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特表2022-539759MU-MIMOパケット到着前チャネル競合
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】MU-MIMOパケット到着前チャネル競合
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/12 20090101AFI20220906BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220906BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220906BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20220906BHJP
【FI】
H04W72/12 110
H04W16/28 130
H04W84/12
H04W72/04 131
H04W72/04 132
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577585
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2020056147
(87)【国際公開番号】W WO2021001749
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】62/870,149
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/710,217
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】アブエルサウード モハメド
(72)【発明者】
【氏名】迫田 和之
(72)【発明者】
【氏名】シン リャンシャオ
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067BB21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE22
5K067KK03
(57)【要約】
リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットをサポートする無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)通信のためのシステム、装置及び方法。アクセスポイント(AP)が、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することによって、RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールする。APは、DL又はUL方向のRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合する。この動作は、WLANにおけるRTAパケットの遅延時間を低減する。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおける無線通信装置であって、
(a)自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信してアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成された無線通信回路と、
(b)前記WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、
(c)前記プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、
(ii)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(iii)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することと、
を含むステップを実行し、
(iv)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する前記局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、前記ステップは、
(v)AP局として動作する際に、前記DL又はUL方向における前記RTAパケットの前記予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)前記APが前記RTAパケットの前記到着時刻の後又は該到着時刻に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、前記配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)前記APが前記RTAパケットの前記予想到着時刻前に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために前記同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記APが前記RTAパケットの到着前に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、将来的なDL RTAパケットをスケジュールすることと、前記DL RTAパケットの前記到着まで、パディングとして動作するダミーパケットを送信することとを含むステップを実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、前記配分されたリソース(RU)での送信が遅延することを非AP局に通知して、前記非AP STAが前記リソースを解析することで、前記パディング又はダミーパケットが送信された後に前記DL RTAパケットを予想することを可能にすることを含むステップをさらに実行する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、前記配分されたリソース(RU)での送信が遅延することを非AP局に通知して、前記非AP STAが前記リソースを解析することで、前記他の局の送信が完了した後に前記DL RTAパケットを予想することを可能にすることを含むステップをさらに実行する、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、リソース配分(RU)上で将来的なDL RTAパケットをスケジュールすることと、前記DL RTAパケットの前記到着まで、前記リソース配分(RU)を時間共有する別のDL送信をスケジュールすることとを含むステップを実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、(i)前記配分されたリソースが共有されることを示すように前記ユーザフィールド内のビットを設定して、別の局の前記情報を示す又は前記送信のパディングのための別のユーザフィールドを送信すること、或いは(ii)新たなユーザフィールドを定義して、前記遅延したDL MIMO送信が開始する予定である前記DL MIMO送信の前記開始に関連する時間値を送信すること、のいずれかに応答して、非AP局に送信されるユーザフィールドのプリアンブルを、前記割り当てられたリソース(RU)が他の局と時間共有されることを示すように修正することをさらに含むステップを実行し、リソースを時間共有する両送信は、PHYパラメータを共有する、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記APにRTAストリームセッション要求を送信して前記APに前記RTAセッション及び該RTAセッションのパラメータについて通知し、これに対してAPが確認応答及び前記RTAストリームセッション要求の受諾又は拒絶で応答して、前記アップリンク(UL)方向の送信にパケットが利用可能になる度にバッファステータスレポート(BSR)を送信することに伴う遅延を排除することを含むステップを実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、UL RTAパケット送信のためにリソース(RU)を配分することと、非AP STAにトリガフレームを送信することとを含むステップを実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記RTAパケットの到着前にリソース(RU)を配分するステップを実行する、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及び前記UL送信の遅延した開始を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドを前記非AP局にトリガフレーム内で送信することによって、前記RTAパケットを受け取った後にUL送信を遅延させるように非AP STAをスケジュールすることを含むステップを実行する、
請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記非AP STAが前記配分されたリソース(RU)でパケットを送信していない時に前記非AP STAがパディングデータ又はダミーパケットを送信するように要求することを含むステップを実行する、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、局のULデータの送信が遅延している時に他の局が送信を行うようにスケジュールすることを含むステップを実行する、
請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、前記配分されたリソース(RU)を時間共有していることを別の局に通知し、PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及び前記アップリンク(UL)送信の終了を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドを前記別の局に前記トリガフレーム内で送信することを含むステップによって他の局のスケジューリングを実行する、
請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記APにRTAパケットの待ち行列バッファ状態を送信してRTAパケットスケジュール時間の推定値を更新することを含むステップを実行する、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
ネットワークにおける無線通信装置であって、
(a)自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信してアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成された無線通信回路と、
(b)前記WLAN上で動作するように構成された局内の、前記無線通信回路に結合されたプロセッサと、
(c)前記プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリと、
を備え、
(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として前記無線通信回路を動作させることと、
(ii)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(iii)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することと、
を含むステップを実行し、
(iv)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する前記局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、DL MIMOのAPとして動作する際に、前記APが前記RTAパケットの到着前に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、将来的なDL RTAパケットをスケジュールし、前記DL RTAパケットの前記到着まで、パディングとして動作するダミーパケットを送信し、前記ステップは、
(v)AP局として動作する際に、前記DL又はUL方向における前記RTAパケットの前記予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)前記APが前記RTAパケットの前記到着時刻の後又は該到着時刻に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、前記配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)前記APが前記RTAパケットの前記予想到着時刻前に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために前記同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項16】
前記命令は、DL MIMOのAPとして動作する前記プロセッサによって実行された時に、リソース配分(RU)上で将来的なDL RTAパケットをスケジュールすることと、前記DL RTAパケットの前記到着まで、前記リソース配分(RU)を時間共有する別のDL送信をスケジュールすることとを含むステップを実行する、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記APにRTAストリームセッション要求を送信して前記APに前記RTAセッション及び該RTAセッションのパラメータについて通知し、これに対してAPが確認応答及び前記RTAストリームセッション要求の受諾又は拒絶で応答して、前記アップリンク(UL)方向の送信にパケットが利用可能になる度にバッファステータスレポート(BSR)を送信することに伴う遅延を排除することを含むステップを実行する、
請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、UL RTAパケット送信のためにリソース(RU)を配分することと、非AP STAにトリガフレームを送信することとを含むステップを実行する、
請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作する前記プロセッサによって実行された時に、前記APにRTAパケットの待ち行列バッファ状態を送信してRTAパケットスケジュール時間の推定値を更新することを含むステップを実行する、
請求項15に記載の装置。
【請求項20】
ネットワークにおける無線通信の実行方法であって、
(a)無線通信回路を、自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信して、通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成されたWLAN局として動作させることと、
(b)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、
(c)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することと、
を含み、
(d)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する前記局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、前記方法は、
(e)AP局として動作する際に、前記DL又はUL方向における前記RTAパケットの前記予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)前記APが前記RTAパケットの前記到着時刻の後又は該到着時刻に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、前記配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)前記APが前記RTAパケットの前記予想到着時刻前に前記チャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために前記同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/870,149号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
該当なし
【0003】
〔コンピュータプログラム付属書の引用による組み入れ〕
該当なし
【0004】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
本特許文献中の資料の一部は、アメリカ合衆国及びその他の国の著作権法の下で著作権保護を受けることができる。著作権の権利所有者は、合衆国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表される通りに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定ではないが米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておく権利のいずれも本明細書によって放棄するものではない。
【0005】
本開示の技術は、一般に無線通信局に関し、具体的には、リアルタイムトラフィックと非リアルタイムトラフィックとの組み合わせを通信する無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局に関する。
【背景技術】
【0006】
市場に投入される電子装置は、Wi-Fiを通じてインターネットにアクセスできる割合がますます増えている。これらのWi-Fiネットワークは、日々拡大してより高いスループットを可能にするとともに、各ネットワークにより多くのユーザを接続できるようになっている。しかしながら、高密度環境又は干渉が存在する状況では遅延時間及び信頼性が保証されず、従ってWi-Fiネットワークは、一般に最善努力型通信(best effort communication)とみなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リアルタイムゲーム、遠隔モニタリング及び制御、並びにその他の遅延感度の高いアプリケーションは、最小限のパケット遅延及びトラフィック信頼性に大きな価値がある急成長カテゴリである。通信されるパケットは、遅延すると容易にその価値を失ってしまう恐れがある。他のアプリケーションでは、エンドツーエンド遅延がエンドユーザに気付かれない限り、許容可能なユーザ体験レベルに達することができる。これらの問題を考慮すると、あらゆる遅延スパイクは性能を損ない、及び/又は偽の結果(spurious results)をもたらす恐れがあるので、システム設計では、最悪遅延時間などのパラメータを研究してこれに対処することが非常に重要である。
【0008】
CSMA/CAを使用する現在の無線技術は、ネットワークの高スループット性能には重点を置いているが低遅延動作をもたらさない。従って、リアルタイムアプリケーション(RTA)などの多くのアプリケーションは低遅延時間を必要とするため技術格差が生じている。RTAデータは、一定期間内に配信される場合にのみ有効であるため、RTAトラフィックは、そのパケット配信に対する高い適時性要件に起因して低遅延時間を必要とする。
【0009】
従って、パケット遅延時間を低減する無線通信装置及び方法に対するニーズが存在する。本開示は、このニーズを満たすとともに、これまでの技術を凌駕するさらなる利点をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
局(STA)がより短いチャネル競合時間でより高速にチャネルにアクセスすることを可能にすることにより、リアルタイムアプリケーション(RTA)のパケット遅延時間の低減に到達することができる。STAは、現在のランダムアクセスチャネルシナリオに起因して、各パケットの送信前にチャネルアクセスを検知してこのために競合する必要があり、このことがパケット遅延の原因になる場合がある。他の遅延原因としては、エンドツーエンドのパケット送信遅延を増大させる節電モードの動作、待ち行列遅延及び送信遅延が挙げられる。
【0011】
本開示は、現在の802.11プロトコルのMAC層及びPHY層を、RTAの最悪遅延時間を抑制して接続信頼性を改善できるように変更するものである。
【0012】
リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)が、RTAパケットの到着前にパケット送信にリソース(RU)を配分し、予想されるRTAパケットの到着前であってもチャネルへのアクセス権を獲得することができる。
【0013】
本明細書の以下の部分では、本明細書で説明する技術のさらなる態様が明らかになり、この詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を制限することなく完全に開示するためのものである。
【0014】
本明細書で説明する技術は、例示のみを目的とする以下の図面を参照することによって十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】HE-SU PPDUフレームのデータフィールド図である。
図2】HE-MU PPDUフレームのデータフィールド図である。
図3】HE-TB PPDUフレームのデータフィールド図である。
図4】トリガフレームのデータフィールド図である。
図5】トリガフレームのユーザ情報フィールドのデータフィールド図である。
図6】トリガフレームの共通情報フィールドのデータフィールド図である。
図7】ブロックACK(BA)フレームのデータフィールド図である。
図8】IEEE802.11ax WLANのために実行されるダウンリンク(DL)OFDMA MIMO送信の周波数使用図である。
図9】IEEE802.11ax WLANのために実行されるアップリンク(UL)OFDMA MIMO送信の周波数使用図である。
図10】CSMA/CA下における再送のフロー図である。
図11】通常のWLANシステムのデータフレームフォーマットのデータフィールド図である。
図12】通常のWLANシステムの確認応答(ACK)フレームフォーマットのデータフィールド図である。
図13】2倍サイズの競合ウィンドウを使用したCSMA/CAにおける再送の通信シーケンス図である。
図14】再試行制限に応答してパケットが破棄されるCSMA/CAにおける再送の通信シーケンス図である。
図15】OFDMAシステムのダウンリンクでのCSMA/CAにおける再送の通信シーケンス図である。
図16】OFDMAシステムのアップリンクでのCSMA/CAにおける再送の通信シーケンス図である。
図17】本開示の少なくとも1つの実施形態による局(STA)ハードウェアのブロック図である。
図18】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って対応されるトポロジ例を示すネットワークトポロジ図である。
図19】本開示の少なくとも1つの実施形態による、リアルタイムアプリケーション(RTA)を実行する局の通信シーケンス図である。
図20】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って対応される異なるチャネルアクセスシナリオを示す通信シーケンス図である。
図21】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って利用されるプリミティブパラメータ通信のブロック図である。
図22】本開示の少なくとも1つの実施形態による、チャネルアクセスパラメータを有する新規セッション(New Session)要求のデータフィールド図である。
図23】本開示の少なくとも1つの実施形態による、新規セッション要求に対する応答のためのプリミティブパラメータのデータフィールド図である。
図24】本開示の少なくとも1つの実施形態による、早期競合ウィンドウ期間の動的調整のフロー図である。
図25】本開示の少なくとも1つの実施形態による、AP局と関連する非AP局との間の交換を例示する通信シーケンス図である。
図26】本開示の少なくとも1つの実施形態による、複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット送信をスケジュールするAPを例示するRU送信図である。
図27】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APが仮想的又は物理的検知を通じてチャネル使用中を発見してチャネルアクセスのために競合しなければならない事例を例示するRU送信図である。
図28】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、MACバッファにおけるRTAパケットの到着前にMU-MIMO送信が既に開始されている事例を例示するRU送信図である。
