(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】多重接合光起電力デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
H01L31/04 122
H01L31/04 112Z
H01L31/04 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500924
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020069477
(87)【国際公開番号】W WO2021005191
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517427978
【氏名又は名称】オックスフォード フォトボルテイクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベスト,ジェームズ レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ, ジェームズ デンジール
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151AA09
5F151AA10
5F151AA20
5F151CB12
5F151CB13
5F151CB14
5F151CB15
5F151DA04
5F151DA15
5F151EA05
5F151EA19
(57)【要約】
多重接合光起電力デバイスは、第1のサブセル(11b)と第2のサブセル(11a)とを有し、第2のサブセル(11a)は、入射光が第1のサブセル(11b)の前に第2のサブセル(11a)を通過するように第1のサブセル(11b)に重なる。第2のサブセル(11a)の受光面は、透明導電材料(12)の層と、第1の方向に延び、透明導電材料(12)の層と接触する1つ又は複数の金属トラック(13)とを有する。電気絶縁材料(16)の層が、デバイスのエッジにおいて、1つ又は複数の金属トラック(13)の一端の下に位置する第2のサブセル(11a)の受光面上に設けられ、導電性パッド(14)が、電気絶縁材料(16)の層の上に、且つ外部回路への電気的な接触を提供するように1つ又は複数の金属トラック(13)と電気的に接触して設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブセル及び前記第1のサブセルと電気的に接触する第2のサブセルを有するモノリシック集積多重接合光起電力デバイスであって、前記第2のサブセルは、前記第1のサブセルを覆い、入射光が使用中の前記第1のサブセルに到達するよう前記第2のサブセルを通過するように構成され、前記第2のサブセルの表面が、光透過性導電性材料の層と、前記光透過性導電性材料の層と接触し、第1の方向に延びる1つ又は複数の金属トラックとを有する受光面を有し、電気絶縁材料の層が、前記多重接合セルの端部において前記1つ又は複数の金属トラックの一方の端部の下に延びる前記第2のサブセルの前記受光面上に設けられ、導電性パッドが、前記電気絶縁材料の層の上に、且つ、外部回路への電気的な接触を提供するために前記1つ又は複数の金属トラックと電気的に接触して設けられ、前記光透過性導電性材料の層は、前記受光面上の前記電気絶縁材料の層の少なくとも一部の下に存在しない、
モノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項2】
前記受光面上の前記電気絶縁材料の層は、前記光透過性導電性材料の層と部分的に重なる、
請求項1に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項3】
互いに離間し、前記第1の方向に延びる複数の金属トラックを有し、前記電気絶縁材料は、前記第1の方向に垂直方向に且つ前記受光面と平面平行に延びる、
請求項1に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項4】
前記第2のサブセルは、ペロブスカイト材料の層を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項5】
前記第1のサブセルは、単結晶シリコン、ポリシリコン、CdTe、Cu(In、Ga)Se
2若しくはCu
2ZnSn(S、Se)
4サブセル、又はペロブスカイトサブセルを含み、前記第1のサブセルは前記第2のサブセルより小さいバンドギャップを有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項6】
前記電気絶縁材料は光透過性である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項7】
前記電気絶縁材料は、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ及び架橋ポリマーのうちの1つ又は複数である、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項8】
前記電気絶縁材料は弾性である、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項9】
前記電気絶縁材料は光架橋ポリマーを含む、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項10】
前記第2のサブセルは、さらに、正孔輸送材料の層と、前記ペロブスカイト材料の層の両側に電子輸送材料の層とを含む、
請求項4に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項11】
前記ペロブスカイト材料は、有機カチオン及びセシウム又はルビジウムカチオンから選択される1つ又は複数のカチオンと、Pb、Sn又はTiのうちの1つ又は複数と、Cl、Br及びIから選択される1つ又は複数のハロゲン化物アニオンとを含む、
