンプルを完全に混合し、サンプル溶液を0.1(N)HCl溶液で滴定する。アミン価は、式(56.11×V×N)/W KOH重量(mg)/サンプル重量(g)に従って計算される。式中、V=必要なHCl体積(ml)、N=HClの規定度、すなわち0.1N、W=分取したサンプルの重量(グラム)である。
【0031】
本発明の一態様において、親水性シリコーンポリマーのアミン価は、好ましくは、ポリマー1グラムあたり2~60mgのKOHである。
【0032】
一実施形態において、ポリオキシアルキレンエポキシシロキサンのエポキシ濃度及びD単位の数、すなわち-(OSi(CH3)2)-単位の数は、NMRデータによって決定される。反応及び再配列(又は再編成、rearrange)プロセスの後、得られたSi-Hポリマーは、主に、アルキルポリオキシアルキレンエポキシ基と更に反応するSi-Hポリマーの混合物であるから、平均エポキシ濃度を得るためにポリマー質量のエポキシ濃度を決定することは重要であり、この値から、エポキシの総モル数が考慮される。次いで、アミン化合物は、全てのポリマーのエポキシ濃度に基づいて、1:1の比率で更に反応するように選択される。
【0033】
本発明のプロセスにおいて、以下の式:
CH
2=CH-R
6-(OR
2)
y-O-R
5-CH(O)CH
2 (V)
のオレフィン性不飽和エポキシ化合物が用いられる。式中、R
5、R
6は直鎖のC
1~C
6アルキレンラジカル、又はC
3~C
8の環状アルキレンラジカルであり、yは0又は1~30の整数である。(O)基は、2つの炭素原子に結合した架橋酸素機を表す。最も好ましく適切なオレフィン性不飽和ポリエーテルエポキシ化合物には、以下が含まれる:
CH
2=CH-(CH
2)-(OCH
2CH
2)
r-(OCH(CH
3)CH
2)
s-O-CH
2-CH(O)CH
2
(式中、r、sは0又は1~30である)、
【化1】
、
【化2】
、
CH
2=CR-(CH
2)
w-O-R
5-CH(O)CH
2、CH
2=CR-(CH
2)
w-R
5-CH(O)CH
2
(式中、Rはメチルラジカルである)。
【0034】
一実施形態において、オレフィン性不飽和ポリオキシアルキレンエポキシ化合物は、好ましくは、アリルポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリシジルエーテル[CH2=CH-(CH2)-(OCH2CH2)r-(OCH(CH3)CH2)sO-CH2-CH(O)CH2]であって、式中、r=8,10、s=0,1である。これは、JIANGSU ZHONGSHAN CHEMICAL CO.LTD.から入手可能である。好ましくは、水素シロキサン中のSi結合水素1モルあたりのポリエーテルエポキシ化合物中のオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0.9~1モルである量で、オレフィン性不飽和エポキシ化合物が用いられる。
【0035】
場合によって、好ましくは、オレフィン性不飽和ポリエーテルは、ポリエチレングリコールアリルメチルエーテルCH2=CHCH2(OC2H4)nOH;CH2=CHCH2(OC3H6)nOH;ポリアルキレングリコールアリルメチルエーテル(EO/POランダム)CH2=CHCH2O(C2H4O)l(C3H6O)kHから選択される。式中、l及びkは2~100の整数、好ましくは20~40の整数、より好ましくは25~30の整数である。好ましいオレフィン性不飽和ポリエーテルの非限定的な例は、インドのIGLからPolymeg 1200APとして入手できるアリルオキシ(ポリエチレンオキシド)(EO 29)である。好ましくは、水素シロキサン中のSi結合水素1モルあたりのポリエーテル中のオレフィン性不飽和ラジカル(C=C)が0~0.1モルである量で、オレフィン性不飽和ポリエーテルが用いられる。
【0036】
少なくとも1つの第三級アミン基を含むアミン化合物は、限定されないものの、ポリアルキルアミノアルキルアミン、ポリエーテルアミン、脂肪酸アミドアルキリルジアルキルアミン類等から選択される。ポリアルキルアミノアルキルアミンは、限定されないものの、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-ジプロピレントリアミン、HuntsmanからJeffcatの名称で一般に入手できるN,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ホルムアミド、ジメチルシクロヘキシルアミンから選択される。脂肪酸アミドアルキルジアルキルアミンは、限定されないものの、コカミドプロピルジメチルアミン、ステリルアミドプロピルジメチルアミン、ラウラミドプロピルジメチルアミン、リノールアミドプロピルジメチルアミン(linoleamidopropyl dimethylamine)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン(myristamidopropyl dimethylamine)、オータミドプロピルジメチルアミン(oatamidopropyl dimethylamine)等から選択される。
