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特表2022-539911ピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物、その製造方法及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】ピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/58 20060101AFI20220906BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20220906BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C07F9/58 Z CSP
A61P7/10
A61K31/675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502056
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2020094379
(87)【国際公開番号】W WO2021057082
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910930296.X
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521510051
【氏名又は名称】シャンハイ シュンフェァ ファーマシューティカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI XUNHE PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】Zheng, Yongyong Room 216, Building 2,No. 1366 Qixin Road, Minhang District Shanghai 200000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ノンノン
(72)【発明者】
【氏名】ジン ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン ヨンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ フォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン メイファー
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086DA38
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA02
4C086ZA83
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB20
4H050AC90
4H050WA15
4H050WA23
(57)【要約】
本発明は生物医薬の技術分野に関し、具体的にピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物、その製造方法及びその用途に関する。本発明が提供するピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物の有益な効果は、溶解度が高く、安定性が高く、製剤の製造に使いやすいなどの特性を有し、産業上の利用可能性が拡大され、そして医薬用途に使用されやすい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1によって示されるピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩。
【化1】
ここで、
XはOである、Cである、またはXは存在しない
YはCである、またはYは存在しない
XとYがいずれも存在しない場合、OはPと直接結合する
Xが存在し、Yが存在しない場合、XはOと直接結合する
Yが存在し、Xが存在しない場合、YがPと直接結合する
【請求項2】
前記医薬上許容される塩は、金属塩、無機/有機塩基と形成された塩、及び塩基性アミノ酸と形成された塩を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項3】
前記金属塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属の塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩などのアルカリ土類金属の塩を含むがこれらに限定されず、
前記有機塩基は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、及びジイソプロピルエチルアミンを含むがこれらに限定されない、
ことを特徴とする請求項2に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項4】
下記表1の化合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩。
【表1】
【請求項5】
下記M3をPOCl3と反応させることにより、化学式Iによって示される化合物を得る工程と、
化学式Iによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン又はトリブチルアミンとそれぞれ反応させ、化学式I-1によって示される化合物、化学式I-2によって示される化合物、化学式I-3によって示される化合物、又は化学式I-4によって示される化合物をそれぞれ得る工程と、
を含むこと、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の製造方法。
【請求項6】
下記M3をパラホルムアルデヒドとヒドロキシメチル化、塩素化、エステル化、水素化することにより、脱ベンジル化することによって、化学式IIによって示される化合物を得る工程と、
化学式IIによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムとそれぞれ反応させることにより、化学式II-1によって示される化合物又は化学式II-2によって示される化合物をそれぞれ得る工程と、
を含むこと、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の製造方法。
