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特表2022-539854高い比表面積を有する安定化リグニンを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】高い比表面積を有する安定化リグニンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08H 7/00 20110101AFI20220906BHJP
【FI】
C08H7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500828
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069628
(87)【国際公開番号】W WO2021005230
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102019210199.2
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513191653
【氏名又は名称】サンコール インダストリーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SUNCOAL INDUSTRIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットマン トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ポジャン ヤコブ
(57)【要約】
本発明は、2つの方法工程を含む、安定化リグニンをリグニン含有原材料から製造する方法に関する。本発明はまた、こうして製造された安定化リグニンに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン含有原材料から少なくとも10m/gのSTSA表面積を有する非溶解の安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、液体中に溶解されたリグニンと架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニンの中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを、第1の最高温度T1maxと第1の最低温度T1minとの間にある第1の温度T1で、規定された期間にわたり反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋剤の添加が前記第1の方法工程で行われ、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の量が、使用されるリグニンの中の架橋可能な単位1mol当たり最大4mol、好ましくは3mol未満、より好ましくは2.5mol未満に相当することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤の配量を、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の量が、前記使用されるリグニンの中の前記架橋可能な単位と架橋可能な単位1mol当たり少なくとも0.5mol、好ましくは少なくとも0.75mol、より好ましくは少なくとも1mol、特に好ましくは少なくとも1.1mol、特に少なくとも1.15molに相当するように行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リグニン含有原材料から安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニンの中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
ここで、架橋性化合物の量は、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の含有量が前記リグニンの中の架橋可能な単位1mol当たり0.5molから4molの間であるように選択される、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法。
【請求項6】
前記架橋剤の量は、最大35g/100g(リグニン)、好ましくは最大30g/100g(リグニン)、より好ましくは最大25g/100g(リグニン)、特に最大20g/100g(リグニン)であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋剤として、アルデヒドまたは二官能性化合物を添加することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の方法工程における温度は、有利には、50℃超、好ましくは60℃超、特に好ましくは70℃超で、かつ180℃未満、好ましくは150℃未満、更に好ましくは130℃未満、特に好ましくは100℃未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の方法工程における平均滞留時間は、少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、特に好ましくは少なくとも30分、特に少なくとも45分であるが、300分未満であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の方法工程における温度は、有利には、270℃未満、好ましくは260℃未満、更に好ましくは250℃未満、特に好ましくは240℃未満、特に235℃未満であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の方法工程における平均滞留時間は、少なくとも10分、より好ましくは少なくとも30分、特に好ましくは少なくとも45分であるが、600分未満、好ましくは480分未満、特に好ましくは450分未満であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解されたリグニンを含む液体のpHは、前記第1の方法工程の前に、少なくとも7.5であり、前記第1の方法工程の後の前記溶解された変性リグニンを含む液体のpHよりも高いことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶解された変性リグニンを含む液体のpHは、前記第2の方法工程の前に、少なくとも7であり、前記第2の方法工程の後の前記非溶解の安定化リグニンを含む液体のpHよりも高いことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の方法工程において、
・ 炭水化物ベースの架橋剤、好ましくはアルデヒド、好ましくはグリセルアルデヒドまたはグリコールアルデヒドを、前記溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散された炭水化物から得て、
・ 前記液体中に溶解されたリグニンと、前記炭水化物ベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1の方法工程において、
・ リグニンベースの架橋剤、好ましくはアルデヒド、好ましくはメタンジオールまたはグリコールアルデヒドを、前記溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散された炭水化物から得て、
・ 前記液体中に溶解された残りのリグニンと、リグニンベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも10m/g、より好ましくは少なくとも20m/gのSTSA表面積を特徴とする、非溶解の安定化リグニン、特に請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において得ることが可能な非溶解の安定化リグニン。