【0037】
使用されるポリエーテルアミン又はポリオキシアルキレンポリアミンには、分子のアルファオメガ位置にジアミンでキャップされたポリオキシアルキレン、又はその混合物が含まれる。アルキレンエーテルにおけるアルキレン部分の炭素鎖は、C2~C6、最も好ましくはC2若しくはC3、又は混合物であってよい。ポリオキシアルキレン鎖長は、1~100、最も好ましくは5~40で変わり得る。市販で入手可能なポリエーテルアミン類(polytheramines)は、D、ED、及びEDRシリーズ製品を含むJeffamineジアミン類であり、Jeffamine Tシリーズ製品はトリアミン類であり、SDシリーズおよびSTシリーズ製品は、Jeffamine及びHuntsmanの同様のものの第二級アミンバージョン、若しくは4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン;4,9-ジオキサデカン-1,12-ジアミン;4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、BASFからのポリエーテルアミンD230、ポリエーテルアミンD400、ポリエーテルアミンD2000、ポリエーテルアミンT403、又はそれらの混合物である。本発明に従って用いられる最も好適なポリエーテルアミンは、ポリオキシアルキレンが分子のアルファオメガ位置にて第一級ジアミンでキャップされた第一級ポリエーテルジアミン又はその混合物である。最も好ましいポリエーテルアミンの非限定的な例は、アルファオメガ位置にて第一級ジアミンでキャップされたポリオキシプロピレンである。好ましくは、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサンに対して20モルパーセント以上の第三級アミン基がコポリマーの調製中に用いられ、生成物の末端基の大部分は第三級アミノ基であると予想される。
【0038】
本発明のプロセスの第2ステップにおいて、好ましくは、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサン中のエポキシ基1モル当たり、アミン化合物中のアミノ基が1.2モル以上である量で、アミン化合物が用いられる。
【0039】
好ましくは、Rは同じ又は異なるものであり、C1~C20のアルキルラジカルである。アルキルラジカル類Rの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチルラジカル、n-ヘキシルラジカル等のヘキシルラジカル類、n-へプチルラジカル等のヘプチルラジカル類、n-オクチルラジカル等のオクチルラジカル類及び2,2,4-トリメチル-ペンチルラジカル等のイソオクチルラジカル類、n-ノニルラジカル等のノニルラジカル類、n-デシルラジカル等のデシルラジカル類、n-ドデシルラジカル等のドデシルラジカル類、並びにn-オクタデシルラジカル等のオクタデシルラジカル類である。好ましくは、Rはメチルラジカルである。
【0040】
R1、R2はC1~C6のポリアルキレンオキシドラジカルである。C1~C6のポリアルキレンオキシドラジカルの例は、ポリエチレンオキシドラジカル、ポリプロピレンオキシドラジカル、ポリブチレンオキシドラジカル、ペントキシラジカル、ヘキソキシラジカル若しくはその異性体又はそれらの混合物である。アルキル置換は、ハロ置換基、ヒドロキシ置換基、カルボキシ置換基、エーテル置換基又はエステル置換基であってよい。親水性シリコーンポリマーを調製するためのプロセスでは、溶媒が用いられ得る。
【0041】
使用される溶媒は、一般に非反応性溶媒である。使用される好ましい溶媒は、2-エチル-1-ヘキサノールである。ポリシロキサンのエポキシ末端基は、溶媒、水又はアルコールと副反応を起こし、それぞれのジオール又はエーテルアルコールを生成し得る。
【0042】
エポキシシクロヘキサンは、白金触媒を用いるヒドロシリル化反応中に、アリル官能性分子の逆供与反応を停止するために用いられる。
【0043】
本発明の別態様において、親水性シリコーンポリマーの粘度は、25℃で少なくとも50mPa.sであり、より好ましくは、25℃で100~15000mPa.sである。粘度は、Anton Paar Rheometer;モデルMCR101、ジオメトリー・シングル・ギャップ・シリンダ:CC27スピンドル又は直径60mm、2°及び剪断測度1s-1のコーン・プレートで測定される。
【0044】
粘度の値は、60秒で取得され、剪断測度=1s-1、25℃の温度にて測定される。測定は、3回繰り返される。MCRレオメータ・シリーズは、USP法(US Pharmacopeia Convention)912-回転レオメータ法に従って作動する。
【0045】
