(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】三次元物体を調製するための3D印刷システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20220907BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220907BHJP
B29C 44/02 20060101ALI20220907BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20220907BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220907BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220907BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220907BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20220907BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C44/00 Z
B29C44/02
B29C64/205
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
B29C64/321
B29K105:04
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021510971
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2019072702
(87)【国際公開番号】W WO2020043660
(87)【国際公開日】2020-03-05
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515169326
【氏名又は名称】ズルツァー マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シールズ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】タマロ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トロムスドルフ、ウーラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルカー、クラウディオ
【テーマコード(参考)】
4F213
4F214
【Fターム(参考)】
4F213AA03
4F213AA13
4F213AA15
4F213AA24
4F213AA31
4F213AB02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL25
4F213WL32
4F213WL74
4F214AA24
4F214AB02
4F214AG20
4F214UA37
4F214UB01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための3D印刷システムであって、i)膨張可能なポリマー溶融物を調製し、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための印刷装置(10)と、ii)事前定義された三次元マトリックス内の印刷装置の位置を調整して、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを所定の時間に三次元マトリックス内の正確な位置に堆積させるための三次元移動装置とを備え、印刷装置は、a)印刷装置の上流端の供給セクション(16)と、b)加熱セクション(20)と、c)加圧セクション(22)と、d)発泡剤供給ライン(26)と、e)混合セクション(24)と、f)冷却セクション(28)と、g)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための金型を含む印刷装置の下流端にある末端印刷ヘッドセクション(30)とを備え、混合セクションe)および冷却セクションf)は、供給セクションa)、加熱セクションb)、および加圧セクションc)の下流に配置され、発泡剤供給ラインd)は、1つまたは複数の排出端を有し、排出端は、加圧セクションc)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの1つまたは複数に接続されている、3D印刷システムに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための三次元印刷システムであって、
i)膨張可能なポリマー溶融物を調製し、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための印刷装置(10)と、
ii)所定の三次元マトリックス内の前記印刷装置(10)の位置を調整して、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーの前記ストランドを所定の時間に前記三次元マトリックス内の正確な位置に堆積させるための三次元移動装置と
を備え、
前記印刷装置(10)は、
a)前記印刷装置の上流端(12)の供給セクション(16)と、
b)加熱セクション(20)と、
c)加圧セクション(22)と、
d)発泡剤供給ライン(26)と、
e)混合セクション(24)と、
f)冷却セクション(28)と、
g)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーの前記ストランドを前記表面に堆積させるための金型(32)を含む前記印刷装置(10)の下流端(14)にある末端印刷ヘッドセクション(30)と
を備え、
前記混合セクション(24)および前記冷却セクション(28)は、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、および前記加圧セクション(22)の下流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、1つまたは複数の排出端を有し、前記排出端は、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちの1つまたは複数に接続されている、三次元印刷システム。
【請求項2】
少なくとも前記セクション(16)、(20)、(24)、および(28)は、好ましくは1~10mmの間、より好ましくは2~4mmの間である同じ内径を有する管状セクションである、請求項1に記載の三次元印刷システム。
【請求項3】
i)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、前記冷却セクション(28)、および前記印刷ヘッド(30)は、前記印刷装置(10)の前記上流端(12)から前記下流端(14)まで、この順序で配置されるか、または、