【請求項17】
0.1cm/g未満、より好ましくは0.01cm/g未満、特に好ましくは0.005cm/g未満の細孔容積を特徴とする、請求項16に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項18】
30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満のアルカリ性液体における溶解度を特徴とする、請求項16および17のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項19】
160℃超、更に好ましくは180℃超、特に好ましくは200℃超、特に250℃超のガラス転移温度を特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項20】
少なくとも10m/g、より好ましくは少なくとも20m/gのSTSA(前記STSAは、好ましくは、200m/g未満である)、
54ppm~58ppmでのメトキシ基のシグナルに対して1%~80%、好ましくは5%~60%、特に好ましくは5%~50%の強度を有する、固体13C-NMRにおける0ppm~50ppm、好ましくは10ppm~40ppm、より好ましくは25ppm~35ppmでのシグナル、および使用されるリグニンよりも高い、125ppm~135ppm、好ましくは127ppm~133ppmでの13C-NMRシグナル、
再生可能な原材料の含有量に対応する、好ましくは0.20Bq/g(炭素)超、特に好ましくは0.23Bq/g(炭素)超であるが、好ましくは、すべての場合において0.45Bq/g(炭素)未満である14C含有量、
60質量%から80質量%の間、好ましくは65質量%から75質量%の間の無灰乾燥物質に対する炭素含有量、
を特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
広葉樹、針葉樹、および一年生植物由来のリグニンは、例えば、クラフトリグニン、リグノスルホン酸塩、または加水分解リグニンの形で抽出/回収した後に、多くの極性媒体およびアルカリ性媒体において高い溶解度を示す。リグニンは、とりわけ、ほとんどが80℃~150℃の温度でガラス転移を示す。軟化すると、低温でもリグニン粒子の微視的構造が変化する。したがって、リグニン含有材料は、一般に高温に耐えられず、すなわちそれらの特性を変化させる。さらに、例えば、10%の水を含むジオキサンおよびアセトンなどの極性溶媒、またはアルカリ性溶媒におけるリグニンの溶解度は、通常95%を上回る(非特許文献1、非特許文献2)。これらの特性およびその他の特性は、リグニンが材料用途において限られた範囲でのみ使用され得ることを意味する(特許文献1)。
【0002】
以下で、リグニンは、クラーソンリグニンおよび酸可溶性リグニンの集合を意味すると理解されるべきである。乾燥物質は、他の有機成分および無機成分を更に含有する。
【0003】
これらの不利点を克服するために、200℃を超える軟化温度(ガラス転移温度)を特徴とする安定化リグニンの熱水炭化による製造が提案されている(特許文献2)。pHを調整することにより、規定の粒度分布を有する安定化リグニンを得ることが可能である(特許文献2)。
【0004】
改善された方法では、リグニンは、例えば、エラストマー中で機能性フィラーとして使用され得る粒状炭素材料を製造する原材料として使用される(特許文献3)。機能性フィラーの重要な品質パラメーターは、STSAの測定によって決定される粒状炭素材料の外部表面積である。このような方法では、通常150℃から250℃の間の温度でのリグニン含有液体の熱水炭化が使用される。このような温度でのリグニンの高い反応性のため、高い比表面積を達成するには、リグニン含有液体のpH、イオン強度、およびリグニン含有量、ならびに熱水炭化の温度および継続時間の間で微妙なバランスをとる必要がある。これは、pHをアルカリ性範囲内、通常は7を上回る値に調整することにより達成される。
【0005】
このような粒状炭素材料については、これにより、それぞれの出発リグニンとは異なる材料の用途が切り開かれる。例えば、40%未満の低い溶解度および5m/g超で200m/g未満の比表面積では、これらをエラストマー中で強化フィラーとして、そしてカーボンブラックの部分的または完全な代替物として使用することができる。
【0006】
これらの方法の不利点は、一般に40%から60%の間である低い収率である。これらの方法の更なる不利点は、ますます高くなる比表面積を達成するのに、リグニン含有液体の特性(pH、イオン強度、リグニン含有量)を熱水炭化のプロセスパラメーター(温度および滞留時間)に合わせて調整するコストが高いことである。5m/g~40m/gの範囲内の表面積を達成するのは容易であるが、上述のバランスの必要な感度は、工業的規模よりも実験室において40m/gを上回る比表面積を達成する方が容易であることを意味する。比表面積を増加させることを目的としたそのような調整は、収率の減少につながると想定され得る。
【0007】
220℃から280℃の間の温度での熱水炭化により乾燥黒液および水の懸濁液から燃料を製造するために、固体材料の収率を高めてリグニン変換を増大させる既知の方法は、ホルムアルデヒドの添加である[非特許文献3]。カンら(Kang et al.)は、20%の固体濃度の乾燥リグニン100g当たり37gのホルムアルデヒドを添加することを提案している(乾燥物質に対して30%のリグニン含有量を有する黒液を乾燥させることにより得られた25gの乾燥物質当たり100mlの2.8%ホルムアルデヒド溶液)。これにより、黒液中に存在するリグニンの固体への変換率を60%~80%から90%から100%の間の値に高めることができ、ここで、最高値は220℃から250℃の間の温度で達成される。この従来技術によれば、収率の増加は、ホルムアルデヒドと、黒液中の固体と、この固体から形成される炭化生成物との間の重合に起因すると見なされている(第716頁、最終段落)。
【0008】
この従来技術の不利点
100gのリグニン当たり37gのホルムアルデヒドの高特異的配量、
使用される乾燥物質およびそれから生成される生成物の高い灰分、
ホルムアルデヒドと、黒液中の固体と、この固体から形成される炭化生成物との間の重合、ならびに、
燃料における使用に対する生成物の使用の関連する制限。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013002574号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/018944号
【特許文献3】国際公開第2017/085278号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】サメニら(Sameni et al.),バイオリソーシズ(BioResources),2017年,第12巻,第1548頁~第1565頁
【非特許文献2】ポジャンら(Podschun et al.),ヨーロピアン・ポリマー・ジャーナル(European Polymer Journal),2015年,第67巻,第1頁~第11頁
【非特許文献3】バイオリソース・テクノロジー(Bioressource Technologie)2012年,第110巻 第715頁~第718頁,カンら(Kang et al.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、材料用途に適した安定化リグニンが高収率で得られる方法を見出すことである。
【0012】
本発明の目的は、
アルカリ性媒体および/または極性媒体におけるリグニンの溶解度を低下させ、
リグニンのガラス転移温度を高め、または排除し、
有利な粒子特性を有する安定化リグニンをもたらし、かつ、
