(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】細胞培養を増強するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20220906BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220906BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20220906BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20220906BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220906BHJP
C12N 13/00 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220906BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
C12N1/00 F ZNA
C12N5/07
C12N5/16
C12N5/0783
C12N13/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500850
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020040916
(87)【国際公開番号】W WO2021007170
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502221282
【氏名又は名称】ライフ テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】マンスール サリャ
(72)【発明者】
【氏名】カーン ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ピアース アンソン
(72)【発明者】
【氏名】リン ペイ-イ
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
【Fターム(参考)】
4B033NJ01
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065BB32
4B065BD12
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書では、細胞培養方法およびそれに関連する組成物の改良が提供される。一部具体的には、本明細書では、細胞分裂時間および生存率を増加させる組成物および方法、ならびにキットが提供される。また、本明細書では、エレクトロポレーションを実行するための組成物および方法が提供され、高レベルのエレクトロポレーション効率が達成され、細胞に対するエレクトロポレーションの有害な影響が減少する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無血清細胞培養培地を調製するための方法であって、リポタンパク質粒子組成物またはリポタンパク質組成物を基礎培養培地に添加することを含み、前記リポタンパク質粒子組成物またはリポタンパク質組成物が血清代替物として機能する量で添加される方法。
【請求項2】
前記リポタンパク質粒子組成物が、
(a)高密度リポタンパク質粒子、
(b)低密度リポタンパク質粒子、および
(c)超低密度リポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リポタンパク質粒子組成物が、ヒト血液から得られたリポタンパク質粒子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リポタンパク質粒子組成物が、合成リポタンパク質粒子を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記リポタンパク質粒子組成物が、合成高密度リポタンパク質粒子を含む、請求項1、2、または4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記合成リポタンパク質粒子が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記合成リポタンパク質粒子が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIの一部を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIが、組換え的に産生される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIの組換え的産生が、非哺乳動物細胞を使用して行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非哺乳動物細胞が、昆虫細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地であって、前記無血清細胞培養培地は、哺乳動物細胞の増殖を補助し、前記哺乳動物細胞の前記増殖は、前記1つ以上のリポタンパク質化合物を含まないが血清を含む培地で増殖した同じ細胞と比較して、前記1つ以上のリポタンパク質化合物を含む前記無血清細胞培養培地において10%増加する、無血清細胞培養培地。
【請求項12】
前記1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、アポリポタンパク質AIである、請求項11に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項13】
前記1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、アポリポタンパク質AIIである、請求項11に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項14】
前記1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、リポタンパク質粒子の成分である、請求項11~13のいずれか一項に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項15】
前記リポタンパク質粒子が、高密度リポタンパク質である、請求項14に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項16】
前記リポタンパク質粒子が、哺乳動物から得られる、請求項14または15に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項17】
前記リポタンパク質粒子が、非天然型である、請求項14または15に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項18】
前記非天然リポタンパク質粒子が、非天然タンパク質、天然アポリポタンパク質、または天然アポリポタンパク質の一部のいずれかを含む、請求項17に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項19】
細胞生存率の増加が、10%~約75%の範囲である、請求項11~18のいずれか一項に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項20】
前記哺乳動物細胞が、ハイブリドーマ細胞である、請求項11に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項21】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項20に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項22】
前記哺乳動物細胞が、免疫細胞である、請求項11に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項23】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項22に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項24】
前記T細胞が、
(a)調節性T細胞、
(b)CD4+T細胞、
(c)CD8+T細胞、
(d)T
H1細胞、
(e)T
H2細胞、
(f)T
H3細胞、
(g)T
H17細胞、
(h)T
H9細胞、および
(i)T
FH細胞からなる群から選択される1つ以上のT細胞である、請求項23に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項25】
前記T細胞が、CD3表面マーカーへのライゲーションを介して血液から単離される、請求項23または24に記載の無血清細胞培養培地。
【請求項26】
哺乳動物細胞を増殖させるための方法であって、前記哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地中で前記哺乳動物細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【請求項27】
前記リポタンパク質化合物が、1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リポタンパク質粒子化合物が、
(a)高密度リポタンパク質粒子、
(b)低密度リポタンパク質粒子、および
(c)超低密度リポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物細胞集団のエレクトロポレーションのための方法であって、
(a)前記哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、無血清培地中で少なくとも12時間、前記哺乳動物細胞集団を1つ以上のリポタンパク質化合物と接触させることと、
(b)前記哺乳動物細胞集団に1つ以上の電気パルスを印加して、それにより前記哺乳動物細胞集団のメンバーの細胞膜をエレクトロポレーションすることと、を含み、
エレクトロポレーション効率は少なくとも60%であり、前記哺乳動物細胞集団における細胞の生存率は10%未満減少する、方法。
【請求項30】
前記エレクトロポレーション効率が、前記哺乳動物細胞集団のメンバーにおける検出可能なマーカーの発現によって測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出可能なマーカーが、蛍光タンパク質である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
活性化されたT細胞集団を維持するための方法であって、
(a)T細胞の活性化集団を生成することと、
(b)リポタンパク質サプリメントの存在下で、ステップ(a)において生成された前記T細胞の活性化集団を増殖させることと、
(c)ステップ(b)において生成された増殖した前記T細胞の活性化集団を、次の7日間で細胞増殖速度の少なくとも30%の低下をもたらすのに十分な強度の電界に曝露することと、
(d)ステップ(b)と同じ条件下でステップ(c)の前記T細胞の活性化集団を7日間維持することと、を含み、
ステップ(a)~(d)の間の前記T細胞の活性化集団の生存率は70%超を維持する、方法。
【請求項33】
1つ以上の核酸分子が、ステップ(c)において、前記T細胞の活性化集団の個々のT細胞に導入される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記1つ以上の核酸分子のうちの少なくとも1つが、キメラ抗原受容体をコードする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記キメラ抗原受容体が、前記T細胞の活性化集団の個々のT細胞において安定して発現される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記T細胞の活性化集団が、ステップ(b)において3日間増殖される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
(e)ステップ(d)後に前記T細胞の活性化集団を洗浄することと、
(f)リポタンパク質サプリメントの非存在下で、ステップ(e)において生成された洗浄された前記T細胞の活性化集団を増殖させることと、をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
5日間の期間にわたり、前記洗浄されたT細胞の活性化集団の生存率が70%超を維持し、前記洗浄されたT細胞の活性化集団が、少なくとも3倍増殖する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記T細胞の活性化集団が、ステップ(d)の間に異なる場所に輸送される、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記異なる場所が、100マイル超離れている、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
哺乳動物細胞を保存するための方法であって、
(a)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で前記哺乳動物細胞を増殖させるステップと、
(b)前記哺乳動物細胞を電界に曝露するステップと、
(c)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で前記哺乳動物細胞を増殖させるステップと、をこの順番で含み、
ステップ(c)における前記哺乳動物細胞は、ステップ(a)よりも少なくとも50%低い速度で増殖し、
前記哺乳動物細胞の生存率は、ステップ(a)~(c)の間70%超を維持する、方法。
【請求項42】
前記哺乳動物細胞が、T細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物細胞が、ステップ(c)において7日間増殖される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(c)における前記哺乳動物細胞の細胞生存率が、7日間の増殖の間、70%超を維持する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(c)における前記哺乳動物細胞が洗浄され、少なくとも50%低い濃度の前記1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地に移される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
核酸分子が、ステップ(b)において前記哺乳動物細胞に導入される、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸分子が、キメラ抗原受容体をコードする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記哺乳動物細胞が、T細胞である、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/871,409号に対する優先権の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年6月2日に作成された上記のASCIIコピーは、LT01457_SL.txtという名前で、サイズは8,090バイトである。
【0003】
本明細書では、細胞培養方法およびそれに関連する組成物の改良が提供される。一部具体的には、本明細書では、細胞分裂時間および生存率を増加させる組成物および方法、ならびにキットが提供される。また、本明細書では、エレクトロポレーションを実行するための組成物および方法が提供され、高レベルのエレクトロポレーション効率が達成され、細胞に対するエレクトロポレーションの有害な影響が減少する。
【背景技術】
【0004】
細胞培養組成物および方法は当技術分野で知られている。多くの場合において、細胞が多数に増殖し、細胞集団内で多数の生細胞を維持する条件下で細胞を培養することが望ましい。本明細書では、これらの目標、ならびに他の目標を達成することを目的とした組成物および方法が提供される。
【0005】
細胞を治療目的で使用する場合、血清の非存在下でこれらの細胞を培養することが一般的に望ましい。この理由には、血清中に存在する外来物質(例えばウイルス、プリオン、マイコプラズマ等)で細胞が汚染される可能性が含まれる。また、かなりの数(例えば、100匹以上)の動物の血液からプールされた血清でさえ、哺乳動物細胞培養で使用される場合、かなりのロット間変動を有する(
図1を参照)。
図1に提示されたデータから分かるように、市販のヒト血清の異なるロットは、総T細胞収量において実質的な変動(15%~50%)を示す。形質導入効率に関しても見られる実質的な変動(データは示さず)。上記は、血清代替物が頻繁に使用されるいくつかの理由である。
【0006】
エレクトロポレーションは、材料が細胞に導入され得る方法である。細胞および導入される材料を含む溶液が、短時間の高強度電界に曝露される。電界は細胞を「穿孔」し、外膜に一時的な細孔を生成し、溶液中の物質を細胞内に拡散させる。
【0007】
細胞のエレクトロポレーションに関する問題の1つは、このプロセスによって細胞の生存率が低下することが多いことである。さらに、逆相関エレクトロポレーション効率と細胞生存率との間のバランスがしばしば求められる。一例として、細胞内量に等しい生理学的レベルのカリウムは、エレクトロポレーションされた細胞の生存率を増加させる傾向がある(例えば、van den Hoff et al.,Nucleic Acids Res.,20:2902(1992)を参照されたい)。カルシウムイオンの存在は、エレクトロポレーション後の細胞の生存率を高めることが報告されている。生存率の増加の理由は、エレクトロポレーション後の再密封プロセスにおけるカルシウムによる寄与であると報告されていると仮定される。van den Hoffら(Nucleic Acids Res.,20:2902(1992))の表1は、細胞に印加される電荷が高いほど細胞生存率が低くなり、測定された最高細胞生存率は約69%であることを本質的に示している。
【0008】
エレクトロポレーション培地の浸透圧は、細胞の生存率および細胞膜を通過する大きな分子の移動効率に影響を与える。例えば、van den Hoffら(Nucleic Acids Res.,18:6464(1990))は、低張エレクトロポレーション培地の使用を推奨していない。
【0009】
高レベルの細胞生存率を維持するとともに、細胞への分子の高レベルの導入をもたらすエレクトロポレーション法が必要である。
【発明の概要】
【0010】
高い細胞生存率を有する細胞(例えばヒト細胞)を培養および/または増殖させるための組成物および方法が提供される。さらに、本明細書では、とりわけ、細胞に高分子を導入するための組成物、方法システム、キット、および方法が提供され、細胞は高い生存率を維持する。したがって、一般に、本明細書では、高い細胞生存率の維持、および組成物中の細胞が高レベルの生存率を維持する細胞組成物の生成のための細胞プロセスに関連する組成物および方法が提供される。
【0011】
いくつかの態様において、本明細書では、無血清細胞培養培地を調製するための方法、およびそのような方法で使用される組成物、およびそのような方法によって調製される得られる培養培地である。そのような方法は、1つ以上のリポタンパク質粒子組成物および/または1つ以上のリポタンパク質が基礎培地に添加される方法を含む。多くの場合において、リポタンパク質粒子組成物および/またはリポタンパク質は、血清代替物として機能する量で添加される。
【0012】
方法で使用され、本明細書に記載の組成物中に存在するリポタンパク質粒子は、(a)高密度リポタンパク質粒子、(b)低密度リポタンパク質粒子、および(c)超低密度リポタンパク質粒子、ならびに他の種類のリポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含み得る。
【0013】
方法で使用され、本明細書に記載の組成物中に存在するリポタンパク質粒子は、天然源(例えば、血液またはヒト等の哺乳動物)から得られ得るか、または合成的に生成され得る(例えば、合成高密度リポタンパク質粒子等の合成リポタンパク質粒子)。いくつかの場合において、合成リポタンパク質粒子は、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、アポリポタンパク質IV、アポリポタンパク質-CI、アポリポタンパク質III、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E、および/またはそのようなアポリポタンパク質の1つ以上の一部を含み得る。
【0014】
さらに、組成物中に存在し、本明細書に記載の方法で使用されるアポリポタンパク質は、天然源(例えば、血液またはヒト等の哺乳動物)から得られ得、および/または組換え的に産生され得る。さらに、アポリポタンパク質および/またはその一部の組換え的産生は、非哺乳動物細胞(例えば、細菌細胞、植物細胞、および昆虫細胞等)を使用して行うことができる。
【0015】