請求項4に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイス。
【請求項12】
基板上に列状に配置され、前記導電性パッドにより互いに直列に電気的に接続される、複数の請求項1乃至11のいずれか1項に記載のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを有する光起電力パネル。
【請求項13】
前記多重接合光起電力デバイスは、1つのデバイス上の前記パッドが隣接するデバイスの後部接点と接触するように、重なる列に配置される、
請求項12に記載の光起電力パネル。
【請求項14】
モノリシック集積光起電力デバイスを製造する方法であって、前記方法は:
(a)第1の光起電力サブセルを設けるステップと;
(b)前記第1のサブセルの上部に且つ前記第1のサブセルと電気的に接触して第2のサブセルを設けるステップであって、前記第2のサブセルの受光面が、前記第2のサブセルの上面の大部分の上に光透過性導電性材料の層を含む、ステップと;
(c)前記第2のサブセルの前記上面の少数の上に電気絶縁材料の層を設けるステップと;
(d)前記受光面上に細長い電気接点を設けるステップであって、前記接点は、前記光透過性導電性材料の層及び前記電気絶縁材料の層の両方の上に延びる、ステップと;
(e)前記電気絶縁材料の層の上部に且つ前記細長い電気接点と電気的に接触する導電性パッドを設けるステップと;を含み、
前記ステップ(b)は、前記受光面の領域が、前記光透過性導電性材料の層を有しないように実行され;
前記ステップ(c)において、前記電気絶縁材料の層は、前記光透過性導電性材料の層を有しない前記受光面の前記領域に設けられ、
前記ステップ(c)において、前記電気絶縁材料の層は、オプションで、前記光透過性導電性材料の層のエッジに重なるように配置される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力(photovoltaic)(PV)デバイスに関し、特に、タンデム太陽電池及びPVパネルなどのモノリシックに集積された多重接合光起電力デバイス(multi-junction photovoltaic devices)に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギ変換は、再生可能エネルギを提供するための最も有望な技術の一つである。しかしながら、高い材料コストを含む太陽エネルギを捕捉するデバイスを製造する高いコストが、その広範な使用を歴史的に妨げてきた。
【0003】
例えば、シリコンp-n接合などの単接合太陽電池は、AM1.5G条件下で、約29%の最大の理論効率及び最大26%の実用効率を有する(例えば、非特許文献1を参照されたい)。しかしながら、より高いバンドギャップを有する材料のセルがシリコン単接合セル(又は他のタイプの単接合セル)の上に積層され直列に接続される場合、制限理論効率は40%超に増加する。従って、タンデム及び他の多重接合セル技術に現在多くの関心がある。
【0004】
モノリシック集積多重接合セルの従来の例を、
図1A(平面図)及び
図1B(断面図)に示す。デバイスは、第1のサブセル(1b)と、第1のサブセル(1b)と電気的に接触した第2のサブセル(1a)とを有し、サブセルは、入射光が第2のサブセル(1a)を通過して使用中の第1のサブセル(1b)に到達するように構成される。第2のサブセルの表面は、光透過性導電性材料(2)の層と、光透過性導電性材料(2)の層に接触し、第1の方向(すなわち、A-A’軸に平行)に延びる1つ又は複数の金属トラック(例えば、銅ストリップなど)と、を有する受光面を有する。典型的には、導電性パッド(例えば、金属リボン)が、金属トラック(4)の上及びデバイス(5)の底部の両方に設けられ、1つのデバイスの底部導電性パッドと隣接デバイスの上部導電性パッドとの電気接続によって、複数の装置の直列接続及びストリング(stringing)を可能にする。
【0005】
しかしながら、
図1A及び
図1Bのもののなど多重接合デバイスを使用する光起電力モジュール及びパネルの製造における1つの問題は、例えば、接着接合又は半田接合によってデバイスへの電気的接続がなされるとき、多重接合セルを通して短絡することである。その結果、デバイスの歩留まり及び効率が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような欠点を軽減し、多重接合PVパネルの製造をより安価にし、光起電力パネルの信頼性を高めることを目的とする。
【0007】
光起電力ストリップをそれらの間の可撓性プラスチックテープで相互接続する既知の方法は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Photovoltaic Solar Energy - from Fundamentals to Applications”, edited by A Reinders et al., Wiley ISBN9781118927465 [2017] on p.164
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本発明は、本明細書に定義される特許請求の範囲の主題によりこれらの欠点を軽減する。本発明のさらなる利点は、以下のセクションでさらに詳細に説明される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、請求項1~11に記載の多重接合光起電力デバイスが提供される。本発明の第2の態様によれば、請求項12及び13に記載のように、直列に接続された第1の態様による複数の多重接合デバイスを有する光起電力パネルが提供される。本発明の第3の態様によれば、請求項14に記載の多重接合光起電力デバイスの製造方法が提供される。
【0012】