高い収率を有する、方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の変形形態においては、リグニン含有原材料から少なくとも10m/gのSTSA表面積を有する非溶解の安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、液体中に溶解されたリグニンと、架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法が提供される。
【0014】
好ましいリグニン含有原材料は、特に、
木質バイオマスのクラフト蒸解からの黒液またはそれから生成された固体(例えば、LignoBoostリグニン、LignoForceリグニン)、
木質バイオマスの酵素加水分解からの固体、
木質バイオマスの亜硫酸塩での蒸解からの黒液(リグノスルホン酸塩)もしくはそれから生成された固体、または木質バイオマスの溶媒による蒸解からの液体もしくはそれから生成された固体(例えば、Organosolvリグニン)、
である。
【0015】
リグニン含有原材料が固体である場合に、第1の方法工程の前にそこに含まれるリグニンを液体中に完全にまたは部分的に溶解させなければならない。リグニンを液体中に溶解させる方法は従来技術である。
【0016】
第1の方法工程において架橋剤と反応する溶解されたリグニンに加えて、液体中には非溶解のリグニンも分散された形で存在し得る。したがって、本方法では、必ずしもすべてのリグニンが液体中に溶解されて存在する必要はない。しかしながら、リグニンの50%超、特に好ましくは60%超、更により好ましくは70%超、特に好ましくは80%超、特に90%超が液体中に溶解されていることが有利である。
【0017】
溶解された変性リグニンは、特に
リグニン中の芳香族化合物が、依然として主にエーテル結合を介して接続されていること、
芳香族環の全割合に占めるパラ置換フェノール環の割合が95%超、好ましくは97%超、特に好ましくは99%超であり、かつ遊離フェノールの含有量が200ppm未満、好ましくは100ppm未満、更により好ましくは75ppm未満、特に好ましくは50ppm未満であること、
クラーソンリグニンの含有量が、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも85%であること、
を意味すると理解される。
【0018】
フェノール含有量は、DIN ISO 8974に従って決定される。クラーソンリグニン含有量は、TAPPI T222に従って酸不溶性リグニンとして決定される。
【0019】
「非溶解の安定化リグニン」という用語は、本発明の目的のために、第2の方法工程の後に液体から分離され得る固体を意味すると理解されるべきである。非溶解の安定化リグニンはアルカリ性液体中に難溶性であるにすぎず、低い多孔性を有する。本方法によって得られた安定化リグニンの特性を以下に詳細に説明する。
【0020】
有利には、この第1の変形形態においては、リグニン含有原材料から非溶解の安定化リグニンを製造する改善された方法であって、
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニン中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを、第1の最高温度T1maxと第1の最低温度T1minとの間にある第1の温度T1で、規定された期間にわたり反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法が提供される。
【0021】
本方法は、第1の方法工程における架橋剤との反応を伴わない方法様式と比較して、非溶解の安定化リグニンの収率を大幅に増加させる。
【0022】
2段階の方法様式は、それぞれの方法工程が行われる条件に有利な影響を及ぼし得る。
【0023】
第1の方法工程における架橋剤と液体中に溶解されたリグニンとの反応により、反応における高い選択性を保証し、溶解された変性リグニンを選択的に得た後に、これを第2の方法工程において非溶解の安定化リグニンに変換することが可能である。第1の方法工程を溶液中で実施することにより、架橋剤と、リグニンおよびリグニンから形成された任意の炭化生成物との重合が減少するか、または完全に抑制される。第2の方法工程において、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することで、非溶解の安定化リグニンの粒子特性に選択的に影響を与えることができる。これにより、有利な粒子特性を設定することができる。
【0024】
本方法の2段階の方法様式により、驚くべきことに、第1の方法工程において架橋剤との反応を伴わない従来技術に従って同じ出発材料から製造された安定化リグニンよりも、収率および比表面積が大幅に高い安定化リグニンが得られる。
【0025】
さらに、本方法の2段階の方法様式により、驚くべきことに、架橋剤との反応を伴うが、1工程法における従来技術に従って同じ出発材料から製造された安定化リグニンよりも収率および比表面積が大幅に高い安定化リグニンが得られる。
【0026】
好ましくは、溶解されたリグニンに対する非溶解の安定化リグニンの収率は、60%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、特に85%超である。
【0027】
上記の変法の一実施形態においては、架橋性化合物は、第1の方法工程において添加される。
【0028】
架橋剤の配量は、好ましくは、架橋剤中の架橋可能な単位の量が、使用されるリグニン中の上記架橋可能な単位と架橋可能な単位1mol当たり最大4mol、好ましくは最大3mol、より好ましくは最大2.5mol、特に好ましくは最大2mol、更により好ましくは最大1.75mol、特に最大1.5molに相当するように行われる。
【0029】
好ましくは、架橋剤の配量は、架橋剤中の架橋可能な単位の量が、使用されるリグニン中の上記架橋可能な単位と架橋可能な単位1mol当たり少なくとも0.5mol、好ましくは少なくとも0.75mol、より好ましくは少なくとも1mol、特に好ましくは少なくとも1.1mol、特に少なくとも1.15molに相当するように行われる。
【0030】
第2の変形形態においては、リグニン含有原材料から安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニン中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
ここで、架橋性化合物の量は、架橋剤中の架橋可能な単位の含有量がリグニン中の架橋可能な単位1mol当たり0.5molから4molの間であるように選択される、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法が提供される。
【0031】
したがって、使用されるリグニンの量に対して最適な量の架橋剤が選択されるが、第1の方法工程において規定された温度様式は必要とされない代替方法が同様に提供される。これは、得られる炭化された安定化リグニンの収率および比表面積が、最適な量の架橋剤が選択される場合に大幅に増加し得るという驚くべき知見の結果として起こった。
【0032】
第2の変法の一実施形態においては、第1の方法工程は、第1の変法から類推して補足され得る。第1の変法と第2の変法との1つのそのような組合せにおいては、リグニン含有原材料から安定化リグニンを製造する有利な方法であって、
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニン中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを、第1の最高温度T1maxと第1の最低温度T1minとの間にある第1の温度T1で、規定された期間にわたり反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
ここで、架橋性化合物の量は、架橋剤中の架橋可能な単位の含有量がリグニン中の架橋可能な単位1mol当たり0.5molから4molの間であるように選択される、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法が提供される。