いくつかの態様において、本明細書では、無血清細胞培養培地が提供される。そのような培地は、1つ以上のリポタンパク質を含み得る。さらに、そのような培養培地は、哺乳動物細胞の増殖を補助することができ、哺乳動物細胞の増殖は、1つ以上のリポタンパク質を含まないが血清を含む培養培地で増殖させた同じ細胞と比較して、1つ以上のリポタンパク質を含む無血清細胞培養培地において少なくとも10%(例えば、約10%~約75%、約10%~約70%、約10%~約55%、約10%~約45%、約10%~約35%、約10%~約25%、約20%~約70%、約20%~約55%等)増加する。本明細書に記載の無血清細胞培養培地は、1つ以上のリポタンパク質化合物(例えば、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、アポリポタンパク質IV、アポリポタンパク質-CI、アポリポタンパク質III、アポリポタンパク質D、およびアポリポタンパク質E等)、ならびに/またはリポタンパク質の1つ以上の下位部分のうちの1つを含み得る。さらに、リポタンパク質および/またはリポタンパク質下位部分は、リポタンパク質粒子の成分であり得る(例えば、高密度リポタンパク質粒子、低密度リポタンパク質粒子、超低密度リポタンパク質粒子等)。
【0016】
本明細書に記載の培養培地(例えば無血清培地)中に存在するリポタンパク質粒子は、天然源(例えばヒト等の哺乳動物の血液)から得られ得るか、または非天然型であり得る(例えば合成的に産生される)。さらに、非天然リポタンパク質粒子は、1つ以上の非天然タンパク質、1つ以上の天然アポリポタンパク質、天然アポリポタンパク質の1つ以上の部分、またはこれらの1つ以上の組み合わせを含み得る。
【0017】
本明細書に記載の組成物および方法を使用して培養され得る細胞は、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト細胞等の哺乳動物細胞を含む。さらに、そのような細胞は、特定の組織(例えば、肝臓、脾臓、リンパ節、肺等)に由来し得るか、または細胞カテゴリー型(例えば免疫系細胞)、および/もしくは特定の細胞型(例えば、FoxP3+制御性T細胞、B細胞)のものであり得る。そのような細胞はまた、T細胞および/または特定のT細胞、例えば調節性T細胞(例えば、FoxP3+制御性T細胞、FoxP3-制御性T細胞等)、CD4+T細胞、CD8+T細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TFH細胞等であり得る。
【0018】
いくつかの場合において、本明細書では、哺乳動物細胞を増殖させるための方法が提供される。そのような方法は、哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地中で哺乳動物細胞をインキュベートすることを含み得る。
【0019】
そのような培養培地中に存在するリポタンパク質化合物は、(a)高密度リポタンパク質粒子、(b)低密度リポタンパク質粒子、および(c)超低密度リポタンパク質粒子、ならびに他の種類のリポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含み得る。
【0020】
また、本明細書では、哺乳動物細胞集団のエレクトロポレーションのための方法も提供される。そのような方法は、(a)哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、培養培地(例えば無血清培地)中で少なくとも12時間(例えば、約12~約168時間、約12~約150時間、約12~約120時間、約12~約100時間、約12~約100時間、約12~約72時間、約24~約96時間、約48~約150時間、約48~約96時間、約70~約120時間等)、哺乳動物細胞集団を1つ以上のリポタンパク質化合物と接触させること、および(b)哺乳動物細胞集団に1つ以上の電気パルスを印加して、それにより哺乳動物細胞集団のメンバーの細胞膜をエレクトロポレーションすることを含み、エレクトロポレーション効率は少なくとも60%(例えば、約60%~約100%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約85%、約70%~約100%、約70%~約95%、約70%~約90%、約80%~約100%、約80%~約95%等)であり、哺乳動物細胞集団における細胞の生存率は10%未満(例えば、約0%~約10%、約0%~約8%、約0%~約7%、約0%~約5%、約3%~約10%、約3%~約8%、約3%~約6%、約5%~約10%等)減少する。
【0021】
いくつかの場合において、エレクトロポレーション効率は、哺乳動物細胞集団のメンバーにおけるマーカー(例えば検出可能なマーカー)の発現によって測定され得る。さらに、マーカー(例えば検出可能なマーカー)は、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、EGFP(S65T/F64L)、Emerald、Azami Green、AcGFP、ZsGreen等)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、mCitrine、Venus、YPet、PhiYFP等)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mTagBFP等)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet、AmCyanl、Midoriishi-Cyan等)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mPlum、AsRed2、mCherry、mRFP1、HcRed1、mRasberry、mStrawberry、Jred等)、オレンジ蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO2、Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato等)、または他の適切な蛍光タンパク質であり得る。
【0022】
さらに、本明細書では、活性化されたT細胞集団を維持するための方法が提供される。いくつかの場合において、そのような方法は、(a)T細胞の活性化集団を生成すること、(b)リポタンパク質サプリメントの存在下で、ステップ(a)において生成されたT細胞の活性化集団を増殖させること、(c)ステップ(b)において生成された増殖したT細胞の活性化集団を、次の7日間で細胞増殖速度の少なくとも30%(例えば、約30%~約100%、約30%~約95%、約30%~約90%、約30%~約85%、約30%~約80%、約50%~約100%、約50%~約95%、約50%~約85%、約65%~約100%、約65%~約95%、約60%~約90%、約70%~約100%、約70%~約95%、約80%~約98%等)の低下をもたらすのに十分な強度の電界に曝露すること、および(d)ステップ(b)と同じ条件下でステップ(c)のT細胞の活性化集団を少なくとも5日間(例えば、7日間、約5日~約12日間、約6日~約12日間、約6日~約10日間、約6日~約8日間等)維持することを含み、ステップ(a)~(d)の間のT細胞の活性化集団の生存率は70%超(例えば、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約70%~約98%、約80%~約98%、約80%~約95%、約85%~約100%等)を維持する。
【0023】
いくつかの場合において、1つ以上の核酸分子(例えば、キメラ抗原受容体をコードする1つ以上の核酸分子)が、ステップ(c)において、T細胞の活性化集団の個々のT細胞に導入され得る。1つ以上の核酸分子がタンパク質(例えばキメラ抗原受容体)をコードする場合、タンパク質は、それらが導入されるT細胞内で安定して、または一過的に発現され得る。
【0024】
例えば、上記のように、活性化されたT細胞集団を維持するための方法が実践される場合、T細胞の活性化集団は、上記ステップ(b)において約1日~約6日間(例えば約1日~約6日間、約2日~約6日間、約3日~約6日間、約1日~約5日間、約1日~約4日間等)増殖され得る。
【0025】
さらに、例えば、上記のように、活性化されたT細胞集団を維持するための方法は、(e)ステップ(d)後にT細胞の活性化集団を洗浄すること、および(f)リポタンパク質サプリメントの非存在下で、ステップ(e)において生成された洗浄されたT細胞の活性化集団を増殖させることをさらに含み得る。
【0026】
さらに、多くの場合において、洗浄されたT細胞の活性化集団の生存率は、5日間の期間にわたり70%超(例えば、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約70%~約98%、約80%~約98%、約80%~約95%、約85%~約100%等)を維持し、洗浄されたT細胞の活性化集団は、少なくとも3倍(例えば、約3倍~約12倍、約4倍~約12倍、約5倍~約12倍、約6倍~約12倍、約3倍~約10倍、約5倍~約11倍等)増殖する。
【0027】
上記のような方法は、高レベルの細胞生存率を維持しながら、細胞の保存および/または輸送を可能にする。したがって、本明細書では、T細胞の活性化集団がステップ(d)の間に異なる場所(例えば、約10~約5,000マイルの場所、約10~約100マイルの場所、約50~約5,000マイルの場所、約50~約3,500マイルの場所、約200~約3,500マイルの場所、約300~約3,500マイルの場所、約500~約3,500マイルの場所、約1,000~約5,000マイルの場所等)に輸送される方法もまた提供される。
【0028】
また、哺乳動物細胞(例えばT細胞)を保存するための方法が提供される。そのような方法は、(a)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を増殖させるステップ、(b)哺乳動物細胞を電界に曝露するステップ、および(c)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を増殖させるステップを含み(例えばこれらのステップをこの順番で含み)、ステップ(c)における哺乳動物細胞は、ステップ(a)よりも少なくとも50%(例えば、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約60%~約85%等)低い速度で増殖し、哺乳動物細胞の生存率は、ステップ(a)~(c)の間70%超(例えば、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約70%~約98%、約80%~約98%、約80%~約95%、約85%~約100%等)を維持する。
【0029】
さらに、哺乳動物細胞は、ステップ(c)において約1日~約6日間(例えば、7日間、約1日~約6日間、約2日~約6日間、約3日~約6日間、約1日~約5日間、約1日~約4日間等)増殖され得る。
【0030】
いくつかの場合において、ステップ(c)における哺乳動物細胞は洗浄され、少なくとも50%(例えば、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%、約50%~約90%、約60%~約80%等)低い濃度の1つ以上のタンパク質化合物を含む培養培地に移され得る。
【0031】
いくつかの場合において、1つ以上の核酸分子(例えば、キメラ抗原受容体をコードする1つ以上の核酸分子)は、ステップ(b)において哺乳動物細胞(例えばT細胞)に導入され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ヒト血清はロット間で不一致を示している。ヒトT細胞を、対照ロットのヒト血清と比較していくつかの不適格ロットのヒト血清(「huAB血清」と表示)を補充した基礎培地で増殖させた。CTS OpTmizer(商標)5%ヒト血清を含む培地。成長は、刺激後10日間にわたり測定された。
【
図2】ヒトアポリポタンパク質AI(配列番号1)のアミノ酸配列、およびこのタンパク質の一部の領域を示す図である。
【
図3】ヒトアポリポタンパク質AII(配列番号2)のアミノ酸配列、およびこのタンパク質の一部の領域をアウトラインスタイルのボックスで示す図である。
【
図4】8mg/LのHDLを添加したCTS OpTmizer(商標)で培養したT細胞(n=4)の5日目および10日目の増殖倍率を示す図であり、HDLは(1)事前配合物として(「T細胞サプリメント中のHDL」)、または(2)CTS OpTmizer(商標)に直接添加される(それぞれ「T細胞サプリメント中のHDL」および「使用時点でのHDL」)(例1を参照されたい)。これら2つのHDL添加の増殖倍率を、(1)完全CTS OpTmizer(商標)および(2)5%ヒト血清を含むX-VIVO(商標)15中のT細胞の増殖と比較した。
【
図5】8mg/LのHDLを添加した基礎培地中で培養したT細胞(n=4)の5日目および10日目の生存率を示す図である。表示は
図4の通りである。
【
図6】(1)CTSOpTmizer(商標)およびHDL、ならびに(2)完全なCTS OpTmizer(商標)の存在下での10日目のT細胞増殖のCD8+/CD4+比を示す図である(n=3)。CTS OpTmizer(商標)と比較して、HDLを含むCTS OpTmizer(商標)においてCD8+:CD4+比の1.30倍の変化が見られた。
【
図7】(1)CTSOpTmizer(商標)およびHDL、ならびに(2)完全なCTS OpTmizer(商標)の存在下での10日目の細胞増殖の表現型を示す図である(n=4)CTS OpTmizer(商標)と比較して、HDLを含むCTS OpTmizer(商標)においてCD27+T細胞の12%の増加が見られた。CTS OpTmizer(商標)と比較して、HDLを含むCTS OpTmizer(商標)においてCCR7+T細胞の19%の増加が見られた。
【
図8】エレクトロポレーションの前に6mg/LのHDLを含むICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)(CTS OpTmizer(商標)6HDL)および完全CTS OpTmizer(商標)中で増殖させた、5人の異なるドナー(D032、D093、D168、D242およびD938)からのT細胞の生存率の違いを示す図である。完全CTS OpTmizer(商標)におけるT細胞生存率は、Y軸でゼロ(0)である。5つすべてのドナー試料のT細胞を3日目にエレクトロポレーションした(黒い上向き矢印を参照されたい)。
【
図9】
図8に示されたデータを使用したCTS OpTmizer(商標)6HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)で培養された5人の異なるドナーからのT細胞の平均総細胞生存率を示す図である。
図8のように、細胞を3日目にエレクトロポレーションした(黒い下向き矢印を参照されたい)。
【
図10】CTS OpTmizer(商標)6HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)中での10日間の期間にわたるT細胞の増殖を示す図である。5人のドナーからのT細胞を、3日目にエレクトロポレーションした。
【
図11】CTS OpTmizer(商標)6HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)中で増殖させた5人の異なるドナーからのT細胞のエレクトロポレーションから24時間後のエレクトロポレーション効率を示す図である
【
図13】様々な条件下でエレクトロポレーションの前に増殖させた2人の異なるドナーからのT細胞のエレクトロポレーション効率を示す図である。これらの増殖条件は次の通りである:(1)ICSRを含まず6mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(2)ICSRを含まず5mg/LのHDLおよび1mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(3)ICSRを含まず4mg/LのHDLおよび2mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(4)ICSRを含まず3mg/LのHDLおよび3mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(5)ICSRを含まず2mg/LのHDLおよび4mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(6)ICSRを含まず1mg/LのHDLおよび5mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、(7)ICSRを含まず6mg/LのLDLを含むCTS OpTmizer(商標)、ならびに(8)ICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)、ならびに(9)完全CTS OpTmizer(商標)。白抜きの下向き矢印は、2人のドナーで見られる一般的な最高のエレクトロポレーション効率を示す。
【
図14】様々な条件下でのT細胞の生存率を示す図である。単一ドナー(D032)からのT細胞を3日目にエレクトロポレーションした。「ALL」と表示されたT細胞試料は、エレクトロポレーション前に接触させたのと同じ培養培地中で、10日間の増殖期間を通して維持された。細胞を洗浄し、Opti-MEM(商標)培養培地中でエレクトロポレーションした。
【
図15】エレクトロポレーション前後に様々な条件下で単一ドナー(D032)からのT細胞が培養されたT細胞の生存率を示す図である。T細胞増殖条件は、本質的に
図14と同じであった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
概要
本明細書では、(1)無血清細胞培養、(2)細胞への核酸分子の導入、および(3)低レベルの細胞増殖での細胞の維持に関連する組成物および方法が部分的に提供される(
図14および15を参照されたい)。
【0034】
無血清細胞培養に関して、リポタンパク質粒子および/またはリポタンパク質を用いた動物細胞の培養のための組成物および方法が本明細書で提供される。多くの場合において、そのような動物細胞は、血清の存在下で増強された増殖を示す細胞である。
【0035】
細胞への核酸分子の導入に関して、エレクトロポレーション後の細胞生存率およびトランスフェクション効率の増加を可能にする条件下での細胞のエレクトロポレーションのための組成物および方法が本明細書で提供される。いくつかの場合において、本明細書に記載の方法は、リポタンパク質粒子および/またはリポタンパク質を用いた細胞のエレクトロポレーション前のインキュベーションを含む。
【0036】
定義
以下の定義は、本主題を理解する目的、および添付の特許請求の範囲を構築する目的で含まれる。本明細書で使用される略語は、化学および生物学の当該技術分野におけるそれらの従来の意味を有する。
【0037】
本明細書で使用される場合、数値または範囲の文脈における「約」という用語は、別段文脈がより限定的な範囲を要求しない限り、列挙または特許請求される数値または範囲の±10%を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、ワックス、脂肪、油、脂肪酸、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、およびリン脂質等を含む。実施形態では、脂質は、アルコール中には溶解するが水中には溶解しないワックス、脂肪、油、脂肪酸、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、またはリン脂質等の物質である。実施形態では、脂質は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、プレノール脂質、糖脂質、またはポリケタイドである。実施形態では、脂質は、ケトアシルまたはイソプレン基を含む。実施形態では、脂質は、ワックスエステルである。実施形態では、脂質は、エイコサノイド(例えば、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン、リポキシン、レゾルビン、またはエオキシン)である。実施形態では、脂質は、ステロール脂質である。実施形態では、ステロール脂質は、コレステロールまたはその誘導体である。実施形態では、コレステロールは、nat-コレステロールおよび/またはent-コレステロールである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、飽和または不飽和のいずれかの、多くの場合長い脂肪族尾部を有するカルボン酸(または有機酸)を指す。実施形態では、脂肪酸は、少なくとも4個の炭素原子長の炭素-炭素結合鎖を有する。実施形態では、脂肪酸は、少なくとも8個の炭素原子長の炭素-炭素結合鎖を有する。実施形態では、脂肪酸は、少なくとも12個の炭素原子長の炭素-炭素結合鎖を有する。実施形態では、脂肪酸は、4~24個の炭素原子長の炭素-炭素結合鎖を有する。実施形態では、脂肪酸は、天然に存在する脂肪酸である。実施形態では、脂肪酸は、人工のものである(例えば、天然には産生されない)。実施形態では、天然に存在する脂肪酸は、偶数個の炭素原子を有する。実施形態では、天然に存在する脂肪酸の生合成は、2個の炭素原子を有するアセテートに関与する。実施形態では、脂肪酸は、遊離状態(エステル化されていない)であっても、トリグリセリド、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド、アシル-CoA(チオエステル)結合、または他の結合形態等のエステル化された形態であってもよい。実施形態では、脂肪酸は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、またはジホスファチジルグリセロール形態等のリン脂質としてエステル化されてもよい。実施形態では、脂肪酸または脂肪酸の誘導体は、遊離脂肪酸、本明細書に開示される脂肪酸のエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)、モノ、ジ、もしくはトリグリセリド(例えば、グリセロールエステル)、アルデヒド、アミド、またはリン脂質バージョンである。「飽和脂肪酸」は、いかなる二重結合または鎖に沿った他の官能基も含有しない。「飽和」という用語は、すべての炭素(カルボン酸[-COOH]基を除く)が可能な限り多くの水素を含有するという点で、水素を指す。換言すると、オメガ末端は、3個の水素(CH3-)を含有し、鎖内の各炭素は、2個の水素(-CH2-)を含有する。「不飽和脂肪酸」では、鎖に沿って1つ以上のアルケン官能基が存在し、各アルケンは、鎖の単結合の「-CH2-CH2-」部分を二重結合の「-CH=CH-」部分(つまり、別の炭素に二重結合した炭素)で置換する。二重結合のいずれかの側に結合している鎖内の次の2個の炭素原子は、シスまたはトランス配置で発生し得る。脂肪酸の非限定的な例の表は、以下の通りである。
