(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ATOH1遺伝子を活性化するオリゴ核酸分子及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220906BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220906BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220906BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220906BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20220906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220906BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220906BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20220906BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220906BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20220906BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220906BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/88 Z
C12N15/87 Z
A61P35/00
A61P27/16
A61K48/00
A61K31/713
A61K31/7088
A61K31/711
A61K31/7125
A61K31/712
A61K31/7115
A61K9/127
A61K47/30
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577888
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(85)【翻訳文提出日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2020100093
(87)【国際公開番号】W WO2021000928
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】201910598221.6
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339315
【氏名又は名称】ラクティゲン セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】リ ロンチョン
(72)【発明者】
【氏名】カン ムーリン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
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4C086AA01
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4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明はオリゴ核酸及び聴力損失の治療におけるその応用に関する。本願は聴力損失の治療用の小分子活性化核酸分子を提供する。本発明の小分子活性化核酸分子は、ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖又は一本鎖RNA分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖NA分子は16~35ヌクレオチド長さを有する2本の核酸鎖を含み、且つそのうち一方のヌクレオチド鎖がATOH1遺伝子プロモーター領域から選ばれる標的と少なくとも75%の相同性又は相補性を有する。また、本発明は、前記小分子活性化核酸分子及び任意で薬学的に許容可能なベクターを含む薬品組成物に関して、前記小分子活性化核酸分子又は前記医薬組成物を用いて、細胞中でのATOH1遺伝子とたんぱく質の表現をアップレギュレーションする方法、及びATOH1遺伝子の表現不足又は減少に関連する疾病や障害を治療する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1核酸鎖と第2核酸鎖とを含む小分子活性化核酸分子であって、第1核酸鎖は、ATOH1遺伝子プロモーター領域のうち転写開始部位から位置-578~-386(SEQ ID NO:2)、位置-339~-291(SEQ ID NO:3)、位置-162~-86(SEQ ID NO:4)又は位置-55~-34(SEQ ID NO:5)上流における長さ16~35ヌクレオチドの連続した配列と少なくとも75%の相同性又は相補性を有し、前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は相補的に二本鎖核酸構造を形成することができ、前記二本鎖核酸構造はATOH1遺伝子の細胞での発現を活性化/アップレギュレーションできる、小分子活性化核酸分子。
【請求項2】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は2本の異なる核酸鎖上に存在する、請求項1に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項3】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖は同一の核酸鎖上に存在し、好ましくは、前記小分子活性化核酸分子はヘアピン型一本鎖核酸分子であり、前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖が二本鎖核酸構造を形成する相補領域を含む、請求項1に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項4】
前記小分子活性化核酸分子の少なくとも1本の鎖は3’末端に長さ0~6ヌクレオチドの突出を有する、請求項2に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項5】
前記小分子活性化核酸分子の2本の鎖はいずれも3’末端に長さ0~6ヌクレオチドの突出を有し、好ましくは長さ2又は3ヌクレオチドの突出を有する、請求項4に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項6】
前記第1核酸鎖と前記第2核酸鎖はそれぞれ長さ16~35ヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項7】
前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:280~416から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、又はSEQ ID NO:SEQ ID NO:280~416から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%の相同性又は相補性を有する核酸配列からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項8】
前記第1核酸鎖は、SEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%の相同性を有し、前記第2核酸鎖は、SEQ ID NO:143~279から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列と少なくとも75%の相同性を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項9】
前記第1核酸鎖は、SEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又はSEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなり、且つ前記第2核酸鎖は、SEQ ID NO:143~279から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列を含むか、又はSEQ ID NO:143~279から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列からなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項10】
前記小分子活性化核酸分子は、少なくとも1つの修飾を含み、好ましくは、前記修飾は化学修飾である、請求項1~9のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項11】
前記化学修飾は、下記修飾の少なくとも1種以上を含むか、又はこれらから選ばれる、請求項10に記載の小分子活性化核酸分子:
(1)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるヌクレオチドを連結するホスホジエ ステル結合に対する修飾、
(2)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるリボースの2’-OHに対する修飾、
