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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】子宮内膜受容期を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20220906BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220906BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220906BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220906BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220906BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220906BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220906BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 M
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577398
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 AU2020050645
(87)【国際公開番号】W WO2020257857
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】2019902204
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517437379
【氏名又は名称】ハドソン インスティテュート オブ メディカル リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】521565268
【氏名又は名称】モナシュ・アイヴィーエフ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グイイン・ニー
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア・ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・ジョハン・フランス・ロンバーツ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA27
2G045CB01
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
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4B063QR72
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、対象における胚着床のための子宮内膜受容期を予測する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法に関する。本発明はまた、上皮受容期をモニタリングし、上皮受容期を改善する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における胚着床のための子宮内膜受容期を予測する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法。
【請求項2】
ポドカリキシンのレベルの決定が、子宮内膜上皮細胞中の、ポドカリキシンタンパク質の量及び/若しくは分布パターンを決定する工程、並びに/又はポドカリキシンをコードする核酸分子の量を決定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸分子がmRNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象中のポドカリキシンのレベルと、少なくとも1つのリファレンス中の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルとを比較する工程を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも高いかどうか、又は(b)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも低いかどうかを決定する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
子宮内膜上皮細胞が内腔上皮細胞及び/又は腺上皮細胞である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(i)対象の内腔上皮細胞における、より低いレベルのポドカリキシン、及び、腺上皮細胞における、より高いレベルのポドカリキシンが、子宮内膜上皮受容期であることを示す;又は
(ii)対象の内腔上皮細胞における、より高いレベルのポドカリキシン、及び、腺上皮細胞中における、より高いレベルのポドカリキシンが、子宮内膜上皮受容期前であることを示す;又は
(iii)対象の内腔上皮細胞における、より低いレベルのポドカリキシン、及び、より低いレベルの腺上皮細胞中のポドカリキシンが、子宮内膜上皮受容期後であることを示す、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポドカリキシンのレベルを決定するためにポドカリキシンに特異的に結合する抗体又はアプタマーを使用する工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
抗体又はアプタマーが検出可能な標識にコンジュゲートされている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
検出可能な標識が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、補欠分子族、造影剤及び超音波造影剤からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
超音波造影剤がマイクロバブル放出剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポドカリキシンのレベルの決定が、プロゲステロンの下流の調節因子及び/又はポドカリキシンの上流の調節因子のレベルを決定する工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロゲステロンの下流の調節因子及び/又はポドカリキシンの上流の調節因子が、マイクロRNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マイクロRNAが、miR-199又はmiR-145である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫組織化学アッセイ、in situハイブリダイゼーション、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ、ウェスタンブロット、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又は超音波分子イメージングを実施する工程を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
in vitro又はex vivoで子宮内膜上皮細胞に対して実施される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
生体試料中の、対象から得られた子宮内膜上皮細胞に対して実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生体試料が、子宮内膜生検、子宮液試料及び膣液試料からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象が、プロゲステロン、プロゲストゲン又はそのアナログ若しくは組合せを含む組成物を用いて以前に処置されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ポドカリキシンのレベルが、少なくとも1つの生体試料中で、及び周期中の少なくとも1つの時点で決定される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
対象への胚の移植を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ポドカリキシンのレベルが、対象の最初の周期において決定され、胚が対象のその後の周期中に移植される、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
対象における不妊症を検出する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法。
【請求項24】
対象における不妊症を診断及び予後診断する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法。
【請求項25】
ポドカリキシンのレベルが、少なくとも1つの生体試料中で、及び周期中の少なくとも1つの時点で決定される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングし、胚着床のための最適な子宮内膜上皮受容期を予測する方法であって、1つ又は複数の時点で対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法。
【請求項27】
対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期を改善する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び細胞中のポドカリキシンのレベルに基づいて、対象に、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに十分な量の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項28】
対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期の改善に対する化合物の有効性を評価する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含み、対象が化合物を用いた処置を以前に受けたことがある、方法。
【請求項29】
対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期を改善するための化合物を用いた処置を最適化する方法であって、対象に、化合物を投与する工程、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び必要に応じて、ポドカリキシンのレベルに基づいて、対象に対する処置を改変する工程を含む、方法。
【請求項30】
改変が、用量、化合物の型及び/又は投与経路のうちの1つ若しくは複数又は全部である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
化合物が、プロゲステロン、プロゲストゲン、又はそのアナログ、アンチセンスポリヌクレオチド、触媒核酸、干渉RNA、siRNA、マイクロRNA及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本出願は、2019年6月25日に出願された「Methods of predicting endometrial receptivity」の表題の豪州特許出願第2019902204号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子的形態の配列表と共に出願される。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本開示は、対象における胚着床のための子宮内膜受容期を予測する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法に関する。本開示はまた、上皮受容期をモニタリングし、上皮受容期を改善する方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
胚着床は、妊娠の確立における重要なステップであり、着床の失敗は不妊症の原因となり得る。生殖補助医療技術(ART)は、不妊症を克服するための主要な介入であるが、低い着床率(ARTサイクルあたり平均で約30%)がARTの成功を著しく制限する。
【0005】
着床は、胚と子宮との間の高度に協調的な相互作用を含む。着床が成功するためには、胚がよく発達しており、着床を可能とする必要があり、子宮は受容状態にある必要がある。
【0006】
胚培養及び選択における革新は、近年、ARTを大きく改善させた。しかしながら、着床前遺伝子スクリーニングを含む最新の胚技術を用いても、着床不全は依然として、着床の結果の決定における子宮内膜の重要性を強調する、制限的な障害である。
【0007】
子宮の内層である子宮内膜は、着床に関与し、着床のプロセスは種間で大きく異なる。ヒトの着床には、胚が子宮内膜の内腔上皮に付着し、上皮層を横断し、下にある基底膜に浸透し、最終的に、間質区画に移動する必要がある。次いで、内腔上皮は、着床部位を再密封し、胚を組織内に完全に封入する。このヒトの着床カスケードは、独特のものであり、動物モデルでは、ヒト着床プロセスの全態様を要約できない。
【0008】
月経周期毎に、ヒト子宮内膜は、卵巣ホルモンであるエストロゲン及びプロゲステロンの影響下で実質的に再構築し、プロゲステロンが優勢である場合、分泌中期(28日周期の20~24日目)にのみ受容状態になる。このことによって、子宮内膜受容期が、着床のための胚発生とシンクロすることとなる。
【0009】
しかしながら、子宮内膜受容期を制御する詳細な分子及び細胞メカニズムは、未だに完全には解明されていない。特に、内腔上皮が、胚の付着及び侵入についてどのように再構築するかは不明である。子宮内膜組織のトランスクリプトーム分析は、多数の遺伝子が受容期において上方又は下方調節されることを示したが、データセットは試験間で大きく変化する。ERA(子宮内膜受容期アレイ)と呼ばれるマイクロアレイに基づくmRNAシグネチャー技術が、着床ウィンドウを同定するために開発されたが、ERAの有用性は未だに証明中である。更に、ERAは全組織生検を使用し、かくして、特定の細胞型又は特異的分子の特異的関与を正確に示すことができない。
【0010】
したがって、胚着床のための最適な期間を予測し、着床不全を減少させる方法の開発のための必要性が当業界に存在し続けていることが、当業者には明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,306,610号
【特許文献2】米国特許第5,962,233号
【特許文献3】欧州特許第320,308号
【特許文献4】米国特許第4,883,750号
【特許文献5】WO88/10315
【特許文献6】米国特許第4,810,658号
【特許文献7】米国特許第4,978,503号
【特許文献8】米国特許第5,186,897号
【特許文献9】WO99/32619
【特許文献10】WO99/53050
【特許文献11】WO99/49029
【特許文献12】WO01/34815
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】http://broadinstitute.github.io/picard
【非特許文献2】http://grch37.ensembl.org
【非特許文献3】https://www.genome.jp/kegg/pathway.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本開示の作製において、本発明者らは、ヒト子宮内膜上皮受容期の重要な負の調節因子としてポドカリキシンを同定した。本発明者らは、ヒト組織試料中でのこの調節因子の役割及びIVF患者における着床不全とのその関連を研究した。ポドカリキシンの発現をモジュレート及び調節する方法も評価した。驚くべきことに、本発明者らは、腺上皮細胞ではなく、内腔上皮細胞中でのポドカリキシンの下方調節が、上皮受容期を示すことを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らによる知見は、対象における胚着床のための子宮内膜受容期を同定又は予測する方法のための基礎を提供する。例えば、本開示は、対象における胚着床のための子宮内膜受容期を予測する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法を提供する。
【0015】
一例では、本開示は、対象における胚着床のための子宮内膜受容期を予測する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法を提供する。
【0016】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中の、ポドカリキシンタンパク質の量及び/若しくは分布パターンを決定する工程、並びに/又はポドカリキシンをコードする核酸分子の量を決定する工程を含む。
【0017】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンタンパク質の量及び/又は分布パターンを決定する工程を含む。例えば、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンタンパク質の量を決定する工程を含む。別の例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンタンパク質の量及び/又は分布パターンを決定する工程を含む。
【0018】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中の、ポドカリキシンをコードする核酸分子の量を決定する工程を含む。
【0019】
一例では、核酸分子は、mRNAである。子宮内膜上皮細胞中の核酸分子の量を測定する方法は、当業界で公知である、及び/又は本明細書に記載される。例えば、核酸分子は、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用して検出される。
【0020】
一例では、方法は、対象中のポドカリキシンのレベルと、少なくとも1つのリファレンス中の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルとを比較する工程を更に含む。リファレンスを決定する方法は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。
【0021】
一例では、方法は、(a)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも高いかどうか、又は(b)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも低いかどうかを決定する工程を含む。
【0022】
一例では、子宮内膜上皮細胞は、内腔上皮細胞及び/又は腺上皮細胞である。例えば、子宮内膜上皮細胞は、内腔上皮細胞である。別の例では、子宮内膜上皮細胞は、腺上皮細胞である。
【0023】
一例では、本開示の方法は、以下を提供する:
(i)対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより高いレベルが、子宮内膜上皮受容期を示す;又は
(ii)対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより高いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベルが、子宮内膜上皮受容期前を示す;又は
(iii)対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベルが、子宮内膜上皮受容期後を示す。
【0024】
一例では、対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより高いレベルは、子宮内膜上皮受容期であることを示す。
【0025】
一例では、対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより高いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより高いレベルは、子宮内膜上皮受容期前であることを示す。
【0026】
一例では、対象の内腔上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベル及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのより低いレベルは、子宮内膜上皮受容期後であることを示す。
【0027】
一例では、方法は、ポドカリキシンのレベルを決定するために、ポドカリキシンに特異的に結合する抗体又はアプタマーを使用する工程を含む。例えば、方法は、ポドカリキシンのレベルを決定するために、ポドカリキシンに特異的に結合する抗体を使用する工程を含む。本開示における使用にとって好適な抗体は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。別の例では、方法は、ポドカリキシンのレベルを決定するために、ポドカリキシンに特異的に結合するアプタマーを使用する工程を含む。本開示における使用にとって好適なアプタマーは、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。
【0028】
一例では、抗体又はアプタマーは、検出可能な標識にコンジュゲートされる。例えば、抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。別の例では、アプタマーは、検出可能な標識にコンジュゲートされる。本開示における使用にとって好適な検出可能な標識は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、検出可能な標識は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、補欠分子族、造影剤及び超音波造影剤(ultrasound agent)からなる群から選択される。
