(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】クロロシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20220907BHJP
C01B 33/035 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
C01B33/035
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021535220
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(85)【翻訳文提出日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2018085601
(87)【国際公開番号】W WO2020125955
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインツ、リンベック
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA11
4G072AA13
4G072AA14
4G072BB12
4G072GG03
4G072HH01
4G072HH08
4G072HH09
4G072JJ01
4G072JJ26
4G072JJ28
4G072JJ34
4G072KK07
4G072KK09
4G072LL02
4G072LL03
4G072MM08
4G072MM21
4G072NN14
4G072RR17
4G072UU02
4G072UU30
(57)【要約】
本発明は、流動床反応器内において、水素及び四塩化ケイ素を含む反応ガスと、シリコン及び触媒を含む粒子状接触剤と、の反応により、クロロシランを製造する方法に関し、クロロシランが一般式HnSiCl4-n及び/又はHmCl6-mSi2(式中、n=1~4であり、m=0~4である)を有し、反応器の設計が指標K1により表され、接触剤の構成が指標K2により表され、反応条件が指標K3により表され、K1の値が1~20であり、K2の値が0.001~200、K3の値が0.5~10,000であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床反応器内において、水素及び四塩化ケイ素を含む反応ガスと、シリコン及び触媒を含む粒子状接触剤と、の反応により、クロロシランを製造する方法であって、前記クロロシランが、一般式H
nSiCl
4-n及び/又はH
mCl
6-mSi
2(式中、n=1~4であり、m=0~4である)を有し、
前記反応器の設計が、指標K1により表され、
前記接触剤の構成が、指標K2により表され、
反応条件が、指標K3により表され、
K1の値が2~20であり、K2の値が0.001~200であり、K3の値が0.5~10,000である
ことを特徴とする方法。
【数1】
[式1中、
φ = 前記反応器の充填レベル、
V
reactor, eff = 前記反応器の有効体積[m
3]、
A
tot, cooled = 前記反応器内の冷却表面積の合計[m
2]、
d
hyd = 反応器の水力直径[m]。]
【数2】
[式4中、
B
AK = 前記接触剤の粒径分布の幅[μm]、
d
32 = 粒子のザウター径[μm]、
R
Si = 前記シリコンの純度、
δ
rel = 前記接触剤における相対触媒分布。]
【数3】
[式7中、
u
L = ガス空塔速度[m/s]、
ν
F = 流体の動粘性率[m
2/s]、
ρ
F = 流体密度[kg/m
3]、
p
diff = 流動床上の圧力損失[kg/m・s
2]、
g = 重力加速度[m/s
2]。]
【請求項2】
K1の値が、3~18であり、好ましくは4~16であり、特に好ましくは6~12であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
K2の値が、0.005~100であり、好ましくは0.01~25、特に好ましくは0.02~15であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
K3の値が、0.5~10,000であり、好ましくは3~3000、特に好ましくは5~1000であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有効反応器体積V
Reactor,effが、1~300m
3であり、好ましくは5~200m
3、特に好ましくは10~150m
3、とりわけ好ましくは20~100m
3であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水力プラント直径d
hydが、0.5~2.5mであり、好ましくは0.75~2m、特に好ましくは0.8~1.5mであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動床上の圧力損失p
diffが、10,000~200,000kg/m・s
2であり、好ましくは30,000~150,000kg/m・s
2、特に好ましくは50,000~120,000kg/m・s
2であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子のザウター径d
hydが、10~2000μmであり、好ましくは50~1500μm、特に好ましくは100~1000μm、とりわけ好ましくは200~800μmであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触剤の粒径分布の幅B
AKが、10~1500μmであり、好ましくは100~1000μm、特に好ましくは300~800μmであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触剤における相対触媒分布δ