本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスの好ましい実施形態及び本発明の他の態様は、以下の説明及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、添付の概略図を参照して、本発明の実施形態を単なる例示として説明する:
【0014】
【
図1A】既知のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスの平面図を示す。
【0015】
【
図1B】既知のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを断面図で示す。
【0016】
【
図2A】本発明によるデバイスの第1の実施形態の平面図を概略的に示す。
【0017】
【
図2B】本発明によるデバイスの第1の実施形態の断面図を概略的に示す。
【0018】
【
図3A】本発明によるデバイスの第2の実施形態の平面図を概略的に示す。
【0019】
【0020】
【
図3C】本発明の第2の実施形態の例による、重複列に電気的に直列に接続された複数のデバイスを有する「シングリングされた(shingled)」光起電力パネルの断面図を示す。
【0021】
【
図4A】本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを準備する例示的なシーケンスを示す。
【0022】
【
図4B】本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを準備する例示的なシーケンスを示す。
【0023】
【
図4C】本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを準備する例示的なシーケンスを示す。
【0024】
【0025】
【
図4E】本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスを準備する例示的なシーケンスを示す。
【0026】
【0027】
【
図5】比較例1のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスの写真である。
【0028】
【
図6】ボンディング及び積層/封入前後の比較例1のデバイスの電流-電圧特性を示す。
【0029】
【
図7A】比較例2のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスの写真である。
【0030】
【
図7B】本発明による例1のモノリシック集積多重接合光起電力デバイスの写真である。
【0031】
【
図8】接合及び積層/封入後の比較例2及び例1のデバイスの電流-電圧特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のより完全な理解のために、ここでその例示的な実施形態の以下の説明を参照する:
【0033】
モノリシック集積多重接合光起電力デバイス
第1の実施形態では、本発明は、第1のサブセルと、第1のサブセルと電気的に接触する第2のサブセルとを有するモノリシック集積多重接合光起電力デバイスに関し、第2のサブセルは、第1のサブセルを覆い、入射光が第2のサブセルを通って使用中の第1のサブセルに到達するように構成され、第2のサブセルの表面は、光透過性導電性材料の層と、光透過性導電性材料の層と接触し、第1の方向に延びる1つ又は複数の金属トラックとを有する受光面を有し、電気絶縁材料の層が、多重接合セルの端部で1つ又は複数の金属トラックの一方の端部の下に延びる第2のサブセルの受光面上に設けられ、導電性パッドが、電気絶縁材料の層の上に、且つ、外部回路への電気的な接触を提供するために1つ又は複数の金属トラックと電気的に接触して設けられる、ことを特徴とする。
【0034】
有利には、光透過性導電性材料の不存在及び/又はパッドの下の受光面上の電気絶縁材料の層の存在は、その後のボンディング及び/又は封入(encapsulation)において積層(lamination)圧力の印加中に典型的に観察される短絡のリスクを顕著に低減する。
【0035】
光透過性導電性材料は、電気絶縁材料の全層の下にあってもよいが、電気絶縁材料が光透過性導電性材料の隣に設けられる又はそれに部分的にのみ重なるように、多重接合セルのエッジを光透過性導電性材料でコーティングされないままにすることが好ましい。換言すれば、光透過性導電性材料の層は、電気絶縁材料の層の下に存在しないこと、又は電気絶縁材料の層が、受光面上の光透過性導電性材料の層のエッジに重なることが好ましく、その結果、導電性パッドと金属トラックとの間の界面(interface(接触面))における機械的及び熱的応力は、タンデム活性領域から離間される。
【0036】
本発明に使用される光透過性導電性材料は、好ましくは、波長250nmと750nmとの間で測定される光透過率が50%~90%又は95%、さらに好ましくは少なくとも80%であり、抵抗率が10-2Ω・cm以下(ASTM B193-16による)である。
【0037】
典型的に使用される材料は、例えば、Sb又はF(ATO又はFTO)でドープされたSnO2、Al(AZO)又はGaでドープされたZnO、及びSn(ITO)でドープされたIn2O3などの透明導電性酸化物(TCO)である。代替的には、カーボンナノチューブ、銀ナノワイヤ又はグラフェン膜を使用してもよい。光透過性導電性材料層の厚さは、使用される材料に応じて、当業者によって適切に選択され得る。例えば、透明導電性酸化物が光透過性導電性材料として使用される場合、典型的な厚さは、50~200nmの範囲である。
【0038】
本発明に使用される電気絶縁材料は特に限定されないが、体積抵抗率が1010Ω・cm(例えば、ASTM D257に従って決定され得る)を超え、熱膨張係数が1~100ppm/Kの間(熱機械分析による)の材料が好ましい。
【0039】
