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特表2022-539753ガンマデルタT細胞を阻害する、または活性化させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ガンマデルタT細胞を阻害する、または活性化させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220906BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220906BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220906BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220906BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220906BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220906BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20220906BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220906BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/13
C07K16/28
A61P37/06
A61P35/00
A61P31/00
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61P43/00 111
C12N15/12
C07K14/725
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577332
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 AU2020050662
(87)【国際公開番号】W WO2020257871
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】2019902308
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2019904771
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2019904773
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519305960
【氏名又は名称】ザ ユニバーシテイ オブ メルボルン
(71)【出願人】
【識別番号】521438320
【氏名又は名称】オリビア・ニュートン-ジョン・キャンサー・リサーチ・インスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】521239819
【氏名又は名称】シーエスエル イノベーション プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベーレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン セボン
(72)【発明者】
【氏名】マーク リゴー コータル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス サミュエル フルフォード
(72)【発明者】
【氏名】デイル イアン ゴドフリー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ハメット
(72)【発明者】
【氏名】シモン オストロウスカ
(72)【発明者】
【氏名】コン パノウシス
(72)【発明者】
【氏名】アダム ピーター ウルドリッチ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG02
4B064AG12
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA44
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB08
4C084ZB26
4C084ZB32
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、BTN2A1アンタゴニストを対象に投与することにより、Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞の活性化を阻害する方法のほか、BTN2A1アンタゴニストを対象に投与することにより、Vγ9+ TCRを発現するγδ T細胞を誘導または増強する方法に関する。本開示はさらに、BTN2A1アンタゴニストとBTN2A1アゴニストに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象においてVγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞の活性化を阻害する方法であって、前記対象にBTN2A1アンタゴニストを投与することを含み、前記BTN2A1アンタゴニストが:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9に結合することを阻害する;
iii)BTN2A1/BTN3A1複合体がVγ9+ TCRに結合することを阻害する;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させる方法。
【請求項2】
Vγ9Vδ2+ γδ T細胞の活性化を阻害する、請求項1の方法。
【請求項3】
Vγ9Vδ2- γδ T細胞の活性化を阻害する、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体が1つ以上の追加分子を含む、請求項1~3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体がBTN3A2および/またはBTN3A3を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、または前記γδ T細胞の増殖の1つ以上を阻害する、請求項1~5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記BTN2A1アンタゴニストが、ホスホ抗原を媒介とした前記γδ T細胞の活性化を阻害する、請求項1~6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
前記BTN2A1アンタゴニストがBTN2A1とBTN3A1の会合を阻害する、請求項1~7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
前記BTN2A1アンタゴニストがBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を阻害する、請求項8の方法。
【請求項10】
前記BTN2A1アンタゴニストが、Vγ9の生殖系コード領域および/またはδ鎖の遠位へのBTN2A1の結合を阻害する、請求項1~9のいずれか1項の方法。
【請求項11】
前記BTN2A1アンタゴニストが、Vδ2の生殖系コード領域(TCRγ鎖のCDR2ループおよび/またはCDR3ループなど)へのBTN2A1/BTN3A1複合体の結合を阻害する、請求項2~10のいずれか1項の方法。
【請求項12】
前記BTN2A1アンタゴニストが前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてこのBTN2A1分子を刺激性BTN2A1から非刺激性BTN2A1へと切り換える、請求項1~11のいずれか1項の方法。
【請求項13】
前記BTN2A1アンタゴニストが、前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させるとともに、ホスホ抗原の活性化を阻害する、請求項7~10のいずれか1項の方法。
【請求項14】
対象においてVγ9+γδ T細胞応答を抑制または阻害する方法であって、BTN2A1アンタゴニストを前記対象に投与することを含み、前記BTN2A1アンタゴニストが、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9+ TCRに結合することを阻害する;
iii)BTN2A1/BTN3A1複合体がVγ9+ TCRに結合することを阻害する;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させる方法。
【請求項15】
Vγ9Vδ2+ γδ T細胞応答を抑制または阻害する、請求項14の方法。
【請求項16】
Vγ9Vδ2- γδ T細胞応答を抑制または阻害する、請求項14または15の方法。
【請求項17】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体が1つ以上の追加分子を含む、請求項14~16のいずれか1項の方法。
【請求項18】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体がBTN3A2および/またはBTN3A3を含む、請求項17の方法。
【請求項19】
細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、または前記γδ T細胞の増殖の1つ以上を阻害する、請求項14~18のいずれか1項の方法。
【請求項20】
前記BTN2A1アンタゴニストが前記γδ T細胞の活性化を阻害する、請求項14~20のいずれか1項の方法。
【請求項21】
前記BTN2A1アンタゴニストが、ホスホ抗原を媒介とした前記γδ T細胞の活性化を阻害する、請求項20の方法。
【請求項22】
前記BTN2A1アンタゴニストがBTN2A1とBTN3A1の会合を阻害する、請求項14~21のいずれか1項の方法。
【請求項23】
前記BTN2A1アンタゴニストがBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を阻害する、請求項22の方法。
【請求項24】
前記BTN2A1アンタゴニストが、Vγ9の生殖系コード領域および/またはδ鎖の遠位へのBTN2A1の結合を阻害する、請求項14~23のいずれか1項の方法。
【請求項25】
前記BTN2A1アンタゴニストが、Vδ2の生殖系コード領域(TCR γ鎖のCDR2ループおよび/またはCDR3ループなど)へのBTN2A1/BTN3A1複合体の結合を阻害する、請求項15~24のいずれか1項の方法。
【請求項26】
前記BTN2A1アンタゴニストが前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてこのBTN2A1分子を刺激性BTN2A1から非刺激性BTN2A1へと切り換える、請求項14~25のいずれか1項の方法。
【請求項27】
前記BTN2A1アンタゴニストが前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させるとともに、ホスホ抗原の活性化を阻害する、請求項21~26のいずれか1項の方法。
【請求項28】
Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞の活性化をインビトロまたは生体外で阻害する方法であって、前記γδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、BTN2A1アンタゴニストの存在下で培養することを含み、前記BTN2A1アンタゴニストが:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9に結合することを阻害する;および/または
iii)BTN2A1/BTN3A1複合体がVγ9+ TCRに結合することを阻害する方法。
【請求項29】
請求項2~13に規定されている特徴のいずれか1つによってさらに規定される、請求項28の方法。
【請求項30】
前記γδ T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程をさらに含む、請求項24または25の方法。
【請求項31】
自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、BTN2A1アンタゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶または移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項32】
がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、BTN2A1アンタゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項33】
対象においてVγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞を活性化させる方法であって、前記対象にBTN2A1アゴニストを投与することを含み、前記BTN2A1アゴニストが:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる方法。
【請求項34】
Vγ9Vδ2+ γδ T細胞を活性化させる、請求項33の方法。
【請求項35】
Vγ9Vδ2- γδ T細胞を活性化させる、請求項31または32の方法。
【請求項36】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体が1つ以上の追加分子を含む、請求項33または34の方法。
【請求項37】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体がBTN3A2および/またはBTN3A3を含む、請求項36の方法。
【請求項38】
細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、または前記γδ T細胞の増殖の1つ以上を活性化させる、請求項33~37のいずれか1項の方法。
【請求項39】
前記BTN2A1アゴニストが、ホスホ抗原の結合とは独立に前記γδ T細胞を活性化させる、請求項33~38のいずれか1項の方法。
【請求項40】
前記BTN2A1アゴニストがBTN2A1とBTN3A1の会合を促進する、請求項33~39のいずれか1項の方法。
【請求項41】
前記BTN2A1アゴニストがBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を促進する、請求項38の方法。
【請求項42】
前記BTN2A1アゴニストが、BTN2A1とBTN3A1に対して二重特異性である、請求項33~41のいずれか1項の方法。
【請求項43】
前記BTN2A1アゴニストがBTN3A1と交差反応する、請求項42の方法。
【請求項44】
前記BTN2A1アゴニストが前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてこのBTN2A1分子を非刺激性BTN2A1から刺激性BTN2A1へと切り換える、請求項33~43のいずれか1項の方法。
【請求項45】
対象においてVγ9+ γδ T細胞応答を誘導または増強する方法であって、BTN2A1アゴニストを前記対象に投与することを含み、前記BTN2A1アゴニストが、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる方法。
【請求項46】
Vγ9Vδ2+ γδ T細胞応答を誘導する、請求項45の方法。
【請求項47】
Vγ9Vδ2- γδ T細胞応答を誘導する、請求項45または46の方法。
【請求項48】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体が1つ以上の追加分子を含む、請求項45または46の方法。
【請求項49】
前記BTN2A1/BTN3A1複合体がBTN3A2および/またはBTN3A3を含む、請求項48の方法。
【請求項50】
細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、または前記γδ T細胞の増殖の1つ以上を誘導する、請求項46~49のいずれか1項の方法。
【請求項51】
前記BTN2A1アゴニストが、ホスホ抗原の結合とは独立に前記γδ T細胞を活性化させる、請求項45~50のいずれか1項の方法。
【請求項52】
前記BTN2A1アゴニストがBTN2A1とBTN3A1の会合を促進する、請求項45~51のいずれか1項の方法。
【請求項53】
前記BTN2A1アゴニストがBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を促進する、請求項52の方法。
【請求項54】
前記BTN2A1アゴニストが、BTN2A1とBTN3A1に対して二重特異性である、請求項45~53のいずれか1項の方法。
【請求項55】
前記BTN2A1アゴニストがBTN3A1と交差反応する、請求項54の方法。
【請求項56】
前記BTN2A1アゴニストが前記BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてこのBTN2A1分子を非刺激性BTN2A1から刺激性BTN2A1へと切り換える、請求項45~55のいずれか1項の方法。
【請求項57】
Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞をインビトロまたは生体外で活性化させる方法であって、前記γδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、BTN2A1アゴニストの存在下で培養することを含み、前記BTN2A1アゴニストが:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる方法。
【請求項58】
請求項33~44に規定されている特徴のいずれか1つによってさらに規定される、請求項57の方法。
【請求項59】
前記活性化されたγδ T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程をさらに含む、請求項57または58の方法。
【請求項60】
自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、BTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項61】
がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、BTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項62】
BTN2A1に特異的に結合し、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されること;
ii)BTN2A1がVγ9に結合すること;および/または
iii)BTN2A1/BTN3A1複合体がVγ9+ TCRに結合すること
を阻害するBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項63】
請求項2~12に規定されている特徴のいずれか1つによってさらに規定される、請求項62のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項64】
BTN2A1に特異的に結合し、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1複合体が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる
BTN2A1アゴニスト。
【請求項65】
請求項33~44に規定されている特徴のいずれか1つによってさらに規定される、請求項64のBTN2A1アゴニスト。
【請求項66】
BTN2A1のアンタゴニストまたはアゴニストが抗原結合ドメインを含むタンパク質である、請求項1~65のいずれか1項の方法。
【請求項67】
前記タンパク質が、
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv;
(iii)Fvフラグメント;
(iv)単一ドメイン抗体(sdAb);
(v)ナノボディ;
(vi)ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次の多量体;
(vii)Fabフラグメント;
(viii)Fab’フラグメント;
(ix)F(ab’)フラグメント;
(x)F(ab’)2フラグメント;
(xi)抗体のFc領域に連結された(i)~(x)のいずれか1つ;
(xii)免疫エフェクタ細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに融合された(i)~(x)のいずれか1つ;または
(xiii)抗体
である、請求項66の方法。
【請求項68】
本開示のタンパク質が、親和性成熟抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、またはヒト化抗体であるか、その抗原結合フラグメントである、請求項67の方法。
【請求項69】
前記BTN2A1アンタゴニストが可溶性Vγ9+ TCRである、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項70】
前記可溶性Vγ9+ TCRが単量体である、請求項69の方法。
【請求項71】
前記可溶性Vγ9+ TCRが多量体である、請求項69の方法。
【請求項72】
前記BTN2A1アンタゴニストが、配列番号100に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号101に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項73】
前記BTN2A1アンタゴニストが、配列番号108に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号109に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項74】
前記BTN2A1アンタゴニストが、配列番号116に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号117に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項75】
前記BTN2A1アンタゴニストが、配列番号124に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号125に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項76】
前記BTN2A1アンタゴニストが、配列番号132に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号133に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である、請求項1~32のいずれか1項の方法、または請求項62または63のBTN2A1アンタゴニスト。
【請求項77】
BTN2A1に特異的に結合し:
(i)細胞の集団内のγδ T細胞を活性化させる、および/または活性化されたγδ T細胞の数を増加させる;および/または
(i)γδ T細胞活性化のマーカーを発現しているγδ T細胞の割合を増加させる;および/または
(ii)γδ T細胞によるサイトカインの分泌を増加させる;および/または
(iii)γδ T細胞ががん細胞を殺すこと、および/またはがん細胞の増殖を阻害すること、および/または感染した細胞を殺すこと、および/または感染した細胞の増殖を阻害することを誘導する;および/または
(iv)γδ T細胞の細胞表面に発現するγδ T細胞活性化のマーカーの量を増加させるBTN2A1アゴニスト。
【請求項78】
BTN2A1に特異的に結合し:
(i)細胞表面にCD25を発現しているγδ T細胞の割合を増加させる;および/または
(ii)γδ T細胞によるインターフェロンγの分泌を増加させる;および/または
(iii)γδ T細胞ががん細胞を殺すこと、および/またはがん細胞の増殖を阻害することを誘導する;および/または
(iv)γδ T細胞の細胞表面に発現するCD25の量を増加させるBTN2A1アゴニスト。
【請求項79】
(i)配列番号140に記載されている配列またはその相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域(VL)と、配列番号144に記載されている配列またはそのCDRを含む重鎖可変領域(VH);
(ii)配列番号148に記載されている配列またはそのCDRを含むVLと、配列番号152に記載されている配列またはそのCDRを含むVH
(iii)配列番号156に記載されている配列またはそのCDRを含むVLと、配列番号160に記載されている配列またはそのCDRを含むVH
を含む抗体である、請求項77のBTN2A1アゴニスト。
【請求項80】
対象においてVγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞を活性化させる方法であって、請求項77~79のいずれか1項のBTN2A1アゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項81】
対象においてVγ9+γδ T細胞応答を誘導または増強する方法であって、請求項77~79のいずれか1項のBTN2A1アゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項82】
Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞をインビトロまたは生体外で活性化させる方法であって、前記γδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、請求項77~79のいずれか1項のBTN2A1アゴニストの存在下で培養し、場合により、その活性化されたγδ T細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項83】
自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、請求項77~79のいずれか1項のBTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項84】
がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法であって、請求項77~79のいずれか1項のBTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願のデータ
本出願は、2019年6月28日に出願された「ガンマデルタT細胞を阻害する、または活性化させる方法」という名称のオーストラリア国特許出願第2019902308号、2019年12月17日に出願された「ガンマデルタT細胞を阻害する、または活性化させる方法」という名称のオーストラリア国特許出願第2019904771号、および2019年12月17日に出願された「ガンマデルタT細胞を阻害する、または活性化させる方法」という名称のオーストラリア国特許出願第2019904773号からの優先権を主張する。各出願の全内容が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
配列リスト
本出願は、電子形態の配列リストとともに出願される。配列リストの全内容が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0003】
本開示は、γδ T細胞を阻害する、または活性化させる試薬と方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルファ-ベータ(αβ)T細胞による抗原(Ag)の認識は、TCR-α遺伝子座とTCR-β遺伝子座によってコードされていてAg提示分子によって提示されるAgに結合するT細胞受容体(TCR)を通じてなされる。この基本的な原理が当てはまるのは、MHC分子によって提示されるペプチドAgを認識するαβT細胞、CD1dによって提示される脂質Agを認識するNKT細胞、およびMR1によって提示されるビタミンB代謝産物を認識する粘膜関連不変T(MAIT)細胞である(J. Rossjohn et al. (2015))。ガンマ-デルタ(γδ)T細胞は、別々のバリアブル(v)、ダイバーシティ(D)、ジョイニング(J)、およびコンスタント(C)TCR-γ遺伝子座とTCR-δ遺伝子座に由来するTCRを発現するユニークな系列である。循環している大半のヒトγδ T細胞はVγ9+ TCRを発現し、その大半は、ホスホ抗原(pAg)と呼ばれるAgの1つの明確なクラスと反応する(P.Constant et al. (1994);Y. Tanaka et al., (1995))。
【0005】
pAgはイソプレノイドの生合成における中間体であり、ほぼすべての細胞生物に存在する。脊椎動物はメバロン酸経路を通じてイソプレノイドを産生するのに対し、微生物は非メバロン酸経路を利用しており、化学的に異なるpAg中間体を生じさせる(L. Zhao et al. (2013))。Vγ9+ T細胞は、どちらかの経路を通じて産生されるpAg(メバロン酸経路からのピロリン酸イソペンテニル(IPP)と、非メバロン酸経路からのピロリン酸4-ヒドロキシ-3-メチル-ブテ-2-エニル(HMBPP)が含まれる)を感知するが、細菌のHMBPPに対しては脊椎動物のIPP pAgに対するよりも約1000倍感度が高い(A. Sandstrom et al. (2014))。したがってVγ9+ T細胞は、細菌感染に由来するHMBPPだけでなく、異常な細胞(がん細胞など)に蓄積したIPPにも応答することができる。細菌と寄生虫が感染している間、pAgはVγ9+ T細胞にサイトカインを産生させるとともに、Vγ9+ T細胞を増殖させて末梢血単核細胞(PBMC)の約10%~50%を占めるようにする(Y.L. Wu et al. (2014); J. Zheng et al. (2013))。Vγ9+ T細胞が抗菌免疫において果たすこの重要な役割は、ヒトPBMCを免疫不全マウスに移入すると細菌感染に対してVγ9 T細胞に依存した保護につながることにより実証された(L. Wang et al. (2001))。Vγ9+ T細胞はインビトロでpAgに依存したやり方でさまざまな腫瘍細胞系を殺すこともでき、多数の臨床試験においてその抗がん能力が調べられた結果、いくつかの有望な結果が得られている(D.I. Godfrey et al. (2018))。したがってVγ9+γδ T細胞は、ヒト免疫系の1つの重要かつ非冗長な武器となる。
【0006】
保護免疫においてγδ T細胞によって感知されるpAgの重要性にもかかわらず、pAgの認識を司る分子機構は不明である。
【0007】
上記のことから、例えばがん患者、または慢性感染症を持つ患者においてγδ T細胞応答を誘導または阻害することのできる新たな免疫療法と薬剤を提供するため、pAg認識を司る機構をよりよく理解する必要があることは、当業者にとって明らかであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明に到達するにあたり、発明者らは、pAg反応性γδTCRの新規なリガンドとして表面タンパク質であるブチロフィリン、サブファミリー2、メンバーA1(BTN2A1)を同定した。発明者らは、BTN2A1の発現がγδ T細胞による有効なpAg応答にとって必須であることを実証した。発明者らは、BTN2A1が抗原提示細胞(APC)の表面でBTN3A1と密に会合し、この複合体が、マウスとハムスターのAPCにpAg提示能力を与えるのに必要かつ十分であることも示した。
【0009】
発明者らによるこれらの知見により、BTN2A1に結合してγδ T活性化を増強する試薬の基礎と、例えばがんまたは感染症の治療におけるその試薬の利用が提供される。
【0010】
発明者らによるこれらの知見により、BTN2A1に結合してγδT活性化を損なう試薬の基礎と、例えば自己免疫疾患、移植拒絶、または移植片対宿主病におけるその試薬の利用も提供される。
【0011】
したがって本開示により、対象においてVγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞の活性化を阻害する方法が提供され、この方法はBTN2A1アンタゴニストをその対象に投与することを含み、そのBTN2A1アンタゴニストは、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3複合体(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9に結合することを阻害する;
iii)BTN2A1/BTN3(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)がVγ9+ TCRに結合することを阻害する;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させる。
【0012】
一実施態様では、この方法は1つ以上のVγ9+ T細胞サブセットの活性化を阻害する。例えばこの方法は、Vγ9Vδ2+、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+ γδ T細胞の1つ以上の活性化を阻害する。別の一例では、この方法は、Vγ9Vδ2- T細胞の活性化を阻害する。。例えばこの方法は、Vγ9Vδ2+、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+ γδまたはVγ9Vδ2- T細胞の1つ以上の活性化を阻害する。例えばこの方法は、1つ以上のVγ9+ T細胞サブセットの表面におけるCD25の上方調節、および/またはそのサブセットからのIFN-γの産生を阻害する。一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+ γδ T細胞の活性化を阻害する。別の一実施態様では、この方法は、Vγ9Vδ2- γδ T細胞の活性化を阻害する。さらなる一実施態様では、この方法は、Vγ9Vδ2+ γδ T細胞および/またはVγ9Vδ2- γδ T細胞の活性化を阻害する。
【0013】
一実施態様では、BTN2A1/BTN3はBTN2A1/BTN3A1複合体である。この複合体としてヘテロマー複合体または多量体複合体が可能である。
【0014】
一実施態様では、BTN2A1とBTN3が同じ細胞の表面で発現する。
【0015】
さらなる一実施態様では、BTN2A1/BTN3A1複合体は、1つ以上の追加分子(BTN3A2および/またはBTN3A3など)を含む。その1つ以上の追加分子はγδ T細胞の活性化を増強することができる。
【0016】
一実施態様では、上記の方法は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を阻害する。
【0017】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、ホスホ抗原を媒介としたγδ T細胞の活性化を阻害する。
【0018】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3A1の会合を阻害し、例えばBTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を阻害する。
【0019】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1が、Vγ9の生殖細胞系列がコードする領域および/またはTCR δ-鎖の遠位に結合するのを阻害する。一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1が、Vγ9のフレームワーク領域、および/またはArg20、Glu70、およびHis85の少なくとも1つを含む領域に結合するのを阻止する。BTN2A1アンタゴニストは、Vγ9のABED反平行β-シートのB鎖、D鎖、およびE鎖の外面上の領域に結合するのを阻止することができる。一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、CDRループよりもCγドメインに近い領域に結合する。
【0020】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1/BTN3複合体が、Vδ2の生殖細胞系列がコードする領域(TCR δ鎖のCDR2ループおよび/またはTCR γ鎖のCDR3ループなど)に結合するのを阻害する。例えばBTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1がVδ2のArg51とVγ9-JγPがコードするCDR3ループのLys108の近傍の領域に結合するのを阻止する。
【0021】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてBTN2A1分子を刺激性BTN2A1から非刺激性BTN2A1へと切り換える。
【0022】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてホスホ抗原の活性化を阻害する。例えばBTN2A1アンタゴニストはホスホ抗原がBTN2A1の細胞質ドメインおよび/またはBTN3分子に結合するのを阻害する。
【0023】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性である。別の一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN3分子(例えばBTN3A1)と交差反応する。別の一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは可溶性Vγ9+ TCRである。
【0024】
本開示により、対象におけるVγ9+ γδ T細胞応答を抑制または阻害する方法も提供され、この方法はBTN2A1アンタゴニストをその対象に投与することを含み、そのBTN2A1アンタゴニストは、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3複合体(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9+ TCRに結合するのを阻害する;