relが、0.001~7であり、好ましくは0.005~5、特に好ましくは0.01~2.5であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、Fe、Al、Ca、Ni、Mn、Cu、Zn、Sn、C、V、Ti、Cr、B、P、O、Cl及びそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス空塔速度u
Lが、0.05~2m/sであり、好ましくは0.1~1m/s、特に好ましくは0.2~0.8m/s、とりわけ好ましくは0.25~0.6m/sであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記流体密度ρ
Fが、2~20kg/m
3であり、好ましくは5~15kg/m
3、特に好ましくは7.5~12kg/m
3であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動粘性率ν
Fが、3×10
-7~5.4×10
-6m
2/sであり、好ましくは1.5×10
-6~5.4×10
-6m
2/s、特に好ましくは2×10
-6~4×10
-6m
2/sであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記流動床反応器内の絶対圧力が、0.5~5MPaであり、好ましくは1~4MPa、特に好ましくは1.5~3.5MPaであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
350℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、特に好ましくは480℃~600℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応ガスが、前記反応器に入る前に、水素及び四塩化ケイ素を少なくとも10vol%、好ましくは少なくとも50vol%、特に好ましくは少なくとも90vol%含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
多結晶シリコンを製造するための統合システムに組み込まれていることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器内において、水素及び四塩化ケイ素を含む反応ガスと、シリコン及び触媒を含む粒子状接触剤と、の反応により、クロロシランを製造する方法に関し、クロロシランが一般式HnSiCl4-n及び/又はHmCl6-mSi2(式中、n=1~4であり、m=0~4である)を有し、反応器の設計が指標K1により表され、接触剤の構成が指標K2により表され、反応条件が指標K3により表され、K1の値が1~20であり、K2の値が0.001~200であり、K3の値が0.5~10,000であることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
チップ又は太陽電池を製造するための出発原料としての多結晶シリコン(polycrystalline silicon)は、通常、その揮発性ハロゲン化合物、特にトリクロロシラン(TCS、HSiCl3)、を分解することによって製造されている。
【0003】
多結晶シリコン(ポリシリコン)は、反応器内で加熱されたフィラメントロッド上にポリシリコンを堆積させるシーメンス法により、ロッド形状で製造することができる。プロセスガスとしては、通常、TCSと水素との混合物が使用されている。また、流動床反応器内でポリシリコン顆粒を製造することもできる。これは、ガス流を利用してシリコン粒子を流動床中で流動させることを含み、ここで当該流動床は、加熱装置により高温に加熱される。TCSなどのシリコン含有反応ガスを加えると、高温の粒子表面で熱分解反応が起こり、粒子の直径が大きくなる。
【0004】
クロロシラン、特にTCSは、以下の反応に基づく3つの方法によって基本的に製造することができる(国際公開第2010/028878A1号及び国際公開第2016/198264A1号参照)。
(1)Si+3HCl → SiHCl3+H2+副生成物
(2)Si+3SiCl4+2H2 → 4SiHCl3+副生成物
(3)SiCl4+H2 → SiHCl3+HCl+副生成物
【0005】
副生成物は、例えば、モノクロロシラン(H3SiCl)、ジクロロシラン(H2SiCl2)、四塩化ケイ素(STC、SiCl4)、並びにジ及びオリゴシランなどのさらなるハロシランを含むことがある。炭化水素、有機クロロシラン及び金属塩化物などの不純物が副生成物の構成要素であることもある。そのため、高純度のTCSの製造は、通常、後続の蒸留を含む。
【0006】
反応(1)による塩化水素化(HC)は、流動床反応器内で塩化水素(HCl)を加えることにより、冶金シリコン(Simg)からクロロシランを製造することを可能にし、ここで反応は発熱的に進行する。これにより、通常、主生成物としてTCS及びSTCが得られる。
【0007】
クロロシラン、特にTCSを製造するためのさらなる選択肢は、触媒の存在下又は非存在下で、気相中でのSTC及び水素の熱変換である。
【0008】
反応(2)による低温変換(LTC)は、弱吸熱過程であり、通常は触媒(例えば、銅含有触媒又は触媒混合物)の存在下で行われる。LTCは、流動床反応器内において、Simgの存在下、0.5~5MPaの圧力下かつ400℃~700℃の温度で実施することができる。無触媒反応モードは、Simgを使用して、及び/又は反応ガスにHClを加えることによって、通常は可能である。しかしながら、他の生成物分布が生じる可能性があり、及び/又は触媒を使用した場合よりも低いTCS選択性が得られる可能性がある。