(3)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における塩基に対する修飾、
(4)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における少なくとも1個のヌクレオチドがロ ックド核酸である。
【請求項12】
前記化学修飾は、2’-フルオロ修飾、2’-オキシメチル修飾、2’-オキシエチレンメトキシ修飾、2,4’-ジニトロフェノール修飾、ロックド核酸(LNA)、2’-アミノ修飾、2’-デオキシ修飾、5′-ブロモウラシル修飾、5′-ヨードウラシル修飾、N-メチルウラシル修飾、2,6-ジアミノプリン修飾、ホスホロチオエート修飾及びボラノホスフェート修飾の1種以上を含むか、又はこれらから選ばれる、請求項10に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項13】
ATOH1遺伝子の発現を少なくとも10%活性化/アップレギュレーションする、請求項1~12のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸。
【請求項15】
DNA分子である、請求項14に記載の核酸。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子又は請求項14又は15に記載の核酸を含む細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項16に記載の細胞、及び任意に薬学的に許容可能なベクターを含む組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容可能なベクターは、リポソーム、高分子ポリマー又はポリペプチドを含むか、これらから選ばれる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物の、細胞におけるATOH1遺伝子発現の活性化/アップレギュレーション用の製剤の調製における使用。
【請求項21】
前記小分子活性化核酸分子は直接前記細胞に導入される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記小分子活性化核酸分子は該小分子活性化核酸分子をコードするヌクレオチド配列を前記細胞に導入することにより細胞で産生される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記細胞は哺乳動物細胞を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記細胞はヒト細胞である、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記細胞は人体に存在する、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記人体は、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であり、且つ前記小分子活性化核酸分子は、前記疾患又は障害の治療に十分な量で投与される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記ATOH1ンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、聴力損失及び腫瘍を含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
SEQ ID NO:2~5からなる群から選択されるヌクレオチド配列からの、長さ16~35ヌクレオチドの任意の連続配列を含むか、または選択される、これらから選ばれる分離したATOH1遺伝子小分子活性化核酸分子の標的部位。
【請求項29】
SEQ ID NO:280~416からなる群から選択される任意のヌクレオチド配列のいずれかを含むか、これらから選ばれる、請求項28に記載の小分子活性化核酸分子の標的部位。
【請求項30】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物を細胞に投与することを含む、ATOH1遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法。
【請求項31】
前記小分子活性化核酸分子は直接前記細胞に導入される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記小分子活性化核酸分子は、前記小分子活性化核酸分子をコードする前記核酸を前記細胞に導入することにより細胞で産生するものである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞は哺乳動物細胞を含む、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞はヒト細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞は人体に存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記人体は、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であり、且つ前記小分子活性化核酸分子は前記疾患又は障害の治療に十分な量で投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ATOH1ンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、聴力損失及び腫瘍を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物を前記個体に治療有効量で投与することを含む、個体のATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法。
【請求項39】
前記ATOH1ンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、聴力損失及び腫瘍を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記個体は哺乳動物である、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記個体はヒトである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物の、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物の調製における使用。
【請求項43】
前記ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害は、聴力損失と腫瘍を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
請求項1~13のいずれか1項に記載の小分子活性化核酸分子、請求項14又は15に記載の核酸、請求項16に記載の細胞又は請求項17~18のいずれか1項に記載の組成物の、ATOH1タンパク質発現不足により引き起こされる聴力損失を含む疾患治療用の薬物の調製における使用。
【請求項45】
前記個体は哺乳動物である、請求項43~44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
前記個体はヒトである、請求項43~44のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の技術分野に属し、具体的には、遺伝子活性化に関連するオリゴ核酸分子に関して、例えば小分子活性化核酸分子及び小分子活性化核酸分子のATOH1遺伝子転写の活性化/アップレギュレーションにおける応用、並びに聴力損失などATOH1たんぱく質欠乏又は不足に関連する疾患や障害の治療における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
聴力損失は深刻な世界性疾病で、全世界の3.6億人に影響している。聴力損失は患者の生活の質に影響するだけではなく、患者と医療システムに対しても重い負担である。現在まだ有効な治療方法がないため、新しい治療手段の開発が必要である(WHO, 2013)。
【0003】
聴力損失は聴覚機能障害の表現であり、一般臨床上で聴力損失を伝音性、感音神経性と混合性聴力損失の三種類に分類している。伝音性聴力損失の病変は外耳あるいは中耳にあり、音波の内耳への伝達が障害される。最もよく見られる聴力損失タイプは感音神経性聴力損失であり、主に内耳蝸牛中の有毛細胞の損失によるものである(Liberman 1990)。伝音性聴力損失と感音神経性聴力損失を引き起こす要素は同時に存在することは混合性聴力損失と呼ばれる。ヒトの内耳には約75,000個の感覚有毛細胞があり、機械的に敏感な静的繊毛束により音や運動を検出し、運動信号を電気信号に変換する機械センサである。音声の伝達仕組みは、内耳が外有毛細胞による音声の適応的増幅及び内有毛細胞のシナプス化学的伝達により、音声の機械的振動を聴神経線維上の電気的衝動に変換することである。電気的衝動はさらに聴覚脳幹と聴覚皮質に処理、コード及び解読され、結果として認知レベルで外界の音声振動に対する聴覚物像を呈した。
【0004】
聴力損失の影響要素は先天性と後天性に分けられる。先天性要素とは主に新生児の出産時或いは出産直後に聴力損失が現れることであり、妊婦の妊娠期に特定疾患の感染と不適切な特殊な薬物の使用、分娩期の不当な合併症の出現などを含む。後天性要素はあらゆる年齢で発生可能であり、特定の感染症の感染、頭や耳への外傷、過酷な騒音や耳毒性薬物環境への長期暴露、高齢化による蝸牛感覚有毛細胞の劣化などを含む(Gurtler and Lalwani 2002)。健常者で、男性の聴力損失は約45歳から始まり、女性の聴力損失はやや遅れている。50歳以上の人の40%超と70歳以上の人の70%が臨床上で顕著な聴力損失を持たれている。人口高齢化に伴い、高齢者難聴の発症率も増加している。また、内耳前庭上皮細胞中の有毛細胞の損失は平衡機能障害を招き、眩暈を引き起こす。