【0033】
架橋剤は、リグニン中のフェノール環(フェノール性グアイアシル基およびp-ヒドロキシフェニル基)上の遊離オルト位およびパラ位で反応し得る。フェノール環上の遊離オルト位およびパラ位で反応するのに適した架橋剤の例は、ホルムアルデヒド、フルフラール、5-HMF、ヒドロキシベンズアルデヒド、バニリン、シリンガアルデヒド、ピペロナール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、または糖アルデヒドなどのアルデヒドである。フェノール環での反応に好ましい架橋剤は、ホルムアルデヒド、フルフラール、ならびにグリセルアルデヒドおよびグリコールアルデヒドなどの糖アルデヒド(エタナール/プロパナール)である。
【0034】
さらに、架橋剤は、リグニン中の芳香族および脂肪族のOH基(フェノール性グアイアシル基、p-ヒドロキシフェニル基、シリンギル基)と反応し得る。例えば、この目的のために、グリシジルエーテルなどのエポキシ基を含む二官能性化合物および更に多官能性化合物、ジイソシアネートもしくはオリゴマージイソシアネートなどのイソシアネート基を含む二官能性化合物および更に多官能性化合物、または酸無水物を含む二官能性化合物および更に多官能性化合物を使用することが好ましい場合がある。芳香族および脂肪族のOH基での反応に好ましい架橋剤は、イソシアネートおよび酸無水物である。
【0035】
架橋剤は、カルボキシル基とも反応し得る。例えば、この目的のために、ジオールおよびトリオールを使用することができる。カルボキシル基との反応に好ましい架橋剤はジオールである。
【0036】
さらに、架橋剤は、フェノール環、芳香族および脂肪族のOH基、ならびにカルボキシル基と反応し得る。例えば、この目的のために、上述の架橋剤の官能基のうちの少なくとも2つを含む二官能性化合物および更に多官能性化合物を使用することが好ましい場合がある。
【0037】
フェノール環と反応する架橋剤を使用する場合に、使用されるリグニン中の架橋可能な単位は、フェノール性グアイアシル基およびp-ヒドロキシフェニル基を意味すると理解される。架橋可能な単位の濃度(mmol/g)は、例えば31P-NMR分光法を介して決定され(非特許文献2)、ここで、グアイアシル基は1つの架橋可能な単位を含み、そしてp-ヒドロキシフェニル基は2つの架橋可能な単位を含む。
【0038】
芳香族および脂肪族のOH基と反応する架橋剤を使用する場合に、使用されるリグニン中の架橋可能な単位は、すべて芳香族および脂肪族のOH基を意味すると理解される。架橋可能な単位の濃度(mmol/g)は、例えば31P-NMR分光法を介して決定され、ここで、すべての基は1つの架橋可能な単位を含む。
【0039】
カルボキシル基と反応する架橋剤を使用する場合に、使用されるリグニン中の架橋可能な単位は、すべてカルボキシル基を意味すると理解される。架橋可能な単位の濃度(mmol/g)は、例えば31P-NMR分光法を介して決定され、ここで、すべての基は1つの架橋可能な単位を含む。
【0040】
二官能性架橋剤を使用する場合に、1molの二官能性架橋剤当たり2molの架橋可能な単位が利用可能である。したがって、三官能性架橋剤を使用する場合に、1molの三官能性架橋剤当たり3molの架橋可能な単位が利用可能であるなどである。
【0041】
好ましくは、架橋剤の量は、最大35g/100g(リグニン)、好ましくは最大30g/100g(リグニン)、より好ましくは最大25g/100g(リグニン)である。
【0042】
好ましくは、ホルムアルデヒドの量は、最大25g/100g(リグニン)、好ましくは最大20g/100g(リグニン)、より好ましくは最大15g/100g(リグニン)、特に最大12g/100g(リグニン)である。したがって、添加されるホルムアルデヒドの量は、1g/100g(リグニン)~20g/100g(リグニン)、好ましくは5g/100g(リグニン)~15g/100g(リグニン)、より好ましくは6g/100g(リグニン)~10g/100g(リグニン)の範囲内であり得る。
【0043】
第1の方法工程における温度は、有利には、50℃超、好ましくは60℃超、特に好ましくは70℃超で、かつ180℃未満、好ましくは150℃未満、更に好ましくは130℃未満、特に好ましくは100℃未満である。
【0044】
第1の方法工程における平均滞留時間は、有利には、少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、特に好ましくは少なくとも30分、特に少なくとも45分であるが、300分未満である。
【0045】
第1の方法工程についての時間および温度窓の有利な組合せは、少なくとも15分、好ましくは少なくとも20分、より好ましくは少なくとも30分、特に好ましくは少なくとも45分の滞留時間とともに、50℃の最低温度および180℃の最高温度である。第1の方法工程についての時間および温度窓の代替的に有利な組合せは、少なくとも10分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも20分、特に好ましくは少なくとも30分、特に少なくとも45分の滞留時間とともに、50℃の最低温度および130℃の最高温度である。
【0046】
特に好ましい実施形態においては、溶解されたリグニンと少なくとも1つの架橋性化合物との混合物は、第1の方法工程において、50℃から180℃の間の温度T1で、少なくとも20分、好ましくは少なくとも60分の滞留時間にわたり保持される。
【0047】
更なる特に好ましい実施形態においては、溶解されたリグニンと少なくとも1つの架橋性化合物との混合物は、第1の方法工程において、70℃から130℃の間の温度T1で、少なくとも10分、好ましくは少なくとも50分の滞留時間にわたり保持される。
【0048】
有利には、第1の方法工程の間に、溶解されたリグニンを含む液体および架橋剤は加熱され得る。加熱速度は、好ましくは毎分15ケルビン未満、より好ましくは毎分10ケルビン未満、特に好ましくは毎分5ケルビン未満である。
【0049】
有利には、第1の方法工程における温度は、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、特に好ましくは少なくとも30分の期間にわたり、ほぼ一定に保たれる。
【0050】
第1の方法工程における加熱と一定温度の維持との組合せも有利である。
【0051】
圧力は、好ましくは、リグニンを含む液体の飽和蒸気圧よりも少なくとも0.2バール高い、好ましくは最大20バール高い。
【0052】
有利には、溶解されたリグニンを含む液体のpHは、第1の方法工程の前に、第1の方法工程の後の溶解された変性リグニンを含む液体のpHよりも高い。
【0053】
第1の方法工程の前の溶解されたリグニンを含む液体のpHは、有利には、7超、好ましくは7.5超、更に好ましくは8超、特に好ましくは8.5超であるが、12.5未満である。
【0054】
第1の方法工程の後の溶解された変性リグニンを含む液体のpHは、有利には、6.5超、好ましくは7超、好ましくは8超であるが、12未満である。
【0055】
好ましくは、溶解された変性リグニンを含む液体のpHは、第1の方法工程の後に、第1の方法工程の前の溶解されたリグニンを含む液体のpHよりも少なくとも0.2単位低い、好ましくは少なくとも0.5単位低い、より好ましくは少なくとも1単位低い。
【0056】
溶解されたリグニンを含む液体の総質量に対するリグニンの割合は、第1の方法工程において、有利には、3%から25%の間、好ましくは20%未満、より好ましくは18%未満である。
【0057】
第2の方法工程における温度は、有利には、270℃未満、好ましくは260℃未満、更に好ましくは250℃未満、更により好ましくは240℃未満、追加的に好ましくは230℃未満、追加的に特に好ましくは220℃未満、特に215℃未満である。
【0058】