iii)BTN2A1/BTN3複合体(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)がVγ9+ TCRに結合するのを阻害する;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させる。
【0025】
一実施態様では、この方法は、Vγ9Vδ2+、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+ γδ T細胞応答の1つ以上を抑制または阻害する。一実施態様では、この方法は、Vγ9Vδ2+、Vγ9Vδ2-、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+ γδ T細胞応答の1つ以上を抑制または阻害する。一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+ γδ T細胞応答を抑制または阻害する。別の一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2- γδ T細胞応答を抑制または阻害する。さらなる一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+ γδ T細胞応答および/またはVγ9Vδ2- γδ T細胞応答を抑制または阻害する。
【0026】
一実施態様では、BTN2A1/BTN3はBTN2A1/BTN3A1複合体である。複合体としてヘテロマー複合体または多量体複合体が可能である。
【0027】
さらなる一実施態様では、BTN2A1/BTN3A1複合体は1つ以上の追加分子(BTN3A2および/またはBTN3A3など)を含む。その1つ以上の追加分子はγδ T細胞の活性化を増強することができる。
【0028】
一実施態様では、上記の方法は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を抑制または阻害する。
【0029】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、ホスホ抗原を媒介としたγδ T細胞の活性化を阻害する。
【0030】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3A1の会合を阻害し、例えばBTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を阻害する。
【0031】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1が、Vγ9の生殖細胞系列がコードする領域および/またはTCR δ-鎖の遠位に結合するのを阻害する。一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1が、Vγ9のフレームワーク領域、および/またはArg20、Glu70、およびHis85の少なくとも1つを含む領域に結合するのを阻止する。BTN2A1アンタゴニストは、Vγ9のABED反平行β-シートのB鎖、D鎖、およびE鎖の外面上の領域に結合するのを阻止することができる。一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、CDRループよりもCγドメインに近い領域に結合する。
【0032】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1/BTN3複合体が、Vδ2の生殖細胞系列がコードする領域(TCR γ鎖のCDR2ループおよび/またはCDR3ループなど)に結合するのを阻害する。例えばBTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1が、Vγ9-JγPがコードするCDR3ループのArg51とLys108の少なくとも1つの近傍の領域に結合するのを阻止する。
【0033】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてこのBTN2A1分子を刺激性BTN2A1から非刺激性BTN2A1へと切り換える。
【0034】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてホスホ抗原の活性化を阻害する。例えばBTN2A1アンタゴニストはホスホ抗原がBTN2A1および/またはBTN3分子の細胞質ドメインに結合するのを阻害する。
【0035】
一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性である。別の一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストはBTN3分子(例えばBTN3A1)と交差反応する。別の一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは可溶性Vγ9+ TCRである。
【0036】
本開示により、Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞の活性化をインビトロまたは生体外で阻害する方法も提供され、この方法は、γδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、BTN2A1アンタゴニストの存在下で培養することを含み、そのBTN2A1アンタゴニストは、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1ヘテロマー複合体が形成されることを阻害する;
ii)BTN2A1がVγ9に結合することを阻害する;および/または
iii)BTN2A1/BTN3A1ヘテロマー複合体がVγ9+ TCRに結合することを阻害する;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させる。
【0037】
一実施態様では、この方法は、γδ T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程をさらに含む。例えばγδ T細胞は、操作された受容体(例えば遺伝子が操作されるか改変されたT細胞受容体)を含む。例えばγδ T細胞は、操作された受容体(例えば遺伝子が操作されるか改変されたT細胞受容体)を含まない。さらなる一実施態様では、γδ T細胞は操作されたγδ T細胞である。この方法は、組織移植または同種異系血球移植で患者を治療する文脈において有用である可能性がある。
【0038】
本開示により、自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、BTN2A1アンタゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶または移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0039】
本開示により、がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、BTN2A1アンタゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0040】
本開示により、対象においてVγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞を活性化させる方法も提供され、この方法は、その対象にBTN2A1アゴニストを投与することを含み、そのBTN2A1アゴニストは:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる。
【0041】
一実施態様では、この方法は、1つ以上のVγ9+ T細胞サブセットを活性化させる。例えばVγ9Vδ2+、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+γδ T細胞の1つ以上。例えばVγ9Vδ2+、Vγ9Vδ2-、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+γδ T細胞の1つ以上。一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+γδ T細胞を活性化させる。別の一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2-γδ T細胞を活性化させる。さらなる一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+γδ T細胞とVγ9Vδ2-γδ T細胞を活性化させる。
【0042】
一実施態様では、BTN2A1/BTN3はBTN2A1/BTN3A1複合体である。この複合体としてヘテロマー複合体または多量体複合体が可能である。
【0043】
さらなる一実施態様では、BTN2A1/BTN3A1複合体は1つ以上の追加分子(BTN3A2および/またはBTN3A3など)を含む。その1つ以上の追加分子はγδ T細胞の活性化を増強することができる。
【0044】
一実施態様では、上記の方法は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を活性化させる。
【0045】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、活性化されたγδ T細胞は、CD25、CD40-リガンド(CD40-L)、CD69、およびCD107aの1つ以上を発現する。
【0046】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストはホスホ抗原結合とは独立にγδ T細胞を活性化させる。
【0047】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1の会合を促進し、例えばBTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を促進する。例えばBTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1を架橋させる。
【0048】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性である。別の一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN3分子(例えばBTN3A1)と交差反応する。
【0049】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてBTN2A1を非刺激性BTN2A1から刺激性BTN2A1へと切り換える。
【0050】
本開示により、対象においてVγ9+γδ T細胞応答を誘導または増強する方法も提供され、この方法は、BTN2A1アゴニストをその対象に投与することを含み、そのBTN2A1アゴニストは、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる。
【0051】
一実施態様では、この方法は1つ以上のVγ9+ T細胞サブセットを誘導する。例えばVγ9Vδ2+、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+ γδ T細胞の1つ以上。例えばVγ9Vδ2+、Vγ9Vδ2- γδ、Vγ9Vδ1+、Vγ9Vδ3+、Vγ9Vδ4+、またはVγ9Vδ5+二重特異性T細胞の1つ以上。一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+二重特異性T細胞応答を誘導する。別の一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2-二重特異性T細胞応答を誘導する。さらなる一実施態様では、この方法はVγ9Vδ2+二重特異性T細胞とVγ9Vδ2-二重特異性T細胞応答を誘導する。
【0052】
一実施態様では、BTN2A1/BTN3はBTN2A1/BTN3A1複合体である。この複合体としてヘテロマー複合体または多量体複合体が可能である。
【0053】
さらなる一実施態様では、BTN2A1/BTN3A1複合体は1つ以上の追加分子(BTN3A2および/またはBTN3A3など)を含む。その1つ以上の追加分子はγδ T細胞の活性化を増強することができる。
【0054】
一実施態様では、上記の方法は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を活性化させる。
【0055】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、活性化されたγδ T細胞は、CD25、CD69、CD40-リガンド(CD40-L)、およびCD107aなどの1つ以上の活性化関連マーカーを発現する。
【0056】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストは、ホスホ抗原結合とは独立にγδ T細胞を活性化させる。
【0057】
一実施態様では、またはさらなる一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1の会合を促進し、例えばBTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1の直接的な会合を促進する。例えばBTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3A1を交差連結させる。
【0058】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性である。別の一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN3分子(例えばBTN3A1)と交差反応する。
【0059】
一実施態様では、BTN2A1アゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を変化させてBTN2A1を非刺激性BTN2A1から刺激性BTN2A1へと切り換える。
【0060】
本開示により、Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞をインビトロまたは生体外で活性化させる方法も提供され、この方法は、そのγδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、BTN2A1アゴニストの存在下で培養することを含み、そのBTN2A1アゴニストは:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3A1ヘテロマー複合体が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる。
【0061】
一実施態様では、この方法は、活性化されたγδ T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程をさらに含む。さらなる一実施態様では、この方法は、操作されたγδ T細胞を、それを必要とする対象に投与する工程をさらに含む。
【0062】
本開示により、自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、BTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0063】
本開示により、がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、BTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0064】
本開示によりBTN2A1アンタゴニストも提供され、このBTN2A1アンタゴニストはBTN2A1に特異的に結合し、
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3複合体(BTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されること;
ii)BTN2A1がVγ9に結合すること;
iii)BTN2A1/BTN3A1複合体がVγ9+ TCRに結合すること;および/または
iv)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を減少させること
を阻害する。
【0065】
本開示により、BTN2A1に特異的に結合し:
i)細胞の表面にBTN2A1/BTN3複合体(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)が形成されることを促進する;
ii)γδ T細胞の表面にVγ9+ TCRが連結されることを誘導する;および/または
iii)BTN2A1を発現している細胞の活性および/または生存を増加させる
BTN2A1アゴニストも提供される。
【0066】
一実施態様では、BTN2A1のアンタゴニストまたはアゴニストは抗原結合ドメインを含むタンパク質である。
【0067】
一実施態様では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv;
(iii)Fvフラグメント;
(iv)単一ドメイン抗体(sdAb)(例えばナノボディ);
(v)ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次の多量体;
(vi)Fabフラグメント;
(vii)Fab’フラグメント;
(viii)F(ab’)フラグメント;
(ix)F(ab’)2フラグメント;
(x)抗体のFc領域に連結された(i)~(ix)のいずれか1つ;
(xi)免疫エフェクタ細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに融合された(i)~(ix)のいずれか1つ;または
(xii)抗体
である。
【0068】
一実施態様では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv;
(iii)Fvフラグメント;
(iv)単一ドメイン抗体(sdAb);
(v)ナノボディ;
(vi)ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次の多量体;
(vii)Fabフラグメント;
(viii)Fab’フラグメント;
(ix)F(ab’)フラグメント;
(x)F(ab’)2フラグメント;
(xi)抗体のFc領域に連結された(i)~(x)のいずれか1つ;
(xii)免疫エフェクタ細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに融合された(i)~(x)のいずれか1つ;または
(xiii)抗体
である。
【0069】
一例では、本開示のタンパク質は、親和性成熟抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、またはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0070】
一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号100に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号101に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である。
【0071】
別の一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号108に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号109に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である。
【0072】
別の一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号116に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号117に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である。
【0073】
別の一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号124に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号125に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である。
【0074】
別の一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号132に示されている配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号133に示されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む抗体である。
【0075】
一例では、BTN2A1アンタゴニストは、配列番号100に記載されているアミノ酸配列を含むVHの相補性決定領域(CDR)を含むVHと、配列番号101に記載されているアミノ酸配列を含むVLのCDRを含むVLを含む抗体である。
【0076】
例えばこのアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号100のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号100のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号100のアミノ酸97~105に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号101のアミノ酸27~32に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号101のアミノ酸50~52に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号101のアミノ酸89~97に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0077】
一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号102に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号103に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号104に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号105に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号106に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号107に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0078】
別の一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号108のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号108のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号108のアミノ酸97~105に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号109のアミノ酸27~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号109のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号109のアミノ酸90~98に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0079】
一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号110に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号111に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号112に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号113に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号114に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号115に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0080】
別の一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号116のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号116のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号116のアミノ酸97~104に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号117のアミノ酸27~32に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号117のアミノ酸24~26に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号117のアミノ酸89~97に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0081】
一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号118に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号119に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号120に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号121に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号122に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号123に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0082】
別の一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号124のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号124のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号124のアミノ酸97~105に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号125のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号125のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号125のアミノ酸90~101に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0083】
一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号126に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号127に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号128に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号129に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号130に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号131に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0084】
別の一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号132のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号132のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号132のアミノ酸97~106に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号133のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号133のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号133のアミノ酸92~100に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0085】
一例では、このアンタゴニストは、
(i)(a)配列番号134に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号135に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号136に記載されている配列を含むCDR3
を含むVH、および/または
(ii)(a)配列番号137に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号138に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号139に記載されている配列を含むCDR3
を含むVLを含む抗体である。
【0086】
一例では、本開示のタンパク質は、親和性成熟抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、またはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0087】
一例では、タンパク質、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、上記のタンパク質、抗体、または機能的フラグメントのいずれかをコードする核酸によってコードされるタンパク質、抗体、またはその機能的フラグメントの任意の形態である。
【0088】
一例では、上記のアンタゴニストは、タンパク質、例えば本明細書に開示されている抗体の結合を競合的に阻害する可変領域を含む抗体である。
【0089】
別の一実施態様では、BTN2A1アンタゴニストは可溶性Vγ9+ TCRである。この可溶性Vγ9+ TCRは任意のTCRアレルを含むことができる。
【0090】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは単量体である。
【0091】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは多量体である。
【0092】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号85~89のいずれか1つに記載されている配列を含むγ鎖、および/または配列番号70~74のいずれか1つに記載されている配列を含む δ 鎖を含む。一実施態様では、γ鎖とδ鎖は、例えばトロンビンプロテアーゼ切断部位(例えばLVPRGS)で切断される。
【0093】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号90~94のいずれか1つに記載されている可変領域を含むγ鎖、および/または配列番号75~79のいずれか1つに記載されている可変領域を含むδ鎖を含む。
【0094】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号95~99のいずれか1つに記載されている配列を含むγ鎖可変領域の相補性決定領域3(CDR3)、および/または配列番号80~84のいずれか1つに記載されている配列を含むδ鎖可変領域の相補性決定領域3(CDR3)を含む。
【0095】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号95~99のいずれか1つに記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域、および/または配列番号80~84のいずれか1つに記載されているCDRを含むδ鎖可変領域を含む。
【0096】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号95に記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域と、配列番号80に記載されているCDR3を含むδ鎖可変領域を含む。
【0097】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号96に記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域と、配列番号81に記載されているCDR3を含むδ鎖可変領域を含む。
【0098】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号97に記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域と、配列番号82に記載されているCDR3を含むδ鎖可変領域を含む。
【0099】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号98に記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域と、配列番号83に記載されているCDR3を含むδ鎖可変領域を含む。
【0100】
一実施態様では、可溶性Vγ9+ TCRは、配列番号99に記載されているCDR3を含むγ鎖可変領域と、配列番号84に記載されているCDR3を含むδ鎖可変領域を含む。
【0101】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合してγδ T細胞を活性化させるBTN2A1アゴニストが提供される。
【0102】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合してγδ T細胞活性化と関連する細胞表面マーカーの発現を誘導するBTN2A1アゴニストが提供される。
【0103】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合してγδ T細胞による1つまたは複数のサイトカインの分泌を誘導するBTN2A1アゴニストが提供される。
【0104】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合して、γδ T細胞ががん細胞を殺傷すること、および/またはがん細胞の増殖を阻害すること、および/または例えばウイルス、細菌、または寄生虫に感染した細胞を殺傷すること、および/または例えばウイルス、細菌、または寄生虫に感染した細胞の増殖を阻害することを誘導するBTN2A1アゴニストが提供される。
【0105】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合して:
(i)γδ T細胞を活性化させる、および/または細胞の集団内の活性化されたγδ T細胞の数を増加させる;および/または
(i)T細胞活性化マーカーを発現しているγδ T細胞の割合を増加させる;および/または
(ii)γδ T細胞によるサイトカイン(例えばインターフェロン-γ)の分泌を増加させる;および/または
(iii)γδ T細胞が、がん細胞を殺傷すること、および/またはがん細胞の増殖を阻害すること、および/または感染した細胞を殺傷すること、および/または感染した細胞の増殖を阻害することを誘導する;および/または
(iv)γδ T細胞の細胞表面に発現するT細胞活性化のマーカーの量を増加させる
BTN2A1アゴニストが提供される。
【0106】
本開示によりさらに、BTN2A1アゴニストとして、BTN2A1に特異的に結合して:
(i)細胞表面にCD25を発現しているγδ T細胞の割合を増加させる;および/または
(ii)γδ T細胞によるインターフェロンγの分泌を増加させる;および/または
(iii)γδ T細胞ががん細胞を殺傷すること、および/またはがん細胞の増殖を阻害することを誘導する;および/または
(iv)γδ T細胞の細胞表面に発現するCD25の量を増加させる
BTN2A1アゴニストが提供される。
【0107】
一例では、BTN2A1アゴニストは、γδ T細胞の集団をインビトロでBTN2A1アゴニストと少なくとも6時間または8時間または10時間または12時間の期間にわたって接触させてその集団の中でCD25を発現しているγδ T細胞の割合をフローサイトメトリーで測定することを含むアッセイで測定するとき、細胞表面にCD25を発現しているγδ T細胞の数を増加させる。このようなアッセイは、γδ T細胞の表面で発現したCD25および/または他の分子のレベルを評価するのにも有用である。
【0108】
一例では、細胞表面にCD25を発現しているγδ T細胞の割合の増加は、
