(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】高齢者介護のための歩容動力学、パターン及び異常の非接触識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20220906BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513840
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 US2020035040
(87)【国際公開番号】W WO2020247246
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519078721
【氏名又は名称】テルース ユー ケア インコーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Tellus You Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】642 Alvarado St, Apt. 206 San Francisco, California 94114 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】ラメッシュ・シュリバツァン
(72)【発明者】
【氏名】スー・ケビン
(72)【発明者】
【氏名】コーク,タニア・アベディアン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB01
4C038VC01
4C038VC05
(57)【要約】
ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断することは、ユーザに対応する複数の点群を形成することであって、点群のそれぞれが、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標であることと、点群の重心を決定することと、ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームについて重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いて一時的歩行速度を決定することと、一時的歩行速度に基づいてユーザの歩容スピードを決定することと、ユーザの歩容スピードの少なくとも1つの分布を決定することと、歩容スピードの少なくとも1つの分布からの歩容スピードの逸脱に基づいて歩容異常を検出することとを含む。複数の点群を検出することは、追跡デバイスを用いてユーザの移動を捕捉することを含んでもよい。追跡デバイスは、レーダー及び/又はライダーを使用してもよい。システムは、ユーザのルーチンに対応するユーザの歩容パターンを決定してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断する方法であって、
前記ユーザに対応する複数の点群を形成することであって、該点群のそれぞれが、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標であることと、
前記点群の重心を決定することと、
前記ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームについて前記重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いて一時的歩行速度を決定することと、
前記一時的歩行速度に基づいて前記ユーザの歩容スピードを決定することと、
前記ユーザの歩容スピードの少なくとも1つの分布を決定することと、
前記歩容スピードの少なくとも1つの分布からの前記歩容スピードの逸脱に基づいて歩容異常を検出することと、
を含む、方法。
【請求項2】
複数の点群を検出することは、追跡デバイスを用いて前記ユーザの移動を捕捉することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追跡デバイスは、レーダー又はライダーのうちの少なくとも1つを用いる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動は、歩行する、立つ、座る、ベッドに横たわる、床に横たわる、及び退室することのうちの少なくとも1つに対応する状態と関連付けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザが歩行するルートに基づいて、該ユーザのルーチンに対応する該ユーザの歩容パターンを決定することを更に含み、前記歩容スピードの少なくとも1つの分布のうちの別個のものが、前記ルーチンのそれぞれに提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記歩容パターンから逸脱した前記ルーチンのサブセットについて歩容スピードを検出することに応答して警告を提供することを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記警告は、前記ユーザの前記歩容スピードが逸脱する前記ルーチンのうちの特定のものの識別情報とともに提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ルートは、室内の物体間の前記ユーザの移動に対応する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断するソフトウェアを含む非一時的コンピューター可読媒体であって、前記ソフトウェアは、