有利な実施形態においては、第2の方法工程における温度は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも160℃、より好ましくは少なくとも170℃である。
【0059】
したがって、第2の方法工程における温度は、150℃から250℃の間の広い範囲に及び得る。
【0060】
特に好ましい実施形態においては、第2の反応工程は水熱処理に相当し、ここで、水熱処理における温度T2は、150℃から250℃の間、好ましくは170℃から240℃の間、より好ましくは175℃から235℃の間である。
【0061】
圧力は、好ましくは、リグニンを含む液体の飽和蒸気圧よりも少なくとも0.2バール高い、好ましくは最大20バール高い。
【0062】
有利には、第2の方法工程における平均滞留時間は、少なくとも10分、より好ましくは少なくとも30分、特に好ましくは少なくとも45分であるが、600分未満、好ましくは480分未満、特に好ましくは450分未満である。
【0063】
有利には、溶解された変性リグニンを含む液体のpHは、第2の方法工程の前に、第2の方法工程の後の非溶解の安定化リグニンを含む液体のpHよりも高い。第2の方法工程の後の非溶解の安定化リグニンを含む液体のpHは、有利には、5超、好ましくは6超であるが、11未満である。非溶解の安定化リグニンを含む液体のpHは、第2の方法工程の後に、好ましくは、第2の方法工程の前の溶解された変性リグニンを含む液体のpHよりも少なくとも0.2単位低い、好ましくは少なくとも0.5単位低い、より好ましくは少なくとも1単位低い。
【0064】
溶解された変性リグニンを含む液体の総質量に対するリグニンの割合は、第2の方法工程において、有利には、3%から25%の間、好ましくは20%未満、より好ましくは18%未満である。
【0065】
有利には、架橋剤は、第1の方法工程の間にその場で生成される。第1の方法工程において架橋剤を作製することの利点は、第1の方法工程において添加される架橋剤の量を減らすことができるか、または完全に省くことができることである。
【0066】
有利には、架橋剤は、第1の方法工程の間に、溶解されたリグニンを含む液体中に分散または溶解された炭水化物(好ましくは、セルロース、ヘミセルロース、またはグルコース)からその場で作製される。炭水化物、好ましくはセルロース、ヘミセルロース、またはグルコースは、好ましくは、溶解されたリグニンを含む液体に添加され得るか、または既に存在している。そのような有利な方法様式の一例においては、
第1の方法工程において、
・ 炭水化物ベースの架橋剤、好ましくはアルデヒド、好ましくはグリセルアルデヒドまたはグリコールアルデヒドを、溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散された炭水化物から得て、
・ 液体中に溶解されたリグニンと、炭水化物ベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する。
【0067】
有利には、架橋剤は、第1の方法工程の間に、溶解されたリグニンを含む液体中に分散または溶解されたリグニンからその場で作製される。そのような有利な方法様式の一例においては、
第1の方法工程において、
・ リグニンベースの架橋剤、好ましくはアルデヒド、好ましくはメタンジオールまたはグリコールアルデヒドを、溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散された炭水化物から得て、
・ 液体中に溶解された残りのリグニンと、リグニンベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する。
【0068】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、それを材料用途で使用することを可能にする有利な粒子特性を有する。好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、500μm未満、好ましくは300μm未満、より好ましくは200μm未満、特に100μm未満、特に好ましくは50μm未満の粒度分布におけるD50を有する。好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、0.5μm超、好ましくは1μm超、より好ましくは2μm超の粒度分布におけるD50を有する。
【0069】
安定化リグニンの粒度分布の測定は、蒸留水を含む懸濁液中でISO 13320に従ってレーザー回折により行われる。粒度分布の測定前および/または測定中に、測定される試料は、多数の測定にわたって安定した粒度分布が得られるまで超音波で分散される。
【0070】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、少なくとも10m/g、より好ましくは少なくとも20m/gのSTSAを有する。好ましくは、STSAは、200m/g未満である。STSA(統計的厚さ表面積)は、ここでは安定化リグニン粒子の外部表面積の指標である。
【0071】
本安定化リグニンまたは粒状炭素材料の1つの変形形態においては、STSA表面積は、10m/gから180m/gの間、好ましくは20m/gから180m/gの間、より好ましくは35m/gから180m/gの間、特に好ましくは40m/gから180m/gの間の値を有する。
【0072】
有利には、本安定化リグニンのBET表面積は、STSA表面積から最大20%、好ましくは最大15%、より好ましくは最大10%だけしか外れない。BET表面積は、ブルナウアー、エメット、およびテラーよる窒素表面積を介した外部表面および内部表面の合計表面積として決定される。
【0073】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、第2の方法工程の終わりに水中に分散されて存在する。
【0074】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、低い多孔性を有する。有利には、安定化リグニンの細孔容積は、0.1cm/g未満、より好ましくは0.01cm/g未満、特に好ましくは0.005cm/g未満である。これは、通常500m/gを超えるBET表面積に加えて、最大10m/gのSTSA表面積も有し得る粉砕された生物起源の粉末化活性炭などの微細化された多孔質材料と比較して際立った本安定化リグニンの特徴である。
【0075】
非溶解の安定化リグニンの際立った特徴は、好ましい有利な粒子特性、例えば、ホルムアルデヒドとの反応によって製造され、溶液からゲル状態を経て熱硬化性樹脂に変換されたリグニンベースの樹脂の500μm未満の粒度分布におけるD50または10m/g超、好ましくは20m/g超のSTSAである。
【0076】
BET表面積およびSTSA表面積は、ASTM D6556-14規格に従って決定される。それとは異なって、本発明においては、STSA測定およびBET測定のための試料調製/脱ガスは150℃で実施される。
【0077】
非溶解の安定化リグニンは、固液分離によって第2の方法工程の後に液体から分離され得る固体を意味すると理解される。そのような固液分離の一例は、遠心分離または濾過である。
【0078】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、アルカリ性液体において限定された溶解度しか有しない。非溶解の安定化リグニンの溶解度は、好ましくは30%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは20%未満である。
【0079】
非溶解の安定化リグニンのアルカリ溶解度は、以下の通りに決定される:
1. 非溶解の安定化リグニンを遠心分離により液体から分離し、蒸留水で2回洗浄する。上清を毎回傾瀉除去する。
2. 1からの生成物を105℃で24時間乾燥させる。
3. 6.6質量%の濃度を有する2からの生成物および0.1MのNaOHの懸濁液、したがってアルカリ性懸濁液を作製する。水酸化ナトリウム溶液を添加した後にpHが10未満であれば、追加の水酸化ナトリウム溶液を計量供給する。