第1ステップにおけるヒドロシリル化反応の触媒は、好ましくは、白金金属の群からの金属、又は白金金属の群からの化合物若しくは錯体を含んで成る。そのような触媒の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は活性炭等の支持体に存在し得る白金由来の金属及び微細な白金の化合物又は錯体である。これは、ハロゲン化白金、例えばPtCl4、H2PtCl6*6H2O、Na2PtCl4*4H2O、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金-アルコキシド錯体、白金-エーテル錯体、白金-アルデヒド錯体、H2PtCl6*6H2Oとシクロヘキサノンの反応生成物を含む白金-ケトン錯体、検出可能な無機結合ハロゲンの有無にかかわらず、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチル-ジシロキサン錯体等の白金-ビニルシロキサン錯体、ビス(ガンマ-ピコリン)白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)二塩化物、シクロオクタジエン-白金二塩化物、ノルボルナジエン-白金二塩化物、ガンマ-ピコリン-白金二塩化物、
シクロペンタジエン-白金二塩化物、並びに、1-オクテン溶液中の四塩化白金とsec-ブチルアミンとの反応生成物等の、オレフィン、及び第一級アミン若しくは第二級アミン、又は第一級アミン及び第二級アミンと四塩化白金との反応生成物、又はアンモニウム-白金錯体等である。
【0046】
好ましくは、反応は、触媒、好ましくはヘキサクロロ白金酸を、好ましくは500~5000重量ppmの範囲の存在下で、70~110℃、より好ましくは80~100℃で実施される。好ましくは、反応は、酸素の非存在下、すなわちN2雰囲気下で実施される。
【0047】
本発明の別の実施形態において、水性エマルジョンは、界面活性剤又は乳化剤を有し、これは、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の乳化剤、好ましくはカチオン性若しくは非イオン性の乳化剤又はそれらの混合物、最も好ましくは非イオン性乳化剤又は非イオン性乳化剤の混合物から選択される。
【0048】
本発明の別の態様によれば、本発明の親水性シリコーンポリマーを含んで成る水性組成物が供される。好ましくは、水性組成物は水性エマルジョンである。
【0049】
本発明の別の態様によれば、本発明の親水性シリコーンポリマーを含んで成る組成物、好ましくは濃縮組成物を供する。好ましくは、組成物の総重量に基づき、濃縮組成物は、組成物の総重量に基づき、1~99重量パーセント、より好ましくは50~99重量パーセントの親水性シリコーンポリマー、0.1~20重量パーセント、より好ましくは5~20重量パーセントの乳化剤、0.1~10重量パーセント、より好ましくは0.1~5重量パーセントの酢酸又はその誘導体、場合によっては、好ましくは所要の許容量に従って、殺生物剤を含んで成る。
【0050】
本発明の別の態様では、水、好ましくは脱塩(demineraized;DM)水を濃縮組成物に加え、親水性シリコーンポリマーを含んで成る水性組成物を得る。
【0051】
好ましくは、水性組成物は、5~99重量パーセント、より好ましくは5~70重量パーセント、最も好ましくは5~40重量パーセントの親水性シリコーンポリマー、0.1~20重量パーセント、より好ましくは0.1~10重量パーセントの乳化剤、0.1~10重量パーセント、より好ましくは0.1~10重量パーセント、最も好ましくは0.1~5重量パーセントの酢酸又はその誘導体、場合によっては、好ましくは所要の許容量に従って殺生物剤、及び水を含んで成る。水の量は、100重量パーセントまで加えられる。
【0052】
一実施形態では、エマルジョン中、酸性媒体にて、親水性シリコーンポリマー基に窒素末端基を有するアミン化合物の窒素原子は、正の価数(a positive valiancy)を得てN+を形成する。M-は、アニオン基、好ましくは、得られ得るN+に対応する、カルボキシレートアニオン、例えばアセテートアニオン等の酸のアニオンである。
【0053】
特に好適な非イオン性乳化剤には、アルキルポリグリコールエーテル、アルキル化脂肪アルコールアルキルアリールポリグリコールエーテル、エチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックポリマー、脂肪酸、レクチン、ラノリン、サポニン、セルロース、セルロースアルキルエーテル及びカルボキシアルキルセルロース等の天然物質及びそれらの誘導体、飽和及び不飽和アルコキシル化脂肪アミンが含まれる。好ましい非イオン性乳化剤はアルキル化脂肪アルコールであり、アルキレート脂肪アルコールの非限定的な例は、ラウリルアルコールのポリオキシエーテル(CH3(CH2)10CH2OH)である。
【0054】
