(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】改変細胞および関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20220906BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220906BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220906BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20220906BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220906BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220906BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220906BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220906BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20220906BHJP
【FI】
A61K35/12
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P21/04
A61P21/02
A61P3/10
A61P35/00
A61K35/28
A61K35/14 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500951
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020041309
(87)【国際公開番号】W WO2021007383
(87)【国際公開日】2021-01-14
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ミレイ,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ミタニ ヤスユキ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087MA13
4C087MA16
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA31
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA94
4C087ZB26
4C087ZC02
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞を含む。本発明の特定の実施形態は、改変細胞を使用する方法を含む。本発明の他の実施形態は、改変細胞を投与する方法を含む。本発明のさらなる実施形態は、疾患を治療するために改変細胞を投与する方法を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書で論じられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変細胞を動物に投与するための方法であって、
改変細胞を動物に投与することを含み、
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを発現するか、またはその両方である、方法。
【請求項2】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現するか、またはその両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを発現する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジストロフィンポリペプチドが、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記改変細胞が、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記改変細胞が、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現する、MSC細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記投与することが、非経口投与、粘膜投与、静脈内投与、デポー注射、皮下投与、局所投与、皮内投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、または筋肉内投与である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記投与することが、注射または筋肉内注射である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記動物が、哺乳動物、霊長類、サル、マカク、アカゲザル、またはブタオザル、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、トリ、ニワトリ、マウス、ウサギ、およびラットから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記動物が、マウス、ラット、またはヒトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記動物が疾患の治療を必要としている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が、前記動物の細胞がジストロフィンを過少発現するか、ジストロフィンを発現しないか、または欠陥のある形態のジストロフィンを発現する疾患である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が、ミオパチー、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病とも称される)、糖原病II型(ポンペ病とも称される)、横紋筋肉腫(RMS)、またはサルコペニアである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患が筋ジストロフィーである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを発現するか、またはその両方である、改変細胞。
【請求項17】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現するか、またはその両方である、請求項16に記載の改変細胞。
【請求項18】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを発現する、請求項16または17に記載の改変細胞。
【請求項19】
前記ジストロフィンポリペプチドが、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィンである、請求項16~18のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項20】
前記改変細胞が、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である、請求項16~19のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項21】
前記改変細胞が、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である、請求項16~20のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項22】
前記改変細胞が、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現する、MSC細胞である、請求項16~21のいずれか一項に記載の改変細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月10日に出願された米国仮特許出願第62/872,610号、表題「POLYPEPTIDES,NUCLEIC ACID MOLECULES,CELLS,AND RELATED METHODS」の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたNIH AR068286の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照
本出願には、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表が含まれており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年6月29日に作成された上記のASCIIコピーは、2020_07_seq_listing_36821_04049_ST25.txtという名称であり、73KBのサイズである。
【背景技術】
【0004】
筋ジストロフィー(MD)は、筋肉細胞膜の安定性を提供するジストロフィン-糖タンパク質複合体(DGC)の変異によって引き起こされる一群の遺伝性筋障害である。MDの1つの形態は、3500人に1人の男児に発症し、ジストロフィンの突然変異によって引き起こされるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)であり、重度の筋消耗をもたらす。いくつかの治療および治療戦略が可能性を示すが、代替の戦略が有益な場合がある。
【0005】
本発明の特定の実施形態は、上記の問題のうちの1つ以上に対応する。本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞を含む。本発明の特定の実施形態は、改変細胞を使用する方法を含む。本発明の他の実施形態は、改変細胞を投与する方法を含む。本発明のさらなる実施形態は、疾患を治療するために改変細胞を投与する方法を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書で論じられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞を動物に投与することを含む、改変細胞を動物に投与するための方法を含み、改変細胞は、本明細書に開示されるような改変細胞である。いくつかの実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを発現するか、またはその両方である。他の実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現するか、またはその両方である。さらに他の実施形態において、ジストロフィンポリペプチドは、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィンである。特定の実施形態において、改変細胞は、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である。さらに他の実施形態において、改変細胞は、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である。いくつかの実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現する、MSC細胞である。他の実施形態において、投与することは、非経口投与、粘膜投与、静脈内投与、デポー注射、皮下投与、局所投与、皮内投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、または筋肉内投与である。特定の実施形態において、投与することは、注射または筋肉内注射である。さらに他の実施形態において、動物は、哺乳動物、霊長類、サル、マカク、アカゲザル、またはブタオザル、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、トリ、ニワトリ、マウス、ウサギ、およびラットから選択される。さらに他の実施形態において、動物は、マウス、ラット、またはヒトである。いくつかの実施形態において、動物は、疾患の治療を必要としている。特定の実施形態において、疾患は、動物の細胞がジストロフィンを過少発現するか、ジストロフィンを発現しないか、または欠陥のある形態のジストロフィンを発現する疾患である。さらに他の実施形態において、疾患は、ミオパチー、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病とも称される)、糖原病II型(ポンペ病とも称される)、横紋筋肉腫(RMS)、またはサルコペニアである。さらに他の実施形態において、疾患は筋ジストロフィーである。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような改変細胞を含む。他の実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを発現するか、またはその両方である。特定の実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現するか、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現するか、またはその両方である。さらに他の実施形態において、ジストロフィンポリペプチドは、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィンである。さらに他の実施形態において、改変細胞は、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である。特定の実施形態において、改変細胞は、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞である。いくつかの実施形態において、改変細胞は、myomakerポリペプチドを発現し、ジストロフィンポリペプチドを過剰発現する、MSC細胞である。