【0005】
ATH1、HATH1、MATH-1及びbHLHa14とも言われるATOH1遺伝子は、無調bHLH転写因子1(atonal bHLH transcription factor 1)たんぱく質をコードし、塩基性ヘリックスループヘリックス(basic helix-loop-helix, bHLH)転写因子ファミリーメンバーに属する。ATOH1は哺乳類動物の内耳有毛細胞の形態と機能再生過程において正の制御作用を発揮する(Zheng and Gao 2000)。ATOH1は内耳発育において最初に発現する遺伝子であると知られ(Bermingham et al. 1999)、例えば脊髄、内耳有毛細胞、小脳ニューロン、本体受容系ニューロン及び非神経細胞の各種神経細胞の発育を調節する。内耳の発育期間において、有毛細胞の再生は重要な役割を果たし、ATOH1は有毛細胞の分化と再生を促進するキーポイントである。従い、ATOH1遺伝子の過剰発現を誘導し、更に有毛細胞の再生を促進することは聴力損失の治療に新しい治療法を提供できるかもしれない。また、ATOH1は腫瘍抑制遺伝子の機能を持っている。例えば、結直腸癌において、ATOH1は明確な腫瘍抑制遺伝子であり、ATOH1の過剰発現は腫瘍細胞の増殖と移植腫瘍の成長を抑制できる(Kazanjian and Shroyer 2011)。
【0006】
ベクター(ウイルスとリポソーム)を介するATOH1遺伝子治療は動物実験において有毛細胞の再生を促進と聴力を改善できる効果を示した(Richardson and Atkinson 2015)。ATOH1の過剰発現を介して、Corti 's器の細胞骨格が崩壊する前に有毛細胞の分化と再生を誘導する学者もいる(Kawamoto et al. 2003; Gubbels et al. 2008)。アメリカミシガン大学のRapheal研究チームは、アミノグリコシド系抗生物質により完全難聴になった成体のギニアブタの内耳に対して、ATOH1の過剰発現を行うことで、有毛細胞が再生でき、聴覚機能が部分的に回復できたと報告した(Izumikawa et al. 2005)。新生マウスではATOH1の過剰発現は支持細胞を有毛細胞に変換でき、これも他の細胞(例えば腸細胞)の分化を促進し(Aragaki et al. 2008)、結腸癌細胞の増殖を低下することができる(Leow, Polakis, and Gao 2005)。
【0007】
遺伝子の伝達には通常ベクターが必要であり、現在よく使われている遺伝子トランスフェクションベクターは主にウイルスとリポソームの2種類がある。現在ノバルティスが開発した遺伝子治療製品(CGF166、組換えアデノウイルスを介するATOH1遺伝子治療)は、現在、聴力喪失を治療するための第I相臨床試験で使用されている(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02132130)。このウイルス-遺伝子治療システムの発現レベルは高いが、ベクターの安全性と免疫反応の問題を完全に克服することができず、人体に応用するにはまだ挑戦がある。従い、新しい治療法の開発は極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、ATOH1遺伝子転写を活性化/アップレギュレーションして、ATOH1タンパク質の発現量を増加することで内耳有毛細胞の再生を促進し、聴力を回復させ、又はATOH1たんぱく質欠乏又は不足に関連する疾患又は障害、例えば腫瘍を治療する、RNA活性化プロセスに基づく小分子活性化核酸分子を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、小分子活性化核酸分子を含む組成物又は製剤を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、小分子活性化核酸分子又はそれを含む組成物又は製剤の、ATOH1遺伝子の細胞での発現を活性化/アップレギュレーションする薬物の調製における応用を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、ATOH1遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーションの方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、小分子活性化核酸分子又はそれを含む組成物又は製剤の、ATOH1たんぱく質欠乏又は不足に関連する疾患又は障害、例えば聴力損失の治療用の薬物の調製における応用、又はATOH1たんぱく質欠乏又は不足に関連する疾患又は障害の治療方法を提供することである。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、SEQ ID NO:2~SEQ ID NO:5のいずれか1つの配列上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含むか、これらから選ばれる分離したATOH1遺伝子小分子活性化核酸分子の標的部位を提供する。
技術案
【0014】
本発明の一態様では、細胞中のATOH1遺伝子の発現を活性化又はアップレギュレーションする小分子活性化核酸分子例えば小分子活性化RNA(saRNA)分子を提供し、前記小分子活性化核酸分子の1本の鎖はATOH1遺伝子プロモーター領域のいずれかの長さ16~35個ヌクレオチドの核酸配列とは少なくとも75%の相同性又は相補性を有し、前記遺伝子発現の活性化又はアップレギュレーションを実現する。プロモーター領域とは、転写開始部位の上流を含む637個のヌクレオチドである。具体的には、小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、ATOH1遺伝子プロモーターのうち転写開始部位から-578~-386領域(ホットスポット1、SEQ ID NO:2)、-339~-291領域(ホットスポット2, SEQ ID NO:3)、-162~-86(ホットスポット3, SEQ ID NO:4)、又は-55~-34領域(ホットスポット4, SEQ ID NO:5)における連続した16~35個のヌクレオチドとは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又は100%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含むか、これらから選ばれる。より具体的には、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:280~416から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する。特定の一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の一本鎖は、SEQ ID NO:280~-416から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する核酸配列を含む。別の一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:280~416から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する核酸配列からなる。さらに一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の1本の鎖は、SEQ ID NO:280~416から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する核酸配列である。
【0015】
本発明の小分子活性化核酸分子は、ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖小分子活性化核酸分子を含み、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。第1核酸鎖はATOH1遺伝子プロモーターのうち転写開始部位から-578~-386領域(ホットスポット1, SEQ ID NO:2)、-339~-291領域(ホットスポット2, SEQ ID NO:3)、-162~-86(ホットスポット3, SEQ ID NO:4)又は-55~-34(ホットスポット4, SEQ ID NO:5)のうちのいずれかの連続した16~35個のヌクレオチドとは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の相同性又は相補性を有する。第1核酸鎖と第2核酸鎖は相補して二本鎖核酸構造を形成し、二本鎖核酸構造はATOH1遺伝子の細胞での発現を活性化できる。
【0016】
本発明の小分子活性化核酸の第1核酸鎖と第2核酸鎖は2本の異なる核酸鎖上に存在してもよく、同一の核酸鎖上に存在してもよい。第1核酸鎖と第2核酸鎖がそれぞれ2本鎖上にある場合、小分子活性化核酸分子の少なくとも1本鎖は、5’末端及び/又は3’末端に突出又はオーバーハングを有することができ、例えば3’末端に0~6ヌクレオチドの突出、0、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチドの突出を有する。好ましくは、本発明の小分子活性化核酸分子の2本の鎖は全て突出を有し、より好ましくは、小分子活性化核酸分子の2本の鎖の3’末端のいずれにも0~6ヌクレオチドの突出を有し、例えば、0、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチドの突出、最も好ましくは、2又は3ヌクレオチドの突出を有する。好ましくは、突出端のヌクレオチドはdTであってもよい。