前記ユーザに対応する複数の点群を形成する実行可能コードであって、該点群のそれぞれが、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標である、実行可能コードと、
前記点群の重心を決定する実行可能コードと、
前記ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームについて前記重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いて一時的歩行速度を決定する実行可能コードと、
前記一時的歩行速度に基づいて前記ユーザの歩容スピードを決定する実行可能コードと、
前記ユーザの歩容スピードの少なくとも1つの分布を決定する実行可能コードと、
前記歩容スピードの少なくとも1つの分布からの前記歩容スピードの逸脱に基づいて歩容異常を検出する実行可能コードと、
を備える、非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項10】
複数の点群を検出することは、追跡デバイスを用いて前記ユーザの移動を捕捉することを含む、請求項9に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項11】
前記追跡デバイスは、レーダー又はライダーのうちの少なくとも1つを用いる、請求項10に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項12】
前記移動は、歩行する、立つ、座る、ベッドに横たわる、床に横たわる、及び退室することのうちの少なくとも1つに対応する状態と関連付けられる、請求項10に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項13】
前記ユーザが歩行するルートに基づいて、該ユーザのルーチンに対応する該ユーザの歩容パターンを決定する実行可能コードを更に備え、前記歩容スピードの少なくとも1つの分布のうちの別個のものが、前記ルーチンのそれぞれに提供される、請求項10に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項14】
前記歩容パターンから逸脱した前記ルーチンのサブセットについて歩容スピードを検出することに応答して警告を提供する実行可能コードを更に備える、請求項13に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項15】
前記警告は、前記ユーザの前記歩容スピードが逸脱する前記ルーチンのうちの特定のものの識別情報とともに提供される、請求項14に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【請求項16】
前記ルートは、室内の物体間の前記ユーザの移動に対応する、請求項13に記載の非一時的コンピューター可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年6月7日に出願された、「NON-CONTACT IDENTIFICATION OF GAIT DYNAMICS, PATTERNS AND ABNORMALITIES FOR ELDERLY CARE」と題する米国仮特許出願第62/858,406号の優先権を主張し、この米国仮特許出願は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本出願は、相互接続されたハードウェア及びソフトウェア、並びに機械学習を用いた、歩行パラメータ及びパターンのリモートモニタリングの分野に関し、より詳細には、超広帯域レーダー及び機械学習を用いた高齢者の歩容動力学(GAIT DYNAMICS)、パターンの識別及び歩容異常の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
律動的で、平衡のとれた、十分高速な歩容は、人間の健康の重要な要因である。歩容の品質及びスピードは、多くの場合、年齢とともに劣化し、歩容異常は多くの高齢者にとって課題を表す。このため、1つの研究によれば、施設に入っていない高齢者の標本において、35%が異常歩容を有することがわかった。別の研究において、歩容障害は、70歳~74歳の人物の約25%において検出され、80歳~84歳の人物のほぼ60%において検出された。
【0004】