【請求項7】
下記M3をヒドロキシメチルホスホン酸ジエチルと反応させ、脱エチル化することによって、化学式IIIによって示される化合物を得る工程と、化学式IIIによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムとそれぞれ反応させることにより、化学式III-1によって示される化合物又はIII-2によって示される化合物をそれぞれ得る工程と、
を含むこと、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の製造方法。
【請求項8】
治療量の請求項1~4のいずれか1項に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物及び/又はその医薬上許容される塩と、薬学上許容される他の補助剤と、を含む薬物組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の利尿薬の製造における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の技術分野に関し、具体的にピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
トラセミドの化学名は1-[4-(3-メチルフェニル)アミノピリジン-3-]スルホニル-3-イソプロピル尿素であり、新しい高効率なループ利尿薬である。pKaの値が6.44であり、水にほとんど溶解せず、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液にわずかに溶解する。20年あまりの臨床応用により、トラセミドは適応範囲が幅広く、利尿作用に速効性があり、強力且つ持続性があり、臨床において普及する価値がある高効率な利尿薬であることが実証されている。
【0003】
現在、承認されているトラセミドの剤形として、注射剤、錠剤及びカプセル剤がある。注射剤の製造過程において、原薬が高い水溶性を有することが望ましい。トラセミドは水に非常に溶けにくく(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 53 (2002) 75-86)、トラセミドの注射剤を製造するとき、水酸化ナトリウムと、溶解しやすくする大量の補助剤を加える必要がある。使用される補助剤は、ポリエチレングリコール400、トロメタモール、水酸化ナトリウム、及び塩酸などを含む。上記の補助剤を加えることは、多くのよくないことをもたらす。1)水酸化ナトリウム水溶液中でトラセミドが溶解する過程において明らかに放熱し、製剤の分解不純物が生成しやすい。2)ポリエチレングリコール400、トロメタモールなどの有機ハイドロトロープ剤の添加は、注射剤の使用上の安全性に悪い影響をもたらす。患者に発生し得る副反応を減らせるように、配合する成分の種類を減らすことが望まれる。したがって、水溶性がより高く、製剤の製造により適した新型のループ利尿薬を開発することが大きな挑戦である。
【0004】
文献(Drugs 41 (1): 81-103, 1991)において、トラセミドの体内活性代謝物であるM3(下記化学式aによって示されるM3)について報告されている。M3の薬理活性はトラセミドに相当する。トラセミドと比べると、M3はベンゼン環にフェノール性水酸基が導入されたが、水溶性が依然として効果的に改善されておらず、製剤の生産が困難である。したがって、発明者は、M3に基づいてさらに改善し、良好な水溶性を有しつつ良好な利尿作用を保てる薬物を得ることを試みた。
【化a】
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、ピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩を提供することであり、その構成は化学式1によって示される。
【化1】
【0006】
ここで、XはOである、Cである、またはXは存在しない。YはCである、またはYは存在しない。XとYがいずれも存在しない場合、OはPと直接結合する。Xが存在し、Yが存在しない場合、XはOと直接結合する。Yが存在し、Xが存在しない場合、YはPと直接結合する。
【0007】
前記医薬上許容される塩は、例えば、金属塩、無機/有機塩基と形成された塩、及び塩基性アミノ酸と形成された塩を含んでいてもよい。金属塩の非限定的な例は、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属の塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩などのアルカリ土類金属の塩を含むが、これらに限定されない。前記有機塩基の非限定的な例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、及びジイソプロピルエチルアミンを含むが、これらに限定されない。
【0008】
好ましくは、前記ピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩は以下の化合物から選ばれる。
【表1】
【0009】
本発明の第2の目的は、ピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の製造方法を提供することであり、この方法は以下の工程を含む。
【0010】
M3をPOCl3と反応させることにより、化学式Iによって示される化合物を得る工程と、化学式Iによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン又はトリブチルアミンとそれぞれ反応させ、化学式I-1によって示される化合物、化学式I-2によって示される化合物、化学式I-3によって示される化合物又は化学式I-4によって示される化合物をそれぞれ得る工程。
【0011】
或いは、M3をパラホルムアルデヒドとヒドロキシメチル化、塩素化、エステル化、水素化することにより、脱ベンジル化することによって、化学式IIによって示される化合物を得る工程と、化学式IIによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムとそれぞれ反応させることにより、化学式II-1によって示される化合物、化学式II-2によって示される化合物をそれぞれ得る工程。
【0012】