【0017】
本発明の小分子活性化核酸分子は、二本鎖領域ヘアピン構造を形成可能な小分子活性化核酸分子、例えば一本鎖小分子活性化RNA分子を含むことがある。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する一本鎖小分子活性化RNA分子を含み、前記一本鎖小分子活性化核酸分子は二本鎖領域ヘアピン構造を形成することができる。第1核酸鎖と第2核酸鎖が同一の核酸鎖上に存在する場合、好ましくは、本発明の小分子活性化核酸分子はヘアピン型一本鎖核酸分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖は、二本鎖核酸構造を形成可能な相補領域を有し、前記二本鎖核酸構造は例えばRNA活性化メカニズムを通じてATOH1遺伝子の細胞での発現を促進することができる。
【0018】
上記小分子活性化核酸分子では、第1核酸鎖と第2核酸鎖の長さは、それぞれ16~35個ヌクレオチド、例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35個ヌクレオチドであってもよい。
【0019】
一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有し、且つ小分子活性化核酸分子の第2核酸鎖は、SEQ ID NO:143-279から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列を含み、又はSEQ ID NO:6~142から選ばれるいずれかひとつのヌクレオチド配列とは少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列からなり、且つ本発明の小分子活性化核酸分子の第2核酸鎖は、SEQ ID NO:143~279から選ばれるいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列を含み、又はSEQ ID NO:143~279から選ばれるいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも75%、例えば少なくとも約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%の同一性又は相同性を有する核酸配列からなる。特定の実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖は、SEQ ID NO:6~142のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列であり、且つ第2鎖は、SEQ ID NO:143~279のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列である。一実施形態では、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子は、合成するもの、インビトロで転写したもの又はベクターで発現させたものであってもよい。
【0020】
本明細書に記載の小分子活性化核酸分子における全てのヌクレオチドは、化学修飾を行われていない天然のヌクレオチドであってもよく、少なくとも1種の修飾を含んでもよい。一実施形態では、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子における修飾は、化学修飾を含むことができ、たとえば、少なくとも1つのヌクレオチドに化学修飾を有することができ、本発明で使用される化学修飾は、下記修飾を含むか、これらから選ばれる1種又は複数種、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
(1)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるヌクレオチドのホスホジエステル結合に対する修飾、
(2)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列におけるリボースの2’-OHに対する修飾、
(3)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における塩基に対する修飾、
(4)前記小分子活性化核酸分子のヌクレオチド配列における少なくとも1個のヌクレオチドはロックド核酸である。
【0021】
前記化学修飾は、当業者に公知されるものであり。前記ホスホジエステル結合修飾とは、ホスホジエステル結合における酸素に対する修飾であり、ホスホロチオエート修飾及びボラノホスフェート修飾を含むが、これだけではないというものである。これらの2種類の修飾はいずれもsaRNA構造を安定させ、塩基対の高い特異性及び高い親和性を保持することができる。
【0022】
リボース修飾とは、ヌクレオチドペントースにおける2’-OHに対する修飾であり、即ち、リボースのヒドロキシ位置にいくつかの置換基が導入され、例えば、2’-フルオロ修飾、2’-オキシメチル修飾、2’-オキシエチレンメトキシ修飾、2,4’-ジニトロフェノール修飾、ロックド核酸(LNA)、2’-アミノ修飾、2’-デオキシ修飾などを含むが、これだけではないというものである。
【0023】
塩基修飾とは、ヌクレオチドの塩基に対する修飾であり、例えば、5′-ブロモウラシル修飾、5′-ヨードウラシル修飾、N-メチルウラシル修飾、2,6-ジアミノプリン修飾などを含むが、これだけではないというものである。
【0024】
これらの修飾は、小分子活性化核酸分子のバイオアベイラビリティを向上し、標的配列との親和性を高め、細胞内のヌクレアーゼ加水分解に対する耐性を向上させる。
【0025】
さらに、小分子活性化核酸分子の細胞への取り込みを促進するために、以上の修飾に加えて、小分子活性化核酸分子の第1核酸鎖及び/又は第2核酸鎖の末端に例えばコレステロールなどの親油性基を引入することにより、脂質二重層からなる細胞膜及び核膜が細胞核内の遺伝子プロモーター領域と作用することに寄与する。
【0026】
本発明が提供する小分子活性化核酸分子は、細胞と接触すると、細胞中でのATOH1遺伝子の発現を効果的に活性化又はアップレギュレーションすることができ、好ましくは、発現を少なくとも10%アップレギュレーションすることができる。
【0027】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸に関する。一実施形態では、前記核酸はDNA分子であってもよい。
【0028】
本発明の別の態様では、以上に記載の小分子活性化核酸分子又は本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞を提供する。一実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する二本鎖小分子活性化核酸分子であってもよく、第1核酸鎖と第2核酸鎖を含む。別の実施形態では、本発明の小分子活性化核酸分子は、ATOH1遺伝子プロモーター領域に標的化する一本鎖小分子活性化核酸分子であってもよい。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子又は本明細書に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸と、必要に応じて薬学的に許容可能なベクターと、を含む組成物(例えば医薬組成物)を提供する。一実施形態では、前記薬学的に許容可能なベクターは、リポソーム、高分子ポリマー又はポリペプチドを含むか、これらから選ばれる。
【0030】
本発明の別の態様は、本発明に記載の小分子活性化核酸分子、本発明に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を含む製剤を提供する。
【0031】
本発明の別の態様は、本発明に係る小分子活性化核酸分子、本文に記載の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を含むキットを提供する。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、ATOH1遺伝子の細胞での発現を活性化/アップレギュレーションする薬物又は製剤の調製における使用に関する。
【0033】
本発明の別の態様は、さらに、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物又は製剤を細胞に投与することを含む、ATOH1遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法に関する。一実施形態では、ATOH1遺伝子の細胞での発現の活性化/アップレギュレーション方法は本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を前記細胞に投与することを含み、前記細胞はがん細胞、脊髄細胞などの神経細胞、内耳有毛細胞、内耳支持細胞、小脳ニューロン、固有受容系ニューロン、及び非神経細胞を含むが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、がん細胞は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などの固体腫瘍からの細胞である。上記細胞は、例えば細胞系や細胞株などのような単離体であってもよいし、例えば人体などの哺乳動物体に存在していてもよい。