【0009】
反応(3)による高温変換(HTC)は、吸熱過程である。この過程は、通常は高圧下、600℃~1200℃の温度の反応器内で行われる。
【0010】
既知の方法は、原理的にコストがかかり、大量のエネルギーを消費する。必要なエネルギー投入は、通常は電気的手段により行われており、大きなコスト要因となっている。流動床反応器におけるLTCの運転性能(例えば、TCS選択性-加重生産性、高沸点副生成物の生成がほとんどないことで表される)は、調整可能な反応パラメータに決定的に依存する。さらに、連続プロセスモードでは、反応成分であるシリコン、STC及び水素を上記反応条件下で反応器に導入する必要があり、これにはかなりの技術的複雑さを伴う。このような背景に対して、可能な限り高い生産性(単位時間及び反応体積あたりに生成するクロロシランの量)と、所望の目的生成物(典型的にはTCS)に基づく可能な限り高い選択性(TCS選択性-加重生産性)とを実現することが重要である。
【0011】
LTCによるクロロシランの製造は、動力学プロセスである。可能な限り性能を効率化し、HCを常に最適化するためには、基本的な動力学を理解し、視覚化することが必要である。そのためには、原理的に、プロセスモニタリングのための高い時間分解能を持つ手法が必要である。
【0012】
回収サンプルの分析(オフライン/アトライン測定(off-/at-line measurement))により、人的集約型実験室的方法でLTCからの生成混合物の組成を決定することが知られている。しかしながら、上記分析は、常に時間的な遅れを伴って行われることから、最良のケースでは、流動床反応器の個別の動作状態についての点状の遡及的抽出物を提供する。しかしながら、例えば、複数の反応器の生成物ガス流が1つの凝縮セクターで結合され、この凝縮混合物の1つのサンプルのみが回収される場合、分析結果に基づいて個々の反応器の動作状態について具体的な結論を出すことは不可能である。
【0013】
LTCからの生成混合物の組成を高い時間分解能で測定できるようにするためには、ガス流及び/又は凝縮物流中でプロセス分析計、例えばプロセスガスクロマトグラフ(オンライン/インライン及び/又は非侵襲的測定)を(好ましくは各反応器において)使用することが可能である。しかしながら、これの不利な点は、原理的には、高い機械的ストレス(摩耗)及び浸食的な化学環境のために、使用できる機器の数が限られることである。また、一般的に資本コストや維持コストが高いことも、さらなるコスト要因となっている。
【0014】
LTC反応器の個別の動作状態を特定するために、原理的には、以下のように分類できる様々なプロセス分析法を利用することが可能である(W.-D.Hergeth,On-Line Monitoring of Chemical Reactions:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley:Weinheim,Germany 2006)。
【0015】
【0016】
プロセス分析計の不利な点は、いわゆるソフトセンサー(仮想センサー)に基づいたモデルベースの方法論によって回避することができる。ソフトセンサーは、プロセスの操作に不可欠な操作パラメータ(例えば、温度、圧力、体積流量、充填レベル、出力、質量流量、バルブの位置)について連続的に決定される測定データを利用する。これにより、例えば、主生成物及び副生成物の濃度を予測することが可能になる。
【0017】
ソフトセンサーは、数学的方程式に基づいており、代表的な測定値の目標値への依存性シミュレーションである。言い換えれば、ソフトセンサーは、相関する測定値の依存性を示し、目標パラメータにつながる。したがって、目標パラメータは直接測定されるのではなく、これらの相関する測定値を用いて決定される。HCに適用すると、これは、例えば、TCS含有量又はTCS選択性が、実際の測定センサー(例えば、プロセスガスクロマトグラフ)を用いて決定されるのではなく、操作パラメータ間の相関関係を介して計算することができることを意味する。
【0018】
ソフトセンサーの数学的方程式は、完全に経験的なモデリング(例えば、変換されたべき乗則モデルに基づく)、半経験的なモデリング(例えば、反応速度を記述するための速度方程式に基づく)、又は基本的なモデリング(例えば、流動力学及び動力学の基本方程式に基づく)によって得ることができる。数学的方程式は、プロセスシミュレーションプログラム(例えば、OpenFOAM、ANSYS又はBarracuda)又は回帰プログラム(例えば、Excel VBA、MATLAB又はMaple)を用いて導き出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、LTCによるクロロシランの製造の経済性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、流動床反応器内において、水素及び四塩化ケイ素を含む反応ガスと、シリコン及び触媒を含む粒子状接触剤と、の反応により、クロロシランを製造する方法によって達成される。ここでクロロシランは、一般式HnSiCl4-n及び/又はHmCl6-mSi2(式中、n=1~4であり、m=0~4である)を有する。
【0021】
反応器の設計は、無次元の指標K1により表される。
【数1】
【0022】
式1中、
φ = 反応器の充填レベル、
Vreactor, eff = 反応器内部の有効体積[m3]、
Atot, cooled = 反応器内の冷却表面積の合計[m2]、及び
dhyd = 反応器の水力直径[m]。
【0023】
接触剤の構成は、無次元の指標K2により表される。
【数2】
【0024】
式4中、
BAK = 接触剤の粒径分布の幅[μm]、
d32 = 粒子のザウター径[μm]、
RSi = シリコンの純度、及び