多くの研究者は、歩容異常の判断が課題となり得ることに同意している。なぜなら、高齢者における正常歩行を定義する明確に受け入れられた基準が存在しないためである。70代の健康な人物と、20代の健康な人物を比較する研究により、高齢人口における歩容スピード及びストライド長の10%~20%の低減が実証されている。一般的に加齢とともに変化する歩容の他の特性には、スタンス幅の増大、両脚支持期(すなわち、両脚が地上にある)において費やされる時間の増大、曲がった姿勢、蹴り出しの瞬間の力の発生の活力の低下が含まれる。
【0005】
歩容のいくつか要素は、通常、加齢とともに変化するが、変化しないものもある。主要歩容特性は、歩容速度(歩行スピード)であり、これは通例、約70歳まで安定したままであるが、その後、歩容スピードは、通常の歩行の場合、10年ごとに平均約15%低下し、高速歩行の場合、10年ごとに20%低下する傾向にある。多数の研究により、高齢者の歩容スピードが、死亡率の有力な予測材料であることが証明されている。実際に、歩容スピードは、高齢者の慢性の医学的状態及び入院の数の指標として有力である。健康統計によれば、75歳において、低速の歩行者は、通常速度の歩行者よりも平均6年以上早く死亡し、高速の歩行者よりも10年以上早く死亡する。
【0006】
身体力学の観点から、歩容スピードは、通常、加齢とともに低下する。なぜなら、高齢者は、同じ歩調でより短いステップを進むためである。複数の健康状態が、機能不全の歩容又は安全でない歩容に寄与する場合があり、リストには、認知症等の神経障害、運動疾患及び小脳疾患、感覚神経障害又は運動神経障害、及び筋骨格障害、例えば脊髄狭窄が含まれる。歩容障害は、多くの異なる形、例えば運動の対称性の喪失、律動的歩容の始動又は維持の困難、歩容の始動時の後方歩行、歩行中の後方転倒、歩行経路からの逸脱、及び多くの更なる欠陥等で現れる場合がある。
【0007】
従来、歩容障害は、患者の症状の収集、補助デバイスを用いる場合及び用いない場合の歩容の観察、歩容動力学の全ての成分の評価、並びに患者の歩容成分及び逸脱の知識を用いた反復的な患者の歩容の観察を含む多段階プロセスを通じて診断及び解析されてきた。世界人口の高齢化、及び長期高齢者介護施設に居住する高齢者のパーセンテージの増大により、ヘルスケア産業は、ペースを加速して高齢者を連続的に接触及び非接触モニタリングするための技術及び用途を開発している。例には、運動捕捉デバイス(Microsoft Kinect等)、MIT研究者による実験的WiGait RFデバイス等に基づく歩容解析システムが含まれる。
【0008】
非接触連続歩容モニタリングデバイス及びシステムの開発におけるいくらかの進歩にもかかわらず、自動歩容解析の分野には多くの未解決の問題が存在する。
【0009】
多くの実践者は、依然として、ストップウォッチによって計時された10メートル歩行試験等の旧式の歩容スピード測定技法を用いているのに対し、より進化したウェアラブルな実験解決策、例えばRunScribe ShoeRide、Stryd又はProKineticsのZeno Walkway等は、複雑で多様化したユーザ挙動及びルーチンを伴う現実世界の環境における永久的な歩容測定を可能にしない。カメラベースの運動捕捉技術は、多くの場合、高齢者によるプライバシー要件に抵触する一方、実験的なWiGaitデバイスは、フレームあたり単一の身体点を捕捉し、これは、歩行パターンを索出し、歩容異常を検出するには不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、信頼性のある歩容モニタリング、歩容パターンの識別、及び歩容異常の検出のための新たな技法及びシステムを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載のシステムによれば、ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断することは、ユーザに対応する複数の点群を形成することであって、点群のそれぞれが、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標であることと、点群の重心を決定することと、ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームについて重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いて一時的歩行速度を決定することと、一時的歩行速度に基づいてユーザの歩容スピードを決定することと、ユーザの歩容スピードの少なくとも1つの分布を決定することと、歩容スピードの少なくとも1つの分布からの歩容スピードの逸脱に基づいて歩容異常を検出することとを含む。複数の点群を検出することは、追跡デバイスを用いてユーザの移動を捕捉することを含んでもよい。追跡デバイスは、レーダー及び/又はライダー(lidar)を用いてもよい。移動は、歩行する、立つ、座る、ベッドに横たわる、床に横たわる、及び/又は退室することに対応する状態と関連付けられてもよい。ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断することは、ユーザが歩行するルートに基づいて、ユーザのルーチンに対応するユーザの歩容パターンを決定することも含んでもよく、歩容スピードの少なくとも1つの分布のうちの別個のものが、ルーチンのそれぞれに提供される。ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断することは、歩容パターンから逸脱したルーチンのサブセットについて歩容スピードを検出することに応答して警告を提供することも含んでもよい。警告は、ユーザの歩容スピードが逸脱するルーチンのうちの特定のものの識別情報とともに提供されてもよい。ルートは、室内の物体間のユーザの移動に対応してもよい。