または、M3をヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル(9)と反応させ、脱エチル化することによって、化学式IIIの化合物を得る工程と、化学式IIIによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムとそれぞれ反応させることにより、化学式III-1によって示される化合物、III-2によって示される化合物をそれぞれ得る工程。
【0013】
本発明の第3の目的は、薬物組成物を提供することであり、治療量のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物及び/又はその医薬上許容される塩と、薬学上許容される他の補助剤とを含む。
【0014】
前記補助剤(担体)は薬学分野における通常の担体であり、例えば、希釈剤及び賦形剤は水などである。結合剤はセルロース誘導体、ゼラチン、ポリビニルピロリドンなどである。充填剤はデンプンなどである。崩壊剤は炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどである。また、香味料、甘味料など他の補助剤を組成物に添加してもよい。
【0015】
本発明の組成物の各剤形は、医学分野における通常の方法を用いて製造できる。その有効活性成分の含有量は0.1%~99.5%(重量比)である。
【0016】
本発明の投与する量は、投与経路、患者の年齢、体重、処置される疾患の種類および重篤度などに応じて調整してよい。その1日の用量は0.001~30mg/kg体重(経口)又は0.005~30mg/kg体重(注射)である。
【0017】
本発明の第4の目的は、利尿薬の製造過程におけるピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物又はその医薬上許容される塩の用途を提供することである。
【0018】
本発明が提供するピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物の有益な効果は、溶解度が高く、安定性が高く、製剤の製造に使いやすいなどの特性を有し、産業上の利用可能性が拡大され、そして医薬用途に使用されやすい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例と併せて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、これらに限定されない。
【0020】
実施例1 化学式Iによって示される化合物の製造
ステップ1:化学式3によって示される化合物の製造
500mLの反応フラスコに無水エタノール(300mL)と化合物2(18.5g,0.15mol,1.05eq)を加え、撹拌し、75℃まで加熱し、化合物1(27.5g,0.143mol,1.0eq)を数回に分けて加えた。加えた後に、この温度を保ちながら1時間撹拌し反応させた。固体が析出した。フラスコ内の温度を20-25℃に降温させ、炭酸ナトリウム(15.9g,0.15mol,1.5eq)を加え、撹拌しながらパラホルムアルデヒド(15g,0.5mol,5eq)を数回に分けて加えた。加えた後に、フラスコ内の温度を80-85℃に昇温させ、 2時間反応させ、フラスコ内の温度が20-25℃になるまで徐々に降温させた。濾過し、液体を全て抜き出し、淡黄色の濾過ケーキを得た。これは、化学式3によって示される化合物(36.5g,收率81%)であった。MS: 280 [M +1]。
【0021】
ステップ2:化学式M3によって示される化合物の製造
500mLの反応フラスコにアセトン(200mL)、化学式3によって示される化合物(35g,0.11mol,1.0eq)及び水酸化ナトリウム(8.87g,0.22mol,2.0eq)を加え、フラスコ内の温度を20-25℃に制御し、化合物4(11.2g,0.13mol,1.2eq)を滴下した。滴下が完了した後、フラスコ内の温度を45~50℃に昇温させ、1時間撹拌した。完全に反応し、フラスコ内の温度を8~12℃に降温させ、さらに1時間維持した。濾過し、液体を全て抜き出し、白っぽい色の湿品を得た。当該湿品を精製水(200mL)に加え、フラスコ内の温度を20-25℃に制御し、6%の酢酸水溶液を滴下し、pHを6~7(pH試験紙)に調整した。30分間撹拌し、濾過し、精製水で濾過ケーキを洗浄し、液体を全て抜き出し、M3の湿品を得た。55~60℃で湿品を一定の量まで真空乾燥させ、化合物M3(34g,収率85%)を得た。MS: 365 [M +1]。
【0022】
ステップ3:化学式Iによって示される化合物の製造
250mLの反応フラスコにテトラヒドロフラン(150mL)、化合物M3(15g,41.2mmol,1.0eq)、ジイソプロピルエチルアミン(5.3g,41.2mmol,1.0eq)を加え、フラスコ内の温度を0-5℃に降温させ、撹拌しながらオキシ塩化リン(6.3g,41.2mmol,1.0eq)を滴下した。滴下が完了した後、0-5℃で2時間反応させた。この温度を維持し、水(5mL)を加え、焼入れ反応させた。乾燥するまで溶剤を濃縮し、濃縮して残ったものを得た。当該残ったものを中性酸化アルミニウムを用いてカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン/メタノール10:1)により分離し、流れ出たものを濃縮し、40-45℃で一定の量まで真空乾燥させ、化合物I(11.9g,収率65%)を得た。MS: 445 [M +1]。1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.66 (s, 1H), 8.05-8.06 (d, J = 5.2Hz, 1H), 7.29 (m, 1H), 7.21-7.22 (d, J = 5.2Hz, 1H),6.88 (m, 1H), 6.58 (s, 1H), 4.27 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 0.95 (s, 3H), 0.94 (s, 3H)。
【0023】