好ましい実施形態では、電気絶縁材料は、光透過性である、すなわち、少なくとも90%の可視光に対する平均透過率を示し、これは、光透過性導電性材料が電気絶縁材料の層の下に存在する場合に、タンデム活性領域の延長を潜在的に可能にする。
【0040】
特に好ましい実施形態では、電気絶縁材料は、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ及び架橋ポリマー(例えば、エポキシベースのポリマー、シリコーンベースのポリマー、ポリイミド、アクリレートベースのポリマー及びそれらのコポリマーを含むが、これらに限定されない)のうちの1つ又は複数である。簡単な製造の観点からの特に好ましい実施形態では、電気絶縁材料は、光架橋ポリマーを含む。電気絶縁材料層の厚さは、特に限定されないが、典型的には、0.5~300μmの間、好ましくは1~100μmの間の範囲である。電気絶縁材料は、好ましくは弾性であり、その結果、モジュール内にシングリングされた(shingled)配置に配置されるとき、モジュールは、機械的衝撃又は膨張差に起因してせん断力を生じさせる温度勾配により容易に耐えることができる。
【0041】
光透過性導電性材料の層に接触する1つ又は複数の金属トラックは、典型的には、1つ又は複数の高い導電性の金属(例えば、銅、銀又はアルミニウム)又は金属合金を含む又はそれらからなるリボン又は堆積層である。好ましい実施形態では、1つ又は複数の金属トラックは、メタライゼーションペースト(例えば、70~95%のAg充填(Ag loading)の銀ペースト)の堆積(deposition)及びその後の乾燥によって形成される。金属トラックの典型的な寸法は、幅が10~100μmの間、好ましくは25~60μm、高さが1~30μmの間、好ましくは5~17μmの間の範囲である。
【0042】
本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスでは、導電性パッドが、電気絶縁材料の層の上に設けられ、外部回路への電気的な接触を提供するために1つ又は複数の金属トラックと電気的に接触する。この目的のために、導電性パッドは、電気絶縁材料層の表面及び/又は多重接合デバイスの上面を越えて延び得る。導電性パッドに使用される材料は、低い抵抗率(好ましくは10-1Ω・cm以下、さらに好ましくは10-2Ω・cm以下の抵抗率)を示し、ストリンギング用途のボンディングを可能にする限り、特に限定されない。それに限定されるものではないが、好ましい材料には、酸化を防止するためにフラックスを添加することができるはんだ(例えば、Sn/Pb 60/40、Sn/Pb/Ag 62/36/2又はSn/Ag 96.5/3.5合金などの金属又は金属合金)が含まれる。代替的には、低温プロセスが望ましい場合(例えば、熱に敏感なペロブスカイト配合物を使用する場合)、導電性接着剤、さらには厚さ又はz軸にわたって0.5・10-4~50・10-4Ω・cmの抵抗率を持つ等方性又は異方性導電性接着剤(ペースト又はテープ)を使用することが好ましく、理想的には1Nmmを超える剥離強度を可能にする。例示的な導電性接着剤として、導電性粒子(例えば、金属粒子)を充填した架橋性ポリマー(例えば、エポキシ、シリコーン又はアクリレート)が挙げられ得る。導電性パッドの厚さは、材料、幾何学的形状及び所望の結合特性に応じて、当業者によって適切に選択され得る。例えば、典型的な半田厚さは5~100μm、好ましくは10~50μmの範囲である。導電性接着剤で作られたパッドの典型的な厚さは、20~300μm、好ましくは30~200μmの範囲である。
【0043】
本明細書において、「導電性パッド」という用語は、金属トラック上のパッド(シングリングストリング構成(shingle(部分重ね) stringing arrangement)の場合)又は金属トラックに取り付けられた金属リボン(従来のストリング構成の場合)を指すことができる。したがって、「導電性パッド」の例は:a)導電性接着剤で(金属トラックに)接合された金属リボン(従来のストリング用);b)半田で(金属トラックに)接合された金属リボン(従来のストリング用);c)導電性接着剤パッドのみ(シングリング(shingling)用);及びd)半田パッドのみ(シングリング用);を含み得る。
【0044】
一般に、第1のサブセル及び第2のサブセルの具体的な構成は、特に限定されるものではなく、それらの各々は、第1のサブセルと第2のサブセルとの間に設けられた1つ又は複数の中間層と同様に、複数のサブ層を含み得ることが理解される。
【0045】
例示的な中間層は、例えば、透明導電性酸化物(インジウム錫酸化物(ITO)又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などを含む)、炭素(例えば、グラフェン)、及び金属ナノワイヤを含み得る相互接続層を含む。好ましくは、ITOの相互接続層は、10nm~60nmの厚さ、より好ましくは約30~55nmの厚さを有する。
【0046】
好ましい実施態様では、第2のサブセルは、ペロブスカイト材料の層を含む。
【0047】
用語「ペロブスカイト」は、本明細書で使用されるとき、CaTiO3のものに関連する三次元結晶構造を有する材料、又は材料の層を含む材料を指し、その層はCaTiO3のものに関連する構造を有し、前者が好ましい。当業者に知られているように、ペロブスカイトは、化学式ABX3により一般的に表現することができ、A及びBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである、又は化学式[A][B][X]3により一般的に表現することができ、[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、[X]はアニオンである。好ましいペロブスカイト材料は、光増感材料、すなわち、光生成及び電荷輸送の両方を行うことができる材料である。さらなる好ましい実施形態では、ペロブスカイト材料は、有機カチオン及びセシウム又はルビジウムカチオンから選択される1つ又は複数のカチオン、Pb、Sn又はTiのうちの1つ又は複数、及びCl、Br及びIから選択される1つ又は複数のハロゲン化物アニオンを含む。