有機繊維を処理する、すなわち含浸させるための主題のプロセスは、例えばフィラメント、糸の形態で、又は、ウェブ、マット、ストランド、織布(waven)、ループ形成ニット(loop-forming knitted)織物又はループ・ドローイング・ニット(loop-drawlingly knitted)織物等の織布として、全ての有機繊維で有用である。本発明に従うプロセスによって処理され得る繊維の例は、ケラチン、特に羊毛、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルのインターポリマー、綿、レーヨン、麻、天然絹、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、及びこのような繊維の少なくとも2つのブレンドから構成される繊維である。前述の列挙から明らかであるように、繊維は、任意の天然又は合成由来のものであり得る。織物又は織布は、布地ウェブ(fabric webs)又は衣服、若しくは衣服の一部の形態で存在し得る。
【0055】
他の一要素において、親水性シリコーンポリマー組成物の親水性は、Terry towelの保水性試験-ASTM D 4772-97(2004年再承認)に従って測定された親水性シリコーンポリマー組成物でコーティングされた繊維の吸水性によって測定される。これは、織布(waven)、ニット(又は編物、knit)及び非織布を含む任意の繊維含有物又は構造物の織物に用いられ得る。
【0056】
Terry towelの保水性-ASTM D 4772-97(2004年再承認):本試験方法は、水の流れによるテリー布地(terry fabrics)の表面吸水性を割合で試験するため、バスタオル、バスシート、ハンドタオル、キッチンタオル、布巾(dishcloth)、手ぬぐい(washcloth)、ビーチウェア、バスローブ等に対して用いられる。この試験方法は、人間の皮膚、食器、及び家具等の表面から液体の水を急速に吸収及び保持するテリー布地の能力を決定する。実験に用いたタオルは、白色で、370 GSMを有する。未処理のタオルの保水性は、46%である。
【0057】
手触りの試験は、以下のプロセスによって実施される:まず、パディング・プロセス(padding process)の後、処理された布地又は織物を、35℃の温度及び相対湿度(Relative Humidity;RH)60にて6時間コンディショニングする(または状態調製する、condition)。コンディショニングした布地を、RH50で25℃の温度に移す。
【0058】
5人のパネリストを固定し、彼らの手に脂がないことを確認する。次いで、布地を同じ面側で2回折る。手触りは、折り畳まれた布地を布地の表面に沿って水平に摩擦し、各パネリストによるスコア(又は成績若しくは点数、score)を平均することによって行う。
【0059】
色堅牢度をテストするため、2ppm、5ppm及び10ppmの利用可能な塩素水でしみ試験を実施する。布をフープ/リングで結び、水平面に対して45°で保持し、次いで、ビュレットからの液滴が布の表面に落ちるように、布の表面の10cm上にビュレットを配置する。2ppmの塩素水50mlを1時間、1滴ずつ滴下した後、布を乾かして外観を確認する。観察により、それぞれの処理された布について表1に記入し、10ppmの塩素水耐性について「有」又は「無」として記録する(又は取り込む、capture)。
【0060】
また、本発明に従う親水性シリコーンポリマーは、毛髪又は皮膚のコンディショニング剤としての使用にも好適であり、またそれをアニオン性塩基洗剤組成物の消泡剤として、又は様々な産業用途の湿潤剤として用いるのにも好適である。
【0061】
以下の非限定的な実施例に関連して、本発明の詳細、その性質及び目的をより詳細に以下に説明する。
【実施例】
【0062】
本発明の組成物を調製するプロセスにおいて、以下の非限定的なステップに従った:
1)H-ポリマーの合成:
25℃で60mPa・sの粘度及び0.05重量%の水素含有量及びD4(2083g)を有する流体のWacker H polymer-55(917g、0.458モルのSi-H)をガラス・ライニング反応器(glass-lined reactor)に移す。攪拌しながら、反応温度を85℃に設定する。全反応は、N2雰囲気下(N2パージなし)で実施する。材料温度が85℃に達した後、0.3gのPNCl2(100%)を非常にゆっくりと注意深く加える。材料温度が2~5℃上昇することが認められる。触媒の添加を完了した後、反応温度を92℃に設定する(95℃を超えないようにする必要がある)。攪拌しながら、92℃で4時間反応を継続させる。次いで、材料を55℃にまで冷却し、無水物Na2CO3粉末で2時間ゆっくりと攪拌しながら中和する。残留物をろ過して取り除き、クリア(又は透明、clear)で透明な流体を収集する。得られた流体の構造は、以下のとおりである:
H(CH3)2SiO((CH3)2SiO)u((CH3)HSiO)nSi(CH3)2H
同様に、反応中のD4の量を変更し、NMRデータからuの値を決定することによって、uが10~250である様々な流体を調製する。好ましくは、uの値が55、80、140、160であり、nの値が0~50であって、同様の合成プロセスによって調製される。