ii)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、前記冷却セクション(28)、および前記印刷ヘッド(30)は、前記供給セクション(16)、次に前記加圧セクション(22)が続き、次に前記加熱セクション(20)が続き、次に前記混合セクション(24)が続き、次に前記冷却セクション(28)が続き、次に前記印刷ヘッドセクション(30)が続く順序で、前記上流端(12)から前記下流端(14)まで配置されるか、または、
iii)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、および前記加圧セクション(22)は、1つのセクションに組み合わされ、次に前記混合セクション(24)が続き、次に前記冷却セクション(28)が続き、次に前記印刷ヘッドセクション(30)が続く、請求項1または2に記載の三次元印刷システム。
【請求項4】
前記加熱セクション(20)は管を含む管状セクションであり、ペルチェ素子、抵抗ヒーター、または熱交換器が前記管の外壁に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項5】
前記加圧セクション(22)は、ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機、またはギア圧縮機を含み、前記加圧セクション(22)の壁は、好ましくはペルチェ素子、抵抗ヒーター、または熱交換器である加熱手段を備えることが好ましい、請求項1~4のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項6】
前記冷却セクション(28)は、前記混合セクション(24)の下流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、前記混合セクション(24)、好ましくは前記混合セクション(24)の上流部分に接続されている1つの排出端を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項7】
前記冷却セクション(28)は、前記混合セクション(24)の上流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、前記冷却セクション(28)、または前記混合セクション(24)、好ましくは前記混合セクション(24)の上流部分に接続されている1つの排出端を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項8】
前記印刷ヘッドセクション(30)は、先細の管状セクションであり、前記印刷ヘッドセクション(30)の下流部分は、前記金型(32)を形成するように先細になっており、前記印刷ヘッドセクション(30)の上流部分は、好ましくは、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(29)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちの少なくとも1つと同じ内径を有し、より好ましくは、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(29)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちのすべてと同じ内径を有することが好ましく、前記金型(32)は、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.1~0.5mmの内径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項9】
少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための方法であって、前記方法は、請求項1~8のいずれか一項に記載の三次元印刷システムで実行される、方法。
【請求項10】
前記方法は、
a)ポリマー溶融物が得られるように、ポリマーを溶融するステップと、
b)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、前記ポリマー溶融物を加圧するステップと、
c)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つの発泡剤を前記加圧されたポリマー溶融物に投与するステップと、
d)均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つのミキサーを通過させることにより、好ましくは少なくとも1つの静的ミキサーを通過させることにより、前記膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を均質化するステップと、
e)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、前記均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を冷却するステップと、
f)前記冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、前記印刷装置(10)の前記金型(32)を通して押し出すことにより、成形、堆積、および発泡させるステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの核剤が前記ポリマーに添加され、前記少なくとも1つの核剤は、好ましくは、ステップa)の前および/またはステップa)の後であるが、ステップd)の前に添加される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリスチレン、ポリ乳酸、熱可塑性エラストマー、ニトリルゴム、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイミド、塩化ポリビニル、および前述のポリマーの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発泡剤は、物理的発泡剤であり、好ましくは、二酸化炭素、窒素、水、シクロペンタン、イソブタン、ペンタン、および前述の化合物の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される物理的発泡剤である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)で得られた前記膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、60~270℃の温度を有し、2~50MPaに加圧される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