実施例2 化学式I-1によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式Iによって示される化合物(2.5g,5.6mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら25%の水酸化ナトリウム溶液(0.45g,11.3mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後に、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(20mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二ナトリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(20mL)/H2O(2mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式I-1によって示される化合物(1.8g,収率65%)を得た。HPLC純度は99.25%であった。MS: 489 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.63 (s, 1H), 8.06-8.07 (d, J = 5.2Hz, 1H), 7.27 (m, 1H), 7.22-7.23 (d, J = 5.2Hz, 1H),6.89 (m, 1H), 6.57 (s, 1H), 4.25 (m, 1H), 2.25 (s, 3H), 0.95 (s, 6H)。ナトリウム含有量は、9.45%であった。
【0024】
実施例3 化学式I-2によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式Iによって示される化合物(2.5g,5.6mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら20%の水酸化カリウム溶液(0.63g,11.3mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後に、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(20mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二カリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(20mL)/H2O(2mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式I-2によって示される化合物(1.7g,収率59%)を得た。HPLC純度は99.05%であった。MS: 521 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.65 (s, 1H), 8.07 (m, 1H), 7.22-7.26 (m, 2H), 6.88 (m, 1H), 6.56 (s, 1H), 4.27 (m, 1H), 2.26 (s, 3H), 0.94 (s, 6H)。カリウム含有量は、15.00%であった。
【0025】
実施例4 化学式I-3によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)、化学式Iによって示される化合物(2.5g,5.6mmol,1.0eq)、及びトリエチルアミン(0.57g,5.6mmol,1.0eq)を加え、1時間撹拌し反応させた。乾燥するまで溶剤を濃縮し、泡状固体を得た。当該固体をアセトン(10mL)によって再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、化学式I-3によって示される化合物(1.7g,収率56%)を得た。HPLC純度は98.60%であった。MS: 445 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.56 (s, 1H), 7.97 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.25 (m, 2H), 6.87 (m, 1H), 6.61 (s, 1H), 4.28 (m, 1H), 3.08 (m, 6H), 2.27 (s, 3H), 1.09 (m, 9H), 0.94 (s, 6H)。
【0026】
実施例5 化学式I-4によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)、化学式Iによって示される化合物(2.5g,5.6mmol,1.0eq)、及びトリブチルアミン(1.04g,5.6mmol,1.0eq)を加え、1時間撹拌し反応させた。乾燥するまで溶剤を濃縮し、泡状固体を得た。当該固体をアセトン(10mL)によって再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、化学式I-4によって示される化合物(1.8g,収率51%)を得た。HPLC純度は98.75%であった。MS: 445 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.59 (s, 1H), 7.98 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.27 (m, 2H), 6.88 (m, 1H), 6.65 (s, 1H), 4.21 (m, 1H), 3.05 (m, 6H), 2.23 (s, 3H), 1.35-1.42 (m, 12H), 0.93 (s, 6H) , 0.87 (m, 9H)。
【0027】
実施例6 化学式IIによって示される化合物の製造
ステップ1:化学式5によって示される化合物の製造
500mLの反応フラスコに無水エタノール(300mL)、化合物M3(15g,41.2mmol,1.0eq)、及び炭酸ナトリウム(6.5g,61.7mmol,1.5eq)を加え、撹拌しながら、数回に分けてパラホルムアルデヒド(6.2g,0.21mol,5.0eq)を加えた。加えた後、フラスコ内の温度を80-85℃に昇温させ、2時間反応させ、フラスコ内の温度を20-25℃になるまで徐々に降温させた。白い固体が析出し、濾過し、水洗いをした。濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、化学式5によって示される化合物(12.8g,収率79%)を得た。MS: 395 [M +1]。
【0028】
ステップ2:化学式6によって示される化合物の製造