【0029】
一例では、検出可能な標識は、放射性標識である。例えば、放射性標識は、限定されるものではないが、放射性ヨウ素(125I、131I);テクネチウム;イットリウム;35S又は3Hであってもよい。
【0030】
一例では、検出可能な標識は、酵素である。例えば、酵素は、限定されるものではないが、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼであってもよい。
【0031】
一例では、検出可能な標識は、蛍光標識である。例えば、蛍光標識は、限定されるものではないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンであってもよい。
【0032】
一例では、検出可能な標識は、発光標識である。例えば、発光標識は、限定されるものではないが、ルミノールであってもよい。
【0033】
一例では、検出可能な標識は、生物発光標識である。例えば、生物発光標識は、限定されるものではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン又はエクオリンであってもよい。
【0034】
一例では、検出可能な標識は、磁気標識である。例えば、磁気標識は、限定されるものではないが、ガドリニウム又は酸化鉄キレートであってもよい。
【0035】
一例では、検出可能な標識は、補欠分子族である。例えば、補欠分子族は、限定されるものではないが、ストレプトアビジン/ビオチン又はアビジン/ビオチンであってもよい。
【0036】
一例では、検出可能な標識は、造影剤である。
【0037】
一例では、検出可能な標識は、超音波造影剤である。例えば、超音波造影剤は、限定されるものではないが、マイクロバブル放出剤であってもよい。一例では、超音波造影剤は、マイクロバブル放出剤である。
【0038】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、プロゲステロンの下流の調節因子及び/又はポドカリキシンの上流の調節因子のレベルを決定する工程を含む。例えば、プロゲステロンの下流の調節因子及び/又はポドカリキシンの上流の調節因子は、マイクロRNAである。別の例では、方法は、ポドカリキシンのレベルを決定するためにマイクロRNAのレベルを決定する工程を含む。例えば、マイクロRNAは、miR-199又はmiR-145である。更なる例では、マイクロRNAのレベルと、ポドカリキシンのレベルとの間には、反比例関係がある。例えば、マイクロRNAレベルの上昇は、ポドカリキシンレベルの低下を示す。
【0039】
ポドカリキシンのレベルを検出する方法は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、方法は、免疫組織化学アッセイ、in situハイブリダイゼーション、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ、ウェスタンブロット、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)又は超音波分子イメージングを実施することを含む。
【0040】
一例では、方法は、免疫組織化学アッセイを実施する工程を含む。
【0041】
一例では、方法は、フローサイトメトリーを実施する工程を含む。
【0042】
一例では、方法は、酵素結合免疫吸着アッセイを実施する工程を含む。
【0043】
一例では、方法は、ウェスタンブロットを実施する工程を含む。
【0044】
一例では、方法は、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施する工程を含む。
【0045】
一例では、方法は、超音波分子イメージングを実施する工程を含む。
【0046】
一例では、方法は、in vitro又はex vivoで子宮内膜上皮細胞に対して実施される。例えば、方法は、in vitroで子宮内膜上皮細胞に対して実施される。別の例では、方法は、ex vivoで子宮内膜上皮細胞に対して実施される。
【0047】
一例では、方法は、生体試料中の対象から得られた子宮内膜上皮細胞に対して実施される。本開示における使用にとって好適な生体試料は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、生体試料は、子宮内膜生検、子宮液試料及び膣液試料からなる群から選択される。
【0048】
一例では、生体試料は、子宮内膜生検である。
【0049】
一例では、生体試料は、子宮内膜上皮細胞である。
【0050】
一例では、生体試料は、子宮液試料である。
【0051】
一例では、生体試料は、膣液試料である。
【0052】
一例では、対象は、プロゲステロン、プロゲストゲン又はそのアナログ若しくは組合せを含む組成物を用いて以前に処置されたことがある。例えば、対象は、不妊症のための処置を受けている。別の例では、対象は、胚着床不全に起因する処置を受けている。
【0053】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、少なくとも1つの生体試料中で、周期中の少なくとも1つの時点で決定される。例えば、ポドカリキシンのレベルは、周期中の1、又は2、又は3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10の時点で決定される。
【0054】
一例では、方法は、対象への胚の着床を更に含む。例えば、胚の着床は、対象中のポドカリキシンのレベルに基づく。
【0055】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、対象の第1周期において決定され、胚は、対象のその後の周期に移植される。
【0056】
本開示はまた、対象における不妊症を検出する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法も提供する。
【0057】
本開示は更に、対象における不妊症を診断及び予後診断する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法を提供する。
【0058】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、少なくとも1つの生体試料中で、周期中の少なくとも1つの時点で決定される。
【0059】
本開示はまた、対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングし、胚着床のための最適な子宮内膜上皮受容期を予測する方法であって、1つ又は複数の時点で対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定することを含む、方法も提供する。
【0060】
本開示はまた、対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期を改善する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び細胞中のポドカリキシンのレベルに基づいて、対象に、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに十分な量の化合物を投与する工程を含む、方法も提供する。
【0061】
本開示は更に、対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期の改善に対する化合物の有効性を評価する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含み、対象が化合物を用いた処置を以前に受けたことがある、方法を提供する。
【0062】
本開示はまた、対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期を改善するための化合物を用いた処置を最適化する方法であって、対象に、化合物を投与する工程、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び必要に応じて、ポドカリキシンのレベルに基づいて、対象に対する処置を改変する工程を含む、方法も提供する。
【0063】
一例では、改変は、化合物の用量、型及び/又は投与経路のうちの1つ若しくは複数又は全部である。
【0064】
一例では、化合物は、プロゲステロン、プロゲストゲン、又はそのアナログ、アンチセンスポリヌクレオチド、触媒核酸、干渉RNA、siRNA、マイクロRNA及びそれらの組合せからなる群から選択される。例えば、化合物は、miR-199又はmiR-145等の、マイクロRNAである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】HUVEC及びHEEC中でのポドカリキシン(PCX)mRNA発現のリアルタイムqRT-PCR分析を示すグラフ表示である。データは、平均±SDとして表される。
図2】月経周期の分泌(Sec)増殖期(Prolif)、初期(E)、中期(M)及び後期(L)における(A)内腔上皮(LE);(B)腺上皮(GE)、及び(C)血管(BV)におけるPCX免疫組織化学染色強度の定量化を示すグラフ表示である。データは、平均±SDとして表される。Prolif;E-Sec;M-Sec;L-Sec。*P<0.05、**P<0.005、***P<0.0005。
図3】48、72及び98時間にわたるプロゲステロン(P)を用いずに、又は用いて、エストロゲン(E)で処置した一次HEEC中のPCXの(A)mRNAレベル及び(B)タンパク質レベルを示すグラフ表示である。データは、平均±SDとして表される。*P<0.05、**P<0.005。
図4】イシカワ細胞中でのPCXの一過的ノックダウン(KD)又は安定な過剰発現(PCX-OE)の効果を示すグラフ表示である。PCXの一過的ノックダウンは、PCXのmRNA発現を減少させ(A)、フィブロネクチンの接着を増大させた(B)。PCXの過剰発現は、PCX mRNA発現を増加させ(C)、フィブロネクチンへの接着性を減少させた。平均±SD、***P<0.0005、****P<0.0001。
図5】PCXを過剰発現するイシカワ単層上への一次栄養膜スフェロイドの結合の定量化を示すグラフ表示である。平均±SD、n=3~5、*P<0.05、**P<0.005、****P<0.0001。
図6】PCXを過剰発現するイシカワ単層を介する一次栄養膜スフェロイドの侵入の定量化を示すグラフ表示である。平均±SD、n=3、*p<0.05、**p<0.005。
図7】PCXを過剰発現するイシカワ単層上へのヒト胚の(A)結合及び(B)侵入の定量化を示すグラフ表示である。平均±SD、n=3、**P<0.005;*p<0.05。
図8a】対照とPCX-OEイシカワ細胞との間で上方調節された遺伝子のリアルタイムqRT-PCR分析を示すグラフ表示である。平均±SD、n=3。*P<0.05、**P<0.005、***P<0.0005、****P<0.0001。
図8b図8a参照。
図9】対照及びPCX-OE細胞の(A)経上皮電気抵抗(TER)及び(B)FITC-デキストランの流動を示すグラフ表示である。平均±SD、n=3、**P<0.005。
図10】PCX-及びPCX+群における着床の成功及び失敗の割合を示すグラフ表示である。*P=0.036、フィッシャーの直接確率検定。
図11】E+P処置後に対するE処置後の一次子宮内膜上皮細胞中でのmir145及びmir199のリアルタイムRT-PCR分析を示すグラフ表示である。E細胞と比較したE+P細胞中での倍率変化±SD、n=4、*P<0.05。
図12】mir145、mir199又はその組合せによるトランスフェクション後のイシカワ細胞中でのPCX mRNAのリアルタイムRT-PCR分析を示すグラフ表示である。24時間で対照細胞と比較した倍率変化±SD、n=4。
【0066】
配列表の凡例
【0067】
【表1A】
【0068】
【表1B】
【発明を実施するための形態】
【0069】
一般的定義
本明細書を通して、別途具体的に記述されない限り、又は別途文脈が必要としない限り、単一の工程、組成物、工程群又は組成物群と述べる場合は、1つ及び複数(すなわち、1つ又は複数)のこれらの工程、組成物、工程群又は組成物群を包含すると取られるべきである。
【0070】
本開示は、例示のみを目的として意図される、本明細書に記載される特定の例によってその範囲を限定されない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、明確に本開示の範囲内にある。
【0071】
当業者であれば、広く記載される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に対して、いくつかの変更及び/又は改変を加えることができることを理解するであろう。本発明の実施形態は、したがって、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないと考えるべきである。
【0072】
本明細書で考察及び/又は参照される全ての刊行物は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
本明細書に含まれた文献、行為、材料、デバイス、論文等の考察は、単に本発明に関する文脈を提供するためのものである。それは、これらの事柄のいずれか、又は全部が、先行技術ベースの一部を形成するか、又は本出願のそれぞれの請求項の優先日より前に存在していたために本発明と関連する分野における共通一般知識であったとの承認と取られるべきではない。
【0074】
本明細書の本開示の任意の例は、別途具体的に記述しない限り、本開示の他の任意の例に変更すべきところは変更して適用されると取られるべきである。言い方を変えれば、本開示の任意の特定例を、本開示の任意の他の例と組み合わせることができる(相互に排他的である場合を除く)。
【0075】
特定の特徴又は特徴群又は方法又は方法ステップを開示する本開示の任意の例は、特定の特徴又は特徴群又は方法又は方法ステップを放棄させるための明確な支持を提供すると取られるであろう。
【0076】
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、生殖生物学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)によって一般的に理解されるものと同じ意味を有すると取られるべきである。
【0077】
別途指摘されない限り、本開示において使用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者には周知の標準的な手順である。そのような技術は、Perbal 1984;Sambrook 1989;Brown 1991;Glover 1995;Ausubel 1988;Harlow 1988;Coligan 1991等の供給源中の文献を通して記載及び説明されている。
【0078】
用語「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X若しくはY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、両方の意味又はいずれかの意味に対する明確な支持を提供すると取られるべきである。
【0079】
本明細書を通じて、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記述された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の含有を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒトを含む任意の動物、例えば、哺乳動物を意味すると取られるべきである。例示的な対象としては、限定されるものではないが、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられる。別の例では、対象はヒトである。一例では、対象はヒト女性である。
【0081】
子宮内膜上皮受容期
子宮内膜再構築は、ヒト月経周期の鍵となる特徴であり、非接着状態から接着状態への変換は、胚着床にとって重要である。特に、着床する胚と直接相互作用して、結合を開始させる、内腔上皮の先端面が、受容期のために再構築する必要がある。したがって、子宮内膜が胚着床を受け入れる場合の周期中の最適な時点を決定することができるのが望ましい。
【0082】
本開示は、自然に達成される妊娠、例えば、自然に達成される受胎後の着床、又は生殖補助医療技術を用いて達成された妊娠のための最適なタイミングを決定するための方法を提供することが当業者には明らかであろう。
【0083】
本発明者らは、子宮内膜上皮細胞が、受容期のために上皮中で下方調節されなければならない、鍵となる抗着床調節因子としてポドカリキシンを内在的に発現することを見出した。具体的には、本発明者らは驚くべきことに、腺上皮ではなく、子宮内膜内腔上皮中での調節因子の下方調節が、子宮内膜上皮受容期であることを示すことを見出した。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「子宮内膜上皮受容期」とは、子宮内膜が着床を受け入れる月経周期の期間を指す。この期間に、子宮内膜は、胚盤胞の接着を可能にする機能的状態を獲得する。この期間は好ましくは、ヒトにおいては月経周期の分泌中期又は28日の月経周期の20~24日目に一致する。
【0085】
本発明者らはまた、子宮内膜上皮の内腔細胞と腺細胞との両方におけるポドカリキシンの上方調節又はレベルの上昇が、受容期前であることを示すことも示した。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「受容期前」又は「子宮内膜上皮受容期前」とは、子宮内膜が着床をまだ受け入れないが、その周期中に着床を受け入れるようになるプロセスにある月経周期の期間を指す。
【0087】
本発明者らはまた、子宮内膜上皮の内腔細胞と腺細胞との両方におけるポドカリキシンの下方調節又はレベルの低下が、受容期後であることを示すことも示した。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「受容期後」又は「子宮内膜上皮受容期後」とは、子宮内膜が着床を受け入れていた月経周期の期間であるが、着床のための周期がすでに生じてしまった期間を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「周期」又は「月経周期」とは、女性及び他の雌性霊長類における排卵及び月経のプロセスを指す。当業者であれば、この用語が、卵巣(卵巣周期としても知られる)と、子宮又は子宮内膜の内層(子宮周期としても知られる)との両方と関連する変化を包含することを理解するであろう。卵巣周期は、卵胞期、排卵期及び黄体期からなり、子宮周期は、月経期、増殖期及び分泌期からなる。ヒトにおける平均月経周期は、28日である。
【0090】
一例では、本開示は、それを必要とする対象における子宮内膜上皮受容期を予測する方法を提供する。
【0091】
ポドカリキシンのレベルの決定
ポドカリキシン様タンパク質1(PCLP-1)としても知られる、ポドカリキシン(PODXL又はPCX)は、膜貫通型シアロムチンのCD34ファミリーのメンバーであり、細胞接着、移動及び極性の調節に関与する。PODXLは、腎臓有足細胞、造血前駆細胞、血管内皮、及びニューロンのサブセットによって発現されるが、異常な発現は、様々ながんに関与している。I型膜貫通タンパク質として、PODXLは、広くOグリコシル化及びシアル化された細胞外ドメインと、膜貫通領域と、短い細胞内領域とを有する。コードされるタンパク質は、22アミノ酸のシグナルペプチド、439残基の細胞外ドメイン、21残基の膜貫通ドメイン及び76アミノ酸のC末端細胞内ドメインを有する。命名のみのためであって、限定のためではないが、ヒトPODXLの例示的な配列は、NCBI Reference Sequence NG_042104.1に記載されている。用語「ポドカリキシン(PODXL又はPCX)」は、ポドカリキシンmRNA又はポドカリキシンの突然変異体若しくは多型形態の選択的スプライシングから生じ得る任意のアイソフォームを含む。例えば、命名のみの目的であって、限定のためではないが、ヒトPODXLアイソフォーム1及び2の例示的な配列は、それぞれ、GenBank受託番号NP_001018121及びGenBank受託番号NP_005388に記載されている。他の種に由来するPODXLの配列を、本明細書に提供される配列を使用して、及び/若しくは公共的に利用可能なデータベース中で決定することができる、並びに/又は標準的な技術(例えば、Ausubel 1988又はSambrook 1989に記載のような)を使用して決定することができる。
【0092】
本発明者らは、ポドカリキシンが、受容期確立の時点で内腔上皮細胞中で顕著に下方調節されることを見出した。
【0093】
したがって、本明細書に記載の任意の開示の方法は、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む。
【0094】
本明細書で使用される場合、ポドカリキシンを参照する用語「レベル」は、遺伝子及び/又はタンパク質の機能性のレベル(すなわち、機能的レベル)を指すと理解されるべきである。例えば、レベル(又は「発現レベル」)とは、遺伝子によって発現されるmRNA転写物の測定単位又はコードされるタンパク質の測定単位を指す。
【0095】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、子宮内膜上皮細胞中の、ポドカリキシンタンパク質の量を決定する工程、及び/又はポドカリキシンをコードする核酸分子の量を決定する工程を含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、ポドカリキシンのレベルを参照する用語「量」は、mRNA分子及び/又はタンパク質の数量を指すと理解されるであろう。分布パターンを評価する種々の方法が当業者には公知であり、当業者であれば、特定の値又は量が使用される評価方法に応じて変化することを認識するであろう。また、この用語が絶対値と相対値の両方を包含することも明らかであろう。例えば、量は、リファレンス若しくは対照試料、評価される細胞の数(例えば、細胞100個あたりの量)及び/又は細胞の型(例えば、内腔対腺上皮細胞)に対するものであってもよい。別の例では、量は、試料中に存在するmRNA分子及び/又はタンパク質の量の絶対値であってもよい。
【0097】
