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特表2022-539888複数ページセキュリティドキュメントのための複数ページパーソナライゼーション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】複数ページセキュリティドキュメントのための複数ページパーソナライゼーション
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/24 20140101AFI20220906BHJP
   B42D 25/378 20140101ALI20220906BHJP
【FI】
B42D25/24
B42D25/378
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501051
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020068682
(87)【国際公開番号】W WO2021004890
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19305931.8
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522230381
【氏名又は名称】タレス ディアイエス フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100086368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック,ルシュール
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB02
2C005JB17
(57)【要約】
一連のページのそれぞれの縁部のパーソナライゼーションエリア上にレーザ可変インク層を配置することによって複数ページセキュリティドキュメントをパーソナライズすること。方法は、一連のページのそれぞれのパーソナライゼーションエリアの一部分を、一連のページの上記それぞれの上にあるページに対して、上記一連のページの中のそれぞれ2つの連続したページのパーソナライゼーション部分が互いに隣接して位置することによって2次元複数ページパーソナライゼーションセクションを生成するように表出させること、及び上記表出部分をレーザ露光することによって、上記一連のページの各ページの表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させることで2次元複数ページパーソナライゼーションセクション上にパターンを作成し、その結果、一連のページの表出部分が同時に見られるときにパターンが見えることを含む。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ページセキュリティドキュメントをパーソナライズする方法であって、前記方法が、
一連のページ上で、
前記一連のページのそれぞれの縁部のパーソナライゼーションエリア上にレーザ可変インク層を配置すること、
前記一連のページのそれぞれの前記パーソナライゼーションエリアの一部分を、前記一連のページの前記それぞれの上にあるページに対して、前記一連のページの中のそれぞれ2つの連続したページのパーソナライゼーション部分が互いに隣接して位置することによって、2次元複数ページパーソナライゼーションセクションを生成するように表出させること、
前記表出部分をレーザ露光することによって、前記一連のページの各ページの前記表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させることで前記2次元複数ページパーソナライゼーションセクション上にパターンを作成し、その結果、前記一連のページの前記表出部分が同時に見られるときに前記パターンが見えること、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数ページパーソナライゼーションセクションの任意の2つの隣接するシートについて、前記2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、前記2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、前記複数ページセキュリティドキュメントの前記縁部の一部分を角度切断することによって、前記一連のページの各ページの前記一部分を表出させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パーソナライゼーションゾーンの任意の2つの隣接するシートについて、前記2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、前記2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、前記セキュリティドキュメントを曲げることによって、前記一連のページの各ページの前記一部分を表出させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザ可変インク層が、各ページの前記露出部分上のギロシェパターンのラインであり、各ページの前記表出部分の前記インクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させるステップが、前記ギロシェパターンの前記ラインの各部分をレーザ露光し、これによって前記ギロシェパターンの前記ラインを変化させることを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レーザ露光が前記レーザ可変インク層の元の色を変化させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レーザ露光が前記レーザ可変インク層を色褪せさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの上側のシートが、前記上側のシートのレーザパーソナライゼーションが前記上側のシートの前記パーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、前記下側のシートの内部部分を表出させる内部切抜き窓を含み、前記透明窓内の前記下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンが、ジグソーパズルのピースのように前記上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの上側のシートが、前記上側のシートのレーザパーソナライゼーションが前記上側のシートの前記パーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、前記下側のシートの不規則な形状のパーソナライゼーションエリアを表出させる不規則な縁部を含み、前記不規則な形状のパーソナライゼーションエリア内の前記下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンが、ジグソーパズルのピースのように前記上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して複数ページセキュリティドキュメントに係り、より具体的には、複数ページセキュリティドキュメントを偽造から保護するための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数ページセキュリティドキュメント、例えばパスポートは通常、表紙と、データページと、複数ページセキュリティドキュメントの所持者にいくつかの追加の権利を与えるために使用され得る複数の内部ページとから構成される。例えば、パスポートはビザが書き加えられ得る複数のページを含む。
【0003】
複数ページセキュリティドキュメントの偽造品を作るための1つのメカニズムは、あるドキュメントのページを別のドキュメントに入れ替えることである。内部ページはそれ自体がほとんどセキュリティをもたらさない(通常、セキュリティギロシェパターン又は他の何らかの形態のセキュリティ用紙に限られる)ため、そのようなドキュメントを精査する者が、そのドキュメントが最初に作られた又はパーソナライズされた当初から一緒にバインドされたページを含んでいるかどうかを判断することは非常に困難である。
【0004】
以上のことから、ページの入れ替えによる偽造から複数ページセキュリティドキュメントを保護する改善された方法が必要であることは明らかである。
【発明の概要】
【0005】
一連のページのそれぞれの縁部のパーソナライゼーションエリア上にレーザ可変インク層を配置すること、一連のページのそれぞれのパーソナライゼーションエリアの一部分を、一連のページの上記それぞれの上にあるページに対して、上記一連のページの中のそれぞれ2つの連続したページのパーソナライゼーション部分が互いに隣接して位置することによって2次元複数ページパーソナライゼーションセクションを生成するように表出させること、及び上記表出部分をレーザ露光することによって、上記一連のページの各ページの表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させることで2次元複数ページパーソナライゼーションセクション上にパターンを作成し、その結果、一連のページの表出部分が同時に見られるときにパターンが見えることによって複数ページセキュリティドキュメントをパーソナライズする方法。
【0006】
一態様では、複数ページパーソナライゼーションセクションの任意の2つの隣接するシートについて、2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、複数ページセキュリティドキュメントの縁部の一部分を角度切断することによって、一連のページの各ページの一部分を表出させる。別の態様では、パーソナライゼーションゾーンの任意の2つの隣接するシートについて、上記2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、セキュリティドキュメントを曲げることによって、一連のページの各ページの一部分を表出させる。
【0007】