好ましくは、遮音性材料、クッション、マットレス、マット、スポンジ、靴底、スポーツシューズ、保護具、支持構造、または充填構造である、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法で入手可能な三次元物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレンフォームなどの膨張したポリマーで少なくとも部分的に作製された三次元物体を調製するための三次元印刷システム、ならびに少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膨張したポリマー、すなわちポリマーフォームは、低密度を特徴とする気泡構造である。フォームは、独立気泡フォーム、連続気泡フォーム、混合気泡フォーム、一体型フォームに分けられる。独立気泡フォームは、中実ポリマー材料によって完全に囲まれ、気体で満たされた気泡を含むが、連続気泡フォームの気泡は、中実ポリマー材料によって完全には囲まれておらず、したがって互いに相互接続されている。このため、連続気泡フォームは水などの液体を吸収する可能性があるが、独立気泡フォームは吸収しない。混合気泡フォームは、連続気泡ならびに独立気泡を含むが、一体型フォームは、厚い、非気泡または少なくとも本質的に非気泡の外壁と、それらの間に気泡コアとを有し、密度は外壁から内壁へと本質的に連続的に減少する。
【0003】
フォームは、容易に成形可能であり、引張強度が低く、遮音性が高く、さらに熱伝導率が低いことを特徴とする。これらの特性のために、フォームは簡単に作業でき、様々な商業分野で応用されている。例えば、ポリスチレンまたはポリウレタンで作られたものなどの独立気泡フォームは、例えば、建物の断熱材としてなど、産業の複数の分野で断熱材として使用されている。フォームの商業的用途の他の例は、遮音材、クッション、マットレス、マット、およびスポンジである。
【0004】
フォームは、エチレン-酢酸ビニル、ポリエチレン、ニトリルゴム、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ乳酸、およびポリ塩化ビニルなど、ほぼすべての市販のポリマーで作製することができる。
【0005】
発泡物品を製造するためのいくつかの方法が知られている。したがって、一例は、発泡剤を含む加圧されたポリマー溶融物がノズルを介して金型に射出される直接射出膨張発泡成形プロセスである。加圧されたポリマー溶融物の圧力よりも低い圧力が存在する金型内では、発泡剤が膨張し、したがって、所望の形状のポリマーフォームを形成する。別の一例は、圧力が解放されて温度が低下する前に、高温および加圧下で二酸化炭素などの発泡剤を用いてオートクレーブ内でポリマー顆粒をインキュベートして、顆粒を発泡ビーズに発泡させることである。次に、これらの発泡ビーズを金型に注入して、圧力と蒸気を加えることによって発泡ビーズをその中で熱溶融して所望の形状にすることができる。したがって、さらに別の一例は、ポリマー溶融物を含む加圧された発泡剤をダイプレートの金型を通して押し出し、ポリマーストランドの膨張が回避されるように圧力下でポリマー溶融物が冷却される水中造粒機内で金型のすぐ後ろにポリマー溶融物ストランドを造粒することによって、膨張可能なポリマービーズを形成することである。その後、膨張可能なポリマービーズを金型内で発泡させ溶融して、所望の形状を有する物品にすることができる。
【0006】
最近、三次元(3D)印刷を利用して発泡物品を製造することが提案された。これには、製造に手間と費用がかかる成形品が必要ないという利点がある。さらに、3D印刷は高速で、プロセス中に材料を変更することができ、ごみはごくわずかしか発生しない。
【0007】
特許文献1は、3D印刷に基づいて発泡生成物を製造するための方法および装置を開示している。この装置は、成形ユニットとしての3Dプリンター、超臨界浸透ユニット、および発泡ユニットを含む。超臨界浸透ユニットは、予熱器、ブースターポンプ、二酸化炭素貯蔵タンク、および浸透容器を含むが、発泡ユニットは、主に蒸気発生器、フォームボックス、およびカバープレートで構成されている。この方法は、以下のステップ:第一に、3Dプリンターを介してポリマー溶融物の三次元モデルを印刷するステップと、第二に、形成された三次元モデルを超臨界浸透ユニットの浸透容器に入れ、超臨界二酸化炭素を浸透させるステップと、第三に、発泡生成物が得られるように、フォームボックス内で三次元モデルの蒸気発泡を実行するステップとを含む。しかしながら、このプロセスにはいくつかの欠点がある。まず第一に、それは発泡セクションと非発泡セクションとを含むハイブリッド物品を製造することを可能にしない。むしろ、この方法では、完全に均一に発泡した物品しか製造できない。また、この方法で製造された発泡生成物の発泡構造および密度は、十分に制御することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第106493968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これを考慮して、本発明の根底にある目的は、より柔軟であり、特に発泡構造および発泡した生成物の密度を制御することを可能にし、発泡セクションと非発泡セクションとを含むハイブリッド物品を製造することを可能にする、少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための3D印刷システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための3D印刷システムであって、
i)膨張可能なポリマー溶融物を調製し、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための印刷装置と、
ii)事前定義された三次元マトリックス内の印刷装置の位置を調整して、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを所定の時間に三次元マトリックス内の正確な位置に堆積させるための三次元移動装置とを含み、
印刷装置は、
a)印刷装置の上流端の供給セクションと、
b)加熱セクションと、
c)加圧セクションと、
d)発泡剤供給ラインと、
e)混合セクションと、
f)冷却セクションと、
g)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための金型を含む印刷装置の下流端にある末端印刷ヘッドセクションとを含み、
混合セクションe)および冷却セクションf)は、供給セクションa)、加熱セクションb)、および加圧セクションc)の下流に配置され、発泡剤供給ラインd)は、1つまたは複数の排出端を有し、排出端は、加圧セクションc)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの1つまたは複数に接続されている、3D印刷システムを提供することによって満たされる。
【0011】