【表1】
【0040】
本明細書で使用される場合、「リポタンパク質サプリメント」という用語は、1つ以上のリポタンパク質化合物を含み、細胞培養培地に添加され得る材料を指す。リポタンパク質サプリメントに存在し得るリポタンパク質化合物の例には、リポタンパク質粒子、アポリポタンパク質およびその下位部分、合成HDL粒子、血液(例えばヒト血液)から単離されたHDL、ならびに1つ以上のリポタンパク質のみ、または1つ以上の脂質および/または1つ以上の脂肪酸との組み合わせの混合物が含まれる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「リポタンパク質粒子」という用語は、脂質(例えば、コレステロールおよびトリグリセリド)、ならびに他の分子を運搬する分子集合体を指す。多くの場合、リポタンパク質粒子はリン脂質およびコレステロールの外層を有し、親水性部分は周囲の水に向かって外側に配向し、各分子の親油性部分は粒子内の脂質分子に向かって内側に配向している。アポリポタンパク質は、外層に埋め込まれている。したがって、複合体は脂肪を乳化するのに役立つ。リポタンパク質粒子の例には、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、中間密度リポタンパク質、および超低密度として分類される血漿リポタンパク質粒子が含まれる。リポタンパク質粒子はまた、合成的に生成され得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「高密度リポタンパク質」(HDL)粒子という用語は、リポタンパク質の主要な群の1つを指す。HDL粒子は組成が不均一であり、典型的には、粒子当たり80~100個のタンパク質分子で構成され、数百の脂質分子で構成されている場合もある。天然HDL粒子には多くの様々な種類があるが、これらの粒子は、典型的にはアポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AII、アポリポタンパク質IV、アポリポタンパク質-CI、アポリポタンパク質III、アポリポタンパク質D、およびアポリポタンパク質Eを含むいくつかの種類のアポリポタンパク質を含む。HDL粒子は、多くの場合約55%のタンパク質、3%~15%のトリグリセリド、26%~46%のリン脂質、15%~30%のコレステリルエステル、および2%~10%のコレステロールで構成される。HDL粒子のタンパク質の約70%は、典型的にはアポリポタンパク質AIである。
【0043】
電気泳動移動に基づいて、HDL粒子は一般に3つのサブタイプに分類され得る。これらのサブタイプは、(1)α移動種(例えば、球状HDL2およびHDL3)、(2)β移動種(例えば、プレβ円盤状HDL、低脂質APO-AI、および遊離APO-AI)、ならびに(3)γ移動種である。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アポリポタンパク質AI」(APO-AI)という用語は、約31kDaの分子量を有し、アスパラギン酸をHDL粒子に見られるN末端残基として、およびグルタミン酸をC末端残基として有する267アミノ酸からなるヒト細胞において発現される(すなわち処理前に)タンパク質を指す(例えば
図2を参照されたい)。5.6のpIを有する1つの主要なAPO-AIタンパク質アイソフォーム、5.53および5.46のpIを有する2つの副次的なアイソフォーム、および4つもの追加のアイソフォームがある。このタンパク質は、α-ヘリックス構造を多く含んでいる。他の生物からの関連タンパク質もこの用語の範囲に含まれる。
【0045】
APO-AIは、N末端で約1アミノ酸~約30アミノ酸(例えば、約1アミノ酸~約26アミノ酸、約1アミノ酸~約25アミノ酸、約1アミノ酸~約20アミノ酸、約1アミノ酸~約19アミノ酸、約10アミノ酸~約30アミノ酸、約10アミノ酸~約26アミノ酸、約10アミノ酸~約25アミノ酸、約10アミノ酸~約19アミノ酸、約19アミノ酸~約30アミノ酸、約19アミノ酸~約26アミノ酸、約18アミノ酸~約26アミノ酸等)で切り詰めることができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「基礎培養培地」という用語は、特定の細胞型の増殖を改善するために追加の成分(例えば、血清、血清置換物等)が補充され得る細胞培養培地を指す。基礎培地は、アミノ酸、ビタミン、有機塩および無機塩、ならびに炭水化物源を含む多くの成分を含み得る。各成分は、細胞の培養を補助する量で存在することができ、そのような量は、当業者に一般的に知られている。基礎培地はまた、緩衝物質(重曹等)、抗酸化剤、機械的ストレスに対抗する安定剤、またはプロテアーゼ阻害剤等の追加の物質を含んでもよい。Thermo Fisher Scientificsから入手可能な例示的な基礎培地には、Advanced DMEM(カタログ番号12491-015)、CTS(商標) KnockOut(商標)DMEM(カタログ番号A12861-01)、DMEM、高グルコース(カタログ番号11965-084)、Advanced DMEM/F-12(カタログ番号12634-010)、CTS(商標)KnockOut(商標)DMEM/F-12(カタログ番号A13708-01)、DMEM/F-12(カタログ番号11320-033)、IMEM(改良最小必須培地)(カタログ番号A10489-01)、IMDM(カタログ番号12440-046)、LeibovitzのL-15培地(カタログ番号11415-064)、McCoyの5A(改変)培地(カタログ番号16600-082)、MCDB131培地(カタログ番号10372-019)、培地199(カタログ番号11150-067)、Advanced MEM(カタログ番号12492-013)、フィッシャー培地(カタログ番号21475-025)、Advanced RPMI1640培地(カタログ番号12633-012)、RPMI1640培地(カタログ番号11875-085)、およびWilliamのE培地(カタログ番号12551-032)が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「血清置換物」という用語は、血清が増殖を増強する細胞の増殖を増強するために血清の代わりに使用され得る組成物を指す。血清代替物は、多くの場合、脂質等の成分の混合物を含む。血清代替物の例には、CTS(商標)免疫細胞SR(ICSR)(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A2596101およびA2596102)、KnockOut(商標)Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10828028)、Serum Replacement 1(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、カタログ番号S0638)、およびSerum Replacement Solution(PeproTech、Rocky Hill、NJ、カタログ番号SR100)が含まれる。
【0048】
血清置換物は、それらの成分において包括的である必要はない。したがって、追加の成分(例えば、インターロイキン-2(IL-2)等の1つ以上のサイトカイン)が、1つ以上の血清置換物に加えて基礎培地に添加されてもよい。
【0049】
「免疫細胞」という用語は、免疫系の一部であってもよく、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、先天性リンパ系細胞(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、ガンマ-デルタT細胞、間葉系幹細胞もしくは間葉系間質細胞(MSC)、単球またはマクロファージ等の特定の機能を実行する細胞を指す。T細胞、NK細胞、NKT細胞、ILC、CIK細胞、LAK細胞、ガンマデルタT細胞等の細胞毒性機能を持つ免疫細胞も含まれます。「免疫細胞」の範囲には、(a)Th1 T細胞、(b)Th2 T細胞、(c)Th17 T細胞、(d)Th22 T細胞、(e)調節性T細胞、(f)ナイーブT細胞、(g)抗原特異的T細胞、(h)中央記憶T細胞、(i)エフェクター記憶T細胞、(j)組織に存在する記憶T細胞、および(k)仮想メモリーT細胞からなる群から選択され得るT細胞サブセットも含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「活性化」という用語は、測定可能な形態的、表現型的、および/または機能的変化を誘導するのに十分な細胞表面部分のライゲーションの後の細胞の状態を指す。T細胞の文脈において、そのような活性化は、細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞の状態であり得る。T細胞の活性化はまた、サイトカイン産生および/または分泌、ならびに受容体もしくは接着分子等の細胞表面分子の発現の上方制御もしくは下方制御、またはある特定の分子の分泌の上方制御もしくは下方制御、ならびに制御性または細胞溶解性機能の実行も誘導し得る。他の細胞の文脈において、この用語は、特定の物理化学プロセスの上方制御もしくは下方制御のいずれかを暗示する。
【0051】
実施形態では、刺激は、細胞表面部分のライゲーションによって誘導される一次応答を含む。例えば、受容体の文脈において、そのような刺激は、受容体のライゲーションおよびその後のシグナル伝達事象を伴い得る。実施形態では、T細胞の培養は、T細胞を刺激することを含む。T細胞の刺激に関して、そのような刺激は、一実施形態では、その後にTCR/CD3複合体の結合等のシグナル伝達事象を誘導するT細胞表面部分のライゲーションを指す。実施形態では、刺激事象は、細胞を活性化し、受容体もしくは接着分子等の細胞表面分子の発現を上方制御もしくは下方制御し得るか、または分子の分泌を上方制御もしくは下方制御し得、例えば腫瘍成長因子ベータ(TGF-β)を下方制御し得る。活性化に使用され得るリガンドは、抗体を含む。そのような抗体は、任意の種、クラス、またはサブタイプの抗体であってもよいが、ただし、そのような抗体は、必要に応じて、対象となる標的、例えば、CD3、TCR、またはCD28と反応することができる。
【0052】
本明細書に記載の方法(例えば、T細胞活性化、免疫細胞精製等)で使用するための「抗体」は、以下を含む。
【0053】
(a)免疫グロブリンの様々なクラスまたはサブクラスのいずれか(例えば、任意の動物、例えば従来使用される動物のいずれか、例えばヒツジ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ラクダ類、または卵黄由来のIgG、IgA、IgM、IgD、またはIgE)、
(b)モノクローナルまたはポリクローナル抗体、
(c)モノクローナルであるかポリクローナルであるかに関わらず、無傷抗体または抗体の断片(この断片は、抗体の結合領域を含有するもの、例えば、Fc部分を欠く断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、VHH、または他の単一ドメイン抗体)、無傷抗体内の重鎖成分を接続するジスルフィド結合の還元開裂によって得られるいわゆる「半分子」断片である)。Fvは、2つの鎖として発現した、軽鎖の可変領域、および重鎖の可変領域を含有する断片と定義され得る。
【0054】
(d)モノクローナル抗体、抗体の断片、「ヒト化抗体」、キメラ抗体、または合成的に作製もしくは変更された抗体様構造体を含む、組換えDNAまたは他の合成技術によって生成または修飾された抗体。
【0055】
抗体、例えば、一本鎖抗体、CDR移植抗体等の機能的誘導体または「等価物」もまた含まれる。一本鎖抗体(SCA)は、融合した一本鎖分子として、好適なポリペプチドリンカーによって結合された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する、遺伝子操作された分子と定義され得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「分離」という用語は、(例えば、濾過、親和性、浮遊密度、または磁気引力によって)1つの成分を別の成分から実質的に精製する任意の手段を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「精製する」または「精製された」という用語は、混合物の成分の量を1つ以上の他の成分よりも増強することを指す。例として、Treg細胞がT細胞の混合集団に存在し、Treg細胞が集団の5%を表し、他のすべてのT細胞が総T細胞集団の95%を表すと仮定する。集団の20%をTreg細胞とし、他のT細胞が総T細胞集団の80%となるプロセスが実行された場合、Treg細胞は「精製」されている。典型的には、T細胞サブセット(または他の細胞型)が精製されると、T細胞サブセット(または他の細胞型)の比率は少なくとも2倍増加する(例えば、1:10の比率から1:5の比率)(例えば、約2倍~約100倍、約2倍~約100倍、約2倍~約100倍、約5倍~約100倍、約8倍~約100倍、約15倍~約100倍、約10倍~約40倍等)。
【0058】
本明細書で使用される場合、「固体支持体」という用語は、抗体等のポリペプチドが精製目的で付着され得る任意の固相材料を指す。したがって、「固体支持体」という用語は、樹脂、マルチウェルプレートのウェル、および様々なタイプのビーズを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体の構成は、ビーズ、球、粒子、顆粒、または表面の形態である。いくつかの実施形態において、表面は、平面、実質的に平面、または非平面である。いくつかの実施形態において、固体支持体は、多孔性または非多孔性であってもよい。いくつかの実施形態において、固体支持体は、ウェル、くぼみ、または他の容器の形態で構成され得る。いくつかの実施形態において、固体支持体は、天然多糖、合成ポリマー、無機材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、固体支持体はビーズであってもよい。いくつかの実施形態において、そのようなビーズは、架橋ポリスチレンマトリックスとポリエチレングリコール(PEG)とのグラフトコポリマーである樹脂を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法で使用されるビーズは、磁性であってもよい。例えば、ビーズの磁化により、自動処理技術を使用してビーズを洗浄および操作することができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「磁性ビーズ」は、1つ以上の金属またはその酸化物または水酸化物を含む磁気応答性粒子を指す。対象となる磁気応答性材料は、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、およびメタ磁性材料を含む。いくつかの実施形態において、これらの粒子が水性媒体中に分散または懸濁され、磁場の印加によって分散液または懸濁液から分離される能力を有する限り、任意の磁気ビーズが使用される。いくつかの実施形態において、磁性ビーズは、例えば、鉄、コバルトまたはニッケルの塩、酸化物、ホウ化物または硫化物;および磁化率の高い希土類元素(ヘマタイトおよびフェライト等)を含む。磁性ビーズの具体例としては、鉄、ニッケル、コバルト等が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「CD8+T細胞」という用語は、その表面上に共受容体CD8を提示するT細胞を指す。CD8は、特定の抗原を認識することができるT細胞受容体(TCR)の共受容体としての役割を果たす膜貫通糖タンパク質である。TCRと同様に、CD8は、主要組織適合性複合体I(MHC I)分子に結合する。実施形態では、CD8+T細胞は、(細胞傷害性Tリンパ球、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、またはキラーT細胞としても知られる)細胞傷害性CD8+T細胞である。実施形態では、CD8+T細胞は、CD8+T細胞抑制因子とも称される制御性CD8+T細胞である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「CD4+T細胞」という用語は、その表面上に共受容体CD4を提示するT細胞を指す。CD4は、特定の抗原を認識することができるT細胞受容体(TCR)の共受容体としての役割を果たす膜貫通糖タンパク質である。実施形態では、CD4+T細胞は、Tヘルパー細胞である。Tヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞およびメモリーB細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫プロセスにおいて、他の白血球細胞を支援する。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原に提示されたときに活性化される。一旦活性化された後、それらは、急速に分裂し、サイトカインと呼ばれる小タンパク質(これは、能動的な免疫応答を制御または支援する)を分泌する。これらの細胞は、TH1、TH2、TH3、TH17、TH9、またはTFHを含むいくつかのサブタイプのうちの1つに分化することができ、これらは、異なるサイトカインを分泌して、異なる種類の免疫応答を促進する。APCからのシグナル伝達は、T細胞を特定のサブタイプへと指向する。実施形態では、CD4+T細胞は、制御性T細胞である。
【0062】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」または「CAR(複数)」は、抗原特異性を細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞等のT細胞、またはそれらの任意の組み合わせ)に移植する、操作された受容体を指す。CARはまた、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体としても知られる。実施形態では、CARは、1つ以上の抗原特異的標的化ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、1つ以上の共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。実施形態では、CARが2つの異なる抗原を標的化する場合、抗原特異的標的化ドメインは、直列に配置され得る。実施形態では、CARが2つの異なる抗原を標的化する場合、抗原特異的標的化ドメインは、直列に配置され、リンカー配列により分離され得る。
【0063】
CARは、免疫細胞(例えば、活性化T細胞等のT細胞)に任意の特異性を移植する操作された受容体である。これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性を免疫細胞に移植するために使用されるが、それらのコード配列の移入は、レトロウイルスベクターによって促進される。受容体は、キメラと呼ばれるが、これは、それらが異なる源に由来する部分で構成されているためである。CARは、養子細胞移入によるがんの療法として使用することができる。T細胞を患者から取り出し、それらが患者の特定のがんに特異的な受容体を発現するように修飾する。がん細胞を認識および殺滅するT細胞を、患者に再導入する。実施形態では、患者以外のドナーから供給されたT細胞の修飾を使用して、患者を治療することができる。
【0064】
キメラ抗原受容体を発現するT細胞の養子移入を使用して、CAR修飾T細胞を操作して、任意の腫瘍関連抗原を標的化することができる。患者のT細胞を収集した後、患者に注入して戻す前に、細胞を遺伝子操作して、患者の腫瘍細胞上の抗原に特異的に指向されたCARを発現するようにする。
【0065】
がん免疫療法のためにCAR-T細胞を操作するためのいくつかの方法は、導入遺伝子を宿主細胞ゲノムに組み込む、レトロウイルス、レンチウイルス、またはトランスポゾン等のウイルスベクターを使用する。あるいは、プラスミドまたはmRNA等の非組み込みベクターを使用してもよいが、これらの種類のエピソームDNA/RNAは、細胞分裂を繰り返した後に失われる可能性がある。結果として、操作されたCAR-T細胞は、最終的にそれらのCAR発現を失う可能性がある。別のアプローチでは、そのゲノムに組み込まれることなく、T細胞内で安定して維持されるベクターが使用される。この戦略は、挿入変異原性または遺伝毒性のリスクを有することなく、長期的な導入遺伝子発現を可能にすることが見出されている。