(i)BTN2A1アゴニストと接触させなかったγδ T細胞の集団においてCD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合;および/または
(ii)BTN2A1アゴニストまたはBTN2A1アンタゴニストでないBTN2A1に特異的に結合する抗体と接触させたγδ T細胞の集団においてCD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合
との比較である。
【0109】
一例では、上記のアゴニストは、γδ T細胞活性化の(CD25に加えて)1つ以上の追加マーカーを発現しているγδ T細胞の割合を増加させる、および/またはγδ T細胞の細胞表面に発現した活性化CD25の(CD25に加えて)1つ以上の追加マーカーの量を増加させる。
【0110】
一例では、BTN2A1アゴニストは、CD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合を、γδ T細胞の集団内の細胞の少なくとも10%まで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、CD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合を、γδ T細胞の集団内の細胞の少なくとも15%まで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、CD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合を、γδ T細胞の集団内の細胞の少なくとも20%まで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、CD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合を、γδ T細胞の集団内の細胞の少なくとも30%まで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、CD25を細胞表面に発現しているγδ T細胞の割合を、γδ T細胞の集団内の細胞の少なくとも40%まで増加させる。
【0111】
別の一例では、BTN2A1アゴニストは、インビトロの細胞培養物の中でγδ T細胞の集団をBTN2A1アゴニストとともに少なくとも6時間または8時間または10時間または12時間の期間にわたって培養して細胞培養物の流体1 mL当たりのインターフェロン-γの量を測定することを含むアッセイで測定するとき、γδ T細胞によるインターフェロン-γの分泌を増加させる。
【0112】
一例では、BTN2A1アゴニストは、インターフェロン-γの分泌をγδ T細胞培養物からの流体の10 pg/mLまで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、インターフェロン-γ の分泌をγδ T細胞培養物からの流体の20 pg/mLまで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、インターフェロン-γの分泌をγδ T細胞培養物からの流体の30 pg/mLまで増加させる。一例では、BTN2A1アゴニストは、インターフェロン-γの分泌をγδ T細胞培養物からの流体の40 pg/mLまで増加させる。
【0113】
一例では、このアゴニストは、(インターフェロン-γに加えて、またはインターフェロン-γの代わりに)1つ以上の追加または代わりのサイトカインの分泌を増加させる。
【0114】
さらなる一例では、細胞(例えば黒色腫細胞または黒色腫細胞系)を、γδ T細胞と、BTN2A1アゴニストと、生きている細胞によって還元されて検出可能な試薬(例えばホルマザン)になる試薬(例えば3-(4,5-ジメチルチアゾル-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド[MTT])の存在下で培養し、その検出可能な試薬を検出することを含むアッセイで測定するとき、γδ T細胞が細胞(例えばがん細胞または感染した細胞)を殺傷すること、および/または細胞の増殖を阻害することを誘導する。そのとき検出可能な試薬のレベルがBTN2A1アゴニストの存在下ではBTN2A1アゴニストの不在下と比べて低下していることが、細胞が殺傷されたか、細胞の増殖が阻害されたことを示している。
【0115】
一例では、BTN2A1アゴニストは、抗原結合ドメインを含むタンパク質である。
【0116】
一実施態様では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv;
(iii)Fvフラグメント;
(iv)単一ドメイン抗体(sdAb);
(v)ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次の多量体;
(vi)Fabフラグメント;
(vii)Fab’フラグメント;
(viii)F(ab’)フラグメント;
(ix)F(ab’)2フラグメント;
(x)抗体のFc領域に連結された(i)~(ix)のいずれか1つ;
(xi)免疫エフェクタ細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントに融合された(i)~(ix)のいずれか1つ;または
(xii)抗体
である。
【0117】
一例では、BTN2A1アゴニストは、配列番号140に記載されている配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、配列番号144に記載されている配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む抗体である。
【0118】
一例では、BTN2A1アゴニストは、配列番号148に記載されている配列を含むVLと、配列番号152に記載されている配列を含むVHを含む抗体である。
【0119】
一例では、BTN2A1アゴニストは、配列番号156に記載されている配列を含むVLと、配列番号160に記載されている配列を含むVHを含む抗体である。
【0120】
一例では、BTN2A1アゴニストは、上記の任意の抗体のCDRを含むVLとVHを含む抗体である。例えばCDRは、Kabatの番号付けシステムによって規定されている(Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987年と1991年)。
【0121】
例えばBTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号140のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号140のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号140のアミノ酸90~98に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号144のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号144のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号144のアミノ酸97~109に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0122】
例えばBTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号148のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号148のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号148のアミノ酸90~100に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号152のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号152のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号152のアミノ酸97~116に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0123】
例えばBTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号156のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号156のアミノ酸51~53に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号156のアミノ酸90~100に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号160のアミノ酸26~33に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号160のアミノ酸51~58に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号160のアミノ酸97~109に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0124】
一例では、BTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号141に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号142に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号143に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号145に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号146に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号147に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0125】
一例では、BTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号149に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号150に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号151に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号153に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号154に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号155に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0126】
一例では、BTN2A1アゴニストは、
(i)(a)配列番号157に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号158に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号159に記載されている配列を含むCDR3
を含むVL;および/または
(ii)(a)配列番号161に記載されている配列を含むCDR1;
(b)配列番号162に記載されている配列を含むCDR2;および
(c)配列番号163に記載されている配列を含むCDR3
を含むVHを含む抗体である。
【0127】
一例では、本開示のBTN2A1アゴニストは、親和性成熟抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、またはヒト化抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0128】
一例では、BTN2A1アゴニストは、タンパク質、例えば本明細書に開示されている抗体の結合を競合的に阻害する、および/または本明細書に開示されている抗体と同じエピトープに結合する可変領域を含む抗体である。
【0129】
本開示により、対象においてVγ9+ TCRを発現するγδ T細胞を活性化させる方法も提供され、この方法は、上記のBTN2A1アゴニストをその対象に投与することを含む。
【0130】
本開示により、対象においてVγ9+ γδ T細胞応答を誘導または増強する方法も提供され、この方法は、上記のBTN2A1アゴニストをその対象に投与することを含む。
【0131】
本開示により、Vγ9+ TCRを発現しているγδ T細胞をインビトロまたは生体外で活性化させる方法も提供され、この方法は、そのγδ T細胞と、BTN2A1を発現している細胞を、上記のBTN2A1アゴニストの存在下で培養することを含む。一実施態様では、この方法は、その活性化されたγδ T細胞を、それを必要とする対象に投与することをさらに含む。
【0132】
本開示により、自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、上記のBTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象における自己免疫疾患、移植拒絶、移植片対宿主病、または移植片対腫瘍効果の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0133】
本開示により、がんまたは感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和する方法も提供され、この方法は、上記のBTN2A1アゴニストを、それを必要とする対象に、その対象におけるがんまたは感染症の前記症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに十分な量で投与することを含む。
【0134】
配列リストの鍵
【0135】
配列番号1はヒトBTN2A1アイソフォーム1のアミノ酸配列である。
配列番号2はヒトBTN2A1アイソフォーム2のアミノ酸配列である。
配列番号3はヒトBTN2A1アイソフォーム3のアミノ酸配列である。
配列番号4はヒトBTN2A1アイソフォーム4のアミノ酸配列である。
配列番号5はヒトアネキシンA5のアミノ酸配列である。
配列番号6はヒトアネキシンA1のアミノ酸配列である。
配列番号7はラクトアドヘリンC1C2ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号8はPSP1タンパク質のアミノ酸配列である。
配列番号9~69はプライマーをコードするヌクレオチド配列である(表2参照)。
配列番号70はδ2(クローン6)のアミノ酸配列である。
配列番号71はδ2(クローン3)のアミノ酸配列である。
配列番号72はδ2(クローン4)のアミノ酸配列である。
配列番号73はδ2(クローン5)のアミノ酸配列である。
配列番号74はδ2(クローン7)のアミノ酸配列である。
配列番号75はδ2(クローン6)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号76はδ2(クローン3)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号77はδ2(クローン4)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号78はδ2(クローン5)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号79はδ2(クローン7)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号80はCDR3δ(クローン3)のアミノ酸配列である
配列番号81はCDR3δ(クローン4)のアミノ酸配列である
配列番号82はCDR3δ(クローン5)のアミノ酸配列である
配列番号83はCDR3δ(クローン6)のアミノ酸配列である
配列番号84はCDR3δ(クローン7)のアミノ酸配列である
配列番号85はγ9(クローン6)のアミノ酸配列である。
配列番号86はγ9(クローン3)のアミノ酸配列である。
配列番号87はγ9(クローン4)のアミノ酸配列である。
配列番号88はγ9(クローン5)のアミノ酸配列である。
配列番号89はγ9(クローン7)のアミノ酸配列である。
配列番号90はγ9(クローン6)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号91はγ9(クローン3)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号92はγ9(クローン4)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号93はγ9(クローン5)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号94はγ9(クローン7)の可変領域のアミノ酸配列である。
配列番号95はCDR3γ(クローン3)のアミノ酸配列である
配列番号96はCDR3γ(クローン4)のアミノ酸配列である
配列番号97はCDR3γ(クローン5)のアミノ酸配列である
配列番号98はCDR3γ(クローン6)のアミノ酸配列である
配列番号99はCDR3γ(クローン7)のアミノ酸配列である
配列番号100はHu34C VHのアミノ酸配列である
配列番号101はHu34C VLのアミノ酸配列である
配列番号102はHu34C VH CDR1のアミノ酸配列である
配列番号103はHu34C VH CDR2のアミノ酸配列である
配列番号104はHu34C VH CDR3のアミノ酸配列である
配列番号105はHu34C VL CDR1のアミノ酸配列である
配列番号106はHu34C VL CDR2のアミノ酸配列である
配列番号107はHu34C VL CDR3のアミノ酸配列である
配列番号108はクローン227 VHのアミノ酸配列である
配列番号109はクローン227 VLのアミノ酸配列である
配列番号110はクローン227 VH CDR1のアミノ酸配列である
配列番号111はクローン227 VH CDR2のアミノ酸配列である
配列番号112はクローン227 VH CDR3のアミノ酸配列である
配列番号113はクローン227 VL CDR1のアミノ酸配列である
配列番号114はクローン227 VL CDR2のアミノ酸配列である
配列番号115はクローン227 VL CDR3のアミノ酸配列である
配列番号116はクローン236 VHのアミノ酸配列である
配列番号117はクローン236 VLのアミノ酸配列である
配列番号118はクローン236 VH CDR1のアミノ酸配列である
配列番号119はクローン236 VH CDR2のアミノ酸配列である
配列番号120はクローン236 VH CDR3のアミノ酸配列である
配列番号121はクローン236 VL CDR1のアミノ酸配列である
配列番号122はクローン236 VL CDR2のアミノ酸配列である
配列番号123はクローン236 VL CDR3のアミノ酸配列である
配列番号124はクローン266 VHのアミノ酸配列である
配列番号125はクローン266 VLのアミノ酸配列である
配列番号126はクローン266 VH CDR1のアミノ酸配列である
配列番号127はクローン266 VH CDR2のアミノ酸配列である
配列番号128はクローン266 VH CDR3のアミノ酸配列である
配列番号129はクローン266 VL CDR1のアミノ酸配列である
配列番号130はクローン266 VL CDR2のアミノ酸配列である
配列番号131はクローン266 VL CDR3のアミノ酸配列である
配列番号132はクローン267 VHのアミノ酸配列である
配列番号133はクローン267 VLのアミノ酸配列である
配列番号134はクローン267 VH CDR1のアミノ酸配列である
配列番号135はクローン267 VH CDR2のアミノ酸配列である
配列番号136はクローン267 VH CDR3のアミノ酸配列である
配列番号137はクローン267 VL CDR1のアミノ酸配列である
配列番号138はクローン267 VL CDR2のアミノ酸配列である
配列番号139はクローン267 VL CDR3のアミノ酸配列である
配列番号140は抗体244のVLのアミノ酸配列である
配列番号141は抗体244のVLのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号142は抗体244のVLのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号143は抗体244のVLのCDR3のアミノ酸配列である
配列番号144は抗体244のVHのアミノ酸配列である
配列番号145は抗体244のVHのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号146は抗体244のVHのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号147は抗体244のVHのCDR3のアミノ酸配列である
配列番号148は抗体253のVLのアミノ酸配列である
配列番号149は抗体253のVLのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号150は抗体253のVLのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号151は抗体253のVLのCDR3のアミノ酸配列である
配列番号152は抗体253のVHのアミノ酸配列である
配列番号153は抗体253のVHのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号154は抗体253のVHのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号155は抗体253のVHのCDR3のアミノ酸配列である
配列番号156は抗体259のVLのアミノ酸配列である
配列番号157は抗体259のVLのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号158は抗体259のVLのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号159は抗体259のVLのCDR3のアミノ酸配列である
配列番号160は抗体259のVHのアミノ酸配列である
配列番号161は抗体259のVHのCDR1のアミノ酸配列である
配列番号162は抗体259のVHのCDR2のアミノ酸配列である
配列番号163は抗体259のVHのCDR3のアミノ酸配列である
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】Vγ9Vδ2+ γδ T細胞受容体四量体染色はBTN2A1に依存する。(A)さまざまな細胞系のVγ9Vδ2+ γδTCR四量体染色。ヒストグラムは、γδTCR四量体#3~#7;無関係な対照(マウスCD1d-α-GalCer)四量体;ストレプトアビジン(SAv)-PE対照を示す。(B)ソート(分取)なしのLM-MEL-62細胞とVγ9Vδ2 γδTCR四量体lo LM-MEL-62細胞の間でのそれぞれのgRNAに関するlog2(倍数変化)対-log10(p値)を示すボルカノプロットであり、濃い灰色は有意差ありを示す(偽発見率<0.05)。(C)LM-MEL-62 BTN2A1null細胞とLM-MEL-75 BTN2A1null細胞のVγ9Vδ2+ γδTCR四量体染色を親細胞と比較。(D)BTN2A1またはBTN3A1のどちらかをトランスフェクトされた親細胞とBTN2A1null1/null2LM-MEL-62細胞に関する抗BTN2A1 mAb(クローン231)染色、抗BTN3A1/3A2/3A3 mAb(クローン103.2)染色、およびVγ9Vδ2+ γδTCR四量体(#6)染色。*WT細胞のγδTCR四量体染色は2回示されている。(E)LM-MEL-62細胞、LM-MEL-75細胞、およびHEK-293T細胞のVγ9Vδ2+ γδTCR四量体#6染色であり、細胞を一群の抗BTN2A1 mAbとともにあらかじめインキュベートした後にアイソタイプ対照(白色)と比較。下方のヒストグラムは、無関係なマウスCD1d-α-GalCer四量体を用いた対照染色を示す。tet、四量体。(A)、(C)、(D)、(E)の中のデータは、2つの独立な実験を表わす。
【0137】
図2】BTN2A1はVγ9+ γδ T細胞受容体に結合する。(A)3つの代表的なヒトPBMCサンプルに関するBTN2A1四量体-PE染色(第1列)またはストレプトアビジン-PE対照染色(第2列)対CD3ε染色。ヒストグラムは、ゲートされたγδ T細胞(CD3+ γδTCR+)、αβ T細胞(CD3+ γδTCR-)、B細胞(CD3- CD19+)、単球(CD3- CD19- CD14+)、またはその他(CD3- CD19- CD14-)のサブセットに関するBTN2A1四量体-PE染色(白色)またはストレプトアビジン-PE対照(灰色)を示す。箱ひげ図(右側)は、異なるドナーからの血液サンプル中のBTN2A1四量体に結合するそれぞれの細胞系列の割合を示す。(B)Vγ9+Vδ2+ γδ T細胞、Vγ9+Vδ1+ γδ T細胞、Vγ9-Vδ1+ γδ T細胞に関するBTN2A1四量体(白色のヒストグラム)染色とストレプトアビジン-PEのみ対照(灰色のヒストグラム)染色の重ね合わせであり、親ゲーティングが左側に示されている。箱ひげ図(右側)は、異なるドナーの中のBTN2A1四量体-PEに結合するそれぞれのγδ T細胞サブセットの割合を示す。(C)精製してインビトロで増殖させたVδ2+ T細胞を用いて二重染色または一重染色した対照に関するBTN2A1四量体-PEとCD3ε-APCの間のFRET蛍光(ヒストグラムの重ね合わせ)。箱ひげ図は、異なるヒトドナーからのγδ T細胞サブセットにおけるFRET平均蛍光強度(MFI)を示す。(D)固定化されたVγ9+Vδ2+(「TCR #6」、左)γδTCR、Vγ9+Vδ1+(「ハイブリッド」、中央)γδTCR、およびVγ5+Vδ1+(「9C2」、右)γδTCRへの可溶性BTN2A1(200~3.1 μM)の結合を表面プラズモン共鳴によって測定。飽和プロット(下)は、平衡時の結合とスキャッチャードプロットを示す。KD、平衡時の解離定数±SEM;SAv、ストレプトアビジン。データは、(A)では2つの独立な実験からプールしたn=8人のドナーを表わし;(B)では2つの実験からのn=8人のドナーを表わし;(C)では3つの独立な実験からプールしたn=7人のドナーを表わし;(D)ではn=2つの別々の実験を表わし、その一方(実験2)は二連で実施して平均した。
【0138】
図3】pAgに対するγδ T細胞の機能的応答はBTN2A1に依存する。(A)示されているように±4 μMのゾレドロネートおよび±10 μg/mlの中和抗BTN2A1 mAbとともに24時間にわたって培養したPBMCの中からゲートされたVδ2+ T細胞と対照Vδ1+ T細胞に関するCD25の発現とCD3εの平均蛍光強度(MFI)。*、p<0.05;**、p<0.01、***、p<0.001、ANOVAによる。(B)(A)からの培養物上清の中のIFN-γとTNFの濃度。**、p<0.01;***、p<0.001、フリードマン検定による。(C)4 μMのゾレドロネートなし(灰色)またはあり(濃い灰色)で親LM-MEL-62またはBTN2A1null LM-MEL-62のAPCとともに培養し、精製してインビトロであらかじめ増殖させたVδ2+ T細胞に関するCD3のMFIとCD25の発現。各シンボルは異なるドナーを表わす。棒グラフは平均値±SEMを示す。(D)1 μMのゾレドロネートで2日間チャレンジした後、IL-2を含有する培地の中で非接着PBMCをさらに7日間維持した、PBMCと親LM-MEL-62またはBTN2A1null1 LM-MEL-62のAPCの共培養物の中のVδ2+ γδ T細胞の数。*、p<0.05、マン-ホイットニー検定を利用。(E)親LM-MEL-62標的またはBTN2A1null LM-MEL-62標的とインビトロで増殖させたVδ2+ T細胞±1 μMのゾレドロネートの共培養物の、示されている時点での細胞生存率(平均値±SEM)を代謝染料MTSを用いて求め、入力した細胞数に対して規格化した。*、p<0.05、マン-ホイットニー検定を利用。(F)精製してインビトロであらかじめ増殖させたVδ2+ T細胞をHMBPP(0.5 ng/ml)またはプレートに結合した抗CD3+抗CD28(それぞれ10 μg/ml)±10 μg/mlの中和抗BTN2A1 mAbとともに培養した後のCD25の発現(左)とIFN-γの濃度(右)。データは、(A)と(B)では2つの独立な実験からプールしたn=8人のドナーであり;(C)では3つの独立な実験からプールしたn=3人のドナーであり、それぞれ、異なるシンボルで示されているn=4の技術的レプリケートで実施し;(D)ではn=4人のドナーであり、それぞれ、5つの独立な実験で1~5の技術的レプリケートから平均し;(E)では2つの独立な実験からプールしたn=8人のドナーであり;(F)n=4人のドナーであり、それぞれ、6つの独立な実験で2~6の技術的レプリケートから平均した。Zol、ゾレドロネート。。
【0139】
図4】BTN2A1とBTN3A1の両方がpAg提示に必要とされる。(A)40 μMのゾレドロネートの存在下(濃い灰色)または不在下(灰色)で、示されているAPCとともに一晩共培養した後のG115 Vγ9Vδ2+ γδ TCR(上の行)、9C2 Vγ5Vδ1+ γδ TCR(中央の行)、および親(TCR-)J.RT3-T3.5(下の行)Jurkat細胞に関するCD69の発現。数字は蛍光強度の中央値を示す。(B)4 μMのゾレドロネートの存在下(濃い灰色)または不在下(灰色)で、(B)BTNL3、BTNL8、BTN2A1、BTN3A1、およびBTN3A2、または(C)BTN2A1ΔB30、BTN3A1、およびBTN3A2の示されている組み合わせをトランスフェクトされたCHO-K1(ハムスター起源)またはNIH-3T3(マウス起源)のAPCとともに24時間培養した、精製してインビトロであらかじめ増殖させたγδ T細胞の表面でのCD25発現(各サンプルについて、刺激なしの対照に規格化した)の変化。(D)(A)におけるようにしてγδ T細胞を共培養したが、APCの2つの集団(それぞれ別々に、BTN2A1、BTN3A1、およびBTN3A2の組み合わせがトランスフェクトされる)の1:1混合物が存在していた点が異なる。それぞれのシンボルと接続線は異なるドナーを表わす。*、p<0.05;**、p<0.01、対応のあるウィルコクソン検定を利用。棒グラフは平均値±SEMを示す。データは、(A)では3つの似た実験の1つを表わし;(B~D)では、3~5回の独立な実験からプールした群1つ当たりn=7~9人のドナーを表わす。
【0140】
図5】BTN2A1は細胞表面でBTN3A1と会合している。(A)親LM-MEL-75(「WT」、上の行)細胞、BTN2A1null(中央の行)細胞、およびBTN3A1null(下の行)細胞の表面のBTN2A1(クローン259)とBTN3A(クローン103.2)と汎HLAクラスI(クローンW6/32)のZ-スタック共焦点顕微鏡画像。(B)グラフは個々の視野に関するピアソンの相関係数を示す。代表的なボクセル密度プロットは、抗BTN2A1対 抗BTN3A1/3A2/3A3(「BTN3A」)(左)、抗BTN2A1対 抗HLA-A、B、C(中央)、および抗BTN3A対 抗HLA-A、B、C(右)の間の相関を表わす。***、p<0.001、クラスカル-ウォリス検定をダンの事後検定とともに使用。(C)示されているmAbクローンを用いた、LM-MEL-75細胞の表面での抗BTN2A1対BTN3A共染色、または単染色、またはマウスIgG1対マウスIgG2aアイソタイプ対照染色(それぞれx軸とy軸)(上の行)。ヒストグラム(第2行)はFRET蛍光を表わす。(D)ブチロフィリンCFP/YFPをトランスフェクトされたNIH-3T3細胞の間でのFRET+細胞の割合。データは、(A)と(B)では2つのプールされた独立な実験を表わし;(C)では1つの実験を表わし;(D)では4つの独立な実験を表わす。
【0141】
図6】Vγ9Vδ2+ γδ T細胞受容体は2つの異なるリガンド結合ドメインを含有する。(A)単一残基G115 γδTCRアラニン変異体(または対照Jurkat.9C2 γδTCR)をトランスフェクトされてゲートされたGFP+CD3+ HEK-293T細胞のBTN2A1四量体-PE(濃い灰色)染色と対照ストレプトアビジン-PEのみ(黒色)染色をG115 WT γδTCRのBTN2A1四量体染色に規格化。(B)G115 γδTCR(pdbコード1HXM(T.J. Allison et al. (2001))Vγ9 ABED β-シートの模式図であり、R20、E70、およびH85の側鎖を示している。(C)40 μMのゾレドロネートの存在下(濃い灰色)または不在下(灰色)でLM-MEL-75 APCとともに一晩培養した後にG115 γδTCRアラニン変異体を発現しているJurkat細胞(または9C2 γδTCR+ Jurkat細胞、または親γδTCR-Jurkat細胞)の表面でのCD69発現をG115 WT γδTCR+ Jurkat細胞の活性化レベルに規格化。(D)G115 γδTCR(pdbコード1HXM (25))の表面であり、BTN2A1四量体の結合(上の行)とゾレドロネート活性(下の行)にとって重要な残基を示している。BTN2A1結合またはCD69誘導の喪失が75%超である残基の側鎖を標識し、濃い灰色でも示してある;50%~75%の低下を標識し、中間の濃い灰色でも示してある;50%未満の低下灰色;Vδ2、薄い灰色;Vγ9、中間の灰色;定常領域、白色。MFI、蛍光強度の中央値;SAv、ストレプトアビジンだけの対照;unstim、刺激なしの対照。(A)と(B)の中のデータは、N=3回の別々の実験の平均値±SEMを表わす。
【0142】
図7】抗BTN3A1 mAbクローン20.1のアゴニスト活性はBTN2A1に依存する。抗BTN3A(クローン20.1、10 μg/ml、濃い灰色のヒストグラム)またはアイソタイプ対照(マウス IgG1、10 μg/ml、薄い灰色)とともにあらかじめインキュベートした親LM-MEL-75(「WT」)またはBTN2A1nullどちらかのAPCとともに培養した後、Vγ9Vδ2+ γδTCR(クローンG115)、または示されているG115 γδTCR変異体、または対照Vγ5Vδ1+ γδTCR(クローン9C2)を発現しているJurkat細胞の表面でのCD69発現。2つの別々の実験の1つを表わすデータ。
【0143】
図8】可溶性Vγ9Vδ2+ γδ TCR四量体の生成。(A)PBMCから単一細胞ソートされたVδ2+ γδ T細胞に関するVδ2とVγ9のPCR。陰性対照は、同じプレートからの空のウエルのPCRを示す。(B)選択された細胞からのペアにされたγ-鎖遺伝子とδ-鎖遺伝子の利用とCDR3モチーフ。(C)ロイシンジッパーにカップルした完全長エクトドメインとAviタグ/His6タグを含有する可溶性γδ TCRコンストラクトの設計。(D)変性した可溶性のビオチニル化Vγ9Vδ2+ γδ TCRと非ビオチニル化Vγ9Vδ2+ γδ TCRが単独の場合、または変性していない天然ストレプトアビジン(SAv)と混合された場合のSDS-PAGE分析であり、ビオチニル化されたTCR δ-鎖が天然ストレプトアビジンとともに複合体に組み込まれることを示す。MW、分子量マーカー。
【0144】
図9】全ゲノムCRISPR/Cas9ノックアウトスクリーンを利用したVγ9Vδ2+ γδ TCRリガンドの同定。(A)n=4つの別々のレプリケートからγδTCR四量体#6lo LM-MEL-62細胞を4回続けてソート-精製した。ヒストグラムは、各ラウンドのソーティングをしてから1~2週間培養した後のγδTCR四量体#6に対照染色を重ねて示す。(B)γδTCR四量体#6lo集団の中の上位40個のガイドRNA遺伝子標的を、対照であるソートなしの(「pre-sort」)LM-MEL-62細胞と比較。
【0145】
図10】BTN2A1とBTN3A1をノックアウトした細胞系の生成。BTN2A1 nullとBTN3A1nullのLM-MEL-62細胞またはLM-MEL-75細胞を、標的細胞にCas9と特異的ガイドRNAをコードするベクターを一過性にトランスフェクトすることによって生成させた後、バルク細胞ソーティングを実施した。(A)各細胞系の抗BTN2A1(クローン231)染色と抗BTN3A1/3A2/3A3(クローン103.2)染色にアイソタイプ対照を重ね合わせてある。(B)各細胞系のVγ9Vδ2+ γδ TCR四量体#6染色(濃い灰色)を無関係な四量体対照(マウスCD1d-α-GalCer、灰色)と重ね合わせてある。データは2つの似た実験を表わす。
【0146】
図11】抗BTN2A1 mAbの生成。(A)BTN2A1、BTN2A2、BTN3A1、BTN3A2のエクトドメインのアラインメント。(B)プレートに結合したBTN2A1、BTN2A2、またはBTN3A3のエクトドメインへの抗BTN2A1 mAbクローンの結合であり、ELISAによる。ここでヒートマップは吸光度を示す。(C)完全長ヒトBTN2A1、BTN2A2、またはBTN3A1をトランスフェクトされたマウスNIH-3T3細胞、またはトランスフェクトされていない細胞に対する抗BTN2A1 mAbの反応性が示されている。データはN=2回の別々の実験から平均した。。(D)LM-MEL-62親細胞(「WT」)、BTN2A1null1細胞、およびBTN2A1null2細胞に対する選択された抗BTN2A1クローンまたはアイソタイプ対照(マウスIgG2a κ、クローンBM4)の反応性であり、BV421で標識した二次ポリクローナルAbを使用した。同じアイソタイプ対照がそれぞれの行で重ね合わされている。(E)LM-MEL-62親細胞(「WT」)、BTN2A1null細胞、およびBTN3A1null細胞に対する選択された抗BTN2A1クローンの反応性であり、PEで標識した二次ポリクローナルAbを使用。A450、450 nmでの吸光度。
【0147】