一例では、ポドカリキシンのレベルの決定は、ポドカリキシンタンパク質の分布パターンを決定する工程を含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「分布パターン」とは、対象中のポドカリキシンタンパク質の特異的パターン及び/又は細胞局在化を指す。分布パターンを評価する種々の方法が当業者には利用可能であり、使用される分析方法に依存するであろう。当業者であれば、この用語が記述的分析(例えば、存在又は非存在)、多パラメーター型及び半定量型スコアリング(例えば、強い、弱い又は非存在)を包含することを認識するであろう。
【0099】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、細胞の集団中でのレベルである。
【0100】
本開示における「細胞の集団」又は「細胞集団」と述べる場合は、全ての子宮内膜上皮細胞を指す。子宮内膜が内腔上皮細胞と腺上皮細胞との両方から構成されること、及びこの用語が両方の細胞の集団を包含することが、当業者には明らかであろう。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「内腔上皮」(LE)とは、子宮の内腔に並ぶ細胞を指す。
【0102】
本明細書で使用される用語「腺上皮」(GE)とは、子宮内膜又は子宮腺の細胞を指す。
【0103】
したがって、対象中のポドカリキシンのレベルが、細胞の集団(すなわち、腺上皮細胞と内腔上皮細胞の両方)中のレベルであってもよいこと、又はポドカリキシンのレベルが、細胞の集団のサブセット(すなわち、腺若しくは内腔上皮細胞のいずれか)中のレベルであってもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0104】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、内腔及び腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルである。例えば、ポドカリキシンのレベルは、リファレンス又は対照と比較される。
【0105】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、内腔又は腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルである。一例では、ポドカリキシンのレベルは、内腔上皮細胞中のポドカリキシンのレベルである。一例では、ポドカリキシンのレベルは、腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルである。一例では、内腔又は腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルは、リファレンス又は対照と比較される。別の例では、内腔上皮細胞中のポドカリキシンのレベルは、腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルと比較される。別の例では、腺上皮細胞中のポドカリキシンのレベルは、内腔上皮細胞中のポドカリキシンのレベルと比較される。
【0106】
本明細書に記載の任意の方法の一例では、方法は、(a)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも高いかどうか、又は(b)対象中のポドカリキシンのレベルが、リファレンス中のポドカリキシンのレベルよりも低いかどうかを決定する工程を含む。
【0107】
ポドカリキシンのレベルを参照する用語「より高い」とは、対象中のポドカリキシンをコードする核酸分子又はポドカリキシンタンパク質のレベルが、対照若しくはリファレンスレベルと比較して、又は別のものと比較した1つの細胞集団中で、高い、又は増大することを意味する。ポドカリキシンのレベルが、統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%、又は約20%、又は約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%増大すれば十分であることが前記から明らかであろう。
【0108】
ポドカリキシンのレベルを参照する用語「より低い」とは、対象中のポドカリキシンをコードする核酸分子又はポドカリキシンタンパク質のレベルが、対照若しくはリファレンスレベルと比較して、又は別のものと比較した1つの細胞集団中で、低い、又は低下することを意味する。ポドカリキシンのレベルが、統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%、又は約20%、又は約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%低下すれば十分であることが前記から明らかであろう。
【0109】
ポドカリキシンのレベルを決定する方法
ポドカリキシンをコードするポドカリキシン核酸分子又はポドカリキシンタンパク質のレベルを決定する方法は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。
【0110】
核酸分子のレベルの決定
核酸を検出するための方法は、当業界で公知であり、例えば、ハイブリダイゼーションに基づくアッセイ、増幅に基づくアッセイ及び制限エンドヌクレアーゼに基づくアッセイが挙げられる。例えば、転写された遺伝子のレベルを、特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、リガーゼ連鎖反応又はサイクリングプローブ技術によって決定することができる。
【0111】
プライマーの設計及び生産
当業者には明らかであるように、本開示のアッセイにおいて使用される特定のプライマーは、使用されるアッセイ形式に依存するであろう。明らかに、目的のマーカーに特異的にハイブリダイズするか、又はそれを検出することができるプライマーが好ましい。例えば、PCR又はハイブリダイゼーションのためのプライマーを設計するための方法は、当業界で公知であり、例えば、Dieffenbach 1995に記載されている。更に、様々なアッセイのための最適なプライマーを設計するいくつかのソフトウェアパッケージ、例えば、Center for Genome Research, Cambridge, MA, USAから入手可能なPrimer 3が公共的に利用可能である。本開示における使用にとって好適なプライマーは、好ましくは、ヘアピンを形成しない、自己プライミングしない、又はプライマー二量体(例えば、検出アッセイにおいて使用された別のプライマーとの)を形成しないものである。
【0112】
更に、プライマー(又はその配列)は、それが標的核酸から変性する温度(すなわち、プローブ若しくはプライマーの融点、又はTm)を決定するために評価される。Tmを決定する方法は、当業界で公知であり、例えば、Santa Lucia, 1995又はBresslauerら、1986に記載されている。
【0113】
本開示におけるポドカリキシンの検出のために使用される例示的なプライマーとしては、
hPODXL-フォワード: 5'-GAGCAGTCAAAGCCACCTTC-3'、
hPODXL-リバース: 5'-TGGTCCCCTAGCTTCATGTC -3'
が挙げられる。
【0114】
好適な対照プライマーも、当業者には明らかであり、例えば、18s及びβ-アクチンが挙げられる。本開示における使用のための例示的な対照配列としては、
18s-フォワード: 5'-CGGCTACCACATCCAAGGAA-3'
18s-リバース: 5'-GCTGGAATTACCGCGGCT-3'
が挙げられる。
【0115】
本開示のプライマーを生産/合成するための方法は、当業界で公知である。例えば、オリゴヌクレオチド合成は、Gait 1984に記載されている。例えば、プローブ又はプライマーを、生物学的合成(例えば、制限エンドヌクレアーゼを用いた核酸の消化)又は化学的合成によって取得することができる。短い配列(約100ヌクレオチドまで)については、化学合成が好ましい。
【0116】
一例では、プライマーは、1つ又は複数の検出可能なマーカーを含む。例えば、プライマーは、例えば、フルオレセイン(FITC)、5,6-カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール-4-イル(NBD)、クマリン、塩化ダンシル、ローダミン、4'-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、並びにシアニン色素Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7、フルオレセイン(5-カルボキシフルオレセイン-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、ローダミン(5,6-テトラメチルローダミン)等の蛍光標識を含む。これらの蛍光色素に関する、吸光度及び発光極大はそれぞれ、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm: 672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)及びCy7(755nm;778nm)である。
【0117】
或いは、プライマーは、例えば、蛍光半導体ナノ結晶(例えば、米国特許第6,306,610号に記載されている)、放射性標識又は酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)若しくはβ-ガラクトシダーゼ)で標識される。
【0118】
そのような検出可能な標識は、プライマー、例えば、プライマーのハイブリダイゼーション又はプライマーを使用して生産される増幅産物の検出を容易にする。そのような標識されたプライマーを生産するための方法は、当業界で公知である。更に、標識されたプライマーの生産のための商業的供給源は、当業者には公知であり、例えば、Sigma-Genosys社、Sydney、Australiaがある。
【0119】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
PCRの方法は、当業界で公知であり、例えば、Dieffenbach 1995に記載されている。一般的には、PCRのために、少なくとも約20ヌクレオチド又は少なくとも約30ヌクレオチドを含む2つの非相補的核酸プライマー分子を、核酸鋳型分子の異なる鎖にハイブリダイズさせ、鋳型の特異的核酸分子コピーを酵素的に増幅させる。PCR産物を、核酸に結合する検出マーカーを用いた電気泳動及び検出を使用して検出することができる。或いは、1つ又は複数のオリゴヌクレオチドを、検出可能なマーカー(例えば、フルオロフォア)を用いて検出し、増幅産物を、例えば、ライトサイクラー(Perkin Elmer社、Wellesley、MA、USA)を使用して検出する。或いは、PCR産物を、例えば、質量分析を使用して検出する。明らかに、本開示はまた、例えば、TaqManアッセイ等の、定量型のPCR(リアルタイムPCR;RT-PCR等)も包含する。TaqManアッセイ(米国特許第5,962,233号に記載されている)は、色素対が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって相互作用するような、一方の末端上にドナー色素及び他方の末端にアクセプター色素を有する対立遺伝子特異的(ASO)プローブを使用する。
【0120】
リガーゼ連鎖反応(LCR)
連鎖反応(例えば、欧州特許第320,308号及び米国特許第4,883,750号に記載されている)は、隣接する標的核酸にハイブリダイズする2つ以上のオリゴヌクレオチドを使用する。次いで、リガーゼ酵素を使用して、オリゴヌクレオチドを連結する。他方のプライマーに隣接する一方のプライマーの末端のヌクレオチドと相補的ではない1つ又は複数のヌクレオチドの存在下では、リガーゼはプライマーを連結することができず、それによって、検出可能な増幅産物を産生することができない。次いで、サーモサイクリングを使用して、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドは、更なるオリゴヌクレオチドのための標的になる。次いで、ライゲーションされた断片を、例えば、電気泳動、又はMALDI-TOFを使用して検出する。或いは、又は更に、1つ又は複数のプローブを、検出可能なマーカーで標識することによって、迅速な検出を容易にする。
【0121】
サイクリングプローブ技術
サイクリングプローブ技術は、標的配列にハイブリダイズすることができるDNA-RNA-DNAを含むキメラ合成プローブを使用する。標的配列へのハイブリダイゼーションの際に、形成されるRNA-DNA二重鎖は、プローブを切断するRNase Hのための標的である。次いで、切断されたプローブを、例えば、電気泳動又はMALDI-TOFを使用して検出する。
【0122】
Qβレプリカーゼ
Qβレプリカーゼを、本開示における更に別の増幅方法として使用することもできる。この方法では、標的のものと相補的な領域を有するRNAの複製配列を、RNAポリメラーゼの存在下で試料に添加する。ポリメラーゼは、複製配列をコピーし、次いで、それを検出することができる。
【0123】
鎖置換増幅(SDA)
鎖置換増幅(SDA)は、標的配列を増幅させるために、オリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ及び制限エンドヌクレアーゼを利用する。オリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズさせ、ポリメラーゼを使用してこの領域のコピーを産生させる。次いで、コピーされた核酸と標的核酸との二重鎖を、コピーされた核酸の開始部のヌクレオチド配列を特異的に認識するエンドヌクレアーゼを用いてニッキングする。DNAポリメラーゼは、ニッキングされたDNAを認識し、同時に標的領域の別のコピーを産生し、以前に生成された核酸を置換する。SDAの利点は、それが等温形式で行われ、それによって、高効率の自動化分析を容易にするということである。
【0124】
他の核酸増幅法
他の核酸増幅手順としては、核酸配列に基づく増幅(NASBA)及び3SR(WO88/10315)を含む、転写に基づく増幅システム(TAS)が挙げられる。
【0125】
ヌクレオチド配列の直接配列決定のための方法は、当業者には周知であり、例えば、Ausubel 1995及びSambrook 1989に見出すことができる。配列決定を、任意の好適な方法、例えば、ジデオキシ配列決定、化学的配列決定、次世代配列決定技術又はその変形によって実行することができる。直接配列決定は、特定の配列の任意の塩基対における変化を決定する利点を有する。
【0126】
ポドカリキシンポリペプチド又はタンパク質のレベルの決定
ポドカリキシンタンパク質又はポリペプチド(異なるアイソフォームを含む)の量又はレベルを検出するための方法は、当業界で公知であり、例えば、免疫組織化学、免疫蛍光、イムノブロット、ウェスタンブロット、ドットブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、質量分析(タンデム質量分析、例えば、LC MS/MS)、バイオセンサー技術、エバネセント光ファイバー技術又はタンパク質チップ技術が挙げられる。例えば、好適なアッセイは、半定量的アッセイ及び/又は定量的アッセイである。
【0127】
用語「タンパク質」は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続するアミノ酸又は互いに共有的若しくは非共有的に連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと取られるべきである。例えば、一連のポリペプチド鎖を、好適な化学結合又はジスルフィド結合を使用して共有的に連結することができる。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。
【0128】
用語「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」は、ペプチド結合によって連結された一連の連続するアミノ酸を意味することが前記段落から理解されるであろう。
【0129】
一例では、試料中のポドカリキシンのレベルを決定するための方法は、対象に由来する生体試料と、ポドカリキシンポリペプチド又はタンパク質に特異的に結合する抗体又はリガンドとを、抗体又はリガンドがポリペプチド又はタンパク質との複合体を形成するのに十分な時間にわたって、かつ条件下で接触させる工程、次いで、複合体を検出する工程を含む。
【0130】
リガンド
本明細書で使用される場合、用語「リガンド」は、ポドカリキシンポリペプチドに特異的に結合することができる任意の化合物、分子、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、化学物質、低分子、天然化合物等を含むと取られるべきである。そのようなリガンドは、任意のプロセスによって、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、静電気的相互作用、ジスルフィド結合形成又は共有結合形成によってポドカリキシンポリペプチドに結合してもよい。
【0131】
抗体
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、インタクトなモノクローナル又はポリクローナル抗体、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgG、IgM、IgE)画分、ヒト化抗体、又は組換え一本鎖抗体、並びに例えば、Fab、F(ab)2、及びFv断片等のその断片を指す。
【0132】
ポドカリキシンの検出における使用にとって好適な抗体は、当業者には明らかであり、及び/又は本明細書に記載され、例えば、商業的に入手可能な抗体AF1658(R&D Systems社);3D3(Santa Cruz社)及び/又はEPR9518(Abcam社)が挙げられる。
【0133】
一例では、抗体は、ポドカリキシンのレベルを決定するためにポドカリキシンに特異的に結合する。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」は、抗体が、別の抗原又は細胞よりも、特定の抗原又はそれを発現する細胞と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/又はより高い親和性で反応するか、又は会合することを意味すると取られるべきである。一般に、必要ではないが、結合と述べる場合は、特異的結合を意味し、それぞれの用語は、他の用語のための明確な支持を提供すると理解されるべきである。
【0135】
抗体を、当業者には公知の、例えば、Harlo 1988に記載された様々な技術のいずれかによって調製することができる。1つのそのような技術では、ポドカリキシンポリペプチド又はその断片を含む免疫原を、様々な哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ又はヤギ)のいずれか1種に注入する。免疫原は、天然の供給源に由来する、組換え発現手段によって産生される、又は化学合成(例えば、BOC化学若しくはFMOC化学)等によって人工的に生成される。この方法では、ポドカリキシンポリペプチド又はその断片は、改変なしに免疫原として働くことができる。或いは、ポドカリキシンポリペプチド又はその断片は、例えば、ウシ血清アルブミン等の担体タンパク質に連結される。免疫原及び必要に応じて、タンパク質のための担体を、好ましくは、1又は複数の追加免疫化を含む所定のスケジュールに従って、動物宿主に注入し、前記動物から血液を定期的に収集する。必要に応じて、免疫原は、免疫原に対する免疫応答を増強するために、例えば、Freundの完全又は不完全アジュバント等のアジュバントの存在下で注入される。
【0136】
目的の抗原性ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を、例えば、Kohlerら、1976の技術、及びその改良版を使用して調製することができる。簡単に述べると、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生することができる不死細胞株の調製を含む。そのような細胞株を、例えば、上記のように免疫された動物から取得された脾臓細胞から生産することができる。脾臓細胞は、例えば、ミエローマ細胞融合パートナー、好ましくは、免疫された動物と同系であるものとの融合によって不死化される。様々な融合技術を用いてもよく、例えば、脾臓細胞と、ミエローマ細胞とを、非イオン性界面活性剤と混合するか、又は電気融合した後、ミエローマ細胞ではなく、ハイブリッド細胞の増殖を支援する選択培地中で増殖させることができる。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)選択を使用する。十分な時間の後、通常、約1~2週間後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一のコロニーを選択し、細胞が増殖した増殖培地を、ポリペプチド(免疫原)に対する生物活性の存在について試験する。高い反応性及び特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0137】
モノクローナル抗体は、例えば、上記の親和性精製等の方法を使用して増殖しているハイブリドーマコロニーの上清から単離される。更に、マウス等の好適な脊椎動物宿主の腹腔へのハイブリドーマ細胞株の注入等の様々な技術を用いて、収率を増強することができる。次いで、そのような動物対象の腹水又は血液から、モノクローナル抗体を収獲する。クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈降、及び/又は抽出等の従来の技術によって、抗体から夾雑物を除去する。
【0138】
或いは、目的のポドカリキシンポリペプチド又はその断片の形態に結合することができるモノクローナル抗体を、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbarら、1983)、ヒトモノクローナル抗体を生産するためのEBV-ハイブリドーマ技術(Cole、1985)、又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(Huseら、1989)等の方法を使用して生産する。
【0139】
一例では、抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。