【0012】
更に本明細書に記載のシステムによれば、非一時的コンピューター可読媒体が、ユーザの歩容パターンを決定し、異常を判断するソフトウェアを含む。ソフトウェアは、ユーザに対応する複数の点群を形成する実行可能コードであって、点群のそれぞれが、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標である、実行可能コードと、点群の重心を決定する実行可能コードと、ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームについて重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いて一時的歩行速度を決定する実行可能コードと、一時的歩行速度に基づいてユーザの歩容スピードを決定する実行可能コードと、ユーザの歩容スピードの少なくとも1つの分布を決定する実行可能コードと、歩容スピードの少なくとも1つの分布からの歩容スピードの逸脱に基づいて歩容異常を検出する実行可能コードとを備える。複数の点群を検出することは、追跡デバイスを用いてユーザの移動を捕捉することを含んでもよい。追跡デバイスは、レーダー及び/又はライダーを用いてもよい。移動は、歩行する、立つ、座る、ベッドに横たわる、床に横たわる、及び/又は退室することに対応する状態と関連付けられてもよい。ソフトウェアは、ユーザが歩行するルートに基づいて、ユーザのルーチンに対応するユーザの歩容パターンを決定する実行可能コードも備えてもよく、歩容スピードの少なくとも1つの分布のうちの別個のものが、ルーチンのそれぞれに提供される。ソフトウェアは、歩容パターンから逸脱したルーチンのサブセットについて歩容スピードを検出することに応答して警告を提供する実行可能コードも備えてもよい。警告は、ユーザの歩容スピードが逸脱するルーチンのうちの特定のものの識別情報とともに提供されてもよい。ルートは、室内の物体間のユーザの移動に対応してもよい。
【0013】
提案されるシステムは、歩行方向及び歩容スピードの識別を用いた連続非接触ユーザモニタリングを提供する。システムは、日常のユーザルーチンと関連付けられた歩容統計及びパターンを累積し、歩容統計及びパターンを、新たに捕捉されたデータと比較し、歩容異常を検出し、歩容パラメータが通常パターンから著しく逸脱している場合にユーザ状態のレポート及び即時警報を生成することができる。
【0014】
システム機能の様々な態様は以下のように説明される。
【0015】
1.追跡デバイスが、ユーザが居住する部屋の中の移動物体から高精度データを常時捕捉する。移動は、歩行する、立つ、座る、及びベッド又は床に横たわることを含むことができ、より小さな振幅を有する移動は、呼吸及び心拍を示すことができる。デバイスは、1つ以上のレーダー、及びライダー又は他の非カメラベースの運動捕捉技術を含むことができる。いくつかの場合、カメラの使用は、特に、長期の高齢者介護施設、入院患者治療等における24時間体制のモニタリング中、ユーザのプライバシーを害するとみなされる場合がある。
【0016】
2.捕捉されたデータは点群の形態で表され、データ捕捉セッションを通じたフレーム単位の移動点の3次元座標を示すことができる。フレーム周波数は、追跡デバイスの技術的特性、計算、記憶及びデータ送信環境、データ正確性要件等によって決定することができる。多くのタスクにとって、毎秒4フレームのフレーム周波数を十分とみなすことができる。
【0017】
3.後続のフレームと関連付けられた点群は、いくつかのステップ、すなわち、
a.冗長点のフィルタリング除去を含む点群のクリーニング、
b.点群の重心の位置の計算、
c.ユーザの歩行中に捕捉された隣接する複数のフレームの重心のシーケンス及び近傍の複数のフレームの点群のそのような隣接する複数の重心を接続するベクトルに基づく推定値を用いた、一時的歩行速度、スピード及び歩行方向の決定、
において前処理することができる。
【0018】