レーザ可変インク層は、各ページの露出部分上のギロシェパターンのラインである場合があり、各ページの表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させるステップは、ギロシェパターンのラインの各部分をレーザ露光し、これによってギロシェパターンのラインを変化させることを含む。
【0008】
レーザ露光はレーザ可変インク層の元の色を変化させる。一実施形態では、レーザ露光はレーザ可変インク層を色褪せさせる。
【0009】
ある態様では、少なくとも1つの上側のシートは、上側のシートのレーザパーソナライゼーションが上側のシートのパーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、下側のシートの内部部分を表出させる内部切抜き窓を含むことがあり、透明窓内の下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンは、ジグソーパズルのピースのように上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する。
【0010】
別の態様では、少なくとも1つの上側のシートは、上側のシートのレーザパーソナライゼーションが上側のシートのパーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、下側のシートの不規則な形状のパーソナライゼーションエリアを表出させる不規則な縁部を含み、不規則な形状のパーソナライゼーションエリア内の下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンは、ジグソーパズルのピースのように上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する。
【0011】
これら及び他の利点を達成するため、また具体化され広く説明される本発明の目的に従って、本発明は、複数ページセキュリティドキュメントをパーソナライズする方法であって、方法が、
一連のページ上で、
一連のページのそれぞれの縁部のパーソナライゼーションエリア上にレーザ可変インク層を配置すること、
一連のページのそれぞれのパーソナライゼーションエリアの一部分を、一連のページの上記それぞれの上にあるページに対して、上記一連のページの中のそれぞれ2つの連続したページのパーソナライゼーション部分が互いに隣接して位置することによって2次元複数ページパーソナライゼーションセクションを生成するように表出させること、
上記表出部分をレーザ露光することによって、上記一連のページの各ページの表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させることで2次元複数ページパーソナライゼーションセクション上にパターンを作成し、その結果、一連のページの表出部分が同時に見られるときにパターンが見えること、を含む方法を提案する。
【0012】
本発明のある態様によれば、方法は、上記複数ページパーソナライゼーションセクションの任意の2つの隣接するシートについて、上記2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、上記2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、複数ページセキュリティドキュメントの縁部の一部分を角度切断することによって、上記一連のページの各ページの上記一部分を表出させるステップを含む。
【0013】
本発明のある態様によれば、方法は、上記パーソナライゼーションゾーンの任意の2つの隣接するシートについて、上記2つの隣接するシートの下側のシートの一部分が、上記2つの隣接するシートの上側のシートの縁部を越えて露出されるように、セキュリティドキュメントを曲げることによって、上記一連のページの各ページの上記一部分を表出させるステップを含む。
【0014】
本発明のある態様によれば、レーザ可変インク層は、各ページの露出部分上のギロシェパターンのラインであり、各ページの表出部分のインクが塗布されたパーソナライゼーションエリアを変化させるステップは、ギロシェパターンのラインの各部分をレーザ露光し、これによってギロシェパターンのラインを変化させることを含む。
【0015】
本発明のある態様によれば、レーザ露光はレーザ可変インク層の元の色を変化させる。
【0016】
本発明のある態様によれば、レーザ露光はレーザ可変インク層を色褪せさせる。
【0017】
本発明のある態様によれば、少なくとも1つの上側のシートは、上側のシートのレーザパーソナライゼーションが上側のシートのパーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、下側のシートの内部部分を表出させる内部切抜き窓を含み、透明窓内の下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンは、ジグソーパズルのピースのように上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する。
【0018】