【0066】
本明細書で使用する場合、「相同組換え」という用語は、類似のヌクレオチド配列を含む2つのDNA鎖がゲノム物質を交換する、遺伝子組換えの機序を指す。細胞は減数分裂中に相同組換えを使用し、DNAを再配列して、完全に固有の一倍体染色体のセットを創出する働きをするが、損傷したDNAの修復、特に二本鎖破断の修復にも役立つ。相同組換えの機序は当業者に周知であり、例えば、PaquesおよびHaber(Paques F,Haber J E.;Microbiol.Mol.Biol.Rev.63:349-404(1999))により説明されている。本明細書に示される方法では、相同組換えは、該標的配列内の連続DNA配列に相同である該ドナーDNA配列のそれぞれ上流(5´)および下流(3´)に配置されている該第1および該第2の隣接エレメントの存在により可能になる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「非相同末端接合」(NEHJ)という用語は、相同性からほとんど独立したプロセスを介して二本鎖破断(DSB)の2つの末端を接合する細胞プロセスを指す。天然DSBは、複製フォークが損傷したテンプレートに遭遇したときのDNA合成の間に、およびV(D)J組換え、免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座でのクラススイッチ組換え、および減数分裂を含む、ある特定の特殊な細胞プロセスの間に、自然に生成される。加えて、電離放射線(X線およびガンマ線)、UV光、トポイソメラーゼ毒、または放射性類似薬に細胞をさらすと、DSBが生成され得る。NHEJ(非相同末端接合)経路は、相同性からほとんど独立したプロセスを介してDSBの2つの末端を接合する。DSBで生成される特定の配列および化学修飾に応じて、NHEJは正確であっても、変異原性であってもよい(Lieber M R.,The mechanism of double-strand DNA break repair by the nonhomologous DNA end-joining pathway.Annu Rev Biochem 79:181-211)。
【0068】
本明細書で使用する場合、「ドナーDNA」または「ドナー核酸」は、相同組換えにより遺伝子座に導入されるように設計された核酸を指す。ドナー核酸は、多くの場合、遺伝子座と配列相同性の少なくとも1つ領域を有することになる。多くの場合において、ドナー核酸は、遺伝子座と配列相同性の2つの領域を有することになる。これらの相同性の領域は、一方または両方の末端にあっても、ドナー核酸分子の内部にあってもよい。多くの場合において、細胞に存在する核酸分子に導入することが望まれる核酸を有する「挿入」領域は、相同性の2つの領域の間に位置することになる。
【0069】
細胞培養組成物
任意の数の細胞培養配合物を使用して本明細書に記載の組成物を調製することができ、および/または本明細書に記載の方法で使用することができる。
【0070】
細胞培養組成物は、多くの場合、本質的にモジュール式になるように設計されている。1つの形態は、基礎培地が調製され、1つ以上のサプリメントが、特定の細胞型および/または用途のために基礎培地に添加される場合である。また、個々の成分(例えば、成長因子、サイトカイン等)を培地製剤に添加することができる。したがって、多くの場合において、かなり一般的な基礎培地が、いくつかの特定の用途のために改変され得る。
【0071】
哺乳動物細胞培養培地を含む培養培地に含まれる成分は、アミノ酸、ビタミン、グルコース、緩衝液、塩、ミネラル、pH指示薬(例えばフェノールレッド)、脂肪酸、ステロール(例えばコレステロール)、タンパク質/ペプチド(例えば血清アルブミン、インスリン、インスリン様成長因子、インターロイキン-2、ホルモン等)、およびシクロデキストリン等の脂肪酸担体を含む。培養培地におけるシクロデキストリンの使用は、PCT公開WO2019/055853に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
基礎培地
かなりの数の基礎培地が何年にもわたって開発されてきた。基礎培地は、多くの場合、細胞増殖のための基本的な材料を含む。これらは、ビタミンおよびミネラルを含む。また、グルコース等の炭素源が存在することが多いが、追加することもできる。
【0073】
基礎培地は、一般的に、細胞の種類、起源(動物種)、および培養の目的に基づいて、それぞれの場合で設計される。したがって、基礎培地の組成は、そのような要因に応じて大きく異なる可能性がある。
【0074】
基礎培地の一例はDMEM/F-12である。この培地の配合を以下の表2に示す。当然ながら、これは基礎培地の一例にすぎない。
【表2】
【0075】
培養培地サプリメント
本明細書の他の場所に示されているように、特定の目的のために基礎培地に追加が行われてもよい。基礎培地へのこれらの追加は、一般に、特定の目的を達成するために行われる。目的には、特定の細胞型の増殖、混合細胞集団における1つ以上の特定の細胞型の優先的増殖、1つ以上の特定の細胞型の増殖速度の増加、混合培養物中に存在する1つ以上の細胞型の細胞生存率の向上等を可能にすることが含まれる。
【0076】
サプリメントは、多くの場合、1つ以上の培地で使用するために配合され、それらの培地が少なくとも1つの目的を満たすことができるようにする。培養培地サプリメントに含まれ得るいくつかの成分には、(1)血清および組織タンパク質および抽出物(例えば、胎児ウシ血清タンパク質、ウシ下垂体抽出物)、(2)動物由来(例えば、動物組織、乳)、微生物由来(酵母)および/または植物由来(大豆、小麦、米)であり得る加水分解物、(3)成長因子(例えば、EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、TGF)、(4)ホルモン(例えば、成長ホルモン、インスリン、ヒドロコルチゾン、トリヨードチロニン、エストロゲン、アンドロゲン、プロゲステロン、プロラクチン、濾胞刺激ホルモン、ガストリン放出ペプチド)、(5)キャリアタンパク質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、ラクトフェリン等)、(6)脂質および関連分子、例えばコレステロール、ステロイド、脂肪酸(例えば、パルミテート、ステアレート、オレエート、リノレエート)、エタノールアミン、コリン、イノシトール等、(7)金属(例えば、Fe、Zn、Cu、Cr、I、Co、Se、Mn、Mo等)、(8)ビタミン(例えば、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)、水溶性ビタミン(例えば、B1、B2、B6、B12、C、葉酸)、(9)ポリアミン、例えばプトレシン、スペルミジン、およびスペルミン、(10)還元剤、例えば2-メルカプトエタノール、α-チオグリセロール、還元型グルタチオン、(11)保護剤/洗剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、Pluronic F-68、Tween80等)、(12)接着因子、例えばフィブロネクチンおよびラミニン、ならびに(13)これらの成分の組み合わせが含まれる。
【0077】
血清代替物
本明細書の他の場所で述べられているように、一般に、細胞培養系における動物血清の使用を避けたいという要望がある。さらに、細胞培養培地は、細胞培養のために血清を必要としないように配合され得るか、または血清代替物が培養培地に添加され得るようにモジュール方式で配合され得る。
【0078】
多くの血清代替物が開発されている。これらには、Gibco(商標)KnockOut(商標)Serum Replacement(KnockOut(商標)SR)(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号10828010)およびCTS(商標)Immune Cell SRが含まれる。
【0079】
血清代替物は、動物起源不含および/またはイムノグロビン不含であってもよい。
【0080】
さらに、血清代替物は、特定の細胞型(例えば、ヒト胎児幹細胞、CD3+T細胞、1つ以上のT細胞サブタイプ、B細胞、HeLa細胞、293細胞、HEK細胞等)の培養のために配合され得る。
【0081】
リポタンパク質サプリメント
本明細書の他の場所で説明されているように、細胞組成物へのリポタンパク質サプリメントの添加から有益な結果を得ることができることが見出された。
【0082】
さらに、本明細書に提示されるデータは、リポタンパク質およびリポタンパク質粒子が血清代替物として作用し得ることを示している。このような血清代替物の例は、次の成分が示された量で培養培地中に存在するように基礎培養培地に配合および添加された配合物である:HDL(0.008g/L)、N-アセチルLシステイン(0.353g/L)、エタノールアミンHCl(0.0108g/L)、ヒトアルブミン(21.575g/L)、塩化カリウム(0.0000216g/L)、亜セレン酸ナトリウム(0.00000540g/L)、リン酸ナトリウム、二塩基性、7H2O(0.000233g/L)、リン酸カリウム、一塩基性(0.0000216g/L)、および塩化ナトリウム(0.000863g/L)(例1を参照されたい)。本明細書で論じられるように、HDLは、そのような培養培地において、他のリポタンパク質粒子および/または1つ以上のリポタンパク質(例えば、APO-AIおよび/またはAPO-AII)で置き換えることができる。
【0083】
リポタンパク質サプリメントは、任意の数の形態であり得、またいくつかの異なる成分を含み得る。そのような成分の例には、1つ以上のアポリポタンパク質(例えば、アポリポタンパク質A(例えば、APO-AI、APO-AII、アポリポタンパク質AIV、アポリポタンパク質AV)、アポリポタンパク質B(例えば、アポリポタンパク質B48、アポリポタンパク質B100)、アポリポタンパク質C(例えば、アポリポタンパク質CI、アポリポタンパク質CII、アポリポタンパク質CIII)、アポリポタンパク質D、アポリポタンパク質E(例えば、アポリポタンパク質E-II、アポリポタンパク質E-IV)、アポリポタンパク質F、アポリポタンパク質G、および/またはアポリポタンパク質H)が含まれる。
【0084】
リポタンパク質サプリメントは、動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、チンパンジー、アフリカミドリザル、ニワトリ等)から得られたリポタンパク質粒子を含み得る。リポタンパク質サプリメントは、生物の外部で生成されるリポタンパク質粒子(すなわち合成リポタンパク質粒子)を含み得る。
【0085】
リポタンパク質粒子の精製方法は知られている。LDL粒子を精製するための1つの方法は次の通りである。LDL粒子は、以下のように300mlのヒト血漿から単離され得る。100mMのEDTAを3mlの血漿に添加する。次いで、混合物を12℃で20分間、41,000×Gで遠心分離する。白色の上層を廃棄し、下層を新しい管に移す。次いで、管を12℃で24時間、280,000×Gで再度遠心分離する。下層を混合し、緑がかったペレットをそのまま残す。次いで、下位レベルを収集し、ペレットを廃棄する。収集されたLDL-血漿の密度を、臭化カリウム(KBr)を使用して1.06に調節する。次いで、溶液を12℃で48時間、165,000×Gで遠心分離する。最上部の画分には、精製されたLDL粒子が含まれている。LDL粒子は、使用するまで窒素下、暗所、4℃で保管され得る。
【0086】
WeibeおよびSmith(“Six Methods for Isolating High-Density Lipoprotein Compared with Use of the Reference Method for Quantifying Cholesterol in Serum”,Clin.Chem.31:746-750(1985))は、血清からHDL粒子を得るためのいくつかの異なる方法を説明および比較している。
【0087】
リポタンパク質粒子はまた、商業的供給源から入手することができる。例として、ヒト血液からのHDLおよびLDL粒子は、Lee Biosolutions(それぞれカタログ番号361-10-0.1および360-10-0.1)、ProSpec-Tany TechnoGene Ltd.(それぞれカタログ番号PRO-559およびPRO-562)から購入され得る。
【0088】
合成リポタンパク質粒子を製造するための多くの方法が開発されている。1つのそのような方法は、Tang et al.,“Influence of route of administration and lipidation of apolipoprotein A-I peptide on pharmacokinetics and cholesterol mobilization”,J.Lipid Res.,58:124-136(2017)に示されている。この論文では、薄膜水和法による合成HDL粒子。簡単に説明すると、リン脂質1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)を、20mg/mlでクロロホルムに溶解した。APO-AI模倣ペプチド22A、PVLDLFRELLNELLEALKQKLK(配列番号3)を、10mg/mlでメタノール:水(1:1の体積比)に溶解した。DPPC、POPC、および22Aを、4mlのガラスバイアル内で様々な重量比で混合し、5秒間ボルテックスした。次いで、混合物を窒素ガス流によって乾燥させ、次いで一晩真空オーブンに入れて残留溶媒を除去した。得られた脂質フィルムをPBS(pH7.4)(22Aの最終濃度=15mg/ml)で水和し、ボルテックスした。懸濁液をバス型ソニケーターで5分間、次いでプローブ型ソニケーターで断続的に(50W×10S×12サイクル)ホモジナイズし、透明または半透明の22A-sHDL溶液を形成した。
【0089】
合成LDL(sLDL)の製造方法も開発されている(例えば、Hayavi and Halbert,“Synthetic Low-Density Lipoprotein,a Novel Biomimetic Lipid Supplement for Serum-Free Tissue Culture”,Biotechnol.Prog.21:1262-1268(2005)を参照されたい)。1つのそのような方法では、ホスファチジルコリン、トリオレイン、およびコレステリルオレエートの3:2:1モル比を、ジクロロメタンおよびコレステロール、ならびに次のN末端からC末端への配列を有する合成ペプチドの混合物に溶解した:レチノイン酸-Leu-Arg-Leu-Thr-Arg-Lys-Arg-Gly-Leu-Lys-Leu-コレステロール(配列番号4)またはレチノイン酸-Gly-Thr-Thr-Arg-Leu-Thr-Arg-Lys-Arg-Gly-Leu-Lys-Leu(配列番号5)。これらのペプチドは、1モル当たり様々なモル濃度でオレイン酸コレステリルと混合された。次いで、ジクロロメタンをオレイン酸ナトリウムの水溶液に添加し、EmusiFlex-C5マイクロフルイダイザー(Avestin、Canada)を使用して最大30,000psiの圧力で4℃で混合した。次いで、混合物の有機溶媒成分を、室温で蒸発により除去した。
【0090】
また、0.03mol/molコレステリルエステルでの純粋なオレイン酸コレステリルおよびトリオレインおよびレチン酸-Leu-Arg-Leu-Thr-Arg-Lys-Arg-Gly-Leu-Lys-Leu-コレステロール(配列番号4)の代わりに、対応するコレステリルエステルおよびトリグリセリドの以下の比率、オレイン酸(21:41)/リノール酸(50:15)/パルミチン酸(12:25)/アラキドン酸(6:1.3)/ステアリン酸(0:5.7)を使用して、上記のように混合sLDL(sLDL(混合))脂肪酸系を調製した。
【0091】
培養培地組成物に添加され得るアポリポタンパク質模倣ペプチドは、表3に示される1つ以上のペプチドを含む。さらに、そのようなペプチドを含むタンパク質、ならびに他のアポリポタンパク質模倣ペプチドもまた、培養培地組成物に添加され得る。そのようなタンパク質は、表3に示されるペプチドのサイズより大きくてもよく、例えば、約15~約250(例えば、約15~約250、約20~約250、約30~約250、約40~約250、約60~約250、約20~約200、約20~約150、約30~約120等)アミノ酸の長さであってもよい。さらに、アポリポタンパク質模倣タンパク質は、表3に示される1つ以上のペプチドのコンカテマー、および他のアポリポタンパク質模倣ペプチドを含み得る(表4を参照されたい)。
【表3】
【表4】
【0092】
ペプチドおよびタンパク質が培養培地で使用される場合、これらの分子は、化学合成または組換え等の方法によって生成され得る。これは、動物起源不含細胞培養が望まれる場合に特に望ましいであろう。
【0093】
組換えタンパク質の生成は、当技術分野において周知である。さらに、組換えタンパク質は、動物起源ではない細胞に存在し得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、植物細胞等の非動物である。培養で容易に成長する植物細胞の例には、Arabidopsis thaliana(クレス)、Allium sativum(ニンニク)Taxus chinensis、T.cuspidata、T.baccata、T.brevifoliaおよびT.mairei(イチイ)、Catharanthus roseus(ツルニチニチソウ)、Nicotiana benthamiana(ナス科)、NT-1やBY-2等のタバコ細胞株を含むN tabacum(タバコ)(NT-1細胞はATCC、No.74840から入手可能、米国特許第6,140,075号も参照されたい)、Oryza sativa(コメ)、Cucumis sativus(キュウリ)、Stevia rebaudiana(スイートリーフ)、Stizolobium hassjoo(スベリヒユ(purselane))、Panicum virgatum(スイッチグラス)、およびZea mays spp.(トウモロコシ/コーン)が含まれる。組換えタンパク質の生成に使用され得る追加の宿主細胞の例には、次の属の生物が含まれる:Aspergillus、Bacillus、Candida、Corynebacterium、Eremothecium、Escherichia、Fusarium/Gibberella、Kluyveromyces、Laetiporus、Lentinus、Phaffia、Phanerochaete、Pichia、Physcomitrella、Rhodoturula、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Sphaceloma、XanthophyllomycesまたはYarrowia。このような属の代表的な種には、Lentinus tigrinus、Laetiporus sulphureus、Phanerochaete chrysosporium、Pichia pastoris、Cyberlindnera jadinii、Physcomitrella patens、Rhodoturula glutinis、Rhodoturula mucilaginosa、Phaffia rhodozyma、Xanthophyllomyces dendrorhous、Fusarium fujikuroi/Gibberella fujikuroi、Candida utilis、Candida glabrata、Candida albicans、およびYarrowia lipolyticaが含まれる。
【0095】
細胞培養
本明細書では、細胞(例えばT細胞)の培養のためのワークフロー、組成物、および方法が提供される。本明細書に記載の方法は、培養中の細胞が急速な分裂時間で高レベルの細胞生存率を示す細胞の培養のために設計されている。多くの場合において、そのような方法は、1つ以上のリポタンパク質サプリメントを使用する細胞(例えば哺乳動物細胞)の培養を含み得る。
【0096】
本明細書の他の場所に示されているように、細胞はしばしば補充された基礎培地で培養される。培地中に存在する1つ以上の細胞型の増殖を可能にするかまたは増強するために、いくつかの成分が基礎培地に添加され得る。そのような成分には、ビタミン、ミネラル、脂質、成長因子、およびサイトカインが含まれる。
【0097】
血清および動物起源の材料を含まない細胞培養培地を使用したいという要望がある。「動物起源不含」とは、成分が動物または動物細胞から得られないことを意味する。したがって、例えば酵母細胞で産生される組換え発現されたヒトタンパク質は、それがヒトタンパク質であるにもかかわらず、動物起源不含とみなされる。本明細書では、血清(例えばヒト血清、ウシ血清等)を含まずに動物細胞(例えば哺乳動物細胞)の効率的な増殖を可能にする組成物および方法が提供される。また、本明細書では、動物細胞(例えば哺乳動物細胞)の効率的な増殖を可能にする、動物不含組成物、およびそれに関連する方法が提供される。
【0098】
多くの場合において、細胞の添加前、添加中、および/または添加後に、1つ以上のリポタンパク質サプリメントが細胞培養培地に添加され得る。さらに、1つ以上のリポタンパク質サプリメントは、細胞増殖プロセス中に細胞培養培地から除去され得る。
【0099】