本発明に係る3D印刷システムは、後で発泡剤を注入されて発泡されるポリマーストランドをターゲット表面に堆積させない。むしろ、本発明に係る3D印刷システムは、発泡剤を含むポリマーの混合物のストランドをターゲット表面に堆積させる。印刷装置の供給セクションa)に供給された後、ポリマーは加熱セクションb)で溶融され、加圧セクションc)で加圧され、その後、発泡剤が発泡剤供給ラインd)を介して加圧されたポリマー溶融物に注入される。加えられた圧力のために、そのように形成された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、印刷装置のこのセクションにおいて、それぞれ膨張または発泡しない。続いて、膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を混合および冷却してから、それを印刷装置の末端印刷ヘッドセクションの金型を通して押すことによりターゲット表面に堆積させる。とりわけ、印刷装置で調整された混合物の流量および冷却セクションで調整された温度に依存して、膨張可能なポリマー、膨張するポリマー、または膨張したポリマーのストランドがターゲット表面に堆積される。混合物の温度が末端印刷ヘッドセクションで十分に低い場合、混合物は、印刷装置の外部の周囲温度にさらされたときに、末端印刷ヘッドセクションを離れた後、それぞれ膨張または発泡するだけであり、その結果、膨張可能なポリマーのストランド、すなわち膨張していないポリマーのストランドが堆積され、これは、堆積中またはその直後に表面で膨張する。しかしながら、末端印刷ヘッドセクションにおける混合物の温度がより高い場合、(膨張するポリマーのストランドが堆積されるように)末端印刷ヘッドセクションを離れるとき、または(すでに膨張したポリマーのストランドが堆積されるように)末端印刷ヘッドセクションを離れる前でさえ、混合物はすでにそれぞれ膨張または発泡するであろう。したがって、本発明に係る3D印刷システムは、この点に関して非常に柔軟である。さらに、本発明に係る3D印刷システムは、印刷装置内で発泡剤を含むポリマーの混合物中の発泡剤の濃度を変更することを可能にし、冷却セクションの温度を変更することによって印刷装置内の混合物の温度を変更することを可能にし、印刷装置を通る混合物の流量を変更することを可能にし、時間の経過とともに印刷装置に供給されるポリマーの種類を変更することを可能にする。これらの理由のために、本発明に係る3D印刷システムは、発泡構造および発泡した生成物の密度を自由に制御することを可能にする。さらに、ポリマー溶融物への発泡剤の添加を一時的に停止することにより、発泡セクションと非発泡セクションを含むハイブリッド物品を製造することができる。全体として、本発明は、より柔軟であり、特に発泡構造および発泡した生成物の密度を制御することを可能にし、発泡セクションと非発泡セクションとを含むハイブリッド物品を製造することを可能にする、少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための3D印刷システムおよび方法を提供する。
【0012】
原則として、本発明は、印刷装置およびそのセクションの形態に関して特に限定されない。したがって、セクションのうちの1つまたは複数は、例えば、正方形、長方形、楕円体、または円形の断面を有することができ、単一セクションの寸法は、互いに同じであっても異なっていてもよい。特に、供給セクションa)、加熱セクションb)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの1つまたは複数が円形断面を有する、したがって(三次元的に見て)管状である場合、良好な結果が得られる。各々のセクションは、例えば、1~10mmまたは2~4mmの同じ内径または異なる内径を有することができる。より好ましくは、少なくとも供給セクションa)、加熱セクションb)、混合セクションe)および冷却セクションf)のすべては、好ましくは1~10mmの間、より好ましくは2~4mmの間である同じ内径を有する管状セクションである
【0013】
また、本発明は、原則として、混合セクション(e)および冷却セクションf)が、供給セクションa)、加熱セクションb)、および加圧セクションc)の下流に配置されている限り、かつ、発泡剤供給ラインd)が、1つまたは複数の排出端を有し、排出端が、加圧セクションc)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの1つまたは複数に接続されている限り、印刷装置の単一セクションの順序に関して特に限定されない。この文脈において、セクションは、長手方向のセグメント、すなわち、印刷装置の長手方向に延びるセグメントを示す。
【0014】
本発明の1つの特定の好ましい実施形態によれば、セクションa)~c)およびe)~g)は、印刷装置の上流端から下流端へとこの順序で配置される。
【0015】
あるいはまた、セクションa)~c)およびe)~g)は、印刷装置の上流端から下流端へと、供給セクションa)、次に加圧セクションc)が続き、次に加熱セクションb)が続き、次に混合セクションe)が続き、次に冷却セクションf)が続き、次に末端印刷ヘッドセクションg)が続く順序で配置される。
【0016】
本発明のさらに別の一実施形態によれば、セクションa)~c)は、1つのセクションに組み合わされる、すなわち、供給セクションa)は、加熱セクションb)および加圧セクションc)も兼ねるように具現化される。この組み合わされたセクションa)、b)、c)の下流には、混合セクションe)、次に冷却セクションf)が続き、次に末端印刷ヘッドセクションg)が続く。
【0017】
さらに代替的に、セクションe)およびf)は、1つのセクションに組み合わされ、すなわち、混合セクションe)は、冷却セクションf)も兼ねるように具現化される。この実施形態は、セクションa)からc)が1つのセクションに組み合わされる前述の実施形態と互換性があり、その結果、本発明のこの実施形態の印刷装置は、組み合わされた供給、加熱、および加圧セクションa)、b)、c)と、その下流に、組み合わされた混合および冷却セクションe)、f)とを含む。あるいはまた、セクションa)、b)およびc)は異なっていてもよく、その結果、印刷装置は、上流の供給セクションa)、その下流に加熱セクションb)、その下流に加圧セクションc)、その下流に組み合わされた混合および冷却セクションe)、f)およびその下流に末端印刷ヘッドセクションg)を含む。
【0018】
供給セクションa)は、その最も単純な実施形態では、管の管状端セクションである。
【0019】
加熱セクションを形成するために、印刷装置のそれぞれのセクションは、管内に存在するポリマーを加熱して溶融させることができる任意の手段を備えていてもよい。例えば、印刷装置のそれぞれのセクションは、ペルチェ素子または抵抗ヒーターなどの能動加熱素子、または熱交換器を備えていてもよい。より具体的には、ペルチェ素子、抵抗ヒーター、または熱交換器を加熱セクションの外壁に設けることができ、これは、ペルチェ素子、抵抗ヒーターまたは熱交換器が、管の外壁に設けられるように、印刷装置の加熱セクションb)が管状セクションである場合に特に好ましい。
【0020】
本発明のアイデアのさらなる発展において、供給セクションa)と加熱セクションb)との間に冷却セクションを配置することが提案されている。これにより、下流の加熱セクションb)でポリマーに伝達される熱のために、ポリマーが供給セクションa)で溶融することを確実に回避することができる。冷却セクションは、ペルチェ素子、熱交換器、または好ましくは冷却フィンが管の外壁に設けられている、管を含む管状セクションとすることができる。
【0021】