【0048】
ペロブスカイト材料は、光ドープされるときにn型電子輸送半導体として作用するペロブスカイトであり得る。代替的には、光ドープされるときにp型正孔輸送半導体として作用するペロブスカイトであり得る。従って、ペロブスカイトは、n型又はp型であってもよく、あるいは真性半導体であってもよい。好ましい実施形態では、使用されるペロブスカイトは、光ドープされるときにn型電子輸送半導体として作用するものである。ペロブスカイト材料は、両極性電荷輸送を示し得、従って、n型及びp型半導体の両方として作用し得る。特に、ペロブスカイトは、ペロブスカイトと隣接する材料との間に形成される接合のタイプに応じて、n型及びp型半導体の両方として作用し得る。これらに限定されないが、使用され得る例示的なペロブスカイト材料は、例えば、Kojima, A. et al., Journal of the American Chemical Society 2009, 131(17), pp. 6050-1; Zuo, C. et al., Adv. Sci. 2016, 3, 1500324;WO2013/171517A1;WO2014/045021A1;及びWO2016/198898A1に開示されている。
【0049】
第2のサブセルがペロブスカイト材料を含む場合、ペロブスカイト材料を含む層は、好ましくは、少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、少なくとも1つのp型層を含むp型領域との間に挟まれ、したがって、p-i-n又はn-i-pサブセルアーキテクチャを提供する。
【0050】
用語「n型」は、本明細書中で使用されるとき、正孔よりも電子の濃度が大きい外因性半導体を含む領域、層、又は材料を指す。したがって、n型半導体では、電子は多数キャリアであり、正孔は少数キャリアであり、したがって、それらは電子輸送材料である。従って、用語「n型領域」は、本明細書で使用されるとき、1つ又は複数の電子輸送(すなわち、n型)材料の領域を指す。同様に、用語「n型層」は、電子輸送性(すなわち、n型)材料の層を指す。電子輸送材料(すなわち、n型)は、単一の電子輸送化合物又は元素材料、又は当技術分野で知られた2つ以上の電子輸送化合物又は元素材料の混合物であり得る。電子輸送性化合物又は元素材料は、ドープされていなくてもよく、又は、1つ又は複数のドーパント元素でドープされていてもよい。これに限定されるものではないが、例示的なn型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、アモルファスSi、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体、及びn型II-V族半導体から選択され得、いずれもドープ又は非ドープであってよい。それらの例として、チタン、錫、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウム、又は前記金属の2以上の混合物の酸化物;カドミウム、錫、銅、亜鉛又は前記金属の2以上の混合物の硫化物;カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウム又は前記金属の2以上の混合物のセレン化物;又は、カドミウム、亜鉛、カドミウム若しくは錫、又は前記金属の2以上の混合物のテルル化物から選択されるn型材料が挙げられ得る。代替として、PCBM、ICBA、IPB又はIPHのようなC60又はC70フラーレン又はフラーレン誘導体材料がn型領域を形成するために使用されることができる。
【0051】
用語「p型」は、本明細書中で使用されるとき、電子よりも大きな正孔濃度を有する外因性半導体を含む領域、層、又は材料を指す。p型半導体では、正孔は多数キャリアであり、電子は少数キャリアであるため、正孔輸送材料である。従って、用語「p型領域」は、本明細書で使用されるとき、1つ又は複数の正孔輸送(すなわち、p型)材料の領域を指す。同様に、用語「p型層」は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層を指す。正孔輸送材料(すなわち、p型)は、単一の正孔輸送化合物又は元素材料、又は、当技術分野で知られた2つ以上の正孔輸送化合物又は元素材料の混合物であり得る。正孔輸送化合物又は元素材料は、ドープされていなくてもよく、又は、1つ又は複数のドーパント元素でドープされていてもよい。例示的なp型化合物は、スピロ-OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン)、TNATA(4,4',4”-トリス-(N-(ナフチレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-ジ-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、tBP(tert-ブチルピリジン)m-MTDATA(4,4'、4”-トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N'、N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5'-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2'-ビチオフェン)、ジ-NPB(N,N'-ジ-[(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル]-1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン)、α-NPB(N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニルベンジジン、及びPEDOT:PSSを含むが、これらに限定されない。p型層は、例えば、tert-ブチルピリジン、LiTFSI又はニトロソニウムテトラフルオロボレートのようなドーパントをさらに含み得る。