図29】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、RTAパケットデータ送信がDL MU-MIMO送信後に開始されてその終了前に終了する事例を例示するRU送信図である。
図30】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、RTA送信のために割り当てられた時間中に複数のSTAがRUにアクセスするようにAPがスケジュールする事例を例示するRU送信図である。
図31】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、RTA STAに割り当てられたRUが、RTAパケット又は通常の非RTAパケットを受信する他のSTAと共有されることを例示するRU送信図である。
図32】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APがRTAパケットの前及び/又は後にパディングを利用する事例を例示するRU送信図である。
図33】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、RTA送信に割り当てられた時間中に複数のSTAがRUにアクセスするようにAPがスケジュールする事例を例示するRU送信図である。
図34】現在の802.11ax標準による、パディングを使用するスケジューリング図である。
図35】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、APがRTAパケットの送信前にパディングを送信する事例のスケジューリング図である。
図36】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、APがRTAパケットの前に別のSTAに別のパケットを送信する事例のスケジューリング図である。
図37】本開示の少なくとも1つの実施形態による、高効率(HE)マルチユーザ(MU)PPDUフレームフォーマットのデータフィールド図である。
図38】本開示の少なくとも1つの実施形態による、図37の高効率(HE)マルチユーザ(MU)PPDUフレームに含まれるHE-SIG-Bフィールドのデータフィールド図である。
図39】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、別のSTA送信をカスケード化するようにRTA STAを割り当てる前及び後のRTAユーザフィールド図である。
図40】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、別のSTA送信をカスケード化するようにRTA STAを割り当てる前及び後のRTAユーザフィールド図である。
図41】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APのRTAデータのDL OFDMA競合前及び将来的スケジューリングのフロー図である。
図42】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MU-MIMO又は遅延したRTAパケット送信をスケジュールするフロー図である。
図43】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APから受け取られた、RTAパケットの将来的スケジューリングを含むパケットをSTAが処理するフロー図である。
図44】本開示の少なくとも1つの実施形態による、他のSTAによって共有されるRUが複数存在する場合のユーザフィールドを示すデータフィールド図である。
図45】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、RTAを実行しているSTAとのUL OFDMA/MU-MIMOを例示するRU送信図である。
図46A】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行されるUL RTA要求のRU送信図である。
図46B】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行されるUL RTA要求のRU送信図である。
図47】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、非AP STAからAPにRTQTDフィードバックメッセージを送信することを通じてRTAパケットのスケジュール時間を調整するRU送信図である。
図48】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、非AP STAがAP STAとフレームを交換する通信シーケンス図である。
図49】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行されるUL RTAスケジューリングのRU送信図である。
図50】本開示の少なくとも1つの実施形態に従って実行される、2つのSTAがRUを共有するUL STAスケジューリングのRU送信図である。
図51A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APがMU-MIMO技術を使用してUL RTAパケット送信をスケジュールするフロー図である。
図51B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APがMU-MIMO技術を使用してUL RTAパケット送信をスケジュールするフロー図である。
図52】本開示の少なくとも1つの実施形態による、UL MIMO又は遅延したUL RTAパケット送信をスケジュールするフロー図である。
図53A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APから受け取られた、RTAパケットのULスケジューリング及び将来的スケジューリングを含む基本トリガフレームをSTAが処理するフロー図である。
図53B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APから受け取られた、RTAパケットのULスケジューリング及び将来的スケジューリングを含む基本トリガフレームをSTAが処理するフロー図である。
図54】本開示の少なくとも1つの実施形態による、UL MU-MIMO/OFDMA送信のためにリソースを配分するトリガフレームのデータフィールド図である。
図55】本開示の少なくとも1つの実施形態による、図54のトリガフレームフォーマットに含まれるユーザ情報フィールドのデータフィールド図である。
図56A】本開示の少なくとも1つの実施形態による、複数のSTAのカスケード化された送信の場合又は1つのSTA送信が遅延してこのSTAがパディング情報を送信する必要がある場合に送信されるトリガフレームのデータフィールド図である。
図56B】本開示の少なくとも1つの実施形態による、複数のSTAのカスケード化された送信の場合又は1つのSTA送信が遅延してこのSTAがパディング情報を送信する必要がある場合に送信されるトリガフレームのデータフィールド図である。
図57】本開示の少なくとも1つの実施形態による、非AP STAによってAP STAに送信されるPPACC要求フレームのデータフィールド図である。
図58】本開示の少なくとも1つの実施形態による、AP STAによって非AP STAに送信されるPPACC応答フィールドのデータフィールド図である。
図59】本開示の少なくとも1つの実施形態による、非AP STAによってAP STAに送信されるECA期間要求のデータフィールド図である。
図60】本開示の少なくとも1つの実施形態による、AP STAによって非AP STAに送信されるECA期間応答フレームのデータフィールド図である。
図61】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STAによって関連するAPに送信されるRTAストリーム開始要求のデータフィールド図である。
図62】本開示の少なくとも1つの実施形態による、APによって関連するSTAに送信されるRTAストリーム開始応答のデータフィールド図である。
図63】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STAによって関連するAPに送信されるRTQTDフィードバックフィールドのデータフィールド図である。
図64】本開示の少なくとも1つの実施形態による、RTA送信の予測時間を更新するためにSTAによって関連するAPに送信されるRTQTDフィードバック確認応答のデータフィールド図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.802.11WLANシステムの説明
無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)性能を改善するために、具体的には2.4GHz及び5GHz帯に重点を置く提案などの数多くの802.11修正案が提案されている。これらの過去の修正案の大部分は、最大受信データレートを当初提案されていた2Mビット/秒から802.11ax修正案では場合によって最大9.6GHzに改善することを目的としたものである。例えば、チャネル帯域幅の20MHzから最大160MHzへの増加、新たな変調及び符号化スキームの使用、並びに多入力多出力(MIMO)及びマルチユーザ(MU)送信の導入を通じて物理層のデータレートを高める多くの技術が利用されてきた。送信のオーバーヘッドを低下させ、従ってデータスループットを向上させるために、他の媒体アクセス制御(MAC)層の改善も導入されてきた。なお、MAC層は、開放型システム間相互接続(OSI)通信モデルで規定される7つ層のうちの1つである。このオーバーヘッドの低下は、例えばフレーム間隔を短縮し、パケットの集約化及びセグメント化を行い、Wi-Fiネットワークにおけるサービス品質(QoS)対応を改善し、局が節電のためにアウェイク状態とドーズ(スリープ)状態とを繰り返す電力消費プロトコルを適用することによって達成することができる。
【0017】
1.1.802.11ax-PPDUフォーマット
図1に、IEEE802.11axでのシングルユーザ送信に使用される、IEEE802.11axのHEシングルユーザ(SU)PPDUフォーマットを示す。なお、PPDUは、物理層収束手順プロトコルデータユニット(Physical layer convergence procedure Protocol Data Unit)の略である。PPDUフレームは、PSDU+PHYヘッダ及びプリアンブルを含む。高効率(HE)シングルユーザ(SU)PPDUフレームは、(a)非HT短期訓練フィールドであるL-STF、(b)非HT長期訓練フィールドであるL-LTF、(c)非HT信号フィールドであるL-SIG、(d)反復する非HT信号フィールドであるRL-SIG、(e)HE信号AフィールドであるHE-SIG-A、(f)HE短期訓練フィールドであるHE-STF、(g)HE長期訓練フィールドであるHE-LTF、(h)PSDUを搬送するデータフィールドであるデータ(Data)、及び(i)パケット拡張フィールドであるPEを含む。
【0018】
図2に、ダウンリンクマルチユーザ送信に使用されるIEEE802.11axのHEマルチユーザ(MU)PPDUフォーマットを示す。このフォーマットは、図1に示すシングルユーザPPDUフォーマットと比較すると、各ユーザに個別のリソースブロック配分情報を提供するHE-SIG-Bフィールドをフォーマットに追加する。
【0019】
図3に、アップリンクマルチユーザ送信に使用されるHEトリガベース(TB)のPPDUフォーマットを示す。HE TB PPDUフォーマットのフィールドは、HE-STFフィールドが8μsであることを除いて図1のHEシングルユーザPPDUフォーマットのフィールドと同一である。
【0020】
図4に、IEEE802.11axのトリガフレームフォーマットの内容を示す。フレーム制御(frame control)フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間(duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。
【0021】
図5に、各STAのための情報を含むユーザ情報(user Info)フィールドを示す。共通情報(common info)フィールド及びユーザ情報フィールドは、各ユーザに個別のリソースブロック配分情報を提供する。これらのフィールドは、AID12、RU配分(RU Allocation)、コーディングタイプ(Coding Type)、MCS、DCM、SS配分(SS Allocation)、ターゲットRSSI(Target RSSI)、及び予約(Reserved)と共に示される。
【0022】
図6に共通情報フィールドを示しており、このフィールドは、全ての配分されたSTAのための情報を含み、トリガタイプ(Trigger Type)、長さ(Length)、カスケーディング指示(Cascading Indication)、必要CS(CS Required)、BW、GI及びLTFタイプ(GI and LTF Type)、MU MIMO LTFモード(MU MIMO LTF Mode)、HE-LTFシンボル数(Number of HE-LTF Symbols)、LDPC追加シンボルセグメント(STBC、LDPC Extra Symbol Segment)、AP TX電力(AP TX Power)、パケット拡張(Packet Extension)、空間再使用(Spatial Reuse)、ドップラー(Doppler)、GI及びLTFタイプ、HE-SIG-A予約(HE-SIG-A Reserved)及び予約を示す。
【0023】
図7に、通常のWLANシステムにおけるブロックACK(BA)フレームフォーマットの内容を示す。フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信するSTAのアドレスを含む。BA制御フィールドは、ブロックACKのポリシーを示す。BA情報フィールドは、送信のフィードバックを含む。FCSフィールドは、フレームチェックシーケンスである。
【0024】
1.2.遅延に影響を与えるWLAN機能
1.2.1.チャネルアクセス及び遅延耐性
WLAN装置では、競合ベースアクセス及び競合なしアクセスの両方が可能であると理解されたい。競合ベースアクセスは、チャネルへのアクセス権を獲得するために、チャネルが使用中である度にチャネルがチャネル及び内容を検知する必要がある。これによってさらなる送信遅延が発生するが、衝突は回避される。競合なしチャネルアクセスでは、APが競合することなくチャネルへのアクセス権を獲得することができる。このアクセスは、他のSTAによって使用されるDIFS(分散型フレーム間隔(Distributed Inter-Frame Spacing))に比べてPIF(PIFは、PCFフレーム間隔として定義される)に等しい短いフレーム間隔を使用することによってチャネルアクセス協調が達成されるハイブリッド制御型チャネルアクセス(Hybrid Controlled Channel Access:HCCA)において可能である。
【0025】
競合なしアクセスは、競合遅延を回避するための実行可能な解決策のように思えるが、幅広く展開されておらず、ほとんどのWi-Fi装置は競合ベースアクセスを使用している。従って、STAがチャネルにアクセスするには、チャネルを検知してチャネルが使用中でないことを発見しなければならない。チャネルは、以下のうちのいずれかに従って使用中とみなされる。(a)STAがフレームのプリアンブルを検出し、検出されたフレームの長さにわたってチャネルが使用中とみなされる時にチャネルは使用中とみなされる。(b)STAが20dBの最小感度を上回るエネルギーレベルを検出した時に、チャネルは使用中とみなされる。(c)STAが、検出されたフレームのネットワーク配分ベクトル(Network Allocation Vector:NAV)を読み取ることによってチャネルが事実上使用中であることを検出した時に、チャネルは使用中とみなされる。
【0026】
802.11ax標準では、誤ってNAVタイマをリセットすることによって起こり得る衝突を回避するために2つのNAVが導入された。一方のNAVはBSS STAのためのものであり、他方のNAVは非BSS STAのためのものである。STAは、これらの2つのNAVを別々に維持して持ち続ける。
【0027】
802.11axは、全てのレガシー802.11WLAN装置と同様に、チャネルアクセスのためにキャリア検知多重アクセス型衝突回避(CSMA/CA)を使用する。APは、アップリンク(UL)MIMO送信のためのトリガフレームを送信するには依然としてチャネルアクセスのために競合する必要がある。802.11axでは、APがそのBSS内のいずれかのSTAを介してチャネルアクセス権を取得(獲得)できるようにするために、802.11ax装置のみのための第2の高度分散型チャネルアクセス(enhanced distributed channel access、EDCA)セットが導入された。この形態のチャネルアクセスは、レガシーな非802.11ax装置がEDCAを使用して自由にチャネルにアクセスし、APがUL又はダウンリンク(DL)OFDMA MIMOデータ送信をスケジュールするためにチャネルへのアクセス権を獲得する機会を高めることを可能にする。なお、OFDMAは、直交周波数分割多元接続の略であり、OFDMのマルチユーザバージョンである。
【0028】
1.2.2.節電及び遅延耐性
局は、電力を節約するために時折自機の無線を遮断することがあるので、節電プロセスも遅延時間に影響を及ぼすことがある。APは、そのベーシックサービスセット(BSS)内の各STAのデータをバッファリングし、STAが起動してこれを受け取るのを待つ。APは、STAが起動したことが分かるとチャネルのために競合し、そのパケットをSTAに送信する必要がある。STAも、起動してチャネルのために競合し、APに接触して自機のためのパケットが存在するかどうかをチェックすることができる。別のオプションは、AP及びSTAがデータを交換するための時間をAP及びSTAがスケジュールすることを可能にする。これらの全てのオプションは、パケット送信にさらなる遅延をもたらし、節電と遅延耐性との間のトレードオフを発生させる。
【0029】
2.2.3.マルチユーザ送信及び受信
802.11WLAN装置は、送信及び受信、並びにOFDMAチャネルアクセスのためのMIMOアンテナの使用を可能にする。IEEE802.11axは、アップリンク及びダウンリンクの両方においてマルチユーザ送信をサポートする。このMIMOサポートは、例えば802.11acのSU-MIMO DLでは最大8つのストリームを通じて、或いは802.11acに規定されるMU-MIMO DL送信を通じた複数のユーザへのマルチユーザ送信を通じて、1又は2以上のユーザへのマルチストリーム送信を可能にする。これにより、APは、そのベーシックサービスセット(BSS)内のSTAに1又は2以上のストリームを割り当てることができる。
【0030】
データ送信に最大160MHzのワイドチャネルを使用すると、このチャネルは、一部の周波数が他とは異なる干渉レベルを受ける干渉周波数選択的になると予想される。これにより、予想される達成可能なレートが影響を受けて性能が低下する。この問題を解決するために、802.11axでは、隣接するサブキャリアをリソースユニット(RU)にグループ化するOFDMAが導入された。これらのRUを異なる受信機に割り当てて送信レートを最大化することができる。このスケジューリングの結果、各受信機の関心信号雑音比(Signal of Interest Noise Ratio:SINR)が最大化されることによって高変調符号化スキーム(MCS)が可能になり、従って達成されるスループットが高まる。なお、SINRは、特定の関心信号の電力を他の全ての干渉信号からの干渉電力と背景雑音からの干渉電力との和で除算したものとして定義される。
【0031】
OFDMAでは、さらなるユーザを同時にスケジュールすることができるので、リソース使用を改善して遅延時間を低減するために多くのユーザが同じ時点で同時リソース(same time resources)を利用し、これらのユーザ間で周波数領域を分割することができる。また、OFDMAでは、データ量の少ないSTAが通信して狭いRUを占有することもでき、従ってスケジューリングが非常に効率的になり、チャネルへの短時間アクセスを必要とするアプリケーション間でのリソース分割を改善することができる。これらの態様は、チャネルアクセス時間、並びにフレームヘッダ及びプリアンブルのオーバーヘッドを低減するのに役立つことができる。
【0032】
OFDMAは、MIMO送信と組み合わさった時にさらに効率的になることができる。STAのMIMO容量に応じて、RUを利用してSTAに複数の空間ストリームを送信することができる。また、STAのMIMO容量に応じて、それぞれが1又は2以上の空間ストリームを有することができる複数のSTAに1つのRUを割り当てて共有することもできる。同じリソースにより多くのSTAを詰め込むことは、STA及びAPの遅延時間の改善に役立つことができる。
【0033】
図8に、DL OFDMA MIMO送信の例を示す。APは、周波数/RUマッピングとSTAのためのRU割り当てとを指定するPHYプリアンブルを全てのSTAに送信している。
【0034】
図9に、UL OFDMA MIMO送信の例を示す。APは、周波数/RUマッピングとSTAのためのRU割り当てとを含むトリガフレームを全てのSTAに送信している。少なくとも1つの実施形態では、UL MIMO送信がトリガフレームの受信と同期し、STAがDLトリガフレームの受信後にSIFの送信を開始する。
【0035】
1.2.4.再送
図10に、STAがパケット送信及び再送のためにチャネルにアクセスすることを可能にする、IEEE802.11 CSMA/CAにおける送信及び再送を示す。CSMA/CAシステムでは、このプロセスが各送信及び再送前に実行され、STAは、チャネルを検知して、チャネルアクセスを求めて競合するためにバックオフ時間を設定する必要がある。バックオフ時間は、ゼロと競合ウィンドウ(CW)のサイズとの間の一様なランダム変数によって決定される。STAは、バックオフ時間にわたって待機し、チャネルがアイドルであることを検知した後にパケットを送信する。STAがタイムアウト前にACKを受け取らなかった場合には、パケットの再送が必要である。そうでなければ、送信は上手くいったとみなされる。
【0036】
再送が必要な場合、STAはパケットの再送回数をチェックし、再送回数が再試行制限を上回る場合、パケットは破棄されて再送はスケジュールされない。そうでなければ、1又は2以上の再送がスケジュールされる。再送がスケジュールされる場合には、この再送のチャネルアクセスを求めて競合するために別のバックオフ時間が必要になる。競合ウィンドウのサイズが競合ウィンドウ上限(CW制限)に達していない場合には、STAがCWを増やして実行はフロー図の最上部に戻り、従ってSTAは、新たなサイズの競合ウィンドウ(CW)に応じて別のバックオフ時間を設定する。STAは、再送のためのバックオフ時間にわたって待機し、以下同様である。
【0037】
図11に、通常のWLANシステムにおけるデータフレームフォーマットを示す。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信するSTAのアドレスを含む。シーケンス制御(Sequence control)フィールドは、パケットのフラグメント数及びシーケンス番号を含む。データ及びFCSフィールドも存在する。
【0038】
図12に、通常のWLANシステムのACKフレームフォーマットを示す。フレーム制御フィールドは、フレームのタイプを示す。継続時間フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。
【0039】
図13に、再送のためにバックオフ時間が増加するCSMA/CAの再送のシナリオを示す。データフレーム及びACKフレームは、それぞれ図11及び図12に示すフォーマットを使用する。送信側は、パケットの初期送信を送信した後にタイムアウトまでACKを受け取っていない。この結果、送信側は別のバックオフ時間を設定し、これによって競合ウィンドウのサイズはnスロットになる。送信側STAは、バックオフ時間にわたって待機した後に初めてパケットを再送する。しかしながら、この例ではこの再送も失敗している。送信側STAはパケットを再送する必要があり、再びチャネルアクセスを求めて競合するためにバックオフ時間を設定する。今回は、再送に起因して競合ウィンドウのサイズが2倍の2*nスロットである。この競合ウィンドウサイズによって予想バックオフ時間も2倍になる。この第2の再送は、タイムアウト前にACKを受け取ったので成功している。
【0040】
図14に、再送回数が再試行制限を上回った後にパケットが破棄される一例を示す。データパケットフレーム及びACKフレームは、それぞれ図11及び図12に示すフォーマットを使用する。図示のように、送信側STAは、パケットの初期送信が失敗した後にこのパケットを複数回再送している。しかしながら、どの再送も成功していない。N回の再送後に、再送回数が再試行制限を上回る。送信側STAは、このパケットの再送を停止し、このパケットは破棄される。