本発明のある態様によれば、少なくとも1つの上側のシートは、上側のシートのレーザパーソナライゼーションが上側のシートのパーソナライゼーションに対応するパーソナライゼーションを下側のシート上にもたらすように、下側のシートの不規則な形状のパーソナライゼーションエリアを表出させる不規則な縁部を含み、不規則な形状のパーソナライゼーションエリア内の下側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンは、ジグソーパズルのピースのように上側のシート上に生成されたパーソナライゼーションパターンに適合する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】複数ページセキュリティドキュメントの斜視図。
図2図1の複数ページセキュリティドキュメントの断面図。
図3図1の複数ページセキュリティドキュメントの第2のシートの平面図。
図4図1乃至図3の内部シートのある実施形態の断面図。
図5図1乃至図4の複数ページセキュリティドキュメントの1つの内部シートの平面図。
図6図1乃至図4の複数ページセキュリティドキュメントの1つの内部シートの別の平面図。
図7】様々な実施形態に係る図1乃至図6の複数ページセキュリティドキュメントのいくつかのページの断面図。
図8】様々な実施形態に係る図1乃至図6の複数ページセキュリティドキュメントのいくつかのページの断面図。
図9】様々な実施形態に係る図1乃至図6の複数ページセキュリティドキュメントのいくつかのページの断面図。
図10】様々な実施形態に係る図1乃至図6の複数ページセキュリティドキュメントのいくつかのページの断面図。
図11】複数ページセキュリティドキュメントの一連の内部ページ上の複数の表出されたパーソナライゼーションエリアからなる特別複数ページパーソナライゼーションセクションを表出させる複数ページセキュリティドキュメントのデータシートの一部分の平面図。
図12】複数ページセキュリティドキュメントの特別パーソナライゼーションセクションにマークを付けるための機構の模式図。
図13】複数ページセキュリティドキュメントの特別パーソナライゼーションセクションにマークを付けるための機構の模式図。
図14】特別複数ページパーソナライゼーションセクションにレインボーテキストが付された複数ページセキュリティドキュメントの図。
図15】複数ページレインボーテキストが付されたページの入れ替えがページ入れ替えにより作成された偽造品を明らかにし得ることを示す図。
図16】切欠片の形状が不規則な複数ページセキュリティドキュメントの平面図。
図17】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図18】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図19】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図20】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図21】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図22A】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図22B】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
図23】特別パーソナライゼーションセクションが、下層ページが見える窓を提供する内部切抜きを含むある実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な説明において、例示により、本発明が実施され得る特定の実施形態を示す添付図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分詳細に記載される。異なっていたとしても、本発明の様々な実施形態は必ずしも互いに排他的でないことは理解されるべきである。例えば、一実施形態と関連して本明細書に記載される特定の特徴、構造、又は特性は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、他の実施形態において実現されることがある。加えて、開示される各実施形態の範囲内の個別要素の位置又は配置は、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく変更され得ることは理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で受け取られるべきではなく、本発明の範囲は、請求項が権利を得ることができる全範囲の同等物とともに、適切に解釈された、添付の請求項によってのみ定義される。図面において、類似の番号はいくつかの図を通して同じか又は類似の機能を指す。
【0021】