図4は、異なる培養培地および異なる成分を含む異なる培養培地におけるT細胞の増殖のデータを示している。T細胞増殖の最低レベルは、ICSRを含むCTS OpTmizer(商標)(完全なCTS OpTmizer(商標))で見られた。次に低いレベルのT細胞増殖は、X-Vivo(商標)5%ヒト血清で見られた。最高レベルのT細胞増殖は、8mg/LのHDLを含みICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)で見られ、結果は、2つのHDL追加データセットで同様であった。
【0100】
図5は、
図4(5)に示されているデータに関連するT細胞の%生存率のデータを示す。1つの例外を除いて、生細胞の%はすべての試料およびすべての時点において類似していた。この例外は、ICSR試料を含むCTS OpTmizer(商標)の5日目の測定に対するものである。
【0101】
図4および5に示されているデータは、リポタンパク質サプリメント(例えばHDL)が血清代替物として使用され得ることを示している。さらに、リポタンパク質サプリメント(例えば8mg/LのHDL)は、増殖プロセス中に血清(例えばヒト血清)または血清代替物(例えばICSR)よりも培養培地においてより高い増殖レベルをもたらし、細胞をより高いレベルの生存率に維持するように配合され得る。
【0102】
組成物に添加され、本明細書に記載の方法で使用されるリポタンパク質サプリメントは、本明細書に記載の任意の数の成分または成分の組み合わせを含み得る。多くの場合において、リポタンパク質サプリメントは、少なくとも1つのリポタンパク質の一部をすべて含む。
【0103】
さらに、リポタンパク質サプリメントは、完全に動物起源であってもよく、部分的に動物起源であってもよく、または動物起源を含まなくてもよい。例えば、リポタンパク質サプリメントは、1つ以上のタイプのリポタンパク質粒子を含み得る。さらに、そのようなリポタンパク質粒子は、天然供給源(例えば哺乳動物の血液)に由来してもよく、または合成的に生成されてもよい。
【0104】
リポタンパク質サプリメントを培養培地に添加して、培養培地中のリポタンパク質サプリメントの成分の最終量をもたらすことができる。例えば、リポタンパク質サプリメントを培養培地に添加して、最終成分濃度を約0.1mg/L~約500mg/L(例えば、約0.2mg/L~約15mg/L、約0.1mg/L~約10mg/L、約0.1mg/L~約3mg/L、約1mg/L~約450mg/L、約1mg/L~約400mg/L、約1mg/L~約350mg/L、約1mg/L~約300mg/L、約1mg/L~約250mg/L、約1mg/L~約200mg/L、約1mg/L~約150mg/L、約1mg/L~約100mg/L、約1mg/L~約50mg/L、約1mg/L~約30mg/L、約1mg/L~約20mg/L、約1mg/L~約15mg/L、約1mg/L~約10mg/L、約3mg/L~約20mg/L、約3mg/L~約15mg/L、約5mg/L~約20mg/L、約5mg/L~約12mg/L等)の最終成分濃度をもたらすことができる。
【0105】
さらに、リポタンパク質サプリメントは、特定の増殖特性をもたらす量で培地に添加され得る。例えば、リポタンパク質サプリメントは、設定された時点で、ICSRを含むCTS OpTmizer(商標)(完全なCTS OpTmizer(商標))よりも高いT細胞増殖をもたらす量で添加され得る。測定され得る他の成長特性は、%生存率および1つ以上のT細胞サブタイプの有病率である。さらに、設定された時点は、リポタンパク質サプリメントの存在下での増殖の開始から3、4、5、6、7、または10日後であってもよい。
【0106】
例として、性能比較は次のように実行され得る。4人の異なるドナーからのT細胞を、ICSRを含むCTS OpTmizer(商標)および様々な量のリポタンパク質サプリメント(例えば、精製されたアポリポタンパク質、HDL、LDL等)を含むCTS OpTmizer(商標)を用いて試験することができる。時間ゼロで、活性化T細胞(実施例1を参照されたい)を、100U/mlのIL-2を含むG-Rex(商標)プレートのウェル当たり1×10
6細胞で播種する。次いで、T細胞を37℃のインキュベーターに入れる。次いで、T細胞試料を、設定された時点で関心のある特性について比較する。例えば、関心のある特性が5日目の増殖倍数であり、表5に示すデータが得られた場合、4人のドナーから得られたデータは、増殖倍数の増加が統計的に有意であり、ICSR試料を含むCTS OpTmizerに対する様々な量のリポタンパク質サプリメント試料を含むCTS OpTmizer(商標)の増殖倍数が3.5であることを示している。これは29%の増加に相当する。
【表5】
【0107】
多くの場合において、リポタンパク質サプリメントは、血清代替物の性能に等しいか、または血清代替物の性能を超える量で培養培地に添加される(例えば、約5%~約100%、約5%~約90%、約5%~約80%、約5%~約70%、約10%~約100%、約20%~約100%等)。
【0108】
リポタンパク質サプリメント成分は、単一のタンパク質(もしくはペプチド)、タンパク質の混合物、タンパク質断片、タンパク質断片の混合物、および/または1つ以上のリポタンパク質粒子を含み得る。例えば、リポタンパク質サプリメント成分は、HDLまたはLDL等のリポタンパク質粒子を含み得る。さらに、HDLおよびLDLリポタンパク質粒子の両方が培養培地に添加されてもよい。これが行われる場合、これらのリポタンパク質粒子のいずれか1つまたは両方の組み合わせの濃度は、上記の範囲内であってもよいか、または約1mg/L~約30mg/L(例えば、約1mg/L~約18mg/L、約1mg/L~約15mg/L、約1mg/L~約10mg/L、約2mg/L~約13mg/L、約3mg/L~約15mg/L、約5mg/L~約12mg/L等)の範囲であってもよい。さらに、培養培地に添加される2つのリポタンパク質粒子の比率もまた変化し得る。例えば、HDL:LDLの比率は、約10:1~約1:10(例えば、約10:1~約1:10、約5:1~約1:10、約1:1~約1:10、約10:1~約1:5、約10:1~約1:1等)で変化し得る。当然ながら、他のリポタンパク質粒子も培養培地に添加することができる。そのようなリポタンパク質粒子は、天然の供給源(例えばヒトの血液)から得られてもよく、および/または合成されてもよい。
【0109】
図6および表14の組み合わせで示されたデータは、8mg/LのHDLを含むCD8+T細胞がCTS OpTmizer(商標)で優先的に増殖することを示している。
図7および表15の組み合わせで示されたデータは、CD27 T細胞が8mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)において優先的に増殖されること、およびCD62L T細胞が優先的に増殖しないことを示している。
【0110】
本明細書には、T細胞の増殖のための組成物および方法が記載される。いくつかの場合において、この増殖により、2つ以上のT細胞サブタイプが増殖前および増殖後で本質的に同じ比率(すなわち、約10%以内)で存在するT細胞集団が生成される。いくつかの場合において、この増殖により、2つ以上のT細胞サブタイプが増殖前および増殖後で異なる同じ比率(すなわち、約10%超、例えば約11%~約200%、約11%~約90%、約11%~約75%、約30%~約200%、約30%~約100%等)で存在するT細胞集団が生成される。さらに、そのようなT細胞サブタイプには、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CD27+T細胞、CD62L+T細胞、およびCCR7+T細胞が含まれる。
【0111】
表16~20のデータが示すように、個々のリポタンパク質を血清代替物として培地に添加することもできる。表16および20に示されているデータは、APO-AIおよびAPO-AIIがICSRの代替物として機能することを示している。
【0112】
表16~20のデータからわかるように、APO-AIおよびAPO-AIIは、T細胞増殖および高レベルの細胞生存率の両方を補助し得る。これらのデータは、アポリポタンパク質が血清代替物として機能し得ることを示している。したがって、本明細書では、1つ以上のアポリポタンパク質(例えば、約1~約10、約2~約10、約3~約10、約1~約4、約2~約5等)および/またはその下位部分が培養培地に含まれる組成物および方法が提供される。
【0113】
エレクトロポレーション
本明細書では、細胞のエレクトロポレーションのための組成物および方法が提供される。特に、細胞のエレクトロポレーションを可能にし、エレクトロポレーション後の細胞生存率を高くする組成物および方法が本明細書で提供される。
【0114】
細胞膜の膜電位Um(t)を細胞膜の多孔性が劇的に上昇する値まで急速に増加させる電界パルスに対する細胞膜の応答に関連する機構理論については、かなりの量の研究が行われている(Weaver et al.,Bioelectrochemistry 87:236-243(2012)を参照されたい)。膜の多孔性の変化は、細孔の形成が原因であると考えられている。
【0115】
エレクトロポレーションに使用される大きな電界パルスは、主な原因である加熱によって、または加熱なしで細胞を死滅させることができる。2つの非加熱死滅機構は、アポトーシスまたは壊死の誘導によるものと考えられている。さらに、高強度電界細胞死滅はアポトーシスによるものであると考えられており、低強度電界細胞死滅は壊死によるものであると考えられている。したがって、細胞死のメカニズムに関係なく、高い細胞生存率が維持されるように電界条件を調節することが一般的に望ましい。
【0116】
異なる「ギャップ」サイズのエレクトロポレーションキュベットが使用され得る。「ギャップ」とは、電気が通過する空間である。ギャップサイズは、約0.1mm~約15mm(例えば、約0.5mm~約15mm、約1mm~約15mm、約2mm~約15mm、約2mm~約10mm、約2mm~約8mm、約3mm~約6mm等)であってもよい。多くの場合において、動物細胞のエレクトロポレーションには約4mmのギャップサイズが使用される。
【0117】
エレクトロポレーション中に細胞に印加される電圧の量は大きく変動し得、約200ボルト(V)~約1,500V(例えば、約200V~約1,500V、約200V~約1,500V、約250V~約1,500V、約350V~約1,500V、約300V~約1,500V、約400V~約1,500V、約500V~約1,500V、約600V~約1,500V、約200V~約1,000V、約225V~約900V、約250V~約900V、約250V~約800V、約300V~約750V、約300V~約650V等)であってもよい。
【0118】
さらに、電圧は、様々なパルス持続時間にわたって印加され得る。そのような持続時間は、約1ナノ秒~約1秒(例えば、約150ナノ秒~約1秒、約250ナノ秒~約1秒、約300ナノ秒~約1秒、約500ナノ秒~約800秒、約1マイクロ秒~約1秒、約100マイクロ秒~約1秒、約1マイクロ秒~約800マイクロ秒、約1マイクロ秒~約600マイクロ秒、約1マイクロ秒~約500マイクロ秒、約1マイクロ秒~約400マイクロ秒、約1マイクロ秒~約300マイクロ秒、約100マイクロ秒~約700マイクロ秒、約200マイクロ秒~約600マイクロ秒等)であってもよい。
【0119】
2つ以上のパルスが使用される場合、パルスの数は変動し得、約1~約500(例えば、約2~約500、約10~約500、約20~約500、約30~約500、約10~約250、約10~約200、約10~約170、約10~約150、約25~約250、約25~約200、約25~約150等)のパルスであってもよい。
【0120】
エレクトロポレーションの前に細胞をリポタンパク質サプリメントとインキュベートすることで、エレクトロポレーションが細胞の生存率に及ぼす影響を有利に調整できることが分かっている。したがって、細胞がリポタンパク質サプリメントと一定期間接触され、次いでエレクトロポレーションされる組成物および方法が本明細書に記載される。
【0121】
図8および9は、実施例2に示されているように生成されたデータを示している。6mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)、またはICSRを含むCTS OpTmizer(商標)でT細胞を3日間増殖させた。次いで、細胞生存率を4日目に測定した。見てわかるように、エレクトロポレーションの前にT細胞を6mg/LのHDLで3日間増殖させた試料は、ICSRでT細胞を3日間増殖させた試料よりも有意に高いレベルの生存率を示した。
図8および表21から分かるように、2つの増殖条件の間の4日目の増加したT細胞生存率は、20.23~36.21の範囲であり、6mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)で増殖させたT細胞の平均T細胞生存率は70.50であり、ICSRを含むCTS OpTmizer(商標)で増殖させたT細胞の平均T細胞生存率は49.26である。
【0122】
図11および12は、6mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)またはICSRを含むCTS OpTmizer(商標)で3日間増殖させたT細胞のエレクトロポレーション効率のデータを示す。1つを除くすべてのドナー試料のT細胞は、エレクトロポレーション効率の向上を示した。
【0123】
本明細書では、細胞に対するエレクトロポレーションの効果を調節するための組成物および方法が提供される。いくつかの態様において、細胞は、エレクトロポレーションの前に、一定期間(例えば、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約2~約6日、約2~約5日等)リポタンパク質サプリメントと接触させられる。多くの場合において、リポタンパク質サプリメントは培養培地中に存在し、細胞はエレクトロポレーション前の期間中に活発に増殖する。いくつかの場合において、細胞はエレクトロポレーションの前に洗浄され、非培養培地溶液(例えば緩衝液)中でエレクトロポレーションされ、エレクトロポレーション後に培養培地に再懸濁される。いくつかの場合において、エレクトロポレーション後の培養培地はリポタンパク質サプリメントを含むが、含まれない場合もある。一例として、いくつかの場合において、T細胞は6mg/LのHDLを含むCTS OpTmizer(商標)で3日間増殖され、洗浄され、緩衝液に再懸濁され、次いで緩衝液中でエレクトロポレーションされ、次いで緩衝液から分離されて、さらなる増殖のためにICSRを含むCTS OpTmizer(商標)に再懸濁されてもよい。このプロセスは、本質的に、
図8~12に示されている日が生成された方法である。
【0124】
培養培地に添加され得るリポタンパク質サプリメントの量は様々である。いくつかの場合において、例2に示された方法を使用して、指定されたエレクトロポレーション効率を達成するように量が調節される。エレクトロポレーション効率は、細胞の種類、細胞の代謝状態、細胞に導入される核酸分子等を含む様々な要因によって決定される。
【0125】
また、本明細書では、細胞のエレクトロポレーションの効率を高めるための組成物および方法が提供される。多くの場合において、細胞がエレクトロポレーション前に一緒にインキュベートされるリポタンパク質サプリメントの量は、本明細書の他の場所に記載されている通りである。
【0126】
本明細書に記載の方法によって細胞に導入され得る核酸分子には、RNA、DNA、およびそれらの組み合わせ(RNA/DNAハイブリッド)が含まれる。そのような核酸分子は、一過性または安定した発現のために設計され得る。安定した発現は、例えば、複製起点を有する核酸分子、または相同組換えによって宿主細胞ゲノムに組み込まれるように設計された核酸分子(例えばドナー核酸分子)の導入によって達成され得る。
【0127】
さらに、一本鎖DNAドナー(ssDNA)、平滑末端dsDNAドナー(平滑)、5’オーバーハング(5’)のdsDNAドナー、および/または3’オーバーハング(3’)のdsDNAドナーを含む細胞に導入された核酸分子。
【0128】
細胞に導入された核酸分子は、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードし得る。
【0129】
キメラ抗原受容体(CAR)は、任意の数の構造を有し得、また任意の数の目的のために設計され得る。多くのCARは、細胞外抗原認識ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに連結し、これにより、抗原が結合すると細胞(T細胞等)が活性化される。CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインの3つの領域で構成されることが多い。
【0130】
細胞外ドメインは、細胞の外側に露出し、潜在的な標的分子と相互作用することができるCARの領域である。膜貫通ドメインは、典型的には、細胞膜にまたがる疎水性領域からなる(例えばヒトCD28膜貫通ドメイン)。細胞内ドメイン(例えばCD3-ゼータの細胞質ドメイン)は、細胞の内部にシグナルを「伝達」する受容体の内部細胞質末端である。
【0131】
細胞維持
リポタンパク質サプリメントとのインキュベーション後に細胞をエレクトロポレーションし、リポタンパク質サプリメントとの接触を維持すると、細胞は一定期間高い生存率を維持するが、増殖速度の低下を示すことが見出された。
【0132】
図14および15に示されるデータは、示された培地で増殖されたT細胞を使用して生成された。次いで、これらのT細胞を3日目にエレクトロポレーションした。次いで、すべての試料のT細胞を、示された培養培地で維持した。
図14は、T細胞が示されたリポタンパク質サプリメントの存在下で増殖され、次いでエレクトロポレーションされ、それぞれが元の培養培地で維持される場合、リポタンパク質サプリメントが存在すると細胞生存率が高いままであることを示すデータを示す。
図15は、T細胞がリポタンパク質粒子(HDL、ならびにHDLおよびLDLの組み合わせ)の存在下でエレクトロポレーションされ、リポタンパク質粒子と接触したままにされると、増殖が減少することを示すデータを示す。したがって、本明細書では、高い細胞生存率を維持しながら細胞の増殖速度を低下させるための組成物および方法が提供される。
【0133】
多くの場合において、哺乳類動物細胞集団の増殖は増殖を続け、生存率の低下を示し、細胞分裂を低下させる。細胞が最初にリポタンパク質サプリメントの存在下で増殖され、次いで電界中に置かれる場合、細胞生存率の比較的低いレベルの損失で核酸が細胞に導入され得ることが観察された。さらに、そのような細胞がリポタンパク質サプリメントを含む培養培地中で維持される場合、これらの細胞は、細胞増殖の減少を示しながら、高レベルの細胞生存率を維持し続ける。したがって、本明細書では、哺乳動物細胞の増殖を可能にし、その後低レベルの増殖であるが高い細胞生存率を有する細胞の維持を可能にする組成物および方法が提供される。そのような組成物および方法は、細胞の保存に有用である。
【0134】
本明細書では、哺乳動物細胞を保存するための方法が提供される。そのような方法は、次の手順を含む方法を含んでいた。まず、哺乳動物細胞を、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で一定期間(例えば、約1日~約10日、約2日~約10日、約3日~約10日、約1日~約8日、約1日~約7日、約1日~約5日、約1日~約4日、約2日~約4日等)増殖させる。次いで、哺乳動物細胞は哺乳動物細胞を電界に曝露している。電界への曝露後、細胞は、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で哺乳動物細胞の増殖に適した条件下で維持される。上記のプロセスの条件は、哺乳動物細胞が高レベルの細胞生存率を維持しながら低レベルの増殖を示すように調節され得ることが見出された(
図14および15を参照されたい)。
【0135】
保存のために調製され、本明細書に記載の条件下で保存される細胞は、T細胞等の操作された細胞を含む、任意の数の異なる細胞型であり得る。これらの細胞は、保存中に37℃で保存され得、少なくとも24日間(例えば、約5日~約24日、約5日~約20日、約5日~約18日、約5日~約15日、約5日~約12日、約5日~約10日、約5日~約7日、約1日約10日、約3日~約7日、約2日~約8日等)高レベルの細胞生存率を維持しながら保存状態で維持され得る。
【0136】
さらに、保存期間の終了時に、細胞を洗浄して1つ以上のリポタンパク質化合物を除去し、次いで、細胞増殖を阻害するのに十分な量の1つ以上のリポタンパク質化合物を含まない培養培地と接触させることができる。
【0137】
そのような方法で保存され得る細胞は、操作されたT細胞を含む。T細胞保存法は、ある場所から別の場所への細胞(例えば、操作されたT細胞等のT細胞)の運搬に使用され得る。
【0138】
T細胞
任意の数の異なる種類のT細胞が組成物中に存在し得、本明細書に記載の方法で使用され得る。これらのT細胞のいくつかは次の通りである。
【0139】
ナイーブT細胞は一般に、L-セレクチン(CD62L)およびC-Cケモカイン受容体型7(CCR7)の表面発現;活性化マーカーCD25、CD44またはCD69の欠如;ならびにメモリーCD45ROアイソフォームの欠如を特徴とする。
【0140】
Th17細胞:Tヘルパー17細胞(または「Th17細胞」または「Th17ヘルパー細胞」)は、宿主防御を制御すると考えられるCD4+Tヘルパー細胞の炎症サブセットであり、組織の炎症およびある特定の自己免疫性疾患に関与する。担がんマウスに養子移入した場合、Th17細胞はTh1または非極性(ThO)よりも黒色腫を根絶するのに強力であることが分かっている。Th17細胞の表現型は、CD3+、CD4+、CD161+である。