【0041】
図15に、OFDMAを使用するダウンリンクマルチユーザ(DL MU)送信の例として、OFDMAシステムのダウンリンクにおけるCSMA/CA再送スキームを示す。送信側APは、その受信側1、2、3及び4に、HE MU PPDUフォーマットを使用してデータを送信する。APは、初期送信を終了した後に、全ての受信側にマルチユーザブロックACK要求(MU-BAR)を送信する。その後、受信側は、APにブロックACK(BA)を返送する。APは、BAの内容に従って受信側1、3及び4にパケットを再送すべきかどうかを判定する。APは、チャネルのために競合し、バックオフ時間にわたって待機する。第1の再送は、APがチャネルアクセス権を獲得した後に行われる。
【0042】
図16に、OFDMAを使用するアップリンクマルチユーザ送信の例を示す、OFDMAシステムのアップリンクにおけるCSMA/CA再送スキームを示す。APは、最初に全ての送信側1、2、3及び4にトリガフレームを送信する。送信側はトリガフレームを受け取り、トリガフレームによって配分されたリソースブロックを使用して初期送信を開始する。マルチユーザ送信パケットは、HE-TB PPDUフォーマットを使用する。APは、送信側からパケットを受け取り、BAフレームを送信して送信の正確性を報告する。ここでは、送信側2からのデータを搬送するパケットのみが正しく受け取られたことを例示する。送信側1、3及び4については、再送をスケジュールする必要がある。APは、チャネルのために競合し、バックオフ時間にわたって待機してチャネルアクセス権を獲得する。その後、初期送信と同様に再送が進行する。
【0043】
1.2.5.UL OFDMAランダムアクセス
802.11axでは、どのSTAが送信すべきデータを有しているか、又は関連しないSTAがいつデータを送信したいと望んでいるかをAPが分かっていない場合のUL送信のためにUL OFDMAランダムアクセスが導入された。トリガフレームは、ランダムULチャネルアクセスのためにいくつかのRUを配分することができる。APがアップリンクランダムアクセスのために特定のULを割り当てると、STAは、OFDMAバックオフ手順を使用して、ランダムアクセスチャネルにアクセスするかどうかを決定する。この決定は、バックオフ乱数値を選択し、この値をランダムアクセスのために割り当てられたRU数と比較することによって行われる。現在のバックオフ乱数値がRU数を下回る場合、STAは、ランダムアクセスのために割り当てられたRUのうちの1つにランダムにアクセスする。このランダムアクセス法は、ショートパケット送信の効率を高めると期待されている。
【0044】
1.2.6.遅延に影響を与えるPHYパラメータ
1.2.6.1.帯域幅
802.11は、チャネライゼーション又は様々な帯域幅を可能にする。1つのSTA送信又は受信に割り当てられるチャネルは、20MHz、40MHz、80MHz又は160MHzとすることができる。一般に、帯域幅が増えると、チャネルが占有されていない時にユーザが送信機会を得る頻度が高まるので、データスループットの向上に役立つとともに、必然的に他のユーザ送信のためにチャネルが解放されて、ユーザがより短い時間で送信を完了できるようになるはずである。しかしながら、他の影響としてより多くの遅延が生じ、利用されるさらなる帯域幅がチャネル雑音を増加させ、これによって受信信号に悪影響が及ぶこともある。また、この高い帯域幅は、いずれかのユーザがロックされたチャネルの一部を利用することに伴って干渉の可能性を高めてしまう。この場合のチャネルは、干渉周波数選択的とすることができる。この結果、受信及び再送の両方でエラーが生じることがある。上述したように、WLANにおけるパケット再送は著しい遅延を誘発することがある。
【0045】
1.2.6.2.変調
802.11acは、最大256QAMのコンステレーションを可能にし、802.11axは、最大1024QAMを可能にする。このことは、データスループットを数ギガビットまで高めるのに役立つことはできるが、信号は雑音及び干渉の影響を非常に受けやすくなる。信号対干渉及び雑音の比率が十分に高くない場合には、これによって復号エラーが生じ、受信信号の再送が必要になると思われる。このことが、信号の遅延を悪化させる遅延原因となる恐れがある。
【0046】
また、802.11axは、トーン数を増やすためにOFDMシンボル長を12.8μsに増加させ、チャネル状態に応じてこれらの中から複数のガードインターバル(0.8μs、1.6μs、3.2μs)(GI)が選択されることを可能にする。この結果、オーバーヘッドが減少して送信効率が向上した。
【0047】
802.11axは、オプションのデュアルキャリア変調(DCM)機能の使用を通じてサブキャリア上でのデータの複製を可能にした。この機能は、送信の信頼性を高めてPERを低下させた一方で、リソース使用の倍加によってスループットが半減した。
【0048】
1.2.6.3.フレーム長
802.11に追加された新機能は、プリアンブル及びフレームヘッダにさらなる情報がプッシュされることを必要とした。この結果、オーバーヘッドがさらに増加してリソース利用効率が低下した。このような高レートのオーバーヘッドを抑えるために、802.11acではフレームの最大長が4692480ビットに増加した。ショートパケットには長いフレームが適しておらず、オーバーヘッドが非常に高くなる。
【0049】
2.課題の記述
通常、遅延感度の高いアプリケーションを実行するWLAN STAは、WLANサービスを通じて動作する際に劣化し、従ってしばしばユーザ体験を悪化させ、或いはこれらのアプリケーションについてはWLANサービスに依拠できないこともある。802.11標準で規定される現在の無線プロトコルは、最善努力型のサービスを提供するように設計されている。WLAN装置間のパケット送信の平均遅延は通常は適切であるが、遅延感度の高いアプリケーションでは最悪遅延が容認できないことが多い。
【0050】
パケット送信の遅延の主な原因の1つは、チャネルアクセスに関連する遅延によるものである。WLAN装置は、チャネルにアクセスする前にチャネルを検知する必要がある。WLAN装置は、チャネルが使用中であると分かった場合、チャネルアクセスのために競合する必要がある。この競合は、チャネルアクセスを体系化し、複数の装置が同時にそのチャネルにアクセスしようと試みている時に衝突を回避するCSMA/CAプロトコルを使用することによって行われる。しかしながら、遅延感度の高いアプリケーションは、チャネル競合に関連する遅延の影響を受ける。UL又はDLのMU-MIMO送信は、スペクトル効率良く設計されているにもかかわらず、スケジューリング及びチャネルアクセスのオーバーヘッドに起因してなおもパケット送信を遅延させることがある。
【0051】
3.本開示の寄与
本開示では、MU-MIMO UL及びDL送信のためのパケット到着前競合手順を提案する。アプリケーションを実行するSTAは、WLAN装置のMAC層にリアルタイムアプリケーションパケットの予想到着時刻を通知する。リアルタイムアプリケーションパケットの予想到着時刻に関する情報を受け取ったMAC層は、送信遅延を低減するのに役立つようにパケット到着前にチャネルアクセスのために競合し、パケットを受け取った時点で既にパケット送信のためにチャネルが予約されているので、たとえRTAパケット到着前であってもUL又はDL送信をスケジュールすると決定する。
【0052】
4.局ハードウェア構成
図17に、バス14に結合されたコンピュータプロセッサ(CPU)16及びメモリ(RAM)18を有し、STAにセンサ及びアクチュエータなどへの外部I/OをもたらすI/O経路12にバス14が結合されたハードウェアブロック13内へのI/O経路12を示す、STAハードウェア構成の実施形態例10を示す。プロセッサ16上では、STAが「新規STA」又は既にネットワーク内に存在するSTAのうちの1つの機能を実行できるように実行される通信プロトコルを実装するプログラムを実行するための、メモリ18からの命令が実行される。また、このプログラミングは、現在の通信状況でどのような役割又は役割の組み合わせを果たしているかに応じて異なるモード(送信元、中間、宛先、アクセスポイント(AP)、非アクセスポイント及びRTA局など)で動作するように構成されると理解されたい。
【0053】
STAは、単一のモデム及び単一の無線周波数(RF)回路を含むように構成することも、或いは限定ではなく一例として図示するように複数のモデム及び複数のRF回路を含むように構成することもできる。この例では、図示のホストマシンが、近隣STAとの間でフレームを送受信する複数のアンテナ24a~24n、25a~25n、26a~26nへの無線周波数(RF)回路22a、22b、22cに結合されたミリメートル波(mmW)モデム20を含むように構成される。また、このホストマシンは、(単複の)アンテナ29への無線周波数(RF)回路28に結合されたsub-6GHzモデム27を含むことも分かる。
【0054】
従って、この図示のホストマシンは、2つの異なる帯域で通信を行えるように、2つのモデム(マルチバンド)及びその関連するRF回路を含むように構成される。限定ではなく一例として、対象の指向性通信帯には、mmW帯でデータを送受信できるようにmmW帯モデム及びその関連するRF回路が実装される。一般に発見帯と呼ばれる他方の帯域は、sub-6GHz帯でデータを送受信できるようにsub-6GHzモデム及びその関連するRF回路を含む。
【0055】
この例では、mmW帯のためのRF回路を3つ示しているが、本開示の実施形態は、いずれかの任意の数のRF回路に結合されたモデム20を含むように構成することができる。一般に、使用するRF回路の数が多ければ多いほど、アンテナビーム方向のカバレッジが広くなる。なお、利用するRF回路の数及びアンテナの数は、特定の装置のハードウェア制約によって決まると理解されたい。RF回路及びアンテナの中には、STAが近隣STAと通信する必要がないと判断した時に無効にできるものもある。少なくとも1つの実施形態では、RF回路が、周波数変換器及びアレイアンテナコントローラなどを含み、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数組のビームパターンを使用して信号を送信することができ、各ビームパターン方向がアンテナセクタとみなされる。
【0056】
従って、ホストマシンは、近隣STAとの間でデータフレームを送信/受信するモデムを収容することが分かる。モデムは、物理信号の生成及び受信を行う少なくとも1つのRFモジュールに接続される。(単複の)RFモジュールは、周波数変換器、アレイアンテナコントローラ、及び必要に応じてその他の回路を含む。(単複の)RFモジュールは、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、複数組のビームパターンを使用して信号を送信することができる。
【0057】
5.検討中のトポロジ
図18に、以下の説明のためのトポロジ例30を示す。このトポロジには、複数のBSS32、34、36を示す。BSS1 32は、非RTAストリームを実行するアクセスポイント(AP)38aと、RTAストリームを実行するSTA38bと、非RTAストリームを実行するSTA38c、38d及び38eとを有していると考えられる。図を簡素化するために、AP自体を除き、他のSTAはいずれもAPとはみなさない。同様に、BSS2 34には、RTAストリームを実行するAP42aと、RTAストリームを実行する3つのSTA 42b、42c及び42dと、非RTAストリームを実行するSTA42e及び42fとが存在する。BSS3 36には、RTAストリームを実行するAP40aと、非RTAストリームを実行するSTA40b、40c、40d及び40eとが存在することが分かる。これらのBSSは同じチャネルを共有しており、ここでは装置の一部がRTAを実行して、データを送信するために素早いチャネルアクセスを保証する必要がある。
【0058】
図19に、毎期間54に限られた量のデータ52(限られた長さの1又は2以上のパケット)を生成しているリアルタイムアプリケーション(RTA)をSTAが実行する例50を示す。図示のように、RTAパケットは、RTAを実行するSTAのMAC層に予想時刻に到着しており、好ましくはリアルタイムアプリケーションがリアルタイムで応答し続けるようにリアルタイムで送信されるべきである。RTAパケットが受け取られると、リアルタイムアプリケーションがMAC層にRTAセッションパラメータを通知することなどによって、次のRTAパケット到着時刻が予め分かる。各BSSは1つのAP及び複数のSTAを含み、これらの各々がRTAセッションを実行することができる。各RTAセッションは、限られた長さを有するパケットを特定の周期性で生成させると予想される。
【0059】
図18に示すように、複数のBSSからの局が、RTAセッション及び他の非RTAセッションのチャネルアクセス権を獲得するために競合する。各BSSは、RTAを実行するいくつかのSTAを含むように例示しているが、RTAは遅延耐性が低いので、パケットの送信準備ができた時点でさらに容易にチャネルにアクセスできるべきである。APは、自機のRTAパケットを優先し、自機のBSS内の他のSTAからのRTSを拒絶することによって、これらに自機のBSS内のチャネルを要求している他のSTAよりも大きな(高い)優先度を与えることができる。APは、依然として周辺エリア内の他のBSSからの他のSTAと競合できる必要がある。STA及びAPは、MIMOアンテナを備えることができる。
【0060】
6.チャネルアクセス遅延
パケットは、送信側のアプリケーション層で生成された後に、受信側のアプリケーション層に供給される時点まで数多くのタイプの遅延を受けることがある。これらの遅延の1つは、チャネルが空いていて未使用の場合のチャネルアクセス権の獲得に関連する遅延を表すチャネルアクセス遅延である。以下では、この遅延の原因を識別しようと試みる。
【0061】
WLANを使用するいずれかのSTAは、トークする前にリスンする必要があるのに対し、CSMA/CAを使用するSTAは、チャネルへのアクセス前にチャネルを検知して衝突を回避する。いずれかの局は、チャネルへのアクセス前にチャネルを検知すべきであり、チャネルが空いている場合、STAはそのチャネルにアクセスすることができる。チャネルが占有されている場合、STAは、そのチャネルにアクセスしようと試みている他のSTAとの衝突の可能性を最小化するために、チャネルが空くまで待つべきである。チャネルは、チャネル上のエネルギーを検出することを通じて、又はパケットヘッダを受け取ることによって、空いている又は使用中であるとみなされる。一部が同時にチャネルにアクセスしようと試みる多くのSTAとの媒体の共有に起因して2つのチャネルが同時にチャネルにアクセスして両送信パケットストリームが衝突するのを防ぐために、衝突回避機構が利用される。
【0062】
図20に、いくつかのチャネルアクセスシナリオ例70を示す。図の右側に示す最初の事例では、チャネルアクティビティ72の使用中部分73aの最中の時点76にパケット74が到着する。STAは、チャネルのために競合し、ランダムバックオフ(ランダムバックオフタイマ)73bを実行し、チャネルが使用中でなければパケット73cを送信するためにチャネルにアクセスする(75)。
【0063】
図の中央のシナリオを参照すると、チャネルが使用中でない(空いている)時点82にRTAパケット80が到着した場合、STAは、チャネルの即時アクセス77を獲得して直ちにRTAパケット78の送信を開始する。
【0064】
図の左側のシナリオを参照すると、RTAパケットの到着後、たとえ再びチャネルが空いた場合でも、STAはそのチャネルにアクセスできない場合があると理解されたい。例えば、パケット到着時に使用中であるチャネル86aを示すチャネルアクティビティ85が見られる時点88にパケット84が到着すると、STAは、チャネルが空くまで待って自機のバックアップタイマ86bを設定するが、この時間中、バックオフタイマが満了する前に他の何らかのチャネルがチャネルへのアクセス権を獲得する場合もある。従って、バックオフ間隔後にも依然としてチャネルは使用中86cであり、これがさらなるバックオフ間隔86d及び使用中期間86e、その後のバックオフ86fを含めて複数回発生し、その後にパケット89送信のためのチャネルアクセス87が獲得されることが分かる。RTAパケット到着からチャネルアクセス時間までの時間間隔はチャネルアクセス遅延を表し、これがWLANパケット送信の遅延の最も大きな原因の1つと考えられる。
【0065】
7.パケット到着前チャネル競合
7.1.RTAストリーム設定
MAC層は、別様に取り扱う必要があるRTAのパケットを認識すべきである。MAC層は、チャネルにアクセスし、送信されるはずの正確な時点でRTAパケットを送信することに重点を置いた特別なプロセス(例えば、アルゴリズム)を実行すると予想される。アプリケーション層は、リアルタイムアプリケーションを開始すると、MAC層にRTAセッションの開始を通知すべきである。アプリケーション層は、リアルタイムアプリケーションを開始すると、MAC層にRTAセッションのパラメータを通知すべきである。チャネルアクセスのために使用されるパラメータは、(a)最大RTAパケット長、(b)チャネルアクセス毎に受け取るべき最大パケット数、(c)RTAパケットのチャネルアクセス周期性、(d)RTAパケットを生成してMACに送信すべき予想時刻、及び(e)最大遅延許容差を含む。
【0066】
図21に、アプリケーション層又は他のいずれかの上位層112からのプリミティブパラメータがPHY層116よりも上位のMAC層114に送信される実施形態例130を示す。
【0067】
図22には、少なくとも以下を含むチャネルアクセスパラメータを有する新規セッション要求の実施形態例130を示す。(a)新規セッション要求(New Session Request)は、第1の状態に設定された場合にアプリケーション層が新規RTAセッションを開始していることを示すフィールドである。新規セッション要求フィールドがこの第1の状態に設定されていない場合には、以下のパラメータが、以前に開始されたRTAセッションの更新を表す。本文書で説明するこの及びその他のフィールドでは、単一ビットのTrue(真)/False(偽)フィールドに正又は負論理を利用することができ、マルチビットフィールドには、本開示の教示から逸脱することなくいずれかの所望の表現形式を使用することができると理解されたい。MAC層は、新規セッション要求を受け取って受諾した時点でRTAセッションを開始すべきである。RTAセッションを開始する詳細については、以下の節で説明する。
【0068】
(b)セッションID(Session ID)フィールドは、開始されるRTAセッションへの参照においてセッションIDを示すためにアプリケーション層によって利用される。MAC層は、以下のパラメータをセッションIDに関連付ける。このRTAセッションに関するさらなる上位層とMAC層との間のいずれかのさらなる通信は、このセッションIDを含むべきである。この通信は、RTAセッションの更新、削除又は修正を含む。
【0069】
(c)最大RTAパケット長(Maximum RTA Packet Length)フィールドは、MAC層に供給される各パケットのビット単位の又は時間に関する最大サイズを表す。MAC層は、この情報を使用して、RTAのための各チャネルアクセスに必要な時間を推定する。
【0070】
(d)各チャネルアクセスの受信パケット数(Number of Packets to be Received)フィールドは、各RTAチャネルアクセスについてMAC層に供給すべき最大パケット数を示す。MAC層は、この情報を使用して、RTAのための各チャネルアクセスに必要な時間を推定する。上位層がパケット数及びパケットサイズの代わりに各チャネルアクセスに必要とされる時間を送信する場合、これらの2つの変数は1つの変数に組み合わせることができると理解されたい。
【0071】
(e)パケット周期性(Packet Periodicity)フィールドは、RTAパケットの1つの予想時刻後にMAC層が次のRTAパケットの到着を予想すべき時刻を表す。これは、RTAパケットのチャネルアクセスの周期性である。MAC層は、この情報を使用して、上位層からRTAパケットが到着する時刻を推定する。
【0072】
(f)最大遅延許容差(Maximum Delay Tolerance)は、上位層から受け取られたパケットによって許容される最大遅延を表すフィールドである。MAC層は、このフィールドの値に応答して、最大遅延許容差の経過後はパケットを破棄して供給しようと試み続けない。
【0073】
(g)セッション有効期限(Session Life time)は、RTAセッションがどれほどの長さ(期間)にわたってアクティブであるかを表すフィールドである。この長さは、RTAパケット生成時間の開始に対する時間として表すことも、或いはRTAパケット送信の周期的サイクル数の観点から表すこともできる。MAC層は、セッション有効期限によって定められる期間にわたってRTAパケットの到着を予想している。
【0074】
図23に、後述するRTAストリームの開始及び受信パラメータに応答してMAC層が上位層に送信できる、新規セッション要求に対する応答のプリミティブパラメータの実施形態例150を示す。
【0075】
(a)応答(Response)フィールドは、受け取られた要件がそのまま達成されるかどうかを示す。第1の状態(例えば、1)に設定された場合、アプリケーション層はパラメータを変更する必要がない。第2の状態(例えば、0)に設定された場合、アプリケーション層は、提案されるパラメータを受諾し、又は新たなパラメータセットを再送すべきである。
【0076】
(b)セッションID(Session ID)フィールドは、この応答及びパラメータがどのRTAセッションを参照しているかを示す。アプリケーション層は、この情報を使用してセッションIDを他の全てのRTA実行セッションに一致させる。
【0077】
(c)最大RTAパケット長(Maximum RTA Packet Length)フィールドは、応答がゼロであった場合に提案される、MAC層に供給される各パケットのビット単位又は時間単位での最大サイズを表す。MAC層は、この情報を使用して、RTAのための各チャネルアクセスに必要な時間を推定する。
【0078】
(d)各チャネルアクセスの最大受信パケット数(Maximum number of packets to be received)は、パケットの応答回数がゼロとして示された場合に提案される、RTAチャネルアクセス毎にMAC層に供給すべきパケットの最大数を表すフィールドである。MAC層は、この情報を使用して、RTAのための各チャネルアクセスに必要な時間を推定する。なお、上位層がパケット数及びパケットサイズの代わりに各チャネルアクセスに必要とされる時間を送信する場合には、上記2つのフィールドを1つの変数に組み合わせることができる。
【0079】
(e)パケット周期性(Packet Periodicity)フィールドは、メッセージ内の応答フィールドがゼロに設定された場合に提案される、RTAパケットの1つの予想時刻後にMAC層が次のRTAパケットの到着を予想できる時刻を表す。これは、RTAパケットのチャネルアクセスの周期性である。MAC層は、この情報を使用して、上位層からRTAパケットが到着する時刻を推定する。
【0080】
(f)最大遅延許容差(Maximum Delay Tolerance)フィールドは、メッセージ内の応答フィールドがゼロに設定されている場合に提案される、上位層から受け取られたパケットによって許容される最大遅延を表す。応答がゼロである場合、このフィールドは、MAC層がAPP層に新たなパラメータを提案しており、APP層によって要求されるパラメータを受諾していないことを示す。MAC層は、最大遅延許容差の経過後はパケットを破棄して供給しようと試み続けない。
【0081】
(g)セッション有効期限(Session Lifetime)フィールドは、RTAセッションがどれほどの長さにわたってアクティブであるかを表し、RTAパケット生成時間の開始に対する時間として指定することも、或いはRTAパケット送信の周期的サイクル数の観点から指定することもできる。MAC層は、セッション有効期限によって定められる期間にわたってRTAパケットの到着を予想している。
【0082】
7.2.競合及びチャネル統計
STAは、適切な時点でRTAパケット送信を準備できるように、チャネルがどれほど使用されているかに関する統計を収集する必要がある。チャネルが完全に空いている場合、STAは競合することなくチャネルにアクセスすることができる。チャネルが占有されている場合、STAはチャネルが空くまで待機し、チャネルにアクセスするためにバックオフタイマを実行する。タイマが切れると、STAはチャネルにアクセスすることができる。RTAパケットが時間通りに供給されることを確実にするために、パケットが到着した時点でチャネルを予約し、又はまさに予約しようとすべきである。STAは、いつチャネルを試行してアクセスすべきであるかに関する正しい判断を行うためにチャネルの統計を知る必要がある。
【0083】