図12】BTN2A1四量体の生成。(A)C末端リンカー(アミノ酸配列:GTGSGSGG)に融合されたBTN2A1エクトドメイン(IgVドメインとIgCドメイン;Gln29~Ser245)とそれに続くAvi(ビオチンリガーゼ)タグおよびHis6-タグ(アミノ酸配列: LNDIFEAQKIEWHEHHHHH)を含むコンストラクトの設計。(B)293T細胞の中で産生されたビオチニル化BTN2A1(と対照BTN3A1)のエクトドメインのSDS-PAGE分析。右側のレーン変性していないストレプトアビジン(SAv.)との複合体にされた変性したBTN2A1-ビオチン。(C)抗BTN2A1クローンであるHu34Cと231に対するプレートに結合したBTN2A1エクトドメインの反応性をアイソタイプ対照(クローンBM4)と比較したELISA。パネル(C)の中のデータは1つの実験を表わす。MW、分子量マーカー。
【0148】
図13】BTN2A1はVγ9Vδ2+ γδ TCR四量体によって特異的に認識される。ヒトBTN2A1、BTN2A2、BTNL3+BTNL8、またはBTN3A1+BTN3A2をトランスフェクトされた後にゲートされたGFP+マウス3T3細胞の表面でのVγ9Vδ2+ γδ TCR四量体#6、無関係な対照四量体(マウスCD1d-α-GalC)、または対照ストレプトアビジン(SAv.)単独の染色(親のゲーティングは密度プロットの上の行に示されている)。データは2つの似た実験を表わす。
【0149】
図14】アンタゴニストである抗BTN2A1 mAbは、pAgを媒介としたVδ2+ γδ T細胞の活性化を特異的に阻止するが、ペプチドを媒介としたCD8+ αβ T細胞の活性化は阻止しない。(A)インビトロで、pAg HMBPP(0.5 ng/ml)またはゾレドロネート(4 μM)のどちらかを単独で用いて、またはサイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、およびインフルエンザ(1 μg/ml)に由来する免疫原性ペプチドを含有するCEFペプチド混合物との組み合わせを用いて±10 μg/mlの中和抗BTN2A1 mAb(クローンHu34C、236、259、267)、抗BTN3A分子(クローン103.2)、またはアイソタイプ対照(マウスIgG2a、κ、クローンBM4)でチャレンジした後の、PBMCの中からゲートされたVδ2+ CD3+ T細胞(左)またはCD8+ CD3+ T細胞(右)に関する細胞内IFN-γ発現。(B)代表的なゲーティング(上の行)と、ゲートされたVδ2+ CD3+ T細胞(中央の行)、またはCD8+ CD3+ T細胞(下の行)の表面でのIFN-γ染色のプロット。データは2つの独立な実験からの7人のドナーを表わす。
【0150】
図15】ゾレドロネート、HMBPP、およびIPPに対するJurkat G115 Vγ9Vδ2+ γδ T細胞の応答はBTN2A1に依存する。(A)段階的用量のpAg HMBPP、IPP、またはゾレドロネート±親LM-MEL-75 APCとともに培養した後のJurkat G115 Vγ9Vδ2 γδTCR+または対照Jurkat 9C2 Vγ5Vδ1 γδTCR+ T細胞の表面でのCD69誘導。Jurkat G115 T細胞系とJurkat 9C2 T細胞系を親LM-MEL-75、BTN2A1null、またはBTN3A1nullのAPCのいずれかとともに、±HMBPP(100 nM)、IPP(100 μM)、またはゾレドロネート(40 μM)で培養した後の(B)代表的なCD69のヒストグラムと(C)発現レベル。データは、(A)では1つの実験からであり;(B)と(C)ではN=4回の独立な実験からプールされた。
【0151】
図16】BTN2A1+BTN3A1は、pAgをγδ T細胞に提示する能力を持つマウスAPCを生成させる。(A)BTNL3、BTNL8、BTN2A1、BTN3A1とBTN3A2、またはBTN2A1ΔB30の示されている組み合わせをトランスフェクトされたNIH-3T3細胞の表面でのBTN2A1染色(クローン231)対BTN3A1/3A2/3A3染色(クローン103.2)、またはアイソタイプ対照染色(マウスIgG2aクローンBM4)。(B)4 μMのゾレドロネートの存在下(濃い灰色)または不在下(灰色)で、BTNL3、BTNL8、BTN2A1、BTN3A1とBTN3A2、またはBTN2A1ΔB30の示されている組み合わせをトランスフェクトされたCHO-K1またはNIH-3T3のAPCとともに24時間培養された、精製してインビトロであらかじめ増殖させたγδ T細胞の表面でのCD25発現。右側の3つの群は、それぞれBTN2A1、BTN3A1、およびBTN3A2の示されている組み合わせを別々にトランスフェクトされたAPCの2つの集団の1:1混合物の存在下で共培養されたγδ T細胞を示す。(C)BTN2A1とBTN2A1ΔB30の構造の模式図(左)と、BTN2A1またはBTN2A1ΔB30をトランスフェクトされたNIH-3T3細胞の表面の抗BTN2A1(クローン259)とγδTCR四量体(#6)を関連する対照と重ね合わせて示したヒストグラム。データは、3~5回の独立な実験からプールしたn=7~9人のドナー/群を表わす。TM、膜貫通ドメイン。
【0152】
図17】BTN2A1の細胞内B30.2ドメインへのHMBPPの結合は検出できない。(A)等温滴定カロリメトリーの生のトレースと、(B)pAg HMBPP、IPP、またはPBSバッファだけを順に注入したときの組み換えBTN2A1(左の列)またはBTN3A1(右の列)のB30.2ドメイン(100 μM)の結合の等温線。2つの独立な実験の1つからのデータを示してある。
【0153】
図18】細胞表面でのBTN2A1とBTN3A1の会合は細胞内B30.2ドメインとは独立である。輪郭プロット(上の行)は、BTN2A1、BTN3A1、BTN3A1、および/またはBTN2A1ΔB30の示された組み合わせをトランスフェクトされたマウスNIH-3T3細胞の表面でのBTN2A1(クローン259)染色対BTN3A(クローン103.2)染色(濃い灰色)を、アイソタイプ対照染色(x軸のマウスIgG1クローンMOPC-173対y軸のマウスIgG2aクローンBM4、灰色)と重ね合わせて示している。ヒストグラム(第2行)は、それぞれの染色条件でのFRETシグナルを表わす。データは2つの独立な実験を表わす。
【0154】
図19】CFPタグ付きとYFPタグ付きのブチロフィリンコンストラクトの生成。(A)CFPまたはYFPにカップルした「長い」か「短い」C末端可撓性リンカーを持つ完全長のBTN2A1、BTN3A1、BTNL3、およびBTNL8の設計。(B)C末端リンカーとCFP/YFPドメインのアミノ酸配列。(C)それぞれのコンストラクトを一過性にトランスフェクトされたマウスNIH-3T3細胞の表面での抗BTN2A1(クローン231)mAbと抗BTN3A分子(クローン103.2)mAbの染色(濃い灰色)またはアイソタイプ対照染色(IgG1対IgG2a、黒色)を示す代表的なプロット。(D)WT BTN分子またはCFP/YFPタグ付きBTN分子をトランスフェクトされたマウスNIH-3T3細胞でのBTN2A1(左)とBTN3A1(右)の表面発現を示す代表的なプロット。
【0155】
図20】BTN2A1とBTN3A1の細胞内ドメインは会合しており、これはpAgによって影響されない。(A)プロットは、ブチロフィリン分子の異なる組み合わせ(上の行)をトランスフェクトされたか、対照(第2行)を1回トランスフェクトされたマウス3T3細胞でのFRET対ドナー蛍光分子(CFP)を示す。(B)±HMBPP(100 ng/ml)またはゾレドロネート(40 μM)を用いて一晩チャレンジした、示されている組み合わせのCFP/YFPタグ付きブチロフィリンをトランスフェクトされたマウス3T3細胞でのFRET。(C)±HMBPP(100 ng/ml)またはゾレドロネート(40 μM)を用いて一晩チャレンジし、抗BTN2A1(クローン259)と抗BTN3A1(クローン103.2)の同時染色によって測定したBTN2A1とBTN3A1のエクトドメイン間のFRET。すべてのプロットが、トランスフェクトされた細胞(CFP、またはYFP、または両方)に関してあらかじめゲートされたが、適切な場合には、トランスフェクトされていない対照は別である。データは、(A)では4つの独立な実験を表わし;(B)と(C)では2つの独立な実験を表わす。
【0156】
図21】BTN2A1とBTN3A1の間の細胞内ドメイン会合は抗BTN2A1 mAbによって破壊される。トランスフェクトされたマウスNIH-3T3細胞を、一群の標識なし抗BTN2A1 mAb(10 μg/ml)、またはアイソタイプ対照(マウスIgG2a、κ、クローンBM4)とともにインキュベートした後の、CFPタグ付きまたはYFPタグ付きのBTN2A1とBTN3A1の間のFRET+細胞の割合(灰色)。対照BTN3A1+BTNL8トランスフェクタントのFRETレベルも示されている(濃い灰色)。BTN2A1+BTN3A1群のデータは2つの独立な実験を表わし、それぞれ、BTN2A1CFP+BTN3A1YFPトランスフェクタントとBTN3A1CFP+BTN2A1YFPトランスフェクタントを用いて実施した(グラフではまとめてプールされている);BTN3A1CFP+BTNL8YFPは2つの独立な実験からである。
【0157】
図22】Jurkat.G115 γδTCR変異体によるγδTCRの正常な発現と抗CD3刺激に対する応答。(A)Jurkat G115 γδTCR変異体のそれぞれをトランスフェクトされたHEK-293T細胞の表面でのCD3ε/GFP同時発現。ゲートは、BTN2A1四量体染色の強度を求めるのに使用した細胞を示す。(B)(A)でゲートされた集団のそれぞれの代表的なBTN2A1四量体染色(濃い灰色)とストレプトアビジンのみの対照(灰色)。(C)40 μMのゾレドロネートあり(濃い灰色)またはなし(灰色)の場合にLM-MEL-75 WT APCを含有する共培養物の中のJurkat G115変異体の表面での代表的なCD69誘導。(D)プレートに結合した抗CD3/抗CD28(それぞれ10 μg/ml、濃い灰色)の上で、または単独(灰色)で一晩培養した後のJurkat G115 γδTCR変異体の表面でのCD69誘導。(D)の中のデータはn=2回の独立な実験の平均値±SEMを示す。ND、実施せず。
【0158】
図23】複合体N-グリカンはBTN2A1がVγ9Vδ2+ γδ TCRに結合するのに必要とされない。複合体グリカンを有するBTN2A1エクトドメインを哺乳類Expi293Fの中で生成させ、単体グリカンを有するBTN2A1エクトドメインをGNTI欠損HEK-293S細胞の中で生成させた。後者をGlycoBuffer 3の中で製造者の指示に従って(NEB)エンドグリコシダーゼHを用いて室温で一晩処理し、脱グリコシル化されたBTN2A1を得た。(A)異なるビオチニル化BTN2A1エクトドメインのSDS-PAGE。(B)ビオチニル化BTN2A1エクトドメインの各バッチから生成したフィコエリトリン結合四量体を用いるか、対照ストレプトアビジン(SAv.)だけを用いて、親(TCR-)J.RT3-T3.5(上の行)、J.RT3-T3.5.9C2 Vγ5Vδ1+ γδ TCR(中央の行)、およびJurkat J.RT3-T3.5.G115 Vγ9Vδ2+ γδ TCR(下の行)を同時に染色し、細胞系を抗CD3ε-アロフィコシアニンでも染色した。BTN2A1四量体と抗CD3ε(下方のヒストグラム)の間のFRETも各サンプルで測定した。(C)PBMCドナー(左)、または精製してインビトロであらかじめ増殖させたVδ2+ γδ T細胞のn=3個のサンプル(右側のプロット)の表面でのグリコシル化(複合体または単体)BTN2A1四量体の染色。
【0159】
図24】BTN2A1は循環している単球の表面に発現する。2人の健康なPBMCドナーからのゲートされた白血球サブセットを、BTN2A2と交差反応しない抗BTN2A1クローン259とクローン229で染色し、アイソタイプ対照(IgG2a、κ)または二次だけ(白色)の染色と比較。ヒストグラムは、B細胞(CD19+ CD3-)、CD4+ T細胞(CD3+ CD4+ CD8-)、CD8+ T細胞(CD3+ CD4- CD8+)、γδ T細胞(CD3+ γδTCR+)、MAIT細胞(CD3+ MR1-5-OP-RU四量体+)、NK細胞(CD3- CD56+)、および単球(CD14+)に関する染色を示す。親LM-MEL-62とBTN2A1nullが同じ実験に含まれていた(下方のヒストグラム)。(B)(A)と同様だが、グラフがn=4~5人のドナーの平均蛍光強度(MFI)染色を示している点が異なる。(C)5人の独立したドナー由来でインビトロで増殖させたVδ2+ γδ T細胞の表面でのBTN2A1と対照GAPDHのウエスタンイムノブロット分析を親LM-MEL-62細胞およびBTN2A1null1細胞と比較。
【0160】
図25】BTN2A1は、ホスホ抗原に誘導されたガンマデルタT細胞によるサイトカイン産生にとって重要である。示されているLM-MEL-62細胞(WTまたはBTN2A1-KO)を単離されたガンマ-デルタT細胞(エフェクタと標的の比は2:1)とともに培養し、ゾレドロネートで処理した。培養物上清を1日後と3日後に回収し、(Luminexキットを用いて)サイトカインの分析を実施した。データ点は、独立な培養と処理からの単一のウエルである。
【0161】
図26】抗BTN2A1抗体244、253、および259がヒトVγ9Vδ2+ γδ T細胞に対して刺激活性を示すことを示す。(A)±10 μg/mlの抗BTN2A1抗体またはアイソタイプ対照(IgG2aクローンBM4)とともに一晩培養した後の、インビトロであらかじめ増殖させたVγ9Vδ2+ γδ T細胞の表面でのCD25発現が示されている。(B)同じ培養物からのインターフェロン-γ産生をサイトメトリービーズアレイによって検出。データは、2つの別々の実験からプールしたn=8人のドナーを表わす。
【0162】
図27】抗BTN2A1抗体253と259が腫瘍細胞の溶解を誘導できることを示す。(A)LM-MEL-75(薄い灰色の棒と円形シンボル)またはLM-MEL-62(濃い灰色の棒と正方形シンボル)と、抗体253、259、BM4(アイソタイプ対照)、ゾレドロネート(陽性対照)、またはHMBPP(陽性対照)の存在下で培養したVγ9Vδ2+ γδ T細胞による腫瘍細胞の溶解。(B)図19Aにおけるのと同じVγ9Vδ2+ γδ T細胞の表面でのCD25発現。
【0163】
図28】(A)は、抗BTN2A1抗体253と259を用いたCD25の上方調節による、ホスホ抗原とは独立なVγ9Vδ2の活性化を示す。抗体259はより大きな活性化能力を持つ。これらの抗体がその活性化能力を及ぼすのにAPCまたはホスホ抗原の添加は必要とされない。(B)LM-MEL-62細胞をVγ9Vδ2細胞と1:1の比で、異なる量の抗体253または259のそれぞれとともに培養した後の生存率。最大の殺傷は両方の抗体で1と10 μg/mlの間で実現するように見え、抗体259は抗体253よりも強力な細胞殺傷の誘導因子である。(C)Vγ9Vδ2細胞をエフェクタ、LM-MEL-62細胞を標的として、エフェクタ細胞と標的細胞(E:T)の比をさまざまにしてVγ9Vδ2細胞とともに培養した後のLM-MEL-62細胞の生存率。Vγ9Vδ2は1人の黒色腫患者(患者1)または1人の健康なドナーに由来するものであり、Vγ9Vδ2細胞を活性化させるため抗体259またはゾレドロネートで処理した。処理群とドナーの両方でエフェクタ細胞の数を増やしたときの標的細胞の生存率の低下は、細胞死がVγ9Vδ2細胞に依存することを示す。
【0164】
図29-1】1人の黒色腫患者(AとB)から増殖させたVγ9Vδ2細胞からのサイトカイン/ケモカインプロファイル。散布図は、2つの独立なレプリカからの平均値を示す。0での値を0.1に設定して対数スケールで見られるようにした。示されていないサイトカイン/ケモカインは検出されなかった。
図29-2】1人の健康なドナー(CとD)から増殖させたVγ9Vδ2細胞からのサイトカイン/ケモカインプロファイル。散布図は、2つの独立なレプリカからの平均値を示す。0での値を0.1に設定して対数スケールで見られるようにした。示されていないサイトカイン/ケモカインは検出されなかった。
【0165】
図30】(AとB)さまざまな処理のもとで、示されているサイトカイン/ケモカインの発現をBM4(アイソタイプ処理)と比べたときのパーセント変化を示す。棒は、2つの値の平均値のパーセント変化を示すが、259は例外であり、ウエルを1つだけ使用した。示されていないサイトカイン/ケモカインは検出されなかった。
【0166】
図31】BTN2A1は、Vγ9Vδ1+ T細胞系の活性化をそのコグネイトTCRリガンドと比べて増加させる。ヒトCD1cと反応するVγ9Vδ1+ TCR、またはヒトCD1dと反応するVγ9Vδ1+ TCR、またはヒトCD1dと反応するVγ5Vδ1+ TCR(9C2)を発現しているT細胞系を、CD1c、CD1d、BTN2A1、または対照BTNL3の示されている組み合わせをトランスフェクトしたマウス3T3細胞APCとともに24時間培養した後の(A)代表的なCD69のヒストグラムと(B)CD69の蛍光強度中央値。データは、n=4回の独立な実験からプールされる。
【発明を実施するための形態】
【0167】
全般
【0168】
本明細書の全体を通じ、異なる記載が特になされている場合や文脈がそうでないことを要求している場合を除き、単一の工程、物質の組成物、一群の工程、または物質の一群の組成物は、1つと複数(すなわち1つ以上)のこれら工程、物質の組成物、一群の工程、または物質の一群の組成物を包含すると理解される。
【0169】
当業者は、本開示に、具体的に記載されている以外のバリエーションと変更の可能性があることがわかるであろう。本開示にはそのようなあらゆるバリエーションと変更が含まれることを理解すべきである。本開示には、本明細書の中で個別に、または集合的に言及されているか示されている工程、特徴、組成物、および化合物のすべてと、その工程または特徴の任意の2つ以上のあらゆる組み合わせが含まれる。
【0170】
本開示は本明細書に記載されている具体的な例によって範囲が限定されてはならず、それらは例示だけが目的であると想定されている。機能的に同等な生成物、組成物、および方法は、明らかに本開示の範囲内である。
【0171】
本開示のあらゆる例は、特に断わらない限り、必要な変更を加えて本開示の他のあらゆる例に当てはまると理解される。言い換えると、本開示のあらゆる具体例は、(互いに排他的である場合を除き)本開示の他のあらゆる具体例と組み合わせることができる。
【0172】
1つの具体的な特徴、または一群の特徴、または方法、または方法の工程を開示している本開示の任意の例は、その具体的な特徴、または一群の特徴、または方法、または方法の工程を否定するための明示的な支持を提供すると理解される。
【0173】
特に断わらない限り、本明細書で用いられているあらゆる科学技術用語は、当該分野(例えば細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学)の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を持つと理解される。
【0174】
特に断わらない限り、本開示で用いられている組み換えタンパク質、細胞培養、および免疫学の技術は、当業者に周知の標準的な手続きである。そのような技術はさまざまな出典の中の文献全体を通じて記載され説明されており、その出典の例は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、T.A. Brown(編者), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991)、D.M. Glover and B.D. Hames(編者), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996)、およびF.M. Ausubel et al. (編者), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までのあらゆる改定を含む), Ed Harlow and David Lane(編者)Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)、およびJ.E. Coligan et al.(編者)Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までのあらゆる改定を含む)である。
【0175】
本明細書における可変領域とその部分、抗体とそのフラグメントの記述と定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991、Bork et al., J Mol. Biol. 242, 309-320, 1994、Chothia and Lesk J. Mol Biol. 196:901 -917, 1987、Chothia et al. Nature 342, 877-883, 1989および/またはAl-Lazikani et al., J Mol Biol 273, 927-948, 1997の中の議論によってさらに明確にすることができる。
【0176】
「および/または」という表現、例えば「Xおよび/またはY」は、「XとY」または「XまたはY」を意味すると理解され、両方の意味、またはどちらかの意味の明示的な支持を与えると理解される。
【0177】
本明細書全体を通じ、「含む」という用語、または「含む(主語が三人称単数)」、「含んでいる」などのバリエーションは、記載されている1つの要素、整数、または工程、または一群の要素、整数、または工程を含み、任意の他の1つの要素、整数、または工程、または一群の要素、整数、または工程が除外されることはないと理解される。
【0178】
本明細書では、「に由来する」という表現は、指定されている整数を特定の供給源から取得できることを示すと理解されるが、必ずしもその供給源から直接である必要はない。
【0179】
選択された定義
【0180】
「ブチロフィリン(BTN)」と「ブチロフィリン様(BTNL)」分子という用語は、膜貫通タンパク質の免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する免疫応答の調節因子を意味する。これらは共刺激分子のB7ファミリーと構造的に関係しており、似た免疫調節機能を持つ。BTNは、T細胞の発達、活性化、および阻害に関与するほか、T細胞と抗原提示細胞および上皮細胞の相互作用の変更に関与する。いくつかのBTNは自己免疫疾患および炎症性疾患と遺伝的に関係している。ヒトブチロフィリンファミリーは7つのメンバーを含んでおり、それが3つのサブファミリー、すなわちBTN1、BTN2、およびBTN3に分けられる。BTN1サブファミリーは原型単一コピーのBTN1A1遺伝子だけを含有するのに対し、BTN2とBTN3のサブファミリーはそれぞれ3つの遺伝子、すなわちBTN2A1、BTN2A2、およびBTN2A3と、BTN3A1、BTN3A2、およびBTN3A3を含有する。BTNLタンパク質はBTNファミリーのメンバーとかなりの相同性を共有する。ヒトゲノムは、4種類のBTNL遺伝子、すなわちBTNL2、3、8、および9を含有している。
【0181】
ブチロフィリンとBTNL分子は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、すなわちN末端Ig-V様ドメイン(本明細書では「IgV」と呼ぶ)とC末端Ig-C様ドメイン(本明細書では「IgC」と呼ぶ)を含有する。
【0182】
名称だけを目的として、非限定的に、BTN2A1のアミノ酸配列は、NCBI RefSeq NP_001184162.1、NP_001184163.1、NP_008980.1、またはNP_001184163.1に、および/または配列番号1~4に教示されている。一例では、BTN2A1はヒトBTN2A1である。
【0183】
「γδ T細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)複合体の一部としてγ鎖とδ鎖を発現する細胞を意味する。γδ TCRはγ-鎖とδ-鎖からなり、それぞれが可変Igドメインと定常Igドメインを含有している。これらドメインは、TCRδとγ遺伝子座の中のバリアブル(v)、ダイバーシティ(D)(TCRδのみ)、ジョイニング(J)、コンスタント(C)という遺伝子の遺伝子組み換えによって形成される。それぞれの鎖の可変ドメインは、典型的にはリガンドと接触する3つの溶媒曝露ループ(CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域として知られる)を含有しており、CDR3領域は組成が非常に多様であり、それは、V-D-Jの組み合わせの多様性と、V-D組み換え部位とD-J組み換え部位における非鋳型ヌクレオチド変化(付加と欠失)に起因する。
【0184】
ヒトでは、γδ T細胞をさらに「Vδ2細胞」と「非Vδ2細胞」に分けることができ、後者はほとんどがVδ1を発現する細胞からなり、稀にはVδ3-鎖またはVδ5-鎖を発現する細胞からなるが、Vδ4、Vδ6、Vδ7、Vδ8も記載されている。γδ T細胞は抗体依存性細胞傷害(ADCC)とファゴサイトーシスを媒介することができ、前もって分化または増殖することなく病原体特異性抗原に対して迅速に反応することができる。γδ T細胞はタンパク質と非ペプチド抗原に直接に応答するため、MHCに限定されない。少なくともいくつかのγδ T細胞特異的抗原は、細菌性病原体と誘導された自己抗原に見られる進化的に保存された分子パターンを提示し、その分子パターンが、細胞ストレス、感染、および形質転換によって上方調節される。そのような抗原を本明細書では一般に「ホスホ抗原」またはpAgと呼ぶ。Vγ9+ γδ T細胞はTCRと(共)受容体を通じて他の抗原とリガンドにも応答することができる。
【0185】
それに加え、γδ T細胞はさらに、以下の一連の多機能集団に分類すること、すなわちIFN-γ産生γδ T細胞、IL-17A産生γδ T細胞、抗原提示γδ T細胞、濾胞性bヘルパーγδ T細胞、および制御性γδ T細胞に分類することができる。γδ T細胞は、直接的な細胞傷害性を及ぼす免疫応答、サイトカイン産生、および間接的な免疫応答を促進することができる。例えばIFN-γ産生表現型は、増加したCD56発現と増強された細胞溶解応答を特徴とする。いくつかのγδ T細胞サブセットは炎症および/または免疫抑制を容易にすることによって疾患の進行に寄与する可能性がある。例えばIL-17A産生γδ T細胞は炎症反応に広く関与し、感染症と自己免疫疾患の間は病原体の役割を持つ。
【0186】
γ遺伝子とδ遺伝子両方の相補性決定領域3(CDR3)領域は受容体の頂部に非常に大きな突起を形成する。Vγ9鎖とVδ2鎖からなるヒトTCRはC-V接合の位置の屈曲を特徴とする。VδのCDR2ループでは、C"鎖は、そのドメインの内側β-シートのC'鎖とペアを形成する。
【0187】
「BTN2A1アゴニスト」という用語は、BTN2A1に特異的に結合してVγ9+ γδ TCRの活性化を誘導または増強する分子を意味する。例えばこのアゴニストは、BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上に結合する。アゴニストBTN2A1は、Vγ9+Vδ2+および/または Vγ9+Vδ2- γδ TCRの活性化を誘導または増強することができる。例えばアゴニストBTN2A1はVγ9+ γδ TCRの活性化を誘導または増強することができ、その非限定的な例に含まれるのは、Vγ9+Vδ2+および/またはVγ9+Vδ1+ γδ TCRの活性化である。活性化は抗原とは独立である可能性がある。例えば理論または動機に囚われることがないと、BTN2A1へのBTN2A1アゴニストの結合は、BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上を改変して非刺激性BTN2A1から刺激性BTN2A1へのスイッチとしての抗原(例えばpAg)活性化を模倣することができる。BTN2A1アゴニストは抗原結合と同様のキネティクスと効力でVγ9+ γδ TCR活性化を誘導することができる。一実施態様では、BTN2A1アゴニストの結合が、例えば腫瘍細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、および/またはナチュラルキラー(NK)細胞の細胞表面でのBTN2A1分子の組織化の変化につながる。例えばBTN2A1アゴニストは、細胞表面でBTN2A1/BTN3複合体(例えばBTN2A1/BTN3A1複合体)の形成を促進することができる。このアゴニストはBTN3A1と交差反応すること、またはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性であることができる。別の一実施態様、またはさらなる実施態様では、BTN2A1アゴニストの結合は、γδ T細胞上のVγ9+ TCRの連結を誘導する、および/またはBTN2A1を発現する細胞の活性および/または生存を増加させる。BTN2A1アゴニストはγδ T細胞に対して刺激性であり、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を活性化させることができる。
【0188】
「BTN2A1アンタゴニスト」という用語は、BTN2A1に特異的に結合してVγ9+ γδ TCRの活性化を阻害する分子を意味する。例えばこのアンタゴニストは、BTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上に結合する。BTN2A1アンタゴニストはVγ9+Vδ2+および/またはVγ9+Vδ2- γδ TCRの活性化を阻害することができる。例えばBTN2A1アンタゴニストはVγ9+Vδ2+および/またはVγ9+Vδ1+ γδ TCRの活性化を阻害することができる。代表的なBTN2A1アンタゴニストはBTN2A1分子の細胞外ドメイン(IgVおよび/またはIgC)の1つ以上に結合して、抗原(例えばpAg)活性化を阻害する、Vγ9+ γδ TCRへの結合を阻害する、および/またはBTN3分子(例えばBTN3A1)との相互作用を阻止する。BTN2A1アンタゴニストは立体配座の変化を誘導してBTN2A1分子を刺激性BTN2A1から非刺激性BTN2A1へと切り換え、例えば抗原活性化および/またはBTN3A1との相互作用を阻止する。BTN2A1アンタゴニストは、BTN2A1分子上でVγ9+ TCRと相互作用する部位、またはBTN2A1分子上でBTN3分子(例えばBTN3A1)と相互作用する部位に結合することができる。例えばBTN2A1アンタゴニストとして可溶性TCRが可能である。別の一例では、BTN2A1アンタゴニストはBTN3A1と交差反応することができる、またはBTN2A1とBTN3分子(例えばBTN3A1)に対して二重特異性であることができる。BTN2A1アンタゴニストはγδ T細胞に対して抑制性であり、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を阻害することができる。
【0189】
本明細書では、γδ T細胞活性化の文脈における「阻害する」または「阻害している」という用語は、本開示のBTN2A1アンタゴニストがVγ9+ γδ TCR活性化のレベルを低下または減少させることを意味すると理解される。上記のことから、本開示のBTN2A1アンタゴニストは活性化を完全に阻害する必要はなく、むしろ活性を統計的に有意な量(例えば少なくとも約10%、または約20%、または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%)だけ低下させる必要があることが明らかであろう。Vγ9+ γδ TCR活性化の阻害を明らかにする方法は、本分野で知られている、および/または本明細書に記載されている。
【0190】
本明細書では、「BTN2A1/BTN3複合体」という用語は、細胞(例えば腫瘍細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、実質細胞、および/またはナチュラルキラー(NK)細胞)の表面のBTN2A1とBTN3分子の複合体(例えばBTN2A1とBTN3A1の複合体)を意味する。BTN2A1/BTN3複合体としてヘテロマー複合体または多量体複合体が可能である。この複合体は、1つ以上のBTN3分子(例えばBTN3A1とBTN3A2、および/または他のタンパク質(ATP結合カセット輸送体A1(ABCA1)など))を含むことができる。この複合体はBTN2A1二量体を含むことができる。同様に、BTN3分子は単量体または二量体の形態で存在することができる。BTN2A1とBTN3分子は、細胞表面に同時局在することや、(例えば架橋して)直接的に、または(別の分子またはタンパク質を介して)間接的に会合することができる。BTN2A1/BTN3複合体は抗原に直接または間接に結合することができる。例えばBTN2A1および/またはBTN3分子の細胞質ドメインは抗原に直接または間接に結合することができる。
【0191】
本明細書では、「がん」という用語は、自己増殖する能力を持つ細胞、すなわち急速に増加している細胞増殖を特徴とする異常な状態または条件を意味する。過剰増殖性で新生物性の疾患状態は、病理的、すなわち疾患状態を特徴とするか構成すると分類すること、または非病理的、すなわち正常からの逸脱だが疾患状態とは関係しないと分類することができる。この用語には、組織病理学的タイプまたは侵襲性の段階に関係なく、あらゆるタイプのがん性増殖または発がんプロセス、転移性組織または悪性に変化した細胞、組織、または臓器が含まれることを意味する。
【0192】
本明細書では、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの結合領域とBTN2A1分子の相互作用に関する「結合する」という用語は、その相互作用がBTN2A1分子上の特別な構造(例えばエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば抗体はタンパク質一般ではなくて特定のタンパク質構造を認識してそれに結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、エピトープ「A」(または遊離した標識なしの「A」)を含有する分子が、標識された「A」とタンパク質を含有する反応物の中に存在していると、抗体に結合する標識された「A」の量が減るであろう。
【0193】
本明細書では、「特異的に結合する」という表現は、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの表面の結合領域とBTN2A1分子の間の結合相互作用が抗原決定基またはエピトープの存在に依存することを意味すると理解される。結合領域は、他の分子または生物の混合物の中に存在しているときでさえ、特定の抗原決定基またはエピトープに選択的に結合する、またはそれを認識する。一例では、結合領域は、特定の構成要素、またはそれを発現している細胞と、代わりの抗原または細胞と比べてより頻繁に、より迅速に、より長期間、および/またはより大きな親和性で反応または会合する。この定義を読むことにより、例えば結合領域そのは特定の要素に結合するは、第2の抗原に特異的に結合してもしなくてもよいことも理解される。そのため「特異的に結合する」は、別の抗原の排他的な結合または検出不能な結合を必ずしも必要としない。「特異的に結合する」という表現は、本明細書では「選択的に結合する」と交換可能に用いることができる。一般に、本明細書での結合への言及は特異的な結合を意味し、それぞれの表現は、他の表現の明示的な支持を提供すると理解される。特異的結合を明らかにする方法は当業者には明らかであろう。例えば本開示の結合領域を含む結合タンパク質を、構成要素、またはそれを発現している細胞、またはその変異体形態、または代わりの抗原と接触させる。次いでその構成要素または変異体形態、または代わりの抗原への結合を明らかにすると、上記のように結合する結合領域が、その構成要素に特異的に結合すると見なされる。一例では、構成要素またはそれを発現している細胞への「特異的結合」は、結合領域が、10 μM以下(9 μM以下、8 μM以下、7 μM以下、6 μM以下、5 μM以下、4 μM以下、3 μM以下、2 μM以下、または1 μM以下など)、100 nM以下など、50 nM以下(例えば 20 nM以下)など、1 nM以下(例えば0.8 nM以下)、1×10-8 M以下、5×10-9 M以下(例えば3×10-9 M以下)など、2.5×10-9 M以下などの平衡定数(KD)で結合することを意味する。
【0194】
「組み換え」という用語は、人工的な遺伝子組み換えの産物を意味すると理解される。したがって抗体またはその抗原結合フラグメントの文脈では、この用語に、B細胞が成熟している間に起こる自然な組み換えの産物である対象の体内の天然の抗体は包含されない。しかしそのような抗体が単離される場合には、それは抗体可変領域を含む単離されたタンパク質と見なされる。同様に、核酸がコードするタンパク質が単離され、組み換え手段を利用して発現される場合には、得られるタンパク質は組み換えタンパク質である。組み換えタンパク質には、人工的組み換え手段によって発現させたタンパク質も、例えばそれを発現させる細胞、組織、または対象の中にあるときには、包含される。
【0195】
「タンパク質」という用語には、単一のポリペプチド鎖、すなわちペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸、または共有結合または非共有結合で互いに連結された一連のポリペプチド鎖(すなわちポリペプチド複合体)が含まれると理解される。例えばその一連のポリペプチド鎖は、適切な化学結合またはジスルフィド結合を用いて共有結合させることができる。非共有結合の例に含まれるのは、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、および疎水性相互作用である。
【0196】
「ポリペプチド」または「ポリペプチド鎖」という用語は、前段落から、ペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸を意味すると理解される。
【0197】