【0008】
本発明の他の実施形態もまた、本明細書で論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された図面を少なくとも1つ含む。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願の刊行物のコピーは、要請および必要な手数料の支払いに応じて特許庁から提供される。
【0010】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つ以上を参照することによってよりよく理解され得る。
【0011】
【
図1】myomaker
+ MSCと筋肉細胞とのインビトロおよびインビボ異種融合。(A)インビトロ融合試験の概略図。WTマウスの骨髄からMSCを単離し、myomakerおよびGFPレトロウイルスで形質導入し、次いで、WT初代筋芽細胞と共培養し、分化させた。(B)5日間の分化後に細胞を固定し、ミオシン抗体で免疫染色した(赤)。Myomaker
+ MSCは、筋芽細胞と融合してキメラ筋管を形成した(ミオシン
+ GFP
+)。(C)移植の24時間前に心臓毒で損傷させたWTマウスのTA筋にMSCを移植してから4週間後の代表的な筋肉切片。切片をジストロフィン抗体で染色して(赤)筋線維を同定した。(D)切片当たりのGFP
+筋線維の数の定量化。データは平均±SEM、n=4筋肉として表される。**空と比較してp<0.01。スケールバー:100μm。
【
図2】Myomaker
+ MSCは損傷のない筋肉と融合する。(A)WTマウスの損傷のないTA筋にMSCを移植してから2週間後の代表的な筋肉切片。中心核を有する筋線維および有しない筋線維の両方でGFP蛍光が観察されたことから、myomaker
+ MSCが再生線維および非再生線維の両方と融合したことが示唆される。DMD:ジストロフィン。(B)Myomakerを発現するMSCは、心筋と容易に融合しない。GFP
+ myomaker
+ MSCを直接心臓内注射によってRosa
mTmGマウスに送達し、移植の3日後または14日後に共焦点顕微鏡によって生着を評価した。送達後3日でレシピエントの心臓(膜tdTomato
+)内の注射部位に沿ってMyomaker
+ MSC(GFP
+)が検出され、14日間保持された。myomaker
+ MSCは、注射の領域を示す針穿刺創内に局在していたが、心筋細胞とのMSC融合はほとんど検出されなかった。矢印は、膜tdTomato
+心筋細胞内の細胞質GFPによって示される単一の融合事象を示す。スケールバー、100μm。(C)損傷のない筋肉にmyomaker
+ MSCを移植した後の、中心核を有するおよび有しない切片当たりのGFP
+線維の定量化。n=4つの筋肉。**中心核を有しない空と比較してp<0.01。(D)タモキシフェンレジメンは、衛星細胞のmyomakerを効率的に欠失させ、融合の欠如をもたらす。Myomaker
LacZ/loxp;Pax7
CreERT2/+マウスをタモキシフェンで5日間連続して処理した(myomaker
scKO)。対照は、ビヒクルで処理したMyomaker
LacZ/loxp;Pax7
CreERT2/+マウスであった。筋形成前駆細胞を活性化するために複数の筋肉を心臓毒(CTX)で損傷させ、それらの細胞を損傷の3日後に単離した。(E)タモキシフェンレジメンは、衛星細胞のmyomakerを効率的に欠失させ、融合の欠如をもたらす。qPCRによるmyomakerの発現により、myomaker
scKOマウスからの筋芽細胞における効率的な欠失が明らかになった。(F)タモキシフェンレジメンは、衛星細胞のmyomakerを効率的に欠失させ、融合の欠如をもたらす。対照およびmyomaker
scKO筋芽細胞を、3日間分化させた。対照筋芽細胞は正常に融合したが、myomakerヌル筋芽細胞は融合することができなかった。(G)myomaker
scKOマウスを使用した移植試験の概略図。衛星細胞由来のmyomakerを、タモキシフェンで5日間連続して処理することにより欠失させた。(H)myomaker
scKOマウスの損傷のないTA筋にmyomaker
+ MSCを移植してから2週間後の代表的な筋肉切片。myomaker
scKOマウスにおいて中心核が観察されなかったことから、再生の阻害が示される。(I)myomaker
scKO筋肉に移植後の中心核を有するおよび有しない切片当たりのGFP
+線維の数の定量化。N.S.、有意ではない。n=4~6つの筋肉。データは平均±SEMとして表される。(J)WT筋芽細胞は、myomaker KO筋芽細胞よりも効率的に融合する。筋芽細胞をWT TA筋に移植してから2週間後の筋肉切片。初代筋芽細胞を、WTおよびmyomaker
scKOマウスの筋肉から単離し、それぞれGFPおよびdsRedで形質導入した。筋芽細胞の各集団を、別々に移植するかまたは混合して、移植の24時間前に心臓毒で損傷させたWTマウスのTA筋に移植した。WT-GFP筋芽細胞は、dsRED-myomaker KO筋芽細胞と比較して生着の増加を示した。dsRed
+非融合単核細胞(中央パネル-矢印)が観察されたが、WT-GFP筋芽細胞の移植後にはこれは見られなかった(左パネル)。同時移植後(右パネル)、最小限のdsRed
+(矢印)およびGFP
+ dsRed
+筋線維(矢印)が検出された。n=3~4。スケールバー:100μm。
【
図3】異種融合後のmdx
4cv筋肉におけるジストロフィン回復の評価。(A)インビトロ融合試験のためのプロトコルの概略図。GFP
+ myomaker
+ MSCを、mdx
4cvマウスから単離した初代筋芽細胞と共培養し、分化させた。(B)5日間の分化後に細胞を固定し、ジストロフィン抗体で免疫染色した。ジストロフィン発現は、myomaker
+ MSCと融合した筋管の膜で観察されたが、非融合mdx
4CV筋管では観察されなかった。(C)mdx
4cvマウスの損傷のないTA筋に、GFP発現myomaker
+ MSC、または対照としてWT-GFP筋芽細胞を移植してから2週間または6週間後の筋肉切片。mdx
4cvマウスの1つの群を、リプログラミングを強化する手段としてトリコスタチンA(TSA)で処理した。融合(GFP
+筋線維)は両方の時点で観察されたが、GFP
+ジストロフィン
+筋線維は筋芽細胞移植筋肉でのみ検出された。myomaker
+ MSC移植筋肉のジストロフィン
+筋線維は、GFP
+ではなく、復帰変異体(矢印)である可能性が高い。(D)MSC移植の2週間後の筋肉における切片当たりのGFP
+線維の数の定量化。n=4つの筋肉。*空と比較してp<0.05。スケールバー:B、25μm;C、100μm。データは平均±SEMとして表される。
【
図4】CBSCおよびTTFのmdx
4cv筋肉とのmyomaker媒介性異種融合ならびにジストロフィンによるリプログラミング。(A)インビトロ融合試験のためのプロトコルの概略図。CBSCをRosa26
mTmGマウスの脛骨および大腿骨から単離し、myomakerレトロウイルスに感染させた。TTFをWTマウスの尾の先端から単離し、myomakerおよびGFPを用いてレトロウイルスで形質導入した。細胞をmdx
4cv初代筋芽細胞と共培養し、分化させた。(B)5日間の分化後に共培養細胞を固定し、ミオシンおよびジストロフィン(DMD)抗体で免疫染色した。myomaker
+ CBSCおよびTTFは、筋芽細胞と融合してキメラ筋管を形成し、膜でジストロフィンの発現を示した。(C)MSC、CBSC、およびTTFにおけるmyomakerの定量的RT-PCRは、非筋肉細胞の感染後のmyomakerの発現が類似していることを示している。各細胞型は、分化した筋芽細胞(DM)よりも高いmyomakerレベルを示す。GM:増殖培地。(D)mdx
4cvマウスの損傷のないTA筋に、それぞれCBSCおよびTTFを移植してから2週間後および10週間後の代表的な筋肉切片。myomaker細胞を移植した筋肉にmTomato
+またはGFP
+筋線維が観察されたことから融合が示唆されたが、それらにジストロフィンは検出されなかった。mdx
4cvマウスでは、復帰変異体線維(矢印)のみが観察された。(E)切片当たりのmTomato
+またはGFP
+線維の数の定量化。n=3つまたは4つの筋肉。*空と比較してp<0.05。データは平均±SEMとして表される。スケールバー:B(1番目および3番目のパネル)およびD、100μm;B(2番目および4番目のパネル)、25μm。
【
図5】異種細胞融合により誘導されるジストロフィンによらないインビボでのリプログラミング。(A)インビボでのリプログラミングを検出するためのプロトコルの概略図。CBSCをMyl1
Cre/+マウスから単離し、myomakerおよびGFPレトロウイルスで形質導入し、次いで、Rosa26
tdTomatoマウスのCTX損傷TAに移植した。(B)CreのPCRは、myomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCがCreを発現しないことを示している。β-アクチン-CreマウスのTTFを陽性対照として使用した。(C)移植の4週間後にmyomaker
+ Myl1
+/+ CBSCまたはmyomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCのいずれかを移植したRosa26
tdTomato筋肉のホールマウント蛍光画像。(D)移植後のRosa26
tdTomatoマウスからのTAの代表的な切片。myomaker
+ Myl1
+/+ CBSCおよびmyomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCの両方が融合した(GFP
+筋線維)が、tdTomatoの発現(リプログラミング)はmyomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCを移植した筋肉でのみ観察された。スケールバー:C、1cm;D、100μm。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般的な発明の概念を包含する実施形態は多様な形態をとることができるが、本開示は単なる例示とみなされるべきであり、一般的な発明の概念は開示される実施形態に限定されることを意図しないことを理解して、様々な実施形態を本明細書で説明する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞を含む。本発明の特定の実施形態は、改変細胞を使用する方法を含む。本発明の他の実施形態は、改変細胞を投与する方法を含む。本発明のさらなる実施形態は、疾患を治療するために改変細胞を投与する方法を含む。本発明の追加の実施形態もまた、本明細書で論じられる。
【0014】
MyomakerポリペプチドおよびMyomaker核酸分子
本発明のいくつかの実施形態は、myomakerポリペプチド、myomaker核酸分子、もしくはその両方を含む組成物、myomakerポリペプチド、myomaker核酸分子、もしくはその両方を含む細胞、またはmyomakerポリペプチド、myomaker核酸分子、もしくはその両方を使用することを含む。いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチドは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014/210448 A1に開示されるmyomakerタンパク質である。他の実施形態において、myomakerポリペプチドは、WO2014/210448 A1の表10Aに開示されているmyomakerタンパク質である。いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチドは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2018/152103 A1に開示されるmyomakerタンパク質である。他の実施形態において、myomakerポリペプチドは、WO2018/152103 A1の表2に開示されているmyomakerタンパク質である。「myomakerポリペプチド」という用語は、「wt-myomakerポリペプチド」(すなわち、意図的に人為的な改変をしていない、天然に見られるmyomakerポリペプチド)および「変異myomakerポリペプチド」(例えば、wt-myomakerポリペプチドに1つ以上の改変が加えられている)を包含する。wt-myomakerポリペプチドの非限定的な例は、WO2014/210448 A1の表10A、WO2018/152103 A1の表2、または表1Aに見られる。他の実施形態において、myomakerポリペプチドは、wt-myomakerポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有する。wt-myomakerポリペプチドは、いくつかの実施形態において、哺乳動物、ラット、ネコ、ウサギ、ヒト、ウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、サル、ツパイ、イヌ、ブタ、トガリネズミ、ゾウ、またはオポッサムを含むがこれらに限定されない任意の動物からのmyomakerポリペプチドであり得る。表1Aは、wt-myomakerポリペプチドの非限定的な例を提供し、表1Bおよび1Cは、関連する核酸配列(開始および停止コドンを含む)の非限定的な例を提供する。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【0015】