本明細書で説明される技術は、複数ページセキュリティドキュメント、例えばパスポートを、複数ページセキュリティドキュメントの縁部に沿って印刷されたパーソナライズされたレインボーテキストでパーソナライズするための機構を提供する。レインボーテキストは、一連のページを構成するいくつかのページのインク上に多色レーザを使用してレインボーテキストを“書き込む”ことによって、複数ページセキュリティドキュメントの一連のページ上でインクを変化させることで作成される。レーザ露光により変化させるインクは、複数ページドキュメントのページに、例えばページ内に存在するギロシェセキュリティ画像を構成するライン形態で既に存在するオフセットインクか、又は本明細書の以下で説明されるレーザ変化のための各ページの一部分に配置されたオフセット又は他のレーザ可変インクなどのインクである。
【0022】
図1は、本明細書では表紙105、通常はデータページである第2のシート107、第2のシート107の後方の複数の内部シート109、及び裏表紙111とそれぞれ呼ばれる3つの連続シートを有する複数ページセキュリティドキュメント101の斜視図である。各シートは表ページ及び裏ページを有する。シート105~107は、綴じ具103を使用して片側に沿って綴じ合わせられる。
【0023】
図2は、図1の線a‐aに沿った複数ページセキュリティドキュメント101の断面図であり、第2のシート107と裏表紙111との間に複数のシート109が示されている。
【0024】
図3は、複数ページセキュリティドキュメント101の第2のシート107、この例ではパスポートのデータシートの平面図である。第2のシート107は、複数のセキュリティ特徴301と、伝記的情報303、写真305、及び通常は多色刷りのオフセット印刷であるギロシェパターン306などのパーソナライゼーションデータとを含む。
【0025】
複数ページセキュリティドキュメント101は更に、一連のシート109の縁部に沿ったエリアからなる特別パーソナライゼーションセクション307を含む。この縁エリアは、図3に示すように縁部の一部分であるか、又は縁部全体である場合がある。特別パーソナライゼーションセクション307は、どの2つの連続的なシートも下側のシートの一部分が対応する上側のシートの縁部を越えて露出するような図1及び図2の一連のシート109の縁エリアから構成される。
【0026】
一実施形態では、特別パーソナライゼーションセクション307は、各2つの連続的なシートについて、上側のシートが下側のシートよりも少しだけ多く切断されることにより、上側のシートの下方に下側のシートの一部分を表出させるように、各シートの一片を切り取ることによって作成される。図3に示された例示的な特別パーソナライゼーションセクション307は、複数ページセキュリティドキュメントの各シート109の切欠きが、非常によく似ているが、サイズが異なる切欠きを有する長方形であるのに対して、代替的な実施形態では、切欠きの形状は、図16に示され、以下でこれと関連して考察されるようにシートによって異なることがある。
【0027】
図4は、図1図3の内部シート109(ただし、図3ではデータシート107によって隠されている)のある実施形態の断面図である。図4の実施形態では、内部シート109aが、インクが塗布されたパーソナライゼーションエリア401を有する。インクは、オフセット印刷インクであるか、又は特定のレーザに露光されたときに変色する材料、例えば、インクジェット用インク、アクリル絵の具、有機染料、フォトクロミック染料、若しくはサポートページにわたって層に堆積させた(又はこのようなページの内部に混入された)特定のレーザに露光されたときに変色する材料である場合がある。様々なレーザ波長及びタイプ(例えば、ナノ秒レーザ、ピコ秒レーザ、フェムト秒レーザ)に反応する多くの材料が存在する。例えば、
・ 金属粒子を含むインクを、赤外線レーザ(1064nm)によって除去することができる。このような粒子除去は変色をもたらすことがある。
・ ほとんどの印刷プロセスにおける原色に対応するインクは、UVレーザが以下の表1に示す色を褪せさせることからUVレーザに反応する。
● 一部のマジェンタインクが低出力UVレーザで色褪せる
● 一部のシアンインクが、マジェンタを色褪せさせるのに使用されたレーザよりも高出力のUVレーザで色褪せる
● 一部のイエローインクがより高出力のUVレーザを使用して色褪せる
● 上記の組み合わせで、UVレーザは、使用される出力に応じて、灰色(灰色はイエロー、シアン、及びマジェンタ色素の結果である)から緑色、黄色、及び白色への異なる色変化をもたらすことができる。
【0028】
図5は、一実施形態に係る図1図4のシート109の対応する1つである、1つの内部シート109bの平面図である。シート109bは切欠き501を有し、切欠き501は一連のシートの中でこれよりも下にあるシートの一部分を表出させるものである。更に、シート109bは、複数ページセキュリティドキュメント101を構成する一連のシートの中でこれよりも上にあるシートの対応する切欠きから表出されるパーソナライゼーションエリア503を含む。以上で考察したように、パーソナライゼーションエリア503はレーザ可変インクが塗布されることがある。代替的に、下位シートのレーザ可変インクを使用して印刷されたギロシェ506を構成するラインは、切欠き501から露出される。
【0029】
図6に示す代替的な実施形態では、セキュリティドキュメントの1つのシート109cが示されている。シート109cは、シート109cの縁部全体に延在するパーソナライゼーションエリア603を有する。
【0030】
