(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】トリテルペンの製造
(51)【国際特許分類】
C12P 15/00 20060101AFI20220906BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220906BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220906BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20220906BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
C12P15/00
C12N1/19
C12N1/21
C12N9/04 Z
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576980
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2020036014
(87)【国際公開番号】W WO2020263524
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504256408
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street,12th Floor,Oakland,California 94607 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キースリング,ジェイ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ユジョン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD09
4B050KK06
4B050LL05
4B064AC19
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4B064CA02
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4B065AC14
4B065BD27
4B065CA05
4B065CA10
4B065CA60
(57)【要約】
β-アミリンからキラ酸を製造するために、β-アミリン合成酵素、シトクロムP450還元酵素、シトクロムP450 C28位酸化酵素、シトクロムP450 C16位酸化酵素、およびシトクロムC23位酸化酵素を発現する遺伝子組換え微生物菌体を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-アミリンから酸化型トリテルペンを製造する方法であって、β-アミリン合成酵素、シトクロムP450還元酵素、シトクロムP450 C28位酸化酵素、シトクロムP450 C16位酸化酵素、およびシトクロムP450 C23位酸化酵素を発現する遺伝子組換え微生物菌体をインキュベートして酸化型トリテルペンを生成させる工程を含み、該工程が、該菌体内の該C28位酸化酵素、該C16位酸化酵素、および該C23位酸化酵素により、β-アミリンの28位、16位、および23位の炭素がそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、およびホルミル(アルデヒド)基に酸化される条件下で行われる、方法。
【請求項2】
前記微生物菌体が、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、またはHansenula polymorphaなどの酵母菌体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物菌体が、Yarrowia lipolytica、Rhodosporidium toruloides、またはLipomyces starkeyなどの油脂酵母菌体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物菌体が、Escherichia coli、Bacillus subtilis、またはストレプトマイセス属細菌などの細菌菌体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物菌体が、植物由来のβ-アミリン合成酵素を発現してイソプレノイド生合成経路を迂回するように遺伝子組換えされている、請求項1、2、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記シトクロムP450還元酵素が、Arabidopsis thalianaのシトクロムP450還元酵素(AtATR1)およびLotus japonicusのシトクロムP450還元酵素(LJCPR)から選択される、請求項1、2、3、4、または5に記載の方法。
【請求項7】
前記シトクロムP450 C16位酸化酵素が、CYP87D16およびCYP716Y1から選択される、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の方法。
【請求項8】
前記シトクロムP450 C23位酸化酵素が、CYP72A68およびCYP714E19から選択される、請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の方法。
【請求項9】
前記シトクロムP450 C28位酸化酵素が、CYP716A1、CYP716A12、CYP716A15、CYP716A17、CYP716A44、CYP716A46、CYP716A52v2、CYP716A75、CYP716A78、CYP716A79、CYP716A80、CYP716A81、CYP716A83、CYP716A86、CYP716A154、CYP716A110、CYP716A140、CYP716A141、CYP716A179、CYP716A252、およびCYP716A253から選択される、請求項1、2、3、4、5、6、7、または8に記載の方法。