チャネル統計は、以下のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。(a)チャネルにアクセスしているSTAの数に関する情報。この情報は、(a)(i)STAが一部を成す同じBSSIDからチャネルにアクセスしている周辺のSTAの数、(a)(ii)チャネルにアクセスしている周辺の、STAが一部を成すものとは異なるBSSIDに属するSTAの数、及び(a)(iii)チャネルにアクセスしている周辺の、どのBSSIDの一部であるかを検出できないSTAの数、にさらに分割することができる。なお、STAは、検出されたPHYヘッダと、場合によってはMACヘッダとを利用して統計を推定することができる。(b)チャネルが他のSTAによって占有されている時間の割合。この情報は、(b)(i)同じBSSIDのSTAによってチャネルが占有されている時間の割合、(b)(ii)異なるBSSIDのSTAによってチャネルが占有されている時間の割合、及び(b)(iii)BSSIDが識別されないSTAによってチャネルが占有されている時間の割合、にさらに分割することができる。なお、STAは、検出されたPHYヘッダと、場合によってはMACヘッダとを利用して統計を推定することができる。(c)チャネル遅延アクセス時間は、パケットの送信準備が整った時点でチャネルにアクセスするための平均時間を表す。(d)バックオフタイマ割り込み統計は、バックオフタイマが割り込まれた回数の統計を表す。
【0084】
なお、STAは、これらの統計を収集するために常に起動している必要はなく、例えばSTAは、(定期的に又は状態/入力に応答して)起動して期間毎にこれらの統計を計算することができる。STAは、チャネルにアクセスしようと試みている間に統計の収集のみを行うモードに入ることによってエネルギーを節約することができ、従って統計収集のみを目的として起動する必要はない。
【0085】
7.3.早期競合ウィンドウ期間
STAは、RTAセッションを確立すると、次のRTAパケット到着のためのタイマを実行し始める。本開示によれば、STAは、RTAパケットの到着前であってもチャネルアクセスのために競合することができる。この目的は、パケット到着の直前に誰かがチャネルへのアクセス権を獲得するのを避けるためである。パケット到着よりも早期競合ウィンドウ期間だけ早い期間中にチャネルが使用中である場合、STAは競合を開始すべきである。この時間中にチャネルが空いている場合、STAはチャネルの状態をモニタし続ける。早期競合ウィンドウ期間のサイズは、チャネルの占有率が高いこと(例えば、STAが多いこと、チャネルの占有時間が長いこと、チャネルアクセス遅延率が高いこと、又はバックオフタイマ割り込み率が高いこと)を示している収集された統計に関連すべきである。早期競合ウィンドウ期間長は、手動で固定値に設定することも、或いはチャネル統計に従って動的に調整することもできる。
【0086】
図24に、早期競合ウィンドウ期間の動的調整を表す実施形態例170を示す。ルーチンが開始されると(172)、RTAセッションが開始され(174)、早期競合ウィンドウ(ECW)期間がゼロ又は初期値に設定される(176)。チャネルの統計は、このフローチャートではループとして示す一定期間にわたって更新され、チャネルが混雑していればしているほどECW期間の値が増加する。チャネルの混雑度が低下するとECW期間の値も減少する。
【0087】
具体的には、チャネル統計を収集し(178)、チャネルの占有率が高いかそれとも低いかをチェックする(180)。この判定は閾値レベルに依存し、閾値レベルよりも上ではチャネルの占有率が「高い」とみなされ、閾値レベルよりも下ではチャネルの占有率が「低い」とみなされる。占有率が低いことが分かった場合、実行はブロック182に到達し、ECW期間値を最小値(例えば、ゼロ)に向けて減少させる。或いは、占有率が高いことが分かった場合、実行はブロック184に到達し、ECW期間値を最大値に向けて増加させる。いずれの場合にも、その後にRTAセッションが依然としてアクティブであるかどうかをチェックする(186)。依然としてアクティブである場合には、タイマの満了を待って(188)ブロック178に戻り、そうでなければ実行は終了する(189)。
【0088】
なお、この及びその他のフロー図は、図を簡素化するためにフローを単純に線形時間で示している。しかしながら、実行されるステップは、フローチャートのステップがそのタスク及び/又はスレッド内で実行される一方で他の動作が他のタスク及び/又はスレッドのために実行されるマルチタスク環境又はマルチカーネル環境で実行することもできると理解されるであろう。
【0089】
7.4.早期チャネルアクセスウィンドウ
RTAを実行するSTAは、RTAパケットの推定到着時刻前にチャネルを占有して、他の局がその時点でチャネルを占有しないことを保証することができる。推定されるRTAパケット到着前のSTAがチャネルを占有できる期間が、早期チャネルアクセスウィンドウ(ECAW)である。STAは、この時間中にチャネルへのアクセス権を獲得すると決定した場合、推定されるRTAパケットの到着時刻までにRTAパケットの送信準備が整うことを条件に、対象とするSTA又は他のいずれかのSTAにパケットを送信し始める。STAは、ECAW中に送信すべきパケットを有しておらずにチャネルを占有する必要がある場合、チャネルを占有するためにヌル又はダミーパケットを送信して、他者がチャネルを使用できないようにする。ECAWは短期間と予想されるため、不必要な送信で過度にチャネルを占有しないようにすべきである。
【0090】
7.5.RTAパケット到着前のチャネル競合STA
APは、アクティブなRTAセッションを有すると、いつでもチャネルの早期競合を開始することができる。APに関連するSTAは、そのスリープ及び起動サイクルをSTA RFがオフであること又はパケット受信準備が整っていないことに起因するパケット損失又はパケット遅延を避けるように調整するために、AP RTAパケットセッションに関する情報を取得しなければならない。APは、RTAストリームの開始及びこれに関連するパラメータについてSTAに通知するフレームをSTAに送信する。STAは、RTAストリーム開始フレームの受信を確認応答し、これに従ってそのスリープ及び起動スケジュールを調整する。
【0091】
AP STAは、RTAセッションがアクティブである間のいずれかの時点で、ECW及びECAWパラメータの更新要求を送信することができる。少なくとも1つの実施形態では、APが、競合前パラメータが更新される度にSTAに通知するように構成され、STAはパラメータ更新フレームの受信を確認応答する。
【0092】
図25に、AP STA192が関連するSTA194にPPACC要求又は情報フレームを送信する(196)実施形態例190を示す。APは、RTAストリームを開始する意図をSTAに通知する。STAは、この要求に対して確認応答(ACK)フレームで応答する(198)。APは、PPACC要求/情報フレームの受信を確認応答した後に、ECA期間要求/情報を送信する(200)ことによっていつでもRTAセッションパラメータを更新することができる。STAは、フレームの受信を確認応答(ACK)し(202)、このRTAセッションに関連するパラメータを更新すべきである。このセッションでは、ECA204及びその後のACK206を複数回行うことができる。
【0093】
8.MU-MIMO早期チャネル競合
1人のユーザがチャネルにアクセスしているSISO又はSU-MIMO送信と同様に、STAは、MU-MIMO/OFDMAを使用してチャネルにアクセスする場合、送信前にリスンして送信前にチャネル占有されていないことを確認する必要がある。
【0094】
図26に、チャネルが空いており(212)、従ってRTAパケットの到着時214に送信がOFDMAフレーム送信を開始する例210を示す。APは、共通プリアンブル216を送信した後に、割り当てられたリソースユニット(RU)でパケット送信218を行う。APは、RTAパケットを受信すると予想されるSTAに、割り当てられたRUのうちの1つでRTAパケットを送信する。
【0095】
図27に、チャネルが占有されている(使用中である)232時にSTAがチャネルへのアクセス権を獲得するために競合プロセスを開始し、この競合プロセスがパケット遅延を招く場合の例230を示す。この図には、アプリケーションからのRTAパケット到着234を示しており、従ってチャネルが占有されていない時にバックオフ間隔238を使用して競合が開始し、ここではMU-MIMO/OFDMA送信に参加している全てのSTAに対してチャネル上で共通プリアンブル240でバックオフ送信が開始した後にアクセス権が獲得されると仮定する。この共通プリアンブルは、ここではSTA1、STA2、RTA TX、STA4、STA5、STA6として例示する参加中のSTAと、これらの各STAのRUの配分242とに関する情報を有する。
【0096】
DLのためにMU-MIMOを適用する又はUL MU-MIMOを可能にするAPは、OFDMA又はMU-MIMO送信を使用する際に、上述した同じアルゴリズムを適用することができる。STAは、ECWP及びECCAを使用してチャネルのアクセス権を獲得することができる。STAは、たとえデータがバッファリングされる前であってもRTAパケットを送信するようにスケジュールすることができる。
【0097】
MU-MIMO/OFDMA送信では、DL送信であるかUL送信であるかにかかわらず、APがMU-MIMO又はOFDMA送信を協調させる責任を負う。いずれの場合にも、APは、チャネルのアクセス権の獲得及び送信の協調に対して責任を負う。
【0098】
8.1.DL送信
APは、STAにRTAパケットを送信していてRTAパケットの予想到着時刻に関する情報を取得している場合、パケットの到着を待った後にチャネルを検知して、チャネルが使用中であるか否かを判定することができる。チャネルが占有されていない場合、APは、図27に示すようにRTA STAを含む複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット送信をスケジュールすることができ、ここではRTA TXが何らかの空いているRUに割り当てられる。
【0099】
使用中チャネルのシナリオにおけるRTAパケットは、チャネル競合時間に起因する遅延を受ける。なお、他のSTAもチャネルにアクセスしようと試みることによってAPがこのチャネルへのアクセス権を獲得できず、これらの他のSTAのバックオフタイマのうちの1つがAPよりも前に切れた場合、この時間は図示のものより長くなることもあると理解されたい。いずれの場合にも、本開示によるAPは、チャネルが必要とされる時間を認識しており、リソースを「事前予約」(早期にチャネルを予約)してRTAパケットのためのチャネル時間を保証することができる。
【0100】
8.1.1.早期チャネルアクセス
本開示によるAPは、予想されるRTAパケット到着時刻を取得しており、従ってパケット到着前にチャネルを予約しようと試みる。APは、カウントダウンタイマを新たなRTAパケットの予想到着時刻に設定する。APは、RTAパケットを受け取る度にRTAパケットタイマを設定し、新たなRTAパケットの到着までのカウントダウンを開始する。APは、カウントダウンタイマがcountdown_channel_monitor_timeに等しい値に達した時にチャネルのモニタリングを開始して、新たなRTAパケットの到着時刻前にチャネルが使用中であるかどうかを確認する。チャネルが使用中でない場合、APは、チャネルへのアクセスを獲得する時点であるcountdown_early_channel_access_timeに等しい値にカウンタが達するまでチャネルをモニタし続ける。APは、チャネルをモニタしているいずれかの時点でチャネルが使用中になった場合、チャネルアクセスのための競合を開始してチャネルへのアクセス権を獲得する。APは、他のSTAへの送信を有していてRTAパケットの到着前に意欲的にRTAのためのリソースを事前予約(チャネルを早期予約)する場合、RTAパケット到着前にチャネルをモニタすることなく、RTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得すると決定することができる。
【0101】
8.1.2.RTAパケット到着までのパディング送信
本開示によるAPは、予想されるRTAパケット到着時刻に関する情報を取得しており、従ってパケット到着時刻前に準備を整えることができる。APは、MU-MIMOを使用してRTA STA及び他のSTAにも送信できる、同じBSS内のSTAに送信すべき他のデータを有することができる。APは、RTAパケットの到着時又は到着前にチャネルへのアクセス権を獲得することができ、APの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合には、依然としてRTA STA DL送信にRUを割り当ててMU-MIMO送信を開始する。
【0102】
図28に、MACバッファにおけるRTAパケット到着264前に、従って未だRTAパケットが送信のために利用可能でない時に既にMU-MIMO送信が開始されている場合の実施形態例250を示す。パケット到着前チャネル検知を通じてチャネルが使用中252であることが分かり、APはチャネルをモニタする(257)。チャネルの使用中は早期CW期間256の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ258を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス259も実行する。APは、チャネルへのアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル260でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、たとえ未だRTAパケットが到着していない場合でも、RTA STAを含む複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット262送信を開始し、ここではRTA TXがいくつかの空いているRUに割り当てられる。ここでは、APがRTAパケット到着264前にパディング263を生成し、その後にRTAが送信される(265)ことが分かる。従って、APはDL MU-MIMOの送信を開始し、図示のようにRTA TXパケットの最初にパディングを配置する。RTAパケットがMACキューに到着すると、パディングデータは中断されてRTAパケットデータが送信に加えられる。
【0103】
図29に、RTAパケットデータ送信がDL MU-MIMOの送信後に開始されてその終了前に終了し、APがRTAパケットデータの後にパディングを追加して、RTA STAに割り当てられたRU上でのデータ送信の最後を他のSTAに割り当てられたRUの送信の最後に同期させる場合の実施形態例270を示す。
【0104】
パケット到着前チャネル検知274を通じてチャネルが使用中272であることが分かり、APはチャネルをモニタする(277)。チャネルの使用中は早期CW期間276の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ278を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス279も実行する。APは、チャネルアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル280で、その後にデータ282でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、たとえ未だRTAパケットが到着していない場合でも、RTA STAを含む複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット282送信を開始し、ここではRTA TXがいくつかの空いているRUに割り当てられる。ここでは、APがRTAパケット到着284前にパディング281を生成し、その後にRTAが送信されて(283)短いRTA TXが完了するので、その後にさらなるパディング285が続くことが分かる。
【0105】
図30に、本開示に従って動作するAPが、RTA送信空間共有及びMU-MIMO送信技術のために割り当てられた時間中にRUにアクセスするように複数のSTAをスケジュールする場合の実施形態例290を示す。この例では、パケット到着前チャネル検知294を通じてチャネルが使用中292であることが分かり、APはチャネルをモニタする(297)。チャネルの使用中は早期CW期間296の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ298を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス299も実行する。APは、チャネルアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル300で、その後にデータ302でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、たとえ未だRTAパケットが到着していない場合でも、RTA STAを含む複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット302送信を開始し、ここではRTA TXがいくつかの空いているRUに割り当てられる。ここでは、APがRTAパケット到着304前にパディング301を生成し、その後にRTAが送信されて(303)MU-MIMO DL送信前に完了し、従ってさらなるパディング305も送信されることが分かる。この例では、RTA TX303がSTA 6 306と共有されている(308)ことが分かる。
【0106】
8.1.3.同じRU上での連続送信のスケジューリング
この例では、本開示に従って動作するAPがRTAパケットの予想到着時刻に関する情報を有し、パケット到着前にその送信を準備することができる。この具体例では、APが、MU-MIMOを使用してRTA STA及び他のSTAにも送信できる、同じBSS内のSTAに送信すべき他のデータを有することができる。APは、RTAパケットの到着時又は到着前にチャネルへのアクセス権を獲得することができ、APの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合には、依然としてRTA STA DL送信にRUを割り当ててMU-MIMO送信を開始する。
【0107】
図31に、RTA STAに割り当てられたRUが、RTAパケット又は通常の非RTAパケットを受け取っている他のSTAと共有される実施形態例310を示す。この共有は、一方のSTA送信を他方の送信後にスケジュールすることによって実行される時間ベースの共有である。RUの時間が2つのSTA間で分割されるので、これらのSTAはRUを時間共有する。
【0108】
パケット到着前チャネル検知314を通じてチャネルが使用中312であることが分かり、APはチャネルをモニタする(317)。チャネルの使用中は早期CW期間316の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ318を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス319も実行する。APは、チャネルアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル320で、その後にデータ322でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、1つがSTA 6 323である複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット322送信を開始し、その後のRTAパケット到着時324にRTAデータが送信される(325)。従って、非RTAトラフィックとRTAトラフィックとの間でRUが共有されたことが分かる。
【0109】
図32に、本開示に従って動作するAPが、RTAパケット送信に割り当てられた時間内のピーク対平均電力比(PAPR)を抑えるために、RTAパケットの前及び/又は後にパディングを利用してMU-MIMOパケットでの常時ビット送信及び伝送を可能にする場合の実施形態例330を示す。PAPRは、所与のパケット送信におけるサンプルの最大電力をその送信の平均電力で除算した間の関係であると理解されるであろう。RTAパケット送信に割り当てられた時間に到達したにもかかわらず未だパケットが利用可能でない場合には、RTAパケットの送信前にパディングが利用される。MU-MIMOパケット送信の終了前にRTAパケットデータ送信が終了した場合には、RTAパケットの送信後にパディングが利用される。
【0110】
具体的に言えば、図にはパケット到着前チャネル検知334を通じて使用中のチャネル332を示しており、APはチャネルをモニタする(339)。チャネルの使用中は早期CW期間336の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ338を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス340も実行する。APは、チャネルアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル341で、その後にデータ342でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、1つがSTA 6 343である複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット322送信を開始する。RTAパケット到着344前にSTA6送信が完了した場合には、パディング345が生成される。RTAパケットの到着時344にRTAデータが送信される(346)。OFDMAフレームの最後よりも前にRTA TX346が完了した場合には、パディング347が生成される。従って、この図では、非RTAとRTAトラフィックとの間でRUが共有されたことが分かる。
【0111】
図33に、本開示に従って動作するAPが、図示のような空間共有及びMU-MIMO送信技術を通じて、RTA送信のために割り当てられた時間中又はRUの他のスケジューリング中にRUにアクセスするように複数のSTAをスケジュールする場合の実施形態例350を示す。
【0112】
具体的に言えば、図にはパケット到着前チャネル検知354を通じて使用中のチャネル352を示しており、APはチャネルをモニタする(357)。チャネルの使用中は早期CW期間356の一部まで継続し、APはチャネルが占有されなくなるのを待つ。APは、他にも送信すべきデータを有しているため、占有されなくなったことが分かるとバックオフ358を開始し、未だ受け取られていないRTAデータのための早期チャネルアクセス359も実行する。APは、チャネルアクセス権を獲得し、最初に共通プリアンブル360で、その後にデータ362でMU-MIMO DL送信を開始する。APは、1つがSTA7 365とRUを共有するSTA 6 363である複数のSTAへのMU-MIMO DLパケット362送信を開始する。図示のようにRTAパケット到着364前にSTA6送信が完了した場合には、パディング367が生成される。RTAパケット到着364時にRTAデータが送信され(366)、OFDMAフレームの最後よりも前にRTA TXが完了した場合にはパディング368が生成される。従って、この図では、非RTAとRTAトラフィックとの間でRUが共有されたことが分かる。
【0113】
8.1.4.DL MU-MIMO RTAを受け取ったSTA
本開示によれば、スケジュールされたDL-MU-MIMO RTAを受け取ったSTAは、たとえRTAパケットの予想到着時刻前であってもRTAパケットがいつ予想されるかを認識する。従って、RTAパケットを予想するSTAは、開示するプロトコルに従うにあたってRTAパケットの予想到着時刻前に休止しない。具体的には、RTAパケットを予想するSTAは、APが早期チャネルアクセス期間よりも前に送信を行える場合には、RTAパケットの予想到着時刻前のcountdown_channel_monitor_timeによって設定された期間に起動し、或いはAPが早期チャネルアクセス期間よりも前にチャネルにアクセスできない場合には、RTAパケットの予想到着時刻のcountdown_early_channel_access_time前に起動する。STA及びAPは、RTA早期競合手順が開始した時にパラメータを交換し、STAは、起動する必要がある時点について通知される。DL MU-MIMOパケットを受け取ったSTAは、プリアンブルをチェックすることによってそのデータ送信の開始を判定することができる。
【0114】
9.1.5.同じRUを介した遅延したスケジューリング及びカスケード化されたスケジューリングの許容
現在のところ、802.11axでは、プリアンブルを送信した後にパケットデータの送信を遅延させることが許されていない。MACヘッダ及びペイロードは、プリアンブルの直後に続くべきである。現在のところ、802.11axでは、1つのMU-MIMO DLパケット内の時間領域(時間共有なし)において複数のSTAを複数のRUに対してスケジュールすることが許されていない。空間領域では、MU-MIMOを使用して複数のSTAに複数の空間ストリームを送信することによってRUを共有することができるが、同じMU-MIMOパケット内で順にSTAをスケジュールすることは許されていない。