250mLの反応フラスコにジクロロメタン(100mL)、N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)、及び化合物5(12g,30.4mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら塩化チオニル(10.9g,91.3mmol,3.0eq)を滴下した。滴下が完了した後、フラスコ内の温度を60-65℃に昇温し、2時間反応させた。反応終了後、500mLビーカーに入れ、氷浴しながら10%の炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を数回に分けて滴下し、分液漏斗で液体を分離し、水層を除去した。有機層をさらに2回水洗し(50mL×2)、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄し、液体を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで濃縮した。残ったものを酢酸エチル(50mL)によってスラリー洗浄し、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、化学式6によって示される化合物(10.7g,収率85%)を得た。MS: 413 [M +1]。
【0029】
ステップ3:化学式8によって示される化合物の製造
250mLの反応フラスコにアセトニトリル(100mL)、化合物6(10g,24.2mmol,1.0eq)、炭酸ナトリウム(5.1g,48.4mmol,2.0eq)、及びリン酸ジベンジルナトリウム塩7(8.0g,26.6mmol,1.1eq)を加えた。撹拌しながらフラスコ内温度を80-85℃に昇温させ、8時間反応させた。温度が高い間に無機塩を濾過除去し、濾液が乾燥するまで濃縮した。濃縮して残ったものにトルエン(50mL)を加え、再結晶化し、濾過した。濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式8によって示される化合物(7.1g,収率45%)を得た。MS: 655 [M +1]。
【0030】
ステップ4:化学式IIによって示される化合物の製造
無水エタノール(400mL)、化合物8(7g,10.7mmol,1.0eq)と10%のパラジウム炭素(0.7g,10%重量比)を高圧反応器に入れた。窒素で3回置換し、圧力が2MPaになるまで水素を導入し、撹拌しながら室温で5時間反応させた。反応が終了し、濾過し、濾液が乾燥するまで濃縮し、白色固体の化学式IIによって示される化合物(4.1g,収率81%)を得た。MS: 475 [M +1]。1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.65 (s, 1H), 7.99 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.24 (m, 2H), 6.91 (m, 1H), 6.59 (s, 1H), 5.93 (s, 2H), 4.25 (m, 1H), 2.25 (s, 3H), 0.95 (s, 6H)。
【0031】
実施例7 化学式II-1によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式IIによって示される化合物(2g,4.2mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら25%の水酸化ナトリウム溶液(0.34g,8.4mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後に1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(10mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二ナトリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(10mL)/H2O(1mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式II-1によって示される化合物(1.3g,収率60%)を得た。HPLC純度は98.75%であった。MS: 519 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.64 (s, 1H), 8.07-8.08 (d, J = 5.2Hz, 1H), 7.25 (m, 2H), 6.89 (m, 1H), 6.59 (s, 1H), 5.94 (s, 2H),4.27 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 0.94 (s, 6H)。ナトリウム含有量は、8.85%であった。
【0032】
実施例8 化学式II-2によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式Iによって示される化合物(2g,4.2mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら20%の水酸化カリウム溶液(0.47g,8.4mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(10mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二カリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(10mL)/H2O(1mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式II-2によって示される化合物(1.3g,収率56%)を得た。HPLC純度は99.15%であった。MS: 551 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.63 (s, 1H), 8.07 (d, J = 5.2Hz, 1H), 7.26 (m, 2H), 6.92 (m, 1H), 6.61 (s, 1H), 5.93 (s, 2H), 4.25 (m, 1H), 2.25 (s, 3H), 0.95 (s, 6H)。カリウム含有量は、14.21%であった。
【0033】
実施例9 化学式IIIによって示される化合物の製造
ステップ1:化学式10によって示される化合物の製造
500mLの反応フラスコに無水テトラヒドロフラン(200mL)、化合物M3(15g,41.2mmol,1.0eq)、化合物9(6.9g,41.2mmol,1.0eq)、PPh3(1.6g,6.2mmol,0.15eq)及びDEAD(1g,6.2mmol,0.15eq)を加え、30-35℃で撹拌しながら24時間反応させ、反応液が乾燥するまで濃縮し、残ったものをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって純化し(移動相ジクロロメタン)、化学式10によって示される化合物(13.8g,収率65%)を得た。MS: 515 [M +1]。