図7及び図8は、図3の線a‐aに沿った断面図である。図7では、インクが付されたエリアをずれた縁部に有する一連のシート701aが、図5に示すような切欠き部によって形成される。図8の例も図5に示すような切欠き部を使用して形成される。ただし図8では、表出部分は、図5のギロシェ506を構成するオフセット印刷されたラインを表出させる。
【0031】
図9及び図10は、パーソナライゼーションエリア503b及び503cのそれぞれが、一連のシート701c及び701dのそれぞれを曲げることによって表出される。前者の場合、表出エリアはインクが塗布されており、後者の場合、表出エリアはギロシェパターンを構成するラインの表出である。
【0032】
図11は、内部シート109上にそれぞれ位置した、複数の表出されたパーソナライゼーションエリア1103a~1103g(図5のパーソナライゼーション部分503に対応)からなる特別パーソナライゼーションセクション1107(図3の特別パーソナライゼーションセクション307に対応)を表出させるデータシート1101(図1図3のデータシート107に対応)の一部分の平面図である。特別パーソナライゼーションセクションは、(図11に示すように)データシート1101に切欠きを設けることによって、又はデータシート1101に透明窓を設けることによってデータシート1101の下方に表出されることがある。以上で考察したように、特別パーソナライゼーションエリア1103は、セキュリティドキュメントを構成するページの縁部の任意の部分、例えば縁部全体(この場合は切欠部に隣接する部分1111a及び1111bが存在しないことになる)にわたって延在することがある。
【0033】
図12は、各個別のシート1209のパーソナライゼーションエリアが、インクが塗布されたマーキング部分1211を有する、複数ページセキュリティドキュメント1201の特別パーソナライゼーション部分1203にマークを付けるためのメカニズムの模式図である。
【0034】
制御されたレーザビーム1215を放射可能な多色レーザ1213が、一連のシート1219のいくつかのシートのそれぞれのパーソナライゼーションセクション1211にマークを付けるために使用される。
【0035】
多色レーザ1213は、例えば、生成されたレーザビームの方向を正確に制御するガルバノ位置決めシステムを有するガルバノミラーレーザである。第1の実施形態では、レーザ1213は、リトアニアのヴィリニュスにあるUAB Ekspla社製のEKSPLA NT242などの多色レーザ、又はドイツのカイゼルスラウテルンにあるXiton Photonics GmbH製、若しくはドイツのディッツィンゲンにあるTRUMPF GmbH製の、様々な波長レーザビーム、例えばレーザIR‐1064、赤色レーザ‐671nm、緑色レーザ532nm、青色レーザ471nmを生成する様々なレーザである。ある実施形態では、多色レーザ1213は、少なくとも、関連するパルス持続時間と共に表1に示される色のレーザビームを生成することがある。
【0036】
【表1】
【0037】
結果として生じるマーキングの色は、インクの色、インク材料、インクが塗布されたマーキング部分及びレーザパルスの色に依存する。下記の表2は、レーザ波長により生成された色及び特別パーソナライゼーションエリアのインク又は他の材料に及ぼす効果を示している。
【0038】
【表2】
【0039】
異なる波長のレーザは異なる特異的効果を有する。例えば、特定の波長のレーザは、パーソナライゼーションエリア503のインク組成物中に特定の割合で含まれる2つ以上の異なる色素の成分であり得る1つの色素タイプのみを褪せさせる場合がある。
【0040】
代替的に、レーザを使用してインクを色褪せさせる。シアン、マジェンタ、及びイエロー色素のオリジナルのインクマーキングを仮定すると(なお、実際の色はこれらの色素の組み合わせによって生成される)、赤色レーザがシアン色素を褪せさせ、緑色レーザがマジェンタ色素を褪せさせ、青色レーザがイエロー色素を褪せさせる。代替的に、インクはレーザ露光されるときに炭化する添加剤を含むことがある。
【0041】
代替的に、レーザを使用して熱的効果によってインク(又は紙)の色を変化させる。例えば、異なる色に表出され得るサーマルインク(又は感熱紙)、例えばフランスのペサックにあるOlikrom SAS製などの熱変色性インクに対してIRレーザを使用する。
【0042】
代替的に、図13に示すように、ギロシェ506を構成するラインであるマーキング部分1311にレーザビーム1215を放射することによってマーキングが行われる。
【0043】
図14は、上記の方法で特別複数ページパーソナライゼーションエリア1405(図3の特別パーソナライゼーションエリア307に対応)にレインボーテキスト1403でマークされた複数ページセキュリティドキュメント1401の図である。
【0044】
上記の技術は、複数ページセキュリティドキュメントへの攻撃に対するセキュリティ特徴を提供する。例えば、パスポートドキュメントでは、シート109は多くの場合ビザを印刷するために使用される。あるパスポートから1つのシートを取り除き、別のパスポートに挿入することによって、偽造者がビザによって伝達される権利を受ける資格がない者のパスポートにビザを移すことがある。しかしながら、複数ページ特別パーソナライゼーションエリアのレインボーマーキングが同一でない限り、複数ページ特別パーソナライゼーションエリアのレインボーパーソナライゼーションは一貫性のあるマーキングとして現れることはない。