また、加圧セクションc)に関して、本発明は特に限定されない。したがって、加圧セクションc)は、(加熱セクションb)が加圧セクションc)の下流にある場合)固体の形態または(加熱セクションb)が加圧セクションc)の上流にある場合)好ましくは溶融物の形態のいずれかで管中に存在するポリマーを加圧することができる任意の手段によって形成することができる。好ましくは、加圧セクションc)は、ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機、またはギア圧縮機を含む。加圧セクションc)が加熱セクションb)の下流に配置される場合、加圧セクションc)を通って流れるポリマー溶融物が固化することを回避するために、加圧セクションc)が加熱要素を含むことがさらに好ましい。加圧セクションc)で提供される加熱要素は、ペルチェ要素、抵抗ヒーター、または熱交換器とすることができる。
【0022】
上記のように、本発明によれば、発泡剤供給ラインd)は、加圧セクションc)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの1つまたは複数に接続されている1つまたは複数の排出端を有する。したがって、発泡剤供給ラインd)は、3つの排出端を含むことができ、そのうちの1つは加圧セクションc)に接続され、そのうちの他方は混合セクションe)に接続され、そのうちの他方は冷却セクションf)に接続される。あるいはまた、発泡剤供給ラインd)は2つの排出端を含むことができ、そのうちの一方は混合セクションe)に接続され、そのうちの他方は冷却セクションf)に接続される。さらに代替的で実際に好ましいのは、発泡剤供給ラインd)が、1つの排出端を含むものであり、これは、混合セクションe)、より好ましくは、混合セクションe)の上流部分に接続される。混合セクションe)が冷却セクションf)の上流に配置される場合、後者の実施形態が特に好ましい。冷却セクションf)が混合セクションe)の上流に配置される場合、発泡剤供給ラインd)は、冷却セクションf)に接続された1つの排出端を有することができる。
【0023】
本発明のアイデアのさらなる発展において、混合セクションe)は、1つまたは複数の静的ミキサーを含むことが示唆される。原則として、押し出し機または混錬機などの動的ミキサーも使用できる場合でも、実際には、1つまたは複数の静的ミキサーを使用することが好ましい。動的ミキサーの不可欠な構成要素であるような移動要素または回転要素がそれぞれ存在しないため、これは好ましい。そのため、メンテナンスが少なくて済む。さらに、静的ミキサーは、内径が1~10mm、好ましくは2~4mmの管に統合できるように、十分に小さく具現化することができる。
【0024】
冷却セクションf)は、例えば、正方形、長方形、楕円体、または円形の断面を有することができる。しかしながら、冷却セクションf)は、管を含む管状セクションであり、ペルチェ素子、熱交換器、または冷却フィンが管の外壁に設けられていることが好ましい。より好ましくは、管状冷却セクションf)の内径は1~10mmであり、特に好ましくは2~4mmである。
【0025】
本発明の別の特に好ましい一実施形態によれば、印刷ヘッドセクションg)は、先細の管状セクションであり、印刷ヘッドセクションg)の下流部分は、金型を形成するように先細になっている。好ましくは、印刷ヘッドセクションg)の上流部分は、供給セクションa)、加熱セクションb)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちの少なくとも1つと同じ内径を有し、より好ましくは、供給セクションa)、加熱セクションb)、混合セクションe)、および冷却セクションf)のうちのすべてと同じ内径を有することが好ましい。金型は、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.1~0.5mmの内径を有する。
【0026】
別の一態様によれば、本発明は、少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための方法であって、方法は、前述の三次元印刷システムで実行される、方法に関するものである。
【0027】
好ましくは、この方法は、
a)ポリマー溶融物が得られるように、ポリマーを溶融するステップと、
b)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、ポリマー溶融物を加圧するステップと、
c)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つの発泡剤を加圧されたポリマー溶融物に投与するステップと、
d)均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つのミキサーを通過させることにより、好ましくは少なくとも1つの静的ミキサーを通過させることにより、膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を均質化するステップと、
e)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を冷却するステップと、
f)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、印刷装置の金型を通して押し出すことにより、成形、堆積、および発泡させるステップとを含む。
【0028】
代替の実施形態では、前述のステップの順序が変更される。例えば、ステップa)およびb)は、組み合わされた供給、加熱、および加圧セクションa)、b)、c)を通してポリマーを押し出すことによって同時に実行することができる。
【0029】
また、ステップd)およびe)は、組み合わされた混合および冷却セクションe)、f)を通して、膨張可能な加圧されたポリマー溶融ポリマーを押し出すことによって同時に実行することができる。
【0030】
前述の両方の実施形態は、ステップa)およびb)が、組み合わされた供給、加熱、および加圧セクションa)、b)、c)を通してポリマーを押し出すことによって同時に実行され、ステップd)およびe)が、組み合わされた混合および冷却セクションe)、f)を通して膨張可能な加圧されたポリマー溶融ポリマーを押し出すことによって同時に実行されるように組み合わせることができる。この実施形態では、この方法は、以下のステップ:i)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、ポリマーを溶融および加圧するステップと、
ii)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つの発泡剤を加圧されたポリマー溶融物に投与するステップと、iii)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を均質化および冷却するステップと、iv)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、印刷装置の金型を通して押し出すことにより、成形、堆積、および発泡させるステップとを含む。
【0031】
さらに別の実施形態では、ステップa)からf)を含む前述の実施形態において、ステップb)は、ステップa)の前に実行することができ、その結果、最初にポリマーが加圧され、その後、加圧されたポリマーが溶融される。
【0032】