【請求項10】
前記還元酵素、前記C28位酸化酵素、前記C16位酸化酵素、および前記C23位酸化酵素のうち1つ、2つ、3つ、またはこれらすべてが、植物由来の酵素、特にArabidopsis thaliana、Lotus japonicus、Centella asiatica、Medicago truncatula、Bupleurum falcatum、またはMaesa lanceolateに由来する酵素である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元酵素、前記C28位酸化酵素、前記C16位酸化酵素、および前記C23位酸化酵素が、それぞれ独立して、Arabidopsis thaliana、Lotus japonicus、Centella asiatica、Medicago truncatula、Bupleurum falcatum、またはMaesa lanceolateに由来する酵素である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の方法。
【請求項12】
前記C16位酸化酵素および前記C23位酸化酵素が、CYP72A68(C23)およびCYP716Y1(C16)である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11に記載の方法。
【請求項13】
前記還元酵素、前記C28位酸化酵素、前記C16位酸化酵素、および前記C23位酸化酵素が、LjcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A83(C28)の組み合わせ、LjcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A12(C28)の組み合わせ、およびAtrcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A12(C28)の組み合わせから選択される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸化型トリテルペンが、キラ酸、ヘデラゲニン、カウロフィロゲニン、ジプソゲニン、ジプソゲン酸、およびキラ酸酸化物から選択される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13に記載の方法。
【請求項15】
前記23位の炭素の酸化により酸が生成され、その後、任意に行われる該酸の還元によりアルデヒドが生成されることにより、または前記23位の炭素の酸化によりアルコールが生成され、その後、任意に行われる該アルコールの酸化によりアルデヒドが生成されることにより、例えば、キラ酸が生成される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14に記載の方法。
【請求項16】
酸化型トリテルペンを製造するための遺伝子組換え微生物菌体であって、β-アミリン合成酵素、シトクロムP450還元酵素、シトクロムP450 C28位酸化酵素、シトクロムP450 C16位酸化酵素、およびシトクロムP450 C23位酸化酵素を発現し、該菌体内の該C28位酸化酵素、該C16位酸化酵素、および該C23位酸化酵素により、β-アミリンの28位、16位、および23位の炭素がそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、およびホルミル(アルデヒド)基に酸化されて酸化型トリテルペンが生成される、遺伝子組換え微生物菌体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
序論
キラ酸は、3位と16位にヒドロキシル基、23位にアルデヒド基、28位にカルボン酸基を有する五環式トリテルペノイドであり(
図1)、有用な薬効があることが、例えば、Rodriguez-Diaz M, et al. Topical anti-inflammatory activity of quillaic acid from Quillaja saponaria Mol. and some derivatives. J Pharm Pharmacol. 2011 May;63(5):718-24で確認されている。しかし、キラ酸の化学合成や生合成経路は知られておらず、キラ酸の製造方法には隠れたニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、キラ酸、キラ酸の前駆体、これらの還元体および酸化体などのβ-アミリン酸化物を製造するための方法、組成物ならびにシステム、例えば、遺伝子組換え菌体を提供する。
【0003】
一態様において、本発明は、酸化型トリテルペンを製造する方法を提供する。該方法は、β-アミリン合成酵素、シトクロムP450還元酵素、シトクロムP450 C28位酸化酵素、シトクロムP450 C16位酸化酵素、およびシトクロムP450 C23位酸化酵素を発現する遺伝子組換え微生物菌体をインキュベートするか、増殖させて酸化型トリテルペンを生成させる工程を含み、該工程は、該菌体内の該C28位酸化酵素、該C16位酸化酵素、および該C23位酸化酵素により、β-アミリンの28位、16位、および23位の炭素がそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、およびホルミル(アルデヒド)基に酸化される条件下で行われる。
【0004】
いくつかの実施形態において、
【0005】