δrel = 接触剤における相対触媒分布。
【0025】
反応条件は、無次元の指標K3により表される。
【数3】
【0026】
式7中、
uL = ガス空塔速度[m/s]、
νF = 流体(反応器内部のガス状反応混合物)の動粘性率[m2/s]、
ρF = 流体密度[kg/m3]、
pdiff = 流動床上の圧力損失[kg/m・s2]、及び
g = 重力加速度[m/s2]。
【0027】
上記方法において、K1の値は2~20であり、K2の値は0.001~200であり、K3の値は0.5~10,000である。これらの範囲内では、上記方法の生産性が特に高い。
【0028】
プロセス監視の物理的及び仮想的な方法を使用することで、LTCにおける新たな相関関係を特定することができた。特定のパラメータ設定及びその組合せを選択することで上記方法を特に経済的に実施できるように、この相関関係により、3つの指標K1、K2及びK3を介してLTCを記述することが可能になった。本発明の方法は、LTCのための「アドバンスト・プロセス・コントロール(APC)」の文脈で、統合された予測的なプロセス制御を可能にする。LTCが、特にプロセス制御システム(好ましくはAPCコントローラ)を介して、K1、K2及びK3についての本発明の範囲で実施される場合、可能な限り最高の経済効率が達成される。シリコン製品(例えば、様々な品質等級のポリシリコン)を製造するための統合システムにおいて、上記方法を組み込むことにより、製造シーケンスを最適化し、製造コストを削減することができる。
【0029】
指標K1、K2及びK3の範囲は、直交座標系でプロットすると、LTCのための特に有利な操作範囲を表す3次元空間を張る。このような操作範囲は、
図1に模式的に示されている。本発明の方法は、特に、LTC用の新しい流動床反応器の構成を簡素化する。
【0030】
さらに、ソフトセンサーは、例えばTCS選択性などの性能パラメータを、K1、K2及びK3の関数として表示することができる。このようにして高時間分解能で決定された性能データを、プロセス制御手段、特にモデル予測制御手段に、操作変数として提供することができる。このようにして、経済的に最適化された態様で上記方法を操作することができる。
【0031】
上記方法の好ましい実施形態では、K1の値は3~18であり、好ましくは4~16、特に好ましくは6~12である。
【0032】
K2の値は、望ましくは0.005~100であり、好ましくは0.01~25、特に好ましくは0.02~15である。
【0033】
K3の値は、望ましくは0.5~10,000であり、好ましくは3~3,000、特に好ましくは5~1,000、とりわけ好ましくは10~500である。
【0034】
図2は、上記方法を実施するための反応器内部6を有する流動床反応器1を模式的に示している。反応ガス2は、好ましくは下方から、また任意に側方から(例えば、下方からのガス流に対して接線方向又は直交方向に)粒子状接触剤に注入され、これにより接触剤の粒子を流動化させて流動床3を形成する。反応は、通常、反応器の外部に配置された加熱装置(図示せず)を用いて流動床3を加熱することによって開始される。連続運転中は、通常、加熱は必要ない。粒子の一部は、ガス流によって流動床3から流動床3上の空間4に移送される。自由空間4は、非常に低い固体密度を特徴とし、当該密度は、反応器出口に向かって減少する。ガス流とともに反応器を出る粒子画分は、粒子排出物5と記載する。流動床反応器の一例は、米国特許出願公開第2011/0129402A1号明細書に記載されている。
【0035】
K1-充填レベル-加重反応器設計
指標K1は、式1により、反応器形状のパラメータ、すなわち反応器内部の有効体積VReactor, eff、反応器内部の冷却表面積Atot, cooledの合計、及び水力直径dhydを、無次元の充填レベルφで表されるように、流動床と関連付ける。
【0036】
VReactor, effは、反応器内部の総体積からすべての内部構造物を除いたものに相当する。VReactor, effは、望ましくは1~300m3であり、好ましくは5~200m3、特に好ましくは10~150m3、とりわけ好ましくは20~100m3である。
【0037】
流動床反応器における流体動力学の研究により、流動床反応器の内部の形状が流体動力学に決定的な影響を与え、ひいては生産性にも影響を与えることが明らかになった。内部とは、特に、反応ガス及び/又は接触剤の粒子と接触する可能性のある領域(すなわち、特に、上記空間と流動床が形成される領域との両方)を意味すると理解されるべきである。内部の形状は、高さ、幅、形状(例えば、シリンダー又はコーン)などの一般的な構造上の特徴だけでなく、内部に配置された内部構造物によっても決定される。内部構造物は、特に、熱交換器ユニット、補強面、反応ガスを導入するための供給部(導管)、及び反応ガスを分配するための装置(例えば、ガス分配板)などである。
【0038】
反応器内部の冷却表面積の合計Atot, cooledは、どれだけの表面積を熱交換に利用できるかを特定する。例えば、Atot, cooledは、冷却マトリックス(個々のランスやUパイプなどからなる)とジャケット冷却器との表面積で構成される。
【0039】
流動床反応器の水力直径dhydは、流体-機械摩擦や、内部構造物、流路又は他の形状の表面効果を、等価な直径に帰属させて説明することを可能にする工学的な指標である。dhydは、式2に従い算出される。
【0040】
【0041】
式2中、
Aq,free = 内部の自由流断面積[m2]、及び
Utot, wetted = すべての内部構造物の濡れ周長[m]。
【0042】
自由流断面積とは、流動床が形成される(内部構造物を含まない)反応器の部分の断面積である。
【0043】
水力プラント直径dhydは、望ましくは0.5~2.5mであり、好ましくは0.75~2m、特に好ましくは0.8~1.5mである。