1つ以上の改変は、場合によっては、挿入、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つ以上の天然に存在するポリペプチドを包含しない(例えば、wt-myomakerポリペプチドのうちの1つ以上を包含しない)。他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、wt-myomakerポリペプチドのいずれも包含しない。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、いずれの天然に存在するポリペプチドも包含しない(例えば、wt-myomakerポリペプチドまたはいずれか他の天然に存在するポリペプチドのいずれも包含しない)。
【0016】
いくつかの実施形態において、wt-myomakerポリペプチドに対する1つ以上の改変は、wt-myomakerポリペプチドの疎水性領域の1つ以上のアミノ酸に対する、wt-myomakerポリペプチドの親水性領域の1つ以上のアミノ酸に対する、またはそれらの組み合わせにおける、1つ以上の置換、1つ以上の挿入、または1つ以上の欠失(またはそれらの組み合わせ)を含み得る。いくつかの実施形態において、wt-myomakerポリペプチドに対する1つ以上の改変は、wt-myomakerポリペプチドの疎水性領域の1つ以上のアミノ酸に対する、wt-myomakerポリペプチドの親水性領域の1つ以上のアミノ酸に対する、またはそれらの組み合わせにおける、1つ以上の置換または1つ以上の欠失を含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチドは、wt-myomakerポリペプチド(例えば、配列番号1または配列番号4)と、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.95%、約99.99%、約100%未満、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド配列を有し得る。いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチド配列は、配列番号1または配列番号4と、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.95%、約99.99%、約100%未満、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%のアミノ酸配列同一性を有する。アミノ酸配列同一性(例えば、パーセント同一性)は、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、Clustal Omega、またはMegalignソフトウェアを使用する等の任意の好適な方法によって決定することができる。別段の指示がない限り、アミノ酸配列同一性(例えば、パーセント同一性)は、BLAST-2を使用して決定される。
【0018】
myomakerポリペプチドをコードする核酸分子は、「myomaker核酸分子」と称される。特定の実施形態において、myomaker核酸分子は、ベクター(例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、キメラウイルスベクター、プラスミド、発現ベクター、共役ベクター、または非共役ベクター)に含まれる。特定の実施形態において、myomaker核酸分子は、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、筋肉細胞、非筋肉細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、NIH/3T3細胞、CHO細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、血液細胞、骨髄細胞、または脂肪幹細胞)等の細胞内にある。
【0019】
他の実施形態において、myomaker核酸分子は、myomakerポリペプチドをコードするために使用されない1つ以上の核酸配列(例えば、1つ以上のイントロン)を含む。例えば、myomaker核酸分子は、天然に見られるような1つ以上の核酸分子(例えば、イントロンを含む)を含むことができる。特定の実施形態において、myomaker核酸分子は1つ以上のイントロンを含まないため、myomaker核酸分子は本質的に1つ以上の核酸分子とは異なる。いくつかの実施形態において、myomaker核酸分子は、cDNA分子(「myomaker cDNA分子」)である。特定の実施形態において、myomaker cDNA分子は、天然に見られる核酸分子と同一である。他の実施形態において、myomaker cDNA分子は天然に見られる核酸分子と同一ではない(例えば、myomaker cDNA分子は、天然に見られる核酸分子に1つ以上のイントロンを含まないため)。
【0020】
いくつかの実施形態において、myomaker核酸分子配列は、wt-myomakerポリペプチドをコードする核酸分子(例えば、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号15、または配列番号16)と、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.95%、約99.99%、約100%未満、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、myomaker核酸分子配列は、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号15、または配列番号16と、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%、約99.95%、約99.99%、約100%未満、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%の配列同一性を有する。wt-myomakerポリペプチドおよびwt-myomaker核酸分子の非限定的な例は、表2に見ることができる。核酸配列同一性(例えば、パーセント同一性)は、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、Clustal Omega、CRISPまたはMegalignソフトウェアを使用する等の任意の好適な方法によって決定することができる。別段の指示がない限り、核酸配列同一性(例えば、パーセント同一性)は、BLAST-2を使用して決定される。
【0021】
いくつかの実施形態において、myomaker核酸分子は、疎水性領域、親水性領域、またはそれらの組み合わせにおいて、wt-myomakerポリペプチドに対する1つ以上の改変を有するmyomakerポリペプチドをコードする。
【0022】
myomaker核酸分子は、限定されないが、WO2014/210448 A1に見られるもの、WO2018/152103 A1に見られるもの、化学合成、酵素的生成または生物学的生成等の、任意の好適な技術を用いて作製することができる。核酸分子の化学合成は、例えば、ホスホトリエステル、ホスファイトもしくはホスホルアミダイト化学および固相技術を使用するインビトロ化学合成によって、またはデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体を介して作製される核酸分子を含み得る。酵素的に生成される核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含むがこれに限定されない任意の好適な方法を用いて達成することができる。生物学的に生成される核酸分子は、細菌中で複製された組換えDNAベクター等の、生細胞で産生された(すなわち、複製された)組換え核酸を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を用いて達成することができる。
【0023】
myomaker核酸分子および/またはmyomakerポリペプチドの構造においてなされた改変または変更は、本発明において使用され得る。特定の実施形態において、myomakerポリペプチドは(例えば、1つ以上の挿入、1つ以上の欠失、または1つ以上の置換(例えば、保存的置換)によって)改変され得る。いくつかの実施形態において、改変myomakerポリペプチドは、未改変myomakerポリペプチドの1つ以上の機能、例えば、2つの細胞の融合を活性化する能力、細胞融合を可能にする能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合可能性を付与し、別の細胞がmyomakerおよびmyomergerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、細胞に融合性を付与する能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合性を付与し、別の細胞がmyomakerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、胚発生中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成の誘導のレベル、膜への親和性、または膜コンパートメントとの会合のレベルの、感知できるほどの損失(例えば、約1%未満、約5%未満、約10%未満、約25%未満、約50%未満、約75%未満、約90%未満、約95%未満、約99%未満、または約100%未満の機能の低下)を有しない。いくつかの実施形態において、改変myomakerポリペプチドは、未改変myomakerポリペプチドの1つ以上の機能、例えば、2つの細胞の融合を活性化する能力、細胞融合を可能にする能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合可能性を付与し、別の細胞がmyomakerおよびmyomergerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、細胞に融合性を付与する能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合性を付与し、別の細胞がmyomakerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、胚発生中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成の誘導のレベル、膜への親和性、または膜コンパートメントとの会合のレベルの所望のレベル(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%)を保持する。いくつかの実施形態において、改変後のmyomakerポリペプチドは、未改変myomakerポリペプチドと比較して、増加したレベルの1つ以上の機能を有する。核酸分子は、そのような改変myomakerポリペプチドをコードするように設計することができ、そのような核酸分子は、本発明で使用することができる。
【0024】
「機能的myomakerポリペプチド」は、1つ以上の機能、例えば、2つの細胞の融合を活性化する能力、細胞融合を可能にする能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合可能性を付与し、別の細胞がmyomakerおよびmyomergerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、細胞に融合性を付与する能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合性を付与し、別の細胞がmyomakerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、胚発生中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成の誘導のレベル、膜への親和性、または膜コンパートメントとの会合のレベルの所望のレベル(例えば、天然に存在するmyomakerポリペプチド等の別のmyomakerポリペプチドと比較して少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%)を有するmyomakerポリペプチド(例えば、改変ポリペプチド)として定義される。いくつかの実施形態において、機能myomakerポリペプチドは、別のmyomakerポリペプチド(例えば、天然に存在するmyomakerポリペプチド)と比較して、増加したレベルの1つ以上の機能を有する。核酸分子は、機能的myomakerポリペプチドをコードするように設計することができ、そのような核酸分子は、本発明で使用することができる。
【0025】
「機能的に同等のmyomakerポリペプチド」は、元のmyomakerポリペプチドから(例えば、1つ以上の挿入、1つ以上の欠失、または1つ以上の置換(例えば、保存的置換)によって)改変されたmyomakerポリペプチドとして定義され、その改変myomakerポリペプチドは、元のmyomakerポリペプチドの1つ以上の機能、例えば、2つの細胞の融合を活性化する能力、細胞融合を可能にする能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合可能性を付与し、別の細胞がmyomakerおよびmyomergerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、細胞に融合性を付与する能力(例えば、タンパク質を付加すると、タンパク質は細胞に融合性を付与し、別の細胞がmyomakerを含む場合、細胞はその他の細胞と融合することができる)、胚発生中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成中の発現レベル、成体生物(例えば、胚性よりも発達した)における筋形成の誘導のレベル、膜への親和性、または膜コンパートメントとの会合のレベルの所望のレベル(例えば、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%)を保持する。いくつかの実施形態において、機能的に同等のmyomakerポリペプチドは、元のmyomakerポリペプチドと比較して、増加したレベルの1つ以上の機能を有することができる。核酸分子は、機能的に同等のmyomakerポリペプチドをコードするように設計することができ、そのような核酸分子は、本発明で使用することができる。