4. アルカリ性懸濁液を25℃で2時間撹拌する。
5. 次いで、アルカリ性懸濁液を6000gで遠心分離する。
6. 遠心分離からの上清を多孔度4のフリットを通じて濾過する。
7. 遠心分離後の固体を、4.から6.の繰り返しにより、蒸留水で2回洗浄する。
8. 遠心分離後の固体および多孔度4のフリット上の残留物を105℃で乾燥させて、測定する。
9. リグニンに富む固体のアルカリ溶解度を、以下の通りに決定する:
リグニンに富む固体のアルカリ溶解度[%]=遠心分離、濾過、および乾燥からの非溶解の画分の質量[g]/工程2で得られた生成物の質量[g]×100。
【0080】
好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、160℃超、更に好ましくは180℃超、特に好ましくは200℃超、特に250℃超のガラス転移温度を有する。好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、測定可能なガラス転移温度を有しない。
【0081】
固液分離、洗浄、および乾燥の後に、DIN 53765に従って、乾燥した非溶解の安定化リグニンに対してガラス転移温度の測定を行う。
【0082】
非溶解の安定化リグニンはまた、本発明によれば、
少なくとも10m/g、より好ましくは少なくとも20m/gのSTSA(好ましくは、STSAは、200m/g未満である)、
54ppm~58ppmでのメトキシ基のシグナルに対して1%~80%、好ましくは5%~60%、特に好ましくは5%~50%の強度を有する、固体13C-NMRにおける0ppm~50ppm、好ましくは10ppm~40ppm、より好ましくは25ppm~35ppmでのシグナル、および使用されるリグニンよりも高い、125ppm~135ppm、好ましくは127ppm~133ppmでの13C-NMRシグナル、
再生可能な原材料の含有量に対応する、好ましくは0.20Bq/g(炭素)超、特に好ましくは0.23Bq/g(炭素)超であるが、好ましくは、すべての場合において0.45Bq/g(炭素)未満である14C含有量、
60質量%から80質量%の間、好ましくは65質量%から75質量%の間の無灰乾燥物質に対する炭素含有量、
160℃超、更に好ましくは180℃超、特に好ましくは200℃超、特に250℃超のガラス転移温度(好ましくは、非溶解の安定化リグニンは、測定可能なガラス転移温度を有しない)、
0.1cm/g未満、より好ましくは0.01cm/g未満、特に好ましくは0.005cm/g未満の安定化リグニンにおける細孔容積、
を有するものである。
【0083】
本発明を、図面を参照して例示的な実施形態に基づき以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】例示的な実施形態1による第1の実施形態についての結果の図表を示す。
図2】例示的な実施形態1に従って得られた安定化リグニンの13C-NMRスペクトルを示す。
図3】例示的な実施形態2による第2の実施形態についての結果の図表を示す。
図4】例示的な実施形態1および例示的な実施形態2からの温度プロファイルの図表を示す。
図5】例示的な実施形態3に従って製造された安定化リグニンの収率およびBET値に対する使用される架橋剤の量の影響を表す図表を示す。
図6】例示的な実施形態3に従って得られた安定化リグニンの13C-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下の実施例においては、STSAの代わりにBETが示されている。しかしながら、ここで製造される非溶解の安定化リグニンについては、BETとSTSAとは互いに10%を超える違いはない。
【実施例
【0086】
実施例1
この実施例の原材料は、木質バイオマス(広葉樹)の酵素加水分解からの固体である。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、固体を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。
【0087】
溶解されたリグニンを含み、かつ15%の乾燥物質含有量および10.9のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のホルムアルデヒドとの反応の第1の方法工程において、表1に規定される量の23.5%ホルムアルデヒド溶液を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびホルムアルデヒド溶液を均質化し、第1の方法工程において表1に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを遠心分離によって得た。脱塩水で2回洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表1および図1に示される収率が得られた。表1および図1における比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0088】
使用される乾燥物質は88%のリグニン含有量を有する。使用される乾燥物質のリグニン分は、1.3mmol/gのフェノール性グアイアシル基および0.1mmol/gのp-ヒドロキシフェニル基、したがって1.5mmol/gの架橋可能な単位を有する。
【0089】
使用されるホルムアルデヒドは、1gの乾燥ホルムアルデヒド当たり66.6mmolの架橋可能な単位を有する。
【0090】
【表1】
【0091】
上記の表1から分かるように、製造されるリグニン材料の収率およびBETは、使用される架橋剤の量および上流の第1の反応工程の使用に依存する。
【0092】
したがって、例D、例E、および例Fは、架橋剤の量を変えずに第1の方法工程を使用すると、得られる材料のBETの増加がもたらされることを示している。第1の反応工程を71分または85分の時間で行うと、短縮された第1の反応工程と比べて、BET値が倍化する(例E)。
【0093】
BETはまた、最初は架橋剤の量が増えると増加するが(例B~例F)、架橋剤の量が更に増えると低下する(例G)。
【0094】
例示的な実施形態2において、同様の効果を確認することができる(以下の表2を参照)。ここで、架橋剤の量を倍化すると、安定化リグニンのBETおよび収率が低下する(例Iおよび例L)。
【0095】
したがって、使用される架橋剤の量についての至適が明らかになる。
【0096】
例E2において、13C-ホルムアルデヒドを使用し、固体NMR分光法により分析した。使用されるリグニンおよび安定化リグニンのスペクトルを図2に示す。これは、11ppm~36ppmにメチレン基の好ましい形成を示すとともに、24ppm~32ppmに安定化リグニンの構造としての2つのグアイアシル単位に関する中心シグナルを示している。
【0097】
実施例2
この実施例についての原材料は、クラフト蒸解からの黒液から得られたLignoBoostリグニンである。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、固体を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。溶解されたリグニンを含み、かつ15%の乾燥物質含有量および9.2のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のホルムアルデヒドとの反応の第1の方法工程において、表2に規定される量の23.5%ホルムアルデヒド溶液を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびホルムアルデヒド溶液を均質化し、第1の方法工程において表2に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを遠心分離によって得た。脱塩水で2回洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表2および図3に示される収率が得られた。表2および図3における非溶解の安定化リグニンの比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0098】