【0044】
すべての対象物(内部の直径、内部構造物の外周、冷却表面積)の測定は、例えば、レーザー測定/3Dスキャン(例えば、ZEISS COMET L3D 2)によって実施することができる。これらの寸法は、通常、反応器メーカーの文献からも知ることができる。
【0045】
充填レベルφは、反応器内部にどの程度の接触剤が存在するかを示す。φは、式3に従い算出される。
【0046】
【0047】
式3中、
pdiff = 流動床上の圧力損失[kg/m・s2]、及び
ρp = 接触剤の粒子固体密度[kg/m3]。
【0048】
粒子固体密度ρpは、ほぼ一定とみなすことができる。典型的な値は、例えば2336kg/m3(20℃におけるSiの密度)である。測定は、ピクノメーターを用いて行ってもよい。
【0049】
流動床上の圧力損失pdiffは、好ましくは10,000~200,000kg/m・s2であり、特に好ましくは30,000~150,000kg/m・s2、とりわけ好ましくは50,000~120,000kg/m・s2である。pdiffを決定するために、反応ガスの供給管内と排出ガスの排出管内との両方の圧力を、例えばマノメーターを用いて測定する。pdiffは、差分である。
【0050】
K2-接触剤の構成
K2は、式4により、使用される粒子状接触剤の構成、特に造粒を表す。
【0051】
K2は、シリコンの無次元の純度RSi、接触剤の粒径分布の幅BAK、ザウター径d32、及び接触剤の相対触媒分布δrelで構成される。BAKは、式5に従い得られる。
BAK = d90 - d10 式5
【0052】
式5中、画分又は造粒混合物中において、d10[μm]は、比較的小さい粒子のサイズを示す指標であり、値d90[μm]は、比較的大きい粒子を示す指標である。d10及びd90は、一般に、粒径分布の特性評価のための重要なパラメータである。例えば、値d10は、全粒子の10%が記載の値よりも小さいことを意味する。また、値d50は、メジアン粒径と定義されている(DIN 13320参照)。
【0053】
d10及びd90の値は、接触剤の粒径分布の幅BAKが好ましくは10~1500μm、特に好ましくは100~1000μm、とりわけ好ましくは300~800μmとなるように選択される。
【0054】
ザウター径d32は、接触剤の平均等体積粒径であり、好ましくは10~2000μmであり、特に好ましくは50~1500μm、とりわけ好ましくは100~1000μm、とりわけ特に好ましくは200~800μmである。
【0055】
粒径分布の幅/ザウター径は、ISO 13320(レーザー回折)及び/又はISO 13322(画像分析)に従って決定することができる。粒径分布からの平均粒径/直径は、DIN ISO 9276-2に基づいて計算することができる。
【0056】
接触剤における相対触媒分布δrelは、触媒を用いた粒子状接触剤の濡れ/一般的な濡れ性を示す指標である。「触媒」とは、特に、流動床反応器に添加される、触媒及び/又は促進剤の混合物をも包含するものとして理解されるべきである。これに対応して、δrelは、触媒混合物又は触媒-促進剤混合物を用いた粒子状接触剤の濡れの指標とすることもできる。
δrelは、式7に従い算出することができる。
【0057】
【0058】
式6中、
λ = 触媒/シリコン造粒物の質量比又は触媒充填量、
Ospec, cat = 触媒の平均比表面積[m2/kg]、及び
Ospec, SiK = シリコン造粒物の平均比表面積[m2/kg]。
【0059】
接触剤における相対触媒分布δrelは、望ましくは0.001~7であり、好ましくは0.005~5、特に好ましくは0.01~2.5である。
【0060】
平均比表面積は、例えば、BET法(ISO 9277)に従ってガス吸着により直接決定することができる。
【0061】
「造粒物」とは、特に、例えば、特に粉砕・製粉プラントを用いた、塊状シリコン(特にSimg)の粉砕によって得られるシリコン粒子の混合物を意味すると理解されるべきである。塊状シリコンは、10mm超、好ましくは20mm超、特に好ましくは50mm超の平均粒径を有することができる。最大平均粒径は、好ましくは500mmである。
【0062】
造粒物は、本質的には、篩い分けによって、画分に分級することができる。
【0063】
造粒物は、以下により/以下から製造することができる。
-塊状シリコンを粉砕、製粉し;続いて任意でふるいにかける(分級)。
-様々な種類のシリコン(ウェハー、多結晶(polycrystalline/multicrystalline)・単結晶シリコン、Simg)の処理(粉砕、製粉、ソーイング)で発生する、特にダスト状の廃棄物であって、分級してもよく;オーバーサイズ及び/又はアンダーサイズの形状であり、これらは目標とする粒径から外れている画分である。
-造粒されたSimg又はポリシリコン、及びこのようにして形成された共生成物、特にシリコンダスト(平均粒径10μm未満、任意に処理(圧縮/凝集)、例えばペレットの形)を製造する方法。
【0064】
異なる造粒物の混合物を造粒混合物と呼び、造粒混合物を構成する造粒物を造粒物画分と呼ぶことがある。造粒物画分は、互いに相対的に、粗粒画分と細粒画分とに分級され得る。造粒物混合物の場合、原理的には、複数の造粒物画分が粗粒画分及び/又は細粒画分に分級されてもよい。流動床反応器に導入される造粒物は、操作造粒物と呼ばれることがある。接触剤は、一般に、反応器内で反応ガスと接触して反応する造粒混合物である。
【0065】