【0045】
ある実施形態では、複数ページ特別パーソナライゼーションエリアのレインボーパーソナライゼーションは、特定の複数ページセキュリティドキュメントに関する固有のデータである。例えば、複数ページセキュリティドキュメントがパスポートである場合、レインボーテキストは、パスポート所持者のパスポート番号や姓である場合がある。
【0046】
例えば、それぞれ各パスポート所持者の名前が記された、第1のパスポート冊子151の特別パーソナライゼーションセクション1501a及び第2のパスポート冊子153の特別パーソナライゼーションセクション1501bに入力されたレインボーテキストを示す図15のマーキングを検討する。第3のパスポート冊子155では、Taylor-Smithという名前の個人の所有物である第2のパスポート冊子153のシート1503bが、Greystoneという名前の個人の所有物である第1のパスポート冊子151に挿入されたことによって、対応するシート1503aに取って代わり、第1のパスポート冊子151の特別パーソナライゼーションセクション1501aに現れている。結果として生じるパスポート冊子155の特別パーソナライゼーションエリア1501cのレインボーテキストは、シート1503bのレインボーテキストがその上下にあるシートのレインボーテキストと一致しない点で内部的に一貫性がないことが明らかである。したがって、結果として生じるパスポート冊子155の特別パーソナライゼーションセクション1501cを含むパスポート冊子を検査する者は、矛盾を確認し、このパスポート冊子に偽造物の可能性があるというフラグを立てることができる。
【0047】
上記の特別パーソナライゼーションエリアは規則正しい長方形セクションとして示されているが、代替的な実施形態では、切欠き(縁部の一部分用であるか縁部全体にわたるものであるかにかかわらず)は不規則な形状を有し、シートによって異なることがある。このような実施形態の例示的な複数ページセキュリティドキュメント1601が図16に示されている。上記の例と同様に、複数ページセキュリティドキュメント1601は、図16の実施形態では、シート1603a~1603e上の不規則な形状の特別パーソナライゼーションエリアから構成される特別パーソナライゼーションセクション1607を含む。その形状はランダムであるか、例えば様々な周波数若しくは複数の周波数及び振幅の正弦波状の何らかの可変パターンに従うことがある。好適な実施形態では、下層のシートの特別パーソナライゼーションエリア全体を次の上層シートの切欠きに見ることができる。パーソナライゼーションエリアの形状が一致しないだけではなく、特別パーソナライゼーションセクション1607上に印刷された、例えば図15の様式のレインボーテキストが、あるドキュメント(ソース)から別のドキュメント(ターゲット)へのシートの置き換えをソースドキュメントのレインボーテキストとして容易に識別できるようにする。更に、ソースドキュメントから入れ替えられたページの直下にあるターゲットドキュメントのページ上に表出されたレインボーテキストにも不一致がある。
【0048】
更なる実施形態では、特別パーソナライゼーションエリアは、他のシートの特別パーソナライゼーションエリアが見える窓を提供する切欠きを含む。図17は、この実施形態に係る複数ページセキュリティドキュメントのセクション1701の図である。特別パーソナライゼーションエリア1703a~1703dが、様々な形状、例えば三角形、八角形、ハート形、円形を有し得る内部切抜き1705a~1705lを含むことによって特別複数ページパーソナライゼーションセクション1707を提供する。切抜き1705のそれぞれは、その下にあるシート上の特別パーソナライゼーションエリア1703に開口した窓であり、例えば、切抜き1705a~1705dは、最上段の内部シート1709aの特別パーソナライゼーションエリア1703aにある切抜きであって、上から2段目の内部シート1709bの特別パーソナライゼーションエリア1703bが見える窓を提供する。
【0049】
上記の縁部パーソナライゼーションは切抜き1705全体で実行される。例えば図17の例における特別パーソナライゼーションエリア1703aを検討すると、これは元の色素をここでは南西から北東方向にのびる縞模様で象徴された色に変えるレーザを使用してパーソナライズされている。
【0050】
図18は、互いから切り離されたシート1709a~1709dを示している。
【0051】
図19は、パーソナライズされた特別パーソナライゼーションセクション1707を示している。好適な実施形態では、図15の様式のレインボーテキストが特別パーソナライゼーションセクション1707上にレーザ印刷されているが、図19では例示を目的として、4つの異なる“カラー”が特別パーソナライゼーションセクション1707を横切る水平バンドとして印刷されている。これらの“カラー”は4つの異なるハッチパターンによって表される。すなわち、最上部の水平バンドはドットパターンでハッチングされ、次のバンドは北西から南東方向にのびる斜めのハッチを有し、第3のバンドは南西から北東方向にのびる斜めのハッチであり、最後に第4のバンドは斜めのクロスハッチである。