【0034】
本発明の小分子活性化核酸分子は細胞に直接導入してもよく、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸配列を細胞に導入することで細胞内で産生するものであってもよく、前記細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはヒト細胞である。上記細胞は、例えば細胞系や細胞株などのような単離体であってもよいし、例えば人体などの哺乳動物体に存在していてもよい。該人体は、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害に罹患している患者であってもよい。本発明の前記小分子活性化核酸分子は、ATOH1タンパク質量の欠乏又はATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害を治療するために十分な量で投与されることができる。具体的には、前記ATOH1タンパク質量の欠乏又はATOH1発現不足又は減少に関連する前記疾患又は障害は、例えば腫瘍、たとえば固形腫瘍を含むことができ、前記固形腫瘍は、肝癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、神経膠腫などを含むことができる。
【0035】
本発明の別の態様は、分離したATOH1遺伝子小分子活性化核酸分子の作用部位を提供する。該部位は、ATOH1遺伝子のプロモーター領域上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含み、好ましくは、前記作用部位は、SEQ ID NO:2~5のいずれか1つの配列上の任意の連続した16~35個ヌクレオチドの配列を含むか、これらから選ばれる。具体的には、前記作用部位は、SEQ ID NO:280~416のヌクレオチド配列を含むか、これらから選ばれるいずれか一つのヌクレオチド配列である。
【0036】
本発明の別の態様は、本発明の小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物を治療有効量で個体に投与することを含む、個体のATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法に関する。一実施形態では、本発明の個体のATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害の治療方法は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物、及び小分子化合物、抗体、ポリペプチド、タンパク質などを治療有効量で個体に投与することを含む。前記個体は、例えばヒトなどの哺乳動物であってもよい。一の態様において、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害とは例えば聴力損失、結腸直腸癌などの腫瘍疾患がある。
【0037】
本発明の別の態様は、本発明の小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物又は製剤を治療有効量で個体に投与することを含む、個体の聴力損失の治療方法に関する。一実施形態では、本発明の個体の聴力損失の治療方法は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物、及び小分子化合物、抗体、ポリペプチド、タンパク質などを治療有効量で個体に投与することを含む。前記個体は、例えばヒトなどの哺乳動物であってもよい。聴力損失又は聴覚障害とは、聴力の部分又は完全喪失で、日常会話に対する敏感性が低いことである。1997年、世界保健機関(WHO)は500Hz、1000Hz、2000Hzと4000Hzの4つの周波数での平均聴力損失によって、聴覚損傷の重症度を4つの等級に分け、26~40dBが軽度で、41~60dBが中等度で、61~80dBが重度で、80dB以上は最重度である。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物の調製における使用に関する。前記個体は、例えばヒトなどの哺乳動物であってもよい。一の態様において、前記ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患とは例えば聴力損失、結腸直腸癌などの腫瘍疾患がある。
【0039】
一実施形態では、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物の、聴力損失治療用の薬物の調製における使用を提供する。
【0040】
本発明の別の態様は、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物又は製剤の、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は障害治療用の薬物又は医薬組成物の調製における使用に関する。
【0041】
一実施形態では、本発明の前記小分子活性化核酸分子、本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸、本発明の小分子活性化核酸分子又は本発明の小分子活性化核酸分子をコードする核酸を含む細胞、又は本発明の小分子活性化核酸分子を含む組成物又は製剤の、聴力損失治療用の薬物または医薬組成物の調製における使用を提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係るATOH1遺伝子発現を活性化/アップレギュレーション可能な小分子活性化核酸分子例えば小分子活性化RNA(saRNA)は、ATOH1遺伝子を長時間活性化させることで、ATOH1遺伝子とタンパク質の発現を効率よく特異的にアップレギュレーション又は回復させることができ、且つ毒性や副作用が低く、ATOH1タンパク質の発現不足又は減少に関連する疾患又は病症用の薬物又は製剤の調製に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1はsaRNAを介するATOH1 mRNAの発現の変化を示す図である。ATOH1プロモーターに標的化する403個のsaRNAでそれぞれHEK293T細胞をトランスフェクションし、72時間後QuantiGene 2.0法によりATOH1 mRNA発現を分析する。図には、対照処理(mock)に対するATOH1 mRNA発現変化が示され、saRNAのATOH1プロモーター標的での位置で-637から-19まで並べられている。
【0044】
【
図2】
図2は機能性saRNAのATOH1プロモーターでのホットスポット領域を示す図である。ATOH1プロモーターに標的化する403個のsaRNAでそれぞれHEK293T細胞をトランスフェクションし、72時間後QuantiGene 2.0法によりATOH1 mRNA発現を分析する。図には、対照処理(mock)に対するATOH1 mRNA発現変化が示され、saRNAのATOH1プロモーターでの標的位置で-637から-19まで並べられている。図には、点線は0.5(log2)倍増加の限界であり、点線バーは4つの機能性saRNAが集まるホットスポット領域(H1~H4)を囲み示している。
【0045】
【
図3】
図3はHEK293T細胞に対してツーステップ法RT-PCRによりQuantigeneスクリーニング結果を検証する図である。示されるsaRNAを用いて10 nMの最終濃度でHEK293T細胞を72時間トランスフェクションし、Qiagen RNeasyキットを用いてRNAを抽出し、逆転写後、7500FASTリアルタイムPCRシステムを用いてqPCR増幅を行った。また、HPRT1遺伝子を増幅して内部参照とする。図には、単独のsaRNA処理後mRNAに対するATOH1の発現値が示される。Mock、dsCon2及びRAG9-871iはそれぞれブランクトランスフェクション、無関係な配列の二本鎖RNAトランスフェクション及び低分子干渉RNA対照トランスフェクションである。
【0046】
【
図4】
図4はNKEK細胞に対してツーステップ法RT-PCRによりQuantigeneスクリーニング結果を検証する図である。示されるsaRNAを用いて10 nMの最終濃度でNHEK(健常者の表皮角質細胞)細胞を72時間トランスフェクションし、Qiagen RNeasyキットを用いてRNAを抽出し、逆転写後、7500FASTリアルタイムPCRシステムを用いてqPCR増幅を行った。また、HPRT1遺伝子を増幅して内部参照とする。図には、単独のsaRNA処理後mRNAに対するATOH1の発現値が示される。Mock、dsCon2及びRAG9-871iはそれぞれブランクトランスフェクション、無関係な配列の二本鎖RNAトランスフェクション及び低分子干渉RNA対照トランスフェクションである。
【0047】
【
図5】
図5はATOH1 saRNAがATOH1たんぱく質の発現を活性化する結果を示す図である。それぞれ示されるsaRNAを用いて10 nMの最終濃度でHEK293T細胞を72時間トランスフェクションし、細胞を収集して細胞総蛋白質を抽出して、ウエスタンブロット法によりATOH1タンパク質の発現レベルを検出するとともに、α/β-チューブリンを内部参照とした。図には、単独のsaRNA処理の後たんぱく質に対するATOH1の発現値が示される。Mock、dsCon2及びRAG9-871iはそれぞれブランクトランスフェクション、無関係な配列の二本鎖RNAトランスフェクション及び低分子干渉RNA対照トランスフェクションである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明では、関連用語は、以下のように定義される。