【0052】
p型層はさらに、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;ペロブスカイト;アモルファスSi;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含む無機ホールトランスポータ(inorganic hole transporter)を含み得、各々ドープされていてもドープされていなくてもよい。
【0053】
別の好ましい実施形態では、第1のサブセルは、第2のサブセルより小さいバンドギャップを有する。さらに好ましくは、第1のサブセルは、単結晶シリコン、ポリシリコン、CdTe、Cu(In,Ga)Se2又はCu2ZnSn(S,Se)4サブセル、又はペロブスカイトサブセル(そのバンドギャップは第2のサブセルのものより小さい)を含む。
【0054】
太陽スペクトルの収穫を最適化するために、第2のサブセルは、好ましくは1.50eV~1.75eV、より好ましくは1.65eV~1.70eVのバンドギャップを有するペロブスカイト材料を含み、第1のサブセルは、好ましくは1.05eV~1.15eV、より好ましくは約1.1eVのバンドギャップを有する。用語「バンドギャップ」は、本明細書中で使用されるとき、材料の価電子バンドの頂部と伝導バンドの底部との間のエネルギ差を指し、これは、過度の実験なしに当業者によって決定され得る。
【0055】
モノリシック集積多重接合光起電力デバイスは、個々のサブセルが単一の端子対(すなわち、導電性パッド)の間で直列に電気的に接続されている限り、2つ以上のサブセルを含み得ることに留意されたい。トリプルサブセル構造の例は、ペロブスカイト材料を含む光活性領域を含む上部サブセル(第2サブセル)、シリコンヘテロ接合(SHJ)を含む中間サブセル(第1サブセル)、及びペロブスカイト材料を含む光活性領域を含む底部サブセルを含む両面モノリシック集積多重接合光起電力デバイスを含むが、これらに限定されない。
【0056】
モノリシック集積多重接合光起電力デバイスの一例が
図2A及び2Bに示され、第2のサブセル(11a)によって覆われた第1のサブセル(11b)を含むモノリシック集積構造を示す。第2のサブセル(11a)の上部、すなわち受光面側には、光透過性導電性材料(12)の層が受光面の一部の上に設けられている(
図2A及び2Bに示すように)。代替的に、光透過性導電性材料(12)は、受光面全体にわたって設けられてもよい(図示せず)。多重接合セル(11)は、その端部に電気絶縁材料(16)をさらに有する。加えて、少なくとも1つの金属トラック(13)が、光透過性導電性材料(12)の層に接触して、第1の方向(すなわち、B-B'軸に平行)に延びるように設けられ、金属トラック(13)の一端は、電気絶縁材料(16)の上に配置されている。好ましい実施形態では、モノリシック集積多重接合光起電力デバイスは、互いに離間し、第1の方向に延びる複数の金属トラックを有する(
図2A及び2Bには示されていない)。これに限定されないが、電気絶縁材料(16)は、
図2Aに示すように、第1の方向(すなわち、B-B'軸)に垂直な方向に且つ受光面と平行に延びる。最後に、導電性パッド(14)が、電気絶縁材料(16)の層の上に設けられ、外部回路への電気的接触を提供するために金属トラック(13)と電気的に接触する。オプションで、第2の導電性パッド(15)が、多重接合セルの底面に設けられてもよい。
【0057】
図1A及び
図1Bの従来のデバイスでは、金属トラック(3)に導電性パッド(4)が接合される領域は、光透過性導電性材料(2)の真上にあり、金属トラック(3)はそれと直接接触している。従って、高温を伴う接合プロセスは、受光面の損傷を防止するために回避されなければならず、これは、接合技術の選択及び結果として生じる接合の品質を厳しく制限する。対照的に、本発明では、
図2A及び2Bに示されるように、電気絶縁材料(16)が、導電性パッド(14)が接合されている部分の金属トラック(13)の下方に設けられ、したがって、熱バッファとして機能する。したがって、高温(300℃以上)でのはんだ付け方法を含む、導電性パッド(14)の金属トラック(13)への接合のために、広範囲の技術が用いられ得る。さらなる利点は、エージング中に、導電性パッド(14)と金属トラック(13)との間の界面における熱応力(剪断)が、タンデム活性領域から離れていることである。従って、本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスは、改良された性能及び信頼性を示す。
【0058】
光起電力パネル
第2の実施形態では、本発明は、基板上に列状に配置され、前記導電性パッドを介して互いに直列に電気的に接続された、上述の第1の実施形態による複数の多重接合光起電力デバイスを有する光起電力パネルに関する。
【0059】
好ましい実施形態では、多重接合光起電力デバイスは、一方のデバイス上のパッドが隣接するデバイスの後部接点と接触するように、オーバーラップする列に配置される。例えば、
図2A及び
図2Bによる構成を使用することにより、パッド接触は、一方のデバイスの下部導電性ボンドパッド(15)を隣接するデバイスの上部導電性ボンドパッド(14)に接合することによって確立され得る。代替的な好ましい実施形態が
図3A~3Cに示されている。ここで、下部導電性ボンドパッドは省略される。
図3A及び3Bによる複数の多重接合光起電力デバイスは、次いで、好ましくは、導電性パッドのための導電性接着剤を用いて、上部セルの背面が下部セルの前面の導電性パッド(24)と接触するように(
図3Cを参照)、互いに直接接続され得、それによって、シングリングされた構成を提供する。2つの接続されたセル間の最大の重なりは、好ましくは、絶縁材料のストリップの幅に制限される。
【0060】