【0141】
メモリーT細胞:「抗原経験細胞」とも称されるメモリーT細胞は、抗原との遭遇前に経験される。これらのT細胞は、長寿命であり、抗原を認識し、これらのT細胞が以前に曝露された抗原に対する免疫応答に迅速かつ強力に影響を与えることができる。メモリーT細胞は、幹細胞様メモリー細胞(TSCM)、セントラルメモリー細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM)を含み得る。TSCM細胞は、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+、およびIL-7Ra+を有するが、それらはまた、大量のIL-2R、CXCR3、およびLFA-1も発現する。TCM細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を発現し、それらは、IL-2を分泌するが、IFN-γまたはIL-4は分泌しない。TEM細胞は、L-セレクチンまたはCCR7を発現しないが、IFNγおよびIL-4等のサイトカインを産生する。
【0142】
メモリーT細胞サブタイプ:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)は、CD45RO、C-Cケモカイン受容体型7(CCR7)、およびL-セレクチン(CD62L)を発現する。セントラルメモリーT細胞は中レベルから高レベルのCD44を発現する。このメモリー亜集団は、リンパ節および末梢循環によく見られる。
【0143】
組織常駐メモリーT細胞(TRM)は、通常、再循環することなく組織(皮膚、肺、胃腸管等)を占有します。これらの細胞は、病原体に対する防御免疫において役割を果たすと考えられている。機能不全TRM細胞は、様々な自己免疫疾患に関与している。
【0144】
仮想メモリーT細胞は、強力なクローン増殖イベントの後に発生したようには見えないという点で、他のメモリーサブセットとは異なる。この集団は全体として、典型的には末梢循環内に豊富に存在する。
【0145】
治療方法
いくつかの態様において、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される方法によって得られるかまたは生成される対象細胞(例えば、T細胞、NK細胞等)またはそのような細胞の子孫に投与することを含むそのような方法。
【0146】
一例として、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子をT細胞に導入して、CAR-T細胞を生成することができる。次いで、これらのCAR-T細胞を増殖させて、CAR-T細胞薬を生成する。次いで、T細胞の活性化が、CD3およびCD28細胞表面受容体の抗体の結合によって媒介され得る。
【0147】
任意の数の細胞型(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞)が治療方法において使用され得る。
【0148】
NK細胞は、自然免疫系の主要な構成要素を構成する細胞傷害性リンパ球であり、インターフェロンおよびマクロファージ由来のサイトカイン等の細胞シグナルに応答して活性化される。NK細胞の細胞毒性活性は、「活性化受容体」または「阻害性受容体」とみなされ得る2種類の表面受容体によって主に調節されるが、一部の受容体(CD94および2B4(CD244等))は、リガンド相互作用に応じてどちらの方法でも機能する。
【0149】
NK細胞は、例えばCD56およびCD3に対する抗体を用いて、ならびにCD56+CD3細胞ために選択して、単離または濃縮され得る。したがって、細胞組成物は、CD3のために陰性選択され得、続いてCD56+細胞について陽性選択され得る。両方の選択は、細胞表面マーカーに結合特異性を有する抗体が結合する固体支持体を使用して実行され得るが、NK細胞の放出は陽性選択ステップ(すなわちCD56+ベースの細胞精製)によってのみ媒介される必要がある。
【0150】
例として、NK細胞は腫瘍の宿主拒絶反応において役割を果たし、ウイルス感染細胞を死滅させることができることが示されている。したがって、NK細胞は、ウイルス感染症の治療に使用され得る。さらに、NK細胞(例えば、活性化NK細胞)は、がんのエクスビボ治療およびインビボ処置の両方で使用され得る。
【0151】
CD8+T細胞(例えば、増加したCD8+T細胞の割合を含むT細胞の増殖集団、またはそのような増殖集団から単離したCD8+T細胞)の用途の非限定的な例には、免疫抑制された移植患者の治療のための、サイトメガロウイルス(CMV)感染症およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症等のためのウイルス特異的T細胞に基づく免疫療法が含まれる。例えば、Heslop et al.(2010)Blood 115(5):925-35を参照されたい。追加の非限定的な例には、がんおよび感染性疾患の治療のための、CAR-Tおよび他の様式のウイルス特異的T細胞の操作の使用が含まれる。例えば、Pule et al.(2008)Nature Medicine 115(5):925-35およびGhazi et al.(2013)J Immunother 35(2):159-168を参照されたい。CD4+T細胞(例えば、増加したCD4+T細胞の割合を含むT細胞の増殖集団、またはそのような増殖集団から単離したCD4+T細胞)の用途の非限定的な例には、HIV+患者の治療、および増殖させたCD4+Tヘルパーサブセット(例えば、TH1、TH2、TH3、TH17、TH9、またはTFH)、および自己免疫を治療するための制御性T細胞(Treg、CD4+CD25+FoxP3+)が含まれる。例えば、Tebas et al.(2014)N Engl J Med 370(10):901-10およびRiley et al.(2009)Immunity 30(5):656-665を参照されたい。
【0152】
いくつかの実施形態において、T細胞は、CD8+T細胞である。実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞である。
【0153】
いくつかの実施形態において、T細胞は、分化の段階に基づいて単離される。T細胞集団は、特定の細胞マーカーまたはタンパク質の存在または不在に基づいて分化の段階を評価することができる。T細胞分化の段階を評価するために使用されるマーカーには、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD19、CD20、CD25、CD27、CD33、CD34、CD45、CD45RA、CD45RB、CD56、CD62L、CD123、CD127、CD278、CD335、CD11a、CD45RO、CD57、CD58、CD69、CD95、CD103、CD161、CCR7、および転写因子FOXP3が含まれる。
【0154】
実施形態では、適切な細胞集団(例えば、T細胞集団、B細胞集団等)または亜集団が患者または動物から単離されると、任意選択で、得られた細胞集団が本明細書に記載の組成物および方法を使用して増殖される前に、遺伝的または任意の他の適切な改変または操作が行われてもよい。この操作は、例えば、抗CD3および抗CD28抗体を用いてT細胞を刺激/再刺激して、それらを活性化/再活性化させる形態をとり得る。
【0155】
実施形態では、活性化細胞(例えば、T細胞、NK細胞等)を対象に投与し、次いでその後に再び採血し(またはアフェレーシスを実行し)、本発明で提供される方法に従って、その血液から細胞を活性化および増殖させ、これらの活性化および増殖させた細胞を患者に再注入することが望ましくなり得る。
【0156】
実施形態では、本明細書で提供される方法に従って生成されるT細胞亜集団は、実験用途および治療用途を含む多くの潜在的な用途を有し得る。実施形態では、少数のT細胞を患者から取り出し、その後それらをエクスビボで操作し、増殖させてから、患者に再注入する。この方法で治療することができる疾患の非限定的な例は、抑制された免疫活性が(例えば、同種移植免疫寛容のために)望ましい、自己免疫性疾患および病態である。実施形態では、治療方法は、哺乳動物を提供し、T細胞を含有する該哺乳動物から生体試料を得ることと、本明細書で提供される方法に従って、エクスビボでT細胞を増殖/活性化させることと、増殖/活性化させたT細胞を治療される哺乳動物に投与することとを含む。実施形態では、第1の哺乳動物および治療される哺乳動物は、同じであっても異なっていてもよい。実施形態では、哺乳動物は一般に、ネコ、イヌ、ウサギ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、サル、またはヒト等の任意の哺乳動物であり得る。実施形態では、第1の哺乳動物(「ドナー」)は、同系、同種、または異種であり得る。
【0157】
実施形態では、本明細書で提供される組成物および方法を使用して産生されるT細胞亜集団は、様々な用途および治療モダリティで使用することができる。実施形態では、T細胞亜集団は、がん、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、感染性疾患、および移植片対宿主病(GVHD)を含むがこれらに限定されない疾患状態の治療において使用することができる。実施形態では、T細胞療法には、免疫枯渇後もしくは免疫枯渇後ではない、本明細書で提供される方法によって外部で増殖させたT細胞亜集団の対象への注入、またはドナー対象から単離した、外部で増殖させた異種T細胞の対象への注入(例えば、養子細胞移入)が含まれる。
【0158】
T細胞がCAR-T細胞である実施形態において、抗原結合部分の選択は、処置されるがんの特定の種類に依存し得る。腫瘍抗原は、当該技術分野で知られており、例えば、膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、β-ヒト慢性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RUL RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン(prostein)、PSMA、HER2/neu、サバイビングおよびテロメラーゼ(surviving and telomerase)、前立腺がん腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF-1)、IGF-II、IGF-I受容体、ならびにメソセリンを含む。
【0159】
T細胞の混合集団の源の例
実施形態では、T細胞の混合集団の出発源は、対象から単離され得る血液(例えば循環血液)である。実施形態では、循環血液は、1単位以上の血液から、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスから得ることができる。実施形態では、アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球細胞、赤血球細胞、幹細胞(例えば誘導多能性幹細胞)、および血小板を含む、リンパ球を含む。T細胞および他の細胞は、血液単核細胞、骨髄、胸腺、組織バイオプシー、腫瘍、リンパ節組織、胃腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓組織、または任意の他のリンパ組織、および腫瘍を含む(がこれらに限定されない)いくつかの源から得ることができる。T細胞は、T細胞株および自己または同種の源から得ることができる。T細胞はまた、異種の源、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタからも得ることができる。
【0160】
実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離等の当業者に既知の任意の数の技術を使用して対象から収集された血液の単位から得ることができる。T細胞は、対象の循環血液から単離されてもよい。実施形態では、血液は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって対象から得ることができる。実施形態では、アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、PBMC、他の有核白血球細胞、赤血球細胞、および血小板を含むリンパ球を含む。実施形態では、感作組成物への曝露ならびにその後の活性化および/または刺激の前に、T細胞の源は、対象から得られる。実施形態では、アフェレーシスによって収集した細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、細胞を、その後の処理ステップのために、適切な緩衝液または培地中に入れてもよい。本明細書に記載の実施形態において、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄されてもよい。実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠いてもよいか、またはすべてではなくとも多くの二価カチオンを欠いてもよい。当業者であれば容易に理解するように、洗浄ステップは、製造業者の指示に従う、半自動「流水式」遠心分離機(例えば、COBE(登録商標)2991細胞プロセッサであるBaxter)の使用等によって、当業者に既知の方法によって達成され得る。実施形態では、洗浄後、細胞を、例えばカルシウム(Ca)不含、マグネシウム(Mg)不含PBS等の様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁させてもよい。実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地中に直接再懸濁させてもよい。
【0161】
実施形態では、T細胞は、赤血球細胞を溶解または除去し、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離によって単球を枯渇させることによって、末梢血液リンパ球から単離される。実施形態では、特異的なT細胞の亜集団は、正または負の選択技術によってさらに単離することができる。
【0162】
実施形態では、T細胞は、CD3+細胞について正に選択することができる。当業者に既知の任意の選択技術が、使用されてもよい。非限定的な一例は、フローサイトメトリー選別である。別の実施形態では、T細胞は、抗CD3ビーズとともにインキュベートすることによって単離することができる。非限定的な一例は、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間にわたる、CTS(商標)Dynabeads(登録商標)CD3/CD28(Life Technologies Corp.、カタログ番号11141D)等の抗CD3/抗CD28結合ビーズである。実施形態では、期間は、30分間~36時間以上、およびそれらの間のすべての整数値の範囲である。実施形態では、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。別の実施形態では、期間は、10~24時間である。実施形態では、インキュベーション時間は、24時間である。24時間等のより長いインキュベーション時間は、細胞の産生量を増加させ得る。実施形態では、他の細胞型と比較して、T細胞がほとんど存在しないあらゆる状況において、より長いインキュベーション時間を使用して、T細胞を単離することができる。実施形態では、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択された細胞に固有の表面マーカーに指向された抗体の組み合わせを用いて達成することができる。1つの可能性のある方法は、負に選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに指向されたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、磁気免疫付着またはフローサイトメトリーによる細胞選別および/または選択である。実施形態では、増殖倍率は、ドナー細胞の可変性のために、出発材料に基づいて異なり得る。実施形態では、通常の出発密度は、約0.5×106個~約1.5×106個であり得る。
【0163】
実施形態では、T細胞亜集団は、1つ以上のマーカーが存在するかまたは不在であるかに基づく選択によって生成され得る。例えば、Treg細胞は、CD4+、CD25+、CD127負/低、および任意でFOXP3+である細胞の選択に基づいて、混合集団から得ることができる。実施形態では、Treg細胞は、FOXP3-であり得る。この例では、選択は、1つ以上の定義可能な特徴に基づいて、細胞を「選ぶこと」を事実上指す。さらに、選択は、1つ以上の特徴を有する細胞(正)または1つ以上の特徴を有しない細胞(負)に関しての選択であり得るという点で、正または負であり得る。
【0164】
Treg細胞に関して、例示の目的で、これらの細胞は、これらの細胞がCD4および/またはCD25に結合する抗体が結合した表面(例えば、磁気ビーズ)に結合すること、ならびにCD127に結合する抗体が結合した表面(例えば、磁気ビーズ)に非Treg細胞が結合することを通して、混合集団から得ることができる。特定の例として、CD3に結合する抗体が結合した磁気ビーズを使用して、CD3+細胞を単離してもよい。一旦放出された後、得られたCD3+細胞を、CD4に結合する抗体が結合した磁気ビーズと接触させてもよい。その後、得られたCD3+、CD4+細胞を、CD25に結合する抗体が結合した磁気ビーズと接触させてもよい。その後、得られたCD3+、CD4+、CD25+細胞を、CD127に結合する抗体が結合した磁気ビーズと接触させてもよく、収集される細胞は、これらのビーズに結合しない細胞である。
【0165】
実施形態では、複数の特徴を同時に使用して、T細胞亜集団(例えばTreg細胞)を得ることができる。例えば、2つ以上の細胞表面マーカーに結合する抗体をそれに結合した状態で含有する表面もまた、使用することができる。特定の例として、CD4+、CD25+細胞は、混合集団から、CD4およびCD25に結合する抗体が結合した表面にこれらの細胞が結合することにより、得ることができる。複数の特徴の同時選択は、所望の細胞型とともに「共精製」する望ましくないいくつかの細胞型をもたらし得る。これは、上記の特定の実施例を使用して、CD4+、CD25-およびCD4-、CD25+である細胞が、CD4+、CD25+細胞に加えて得られ得るため、その通りである。
【0166】
本明細書では、1つ以上のT細胞亜集団のメンバーを得るための方法が含まれ、T細胞亜集団のメンバーは、特定の特徴によって特定され、これらの特徴に関して異なる細胞から分離される。本明細書に示される方法において使用され得る特徴の例には、以下のタンパク質、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD19、CD20、CD25、CD27、CD33、CD34、CD45、CD45RA、CD56、CD62L、CD123、CD127、CD278、CD335、CCR7、K562P、K562CD19、およびFOXP3の存在または非存在が含まれる。
【0167】
CAR-T細胞
また、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)を生成するための組成物および方法も提供される。キメラ抗原受容体(CAR)は、指定された免疫細胞を提供するように設計された操作された受容体である。受容体は、キメラと呼ばれるが、これは、それらが異なる源に由来する部分で構成されているためである。
【0168】
多くの場合において、CAR-T細胞は、抗原結合機能およびT細胞活性化機能を組み合わせた組換え受容体を発現する。通常、CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインの3つの領域を含む。
【0169】
細胞外ドメインは、細胞の外部に露出している受容体の領域であり、典型的には、シグナルペプチド、抗原認識領域、およびスペーサーの3つの領域を含む。シグナルペプチドは、CARの細胞膜への組み込みを促進する。CARの抗原認識領域は、典型的には、単鎖可変抗体断片(例えば、CD19受容体に対する結合活性を有する抗体断片)である。膜貫通ドメイン(例えばCD28膜貫通ドメイン)は、典型的には、T細胞の細胞膜にまたがる疎水性領域であり、細胞外ドメインによって受信されたシグナルの通過を可能にして、T細胞の内部に伝達させる。抗原認識後、受容体がクラスター化し、シグナルが細胞内ドメインに伝達される。
【0170】
CARをコードする核酸分子は、任意の数のフォーマットで構造化することができ、任意の数の方法によってT細胞に導入することができる。CARコード領域は、通常、プロモータ(例えばCMVプロモータ)等の発現制御配列に作動可能に連結される。さらに、これらの核酸分子は、典型的には、調節される要素、翻訳ターミネータ、および1つ以上の選択可能なマーカー等の成分を含む核酸ベクター(例えばクローニングベクター)中に存在する。
【0171】
治療を必要とする対象または患者を治療するための1つのアプローチは、増殖させたT細胞を使用し、CARを発現させることにより腫瘍細胞上で発現した抗原を標的化するようにT細胞を遺伝子組換えすることである。多くの場合において、CAR等のタンパク質をコードする核酸分子がT細胞に導入され、続いて操作されたT細胞が増殖される。
【0172】
CARを利用する治療において、免疫細胞を、患者血液または他の組織から採取してもよい。T細胞は、T細胞の表面上でCARを発現するように、下記のように操作され、T細胞が特異的抗原(例えば、腫瘍抗原)を認識することを可能にする。次いで、これらのCAR-T細胞は、本明細書に記載の方法によって増殖させ、患者に注入することができる。患者への注入後、T細胞は、増殖し続け、CARを発現し続け、CARが操作されて認識する特異的抗原を抱えるT細胞に対して、免疫応答を開始させる。