【0052】
南西から北東方向にのびる斜めのハッチが付けられた第3の水平バンドを検討する。シート1709a~1709cのそれぞれは、切抜き、すなわち切抜き1705c、1705k、及び1705gを有する。したがって、これらのシートの下にあるシートは全て、クロスハッチにより露出されたエリアに同じパターンが付されている。図20は、図19のパーソナライゼーション後の切り離されたシート1709a~1709dのそれぞれのためのマーキングを示している。
【0053】
図21は、第2のドキュメントの特別複数ページパーソナライゼーションセクションを構成する特別パーソナライゼーションエリア2103a~2103dに切抜き窓2105a~2105iを有する第2のドキュメントのページを示している。切抜き窓2105a~2105iは、場所及び様式が図17図20のドキュメント1701の切抜き窓と異なる。
【0054】
図22Aは、パーソナライズされた第2のドキュメント2101の図を提供する。パーソナライゼーションは図15に記載されたようなレインボーテキストである場合がある。しかしながら、例示を目的として、図19及び図20の例と同様に、パーソナライゼーションは、それぞれがそれ自体のハッチマーキングを有する4つの水平“カラー”バンドとして示されている。図19及び図20の例と同様に、あるページのマーキングは、マーキングされているページにおける透明窓に対応する下層にあるページのエリアに対応するマーキングを生じさせる。“対応するマーキング”とは、パーソナライゼーションにおけるパターン、例えば氏名やドキュメント番号を含むレインボーマーキングが、レーザにより下側のページ上に生成されたパーソナライゼーションパターンの一部分がジグソーパズルのピースのように透明窓を有する上側のページ上のパターンに適合するように下層にあるページ上に位置する部分を含むことを意味する。
【0055】
したがって、図17図20のドキュメントに対して、ドキュメント2101は、ドキュメント1701上で使用されたハッチマーキングと異なるハッチマーキングで示すような異なるカラーでパーソナライズされている。
【0056】
図22Bは、互いから切り離されたページ2109a~2109d上のこれらのハッチマーキングを示している。
【0057】
図23は、第1のドキュメント1701のあるシート、具体的には第3のシート1709cの代わりに、あるシート、具体的には第2のドキュメント2101の第3のシート2109cを用いることの影響を示している。第1の画像2301は、図20のパーソナライズされたシート1709cの破線エリア2001の拡大図を示す。第2の画像2303は、第2のドキュメント2101のシート2109cの対応するエリア2201を示す。最後に、第3の画像2305は、シート2109cがシート1709cの代わりにドキュメント1701に入れられた、結果として生じるドキュメント内の対応するエリアを示す。
【0058】
シート2109cは第2のドキュメント2101の関連部分をパーソナライズするのに使用されたハッチマーキング2307でパーソナライズされるため、シート2109cのハッチマーキングは、第1のドキュメント1701のパーソナライゼーションに対応するハッチマーキング2309と一致しない。同様に、切抜き2105kは、ハッチマーキング2307と一致しない、下にあるシート1709dのパーソナライゼーションを表出させる。むしろ、窓2105k越しに表出された、切抜き2105kの場所における第1のドキュメント1701のパーソナライゼーション、つまり切抜き1705を通したパーソナライゼーションマーキング及び周辺エリアにおけるオリジナルプレパーソナライゼーションのオリジナルギロシェパターン。更に、透明窓2105h越しに作られたページ2109c上の第2のドキュメントのパーソナライゼーション、つまり、切抜き2105hを通した第2のドキュメントのパーソナライゼーションが、透明窓1705g越しに見える。これらのパーソナライゼーションは周囲のパーソナライゼーションと一致しないため、ページ1709bと2109cとが同じドキュメントに属さないことは容易に明らかである。したがって、ページが入れ替えられたことは、第1の複数ページセキュリティドキュメント1701を検査する者によって容易に見分けられる。
【0059】
上記の内容から、複数ページセキュリティドキュメントを不正から保護するための効率的かつ安全なメカニズムが、独自のレインボーテキストが複数ページセキュリティ物品のパーソナライゼーション段階の間に複数ページセキュリティ物品に追加され得るメカニズムによって提供されることは明らかである。この保護は、あるドキュメントのシートが別のドキュメントのシートの代わりに用いられる偽造攻撃から保護することに特に役に立つ。
【0060】
本発明の特定の実施形態を記載及び図示してきたが、本発明は以上で記載及び図示された部品の特定の形態や配置に限定されるべきではない。本発明は請求項によってのみ限定される。
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【国際調査報告】