さらに別の一実施形態では、ステップa)からf)を含む前述の実施形態では、ステップe)は、ステップd)の前に実施することができ、その結果、最初に膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が冷却され、その後、冷却された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が混合される。
【0033】
方法は、以下のステップ:
a)加圧されたポリマーが得られるように、ポリマーを加圧するステップと、
b)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、加圧されたポリマーを溶融するステップと、
c)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つの発泡剤を加圧されたポリマー溶融物に投与するステップと、
d)冷却された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を冷却するステップと、
e)均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、少なくとも1つのミキサーを通過させることにより、好ましくは少なくとも1つの静的ミキサーを通過させることにより、冷却された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を均質化するステップと、
f)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、印刷装置の型を通して押し出すことにより、成形、堆積、および発泡させるステップとを含むように、前述の両方の実施形態を組み合わせることができる。
【0034】
膨張中に発泡剤によって形成される気泡のサイズを調整するために、本発明のアイデアのさらなる発展において、少なくとも1つの核剤がポリマーに添加され、少なくとも1つの核剤は、好ましくは、溶融ステップa)の前および/または溶融ステップa)であるが、均質化ステップe)の前に添加されることが示唆されている。
【0035】
核剤が、タルク、ワックス、グラファイト、ベントナイト、および前述の化合物の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される場合、特に良好な結果が得られる。
【0036】
本発明は、任意の発泡可能なポリマーを用いて実行することができる。したがって、適切な例は、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリスチレン、ポリ乳酸、熱可塑性エラストマー、ニトリルゴム、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイミド、塩化ポリビニル、および前述のポリマーの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択されるポリマーである。
【0037】
ポリマーは、任意の形態、例えば、特に、ポリマー溶融物、ポリマー顆粒、ポリマーペレット、ポリマーフィラメント、またはポリマーワイヤの形態で、印刷装置の供給セクションa)にそれぞれ入ることができる。
【0038】
本発明を1つまたは複数の化学的発泡剤を使用して実行することができる場合でも、本発明に係る方法で使用される発泡剤は物理的発泡剤であることが特に好ましい。物理的発泡剤の好ましい例は、二酸化炭素、窒素、水、シクロペンタン、イソブタン、ペンタン、および前述の化合物の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択されるものである。
【0039】
適用されるポリマーの種類に応じて、ステップc)で得られた膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、60~270℃の温度を有することができ、2~50MPaに加圧される。
【0040】
例えば、ポリマーが熱可塑性ポリウレタンである場合、ステップc)で得られた膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、好ましくは100~180℃の温度を有し、2~50MPaに加圧される。
【0041】
しかしながら、ポリマーがポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンである場合、ステップc)で得られた膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、60~120℃の温度を有し、2~50MPaに加圧されることが好ましい。
【0042】
さらなる一態様によれば、本発明は、前述の方法で得られる三次元物体に関するものである。三次元物体は、特に、遮音性材料、クッション、マットレス、マット、スポンジ、靴底、スポーツ靴、保護具、支持構造、または充填構造であり得る。
【0043】
続いて、添付の
図1を参照して、本発明に係る特定の一実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の1つの例示的な実施形態に係る、膨張可能なポリマー溶融物を調製するための、および少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための3D印刷システムの表面に膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを堆積するための印刷装置の概略断面図を示す。
【
図2】実施例1で得られたPETの正方形の単層を示す。
【
図3】実施例2で得られた2つのPETキューブを示す。
【
図4】実施例2の印刷ノズルを通して押し出されたストランドの拡大写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1に示される印刷装置10は、その上流端12からその下流端14へと、以下のセクション:
i)供給セクション16と、
ii)冷却セクション18と、
iii)加熱セクション20と、
iv)加圧セクション22と、
v)混合セクション24と、
vi)冷却セクション28と、
vii)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための型32を含む、印刷装置の下流端にある末端印刷ヘッドセクション30とをこの順序で含み、混合セクション24の上部に接続された、排出端を有する発泡剤供給ライン26が提供される。
【0046】
供給セクション16は、印刷装置10の上流管状端セクションであるが、冷却セクション18は、その外壁に冷却フィンを備えた管状セクションとして具現化されている。加熱セクション20は、管の外壁にペルチェ素子を含む管状セクションであり、一方、加圧セクション22は、スクリュー圧縮機を含む。混合セクション24は、静的ミキサーを含む管状セクションであり、一方、冷却セクション28は、その外壁にペルチェ要素を備えている管状セクションである。
【0047】
動作中に、少なくとも部分的に発泡したポリマーで作製された三次元物体を調製するための方法が実行され、これは以下のステップ:
i)ポリマーを供給セクション16に供給するステップと、
ii)供給セクション16ですでに溶融するのを回避するように、冷却セクション18でポリマーを冷却するステップと、
iii)ポリマー溶融物が得られるように、加熱セクション20でポリマーを溶融するステップと、
iv)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、加圧セクション22においてポリマー溶融物を加圧するステップと、
v)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、混合セクション24の上流部分において加圧されたポリマー溶融物にガス供給ライン26を介して少なくとも1つの発泡剤を投与するステップと、
vi)均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、混合セクション24に設けられたミキサーを通過させることにより、膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を均質化するステップと、
vii)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、冷却セクション28において均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を冷却するステップと、
viii)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、印刷装置10の印刷ヘッドセクション30の金型32を通して押し出すことによって、成形、堆積、および発泡させるステップ、とを含む。
【0048】
続いて、本発明は、非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例1】
【0049】
3Dプリンターのホットエンド(印刷ヘッド)は、発泡剤を溶融ポリマーに直接可溶化するために、本特許出願の請求項1に従って構築された。溶融セクションの内径は1.7mmであった。発泡剤は、HPLCポンプによって発泡剤供給ラインにポンプ輸送された。溶融ポリマーと発泡剤の混合物を静的ミキサー(SMX DN3の4つの要素)に通し、そこで発泡剤をポリマーと均質化させた。最後に、含浸された溶融物は、標準の0.4mm印刷ノズルを通過した。溶融セクションと発泡剤の注入は、電気的に加熱されたアルミニウムブロックによって加熱され、一方、静的ミキサーは、加熱カートリッジなしでアルミニウムブロックによって冷却された(環境への熱放散)。両方の加熱ブロックを同じ温度に加熱した。
【0050】
印刷条件は以下の通りである。
フィラメント:3D-Printerstore.ch製のPro Fill PET
印刷温度:205℃
押し出し速度:15mm/分(発泡剤ありの場合0.6倍)
発泡剤:アセトン(0.005ml/分)
発泡剤含有量(17%w/w)
【0051】
図2は、PETの正方形の単層を示している。印刷は外側から内側へと進行した。つまり、ストランドの外側のラウンドが最初に配置された。第3のラウンド中に、発泡剤の流れが開始され、押し出し速度が40%低下した。最初の2ラウンドのストランドは透明でクリアであったが、次のストランドには、発泡剤によって引き起こされた気泡が明らかに含まれている。
【0052】
実施された試験において、発泡プロセスは安定していた。ポリマーフィラメントは、サイズおよび/または流量の目に見える変化なしに、時間の関数として絶えず発泡した。
【0053】
最終的な物体の寸法精度は、発泡プロセスによって視覚的に影響を受けなかった。密度の低下を補うために、発泡物体を印刷する間の流量を減少させた。
【0054】
発泡物体の層間の良好な接着が観察され、発泡物体を手動で圧搾することによって確認することができた。
【実施例2】
【0055】
同じ印刷ノズルの動きで印刷された2つのPETキューブを
図3に示した。左側のキューブは発泡剤を添加せずに印刷され、右側のコーンは17%の発泡剤を用いて印刷され、フィラメントの押し出し速度は0.6倍低下した。発泡したキューブは、発泡剤なしで印刷されたキューブよりも35%軽量であった。上記の単層のように、ストランド内の泡が見えた。
【0056】
図4は、印刷ノズルを通して押し出されたストランドの拡大写真を示している。右側では、15mm/分の押し出し速度で発泡剤を添加せずにPETフィラメントを押し出した。ストランドは透明で均質であり、気泡は見られなかった。左側では、PETを9mm/分で押し出し、発泡剤としてアセトンを添加した。発泡剤のために、ストランドはここでは泡を含んでいた、すなわちそれは発泡した。
【0057】
実施された試験において、発泡プロセスは安定していた。ポリマーフィラメントは、サイズおよび/または流量の目に見える変化なしに、時間の関数として絶えず発泡した。
【0058】
最終的な物体の寸法精度は、発泡プロセスによって視覚的に影響を受けなかった。密度の低下を補うために、発泡物体を印刷する間の流量を減少させた。
【0059】
発泡物体の層間の良好な接着が観察され、発泡物体を手動で圧搾することによって確認することができた。
【符号の説明】
【0060】
10 印刷装置
12 印刷装置の上流端
14 印刷装置の下流端
16 供給セクション
18 冷却セクション
20 加熱セクション
22 加圧セクション
24 混合セクション
26 発泡剤供給ライン
28 冷却セクション
30 印刷ヘッドセクション
32 金型
【手続補正書】
【提出日】2021-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための三次元印刷システムであって、
i)膨張可能なポリマー溶融物を調製し、膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーのストランドを表面に堆積させるための印刷装置(10)と、
ii
)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーの前記ストランドを所定の時間に前記三次元マトリックス内の正確な位置に堆積させるための三次元移動装置と
を備え、
前記印刷装置(10)は、
a)前記印刷装置の上流端(12)の供給セクション(16)と、
b)加熱セクション(20)と、
c)加圧セクション(22)と、
d)発泡剤供給ライン(26)と、
e)混合セクション(24)と、
f)冷却セクション(28)と、
g)膨張可能な、膨張する、または膨張したポリマーの前記ストランドを前記表面に堆積させるための金型(32)を含む前記印刷装置(10)の下流端(14)にある末端印刷ヘッドセクション(30)と
を備え、
前記混合セクション(24)および前記冷却セクション(28)は、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、および前記加圧セクション(22)の下流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、1つまたは複数の排出端を有し、前記排出端は、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちの1つまたは複数に接続されて
おり、