本明細書で使用される「相補」という用語は、2本のオリゴヌクレオチド鎖が互いに塩基対を形成する能力を意味する。塩基対は、通常、逆方向に平行となるオリゴヌクレオチド鎖におけるヌクレオチド同士が水素結合により形成されるものである。相補オリゴヌクレオチド鎖は、ワトソン・クリック(Watson-Crick)方式で塩基ペアリング(例えば、A-T、A-U、C-G)を行うか、又は二本鎖体を形成させ得る任意のほかの方式(例えばHoogsteen型又は逆Hoogsteen型塩基ペアリング)で塩基ペアリングを行うことができる。
【0049】
相補は、完全相補及び不完全相補の2種類を含む。完全相補又は100%相補は、二本鎖オリゴヌクレオチド分子の二本鎖領域における第1オリゴヌクレオチド鎖からの各ヌクレオチドが第2オリゴヌクレオチド鎖の対応する位置のヌクレオチドと「ミスマッチ」無しに水素結合を形成できることを意味する。不完全相補とは、二本鎖のヌクレオチドユニットが全て水素結合で互いに接合することができないことを意味する。例えば、二本鎖領域の長さが20個ヌクレオチドである2本のオリゴヌクレオチド鎖に対しては、各鎖における2つの塩基対のみが互いに水素結合で接合することが可能であると、オリゴヌクレオチド鎖は10%の相補性を有する。同じ実施例では、各鎖における18個の塩基対が互いに水素結合で接合することが可能であると、オリゴヌクレオチド鎖は90%の相補性を有する。実質的な相補とは、少なくとも約75%、約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、又は約100%相補することを意味する。
【0050】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの重合体を意味し、DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドの一本鎖又は二本鎖分子を含むが、これらに制限されず、規則的・非規則的に交互するデオキシリボシル部分とリボシル部分のオリゴヌクレオチド鎖、並びにこれらの種類のオリゴヌクレオチドの修飾、天然に存在する、又は天然に存在しない骨格を含む。本発明に記載の標的遺伝子転写を活性化させるためのオリゴヌクレオチドは、小分子活性化核酸分子である。
【0051】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチド鎖」と「オリゴヌクレオチド配列」は交換可能に使用することができ、35個以下の塩基を有する短鎖ヌクレオチドの総称(デオキシリボ核酸DNA又はリボ核酸RNA内のヌクレオチドを含む)である。本発明では、オリゴヌクレオチド鎖の長さは、16~35個ヌクレオチドの任意の長さであってもよい。
【0052】
本明細書で示される用語「第1核酸鎖」はセンス鎖であってもよいし、アンチセンス鎖であってもよい。小分子活性化RNAのセンス鎖とは、小分子活性化RNA二本鎖体に標的遺伝子のプロモーターDNA配列のコード鎖とは同一性を有する核酸鎖を含むことをいい、アンチセンス鎖とは、小分子活性化RNA二本鎖体においてセンス鎖と相補する核酸鎖をいう。
【0053】
本明細書で示される用語「第2核酸鎖」はセンス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。第1オリゴヌクレオチド鎖がセンス鎖である場合、第2オリゴヌクレオチド鎖はアンチセンス鎖である。一方、第1オリゴヌクレオチド鎖がアンチセンス鎖である場合、第2オリゴヌクレオチド鎖はセンス鎖である。
【0054】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、1本のポリペプチド鎖のコード又は1本の機能RNAの転写に必要な全てのヌクレオチド配列を意味する。「遺伝子」は、宿主細胞に対して内因性、あるいは完全又は部分的に組換えられた遺伝子であってもよい(例えば、コードプロモーターを導入した外因性オリゴヌクレオチド及びコード配列、又は内因性コード配列に隣接する異種プロモーターを宿主細胞に導入したもの)。例えば、「遺伝子」は、エクソン及びイントロンで構成される核酸配列を含む。タンパク質をコードする配列は、例えば、開始コドンと終止コドンとの間のオープンリーディングフレームにおけるエクソンに含まれる配列であり、本発明では、「遺伝子」は、他の遺伝子がコード配列又は非コード配列を含むか否かを問わず、例えばプロモーター、エンハンサーなどのような遺伝子制御配列及び本分野で知られている他の遺伝子の転写、発現又は活性を制御する他の全ての配列を含むことができる。1つの場合、例えば、「遺伝子」は、例えばプロモーターやエンハンサーなどの制御配列を含む機能性核酸の説明に用いることができる。組換え遺伝子の発現は、一種又は多種の異種制御配列により制御することができる。
【0055】
本明細書で用いられる「標的遺伝子」は、生体内に天然に存在する核酸配列、組換え遺伝子、ウイルス又は細菌配列、染色体又は染色体外及び/又は細胞及び/又はその染色質に一時的又は安定的にトランスフェクション又は混入したものである。標的遺伝子は、タンパク質コード遺伝子であってもよいし、非タンパク質コード遺伝子であってもよい(例えば、マイクロRNA遺伝子、長鎖非コードRNA遺伝子)。標的遺伝子は、通常、プロモーター配列を含み、プロモーター配列と同一性(相同性とも言われる)を有する小分子活性化核酸分子を設計することにより、標的遺伝子に対する正調節を実現することができ、標的遺伝子の発現のアップレギュレーションとして表現される。「標的遺伝子プロモーター配列」とは、標的遺伝子の非コード配列を意味し、本発明において「標的遺伝子プロモーター配列と相補する」における標的遺伝子プロモーター配列とは、当該配列のコード鎖(非鋳型鎖とも言われる)、すなわち、当該遺伝子コード配列と同一の核酸配列である。「標的」又は「標的配列」とは、標的遺伝子プロモーター配列のうち小分子活性化核酸分子のセンスオリゴヌクレオチド鎖又はアンチセンスオリゴヌクレオチドと相同又は相補となる配列断片を意味する。
【0056】
本明細書で使用される用語「センス鎖」、「センス核酸鎖」は交換可能に使用され、小分子活性化核酸分子のセンスオリゴヌクレオチド鎖とは、小分子活性化核酸分子の二本鎖体に標的遺伝子のプロモーター配列のコード鎖と同一性を有する第1核酸鎖が含まれることを意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「アンチセンス鎖」、「アンチセンス核酸鎖」は交換可能に使用され、小分子活性化核酸分子のアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖とは、小分子活性化核酸分子の二本鎖体においてセンスオリゴヌクレオチド鎖と相補する第2核酸鎖を指す。
【0058】
本明細書で使用される「コード鎖」は、標的遺伝子における転写が不可能な1本のDNA鎖を指し、該鎖のヌクレオチド配列は、転写により生成されたRNAの配列と一致する(RNAではUでDNAにおけるTを置換した)。本発明に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列のコード鎖は、標的遺伝子DNAコード鎖と同一のDNA鎖に存在するプロモーター配列を意味する。
【0059】
本明細書で使用される「鋳型鎖」とは、標的遺伝子の二本鎖DNAのうちコード鎖に相補的な他本の鎖であって、鋳型としてRNAに転写可能な鎖を意味し、当該鎖は、転写したRNA塩基と相補的なものである(A-U、G-C)。転写過程において、RNAポリメラーゼは、鋳型鎖に結合し、鋳型鎖の3’→5’方向に沿って移動し、5’→3’方向に従ってRNAの合成を触媒する。本発明に記載の標的遺伝子プロモーターの二本鎖DNA配列の鋳型鎖は、標的遺伝子DNA鋳型鎖と同一のDNA鎖に存在するプロモーター配列を意味する。
【0060】
本明細書で使用される「プロモーター」とは、タンパク質コード又はRNAコード核酸配列と位置的に関連付けることによりそれらの転写に対して調節作用を果たす配列である。通常、真核遺伝子プロモーターは、100~5,000個の塩基対を含むが、この長さの範囲は、本明細書で使用される「プロモーター」を限定する趣旨ではない。プロモーター配列は、一般的にタンパク質コード又はRNAコード配列の5’末端に位置するが、エクソン及びイントロン配列にも存在する。
【0061】
本明細書で使用される「転写開始部位」という用語は、遺伝子の鋳型鎖に転写開始を標識するためのヌクレオチドを意味する。転写開始部位は、プロモーター領域の鋳型鎖に出現することができる。1つの遺伝子は、1つ以上の転写開始部位を有することができる。
【0062】
本明細書で使用される「同一性」又は「相同性」という用語は、小分子活性化RNAのうちの1本のオリゴヌクレオチド鎖(センス鎖又はアンチセンス鎖)が標的遺伝子のプロモーター配列のある領域のコード鎖又は鋳型鎖と類似性を有することを意味する。本明細書では、前記「同一性」又は「相同性」は、少なくとも約75%、約79%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%又は約100%であってもよい。
【0063】
本明細書で使用される用語「突出」、「overhang」、「オーバーハング」は交換可能に使用され、オリゴヌクレオチド鎖の末端(5'又は3')の非塩基対ヌクレオチドを意味し、二本鎖オリゴヌクレオチド内の一方の鎖から延出する他方の鎖から産生するものである。二本鎖体の3'及び/又は5'末端からはみ出した一本鎖領域は、「突出」と称される。
【0064】