4.フレーム単位の点群の幾何学及び動力学への更なる洞察により、他の重要な歩容パラメータ、例えばステップカウント、ステップ長、ストライド内のステップの対称性又は非対称性等の推定を可能にすることができる。ステップ又はストライドの異なる複数の段階において非接触デバイスによって捕捉された歩行ユーザの点群は、ユーザの下半身において、基準足の移動に伴って異なる形状及び速度分布を有する場合がある。特に、下半身の幅は、遊脚中の足の軌道が他方の足の比較的静止した位置に交わるときの、ステップの遊脚中期部分に対応する狭い柱状体と、ステップの踵衝突端における最大距離によって分離された2本の脚によって形成された広い三角形との間で行き来する場合がある。したがって、点速度は、遊脚中の脚の側において、爪先が離れる位置から遊脚中期まで増大し、次に、次の踵衝突期までずっと減少する。点座標及び速度を体系的に収集及び処理することにより、ステップカウント及びステップ長、歩行ベース、歩容対称性、片脚支持期及び両脚支持期の持続時間等を推定することを可能にすることができる。
【0019】
5.システムは、室内の物体間のユーザ移動、朝又は他の日中の部屋の出入り等の、歩行フラグメント(ルート)を含むことができるユーザルーチン(活動)のリストを編集することができる。
【0020】
6.ユーザの歩容のパラメータは、最初に、歩行フラグメント(ルート)、例えば扉から椅子への歩行、テーブルからベッドへの歩行、部屋からの退出等ごとに決定することができる。その後、収集されたパラメータをユーザルーチンごとに処理し、蓄積することができ、様々なルーチンの平均歩容スピード並びに他の解析及び統計も生成し記憶することができ、歩容パターンを識別することができる。
【0021】
7.機械学習を用いて、新たな歩行フラグメントから主要歩容パラメータを取得し、このフラグメントを、歩容パターンに対応するものとして又はそのようなパターンから逸脱しているものとして分類する、様々なルーチンの自動分類器又は自動分類器のセットを構築することができる。トレーニングデータは、ユーザ活動又はユーザ活動の組み合わせに従って構築された、実行時歩容パラメータ、解析及び統計を含むことができる。
【0022】
システムは、全てのルーチンについてユーザの歩容を連続してモニタリングし、統計的平均及び範囲からの大きなスピードの逸脱等の異常を検出し、報告することができる。
【0023】
本明細書に記載のシステムの実施形態は、ここで、次の通りに簡潔に説明される図面の図に従って、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、非接触追跡デバイスを有する家具が設置された部屋、及び様々なユーザ状態の点群の概略図である。
【
図2A】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、点群のクリーニング、並びに歩行方向、一時的速度、スピード及び歩容帯の識別の概略図である。
【
図2B】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、点群のクリーニング、並びに歩行方向、一時的速度、スピード及び歩容帯の識別の概略図である。
【
図3A】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、ユーザルーチンの歩容パラメータの統計の構築の概略図である。
【
図3B】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、ユーザルーチンの歩容パラメータの統計の構築の概略図である。
【
図4】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、新たに捕捉された歩容データのモニタリング、歩容異常の検出及び通知の概略図である。
【
図5】本明細書に記載のシステムの一実施形態による、歩容パラメータ及びパターンの識別、及び歩容異常の報告に関連して機能するシステムを示すシステム流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載のシステムは、ユーザが居住する部屋又は他の設備に埋め込まれた常時オン追跡デバイスによって捕捉された点群によって表されるデータに基づいた、歩行方向及び歩容スピードの連続した非接触識別、日常のユーザルーチンに関係付けられた歩容統計及びパターンの蓄積、歩容異常の検出及び報告のメカニズムを提供する。
【0026】
図1は、非接触追跡デバイスを有する家具が設置された部屋、及び様々なユーザ状態の点群の概略
図100である。レーダー信号125を放出する非接触追跡デバイス120を有する部屋110は、扉130a、窓130bを有し、ベッド140a、テーブル140b及び椅子140cを設置されている。ユーザ150は、部屋を横切って歩き、ユーザ150の移動は、隣接する複数の時間フレームにおいて追跡デバイス120によって捕捉された点群150a、150b、150cのシーケンスを通じて捕捉される。ユーザ150の移動の2つの重要な特性は、歩行方向160及び歩行帯170である。(歩行に関連付けられた点群150a、150b、150cと比較して)より低い点密度を有する2つの他の点群150d、150eは、それぞれ、ユーザ150の座る状態及び横たわった状態を表す。
【0027】
図2A及び
図2Bは、点群のクリーニング、並びに歩行方向、一時的速度及びスピードの識別の概略図である。3つの連続フレームにおけるユーザの位置(詳細については
図1を参照されたい)を示す
図2Aにおける点群150a、150b、150c、及び対応する歩行帯170は前処理され、例えば、デバイス又は環境ノイズから結果として生じる信頼性のないデータ点210がフィルタリング除去され、より代表的でコンパクトなデータサンプルが形成される。
図2Bは、クリーニングされた点群220a、220b、220cを示す。クリーニングされた点群220a、220b、220cの重心230a、230b、230cの位置が計算され、重心230a、230b、230cのうちの隣接するもの同士を接続するベクトル240ab、240bcによって表される一時的歩行方向が識別される。一時的歩行方向を用いて、大まかな歩行方向250が、例えば、一時的歩行方向のセットからの二乗誤差偏差を最小にする直線として近似される。一時的歩行方向は、一時的歩行速度の推定値260a(v
1)及び260b(v
2)も提供し、これによりひいては、式:S
i=|v
i|に従って一時的歩行スピードを定義する。大まかな歩行方向における歩行スピードは、フレームのシーケンスを通じた大まかな歩行方向に沿った距離、及びシーケンス内の最後のフレームと最初のフレームとの間の時間差に基づいて計算することができる。
【0028】
図3A及び
図3Bは、ユーザルーチンの歩容パラメータの統計の構築の概略図である。
図3Aは、扉130a、窓130bを有し、家具アイテムである、ベッド140a、テーブル140b及び椅子140cを有する、
図1からの家具が設置された部屋110の平面図を示す(非接触追跡デバイス及び放射された電波は
図3に示されていない)。ユーザ310は、以下のように、異なる複数の時点において合計4つのルート上を歩行する。
【0029】
1.ルート330aは、扉130aを通じて部屋に入り、椅子140cまで歩行する(歩行状態340aによって表される)ことに対応し、ここにユーザ310が立ち(立つ状態340bによって表される)、次にしばらく座る(座る状態340cによって表される)。歩行帯320は、例示の目的で、ルート330aの中央位置に示される。
【0030】
2.ルート330bは、椅子140cから窓130bに歩行することに対応し、ここにユーザが短い間立つ。
【0031】
3.ルート330cは、ユーザ310が窓130bからベッド140aに歩行することに対応し、ここにユーザ310が横たわり(状態340dによって表される)、しばらく留まる。
【0032】
4.その後、ユーザ310はベッド140aに座り、立ち上がり、ルート330dに沿って歩いて部屋110を出る(退出状態340eによって表される)。
【0033】
システムは、4つ全てのルート330a~330dについて、ユーザ310の歩行方向及びスピードを捕捉し、処理する。全てのルート330a~330dの平均ユーザスピードが、項目270a~270d
【数1】
として示される。
【0034】
ユーザ状態(歩行する、立つ、座る、横たわる、退室する)のシーケンスを分類及びグループ化して、ユーザルーチン350のセット(R
1~R
4)を形成することができる。平均歩容スピード範囲360の統計が
図3Bのグラフ370に示され、
図3Aのユーザ310の歩容パターンを表す。
【0035】
図4は、新たに捕捉された歩容データのモニタリング、並びに歩容異常の検出及び通知の概略
図400である。グラフ370は、様々な日常のルーチン(
図3と併せてより詳細に説明されるように、活動並びに対応する状態及び状態遷移のセット)のユーザ歩行(歩容)パターンを表す歩行スピード範囲の確立された分布を示す。様々なカレンダー日付410におけるユーザ活動の連続した非接触モニタリングにより、システムに、フィールドデータ420の1回のみのセットを提供することができ、ユーザルーチン350の既知のセットについて平均歩容スピードの分布430の構築を可能にすることができる。分布430が歩容パターンからの、すなわち、確立された範囲360からのルーチン350のうちのいくつか又は全ての平均歩容スピードからの、大きな逸脱を示す場合、これは、医療的緊急事態につながる可能性がある、ユーザ歩容に伴ういくつかの問題を知らせることができる。
図4は、フィールドデータについて計算された歩容スピード平均が、4つのルーチンのうちの3つについて確立された範囲360から深刻に逸脱しており、ルーチン440のみが予期される範囲に属する平均スピード値を有している状況を示す。この状況において、システムは、異常なユーザ挙動を有する可能性があるルーチンのリストを生成し、介護者への警告450を送信することができ、影響を受けたユーザルーチンのリスト460を用いて警告を補うことができる。
【0036】
図5を参照すると、システム流れ
図500は、歩容パラメータ及びパターンの識別、並びに歩容異常報告に関連して機能するシステムを示す。処理はステップ510において開始し、ステップ510において、非接触デバイスがユーザをモニタリングし、後続のポーリングフレームにおいてシステムに利用可能にされる点群を構築する。ステップ510の後、処理はステップ515に進み、ステップ515において、点群は、本明細書の他の箇所において説明されるように、フレームごとにクリーニングされる(例えば、
図2A及び
図2B並びに付随するテキストを参照されたい)。ステップ515の後、処理はステップ520に進み、ステップ520において、システムは、点群の重心を構築する(