接触剤は、特に造粒混合物である。接触剤は、好ましくは、さらなる成分を含まない。好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、とりわけ好ましくは1重量%以下の他の元素を不純物として含むシリコンである。好ましくは、典型的には98%~99.9%の純度を持つSimgである。典型的な組成は、例えば98%のシリコンからなり、残りの2%は一般的に大部分が元素:Fe、Ca、Al、Ti、Cu、Mn、Cr、V、Ni、Mg、B、C、P及びOで構成されている。存在してもよいさらなる元素としては、例えば、Co、W、Mo、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Zr、Ge、Sn、Pb、Zn、Cd、Sr、Ba、Y及びClが挙げられる。シリコンの上記純度は、測定対象となるシリコン試料中の上記元素の含有量を測定し、その合計値を用いて純度(例えば重量%)を算出すると理解されるべきである。不純物の合計含有量2重量%が測定される場合、これはシリコンの含有量98重量%に等しい。75~98重量%の低い純度のシリコンを使用することも可能である。しかしながら、シリコンの含有量は、望ましくは75重量%超であり、好ましくは85重量%超、特に好ましくは95重量%超である。
【0066】
シリコン中に不純物として存在するかなりの元素が、触媒活性を示す。したがって、使用するシリコンが触媒活性のある不純物を含む場合、原理的には、別の触媒を追加する必要はないと考えられる。しかしながら、1つ以上の追加触媒の存在によって、特に選択性の点で、上記方法にプラスの影響を与えることができる。
【0067】
一実施形態では、使用されるシリコンは、Simgと超高純度シリコン(純度99.9%超)との混合物である。言い換えれば、Simgと超高純度シリコンとを含有する造粒混合物に関するものでもよい。Simgの割合は、造粒混合物の総重量を基準として、望ましくは少なくとも50重量%であり、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である。超高純度シリコンは、特に細粒画分の構成要素である。細粒画分は、さらに、超高純度シリコンのみを含んでもよい。
【0068】
さらなる実施形態では、使用されるシリコンは、Simg及び超高純度シリコンであり、Simgの割合は、造粒混合物の総重量を基準として、50重量%未満である。造粒混合物/接触剤は、さらに触媒を含有する。超高純度シリコン及び/又は触媒は、好ましくは細粒画分の構成要素である。細粒画分は、好ましくは超高純度シリコンのみからなる。
【0069】
別の実施形態では、使用されるシリコンは、超高純度シリコンのみであり、接触剤/造粒混合物は、触媒を含む。
【0070】
超高純度シリコンは、原理的には、元素Co、Mo及びW(通常、不純物として超高純度シリコン中に既に存在する)のうちの1つが少量存在するだけで、LTCによって変換されることができる。比較的多量の触媒活性元素を不純物として含むSimgを用いた複合変換は不可欠ではない。しかしながら、クロロシランの選択性は、触媒の添加によってさらに向上させることができる。本方法では、特に、造粒混合物中の超高純度シリコンの割合がSimgの割合よりも大きい場合、及び/又は造粒混合物が超高純度シリコンのみからなる場合に、これが当てはまる可能性がある。
【0071】
触媒は、Fe、Cr、Ni、Co、Mn、W、Mo、V、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Ti、Zr、C、Ge、Sn、Pb、Cu、Zn、Cd、Mg、Ca、Sr、Ba、B、Al、Y、Clの群からの1つ以上の元素でもよい。触媒は、好ましくは、Fe、Al、Ca、Ni、Mn、Cu、Zn、Sn、C、V、Ti、Cr、B、P、O、Cl及びこれらの混合物からなる群から選択される。上述したように、これらの触媒活性元素は、不純物として一定の割合でシリコン中に既に存在してもよく、例えば、酸化形態若しくは金属形態で、ケイ化物として、又は他の冶金相中に、又は酸化物や塩化物として存在してもよい。その割合は、使用されるシリコンの純度に依存する。
【0072】
触媒は、例えば、金属、合金及び/又は塩様の形態で接触剤に添加することができる。特に、触媒活性元素の塩化物及び/又は酸化物に関するものでもよい。好ましい化合物は、CuCl、CuCl2、CuP、CuO又はそれらの混合物である。接触剤は、例えば、Zn及び/又はZnCl2及び/又はSnなどの促進剤をさらに含んでいてもよい。
【0073】
使用されるシリコン及び接触剤の元素組成は、例えば蛍光X線分析によって決定することができる。
【0074】
触媒は、シリコンを基準として、好ましくは0.1~20重量%、特に好ましくは0.5~15重量%、とりわけ好ましくは0.8~10重量%、殊のほか好ましくは1~5重量%の割合で存在する。
【0075】
K3-反応条件
指標K3は、式7により、HCの最も重要なパラメータを互いに関連付けている。ここには,ガス空塔速度uL、流動床上の圧力損失pdiff、流体の動粘性率νF、及び流体密度ρFが含まれる。流体とは、反応器内部のガス状反応混合物を意味すると理解されるべきである。
【0076】
ガス空塔速度uLは、望ましくは0.05~2m/sであり、好ましくは0.1~1m/s、特に好ましくは0.2~0.8m/s、とりわけ好ましくは0.25~0.6m/sである。
【0077】
流体密度ρF及び動粘性率νFは、プロセスエンジニアリングソフトウェアを用いた相平衡状態のシミュレーションによって決定することができる。これらのシミュレーションは、物理的パラメータ(例えば、p及びT)を変化させるために、気相及び液相の両方で実際に測定された反応混合物の組成を利用する適合相平衡に基づくのが一般的である。このシミュレーションモデルは、実際の動作状態/操作パラメータを用いて確認することができ、その結果、パラメータρF及びνFに関する操作最適条件を指定することができる。
【0078】