前記微生物菌体は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、またはHansenula polymorphaなどの酵母菌体であり
【0006】
前記微生物菌体は、Yarrowia lipolytica、Rhodosporidium toruloides、またはLipomyces starkeyなどの油脂酵母菌体であり、
【0007】
前記微生物菌体は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、またはストレプトマイセス属細菌などの細菌菌体であり、
【0008】
前記微生物菌体は、植物由来のβ-アミリン合成酵素を発現してイソプレノイド生合成経路または本来のステロール生合成経路を迂回するように遺伝子組換えされており、
【0009】
前記シトクロムP450還元酵素は、Arabidopsis thalianaのシトクロムP450還元酵素(AtATR1)およびLotus japonicusのシトクロムP450還元酵素(LJCPR)から選択され、
【0010】
前記シトクロムP450 C16位酸化酵素は、CYP87D16およびCYP716Y1から選択され、
【0011】
前記シトクロムP450 C23位酸化酵素は、CYP72A68およびCYP714E19から選択され、
【0012】
前記シトクロムP450 C28位酸化酵素は、CYP716A1、CYP716A12、CYP716A15、CYP716A17、CYP716A44、CYP716A46、CYP716A52v2、CYP716A75、CYP716A78、CYP716A79、CYP716A80、CYP716A81、CYP716A83、CYP716A86、CYP716A154、CYP716A110、CYP716A140、CYP716A141、CYP716A179、CYP716A252、およびCYP716A253から選択され、
【0013】
前記シトクロムP450還元酵素、前記シトクロムP450 C28位酸化酵素、前記シトクロムP450 C16位酸化酵素、および前記シトクロムP450 C23位酸化酵素のうち1つ、2つ、3つ、またはこれらすべては、植物由来の酵素、特にArabidopsis thaliana、Lotus japonicus、Centella asiatica、Medicago truncatula、Bupleurum falcatum、またはMaesa lanceolateに由来する酵素であり、
【0014】
前記シトクロムP450還元酵素、前記シトクロムP450 C28位酸化酵素、前記シトクロムP450 C16位酸化酵素、および前記シトクロムP450 C23位酸化酵素は、それぞれ独立して、Arabidopsis thaliana、Lotus japonicus、Centella asiatica、Medicago truncatula、Bupleurum falcatum、またはMaesa lanceolateに由来する酵素であり、
【0015】
前記C16位酸化酵素および前記C23位酸化酵素は、CYP72A68(C23)およびCYP716Y1(C16)であり、
【0016】
前記シトクロムP450還元酵素、前記シトクロムP450 C28位酸化酵素、前記シトクロムP450 C16位酸化酵素、および前記シトクロムP450 C23位酸化酵素は、LjcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A83(C28)の組み合わせ、LjcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A12(C28)の組み合わせ、およびAtrcprとCYP72A68(C23)とCYP716Y1(C16)とCYP716A12(C28)の組み合わせから選択され、
【0017】
前記酸化型トリテルペンは、キラ酸、ヘデラゲニン、カウロフィロゲニン、ジプソゲニン、ジプソゲン酸、およびキラ酸酸化物から選択され、かつ/または
【0018】
前記23位の炭素の酸化により酸が生成され、その後、任意に行われる該酸の還元によりアルデヒドが生成されることにより、または前記23位の炭素の酸化によりアルコールが生成され、その後、任意に行われる該アルコールの酸化によりアルデヒドが生成されることにより、例えば、キラ酸が生成される。
【0019】
一態様において、本発明は、酸化型トリテルペンを製造するための遺伝子組換え微生物菌体を提供する。該微生物菌体は、β-アミリン合成酵素、シトクロムP450還元酵素、シトクロムP450 C28位酸化酵素、シトクロムP450 C16位酸化酵素、およびシトクロムP450 C23位酸化酵素を発現し、該菌体内の該C28位酸化酵素、該C16位酸化酵素、および該C23位酸化酵素により、β-アミリンの28位、16位、および23位の炭素がそれぞれカルボキシル基、ヒドロキシル基、およびホルミル(アルデヒド)基に酸化されて酸化型トリテルペンが生成される。
【0020】
本発明は、本明細書に記載された個々の実施形態のあらゆる組み合わせを包含するものであり、それらはすべて本明細書に記載されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】Saccharomyces cerevisiaeにおける2,3-オキシドスクアレンを生成する生合成経路である。
【
図1B】複数の異種タンパク質の発現により下流における構造機能化を経てトリテルペンが得られることを示した図である。その後、最終的な配糖化工程を経てサポニンが合成される。実線矢印:対応する酵素が同定されている。点線矢印:酵素はまだ発見されていない。
【
図2】遺伝子組換えS. cerevisiaeにおけるキラ酸の生合成経路を簡略化して示した概略図である。キラ酸の合成経路として、可能な2系統の経路を示し、右上に対応する酵素の一覧を掲載した。C16位、C23位、およびC28位の酸化工程が示されている。
【