前記冷却セクション(28)は、管を含む管状セクションであり、ペルチェ素子、抵抗ヒーター、熱交換器または冷却フィンが前記管の外壁に設けられており、
前記加圧セクション(22)は、ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機、またはギア圧縮機を含む、三次元印刷システム。
【請求項2】
少なくとも前記セクション(16)、(20)、(24)、および(28)は、好ましくは1~10mmの間、より好ましくは2~4mmの間である同じ内径を有する管状セクションである、請求項1に記載の三次元印刷システム。
【請求項3】
i)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、前記冷却セクション(28)、および前記印刷ヘッド(30)は、前記印刷装置(10)の前記上流端(12)から前記下流端(14)まで、この順序で配置されるか、または、
ii)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、前記加圧セクション(22)、前記混合セクション(24)、前記冷却セクション(28)、および前記印刷ヘッド(30)は、前記供給セクション(16)、次に前記加圧セクション(22)が続き、次に前記加熱セクション(20)が続き、次に前記混合セクション(24)が続き、次に前記冷却セクション(28)が続き、次に前記印刷ヘッドセクション(30)が続く順序で、前記上流端(12)から前記下流端(14)まで配置されるか、または、
iii)前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(20)、および前記加圧セクション(22)は、1つのセクションに組み合わされ、次に前記混合セクション(24)が続き、次に前記冷却セクション(28)が続き、次に前記印刷ヘッドセクション(30)が続く、請求項1または2に記載の三次元印刷システム。
【請求項4】
前記加熱セクション(20)は管を含む管状セクションであり、ペルチェ素子、抵抗ヒーター、または熱交換器が前記管の外壁に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項5】
前記加圧セクション(22)の壁は、好ましくはペルチェ素子、抵抗ヒーター、または熱交換器である加熱手段を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項6】
前記冷却セクション(28)は、前記混合セクション(24)の下流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、前記混合セクション(24)、好ましくは前記混合セクション(24)の上流部分に接続されている1つの排出端を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項7】
前記冷却セクション(28)は、前記混合セクション(24)の上流に配置され、前記発泡剤供給ライン(26)は、前記冷却セクション(28)、または前記混合セクション(24)、好ましくは前記混合セクション(24)の上流部分に接続されている1つの排出端を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項8】
前記印刷ヘッドセクション(30)は、先細の管状セクションであり、前記印刷ヘッドセクション(30)の下流部分は、前記金型(32)を形成するように先細になっており、前記印刷ヘッドセクション(30)の上流部分は、好ましくは、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(29)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちの少なくとも1つと同じ内径を有し、より好ましくは、前記供給セクション(16)、前記加熱セクション(29)、前記混合セクション(24)、および前記冷却セクション(28)のうちのすべてと同じ内径を有することが好ましく、前記金型(32)は、好ましくは0.1~1.0mm、より好ましくは0.1~0.5mmの内径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元印刷システム。
【請求項9】
少なくとも部分的に膨張したポリマーで作製された三次元物体を調製するための方法であって、前記方法は、請求項1~8のいずれか一項に記載の三次元印刷システムで実行される、方法。
【請求項10】
前記方法は、
a)ポリマー溶融物が得られるように、ポリマーを溶融するステップと、
b)加圧されたポリマー溶融物が得られるように、前記ポリマー溶融物を加圧するステップと、
c)膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つの発泡剤を前記加圧されたポリマー溶融物に投与するステップと、
d)均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物が得られるように、少なくとも1つのミキサーを通過させることにより、好ましくは少なくとも1つの静的ミキサーを通過させることにより、前記膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を均質化するステップと、
e)冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物が得られるように、前記均質化された膨張可能な加圧されたポリマー溶融物を冷却するステップと、
f)前記冷却された均質化された膨張可能な加圧されたポリマー混合物を、前記印刷装置(10)の前記金型(32)を通して押し出すことにより、成形、堆積、および発泡させるステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの核剤が前記ポリマーに添加され、前記少なくとも1つの核剤は、好ましくは、ステップa)の前および/またはステップa)の後であるが、ステップd)の前に添加される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、ポリスチレン、ポリ乳酸、熱可塑性エラストマー、ニトリルゴム、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、ポリクロロプレン、ポリイミド、塩化ポリビニル、および前述のポリマーの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発泡剤は、物理的発泡剤であり、好ましくは、二酸化炭素、窒素、水、シクロペンタン、イソブタン、ペンタン、および前述の化合物の2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される物理的発泡剤である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)で得られた前記膨張可能な加圧されたポリマー溶融物は、60~270℃の温度を有し、2~50MPaに加圧される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】