本明細書で使用される用語「遺伝子活性化」又は「活性化遺伝子」又は「遺伝子のアップレギュレーション」又は「アップレギュレーションされた遺伝子」は交換可能に使用され、遺伝子の転写レベル、mRNAレベル、タンパク質レベル、酵素活性、メチル化状態、染色質状態又は立体配置、翻訳レベル、又は細胞又は生物系でのこの活性又は状態を測定することで、ある核酸の転写、翻訳、発現又は活性の増加を測定することを意味する。これらの活動又は状態は、直接的又は間接的に測定することができる。また、「遺伝子活性化」、「活性化遺伝子」、「遺伝子のアップレギュレーション」、「アップレギュレーションされた遺伝子」は、このような活性化のメカニズムによらず、核酸配列に相関する活性が増加したことを意味し、例えば、調節配列として調節作用を発揮したり、RNAに転写されたり、タンパク質に翻訳されてタンパク質の発現を増加させたりする。
【0065】
本明細書で使用される用語「小分子活性化RNA」、「saRNA」、「小分子活性化核酸分子」は交換可能に使用され、遺伝子発現を促進できる核酸分子を指し、且つ標的遺伝子の非コード核酸配列(例えばプロモーター、エンハンサー等)とは配列同一性又は相同性を有するヌクレオチド配列を含む第1核酸断片(アンチセンス核酸鎖;アンチセンスオリゴヌクレオチド鎖ともいう)と、第1核酸断片と相補するヌクレオチド配列を含む第2核酸断片(センス核酸鎖;センス鎖又はセンスオリゴヌクレオチド鎖ともいう)からなり、そのうち、前記第1核酸断片と第2核酸断片は二本鎖体を形成する。小分子活性化核酸分子は、合成され又はベクターで発現されるとともに二本鎖領域のヘアピン構造を形成できる一本鎖RNA分子で構成されてもよい。そのうち、第1領域は、遺伝子のプロモーター標的配列と配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、第2領域に含まれるヌクレオチド配列は、第1領域と相補的なものである。小分子活性化核酸分子の二本鎖体領域の長さは、通常は約10個~約50個の塩基対、約12個~約48個の塩基対、約14個~約46個の塩基対、約16個~約44個の塩基対、約18個~約42個の塩基対、約20個~約40個の塩基対、約22個~約38個の塩基対、約24個~約36個の塩基対、約26個~約34個の塩基対、約28個~約32個の塩基対であり、通常、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個の塩基対である。また、「saRNA」、「小分子活性化RNA」、「小分子活性化核酸分子」には、リボヌクレオチド部分以外の核酸も含まれ、修飾されたヌクレオチド又はその類似物が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0066】
本明細書で使用される「ホットスポット」という用語は、長さが少なくとも30 bpである遺伝子プロモーター領域を意味する。これらの領域では、機能性小分子活性化核酸分子標的の凝集が現われ、即ち、これらのホットスポット領域を標的とする小分子活性化核酸分子の少なくとも40%は、標的遺伝子mRNAの発現が1.1倍以上になるまで誘導することができる。
【0067】
本明細書で使用される「合成」とは、オリゴヌクレオチドの合成方式を意味し、例えば化学合成、人体外転写、ベクター表現などのRNAを合成可能な任意の方式が含まれる。
【0068】
本発明では、RNA活性化方式によりATOH1遺伝子の発現をアップレギュレーションし、全長ATOH1タンパク質の発現量を増加することで、関連疾患、特に聴力損失を治療する。本発明では、ATOH1遺伝子を標的遺伝子と言うこともある。
【0069】
本発明が提供する小分子活性化核酸分子の製造方法は、配列設計と配列合成を含む。
【0070】
本発明の小分子活性化核酸分子配列の合成は、化学合成方法を用いるか、又は核酸合成の専門バイオテクノロジー企業に委託する。
【0071】
一般的には、化学合成の方法には、以下の4つの工程が含まれる:(1)オリゴリボヌクレオチドの合成;(2)脱保護;(3)精製分離;(4)脱塩及びアニール。
【0072】
例えば、本発明にかかるsaRNAの化学合成の具体的なステップは下記の通りである。
(1)オリゴリボヌクレオチドの合成
自動DNA/RNA合成機(例えば、Applied Biosystems EXPEDITE8909)にて1ミクロモルRNAの合成を設置するとともに、1サイクルのカップリングタイムを10~15分間に設定する。固相連結の5’‐O‐パラジメトキシトリチル‐チミジン支持物を開始剤とし、1回目のサイクルで固相支持物に塩基を連結し、n回目(19≧n≧2)のサイクルでn‐1回目のサイクルで連結された塩基に更に塩基を連結する。このように、全ての核酸配列の合成を完了するまでサイクルを繰り返す。
【0073】
(2)脱保護
saRNAに連結された固相支持物を試験管に入れ、更にこの試験管にエタノール/アンモニア水溶液(体積比1:3)を1 mL入れた後に、栓をした状態で25‐70℃のインキュベータに置き、2‐30時間インキュベーションする。saRNAの固相支持物が含む溶液をろ過してろ過液を集め、再蒸留水で固相支持物を2回溶出して(1回1 mL)ろ過液を集める。集めた溶出液を合わせて、真空条件で1‐12時間乾燥させる。その後、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1 M)を1 mL入れて、室温で4~12時間静置し、更にn-ブタノールを2 mL入れて、高速遠心分離により沈殿物を集め、saRNA一本鎖の粗産物を得た。
【0074】
(3)精製分離
得られたsaRNAの粗産物を濃度1モル/リットルの酢酸トリエチルアミン溶液2 mLに溶解し、次に、高速液体クロマトグラフィー逆相C18カラムにより分離して、精製saRNA一本鎖産物を得る。
【0075】
(4)脱塩及びアニール
サイズ排除ゲルろ過法で塩分を除去し、センス鎖及びアンチセンス鎖のオリゴリボ核酸一本鎖を同じモル比で1‐2 mLの緩衝液(10 mM Tris, pH=7.5‐8.0、50 mM NaCl)に混ぜる。この溶液を95℃まで加熱した後、室温までゆっくりと冷却させて、saRNAが含む溶液を得た。
【0076】
本研究により、上記のsaRNAを細胞に導入した後、全長ATOH1 mRNA及びタンパク質の発現を効果的に増加できることを見出した。
【0077】
以下、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本発明をさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例では、具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、一般的な条件、例えばSambrookら、分子クローニング:実験室ハンドバック(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載の条件、又はメーカーが推薦する条件を用いる。
【0078】
実施例1 ATOH1プロモーターに標的化する小分子活性化核酸分子の設計及び合成
ATOH1プロモーターについて-637bp~-1 bpという637 bpの配列(SEQ ID No:1)を標的配列とし、19個のヌクレオチドをsaRNA標的とし、1個の塩基を移動するごとに次の標的を得た。その後、全ての標的配列をフィルタリング処理し、1)GC含有量が30%~80%の間であり、2)5個以上の連続的に同一のヌクレオチドを含まなく、3)3個より多いジヌクレオチド反復配列を含まなく、4)3個より多いトリヌクレオチド反復配列を含まないことを基準として標的配列を保留する。フィルタリング後、残りの402個の標的配列は候補としてスクリーニングプロセスに移行した。また、ATOH1プロモーター-1407bp位置の1の標的を候補標的配列として選択し、全部で403の標的配列が候補としてスクリーンプロセスに入った。
【0079】
ここで、実験に使用されている二本鎖小分子活性化RNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の長さは全て21個ヌクレオチドであり、前記二本鎖saRNAの第1核酸鎖(センス鎖)は、5’領域の19個のヌクレオチドがプロモーター標的配列とは100%の同一性を有し、その3’末端にTT配列を有し、第2核酸鎖は、5’領域の19個のヌクレオチドが第1リボ核酸鎖配列とは完全相補であり、その3’末端にTT配列を有する。前記二本鎖saRNAの2本の鎖を同量のモル数で混合し、アニーリング後に二本鎖saRNAを形成した。
【0080】
ATOH1プロモーター配列は以下に示され、配列表のSEQ ID No:1の5’~3’の位置1~位置637に対応する。
-637 aaatgcttgg gcatcagaag tgggagctgt gatcctagct tgggggcagc
-587 acagggtagg cggccttctc tctgctttga gtggcttctg ggcgcctggc
-537 gggtccagaa tcgcccagag ccgcccgcgg tcgtgcacat ctgacccgag
-487 tcagcttggg caccagccga gagccggctc cgcaccgctc ccgcacccca
-437 gccgccgggg tggtgacaca caccggagtc gaattacagc cctgcaatta
-387 acatatgaat ctgacgaatt taaaagaagg aaaaaaaaaa aaaaacctga
-337 gcaggcttgg gagtcctctg cacacaagaa cttttctcgg ggtgtaaaaa
-287 ctctttgatt ggctgctcgc acgcgcctgc ccgcgccctc cattggctga
-237 gaagacacgc gaccggcgcg aggagggggt tgggagagga gcggggggag
-187 actgagtggc gcgtgccgct ttttaaaggg gcgcagcgcc ttcagcaacc
-137 ggagaagcat agttgcacgc gacctggtgt gtgatctccg agtgggtggg