【0115】
図34に、802.11n、802.11ac及び802.11ax標準を含む本開示時点の802.11標準で利用されている、全てのRU送信が同時に終了することを確実にするためにRU内のMU-MIMOパケットの最後にパディングビットを有することができるパディングの実施形態例370を示す。この図では、PHYプリアンブル372の後に、MACヘッダ376、ペイロード378及びFCS380を含むデータ374が送信される。データフィールド374の後にはパディング382が続く。
【0116】
本開示による遅延した及び/又はカスケード化されたスケジューリングを可能にするために、プリアンブルを受け取ったSTAは、STAを対象としたデータがプリアンブルの直後に続くかそれとも遅延しているかを知る。遅延は、他のSTAの送信、又は実際にRTAパケットの送信準備が整うまで送信される何らかのヌルデータ/パディングに起因することができる。限定ではなく一例として、遅延した及び/又はカスケード化された情報は、明確にプリアンブルに追加することができ、或いはSTAがプリアンブル後にRTAパケットの開始に関する情報を取得することを別様に可能にすることができる。
【0117】
8.1.6.プリアンブルフォーマット
DL MU-MIMOパケット送信の開始後にRTA STAのデータ送信の遅延を可能にするために、RTA STA及びAPは、いずれもデータが遅延する恐れがあることを予想しているべきである。APは、フレーム全体を通じていつパケットが供給されるかを決定することなく特定のRU上でRTAパケットを受信すべきである旨をRTA STAに通知する。その後、RTA STAは、このRUをモニタして受信データを解析する。
【0118】
8.1.6.1.RTAパケット送信前にパディングを送信するAP
図35に、APがRTAパケット送信の前にパディングを送信している場合の実施形態例390を示す。APは、特定のRUにおいてRTA STAのためにスケジュールされた送信をユーザフィールド内のプリアンブルでSTAに通知する。この図では、PHYプリアンブル392の後に、指定されたRUにおいてRTA STAが解析する受信データが送信される。APは、パディング394をダミーパケットとして送信し、MACヘッダ396は、このパケットがRTA STAを対象とするものではなくダミーペイロード398及びFCS400を有することを示している。RTA STAは、スケジュールされたRUにおいて受信データを解析し、自機を対象としていない宛先アドレスを有するダミーパケットを発見する。RTA STAは、ダミーパケットの継続時間フィールドを読み取ることによって、ダミーパケットの最後がいつであるかを発見する。RTA STAは、ダミーパケットの最後の後に別のパケット(MACヘッダ、ペイロード及びFCS)をチェックする。MACヘッダ404、ペイロード406及びFCS408を含むデータ402が受け取られたことが分かる。RTA STAは、新たなパケットのMACヘッダ404を読み取る。MACヘッダが宛先をRTA STAとして示している場合、RTA STAは、RTAパケットのMACヘッダの継続時間フィールド内に指定されるパケットの最後まで受信パケットを復号する。
【0119】
8.1.6.2.RTAパケット前に別のSTAに別のパケットを送信するAP
図36に、APがRTAパケットの前に別のSTAに別のパケットを送信している場合の実施形態例410を示す。この図では、PHYプリアンブル412の後に、MACヘッダ416、ペイロード418及びFCS420を含むSTA1へのデータ414が続き、その後にMACヘッダ424、ペイロード426及びFCS428を含むSTA2のためのデータ422が続くことが分かる。
【0120】
APは、両STA(STA1及びSTA2(RTA STA))に特定のRUにおけるDL MU-MIMOのスケジューリングについて通知する。両STAは、これらが同じRUにおいてデータを受け取るようにスケジュールされている旨の通知を受ける。STA1はRTAセッションを実行しておらず、従ってプリアンブルの直後にデータを受け取ると予想している。STA2は、プリアンブル後のデータを解析し、自機宛てに送信されたMACヘッダ及びペイロードを復号する。STA1は、残りのパケットはパディングであると考えてこれを復号しない。STA2は、RTAセッションを実行するRTA STAである。STA2はパケットを受信し、指定されたRUにおいて受信データを解析する。RTA STAは、スケジュールされたRUにおいて受信データを解析し、自機を対象としていない宛先アドレスを有するパケットを発見する。
【0121】
RTA STAは、ダミーパケットの継続時間フィールドを読み取ることによって、パケットの最後がいつであるかを判定する。RTA STAは、STA1パケットの最後の後に別のパケット(MACヘッダ、ペイロード及びFCS)をチェックし、新たなパケットのMACヘッダを読み取る。MACヘッダが宛先をRTA STAとして示している場合、RTA STAは、RTAパケットのMACヘッダの継続時間フィールド内に指定されるパケットの最後まで受信パケットを復号する。
【0122】
8.1.6.3.PHYプリアンブル
図37に、802.11axで利用されたような高効率(HE)マルチユーザ(MU)PPDUの実施形態例430を示す。MU-MIMO送信の場合のHE-SIG-Aは、送信のタイプ(UL/DL)と、MCSと、HE-SIG-BフィールドにDCMが使用されている場合にはBSSカラーと、PPDUの空間再使用状況と、帯域幅と、MU-MIMOユーザ数又はHE-SIG-Bシンボル数と、SIG-B内共通フィールドの存在と、ガードインターバル及びLTEサイズと、ドップラー効果と、TXOPスケール値と、LTEシンボル数及び(時変チャネル状態に対処するための)ミッドアンブル周期性と、STBCと、LDPC及びパディング追加パラメータと、CRC及び畳み込みデコーダの末尾とを示すフィールドを含む。
【0123】
図38に、図37のPPDUフレーム内に示す、802.11axで利用されたようなHE-SIG-Bフィールドの実施形態例450を示す。HE-SIG-Bは、OFDMA及びDL MU-MIMOリソース配分割り当て(resource allocation assignment)を提供する。共通フィールドは、周波数領域におけるデータ部分でのRU割り当て、MU-MIMOのために配分されたRU、及びMU-MIMOユーザの数を示す。共通フィールドは、RU割り当てへのトーン(サブキャリア)を示すRU配分サブフィールドを含み、閾値(例えば、106)以上のRUが存在する場合にはMU-MIMO多重ユーザの数を示す。
【0124】
ユーザ固有のフィールドは、ユーザ割り当て及び配分を決定するユーザブロックフィールドを含む。ユーザブロックフィールドは、STA IDと、これに割り当てられる空間-時間ストリーム数と、送信ビームフォーミングが使用される場合には使用されるMCS及びDCMと、コーディングタイプとを含む。
【0125】
APは、特定のRU配分を決定する場合、HE-SIG-Aフィールド上のMU-MIMOユーザ数又はHE-SIG-Bシンボル数を、HE-SIG-Bフィールドの長さに変換できるものに設定する。これにより、どれほど多くのユーザブロックフィールドを予想すべきであるかが決まるはずである。
【0126】
RUが割り当てられて、RUのRTA STAのデータ受信が遅延している場合、HE-SIG-A及びHE-SIG-Bは、RTA STAが遅延なくパケットを受け取っている場合と同様に割り当てられる。しかしながら、送信の最初に、偽のSTA IDにアドレス指定されたダミーパケットが追加される。
【0127】
RTA STAが別のSTAのパケットに続くようにRUが割り当てられる場合には、以下が実行される。(a)HE-SIG-AのHE-SIG-Bシンボル数又はMU-MIMOユーザ数フィールドを、元々のユーザ数に1人のユーザを追加してHE-SIG-Bが第2のユーザフィールド情報を搬送できように設定する。(b)どのRUにもカスケード化された送信が存在しない場合と同様にHE-SIG-Bの共通フィールドを割り当てる。(c)既に割り当て済みのものに加えて最後のユーザブロックフィールドにRTA STAのHE-SIG-Bユーザフィールドを追加する。(d)共通フィールドRU配分は、依然としてRTA STA及び他のSTAが1人のユーザであるかのように総ユーザ数を示す。
【0128】
8.1.6.4.RTAユーザフィールド
図39及び図40に、別のSTA送信をカスケード化するためにRTA STAを割り当てる前及び後のRTAユーザフィールドを示す実施形態例470、490を示す。図39には、他のいずれかの割り当てをカスケード化するためにRTAを割り当てる前のPPDUプリアンブルのHE-SIG-A及びHE-SIG-Bのフィールドを示す。MU-MIMOモードのHE-SIG-Aは、MU-MIMOユーザ数又はHE-SIG-Bフィールドのシンボル数を示すフィールドを有し、この例ではこの数が「n」に割り当てられ、ここではリソースを共有している「2n」人のユーザが存在すると想定される。これによれば、それぞれが2つのユーザフィールドデータを有する「n」個のブロックユーザフィールドが存在するはずである。
【0129】
図40には、RUのうちの1つにおいて送信をカスケード化するためにRTA STAが割り当てられる場合を示す。この例では、総MU-MIMOユーザ数又はHE-SIG-Bフィールドのシンボル数が2n+1に増加し、RTA STAデータを搬送するためにHE-SIG-Bユーザフィールドに新たなユーザブロックが追加される。
【0130】
8.1.7.APフロー図
図41に、RTAデータのAP DL OFDMA競合前及び将来的スケジューリングの実施形態例510を示す。APは、RTAパケット到着のスケジューリングを認識していると想定され、従ってRTAパケットがいつ到着すべきかであるかを予測することができる。APは、予想されるRTAパケット到着までのカウントダウンである時間を有するタイマを開始する。APは、RTAパケットの到着前に行動を行う必要があり、本発明の教示から逸脱することなく、RTAパケットの到着前に推定時刻をもたらすいずれかの実装を利用することができると理解されたい。
【0131】
実行が開始し(511)、RTAパケットカウンタが閾値を下回ったかどうかを判定するためにカウンタをチェックする(512)。パケットカウンタが未だ閾値に到達していない場合、APはRTAカウンタを更新し(514)、実行はブロック512に戻って待機する。RTAパケットカウントダウンタイマが特定の閾値(threshold_1)を下回ると、実行はブロック516に到達し、APは、最初にチャネルが占有されている(使用中である)かどうかをチェックする(516)ことによってRTAパケット送信の準備を開始する。チャネルが使用中である場合、APは競合のためのプロセス518を開始し、ブロック526においてチャネルへのアクセス権を獲得し、その後にDL MU MIMO及び将来のRTAパケット送信をスケジュールし(528)、その後にパケットカウンタをリセット(530)した上で、実行はブロック512に戻る。
【0132】
ブロック516においてチャネルが使用中であると判明しなかった場合にはブロック520に到達し、APは、他のSTAのためにスケジュールすべきデータを有しているかどうかをチェックする。APがDL MU-MIMO/OFDMA送信をスケジュール済みである場合にはブロック526に到達し、APがチャネルへのアクセス権を獲得し、DL MU MIMO及び将来のRTAパケット送信をスケジュールし(528)、その後にカウンタをリセット(530)した上で、実行はブロック512に戻る。
【0133】
一方で、ブロック520のチェックによってAPが他のSTAのためのデータを有していないことが示された場合、実行はブロック522に到達し、RTAカウンタが更新され、ブロック524においてRTAパケットカウンタが第2の閾値に到達したかどうかをチェックし、これによってAPはカウントダウンタイマがthreshold_2に到達するまでチャネルをモニタし続け、到達した時点でチャネルにアクセスできるようになる。チェック524によってパケットカウンタがthreshold_2を下回っていないことが示された場合、実行はブロック516に戻り、そうでなければ実行はブロック526に到達してAPがチャネルへのアクセス権を獲得し、DL MU MIMO送信をスケジュールして将来的なRTAパケット送信をスケジュールし(528)、その後にRTAパケットカウンタをリセット530した上でブロック512に戻る。
【0134】
図42に、パディングの追加を含めてMU-MIMO又は遅延RTAパケット送信をスケジュールする実施形態例550を示す。プロセスが開始し(551)、MACバッファにおいてRTAパケットが利用可能であるかどうかをチェックする(552)。RTAパケットが利用可能である場合には、ブロック554に到達してリソースユニット(RU)を割り当て、直ちにDLパケットの送信を開始し、その後にこの手順は終了する(564)。
【0135】
MACヘッダにおいて未だRTAパケットが利用可能でない場合、実行はブロック556に到達し、RTAパケットの推定到着時刻を認識しているAPは、RTAパケットがTXのために利用可能になるまでの残り時間を推定し、この時間を使用してRTAパケットTX時間をスケジュールする。次に、ブロック558において、この推定された残り時間内に収まる、他のSTAへの送信に利用可能なパケットが存在するかどうかを判定するチェックを行う。これらの条件が満たされる場合、APは、ブロック566においてこのRTAパケット及び他のSTAパケット送信にRUを割り当て、ブロック568において他のSTAにパケットを送信し、その後にRTAパケットが利用可能である場合にはRTAパケットを送信した上でプロセスは終了する(564)。
【0136】
一方で、ブロック558の条件が満たされない場合、APは、ブロック560においてRTAパケット送信にRUを割り当て、RTAパケットが利用可能になる時点まで割り当てられたRUで送信されるようにパディングを追加して(562)プロセスは終了する(564)。
【0137】
8.1.8.RTA STAのフロー図
図43に、APから受け取られたRTAパケットの将来的なスケジューリングを含むパケットをSTAが処理する実施形態例570を示す。プロセスが開始し(572)、MU-MIMO/OFDMA PPDUを含むパケットをSTAがAPから受け取ったかどうかを判定するチェックを行い(574)、その後にアクティブなRTAセッションを有しているかどうか、又は将来的なパケットスケジューリングを予想/有効化するかどうかをチェックする(576)。これらの条件がいずれも満たされない場合、実行は直接ブロック584に進んでパケットデータを処理し、処理を終了する(590)。
【0138】
一方で、ブロック574及び576の条件がいずれも満たされる場合にはブロック578に到達し、プリアンブルを解析してPPDUプリアンブルからスケジューリング情報を抽出する。RUの時間共有についてチェックを行う(580)。このチェックによってSTAが他のSTAとRUを時間的に共有していることが示された場合、実行はブロック586に到達して、スケジュールされた送信のためにプリアンブルのHE-SIG-Bフィールドの最後からユーザフィールド情報を抽出し、この情報は、第1のSTAがパケット送信を終了した後に識別されたRU上でRTA送信が行われる(588)と予想されることを示す。受信機は、割り当てられたRU上で送信されるパケットをモニタする。モニタされたRUにおけるOFDMAフレームの最初には、パケットは第1の受信機に送信されない。第1のユーザへのパケットの送信が完了した後に、RTAユーザへのパケットが送信される。従って、受信機はRUをモニタしてRU上でのデータ受信を予想し、その後にパケットデータが処理されて(584)プロセスは終了する(590)。
【0139】
一方で、チェック580において他のSTAがこのSTAとRUを時間的に共有していないことが判明した場合にはブロック582に到達し、STAは、割り当てられたRU上で受信データを解析し、ダミーSTAに送信されるダミーパケットの形態のどのようなパディングがパケットの最初に必要になり得るかを判定する。STAは、パディング又は他のSTA送信のMACヘッダを読み取って、そのパケットの最後及び自機のパケットの開始を知る。パディング582の後に、STAのためのパケットが送信されて(584)プロセスは終了する(590)。
【0140】
8.1.9.HE-SIG-B内のユーザフィールド
8.1.9.1.802.11axが規定するユーザフィールド
ユーザ(User)フィールドは、HE-SIG-Bの共通(Common)フィールドに後続する。共通フィールド内のRU配分(RU Allocation)フィールド、及びユーザ固有(User Specific)フィールド内のユーザフィールドの位置は、共にSTAのためのデータ送信に使用されるRUを識別する。802.11axにおけるユーザフィールドは、STA ID、空間構成、RU配分において使用されるMCS及びコーディングを示す21ビットで定められる。具体的には、STA_IDの11ビットのB0~B10は、ユーザフィールドが表されるSTA IDを示し、空間構成(Spatial Configuration)の4ビットのB11~B14は、MU-MIMO配分におけるSTAのための空間ストリーム数を示し、MCSの4ビットのB15~B18は変調符号化スキームを示し、1ビットのB19は予約されていて0に設定され、Coding(コーディング)の1ビットのB20は、BCC又はLDPCのどちらが使用されるかを示す。
【0141】
MU-MIMOユーザ数又はHE-SIG-Bフィールドのシンボル数が、HE-SIG-B部分の共通フィールド内のRU配分サブフィールドによって配分されたユーザ数よりもユーザ数が多いことを示す場合には、配分されたRUのうちの1つにおけるSTA送信のうちの1つの後に送信されるRTAパケットを定めるフィールドの方が多いと予想される。どのRUがRTA STAと共有されているかを識別するために、限定ではなく一例として以下の方法のうちの1つを利用することができる。
【0142】
8.1.9.2.同じRUの共有を示すためのユーザフィールドの修正
RUが別のSTAによって時間的に共有されることを示す第1の方法は予約ビットの使用を通じたものであり、ユーザフィールドは以下のように再定義される。STA_IDの11ビットのB0~B10は、ユーザフィールドが表されるSTA IDを示し、空間構成の4ビットのB11~B14は、MU-MIMO配分におけるSTAのための空間ストリーム数を示し、MCSの4ビットのB15~B18は変調符号化スキームを示し、1ビットのB19は、RUが別のSTAと時間共有されるかどうかを示すRU共有(RU Sharing)を示して、他のSTAパラメータを定める別のユーザフィールドが予想されることを示し、コーディングの1ビットのB20は、BCC又はLDPCのどちらが使用されるかを示す。
【0143】
RU共有サブフィールドが1に設定された場合、このユーザフィールドに関連するRUは別のSTAと時間的に共有される(時間共有)。この共有は、このユーザフィールド内に定められたSTA_IDを有するSTAへのパケット送信の終了後に他のSTAにパケットを送信することによって行われる。このフィールドを送信するSTAは、利用可能なRUを使用するように当初スケジュールされていた全てのユーザフィールドの最後の後に、このRUを共有するSTAのユーザフィールドを追加する。
【0144】
図44に、他のSTAによって共有されるRUが複数存在する場合の実施形態例610を示しており、ユーザフィールドの順序は、スケジュールされたユーザフィールドの最後のRUユーザフィールドを共有するさらなるSTAの順序と同じである。STA1及びSTA2に割り当てられるRUは、共通割り当て(Common allocation)フィールドと、プリアンブルのHE-SIG-B部分のユーザフィールドセクション内のユーザフィールドの順序とによって決定される。これらのRUはSTA3及びSTA4によって共有されることが示され、STA1及びSTA2のユーザフィールド内のRU共有フィールドは1に設定される。STA3及びSTA4のユーザフィールドの位置はユーザフィールドセクションの最後であり、これらの順序は、STA3ユーザフィールドが最初に来て、1に設定されたRU共有フィールドを有する第1のユーザフィールドを参照し、STA4が、1に設定されたRU共有を有する第2のユーザフィールドを参照するようになっている。
【0145】
8.1.9.2.2.RUユーザフィールドを時間共有する第2のSTA
8.1.9.2.2.1.実施例1
ユーザフィールドの1つの例は、RUを時間共有する第2のSTAが独自のPHYパラメータ(MCS、コーディング及び空間ストリーミング数)を定める必要がある場合に定義することができる。この例は、8.1.91節で説明したものと同様の、802.11axに規定されるものと同じフィールド、又は修正されたフィールドを使用することができる。
【0146】
8.1.9.2.2.2.実施例2
RUを時間共有する第2のSTAが独自のPHYパラメータ(MCS、コーディング及び空間ストリーミング数)を定める必要がなく、RUを時間共有している第1のSTAと同じパラメータを共有している別の例は以下の通りである。この場合、ユーザフィールドは以下のように再定義される。STA_IDの11ビットのB0~B10は、ユーザフィールドが表されるSTA IDを示し、Time_to_Start_Second_STA_Transmissionの8ビットのB11~B19は、RUを時間共有する第2のSTAが開始されるパケット受信の開始からの時間オフセットを示し、1ビットのB20は予約されている。
【0147】
第1のSTAとRUを時間共有する第2のSTAは、第1のSTAのユーザフィールド及びRUユーザフィールドを時間共有する第2のSTAからPHYパラメータ(MCS、コーディング及び空間ストリーミング数)をコピーする。
【0148】
第2のSTAは、自機とRUを共有している第1のSTAから全てのパラメータをコピーするので、これらの全てのビットを他のフィールドで使用することができる。例えば、ここでは8ビットを使用して、第2の送信を開始すべき時間オフセットを示す。ビット数は、必要とされる解像度に応じて変化することができ、その単位は、いずれかの規定の時間単位又は所定の度数(ticks)とすることができる。
【0149】
第1の送信(TX)がパディングであった場合、第1のSTAのSTA IDはダミーSTA IDとすることができ、PHYデータは第2のSTAを対象とする(遅延送信)。
【0150】
8.1.9.3.修正を伴わないRUユーザフィールドの共有
8.1.9.3.1.RUユーザフィールドを時間共有する第1のSTA
RUユーザフィールドを時間共有する第1のSTAは、RUユーザフィールドを変更する必要がなく、802.11axに規定されるものと同様にそのままであり続ける。ユーザフィールドのフォーマットがそのままであるため、MU-MIMO又は非MU-MIMO PPDUフォーマットの場合にもこれを使用することができる。RUを時間共有する第1のSTAは、その送信が終了した後にRUを使用するSTAによって割り込まれるべきではなく、従ってユーザフィールドは影響を受けない。
【0151】
8.1.9.3.2.RUユーザフィールドを時間共有する第2のSTA
RUユーザフィールド情報を時間共有する第2のSTAは、元々のSTAユーザフィールドが完了した後に来る。RUを時間共有する第2のSTAは、MU-MIMO PPDUが使用される場合には第1のSTAとPHYパラメータ(例えば、MCS、コーディング及び空間ストリーム数)を共有し、非MU-MIMO PPDUが使用される場合には非MU-MIMO PHYパラメータ(例えば、空間時間ストリームの数、送信ビームフォーミングが使用されるか否か、MCS、DCMが使用されるかどうか、及びコーディング)を共有する。
【0152】
RUを時間共有する第2のSTAは、そのユーザフィールドから情報を抽出ことによって、自機がどのユーザ(STA)とRUを時間共有しているかを認識している。RUユーザフィールドを時間共有する第2のSTAは、RUを時間共有する第1のSTAを参照する。
【0153】
この場合のユーザフィールドのフォーマットは、以下の例のようになる。この場合、ユーザフィールドは以下のように再定義される。STA_IDの11ビットのB0~B10は、ユーザフィールドが表されるSTA IDを示し、自機のIDがこのSTA IDと一致するSTAがこのユーザフィールド内のデータを使用し、User_Field_Index_to_Copy_PHY_params_fromの4ビットのB11~B14は、RUユーザフィールドを時間共有する第1のSTAのインデックスであると同時に、RUを時間共有する第2のSTAは、このインデックスによって参照されるユーザフィールド内のPHYパラメータを使用して利用可能なPHYパラメータを抽出し、Time_to_Start_Second_STA_Transmissionの5ビットのB15~B19は、RUを時間共有する第2のSTAを開始すべきパケット受信の開始からの時間オフセットを示す。
【0154】