【0026】
特定の実施形態において、myomakerポリペプチドの長さが短いほど、例えば、所望のレベルの選択された機能を保持しながら、ポリペプチド内で行うことができる改変(例えば、置換)が少なくなる。場合によっては、より長いドメインは、例えば、所望のレベルの選択された機能を保持しながら、より多くの数のそのような変更を有し得る。他の実施形態において、全長ポリペプチドは、より短い長さのそのポリペプチドと比較して、例えば、所望のレベルの選択された機能を保持しながら、固定数の変化に対してより高い耐性を有することができる。
【0027】
置換の設計は、本明細書に記載されているものを含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸のハイドロパシーインデックスは、置換を設計する際に考慮され得る。ハイドロパシーインデックスにおいて、各アミノ酸に、疎水性または電荷特性に基づいて、以下のようにハイドロパシーインデックスが割り当てられる:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);またはアルギニン(-4.5)。場合によっては、特定のアミノ酸が、同様のハイドロパシーインデックスを有する他のアミノ酸に置換され得る。ハイドロパシーインデックスに基づいて変更を行う場合、ハイドロパシーインデックスによるアミノ酸の置換は、±2以下、±1以下、または±0.5以下のインデックスの差を有するアミノ酸で行うことができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、親水性値に基づいて置換を行うこともできる。米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変更を行う場合、親水性値によるアミノ酸の置換は、±2以下、±1以下、または±0.5以下の値を有するアミノ酸で行うことができる。
【0029】
アミノ酸配列またはポリペプチドの「保存的置換」は、所与のアミノ酸残基が、同様の物理化学的特性(例えば、ハイドロパシーインデックスに基づく場合は±1以下、または親水性値に基づく場合は±1以下)を有する残基によって置換されることを示す。保存的置換の例には、(a)脂肪族残基による1つの脂肪族残基の別の脂肪族残基への置換、(b)Ile、Val、Leu、またはAlaのうちの1つのIle、Val、Leu、またはAlaのうちの別の1つへの置換、(c)Gly、Ile、Val、Leu、またはAlaのうちの1つのGly、Ile、Val、Leu、またはAlaのうちの別の1つへの置換、(d)1つの極性残基の別の極性残基への置換、(e)LysおよびArgのうちの1つのLysおよびArgのうちのもう一方での置換、(f)GluおよびAspのうちの1つのGluおよびAspのうちのもう一方での置換、(g)GlnおよびAsnのうちの1つのGlnおよびAsnのうちのもう一方での置換、(h)1つの置換ヒドロキシルまたは硫黄含有残基の別のヒドロキシルまたは硫黄含有残基での置換、(i)Ser、Cys、Thr、またはMetのうちの1つのSer、Cys、Thr、またはMetのうちの別のものでの置換、(j)芳香族残基による1つの芳香族残基の別の芳香族残基への置換、(k)Phe、Tyr、またはTrpのうちの1つのPhe、Tyr、またはTrpのうちの別のものでの置換、(l)1つの塩基性残基の別の塩基性残基への置換、(m)His、Lys、またはArgのうちの1つのHis、Lys、またはArgのうちの別のものでの置換、(n)酸性/アミド残基の別の酸性/アミド残基での置換、(o)Asp、Glu、Asn、またはGlnのうちの1つのAsp、Glu、Asn、またはGlnのうちの別のものでの置換、(p)残基の同様のサイズの別の残基での置換、および(q)Ala、Gly、またはSerのうちの1つのAla、Gly、またはSerのうちの別のものでの置換が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドの疎水性領域の各アミノ酸は、保存的置換(例えば、疎水性残基に関連する保存的置換の任意の組み合わせ)で置換することができる。
【0030】
議論はアミノ酸変化に焦点を合わせてきたが、これらの変化はコードするDNAの変化によって起こり得ることが理解されるであろう。遺伝暗号が縮重していること、および2つ以上のコドンが同じアミノ酸をコードし得ることも考慮されたい。アミノ酸およびそれらのコドンの表Aおよび表Bは、そのような実施形態での使用、ならびにプローブおよびプライマー等の設計等の他の使用のために本明細書に提示されている。
【表4】
【0031】
「機能的に同等のコドン」という用語は、アルギニンまたはセリンの6つのコドン等の、同じアミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書で使用される。
【0032】
特定の例において、核酸分子は、別個の配列を含むと同時に、所望の本発明のポリペプチドをコードする能力を保持するように操作することができる。いくつかの実施形態において、これは、同じアミノ酸をコードする遺伝暗号の縮重(すなわち、複数のコドンの存在)によって達成することができる。他の例において、それは、核酸分子にイントロンを含める、追加する、または除外することによって達成することができる。
【0033】
特定の実施形態において、制限酵素認識配列は、核酸配列に導入され得る一方で、所望のポリペプチドをコードするその核酸分子の能力が維持される。他の実施形態において、CRISPRシステム(例えば、ガイドRNA、crRNA、tracrRNA、sgRNA、DNA修復テンプレート、および限定されないがCRISPR/Cas9等のCasタンパク質のうちの1つ以上を含むCRISPRシステム)を使用して核酸分子を導入することができる一方で、所望のポリペプチドをコードするその核酸分子の能力が維持される。
【0034】
アミノ酸配列(例えば、ポリペプチド)および核酸配列は、追加のN末端もしくはC末端アミノ酸等の追加の残基、または5’もしくは3’配列を含み得るが、配列がポリペプチド発現が関与する生物学的活性の維持を含む上記の基準を満たす限り、依然として本明細書に開示される配列の1つにおいて本質的に記載されている通りであることも理解されよう。末端配列の付加は、例えば、コード領域の5‘もしくは3’部分のいずれかに隣接する様々な非コード配列を含み得るか、または遺伝子内で発生し得る様々な内部配列(すなわち、イントロン)を含み得る核酸配列に特に当てはまる。
【0035】
いくつかの実施形態は、適切な核酸分子(例えば、本明細書で論じられるような核酸配列)の転写および翻訳を介した、細胞内でのポリペプチドの合成を用いる。これらのポリペプチドには、20個の「天然」アミノ酸およびその翻訳後改変が含まれる。インビトロでのペプチド合成は、改変されたまたは通常とは異なるアミノ酸の使用を可能にする。いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチドは、1つ以上の改変されたまたは通常とは異なるアミノ酸を含む改変(例えば、1つ以上の置換または1つ以上の挿入)を包含する。例示的であるが限定的ではない改変されたまたは通常とは異なるアミノ酸の表を表Cに提供する。
【表5】
【0036】
本発明で開示される主題は、myomakerポリペプチド(例えば、変異myomakerポリペプチドまたはwt-myomakerポリペプチド)を産生する方法をさらに含む。任意の好適な分子生物学的技術(例えば、原核生物または真核生物の発現系を使用する)による発現、天然の供給源からの単離、または化学合成を含むがこれらに限定されない、任意の好適な方法を用いてmyomakerポリペプチドを作製することができる。真核生物の発現系は、植物ベースの系、組換えバキュロウイルスを介した昆虫細胞系;組換えバキュロウイルスを介した全昆虫系;Saccharomyces sp.およびPicchia sppを含むがこれらに限定されない遺伝子操作された酵母系;ならびに、C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、NIH/3T3線維芽細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、または組換えタンパク質の産業規模の発現に一般的に使用される他の細胞株を含むがこれらに限定されない哺乳動物細胞系を含む。いくつかの実施形態において、有用な植物ベースの発現系は、トランスジェニック植物系を含み得る。いくつかの実施形態において、有用な植物ベースの発現系は、トランスプラストミック植物系を含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、myomakerポリペプチドを産生する方法は、コードされたmyomakerポリペプチドが発現される条件下で作動可能なプロモーターに作動可能に連結された、本明細書に開示されるmyomaker核酸分子を含む宿主細胞を提供することと、宿主細胞からmyomakerポリペプチドを回収することと、を含む。
【0038】
ジストロフィンポリペプチドおよびジストロフィン核酸分子
本発明のいくつかの実施形態は、ジストロフィンポリペプチド、ジストロフィン核酸分子、もしくはその両方を含む組成物、ジストロフィンポリペプチド、ジストロフィン核酸分子、もしくはその両方を含む細胞、またはジストロフィンポリペプチド、ジストロフィン核酸分子、もしくはその両方を使用することを含む。いくつかの実施形態において、ジストロフィンポリペプチドは、マイクロジストロフィンポリペプチドまたはミニジストロフィンポリペプチドである。「ジストロフィンポリペプチド」という用語は、「wt-ジストロフィンポリペプチド」(すなわち、意図的に人為的な改変をしていない、天然に見られるジストロフィンポリペプチド)および「変異ジストロフィンポリペプチド」(例えば、上記に開示される改変のいずれか等の、wt-ジストロフィンポリペプチドに1つ以上の改変が加えられている)を包含する。他の実施形態において、ジストロフィンポリペプチドは、wt-ジストロフィンポリペプチド(例えば、保存的置換等の上記に開示されたもののいずれか)と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を有する。wt-ジストロフィンポリペプチドは、いくつかの実施形態において、哺乳動物、ラット、ネコ、ウサギ、ヒト、ウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、サル、ツパイ、イヌ、ブタ、トガリネズミ、ゾウ、またはオポッサムを含むがこれらに限定されない任意の動物からのジストロフィンポリペプチドであり得る。
【0039】
ジストロフィンポリペプチドをコードする核酸分子は、「ジストロフィン核酸分子」と称される。特定の実施形態において、ジストロフィン核酸分子は、ベクター(例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、キメラウイルスベクター、プラスミド、発現ベクター、共役ベクター、または非共役ベクター)に含まれる。特定の実施形態において、ジストロフィン核酸分子は、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、筋肉細胞、非筋肉細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、NIH/3T3細胞、CHO細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、血液細胞、骨髄細胞、または脂肪幹細胞)等の細胞内にある。
【0040】
改変細胞を含む細胞
本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞等の細胞を含む。特定の実施形態において、改変細胞は、1つ以上の改変のうちの少なくとも1つがヒトによって(例えば、直接的または間接的に、ヒトの活動によって)実施された、細胞の1つ以上の改変を含む細胞である。いくつかの実施形態において、改変される細胞は、未改変細胞であり得るか、または以前に改変された(例えば、本明細書に開示されるように改変された)細胞であり得る。細胞は、(a)本明細書に開示される1つ以上の核酸分子(myomaker、ジストロフィン、またはその両方)等であるがこれらに限定されない核酸分子の付加、(b)本明細書に開示されるポリペプチドを含むがこれらに限定されない1つ以上のポリペプチドの付加、(c)1つ以上のポリペプチド(例えば、myomaker、ジストロフィン、またはその両方)の発現(例えば、過剰発現)、または(d)それらの組み合わせ(例えば、myomakerの発現およびジストロフィンの過剰発現)を含むがこれらに限定されない、任意の所望の様式で改変することができる。場合によっては、改変細胞は、別の改変細胞のさらなる改変から生じ得る。
【0041】