当業者は、「抗体」が一般に、複数のポリペプチド鎖(例えば軽鎖可変領域(VL)を含むポリペプチドと重鎖可変領域(VH)を含むポリペプチド)からなる可変領域を含むタンパク質であると見なされていることを認識しているであろう。抗体は一般に定常ドメインも含んでおり、重鎖の場合にはそのうちのいくつかが配列されて定常領域(その中に定常フラグメントまたはフラグメント結晶化可能(Fc)が含まれる)になることができる。VHとVLが相互作用し、1個または数個の密接に関係した抗原に特異的に結合することのできる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳類からの軽鎖はκ軽鎖またはλ軽鎖であり、哺乳類からの重鎖は、α、δ、ε、γ、またはμである。抗体として、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスが可能である。「抗体」という用語には、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、合成ヒト化抗体、およびキメラ抗体も包含される。「抗体」という用語には、コードされたC末端リシン残基が失われたバリアント、脱アミド化バリアント、および/またはグリコシル化バリアント、および/または例えばタンパク質(例えば抗体)のN末端にピログルタミン酸を含むバリアント、および/またはN末端残基(例えば抗体またはV領域の中のN末端グルタミン)が欠けたバリアント、および/または分泌シグナルの全部または一部を含むバリアントも含まれる。コードされたアスパラギン残基の脱アミド化バリアントはイソアスパラギン酸アイソフォームとアスパラギン酸アイソフォームが生成させることができ、隣接したアミノ酸残基が関与するスクシンアミドになることさえできる。コードされたグルタミン残基の脱アミド化バリアントはグルタミン酸なることができる。特定のアミノ酸配列に言及するとき、そのような配列とバリアントの異種混合物を含む組成物が含まれることが想定されている。
【0198】
本開示の文脈では、「半抗体」という用語は、単一の抗体重鎖と単一の抗体軽鎖を含むタンパク質を意味する。「半抗体」という用語には、1つの抗体軽鎖と1つの抗体重鎖を含むタンパク質も包含され、その抗体重鎖は変異していて別の抗体重鎖との会合が阻止される。
【0199】
「完全長抗体」、「完全抗体」、または「全抗体」という用語は交換可能に用いられ、抗体の抗原結合フラグメントとは異なり、実質的に完全な形態の抗体を意味する。具体的には、全抗体に、Fc領域を含む重鎖と軽鎖を持つものが含まれる。定常ドメインとして野生型配列の定常ドメイン(例えばヒト野生型配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列が可能である。
【0200】
本明細書では、「可変領域」は、抗原に特異的に結合する本明細書に規定の抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を意味し、例えばCDR(すなわちCDRl、CDR2、およびCDR3)とフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む。例えば可変領域は、3つまたは4つのFR(例えばFR1、FR2、FR3と、場合によりFR4)を3つのCDRとともに含む。VHは重鎖の可変領域を意味する。VLは軽鎖の可変領域を意味する。
【0201】
本明細書では、「相補性決定領域」(同義語CDR;すなわちCDRl、CDR2、およびCDR3)という用語は抗体可変領域のアミノ酸残基を意味し、その存在は特異的な抗原結合の主要な寄与因子である。それぞれの可変領域は、典型的には、CDRl、CDR2、およびCDR3として同定される3つのCDR領域を有する。一例では、CDRとFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987年と1991年に従って規定される(本明細書では「Kabatの番号付けシステム」とも呼ぶ)。Kabatの番号付けシステムによれば、VHのFRとCDRは以下の位置にある。すなわち残基1~30(FR1)、31~35(CDR1)、36~49(FR2)、50~65(CDR2)、66~94(FR3)、95~102(CDR3)、および103~113(FR4)である。Kabatの番号付けシステムによれば、VLのFRとCDRは以下の位置にある。すなわち残基1~23(FRl)、24~34(CDR1)、35~49(FR2)、50~56(CDR2)、57~88(FR3)、89~97(CDR3)、および98~107(FR4)である。
【0202】
「フレームワーク領域」(今後はFR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0203】
本明細書では、「Fv」という用語は、多数のポリペプチドからなるか単一のポリペプチドからなるかに関係なく、中でVLとVHが会合して抗原結合部位を持つ(すなわち抗原に特異的に結合できる)複合体を形成する任意のタンパク質を意味すると理解される。抗原結合部位を形成するVHとVLは、単一のポリペプチド鎖または異なる複数のポリペプチド鎖の形態が可能である。さらに、本開示のFv(のほか、本開示の任意のタンパク質)は多数の抗原結合部位を持つことができ、それらは同じ抗原に結合しても結合しなくてもよい。この用語には、抗体に直接由来するフラグメントのほか、組み換え手段を利用して産生されたそのようなフラグメントに対応するタンパク質が包含されると理解される。いくつかの例では、VHは重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されていない、および/またはVLは軽鎖定常ドメイン(CL)に連結されていない。ポリペプチドまたはタンパク質を含有する代表的なFvに含まれるのは、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次の複合体、またはその定常領域または定常ドメイン(例えばCH2ドメインまたはCH3ドメイン)に連結された上記の任意のもの(例えばミニボディ)である。「Fabフラグメント」は、抗体の1価の抗原結合フラグメントからなり、酵素パパインを用いた抗体全体の消化によって生成させて完全な軽鎖と重鎖の一部からなるフラグメントを生み出すこと、または組み換え手段を利用して生成させることができる。抗体の「Fab'フラグメント」は、全抗体をペプシンで処理した後に還元して得ることができ、完全な軽鎖と、VHと単一の定常ドメインを含む重鎖の一部からなる分子が生じる。このように処理された抗体1つにつき2つのFab'フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは組み換え手段によって作製することができる。抗体の「F(ab')2フラグメント」は、2つのジスルフィド結合によって合体された2つのFab'フラグメントの二量体からなり、抗体分子全体を酵素ペプシンで処理することによって得られ、その後の還元はない。「Fab2」フラグメントは、例えばロイシンジッパーまたはCH3ドメインを利用して連結された2つのFabフラグメントを含む組み換えフラグメントである。「一本鎖Fv」または「scFv」は、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が適切な可撓性ポリペプチドリンカーによって共有結合した抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含む組み換え分子である。
【0204】
「定常領域」という用語は、本明細書では、抗体の重鎖または軽鎖で可変領域以外の部分を意味する。重鎖では、定常領域は一般に、複数の定常ドメインと1つのヒンジ領域を含み、例えばIgG定常領域は、以下の連結された要素、すなわち定常重(CH)1、リンカー、CH2、およびCH3を含む。重鎖では、定常領域はFcを含む。軽鎖では、定常領域は一般に1つの定常ドメイン(CL1)を含む。
【0205】
「フラグメント結晶化可能」または「Fc」または「Fc領域」または「Fc部分」という用語は(本明細書では交換可能に使用でき)、少なくとも1つの定常領域を含み、一般にグリコシル化されていて(だが必ずしもそうである必要はなく)、1つ以上のFc受容体および/または補体カスケードの構成要素に結合できる抗体の領域を意味する。重鎖定常領域は5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、またはμのいずれかから選択することができる。さらに、さまざまなサブクラス(重鎖のIgGサブクラスなど)の重鎖はさまざまなエフェクタ機能に責任があるため、望む重鎖定常領域を選択することによって望むエフェクタ機能を持つタンパク質を生成させることができる。代表的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、およびガンマ3(IgG3)、またはこれらのハイブリッドである。
【0206】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、完全な抗体の1つ以上の可変領域を含む。抗体フラグメントの例に含まれるのは、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ディアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子、半抗体、および複数の抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体である。
【0207】
「安定化されたIgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換が減少するか、Fabアーム交換または半抗体の形成を受ける傾向、または半抗体を形成する傾向が減少するように改変されたIgG4定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」は、ヒトIgG4にとっての一種のタンパク質改変を意味し、IgG4重鎖とそれに付着した軽鎖(半分子)が別のIgG4分子からの重-軽鎖ペアと交換される。したがってIgG4分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得することができ(二重特異性分子にな)る。Fabアーム交換は生体内で自然に起こるし、精製された血液細胞または還元剤(還元されたグルタチオンなど)によってインビトロで誘導することができる。
【0208】
本明細書では、「単一特異性」という用語は、それぞれが同じエピトープ特異性を持つ1つ以上の抗原結合部位を含む結合領域を意味する。したがって単一特異性結合領域は、単一の抗原結合部位(例えばFv、scFv、Fabなど)を含むこと、または同じエピトープを認識する(例えば互いに同一である)いくつかの抗原結合部位(例えばディアボディまたは抗体)を含むことができる。結合領域が「単一特異性」であるという条件は、それが1つの抗原だけに結合することを意味しない。なぜなら多数の抗原が、単一の抗原結合部位が結合することのできる共有されたエピトープ、または互いに非常によく似たエピトープを持つことができるからである。1つの抗原だけに結合する単一特異性結合領域は、その抗原に「排他的に結合する」と言われる。
【0209】
「多重特異性」という用語は、それぞれが異なるエピトープに結合する(例えばそれぞれが異なる抗原に結合する)2つ以上の抗原結合部位を含む結合領域を意味する。例えば多重特異性結合領域は、同じタンパク質の2つ以上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を含むこと、または(例えばBTN2A1とBTN3分子(BTN3A1)などの表面の)異なるタンパク質の2つ以上の異なるエピトープを認識することができる。一例では、結合領域は「二重特異性」であることが可能である。すなわち結合領域は、2つの異なるエピトープに特異的に結合する2つの抗原結合部位を含む。例えば二重特異性結合領域は同じタンパク質上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する、または同じタンパク質上の2つの異なるエピトープに対する特異性を持つ。別の一例では、二重特異性結合領域は、2つの異なるタンパク質(例えばBTN2A1とBTN3分子(BTN3A1)など)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する。
【0210】
本明細書では、「可溶性T細胞受容体」または「可溶性TCR」は、完全長(例えば膜結合)受容体の鎖からなるTCRであって、最低限、その受容体の鎖の膜貫通領域が欠失するか変異していて、その受容体が細胞によって発現されるとき膜と会合しないようにされているものを意味する。最も典型的には、可溶性受容体は、野生型受容体の鎖の細胞外ドメインだけからなる(すなわち膜貫通ドメインと細胞質ドメインを欠く)。本開示の可溶性γδ TCRは、Vγ9を含むγ鎖とδ鎖のヘテロ二量体からなる(本明細書では「可溶性V□9+ TCR」と呼ぶ)。γ鎖とδ鎖のさまざまな特別な組み合わせ、特に生体内に存在することが知られているγδ TCRサブセットに対応するものが、本発明の可溶性γδ TCRで用いるのに好ましいが、Vγ9を含むγ鎖とδ鎖の実質的に任意の組み合わせを持つ可溶性TCRも本開示での使用が考慮されることを理解すべきである。可溶性γδ TCRは、同じ動物種(例えばマウス、ヒト)に由来するγ鎖とδ鎖を含むことが好ましい。
【0211】
本明細書では、「疾患」、「障害」、または「状態」という用語は、正常な機能の崩壊、または正常な機能への干渉を意味し、どれか特定の状態に限定されず、疾患または障害を含む。
【0212】
本明細書では、疾患または状態、またはその再発が生じるか、再発している「リスクがある」対象は、検出可能な疾患、または疾患の症状があってもなくてもよく、本開示による治療の前に検出可能な疾患、または疾患の症状が現われていてもいなくてもよい。本分野で知られているように、および/または本明細書に記載されているように、「リスクがある」は、対象が1つ以上のリスク因子を持つことを表わし、それらリスク因子は、疾患または状態の発達と相関する測定可能なパラメータである。
【0213】
本明細書では、「治療している」、「治療する」、または「治療」という用語には、本明細書に記載のタンパク質を投与することにより、特定の疾患または状態の少なくとも1つの症状を減らす、または除去するか、その疾患または状態の進行を遅延させることが含まれる。
【0214】
本明細書では、「予防している」、「予防する」、または「予防」という用語には、特定の疾患または状態の発生または再発に関する予防を提供することが含まれる。個体は、その疾患が進行または再発する傾向またはリスクを持っている可能性があるが、その疾患または再発の診断はまだなされていない。
【0215】
「有効な量」は、少なくとも、望む結果を投与時と必要な期間にわたって実現するのに有効な量を意味する。例えば望む結果として、治療結果または予防結果が可能である。有効な量は、1回以上の投与で提供することができる。本開示のいくつかの例では、「有効な量」という用語は、本明細書に記載されている疾患または状態の治療を実現するのに必要な量を意味する。本開示のいくつかの例では、「有効な量」という用語は、Vγ9+ TCR γδ T細胞の活性化を実現するか、Vγ9+ TCR γδ T細胞の活性化を阻害するのに必要な量を意味する。本開示のいくつかの例では、「有効な量」という用語は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を実現するか、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、またはγδ T細胞の増殖の1つ以上を阻害するのに必要な量を意味する。有効な量は、治療する疾患または状態、または変化させる因子によって変化する可能性があり、体重、年齢、人種的背景、性別、健康および/または身体状態と、治療する哺乳動物に関係する他の因子によっても変化する可能性がある。典型的には、有効な量は、比較的広い範囲(例えば「用量」範囲)に入ることになり、その範囲は、医療者による定型的な試行と実験によって決めることができる。したがってこの用語が、本開示を特定の量(例えば結合タンパク質の重量または数)に制限していると解釈してはならない。有効な量は、一回用量で、または治療期間にわたって1回または数回繰り返す用量で投与することができる。
【0216】
「治療に有効な量」は、少なくとも、具体的な疾患または状態の測定可能な改善をもたらすのに必要な最小濃度である。本明細書では、治療に有効な量は、患者の疾患状態、年齢、性別、体重や、抗体またはその抗原結合フラグメントがその個体に望む応答を誘導する能力などの因子に応じて変わる可能性がある。治療に有効な量は、抗体またはその抗原結合フラグメントのいかなる毒性効果または有害な効果も治療に有効な量を上回らない量である。
【0217】
本明細書では、「予防に有効な量」という表現は、疾患または状態、またはその合併症の1つ以上の検出可能な症状の出現を阻止する、または阻害する、または遅延させるのに十分な量のBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを意味すると理解される。
【0218】
本明細書では、「対象」という用語は、ヒト(例えば哺乳動物)を含む任意の動物を意味すると理解される。代表的な対象の非限定的な例に含まれるのは、ヒトと非ヒト霊長類である。例えば対象はヒトである。
【0219】
抗体
【0220】
一例では、抗原結合ドメインを含むタンパク質である本開示のBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
【0221】
免疫化に基づく方法
【0222】
抗体を生成させる方法は、本分野で知られている、および/またはHarlow and Lane(編者)Antibody: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)に記載されている。一般に、そのような方法では、タンパク質、またはその免疫原フラグメントまたはエピトープ、またはそれ(すなわち免疫原)を発現して提示する細胞は、場合により、適切な、または望む任意の基剤、アジュバント、または医薬として許容可能な賦形剤とともに製剤化され、非ヒト動物(例えばマウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、またはブタ)に投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、または他の既知の経路によって投与することができる。
【0223】
ポリクローナル抗体の生成は、免疫化された動物の血液を免疫化後のさまざまな時点でサンプリングすることによってモニタすることができる。望む抗体力価を達成する必要がある場合には、さらに1回以上免疫化することができる。適切な力価が実現されるまで、ブーストまたは滴定のプロセスを繰り返す。望むレベルの免疫原性が得られたとき、免疫化された動物を出血させ、血清を単離して保管する、および/またはその動物を用いてモノクローナル抗体(mAb)を生成させる。
【0224】
モノクローナル抗体は、本開示で考慮する抗体の1つの代表的な形態である。「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、同じ抗原(例えば抗原内の同じエピトープ)に結合することのできる均一な抗体集団を意味する。この用語に、抗原の供給源、または抗原を作製する方法に関する限定はないことが想定されている。
【0225】
mAbの生成には多数の既知の技術の任意の1つ(例えばUS4196265またはHarlow and Lane (1988)の上記文献に例示されている手続き)を利用することができる。
【0226】
例えば適切な動物を、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下にて免疫原で免疫化する。齧歯類(ウサギ、マウス、およびラットなど)が代表的な動物である。(例えばWO2002066630に記載されているように)ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように遺伝子操作されていて例えばマウス免疫グロブリンタンパク質を発現しないマウスも、本開示の抗体を生成させるのに使用できる。
【0227】
免疫化の後、抗体を産生する能力を持つ体細胞(例えばBリンパ球(B細胞))を、mAb作製プロトコルで用いるために選択する。これらの細胞は、脾臓、扁桃腺、またはリンパ節からの生検から、または末梢血サンプルから取得することができる。次に、免疫化した動物からのB細胞を、一般に免疫原で免疫化した動物と同じ種に由来する不死骨髄腫細胞の細胞と融合させる。
【0228】
ハイブリッドは、組織培地の中でのヌクレオチドの新たな合成を阻止する薬剤を含む選択培地の中での培養によって増幅される。代表的な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。
【0229】
増幅されたハイブリドーマは、抗体特異性および/または力価に関する機能選択が、例えばフローサイトメトリーおよび/または免疫組織化学および/またはイムノアッセイ(例えばラジイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、ドットイムノアッセイなど)によってなされる。
【0230】
あるいは、(例えばLargaespada et al, J. Immunol. Methods. 197: 85-95, 1996に記載されているように)ABL-MYC技術(NeoClone、Madison WI 53713、USA)を利用してMAbを分泌する細胞系を生成させる。
【0231】
ライブラリに基づく方法
【0232】
本開示には、抗体またはその抗原結合フラグメント(例えばその可変領域を含む)のライブラリのスクリーニングも包含される。
【0233】
本開示で考慮するライブラリの例に含まれるのは、(チャレンジを受けていない対象からの)ナイーブライブラリ、(抗原で免疫化した対象からの)免疫化ライブラリ、または合成ライブラリである。抗体またはその領域(例えば可変領域)をコードする核酸を従来の技術によって(例えばSambrook and Russell, eds, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed, vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に記載されているようにして)クローニングし、それを用い、先行技術で知られている方法を利用してタンパク質をコードし、提示させる。タンパク質のライブラリを作製する他の技術が記載されているのは、例えばUS6300064(例えばMorphosys AGのHuCALライブラリ);US5885793;US6204023;US6291158;またはUS6248516である。
【0234】
本開示による抗原結合フラグメントは、可溶性の分泌タンパク質であること、または細胞または粒子(例えばファージまたは他のウイルス、リボソーム、または胞子)の表面に融合タンパク質として提示することが可能である。提示ライブラリのさまざまな形式が本分野で知られている。例えばライブラリは、インビトロ提示ライブラリ(例えばリボソーム提示ライブラリ、共有結合提示ライブラリ、またはmRNA提示ライブラリ(例えばUS7270969に記載)である。さらに別の一例では、提示ライブラリはファージ提示ライブラリであり、抗体の抗原結合フラグメントを含むタンパク質は、例えばUS6300064;US5885793;US6204023;US6291158;またはUS6248516に記載されているようにしてファージの表面で発現する。他のファージ提示法は本分野で知られており、本開示によって考慮される。同様に、細胞提示の方法が本開示によって考慮される(例えば細菌提示ライブラリ(例えばUS5516637に記載);酵母提示ライブラリ(例えばUS6423538に記載)または哺乳類提示ライブラリ)。
【0235】
提示ライブラリをスクリーニングする方法は本分野で知られている。一例では、本開示の提示ライブラリは、例えばScopes(In: Protein purification: principles and practice, Third Edition, Springer Verlag, 1994)に記載されているようにしてアフィニティ精製を利用してスクリーニングされる。親和性精製の方法は、典型的には、ライブラリによって提示される抗原結合フラグメントを含むタンパク質を標的抗原(例えばBTN2A1)と接触させた後、洗浄し、抗原に結合したままのドメインを溶離させることを含む。
【0236】
スクリーニングによって同定されるどの可変領域またはscFvも、望む場合には完全な抗体へと容易に改変される。可変領域またはscFvを改変または再フォーマットして完全な抗体にするための代表的な方法が記載されているのは、例えばJones et al., J Immunol Methods. 354:85-90, 2010;またはJostock et al., J Immunol Methods, 289: 65-80, 2004;またはWO 2012040793である。その代わりに、またはそれに加えて、例えばAusubel et al (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)、および/または (Sambrook et al (In: Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)に記載されている標準的なクローニング法を利用する。
【0237】
脱免疫化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、合成抗体、霊長類化抗体、およびヒト抗体、または抗原結合フラグメント
【0238】
本開示の抗体または抗原結合フラグメントはヒト化することができるすることができる。
【0239】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体からのFRの表面にグラフトされるかその中に挿入された非ヒト種(例えばマウスまたはラットまたは非ヒト霊長類)からの抗体からのCDRを含むヒト様可変領域を含むタンパク質を意味すると理解される(このタイプの抗体は「CDRグラフト化抗体」とも呼ばれる)。ヒト化抗体には、ヒトタンパク質の1つ以上の残基が1つ以上のアミノ酸置換によって改変された抗体、および/またはヒト抗体の1つ以上のFR残基が対応する非ヒト残基で置換された抗体も含まれる。ヒト化抗体は、ヒト抗体にも非ヒト抗体にも見られない残基も含むことができる。抗体(例えばFc領域)の任意の追加領域は一般にヒトである。ヒト化は、本分野で知られている方法(例えばUS5225539、US6054297、US7566771、またはUS5585089)を用いて実施することができる。「ヒト化抗体」という用語には、例えばUS7732578に記載されている超ヒト化抗体も包含される。同様の意味が、「ヒト化抗原結合フラグメント」という用語に当てはまると理解される。
【0240】
本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントとして、ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントが可能である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書では、ヒト(例えばヒトの生殖細胞系列または体細胞)に見られる可変領域と、場合により定常抗体領域とを持つ抗体、またはそのような領域を用いて作製したライブラリからの抗体を意味する。「ヒト」抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基、例えばインビトロでランダムな変異または部位特異的変異によって導入される変異(特に、保存された置換が関係する変異、またはタンパク質の少数の残基(例えばタンパク質の1、2、3、4、または5個の残基)における変異)を含むことができる。これら「ヒト抗体」は、必ずしもヒトの免疫応答の結果として生成する必要はなく、むしろ組み換え手段(例えばファージ提示ライブラリのスクリーニング)を利用して、および/またはヒト抗体の定常領域および/または可変領域をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えばマウス)によって、および/または(例えばUS5565332に記載されている)ガイド付き選択を利用して生成させることができる。この用語には、そのような抗体の親和成熟形態も包含される。本開示の目的では、ヒト抗体に、ヒト抗体からのFR、またはヒトFRのコンセンサス配列からの配列を含むFRが含まれ、CDRの1つ以上がランダムまたは半ランダムであるタンパク質も含まれると見なされる(例えばUS6300064および/またはUS6248516に記載)。同様の意味が、「ヒト抗原結合フラグメント」という用語に当てはまると理解される。
【0241】
本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントとして、合成ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントが可能である。「合成ヒト化抗体」という用語は、WO2007019620に記載されている方法によって調製される抗体を意味する。合成ヒト化抗体は、抗体の可変領域として、新世界霊長類抗体可変領域からのFRと、非新世界霊長類抗体可変領域からのCDRを含む。
【0242】
本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントは霊長類化することができる。「霊長類化抗体」は、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)を免疫化した後に生成する抗体からの可変領域を含む。場合により、非ヒト霊長類抗体の可変領域をヒト定常領域に連結して霊長類化抗体を生成させる。霊長類化抗体を生成させる代表的な方法はUS6113898に記載されている。
【0243】
一例では、本開示の抗体またはその抗原結合フラグメントはキメラ抗体フラグメントである。「キメラ抗体」または「キメラ抗原結合フラグメント」という用語は、可変ドメインの1つ以上が特定の種(例えばマウス(マウスまたはラットなど))に由来するか、抗体の特定のクラスまたはサブクラスに属する一方で、抗体またはフラグメントの残部が別の種(例えばヒトまたは非ヒト霊長類)に由来するか、抗体の別のクラスまたはサブクラスに属する抗体またはフラグメントを意味する。一例では、キメラ抗体は非ヒト抗体(例えばマウス抗体)からのVHおよび/またはVLを含み、抗体の残部領域はヒト抗体に由来する。このようなキメラ抗体とその抗原結合フラグメントの生成は本分野で知られており、(例えばUS6331415;US5807715;US4816567、およびUS4816397に記載されている)標準的な手段で実現することができる。
【0244】
本開示では、例えばWO2000034317とWO2004108158に記載されている脱免疫化された抗体またはその抗原結合フラグメントも考慮する。脱免疫化された抗体とフラグメントは、1つ以上のエピトープ(例えばB細胞エピトープまたはT細胞エピトープ)が除去されている(すなわち変異している)ため、対象がその抗体またはタンパク質に対する免疫応答を生じさせる可能性が低下する。例えば本開示の抗体を分析して1つ以上のB細胞エピトープまたはT細胞エピトープを同定し、そのエピトープの中の1つ以上のアミノ酸残基を変異させることによって抗体の免役原性を低下させる。
【0245】
二重特異性抗体
【0246】
本開示の抗体または抗原結合フラグメントとして二重特異性抗体またはそのフラグメントが可能である。二重特異性抗体は、異なる抗原またはエピトープに対する特異性を持つ2つのタイプの抗体または抗体フラグメント(例えば2つの半抗体)を含む分子である。代表的な二重特異性抗体は、同じタンパク質の2つの異なるエピトープに結合する。あるいは、二重特異性抗体は、2つの異なるタンパク質の2つの異なるエピトープに結合する。
【0247】
US5731168に記載されている代表的な「鍵と穴」または「ノブと穴」二重特異性タンパク質。一例では、ある定常領域(例えばIgG4定常領域)はT366W変異(すなわちノブ)を含み、ある定常領域(例えばIgG4定常領域)は、T366S、L368A、およびY407V変異(すなわち穴)を含む。別の一例では、第1の定常領域は、T350V、T366L、K392L、およびT394W変異(ノブ)を含み、第2の定常領域は、T350V、L351Y、F405A、およびY407V変異(穴)を含む。
【0248】
二重特異性抗体を生成させる方法は本分野で知られており、代表的な方法が本明細書に記載されている。
【0249】
一例では、IgG型の二重特異性抗体は、IgG抗体を産生する2つのタイプのハイブリドーマを融合させることによって形成したハイブリッドハイブリドーマ(クワドローマ)によって分泌される(Milstein C et al., Nature 1983, 305: 537-540)。別の一例では、抗体は、細胞の中に、同時発現させる興味ある2つのIgGを構成するL鎖とH鎖の遺伝子を導入することによって分泌させることができる(Ridgway, JB et al. Protein Engineering 1996, 9: 617-621;Merchant, AM et al. Nature Biotechnology 1998, 16: 677-681)。
【0250】
一例では、二重特異性抗体フラグメントは、異なる抗体に由来するFabを化学的に架橋させることによって調製される(Keler T et al. Cancer Research 1997, 57: 4008-4014)。
【0251】
一例では、FosとJunなどに由来するロイシンジッパーを用いて二重特異性抗体フラグメントを形成する(Kostelny SA et al. J. of Immunology, 1992, 148: 1547-53)。
【0252】
一例では、二重特異性抗体フラグメントは、2つのクロスオーバーscFvフラグメントを含むディアボディの形態で調製される(Holliger P et al. Proc. of the National Academy of Sciences of the USA 1993, 90: 6444-6448)。
【0253】
抗体フラグメント
【0254】
単一ドメイン抗体
【0255】
いくつかの例では、本開示の抗体の抗原結合フラグメントは、単一ドメイン抗体(「ドメイン抗体」または「dAb」という用語と交換可能に用いられる)であるか、単一ドメイン抗体を含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部を含む単一のポリペプチド鎖である。例えば単一ドメイン抗体はナノボディである。
【0256】
ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ
【0257】
いくつかの例では、本開示の抗原結合フラグメントは、WO98/044001および/またはWO94/007921に記載されているようなディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次のタンパク質複合体であるか、これらを含む。
【0258】
例えばディアボディは、2本の会合したポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、それぞれのポリペプチド鎖は、構造VL-X-VHまたはVH-X-VLを含む(ただしXは、単一のポリペプチド鎖内のVHとVLが会合できる(またはFvを形成できる)には不十分な残基を含むリンカーであるか不在であり、1本のポリペプチド鎖のVHが他方のポリペプチド鎖のVLに結合して1つ以上の抗原に特異的に結合することのできる抗原結合部位、すなわちFv分子を形成する)。二重特異性ディアボディ(すなわち異なる特異性を持つ2つのFvを含む)を形成するには、VLとVHがそれぞれのポリペプチド鎖の中で同じであること、またはVLとVHがそれぞれのポリペプチド鎖の中で異なることが可能である。
【0259】
一本鎖Fv(scFv)フラグメント
【0260】
当業者は、scFvが、単一のポリペプチド鎖内のVH領域およびVL領域と、VHとVLの間のポリペプチドリンカーを含み、そのリンカーが、scFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成する(すなわち単一のポリペプチド鎖のVHとVLが互いに会合してFvを形成する)ことを可能にしていることがわかるであろう。例えばリンカーは過剰な12個のアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3が、scFvにとって最も好ましいリンカーの1つである。
【0261】
一例では、リンカーは配列SGGGGSGGGGSGGGGSを含む。
【0262】
本開示では、ジスルフィドで安定化されたFv(またはdiFvまたはdsFv)も考慮する。ここでは単一のシステイン残基がVHのFRの中とVLのFRの中に導入され、それらシステイン残基がジスルフィド結合によって連結されて安定なFvを生み出す。
【0263】
その代わりに、またはそれに加えて、本開示には、二量体scFv、すなわち(例えばFosまたはJunに由来する)例えばロイシンジッパードメインにより、非共有結合または共有結合によって結合された2個のscFv分子を含むタンパク質が包含される。あるいは例えばUS20060263367に記載されているように、2個のscFvsが十分な長さのペプチドリンカーによって連結されて両方のscFvが形成され、抗原に結合することが可能になる。
【0264】
半抗体
【0265】
いくつかの例では、本開示の抗原結合フラグメントは半抗体または半分子である。当業者は、半抗体が単一の重鎖と単一の軽鎖を含むタンパク質を意味することを認識しているであろう。「半抗体」という用語には、1つの抗体軽鎖と1つの抗体重鎖を含むタンパク質も包含され、その中の抗体重鎖は変異して別の抗体重鎖との会合が阻止されている。一例では、半抗体は、1つの抗体が解離して2個の分子を形成するときに形成され、そのそれぞれは、単一の重鎖と単一の軽鎖を含有する。
【0266】
半抗体を生成させる方法は本分野で知られており、代表的な方法が本明細書に記載されている。
【0267】
一例では、半抗体は、発現させるための興味あるIgGを構成する単一の重鎖と単一の軽鎖の細胞遺伝子に導入することによって分泌させることができる。一例では、定常領域(例えばIgG4定常領域)は、ヘテロ二量体の形成を阻止する「鍵または穴」(または「ノブまたは穴」)変異を含む。一例では、定常領域(例えばIgG4定常領域)はT366W変異(すなわちノブ)を含む。別の一例では、定常領域(例えばIgG4定常領域)は、T366S、L368A、およびY407V変異(すなわち穴)を含む。別の一例では、定常領域は、T350V、T366L、K392L、およびT394W変異(ノブ)を含む。別の一例では、定常領域は、T350V、L351Y、F405A、およびY407V変異(穴)を含む。代表的な定常領域アミノ酸置換はEU番号付けシステムに従って番号が付けられている。
【0268】
他の抗体と抗体フラグメント
【0269】
本開示では他の抗体と抗体フラグメントも考慮し、それは例えば:
(i)ミニボディ(例えばUS5837821に記載);
(ii)ヘテロコンジュゲートタンパク質(例えばUS4676980に記載);
(iii)化学的架橋剤を用いて作製したヘテロコンジュゲートタンパク質(例えばUS4676980に記載);および
(iv)Fab3(例えばEP19930302894に記載)である。
【0270】
安定化されたタンパク質
【0271】
本開示の抗原結合タンパク質は、IgG4定常領域または安定化されたIgG4定常領域を含むことができる。「安定化されたIgG4定常領域」という表現は、Fabアーム交換、またはFabアーム交換を受ける傾向、または半抗体の形成、または半抗体を形成する傾向を減らすように改変されたIgG4定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」はヒトIgG4にとって一種のタンパク質修飾を意味し、IgG4重鎖とそれに付着した軽鎖(半分子)が別のIgG4分子からの重-軽鎖ペアと交換される。したがってIgG4分子は2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得することができる(二重特異性分子になる)。Fabアーム交換は生体内で自然に起こるし、精製された血液細胞または還元剤(還元されたグルタチオンなど)によってインビトロで誘導することができる。
【0272】
一例では、安定化されたIgG4定常領域は、Kabatのシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 1987 および/または 1991)によるヒンジ領域の241位にプロリンを含む。この位置は、EU番号付けシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 2001と、Edelman et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78-85, 1969)によるヒンジ領域の228位に対応する。ヒトIgG4では、この残基は一般にセリンである。セリンがプロリンで置換された後、IgG4ヒンジ領域は配列CPPCを含む。この点に関し、「ヒンジ領域」はFc領域とFab領域に連結される抗体重鎖定常領域のプロリンリッチな部分であり、抗体の2つのFabアームに移動性を与えることが当業者にはわかるであろう。このヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。それは一般に、Kabatの番号付けシステムによればヒトIgG1のGlu226からPro243までの部分として定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に置くことにより、IgG1配列とアラインメントさせることができる(例えばWO2010080538参照)。
【0273】
免疫グロブリンと免疫グロブリンフラグメント
【0274】
本開示の抗原結合タンパク質の一例は、免疫グロブリンの可変領域(TCRまたは重鎖免疫グロブリン(例えばIgNAR、ラクダ抗体))を含むタンパク質である。
【0275】
重鎖免疫グロブリン
【0276】
重鎖免疫グロブリンは、重鎖を含むが軽鎖を含まないという点で、他の多くの形態の免疫グロブリン(例えば抗体)とは構造が異なる。したがってこれら免疫グロブリンは、「重鎖のみの抗体」とも呼ばれる。重鎖免疫グロブリンは、例えばラクダと軟骨魚(IgNARとも呼ばれる)に見られる。
【0277】
天然の重鎖免疫グロブリンの中に存在する可変領域は、通常の4鎖抗体の中に存在する重鎖可変領域(それを「VHドメイン」と呼ぶ)から区別するとともに、通常の4鎖抗体の中に存在する軽鎖可変領域(それを「VLドメイン」と呼ぶ)から区別するため、一般に、ラクダIgでは「VHHドメイン」と呼ばれ、IgNARではV-NARと呼ばれる。
【0278】
重鎖免疫グロブリンは、関係する抗原に大きな親和性かつ大きな特異性で結合するのに軽鎖の存在を必要としない。これは、単一ドメイン結合フラグメントが、発現が容易で一般に安定かつ可溶性である重鎖免疫グロブリンに由来できることを意味する。
【0279】
ラクダからの重鎖免疫グロブリンとその可変領域の一般的な記述と、その生成および/または単離および/または利用のための方法は、特に、以下の参考文献WO94/04678、WO97/49805、およびWO 97/49805の中に見いだされる。
【0280】
軟骨魚類からの重鎖免疫グロブリンとその可変領域の一般的な記述と、その生成および/または単離および/または利用のための方法は、特に、WO2005118629の中に見いだされる。
【0281】
V様タンパク質
【0282】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質はTCR含む。T細胞受容体は、抗体のFvモジュールと似た構造の中に組み込まれる2つのVドメインを持つ。Novotny et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 8646-8650, 1991は、T細胞受容体のその2つのV-ドメイン(アルファとベータと呼ばれる)をどのようにして融合させて一本鎖ポリペプチドとして発現させることができるかと、さらに、抗体scFvと同様にどのように表面残基を変化させて疎水性を減らすかを記述している。V-アルファドメインとV-ベータドメインの2つを含む一本鎖T細胞受容体または多量体TCRの生成を記述している他の刊行物に、WO1999045110またはWO2011107595が含まれる。
【0283】
抗原結合ドメインを含む他の非抗体タンパク質に含まれるのは、一般に単量体であるV様ドメインを持つタンパク質である。そのようなV様ドメインを含むタンパク質の例に含まれるのは、CTLA-4、CD28、およびICOSである。そのようなV様ドメインを含むタンパク質のさらなる開示は、WO1999045110に含まれている。
【0284】
アドネクチン
【0285】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアドネクチンを含む。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンの10番目のフィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメインに基づいており、その中のループ領域が変化して抗原に結合する。例えば10Fn3ドメインのβ-サンドイッチの一端にある3つのループを操作してアドネクチンが抗原を特異的に認識できるようにすることができる。さらなる詳細に関しては、US20080139791またはWO2005056764を参照されたい。
【0286】
アンチカリン
【0287】
さらなる一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアンチカリンを含む。アンチカリンは、小さな疎水性分子(ステロイド、ビリン、レチノイド、および脂質など)を輸送する細胞外タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、抗原に結合するように操作することのできる円錐構造の開放端に複数のループを持つ堅固なβ-シート二次構造を持つ。このような操作されたリポカリンはアンチカリンとして知られる。さらなる詳細に関しては、US7250297またはUS20070224633を参照されたい。
【0288】
アフィボディ
【0289】
さらなる一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアフィボディを含む。アフィボディは、抗原に結合するように操作することのできる黄色ブドウ球菌のプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来する足場である。Zドメインは、約58個のアミノ酸からなる3螺旋束からなる。ライブラリが、表面残基のランダム化によって作製されている。さらなる詳細に関しては、EP1641818を参照されたい。
【0290】
アビマー
【0291】
さらなる一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアビマーを含む。アビマーはAドメイン足場ファミリーに由来する多ドメインタンパク質である。アミノ酸約35個の天然ドメインは、決められたジスルフィド結合構造を採用している。Aドメインのファミリーが示す天然のバリエーションのシャッフリングによって多様性が生まれる。さらなる詳細に関しては、WO2002088171を参照されたい。
【0292】
DARPin
【0293】
さらなる一例では、本開示の抗原結合タンパク質は設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)を含む。DARPinは、細胞骨格への内在性膜タンパク質の付着を媒介するタンパク質の1つのファミリーであるアンキリンに由来する。1つのアンキリン反復は、2つのα-ヘリックスと1つのβ-ターンからなる33残基モチーフである。各反復の第1のα-ヘリックスとβ-ターンの中の残基をランダム化することによりDARPinを操作して異なる標的抗原に結合できるようにすることができる。その結合インターフェイスは、モジュールの数を増やすことによって増加させることができる(親和性成熟の方法)。さらなる詳細に関しては、US20040132028を参照されたい。
【0294】
アネキシン
【0295】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアネキシンを含む。
【0296】
アネキシンはリポコルチンとしても知られ、負に帯電したリン脂質、特にホスファチジルセリン(PS)に曝露される膜にCa2+に依存したやり方で結合する可溶性タンパク質の1つのファミリーを形成する。アネキシンは、高度に保存された70アミノ酸ドメインの4(例外的に8)回反復と可変アミノ(N)末端ドメイン(機能の特異性に責任があると考えられる)によって形成されている。アネキシンはさまざまな細胞プロセスと生理学的プロセスにおいて重要であり、例えば細胞の形の変化に関係する膜足場を提供する。アネキシンは、小胞のトラフィッキングと組織化、エキソサイトーシス、エンドサイトーシスや、カルシウムイオンチャネルの形成にも関与することが示されている。
【0297】
アネキシン種II、V、およびXIは細胞膜の中に位置することが知られている。アネキシンA5は、最も豊富な膜結合アネキシン足場である。アネキシンA5は膜のホスファチジルセリン単位に結合するときに2次元ネットワークを形成する。アネキシンA5は、エンドサイトーシスとエキソサイトーシスの間のほか、他の細胞膜プロセスの間、細胞の形の変化を安定化するのに有効である。
【0298】
アネキシン種I(またはアネキシンA1)は形質膜の細胞質面に好んで位置し、膜のホスファチジルセリン単位に結合する。アネキシンA1は活性化された膜の表面に2次元ネットワークを形成しない。
【0299】
一例では、このアネキシン種はアネキシン誘導体またはそのバリアントである。アネキシン誘導体またはそのバリアントは本分野で知られており、代表的な誘導体またはバリアントが本明細書に開示されている。例えばアネキシンのバリアント/誘導体は、WO199219279、WO2002067857、WO2007069895、WO2010140886、WO2012126157、Schutters et al., Cell Death and Differentiation 20: 49-56, 2013、またはUngethum et al., J Biol Chem., 286(3):1903-10, 2011に開示されている。
【0300】
例えばアネキシン誘導体は、短縮すること(例えば天然のタンパク質と比べて1つ以上のドメイン、またはより少数のアミノ酸残基を含むこと)、または置換されたアミノ酸を含有することができる。一例では、アネキシン誘導体は短縮されたアネキシン1である。例えば短縮されたアネキシン1はN末端自己切断部位(例えば41個のN末端アミノ酸が欠失している)を含まない。一例では、改変されたアネキシンは、アミノ酸伸長部(例えばX1-Gly-X2(ただしX1とX2はGlyとCysから選択される))を含むN末端キレート部位を持つことができる。一例では、アネキシン誘導体または改変されたアネキシンはホスファチジルセリンに結合する。一例では、アネキシン誘導体または改変されたアネキシンは、ホスファチジルセリンに野生型アネキシンと同等のレベルで結合する。例えばアネキシン誘導体または改変されたアネキシンは、ホスファチジルセリンに野生型アネキシンと同じレベルで結合する。
【0301】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質はアネキシンA5を含む。名称だけを目的として、非限定的に、アネキシンA5のアミノ酸配列は、Gene Accession ID 308、NCBI参照配列NP_001145、および/または配列番号5に教示されている。名称だけを目的として、非限定的に、アネキシンA1のアミノ酸配列は、NCBI参照配列NP_000691.1および/または配列番号7に教示されている。
【0302】
ガンマ-カルボキシグルタミン酸リッチ(GLA)ドメイン
【0303】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ガンマ-カルボキシグルタミン酸リッチ(GLA)ドメインまたはそのバリアントを含む。
【0304】
GLAドメインは、ビタミンK依存性カルボキシル化によって翻訳後修飾されたグルタミン酸残基を含有しており、それがガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)を形成する。
【0305】
GLAドメインを含むことが知られているタンパク質は本分野で知られており、その非限定的な例に含まれるのは、ビタミンK依存性タンパク質SとZ、プロトロンビン、トランスサイレチン、オステオカルシン、マトリックスGLタンパク質、インター-アルファ-トリプシンインヒビター重鎖H2、および増殖停止特異的タンパク質6である。
【0306】
ラクトアドヘリンドメイン
【0307】
一例では、本開示の抗原結合タンパク質はラクトアドヘリンドメインを含む。
【0308】
ラクトアドヘリンは多彩なタイプの細胞によって分泌される糖タンパク質であり、2つのEGFドメインと、血液凝固因子VとVIIIのC1ドメインおよびC2ドメインとの配列相同性を持つ2つのCドメイン(C1C2とC2)を持つ。これら凝固因子と同様、ラクトアドヘリンはホスファチジルセリン(PS)含有膜に大きな親和性で結合する。
【0309】
一例では、ラクトアドヘリンドメインは(例えば配列番号27に示されている)C1C2ドメインである。別の一例では、ラクトアドヘリンドメインはC2ドメインである。
【0310】
プロテインキナーゼドメイン
【0311】
一例では、本開示により、プロテインキナーゼCドメインを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0312】
プロテインキナーゼ(PKC)は、他のタンパク質の機能を、これらタンパク質上のセリンとトレオニンというアミノ酸残基のヒドロキシル基のリン酸化を通じて制御することに関与するプロテインキナーゼ酵素の1つのファミリー、またはこのファミリーのメンバーである。
【0313】
PKCの構造は本分野で知られており、ヒンジ領域によって互いにつながった調節ドメインと触媒ドメインからなる。調節ドメインはC1ドメインとC2ドメインを含んでおり、これらがそれぞれDAGとCa2+に結合してPKCを形質膜にリクルートする。
【0314】
一例では、プロテインキナーゼCドメインはC1ドメインである。別の一例では、プロテインキナーゼCドメインはC2ドメインである。
【0315】
プレクストリン相同ドメイン
【0316】
一例では、本開示により、プレクストリン相同(PH)ドメインを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0317】
PHドメインは本分野で知られており、細胞内シグナル伝達に関与したり細胞骨格の構成要素として関与したりする広い範囲のタンパク質に生じる小さなモジュール式ドメインである。PHドメインは約120個のアミノ酸を含む。このドメインは、生体膜とタンパク質(ヘテロ三量体Gタンパク質のベータ/ガンマサブユニットなど)の中のホスファチジルイノシトールに結合することができる。これらの相互作用を通じてPHドメインはタンパク質を異なる膜にリクルートする役割を果たしているため、それらタンパク質を適切な細胞区画に向かわせたり、それらタンパク質をシグナル伝達経路の他の構成要素と相互作用できるようにしたりする。
【0318】
ホスファチジルセリンと相互作用するペプチド
【0319】
一例では、本開示により、ホスファチジルセリンと相互作用するペプチドを含む抗原結合タンパク質が提供される。適切なペプチドは本分野で知られており、その中に含まれるのは、例えばThapa et al., J. Cell. Mol. Med. 12. 1649-1660, 2008とKim et al., PLOS One, 10(3): e0121171に記載されているPSP1である。PSP1は配列CLSYYPSYC(配列番号28)を含む。本開示では、ホスファチジルセリンに結合する能力を保持しているPSP1のバリアントも考慮する。
【0320】
可溶性T細胞受容体
【0321】
一例では、本開示のBTN2A1アンタゴニストは可溶性Vγ9+ TCRである。
【0322】
本開示で有用な可溶性Vγ9+ TCRは、典型的には、Vγ9+ γ鎖を含むγ鎖とδ鎖を含むヘテロ二量体だが、2つの異なるγδヘテロ二量体または2つの同じγδヘテロ二量体を含む多量体(例えば四量体)も本開示で使用することが考慮される。
【0323】
本開示の可溶性Vγ9+ TCRは、当業者に知られている適切な任意の方法によって生成させることができ、最も典型的には組み換えによって生成される。本開示によれば、可溶性γδ TCRを生成させるのに有用な組み換え核酸分子は、典型的には、組み換えベクターと、 γδ TCRの1つ以上の区画(例えば鎖)をコードする核酸配列を含む。本開示によれば、組み換えベクターは、選択された核酸配列を操作するための、および/またはそのような核酸配列を宿主細胞に導入するためのツールとして用いられる操作された(すなわち人工的に作製された)核酸分子である。したがって組み換えベクターは、選択された核酸配列のクローニング、シークエンシング、および/またはそれ以外の操作(例えば選択された核酸配列を発現させること、および/または宿主細胞の中に送達することによって組み換え細胞を形成すること)に適している。このようなベクターは、典型的には、異種核酸配列、すなわち天然にはクローニングまたは送達される核酸配列に隣接して見られることのない核酸配列を含有するが、ベクターは、興味あるタンパク質(例えばTCR鎖)をコードする核酸配列、または核酸分子の発現にとって有用な核酸配列に天然に隣接して見られる制御核酸配列(例えばプロモータ、非翻訳領域)も含有することができる。ベクターは、RNAまたはDNA、原核生物または真核生物が可能であり、典型的にはプラスミドである。
【0324】
典型的には、組み換え核酸分子に、1つ以上の転写制御配列に機能可能に連結された本発明の少なくとも1つの核酸分子が含まれる。本明細書では、「組み換え分子」または「組み換え核酸分子」という用語は主に、転写制御配列に機能可能に連結された核酸分子または核酸配列を意味するが、そのような核酸分子が本明細書に記載されている組み換え分子であるときには「核酸分子」という用語と交換可能に用いることができる。本開示によれば、「機能可能に連結された」という表現は、核酸分子を転写制御配列に連結し、その分子が宿主細胞の中にトランスフェクト(すなわち形質転換、形質導入、トランスフェクト、結合、または導入)されたときに発現できるようにすることを意味する。転写制御配列は、転写の開始、伸長、または終止を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、転写開始を制御する配列(プロモータ配列、エンハンサ配列、オペレータ配列、およびリプレッサ配列など)である。適切な転写制御配列には、組み換え核酸分子が導入される宿主細胞または宿主生物の中で機能できる任意の転写制御配列が含まれる。
【0325】
本発明の1つ以上の組み換え分子を用いて本開示のコードされた産物(例えば可溶性γδ TCR)を生成させることができる。一実施態様では、コードされた産物は、本明細書に記載の核酸分子をタンパク質の産生に効果的な条件で発現させることによって産生される。コードされたタンパク質を産生させるための好ましい1つの方法は、宿主細胞に1つ以上の組み換え分子をトランスフェクトして組み換え細胞を形成するというものである。トランスフェクトするのに適した宿主細胞の非限定的な例に含まれるのは、トランスフェクトすることが可能な任意の細菌、真菌(例えば酵母)、昆虫、植物、または動物の細胞である。宿主細胞として、トランスフェクトされていない細胞、または少なくとも1つの他の組み換え核酸分子をすでにトランスフェクトされた細胞が可能である。得られる本発明のタンパク質は、組み換え細胞の中に残っていてもよく;培地の中に分泌されてもよく;2つの細胞膜の間の空間に分泌されてもよく;細胞膜の外面に保持されてもよい。「タンパク質を回収する」という表現は、タンパク質を含有する培地全体を回収することを意味し、分離または精製の追加工程を含む必要はない。本開示に従って生成されるタンパク質は、多彩な標準的タンパク質精製技術(その非限定的な例は、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、コンカナバリンAクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、および示差可溶化(differential solubilization)である)を利用して精製することができる。本開示に従って生成されるタンパク質は、「実質的に純粋な」形態で回収されることが好ましい。本明細書では、「実質的に純粋な」は、本開示の組成物と方法において可溶性 γδ TCRを有効に利用できる純度を意味する。
【0326】
例えば関連するγ遺伝子とδ遺伝子(例えばγδ TCRのγ鎖とδ鎖の望む部分をコードする核酸配列)を含有する組み換えコンストラクトは、新たに合成すること、または望む受容体を発現するγδ T細胞の供給源(例えばハイブリドーマ、クローン、トランスジェニック細胞)に由来するTCR cDNAのPCRによって生成させることができる。望むγ遺伝子とδ遺伝子のPCR増幅は、これらの鎖の膜貫通ドメインと細胞質ドメインが除去される(すなわち可溶性受容体を生成させる)ように設計することができる。これらの遺伝子で鎖間ジスルフィド結合を形成する部分は保持され、γδヘテロ二量体の形成が維持されることが好ましい。それに加え、望む場合には、産物またはコンストラクトを精製または標識するための選択マーカーをコードする配列をコンストラクトに付加することができる。その後、増幅されたγ cDNAとδ cDNAのペアをクローニングし、配列を検証し、適切なベクター(例えば二重バキュロウイルスプロモータを含有するバキュロウイルスベクター(例えばpAcUW51, Pharmingen Corp., San Diego, Calif.)の中に移す。
【0327】
次いで、可溶性γδ TCR DNAコンストラクトを適切な宿主細胞(例えばバキュロウイルスベクターの場合には適切な昆虫宿主細胞、または哺乳類発現ベクターの場合には適切な哺乳類宿主細胞)の中に同時にトランスフェクトすると、組み換え受容体が発現されて例えば上清の中に分泌される。その後、可溶性γδ TCRを含有する培養物上清を、さまざまなアフィニティカラム(ニッケルニトリロ三酢酸アフィニティカラムなど)を用いて精製することができる。産物は濃縮して保管することができる。他の方法とプロトコルを用いて本開示で使用するための可溶性TCRを生成させることが可能であり、そのような方法が本明細書で用いるために明示的に考慮されることは、当業者にとって明らかであろう。
【0328】
医薬組成物
【0329】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを対象に投与するための組成物または方法において、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは、本分野で理解されているように、医薬として許容可能な基剤と組み合わされることが適切である。したがって本開示の一例により、本開示のBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを医薬として許容可能な基剤と組み合わせて含む組成物(例えば医薬組成物)が提供される。
【0330】
一般に、「基剤」という用語は、任意の対象(例えばヒト)に安全に投与することのできる固体または液体の充填剤、結合剤、希釈剤、カプセル化物質、乳化剤、湿潤剤、溶媒、懸濁剤、コーティング、または潤滑剤を意味する。例えばRemington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co. N.J. USA, 1991)に記載されているように、具体的な投与経路に応じ、許容可能な多彩な基剤を使用することができる。
【0331】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの発明は、予防または治療のための非経口投与、体表面投与、経口投与、または局所投与、エアロゾル投与、または経皮投与に有用である。一例では、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは非経口で(皮下または静脈内に)投与される。例えばBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは静脈内投与される。
【0332】
投与されるBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの製剤化は、選択される投与経路と製剤(例えば溶液、エマルション、カプセル)によって変わるであろう。投与されるBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを含む適切な医薬組成物は、生理学的に許容可能な基剤の中で調製することができる。溶液またはエマルションに関しては、適切な基剤に含まれるのは、例えば水性またはアルコール性/水性溶液、エマルション、または懸濁液であり、その中には生理食塩水と緩衝化媒体が含まれる。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油を含むことができる。多彩な適切な水性基剤が当業者に知られており、その中には、水、緩衝水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、デキストロース溶液、およびグリシンが含まれる。静脈内ビヒクルは、さまざまな添加剤、保存剤、または流体、栄養素または電解質補充剤を含むことができる(一般にRemington's Pharmaceutical Science, 16th Edition, Mack, Ed. 1980を参照されたい)。組成物は、場合により、必要な場合に生理学的条件と同等にするために医薬として許容可能な補助物質(pH調節剤と緩衝剤、および毒性調節剤など、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウム)を含有することができる。BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは液体段階で保管すること、または知られている凍結乾燥と再構成の技術に従い、保管のために凍結乾燥させて使用前に適切な基剤の中で再構成することができる。
【0333】
γδ T細胞免疫応答の機能的測定
【0334】
本開示は、細胞溶解機能、1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生、および/またはγδ T細胞の増殖を活性化させる、または阻害することのできるBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストにも関する。T細胞の数と機能は、T細胞を活性(サイトカイン産生、増殖、または細胞傷害性など)によって検出するアッセイによりモニタすることができる。このような活性は、臨床での転帰と相関する可能性がある。例えば細胞溶解活性を活性化させると、腫瘍標的または感染した細胞が、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを用いた治療の後に溶解する可能性がある。活性化と増加したサイトカイン産生は、サイトカインによる腫瘍または他の標的の細胞死の誘導につながる可能性がある。
【0335】
γδ T細胞の細胞溶解機能を活性化させるとは、γδ T細胞の細胞傷害性の増加、すなわちγδ T細胞による標的細胞の特異的溶解の増加を意味する。γδ T細胞の細胞溶解機能を阻害するとは、γδ T細胞の細胞傷害性の減少、すなわちγδ T細胞による標的細胞の特異的溶解の減少を意味する。γδ T細胞の細胞溶解機能は、例えば直接的な細胞傷害性アッセイによって測定することができる。細胞傷害性アッセイは、典型的には、T細胞またはPBMCを含有するサンプルを、51Crまたはユーロピウムをロードした標的と混合し、標的細胞が溶解した後のクロムまたはユーロピウムの放出を測定することを含む。代理標的、例えば腫瘍細胞系がしばしば用いられる。標的は、抗原(例えばpAg)とともにロードすることができる。サンプルと標的を、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下または不在下でインキュベートする。約4時間にわたってインキュベートした後の標的の溶解率を、標的の達成可能な最大溶解率と比較することによって計算する。細胞傷害性アッセイを利用して、受動的に送達されたT細胞と能動的な免疫療法のアプローチの活性をモニタすることができる。
【0336】
γδ T細胞による1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生を活性化させる、または阻害するとは、γδ T細胞による1つ以上の特定のサイトカイン(例えばIFN-γ、TNF-α、GM-CSF、IL-2、IL-6、IL-8、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、またはIL-17A)の全サイトカイン産生のそれぞれ増加または減少を意味する。T細胞によるサイトカイン分泌は、バルクのサイトカイン産生の測定(ELISAによる)によって、ビーズに基づくアッセイ(例えばLuminex)によって、または個々のサイトカイン産生T細胞のカウント(ELISPOTアッセイによる)によって検出することができる。
【0337】
ELISAアッセイでは、PBMCサンプルを、BTN2A1を発現する添加された細胞あり、またはなしで、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下または不在下にてインキュベートし、規定された時間が経過した後、培養物からの上清を回収し、興味あるサイトカインのための抗体で被覆した微量滴定プレートに添加する。検出可能な標識またはレポータ分子に連結された抗体を添加し、プレートを洗浄して読み取る。典型的には単一のサイトカインを各ウエルで測定するが、15種類のサイトカインまで単一のサンプル中で測定することができる。興味あるサイトカインに対する抗体は、一様で識別可能な割合の蛍光染料とともにマイクロスフェアに共有結合させることができる。その後、蛍光レポータ染料に結合した検出抗体を添加し、フローサイトメトリーを実施する。特定の興味あるサイトカインを示す特定の蛍光に関するゲーティングにより、レポータの蛍光の量に比例するサイトカインの量を定量することが可能である。
【0338】
ビーズに基づくLuminexなどのアッセイでは、サンプルは、通常、分析物特異的捕獲抗体であらかじめ被覆された色彩コード付きビーズの混合物に添加される。抗体は興味ある分析物に結合する。興味ある分析物に対して特異的なビオチニル化検出抗体を添加し、抗体-抗原サンドイッチを形成する。蛍光分子が結合したストレプトアビジンを添加すると、ビオチニル化検出抗体に結合する。ビーズをフローに基づく検出装置で読み取る。1つのレーザーがビーズを分類し、検出中の分析物を明らかにする。第2のレーザーで蛍光分子からのシグナルの大きさを求めると、それが、結合した分析物の量に正比例している。
【0339】
ELISPOTアッセイは、典型的には、96ウエルの微量滴定プレートを精製されたサイトカイン特異的抗体で被覆し;プレートをブロックしてランダムなタンパク質の非特異的な吸収を阻止し;サイトカイン分泌T細胞を、いくつかの異なる希釈度のBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下または不在下で刺激細胞とともにインキュベートし;その細胞を洗浄剤で溶解させ;標識された二次抗体を添加し;抗体-サイトカイン複合体を検出することを含む。最終工程の生成物は、通常は、着色された生成物を生成させる酵素/基質反応物であり、それを顕微鏡で、目視で、または電子的に定量することができる。各スポットは、興味あるサイトカインを分泌している単一の細胞を表わす。
【0340】
γδ T細胞による1つ以上のサイトカインのサイトカイン産生は、多パラメータフローサイトメトリーによって検出することもできる。ここでは、サイトカイン分泌をγδ T細胞の中でブレフェルジンAまたはモネンシン(両方ともゴルジ体に異なるやり方で作用するタンパク質輸送阻害剤であり、どちらが最良であるかは調べるサイトカインによる)を用いて4~24時間ブロックした後、これらの細胞を興味あるマーカーに関して表面染色し、次いで固定し、透過処理した後、蛍光分子がカップルしていて興味あるサイトカインを標的とする抗体で細胞内染色した。その後、これらの細胞はフローサイトメトリーによって分析することができる。末梢血、リンパ節、または組織におけるT細胞のサイトカイン分泌パターンをフローサイトメトリーによって特徴づけることによってヒトにおける免疫応答をモニタすることが可能である。これは、BFAまたはモネンシンで処理することなく生体外で実施することができる。
【0341】
γδ T細胞の増殖を活性化させる、または阻害するとは、γδ T細胞の数の増加または減少をそれぞれ意味する。増殖はリンパ球増殖アッセイを利用して測定することができる。精製されたT細胞またはPBMCのサンプルを、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの存在下または不在下でさまざまな希釈度の刺激細胞と混合する。72~120時間後、[3H]チミジンを添加すると、ガンマカウンタを利用して(増殖の1つの指標としての)DNA合成を定量し、DNAに組み込まれた放射性標識したチミジンの量を測定することができる。増殖アッセイを利用すると、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを投与する前と投与した後のγδ T細胞応答を比較することができる。
【0342】
本開示は、BTN2A1を発現する細胞(例えば単球、マクロファージ、および/または樹状細胞)の活性および/または生存を活性化させる、または阻害することのできるBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストにも関する。BTN2A1を発現する細胞の活性を活性化させる、または阻害するとは、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストが、細胞の表面での共刺激分子の発現(CD86、CD80、およびHLA-DRなど)をそれぞれ増加または減少させること、および/またはこれら細胞の中でToll様受容体(TLR)リガンドによって誘導される炎症促進応答を増加させること、および/または免疫チェックポイント分子(PD-L1、PD-L2など)の発現を変化させることを意味する。BTN2A1を発現する細胞の活性および/または生存は抗原提示アッセイによって測定することができる。簡単に述べると、CD14+細胞をPBMCから単離し、GM-CSFとIL-4を含有する培地の中で5日間にわたって培養してMODCを産生させることができる。以前に記載されているように、抗体-タンパク質複合体をこれらに添加し、MODCに添加されたタンパク質を認識することのできるHLA合致T細胞を添加し、それに続けてこれらT細胞に関するICSを実施することによって提示能力を測定することができる。
【0343】
適応
【0344】
本開示は、疾患または状態の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのに使用できるBTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストにも関する。BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは、それを必要とする対象に直接投与すること、または細胞(γδ T細胞を含む)の生体外刺激と養子移入に用いることができる。
【0345】
当業者は、BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストの使用が、1つ以上のγδ T細胞免疫応答を増強することを望むか、それとも抑制することを望むかどうかと、標的とされるγδ T細胞の集団が免疫抑制性であるか免疫刺激性であるかに依存することを認識しているであろう。一実施態様では、γδ T細胞の機能を操作して例えば腫瘍細胞または感染した細胞に対する細胞傷害性を促進することにより、例えばγδ T細胞の抗腫瘍活性または抗病原体活性を促進する。別の一実施態様では、γδ T細胞の機能を操作し、免疫応答の間のγδ T細胞の免疫抑制活性および/または調節活性を促進する。
【0346】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを用いてがんの症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和することができる。
【0347】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストを用いて感染症の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和することができる。
【0348】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは、がんまたは感染症を治療するためのワクチンアジュバントとして用いることができる。