上記の例では、第2の送信を開始すべき時間オフセットを示すために5ビットのみが使用される。このビット数は、必要とされる解像度に応じて変化することができ、その単位は、いずれかの規定の時間単位又は所定の度数とすることができる。第1のTXがパディングであった場合、第1のSTAのSTA IDはダミーSTA IDとすることができ、PHYデータは第2のSTAを対象とする(遅延送信)。
【0155】
8.2.UL送信
802.11axでは、UL OFDMA/MU-MIMOが、非AP STAのバッファステータスレポート(BSR)、及び同様にSTAからのTB PPDUを要求できるトリガフレームを使用して規定される。
【0156】
図45に、RTAを実行するSTAとのUL OFDMA/MU-MIMOの実施形態例630、660、666を示す。この図には、AP632、STA1 634及びRTA STA636の通信を示す。
【0157】
APは、チャネルの使用中638を発見し、占有されなくなった時点でバックオフ640を行い、チャネルへのアクセス権を獲得してトリガフレームBSRPを送信して(642)STAからバッファステータスレポートを収集し、UL MU-MIMO送信をスケジュールする。APは、チャネルへのアクセス権を獲得すると、このTIF BSRPを自機のBSS内のSTAに送信する。TIFを受け取った全てのSTAは、バッファステータスレポート646、648で応答する。バッファステータスレポートは、非AP STAがAPに送信したいと望むデータ量を示す。RTA STAでは、TIF BSRP642の到着前にRTAパケットが到着した649場合、BSRはこれらのRTAパケットを反映して既にAPに報告されている。APは、非AP STAからBSRを収集し、この情報を使用してSTAへのリソースをスケジュールする(644)。チャネルの使用中652を発見したAPは、バックオフ654を使用してチャネルアクセスのために競合し、リソースをスケジュールすると、UL MU-MIMOがスケジュールされているSTAにベーシックTIF656を送信する。
【0158】
非AP STAは、TIF656を受け取ると、TIFに示されるスケジュールされたリソース上でパケットの送信を開始する。これらの図示の各局は、共通プリアンブル658、664と、STA1 662及びRTA TX668のためのものを含むRUとを生成する。この図には、STAがBSRP TIFを待ってTIFに応答することによって自機のバッファステータスを報告するために必要な時間と、TIFを待って割り当てられたリソース上でUL送信を開始するための時間とによってRTAパケットが遅延する(650)ことを示す。
【0159】
8.2.1.UL RTA要求
非AP STAがRTAパケットを定期的に生成しており、特定のスケジュールに基づいて送信準備を整えると予想される場合、本開示による非AP STAは、APがBSRフレームをトリガするのを待つことに関連する遅延を回避してAPにRTAパケットスケジュールを通知することができる。
【0160】
非AP STAは、実行中のRTAセッションを有している場合、本開示の少なくとも1つの実施形態に従って、開始されたRTAセッションについてAPに通知して実行中のRTAセッションに関連するパラメータを送信するように構成される。この情報を受け取ったAPは、RTAストリーム開始要求の受信を確認応答してこれを受諾又は拒絶することができる。
【0161】
APは、RTAストリーム開始要求を受諾する場合、非AP STAにおけるRTAの予想到着時刻に非AP STAにリソースを配分し、非AP STAは、BSRでRTAパケットを報告する必要がない。
【0162】
図46Aに、UL RTA要求の実施形態例670を示す。この図には、AP672及びRTA STA673における通信を示しており、RTA STAがAP672にRTAストリーム開始要求フレーム674aを送信してRTAセッション開始及びパラメータについて通知し、APがこれに対してRTAストリーム開始応答674bで応答する。その後、RTA STAにRTAパケットが到着する(678)ことが分かるであろう。APは、RTAセッションパラメータを取得していて非AP STAのためのリソースをスケジュールすることができ、従ってチャネルアクセスのために競合してアクセス権を取得した(676)後にTIF680を送信して予想時刻にUL送信を開始する。RTA STAは、TIF680を受け取り、TIFに示されるスケジュールされたリソース上で自機のパケットの送信を開始し、共通プリアンブル682とRTA TXのためのRUを含むRU684とを生成する。この通信は、このようにAPがアクセス権を取得して(688、698)TIFを送信し(690、700)、RTA STAがRTAパケット到着を受け取って(686、696)プリアンブル692、702及びRUのブロック694、704を含むスケジュールされたパケットを送信する形で継続する。RTAセッションが終了すると、非AP STAがRTAストリーム終了要求706を送信し、APがRTAストリーム終了応答を送信することによって確認応答708で応答することが分かる。
【0163】
図46Bに、BSR679にRTAパケット周期性及び生成情報を追加してこれを一回だけ送信することによるRTAセッション開始要求の別の実施方法を示す、図46Aの変形例を示す実施形態例670’を示す。APは、BSRから情報を抽出してRTAセッション詳細を更新する。少なくとも1つの実施形態では、この動作が、使用中675a及びバックオフ675aの後のBSRP677の受信後に、APに送信されるBSR679にRTAストリーム開始要求681内の情報フィールドを添付することによって実行される。図の他の部分は、図46Aに示すものと同じである。
【0164】
8.2.2.UL RTAトラフィック待ち行列期間(UL RTA Traffic Queued Time Duration:RTQTD)フィードバック
非AP STAからRTAパケット周期性を受け取ったAPは、リソースをスケジュールして、非AP STAにおいてRTAパケットの準備が整うはずの推定時刻にTIFを送信する。しかしながら、この推定時刻は十分に正確でないこともあり、バッファリング又はチャネルアクセス及び送信における他の遅延に起因して前又は後にシフトする場合もある。非AP STAは、受け取っているRTAパケットの待ち行列期間に関する更新をAPに送信することができる。APは、この情報を使用して、RTAパケットのバッファ時間を短縮し、又はRTAパケットが遅延することが多い場合にはTIFを遅延させるようにベーシックTIFの送信時間を修正することによって、UL送信のスケジューリングのタイミングを更新する。
【0165】
図47に、非AP STAからAPにRTQTDフィードバックメッセージを送信することを通じてRTAパケットのスケジュール時間を調整する実施形態例710を示す。通信は、AP712と、RTA STAである非AP714STAとの間に見られる。RTA STAからRTAストリーム開始716が送信され、APがRTA STAに応答718を送信し、その後にAPからRTA STAにTIF720が送信される。RTA STAは、RU724を使用してUL MU-MIMO722を実行するが、未だアプリケーション層からRTAパケットを受け取っていないため、TIFが受け取られた時点ではRTAパケットの送信準備が整っておらず、RTAパケットの送信準備が整う予想時刻については726によって表記する。STAは、このパケットを送信する機会を失い、別のTIFが単独で又は新たなTIF729前に到着した他のRTAパケット728と共にRTAパケットを送信するのを待つ。STAは、TIFフレーム送信をRTAパケットの送信準備が整う予想時刻に同期させるためにRTQTDフィードバック734を生成し、これにAPがACKSし(736)、その後に次のRTAパケットの送信準備が整う前の適切な時点でAPがTIF738を送信し、RTA STAがUL MU-MIMO740及びRU744を実行し、プリアンブル後のRUの開始時点にRTAパケットの準備が整う(742)。
【0166】
8.2.3.RTAパラメータ交換の例
図48に、非AP STA752がAP STA754とフレームを交換してAPにRTAセッションについて通知し、RTAセッションパラメータを継続的に更新する実施形態例750を示す。
【0167】
APP層が、RTAの開始756、並びにRTAパケット供給の周期性、タイミング情報について非AP STAのMAC層に通知すると、非AP STAは、RTAセッションの開始についてAPに通知し、RTAパケットの予想到着時刻に関するタイミングパラメータを転送する。APは、ストリーム開始応答758で応答して要求の受信を確認応答し、要求を受諾又は拒絶することによって要求に応答する。
【0168】
非AP STAは、受諾応答を含むストリーム開始応答を受け取った場合、APにRTQTDフィードバックフレーム760を送信することによって、APがUL送信をスケジュールしている時刻を更新するように要求することができる。APは、フレームの受信を確認応答する(762)ことによってこのフレームに応答する。このフレーム交換は、アクティブなRTAセッション中にいつでも何度でも行うことができる。
【0169】
非AP STAのRTAセッションが期限切れになると、非AP STAは、APにRTAストリーム終了要求764を送信して、RTAセッションが期限切れであり、非AP STAをRTAパケットUL送信のために自動的にスケジュールする必要がない旨をAPに通知することができる。APは、このフレームにRTAストリーム終了応答766で応答して終了要求の受信を確認応答する。なお、ストリーム開始要求がセッションの期限切れ情報を含む場合には、セッションを自動的に終了することができる。
【0170】
8.2.4.UL RTAスケジューリング
図49に、AP772とRTA STA774との間の相互作用を示すUL RTAスケジューリングの実施形態例770を示す。STAは、RTAセッションを確立すると、RTAセッションパラメータについてAPに通知する。APは、RTAセッション開始を受け入れた場合、非AP STAにおける次のRTAパケット予想到着時刻のためのタイマの実行を開始する。
【0171】
この図には、チャネルがモニタされている(782)間、初期CW期間780中のパケット到着前チャネル検知時点778でチャネルが使用中776であることを示す。AP STAは、予想されるパケット到着の直前に誰かがチャネルへのアクセス権を獲得してTIF送信を遅延させるのを避けるために、たとえ非AP STAへのRTAパケットの予想到着前であってもバックオフ786を使用してチャネルアクセスのために競合する。早期チャネルアクセス期間が開始し(784)、APがチャネルへのアクセス権を獲得してTIF788を送信する。RTA STAは、このTIFに応答して、プリアンブル790及びRTA TX794を含むRU792でUL RTA送信を開始する。なお、RTAパケットはプリアンブル790後まで到着しないので、RTAパケットの到着796まではパディング795が送信され、その時点でRTA TX794が開始される。
【0172】
図50にもUL RTAスケジューリングを示している(810)が、この図には、AP812、STA6 814及びRTA STA816間の相互作用を示す。この図には、チャネルがモニタされている(824)間、早期CW期間822中のパケット到着前チャネル検知時点820でチャネルが使用中818であることを示す。AP STAは、予想されるパケット到着の直前に誰かがチャネルへのアクセス権を獲得してTIF送信を遅延させるのを避けるために、たとえ非AP STAへのRTAパケットの予想到着前であってもバックオフ828を使用してチャネルアクセスのために競合する。早期チャネルアクセス期間が開始し(826)、APがチャネルへのアクセス権を獲得してTIF830を送信する。STA6は、このTIFに応答してプリアンブル832で送信を開始し、RU836は、STA6のためのRU838を有する。RTA STAは、プリアンブル834、及びRTA TX842を含むRU840でUL RTA送信を開始し、RTA STAはSTA6と同じRUを時間共有してRTAパケット到着837後にRTA送信を開始する。
【0173】
APは、TIFを送信するのに必要な時間、UP送信前のフレーム間隔、並びに共通プリアンブルの送信遅延及びその他の関連する処理遅延を計算する。APは、非AP STAにおけるRTAパケット到着時又はその直後に非AP UL送信が行われるようにTIF送信の時間を調整するように構成される。非AP STAにおける予想パケット到着前の期間中、早期競合ウィンドウ期間中にチャネルが使用中である場合、APは競合を開始すべきである。この時間中にチャネルが空いている場合、APはチャネルの状態をモニタし続ける。
【0174】
早期競合ウィンドウ期間のサイズは、チャネルがより多く占有されていること(STAが多いこと、チャネルの占有時間が長いこと、チャネルアクセス遅延率が高いこと、又はバックオフタイマ割り込み率が高いこと)を示す収集された統計に関連することが好ましい。
【0175】
早期競合ウィンドウ期間長は、手動で固定値に設定することも、或いはチャネル統計に従って動的に調整することもできる。APは、早期チャネルアクセス期間までチャネルが空いていることを発見した場合、予想されるRTAパケットの到着時刻を待つことなく直接チャネルにアクセスする。この期間は短いものと想定され、他のSTAがチャネルへのアクセス権を獲得し、従ってRTAパケット送信を遅延させないことを保証すべきである。
【0176】
APは、予想されるRTAパケットの到着時刻からTIF送信に必要な時間及びUL送信までのフレーム間隔を差し引いた時間よりも早くチャネルを獲得した場合、この非占有時間に他のSTAが送信を行うようにスケジュールし、又はパディング情報が送信されるようにスケジュールすることができる。パディング情報の送信がスケジュールされている場合、RTAセッションを実行している非AP STAはこの送信を行う責任を負う。
【0177】
8.2.5.APのフローチャート
図51A及び図51Bに、APがMU-MIMO技術を使用してUL RTAパケット送信をスケジュールする実施形態例850を示す。プロセスが開始し(852)、非AP STAとのRTAセッションが開始されたかどうかをチェックする(854)。これが非AP STAである場合、実行は図51Bのブロック878に進み、通常のUL伝送スキームを使用して終了する(882)。
【0178】
一方で、これがAPである場合、APは、収集された統計及び非AP STA(RTA STA)RTQTDからのフィードバックを使用して、チャネルアクセス閾値であるthreshold_1及びthreshold_2を計算する(856)。APは、非AP STAにおけるRTAパケット到着のスケジュールを認識しており、従ってRTAパケットが非AP STA待ち行列にいつ到着するかを予想することができる。
【0179】
このスケジュールは、RTAストリーム開始メッセージでAPに伝えられる。APは、非AP STAバッファにおける予想されるRTAパケットの到着までのカウントダウンである時間値を有するタイマを開始する。APは、RTAパケットの到着前に行動を行う必要があり、RTAパケットの到着前に推定時刻をもたらすいずれかの実装が有効なはずである。
【0180】
ブロック856から進み、RTAパケットカウンタがThreshold_1を下回ったかどうかをチェックする(858)。閾値を下回っていない場合、実行はブロック860に進み、RTAカウンタを更新した後でチェック858に戻る。一方で、パケットカウンタがThreshold_1を下回った場合、APは、トリガフレームの準備を開始して、チャネルが使用中であるかどうかを判定するチェック862を実行する。カウントダウン時間がthreshold_1に到達した後にチャネルが使用中である場合にはブロック864に到達し、APは、チャネルアクセスのために競合した後に図51Bのブロック872に到達し、この時点でチャネルへのアクセス権を獲得する。
【0181】
チェック862においてチャネルが使用中でないと判定された場合には、APが他のUL STA送信のためにスケジュールすべきデータを有しているかどうかをチェックする(866)。スケジュールすべき送信が存在する場合には、図51Bのブロック872に到達し、APは、チャネルへのアクセス権を獲得してUL MU-MIMO/OFDMA送信をスケジュールし(874)、この配分で将来的なUL RTAパケットをスケジュールし、この配分情報を含むトリガフレームを送信する。
【0182】
ブロック866のチェックにおいてAPが他のUL STA送信のためのデータを有してないと判明した場合、APは、RTAカウンタを更新することができ(868)、チャネルをモニタし続けて図51Bのチェック870に到達する。RTAがThreshold_2を下回らない場合、実行はブロック862におけるチャネル使用中のチェックに戻る。一方で、チェック870においてカウントダウンタイマがThreshold_2に到達したことが判明した場合にはブロック872に到達し、この時点でAPはチャネルにアクセスする。
【0183】
次に、APは、UL MU-MIMO/OFDMA送信をスケジュールし(874)、この配分で将来的なRTAパケットをスケジュールし、これらの配分情報を含むトリガフレームを送信する。RTAセッションが期限切れになったかどうかをチェックする(876)。期限切れである場合、実行はブロック878に進んで通常のUL伝送機構(スキーム)を使用する。一方で、トリガフレームが送信されてRTAセッションが終了しなければ、APはタイマをリセットし(880)、実行はRTAパケットカウンタがThreshold_1を下回ったかどうかに関するチェック858に戻り、次のUL RTAパケットへのカウントダウンを開始する。
【0184】
図52に、UL-MIMO又は遅延したUL RTAパケット送信をスケジュールする実施形態例890を示す。プロセスが開始し(892)、非AP STAのMACバッファにおいてRTAパケットが利用可能であると推定されるかどうかを判定するチェックを行う(894)。チェック894が満たされた場合、実行はブロック896に到達し、APがRTAパケットにリソース(RU)を割り当て、トリガフレームを送信してUL送信を開始した上でプロセスを終了する(909)。
【0185】
一方で、非AP STAのMACバッファにおいて未だRTAパケットが利用可能でないと推定される場合、実行はチェック894からブロック898に進み、APは、RTAパケット推定の推定到着時刻、及び非AP STAにおいてRTAパケットがTXのために利用可能になるまでの残り時間の知識に基づいて、非AP STAにおける予想されるRTAパケット到着までの残り時間を推定し、この時間を使用してRUを介した将来的なUL RTAパケットのTX時間をスケジュールする。
【0186】
次に、APは、RTAパケットの到着までの残り時間に適合する他のSTAが送信すべき他のULパケットが存在するかどうかをチェックする(900)。このような条件が満たされる場合にはブロック906に到達し、APは、同じRU上でRTAパケットの前に他のUL STAパケット送信をスケジュールし、RUの時間共有を示すユーザ情報を含むトリガフレームを送信(908)した上でプロセスを終了する。
【0187】
チェック900において条件が満たされない場合、APは、ブロック902においてRTAパケット送信のためにRUを割り当て、ブロック904においてトリガフレームを送信し、スケジュールされたRTA送信前にパディングを送信するように非AP STAをスケジュールした上でプロセスは終了する(909)。
【0188】
8.2.6.非AP STA(RTA STA)のフロー図
図53A及び図53Bに、RTAパケットのULスケジューリング及び将来的スケジューリングを含むAPから受け取られた基本トリガフレームをSTAが処理する実施形態例910を示す。処理が開始し(912)、スケジュールされたUL MU-MIMO送信を示すトリガフレームをRTA STAがAPから受け取ったかどうかを判定するチェックを行う(914)。条件が満たされない場合、実行は図53Bのブロック936に進み、パケットデータを処理した上でプロセスは終了する(938)。
【0189】
一方で、ブロック914の条件が満たされてAPからトリガフレームが受け取られた場合、アクティブなRTAセッションを有しているか、又は将来的なパケットスケジューリングを予想/有効化するかどうかのチェック916を行う。条件が満たされない場合、実行はやはり図53Bのブロック936に進む。一方で、条件が満たされた場合、実行はブロック918に到達し、STAは、トリガ情報から配分情報を抽出し、従ってトリガフレームを解析してスケジューリング情報を抽出する。
【0190】
RUが他のSTと時間共有される予定であるかどうかを判定するチェックを行う(920)。条件が満たされずにSTAがUL送信のために他のSTAとRUを時間共有していない場合、非AP STAは、配分されたリソース上で直ちに自機のULパケットを送信し(922)、実行は図53Bのブロック936に到達してプロセスは終了する(938)。
【0191】
一方で、ブロック920においてRUが共有されていると判定された場合、実行はチェック924に到達して、パケット送信が早期に終了するか、それとも遅延するかを判定する。パケット送信が早期に終了することが判明した場合には、図53Bのブロック926に到達して指示された終了時点までパケットを送信し、その後にパケットデータを処理して(936)終了する(938)。
【0192】
一方で、パケット送信が遅延する場合には図53Bのブロック928に到達し、自機のスケジュールされた送信のためにトリガフレームのユーザフィールド情報を抽出する。なお、第2のユーザフィールドは、STAがRTAパケットの送信を開始すべき時刻を搬送すべきである。この情報を抽出した後に、チェック930においてフレームの最初にパディングが要求されるかどうかを判定する。条件が満たされる場合、RTAパケットの最初までパディングデータが送信(932)された後でブロック934に到達する。一方で、パディングが不要である場合、実行は直接ブロック934に進み、指定時刻のRTAパケットを送信した後にブロック936に到達し、パケットデータを処理してプロセスを終了する(938)。
【0193】
8.2.7.トリガフレームフォーマット
図54に、UL MU-MIMO/OFDMA送信のためにリソースを配分するトリガフレームの実施形態例950を示す。このフレームは、応答側STAがHE TB PPDU及びULデータを送信するために必要な情報を搬送する。このフレームは、フレーム制御情報、フレームの継続時間、受信側及び送信側情報を含む。また、全てのユーザがHE TB PPDUを送信するための共通情報、及び各ユーザに固有の情報も含む。
【0194】
図55に、図54のトリガフレームフォーマットに含まれるユーザ情報フィールド970を示す。このユーザフィールドは802.11axで規定されており、STA AIDと、STAへのRU配分と、FECコーディングタイプ、MCS、DCM、空間ストリーム割り当て及びターゲットRSSI、又は同様のものを含むことができるULパラメータとを含む。
【0195】
図54のトリガフレームでは、スケジュールされたULフレームの最初のRTAのカスケード化されたスケジューリング又はパディング情報のスケジューリングを通知するためにユーザフィールド内の予約ビットB39を使用することができる。このユーザフィールドに関連する、ユーザフィールド内のAIDフィールドに一致するAIDを有するSTAが、スケジュールされたULフレームでの自機の送信を遅延させている場合、APはB39を1に設定する。ユーザフィールドが自機のAIDに一致している非AP STAは、依然として日付を処理して、送信に必要な全てのPHYパラメータを抽出する。非AP STAは、B39が1に設定されていることを確認した後に、非AP STAの同じAIDを有し、UL送信のタイミング情報(例えば、プリアンブルまでの遅延又はいつUL送信を終了させるべきであるか)を含む別の関連するユーザフィールドを有すると予想すべきであるとともに、STAがRTAパケット送信前にダミーパケットを送信すべきかどうかも予想すべきである。ユーザフィールドは、トリガ依存型ユーザ情報を含む可変数のビットも含む。
【0196】
図56A及び図56Bに、複数のSTAのカスケード化された送信の場合、或いは1つのSTA送信が遅延してこのSTAがパディング情報を送信する必要がある場合に送信すべきトリガフレームの実施形態例990を示しており、これらの図には複数のユーザ情報フィールドを示す。第1のユーザフィールドのSS配分/RA-RU情報(SS Allocation/RA-RU information)は、送信が遅延すること又は早期に終了することを示し、このユーザフィールド内のトリガ依存型ユーザ情報は、通常のTX情報と共にRTA STAに宛てられる。
【0197】
8.2.7.1.開始が遅延する非AP STAの場合