[注:H-ポリマーには、10~250単位のD鎖が含まれる。使用される実際のD鎖長は、55、80、140、160単位であり、n=0である。]
【0063】
2)エポキシ官能化シリコーンの合成(アリルグリシジルエーテルによる)(表1における比較例1):
H Polymer-160(2370g)を反応容器に入れ、攪拌し、N2パージしながら温度を105℃に設定する。材料温度が95℃に達したら、シクロヘキセンオキシド及び0.3gのPt触媒溶液を加える。51gのアリルグリシジルエーテル(Allyl Glycidyl ether;AGE)を2.5ml/分の投与速度で投与することで反応容器に加える。投与が完了したら、同じ条件で反応容器に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に1.5時間攪拌する。その後、更に7gのAGEを2.5ml/分の投与速度で投与することで反応容器に加える。投与が完了したら、同条件で反応容器に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に1時間攪拌する。次いで、NMR分析によってH濃度を測定し、同じ速度での投与を介して、(必要な場合)追加で4gのAGEを加える。再び、同じ条件で反応混合物に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に2時間攪拌する。NMR分析を介して反応状態を確認し、必要に応じて触媒を加える。Si-H含有量がゼロ又は<2ppmになるまで反応を継続する。反応流体を冷却し、薄茶色の透明な油を収集する。表1には、NMRデータから得られる平均値で、エポキシ基のモル数及びD単位が示されている。
【0064】
3)エポキシ官能化シリコーンの合成(アリルポリエーテルグリシジルエーテルによる)(本発明の実施例):
25℃で60mPa・sの粘度及び0.05重量%の水素含有量を有するH Polymer-55(2370g、1.3モルのSi-H)を反応容器に入れ、攪拌し、N2パージしながら温度を105℃に設定する。材料温度が95℃に達したら、シクロヘキセンオキシド及び0.3gのPt触媒溶液を加える。8個のEO基(1.3モルのオレフィン性基)を有するアリルポリエーテルグリシジルエーテル(Allyl polyether Glycidyl ether;APGE)605gを2.5ml/分の投与速度で投与することで反応容器に加える。投与が完了したら、同じ条件で反応容器に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に1.5時間攪拌する。その後、8個のEO基を有する7gのAPGEを2.5ml/分の投与速度で投与することで反応容器に更に加える。投与が完了したら、同条件で反応容器に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に1時間攪拌する。次いで、NMR分析によってH濃度を測定し、同じ速度での投与を介して、(必要な場合)追加で4gのAGEを加える。再び、同じ条件で反応混合物に0.2gのPt触媒溶液を加え、更に2時間攪拌する。NMR分析を介して反応状態を確認し、必要に応じて触媒を加える。Si-H含有量がゼロ又は<2ppmになるまで反応を継続する。反応流体を冷却し、薄茶色の透明な油を収集し、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサン流体を得る。
[注:HYSI反応は、アリルポリエーテルグリシジルエーテル、アリル-(EO)x-(PO)y-エポキシ(x=5~20;y=0~4)と、様々なH-M-Dn-M-H(n=50~200)シロキサンとを用いて実施された。反応温度範囲は80℃~120℃である。]
【0065】
4)親水性シリコーンポリマー流体の合成(シリコーン四級流体):
表1に記載されているように、ポリオキシアルキレンエポキシ官能性シロキサン流体(中間エポキシシリコーン)、アミン化合物、及び酸を適切な溶媒に溶かし、ゆっくりとN2パージしながら、温度を摂氏(℃)の反応温度に設定する。反応を5時間継続し、しばらくすると反応混合物が透明になる。混合物のNMRを確認し、反応の進行をモニタリングする。反応が完了した[>98%]ことが認められたら、生成物を室温にまで冷却して収集する。NMRによって最終的な流体構造を確認する。
【0066】
5)
親水性シリコーンポリマー流体の特性決定:
(表1の実施例10の流体の特性決定)
化学構造:
【化3】
ポリマーの特性決定:
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)0.3~0.5(m,2H
5)、4.2~4.55(m,1H
13)、3.14~3.25(d,6H
17,18)、2.09~2.18(d,6H
24,25)、1.94~2.09(t,2H
26)