使用されるリグニンは、1.9mmol/gのフェノール性グアイアシル基および0.3mmol/gのp-ヒドロキシフェニル基、したがって2.5mmol/gの架橋可能な単位を有する。
【0099】
使用されるホルムアルデヒドは、1gの乾燥ホルムアルデヒド当たり66.6mmolの架橋可能な単位を有する。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1および実施例2からの温度曲線は、図4のグラフにまとめられている。
【0102】
実施例3
この実施例についての原材料は、クラフト蒸解からの黒液から得られたLignoBoostリグニンである。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、固体を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。
【0103】
溶解されたリグニンを含み、かつ15%の乾燥物質含有量および8.7のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のホルムアルデヒドとの反応の第1の方法工程において、表3に規定される量の23.5%ホルムアルデヒド溶液を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびホルムアルデヒド溶液を均質化し、第1の方法工程において表3に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを濾過によって得た。濾液の2倍量の脱塩水で洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表3および図5に示される収率が得られた。表3および図5における非溶解の安定化リグニンの比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0104】
使用されるリグニンは、1.9mmol/gのフェノール性グアイアシル基および0.3mmol/gのp-ヒドロキシフェニル基、したがって2.5mmol/gの架橋可能な単位を有する。
【0105】
使用されるホルムアルデヒドは、1gの乾燥ホルムアルデヒド当たり66.6mmolの架橋可能な単位を有する。
【0106】
【表3】
【0107】
上記の表3および図5から分かるように、製造されるリグニン材料の収率およびBETは、使用される架橋剤の量に依存する。
【0108】
したがって、例M~例Qは、BETが、最初に架橋剤の量の増加とともに増加するが(例M~例P)、架橋剤の量を更に増加させても、BETの更なる増加はもたらされない(例Q)ことを示している。
【0109】
したがって、使用される架橋剤の量についての至適が明らかになる。
【0110】
例P2において、13C-ホルムアルデヒドを使用し、固体NMR分光法により分析した。使用されるリグニンおよび安定化リグニンのスペクトルを図6に示す。これは、11ppm~35ppmにメチレン基の好ましい形成を示すとともに、24ppm~32ppmに安定化リグニンの構造としての2つのグアイアシル単位に関する中心シグナルを示している。
【0111】
実施例4
この実施例についての原材料は、クラフト蒸解からの黒液から得られたLignoBoostリグニンである。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、固体を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。
【0112】
溶解されたリグニンを含み、かつ15%の乾燥物質含有量および9.0のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のグリオキサールとの反応の第1の方法工程において、表4に規定される量の40%グリオキサール溶液を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびグリオキサール溶液を均質化し、第1の方法工程において表4に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを遠心分離によって得た。脱塩水で2回洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表4に示される収率が得られた。表4における非溶解の安定化リグニンの比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0113】
使用されるリグニンは、1.9mmol/gのフェノール性グアイアシル基および0.3mmol/gのp-ヒドロキシフェニル基、したがって2.5mmol/gの架橋可能な単位を有する。
【0114】
使用されるグリオキサールは、1g当たり68.9mmolの架橋可能な単位を有する。
【0115】
【表4】
【0116】
実施例5
この実施例についての原材料は、クラフト蒸解からの黒液から得られたLignoBoostリグニンである。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、固体を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。
【0117】
溶解されたリグニンを含み、かつ15%の乾燥物質含有量および9.0のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のグリセルアルデヒドとの反応の第1の方法工程において、表5に規定される量を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびグリセルアルデヒド溶液を均質化し、第1の方法工程において表5に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを遠心分離によって得た。脱塩水で2回洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表5に示される収率が得られた。表5における非溶解の安定化リグニンの比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0118】
使用されるリグニンは、1.9mmol/gのフェノール性グアイアシル基および0.3mmol/gのp-ヒドロキシフェニル基、したがって2.5mmol/gの架橋可能な単位を有する。
【0119】
使用されるグリセルアルデヒドは、1g当たり22.2mmolの架橋可能な単位を有する。
【0120】
【表5】
【0121】
実施例6
この実施例についての原材料は、亜硫酸塩での蒸解からの黒液の形のリグノスルホン酸塩である。水および水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、出発材料を、溶解されたリグニンを含む液体に変換した。溶解されたリグニンを含み、かつ12.4%の乾燥物質含有量および10.4のpHを有するそれぞれ30gの液体に、架橋剤のホルムアルデヒドとの反応の第1の方法工程において、表6に規定される量の23.5%ホルムアルデヒド溶液を添加した。溶解されたリグニンを含む液体およびホルムアルデヒド溶液を均質化し、第1の方法工程において表6に指定される時間および温度で処理して、溶解された変性リグニンを製造し、次いで、第2の方法工程において処理して、非溶解の安定化リグニンを製造した。非溶解の安定化リグニンを遠心分離によって得た。脱塩水で2回洗浄し、空気循環乾燥炉内で乾燥させた後に、表6に示される収率が得られた。表6における非溶解の安定化リグニンの比表面積(BET)は、減圧下で150℃にて加熱した後に決定された。