細胞を改変するための核酸分子の付加は、形質転換(本明細書で使用される場合、トランスフェクション法は形質転換という用語に含まれる)、ウイルス形質転換(例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、キメラウイルスベクター、プラスミド、コスミド、人工染色体、バクテリオファージ、ウイルス、動物ウイルス、植物ウイルス、発現ベクター、共役ベクター、または非共役ベクターを使用する)、注射、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、超音波処理、カルシウムイオン処理、リン酸カルシウム沈殿、PEG-DMSO処理、DE-Dextran処理、リポソーム媒介形質転換、または受容体媒介形質転換のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を用いて達成することができる。細胞を改変するためのポリペプチドの付加は、注射、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、超音波処理、カルシウムイオン処理、リン酸カルシウム沈殿、PEG-DMSO処理、DE-デキストラン処理、またはリポソーム媒介のうちの1つ以上を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を用いて達成することができる。付加される核酸分子は、ベクター(例えば、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、キメラウイルスベクター、プラスミド、コスミド、人工染色体、バクテリオファージ、動物ウイルス、植物ウイルス、発現ベクター、共役ベクター、または非共役ベクター)、プラスミド、コスミド、人工染色体、バクテリオファージ、ウイルス、動物ウイルス、植物ウイルスの一部であり得る。いくつかの実施形態において、付加された核酸分子は外因性である。「外因性」とは、(a)付加された核酸分子が細胞の外側に由来する(例えば、細胞にとって外来性である)、または(b)付加された核酸分子を細胞内に見ることができるが、付加された核酸分子は、通常は見られない細胞内(例えば、染色体の別の部分または付加されたプラスミド上)に配置されることを意味する。いくつかの実施形態において、付加されたポリペプチドは外因性である。この文脈における「外因性」とは、付加されたポリペプチドが細胞の外側に由来する(例えば、細胞に対して外来性である)ことを意味する。
【0042】
改変される細胞は、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、脊椎動物細胞、または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、筋肉細胞、非筋肉細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、NIH/3T3細胞、CHO細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、血液細胞、骨髄細胞、幹細胞、または脂肪幹細胞)を含むがこれらに限定されない任意の好適な細胞であり得る。特定の実施形態において、未改変細胞は、昆虫細胞、脊椎動物細胞、または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、筋肉細胞、非筋肉細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、NIH/3T3細胞、CHO細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、血液細胞、骨髄細胞、幹細胞、または脂肪幹細胞)を含むがこれらに限定されない任意の好適な細胞であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、改変細胞は、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞であり得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、改変細胞は、改変非筋肉細胞(例えば、改変線維芽細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞)である。
【0044】
他の実施形態において、改変細胞は、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加された非筋肉細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加された幹細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加された線維芽細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加された筋肉細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加された筋芽細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)、またはmyomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が付加されたMSC細胞(例えば、myomakerおよび/またはジストロフィン核酸分子が外因性である場合)である。
【0045】
改変細胞は、細胞を改変するまたは部分的に改変するための、本明細書に開示されるもの、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれるLI et al.2005に見られるものを含むがこれらに限定されない任意の好適な方法を用いて(例えば、ヒトCMVプロモーターまたはマウス幹細胞ウイルスプロモーター(MSCV)とともにレンチウイルスベクターを使用して)調製することができる(LI et al.(2005)“Stable transduction of myogenic cells with lentiviral vectors expressing a minidystrophin”Gene Therapy,Vol.12,pp.1099-1108)。
【0046】
医薬組成物を含む組成物
1つ以上のポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチド、変異myomakerポリペプチド、wt-ジストロフィンポリペプチド、または変異ジストロフィンポリペプチド)または1つ以上のmyomakerもしくはジストロフィン核酸分子(例えば、裸の核酸分子、ベクター、ウイルス、プラスミドの形態、または任意の好適な形態)は、組成物の一部であり得、少なくとも約0.0001%、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.10%、少なくとも約0.15%、少なくとも約0.20%、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.50%、少なくとも約0.75%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約99.99%、約75%以下、約90%以下、約95%以下、約99%以下、または約99.99%以下、約0.0001%~約99%、約0.0001%~約50%、約0.01%~約95%、約1%~約95%、約10%~約90%、または約25%~約75%の量(全組成物の重量による)であり得る。特定の実施形態において、改変細胞(例えば、本明細書に開示される)等の細胞は、本明細書に示される任意の量(例えば、上記に示される)で組成物の一部であり得る。
【0047】
1つ以上のポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチド、変異myomakerポリペプチド、wt-ジストロフィンポリペプチド、または変異ジストロフィンポリペプチド)または1つ以上のmyomakerもしくはジストロフィン核酸分子(例えば、裸の核酸分子、ベクター、ウイルス、プラスミドの形態、または任意の好適な形態)は、少なくとも約0.0001%、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.10%、少なくとも約0.15%、少なくとも約0.20%、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.50%、少なくとも約0.75%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約99.99%、約75%以下、約90%以下、約95%以下、約99%以下、約99.99%以下、約0.0001%~約99%、約0.0001%~約50%、約0.01%~約95%、約1%~約95%、約10%~約90%、または約25%~約75%。の量(全組成物の重量による)で精製または単離することができる。いくつかの実施形態において、単離または精製は、不純物(例えば、化学的に合成された場合、細胞成分または不要な溶液成分)が、任意の好適な技術(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、遠心分離、分画、ゲル、沈殿、または塩析)のうちの1つ以上によって除去されたことを意味する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態は、1つ以上のポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチド、変異myomakerポリペプチド、wt-ジストロフィンポリペプチド、または変異ジストロフィンポリペプチド)または1つ以上のmyomakerもしくはジストロフィン核酸分子(例えば、裸の核酸分子、ベクター、ウイルス、プラスミドの形態、または任意の好適な形態)を含む組成物を含む。特定の実施形態において、改変細胞(例えば、本明細書に開示される)等の細胞は、本明細書に示される任意の量(例えば、上記に示される)で組成物の一部であり得る。特定の実施形態において、組成物は、動物(例えば、哺乳動物、霊長類、サル、ヒト、イヌ、ブタ、マウス、ウサギ、またはラット)への投与に適した組成物等の医薬組成物である。いくつかの実施形態において、固有の副作用があり得る(例えば、それは、患者に害を及ぼす可能性があるか、または一部の患者においてある程度毒性または有害である可能性がある)。
【0049】
いくつかの実施形態において、1つ以上のポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチド、変異myomakerポリペプチド、wt-ジストロフィンポリペプチド、または変異ジストロフィンポリペプチド)または1つ以上のmyomakerもしくはジストロフィン核酸分子(例えば、裸の核酸分子、ベクター、ウイルス、プラスミドの形態、または任意の好適な形態)は、医薬組成物の一部であり得、少なくとも約0.0001%、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.10%、少なくとも約0.15%、少なくとも約0.20%、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.50%、少なくとも約0.75%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約99.99%、約75%以下、以下約90%、約95%以下、約99%以下、約99.99%以下、約0.001%~約99%、約0.001%~約50%、約0.1%~約99%、約1%~約95%、約10%~約90%、または約25%~約75%の量(全組成物の重量による)であり得る。いくつかの実施形態において、改変細胞(例えば、本明細書に開示される)等の細胞は、本明細書に示される任意の量(例えば、上記に示される)で医薬組成物の一部であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局所、皮下、髄腔内、腹腔内、経口、非経口、直腸、皮膚、鼻腔、膣内、または眼内投与経路に適した剤形で提示することができる。他の実施形態において、医薬組成物は、非経口投与、粘膜投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、皮内投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、または筋肉内投与に適した剤形で提示することができる。医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末顆粒、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤(ヒドロゲルを含む)、ペースト剤、軟膏剤、クリーム剤、プラスター剤、水剤、送達デバイス、坐剤、浣腸剤、注射剤、インプラント、噴霧剤、エアロゾルまたは他の好適な形態の形態であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の処方成分を含むことができる。「処方成分」は、任意の好適な成分(例えば、薬物(複数可)、薬物(複数可)の投与量、薬物(複数可)の放出のタイミング、疾患、病態、臓器、または送達経路に適している)であり得、例えば、水(例えば、煮沸水、蒸留水、濾過水、パイロジェンフリー水、またはクロロホルムを含む水)、砂糖(例えば、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、またはそれらから作製されるシロップ)、エタノール、グリセロール、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、アセトン、エーテル、DMSO、界面活性剤(例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート))、油(例えば、動物油、植物油(例えば、ココナッツ油またはラッカセイ油)、または鉱物油)、油誘導体(例えば、オレイン酸エチル、モノステアリン酸グリセリル、または水素化グリセリド)、賦形剤、防腐剤(例えば、システイン、メチオニン、抗酸化剤(例えば、ビタミン(例、A、E、またはC))、セレン、パルミチン酸レチニル、クエン酸ナトリウム、クエン酸、クロロホルム、またはパラベン(例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン))、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、組成物(例えば、医薬組成物)中の任意の個々の処方成分の濃度は、少なくとも約0.0001%、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.10%、少なくとも約0.15%、少なくとも約0.20%、少なくとも約0.25%、少なくとも約0.50%、少なくとも約0.75%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約99.99%、約75%以下、約90%以下、約95%以下、約99%以下、約99.99%以下、約0.001%~約99%、約0.001%~約50%、約0.1%~約99%、約1%~約95%、約10%~約90%、または約25%~約75%の量(全組成物の重量による)であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの処方成分の濃度は、ポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチドまたはwt-ジストロフィンポリペプチド)が見出される天然の系に見られる濃度と同じではない。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの処方成分の濃度は、ポリペプチド(例えば、wt-myomakerポリペプチドまたはwt-ジストロフィンポリペプチド)をコードする核酸分子が見られる1つ以上の天然の系に見られる濃度と同じではない。