図2Bの項目230a、230b、230cを参照されたい)。ステップ520の後、処理はステップ525に進み、ステップ525において、システムは、隣接する複数のフレームを接続する一時的歩行方向のベクトルを構築する(
図2Bの項目240ab、240bcを参照されたい)。ステップ525の後、処理はステップ530に進み、ステップ530において、システムは、(例えば、本明細書の他の箇所において説明されるように、一時的歩行方向に基づいて最適化タスクを解くことによって、)大まかな歩行方向を識別する。ステップ530の後、処理はステップ535に進み、ステップ535において、システムは歩行スピードを推定する(
図2B及び付随するテキストを参照されたい)。
【0037】
ステップ535の後、処理はステップ540に進み、ステップ540において、システムは、
図3A及び
図3Bと併せて説明したように、ユーザルートの歩容統計を収集し、処理する。ステップ540の後、処理はステップ545に進み、ステップ545において、システムは、ユーザ状態のシーケンス及び状態遷移をグループ化することによってユーザルーチンを識別する。ステップ545の後、処理はステップ550に進み、ステップ550において、システムは、歩行パターン、すなわちユーザルーチンの歩行フラグメントの長期歩容統計(例えば、
図3B、
図4におけるグラフ370を参照されたい)を収集し、処理する。ステップ550の後、処理はステップ555に進み、ステップ555において、ユーザルーチンの歩行パターンが識別される。ステップ555の後、処理はステップ560に進み、ステップ560において、システムは、非接触追跡デバイスを用いたユーザモニタリングを継続する。ステップ560の後、処理はステップ565に進み、ステップ565において、システムは、以前に確立されたユーザルーチンの現在の(フィールド)歩容統計を収集し、処理する。ステップ565の後、処理は試験ステップ570に進み、ステップ570において、
図4及び付随するテキストにおいて説明したように、現在の歩容データにおいて異常歩容パラメータ又は統計が観測されたか否かが判断される。観測されていない場合、処理は完了する。そうでない場合、処理はステップ575に進む。ステップ575において、システムは、影響を受けるルーチン(複数の場合もある)を識別する。ステップ575の後、処理はステップ580に進み、ステップ580において、医療介護者が通知を受ける。ステップ580の後、処理は完了する。
【0038】
本明細書において論考した様々な実施形態は、本明細書に記載のシステムに関連した適切な組み合わせで互いに組み合わせることができる。加えて、いくつかの事例では、フローチャート、流れ図、及び/又は説明されたフロー処理におけるステップの順序は、適宜変更されてもよい。その後、システム構成及び機能は、本明細書に提示した例示と異なっていてもよい。さらに、本明細書に記載のシステムの様々な態様は、様々な応用形態を用いて実施される場合があり、限定ではないが、スマートフォン、タブレット及び他のモバイルコンピューターを含む様々なデバイスにおいて展開される場合がある。スマートフォン及びタブレットは、iOS、Android OS、Windows Phone OS、Blackberry OS及びLinux OSのモバイルバージョンからなる群から選択されたオペレーティングシステム(複数の場合もある)を用いることができる。モバイルコンピューター及びタブレットは、Mac OS、Windows OS、Linux OS、Chrome OSからなる群から選択されたオペレーティングシステムを用いることができる。
【0039】
本明細書に記載のシステムのソフトウェア実施は、コンピューター可読媒体に記憶され、1つ以上のプロセッサによって実行される実行可能コードを含むことができる。コンピューター可読媒体は、非一時的であってもよく、コンピューターハードドライブ、ROM、RAM、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュドライブ、SDカード等のポータブルコンピューター記憶媒体、及び/又は例えばユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースを備えた他のドライブ、及び/又は実行可能なコードが記憶され、プロセッサにより実行され得る任意の他の適切な有形又は非一時的なコンピューター可読媒体又はコンピューターメモリを含んでもよい。ソフトウェアは、バンドル(プリロード)されてもよく、アプリストアからインストールされてもよく、又はネットワークオペレータのロケーションからダウンロードされてもよい。本明細書に記載のシステムは、任意の適切なオペレーティングシステムに関連して使用されてもよい。
【0040】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察又は本明細書に開示した本発明の実施から当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】