【0140】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」は、視覚的に、又は好適な検出器を使用することによって検出することができる光シグナル又はその他のシグナル又は生成物を生成する、又は生成するように誘導することができる分子又は原子タグ又はマーカーである。検出可能な標識は、当業界で周知であり、例えば、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、補欠分子族、造影剤及び超音波造影剤が挙げられる。
【0141】
一般的に使用される蛍光標識としては、Alexa、Cy5及びCy5.5等のシアニン、及びインドシアニン、並びにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)が挙げられるが、それらはそのように限定されない。本開示の実施において有用な蛍光標識としては、これも限定されるものではないが、1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン(pH10);5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-HAT(ヒドロキシトリプタミン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6C;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸性フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ+DNA;アクリジンオレンジ+RNA;アクリジンオレンジ、DNA&RNAの両方;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン;アクリフラビンフォイルゲンSITSA;エクオリン(光タンパク質);Alexa Fluor 350;Alexa Fluor 430;Alexa Fluor 488;Alexa Fluor 532;Alexa Fluor 546;Alexa Fluor 568;Alexa Fluor 594;Alexa Fluor 633;Alexa Fluor 647;Alexa Fluor 660;Alexa Fluor 680;アリザリンコンプレキソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC, AMCA-S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アミノメチルクマリン(AMCA);アニリンブルー;ステアリン酸アントロシル;APC(アロフィコシアニン);APC-Cy7;APTRA-BTC=Ratio Dye, Zn2+;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7 GLL;アタブリン;ATTO-TAG CBQCA;ATTO-TAG FQ;オーラミン;オーロホスフィンG;オーロホスフィン;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);ベルベリン硫酸塩;ベータラクタマーゼ;BFPブルーシフトGFP(Y66H);青色蛍光タンパク質;BFP/GFP FRETビマン;ビスベンズアミド;ビスベンズアミド(Hoechst);ビス-BTC=Ratio Dye, Zn2+;ブランコホルFFG;ブランコホルSV;BOBO-1;BOBO-3;Bodipy 492/515;Bodipy 493/503;Bodipy 500/510;Bodipy 505/515;Bodipy 530/550;Bodipy 542/563;Bodipy 558/568;Bodipy 564/570;Bodipy 576/589;Bodipy 581/591;Bodipy 630/650-X;Bodipy 650/665-X;Bodipy 665/676;Bodipy Fl;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl-セラミド;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR-Xコンジュゲート;Bodipy TMR-X, SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR-X SE;BO-PRO-1;BO-PRO-3;ブリリアントスルホフラビンFF;BTC-Ratio Dye Ca2+;BTC-5N-atio Dye, Zn2+;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムゾン;カルシウムグリーン;カルシウムグリーン-1 Ca2+ Dye;カルシウムグリーン-2 Ca2+;カルシウムグリーン-5N Ca2+;カルシウムグリーン-C18 Ca2+;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);カスケードブルー;カスケードイエロー399;カテコールアミン;CCF2(GeneBlazer);CFDA;CFP--シアン蛍光タンパク質;CFP/YFP;FRET;クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CL-NERF(Ratio
Dye, pH);CMFDA;セレンテラジン;セレンテラジンcp(Ca2+ Dye);セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンn;セレンテラジンO;クマリンファロイジン;C-フィコシアニン;CPMメチルクマリン;CTC;CTCホルマザン;Cy2;Cy3.1 8;Cy3.5;Cy3;Cy5.1 8;Cy5.5;Cy5;Cy7;シアンGFP;サイクリックAMPフルオロセンサー(FiCRhR);CyQuant細胞増殖アッセイ;ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;塩化ダンシル;ダンシルDHPE;ダンシルフルオリド;DAPI;ダポキシル;ダポキシル2;ダポキシル3;DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);Di-4-ANEPPS;ジ-8-ANEPPS(non-ratio);DiA(4-ジ-16-ASP);ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸(DCFH);DiD-親油性トレーサー;DiD(DiIC18(5));DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);DiI(DiIC18(3));ジニトロフェノール;DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DiIC18(7));DM-NERF(高pH);DNP;ドーパミン;DsRed;赤色蛍光タンパク質;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF 97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;臭化エチジウム;エチジウムホモ二量体-1(EthD-1);ユークリシン;EukoLight;ユーロピウム(III)クロリド;EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラロサニリン);FIF(ホルムアルデヒド誘導蛍光);FITC;FITC抗体;フラゾオレンジ;Fluo-3;Fluo-4;フルオレセイン(FITC);フルオレセイン二酢酸;フルオロ-エメラルド;フルオロ-ゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);Fluor-Ruby;FluorX;FM 1-43;FM 4-46;Fura Red(高pH);Fura Red/Fluo-3;Fura-2、高カルシウム;Fura-2、低カルシウム;Fura-2/BCECF;ゲナクリルブリリアントレッドB;ゲナクリルブリリアントイエロー10GF;ゲナクリルピンク3G;ゲナクリルイエロー5GF;GeneBlazer(CCF2);GFP(S65T);GFPレッドシフト(rsGFP)、GFP野生型、非UV励起(wtGFP);GFP野生型、UV励起(wtGFP);GFPuv;グロキサン酸;グラニュラーブルー;ヘマトポルフィリン;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオロゴールド);ヒドロキシトリプタミン;Indo-1、高カルシウム;Indo-1、低カルシウム;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイトCf;JC-1;JO-JO-1;JO-PRO-1;LaserPro;ラウロダン;LDS 751(DNA);LDS 751(RNA);ロイコホルPAF;ロイコホルSF;ロイコホルWS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;LIVE/DEADキット動物細胞、カルセイン/エチジウムホモ二量体;LOLO-1;LO-PRO-1;ルシファーイエロー;リソトラッカーブルー;リソトラッカーブルー-ホワイト;リソトラッカーグリーン;リソトラッカーレッド;リソトラッカーイエロー;リソセンサーブルー、リソセンサーグリーン;リソセンサーイエロー/ブルー;マググリーン;マグダラレッド(フロキシンB);Mag-Fura Red;Mag-Fura-2;Mag-Fura-5;Mag-Indo-1;マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;マキシロンブリリアントフラビン10 GFF;マキシロンブリリアントフラビン8 GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;ミトトラッカーグリーンFM;ミトトラッカーオレンジ;ミトトラッカーレッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;ニトロベンゾオキサジドール;ノルアドレナリン;ニュークリアファストレッド;ニュークリアイエロー;ナイロサンブリリアントイアビンE8G;オレゴングリーン;オレゴングリーン488-X;オレゴングリーン;オレゴングリーン488;オレゴングリーン500;オレゴングリーン514;パシフィックブルー;パラロサニリン(フォイルゲン);PBFI;PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-テキサスレッド[Red 613];フロキシンB(マグダラレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;ホスフィン3R;フォトレジスト;フィコエリトリンB [PE];フィコエリトリンR [PE];PKH26(Sigma社);PKH67;PMIA;ポントクロムブルーブラック;POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;プリムリン;プロシオンイエロー;ヨウ化プロピジウム(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザールブリリアントフラビン7GF;QSY 7;キナクリンマスタード;Red 613 [PE-テキサスレッド];レゾルフィン;RH 414;Rhod-2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5 GLD;ローダミン6G;ローダミンB;ローダミンB 200;ローダミンBエクストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコシアニン;R-フィコエリトリン(PE);rsGFP;S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;SBFI;セロトニン;セブロンブリリアントレッド2B;セブロンブリリアントレッド4G;セブロンブリリアントレッドB;セブロンオレンジ;セブロンイエローL;sgBFP;sgBFP(スーパーグロウBFP);sgGFP;sgGFP(スーパーグロウGFP);SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SNAFLカルセイン;SNAFL-1;SNAFL-2;SNARFカルセイン;SNARF1;ナトリウムグリーン;スペクトラムアクア;スペクトラムグリーン;スペクトラムオレンジ;スペクトラムレッド;SPQ(6-メトキシ-N-(3-スルホプロピル)キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンGエクストラ;SYTO 11;SYTO 12;SYTO 13;SYTO 14;SYTO 15;SYT;SYTO 17;SYTO 18;SYTO 20;SYTO 21;SYTO 22;SYTO 23;SYTO 24;SYTO 25;SYTO 40;SYTO 41;SYTO 42;SYTO 43;SYTO 44;SYTO 45;SYTO 59;SYTO 60;SYTO 61;SYTO 62;SYTO 63;SYTO 64;SYTO 80;SYTO 81;SYTO 82;SYTO 83;SYTO 84;SYTO 85;SYTOXブルー;SYTOXグリーン;SYTOXオレンジ;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン(TRITC);テキサスレッド;テキサスレッド-Xコンジュゲート;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;チオライト;チオゾールオレンジ;チノポールCBS(カルコフロールホワイト);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;TriColor(PE-Cy5);TRITC(テトラメチルローダミン-イソチオシアネート);トゥルーブルー;トゥルーレッド;ウルトラライト;ウラニンB;ユビテックスSFC;wt GFP;WW 781;X-ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;イエローGFP;YFP;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;及びYOYO-3が挙げられる。
【0142】
一例では、検出可能な標識は、酵素である。酵素は、適切な基質に対して作用して、検出可能な色素の産生をもたらすことができる。本開示において有用な酵素の例としては、限定されるものではないが、アルカリホスファターゼ及び西洋わさびペルオキシダーゼが挙げられる。或いは、又は更に、酵素は、例えば、ルシフェラーゼであってもよい。酵素を、従来の化学的方法によって抗体に連結するか、又はそれを融合タンパク質として抗体と一緒に発現させることができる。
【0143】
本開示における検出可能な標識として有用な放射性同位体は、当業界で周知であり、3H、11C、18F、35S、64Cu、67Ga、68Ga、99mTc、111In、123I、124I、125I、及び131Iが挙げられる。カルシトニン受容体に結合する化合物のカルボキシル、アミノ、又はスルフヒドリル基と反応することができる、任意のガンマ放射性物質、例えば、99mTc及び111Inの結合は、ガンマシンチグラフィーを使用する検出方法における使用にとって好適である。化合物のカルボキシル、アミノ、又はスルフヒドリル基と反応することができる、放射性11C、18F、64Cu、67Ga、68Ga、124I、及び131I化合物の結合は、PET/SPECTイメージングを使用する検出方法における使用にとって好適である。
【0144】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)
標準的な固相ELISA又はFLISA形式は、様々な試料に由来するタンパク質の濃度を決定するのに特に有用である。1つの形態では、そのようなアッセイは、生体試料を、例えば、ポリスチレン若しくはポリカーボネート製マイクロウェル若しくはディップスティック、膜、又はガラス支持体(例えば、スライドガラス)等の固体マトリックス上に固定することを含む。
【0145】
ポドカリキシンポリペプチド内のマーカーに特異的に結合する抗体を、固定された生体試料と直接接触させると、前記試料中に存在するその標的タンパク質のいずれかとの直接結合を形成する。この抗体を、一般的には、例えば、FLISAの場合、蛍光標識(例えば、FITC若しくはテキサスレッド)若しくは蛍光半導体ナノ結晶(米国特許第6,306,610号に記載されている)又はELISAの場合、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)若しくはβ-ガラクトシダーゼ)等の検出可能なリポーター分子で標識するか、又は或いは、第1の抗体に結合する第2の標識された抗体を使用することができる。未結合の抗体を除去するための洗浄後、標識を、蛍光標識の場合は直接的に、又は酵素標識の場合は、例えば、過酸化水素、TMB、若しくはトルイジン、若しくは5-ブロモ-4-クロロ-3-インドール-ベータ-D-ガラクトピラノシド(x-gal)等の基質の添加によって検出する。
【0146】
そのようなELISA又はFLISAに基づくシステムは、例えば、単離された、及び/又は組換えポドカリキシンポリペプチド又はその免疫原性断片又はそのエピトープ等の、抗体が結合する既知量のタンパク質標準に対して検出システムを較正することによる、試料中のタンパク質の量の定量化にとって好適である。
【0147】
別の例では、ELISAは、ポドカリキシンポリペプチド内の疾患又は障害のマーカーに特異的に結合する抗体又はリガンドを、例えば、膜、ポリスチレン若しくはポリカーボネート製マイクロウェル、ポリスチレン若しくはポリカーボネート製ディップスティック又はガラス支持体等の固体マトリックス上に固定することからなる。次いで、試料を、前記抗体との物理的関係に持って行き、試料内の前記マーカーを結合させるか、又は「捕捉する」。次いで、結合したタンパク質を、標識された抗体を使用して検出する。或いは、第2の(検出)抗体に結合する第3の標識された抗体を使用することができる。
【0148】
本明細書に記載のアッセイ形式が、例えば、スクリーニングプロセスの自動化又はMendozaら、1999に記載されたマイクロアレイ形式等の高効率形式に適していることが当業者には明らかであろう。更に、例えば、競合的ELISA等の、上記のアッセイの変化は、当業者には明らかであろう。
【0149】
ウェスタンブロッティング
別の例では、ウェスタンブロッティングを使用して、試料中のポドカリキシンポリペプチド内のマーカーのレベルを決定する。そのようなアッセイでは、試料に由来するタンパク質を、当業界で公知であり、例えば、Scopes、1994に記載された技術を使用するドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用して分離する。次いで、分離されたタンパク質を、当業界で公知の方法、例えば、電気泳動転写を使用して、例えば、膜(例えば、PVDF膜)等の固相支持体に転写する。次いで、この膜をブロックし、ポドカリキシンポリペプチド内のマーカーに特異的に結合する標識された抗体又はリガンドを用いて探査する。或いは、標識された二次、又は更には三次抗体又はリガンドを使用して、特異的一次抗体の結合を検出する。次いで、標識のレベルを、使用された標識にとって適切なアッセイを使用して決定する。
【0150】
適切なアッセイは、当業者には明らかであり、例えば、密度測定が挙げられる。一例では、タンパク質バンド又はスポットの強度を、当業界で公知の方法を使用して、SDS-PAGEゲル上にロードしたタンパク質の総量に対して正規化する。或いは、検出されたマーカーのレベルを、対照/リファレンスタンパク質のレベルに対して正規化する。そのような対照タンパク質は、当業界で公知であり、例えば、アクチン、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、β2ミクログロブリン、ヒドロキシ-メチルビランシンターゼ、ヒポキサンチンホスホリボシル-トランスフェラーゼ1(HPRT)、リボソームタンパク質L13c、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体サブユニットA及びTATAボックス結合タンパク質(TBP)が挙げられる。
【0151】
免疫組織化学分析
当業者には明らかであるように、例えば、本明細書に記載の免疫組織化学及び/又は免疫蛍光等の組織化学的方法が、ポドカリキシンの細胞内局在化を決定/検出するのに有用である。そのような方法は、当業界で公知であり、例えば、免疫組織化学(Cuello 1984)に記載されている。
【0152】
組織化学的方法におけるポドカリキシンの局在化を分析する方法は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例示的な方法としては、例えば、以下が挙げられる:
・陽性染色された細胞及び構造の評価。例えば、陽性と考えられる細胞及び/又は構造を計数し、それぞれの試料について陽性染色された細胞の絶対量を決定する。
・陽性染色された細胞及び/又は面積比の評価。例えば、陽性染色された細胞のパーセンテージを決定し、計数された細胞の総数及び/又は評価された総面積と比較する。パーセンテージがある特定のスコア値で与えられる場合、定量的及び定性的スコアリングの組合せを使用することができる。例えば、「存在」スコアは、66%以上の陽性染色された細胞について与えられる;「非存在」スコアは、10%未満の細胞が観察されるか、又は目に見える染色が観察されない場合に与えられる。別の例では、試料は、0(染色なし)、1(10%未満の細胞染色)、2(10%~50%の細胞染色)、又は3(50%を超える細胞染色)のスコアを割り当てられる。
・定性的スコアリング。例えば、IHCの発現力を、陽性若しくは陰性;又は陰性(-)、弱い(+)、中程度(++)及び強い(+++)であるカテゴリーに割り当てることができる。カテゴリーが記号の代わりに数値で記される場合、この手法は定性的から半定量的に変換される。
・デジタル分析。例えば、画像分析ソフトウェア(例えば、Fiji 1.51o)を使用して、平均染色(又はピークピクセル)強度を決定する。
【0153】
ラジオイムノアッセイ