【0349】
BTN2A1のアゴニストまたはアンタゴニストは、自己免疫疾患の症状を予防する、を治療する、の進行を遅延させる、の再発を防止する、またはを緩和するのにも使用できる。
【0350】
BTN2A1アンタゴニストは、他の免疫抑制剤および化学療法剤(その非限定的な例は、プレドニゾン、アザチオプリン、シクロスポリン、メトトレキサート、およびシクロホスファミドである)と組み合わせて用いることができる。
【0351】
実施例1:材料と方法
【0352】
ヒトサンプル
【0353】
健康なドナーの血液に由来するヒト末梢血細胞(PBMC)をAustralian Red Cross Blood Serviceから、倫理審査承認17-08VIC-16または16-12VIC-03に加えてUniversity of Melbourne Human Ethics Sub-Committee(1035100)またはOlivia Newton John Cancer Research Institute(ONJCRI)Austin Health Human Research Ethics Committee(H2012-04446)からの倫理審査承認のもとで取得し、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque PLUS GE Health care)と赤血球溶解(ACKバッファ、自家製)を通じて単離した。確立された細胞系がマイコプラズマ陰性であることをMycoAlert試験(Lonza)を利用して定法で確認し、交差汚染をSTRプロファイリングによって排除した。
【0354】
フローサイトメトリー
【0355】
ヒト細胞をペレット化し(400×g)、洗浄し、ヒトFc受容体ブロック(Miltenyi Biotec)を含有するPBS/2%のウシ胎仔血清(FBS)とともに4℃でインキュベートした。マウスNIH-3T3細胞を抗CD16/CD32(クローン2.4G2、自家製)とともにインキュベートした。次に、細胞を、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD、Sigma)またはLIVE/DEAD(登録商標)生存マーカー(ThermoFisher)に加えて抗体とともにインキュベートした(表1)。BTN2A1とBTN3Aを、自家製モノクローナル抗体(下記参照)を用いて検出した。抗BTN2A1 mAbまたは合致したアイソタイプ対照(クローンBM4、自家製)をアミンカップリングによってAlexa Fluor(登録商標)-647(Thermo Fisher)に結合させ、抗BTN3A(クローン103.2)を、スルホ-SMCCヘテロ二機能性架橋剤を用いてR-フィコエリトリン(Prozyme)に結合させた。いくつかの実験では、標識なしの抗BTN2A1 mAbを、ヤギ抗マウスポリクローナル二次抗体PE(BD-Pharmingen)を用いて検出した後、ブロッキング工程(5%の正常なマウス血清)を続けた。細胞は、四量体Vγ9Vδ2+ γδTCR、BTN2A1、またはマウスCD1d-α-GalCerエクトドメイン(自家製、下記参照)、または同等な量の単独のストレプトアビジンコンジュゲート(BD)でも染色した。各試薬を滴定して最適な希釈因子を求めた。すべてのデータをLSRFortessa(商標)II(BD)で取得し、FACSDivaとFlowJo(BD)ソフトウエアで分析した。時間、前方散乱面積 対 高さ、および生死判別(viability)染料というパラメータをそれぞれ用いてすべてのサンプルをゲートし、不安定な事象、重複、および死んだ細胞を除外した。
【0356】
【表1-1】
【表1-2】
【0357】
γδ T細胞の単離と増殖
【0358】
いくつかの実験において、抗γδTCR-PECy7の後に抗フィコエリトリンを媒介とした磁性ビーズ精製を用いるか、γδ T細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を用いてMACSによりγδ T細胞を富化した。富化後、Aria III(BD)を用いたソートによってCD3+ Vδ2+ γδ T細胞をさらに精製した。富化されたγδ T細胞を、プレートに結合した抗CD3ε(OKT3、10 μg/ml、Bio-X-Cell)、可溶性抗CD28(CD28.2、1 μg/ml、BD Pharmingen)、フィトヘマグルチニン(0.5 μg/ml、Sigma)、および組み換えヒトIL-2(100 U/ml、PeproTech)を用いてインビトロで48時間刺激した後、IL-2を用いて14~21日間維持した。細胞の培養を、10% (v/v)のFCS(JRH Biosciences)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、Glutamax(2 mM)、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、非必須アミノ酸(0.1 mM)、およびHEPESバッファ(15 mM)、pH 7.2~7.5(すべて、Invitrogen Life Technologiesから)に加えて50 μMの2-メルカプトメタノール(Sigma-Aldrich)を補足したRPMI-1640とAIM-V(Invitrogen)の50:50 (v/v)混合物からなる完全培地の中で実施した。
【0359】
トランスフェクション
【0360】
BTN2A1、BTN2A2、BTN3A1、BTN3A2、BTNL3、およびBTNL8(すべてアイソフォーム1)をpMIG II哺乳類発現ベクター(D. Vignaliからの贈り物(Addgeneプラスミド# 52107)(J. Holst et al. (2006))にクローニングし、サンガーシークエンシングによって検証した。マウスNIH-3T3細胞、ハムスターCHO-K1細胞、ヒトLM-MEL-62細胞を前日に播種し、OptiMEMの中でFuGene HD(登録商標)またはViafect(商標)を製造者の指示に従って用いてこれら細胞にトランスフェクトした。遺伝子発現を可能にするため48時間(LM-MEL-62細胞では72時間)後、細胞でGFPと遺伝子発現を調べ、その後表現型アッセイまたは機能アッセイで使用した。
【0361】
γδ T細胞の機能アッセイ
【0362】
新鮮なPBMC(2×106個)を24ウエルのプレート±ゾレドロネート(4 μM、Sigma)の中で培養し、BTN2A1、BTN3A1、またはアイソタイプ対照IgG1κ(MOPC-21、BioLegend)(10 μg/ml)に対するmAbを精製した。24時間後、CD3ε+ γδTCR+ Vδ2+/- γδ T細胞の活性化をフローサイトメトリーによって評価し、サイトカイン産生を、サイトメトリービーズにより、製造者の指示(BD)に従って調べた。図14のアッセイのため、PBMCを24ウエルのプレートの中で培養し、BTN2A1、BTN3A1、またはアイソタイプ対照(10 μg/ml)に対するmAbを用いて30分間ブロックした。次いで細胞を、IL-2(25 U/ml、Miltenyi)とGolgiplugタンパク質輸送阻害剤(BD Biosciences)に加え、HMBPP(0.5 ng/ml、Sigma)、ゾレドロネート(4 μM、Sigma)、およびCEF(1 μg/ml、Miltenyi)の組み合わせを用いて18時間刺激した。細胞を表面染色した後、固定し、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Invitrogen)を製造者のプロトコルに従って用いて透過処理した後、抗IFN-γ(Biolegend)を用いて染色した。共培養アッセイのため、精製してインビトロで増殖させたγδ T細胞(5×105個)を96ウエルのプレートの中でAPC(3×105個)±ゾレドロネート(4 μM)とともに24時間培養し、γδ T細胞の活性化を上記のようにしてフローサイトメトリーによって明らかにした。(図3Cでは)その代わりに、γδ T細胞磁性ビーズ単離キット(Miltenyi)を用いてPBMCドナーから精製した4×104個の一次γδ T細胞をLM-MEL-62 WTまたはBTN2A1null1 APCとともに2:1の比で、1 μMのゾレドロネートの存在下にて2日間培養した。非接着T細胞をその後洗浄し、新たなプレートの中の培地に加えて100 U/ml IL-2の中でAPCなしにてさらに7日間培養した。その後、Vδ2+ γδ T細胞をフローサイトメトリーによって数えた。
【0363】
FRETアッセイ
【0364】
BTN2A1とBTN3A1のエクトドメイン間のFRETを検出するため、細胞を、PEが結合した抗BTN3A1(ドナー)と、Alexa 647が結合したBTN2A1(アクセプタ)で染色した。FRETが、補償されたイエロー670/30チャネルで検出された。長い(BTN3A1とBTNL3で使用)か短い(BTN2A1とBTNL8で使用)可撓性N末端リンカー(図19B)を含有するCFP(mTurquoise2、ドナー)コンストラクトとYFP(mVenus、アクセプタ)コンストラクトを合成し(ThermoFisher)、ブチロフィリンコンストラクトのC末端の中の、部位特異的変異導入によって導入されたフレーム内MfeI部位と、やはりpMIG IRES-GFPモチーフを除去した3′ SalI部位の間にクローニングした。CFPがバイオレット450/50チャネルで検出され、YFPはイエロー585/15を用い、FRETは、CFPとYFPの漏れ込みが補償によって除去されていたバイオレット530/30チャネルを用いた。FRET+と同定された細胞の頻度を、二重トランスフェクタントについてはゲートされたCFP+YFP+ NIH-3T3細胞で、単一トランスフェクタントについてはCFP+ NIH-3T3細胞またはYFP+ NIH-3T3細胞で調べた。
【0365】
腫瘍生存アッセイ
【0366】
腫瘍(104)細胞を96ウエルのプレートの中のRF-10に播種した。翌日、2×104個のγδ T細胞を100 U/mlのIL-2(Miltenyi)±1 μMのゾレドロネート(Sigma)とともに添加した。1日間または3日間のインキュベーションの後、それぞれの時点で生存率をMTSアッセイによって評価し、SpectroStar Nanoプレートリーダー(BMG Labtech)で490 nmにて吸光度を測定し、バックグラウンドに関して補正し、APCだけを含有するウエルに対して規格化した。
【0367】
単一細胞γδTCRシークエンシング
【0368】
健康なPBMCドナーに由来するCD3ε+ γδTCR+ Vδ2+ γδ T細胞を個別にソートした。次にγδTCRを、補表2に掲載されているプライマーを用いて増幅した。次にPCRアンプリコンを、発現のためγ-鎖またはδ-鎖のエクトドメインを含有するpHL-secにクローニングした(図8C)。
【0369】
全ゲノムCRISPR/Cas9ノックダウンスクリーン
【0370】
CRISPR/Cas9ノックダウンスクリーンを、本質的にJ. Young et al. (2017)に記載されているようにして実施した。簡単に述べると、遺伝子1個当たりn=6個のgRNAを含有するプールしたレンチウイルスヒトgRNAノックアウトライブラリ(GeCKOv2、Feng Zhangからの贈り物、Addgene #1000000048)でEndura(商標)ElectroCompetent細胞(Lucigen)を500×超のカバレッジで形質転換し、1 Lの液体Luria Broth培養物の中で37℃にて16時間増殖させた。プラスミドDNAを精製し(PureLink(商標)gigaprep、ThermoFisher)、増幅前と増幅後のライブラリの中のgRNAの量を、PCRで増幅したライブラリのシークエンシング(Illumina HiSeq、サンプルごとに60×106回のリード)によって検証すると、gRNAの脱落は0.2%未満であった。gRNAライブラリDNAに加えてパッケージングプラスミドをFuGENE(登録商標)(Promega)を用いてHEK-293T細胞に一過性にトランスフェクトすることによってレンチウイルス粒子を生成させ、培養物上清をピューロマイシン(1 μg/ml、ThermoFisher)を用いてLM-MEL-62細胞に関して滴定してウイルス力価を求めた。LM-MEL-62細胞の4つの生物学的レプリケート(それぞれ2×108個)にレンチウイルスライブラリを約0.3の感染多重度で形質導入した。次に、形質転換された細胞をピューロマイシンでさらに5日間にわたって選択した後、Vγ9Vδ2+ γδTCR四量体#6low細胞を各レプリケートの半分(約6×107個)からソートし、残りの半分をソートなしの対照として使用した。ソートされた細胞を約2週間にわたって再び増殖させた後、再びソートした。これをさらに2回繰り返し、LM-MEL-62細胞の明確なVγ9Vδ2+ γδTCR四量体#6low集団が十分に豊富になるようにした(図9A)。次いでゲノムDNAを、以前にS. Chen et al. (2015)が記載しているようにして抽出したが、追加のフェノール-クロロホルム精製工程を含めた。約6×107個のソートなしの細胞と約3×107個のソートされた細胞からのgRNAを、Pfuに基づくDNAポリメラーゼ(Herculase II Fusion, Agilent Technologies)と、以前に報告されている(J. Young et al (2017))インデックス配列とアダプタ配列を含有する1工程プライマー(IDT Ultramer oligos)とを用いたPCR(33サイクル)を利用してゲノムDNAから増幅した。アンプリコンを電気泳動の後にゲル抽出し(Wizard(登録商標)SV Gel Clean-Up System、Promega)、PicoGreen(登録商標)(ThermoFisher)で定量し、NovaSeq(Illumina)を用いてシークエンシングした。Cutadapt(M. Martin et al (2011))を利用し、サンプルデータを、順方向プライマースタガーモチーフと逆方向8量体バーコードの組み合わせを用いて脱多重化し、R studioの中のEdgeRソフトウエアパッケージ(M.D. Robinson et al. (2010))を用いて分析した。processAmplicons機能を利用してガイドを数えた。そのとき、単一塩基対のミスマッチ、またはシフトしたガイド位置を許容した。少なくとも5つのサンプルの中で0.5カウント/106未満のガイドを分析から除外した。分散推定の後、ソートなしのサンプルとソートされたサンプルの間のgRNA発現の差をexactTest機能を利用して求め、偽発見率(FDR)が0.05未満を統計的に有意であると見なした。
【0371】
可溶性タンパク質の産生
【0372】
C末端ビオチンリガーゼ(AviTag(商標)とHis6タグを持つコンストラクトをコードするpHL-secベクターDNA(A.R. Aricescu et al. (2006))を哺乳類Expi293F細胞またはGNTI欠損HEK-293S細胞にそれぞれExpiFectamineまたはPEIを用いて一過性にトランスフェクトすることにより、可溶性ヒトγδTCR、ブチロフィリン2A1、およびマウスCD1dエクトドメインを発現させた。MR1-5-OP-RU四量体を以前に記載されているようにして生成させた(H.F. Koay et al. (2019))。固定化された金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)とゲル濾過を利用してタンパク質を培養物上清から精製し、BirA(自家製)を用いて酵素的にビオチニル化した。タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィによって再精製し、-80℃で保管した。ビオチニル化されたタンパク質をストレプトアビジン-PE(BD)で4:1のモル比にて四量体化した。C末端His6タグを持つブチロフィリンB30.2細胞内ドメインをコードするDNAコンストラクトを新たに合成し(ThermoFisher)、pET-30細菌発現ベクターにクローニングした。BL21 DE3(pLysS)大腸菌を用い、IPTG(1 mM)で誘導した後に30℃で一晩発現させた。細胞ペレットを洗浄し、ソニケータを用いてPBS/1 mMのDTTの中で溶解させ、IMACとゲル濾過を利用してB30.2タンパク質を透明なライセートから精製した。
【0373】
抗BTN2A1モノクローナル抗体の生成
【0374】
ヒト抗体ファージ提示ライブラリを用い、BTN2A1に対して特異的な抗体クローンをスクリーンした。スクリーニングは、ストレプトアビジンで被覆した常磁性ビーズ(Dynal)に固定化された50 nMの組み換え可溶性C末端Hisタグ付きBTN2A1エクトドメインへの結合に関する3ラウンドの選択で構成されており、ストレプトアビジンで被覆したビーズにやはり固定化された無関係な対照であるHisタグ付きタンパク質の表面に非特異的結合物質があらかじめ吸着されていた。徹底的に洗浄した後、結合したファージを溶離させ、指数関数的に増殖している細菌培養物(TG1;Stratagene)を感染させることによって一晩増幅させた。次いで、精製したファージをその後のパンニングのラウンドで使用した。3ラウンドの後、結合したファージを溶離させ、190個のクローンをランダムに取り出し、マイクロプレートに固定化されたBTN2A1への結合をELISAによって調べた。陽性クローンのシークエンシングにより合計で52個の個別の抗体クローンが明らかになり、そのうちの45個を、その後Expi293F(商標)細胞(ThermoFisher)の中で発現させるための哺乳類発現ベクターにサブクローニングし、MabSelect SuRe樹脂(GE Lifesciences)上で、ヒトIgG4 Fab領域とマウスIgG2a Fc領域を含む完全長IgG分子として精製した。アイソタイプ対照クローンBM4は、無関係な特異性を持つマウスFab領域を除き、同じFc領域を含有していた。
【0375】
【表2-1】
【表2-2】
【0376】
抗BTN3A抗体の生成
【0377】
抗BTN3A抗体可変ドメイン(クローン20.1と103.2;Palakodeti et al. (2012)に記載)をコードするDNAコンストラクトを合成し(ThermoFisher)、マウスIGHVシグナルペプチドとIgG1定常領域を含有する哺乳類発現ベクターにクローニングした。抗体をExpi293F(商標)細胞の中で上記のようにして発現させ、プロテインGカラムクロマトグラフィ60(GE)を利用して精製した後、バッファ交換によってPBSの中に入れた。
【0378】
酵素結合免疫吸着アッセイ
【0379】
精製した組み換えタンパク質(0.2~20 μg/ml)をマイクロプレートのウエル内のPBSバッファの中で4℃にて一晩固定化した。0.05%のtween 20に加えて5%スキムミルク粉末または0.5%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSの中でインキュベートすることによって非特異的結合を阻止した。次いでウエルを、PBS/0.05%のtween-20/2%のスキムミルク粉末または0.5%のBSAの中に2~5 μg/mLの抗体が存在する状態で室温にて60分間インキュベートした後、PBS/0.05%のtween-20の中で洗浄した。次いでプレートを、HRPで標識したヒツジ抗マウスIgG二次抗体(Chemicon)またはヤギ抗マウスIgG二次抗体(Millipore)とともにインキュベートした後、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン基質(Sigma)を用いて検出し、プレートリーダーを用いて吸光度を450 nmで測定した。
【0380】
CRISPR/Cas9を媒介としたノックダウン細胞系の生成
【0381】
BTN2A1ノックアウト系について、2つのgRNA(BTN2A1null:5'-TCACAAAGGTGGTTCTTCCT-3'(配列番号55)とBTN2A1null2:5'-CAATAGATGCATACGGCAAT-3')(配列番号57))をGeneArt(登録商標)CRISPR Nuclease Vector Kit(Life Technologies)に製造者のプロトコルに従ってクローニングし、サンガーシークエンシングによって配列を検証した。細胞にLipofectamine 2000を用いてトランスフェクトし、48時間後にオレンジ色蛍光タンパク質発現に基づいてソートした。細胞を培養し、抗BTN2A1(クローンHu34C)で染色し、陰性分画をソートした。BTN3A1ノックアウト系について、3つの特異的gRNA配列(5'-GGCACTTACGAGATGCATAC-3'(配列番号59)、5'-GAGAGACATTCAGCCTATAA-3'(配列番号60)、5'-ACCATCAGAAGTTCCCTCCT-3'(配列番号61))を含有するBTN3A1 CRISPR/Cas9 KO Plasmidキット(Santa Cruz Biotechnology)を使用した。細胞にLipofectamine 3000(ThermoFisher)を用いてトランスフェクトし、48時間後に緑色蛍光タンパク質に基づいてソートした。ソートされた細胞を培養し、抗BTN3A1(クローン103.2)で染色し、陰性分画をソートして培養した。
【0382】
Jurkatアッセイ
【0383】
LM-MEL-62またはLM-MEL-75のAPCを96ウエルのプレートに2.5×104個の細胞/ウエルにして一晩インキュベートした。その後、2×104個のG115変異体γδTCRを発現しているJ.RT3-T3.5(ATCC(登録商標)TIB-153(商標))(Jurkat)細胞±ゾレドロネート、HMBPP、またはIPPを20時間にわたって添加した。CD69の発現をGFP+ Jurkat細胞の表面でフローサイトメトリーによって測定した。19個の単一残基アラニン(Ala)変異体(それぞれがVγ9Vδ2+ G115 TCRのVγ9ドメインまたはVδ2ドメインの中にある)を、表2に掲載されているプライマーを用いて部位特異的変異導入によって生成させた)。プライマー(IDT)をリン酸化し(PNK、NEB)た後、pMIGの中のWT G115を鋳型として使用し、KAPA HiFiマスターミックス(KAPA Biosystems)を用いて25サイクルのPCRを実施し、PCR産物をDpnI(NEB)で消化させ、T4 DNAリガーゼ(NEB)を用いて連結させた。次いでコンストラクトの配列をサンガーシークエンシングによって検証した後、トランスフェクトした。G115 TCR変異体がBTN2A1四量体に結合する能力を調べるため、HEK-293T細胞に、個々のγ-鎖またはδ-鎖の変異体に加えて対応するWT δ-鎖またはγ-鎖のそれぞれのほか、2Aが連結されたヒトCD3γδεζをコードするpMIGコンストラクトを1:3の比にし、OptiMEM(商標)(Gibco、Thermo-Fisher)の中でFuGENE(登録商標)HD(Promega)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、HEK293T細胞をピペット操作によって再懸濁させ、CD3ε発現と、PEで標識したBTN2A1四量体または対照であるPEが結合したストレプトアビジンを探すため染色した。変異体G115 TCRと相互作用するBTN2A1四量体の蛍光強度の中央値(MFI)を、フローサイトメトリーにより、ゲートされたCD3+GFP+ HEK293T細胞について調べた。
【0384】
G115変異体がpAg刺激に応答する能力を、J.RT3-T3.5 Jurkat細胞にG115変異体TCRを形質導入することによって調べた。HEK-293T細胞に、それぞれの特定のγ-鎖またはδ-鎖の変異体に加えて対応する野生型のδ-鎖またはγ-鎖のそれぞれと、ヒトCD3、pVSV(-G)、およびpEQ-Pam3(-E)を1:3の比で混合し、OptiMEM(商標)の中でFuGENE(登録商標)HDを用いてトランスフェクトした。24時間後、ウイルス上清を回収し、0.45 μmのCAシリンジフィルタを通過させて濾過した後、JRT3-T3.5 JurakT細胞とともに12時間インキュベートした。このプロセスを1日に2回、4日間にわたって繰り返した。CD3+GFP+ Jurkat細胞をFACS(BD FACSAria(商標)III)によって精製し、それが野生型LM-MEL-75 APCによって提示されるpAgに応答する能力を上記のようにして調べた。
【0385】
G115 γδTCRを発現しているJurkat細胞の抗BTN3A1(クローン20.1)mAbに対する反応性を測定するため、2.5×104個のLM-MEL-75 APC細胞を機能グレード20.1(10 μg/ml、Biolegend)または合致したアイソタイプ対照とともに室温で30分間にわたってあらかじめインキュベートした後、平底96ウエルのプレートに播種した。APCが接着すると2.5×104個のJurkat細胞を添加して抗体の最終濃度を5 μg/mlにした。24時間の共培養の後、CD3+GFP+ Jurkat細胞の表面におけるCD69のレベルをフローサイトメトリーによって明らかにした。
【0386】
表面プラズモン共鳴
【0387】
SPR実験を、10 mMのHEPES-HCl(pH 7.4)、300 mMのNaCl、および0.005%のTween-20バッファを用いてProteon XPR36装置(Bio-Rad)で25℃にて実施した。γδTCRエクトドメインを260共鳴単位(RU)まで、ストレプトアビジンをあらかじめ固定化してあるBiacoreセンサーチップSAの表面に直接固定化した。可溶性ブチロフィリンを段階希釈し(200~3.1 μM)、試験表面と対照表面の上に30 μl/分の速度で同時に注入した。対照フローセル(ストレプトアビジンだけ)注入とブランク注入からデータを差し引いた後、相互作用を、Biacore T200評価ソフトウエア(GE Healthcare)とPrismバージョン8(GraphPad)を用いて分析し、平衡解離定数(KD)を平衡状態で導出した。
【0388】
等温滴定カロリメトリー
【0389】
ITC実験をMicroCal ITC200装置(GE Healthcare)で25℃にて実施した。BTN2A1またはBTN3A1のB30.2ドメインをバッファ交換してPBSに入れ、最終濃度を100 μMに調節した。HMBPP(Cayman Chemical)またはIPPを最終濃度2 mMに調節し、細胞の中に最初の0.4 μl(分析から除外した)を注入した後、2 μlの増分で順次注入した。データはMicrocal Originソフトウエアで分析した。
【0390】
共焦点顕微鏡法
【0391】
LM-MEL-75 WT細胞、BTN2A1null細胞、BTN3A1null細胞を、10%(v/v)のFCS(JRH Biosciences)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、Glutamax(2 mM)、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、非必須アミノ酸(0.1 mM)、およびHEPESバッファ(15 mM)、pH 7.2~7.5(すべてInvitrogen Life Technologiesから)に加えて50μMの2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)を補足したRPMI-1640(Thermo-Fisher)の中で一晩培養し、チェンバーウエルスライド(Lab-Tek、Thermo-Fisher)に付着させた。翌日、細胞を洗浄し、氷の上でOptiMEM(商標)(Thermo-Fisher)を用いて希釈したヒトFc受容体ブロック(Miltenyi Biotec)とともに20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、氷の上のOptiMEM(商標)の中で希釈した抗BTN2A1-AF647(クローン259)、抗BTN3A-PE(クローン103.2)、および抗汎HLAクラスI-AF488(クローンW6/32、BioLegend)で20分間染色した。細胞を、1%のパラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)を含むPBSを用いて20分間固定した後、ProLong Gold AntiFade(Thermo-Fisher)を用いてマウントし、#1カバースリップ(Menzel-Glaser)で一晩覆った。各試薬を滴定して最適な希釈因子を求めた。ボクセルサイズが横方向76.9 nmで軸方向400 nm、ボクセル密度が1024×1024であるZ-スタックのシングルタイル画像を、倒立20倍(0.8NA)の対物レンズを持つLSM780レーザー走査共焦点顕微鏡とZenソフトウエア(Zeiss)で取得した。蛍光色素を488-nm、561-nm、および633-nmのレーザー光線で励起させた。画像をHuygens Professional(Scientific Volume Imaging)でデコンボリュートし、Imaris(Oxford Instruments)ソフトウエアで分析した。撮影された細胞の範囲を規定する興味ある領域を明視野チャネルに基づいて画定し、Imaris Colocモジュールを用いてボクセルのピアソンの相関係数を計算した。強度閾値は、分析した各チャネルについて、各染色に関する陰性対照に基づいて設定した。
【0392】
BTN2A1はVγ9+γδTCRのリガンドである
【0393】
発明者らは、Vγ9Vδ2+ γδ TCRの候補リガンドを同定するため、pAg反応性γδ T細胞に由来する可溶性Vγ9Vδ2+ TCR四量体を生成させ(図8)、それらを用いて多彩な一群のヒト細胞系を染色した。すると、HEK-293Tを含むいくつかの系列が明確に染色されるが、B細胞系C1Rを含む他の系列は染色されないことが明らかになった(図1A)。特に黒色腫細胞系LM-MEL-62が強く染色された(A. Behran et al. (2013))(図1A)。ゲノムワイドなノックダウンスクリーンを利用すると(図9)、Vγ9Vδ2+ TCR-四量体の反応性に責任がある最も重要なガイドRNA(gRNA)はBTN2A1であり、対照と比べて13倍超の富化であった(図1A図9)。BTN2A1はブチロフィリンファミリーのわずかにしか特徴づけられていないメンバーであり、ヒトに見られるがマウスには見られない。BTN3A1と同様、それは2つの細胞外ドメイン(IgVとIgC)と1つの細胞内B30.2ドメインからなる。BTN2A1は、グリコシル化に依存したやり方でC型レクチン受容体CD209(DC-SIGN)と相互作用する可能性があることを示唆する1つの研究(G. Malcherek et al (2007))を別にすると、一般にオーファン受容体であると見なされている。この知見の重要性をさらに調べるため、発明者らは、2つの独立なLM-MEL-62 BTN2A1変異体系列(BTN2A1null1とBTN2A1null2)においてVγ9Vδ2+ TCR四量体に対する反応性の喪失を確認し、異なるLM-MEL-75 BTN2A1変異体細胞系からも同様の結果であった(図1C図10)。これはBTN3A1の発現とは独立であり、親LM-MEL-62系列とBTN2A1null系列の間で本質的に変化しなかった(図1C図10A)。それに加え、BTN3A1null系列のVγ9Vδ2 TCR四量体に対する反応性は親系列と同等であった(図10B)。BTN2A1をLM-MEL-62 BTN2A1null1細胞またはBTN2A1null2 細胞に再導入するとVγ9Vδ2 TCR四量体に対する反応性が回復したのに対し、BTN3A1のトランスフェクションは効果がなかった(図1D)。したがってBTN2A1の発現が、Vγ9Vδ2+ TCR四量体に対する反応性にとって必須である。
【0394】
発明者らは次に、一群のBTN2A1反応性mAbを生成させた。これらはBTN2A2(87%のエクトドメイン相同性)に対してさまざまな程度の交差反応性を示したが、BTN3A2(45%のエクトドメイン相同性)に対しては交差反応性を示さなかった(図11A~C)。これらのmAbは親LM-MEL-62を染色したが、LM-MEL-62 BTN2A1null系列には結合できなかったため、これらmAbのBTN2A1に対する反応性の確認となっている(図11D~E)。抗BTN2A1クローンの大半は、LM-MEL-62細胞、LM-MEL-75細胞、および293T細胞の表面でのVγ9Vδ2 TCR四量体染色を阻止するか、部分的に阻止した(図1E)。これは、BTN2A1がVγ9Vδ2+ γδTCRのリガンドであることを示唆している。
【0395】
BTN2A1がVγ9Vδ2+ γδ T細胞に選択的に結合するかどうかを調べるため、発明者らは、蛍光BTN2A1エクトドメイン四量体を作製した(図12)。これらはPMBCの中のCD3+ T細胞のサブセットを染色したが、他のタイプの細胞は染色しなかった(図2A)。BTN2A1四量体+細胞はγδTCR+であったがαβTCR+ではなかった(図2A)。BTN2A1四量体はほぼすべてのVγ9+Vδ2+γδ T細胞とVγ9+Vδ1+ γδ T細胞を標識したが、Vγ9-Vδ1+ γδ T細胞は標識しなかったため、これは、TCR γ-鎖のVγ9ドメインが反応性と関係していることを示唆している(図2B)。さらに、蛍光BTN2A1四量体と抗CD3ε mAbの間のフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)(P. Batard et al (2002))は、BTN2A1四量体がγδTCRの表面で約10 nm以内に結合していることを示していた(図2C)。BTN2A1がVγ9+ γδTCRに結合するかどうかを直接評価するため、発明者らは表面プラズモン共鳴(SPR)を実施して可溶性BTN2A1とγδTCRエクトドメインの間の相互作用を測定した。一次γδ T細胞の間でのBTN2A1四量体に対する反応性のパターンに合致するように、可溶性BTN2A1 TCR #6(Vγ9Vδ2+)はKD=40 μMの親和性であり、古典的なαβ T細胞で観察されたのと同様であった(M.E. Birnbaum et al (2014))。それは、無関係なVδ1+ γ-鎖とペアになったTCR #6 γ-鎖を同時に発現した「ハイブリッド」γδTCRにも結合し、同等な親和性(50 μM)であった。しかしBTN2A1は、Vδ1+ δ-鎖とペアになったVγ5+ γ-鎖を含むγδTCRには結合しなかった(図2D)。最後に、発明者らは、他のブチロフィリンファミリーのメンバーがVγ9Vδ2 TCRに結合できるかどうかを調べた。BTN2A2は非常に弱い結合しか示さず、BTN3A1+BTN3A2とBTNL3+BTNL8をトランスフェクトされた細胞はVγ9Vδ2 TCR四量体に結合しなかった(図13)。したがってBTN2A1はVγ9+ γδTCRのリガンドである。
【0396】
BTN2A1は、pAgに対するγδ T細胞応答にとって重要である
【0397】
発明者らは次に、BTN2A1がpAgを媒介としたγδ T細胞応答において重要であるかを調べた。予想通り、pAg IPPの蓄積を誘導するアミノビスフォスフォネート化合物であるゾレドロネート(A.J. Roelofs et al. (2009))とともにPBMCを培養すると、Vδ1+ γδ T細胞ではなくVδ2+ γδ T細胞がCD25を誘導し、表面CD3を下方調節し(図3A)、IFN-γとTNFを産生させた(図3B)。TCR依存性活性化のこれら指標は、抗BTN2A1 mAbクローンHu34により、アイソタイプ対照mAbで処理したサンプルと比べて顕著に阻害され、クローン259と267による阻害の程度はより少なかった。次に、精製してインビトロであらかじめ増殖させたVγ9Vδ2+ T細胞を、APCとしての親LM-MEL-62細胞またはBTN2A1null LM-MEL-62細胞とともに培養した。CD25の上方調節とCD3の下方調節に関してゾレドロネートに対するロバストなVδ2+ T細胞応答が親LM-MEL-62 APCの存在下で観察された。しかしBTN2A1null1とBTN2A1null2のAPCの両方とも、APCなしの対照培養物を超えるγδ T細胞活性化を促進することはできなかった(図3C)。同様に、Vδ2+ γδ細胞の増殖は、BTN2A1null1 APCを使用したときに減少した(図3D)。発明者らは、γδ T細胞を媒介とした親LM-MEL-62腫瘍細胞の殺傷がゾレドロネートに依存して起こるが、BTN2A1null1細胞では起こらないことも観察したが、これは、BTN2A1が腫瘍標的のVγ9Vδ2+ T細胞細胞傷害性にとって重要であることを示唆している(図3D)。これらのデータは、BTN2A1がpAgの内在形態に対するγδ T細胞応答にとって重要であることを示している。
【0398】
Vγ9Vδ2+ γδ T細胞は、APCの不在下でpAgの高親和性外来形態(微生物のHMBPPなど)を自己提示することができる(C.T. Morita et al. (1995))。この設定にBTN2A1も不可欠であった。というのも精製してインビトロであらかじめ増殖させたVδ2+ T細胞は、中和抗BTN2A1 mAb(クローンHu34C、227、236、および266)の存在下でCD25の上方調節とIFN-γの産生ができなかったからである(図3E)。クローン267は、HMBPPが誘導する活性化のほんの部分的な阻害剤であった(図3E)。重要なことだが、これらのmAbは、抗CD3と抗CD28を媒介とした活性化を阻害せず(図3E)、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、およびインフルエンザエピトープに由来するウイルスペプチド(「CEF」ペプチド)の混合物によって媒介される一次CD8+ αβ T細胞の活性化も阻止しなかった(図14)。したがってこれらのBTN2A1 mAbは、pAgに駆動されるT細胞免疫の自己形態と外来形態両方の特異的アンタゴニストである。合わせると、BTN2A1は、ヒトVγ9Vδ2+ γδ T細胞によるpAgを媒介としたサイトカイン産生、活性化、増殖、および腫瘍細胞傷害性において重要な役割を果たしている。
【0399】
BTN2A1はBTN3A1と協働してγδ T細胞によるpAg応答を誘導する
【0400】
発明者らは次に、BTN2A1依存性pAg応答がγδTCRシグナル伝達を通じて特異的に媒介されているかどうかを明らかにした。原型「G115」Vγ9Vδ2+ TCRクローン型(T.J. Allison et al. (2001))を発現しているJ.RT3-T3.5(Jurkat)T細胞は、親LM-MEL-75または親LM-MEL-62のAPCとともに培養した後、ゾレドロネートに応答してCD69を上方調節した;しかしBTN2A1nullとBTN3A1nullのAPCは、pAg反応性をほとんど誘導できなかった(図4A)。形質導入されていない(親)Jurkat細胞、または無関係なγδTCR(クローン9C2;A.P. Uldrich et al. (2013))を発現しているJurkat細胞もpAgに応答しなかった。同様の結果が、HMBPPとIPPを使用して得られた(図15A-C)。これは、Vγ9Vδ2+ γδTCRに依存したやり方でpAg応答を特異的に媒介するのにBTN2A1とBTN3A1が両方とも必要とされることを示している。