図56A及び図56Bのトリガフレームは、非AP STAのための2つのユーザフィールドを含む。第1のユーザフィールドは、RTA STAのAIDを含み、1に設定されたカスケード化されたTXビットを有する。図56Bの第2のユーザフィールドは、RTA STAのAIDを含み、通常のユーザフィールドとは異なるフォーマットを有する。第2のユーザフィールドは、遅延TX又は早期TX終了(delayed TX or early TX termination)フィールドを1に設定することによって送信が遅延することを示す。タイミング情報(Timing Information)の第2のユーザフィールドは、UL TX開始時点に対する非AP STAのUL送信開始時点を示す。限定ではなく一例として、タイミング情報に5ビットを配分しているが、このビット数は、規定の解像度及び使用される時間単位に従って異なるように設定することもできる。図示のパディングTX(padding TX)サブフィールドは、送信がパディング又は通常パケットのいずれであるかを示す。第2のユーザフィールド送信におけるユーザフィールドの残り部分は予約される。
【0198】
8.2.7.2.Txが早期に終了する非AP STAの場合
トリガフレームは、非AP STAのための2つのユーザフィールドを含む。第1のユーザフィールドは、RTA STAのAIDを含み、1に設定されたカスケードTXビットを有する。第2のユーザフィールドは、RTA STAのAIDを含み、通常のユーザフィールドとは異なるフォーマットを有する。第2のユーザフィールドは、遅延TX又は早期TX終了フィールドをゼロ(0)に設定することによって送信が早期に終了することを示す。第2のユーザフィールドは、タイミング情報内のUL TX開始時点に対する非AP STAのUL送信終了時点を示す。この例では、タイミング情報に5ビットを配分している。このビット数は、規定の解像度及び使用される時間単位に従って異なることもできる。非AP-STAがパディング情報を送信する予定の場合にはパディングTXフィールドが1に設定され、それ以外の場合にはゼロ(0)に設定される。第2のユーザフィールド送信におけるユーザフィールドの残り部分は予約される。
【0199】
9.フレームフォーマット
9.1.PPACC要求
図57に、パケット到着前チャネルアクセス手順の使用を要求するために非AP STAによってそのBSS内の関連するAP STAに送信されるPPACC要求フレームの実施形態例1030を示す。非AP STAは、この要求を受諾又は拒絶するAP STAからの応答を予想する。フィールドは以下の通りである。フレーム制御(frame Control)フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。PPACC要求(PPACC Request)フィールドは、非AP STAがPPACC手順の有効化を要求していることを示す第1の状態(例えば、1)に設定される。AP STAは、この要求をネットワーク設定と比較して受諾又は拒絶すべきである。ECW長(ECW Length)フィールドは、PPACC手順中に非APが使用すべき要求されるECW期間の長さ(例えば、時間)を示す。AP STAは、この長さをネットワーク設定と比較してこの値を受諾又は拒絶すべきである。ECAW長(ECAW Length)フィールドは、PPACC手順中に非APが使用すべき要求されるWCAW期間の長さ(例えば、時間)を示す。AP STAは、この長さをネットワーク設定と比較してこの値を受諾又は拒絶すべきである。PPACC長(PPACC Length)フィールドは、非AP STAにおいてPPACCがアクティブであるように要求される期間を示す。この要求が承認された場合、STAは、この期間の長さ(時間又はビーコン間隔数)にわたってPPACCを実行し、ゼロの値は無制限期間を示す。
【0200】
9.2.PPACC応答
図58に、PPACC応答フィールドの実施形態例1050を示す。このフレームは、パケット到着前チャネルアクセス手順の使用要求に応答して、AP STAによってそのBSS内の非AP STAに送信される。非AP STAは、この要求を受諾又は拒絶するAP STAからの応答を予想する。フィールドは以下の通りである。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。PPACC応答(PPACC Responce)フィールドは、非AP STAがPPACC手順有効化のためのPPACC要求を受諾していることを示すために第1の状態(例えば、1)に設定され、そうでなければ拒絶される。この応答を受け取ったSTAは、応答が要求を受諾するようなものであればPPACC手順を有効化する。応答が拒絶を示す場合、非AP STAは、他のパラメータを含めてこの要求を再送することができる。提案されるECW長(Suggested ECW Length)フィールドは、PPACC応答が第2の状態(例えば、0)に設定されている場合にのみ存在する。このフィールドは、要求が拒絶され、APが依然として非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的である場合、PPACC手順中に非APが使用すべき提案されるECW期間長を示す。APは、非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的でない場合、このフィールドを0に設定する。
【0201】
提案されるECAW長(Suggested ECAW Length)フィールドは、PPACC応答が0に設定されている場合にのみ存在する。このフィールドは、要求が拒絶され、APが依然として非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的である場合、PPACC手順中に非APによって使用されるように提案されるECAW期間長を示す。APは、非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的でない場合、このフィールドを0に設定する。
【0202】
提案されるPPACC長(Suggested PPACC length)フィールドは、PPACC応答が0に設定されている場合にのみ存在する。このフィールドは、要求は拒絶されたもののAPが依然として非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的である場合、PPACC手順中に非APによって使用されるように提案されるPPACC長を示す。APは、非AP STAのためのPPACC手順を有効化することに意欲的でない場合、このフィールドを0に設定する。
【0203】
9.3.ECA期間要求
図59に、ECA期間要求の実施形態例1070を示す。このフレームは、パケット到着前チャネルアクセス手順のパラメータ更新を要求するために非AP STAによってそのBSS内の関連するAP STAに送信される。非AP STAは、この要求を受諾又は拒絶するAP STAからの応答を予想する。フィールドは以下の通りである。フレーム制御フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。ECW長(ECW Length)フィールドは、PPACC手順中に非APが使用すべき要求される更新されたECW期間の長さ(例えば、時間)を示す。AP STAは、この長さをネットワーク設定と比較してこの値を受諾又は拒絶すべきである。ECAW長(ECAW Length)フィールドは、PPACC手順中に非APが使用すべき要求されるWCAW期間の長さ(例えば、時間)を示す。AP STAは、この長さをネットワーク設定と比較してこの値を受諾又は拒絶すべきである。
【0204】
9.4.ECA期間応答
図60に、ECA期間応答フレームの実施形態例1090を示す。このフレームは、パケット到着前チャネルアクセス手順のパラメータ更新要求に応答して、AP STAによって自機のBSS内の非AP STAに送信される。非AP STAは、要求を受諾又は拒絶するAP STAからの応答を予想する。フィールドは以下の通りである。Frame Control(フレーム制御)は、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。ECA応答(ECA Responce)フィールドは、非AP STAがPPACC手順有効化のためのECA要求を受諾していることを示すために第1の状態(例えば、1)に設定され、そうでなければ拒絶される。この応答を受け取ったSTAは、応答が要求を受諾するようなものであればPPACC手順のECAパラメータを更新する。
【0205】
9.5.RTAストリーム開始要求
図61に、RTAストリーム開始要求の実施形態例1110を示す。このフレームは、特定の時点で何らかの期間にわたって特定の周期性でRTAセッションの開始を要求するためにSTAによってその関連するAPに送信される。フィールドは以下の通りである。フレーム制御フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。RTAセッション長(RTA Session length)フィールドは、UL送信を実行するためにAPによってSTAのためにスケジュールされるべき期間を示す。要求が受諾された場合、要求を受け取ったAPは、このUL送信のための時間にわたってSTAのためにリソースを配分してスケジュールすべきである。RTAセッション開始時刻(RTA session start time)フィールドは、RTAセッションが開始されると予想される時刻を示す。このフィールドは、STAが送信準備の整ったパケットを有すると予想している時刻を表す。この時刻は、このパケットの送信時刻、又はAPとSTAとが同期する正確な時刻に関連することができる。APは、この値をULスケジューリングのSTA送信のためのリソース配分を開始する時刻として使用する。RTAセッション期間(RTA session period)フィールドは、STAからAPへのRTAパケット送信の周期性を示す。STAは、RTAセッション期間毎に送信準備の整ったRTAデータを有すると予想される。APは、この情報を使用して、これらの各期間に1回のRTAチャネルアクセスをスケジュールする。RTA送信の予想時刻は、複数のRTAセッション期間を伴うRTAセッション開始時刻後とすべきである。RTAセッション有効期限(RTA Session lifetime)フィールドは、RTAセッションがオンになっている時間を示す。このフィールドは、RTAセッション期間毎にSTAがAPにRTAパケットを送信すると予想される時刻を表す。この時刻は、このパケットの送信時刻、又はAPとSTAとが同期する正確な時刻に関連することができる。APは、この時間の後にRTAパケット送信のスケジューリングを停止すべきである。
【0206】
9.6.RTAストリーム開始応答
図62に、RTAストリーム開始応答の実施形態例1130を示す。このフレームは、特定の時点で又は何らかの期間にわたって特定の周期でAPによってRTAセッション開始要求への応答としてその関連するSTAに送信される。フィールドは以下の通りである。フレーム制御フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。RTAセッション開始応答(RTA Session initiation responce)フィールドは、RTAストリーム開始要求に対する応答を示す。第1の状態(例えば、1)に設定された場合、APは、RTAセッション要求を受諾してこれにセッションIDを割り当てたことを示す。第2の状態(例えば、0)に設定された場合、APは要求を拒絶したことを示す。開始要求が受諾されてセッションIDを受け取った場合、STAはRTA送信のスケジューリングを予想すべきである。RTAセッションID(RTA session ID)フィールドは、APによってSTAに割り当てられたRTAセッションIDを示す。STAは、将来的にこのセッションIDを使用してこのRTAセッションを参照する。
【0207】
9.7.RTQTDフィードバック
図63に、RTQTDフィードバックフィールドの実施形態例1150を示す。このフレームは、RTA送信の予想時刻を更新するためにSTAによってその関連するAPに送信される。STAは、セッション開始後のどの時点でもこのフレームを送信することができる。フィールドは以下の通りである。フレーム制御フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。RTAセッションIDフィールドは、APによってSTAに割り当てられたRTAセッションIDを示す。STAは、将来的にこのセッションIDを使用してこのRTAセッションを参照する。RTAセッションタイムシフト(RTA session time shift)フィールドは、新たなRTA送信の開始が予想される時刻を示す。このフィールドは、STAが送信準備の整ったパケットを有すると予想している時刻を表す。この時刻は、このパケットの送信時刻、又はAPとSTAとが同期する正確な時刻に関連することができる。APは、この値を使用して、ULスケジューリングのSTA送信のためのリソース配分を更新する。
【0208】
9.8.RTQTDフィードバック確認応答
図64に、RTQTDフィードバック確認応答の実施形態例1170を示す。このフレームは、RTA送信の予想時刻を更新するためにSTAによってその関連するAPに送信される。STAは、セッション開始後のどの時点でもこのフレームを送信することができる。フィールドは以下の通りである。フレーム制御フィールドは、フレームを識別するために必要な全ての情報を含む。RTAセッションIDフィールドは、APによってSTAに割り当てられたRTAセッションIDを示す。STAは、将来的にこのセッションIDを使用してこのRTAセッションを参照する。RTAセッションRTQTD ACK(RTA session RTQTD ACK)フィールドは、RTQTD更新要求の受信の確認応答を示す。第1の状態(例えば、1)に設定された場合、APは、RTAパケット送信時間を要求内で送信された時間差に更新することを確認応答する。STAは、要求した時間での配分を予想すべきである。第2の状態(例えば、0)に設定された場合、APはRTA送信時間を更新することができず、STAが後で試行し、又は現在の配分を使用し続けることができる。
【0209】
10.概要
本開示によれば、RTAパケットのUL又はDLのMU-MIMO送信をスケジュールするAPが、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分し、たとえ予想されるRTAパケット到着前であってもチャネルへのアクセス権を獲得することができる。これを達成するために、APは以下を行う。(a)APは、DL MU-MIMO送信の場合にはAPにおける、又はUL MU MIMO送信の場合には非AP STAにおけるRTAパケットの予想到着時刻及び周期性を知る。(b)APは、DL又はUL方向のRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合し、UL又はDL送信のための別のSTA及びRTA STAのカスケード化された送信を以下のいずれかによって同じリソース上でスケジュールすることができる。(i)APがRTAパケットの到着後又は到着時にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、配分されたリソース上でRTAパケット送信が直ちにスケジュールされる。或いは(ii)APは、RTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、同じリソース上でUL又はDL送信のための別のSTA及びRTA STAのカスケード化された送信をスケジュールすることができる。
【0210】
少なくとも1つの実施形態では、APが、RTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、同じリソース上でUL又はDL送信のための別のSTA及びRTA STAのカスケード化された送信をスケジュールすることができる。
【0211】
DL MIMOの少なくとも1つの実施形態では、APが、RTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、将来的なDL RTAパケットをスケジュールし、RTAパケット到着までパディングのように動作するダミーパケットを送信することができる。
【0212】
DL MIMOの少なくとも1つの実施形態では、APが、RTAパケット到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、リソースを時間共有する同じRU上で将来的なDL RTAパケットをスケジュールし、RTAパケット到着まで別のDL送信をスケジュールすることができる。
【0213】
少なくとも1つの実施形態では、APが、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、配分されたリソースでの送信が遅延することをSTAに通知する。非AP STAは、これらのリソースを解析し、パディング(ダミーパケット)が送信された後にRTAパケットを予想することができる。
【0214】
少なくとも1つの実施形態では、APが、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、配分されたリソースでの送信が遅延することをRTA STAに通知する。非AP STAは、これらのリソースを解析し、他のSTA送信が実行された後にRTAパケットを予想することができる。
【0215】
少なくとも1つの実施形態では、APが、非AP STAへのプリアンブルユーザフィールドを、RUが他のSTAと時間共有されることを示すように修正することができる。この修正は、(a)RUが共有されることを示すようにユーザフィールド内のビットを設定して、他のSTAの情報又はパディングを示す別のユーザフィールドを送信するステップ、又は(b)新たなユーザフィールドを定義して、遅延したDL送信が開始するDL送信の開始に関する時間を送信するステップによって実行され、これを行う際に、リソースを時間共有する両送信はPHYパラメータを共有する。
【0216】
UL送信のための少なくとも1つの実施形態では、非AP STAが、APにRTAセッション及びRTAセッションパラメータについて通知するRTAストリーム開始要求をAPに送信する。APは、確認応答及び受諾又は拒絶でRTAストリームセッション要求に応答し、これによってパケットがUL方向の送信に利用可能になる度にBSRを送信する遅延が省かれる。
【0217】
UL送信のための少なくとも1つの実施形態では、APが、UL RTAにリソースを配分して非AP STAにトリガフレームを送信する。APは、RTAパケットの到着前に配分情報を送信することができる。
【0218】
少なくとも1つの実施形態では、APが、PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及びUL送信の遅延した開始を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドをトリガフレームで非AP STAに送信することによって、RTAパケットの受信後にUL送信を遅延させるように非AP STAをスケジュールすることができる。
【0219】
少なくとも1つの実施形態では、非AP STAに、パケットを送信していない時にパディングデータ(ダミーパケット)を送信するように要求することができる。
【0220】
少なくとも1つの実施形態では、APが、遅延したSTAがULデータを送信していない時に送信を行うように他のSTAをスケジュールすることができる。これは、リソースを時間共有していることをそのSTAに通知し、PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及びUL送信の終了を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドをトリガフレームで非AP STAに送信することによって行われる。
【0221】
UL送信のための少なくとも1つの実施形態では、非AP STAが、APにRTAパケットの待ち行列バッファ状態を送信してRTAパケットスケジュール時間の推定値を更新することができる。
【0222】
11.実施形態の一般的範囲
提示した技術の説明した強化は、様々な無線通信局回路内に容易に実装することができる。また、無線通信局が、1又は2以上のコンピュータプロセッサ装置(例えば、CPU、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ対応ASICなど)、及び命令を記憶する関連するメモリ(例えば、RAM、DRAM、NVRAM、FLASH(登録商標)、コンピュータ可読媒体など)を含むように実装されることにより、メモリに記憶されたプログラム(命令)がプロセッサ上で実行されて、本明細書で説明した様々なプロセス法のステップを実行することが好ましいと理解されたい。
【0223】
当業者は、無線通信局の動作に関連するステップを実行するコンピュータ装置の使用を認識しているため、簡略化のために図にはコンピュータ及びメモリデバイスを示していない。提示した技術は、メモリ及びコンピュータ可読媒体が非一時的であり、従って一時的電子信号を構成しない限り、これらに関して限定するものではない。
【0224】
本明細書では、コンピュータプログラム製品としても実装できる、本技術の実施形態による方法及びシステム、及び/又は手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式又はその他の計算表現のフローチャートを参照して本技術の実施形態を説明することができる。この点、フローチャートの各ブロック又はステップ、及びフローチャートのブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、並びにあらゆる手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコードの形で具体化された1又は2以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって実装することができる。理解されるように、このようなあらゆるコンピュータプログラム命令は、以下に限定するわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するための他のあらゆるプログラマブル処理装置を含む1又は2以上のコンピュータプロセッサ上によって実行して、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0225】
従って、本明細書で説明したフローチャートのブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、(単複の)特定の機能を実行する手段の組み合わせ、(単複の)特定の機能を実行するステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコードロジック手段の形で具体化されるような、(単複の)特定の機能を実行するコンピュータプログラム命令をサポートする。また、本明細書で説明したフローチャートの各ブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせは、(単複の)特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードとの組み合わせによって実装することもできると理解されるであろう。
【0226】
さらに、コンピュータ可読プログラムコードなどの形で具体化されるこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができる1又は2以上のコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶して、これらのコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶された命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック内に指定される機能を実施する命令手段を含む製造の物品を生産するようにすることもできる。コンピュータプログラム命令をコンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置によって実行し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック、(単複の)手順、(単複の)アルゴリズム、(単複の)ステップ、(単複の)演算、(単複の)数式、又は(単複の)計算表現に特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることもできる。
【0227】
さらに、本明細書で使用する「プログラム」又は「プログラム実行文」という用語は、本明細書で説明した1又は2以上の機能を実行するために1又は2以上のコンピュータプロセッサ実が行できる1又は2以上の命令を意味すると理解されるであろう。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで具体化することができる。命令は、装置の非一時的媒体に局所的に記憶することも、又はサーバなどに遠隔的に記憶することもでき、或いは命令の全部又は一部を局所的に又は遠隔的に記憶することもできる。遠隔的に記憶された命令は、ユーザが開始することによって、或いは1又は2以上の要因に基づいて自動的に装置にダウンロード(プッシュ)することができる。
【0228】