或いは、レベルを、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して検出する。このアッセイの基本原理は、抗体-抗原相互作用を検出するための放射性標識抗体又は抗原の使用である。ポドカリキシンポリペプチド内のマーカーに特異的に結合する抗体又はリガンドを固相支持体に結合させ、試料を、前記抗体と直接接触させる。結合した抗原のレベルを検出するために、単離された、及び/又は組換え形態の抗原を放射性標識し、同じ抗体と接触させる。洗浄後、結合した放射活性のレベルを検出する。生体試料中の抗原は、放射性標識された抗原の結合を阻害するため、検出される放射活性のレベルは、試料中の抗原のレベルと反比例する。そのようなアッセイを、増大する既知の濃度の単離された抗原を使用する標準曲線を使用することによって定量することができる。
【0154】
当業者には明らかであるように、そのようなアッセイを改変して、放射活性標識の代わりに、酵素又は蛍光分子等の任意のリポーター分子を使用することができる。
【0155】
バイオセンサー又は光免疫センサーシステム
或いは、試料中のポドカリキシンのレベルを、バイオセンサー又は光免疫センサーシステムを使用して決定する。一般に、光バイオセンサーは、リガンド又は抗体の、標的ポリペプチドへの結合を、電気信号に定量的に変換する光学原理を使用するデバイスである。これらのシステムを、4つの大きなカテゴリー:反射技術;表面プラズモン共鳴;光ファイバー技術及び統合光デバイスに分類することができる。反射技術としては、偏光解析法、多重積分反射分光法、及び蛍光キャピラリーフィルデバイスが挙げられる。光ファイバー技術としては、エバネセント場蛍光、光ファイバー毛細管、及び光ファイバー蛍光センサーが挙げられる。統合光デバイスとしては、平面エバネセント場蛍光、入力グレーディング結合免疫センサー、Mach-Zehnder干渉計、Hartman干渉計及び位相差干渉計センサーが挙げられる。光免疫センサーのこれらの例は、Robins、1991に一般的に記載されている。これらのデバイスのより具体的な説明は、例えば、米国特許第4,810,658号;第4,978,503号;第5,186,897号;及びBradyら、1987に見出される。
【0156】
生体試料
当業者には明らかであるように、生体試料の型及びサイズは、使用される検出手段に依存するであろう。例えば、PCR等のアッセイを、単一の細胞を含む試料上で実施することができるが、細胞の集団が好ましい。更に、タンパク質に基づくアッセイには、抗原に基づくアッセイのための十分なタンパク質を提供する十分な細胞が必要である。
【0157】
本明細書で使用される場合、用語「試料」又は「生体試料」とは、対象から得られる任意の型の好適な材料を指す。この用語は、臨床試料、生体液(例えば、頸管粘液、膣液)、組織試料、生細胞を包含し、また、培養物中の細胞、細胞上清、それに由来する細胞溶解物も含む。試料を、供給源から直接的に取得されたように、又は少なくとも1工程の(部分)精製後に使用することができる。試料を、本開示の方法と干渉しない任意の媒体中で調製することができることが当業者には明らかであろう。典型的には、試料は、細胞若しくは組織を含む、及び/又は細胞若しくは組織を含む水性溶液若しくは生体液である。当業者であれば、選択及び予備処理の方法を知っているであろう。予備処理は、例えば、粘液を希釈することを含んでもよい。試料の処理は、濾過、蒸溜、分離、濃縮を含んでもよい。
【0158】
一例では、生体試料は、対象から予め誘導されたものである。したがって、一例では、任意の実施形態による本明細書に記載の方法は、生体試料を提供する工程を更に含む。
【0159】
一例では、任意の実施形態による本明細書に記載の方法は、例えば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA又はタンパク質等の試料からの抽出物を使用して実施される。
【0160】
一例では、生体試料は、内腔上皮細胞及び/又は腺上皮細胞を含む。例えば、生体試料は、内腔上皮細胞を含む。別の例では、生体試料は、腺上皮細胞を含む。
【0161】
リファレンス試料
前記説明から明らかであるように、本開示の一部のアッセイは、定量化のための好適なリファレンス試料又は対照を利用してもよい。
【0162】
本開示の方法における使用にとって好適なリファレンス試料は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、リファレンスは、内部リファレンス(すなわち、同じ対象に由来する)である、正常な個体に由来する、又は確立されたデータセット(例えば、年齢、試料の種類及び/又は周期の段階によって一致させた)であってもよい。
【0163】
一例では、リファレンスは、内部リファレンス又は試料である。例えば、リファレンスは、自己リファレンスである。一例では、内部リファレンスは、分析中の試料と同時に対象から取得される。別の例では、内部リファレンスは、分析中の試料よりも早い時点で対象から取得される。例えば、試料は、以前の周期から取得される。
【0164】
本明細書で使用される場合、用語「正常な個体」は、対象が不妊ではない、及び/又は現在妊娠していないことに基づいて選択されることを意味すると取られるべきである。
【0165】
一例では、リファレンスは、確立されたデータセットである。本開示における使用にとって好適な確立されたデータセットは、当業者には明らかであり、例えば、
・年齢、試料の種類及び/又は周期の段階によって一致させた、別の対象又は対象の集団に由来する子宮内膜上皮細胞を含むデータセット;
・細胞がポドカリキシン発現を誘導するように処理された、in vitroの子宮内膜上皮細胞を含むデータセット;並びに
・細胞がポドカリキシン発現を阻害するように処理された、in vitroの子宮内膜上皮細胞を含むデータセット
を含む。
【0166】
リファレンス試料の文脈における用語「子宮内膜上皮細胞」は、腺細胞及び/又は内腔細胞を含むことが当業者には明らかである。例えば、リファレンス試料は、腺細胞及び内腔細胞を含む。別の例では、リファレンス試料は、腺細胞を含む。更なる例では、リファレンス試料は、内腔細胞を含む。
【0167】
一例では、リファレンスは、アッセイには含まれない。その代わりに、好適なリファレンスは、予め生成された確立されたデータセットに由来する。次いで、試験試料のプロセッシング、分析及び/又はアッセイに由来するデータを、試料について得られたデータと比較する。
【0168】
子宮内膜上皮受容期のモニタリング
本開示が、対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングし、胚着床のための最適な子宮内膜上皮受容期を予測する方法であって、1つ又は複数の時点で対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法も提供することが当業者には明らかであろう。
【0169】
本明細書で使用される場合、子宮内膜上皮受容期に関する用語「モニタリング」は、予後の決定、薬物療法の選択、進行中の薬物療法の評価、転帰の予測、周期の進行後の、療法に対する応答の決定(合併症の診断を含む)、経時的な患者の月経周期に関する情報の提供、又は療法から利益を得る可能性が最も高い患者の選択を含んでもよい。
【0170】
本明細書で使用される用語「最適」とは、胚着床のための月経周期中の最も好ましい期間を指す。
【0171】
一例では、対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングする方法は、周期中の複数の時点でポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む。例えば、ポドカリキシンのレベルは、卵巣周期中の時点で、及び/又は子宮周期中の時点で決定される。一例では、ポドカリキシンのレベルは、卵胞期、排卵期及び/又は黄体期の間に決定される。更なる例では、ポドカリキシンのレベルは、月経、増殖期及び/又は分泌期の間に決定される。更に、ポドカリキシンのレベルを、周期の単一の期中の複数の時点で決定してもよい。例えば、ポドカリキシンのレベルは、子宮周期の分泌期中の複数の時点で決定される。
【0172】
上で考察された通り、当業者であれば、ヒトにおける平均月経周期は28日であるが、これは変動し得ることを理解するであろう。
【0173】
例えば、卵巣周期のそれぞれの期の平均持続期間は、
・卵胞期:1~14日目;
・黄体期:15~28日目
である。
【0174】
例えば、子宮周期のそれぞれの期の平均持続期間は、
・月経:1~4日目;
・増殖期:5~14日目;
・分泌期:15~28日目
である。
【0175】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、より早い時点で対象のポドカリキシンのレベルと比較される。本開示の文脈における「より早い時点」と述べる場合は、任意の以前の時点での対象の別の試料中で決定されたレベルを指す。例えば、より早い時点は、分析中の試料と同じ周期中の時点又は以前の周期中の同じ時点を指してもよい。
【0176】
当業者には明らかであるように、周期及び/又は複数の周期の持続期間にわたって対象のポドカリキシンのレベルをモニタリングする能力は、胚着床のための最適な子宮内膜上皮受容期を予測するのを支援するであろう。例えば、ポドカリキシンのレベルのモニタリングは、対象の第1の周期において決定され、胚は、対象の第2の周期に移植される。
【0177】
不妊症の診断及び予後診断
本明細書に開示される通り、本開示の発明者らは、子宮内膜上皮受容期におけるポドカリキシンの役割を証明した。本明細書に開示される方法は、不妊症及び着床不全の根本原因を同定するのに有用であろう。例えば、本開示の方法は、対象における不妊症の診断及び予後診断のためのスクリーニング試験として有用である。
【0178】
したがって、本開示は、例えば、対象における不妊症を検出する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法を提供する。
【0179】
本明細書で使用される用語「不妊症」とは、規則的な避妊なしの性交渉の12カ月以上後でも臨床的妊娠を達成することができないことによって定義される生殖系の疾患を指す。
【0180】
本開示はまた、対象における不妊症を診断及び予後診断する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む、方法も提供する。
【0181】
本明細書で使用される場合、用語「診断」とは、対象における不妊症の同定を指す。
【0182】
本明細書で使用される場合、不妊症に関する用語「予後診断」とは、不妊症の診断の発生、進行及び/又は転帰の可能性又は予想を指す。
【0183】
一例では、対象は、不妊症のリスクがある。
【0184】
本明細書で使用される場合、不妊症の「リスクがある」対象は、検出可能な不妊症又は不妊症の症状を有しても、有しなくてもよい。「リスクがある」は、対象が、当業界で公知及び/又は本明細書に記載のように、疾患又は状態の発生と相関する測定可能なパラメーターである、1つ又は複数の危険因子を有することを意味する。
【0185】
対象は、彼女が対照集団よりも不妊症を発症するリスクが高い場合にリスクがある。対照集団は、不妊症に罹患していない、又は不妊症の家族歴を有しない一般的な集団(例えば、年齢、性別、人種及び/又は民族によって一致させた)から無作為に選択される1又は複数の対象を含んでもよい。対象は、不妊症と関連する「危険因子」がその対象と関連することがわかった場合、リスクがあると考えられる。危険因子は、例えば、対象の集団に関する統計的又は疫学的研究による、所与の障害と関連する任意の活性、形質、事象又は特性を含んでもよい。かくして、原因となっている危険因子を同定する試験が対象を特異的に含まなかったとしても、対象をリスクがあると分類することができる。
【0186】
一例では、本開示の方法は、不妊症の症状の開始の前又は後に実施される。不妊症の症状は、当業者には明らかであり、例えば、
・年齢。30代後半以降の女性は、一般的には、20代前半の女性よりも生殖能力が低い;
・子宮内膜症の病歴;
・子宮腺筋症の病歴;
・糖尿病、狼瘡、関節炎、高血圧、及び喘息等の慢性疾患;
・ホルモン不均衡;
・喫煙、アルコール摂取、及び職場での危険物又は毒素への曝露を含む環境因子;
・体脂肪過多又は体脂肪過少;
・凍結外科手術又は錐体生検で処置された子宮頸部細胞診の異常;
・性感染症;
・ファローピウス管の疾患;
・複数回の流産;
・子宮筋腫;
・骨盤手術;並びに
・誕生時に存在する、又は以後の人生において起こる子宮の異常
が挙げられる。
【0187】
上記のように、対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングする方法は、対象における不妊症の診断及び予後診断にとって有用であろう。一例では、対象における不妊症の診断及び予後診断の方法は、周期中の複数の時点でポドカリキシンのレベルを決定する工程を含む。例えば、ポドカリキシンのレベルは、卵巣周期中の時点で、及び/又は子宮周期中の時点で決定される。一例では、ポドカリキシンのレベルは、卵胞期、排卵期及び/又は黄体期の間に決定される。更なる例では、ポドカリキシンのレベルは、月経、増殖期及び/又は分泌期の間に決定される。更に、ポドカリキシンのレベルを、周期の単一の期中の複数の時点で決定してもよい。例えば、ポドカリキシンのレベルは、子宮周期の分泌期中の複数の時点で決定される。
【0188】
医用イメージング
ポドカリキシンのレベルをモニタリングするための本明細書に記載の方法に加えて、in vivoでポドカリキシンをモニタリングする方法を使用することができる。例えば、ポドカリキシンに結合する化合物を、in vivoでイメージングする方法において使用することができる。特に、ポドカリキシンに結合し、造影剤を含む検出可能な標識にコンジュゲートされる、結合される、及び/又はそれでコーティングされる化合物を、公知の医用イメージング技術において使用することができる。
【0189】
in vivoでポドカリキシンをイメージングするために、検出可能な標識は、イメージングによって検出可能であるシグナルを放出することができる任意の分子又は薬剤であってもよい。例えば、検出可能な標識は、タンパク質、放射性同位体、フルオロフォア、可視光放出フルオロフォア、赤外線放出フルオロフォア、金属、強磁性物質、電磁気放出物質、特定のMR分光学的特徴を有する物質、X線吸収若しくは反射物質、又は音波変更物質であってもよい。
【0190】
イメージング法の例としては、MRI、MR分光法、ラジオグラフィー、CT、超音波、平面ガンマカメライメージング、単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、他の核医学に基づくイメージング、可視光を使用する光イメージング、ルシフェラーゼを使用する光イメージング、フルオロフォアを使用する光イメージング、他の光イメージング、近赤外線を使用するイメージング、又は赤外線を使用するイメージングが挙げられる。
【0191】
イメージングのための様々な技術が、当業者には公知である、及び/又は本明細書に記載される。これらの技術はいずれも、本開示のイメージング法の文脈で適用して、ポドカリキシンに結合する化合物にコンジュゲートされた検出可能な標識又は造影剤からのシグナルを測定することができる。例えば、光イメージングは、広く使用されているイメージングモダリティである。例としては、細胞成分の光標識化、並びに蛍光眼底血管造影及びインドシアニングリーン血管造影等の血管造影が挙げられる。光イメージング剤の例としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーンの誘導体、エオシン、エリトリロシン(erytlirosin)、テキサスレッド、テキサスレッドの誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー色素、ダポキシル色素が挙げられる。
【0192】
一例では、ポドカリキシンのレベルは、超音波を使用して検出される。例えば、検出可能な標識は、超音波造影剤である。好適な超音波造影剤は、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、超音波造影剤は、マイクロバブル放出剤(例えば、Willmannら、2017;Yehら、2015;Abou-Elkacemら、2015;Tsurutaら、2014に記載されている)である。一例では、ポドカリキシンを検出する化合物は、マイクロバブルにカップリングされる。様々なカップリング法が当業者には明らかであり、例えば、共有及び非共有カップリングが挙げられる。マイクロバブルの対象への投与後、マイクロバブルとその標的(すなわち、子宮内膜上皮細胞)との接触は、超音波音場の外部的適用によって増強される。超音波音場によってその共鳴周波数の近くで駆動されるマイクロバブルは、Bjerknes力としても知られる、正味の一次及び二次超音波放射圧を経験する。超音波は、マイクロバブルを、超音波伝播の方向に有意な距離(最大でミリメートル)にわたって動かし、マイクロバブル間の引力を引き起こし、凝集体形成をもたらすことができる。かくして、マイクロバブルを、標的上に集中させることができる。
【0193】
in vivoで、並びに周期及び/又は複数の周期の持続期間にわたって、対象中のポドカリキシンのレベルをモニタリングする能力は、対象における不妊症の診断の助けとなり、治療的予後の確立を可能にするであろう。
【0194】
子宮内膜上皮受容期の改善及び着床不全の処置
本発明者らはまた、推定受容期の間の子宮内膜内腔上皮中でのポドカリキシンの持続的発現が着床不全と関連することも示した。
【0195】
現在、IVF実務では、胚移植の前に、子宮内膜を、プロゲステロンで刺激する。しかしながら、子宮内膜上皮受容期に対するホルモン製剤の有効性を評価するためのマーカーが存在しないため、投与前の薬物の種類、用量及び/又は経路の最適化が存在しない。
【0196】
本発明者らは、プロゲステロンが、受容期発達のために特異的に内腔上皮中のポドカリキシンを下方調節することを示した。
【0197】
更に、本発明者らは、マイクロRNAであるmiR-145及びmiR-199が、子宮内膜上皮受容期の確立の間のポドカリキシンの抑制におけるプロゲステロンの下流の調節因子であることを示した。
【0198】
したがって、本発明者らによる知見は、生殖補助医療技術のための子宮内膜プロトコールを最適化するための機能的なバイオマーカーとしてポドカリキシンを使用するための基礎を提供する。例えば、本発明者らによる知見はまた、着床不全を処置するためにポドカリキシンを標的化する方法のための基礎も提供する。
【0199】
本開示の一例では、本開示の任意の例による本明細書に記載の方法は、ポドカリキシンの発現及び/又はレベルを低下させる工程を含む。
【0200】
例えば、本開示は、対象における胚着床のための子宮内膜上皮受容期を改善する方法であって、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び必要に応じて、細胞中のポドカリキシンのレベルに基づいて、対象に、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに十分な量の化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0201】
例えば、対象は、細胞中のポドカリキシンのレベルに基づいて受容期前の状態にあってもよく、対象への化合物の投与は、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに十分なものであり、それにより、対象を受容期状態に移行させる。
【0202】
これらの知見はまた、胚着床のための子宮内膜上皮受容期の改善に対する化合物の有効性を評価する方法のための基礎も提供する。
【0203】
本明細書で使用される場合、用語「化合物」は、本明細書に記載の任意の方法における使用にとって好適である任意の薬剤を指すと理解されるべきである。例えば、本開示における使用にとって好適な化合物は、子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを変更する(例えば、レベルを低下させる)任意の薬剤を指す。本開示における使用にとって好適な化合物は、当業者には明らかであり、例えば、子宮内膜内腔上皮細胞中での核酸のポドカリキシン転写又は翻訳を下方調節する任意の薬剤が挙げられる。例えば、好適な化合物としては、限定されるものではないが、ホルモン製剤及び核酸が挙げられる。
【0204】
ホルモン製剤
本明細書に記載の任意の方法の一例では、化合物は、ホルモン製剤である。本開示における使用にとって好適な様々なホルモン製剤は、当業者には明らかであり、例えば、プロゲステロン、プロゲストゲン並びにそのアナログ及び組合せが挙げられる。
【0205】
核酸
本明細書に記載の任意の方法の一例では、化合物は、核酸である。例えば、核酸は、アンチセンスポリヌクレオチド、触媒核酸、干渉RNA、siRNA又はマイクロRNAである。
【0206】
アンチセンス核酸
用語「アンチセンス核酸」は、本開示の任意の例において本明細書に記載のポリペプチドをコードする特異的mRNA分子の少なくとも一部と相補的であり、mRNA翻訳等の転写後事象を阻害することができる、DNA若しくはRNA若しくはその誘導体(例えば、LNA若しくはPNA)、又はその組合せを意味すると取られるべきである。アンチセンス法の使用は、当業界で公知である(例えば、Hartmann 1999を参照されたい)。
【0207】
本開示のアンチセンス核酸は、生理的条件下で標的核酸にハイブリダイズするであろう。アンチセンス核酸は、構造遺伝子若しくはコード領域又は遺伝子発現若しくはスプライシングに関する制御を行う配列に対応する配列を含む。例えば、アンチセンス核酸は、ポドカリキシンをコードする核酸の標的コード領域、又は5'非翻訳領域(UTR)若しくは3'-UTR又はこれらの組合せに対応してもよい。それは、イントロン配列と部分的に相補的であってもよく、転写の間又は後に、例えば、標的遺伝子のエクソン配列にのみスプライシングされてもよい。アンチセンス配列の長さは、少なくとも19個の連続するヌクレオチド、例えば、ポドカリキシンをコードする核酸の少なくとも100、200、500又は1000個のヌクレオチド等の、少なくとも50個のヌクレオチドであるべきである。遺伝子転写物全体と相補的な完全長配列を使用してもよい。その長さは、100~2000ヌクレオチドであってもよい。標的転写物に対するアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%、例えば、95~100%であるべきである。
【0208】
触媒核酸
用語「触媒核酸」とは、異なる基質を特異的に認識し、この基質の化学的改変を触媒する、DNA分子若しくはDNA含有分子(当業界では「デオキシリボザイム」若しくは「DNAザイム」としても知られる)又はRNA若しくはRNA含有分子(「リボザイム」若しくは「RNAザイム」としても知られる)を指す。触媒核酸中の核酸塩基は、塩基A、C、G、T(及びRNAについてはU)であってもよい。
【0209】