【0052】
特定の実施形態において、医薬組成物は、実質的に投与直後、または任意の実質的に所定の時間、または投与後の時間に、有効成分(例えば、wt-myomakerポリペプチド、wt-ジストロフィンポリペプチド、または改変細胞)を放出するように製剤化することができる。そのような製剤は、例えば、様々な徐放性組成物およびコーティング等の徐放性製剤を含むことができる。
【0053】
他の製剤(例えば、医薬組成物の製剤)は、特定の実施形態において、薬物(または徐放性製剤)を食物、食料品、飼料、または飲料に組み込んだものを含むことができる。
【0054】
改変細胞を含む細胞の使用方法
本発明のいくつかの実施形態は、改変細胞等の細胞を使用する方法を含む。本発明のいくつかの実施形態は、(例えば、本明細書に開示されるような)1つ以上の改変細胞を動物に投与するための方法を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、未改変細胞は、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、脊椎動物細胞、または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、ラット細胞、マウス細胞、筋肉細胞、非筋肉細胞、筋芽細胞、線維芽細胞、C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、NIH/3T3細胞、CHO細胞、樹状細胞、がん細胞、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞、血液細胞、骨髄細胞、幹細胞、または脂肪幹細胞)を含むがこれらに限定されない任意の好適な細胞であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、改変細胞は、改変動物細胞、改変脊椎動物細胞、改変哺乳動物細胞、改変ヒト細胞、改変ラット細胞、改変マウス細胞、改変筋肉細胞、改変非筋肉細胞、改変筋芽細胞、改変線維芽細胞、C2C12細胞、改変C2C12細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変樹状細胞、改変がん細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞を含むがこれらに限定されない任意の好適な細胞であり得る。他の実施形態において、改変細胞は、改変非筋肉細胞(例えば、改変線維芽細胞、10T 1/2線維芽細胞、改変10T 1/2線維芽細胞、改変NIH/3T3細胞、改変CHO細胞、改変樹状細胞、改変がん細胞、改変間葉系幹細胞(MSC)、改変造血幹細胞、改変血液細胞、改変骨髄細胞、改変幹細胞、または改変脂肪幹細胞)である改変細胞であり得る。いくつかの実施形態において、改変細胞は、myomakerを発現するか、ジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現もしくは過剰発現するか、またはそれらの組み合わせである、MSC細胞である。
【0057】
この方法における1つ以上の改変細胞の投与することは、本明細書に開示されるもの等であるがこれに限定されない、任意の好適な様式によって行うことができる。例えば、投与することは、動物に1つ以上の改変細胞を移植する、注射する、または生着させることによって達成することができる。本明細書に開示されるものを含むがこれらに限定されない、任意の好適な投与経路を使用することができる。
【0058】
動物には、哺乳動物、霊長類、サル(例えば、マカク、アカゲザル、またはブタオザル)、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、トリ(例えば、ニワトリ)、マウス、ウサギ、およびラットが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトおよび動物の両方の対象を指す。
【0059】
特定の実施形態において、投与する方法は、疾患の治療の一部であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は、細胞がジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を過少発現する、ジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現しない、ジストロフィンの欠陥型(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現する、またはそれらの組み合わせの疾患等を含むがこれらに限定されない任意の疾患であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は、細胞がジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を過少発現する、ジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現しない、ジストロフィンの欠陥型(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現する、またはそれらの組み合わせの非筋肉疾患等を含むがこれらに限定されない非筋肉関連疾患であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は、細胞がジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を過少発現する、ジストロフィン(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現しない、ジストロフィンの欠陥型(例えば、マイクロジストロフィンまたはミニジストロフィン)を発現する、またはそれらの組み合わせの筋肉関連疾患等を含むがこれらに限定されない筋肉関連疾患であり得る。特定の実施形態において、治療される疾患は、ミオパチー、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルーゲーリック病とも呼ばれる)、糖原病II型(ポンペ病とも称される)、横紋筋肉腫(RMS)、サルコペニア、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、疾患はがんであり得る。本明細書で使用される場合、「治療する」という用語(および「治療」等のその変形)は、その最も広い意味で考慮されるべきである。特に、「治療すること」という用語は、動物が完全に回復するまで治療されることを必ずしも意味するものではない。したがって、「治療すること」には、症状の改善、状態に関連する症状または影響の軽減、状態の重症度の低下、または症状の予防、予防的改善、またはその他の方法で特定の状態を発症するリスクの低減が含まれる。本明細書で使用される場合、動物を「治療すること」への言及には、予防的治療および治療的治療が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法または組成物(例えば、医薬組成物)のいずれかを使用して、動物を治療することができる。
【0060】
さらに他の実施形態において、1つ以上の改変細胞の送達は、任意の好適な投与経路によって行うことができる。投与経路は、経口経路、非経口経路、皮膚経路、鼻腔内経路、直腸経路、膣経路、および眼経路であり得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、投与経路は、非経口投与、粘膜投与、静脈内投与、デポー注射、皮下投与、局所投与、皮内投与、経口投与、舌下投与、鼻腔内投与、または筋肉内投与(例えば、筋肉内注射)であり得る。特定の実施形態において、送達は、注射または筋肉内注射を含む。特定の実施形態において、送達は、改変細胞を含む注射を含む(例えば、組成物または医薬組成物中)。他の実施形態において、送達は、改変細胞を含む筋肉内注射を含む(例えば、組成物または医薬組成物中)。
【0061】
さらに他の実施形態において、治療は、投与するステップのうちの1つ以上をさらに含むことができる。
【0062】
本発明で開示される主題は、以下の特定ではあるが非限定的な例によってさらに説明される。以下の実施例は、本発明に関連する開発および実験の過程の様々な時点で収集されたデータを代表するデータの編集を含み得る。
【実施例】
【0063】
材料および方法
動物
C57BL/6(WT)、mdx4cv(Jackson Laboratory番号002378)、MyomakerLacZ/loxP;Pax7CreERT2(myomakerscKO)、Rosa26mTmG(Jackson Laboratory番号007676)、Rosa26tdTomato(Jackson Laboratory番号007905)、myl1Cre/+(Jackson Laboratory番号024713)マウスを、細胞の供給源および/または細胞移植試験のレシピエントとして使用した。MyomakerscKOマウスを以前に記載されたように生成した(MILLAY et al.(2014)“Myomaker is essential for muscle regeneration”Genes Dev,Vol.28,pp.1641-1646)。10%エタノールを含むコーン油に25mg/mLの濃度でタモキシフェン(Sigma-Aldrich)を溶解し、0.075mg/kg/日の用量で5日間腹腔内投与した。すべての動物の手順は、シンシナティ小児病院医療センターの施設内動物管理使用委員会によって承認され、AAALACガイドラインに従って実施された。
【0064】
細胞の調製
WT MSCを、以前に記載されたように生成した(GONZALEZ-NIETO et al.(2012)“Connexin-43 in the osteogenic BM niche regulates its cellular composition and the bidirectional traffic of hematopoietic stem cells and progenitors”Blood,Vol.119,pp.5144-5154)。簡単に説明すると、骨髄細胞を、20%のMSC刺激サプリメント(StemCell Technologies)、100μM 2-メルカプトエタノール、100IU/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10ng/mLヒト血小板由来成長因子(PDGF)-BB、および10ng/mL組換えマウス上皮成長因子(rM-EGF)を添加したIscove改変ダルベッコ培地(IMDM)のフィブロネクチンコーティングしたウェル(Corning)に播種した。接着クラスターを最低でも5継代増殖させ、マクロファージの枯渇をフローサイトメトリーにより評価した。WT MSCは、10%ウシ成長血清(BGS、HyClone)およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加した高グルコースDMEM(HyClone)で維持した。
【0065】