【0034】
ステップ2:化学式IIIによって示される化合物の製造
250mLの反応フラスコにジクロロメタン(100mL)と化合物10(12g,23.3mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながらフラスコ内の温度を0-5℃まで降温させ、TMSBr(3.6g,23.3mmol,1.0eq)を滴下した。20-25℃で撹拌しながら24時間反応させ、反応液が乾燥するまで濃縮し、残ったものをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって純化し(移動相の中に、ジクロロメタン/メタノール=10:1であり)、化学式IIIによって示される化合物(6.2g,収率58%)を得た。MS: 459 [M +1]。
【0035】
実施例10 化学式III-1によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式IIIによって示される化合物(3g,6.5mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら25%の水酸化ナトリウム溶液(0.52g,13.1mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後に、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(10mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二ナトリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(10mL)/H2O(1mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式III-1によって示される化合物(2.2g,収率68%)を得た。HPLC純度は98.95%であった。MS: 503 [M +1]。ナトリウム含有量は、9.13%であった。
【0036】
実施例11 化学式III-2によって示される化合物の製造
50mLの反応フラスコに無水エタノール(20mL)と化学式IIIによって示される化合物(3g,6.5mmol,1.0eq)を加え、撹拌しながら20%の水酸化カリウム溶液(0.73g,13.1mmol,2.0eq)を滴下した。滴下が完了した後に、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(10mL)を加え、30分間撹拌を続け、濾過し、二カリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(10mL)/H2O(1mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、化学式III-2によって示される化合物(2.3g,収率66%)を得た。HPLC純度は99.19%であった。MS: 535 [M +1]。カリウム含有量は、14.65%であった。
【0037】
実施例12 化学式I-1によって示される化合物の注射液の製造
製剤の組成は、10gの化学式I-1によって示される化合物及び2000mLの注射用水である。
【0038】
製造方法
(1)注射用水を2000mLはかり、化学式I-1によって示される化合物を10g加え、均一に撹拌し、プレートフレームろ過器で予備濾過し、溶液Aを得た。
(2)(1)の溶液Aを2つの0.22μmポリエーテルスルホンフィルタで除菌濾過し、中間体Bを得た。
(3)中間体Bを充填し、溶融して封をし、包装することにより製品を得た。
【0039】
実施例13 化学式II-1によって示される化合物の凍結乾燥粉末注射剤の製造
製剤の組成は、10gの化学式II-1によって示される化合物及び2000mLの注射用水である。
【0040】
製造の過程は、以下の通りである。
1)注射用水の70%体積分を取り、所定重量の化学式II-1によって示される化合物を加え、完全に溶解するまで撹拌し、溶液Aを得た。
(2)注射用水の30%体積分を取り、上記の溶液Aに加え、撹拌しながらpH値を8.5~9.5に調整し、プレートフレームろ過器で濾過し、溶液Bを得た。
(3)(2)の溶液Bを2つの0.22μmポリエーテルスルホンフィルタで除菌濾過し、溶液Cを得た。溶液Cを充填し、栓を半分打ち、中間体Dを得た。
(4)温度が-40℃~-50℃で、圧力が10Pa~22Paの条件下で、前記中間体Dを凍結乾燥処理した。前記凍結乾燥処理では、以下の昇温する工程を実施した。
(a)温度を-45℃~-30℃に設定し、2.0時間、予備凍結した。
(b)-30℃~-20℃に昇温し、4.0時間、昇華した。
(c)-20℃~-10℃に昇温し、1.5時間、昇華した。
(d)-10℃~0℃に昇温し、1.0時間、昇華した。
(e)0℃~15℃に昇温し、1.5時間、昇華した。
(f)15℃~25℃に昇温し、2.0時間、保温した。
保温が完了した後、栓をして、箱(凍結乾燥器)から出し、蓋を締め、化学式II-1によって示される化合物の凍結乾燥粉末注射剤を得た。
【0041】
実施例14 溶解性の比較
トラセミド、M3、I、I-1、I-2、I-3、I-4、II、II-1、II-2、III、III-1及びIII-2の溶解性を比較した。以下に結果を示す。
【表2】
【0042】
溶解度の試験結果から、実施例1~11のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物は、トラセミド及びM3より溶解性が高く、優れた創薬可能性を有することが分かった。
【0043】
実施例15 利尿作用の比較
SD雄性ラット(体重180±20g)を、無作為に、14群に分けた。各群に3匹のラットがいる。各ラットの胃内に、30mL/kgの生理食塩水を投与した。生理食塩水を胃内投与した後、ブランク対照群以外は、各群に1種類の薬物(10mg/kg,ig,1mg/mL,製剤処方:生理食塩水溶解)を与え、排尿の状況を4時間収集し、表3に結果を示している。
【表3】
【0044】
利尿作用の試験結果から、実施例1~11のピリジンスルホンアミドリン酸エステル系化合物は、トラセミドに類似する、又はトラセミドより優れた利尿作用を示し、優れた創薬可能性を有することがわかった。
【0045】
本発明で言及されたすべての文献は、各文献が参考として単独に引用されるように、本願において参考として引用されている。
【国際調査報告】