典型的には、触媒核酸は、標的核酸の特異的認識のためのアンチセンス配列、及び核酸切断酵素活性(本明細書では、「触媒ドメイン」とも称される)を含有する。本開示において有用であるリボザイムの種類は、ハンマーヘッドリボザイム及びヘアピンリボザイムである。
【0210】
RNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の産生を特異的に阻害するのに有用である。理論によって限定されるものではないが、この技術は、目的の遺伝子のmRNA又はその一部、この場合、ポドカリキシンをコードするmRNAと本質的に同一である配列を含有するdsRNA分子の存在に依拠する。便利には、dsRNAを、センス及びアンチセンス配列が、センス配列とアンチセンス配列とがハイブリダイズして非関連配列とdsRNA分子を形成し、ループ構造を形成するのを可能にする非関連配列によって挟まれた、組換えベクター宿主細胞中の単一のプロモーターから産生させることができる。本開示のための好適なdsRNA分子の設計及び生産は、特に、WO99/32619、WO99/53050、WO99/49029及びWO01/34815を考慮して、当業者の能力の範囲内にある。
【0211】
ハイブリダイズするセンス及びアンチセンス配列の長さは、少なくとも30又は50ヌクレオチド、例えば、少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチド等の、それぞれ少なくとも19個の連続するヌクレオチドであるべきである。遺伝子転写物全体と一致する完全長配列を使用してもよい。その長さは、100~2000ヌクレオチドであってもよい。標的転写物に対するセンス及びアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも85%、例えば、95~100%等の少なくとも90%であるべきである。
【0212】
例示的な低分子干渉RNA(「siRNA」)分子は、標的mRNAの約19~21個の連続するヌクレオチドと同一であるヌクレオチド配列を含む。例えば、siRNA配列は、ジヌクレオチドAAから始まり、約30~70%(例えば、40~60%、例えば、約45%~55%等の30~60%)のGC含量を含み、例えば、標準的なBLAST検索によって決定された場合、それを導入しようとする哺乳動物のゲノム中の標的以外の任意のヌクレオチド配列に対して高いパーセンテージの同一性を有しない。ポドカリキシンの発現を低下させる例示的なsiRNAは、Santa Cruz Biotechnology社から商業的に入手可能である。
【0213】
ポドカリキシンの発現を低下させる短ヘアピンRNA(shRNA)も、当業界で公知であり、Santa Cruz Biotechnology社から商業的に入手可能である。
【0214】
マイクロRNA(miRNA又はmiR)分子は、18~25ヌクレオチド長を含み、ダイサー酵素によるプレmiRNAの切断の生成物である。「プレmiRNA」又は「プレmiR」は、ドローシャ(Drosha)として知られる二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼによるプリmiRの切断の生成物である、ヘアピン構造を有する非コードRNAを意味する。ポドカリキシン発現を低下させる例示的なマイクロRNAは、当業者には明らかである、及び/又は本明細書に記載される。例えば、核酸は、miR-199又はmiR-145等の、マイクロRNAである。
【0215】
投与量及び投与
一例では、方法は、対象の子宮内膜上皮細胞中のポドカリキシンのレベルを決定する工程、及び該細胞中のポドカリキシンのレベルに基づいて、該細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに十分な量の化合物を投与する工程を含む。例えば、対象中のポドカリキシンのレベルに基づいて、用量、化合物の種類及び/又は経路のうちの1つ又は複数又は全部を改変する。
【0216】
細胞中のポドカリキシンのレベルを低下させるのに必要とされる化合物の量又は用量は、当業者には明らかであろう。投与量は、有害な副作用を引き起こすほど大きいものであってはならない。一般的には、投与量は、患者における年齢、状態、性別及び疾患の程度と共に変化し、当業者であれば決定することができる。個々の医師であれば、投与量を、いずれかの合併症の事象において調整することができる。
【0217】
投与量は、1日又は数日にわたって、毎日の1又は複数の用量の投与において、約0.1mg/kg~約300mg/kg、例えば、約0.5mg/kg~約20mg/kg等の、約0.2mg/kg~約200mg/kgで変化してもよい。
【0218】
一部の例では、化合物は、その後の用量(維持用量)よりも高い初期(又は負荷)用量で投与される。
【0219】
一部の例では、化合物が、その後の用量において使用されるものよりも低い用量で最初に投与される、用量漸増レジメンが使用される。
【0220】
少なくとも約2回の曝露、例えば、約2~60回の曝露、より具体的には、約2~40回の曝露、最も具体的には、約2~20回の曝露等の、1回より多い曝露又は用量のセットを投与することによって、ポドカリキシンのレベルに基づいて対象を化合物で再処置することができる。
【0221】
本開示の方法による化合物の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的又は予防的であるかどうか、及び当業者には公知の他の因子に応じて、連続的又は間欠的であってもよい。投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってよいか、又は例えば、状態の発症の間若しくは後のいずれかに、一連の間隔を空けた用量であってもよい。
【0222】
上記のように、対象における子宮内膜上皮受容期をモニタリングする方法は、子宮内膜上皮受容期の改善における化合物の有効性をモニタリング及び決定するのに有用であり得る。化合物の投与中の対象における子宮内膜上皮受容期のモニタリングも、対象のための処置レジメンの最適化を補助するであろう。例えば、ポドカリキシンのレベルは、化合物の投与の前及び/又は後に決定され、投与される化合物の用量、経路及び/又は型はそれに応じて調整される。
【0223】
化合物の用量、経路及び/又は型の最適化は、対象における子宮内膜上皮受容期の改善を補助し、着床の確率を最大化するであろう。
【実施例
【0224】
(実施例1)
材料及び方法
一次子宮内膜上皮細胞の単離のためのヒト子宮内膜組織
Human Ethics Committee at Monash Medical Centre(Melbourne, Australia)から倫理審査による承認を取得し、全ての患者にインフォームドコンセント文書を提供した。子宮内膜生検を、子宮鏡検査、子宮内膜掻爬術又は卵管疎通性の評価を受けている女性から取得した。月経周期の段階を、組織の日常的な組織学的日付によって確認した。
【0225】
一次ヒト子宮内膜上皮細胞(HEEC)の単離
増殖期(6~14日目)からの組織を、Dulbeccoの改変Eagle培地/F12(DMEM/F12、Thermo Fisher Scientific社、MA、USA)中に収集し、細胞を、収集の24時間以内に単離した。細胞を、以前に記載されたように(Marwoodら、2009)、酵素的消化及び濾過によって単離した。簡単に述べると、子宮内膜組織試料を、37℃の水浴中、2×20分にわたって一定に振とうしながら、クロストリジウム・ヒストリティカム(Clostridium histolyticum)に由来するコラゲナーゼ(7.5U/ml;Sigma社)及びDNase 1(2000U/ml;Roche社、Castle Hill、NSW、Australia)で消化した。消化反応を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Bovogen Biologicals Pty Ltd社、AUS)及び1%抗生物質-抗真菌剤(Sigma社)を添加したDMEM/F12を含有する完全培地でクエンチし、45μmのナイロンメッシュを通して濾過した。メッシュ上に保持されたヒト子宮内膜上皮細胞(HEEC)を、10mlのPBSでリンスして新しいチューブに入れ、RTで5分、1000rpmで遠心分離した;細胞ペレットを、10%FBS及び1%抗生物質-抗真菌剤を添加したDMEM/F12中に再懸濁し、24ウェルプレート中に播種し、加湿したインキュベーター中、5%CO2下、37℃でインキュベートした。
【0226】
次の日、付着しなかった細胞及び赤血球を除去し、90~95%の集密度に達するまで3日毎に新鮮な培地を付着したHEECに補充した。次いで、HEECを使用して、PCXのホルモン調節を精査した。
【0227】
一次HEECからの細胞膜タンパク質の単離
上記のように単離されたが、更に培養していない一次HEECを、氷冷溶解緩衝剤[プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)を含有する、25mMイミダゾール及び100mM NaCl pH7.0]で溶解し、27.5ゲージ針及びシリンジを7回通過させ、4℃で5分、15,000gで遠心分離した。上清を、氷上で1時間(15分毎にボルテックスしながら)、100mM Na2CO3と共にインキュベートし、4℃で60分、100,000gで遠心分離して、細胞膜を含有するペレットを収集した。
【0228】
細胞膜タンパク質(100μg)を、フィルター支援試料調製(FASP)カラム(Expendeon Inc.社、CA)を使用してプロセッシングした。FASPカラムからのトリプシンペプチドを、遠心分離によって収集し、質量分析のためにC18StageTips上で脱塩した。
【0229】
質量分析
抽出されたペプチドを注入し、95%の溶媒A(milliQ水中の0.1%ギ酸)から100%の溶媒B(0.1%ギ酸、80%アセトニトリル(Mallinckrodt Baker社、Center Valley、PA)、及び20%milliQ水)まで0.4μL/分の流速に設定された線形60分勾配と共にnanoAcquity C18 150×0.075mm I.D.カラム(Waters社)を使用するナノ超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システム(Waters nanoAcquity社、Waters、Milford、MA)上でのナノフロー逆相液体クロマトグラフィーによって分離した。ナノUPLCを、フルスキャン(70000解像度)及び単価種と共に高エネルギー衝突解離を使用する断片化のために選択された上位10種の多価種を獲得するように設定されたナノエレクトロスプレーイオン源(Thermo Fisher Scientific社、Bremen、Germany)を装備したQ-Exactive質量分析計にオンラインで連結した。断片イオンを、17500に設定した解像度で、1e5の強度に設定したイオン閾値で分析した。活性化時間は30msに設定し、正規化された衝突エネルギーを±20%でステップ化し、26に設定した。フルスキャンMS及び高解像度MS/MSスペクトルからなる生ファイルを、Maxquantアルゴリズム(バージョン1.4)を使用して検索した。トリプシンを2つの誤切断に設定し、ファイルを、酸化メチオニンについて設定された可変的改変を用いて検索し、カルバミドメチルCys残基の形態で改変を固定した(それぞれ、40及び17に設定された、改変ペプチドに関するカットオフスコア及びデルタスコアを用いるデフォルトのMaxquant設定を使用する)。また、全てのMS/MS試料を、Mascot(Matrix Science社、London、UK;バージョン2.4.1)を使用して分析した。Mascotを、0.040Daの断片イオン質量許容度及び20PPMの親イオン許容度を用いて検索した。システインのカルバミドメチルを、固定された改変としてMascot中で特定した。N末端のメチオニン及びアセチルの酸化を、可変的改変としてMascot中で特定した。
【0230】
次いで、報告されたペプチドを、Scaffold(バージョンScaffold4.4.1.1、Proteome Software Inc.社、Portland、OR)中で分析した。ペプチドを、Scaffold Local FDRアルゴリズムによって95%よりも高い確率で確立することができた場合、ペプチドの同定を許容した。タンパク質を、90%よりも高い確率で確立することができ、それらがそれぞれの試料に由来する少なくとも1つの同定されたペプチドを含有していた場合、タンパク質の同定を許容した。
【0231】
一次HEECの培養及びホルモン処置
集密なHEECを、加湿インキュベーター中、5%CO2下、37℃で5時間、12ウェルプレート又はガラスカバースリップ中に播種した後、10%活性炭処理済みFBSを添加したDMEM/F12を含有する完全培地中、10nMの17β-エストラジオール(E)(Sigma社)と共に一晩、プライミングした。次の日、Eプライミング培地を除去し、細胞に、それぞれ、E及びE+Pと命名した、1μMのメドロキシプロゲストロン-17-酢酸エステル(P)(Sigma社)を含まない、又は含む、10nMのEを含有する新鮮な完全培地を補充した。細胞を、48時間、72時間及び96時間の時間経過にわたってE又はE+Pで処理した。それぞれの時点の終わりに、細胞を、RNA単離のためにPBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、ペレット化し、簡易凍結したか、又はタンパク質単離のために氷冷PBSで擦り取るか、又は免疫蛍光のために氷冷100%メタノール若しくは4%(W/v)パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した。
【0232】
PCXタンパク質の局在化のための正常で健康な女性からの子宮内膜組織
University of North Carolina及びGreenville Hospital SystemでのEthics Committee for the Protection of Human Subjectsに従って、子宮内膜組織を取得した。25~35日の月経間隔を有する月経周期の異なる段階で、正常で健康な女性から生検を採取した(n=22)。除外基準は、18歳未満又は35歳を超える年齢、29を超える体格指数、この1年以内のPAP検査異常、妊娠を試みている、又は現在妊娠している、静的に活発である、及びコンドームを使用しない、子宮内デバイスが所定の位置にある、妊娠損失の病歴、子宮筋腫等の子宮異常、授乳、子宮内膜の形態に影響する薬剤、既知の頸管狭窄、ベタジンに対するアレルギー並びに基礎内科疾患を含む。周期日を、月経の最初の日によって決定した。尿中LHを、家庭用検査キット(Ovuquick One Step、Conception Technologies社、San Diego、CA)によって決定した。子宮内膜試料を、報告された周期日及びLH急増(LH+)後の日数によって分類した。周期の日を、ヘマトキシン及びエオシンによっても確認した。月経周期の増殖期(n=5)、分泌初期(n=6、LH+4~5)、分泌中期(n=6、LH+7~10)及び分泌後期(n=5、LH+12~13)から、子宮内膜生検を取得した。全ての子宮内膜生検を、ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋した。
【0233】
ヒト子宮内膜生検中のPCXの免疫組織学的局在化
子宮内膜切片(5μm)を、ヒストゾル中で脱パラフィン化し、再水和し、マイクロ波照射(0.01Mクエン酸緩衝剤pH6.0中、高出力で10分)によって抗原を回収した。内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中の3%H2O2で10分クエンチし、0.1%Tween 20を含有する高塩TBS(0.3M NaCl、0.05M Tris塩基pH7.6)中の15%ウマ血清で20分、非特異的結合をブロックした。切片を、0.1%Tween 20を含有する高塩TBS中の10%ウシ胎仔血清中、一次PCX抗体(Ab2、詳細はP42、2μg/ml)と共に37℃で1時間インキュベートした。マウスIgG(Dako)が、一次抗体の代わりに陰性対照になった。切片を洗浄し、適切なビオチン化された二次抗体(Vector laboratories, Inc.社、USA)を、室温で30分適用した。室温で30分にわたってStreptABC/HRP(Dako社)を用いてシグナルを増幅し、ジアミノベンジジン(Dako社)で可視化した。細胞核をヘマトキシリン(青色)で染色し、切片にDPX試薬をマウントした。
【0234】
子宮内膜組織中でのPCX染色の定量化
画像分析ソフトウェアFiji 1.51o(National Institutes of Health、Bethesda、MD)を使用して、スライドを盲検的に分析した。切片毎に、LE、GE及びBVの3つの代表的な画像を撮影した。それぞれの画像を、ローリングボールアルゴリズムを使用するバックグラウンド減算並びに画像を3つのパネル:ヘマトキシリン、DAB及びバックグラウンドに分離する、ビルトインベクターヘマトキシリン及びジアミノベンジジン(HDAB)プラグインを使用する「カラーデコンボリューション」によって分析した。DAPパネル(PCX染色を示す)上で、フリーハンドツールを用いて目的の領域を選択し、その濃淡値を測定した。切片あたりの平均濃淡値を、3つの代表的な画像から算出し、光密度単位[ODU=log10(255/平均濃淡値)]に変換し、これを使用して、PCX染色強度を表した。
【0235】
ウェスタンブロット分析
細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche社)を含有する50mM Tris-HCl pH7.4、150mM NaCl、1mM EGTA、2mM EDTA、1%Triton Xを用いて溶解した。溶解物をドライアイス上で10分凍結した後、更に5分、室温で解凍した。この凍結-解凍サイクルを、3回繰り返した。次いで、試料を、4℃で10分、14000rpmで遠心分離し、タンパク質を含有する上清を、10%SDS-ポリアクリルアミドゲル上で分離し、ポリビニルジフルオリド膜(GE Healthcare社、Rydalmere、NSW、Australia)上に転写した。膜を、0.02%Tween 20を含むTris緩衝化塩水[10mmol/L Tris(pH7.5)及び0.14mol/L NaCl]中の5%BSAでブロックした。3種のPCX抗体を、ウェスタンブロット分析のために使用した: Ab1は、高グリコシル化ムチン領域のアミノ酸23~427に対して生じさせた(AF1658、R&D Systems社、Minneapolis、MN);Ab2は、細胞外ドメインのアミノ酸251~427の一部に対して生じさせた(3D3、Santa Cruz社、Dallas、TX)(Kershawら、1997);Ab3は、PCXの細胞外、膜貫通及び細胞内部分のアミノ酸300~500に対して生じさせた(EPR9518、Abcam社、Cambridge、UK)(Kershawら、1997)。適切な二次抗体は、ヤギIgG-HRP、マウスIgG-HRP又はウサギIgG-HRP(Dako社、Victoria、Australia)を含んでいた。バンドを、Lumi-lightエンハンサー溶液(Roche社)を使用して可視化した。膜を、ローディング対照のためにβ-アクチン(Cell Signaling Technology社、Danvers、MA)について探査した。PCXの細胞外部分を含有する組換えヒトPCX(rPCX、アミノ酸23~427、R&D Systems社)及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を陽性対照として用いた。この実験を、4回繰り返した。
【0236】
イシカワ細胞中でのPCXの一過的ノックダウン
イシカワ細胞(独立行政法人国立病院機構、霞ヶ浦医療センター、茨城県のMasato Nishida教授による素晴らしい贈り物)を、10%(v/v)FBS、1%抗生物質-抗真菌剤及び1%L-グルタミンを添加した改変Eagle培地(MEM、Life Technologies社、Carlsbad、CA)を含有する完全培地中、6ウェルプレート中で5.6×105細胞/ウェルで一晩培養した。次の日、トランスフェクションのために細胞にOpti-MEM培地を補充した。PCX-unique 27mer siRNA二重鎖(SR303611B)及びユニバーサルスクランブル化陰性対照siRNA二重鎖(SR30004)を、Origene社(Rockville, MD)から取得した。対照又はPCX siRNA(20μMストック)を含有する1マイクロリットルのマスターミックスを、250μlのOpti-MEM培地中に添加し、4μlのリポフェクタミントランスフェクション試薬を、250μlのOpti-MEM培地中に希釈した後、それらを一緒に混合し、ウェルに添加した。37℃で24時間インキュベートした後、細胞を完全培地に変更し、更に24時間培養し、PCXノックダウン(KD)をqRT-PCT及びウェスタンブロットによって確認した。
【0237】
イシカワ細胞中でのPCXの安定な過剰発現
ヒトPCXオープンリーディングの発現構築物(RC210816)及び空のpCMV6(対照プラスミド)を、Origene社から購入した。イシカワ細胞を、10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤及び1%L-グルタミンを添加したMEM培地中、6ウェルプレート上で集密まで増殖させた後、PBSで洗浄し、以前に記載されたように(Hengら、2015)、トランスフェクションのために次の日にOpti-MEM培地を補充した。Opti-MEM培地(Life Technologies社)中、1:3の比のプラスミドDNA(PCX又は対照を含有する)と、リポフェクタミントランスフェクション試薬(Life Technologies社)とのマスターミックスを、ウェル(1μgのDNA/ウェル)に添加し、加湿インキュベーター中、5%CO2下、37℃で24時間インキュベートした。細胞に、新鮮なOpti-MEM培地を補充し、更に24時間培養した後、2%ゲネチシンを含む完全培地を含有する10cmのペトリ皿に移した。約90%の集密度に達した後、細胞をトリプシン処理し、25cmのペトリ皿に非常にまばらに播種し(約20,000細胞/皿)、個々のコロニーが形成されるまで培養した。次いで、それそれのコロニーをトリプシン処理し、96ウェルプレートに移した。よく増殖したコロニーを、48、24、12及び6ウェルプレートのより大きなウェルに連続的にスケールアップした。最終的なコロニーを、qRT-PCR及びウェスタンブロット分析によって確認した。
【0238】
qRT-PCRによるイシカワ細胞中でのPCXの確認
全RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen社、Hilden、Germany)を使用して一次HEEC、HUVEC及びイシカワ細胞(PCX-OE、PCX-KD及び対照)から抽出し、TURBO DNAフリーキット(Invitrogen社、Vilnius、Lithuania)で処理した。全RNA(500ng)を、製造業者の使用説明書に従って、Superscript III First-Strand Synthesis System(Invitrogen社、Carlsbad、CA)を使用して逆転写させた。qRT-PCRを、PCXについて上記のように実施した。定量的PCRを、Power SYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems社、Warrington、UK)及びTable 1(表2)に列挙されたプライマーを使用して、Applied Biosystems 7900HT fast real-time PCRシステム上で実施した。
【0239】
【表2】
【0240】
一次HEEC中でのPCXの免疫蛍光分析
ガラスカバースリップ上で増殖させた細胞を、氷冷メタノールで10分固定し、PBSで3回リンスした。細胞を、PBS中の0.1%Triton-X100で5分透過処理し、PBS中の15%ウマ血清及び2%ヒト血清で30分ブロックした。細胞を、5%ウマ血清/PBS中、4℃で一晩、Ab1(6μg/ml)と共にインキュベートした。次の日、細胞を、0.2%Tween 20を含有するPBSで5分、3回洗浄し、RTで1時間、ウマ抗ヤギビオチン化二次抗体(10μg/ml、Vector Laboratories社、Peterborough、UK)と共にインキュベートした後、RTで2時間、ストレプトアビジンコンジュゲート化Alexa Fluor 488(10μg/ml、Invitrogen社、Carlsbad、CA)と共にインキュベートした。核を、DAPI(0.5μg/ml、Sigma社)で染色した。シグナルを、蛍光顕微鏡(オリンパス光学工業社、東京)によって可視化した。
【0241】
フィブロネクチンへのイシカワ細胞の接着の分析
フィブロネクチンへのイシカワ細胞の接着の分析を、Hengら、2015に以前に記載されたように実施した。
【0242】
簡単に述べると、96ウェルプレートを、10μg/mlのフィブロネクチン(Corning Life Sciences社、Tewksbury、MA)で被覆し、イシカワ細胞(PCX-OE、PCX-KD又は対照)を、フィブロネクチン被覆ウェルに添加し(2×104細胞/ウェル)、37℃で90分インキュベートした。非接着細胞を除去し、ウェルをPBS+(Ca2+Mg2+を含有する)で穏やかに洗浄し、RTで5分、撹拌せずに10%エタノール中の0.2%クリスタルバイオレットと共にインキュベートした。クリスタルバイオレット溶液を除去した後、それぞれのウェルをPBS+で3回洗浄して、残存する全てのクリスタルバイオレット染料を除去した。結合した細胞(紫色に染色された)を、RTで250rpmでロッカー上で5分、可溶化干渉剤(0.1M NaH2PO4、pH4.5と50%エタノールとの50/50ミックス)で可溶化した。560nmでの吸光度を、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer社、Waltham、MA)を用いて測定した。培地のみを含むウェルを、陰性対照として含ませた。
【0243】
妊娠末期胎盤からの栄養膜絨毛の収集及び単離
Monash Health Human Research Ethics Committeeから倫理審査による承認を取得し、全ての対象は、単胎妊娠の正常出産予定日の選択的帝王切開からの胎盤試料の収集に関するインフォームドコンセント文書を提供した。
【0244】
栄養膜を、以前に記載されたように(Wallaceら、2017)単離した。簡単に述べると、胎盤葉を切り出し、ハンクス平衡塩溶液で洗浄し、絨毛(約25g)を胎盤葉から擦り取り、37℃の振とう水浴中で15分、DMEM低グルコース、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシン、0.25%トリプシン、0.25%グレードIIジスパーゼ、0.1mg/mlのDNase 1を含有する緩衝剤で消化した。3サイクルの消化後、細胞懸濁液をPercoll勾配遠心分離によって分離し、栄養膜細胞を収集し、10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤を含むDMEM中、8%O2下で一晩、37℃で培養した。
【0245】
一次栄養膜スフェロイドの調製
AggreWellTM 400プレート(Stemcell Technologies社、Vancouver、Canada)を、2mlの抗接着洗浄溶液で予めリンスし、RTで5分、2000gで遠心分離し、製造業者のプロトコールに従って2mlのDMEM/F12培地で洗浄した。一次栄養膜細胞をトリプシン処理し、EB形成培地(Stemcell社)中に再懸濁し、9.6×105細胞/mlを、AggreWellTM 400プレートの各ウェルに移した。各ウェルを、EB培地を用いて合計2ml/ウェルまで継ぎ足し、RTで5分、100gで遠心分離し、加湿インキュベーター中で48時間、5%CO2下、37℃でインキュベートした。
【0246】
スフェロイド侵入試験のために、vybrant細胞標識化溶液DiO又はDiI(Thermo Fisher Scientific社)1mlあたり5μlを、遠心分離の前に培地に添加した。直径約100μmの栄養膜スフェロイドが、この48時間のインキュベーション後に形成した。スフェロイドを、手動のピペッティングによってAggrewellプレートから取り除き、40μmの細胞ストレーナーを通過させて、約100μM未満のサイズのスフェロイドを除去した。最終的なスフェロイドを、付着及び侵入実験のために、細胞ストレーナーをプレートの頂部上に反転させること、及び10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤を添加したDMEM/F12でそれをリンスすることによって、低結合6ウェルプレート中に収集した。
【0247】
イシカワ単層への一次栄養膜スフェロイド付着の評価
対照又はPCX-OEイシカワ細胞を、96ウェル平底プレート中、37℃で一晩培養して、単層を形成させた。次いで、同時に調製された一次栄養膜スフェロイドを、イシカワ単層の頂部上に移し(100μlの培地中、ウェルあたり約30個のスフェロイド)、それぞれ、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間又は24時間インキュベートした。各ウェル中に添加された栄養膜スフェロイドの正確な数を計数した後、ウェルをPBSで3回洗浄して、付着しなかったスフェロイドを除去した。新鮮な培養培地を添加し、各ウェル中の付着したスフェロイドを計数し、付着率(付着した/予備洗浄したスフェロイドのパーセンテージ)を算出した。それぞれの実験は、3回反復ウェルの平均に基づくものであり、最終データを、3~5回の独立実験の平均±SDとして表した。
【0248】
イシカワ単層を横断する一次栄養膜スフェロイドの評価
8ウェルチャンバーを含有するガラスカバースリップスライド(Sarstedt社、Germany)を、RTで10分、次いで、37℃で1時間、DMEM中の1型コラーゲン(Merck-Millipore社、USA)とヒトフィブロネクチン(Corning社、USA)との混合物で被覆した。対照及びPCX-OEイシカワ細胞を、G418を含有する条件培地中、マトリックスの頂部上で培養して、37℃、5%CO2で一晩、単層を形成させた。次の日、条件培地を各ウェルから除去し、スフェロイドを染色するために使用される組合せに応じて、vybrant細胞標識化溶液DiO又はDiIのいずれかを含有する条件培地を補充し(Thermo Fisher Scientific社、培地1mlあたり5μl)、更に24時間インキュベートした。vybrant溶液を含有する培地を除去し、ウェルをPBSで2回洗浄した後、100μlの栄養膜条件培地(10%FBS及び1%抗生物質-抗真菌剤を添加したDMEM/F12)中の約1~3個のスフェロイドを、対照又はPCX-OEイシカワ単層のいずれかの各チャンバーに移し、37℃、5%CO2で24時間又は48時間、同時培養した。次いで、チャンバーを、37℃、5%CO2インキュベーター(オリンパス社、日本)を取り付けた共焦点顕微鏡を使用してイメージングした。
【0249】
ヒト胚付着の評価
対照又はPCX-OEイシカワ細胞を、96ウェル平底プレート中、37℃、5%CO2で一晩、G418を含有する条件培地中で培養して、単層を形成させた。ヒト胚との同時培養の前に、条件培地を除去し、G418を含まない新鮮な培地を補充し、37℃、5%CO2で4時間にわたって平衡化させた。
【0250】
Centre for Reproductive Medicine(CRG, UZ Brussels, Belgium)で収集された凍結保存されたヒト胚の使用は、Institute Ethical Committee及びFederal Committee for Scientific Research on Human Embryos in vitroによって承認された。患者からのインフォームドコンセント文書に関しては、この特定の研究のために使用された胚は、5年の法的に決定された凍結保存期間の後に研究に寄付された胚に由来するものであった。Gardner及びSchoolcraftの基準(Gardnerら、1999)に従って、内細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)との両方についてA又はBスコアリングを有する完全かつ拡大する胚盤胞である、高品質のガラス化した受精後(dpf)5日の胚盤胞を、製造業者のプロトコールに従ってVitrification Thaw Kit(Vit Kit-Thaw、Irvine Scientific社、USA)を使用して温め、20%O2、6%CO2及び89%N2を用いた37℃での回収のためにOrigio胚盤胞培地(Origio社、The Netherlands)の25μlの液滴中に移した。それぞれの胚盤胞の透明帯(ZP)に、胚の孵化を補助するためにレーザーを使用して一晩、約4分の1の長さの大きな穴を作った。形態学的スコアリングに基づいて、ZPから孵化した高品質の6dpの胚のみを、更なる実験のために使用した。それぞれの胚を、その培養液滴から取り出し、イシカワ条件培地(G418を含まない)でリンスし、対照及びPCX-OE単層の頂部に移し、37℃、5%CO2で15時間及び24時間にわたって同時培養した。イシカワ単層への胚付着率を、異なる時点で200μlのチップを使用して培地を穏やかに上下に3~4回ピペッティングして、立体光学顕微鏡(Nikon社、Japan)下で評価した。自由に浮遊する胚を、未付着として考えた。付着率を、移入された胚の総数に対する付着した胚の数のパーセンテージとして算出した。最終データは、3回の独立実験の平均値であった。
【0251】
イシカワ単層を横断するヒト胚の評価
対照及びPCX-OEイシカワ細胞の単層を、イシカワ単層を横断する栄養膜スフェロイドの評価について以前に記載されたように8ウェルチャンバーを含有するガラスカバースリップスライド上のマトリックスの層上で調製した。このモデルはまた、上記の付着アッセイと同じ選択基準を用いて6dpfの胚を使用したが、5dpfの胚を温める代わりに、3dpfの胚を、DiO又はDiIのいずれかで染色する必要がある侵入モデル胚を設定する前に温めた。かくして、Gardner及びSchoolcraftの基準(Gardnerら、1999)に従って、圧縮C1及びC2段階にある、高品質のガラス化した3dpfの胚盤胞を、製造業者のプロトコールに従ってVitrification Thaw Kit(Vit Kit-Thaw、Irvine Scientific社、USA)を使用して温め、20%O2、6%CO2及び89%N2を用いた37℃での回収のためにOrigio胚盤胞培地(Origio社、The Netherlands)の25μlの液滴中に移した。レーザーを使用してそれぞれの4dpfの胚盤胞の透明帯(ZP)中に大きな穴を作り、放置して一晩回復させた。次の日、高品質の5dpfの胚盤胞を、vybrant細胞標識化溶液DiO又はDiI(Thermo Fisher Scientific社、培地1mlあたり10μl)を含有する培養液滴中に移し、20%O2、6%CO2及び89%N2を用いて37℃で24時間インキュベートした。形態学的スコアリングに基づいて、ZPから孵化した高品質の6dpfの胚のみを、侵入アッセイ実験のために使用した。それぞれの胚を、培養液滴から取り出し、イシカワ条件培地(G418を含まない)でリンスし、対照又はPCX-OE単層の頂部に移し、37℃、5%CO2で24時間にわたって同時培養した。同時培養後、それぞれのチャンバーを、共焦点顕微鏡(Zesis社、Germany)を使用してイメージングした。
【0252】
栄養膜スフェロイド及びヒト胚侵入の共焦点イメージング分析
イシカワ単層と共に同時培養した一次栄養膜スフェロイド又はヒト胚(対照又はPCX-OE)のための表面マッピングを、Imarisソフトウェア(バージョン9.2.1、Bitplane社、AG)を使用して実施した。侵入の程度を、単層を通って侵入し、イシカワ単層の下に存在するスフェロイド/胚の容量によって決定した。
【0253】
対照及びPCX-OEイシカワ細胞のRNAseq
イシカワ細胞を、10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤及び1%L-グルタミンを添加したMEM培地中、6ウェルプレート中、5.6×105細胞/ウェルで一晩培養した。次の日、細胞をPBSで洗浄し、RNeasy Mini Kit(Qiagen社)を使用して対照及びPCX-OEイシカワ細胞から全RNAを単離し、TURBO DNAフリーキット(Invitrogen社)で処理した。
【0254】
初期の生リードプロセッシングを実施し、生の75bp単一末端FASTQリードを、FastQC(Andrews 2000)を使用して品質について評価し、R/BioconductorパッケージngsReports(Wardら、2018)を使用して結果を集計した。次いで、リードを、AdapterRemoval(Schubertら、2016)を使用して配列アダプターについて調整し、RNA-seqアラインメントアルゴリズムSTAR(Dobinら、2013)を使用してヒトゲノムGRCh37に対して整列させた。アラインメント後、マッピングされた配列リードを、featureCounts(Liaoら、2014)を使用してGRCh37.p13(NCBI:GCA_000001405.14 2013-09)遺伝子間隔にまとめ、発現分析のために計数表をR統計プログラミング環境に移した。Picardツールパッケージ(http://broadinstitute.github.io/picard)からのMarkDuplicates機能を使用して、配列複製の効果も調査した。
【0255】
遺伝子発現分析を、BioconductorパッケージedgeR(Robinsonら、2009;McCarthyら、2012)及びlimma(Richieら、2015)を使用してRにおいて実行した。2つより多い試料中で100万あたり1計数(cpm)未満の遺伝子を除去することによって低い発現計数について遺伝子計数をフィルタリングし、M値の調整平均法(TMM;Robinson & Oshlack、2010)によって正規化した。示差的遺伝子発現を、線形モデリング及び経験的ベイズモデレーションを用いる、limma(Lawら、2014)中のvoom機能から利用可能なlog-CPM計数及び精密重量に対して実行した。
【0256】
結果の注釈を、biomaRt(Durinckら、2009)中で利用可能なEnsembl注釈(http://grch37.ensembl.org)を使用して実行し、発現の結果を、pheatmapパッケージ(Kolde 2019)を使用してヒートマップ中に表示させた。追加の経路及び遺伝子セット富化分析を、KEGG経路(https://www.genome.jp/kegg/pathway.html)及びMolecular Signature(MSigDB)データベース(Liberzonら、2015)上のclusterProfiler(Yuら、2012)及びmsigdbr(Dolgalev 2018)を使用して実行した。
【0257】
イシカワ細胞中での結合タンパク質の免疫蛍光
対照及びPCX-OEイシカワ細胞を、ガラスカバースリップ上で増殖させ、4%(w/v)パラホルムアルデヒド(E-カドヘリン、Wnt-7A、クローディン-4及びZO-1の分析のため)又は100%メタノール(オクルディンのため)中で固定した。次いで、細胞をRTで、個々の抗体について最適化されたプロトコール(E-カドヘリン:PBS中の10%ウマ血清及び1%BSAで1時間;Wnt-7A:PBS中の10%ウマ血清で2時間;クローディン-4:0.2%Tween 20を含有するPBS中の10%ウマ血清、2%ヒト血清、0.1%魚皮ゼラチン及び0.1%Triton X-100で1時間;ZO-1:PBS中の1%BSAで2時間;並びにオクルディン:0.2%Tween 20を含有するPBS中の10%ヤギ血清、2%ヒト血清、0.1%魚皮ゼラチン及び0.1%Triton X-100)を用いてブロックした。
【0258】
細胞を、一次抗体、E-カドヘリン(2μg/ml、ab1416、Abcam社)、Wnt-7A(6μg/ml、AF3008、R&D社)、クローディン-4(6μg/ml、sc-376643、Santa Cruz社)、オクルディン(1μg/ml、71-1500、Thermo Fisher社)及びZO-1(10μg/ml、61-7300、Thermo Fisher社)を用いて4℃で一晩探査した。次の日、細胞を、PBS中で15分、3回洗浄し、RTで1時間、適切なビオチン化二次抗体と共にインキュベートした後、RTで1時間、ストレプトアビジンコンジュゲート化Alexa Fluor 488を添加した。核を、RTで5分、DAPIで染色した(PBS中の0.5μg/ml、Sigma社)。蛍光シグナルを、蛍光顕微鏡(オリンパス光学工業社、東京)によって可視化した。
【0259】
イシカワ単層透過性の評価
経上皮電気抵抗(TER)と、ウェルの上から底へのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート化デキストラン40,000の輸送との両方の測定のために、10μg/mlのフィブロネクチン(BD Biosciences社、NSW、AUST)でコーティングした透過性トランスウェルインサート(6.5mm、0.4μm孔径、Corning社、NY)を使用した。対照及びPCX-OEイシカワ細胞を播種し(6×104細胞/インサート)、2%G418を含有する完全培地と共に一晩インキュベートした。Millipore MilliCell-Electrical Resistance System(Millipore社、Massachusetts)を使用して、96時間後にTERを測定した。上のチャンバーを、無血清培地と交換し、下のチャンバーは完全培地を含有していた(両方とも2%G418を含有する)。TER測定を通して加温プレートを使用して37℃で細胞を維持した。4つのTER読取り値(オームx cm2)を各ウェルから取り、2回反復ウェルからの読取り値を平均して、生のTERを得た。同じ実験において細胞を含有しないウェルからバックグラウンドTERを減算することによって、最終的な値を得た。
【0260】
FITCデキストランの通過を測定するために、対照及びPCX-OEイシカワ細胞も96時間培養した。その後、2%G418を含有する新鮮な完全培地を、下のチャンバーに添加し、2%G418及びFITCデキストラン(1mg/ml、Sigma社)を含有する新鮮な完全培地を上のチャンバーに添加した。細胞を37℃で2時間インキュベートし、下のチャンバーからの培地を収集し、485/535nmでの蛍光測定(Clariostar、BMG LabTech社、Victoria、Australia)のためにPBS中で1:5に希釈した。最終的な蛍光読取り値は、バックグラウンド(PBSのみ)を減算した後に得られ、データを、4回の独立実験の平均±SDとして表した。
【0261】
子宮内膜スクラッチ手順から得られた子宮内膜組織
不妊症処置中の子宮内膜スクラッチ手順の間に生検された保管された子宮内膜組織のコホートを、内腔上皮中のPCXの免疫組織化学分析のために回収した。全ての生検を、IVF処置の直前の月の自然周期中の分泌中期(d20~24)に採取した。全ての患者は、スクラッチ手順を受ける前に2周期以上の着床不全を経験し、単一の高品質の胚(グレードA~C)を、スクラッチ後のすぐ次の周期に移入した。試料を、Monash IVF(Clayton, VIC, Australia)で2012~2016年に生検し、ホルマリン中に固定した後、Anatpath Services社(Gardenvale, VIC, Australia)によって分析/保管した。この研究のためにAnatpath社からそのような組織を回収するための倫理審査による承認を、Monash Healthから取得した。
【0262】
統計
必要に応じて、対応のないt検定、一元配置ANOVA又はFisherの直接確率検定の統計分析のために、GraphPad Prism version 7.00(GraphPad Software社、San Diego、CA)を使用し、データを平均±SDとして表した。有意性を、*P<0.05、**P≦0.005、***P≦0.0005及び****P≦0.0001と定義した。
【0263】
(実施例2)
一次ヒト子宮内膜上皮細胞中でのポドカリキシンのプロテオーム同定
ヒト子宮内膜組織に由来する一次子宮内膜上皮細胞(HEEC)を単離し、実施例1に記載のように細胞膜タンパク質について富化した。
【0264】
得られたタンパク質を、質量分析によって分析し、合計250種のタンパク質を同定した(Table 2(表3))。これらのうち、47種が細胞膜タンパク質であると見なされ、ポドカリキシン(PCX)を含むそのうちの10種が細胞接着と関連していた。
【0265】
プロテオームの知見を確認するために、増殖期の子宮内膜から単離された一次HEECの全細胞溶解物(プロテオーム研究に関する)を、ヒトPCXの異なる領域に対する3種の抗体を使用するウェスタンブロットによって分析した。
【0266】