mTomato CBSCは、他者によって記載されるようにRosa26mTmGマウスから分離した(DURAN et al.,(2013)“Bone-derived stem cells repair the heart after myocardial infarction through transdifferentiation and paracrine signaling mechanisms”Circ Res,Vol.113,pp.539-552)。この方法を、myl1Cre/+およびWTマウスからCBSCを単離するために変更した。大腿骨および脛骨を採取し、骨端を取り除いた後、乳鉢および乳棒で粉砕した。粉砕した骨をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で5回洗浄して骨髄細胞を除去し、メスで約2mmの断片になるよう細かく刻んだ。0.3%コラゲナーゼI型(Invitrogen)を含有する低グルコースDMEM(Invitrogen)中、37℃で1.5時間インキュベーションした後、骨片と細胞の両方を、20%MSC刺激サプリメント、30%Ham F10(Invitrogen)、100μM 2-メルカプトエタノール、10ng/mLマウスPDGF-BB(ProSpec)、10ng/mLマウスEGF(Novus Biologicals)、2.5ng/mLヒトbFGF(Invitrogen)を添加した低グルコースDMEMに播種した。7日後、骨片を廃棄し、細胞をトリプシン処理し、増殖させた。CBSCは、15%ウシ胎児血清(FBS)、40%Ham F10、10ng/mLマウスEGF、2.5ng/mLヒトbFGF、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加した低グルコースDMEMで維持した。
【0066】
TTFを取得するために、成体WTマウスの尾の皮膚を剥ぎ、かみそりの刃で小片に切断した。尾の外植片を、10%BGSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する高グルコースDMEMを含む100mmの培養皿に播種し、培地を1日置きに交換した。線維芽細胞を尾の外植片から7~10日間遊走させ、次いでトリプシン処理し、ウイルス形質導入のために播種した。
【0067】
初代筋芽細胞は、以前に記載されたように、WT、myomakerscKO、またはmdx4cvマウスから単離した(MILLAY et al(2016)“Structure-function analysis of myomaker domains required for myoblast fusion”Proc Natl Acad Sci USA,Vol.113,pp.2116-2121)。細胞をコラーゲンコーティングしたプレートに播種し、増殖培地(ペニシリン/ストレプトマイシンを含む低グルコースDMEM中の15%FBS、40%Ham F10、および2.5ng/mLヒトbFGF)で維持し、分化培地(ペニシリン/ストレプトマイシンを含む高グルコースDMEM中の2%馬血清)で分化させた。非筋肉細胞の感染について以下に記載したように、WTおよびmyomakerscKO一次筋芽細胞を、GFPまたはdsREDレトロウイルスに感染させた。
【0068】
インビトロ異種融合
非筋肉細胞を、以前に記載されたようにmyomakerおよび/またはGFPレトロウイルスで形質導入した(MILLAY et al(2016)“Structure-function analysis of myomaker domains required for myoblast fusion”Proc Natl Acad Sci USA,Vol.113,pp.2116-2121)。簡単に説明すると、FuGENE6(Roche)を使用してプラスミドDNAをPlatinum E Cell(Cell Biolabs)にトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後にウイルス培地を回収した。ポリブレン(Sigma)を添加した後、ウイルス上清を標的細胞上で18時間インキュベートした。すべての非筋肉細胞の形質導入効率を、カスタム生成されたmyomaker抗体を用いて免疫染色により評価したところ、すべての感染症で95~100%であった(未発表の観察結果)。一次筋芽細胞を37,500細胞/cm2の密度でコラーゲンコーティングしたプレートに播種し、翌日、非筋肉細胞を6,250細胞/cm2の密度で添加し、分化培地で培養した。5日後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)/PBSで固定し、0.2%TritonX/PBSで透過処理した後、3%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBSでブロッキングし、次いで、抗ミオシン重鎖(1:1000、クローンMF20、R&D Systems)および/または抗ジストロフィン抗体(1:1000、番号ab15277、Abcam)と4℃で一晩インキュベートし、続いてAlexa-Flour-二次抗体(1:1000)とインキュベートした。
【0069】
細胞移植
細胞をトリプシン処理し、2×107細胞/mLの濃度でPBSに再懸濁し、氷上に維持した。25μLの細胞懸濁液(500,000細胞)を30ゲージの針を備えたGastightハミルトンシリンジに装填し、前脛骨筋(TA)の遠位端から近位端まで針を縦方向に挿入した。注射は、筋肉当たり5回の連続動作によって行われ、約1mm抜針するごとに5μLの注射で構成されていた。示されている場合、移植の24時間前に10μMの心臓毒(50μL)を注射することによりTAを損傷させた。トリコスタチンA(TSA)(ApexBio)処理では、浸透圧ポンプ(番号0000298、Durect)に6mg/mL TSAを含有する50%DMSO/15%エタノールを充填し、皮下に移植した。移植前に細胞を0.1μM TSAで24時間処理した。心臓内細胞送達のために、心臓を左開胸術によって露出させ、5×104 GFP+ myomaker+ MSC(21μLの滅菌生理食塩水に懸濁)を33gハミルトンシリンジで左心室の前壁に沿った3つの定義された領域に注入した。
【0070】
筋肉組織学
TAが骨に付着した状態で後肢を切断し、4%PFA/PBSに4℃で1~2時間浸漬した。骨を取り除く前に、Zeiss実体顕微鏡を使用して筋肉のサブセットをホールマウントで画像化してtdTomatoを視覚化した。TA筋を骨から外し、筋腹で2つに切断し、2%PFA/PBSに4℃で一晩浸漬した後、4℃の30%スクロース/PBSに入れた。1~2日後、筋肉をOCTに包埋し、凍結し、10μmの切片を回収した。透過性/ブロッキング溶液(PBS中の1%BSA、1%熱不活化ヤギ血清、0.025%Tween20、および0.2%TritonX-100)で切片を1時間室温で処理した後、抗ジストロフィン(1:200)および/または抗ラミニン-2(1:500、番号L-0633、Sigma-Aldrich)抗体と4℃で一晩インキュベートした。切片をAlexa Fluor二次抗体(1:1000)と室温で1時間インキュベートし、DAPI(Vector Laboratories)を含有するVectaShieldを用いてマウントした。心臓組織における融合の分析のために、心臓を氷冷1M KClの心臓内注射により拡張期に停止させ、4%PFA/PBSで灌流した。PFA/PBSで4時間固定した後、心臓をPBSで2回洗浄し、30%スクロース/PBSで一晩凍結保護し、5μmの凍結切片を採取した。NIS Elementsを実行するA1R共焦点を備えたNikon Eclipse Ti倒立顕微鏡でインビトロおよびインビボでのすべての免疫染色を視覚化し、画像をFijiで分析した(SCHINDELIN et al.(2012)“Fiji:an open-source platform for biological-image analysis”Nat Methods,Vol.9,pp.676-682)。
【0071】
RNA分析
細胞を溶解し、RNAqueous(登録商標)マイクロキット(番号AM1931、Invitrogen)を使用して全RNAを抽出し、DNase Iで処理した。ランダムヘキサマープライマー(Applied Biosystems)とともにMultiScribe(商標)逆転写酵素を使用してcDNAを合成した。myomakerの発現は、PowerUp(商標)SYBR(登録商標)Green Master Mix(Applied Biosystems)を用いて、標準的な定量的PCRを使用して評価した。分析は、7900HT高速リアルタイムPCRマシン(Applied Biosystems)で、以下のプライマーを用いて行われた:フォワード、ATCGCTACCAAGAGGCGTT(配列番号17);リバース、CACAGCACAGACAAACCAGG(配列番号18)。結果を、以下のプライマーとともにGAPDHを使用して正規化した:フォワード、TGCGACTTCAACAGCAACTC(配列番号19);リバース、GCCTCTCTTGCTCAGTGTCC(配列番号20)。Creの発現は、以下のプライマーを用いて、標準的なPCRおよびゲル電気泳動を使用して評価した:フォワード、AGGTTCGTTCACTCATGGA(配列番号21);リバース、TCGACCAGTTTAGTTACCC(配列番号22)。GAPDHの発現は、上記と同じプライマーを用いて参照遺伝子として評価した。
【0072】
定量化および統計分析
インビボ融合の定量的評価のために、各筋肉の代表的な切片におけるGFP+またはmTomato+筋線維の数を手動でカウントし、平均±SEMとして提示した。データは、GraphPad Prism6ソフトウェアを用いて、対応のないスチューデントのt検定で分析した。p<0.05の値が統計的に有意であるとみなされた。
【0073】
結果
MSCにおけるmyomakerの発現は筋肉との融合を誘発する
Myomakerを発現する10T 1/2線維芽細胞は、初代筋芽細胞と融合する。MSCがmyomaker媒介性の融合に適しているかどうかを判断するために、マウスMSCをmyomakerおよびGFPレトロウイルスに同時感染させた。対照として、MSCを空のレトロウイルスおよびGFPレトロウイルスにも同時感染させた。次いで、GFP
+ myomaker
+ MSCを野生型(WT)マウスの初代筋芽細胞と混合し、5日間分化させた(
図1A)。筋分化のマーカーであるミオシンに対する抗体を用いた免疫染色によって筋芽細胞を追跡した。筋芽細胞をmyomaker
+ MSCと混合したときにGFP
+ミオシン
+構造が観察されたことから、これらの細胞集団間の融合が示唆される(
図1B)。GFP
+ミオシン
-多核細胞は観察されなかったことから、myomaker
+ MSCが互いに融合しなかったことが示唆される。GFP
+ミオシン
+細胞は、空-MSCおよび筋芽細胞を含む培養物では容易に検出されなかった(
図1B)。次に、myomaker
+ MSCがインビボで筋肉と融合できるかどうかを試験した。前脛骨筋(TA)を心毒性(CTX)で損傷させ、翌日、500,000個のGFP
+ myomaker
+ MSCをTAに移植した。ジストロフィン
+筋線維内のGFPの存在は、MSCと筋肉との融合を示唆し、移植の4週間後に評価した。空-MSCの移植後に最小限のGFP
+筋線維が検出されたが、myomaker
+ MSCでは異種融合の増加が観察された(
図1C)。切片当たりのGFP
+筋線維の数の定量化により、空-MSCと比較してmyomaker
+ MSCの融合が5倍増加することが明らかになった(
図1D)。これらの結果は、myomakerを発現するMSCが融合能を有し、インビボ移植環境で筋肉が異種融合の影響を受けやすいことを示している。
【0074】
次に、myomaker
+ MSCが損傷のない状態で筋肉と融合できるかどうかを評価したが、それは、衛星細胞が活性化されていない非ジストロフィー性疾患の設定において異種融合を利用できることを意味する。損傷のないTAにmyomaker
+ MSCを注入するとGFP
+ジストロフィン
+筋線維によって示されるように筋肉との融合が生じた(
図2A)。心臓組織へのmyomaker
+ MSCの移植は広範囲の融合をもたらさなかったため、myomakerが非筋肉細胞を筋肉と融合させる能力は骨格筋に特異的であった(
図2B)。中心核は、筋線維の再生の特徴であり得、したがって、筋前駆細胞活性の代わりとなり得る。この実験のレシピエント筋肉はCTXで損傷させなかったが、観察された中心核は細胞移植中の針による軽度の損傷によるものであると推測される。空のMSCまたはmyomaker
+ MSCの移植後に、中心核を有する筋線維全体(GFP
+またはGFP
-)に明らかな差異が検出されなかったことから、myomaker
+ MSCが針による損傷に起因する傷害を増強しないことが示唆される(
図2A、挿入図)。しかしながら、中心核を有するおよび有しないGFP
+線維は、空-MSCと比較してmyomaker
+ MSCでそれぞれ2倍および4倍増加したことから、myomakerが成熟筋線維および活性化筋芽細胞に融合能力を付与することが示唆される(
図2C)。
【0075】
細胞の移植は針の挿入により筋肉損傷を引き起こす可能性があるため、myomakerの遺伝子欠失により内因性衛星細胞の融合能力を不活性化して、myomaker
+ MSCが筋線維に直接融合できるかどうかを判断した。衛星細胞におけるmyomakerの条件付き欠失は、myomakerを標的とする対立遺伝子(myomaker
LacZ/loxP)および衛星細胞でCreを特異的に発現するPax7
CreERT2/+対立遺伝子を含むマウスを利用することによって達成した。この手法が融合できない筋芽細胞を生成するのに十分であることを確実にするために、Myomaker
LacZ/loxP;Pax7
CreERT2/+マウスをビヒクル(対照)またはタモキシフェン(myomaker
scKO)のいずれかで処理し、CTX損傷の3日後に筋肉から衛星細胞を単離した。myomakerの発現がmyomaker
scKO筋芽細胞で減少したため、これらの細胞は融合していないと考えられ、衛星細胞の融合をブロックするこのシステムの有用性が強調された(
図2D、
図2E、および
図2F)。次いで、Myomaker
LacZ/loxP;Pax7
CreERT2/+マウスを、ビヒクルまたは5用量のタモキシフェンで処理して衛星細胞中のmyomakerを欠失させた後、myomaker
+ MSCを移植した(
図2G)。Myomaker
+ MSCは、内因性衛星細胞が融合不能になった後でも融合能力を示したことから、それらが筋線維に融合できたことが示唆される(