-87 ggagggtcga ggagggaaaa aaaaataaga cgttgcagaa gagacccgga
-37 aagggccttt tttttggttg agctggtgtc ccagtgc
【0081】
実施例2 ATOH1プロモーターに標的化するsaRNAのハイスループットスクリーニング
(1)細胞培養及びトランスフェクション
健常者の表皮角質細胞(NHEK)、ヒト胚性腎細胞(HEK293T)をDMEM培地(Gibco)に培養した。全ての培地は、10%の子ウシ血清(Sigma-Aldrich)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含有する。細胞を5% CO2、37℃の条件下で培養した。メーカーの指示に従って、RNAiMax (Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて10 nM(断らない限り)の濃度で小分子活性化RNAをトランスフェクションした。
【0082】
(2)QuantiGene 2.0分析
細胞を4000個/ウェルプレートで96ウェルプレートに敷いてオリゴヌクレオチド二本鎖体をトランスフェクションし、72時間トランスフェクションした後、QuantiGene 2.0キット(AffyMetrix製品番号はQGS-1000, ATOH1 Assay ID:SA-6000952; HPRT Assay ID:SA-10030))を用いて目標遺伝子mRNAレベルを定量的に検出した。QuantiGene 2.0キットは、交雑技術に基づく方法であり、遺伝子特異的プローブを用いてmRNAレベルを直接定量するものである。実験手順を簡単に説明すると、溶解液を添加してトランスフェクション後の細胞を溶解させ、細胞溶解物をATOH1及びHPRT1(ハウスキーピング遺伝子)プローブを内包する捕捉ウェルプレートに入れ、55℃で一晩交雑した。交雑信号を増強するために、100 μL相当の緩衝液(Quantigene 2.0キットから提供)において2.0 PreAMP, 2.0 AMP及び2.0ラベルプローブ(Lable Probe, Quantigene 2.0キットから提供)と順番に交雑した。全ての交雑はいずれも50~55℃で1時間振盪する。最後に、洗浄した後、2.0基質を加えて室温で5分間インキュベートした。その後、Infinite 200 PROプレートリーダー(Tecan、スイス)を用いて光信号を検出した。
【0083】
(3)機能性saRNAのスクリーニング
ATOH1転写を活性化できる機能性saRNAを得るために、上記403個のsaRNAを用いてそれぞれ10 nMのトランスフェクション濃度でHEK293T細胞をトランスフェクションし、72時間後、QuantiGeneの方法により、光信号を分析した。表1に示されるように、32(7.9%)及び105(26.1%)個のsaRNAは、それぞれ高度活性化及び軽度活性化活性を示し、266(66.0%)個のsaRNAは、ATOH1の発現に影響しない。活性化の最大程度は5.88倍である。これらの活性化の活性を有するsaRNAは、機能性saRNAと呼ばれる。
【0084】
表1. ATOH1ハイスループットスクリーニング結果のまとめ
【表1】
【0085】
図1は、さらにATOH1 saRNAの高度活性化から高度抑制までの活性の分布を示している。
【0086】
【0087】
403個のsaRNAの活性をATOH1プロモーターにおける位置に従って並んでおり、機能性saRNAの分布が集中し、すなわち、あるプロモーター領域において活性化saRNAが特定の「ホットスポット(hot spot)」領域に集中するという現象が明らかに認められる(
図2)。
図2に示すように、プロモーターの-578~-386の領域(H1)、-339~-291の領域(H2)、-162~-86の領域(H3)及び-55~-34の領域(H4)にそれぞれ4つのホットスポット領域が出現し、活性化saRNAが高度に集中すると表現され、機能性saRNAの比例はそれぞれ41.0%、51.6%、45.6%及び100%である。この分析結果から明らかなように、機能性saRNAはプロモーター上でランダムに分布するものではなく、特定のホットスポット領域に集まるということである。
配列表のSEQ ID NO:2に示される配列に対応するホットスポットH1(5’~3’:-578~-386)配列:
gcggccttctctctgctttgagtggcttctgggcgcctggcgggtccagaatcgcccagagccgcccgcggtcgtgcacatctgacccgagtcagcttgggcaccagccgagagccggctccgcaccgctcccgcaccccagccgccggggtggtgacacacaccggagtcgaattacagccctgcaattaa
配列表のSEQ ID NO:3 に示される配列に対応するホットスポットH2(5’~3’:-339~-291)配列:
tgcacacaagaacttttctcggggtgtaa
配列表のSEQ ID NO:4 に示される配列に対応するホットスポットH3(5’~3’:-162~-86)配列:
Aaggggcgcagcgccttcagcaaccggagaagcatagttgcacgcgacctggtgtgtgatctccgagtgggtgggg
配列表のSEQ ID NO:5に示される配列に対応するホットスポットH4(5’~3’:-55~-34)配列:
ttgcagaagagacccggaaagg
【0088】
実施例3 ハイスループットスクリーニング結果の検証
健常者の表皮角質細胞(NHEK)とヒト胚性腎細胞(HEK293T)を2×105~3×105個の細胞/ウェルで6ウェルプレートに接種し、オリゴヌクレオチド二本鎖体をリバーストランスフェクションした。RNeasy Plus Miniキット(Qiagen)を用いて、その取扱説明書に従って細胞全RNAを抽出した。gDNA Eraser(Takara, Shlga, 日本)を含むPrimeScript RTキットを用いてRNA(1μg)をcDNAに逆転写した。qPCRは、ABI 7500 FastリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)及びSYBR Premix Ex Taq II(Takara, Shlga, 日本)試薬を用い、95℃で3秒間、60℃で30秒間である反応条件で40サイクル増幅した。HPRT1を内部参照とし、RAG9-871iは抑制用dsRNAであり、対照とする。2-ΔΔCT法によりATOH1遺伝子の相対発現値を計算し取得した。使用されるプライマーを表3に示している。
【0089】
あるsaRNAトランスフェクションサンプルのATOH1(目的遺伝子)の対照処理(Mock)に対する発現値(E
rel)を計算するために、目的遺伝子及び内部参照遺伝子のCt値を式1に代入して算出した。
【数1】
式中、CtTmはmockサンプルからの目的遺伝子のCt値であり、CtTsはsaRNA処理サンプルからの目的遺伝子のCt値であり、CtRmはmock処理サンプルからの内部参照遺伝子のCt値であり、CtRsはsaRNA処理サンプルからの内部参照遺伝子のCt値である。
【0090】
表3. ツーステップ法qRT-PCR分析のプライマー配列
【表3】
【0091】
図3及び
図4に示されるように、ランダムに機能性saRNAを選択して、HEK293T細胞及びNHEK細胞に対して検証した結果、いずれもATOH1のmRNAに対してアップレギュレーション作用を持っている。
【0092】
【0093】
実施例4 saRNAによるATOH1タンパク質発現の促進
HEK293T細胞を3×103~5×103個の細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティング敷いて、一晩培養し、ランダムに選択された7個の機能性saRNAをトランスフェクションした。トランスフェクション後72時間後、細胞を収集して、プロテアーゼ阻害剤を含有する細胞溶解液(1×RIPA緩衝液, CST)を用いて溶解した。BCA法(Thermo)によりタンパク質を定量化し、次に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動分離を行い、0.45 μmのPVDF膜に移した。使用される一次抗体は、ウサギモノクローナル抗ATOH1(Abcam)であり、抗α/β-チューブリン抗体(Cell Signaling Technology)はインプリントを検出し、二次抗体は、抗ウサギIgG、HRP-連結抗体(Cell Signaling Technology)を用いた。Image Lab(BIO-RAD、Chemistry Doctm MPイメージングシステム)を用いて信号を収集した。
Image Lab(BIO-RAD、Chemistry Doctm MPイメージングシステム)を用い信号を走査し検出した。
【0094】
図5に示されるように、ランダムに選択されたこの7個の活性化saRNAは、ATOH1タンパク質の発現レベルを促進又は増加できる。
【0095】
上記結果から分かるように、出願者は、ATOH1遺伝子プロモーターに標的化するsaRNAをハイスループットスクリーニングすることにより、ATOH1遺伝子発現を有意に活性化できる複数のsaRNAを見つけた。これらsaRNAはmRNAとたんぱく質発現レベルでATOH1遺伝子の発現をアップレギュレーションでき、ATOH1たんぱく質低下又は不足に関連する疾患又は病症、若しくは上記疾患や状況を治療するための薬物の製造に用いられる。
【0096】
参照文献
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【配列表】
【国際調査報告】