図3】酵母におけるキラ酸およびその他の中間体のin vivoコンビナトリアル製造について示した図である。標準物質(1:カウロフィロゲニン、2:キラ酸、3:ジプソゲン酸、4:16-ヒドロキシオレアノール酸、5:ヘデラゲニン、6:ジプソゲニン)と、AtATR1、CYP72A68、CYP716Y1、およびCYP716A12を発現する遺伝子組換え株のLC-MSクロマトグラムを重ねて示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の記載および本明細書全体を通して、別異に解される場合または別段の記載がある場合を除き、「a」および「an」という用語は1以上を意味し、「または」という用語は「および/または」を意味する。本明細書に記載されている実施例および実施形態は、単に本発明を説明するためのものであり、これらの実施例および実施形態に基づいて、様々な変形または変更が可能であることは当業者には明らかであり、またそのような変形または変更は本願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲に含まれるものである。本明細書に引用されたすべての出版物、特許および特許出願、またこれらに記載の引用文献は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0023】
我々は、複数の異種タンパク質を菌株内で共発現させるコンビナトリアル手法を用いて、Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母を含む遺伝子組換え微生物から発酵により酸化型トリテルペン類を製造することを開示する。様々な植物由来のシトクロムP450還元酵素とP450の組み合わせについて検討を行った。トリテルペン類は、様々な産業分野および医薬分野で応用されている、構造多様性に富んだ大きな天然物群の1つであり、P450触媒による構造修飾は、トリテルペン類の足場構造の多様化と機能化に不可欠である。我々の手法により、遺伝子組換え酵母を用いて、トリテルペン類とそのP450による機能化生成物を再生可能に供給する簡単かつ汎用性の高いプラットフォームが提供される。
【0024】
また、酸化酵素およびテルペン環化酵素を組み合わせて発現させるコンビナトリアル手法と、トリテルペン生産株とにより、抽出および/または精製が困難な生物学的活性を有する他の群に属する天然由来のトリテルペン類を製造するためのプラットフォームも提供される。
【0025】
実施例:複数の異種タンパク質のコンビナトリアル実験によるキラ酸の生合成
この実施例では、β-アミリンの生産収率が高い菌株に複数の異種タンパク質を共発現させるコンビナトリアル手法を用いて、遺伝子組換えSaccharomyces cerevisiaeから発酵によりキラ酸を生産した例を示す。様々な植物由来のシトクロムP450還元酵素とP450との組み合わせを確認する。P450は特異性が高いため、基質の特定の位置の炭素を選択的に機能化することができ、立体選択性および化学選択性を確保するための合成工程を経由する必要がない。同様の方法で、β-アミリン酸化物を含む他の天然トリテルペン類も合成することができる。
【0026】
天然のキラ酸生合成経路はまだ不明であるため、P450として、Arabidopsis thaliana、Lotus japonicus、Centella asiatica、Medicago truncatula、Bupleurum falcatum、Maesa lanceolateに由来するもので特性が明らかにされており、β-アミリンを基質とする酵素活性が確認されている25種類を選択し、コンビナトリアル実験を実施した。植物由来のβ-アミリン合成酵素を発現する遺伝子組換え酵母において、本来のステロール生合成経路を迂回させるために、16位、23位または28位の炭素を機能化する酵素をそれぞれ1つずつ含む3種類のP450を組み合わせて高コピー数プラスミドから発現させた(例えば、
図2およびKirby, Romanini, Paradise and Keasling, FEBS Journal 275 (8) Apr 2008, p1852-1859, "Engineering triterpene production in Saccharomyces cerevisiae β-amyrin synthase from Artemisia annua"を参照)。キラ酸の製造方法について、培地と糖の濃度、培地の種類、発酵時間、添加物の使用などの観点から確認を行った。その結果、協同してβ-アミリンをキラ酸に変換できる機能化酵素の組み合わせが同定された。
【0027】
「酵母工場」で生産されたキラ酸を同定・精製するための特性評価方法として、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)を選択した。AtATR1、CYP72A68、CYP716Y1、およびCYP716A12を発現する菌株のin vivoでの生産量は、他の異なる酵母コンストラクトによる生産の一例となる。
図3は、酵母菌株の抽出物のLC-MSクロマトグラムと、キラ酸(2)およびその他の酸化中間体(カウロフィロゲニン(1)、ジプソゲン酸(3)、16-ヒドロキシオレアノール酸(4)、ヘデラゲニン(5)、ジプソゲニン(6))を含む標準試料のLC-MSクロマトグラムとを比較したものである。中間体3~6の蓄積が認められ、酵母抽出物中にキラ酸に相当する10.01分の溶出ピークが存在することから、in vivoでキラ酸が生成されたことが明確に示されている。
【0028】
また、Quillaja saponariaの本来のP450(CYP716A224、QSのC28位酸化酵素;CYP714E52、QSのC23位酸化酵素)についても、Saccharomyces cerevisiaeを用いて検討を行った。CYP716A297、QSのC16位酸化酵素の反応性も確認する。これらの配列は一般に公開されている。
【国際調査報告】