1つ又は複数のガラス基板及び/又は透明ポリマー基板が、光起電力パネルの背面及び前面をカバーするために使用され得る。加えて、光起電力パネルは、封止材料及び/又は当技術分野で知られたシール部材を用いて(例えば、コーナー部分で)シールされ得る。用途に応じて、光起電力パネルは、オプションで取り付け部材(例えば、取り付けプレート又は類似のもの)及び/又は高さ/角度調整サポートを備えてもよい。
【0061】
モノリシック集積多重接合光起電力デバイスの製造方法
第3の実施形態では、本発明は、モノリシック集積光デバイスの製造方法に関し、方法は:(a)第1の光起電力サブセルを設ける(providing)ステップと;(b)第1のサブセルの上に且つ第1のサブセルと電気的に接触する第2のサブセルを設けるステップであって、第2のサブセルの受光面は、第2のサブセルの上面の大部分に光透過性導電性材料の層を有する、ステップと;(c)第2のサブセルの上面の少数(好ましくは1つのエッジ領域)に電気絶縁材料の層を設けるステップと;(d)受光面に細長い電気接点を設けるステップであって、接点は、光透過性導電性材料の層と電気絶縁材料の層の両方の上に延びる、ステップと;(e)電気絶縁材料の層の上部に、且つ外部回路への電気的な接触を提供するために細長い電気接点と電気的に接触する導電性パッドを設けるステップと、を含む。
【0062】
この点において、用語「大部分」は、表面の50%以上、好ましくは60%以上、とりわけ好ましくは70%以上、特に好ましくは80%から98%の間を示し、一方、用語「少数」は、表面の50%未満、好ましくは40%未満、とりわけ好ましくは30%未満、特に好ましくは2%から20%の間を示す。好ましい実施形態では、ステップ(b)は、受光面の領域(特に好ましくはエッジ領域)が、光透過性導電性材料の層を有さないように実行される。さらなる好ましい実施形態では、電気絶縁材料の層は、ステップ(c)において、光透過性導電性材料の層を有しない受光面の前記領域に提供される。
【0063】
この点に関して、ステップ(c)では、電気絶縁材料の層は、光透過性導電性材料の層のエッジに重なるように配置されることが好ましい。
【0064】
これに限定されるものではなく、第1及び第2のサブセルのタイプ及び構造に主に依存するが、ステップ(a)及び/又は(b)は、真空蒸着又は溶液コーティングによって実行されることが好ましい。
【0065】
例えば、2端子Si/ペロブスカイトタンデムセル(n-i-p又はp-i-nセルアーキテクチャを用いる)の場合、ステップ(a)は、前面メタライゼーショングリッドを持たないシリコン太陽電池の提供を含み得、ステップ(b)は:(b1)シリコン太陽電池の上部にn型(又はp型)接点材料を均一に提供するステップ(例えば、真空蒸着又は溶液コーティングによって)、(b2)n型(又はp型)接点材料の上部にペロブスカイト光起電力吸収体を直接又は多段階蒸着するステップ(例えば、真空蒸着又は溶液コーティングによって);及び(b3)サブセルのシリコン太陽電池積層体の上部に均一にp型(又はn型)接点材料を提供するステップ(例えば、真空蒸着又は溶液コーティングによって)を含み得る。
【0066】
これに限定されないが、以下のステップの好ましい実施形態が
図4A~4Fに示されている。ここで、光透過性導電性材料(32)の層が、サブセル(30)の積層体の上部に設けられ、パターンは、接点材料の1つの狭いストリップを、ウェハのエッジの1つで(例えば、真空蒸着又は溶液コーティングによって)コーティングされないままにする。真空蒸着を使用する場合、このようなパターンは、シャドウマスクを使用することによって作製され得る。溶液コーティングを使用する場合、フォトリソグラフィステップが、透明導電材料が堆積されるべきでないところでp型接点材料をマスクするために必要とされ得る(p型材料が上部に堆積されるn-i-p構造の場合、p-i-n構成が望ましければ、マスクはn型材料上にある)。次いで、フォトレジストエッチングステップが必要とされ得る(リフトオフプロセス)。代替的には、
図4Aに示す実施形態が好ましいが、透明導電材料は、サブセル(図示せず)の積層体の上面全体に均一に堆積されてもよい。
【0067】
光透過性導電性材料に適した材料は、第1の実施形態に関して上述されている。透明導電性酸化物を使用する場合、スパッタリング及び化学蒸着が適切な堆積方法である。スパッタリングが選択される場合、これは、例えば、反応性ガスを使用する金属ターゲット、又はRF電源を使用する金属酸化物ターゲットで行うことができる。
【0068】
その後、電気絶縁材料(36)が、好ましくは、絶縁材料(36)と光透過性導電性材料(32)との間に小さい重なりがあるように、前もってパターン化されたセルのエッジの上に堆積される(
図4B参照)。このステップに適した方法は、例えば、スクリーン印刷を含む。電気絶縁材料としては、例えば、SiO
2又はAl
2O
3層のような無機薄膜が、真空蒸着法によって堆積され得る。エポキシド、アクリレート又はポリイミドのような架橋性(熱硬化性又はUV硬化性)ポリマーが電気絶縁材料として使用される場合、これらは、例えば、印刷(例えば、スクリーン印刷又はインクジェット印刷)又はディスペンス(dispense)(例えば、空気圧ディスペンス)法によって堆積され得、その後、必要に応じて(典型的には、100~200℃の温度範囲で加熱することによって、又はUV照射によって)硬化され得る。
【0069】
続いて、金属トラック(33)が、例えば、スクリーン印刷又はめっき方法(
図4C及び4D参照)を介して、セルの上に堆積され得る。上述のように、金属トラックに使用される例示的な材料は、150~400℃の乾燥ステップをさらに必要とする金属充填ペーストであり得る。熱に敏感な組成物については、低い乾燥温度を持つメタライゼーションペーストを選択することが推奨される。
【0070】
その後、