約150kDaの主要バンドが、両方の細胞型において同等のレベルで3種全部の抗体によって検出された。Ab1は、HUVECとHEECとの両方において約80kDaの追加のより薄いバンドを検出したが、Ab2は、主にHUVECにおいて約45、37及び30kDaの追加のバンドを認識した。rPCXのサイズは、わずかに150kDa未満であり、細胞外ドメインのみを含有するそれと一致していた。これらのデータは、PCXが増殖期の子宮内膜上皮細胞中で発現されることを確認するものであった。
【0267】
RT-PCR分析により、この知見を更に検証し、HEEC及びHUVEC中での同等のレベルのPCX mRNA転写物を検出した(陽性対照;図1)。
【0268】
【表3A】
【0269】
【表3B】
【0270】
【表3C】
【0271】
【表3D】
【0272】
【表3E】
【0273】
【表3F】
【0274】
【表3G】
【0275】
【表3H】
【0276】
【表3I】
【0277】
【表3J】
【0278】
【表3K】
【0279】
【表3L】
【0280】
【表3M】
【0281】
【表3N】
【0282】
【表3O】
【0283】
【表3P】
【0284】
【表3Q】
【0285】
(実施例3)
PCXはヒト子宮内膜中の上皮及び内皮細胞の頂端膜に局在化し、受容期確立と一致して内腔上皮中で特異的に下方調節される
月経周期にわたるヒト子宮内膜中でのPCXの細胞局在化を、実施例1に記載のような免疫組織化学分析によって検査した。
【0286】
3種全部のPCX抗体が、類似する染色パターンを検出した。増殖期では、PCXは内腔及び腺上皮細胞(それぞれ、LE及びGE)の両方、並びに血管(BV)中の内皮細胞の頂端表面に強く局在化した。間質は検出を示さなかった/検出未満であった。このパターンは、多かれ少なかれ分泌初期まで持続し、その後、特に、LEにおいて劇的な相違が出現した。分泌中期では、PCX染色はGEとBVとの両方において依然として強かったが、それはLEにおいてはほとんど検出不可能であった。分泌後期では、LEは最小限のPCXと共に継続したが、GEはより早期と比較してより薄いPCX染色を示した。
【0287】
周期にわたってLE、GE及びBVにおけるPCX染色を定量した(図2A図2C)。図2に示されるように、LEは、周期進行と共に最も劇的な変化を示した。LE中のPCXは、増殖期において最も高かったが、受容期の確立と一致して、分泌中期から顕著かつ特異的に低下した。対照的に、GE中のPCXは、可変性であり、分泌後期まで有意な低下を示さなかった。BV中のPCXは、有意な周期依存的変化を示した。
【0288】
(実施例4)
PCXは、in vitroの一次HEEC中でエストロゲンによって増強され、プロゲステロンによって低下する
エストロゲン(E)及びプロゲステロン(P)は、それぞれ、子宮内膜の増殖及び分化を誘導するため、一次HEEC中のPCXに対するこれらのホルモンの影響を決定した。
【0289】
増殖期に由来する一次HEEC(プロテオーム研究に関する)を単離し、Eのみ(増殖期を模倣するため)又はEでプライミングした後にP(E+P、分泌期を模倣するため)でそれぞれ48、72及び96時間処理した。リアルタイムRT-PCR分析により、PCX mRNAが、Eによって徐々にであるが、微妙に増加したが、E+Pによって経時的に低下した(図3A)が、時間依存的変化は、Eについても、E+Pについても統計的に有意ではないことが示された。しかしながら、PCX mRNAは、EのみよりもE+Pで処理した細胞中で低く、72時間では有意であり、96時間では非常に有意であった(図3A)。ウェスタンブロット分析により、EとE+Pとの差異が96時間でのみ有意であったにも拘わらず、類似するパターンのPCXタンパク質変化が示された(図3B)。
【0290】
この知見を更に検証するために、96時間にわたってE又はE+Pで処理したHEECを、免疫蛍光によって分析した。Eで処理した細胞は強いPCX染色を示したが、E+Pで処理した細胞ははるかに低いレベルのPCXを示した。まとめると、これらの結果は、一次HEEC中のPCXをEは促進するが、Pは低下させることと一致する。しかしながら、単離された細胞中でのPCXの変化は、子宮内膜組織中のLEにおいて観察されるものほど劇的ではなかったが、これは一次細胞がLE及びGE起源の混合物のものであったからである可能性が非常に高い(更に、サブタイプの精製がマーカーの欠如のため不可能である)。それにも拘わらず、これらの結果は、Pが子宮内膜上皮細胞中のPCXを低下させるという見解を支持する。
【0291】
(実施例5)
PCXノックダウンはイシカワ細胞接着性を増大させるが、過剰発現はそれを低下させる
PCXのユニークな発現パターン及びホルモン調節は、PCXが胚着床に対する上皮受容期に影響するかどうかの調査を促した。一次HEECの希少性のため、イシカワ細胞を機能試験のために用いた。イシカワ細胞中のPCX発現レベルを変更させ、フィブロネクチンに対するその接着性を決定した。
【0292】
PCXを、siRNAによってイシカワ細胞中で一過的にノックダウン(KD)した。リアルタイムRT-PCR分析により、対照(CON)細胞と比較したPCX-KD中でのPCX mRNAの60%の低下が示された(図4A)。ウェスタンブロット分析により、このノックダウンが更に確認された。フィブロネクチンへの接着について試験した場合、PCX-KD細胞は、対照よりも2.5倍多く接着した(図4B)が、これは、PCXの低下がその接着性を増大させることを示唆している。
【0293】
この後、PCXを、イシカワ細胞中で過剰発現(OE)させた。完全長ヒトPCXを、イシカワ細胞中に安定にトランスフェクトし、PCX過剰発現をRT-PCT(図4C)及びウェスタンブロットによって確認した。PCX-OE細胞は、対照細胞よりも2.8倍多くのPCXを発現した。これらのPCX-OE細胞は、対照よりも75%低いフィブロネクチンへの接着を示した(図4D)。まとめると、これらの結果は、PCX発現レベルと、イシカワ細胞接着性との間の逆相関を示唆する。
【0294】
(実施例6)
PCX過剰発現は栄養膜スフェロイド付着に対するイシカワ細胞の受容性を低下させる
胚付着に対するイシカワ細胞の受容性に対するPCX-OEの影響を、イシカワ細胞の単層が子宮内膜内腔上皮を模倣し、一次ヒト栄養膜から作られるスフェロイド(約100μm)が胚盤胞を模倣する、in vitroモデル(Hengら、2015)を使用して検査した。同数のスフェロイドを、イシカワ単層の頂部で同時培養し、安定なスフェロイド付着を24時間にわたって評価した(図5)。対照単層については、添加されたスフェロイドの25%が1時間以内に、42%が2時間以内に、及び72%が4時間以内に付着した。その後、付着は時間をかけてゆっくりと増加し、12時間までに76%に達し、24時間までに最大で91%に達した。しかしながら、図5に示されるように、PCX-OE単層は、非常に異なる付着力学を示した。わずか6%のスフェロイドが1時間以内に、11%が2時間以内に付着した;付着は、4時間までに22%に、6時間までに27%に増加した。12時間でも、PCX-OE単層へのスフェロイド付着(64%)は、対照(76%)よりも更に有意に低かった。82%の最大付着率に達するPCX-OEが、対照と有意に異ならないのは、24時間までに過ぎなかった。これらの結果は、PCXが栄養膜スフェロイド付着に対するイシカワ細胞の受容性を低下させ、それが付着のプロセスを減速させたことを示唆する。
【0295】
(実施例7)
PCX過剰発現はイシカワ単層を通過する栄養膜スフェロイドの侵入を阻害する
ヒトにおいては、着床には、胚が内腔上皮に付着した後、上皮細胞間を横断して、間質に移動することが必要である。PCXがイシカワ単層を通る栄養膜スフェロイドの横断プロセスに影響するかどうかを調査するために、本発明者らは、異なる色素で栄養膜スフェロイド及びイシカワ細胞を標識し、マトリックスの層上でイシカワ細胞を培養して、単層を形成させた後、それぞれ24時間及び48時間、頂部上でスフェロイドを同時培養した。イシカワ単層内の栄養膜スフェロイドの位置を、共焦点zスタック走査顕微鏡によって検査した。24時間までに、スフェロイドの侵入は、対照単層については明確に目に見えたが、プロセスはPCX-OE単層については始まったばかりであった。48時間までに、全てのスフェロイドは単層に浸透したが、浸透の程度は、対照細胞よりもPCX-OEについて依然として視覚的に少なかった。イシカワ単層の下に存在するスフェロイドの容量を、侵入の測定値として定量した(図6)。PCX-OE単層の下の平均スフェロイド容量は、それぞれ、24時間及び48時間で対照の容量の30%(非常に有意)及び40%(有意)であった。これらのデータは、PCX-OEは、栄養膜スフェロイドがイシカワ単層を横断するのをより困難にすることを示唆している。
【0296】
(実施例8)
イシカワ細胞中でのPCX過剰発現はまた、ヒト胚の付着及び侵入を妨げる
栄養膜スフェロイドの代わりにヒト胚を使用するin vitroでの付着及び侵入アッセイを繰り返した。ヒト胚盤胞を、対照及びPCX-OEイシカワ細胞単層の頂部上で同時培養し、安定な付着を、それぞれ、15時間及び24時間で評価した(図7A)。15時間で、対照単層に添加した胚盤胞の65%が付着したが、PCX-OE単層に付着したのは25%に過ぎなかった。しかしながら、24時間までに、付着率は、両単層について78%に達した。このデータは、イシカワ単層中のPCXが、栄養膜スフェロイドに関してなされた観察と一致して、胚付着の速度を再度低下させたことを示唆している。
【0297】
次いで、イシカワ単層を通る胚侵入を評価した。色素標識された胚盤胞を、色素標識されたイシカワ単層の頂部上で24時間同時培養し、単層内の胚の位置を、共焦点イメージングによって検査した。胚侵入は、対照単層よりもPCX-OEについて視覚的に少なかった。PCX-OE単層を通って浸透した胚の定量された容量は、対照のものよりも有意に低かった(図7B)。48時間での胚侵入も評価したが、全ての胚はその時点までに崩壊し、データは入手できなかった。これらの結果は、再度、栄養膜スフェロイドに関してなされた観察と一致して、PCXも、胚がイシカワ単層を通って横断するのを妨げたことを示唆している。
【0298】
(実施例9)
PCX過剰発現は、細胞接着及び着床にとって必要とされる遺伝子を下方調節するが、上皮バリア機能を制御する遺伝子を上方調節する
対照及びPCX-OEイシカワ細胞のRNAseq分析
PCXが、イシカワ細胞を、胚付着及び侵入をあまり受容しないようにする方法を理解するために、対照及びPCX-OEイシカワ細胞の全mRNA転写を、RNAseqによって比較した。15,103種の遺伝子の発現が検出され、教師なしクラスタリング分析によって2つの細胞型を2つの異なる群にクラスター化した(データは示さない)。合計940種の遺伝子が2つの群間で有意に異なって発現されることが見出され[p<0.01、Log(2)FC > 2又は< -2]、対照と比較して、PCX-OE中で659種が下方調節され、281種が上方調節された(Table 3(表4))。
【0299】
【表4A】
【0300】
【表4B】
【0301】
【表4C】
【0302】
【表4D】
【0303】
【表4E】
【0304】
【表4F】
【0305】
【表4G】
【0306】
【表4H】
【0307】
【表4I】
【0308】
【表4J】
【0309】
【表4K】
【0310】
【表4L】
【0311】
【表4M】
【0312】
【表4N】
【0313】
【表4O】
【0314】
【表4P】
【0315】
【表4Q】
【0316】
【表4R】
【0317】
【表4S】
【0318】
【表4T】
【0319】
【表4U】
【0320】
これらの示差的に発現される遺伝子(DEG)は、KEGG経路富化分析によって20種の分子経路に富化されることが見出され(Table 4(表5))、これらの経路においては、上方調節されるものよりも下方調節される遺伝子が多かった。胚着床と関連し得る経路としては、ECR受容体相互作用、細胞接着、焦点接着並びにカルシウム、Wnt及びcAMPのシグナル伝達並びに白血球経内皮移動が挙げられる(Table 4(表5))。
【0321】
【表5A】
【0322】
【表5B】
【0323】
【表5C】
【0324】
【表5D】
【0325】
【表5E】
【0326】
【表5F】
【0327】
細胞接着及び上皮結合は、胚付着及び侵入にとって特に重要であるため、これらの経路のより集中的な分析を実施した。細胞接着関連遺伝子について、59種が示差的に発現され、41種(70%)が下方調節され、18種(30%)が上方調節された。上皮密着結合について、46種の遺伝子が示差的発現を示し、20種(43%)が下方調節され、26種(57%)が上方調節された。接着結合について、32種の遺伝子が示差的に発現され、12種(37%)が下方調節され、20種(63%)が上方調節された。ギャップ結合について、36種が示差的発現を示し、26種(72%)が下方調節され、10種(28%)が上方調節された。まとめると、これらのデータは、PCX-OEが、細胞接着及びギャップ結合に関与する遺伝子の発現を優先的に低下させたが、密着/接着結合と関連するものを増加させたことを示している。特に、主要な接着結合遺伝子CDH1(E-カドヘリンをコードする)、密着結合遺伝子TJP1(ZO-1)、CLDN4(クローディン4)及びOCLN(オクルディン)は、対照細胞よりもPCX-OEにおいて全て有意に上方調節され、これをリアルタイムRT-PCR分析によって更に検証した(図8)。
【0328】
胚着床と関連することが知られるものを同定するために、DEGを更に調査した。図8A図8Fに示されるように、WNT7A(Wntファミリーメンバー7A、Wnt 7A)及びLEFTY2(左右決定因子2)等の、発現が着床不全と関連するいくつかの遺伝子が、PCX-OE細胞中で非常に有意に上方調節された。対照的に、LIF(インターロイキン6ファミリーサイトカイン)、CSF1(コロニー刺激因子1)、ERBB4(HER4)、FGF2(線維芽細胞増殖因子2)、TGFB1(TGF-ベータ-1)、及びMMP14等のいくつかのマトリックスメタロペプチダーゼ(MT1-MMP)を含む、いくつかの受容期促進因子は、PCX-OE細胞中で非常に有意に下方調節された(図8G図8L)。これらの結果は、PCXが子宮内膜受容期の上流の負の調節因子として作用することを示唆している。
【0329】
PCXは、細胞間接続を強化し、上皮バリア機能を増大させる
PCX-OE細胞の主な機能的特徴はイシカワ単層を通る胚侵入の阻害であったため、細胞結合タンパク質E-カドヘリン、Wnt 7A、オクルディン、クローディン4及びZO-1の免疫蛍光を調査した。これらのタンパク質は全て、対照細胞と比較してPCX-OE中で高度に上昇したが、これは、そのmRNA発現が有意に上方調節されることと一致していた。これらの染色結果は、PCX-OE細胞が、対照であるイシカワ細胞よりも緊密に互いに接続されたことを示唆している。この結果を確認するために、単層をわたる経上皮電気抵抗(TER)、上皮バリア完全性の生物物理学的測定値を測定した。TERは、対照単層よりもPCX-OEにおいて有意に高かった(図9A)。大きい分子に関する単層の透過性も決定した。FITC標識されたデキストラン(Mol wt 40kDa)を、単層の頂部に添加し、底部へのその流動を、下チャンバー中の蛍光シグナルを測定することによって定量した。PCX-OE単層を通過するデキストランは、対照のものよりも非常に有意に低かったが(図9B)、PCX-OE細胞がより緊密に結合されることと一致していた。まとめると、これらの結果は、PCXが、主要な上皮細胞シーラントとして作用し、様々な細胞結合タンパク質を上方調節して、細胞間接続を強化し、上皮バリア機能を増大させることを示唆している。これらのデータはかくして、PCX-OE単層が、対照イシカワ単層よりも、栄養膜スフェロイド及び胚が横断するのが困難であった理由に関する新しい分子的及び力学的洞察を提供する。
【0330】
まとめると、これらの試験は、PCXが、上皮結合及び単層完全性の支配における重要な調節的役割を果たすことを示唆している。結果として、PCXは胚付着並びに侵入に対する上皮受容期を負に調節し、子宮内膜LE中でのPCXの下方調節は、子宮内膜受容期を確立するために機能的に必要である。
【0331】
(実施例10)
推定受容性子宮内膜のLE中での陽性のPCX免疫染色は、IVF患者における着床不全と有意に関連する
LE中のPCXが、胚着床のための子宮内膜受容期の負の調節因子であることを更に確認するために、IVF患者に由来する子宮内膜組織中のPCXを検査した。多くの不妊治療センターでの現在の実務では、2~3周期後に形態学的に正常な胚を着床することができない患者は、次の周期の前の分泌中期(推定受容期)に「子宮内膜スクラッチ生検」を体験する。スクラッチと関連する傷害が次の周期においてより高い着床率をもたらすというレベル1の証拠のため、この生検は、胚が正常に移入されるであろうこの特定の時点で採取されるが、その有効性は議論の的になっている(van Hoogenhuijzeら、2019;Frantzら、2019;Sar-Shalomら、2018: Nastriら、2015;Gnainskyら、2010)。オーストラリアのMonash IVFで以前に生検された86のそのような組織を得た。これらの患者は、次の周期において単一の高品質の胚の移入を有し、その着床の結果が知られていた。
【0332】
これらの子宮内膜組織中のPCXを、免疫組織化学分析によって検査し、LE中でのPCX染色と、着床結果との関連を決定した(Table 5(表6))。全ての組織(n=86)が、腺及び血管における陽性のPCX染色を示した(データは示さない)。LE染色を検査した場合、これらの組織のうちの66(77%)が、PCXについて陰性(PCX-)であったが、残りの20(23%)は、1/4を超えるそのLE細胞においてPCXについて陽性に染色され、これをPCX+と定義した。
【0333】
【表6】
【0334】
次いで、PCX-及びPCX+コホート中の着床結果(6週の超音波)を、別々に分析した(図10)。合計で、全コホートのうちの30(35%)が着床の成功を達成した。PCX-群(合計で66)においては、27(41%)が着床に成功したが、他の39(59%)は成功しなかった。しかしながら、PCX+群(合計で20)においては、着床はわずか3(15%)において成功し、17(85%)において失敗した。2群間の差異は、統計的に有意であった(p=0.036、Fisherの直接確率検定)。
【0335】
これらの結果は、LE中のPCXが胚着床の有意な負の調節因子であるという重要な臨床的証拠を提供する。更に、このデータは、より以前の機能的試験と共に、LE中での子宮内膜PCX陽性がIVF患者における着床不全にも寄与し得ることを示唆している。
【0336】
(実施例11)
マイクロRNAによる子宮内膜上皮PCXの調節
受容期に関するヒト子宮内膜上皮細胞中のPCXのプロゲステロン誘導性下方調節の背後にある分子メカニズムを調査した。PCXを標的とし得る13種の潜在的なmiRNAをバイオインフォマティクス的に同定し(Table 6(表7))、子宮内膜上皮細胞中でのプロゲステロン誘導性PCX下方調節におけるその関与を検査した。
【0337】
【表7】
【0338】
一次ヒト子宮内膜上皮細胞を単離し、エストロゲン(E、増殖期を模倣するため)又はエストロゲンとプロゲステロン(E+P、分泌期を模倣するため)で96時間処理し、上記のmiRNAのレベルをリアルタイムRT-PCTによって分析した。更に、対照マイクロRNA(hsa-miR-361-5p)を使用した。
【0339】
簡単に述べると、全RNAを、mirVanaTM miRNA Isolation Kits(Thermo Fisher Scientific社)によって抽出し、NanoDrop(商標)1000 Spectrophotometer(Thermo社)を使用して、RNA濃度を決定した。miRNA(10ng)を、製造業者の使用説明書に従ってTaqMan(登録商標)Advanced miRNA cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific社)を使用して逆転写した。Table 8(表8)に特定される条件下でQuantStudio 6 Flex Real-Time PCR System(Applied Biosystems社)を使用して、miRNAアッセイ(Thermo Fisher Scientific社、Table 7(表9)から購入)と共にリアルタイムRT-PCRを実施した。
【0340】
【表8】
【0341】
一部のmiRNAは検出を示さず、多くはE+P処理後に可変性で一貫性のない変化を示した。しかしながら、miR-145及びmiR-199は、Eのみで処理した細胞と比較して、E+Pにおいて、中程度であるが、一貫した、有意な上方調節を示した(図11)。Eによる処理と比較したE+Pによる処理後の平均倍率変化は、miR-145については1.38であり、miR-199については1.50であった。
【0342】
これらの結果は、これらの2つのmiRNAが受容期の確立においてプロゲステロンによるPCXの下方調節を媒介し得ることを示唆している。
【0343】
これらの2つのmiRNAがPCXを直接下方調節することができることを確認するために、これらのmiRNAの模倣体を、ヒト子宮内膜上皮イシカワ細胞株にトランスフェクトし、PCX発現のレベルに対する影響を検査した。
【0344】
イシカワ細胞を、10%FCS、1%L-グルタミン(Sigma社)及び1%抗生物質-抗真菌剤を添加したMEM(Thermo Fisher Scientific社)を含有する完全培地中、12ウェルプレート(3.0×105個/ウェル)で一晩培養した。次の日、トランスフェクションのために細胞にOpti-MEMを補充した。対照及びmiRNA模倣体(5pm、全てThermo Fisher Scientific社製)を、Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、それぞれ24、48、72時間にわたってイシカワ細胞中にトランスフェクトし、PCX mRNAレベルを、リアルタイムRT-PCRによって検査した。2つのmiRNA(それぞれ5pm)の組合せも試験した。
【0345】
トランスフェクション後、miR-145とmiR-199とは両方とも、PCX mRNAを有意に下方調節した(図12)。両方のmiRNAは、24時間でPCX mRNAを約34%抑制し、この抑制は、約50~60%に増大し、48~72時間までにプラトーに達した。2つのmiRNAを一緒にトランスフェクトした場合、相乗効果は明らかではなかった。
【0346】
これらの結果は、miR-145とmiR-199とが両方とも、子宮内膜上皮細胞中でPCX発現を抑制することができることを確認する。
【0347】
【表9】
【0348】
参考文献
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022539754000001.app
【国際調査報告】