【0173】
また、本明細書では、CARを発現するように操作された細胞(例えばT細胞)が提供され、CAR-T細胞は抗腫瘍特性を示す。CARは、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖(例えばCD3ゼータ)の細胞内シグナル伝達ドメインに融合した抗原結合ドメインを有する細胞外ドメインを含むように設計され得る。CARは、T細胞内で発現したとき、抗原結合特異性に基づいて、抗原認識の方向を変えることができる。
【0174】
CARの抗原結合部分は、他に抗原結合部分と称される標的特異的結合エレメントを含む。部分の選択は、標的細胞の表面を画定するリガンドの種類および数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上で細胞表面マーカーとして機能するリガンドを認識するように選択されてもよい。したがって、CARの抗原部分ドメインには、ウイルス、細菌、および寄生虫感染症、自己免疫性疾患ならびにがん細胞と関連するものが含まれる。
【0175】
CARをコードする天然または合成核酸の発現は、典型的に、CARポリペプチドまたはプロモータへのCARポリペプチドの部分をコードする核酸を動作可能に結合させ、その構築物を発現ベクター内に組み込むことにより達成される。ベクターは、複製および組み込み真核生物に好適であり得る。典型的なクローニングベクターは、転写および翻訳ターミネータ、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモータを含む。
【0176】
核酸をクローニングして、いくつかの種類のベクターにすることができる。例えば、核酸をクローニングして、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにすることができる。特定の目的のベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、および配列決定ベクターが含まれる。
【0177】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞内にもたらされ得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、ならびに他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物体内に複製機能の起点、プロモータ配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択可能マーカーを含有する(例えば、WO01/96584、WO01/29058、および米国特許第6,326,193号)。
【0178】
いくつかのウイルスベースの系が、哺乳動物細胞内への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、ベクター内に挿入され、当該技術分野で既知の技術を使用して、レトロウイルス粒子内にパッケージ化され得る。次いで、組換えウイルスを単離し、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達してもよい。いくつかのレトロウイルス系は、当該技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターは、当該技術分野で既知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0179】
追加のプロモータエレメント(例えばエンハンサ)が、転写開始の頻度を調節する。典型的に、これらは、開始部位の上流の領域30~110bpに位置するが、いくつかのプロモータは、開始部位の下流にも機能エレメントを含むことが最近示された。プロモータエレメント間の隙間は多くの場合柔軟であり、そのため、エレメントが反転または互いに対して移動された場合、プロモータ機能が保持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモータでは、プロモータエレメント間の間隙は、活性が低下し始める前に、50塩基対離れるまで増加され得る。プロモータに応じて、個々のエレメントは、転写を活性化させるように協働してまたは独立して機能し得るようである。CAR-T細胞を作製する方法は、当該技術分野で知られている(例えば、米国特許第8,906,682号を参照されたい)。
【0180】
細胞生存率
細胞生存率を決定するための多くの方法が知られている。そのような方法は、(1)生きているかもしくは死んでいる、または(2)活発に増殖している細胞の検出に基づくことができる。細胞集団が研究されている場合、細胞生存率は一般的にパーセンテージまたは比率のいずれかとして表される。例として、生きている細胞と生きていない細胞とを区別するためのトリパンブルー色素ベースアッセイが、100細胞の集団サイズで使用され、40細胞がこの色素で染色され、60細胞がこの色素で染色されない場合、細胞は生存可能であり、非生存細胞対生存細胞の比率は1:1.5である。
【0181】
細胞生存率アッセイは、以下を含むいくつかのカテゴリーに分類され得る。
【0182】
膜破壊アッセイ:これらのアッセイは、細胞が細胞成分を保持する、および/または細胞の外に物質を保持することができないことに基づく。細胞膜が破壊された細胞から放出され得るある酵素の1つは、乳酸デヒドロゲナーゼである。これは多くの哺乳動物細胞に見られる安定した酵素であり、細胞膜が無傷でなくなった場合に容易に検出され得る。トリパンブルーは色素排除アッセイとして使用でき、この色素は生存細胞に取り込まれないが非生存細胞に取り込まれる。トリパンブルーアッセイは、光学顕微鏡を使用して細胞を容易にカウントできるため、有利である。トリパンブルーと同様に、ヨウ化プロピジウム(PI)もまた膜不透過性色素であり、通常は生細胞から除外される。この色素は、インターカレーションによって二本鎖DNAに結合する。PIは488nmで励起され、最大波長617nmで発光する。これらのスペクトル特性により、PIは、488nmで励起されたもの(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびフィコエリトリン(PE)等)等の他の蛍光色素とともに使用され得る。
【0183】
7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)は、DNAと結合するとスペクトルシフトを生じる蛍光インターカレータである。7-AAD/DNA複合体は、488nmレーザーで励起され得、647nmの最大発光を有するため、この核酸染色は多色蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーに役立つ。7-AADは、一般的に生細胞から除外される。
【0184】
ミトコンドリア活性およびカスパーゼアッセイ:アポトーシスの初期段階の特徴は、膜および酸化還元電位の変化を含むミトコンドリアの破壊である。MitoTracker(商標)染料(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号M34150、M34151、およびM34152)は、例えば、生細胞におけるミトコンドリアを染色するための膜電位依存性プローブである。MitoTracker(商標)色素の蛍光シグナルは、脱分極した膜を有するミトコンドリアよりも活性ミトコンドリアの方が明るく、集団内の健康な細胞を識別する方法を提供する。
【0185】
レサズリンおよびホルマザン(MTT/XTT)は、細胞死の前兆となるアポトーシスプロセスの様々な段階を分析することができる。alamarBlue(商標)CellViability Reagent(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号DAL1025)は、生細胞の還元力を使用して生存率を定量的に測定することにより細胞の健康指標として機能する、すぐに使用できるレサズリンベースの溶液である。alamarBlue(商標)試薬の有効成分であるレサズリンは、毒性がない細胞透過性の化合物であり、青色で実質的に非蛍光性である。生細胞に入ると、レサズリンは還元されて、赤色で蛍光性の高い化合物レソルフィンになる。生存率の変化は、吸光度または蛍光ベースのプレートリーダーを使用して検出され得る。
【0186】
セルに加えられると、alamarBlue(商標)Cell Viability Reagentは、生細胞の還元環境によって修飾されて赤色に変わり、蛍光性が高くなる。この色の変化および蛍光の増加は、吸光度(570nmおよび600nmで検出)または蛍光(530~560nmの励起および590nmでの発光を使用)を使用して検出され得る。生存率をアッセイするために、この試薬が完全培地中の細胞に添加され(洗浄または細胞溶解ステップは不要)、1~4時間インキュベートされ、吸光度または蛍光ベースのプレートリーダーを使用して読み取られる。
【0187】
アポトーシスを検出するための1つの手段は、カスパーゼ-3/7活性を検出することである。そのような検出のために使用され得る1つの試薬はCellEvent(商標)カスパーゼ-3/7グリーン検出試薬(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号C10423)である。CellEvent(商標)カスパーゼ-3/7グリーン検出試薬は、約502/530nmの最大吸収/発光を有する核酸結合色素にコンジュゲートした4アミノ酸ペプチド(DEVD(配列番号17))である。DEVDペプチド配列(配列番号17)は、カスパーゼ-3/7の切断部位であり、コンジュゲート色素はペプチドから切断されてDNAに結合するまで非蛍光性である。CellEvent(商標)カスパーゼ-3/7グリーン検出試薬は、DEVDペプチド(配列番号17)が色素がDNAに結合する能力を阻害するため、本質的に非蛍光性である。しかしながら、アポトーシス細胞でカスパーゼ-3/7が活性化された後、DEVDペプチド(配列番号17)が切断され、色素がDNAに結合して、明るい蛍光発生応答を生成できるようになる。DNAに結合したときの色素の蛍光発光は約530nmであり、標準のFITCフィルターセットを使用して観察され得る。
【0188】
機能アッセイ:細胞機能のアッセイは、アッセイされる細胞型に固有である傾向がある。一例として、運動性を使用して精子細胞の機能を評価することができる。配偶子の生存を使用して、受胎能力をアッセイすることができる。赤血球は、酸素濃度に基づく変形能、浸透圧脆弱性、溶血、ヘモグロビン含有量、およびATPレベルの観点から分析されている。
【0189】
核酸取り込みアッセイ:これらのアッセイは、核酸(例えば、DNAまたはRNA)への成分の取り込みに基づいている。そのようなアッセイの例は、DNAへの[3H]-チミジンまたはBrdUの取り込みに基づくものである。
【0190】
細胞生存率アッセイの選択は、多くの場合、コスト、速度、アッセイの容易さ、データの再現性および/または信頼性、ならびに利用可能な測定機器等の多くの要因に基づいて行われる。これらの点に従い、例えば、以下の機器および/またはデバイスを使用して、測定データを取得することができる:光学顕微鏡、フローサイトメトリー、マイクロアレイ、シンチレーション検出器、および分光光度計。
【0191】
細胞増殖の測定は、一般に、少なくとも細胞集団に存在する生存細胞に関して、細胞生存率に直接関連している。細胞増殖および分裂する細胞の能力は、部分的に細胞生存率の尺度である。細胞集団に関して、増殖アッセイは、集団内の細胞が分裂する能力を測定する。換言すれば、非生存細胞は典型的には増殖しない。したがって、細胞集団内の増殖細胞の多くは生細胞である。しかしながら、ほとんどの細胞集団は、これらの集団内の細胞が分裂しているかどうかに関係なく、非生存細胞を含む。
【0192】
細胞増殖は、いくつかの異なる方法で測定することができる。1つのそのような方法は、細胞培養培地中で培養されている細胞の光学密度を測定することによるものである。これらの方法は、一般に、細胞が光を散乱する能力に基づいており、細胞の数が多いほど、より多くの光を散乱する。光学密度は、光度計を使用して600nmで測定されることが多い。
【0193】
細胞増殖は、蛍光色素を使用して行うこともできる。1つのそのような方法は、CyQUANT(登録商標)Cell Proliferation Assay Kit(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号C7026)の使用を含む。このキットの基本は、緑色蛍光色素であるCyQUANT(登録商標)GR色素の使用であり、これは、細胞の核酸に結合すると強い蛍光増強を示す。CyQUANT(登録商標)GR色素を含む緩衝液を添加して細胞を溶解し、次いで蛍光を直接測定する。このアッセイは、200μLの容量で50個以下の細胞~約250,000個の細胞までの線形検出範囲を有する。励起は典型的には約485nmであり、発光検出は典型的には約530nmである。
【0194】
キット
細胞の培養ならびに/または細胞の増殖、遺伝子操作、活性化、保存およびエレクトロポレーション高分子のためのキットも本明細書で提供される。本明細書で提供されるキットは、以下の成分のうちの1つ以上、または2つ以上を有し得る:(1)1つ以上の細胞培養培地、(2)1つ以上のエレクトロポレーション試薬、(3)1つ以上の高密度リポタンパク質、(4)1つ以上のリポタンパク質化合物(例えば、HDL、LDL、APO-AI、APO-AI等)、(5)T細胞を活性化するための1つ以上の試薬(例えば、抗CD3および抗CD28抗体を含むビーズ)、(6)キットの成分を使用するための1つ以上の指示セット(例えば書面による指示)。
【実施例】
【0195】
実施例1:リポタンパク質を含む培養培地でのT細胞の増殖
材料/方法:
高密度リポタンパク質(HDL)(Lee Biosolutions,Inc.、10850 Metro Court,Maryland Heights,MO、カタログ番号361-12)を、使用するまで-80℃で出荷および保管し、使用前に37℃の水浴で解凍した。3つの異なるロットを購入し、試験した。
【0196】
組換えアポリポタンパク質I(APO-AI)(Abcam、1 Kendall Square,Suite B2304,Cambridge,MA、カタログ番号ab50239)をCTS OpTmizer(商標)で最終濃度1mg/mLまで再懸濁した。
【0197】
アポリポタンパク質II(APO-AII):血漿由来のAPO-AIIをLee Biosolutions,Inc.から入手し、冷凍して出荷し、次いで-20℃で保存し、使用直前に解凍することにより調製して使用した(上記のHDLの調製を参照されたい)。
【0198】
X-VIVO(商標)15(Lonza、Walkersville,MD、カタログ番号04-418Q)は、造血細胞用に配合されたL-グルタミン、ゲンタマイシンおよびフェノールレッドを含む無血清培地である。
【0199】
別段に指定しない限り、HDL、LDL、およびアポリポタンパク質は表6に示されるように配合された。
【表6】
【0200】
細胞培養:T細胞の単離:正常なドナー由来の非特定化された凍結アフェレーシスバッグを、StemExpress(9707 Medical Center Drive,Suite 230,Rockville,MD、カタログ番号LE005F)から入手した。Dynabeads(登録商標)Untouched(商標)Human T Cells kit(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11344D)を用いて、T細胞をPBMCから負に単離した。
【0201】
T細胞の活性化および増殖:T細胞(播種密度0.125×106vc/mL、8mLの総培地中で1×106vc/ウェル)をDynabeads(登録商標)Human T-Expander CD3/CD28(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号.11141D)でT細胞当たり3ビーズの比率で活性化し、24ウェルG-Rex(登録商標)プレートでCTSOpTmizer(商標)T cell Expansion Serum-Free Medium中で培養した。Vi-CELL(商標)XRアナライザ(Beckman Coulter、Indianapolis IN)で細胞をカウントした。
【0202】
24ウェル静止プレート(Corning Life Sciences、カタログ番号3524)で行ったAPO-AI実験を除くすべての実験は、24ウェルG-Rex(登録商標)プレート(Wilson Wolf、33 5th Ave NW,Suite 700,St Paul,MN、P/N80192M)で行った。
【0203】
この実施例では、以下の培地を使用した。
1.CTS OpTmizer(商標)+HDL:2.6%のT細胞サプリメント(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A37050-01)、2mMのグルタミン、4mMのGlutaMAX(商標)(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号35050061)、8mg/LのHDL。
2.完全CTS OpTmizer(商標):2.5%のICSR、2.6%のT細胞サプリメント、2mMのグルタミン、4mMのGlutaMAX(商標)。
【0204】
HDLおよびAPO-AII実験は、24ウェルG-Rex(登録商標)プレートで以下のプロトコルを使用して行った。
【0205】
0日目:バルクT細胞を、ICSR、T細胞サプリメント、およびグルタミンを含まない基礎CTS OpTmizer(商標)またはGlutaMAX(商標)中で解凍し、次いで各ウェルに合計8mLで1×106細胞/ウェルでそれらを播種した。次いで、T細胞をDynabeads(登録商標)Human T-Expander CD3/CD28で3:1のビーズ:細胞で活性化した。次いで、IL-2を100U/mLまで加えた。
【0206】
3日目:IL-2をさらに100U/mLまで追加した。
【0207】
5日目:細胞を乱すことなく4mLの全培地をゆっくりと除去することにより培地交換を行い、次いで新鮮な4mLの培地をウェルに加えた。次いで、細胞を懸濁し、Vi-CELL(商標)XRアナライザ(Beckman Coulter)を使用してカウントした。また、IL-2をさらに100U/mLまで追加した。
【0208】
7日目:細胞を乱すことなく4mLの全培地をゆっくりと除去することにより培地交換を行い、次いで細胞を乱すことなく新鮮な4mLの培地を加えた。また、IL-2をさらに100U/mLまで追加した。
【0209】
10日目:Vi-CELL(商標)XRアナライザを使用して細胞をカウントした。Dynabeads(登録商標)を、磁気分離によって0.5x106個の細胞から除去した。CD3、CD4、CD8、CD27、CCR7、およびCD62Lに対する抗体を用いて、表面染色を行った。Gallios(商標)フローサイトメーターおよびKaluza(商標)ソフトウェアで、フローサイトメトリー分析を行った。
【0210】
APO-AI実験は、24ウェル静止プレートで以下のプロトコルを使用して行った。
【0211】
0日目:バルクT細胞を基底CTS OpTmizer(商標)中で解凍し、各ウェルに合計8mLで1×106細胞/ウェルでそれらを播種した。次いで、T細胞をDynabeads(登録商標)Human T-Expander CD3/CD28で3:1のビーズ:細胞で活性化する。次いで、IL-2を100U/mLまで加えた。
【0212】
3、5および7日目:Vi-CELL(商標)XRアナライザを使用して、細胞をカウントした。細胞を0.5×106細胞/mLの濃度で供給した。また、IL-2は、毎回の供給後にさらに100U/mLまで追加した。
【0213】
10日目:Vi-CELL(商標)XRアナライザを使用して細胞をカウントした。
【0214】
表現型の決定:初代ヒトT細胞を、HDLあり、およびなしで10日間増殖させた。Dynabeads(登録商標)を、磁気分離によって0.5×106個の細胞から除去した。CD3、CD4、CD8、CD27、CD62L、およびCCR7に対する抗体を用いて、表面染色を行った。Gallios(商標)フローサイトメーターおよびKaluza(商標)ソフトウェア(Beckman Coulter、Indianapolis IN)で、フローサイトメトリー分析を行った。
【0215】
結果:
細胞の成長および生存率:T細胞の増殖は、総増殖倍数として表される。表7および8に示されているデータは、ICSRを含まないHDL含有培地およびICSRを含む培地でのT細胞の増殖を示している。細胞は、2つの異なるセットの条件下で増殖された。条件1:CTS OpTmizer(商標)中の8mg/LのHDL、2.6%のT細胞サプリメント(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号A37050-01)、2mMのグルタミン、および4mMのGlutaMAX(商標)。条件2:CTS OpTmizer(商標)中の2.6%のICSR、T細胞サプリメント、2mMのグルタミン、および4mMのGlutaMAX(商標)。結果は、ICSRを含まないがHDLが添加されたCTS OpTmizer(商標)でT細胞を増殖させると、T細胞成長が有意に増加することを示した。表8は、条件1および2で増殖させたT細胞の生存率が、5日目および7日目にHDLにより有意に増加することを示すデータを示している。