【0122】
使用される黒液の乾燥物質は70%のリグニン含有量を有する。使用される乾燥物質のリグニン分は、0.6mmol/gのフェノール性グアイアシル基、したがって架橋可能な単位を有する。
【0123】
使用されるホルムアルデヒドは、1gの乾燥ホルムアルデヒド当たり66.6mmolの架橋可能な単位を有する。
【0124】
【表6】


図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン含有原材料から少なくとも10m/gのSTSA表面積を有する非溶解の安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、液体中に溶解されたリグニンと架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニンの中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを、第1の最高温度T1maxと第1の最低温度T1minとの間にある第1の温度T1で、規定された期間にわたり反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋剤の添加が前記第1の方法工程で行われ、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の量が、使用されるリグニンの中の架橋可能な単位1mol当たり最大4molに相当することを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤の配量を、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の量が、前記使用されるリグニンの中の前記架橋可能な単位と架橋可能な単位1mol当たり少なくとも0.5molに相当するように行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
リグニン含有原材料から安定化リグニンを製造する方法であって、
第1の方法工程において、架橋可能な単位としてフェノール性芳香族化合物、芳香族および脂肪族のヒドロキシ基、および/またはカルボキシ基を含む、液体中に溶解されたリグニンと、該リグニンの中の架橋可能な単位と反応し得る架橋可能な単位として少なくとも1つの官能基を含む架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
ここで、架橋性化合物の量は、前記架橋剤の中の架橋可能な単位の含有量が前記リグニンの中の架橋可能な単位1mol当たり0.5molから4molの間であるように選択される、
第2の方法工程において、第2の最高温度T2maxと第2の最低温度T2minとの間にある第2の温度T2で、規定された期間にわたり、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する、方法。
【請求項6】
前記架橋剤の量は、最大35g/100g(リグニン)であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋剤として、アルデヒドまたは二官能性化合物を添加することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の方法工程における温度は、有利には、50℃超で、かつ180℃未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の方法工程における平均滞留時間は、少なくとも5分であるが、300分未満であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の方法工程における温度は、有利には、270℃未満であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の方法工程における平均滞留時間は、少なくとも10分であるが、600分未満であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解されたリグニンを含む液体のpHは、前記第1の方法工程の前に、少なくとも7.5であり、前記第1の方法工程の後の前記溶解された変性リグニンを含む液体のpHよりも高いことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶解された変性リグニンを含む液体のpHは、前記第2の方法工程の前に、少なくとも7であり、前記第2の方法工程の後の前記非溶解の安定化リグニンを含む液体のpHよりも高いことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の方法工程において、
・ 炭水化物ベースの架橋剤を、前記溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散された炭水化物から得て、
・ 前記液体中に溶解されたリグニンと、前記炭水化物ベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1の方法工程において、
・ リグニンベースの架橋剤を、前記溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散されたリグニンから得て、
・ 前記液体中に溶解された残りのリグニンと、リグニンベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、前記溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも10mgのSTSA表面積を特徴とする、非溶解の安定化リグニン、特に請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において得ることが可能な非溶解の安定化リグニン。
【請求項17】
0.1cm/g未満の細孔容積を特徴とする、請求項16に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項18】
30%未満のアルカリ性液体における溶解度を特徴とする、請求項16および17のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項19】
160℃超のガラス転移温度を特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【請求項20】
少なくとも10mgのSTSA、
54ppm~58ppmでのメトキシ基のシグナルに対して1%~80%の強度を有する、固体13C-NMRにおける0ppm~50ppmでのシグナル、および使用されるリグニンよりも高い、125ppm~135ppmで13C-NMRシグナル、
再生可能な原材料の含有量に対応する、0.20Bq/g(炭素)超であるが、すべての場合において0.45Bq/g(炭素)未満である14C含有量、
60質量%から80質量%の間の無灰乾燥物質に対する炭素含有量、
を特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の非溶解の安定化リグニン。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
有利には、架橋剤は、第1の方法工程の間に、溶解されたリグニンを含む液体中に分散または溶解されたリグニンからその場で作製される。そのような有利な方法様式の一例においては、
第1の方法工程において、
・ リグニンベースの架橋剤、好ましくはアルデヒド、好ましくはメタンジオールまたはグリコールアルデヒドを、溶解されたリグニンを含む液体中に溶解または分散されたリグニンから得て、
・ 液体中に溶解された残りのリグニンと、リグニンベースの架橋剤とを反応させ、それにより溶解された変性リグニンを製造して、
第2の方法工程において、溶解された変性リグニンを非溶解の安定化リグニンに変換する。
【国際調査報告】