13C/APT(CDCl3,100MHz)δ(ppm)13.86(-CH2CH2Si)、63(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)2)、53.6~52.6(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)
2)、45.5(-OCH2CH2N(CH3)
2)、38.59(-CH2CH2(C=O)O
-)
29Si NMR(CDCl3,79.5MHz):δ(ppm)-23~-21.3(Me2SiO2/2の合計=D)、-12(ROMe2SiO1/2=DOR)、7.46(Me
3SiO
1/2=M*)
カチオン性SiポリマーのN
+(CH3)2(H
17,18)とアニオン性ラウリン酸のCH2COO
-(H
26)との比率、及びモル%におけるN(CH3)
2(H
24,25)に対するN
+(CH
3)
2(H
17,18)は~1:1である。
【0067】
(表1の実施例13の流体の特性決定)
化学構造:
【化4】
ポリマーの特性決定:
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)0.3~0.5(m,2H
5)、4.4~4.64(m,1H
13)、3.0~3.20(s,6H
17,18)、~3.52(m,1H
16)、1.90~1.93(s,3H
25)
13C/APT(CDCl3,100MHz)δ(ppm)13.07(-CH2CH2Si)、62.1~62.7(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)2)、48.0~48.6(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)
2)、72.23(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)
2)-CH-シクロヘキサン)、24.44(-CH3(C=O)O
-)
29Si NMR(CDCl3,79.5MHz):δ(ppm)-23~-21.3(Me2SiO2/2の合計=D)、-12、-13~-13.52、-15~-15.42(ROMe2SiO1/2=DOR)、7.39(Me3SiO1/2=M*)
カチオン性SiポリマーのN
+(CH3)2(H
17,18)とアニオン性酢酸のCH3COO
-(H
25)とのモル%における比率は~1:1である。
【0068】
(表1の実施例17の流体の特性決定)
化学構造:
【化5】
ポリマーの特性決定:
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ(ppm)0.3~0.5(m,2H
5)、4.2~4.55(m,1H
13)、3.14~3.25(d,6H
17,18)、1.84~1.90(s,3H
28)
13C/APT(CDCl3,100MHz)δ(ppm)13.98(-CH2CH2Si)、62.73(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)2)、52.16~52.7(-OCH2(CHOH)CH2N
+(CH3)
2)、24.44(-CH3(C=O)O
-)
29Si NMR(CDCl3,79.5MHz):δ(ppm)-23~-21.3(Me2SiO2/2の合計=D)、-12,-13~-13.52、-15~-15.42(ROMe2SiO1/2=DOR)、7.39(Me3SiO1/2=M*)
カチオン性SiポリマーのN
+(CH3)2(H
17,18)とアニオン性酢酸のCH3COO
-(H
28)とのモル%における比率は~1:1である。
【0069】
エマルジョンの調製:以下のレシピに従い、ブレンダーに表1のポリマー(ベース流体)を取ることで、20%の活性シリコーンポリマーエマルジョンを調製した。酢酸及び適切な乳化剤(必要な場合)を加えて、10分間混合する。連続的に攪拌しながら段階的に水を加えて、均一な半透明のものから透明なエマルジョンを得た。
【0070】
【0071】
6)布地/織物/タオルへの適用:
上記のレシピに従って、30gplの20%活性エマルジョンでパディング(padding)する。Stentorにて130℃で2分間乾燥させ、次いで30分間混転(又は転回、tumbled)させた。
【0072】
適用ステップの後、明細書に記載されている試験方法によって処理された布地/織物/タオルを分析し、実施例1~20の対応する組成物について、その特性を表1に記録した。
【0073】
【0074】
表1のように、実施例10a、10b、12、13、14、15、16、17、18、及び19によれば、シリコーン構造式(I)を有する本発明の組成物は、10ppmの塩素水に対するタオルの耐変色性の予想外で驚くべき効果と共に、非常に良好な手触り、及びタオルASTM D 4772-97における非常に良好な保水性(未処理のタオルの46%の保水値にほぼ等しい)を有するということが分かった。
【国際調査報告】