【0216】
HDLを用いた実験を8回行ったが、結果はHDLが5日目に平均8倍、10日目に6.6倍成長を増加させることを示している。HDLは5日目に平均22.5%生存率を増加させることが分かった。
【0217】
図4(表10および11)は、HDLが成長に対して使用時に添加するのと同じ効果があるかどうかを評価するためにHDLがT細胞サプリメントに配合されたデータを示す。4人の異なるドナーからのT細胞を試験した。結果は、T細胞サプリメントに配合されたHDLが、細胞成長に対して使用時にHDLを添加した場合と同じ効果を示したことを実証した。結果はまた、5日目に完全CTS OpTmizer(商標)と比較してHDLを含む条件で成長の4.4倍の増加を示し、5%ヒト血清を添加したX-VIVO(商標)(Lonza、Walkersville,MD、カタログ番号BEBP02-054Q)と比較してHDLの1.3倍の増加を示した。
図5(表12および13)は、HDLを含むT細胞サプリメント、使用時点でのHDL、完全CTS OpTmizer(商標)、および5%ヒト血清を添加したX-VIVO(商標)中で増殖させた細胞の生存率のデータを示す。結果は、完全CTS OpTmizer(商標)と比較して、HDLで細胞生存率が34%増加することを示した。
【0218】
図6(表14)は、HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)で成長させた細胞のCD8:CD4比率を示す。結果は、完全CTS OpTmizer(商標)と比較して、HDLを含む条件ではCD8対CD4の比率に1.8倍の変化があることを示した。
【0219】
図7(表15)は、10日目に評価された細胞の表現型を示している。結果は、HDLを含む細胞が完全CTS OpTmizer(商標)(CO)と比較してより高いCD27+およびCCR7+表現型を有していたことを示している。
【0220】
表16、17、および18は、ネイティブAPO-AIIがICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)中で試験されたデータを示している。結果は、完全CTS OpTmizer(商標)(CO)と比較して、2μg/mLのAPO-AIIを含む条件では、5日目に平均1.3倍の成長の増加、および10日目に1.3倍の成長の増加があることを示している。
図8A、9A、および10Aに示される生存率は、2μg/mLのAPO-AIIを含む条件で5日目に平均14.3%の増加、および10日目に平均9.5%の増加を示す。
【0221】
表19に示すデータは、ICSRを含む組換えAPO-AI培養培地を使用してT細胞の増殖が決定されたときに生成されたものである。結果は、10日目の成長が1.1倍増加したことを示している。表20のデータは、完全CTS OpTmizer(商標)(CO)の使用と比較して、CTS OpTmizer(商標)中では1mg/mlのAPO-AI+ICSRを含む条件で5日目の生存率が3.5%増加し、10日目の生存率が5.6%増加することを示している。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0222】
実施例2:脂質で増殖させた細胞のエレクトロポレーション
方法
別段に指定されない限り、この実施例では以下の方法が使用された。また、この実施例では、HDLはLee Biosolutions,Inc.、10850 Metro Court,Maryland Heights,MO(カタログ番号361-10および361-12)から入手し、さらに希釈せずに培地に直接添加した。
【0223】
(1)抗CD3および抗CD28抗体ビーズを含むビーズ(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11131D)ならびに(2)IL-2(100IU/mL)(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号CTP0021)を使用して、回復培地(6mg/LのHDLを含み、ICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)、ここでは「CTS OpTmizer(商標)6HDL」と呼ばれる)または対照としての完全CTS OpTmizer(商標)(ICSRを含むCTS OpTmizer(商標))中で3日間T細胞を活性化した。3日目に細胞をカウントし、洗浄し、次いでOpti-MEM(商標)細胞培養培地(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号11058021)に再懸濁し、エレクトロポレーションした(Neon Transfection System、1100V、各20msの2つのパルス長)。エレクトロポレーション後、IL-2(100IU/mL)を含むCTS OpTmizer(商標)完全培地中で細胞をインキュベートした。pAAV-GFPベクター(Cell Biolabs Inc.、カタログ番号AAV-400)を使用して、細胞生存率およびエレクトロポレーション効率(GFP発現)をエレクトロポレーションの24時間後に決定した。フローサイトメトリー(Beckman Coulter、Gallios(商標)機器)を使用してGFP発現を決定した。細胞を7日目にカウントし、新鮮な培地およびIL-2(100IU/mL)を含む0.5x106/mlの濃度で新しい12ウェル静止プレートに移し、生存率およびカウントが決定される10日目まで培養した。
【0224】
図14および15に示されるデータは、以下のバリエーションで生成された。これらの実験では、10日間のワークフローを通して、細胞を指定された培養培地と継続的に接触させた。
【0225】
結果
本明細書に記載されている実験のいくつかでは、個々のドナー間でデータの変動が見られた。そのような変動は、5人の異なるドナーからのT細胞を使用して生成されたデータを示す
図8において観察され得る。
【0226】
図8に示すデータは、CTS OpTmizer(商標)6HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)中で培養されたT細胞間の生存率データの比較を表している。各時点および各ドナーのベースライン(ゼロ)は、完全CTS OpTmizer(商標)中のT細胞の細胞生存率測定によって設定された。したがって、各バーの高さは生存率の違いを反映している。
【0227】
図8のデータは、エレクトロポレーションの24時間後に生存率に最大の違いが見られ、CTS OpTmizer(商標)6HDL試料のT細胞生存率の平均的な向上は約20%である。データから分かるように、エレクトロポレーション前のCTS OpTmizer(商標)6HDL中で増殖させたT細胞の生存率は、エレクトロポレーション後24時間の5つのドナー試料すべてにおいて、完全CTS OpTmizer(商標)中で増殖させたT細胞よりも高い。これらのデータは、6mg/LのHDLによるT細胞のエレクトロポレーション前の増殖が、エレクトロポレーションの24時間後に細胞生存率の増加をもたらすことを実証している。
【0228】
図9に示されるデータもまた、6mg/LのHDLによるT細胞のエレクトロポレーション前の増殖が、エレクトロポレーション後のより高い細胞生存率をもたらすことを実証している。特に、
図9に示されるデータは、完全CTS OpTmizer(商標)よりも、CTS OpTmizer(商標6HDLにおいてエレクトロポレーションの24時間後の細胞生存率のより低い平均減少を示している。CTS OpTmizer(商標)6HDLの場合、3日目および7日目の平均細胞生存率は約90%であることが示された(3日目:88.95%、SD 2.42;7日目:91.83%、SD 3.08)が、これは4日目で平均約70%に減少する(71.14%、SD 7.26)。完全CTS OpTmizer(商標)の場合、3日目および7日目の平均細胞生存率は約87%であることが示された(3日目:86.57%、SD 1.13;7日目:88.17%、SD 5.79)が、これは4日目で平均約50%に減少する(50.83%、SD 10.54)。したがって、CTS OpTmizer(商標)6HDLの4日目の生存率の低下は約18%(17.81%)であり、完全CTS OpTmizer(商標)の4日目の生存率の低下は約36%(35.74%)である。したがって、CTS OpTmizer(商標)6HDL中の細胞の増殖は、エレクトロポレーションの24時間後に完全CTS OpTmizer(商標)中よりも約50%高い細胞生存率をもたらす。
【0229】
図10に記載のデータは、エレクトロポレーション前のCTS OpTmizer(商標)6HDL中で増殖したT細胞が、完全CTSOpTmizer(商標)中で増殖したT細胞よりも10日目に高い増殖を達成する(それぞれ46.34倍の増殖、SD 16.62対41.05倍の増殖、SD 11.83)ことを示している。
【0230】
図11および12は、CTS OpTmizer(商標)6HDLおよび完全CTS OpTmizer(商標)中でのエレクトロポレーションの前に増殖させたT細胞のエレクトロポレーション効率の比較を示している。エレクトロポレーション効率は、CTS OpTmizer(商標)6HDLにおいて平均58.99%、SD 11.64、完全CTS OpTmizer(商標)において51.74%、SD 5.79であることが分かった。したがって、完全CTS OpTmizer(商標)と比較して、CTS OpTmizer(商標)6HDLにおいて約7%のエレクトロポレーション効率の増加が観察された。
【0231】
図13に示されるデータは、異なる条件下で2人のドナーから得られたT細胞のエレクトロポレーション効率の比較を示している。最高の一貫したエレクトロポレーション効率が、CTS OpTmizer(商標)6HDL、ならびに5mg/LのHDLおよび1mg/LのLDLを含むICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)で見られた。
【0232】
図14に示されるデータは、細胞がICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)中でHDLおよびLDLと接触し続けている場合、エレクトロポレーション後7日間にわたってT細胞の生存率が維持されることを示している。
図15のデータは、ICSRを含まないCTS OpTmizer(商標)中でHDLおよびLDLと接触し続けたT細胞の増殖が、エレクトロポレーション後に完全CTS OpTmizer(商標)に移されたT細胞よりも著しく遅かったことを示している。したがって、
図14および15に示されるデータは、核酸分子がT細胞に導入され得、細胞が低増殖/高生存率状態で少なくとも7日間維持され得ることを実証している。
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【0233】
他の実施形態
本発明を、発明を実施するための形態と併せて記載している一方で、前述の記載は、例示を意図し、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではない。他の態様、利点、および修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0234】
本発明が、その好ましい実施形態を参照して具体的に示され、記載される一方で、当業者であれば、形態および詳細の様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、その中で行われ得ることを理解するであろう。
【0235】
実施形態は、以下の番号付き条項に従ってもよい。
【0236】
項1.無血清細胞培養培地を調製するための方法であって、リポタンパク質粒子組成物またはリポタンパク質組成物を基礎培養培地に添加することを含み、リポタンパク質粒子組成物またはリポタンパク質組成物が血清代替物として機能する量で添加される方法。
【0237】
項2.リポタンパク質粒子組成物が、(a)高密度リポタンパク質粒子、(b)低密度リポタンパク質粒子、および(c)超低密度リポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、項1に記載の方法。
【0238】
項3.リポタンパク質粒子組成物が、ヒト血液から得られたリポタンパク質粒子を含む、項1または2に記載の方法。
【0239】
項4.リポタンパク質粒子組成物が、合成リポタンパク質粒子を含む、項1または2に記載の方法。
【0240】
項5.リポタンパク質粒子組成物が、合成高密度リポタンパク質粒子を含む、項1、2、または4のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
項6.合成リポタンパク質粒子が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIを含む、項4に記載の方法。
【0242】
項7.合成リポタンパク質粒子が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIの一部を含む、項5に記載の方法。
【0243】
項8.アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIが、組換え的に産生される、項6または7に記載の方法。
【0244】
項9.アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AIIの組換え的生産が、非哺乳動物細胞を使用して行われる、項8に記載の方法。
【0245】
項10.非哺乳動物細胞が、昆虫細胞である、項9に記載の方法。
【0246】
項11.1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地であって、無血清細胞培養培地は、哺乳動物細胞の増殖を補助し、哺乳動物細胞の増殖は、1つ以上のリポタンパク質化合物を含まないが血清を含む培地で増殖した同じ細胞と比較して、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地において10%増加する、無血清細胞培養培地。
【0247】
項12.1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、アポリポタンパク質AIである、項11に記載の無血清細胞培養培地。
【0248】
項13.1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、アポリポタンパク質AIIである、項11または12に記載の無血清細胞培養培地。
【0249】
項14.1つ以上のリポタンパク質化合物のうちの少なくとも1つが、リポタンパク質粒子の成分である、項11~13のいずれか1つに記載の無血清細胞培養培地。
【0250】
項15.リポタンパク質粒子が、高密度リポタンパク質である、項14に記載の無血清細胞培養培地。
【0251】
項16.リポタンパク質粒子が、哺乳動物から得られる、項14または15に記載の無血清細胞培養培地。
【0252】
項17.リポタンパク質粒子が、非天然型である、項14または15に記載の無血清細胞培養培地。
【0253】
項18.非天然リポタンパク質粒子が、非天然タンパク質、天然アポリポタンパク質、または天然アポリポタンパク質の一部のいずれかを含む、項17に記載の無血清細胞培養培地。
【0254】
項19.細胞生存率の増加が、10%~約75%の範囲にある、項11~18のいずれか1つに記載の無血清細胞培養培地。
【0255】
項20.哺乳動物細胞が、ハイブリドーマ細胞である、項11に記載の無血清細胞培養培地。
【0256】
項21.哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、項20に記載の無血清細胞培養培地。
【0257】
項22.ヒト細胞が、免疫細胞である、項21に記載の無血清細胞培養培地。
【0258】
項23.免疫細胞が、T細胞である、項22に記載の無血清細胞培養培地。
【0259】
項24.T細胞が、(a)調節性T細胞、(b)CD4+T細胞、(c)CD8+T細胞、(d)TH1細胞、(e)TH2細胞、(f)TH3細胞、(g)TH17細胞、(h)TH9細胞、および(i)TFH細胞からなる群から選択される1以上のT細胞である、項23に記載の無血清細胞培養培地。
【0260】
項25.T細胞が、CD3表面マーカーへのライゲーションを介して血液から単離される、項23または24に記載の無血清細胞培養培地。
【0261】
項26.哺乳動物細胞を増殖させるための方法であって、哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、1つ以上のリポタンパク質化合物を含む無血清細胞培養培地中で哺乳動物細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【0262】
項27.リポタンパク質化合物が、1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、項26に記載の方法。
【0263】
項28.リポタンパク質粒子化合物が、(a)高密度リポタンパク質粒子、(b)低密度リポタンパク質粒子、および(c)超低密度リポタンパク質粒子からなる群から選択される1つ以上のリポタンパク質粒子を含む、項27に記載の方法。
【0264】
項29.哺乳動物細胞集団のエレクトロポレーションのための方法であって、(a)哺乳動物細胞の増殖を可能にする条件下で、無血清培養培地中で少なくとも12時間、哺乳動物細胞集団を1つ以上のリポタンパク質化合物と接触させることと、(b)哺乳動物細胞集団に1つ以上の電気パルスを印加して、それにより哺乳動物細胞集団のメンバーの細胞膜をエレクトロポレーションすることと、を含み、エレクトロポレーション効率は少なくとも60%であり、哺乳動物細胞集団における細胞の生存率は10%未満減少する、方法。
【0265】
項30.エレクトロポレーション効率が、哺乳動物細胞集団のメンバーにおける検出可能なマーカーの発現によって測定される、項29に記載の方法。
【0266】
項31.検出可能なマーカーが、蛍光タンパク質である、項30に記載の方法。
【0267】
項32.活性化されたT細胞集団を維持するための方法であって、(a)T細胞の活性化集団を生成することと、(b)リポタンパク質サプリメントの存在下で、ステップ(a)において生成されたT細胞の活性化集団を増殖させることと、(c)ステップ(b)において生成された増殖したT細胞の活性化集団を、次の7日間で細胞増殖速度の少なくとも30%の低下をもたらすのに十分な強度の電界に曝露することと、(d)ステップ(b)と同じ条件下でステップ(c)のT細胞の活性化集団を7日間維持することと、を含み、ステップ(a)~(d)の間のT細胞の活性化集団の生存率は70%超を維持する、方法。
【0268】
項33.1つ以上の核酸分子が、ステップ(c)において、T細胞の活性化集団の個々のT細胞に導入される、項32に記載の方法。
【0269】
項34.1つ以上の核酸分子のうちの少なくとも1つが、キメラ抗原受容体をコードする、項33に記載の方法。
【0270】
項35.キメラ抗原受容体が、T細胞の活性化集団の個々のT細胞において安定して発現される、項34に記載の方法。
【0271】
項36.T細胞の活性化集団が、ステップ(b)において3日間増殖される、項32に記載の方法。
【0272】
項37.(e)ステップ(d)後にT細胞の活性化集団を洗浄することと、(f)リポタンパク質サプリメントの非存在下で、ステップ(e)において生成された洗浄されたT細胞の活性化集団を増殖させることと、をさらに含む、項32に記載の方法。
【0273】
項38.5日間の期間にわたり、洗浄されたT細胞の活性化集団の生存率が70%超を維持し、洗浄されたT細胞の活性化集団が、少なくとも3倍増殖する、項37に記載の方法。
【0274】
項39.T細胞の活性化集団が、ステップ(d)の間に異なる場所に輸送される、項32に記載の方法。
【0275】
項40.異なる場所が、100マイル超離れている、項32に記載の方法。
【0276】
項41.哺乳動物細胞を保存するための方法であって、(a)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を増殖させるステップと、(b)哺乳動物細胞を電界に曝露するステップと、(c)1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地中で哺乳動物細胞を増殖させるステップと、をこの順番で含み、ステップ(c)における哺乳動物細胞は、ステップ(a)よりも少なくとも50%低い速度で増殖し、哺乳動物細胞の生存率は、ステップ(a)~(c)の間70%超を維持する、方法。
【0277】
項42.哺乳動物細胞が、T細胞である、項41に記載の方法。
【0278】
項43.哺乳動物細胞が、ステップ(c)において7日間増殖される、項41に記載の方法。
【0279】
項44.ステップ(c)における哺乳動物細胞の細胞生存率が、7日間の増殖の間、70%超を維持する、項43に記載の方法。
【0280】
項45.ステップ(c)における哺乳動物細胞が洗浄され、少なくとも50%低い濃度の1つ以上のリポタンパク質化合物を含む培養培地に移される、項41に記載の方法。
【0281】
項46.核酸分子が、ステップ(b)において哺乳動物細胞に導入される、項41に記載の方法。
【0282】
項47.核酸分子が、キメラ抗原受容体をコードする、項46に記載の方法。
【0283】
項48.哺乳動物細胞が、T細胞である、項47に記載の方法。
【配列表】
【国際調査報告】