相平衡は、例えば、測定装置(例えば、修正されたRoeck and Sieg再循環装置、例えば、MSK Baraton type 690、MSK Instruments)を使用して決定することができる。圧力及び温度などの物理的な影響を与える変数を変化させると、物質混合物の状態が変化する。続いて種々の状態を分析して、例えばガスクロマトグラフを用いて成分組成を決定する。状態方程式を改良して相平衡を記述するためには、コンピュータ支援モデリングを使用することができる。データは、プロセスエンジニアリングのソフトウェアプログラムに転送され、相平衡を計算することができる。
【0079】
動粘性率とは、動流体の流れ方向に垂直な方向の運動量移行を表す指標である。動粘性率(kinematic viscosity)νFは、粘性率(dynamic viscosity)と流体密度とにより表すことができる。密度は、例えば、液体の場合はRackett方程式で、気体の場合はPeng-Robinsonなどの状態方程式で近似することができる。密度は、デジタル密度測定器(例えば、DMA 58、Anton Paar)を用いて、ねじり振り子法(固有振動数測定)で測定することができる。
【0080】
流体密度ρFは、好ましくは2~20kg/m3、より好ましくは5~15kg/m3、特に好ましくは7.5~12kg/m3の範囲である。
【0081】
動粘性率νFは、好ましくは3×10-7~5.4×10-6m2/s、より好ましくは1.5×10-6~5.4×10-6m2/s、特に好ましくは2×10-6~4×10-6m2/sの範囲である。
【0082】
本発明の方法が好ましく実施される流動床反応器内の絶対圧力は、0.5~5MPaであり、好ましくは1~4MPa、特に好ましくは1.5~3.5MPaである。
【0083】
本方法は、好ましくは350℃~800℃、特に好ましくは400℃~700℃、とりわけ好ましくは480℃~600℃の温度範囲で行われる。
【0084】
反応ガスは、反応器に入る前に、水素及びSTCを好ましくは少なくとも10vol%、特に好ましくは少なくとも50vol%、とりわけ好ましくは少なくとも90vol%含む。
【0085】
さらに、水素及びSTCは、1:1~10:1、好ましくは1:1~6:1、特に好ましくは1.1~4:1のモル比で存在してもよい。
【0086】
反応ガスは、HnSiCl4-n(n=0~4)、HmCl6-mSi2(m=0~6)、HqCl6-qSi2O(q=0~4)、CH4、C2H6、CO、CO2、O2、N2からなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含んでもよい。これらの成分は、例えば統合システムで回収された水素に由来するものであってもよい。
【0087】
さらに、特に発熱反応型を可能にし、反応の平衡位置に影響を与えるために、HCl及び/又はCl2を反応ガスに添加することも可能である。反応器に入る前の反応ガスは、存在する水素1モルあたり0.01~1モルのHCl及び/又は0.01~1モルのCl2を含むことが好ましい。また、HClは、回収水素中の不純物として存在してもよい。
【0088】
反応ガスは、例えば窒素又はアルゴンなどの希ガスなどのキャリアガスをさらに含んでもよい。
【0089】
反応ガスの組成の測定は、通常、反応器に供給する前に、ラマン分光法や赤外分光法、ガスクロマトグラフィーによって行われる。これは、抜き取り検査でサンプルを採取し、その後「オフライン分析」することにより行うか、又は、システムに組み込まれた「オンライン」分析機器を使用して行うことができる。
【0090】
上記方法は、ポリシリコンを製造するための統合システムに組み込まれていることが好ましい。統合システムは、好ましくは以下の工程:本発明の方法によりTCSを製造し、製造されたTCSを精製して半導体品質のTCSを得て、好ましくはシーメンス法により、又は顆粒として、ポリシリコンを堆積すること、を含む。
【実施例】
【0091】
クロロシラン製造の生産性に対する上記の知見及び相関関係を適用し、指標K1、K2及びK3の範囲(操作範囲)を定義するために、種々のサイズの連続運転される流動床反応器に関する詳細な調査を行った。
【0092】
様々な実験V(表1:V1~V31)を行い、それぞれのケースで、水力プラント直径dhydを0.3m~3mの値で、ガス空塔速度uLを0.01m/s~4m/sの値で、粒子ザウター径d32を5μm~2500μmの値で、操作造粒物の幅BAKを10~2000μmの値で、接触剤の相対触媒分布δrelを0.0001~10の値で、シリコンの純度を0.75~0.99999の値で、触媒充填量λを0.00001~0.4の値で、流動床上の圧力損失pdiffを5000~400,000kg/m・s2の値で変化させた。
【0093】
粒子固体密度ρPは、原則としてほぼ一定であると考えてもよい。流体密度ρFは、通常は2~20kg/m3の範囲である。動粘性率νFは、通常は6・10-7~4.5・10-6m2/sの範囲である。
【0094】
指標K1(式1)、K2(式4)及びK3(式7)は、選択された/規定されたパラメータに起因する。生産性[kg/(kg・h)]、すなわち、反応器内で使用される接触剤(操作造粒物)の量[kg]に対する1時間あたりのクロロシランの生成量[kg/h]は、選択されたK1、K2及びK3の組合せを評価するための、並びに最適な範囲を定義するための基礎として使用された。0.01kg/(kg・h)を超える生産性が最適/許容可能と考えられる。
【0095】
【0096】
実験の結果、指標K1、K2及びK3の最適な範囲で上記方法を実施すると、LTCによってクロロシランを特に高い生産性で製造できることがわかった。
【手続補正書】
【提出日】2019-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床反応器内において、水素及び四塩化ケイ素を含む反応ガスと、シリコン及び触媒を含む粒子状接触剤と、の反応により、クロロシランを製造する方法であって、前記クロロシランが、一般式H