さらに、本明細書で使用するプロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)及びコンピュータという用語は、命令、並びに入力/出力インターフェイス及び/又は周辺装置との通信を実行できる装置を示すために同義的に使用されるものであり、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU及びコンピュータという用語は、単一の又は複数の装置、シングルコア装置及びマルチコア装置、及びこれらの変種を含むように意図するものであると理解されるであろう。
【0229】
本明細書の説明から、本開示は、限定ではないが以下の内容を含む複数の実施形態を含むと理解されるであろう。
【0230】
1.ネットワークにおける無線通信装置であって、(a)自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信してアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成された無線通信回路と、(b)WLAN上で動作するように構成された局内の、無線通信回路に結合されたプロセッサと、(c)プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリとを備え、(d)命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として無線通信回路を動作させることと、(d)(ii)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(d)(iii)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することとを含むステップを実行し、(d)(iv)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、ステップは、(d)(v)AP局として動作する際に、DL又はUL方向におけるRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)APがRTAパケットの到着時刻の後又は到着時刻にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)APがRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、装置。
【0231】
2.ネットワークにおける無線通信装置であって、(a)自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信してアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成された無線通信回路と、(b)WLAN上で動作するように構成された局内の、無線通信回路に結合されたプロセッサと、(c)プロセッサが実行できる命令を記憶した非一時的メモリとを備え、(d)命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするように構成されたWLAN局として無線通信回路を動作させることと、(d)(ii)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(d)(iii)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することとを含むステップを実行し、(d)(iv)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、DL MIMOのAPとして動作する際に、APがRTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、将来的なDL RTAパケットをスケジュールし、DL RTAパケットの到着まで、パディングとして動作するダミーパケットを送信し、ステップは、(d)(v)AP局として動作する際に、DL又はUL方向におけるRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)APがRTAパケットの到着時刻の後又は到着時刻にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)APがRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、装置。
【0232】
3.ネットワークにおける無線通信の実行方法であって、(a)無線通信回路を、自機の受信エリア内の少なくとも1つの他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)局と無線で通信して、通信遅延の影響を受けやすいリアルタイムアプリケーション(RTA)パケット及び非リアルタイムパケットの通信をサポートするアクセスポイント(AP)又は非APのいずれかとして動作する局として構成されたWLAN局として動作させることと、(b)事前ネゴシエーション、又はパケットヘッダ情報、或いは事前ネゴシエーションとパケットヘッダ情報との組み合わせによって、リアルタイムアプリケーション(RTA)パケットと非リアルタイムアプリケーション(非RTA)パケットとを区別することと、(c)DL MU-MIMO送信を実行するAPとして動作する際、又はUL MU MIMO送信を実行する非AP局として動作する際に、RTAパケット到着時刻及び周期性に関する情報を取得することとを含み、(d)RTAパケットのアップリンク(UL)又はダウンリンク(DL)のマルチユーザ(MU)多入力多出力(MIMO)送信をスケジュールするアクセスポイント(AP)として動作する局は、RTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することを実行し、方法は、(e)AP局として動作する際に、DL又はUL方向におけるRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルアクセスのために競合して、(A)APがRTAパケットの到着時刻の後又は到着時刻にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、配分されたリソース(RU)上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールし、又は(B)APがRTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために同じ配分されたリソース(RU)上で別の局及びRTA局のカスケード化された送信をスケジュールすることをさらに含む、方法。
【0233】
4.無線通信のためのシステム及び方法であって、(a)APが、たとえ予想されるRTAパケット到着前であってもチャネルへのアクセス権を獲得するために、RTAパケットのUL又はDLのMU-MIMO送信をスケジュールしてRTAパケット到着前にパケット送信にリソースを配分することと、(b)DL MU-MIMO送信の場合にはAPにおいて、又はUL MU MIMO送信の場合には非AP STAにおいて、RTAパケットの予想到着時刻及び周期性を決定することと、(c)DL又はUL方向におけるRTAパケットの予想到着時刻前に、APとしてチャネルのために競合することと、(d)APがRTAパケットの到着時刻の後又は到着時刻にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、配分されたリソース上で直ちにRTAパケット送信をスケジュールすることと、(e)APが、RTAパケットの予想到着時刻前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、UL又はDL送信のために同じリソースで別のSTA及びRTA STAのカスケード化された送信をスケジュールすることと、(f)DL MIMOにおいてAPがRTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、APが将来のためにDL RTAパケットをスケジュールし、パディングのように動作するダミーパケットをRTAパケットの到着まで送信することと、(g)DL MIMOにおいてAPがRTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、APが将来的なDL RTAパケットをスケジュールして、リソースを時間共有する同じRU上でRTAパケットの到着まで別のDL送信をスケジュールすることと、を含むシステム及び方法。
【0234】
5.命令は、DL MIMOのAPとして動作するプロセッサによって実行された時に、APがRTAパケットの到着前にチャネルへのアクセス権を獲得した場合、将来的なDL RTAパケットをスケジュールすることと、DL RTAパケットの到着まで、パディングとして動作するダミーパケットを送信することとを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0235】
6.命令は、DL MIMOのAPとして動作するプロセッサによって実行された時に、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、配分されたリソース(RU)での送信が遅延することを非AP局に通知して、非AP STAがリソースを解析することで、パディング又はダミーパケットが送信された後にDL RTAパケットを予想することを可能にすることを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0236】
7.DL MIMOのAPとして動作するプロセッサによって実行された時に、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、配分されたリソース(RU)での送信が遅延することを非AP局に通知して、非AP STAがリソースを解析することで、他の局の送信が完了した後にDL RTAパケットを予想することを可能にすることを含むステップをさらに実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0237】
8.DL MIMOのAPとして動作するプロセッサによって実行された時に、リソース配分(RU)上で将来的なDL RTAパケットをスケジュールすることと、DL RTAパケットの到着まで、リソース配分(RU)を時間共有する別のDL送信をスケジュールすることとを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0238】
9.命令は、DL MIMOのAPとして動作するプロセッサによって実行された時に、(i)配分されたリソースが共有されることを示すようにユーザフィールド内のビットを設定して、別の局の情報を示す又は送信のパディングのための別のユーザフィールドを送信すること、或いは(ii)新たなユーザフィールドを定義して、遅延したDL MIMO送信が開始する予定であるDL MIMO送信の開始に関連する時間値を送信すること、のいずれかに応答して、非AP局に送信されるユーザフィールドのプリアンブルを、割り当てられたリソース(RU)が他の局と時間共有されることを示すように修正することをさらに含むステップを実行し、リソースを時間共有する両送信は、PHYパラメータを共有する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0239】
10.命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作するプロセッサによって実行された時に、APにRTAストリームセッション要求を送信してAPにRTAセッション及びRTAセッションのパラメータについて通知し、これに対してAPが確認応答及びRTAストリームセッション要求の受諾又は拒絶で応答して、アップリンク(UL)方向の送信にパケットが利用可能になる度にバッファステータスレポート(BSR)を送信することに伴う遅延を排除することを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0240】
11.命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作するプロセッサによって実行された時に、UL RTAパケット送信のためにリソース(RU)を配分することと、非AP STAにトリガフレームを送信することとを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0241】
12.命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作するプロセッサによって実行された時に、RTAパケットの到着前にリソース(RU)を配分するステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0242】
13.命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作するプロセッサによって実行された時に、PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及びUL送信の遅延した開始を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドを非AP局にトリガフレーム内で送信することによって、RTAパケットを受け取った後にUL送信を遅延させるように非AP STAをスケジュールすることを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0243】
14.命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作するプロセッサによって実行された時に、非AP STAが配分されたリソース(RU)でパケットを送信していない時に非AP STAがパディングデータ又はダミーパケットを送信するように要求することを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0244】
15.命令は、アップリンク(UL)送信でAP局として動作するプロセッサによって実行された時に、局のULデータの送信が遅延している時に他の局が送信を行うようにスケジュールすることを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0245】
16.命令は、プロセッサによって実行された時に、配分されたリソース(RU)を時間共有していることを別の局に通知し、PHYパラメータを示す第1のユーザフィールド及びアップリンク(UL)送信の終了を示す第2のユーザフィールドという2つのユーザフィールドを別の局にトリガフレーム内で送信することを含むステップによって他の局のスケジューリングを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0246】
17.命令は、アップリンク(UL)送信で非AP局として動作するプロセッサによって実行された時に、APにRTAパケットの待ち行列バッファ状態を送信してRTAパケットスケジュール時間の推定値を更新することを含むステップを実行する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0247】
18.APは、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、割り当てられたリソースにおいて送信が遅延することをSTAに通知する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。非AP STAは、リソースを解析して、パディング(ダミーパケット)が送信された後にRTAパケットを予想することができる。
【0248】
19.APは、DL MU-MIMOフレームのプリアンブルを修正することによって、割り当てられたリソースでの送信が遅延することをRTA STAに通知するが、非AP STAは、リソースを解析して、他のSTA送信が実行された後にRTAパケットを予想する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0249】
20.APは、非AP STAへのプリアンブルユーザフィールドを、RUが他のSTAと時間共有されることを示すように修正することができる、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。この修正は、(a)RUが共有されることを示すようにユーザフィールド内のビットを設定して、他のSTAの情報又はパディングを示す別のユーザフィールドを送信すること、又は(b)新たなユーザフィールドを定義して、遅延したDL送信が開始されるDL送信の開始に関する時間を送信すること、によって行われる。これを行うために、リソースを時間共有する両送信はPHYパラメータを共有すべきである。
【0250】
21.UL送信の場合、非AP STAは、APにRTAセッション及びRTAセッションパラメータについて通知するRTAストリーム開始要求をAPに送信する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。APは、確認応答及び受諾又は拒絶でRTAストリームセッション要求に応答する。これにより、パケットがUL方向の送信に利用可能になる度にBSRを送信する遅延が省かれる。
【0251】
22.UL送信の場合、APは、UL RTAにリソースを配分して非AP STAにトリガフレームを送信する、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。APは、RTAパケットの到着前に配分を送信することができる。
【0252】
23.APは、一方がPHYパラメータを示し他方がUL送信の遅延した開始を示す2つのユーザフィールドをトリガフレームで非AP STAに送信することによって、RTAパケットの受信後にUL送信を遅延させるように非AP STAをスケジュールすることができる、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0253】
24.非AP STAに、パケットを送信していない時にパディングデータ(ダミーパケット)を送信するように要求することができる、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0254】
25.APは、遅延したSTAがULデータを送信していない時に送信を行うように他のSTAのスケジュールすることができる、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。これは、リソースを時間共有していることをそのSTAに通知し、一方がPHYパラメータを示し他方がUL送信の終了を示す2つのユーザフィールドをトリガフレームで非AP STAに送信することによって行われる。
【0255】
26.非AP STAは、APにRTAパケットの待ち行列バッファ状態を送信してRTAパケットスケジュール時間の推定値を更新することができる、いずれかの先行する実施形態のシステム、装置又は方法。
【0256】
本明細書で使用する単数形の「a、an(英文不定冠詞)」及び「the(英文定冠詞)」は、文脈において別途明確に示されていない限り複数形の照応を含む。ある物体に対する単数形での言及は、明確にそう述べていない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又は2以上」を意味する。
【0257】
本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1又は2以上の物体の集合を意味する。従って、例えば物体の組は、単一の物体又は複数の物体を含むことができる。
【0258】
本明細書で使用する「実質的に(substantially)」及び「約(about)」という用語は、わずかな変動の記述及び説明のために使用するものである。これらの用語は、事象又は状況に関連して使用した時には、これらの事象又は状況が間違いなく発生する場合、及びこれらの事象又は状況が発生する可能性が非常に高い場合を意味することができる。これらの用語は、数値に関連して使用した時には、その数値の±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下などの、±10%以下の変動範囲を意味することができる。例えば、「実質的に」整列しているということは、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下などの、±10°以下の角度変動範囲を意味することができる。
【0259】
また、本明細書では、量、比率及びその他の数値を範囲形式で示すこともある。このような範囲形式は、便宜的に簡略化して使用するものであり、範囲の限界として明確に指定された数値を含むが、この範囲に含まれる全ての個々の数値又は部分的範囲も、これらの各数値及び部分的範囲が明確に示されているかのように含むものであると柔軟に理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1及び約200という明確に列挙した限界値を含むが、約2、約3、約4などの個々の比率、及び約10~約50、約20~約100などの部分的範囲も含むと理解されたい。
【0260】
本明細書の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本開示の範囲を限定するものではなく、現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。従って、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含むと理解されるであろう。
【0261】
本開示内の「A、B及び/又はC」などの表現構造は、A、B又はCのいずれか、或いは項目A、B及びCのいずれかの組み合わせが存在し得ることを表す。「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」の後にリストされた一群の要素が続くものなどを示す表現構造は、該当する際にはこれらのリストされた要素のいずれかの考えられる組み合わせを含む、これらの一群の要素のうちの少なくとも1つが存在することを示す。
【0262】
本明細書における「ある実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」又は同様の実施形態という言い回しについて言及する参照は、説明する実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。従って、これらの様々な実施形態の表現は、必ずしも全てが同じ実施形態、又は説明されている他の全ての実施形態とは異なる特定の実施形態を意味するわけではない。実施形態という表現は、所与の実施形態の特定の特徴、構造又は特性を、開示する装置、システム又は方法の1又は2以上の実施形態においていずれかの好適な形で組み合わせることができることを意味するものとして解釈すべきである。
【0263】
当業者に周知の本開示の実施形態の要素の構造的及び機能的同等物も、引用によって本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれるように意図される。さらに、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されるように意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。また、本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のためのステップ」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ステッププラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0264】
170 実施形態例
172 開始
174 RTAストリームの開始
176 ECW長=0
178 チャネル統計を収集
180 チャネルの占有率が高いかそれとも低いか?
182 ECWを最小値ゼロまで減少
184 最大値を超えないようにECWを増加
186 RTAセッションが依然としてアクティブであるか?
188 次の統計更新時間が期限切れか?
189 終了
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図20
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図31
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図46A
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図47
図48
図49
図50
図51A
図51B
図52
図53A
図53B
図54
図55
図56A
図56B
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
【国際調査報告】