図4E及び4Fに示すように、導電性パッド(34)が金属トラック(33)に接触して設けられる。代替的には、導電性接着剤が、低温プロセスが推奨されるとき(例えば、熱に敏感なペロブスカイト組成物を使用するとき)に、シングリング技術のために及び従来のストリング技術にも使用することができる。導電性パッド(34)が、例えば金属粒子を充填したエポキシ、シリコーン又はアクリレートのような架橋性ポリマーで作られる場合、硬化ステップが通常必要である。典型的な硬化温度は、100~200℃の範囲である。いくつかの実施形態では、導電性接着剤の硬化は、モジュール積層ステップ中、140℃~160℃の温度で達成することができる(例えば、シングリング配置において)。第1の実施形態に関して上述したように、さらなる導電性パッドが、デバイスの底部に設けられ得(
図4E及び4Fには図示せず)、これは、例えば、金属、金属合金(例えば、スクリーン印刷又はめっき方法を介して)、又は導電性接着剤で作られ得る。
【0071】
次いで、セルは、ストリング(例えば、リボン又はシングリングを用いた従来の)のために、上部及び底部接触の準備が整う。従来のストリング法(=導電性リボンを使用する)及び導電性接着剤を使用する場合、導電性接着剤は、例えば、空気圧ディスペンス法を使用してセル又はリボン上に塗布され得る。加えて、導電性リボンは、はんだ付け技術を用いて又は導電性接着剤を用いて(これは、自動化された空気圧ディスペンス及び熱硬化を必要とし得る)、金属トラック及びセルの背面に取り付けることができる。前面導電性フィンガーの上部への導電性接着剤のはんだ付け及びディスペンスは、絶縁材料でコーティングされた領域に限定されるべきである。接触方法として半田付けを使用するストリング法(例えば、金属又は金属合金が上部及び下部導電性パッドの両方に使用されるとき)については、リボンは、既に半田でコーティングされて供給され得る。シングリングするとき、2つの接続されたセル間の最大の重なりは、デバイス効率の損失を避けるために、絶縁材料のストリップの幅に制限されるべきである。
【0072】
各実施形態の好ましい特徴は、少なくとも特徴のいくつかが相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで自由に組み合わされ得ることが理解されよう。
【0073】
例
比較例1
比較例1では、Ag金属トラックを含む従来の設計(
図1A及び1Bに従う)の2端子Si/ペロブスカイトタンデムセルが提供された。タンデムセル上に、上部導電性パッドが、中央金属トラック上のスクリーン印刷により厚さ10μmのフィンガー(すなわち、厚さ10μmの層)を堆積させるために銀ペーストを使用し、そしてペーストを170℃で20分間赤外線乾燥器中で乾燥させることによって設けられた。加えて、底部導電性パッドが、シリコンサブセルの底面上に同じ方法で設けられた。2つのワイヤが上部及び下部導電性パッドに接触するために使用され、次いで、デバイスが封止された。結果として得られたモノリシック集積セルの写真を
図5に示す。デバイスの電流-電圧特性が、セルのモノリシック集積化対の積層の前後に測定された。
図6に示すように、積層に際し上部セルに短絡が観察される。
【0074】
比較例2
比較例2では、厚さ25μmの形態の電気絶縁材料、UV硬化エポキシフィルムが(
図7Aの写真のT形状の水平線下を参照)設けられ、Ag金属トラックが絶縁材料の上に延ばされている点を除いて、比較例1と同じ2端子Si/ペロブスカイトタンデムセルが使用された。電気絶縁材料は、メッシュサイズ380~460tpiのスクリーンを用いて、45mm/sの印刷速度、3kgのスクィージ圧力(45°角度)及び0.7mmの印刷ギャップでスクリーン印刷によって堆積された。印刷後、UVコンベヤ硬化機が、395nmの波長でUV-LEDランプを用いて、セルを500~1000mJ/cm
2の間のUV線量に曝露するために使用された。上部導電性パッドが、絶縁材料で覆われていない領域内の金属トラック上にスクリーン印刷によって厚さ10μmの層を堆積させるために銀ペーストを使用することによって(
図7A参照)、またペーストを赤外線乾燥器で170℃で20分間乾燥させることによって設けられた。加えて、下部導電性パッドが、シリコンサブセルの底面上に同じ方法で設けられた。上部及び下部導電性パッドを接触させるために2つのワイヤが使用され、デバイスが封止された。デバイスの電流-電圧特性が積層後に測定された。
【0075】
例1
例1では、
図2A及び2Bに沿って、電気絶縁層上に上部導電性パッド(
図7B参照)が設けられたことを除いて、比較例2のように2端子Si/ペロブスカイトタンデムセルが採用された。上部及び下部導電性パッドに接触するために2つのワイヤが使用され、次いで、デバイスが封止された。デバイスの電流-電圧特性が積層後に測定された。
【0076】
比較例2と例1の電流-電圧特性を
図8に示す。比較例2のプロファイルからも分かるように、短絡が見られ、比較例1と同様のC-V特性が得られる。
【0077】
一方、例1では、上部リボンの下の積層の間に生じた短絡は、上部導電性パッドを電気絶縁層の上に設けることにより、成功裏に除去された。
【0078】
これらの結果は、本発明によるモノリシック集積多重接合光起電力デバイスが、性能及び信頼性を改善した光起電力パネルの提供を可能にすることを示す。
【0079】
上述の開示が与えられると、多くの他の特徴、修正、及び改善が当業者に明らかになるであろう。
【0080】
タンデムセルは、タンデムセルのアレイを含むパネル内でストリング又はシングリングすることによって互いに接続され得る。
【符号の説明】
【0081】
1/11/21/31:モノリシック集積多重接合光起電力デバイス
1a/11a/21a:第2のサブセル
2b/12b/22b:第1のサブセル
2/12/22/32:光透過性導電性材料
3/13/23/33:金属トラック(複数可)
4/14/24/34:上部導電性パッド
5/15: オプションの下部導電性パッド
16/26/36: 電気絶縁材料
30: サブセルのスタック
X: タンデム活性領域の幅
【国際調査報告】