図2H)。中心核がある場合およびない場合の融合事象の定量化は、myomaker
+ MSCが衛星細胞融合活性の非存在下で実際に筋線維に融合することを示している(
図2I)。ビヒクルと比較して、タモキシフェンで処理した試料において、中心核を有しないGFP
+筋線維の統計的に有意でない減少が観察された。この減少は、中心核を有する繊維の数が過小評価であること、および中心核を有しないいくつかの繊維がこの切断面の上下に中心核を含み得ることを示唆している可能性がある。
【0076】
myomakerを発現していない細胞(空-MSC)が筋肉と融合できることを実証したが、このことは、インビボでの融合が両方の細胞でmyomakerを絶対に必要とするわけではないことを示唆している。この概念をさらに評価するために、WT-GFP筋芽細胞およびmyomaker KO-dsRED筋芽細胞を生成し、CTX誘発損傷後にそれらをWTマウスに移植した。Myomaker KO-dsRED筋芽細胞と比較して、WT-GFP筋芽細胞はより高い生着能を示した(
図2J)。さらに、小さな単核dsRED
+細胞の数の増加が観察され、これらの細胞が融合できないことが示された(
図2J)。また、WT-GFP筋芽細胞とmyomaker KO-dsRED筋芽細胞を一緒に移植したところ、dsRED
+線維ではなく、主としてGFP
+筋線維が観察されたことから、WT-GFP筋芽細胞がより融合能力が高いことが示唆される(
図2J)。全体として、これらのデータは、2つの細胞のうち少なくとも一方がmyomakerを発現する場合、筋芽細胞-筋芽細胞融合と非筋肉-筋芽細胞融合の両方が、筋肉再生中にインビボで起こり得ることを示している。
【0077】
異種融合後のMSC核のジストロフィンによるリプログラミング
myomakerはMSCの融合を促進するため、MSC核がリプログラミングの影響を受けやすく、mdx
4cv筋管におけるジストロフィンの発現を回復できるかどうかを評価した。mdx
4cvマウスから筋芽細胞を単離し、それらをGFP
+ myomaker
+ MSCと共培養した(
図3A)。5日間の分化後に、これらの培養物における融合とジストロフィンの発現を評価した。予想通り、ジストロフィンはWT筋芽細胞に由来する筋管で検出されたが、mdx
4cv筋管では検出されなかった(
図3B)。いくつかのキメラ筋管において、myomaker
+ MSCとmdx
4cv筋芽細胞との融合、および膜に沿ったジストロフィン発現が観察されたが、ほとんどのGFP
+筋線維は依然としてジストロフィン
-であった(
図3B)。mdx
4cvマウスはジストロフィンを発現しないため、これらの筋管で観察されたジストロフィンは、WT MSC核に由来する確率が高く、リプログラミングが示唆される。核のリプログラミングがインビボでも起こるかどうかを判断するために、myomaker
+ MSCをmdx
4cvマウスの損傷のないTAに移植し、移植後2週間および6週間に融合およびリプログラミングについてアッセイした。Myomaker
+ MSCはジストロフィン筋線維に融合したが、移植後2週間または6週間のいずれにも、検出可能なレベルのジストロフィンは観察されなかった(
図3C)。WTマウスからのGFP
+筋芽細胞も、ジストロフィン回復の陽性対照として使用するためにmdx
4cvマウスに移植した(
図3C)。切片当たりのGFP
+筋線維の定量化により、myomaker
+ MSCが切片当たり約200個のmdx
4cv筋線維に融合したことが明らかになった(
図3D)。また、転写活性を包括的に増強する手段として、マウスをHDAC阻害剤TSAで処理したが、この手法でもジストロフィンの回復はもたらされなかった(
図3C)。これらの結果は、myomaker
+ MSCが検出可能なレベルのジストロフィンによるリプログラミングに抵抗性であると考えられることを示している。
【0078】
myomaker-CBSCおよびmyomaker-TTFの融合および核のリプログラミング
myomaker媒介性の異種融合および機能的リプログラミングの欠如がMSCに限定されているのか、または他の異種細胞で同様の現象が発生しているのかについても調べた。TTFは、古典的なヘテロカリオン実験でリプログラミングを示したために試験し、またCBSCは、MSCに類似しているために試験したが、それらはより原始的な状態にある可能性がある。GFP
+ myomaker
+ TTFまたは膜Tomato(mTom)
+ myomaker
+ CBSCのいずれかとmdx
4cv筋芽細胞とを混合し(
図4A)、融合およびジストロフィンによるリプログラミングをインビトロで成功裏に検出した(
図4B)。MSC、CBSC、およびTTFのmyomakerレベルは同等であった(
図4C)。次いで、両方の細胞型をmdx
4cvマウスの損傷のないTAに移植し、融合を観察した(
図4D)。Myomaker
+ TTFおよびmyomaker
+ CBSCは、myomaker
+ MSCと比較して同様のレベルでmdx
4cv筋肉と融合した(
図4E)。myomaker
+ MSCで観察されたのと同様に、myomaker
+ TTFまたはmyomaker
+ CBSCのいずれかと融合した後に、mdx
4cv筋肉でジストロフィンの回復は検出されなかった(
図4D)。ジストロフィンは、CBSCの移植後7週間でも検出されなかった(データは図示せず)。総合すると、myomakerは、複数の非筋肉細胞型と筋肉との融合を促進するが、ジストロフィンの発現は回復しないと考えられる。
【0079】
異種融合後のジストロフィンによらないインビボでの核のリプログラミング
異種融合は機能的なジストロフィンによるリプログラミングを誘発しないというデータを踏まえて、ジストロフィン非依存性のシステムを使用してリプログラミングが起こるかどうかを調べた。骨格筋特異的ミオシン軽ポリペプチド1(Myl1またはMLC1f)遺伝子座の制御下でCreを発現するMyl1
Cre/+マウスからCBSCを単離した。Myl1
Cre/+ CBSCをmyomakerおよびGFPレトロウイルスに感染させ、次いで、Cre依存性tdTomatoカセットを有するRosa26
tdTomatoマウスのCTXで損傷させたTA内に移植した(
図5A)。したがって、このシステムでリプログラミングを行うには、Myl1の発現に必要な因子がCBSC核内に拡散する必要があるが、それは、これらの核が通常はMyl1を発現しないためである。これによりCBSC核内でCreを活性化させ、次いで、Creが内因性Rosa26
tdTomato筋核内に移行してtdTomato発現を誘導する必要がある(
図5A)。最初に、GFP
+ myomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCが移植前にCreを発現しないことを確認した。実際に、CreのRT-PCRは、Myl1
Cre/+ CBSCでは検出されなかったが、遍在性β-アクチン-Creコンストラクトを発現する細胞で明確に検出され、Cre PCRの陽性対照として機能した(
図5B)。Rosa26
tdTomatoマウスのTA筋のホールマウント蛍光画像により、myomaker
+ Myl1
+/+ CBSCではなく、myomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCの移植が、tdTomato発現を誘導することが明らかになった(
図5C)。凍結切片によっても、myomaker
+ Myl1
+/+ CBSCが筋肉と融合したことが示されたが(GFP
+筋線維)、tdTomatoの発現は観察されなかった(
図5D)。myomaker
+ Myl1
Cre/+ CBSCの融合後、GFPとtdTomatoの共局在が検出され、効率的なリプログラミングが示された(
図5D)。全体として、これらの発見は、筋肉依存性のリプログラミングはインビボで起こるが、特定の遺伝子の遺伝子座に依存している可能性が高いことを示唆している。
【0080】
考察
データの一部において、我々は、様々な非筋肉細胞と筋肉との融合、およびそれに続く核のリプログラミングを調べている。この研究のいくつかの目標のうちの1つは、この戦略を遺伝子送達ビヒクルとして使用するための概念実証として、mdx4cvマウスでジストロフィン発現を回復させるための異種融合の効率を評価することであった。MSC、CBSC、およびTTFと骨格筋との融合を強化するために、筋特異的融合因子であるmyomakerを使用した。各細胞型がmyomakerの発現後に筋肉と融合することができたが、ジストロフィンの回復は、培養筋管のサブセットで検出されたが、mdx4cvマウスの筋線維では検出されなかった。しかしながら、筋特異的Myl1遺伝子座からCreを発現するmyomaker+ CBSCが、融合後に筋線維核におけるCre依存性tdTomato発現を活性化できたため、成体筋線維はリプログラミングを受けることができる。
【0081】
我々は、MSCおよびCBSCがmyomakerベースの遺伝子送達に適したビヒクルであり得ることを実証する。MSCは、骨髄または脂肪組織から容易に入手でき、ゲノム不安定性がない場合に拡張および増殖できるため、細胞治療での使用において臨床的に関連するいくつかの特性を示す。さらに、MSCは、最小限のMHCクラスIおよびIIを発現し、また、myomakerベースの異種融合における使用に追加の利点となる免疫調節特性を示すため、同種異系の設定で使用することができる。CBSCは、マウスに生着した後の栄養因子の分泌により、心臓損傷に対して有益な効果を示す。本試験では、損傷のないmdx4cv筋肉において筋線維の5%が、1回の移植後にmyomakerを発現する非筋肉細胞と融合した。
【0082】
分化細胞のリプログラミングは、転写因子の発現または細胞融合によって達成することができる。実際に、線維芽細胞におけるMyoDの発現は、筋肉への変換に十分であり、定義された因子の体細胞への異所性発現は、多能性への変換を誘導する。細胞培養では、筋肉細胞と線維芽細胞または肝細胞との間のヘテロカリオン形成により、非筋核からの筋遺伝子が活性化される。マウス網膜ニューロンは、損傷中に造血前駆細胞と融合した後にリプログラミングを受け、最終的に網膜の部分的な再生をもたらす。
【0083】
結論として、myomakerは、複数の細胞型がインビボでWTおよびジストロフィー性の筋肉に融合することを可能にする。非筋肉細胞のmyomaker媒介性の融合は、リプログラミングに依存しない戦略を用いることにより、ジストロフィー筋線維への治療材料の送達を支援し得る。
【0084】
本開示で使用される見出しは、その見出しに関連するすべての開示がその見出しで始まる項内にあることを示唆することを意図するものではない。あらゆる主題の開示は、本明細書全体を通して見られる場合がある。
【0085】
「好ましくは」、「一般的に」、および「典型的に」等の用語は、特許請求される発明の範囲を限定するため、または特定の特徴が、特許請求される発明の構造もしくは機能にとって重要、不可欠、またはさらには重要であることを暗示するために本明細書で使用されるものではないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態で利用されてもされなくてもよい代替または追加の特徴を強調することを意図しているに過ぎない。
【0086】
本開示で使用される場合、「a」または「an」は、別段の規定がない限り、1つまたは1つより多くを意味する。特許請求の範囲で、「含む」という語と組み合わせて使用される場合、「a」または「an」という語は、別段の規定がない限り、1つまたは1つより多くを意味する。本開示または特許請求の範囲で使用される場合、「別の」は、別段の規定がない限り、少なくとも2番目それ以上を意味する。本開示で使用される場合、「等」、「例えば(for example)」、および「例えば(e.g.)」という句は、その用語(「等」、「例えば(for example)」、および「例えば(e.g.)」)に続くリストはいくつかの例を提供するが、そのリストは必ずしも完全に包括的なリストではないという点で、「限定されないが、例えば」を意味する。「含む」という語は、「含む」という語に続く項目が、追加の列挙されていない要素またはステップを含む可能性があること、すなわち、「含む」は、追加の列挙されていないステップまたは要素を除外するものではないことを意味する。
【0087】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件等の特性等を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明で開示される主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、質量、重量、時間、体積、濃度、またはパーセンテージの値または量に言及する場合、指定された量から、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、およびいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示される方法を実行するのに適切である。
【0089】
1つ以上の実施形態の詳細な説明が本明細書に提供される。しかしながら、本発明は様々な形態で具現化され得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される特定の詳細は(たとえ、好ましいまたは有利なと表記されていても)限定的であると解釈されるべきではなく、むしろ特許請求の範囲の例示的な根拠として、および当業者に本発明を任意の適切な様式で用いることを教示するための代表的な根拠として使用されるべきである。実際に、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な修正例が、前述の記載および添付の図から当業者に明らかになるであろう。そのような修正例は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】