【0401】
BTN3A1はpAgを媒介とした応答にとって必須だが、強制的なBTN3A1過剰発現は、pAgに駆動されるγδ T細胞刺激能力をハムスターとマウスのAPCに与えることができないため、これは、他の因子が必要とされることを示している(A. Sandstrom et al. (2014);F. Riano et al. (2014))。発明者らは、BTN2A1とBTN3A1が単独ではなく組み合わせでトランスフェクトされたハムスターとマウスのAPCの両方とも、pAgに依存したγδ T細胞の活性化が可能であることを見いだした(図4B図16A~B)。別のブチロフィリン分子であるBTN3A2はこの応答に必要でなかったが、BTN2A1およびBTN3A1と組み合わされたとき、γδ T細胞の活性化を適度に増強したため、これは、BTN3A1活性を増加させる際のその潜在的な役割と合致している(P. Vantourout et al. (2018))。マウスペア型免疫グロブリン様2型受容体ベータに由来する無関係な膜貫通ドメインと細胞内ドメインを持つ改変されたBTN2A1コンストラクト(BTN2A1ΔB30と呼ぶ)も調べた。これは相変わらず細胞表面に発現していてVγ9Vδ2+ TCR 四量体に結合した(図16C)が、pAg提示能力を与えることはなかった(図4C)。したがってBTN2A1の細胞内ドメインまたは膜貫通ドメインは、Vγ9+ γδTCRに結合する際の細胞外ドメインの役割に加え、pAgを媒介としたVγ9Vδ2+ γδ T細胞の活性化にも重要である可能性がある。これは、精製されたpAg(HMBPPまたはIPP)に直接結合するBTN2A1の細胞内B30.2ドメインに起因するようには見えなかった。なぜなら、予想通り、BTN3A1 B30.2ドメインとpAgの間の明確な相互作用(A. Sandstrom et al. (2014)、S. Gu et al., (2017)、M. Salim et al (2017))とは対照的に、これらの分子の間の明確な相互作用が等温滴定カロリメトリーを利用して検出されることはなかったからである(図17)。
【0402】
最後に、発明者らは、BTN2A1とBTN3A1が、同じ細胞の表面で(シスで)または別々の細胞の表面で(トランスで)発現させたときにpAgを媒介とした活性化を誘導するかどうかを調べた。BTN3A1+ APCとBTN3A1+BTN3A2+ APCのどちらかと混合したBTN2A1+ APCは、pAgに対するγδ T細胞応答を誘導できなかった(図4D)、これは、pAgが誘導するγδ T細胞の活性化を媒介するのにこれらの分子が同じAPCの表面で発現せねばならないことを示唆している。
【0403】
BTN2A1は細胞表面でBTN3A分子と会合する
【0404】
BTN2A1とBTN3A1のシスでの同時発現の必要性は、これらが互いに会合している可能性を提起した。抗BTN2A1 mAbと抗BTN3A1/3A2/3A3(「BTN3A分子」)mAbで染色した親LM-MEL-75細胞は、細胞表面でのBTN2A1およびBTN3A分子と似た染色パターンを示した(図5A~C)。ピアソンの相関係数は、BTN2A1とBTN3A分子の染色の間に、無関係な対照(HLA-A、B、C)のいずれかとの重複と比べて有意な重複を示した。したがってBTN2A1とBTN3A分子は形質膜の表面で会合しているように見える(図5B)。さらに、LM-MEL-75細胞を抗BTN2A1(クローン259)と抗BTN3A(クローン103.2)で同時染色すると、明確なFRETシグナルが得られた(図5C)。これは、細胞表面での同時局在を示している(図5C)。抗BTN3A(クローン20.1)を用いた同時染色はFRETを生じさせず、同様に、いくつかの他の抗BTN2A1クローン(Hu34Cと267)は、ほんの弱いFRETになった。それは、mAbのいくつかの組み合わせが10-nmというFRETの検出限界を超えて空間的に分離されたドナー蛍光色素とアクセプタ蛍光色素を生じさせたからである可能性がある。同様の結果が、異なる組み合わせのBTN分子をトランスエクトされたマウスNIH-3T3線維芽細胞で得られた(図18)。興味深いことに、抗BTN2A1と抗BTN3Aを用いたBTN2A1ΔB30+BTN3A1+ NIH-3T3細胞またはBTN2A1ΔB30+BTN3A2+ NIH-3T3 細胞の染色も明確なFRETを生じさせた。後者の知見は、これらの分子の間の会合がB30.2ドメインとは独立であることを示唆しており、その理由は、BTN3A2もB30.2ドメインを欠いていることにある(図18)。
【0405】
発明者らは次に、BTN2A1とBTN3A1の細胞内ドメインも会合しているかどうかを、シアン色蛍光タンパク質(CFP)または黄色蛍光タンパク質(YFP)が結合したブチロフィリンコンストラクトを生成させることによって明らかにした(図19)。マウスNIH-3T3線維芽細胞にBTN2A1CFP+BTN3A1YFP、またはBTN2A1YFP+BTN3A1CFPを同時にトランスフェクトすると、会合することが知られている陽性対照(ブチロフィリン様分子3 (BTNL3)CFP+BTNL8YFP)と同様に明瞭なFRETシグナルが得られた(P. Vantourout et al. (2018))。BTN3A1CFP+BTNL8YFPまたはBTNL3CFP+BTN2A1YFPまたは単一トランスフェクタント対照では、FRETがほとんど、またはまったく見られなかった(図5D図20A)。発明者らは、pAgがBTN2A1とBTN3A1の間のFRETシグナルを変化させるかどうかも調べたが、大きな変化はまったく検出されなかった(図20B図20C);しかしアンタゴニスト活性を持つ抗BTN2A1 mAbクローン(図3Dから)はすべて、それらの会合を壊した(図21)。したがってBTN2A1とBTN3A1の細胞外ドメインと細胞内ドメインの両方が密に会合している。
【0406】
Vγ9Vδ2+γδTCRは少なくとも2つのリガンドを同時に認識する
【0407】
BTN2A1はすべてのVγ9+ γδTCRに結合するが、それでもVγ9+Vδ2+ T細胞だけがpAg反応性であるため、発明者らは、Vδ2が相互作用にも関与するという仮説を立てた。この仮説の1つの必然的な帰結は、Vγ9Vδ2+ γδTCR上に複数の結合ドメインが分かれて存在していて、BTN2A1への結合に責任がある1つはVγ9の生殖細胞系列がコードする領域内に位置し、pAg反応性にも責任がある別の1つはVδ2特異性を組み込んでいるという可能であろう。Vγ9残基Arg20、Glu70、およびHis85(より小さな程度でGlu22)からAlaへの変異はすべて、BTN2A1四量体に対する反応性を完全に喪失させたのに対し、Vδ2変異のどれもこれに影響しなかった(図6A)。これらVγ9感受性残基の側鎖は互いに近接しており(Glu70-His85の距離は2.8 Å;His85-Arg20の距離は5.1 Å)、Vγ9のABED反平行β-シートのB鎖、D鎖、およびE鎖それぞれの外面に位置する。これらが合わさってVγ9のフレームワーク領域内に極性を持つ三つ組を形成する(図6B)。これは、BTN2A1が大半のVγ9+ T細胞に結合することに合致する(図2B)。したがってBTN2A1は、Vγ9の側面に、典型的にはAg認識と関係する相補性決定領域(CDR)ループの近傍ではなく、δ-鎖の遠位で結合するように見える。
【0408】
発明者らは次に、pAgに対する機能的応答を媒介するのにどの残基が重要であるかを調べた。γδTCR変異体をトランスフェクトされたJurkat細胞はその表面に似たレベルのCD3/γδTCR複合体を発現し、固定化された抗CD3 mAbに対して同じ応答をした(図22)が、γ-鎖変異体のBTN2A1結合三つ組のそれぞれに対する変異も、pAgを媒介としたJurkat細胞の活性化を喪失させた(図6B)。しかし2つの追加残基に対する変異、すなわちVδ2がコードするCDR2ループのArg51と、TCR γ-鎖のCDR3ループのLys108に対する変異も、pAgを媒介とした活性化を喪失させた(図6Cと(H. Wang et al (2010))。これら残基はBTN2A1の結合に対して効果を持たず(図6B)、推定BTN2A1フットプリントとはTCRの反対側に位置していた(約30-40 Åの分離)。しかしこれらは互いに近くにあり(約11 Å)(図6D)、そのことにより、BTN2A1の結合にではなく、Vγ9Vδ2+ γδTCRによるpAgを媒介とした活性化に必要な別の結合インターフェイスとなる可能性がある。この第2の結合インターフェイスが、(i)生殖細胞系列がコードする残基の関与を通じたVδ2+ TCR δ-鎖の重要性と、(ii)このループ内の特定の残基の関与を通じた、pAg反応性γδ T細胞の間でのCDR3γモチーフの不変の性質の重要性を説明する。
【0409】
最後に、発明者らは、アゴニストBTN3A1 mAb(クローン20.1)を媒介とした活性化を調べた。この活性化は、BTN3A1の立体配座変化または架橋によってpAgを媒介としたシグナル伝達を模倣すると考えられている(C. Harly et al. (2012))。アゴニストBTN3A1 mAbパルス親APCはVγ9Vδ2 γδTCR+ Jurkat細胞を活性化したが(図7)、これはBTN2A1null APCでは起こらなかった。これは、BTN2A1が、BTN3A1を媒介としたγδ T細胞の活性化にとって極めて重要であることを示唆している。さらに、BTN2A1結合残基His85、Arg20、およびGlu70のTCR γ-鎖Ala変異体と、BTN2A1とは独立なArg51(δ-鎖)とLys108(γ-鎖)の変異体を発現しているJurkat細胞はすべて、アゴニストである抗BTN3A1 mAbがパルスされた親APCに応答しなかった(図7)。したがってBTN2A1とVγ9+ TCRγ-鎖の間の相互作用は、BTN3A1によって駆動されるγδ T細胞応答に不可欠だが十分ではない。この事実が、なぜ初期の研究では、アゴニスト抗BTN3A1 mAbが、ヒトBTN3A1だけをトランスフェクトされたマウス由来のAPCとの共培養物の中でγδ T細胞の活性化を誘導できなかったかを説明できる可能性がある(A. Sandstorm et al. (2014))。なぜならマウスはBTN2A1を発現しないからである。
【0410】
したがってこれら変異体の研究は、pAgを媒介とした活性化とBTN3A1を媒介とした活性化に必要なVγ9Vδ2+ γδTCR上の2つの別々の相互作用部位の存在を明らかにした。Vγ9の側の1つの部位はBTN2A1の結合と活性化の両方に不可欠であるのに対し、他方の部位はVδ2 CDR2とγ-鎖CDR3ループの両方を組み込んでおり、pAgを媒介とした活性化とBTN3A1を媒介とした活性化に必要とされる。したがってVγ9Vδ2+ T細胞は、異なる二重リガンド相互作用を通じてpAgによって選択的に活性化され、そのことによってBTN2A1がVγ9ドメインに結合し、別のリガンド(潜在的にはBTN3A1)が、Vγ9ドメインとVδ2ドメインの両方を組み込んだ別のインターフェイスに結合するように見える。
【0411】
結語
【0412】
これらの知見は、BTN2A1とBTN3が細胞表面で会合していて、pAgを媒介としたγδ T細胞の活性化には両方が必要とされるというモデルを支持する。このモデルは、pAgがBTN3(例えばBTN3A1)にその細胞内B30.2ドメインを通じて結合した後、BTN2A1/BTN3複合体が2つの異なる結合部位を通じてγδTCRに結合すること、すなわちBTN2A1はVγ9フレームワーク領域に結合するのに対し、別のリガンド、おそらくBTN3(例えばBTN3A1)は、TCRの反対側にあるVδ2がコードするCDR2と、γ-鎖がコードするCDR3ループに結合することも示唆している。これは、αβ T細胞による標準的なMHC-Ag複合体認識とはかけ離れたAg感知の異なるモデルを表わす。
【0413】
短いヘアピンRNA(shRNA)ノックダウンを利用した以前の1つの研究では、pAg提示におけるBTN2A1の明らかな役割は見いだされなかった(S. Vavassori et al. (2013))。しかしノックダウン効率はわずか81%であり、BTN2A1タンパク質は測定されていなかったため、残留したBTN2A1が、保持されていた機能を持っていた可能性がある。現在まで、BTN2A1はほとんど特徴が明らかにされておらず、グリコシル化依存性受容体CD209を同定した初期の1つの研究があるだけである(G. Malcherek et al. (2007))。発明者らは、N結合型グリカンがγδTCRへのBTN2A1の結合に不要であることを見いだした(図24)ため、CD209がこの相互作用において役割を果たしている可能性は低い。BTN2A1の発現パターンについてはほとんど知られていないが、RNA分析は免疫細胞の表面での広い発現を予測する。発明者らは、BTN2A1が、循環しているT細胞、B細胞、NK細胞、および単球の表面のほか、Vγ9Vδ2+ T細胞の表面で発現していることを確認した(図24)。これは、pγδ T細胞がどのようにしてpAgを自らに提示するかを説明できる可能性がある(C.T. Morita et al. (1995))。
【0414】
最近の研究により、ヒトBTNL3とBTNL8が同時に会合してヒトVγ4+ γδ T細胞に対して刺激性になり、BTNL3が、γ-鎖可変ドメインの生殖細胞系列がコードするHV4ループと呼ばれる領域と相互作用することが明らかになった(R. Di Marco Barros et al. (2016);D. Melandri et al. (2018))。同様に、マウスのBTNL1とBTNL6は連結されていて腸Vγ7+ γδ T細胞の機能にとって重要であり、γδTCRの似た領域に結合するように見える(R. Di Marco Barros et al. (2016);D. Melandri et al. (2018))。それとは対照的に、BTN2A1-Vγ9結合インターフェイスは、HV4ループよりもVγ9 TCR のABED β-シートの外面に多く依存しているように見える。これは、Vγ9上のBTN2A1結合フットプリントが、CDRループからは遠く、Cγドメインにより近く位置している可能性があることを示している。ブチロフィリン分子は二量体化する傾向があるため(例えばBTN3A1は、安定なVkoji形のホモ二量体を形成すること、またBTN3A2とヘテロ二量体も形成すること(S. Gu et al. (2017))、そしてBTNL3-BTNL8ヘテロ二量体(D. Melandri et al. (2018)を形成することができる)、BTN2A1とBTN3(例えばBTN3A1)の間の会合が直接的な相互作用を示すことが可能性だが、その分子的基礎はまだ不明である。
【0415】
他のAg提示分子(MHC分子とMHC様分子)と比べると、ヘテロマーブチロフィリン複合体の認識は、根本的に異なるクラスの免疫認識である。pAgがこの複合体をどのように変化させて抗原性を誘導するかはまだ知られていないが、ブチロフィリンの二量体または多量体のリモデリング、および/またはBTN2A1とBTN3に対する立体配座の変化が関与している可能性がある。ABCA1(B. Castella et al. (2017))などの他の関連した分子が直接必要とされる可能性がある。
【0416】
これらの知見は、BTN2A1が、感染性疾患、がん、および自己免疫のためのγδ T細胞を媒介とした免疫療法におけるアゴニスト性および/またはアンタゴニスト性介入のための直接的な標的となることを示している。
【0417】
腫瘍殺傷/阻害アッセイ
【0418】
以下の実験において、PE-Cy7が結合した抗γδTCRを用いたMACSと、その後の抗フィコエリトリンを媒介とした磁性ビーズ増幅(Miltenyi Biotec)によってγδ T細胞を富化した。富化後、CD3+ Vδ2+ γδ T細胞をAria III(BD)を用いてソートすることによりさらに精製した。富化されたγδ T細胞を、インビトロで、プレートに結合した抗CD3ε(OKT3、10 μg/ml、Bio-X-Cell)、可溶性抗CD28(CD28.2、1 μg/ml、BD Pharmingen)、フィトヘマグルチニン(0.5 μg/ml、Sigma)、IL-15(50 ng/ml)、および組み換えヒトIL-2(100 U/ml、PeproTech)を用いて48時間にわたって刺激した後、IL-2とIL-15で14~21日間にわたって維持した。細胞を、10%(v/v)のFCS(JRH Biosciences)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、Glutamax(2 mM)、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、非必須アミノ酸(0.1 mM)、およびHEPESバッファ(15 mM)、pH 7.2~7.5(すべて、Invitrogen Life Technologiesから)に加えて50 μMの2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)を補足したRPMI-1640とAIM-V(Invitrogen)の50:50 (v/v)の混合物からなる完全培地の中で培養した。
【0419】
LM-MEL-62黒色腫細胞とLM-MEL-75黒色腫細胞を、96ウエル平底プレート内の10%のFBSを補足したRPMI1640培地の中にウエル1つ当たり1×104個で播種し、一晩放置して接着させた。T25ガンマデルタT細胞を、エフェクタ:標的比を2:1にして100 U/mlのIL-2とともにTCRPMIに添加し、5 μMのゾレドロネートまたは0.5 ng/mlのHMBPPで刺激するか、刺激せずに放置した。アゴニスト性抗体253、259、またはアイソタイプ対照BM4を各ウエルに10 ug/mlで添加した。すべての条件を三連で繰り返した。細胞を37℃でインキュベートし、3日目にVd2+細胞をフローサイトメトリーによって獲得した。生きている細胞をゲートし、活性化をCD25発現の分析によって求めた。黒色腫細胞の生存率をMTSアッセイによって求めた。MTS試薬をRPMI培地に1:5の比で、ウエル1つにつき100 ul添加した。細胞を37℃で30分間インキュベートし、プレートをSpectrostarナノプレートリーダーで490 nmにて読み取った。
【0420】
アゴニスト抗体の存在下でのγδ T細胞活性化の測定
【0421】
いくつかの実験において、PE-Cy7が結合した抗γδTCRを用いたMACSと、その後の抗フィコエリトリンを媒介とした磁性ビーズ精製(Miltenyi Biotec)によってγδ T細胞を富化した。富化後、CD3+ Vδ2+ γδ T細胞を、Aria III(BD)を用いてソートすることによりさらに精製した。富化されたγδ T細胞を、インビトロで、プレートに結合した抗CD3ε(OKT3、10 μg/ml、Bio-X-Cell)、可溶性抗CD28(CD28.2、1 μg/ml、BD Pharmingen)、フィトヘマグルチニン(0.5 μg/ml、Sigma)、IL-15(50 ng/ml)、および組み換えヒトIL-2(100 U/ml、PeproTech)を用いて48時間にわたって刺激した後、IL-2とIL-15を用いて14~21日間維持した。細胞を、10%(v/v)のFCS(JRH Biosciences)、ペニシリン(100 U/ml)、ストレプトマイシン(100 μg/ml)、Glutamax(2 mM)、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、非必須アミノ酸(0.1 mM)、およびHEPESバッファ(15 mM)、pH 7.2~7.5(すべてInvitrogen Life Technologiesから)に加えて50 μMの2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)を補足したRPMI-1640とAIM-V(Invitrogen)の50:50 (v/v)混合物からなる完全培地の中で培養した。
【0422】
インビトロであらかじめ増殖させたCD3+ Vδ2+ γδ T細胞(5×105個)をHMBPP(0.5 ng/ml)±10 μg/mlの中和抗BTN2A1 mAb、またはアイソタイプ対照とともに24時間にわたって培養した。CD25の発現をフローサイトメトリーによって明らかにし、IFN-γの濃度をサイトメトリービーズアッセイ(BD Bioscience)により、製造者の指示に従って求めた。
【0423】
BTN2A1アゴニスト性抗体の同定
【0424】
発明者らは、BTN2A1に対して特異的な抗体のパネルを上記のようにしてスクリーニングし、BTN2A1のアゴニストとなることのできるものを同定した。発明者らは、抗BTN2A1抗体がγδ T細胞を活性化させる能力を評価した。発明者らは、以前に増殖させたγδ T細胞の表面におけるCD25の上方調節を、その細胞を10 μg/mlの抗BTN2A1抗体またはアイソタイプ対照抗体(BM4)とともに一晩培養した後に評価した。図26Aに示されているように、抗体244、253、および259はすべて、CD25を発現するγδ T細胞の割合を増加させることができた。
【0425】
発明者らはさらに、10 μg/mlの抗BTN2A1抗体またはアイソタイプ対照抗体(BM4)の存在下で一晩培養した後にγδ T細胞によって分泌されるインターフェロンγのレベルを測定した。インターフェロンγの分泌は、TCR依存性活性化の別の1つの指標である。図26Bに示されているように、抗体244、253、および259はすべて、分泌されるインターフェロンγのレベルを増加させることができた。
【0426】
発明者らはさらに、抗BTN2A1抗体がγδ T細胞を活性化させてがん細胞を殺す能力、および/または、がん細胞の増殖を阻止する能力を同時培養実験で調べた。培養は、γδ T細胞と黒色腫細胞(LM-MEL-75またはLM-MEL-62)を2:1の比で用いて実施した。細胞を抗体253または259またはBM4(アイソタイプ対照)またはゾレドロネート(陽性対照)またはHMBPP(陽性対照)とともに3日間にわたって培養した。図27に示されているように、抗体253または259の存在下で培養した細胞は、陽性対照としての黒色腫細胞系の少なくとも1つの細胞溶解を似たレベルで誘導した。図27Bは、γCD25上方調節によって評価したδ T細胞の活性化レベルを示す。特に図27Bは、発現のレベルが、抗体253または259の存在下で培養したγδ T細胞において上方調節されることを示す。
【0427】
ホスホ抗原の不在下でのγδ T細胞の活性化と細胞死の誘導
【0428】
材料と方法
【0429】
Luminex(PBMC)
【0430】
1人の健康なドナー(Red Cross Australia)からの血液をフィコール処理し、PBMC層を回収し、洗浄し、5×105個の細胞を、100 u/mlのIL-2を補足した500 ulのTCRPMIの中で10μg/mlの指示された抗体を二連で用いて処理し、37℃かつ5%CO2で16時間インキュベートした。上清を回収した後、Luminex Human 20-plex Inflammationパネル分析(EPX200-12185-901)のためCrux Biolabs(Scoresby、VIC、Australia)に提出した。この分析では、以下の分析物、すなわち:GM-CSF;ICAM-1、IFN-α;IFN-g、IL-1α、IL-1b、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17A、IL-4、IL-8、IP-10、MCP-1、IL-6、MIP-1a、MIP-1b、sE-セレクチン、sP-セレクチン、TNF-αを測定する。すべてのサンプルを適切な対照および基準とともに走らせた。抗体259を用いた処理は1つのウエルでだけ実施した。
【0431】
Luminex(Vγ9Vδ2)
【0432】
簡単に述べると、Vγ9Vδ2細胞を、1人の健康なドナー(Red Cross Australia)と1人のがん患者に由来するPBMCからTCRγδ+ T Cell Isolation Kit(Miltenyi)を用いて単離した。細胞を、100 u/mlのIL-2、CD3(10 μg/ml)、およびCD28(1 μg/ml)を補足したTCRPMIの中で48時間にわたって刺激した。細胞を洗浄し、100 u/mlのIL-2を補足したTCRPMIの中で37℃かつ5%CO2にて14日間にわたって増殖させた後、凍結させた。患者はインフォームドコンセントを提出し、研究はHREC 14/425のもとで承認された。Vγ9Vδ2を解凍し、50 u/mlのIL-2を補足したTCRPMIの中で37℃かつ5%CO2にて一晩放置した。翌日、2×105個の細胞を、100 u/mlのIL-2を補足した200 ulのTCRPMIの中で、10μg/mlの指示された抗体(二連)、またはゾレドロン酸(4 μM)、またはHMBPP(0.5 ng/ml)を用いて処理し、37℃かつ5%CO2で16時間にわたってインキュベートした。上清を回収した後、Luminex Human 20-plex Inflammationパネル分析(EPX200-12185-901)のためCrux Biolabs(Scoresby、VIC、Australia)に提出した。すべてのサンプルを適切な対照および基準とともに走らせた。
【0433】
インビトロ殺傷アッセイ
【0434】
Vγ9Vδ2細胞を、1人の健康なドナー(Red Cross Australia)または1人のがん患者に由来するPBMCからTCRγδ+ T Cell Isolation Kit(Miltenyi)を用いて単離した。患者はインフームドコンセントを提出し、研究はHREC 14/425のもとで承認された。細胞を、100 u/mlのIL-2、CD3(10 μg/ml)、およびCD28(1μg/ml)を補足したTCRPMIの中で48時間にわたって刺激した。細胞を洗浄し、100 u/mlのIL-2を補足したTCRPMIの中で37℃かつ5%CO2にて14日間にわたって増殖させた後、凍結させた。Vγ9Vδ2を解凍し、50 u/mlのIL-2を補足したTCRPMIの中で37℃かつ5%CO2にて一晩放置した。
【0435】
すべてのアッセイで96ウエルの平底プレートにおいて100 μlのRF10培地の中にLM-MEL-62黒色腫細胞を10,000細胞/ウエルで播種して37℃かつ5%CO2で一晩放置し、接着させた。
【0436】
E:T滴定
【0437】
翌日、Vγ9Vδ2細胞を洗浄し、カウントした後、100 u/mlのIL-2と、4 μMのゾレドロネートまたは10 ug/mlの抗体259のどちらかを補足したTCRPMIの中の黒色腫細胞にE:T比を2:1、1:1、1:2、1:4、1:8、または1:16にして添加した。
【0438】
抗体滴定
【0439】
Vγ9Vδ2細胞を洗浄し、カウントした後、100 u/mlのIL-2を補足したTCRPMIの中に10,000細胞/ウエルで播種した。抗BTN2A1抗体253、259、またはBM4アイソタイプ対照を10、1、0.1、および0.01 ug/mlの希釈度でウエルに二連で添加した。細胞を37℃かつ5%CO2でインキュベートした。3日目、Vγ9Vδ2細胞を洗浄し、100 μlのMTS試薬を製造者のプロトコル(Promega、USA)に従ってウエルに1時間にわたって添加した。その後プレートを、Spectrostar Nanoマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて490 nmで読み取り、バックグラウンドの吸光度に関して補正した生存率を求めた。
【0440】
フローサイトメトリー
【0441】
Vγ9Vδ2細胞を前に記載したようにして染色してCD3、Vδ2、CD25、および生死判別染料を探し、Cantoフローサイトメーター(BD)で分析した。細胞をリンパ球、単一細胞、生きている細胞、CD3+Vδ2+に関してゲートし、活性化をCD25発現に基づいて明らかにした。
【0442】
考察
【0443】
Vγ9Vδ2細胞は、ホスホ抗原が提示されると、活性化マーカー(CD25とCD69が含まれる)が上方調節されるとともにサイトカインが発現して反応する。そのためには、抗原提示細胞の表面でのBTN2A1とBTN3A1の発現が必要とされる。抗BTN2A1抗体259と253は、メバロン酸/非メバロン酸経路のこれら中間体の存在なしに、ホスホ抗原を媒介とした活性化をさまざまな程度で模倣することができる(図28A)。
【0444】
機能的には、この活性化により、あらかじめ増殖させたVγ9Vδ2T細胞が黒色腫腫瘍細胞(本明細書ではLM-MEL-62と呼ぶ)を認識して殺傷する能力が用量に依存して増大する。2人の異なるドナー(黒色腫患者)に由来するVγ9Vδ2細胞をあらかじめ増殖させ、黒色腫細胞(1:1の比)とともにインキュベートし、異なる量の抗体253または抗体259で処理した。図28Aの活性化データと同様、抗体259を用いて処理すると、抗体253と比べてLM-MEL-62細胞の生存率はより低くなった。より高い濃度の抗体259は、Vγ9Vδ2細胞を媒介とした腫瘍細胞殺傷を増強し、両方のドナーでの最大の殺傷は1と10 μg/mlの間で実現した(図28B)。
【0445】
腫瘍細胞の殺傷は、抗体の用量だけでなく、エフェクタ(Vγ9Vδ2)細胞と標的(LM-MEL-62)細胞の比にも依存していた(図28C)。ゾレドロン酸を用いた処理と比較すると、抗体259を媒介とする細胞殺傷は、E:Tとの相関を示した(エフェクタがより多いと殺傷がより多かった)が、殺傷は両方のドナーでより少ない程度で起こった。興味深いことに、一人のがん患者(患者1)に由来するVγ9Vδ2細胞は、使用した刺激とは独立に、健康なドナーに由来するものよりも腫瘍細胞殺傷能力がより小さいように見えた。これは、がんの設定におけるVγ9Vδ2細胞の(可逆的な)機能変化を示唆しており、腫瘍微小環境を超えて広がる可能性がある(細胞は循環から単離された)。
【0446】
これらの違いは、部分的には、インビトロで増殖させたVγ9Vδ2細胞に由来していて、ゾレドロネート、HMBPP、または示されている異なる抗体で活性化されたサイトカイン/ケモカインプロファイルに反映されていた(図29AとB、表3と表4)。ドナーと患者に由来するVγ9Vδ2において、ゾルドレネートとHMBPPを用いて処理すると、GMCSF、ICAM-1、IFNγ、IL-13、MIP-1a、MIP-1b、sE-セレクチン、sP-セレクチン、およびTNFαの発現/分泌が増加した。ICAM1を除くこれらのすべてが、より強い刺激(HMBPP)を使用したときにより多く発現し、ICAM-1の発現は、ゾレドロネートおよびHMBPPと同程度に上方調節された。IL-17AとIL-4の分泌は、HMBPP活性化の設定においてだけ検出することができた。IL-17には免疫抑制機能があるため、これは、最も望ましい転帰を実現するためには活性化を微調整してシグナルを阻止できる必要があることを実証している。2つのアゴニスト性抗BTN2A1抗体253と259を用いた処理は、ゾレドロネートとHMBPPを用いた処理と似たパターンを示したが、253はより弱い刺激であった。
【0447】
【表3】
【0448】
【表4】
【0449】
健康なドナーに由来するVγ9Vδ2細胞では、抗体253を用いた処理によって分泌されたGMCSFの量がほんのわずかに増加したが、他の測定されたサイトカイン/ケモカインでそうなることはなかった。がん患者に由来するVγ9Vδ2細胞では、どの分析物も増加が検出されなかったが、多数の分析物の基礎レベルは、アイソタイプ抗体だけ(BM4)で処理したとき検出可能な発現がないことがしばしばあった健康なドナーに由来する細胞におけるよりも高かった。
【0450】
抗体259により、両方のドナーで多数の分析物が実質的に増加した(その中にGMCSF、IFNγ、IL-13、IL-17(非常に低い)、MIP1αとMIP1β、sE-とsP-セレクチン、およびTNFαが含まれる)。健康なドナーに由来する細胞においてだけ、抗体259処理によってICAM1が増加し、がん由来の細胞では、IL-4の新規発現が400 pg/mlを超えた。健康なドナーでは、抗体259で処理したときにIL-4は検出されなかった。
【0451】
発明者らはBTN2A1アンタゴニスト性抗体をさらに使用して、あらかじめ増殖させたVγ9Vδ2細胞の中でベースライン発現をしているどのサイトカインをBTN2A1ガンマ-デルタTCR結合/活性化の阻害によって阻止できるかを探索した。健康なドナー細胞では、34C1処理により、アイソタイプ(BM4)で処理した対照と比べてMIP1αとbのほかGMCSFが下方調節された。サイトカインのベースライン発現がはるかに高いがん患者由来の細胞では、レベル低下をGMCSF、ICAM1(検出できないレベルまで)、IFNγ、IL-13、MIP1α、およびMIP1βのほか、sE-セレクチンで検出することができたため、BTN2A1阻止が、これらの因子を減少させるための1つの有効な治療戦略である可能性がある。
【0452】
われわれのアゴニスト性抗BTN2A1抗体259がPBMCの文脈においてサイトカイン/ケモカインの発現にどのように影響を与えるかを調べるため、発明者らは、一人の健康なドナーから新たに単離したPBMCを、抗体259と抗体229(アンタゴニスト性抗BTN2A1抗体)のほか、アイソタイプ対照で処理した。BTN2A1の阻止シグナルと活性化シグナル(259)について、ベースライン設定におけるサイトカイン発現にとっての抑制性シグナルの帰結を、BTN2A1および/または3A1を発現している他の免疫細胞サブセットからのシグナル、またはVγ9Vδ2細胞活性化の二次効果を含めて探索した。
【0453】
単離されたVγ9Vδ2細胞培養物からの初期のデータと合致するように、抗体259は、全PBMCの文脈でIFNγとsE-セレクチンの発現を増加させ、BTN2A1阻害性抗体とBTN3A1阻害性抗体の両方ともベースライン発現を阻止した(図30)。非常に富化されたVγ9Vδ2細胞培養物の中に存在する他のシグナルは、全PBMCの文脈では検出されなかった。最も注目すべきは、抗体259と接触させたときにTNFαのレベル上昇が検出されなかったことである(表5)。これは、PBMCの中のVγ9Vδ2細胞の数が少なく、検出閾値を超えるシグナルが希釈されたことに起因する可能性がある。
【0454】
【表5】
【0455】
興味深いことに、発明者らは、259によって追加のサイトカイン/ケモカインが上方調節されることを観察したが、これは単培養物では検出されなかった。その中に含まれていたのは、免疫細胞(主に好中球とT細胞)の別の走化性物質であるIL-8(CXCL8)(Henkels et al 2011)であり、IL-8は、乾癬などの自己免疫状態でT細胞を引きつけることにより顕著な役割を演じている可能性がある(Zheng et al 1998)。それに加え、発明者は、259で処理したとき、樹状細胞の強力な走化性物質であるCCL2(MCP-1)と、炎症プロセスに関連するプロトタイプかつ鍵となるインターロイキンとしてのIL-6の増加も見た(Erlandsson et al, 2017;Hashizume et al., 2015)。これらサイトカイン/ケモカインのすべてが、229を用いたBTN2A1/3A1シグナル伝達軸の阻止によって下方調節された。これは、これらがこの複合体を通じたシグナル伝達に依存していることの確認になっている。
【0456】
いくつかのサイトカインとケモカインはアンタゴニスト性抗体によってアイソタイプ対照のレベルよりも低下したが、その発現は抗体259を用いた処理で増強されなかった。その中にはICAM-1、MIP1αとMIP1β、およびsE-セレクチンが含まれていた。
【0457】
Vδ2-γδ T細胞の活性化
【0458】
方法
【0459】
マウス3T3線維芽細胞にpMSCV-IRES-GFPプラスミドとFugeneトランスフェクション試薬を用いて完全長ヒトCD1cまたはCD1d重鎖をトランスフェクトするか、対照コンストラクト(BTNL3)をトランスフェクトした。約2日後に3T3細胞が表面にCD1cまたはCD1dを発現したとき、それらを、CD1c(Vγ9Vδ1+)またはCD1d(Vγ9Vδ1+、またはVγ5Vδ1+)に対して特異的なヒトγδTCRを発現したヒトT細胞系とともに24時間培養した後、T細胞系に関する活性化のレベルを、CD69を用いてフローサイトメトリーによって求めた。T細胞系を、陽性対照としての固定化された抗CD3/抗CD28の上で培養するか、陰性対照としてのトランスフェクトされていない3T3細胞とともに培養した。
【0460】
考察
【0461】
BTN2A1が、Vδ2- γδ T細胞のコグネイトリガンドに対するVδ2- γδ T細胞の反応性を増加させる能力を調べるため、発明者らは、CD1cおよびCD1dとそれぞれ反応する2つのγδ T細胞系(両方ともVγ9Vδ1 γδTCR+)を用いてインビトロアッセイを実施した(図31)。発明者らは、やはりCD1dと反応するが、Vγ9を欠くためBTN2A1には結合するはずのない対照Vγ5Vδ1+ γδ T細胞系(クローン9C2;A.P. Uldrich et al. (2013))も含めた。発明者らは、マウス3T3 APCに、ヒトのCD1cまたはCD1dのどちらかに加え、BTN2A1または無関係の対照コンストラクト(ヒトBTNL3)をトランスフェクトし、それらをγδ T細胞系とともに培養し、24時間後に活性化(CD69)を測定した。データは、BTN2A1が、(a)追加のTCRリガンドなしでさえ、これらVγ9+ γδ T細胞系のいくらかの活性化を誘導することと、(b)CD1c特異的γδTCRとCD1d特異的γδTCRの両方の活性化を増大させることが可能であることを示している。これはVγ9+ TCRに特異的であるように見えた。なぜなら9C2(Vγ5+)はCD1dと特異的に反応したのに対し、これはBTN2A1発現によって増強されなかったからである。
【0462】
これらの知見は、BTN2A1が、Vγ9Vδ2+ γδ T細胞の活性化にとって重要であることに加え、Vδ2- γδ T細胞の活性化も直接誘導できることと、これら細胞のコグネイトAgに対するこれら細胞の応答も増大させうることを示している。
【0463】
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【0464】
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図29-2】
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図31
【配列表】
2022539753000001.app
【国際調査報告】