nSiCl
4-n及び/又はH
mCl
6-mSi
2(式中、n=1~3であり、m=0~4である)を有し、
前記反応器の設計が、指標K1により表され、
前記接触剤の構成が、指標K2により表され、
反応条件が、指標K3により表され、
K1の値が2~20であり、K2の値が0.001~200であり、K3の値が0.5~10,000である
ことを特徴とする方法。
【数1】
[式1中、
φ = 前記反応器の充填レベル、
V
reactor, eff = 前記反応器の有効体積[m
3]、
A
tot, cooled = 前記反応器内の冷却表面積の合計[m
2]、
d
hyd = 反応器の水力直径[m]、
V
reactor, effが、1~300m
3であり、
d
hydが、0.5~2.5mである。]
【数2】
[式4中、
B
AK = 前記接触剤の粒径分布の幅[μm]、
d
32 = 粒子のザウター径[μm]、
R
Si = 前記シリコンの純度、
δ
rel = 前記接触剤における相対触媒分布、
δ
relが、0.001~7であり、
d
32が、10~2000μmであり、
B
AKが、10~1500μmであり、
R
Siが、0.75~0.99999である。]
【数3】
[式7中、
u
L = ガス空塔速度[m/s]、
ν
F = 流体の動粘性率[m
2/s]、
ρ
F = 流体密度[kg/m
3]、
p
diff = 流動床上の圧力損失[kg/m・s
2]、
g = 重力加速度[m/s
2]、
p
diffが、10,000~200,000kg/m・s
2であり、
u
Lが、0.05~2m/sであり、
ρ
Fが、2~20kg/m
3であり、
ν
Fが、3×10
-7~5.4×10
-6m
2/sである。]
【請求項2】
K1の値が、3~18であり、好ましくは4~16であり、特に好ましくは6~12であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
K2の値が、0.005~100であり、好ましくは0.01~25、特に好ましくは0.02~15であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
K3の値が、0.5~10,000であり、好ましくは3~3000、特に好ましくは5~1000であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有効反応器体積V
reactor,effが、5~200m
3であり、好ましくは10~150m
3、とりわけ好ましくは20~100m
3であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水力プラント直径d
hydが、0.75~2mであり、好ましくは0.8~1.5mであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動床上の圧力損失p
diffが、30,000~150,000kg/m・s
2であり、好ましくは50,000~120,000kg/m・s
2であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子のザウター径d
32が、50~1500μmであり、好ましくは100~1000μm、とりわけ好ましくは200~800μmであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触剤の粒径分布の幅B
AKが、100~1000μmであり、好ましくは300~800μmであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触剤における相対触媒分布δ
relが、0.005~5であり、好ましくは0.01~2.5であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、Fe、Al、Ca、Ni、Mn、Cu、Zn、Sn、C、V、Ti、Cr、B、P、O、Cl及びそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス空塔速度u
Lが、0.1~1m/sであり、好ましくは0.2~0.8m/s、とりわけ好ましくは0.25~0.6m/sであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記流体密度ρ
Fが、5~15kg/m
3であり、好ましくは7.5~12kg/m
3であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記動粘性率ν
Fが、1.5×10
-6~5.4×10
-6m
2/sであり、好ましくは2×10
-6~4×10
-6m
2/sであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記流動床反応器内の絶対圧力が、0.5~5MPaであり、好ましくは1~4MPa、特に好ましくは1.5~3.5MPaであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
350℃~800℃、好ましくは400℃~700℃、特に好ましくは480℃~600℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応ガスが、前記反応器に入る前に、水素及び四塩化ケイ素を少なくとも10vol%、好ましくは少なくとも50vol%、特に好ましくは少なくとも90vol%含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
多結晶シリコンを製造するための統合システムに組み込まれていることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】